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BORIS「PINK」(2005.11.18 DIWPHALANX / 2006 Southern Lord)
「世界を変える音」 というキャッチを見たときに、なんて大袈裟なこと…!!と驚いた記憶があるのだが、まさにこのアルバムがBorisを取り巻く世界はガラッと変わっていき、欧米での評価を獲得して行くきっかけとなるエポックメイキングな作品となった。発売から20年経ったが、欧米のベストアルバムセレクションの中にいまだに選ばれるほど欧米での人気は非常に高い。
「あくまのうた」をリリース後、日本でも欧米でもライブを重ねて一定の地位を築きつつあったにも関わらず、メンバーの止むを得ない事情により「feedbaker」リリース直前にライブ活動休止。ライブ休止期間中には「ロックの中心から外側へと発散していくサウンド」と表現していたboris名義で「目をそらした瞬間」「dronevil」「a bao a qu」「マブタノウラ」「vein」といった、膨大なリリースの中でも屈指の実験的な作品が録音されている。それらを含めて13タイトルをリリース(リイシューも含む)した後に、「ロックの外側から中心へと収束していくサウンド」と表現していたBORISとしての2年半ぶりのリリースが本作「PINK」であり、自らが打ち立てたコンセプトである「boris」と「BORIS」の境界線を見事に崩壊させる作品となった。
のちに友人から指摘されて気がついたのだけど、当時勃興していたポストロック〜ポストメタルの空気を吸いながら、これまで彼らが築いてきたサウンドと見事に昇華させた作品だったのも、欧米での大きな評価につながったのかもしれない。何はともあれ時代の文脈とともに、Boris自身の膨大な録音・リリースの文脈を紐解く楽しさはBorisマニアにのみ許された至上の喜びだ。
アルバムがリリースされる少し前の7月9日、新宿LOFTで"WIZARD'S CONVENTION Vol.1" と題されたオールナイトイベントが開催された。日本からはGREENMACHiNE、CHURCH OF MISERY、ETERNAL ELYSIUM、 WRENCH、THE DEAD PAN SPEAKERS、EARTH BLOW(1stアルバムはAtsuoのプロデュース)、アメリカからPELICANが参加し、Borisを中心としたJapnese Heavy Rockシーンの勃興への期待感が溢れる非常に熱気のあるイベントであった(個人的にはステージ転換時にDJをしたのがとても良い思い出)。
また3月の欧州、10月のアメリカとアルバムリリースに前後したツアーでは、SUNN O)))と数多くのライブを行なっており、スモークを多用したシアトリカルな演出はこの頃に互いに切磋琢磨して作り上げて行ったのではないかと推測される(ちなみに10月のツアー中に「Altar」が録音されている)。
このような状況の中で、僕が当時感じていた期待感が少しでも伝わればと思い、発売当時ディスクユニオンが発行していたFOLLOW UPに掲載されたインタビューとディスクレビュー(私が担当しました)も投稿してあるのでこちらもぜひご覧いただけたら。
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BORIS 「HEAVY ROCKS」(2002)
Boris屈指の名作の声も高いこのアルバム、何百回何千回聴いたかわからないくらい聴き込んでいるが、改めて30年超にわたるディスコグラフィーを俯瞰しながら聴くと、当時とは違った味わい深さを感じる。 僕がBorisのライブに行き始めた2000年当時、このアルバムの収録曲たちは歌詞は定まっていないまでも既にライブの定番として磨き上げられていた。
思い起こすと当時は、日本では渋谷系ミュージシャンたちと入れ替わるように骨太なロックバンドたちが一気にメジャーシーンにのしあがってきた頃。そのバンドたち中にはBorisとともに90年台にアンダーグラウンドシーンで切磋琢磨してきたギターウルフ、MAD3、Barebones、ゆらゆら帝国、そして20年の時を超えて交差することとなるNumber GirlやBuffaro Daughterなど現在も活躍するバンドたちが含まれている。
かたや海外に目を向けると、プロト・ヘヴィロックやサイケデリックを礎にしたStoner Rockと呼ばれたロックシーンが大いに盛り上がっていて、当時すでに解散していたが神格化されていたKYUSSのメンバーによるQUEENS OF THE STONE AGEが「Song For The Deaf」(2002)で一気にメジャーシーンに躍り出た頃だ。
「HEAVY ROCKS(2002)」は、そんな世界中でロックがなんとも言えない熱気を帯びていた頃にレコーディングされ、まさに満を辞してリリースされる。Borisの作品群でも特筆すべきメジャー感(ある種の「わかりやすさ」と言い換えてもいい)、Borisがその時代の空気を大きく吸い込みアンダーグラウンドから駆け上がろうとする、まさに羽化する瞬間の勢いが封じ込められている。
ちなみに今作から「ロックの外側から中心へと収束していくヘヴィロックスタイルの"BORIS"」と「ロックの中心から外側へと発散していくヘヴィアンビエントスタイルの"boris"」の二つの表現言語を意識して使い始めている。
本作は2000年に発売された「flood」と対になる作品だが、個人的には「HEAVY ROCKS(2002)」と同時発売されたboris with merzbow 「megatone」(残念がら現在は廃盤で配信もなし)と対��聴いていただけると、この当時に僕が受けた衝撃を少しでも感じていただけるのではないかと思う…
現在リリースされている「HEAVY ROCKS(2002)」にはボーナストラックが3曲追加されていて、個人的には短いながらも非常に素晴らしいインストの名曲「Dronevil」が収録されているのがとても嬉しい…
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Borisを始めて聴く人は何から聴いたらいいのだろうか。
2000年から日本のヘヴィロックバンド「Boris」をウォッチし続けている。アルバムをリリースするたびに、「ヘヴィ」と「ロック」を軸にしつつ表面的な音楽スタイルが常に変わり続けているので「これを聴いたらバンドの概要がわかる」という作品がなくて(さらにそこに加えて、日本のロック文脈に収まりきれない音楽性でもあるので)どこから聴いたらいいのかなかなかとっかかりにくい雰囲気がある。
以前は、コンパクトでオーソドックスなロックサイドの大文字表記"BORIS"と、ノイズやアンビエント的なエクスペリメンタルサイドの小文字表記"boris"の、おおまかに2つの表現言語を持っていており、それに従えばなんとなくどんな作風なのかは判断できていたが、近年では意識的にその境は瓦解しているように感じる。
個人的には初めの一枚としてお勧めするのであれば、Borisがラストアルバムを意識して作ったという『DEAR』。Borisらしいヘヴィなリフから、ドローンやノイズを含むグリッドレスな楽曲まで、世間的に『Borisらしい』という要素が非常にバランスよく構成されていると思う。
そしてBorisが世界に向けて大きく羽ばたいていった金字塔でもある、『PINK』を推すのも一つ正しい選択かもしれない。今でも海外の音楽サイトでのベストランキングでも選出されるくらいに、特に欧米では非常に人気の高い作品だ。
とにかくリリース数も多く、音楽性の幅が広いためにベストアルバムなど絶対に作れないバンドである。そこで「サブスクにある音源で10曲」という縛りをつけて、初めてBorisを聴く人のためのプレイリストを作ってみた。
これはちょっと面白いテーマだなと思って、Patreonというプラットフォームで開設されているBoris(WATAさん)の公式ファンコミュニティ(貴重なWATAさんのフォトセッションや音源に映像、バンドメンバーの日々のことなどファンなら嬉しい内容が盛りだくさん)に「あなただったらどの10曲を選ぶ?」と投げてみると、各人の思い入れのこもったプレイリストが投稿されたので、そちらもぜひ聞いてみていただきたい。
Borisの詳しい経歴などはハードコアなファンが編集している日本語版Wikipediaに記載があるのでそちらも参考にしていただきたい。
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Boris with Michio Kurihara "Rainbow" リリース時インタビュー
「Rainbow」リリース時にFOLOW UPに寄稿したインタビューです。 当時の記録はほとんどなかったと思うので、非常に貴重な資料になると思います。

■意外といえば意外な非常に面白い組み合わせだなと思ったのですが、今回コラボレーションをすることになった切っ掛けは何だったのでしょう?
ATSUO(以下A): そうですね。The Starsや、ゆらゆら帝国のライブとかで栗原さんのプレイは何度も観てたんですけども…。YBO2の復活にBorisで出演した時に栗原さんがGuitar弾いてて共演もしたんですね。オリジナルメンバーという話を聞いたりもして。個人的に YBO2には非常に影響受けてまして。いろいろ興味も湧き…。で、栗原さんのソロのアルバムもすごい良くてですね。でも実は弾き狂ってる栗原さんが好きで…そういうのが個人的に聴きたいなと。コラボという名目で、弾き狂ってる栗原さんのアルバムを作りたいってのが本当の目的でした(笑)。ちょうど「マブタノウラ」のアナログが出来た頃で、それを渡して話が進んでいきました。すごく懐の深いギターリストなんでね。どうにでも対応してくれるだろうな、とも思ってましたし。本当の目的は弾き狂ってる栗原さんなんですけどね(笑)。多分他にもそういう人いっぱいいるんですよ、世界中に。そういうの聴きたい人。White Heavenも手に入りづらい状況だし。
栗原(以下K): 僕もBorisとは数年前から対バンしたりして知っていました。いいバンドだと思ってましたし、色んな人たちと積極的にコラボしてる活動形態も興味深かったです。あと、単純に「Wataさんギター上手いなぁ」とか(笑)、若い人たちなのにMatampやOrangeのアンプを使ってて「タダ者ではないな…」と(笑)。最近の海外での活躍ぶりも耳に入ってました。そんな彼等からコラボの話が来た時には驚きましたが、Atsuo君たちに自分のギターを評価してもらった上でのオファーだったので、それは純粋に凄く嬉しかったし光栄でした。
■曲作り、録音はどんな風に進められたのですか?
A: まあ、まずBorisサイドでバックトラックを録音して。Borisは曲作りは基本的にしないで、スタジオ入ってインプロ、ジャムって感じ。録音も僕がやってます。アイデア 軽く決めて、ワンテクか2テイクで曲がいつの間にか出来てる感じです。そのラフミックスを聴いてもらいながらイメージを膨らましていってもらって。栗原さんの パートはPeace Musicで録音してます。本当ね、奇跡のオンパレードですよ。リードパートは何テイクかあって、アナログには別ミックスも入れる予定になってますが、どのテイク使うか悩むぐらいにね。すごいスムーズでしたよね?
K: そうですね、思いのほか順調に作業が進められました。僕は普段、録音には結構時間がかかってしまう方なんですが、今回はBorisの方でかなりのお膳立てをしてくれてたので…「さぁ、好きなように弾きまくってください!」って感じで(笑)。Atsuo君の求める音と、こちらのイメージする音のシンクロ率が高かったという事もスムーズに作業が進んだ要因だと思います。おかげでかなり楽しく録音させてもらう事が出来ました。
A: で、その後はボーカルパートを録音していって、最終的にまたPeace Musicでミックスという感じ、ですね。
■本当に美しい作品ですよね。パッと聴いた派手さはないのですが、本当に美しくて、シンプルかつ深いアルバムだと思いました。Boris側の視点からすると、栗原ミチオという強力なサポートを得て、「マブタノウラ」と「PINK」以降に見えてきたものをさらに推し進めることが出来たような感じがしますね。
A: ええ、最高傑作だと思ってます。人の力を借りて最高傑作が出来てしまいましたね(笑)。Borisは次のアルバムが大変だなあ(笑)。正式にメンバーになってもらえばいいのか。メンバー入ります?栗原さん?
K: あはは!最大級の社交辞令、ありがとうございます(笑)。Atsuo君は年長者を気遣うやさしい人ですね(笑)。Borisのように長年トリオでやってるバンドは所謂「鉄壁の三角形」が出来てるモノなので、メンバーともなるとなかなか他者は入って行けないですよ。それはともかく、今回Borisの皆と共にとても良い作品を作れた事を本当に誇りに思ってます。それもこれも、当然ですがBoris自体が真に力のあるバンドだったからに他なりません。
A: 話をそらされましたね(笑)。
■特に感じたのは思っていた以上に「歌」がものすごく聴こえてくるアルバムだな、と思いました。Takeshiさんのボーカルにもさらに艶が出ていて良いなぁと思ったのですが、目玉的には"虹が始まるとき"でWATAさんが見事なボーカルを披露していますね。
A: 「PINK」の辺りからやっぱり「歌」が一番面白いというのがありまして。一番スリリングというか、いまのBorisの状況の中でね。Takeshiの ボーカルも最近はナチュラルな声質に流れてきてて、本人もすごく自然な状態で。逆にいろいろ表現の幅も広がってきて、まだやる事いっぱいあるなって感じ です。で、あの曲はたまたま曲が出来たらWataが歌う方がはまったんで…。コラボだとね、バンドのイメージとかも気にしないでいろいろ出来るから…いろいろやってしまっていい余地があるのが楽しいですね。あと朝生さん(Pedal Recordsからアルバムをリリースしている女性SSW)を観てて「あ、歌って大きい声じゃなくていいんだ」って本当に気づかされたんですよね。 Wataは普段からすごく声が小さいんですけど、そういう人でも歌は歌えるんだって気づいたんですよね。小さな声だからこそ生まれる曲ってのがある。朝生さんのライブは栗原さんがエフェクターを踏む音が一番でかい(笑)。
K: (笑)踏み方には気をつけてるんですけどね…でも全部「機械式スイッチ」なので(笑)。そう、今回のWataさんの歌は凄くいいですね。普段のBorisよりシンプルで隙間のある曲も多かったと思うのですが、そんな中でTakeshiさんの押さえた感じの歌も良かったし、それぞれの曲自体もすごくいいと思いました。
■ヘッドホンで聴くと、ギターのトーン、ボーカルのエフェクトなどサウンドの輪郭が非常に面白かったです。スピーカーを通したものとはまた違った聴き方が出来ると思いました。
A: あ、そうですか。ミックスの時は一切ヘッドホンでモニターしてないんですよ(笑)。
音数は少ないですけど、その音の隙間にいろいろ聴こえてくるようなミックスが中村さん(今回のエンジニア)のスタイルなんで。そうやってクローズアップしてもいろいろ楽しめるようにはなっていると思います。ベーシックトラックは8トラックのカセットMTRなんで、今時なかなか 聞けない音質にはなってるんじゃないかなあ(笑)。栗原さんのギターに関してはいろんなFuzz(ギターの音色を変える機械)が使ってあってそれぞれのFuzz、それぞれのセッティングでしか生まれないリードが録れてます。栗原さんはFuzzと話させますからね。
K: いや~まだまだですね…相手(Fuzz)の機嫌にもよりますし(笑)。中には自我の強すぎるFuzzもあるし(笑)…そういう場合は逆にFuzzに「弾かされてる」時もあります(笑)。"虹が始まるとき"のリードギターは正にそんな感じでした。今回は中村さん所有のFuzz数百台の中から、それぞれの曲に合ったFuzzを数台厳選して使わせてもらいました。いつもながら中村さんにはいい音で録ってもらう事が出来まし��。それと、Borisはロー・チューニングによる低域重視、こちらはどちらかと言うと高域寄りの音なので、それらを対比させつつ絶妙のバランスでミックスされてると思います。このあたりも中村さんの手腕ですね。
■Borisは過去には灰野敬二氏や山崎マゾ氏、最近ではMerzbowやsunn O)))など多くのアーティストとコラボレーションを行っていますが、Borisの音楽や活動のスタンスにどのような影響を与えていますか?
A: 音楽と同じように「響き」とか「共鳴」といったものだと思うんですよ、コラボレーションて。音楽をやっていけば自然といろいろな事が起こってくる。音楽 のスタイルやスタンスに確固たる「理想」があるわけじゃないし。逆にそういうのがあるとBorisの場合はつまらなくなってしまうんでね。逆に言えば、 常に変化が起こっていくスタンスはキープしてると思います。
■栗原さんも数多くバンドでの活動や、多くのアーティストのサポートをされていますが、今回のBorisとのコラボレーションをしてみていかがでしたか?
K: そうですね、最初にコラボの話があった時には「うまく行くのかな?」と言う不安も正直ありました。経験した事のないタイプの音のバンドだったので。でも、いざ作業が始まったらそういう不安は吹っ飛びました。今Atsuo君が言ったように自然に「共鳴」が作用したし、音と音の「化学反応」が起こりました。僕はThe Starsというバンドをメインでやっているのですが、他の人たちと一緒に音を出すとそれぞれまた異なった「化学反応」や「融合」が生まれる。このあたりは音楽を演る醍醐味だと感じてます。それと…ちょっと気恥ずかしい表現ですが…Atsuo君たちの音楽に対する「愛情」を凄く感じました。誤解を恐れずに言えば、これは音楽を演る上での基本だと思ってますし、それがあったからこそ今回のコラボも良い結果が出たのだと思っています。とにかくいい経験をさせてもらいました。Borisの皆さんには感謝してます。
■2007年2月4日にはレコ発ライブが行われますね。両者ともライブには定評があるので非常に楽しみにしています。
A: はい、楽しみですね。ツアーが続いていたんで、また新しい事が始まる感じが非常に楽しみです。そのままツアー出ますか?栗原さん。ヨーロッパとアメリカどっちがいいですか?
K: う~ん、どちらも捨てがたいですね…って、ツアーってマジですか!?見知らぬ土地で演奏する事自体は素晴らしいし楽しい事なんですが…Borisのあの山のような機材を毎日運ぶ事を考えると…(遠い目)…(気を取り直して)とりあえずは2月4日のレコ発ライブ、どんな事になるのかまだ見当もつきませんが(笑)楽しみです。あ、その前の週の1月28日に同所でThe Starsのライブもありますので、こちらも宜しく!…と宣伝してしまいました(笑)。
A: 栗原さんリハーサル地獄ですね(笑)。
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