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#武庫川家と猪名川家の婿取り合戦
team-ginga · 1 year
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劇団Plus Oneの『武庫川家と猪名川家の婿取り合戦』
 もう一昨日のことになりますが、5月21日(日曜)に神戸のポートオアシスで劇団Plus Oneの『武庫川家と猪名川家の婿取り合戦』を見てきました。ピッコロ演劇学校の後輩(といっても年齢は向こうが上ですが)の齋藤直美さんが出演する芝居です。
 齋藤さんは現役の高校の先生ーー演劇学校では期が違いますが(横溝正史なら「期ちがいじゃが仕方がない」と言うところでしょうか)、年齢が近いので親しくなり、Youtubeでカミュの『ペスト』を紹介する動画を作った際には医師リウーの母親役で朗読劇に出演してもらいました。
 Plus Oneというのは神戸の市民劇団「座・神戸市民劇場」のOB、OGが作った劇団で、今回が旗揚げ公演のようです。
 ただ……内容的にはかなり不満の残る芝居でした。
 時代設定は……一体いつなんだろう、BGMにエノケンの歌や「広い東京、恋ゆえ狭い」という「東京行進曲」を使ったり、「女は結婚したら家にいて欲しい」とか「米糠3合あれば養子に行くな」とかいうセリフがあるところをみると、ちょっと昔の設定なんでしょうか。
 ある町に八百屋を営む武庫川家と石工を営む猪名川家があります。両家には年頃の娘がいます。斎藤さん演じる寺の住職は武庫川家を訪れ「お宅のお嬢さんが付き合っている男は、猪名川家のお嬢さんとも付き合っている」と言い、猪名川家を訪れ同じことを言います。そのため両家の間に争いが起きますが、最終的には全ては住職が仕組んだことだとわかり、みんなで住職をボコボコにするというお話です。
 たわいもないと言ってしまえばたわいもない話ですが、納得できないことが多すぎます。
 武庫川家でも猪名川家でも両親は娘の彼氏が二股かけていると知って、一刻も早く娘とその男を結婚させようとするのですが、そんなことあり得ますか。私にも年頃の娘がいますが、もしそんなことになったら一刻も早く別れさせようとします。まかり間違えても結婚させようとは思いません。
 また、両家の父親は問題の男と話をして、男が「僕は養子には行きません」、「どちらかと結婚すれば、もう一方が悲しむので結婚はしません」、「僕は東京の大学院に行きます」というのを聞いて納得するのですが、そんなことを言われて納得する父親がいるでしょうか。
 演技も……私は駆け出しの役者ですから演技について云々するのは気が引けますが……全体的にテンポが悪かった、というか遅かったと思います。
 これは役者がセリフを思い出しながら言ったり、セリフを観客に届かせようとしたり、感情を込めようとしたりすると起こりがちなことです。でも日常会話はもっとテンポが早いものです。現実の会話がそうであるなら、舞台での会話もそうでなければならない……いや、日常会話以上にスピードを速くしてちょうどいいくらいだと思います。
 それができていないために、コメディーなのに笑いにつながりません。それなりに面白いセリフもあったはずですから、テンポよく丁々発止のやり取りをすれば、笑いが生まれたのにと思いました。
 でも、それは役者の責任ではありません。それをよしとした演出家=指導者の責任だと思います。
 私は去年、豊岡演劇祭へ行って、豊岡市民有志と南河内万歳一座の役者が一緒に演じた『新・豊岡かよ!』という芝居を見ましたが、とてもいい芝居で、誰が劇団員で誰が市民有志か全くわかりませんでした。
 市民の方々も随分がんばったのだろうと思いますが、やはり作・演出の内藤裕敬さんの指導が良かったのだと思います。
 Plus Oneでも同じことはできたはずなのですが……
 まあ斎藤さんの勇姿が見られただけでよしとしますか。
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