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#おみく足パタパタ
oto64 · 1 year
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2023.03.24
また、別の支店に出張があった。
ここにもほぼ同期Tさんがいて、
Tさんの出勤の日に出張なので
至極当然のように、夜ごはんに行くつもりだった。
出張の前の日。
「仕事終わったらTさん帰るって言ってるけど、
大丈夫?」
と、この前の出張で出会った
ほぼ同期Nさんから連絡がきた。
TさんとNさんは、本当に同期だから仲がいい。
は?となり、急いでTさんにチャットを送る。
「Nさんからなんか言われたんですか...」
とチャットがきて、嫌々でもいいから
夜は付き合って、と約束した。
わたしの出張の目的は、
コミュニケーション網を広げることだから。
仕事中のコミュニケーションなんて最低限なので
呑みニケーションがないと始まらない。
「それなら、俺も行くわ」
とNさんからチャットが来た。
近い支店とはいえ、違う都道府県にいるNさん。
来てくれたら嬉しいけど、とやりとり。
そんなすぐに、前回会ってから1週間は経たないうちに
再会できるとは思ってなかった。
出張の日は忙しく、Tさんと話しつつ
パタパタと過ぎていった。
仕事終わり、ふたりで歩いてごはんに行く道すがら、
Nさんが現れた。
Tさんには内緒にしてたから「え、はぁ!?」と
当然のことながら、驚いていた。
お店をはしごして、夜を楽しんだ。
Nさんはお酒が飲めないにも関わらず、
「2人だけいいなぁ」といい、少しビールを呑んだ。
ほんの少しなのに、顔が赤くなって、
しゃべらなくなってしまった。
「ホテルで休ませてあげたら?」
とTさんに言われた。
3人でわたしの宿泊先まで戻り、
Tさんとホテルの前で、解散した。
「2人の間に何かあったとしても、
俺は黙っとくから安心しろよ」
と言い残し、Tさんは帰っていった。
・・・
部屋に戻って、酔いが覚めるまで、と
ふたりで話していた。
いろんなことをずっと話していた。
歩んできた道のりは、全く違うけど、
お互いに関して、思っていることは似ていた。
そばにいると、安心する。
ずっと知ってる人だった気がする。
気を遣わずにいられるひと。
出会ってから2回会っただけなのに、
そんなはずないくらい、距離が近づいてた。
こうなるんだろうな、と
お互いどこかで思っていて、
お互いそうしたいな、と思ってたようで、
部屋の中でハグをした。
コンビニに散歩に出た。手を繋いで歩いた。
部屋に帰って、ふたりでスイーツを食べて、
あまいキスをした。
あー、もう止められないよね、って笑って
シャワーを浴びて、ベッドに潜り込んだ。
離れたくなくて、離れがたくて
眠ってしまうのが惜しくて、
ずっとくっついていた。
さすがに少しは眠ろうと、朝になって目を閉じた。
1時間半だけ眠って、目を覚ますと
彼はおはようといって、キスをしてくれた。
我々は、動物園にいるべきかもしれないね、と
そう言いたくなるくらい、何度も交わった。
ベッドから出たくなかった。
このままでいたかった。
後悔はなにもなかった。
出会った日にお互い感じていた。
遅かれ早かれ、こうなるんじゃないかな、と。
不思議なんだけど、ほんとにそう思ってた。
帰りのバスの時間を変更してくれて、デートした。
健全なカップルとして、
お互いのやりたいことをした。
ずっと手を繋いでいて、ずっと笑ってた。
寝不足すぎて、頭が回らなくなってたけど、
おしゃべりはつきなくて、ただ楽しかった。
本当は、健全なんかじゃないけど。
「墓場まで持っていこうね」と約束して
それぞれの街に帰った。
Nさんは、前回の出張のあとブリーチを施した先輩に
言われていたらしい。
「あのあと2人はホテル行ったんですか?」と。
出会った日から、そういう感じでちゃってたのかな。
次に集まるときは、気をつけないとな。
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kou-fuk · 9 months
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エアミックスモーター修理
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週末の出来事を書く前に、
アコードのエアミックスモーター修理について
備忘録も兼ねて。
.
アコードのオートエアコン、
ダッシュボードの中から
「カタカタカタ」と小さいけど不快な音がしてた。
設定した温度に達したと思われるときに音がするので、
恐らくは冷たい風と暖かい風を混ぜる弁が
パタパタ動いてるのだろうと思い修理。
修理というか応急処置かな。
.
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エアミックスモーターの場所はココ。
クラッチペダルの左上、緑のカプラーが付いてるヤツ。
ここ久しぶりに覗き込んだけど結構埃っぽいんだね。
カプラーを外してプラスネジ3つ外したらポコッと取れる。
DENSO製。汎用品かな。
.
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金属製ステーについてるプラスネジ2つを外したら、
後はツメで引っ掛かってるだけなのでパカッと割れる。
予想通り、モーターについてるウォームギアが摩耗して、
「遊び」が発生している模様。
この画像で言うとちょうど中央辺り。
写真で見てもコンマ数ミリのギャップが見える。
ここに適当な金属板を挟んで応急処置完了。
後は元通りに組みなおすだけ。
.
このエアミックスモーター、ASSY交換だと
1万円近くするらしい。
金属の板を挟んでギャップを調整するだけで直るから
こういうのは自分でやるほうがいいね。
エアコンをつけて試走してみたけど、
もうカタカタ音はしない。
このウォームギアが摩耗して最終的に欠けたりしたら、
モーターが弁を開閉できなくなり、
恐らく暖房か冷房側に固定されるんだろね。
.
検索してこのページに来る人はいないと思うけど、
(そもそもtumblrのページってgoogle検索とかで引っ掛かるっけ?)
補足情報としては、
車は2007年式 ホンダ アコード (DBA-CL7)。
恐らくCLアコードも、CFアコードも、
似た年式のホンダ車や、もっと言えば他社の車も
構造的には変わらないと思うんで、
もしダッシュボードの中からカタカタ音がするようであれば
このDIYをやってみる価値はあるかもしれんね。
おわり。
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palakona · 4 months
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床波と場所ムラ
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2024年1月、寺口釣池(奈良県)iPhone11
どうも、こんにちは。1月12日(金)は寺口釣池に行ってきました。人気の両ウドン床釣り池で週末は混んでいるイメージがあったり、常連さんが賑やかなので、平日だったらノンビリ静かに釣りが出来るかなと。
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2024年1月、寺口釣池(奈良県)iPhone11
営業開始の7時には間に合わず7時過ぎに到着。長い竿を振りたかったので、屋根のない中央北桟橋と南陸桟橋の2択でしたが、��回は南陸桟橋で午前中ボウズと苦戦したので中央北桟橋の東詰に入りました。中央北桟橋が人気なのか、中央北桟橋は僕を含めて6人並び、中央南桟橋は最初一人、あとから数人やってきました。午後から団体が入って賑やかになってたけど。竹竿は15尺を出しかけましたが、最近「寿るすみ」使ってないな…と12尺の「寿るすみ」にしました。
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2024年1月、寺口釣池(奈良県)iPhone11
浮子は、真冬ですが、ムクトップは止めにしてパイプトップのクルージャンのTKOを使ってみます。YouTubeで石井旭舟氏が「冬でもパイプトップで、浮子は大きい方がいい」って言ってたのでw。
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2024年1月、寺口釣池(奈良県)iPhone11
全然釣れね〜、浮子が動かん…約2時間サワリもない状態。やっと魚信が有って愁眉を開いたがアッパーでした(悲)ボウズ脱出の安堵がぬか喜びに変わった。今日釣れるんやろか?今日は屋根のある中央南桟橋北向きが当たりらしく、噴水のそばに入った釣人がバンバン釣ってはる。中央北桟橋は僕を含めて3人ボウズ?隣の3人組は1人釣ってるだけで二人釣れてない。竿は11尺を出してはったが、釣れないから8尺に替えはった。
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2024年1月、寺口釣池(奈良県)iPhone11
ぬか喜びのスレからさらに1時間経過。やっと釣れた〜(嬉)ボウズ脱出〜!釣り始めから3時間は経ってますw。
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2024年1月、寺口釣池(奈良県)iPhone11
サイズ34cm以上の縛りで早釣りをやっていたので検寸に持ち込むと35.5cmで景品ゲット!ランダムに釣り券が入ってるらしいのですが、それは外れました。前回ゲットした時は入ってたんだけどね。
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2024年1月、寺口釣池(奈良県)iPhone11
さらに小一時間経って2枚目が釣れました。こんな渋い日に両目が開きました。但し、場所ムラが有って中央南桟橋北向きはボチボチ釣れてます。中央北桟橋北向きが激渋。
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2024年1月、寺口釣池(奈良県)iPhone11
12時ごろ、事務所前の噴水が始まったら昼食の時間です。前々回、コシガ池とか西池のノリで11時過ぎにお昼ごはんを食べに行ったら「早っ」っとビックリされたんだけど、前回Fさんとご一緒したおかげで寺口釣池のお昼ごはんのタイミングがわかりましたw。噴水が始まったら皆さん食堂に集まります。
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2024年1月、寺口釣池(奈良県)iPhone11
今日も前回と同じくトンカツ定食。美味いです。満足、満足。釣池でちゃんとしたご飯が食べられるのはポイント高いですね。
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2024年1月、寺口釣池(奈良県)iPhone11
ご飯食べ終わって釣席に戻ったらソッコー釣れました。時合いが来たんかな?
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2024年1月、寺口釣池(奈良県)iPhone11
マブナみたいに細長い。1枚目も細長かった。寺口釣池はヘラブナばかりってわけでもないんやね。あっ、いけね〜、13時から早釣りやってんのに持ち込みしないでリリースしちゃった。やり直しや〜。
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2024年1月、寺口釣池(奈良県)iPhone11
だが、しかし…釣った人は手ぶらで申告して景品を貰っていく…あれえ?って思ってましたが、サイズ縛りのないただの早釣りはフナを持ち込みしなくても良いそうです。景品は、卵1パックは来場者全員に当たるように人数分用意され、他はティッシュとか缶飲料とかお菓子とかです。午後の部はパタパタと2枚釣れたのですぐに釣れるかと思ったんですが、そのまま釣れませんでした…。なので人数分用意された卵は、僕みたいに早釣りで釣れなかった人にも池主さんが配りに来てくれました(^▽^;)
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2024年1月、寺口釣池(奈良県)iPhone11
ということで、1月12日はフナ4枚でした。隣の3人組は一人は数枚釣ってましたが、あと二人は1枚づつ。隣の釣人は気さくな方で時々話しかけられたのですが、僕に「何枚釣れた?4枚?1枚550円でいいやんか。わし2200円や」「(卵を持ってきてもらって)2200円の卵や」とかぼやいてはりました。南側の桟橋に入った人たちはポツポツ釣れたみたいで、早釣りは3回まで景品がもらえるのですが、3回もらった人続出。僕らの桟橋とは別世界でしたw。
では、また。
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tanakadntt · 1 year
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グッズのマリン三輪隊の話(二次創作)
あなたの詠唱はどこから?
 三輪秀次はビリジアングリーンの毛先を持つデッキブラシをぐるりと回して、コツンと甲板に突き刺した。風がデッキを渡り、身につけたセーラー服の襟がふわりと浮いて首を包む。腰の金ボタンが僅かに震え、陽光を反射し、古寺が一瞬目を瞑った。
 『詠唱』が始まる。
 しかし、その詠唱はお粗末なものだった。
「……世界を繋ぐ青い空‼ えーと、希望の空から降り注ぐおひさまのシャワー‼ ……んん、きらめくソード‼ キュア…」
「違います!」
「違う!」
「違うってよ〜」
「違うのか?」
 隊員たちからすぐさまダメ出しされ、隊長は詠唱を途中で遮られたことに不服のようだ。
「それは詠唱じゃないな」
 奈良坂は手旗をバツ印に重ねながら言う。こちらもセーラー姿だ。本日、三輪隊は嵐山隊他と一緒に広報の撮影に来ている。メインはやはり嵐山隊で、三輪隊も「他」に入る部類なので待ち時間が多い。
 スタジオ撮影ではない。わざわざ海近くの公園まで来て、観光用に係留されている帆船を借りての野外撮影だ。そんな場所だから、隊服の撮影ではない。隊それぞれに衣装が用意されている。マリンを意識した、水兵服風だ。
 そういうのは、広報部隊だけでいいだろうと思う人間は結構いるはずだが、どうしても必要だから、とメディア広報室長の根付から、ではなく、営業部長の唐澤に爽やかに笑ってポンと肩に手を置かれると誰も断れない。三輪も同様だった。
 時期を違えて、他の隊でも撮っていると聞けば尚更だった。
「さっきから何をやっている」
 やはり撮影待ちの風間が船底からデッキに出てくる。隣には緑川もいる。嵐山隊他の「他」の仲間はこの風間蒼也と緑川駿で、なぜこの二人が隊ではなく、それぞれ呼ばれたのかは唐澤にしかわからない。
 風間は蒼也の蒼にちなんでブルーの、緑川は緑にちなんでグリーンのセーラー服を支給されている。三輪隊は隊服カラーの紫だ。皆、まったく一緒という訳でなく、少しづつ違っている。
 そのことに言及すると、奈良坂から何を当たり前のことを?と言いたげな視線を送られたので黙った。
例えば、緑川と風間のセーラー服は造りはほぼ一緒と言えるが、色はもちろん、金ボタンの位置やズボンのデザインが違う。さらに風間はつばを深く折ったような帽子を被っていた。セーラーハットというそのままの名前の帽子らしい。一方、緑川は縁にリボンの付いたベレー帽だ。彼の衣装は横ボーダーのインナーと短い丈のセーラージャケットで、両襟をアクセサリーで留め、まるでアイドルのようだった。
「先輩たち、暇だから遊んでるんでしょ」
 中学生に訳知り顔に指摘されて赤面する。尊敬する風間の前で言われるのも恥ずかしい。しかも、図星だった。
「棒が二本あるだろ? だから、オレが槍の使い方を教えてたんだけど、スタッフさんに危ないって怒られてさあ」
 米屋陽介が説明する。
「陽介、棒じゃなくてデッキブラシだ」
「棒だろ」
 デッキブラシは撮影の小道具で三輪と古寺のふたりがブラシ係だ。奈良坂は旗係で、二本の旗を持たされている。気に入っているようでずっと持っていた。米屋は何故か皮袋だ。デッキブラシを持たせても槍にしか見えないと思われたのだろう。ネクタイも腰に引っ掛けていて、休日に出かける船乗りという設定なのか、ラフな感じがよく似合っていた。
「それで、この棒を槍じゃなくて杖ってことにして、詠唱ごっこしてた」
「詠唱?」
 風間が首を傾げる。三輪が横から説明する。
「魔法使いが杖を使って呪文を唱えるじゃないですか?」
「ああ」
「最初は適当な呪文を言ってたんですが、今度は何かを召喚してみようって話になって」
「召喚?」
 緑川が面白そう、と言っている横で さらに風間が首を傾げる。三輪は申し訳なくなってきた。元々、考えついたのは三輪ではなかったから説明もしづらい。今度は奈良坂が助け舟を出す。
「魔法使いのごっこ遊びみたいなものです。魔法で精霊を呼び出す呪文を、一番それっぽく言えた奴の勝ちというルールです」
 奈良坂は進学校の学生らしく説明が上手い。しかし、明快に言語化するとますますやっていることのバカっぽさが際立った。
「それで三輪先輩ダメ出しされてたのかぁ」
 緑川がニヤニヤする。
「……」
 彼は迅以外には大体こんな感じだから三輪も気にしないことにしている。
「三輪は全然ダメだった」
「……」
 それには反論しようもない。三輪が魔法と聞いて連想するのは、昔、姉と観ていた魔法で変身する女児向けアニメしかない。
「今度は奈良坂がやってみろよ」
米屋が言った。
「ああ」
 コホンと奈良坂は咳払いをして、旗を上に構えた。デッキブラシではなく、こちらにするらしい。奈良坂の衣装はダブル六つボタンの付いたジャケットのようになっていて、カチッとした印象だった。
 長い腕で、二本の掲げた旗をくるり回すと舞踊を見ているかのようだ。奈良坂の詠唱は短かった。
「エクスペクト・パトローナム!」
「へ? 短くね?」
 ハリーポッターに全く興味のない米屋が無表情になる。元々、目に感情が入らないから少し怖い。
「守護霊生成ですから召喚とはちょっと違うかと」
 古寺が遠慮なく指摘する。
「ダメか」
「精進しろ」
 風間もわからないながらも審査に参加する気になったらしい。
「はーい、次オレ〜」
「よねやん先輩、頑張って」
 三輪からデッキブラシを渡され 嬉しそうにひと振りする。ぶんと勢いよく、棒がしなった。槍にしか見えない。彼の上着もジャケット仕立てで、奈良坂と違うところはシングルボタンである。大きく開いた上着から青の縞模様を見せている。足元はビーチサンダルで裸足同然だ。
 彼は魔法、魔法だよなあと呟いた。
「陽介、ちちんぷいとかじゃあダメだからな」
「と、思うじゃん?」
 米屋はニヤリと笑って、デッキブラシの柄でカンッと床を叩いた。そのまま、柄を丸く滑らせていく。
「魔法陣グルグル トカゲのし…」
「パクリでしょう!」
 また古寺が突っ込む。弟が二人もいて、少年漫画に詳しいのは彼しかいないのだ。
「そういえば、作戦室で観てましたね」
「テストで誰もバトってくれねえんだもん」
「勉強しろ」
「よねやん先輩かっこ悪い」
「ちぇー、奈良坂はパクリじゃねえのかよ」
「おれが許します」
「贔屓ィ」
 古寺は咳払いだけして無視する。
「じゃあ、次は古寺だな」
 風間は冷静に順番を数えた。
「はい、風間さん」
 途端に古寺が自信のなさそうな表情をする。三輪は「がんばれ」と励ました。
 後輩はデッキブラシを三輪から受け取って、杖を握り横に構える。目を閉じる。他の隊員たちよりひとつ下の年齢を意識してか、かわいいデザインになっていた。サスペンダーをし、ネクタイもリボンのように結んでいる。靴も軽快なスニーカーだ。
 しかし、その時、周りの者には風にはためく不吉な黒いマントの幻想が見えた。
「原初の時空に彷徨う白き者よ、我が誓願を聴きたもう。我が名を持ってここに顕現せよ。我は古寺章平、黄昏の支配者にしてこの地の放浪者なり」
 みんなポカンとしていた。
「これより一切の慈悲なく我が敵を殲滅よ!」
「ハーイ、カットぉー、木虎ちゃんお疲れ様ぁ」
 向こうから嵐山隊と撮影スタッフの声が聞こえる。
「えーと、終わりました」
 デッキブラシのブラシ部分を床に下ろして、こちらを見る。いつもの古寺だ。
「なんで、そんな本格的な……」
 三輪がうめくと、メガネの縁に手をかける。
「弟とやるカードゲームによく出てくるんで覚えちゃいました」
 絶対に読み上げなければいけないルールで、と付け加える。
「スゲエよ」
 と、米屋。
「カッコイイ、古寺先輩」
「お前が優勝だな」
 奈良坂は旗をパタパタと振った。
 風間もウムとうなづく。
 頃合いよく、スタッフから声がかかる。
「そろそろ撮影に入りまーす」
「ハーイ」
終わり
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pale-times · 10 months
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23SS
前回の投稿から相当空いてしまいました。。。
3月下旬にアメリカから帰国して、ずーっと何かに追われていた毎日が終わりました。笑
売れちゃったものもありますが、P A C Sニューアイテムを全然紹介できていなかったんで早速。。
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まだ在庫のあるアイテムから〜。
Wind Hopper Shirts (Black)
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Wind Hopper Shirts (Mustard)
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パタパタできる半袖開襟。快適〜。
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涼しい開襟で、フラップを開けると更に風を感じられる仕様となっています。
ちゃんとポッケもあります。
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ストレッチの効いたスポーティな生地は、織りによって裏面に凹凸を付けているので、 肌離れが良いです。じめっとした日にも最適。
パタパタ煽いでください。
続いてはRCPシャツ。
Round Corner Pocket Shirts
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早速ですが、ポッケの元ネタは先々週(もう2週間経つのか、、)のADANで売ってしまったこのシャツでした。
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元々シャツの製作は考えていなかったのですが、例のDead Stockの生地のオファーが舞い込んだことから インラインはよりシンプルに打ち出そうということで、このスーピマコットンのミニマムな仕様となりました。
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相変わらずのアメリカンシルエットです。
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女性もぜひ。
一枚でもインナーでももちろん、色んなシーンで使い勝手の良いアイテムだと思います。ぜひ!
続いては、瞬く間になくなったFLEX PANTS。
新色のグレイかなり調子良かったです。。
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続いてコンバーチブルパンツ!
※ブラックLLサイズのみ在庫ありますが、少ないです!気になる方はお早めにどうぞ。
Limonta Convertible Pants (BLACK)
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アウトドア感のないマットな質感が特徴。暑くなったら開けるか外すかで調整してくださいませ!
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そして、マチ付きポッケに納めてください。
今回のルックのお気に入りの一枚。
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インスタで見れますのでぜひチェックしてみてください。
駆け足となってしまいましたが、RINSE・PALETOWN店頭にてお待ちしております!
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yotchan-blog · 1 month
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2024/3/26 14:01:34現在のニュース
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ymifune · 1 month
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O3
3月17日。その2。 これでも本当に取り組まないといけないことがある時、割と回り道をせず、後回しにせずすぐ取り掛かることができるようにはなってきていると思う。何かそういった気掛かりなことを先延ばしにしていると逆にイライラしたり、不安が募ったりして、精神衛生上よくなかったりもするのだ。 今日も今日とて、一番すべきことにも切り込んだし、また外堀にあることをパタパタと埋めたりもして過ごすことができたな。 音楽に何時間か時間を割いて、取り組むことができた。行き詰まっていると書いたBPM140の曲は結局どうにもできず、ファイルごと捨てることにした。後悔はない。 Chris Brownの"Call Me Everyday"のビートをお借りした新曲は一応ボーカルのメロディを弾くところまではきた。中々の進展である。少し曲が冗長になってしまった気がしたので、8小節分カットして、大体3分20秒で終わるぐらいの曲にした。今回はベースで結構遊んでしまって、ボーカルを録音してからどれぐらい聴くに足る曲にできるか知らん。できるだけのことはしよう。かなりダウン系のファンクになっていると思う。 明日、SDGsの発表をすることになっている。会社や団体の取り組みを紹介するという課題があり、自分も何かパワーポイントでスライドを作って話をすることにした。で、自分は個人的にSDGsに対してどう理解していて、どんな取り組みをしてきたか、しているか、これからしたいかに振り切った内容にした。今受け持っているクラスはとても優秀なのだが、自分ごとにだと捉えて取り組むという部分が足りていないと思ったので、自分軸にしても発表はできるんだよということをお見せしておくのも一考かと思ったのだ。 SDGsを意識するきっかけとして、カナダのTのことを話すことにした。全く仕方がないことなのだけどね、もう話したところで。 だが、カナダのTとの関係があったからこそ、世界の中の自分という捉え方をできるようになったことは確かだし、本当に学びの多い関係だったことに関しては感謝しているのだ。嘘偽りなく、虚勢を張っているでもなく、それは本当にそう思っている。 SDGsという観点から考えて、どういう点に気づきがあったかを3点にまとめた。
①白人至上主義の現状/Charity Love ②学習障害者の生 ③キリスト教→ユダヤ教
本当はゲイであることを入れてもいい気はしたのだけど、ゲイであることはお互いの前提部分だなと思ったので、除外した。お互いにゲイであることからの学びはなかったという点で。 実は、台本というか、原稿やそれに沿って話すための台本のようなものは作っていない。書いた方がいいのかなとは思ったのだけど、要点がまとまっていれば、あとは話して伝えられたらいいのだと思い、一旦忘れて、パワポで表示されたことについてその場で言葉を紡ぐ自分の歴5年の教師としての経験にかけることにした。うまくいくといいのだが。 押す日は楽しく取り組むことができたと思う。 少し苛まれの時間もあるにはあった。というのは、両親ともに、なぜか私に物を買おうとするのだ。頼んでもいないもので、かつ、・・・必要がなく、逆に荷物になるので後で私が処理に困る気がするようなものを。形のないAmazonギフトカードの方が助かるのだ。Kindleで本も買えるし、必要なら物を買うこともできるし。 昨日、土曜日にScai The Bathhouseに行った。アピチャッポン・ウィーラセタクンの新作で構成された個展を見に行ったのだ。とても良かった。絵コンテは自分で描くという彼の筆致によるドローイングを初めて見た。水墨画と万年筆のインクの顔料を使って描いた物だと聞いている。また、15分ほどの映像作品は音楽的で、ヘッドホンをつけると、アングラのクラブで聴こえてきそうな割れんばかりの重低音が響く音楽が聴こえてきて、一抹のホラー風味もある映像とよくマッチしていた。 映像作品が展示されている暗室から出ると程なくしてアピチャッポン・ウィーラセタクン本人がやってきた。実は何度か実物を見たことがある彼なのだが、なんというか、・・・変わったのは自分なのか彼なのか。アピチャッポン監督が纏っているオーラは過去に見ないほど美しく大きなものだった。酸素の濃いやつ・・・つまり自分で修復できる作用のあるオゾン(O3)のような。濃度の濃い酸素のオーラと、熱帯雨林のような樹木のオーラに、皇族のような金色のオーラが発散されていた。また、彼の声や語り口には今までにない落ち着きと甘いイントネーションが混ざり合い、とても艶っぽかった。直視するのが憚られるほど、彼は美しかった。 アピチャッポン監督は次もイギリスの女優ティルダ・ウィンストンを起用し、スリランカで新作長編の撮影を始めるとのことだった。A Box of Timeと題された映像を54分割ぐらいにしてボックスに収納した可愛いトレカのような展示物があり、それを手袋付きで開けていいと言ってくれて、開けさせてもらい、中のティルダ・ウィンストンの半分ロケハン、半分オフショットの写真を堪能してきた。 なんというか、生きていこうと思った。 生きていけると思ったという方が正確なのかな。アピチャッポン監督が生きている世界は美しいと思った。 寝よう。 明日からも生き延びるので、どうか見守っていて欲しい。 これを読んでくれた人も、どうか平穏無事な1週間を過ごしてもらいたい。
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stran0505 · 3 months
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20240208
1月15日のメモを此処にも載せる。
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2024年1月12日、エスが亡くなる。
その日エスは、祖父と台所で昼食を済ました後、茶の間でテレビを見る祖父に撫でてもらい、満足すると15時頃にいつものソファに横になり、いつも通りに昼寝をし、そのまま静かに彼の心臓は止まった。心臓が悪く、朝晩5錠ずつ薬を飲んでいた。お腹に水が溜まる事を軽減する利尿剤により、大体3時間ごとにおしっこしに外へ出していた。その日も、15:45頃祖父が「エス〜そろそろおしっこ行くか〜」と呼びかけたが、エスが目を開ける事はなかった。祖父は目の前が真っ暗になったと後に話した。視界が元に戻ってから母に電話したそう。母はすぐ家へ向かったのだろう。私は母の職場の方から16:10に連絡を貰った。すぐ実家へ向かった。着いた時はまだ温かく、本当にスヤスヤと寝ている様にしか見えなかった。呼びかけていれば、撫でていれば、明日になれば、いつかは目を覚ます様にしか本当に思えなかった。沢山名前を呼んだ。夜になり、少しずつ首元から硬く冷たくなるのを感じると「本当に死んでしまった」と言う現実と、まだ硬くない顔や手に「目を覚ますかもしれない」と逃避する私が居た。夜ご飯をいつも通りエスにも出した。エスの寝るソファの隣に座布団を敷き、横になった。泣き疲れて眠り、起きてエスを撫でる。
夜が明け、朝方には腕が固まり、時間の経過と共に口周りも固まったが、耳だけは最後までパタパタと動かせた。死んでしまったなんて本当に信じたくなかった。いつまでも涙が止まらなかった。何度も名前を声に出してしまう。前日の夕方に散歩した道を一人で歩いた。青空だった。
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火葬場の受付終了時間が迫り、連れて行く準備をした。最近はずっとこのソファが寝床だったが、昔使っていた布団に寝せて行くことにした。お花を買い、母が作る大好きだったおやつ、いつも引っ張り合いをして遊んだおもちゃ、桜がバックの家族集合写真、それらと共に布団に眠らせ、車に乗せた。太陽が明るくエスを照らした。火葬場から帰ると、雪がゆっくり降り出し、うっすら庭が白くなった。遺骨は暖かくなってから、春に先代達と同じく庭に埋める事にした。
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仏壇にエスの写真とお花を飾った。意図せず、誰よりも大きい写真になっていた。鳥海山をバックに、優しい顔をしたお気に入りの写真。その後私はマンションへ戻ると、音楽番組ミュージックフェアで「夢で逢えたら」が流れていた。
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エス、本当に大好きだよ。皆んなエスが大好きだ。寂しいよ。7歳8ヶ月。早過ぎる。もっと一緒にいたかった。とてもとても大好きよ。いっぱいいっぱいありがとう。天国では心臓の事なんて気にしないで、思いっきり遊んでね。大好きよ。本当にありがとう。また夢で逢おうね。おやすみね。
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#s
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shikasapo-site · 3 months
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しかさぽボードについて
年が明けて、売れ行きがピタッと止まっていた「しかさぽボード」でしたが、昨日、北九州市でミニ福祉機器展があったので出展すると、パタパタと売れました。 やっぱり、PRが足りないのかとも思うんですが、昨日買われた方も初めてお会いする方々でしたので、こうして地道に福祉機器展を通して売っていく商品なんだなと思います。 実際、手に触れて、黒のボードに白ペンで書いてみて、「自分向き!」と納得されて、ご購入の流れが多いので、このスタイルの販売方法が良いのかも知れません。 来月の2月はクローバプラザである「福点まつり」にお邪魔します。 ここも営業活動OKの許可を頂いておりますので、出来るだけ持っていこうと思います。 こういうスタイルでなくて対面が良かったな。
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lostsidech · 3 months
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×××
「ごめん、そこ譲って!」
 瑠真とアンドリューが角から転がり出てきた。それでそのとき、望夢とシオンの間にあった緊迫と予期された動きは破壊された。
 シオンが距離を取り、英語でなにかアンドリューとやり取りする。アンドリューも言葉少なに返す。にやりと笑ったシオンが再び地形の影へと消えていった。瑠真は体勢を立て直すと同時、激しくアンドリューを狙撃するが、アンドリューは手に持っていたものを裏返した。
 地形カードだ。突然周囲が飛び石の水辺になり、滑る。バタバタとパネルが音を立てた。
 パネルを見て、目を疑う。いつの間にそれだけの点差がついていたのだ 地形変更はおよそ四度目だったが、ゴースト撃破数の桁が文字通り変わっていた。
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「望夢、あいつカード狙いで動いてタイミング見て切って、ずっとこっちの邪魔狙い」
 すれ違いざまに瑠真が囁いた。
「ムカつくから本人トバそうとしてるんだけど、その間に雑魚ばっかり撃って稼いでる」
「……バトンタッチ」
「うん」
 ペアと視線が交錯する。
「私じゃジリ貧になる。音楽の解除はもうできる」
「ああ」
 一度目で解析は済んだ。曲が変わっても上辺が影響されるだけだ。根本の解除方法は変わらない。最初の分担に戻ったほうがいい。瑠真がいくら相手の音楽戦法の乗りこなしを覚えてもそれは相手のフィールドで踊っているだけだ。
 フィールド││物理的なフィールドカードも同時に思い出す。キングという苗字が似合いだ。音楽と地形を支配する青年。
 瑠真の言葉を改めて思う。
 フィールドカードを使うのは、本当に「こっちの邪魔」││撹乱のためか 彼は周囲に音楽を聞かせたいのだとシオンは言っていた。音楽と重ねて、全く別個の攪乱を行う意味とは
 望夢は離れていく瑠真の背中に、インカムを構えて語り掛けた。
「瑠真、できるだけ長引かせて」
「了解」
 特にためらいのない返事。言葉を交わすのと同時、それぞれが、今来たのと反対側に飛び出した。瑠真はシオンへ、望夢はアンドリューへ。
 アンドリューが狙うゴーストを、彼の発砲と同時に撃った。アンドリューが振り向く。こちらに注目が向く。
 まずはアンドリューを継続的に狙った。青年は小刻みにこちらの照準を避けながら移動を始めるが、撃ち返してはこない。
 望夢は気合を入れ直した。戦術解析なら得意分野。レーザーガンもペタル式のため、望夢の干渉操作系能力の範囲内だ。
 会場全体のペタル銃へ、そして周りのすべての状況に感覚を巡らす。自分自身の動きも感知のコントロール下に置くことで、照準を繊細に調整していく。
「……ああ、やっぱり狙ってるな。こいつでどうだ」
 そして、少し遠くにいたゴーストを二体ほど、連続して撃ち抜いた。
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 協会側のスコアパネルがパタパタ言う。アンドリューがまとめて点数を入れるときよりは、よほど控えめな数だ。
 なのに、アンドリューは先ほどより露骨に嫌な顔をした。自分が狙われたときより反応が大きい。こちらが彼のゴースト狩りの邪魔をしていると気づいたのだろう。
「いい反応」
 にやりとして銃を構え直す。
「もうちょっと、その顔見せてくれ」
 仮説更新。奴はプレイヤーを狙わない代わりに、ゴースト狩りをできるだけ意味あるものにする方策を練っている。では、その方策とは ゴーストは地形に紐づいたものだ。望夢は今度は地形を形成するペタルを探る。
 正直集中対象が多すぎて、地形のような広い範囲を対象にすると何がなんだか判断できない。だが、だからこそ浮かび上がってきたものがあった。
 地形に影響されない地点が会場内にいくつかある。
 その正体はすぐにわかる。カードの配置だ。
 カード台の周りはペタル流が止まっているのだ。理由は単純。物理的な感触を『ペタルで形作っている』各地系とは異なって、カードとカード台は実際に物理だ。であれば、それが完全に見えなくなるような地形セットは発生しない。どんな地形の変動が起こっても、そこだけペタルの地形には覆われない形になる。
 アンドリューは音楽とゴースト、そしてカードを使って、何をしたいのだ
 彼が向かっている先を見極める。カード台はその先にあるか 向かうならこれだろうという方向の台には当たりがつくが、アンドリューは真っ直ぐそこに向かっているわけではない。周囲のゴーストを狩りながら、不規則に回り道している。
「……、」
 不規則だろうか。──実は法則性があるのではないか。
 移動しながら望夢は途中でアンドリューを追うのを辞め、横道に飛び込んだ。その先には別のカード台がある。それを取って切ろうとしたとき、「ヘイボーイ」シオンの声が響いた。
 思わず首をすくめた望夢の頭の傍を通って、レーザー光が岩の形をした壁に当たる。
「うわっ」
 思わず身を隠す。近くをシオンと瑠真がそれぞれ走り去っていった。巻き添えを食らうところだった。通りすがりに見つけてこちらの邪魔をしたのだろう。
 その間にアンドリューが別のカード台に辿り着いたらしい。バタバタバタと、また点数パネルが捲れた。今度は火山口のような、殺風景な凹凸地形が開けた。
 そろそろ気がついていた。
 アンドリューが地形を組み替えるごとに、動く点数が大きくなっていく。
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 地形自体には元々、フレーバー程度の要素しかないはずだ。なのにこれだけ点数が変わるのは明らかに設計ミスではないか。あくまで地形による凹凸で、無理な位置になるエネミーの発生キャンセル分だけのはずだ。
 エネミー発生キャンセル──望夢は横切っていくゴーストを睨みつけた。
「よう、お前、消えたら何秒後に再生するんだっけ」
 撃つ。
 しばらく何も起きなかった。
 また瑠真とシオンが横切るのを危惧する空白のあとに、ぼこり、と同じ位置に煙霧の発生。それが人の形になり、ゴーストになって歩き去っていった。
「四秒……ってとこかな」
 あるいは。アンドリューが鳴らす音楽で言うと、八拍程度。
 望夢はインカムをつけた。直接の会話の邪魔になるからと仕舞っていたが、これは一応味方との通信に使える。
「瑠真」
『だぁ今集中してるとこなのぉーっ、何』
「俺たちが控室で見るより前から、地形バリエーションって公開されてた」
『はぁ』
 瑠真が怪訝な声をあげた。
『当たり前でしょ。あの説明映像、選手には開会前からずっと渡されてるわよ。くじ引きでここになっただけなんだから、当たり前でしょ』
 ビンゴ。
 角から飛び出してきたアンドリューと目が合った。今はカードは持っていない。再びゴースト狩りのターンだろう。
 アンドリューがあえて、撃てるゴーストを見逃すことがあることに、望夢は気がついていた。だから嫌がらせが効くのだ。
「仕掛け合戦なら俺も得意だぜ、バンドマン」
 どうせ通じない日本語で煽る。
 あとは、正しく盤面を読むだけだ。
×××
 幼少期、自分のいた場所にこんな立派な音響設備はなかった。タイラー・ドレイクはしみじみと思う。
 タイラーは、一九四八年生まれのありふれた男だった。
 実家はスラム。ジョンは路地裏で物心ついた。家賃を払う金がなく、そこにたむろしているホームレスの一員だったのだ。
 あるとき暮らしていた街は政府の掃討に遭い、「きれいに」された。当時の福祉施策で金を受け取った。路地裏を追い出され、代わりに立った公営住宅に押し込められたところでタイラーにも家族にも、お仕着せの生活は似合わなかった。
 ただ、スラム時代の路上で聞いていた、カセットの音をよく思い出していた。
 ある戦争で異能の存在を知った。
 悪名高い戦争だった。母国は国際条約を破って侵略し、化学兵器を用い、そのうえで明確な勝利を収めず撤退したというもの。国内でも反対の声が噴出し、平和活動というものが目に見えて動き始めた。
 しかしその頃ずっと現地にいたタイラーにとって、それらは実感のない話だ。代わりに覚えているのは、むせかえるような雨の匂い、土の感触、怒号、血の味。
 ゲリラ戦が行われていた時期だったのだ。そして民間の力を投入していた当時の敵対国には、まだ存在が表に出ること自体貴重だった、自然開花異能者がいた。
 少女だった。
 ピンク色のスカーフを腕に巻いて、静かな瞳で彼女はアメリカ兵を殺した。
 念動力使いだった。宙に固定された仲間の腕や足がおもちゃのように折られるのを確かにタイラーは見た。彼女の存在は恐慌を生んだ。初期作戦にはいなかった戦力として彼女は投入され、その正体を理解できる者はあまりに少なかったのだ。
 ある日、彼女を集中的に排除する作戦行動が取られた。
 他のゲリラ兵に何人撃たれても彼女に到達するという目標の下、たくさんの仲間が犠牲になった。少女は三方向からの追撃を受け、ついに念動力での対応をし切れずに斃れた。
「たすけて」
 その時、彼女を撃てるのはタイラーと隣の同僚だけだった。
 タイラーは彼女を撃てなかった。
 代わりに同僚が彼女を撃って終わらせた。
✕✕✕
「ニューヨーク一帯の防音設備がある建物」では広すぎる。翔成は調べ始めてすぐに、考えるまでもなくそのことに思い至った。
『ホムラグループの足の数でもダメなのか』
「正直言いますね おれ、下っ端なのでホムラグループに情報共有したとこで、全体を動かす力はありません」
 宝木隼二の純粋な疑問に、翔成は電話越しに白状した。他人事の高校生はそれを聞いて少し笑った。
『でも君のお嬢様のことだろ 動かせる人がいるでしょ』
「いー……そう言われたら一人、おれが頼んだら繋いでくれそうな人が思いつく……」
 ホムラグループで莉梨のお目付け役をしている青年を思い浮かべ、翔成はこっそりと溜息をついた。個人的に苦手なのだ。
 と、ふいに翔成のSMSの通知が響いた。
「お」
『情報更新』
 電話の向こうの宝木の声が弾む。その通り。現場で聞き込みを行っている帆村式の妖術師たちから、思念調査情報が送られてきていたのだ。誘拐時間と場所がわかったらしい。
 脅迫状が来るまでの時間を鑑みて、ほぼ間違いなくNYから出てはいない、という推論が述べられていた。目撃情報からして、NY中心を北上していった可能性が高いということだ。
 宝木のために読み上げかけて、覚えのある文字列に目が止まる。
「誘拐場所は││あ」
『何だ』
「協会のホテルの、リネン室だ。宝木さん、泊まってますよね」
 宝木が通話の向こうで唖然とした。
『なんでホムラグループのお嬢様がうちのホテルで攫われてるんだ 現地に先に来てたって言わなかったっけ うち、何か巻き込まれてる』
「い、いやぁそれが事情が複雑でして」
 リネン室、である理由も翔成は薄々察していた。半ばお忍び、半ば以上お遊びでメイド服を来ていた帆村莉梨の姿が思い浮かぶ。何を思ってか今朝もまたメイド服で協会補欠メンバーと合流しようとし、そこで不意を打たれたというわけだ。
 ホムラグループの既定の滞在場所であれば彼女の護衛はごまんといたはずだ。知っていた自分もホムラグループ内で怒られるような気がしてきて翔成は天を仰いだ。
「て、力抜けてる場合じゃない」
 慌てて連絡を読み返す。莉梨はおそらく意識を奪われた状態で、車で三〇分ほどの距離を北上させられ、どこかに監禁されてから脅迫状に接触した可能性が高いとのことだ。その監禁場所が、先ほど宝木が予測した通りに防音設備のある施設であるなら、探索範囲はホテルから十数km圏内に絞れる。
『まだ足で探すには広いな』
「うん。でも、だいぶマシにはなる。話してみる」
 正直聞いてもらえる気はしないながら、翔成は一度、宝木に断って電話を切る。
 代わりに繋ぐ対象は、ホムラグループ社員にして妖術師・児子操也。莉梨のことであれば、翔成が個人的に連絡をつけられる範囲で最も力を持っている。
 彼もまた莉梨に続いてアメリカにいるはずで、発信番号は国内宛てになった。
『なんだい、小姓くん』
 二コールですぐに電話に出た青年の声は、さすがに荒んでいた。彼が傍目にも入れ込んでいるお嬢様に無法者の手出しを許してしまったのだ。仕方がない。
 翔成はお疲れ様です、と挨拶もそこそこに本題に入った。初対面の記憶が最悪だっただけに、との会話は最低限にしたい。
「ええと、これは大変類推に類推を重ねた、ワトソンの提言なんですが……」
『何がワトソンだって』
「言葉の綾です」
 すぐに説明に入る。莉梨を誘拐する可能性があるのが、旧秘匿派だけではないこと。やり口からしてヒイラギ会シンパの一般人ではないかと思うこと。一般人であれば、ある程度の防音機能を持った設備は必須であるということ。
『……ふむ。妥当な線……と言ってあげなくはないけど、秘匿派に先立って潰す意味はあんまりないんだよね』
 相手の反応は色よいとは言いがたかった。
『俺たちってほら、組織的に嫌いじゃん、他の秘匿派』
「ですよねー……」
 予想通りだ。莉梨の捜索先が即座にNY秘匿派アジトに決定したのは、おそらく組織的な事情もある。これを理由にホムラグループが海外の秘匿派事情に頭を突っ込む動機。いざとなれば、寵愛しているお嬢様も切り捨てて利用する組織であると、翔成自身もよく知っていた。
「おれができる範囲で総当たりするので……せめて児子さんの声が届く範囲だけでも、人動かしてもらえたら」
 それでも食い下がる。こと話が帆村莉梨の身の安全におよぶのだ。翔成が児子を苦手だからとか、組織の都合があるからと、引き下がってはいられないのだ。
『や、君が動く必要はないんじゃない 興味あればエリアに移動しとくくらいでいいよ』
 と、児子が突然言った。
「え でも、さっき組織は動かせないって」
『俺たちの組織はね』
 児子操也が含み笑いした。翔成がその意味合いを受け取れずにいるうちに、説明が続く。
『高瀬式には、君の一件で横槍入れられた貸しがあってね。秘匿派狩りなら協力するって。NYに来てるらしい分隊から連絡があったとこだよ。
 それなら、秘匿派狩りより、君のヒントをまとめて渡して、莉梨の発散を感知して辿らせたほうが早くない あの���犬たち、鼻の良さが強みでしょ』
×××
 試合は合計一〇分以上続いていた。
 動き続けた身体はアドレナリンが出ているとはいえ疲労を訴えている。アンドリューが攪乱のために流す音楽は、傾向が分かっているとはいえ曲が変わるたびに望夢には負荷を与える。最初に瑠真に教えられた曲から数えて三曲目に突入し、そのたびに遠くにいる観客たちが湧いていた。やはりファン向けのライブの役割もあるのだろう。
 今のところ瑠真も自分も落ちていない。それが救いだった。
 会場の地形は洞窟のような、入り組んだ迷路じみたものに戻っていた。望夢がそういうカードを切ったのだ。視界が封じられるということもある。有利な地形カードを見つけ、保持して、アンドリューやシオンに狙われたタイミングで使う。それで持久戦に食い下がっている。
 それでも日本とアメリカの点差はまだ圧倒的にアメリカ優位だった。もはや日本チームは、アメリカ側の二人を落とすしか勝ちの目がない。残りの地形カードをかき集めてギリギリ間に合うかどうかという点数差だ。
 
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 制限時間は一五分。終了が刻々と近づいてくる。
 望夢としてはできれば、それらすべてを理解したうえで、手あたり次第の地形カードを積極的に切りたくはなかった。
『望夢』
 インカム越しに瑠真が叫んだ。
『アンドリュー、そっち向かってる』
「……サンキュー」
 望夢やアンドリューにとっては、視界が封じられる地形だが、瑠真やシオンにとっては違う。
 壁と壁の間や高いその稜線を身軽に駆け回る彼女たち身体強化系術師は、それぞれのチームの目としても活躍している。昔の瑠真なら時間を稼げ、見張りをやれと言ったら嫌がっただろうが、今の彼女は能力に貪欲だ。インカム越しに二つ返事で分担を聞いてくれた。
 最初こそ目になってもらわなくても、望夢が自分でアンドリュー自身の発散を感知して戦っていたが、今は、集中すべき対象が変わっている。それどころではない。
 壁の一つに身を隠す。アンドリューが気づかず通り過ぎていく。その行き先を思い浮かべた。全身の感覚でペタルを辿る。
「……あの台か」
 制限時間も、未使用カードの残り枚数も少ない。そろそろ勝負どころだ。
 試合時間、残り四分ほど。アンドリューが流していた前の曲が終わり、また曲が変わった。今までの曲と音の感じは変わらないが、静かな曲調のギターイントロ。遅いテンポ。
『さっきのバンドのボーカルの、ラストソング』
 瑠真が早押しのようにインカムで叫んだ。
『時間的にも最後だと思う。狙って組んでるのね』
「ありがとう」
 残り時間ぴったりまで流す気だ。そのつもりでセットリストを用意しているのだろう。
 望夢は迷路を構成するペタルを辿りながら、アンドリューの元へと走った。いくつかの曲がり角の先で、アンドリューが振り向く。その手はすでにカード台のボタンを押している。
 彼はこのフィールドの王者だ。切るたびに増えるフィールド切り替え時の点数は、もはや日本チームにとってはオーバーキルだ。残り少ない時間で、日本に逆転の目はもはやない。観客はそう思っているだろう。
 それでも席を立たないのは、純粋にアンドリューが鳴らし、シオンが踊るこのステージを楽しみにしているのだ。
 俺たちは誰にも注目されていない。
 ──そういう状況が望夢は得意だ。
 アンドリューの頭の周りを撃つ。背後にいたゴーストが弾けて消えた。アンドリューはもはや反応しなかった。別に必要のない小さな的の一つや二つ、望夢に書き換えられても仕方がないと思っているのだろう。
 立ち位置は丁度、アンドリューが壁に据え付けられたカード台を背に、望夢を見据えている形になっていた。こちらにはアンドリューとシオンの両方を狙って落とす程度しか抵抗の方法はない。狙われるとわかっていても、自身も狙うために迷路から飛び出さざるを得ない。
 間に合わない。この距離で間に合うわけがない。アンドリューの手が、開いた強化ガラスの間に入り込み、カードを取る。最後の図柄──真っ平に続く床面に何種類かの縦方向の足場だけが用意された、シンプルで見通しのいい地形。
 望夢との相性は最悪だ。
 曲はまだ続いている。痛々しげな訴えに似たボーカルが叫ぶ。そしてアンドリューはまだカードを切らなかった。こちらに銃口を向ける。とっさに避けようとしたとき、インカムの瑠真が何か言った。
『危ない』
「わかって──」
『違う、こっち』
 望夢が飛び出したばかりの岩場の上から、軽やかに金色の影が舞い降りた。シオンだ。
「お──」
「キミ、何するか怖いから」
 すれ違いながら彼女はそう言った。
「最後まで邪魔させてね」
 言いながら、彼女がまばたきする。瞬間、視界が狂った。何らかの光術を使われたのだ。
 反射で解除したとき、向かいの壁から瑠真が飛び出して、シオンを牽制した。シオンは舌をぺろりと出して再び路地に消え、瑠真もそれを追う。
 そこで気が付いた。銃がない。
「え」
 足元に望夢の銃が転がっている。……自分で取り落としたのだろう位置。
 本当に取り落としたのだ。おそらくシオンはこちらの銃の位置を錯覚で狂わせていった。完全に奪えば試合の根本ルールに差しさわり、ルール違反だ。こちらが勝手に手を放すよう、あるいはそこまで行かなくても少なくともアンドリューやシオン自身に銃口を向けられないよう、望夢の視界が銃を認識する位置を軽く前後させて混乱させてきたのだ。
「うわ」
 それ以上考える前に危機感が頬を叩いた。とっさに自分の銃の上に転がるように倒れたとき、アンドリューの放ったレーザーが背後の壁を打ち抜いて行った。
「Don’t you give up, boy」
 青年が何か言った。煽られていることはわかる。ギブアップと聞こえた。諦めろ。
 完全に座り込み、相手を見上げるだけの姿勢になった望夢に、アンドリューが一歩ずつ近づいてくる。
「It’s singing ”You Know You’re right”」
 どうせ望夢は答えないのだ。彼は世界に向けて話している。
「You are right, ah I know everybody says so.  We don’t deny.  But cannot live together, just like lovers in lyrics, you know  We are not hysteric lovers, just compete in game instead of quarrels.  That’s the slogan of this tournament and also what “they” said」
 背後には彼の稼いだ圧倒的な点数差のボードが見えている。
 もはや何を言われようと勝ち目がないことを印象づけるだけだ。彼はわかってて話している。曲が終わりに向けて盛り上がる。これは、演出だ。彼らが美しい勝利を収めるための。
「History is written by the victors」
 目の前で足が止まる。
「And today you are the loser」
 こちらに銃口を向けたまま。
 アンドリューは、軽やかな動作でカードを裏返す。
 最後の地形が発動する。小細工をする望夢には相性最悪で、そして観客からは最も見通しやすく演出性が高い、まっさらな平地。
 それによりまたスコアパネルが回る音が響き、アンドリューは曲の終わりとともに、最後に望夢を撃ち抜く。
 ││そのはずだった。それをアンドリューは企図していただろう。
 アンドリューが戸惑った。
 地形が変わる。灰色の壁がなくなり、周りが明るくなった気がする。それでもパネルが回る音が響かない。
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 さらに言うなら。
 この地形変化で開けた視界に、大量のゴーストが佇んでいる。いくつも、尋常じゃない数。最初にこれだけ同時発生はしていなかっただろう密度で。
 沈黙の中に、曲が最後の一節を響かせる。
「Why──」
 望夢は笑って、手元にもう一つだけ残っていたカードを裏返した。
「っ」
 青年が怯えたように身を引いた。
 当然のことだ。その瞬間、再び景色が変わったからだ。最初の地形と同じもの。高い壁とステップを持つ見通しの悪いものだ。観客席もシオンや瑠真の姿も見えなくなる。
 バタバタバタと、見えない視界の向こうで、スコアパネルが回った。言うまでもない。音を立てたのは、協会のパネルだ。
「What……」
「陣地を変えれば、発生エネミーの位置と回数が変わる」
 望夢は言いながら立ち上がった。アンドリューはこちらを狙う気概も失せている。
 なぜなら、そこはもう彼が敷いた演出の中ではないからだ。
「発生時に誰かのカードで地形変化により発生をキャンセルされたエネミーは、カードを切ったプレイヤーの手柄になる」
 使用済みのカードを放り投げる。どうせもう試合は終わる。
「地形はあらかじめ公開されてる。ゴーストの初期位置はランダムとは言うが、自分のペタルから出てるんだ。俺みたいに多少感知系が使えれば読める。お前はどう把握してたんだろうな。これはただの推測だけど、音楽の一部として発生テンポを見てたんじゃないかと思う」
 エネミー消滅から再発生まで四秒。あるいは八拍。
 曲によっても違うが、あるいは音楽というのは経過時間の秒単位の管理にも使える。
 誰かに撃たれるたびに、そして地形変化のたびにゴーストは消え、そして四秒後に再生する。次に自分が使う地形がわかっていれば、その地形上でキャンセルされる位置にゴーストを誘い込み、それらが揃ったタイミングでカードを切ればいい。彼らの移動ルートは単調な直線だ。法則性を掴めば、各地形で何秒後にどこにいるかの計算は比較的容易だ。
 アンドリューは最初から、手に入れた瞬間にはカードを使わず、保持していた。
 こちらの攪乱のためかと思ったが、おそらくゴースト位置が揃うのを待っていたのだ。
 最大の演出、それは影の人型もすべて消し去り、広いフィールドの真ん中で敵を撃ち抜くこと。計画を崩されたアンドリューは、青い顔で口を動かす。どうやって、という顔に見えた。
「得意だからだ。悪いな、姑息で」
 望夢が方針を決めてからの試合の間中、走り回りながらやっていたこと。アンドリューが撃ったゴーストを四秒後の再発生で再度撃ち、全てのゴーストの位置を四秒ずつずらすこと。
 結果、アンドリューが『必要な位置に揃えた』と思い込んで切った地形カードは、全て空振った。
 四秒後、望夢が彼の揃えた条件を乗っ取った。いや、正確にはさすがに全てのゴーストの位置を踏まえて乗っ取ったわけではない。望夢自身も同じ方法で、自分が最初に見た地形にゴーストを揃え続けていたのだ。偶然そのカードが手に入って助かった。
「俺はヒイラギ会式になったつもりなんか一度もない。真正面から、あんたの策に乗っからせてもらっただけだ」
 アンドリューに聞こえないことは承知だ。彼に聞こえなくても変わらない。この試合は全世界放映だ。
 ヒイラギ会が「己の心に従う」という、ある意味での「自分自身らしさ」を追求するのなら、望夢たち高瀬式というのはほとんど最も遠い世界解釈だろう。高瀬式の役割の最も重要な部分は、自身の解釈ではなく他者の解釈への介入だ。それぞれの世界認識を他人の言葉でしか語ることがない。それを世界に伝えなくてはならない。
 アメリカチームはパフォーマーだ。「夢を叶える」に重きを置いている。
 それを反対側から揺さぶって「打ち消す」のが望夢の勝ち筋だ。
 簡単なことだ。
 彼らが作った舞台に乗った上で、その夢の主役を乗っ取ればいい。
 舞台の真ん中で、望夢は自分のレーザー銃を拾い上げ、相手の額に突き付ける。
「覚えとけ」
 浅い息を吐きながら望夢は汗を拭った。動いたことというよりも緊張が極致を超えたことにより出たものだった。
「他人の夢のダシにされるほど安くない」
 遊んでいる場合ではない。望夢にこれができても、ペアにできるとは到底思えない。
 その瞬間、正々堂々とアメリカチームのパネルが片方、戦闘不能で落ちた。
 
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×××
「あいつら、銃持ってる」
 翔成が電話越しに言うと、宝木は『さすがアメリカ』と言った。
『どういうレベル 拳銃』
「それが……かなりゴツい武装ですよ。何人もいる。軍っぽい」
『民間軍事会社』
「そういうのもあるのか……」
 翔成はホムラグループ社員から送られてきた画像を見る。高瀬式が突き止めた誘拐犯の潜伏地の画像だった。
 高瀬式は秘匿派の警察という性質上、民間人には手出しができない。帆村莉梨の発散の報告と同時に、「他には異能の気配がない」ということを伝えてきた。その時点で高瀬式の出番は終わりだった。あとは直接お嬢様を攫われているホムラグループの問題だ。
 翔成は先に行動を始めていたこともあり、かなり近くに来ている。このままであれば突入隊に混ざれる位置にいる。
『陽動撹乱、君がやってみる 洗脳の基本だよ』
 先ほど連絡してきたホムラグループの青年は言った。
『まあ、もちろん君以外に十分、カバーできる戦力がある状態で、だけど』
 教育くらいの軽い口調だった。ホムラグループのお嬢様に付き添ってきただけのことはある、荒事慣れした青年である。
 自分がやるかどうかは置いておいて、とにかく翔成も現地に向かっていた。まずは最速で到着した妖術師が報告を寄越してきている。それによると、待機している武器持ちの見張りたちに害意はない。銃を持ってはいるが、テロ目的などの攻撃的な意志はない。であれば翔成も交ざっていい、というのが児子の判断で、そのため画像等の共有も受けているのだった。
 とはいえ自分一人ではあまり落ち着いていられる自信がない。まだ電話は切れなかった。
「……ん」
 翔成は電話を片耳に、画像の一部に目を留めた。
「なんかみんな、カメラとかスマホ手に持ってる」
『パフォーマンス目的 誘拐の助けが来たら配信したいとか』
「趣味わる……」
 辟易したが、無くはない気がする。ヒイラギ会の支援者ならヒイラギ会本体と似たようなことをするかもしれない。不意に思い出す。莉梨の「騙されないで」。
 あれはこういった話なのではないだろうか。うかつに踏み込むと不祥事にされかねない。
「……おれ、行かないほうがいいかな」
『翔成くんの歳なら、そうかもな……。もし本当に撮られるとしたら、顔が映る。親御さんが心配する』
 脳裏をぐるぐると予感が渦巻き始めた。
「もしかして、あいつらの目的、わかったかも……」
『え』
「莉梨さんが攫われた理由。『おれたち』じゃないですか」
 翔成は電話に力を込めた。
「何故莉梨さんなのかって……ヒイラギ会の関係者だとしたら、『おれたち』がヒイラギ会と対立してるのも知ってておかしくない」
『おびき出されてる』
「はい。それに……丹治さんが試合に出られなくなった理由、偶然だって話したじゃないですか。本当なら、莉梨さんを助けに行く人の中には『瑠真さんや高瀬もいておかしくなかった』」
『……』
 考え込むように宝木は黙った。
「あいつらがパフォーマンス目的でカメラ持ってるとして、映ったら一番まずいのはあいつらですよね。宝木さんの言うとおり、あいつらっておれと同じでただの学生だから。今までの事件も流されちゃってるんだったら、合わせて何て言われるかわからない」
『……とりあえず、来てないから良かったじゃないか』
「まあね だけど、たとえばこの誘拐犯がアメリカチームと連携取ってるとしたら」
 宝木が息を止める気配があった。
『アメリカを勝たせるために、日本を邪魔してるって』
「ちょっと違う。あいつらが莉梨さんを助けに向かったらそれを暴いて、不祥事にする。万一向かわなかったら会場で、協会の不祥事取りざたして暴く。そういう二段構えだとしたら」
『……君は、アメリカ代表チームが誘拐犯とグルだとか、そういう話をしてる?』
 翔成は少し黙った。
「そこまでは保留です。でも、どっちに転んでも損な状況に変わりはない」
 電話機を持つ手に力を込める。
「ともかく、『あいつら』が狙われてる可能性は全然ある。そうしたら、今どっちかっていうと奴らの本命は試合会場にある! やっぱりこのまま試合を続けさせるのは良くない。試合中はおれじゃ通信を取れません……誰かそれを教えて。運営に今の異常さを伝えて止めさせて」 
『できるかはわからない。この分じゃ大会ごとアメリカのグルだ。だけどオレが戻る。どこに何を言えばいいかくらいはわかってる』
 頼りになる高校生は決然と言った。翔成はまだ胸のざわめきを消すことができない。
「それに。おれの役目が、みんなの見落としてることを拾い上げる役目だとしたら……。これで終わりだと思えないのが怖い。試合が続いてること自体怖いよ。暴くだけじゃなくて、その先の目的があったら? そこにヒイラギ会が噛んでたら尚更だ」
 宝木に断って電話を切り、翔成はすぐに電話を児子にかけなおした。連続使用で熱くなった筐体が悲鳴のようにコール音を鳴らす。
『翔成くん?』
 児子が出た気配がある。翔成は息を急ききる。
「会場、会場が不安なんです! 今ってホムラグループも高瀬式も、パークから離れてる状態になってますよね? 誰かが仕掛けるなら手薄すぎる!」
『待って、順番に話して』
 児子は決して翔成に対して友好的な青年ではないが、この時ばかりは親切だった。翔成が混乱しているのを見て取るや、冷静な聞き手になって翔成の懸念を解きほぐしにかかる。
 翔成がひとしきり、会場で戦う二人の先輩への心配を吐き出したとき、児子は肯定した。
『間違っちゃいないと思うよ。手薄なのは困る。こちらの規模ももう概ね分かったところだしね。高瀬式の犬たちとうちの役に立てない警備要員は戻させよう。君の懸念がアタリでもハズレでも、どいつにとっても都合のいい偏りができるのは困る』
 ありがとうございます、と翔成は乱れた呼吸で感謝する。電話越しに児子が指示を飛ばしている声が聞こえる。さすがは莉梨のお目付け役だけあって、こうしたときの指揮系統ではかなり上に来るらしい。
 ──その声が、面白そうに「ちなみに」と言った。
『今から莉梨の救出なんだ』
「え」
 翔成は一瞬、自分がどこにいるべきなのか逡巡する。ホムラグループ警備隊や高瀬式、それに宝木がパークに戻ったのであれば、非力な翔成がいる理由はないのだろうか。
 見ろと言われた理由が気になった。目下の主である莉梨のこと。
『偵察ウサギを行かせたんだ。交代で出入りしてる敵グループの一人が捨てたタバコを使って、「感染」、連中にウサギのぬいぐるみが味方だと誤認させた。手紙を持たせて、嘘の二枚目の脅迫状を用意して、彼女にまた生存確認を仕込ませようという架空の任務を持たせてね』
 児子はすらすらと自身の妖術のからくりを語る。彼の妖術にいい思い出を持たない翔成は少々背筋を震わせる。
『脅迫状カッコ嘘が帰ってきて、無事に莉梨とコミュニケートできたよ。今から彼女が脱出するから、銃持ちの連中の攪乱、手伝ってくれ』
「おれが……」
『今日は戦力足りたらそうするって言っただろ。これもレッスンだよ。──ああそうだ』
 青年は愉しげに言った。
『俺、君の心配���結構当たると思ってるんだけど。探偵としてはヘタクソだと思うんだよなあ。論理性ないもの。
 多分ね、俺たちのお嬢様なら全部わかってるから、まあ脱出させられたら訊いてみようよ』
次>>
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palakona · 4 months
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意外な釣果
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2024年1月、阪奈園へら鮒センター(大東市)iPhone11
どうも、こんにちは。1月7日(日)は、阪奈園へら鮒センターに行ってきました。2日連続で寝坊して…アラームをセットし忘れたんかなあ。アラームが鳴らへんなあと思って薄目開けたらこの季節なのに窓の外が明るいってパターン(^▽^;)。すぐに着替えて出発したんで、9時に釣りを始めることができましたが、1時間以上のロス。今日は西風が強いらしいので、西側に防風林ならぬ竹林のある風裏の釣り席を選びました。到着した時は車がまあまあ多いと思いましたが、中に入ってみると人気の1号池陸桟橋北向きにズラリと並んでおられて、2号池はいつも通り閑散としていました。今の季節は僕は2号池の方が好きやけどなあ。ジャミが動き出すと2号池は釣りにならないので、僕も1号池陸桟橋推しになりますけどね。あと、1号池中桟橋北向きも気になっていますが、いつも2号池がガラガラなので周りを気にせず席も選び放題の2号池に入ってしまう。
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2024年1月、阪奈園へら鮒センター(大東市)iPhone11
今日の竹竿は、阪奈園HCでは(僕の場合)お約束の11尺で銘柄は「池ノ坊」です。11尺は3本あるので、竹竿を買う時の足しにしようと売りに行きましたが、買い叩かれたので売るのがアホらしくなって手許に残した竿です。総高野竹の軟式〜中式の竿で使い心地は最高。売らずに良かったと思いました。竹竿は7尺から16尺まで持ってきていますが、僕の腕ではうかうかするとボウズになりかねないので、尺数変更とか試している余裕はないですw。
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2024年1月、阪奈園へら鮒センター(大東市)iPhone11
浮子も実績のある舟水の「底08ソリッド」の9番。浮子も沢山持っていて色々使ってみたいのですが、シズ合わせとかに時間を使う余裕がないw。
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2024年1月、阪奈園へら鮒センター(大東市)iPhone11
前回来た時は、浮子が動くのは数時間に一度の悶絶時合いで、アワセ切れもあって結局ボウズだったのですが、今日は浮子の動きで気配を感じて集中していたら「ツン」と入ってアワセも決まってボウズ脱出〜!阪奈園HCは浅いのでヘラブナが横に走るのですが、寒い割にはヘラブナは元気で魚信もハッキリしていたしチョー気持ち良いですw。
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2024年1月、阪奈園へら鮒センター(大東市)iPhone11
2枚目は浮子がズルズルっと入る魚信で糸スレかな〜と思いましたがちゃんと口に掛かってました。両目が開いた〜(嬉)
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2024年1月、阪奈園へら鮒センター(大東市)iPhone11
ボウズは無くなったし、もう満足ですw。写真は南陸桟橋に向かう道。中桟橋だと南向きで釣れなかったら反対を向いて北向きで釣れるので、北向き一択になる南陸桟橋は最近入ってないなあ。そこそこ釣れるんですけどね。←オマエガイウナ
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2024年1月、阪奈園へら鮒センター(大東市)iPhone11
また釣れました。2枚追加して午前中は4枚で折り返し。
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2024年1月、阪奈園へら鮒センター(大東市)iPhone11
まぶし粉は菅原商会の3号(左)を使っているのですが、阪奈園HCで売ってるまぶし粉が釣れると聞いたので買ってみました。サイズは2種で「粒」(菅原商会で4号ぐらい)と「粉」(1号〜2号)。「粉」を使ってみましたが、特に効果なかったwので、主に使ったのはいつもの菅原商会の3号です。次は「粒」の方を使ってみよう。
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2024年1月、阪奈園へら鮒センター(大東市)iPhone11
10時台後半に釣れたのを最後に約2時間釣れず、北向きに場所替えを考えましたが、予報通り西風が強くなってきたのでそのまま南向き風裏で続行。やっと釣れたと思ったら尻尾でした…。
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2024年1月、阪奈園へら鮒センター(大東市)iPhone11
13時22分。やっと午後の1枚目。長かった…
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2024年1月、阪奈園へら鮒センター(大東市)iPhone11
約15分後にヒット!時合いが来た〜と活気づいたがアッパーでした。浮子が「ツン」って入ったのに〜。
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2024年1月、阪奈園へら鮒センター(大東市)iPhone11
今度はお手手…ぬか喜びでした。
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2024年1月、阪奈園へら鮒センター(大東市)iPhone11
遠いけど見えるかな〜。桟橋の上にカワセミがいます。カワセミって鉄琴を叩くような鳴き声ですね。ジャミをぎょうさん食べてくれ〜。
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2024年1月、阪奈園へら鮒センター(大東市)iPhone11
午後は釣れない時合いが長かったけど、15時ぐらいから口を使い始めて怒涛の連発(大袈裟w)。パタパタと3枚釣れて、特に8枚目は一荷(両子)だったが、1枚外れてしまった。取り込んでから鉤を見たらバラシではなくてチモトから切れてましたわ。結び目が弱ってたんかなあ。1枚損した。その後は釣れず、16時前まで粘りましたけど終了としました。
ということで、1月7日はヘラブナ8枚でした。前日とは打って変わって冷え込むとか、西風が強いとか、前回ボウズだったし新こしが池にしようかな〜と思ったりしましたが、終わってみれば寝坊してロスもあったのに結構釣れました。ちなみにhowellsさんは前日11枚だったそうです。釣り席は聞き忘れました(^▽^;)。
では、また。
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ichinichi-okure · 3 months
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2024.1.17wed_tokyo
昨晩は、わりとよく眠れた。 鼻詰まりが随分ましになったのが嬉しい。それまでは鼻をどれだけかんでも一向に空気の通り道が出来なかったのに、今では呼吸をするたびに鼻の奥に冷気を感じることができる。鼻呼吸ができないと、寝てる間にもしや呼吸困難に陥るんじゃないかと妙な心配をしてしまう。
熱を出すような風邪は4年ぶりです。 SUNNY BOY BOOKSさんでの個展を終えて、一息ついたらこれである。まあ、作家が個展のあとに調子を崩すのはよくあることかもしれない。 もしやコロナでは、と検査キットを試してみたけど幸い陰性でした。
たとえコロナでなくとも、辛いものは辛い。ふと寝起きの妻を見ると、どうやら彼女も調子が悪いらしく、今日は在宅の手続きを取ったそうだ。自分の風邪がうつったんじゃないかとヒヤヒヤする。 首から上だけプールの水に没んでるような、じんじんとした不快さを感じながら1階に降りると、柴犬のひるねは階段の下で尻尾を振って待っていた。早く散歩に行きたいのだ。風邪をひいたせいでここ数日の散歩はショートコースばかりだった。今日はノーマルコースにしよう。(ひるねのお散歩コースは、ショートコース、ノーマルコース、スペシャルコース、プラチナコースがあります)
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昨日の夕方の強風で凍える思いをしたので、念のため厚着で外に出ると、今日はそれほどでもない。ひるねも待ってましたと言わんばかりに、軽やかなステップで歩いてゆく。
体調が優れてなくとも、ひるねとの散歩は気持ちの良いものです。 僕が住んでいる町田市の玉川学園は、知る人ぞ知る坂の多い学園都市で、どこへ行くにも坂を上らなければならない。最寄りの小学校までは郵便局のある長い坂を歩いていかなければならないので、この町で健脚を鍛えた子どもたちは全国のマラソン大会でもなかなか良いところまで行くんだとかなんとか。真偽のほどはわからないけど。 とにかく、犬の散歩をするのにだって、それなりに坂を上ったり下ったりしなくちゃならないのだけど、おかげで見える景色にも変化があって楽しい。 家から南に曲がりくねった住宅地を歩いていくと、ゆっくりと標高が高くなっていく。断崖にそって左に大きくカーブしているので、そこからの見晴らしはなかなか良い。見晴らしと言っても見えるのは町田の街並みで、それは別にとくべつ美しいと言えるものではないのだけど(町田市民は怒るかもしれないけど)、「暮らし」を感じるにはこの上ない好スポットだと思う。夕暮れ時にここを通ると、ときどき中学生か高校生の女の子が、夕日を撮ろうとスマホを向けている。
犬と暮らすようになって、共に散歩をするようになると、そうでなかった頃には感じもしなかったことに気付くようになった。 たとえばポイ捨て。犬と散歩をすると自然と目は足元に行くわけで、道に転がるゴミの多さに辟易することがある。犬は食欲の権化と言っても過言ではないので(人間もそうかもしれませんが)おにぎりの包装フィルムとか、カップ麺の容器とか人が捨てたものに口を向けようとする。誤ってお菓子を包み袋ごと食べてしまった時は動物病院で吐かす処置をしなければならなかった。そういうことがあるから、散歩中にスマホなんてなかなか見れません。でもたまにいるんだよなぁ、スマホしか見ずに犬の散歩をしている人。もうなんならスマホに集中しすぎちゃって道の真ん中で直立不動になっちゃってるの。直立不動の飼い主にリードだけ繋がれちゃって、飼い主の周りをウロウロすることしかできない犬。なんですかあれは。
散歩から帰って、熱を測ると37.3分だった。これくらいの熱なんでもない筈なのに、なんなんだこの不快感は。 来週は勤め先の専門学校に必ず行かなければならないから、なんとしても治したい。学生は卒業制作の真っ只中で、その最終発表が来週なのだ。講師が風邪で不在なんて事態にするわけにはいかない。かかりつけのクリニックに予約を取ると、着込んで車で向かう。 いつも診てもらっている先生がお休みで、今日の先生は自分よりひとまわりは若そうな方だった。最近ではこういうことが増えた。今まではお世話になる人みんな自分よりも年上の方が多かったのに、気づけば同年代、今では年下の人にお世話になることが多い。アパレルの店員なんて、みんな年上のお姉さんって感じがしたけど。 若い先生は、緊張しているのか急いでいるのか、割と早口で、だけど丁寧に「まあ、風邪ですねえ」という話をしてくれた。
薬局で薬をもらうと、途中マクドナルドでテイクアウトして、家に戻った。ちょうど仕事の区切りがついた妻とまずはフライドポテトからむしゃむしゃ食べ始めた。
「マクドナルド美味しいな」つい、口に出た。マクドナルド美味しい。 「うん」妻が言う。
テレビをつけると、阪神・淡路大震災の追悼の様子を映していた。そう、今日は1月17日だ。29年前、私はまだ小学生でした。 会場の公園に設置された竹の灯籠で「ともに」の文字がかたどられている。当然、能登半島での被災者への思いを込めてのものだろう。 ここ数日は本当に寒い。北陸は凍てつく寒さだろう。避難所生活している方々を想うと本当に心が痛い。自分はなんだ、ちょっと風邪をひいたくらいで。暖かい部屋でハンバーガーを2個もたいらげているじゃないか。つい、そんなことを思っていると、切り替わったニュースで、与党が資金パーティの取りやめをどうするかで3時間会合を開きました、みたいなことを言っている。 どうかしている。さっさとやめれ、そんなこと。
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フツフツとテレビに対して怒っていると気分が悪くなるので、夕方まで眠ることにした。 ボフっと枕に頭を預けて、右を見たり、左を見たり、天井を見たりする。どっちを向いても鼻がツーンとして寝心地がよくない。 それで結局スマホをいじってしまったりするのだ。これは良くない。依存してるんだろうなぁ、スマホに。 どっかの誰かが言っていた。「朝起きて、パートナーにおはようを言う前にスマホをいじっているのなら、対策を考えたほうがいい」
そんな話の後だが、数時間後にスマホのメール通知で目を覚ました。新規の仕事の依頼メールだった。 児童文庫の装画の案件で、作者は誰もが知る素晴らしい児童作家だった。私も、彼の本は大好きだ。 パタパタと階段を降りて妻に報告する。妻も喜んでくれた。
16時になる頃に、もう一度ひるねのさんぽに行く。 手付かずの朝を歩くのも気持ち良いが、この時間の玉川学園も好きだ。街が頬を染めたような色に染まる。 ちょっと遠回りしたスペシャルコースをひるねと歩いて、何人かのご近所さんに挨拶をすると、例の見晴らしの良い曲がり角に差し掛かった。夕焼けの中で小田急電鉄がだんだん細くなる線路と共に、団地や無数の住宅の間を抜けて町田の市街地へ溶け込んでいく。
夕暮れが、家に帰る合図になればいい。暗くなる前に家に帰って、好きな人と過ごすのだ。夜になってからではちょっと遅い。夕暮れを一緒に過ごすのが良い。
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-プロフィール- 本田亮 40歳 東京都町田市 イラストレーター インスタ https://www.instagram.com/ryoillust/ ツイッター https://twitter.com/ryoillust
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kyono-toritori · 4 months
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8年ぶりの再会ーニシオジロビタキ
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カカカッ、、カカカッ…と鳴きながら尾羽をぴょんぴょんさせて移動するのが特徴の、地味な鳥。
2015年9月だったか、いつもの公園を散歩していたらその声が聴こえました。ピントが合わず、ちゃんとした写真が撮れなかったのが悔しくて。記憶を頼りに図鑑で調べたら、「ニシオジロビタキ」という旅鳥であることがわかり、鳥類研究所に報告しました。
私の住んでいる地域は日本海側に近いため、離島から来た鳥が公園に立ち寄ることがあります。
そのため、いつか必ずこの公園で出会えると信じて(半信半疑で)8年が経ちました。
と、ある日…公園の茂みの奥から声がして、これは虫ですか?って自分が尋ねてきました。(ねじ込ミスチル)
死に際のトンボが羽ばたいたような、ジジジっ…という音が足元から聴こえて。しばらくは、虫だろうと疑いませんでした。
他の鳥達もいたので、撮影に夢中になってその場所に滞在。
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コゲラ 
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このツグミなんか、一瞬ハチジョウの亜種かな?と思ったりもして。
道草していると、頭の上から聞き覚えのある声が。
「カカカッ…カカカッ」
クリック音。これはニシオジロビタキしか出せない!
探すこと20分くらいかなぁ。翻弄されまくって、ようやく何かいることに気づいたのが、なんと足元の羽音でした。
ジジジっという羽音がする所に小鳥がパタパタ飛んでいる。
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いたぁ…
まがうことなきニシオジロビタキやん…。お前こんな声も出せたのか。
願い続ければ会えるのかもしれない。
そう思わせてくれた出会いでした。地味な鳥って可愛い。
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shukiiflog · 6 months
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ある画家の手記if.87 雪村絢視点 告白
朝起きてリビングに出てったら真澄さんのメモがあった。
”クリスマス明けには…  って、どっ��の物件でクリスマスならではのトラブルでもあったのかな。それとも真澄さんにもクリスマス一緒に過ごしたい相手とかがいたのかな。彼女とか…? 真澄さんにあんまりそういう可能性考えたことなかったかも。下手に詮索されても嫌だろうし、とか思ってせめて一緒に暮らすのに不自由で気狭な思いさせない範囲のことしかなるべく考えないようにしてた。そういう人の存在感を真澄さんの周りに感じたことなかったし。 俺は戸籍上は家族だし同居人だけど、もしかして真澄さんは俺がいるからここに恋人連れてこれないとか、あるかな… ないな、俺相手にそんな妙な気遣いしてたら同居生活なんてやってけないし。
というわけで俺も今日は出動する。クリスマス当日。俺は今は彼女いないけど。 昨日の夜に香澄から怒涛のラインがきた。 要約、「絢がくれた服いま開けて着てみたらすごく白い、街中で浮きそう、こんなの着たことない、着こなし自信ない、直人に変な顔されたらどうしよう」。 俺、「La,la-Ma chatoune. 落ち着きなよ、明日の朝そっちに行って全身チェックしてあげる。今夜はもう寝ること。服より目にくま作ってる方が直にぃは落ち込む♡」というわけ。 よっぽど慌てたのか香澄がうっかりベルギー国旗でそれ流してまこにも筒抜けになってたから、まこも来てくれることになった。全身のバランスとか体型に合ってるかとか色彩見るだけなら俺にもできるけど、流行とかは俺知らないからよかった。ベルギー国旗ってのは俺と香澄とまこのグループラインのとりあえずの名前。俺の髪はもう黒髪じゃないけど、三人の頭が並んだら髪の色がベルギーの国旗みたいだったから。
朝一番に香澄の部屋に訪ねてったら、香澄はいつものニット着てて、通されたソファの上に俺があげた服が綺麗に広げてぜんぶ並べられてた。なんか試行錯誤の跡を感じる。 直にぃとの待ち合わせの時間は11時くらいらしいから、全然まだのんびりしてられる。 まこはあとからゆっくり来るって行ってたから、俺と香澄はそれまで一緒にリビングの床でお昼寝した。香澄がかいじゅうを枕にして、俺は香澄のお腹を枕にして寝る。昨日もたくさん訳文作って頭使った、お腹すいた…
まこがインターホン鳴らした音で二人とも目が覚めた。香澄がモニター見ながら鍵を開ける。 まこは片腕に箱を抱えてた。 「お前らはもう食ったかもしれねえけど俺がまだ今年食ってないから」って、まこが開けた箱の中には、イチゴに囲まれて小さなサンタとトナカイと雪が積もった小屋が乗ってるかわいいケーキが入ってた。 「俺も食べていいの?」って聞いたら「おう。一人でぜんぶ食っていいって意味ではない」ってつっこまれた。 ちょうどお腹すいてたから電話でたくさん出前とって、まこが持ってきてくれたケーキはそのあとに取っておく。 「そんなに着こなし難しい服じゃなくね?」 「Ja-、フツーに順当に着ただけでかわいい感じになるように選んだんだけど。」 「か、かわいいかんじ…」 「白いけど仮装レベルの滑稽な感じではない」 「Non、クリスマスだし、ちょっとは非日常でいいじゃんね、直にぃのサンタになるつもりで着なよ。あっ 出前きた!」 次々運ばれてくる出前の朝食を三人で食べて、 この服着たら直にぃはテンション爆上げになるって香澄に念押しながら、香澄にいつものニット脱がせて、服着せてコートも着せて、持ってきた香水を手首とうなじに軽くふって髪に少しすりこんだ、帽子をいい感じの角度と深さにかぶせて髪の襟足を綺麗に出す。 「よし、ほぼ完成。」 もう待ち合わせの時間が近づいてたからそのまま香澄の背中を玄関まで押してく。 玄関先でずっと脱がないで被ってた真澄さんのニット帽を自分の頭からスポッと取ると、「Ta-da!」って帽子の中から手袋を取りだした。まこが持ってたかわいい指なし手袋みたいな手袋さがしたけどお店にはサイズがなかったから。香澄の手にそれを嵌める。 「Parfait,Parfaite!夜なべした甲斐があった」 「夜なべ?」 「時間なかったから。最初だけ真澄さんに教えてもらってそっから超巻きで俺が編んだ」 サイズぴったりでよかった。香澄は俺のお手製指なし手袋をじっと見ながらなんか照れてた。 はいはい今日はあざといくらいがちょうどいい、いってらっしゃい。って香澄を送り出す。マンションの合鍵を香澄から預かって、まこも一緒に見送る。 部屋に入ってベランダから下を見下ろすと香澄が出ていくのが豆粒みたいに小さく見えた。 のんびりしてたらちょっと時間ギリギリになっちゃって、香澄はサンタのケーキ食べる時間なかったから、せめてと思って出てくときにケーキに乗ってるイチゴ一個だけ香澄の口に押し込んどいた。
香澄が行っちゃってから、まこと俺で残りのケーキを食べることにした。 「包丁で綺麗に半分に切ったらサンタかトナカイか小屋のどれかは一刀両断を免れない」ってことで切り分けないで、ホールケーキを二人で無秩序にあちこちからフォークで食べ散らかしていく。 こういうのいいな、もうお腹いっぱい食べたあとだからちょっとずつ味わってゆっくり食べられる。 思い出して、ソファの上に放ってた自分のリュックの中から包みを取り出す。 「あげる」ってまこに差し出した。「クリスマスプレゼント」 あんまり予想してなかったのかまこはちょっとびっくりしたような顔してたけど、すぐに笑って「サンキュ」って受け取ってくれた。 「実はちょっと前にもうこれ買ってた、お店で見つけて、まこに似てると思って」 「これってここで開けていいやつ?」 「いいよ~」 プレゼントのつもりじゃなかったけど状態は綺麗だったから、一度洗ってブラシかけて俺が自分でクリスマスっぽくラッピングした。ぬいぐるみ。 「なんだこれ?サメ?」 包みを解いて出してみながらまこはサメをいろんな角度から見てる。 「ぬいぐるみなんていつぶりだろ…ありがと」 一応喜んでくれたみたいだ、よかった。真澄さんに似合うもの選んでたらそっちにお金かかっちゃって、まこに他にももう一品買って添える余裕なくなっちゃったから。 向かい合って床に胡座かいて座ったまま、サメをボールがわりに二人で空中に投げあってバレーみたいなキャッチボールみたいなことしながら話す。 「これどこで買ったの」 「近くの駅ビルの中にかわいいお店があったよ。そこで真澄さん…今いっしょに住んでる人にも、キリンのぬいぐるみ買った。似てたから」 「そういやこの前もぬいぐるみ見てたな」 「うん、俺そういうの好きかも。男がかわいいものとか持ってたらめっちゃディスられるから無意識にこれまであんま見ないようにしてた気がする」 「前の家ではだろ? 今はその、ますみさんって人との生活はうまくいってんの」 「うん。…。俺もタフガイになりたい」 「はい?」 まこの投げたサメが変な方向に飛んでったから俺が体伸ばして拾う。サメに顎を乗せて床にダラダラ横になって転がりながら続ける。 「真澄さん、背が高くて体しっかりしてて大人の男って感じで超かっこいい。ガチムチって感じじゃないし意識してトレーニングしたり鍛えてるってわけでもないと思うけど。いざってときにバトれる体ってすごい憧れる…。」 「言ってることは分からんでもないっつーか、俺のスポーツやってるダチの中にも似たようなこと言ってたやつはいたな。ヤバい時にはじめっから武力行使ってわけじゃないにしても」 「最終手段として手元にあるだけで精神的余裕も持てるとかさ。わかんないけど…俺チビだしやせっぽちだしな~…」 床で体伸ばしてごろごろしてたらまこにサメで顔面ボスって叩かれた。サメがハリセンみたいな使い方されてる…。 「お前、それでチビって俺の身長ディスってんの?」 しら~っとした笑みでつっこまれて、一瞬頭が停止した。慌てて訂正する。 「そういう意味じゃないって!あの、俺んち、前の家のほう、みんな背が高くて、そういう家系?多分、まこ直にぃと会ったことある?あれくらい、直にぃと同じくらいあるのが普通って感じで、俺は家の中ではずっと伸び悩んだチビ扱いされてたっていうか、実際そういうのあると思う脚やけどしてからピタッと身長伸びるの止まったし、顔もなんか童顔だし、」「わかったわかった、そーいうことね」 俺が床で手足パタパタしながら矢継ぎ早に色々言ったら、まこはなにか察したっぽい顔で俺の言葉を制したあとで言った。 「そういうとこお前の今後の課題だからな」 課題…。 …そっか…火傷痕見られた時にも似たようなこと言われた 無意識でも自己卑下してたら誰かのこと知らない間に蔑んだり傷つけたりすることになるのか… 「………ごめん…。」 俯せになって顔伏せたまま五体投地みたいなかっこうで素直に謝ったら、サメで頭ぽふぽふ優しく叩かれた。 まこに今日はこの部屋に泊まるのかって聞かれたから、「真澄さんが出かけてるから帰ってくるの家で待ってたい」って言ったら、またサメで頭ぽふぽふ叩かれた。それで、まだ夕方くらいで日は高いけど今日はここで解散することになった。
まっすぐ家に帰ってから、お風呂はいって、夕飯を作る。 真澄さんの分どうしよう…今夜はまだ帰ってこないかもしれないけど、その時は俺が真澄さんの分も全部食えばいいや。掃除機みたいな胃袋に感謝。 帰る途中で買った材料でスポンジケーキを焼いた。生クリーム大量とかベタベタしてるかんじのは、俺が一人で食べることになった場合さすがに胸焼けしそうと思って、スポンジケーキに白い粉砂糖かけて、チョコで ” Un Noël d'amour et de douceur pour une personne que j'aime de tout mon coeur.  Joyeux Noël “ って書いた。長い文章になったけど他になにもフルーツとか飾りとか乗ってないシンプルなケーキだから、本の一ページを切り取ってきたみたいでちょっとモダンでオシャレな感じになった。書体をクリスマスっぽく綺麗に丁寧に揃えたし。 あんまりフルーツとかあれこれ乗っけて味を豪華にしたら、食べないと意味ないものになっちゃうかもだしな。無理して食べなくても見てくれるだけでいいようにこんな感じにした。
夜になって、一人で夕食を食べ終えて、食器をキッチンで洗って拭いて仕舞う。真澄さんの分を容器に残して冷蔵庫に入れておく。 ケーキにはちょっとあいてるスペースに蝋燭を立ててみた。蝋燭たくさんもらったけど、誕生日じゃないんだし…と思って、考えた末に2本だけ立てた。俺と真澄さん。 ケーキには手をつけないで綺麗なまま、リビングのテーブルに蓋をかぶせて置いた。その横に上品なしっかりした作りの小箱を並べる。 小箱は真澄さんのクリスマスプレゼントに買った万年筆。俺が最初に借りたのを一本ほとんど占領してインク入れ替えながらずっと使ってるから。買うときに万年筆専門のお店に入って、ふと誠人さんが使ってたのと同じやつを見つけて値段見てみたら50万円した。やっぱあの人こっわいな…ペン一本に50万…。でももっと高いやつもごろごろあった。さすがにそこまでのは俺の所持金じゃ買えないから、そこそこの、みたいなことになったけど、デザインは真澄さんに似合うと思う。書斎の書棚に使ってあるのと同じ種の木のボディだから。 暗い室内でキリンを抱いてリビングのソファに横になる。30分くらいしてから、今夜は一応ここで寝て待ってようと思って、寝室から毛布をひっぱってくる。空調つけてるけどこのまま寝てたら風邪ひきそうだから。
まだ深夜までいかないくらいの時間に、鍵が開く音がして毛布から体を起こす。 キリン持ったままソファから立ち上がって玄関のほうをのぞいたら、真澄さんが片腕に女の子を抱えてた。 二人とも綺麗にフォーマルで揃えた格好してる。ていうかここまで全身キメてる真澄さん初めて見た。 妹さん…じゃないよな、ドレスの合わせ方そういう感じじゃないし…すごい年齢差と体格差あるけど、これってデート帰りか… 俺邪魔だな? あのケーキ二人にあげよう。ちょうどなんかそんな文言になってるし。 玄関に寄ってって出迎える。 「おかえりなさい。真澄さん、俺今夜どっか出かけてようか…?」 なんか安いラブホとかならクリスマスでも空いてるかも。一泊分くらいならまだお金あるし…急いで寝室整えなくちゃ、 「顔合わせなんだから出てっちゃ困るな」 顔合わせ? 「光さん。さっき結婚してきた」 ーーーーけ?  けっこん……… 「…………」 頭が完全に止まってたら真澄さんが抱えてる女の子…ひかるさん?…の体を俺のほうに向けて、ひかるさんに向けて続けた 「息子の絢だよ、血は繋がって無いがね」 「「息子!!」」 同じワードでビビって俺と女の子が同時に大きな声出した 「うわびっくりした」 「むすこ!! 真澄にむすこがいた!」 女の子は真澄さんの腕から身を乗り出して俺を見ようとする。落ちそうになって真澄さんに抱え直されてた。…ボリュームのあるドレスの布に隠れて見えないけどもしかして足かどこか怪我してる…? 「俺息子だったんだ…」 ぽかんとしたまま呟いたら真澄さんは靴脱いで部屋に上がりながら言った。 「息ぴったりじゃねえか。心配なさそうだな」 …この場合って俺のポジション���んになるんだ…? 俺の方がたぶんこの子より歳上だから…いやそれでもこの子のほうが母親…? 妹みたいに接し…いや、真澄さんの奥さんだから…えーと… 俺、もうこの家でてかなきゃいけないのかな… 色々考えながらもリビングのテーブルからトレイごとケーキを持ち上げて、二人の目の前でパカッと蓋をとる。 「ぼくが心から愛しているひとに、愛と優しさのクリスマスを。メリークリスマス。…って意味。」 ケーキに書いたフランス語を読んだ。真澄さんは読めるけど、この子が読めるか分かんないから。 フランス人とか俺の素ならこれくらいの言い方は普通だけど真澄さんに向けてだったから、最悪ウケが狙えればいいくらいのつもりで書いた、奇しくもシチュエーションぴったりになったような。 真澄さんはケーキ見ながら「すごいね」ってひとりごとみたいに言ったと思ったら、こう 続けた、綺麗な発音で 「Dans vos livres, vous montrez que dans toute vie, me^me la plus mise'rable, il y a de quoi se re'jouir, de quoi rire, de quoi aimer.」 「ーーーー……」 目からぼたぼた涙でてきた なにかフランス語で返そうと思ったんだけど洒落た言葉なにも浮かばなかった 通じてなくていいと思ってたんだ、この人に ケーキとかも、こんなのは全部俺が一人で勝手にやってることなんだからって 万年筆も、キリンも、食事も、一つ一つの言葉も、俺が自分について語ることも、俺が自由に生きることも、この人のしたことがなにか報われるように この人の幸せを願いながらやってても 押しつけがましくならないように最低限のことしか言葉にしなかった 俺がただ好きで自由にやってることが恩返しになるからって 説明しなくてもバレてたかもしれない、それでも俺が言葉にしたらなにか返さなきゃいけなくなる だからいつも黙ってた 気遣いのつもりで 鬱陶しいやつだって思われそうなことを避けてた もういつ切り捨てられてもいいような向き合い方はできなかったから でもちゃんと通じてたし、受け取ってもらえてた 「なかないで」 真澄さんの腕の中から女の子が手を伸ばして俺の頭をそっと撫でてきた そのまま首に細い腕を回されてぎゅっと首元に抱きつかれる 小さな手が俺の背中をあやすみたいに撫でた 「さんにんで暮らそうね、あや」 真澄にいじめられたときはわたしが真澄をこらしめてあげる、って 真剣な顔して言われた 俺はいっぱい余ってた蝋燭の中から一本とってきて、ケーキに二本刺してたのの真ん中にもう一本足した
そのあと三本の蝋燭に俺がマッチで火を灯して、真澄さんにソファの上に降ろされたひかるさんがそれを吹き消した 俺とひかるさんはこっちにきた煙で咽せそうになって煙を避けながら笑った 真澄さんはキリンみたいに静かな優しい瞳で俺たちを見てた
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戦闘衣装詳細(リンク紹介)
鉄腕バーディーDECODEより。
※オリキャラの紹介ではありません
独り言・・ この主人公キャラの戦闘服、個人的に��番好きなタイプ。同時に知っている中で最も複雑な衣装とも思った。 皮膚と装甲が一体化するタイプで厳密には服では無いのかも… 手の甲に装甲有るのに対し掌は露出している。人差指と小指の甲側の装甲が手の装甲と繋がってないのがポイント。 主人公の元ネタが初代ウルトラマンで、デザインそのものが宇宙人寄りに突出している。 戦闘服の装甲はウルトラマンの体表をイメージしているとか。装甲パーツが全体的に繋がってなく、服としての形状ではない。 本当にウルトラマンみたいな装甲をしている。 この作品自分がアニメという物に本格入門したきっかけに成った作品だから思い入れ深い。 2期のオープニング、kiseki (NIRGILIS)のインパクトが大きかった。 多分人生で初めてアクション多様の動き回る女子という物をこの時見た。
跳ねる、飛ぶ、走る、単純な動作一つずつに魅入られる。
衣装の装甲が反応装甲(物質を反発する効果)の様な性質をもっていて、地面に足を強く付けたり走ると、地面との接触時に強烈な摩擦による火花が出る。だからバーディーがヒールを地面に擦らせるだけで火花が出、それがとても綺麗に思えた。アクションを起こす度に眩い閃光を出す演出はバーディー独特の演出。
この衣装の真価は動き回る時にある。 https://www.youtube.com/watch?v=Fq7Zh_kpOGg
https://www.youtube.com/watch?v=zfw9DRG5K6o このRemixももう何十年も聴き続けてる。アップロードされた日日を思うと懐かしさを思い出す。
鉄腕バーディー自体知っている人が少なすぎる点悲しい。
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