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#CDK4/6阻害剤
ishuran · 1 year
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Vol.162 【ASCO特集】カペシタビン(ゼローダ)の手足症候群に救いの手
梅雨真っ只中、ムシッとした空気に覆われていますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
私は先日、北海道(札幌)に出張で行き、一瞬だけですが爽やかな青空を楽しむことができました。
今月は皮膚科関連の学会に17年ぶり(!)に立て続けに参加してきたのですが、流石にこれだけ年数が経つと、座長や演者で見知っている先生はごく僅かで、時の流れを感じます。
今号は、月初に開催されたASCO(米国臨床腫瘍学会)からの最新情報を2本お届けします。
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【記事1】CDK4/6阻害剤の使い方に一石を投じた「SONIAスタディ」
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「ホルモン陽性・HER2陰性」は、乳がんで最も多いサブタイプです。
このタイプの乳がんの場合、がんは女性ホルモンを糧に増殖するため、術後療法にしても進行/再発時の治療にしても、ベースになるのは女性ホルモンを抑制する「ホルモン療法」になります。
ここに加わったのが、CDK4/6阻害剤というタイプの抗がん剤で、日本ではパルボシクリブ(イブランス)とアベマシクリブ(ベージニオ)の2剤が、2017年から18年にかけて、進行/再発のホルモン陽性・HER2陰性乳がんの治療薬として登場しました。
当初は二次治療以後で使われていたのですが、一次治療での有用性を示すエビデンスが出たことにより、現在では一次治療でもCDK4/6阻害剤+ホルモン剤(アロマターゼ阻害剤)がホルモン剤単剤の治療よりも推奨度の高い標準治療となっています。
ところが、そこに一石を投じるような試験結果が出てきました。
 ■”Primary outcome analysis of the phase 3 SONIA trial (BOOG 2017-03) on selecting the optimal position of cyclin-dependent kinases 4 and 6 (CDK4/6) inhibitors for patients with hormone receptor-positive (HR+), HER2-negative (HER2-) advanced breast cancer (ABC)”「ホルモン陽性HER2陰性進行乳がん患者に対するCDK4/6阻害剤の最適な投与タイミングの選択に関する第3相SONIA試験(BOOG 2017-03)の主要アウトカム解析」(Journal of Clinical Oncology)
一次治療でホルモン剤単独療法、二次治療でCDK4/6阻害薬の併用療法を行う場合と、一次治療からCDK4/6阻害薬の併用療法を行う場合を、”ガチンコ”で比較した試験は今までなく、SONIA試験はそこを明らかにしようとした試験です。
1050名のホルモン陽性・HER2陰性の進行/再発乳がんの患者さんを、以下の2群に分けてその後の治療経過を比較しました。
・一次治療でCDK4/6阻害剤+アロマターゼ阻害剤、進行後の二次治療でフルベストラント<A群>
・一次治療でアロマターゼ阻害剤、進行後の二次治療でCDK4/6阻害剤+フルベストラント<B群>
結果、2つの治療を合わせた無増悪生存期間(PFS2)は、A群は31.0ヶ月、B群は27.8ヶ月で、両者の間に有意差はなし。
一方で、CDK4/6阻害剤での治療期間は、A群は24.7ヶ月・B群は8.3ヶ月と、圧倒的にB群が短く、Grade3以上の重篤な有害事象の発生件数も2778件vs1620件と、B群が少ない結果となりました。
色んな意味で負担の大きい治療はなるべく後回しにしたい患者ニーズは一般的ですので、アロマターゼ阻害剤単剤治療が一次治療でも効果面で明確な不利がなさそうという今回の試験結果は、患者さんにとって選択肢の幅が広がったという意味で朗報だと思います。
最後に、こんな試験を製薬会社がやるわけないよなと思って資金提供者をチェックしたら、「オランダ医療研究開発機構とオランダの医療保険会社」と出てました。
今後もこうした患者さんの負担面に配慮する「デ・エスカレーション」的な試験は、保険者が率先して行なう流れが続きそうですね。
※本項執筆時点(2023年6月30日)で、筆者はパルボシクリブ、アベマシクリブに関して、特筆すべき利益相反はありません。
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【記事2】カペシタビン(ゼローダ)の手足症候群に救いの手
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「手足症候群」という言葉、抗がん剤治療を経験されてきた方は、耳にしたり実際に経験されたことがあるかもしれません。
抗がん剤を投与することで、
・手や足がしびれる、痛むなどの感覚異常が出る
・手や足の皮膚が赤くなる、むくむ、しみが出来る、皮膚が硬くなる(角質化)、水ぶくれが出来る
・爪が変形する、色がつくことがある
(出所:国立がん研究センター東病院)
などの症状が副作用として出てくることがあり、これら一連の症状が「手足症候群」と呼ばれています。
酷くなると、ものを持てなくなったりキーボードを打てなくなったりなど、著しくQOLが阻害されます。
「手足症候群」を引き起こしやすい抗がん剤の中でも代表的なものが「カペシタビン(ゼローダ)」。経口剤という簡便性もあって、胃がん、大腸がん、乳がんで、広く使われています。
このゼローダの手足症候群を予防するのに、「ジクロフェナク」という消炎鎮痛剤の外用剤を試してみた試験結果が出てきました。
 ■”Randomized double-blind, placebo-controlled study of topical diclofenac in prevention of hand-foot syndrome in patients receiving capecitabine”「カペシタビン投与患者における手足症候群予防を目的としたジクロフェナク外用薬の無作為二重盲検プラセボ対照試験」(Journal of Clinical Oncology)
ジクロフェナクは昔からよく使われている消炎鎮痛剤で、ブランドとしてはボルタレンが一番有名です。
カペシタビン投与予定の乳がん/胃がんの患者さんに、ジクロフェナク外用剤を予防的に4サイクル投与する群(130名)とプラセボ群(133名)とで、手足症候群の出方に違いがあるか調べたところ…
グレード2以上の手足症候群の発症率:3.8% vs 15.0%
全てのグレードの手足症候群の発症率:6.1% vs 18.1%
と、有意差ありで、ジクロフェナク投与群が低い結果になりました。
手足症候群が酷くなるとカペシタビンを減量せざるを得ないので、抗がん剤の本来の効果を期待するという意味でも、ジクロフェナク外用剤の予防投与は意義があると考えられます。
さらに、ジクロフェナクは古い薬剤なので、コストが極めて低いのも喜ばしいですね。
今回の試験はカペシタビン投与に限定されたものですが、手足症候群は、カペシタビン以外の抗がん剤でも比較的よくある副作用のため、更に応用が進むことを期待したいと思います。
※本項執筆時点(2023年6月30日)で、筆者はジクロフェナク外用剤、カペシタビンに関して、特筆すべき利益相反はありません。
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iryouhoken · 7 years
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日経メディカル (登録)エストロゲン受容体陽性乳癌の1次治療としてのpalbociclibとレトロゾール併用はOS延長の可能性【ASCO2017】日経メディカル (登録)エストロゲン受容体陽性HER2陰性進行乳癌に対する1次治療としてCDK4/6阻害薬palbociclibとレトロゾールを併用投与することは、レトロゾール単剤よりも全生存期間(OS)を延長できる可能性が明らかとなった。オープンラベルフェーズ2試験PALOMA-1のOSの解析で、統計 ...
http://news.google.com/news/url?sa=t&fd=R&ct2=us&usg=AFQjCNFH3eor8RZcg4HOovQhBamezHLozA&clid=c3a7d30bb8a4878e06b80cf16b898331&ei=88w2WfvsItCHzgLHuDs&url=http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/search/cancer/news/201706/551554.html
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ishuran · 1 year
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Vol.165 遺伝子変異は早く知るに限る〜進行非小細胞肺がんでの興味深い研究結果
お盆が過ぎ、少しは涼しさを感じられるようになるかと思いきや、変わらずの猛暑&熱帯夜続きで、流石に身体に堪えますね。
東京で猛暑日がこんなにもあった年はあったかなと記録を調べてみたら、今まで一番多かったのが、昨年の16日間。2010年に記録した13日間を12年ぶりに更新しての数字です。
そして、今年は…  なんと8月29日時点で既に22日間!!
世界陸上での日本記録の大幅更新はWelcomeですが、こんな大幅な記録更新は勘弁して欲しいです。
私自身も、夏バテなのか先日来体調を崩してしまい、久しぶりに高熱にうなされる日を過ごしています。検査の結果、コロナでもインフルでもなさそうなのはまだ良かったのですが…
読者の皆さまにおかれましても、どうぞお身体ご自愛くださいませ。
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【記事1】 BMIと副作用:太るべきか、太らざるべきか?
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適切な体重管理は、がん治療においては一般的にプラスに働くと考えられています。
特に、乳がんについてはかなりエビデンスが揃っており、ガイドラインの中でも肥満の影響について論じられています。
 ■「CQ6    肥満は乳癌患者の予後に影響を及ぼすか?」(乳癌診療ガイドライン2022年版)
「乳癌診断時に肥満である患者の乳癌再発リスク,乳癌死亡リスク,全死亡リスクが高いことは確実である」
「乳癌診断時より肥満度が上昇した患者において乳癌再発リスク,乳癌死亡リスク,全死亡リスクが高いことはほぼ確実である」
と記載されており、治療医が患者の体重管理について助言をする根拠となっています。
一方で、抗がん剤治療の際に、体重(BMI)がどのような意味を持ち得るのかについて、一本興味深い論文が出てきました。
 ■"Impact of BMI in Patients With Early Hormone Receptor–Positive Breast Cancer Receiving Endocrine Therapy With or Without Palbociclib in the PALLAS Trial”「PALLAS試験でパルボシクリブ併用または非併用の内分泌療法を受ける早期ホルモン受容体陽性乳癌患者におけるBMIの影響」(Journal of Clinical Oncology)
抗がん剤は注射剤の場合、一般的に「体表面積」あたりで投与量が決まっています。「体表面積」は身長と体重で決まります。
一方で、パルボシクリブ(イブランス)のように「経口剤」の抗がん剤もありますが、この場合、身長とか体重には関係なく、投与量は基本誰でも同じです。
PALLAS試験は、ホルモン陽性の早期乳がんの患者さんに、術後療法として標準的なホルモン剤にCDK4/6阻害薬パルボシクリブ(イブランス)を上乗せした場合の再発予防効果を検証した試験です。
この試験を実施した際に、BMIによる副作用の出方の違いも同時に検証しており、その結果について論じられているのが、上記の文献になります。
解析に組み入れられた5,698例のうち、ベースライン時の体重は、68例(1.2%)が低体重、2,082例(36.5%)が標準体重、1,818例(31.9%)が過体重、1,730例(30.4%)が肥満でした。
そして、パルボシクリブ群では、BMIが高いほど好中球減少症が有意に減少(7%)し、これがBMIが高いほど治療中止率が有意に低下(25%)したことに繋がったと考えられました。
ちなみに、BMIに関係なく、本試験ではパルボシクリブの上乗せ効果は認められませんでした。
ここから推察されることは、パリボシクリブだけでなく経口剤の抗がん剤の治療においては、体重がある方が副作用の出方やそれに伴う中止のリスクは下がるかもしれないということです。
有効であることがわかっている治療方法であれば、副作用による中止リスクは下げた方が良いでしょうから、その意味では体重は増えている方がむしろ良いのではと考える向きもありそうですが…
とはいえ、全体としては再発リスクがBMIの増加により上がることはほぼ確実なわけで、この試験結果をもって「太るべき」とは、言えないでしょうね。
いずれにしても、パルボシクリブ以外の薬剤での追加的な研究結果が期待されるところです。
※本項執筆時点(2023年8月31日)で、筆者はパルボシクリブに関し、特筆すべき利益相反はありません。
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【記事2】遺伝子変異は早く知るに限る~進行非小細胞肺がんでの興味深い研究結果
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非小細胞肺がんは、がんを引き起こす「ドライバー遺伝子」の解析と臨床への応用、すなわち「個別化医療」がもっとも進んでいるがんです。
現在、日本で対応する分子標的薬が存在する遺伝子変異は、EGFR, ALK, ROS1, MET, RET, NTRK, BRAF, KRAS遺伝子G12C変異、と数多くあり、今後も増えていくことが予想されます。
従って、このメルマガでも何度も取り上げている「遺伝子パネル検査」を行なう意義がもっともあるがんと言えます。
ところが、ここで大きな問題が一つ。
現状では、遺伝子パネル検査が保険で認められるのは、「標準治療がない、または局所進行または転移が認められ標準治療が終了となった固形がん患者さん(終了が見込まれる方を含む)」のみです。
本来であれば、再発/進行が判明した時点で、「遺伝子パネル検査」を行ない、適合した治療にすぐ進んでいったら良さそうなものなのに、そうなっていないわけですね…
遺伝子パネル検査をなるべく早期に行なった方が良さそう、ということを示唆する研究結果を、一本ご紹介します。
 ■”Compromised Outcomes in Stage IV Non–Small-Cell Lung Cancer With Actionable Mutations Initially Treated Without Tyrosine Kinase Inhibitors: A Retrospective Analysis of Real-World Data"「チロシンキナーゼ阻害剤なしで初期治療された、治療可能な変異を有するステージIV非小細胞肺癌における予後の悪化:リアルワールドデータのレトロスペクティブ解析」(Journal of Clinical Oncology)
「チロシンキナーゼ阻害剤」とは、遺伝子変異に適合した分子標的薬とお考えください。
研究時点で治療アクションが可能ながん遺伝子変異「EGFR, ALK, ROS1, BRAF, MET, RET, ERBB2, or NTRK」を持っていたとわかっていた患者さんの転帰を以下の3群に分けて調べました。
・A群:遺伝子変異が判明するまで治療開始を待ち、適合する分子標的薬で治療した群(379名)
・B群:当初化学療法or免疫チェックポイント阻害剤で治療開始し、分子標的薬に35日以内にスイッチした群(47名)
・C群:当初化学療法or免疫チェックポイント阻害剤で治療開始し、分子標的薬に35日以内にはスイッチしなかった群(84名)
ちなみに、遺伝子変異の内訳は下記の通りです。
EGFR (n = 451), BRAF (n = 113), HER2 (n = 60), MET (n = 59), ALK (n = 58), ROS-1 (n = 21), NTRK1/2/3 (n = 15),  RET (n = 14)
結果、全生存期間(OS)の中央値は、
・A群:28.8ヶ月
・B群:21.7ヶ月
・C群:15.3ヶ月
となり、A群とC群の間では有意差ありという形でした。
ということで、遺伝子変異がある場合、なるべく早いタイミングで適��した分子標的薬での治療に入ることが大事になるということが示唆されるデータでした。
ちなみに日本での臨床実態は、いきなりの遺伝子パネル検査は保険診療の中ではできませんが、EGFRやALKなど、比較的昔から知られている遺伝子変異については事前に調べ、そうでない遺伝子変異についてはスキップしたり後日実施したりする形で対応されている施設が多いと考えられます。
遺伝子変異は「早く知っておくに越したことはない」ということで、今後、より早いタイミングでの遺伝子パネル検査の保険適応を期待したいと思います。
※本項執筆時点(2023年8月31日)で、筆者は複数の遺伝子パネル検査機器メーカーの株式を保有しています。
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ishuran · 5 years
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Vol.111「女もすなる子宮頸がん予防ワクチンといふものを、男もしてみむ」
梅雨空が長いこと続きますね。
7月は、学会ラッシュの月。先々週は乳癌学会、先週は臨床腫瘍学会と立て続けに参加してきました。
色々面白い発見があったのですが、今号は前回の特集でカバーしきれなかったASCOの続報も交えた内容にさせていただき、上記2学会での学びについては、次号以降でまたお伝えして参ります。
━ イシュランメルマガ Vol.111 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【記事1】女もすなる子宮頸がん予防ワクチンといふものを、男もしてみむ
【記事2】HR陽性・HER2陰性再発乳がんで大きな研究結果が出たものの。。。
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【記事1】女もすなる子宮頸がんワクチンといふものを、男もしてみむ
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通称「子宮頸がんワクチン」に関して、大きなニュースが2つほど入りました。
まず一つ目はこちら。
 ■「子宮頸がんワクチン、14カ国の調査で効果明らかに 撲滅の可能性も」(BBC)   https://www.bbc.com/japanese/48795883
「国際研究チームがこのほど、計6000万人を対象とした65件の研究を評価した」結果が出ました。
このようにレベルの高い複数の研究結果をまとめて解析する研究手法は「メタアナリシス」と呼ばれ、科学的根拠(エビデンス)の中でも”決定的”と言えるレベルのものです。
ワクチン接種が始まる前と8年後を比べた際の結果は、
>>
・16型と18型のHPV感染件数は、15~19歳の女性で83%、20~24歳の女性で66%減少
・CINの発症件数は、15~19歳の女性で51%、20~24歳の女性で31%減少
>>
と、子宮頸がんの発症原因となるHPV(ヒトパピローマウィルス)感染件数も、前がん病変であるCIN(子宮頸部上皮内腫瘍)の件数も、共に大きく下がっていることが確認されました。
子宮頸がんそのものの発症件数が調べられていないのは、前がん病変が実際にがん化するまでは更に数年単位の時間がかかり、まだこの時点ではそこまでの差が出ないと考えられたからと推測します。
そして、二つ目が、こちら。
 ■「子宮頸がんワクチン 男子にも」(TBSニュース)   https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3721443.htm?1562996435137
”イギリスでは、2008年から12歳と13歳の女子を対象に「HPVワクチン」いわゆる子宮頸がんワクチンの接種を行っていますが、イギリス政府は9月から新たに同じ年齢の男子も接種の対象とすると発表”されました。
子宮頸がんの原因となるHPVは、当然、男性にも感染します。
男性に感染した場合、咽頭がんや肛門がんなどの発症原因になりえますし、性行為等を介して”感染源”にもなりえるので、男性もワクチン接種する方が良いという考え方が背景にあります。
おそらく、今後もこれが世界の潮流となっていくことでしょう。
ちなみに、ASCOの子宮頸がんワクチンのセッションの中で、各国の(女子の)子宮頸がんワクチンの接種率は、ざっくり米国が50%、豪州が80%、南米各国が60-70%と発表されていました。
低い米国の数字をどうやって上げていったら良いのか、という議論がされていたのですが、日本に関しては、接種率1%未満とあまり��惨状に、完全に蚊帳の外に置かれています。
このままいくと、10年後に日本だけが毎年数千人単位で子宮頸がんで亡くなられる方を出し続ける唯一の国になることは、ほぼ確実でしょう。
※子宮頸がん予防ワクチンに関し、本稿執筆時点で筆者は特段のCOI(利益相反)はありません
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【記事2】HR陽性・HER2陰性再発乳がんで大きな研究結果が出たものの。。。
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ASCOの続報です。
閉経前のHR陽性・HER2陰性再発乳がんで、大変有望な試験結果が出てきました。
 ■”Endocrine Therapy Plus Ribociclib Yields OS Advantage in HR+/HER2-Negative Breast Cancer”「ホルモン療法へのリボシクリブの上乗せがホルモン陽性・HER2陰性乳がんの生存期間を延長」(The ASCO POST)   https://dailynews.ascopubs.org/do/10.1200/ADN.19.190347/full/?cid=DM2353&bid=18275404
再発・進行したホルモン陽性・HER2陰性乳がんに対し、近年、CDK4/6阻害剤と呼ばれるク��スの薬剤が出てきています。
日本ですでに発売されている、パルボシクリブ(イブランス)とアベマシクリブ(ベージニオ)に加え、もう一剤あるのが、このリボシクリブです。
「モナリザ7試験」と呼ばれる本試験では、閉経前のホルモン陽性・HER2陰性進行乳がん患者672名を、「リボシクリブ+ゴセレリン(ゾラデックス)」群(以下、リボシクリブ群)と「プラセボ+ゴセレリン」群(以下、プラセボ群)の2群に分けて経過を観察しました。
結果、全生存期間(OS)がプラセボ群が40.9ヶ月だったのに対し、リボシクリブ群は”未到達”、つまり参加者の半数以上がまだ生存しており、死亡リスクはプラセボ群比で29%低下となりました。
また、主な重篤な有害事象は、「好中球減少」(プラセボ群4.5%に対しリボシクリブ群63.5%)と「肝胆毒性」(プラセボ群6.8%に対し、リボシクリブ群11.0%)の2つでした。
今回の試験の意義は、対象を閉経前の女性に絞り、そこでOSの差がきっちり出たところにあります。CDK4/6阻害剤の他の2剤ではそこまで検証できていません。
で、ここまでは良いのですが、問題なのが、このリボシクリブ、日本では他の2剤より市場参入が遅れたということで開発を断念してしまっているのですよね…
今後、ドラッグラグ(海外の標準治療に日本ではアクセスできない状態)の問題が再燃しかねないと懸念しており、こうした事例には患者さん側からも声を上げていく必要ありと感じています。
※リボシクリブは記事内にも記載したように日本では未承認ですので、ご注意ください。また、CDK4/6阻害剤に関し、本稿執筆時点で筆者は特段のCOI(利益相反)はありません
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iryouhoken · 7 years
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日経メディカル (登録)エストロゲン受容体陽性乳癌の1次治療としてのpalbociclibとレトロゾール併用はOS延長の可能性【ASCO2017】日経メディカル (登録)エストロゲン受容体陽性HER2陰性進行乳癌に対する1次治療としてCDK4/6阻害薬palbociclibとレトロゾールを併用投与することは、レトロゾール単剤よりも全生存期間(OS)を延長できる可能性が明らかとなった。オープンラベルフェーズ2試験PALOMA-1のOSの解析で、統計 ...
http://news.google.com/news/url?sa=t&fd=R&ct2=us&usg=AFQjCNFH3eor8RZcg4HOovQhBamezHLozA&clid=c3a7d30bb8a4878e06b80cf16b898331&ei=BJc2WfiQF8WizQL5-K-QAw&url=http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/search/cancer/news/201706/551554.html
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iryouhoken · 7 years
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日経メディカル (登録)エストロゲン受容体陽性乳癌の1次治療としてのpalbociclibとレトロゾール併用はOS延長の可能性【ASCO2017】日経メディカル (登録)エストロゲン受容体陽性HER2陰性進行乳癌に対する1次治療としてCDK4/6阻害薬palbociclibとレトロゾールを併用投与することは、レトロゾール単剤よりも全生存期間(OS)を延長できる可能性が明らかとなった。オープンラベルフェーズ2試験PALOMA-1のOSの解析で、統計 ...
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iryouhoken · 7 years
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日経メディカル (登録)エストロゲン受容体陽性乳癌の1次治療としてのpalbociclibとレトロゾール併用はOS延長の可能性【ASCO2017】日経メディカル (登録)エストロゲン受容体陽性HER2陰性進行乳癌に対する1次治療としてCDK4/6阻害薬palbociclibとレトロゾールを併用投与することは、レトロゾール単剤よりも全生存期間(OS)を延長できる可能性が明らかとなった。オープンラベルフェーズ2試験PALOMA-1のOSの解析で、統計 ...
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iryouhoken · 7 years
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iryouhoken · 7 years
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日経メディカル (登録)エストロゲン受容体陽性乳癌の1次治療としてのpalbociclibとレトロゾール併用はOS延長の可能性【ASCO2017】日経メディカル (登録)エストロゲン受容体陽性HER2陰性進行乳癌に対する1次治療としてCDK4/6阻害薬palbociclibとレトロゾールを併用投与することは、レトロゾール単剤よりも全生存期間(OS)を延長できる可能性が明らかとなった。オープンラベルフェーズ2試験PALOMA-1のOSの解析で、統計 ...
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