#絨毯の特徴、手入れと使い方
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五月にみたもの覚え書き
世がゴールデンウィークだからといって別に休みでもないのは毎年のことなのだけれども、なんもせんのもなんなのでなにかしらやることにしている。今年は東洋美術史をざっくり勉強する、と決めて、4月の末に武蔵野美大出版局の『東洋美術史』を買ってきた。ゴールデンウィーク中に通読することを目標にしていたものの、すっとろくて半分もいかず、五月も終わろうかという頃にようやっと読み終わった。ついでなのでずっと積んでいた美術出版社の『東洋美術史』も併読して、こちらも完走した。
で、先日、用があって神戸に帰省した。ついでなので奈良に寄ったりして、あれこれ見てきた。その覚え書き。
大和文華館にはずっと行きたいと思っていたのだけれどもなかなか機会がなく、あっても逃し、行きたいな行きたいなと思っているうちに十年くらい経っていた。行けてうれしい。老若男女がバランスよくおり、そのどの層も、出されているものを信頼してじっくり見ているかんじがあってよかった。健全な集中力が展示室内をひたひたにしている。
静かな衝撃だったのが北魏の石造二仏並坐像で、字の通り、仏と仏が並んで坐っている。こういう形式の仏像をはじめて見た。ほんのわずかに顔がお互いの方に傾いている。小ささも相俟って、閉じた、親密なかんじがする。とてもいい。
青花双魚文大皿。二匹の魚のまわりに水草を二種描いている。一種は金魚藻みたいな形のやつで、もう一種は一枚一枚の葉の長いもの。前者が星を散らしたみたいな効果を出しているのに対し、後者はストロークの長い有機的な曲線が水の流れを感じさせるような効果を出していて、この取り合わせの妙がいい。外側は陸の植物複数種が切れ目なくぐるりと囲む(四季の花を組み合わせること��永続性を象徴させているらしい)。魚は、描かれている見込みの面積からすると小さめなのだけれども、背びれをグッと立てて全開にし、胸を張っるようにして頭のほうを起こし、口をギュッと結んで、上げた顎ごしに下を睨みつけるような、気合の入った顔をしている。でも小さい。小さい体に大きいガッツというかんじがして、いい。真横から描かれているが、胸びれも腹びれも左右両方が見えるようにズラしてあり、それが動きと若干の立体感を感じさせて、イキイキして見える。「魚」は中国語の発音がと「余」と音が同じなので縁起がいい、ということらしいけれども、たとえ縁起が最悪だったとしてもぜひ見たい、いい絵。
『大和文華館所蔵品目録』として矢代幸雄直筆の書類が展示されていた。使われている紙が大和文華館仕様の原稿用紙なのだけれど、これがとても素晴らしくて、上部に広くスペースが設けられているので図なり註なりをたっぷり書き(描き)込める。一枚あたりがA5くらいの縦長で、ふつうの原稿用紙のハーフサイズ(だから200字?)になっている。もしやミュージアムショップに売ってやしないかと覗いてみたけども、なかった。売るべきだと思う。売ってください。
国宝展開催中の奈良国博は噂に違わぬ大混雑。奈良国博が、というより奈良がもう全体的に大混雑で、鹿にしても飽食状態なんかして人間に対する関心がやや薄く、煎餅差し出されても「まあそんなに言うんやったらもらってやってもいい」くらいの反応でしかない。しんどいので、見たかったやつだけじっくり見た。
百済観音は細身な印象が強いが、腕は案外太い。肩の丸みがそのまま腕の太さになって、そのまま肘までおりるかんじ。本体のS字のシルエットに共振するように、装飾の曲線がつく(耳飾りと袖)。全身のシルエットそれ自体が蝋燭の灯のようにも見える。
宝菩提院願徳寺菩薩半跏像。ウナギの群れのごときぐりゅんぐりゅんの衣文がすごい。衣自体にはほとんど嵩がなくて、濡れた布が体にまとわりついているようでもある。滝を描いた山水画をなんとなく彷彿とさせる。菩薩の体を源として、なにかが激しく流れ落ちているかんじがする。この作品を取り囲む人だかりからおじさまがひとり、「ピカイチやな……」と呟きながら出てきた。ほんまやね。
中宮寺菩薩半跏像。この一軀のために一室設けられている。白い空間の真ん中に、黒い仏像が置かれている。シルエットの簡潔さが際立つ。パッと見は安らいだ表情のようにも思えるのだが、単眼鏡で眺めてみると小鼻の上あたりの肉にやや緊張したかんじがあり、差し迫った表情のようでもある。左目の下に筋状に漆の乱れがあるようで、これが涙の跡ようにも見える(同展出品の法隆寺地蔵菩薩立像の左目下にも筋みたいなものを見つけたけどなんなんだろう)。肘の位置が左右でけっこう違うが、肩は水平で、前後にもずれない。後ろ姿がいい(今回の展示では360°どこからでも見ることができる。一生分見とくつもりで、長いこと真後ろに立ってボーっと眺めていた)。肩甲骨などの凹凸は彫り出されず、中央の溝だけが一本、すばらしい微妙さで彫られていて、背中のなめらかな曲面の連なりをつないでいる。やや前側にかがみこむような姿勢なので背中がわずかに丸まっていて、そのことによって高い集中力を感じさせる。尻は体重で潰れることなく、高さを保ったまま小ぶりに締まる。それで腰の位置が高く見え、上半身に若干浮遊感が生まれているように思う。
神戸にいる間に空いた時間で白鶴美術館にも行ってきた。ここは春季と秋季だけ開館していて、対する私は夏と年末年始くらいしか帰省しないので、行きたいな行きたいなと思っているうちに十年くらい経っていた。行けてうれしい。阪急御影から山側に十数分くらい歩いたところにある。
おもに本館一階の展示室の古代中国の青銅器をじっくりみた。図版で見るといかにもいかめしいかんじがあって、近寄りがたく思っていたのだが、実物を見ると案外まろやかな印象を受ける。表面がなめらかな部分なんかは翡翠みたいに見える。単眼鏡で細部を観察するのがとても楽しい。饕餮夔龍文方卣は特にのびのびとしたかんじがあって、把手のつけ根のひょうきんな顔(キリンのツノみたいなのが生えている。顎がしゃくれていて、ちょっと口角が上がって見える)とか、フタの持ち手の犬の顔がついた鳥みたいな造形とか、見ていて飽きない。象頭兕觥は字の通り象の頭が象られていて、おもしろい。
西周時代の車馬具のなかに「節約」という名称のパーツがあっておもしろかった。綱紐をつなげるのに使う、K字状のもの。
金象嵌渦雲文敦は足とフタのついた球形の青銅器で、器形がまずたいへん愛おしい。三本足(動物の足のような形。こどもの虎のみたいなかんじ。かわいい)に二つの把手(虎?の顔)がついていて、顔に正面��ら向きあうようにして見ると足の一方が近く、もう一方が離れて見えることになり、そこにリズムが生まれている。なおフタには環が三つついていて、今回は足の位置に揃えて置かれていたけれども、ズラしてみるとまた違うリズムが生まれそうで、妄想していると楽しい。この環というのがやや外向きに開くように配置されていて、その点でも大らかさというか開放感みたいなものが感じられ、好きにさせられてしまう。
二階は漢から唐ぐらいまでの金工作品が出ていた。
鍍金花鳥文銀製八曲長杯は八辨の花形を横に引き伸ばしたような変わった形をした器で、杯というには浅いようにも思えるけれども、皿というには深さがある。外側側面は、銀色の地の上に金色の植物と鳥の文様がたっぷり詰めこまれている。他にも唐代の小品がいくつも出ていたけれども、いずれもたいそう趣味がよくて、なんという時代であろうかと思った。自分が遣唐使だったらたぶん、船に積む品物が選べなくて泣いちゃう。
二階の展示室の端っこの小さい区画(昔は貴賓室だったらしい)が次の展示の予告のコーナーということになっていて、出品予定の南宋と明のやきものが出ていた。次は陶磁器の名品展的なことをやるらしい。自前のコレクションであれこれ展示を組み立てて回していけるからこそできることなんだろうなと思う。賢い。
新館ではコーカサスの絨毯をみた。閉館間際であんまりゆっくりはできなかったのだけれども、眼福だった。V字型の鳥がたくさん織り出されたカザック絨毯が特によかった。絨毯の真ん中の淡い緑色の菱形の区画に、クリーム色、黄土色、朱色、こげ茶色の鳥がわんさかいる。絨毯の縁の枠の部分にもちらほらいる。
帰りは住吉川沿いを少し歩いた。それからどういう道を通ったのかあんまり覚えてないのだけど、途中に時間が止まったような小さい公園を見つけた。一度は通りすぎたものの、やっぱり気になったので引き返し、写真を撮った。近くのどこかの部屋からピアノの音が聞こえていて、同じフレーズがつたない指で繰り返し練習されているようだった。

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ペルシャ絨毯買取 「ペルシャ絨毯は高く売れるものも多い」ということは知っていても、実際にどのようなポイントを見て価値が判断されているのかは分かりにくいものがあります。 ここでは、ペルシャ絨毯の買取で必ずチェックされるであろう重要な査定ポイントと、そのポイントがどのような特徴であれば高く売れやすいのかをご紹介します。 査定前にお持ちのペルシャ絨毯を確認してみてください。 サイズが大きい ペルシャ絨毯は、サイズが大きければ大きいほど高く買取されやすくなる傾向があります。 ペルシャ絨毯を織るのには非常に手間がかかるため、大きければ大きいほどそれだけ製造に工数がかかります。 職人の手が多くかかっている分、大きいペルシャ絨毯には高い価値がつきやすいのです。 状態がきれい ペルシャ絨毯の保存状態は、買取価格に直結する重要な査定ポイントです。 絨毯が擦り切れている、色褪せている、ペットの匂いがついているなどすると、買取価格は下がってしまう可能性が高いでしょう。 買取直前でどうこうするのは難しいですが、日頃のお手入れが買取価格にも関わってきます。 素材が高価である ペルシャ絨毯の素材には、大きく分けてシルクとウールの2種類があります。 このうち、より高く買取されやすいのはシルクのペルシャ絨毯です。 素材はペルシャ絨毯の買取に際してはまずチェックされる査定ポイントの1つと言えるでしょう。 縫い目が細かい ペルシャ絨毯のノット数とは、その絨毯がどれだけ細かい目で織られているかを表す数値です。 ノット数が高い、すなわち目が細かい絨毯のほうが単位面積あたりの作業量が多くなるため、作るのにそれだけ職人の手間と時間がかかります。 そのため、サイズが大きいペルシャ絨毯と同様の理由から、高く買取されやすくなるのです。 産地や工房の証明書などがある ペルシャ絨毯の産地は複数あり、特にイランのナイン、カシャーン、クム、タブリーズ、イスファハンは5大生産地として有名です。 また、中古市場では古いものほど価値が高いとされています。 製造から50年以上経過した骨董品は「オールド」、製造から100年以上経過したものは「アンティーク」といわれます。 5大産地で作られ、製造から50年以上経ったペルシャ絨毯は高値が期待できるでしょう。 査定時には産地や工房名がわかる証明書を提示すると本物だと証明できます。 さらに、お持ちのペルシャ絨毯の入手方法や購入場所を確認できるようなら、事前に調べて査定士に提示することをおすすめします。 色柄の美しさ ペルシャ絨毯の柄は、中心に大きな模様を配した「メダリオン」、総柄の「オーバーオール」、モスクから着想した「メヘラブ」、景色を表現した「ピクチャ」の4種類があります。 特に「メダリオン」は万華鏡のなかを覗いたような美しい模様が人気です。 ペルシャ絨毯の中でも、多くの人が欲しがるような、美しくて味わいのある柄は高く売れやすいでしょう。 ただし、「中古市場で高く売れる色柄」というのが明確に決まっているわけではありません。 査定する時点の中古市場での動向を確認し、需要が見込めると判断すれば高値で買い取ってくれるでしょう。 ご満足いただける適正価格をご提示できるよう努力いたします。 バイセルの査定やキャンセルは無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
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Trip to Bangkok, September 2024 - Day 3: Wat Arun and Wat Pho
On the second day in Bangkok, I woke up and spent a lazy day at the hotel, and decided to do something unusual like sightseeing, so I went to Wat Arun and Wat Pho, two of the three most famous temples in Bangkok. (Actually, I found that “Wat Phra Kaew” was closed by the time I arrived.)
バンコク2日目、目が覚めてダラダラとホテルで過ごして、めずらしく観光っぽいことをするか、と思い、バンコクの三大有名寺のうち「ワット・アルン」と「ワット・ポー」へ。(実は、「ワット・プラケオ」は気づいたら閉館時間になっていた)
👉🇹🇭 バンコク旅(#Bangkok2024September)
ホテルからタクシーでまずは一番遠い「ワット・アルン」へ。「暁の寺」という意味のお寺なので、基本的には午前中、早朝に観光に行く人が多いらしい。私は午後、もう夕方くらいの時間にGrabで向かったので、運転手さんが「珍しいねえ」なんてめちゃくちゃ話かけてきてくれた。
・「ワット・アルン」は早朝に行くのがベストだから、この時間は人少ないんじゃない? ・この時間は帰宅ラッシュがスタートしてるからめちゃくちゃ渋滞してるよ。 ・タイは交通渋滞のせいで空気が悪すぎるから、絶対バイクタクシーは乗っちゃダメ。ベストは電車。 ・トゥクトゥクは以前はちゃんと認可のあったおじいさんがやってたからよかったけど、今は観光客狙いの奴が多いから乗っちゃダメ。地方ならOK。 ・タイの前の国王は本当に愛されてたから、逆に現国王は家族関係が複雑だから後継者選びが大変らしい。 ・今までは日本人が多かったエリアの不動産が中国の人に買われてきて治安が変わっちゃった。
1時間くらい乗ってたけど、ずっと話しかけられて面白かったわw
◾️ワット・アルン(暁の寺)
📍158 Thanon Wang Doem, Wat Arun, Bangkok Yai, Bangkok 10600 タイ
正式な名前は「ワット・アルンラーチャワラーラーム」。正確な創建年は不明だそうですが、少なくとも1700年ごろにはもうあったみたい。
入場料はTHB200。
チケットを買うと、なぜかお水が1本もらえますw (入場料としてではなく、お水代として払ったような感じなのかな)
いろんなところが工事中。修復しなきゃなところも多いんだろうね。
お寺なので、修行をしているであろうオレンジの僧服のお坊さんもちらほら。観光客の対応とかも修行の一環なのかしら。
特徴的な大仏塔の形は「バンコク様式」と呼ばれるそうで、”中心の大塔を4つの小塔が取り囲み、須弥山(古代インドの世界観の中で中心にそびえる山)を具現化している”、らしい。
モザイクみたいなカラフルな装飾は、割れた陶器の破片を使ってできています。
登ってみようかなと思って近づいたのですが...
とにかく階段の角度がキツい!!
そして、インスタグラマー多すぎ!!!
お寺の外側に貸し衣装屋さんがめちゃくちゃ並んでいて、ここで映え写真を撮るのが世界的に流行っている、んだと思われます。こういうことするのアジア系の人だけかな、と思っていたら、欧米系の人もガッツリ民族衣装を着て、なんならカメラマン引き連れて撮影していたので、情緒も何もないお寺でしたw
これが何のお寺なのかもよくわからないまま、とにかく撮影が目的で来てる感じ。でも観光客によって潤うことで改修費とかも出せるんだろうから、まあwin-winか...
人が少ない時間にゆっくり見学できれば最高でしたね。次回、体力つけて一番上まで登ってみたいw
▲遠くからセルフィーだけしておきました。
”映え写真コスプレインスタグラマーの巣窟” ワット・アルンからは早めに退散。
ワット・アルンの船着場から、対岸のワット・ポーの船着場に向かいます。船賃はTHB15なり。
めちゃくちゃ揺れるし、めちゃくちゃ川汚いなw でもちょっと楽しいw
◾️ワット・ポー
📍2 Sanam Chai Rd, Phra Borom Maha Ratchawang, Phra Nakhon, Bangkok 10200 タイ
ワット・ポーのほうは入場料THB300(=約¥1,350)。「結構するな...まあしょうがないか...」とか思いながら中へ。
中は結構広いみたい。
この時点では、「一番有名な”黄金の涅槃像”だけ見てさっさと帰るか...どうせまたコスプレインスタグラマーの巣窟だろうしな...」なんて思っていました。
まずは、入口正面にある「黄金の涅槃像」の建物へ。(地図で言うと⑩Phra Vihara of the Reclining Buddha)
お
おおお
すごい!
想像していたより大迫力だし、めちゃくちゃすごいぞ!
黄金の涅槃仏もものすごくデカくて綺麗だし、
建物の中の壁の螺鈿細工も美しい。これはすごい、来てよかった、¥1,350の入場料の価値あるわ〜!
観光客の入場料はTHB300(2019年まではTHB100、そこからTHB200に値上がりして、さらに最近上がったみたい)だけど、タイの人は無料。
なので、ちゃんとお供え物もある。ちゃんとお参りに来てるんだろうなあ。
▲黄金の涅槃仏と私
足の裏にも見事な螺鈿細工。 平たい扁平足な足の裏は、仏教的には”超人”の証らしい。 (つまり私もちょっとだけ超人の要素あるのでは...苦笑)
お尻から背中側。こっちもすごい。
1枚の写真では全体が入りきらない。良いものを見た感��すごい。
涅槃仏の背中側の壁には、108個の壺が並んでいて、ここに1つずつコインを入れていくことで煩悩が消えるという話があるらしく、私もせっかくなのでトライ。
ちゃんと全部入れたのにも関わらず、お皿の中にはまだまだ大量のコイン。おばちゃんが量ってお皿にコイン分けてたっぽいけど、適当なのかな...?苦笑
▲後頭部側が出口。
いやー、これは行ってよかったです。
涅槃仏の建物を出た外にも、仏塔や回廊がたくさんあり、見応え抜群。
ワット・アルンよりも仏塔の作りが綺麗で、装飾もちゃんと整ってる。
大きな4つの仏塔は、ラーマ1世・ラーマ2世・ラーマ3世・ラーマ4世のものらしい。ラーマ4世が「これ以上仏塔は建てなくてヨシ」としたので、これ以降新しい仏塔は建ってないみたい。
絢爛豪華な本堂。靴を脱いで入った先に広がる、赤絨毯。 たくさんの人がお参りに来ていて、���常に溶け込んだお寺なんだなあと感心しました。
ワット・ポー、閉館に近い時間に行ったこともあり、ほとんど観光客がいなくて、もちろん謎のコスプレインスタグラマーもいなくて、とても快適だった!こっちは行った甲斐があったなあ。ゆっくり仏塔や回廊を回ることができて、充実した観光時間でした。
外回廊を抜けた先、出口に向かう途中に大量に落ちている猫w
めちゃくちゃかわいい。キミこそが映えだよ...!!!
これこそ日常の寺なんでしょうね。ねこかわゆ。
【2024年9月 バンコクの旅】 ・Day 1 └ 東京〜ソウル: air premia プレミアムエコノミー └ ソウル〜バンコク: air premia エコノミー └ แตงโม Watermelon └ <HOTEL> Hotel Ordinary Bangkok ・Day 2 └ Baiyoke Tower II └ ゴーアン カオマンガイ プラトゥーナム(ピンクのカオマンガイ) └ クワンヘン・ガイトーン・プラトゥナーム(緑のカオマンガイ) └ <HOTEL> Akara Hotel Bangkok └ Iron Balls Distillery & Bar └ Iron Balls - The Parlour └ Hair of the Dog Craft Beer and Gin Experience Phrom Phong ・Day 3 └ ワット・アルン(暁の寺) 👈THIS └ ワット・ポー(涅槃寺) 👈THIS └ YOLO Craft Beer Bar ・Shopping in Bangkok ・Day 4
+α バンコク旅行で便利なアプリ: MuvMi
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イキヤ真澄樹しみれーと24 衝突 トキさん来訪

捨てられない死体、母親の死に際、遺伝する夭折、薬を真澄に託したトキさん、衝突
「…… … 何でだろ 殺せるのに …殺したあとに 俺 捨てられないかもしれない … 」
「ーーーー自分に起きたことをナメてんじゃねえ …そこで��ったら許さねえ …二度とわらうな その笑みは この俺への侮辱と侮蔑だ」
真澄に起きたことを お前自身が簡単に踏み躙ってくみたいな こと…は 俺 耐えられ ない …
波乱… カガリを待ち構えて殺すか…? いや…焦ると死ぬ… イキヤ真澄はまず悪夢の治療とかをきちんとやらせていくべきなのか…
4949cry — 昨日 23:59 …(゚ロ゚) 2024年3月3日
4949cry — 今日 00:00 すーぱーインモラルルートに突入するならカガリくん…もありだが たぶんもう真澄はよっぽど死にはしない… イキヤくんはわからんが
sz — 今日 00:01 カガリはイキヤ真澄に殺されたら死ぬ間際にでも「ありがと…」って心からの感謝を告げる… どこにも居ないはずで居るままより死んだほうがカガリはずっとらく… イキヤももう死にはしないな 真澄になにかあったらどう転ぶか分からんが… すーぱーインモラルルート…死体遺棄的な…?(O O)
4949cry — 今日 00:07 うん ますみんがさねつぐさんとこにカガリくん持ってって埋葬する
sz — 今日 00:08 (゚ロ゚)… イキヤはそのときは食おうと思ってるぽいぞ
4949cry — 今日 00:11 「プリオン病になるからやめな」
sz — 今日 00:11 「プリオン病(O O)?」 人間も肉じゃねえのか…(O O)
4949cry — 今日 00:14 「同種の生物で共食いをすると発現する感染症因子だ」
sz — 今日 00:16 「…(O O)殺すのに…食ってもやれねえのか…
4949cry — 今日 00:17 「…。まぁ…うつひこがしたいようにしな」
sz — 今日 00:18 「感染症(O O)?にはなりたかねえけど… 食わねえんなら… ほんとに 殺す だけなのか… 」 「…… … 何でだろ 殺せるのに …殺したあとに 俺 捨てられないかもしれない … 」 オオミズアオも標本にしてあるしな…
4949cry — 今日 00:22 「そうか」…
sz — 今日 00:23 カガリを殺して 殺したあとも…死体を大事にするかもしれない …死体を大事にって… 俺 死体をなんだと…?思ってんだろ… 「食う以外にどうすればいいのかわからない…」
4949cry — 今日 00:28 「…お母様はどうしたんだ」
sz — 今日 00:29 「庭で死体とずっと一緒にいた 抱きしめて …でも、客がきて 見つかって …引き離されて 俺はそのとき目が見えなくなってて耳も聞こえなくなってたから 何がどうなってるのか何もわかんねえまま 師匠…昔から世話んなってる大人、に、…いろいろ任せっきりになって 葬式やったのかとかもよく分かってねえ… 実家にあれはある、なんか装飾が細かくて豪華なやつ(O O)」
sz — 今日 00:37 両開きんなっててローソクとか立ててあるやつ あれの使い方よくわかんねえ(O O) なんなのかもほんとはよく知��ねえ…(O O) でも母さんがあれになったとは思えねえ
4949cry — 今日 00:39 のそ… ぎゅ
sz — 今日 00:40 (O O)…ぎゅ… 「死ぬのは …しかたない 仕方なくねえけど、でもいつか死ぬから …でも 死体と …お別れ…?できるように なったほうが… …ならなきゃいけないのか… ?」 ぎゅ… 「いつか真澄が死んだら …俺はお前の死体とお別れ でき ない … 」 「…真澄が死んだあとも ずっとそばにいていい?」
4949cry — 今日 00:48 「…うん」
sz — 今日 00:50 「救急車呼んで運んでもらったり 火葬にしたり 葬式したり ぜんぶしないで …ただずっとそばにいてもいい? …いつか俺も死ぬまで」
4949cry — 今日 00:53 「…。うん」ぎゅ…
sz — 今日 00:54 ぎゅ… 「…真澄は長生きしたい?」
4949cry — 今日 00:58 「わからない …」
sz — 今日 01:00 「……真澄が死ぬとき 幸せに死ねるように 俺がする …俺より先に死んでくれる?」
4949cry — 今日 01:03 「…。そうしたいのか?」
sz — 今日 01:04 「うん。…それに真澄より先に死にたくない」 先に死にたくない… でも 俺はそんなに長く生きられないかもしれない … どうすればいい 「…………」 どうすればいいんだ ( ・∇・)いふわんのときのようにトキさんにお助けキャラになって登場してもらうか…?
やってみるか…? 掻っ攫われそうな雰囲気が漂ったらそこでピシャーンと終了、引き返しで…?
4949cry — 今日 01:35 www イキヤくん抱いてしばらくはセックスしなかったのかな リベンジでもっかい真澄がイキヤくんだいじにだいじに抱いてそうだな その翌日以降とかかな
sz — 今日 01:37 うおおおイキヤが抱いてもらえとる 翌日以降の夜、ますみんの部屋の窓が外からスルッと開きます 空いた窓の淵に乗って、部屋にはまだ上がり込んでこないトキさん 風に靡くあの絨毯がもう部屋の中にばさあっと広がってるが 真澄は起きてるかな
4949cry — 今日 01:44 起きてるだろうな…悪夢に関わるようなことはまだ何も変わってない カガリくんが入ってきたときも意に介さず入れちゃってたみたいに、まだ家の感覚もあまり成長してない 他ルートでトキさん入れてたのといっしょだな
sz — 今日 01:47 トキさん顔だけ真澄のほう向けて、にんまり… 「良い夜だ 」 「虚は手前の なんだい 」
sz — 今日 01:54 トキさん… ここまでのイキヤ真澄を見てきててだいたい知ってるくせに聞く…
4949cry — 今日 01:57 「…?うつ?」 鬱 ? … うつひこ?
sz — 今日 01:59 「俺が誰だか大体の見当はついてんじゃあねえのかい」
4949cry — 今日 02:00 「…貴方はだれ?」
sz — 今日 02:01 「行屋疾彦 あれの父親だ」 「んなこたぁいいさ 虚は このままいくと永くねえぜ 虚の間抜けは今に始まったこっちゃあねえが、これに関しちゃ遺伝的なモンだ 今頃途方に暮れてるだろうよ」ひっひ…
4949cry — 今日 02:08 「…ときひこさん…」ぽそ…つぶやく
sz — 今日 02:09 ふいにますみんのほうへ大量の薬のストックを放って投げて渡す…
4949cry — 今日 02:09 遺伝 …この人は幾つなのか…うつひこが長く生きたいって話は聞いたことがない キャッチ … くすり… 何の印も形状の特徴もない …「くれるんですか」これ
sz — 今日 02:11 「上手く使いな 手前らの様子は眺めてる分にも面白味がある 続けろ」 トキさん窓枠で立ち上がってふらっと出ていく、手前でとまって
sz — 今日 02:20 「ーーーー手前の不眠と悪夢 治してえんなら自分が被害者だってことを早々に認めるんだな」
4949cry — 今日 02:21 ますみんトキさんの方を見ている… 「…治すべきだと思いますか」
sz — 今日 02:26 「べきだろうとなかろうと治しちまえ」 「…ふぅん… よっぽど手放したくねえ悪夢でも見んのか?」にまぁ…
4949cry — 今日 02:35 「手放したら僕は僕じゃなくなるようで …」俯く 怖いんです、…←声には出してない
sz — 今日 02:36 トキさん恐怖心を見ているし感じている… 「虚と生きるよりその悪夢を大事にしてえんなら後生大事に抱えてりゃいいさ 手前がどれだけ変わっちまおうと虚は手前を愛すだろうよ」
4949cry — 今日 02:42 「…」ますみん薬置いて部屋出た イキヤくんの部屋にいく すたすた ガチャ ばたん! ノックもせずにドア開けて入った イキヤくん寝ててもぎゅー!ってする
sz — 今日 04:36 「! …」 イキヤも眠れなくて、横になってるだけで起きてた 真澄をそっと優しく抱きしめ返して自分のほうにさらに引き寄せるみたいに真澄の後頭部撫でてあやす… 「真澄… …どした?」なでなで…さすさす… このトキさんイキヤにも気づかれないようにうまく気配殺してるので、イキヤでもトキさんが今隣の部屋に来てることを察知できないし、このままたぶん気付けない
sz — 今日 04:43 真澄の後頭部や背中を優しく撫でさすりながら… …悪夢みた?一緒に寝ようか って言おうか迷っている…
4949cry — 今日 05:01 ぎゅ…「…ときひこさんが…うつひこは長生きできないって」頭撫でてもらいながら顔伏せたまま 「遺伝って なに」
sz — 今日 09:59 イキヤぞっとして真澄の身体をよく撫でて全身スキャンする…「あいつに会ったのか いつ 何もされてねえか」 …なんとなく生きてる感じはしてたけど 生きてたのか…
4949cry — 今日 12:43 「…話を。うつひこのことと…僕の悪夢のことを、一言二言話した。見守ってるよってさ」こてん…顔横向かせてイキヤくんの胸元にのっける… 心臓の音… 「まだ隣の部屋に居るかも」←テリトリー内なので居たらますみんわかるんだけど、イキヤくんに離てほしくないので断定はしない… もういなかったら「さっきまで隣の部屋で。今はもういない」って言うかな
sz — 今日 13:07 まだ隣の部屋にいてくつろいでるかもな…w 「……生きてたのか あいつも」
4949cry — 今日 13:10 「…ときひこさんからの遺伝なの?お母様のほう?」
sz — 今日 13:12 「あの父親と母さん、そんなに遠くねえ親戚なんだ どっちからどう俺に遺伝しても あんま変わんねえ…のかも」 「あいつは…まだ生きてんなら長生きだ 今四十くらいじゃねえの… 俺んちの 特に男親 三十代でだいたい死んでた気がする」
4949cry — 今日 13:17 「そう…」
sz — 今日 13:18 「身体が弱いとかってんじゃねえから… 打つ手ない 歳取るごとに …発狂?…する それで気付けずに無茶なことして死ぬ …そんだけ」 「特に酷かったのに八十くらいまで生きたひいじーじゃんみたいな特例もいるから、俺がどうなるかもまだ分かんねえけどさ」 真澄の頭に顔寄せる…耳元で言い聞かせるように囁く…
sz — 今日 13:29 「俺は案外けろっと長く生きるかもしれねえよ? 母さんみたいな精神症状も出てねえし、あいつみてえに無茶に身体を酷使した生き方もしてない 躁でも 鬱でも ない …接してても、こうしてちゃんと話通じるだろ …大丈夫 …俺は大丈夫 」 最後のほう自分に言い聞かせるみたいになってるな
4949cry — 今日 13:35 「…うつひこ」かおあげる…イキヤくんみる 「僕が死んだとき わかる?」
sz — 今日 13:38 一度眼を閉じてすぅー…っとゆっくり呼吸する… 「……うん」 「わかるよ」 真澄に死が近づいても 分かる だからその時 俺は必ずお前のそばにいる 絶対に …そのためには俺のほうが真澄より長く生きなくちゃ …どうしても真澄より長く生きなくちゃ 5分でも、ほんの一秒でもいいから、真澄より 長く… どうすればいい? …なんなんだよ… …なんだってんだよ… 遺伝ってなんだよ …畜生
sz — 今日 13:49 慧さんが 遺伝も要は発現するかしないかで環境如何だから縛られすぎずに健康的な生活しろ、呪われ過ぎるな、…って 言ってた …
4949cry — 今日 13:56 「…僕は …誰なんだろうな」
sz — 今日 13:57 「(O O)真澄。」 「…お前 あいつになんか言われたろ? なに言われた、 あいつは人が傷つくことを際限なくいくらでも言う、なんとも思わずに、あいつの言葉に惑わされんな、」 ーーー! 居るのか、隣の部屋 イキヤになにか勘付かれたことに勘付いたトキさん、ゆらあっとイキヤ真澄のいる部屋のドアの前まで来た
sz — 今日 14:04 トキさん、当然のようにドア開けてイキヤ真澄の姿も見ずにすいすいまっすぐ部屋に入ってくる
4949cry — 今日 14:10 起き上がるますみん…
sz — 今日 14:12 「ーーーっは! いい笑い種 手前ら萎れてお互いにしなだれ掛かった細百合かなんかか? そのくだらねえ脆さを早いとこどうにかしな じゃねえと遺伝がどうのこうの言ってる間もなく死神に喰われて終わりだ 俺は高みの見物だ 湿っぽいばっかじゃ興醒めだ もっと客席沸かせな」 イキヤの部屋の窓からヒョイっと外に飛び降りて出てった… イキヤ言い返す暇もなかった… けど真澄のことしっかり胸の中に抱き込んだぞ トキさんから見えないくらいにしっかり まもる…
4949cry — 今日 14:18 抱き込まれてイキヤくんの腰に腕回しておく…けどトキさんすぐ出て行った…
sz — 今日 14:19 窓の外に向かって大声で怒鳴り散らし返したいイキヤ 真澄が優先なので我慢している
4949cry — 今日 14:19 「…」すり 抱き寄せられた胸元に頬擦りする… 「傷付けられてないよ あの人は惑わすようなことは何も言ってない …」
sz — 今日 14:22 「言い方あんだろ… 」
4949cry — 今日 14:24 「…言い方もべつに…」イキヤくん見上げる「悩みを言い当てられたところはあるけどね。…うつひこあの人のこと嫌いか?」
sz — 今日 14:25 …、嫌い… 嫌い? 「憎んで る… ? 俺がアイロン押し当てられるのを 屋根の上にいて ぜんぶ知ってて 見物?…してた … …?」
sz 「イキヤくんのこれまでの人生 惨めで憐れで悲惨なものに …あなたがするんだ ふ ふふ っ…」
sz — 今日 14:30 カガリのこれが発動してんなぁ…( ・∇・) 今まではそれを 単に最低な父親だってしか 特に思ってなかったけど… … 「……いや、嫌いだ。色がうるさいから。」←自分で原点復帰した 「真澄はあいつのこと嫌いか?」
4949cry — 今日 14:34 「…とくにどうとも」
sz — 今日 14:34 「悩みってなんだ(O O)」
4949cry — 今日 14:35 「…でも」イキヤくんの胸元に手あてて「うつひこを助けてくれなかったなら 嫌い」
sz — 今日 14:37 「(O O)…」じぃ…っ 悩みってなんだ…
4949cry — 今日 14:38 「…ああ 睡眠が足りてないだろ 僕もうつひこも」 そのことだよ …「僕が悪夢をみていることを知っていた」
sz — 今日 14:39 「あいつも なんか見るから。…俺の目と似てる」 睡眠… 「真澄が飲んでる眠剤を俺も飲んだらいいのか…?(O O)」 「悪夢… 見ないで眠れたことねえのか(O O)」…
4949cry — 今日 14:47 「そんなことはない」(はず…)「…でも みなかったらみなかったで…不安になる 自分が誰かがわからなくなるような」 イキヤくんの手とる…ベッドに腰掛けて手いじる …きれいな手 雄弁な 「…どんな夢なのかを話したことがあったっけか」
sz — 今日 14:49 「樹さんの…昔あったこと… じゃねえのか」 (O O)詳しく聞いた…あれじゃなくて、バリエとかあんのか…それとも内容いつも定まってねえのかな
4949cry — 今日 14:52 「最近ではうつひこが襲われるときのこともみる」ふ…「みたことねえはずなのに」 「…前の恋人の…ことも…」
sz — 今日 14:55 「…なんでみる?」 なにか 自分で 分かってそうだ
4949cry — 今日 14:59 「樹と僕が双子なのは知っての通りだけど …あのことがあるまで僕らはそっくりだったんだ」 離れたところで育つと余計に似る、って実験結果もあるくらいだから 自然なことだったんだろう …「遺伝子的には全く同じ …おなじ存在のイフを、僕らは互いにみることができた」
sz — 今日 15:01 「…」
4949cry — 今日 15:04 「あの時 樹が … あれからだ、僕たちの外見や…意��の状態に違いが顕れだした …もしかしたら死んでいたかもしれないけれど結果的に死ななかった自分が継続して今生きているのなら 僕たちはそこで死んだ自分も同時に存在することができる … …僕は …樹じゃない … …樹じゃない自分が …」許せない 「樹じゃない自分になったのが …あの時だ そう思ってんだろうよ、この脳みそが」
sz — 今日 15:08 「逆だったらよかったと思うのか」
4949cry — 今日 15:10 「…いいや。樹に憧れてるのが楽しかったし もし僕がされたら樹は僕以上に自分を責めたかもしれない …あの時も 樹は僕の名前を呼んだ途端に冷静になって声を上げるのをやめたように見えた、 …、…」 俯く…表情が ますみん泣きそう…
sz — 今日 15:13 イキヤ、真澄の目をまっすぐ見つめている…いつものあの目で 「ーーーここに樹さんが居ないから 言うけど 俺はずっと 不思議で仕方ない なんで酷い目にあったのが樹さん一人だってことになってんだ? 双子で 見た目に違いが出て それがその時のことのせいでも なんで酷い目に遭った側と、遭わなかった側の、真逆に分かれたモンみてえにいうんだ
sz — 今日 15:22 真澄と樹さんに起きたことはどっちも酷いことだ 同じ場所、同じ日に、同じ酷いことの最中に居させられたけど それぞれにまったく違う酷いことが起きた 違う目に遭ってんだからその後も違くなるだろ 樹さんに起きたのは強姦 真澄に起きたのは拷問だ どっちも 子供が受けてただで済むもんじゃねえよ
4949cry — 今日 15:25 「拷問て」 ふ、って笑うますみん
sz — 今日 15:25 おおーっとイキヤがカチンときたぞ?!
4949cry — 今日 15:25 (・∀・)
sz — 今日 15:26 真澄の胸ぐら掴んでグイッと顔引き寄せて凄い目で睨みつけるぞ
4949cry — 今日 15:26 !
sz — 今日 15:27 「ーーーー自分に起きたことをナメてんじゃねえ …そこで笑ったら許さねえ …二度とわらうな
4949cry — 今日 15:28 「…、…悪い」
sz — 今日 15:28 その笑みは この俺への侮辱と侮蔑だ」
4949cry — 今日 15:29 「…」うぐ…
sz — 今日 15:29 微動だにせずじっ…と同じ体制で真澄を睨み下げる…
4949cry — 今日 15:32 少しため息ついて目ふせるますみん「…防衛反応で笑っちまうこともあるんだぜ?馬鹿にしたわけでも笑い飛ばしたわけでもねえよ…」
sz — 今日 15:34 「なら復唱するか? てめえ 一言なんつった」
4949cry — 今日 15:34 「…」
sz — 今日 15:37 「……壊し方が甘かったか その脳みそ、まだまだ壊したほうがいいらしいな 」
4949cry — 今日 15:38 「!?」ますみんちょっと抵抗しかけたな 身じろぎして瞬き忘れてイキヤくん見詰め返した
sz — 今日 15:39 イキヤが胸ぐら掴んだまま引き寄せて真澄にキスするぞ ここでトラウマキス
4949cry — 今日 15:40 ひええ イキヤくん起きたことを急に全部受け入れられなくて一旦矮小化して飲み込むのは防衛反応の一種にあるんやで…(・∀・) ますみんさすがにじたじたって手足あばれた…一瞬だけど すぐイかされてしまうかな
sz — 今日 15:41 イキヤはそういうのなにも知らんからなあ…(°°) しばらくそのまま深いキスしたらぷはって一度離すけども… イかせるだけじゃなくて深いキス続けたのは自分がキレてるのが愛情由来なのを伝えるためみたいな… じゃないと今のイキヤ、かおが ガチギレすぎて… こわい( ・∇・)
4949cry — 今日 15:46 真澄もさすがに嫌われたかもとか見捨てられ不安がチラついてたな 愛情伝われ… さすがにキスされて急にイかされて泣くかなますみん 緊張してたからイかされる強引さがだいぶしんどかったろうし
sz — 今日 15:48 それ拷問やぞ…おまえがますみんに拷問してどないすんねんイキヤ…
4949cry — 今日 15:49 www
sz — 今日 15:50 真澄が泣いたらさらにキスするかも… 今度はあやすようなニュアンスも入ったかんじの キスだんだん優しくあまくしてく 胸ぐら掴んでる手も真澄の頭くしゃってしたりするほうに変わる
4949cry — 今日 16:32 ビクついてたますみんがだんだんイキヤくんの様子確かめるみたいにゆっくり目ひらく
sz — 今日 16:35 イキヤもうガチギレ顔してない… いつもの顔… 目元すこし優しめに眇めてるくらい
4949cry — 今日 16:39 ぽろ…って涙おちた… 生理的な涙のようなガチギレされてない顔でほっとしての涙のような
sz — 今日 16:40 キス極限まで優しいほうに振ったキスをしばらく続けてから、そ…っと唇離す… 顔近いまま そのまま、呟くみたいな弱くなった声で でもしっかり伝える… 「…ごめん 伝え…ること… まちがった バカにしたわけでも 笑い飛ばしたわけでもないんだと しても 俺は …傷ついた 傷ついた … … だからもう やめろ 真澄に起きたことを お前自身が簡単に踏み躙ってくみたいな こと…は 俺 耐えられ ない … 」 目にすうっと涙が浮かんだ 零れ落ちないで目元に溜まってく 眉が下がって眉間に悲痛な皺が寄った…
4949cry — 今日 16:51 「…、…」掛ける言葉もない… … …、「…うつひこ 今僕のこと殺せる?」
sz — 今日 16:53 「…殺してほしいか?」 …真澄を殺す ……いつかじゃなくて 今?
4949cry — 今日 17:00 「うん」
sz — 今日 17:03 「ーーー殺せるよ
…けど、今は殺さねえ お前が自分で死のうとするなら、阻む 俺はお前にまだなにもできてない お前のことを…知らない そんなうちから 殺せるほど お前のことどうでもよくない ………手を尽くす ……苦しめてんなら、ごめん
4949cry — 今日 17:09 「ちがうよ …幸せだから」ぺしゃ…ってベッドに倒れ込む
sz — 今日 17:10 ますみん抱きしめて倒れる衝撃和らげて庇うみたいにいっしょに倒れたかも 「なら幸せから逃げようとしてんじゃねえよ… そんなら殺さねえ」 ぎゅうー…
4949cry — 今日 17:13 「…逃げか …そうかもな」 抱きしめ返す…
sz — 今日 17:14 イキヤの涙がほどよくシーツに吸われてって溢れずに済んだ 抱きしめて真澄の頭撫でる… 「…つづき 話せるか?」
4949cry — 今日 17:15 「続き?」
「夢の話、してたろ 昔の話も あの続きだ 俺は お前に起きたことをお前の口から 聞きたい …口にすんのが…しんどいんなら ゆっくりでも ちょっとずつでもいいから 」 なにが起きたのかあの時あらましを話したのは樹さんだった それじゃだめだ
4949cry — 今日 17:23 「…続きはない …いや …、どこから続ければいい?」
sz — 今日 17:25 「あの時、なんか言葉に詰まったろ なにを考えてた? なにが頭に浮かんだ どういう気持ちだった? 出来事だけ把握したいってんじゃねえ… わいた気持ちを ぜんぶ言葉にして 教えろ」
4949cry — 今日 17:28 「… わからない」わからない …気持ち なんて …その都度 決めて��も、 …あの時の気持ちを今考えることさえ 難しい … 「ただ…樹と三人で居た時に樹が話した、あれを聞くまで僕は樹を見捨ててただ隠れていたんだと思ってた 助けられるところでただ見ていて…助けなかったんだと」
sz — 今日 17:31 「ただ隠れてたって言い方…やめろ それは 多分 正しくねえ」
sz — 今日 17:39 「自分の身を守ることを強要されてんじゃねえか それも、お前が個人的に助けたかったり、人道的に助けなきゃいけなかったり、そういう複雑な葛藤を踏み潰されて、お前自身の意に反してたかどうかさえの境界までもを内側から曖昧にさせられたんだろ 隠れてたあいだ、ずっとそんな時間が お前の身に降り積もった …これが拷問じゃなくてなんなんだ? もっと酷い言葉になら言い換えられるかもしれねえ」
sz — 今日 17:49 「生きながら殺されて その先死ぬことも禁じられて まっとうな生き方を強いられて …樹さんのことじゃねえぞ お前のことだ これは」
4949cry — 今日 17:50 「…っ」 そう…なのか? …いや… わからない わからない…けど「まぁ…それは…ともかくとしても、あの日うつひこに樹が話すのを聞いたことで…助けを呼びに行ってたってのを、初めて知った」 完全に見捨てては居なかった …いや、それはともかく 「記憶の曖昧さってのを痛感したよ。…悪夢に縋ったってあの日を間違い無く繰り返し見ているわけではない」
sz — 今日 17:59 「話は聞く …けど俺が言ったとこを曖昧なままにすんな …その時の気持ちを俺が訊いて お前は、分からない、っつった ……それがお前の 被害の形だ 分からなく させられた。…分からねえのが、お前がどれだけ酷い目に遭ったのかの度合いだ ……お前にとっては 納得いかねえか、そういうことにはしたくねえかもしれねえけどな 俺は そういうことにする お前は俺の言葉にぜんぶ塗りつぶされろ …俺はお前にそうする」 「記憶も気持ちも過去も曖昧だ、夢も。ならお前のことは俺が決める お前の輪郭は俺が作る」
sz — 今日 18:07 「ーーーつっても素材がねえとなんも作れねえから もっと話せ」
4949cry — 今日 18:08 「そ …さすがにそいつは横暴だろ、…」
sz — 今日 18:11 「じゃあ加工されたくねえ素材には印つけて寄越せよ …できんのか?」 「悪夢見ねえと自分が誰かも分かんなくなるんだろ でもお前が悪夢で魘されてるのも、それでちゃんと眠れてねえのも、俺が嫌だ お前も、眠れるようになるっつった ぜんぶ俺と生きるためだ 俺と幸せに生きるため なら、お前が誰なのか決めるのは、俺だ」
4949cry — 今日 18:17 「…、…言いなりの人形でいいのかよ それが誰なのかを自分で言い聞かせて見出す虚像は一人遊びとどう違う」
sz — 今日 18:19 ふ…「おい 俺は絵描きだぞ?」 「一人遊びのプロで、一人遊びをそれだけで完結させねえプロだぜ」 「虚像だと思うんなら安心しろよ 俺はもともと ただの虚(うつろ)だ 」 果てない虚で包み込んでやる どうしようもなく安楽ななにもなさで永遠に守ってやる
4949cry — 今日 18:31 「…加工されたくねえ素材には印つけろとか言ったな」
sz — 今日 18:31 「印つけても加工しねえかどうかは俺の判断だけどな」 「加味するくらいはする」
4949cry — 今日 18:35 「…。なら渡さない …何も言わねえでおくさ」
sz — 今日 18:38 「加味するっつってんだろ(O O)寄越せ。俺の仕事の出来栄えはよく知ってんだろ(O O)」
4949cry — 今日 18:39 「これは仕事じゃない」調子もどってきたなますみん(・∀・)
sz — 今日 18:39 「だだこねるなよ… お前、往生際悪りいぞ(O O) 俺と生きてくんだから腹くくれ」
4949cry — 今日 18:43 「…うつひこが好き」真顔 「どんな風に好きで …どうしたいと思ってるか 全部は自分でもわからねえし変わってくかも …お前が掌握できるとも思えない だから加工するな」
sz — 今日 18:49 「俺はいっぱい眠ってきもちよかった、お前にもそうなってほしい、つった そしたらお前も、そうなりたい、つった。 …無加工のままちゃんとそんなふうに眠れるようにまでなるんだろうな…?(O O)」
4949cry — 今日 18:53 無加工と言えるかは正直怪しいけどな… とさっきもトラウマキスされたのを思い出して内心びく…とするますみん 「どうしたら眠れるのかはわからないけど… 病院にでもかかってみるかな」
sz — 今日 18:55 「びょういん… 悪夢と不眠の…? あてがあんのか(O O)」 何科…?の、なんだ…?(O O)?あ、画家に精神やられて不眠症なって精神科の世話んなるやつ多いな…精神科…?
4949cry — 今日 19:00 「精神科だろうな。もしくは内科か心療内科か…」
sz — 今日 19:01 「俺は悪夢はそんなに見ねえけど…眠れねえんなら俺も病院行ったらなんかチリョウ…されんのか?(O O)」 俺も行ったほうがいいのか…??? 「……真澄に抱かれたら100パー眠れる…」 「しかもなんか…すげえ心地よく…すげえたくさん、一生ぶん寝たいだけ寝たかもってくらい そんで起きたら体軽くて動かしやすくてどこも痛くも苦しくもしんどくもなくて、気分も良い」
4949cry — 今日 19:06 「一緒にいくか」病院「…毎日抱いたら内臓に負担かかるだろ。ごめんな」ちゅ
sz — 今日 19:08 ちゅってされてくすぐったそうに目細めた…「謝るとこじゃねえよ…」 「一緒に行こう」
4949cry — 今日 19:11 おお なんか 進ん���感…!
sz — 今日 19:13 進んだはずだぞおおお
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191219 猫の帰宅
約三週間、渡辺さんが台湾に行くというので飼い猫を預かっていた。今日の昼に迎えに来るのでやっと飼い主の元へ帰宅。渡辺さんは学部生の時の友人で、わしは今までも友人はいたが、渡辺さんほど色々な話をした友人はいない。量的にも、平井の10倍、牧君の50倍はしゃべっていると思う。でも卒業してからは1年に一回ぐらい何かの用で会うぐらいだ。
笠井潔の矢吹駆シリーズというパリを舞台にした長大な推理小説がある。主人公は警視の一人娘の強気で美人なパリジェンヌで、ナディアというなまえ。矢吹駆は、現象学の論理で難事件を解決する謎の日本人青年で、ナディアは事件では相棒役である。わしは渡辺さんに対し、ナディアが駆に対して抱く感情(から恋愛感情を抜いたような感情)をずっと持っていた。渡辺さんは駆のような張り詰めたお人柄ではない���…なんかとこしえのはかりしれなさへの尊敬&張り合い…みたいな…。ま、それがどういう感じかを知りたければ読んでみてちょうだい。
猫を預かってくれまいかと言われた時、え…やだ…と思ったが、なぜかいいよと言ってしまった。そもそもわしは動物に全く慣れていないのだ。人間が犬や猫を抱いている写真や映像を見るたびに、膝の上からどかしたらそこに糞や尿をされてるんじゃないか…?と思ってキモ~いと思っていた。膝は最悪だが家の床でも最悪。たたみとか絨毯だったらもっと最悪。と渡辺さんに言ったら、そういうことは滅多にないらしい(動物トイレというものがあって、そこでするような習性がある)。しかしとにかく、今までにない状況への好奇心もあって、11月26日にうちに猫が来ることになった。
基本的には案じていたほど大したことはなかったので、普段はほとんどほっといていた。でも最初の数日のおとなしさが消えてゆくにしたがい、うざ…と思ったこともあった。夜わしが寝る前にやたらと元気になり、机に乗ってものをいじろうとしたり、壁紙をひっかいたり、というようなことである。
はじめは机の手前にスチレンボードを立てかけ、それを椅子や重いもので抑えて防猫壁を作っていた。あと仕事スペースと台所方面を仕切る戸も自力で開けられると分かったのでそこにも防猫壁を作った。さらにボードをガムテープで貼り合わせ、約1.5畳×高さ約2mの幽閉スペースを作り、夜はそこにトイレと一緒に入れてみたりした。(うちには「鳥公園のアタマの中展」で使ったB1サイズのスチレンボードが10枚近くとってあるのだ)。しかし猫がどんどん活発化し、ボードを倒して深夜に大きな音を立てたり、無限に戸をガリガリしたり、無限に幽閉所で鳴きながらジャンプしまくったりしてわしを寝させなかった。明け方に、呆然としながらやっぱ猫用の宿屋みたいなとこ探してそこにブチ込むか…と思ったりもした。
しかしまあ朝になると寝て大人しくなるのでまあいっかと思って警戒を解いて日々仕事をしていた。そしてしばらくして、猫に何かをさせないようにすることは無理だと気づいた。ここに乗らせない、入らせない、騒がせない、というような施策は何もうまくいかない。それより机の上を(片付けはしなくとも)猫がその上に乗って歩いたりしても平気な感じにしとけば別にいいのである。我を忘れるほどひも類をいじるのが好きなようなので、机の上のケーブル類を本や書類の下に隠しとけばよい。本や書類の上を歩くのは別に構わないのだから…。壁は搔きむしらぬようボードで保護すればよい。そうしたらまあ、前ほど気をもむこともなく、基本的に猫を無視していられる時間が増えた。
わしはとにかく暴れるものや騒がしいものが嫌いなのだ。人間でも動物でも。大人しくしておけば後で片付ける必要もないのになぜわざわざビールを掛けあい、Qフロントの前で騒ぎ、棚の上に乗ってものを落とす?と思う。ちなみにこの性質ははっきりと父方の祖母ラインから受け継いだものだと思う。祖母は庭に野良猫が来た時にすぐ石を投げられるようにあらかじめ縁側に並べていたほど(とんでもない老婆…)。父は映画で激情した主人公が皿割りまくったり部屋にあるものを滅茶苦茶にするシーンを見るだけでいつも嫌そうにしていた。わしも、猫が騒いでいるときは、決してわしは猫のことを好きではなかった。知能の低く憎たらしい薄汚い獣よ…と思っていた。
でも大人しくしている時の猫はかわいい。おとなしい時というのは寝ている時か眠い時だ。日中わしが机で仕事をしている時、振り返ると後ろのベッドの上で寝ているかまどろんでいる。体を丸めてホットクのように平べったくなり、そこだけ羽毛布団がへこんでいるが、その沈み込み具合から大した体重もないことがわかる。そういうのを見ると、猫がいるというより、毛皮がポチャッと置かれてあるという感じで、無性にかわいいと思った。わしは赤ん坊も、顔やしぐさをアップで撮るより、部屋で寝て静かにしているところを外からドアを少し開けて撮った写真をなぜかかわいく感じるが、小さくておとなしいというのが条件なのだろうか。そしてそっとトイレや台所に行って戻ってくると、起きて心配そうにこちらを見ている。そういうところもかわいいと思った。
そしてわしが寝ようとして布団に入り本を読んだり携帯を見ていると、適当にひとしきり部屋を駆け回ったあとベッドに乗ってきて丸くなった。しばらくして布団を持ち上げるとさっと中に入り、いつもわしの腕に顎を乗せて寝ていた。またずっと机で仕事をする機会があると、そのときは机の上を右から左へ何度か行き来したのち(邪魔…)ひざへ降りてきて膝で寝てることもよくあった。これはまあ膝に乗って寝ていること自体はかわいいが、また起こすと厄介なので立ち上がれず迷惑でもあり、僅差で迷惑の勝ちという感じ。
最後の数日は、かわいさで憎しみの記憶が部分的に洗い流されたというか…厄介なことは無限にいろいろしてはくるが、そういうことのいくらかは(全てではない)なんとなく思い出せないどうでもいい感じになった。なんというか、かわいいとはこういうことね…というのが少しわかった気がする。
もう一つ猫との生活でわしが実感したのは、わしはむしろ自分が猫のように自由に生きたいのだということ、そして今までそのように暮らしていたということだ(去勢されて家から出されずに暮らす猫が自由かというと微妙だが…)。もちろん成獣の猫一匹程度なら、他���(他猫?)をケアしつつの生活はそこまで大したことではない。しかしあまりにも今までの自分の生活は自由だった。全人類の中で世界上位1%に入る自由さだと思う。
育児も介護もせず、ナプキンやタンポンを準備しておく必要もなく、定期的なインスリン注射・人工透析・ストーマのパウチ交換などの必要もない。借金もないので返済もないし、仕送りもしてない。実家も口うるさくなく、自分に特別な意向を持っている恋人もいない。政党・会社・大学・宗教ほかあらゆる共同体に属してない。この自由がいつまで続くかは分からないが、想像できるとしたら両親が要介護になるか、自分がある日倒れて要介護になるか、悪霊に取り憑かれて霊障に悩まされるか(突然のスピ)、ストーカーが現れて弁護士が必要になるか…ということだろうか。今のところその予感もなく、そして気構えもない。その時が来たらどうにかするしかないよね〜としか思わず、正直そんな風に思ってることにも後ろめたさもない。もちろんこの自由には失業保険や労災がないデメリットもあり、なにより孤独である。でも孤独が自分には必要だし、それが自由の条件でさえあると思う。つまり自由すぎて気づかなかったが、わしは自由と孤独を愛していたのだと思った。ナディアは「哲学者の密室」でこんなことを言っている。
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音楽家にとってピアノは、たんなる道具ではない。ベートーヴェンにとって存在の中核をなしている、作曲や演奏など音楽という存在可能性に至る通路なのだ。聴覚にしてもおなじことだろう。日常的にあたえられる無数の存在可能性は、音楽家の場合には音楽であるような、存在の中心的な可能性によって豊かに意味づけられている。
なぜそうなるのだろう。たぶん、ベートヴェンが音楽を欲し、それを愛していたからだ。わたしには、そうとしかいいようのない気がする。一杯のコニャックを楽しむこと。流行の服を着て街を歩くこと。自動車道路をスポーツカーで疾走すること。愛の対象は無限にありうるだろうが、事物や他者への気づかいを支えていること、それらを色づけ、ときめかせていることは疑いえない。
しかしながら人間は、だれでも、絶対にかけがえないと感じてしまうものをもつ。それが人間の中心的な存在可能性であり、そこにおいて愛は、もっとも濃密なものとして生きられ、成就されるのだろう。音楽家にはご馳走も新しい服も、演奏や作曲とは引換になりえないものだ。普通は趣味と呼ばれたり、あるいは快楽と特徴づけられたりする無数の小さな愛は、かけがえのないものへの愛を中心として配置され、またそれに包摂されてのみ存在している。
どのようにありうることが、自分の生にとって中心的であるのか。なにが、かけがえないものであるのか。
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ナディアにとってはそれは駆なのだと強く自覚してこの小説は終わるが、わしにとってはそれは、自由で孤独(だからこそ可能)な仕事をする生活なのだと思う。意識的にそうしたわけではないが、それがわしが家と別に通勤する仕事場を持たず、オフィスのシェアもせず、就職もせず、エージェントもいない理由なのだと思う。今まで自由のために戦うということがどういうことか正直分かってなかったが、この自由をわけもなく妨害されるような目に誰か友人が遭っているとしたらそりゃ瞋ることだろうと思った。
ところで、望君がいいと言っていたので(みんな言ってるか)「Marriage Story」を見たら、こんな歌が歌われていた。
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『フォーゴトン・レルム探訪』カード・プレビュー④
6/24に公開された『フォーゴトン・レルム探訪』の新カードについて、元ネタなどを解説していく。
ダンジョン
ダンジョンズ&ドラゴンズの名の通り、ダンジョン(迷宮)はこのゲームの非常に大事な要素だ。暗くかび臭いダンジョンを探索して多くの怪物を打ち倒し山のような財宝を得ることは、冒険者にとって至上の喜びとなるだろう。
ダンジョンカードは、そんな冒険者が挑むダンジョンを表している。詳しいルールは公式サイトの解説を読んでもらうとして、カードの解説をしていこう。
《ファンデルヴァーの失われた鉱山》
お馴染みD&D第5版のスターターに収録されたキャンペーン・シナリオが元ネタだ。もう遊び終わったり、2周以上している冒険者も多いのではないだろうか。
スターターセットは版元品切れ中なので、遊んでみたい人は早めに手に入れるようにしよう。
《魂を喰らう墓》
フォーゴトン・レルムの南にある大陸チャルトを舞台にしたアドベンチャー・シナリオが『魂を喰らう墓』だ。ダンジョンはシナリオに登場する迷宮そのもので、邪悪な神の被造物であるアトロパルも当然登場する。シナリオのネタバレじゃないかって? 気になる冒険者はぜひシナリオを最後まで進めてみて欲しい。
《狂える魔道士の迷宮》
『ウォーターディープ:狂える魔道士の迷宮』は大都市ウォ���ターディープから始まる高レベル向け大長編ダンジョン・アドベンチャーだ。別のシナリオ集『ドラゴン金貨を追え』から繋げて遊ぶとレベル的にはちょうどいい。冒険者の最高レベルまで到達するメガ・ダンジョンなだけあって、カードのダンジョンも部屋数が多いのが面白い。
クリーチャー
《無私のパラディン、ナダール》
実はあんまり情報がないナダール君。彼の種族はドラゴンボーンという、竜の血族である。過去の版でミニチュアがあったという情報をいただいたので、おそらくサンプルキャラクターの類がカード化されたものではないだろうか。ダンジョンを踏破することで周囲をパワーアップさせるあたりがパラディンらしい。
ダンジョンを踏破することが能力の条件になっているのは、かつてのレベルアップ能力の変形だろう。なるべく部屋数の少ないダンジョンを踏破して早めに条件を達成したいところだ。
《近道探し》
ダンジョンを進めてくれるローグ。コモンらしいシンプルな能力だが、絨毯の下の隠し扉を発見したうえで防御にも回れるナイスな性能だ。しかし、D&Dでローグと絨毯というと映画「ダンジョン&ドラゴン」のアイツを思い出すのは僕だけではないはずだ…。
《グルーム・ストーカー》
グルーム・ストーカーは「ザナサーの百科全書」に掲載されたレンジャーのサブクラスで、レベルがあがるとミスした攻撃を振りなおしたり、相手の攻撃に割り込んで攻撃したりと武技の素早さが特徴になってくる。ダンジョンを乗り越えてレベルアップしたレンジャーが二段攻撃を持つことで、彼の卓越した剣技が表現されているというわけだ。
プレインズウォーカー
《Ellywick Tumblestrum》
エリーウィックはD&D3版時代のサンプルキャラクターであるノームのバード(クレリックだったりもするらしい)。彼女がなぜプレインズウォーカーであるかについては、おそらくサンプルキャラクターとしてプレイヤーによって様々な次元を冒険するからだろう。
冒険者らしいダンジョンを進む能力と味方のクリーチャーを探す能力、バードとしての周囲を強化する能力を持っており、冒険者デッキにぜひ入れたい一枚だ。
土地
《進化する未開地》
これは既存のカードのイラスト違いだが、クラシックD&Dのモジュール風の特殊イラストになっている。昔からのD&Dファンにとって、これは文句なしに素晴らしいデザインだ。ぜひ英語日本語ともにコレクションしたい。
その他
そして、そのほか名前やイラストだけ公開されたものもある。

《Ancient Red Dragon》
間違いなくD&Dの顔だ。願わくばクラシックD&D赤箱の表紙そのままで登場してほしい。

《Icingdeath, Frost Tyrant》
ドリッズト&ウルフガーと戦った恐るべきホワイトドラゴン「アイシングデス」が登場する。マローのblogでほのめかされた「死亡時に装備品を生成するクリーチャー」はこいつと名刀「アイシングデス」のことではないだろうか。
《Iymrith, Desert Doom》
イームリスは未訳のシナリオ集「Storm king's Thunder」に登場する女性のブルードラゴンである。気まぐれな性格で、ガーゴイルを伴って魔術を収集していたということで、呪文を回収したりサーチしたりする能力が期待できそうだ。
《Ebondeath, Dracolich》
ドラゴンのリッチであるエボンデスはレルム西方の死者の沼地を支配していたドラゴンで、神と取引をしてリッチ化し、カルトを率いていたらしい。マジックアリーナではペットとしてゲーム中に表示できるちょっとかわいいマスコットとしても登場する。
《Inferno of the Star Mounts》
エインシェント・レッドドラゴンであるインフェルノは、火の魔法を修得したレッドドラゴンであり、ソードコーストの星山脈に隠れ住んでいる。それが山々に所有している金銀財宝はざっと金貨一千万枚に相当すると言われている。
《Old Gnawbone》
このエインシェント・グリーンドラゴンは人間やエルフの女性に変化して人間社会の中に溶け込み、犯罪集団を操り智謀策略を巡らすことに熱心だったようだ。Forgotten realms wikiによると、彼女もまた未訳のアンドベンチャー「Storm king's Thnder」に記載があるとのこと。
おまけ
アートカード
セットブースターに封入されるイラストカードの裏面には、D&D第5版のクリーチャーデータが記載されるようだ。セッションの際に使いやすいことこの上ないので、こちらも全種揃えたい。
ではまた次のレビューで。
#dungeons&dragons#forgotten realm#フォーゴトン・レルム#マジック#マジック・ザ・ギャザリング#magic the gathering#adventure in the forgotten realms
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『とあるねじれたせかいのものがたり』
一
歪んでる、それが正しい、あの子の世界。
その女の子は、一面が銀色に輝く雪原のはじっこに住んでいる。剛毛の赤毛に、とろりと溶けるような垂れた黒色の目に短く切り揃えられたような睫毛。同年代の子供で背の順に並べば一番前を陣取るようなこじんまりとした背丈。決して美人とは言えないその女の子は、毎日大きな書庫の隅に置かれた机で本を読んでいた。書庫は壁全体に張り付いているような巨大な本棚をいくつも揃えている。無論壁だけでなく部屋全体に美しく並べられ、その一つ一つが様々な書物でびっしりと埋まっている。思わず前のめりになってしまう胸が躍る冒険譚も、大人でも読むのに苦労するだろう分厚い辞書のような物語も、どこかに住む見たことのない生物が全頁に描かれている図鑑も、幼子も心をときめかせるカラフルな絵本も、彼女の望む全ての本が揃っていた。そこで年がら年中四六時中読書に耽っていた。 女の子はたった一人でその家に住んでいた。丸太で頑丈に造られたその家は、人間だって簡単に吹き飛ばされてしまいそうな猛烈な吹雪にあてられてもびくともしない。数か所に設けられた窓も三重構造になっているから、寒さにも風にも強い。ただ、換気をしようとするときに不便なだけ。 お腹が空いたら彼女は台所へ向かう。冷蔵庫の中身は誰かがこっそり補充しているかのように常に満杯だった。それを女の子は不思議に思ったことはない。今日もまっしろで雪玉みたいな卵を二つ。慣れた手つきで殻を割って、ボウルに落とされるは二つの黄色いまる。いくつかの調味料を目分量で加えてかき混ぜる。これで準備は万端。長方形のフライパンにフライ返しと取り皿を乗せて右手に、ボウルを左手に。小さな両手でたくさんの荷物を引きつれて、煌々と燃える居間の暖炉へと。煉瓦で囲まれた大きな暖炉にフライパンを翳して温めたら、卵を流す。じゅう、と耳に心地良い音。静寂を掻き分けるようなこの音が女の子は好きだった。火力が強いために加減が難しいが、上手く溶き卵をひっくり返していく。慣れた手つきで、��っという間にふっくらふんわり卵焼きのできあがり。まだ熱い間にいただきます。暖炉の前のテーブルに卵焼きと箸を並べて、彼女は手を合わせる。それから箸で卵焼きを裂く。その隙間から、冬に吐きだす白い息のような湯気がもくもくもくと溢れだしてきて、女の子はにんまり笑みを浮かべる。美しい断面図、黄色の層。一口サイズにして口の中に放り込む。控えめな味付けだけど、甘い卵の味がしっかりと口の中いっぱいに染み渡っていった。はふはふと熱さに口の中で卵焼きを転がしながら、それでも我慢できなくて噛んでいく。そのたびに味が広がっていく。卵焼きは彼女が大好きで大得意な料理だった。 満たされたらまた書庫へと戻る。書庫は居間よりも何倍も大きくて、まるで家に図書館が併設されているかのようだった。部屋には真っ赤な絨毯が敷かれ、女の子の平凡な容姿とは裏腹の、どこか高級な気風を兼ね備えている。木製の本棚に並べられた本は乱雑で、高さもまったく揃っていない。それを彼女は気にしなかった。むしろそのざわめいているような雰囲気が彼女にとっては心地良かった。まるで、一人きりじゃないみたいだったから。一冊一冊無造作に読み進めている感覚がたまらなく愛おしかったから。 食事をとる前に読了して机に置きっぱなしにしていた本を手に取り、適当な隙間に押し込める。こうしてまた仲間の元に戻っていく。溢れんばかりの物語の渦に引き込まれて、一つになる。おかえり、ただいま。そんな言葉が聞こえてきそうだった。さよなら、またね。女の子は愛しげに細い指で背表紙をなぞる。心を動かす物語を、ありがとう。 次に読む本を決めていないのが女の子の特徴だ。棚いっぱいに広がっている背表紙の森を眺めて、呼ばれるように一冊の本に指をかける。今日もそうして一つの本棚の前に立ち、黒い瞳で無数の題名を受け止めていく。と、視線の動きが止まる。すぐに書庫の大きな扉の傍まで戻ると、自分の何倍もの背丈のハシゴを手に取った。幼い身体に対してあまりに長く、運びづらい。本棚に這わせるようにゆっくりゆっくり連れて行くと、目的の場所に立てかけた。ハシゴは天井まで突き刺さりそうな高さだった。実際、本棚は丁度天井まで届いているため、そのくらいの高さが無いと意味が無い。女の子はハシゴが安定していることを何度も確認すると、意を決して登っていく。一段一段、丁寧に手をかけ、足をかけていく。いくつもの本を横目にひたすら上へと向かっていき、一番上の段までやってくる。おはよう、よろしくね。手を伸ばして、蜂蜜色のハードカバーの一冊を取り出す。いってきます、いってらっしゃい。そうして森の中で一輪の花を摘む。脇に挟み込むと、行きよりも慎重に降りていく。幸運なことに未だ落ちたことは一度も無いが、足を滑らせれば、ハシゴがバランスを崩せば、小さな命の灯など一瞬で吹き飛ばされてしまうのだろう。それが女の子はどうしようもなく怖かった。油断すると足を掬われる。本が教えてくれたことだ。石橋を叩いて渡るように緊張を保っていくと、気付いたら床に足がついていた。やれやれ、今日も無事に乗り越えられたようだ。女の子は本を両腕で包み込みながら安堵の息をついた。 ハシゴを定位置に戻し、すぐに机へと向かう。窓の向こう側から差し込んでくる白い光を明かりにして、本を前にする。『麦』という余計なものを全て削ぎ取ったような端的な題名。本を開くと、古びた一ページ目が顔を出す。あなたはどんなものをわたしに与えてくれるの、楽しみにしているね。 文字の一つ一つを撫でるように読み進めていく。紙を捲る乾いた音が、大聖堂で楽器を鳴らすように書庫に響く。外界の音は厳重なガラス戸が一寸の漏れなく遮断しているため、その音だけが唯一この家に残された光のようだった。他には何も無い、無音の世界。女の子はそれに寂しさを覚えない。別の世界に心を委ねているから、気にも留めない。 小さな窓の外からの明かりは何時の間にかおとなしくなっていき、文字が読めないほどに暗くなってきた頃に息を吹き返したかのように顔を上げた。架空の世界から現実の世界へと戻ってきた彼女は、余韻に脳が痺れたまま徐に立ち上がる。『麦』に薄い木片の栞を挟み込んで閉じると、机の上に残して彼女は書庫を後にする。 書庫と居間は短く真っ直ぐとした廊下で繋がれている。この��にある部屋は、ベッドが置かれただけの寝室と、台所を取り込んだ居間と、書庫のたった三つだけだった。それだけで彼女には十分だった。 居間の暖炉の前の椅子に腰かけると、女の子は一日を戦いきった後のように長い溜息をついた。息を吐くと同時に、空腹感も増幅してくる。また卵焼きでも作ろうか、それとも別のものを作るかと思案する。妙な倦怠感が全身に覆いかぶさって、なされるがままに彼女はテーブルに伏せる。なんだか、とても疲れていた。『麦』は一人の女の子の生き様を描いている物語なのだが、まるで筆者が直接書いた自伝のような生々しさがあった。他の本とは何か違う。うまく言葉で形容できないのが彼女は非常にもどかしかったのだが、とにかく違う、そんな引力のある書物だった。だからか、いつもよりも余計に力を吸い取られていた。 疲労の海に抵抗なく浸かっていると、彼女はいつの間にか目を閉じ、夢の世界へと旅立ってしまっていた。
二
女の子は、聞き覚えの無い音に目を覚ました。こんこん、と何かを叩いている音だ。硬いその音は小さなものだったが、沈黙を当然とする家を揺らすように響いている。眠気まなこを擦りつつ、女の子は震源を探ろうと周りを見渡す。が、いつも通り暖炉で火が燃えているだけ。部屋の中に特に異変は無い。不思議に思いながら椅子から立ち上がって、耳からの情報を分析して少しでも音が大きく感じる方向へと歩いていく。そうすると彼女は一度として開けたことのない形ばかりの外への扉の前に辿り着いていた。明らかにここから――正しく言えばこのすぐ外から音は発信されている。彼女は木の重い扉の取っ手をとり、力いっぱい引く。びゅおう、と猛烈な風が部屋に吹き込んできて、まだ夢の中にいるような浮遊感が走り去っていった。細めた視界に入ったのは、扉の向こうにいたのは、彼女が初めて見る、彼女によく似た形をした生物だった。 「え……」 一体いつ以来、彼女は声帯をこれだけ震わせたのだろう。小さな感嘆符が零れ落ちて、目の前にいる人物に穴を開けんとしているかのように見上げていた。自分よりずっと大きな体つき。がっしりと肩が広く、闇夜から生まれたかのような真っ黒に染まった服を身に纏っている。男のひとだ、と彼女ははっきりと断言した。何度か見たことがある――それは本が由来だった。本の挿絵で見たような男性像が目の前にリアルな姿として存在している。 男性は女の子より一回り歳を取ったような、しかしまだ活力が十分に身に余っているそんな若者だった。扉が開けられたことに驚いたのか目を見開きながら、雪崩れ込むように女の子の横を擦り抜け、居間へと突入していった。というよりも、倒れ込んでいった。女の子は息を呑む。本を落とすよりもずっと重量感のある音が床を揺らす。女の子は顔を硬直させながら、恐る恐る目の前にいる若者の目を閉じた顔に指先で触れた。まるで雪のような冷たさに指が痙攣する。と、若者の眉間がぐっと歪む。些細な変化にも驚いて女の子は仰け反るが、若者には身体を動かす力も殆ど残されていないらしい。 とりあえず、扉を締めなければ家の中にまで雪が積もってきてしまいそうだった。女の子は若者の足を無理矢理引き摺って家の中に押し込めると、扉を閉める。ずっと使われておらず形式上のものであった外と中の境界線は、錆び付いたように重い。 若者は今にも凍え死んでしまいそうなことは、幼い女の子でもすぐに理解できた。すぐに暖炉の前に連れていて、温めてあげなければ。女の子は小さな身体で若者の体を引こうとするが、びくともしない。彼女が考えていたより人間の身体というのは重い。それでも、何もしないわけにはいかない。彼女はまず吹雪に晒されてしまい彼にかかった雪を叩き落とし、近くにあったタオルで濡れた部分をゆっくりと拭いていく。死人のように青白い顔をしているが、まだ息はしている。彼女は何度も何度も彼の顔を優しく拭いた。目を覚ますのを、じっと待っていた。 その甲斐あってか、しばらくしてから彼の目が薄らと姿を現す。女の子は息を呑み、身を乗り出した。自分と同じ黒い瞳をしている。改めて見ると、逞しいというよりは、優しくおっとりとした印象を持たせる。けれど鼻がぴんと美しいラインを描いており、整っている顔つきだった。若者は現状を理解できず、相変わらず生気が抜けた表情で固まっていた。 女の子は一度その場を離れ、台所へと向かう。慣れた手つきでティーポットとティー��ップ、それからハーブを一枚用意する。小鍋に水を注ぐと、暖炉の前へと移動しその火を利用して沸騰を待つ。その間積極的に後ろを振り返り、若者の様子を伺っていた。若者は一��は目を覚ましたものの、凍り付いたような体を動かすことができないでいた。珍しいものを見る目で眺めているうちに、手元のお湯は沸騰する。慌てて台所へと戻ると、ポットの中にハーブを落とし、湯を注ぐ。ハーブの香りが彼女の鼻腔を刺激し、充満していく。心が穏やかになる爽やかな香りだ。ハーブの成分が浸透するのを待つ間に、女の子は若者の傍に戻る。 「……ごめん……ありがとう……」 若者は女の子を視界にいれるや否や、そう彼女に声をかけた。女の子は肩を跳ねさせ、直立する。相手は人間なのだ、喋るのは当然だ。そうと解っていても、胸がどきどきとして、一気に緊張してくる。 凍ったような体を無理に動かそうとする若者を見て我に返った女の子は、急いでその傍に寄る。彼女のか弱い体で若者を支えられようもないが、その健気さに若者は微笑みを取り戻した。力が湧いてきたように、体を引き摺るようにして暖炉のもとへと向かう。ゆっくりゆっくり、時間をかけて、歯をがちがちと鳴らしながら息を切らしながら体の痛みに耐え、炎の前に辿り着いた。そこでようやく、若者は安堵の息をついた。同時に女の子も胸を撫で下ろす。 ふと、ハーブティーのことを思い出し、一目散に女の子は台所に入る。ティーポットからハーブを取り出すと、ティーカップと共に暖炉の前へ戻る。まさか、二つのティーカップを同時に使うときがやってこようとは夢にも思わなかった。床にカップを並べると、ゆっくりとハーブティーを注いでいく。白銀の湯気が空気に溶けていき、同時に昇ってくるハーブの香りに若者の固まった頬は綻んだ。手をついてそこに体重をかけながら上半身を起き上がらせ、彼女からカップが渡されるのを待つ。 女の子は恐る恐るハーブティーを彼に差し出す。 「ありがとう」 先程よりもはっきりとした口調で律儀に若者は対応し、震える両手でティーカップを包み込む。掌から感じられる温もりは癒しそのもの。水面に映る若者の顔は揺れている。端に唇をつけ、少しずつ喉に流し込んでいく。冷えた歯に熱々の紅茶は痛みを呼び起こしたが、すぐにそれは打ち消される。さっぱりとした味わいだった。濃さもちょうどよく、飲みやすい。芯まで冷え込んだ身体に心地良く熱が浸透していくのを感じる。ふと視線を女の子にやると、彼女は黒い目を大きく開けて若者を凝視していた。何故そんなに見てくるのか不思議だったが、やがて気付いたように若者は口を開く。 「……とても、美味しい。とっても」 女の子はぱっと表情を明るくさせた。年相応の愛くるしい笑顔に、若者の心も和らぐ。 それから女の子は思いついたように立ち上がり、台所に戻る。不思議そうに取り残された若者は、きょろきょろと居間の様子を見回す。木造のあたたかい色合いの壁に床。部屋の中心に赤い絨毯が敷かれ、その上にはテーブルに椅子が置かれている。そして、彼の目の前にある暖炉。それだけしかそこには無かった。随分と広いのに、場所を持て余しているようだった。やがて、女の子が戻ってきたのに気が付く。彼女は卵焼きを作る体勢でいた。若者には調理用具の意味が分からず、不審気に眉を顰める。しかし次の瞬間、目の前で繰り広げられる料理に驚嘆せざるを得なかった。自分よりも一回りも小さい女の子が、いとも簡単に美しい卵焼きを作り上げていく。あっという間だった。黄金の輝きと出来たての湯気を放つそれは、若者の萎えていた食欲を刺激した。女の子は箸で一口分に切ると、彼の口の前に持っていった。それは予想だにしていなかった若者だったが、生憎彼の手は箸を器用に扱えるほど回復していない。幼い子供に「あーん」をされるなんて恥ずかしい以外の何物でもなかったが、相手の輝く瞳を見ていては断ることもできない。仕方なく口を開けると、卵焼きが放り込まれる。紅茶のおかげで温もっている口内に、とろりと染み出る素材の甘さ。調味の加減も控えめながら、卵本来の味を引き立てているようだった。たかが卵焼き、されど卵焼き。特に体が弱った彼にとってはどんな高級料理よりも絶品だと断言できた。 「美味しい!」 我慢できず、嬉しそうな声が彼から飛び出していた。一気に元気が湧いてきたかのようだった。 女の子は喜び、次々と彼の口の大きさに合うよう卵焼きを切っていく。 「君は、小さいのにしっかりしているね……お母さんはいないの?」 ようやく思考がはっきりとしてきたのだろう、若者はそう尋ねる。 対する女の子はぽかんと目を丸くする。お母さん、という言葉を噛み砕き、本で読んできた母親像を思い出す。子供を産み、育てる女性。気付いた頃には――最初から一人だった女の子には関係の無い存在だった。結果、彼女は首を横に振る。 「お父さんは?」 彼女の行動は変わらない。 「一人でこんなところに住んでいるの?」 そこでようやく彼女は大きく頷いた。すごいなあ、と感嘆の声をあげる。女の子にとっては当然のことであったから、何をそんなに驚かれるのかよくわからない。 「……俺は柊っていうんだ。外の吹雪に巻き込まれちゃってね……本当に助かったよ、君が出てくれて」 ひいらぎ。女の子は心の中で繰り返した。文字はきっと、柊。木へんに、冬。ひいらぎ。女の子はこの言葉を何度か本で見てきたが、微風が流れるような穏やかな音の響きが快くて、好きな言葉の一つだった。 同時に、優しい声だな、と女の子は思った。低くてしっかりとしているのだけど、鼓膜を撫でるような綿みたいに優しい声だ。きっと、ずっと聴いていても飽きないのだろう。子守唄でも歌われたら、どんなに目が覚めていてもすぐに眠ることができそうだ。それか、聴いていようと夢中になって無理矢理起きているかの、どっちか。 「君の名前は?」 不意に問われて、女の子は思考を停止させる。彼女には名前というものが存在しない。一人で生活し他人とまったく出会うことのない彼女には、必要無いものである。けれど、名乗ったら、名乗り返す。物語ではよくあるパターンだ。このタイミングで言わないのもおかしいだろう。あまり、変な子だと思われたくない。どうしようと考え始めて、最初に出てきた単語をいつのまにか口に出していた。 「……む、ぎ」 「麦?」 拙い声を彼は聞き取ってくれたらしい。女の子は――麦は、大きく縦に頷いた。 麦かあ、麦。いいね、麦かあ。何が嬉しいのか、柊は頬を綻ばせた。本当は先程まで読んでいた本のタイトルから引用しただけの偽りの名前だが、そうやって何度も繰り返されると何故かとても唇のあたりがむず痒くなる。 そこで沈黙が訪れる。柊はハーブティーを口にし、麦は彼の口が落ち着いた頃に卵焼きを差し出した。僅かずつではあるが、彼の胃は満たされていく。幸せを具現化したようなその味に、逐一柊は美味しいと感想を述べた。そのたびに麦は嬉しくなって、他にも御馳走してあげたい気持ちに駆られる。けれどそれ以上に、麦は今、この瞬間を柊と過ごしていたいと思うのだった。初めて出会った人間。心優しい大人。読書からは感じたことのない楽しさに胸が躍っていた。 麦はうまく喋れない子だと柊はすぐに理解した。だから会話といっても基本的に彼から喋り、麦はそれに身振り手振りで返すといった風である。言葉を発するのは不得意だけど、しかし麦は読書で培ってきたおかげなのか頭がいい。柊の言葉をほとんど理解することができたため、不器用なようで、しかし円滑にコミュニケーションがとることができたのである。 「卵焼き、好きなの?」 こくりと頷く。 「俺もまあ、好きだけど、普通って感じかな。でもさ、麦の卵焼きは特別だなあ。俺の母さんが作るものよりずっと美味しいよ」 唇を噛んで、恥ずかしげに顔を俯かせる。 「というか、こんなところに住んでるのによく食材なんて調達できるね。外、かなり雪が積もってるけど」 ふるふると横に振る。 「ん? 雪、得意なの?」 ふるふる。 「んーと……そっか。まあ、どうにかしてるんだよね」 こくり。柊は苦笑を浮かべた。初対面であるおかげでもあるだろうが、無闇に踏み込んでこないのも麦には丁度良かった。 先程の柊の言葉にどう答えたらいいのか、麦には分からない。冷蔵庫に詰め込まれた食材は常に補充されていて、困ることが無い。それが普通だと思っていた。でも、そういえば本の中でも食材を買いに出かけている描写はいくつも見てきた。そういうものなのかもしれない。自分の方が、不思議なのかもしれない。けれど、それを柊に説明しようもない。それに柊はあまり気にしない風にいてくれるから、まあいいや、と流すこ��ができる。 「吹雪、やまないね」 柊は三重に守られた窓の外を見ながら、ぼんやりと呟く。 「今夜中はずっとああなんだろうな」 こくり。 「ごめんね。急に入ってきちゃって」 ふるふる。 「麦は優しい子だな」 ふるふる。 自分よりも、こうして構ってくれる柊の方がずっと優しい。美味しい美味しいと言ってくれる柊の方がずっとずっと優しい。そう言いたかった。 「そこにつけこむようでなんだか悪いんだけど、今夜はここに泊まっていってもいいか?」 こくりこくり、こくり。 勿論です。 力強く何度も頷いた麦に、柊は思わず噴き出した。 「ありがとう。なに、なんか嬉しそうだね」 見透かされたみたいで、麦は隠れるように自分に淹れたハーブティーを口にした。不思議。いつもと同じハーブでいつもと同じくらいの時間だけ浸けたのに、なんだかいつもよりずっと、おいしい。卵焼きはいつの間にか無くなってしまっていた。全部柊がたいらげてくれた。自分の作った料理を誰かが幸せそうにたいらげてくれるのは、こんなにも快いものなんだと麦は知る。 それからもいくつか会話は続いていく。いつもならとっくに夕食を済ませて書庫に戻って読書に耽っている頃だが、麦の頭に読書のことはまるで蝋燭の火が消えてしまったように無くなっていた。夢中になっているといつのまにか時間が過ぎていってしまうのは、読書と同じだった。本が好きなことも、柊に告げた。どんなことが好きか、という問いに対し、ほん、という単語は言いやすいのか、すらりと言うことが出来た。その年で読書家かあ、と柊は笑った。誇らしげな顔で何度も頷く。本当に好きなんだね。その言葉に、強い肯定を示した。どこか誇らしげな顔をしていたのが、柊の瞳に焼き付いた。 本に関する柊からの質問攻めが終わった後、ふと、思い出すように柊は声をあげた。 「そういえば、今日って十月三十一日だっけ」 じゅうがつさんじゅういちにち。何の暗号かと思考を巡らせる。と、思い至る。日付だ。今日という日を定める記号。本の中では時間の動きを明確にするために記しているものもある。麦には日付感覚というものが存在しない。日々同じ時間を同じようにを繰り返すだけなのだ。けれど麦はきっとそうなんだ、今日は十月三十一日なんだと思い込み、彼の言葉を肯定する。そうだよね、うんうん、ああ、でも。柊は顔を顰めた。些細な表情変化にすら、何か悪いことをしただろうかと麦は怯えてしまう。返答が良くなかっただろうか。肯定してはいけなかっただろうか。 柊には麦の動揺が伝わったらしい。 「いやさ、折角のハロウィンだっていうのに、俺お菓子もなんにも持ってないなーって思って、なんか申し訳ないや」 ハロウィン? 麦は光の速さで頭の中の辞書を捲っていく。が、その単語は彼女の聞き知らぬものであった。本でもそんなものを題材にしたものがあっただろうか? 忘れただけだろうか。いくら卓越した読書量を誇る麦でも、読んできた本以上に読んでいない本がまだ途方も無いくらい多いのだから、知らないものがあってもおかしくはない。そう自分に言い聞かせながらも、やはり気になる。 「というか、今回の場合俺が家に訪問してるし、なんか何もかもかっこつかないなあ。うーん情けない大人だ」 柊が何を言っているか、さっぱり解らない。必死に理解しようと脳をフル回転するものの、結果は良くない。白旗だ。お手上げだ。 そんな麦の様子を敏感に察した柊は、首を傾げた。 「ハロウィン。……Trick or treat」 流暢な英語が彼の口から滑るが、彼女は顔をぽかんとさせたままである。今までなんらかの返答をしてきた麦が、初めて見せた「わからない」だった。 「トリックオアトリート。知らないのか?」 「とり……」 「トリック、オア、トリート。お菓子をくれなきゃいたずらするぞ、っていう意味」 麦の表情は相変わらずである。 本当に分かってないんだなあ、と柊は微笑を浮かべる。 「子供は今日、十月三十一日――ハロウィンの夜、一軒一軒家を回って大人にそう言ってお菓子をねだるんだ。愉しいお祭りだよ。子供の持てる小さな鞄いっぱいに美味しいお菓子を詰めるから、その後毎日お菓子を食べられる。やっぱりお菓子って、子供にとっちゃ宝みたいなものでしょ」 麦は頬を紅潮させて、やや興奮気味に頷く。なんだかよく分からないけど、しかしとても魅力的な話だった。あまーいお菓子を貰いに、人々に出会っていく。そしてきっと、後で毎日大切に大切に消費していくのだ。お祭りというその言葉の響きだけでもわくわくさせられる。 「とり、あー……」 麦は頑張って発音しようとするが、理解してもいない単語を放出するのは、彼女にはあまりにも難しい。 「トリック、オア、トリート」 「とり、おあ」 「トリック、オア」 「とりっく、おあ」 「そうそう。トリック、オア、トリート」 「とりっく、おあ、とりーと」 「おおっいけたね! でもごめん俺、お菓子が無いんだよ。いたずら確定だ」 けらけらと笑う柊だったが、麦は慌てて否定する。いたずらなんて、できっこない。根気強く自分のペースに合わせてくれるこの人に、危害なんて与えられるわけがない。麦の必死な様子を見ていると、柊は穢れなき穏やかな気持ちでいられた。 「……もう俺はそんなのをする歳じゃないけど、麦なら余裕だなあ」 しみじみと、水が布に浸透していくような静かな言い方。 淋しそうな表情だな、と麦は思った。きっとこの人は、大人になってしまい、戻れない子供だった時代に恋い焦がれるような思いに晒されているのだ。懐古の思いにとらわれて苦しむ人の物語を、麦はいくつか目にしてきた。この人もきっと、同じなんだ。 「……麦は外にはいかないのか?」 その問いに麦は首を横に振って応える。そっか、と柊は目を俯かせた。 「そっか。それならハロウィンを知らないのも納得かな……でもさ、それって、淋しくはないか?」 少し間を置いて、再び麦は首を横に振った。淋しくはない。いつも彼女の傍には身に余る本がある。本が友達のようなものだったから、飽きることも淋しくなることもない。そういった感情をまったく持ち合わせたことが無かった。 「でもやっぱり、勿体ないよ。こんなとこにたった一人で住んでるなんて、可哀そうだ」 可哀そう? 何が可哀そうだというのだろう。彼女はここでの生活を受け入れ、満足していた。その気持ちは真実そのものである。それなのに柊はなんだか憐れむような目で麦を見つめてくるのだ。ハロウィンを知らない彼女を、他人という存在に疎い彼女を、本に囲まれ幸せである彼女を、可哀そうだと。 「俺さ、今の吹雪が止んだらここを出ていくから、試しでさ、一緒に外に出てみないか?」 誘い。 一瞬だけ、ほんの少しだけ、彼女の心が揺らいだ。彼は、いずれこの家を発つ身。ここに留まってほしいなんて、彼女は言えない。幸せな時間は終わってしまう。それはきっとそう遠くない。でも、行ってほしくない。なら、彼についていくという案はひどく魅力的なように思えた。 その瞬間、脳を突き刺す痛みに顔を歪めた。だめ、と強く叩かれたかのようだった。だめ、ダメ、駄目。そんな声が聞こえてきそうだった。麦はまた首を横に振る。否定。拒絶。行かない。行っちゃいけない。理由は解らないけど、自分はここに居なくちゃいけないから。誰にも教えられていないけど、それは使命であり運命であるかのように麦の中に元来根付いていた。 「……麦?」 優しい声。麦を癒してくれる音。 「大丈夫か、なんだか顔色が急に悪くなったけど」 平気だと返事しようとしたが、秒を追うごとに痛みが酷くなっていくようで、麦は頭を抱え込んだ。頭のはじっこが、熱い。ずきんずきんと痛んで、苦しい。耐えられなくなって、遂に前のめりに倒れ込んだところを、柊の温かくなった身体が難なく受け止めた。なんて力強く頑丈な胸板だろうか。ひ弱で幼い自分の体とはまるで別物だった。麦は彼の大きな腕の中から、恐る恐る彼の顔を覗き込んだ。さっきよりずっと近いところで、柊は変わらぬ笑顔を浮かべていた。 「疲れたんだね。ごめん、変なこと言って。今日はもう休んだ方がいい。寝室はどこ?」 嫌だ、もう少し、話していたい。麦の本音はそうだったが、その欲がはっきりと彼女の心に浮かびあったとたんに、打ち消すように大きな響きが頭を支配する。痛い。やめて。益々苦痛に歪んでいる様子は、柊を戸惑わせる。その顔が、決定打だった。もう終わりだ。困っているのに、我儘は言えない。 麦は項垂れ、暖炉の左奥にある扉を指差した。寝室のある部屋なのだと理解し、柊はぐったりとしている麦をおぶると、彼女の寝室だという部屋へ入る。扉を開くと出窓に置かれた蝋燭が部屋を照らしている。一見あまりにも儚く不十分な光のようだが、この部屋はとても狭く、ベッドしか置かれていない。読書灯としての役割を果たせていれば十分なのだろう。柊は皺無く整えられた布団を捲りあげ、頭痛に苦しむ麦をあまり揺らさないようにゆっくりとベッドに座らせる。頭に手を当てたまま人形のように動かない麦を見て、柊は仕方なさそうに腕を伸ばす。麦はとても、軽い。いとも簡単に持ち上げることができる。背中と足を包み込むように持ち上げて、麦の身体を布団の下へと滑らせる。ようやく横になった麦にふかふかの布団をそうっとかけると、彼女の臆病な顔だけがよく見えた。愛玩動物を扱うのと同じような要領で柔らかい赤毛を骨ばった大きな手で撫でると、麦の表情は不意に綻んだ。 「……ひい、らぎ」 あまりにも拙い声だ。言葉を口にするというその行為自体に慣れていないことがあまりにも分かりやすい。 「ひいらぎ」 彼の名前を呼ぶ。 「ひいらぎ、ひいらぎ」 何度も呼ぶ。 「ひいらぎ、ひいらぎ、……柊」 何度も、何度も呼ぶ。 どうして名前を連呼するのか、それになんの意味があるのか読み取れず、ただ単純に恥ずかしくなって柊は目を逸らす。それは、先程自己紹介をして、柊が何度も彼女の名前を呼んだ時と同じような光景だった。 「ほら、頭痛いんだろ。ゆっくり休んで、明日も本を読むんだろ」 柊は身を乗り出し、出窓にある蝋燭を吹き消す。居間から零れてくる光だけが寝室を照らしているが、麦の視界では一気に柊の顔は逆光で闇に塗りつぶされてしまった。それでもなんとなく感じ取れるのだ。暗闇の中で、彼が穏やかな笑みを浮かべている。彼女の目には鮮明に柊の表情が映っていた。 「おやすみ」 軽くそう声をかけると、柊は麦に背を向ける。居間に足を踏み入れると、音を立てないようにそうっと慎重に扉を閉めていく。光の線がどんどん狭まっていく。完全に消えて無くなってしまうその瞬間まで惜しむように、麦は瞬きもせずに目を凝らし続けていた。
三
柊の足はこの家において一番の面積を占める書庫へと向かっていた。他人の家を詮索するのはよくないと分かっていながらも、明日にでも発つ身だ。その前に、麦の生活の全てだという読書の間を一目見てみたかった。居間から続く廊下を歩くとすぐに突き当りに辿り着く。そこに佇んでいる重��扉を開くと、柊は思わず息を止めた。 点けたままにして放置されていたのか、待ち受けていたように淡い黄金の電灯が照らしている中で、二階分に相当するだろう天井の高さまで伸びた本棚が数十と並べられ、それを余すことなく本が埋め尽くしている。書物が生み出す独特の渇いた匂いで部屋が満ち満ちており、明らかに居間や寝室とは別格のものであると確信した。扉を閉めると、柊は一人穴に突き落とされたような気分にさせられた。圧倒されているのだ。シックな色合いの真っ赤な絨毯は柔らかく、足音はいとも簡単に吸収される。どこか高級感を思わせる厳格な色合いの部屋だが、柊は同時に不気味さも抱える。これだけ大量の書物がどうして周りに何も無い雪原にあるのだろう。いくら一日の大半を読書に費やしているといっても、一生かかっても全てを読破するのは無理ではないだろうか。 柊は棚に並べられた本の群を眺める。高さがまったく揃っていない様子は、整理整頓に関しては麦が無頓着であることをそのまま示している。殆ど物が置かれていない居間や皺のまったく無かったベッドの置いてある寝室を思い返すと、どこかが僅かにずれた不協和音のようだった。何か知っている本でもないものかと探してみるが、彼の知らないタイトルばかりだった。読むのが億劫になりそうな固い雰囲気のものもあり、自分よりずっと小さな麦がこのような本と日々向き合っているのかと思うとただ圧巻されるばかりである。言葉を知らない幼子のように見えていたが、実は途方もない量の知識を溜め込んでいるのではないだろうか。むしろ何故ハロウィンを知らなかったのかが益々疑問である。 ぼんやりとした調子でいると、やがて窓に面した古い机に辿り着いた。机の上には、小さなランプといくつかの辞書、そして栞を挟んでいるところから読みかけであると思われる蜂蜜色のハードカバーの本が一冊、椅子の前に置かれていた。薄らいだ表紙の文字に目をやると、『麦』と書かれていた。彼女と同じ名前の題名だとまず思った。だから彼女は手に取ったのかもしれない。自分の名前と同じ作家はそれだけで何故か親近感が湧いたり、気になったりするのと同じことだ。なかなか可愛らしい人間味のある麦の一面をこっそり垣間見て、まるで夜の学校にでも忍び込んでいるような不思議な緊張と高揚で満たされる。 しかし、そこで柊は気が付いた。この本には著者名が明記されていないのだ。表紙にも、背表紙にも、そして表紙を捲った一ページ目にも無い。当然のように『麦』というその一文字だけが印刷されているだけ。不審に思った柊は、『麦』を手に取ったまま、周囲の本棚にしまってある本を確認する。さすがにハシゴを使って上まで確認しようという勇気は湧いてこなかったが、歩き回ったところ、殆どは著者がはっきりと書いてある。殆どは、だ。片手で数えられるほどだが、『麦』と同じように著者名が載っていない本も存在していた。そしてそれらは決まって蜂蜜色のハードカバーの本であった。そういうシリーズなんだろうかと考えるものの、なんとなく納得がいかない。何故だろう、気味が悪い。得体の知れない空気がこの図書館のような書庫全体に漂っていた。誤魔化そうとしていても拭い切れず鼻につく臭いのよう。 そうして『麦』に視線を落としている時。 唐突に、書庫を照らしていた光が、全て消え去る。 柊はハッと視線を上げた。しかし一点の光も無く真っ黒に塗りつぶされた視界では何も捉えることはできないし理解することもできない。急に奈落の底に連れて行かれたかのようだが、手を伸ばすと傍に本棚があり、場所は変わっていないことを確認する。 が。 ふわり、と、薄いシルクの布のようなものが、本棚についたその彼の左手に覆いかぶさる。 ぞわりと柊の全身に猛烈な寒気が迸り、反射的に腕を引いた。今のは一体なんだった? 一体自分の身に何が降りかかった? 真っ暗闇の視界では皆目見当がつかず、恐怖が一気に増幅されていった。本棚に触れてはいけないとそれだけは把握し、柊は逃げるようにその場を離れる。方向感覚はまったく正常でないが、立ち止まっていられるほど悠長で鈍感な精神を持ち合わせてはいない。もがくように動き回っていなければ誤魔化せない。とにかくまずは明かりを点けなければ。入ってきた扉は、どこだ。本棚と本棚の間を走り抜けていくと、彼は出入り口ではなく麦の机の前に辿り着いていた。夜中だが、窓から零れてくるのは雪の光か、ほんの僅かだが青白い光が注がれていた。時を経て暗順応が機能してきたこともあり、闇の中でも視界が安定してくる。彼は焦燥に肩を激しく上下したまま、ゆっくりとその場で振り向いた。 身体が固まる。 塗りつぶされた暗闇の中で、更に濃い影が、黒い本棚から染み出るように蠢いている。ふわりふわり、海月のように、微風に揺れるカーテンのように、生きているように、湧き出ている。異形が、異様な風景を作り上げ、彼を闇の底へと誘う。それが一体なんなのか、柊にはまったく理解することができない。動揺に眼が眩んでいるが、彼の頭に響く危険信号が戻ってはいけないと叫んでいる。単純な生理的拒絶。あれは、触れてはいけない。そう確信した瞬間、足が竦み、いよいよ彼は身動きがとれなくなってしまった。 と、さわ、と何かが鼓膜を擦る。耳元で吐息を吹きかけられたようなこそばゆさに、神経が極限まで逆立っていた柊の体は反射的に仰け反った。あの影がすぐ近くまで音も立てずに忍び寄ったのかと危惧したが、少なくとも自分の手の届く範囲には見当たらない。なら、なんだったのか。柊は耳を守るように手を翳して、震える息で耳をすました。戸の隙間からそっと暗室を窺うように、心の準備をしながら感覚をとぎらせてみる。さわ、さわ。さわ、ざわ。鼓膜が揺らぐ。全身に鳥肌が立っていくようだった。囁くように鳴いているような何かは、誰かの声。 にん、げんだ。ふふ。さわざわ。に、んげん。ふふ、ひい、ぎ、ら、ひい、らぎ、うふふ。まよ、って、あは。ひいらぎ。 靄のような雑音が混ざったたどたどしい言葉。何かに引っかかっているような、壊れたレコードのような音。柊は無意識に、あまりにも不器用でたどたどしい麦の声を連想した。違う。彼は即座に否定する。これは麦の声じゃない。彼女はもっとあたたかい色を帯びている。浅はかな自らの想像力に感じるのは、麦に対する後ろめたさ。 ――ニンゲン。 霧雨のようなざわめきに圧し掛かるようにあまりにも唐突に、どこからか、ぐんと低く鉛のように重い脅すような声が響く。 耳を包み震えていた柊の手が、萎縮のあまり硬直する。 ――人間……人の魂。 ――僅かな綻びから穢れた足で踏み入った、愚かな人の魂。 何かがこそこそと発している囁きと違い、この低い声は投げかけてきているのか明確に聞きとることができた。しかし、その声が何を暗示しているのか、やはり柊にはすぐに理解できなかった。少なくとも分かるのは、脳内に直接語りかけてくるその声は、はっきりと聞き取れる代わりに頭を痺れさせるような残響を以て抉ってくるということだ。 ゆらりゆらり本棚を揺蕩う影。段々と成長しているかのように伸びている。まるで深海で揺れる海藻のようだった。 ――此処は唯一であり、何とも交わらぬ世界。貴様のような者の踏み入れて良い領域ではない。故に排除する。 突如として突き出された宣告を柊は瞬時に反芻し、大きく目を見開いた。 「!? 排除って……どういう……!」 動揺と畏怖が混ざり合った震えた声で、柊はどこから発しているかも分からない声に向かって戸惑いをぶつける。 「なんなんだ、さっきからわけがわからないことばかり……ここは麦の家だろう。俺は吹雪で迷い込んできただけで……!」 ――ならば貴様に問う。貴様、何故ここに入った。 「何故って」 すぐに言い返すために柊は自分という存在を顧みようとした。しかし彼の脳内に浮かんできたのは、いつしかの思い出でもここに至る映像でもなく、新品のノートのように美しくまっさらでまっしろな記憶だけだった。 あれ。 そういえば、俺はどこから来たんだ。 俺は、どうして吹雪の中にいたんだ。 卵焼きを作ってくれた、母さんってどんな顔だったんだ。 ハロウィンの記憶は、一体どこで誰と紡いだ記憶なんだ。 何も覚えていない。 まっさらでまっしろで、なにもない。 俺は一体、なんだ。 ――貴様は迷い彷徨い続け、最早藻屑に等しい魂。それ故にこの世界に繋がる僅かな隙間を抜けてきたのだろう。自分でも気が付いていないとは、なんと滑稽で愚劣なことか。 呆れたような声が収束するや否やくすくす、と嗤う声が大きくなった。子供や、女や、男、或いは全く別の生き物の、様々な声が折り重なって、柊に降り注いでくる。全身の毛を逆立てる、声の群集。耳元から聞こえてくるようにも、遠くから聞こえてくるようにも思われる。 明らかに自分の感覚がおかしくなってきている。柊は塞ごうとしても使い物にならない手を胸に当て、振動する深呼吸をした。とりっく、おあ、とりーと。極限状態で、麦の言葉が蘇る。まったく、これはいたずらどころの話ではない。なんてハロウィンだ。 ここは、危ない。逃げなくてはならない。しかし、どうしたらいい。外は夜、加えて荒れ狂う猛吹雪。窓を開けて外に出たところで、逃げることはできるかもしれないが別の危険が牙を向けて立ちはだかっている。そもそも、厳重な三重の窓を悠長に一つ一つ開けていられるような余裕などない。ならば、この道をまっすぐ走り抜けるか。出入り口に向かって影に捕まらず逃げ切ることができるか。彼は速まる鼓動を胸に、なるべく冷静になれと自分に言い聞かせる。パニックになってはいけない。先程まで自分の歩いていた書庫の道を本棚の配置を頭の中に描け。最初来てから、この机に至るまでの道順、方向。思い出せ。組み立てるんだ。 ――塵如きが神体に触れるなど、余計な知識を与えるなど、決して許されぬ。 神体? なんの話だろうか。 惑わせられてはならない、耳を傾けてはならないと思いつつも自然と柊の思考は傾いていく。だが、塵という単語が自分を指しているのは流れで汲み取れたが、そうなれば自分が触れたという神体というのは、人間とは相容れぬ存在であろう存在というのは、まさか。 ――身を以てその愚行を恥ずべし。 「待て! 麦が……麦が神様って、どういうことだ!?」 思い当たった答えはほぼ確信。しかし麦という幼い少女と神の称号はあまりにも彼には不釣り合いなように思われ、当たって砕けろとも言わんばかりに叫んでいた。同時に、自分を殺そうとする相手を引き留める、時間稼ぎでもあった。なんでもいい、生き延びるために、崖に手で掴まっているようなぎりぎりの状態を少しでも延ばすしかない。 「麦……麦は……」 狼狽えた声で、場を繋ごうとする。その最中、彼の中で渦巻いていたものがゆっくりと顔を出す。短時間にして、麦と、麦の家に対する抱いた謎、疑念。これは、この声は、恐らくこの家の鍵となる何か。麦を取り巻く異変の理由を知る何か。いや、もしかしたら、真実そのもの。そう考えたら、止まらなくなる。 自身の記憶には無くとも、彼は、元来好奇心に魅せられると、夢中になって身を捧げる性をもっていた。純粋な、真実への拘り。それが柊という魂の性であり、本質であった。自分で気付かぬほど既に柊自身がひどく歪んでいても、揺らぐことなく彼の中に在り続けていた。 それが彼を、突き動かしていく。 「というか、麦はどうしてこんな人里離れた雪原に住んでいるんだ。たった一人で、あんなに小さい子供がどうして生活できている」 「外に出たことがないというのに、どうして切らすことなく食べ物が用意されているんだ」 「汚い話だけど、便所も無かった。風呂も無い。居間と、寝室と、この書庫。この家自体、広い割に生活するには決定的に欠けている」 「どこから電気が通っている。どうして暖炉の炎は消えない」 「一生かかっても読み切れないだろう大量の本は、一体誰が、どうやってここに押し込めたんだ」 「麦はこの家からどうして外に出たことがないんだ」 「一体ここはなんなんだ。麦は一体――なんなんだ」 柊の口からは、短時間にして溢れ出てきた疑問――この空間、麦の世界の歪みを問う言葉が自然と溢れ出ていた。おかしい。何もかもが、おかしい。得体の知れない、理由が見えない歪に柊は気付かぬはずが無かった。ただそれを、麦に直接言及することが躊躇われただけで。 歯を食い縛り、影の返答を持つ。その沈黙が、切迫した環境下にある彼には異様に長く感じられた。 ――神は、此処に存在している、其れこそが力。其れこそが世界。 ――外界に触れること、あってはならない。他に意志を向けてはならない。 静寂。 まともな返答にもなっていない。ただぼやかしているだけ。 『麦』が彼の手から滑り落ちる。挿まれていた栞は衝撃のままに飛び出し絨毯の上に転がり、乱雑に開かれたまま本は静止する。未だ止まらない嗤い声と誰とも知らぬ低い声を遮る音は、絨毯でも吸収しきれない。 柊の拳は震えていた。恐怖とは異質の、胸の奥から競り上がってくるどろどろと混濁した感情だった。麦の淹れてくれた心も体も温まるハーブティーの味が、ふんわりと甘い卵焼きの味が、まだ口の中に残っている。ハロウィンの話を身を前のめりにして耳を傾けている映像はまだ新しい。外に出ようと試しに誘ってみたものの、拒絶と共に苦しげに歪めた表情は切実で、痛みが直に伝わってくるようだった。あまりにも軽い身体を持ち上げた時の感覚は忘れない。自分の名前を何度も何度も呼ぶ、嬉しそうに呼ぶ、その声が、耳に残っている。最後に見せた精一杯の微笑みが、目に焼き付いて離れない。麦は良い子だった。可愛らしく愛らしい、不器用な女の子だった。吹雪で荒んだ自分の体と心を一瞬で溶かしてしまう、そんな力があった。 彼女は何か理不尽なものに捕われているのではないのだろうか。ここに閉じ込められ、それに本人すら気が付かぬまま、時を過ごしている。この家で彼女を見張る、この得体の知れない影が、彼女を縛っているのではないだろうか。 だとしたら、なんて歪みだろう。 「そんなの、間違っている」 正しさを望む柊は断言した。影を真っ向から否定した。 「外を知ってはいけない? そんなの、ただの監禁じゃないか。あんな小さな女の子を閉じ込めて、一体どうしようっていうんだ」 ――つい先程迷い込んできた歪み如きが、解ったような口をきくか。貴様は何も理解していない。実に愚かしい。 「何が理解だ。そっちの都合なんて最初から解ってやるつもりもない」 ――余程魅せられ心を奪われたか……仮にも魔除けの力を持つ名を持っているというのに。貴様のような者の身勝手な甘言が神体を壊すことに繋がるとも知らないで、平和なことよ。 「壊す……? 麦を苦しめているのは、あの子の世界を歪めているのは、お前達だろう!?」 ――嗚呼、実に憐れ。強情は若さ故か。貴様の言うかの苦しみは貴様等のような者が生み出すのだと、解らぬとは。 影の声が明らかに増幅し、苛立ちを部屋中に吹雪の如く降り注いだ。 本棚から溢れる影の成長速度が突如加速する。恐怖が一抹も無いというわけではない。だが、柊の中にある柊の正義が、勇気が、怒りが、拘りが、彼を奮い立たせる。怖がってはいけ��い。麦を連れて今すぐにでもここから出ていこう。外の世界に連れ出そう。一刻も早く、彼女を呪縛から解き放たないと。こんな危険で歪な場所に彼女一人を置いていけるはずがない。 柊は遂に走り出した。頭に描き抜いた地図を信じ、唯一の光源である背後の窓から離れ、真っ赤な絨毯を勢いよく蹴り、真っ直ぐ本棚と本棚の間の道を抜けていく。瞬間、見逃すはずもなく影が彼を掴みとろうと一気に手を伸ばす。彼は自分の中から湧き出てくる力に驚きすら感じていた。今なら全てを弾き飛ばせそうだった。肌に一瞬で鳥肌を立たせるような気味の悪い影が触れようとしても、まるで何かが柊を守っているかのように弾き返す。擦り抜けていく。行ける。逃げ切る。逃げ切って、麦のあの細い手をとる。この家を飛び出て、彼女を解放する。きっとそのために自分はここに迷い込んできたのだ。 途中で道を左に曲がる。そして真っ直ぐいけば出入り口が待っている。鍵がかけられるような仕組みにはなっていなかったはず。このまま突入するのみ。この書庫から出ることさえできれば、恐らく勝ち。 しかしその直後のことだ。彼のその数歩先で、とてつもない雪崩れが転がり込んできたかのような壮絶な音が響いた。柊は目を見開き、急ブレーキをかけた。暗闇の中でも分かる。あまりに背の高い本棚に詰め込まれた大小色とりどりの本が濁流の如く彼の前で転がり落ちたのだ。いっちゃだめ、いっちゃだめ。そう言っているかのように。茫然とその様子を柊の瞳は捉える。彼は大量の本が無造作に積み重なっていく様子を見守る他無かった。彼女の拠り所である本ですら敵と化すのか。文字通り本の山に行く手を一瞬で阻まれた柊に残されるのは、勇気でも、怒りでも、恐怖でもなく、何も無くなり、絶望が顔を出す。 動揺は停止を呼んだ。柊の思考は鈍り、その隙に彼の身体を掬うように影が纏わりついてきた。我に返りそれを解こうと身を振るった柊だったが、次々に容赦なく襲い掛かってくる影の布は、最早小さな彼ひとりで対処できるレベルを超えていた。柊を守っていた何かは、もう息を引き取ったかのように機能しない。隙間無く柊を蝕もうとするように影は巻き付いていく。豪速で体中の隙間から柊の体内に侵入して、息の音を止めていく。筋肉は痙攣して、ぴくりとも動けなくなる。形すら残すまいとするように、外から内から喰われていく。黒に蝕まれていく。暗闇に取り込まれていく。影に成り果てていく。 圧倒的な力を前に、成す術もない。 声は聞こえない。 在るのは、沈黙のみ。
四
朝。麦は平凡な一日の始まりに、すぐに異変を察知した。 彼が居ない。昨夜ここに訪れた、柊が居ない。本来なら柊の方が異変であったはずなのに、麦にとっては今のこの状況の方が非日常であるかのようだった。 いつもと変わらないはずの居間はやけに静かだった。やはり柊の姿は見当たらない。まるで昨夜のことが全て物語のように架空の世界で、自分の妄想が創り出した嘘の産物のように思えたが、それにしてはあまりにも実感として強く彼女の中に残っている。彼の声も彼の力強い腕も、麦自身がよく覚えている。麦は真ん中のテーブルに目を留め、唾を呑んだ。二つのティーカップと小皿。嘘なんかじゃない。確かに柊はここに居た。ここでハーブティーを飲み、卵焼きを食べたんだ。美味しいって何度も笑ってくれたんだ。 柊の姿を求めて、彼女はこの家のもう一つの部屋である書庫へと向かった。黄金の光に照らされた本の森は、いつものように高さの揃っていないまま佇んでいる。日常そのものの形を保っている。歩いて見回ってみたものの、柊の姿は塵も見当たらない。読書の定位置である机の近くまでいくと、ふと外の吹雪が止んでいることに気が付いた。吹雪がやんだら出ていくと言っていた。もしかしたら、直接別れを告げるのが気恥ずかしくて、麦に何も言わずに勝手に出ていったのかもしれない。今まで読んできた文章の中で、あのくらいの年頃の男性がそうやって一人で旅に出ていこうとする描写があった。所詮、数時間だけの付き合いだ。そのくらい呆気ないものでも仕方が無い���もしれない。けれど麦は淋しかった。……そう、とても、淋しかった。彼女は自分で自分に驚愕する。そうか、これが淋しいという感覚なんだ。理解し、痛む胸を手で押さえる。柊は、ひどい。私を置いて、さっさとどこかに行ってしまった。もっと沢山お話をしたかったのに。もっと一緒に居たかったのに。 と、麦は足元に『麦』が落ちていることに気が付いた。栞が飛び出して、どこまで読んだか分からなくなってしまっている。そっと拾い上げてぱらぱらとページを捲るものの、まるで情報が頭に入ってこない。こんな感覚は抱いたことがなかった。こんな風に文字をぞんざいに扱ったことは、一度も無かった。麦は『麦』を閉じる。栞を机の上に置き去りにして、出入り口へと向かった。『麦』を取ったときと同じように本を脇に挟んで、ハシゴを移動させる。頭痛からは解放されていたが、身体がやたらと怠い。のろのろととある本棚に立てかける。それは『麦』の入っていた棚だった。読み切っていないが、とても今は続きを読もうと思う気分じゃなかった。どんなに難易度の高い本でも辞書を駆使して何日もかけて読破するのが信条であったのに、それを覆す行為である。この二日で、彼女にはあまりにも「初めて」が多すぎた。きっと麦は自分の心を制御できないでいるのだろう。 ハシゴを一段ずつ登っていく。自分の体重に震えるハシゴを伝い、確実に上へと向かっていく。麦の瞳はぼんやりとしていて、何かをきっかけに落ちてしまいそうな足取りだった。やがて『麦』があったところまできて、彼女は蜂蜜色のその本を適当に戻した。ごめんね。彼女は謝るしかなかった。ごめんね、ごめんね。なんだか涙が出てきそうだった。経験したことのない感情、途中で投げ出してしまった後ろめたさ、柊の声。いろんなものが彼女の中で渦巻いて、いつもなら耳に届いてくる本の声もそっぽを向いたかのように聞こえなくて、まったく訳が分からなくなる。 彼女はまた少しずつ降りていく。 荷物が無い分、帰りの方が楽だ。 それで視界が広がっていたのだろうか、彼女の目に、とある蜂蜜色のハードカバーが映る。 テンポ良く動かしていた足を彼女はふと止めた。 その本から目を離せなくなった。心が奪われてしまった。 題名を――『柊』。 著者名は、無し。 麦は無意識に手を伸ばしていた。そうすれば、届く距離だった。 指先に本が触れる。古くなった『麦』と違って、まだ真新しい触感だった。それを引き抜こうと、体重を寄せる。 バランスが崩れる。 身体が空中に投げ出される。 油断をすれば、足を掬われる。 本と共に、『柊』と共に、落ちていく。
赤毛が更に紅く染まっている。色鮮やかな赤ずきんを被っているように頭は真っ赤。頭だけじゃない、全身が強く打ちつけられ、止めどなく血が彼女の体から抜けていく。 真っ赤な絨毯とまったく同じ色。 柔らかな毛は麦の鮮血を吸っていく。色は上塗りされていく。
書庫に潜むそれは思った。 ――嗚呼、これで、幾度目だろうか。 と。
『柊』から影が伸びる。 優しく、柔らかく、彼女を抱きしめた。
五
朝。女の子は目を覚ました。 彼女は毎日読書をしていた。居間に並列している図書館のような書庫は、天井まで突き抜けんとする本棚がいくつも並んでいて、その一つ一つに本が所狭しと並んでいる。無数にある物語に身を委ねるのが好きだった。彼女はそれだけで満足できた。他には何も望んでいないし、望もうともしていない。ただ、目の前にある、この大量の書物を読み進めていくことこそ、生き甲斐そのものだった。 ずっと読み続けてもきっと永遠に読み切ることができないその本の森が、彼女を縛り続ける。彼女をここに留まらせ続ける。
ここに存在することこそが力。ここに留まることで、世界を保つことができる神様。外へ出ていけば、世界は消えてしまう。同時に神様も消えてしまう。神様が世界であり、世界は神様そのもの。だから、彼女はここに生きる。害をなす可能性は全て淘汰された世界で、自分でも理解せぬままにページをめくる。たとえ死んでも、また生まれる、神様の入った仮初めの身体で。 そうして世界は永遠に保たれるのだ。
歪んでる、それが正しい、あの子の世界。
歪んでも、それに気付かぬ、あの子の世界。
彼女は今日もその世界で、本を読む。
了
お題:本の高さが揃ってない本棚、ハーブティー、卵焼き、ハシゴ、ハロウィン、赤ずきん
作成:2014年10月
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往復書簡その2
松田水緒さま
アニタ・パレンバーグという美しくサディスティックな女看守人のような名前をもつ、この女性を最初に認識したのは、私が中学生の頃でした。その頃の洋楽ファンなら必ずたどる道だった「ミュージックライフ」誌をご多分にもれず、買ったりしていたのです。ある号に、ロックミュージシャンのファッションについての特集が2ページにわたってあり、キース・リチャーズと一緒にペルシャ風の絨毯の上に胡座をかいて座る、ヒョウ柄パンツのカッコいい女性の写真に目を奪われました。
光を放つような笑顔は、輝く瞳と肉食獣の歯。無造作に切った肩までのブロンドの髪。瞳の輝きをいっそう際立たせる光るサテンのシャツには、ネックレスを重ね付けして、大きなバックルの付いた太いベルトを腰に引っ掛け、ヒョウ柄パンツで脚を組むアニタ。まさに一番カッコよかった時代のキースにピッタリな女性でした。

つい先日知ったのですが、この写真は1968年、当時二人が住んでいたチェルシーの家で撮られたものなのですね。
チェルシーと言えば、ロンドンの中央を環状線に走る地下鉄サークルラインの駅スローンスクエアからキングズロードを西へ歩いたあたりで、今もファッショナブルなエリアですが、88年に初めてこの地に立った時はちょっと震えました。
私は、ブライアン・ジョーンズがいた頃と、彼が死んで代わりにウブなミック・テイラーが入って来た頃のストーンズが最も好きで、なかでもアルバム“Beggars Banquet”(1968年)と“Let It Bleed”(1969年)が彼らの頂点だと信じていて(何か悪魔的な美しさがあると思いませんか?)、特に後者の最後の曲として収められている“You Can’t Always Get What You Want”の歌詞に“I went down to the Chelsea Drugstore”というフレーズを聞いてから、チェルシーという場所は、私のなかでは聖地となったのです。この歌詞に出てくる実在した「チェルシー・ドラッグストア」についても、いつか書きたいと思いますが、外観はこんな店です。いい感じでしょ?

今はマクドナルドになっているのが、なんとも…。
以前、アヌーシュカのお客さんで、とってもイカすお嬢さんに「アヌーシュカって、チェルシーっぽい」と褒められたのが、忘れられない最高の賛辞です。話が脱線しました。戻しましょう。
アニタがトップスに光る素材(特にフリルをあしらったサテンのブラウスやラメのタートルのセーター)を好んで着たのは、自分の輝く瞳の魅力を良く知っていたからでしょう。それらは互いに反射し合い、「私の魅力はこれだ!」と主張しています。
60年代終わりから70年代初めのローリングストーンズの広報担当だったジョー・バーグマン(女性です)によると、「アニタはもう一人のストーンズだった。彼女とミック、キース、そしてブライアンが、ローリングストーンズ。彼女の影響はとても大きいし、ストーンズをクレイジーな存在にし続けた」のです。 初めてストーンズの前にアニタが現れたのは、65年のミュンヘン公演。65年のストーンズといえば、モッズっぽい服装です。ミックはどこかまだLSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)の学生の面影があるクルーネックのセーター、ブライアンはお得意のボーダーのTシャツ。キースは、デニムのジャケットにキャスケットが定番で、放っておけば一年中同じ服を着ていそうな服装に無頓着で、ギターさえ弾いていればゴキゲン!といった風。

そんなブルース好きな若い男の子たちが、グラマラスなロックスターに変身する背景には、アニタがいました。
マリアンヌ・フェイスフルの自伝“Faithfull”に、アニタがブライアンと一緒に暮らしていた頃の様子が描かれています。彼らは手当たり次第に服やアクセサリーを買い、お出かけとなると、極度にナルシストな二人は、お互いを飾り立てて何時間も過ごしました。クローゼットやトランクからは山ほどのスカーフやシャツやブーツが飛び出し、何着も服を試しては、気取って歩いてみせたり、双子みたいにそっくりな彼らが、鏡を覗いておめかしする様子を、マリアンヌはうっとりと眺めていたといいます。そこでは、男女の性別は曖昧なものとなって、やがて消え去り、アニタはある時はブライアンを太陽王ルイ14世に、またある時はフランソワーズ・アルディにと変身させたのです。

キース・リチャーズの有名なコメントがあります。「いつのまにかファッション・アイコンって呼ばれるようになったけれど、カミさんの服を借りて着ただけ」(アニタとキースは、服のサイズが同じだった)。
キースがアニタに初めて会った時「ものすごくビビった」し、「なんでも知っていて、しかもそれを五ヶ国語で話せるんだ!」と、強烈な個性の女性が現れたことを素直に感嘆してみせたですが、ミックは警戒心を持ったようです。女性をコントロール下に置きたいタイプだったからでしょうね。 ストーンズのファッションに与えた影響をわかりやすく言うのなら、アニタ登場以前のストーンズはまだ少年っぽさが残るモッズ風に対し、アニタ後は、ヴェルヴェット、サテン、レース、ゴブラン織りなどを使い、アンティークや、中東のカフタンなどエキゾティックなものも取り入れ、多彩で幻想的、そしてデカダンな悪の華へと変身します。

アニタのお気に入りのショップのひとつに、スウィンギング・ロンドンの伝説的なブティック“Granny Takes a Trip”があります。彼女の言葉を借りるなら、「Mary Quantは大人しすぎるし、モッズ風もオプアート風も好みではない」し、「Bibaはあまりにも有名」という理由で、チェルシーの外れにあるこの隠れ家のような店で、彼女はサテンのミニスカートを作ってもらったりしていたそうです。
お香やパチュリ・オイルの強い香りが重く漂い、サイケデリックな曲が大音量で流れ、商品もよく見えないほど暗い店で売られていたのは、ヴィクトリア朝のアンティーク、中東やインドのエスニックな服や小物、アンティークのブラウスをリメイクしたメンズのシャツ、ヴェルヴェットやサテンのタイトなフレアパンツ、テイラーメイドのジャケット、ヴェルヴェットやレースのブラウスやスカート、ドレス、サングラスなど…。
店の奥では、店員���お客さんが一緒にマリファナを吸っていたり、顧客にはストーンズ、ビートルズ、ジミ・ヘンドリックス、ピンクフロイドなど錚々たる顔ぶれのミュージシャンばかりではなく、流行に敏感な貴族階級の子女もいたのですが、決して安くはないGrannyの服を買うことができたり、エクスクルーシブな店の雰囲気の馴染めるのは、そういう‘In’な人たちだったからでしょう。面白いことに、当時は外れた場所にあったこの店を最初に嗅ぎつけたのは、チェルシー界隈のゲイと貴族階級の若者だということ。そのあとに来たのがロックスター達。この店の特徴を言い当てているようですね。さて、Grannyで一番有名な服は、おそらくウィリアム・モリスのテキスタイルを使った、このジャケット。

高級デパートであるリバティ百貨店で、ウィリアム・モリスの生地を小売値で買い、サヴィル・ロウ仕込みの職人が仕立てたので、かなり高価になるのも仕方なかったようですね。写真からも仕立ての良さが伝わってくるようです。ロンドン古着屋を営む私にとってGrannyは、「超」が10000個くらい付くくらい恐ろしくレアなアイテムなのです。そういえば俳優のヴィンセント・ギャロがGrannyの服を探していると、かなり前に聞きましたが、何か手に入ったでしょうか?ちょっと気になりますね。下の彼の個人広告にも、やはりヴィンテージのギターなどと並んでGrannyの名もありますね。
http://www.vincentgallo.com/classifieds/
最後に、Grannyの往年の姿を伺うことができるこの映像を見ながら、アニタ・パレンバーグという最高にイカした女性のことを今日も想うことにします。
youtube
2017年10月19日
ジュヌヴィエーヴ金子
#anita pallenberg#the rolling stones#granny takes a trip#'60s#'70s#vintage#anouchka#アニタ・パレンバーグ#ローリングストーンズ#グラニー・テイクス・ア・トリップ#ヴィンテージ#古着#国分寺#アヌーシュカ
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BIRTHDAY'S SHIRT SELECTION.

暖かい気候になってきました。
春の装いに欠かせないシャツのラインナップをご紹介。
ブランド毎に載せていきますね^^
The Letters


The Lettersではロングセラーのバンダナシャツ。
今季は新色のキャメルを製作。
春らしさとしっとりした色、そして独特なオリジナルバンダナテキスタイルが特徴的です。

The Letters : WESTERN CUTTING SHIRT - WESTERN BANDANNA FLANNEL - ¥45,000+tax

同じVのカッティングデザインの馬蹄柄。
派手��が少なく、スタイリングに組み込みやすいアイテム。
レーヨン×コットンからなるハリのある素材感、肌当たりのひんやりとした春には最適な生地感もgoodです。

The Letters : WESTERN CUTTING SHIRT - HORSE SHOE GABARDINE - ¥40,000+tax


こちらも馬蹄柄と同じギャバジン素材を使用したカウボーイ柄ジップシャツ。
ジップアップのシャツも新鮮な1着ですね。
1枚でもアウターのような存在感が非常にカッコいいです。

The Letters : WESTERN ZIP SHIRT - COWBOYS GABARDINE - ¥44,000+tax
JOHN MASON SMITH


世界最高峰と言われるシャツメーカー、THOMAS MAISONの生地を使用したトラッカーシャツ。
打ち込みが非常にいいハリのある素材感に加え、フロントはタックを入れたドレッシーな雰囲気。
1枚で様になる上品なシャツをご堪能ください。

JOHN MASON SMITH : TRUCKER SHIRTS ¥31,000+TAX
WELLDER

WELLDERらしく非常に綺麗で柔らかい印象も持たせたウエスタンデザインのシャツ。
艶のあるピンクと男らしさのあるウエスタンのギャップにセンスを感じます。


WELLDER : Cord Trimming Western Shirt ¥33,000+TAX
fit MIHARA YASUHIRO




汚く美しくをテーマにヨーロッパでは絨毯などに使用されるダマスク柄の上からステインデザインを施したサテンシャツ。
光沢感とドレープ感。
今季のテーマをまさに象徴するデザインですね。

FIT MIHARA YASUHIRO : PAINTED PRINTED L/S SHIRT(BLACK) ¥37,000+TAX
FIT MIHARA YASUHIRO : PAINTED PRINTED L/S SHIRT(WHITE) ¥37,000+TAX
JUHA




モード感の強いフラワーデザインシャツ。JUHAからのご提案です。
ブラックベースとピンクベージュべースの両極端な展開。
お好みでスタイルに差し込んでみてください。
矛盾してますが、”シックな派手さ”というのが言い方としては一番合うかもしれません。


JUHA : BOTANICAL OVER SHIRT ¥30,000+TAX
一年を通して楽しめるシャツ。
新鮮な服手に入れてコロナが収束するまでの温めてくださいね^^笑
BIRTHDAYは元気に営業中デス!!
- CONTACT -
BIRTHDAY 福岡県福岡市中央区大名1丁目2-37-1 selva西大名 Ⅱ 1F
092-721-1125 11:00-20:00
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佐藤竜晴 BIRTHDAY BLOG
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西村直 BIRTHDAY BLOG
梅村健斗 BIRTHDAY BLOG
BIRTHDAY ONLINE STORE
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ペルシャ絨毯買取 | 納得の買取価格をご提示いたします。

ペルシャ絨毯買取 , 納得の買取価格をご提示いたします。 ペルシャ絨毯のご売却をお考えならお任せください ペルシャ絨毯買取専門店港区 | ペルシャ絨毯買取 国内でNO1 | 長年の経験により価値に見合った ペルシャ絨毯はインテリアが好きな人なら一枚はお持ちではないでしょうか。 中古市場でペルシャ絨毯はアンティーク品を中心に人気を集めており、査定で高値がつく場合があります。
処分にお困りのペルシャ絨毯はございませんか?
国内でどこでも、絨毯販売 や ペルシャ絨毯買取 , 絨毯買取をします。絨毯専門店として、ペルシャ絨毯買取 絨毯買取 絨毯専門 ヘレケ絨毯買取 絨毯下取り ペルシャ絨毯 アンティーク絨毯買取 シルク絨毯買取 絨毯 買取 じゅうたん買取 中古絨毯買取 汚れた絨毯 じゅたん買取 絨毯 買取 ペルシャ絨毯買取 ペルシア絨毯 買取 クム絨毯 買取 絨毯買取 絨毯販売 ペルシア絨毯買取 絨毯クリーニング ペルシャ絨毯クリーニング ペルシア絨毯買取があれば体調しますので、よろしくお願いします。 クム産やナイン産などはもちろん、タブリーズ産などペルシャ絨毯は高価格でお買取させていただきます。査定料など手数料は全て無料ですので、買取価格や価値だけ知りたいお客様もお気軽にご相談ください。 ペルシャ絨毯は売る方法に注意しないと大きく損をしてしまうことが少なくなく、「売れない」と誤解している人もいます。高く売るために適切な売り方や買取価格相場を押さえておきましょう。

納得の買取価格をご提示いたします。 ペルシャ絨毯だけでなく、多く高価なものやアンティーク品を持っている場合に、効率よく売ることができるでしょう。買取方法は店頭、出張、宅配のいずれかです。
ペルシャ絨毯買取
産地や年代が不明なペルシャ絨毯も絨毯のプロが査定。 絨毯専門店ならではの目利きで、他店よりも高価買取。 本物か偽物かわからない。産地や工房など詳しいことがわからない。 そのようなペルシャ絨毯でもしっかりと対応させていただきます。 ペルシャ絨毯は古代ペルシャの遊牧民が寒さから身を守るためや祈祷を行うために、羊毛や綿から手織りで織り上げたのが始まりと言われています。 ペルシャ文化・ペルシャ芸術を代表する、世界的に見ても歴史のある美術工芸品の1つで、古来より高級絨毯の代名詞として広く知られています。 デザイン性の高さはもちろん、一つひとつが手織りで同じ物が二つとないことからのも魅力です。 また、ペルシャ絨毯は丈夫で耐久性に優れていることから、使い込むほどに独特の味や深みが増すというのも人気の理由と言えます。 日本にも安土桃山時代の末期(16世紀末)、シルクロードを経由してペルシャ絨毯が持ち込まれています。 当時の権力者であった豊臣秀吉はペルシャ絨毯を大変気に入り、陣羽織に仕立てて愛用したと伝えられています。 色彩豊かできらびやかな桃山文化とも相まって、繊細な文様で彩られたペルシャ絨毯は人気を博しました。 また京都では、ペルシャ絨毯は祇園祭の山鉾を飾る懸装品(けそうひん)としても使われてきた歴史があります。 敷くだけでなく、タペストリーとして壁掛けにも使われインテリアとしても人気です。 ペルシャ絨毯は骨董品の価値が高く、収集家が多いため中古市場では盛んに取引されています。 アンティークのペルシャ絨毯を中心に高値での買取例も数多く見られます。 納得の買取価格をご提示いたします。 ペルシャ絨毯は数千円から数十万円が買取相場です。 ただし、買取相場は制作年代、産地、保存状態などの条件によって大きな幅があります。

ペルシャ絨毯買取 「ペルシャ絨毯は高く売れるものも多い」ということは知っていても、実際にどのようなポイントを見て価値が判断されているのかは分かりにくいものがあります。 ここでは、ペルシャ絨毯の買取で必ずチェックされるであろう重要な査定ポイントと、そのポイントがどのような特徴であれば高く売れやすいのかをご紹介します。 査定前にお持ちのペルシャ絨毯を確認してみてください。 サイズが大きい ペルシャ絨毯は、サイズが大きければ大きいほど高く買取されやすくなる傾向があります。 ペルシャ絨毯を織るのには非常に手間がかかるため、大きければ大きいほどそれだけ製造に工数がかかります。 職人の手が多くかかっている分、大きいペルシャ絨毯には高い価値がつきやすいのです。 状態がきれい ペルシャ絨毯の保存状態は、買取価格に直結する重要な査定ポイントです。 絨毯が擦り切れている、色褪せている、ペットの匂いがついているなどすると、買取価格は下がってしまう可能性が高いでしょう。 買取直前でどうこうするのは難しいですが、日頃のお手入れが買取価格にも関わってきます。 素材が高価である ペルシャ絨毯の素材には、大きく分けてシルクとウールの2種類があります。 このうち、より高く買取されやすいのはシルクのペルシャ絨毯です。 素材はペルシャ絨毯の買取に際してはまずチェックされる査定ポイントの1つと言えるでしょう。 縫い目が細かい ペルシャ絨毯のノット数とは、その絨毯がどれだけ細かい目で織られているかを表す数値です。 ノット数が高い、すなわち目が細かい絨毯のほうが単位面積あたりの作業量が多くなるため、作るのにそれだけ職人の手間と時間がかかります。 そのため、サイズが大きいペルシャ絨毯と同様の理由から、高く買取されやすくなるのです。 産地や工房の証明書などがある ペルシャ絨毯の産地は複数あり、特にイランのナイン、カシャーン、クム、タブリーズ、イスファハンは5大生産地として有名です。 また、中古市場では古いものほど価値が高いとされています。 製造から50年以上経過した骨董品は「オールド」、製造から100年以上経過したものは「アンティーク」といわれます。 5大産地で作られ、製造から50年以上経ったペルシャ絨毯は高値が期待できるでしょう。 査定時には産地や工房名がわかる証明書を提示すると本物だと証明できます。 さらに、お持ちのペルシャ絨毯の入手方法や購入場所を確認できるようなら、事前に調べて査定士に提示することをおすすめします。 色柄の美しさ ペルシャ絨毯の柄は、中心に大きな模様を配した「メダリオン」、総柄の「オーバーオール」、モスクから着想した「メヘラブ」、景色を表現した「ピクチャ」の4種類があります。 特に「メダリオン」は万華鏡のなかを覗いたような美しい模様が人気です。 ペルシャ絨毯の中でも、多くの人が欲しがるような、美しくて味わいのある柄は高く売れやすいでしょう。 ただし、「中古市場で高く売れる色柄」というのが明確に決まっているわけではありません。 査定する時点の中古市場での動向を確認し、需要が見込めると判断すれば高値で買い取ってくれるでしょう。 ご満足いただける適正価格をご提示できるよう努力いたします。 バイセルの査定やキャンセルは無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
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また、状態のよい絨毯に、えも言われぬツヤや、天然染料の醸し出す色合いが美しい場合には、アンティーク品として相応の価値がつくこともあるのですね。 無料出張 対応エリア 全国の出張購入をサポートします。 ショッピングブーストゾーン全国からカーペットを集めています! ショッピングをサポートするエリアは、 東京、神奈川、千葉、埼玉、いばらき、栃木、軍馬、愛知、静香、新潟、長野、山梨、京都、大阪、福岡、山口、大分、佐賀、福井県、熊本です。 ペルシャ絨毯買取専門店港区 ペル���ャ絨毯を高く買取します。 全国でもご利用いただけますので、上記以外の方も大歓迎です! 無料評価をご利用ください。 土日・祝日も休まず営業!どしどしお問合せください!

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番外編 中東旅行(その1 Abu Dhabi)
10月27日(日)がインドの新年に当たるDiwaliという祝日で、26~30日まで5連休になったので、アブダビ、ドバイ、ドーハを旅行してきました。 ムンバイから飛行機で3時間、時差も1時間半なので、心理的には台湾あたりに行く感じかと。 久しぶりにがっつり建築を見たなという感じなので、見てきたものをぽつぽつとまとめたいと思います。
アブダビ(UAEアラブ首長国連邦の首都)
□Louvre Abu Dhabi 設計 Jean Nouvel 竣工 2017


ルーブル美術館初の海外分館。学生のとき、アブダビの人工島に美術館が4つぐらい計画されているドローイングを見た中で、ドームのイメージがとても強くて、正円...とか思ったのを思い出した。パースではもっと大量の光が差し込んでいたような。 実際、ドームの下は思っていたよりも少し薄暗くて、木漏れ日状に光が壁や床に落ちてくるのがとても気持ちよく、光が移り変わるのを一日中見ていられる。
この建築を印象付けるドームも、ドームを構成する幾何学模様も典型的なイスラム建築からの引用で、その下に街区のように並ぶ白いボリュームは乾燥地域でよく見られるアドべの住宅を彷彿とさせるので、ここアラブの砂漠と伝統と文化をまっすぐ反映したように読み取れるのですが、このドームの飛躍よ…!という気持ちです。
幾何学模様のパターンの重ね合わせで粗密を作ってあるのですが、完全にランダムというわけではなく、周辺は厚く、頂上に向かって粗になっているので、天辺に行くほど光が透けて見えて妙に軽やか。 周囲はペルシャ湾に囲まれているので、水際からはまた別の光の揺らぎがあってそれも良い。

展示も非常に充実しており、常設展は中東を中心に、古代から現代まで歴史を追っていくような内容でした。 ローマ、エジプト、シルクロードとの関連などなど。 展示室を移るごとに時代が進むという構成で、それも街を巡っているようで心地良い。パリのルーブルのように一日あっても見切れない、みたいなボリュームではないものの、じっくり見ていると一日くらいは余裕で過ごせるのではないかと。企画展はエコール・ド・パリの作品展でした。ムンバイにはなかなか油彩の巡回展みたいなのが来てくれないので、シャガールとモディリアーニとレオナールフジタに会えて私は大満足です。
□The Mall (World Trade Center Souk) 設計 Foster+Partners 竣工 2014


ワールドトレードセンターのオフィス棟2棟と、その足元のショッピングモール。 外装は複数のパターンの格子と幾何学模様のパネルになっており、一枚一枚がテラコッタでなかなかのボリューム感。内装も同じく格子のパターンが繰り返し現れてきて、こちらは木製のパネルになっている。回廊部分と、エスカレーター・エレベーターホールがどーんと垂直に抜けていてかなり明るい空間になっています。採光にガラスブロックなども使われており、外装の格子+ガラス+内装の格子で自然光をうまくコントロールしている印象。

上階のレストランのテラス等から屋上庭園に出られるようになっており、そのまま各階がつながって地上まで行き来できるようになっているのですが、あまりの暑さと日差しの強さで滞留している人はほとんどおらず、もったいないなー。 店舗部分とテラスも直接の交流があるわけではなく、どちらかというと店舗は外に向かって閉じているので、気候が良い時期でも活用されているのかどうかは不明です。外部環境が厳しすぎて、外に開くのはなかなか難しそう。
□Qasr Al Hosn 竣工 1761


別の名をWhite Fort(Fort=城塞)と言い、アブダビで最も古い石造建築です。元々、淡水井戸などの水資源を守るための見張り塔として作られ、のちに政権者たちの住宅として活用されていたそう。 現在はリノベーションされて随分きれいになってしまっているのですが、当時の生活を復元した展示などもあり楽しめます。
ここに入るためには隣にあるHouse of Artisansという美術館とセットになっているチケットを買う必要があり、そちらでは漁師たちが使っていた網、籠などの手工芸の展示やアラビアンコーヒーのセレモニーなどを受けることができます。
ちなみに、1枚目の奥に映っているのがワールドトレードセンターのオフィス棟です。最上階の斜めカットは自然光を最大限取り入れるためか。シンボリックなシンメトリーな形状は何を表しているのだろうか…
また、同敷地にAl Musallah (設計CEBRA / 竣工済み? オープン前)という、アブダビの新しい文化拠点として図書館、シアター、カフェなどを併設したものが完成しているようでしたが、中には入れず。

ランダムな矩形の組み合わせ。画像しか見れないので次来るときのリベンジ
□Emirates Palace 設計 Wimberly Allison Tong&Goo 竣工 2005


高級ホテルが次々誕生するため、もはや5つ星ではなく7つ星ホテルと呼ばれるエミレーツパレス。 外装は落ち着いたこげ茶色の御影石で統一されていて、一見控えめな感じですが、内部は至るところゴールドでキラキラしていました。内外とも、イスラムのアーチ、ドーム、幾何学模様が繰り返し使われています。お金があるところにはあるんだなー。いろいろ勉強になります。
□Etihad Towers 設計 DBI Design 竣工 2011

エミレーツパレスの対面にある商業コンプレックスです(右端の2棟は別の建物)。アラブの重要なシンボルである、帆船、剣、鷹狩り(鷹が翼を閉じている様子?)から想起したという彫刻のような5棟が、相似形を成しながら角度と高さを変えつつ互いに向かい合っており、バランスよくまとまっている。 中はこちらも5つ星ホテルとサービスアパートメント、低層部分は高級ブランドのブティックになっています。 こういうの、見ててすごいなーと思うけど、あんまり私に関係しない建築なので楽しみ方がよく分からない。
□Sheikh Zayed Bridge 設計 Zaha Hadid 竣工 2010

片側4車線ずつのハイウェイがそれぞれ片持ちで真ん中のRCによって持ち出されています。写真では見切れているのですが、左側から近づくとアーチが逆に道路を挟むように入れ替わっていて、これはもうぜひ別の角度からの写真を見てほしい。(モスクに行く前に歩いて立ち寄ったため、これ以上近づく気力がなかったので載せられる写真はなく。。archidailyのリンクを貼っておきます) サインカーブの曲線が目を引く、いかにもZahaという造形でした。 側面から見るより、実際に車で通ってスケール感と構造を感じてほしい。
□Wahat Al Karama 設計 bureau^proberts Urban Art Projects Idris Khan(artist) 竣工 2016


戦死者たちの追悼記念碑。互いにもたれかかるように並んだ31枚の銘板にはUAEの偉大な詩が刻まれているらしい(アラビア語なので全く読めず)。構成は非常に明解で、銘板から伸びている軸線上に水盤があり、その先に戦死者たちの名前が掲げられた2枚目のパビリオンが配置されている。 写真奥に向かう直線上にも大きな水盤があり、そこからグランドモスクが正対して見えるので、どちらかというとそれを見れたのがとても良かった。
モスクからは10:00~6:30まで30分毎にシャトルが出ています。
□Sheikh Zayed Grand mosque 竣工 2007



UAEで最も大きく、世界でも6番目に大きなモスクです。モスクの系統には全く明るくないので、このアーチが何様式でとか言えないのですが、とにかく豪華絢爛で観光客のインスタスポットになっていた。 また、ここは世界最大のペルシャ絨毯が敷き詰められていることでも有名だそうで、一枚もので約5,500㎡ということです。人の大きさと比較して柱も何も大きすぎてスケール感が狂いそうになる。この男性2名も、まるで外で木にもたれかかっているようにも見えるな… 装飾は、白大理石を削ってそこに違う色の石を埋め込むという手法で、タージマハルなどで見られるのと同じなのですが、技術の進歩(と予算)を端々に感じます。(左がタージマハル、右がシークザイードモスク)

□Andaz Capital Gate Abu Dhabi 設計 RMJM 竣工 2011


ダイアグリッド構造からなり、世界で最も傾いているビル(18°)ということでギネスにも載ったと言うアブダビのAndazホテルです。ダイアグリッドは、青山のプラダとか、ロンドンの30St Mary Axeなどで使われている斜め格子の鋼構造で、内部にはかなりがっつり構造が出てきているのですが、外装はカーテンウォールを持たせるだけの細い材だけ見えてきて、曲線のしなやかさを見せているのか。完全にガラスだけにするより、この格子によって特徴的な形が際立っているように見える。消したくても消せなかっただけかもしれないけど... あとANdAZのロゴはなぜあんなシンプルかつカラフルなのか、ワードで作ったんかなどと偉そうに考えながら、これにてアブダビ終了です。
次はドバイ編をお送りします。
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100周年を迎えたシトロエン。大人気のC3に加えて、「C3 エアクロス SUV」「C5 エアクロス SUV」の2台でさらに攻勢をかける
●絶好調のシトロエン。最新モデルのお披露目を兼ねたビジネス発表会を開催 創業100周年を迎えたシトロエン。5月28日に発売されたシトロエン C5 エアクロスSUVと、7月16日にリリースされたばかりのシトロエンC3エアクロスSUVのお披露目も含めて、2019年7月17日に「シトロエン2019年ビジネス中間報告会」をプレス向け開催しました。 プジョー・シトロエン・ジャポンのクリストフ・プレヴォ社長は「シトロエン」ブランドについて、ディーラーネットワークの再構築により2019年上半期は4年前の2015上半期と比べて、83%の成長を遂げたことを報告。シトロエンの中でも大きな成長に寄与したモデルとして、新型C3を挙げています。 旧型C3の月間平均販売台数(2014年〜2016年月平均販売台数)が55台だったのに対し、現行C3(2017年〜2019年月平均販売台数)は168台と、約3.1倍の売れ行きを示しています。 グループPSAのインド・パシフィック地区統括本部長のエマニュエル・ドゥレ氏は、「シトロエン」ブランドがグローバルで、2018年に過去最高となる1,046,000台を記録し、そのうち、825,000台がヨーロッパ市場だったとしています。さらに、2020年にインド市場に同ブランドを投入すると明らかにしています。 なお、2019年秋の東京モーターショーへの出展は見送られるそうですが、シトロエン100周年を記念して��独自のイベントが今秋複数開催される予定で、ファンには見逃せない機会になりそう。詳細が決まりましたらご報告します。 ●ミドルサイズSUVのシトロエン C5 エアクロス SUV さて、「シトロエン C5 エアクロスSUV」を振り返ると、ボディサイズは全長4500×全幅1850×全高1710mm、ホイールベースは2730mm。プジョー3008が全長4450×全幅1840×全高1630mmですので、プジョー3008よりも50mm長く、10mmワイドで80mm高くなっています。 搭載されるエンジンは2.0Lの直列4気筒ディーゼルターボで、177ps/3750rpm・400Nm/2000rpmというディーゼルらしい分厚い最大トルクが特徴。トランスミッションは「EAT8」と呼ばれる8速ATが組み合わされています。 高い快適性をブランド価値としているシトロエンだけに、メカニズムでは足まわりにも注目。PHC(Progressive Hydraulic Cushions/プログレッシブ・ハイドローリック・クッション)と呼ぶサスペンションテクノロジーにより「魔法の絨毯のような」乗り味を得ているそう。 このPHCは、通常のダンパーにセカンダリーダンパーが追加された構造の純メカニカルなシステム。ダンパーシリンダー内に第2のダンパーシリンダーが配されていて、サイドには複数のポートが開けられています。セカンダリーシリンダーにはその内径にあったセカンダリーピストンがあり、ストロークが進むとそのセカンダリーピストンがシリンダーに入り込みハイドロリックストップとして作用する位置依存型のダンパーです。 快適性を担保すべく、見るからに座り心地が良さそうな大型シートが前後に配されているほか、580L〜1630Lという大きなラゲッジ、最新のADAS(先進安全装備)を用意。 ADASの中でも、ハイウエイドライブアシストは、渋滞での完全停止と3秒以内の再発進が可能なトラフィックジャムアシストと前走車との車間距離を保つアクティブクルーズコントロール、さらに車線内の左右任意の位置を保持しながら走行するレーンポジショニングアシストを統合したシステム。 ドライバーの好みに応じて車線のやや左側をキープしたり、高速道路の流れが遅い状態で車線左側をオートバイが通過しがちな場合にやや右側に自車を寄せて走行させたりということが可能になっているそうです。 「シトロエン C5 エアクロスSUV」の価格は、4,240,000円で、「ナッパレザーパッケージオプション」が36万円で設定されています。 ●シトロエン C3 エアクロス SUVもデビュー 以前お伝えしたように、CセグメントSUVの「シトロエン C3 エアクロスSUV」は、全長4160×全幅1765×全高1630mm、ホイールベースは2605mm。大ヒット作のC3が全長3995×全幅1750×全高1495mm、ホイールベースが2535mm。C3よりも165mm長く、15mmワイドで、135mm高くなっています。 C3よりも70mmホイールベースが長く、背の高さもあってよりアップライトなシートポジションになることもあり、後席に座ってみると「シトロエン C3 エアクロスSUV」の方が広く、開放感も高く感じられます。 使い勝手の面では助手席の背もたれも前倒し可能で、最長2.4mの長尺物も積載可能。なお、荷室容量は通常時410L・最大時1289L。後席スライドにより410L〜520Lの間で可変します。 エンジンは110ps/5500rpm・205Nm/1750rpmというアウトプットを実現している1.2Lの直列3気筒ターボで、トランスミッションは6AT。「シトロエン C3 エアクロスSUV」の価格は、2,590,000円〜2,970,000円です。 (文/写真 塚田勝弘) あわせて読みたい * 【新車】ポップな存在感と魅力的な価格でヒット確定!? コンパクトSUVのシトロエン「C3 エアクロスSUV」が登場 * GM元副会長が衝撃発言!「コルベットの次期型はSUV化したほうがいい」 * 後継モデルはどうなる!? シトロエン C4カクタスが一代限りで生産終了の噂 * ロータス初のクロスオーバーSUVか!? プロトタイプを激写 * 「INNO」ブランドからスズキ・ジムニーなどのSUVに映えるルーフボックスとルーフデッキが新登場 http://dlvr.it/R8cPZX
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ed. from the everworld
バルナバーシュは夢を見ていた。かれは夜の海のせせらぐ柔らかな砂浜にうつぶせており、身を起こすと、あたりを見わたし、ここがたしかに故国ゲルダット――その十の都市のひとつ、拝火の街ジルヴァの西に続く、〈竜域の海〉に臨む〈月と海の浜〉であることが、妙にさえざえとした頭ですばやく把握できた。
身に着けている衣服は、寄せ手の隠密として囚われていたジルヴァの大聖堂から逃げのびてきた時のままで、厚手のくたびれた濡羽色の外套のほかは、皮製の防具を最低限に取り合わせた軽装のみだった。かれは大聖堂の地下で、ジルヴァの現在の監督者であるカレルから手酷い拷問を受けていたが、セニサの手引きのおかげで脱走できたのだった。そして無力と絶望のなか、ほうほうのていでこの海岸までたどりついた。かつて愛しあったセニサと逍遥し、口づけを交わしたこの場所に。
(あれから、私は……)
無意識に内隠しへのばされた手が懐中時計をつかみ、取りだして、細やかな意匠のほどこされた金の上蓋を開いた。特殊な動力源が発する永久的なエネルギーを得ながら、針は白磁色の文字盤のなかで規則正しく時を刻んでいる。時計は何も語らない――そのことに得体の知れない喪失感が身裡を這いあがり、バルナバーシュは立ちくらみのような激しい眩暈に襲われた。この時計に、大切ななにかがあったはずだ。思い出そうとしても頭のなかに深い霧がかかり、身もだえしかできない己れがひどくやるせない。
離れたところに、肩掛けの荷が砂にまみれて転がっているのが見えた。手がかりをもとめて開くと、魔術の助けとなる秘薬やわずかな食糧が散乱するなかで、まったく覚えのない、未知の材質からなる金属塊が異様な存在感を放っていた。
手に取ると、それは機械仕掛けで動く右腕のようで、強い力によって――おそらく斧のような武器で斬り飛ばしたあとが断面にみてとれた。バルナバーシュは知らず息をのみ、あえぎつつ額をおさえた。頭蓋の最奥がどくどくと痛み、これは絶対に手放してはならないのだと甲高く警鐘を発している。由来など分からなかったが、霊次元に通ずる魔術師であるかれは、この感覚の訴えをひとまず信じることにした。荷を背負い、砂をはらって立ち上がると、切り立った崖の上に暗鬱とそびえるジルヴァの中心街を見あげた。街中から上がる無数の火の手が大聖堂の尖塔の数々を燃え立たせるように照らし、戦さがすでに佳境にあるのを伝えている。バルナバーシュは戦慄した。
「セニサ……!」
ジルヴァの本丸であるはずの大聖堂をさして、砂に足をとられつつもバルナバーシュは駆けだした。すでに崩れかけ、あまたの窓から火を噴く街路につづく西門からは入らず、自分が来た道――セニサの案内でそこから逃がされた、大聖堂の内部につながる隠し通路へと引きかえす。
通路は大聖堂の真下――ジルヴァの街のはるか崖下にあり、海に流れ出ている数ある水路のひとつだった。バルナバーシュは躊躇なく暗く湿ってよどむ水路を突きすすみ、横道に入って腐食しかけた扉を蹴りやぶり、崖の内部に掘られた石造りの長い螺旋階段をとばしとばし駆けのぼった。不思議と疲労はつのらず、胸にある懐中時計が一秒を刻むごとに活力を与えてくれるような潜在力のみなぎりを覚え、勢いはむしろいや増すかにも感じられた。
最後の段を踏みこえ、石壁に似せた重い扉を押し開くと、大聖堂のいまは使われていない、木箱やがらくたの積み置かれた暗い小部屋のひとつに出た。セニサに地下牢から導かれ、そして別れた場所だった。逃走のとき、振りむいて最後に見たセニサは、彼女の行動を不審に感じたカレルの配下に見とがめられ、いずこかへ連れていかれるところだった。自分が逃げおおせたことはすんでのところで知られていないはずだが、彼女が心を読む魔術を会得したカレルの尋問を受ければ終わりだ。今度こそ、裏切り者としての末路――ひと思いには殺されず、いまわしい禁術の数々によって生きながら魂の業苦を受け、永遠に死によって解き放たれることのない悲運がセニサにもたらされてしまう。急がねばならない。
バルナバーシュは耳をすまして部屋の外をうかがった。くぐもってはいるが、廊下からは無数の戛然たる剣戟や、入りみだれる突喊と悲鳴、調度品が燃え落ち、破壊される音、壁が崩れる轟音が混沌と聞こえてくる。大聖堂は攻め入られており、なにを相手に戦っているのかはすぐに分かった。〈オールドクロウ〉の家門の軍勢だ。バルナバーシュ家は〈オールドクロウ〉の遠い傍系であり、代々が住む屋敷も、かれらの管轄である橋梁の街、ウィルミギリアにある。屋敷とそこに住む二人の使用人の安全を保障されるかわりに、おそらくは最後の当主となるセインオラン=エルザ・バルナバーシュは、命を受けてジルヴァの街に隠密として潜入していた。その任はまっとうできなかったが、〈オールドクロウ〉は長い歴史において何事にも中立をつらぬきつつも、唯一、時の浅からぬ同盟と不即不離の友誼が息づいていた拝火の街ジルヴァがカレルの支配によって穢れ、暗黒に落とされたことを知ると、義を果たすためついに出兵を決めたのだった。
バルナバーシュは、〈オールドクロウ〉の優勢を確信して廊下に飛び出したが、目の前で繰り広げられているのは酸鼻をきわめた地獄の有りさまだった。廊下や中庭では、多足の巨大な鰐や、複数のあぎとが張りつく不定形の黒い生物、無数の顔と槍をかいこむ腕がたえず浮かびあがる赤黒い肉塊などのおぞましい魔物の群れがひしめいて、〈オールドクロウ〉の戦士や魔術師らともみ合いになり、頭から次々と喰らってはかみ��き、肉や骨がつぶされる聞くに堪えない音と理性あるものたちの断末魔を響かせていた。禁術を用いて召喚されたに違いないが、この大群のためにどれだけの生贄の血肉と魂、そして理解を絶する儀式が必要とされたのかは想像すらもしたくなかった。また、その多くが静寂を愛するジルヴァの罪なき住民たちであろうことも。
「バルナバーシュ!」
声がしたほうを振りむくと、〈オールドクロウ〉の家門の次男である豊かな黒髭をたくわえた男――名をハヴェルという――が、甲冑を鳴らしながら駆け寄ってくるところだった。直接、バルナバーシュに諜報を下知したのもこの者である。かれは優れた魔法剣士であり、右手には金の魔法的装飾が美々しいルーンソードが握られていたが、薄青く光る刃や刻まれたルーンにはいましも浴びた熱い鮮血がしたたっていた。
「おぬしが捕らえられたと聞いて、もう死んでいるものと思っていたぞ。我らはカレルの配下や、その後ろ盾である〈不言の騎士〉の増援と戦っていたのだが、きゃつら突然、苦しみだしたかと思えば、体がふくれ、あのような魔物に成り下がってしまったわ。いまさらだが世も末よ……我々は禁術などに手は出さんが、ゆえに成すすべも残されていないだろう。国は終わりだ」 「かもしれんな。魔術に善悪などなく――暴走するヒトの心こそが悪となり怪物となって、かような禁術をも生んでしまう。だが国が終わろうとも、私たちはまだ生きている。そして、あなたがた〈オールドクロウ〉は最後の砦なんだ。いまこそ、かつてゲルダットを興した十賢者のなかでも最高とうたわれた智者の血を継ぐ者たちとして、生きようとする人々の灯火となってくれ。頼む」 「忘れられては困るが、バルナバーシュ家もその血の継承者だ。どれほど遠かろうともな。して、おぬしはどうする。我らは撤退しつつあるが、ここで戦うのか?」 「やらねばならないことがある。セニサがまだ生きている」
そのとき、言葉を交わすふたりに一体の鰐の魔物が、のたうち、床に折り重なった死体を踏み荒らしながら突進してきた。二人は左右にさけてやり過ごし、バルナバーシュは腰に差した剣を抜き放つと、足をとめた鰐の背へ、尾からとぶように駆けあがって太い首根に刃を突き込んだ。自分が持ちえないはずの高い判断力や身体能力とともに、バルナバーシュはそこではじめて、手に持つ武器がただのありふれた剣ではなく、魔銀から鍛えられた業物であるのを知り、銀の薄刃は大気を鋭く切り裂けるほどに軽く、切っ先は鰐の異次元の物質からなるいびつな鱗を乳酪かなにかのようにたやすく貫いた。血管のように精密に、かつ生物的に張りめぐらした魔術回路によって、魔力を通わせつつ驚くほど自分の手に馴染むものだったが、これをいつ手に入れたのかが思い出せず、混乱したわずかな隙にバルナバーシュは暴れる鰐の背から振りおとされてしまった。うめきつつハヴェルに助け起こされ、ルーンソードを構えた彼に脇へと押しやられた。
「さっさと行け。そしてセニサ殿を助けてこい」
バルナバーシュは指揮官たるハヴェルにその場を任せると、ヒトと魔物が殺戮に熱狂する阿鼻叫喚の渦中を駆け、死体と血だまりの海を泳ぎ抜けるようにして石の回廊を突き進んだ。中庭から望む空では赤く脈打ちながら膨張した月が、うごめく紅炎を幾筋も発しながら天頂にとどまり、いまこの地が現世と異界をつなぐ巨大な門と化している証左をまざまざとあらわしている。バルナバーシュは大聖堂内部の道すじを正確に把握していた。若かりしころに魔術と学問の研鑽に励み、学友のセニサと青春を謳歌した愛すべき地ゆえに。大聖堂は本堂である大伽藍の周辺をさまざまな施設が囲い、入り組んでおり、有事には砦としても機能する。バルナバーシュは本堂をさして向かっていた。
やがて地獄を抜け、ヒトも魔物の姿もなくなって、聞こえるのは自分の息づかいだけとなりつつあった。本堂へ続く廊下はしんと静かで奇妙に気配もなかったが、その理由を考えているひまなどなく、ひたすら走り、ついに百フィートを超える高さの天井をもつ大伽藍にたどりついた。翼廊には建国の祖である十賢者を描いたステンドグラスがそびえ、背後には巨大な薔薇窓が輝いていたが、赤い月の投げかける光がすべてを血のごとき真紅に染めあげていた。連なる長椅子の濃い影のなかからいくつもの闇がわきあがり、人の形をなして這い出ると身をひきつらせながらバルナバーシュに殺到したが、かれは果敢に銀剣を鞘走らせ、敵の喉元を突き、首を宙にとばし、また振るわれた闇色の刃をはっしと受け止めつつ防御を切りくずしてその囲いを破っていった。
「セニサ!」
最奥に設えた石造りの祭壇には、求めていた女性が灰色の長衣を着せられた姿でぐったりと横たえられ、その前にはカレルが――顔の右半分を残して肉体のほとんどが溶け崩れ、ふくれあがり、繊維のように無数の触手や肉の細いすじがねじれながら波打つ異形となりはてた男が立っていた。かれはバルナバーシュの姿をみとめたが、かまわずに、くぐもった笑いをもらしながらセニサを取りこもうと腕だったもの――青と緑の宝石におおわれた触手の一本をのばしてゆく。カレルは理性をとどめながらも肉体そのものが異次元の一部と同化し、門の役目となって、彼女を混沌のただなかへと連れ去ろうとしているのだ。バルナバーシュは絶叫しながら、銀剣とともに大伽藍の祭壇へ駆けていく。近づくにつれ、カレルは肉体のあらゆる節々と裂け目から、この世のものではない光炎を噴き出し、みだりがましくも激しい様々な色相をまたたかせ、ゆがみ、ひしめき、抑制のきかぬ痴れきった力の波動を放ってバルナバーシュを押しかえそうとした。黄緑の熔岩があふれて泡だち、強烈に移りゆく奔流のなかで怪鳥めいた哄笑をあげ、己れを神だと驕った者の末路を見せつけながらも、カレルはいまもって禁術を自在にあやつり、セニサを、そしてジルヴァの街をも呑みこむべく異界の領域を拡げる古代の呪文を低くつぶやきはじめた――カレル、そして禁術に手を染めたものらが永遠と信じたかたち、完全だと思い描いた世界を手に入れるために。
バルナバーシュが永続的に放たれる波動に銀剣の切っ先を差しむけると、霊圧を切り裂くことができたが、それでも前進は困難なものだった。だが、セニサに魔手が巻きつき、門となったカレルのなかへ引き込まれつつあるのを目にしたとき、胸元から青白い光が差し、突如として白熱した! すさまじい力が流れ込んできて、横溢するバルナバーシュの肉体と精神は耐えきれず咆哮し、まばゆい魔力の青い光を剣から放ちながら床を蹴った。一足飛びに祭壇に躍りかかり、艶美な石に守られた触手を目にもとまらぬ剣速で断ち、宙高くへ斬り飛ばした。そして驚愕するカレルの、心臓と思しき肉塊のひだのなかへ銀剣を突き入れる。そのまま両手で柄を握りこみ、触手や肉のすじを引き裂きながら斬り上げてカレルの頭部を中心から両断した。カレルは自らの重みに潰れるようにして崩れ落ちたが、いまだ繋がったままの異次元のロジックに生かされているのか、身の毛もよだつ異形の悲鳴をあげながらのたうっていた。バルナバーシュはその姿に同情こそすれ、悪心や嫌悪を覚えることはなかった。
「すまない、カレル……」
まだ目を閉じて眠るセニサに息があり、異常がないのを確かめると、バルナバーシュは彼女を抱きあげて急ぎ大伽藍を脱した。もはや制御のきかなくなったカレルの肉体からは、異次元の際限なきゆがみ――現次元には抑えきれぬ未知のロジック――があふれ続けており、その先触れにさらされたあらゆる物体は変質し、カレルと同じようにねじれてのたうち、でたらめに様々な生命が生まれ、数分ともたず息絶えて腐り、甘い熱を発するおびただしい死骸の海をなしていった。そうしてゆがめられたジルヴァの大聖堂が、灯台たる尖塔が、灰色の静寂の街と、そのかけがえのない歴史のシンボル――目に見えぬ象徴的な存在――が、儚いまぼろしだったかのように崩壊していく。跡形もなく。ふたたび隠し通路を抜けて、〈月と海の浜〉まで避難したバルナバーシュは、セニサを砂浜に横たえながら、火勢の増したジルヴァの街が巨大な葬送のなかで燃えて灰に帰していくのを茫然と眺めていた。愛おしく、懐かしきものへの憧憬のように。
ゲルダットという国は遠からず終わりを告げるだろう。十の都市のうち、八つはいまだ禁術に酔いしれ、一つはいま眼前で灰となり、残された一つだけが小さな光の欠片――希望の寄る辺だった。〈オールドクロウ〉の家門が治める、ゲルダット最西端の都市、ウィルミギリアなる土地だ。西方の多民族国家、ハンターレクとの交易が盛んで外交政治に長けた都市だが、このままゲルダットが異界の力にあふれた魔境と化せば、ハンターレクへと吸収されていくのかもしれない。それでも、ウィルミギリアには様々な可能性が残されている。バルナバーシュ家の屋敷も無事に守られていることだろう。
馬も船もない。街道は野盗が目を光らせているので危険だ。セニサを背負ってウィルミギリアへ向かうためにも、いまは休まねばならなかった。あるいは目覚めるまで待つのがいいのだろうが、あの葬送の光景を彼女が見てしまったら、という不安がバルナバーシュの心中でまさっており、可能なかぎりジルヴァからは離れておきたかった。ジルヴァの街を治めつづけた家門〈灰の乙女〉の直系たるセニサもまた、街へとってかえし、ともに灰になろうとするのではないかと、その彼女を果たして私に止められるのだろうかと、バルナバーシュはひとり苦悶しつづけた。あらゆる秘密と呪いが海底に眠るとうたわれる〈月と海の浜〉の、寄せては返す波の音楽的な音を聴きながら。異界とのつながりが断たれた月は、もとの真珠のごときゆたかな色あわいを取りもどし、ひとつの終わりと始まりの解放を穏やかに静観していた。
白地のカーテンが初夏のそよ風に揺れ、なにものかの訪れと錯覚した意識が机でまどろんでいた頭をもたげさせたが、目を巡らせた狭い書斎には自分以外の者はだれもいなかった。心地のよい昼下がりだった。絨毯のない板張りの床も、乳白色のやわらかな左官壁も、また棚や調度品も簡素な一室だったが、父の代から長年仕えてくれた使用人が亡くなるとともに離れたウィルミギリアの屋敷よりも風通しはよい。あのあらまほしき思い出の残る家から去るのは心を焦がすばかりだった。だが、もうひとりの――みずからとさして歳の変わらぬ女性使用人がいとまを得ると、そこにささやかに住まい、いまは屋敷とともに思い出を守ってくれている。それは彼女自身の願いや意思だったが、やるべきことを終えたあかつきには、家族を連れていつでも帰ってきてよいのだとも言ってくれた。
扉がほとほとと叩かれ、ひとりの女性が部屋をおとずれた。長い銀灰の髪を編んで束ね、薄手の白いチュニックと藍色のスカートを爽やかにまとったセニサだった。あの美しかった灰色の長衣の姿は、ジルヴァの街が失われた日から一度も目にしていない。思い出してしまうのだろうかと思うと心苦しかった。
セニサは薬草茶の器を載せた盆を机におくと、そこに広げられている図面をしばらく一心に見つめていた。
「これが、あなたの描く未来なのね」
私の肩に手を置きながら、ものやわらかに彼女は言った。うなずき、私はそばにあった機工の残骸――あの日、荷物に入っていた見知らぬ機械仕掛けの腕――を手に取り、ためつすがめつ眺めてみる。そして窓の外へ目をやった。あれから十年の歳月が流れた……。ゲルダットという国は消え、その大地もまた各都市とつながった異次元からあふれだした力によって変容し、人跡は失われ、岩の多い野ばかりが広がるだけの辺境と変わり果ててしまった。太古の火山がふたたび目覚め、火を噴き上げ、おびただしく氾濫する熔岩によって大陸そのものを作り変えられたかのようだった。三千年以上も昔、神の怒りに触れて滅びた北方大陸より生き残りを率い、新天地を求めて〈竜域の海〉を越えてきた十賢者がここに叡智の小国を興したのだが、それ以前の支配者のない自然に立ち返ったのだ。東西それぞれの隣国であるハンターレクとミラの主導者たちは、ゲルダットが滅びたのちも魔術によって呪われた地として近づこうとはしなかった。しかし恐れ知らずの有志たちは、新たな土地、新たな富というまだ見ぬ夢をたずさえて、開拓に乗りだしはじめている。私たち二人もそのさなかにあった。
私とセニサは、開拓者の村で読み書きや様々な知識を伝える教師として、また有事の相談役として働いている。このまっさらな天地に流れてきた開拓民の多くは、ハンターレクやミラで貧困に苦しみ、またある者は迫害を受けて暮らし、教養を持つことの許されなかった境遇にあった。知識の伝授は、ここから長い時をかけて発展し、かれらとその未来を守る鎧ともなるだろう。
私はその暮らしのかたわら、開墾や土木��助ける機械仕掛けの自動人形の研究をしている。魔術で生み出せる自立式の泥人形、ゴーレムでもこなせるはずだが、いまは魔術に頼らずともすむ道も探さねばならないと考えるようになった。
(悪を滅ぼすのではない。悪を善に変える――それが過去をすら償い、みずからの手で運命を編みだす技となるのだろう)
私には、無知――怒りと恐れによって多くの書を焼きはらった悪がある。カレルを殺さざるをえなかった悪も。このゼロからの出発は、長い道のりとなるだろう。
開拓者たちが作物の世話を終え、切り株に腰かけて談笑している屋外へと放った目を、手に持った機械仕掛けの腕にもどす。腕は人体を模して精密かつ柔軟に作られ、もし本体に繋がっていたなら完璧とも言えるはたらきで動いていたのであろう。どこか���い国から流れ着いたのだろうか――しかし漠然とだが、この腕は手放してはならないものだと、いまでも感じている。守護、約束、呼びかけ、絆、思い出、夢……あの〈月と海の浜〉の水底から唯一、引き揚げられた甘くも苦い秘密、あるいは呪いの側面を持った愛。人知の及ばぬ遠いかなたの不可避のロジックによって私に結びつけられ、次元さえ越えてきたのかもしれなかった。
「セイン。これはあなたの懐中時計なの?」
セニサが図面をさして尋ねてきた。自動人形の核となるエネルギー源として、懐中時計とその動力の結晶体が役立ちそうだった。だがそれ以上に、この時計をこの子に、私の夢にこそ託したいと考えていた。そう伝えると、セニサはうなずきで同意を表した。
「それでも、私は託すだけだ。何を選ぶのかは、この子に任せたい。世界を作り出すのは、その時代を生きる者たちなのだから」
青く晴れ渡った天空を見上げ、思いを馳せた。過去、現在、未来の連なり――そしてあるひとつの象徴へと。はるかなる彼方にそびえる大樹の豊かな枝葉のさざめきが、空を往く風によぎっていった。
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Tom-a Hawk Missile Army Rules:トマホークミサイルを中心とした光の青の軍事行動のセオリー
トマホークミサイルをはじめとするこれらの兵器戦略は光の青の戦争行動の答えといえる。その仮定的な構想のアイデアを記述する。この記事で書いているミサイルについての情報は現実として実現しているものではなくもっと拡張的な構想を含めて書いている。【青:統合を信じている属性、光の場合善と統合を信じている属性】
大綱:
ミサイルを使えば例えば通常の高射砲のような直線的な弾道をとるものとは違い敵標的が進路を変えたり移動した場合でも標的に誘導して爆破できることになる。それが通常の弾道ではなくミサイルを使う理由である。ミサイルは機関銃などを使えば撃ち落とせるかもしれないが、大体は撃ち落とされずに標的を撃破できるものと思われる。パトリオットミサイルやスティンガーミサイルは小回りが利いたほうが敵標的を適切に追尾して撃破しやすくなる。
要はミサイルは敵兵力へのリーチが長いため、敵からの攻撃が届かない場所から発射して味方に損害を出さずに敵兵力を攻撃できる。どのミサイルも赤外線画像や光学画像を識別して両方の情報を斟酌した上で敵ユニットまで誘導する。
炸薬が毒性が強いと爆破後や命中外しした場合の処理のための爆発で周りに火薬が残存するため、環境汚染などの危険性が考えられる。施設自体は継続的に利用不可にしたいならむしろ汚染したほうが良さそうだが、周りの環境への影響や近隣の光の青の住民への健康被害、接収した場合の除染の手間や方法などを考えると、毒性が低いほうが良いと思われる。なるべく完全に燃焼する純度の高い環境汚染の危険性が少ない炸薬を使うことが推奨されるだろう。ニトログリセリンを使った燃焼率の高いTNT火薬や水素を使った燃焼時に水しか出さず水蒸気爆発する水素弾頭を使うと良いだろう。水素弾頭には燃焼に必要なので酸素弾頭も取り付ける。
どの手法を使う時でも敵軍に光の青が居ないかどうかはギルクラで調べなければいけない。敵軍に光の青が居る場合はそのユニットは撃墜しないように味方に指令を出す。また光の青の敵機にも光の青の自軍を攻撃しないようにコンタクトを取る必要がある。敵側の光の青のGCにツールを使って自軍に悪意がないことを確認してもらい、交戦を防ぐ措置を取らなければいけない。善人同士が殺しあっても意味が無い。光の青はVTがどこにでも生まれるためどこの国にでも生まれる。このことはBIOSで常識を知っている大人の子供はよく知っている。
トマホークミサイル:
トマホークミサイルは最も味方の損害が少なく敵施設をピンポイントに攻撃できるミサイルであり、遠隔攻撃の象徴とも言える兵器である。光の青は善人を殺してはいけないため、周囲に被害が及ばないよう目的施設のみをピンポイントで破壊する必要がある。
トマホークミサイルは爆破したい範囲を広げるために威力を上げたければ弾頭の火薬を多く入れられるように換装できるようにすれば良いし、航続距離を伸ばしたいなら多くの噴射剤を装填するように換装できれば良い。体躯が重くなるなら揚力用の羽根は大きくすれば良い。
地形照合するためには複数の偵察衛星の視差の角度で地形の高さを測るかあるいは測量に依って得られた地形データを使うことになる。地形照合用の地形データはギルクラが収得しても良い。GPSで誘導するのもありだが、通常のGPSは平和利用のためにしか利用してはいけないことになっているため、GPSの使える情報収集衛星を打ち上げる必要がある。風景照合誘導はスパイを派遣して風景写真を撮ってもらっても良いが、スパイに危険が及ぶためリスクが有る。
平行距離的に横から見た視線で遠くまで見れる偵察衛星というものがあっても良いだろう。撃ち落とすのは簡単ではないと思われるものの場合によって偵察衛星が敵に撃ち落とされないように注意しなければいけない。非常に簡易的な偵察衛星を複数打ち上げるのが対処策か。
今までのトマホークミサイルは光学識別で誘導するがこれだと昼間でないと出来ない誘導方法となる。GPSを使えば海上や昼間の誘導の補助になるし、夜の誘導のためにGPSを利用したり赤外線暗視装置や地形を検知するレーダーもミサイルの下部に装備して、昼間は光学と合わせてミサイルを地形画像識別して誘導する。
突入前に目標に外れることが確定した場合は空中で爆発させて被害を最小限に抑える。もし目標まで巡航できないと判断した場合は周回して再度ランデブーを試みるといいだろう。発射する際は敵のGCに命中航路を外される危険性があるため味方のGCで権限を引き上げて保護する。
地下施設に対しては弾頭を尖らせることに依って地面にめり込んで目的施設まで貫通させたうえで弾頭に装備したスイッチを発動させることでその後の時間を測り爆発させる方法が考えられる。この場合一旦上空まで飛翔させたうえで角度を確保して地面に突き刺さる方法が考えられる。
核弾頭を装備すると無差別殺戮兵器となる可能性が考えられるが、核の場合弾道ミサイルでも良いかもしれないし、また核はMADが働くためかえって冷戦状態の膠着状態��なるかもしれない。NO.6や国際世論やMADは核を認めない。MADが張られた状態ではトマホークミサイルを使うとかえって主に光の青が悪人の敵施設を攻撃できる。MADはトマホーク自体でも張られることになる。
トマホークは戦艦でも良いがより遠距離の標的を狙うために航続距離を伸ばすため、爆撃機や潜水艦から発射することが考えられる。潜水艦から発射するのは隠密行動としては効果的である。
海上から発射する場合、魚雷として海中を航行させてから海岸近くで空中に飛翔したほうがレーダーなどに発見されにくいため良いだろう。普通は空中を巡航してレーダーに発見されるより水中を航行してソナーで発見されるほうが敵には発見されにくいと思われる。水中でもソナーで地形を捉えれば所定の航路での航行を行うことが出来る。
多数の乱数関数を切り替えて飛行制御に使えばトマホークミサイルが高射砲に撃ち落とされないようにカオスにジグザグ飛行できる。低空を飛ぶことに依ってレーダーに発見されたり高射砲に撃ち落とされる問題を減らすことが出来る。おそらく実際のところは若干数は撃ち落とされることもあるが、大体は標的に命中するだろう。
水中地上いずれでも方位磁針を使うことに依って大体の航路を把握することが出来る。方位磁針は磁極と自転極はずれるため、これを考慮に入れて方位を測る。
アニメーションカーブから考えるなら、トマホークミサイルの軌道はなめらかな曲線を描くため正弦波に則って巡航するだろう。わざと軌道をずらせば高射砲に撃ち落とされる危険性を減らすことが出来る。
巡航のための航路は高く飛ばなければいけない山岳地帯や高射砲に撃ち落とされるような土地や光の青を含んだ一般市民が住んでいる住宅地は航路を迂回して避けたほうが良いだろう。発射前の航路のプログラムデータ入力画面は普通は曲線を描くと思われるが目的地まで飛べば良いため角々の航路入力でも良いのかもしれない。
AXISの青や闇の青や赤でも自軍への被害が小さいことや拠点を攻撃しやすいことをそれらの団体が評価すればトマホークを使う可能性はなくはない。光の青はこれらの団体に自軍の拠点を攻撃される危険性を考慮すべきである。基本的に絨毯爆撃の逆のピンポイント爆撃で一般市民や自軍への被害が小さいトマホークは光の青が好む戦略であるため若干善のために使われる領分のほうが多いと言える。
トマホークはリーチが長いため敵の防衛ラインを超えてその奥を攻撃できる。光の青と光の青はもともと撃ち合わず、闇の青は光を潰したいためトマホークを使うが光の青に反撃されて自身が殺されるのはさすがに嫌である。赤はトマホークを好まず絨毯爆撃を好むが少しはトマホークを使うことは有るかもしれない。AXISの青は互いにMADを張るだろう。パトリオットが配備されていると爆撃機を撃墜しやすくなるためトマホークのみが敵へのリーチとして有効な兵器となることになる。
地形の高解像画像を得られない場���は低解像の画像で地形照合修正するために若干高度が高いところを飛んで光学識別用の広めの地面の映像を得る必要性があるだろう。海中から飛翔して地上に届いたら若干高めを飛んでどの地帯に到達したのか地形照合修正で航路を把握して修正する。その後は低空を飛び所定の軌道を維持する。
ジョイント・スターズ:
もっと局地的にはジョイント・スターズやステルス爆撃機を使って誘導しミサイルや爆弾を落とすのも同様の手法である。大規模戦闘を行うならジョイント・スターズを使った隊規を組んだRMAは最善の戦闘方法である。要は情報を使った敵の索敵・誘導を使った効率の良いピンポイントな攻撃・兵力の適切でスムーズな移動・後方からの滞りない物資の補給である。
本来は末端まで全体の指揮情報が伝わったほうが問題の発生時に適切に対処しやすいため、上部の情報まで伝達しておきたいところではあるが、情報の流出を防ぐため末端までは上部の指揮情報は伝えないほうが良いだろう。末端には任務遂行に必要なだけの情報を伝達する。機密情報はGCの権限を引き上げて保護して秘匿する。
上が裏切った場合は従うかどうかは下部の集合が判断する。ただし上層部に離反があった時のために、兵士が自分の所属を再決定するための認識を得るために使える自由に通信できる通信ネットワークを整える必要性が考えられる。上層部の命令が信用出来ない場合GCの隊長に敵が光の青かどうかを調べてもらい戦闘を回避することで善人の犠牲を防ぐことになる。GCの隊長に対しては天命や日頃の態度観察で善を信じているか信用できるかを隊員は判断する。
パトリオットミサイル:
迎撃のためにはパトリオットミサイル【これは意趣名であって正確なパトリオットミサイルとは別のもの】を装備したほうが良いだろう。拠点周り一定距離に射出口を配置して、敵からの襲撃時に迎撃に発射するために使う。敵戦力が自軍拠点に到達するまでになるべく多くの敵機を撃ち落としておけば迎撃のための自軍の損害を減らせる。射出口はセキュリティークラックを受けないように専用の有線の回線で繋いで、迎撃のためのシグナルを出して発射する。この場合拠点周りに索敵用のレーダーが要る。
動的には射出口ではなく車両を配置してミサイルを撃たせても良い。パトリオットミサイルの長いリーチを利用すれば車両を撃破されることを少なくして敵への牽制に出来る。射出口を設置するのは無人で迎撃して操縦者の危険を減らすためである。パトリオットも外れた場合は周りへの被害を防ぐため時限設定で自爆するようにプログラムする。
スティンガーミサイル:
ゲリラ戦をやるならスティンガーミサイルが良いだろう。敵の航空機や車両をロックオンして移動する敵ユニットでもミサイルで誘導して爆破する。スティンガーミサイルは戦車でも爆破できるくらいの威力がある。
敵味方が入り交じる戦闘地域ではまとめて全体を爆破できないため、銃を使って歩兵で踏み込んで交戦することになる。人質を取られた場合は特にである。物陰から打てるカメラ付きの長射程のマシンガンは有効である。空間制圧用に手榴弾は装備、防弾チョッキは帯着し、十手ナイフは雑用に所持する。あとはこれらの歩兵は防弾ガラス装備の車両で移動する。
正規軍の場合ゲリラ戦は撤退時に行うものだろう。撤退のための退避路を確保し時間稼ぎを行うためにゲリラ戦を行う。レジスタンス組織ならゲリラ戦は重要で主要な戦闘方法になる。
アパッチヘリは普通は歩兵への牽制力は強力だと思われるが、敵歩兵がスティンガーミサイルを装備していた場合簡単に撃ち落とされてしまうため、自軍への被害が大きくほとんど意味が無い。かえって対ヘリ戦をやるならスティンガーミサイルを装備するべきである。
ハープーンミサイル:
【これは意趣名であって正確なハープーンミサイルとは別のもの】通常の機関砲などと比べてより遠くに居る敵に長いリーチを確保したうえで打てる中距離で打つ誘導ミサイルである。例えば海戦になった場合に味方艦からハープーンミサイルを打って一定距離に居る敵艦艇を撃破するために使うことが考えられる。
このミサイルは艦船のレーダーで敵を捕捉した後、赤外線画像や光学画像を識別して敵艦艇の識別情報を入力し、敵艦艇の移動などに依る映像の見え方の変化を予測しながらそれをロックオンして追尾することに依って敵艦艇を敵からリーチが届かない範囲で撃破するミサイルである。ミサイルのカメラは発射時点から敵艦艇を補足している必要性がある。
#トマホーク巡航ミサイル#ユニバーサル規格#索敵#パトリオットミサイル#スティンガーミサイル#ピンポイント爆撃#Mad#ジョイント・スターズ#RMA#ミサイル誘導#長射程マシンガン#ハープーンミサイル
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D&D第5版 ダンジョンマスターズガイド導入のすすめ(その3) ●魔法のアイテム 剣と魔法の世界に出てくる道具は、ときに我々の想像もつかないような能力を秘めています。そんな魔法のアイテムがずらりと並んだリストは、そのひとつひとつがシナリオの出発点となるでしょう。 単純に能力が上がっている武器や鎧だけでなく、空を飛び自動的に攻撃を防ぐ盾や他者に魅了の魔術をかけるメガネ、「つらぬき丸」のように危険を知らせる剣、大量の水を吸収しておける粉など、シナリオのギミックとして使うのに適した魔法の道具がいくつも収録されています。 それら魔法のアイテムの来歴や特徴(持つと運が良くなる、蝶がよってくるなど)をランダムに決める表も付属しています。魔法のアイテムを決めてからダイスを数回振るだけで、「巨人族が敵対者を倒すために作り出した決して壊れぬ魔法の剣」なんて設定ができあがるのです。ここから、「巨人族と敵対していたドワーフから、忌まわしいドワーフ殺しの剣を探すように依頼される」といったシナリオを広げることができるでしょう。 表の中には「ポーションを2種類いっぺんに飲むとどうなるか」や「巻物の発動に失敗した場合どんな事故が起きるか」なんてものもありますし、呪われたアイテムや、特定の使い手を選ぶアイテムのルールも存在します。「ある血筋にのみ振るうことができる魔法剣」とか「ある部族しか知らない合言葉を言うことで中からエレメンタルが飛び出す宝石」など、キャンペーンの軸になりそうなものを手軽に創造することができますよ。 魔法のアイテムの設定やデータをいちから決めようとすると、強すぎたり弱すぎたり、便利すぎたりして、バランス取りに苦労するものです。これら魔法のアイテムのリストを活用することで、そういったバランスの崩壊を防ぎつつ、プレイヤーに伝説的な事物に関わる冒険を楽しんでもらうことができるでしょう。 ●DMのコツ ダンジョンマスターのやることは、シナリオを組んで、ミニチュアを用意して、それだけでは終わりません。本番はプレイヤーたちとの、テーブルでのやりとりです。「ゲームの運営」パートには、そんなDMのコツが様々に語られています。 DMはどんな話し方がよいのか、プレイヤーにはどう話してほしいのか、ダイスの出目を公開することと非公開にすることのメリットは? 欠席したプレイヤーのキャラクターはどう扱う? セーヴィング・スローはどんなときにさせたらいいの? インスピレーションはどんなときに与えるのが適正なのか、NPCや敵に遭遇したときの彼らの態度は? うまい「ロールプレイ」とは? イニシアチブのうまい管理方法は? ミニチュアを使った戦闘の処理方法は? etcetc…. すでにDMを何度も経験している方も、「これあんまりやってないかも」というコツが書いてあると思います。免許取得2年目と同じく、「慣れてきた」と思ったころがこういう細かいテクニックについておろそかにしがちなもので(スイマセン、ハイ)、普段感覚で決めているけど、実際にはもっと楽だったり楽しかったりする方法があるかもしれません。 以前書いたとおり、全部を読んで全部を覚えて全部を実践する必要はまったくありません。しかし、これらを一通り読んでおくことで、改善点に気がつけたりすることは非常に多いと思います。ある意味ではこの本全体の中でも最も重要と言っていいセクションなのではないでしょうか。 次回は紹介の(たぶん)最終回。そのほかのオプションルールについてご紹介します。
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. MEPHISTOメフィスト レザースニーカー WHITE サイズEUR6.5(25センチ相当) https://www.van-gincho.jp/item/RAINBOW-WHT-65-418/ GINCHOさんに合いそうです。と声をかけてくれたブランド、メフィスト。 当然、超有名ブランド。 知らない訳ではありませんでした。 ただ、店長のお店では一番高い靴は リーガルのサドルシューズ。 ここまで、良い靴、お値段の張る靴は 靴屋さんで売るべきでは? 靴をベースにしたセレクトショップならまだしも 僕は服をベースにしたセレクトショップ。 ちょっと、僕の能力に合わないと思います。と 何度かお断りしたのですが ありがたいことに、ブログやインスタを読み込んでくださり、そういうお店だから。と仰っていただけました。 サンプルを履くと、なるほど 履きやすいです。すんごく。 そいう事で、取り扱いを本格的に始めます。 自分が良いと思うものを。 そのコンセプトに忠実に。 メフィストはフランスのサルブールというドイツとの国境エリアに本社があります。 ドイツはコンフォートシューズが盛んな国で 実はメフィストの創業者もドイツ人です。 コンフォートシューズの源流を組みながらも、ファッション性の高い靴を作りたいという志からメフィストは生まれました。 1965年の創業以来、すべてヨーロッパで職人の手によりハンドメイドで作られています。 メフィストと最大の特徴は 「ソフト・エア・テクノロジー」という靴底に入っているエア(空気)です。 ナイキのエアをイメージしていただけるとわかりやすいのですが、メフィストの靴のすべてにこのテクノロジーが採用されており、国際特許も取得しております。 さらに、革靴の製法であるグッドイヤー製法に、このソフトエアテクノロジーを組み合わせた製法は世界でもメフィストだけが持っている技術です。 素材は100%本革を使用しており、靴底はすべて天然のラバーを使用しています。 靴底に入っているインソールにも天然ゴムを使用しており、足を入れた時のまるで絨毯を踏みしめたような感覚はメフィストにしかない独特のものです。 創業当時から家族経営を続けており、一過性のトレンドに流されることなく、オーセンティックな靴を作り続けてきました。 世界中の靴底を快適にするという企業理念のもと、かたくなまでに手作りを続けてきたまっすぐな職人気質のブランドです。 メフィストのアイコンモデルである この「RAINBOW」は創業当時から作られているレザースニーカーです。 まさにメフィストの顔。代名詞です。 当時から変わらない作り方で50年以上世界各国で愛されています。 RAINBOWはメフィストを代表するモデルで、最初履いた瞬間は「ん?」という不思議な感覚にとらわれます。 幅が広めで、靴底が固いような、柔らかいような。 デザインは履いたほうがスッキリ見えるような感じ。 今まで履いたことがない靴であることは違いないと思います。 僕もそうでした。 足全体を包み込まれているような、包み込まれていないような、そんな感じです。 実はこれが、コンフォートシューズを源流とする靴づくりの哲学なのです。 足の甲とかかとをひもで固定し、それ以外の部分はゆとりが出るように設計されています。 素足のまま歩いているような感覚、履けば履くほどおどろくくらい自分の足になじんできます。 デザインは一見ボテっとしたように見えますが、これが何にでも合います。 特にジャケパンスタイル、アイビースタイルには綺麗にはまります。 ぜひ一度試してみていただければと思います。 <<MEPHISTOメフィストの由来>> ルネッサンス期ゲーテの名作ファウストの登場人物に出てくる悪魔の名前メフィスト。 悪魔ですが、ファウストに並ぶ主役の一人で メフィストによりこの世の享楽を与えれるという構図で 悪魔=悪い、というより、伝説的で、クールなイメージ。 ドゥカティというイタリアのバイクにも「ディアベル」というイタリア語で「悪魔」という意味のモデルがあったり 中国のEC企業、アリババと同じく。 ブランドの緑のMマークも悪魔の表情をかたどっています。 あと創業者の名前がマーティン・ミカエリなのでイニシャルがM・MなのでMにこだわったのではないかという説も。 1965年創業当時ヨーロッパ、西欧文明において悪魔の存在こそが 宗教・文化・社会を貫く力学的原理として近代ヨーロッパの絶えざる発展の原動力となった という思想があったよう。 またブランドの名前としては、メフィストシューズはメンテナンスを継続することで一生履ける靴であり さらに履き心地が快適なことから 一度履くと取りつかれたようにこれしか履けなくなる という意味から悪魔のように取りつかれたようになる、という意味合いも。 ブランドに込めた思い。諸説ありです。<(_ _)> (メンズショップGincho) https://www.instagram.com/p/CNzJRy2DJ-L/?igshid=1dvdl6cdpo7x5
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