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#ひさしぶりに観て大号泣した華金
fukagawakaidan · 1 month
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「お化けの棲家」に登場したお化け。
1、骨女〔ほねおんな〕 鳥山石燕の「今昔画 図続百鬼』に骨だけ の女として描かれ、 【これは御伽ぼうこうに見えたる年ふる女の骸骨、牡丹の灯籠を携へ、人間の交をなせし形にして、もとは剪灯新話のうちに牡丹灯記とてあり】と記されている。石燕が描いた骨女 は、「伽婢子」「牡丹灯籠」に出てくる女つゆの亡霊、弥子(三遊亭円朝の「怪談牡丹灯 籠」ではお露にあたる)のことをいっている。これとは別物だと思うが、「東北怪談の旅」にも骨女という妖怪がある。 安永7年~8年(1778年~1779年)の青森に現れたもので、盆の晩、骸骨女がカタリカタリと音をたてて町中を歩いたという。この骨女は、生前は醜いといわれていたが、 死んでからの骸骨の容姿が優れているので、 人々に見せるために出歩くのだという。魚の骨をしゃぶることを好み、高僧に出会うと崩れ落ちてしまうという。 「鳥山石燕 画図百鬼夜行」高田衛監修・稲 田篤信・田中直日編 「東北怪談の旅」山田 野理夫
2、堀田様のお人形
以下の話が伝わっている。 「佐賀町に堀田様の下屋敷があって、うちの先祖はそこの出入りだったの。それで、先代のおばあさんが堀田様から“金太郎”の人形を拝領になって「赤ちゃん、赤ちゃん」といわれていたんだけど、この人形に魂が入っちゃって。関東大震災のとき、人形と一緒に逃げたら箱の中であちこちぶつけてこぶができたから、修復してもらうのに鼠屋っていう人形師に預けたんだけど少しすると修復されずに返ってきた。聞くと「夜になると人形が夜泣きしてまずいんです」と言われた。 (『古老が語る江東区のよもやま話』所収)
3、ハサミの付喪神(つくもがみ)
九十九神とも表記される。室町時代に描かれた「付喪神絵巻」には、「陰陽雑記云器物百年を経て化して精霊を得てよく人を訛かす、是を付喪神と号といへり」 という巻頭の文がある。 煤祓いで捨てられた器物が妖怪となり、物を粗末に扱う人間に対して仕返しをするという内容だ が、古来日本では、器物も歳月を経ると、怪しい能力を持つと考えられていた。 民俗資料にも擂り粉木(すりこぎ)や杓文字、枕や蒲団といった器物や道具が化けた話しがある。それらは付喪神とよばれていないが、基本的な考え方は「付喪神絵巻」にあるようなことと同じで あろう。 (吉川観方『絵画に見えたる妖怪』)
4、五徳猫(ごとくねこ)  五徳猫は鳥山石燕「画図百器徒然袋」に尾が2つに分かれた猫又の姿として描かれており、「七徳の舞をふたつわすれて、五徳の官者と言いしためしも あれば、この猫もいかなることをか忘れけんと、夢の中におもひぬ」とある。鳥山石燕「画図百器徒然袋」の解説によれば、その姿は室町期の伝・土佐光信画「百鬼夜行絵巻」に描かれた五徳猫を頭に 乗せた妖怪をモデルとし、内容は「徒然袋」にある「平家物語」の 作者といわれる信濃前司行長にまつわる話をもとにしているとある。行長は学識ある人物だったが、七徳の舞という、唐の太宗の武の七徳に基づく舞のうち、2つを忘れてしまったために、五徳の冠者のあだ名がつけられた。そのため、世に嫌気がさし、隠れて生活するようになったという。五徳猫はこのエピソードと、囲炉裏にある五徳(薬缶などを載せる台)を引っ掛けて創作された 妖怪なのであろう。ちなみに土佐光信画「百鬼夜行絵巻」に描かれている妖怪は、手には火吹き 竹を持っているが、猫の妖怪ではなさそうである。 ( 高田衛監修/稲田篤信・田中直日編『鳥山石燕画図百鬼夜行』)→鳥山石燕『百器徒然袋』より 「五徳猫」
5、のっぺらぼー 設置予定場所:梅の井 柳下 永代の辺りで人魂を見たという古老の話しです。その他にも、背中からおんぶされて、みたら三つ目 小僧だったり、渋沢倉庫の横の河岸の辺りでのっぺらぼーを見たという話しが残っています。 (『古老が語る江東区のよもやま話』所収) のっぺらぼーは、顔になにもない卵のような顔の妖怪。特に小泉八雲『怪談』にある、ムジナの話が良く知られている。ある男が東京赤坂の紀国坂で目鼻口のない女に出会い、驚き逃げて蕎麦 屋台の主人に話すと、その顔も同じだったという話。その顔も同じだったという話。
6、アマビエアマビエ 弘化3年(1846年) 4月中旬と記 された瓦版に書かれているもの。 肥後国(熊本県)の海中に毎夜光るものが あるので、ある役人が行ってみたところ、ア マビエと名乗る化け物が現れて、「当年より はやりやまいはや 6ヵ月は豊作となるが、もし流行病が流行ったら人々に私の写しを見せるように」といって、再び海中に没したという。この瓦版には、髪の毛が長く、くちばしを持った人魚のようなアマビエの姿が描かれ、肥後の役人が写したとある。 湯本豪一の「明治妖怪新聞」によれば、アマピエはアマピコのことではないかという。 アマピコは瓦版や絵入り新聞に見える妖怪で、 あま彦、天彦、天日子などと書かれる。件やクダ部、神社姫といった、病気や豊凶の予言をし、その絵姿を持っていれば難から逃れられるという妖怪とほぼ同じものといえる。 アマビコの記事を別の瓦版に写す際、間違 えてアマビエと記してしまったのだというのが湯本説である。 『明治妖怪新聞」湯本豪一「『妖怪展 現代に 蘇る百鬼夜行』川崎市市民ミュージアム編
7、かさばけ(傘お化け) 設置予定場所:多田屋の入口作品です。 一つ目あるいは、二つ目がついた傘から2本の腕が伸び、一本足でピョンピョン跳ねまわる傘の化け物とされる。よく知られた妖怪のわりには戯画などに見えるくらいで、実際に現れたなどの記録はないようである。(阿部主計『妖怪学入門』)歌川芳員「百種怪談妖物双六」に描 かれている傘の妖怪「一本足」
8、猫股(ねこまた)  猫股は化け猫で、尻尾が二股になるまで、齢を経た猫 で、さまざまな怪しいふるまいをすると恐れられた。人をあざむき、人を食らうともいわれる。飼い猫が年をとり、猫股になるため、猫を長く飼うもので はないとか、齢を経た飼い猫は家を離れて山に入り、猫股 になるなどと、各地に俗信がある。 このような猫の持つ妖力から、歌舞伎ではお騒動と化け猫をからめて「猫騒動もの」のジャンルがあり、
「岡崎の猫」「鍋島の猫」「有馬の猫」が三代化け猫とされる。
9、毛羽毛現(けうけげん) 設置予定場所:相模屋の庭 鳥山石燕の「今昔百鬼拾遺」に毛むくじゃらの妖怪として描かれた もので、 「毛羽毛現は惣身に毛生ひたる事毛女のごとくなればかくいふ か。或いは希有希現とかきて、ある事まれに、見る事まれなれば なりとぞ」とある。毛女とは中国の仙女のことで、華陰の山中(中国陝西省陰県の西 獄華山)に住み、自ら語るところによると、もともとは秦が亡んだため 山に逃げ込んだ。そのとき、谷春という道士に出会い、松葉を食すことを教わって、遂に寒さも飢えも感じなくなり、身は空を飛ぶほど軽くなった。すでに170余年経つなどと「列仙伝」にある。この毛羽毛現は家の周辺でじめじめした場所に現れる妖怪とされるが、実際は石燕の創作妖 怪のようである。 (高田衛監修/稲田篤信・田中直日編『鳥山石燕 画図百鬼夜行』→鳥山石燕「今昔百鬼 拾遺」より「毛羽毛現」
10、河童(かっぱ) 設置予定場所:猪牙船 ◇ 河童(『耳袋』) 江戸時代、仙台藩の蔵屋敷に近い仙台堀には河童が出たと言われています。これは、子どもたちが、 なんの前触れもなく掘割におちてしまう事が続き探索したところ、泥の中から河童が出てきたというも のです。その河童は、仙台藩の人により塩漬けにして屋敷に保管したそうです。 ◇ 河童、深川で捕獲される「河童・川太郎図」/国立歴史民俗博物館蔵 深川木場で捕獲された河童。河童は川や沼を住処とする妖怪で、人を水中に引き込む等の悪事を働く 反面、水の恵みをもたらす霊力の持ち主として畏怖されていた ◇ 河童の伝説(『江戸深川情緒の研究』) 安永年間(1772~1781) 深川入船町であった話しです。ある男が水浴びをしていると、河童がその男 を捕えようとしました。しかし、男はとても強力だったので逆に河童を捕えて陸に引き上げ三十三間堂の前で殴り殺そうとしたところ、通りかかった人々が河童を助けました。それ以来、深川では河童が人 間を捕らなくなったといいます。→妖怪画で知られる鳥山石燕による河童
11、白容商〔しろうねり〕
鳥山石燕「画図百器 徒然袋」に描かれ、【白うるりは徒然のならいなるよし。この白うねりはふるき布巾のばけたるものなれども、外にならいもやはべると、夢のうちにおもひぬ】 と解説されている。白うるりとは、吉田兼好の『徒然草」第六十段に登場する、 芋頭(いもがしら)が異常に好きな坊主のあだ名である。  この白うるりという名前に倣って、布雑巾 の化けたものを白容裔(しろうねり)と名づけたといっているので、つまりは石燕の創作妖怪であろう。古い雑巾などが化けて人を襲う、などの説 明がされることがあるが、これは山田野理夫 の『東北怪談の旅』にある古雑巾の妖怪を白 容裔の話として使ったにすぎない。 『鳥山石燕画図百鬼夜行』高田衛監修・稲 田篤信・田中直日編
12、轆轤首〔ろくろくび〕
抜け首、飛頭蛮とも つな いう。身体から首が完全に分離して活動する ものと、細紐のような首で身体と頭が繋がっているものの二形態があるようである。 日本の文献には江戸時代から多くみえはじ め、『古今百物語評判』『太平百物語』『新説 百物語」などの怪談集や、『甲子夜話』『耳 囊」「北窓瑣談」「蕉斎筆記』『閑田耕筆』と いった随筆の他、石燕の『画図百鬼夜行」に 代表される妖怪画にも多く描かれた。 一般的な轆轤首の話としては、夜中に首が 抜け出たところを誰かに目撃されたとする内 容がほとんどで、下働きの女や遊女、女房、 娘などと女性である場合が多い。 男の轆轤首は「蕉斎筆記』にみえる。 ある夜、増上寺の和尚の胸の辺りに人の 首が来たので、そのまま取って投げつけると、 どこかへいってしまった。翌朝、気分が悪いと訴えて寝ていた下総出 身の下働きの男が、昼過ぎに起き出して、和 尚に暇を乞うた。わけ その理由を問えば、「昨夜お部屋に首が参りませんでしたか」と妙なことを訊く。確か に来たと答えると、「私には抜け首の病があります。昨日、手水鉢に水を入れるのが遅い とお叱りを受けましたが、そんなにお叱りに なることもないのにと思っていると、 夜中に首が抜けてしまったのです」 といって、これ以上は奉公に差支えがあるからと里に帰って しまった。 下総国にはこの病が多いそうだと、 「蕉斎筆記』は記している。  轆轤首を飛頭蛮と表記する文献があるが、 これはもともと中国由来のものである。「和漢三才図会』では、『三才図会」「南方異 物誌」「太平広記」「搜神記』といった中国の 書籍を引いて、飛頭蛮が大闍波国(ジャワ) や嶺南(広東、広西、ベトナム)、竜城(熱 洞省朝陽県の西南の地)の西南に出没したことを述べている。昼間は人間と変わらな��が、夜になると首 が分離し、耳を翼にして飛び回る。虫、蟹、 ミミズなどを捕食して、朝になると元通りの 身体になる。この種族は首の周囲に赤い糸のような傷跡がある、などの特徴を記している。中国南部や東南アジアには、古くから首だけの妖怪が伝わっており、マレーシアのポン ティアナやペナンガルなどは、現在でもその 存在が信じられている。 日本の轆轤首は、こうした中国、東南アジ アの妖怪がその原型になっているようである。 また、離魂病とでもいうのだろうか、睡眠中に魂が抜け出てしまう怪異譚がある。例えば「曽呂利物語」に「女の妄念迷い歩 <事」という話がある。ある女の魂が睡眠中に身体から抜け出て、 野外で鶏になったり女の首になったりしているところを旅人に目撃される。旅人は刀を抜いてその首を追いかけていく と、首はある家に入っていく。すると、その家から女房らしき声が聞こえ、 「ああ恐ろしい夢を見た。刀を抜いた男が追 いかけてきて、家まで逃げてきたところで目 が醒めた」などといっていたという話である。これの類話は現代の民俗資料にも見え、抜け出た魂は火の玉や首となって目撃されている。先に紹介した「蕉斎筆記』の男の轆轤首 も、これと同じように遊離する魂ということ で説明ができるだろう。 轆轤首という妖怪は、中国や東南アジア由 来の首の妖怪や、離魂病の怪異譚、見世物に 出た作りものの轆轤首などが影響しあって、 日本独自の妖怪となっていったようである。 【和漢三才図会』寺島良安編・島田勇雄・竹 島淳夫・樋口元巳訳注 『江戸怪談集(中)』 高田衛編/校注『妖異博物館』柴田宵曲 『随筆辞典奇談異聞編」柴田宵曲編 『日本 怪談集 妖怪篇』今野円輔編著 『大語園』巌谷小波編
13、加牟波理入道〔がんばりにゅうどう〕
雁婆梨入道、眼張入道とも書く。便所の妖怪。 鳥山石燕の「画図百鬼夜行」には、便所の台があるよう 脇で口から鳥を吐く入道姿の妖怪として描かれており、【大晦日の夜、厠にゆきて「がんばり入道郭公」と唱ふれば、妖怪を見さるよし、世俗のしる所也。もろこしにては厠 神名を郭登といへり。これ遊天飛騎大殺将軍 とて、人に禍福をあたふと云。郭登郭公同日 は龕のの談なるべし】と解説されている。 松浦静山の『甲子夜話」では雁婆梨入道という字を当て、厠でこの名を唱えると下から入道の頭が現れ、 その頭を取って左の袖に入れてまたとりだすと 頭は小判に変化するなどの記述がある。 「がんばり入道ホトトギス」と唱えると怪異 にあわないというのは、江戸時代にいわれた 俗信だが、この呪文はよい効果を生む(前述 ことわざわざわい ●小判を得る話を含め)場合と、禍をよぶ 場合があるようで、「諺苑」には、大晦日に この話を思い出せば不祥なりと書かれている。 また、石燕は郭公と書いてホトトギスと読ませているが、これは江戸時代では郭公とホト トギスが混同されていたことによる。 ホトトギスと便所との関係は中国由来のようで、「荊楚歲時記』にその記述が見える。 ホトトギスの初鳴きを一番最初に聞いたもの は別離することになるとか、その声を真似すると吐血するなどといったことが記されており、厠に入ってこの声を聞くと、不祥事が起 こるとある。これを避けるには、犬の声を出 して答えればよいとあるが、なぜかこの部分 だけは日本では広まらなかったようである。 『鳥山石燕画図百鬼夜行』高田衛監修・稲 田篤信・田中直日編 『江戸文学俗信辞典』 石川一郎編『史実と伝説の間」李家正文
14、三つ目小僧
顔に三つの目を持つ童子姿の妖怪。 長野県東筑摩郡教育委員会による調査資料に名は見られるが、資料中には名前があるのみ で解説は無く、どのような妖怪かは詳細に語られていない。 東京の下谷にあった高厳寺という寺では、タヌキが三つ目小僧に化けて現れたという。このタヌ キは本来、百年以上前の修行熱心な和尚が境内に住まわせて寵愛していたために寺に住みついたものだが、それ以来、寺を汚したり荒らしたりする者に対しては妖怪となって現れるようになり、体の大きさを変えたり提灯を明滅させて人を脅したり、人を溝に放り込んだりしたので、人はこれ を高厳寺小僧と呼んで恐れたという。困った寺は、このタヌキを小僧稲荷として境内に祀った。この寺は現存せず、小僧稲荷は巣鴨町に移転している。 また、本所七不思議の一つ・置行堀の近くに住んでいたタヌキが三つ目小僧に化けて人を脅したという言い伝えもある。日野巌・日野綏彦 著「日本妖怪変化語彙」、村上健司校訂 編『動物妖怪譚』 下、中央公論新社〈中公文庫〉、2006年、301頁。 佐藤隆三『江戸伝説』坂本書店、1926年、79-81頁。 『江戸伝説』、147-148頁。
15、双頭の蛇 設置予定場所:水茶屋 「兎園小説」には、「両頭蛇」として以下の内容が著してある。 「文政7年(1824)11月24日、本所竪川通りの町方掛り浚場所で、卯之助という男性 が両頭の蛇を捕まえた。長さは3尺あったという。」
文政7年(1824)11月24日、一の橋より二十町程東よりの川(竪川、現墨田区)で、三尺程の 「両頭之蛇」がかかったと言う話です。詳細な図解が示されています。 (曲亭馬琴「兎園小説」所収『兎園小説』(屋代弘賢編『弘賢随筆』所収) 滝沢馬琴他編 文政8年(1825) 国立公文書館蔵
16、深川心行寺の泣き茶釜
文福茶釜は「狸」が茶釜に化けて、和尚に恩返しをする昔話でよく知られています。群馬県館林の茂 林寺の話が有名ですが、深川2丁目の心行寺にも文福茶釜が存在したといいます。『新撰東京名所図会』 の心行寺の記述には「什宝には、狩野春湖筆涅槃像一幅 ―及び文福茶釜(泣茶釜と称す)とあり」 とあります。また、小説家の泉鏡花『深川浅景』の中で、この茶釜を紹介しています。残念ながら、関 東大震災(1923年)で泣茶釜は、他の什物とともに焼失してしまい、文福茶釜(泣き茶釜)という狸が 化けたという同名が残るのみです。鳥山石燕「今昔百鬼拾遺」には、館林の茂森寺(もりんじ)に伝わる茶釜の話があります。いくら湯を 汲んでも尽きず、福を分け与える釜といわれています。 【主な参考資料】村上健司 編著/水木しげる 画『日本妖怪大辞典』(角川出版)
17、家鳴(やなり) 設置予定場所:大吉、松次郎の家の下)  家鳴りは鳥山石燕の「画図百鬼夜行」に描かれたものだが、(石燕は鳴屋と表記)、とくに解説はつけられて いない。石燕はかなりの数の妖怪を創作しているが、初期の 「画図百鬼夜行」では、過去の怪談本や民間でいう妖怪などを選んで描いており、家鳴りも巷(ちまた)に知られた妖怪だったようである。 昔は何でもないのに突然家が軋むことがあると、家鳴りのような妖怪のしわざだと考えたようである。小泉八雲は「化け物の歌」の中で、「ヤナリといふ語の・・・それは地震中、家屋の震動 する音を意味するとだけ我々に語って・・・その薄気 味悪い意義を近時の字書は無視して居る。しかし此語 はもと化け物が動かす家の震動の音を意味して居た もので、眼には見えぬ、その震動者も亦(また) ヤナ リと呼んで居たのである。判然たる原因無くして或る 家が夜中震ひ軋り唸ると、超自然な悪心が外から揺り動かすのだと想像してゐたものである」と延べ、「狂歌百物語」に記載された「床の間に活けし立ち木も倒れけりやなりに山の動く掛軸」という歌を紹介している。 (高田衛監修/稲田篤信・田中直日編『鳥山石燕画図百鬼夜行』、『小泉八雲全集』第7巻)
18、しょうけら 設置予定場所:おしづの家の屋根 鳥山石燕「画図百鬼夜行」に、天井の明かり取り窓を覗く妖怪として描かれているもの。石燕による解説はないが、 ショウケラは庚申(こうしん) 信仰に関係したものといわれる。 庚申信仰は道教の三尸(さんし)説がもとにあるといわ れ、60日ごとに巡ってくる庚申の夜に、寝ている人間の身 体から三尸虫(頭と胸、臍の下にいるとされる)が抜け出し、天に昇って天帝にその人の罪科を告げる。この報告により天帝は人の命を奪うと信じられ、対策とし て、庚申の日は眠らずに夜を明かし、三尸虫を体外に出さ ないようにした。また、これによる害を防ぐために「ショウケラはわたとてまたか我宿へねぬぞねたかぞねたかぞ ねぬば」との呪文も伝わっている。 石燕の描いたショウケラは、この庚申の日に現れる鬼、ということがいえるようである。
19、蔵の大足
御手洗主計という旗本の屋敷に現れた、長さ3尺程(約9m)の大足。(「やまと新聞」明治20年4月29日より)
20、お岩ちょうちん
四世鶴屋南北の代表作である「東海道四谷怪談」のお岩 を、葛飾北斎は「百物語シリーズ」の中で破れ提灯にお岩が 宿る斬新な構図で描いている。北斎は同シリーズで、当時の 怪談話のもう一人のヒロインである「番町皿屋敷のお菊」も描 く。「東海道四谷怪談」は、四世南北が暮らし、没した深川を舞台にした生世話物(きぜわもの)の最高傑作。文政8年(1825) 7月中村座初演。深川に住んだ七代目市川團十郎が民谷伊 右衛門を、三代目尾上菊五郎がお岩を演じた。そのストーリーは当時評判だった実話を南北が取材して描 いている。男女が戸板にくくられて神田川に流された話、また 砂村隠亡堀に流れついた心中物の話など。「砂村隠亡堀の場」、「深川三角屋敷の場」など、「四谷怪 談」の中で深川は重要な舞台として登場する。
21、管狐(くだぎつね)  長野県を中心にした中部地方に多く分布し、東海、関東南部、東北の一部でいう憑き物。関東 南部、つまり千葉県や神奈川県以外の土地は、オサキ狐の勢力になるようである。管狐は鼬(いたち)と鼠(ねずみ)の中間くらいの小動物で、名前の通り、竹筒に入ってしまうほどの大きさだという。あるいはマッチ箱に入るほどの大きさで、75匹に増える動物などとも伝わる個人に憑くこともあるが、それよりも家に憑くものとしての伝承が多い。管狐が憑いた家は管屋(くだや)とか管使いとかいわれ、多くの場合は「家に憑いた」ではなく「家で飼っている」という表現をしている。管狐を飼うと金持ちになるといった伝承はほとんどの土地でいわれることで、これは管 狐を使って他家から金や品物を集めているからだなどという。また、一旦は裕福になるが、管狐は 大食漢で、しかも75匹にも増えるのでやがては食いつぶされるといわれている。 同じ狐の憑き物でも、オサキなどは、家の主人が意図しなくても、狐が勝手に行動して金品を集 めたり、他人を病気にするといった特徴があるが、管狐の場合は使う者の意図によって行動すると考えられているようである。もともと管狐は山伏が使う動物とされ、修行を終えた山伏が、金峰山 (きんぷさん)や大峰(おおみね)といった、山伏に官位を出す山から授かるものだという。山伏は それを竹筒の中で飼育し、管狐の能力を使うことで不思議な術を行った。 管狐は食事を与えると、人の心の中や考えていることを悟って飼い主に知らせ、また、飼い主の 命令で人に取り憑き、病気にしたりするのである。このような山伏は狐使いと呼ばれ、自在に狐を 使役すると思われていた。しかし、管狐の扱いは難しく、いったん竹筒から抜け出た狐を再び元に 戻すのさえ容易ではないという。狐使いが死んで、飼い主不在となった管狐は、やがて関東の狐の親分のお膝元である王子村(東京都北区)に棲むといわれた。主をなくした管狐は、命令する者がいないので、人に憑くことはないという。 (石塚尊俊『日本の憑きもの』、桜井徳太郎編『民間信仰辞典』、金子準二編著『日本狐憑史資料 集成』)
22、かいなで 設置予定場所: 長屋の厠 京都府でいう妖怪。カイナゼともいう。節分の夜に便所へ行くとカイナデに撫でられるといい、これを避けるには、「赤い紙やろうか、白い紙やろうか」という呪文を唱えればよいという。 昭和17年(1942年)頃の大阪市立木川小学校では、女子便所に入ると、どこからともなく「赤い 紙やろか、白い紙やろか」と声が聞こえてくる。返事をしなければ何事もないが、返事をすると、尻を舐められたり撫でられたりするという怪談があった��いう。いわゆる学校の怪談というものだが、 類話は各地に見られる。カイナデのような家庭内でいわれた怪異が、学校という公共の場に持ち込まれたものと思われる。普通は夜の学校の便所を使うことはないだろうから、節分の夜という条件が消失してしまったのだろう。 しかし、この節分の夜ということは、実に重要なキーワードなのである。節分の夜とは、古くは年越しの意味があり、年越しに便所神を祭るという風習は各地に見ることができる。その起源は中国に求められるようで、中国には、紫姑神(しこじん)という便所神の由来を説く次のような伝説がある。 寿陽県の李景という県知事が、何媚(かび) (何麗卿(かれいきょう)とも)という女性を迎えたが、 本妻がそれを妬み、旧暦正月 15 日に便所で何媚を殺害した。やがて便所で怪異が起こるようになり、それをきっかけに本妻の犯行が明るみに出た。後に、何媚を哀れんだ人々は、正月に何媚を便所の神として祭祀するようになったという(この紫姑神は日本の便所神だけではなく、花子さんや紫婆(むらさきばばあ)などの学校の怪談に登場する妖怪にも影響を与えている。) 紫姑神だけを日本の便所神のルーツとするのは安易だが、影響を受けていることは確かであろう。このような便所神祭祀の意味が忘れられ、その記憶の断片化が進むと、カイナデのような妖怪が生まれてくるようである。 新潟県柏崎では、大晦日に便所神の祭りを行うが、便所に上げた灯明がともっている間は決して便所に入ってはいけないといわれる。このケースは便所神に対する信仰がまだ生きているが、便所神の存在が忘れられた例が山田野理夫『怪談の世界』に見える。同書では、便所の中で「神くれ神くれ」と女の声がしたときは、理由は分からなくとも「正月までまだ遠い」と答えればよいという。便所神は正月に祀るものという断片的記憶が、妖怪として伝えられたものといえる。また、「赤い紙やろうか、白い紙やろうか」という呪文も、便所神の祭りの際に行われた行為の名残を伝えて いる。便所神の祭りで紙製の人形を供える土地は多く、茨城県真壁郡では青と赤、あるいは白と赤の 男女の紙人形を便所に供えるという。つまり、カイナデの怪異に遭遇しないために「赤い紙やろう か、白い紙やろうか」と唱えるのは、この供え物を意味していると思われるのである。本来は神様に供えるという行為なのに、「赤とか白の紙をやるから、怪しいふるまいをするなよ」というように変化してしまったのではないだろうか。さらに、学校の怪談で語られる便所の怪異では、妖怪化した便所神のほうから、「赤い紙やろうか、白い紙やろうか」とか「青い紙やろうか、赤い紙やろうか」というようになり、より妖怪化が進ん でいったようである。こうしてみると、近年の小学生は古い信仰の断片を口コミで伝え残しているともいえる。 島根県出雲の佐太神社や出雲大社では、出雲に集まった神々を送り出す神事をカラサデという が、氏子がこの日の夜に便所に入ると、カラサデ婆あるいはカラサデ爺に尻を撫でられるという伝 承がある。このカラサデ婆というものがどのようなものか詳細は不明だが、カイナデと何か関係があるのかもしれない。 (民俗学研究所編『綜合日本民俗語彙』、大塚民俗学会編『日本民俗学事典』、『民間伝承』通巻 173号(川端豊彦「厠神とタカガミと」)ほか)
23、木まくら 展示予定場所:政助の布団の上 江東区富岡にあった三十三間堂の側の家に住んだ医師が病気になり、元凶を探した所 黒く汚れた木枕が出た。その枕を焼くと、死体を焼く匂いがして、人を焼くのと同じ時間がかかったという。 (『古老が語る江東区のよもやま話』所収)
24、油赤子〔あぶらあかご〕鳥山石燕の『今昔 画図続百鬼』に描かれた妖怪。【近江国大津 の八町に、玉のごとくの火飛行する事あり。土人云「むかし志賀の里に油うるものあり。 夜毎に大津辻の地蔵の油をぬすみけるが、その者死て魂魄炎となりて、今に迷いの火となれる」とぞ。しからば油をなむる赤子は此ものの再生せしにや】と記されている。 石燕が引いている【むかし志賀(滋賀) の】の部分は、「諸国里人談』や『本朝故事 因縁集」にある油盗みの火のことである。油盗みの火とは、昔、夜毎に大津辻の地蔵 の油を盗んで売っていた油売りがいたが、死 後は火の玉となり、近江大津(滋賀県大津 市)の八町を縦横に飛行してまわったという もの。石燕はこの怪火をヒントに、油を嘗める赤ん坊を創作したようである。 『鳥山石燕画図百鬼夜行』高田衛監修・稲 田篤信・田中直日編 『一冊で日本怪異文学 100冊を読む」檜谷昭彦監修『日本随筆大成編集部編
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3 notes · View notes
kachoushi · 5 months
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各地句会報
花鳥誌 令和6年5月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和5年2月1日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
立春を待たずに友は旅立ちし 喜代子 習はしの鰈供へる初天神 由季子 在さらば百寿の母と春を待つ 同 春遅々と言へども今日の日差しかな 都 橋桁に渦を巻きつつ雪解水 同 盆梅の一輪ごとにときめきぬ 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月3日 零の会 坊城俊樹選 特選句
飴切りの音高らかに春を待つ 和子 風船消ゆ宝珠の上の青空へ 慶月 天を突く手が手が福豆を欲す 光子 葬頭河の婆万年を寒く座す 光子 飴切りのビートを刻み追儺の日 いづみ 虚無なるは節分の達磨の眼 緋路 老いてなほ鬼をやらふといふことを 千種 恵方向く沓の爪先光らせて 光子 とんがらし売る正面に福豆も 和子 錫杖をつき仏性は春を待つ 小鳥
岡田順子選 特選句
厄落し葬頭河婆をねんごろに はるか 柊挿す住吉屋にも勝手口 眞理子 豆を打つ墨染のぞく腕つぷし 千種 奪衣婆の春とて闇の中笑ふ 俊樹 亀鳴けば八角五重の塔軋む 俊樹 節分や赤い屋台に赤い香具師 緋路 錫􄼺の音待春の鼓膜にも 緋路 飴切りのトントコトンに地虫出づ 風頭
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月3日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
ものゝふの声は怒涛に実朝忌 かおり 実朝忌由比のとどろきのみ残る 睦子 久女忌の空は火色にゆふぐれて かおり やはらかな風をスケッチ春を待つ 成子 実朝の忌あり五山の揺るぎなし 美穂 歌詠みは嘘がお上手実朝忌 たかし 死せし魚白くかたどり寒月光 かおり 実朝忌早き目覚めの谷戸十戸 久美子 寒月や薄墨となるパールピアス かおり 寒月に壁の落書のそゝり立つ 同 ふはとキスこの梅が香をわたくしす 美穂 昃れば古色をつくす蓮の骨 睦子 寒禽の過り裸婦像歪みたる かおり 人呑みし海ごつごつと寒の雨 朝子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月9日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
両の手をあふるるあくび山笑ふ 美智子 春浅し絵馬結ふ紐のからくれなゐ 都 鰐口に心願ありて涅槃西風 宇太郎 柊挿す一人暮しに負けまじと 悦子 寒晴や日頃の憂さをみな空へ 佐代子 師の苦言心にとめて初硯 すみ子 この町を砕かんばかり月冴ゆる 都
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月10日 枡形句会
春菊をどさつと鍋に入れ仕上ぐ 白陶 落ちる時知りたるやうに紅椿 三無 装ひは少し明るめ寒明ける 和代 一品は底の春菊夕餉とす 多美女 中子師の縁の作詞冬の能登 百合子
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令和5年2月11日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
料峭の石橋渡る音響く 三無 苔厚き老杉の根に残る雪 あき子 羽広げ鴨の背にぶく薄光り のりこ 春まだき耀へる日の風を連れ 三無 吟行や二月の空は青淡き 和魚 春めきて日向の土の柔らかく 三無 春の陽を川面に溜めてゆく流れ 貴薫
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月12日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
古暦焚くパリの下町も焚く 昭子 豆撒や内なる鬼を宥めつつ みす枝 落日にして寒菊の色深し 世詩明 被災地の家もひれ伏し虎落笛 ただし 裸婦像の息づく如く雪の果 世詩明 雪吊の縄にも疲れ見えにけり ��美子 ありし日の娘を偲び雛飾る みす枝 それぞれの何か秘めたる卒業子 世詩明 今生の山河に満つる初明り 時江 九頭竜の河口に余寒残しをり 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月13日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
春立つや電車もステップ踏み走る 紀子 薄氷を横目に見つつ急く朝 裕子 商店街バレンタインの日の匂ひ 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月13日 萩花鳥会
白梅と紅梅狭庭にうらうらと 祐子 熱燗で泣けたあの唄亜紀絶唱 健雄 如月の青空のこころ乗り移る 俊文 春の霜とぎ汁そつと庭に撒き ゆかり うすらひを踏むが如くの孫受験 恒雄 透きとほる窓���の瓶や冬の朝 吉之 身に纏う衣減らざり春浅し 明子 躙り口扇子置く手に零れ梅 美恵子
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令和5年2月16日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
越前の雪の生みたる雪女 雪 又次の嚔こらへてをりし顔 同 一としきり一羽の鴉寒復習 同 横顔の考へてゐる寒鴉 同 老いて尚たぎる血のあり恵方道 真喜栄 節分会華を添へたる芸者衆 同 白山の空より寒の明け来たり かづを 紅梅や盗まれさうな嬰児抱く みす枝 老犬の鼾すこやか春を待つ 清女 佐保姫やまづ能登の地に舞ひ来たれ 嘉和 収骨の如月の手は震へつつ 玲子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月16日 さきたま花鳥句会
煮凝を箸で揺らしつ酒を酌む 月惑 春一番ドミノ倒しの駐輪場 八草 雪残る路肩を選りて歩く子ら 裕章 春立つや蠢く気配絵馬の文字 紀花 朽木根に残してあがる春の雪 孝江 見舞ふ友見送る窓の老の春 ふゆ子 鼓一打合図に開始鬼やらひ ふじ穂 スクワット立春の影のびちぢみ 康子 匂ひ来し空に溶けたる梅真白 彩香 生みたてと書きて商ふ寒卵 みのり 寿司桶の箍光りたる弥生かな 良江 春泥や卒寿の叔母の赤き靴 珪子
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令和5年2月18日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
総門を白く散らして梅の寺 斉 俯ける金縷梅の香や山門に 芙佐子 恋の猫山内忍び振り返る 斉 日溜りに小さき影なし猫の恋 白陶 腰かけて白きオブジェの暖かし 久子 鳥もまた盛んなるかな猫の恋 白陶
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月21日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
撫で牛に梅の香纏ふ天満宮 笑子〃 白梅の五感震はす香の微か 千加江 真夜の雪寝る間の怖さ知るまいの 令子 銀色の光ほころび猫柳 啓子 復興や春一丁目一番地 数幸 紅梅の謂を僧の懇ろに 雪
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月22日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
一羽には一羽の矜持寒鴉 雪 憶却の先立つてゐるちやんちやんこ 同 煮凝りや良き酒飲めて子煩悩 同 来し方を語り語らず大冬木 同 此の人の思ひも寄りぬ大嚏 同 初春の遥か見据ゑ左内像 一涓 熱燗や聞きしに勝る泣き上戸 同 己がじし火と糧守りて雪に棲む 同 灯もせば懐古の御ん目古雛 同 もう少し聞きたいことも女正月 昭子 冬日向ふと一病を忘れけり 同 瀬の音にむつくりむくり蕗の薹 みす枝 夜中まで騒めき続く春一番 やすえ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
寒紅や良きも悪しきも父に似し 雪 退屈をひつかけてゐるちやんちやんこ 同 春立つや千手千眼観世音 同 路地路地に国府の名残り春の雪 同 節分会葵の御紋許されて 同 越前の夜こそ哀し雪女 同 瓔珞に鐘の一打にある余寒 清女 能登地震声を大にし鬼は外 数幸 春塵や古刹の裏の道具小屋 泰俊 蕗の薹顔出し山を動かしぬ 啓子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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124770353 · 8 months
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20240202
megmeg🐰🐥🌸 @megmeg_fblc07 2024/02/02(金) 23:54:35 Replying to @sugi_weaver
@ojro_men and 4 others 素敵なオーラが〜😊🌈✨ 東京参戦に向け今SpotifyでONCEめっちゃ聴いてます🎧👍楽しみしてますょ〜❣️ 明日の大阪も最高なLIVEになりますように😌✨ megmeg🐰🐥🌸 @megmeg_fblc07 2024/02/02(金) 23:46:35 Replying to @ojro_men ONCEぐーじ🥁素敵です🥰✨ 大阪の陣🐙頑張ってね〜( •̀ᴗ•́ )و🔥🔥🔥 remiofan @remiofan 2024/02/02(金) 23:44:39 Replying to @ojro_men れーは?🙋 hiroちゃん (ひろiro) @iro_one_iro 2024/02/02(金) 23:19:17 Replying to @ojro_men O〜お〜🐥 治:効能 癒やし、思いやり、治す、O← みーにゃん @minyan_3939 2024/02/02(金) 23:16:09 Replying to @ojro_men ONCEのOさん、 Billboardふぁいとー😆🥁 くまさん🐻 @ayu_weaver 2024/02/02(金) 23:13:47 Replying to @ojro_men わぁ~✨✨✨✨   楽しみにしてます🥰
ONCEメンバー温かい✨✨✨✨ むーちょ(むーちゃむーちょ) @ringonoDANGO 2024/02/02(金) 22:57:56 Replying to @ojro_men Oぉ〜👏👏👏 楽しみにしてまぁぁぁぁす🥁 ちはるん♪ @chiharu509 2024/02/02 (金) 22:44:03 Replying to @ojro_men ONCE神宮司さん🤭緊張しつつも🥁楽しんで来てください🎶 あられ @0416_haha 2024/02/02 (金) 22:35:42 Replying to @ojro_men よろしくお願いします🥁 楽しみです💕 琥珀🎸✨🔥🎵 @c90fd72c0f0341f 2024/02/02 (金) 22:34:44 Replying to @ojro_men 治のOだったのか🤣 ONCE神宮司ファイトー🥁✨ きしめんRI-nem @rijooki 2024/02/02 (金) 22:33:18 Replying to @ojro_men 治のO🤣🤣 harurika.1224 @1224Harurika 2024/02/02 (金) 22:30:24 Replying to @sugi_weaver
@amema_vln and 4 others 杉くん、いよいよ明日ですね😃💕 久しぶりのビルボード大阪 バンドになった杉くん、とっても楽しみです💕💕 🐟💚さくらこ🌸(りんまぁこ🍏) @chmichil 2024/02/02 (金) 22:28:46 Replying to @sugi_weaver
@amema_vln and 4 others オサと一生くんだ😆🎸🥁💕 きしめんRI-nem @rijooki 2024/02/02 (金) 22:28:42 Replying to @sugi_weaver
@amema_vln and 4 others 素敵な空間にならない訳が無い豪華メンバー✨✨✨楽しんでふぁいとぉ〜 さやさ @WEAVER_1021 2024/02/02 (金) 19:05:25 Replying to @sugi_weaver
@amema_vln and 4 others 本当にドキドキしてきました🥰🥰🥰
明日は楽しむ準備万端です!!! ありひろちゃん @arihiro_CHAN 2024/02/02 (金) 17:38:35 Replying to @ojro_men こんにちは 頭痛は良くなりましたか? 来週にかけて天気が崩れるようなので ひやひやしています 今日の甲府は曇りのち☀️でした ルナゴ @sanjirose0930 2024/02/02 (金) 17:34:21 Replying to @ojro_men 気圧が荒ぶってますね⚡ 私もお薬飲みました💊 暖かくしてお過ごしください😌🧉 える @LMInfinite0313 2024/02/02 (金) 16:12:03 Replying to @sugi_weaver
@amema_vln and 4 others 素晴らしい👏👏👏キラキラ輝いてますね🎵 #杉本 雄治( #ONCE ) おはぎ @makomamaf10 2024/02/02 (金) 16:12:01 Replying to @sugi_weaver
@amema_vln and 4 others 杉くん リハ風景 ありがとうございます。 とても楽しみです🥰 teru @63CONANAN25 2024/02/02 (金) 15:42:57 Replying to @sugi_weaver
@amema_vln and 4 others 愛のこもったお言葉✨ 感動でもう泣いちゃいそうです、ありがとうございます🥹 #ONCE の曲が皆さんの演奏でどう変わるか本当に楽しみですワクワク😆✨ RINKA @RINKAatkobe4649 2024/02/02 (金) 15:41:59 Replying to @sugi_weaver
@amema_vln and 4 others 杉本さんお疲れ様です! 杉本さんにとって信頼のおける最強の先輩方との公演ですよね!! #ONCE  のまた新たな形! めちゃくちゃ楽しみですね! 私も初見の方を連れていくのと、今ちょっと追加で来たい方いないか考え中です!いつもギリギリw タオル、バッグ使ってます! 楽しみ! あい @weaverfestival 2024/02/02 (金) 15:23:49 Replying to @sugi_weaver
@amema_vln and 4 others 昨日、ライブ行く用意したんですけど、出発が今晩なのでドキドキしてます💦
どこから観る景色も、音楽も最高だと思うので、この胸に焼き付けます‼️🥰
杉ちゃんの音楽を自信もって、皆にぶつけてくださいね🎶
グッズ販売の時間は何時ですか? AKEMI @AKEMI73394390 2024/02/02 (金) 15:08:20 Replying to @sugi_weaver
@amema_vln and 4 others 杉くん♡リハ風景の写真ありがとうございます🥹 いよいよ明日!楽しみ〜🥰🩵✨ 琥珀🎸✨🔥🎵 @c90fd72c0f0341f 2024/02/02 (金) 14:55:44 Replying to @ojro_men おはこんにちわ😊 あらら💦 気圧の変化は辛いですね😵 外はさみーし、お大事にして下さい🙏 むーちょ(むーちゃむーちょ) @ringonoDANGO 2024/02/02 (金) 14:38:47 Replying to @ojro_men そんな時の〜塩分チャージ( '▽')? パワーチャージして🥟 早く治りますよーに〜(ㅅ˙³˙) あられ @0416_haha 2024/02/02 (金) 14:30:38 Replying to @ojro_men こんにちは😊
明日のライブ💕 なまぐうじさんに、お会いできるのは 何年ぶりなのか思い出せないぐらいです 心斎橋ジャニスだったかな🙄
杉くんのピアノと歌声と 治さんのドラムだなんて 隅で号泣します😭 ももくるひめ @momokurumihime 2024/02/02 (金) 14:07:25 Replying to @ojro_men おはようございます 大丈夫ですか?早く治りますようにー まき @H8_maki19 2024/02/02(金) 13:30:39 Replying to @ojro_men おはようございます😃 お大事に…😐 yoshino @yoshino3996 2024/02/02(金) 13:25:06 Replying to @ojro_men おはようございます🌞 連日のリハ🥁お疲れ様でした! 今日、大阪に移動ですか? 頭痛…おだいじにです♡ きしめんRI-nem @rijooki 2024/02/02(金) 12:54:25 Replying to @ojro_men おはようございます🌥 今日はサミーネミーです 頭イタタですね( *_* )
待ちに待ってた甘平ミカンが出てきたのでアタシ嬉しい🍊 ちはるん♪ @chiharu509 2024/02/02(金) 12:52:35 Replying to @ojro_men おはようございます🐹🌤 頭痛大丈夫ですか?💊💦 昨日は携帯持ったまま寝ちゃってました🥹やっぱりオサくんの声は癒やされる🩷大阪🥁頑張ってくださいね😊 momo @momochi039 2024/02/02(金) 12:32:24 Replying to @ojro_men おはようございます🙂🔅✨
気圧で頭痛🤕 同じく...です🙋🏻‍♀️´- スマイルりん @FT_lovelysmile 2024/02/02(金) 12:29:01 Replying to @ojro_men こんにちはー、あらあら大丈夫ですか? くもうさぎ姫 @kumousagihime 2024/02/02(金) 12:18:33 Replying to @ojro_men おはようございます🌥 お大事になさってください😌 yacoco @yacodean 2024/02/02(金) 12:16:28 Replying to @ojro_men オサヨーございます☁🥶 耳のまわりをマッサージすると良いらしいですよ👂モミモミ あんみつ彦 @anmitsuhico 2024/02/02(金) 12:05:51 Replying to @ojro_men あら😳💦大丈夫でしょうか? おささん、おはようございます☀️ ☆じゅんじゅん☆ @junjun56o1 2024/02/02(金) 11:52:31 Replying to @ojro_men おはようございます😃 体調には気をつけてくださいね😊✨ くう間もん @kasu3iro 2024/02/02(金) 11:48:13 Replying to @ojro_men おはようございます😊✨ どんより☁、暖かくお過ごし下さい🍀🐥🕊☺️☕😊 gash @a_kie_1123 2024/02/02(金) 11:43:26 Replying to @ojro_men おはよーございます😊 気圧頭痛ですか😞頭痛薬💊飲んで休んでくださいな🥺 さとみ @remisato 2024/02/02(金) 11:40:03 Replying to @ojro_men こんにちは(*´∀`*)ノノ hiroちゃん (ひろiro) @iro_one_iro 2024/02/02(金) 11:24:49 Replying to @ojro_men 治さんは頭痛ですか😵‍💫 お大事にです。 きょうは寒いですね。指がかじかみます🥶 megmeg🐰🐥🌸 @megmeg_fblc07 2024/02/02(金) 11:23:11 Replying to @ojro_men おはよおさん🐥🐲✨☁️ 私もなんとなく頭が重いと思ったら 気圧急上昇ですか〜🙀💦 しかも最高気温7℃…😨 ずっと家にこもっていたいです〜🥺 remiofan @remiofan 2024/02/02(金) 11:23:08 Replying to @ojro_men いたいのいたいのとんでおはニキ🙋 くみくみ @kumikotakuro 2024/02/02(金) 11:20:56 Replying to @ojro_men おはようございます😀 気圧で頭痛いのですかー🥶ゆっくりして下さい🙏 sayaka @saya103 2024/02/02(金) 11:18:34 Replying to @ojro_men おはようございます☁️ 今度は🧚‍♂️が出ました💦色々流行ってますね💦 免疫力上げて乗りきりまーす☺️ Alice @Alice6499530073 2024/02/02(金) 11:16:09 Replying to @ojro_men おはようございます♪
心配ですね😟 お大事にして下さい☕️ megmeg🐰🐥🌸 @megmeg_fblc07 2024/02/02(金) 01:34:41 @ojro_men
大阪の陣🥁コレ飲んでファイトだょ😆🔥
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thyele · 2 years
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2022年11月25日
出世望まぬ公務員「勉強時間ない」「昇進よりも家庭」 自治体は苦悩:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASQB040W1Q6XULEI006.html
「マイナ保険証が義務化なら閉院するしか…」高齢医師の声も 日弁連の集会で医師団体が訴え - 弁護士ドットコム https://www.bengo4.com/c_18/n_15297/
汚され、壊され、暴言も…マナーが悪すぎてトイレ撤去 お寺の住職が苦渋の決断「数十年悩まされました」|まいどなニュース https://maidonanews.jp/article/14774987
「泣ける漫画ランキング」発表 3位『SLAM DUNK』、2位『鬼滅の刃』、1位は? - ITmedia ビジネスオンライン https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2211/22/news144.html
すき焼きに白菜を入れる?実は「入れない」が正解・・・?!【すき焼きの新しい定番】 | 株式会社メディアエクシード https://mediaexceed.co.jp/monitoring/1408/
朝から幸せな気分、早朝出勤の会社員と始発で通う清掃員の会話が話題 「日々感謝です」「心温まるツイート」|まいどなニュース https://maidonanews.jp/article/14771603
こんなの「猫神家」じゃん...! 華麗なジャンプの結果、飼い主のカバンにぶっ刺さるニャンコが激写される(全文表示)|Jタウンネット https://j-town.net/2022/11/23340964.html?p=all
河北麻友子、第1子妊娠を発表 夫とおそろいのデニム姿で「Mom&Dad」:中日スポーツ・東京中日スポーツ https://www.chunichi.co.jp/article/587571
子宮移植、慶応大が計画申請 承認されれば国内初の実施へ | 毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20221122/k00/00m/040/086000c
椎名林檎の5年ぶり全国ツアー2023「椎名林檎と彼奴等と知る諸行無常」東京・大阪ほか10都市で - ファッションプレス https://www.fashion-press.net/news/96441
CREATURE CREATUREさん「『Death Is A Flower』(2017年)のサブスクリプションが解禁がされました。」 https://twitter.com/CREATURE_C/status/1595238550102241283
MORRIEさん「サブスクリプション解禁です。 『HARD CORE REVERIE』(2014年) 『光る曠野』(2019年)」https://twitter.com/nowherenobodygu/status/1595238497585364992
巧-𝚃𝙰𝙺𝚄𝙼𝙸-さん「【Recommend songs】 GROW 低脳パレード/silhouette https://t.co/v3JGDF5U3i ANOTHER CHRONICLE Glory https://t.co/bi61iwzANy」https://twitter.com/grow6tak/status/1576373266167390208
Bar ROSIERさん「明日から月曜までバースデーイベント開催致します。是非ROSIERに遊びに来てね~ https://t.co/uF5Qj1qIYL」https://twitter.com/BarROSIER/status/1595641687485059072
ヴィジュアル博士のる@監修オムニバスCD2種発売中さん「そもそも前略プロフって一般層もだけどバンギャル界隈というかヴィジュアル系界隈に浸透してたよね!?みんなやったことあるよね!?」https://twitter.com/vr_noru/status/1595662818015318017
【Phobia】 KISUIさん「Phobia/abyssの集い https://t.co/VDvIUMRQ7r」https://twitter.com/KISUIxxx/status/1595619610128445440
Lottoさん「本日、梟 北参道GRAPES だいすけ君の誕生日パーティーです。 宜しくお願いします! https://t.co/ieFE8wGWou」https://twitter.com/Lotto_drums/status/1595676494642417664
十三月 紅夜さん「🌹🔔万物教会 おみやげ情報🔔🌹 公演パンフレット・・・1000円 枚数限定シングルCD・・・1500円 ステッカーセット・・・1500円 ガチャポン・・・1回500円 上演前後はおみやげ屋さんが開店します! ご参加の際は是非お立ち寄り下さい❣️ #万物教会 #百眼 https://t.co/gKSDWOEplz」https://twitter.com/jusangatsukouya/status/1595420805663723520
DETRUIREさん「2022年11月23日発売 「SUGIZO/THE COMPLETE SINGLE COLLECTION」 SUGIZOさん25thおめでとう🎉ございます。🎉🎉🎉🎉🎉 CD送って頂き感謝いたします。💿 初回限定盤Get🎸 DETRUIREで早速流します。🎵🎶 @SUGIZOofficial #SUGIZO #THEONENESS #DETRUIRE #SAPPORO https://t.co/jkqJ5iOACo」https://twitter.com/DETRUIRE5923/status/1595253909828022272
ヨドバシカメラ 梅田店さん「【#ヨドバシ梅田 リリイベ情報🎤】 12/4(日)B2Fヨドバシホールにて、「#SUGIZO」様によるベストアルバム「THE COMPLETE SINGLE COLLECTION」発売記念🎉サイン会を開催‼️ 3F音楽映像・ソフト売場で対象商品ご購入の方に先着で整理番号付サイン会参加券をお渡しします💡 ご来店をお待ちしております✨ https://t.co/J8zTsZXgte」https://twitter.com/yodobashi_umed/status/1594969768192188416
金髪豚野郎K助(偽殿下)さん「明日は午前中からメタるからもう寝よう フライヤのデザインは終わらん 一生終わらんと思う (°_°)」https://twitter.com/goldenpigdrumer/status/1595431402778296320
源 依織さん「興奮冷めやまんので明日旅に出ます。」https://twitter.com/prin_guitarist/status/1595434070187847680
紅日毬子さん「因みに、リクガメさんのおべべをアンナに襤褸にしたのは僕です。 経年劣化加工なら任せろ。浪漫のある奴にしか成し得ないと自負してゐる。 背中にはウツスラ、アレの影が…?! #百眼 #万物教会 https://t.co/l1lXGsYLiV」https://twitter.com/akahimariko/status/1595437302989611008
紅日毬子さん「#百眼 #万物教会 二日目二公演、ありがたう存じました‼️ けふ、此の指輪を忘れてかなしかツた… ユリイカはひとが作ツたホムンクルスなので、賢者の石をイメエヂしてるンだよ。耳飾りもちいさな賢者の石がついてるの。ユリイカ本人は知らないンだけどね。 叉あした! https://t.co/iGI2X5fxvM」https://twitter.com/akahimariko/status/1595418466827149312
こもだまり|昭和精吾事務所さん「#仮面劇犬神 丁寧な感想ありがとうございます! 寺山さんと同じ12/10生で、代わりにケーキの蝋燭吹き消してもらった寺山修司誕生日公演もザムザ阿佐谷でしたね。 長く見てくださってるので気づいていなかったのですが、ジァン・ジァンの頃はまだ出会ってない(���神見てない)んですね!」https://twitter.com/mari_air/status/1595444503976235009
航跡kou-seki(大概 梶原航)さん「生きている実感や生きた心地、存在の証明 。仮面劇犬神も舞台TRIANGLEも、偶然にも根底に流れている大きなテーマは近いものがある。 包み込む手のひら一つで、生きていること全てを肯定することが出来ると信じさせてくれる。そういうのは物語より現実の方が容易だったり。【雑記】」https://twitter.com/wataru_kaji/status/1593220256214188032
松本大さん「音楽監督 西邑卓哲さん なんで #万物教会 へ! 初 #百眼 ❗️ 他では観られないグイグイ来る #紅日鞠子 さん 楽しそう?な #こもだまり さん 存在感が圧倒的な #薔子 さん 西邑さんの姿をずっと探していたが ギターではなく まさかのドラムだったとは⁉️ #ザムザ阿佐谷 にて 是非❗️ https://t.co/te24rDIKsR」https://twitter.com/61k61z61k61z/status/1595218577665462272
シウ 【画集が発売されました!】さん「「万物教会」絶賛公演中です!おみやげも充実しております💕俳優さんのチェキ販売もあります!大盛況ですがまだチケットが間に合うので気になっている方は是非観にきてね!🧙 https://t.co/5A3Ntj0DPB」https://twitter.com/shiuriri/status/1595441097760710659
UNCLOCK LOVER 頼田陵介さん「最終調整しております✌️✨ 2022.11.25 吉祥寺SHUFFLE UNCLOCK LOVER ONE MAN LIVE 『Time for a change』 ■会場:東京:吉祥寺SHUFFLE ■OPEN/START:18:00/19:00 ■Ticket Adv¥4000/Day¥4500 予約はこちら↓ https://t.co/XHoyQwGMyB ■配信Ticket¥2500 https://t.co/lKqyX93d3n https://t.co/0rec4WlYbD」https://twitter.com/yorita_ryosuke/status/1595448884314398720
nao 首振りDollsさん「英語がちゃんとわかってない私でもわかった。 血よりも濃い遺伝子を遺した類稀なる偉大なギタリスト、 世界中の子どもたちがきっと弾き継ぎます。 ご冥福をお祈りします。」https://twitter.com/kubihuri_nao/status/1595450344712318976
こもだまり|昭和精吾事務所さん「最優先事項は何か、どこまで追求するか、どう伝えるか、または諦めるか、など たくさんの選択をしながら生きていくんですね。 そしていま選択すべきは、 お風呂か睡眠か食事か洗濯かだ(ダジャレではない)。 バターしょうゆ味のポテチ買って帰ったら家のハッピーターンがバター醤油味だった😳」https://twitter.com/mari_air/status/1595451445444505603
Ivy darknessさん「もうすぐマクラカ壊死ライブだ 11/26ライブだ 猛烈準備しなくちゃなぁ 今月の最後は二万電圧に闇を感じに来ればいい 最近創造ばかりだから破壊もしなければ」https://twitter.com/IVY_DOPE_SHOW/status/1595452754423869441
こもだまり|昭和精吾事務所さん「爆音天使・ミカを演じる君崎友梨夏さん。衣裳も道具もすごく似合ってて、チェキ人気出そう…って思ってたらやはり大人気らしい!! 細い身体なのによく(声が)鳴ってる。喉が強いのかな? なぜかみんな「ミカ」って呼んでる。 #万物教会 #百眼」https://twitter.com/mari_air/status/1595454356333416449
こもだまり|昭和精吾事務所さん「つつつ、通販出し忘れてた…」https://twitter.com/mari_air/status/1595454592602763264
つきみのな@観劇雑多さん「本筋の外側にいる「魔女組」と「深海組」の交錯によって、物語が外側から埋められて行く(関係の暗示と道の提示)のが面白い構成だなと思ったし、内側が奴婢訓(よりは統制取れてるけど)的なごっこ遊びで成り立っているところに百眼感を覚えました。神は代替可能なんだなあとか思ったり。」https://twitter.com/nona_tsukimi/status/1595034328198938624
横山企画室さん「多分日に日にヘアスタイルは変わるのでしょう^^b https://t.co/UF0yhgQXoJ」https://twitter.com/yokodile01/status/1595456027222081544
横山企画室さん「https://t.co/OGjZvddCFU」https://twitter.com/yokodile01/status/1595456034998321159
シウ 【画集が発売されました!】さん「魔女が手下を教育する話が4周年ですね🧙‍♀️以前投稿した1話からまとめたものよかったら読んでください❤️ #pixiv https://t.co/UddmedkVaz https://t.co/f00hF6jOog」https://twitter.com/shiuriri/status/1584121856012865541
シウ 【画集が発売されました!】さん「魔女が手下を教育する話【短編集】 | シウ*単行本発売中 #pixiv https://t.co/Z4NkQBMN1D 魔女が手下を教育する話の短編をまとめました✨一気に読みやすいよー!」https://twitter.com/shiuriri/status/1153258476258205696
ラジオのアナ~ラジアナさん「今日のNACK ヴァージン  #首振りDolls の ドラム #ナオ さんの紹介で #中尊寺まい さんにお越しいただきました✨ ありがとうございました‼️ #raji795 #nack5 #西田好孝 #ゆりこ 詳しい情報はこちらをチェック! https://t.co/C8MCsIkxbF」https://twitter.com/raji795/status/1595454586768457728
lucy+peter=esolagoto / 中村真悟さん「先程の地震でPC横の棚から単3電池が落下、PCに挿さっていたeLicenserに見事にヒットしcubaseが落ちた。 もう森へ帰ろう。 https://t.co/WczXdu2yRg」https://twitter.com/lucy_peter/status/1595477174781636608
長谷川すずなさん「12/22 下北沢rpm 川尻歩くん@jiri_jiri_b ホストリーダーの日に、なんとセッションホストとして参加させて頂きます…! 予約なし。演奏者、初心者も見学者も全員超超ウェルカムです💁‍♀️ ぜひふらっと遊びに来てください! https://t.co/pFtP29NiZz」https://twitter.com/hsgwszn/status/1595397621484589056
十三月 紅夜さん「2日目終宴✨❣️ ご参加ありがとうございました! アンコールもありがたきおん🌹 明日は19時に万物教会の扉が開きます。 君の為のレゾンデートル創世記、見届けに来て! 『万物教会』 11月22日〜28日 於・ザムザ阿佐谷 https://t.co/F8Wzwt9K3i 🔔ご予約 https://t.co/KH0P68N4NY #万物教会 #百眼 https://t.co/4Abz3mYCZx」https://twitter.com/jusangatsukouya/status/1595411254662799362
【貴族】Shinpei Mörishigeさん「ケビンちゃんの2014年くらいのサムライ時代の衣装を彷彿とさせる・・・。 私も万物教会に行きます💒」https://twitter.com/KIZOKU_0927/status/1595484767499476992
mikeintokyorogersさん「The World Famous Mike Rogers Show! Love FM 76.1 NOW ON AIR! Palastleben - Neon Escape #mrskor https://t.co/bO6VrnLKy8」https://twitter.com/mikeintokyo2004/status/1595429714482659328
Yoshikiさん「少しでも協力できれば #YOSHIKI  IOMによると、#ウクライナ で自宅を追われるなどした人は直近で650万人に上り、さらに帰還してきた590万人が緊急の #人道支援 を必要としている。冬場を迎え、支援の必要性が増しているとしてIOMは協力を訴えている@IOMJapan @UNmigration https://t.co/0I5XNujHNW」https://twitter.com/YoshikiOfficial/status/1595518523807129600
ヴィジュアル博士のる@監修オムニバスCD2種発売中さん「【ヴィジュアル系今日は何の日】 LUNACYが目黒ライブステーションでのワンマンライブよりLUNA SEAに改名した日。 (1990.11.24) https://t.co/DICMq3bJ1u」https://twitter.com/vr_noru/status/1595537930403352577
ryoさん「@yokodile01 @karyu_official 新曲もコツコツと🤘」https://twitter.com/ryo_dalli/status/1595539679629438976
ヴィジュアル博士のる@監修オムニバスCD2種発売中さん「lynch.の武道館も観てないし日本が勝つ瞬間も生で見てないし、なんだか自分が非国民な気がしてきたゾ」https://twitter.com/vr_noru/status/1595550086159036416
Ryuichi Kawamuraさん「https://t.co/BScbiLypVE」https://twitter.com/RyuichiKawamur2/status/1595551720809336835
Ryuichi Kawamuraさん「https://t.co/sNGr5yv6Rm」https://twitter.com/RyuichiKawamur2/status/1595560541640359936
MIYAVIさん「You checkin #MIYAVIVERSE ?Any fav track? みんな、ゲワイってる?お気に入りはどれ?💿」https://twitter.com/MIYAVI_OFFICIAL/status/1595579190409326593
びじゅなびさん「【H.U.G】 Angelo、ex.D’ESPAIRS RAYのKaryuセッションバンド「H.U.G」、YouTubeチャンネルを開設! 記事はこちら▶️https://t.co/N8qIPWEq30 H.U.G YouTubeチャンネル https://t.co/1mFEylawXV https://t.co/M519juhXmC」https://twitter.com/visunavi/status/1595250894882635776
DI:GA ONLINE編集部さん「Angelo、ex.D’ESPAIRS RAYのKaryuセッションバンド「H.U.G」YouTubeチャンネル開設! #Karyu https://t.co/PMTs3A3EXY」https://twitter.com/diga_online/status/1594990244084199424
静かの海_official 7月1日 GRAND OPENさん「いよいよ明日、aieさんと春さんによる 「名古屋の春、ゴッドソロ」開催! 11月25日(金) OPEN 18:30 / START 19:00 内容:アコースティックライブ 前売りチケットの販売は、本日23:59 までです。お見逃しなく☆ [イベント詳細] https://t.co/OSOADHZZW1 #aie #春 #アコースティックライブ #静かの海 https://t.co/0qcLaBVEVs」https://twitter.com/shizuka_n_osu/status/1595583729044697088
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keredomo · 3 years
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父親2
 六年間の闘病を経て父が逝去した。  闘病というが、おそらく闘っていたのは一人、正気の母のみであった。父本人ではなく、私でもない。  父は倒れた時点ですでに人間の理性を手放しており、猛スピードで父ではなくなっていった。寝たきりで衰え続け、一刻一刻と、わかることがなくなっていった。  最初の頃はまだ病床で娘の私を認識したが、今際の際の少し前にビデオ通話を繋いでもらった時にはもう私のことすらわからなかった。最後までわかったのは妻のことだった。妻であり母親がわりである彼女だけに縋って、それ以外には何もかもわからないまま、父は死んでいった。おそらく自身が死ぬことすらわからぬまま。  闘病が六年の長い年月におよんだことを、遠く離れて暮らす私は意識していなかった。看護を一手に担ってきた母にとってはきっと六十年にも匹敵する長い長い年月だったことだろう。理性を失い、痛みだけが意識に上るようになった父にとっては、無限の苦しみだったことだろう。
 
 秋の入り口、二週間前から危ないとされていた父がいよいよ亡くなろうという時、私は東京で泥酔しながら「あした死ぬなら」という題をつけてどうでもいいような文章を書いていた。酔いどれの手遊びだったけれど、父の死をはさみ、未だ完成していない。
 深夜三時、母から「お父さん、さっき逝きました」とメッセージが入った。酔い潰れてほとんど眠ろうとしていた私はその報せを読むこともなく、ひたすら自分に没入していた。  母は一人で夫の死と対峙して、さめざめと遺体に縋って、一通り泣いたのち冷静に処理したのだろう。  翌朝八時半に目覚めて、寝ぼけながら「そっか」と返事した。  私にとっては父の死はごく自然なことだった。すでに数年前に父の死を受け入れていて、いまさら悲しんで言葉を尽くす必要はなかった。そのことも母にとってはあまりにも薄情な態度に映ったかもしれない。「父親」と題した手記を読ませたことはあったと思うが、なんのリアクションもなく、母には私の心情は伝わらなかったようだった。せめて「お疲れ様でした」くらい書くべきだっただろうか。誰に対する労いの言葉なのかはっきりしないままでも。  母にだけは、齢三十を超えてもなお、うまく優しくできない。母に優しくするための嘘をどうしてもつくことができない。方便を用意してあげられない。他人にならば、息を吐くように嘘をついて優しくできるのに。
 まだ眠い目を強めにこすり、睡眠不足と深酒で痛めつけた体をぐったり横たえたまま、���んとか頭だけは働かせる。  会社の上司に父の逝去を報告し、慶弔休暇の手続きをする。急ぎの仕事を確認し、東京にいないとできないいくつかの業務をこなす。休暇のあいだに進めておくべき仕事の資料を束ねて実家宛に郵送し、今日来るはずの他部署からの連絡を待ちながら、前々日から予約してあったスリラー映画を日比谷で観た。映画を観ているあいだは何も考えずにいられて、ようやく少し気持ちが落ち着いた。映画を観終え、会社に戻って必要書類をピックアップしつつ、足を飛行機と新幹線とで迷って苛立つ。道中落ち着いて働けるよう五時間かかる新幹線を予約した。
 帰郷の態勢を整え終えたのが翌日の午前一時半。気が昂って眠れないので、それからワインを一本半あけた。  酒を飲みながら、また書きかけの文章に向き合うことで自分に没入してやり過ごす。父の死について深く考えることを無意識に拒絶している。自分についてだけひたすら考えるために書きかけていた文章の続きを書くが、うまく書き進められない。酩酊してようやく眠れたのは明け方だった。  早朝五時に起きるつもりが九時前まで眠ってしまい、実家に到着したのは午後四時ごろだった。母に頼まれてお寺と弔問客に渡す菓子折りを揃えたらとんでもない大荷物になって、親の死よりも重い。
 着いて早々喪服に着替えて通夜の準備をし、誰一人として見知らぬ弔問客に戸惑いながらなんとか応対する。名前も顔も知らなかった父の血縁がぞろぞろ現れて、客間に入りきらない。人が一人生きるだけで何人もの人間がまとわりついてくる。おそろしいことだ。  九十を超えてなお衆生を見下す高慢な坊主の失礼な説教で怒り心頭を発しつつ、自宅で執り行う小規模な通夜をとりあえず済ませた。精進弁当を食べ、母を寝室に見送ったのち(いまどきは一晩途切れない線香なるものがあって、夜通し遺体の側で線香番をする必要はないのだそうだ)、家にある酒を度数の高い順に煽っていった。在庫のウィスキーを飲み干したので焼酎に手をつける。どちらも、醒めたまま深い酩酊に導く厄介な酒で、一向に眠くならないのに感情だけが尖ってゆく。
 母が眠ってくれたおかげで父とようやく二人きりになれた。  母がいると、「母と父のこと」が優先されてしまって、私は部外者になる。父はどうしようもなく母の夫だった。私の父であるよりも、母が半狂乱になりながら狂おしく恋慕した、「母の夫」だった。そこに私が入る隙はなかった。生涯、かれらは男女であって、父母ではなかった。  強い酒をあおって、理性に命じている「私は父を愛さない」という重い枷が酩酊によって外れているせいで、感情だけが乱暴に行動させる。  父の遺体に触ってみたいと思った。生きている父にはほとんど触ったことがない。小学生のときにむきになって体を使った喧嘩をして、私は力で押し負けて泣いてしまい、それ以来互いに気まずく、私は父には触れなくなったし父も私に触れなくなった。死んだのでようやく遠慮なく触れられる。棺の蓋を派手に外した。棺を覆う、仏門の好む金刺繍の織物は廊下に雑に投げ捨てた。
 まだ焼かれていない遺体も、長い闘病でほとんど骨と皮だけになってしまっている。十月とはいえ残暑が名残っているからと、遺体は腐敗防止のために厳重に冷やされて、顔から何からすっかり白くなっていた。静か。悲惨で、グロテスク。肉をすべて失い、頭蓋骨に張り付くような土色の皮膚。男前が見る影もない。  肌に触れるとどこかシリコンのような手触りだった。ひやりと冷たい。頭と顔に手指をすべらせて、かわいそうに、と思う。耳と首を触って、ずいぶん痩せたね、と思う。肩に触れて、腕をなぞって、筋肉はほとんど削げ落ちて骨があらわれているのを確かめる。  両手は腹のあたりで組まされていた。指を組み合わせて眠るような上品な男ではないので、様式に則って組まされているのだろう。そっと外して、自分の指を父の右手に組み合わせてみた。父と手を繋いだ記憶なんかひとつもなくて、父の指を初めて知るのが遺体であることに途方もない虚しさをおぼえる。
 覗き込むと、棺には二体のぬいぐるみが収められていた。いずれも、二十代の私が父に贈ったものだった。通信会社のテレビCMで見て欲しがっているらしいと母から伝え聞いて、オークションで入手した白い犬の動くぬいぐるみと、酔っぱらって繁華街のUFOキャッチャーでとって、邪魔だからと送りつけたオレンジ色の猫の妖怪のぬいぐるみ。男勝りのくせに意外とかわいいものが好きな父は大喜びで、「俺が死んだら棺桶に入れてくれ」とはしゃいだ。当時からそう言っているのは知っていて、疎遠ながらも父を喜ばせたことが嬉しく、私も満更でもなかった。  知っていたのに、実際にぬいぐるみたちが棺に父の屍体と一緒に入っているのを見て泣き崩れてしまった。喪主の母の裁量ではあるが、父がそれらを本当に連れて行ってくれるとは思わなかった。
 死んで初めて、父は私の父になったのかもしれない。死んで、母の夫であることを逃れて、ようやく私の父になってくれたのかもしれない。  あるいは、父が死んで、ようやく母が夫を私の父にしてくれたのかもしれない。  やるせなかった。生きているうちにそうなってくれれば、どんなに寂しくなかったことだろう。
 私が騒いでいるのを聞きつけて目を覚ました母親が二階の寝室から降りてきて、明日があるのだからもう寝なさいと促す。母は父の妻であることと私の母親であることを両立しているので、私の寂しさも悔しさも悲しみも一切理解できない。邪魔をされて恨めしかったけれど、それ以上に父の死に大泣きしているのを母に見られたのが気まずくて、素直に従った。母は、私にも父を失った悲しみを共有してほしいと思っているくせに、私が父と二人で過ごすことにはわかりやすく苛立ちを示すのだった。途方もなく女だ。
 
 翌朝、深酒と号泣と寝不足で目も当てられない浮腫んだ顔で本葬に入った。  昨日の通夜で話すまで存在しなかった血族の綺麗な中年女性が、式の準備を手伝ってくれながら「浮腫んでるね」と笑いもせずに言う。「昨日、夜中に泣きすぎちゃって」とへらへら返すと、また笑いもせずに「うん」と言う。彼女の父親は私の父の兄で、私がまだ幼い頃に亡くなった。父親を亡くすことがどういうことか、あの人はちゃんと理解していたのだろう。  昨日の通夜のときよりも絢爛な袈裟を纏った寺の人々が到着し、昼過ぎに式が始まった。合唱を老坊主に要請された南無阿弥陀仏を一応口にしながら、宗教儀式の儀式性を自分が必要としていることに自覚的な人間はこの場にどれくらいいるのだろうか、とぼんやり考える。一人でひととおり泣いたのでもう涙はでない。読経なんかで休まる心は持ち合わせていない。自宅の狭い客間で坊主が払子を振り回すと電灯の紐に当たってしまってうまくいかないのを眺めて少し笑う。ぎこちない焼香は悲しみを形骸化する。  用意された霊柩車は期待していた金ぴかの装飾をつけておらずがっかりした。屍体とはかけ離れた姿を写した遺影を持たされて、後部座席に乗り込む。火葬場まで母と何か話したけれど、妙に天気がよかったことと、母が涙ぐんでいたこと以外、よく覚えていない。母は、父の死に納得しようと懸命に言葉を発した。その姿は痛々しくて、かける言葉が見つからない。
 焼くと、ぼろぼろの骨がでてきた。係りの人が、これは背骨、これは肩、これは顎、と説明しながら手でばきばきに折って小さくした骨を渡してくれる。脳を開いて蓋したときに頭蓋骨につけた金具が焼け残っているのを見て、母がしみじみ悲しんでいた。骨壷に入りきらなかった骨をつまんでまじまじ眺めてみると、サンゴ礁の死骸にそっくりだった。人間も自然の一部なのだと思えて嬉しかった。一緒に焼かれたぬいぐるみたちは跡形もなく燃え尽きていた。
 火葬場からの帰り道、後部座席で従姉妹の運転する車に揺られながら、何を考えることも疎ましいほど疲弊していて、「なにも思いたくないくらい疲れ果てた」という一文をずっと繰り返し繰り返し頭の中で唱えた。人の死はこれほどまでに精神を疲弊させるのだと思い知らされる。なにも思いたくないくらい疲れ果てた。なにも感じたくない。なにも。  常に何かを考えていたい自分がこれほどまでに疲弊するのが人間の死なのだった。
 
 弔問客も落ち着いた初七日の六日目、母にねだって車を出してもらい、隣市の美術館に行った。  人の手が創り出した美しいものを見たかった。生が創り出すものを。  死を拭い去って再び生を始め直すには、人間が生きた証を目の当たりにする必要があった。美術作品のインパクトに圧倒されて、生きることを取り戻したかった。いずれ死ぬ身を生きることは、あまりにも虚しすぎる。  父の享年が七四歳であることを、会社に提出する慶長休暇申請書を書くにあたって初めて知った。そんなに高齢だったのか。となれば私は父が四三歳のときの子で、ずいぶん遅くできた可愛い娘だったはずなのに。愛したかっただろうな、と悔しく思う。
 父の死にどっぷり浸かっていたせいだろう、展示を眺めていて、初めて「作家がこの絵を何歳のときに描いたのか」に意識を向けた。作家の生没年と作品の制作年を照らし合わせて、これを八〇代で描くのかとか、これを二〇代で描くのかとか、柄にもなくそれぞれの作家の人生に思いを馳せた。三一歳の自分にこれから何ができるか、考えずにいられない。  生きているあいだに、私になにができるだろう。
 初七日の七日目、家族の夫が地元まで会いにきてくれた。父の死についてではなく私の生について話をして、ようやく話して、夫が私の代わりに泣いてくれたので、泣いていいほどの苦しみなんだと初めて知って、私も涙した。  こんな苦しい生を生きていたくないと毎日思う。生は、誰にとってもこんなにも苦しいものなのだろうか。
 
 初七日を終え、翌日の夕方にまた新幹線で東京に戻った。  父の死は、たいしたことではなかったはずだった。感情はとっくに整理されていて、事実を受け入れるのにそう困難はないはずだった。  そのこと自体は誤認ではなかった。いまだ深い悲しみに囚われている母を置き去りにして、私は父の死を摂理として安らかに受け入れた。けれど、肉親の死はたしかに私を生の枷を一つ取り除く出来事であった。  もはや、私の死を悲しむだろう誰かを悲しませないためだけに生きているのだと思い知らされる。次に来る祖母の死は、また私の命綱を一つ切るだろう。その次に来る母の死は、強く太く私を生に結びつけている綱を一つ切るだろう。
 そうして身近な者の死を繰り返し受け入れて、いつか私を繋ぎとめる重石は私を生に繋ぎとめられないくらい軽くなってしまうだろう。  「あなたが悲しむから死なない」という枷が軽くなるごとに、私は自分を軽いものとしてしか扱えなくなるのだろう。これから何十年もかけて、ゆっくりと軽くなってゆく。すっかり軽くなってしまって、この生を手放せる日がくる。それだけが、今の私の、唯一の希望だということが、あまりにも虚しい。
 
父親 https://keredomo.tumblr.com/post/639728309119451136/%E7%88%B6%E8%A6%AA
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hi-majine · 4 years
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古典落語「小言念仏」
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 信心《しんじん》は徳のあまりということをよく申しますが、まごころこめての信心は、まことにすくないようでございます。  なかには、不景気で、商売もおもしろくないから、ひとつ信心でもしてみようかなどという、でも信心だの、また、おもしろ半分だの、もののついでなどというご参詣もあるようで…… 「おい、ついでに観音さまへいこうじゃないか」  という。  いって、ほんとうに参詣するのかとおもうと、お堂からフイとわきへそれて、映画館や寄席のほうへおまいりにいってしまいます。怪しからぬわけのものでございます。  まことのこころというのは、寒《かん》三十日のあいだの寒まいり、こればかりは、しゃれやじょうだんではできません。  寒風肌をさくようなさむい晩、ひとえの行衣《ぎようい》一枚で、わらじをはいて、雪の降る日も、風の夜もいとわず、「六根清浄《ろつこんしようじよう》、六根清浄」と、駈けてあるきます。そのさむいすがたで信心するのですから、神さまもいくらかご利益《りやく》をあたえるだろうとおもいます。  さむい時分に、さむい思いをして、わが身を苦しめてご利益があるものなら、暑い時分に暑い思いをしたら、おなじご利益がありそうなものでございますが、まだ暑中まいりというのはございません。  暑中九十度以上の暑さに、シャツを五枚に、ももひきを五枚はいて、襦袢《じゆばん》を五枚、胴着を五枚、綿いれを五枚、羽織を五枚、上から二重まわしを着て、襟巻《えりま》きをして、ふところへかいろを三つ、背なかへ四つもいれて、午後の一時か二時ごろ、往来を「六根清浄、六根清浄」と駈けてごらんなさい、たいがい目をまわしてしまいます。
 むかしは、お賽銭《さいせん》は、一銭がふつうでございました。二銭、三銭あげるかたは、ご利益をよけいさずかろうという、欲から割りだしたので、なかには、また、五十銭銀貨をあげるかたがございましたが、これは、自分で承知してあげるわけではない、色がさびてるところから、一銭銅貨とまちがえて投げてしまって、あとで気がついて、 「あっ、まちがえた、ちくしょう!」  うらめしそうに賽銭箱のなかをのぞいているひとがございます。 「ああ、つまらねえ。もったいないことをした」  どっちがもったいないかわかりません。  わずかなお賽銭で、おたのみあそばすことがなかなか多うございます。  どんなかたでも、神仏にむかって、家内安全なら安全、商売繁昌なら繁昌と、ひとつおねがいあそばすかたは、おそらくございますまい。たいがい五つや六つ、多いのになると、一ダース半ぐらいもたのんでおります。  正面にむかって、ポンポンと柏手《かしわで》を打ちます。あれは、なんのためだかわかりません。人間同士なら、目下の者を呼ぶときに手を打ち鳴らします。親や主人を、手をたたいて呼ぶひとはございますまい。神さまを目下だとおもって手をたたいて呼んでるんでしょうか?  これから拝みます。神仏にむかったら、かならず十本の指は口のところへもっていらっしゃいます。これは、ねがいごとが叶《かな》うという字をこしらえるので、口に十の字、なかには、口の上へ十の字をもっていきます。はなはだしいのは、あたまの上のほうへいっているのもございます。まあ、上でも下でも、手をあわせているのは殊勝《しゆしよう》でございますが、なかには、片っぽうの手をふところ手をして、かゆいところをかきながら、手さきでのみをつかまえまして、それをひねって、賽銭箱の角《かど》でつぶしたりなんかしております。殺生をしながら信心をしてもなんにもなりません。  これからおねがいするわけですが、ざっとねがうところを申しあげてもずいぶんございます。 「四国は、讃州那珂《さんしゆうなか》の郡《こおり》、象頭山金毘羅大権現大天狗小天狗《ぞうずさんこんぴらだいごんげんだいてんぐこてんぐ》、家内安全、息災延命《そくさいえんめい》、商売繁昌、守らせたまえ、悪事災難、剣難、盗難、水難、火難をのがれさせたまえ」  これで一銭なんですから、ひとついくらにつきますか? ……これで、のこらずご利益があったら、こんな安いものはございません。  拝むときには、ほかに気が散らないようにと、目をつぶって拝みます。目をつぶったって、鼻までつぶるわけにはいきませんから、となりに若い女のひとなんかがならんで拝んでますと、おしろいの匂い、香水の匂いなんかが、つんつんと鼻へはいってまいります。そうなると、つい目をあけちまうということになるので…… 「妙法蓮華経《みようほうれんげきよう》、南無妙法蓮華経《なむみようほうれんげきよう》……ふんふん、ふんふん、妙法蓮華経、妙法蓮華経、ふんふん、ふんふん、南無妙法蓮華経……うん、こりゃあ、若くてきれいだな……もし、ねえさん、袂《たもと》がひきずってますよ……南無妙法蓮華経、妙法蓮華経、妙法蓮華経……ああっ、こうもり傘がたおれましたよ。お賽銭箱のすみに立てかけておいたらいいでしょうよ。いいえ、どういたしまして……南無妙法蓮華経、妙法蓮華経、妙法蓮華経……きれいだなあ、ほんとうにきれいだ。娘じゃあねえな……ひとのかみさんでもなし、水商売の女でもなし……妙法蓮華経、妙法蓮華経……なに者だろう? うん、そうだ、二号さんかな? こういう女を囲っておくのはどんなやつだか、ちくしょう法蓮華経……」  信心にもなんにもなりゃあしません。  お若いうちは、気のまよいというものがございます。  年をとると、気が定《さだ》まると申しますが、そうばかりもまいりません。  よく念仏三昧《ざんまい》をなさるかたがございます。  こういうひとは、朝起きますと、仏壇の前へ坐りまして、木魚《もくぎよ》や鉦《かね》をポクポクカンカンたたいておりますが、叱言《こごと》まじりの念仏で、なんのための信心だかさっぱりわかりません。 「なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみだぶ。おいおい、ばあさん、仏壇を掃除しなきゃあいけねえよ。ほこりだらけじゃねえか。無精《ぶしよう》しちゃいけねえ。なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみだぶ。仏壇掃除することと、猫ののみをとることしか用はねえんじゃねえか。なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみだぶ。おめえなんぞ、おまえなんぞ、もうじきあの世からおむかえがくるんだぞ。なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみだぶ。なに? おじいさんがさきでしょうだと? ばかあいやあがれ。なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみだぶ。おいおい、仏壇の花がしおれてしまってるじゃねえか。仏さまの花をしおれさしておくことがあるかい。なむあみだぶ、なむあみだぶ。だれだい、この線香を立てるのに横に立てるのは? 仏壇が灰だらけになってしまうじゃねえか。なむあみだぶ、なむあみだぶ。おばあさん、若い者にさせちゃあいけませんよ。仏壇のことは、おまえさんがおしなさい。なむあみだぶ、なむあみだぶ。おいおい、赤ん坊が泣いてるよ。お念仏のじゃまにならあ。ぴいぴい泣かせるな。なむあみだぶ、なむあみだぶ。なに? 泣くからしかたがねえと? だれだい、よけいな口をきくのは? 泣かさねえようにするのが、おまえたちの役だ。なむあみだぶ、なむあみだぶ。なんだって、けさは、またぴいぴい泣くんだな。ああ、よく泣くとおもったら、金坊、おまえがかまったんだな。兄さんのくせに赤ん坊をかまうやつがあるか、大きいからだをして……早くごはんを食べて学校へおいでなさい。おそくなると、先生にしかられるよ。なむあみだぶ、なむあみだぶ。こんどは、ちっと勉強をしなさい。なむあみだぶ、なむあみだぶ。このあいだの通信簿《つうしんぼ》をみろ。乙《おつ》ばかりじゃあねえか。ちと勉強しろ。なむあみだぶ。なに? 乙ばかりじゃあねえ? 丙《へい》もある? ばかっ、丙や丁《てい》のあるのをじまんするやつがあるか。なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみだぶ。おい、赤ん坊のものをとって食べるな。意地のきたねえやつだ。なむあみだぶ、なむあみだぶ。なんだ? ようかんか? うまそうだな。おれにも半分くれ。なむあみだぶ、なむあみだぶ。泣いてもかまわねえ、半分とれというのにな。なむあみだぶ、なむあみだぶ。おいおい、鉄びんが沸《に》え立っているぞ。ふたを切らなくっちゃあいけねえ。早くしねえと、吹きこぼれるぞ。なむあみだぶ、なむあみだぶ。そーら、吹きこぼれちまった。みろ、灰だらけになって……だからいわねえことじゃあねえ。なむあみだぶ、なむあみだぶ。おいおい、ごはんが焦《こ》げてるとみえてくせえぞ。なむあみだぶ、なむあみだぶ。なに? となりのだ? となりのだって焦がしちゃあいけませんよ。となりへいって、そういってやりな。なむあみだぶ、なむあみだぶ。けさは、味噌汁をこしらえたのか? なむあみだぶ、なむあみだぶ。お汁の実はなんにしたい? なむあみだぶ、なむあみだぶ。まだわからない? なにをしているんだ? 子どもが学校へいくのがおそくなるじゃあねえか。なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみだぶ。なに? お汁の実はいもだ? そんなものは、ちょっくら煮えるもんか。胸が焼けて屁《へ》ばかりでるじゃねえか。なむあみだぶ、なむあみだぶ。おい、おもてへどじょう屋がきた。どじょう汁にしな、どじょうに……なむあみだぶ、なむあみだぶ。早くどじょう屋を呼ばねえかよ。早く呼ばねえと、いっちまうぞ。おいおい、そんなちいせえ声で聞こえるもんか。もっと大きな声だして呼べってんだ。なむあみだぶ、なむあみだぶ。どじょう屋がいっちまうてんだよ。なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみだぶ。どじょう屋! なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみだぶ、どじょう屋! なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみや! どじょうや、どじょう……あべこべになっちゃうじゃあねえか。なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみだぶ。どじょう屋きたかい? たくさん買わなくってもいいよ。五合《ごごう》買えばたくさんだ。五合いくらだか聞いてみろ。なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみだぶ。なに? 十五銭? そりゃあ高えや。高えから、もっと値切んな。十三銭に負けろって……負けなきゃあ買わねえといえば負けらあ。なむあみだぶ、なむあみだぶ。それみろ、負けたろう? 惜《お》しいことをした。もう一銭値切りゃあよかった。なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみだぶ。早くいれものをだしてやれ。な��あみだぶ、なむあみだぶ。目方《めかた》ごまかされるといけねえから、そばについてろ、なむあみだぶ……二、三びき負けてもらいな。なむあみだぶ、なむあみだぶ。なにを? 負けなければ、かまわねえから、どじょう屋がよそ見をしてるうちに、ぎゅっとつかまえて、二、三びきつかみこめ……なむあみだぶ、なむあみだぶ、おいおい、ざるなんか持ってったってだめだ。なべを持っていくんだよ。どじょういれたら、すき間からな、ふたをしといて酒をつぎこんでみろい。そうすりゃあ、どじょうがうまくなるんだい。なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみだぶ。どうだ、苦しがってあばれてるだろう? え? 平気で泳いでる? 酒が水っぽいんだよ。なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみだぶ。ふたをおさえて火へかけろ。ぎゅっとおさえてねえと、苦しがってとびだすぞ。なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみだぶ。え? ごとごといってる? 苦しがってるんだ。おもしれえな。なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみだぶ、なむあみだぶ……しずかになった? ふたをあけてみろ。なに? 腹をだしてみんな死んじまった? ざまあみやがれ」
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misen9710 · 3 years
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朝比奈潤(ドMおじさん)@doemojisan
今から15年ほど前、20代後半の頃に個別指導系の学習塾で数年間働いていた。担当は男子中学生ばかりだったがその中に明らかにオーラが違うイケメンがいた。今で言えば坂口健太郎によく似ていたので、ここでは彼を坂口君と呼ぶ。坂口君は身長180弱、不良っぽさと中性的な部分を併せ持ったルックスだった。
実際、彼はよくモテていた。恥ずかしい話だが、私は女性の生態についての知見をほとんど彼から得たと言っても過言ではない。30歳手前の大人が14~5歳の少年から女について教わるという屈辱は私を大いに苦しめたが、童貞だった私には坂口君が無邪気に話すモテ話が抗いがたい魅力を持っていた。
「さっき逆ナンされてカラオケでセックスしてきちゃった」私が担当してすぐの頃、彼が述べた遅刻の理由である���成績の良い子が行くような塾ではなかったから真面目に勉強しに来ている生徒は少ない。それでもこの発言は衝撃的であった。事の真偽はともかくとして、私は注意するよりも呆然としてしまった。
イケメンの中でもよりすぐりの「超イケメン中学生」には凡人には想像し得ない奇跡のような出来事が毎日起きている。逆ナンパはそれこそ日常茶飯事だ。家電量販店で暇をつぶしていたら、見知らぬ40代のマダム風女性に当時、流行っていたゲームボーイアドバンスを買ってもらったこともあるという
奇跡というのはたとえば、繁華街ですれ違った20代の女性に道を聞かれ、親身になって教えたところ連絡先を聞かれ後日、お礼がしたいと食事に誘われる…といったようなことだ。そんなことがあるのだろうかと思う。私は42年間生きて、宗教の勧誘以外で一人歩きの女性に声をかけられたことがない
こうしたエピソードの一つひとつに何とも言えない迫力を感じ、私は授業中の彼の雑談、自慢話を黙認した。そういった話に私自身が興味を持っていた。彼の携帯電話の画像フォルダには今まで関係した女性との画像が収められていた。その数の多さ、写真に収まった女性の美しさには圧倒される思いであった
そのフォルダを全部見たわけではないが、一際目を引いたのは坂口君と同世代であろう白人とのハーフの美少女だ。玉城ティナ、トリンドル玲奈に似た雰囲気の彫刻のように美しい顔だった。とても中学生には見えない。そしておっぱいも、服の上からでもそれなりの大きさになっているのがわかった
何枚かの画像には私と同世代、もしくは30代であろう女性も写っていた。私には視線すら合わせない同世代の美女が15歳の少年には心を開き体も許しているのかと思うと、やるせない思いであった。自分の私生活がとてつもなく惨めに感じ、オスとしての能力の違いを見せつけられる思いであった
当時の私生活は今よりも悲惨であった。休日ともなれば昼近くまで惰眠を貪り、起きれば近所のコンビニへ行く。道中、美少女とすれ違えばその顔や胸の膨らみを凝視して目に焼き付け、帰宅後はその美少女を想像しながら自慰をする。そしてコンビニ弁当を食べテレビを見ながら夕方になるとまた自慰にふける
坂口君が恋愛ゲームを楽しみ女性を楽しませ、そして愛されている一方で、私は道行く美人を盗み見ては服の上から伺えるおっぱいの大きさを確認して脳裏に焼き付け、その乳房を揉みしだく妄想にかられながら一人慰め、果てる。東京砂漠とはこのことだろう。私は自分の情けなさに消え入りたくなった
坂口君を教えていて気付いたことがある。それは女も男と同じように気になる異性をチラ見するという事実だ。教室で隣り合って座っていた私にはそれが手に取るようにわかった。そしてチラ見された側は視線に完全に気付く。チラ見されている事に気付かれまいとあえて見ないようにする行為すらもほぼわかる
授業時間が終わり坂口君が帰宅しようとすると、いつも奇妙な光景が繰り広げられた。女子生徒たちがみなソワソワしながら坂口君の様子を気にしているのである。女子生徒の中でもカースト上位と思われる、沢尻エリカ似のリーダー格はいつも偶然を装って坂口君の周囲をうろつき会話の機会を伺っていた
沢尻の積極性に私は驚いた。女の子は相手次第でこれほどまでに積極的になるのである。カースト下位の女の子には坂口君と話す機会は与えられない。女子リーダー格の沢尻は、その地位を生かして他の女の子を牽制していたのかもしれない。授業が終わると上位グループが坂口君を取り囲むこともあった
坂口君と沢尻はもしかしたら関係を持っていたのかもしれない。なぜなら沢尻が坂口君に夢中になっていたのは誰の目にも明らかだったからだ。坂口君に入れあげていたのは沢尻だけではない。女性社員にもまた坂口君は人気があった。中でもある20代後半の女性社員が取った行動は生々しかった
の女性社員は波瑠に少し似ていたのでここでは波瑠さんと呼ぶ。長身でスレンダー、キリッとした顔つきが近寄りがたい雰囲気を出していて仕事が速かった。その波瑠さんは、愛想が良いほうではなかったが、坂口君と話すときだけは満面の笑みになるのである
志望校などを調査する資料を坂口君が提出し忘れたことがあったが、その時の波瑠さんの動きは凄かった。坂口君の席の隣にひざまずいて「ここに名前を書いて」「学籍番号はここ」と、手取り足取り教えながら書かせているのだ。どこに名前を記入するかなどバカでもわかる。波瑠さんの魂胆は明らかだった
波瑠さんが坂口君に資料を書かせている間、二人の物理的な距離が徐々に近づいていくのがわかった。波瑠さんは時に坂口君に覆いかぶさるように資料の書き方を教えていた。私には波瑠さんのおっぱいが坂口君の背中に当たっているように見えて仕方がなかった。いや、間違いなく胸と背中が触れ合っていた
波瑠さんは長身だったが胸はそんなに大きくなかった。体の線がはっきりとわかるような服を着てくることもなかった。私はそんな波瑠さんが自らの女の部分を強調していることに衝撃を受けた。よく恋愛マニュアルに「OKサインを見逃すな」なんて書かれているが、こういうことなのかと思った
女のOKサインとはかくも露骨なものなのだ。本物のOKサインとはこのようなものなのだと思い知らされた。恋愛マニュアルに書かれた「酔っちゃった~」なんていうセリフや、普通の男が「もしや」と感じるセリフなど、このときの波瑠さんのOKサインに比べれば勘違いに近い
手取り足取り教えられながら資料を書き終えた坂口君の行動も私を驚かせた。「疲れた~」と言いながら席を立った坂口君は「波瑠さんの肩揉んであげます」といって肩のあたりを揉みはじめたのだ。波瑠さんは顔を真っ赤にしている。あのクールビューティの波瑠さんが真っ赤になって動揺している
波瑠さんにひそかに思いを寄せていた私は激しく嫉妬した。童貞ゆえの自信のなさで会話すらままならなかったが、いつも彼女を盗み見ていた。服の上から伺える乳房の形を想像しながら自慰したこともある。年上の彼氏がいるという噂にうちのめされたこともあった
そんな高嶺の花だった波瑠さんが「どうぞ私を抱いて」と言わんばかりにオンナの表情をしていたことがショックだった。一見、ツンとしているように見える女性でもイケメンに見つめられたらイチコロなのだ。しかも相手は15歳の少年である。この事実は私を苦悩させた
その日、自宅に帰った私は波瑠さんの表情を思い出していた。肩を揉まれた時の波瑠さんはなんと幸せそうな表情をしていたことか。坂口君が波瑠さんを抱いている姿を想像して��た。すると嫉妬と悔しさで不思議と興奮してくるのがわかる。寝取られ好きの気持ちがわかった。私はその夜、何度も自慰をした
この一連の出来事は童貞を捨てたいという思いを強めた。風俗でもいいから童貞を捨てれば嫉妬に苦しまなくてもすむかもしれないと思った。次の休日、ネットで入念な下調べをし風俗へ向かった。初めての記念だからと一番美人でゴージャスな容姿の女の子を指名した
指名し部屋で待つ間、胸は高まった。期待と緊張が入り交じり、武者震いが止まらなかった。女の子が部屋に入ると緊張は限界を越えた。手足が震えている。まずい。嬢に童貞であることを悟られたくない一心で、手足の震えを隠し手慣れた様子を演じようとすればするほど震えは強まり会話にも妙な間ができた
正常なコミュニケーションすら成立しない私を前に、風俗嬢は徐々に心を閉ざしていった。恐らく私は緊張と劣等感にまみれた恐ろしい表情をしていたのだろう。風俗嬢が私を不気味がり、怖がっているのがわかる。私はその雰囲気をどうすることもできず、無言で胸を揉み続けた
子泣き爺のように後ろから覆いかぶさり、ぎこちなく胸を揉みしだく私の表情をチラリと見た風俗嬢は、ほんの一瞬だが嫌悪の表情を見せ、その後は私をできるだけ見ないようにしていたと思う。私の性器に手を伸ばし、数回上下に動かしながら刺激を与え勃起を確認した彼女は無言でコンドームを装着させた
コンドームを装着されながら私は女体に感じ入っていた。初めて触る女性のおっぱい。その柔らかさ美しさに衝撃を受けた。女の乳房とはこんなにも男に幸せな感情を与えるのかと。ずっと揉み続けていたい衝動にかられた。しかしコンドームを装着させた嬢は女性器に何かを塗り込んだあと挿入を促した
正常位の体勢から、私はアダルトビデオの見よう見まねで挿入を試みた。しかし、これが意外に難しい。挿入しようとし、角度や位置の違いから押し戻される。それを数回繰り返すうちに動揺は強まった。童貞であることがバレたかもしれない。そして何より精神的動揺から勃起が弱まっていくのを感じた
萎えて柔らかくなった男性器を女性器の入り口に押し付け、どうにか挿入しようとして押し戻される滑稽きわまりないやりとりの後、私は挿入を諦めた。気まずさを誤魔化すため、私は風俗嬢のおっぱいにむしゃぶりついた。風俗嬢は事務的に私の性器を手でしごき、再び勃起を促した
胸を揉むとわずかだが、萎えた性器が復活する。ベッドの上にお互い向き合って座りながら無言のまま、私は胸を揉みしだき、風俗嬢は淡々と私の性器をこすり上げる重苦しい時間が20分くらい続いた。異様な光景だったと思う。やがてコンドームがシワシワになったところでタイマーの警告音が響いた
「時間…」とつぶやいた風俗嬢はコンドームを剥ぎ取り、激しいペースで性器をしごいた。私も胸を揉むペースを早める。すると数十秒後、精子が放出された。思わず「あっ」という声を上げてしまった。賢者モードに陥る私をよそに彼女はティッシュで精子を拭く。これが私のみじめな初体験だった
挿入に成功しなければ真の意味で童貞を脱したことにはならない。翌週も同じ店に行った。指名した娘は先週の子ほど美人ではなかったがとても愛想が良かった。武者震いしながら性行経験者を装う私のバレバレの演技にも笑顔だ。私を傷つけないよう、私が彼女をリードしている錯覚を与えながら挿入へと導く
メリメリという感覚の後、私の性器はするっと女性器の中に入った。挿入に成功した。私は激しく動くことで緊張を悟られないように努めた。しかし、このとき私は膣内での射精には成功しなかった。風俗業界ではこれを中折れと呼ぶらしい。結局、私は手と口で嬢に刺激されながらゴム内で発射させられた
恥ずかしながら私はセックスがこんなにも難しく、重圧がかかるものだとは知らなかった。機会さえあれば誰にでもできると思っていた。水を飲み、道を歩き、ベッドで寝る。そんな人間の当たり前の営みと同じく挿入と射精ができるのだと。しかし実際は違う。自転車の補助輪を外すような訓練が必要なのだ
風俗店から帰宅後、ネットで調べたところ、私のような症状は「膣内射精障害」と言うらしい。自慰ばかりしているモテない男が患う風土病のようなものだ。普通の男性が患うこともあるが、多くは加齢、飲酒、あるいは倦怠期で刺激を失ったことが原因であり、コンディション次第ですぐ回復する
自慰ばかりしている男性は、しばしば自分の性器を強く握りしめる。そして、それは膣が加える刺激を上回る。性交よりも自慰の回数が圧倒的に多い非モテ男はそれに慣れきってしまい、いざ性交するときに刺激が足りず射精に至らないのだ。オナニー病、モテない病と言える。こんなに哀しい病があるだろうか
結局、膣内での射精に成功するまで、童貞を捨てた日から3年以上の月日がかかった。風俗店へ通いつめた回数は40回を超える。30歳を超え、ようやくである。中折れし途中で萎えた性器を手でしごきあげられ、射精させられるという情けないセックスを40回以上も繰り返したのだ
童貞を捨てれば消え去るかと思われた劣等感はさらに巨大になった。3年の間、自らの性的能力の低さ、異常さを突きつけられた思いがした。15歳の少年がいとも簡単に、毎日のように行う「普通の性交」にお金を支払ってもなお達しないのである。波瑠さんら女性社員や生徒がこれを知ったら、蔑み笑うだろう
恥ずかしい話だが、今でも私は2回に1回は膣内射精に失敗する。これは異常なことだろう。しかし、異常者なりに気づきもあった。風俗嬢に「実は素人童貞で経験が少ないんです。リードしてください」と白旗を上げるのだ。すると精神的に少し楽になることがわかった。少なくとも手足の震えは軽減した
裸の女性を前にした緊張、武者震い、手足の震えは、恐らく素人童貞を恥に思い隠そうとする男のチンケなプライドと密接に関わっている。あえて白旗を上げることで、それはいくらか軽減する。しかし「途中で萎えたらどうしよう」という重圧は依然として残る。この重圧から逃れる方法を私はいまだ知らない
風俗嬢に「経験が少ないのでリードしてほしい」とカミングアウトすると、高確率で「そういうお客さんの方が好き」と言われる。これは好き嫌いというよりも、その方が業務上、楽なのだろう。世の女性が素人童貞を好きというわけではない。むしろ素人童貞で射精障害のおっさんなど視界にすら入っていない
しかし指名した子がドンピシャで好みだった場合は、経験が少ないことを明かせずにいた。もしかしたらこの娘と付き合えるかもしれないという下心からである。冷静に考えれば風俗嬢が客と付き合うことなどあるはずがない。にも関わらず、自分を偽りカッコつけてしまうのだ
なぜか。それは女性との接触が極度に少ない非モテには万に一つの可能性でさえ貴重な機会だからだ。自分でも狂っていると思う。しかし非モテの劣等感とは、これほどまでに人間の判断力を狂わせるのである。こうして性に習熟した大人の男を演じようとして射精に失敗し呆れられる。私はこれを繰り返した
風俗店通いで不快だったのは待合室の存在だ。見るからに女と縁がなさそうな醜い男たちが折り重なるように狭い部屋に押し込められ、煙草の煙にまみれながら携帯電話の画面を覗いている。そしておそらく彼らは軽く勃起している。この世の終わりみたいな場所だ。気持ちの悪さに身の毛がよだってしまう
フェミニストが憎み、罵り、滅ぼそうとしているのは風俗店の待合室にいるような男たちのことだろう。決して坂口君のような美少年ではない。この点に関して、私はフェミニストに深く同意する。彼らを消し去ることで、世界は少しだけ良くなると思わざるを得ない。私も消えてしまうけれども
おそらく坂口君は、平均的な非モテ中年の何十倍、何百倍もの女性を傷つけ、悲しませ、不安にさせてきたはずだ。しかし、世の女性はそれでも坂口君を愛する。そして彼に特別扱いされることを望む。フェミニストも坂口君を攻撃することはない。彼の存在そのものが女性を幸せにするからだ
私のような非モテ中年がフェミニストにお願いしたいのは、せめて我々が生きる権利だけは奪わないでほしいということだ。風俗店の待合室に来てしまうような種族は、自分ではどうにもできない性衝動と法律の折り合いをつけ、やむにやまれず安月給を工面して数万円を握りしめてやってきた善良な市民である
男がお金を払って快楽を得ようとすることに関して、女性の目は厳しい。それは本来なら淘汰され、消えてなくなるべき遺伝子が、お金の力で力を得ることへの本能的な嫌悪であると思う。この本能は現在の人権制度、博愛主義と完全に対立する。この点について現代社会はまだ答えを見いだせていないと思う
坂口君には女性を虜にする必殺技があった。それは笑顔で挨拶することだ。なんだ、それだけかと思うかもしれない。しかし彼は笑顔だけで女性を完全にコントロールしていた。私が見る限り、彼はいつも同じように笑顔の挨拶をしていたわけではない。人や状況に応じて、振りまく笑顔の量に濃淡をつけていた
坂口君が最大級の笑顔で挨拶をすると、女たちは皆、有頂天になった。成人女性とてそれは同じだった。みな狂ったように喜んだ。しかし、いつもそれをするわけではない。そうやって濃淡をつけることで、不安にさせたり、嫉妬させたりしながら女たちの行動をコントロールするサイコパス的な側面があった
それは幼少期から女性と濃密なコミュニケーションをすることで得られた天性の能力だろう。真似しようとしてできるものではない。「女性に優しく」と、よく恋愛マニュアルに書かれているが、大半の男が考える優しさは「弱さゆえの優しさ」であって、本質的には媚びや譲歩に近い
そしてこれは重要なことだが、女性はその「弱さゆえの優しさ」には興味がない。いや、嫌悪すらしていると思う。「弱さゆえの優しさ」でどんなに高額のプレゼントを貰おうとも、女たちはなびかない。むしろ坂口君から時に冷たくされ、時に嫉妬させられながら、ごくたまに優しくされる恋愛を選ぶ
坂口君に話しかけられた女性の反応は、若くてハンサムな白人男性に話しかけられた日本人女性のリアクションに近い。若い白人男性が日本人女性を次々といとも簡単にナンパする動画がネット上で賛否を呼んでいたことがあり、私もそれを興味深く観たが、あれはまさしく坂口君の周りで起こっていたことだ
六本木などを歩けばわかることだが、ハンサムな白人男性を連れて歩く日本人女性��不思議と欧米風の所作になる。彼女らは白人男性を連れて歩いているという状況そのものに酔っていて、「みんな見て、これが私の彼氏よ」とアッピールしたくてたまらないように私には見える
白人男性と交際すること、それを周囲に認識させることが自らの格をも上げるのだと確信していないと、ああはならないのではないか。少なくとも冴えない日本人男性を連れて歩く日本人女性は、六本木を彼女らほど我が物顔では歩かない。もっと申し訳なさそうにそそくさと歩いているように私には見える
思えば沢尻や波瑠さんは、坂口君と話しているとき、とても得意げだった。周囲に見せつけるように、「坂口君とこんなに仲が良い私」をアッピールしていた。そして我を忘れて会話を楽しんでいた。沢尻はともかく、波瑠さんまでが中学生相手にそんなになってしまったことは、私に強い衝撃を与えた
私が初めて風俗店へ行ってから数週間後、沢尻の母親からの電話が私の勤務する学習塾を大混乱に陥れた。最初に電話をとったのは私だ。母親が言うには沢尻が波瑠さんからしきりに服装について注意を受け精神的に参っていると。服装についての規則はないはずでは?何が悪いのかということだった
これは沢尻の母親に理がある。生徒の服装を職員が注意することは、基本的にはないはずだ。そんな場面を見聞きしたこともなかった。これは奇妙だ。そして母親は言いにくそうに、話を続けた。「あと…娘が波瑠さんにあなた処女じゃないでしょって言われたみたいなんですけど…」。私は耳を疑った
沢尻母が校舎へやってくると、室長室へ通し、私は退席した。約1時間後、沢尻母が帰ると、今度は波瑠さんが室長室へと呼ばれた。授業時間になっても波瑠さんは戻ってこない。私は嫌な予感がした
納得がいくようでいかない、なんとも要領を得ない説明である。「波瑠さん、沢尻に派手な下着を着るなとか、ピタっとした服を着て来るなとか言ってたらしいですよ…。で、別の教室へ行って、すぐ辞���たみたい…」。私はそのことを坂口君から聞いた。そして事の真相にある程度の察しがついた
一連の騒動はおそらく坂口君をめぐる沢尻と波瑠さんの潰し合いなのだ。そして沢尻が勝ったと。坂口君と沢尻がイチャついていたのを見た波瑠さんが嫉妬し、坂口君におっぱいを密着させて接近した。それを察知した沢尻は波瑠さんのクビを獲りにきた…。そういうことなのではないかと
坂口君はなぜ波瑠さんの「その後」を知っていたのか。私は彼に「そんなこと誰から聞いたの?」とは聞けなかった。仮に聞いたら、彼はおそらく「だって波瑠さん、俺のセフレだよ」と無邪気に答えたであろう。波瑠さんに想いを寄せていた私は、それだけはどうしても聞きたくなかった
坂口君は波瑠さんのOKサインを見逃してはいなかったのだ。そして彼は波瑠さんとセックスしていたのだと思う。室長の聞き取りで波瑠さんは、沢尻への仕打ちだけでなく余罪も白状した。そして警察沙汰を恐れた塾側は、噂になる前に波瑠さんをクビにした…。これが坂口君の口ぶりから察した私の仮説である
坂口君と波瑠さんは、いったいどんなセックスをしていたのだろう。15歳にして180cm近い長身、私より10cm以上も高い。きっと性器も立派なのだろう。少なくとも私のような仮性包茎のイカ臭い、粗末な性器ではないはずだ。場馴れした手つきで波瑠さんをリラックスさせ、「好き」と囁き合ったのではないか
坂口君は30人以上とやったと豪語していた。多少盛っていたかもしれないが、説得力はあった。セフレの女子大生からの「生理来たよ」というメールを見せてきたこともあった。当初、私はその意味がわからなかった。数日してようやく危ない日にコンドームなしでセックスしたことを意味するのだと悟った
童貞の男はそんなことも分からないくらい察しが悪い。そのくせ嫉妬深い。坂口君と波瑠さんがセックスしていたことに気付いた日、私は帰宅するなり自慰をした。波瑠さんを奪われた怒りに近い感情が、なぜか興奮を高めた。怒りと興奮で顔を紅潮させながら、あらん限りの力を込めて性器を握りしめていた
そのときの私はこの世のものではないくらい醜い顔をしていたはずだ。嫉妬に狂いながら坂口君が波瑠さんを愛撫する姿を想像し、「畜生、畜生…」と呟きながら性器を握りしめた。膣内射精障害が悪化するとも思ったが、どうにでもなれという自暴自棄の気持ちが勝っていた
そのときなぜか波瑠さんが小ぶりなおっぱいを精一杯寄せて、坂口君の性器を挟んでいる像が思い浮かんだ。パイズリだ。なぜそんなイメージが浮かんだのかはわからない。心の奥底に閉じ込めた性衝動が脳内で不可思議に暴発したのだと思う。そして、その瞬間、私の性器は精子を垂れ流した
その後、私は坂口君の立派な、私の倍くらいはあるだろう性器を波瑠さんが小さな乳房で一生懸命に包み込んで奉仕している場面を思い浮かべながらもう一度、射精した。その後、今度は波瑠さんが坂口君に攻められ、涙声で「ごめんなさい」と言いながら絶頂に至る妄想でさらにもう一度、射精した
それにしても波瑠さんはなぜ沢尻なんかに目くじらを立てたのだろう。たしかに職員にとって沢尻は苛立たしい存在ではあった。反抗的で知性に欠け、徒党を組むタイプの女だ。が、所詮中学生。美人だが波瑠さんの上品な美しさとはモノが違う。しかし沢尻にあって波瑠さんにないものが一つだけあった
大きな乳房だ。沢尻は中学生の割におっぱいが大きかった。それを見せつけるように胸の谷間も露わなキャミソールを着てくることもあった。波瑠さんは沢尻の胸の大きさに嫉妬していたのだろうか。普通ならば、そんな結論には至らない。何より女性は男が思うほど、恋敵の胸の大きさを気にしない
本当のところはわからないが、少なくとも気にしない素振りを見せる。しかし、こんな普通じゃない状況になった今、どんな可能性だってありうるように思われた。沢尻が大きな胸で坂口君を誘惑していると確信した波瑠さんが、嫉妬にかられ派手な下着や体のラインが出る服を着ないよう命じた…
そんなのはアダルトビデオの中だけの話。そうやってシンプルに考えられる人を私は羨む。いろいろな可能性を考えたとしても、それは何も生まない。真相は本人に聞いてみなければわからないのだから、考えたって仕方がないのだ。本人ですら、自分が何を考えているのかわからないのかもしれないが
波瑠さんは胸は小さく、おそらくAカップかBカップといったところだったが、170cm近い長身で顔が小さく手足が長い。他人の美貌に嫉妬するようなコンプレックスがあるようには見えなかった。沢尻は165cmくらい、Dカップくらいだろうか。大人びてはいるが品の無いヤンキーみたいだなと思うこともあった
私は波瑠さんに話しかける勇気はないくせに、チラチラと盗み見ていた。ブラウスの間からブラジャーが見えていて、凝視してしまったこともあった。もう少し角度をずらせば波瑠さんの胸の大きさが確認できるような気がした。思えばあれは気付かれていただろう。なんとも情けない話だ
真剣佑という俳優が14歳当時、37歳の子持ち既婚女性と肉体関係を持ち、その女性が真剣佑との間に生まれた子供を出産したというスキャンダルがあったはずだ。私はこの報道を聞いて真っ先に坂口君と波瑠さんのことを思い出した。この世には現実にこういうことがあるのだ。「事実は小説より奇なり」である
37歳人妻の理性はなぜぶっ壊れたのか。希少性の法則という言葉がある。人は希少なものや機会には価値があると思い込み、しばしば非合理的な行動をとる。旅先で割高な土産物を買ったり、閉店セールで安いからと絶対に使わないものを買ったりしたことはないだろうか
希少性の法則は性愛においてこそ当てはまると私は考える。目の前にいる美少年が完全に自分の好みのタイプで、彼にいま好意を伝えなければもう会えないかもしれないという状況があったとしたら、女の理性は少しづつ壊れていく。「こんな子にはもう出会えないかも」「今しかない」という感覚
それでも法に触れることを恐れて、性衝動を理性で強引に閉じ込めるのが普通の人間だ。しかし、心の奥底に折り畳まれた性衝動を侮ってはいけない。理性で閉じ込めるたびに性衝動は力を増す。性的な衝動を発散する機会が少ない、抑圧された女性の性衝動は男の数倍強い
希少性の法則を突き詰めれば、非モテ男の生存戦略は希少性を獲得することということになる。容姿に恵まれていないが幸せな性愛生活を送りたいと願うなら、希少な存在になるべきだ。この観点から、モテたくてバンドをやる、芸人を目指す、漫画家を目指すという行為はまったく正しい
希少な存在だけが女の心を揺さぶり、理性の扉を開くことができる。モテたいのに会社員になってそれなりの年収を貰おうと努力するのは完全に間違っている。そもそも非モテは会社で出世できない。会社とは非モテがせっせと努力して得たものをリア充がまるで自分の手柄のようにかっさらっていく場所だ
イケメン男子中学生に手を出した年上の女は、遊ばれた挙げ句、無残に捨てられるだけなのになぜ…?と理解ができない人もいるだろう。非常に浅はかな考えだ。性愛に賭ける女の深い情念を甘く見すぎている
女はイケメンに近づけば遊ばれ捨てられることなど百も承知なのだ。15歳の美少年に手を出せば、彼と同世代の美少女と比較され、子供と侮っていた女に男を奪われ、時に恋敵の女子中学生よりも胸が小さいというみじめな現実を突きつけられ嫉妬に狂うことだって覚悟の上なのだ
男子中学生と成人女性の間には、事実、性愛関係が成立する。たった今も地球のどこかで男子中学生と成人女性はセックスをしている。にも関わらず、それは世間的には許容されない。いや、法的、社会的、道徳的、教育的などあらゆる観点からそれは否定される
そして弱虫や嘘つき、偽善者たちは、男子中学生と成人女性の性愛関係など、この地球上にまるで存在していないかのように振る舞う。しかし、私は文学的、ないし芸術的な観点からは、それを肯定したい。少なくとも私には坂口君に肩を揉まれ至福の表情を浮かべる波瑠さんを咎める気にはなれなかった
私は数日前にTwitterでここに書いたトラウマを吐き出したことで、ようやく性愛と向き合うことができた。性愛以上に大事なものはこの世に存在しないことにようやく気付いた。そして素人童貞なりに、この世にどうにか自分の爪痕、生きた証を残したいという強い生の衝動に突き動かされてこれを書いている
私の書く文章を気持ちが悪いと思う人は多いだろう。作り話だ、決めつけだ、素人童貞に何がわかるという意見だってあるはずだ。批判したければ批判するがいい。笑いたければ笑えばいい。しかし、批判しても笑っても、すべての人間に気色の悪い性的衝動が存在する事実を消し去ることはできない
この一連のツイートを波瑠さんと、私を射精に導いたすべての女性に捧げる…って、捧げられても困るか…。まあいいや(完)
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ponpompom · 4 years
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2020年ベスト映画
長い文章を人目にさらすのが
だいぶ久々だなぁと思いながらいざ書くぞ!
2020年。終わってもう10日以上!?はやぁ…。
コロナですっかり現場がなくなり、ライブは配信、イベントも配信。
友達に気軽に会いに行くのも難しくて
zoom飲みなんてしてみたりして。
というような情勢で、今までより楽しんだのが映画だった。それも映画館で観るやつ。
ということで配信で見たのは今回のランキングから外しています。
振り返ってみれば2020年のはじめとおわりに好きなやつが固まっててなんか面白い。
ではいきます!
10、mid90s
スティーヴィー(主人公の男の子)がちっちゃすぎて本当にあんた、ワルになれるのか!?と見守る形になってしまった・・・
二番弟子の子に嫉妬されちゃってウワー!みたいなのはとてもわかるというか思春期の感情って感じ。グループのリーダー、レイはかっこいいよね・・・。
ラストシーンがめっちゃエモくてよかった。全体的な雰囲気が好き!という映画。
9、魔女見習いをさがして
おジャ魔女世代なので観ないと〜!と思って観たら思った以上におジャ魔女世代向けというか
昔夢中になったものに支えられて生きてる人たちの話で新しい切り口〜!となった。
百田夏菜子さんめっちゃ声優上手い。
あと男はみんなおんぷちゃんがすき。
わたしは推しとかいう概念あんまりなかったなぁ〜と思いながら観てたらそういえばはづきちゃん好きだったなと思い出した。
8、アルプススタンドのはしの方
地元の高校が舞台演劇でやって話題になった作品…をまた映画にしたもの。
高校生の演劇!わたしの星…!とか思い出しつつ鑑賞。
高校球児たちや、華やかな人達とはまた違う
はしの方、にいる人たちのお話。
なのでグラウンドは一切映らず(それが舞台装置だから演劇っぽくて良いのだが)
自分は完全にこっち側だなぁと思いつつみたけど
わたしよりガンガンに青春してた、いいわね…
7、劇場版鬼滅の刃 無限列車編
鬼滅の刃、アニメ化して配信中くらいから観てました…そんでハマって原作電子書籍で集めてって、本誌追いついて最終回までハラハラしながら読んだタイプの人ですので映画楽しみにしてた!
煉獄さんの話はほんと漫画でも泣いたけどアニメになると余計泣けたよね…。
炭治郎の芯を作った人だよ。尊敬だよ。
正直話題になりすぎて今さら特にいうことない。でも好きな作品だった。こんなに忠実にアニメ化してくれたらワニ先生も嬉しいよね。
アホみたいに上映してた時期の、朝7時30分〜の回で観たのが良い思い出。
こんな朝から映画ってやってくれるんだね…
6、ブックスマート
結構ゲラゲラ笑える。なんのかんの全員いいやつで幸せになった〜。
 ハリポタの組み分けの話、アメリカでもするんだ!イケてるひと��ちでもするんだ!わー!ってめっちゃテン��ョンが上がった…。
ネタが多すぎて話が絞れねぇな…。
主人公の女の子たちがいわゆる陰キャ(死語?)ではあるが、頭が良くて自分に自信があるのでめっちゃ褒め合いをするところがとても良い。仲の良さ伝わる。
あと、ジェンダー的なことも、当たり前に描いていてそこに大して主題を置いてなくてたまたま「そうなの」というだけ、という雰囲気が最近の映画だなあとなった。
5、羅小黒戦記
シャオヘイかわいいよ…無限さまかっこいいよ…。
画面がずっと美しいしかわいいしアクションもすごいし、ありがてぇ〜って感じで笑顔になった。
話が好き!というよりは画面が好きだ!!!という映画。
アニメでもなかなか珍しいかもしれない…。絵柄が大好き!動きが大好き!
早く配信とか始まって欲しい。何か作業しながら流していたい。
 以下、観た当時の気持ちのまま書いた感想をそのまま貼り付けちゃうので、
ネタバレが多く含まれますのでご注意ください…あといちいち長いのが多いと思うけど…。
(ていうほどこれ読んでくれる人いるのかは不明)
 4、殺さない彼と死なない彼女
※これは2019年の映画だけど私の初見が2020年だったので
話題になる前はいつものしょうもないデートムービーかよと思っていました(ほんとごめん)
でも、そうではなかった。びっくりするほど真っ直ぐ心に届く映画でした。
 こんな口調で東京の高校生たちはしゃべるのか!?うそやん?というちょっと芝居かかった口調も最初は違和感があったがだんだん癖になる。
3つのお話が平行してるようでいてちょっとずれてる構成もよかった。ラスト付近でつながっていくところがオムニバスの楽しいところ。
 ・きゃぴ子と地味子のお話
きゃぴ子が一番好きなのは地味子なんだから二人が付き合えば全部解決しないか?と思わされるいい百合だった…。
でも女同士で好きあってても、そういう好きじゃない場合の方が多いからな。男の人にしか埋められない心の穴があるんだろうか。
かわいい子のことをやっかむ人たち、まあそらいるんだろうけど、かわいいことは素晴らしい才能だし、勝てないなあと思うし。
きゃぴ子に素直にかわいいって言い続ける地味子もかわいいよ。
 ・八千代と撫子のお話
一途に好きって言い続ける撫子(原作では君が代ちゃんなんだな)がめちゃくちゃかわいい。
通話録音しようとするシーンがめちゃ好き。
好き好き言われる側としては、なんでそんなに好きなんかわからなくなるよね、わかる。
そして、八千代が撫子を好きになったって伝えたら、その関係が壊れるんじゃないかって心配する気持ちもめちゃわかる。
しかし撫子はそこで八千代君に飽きちゃう女じゃなかった、よかった・・。ハッピーエンドで。トラウマを癒してくれる女神だったよね…。
 ・小坂と鹿野のお話
口が悪すぎるけど、お互い絶対好きじゃん素直になれよ!!!と思い続けてたらまあ、そう来たか…。
原作を全く知らずに臨んだので、まあどっちか死んじゃうんだろうなとは思った、思ってたけど、ほんとにどっちも死なないでほしくなる。
なな、生きて。ってそれちゃんと対面で言いなさいよ…。で泣く。
夢の世界がだいぶ救いがあったけど、なんで彼は殺されないといけないんかまったく不条理すぎて殺人鬼はほんとにお前が死ねって思ったな…。
鹿野が小坂のクローゼットで服を抱きしめるところとかほんと無理だった泣いた…。幸せになってほしかった。
 最後に、あなたについていきたいって言ってた鹿野が、小坂を追い抜く演出がマジでよかったです…。(映画オリジナルなんだね)
時系列のずれにも伏線があったんだね。撫子を慰めれるほど元気になってえらい。
 観終わったときメイクがほぼ落ちてました。観れてよかった。悲しいけど暖かいものが残る作品。
※後日原作も読んだけど同じところで泣いちゃってびっくりしたよね。涙腺にダイレクトよ。
 3、ジョジョ・ラビット
ラストシーンでちょっとずつ我慢していた涙が我慢できなくなってボロボロ泣いてしまった、。
結構デリケートな話なのに、思ったより軽やか、序盤はこれ大丈夫なのとか思いつつ。
「ハイルヒットラー!」の応酬とか茶化してやってるもんね・・・
でも戦争と国の思想の刷り込み、差別の恐ろしさはしっかり伝わってくる。
男女差別もバリバリにあるし、弱い者には価値がないっていうのを空気から伝えてきて、しんどい・・。
エルサが隠れている部屋が見つかった時はこれはアレじゃん(ネタバレ防止)
とかとても思ってしまった。隠れ家のモチーフかぶり・・・。
ユダヤ人ってゲシュタポにバレそうになったところが本当に冷や冷やした、絶対に気づかれないでほしい…と祈るように見ていた。
そして見逃してくれるキャプテン.Kが。
フィンケルと同性愛をはぐくんでる(全然明言されてないけどおそらく・空気で、と他感想でも拝見)し、
おそらく表では隠していたけど同性愛もナチスは迫害対象だったらしいしナチズムには反対してたんだろうな、
というのがラスト近辺でもわかる。かっこよくていい男だった。
で、お母さん、ロージーもめちゃくちゃいい女。あんな美女かつ賢い、なのにお母さんって、設定がよすぎ。
そしてお母さんが亡くなってしまったことをあんな形で知るのしんどすぎるし、そこで靴ひもを結ぼうとするけど結べないジョジョ・・・
がラストでエルサの靴ひもを結んであげる。で成長を演出する。ってそんなんグッとくるに決まってるじゃないですか。
極めつけのダンスもね。人は自由になると踊りたくなるのか。音楽が髄所に効いてる映画だったしなぁ。
以下、思ったこと箇条書き
・ヨーキーもいい役。冷静でほんとに10歳なの!?柔軟。と思う。ジョジョにいい友達がいてよかった
・お腹の中で蝶が舞うような。をちゃんとイメージから表しているシーンよかった、かわいい。
・アドルフ・ヒトラー役は監督!?て後で知ってびっくりした。何でもできるんだね・・・。あの感じがでています。
・飢えてるときウサギ食べるのか!?と思ったけど食べませんでしたね・・・
・戦争中のわりにラスト以外は暮らし向きとしてはそれをほんのりとしか感じない、ドイツって結構戦時中も普通の暮らしができてる方だったのかな・・・(史実良く知らないけど)
※めちゃ余談だけど、最近読んだ「戦争は女の顔をしていない」(漫画版)という作品において敵国の女性兵がドイツ人女性がベランダでコーヒーを飲んでいるところを行軍中に見かけて、そんな優雅なことが戦時中もあるなんて!とびっくりしてしまう。みたいなエピソードがあって、それを思い出した。
2、朝が来る
辻村美月さんの作品が元々好きってのもあるけど。
知り合いの映画好きの人たちか絶賛するのわかった。
こんなリアリティある演技合戦が観られるとは…。
例えば施設のギャルや新聞販売所のギャル。
本物連れてきたのかってくらいいそうだったしマジで同一人物かと思った。
 あとやっぱ蒔田彩珠さんの吸引力がすごい。
人を惹きつける魅力。ボサボサの金髪になっても魅力が失われない。
死んじゃわなくて本当よかった。警察来た時死んだわ…って思ってしまったし。
ちびたん、いい子に育ててもらえてよかったね…幸せになってくれ。
 1、パラサイト
…めちゃくちゃ面白かった、面白いって一言で言っちゃうだけじゃダメな気がするけど
ネタバレ禁止ならもうとにかく観てよ~!(PG-12…ひっかかる…じゃなければ)というしかないな
序盤1時間くらいは本当にエンタメで、キンプリの映画みてるんかなくらい声に出して笑うの我慢した、キム家は演技がうますぎるし、
パク家は騙されやす過ぎる。(ダソンには気付かれてたかもしれないが)
ヨンギョ(奥さん)のびっくりし方とか、大げさなんだけどほんとにこういう人いそうなんだよな…。て思っちゃう。
とはいえ、ちゃんと仕事はしてるんだよな、キム一家。
雇用されるかされないかは、技能とか技術じゃなくて「人のつながり」「コネ」ていうのが、
今の社会なんだね始まりがアレだったので…。ギジョン(ジェシカ)がどんな授業してたかは謎だけど。
普通に家政婦の仕事とかハードだと思う、おいしいものが食べれそうなのはいいけどさ…。
ギウ(ケビン)は紹介してくれたお友達のこと一瞬で裏切っていて笑った、でもその友達が紹介しなければあんなラストにはならなかったんやなあ…。
パク家がキャンプに行った時に好き放題していたときまではまあ悪いんだけどほんとに爽快だった、たんのしかっただろうなって。
そっからの急激な展開!もう面白いのにさらにそれが深まる…というか別のベクトルに行くっていう。
富裕層(高台)と貧困層(半地下)だけじゃなく、そしてまた更に下(地下)があるっていうね、
二人分食べるんだよねってドンイクが言ってたのはそういうことでしたか!伏線回収がいっぱい…。
そして本当の意味でパラサイトしていたのはムングァンの夫でした…。面白い…
そこでのいざこざからはだいぶとドロドロした展開に。北朝鮮ジョークがいっぱい…韓国映画なんだな…普段観ないから新鮮。
ちょいちょい日本語に近い単語が聞こえてきておもしろいよね。お隣なのに何にも知らんよね…。
・・脱線した、それでパク家も帰ってくるって言うね!大雨なんだから予測しときなさい!
��こでもでてくる「切り干し大根のようなにおい(貧困層のにおい?)」の話があとであんな形で引き金になるなんて。
そっから脱出までもかなり息が詰まった…。家政婦、死ななくてよかった…て思ってたのに亡くなりそう…助けられなかった夫の声がもう。
そしてキム家がやっと出られたと思ったら、(ここで高台から階段で降りていくカメラワークがめちゃくちゃ象徴的)まさかの洪水で家が水没。
何かを掬い上げないといけない中でギテクがチュンスク(元砲丸投げの選手だったみたい)のメダルをひっつかむのに、
妻への愛情と過去の栄光にすがる、みたいな切なさを感じでグッと来てしまった、
そして暴発する半地下のトイレのふたを無理矢理閉めて一服するギジョンのかーっこいいこと。名シーン。
次の日に、あの惨劇が起きる。
結局純粋な悪者がいないんだよね、一番かわいそうなのはドンイクさんよ、なーんも悪いことしてないのにね…。
金持ちをヤなやつとして描くのはもうほんとに古いんだろうよ、下層の洪水被害のことなんて息子の誕生日をめいっぱい祝うことに比べたら全然大事じゃない、そらそうよね。
私にもお金持ちの友達いるけど、彼らマジでいい奴だから、「金は性格のしわを伸ばすアイロン」は本当のことだと思う。
苦労せずその地位を得てるってこともないんだろうけど、心の余裕ってやつは段違いなんだろうな、いいな…。
それはめちゃくちゃ思った。
ラストシーン(モールス信号ってあんな長い手紙かけるんか、すごいや…。)
父の手紙を解読してお金持ちになって父親を助けるって言ったギウの決意に嘘はないんだろうけど、韓国の社会構造ではそれは本当に夢であり、ノープランなのと同じなのかもしれない…。というラストが何とも言えなかった。
 以上!!長いな!!!いつも自分のためだけに書いているから大変独りよがりな文章かと思いますが・もし読んでもらえた人がいるならありがとうございます。
今年もコロナはおさまる気配ないのでなんのかんの映画に行ってしまう気がする。
習慣てすごいよね。良い映画に出会えると良いなあ。
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t-meteora · 4 years
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パワーオブアニメーション
おひさしぶりです 皿です 仕事がコロナの影響もあってごたごたしてます はぁ……早期リタイアしたい ** で、SQの最新号 けっこうビックリしました 選抜がまさかの!ドリームチーム戦…!!しかも隊長もシャッフル!!?? チーム発表むちゃくちゃ楽しみすぎて心の準備が追いつかない もはやワートリはスポーツ漫画ですね シャッフルはある意味スピンオフで期待してたし、同人誌でみたことあr二次創作者的には想定外のボーナスって感じ(^^) 東さんは大人気メンだしヒュースが過去当たった隊のオペちゃんの方を同じ隊に希望してるのおもろいな しかし一緒になりたくないひとって希望も実はどうなるかはわからんのですよね 修がカトリーヌ指定してるけど逆に同チームになる展開もありうるし ちかちゃんはユズルが死んでも死守するから大丈夫 なんにしてもやっぱり二宮隊長は遠征編におけるキーマンでいっしょに近界行くことになるんだろうな そしてじんさんと古寺以外の三輪隊、みわくんはおるすばん…と あと自転車で顔色変えずにすっころぶヒュースがとてもかわいくてよかったです
それからアニトリの特番、楽しかったですね! ゆうおさと犬飼パイセンの愛が暴走しててによによしてました
Tumblr media
特報映像がぐっとくる…あいつら動いてる(´;ω;`)  ひさびさに修とゆうまの声も聞けてこみあげるものがありましたよね… スタッフもほとんど続投の上、新キャラCVが超豪華すぎてびびる…さすがの東映人脈 個人的に嬉しかったのはやっぱりラタの中のひとだけど、この後ランク戦ででてくるB級キャラのCVも楽しみすぎて盆とクリスマスと正月いっぺんにくる感じ(^^) 番宣から察するに資金もリソースも潤沢というわけでもなさそうなので、アクションの作画についても制作サイドの裏話からプリビズってやつで決め絵だけ精度上げて、あとは静止画多めなのかしら…なんにしても応援したい ゆまのシャワーシーンも全わたしが泣いて喜ぶのでやってくれてええんやで…
それでアニメの話題なんですが、羅小黒戦記が吹替え版全国上映!でとても嬉しいです かなり前、今年の2月に中国語版を単館で観に行ってめちゃ気に入ったんだけど、すぐ新型ウイルスで観れなくなってしまったんで シャオヘと師弟関係がも〜可愛すぎてさ!!ほんと言語化できん… 白髪verはゆまくんのヴィジュアルにちょっと近いしツボでしたね とくにラストが、脳回路ショートするぐらい超絶かわいかったのでこれから観る方は一番最後に刮目してほしい 中国語の声優さん、主要キャラすっごくよかったんですよ 日本の声優さんも良さそげだけど、本家版の演技をかなり意識してると思います アクションも前評判通りすてきだったし、タッチとか演出、色彩もよかったな〜〜〜〜〜 アクションといえば、自分動いているものの上でさらに動いて闘うってやつが大好物なんですがこの映画もあるんですよ、高速で走る電車上での乱闘が!そう!おたくが歓喜して作画班が死ぬ例のアレです 暴走列車!車両移動して!乗客助けながら!とか空気抵抗演出とか鉄板をほとんどやってくれて嬉しい(^^) 鬼滅の劇場版も、観てないですけど原作では無限列車編はすこし汽車上アクションあるので、ここ映画にしたのは画面映えするからって目論見もあったんじゃないかと勝手に想像してる 羅小黒では車上で投げられたシャオヘが後ろに流れてロジュがキャッチするというシーンがあります それからカメラがぐわんぐわん回って、ローアングルから被写体に近づくみたいなそういう演出もあって小気味よかった 空間系演出が大得意のアニメーターで鈴木典光さんって大御所いらっしゃるけど、ああいう感じ(エウレカの1期EDの作画の人って言えばお分かりいただけるだろうか) とにかく好きなものぜんぶやってくれた、眼福でした
WTでもランク戦で動きもの上のアクションやってくれないかなぁ こっそり今後に期待してます
■本日の2本 羅小黒戦記 無限登場シーン
相手がガンガン音出して大げさに動くのに対して、ムゲンの静かでゆったりいなす振る舞いが”格上”感をわかりやすく出してる かっこいい…
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公式トレイラー 電車の戦闘シーンは1:51くらいから
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5 notes · View notes
gohan-morimori · 4 years
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アジャラカモクレンニセンニジュウイチネンイチガツニジュウゴニチカラサンジュウイチニチマデノニッキ
1月25日(月)
 大前粟生『私と鰐と妹の部屋』読み終える。この本はたしか去年の2月だったか3月だったか(たしか2月)の本屋博で、toi booksのブースで買ったものだ。特典の『全身が青春』を読む。読んでいたら、やっぱり日記なんじゃないか、という気分になる。日記、いいな、となる。やったほうがきっといい。っていうかやりたい。という気分がどんどん高まっていって、でももうわたしは笹塚には住んでいないからタイトルを笹塚日記からなにか違うものに変えたほうがきっといい。変えないとテンションが上がらない。ということで、ぐるぐる考えて、アジャラカモクレンにしようと思った。3年前だったか4年前だったか(たしか3年前)(いや4年前か、もう)、そのころはまだ京都に住んでいて、でも東京へ行くことがほぼほぼ決まっている段階で、そういう状態で日々を過ごしている中で、なにか書きたい、小説ではないなにか、というようなことを思って、Tumblrでブログっぽい文章をいくつか書いていた時期があった。そのTumblrの名前をアジャラカモクレンにしていた。死神っぽいなにがしかから身を守りたかったのか。それが、そのTumblrがまだ残っていて、それも使おう、と思った。noteを使っていく上で、noteとかcakesとかに対するモヤッとした感情を解決するための策として、すこし前から、ショート・スパン・コールの更新/公開はnoteとg.o.a.tとTumblr(と、時間差でInstagram)を並行して使う、ということをしていた。「noteを使う」から「noteも使う」にすることで、自分の中でのnoteの重要性というか、一箇所性(一箇所性?)というか、ここだけ感というか、そういう価値を下げて、均す。わたしの文章を読む(読みたい)人に対しては「読みたい場所、モヤッとしない場所を選んで読んでね」という態度でいることができるし、ひとつの文章を更新/公開する場所を増やすことで、予期せぬ出会い、みたいな可能性も増やせたら、みたいな。いまのところそれはなんだかうまくいっているような気がしていて、というかわたしはとても気が楽で、こりゃいいやと思っている。しばらくはこの方法でいくのだと思う。そもそもいままで、なんで一箇所でしか更新/公開していなかったのだろう。なにはともあれそれでアジャラカモクレンのロゴを作った。なにはともあれまずはロゴ、ということで、バージョンの古いイラレを嬉々としていじり、ロゴを作った。アジャラカモクレンこれは日記です。アジャラカモクレンコレハニッキデス。死神よ消えろ!
1月26日(火)
 休日。去年の12月からは職場のシフトを固定にしてもらっていて、だから毎週火水はおやすみ。確定申告とか、皮膚科とか、耳鼻科とか(もう花粉が暴れだしている)、新宿の某クリニック(ホルモン注射)とか、やったほうがいいこと、やらなきゃいけないこと、行かなきゃいけないとこ、行ったほうがいいとこ、が溜まっているのだけど最近の火水はなんだかんだでずっと家に居てしまう。ショート・スパン・コールをぐんぐん書く。佳境、というか、自分の中でここは特に大事に慎重に書きたい、みたいなところにもうすこしで差し掛かりそうで、どきどきしている。なんだかんだで100篇はゆうゆう越えるもんだな、とも思っている。本読んで、書いて、トイレ行って、コーヒー飲んで、ビタミン剤飲んで、本読んで、書いて、トイレ行って、部屋うろうろして、コーヒー飲んで、煙草吸って吸って吸って本読んで書いて、みたいな感じで夜になってゲラ2本チェック。それぞれに戻す。
1月27日(水)
 休日。昨日から、というか一昨日の夜からずっと同じ寝間着を着ている。着替えていない。火水はこうなる。読んで書いて書いて読んでコーヒー煙草トイレコーヒー煙草スパゲッティ読んで書いてコーヒー煙草煙草煙草吸い過ぎだなコーヒートイレ煙草読んで書いて書いて書いて部屋うろうろ。リディア・デイヴィス『ほとんど記憶のない女』読み終える。高木美佑『きっと誰も好きじゃない』読み終える。リディア・デイヴィスの本を読むと勇気と恐怖が同時にやってくる。ここまでやってくれている人が既にいる、という勇気と、それと同じだけの恐怖(ここまでやってくれている人が既にいる……)。先週だったか、toi booksのYouTube配信で、大滝瓶太×滝口悠生のトークを聴いていたら、滝口さんが「連載って大変」みたいなことを言っていて、わたしは『灯台より』で自分が連載している小説「どこに行ってもたどり着く場所」のことを思いながら、勇気と恐怖が同時にやってきたのを思い出す。滝口さんでもそんなこと思うんだな、という勇気と、滝口さんでもそんなこと思うんだな、という恐怖。もしかしたらわたしはまだ到底持ち上げられない重さのダンベルに手をかけている状態なんじゃないか、みたいな。それを本屋Lighthouseの関口さんにSkypeで話して、そのSkypeは関口さんによるアナログなのかハイテクなのかわからない手法でライブ配信されていて、ほぼ機材チェックみたいな謎の時間を視聴者には提供していたこととは思うが、なんだか久々に、自分の生活圏外の人(関口さん)と交流、というか井戸端会議っぽい駄弁りができた感じがして、いい息抜きになった気がしている。関口さんとのSkypeを切ってから阿久津さんのZOOMにアクセスして、会議、というかこれもまた駄弁りのような、わちゃわちゃした会話をしていたら野口さんもZOOMに入ってきて、それで3人でわちゃわちゃと話してなんだか楽しかった。仕事と遊びがまぜこぜになる感じ。いまだにわりと新鮮に「オトナだ」となる。今年で29歳なんだから、オトナだろうよ。阿久津さんと野口さんはスタバの話でずいぶんとハッスルしていて、スタバになんのメモリアルもないわたしは途中からスマホをいじったりぼや〜っとZOOMの画面を眺めたりしていた。通話終わり。ゲラに関するメールを打って送る。なんだかどっと眠たくなって、歯を磨いて寝る。
1月28日(木)
 11時過ぎだか12時過ぎだかに起きる。14時には下北沢に着いていないといけない、というのを、忘れていたわけではないのだけれど「それってつまり」と考えることができなくて部屋をうろうろしたりぼやぼやしたりしているうちにちゃんとしたご飯を食べる時間がなくなっていて着替えてざっくり化粧をしてチキンラーメンを啜って家を出る。小雨。聞いてないなあ、知らないよ、雨、と思いながら自転車に乗った。雨粒がぽろぽろとマスカラに当たるのを感じていたけれど雨が降るなんて知らなかったから知らなかった。雨なんて無視無視。下北沢についた。阿久津さんと話す。話している間、雨が雪に変わっていくのが阿久津さんの後ろ、ガラス戸越しに見えて、話している途中で、あ、雪、と言った。言ったらわたしの斜め前、阿久津さんの横に座っていた桜木さんが反応して、あ、雪、となって、よかった。いい瞬間だった。雪。穂村弘の〈体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ〉という短歌を思い出したり、いしいしんじ『よはひ』の「二歳五ヶ月のピッピ」を思い出したり。職場で働く。静かな日。なにかチームで動くとき、チームに所属するとき、その中に居るとき、わたしはわりと「元気印」みたいなレッテル(レッテル?)を貼られたり、ムードメーカー的な立ち回りを演じたり(演じたり?)、ピエロっぽい役割を割り当てられたり、それらを自覚的に(あるいは無自覚的に)率先して引き受けたり、結果的にそういう立場になっていたり、することがあるのだけど、そしてそれはたぶんわたし自身が望んでそうなっている側面もあるのだろうけれど。いつだって元気なわけではないし、人一倍暗い瞬間だってきっとあるし、汚く醜い感情でひたひたになっている期間だってあるし。そういうとき。元気印が元気じゃないとき。いったい誰がわたしを元気にしてくれるのだろう。みたいな、行き場のないモヤモヤ、憤り、やるせなさ、みたいなものを感じることがちょいちょいあって、いままでは、そういうときはそのモヤモヤや憤りややるせなさに任せて、誰かに怒られたりするまで奔放に破壊的な行動をしてきたのだけど、いまは、いまの職場では、というかいまの自分は、そういうときも、そういうときであっても、仮面であっても演技であってもポーズであってもいいから、「元気」を全うしようという気持ちでいる���すきな人たち、信頼している人たち、素敵な人たちを自分の不調や不機嫌や元気のなさによっていたずらに不安にさせたり傷つけたりしたくない。それもきっと仕事のうちだ、と、思いはじめている。それがいつだってできるわけではまだないし、じゃあわたしの元気がないときは誰がわたしを元気にすんだい、みたいな気持ちへの落とし前はぜんぜんつけられないけれど(そしてその問いへの答えは結局「自分自身」でしかないのだけど��、でも、死ぬまで独り身で生きていくかもしれない現実に向き合って覚悟を決めて朗らかに独り身を生き抜くリズムを作るために去年の10月から一人暮らしをはじめたのだから、だから……なんだっけ?閉店時間になって、帰り支度をして、吉野靫『誰かの理想を生きられはしない -とり残された者のためのトランスジェンダー史』を読んで、帰って、コーヒーを淹れて煙草を吸ってこの日記を一昨日昨日の分まで書いて洗濯ものを干して(めちゃくちゃさむい)、湯たんぽをあっためてパソコンデスクの下に置いて足を乗っけてあったまりながら今日の分を書いて、ピラカンサのシュトーレンを切って食べて(しみしみになっていておいしい)、これからお風呂に入る。湯船に浸かりながら吉野靫『誰かの理想を生きられはしない -とり残された者のためのトランスジェンダー史』の続きを読む。いろいろ重ねて読んでしまうからしんどい本だけど読んでおきたい本でもある。気圧ひくい。頭いたい。かなしい気持ちになっている。奔放に、抱きしめられたいな〜、人に。最後にだれかと手をつないだのっていったいいつだ。
1月29日(金)
 寒い。晴れている。出勤。せわしなく働く。閉店後、
https://soundcloud.com/yunovation/virtual-luv20190314-1
を一曲リピートで延々流しながら、吉野靫『誰かの理想を生きられはしない -とり残された���のためのトランスジェンダー史』を読む。読み終える。終わりの文章でちょっと泣きそうになる。死にたくないな。生きなきゃな。とか思う。家に帰る途中で西友に寄って牛乳とオレンジジュースと豚バラとキムチを買って帰る。中橋さんに電話してだらだらしゃべる。途中からGoogle Mapで京都のあちこちを見回るのがやめられなくなって、電話を切ってからもだらだらと地図上で京都のあれこれを見ていた。それからなぜかYouTubeで予備校講師の動画を見漁りはじめて、止まらなくなって空が明るくなってから危機感に襲われて入浴。湯船に浸かりながらオーレ・トシュテンセン『あるノルウェーの大工の日記』を読み始める。去年はこの時期に佐伯一麦『ノルゲ』を読み始めた気がする。2月だったかな。同じ時期にノルウェーの本を読んでいるのがなんだか不思議とうれしいきもちになる。眠る。
1月30日(土)
 起きたり寝たり起きたりを行ったり来たりして13時50分くらいに起きる。慌てて準備をして出勤。煙草を忘れたことに家を出てしばらくしてから気がついて途方に暮れる。働く。せわしなく働く。いそがしいそがし、あわあわあわあわ、としているうちに閉店の時間になって身体がやたら重たくて怖くなった。ごはんを食べながらiPhoneで呪術廻戦の最新話を観る。ほんとTikTokみたいなアニメ/漫画だなと思う(いいとかわるいとかではなく)。ハンターハンター、ソウルイーター、BLEACHの気配をむんむん感じる。そのまましばらく身体が重くて動けなくなって、お腹が痛くなってきて、こわいこわい、と思いながら身体を椅子からひっぺがして帰り支度をして職場を出た。家に帰って可燃ごみをゴミステーションにぶちこんで今日一本目の煙草を吸って、腹痛に耐えかねてトイレに籠もってお腹をさすりながら『京都町中華倶楽部』創刊号を読む。おもしろい。この本を面白がれるのはわたしがいま京都にいないからなのかもな、と思う。キッチンとトイレを何度か往復しているうちにだんだん腹痛がおさまってきて、ビールを飲みながらまた煙草を吸う。京都。京都にいつか戻りたい。「戻る」という言葉がやはりしっくりくるな、と思う。戻りたいな、と思う。いつか。それがいつなのかはわからないけれど、いつかほどほどに自由に居住地を選べるような身分になったら、また京都に住みたい。でも東京が嫌だとか嫌いだとか、ここにいたくないとか自分の居場所はここじゃないとか思っているわけではなくてむしろ逆で、東京は東京で好きだし、ここは自分のいまの居場所だと思っている。でも、これは去年の4月ごろ、緊急事態宣言で家に籠もりっきりになって、あちこちの団体やお店なんかでクラウドファンディングが立ち上がったりしていたころ気づいたことなのだけど、わたしがこういう状況下で「助けたい」とか「助かって欲しい」とか「生き延びてほしい」とか「なくならないでほしい」とか思うような場所、モノ、人、コトのほとんどは京都のあれこれで、京都の書店で京都の映画館で京都のライブハウスで京都の酒場で、それはわたしが東京に住み始めてからまだ2年半ほどしか経っていないのもあるし、東京に来てから1年以上は手術費を稼ぐために娯楽的なあれこれを極端に切り詰めてきたからで、そもそもわたしはまだ自分が住んでいる土地のことをぜんぜん知らない。知らない土地に対して「助けたい」と思うのはむずかしい。というか、まずは京都が助かって欲しい。話はそれからだ、感がある。ここ半年ほどは、本を買うときは大抵京都もしくは大阪の書店のオンラインストアで注文しているし、たぶんこれからもそうしていくだろう。みたいなことを考えたり昨夜に引き続き予備校講師の動画を見漁っていたら日付が変わっている。今日こそは早く寝たい。喉に違和感がある気がする。こわ〜。
 自分にとって京都ってなんだったんだろう。みたいなことをよく考える。考えるというか、ぼやぼやと思ったりする。カンタンに最強になれる場所だったな。カンタンに、井の中の蛙になれる。よく晴れた日に、紫明通を自転車で走っているとき、ここが世界だと思っていたフシはあった。井の中の蛙は大海を知らないが、大海の鯨は井の中を知らない。井の中でしか存在し得ない世界を知らない。
1月31日(日)
 とか書いたけど嫌なことも悲しいこともむかつくことも、孤独も寂しさもどこにも行けないもどかしさも、京都にいた約7年間で味わい尽くしたはずで、だからわたしの京都観には著しい美化が伴っていて、それをちゃんと自覚しておかないといけない、たぶん。トランスジェンダー、という自分のいち側面だけを考えると明らかに京都より東京のほうが日常で被るストレスや暴力、差別や排除はすくなくて、すくない気がいまは気がしていて、それはやっぱり人間の多さに依るところが大きいし、京都の狭さ、人の(土着的な人の)少なさはやっぱりトランスジェンダーといういち側面において無視できないしんどさをわたしの日々に与えていたはずで、出ていきたい、ここを出ていきたい、という気持ちと、出ていけない、一生この場所で時給労働に従事し尽くした結果疲れてすり減って独りで何も成し遂げられないまま手術も満足にできないまま貧困状態のまま死んでいくんだ、クソが、みたいな気持ちで粉微塵になりそうだったはずで。そこから愉快な奇跡が重なっていまわたしは東京にいる。11時なのか12時なのか、みたいな時間に起きた。起きたけど起き上がることはできなくて、貪欲を抱きしめたり貪欲と添い寝みたいな格好になりながら、『京都町中華倶楽部』創刊号を貪欲の顔に乗っけて布団にくるまりながら読んでいった。龍門なつかしいな。行きたいな。知らない店がたくさんある。とか思っているうちに13時前になって慌てて布団を出てお風呂に入れない。家を出る。買い出しをして出勤。忙しくて慌ただしくてちょくちょく恐慌状態になったりしながら踏ん張って働く。忙しい。疲れた。ごはんを食べてビールを飲んで煙草を吸って身体が動かない。動かす。職場を出て、家へ。帰宅。「どこへ行ってもたどり着く場所」連載第3回の原稿について考えたり、『ショート・スパン・コール』94篇目〜103篇目あたりまでの展開や構想を練ったりしながら自転車を漕いでいると自分がどこにいるのかわからなくなりそうで怖い。いつか事故りそう。やっぱり日記を書きはじめるとそれ以外が書けなくなる。不器用。わたしはむずかしいことをしていて、それはひとりごとの言えなさに似ている。2冊目の歌集を出したい。というか出す。モノはあるから、自費でやろうか、BASEで、みたいな気持ちにかなり傾いていて、今年の上半期中に組版をやって見積もりをしよう。「どこへ行ってもたどり着く場所」も、『ショート・スパン・コール』も、大切に書きたい。疲れた。疲れた。今日こそお風呂に入ろう。2月は「どこに行ってもたどり着く場所」の原稿を書く前に読まないといけない(と、自分に言い聞かせている)本が何冊もあるから、ヘビーな月になりそう。がんば〜〜りまっしょ〜〜。タフネスを俺にくれ!!!!!!!!!
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kachoushi · 1 year
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各地句会報
花鳥誌 令和5年4月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和5年1月4日 立待俳句会 坊城俊樹選 特選句
年賀状投函ポスト音を吐く 世詩明 大冬木小枝の先まで空を突く 同 猫寺の低き山門虎落笛 ただし 福の神扱ひされし嫁が君 同 石清水恙の胸を濡らしつつ 輝一 阿弥陀様お顔に笑みや秋思かな 同 去年今年有縁ばかりの世なりけり 洋子 潮騒の聞こゆる壺に水仙花 同 羽根をつく確かなる音耳に老ゆ 同 時々は絵も横文字も初日記 清女 初電話友の恙を知ることに 同 暁に湯気立ち上がる冬の海 誠 大寒のポインセチアに紅のあり 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月5日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
初暦いかなる日々が待ち受けん 喜代子 おさんどん合間に仰ぐ初御空 由季子 病院の灯消えぬや去年今年 同 雪掻に追はれつつ待つ帰り人 さとみ 海鳴りや岬の水仙なだれ咲く 都
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月7日 零の会 坊城俊樹選 特選句
あをき空うつし蓮の枯れつくす 和子 蓮枯れて底の地獄を明るめる 軽象 枯はちす揺り起こすなり鐘一打 三郎 破れ蓮の黄金の茎の高さかな 炳子 枯蓮の無言の群と相対し 秋尚 弁天の膝あたたかき初雀 慶月 面差しの傾城名残青木の実 順子 男坂淑気を少し漂はせ 三郎 恵方道四方より坂の集まり来 千種 葬儀屋の注連縄なんとなく細い いづみ いかやきのにほひに梅の固くあり 要 枯蓮のやり尽くしたる眠りかな 佑天
岡田順子選 特選句
枯はちす揺り起こすなり鐘一打 三郎 鷗来よ枯蓮の幾何模様へと 俊樹 そのあとは鳶が清めて松納 いづみ 毛帽子にまつ毛の影のよく動く 和子 北吹けりもう息をせぬ蓮たちへ 俊樹 蓮枯れて水面一切の蒼穹 和子 人日の上野で売られゆくピエロ 三郎 石段に散り敷く夜半の寒椿 悠紀子 恵方道四方より坂の集まり来 千種 よろづやに味噌づけ買うて寒に入る 眞理子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月7日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
双六やころころ変る恋心 朝子 下の子が泣いて双六終りけり 孝子 短日は数が減るかもニュートリノ 勝利 歌留多と���式部小町も宙に舞ひ 孝子 小春日や生ぬるき血の全身に 睦子 骨と皮だけの手で振る賭双六 愛 京の町足踏み続く絵双六 散太郎 粛々と巨人に挑む年始 美穂 来世から賽子を振る絵双六 愛
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月9日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
双六の終着駅や江戸上り 時江 たかいたかいせがまれて解く懐手 昭子 てのひらの白きムースの初鏡 三四郎 火消壺母のま白き割烹着 昭子 木の葉髪何を聴くにも左耳 世詩明 街筋の青きネオンや月冱てる 一枝 姿見に餅花入れて呉服店 昭子 はじき出す男の子女子のよろけ独楽 時江 一盞の屠蘇に機嫌の下戸男 みす枝 初詣寺も神社も磴ばかり 信子 御降や傘を傾げてご挨拶 みす枝
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月9日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
初明かり故山の闇を払ひゆく かづを 万蕾にある待春の息吹かな 々 小寒や薄く飛び出る鉋屑 泰俊 勝独楽になると信じて紐を巻く 々 仏の前燭火ゆらすは隙間風 匠 筆箱にニトロとんぷく老の春 清女 二千五百歩小さな散歩寒に入る 天空
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月10日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
鋳鉄製スチームの音古館 宇太郎 始業の蒸気雪雲を押しあげて 美智子 溶けてなほ我にだけ見ゆる時雨虹 佐代子 失ふはその身ひとつや冬の蜂 都 寒灯下遺影に深く法華経 悦子 大木を伐られ梟去つたらし 史子 枯木立通り抜けたる昼の月 益恵
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月10日 萩花鳥会
人生の余白少なし冬の薔薇 祐子 裸木が絵になる空を展げゆく 健雄 山茶花や気は寒々と花紅く 俊文 守らねばならぬ家族や去年今年 ゆかり 一椀に一年の幸雑煮膳 陽子 故郷で一つ歳とる雑煮かな 恒雄 昼食後一枚脱いで四温かな 吉之 亡き人に届きし賀状壇供へ 明子 逆上がり笑顔満面四温晴 美惠子
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令和5年1月13日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
初生けを祝成人と命名す みえこ 薪焚の初風呂済ませ閉店す 令子 御降りに濡れても訪ひぬ夫の墓 同 初詣光��現れて良き日かな あけみ 注連飾父の車の隅に揺れ 裕子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月14日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
閼伽桶の家紋色濃し寒に入る 多美女 養生の大樹潤す寒の雨 百合子 勤行の稚の真似事初笑ひ 幸風 いつもならスルーすること初笑 秋尚 臘梅に鼻近づけてとしあつ師 三無 寒椿堂裏の闇明るうす 多美女 多摩堤地蔵三体春立ちぬ 教子 均しある土の膨らみ春隣 百合子 掃初の黒御影拭き年尾句碑 文英 悴んで顔を小さく洗ひけり 美枝子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月15日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
飛石を跳ね蝋梅の香に酔うて 炳子 木道の先の四阿雪女郎 幸風 その奥に紅梅の蕊凜として ます江 黒き羽根なほ黒々と寒鴉 貴薫 不器用に解けてゆきぬ寒椿 千種 入れとこそ深き落葉へ開く鉄扉 同 谷あひに弥生の名残り水仙花 炳子 椿落つ樹下に余白のまだありて 三無 木道まで香り乱れて野水仙 芙佐子 寒禽の群を拒まぬ一樹かな 久子
栗林圭魚選 特選句
山間の埋れ火のごと福寿草 斉 空昏く寒林よぎる鳥の影 芙佐子 厚き雲突き上ぐ白き冬木の芽 秋尚 福寿草労り合ひて睦み合ひ 三無 そのかみの住居跡とや蝶凍つる 炳子 水仙の香を乱しつつ通り抜け 白陶 入れとこそ深き落葉へ開く鉄扉 千種 竹林の潤み初めたる小正月 要 椿落つ樹下に余白のまだありて 三無 せせらぎのどこか寂しげ寒の水 白陶
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月16日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
若きより板に付きたる懐手 雪 北窓を塞ぎさながら蟄居の間 同 昨夜の酔ひ少し残るや初鏡 かづを 九頭竜や寒晴の綺羅流しゆく 同 除夜の鐘八つ目を確と拝し撞く 玲子 初明り心の闇を照らされし 同 一点の客観写生冬の句座 さよ子 翳す手に歴史を語る古火鉢 同 笑つても泣いても卒寿初鏡 清女 餅花の一枝華やぐ奥座敷 千代子 年賀状手描の墨の匂ひたつ 真喜栄 若水を汲むほどに増す顔のしわ 同 裸木村は大きな家ばかり 世詩明 春炬燵むかし昔しの恋敵 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月18日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
水仙や悲恋の話知りしより 啓子 堂裏の菰に守られ寒牡丹 泰俊 餅花やなにやらうれしその揺れも 令子 左義長の遥けし炎眼裏に 淳子 寅さんを追つて蛾次郎逝きし冬 清女 飾り焚く顔てらてらの氏子衆 希子 御慶のぶ一人一人に畏みて 和子 眉を一寸引きたるのみの初鏡 雪 初髪をぶつきら棒に結ぶ女 同 束の間の雪夜の恋に雪女 同 マスクして睫毛に化粧する女 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月20日 さきたま花鳥句会
凍星や夜行列車の窓あかり 月惑 葉牡丹や鋳物の町の鉄の鉢 一馬 どら猫のメタボ笑ふか嫁が君 八草 小米雪運河の小船音もなく 裕章 老木に力瘤あり春隣 紀花 竜神の供物三個の寒卵 ふゆ子 医学書で探す病名寒燈下 とし江 おごそかに雅楽流るる初詣 ふじ穂 人のなき峡の華やぐ柿すだれ 康子 小正月気の向くままの古本屋 恵美子 寒梅や万葉がなのやうに散り 良江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月21日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
福引の種考へてゐるところ 雪 枯れ行くは枯れ行く庭の景として 同 懐手して身も蓋も無き話 同 思ひ遣り言葉に出さぬ懐手 昭上嶋子 言ひかねてただ白息を吐くばかり 同 きさらぎや花屋はどこも濡れてをり 同 父の碑を七十余抱き山眠る 一涓 藪入りを明日に富山の薬売り 同 人日や名酒の瓶を詫びて捨つ 同 一陣の風に風花逃げ廻る 世詩明 安座して児の母となる毛糸編む 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月22日 月例会 坊城俊樹選 特選句
舞ひ上がる金子銀子や落葉掻 千種 春近し湯気立つやうな土竜塚 昌文 寒林や父子のだるまさんころんだ 慶月 紅梅のどこより早く憲兵碑 同 冬帝に囲まれてゐる小さき者 いづみ 出征を見送る母子像の冷え 昌文 青銅となりて偉人は寒天に 千種 火の雨を知る大寒の展示館 いづみ
岡田順子選 特選句
狛犬の阿形の息を白しとも 俊樹 勾玉のほどけ巴に冬の鯉 千種 ただ黒し桜ばかりの寒林は 同 ボサノバを流し半熟寒卵 慶月 石に苔泥に苔あり日脚伸ぶ 和子 息白く母子像見てひとりきり 俊樹 寒林の一木たるを旨とせり 晶文
栗林圭魚選 特選句
冬の雲弛びそめたり大鳥居 要 朽木より梅百蕾の薄明り 昌文 ボサノバを流し半熟寒卵 慶月 能舞台脇座に現るる三十三才 幸風 日向ぼこして魂は五間先 俊樹 霜柱崩れ鳥居の崩れざる 同 青銅となりて偉人は寒天に 千種
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月 九州花鳥会 坊城俊樹選 特選句
大枯野太古は大海だつたかも ひとみ 初景色常の神木よそよそし 美穂 椰子の実のほろほろ落ちて神の留守 孝子 緋あけ色の空へ音ひき初電車 美穂 嫁が君大黒様の手紙持ち ひとみ おんちよろちよろと声明や嫁が君 睦古賀子 歌留多取対戦するは恋敵 睦吉田子 水仙はシルクロードの香を含み ひとみ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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meganetombo · 4 years
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◎壽 乱舞音曲祭(1/17 17:00膝丸回、1/23 17:00千子村正回 配信)
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◯開演前アナウンス
・「政府」って言われると時の政府が頭をよぎる。
◯オープニング
・オケチューニング風にはじまるオープニング。世が世なら生オケだったりしたのかなぁ。
◯前説
・日向くんと浦島くん…やだ…こんなかわいいの…?
・「胸がいっぱい」「みんなのお祝い」の言葉で泣けてくる。
◯華のうてな
・開幕しくしくくれくれに止まる呼吸。
・お祝いだから華やかな曲から始まるかなとか甘っちょろい考えは刀ミュくんには通用しませんでした。審神者を仕留めにかかってきてる最高かよ。
・なんていうか…黒羽さんの三日月宗近は…本当にすごいな。ため息しか出ない。ビジュアルもだけど、ほしい表情ほしい音ほしい声ほしい息遣いをほしい圧でくれる。画面に映ってる間ずっと息止まる。
◯瑠璃色の空
・出だしの大倶利伽羅の声が優しくて優しくて。千秋楽は特に柔らかい気がした。刀を見つめる大倶利伽羅に毎回泣いちゃう。「重くなったね。君の剣」って台詞がよぎる。
・大倶利伽羅に手を差しのばす蜻蛉切さん。そっと見つめる村正さん。このスリーショット。号泣。
◯手合わせ(日替り)
・1/17 陸奥守吉行 対 大和守安定
・1/23 蜂須賀虎徹 対 三日月宗近
ミュ三日月の演練台詞個人的には初めて聞いた。
◯序章
・幕末組ってストレートな歌詞が多い気がする。男くさくてよい。
・2部が特にだけど、むっちゃんのオラツキ最高じゃない?今回ちょっとクールめなメイクも合間ってめちゃめちゃかっこいい。むっちゃんの極大好きなんですけど、演練相手の極むっちゃんに惚れた瞬間を思い出しました。
◯太刀風
・鶴丸国永の声の吸引力。鶴の一声。
・村正組のツーショットのキタコレ感。もう背中合わせで歌ってほしいペア第1位。めちゃめちゃ気持ちよさそうに歌うやん。好き。
◯未熟な私は夢を見る
・始終ニコニコしちゃう。よかったねぇよかったねぇ籠手切くん。
◯浦島ソロ
・続く虎徹三兄弟でさらにニコニコ。もう顔が溶ける。
・一緒にはしゃいでくれる長曽祢ぱぱ。目線を合わせるよう屈みながら微笑む聖母蜂須賀。
◯のら猫ニ匹
・終わってからずーっと頭の中でループしてる曲。口ずさんじゃう。
◯かざぐるま
・全員での大合唱。やばい。鳥肌。ありがとうございます。
・人の世に長くある刀だからこその歌だなって思う。
2部
・燕尾服の衝撃。
もはや2部の感想はこれにつきる。いろいろ言うけどもうなんていうか最終的にはこれ。
このコンサート感!際立つ足の長さ!
衣装決めた方に拍手喝采。スタンディングオベーション。もう燕尾服の発明にまで遡って祝いたい。燕尾服嫌いなオタクっているの?(過激派)
◯新曲
・三日月に目を細めて微笑まれると胸がきゅーっとなる。
◯mistake
・大千秋楽、三日月宗近の見下し目線いただきましたありがとうございます!
◯初期刀ごあいさつ
・ちょっと新鮮なスリーショット。
・「べっぴんさん」て表現好き。褒められて照れるむっちゃんも可愛い。
◯Additional Times
◯Signalize
・加州清光の体力おばけ健在。ミステイクからの芝居挟んでここまで、ガシガシ踊るはクルクル回るわ加州清光ここにありって感じでまじカリスマ。
◯約束の空
・無敵感!
◯Impulse
・村正さんはコントと曲のギャップなんとかしてほしい。さっきまであんなに挙動不審だったのに!なんで!そんなに!かっこいいの!
◯美しい悲劇(日替り)
・1/17 加州清光と鶴丸国永
胸熱。表現が難しいけど、新旧ルーキーって感じ。当初、加州清光を見た時の衝撃すごかったし、鶴丸国永にも度肝抜かれた思い出。
・1/23 大倶利伽羅と豊前江
リア恋組と名付けました。勝手に。
この日はこの辺、豊前さんも体力おばけですね。
◯断然、君に恋してる!
・かわいいかわいいひたすらかわいい!この6振大正解!きらきら!
・蜂須賀から浦島へと受け継がれるジャンプ力。
◯Scarlet Lips
・ミュ本丸の宴会、私が思ってた宴会と違う。こんなかっこいいの?これが現代のかっぽれってことでよろしい?
◯ビデオレター
・本丸?遠征先?で撮ってる所想像すると微笑ましい。
・石切丸さんは疫病退散の神事に忙しいらしい。お疲れ様です。あまり無理しすぎないでください。
◯刀剣乱舞
・嬉しい。本公演だけで聞けるレア感も好きだけどやっぱりこの曲聞かなきゃ帰れない。
◯最後ご挨拶
・1/17膝丸
三日月がせっかくだから最後金枠の中から帰りなよって合図してくれるも、?浮かべたまま笑顔で帰っていく膝丸。しっかり者の弟が見せる天然…くそっ…そういうとこだぞ!膝丸!好き!
・1/23豊前江と桑名江
桑「今日もぉ…豊前がぁ…速かった!」豊「ありがとー!大地ー!」
何このやりとり?可愛すぎじゃない?加州との掛け合いもおもしろかった。
豊前さんはまじで速かった。鬼のようにスクショしてたんですが、ポーズからポーズへのモーションが速いのか全然捕らえられない。わざとなのか天性のものなのか、はたまた私のスクショ能力の問題か分かりませんが、とにかく速かったです。
◯ダブル?カテコごあいさつ
小狐丸「こんなに大きくなりました」
この言葉。途中から参戦の自分でもぐっとくるので、トライアルから応援している方々の気持ちは想像できないほどのものがあるんだろうなぁ。
そうやって応援し続けてくださった方々がいるおかげで、自分もミュージカル刀剣乱舞に出会えたと思うと本当に感謝しかない。
日向くんの「みんなのお祝い」という言葉通り、キャストにも、スタッフさんにも、ファンにも感謝を感じられる公演でした。
ありがとうございました!
追��
音曲祭の熱冷めやらずで、久しぶりにつわもの観たんですけど、数回目とは思えないほど号泣した。まるで初見のように嗚咽する自分にちょっと引いた。
ていうか黒羽さんめちゃくちゃ細いね!?今も細いと思ったけど当時はもう棒っていうか針?その分2部最終形態の体のラインが映えるけどね。お背中久しぶり見ても綺麗だった。もう健康でさえいてくれれば細くても太くてもなんでも好きです。
本来、音曲祭が生で見れる初刀ミュになるはずだったんですが、今回は断然せざるを得ず。
正直数日間…いや数週間はもう心がやさぐれてとげとげしてたんですけど、配信を見てそんなことはどうでもよくなりましたね。
いつかこの美の暴力を生で浴びる日までは死ねないと心に固く誓いました。
明日からも粛々と生きるぞ!
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geniusbeach · 5 years
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絶望のパレード
 魂がうわついている。まるで自分が自分でないみたいだ。ここしばらく意識は常に前方斜め下で、歩いているのは抜け殻か尻尾のようなものである。いつから、そしてなぜそのようになってしまったのだろうか。正月にかこつけて内省的になってみる。
 昨年の初めに私家版詩集を刊行した。それまでに書き溜めた僅かな詩編を、2人の詩人と編集者、美術家とともに共著の形でまとめた。処女詩集にして全集のようなおもむきがあるけれども、自分としてはそれでよい。稲垣足穂風に言うなら、以降に自分が書くものはその注釈かバリエーションに過ぎないということだ。共著者と編集者が営業に奔走してくれ、関西の大型書店のみならず、関東の書店にも置いてもらうことができた。ありがたいことに帯には人類学者の金子遊氏が一文を寄せてくださった。個人的には、自分の高校時代からの読書遍歴を決定づけた恵文社一乗寺店に置いてもらえたこと、そしてそこで一度品切れになったことが大変嬉しかった。これで一地方のマイナーポエットになることができたという感じがある。それ以上は望まないが、この営みは細々と続けていくつもりだ。
 詩集に関するあれこれが落ち着いてからは、英語の学習に明け暮れた。一昨年は仕事で繁忙を極めており、勉強どころか読書も満足にできなかったため、それを取り戻すように必死にやった。おかげで昨年度中の目標としていた点数を一発で大きく上回ることができ、すぐに違う分野へ手を出した。次はフランス語であった。気合を入れて5000円もする参考書を買い、基礎からやり直していった。ところがその参考書、誤植があまりにも多く、解説も非常に不親切で、ページをめくるのが億劫になり早々にやる気を失ってしまった。なんとも情けない話である。新しい参考書を買う気もなくなり、漢字の勉強へシフトしたところ、こちらはうまくいった。徐々に、平日はカフェで、週末は図書館で勉強するスタイルが出来上がっていった。その間も読書は続け、昨年で40~50冊程度は読むことができた。
 秋ごろには面白い出会いがあった。実存的な不安が高まったこともあり、有休を取って哲学の道を散歩していたところ、海外からの観光客に、掛かっている看板の意味を聞かれた。訛りのある英語だったため、フランス人ですか? と問うと、そうだとの答え。自分がわずかばかりフランス語が話せるとわかって意気投合し、3日間観光ガイドのようなことをした。彼の名はムッシュー・F、ひとりで日本にバカンスに来て、東京でラグビーの試合を見たりしたとのこと。七十を超える高齢だが、つい最近まで自分もラグビーをしていたと話すエネルギッシュな人物で、全く年齢を感じさせない。パリで会社を営んでいるそうで、これが私の家だと言って見せられたのは、湖畔に浮かぶ大邸宅の写真であった。週末には森を散歩したり、湖にモーターボートを浮かべたり、馬に乗ったりしているよと言う。もちろんそれらは全て私有(森や湖でさえ!)、モノホンの大金持ちである。京都では一緒にカフェに行ったり、大文字に登ったり、うどんをご馳走したり、孫用の柔道着を探したり、旅行の手配を手伝ったりした。是非フランスにおいでと言い残し、彼は去った。それから今でも連絡を取り合っている。実に50歳差の友人ができた。
 かつて自分は、日本で日々を平穏に過ごしながらたまに外国語を話す生活を望んでいたが、今になって少しばかり叶っていることに気が付いた。仕事ではしばしば英語を使う。ただ、本音を言えば、金子光晴のように海外を旅して回りたい。学生時代に思い描いていた生活はと言えば、高等遊民か世界放浪者であった。金子は詩の中で「僕は少年の頃/学校に反対だった。/僕は、いままた/働くことに反対だ。」と言った。人間は何からも自由なのである。自分も「成績」や「評価」、「管理」などには絶対に反対である。人に指示され、その目を気にして送る生活など耐えられない......。ところが、じっさいの自分には構造の外へ飛び出す勇気がない。そもそも自分は道の外から生のスタ-トを切ったのだ。そこから正道に戻るだけで精いっぱいだった。血の鉄鎖に引きずられながらもなんとか空転を繰り返した結果、保守的な思想が全身に染みついてしまった。今はなすすべもないまま泣く泣くレールの上を鈍行で走っている。窓からは、空中を並走するもうひとりの自分が見える。全てに背を向けて純粋な精神の飛翔を楽しむ自分の姿が。金子の詩友・吉田一穂は「遂にコスモポリタンとは、永生救はれざる追放者である」と言った。世界は狭量だ。自分にとっては、シュマン・ド・フィロゾフもアヴェニュ・デ・シャンゼリゼも等価である。どうにか国や所属を超越したいと強く思う。やはり勉強をし直さねばならない。
 自分の様子がおかしくなったのは10月頃からだ。一昨年度に忙殺されたせいで少なからず人間の心を失った自分は、仕事における虚脱感に苛まれていた。家における問題もあり、また昨年度新たに来た上司とは全くウマが合わず、フラストレーションも募っていた。そもそもが5年で5人も上司が変わるという異常な環境である。自分はよく耐えてきたと思う。働くことが馬鹿馬鹿しくなり、ぼーっとする時間が多くなる。そんな中、自分はある大きなミスをしでかしてしまった。それは実際大した問題ではない、誰にでも起こりうることだった。尻ぬぐいは上司とともに行うこととなった。しかし、そのミスのせいでかなり落ち込んでしまい、さらに事後対応や予防策の打ち出し方が虫唾が走るほど不快なものであったため、自分は深く考え込むこととなった。さらにそこで追い打ちのごとく転勤が告げられたため、自分はついに心身に不調をきたしてしまった。抑鬱、不眠、吐き気、緊張性頭痛、離人感、悲壮感、食欲不振……全ての事物から逃げ出したくなる衝動に眩暈がする。ある日職場で人と話している時に、どうにもうまく言葉が出てこなくなったため、何日か休む羽目になった。初めて心療内科を受診し薬をもらった。一日中涙が止まらなかった。その頃の記憶はあまりない。日々、ふわふわと悲しみのなかを漂っていたように思う。ただ、話を聞いてくれる周りの人々の存在はかなりありがたく、ひとりの人間の精神の危機を救おうとしてくれる数多の優しさに驚かされた。転勤の話は自分の現況を述べたところひとまず流れた。その際、上役が放った言葉が忘れられない。「私は今までどこに転勤しても良いという気持ちで仕事をしてきましたけどね」。他人の精神をいたずらに脅かすその無神経さに呆れて物が言えなかった。薬の服用を続け、1ヶ月半ほどかけて不調はゆるやかに回復したが、自分が何もできずに失った貴重な期間を返して欲しいと強く思う。仕事に対する考え方は世代間でもはや断絶していると言ってもよいだろう。
 労働を称揚する一部の風潮が嫌いだ。仕事をしている自分は情けない。それにしがみついてしか生きられないという点において。システムに進んで身を捧げる人間の思考は停止している。彼らは堂々と「世の中」を語り始め、他人にそれを強制する。奴隷であることの冷たい喜びに彼らの身体は貫かれている。何にも興味を持てなかった大多数の人間が、20代前半に忽然と現れる組織に誘拐され、奇妙にも組織の事業であるところの搾取に加担・協力までしてしまう。それは集団的なストックホルム症候群とでも言うべきではないか。社会全体へのカウンセリングが必要だ。尤も、使命感を持って仕事に臨む一部の奇特な人々のことは尊敬している。生きる目的と収入が合致しさえすれば、自分も進んでそうなろう。だが自分は、「社会とはそういうもの」だという諦念には心の底から反抗したい。組織とは心を持たない奇形の怪物だ。怪物は人間の心の欠陥から生まれる。ただ怪物のおかげで我々は生きられる。それをなだめすかしておまんまを頂戴しようという小汚い算段に、虚しさを深める日々。人間的であろうとする以上、この虚しさを忘れてはいけない。
 どうしようもない事実だが、労働によって人の心は荒む。労働は労働でしかない。肉体を動かすことによる健康維持という面を除けば、それ自体、自己にとっては無益なものだ。勤労意欲のない文学青年たちはいかなる生存戦略を以て生活に挑んでいるのか。彼らの洞窟を訪ねて回りたいと思う。現代には、彼らのように社会と内面世界を対立させたまま働き消耗する人々がいる。ある経営者がその現象を「ロキノン症候群」と呼んでいた。芸術に一度でもハマったことがあるような人々がそうなのだという。しかし彼らも納得はいかないながら、どこかで折り合いをつけて頑張っているはずだ。自分は彼らに一方的な連帯感を覚える。来る亡命に向けて、励まし合っているような気さえするのだ。世間様はきっと我々を馬鹿者だと罵るだろう。「なんとでもいはしておけ/なんとでもおもはしておけ」と、山村暮鳥の強い声が聞こえる。目に見えるものだけを信じるのもいいが、それを周りに強いてはならない。我々は今、ようやく開けてきた時代を生きている。だが認識は未だ模糊としている。完全な精神が保証される世界からすると、まだまだ古い時代なのだ。人間の姿を見失いがちな現代に対して言えるのはただ一つ、みんなで一緒に幸せになろう、ということだけだ。
 さて、年末に3日間の有休をぶち込んだので年末年始は12連休となった。天六で寿司を食べ、友人宅に入り浸ってジャークチキンをむさぼった。ポルトガル料理に舌鼓を打ち、サイゼリヤで豪遊した。特に予定を立てずに、ひたすら酒とコーヒーを鯨飲する毎日であった。心身の不調はマシになったものの、不運が続き、人と会わなければどん底に落ちると思った。それはまるで自分という神輿を中心にした絶望のパレードのようだった。
 休みの初日、ふと思い立ち、生き別れた父親の所在を探るべく、戸籍を請求してみた。私は父親の顔も名前も知らなかった。さほど興味がなかったというのもあるが、これまで家族に問うても曖昧な答えしか返ってこなかったのだ。働き出してからしばらくして、親戚から聞いたのは、父親は母親と同じく耳が聞こえなかったこと、暴力をふるう人間であったことの二つだけだ。養育費が払われることはなかったともどこかで聞いたような気もする。いずれにせよクズのような人間であったことは疑いようもない。生まれてから会った記憶もなく、不在が当たり前の環境で育ったため、会いたいと思ったことはほとんどない。ただ、自分の身体の半分が知らない人間の血によって構成されていることに何とも言えない気持ち悪さを覚えていた。というのも、顔は母親似だと言われるが、色覚異常の遺伝子は父親から受け継いだものであり、おかげで少年はある夢を断念せざるを得なくなったからだ。その「不可視の色」を意識するたび、自分の身の内には不在の存在がかえって色濃く反映された。違和感は自分が年を重ねるごとに増してゆくような気がした。そのため、せめて名前と消息だけでも知っておこうと思い、今回ようやく役所に出向いたのだ。職員に尋ねたところ丁寧に教えてもらえた。自分の戸籍から遡れば簡単に辿ることができる。しばらくして数枚の紙きれが手渡された。そこには聞きなれない苗字が書かれてあった。そして、案外近くにひとりで住んでいることがわかった。ふーん。何か虚しさを覚えた。自分は何がしたかったのか。カメラを持って突撃でもすれば面白いのかもしれない。ネットで調べてみると同じ名前の者が自己破産者リストに載っていた。そうかもしれないし、そうではないかもしれない。結局自分には関係のないことだ。じっさいこの文章を書いている今、父親の下の名前をまったく忘れてしまっている。思い出そうとしても思い出せないのだ。
 旅行前日の夜中に家の鍵をなくした。普段ほとんど物をなくさないのでかなり焦った。約4㎞の距離を3往復し、交番に駆け込むも見つからず。最後に寄ったコンビニの駐車場を這うように探し回ったところ、思いがけない場所で発見し安堵した。寒くて死ぬかと思った。自分は落とし物を探す能力には自信がある。物をなくさない、などと言いながらイヤホンのイヤーピースはこれまでに3度落としたことがある。しかし、その都度血眼になって道端から救出してきたのだ。今回見つからなかったら自分はどんなに落ち込んでいただろう。2時間も無駄にしてしまったが、とにかく良かった。もうお洒落を気取ったカラビナは使わない。
 中学時代の友人3名と有馬温泉に行った。ここ数年、年末の旅行は恒例行事となっている。とはいえこの4人で遊ぶために集まるのはおよそ10年ぶりだ。有馬は京都から車でおよそ1時間半。温泉街は観光客でごった返している。外国人も多い。昼飯にカレーを食べ、しばしぶらつく。細く入り組んだ坂道が続く。公園には赤く錆びついた蛇口があった。飲用可能な鉄泉だったが、衝撃的な味に顔がゆがむ。血だ。その後、目当ての温泉旅館に行くも臨時休業であった。どこの湯も混雑しており、20分待ちがザラだった。日帰り湯の看板が出ていないホテルにダメもとで聞いてみると、幸運にも入れるとの答え。客もほとんどおらず、金泉をこころゆくまで楽しめた。歩き途中、炭酸せんべいを土産に買う。特徴のない普通のせんべいだ。ここで一旦宿に戻って車を置き、再びタクシーで温泉街へ。鉄板焼き屋でお好み焼きを食べ、銀泉に入る。顔がツルツルになった。宿はそこからかなり離れた山裾にある合宿所のようなところだった。嫌がるタクシーに乗り込み、外灯のない急坂を登る。受付には緩い感じのおじさんがいて、懐かしさを覚える。鍵を受け取り、宿泊棟へ。一棟貸しなので騒ぎ放題だ。大量に仕入れた酒とつまみと思い出話で深夜までウノに耽った。翌朝気が付いたのは隣の棟の声が意外とよく聞こえるということだ。大声、というか爆音で昔の先生のモノマネやらツッコミやらを繰り返していた我々の醜態は筒抜けになっていたようだ。棟を出る時に同年代くらいの若者と鉢合わせてかなり気まずかった。ここにお詫び申し上げる。この日は朝から中華街へと移動し、料理を食らった。鰆の酒粕餡かけという聞きなれない一皿がめっぽう美味かった。バリスタのいるコーヒー屋でエスプレッソを飲み、だらだら歩いて旅行は終了。京都に着いてからなぜか3時間ほどドライブし、大盛の鴨南蛮そばを腹に入れてから解散となった。
 大晦日は友人宅で蕎麦をご馳走になってから鐘を撞きに行き、深夜まで運行している阪急で松尾大社へ。地元の兄ちゃんが多い印象。社殿がコンパクトにまとまっていて良かった。おみくじは末吉だった。年明け早々、以前付き合っていた人が結婚したことを人づてに聞く。めでたい気持ち半分、複雑な気持ち半分。元日は高校時代の友人3人と四条で酒を飲むだけに留まる。2日は友人らと蹴上の日向大神宮へ。「大」と名づくが割合小さい。社殿の奥には天の岩屋を模したと思しき巨大な岩をL字型にくりぬいた洞窟があり、潜り抜けることができる。いつ作られたものかは不明だそう。暗闇を抜けて日の光を再び浴びる時、不思議にもスッキリとした���覚になる。ここでもおみくじは小吉だった。その後は下鴨神社の露店を物色し、ケバブとヤンニョムチーズチキンなる悪魔のような食べ物に枡酒で乾杯。旧友と合流し、深夜まで酒を飲み、コーヒーで〆。怒涛のアルコール摂取はここで一旦落ち着いた。
 3日、昼に起きる。夕方ごろ喫茶店に行くもぼんやりして何もできず。3時間で本のページを3回めくったのみ。その帰りがけに初めて交通事故を起こした。自分は自転車に乗っていたが、考え事ごとをしていたかそれとも何も考えていなかったか、赤信号の灯る横断歩道の真ん中で車に真横からはねられて、初めて意識が戻った。即座に状況を理解し、平謝りする。非常に幸運なことに怪我も物損もなく、さらには運転手が気遣ってくれたおかげで大事には至らず、事故処理のみしてその場を後にした。自分はあまりにぼーっとしすぎていたのだ。赤信号はおろか、横断歩道があることさえも気づいていなかった。完全にこちらが悪い。ただ、こんなことを言ってはヒンシュクを買うだろうが、何か自分のせいではないような気もした。昔、轢かれたことのある友人が、「車は鉄の塊、人なんて無力」と言っていた。生と死は笑えるほどに近い。車の同乗者には、生きててよかったなぁ! と半ば怒った口調で言われた。果たしてそうなのか。苦しんで生きるか、知らぬ間に死ぬか、どちらが良いのか。よくわからない頭のまま先輩の家に遊びに行き、帰ってからおみくじを捨てた。馬鹿にもほどがある。
 “WWⅢ”がツイッターのトレンド入りした日に、リニューアルしたみなみ会館で映画「AKIRA」を見た。第三次世界大戦で荒廃・復興した2020年のネオ東京が舞台である。東京オリンピックの開催まで予言されていて瞠目する。作画の緻密さと色彩の美麗さ、展開のスピードが尋常ではなく、見るドラッグのようであった。見に来ていたのは意外にも20代の若者が多かった。なぜか終了30分前に入ってきた女性3人組もいた。目がぐるぐる回って、もう何が何か訳がわからなかった。溢れそうな鍋に蓋をしたところ、その蓋の上から具が降ってきた。そんな脳内で、世界の終わりというよりは、自分の終わりという感じだった。翌日から仕事だったが、変に興奮して夜中まで寝付くことができなかった。
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sorairono-neko · 5 years
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 ヴィクトルの演技を、勇利はもう何十回も見直していた。幼いころから、ヴィクトルの踊っているところは夢中で見ていたし、姉に「またなの?」とあきれられるほどくり返し再生したけれど、これは特別だった。だってヴィクトルの復帰試合なのだ。ヴィクトルは長いあいだ、勇利のコーチとして働き、競技のほうは休養していたのである。もちろんそのあいだ、ヴィクトルがまったくすべっていなかったというわけではない。勇利と一緒にいつも氷にのっていた。しかしそれはあくまで勇利のためで、試合に出ることを考えた真剣な練習ではない。ときおり、思い出したように過去のプログラムを演じて見せてくれたけれど、それだけのことだ。たとえば勇利がその程度の稽古で試合に出ろと言われたら、きわめてみじめな結果になるだろう。それなのにヴィクトルは、ロシア選手権で、これまでとはまるでちがう、これまで以上のすばらしい演技をして見せたのだ。その復帰試合の映像を初めて目にしたとき、勇利は、ヴィクトルはこんなにうつくしいんだ、と思い、頬には知らず知らずのうちに涙が流れた。  それからは、寝てもさめてもヴィクトルのことばかり考えた。あんなに神々しい演技、あれほどのことができるヴィクトル、なんてすばらしいんだろう、なんてすてきなんだろう、とそればかりだった。ヴィクトルが自分のコーチだということも勇利は思い出せなかったくらいだ。とにかく氷上のヴィクトルに夢中で、ほかのことは考えられなかった。表彰台のヴィクトルが、気取ったしぐさで金メダルにキスしたとき、勇利は、ああ、この光景がまた見られるんだ、とそのことにも泣いてしまった。どうしようもなくヴィクトルのことが好きで、ヴィクトルのことだけを想い、ヴィクトルしか目に入らなかった。 「ヴィクトル、かっこよか……」  ああ、ヴィクトル。ヴィクトルの試合が見たい。彼の姿を瞳に直接焼き付けたい。これまで以上にうつくしく、華麗で荘厳なヴィクトルの演技。神々しいほどのプログラム。皇帝の名にふさわしいあの威厳。すべてを肌で感じたい。 「ヴィクトルを見たい……」  そうつぶやいた瞬間、勇利はもう立ち上がっていた。彼はバックパックに必要なものをつめこみ、「しばらく帰ってこないから!」と家族に声をかけて家を飛び出した。電車に飛び乗り、移動しながらすべての手配を済ませた。勇利はのんびりしているように見えるかもしれないけれど、やるときは熱中する性質なので、あっという間にチェコはオストラウにたどり着いていた。それはヨーロッパ選手権が開催される地だった。雪がひどかったので、ちゃんと飛行機が着陸できるか心配だったのだが、それほど待つこともなく望み通りオストラウの地を踏みしめることができた。 「さむっ……」  外へ出た勇利は、ニット帽をかぶり直し、下げていたマスクを鼻の上まで引き上げて身をふるわせた。眼鏡がすこし曇った。 「えっと……」  とりあえずホテルへ向かった。荷物を置いたら散策しようと思っていたけれど、それどころではなかった。時差に勇利はまいってしまったのだ。バルセロナに行ったときもそうだったが、差が八時間あると体内時計は狂ってしまう。チェコと日本の時差は、スペインと日本のそれと同じである。 「あー、だめ……」  勇利は早々にベッドにもぐりこみ、深く眠った。目ざめる前に夢を見た。ヴィクトルが出てきた。彼は氷の上で優雅に舞っており、勇利は客席から彼をうっとりとみつめているのだ。ヴィクトル、かっこよか、と感激したところで目がさめた。 「いい夢だった……」  勇利はふわっと笑ってつぶやいた。これは正夢だ。もうすぐヴィクトルを見ることができるのだ。  食事を済ませてから、持ってきた雑誌をひろげた。それはフィギュアスケート雑誌の最新号で、ヴィクトルの記事がたっぷりと掲載されていた。もともと世界的に有名なヴィクトル・ニキフォロフだが、彼は日本の勝生勇利のコーチでもあるので、このところ、日本ではますます知名度が上がっているのだ。勇利は、勝生勇利のおかげでヴィクトルの記事が増える、と感謝した。 「あ、勝生勇利ってぼくだ」  それはともかく、勇利は雑誌を読み耽り、満足してから再び眠りについた。  翌日は、道に迷いながら、雪の中を一生懸命会場へ向かった。今日は男子のショートプログラムがある。しかし、勇利の目当てはそれだけではない。 「ヴィクトルー!」 「クリス!」 「エミル!」 「ユーラチカー!」  黄色い声援が飛び交う中、選手たちが会場入りする。もちろん勇利も大勢のファンに紛れこんでその様子を見学した。ものすごい揉み合いである。ファンとしてこういう場に参加するのは、じつは勇利は初めてではないのだけれど、過去にないほど活気にあふれていた。それだけヴィクトルの復帰をみんなが待ちわびていたということだろう。よくチケット取れたなあ、と勇利は息をついた。開催地がチェコだからよかったのかもしれない。ロシアでは無理だっただろう。確か来年はモスクワで開催だ。次はチケット争奪戦だぞ……と勇利は気を引き締めた。  ヴィクトル、ヴィクトル、と呼ぶ声が多かった。勇利も一緒になって叫んだ。 「ヴィクトル、かっこよかー!」  日本語で言った。ものすごく気持ちよかった。すると、戸口の前でヴィクトルが立ち止まり、振り返ったからどきっとした。でも、もちろん勇利の声が聞こえたわけではないだろう。彼はかけていたサングラスを外すと、にっこり笑い、片目を閉じて愛嬌を振りまいた。悲鳴と歓声が上がる。勇利も両手を握り合わせて、みんなと一緒に「きゃー!」と叫んだ。ヴィクトルのファンでいられるって最高……。  ヴィクトルが笑顔で手を振って中へ入っていく。勇利はいつまでも彼の消えた扉をみつめていた。ヴィクトルだ……。なんだか泣きそうだった。かっこいい。すごくかっこいい。ぼくの神様。王子様。 「あなたもヴィクトルのファンなの?」  隣にいた女の子が話しかけてきた。金髪でそばかすのある、気のよさそうな少女だった。癖のある英語を話す。 「うん、そうだよ」  勇利は興奮気味に答えた。 「男の子でも彼の魅力がわかるのね。当然よね。かっこいいわよね、彼!」 「うん! ぞくぞくきちゃう! 最高!」 「ああ、ヴィクトルにほほえみかけられたいわ。ちょっとでもいいから話したいわ。彼、去年、自分の生徒にリンクでキスしたのよ。見た? すごいわよね。ユーリ・カツキって選手。知ってる?」 「知ってる。うらやましいよね!」 「みんなは、あれはしてない、ぎりぎりだ、とか言ってたけど、私はしてると思うわ。あなたは?」 「ぼくもそう思う!」  会場に入り、客席に腰を下ろした勇利は、もう完全にのぼせ上がってしまっており、あとでいくら思い出そうとしても、ヴィクトルが登場するまでの記憶がなかった。ヴィクトルがもうすぐすべる、それを見られる、ぼくが、ぼくがこの目で、と思うと全身がふるえるほどだった。勇利の頭の中はヴィクトルでいっぱいだったのだ。ヴィクトルの滑走順は最後で、彼がリンクサイドに姿を現したとき、勇利は興奮のあまり泣き出してしまった。 「ちょっと、大丈夫?」  隣にいた女性に心配された。 「だ、大丈夫です……問題ありません……」 「ヴィクトルを見に来たの?」 「はい……」 「わかるわ。そうなるわよね。ロシア選手権の演技もすごかったわよね」  勇利は、ヴィクトルのロシア選手権の演技がどれほどすばらしかったかを演説したかったけれど、ヴィクトルを見るのに夢中でものが言えなかった。  前の選手の演技が終わり、ヴィクトルが氷にのる。地響きのような歓声が上がった。勇利も喉を嗄らして「ヴィクトル!」と叫んだ。ヴィクトルがコーチと何か話している。彼はまったく緊張しているようには見えなかった。微笑さえ浮かべ、くつろいだ様子でうなずいていた。ヤコフが何か言いかけるのを、「わかったわかった」というように愛嬌のあるしぐさで遮ったのでみんなが笑った。 「はあ……ヴィクトル、かっこよか……演技前でもぜんぜん緊張しとらん……さすがヴィクトルばい……」  ヴィクトルの名前が読み上げられ、彼は歓声に応えながらリンクの中央へ向かった。勇利は再び涙ぐんでいた。両手をかたくかたく握り合わせ、ヴィクトルの一挙手一投足を見守る。スタートポジションについたヴィクトルは、目を伏せ、優しいまなざしでみずからの手を見た。何をしているのだろう? 勇利は首をかしげた。ヴィクトルのルーティンにこういうものはなかったはずだけれど。 「指輪を見てる」  隣の女性がつぶやいた。勇利は瞬いたが、その瞬間、ヴィクトルが静止し、わずかな間のあと、音楽が流れ出した。ヴィクトルがなめらかにすべり始める。  それからの約一分半は、勇利にとって目がくらむほどの陶酔の時間だった。勇利は、ぼくはあの一分半のために生まれてきたのではないかとあとになって思った。それほど濃密で、息もできないほどうつくしく、崇高な時だった。勇利は夢見るような瞳でヴィクトルの姿を追い続けた。釘付けだった。  ヴィクトルの演技が終わった瞬間、勇利は勢いよく立ち上がって思い切り手を叩いた。もちろん、まわりの観客もそうしていた。数々の花束がリンクに投げこまれる。そこで勇利はようやく気がついた。花を支度していない。そんなことも思いつけないほど、勇利の頭の中はヴィクトルでいっぱいだったのだ。  ヴィクトルが丁寧な挨拶をし、ぬいぐるみをひとつ拾った。まわりの女性が「かわいい!」と叫んだ。プードルのぬいぐるみだ。マッカチンだ、と勇利はにこにこした。  キスアンドクライで、ヴィクトルはマッカチンのぬいぐるみを膝に置き、マッカチンのティッシュカバーの奥からティッシュペーパーを引き出した。あのカバーはいまぼくのところにあるはずなのに、と勇利は思い、ヴィクトル、マッカチンたくさん持ってるんだなあ、とほわっとした感情をおぼえた。ヴィクトルが手を振ってから鼻をかんだ。さすがヴィクトル、鼻をかむ姿もかっこよか……。  ヴィクトルの得点が出た。二位を大きく引き離して、いちばんだった。勇利は当然だと思いながらも、歓喜の悲鳴をまわりのみんなと一緒に上げた。ヴィクトルは笑みを浮かべ、うんうんとうなずいた。ヤコフが何か言っている。ヴィクトルは怒られているのだろうか? どこがいけなかったのか、勇利には想像もつかなかった。ていうか、ヴィクトル、パーソナルベスト更新してもいいんじゃないの? 採点員はわかってないな!  そのあと、どうやってホテルへ戻ったのかよくおぼえていない。とにかく気持ちがふわふわと浮ついて、夢見ごこちだった。興奮で食事が喉を通らなかった。  ああ、ヴィクトル……。  かっこよかった……。  すごかった……。 「……ヴィクトル」  勇利はベッドの上を転げまわり、ヴィクトルのすばらしい演技に思いをめぐらせた。指先の繊細な動き、視線の使い方、思いのこもった表情、身体のしなり、音楽のとらえ方、そしてジャンプの入り方、着氷――何もかもが完璧だった。八ヶ月もやすんでいたとは思えない。��ィクトル・ニキフォロフは絶対王者だというのが演技から伝わってきた。これが最高ではない。もっともっと、今後、どんどん彼のすばらしさがあますところなく発揮される。そんな予感をおぼえるプログラムだった。 「ああ、ヴィクトル、ヴィクトル、ヴィクトル……」  勇利は幾度も吐息を漏らした。頬は紅潮し、ちょっとしたことで目がうるんでしまう。 「ヴィクトル、好き、好き好き……」  その夜は、ヴィクトルの比類ない姿を思い浮かべながら眠りについた。勇利はしあわせだった。  翌日はシングル男子の試合はなかったので、勇利は一日ホテルにこもって過ごした。雪がひどく、外は寒そうだったけれど、そんなことは頭になかった。勇利は退屈しなかった。彼は両手を組み合わせ、ぼんやりと視線を宙に投げ、うっとりした表情で昨日のヴィクトルの演技を思い出していた。そうしているだけで時間は飛ぶように過ぎた。ときおりは、会場入りするときのヴィクトルを思い浮かべた。スケートをしていないおりでも彼は優雅な身のこなしをしており、すばらしく洗練された物腰でふるまうのだ。振り返り方、そのときの髪の揺れ方、サングラスを取るときの手つき、片目を閉じる上品さ――、どれをとっても文句のつけようがない。勇利は上気させた頬に手を当て、「ヴィクトル……」と幾度もつぶやいた。彼は恋に落ちた乙女のようだった。  夜になると勇利は、明日のフリースケーティングに備え、早めにやすんだ。翌朝はきちんと朝食をとり、心構えをしっかりした。万全の体調でヴィクトルを見るのだと彼は意気込んでいた。ああ、またヴィクトルに会える、彼の姿を目に焼き付けることができる――そう思うと勇利はこれまでにないほど気持ちが高揚した。  もちろん、今日もヴィクトルの会場入りを見守った。勇利はもみくちゃにされながら、大勢のファンに交じって声を張り上げた。 「ヴィクトル、ヴィクトル、かっこいい! ヴィクトル、ショート最高だった。ヴィクトル好き! 大好き!」  ヴィクトルは親切にファンたちを振り返り、にっこり笑って手を振った。勇利は思わず隣にいた少女に話しかけてしまった。 「見た? 見た? いまのヴィクトル見た!? クッソかっこいい!!」 「見た! ほんとかっこいい!」  ほかの者たちも同意した。ファンのこころはひとつだった。 「すごいわよね、ヴィクトルと普通に話せる人もこの世に存在するんだもんね」 「ほんとにね! ヴィクトルを目の前にして落ち着いてられるってどういう人間なんだろう。もう、信じられないよ! ぼくだったら絶対興奮して頭が変になっちゃう!」  勇利はこぶしを握って力説した。  先日もそうだったけれど、勇利は客席で、まわりを見まわす余裕もなかった。ただヴィクトルの出番を待ちわび、彼の姿を望んだ。精神状態がおかしくなっているんじゃ、と自分で疑ったので、とにかく深呼吸をして気持ちを鎮めた。ヴィクトルの演技前に倒れて医務室へ運びこまれる、なんていう事態は絶対に避けなければならない。落ち着け、落ち着け。  ヴィクトルは今日も最終滑走だった。彼がリンクサイドにやってくると、勇利は目をきらきらと輝かせ、じっと見入った。眼鏡を押し上げて、最適な位置にレンズを動かすことも忘れない。眼鏡の度数を変えておけばよかったかな? そんなこと、いま考えても仕方がない。ヴィクトルだ。ああ、ヴィクトルだ! 「ヴィクトルー! ダバーイ!!」  ヴィクトルがスタートポジションへ向かってすべり出すと、勇利は声を限りに叫んだ。うつくしい衣装の裾がひらりと翻る。勇利はヴィクトルのこの衣装が大好きだった。色といい、デザインといい、完璧だ。いかにも気高く、皇帝にふさわしい。昨季から着用しているものなので、勇利はヴィクトルが衣装を変えてしまうのではないかと心配していたのだ。ヴィクトルのことだから、どんなものでもうつくしく着こなすだろうけれど、しかし勇利はこれがよかった。作製の時間がないからか、それともヴィクトル自身も気に入っているのか、彼がロシア選手権でこの衣装をまとって現れたときは、少なからず感激した。これを着こなせるのはヴィクトルしかいない、と思った。  ヴィクトルが静止した。彼はふうっと息をつくと、右手を持ち上げ、そっと薬指にはめた金色の指輪に接吻した。観客がどよめき、勇利も陶酔したようにそのしぐさをみつめた。  ヴィクトル、かっこよか……。  金メダルにするときもそうだが、ヴィクトルは、キスという動作が本当に似合うのである。  ヴィクトルが優しいまなざしで指輪をみつめ、ゆっくりと手を下ろした。ひと呼吸おいたあと、アリアの叙情的な旋律がささやくように流れ出る。それに乗って、なめらかにヴィクトルがすべり始める――。  勇利はほうっと溜息をついた。なんてうつくしいのだろう。この世のものとは思えない。「離れずにそばにいて」。昨季からのプログラムである。しかし勇利は、それが新鮮さをともなってこころに迫ってくるのを感じた。ちっとも見慣れたという気がしない。ヴィクトルはいつだって新しい感性をくれる。去年までのヴィクトルとぜんぜんちがう。あのときもすてきだったけれど、いまはもっと――もっと――ああ、言葉にできない!  ヴィクトルはほほえみさえ浮かべて踊っていた。「とんでもない鬼プロ」とスケート仲間のあいだでささやかれるそれを、甘く魅惑的に。舞いを見ているかのようだ。そうして人々を惹きつけておいて、難しいジャンプを鋭く跳ぶのである。はっとめざめさせられる。  ヴィクトル、貴方はなんて綺麗で威厳があるのでしょう。ぼくはもう、貴方にすべてを捧げたくなる。ううん、でも、そんなふうに考えることさえ畏れ多い――。  勇利はつぶらな瞳を大きくみはり、くちびるをわずかにひらいてヴィクトルに見蕩れていた。ヴィクトルが最後に両手を肩に添え、天を仰いだとき、勇利の瞳からは大粒の涙があふれた。 「ヴィクトル……」  しかしヴィクトルの姿を見逃すわけにはいかない。勇利は急いで眼鏡を上げ、手の甲で目元をこすると、風格のある長身に目をこらした。ヴィクトルは両手を下ろしたあと、右手だけをすっと上げ、最初と同じように指輪にうやうやしくくちづけした。それから笑顔で手を振った。彼は丁寧な挨拶を幾度もした。勇利は立ち上がり、てのひらが痛くなるほど拍手した。ヴィクトルはリンクの出口へ向かう途中、ふと視線をめぐらせ、ひとつのぬいぐるみへ寄っていった。マッカチンかな、と思った勇利は大きく瞬いた。思わずつぶやいた。 「あのぬいぐるみ、なに?」  勇利のちいさな声を聞き取った隣の観客が答えた。 「ユーリ・カツキよ! 手作りみたいね。『エロス』の衣装着てる。かわいい!」  ああ、なるほど。ユーリ・カツキか……。ヴィクトルの生徒のぬいぐるみを誰かが気遣って投げ入れたのだ、と勇利は納得した。ヴィクトルうれしそう。よっぽど自分の生徒が好きなんだね……。  キスアンドクライに座ったヴィクトルは、ぬいぐるみの手を取り、左右に振ってにこにこ笑っていた。勇利は、ヴィクトルが歴代最高得点を塗り替えるのではないかと考えた。胸がどきどきした。勇利は瞳を輝かせながら採点を待った。  会場の大型モニタに、ヴィクトルが足元にあるモニタをみつめる光景が映し出されている。結果を知らせるアナウンスが流れた。歓声が上がった。「Rank1」という文字が映し出される。ヴィクトルが金メダルだ。  予想していたことなのに、勇利はたまらなくうれしくてまた泣いてしまった。歴代最高得点は更新できなかった。しかしヴィクトルならそのうち抜いてくれるだろう。とにかくヴィクトルは最高だった。  表彰式のあいだも、勇利はずっと夢見ごこちだった。さらにその気分は続いた。翌日のエキシビションで、ヴィクトルはなんと勝生勇利のショートプログラム「エロス」を披露したのだ。これには会場じゅうが悲鳴を漏らした。勇利は両手を頬に当て、歓声を上げっぱなしだった。ヴィクトルかっこいい、と瞳は常にうるんでいた。勝生勇利の見せる誘う駆け引きとはちがう、まるで最初から「おまえは俺を愛してるだろう?」と魅了するような「エロス」だった。さあおいで。そんな目をするなら抱いてあげるよ。その代わり、忘れられなくなっても知らないよ。――そうして惹きこまれた。勇利はふるふるとふるえながら、「抱いてください……」とつぶやいてしまった。日本語だったので誰にもわからなかっただろうけれど、もし通じる者がいたとしても問題はなかっただろう。なぜなら、会場じゅうがそんな感情でいっぱいだったからである。勇利は、「ヴィクトル、ぼくを抱いてー!」と今度は叫んだ。  勇利はみちたり、これ以上ない幸福感を抱いてホテルへ戻った。彼は何をするにもヴィクトルのことを考え、ヴィクトルの圧倒的に男っぽい微笑、なまめかしい指先、そして胸がずきずきするほどのつやっぽさと色気を思い起こしては涙を流して時間を過ごした。人間が暮らしをいとなむために必要なこともするにはしたけれど、食事も入浴もすべて上の空だった。勇利は自分が何を食べたか思い出せなかった。  ベッドにもぐりこんだ勇利は、来てよかった、とこころからの満足を感じていた。これで明日からまた生きていける。ヴィクトルがいればこの世界は輝くし、勇利の人生はばら色だ。  翌朝勇利は上機嫌でホテルをチェックアウトし、空港へ向かおうとした。しかし、ものすごい吹雪に遭い、行き倒れそうになった。そのときもまだ勇利はヴィクトルのすべてにこころを奪われていたので、まるで理解していなかったのだけれど、交通機関は麻痺し、道をゆく人はまったくいない状態だった。さすがに生命の危機を感じたとき、ようやく勇利は我に返り、このままではまずい、と青ざめた。これではきっと飛行機は飛ばないだろう。そもそも空港にたどり着けないし、あたたかいところへ避難しなければ大変なことになる。  勇利はホテルへ引き返そうとした。しかし、ずいぶん歩いてきてしまったので、とても帰れそうになかった。どうしよう?  そういえば、もう一軒ホテルがあった、と思い出した。そちらのほうが都合がよかったのだけれど、泊まり賃が高くて断念したのである。だが、いまはそんなことは言っていられない。ここからならたどり着けるはずだ。勇利はふらふらしながら記憶を頼りに道を曲がった。  雪にまみれ、ほとんど雪だるまになって、勇利はようやくホテルにたどり着いた。泊まっていたところより豪華なつくりにいくらか気後れしたけれどどうしようもない。とりあえず部屋が空いてるか訊いて……と中へ入ろうとしたとき、ちょうど出てきた宿泊客にぶつかってしまった。 「あ、ごめんなさい……」  勇利はしりもちをつき、ずれた眼鏡に手をやった。 「こちらこそ。失礼」  長身の男性が言った。勇利は曇った眼鏡越しに相手を見たが、その瞬間、一気にのぼせ上がった。  ヴィクトルだ! 「えっ、あ、あ、えっ、えっ、なっ……」  まともにしゃべれなくなってしまった。こんなところにヴィクトルがいるなんて! 信じられない。ここは選手���泊まるホテルだったのだろうか? 勇利はそこまでは知らなかった。なんという幸運。でもいま自分は、甚だしくみっともない姿をしているのである。勇利は急に気恥ずかしくなった。なんだこの垢抜けない貧しそうな子どもは、と思われたかもしれない。サインが欲しいけれど、そんなことを言っている場合ではない。 「あ、うんと、ヴィ、ヴィクトル、え、えっと、や……」  しどろもどろになった勇利をヴィクトルは助け起こし、それからぱちりと瞬いた。彼は大きく目をみひらき、どうして、というようにつぶやいた。 「勇利……?」 「えっ」  そこでようやく勇利は、自分がヴィクトルの生徒なのだということを思い出した。いや――もちろんそれは事実として頭の片隅にあったのだけれど、勇利はひと月ほどずっとひとりで練習していたし、そのあいだ、ヴィクトルのことを画面越しにしか見ていなかったし、オストラウに来てからはファンとしての感情しかなかったしで、そういう心構えが吹き飛んでしまっていたのだ。 「す、すみませんでした!」  勇利は反射的に逃げ出そうとした。なぜかはわからないけれど、自分の存在をヴィクトルに知られたくない、と思った。たぶん、練習もせずにこんなところにいることとか、そこまでしたかったファン心理とか、それを気持ち悪いやつだと思われるのではないかとか、そんなことが心配だったのだろう。勇利はヴィクトルにくるりと背を向け、重厚な扉を押し開けて外へ飛び出した。 「わっ」  雪に足を取られて勢いよく転んだ。勇利は雪につっぷした。 「勇利!」  ヴィクトルが慌てて出てきて勇利を抱き起こした。 「大丈夫かい? 急に外へ出るから……」  どこも痛くなかった。そんなことよりヴィクトルから逃げ出したかった。勇利はまっかになり、マスクを引き上げ、マフラーに顔をうめるようにしてうつむいた。 「ぼ、ぼくは勝生勇利ではありません」 「え?」 「人違いです。失礼します」 「あ、ちょっと」 「さよなら!」 「勇利!」  勇利は立ち上がり、よろよろと駆け出した。幸い、風はよわまり、雪もさっきほど降っていなかった。これなら前も見えるし歩ける。もとのホテルへ戻れそうだ。勇利は雪の深さに不自由しながら、脇目もふらず歩いた。とにかく安全な場所へ行きたかった。この寒さがなく、ヴィクトルもいないところへ。 「はあ、はあ」  息を弾ませつつ、ようやく目当てのホテルへたどり着く。一時間ほど前に出たばかりの建物なのに、ひどくなつかしく感じた。とにかく疲れた。もう一泊できるか訊かなければ。ロビーには人が多い。勇利のように予定の狂った旅行客だろう。泊まれるだろうか、と不安になった。扉の前で雪を払い落とし、ふらふらしながら受付へ行こうとしたとき――。 「勇利」  やわらかくて艶のある声にはっきりと呼ばれ、勇利は飛び上がった。おそるおそる振り返ると、観葉植物の陰にヴィクトルがいて、腕を組み、にこにこしながら勇利を見ていた。 「やあ。ひどいな。なぜさっきは逃げ出したりしたんだい?」 「あ、あの……」  勇利は青ざめた。どうしてここに? なんで? なぜ勇利の居場所がわかったのかも不思議だし、勇利よりさきにたどり着いているのもおそろしい。 「ぼ、ぼくは勝生勇利ではありません……」  勇利はちいさな声で反論した。ヴィクトルがおおげさに目をみひらく。 「勝生勇利じゃないだって?」 「は、はい……」 「この俺を置いてきぼりにするなんて、そんなこと、この世界で勝生勇利しかしないはずなんだけどね」  ヴィクトルはつかつかと歩み寄ってきた。勇利はうろたえ、ヴィクトルは勇利の手首をしっかりとつかんだ。もう一方の手でマスクとマフラーを下ろし、ニット帽も取ってしまう。 「ああ、やっぱり俺の勇利だ。こんなにかわいい子は俺の生徒しかいないよ。きみは勝生勇利だよ」 「い、いえ、あの……」 「で、俺の最愛の生徒がなんでこんなところにいるんだろうね? 俺のいとしい勇利はいまごろ日本の長谷津にいて、四大陸選手権のために練習をしているはずなんだけど。俺は夢を見ているのかな?」 「えっと……」 「まあいい。話は部屋で聞くよ。こんなところで言いあっていても仕方がない。おいで」 「えっ」 「こっちだ。勇利が逃げたりするから手間がかかるじゃないか。雪が激しくなったら移動できなくなるよ。早く」 「ぼ、ぼくはここに泊まるんです」 「残念ながら部屋は空いてないそうだよ。俺のところへおいで」 「でも……」 「野宿する気かい? 来るんだ」  勇利はヴィクトルに手を取られ、ふらふらしながらついていった。部屋が空いていない? 本当だろうか? しかし、どちらでも同じことだ。ヴィクトルにみつかってしまった以上、もう事態は勇利の思うようにならないのだ。  勇利は再び外へひっぱり出され、ヴィクトルのホテルへ連行された。ヴィクトルは受付でもうひとり泊まることを伝え、そのぶんの金額を支払った。 「ヴィクトル、ぼく、自分で払います」 「そんなことはいいからおいで。寒いだろう。俺のところはダブルだから問題ないよ。もともともう一泊する予定だったんだ。ちょうどよかった。明日にはこの天候もおさまるといいね。ちなみに、俺が勇利のホテルへ行けたのは、ここからいちばん近いホテルを考えて見当をつけたからで、きみより早くたどり着けたのは、俺がきみよりこのあたりの道を知っていたからというだけの理由だよ」  勇利はヴィクトルの部屋へ連れていかれた。勇利としては、引き立てられるという気持ちだった。ヴィクトルの部屋はそれほどひろくはなかったけれど、寝台が大きく、そして、枕元にぬいぐるみが置いてあった。マッカチンと、「エロス」の衣装を着た勝生勇利だった。 「さあ、服を脱いで。濡れただろう。着替えはある?」 「あ、あります」  本当に少ない荷物で来たから、それはすでに着た服だった。しかしほかに乾いているものはないし、どうしようもないので勇利はうなずいた。ヴィクトルはすこし考え、自分のトランクの中から清潔なジャージを取り出し、勇利に手渡した。 「これを着るといい」 「あの、結構です。悪いから……」 「いいから着て。下着は……」 「あっ、下着はいいです。あります」  前夜、入浴したときに手洗いして干しておいたのだ。勇利が慌てて手を振ると、ヴィクトルはふっと笑い、「じゃあ浴室を使って」と扉を示した。 「あの……」 「なんだい?」 「……すみません」 「いいよ。早く入って。試合前に風邪をひいたら大変だ。試合前じゃなくても大変だけどね」  勇利はおずおずと浴室へ行き、そこで熱いシャワーを浴びた。ああどうしよう、と頭の中はそればかりだった。ヴィクトルと会ってしまった。怒ってるかな? でもそんなことより、ヴィクトルはあのヴィクトル・ニキフォロフなのだ。どうしよう。どうしよう。どうしよう……。  ほかほかとあたたまった身体で部屋のほうへ行くと、ヴィクトルが窓際のテーブルで紅茶を飲んでいるところだった。 「おいで」  ヴィクトルがほほえんだ。勇利はぽーっとなった。遠慮がちにそちらへ行き、彼の前にちょこんと腰を下ろした。 「服、ありがとうございます」  ヴィクトルのジャージは勇利にはすこし大きかった。そしてよい匂いがした。ぼく、ヴィクトルのジャージ着てる……と勇利は興奮ぎみだった。  ヴィクトルは勇利のために、優雅な手つきでカップに紅茶をついだ。勇利は低い声で礼を言ってそれを飲んだ。 「さてと……」  ヴィクトルはソファの背もたれにもたれ、脚を高々と組んで勇利を打ち眺めた。勇利は赤くなって目を伏せた。ヴィクトル、かっこよか……試合でもかっこよかったけど、いまも……。 「説明してもらえるかな」 「え?」 「どうして勇利がこんなところにいるんだろう? 俺はびっくりしたんだよ。思いがけず勇利に会えてとてもうれしい。でもかなり混乱している。だから話して欲しい。どうして勇利はここにいるんだ?」 「え、えっと、あの、ぼく……」  何か言わなければ。ヴィクトルが説明を求めている。話さなければ。そう思うのに、勇利の舌はいっこうに動いてくれなかった。目の前にヴィクトルがいるのだ。あのヴィクトル・ニキフォロフが。あれほどのすばらしい、感動的な、たぐいまれな演技をしたヴィクトルが。勇利は喜びと興奮とで気持ちが高揚し、口が利けなかった。その代わり、どんどん頬が紅潮してくる。さっきまで雪にまみれて凍えていたのに、熱い湯を使ったり紅茶を飲んだりしたからではなく、内側から熱があふれてくるようだった。 「勇利? どうしたんだ?」 「…………」 「なんだい? そんなにじっと見て。きみは……」 「ヴィ、ヴィクトル」  勇利の口がようやく動いた。話せるとなると、勇利は一気に語り始めた。とめどなく言葉があふれた。 「あの、あの、ぼく、ヴィクトルの試合見ました。演技、見ました!」 「え?」 「すごかったです。すばらしかったです。気品高いヴィクトルの演技……、最高でした。泣きました。あの、上手く言えないんですけど、本当に感激しました。貴方が氷の上に戻ってきてくれてうれしいです。また貴方のスケートが見られると思うと、ぼくは喜びで胸が苦しくなります」 「……勇利?」 「かっこよかったです。綺麗でした。うつくしかった。すみません、月並みな言葉しか出てこなくて……ちょっといまぼく、とりみだしてて……。あのヴィクトルに会えるなんて思っていなかったし」 「…………」 「会場入りする貴方を待ってました。みんなに笑顔を振りまいてくれてうれしかった。どきどきしました。ヴィクトルはやっぱりファンに優しいなあって、ファン同士で盛り上がりました。みんな、貴方のことを偉大だって言ってました」 「…………」 「エキシビションも見ました。気高くて、崇高で、それから大人っぽくて、すっごくエロスで……ぞくぞくしました。抱いてあげるって言われてるみたいでした。ぼく、ヴィクトル、抱いて! って思いました。ホテルへ戻ってからもずっと、寝てもさめても貴方のことを想っていました」 「…………」 「来てよかったです。ありがとうございます。ヴィクトルが復帰してくれて本当にうれしい。それで、あの、ぼくずうずうしいと思うんですけど、いままでこんなこと言ったことないし、近づくのも無理だったんですけど、もうここまで来てしまったので、恥知らずだけどおねがいしてしまいます。よかったら、あの、あの……」  勇利はバックパックを探り、いつも持ち歩いているおぼえ書き用の大切なノートを取り出した。 「サインください!」 「…………」  ヴィクトルは黙って勇利をみつめていた。彼は静かにノートを受け取ると、新しいページを出し、ペンでさらさらと名前を書いた。 「宛名入れるの?」 「で、できれば……! あの、ぼく勝生勇利っていいます」  ヴィクトルは微笑を浮かべながら、「かわいらしい俺の勇利へ」と宛名を入れ、そのページを勇利のほうへ向けて差し出した。勇利はふるえる手でノートを引き取ると、胸に抱きしめ、泣きそうになりながらつぶやいた。 「ありがとうございます。宝物にします……!」 「どういたしまして」  にっこり笑ったヴィクトルはペンを置き、頬杖をついてからかうように言った。 「……で? つまり勇利は、ロシア選手権の俺の演技を見て気持ちが高揚し、いてもたってもいられなくなってヨーロッパ選手権を観戦しに来たということなのかい?」 「えっ……、は、はい、そうです」 「俺の演技を自分の目で見るまでは落ち着いて練習もできないと」 「は、はい」 「見ることさえできれば四大陸選手権に集中できるし、勉強にも、力にもなるからと」 「はい……」 「俺に連絡したら怒られるから、こっそり来たと」 「こっそりというか……そういうこと考えてなくて……」 「なるほど」  ヴィクトルはゆっくりとうなずいた。 「かわいいね……、勇利」 「あ、あの、ヴィクトル」 「なんだい?」 「訊いてもいいですか? ヴィクトルの演技、昨季とぜんぜんちがったんですけど、今回の心構えとか意識とか」 「おやおや。だんだんファン式からいつもの遠慮のない勝生勇利式に変わってきたな」 「あとジャンプ構成が……」 「あのかっこうでファンにまぎれこまれたら、さすがに俺も勇利だとはわからないよ。試合用の姿で来てくれたらよかったのに。でもね、おやっとは思ったんだ。なんとなく勇利の声が聞こえた気がしたんだよ。あまりにもおまえを恋しがっているから幻聴が聞こえるんだと思ったけどね。勇利、きみ、俺の演技前に『ダバーイ』と叫んだね」 「えっ」 「『エロス』はきみへ向けて踊ったプログラムだよ。抱いて欲しくなった? オーケィ。きみの解釈でまちがいない」 「あ、あの、ヴィクトル……?」  ヴィクトルは立ち上がると、勇利の手を取り、うやうやしく、しかし強引にベッドへ案内した。 「何を……」  押し倒され、勇利はとりみだした。ヴィクトル何なの!? 何しようとしてるの!? 「ファ、ファンにこんなこと……」 「まだそんなことを言ってるのか。皇帝ヴィクトル・ニキフォロフの魔法にかかっているようだね。俺がその魔術をといてあげよう」 「ちょ、ちょっとヴィクトル――」 「勇利……、会いたかったよ。あとで金メダルにキスさせてあげる。いまは俺にキスをして」 「あっ……」 「信じられない!」  身体のけだるさからようやくさめた勇利は、頬をふくらませて文句を言った。ヴィクトルは勇利に腕枕をし、のんびりと笑っている。 「なんでえっちなことなんてするの!? ぼくはヴィクトルの演技に本当に感動してたんだよ!」 「演技に感動することとセックスに感激することは相反しない」 「べつに感激なんてしてませんから!」 「いやだった?」 「……いやじゃないけど」  勇利がヴィクトルの胸に顔をうめて甘えると、ヴィクトルは陽気に笑って勇利の髪を撫で、耳元にささやいた。 「魔法がとけたようだね」 「う……」  ヴィクトルの親しみ深い愛撫を受ければ、遠くからあこがれているだけの子どものような精神ではいられない。 「……もうちょっとあのままがよかった」 「勇利は楽しいかもしれないけどね、俺はつまらないよ」 「だって……」  勇利は拗ねた。 「本当によかったんだもん、ヴィクトルの演技……」 「じゃあファンの言葉じゃなく、俺が溺愛する、俺の勇利の言葉で褒めてくれ」 「…………」  勇利はヴィクトルの喉元に接吻し、あえかな息をついた。 「ヴィクトル……」 「うん?」 「……すてきだった……」 「ああ」 「かっこよかった……もうわけがわからないくらいよかった……ロシア選手権も……。よすぎて、思わず家を飛び出しちゃったし、チェコにまで来ちゃったし、完全なファンに戻っちゃったよ……」 「勇利の愛情表現は複雑だ」  ヴィクトルが明るく笑った。彼のてのひらを背中に感じながら、ああ、ヴィクトルだ……と勇利は目を閉じた。 「ぼくのヴィクトルは最高……」 「ふ……」  ヴィクトルは勇利のまなじりにかるく接吻した。勇利はすりすりとすり寄った。ヴィクトルは手を伸べて携帯電話を取り、時刻を確かめた。それからすこし何か操作した。 「……あ」 「なに?」 「勇利、撮られてるよ」 「え?」 「ニュースになってる」  勇利は目をみひらいた。 「うそ!」 「本当。『ヴィクトル・ニキフォロフの秘蔵っ子、勝生勇利、ヨーロッパ選手権を観戦。関係者席にいないことから、ファンとして見に行ったものだと思われる。勝生は会場入りする選手を行儀よく待って、ほかのファンとともにニキフォロフに声援を送り、満足の様子だった。観戦中はニキフォロフの演技に夢中になっており、勝生勇利はヴィクトル・ニキフォロフのファンなのだということを改めて我々に思い出させた』だって」 「見せて!」  勇利はヴィクトルの腕をぐいと引いた。読んでみると、確かにヴィクトルが言ったようなことが書いてあった。眼鏡とマスクという姿の勇利の写真もある。両手を握り合わせて、目をうるませているではないか。勇利はまっかになった。この顔! こんなにとろけきって……。世界じゅうに知れ渡ってしまった。  気恥ずかしさのあまりヴィクトルに抱きつくと、彼は笑いながら携帯電話を戻し、勇利を抱き直した。 「俺のファンとどんな交流したの?」  勇利はすぐに立ち直った。確かにきまりが悪い。けれどよいではないか。ヴィクトルなのだ。誰だってヴィクトルの試合は見たいだろう。勇利は当たり前のことをしただけなのである。何も恥じることはない。 「みんなヴィクトルかっこいいって。ヴィクトルに話しかけられたい、笑いかけられたいって言ってたよ。そうそう、勝生勇利とリンクでキスしたかしてないかっていう話があるんだって」 「勇利はなんて答えたんだ?」 「してたと思う、って。あと、うらやましいよねって」 「おまえはどうかしている」 「そうかな……」  ヴィクトルがくちびるを重ねた。勇利はふるっとふるえた。 「……それから?」 「ヴィクトルの『エロス』見て、みんな『抱いて!』って雰囲気だった」 「俺が抱くのは勇利だけだよ」 「ぼく、ヴィクトルかっこよか! って叫ぶの最高に気持ちよかった。ヴィクトルのファンサービスうれしかった」 「普段、勇利にはもっとサービスしてるだろう?」 「そういうのとはちがうんだよ……」 「わからない子だな……」 「それに……、」  勇利はつぶやいた。 「このところは会ってなかったから、ヴィクトルのぼくへのそういうサービスとも無縁だったし……」  ヴィクトルはもう一度優しく勇利にキスし、ほほえんだ。 「いましてるじゃないか……」 「じゃあ、もっとして」 「何をしてもらいたい?」  勇利はおとがいを上げると、のんびりと笑っているヴィクトルを熱心にみつめた。 「いまになって気がついたんだけどね、ぼく、一ヶ月とすこしあとには、あのヴィクトル・ニキフォロフと戦わなくちゃならないんだよ」 「その通りだね」 「ヴィクトルは強くて、品位が高く、絶対的な威厳にみちていた……」 「勇利は可憐で凛々しく、逆らえないうつくしさにみちているよ」 「ねえヴィクトル」  勇利はヴィクトルに顔を近づけた。 「どうすればヴィクトル・ニキフォロフに勝てると思う?」 「…………」 「ヴィクトルはぼくのコーチでしょ。勝てる方法を考えてよ。そして練習の項目一覧をつくり直してよ」  ヴィクトルはおもしろそうな目で勇利をしばらく眺めていたが、「ファン式の勝生勇利は完全に終わったようだね」とうなずいた。 「そうだよ。ヴィクトルが魔法をといたんじゃない」 「しかし、ベッドの中でする会話じゃないな」 「そんなの知らない。ヴィクトル、ぼくをヴィクトルに勝てるようにして!」 「まさに勝生勇利式だ……」  勇利はベッドから裸で飛び降りると、テーブルにのっていたノートとペンを取り、再びヴィクトルの隣へすべりこんだ。 「ぼくがいま朝からやってる練習をおさらいするね。いい? まず基礎練をして、コンパルソリーをして、パート練習をして、ジャンプをやって、走りに行って……、三日に一度はランスルーをして……」  勇利はそれから一時間ほど、ヴィクトルと稽古についてまじめに話しあった。ヴィクトルに注意されたこと、新しくする練習について、こまかくノートに書いておき、あとで見直して役立てることにする。作戦会議が終わるころには、勇利は大満足のていでにこにこしていた。 「ありがとうコーチ。ぼく勝てそうな気がしてきたよ」 「その前に四大陸選手権があるけどね」 「練習のききめをためすいい機会だね」  勇利は機嫌よくノートをまくらべに置いた。ヴィクトルは勇利の髪にくちびるを寄せ、しばらく黙っていた。 「……勇利」 「なに」 「こっそり俺の試合を観戦するのは楽しかったかい?」 「うん、すごく」 「不公平だな」 「何が?」 「俺は勇利の試合でそうすることができない」  勇利は笑った。 「ヴィクトルはいつもぼくのいちばんそばにいて見ていてくれなきゃいやだよ」  ヴィクトルの長い指が勇利の黒髪をかるく梳いた。 「……前もって言って欲しかった?」 「うん?」 「ぼくが会場にいるってわかってたほうがよかった?」 「…………」  ヴィクトルは目を伏せて優雅に微笑した。 「いや……」 「そう?」 「もちろん、勇利がいると思えばうれしいけどね。ただ……」  ヴィクトルのくちびるが勇利の耳元に寄る。 「いつも、勇利が見ていると思いながら演技をしているよ。だから、同じことさ……」  勇利はその甘美な声にぞくぞくした。ファンの勝生勇利では味わえない、ヴィクトルの特別な愛だった。ヴィクトルは皇帝ヴィクトル・ニキフォロフの魔法はといたかもしれないが、ヴィクトルだけの魔術的な誘惑で、勇利をこうしてとろとろにとろけさせるのである。  勇利は頬を上気させ、とりのぼせたようにヴィクトルを見た。ヴィクトルが笑って、「夕食にするかい?」と起き上がろうとした。勇利はヴィクトルに抱きついた。 「勇利?」 「ファン式の勝生勇利は終わったの」 「ああ」 「生徒式の勝生勇利も終了だよ」 「うん?」 「ここからは……」  勇利は指先でヴィクトルのくちびるにふれ、世にも稀な清楚にみちたまなざしで彼をみつめた。若ざかりといった感じのしなやかな裸身が、ヴィクトルの身体にすり寄っていく。ヴィクトルが何かを耐えるような顔つきになった。 「勇利……、俺、試合を終えたばかりなんだけどね……」 「だめ……?」  勇利はけなげな表情で瞬き、慎ましやかにくちびるをふるわせた。 「いや……?」  ヴィクトルがまいったというように笑い出した。彼は勇利を抱きしめ、寄り添って楽しそうにささやいた。 「勇利……、本当におまえは俺を驚かせるな。こんなところへ現れたことも、そんなふうに『エロス』とはちがう方法で悩殺することも」  勇利は、四大陸選手権での再会をかたく約束してヴィクトルと別れた。たった二週間なのに永遠の別れのような気がして、勇利は泣いてしまった。ヴィクトルは優しくいつくしむように勇利の頬を撫で、愛情のこもった接吻を念入りにしてくれた。  帰国した勇利はまた時差にまいってしまって寝こみ、翌日、稽古を再開した。早朝、リンクへ行き、誰もいない氷の上に立つと、すがすがしい、さわやかな気持ちでいっぱいになった。しかし、ここにヴィクトルはいないのだ。あんなに一緒に練習したのに。ひとりにようやく慣れたというのに、チェコで彼に再会したことで、また勇利はさびしくなってしまった。 「ヴィクトル、さびしいよ!」  勇利はせつなさでいっぱいになり、リンクの中央で叫んだ。 「なんだって? それはいけない!」  そんな答えが反響し、勇利はこころの底からびっくりした。  なに? いまの……。  ヴィクトルの声……。  信じられない気持ちでおそるおそる振り返った。ヴィクトルが氷の上に立ってにこにこしていた。 「ヴィクトル……」  勇利の全身に、ぞくぞくっとした戦慄が走った。 「本物……?」 「驚かされっぱなしは性に合わないものでね。どう、びっくりしたかい?」  勇利の目に涙があふれた。勇利はものすごい勢いでヴィクトルのもとまで駆けつけ、彼に思い切り抱きついた。 「チェコで勇利に会ったときの俺の気持ちがわかった?」  勇利は泣きながらささやいた。 「いまのヴィクトル、何式?」 「勇利は何式でいてもらいたい? 皇帝式? コーチ式? それとも……」 「リンクではコーチ式でいてもらいたいけど、いまだけは我慢できないよ……!」 「オーケィ」  ヴィクトルはいつでも勇利を驚かせるし、いつだって勇利の望みをかなえてくれる、最高の男なのだ。
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2ttf · 12 years
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nagako · 5 years
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2019.06.25 ダイバーシティに溢れるポエジー
先日、乃木坂から西麻布まで、青山霊園を抜ける道を歩いている時にようやく気づいたのだった、ここが青山霊園なのだと。東京で生まれ育って45年、何度も通ったこの道に霊園があることはもちろん知っていたのだが、なぜかそれが青山霊園と直結せず、青山霊園はもっと青山一丁目方面のどこか別の場所にあって、ここは違うと思い込んでいた。
なぜそう思い込んでいたのか。まったくわからないが、理由はおそらくない。もともと方向音痴で、地図を読むのも苦手なので、勘違いした節はある。が、もっと根本的に、これまでの人生で「ここが青山霊園である」とあえて認識する機会も必要性もなく、同時に「ここが青山霊園ではないか否か」についても懐疑してこなかったため、まるっとスルーしてしまったのだろう。
時に、自分と密接なトピックや関係性のある事物以外には意識が及ばず、世界から欠落させてしまっていることがある。興味のないカルチャー、苦手な学問、海外情勢、自分の生活と地続きであるはずの地域問題などなど、様々なトピックについて思考したいのに、それらが認識の外にある場合、存在そのものに気づかない可能性も否めない。かくして視野は狭窄する。
自分が捉えている世界は、自分の認識を保有するたった1400ccの脳にある。本来の世界は外にある。見えない外を想像し、見える内を疑う視点を保ち続けなければすぐさま思考は停止する。なるべく視野を広く。自分を盲信せず。それでもスルーしてしまう事物は多くあるので、青山霊園のような日常のふとした「気づき」が意識を刺激してくれるのはとてもありがたい。
 以下、最近の日記。
◎6月14日 アジア食材を調達しに新大久保のJB HALAL FOODへ。たまたま棚卸しをやっていて、ゆっくり見れなそうだったので、東新宿のASIA SUPER STOREへ。帰宅するのが遅くなるので冷凍冷蔵を除いた食材を吟味するのだけれど、結局ゲテモノ見ちゃうよね。
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お買い物後、ワタリウムで大好きなジョン・ルーリー展「Walk this way」。眼福。凄まじいポエジー。可視域の向こう側で息づく精霊たちの遊び。固定観念の���号をはしゃぎながら破壊する無垢なる何者かの笑い声。
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ジョン・ルーリー詣。最高すぎて脳からβエンドルフィン出まくる。 ジョン・ルーリーの絵を見るといつも、子供の頃にきっちり子供をやり尽くさないまま規範の型にはめられ、大人にさせられた結果未だに成仏できずにくすぶり続けるわたしのインナーチャイルドが、大はしゃぎする。それでいいんだよって言われてる気がする。もう一度やれる気がする。もう一度くる
その後、GLASSLOFT展の打ち上げに誘っていただいて、会場に着いたらメンバーのみなさま自ら赤エプロン装着!手料理でおもてなしいただいて感激! 
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ちょっと信じられないくらい豪華なクリエイター陣が赤いエプロンしていらっしゃる豪華な打ち上げ現場!ご馳走さまでした!
◎6月15日 食材整理。英語表記さえない子はもう何が何だかわからない
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◎6月16日 原稿が進まないのでトムヤムクン制作へ逃亡
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◎6月17日 毎月第3月曜日16時台は、渋谷のラジオなのに映像部! ゲストの尚玄さんありがとうまたね!
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毎月第3月曜日16時台は #渋谷のラジオなのに映像部  📻 本日は今週末に主演映画『ココロ、オドル』の公開を控えている俳優の尚玄さんをゲストにお招きいたしました! 映画の見どころはもちろん、以前出演された映画や体作りのお話などいろいろ伺いました! 尚玄さん、聞いてくださったみなさん、ありがとうございました😊 楽しすぎて記念写真撮るの忘れました😭 また来月!
その後、ヤマト運輸の祐天寺センターへ。農家さんから取り寄せた梅3kgが、なぜか以前住んでいた祐天寺のアパートに届いちゃって、引き取りに。なかみ梅なのに段ボールはみかん。
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Amazonの住所設定がなぜか昔の住所になってしまっていて、南高梅3キロがヤマトの祐天寺センターに漂着して、転送は受け付けられないから取りに来い、さもなくば発送主に1週間後に戻すとのことで、金も払わず商品戻すのはあまりにも農家さんに申し訳ないから引き取りに来て、ダンボールを抱えてよちよち歩きながら「重い、あまりにも重い」と喘ぐ道すがら、小学生に「みかん!みかん!」と指さされ、「おいこらガキ!みかんじゃねえよ!梅だよ!」と怒鳴り散らしたい衝動を堪えたところで馴染みの蕎麦屋の前を通りかかったので、生粉打ちとろろそばをいただきながら、このダンボールを抱えてこれから1時間ラッシュの満員電車に揺られて帰宅する自信がないけれど、赤ちゃんも子供ももっと重いわけだからだっこするお父さんお母さん大変だ、気ままに生きる独り者の私ごときがたかだか3キロで弱音吐くなど片腹痛い、そうだこのダンボールは神が私に与えたもうた赤ちゃんで、この子を立派に育てるのが私の使命だとやにわに天啓を受け、蕎麦屋を出るなりダンボールに梅太郎という名前をつけてよしよしあやしながら抱きしめて歩く私をどなたか見かけたら遠慮なく通報してください
◎6月18日 原稿がどうしてもうまくいかない。煮詰まったときはみじん切りに限る。というわけで、サンダーキャッツさんのレシピでザワークラウト。
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◎6月20日 梅仕事開始。甥っ子に手伝ってもらって2kg塩漬け。梅酒用1kgは冷凍庫へ。
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夜は仕事しながらDOMMUNEで「TOKYO NEW SOURCE」特集を正座で拝見。お世話になっているWATUSIさん、大ファンのいとうせいこうさん、憧れのs-kenさん、そして中2から神と呼んでいる町田康さん。この並びにさらにOTOさんまで。無性に山本政次監督「ロビンソンの庭」を見直したくなった。
そういえば中学生の時、パンク仲間の友達のいとこが町田町蔵時代の人民オリンピックショーのライブ音源を聞かせてくれたことがあった。その中の一曲に腰が砕けて立ち上がれなくなるくらいの衝撃を受けた。音源になっていないから歌詞も曲名もわからないけれど、あまりの衝撃に5、6年くらいシリアスな精神の緊張状態を保っていたところで町田氏の歌詞集が出て、これは絶対あの曲の歌詞だと思しき詩のタイトルが「レタスと仏像」だった時、その言葉のチョイスと抜け感にやられて、ずっとシリアスに緊張していた心がおおいに緩んで思わず号泣してしまった夏の日を思い出して夜中に悶絶。
◎6月22日 gongonこと長嶋五郎画伯の個展エンディングへ。遅れちゃって本人のラップパフォーマンス見れなかったんだけど、友達とおしゃべりして、星野概念さんのトリオのライブを少し拝見。
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その後、青山CAYへ。楽しみにしていた「TOKYO NEW SOURCE」のライブ! みなさま本当に素晴らしかった。SECRET COLORSの4者4様のポエトリー。表現力が豊かで、格好良かったので、サイコーとかイエーとか叫びながら1人で拍手していたら「ナガちゃん?」って。大学の頃の旧友、みずえだった。なんと10数年ぶりの予期せぬ嬉しい再会。久しぶり、いま何してんのって聞いたらおもむろにパケ入りのナンプラー麹をくれる。作ってるらしい。やっぱりちょっと凝り性の人たちはね、みんな行くんだよ、発酵に。
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そのみずえと一緒にライブを見る。s-kenさんの年季の入ったピカピカの高級本枯れ節みたいな貴重なスポークンワーズ。神こと町田康先生のピンと張りつめたテグスのような緊張感の中にも温もりがともる聖なる朗読とお歌。いとうせいこう is the poetのダブポエトリーの、言葉と音の一部に自分が取り込まれたかのような錯覚の快楽。WATUSIさんの指から放たれるベース音が自分の足の裏をビリビリ振動させる。これはほとんど性行為だと思いますとご本人にお伝えしながら、改めてポエトリーってすごいなと感動した次第。
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音楽や朗読、執筆表現のみならず、【個々の多様性を尊重する社会】には、ポエジーが溢れている。
ひと昔前には【人間を一括りとくくりたがる社会】があった。男らしさ・女らしさのジェンダーの型。個人より全体を重んじる社会規範。全体より外れる者を断罪する同調圧力。モテるためのHOW TO。これらは、人間個人の性質を慮る以前に、先に型を示し、そこへ後付け的かつ一様に人間を押し込む型先行の方法論だった。ゆえに個に不寛容で、抑圧的だった。
私などは、それを個殺しと呼び、たかだか型の分際で、個々に異なる命を生きぬく人間より先にしゃしゃり出るな図々しい、人間を馬鹿にするのもいい加減にしろと怒りの長文コラムを認めて対抗したものだが、実際に型にはまらない人間を侮辱したり、いたずらに苦しめたりする状況は人権侵害であり、個人の自己決定権を蔑ろにしているという意味においても、まさしく人間を馬鹿にしているとしか言いようがない。
男らしさ・女らしさの型。良き父・母の型。理想の家族像。模範生。デキる男の処世術。モテる女の仕草。それらは本来、先だって多様な個性を生きてきた人間の行為や選択を参照した結果、後付け的に集約された傾向と対策、あるいは各組織の長が管理しやすい理想のコマ像であり、個々に多様な人間たちを一回りも二回りも都合よく矮小化させた空疎なデータにすぎない。そのたかだかデータに向かって、個々に多様な人間を後付け的に集約せんとする社会で、人間は人間性=個を殺され、たかだかデータの劣化コピーとして扱われる人間喪失デフレスパイラルの沼に総じて落とされた。
前時代の鬱憤や反省を受けて、現在は人権意識を改め、【個々の多様性を尊重する社会】を目指す向きにある。もっとも過渡期ゆえ、未だ【人間を一括りとくくりたがる社会】の残滓に出くわす瞬間もあれば、多様性への理解値が自分も含めて不足しているのではないかと懐疑することもある。なにしろ自分が見ている世界は、自分の1400ccの脳が自分に見せている世界だ。視野を広く持たないと、ここは青山霊園ではないと思い込みながら、青山霊園の中を歩くような頓珍漢な事態を招いてしまう。
さておき。この一様と多様がぶつかり合っては渦を巻く過渡期のカオスに、私はポエジーのうねりのようなエネルギーを感じる。型はたかだかデータであって、良くも悪くも光も闇も有象無象の矛盾もまるっと内包する人間そのものの性質を映していない。むしろ人間ならではの複雑な性質の上っ面のみを都合よく抽出して滅菌し、最低解像度で簡略化した劣化コピーキャットが型に現れる人間像である。そこに人間個人の真なる声はない。型に嵌められる怒り、型になじまない苦しみ、型に嵌らない者への侮辱、その悲しみなど、先に用意された型と対峙した時に、どうしてもこぼれ落ちてしまう各個性にこそ真なる声がある。そしてそれらは個々に多様である。
型の時代は、データ集計の都合上、男女、老若、白黒、犬猫といった二項対立や選択を容易に持ち出し、優劣をつける言説が多かった。多様性の許容を目指す現在はその「どちらかしかない」状況が苦しく、社会にも閉塞感が蔓延する。今はSNSやブログなどを通じて多様な生き方、グレースケールの振り幅、個々に異なる言葉の表現を目視できる。そこにはポエジーが溢れている。
ポエジーは、白黒の型からこぼれ落ちた個が、人間の真なる声で自らの生命を誇る賛歌であり、押し付けられた規範的な言葉では到底語りつくせない人間味を雄弁に語る表現の力だ。うまくまとめなくていい。支離滅裂でいい。超整っていてもいい。誰かにとって都合の良い言葉などほとんど嘘だから吐かなくていい。嘘をついてもいい。醜くていい。美しくていい。なんでもいい。言葉が生命の一部であることを喜び、ゆえに生命が潤う循環によって、人生が素晴らしくなるといい。この世にもっとポエジーが溢れて、人間ひとりひとりが自分の生命と楽しく、丁寧に遊べるようになるといい。
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