憑屋よもやま話第四回『南雲一行』
というわけでよもやま話も第四回。南雲一行、具体的にはシノノメ、ミカヅキ他アヤカシ組、藍銅のお話です。
ネタバレにつき続きからどうぞ
猿鳶東雲について
当初は私が忍者という概念が好きだから忍者を出そう!という超適当なノリで生まれたヤツでした。それも軽薄な忍者が好き。いや堅物な忍者も好きですが、まあそこはそれ。そんな超短絡的な動機で、話に絡ませやすいように主人公とはマブダチってことにしておこう!と「自称」南雲仁の親友として登場と相成りました。この時点ではさほど彼の過去については詳しく考えていません。
その後話を詰めていく過程で、僧侶と忍者が友達ってどういう繋がり?っていうところから本編のあの流れで友だちになった、っていうところまで漕ぎ着けました。
南雲と出会った当初のシノノメは食うに困った親に売られ、生ける武器『鋼刃衆(※1)』の武器のうちの"一本"として活動していました。人権ゼロの鉄砲玉。そんな彼に与えられた任務の一つが、神楽宮暗殺の任務でした。政治的な実権こそ握らないものの、神楽宮は日ノ国でも強大な法力を持つ人物なんで命を狙う人間なんてゴマンといたわけです。そんな人らの鉄砲玉としてその時向かわされたのが名無しの少年。のちの猿鳶東雲だったわけです。
で、そこで出会った仁少年に「死んでもいいとかいうな」と叱責され、これまでの人生で躾けられたことはあれど叱られたことのないシノノメ少年はカルチャーショックを受けるわけです。しかもそのあと命を狙った相手には許されて逃され、ある意味で途方に暮れたわけです。失敗したから戻ったら死ぬしそれでいいと思っていたけど、命を粗末にするなと怒られ、その言葉が頭にこびりついて離れず、なぜだか戻ることが出来なかった。そこで彼の人生が変わりました。ちなみに仁少年が彼に怒ったのは、南雲に関するよもやま話でも書きましたが殆ど八つ当たりに近い動機なのですがまあシノノメ少年は知る由もありません。ある意味相手のことを思っての言葉よりも八つ当たりだからこそよかったのかも。
その後仁、キクリに再会し、名前を与えられ、彼らと普通の子供のように遊んで、そこで初めて彼は人間性を獲得しました。嬉しい、楽しいという感情をぼんやりながらも得て、そこからようやく猿鳶東雲という人間の人生が始まったわけです。
それからは紆余曲折あり忍の師朧月の銀狐(※本編SS・忍の心得に登場)に拾われて忍者としての道を歩み出します。現在のシノノメがおちゃらけたムードメーカーになっているのは師の影響が強いです。特に女好きになったあたりは。ただ、彼が身をおくこととなったコーガの里に来た当初は少年漫画のライバルキャラのようなクールボーイでした。何があったの?ちなみに現在のコーガの若き当主とはほぼ同期でマブの戦友だったりします。
ともあれ、修���時代に人格形成が行われ今に至ります。現在の性格になったのは関わった人の影響もありますが、仕事上関わった人間から人間性をトレースして『どのような振る舞いをすると効率よく相手を油断させることが出来、かつ周囲に溶け込めるか』を研究した結果でもあると思われます。とはいえ、打算で作り上げた人格も時間が経てば立派に彼の『性格』足り得るものになっている筈。
忍者になれたことは彼の人生としてはかなり大きな意義となりましたが、仕事柄汚れ仕事は多く、そのことで南雲やキクリに大して引け目が出来てしまっているところがあります。そのあたりがSS・ヒトゴロシの夜などで言及されている話。南雲やキクリ、出会った後はヨマなど、生まれ育ちの悲惨さもあり周囲の人々に対して無意識的に『自分よりも綺麗なもの』として認識しがちなところがあります。自分一人で汚れ役を買って出ようと考えるところがあるのはそのあたりが原因。そして軽蔑はされてもいいけれど相手に気負わせるのは嫌だ、というところにそういった部分を隠す理由があります。結果自分を軽視しがちなのも生まれに由来がありますが、ただこのあたりについては幼少期に南雲に叱られたこともあり何も考えなしに自分を犠牲にしようということはありません。手を汚すのは厭わないけれど、死ぬのは御免。何故なら仁ちゃんが怒るから。そんな感じ。
ちなみにシノノメが決め台詞として言っている、「音無し、香無し、名無し、その功天地造化の如し」の元ネタは「音も無く、匂いも無く、智名も無く、勇名も無し。その功、天地造化の如し」という言葉。万川集海という忍術書に書かれている言葉です。音も匂いもなく功績が残っても誰も知らない、名前も残らない。天がそうしたように思わせる…という意味だそうで。シノノメがこれを決め台詞にしてるのは師に教えられたのと、あと口に出すとカッチョイイからだけであって別にこれを言っている時はこれの意味するところを意識はしていないです。ただ、生き方はそれに沿うようにしてはいるそうですが。
デザイン関係の話をします。実は殆ど一発デザイン。ほぼ決定稿となったのがこちらです。
この頃はわりと全体的に頭身低めでデザインしていました。変更点は指ぬきグローブじゃなくなったところくらいかな?余談ですが巾着袋に入っているのは兵糧で、クナイや手裏剣などは服の内側に隠していたり忍術で召喚したりしています。
あと、髪~顔の作りに関しては猿鳶の『猿』を念頭に置いて猿っぽくしています。もみあげが内側に来ているところと、眉毛が末広がりなところ。猿っぽくない?そうでもない…?垂れ目は趣味です。なんとなく、女ったらしは垂れ目にしろと遺伝子がそう囁く気がしています。
ちなみに初期配色案はこちら。
今よりちょっと胡散臭い気がします。ただ、南雲、ヨマともに紫要素の多い配色だったのでコイツまで紫にしたら色が偏るな…と考えてボツにした。…ような気がします。
あとこちらが幼年期のラフ。おまけに南雲氏も。立ち絵とはほとんど変わっていません。
※1)鋼刃衆…『人鍛冶師』という人を武器として作り変える刀工集団により『打たれた』人間武器の集団。心を殺し、刀として、或いは暗器として日夜誰かの命を奪うために生きるモノたち。起こりは憑屋より100年ちょっと前、日ノ国における戦国時代から。それなりに平和になって暫く経つ今でもその行いと技術は連綿と続いています。今なお日ノ国の各地で暗躍し、そして鉄砲玉の如く彼らは死んでいっています。何度か仕事をこなし、実績がついてそれなりに高価な『武器』になると武器としての銘が与えられます。それまでは名無し。シノノメはまだ銘が与えられる前の状態で南雲たちに出会ったわけです。
ミカヅキたちの話
超初期の南雲withアヤカシズ。つららがニーハイ履いてるとかビミョ~な変化がありますが基本コレから変わっていません。
まずミカヅキについてですが、アヤカシをお供に旅をするという話なわけでわかりやすく、こう、ピカチ●ウみたいなマスコットがほしいというところから生まれました。で、どんな妖怪を引き合いに出すかとなった時に、猫又あたりが一番ポピュラーでわかりやすいだろうと思ったのですが、猫又って属性、何…?となり単純な猫又にするのは没。その後少し妖怪について調べて、火車という存在に行き着きました。猫!火属性!実にわかりやすいじゃあありませんか。まあ実際の伝承の火車は死体を奪い去るというわりとおどろおどろしい存在ではありますが、ミカヅキはまだ仔猫なのでそのへんはご容赦を。南雲につかず、火車として大成していたらそういう方向に行っていたかもしれません。
実はミカヅキはこの最初の4体の中では一番南雲とは付き合いが浅いアヤカシです。それでも常に一緒にいるのはなんだかんだで一番馬が合うから。と、霊装時の相性がいいから。子供なので裏表がないところが南雲的に気に入ったのでしょう。ミカヅキの方も、南雲のツンデレ気質を理解しているのでなんとなく放っておけなくてついてきています。懐いているとも言う。
出会いはミカヅキの住処だったところを荒し回っていた大アヤカシを南雲が退治して云々、という感じ。
お次につらら。彼女はわかりやすくお色気要員と、わかりやすい妖怪要素を担っています。というか、初期4体は全体的にわかりやすさを優先して選定をしてはいますが。
彼が他に誰を想っていても南雲仁を愛している、愛に生きる乙女。とはいえ、別に南雲仁とは添い遂げられなくてもいいと思っています。誰かを想っている状態が楽しいから南雲に恋をしている感じ。両思いになると溶けてしまうさだめを持っているので一方的に片思いさせてくれる南雲だからこそ真っ直ぐ愛することが出来るというか。
SS・みんなの南雲でも描かれたことですが、つららはどうにも優しくて甘い女なので愛する人の哀しみを勝手に分かち合いがちな女性です。愛し合って自分が消えてしまったら、自分は満足だけれど相手はその喪失の哀しみを負わなければいけない、それはイヤ、だったら私を愛さないような人を愛そう、みたいな。勿論、南雲の心根の優しさもしっかりと理解してそこもきちんと、というかそこをメインに愛しています。
南雲との出会いは、昔惚れた男に騙されて見世物小屋に売り飛ばされ、見世物にされていたところを助けてもらったとかです。
ショウキチ。泥田坊という妖怪が元ネタです。微妙にマイナーなんだろうか。どうなんだろう。とにかく土属性のアヤカシをねらなきゃいけないから、わかりやすそうな妖怪を…と選んだのが泥田坊でした。デザイン的には記述にある特徴をマイルドに、デフォルメして描いただけで特に捻りはないです。
イズモの守護していた村の村民で、死後アヤカシとなってからは生前の恩義もあってイズモと交流を持っていました。南雲との関係もそこからで、4体の中では一番南雲と付き合いが長いアヤカシです。イズモ亡き後、南雲がスサノオへ行くまでは彼が面倒を見ていました。南雲からすればもうひとりのおじいちゃんみたいな感じです。親戚の喧しいおじいちゃん、の方が近いか。南雲がスサノオから旅立ち、憑屋として活動をはじめた折に再会。レギュラーメンバーとして南雲の助けとなるべく彼と契約をします。
コクリコ。みんな大好きヤタガラス。でも足は三本ない。とはいえ、この人鳥姿は省エネモードで鳥モードはちゃんと足が三本あったりするのではないでしょうか。今考えました。
鳥キャラは、まあ趣味ですね。趣味です。案外つららとはいいカップルというかコンビのような気がします。お七イベントのあたりとか。元はイズモの住んでいた山の住人で、イズモや南雲とは普通に近所付き合いのような間柄。イズモが生きていた頃はショウキチほど密な関わりはなく、イズモの死後に一人になった南雲の様子をチラチラ覗いてこっそり守っていたような感じです。同じ山に住むよしみというか、まあコクリコさんはいい鳥なので。南雲と契約したのはショウキチと同じルート。ちなみに第二幕で仲間にできる天狗のミカゲさんとは犬猿の仲という裏設定がありますが、そもそもヤタガラスと天狗の種族仲自体があまり良くなかったりします。鳥種問題。
ところで普段くっついてるミカヅキはともかく、他の3体や河童の平太とかは時々出てくるけど普段どうしてるの?という話ですが。作中で霊装図鑑として閲覧できる『霊帖』がまんま契約書とワープの座標指定を��ねています。仲間になったアヤカシを霊帖に登録し、霊帖を通じて仲間にしているアヤカシに呼びかけると霊帖を標として遠く離れた場所にいるアヤカシが南雲の元へ来るためのワープポイント、『霊門』が発生します。それを通じて戦闘時などに彼らを呼び出して霊装しているわけです。これがあるから付け外しに1ターンずつかかるんだ!まあそれはこじつけですが。なので、普段は皆思い思いの場所でテキトーに気楽に生きてます。
ところで作���では合計26体のアヤカシを仲間にできるわけですが、何故今までも憑屋として活動していたのに初期アヤカシは4体なのか?という疑問があるかと思います。それは実は殆どのアヤカシに大して南雲が契約期間を設定しているからです。今回で言えば神楽宮からのお使いを終えるまで、というような感じで。というのも、人でないものとの契約を十も二十も記しまくった霊帖なるものを遺して死ぬなんてことがあったら悪用されないからです。あとは契約維持に多少なりとも霊力のコストがかかるから。恒常的に裂けるコストは基本10体までが限界です。なので、ほとんどのアヤカシは期間限定。考えてみれば最終幕なんて神霊レベルの存在を仲間にしまくっているわけですからコストは相当やばいことになっているはずです。そのコストを顧みず、自分の体を代償にしてまで契約しまくって逆に喰ってしまっているのがアザミですが。その結果がアレですよ、アレ。
藍銅について
和物と言えば落ち武者だろ!
彼の存在についてはこの短絡的な一言につきます。何故侍ではなく落ち武者だったのか、過去の自分に聞いてみたいところですね。そんな動機から誕生したのが作中屈指のピュアキャラ、藍銅くんでした。どうしてもござる口調の侍が出したかったというのも誕生の動機の一つです。
藍銅について言えば、これを話さず何を話すかというのが孔雀との因縁です。実は当初はここまで濃い関係性にする予定はなく、そもそも藍銅もシナリオでちょろっと出てきて霊装入りするだけのキャラの予定でした。が、ちょっとアブない人斬りキャラを出したい、というところから孔雀が生まれ、折角だから昔ライバルだったみたいな設定にしておこうと決めたが最後…でした。よもやこんなにアレな関係になるとは…。
孔雀を狂わせてしまったのは藍銅だけれど、彼には全くそんなつもりがあるはずもなく、また孔雀もそれを理解してもらおうとは思っていなかったので結局最後の最後まで和解することなく二度の別離となりました。おそらくこの二人は出会わないのが最善だっただろう、とは思えますが、それを本人たちがそう思っているかは全く否。藍銅は切磋琢磨できるよき友人に恵まれた、と思っていますし、孔雀も自分に生きる指標を与えてくれたという点で、出会わない方がよかったなんて微塵も思っていません。孔雀のこのへんの思いに関しては次回あたりの彼のよもやま話で。
ともかく、他人から見たらどうであろうが彼らにとって最後は殺し合う仲になったとしてもそれまでの過程で得た優しい時間は得難いものだったのです。だからこそ、藍銅は二度目の決闘の終わりの時も孔雀の想いを理解したいと思っていましたが、まあ、無理でした、と。それでも今度は地獄で、と冗談のような口約束を遺された孔雀の刀に向かって出来るようになったあたり、理解は出来なくても死んだ後くらいは彼の望みに沿ってやろうと妥協は出来るようになったのではないでしょうか。
何が悪かったかと言えば、藍銅も孔雀も悪いことはなかった。いや孔雀はやったことは悪いですが、まあ双方個人自体には問題はなかったのです。ただ出会ってしまって、孔雀の方が心の釦を掛け違えて闇を深めて、一方藍銅は幼少期から全く変わらずに何一つ歪まずあまりにも真っ直ぐ正しく育ってしまって、そのコントラストが惨劇悲劇の引き金となったというか。このあたりのこと、具台的には孔雀の心の内に何があったのかはいずれ公開されるであろうスピンオフ『憑屋異譚蒼龍戦史』で詳しく物語として綴りたいと思います。彼だって藍銅と出会ってすぐに狂っちゃったわけじゃないんです、最初は普通に憧れてたんです本当だよ…。
ところで良心の塊のような藍銅という青年ですが、生き死にに関しては元々戦国時代の戦人であるためシビアです。とはいえ何もものを思わないというわけではなく、SS・ヒトゴロシの夜に語られた通り、守るために殺すことに関しては自分なりの信念と考えを持っています。人を殺した場数で言えばシノノメより多く、さらに正面切って正々堂々叩き切っているので、ある意味ではシノノメの大先輩というか。だからこそ、あのSSでシノノメを諭す役割に回っていたわけです。
ちなみに基本幽霊なので霊体ですが、満月に近い月の夜や南雲のような霊力が高い人物が近くにいる、黄泉比良坂洞のような霊力が満ちまくってる場所にいる、そもそも禍ツ夜が来ていて土地自体の霊力が高まっている、などなど条件がある程度揃っていれば数分~数十分ほどは実体化出来ます。実体化と言っても生者に対してだと藍銅が一方的に触れられるだけで、早い話がポルターガイストや心霊現象みたいな状態になります。肩が重い、みたいな。生者からは触れられません。一方相手が霊体やアヤカシのような霊力で体の殆どが構成されている存在、孔雀のようにめちゃ強い霊力で常に実体化しているような相手だと普通に干渉ができます。最終幕の孔雀戦ラストで彼を斬り伏せられたのもそのため。
二刀流についてですが、彼は礼儀正しい人間ですが蓋を開けば非常に脳筋なので、一本より二本の方が強いだろう!という単純な考えで二刀流で戦っています。とはいえ、本来二刀流は隙が出来やすいはずなのでそれで大成してしまったあたり、天賦の才能があったというか。一応刀一本でも戦えはしますが、本人としてはバランスが悪い気がするので二本の方が戦いやすいようです。
デザインの話です。
初期デザインがこちら。基本は今とほとんど変わりませんが、現デザインの方が全体的にスッとしています。動きやすそうといいますか。刀も手ぶらになりましたね。現在は戦闘時にヒュンッと出て来るという設定になっています。この頃は名前が未定で、端っこに「落ち武者」と書かれているのがシュールというかなんというか。
初期案全身図。袴がビラビラしていたり鉢巻があったり要所要所相違点が見受けられますが基本はさほど変わっていません。コテコテの侍を意識してデザインしています。THE・侍って感じの。右目の三本傷は孔雀につけられたものという設定ですが、最初期は「傷があったほうが落ち武者っぽい」というだけの理由で描かれており、孔雀につけられたというのは後付の設定です。
享年は25歳ですが、顔は美青年というよりは青年と少年の中間あたりで描いています。童顔というか、なんというか。私がこの手の顔を描くのが好きだというのもあります。ちなみに美しさイケメンぶりのベクトルは違いますが、アザミと並んで作中でトップクラスの美形の設定です。立ち振舞であまりそう見えないというのがミソで、黙って遠くを見据えていると非常に美形で絵になる、という想定です。アザミがマイナス方面の、人を拐かす美貌なら藍銅はプラス方面の、単純に人を惚れさせる類の美形という感じです。えーあの俳優さんカッコイー!みたいな。
以上、今回のよもやま話はなかなか長くなりました。次回はアザミ一行、というかあの問題児二人組に関して何か書こうかなという感じです。
よろしければ次回もお付き合いくださいませ。ではまた。
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憑屋よもやま話第三回『ヒロインの話』
超久しぶりのよもやま話です。今回はヒロインの話。
続きからどうぞ。
えー、ヒロインの話です。
ヨマちゃんと、もうひとりのヒロインキクリちゃんについて。
まずヨマちゃんについて。
一応憑屋のヒロインという立場でありますが、どちらかと言えばもう一人の主人公という立ち位置です。
南雲さんが物語の開始時点ですでに伸びしろが伸び切っている人物像だったので、話の中で成長できるキャラクターをという感じで造形しました。なので、南雲さんとの関係も男女の関係というよりは兄妹に近い感じです。
キャラクターとしても南雲さんとは対照的に書いていますね。方やアヤカシに救われ、方やアヤカシに村を滅ぼされと。二人とも始まりの時点は人間嫌い、アヤカシ嫌いであったわけです。南雲さんがヨマちゃんをなんとなく放っておけなかったのはそこもあります。まあ半分ほどは神楽宮様が怖いのがありましたが。
デザインとしてはお団子ツインテで絵映えする見た目にしよう、って感じでした。あとはミニスカ巫女服という要素をモリモリ……。14才にしてはお胸がバインバインですが、身長もそこそこ高い方なので発育はいい方なのだと思います。
こちらは初期の設定画。パッツンはまあ、趣味ですね……。最終的にはおでこがもうちょっと広くなりましたね。おでこが広くて眉毛が太い女の子が好きなのですが、意志の強さが表せたかな?と思います。とはいえ、目元は目つきが悪くならないようにつり目にはしていません。普通のまんまるめの目ですね。まつ毛もあまりないです。
では次はキクリちゃんに関して。
キャラクターとしては最終幕にしか出ないのですが、憑屋そのもののキーパーソンです。
南雲仁にとっての初恋の女の子であり、最初に『人』の中で南雲仁のアヤカシと仲良く出来る力を正面から認めてくれた相手です。
開発室にも書いてありますが、憑屋において彼女の死は不可避なものです。彼女が封印を完遂させていると、また十年後に封印をかけなおすことになり、そのサイクルが終わらなくなります。そしてその間にマガツヒノカミの力が元に戻り、封印が綻びて完全な状態でマガツヒノカミが復活してしまう…ということになっていたわけです。本編の封印の状態はマガツヒノカミの力に蓋をしているだけなので、内側では力が戻ってきているんですね。なので、そのまま進むとマガツヒノカミが完全復活するという。
今回ではアザミさんが不完全な状態でマガツヒノカミを呼び起こしたのでギリギリ人の手でも打倒できる範囲だったというわけですが、それはキクリ嬢の死なくばなしえなかった……という感じです。そういう意味で、不可避。
彼女の内面としては生い立ちはよくはなかったけれど(ヨマと同じの孤児で、神楽宮に拾われた)、まったく普通の女の子です。責任感だけは人より強く、人を好きになることを怯えない社交性のある女の子。だからこそ南雲さんの大切な女の子となり得たのではないでしょうか。と思ったり思わなかったり。
本編の最期はああでしたが、彼女としては自分の使命を真っ当出来なかったけ���ど自分の大切な人、信じている人にそれを託すことが出来たので未練はないと思います。想い人とも思いが通じましたし。添い遂げたいという淡い願いは叶いませんでしたが、結末としては魂は共に在ることが出来るようになったのでこれはこれで哀しいけれど悪くはない終わりなのかな?とは思いつつ。
デザインの話です。
初期ラフで、ほとんどこれが決定稿です。
モチーフは花で、袖のデザインなどにそれを反映させていますね。ミニスカなのは趣味でもありますが、まだ普通の女の子なのでそういったところに俗っぽさを出したかったのもあります。衣装が白基調なのは光の中に消えていく、というのがほとんど最初から決まっていたので場面に映えるように配色をデザインしてはいました。
おまけに南雲さんの霊装菊理を。
おおよそキクリの元の姿をなぞっています。服を男性っぽく改造したというか……。胸元にぶら下がっているのは石塔で託された殺生石です。
今回の話はこんな感じです。ヒロインの話、と括りましたがどうなんでしょうか。全編通じてイマイチ花のない話ではありましたが、彼女たちが物語に華を添えられていたならいいかなーと思います。
では次回は南雲一行の話か、アザミさんの話か……。またよもやま話があれば何か書きたいところです。ではまたいずれ。
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