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【530ZINE を街中でゲリラ配布します】
5/24(月)~5/30(日)にかけて水色のポリバケツをゲリラ的に街中に設置して配布します。
ゴミ箱へダイブする体験を通して、ぜひ自身の手でZINEを拾い上げて欲しいと思っています。是非ご参加ください。ゴミ箱の中にあるも��はもう使えないものでしょうか?まだ使える可能性のあるゴミではないものかもしれません。本当はゴミですらないのかもしれません。

〈概要〉
配布期間:5/24(月)~5/30(日)
時間:14:00-17:00(25日 13:00-16:00 / 28日 12:00-15:00)
ゴミ箱設置場所(予定):
5/24(月):キャットストリート ROXY前付近
5/25(火):表参道 GYLEビル前
5/26(水):渋谷ハチ公前 with Spiral Club
5/27(木):WORKING GLASS HERO
5/28(金):ICU(国際基督教大学) バカ山 *ICU学生以外入場できません。*12:00-15:00
5/29(土):COMMUNE
5/30(日):代々木公園噴水前 with Spiral Club
〈530week 2021〉
2021年の530weekのテーマはレジリエント(resilient)。
2020年に出現したコロナウイルスの猛威により、明日明後日の状況も読めない不確実性に囚われてしまった私たちの生活。そんな日々に、そして未来に対して私たちは耐久性(resilience)をつけていく必要がある。
ただ、未来が読めないなんて話は世界的パンデミック発生の以前にもあっただろう。地球環境のこと、人権・政治のこと、そして私たちが捨てるゴミのこと。中国が2018年にプラスチックゴミを、2021年には古紙の受け入れを停止した。不要なものを誰かに押し付けてきた私たちは、自��にモノを捨てることができない時代に入っている。ここでゼロウェイストについて考えることは、私たちの暮らしの未来のレジリエンスを考えることに繋がるはずだ。
今回、レジリエンスをテーマに、530メンバーの寄稿 NEUT Magazine ディレクションによるyaeさんのアートワークを表紙に、さらには同ウェブマガジン編集長の 平山潤 との対談記事、Spiral Club が発行するスパイラル特別号を掲載したZINEを100部限定で作成。暮らし、社会、働き方、多様な角度からそれぞれが思う「レジリエンス」が綴られています。ZINE製作にあたり限定部数での刊行としたのは、一度誰かの手に渡ったものがまた次なる人の手に渡って欲しいからです。手にしたものを誰かに共有して欲しいと思っています。
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【530week 2021 は ZINEを製作しました】 2021年の530weekのテーマはレジリエント(resilience)。 2020年に出現したコロナウイルスの猛威により、明日明後日の状況も読めない不確実性に囚われてしまった私たちの生活。そんな日々に、そして未来に対して私たちは耐久性(resilience)をつけていく必要がある。 ただ、未来が読めないなんて話は世界的パンデミック発生の以前にもあっただろう。地球環境のこと、人権・政治のこと、そして私たちが捨てるゴミのこと。中国が2018年にプラスチックゴミを、2021年には古紙の受け入れを停止した。不要なものを誰かに押し付けてきた私たちは、自由にモノを捨てることができない時代に入っている。 ここでゼロウェイストについて考えることは、私たちの暮らしの未来のレジリエンスを考えることに繋がるはずだ。 今回、レジリエンスをテーマに、530メンバーの寄稿@neutmagazine ディレクションによる@xxyae さんのアートワークを表紙に、さらには同ウェブマガジン編集長の@jun__hirayama との対談記事、@spiral_club が発行するスパイラル特別号を掲載したZINEを100部限定で作成。暮らし、社会、働き方、多様な角度からそれぞれが思う「レジリエンス」が綴られています。ZINE製作にあたり限定部数での刊行としたのは、一度誰かの手に渡ったものがまた次なる人の手に渡って欲しいからです。手にしたものを誰かに共有して欲しいと思っています。 手に取る場所は方法はまた今週中にお伝えします。 #530week #zerowaste #ゼロウェイスト #530 #ZINE #resilience #resilient #不確実性 #耐久性 #耐性 #捨てない https://www.instagram.com/p/CPCkJDgsMNM/?utm_medium=tumblr
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[Material:紙]:530 Tumblr VOL.8
2021.04.23 FRI 21:00:00
530はゼロウェイストなライフスタイルを様々なコラボレーターとともに作っていくコミュニティです。ゼロウェイストというテーマを今まで取り上げてこなかった様々な視点で書き残していきたい。物質的なゴミの減量にとどまらないゼロウェイストの奥深さを、読者の皆さんと一緒に探っていきたいと思っています。そんな想いのもと、2021年1月から隔週でニュースレターを配信しています。
ゴミだと呼ばれる地球にとっての大切な資源を扱う530の、様々なマテリアルについて掘り下げていく企画「Material」。
TEXT BY SATSUKI TATENO
紙は無くならない
前回の記事では、紙は文明や芸術発展に寄与した歴史について紹介した。と同時に、紙の代わりとなりうるデータ、パソコン、iPadの発達にも言及した。これらは本当に紙の代わりとなるのだろうか?ということについて考えてみたい。「書く」「伝える」「残す」「表現する」媒体であった紙はもう必要ないのか?
ペンで書く行為と、タイピングで文字を打つ行為はかなり別なものである気がする。では、iPadペンシルでノートをとる行為と、紙でメモをとる行為を比べた場合は?自分で筆を動かす方が、自由に書けて気持ちがいい。だから、紙でできていた行為を可能にするiPadのようなデバイスが生まれたのだろう。だとしても、完全に置き換え可能かと聞かれると、答えはきっと否だ。
保存目的だとしても、ハードディスクに落とすよりも紙で保存する方が長期間保存できることがわかっているし、デバイスは充電する必要があったり、新たに開発されると今使用しているアプリケーションが陳腐化していくことも考えられる。そしてなにより、書いている質感やモノとして手に取れるかどうかが大きく違う。大袈裟な例でいうと、絵の具を使って筆で色を付ける感触と、iPadペンシルで筆の大きさや色を選択して画面上にタッチしながら描くというのは違うだろう。
読む行為にも注目してみるとどうか。
あなたのそばに、何冊が本が置いてある。何とも思わず、その本を手に取る。途中まで読んでいたことを思い出して、感覚的に読んだ場所のページをめくる。もしお気に入りの本でよく読む章があるとしたら、すぐにそのページを開くことができるかもしれない。あなたの手が感覚的に覚えているんだと思う。その体験は画面上では難しい。
身体的な感覚に意識を向けると、紙という素材がどれほど私たちに豊かな体験をもたらしてくれているかがわかる。そんな風に自分の手で触れたり描いたりできる紙には、代わりなんてモノは存在しない気がしてくる。
紙は森からできている
紙はこれからも私たちにとってなくてはならないモノならば、紙はどうあるべきなのか?
普段使いして��る紙製品のほとんどは木からできている。木材の繊維であるセルロースを機械的に取り出し、紙の原料となるパルプをつくる。そのパルプから私たちの使う紙製品ができあがる。木材からつくられた新しい��ルプはバージンパルプと呼ばれ、紙の構成についてバージンパルプ何%、古紙何%と言ったりする。
日本はパルプの原料となる木材のうち70%近くを輸入に頼っている。輸入木材は低質材といって製紙以外の使い途があまりない木材で、かつFSC認証を受けている木材資源も多い。それでも、輸入先はブラジルやチリといったアマゾン地域、ベトナムやタイ、マレーシアなどの熱帯の東南アジア地域が目立つ。
これからも紙は無くなることはないけれど、その資源にはFSC認証がついているし、有機物であるし、再生紙としても活用されているから何の問題もない。本当にそうなのか、紙の進化はここまでなのか?FSC認証がついていれば熱帯林から輸入していても大丈夫なのか。会議資料や広告チラシは、絶対に紙という媒体に落とさなければいけなかったか。バージンパルプの量はこれからも同じ割合のままでいいのか。国産木材を使い、手漉きの技術でつくられる和紙の存在にもう価値はないのか。
このように、紙のありかたや素材を見つめなおす必要性を感じ生まれたのが「The Paper」だ。530の中村元気がコンセプト・企画を担当し、バージンパルプを一切使用せず建築廃材と古紙のみを利用してつくられた紙となっている。
テスト販売で店頭に並んだノートには、細かく粉砕された木材のあとが見てとれ、若干の書きづらさが残るような仕上がりになっている。筆者も普段使いで「The Paper」のノートを使用しているが、ノートを開いたとき、ペンが小さな凹凸に引っかかるタイミング、ざらざらとした表面に触れるたび、この紙は木からできていることを思い出す。

見つめ直すとは
あらゆる情報がデジタルに置き換わって、資源の無駄を無くすためにペーパーレスも謳われている。情報の保存に関しても、デジタルアーカイブのテクノロジーのこれからまだまだ発達するだろう。もしかしたら人間の方もデジタル化に適応して、タイピングの方が思考が整理しやすくなったり、画面上の方が創造性を発揮できるように進化するかもしれない。
紙という素材は、歴史を遡っても芸術・創造性を発揮するための一つの道具であった。今回リリースされた「The Paper」も、今まで紙が担ってきたクリエイティブな分野の活動を支える存在でありたいと考え���いる。これからの紙も芸術・創作活動の基盤であり続けるよう、デジタルな時代だからこそ素材を改めて見直さなければならない。
今だからこそ素材を見直そうというのは何も紙に限った話ではない。日々の暮らしで消費しているモノに対しても、何からできてどこからやってくるのか、どんなふうに大事にできるか、違う素材で作ることはできないか、そんなふうに想像することはとても大事なはずだ。その思考の積み重ねは、愛すべきモノと巡り合い、本当に豊かな時間を過ごすための糧となるだろう。
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[わたしのゴミゼロの世界 - my Zerowastism -]Riho :530 Tumblr VOL.7
2021.04.09 FRI 21:00:00
530はゼロウェイストなライフスタイルを様々なコラボレーターとともに作っていくコミュニティです。ゼロウェイストというテーマを今まで取り上げてこなかった様々な視点で書き残していきたい。物質的なゴミの減量にとどまらないゼロウェイストの奥深さを、読者の皆さんと一緒に探っていきたい。そんな想いのもと、2021年1月から隔週でニュースレターを配信していきます。上半期のテーマは、530メンバーの「わたしのゴミゼロの世界 - my Zerowastism -」。
TEXT BY RIHO MATSUMARU
はじめまして、松丸里歩です。
学生時代に530に関わりはじめ、現在は他にもFarmers Market、吉祥寺ハニカムプロジェクト、Allesgoodなど、食・コミュニティ・キャリアの分野での企画立案やプロジェクトマネジメントを通じて循環型社会のco-designにいそしんでいます。共同ホストを務めるポッドキャスト「COMポスト資本主義」では、個人・社会・自然のいずれかに負荷が偏っていない、本質的に豊かな社会のあり方を探っています。バシッと決まる肩書きはありませんが、人と人をつなぐことがライフワークの大事な一部になっているので、コミュニティ・コーディネーターとでも名乗ってみます。
日常の「食」から捉える、社会と自然のこと
ゼロウェイストや環境問題に取り組んでいる人のなかには、自然豊かな環境で育ったとか、親がそういった問題に関心が高かったとか、幼少期の体験が影響している人も多いように思います。しかし、私は大阪で生まれてからほとんどの時間を都市で過ごし、ごく一般的な家庭で育ったので、大学生になるまで環境問題を本気でとらえることはありませんでした。
では、きっかけはなんだったのか?
確固たるターニング・ポイントがあったわけではありませんが、私の価値観がじわじわと変わっていった背景には「食」に興味を持つようになった実体験がありました。
はじまりは、高校生の頃にホームステイをしたカナダでの食生活。肉中心のボリューミーな食事や砂糖たっぷりのスナックなど、(当時は美味しく食べていたのですが)栄養バランスの偏った食生活のせいで体調を崩し、個人の健康という側面から食について考えるようになりました。大学に入学すると、学内外での学びや体験を通して、世界での食料分配の不均衡といった社会問題、慣行農業や畜産による環境負荷など、毎日の「食べる」という行為が個人レベルを越えて社会・環境にも大きな影響をもたらしていることに気が付きました。
「つながり」が見えなくなった社会
「日常の食が、こんなに大きな問題につながっていたなんて」。当時の私は衝撃を受けました。それからしばらくはフードロス、有機農業など、「食の社会問題」に限定した取り組みをしていましたが、そこからまた新たな気付きを得ます。
全てはつながっている。
そう、私が再発見した「食と社会・環境問題のつながり」という構造は、なにも食に限ったことではありませんでした。個人の買い物、使う電気、そして、捨てるごみ。生活のあらゆる要素が、地域社会や遠く離れた国の人、自然環境とつながっていたのです。
本来は見えているはずの、ある物事(例えば、食べ物)がつくられる背景や、その後の行為(例えば、フードロス)がもたらす影響といった一連の因果関係やつながりが、生産と消費の分断やグローバル化、政治によって隠されている現代都市の荒波の中で、私たちは自分自身の生活の舵を取れているのでしょうか?
そんな違和感のある生活様式や社会構造から少しでも脱するために。誰かに気付きを与えたり、共に考えるきっかけにするために。ゼロウェイストのような、日常の中の「小さな抵抗」があるのでは、と思っています。

自然界には「ゴミ」なんて存在しない
「ゼロウェイスト」という英語は、私たちの屋号もそうであるように、しばしば「ゴミゼロ」と翻訳されます。しかし、「ゴミ」を「ゴミ」たらしめているものとは一体なんなのでしょうか。
数年前、すでに日常生活でゼロウェイストに取り組んでいた最中、「In nature, there’s no such thing as waste.(自然界には「ゴミ」なんて存在しない)」という言葉をどこかで聞いた私は妙に納得しました。それまでは、「ゼロウェイスト=ゴミゼロ」という言葉に対して「ゴミを本当にゼロにすることなんて無理やろ」と思っていた節があったのだと思います。しかし、この言葉が教えてくれるのは、「ゴミ」とはそもそも人間たちが作り出したもの。自然界では、役目を果たしたものは土に還るなど、分解されて新たないのちの一部になります。それに反して、人間は自分たちが過ごしやすくなるために、プラスチックのような自然分解されない使い捨て素材や、自然由来の原材料でもリサイクルされず燃えるゴミや埋め立てゴミになってしまう製品をたくさん作り出してしまいました。「waste」という言葉には「ムダ」という意味合いもありますが、便利さを追求するあまり、気づけば私たちの生活にはムダなモノが溢れてしまっています。毎週の「燃えるゴミの日」に軒先に放り出される、ゴミ袋の山をまじまじと見ていると、このゴミたちは本当に必要だったのか?と悶々としてしまいます。
生産のあり方を変えるための「小さな抵抗」
人間のモノとの付き合い方が自然界の循環に近い形に少しずつ戻るためには、「生産」側の大胆な変化が不可欠。「消費者」が問題に気づき、いくらゼロウェイストの努力をしたって、生産状況が変わらなければ無念になりえます。必要以上にモノを作らない、長持ちする設計やかんたんに修理できる設計にする、自然由来の素材や、リサイクル可能・リサイクルされた素材に切り換える、などといった変化が必要です。従来の生産量と生産方法を維持したまま、「エコな製品ライン」を追加したところで、状況は良くならないのです。
こんな生産の問題と変革の必要性を強く感じた上で、まだ問題に気づいていない人と一緒に考える機会を生み出すため、そして社会や経済界に対して共に意思表示をするために、ひとりひとりの生活者に自分なりの「小さな抵抗」を日常的に実践してほしい、と私は思います。そんな「小さな抵抗」のひとつがゼロウェイスト。他にも、プランターで野菜を育ててみるとか、破れた服を自分でお直しして長く着るとか、あなたなりに楽しみながら実践できる「小さな抵抗」があると思うので、なにもこれを読んでいる皆さんに向かって「ゼロウェイストを目指しなさい!」と叫びたいわけでもありません。日常生活で出すゴミを限りなくゼロにすることとか、野菜を自給自足することがゴールではなく、不完全でも「抵抗」してみるその行動によって自分の周りに小さな渦を生み出すことができれば、社会システムの大きな変革につながるかもしれないから。
と、少々難しい話になりましたが、頭をかたくして考えなくても、ごはんは割り箸よりもマイ箸で食べる方が口当たりよくて美味しいと思ってます。

(#EverydayActivism - サステナブル・ライフスタイルについて発信するWebメディア、pebble magazineのロンドンでのイベントにて。マイスプーンと、会場で責任を持って回収・コンポストされていた紙カップ。)
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[Material:紙] :530 Tumblr VOL.6
2021.03.26 FRI 21:00:00
530はゼロウェイストなライフスタイルを様々なコラボレーターとともに作っていくコミュニティです。ゼロウェイストというテーマを今まで取り上げてこなかった様々な視点で書き残していきたい。物質的なゴミの減量にとどまらないゼロウェイストの奥深さを、読者の皆さんと一緒に探っていきたいと思っています。そんな想いのもと、2021年1月から隔週でニュースレターを配信していきます。
ゴミだと呼ばれる地球にとっての大切な資源を扱う530の、様々なマテリアルについて掘り下げていく企画「Material」。まずは、4月にリリースを控える「紙」について。
TEXT BY SATSUKI TATENO
次の誰かへ「伝える」
伝えること、それは人間からは切っても切り離せない行為である。
1万7000年以上前に描かれたラスコー洞窟の絵には、馬や雄鹿などの動物の姿が残されている。描いた人々の意図するところはわかっていない。警戒の必要がある動物を選んで描いたのか、何か宗教的な意味合いがある動物が選ばれたのか。現在に生きるわたしたちは意味を推測するが、それ以前に絵の美しさ、色鮮やかさに感動する。もう一つラスコー洞窟の壁画の特徴として、ひとの手形が残されていることがある。手形を残した動機については諸説あるが、その中に「わたしはここにいた」ことを表しているという説がある。ここでも今を生きるわたしたちと、過去に何らかの思いで絵を残したひととの間にコミュニケーションが生まれている。

ラスコー洞窟の壁画は、1万7000年前にも創作活動と思われる行為があったことを示す。水や食料の獲得が容易ではなかったはずの時代に多くの時間を当てられ創られたものだ。何かを表現したい、と思うのは本能の一つなんだと思う。そして表現したいという欲は、次の誰かに残したい、別の人に見て欲しいという思いにつながる。つまり、何かを書いて表現することは記録するという結果を伴う。
どのようにして人間は「書く」ようになったか。ヒトは他の動物よりも大脳を大きく発展させ、言葉を使うようになった。また、5本の指を持っていることで、今ではペンを持ちまたキーボードをタイプする。
「伝えたい」「残したい」「表現したい」という欲求を満足させるために、人間は道具とも呼べるテクノロジーを発展させてきたのではないだろうか。
書写素材の発展
紙が誕生するまでに書写素材として使われていたものは、石、粘土板、パピルス、樹皮、羊皮、木、竹など多くの素材があげられる。粘土板は安価で書きやすい素材であっただけでなく、釜で焼かれると耐久性を獲得し長期間保存するという願いを叶えた。使用期間は三千年以上にもわたり、紙が使用されてきた期間よりももっと長い。パピルスは世界に輸出される素材になるが、それは被覆加工剤の役割をパピルスの乾いた樹液が担ったことで、インクの滲みを抑えたり、書き直すことを可能にしたことが大きかった。もちろん石や粘土板よりも軽く、持ち運べるという点でもパピルスへの移行は納得できる。しかし、パピルスはデルタ川下流域が最も生育に適しており、多くを生産することはできず、どんなに地中海全域でパピルスの需要が高まっても��価な素材であり続けた。
パピルスの使い手は主に書記官であったが、高価なパピルスを扱う書記官になるには勉強の期間が必要だ。その際には、書き直しのできる素材がそばにあった。もっとも長い間使用されたのは蠟板である。この蠟板が登場すると、書いては消し、書いては消しという行為が可能になる。そうして書記官だけでなく、徐々に一般の人間も一時的に書きたいという欲求を満たすようになった。それまでは何を書こうにも半永久的に残る粘土板や、用が済めば捨てるとは決してならない高価な素材しかなかった。ちょっとしたメモ、計算の補佐、文書の下書きなどにはうってつけの素材が誕生したわけだ。
紙の発明
紙の発明はいまだに謎に包まれている。紙という素材は、目に見えないほどの大きさのセルロース繊維から成り立っている。セルロース繊維は植物の構成単位のひとつで、光合成によって作られるブドウ糖がつながってできており、世界でもっともありふれたオーガニックな化合物だ。セルロースを分離させるには、切って叩いて煮てふやかすという長い工程を踏まなければいけないが、なぜかこの工程を中国人は発見した。
それまでは絹からできた大変高価な帛書というものを使っていた。それに代わり、安価で生産できる紙が中国の世界には広がっていった。そうして中国人は紙の通になった。帽子、衣装、凧、提灯、扇を紙で作り、葬式には紙を燃やし、祈祷にも紙を使った。紙コップやトイレットペーパーも中国の発明のようだ。製紙法は日本にも持ち込まれ、書写素材以外の用途を見出したのは中国と同様だった。手漉き紙に運勢を書いて売るおみくじ、神聖な場所には特殊な裁ち方と折り方によってたくさんの角が作られた御幣、ガラス窓の代わりの障子、紙で作られた唐傘など。紙は日本文化の大事な部分を担うほど日常に溢れていった。
中国で紙が作られるようになって、もちろん知識の蓄積のための文書としても活躍したが、特筆すべきは書道calligraphyの発達だろう。書道は美しく文字を書く芸術だが、それ以上に個性を表現する芸術であった。毛筆が描く太い曲線や細い曲線、はねや止め、また書かれる言葉も、書き手の個性を表している。ときには見事に書かれた一文字が、一つの芸術品として壁に掛けられることもある。イスラム圏に製紙法が伝わったときには、コーランが一字一句、句読点までも正確にさらに美しく写されることが基本とされ、精美だが華やかな芸術が生まれている。

紙という素材に触れる人が増えることは、それだけ「書く」ことを知る者が増え、書の美しさを究める者が増え、新たな芸術や文化の発展に寄与する。紙が発明されるまでの歴史は、わたしたちが「書く」ことが日常化していく過程だ。中国やイスラムをはじめ、紙を獲得した地は書道を中心に芸術的な分野を発展させる。このことは、これからの紙を考えるにあたって何を指してくれるのか。今ではノートパソコンやiPad、電子データのような新しい道具を手に入れたわたしたちにとって、「書く」「伝える」「残す」「表現する」媒体であった紙はもう必要ないのか?はたまた、これまで見落としていた紙の特性を見出すのだろうか。
【参照資料】
“The Past We Can Never Return To – The Anthropocene Reviewed.” YouTube, 24 May 2020, youtu.be/YbgnlkJPga4.
Kurlansky, Mark. 紙の世界史: PAPER 歴史に突き動かされた技術. Translated by 川副 智子, 徳間書店, 2016.
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[わたしのゴミゼロの世界 - my Zerowastism -]大川硝子工業所:530 Newsletter VOL.5
2021.03.12 FRI 21:00:00
530はゼロウェイストなライフスタイルを様々なコラボレーターとともに作っていくコミュニティです。ゼロウェイストというテーマを今まで取り上げてこなかった様々な視点で書き残していきたい。物質的なゴミの減量にとどまらないゼロウェイストの奥深さを、読者の皆さんと一緒に探っていきたい。そんな想いのもと、2021年1月から隔週でニュースレターを配信していきます。上半期のテーマは、530メンバーの「わたしのゴミゼロの世界 - my Zerowastism -」。
TEXT BY OKAWA TAKENOBU
こんにちは。オーカワです。墨田区で家業でもあるガラスびん会社の代表をやっています。おそらく530メンバーの中では年長者の部類で、かつ実は環境問題云々には疎いタイプの人間です。コンポストもやってないし、マイバックもよく忘れるし、ジュースが飲みたくなればペットボトルも買います。でも環境問題な事柄には興味あるし解決したいと思う。そんなどっちつかずで、且つモノづくりな立場と一消費者でもある私が思う「ゴミゼロの世界」について。
直ぐにゼロウエイストなんて無理!でも、
先に言ってしまうと、これだけドップリと物で溢れて便利な生活に慣れてしまった現代人が急激に「全人類ゼロウエイスト!」なんて無理な気がする。綺麗事や正論だけ並べて解決できるほど楽な事柄ではない。考えて欲しいのは、人それぞれ仕事も趣味も生き方も生活の仕方もバラバラ。どこに重きを置くかも個人の自由。そんな中、全く意識がなかった人に「ゴミをなくすためにコンポストしようね!」なんて話しても「いやいやそんな暇ない。そもそもその堆肥どこで使うの?私植物とか育ててないし。」という流れが現実だ。ご多分に漏れず私もどちらかと言えば「そんな暇ない。仕事と子育てで生活は満たされている。」という感じ。そして仮にこういう考えを押し付けてしまうと、最悪その人の大切な何か(趣味とか時間とか)を奪ってしまうことになりかねない。でも、反面同じ意識を持つ仲間が増えないと、現状の世の中では一向にゴミが減らないのも事実。そうゴミゼロへの道は非常に悩ましく険しく一筋縄ではいかない。だけど、それはもしかしたら考え方や捉え方次第で光は見えてくるかもしれない。
ゴミが知育玩具に早変わり
私は食べ終わったお菓子の箱や使い終わったトイレットペーパーの芯などは、性格的に物で溢れている環境が好きではないのですぐ捨ててしまう。(家族は私を捨て魔と呼ぶ)ある日3歳の息子の幼稚園から「ご家庭で要らなくなった箱などは工作で使うので都度持ってきてください。」というお達しが来た。息子はその箱たちを切ったり貼ったり手を加えながら毎日楽しそうに工作をしている。私にとってのゴミは、実は可愛い息子の知育玩具となっている。空き箱がゴミ箱に行こうが、息子の幼稚園での遊び道具になろうが、捨て魔の私の目の前から消えるので、ぶっちゃけどっちでも良い。でもゴミ箱→燃えるゴミ→ファイヤー!より、息子→楽しく遊ぶ→脳みそ刺激→空き箱で何を作ったか家族で会話→息子の成長を伺える機会の創出!の方がどう考えても建設的でコスパも良い。当然出来上がったものは後世に残すべき芸術品ではないのでホトボリ冷めれば、燃えるゴミ→ファイヤー!ではあるが、これだけ有効に使えれば十分に役割を果たせていると言える。この時代ある程度は文明から生み出された物を使って生活をしないといけない訳で、どうしたって地球や自然と調和しにくいゴミは出てきてしまう。でもそのゴミにどういうプロセスを踏ませるか?を考えるだけで、ゴミがゴミとして成立するまでの時間は稼げる。延命治療みたいで何だかネガティブに聞こえるかもしれないけど、この考え方や発想が、大きかったり大量に���生してしまうもので実現すれば、かなりの効果はあるのではないだろうか。
チョイスできる購買
最近何かとプラスチックの事が問題視され、最も身近な存在でもあるペットボトルが標的にされている。日本にペットボトルが登場したのは1977年にしょう油の容器として採用され、その数年後に飲料用としても採用されたそうだ。1979年生まれの私。記憶を辿ると「びん→PET」「缶→PET」という変遷を肌で感じていたような気がする。しかしなぜPETボトルがここまで広まったのか?メーカー側からすれば「軽いし、扱いにそこまで気を使わなくてもよい」というメリットがある。しかしメーカー側がそんな仕事のしやすさを理由にペットボトルの使用を推し進めたわけではなく、単に消費者側の「ライフスタイルの変化」がそうさせたのだ。 分かりやすい例として、専業主婦が当たり前だったころは、日中母親が食材の買い出しをしに街へ出掛けていた。多少の重い荷物はそこまで負担にはならなかっただろう。でも今はどうだろうか?こと都心部の共働きの家庭であれば、仕事帰り最寄り駅からの帰り道にスーパーへ寄り食材を調達。場合によってはその足で幼い子供を保育園にお迎えに行き、徒歩や自転車で家路につく。そんな毎日の負担を少しでも減らすためにも軽くて扱い易い容器に変わることは必然であった。なんて話をびん屋なので半ば自虐的に話す機会が公私ともにちょくちょくあったのですが、最近はこの話はもしかしたらもう過去の話なのかも?って気がしてきていて。 なぜならこのコロナ渦でネット販売は一層加速し、重たい物は自分の足を使って買いにいく必要はなくなったのだ。であればペットボトル製品でなくても、びん入りや缶入りでもまったく問題ないのではないだろうか?(配送にかかるCO2のなんちゃらとかはとりあえず置いといて) 消費者は選べる余地があるなら缶やびんの方をチョイスする。そしてメーカー側は同じアイテムでも消費者が容器のチョイスができるラインナップ作りを検討して頂きたいところ。「実はゴミを減らしたいけど、買うべきものは必然的にゴミが出てしまう」という場合もあるだろう。でも少し現場の意見として明るい話をすると、少しずつ変化の兆しは見えていて「環境の事を配慮してプラからびんへの移行を考えています。」という類の問い合わせが最近増えている。もちろんSDGs的観点もあるとは思うけど、「ユーザーからの要望」という話も大いにアリ。「売り手(生産者)が変わってくれないと、私たち(消費者)は変われない。」なんて思いがちですが、実は逆で私たちが変われば、売り手は変わります。昨今のマーケティング同様に環境問題解決も「川上起点」ではなく「川下起点」ってことかも。そしてそれが国や世界を変えるキッカケになったり。
常識はいつでも覆された
また、もし「ゴミゼロ」な思想や行動が、新たな趣味や生き方の一つに加わったらどうなるだろうか?例えば若者の中で「#ゴミ拾い」なハッシュタグが流行る。その流れを受けて各種アパレルメーカーがオリジナルのトング、ほうき、チリトリを発売。例えばコンポストが浸透しコンポスターなる人種が生まれ、コンポスト作りを競い合う。蕎麦屋の暖簾分けならぬミミズ分けとかが始まる。有名コンポスターのコンポストが高値で取引。1年待ちもざら。例えば街歩き雑誌では「東京バルクストア巡り」なんて特集が組まれたり、グルメ誌では「給水スポット味比べ」な企画が組まれたり。と半ばギャグ的に書きなぐったけど、イヤホンをして音楽を外で楽しむウォークマン、日本酒を気軽に楽しむワンカップ、ペットボトル入りの冷たい緑茶、電話を持ち歩く……。当時はだれもが考えもしなかったし、最初は受け入れられなかったけど、その後一般的になった文化や物は世の中に沢山溢れている。そう考えるとさ���きのギャグ的発想もリアルになることは十分にあり得るのではないだろうか?それに堆肥だって量り売りだって水筒を持ち歩くだって、実践するかしないかはさて置き日本人が今までやったことがある生活様式の一つ。廃れたものでも感覚的には受け入れることができる素養はあるのではないだろうか? と、最初からガッツリ否定的な内容ではじまった文章も、何だか最後は明るい前向きで夢のある文章に。深刻な事こそ明るく楽しく接して「あら!いつの間にか解決!」そんな感じでいけたらいいなと思ったり。モノづくりな立場と一消費者でもある私。どちらの気持ちも事情も察するところはあるんだけど、そこは生産する側も消費する側もお互いを認め合い、時にぶつかり合いながら切磋琢磨していく事で、より良い方向に向かっていくんじゃないかなとこっそり妄想しております。
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[Material:紙]
:530 Tumblr VOL.4
2021.02.26 FRI 21:00:00
530はゼロウェイストなライフスタイルを様々なコラボレーターとともに作っていくコミュニティです。ゼロウェイストというテーマを今まで取り上げてこなかった様々な視点で書き残していきたい。物質的なゴミの減量にとどまらないゼロウェイストの奥深さを、読者の皆さんと一緒に探っていきたいと思っています。そんな想いのもと、2021年1月から隔週でニュースレターを配信していきます。
ゴミだと呼ばれる地球にとっての大切な資源を扱う530の、様々なマテリアルについて掘り下げていく企画「Material」。まずは、4月にリリースを控える「紙」について。
TEXT BY SATSUKI TATENO
「紙」という素材が好きなわけ
あなたは紙を何に使っているだろうか?
電子書籍より、紙の本。
パソコン上でメモを取るより、紙のノートで。
スケジュールも、わざわざ自分の手帳に書き込んだり。
自分だけが見る、自分のためのノートがあって、そこに日記を書いてみたり。
早く、確実に、手間を取らないメール、という手段が手の中にあるのにもかかわらず、手紙という文化がなくならなかったりする。
あなたの生活に寄り添ってくれている紙は、きっと電子上のデータの無機質さからは遠くにある。自分の手で触れることのできる、罫線なんて気にせずに自由にペンを走らせて、落書きだってできてしまうような。そして、ときが経てば日に焼けて少しくたびれるような、そんな感覚を大切にしているのではないだろうか?
530はゼロウェイストな世界を目指しているのだから、無駄になるものを使うことには反対なのでは?とつっこまれそうな気もするが、、、そんなことはない。
むしろ、手にしたものを大切に扱えるその優しさとか、あたたかさ、人間っぽさは大事にしたいと思っている。ゆっくりと時間をかけて、自分の中にある言葉にならない言葉を白い紙の上に書き落としてみたり、実際の本の重みを感じたりしたいし、ページをめくるときに触れ合う紙の感触を忘れてはいけないと強く思う。
全てがオンラインで済まされる世界だったらどんなに寂しいだろう。
とは言っても、日常を過ごしていると、あれもこれも印刷されて、いつになっても読まない謎のパンフレットが会社や学校から配られることもある。すぐに捨てられたり、大切にされない、もったいない形で紙を使う必要はないと思う。また、電子化できるところは、どんどんしていくべきだとも思う。まだまだ現実と理想が掛け離れている現在において、私たちは紙という有限性をもった素材との向き合い方を再考する必要がある。

大量の紙を消費する私たち
実際に、2018年の日本の���民一人当たりの紙の消費量は201.8kgと言われている。(日本製紙連合会)
約200kgを超える紙って一体どれくらいの量なんだろうか?この数字の内訳が、ノートやコピー用紙とは限らないが、コピー用紙一枚がだいたい4gであることを考えれば、驚くべき数字だろう。
そして、日本は古紙回収の進んでいる国の一つではあるが、紙の消費量の20.6%は古紙として回収されていない。(OVOL 日本紙パルプ商事株式会社)つまり、とてもとても簡略化して考えると、200kg中の20%、40kgが最終的には焼却ゴミとして捨てられていると計算できる。もう一度、数字遊びをしてみると、40kgの紙は1万枚のコピー用紙に置き換えられる。
と数字遊びをしたのはいいが、この20.6%の未回収の紙は、トイレットペーパーなどの衛生用紙が占めているとも考えられる。だとしても、、、だ。約80%が古紙回収に回っているとしても、国民一人当たり年間160kgの紙製品を消耗している。この事実にも着目するべきであろう。
本当に私は、160kgもの紙を使っているのだろうか?
2020年はコロナウイルスの拡大でたくさんの時間を家で過ごした。ECで買い物を済ませ、本もたくさん買った。その荷物たちは大きなダンボールに入っていた。スーパーで並ぶ品物たちも、段ボールに梱包されていただろう。よく考えると、見知らぬ間に日常生活でたくさんの紙を消費している。
今後、私たちの生活に寄り添い、かつ大きな役割を果たしてくれている、紙という素材はどう扱われていく必要があるだろうか?
パルプの原材料である森林資源との付き合い方、そもそも紙というものがどうやって生まれ、作られたのかを紐解きながら、さらに紙のあるべき姿への理解を深めていきたい。
【参考文献】
“日本製紙連合会: 製紙産業の現状: 世界の中の日本.” 日本製紙連合会 | 製紙産業の現状 | 世界の中の日本, www.jpa.gr.jp/states/global-view/.
“図表:紙・パルプ統計.” OVOL 日本紙パルプ商事株式会社, https://www.kamipa.co.jp/wp/wp-content/uploads/2020/09/statistical_charts_202102_01.pdf
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[わたしのゴミゼロの世界 - my Zerowastism -]Yuri:530 tumblr VOL.3
2021.02.12 FRI 21:00:00
530はゼロウェイストなライフスタイルを様々なコラボレーターとともに作っていくコミュニティです。ゼロウェイストというテーマを今まで取り上げてこなかった様々な視点で書き残していきたい。物質的なゴミの減量にとどまらないゼロウェイストの奥深さを、読者の皆さんと一緒に探っていきたい。そんな想いのもと、2021年1月から隔週でニュースレターを配信していきます。上半期のテーマは、530メンバーの「わたしのゴミゼロの世界 - my Zerowastism -」。
TEXT BY YURI UTSUNOMIYA
はじめまして、宇都宮裕里です。2年前の530conference 2020にボランティアとして関わったことがきっかけで、以来メンバーとして活動をしています。普段は表参道でのコミュニティコンポストプロジェクト『1.2 mile commnunity compost』の運営をおこない、コンポストという資源循環と地域循環を都市部でつくっています。今回は、自分のこれまでを振り返りながら自分の中のゼロウェイストな世界のイメージを共有していきたいと思います。
なぜ?を感じる瞬間
私がゼロウェイストというコンセプトに興味を持つに至った幾つかの要素を振り返りたいと思う。もともと、環境問題には興味があった。具体的な動機は覚えていないが、小学4年生の頃(2005年ごろ)の授業の発表ではパワーポイントを使って背景を鮮やかな水色に彩り「ツバルの海面上昇」について取り上げたこともあった。なぜ日本とツバルが同じ地球にいながらツバルの人々が海面上昇の危機にさらされているのか、という素朴な疑問がわいたからだ。
それは、正しいとされていたり普通だとされている考え方があるにも関わらず、現実にはそれとは反対のことが起きている。なぜ、そういったことが起きてしまったか理由を知ることで、解決に近づくことができると考えている。
つまり、ゴミのポイ捨てをした人にポイ捨てをさせてしまう社会に対して、強烈に興味が湧いてしまうのである。
ポートランド留学
ゼロウェイストに興味を持ったもう一つの理由は、学生時代にアメリカのオレゴン州ポートランドへ留学し、環境学を学びながら「全米一住みやすい街」と言われる生活レベルとまちづくりを体感したことだと思う。この街は、住民や行政、経済性と環境性、都市開発と自然など実際にバランスの取れた都市だ。留学当時、街に対して環境やサステナビリティの理想郷というイメージを持っていて、この街で過ごせた期間は、自分にとって英語圏文化をインストールするだけにとどまらず、「人生を変える」ターニングポイントになったと思っている。
ゼロウェイストとの出会いを生んだ植物
元々漠然と環境問題に興味があった私をゼロウェイストという特定の問題にのめり込ませたのは、ヘンプ(大麻)という植物だった。留学先の授業のテーマでもあったプラスチックバッグを削減するための代替素材として、「ヘンプが来ると思う。」という、現地のクラスメイトの発言が妙に引っかかり調べ始めたのがきっかけだった。誤解のないように補足すると、ヘンプというのは、大麻の中でも酩酊成分(THCと呼ばれる成分)の含有量がごくわずかな品種のことを指し、いわゆるマリファナとは区別される。 そして、調べてみると資源としての有用性が昔から言及されていることを知った。ポートランドはマリファナ製品の販売が許可されていたし、路上でもその香りを感じることもあった。日本では大麻の所持は違法だが、その土地の文化を理解していたことで、そのものの存在を受け入れることができた。 ヘンプもまた、知れば知るほど興味深い。とくに、産業用の品種でTHCをほとんど含まないヘンプとその成分が多く含まれるマリファナが、そもそも日本では一緒くたに「違法薬物としての大麻」としてくくられる。これは、ノンアルコールビールで考えれば、度数があってもなくてもそれが「ビール」であれば規制されるということだ。物事には状況があるのに、どうしてそれを分解しようとしないのか、と思う。今振り返っても、ヘンプに反応したのは、自分にとっては自然だった。 そして、資源としてのヘンプの可能性を感じたのは以下のようなことだった。その茎は種まきから3ヶ月ほどで人間の背丈以上に成長し、農薬や化学肥料も必要とせず地球上のほとんどの場所で栽培が可能と言われている。しっかりと根を張るので、収穫後には土を柔らかくし土壌に空気の層を作り出す。また、過剰な施肥によって土壌内に蓄積され地下水汚染の原因にもなる硝酸体窒素を吸い上げ除去するという実験結果も出ている(出典:北海道ヘンプ協会)。そして、収穫後には余すことなく活用できるという点もまた、資源という観点では重要だ。例えば、茎は発酵をさせることで繊維を取り出し(精麻)、衣類の元になったり、種子は「麻の実」として調味料に使われていたり、中身のナッツやナッツを絞ったオイルはオ��ガなどを含むスーパーフードとしても現在注目されている。また、実用化こそ定着はしていないが、バイオ燃料としての可能性も期待されている。一方で実例としては、実際にメルセデスベンツやBMWの内装部品にヘンプフラックス(参考:https://www.hempflax.com/en/)という素材が採用されているほか、繊維を活用し調湿性や保温性などの特徴を活かした断熱材や茎の部分と石灰を混ぜ合わせたブロック(通称ヘンプクリート)など、建材としての活用例もある。 このように成長スピードが速い点や、余すことなく活用できるという点にヘンプの可能性を見出すことができる。とくに、日本も戦前までは盛んに栽培され、政府も栽培を後押しするほどの一大産業だったという歴史もあり、前述の活用事例以前から、日本人の衣食住を支えていたとも言える。 特に「住」の部分は興味深い。茎を発酵させ繊維を取った後の茎の部分をおがら(麻幹)と呼ぶが、繊維を取った後にそれを廃棄せず、有効活用をする。日本固有の住居のひとつである合掌作りの茅葺き屋根の下地として用いられていた記録があり、今でもその様子は白川郷の茅葺き屋根で見ることができる。(参考:https://www.asahi.com/articles/ASMBD5DJQMBDONFB010.html)。
わたしのゼロウェイストな世界
ヘンプが好きすぎて少し長くなったが、ヘンプを使って資源問題の一部を解決することができるのではないか考えている。ヘンプはプラスチックの原料��なりうるセルロースという繊維成分を多く含むため、理論上植物性のプラスチックを生成することが可能である。もともとプラスチックバッグを減らすための手段としてヘンプが使えないかと考えていたが、それを社会にインストールして産業として後押しされるようなしくみを作ることためには、まずは生分解性プラスチックの部分から組み立てる必要があると考えていた。 そんな中で、出会ったのが株式会社4Natureだった。資源の循環や地域の人の循環などを作りバランスの良い仕組み作りを構築している。もともと回収・堆肥化を見据えてサトウキビストローの販売をおこなっている。天然成分かつ生分解性のサトウキビストローを扱うことは、自分自身の関心である植物性プラスチックや、その機能をバランスよく社会に実装するためのしくみを考える実践の場としてとても刺激的な場であり、自然な選択だった。 現在、表参道で1.2 mile community compostという都市部での堆肥の行き場を考えるコミュニティの企画・運営をおこなっている。現在、行政のごみ焼却コストにも莫大な税金が投じられ、水分が約90%を占める生ごみを必死に焼却している。また、都市部での生ごみの処理は、狭いベランダやバルコニーでは活用方法に限界があったり、身近に畑も少ないことから生ごみの分解後の活用方法が課題となっている。 ただ、生ごみをなくすことはわたしたちが身近に取り組めることではあるが、堆肥になった時の活用の選択肢も同時に持っておくことも大切だ。ゼロウェイストという考え方に都市部でのコンポストを当てはめると、コンポストはあくまでも、ごみを出さない暮らしを実現するためのツールでしかない。 学生の時にヘンプに対して感じた可能性は、今現在4Natureで行っているサトウキビストローの販売やコミュニティコンポストなどに感じるものと共通していると思う。それは、これまで価値や可能性が見出されなかったものに対して、新しい価値を見出してバランスのよい社会の仕組みを構築するということだ。その仕組みが広がり、日常生活の中の行動が変わった先に、あえてお互い何かアクションをすることがちょっといいよねと思える社会になったらいいなと思う。
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[わたしのゴミゼロの世界 - my Zerowastism -]Risa:530 tumblr VOL.2
2021.01.29 FRI 21:00:00
530はゼロウェイストなライフスタイルを様々なコラボレーターとともに作っていくコミュニティです。ゼロウェイストというテーマを今まで取り上げてこなかった様々な視点で書き残していきたい。物質的なゴミの減量にとどまらないゼロウェイストの奥深さを、読者の皆さんと一緒に探っていきたい。そんな想いのもと、2021年1月から隔週でニュースレ���ーを配信していきます。上半期のテーマは、530メンバーの「わたしのゴミゼロの世界 - my Zerowastism -」。
TEXT BY RISA ARAI
こんにちは、りさです。大学卒業後、廃棄物管理の仕事に携わる過程でごみ問題を身近に感じるようになり、どうしたら問題解決ができるかを考えるようになりました。環境・社会問題の全体像をとらえ具体的な施策を学ぶために、現在はオランダのユトレヒト大学の ”Sustainable Development” プログラムで勉強しています。環境問題、サステナビリティ、ゼロウェイストといった一見いかめしいイシューを、胸にすっと落ちるような方法で伝えられれば嬉しいです。
いま、わたしたちが立つ場所
人類は約700万年前に誕生し、類まれな繁栄をきわめている種のひとつだ。およそ250年前の産業革命をきっかけに、わたしたち人間の生活はもっとせわしなく、そして豊かになった。それ以来、石器時代のヒトが見たら仰天するようなスピードで、わたしたちは次々と技術革新を起こしてきた。ついに、人口増という意味でもグローバリゼーションという意味でも、地球はすっかり狭くなった。現代に生きるわたしたちは、モノをつくり、使い、そして捨てることで更に便利で豊かな生活を享受している。
ものを捨てるということ、すなわち「ごみ」を生み出すということは、わたしたち現代人の特性のひとつだ。商品のパッケージごみや壊れた家電製品から、農薬や堆肥の残渣、二酸化炭素、核のごみまで。それらが自然に分解されたり還元されるまで、この数百年ほどの人類の進歩の歴史なんてちっぽけに思えるくらいに、途方もない年月を要する。暮らしの発展とともに増え続けるごみを処理する能力は、限界に達しつつある。
ひるがえってほかの生き物を眺めてみると、彼らはごみを出さない。例えば鳥の糞も死骸も、すべて生態系の枠ぐみの中でぐるぐると循環して無駄になることがない。脊椎動物の一種であるわたしたちはあくまで生態系の一部を成しながら、本来の自然のルールから外れて、ずんずんと危うい道を歩いている。
人間が危うい道を突き進んでいることについて、ずいぶんと前から警鐘が鳴らされてきた。1960年代からレイチェル・カーソンの『沈黙の春』をはじめ人間活動による環境問題が議論の的となった。1980年から90年代にかけて、国連が主導して各国が環境問題について本格的に議論するようになり、2015年には「持続可能な開発目標(SDGs)」が設定され、世界中のさまざまな分野―政治レベルだけでなく、ビジネスや市民社会でも―で共有された。
60年以上前から人間活動による環境破壊は取り沙汰されていたのにもかかわらず、今もなお問題は続いている、というよりも、ずっと深刻化している。今や地球の資源は枯渇しつつあり、温室効果ガスの排出によって気候変動が加速している。そして、それに呼応するようにさまざまな側面で―北と南の間、既得権益者ともたざるものの間、世代の間―の格差は広がっている。つまり、わたしたちは今「持続不可能な」世界に生きている。どうしたらこの大きな問題を解決できるだろうか。いや、たとえすっかり解決することはできなくても、少しでも社会をよりよい方向に導くには、わたしたちには何ができるだろうか。
分断する世界観
大量生産・大量消費の社会に暮らすわたしたちが抱えるごみ問題の解決策の一つとして、「ゼロウェイスト」―ウェイスト(waste)すなわち「ごみ/無駄」 をゼロにする―という考え方・活動がある。わたしたちがごみをまったく出さず、完璧な自然循環の一部になるにはまだまだ非現実的だけど、できるだけモノを新しく買わずに既に持っているモノを修理して長く使い続けることや、包装資材の少ない商品を買うことはゼロウェイストの第一歩だ。そんな風にゼロウェイストな生活を送ろうと努力していると、ごみ問題の深刻さや無駄だらけの消費社会に辟易することがある。
「みんな、なんでゼロウェイストの大切さをわかってくれないのかな?」
一見もっともらしいこの思考には、実は落とし穴がある。というのも、ゼロウェイストに一所懸命なわたしは、他の人のもつ世界観をすっかり見落としているからだ。
(出典: van Egmond & de Vries, 2011 を元に筆者作成)
この図は、人々がもつ世界観を四つの類型で示したものだ(van Egmond & de Vries, 2011)。もちろん、現実世界の人たちはこれほど単純化できないので、あくまでひとつのツールとして見てほしい。「世界のために、環境問題を解決したい」と思うあなたは、おそらく左上の「絶対的理想主義者」にあたる。一方で、「自分のまわりの生活が安定しているのが一番」と思うあなたは、右下の「主観的物質主義者」に該当するだろう。なにが言いたいかというと、人々がもつ世界観は絶対的なものではなく、「数あるうちの一つの世界の見方でしかない」ということだ。ゼロウェイストがどれだけ高尚な意味をもっていても、ピンと来ない人には理解しえないものなのだ。
人々の世界観はそう簡単には変わらないし、既存の伝統や仕組みも深く社会に根付いている。人は自分の価値観に合う人とつるみがちで、仲間同士でかたまることに安堵を覚える。しかし、異質なものを排除しつづけてしまうと、異なる価値観をもつ人との間に「分断」が起きてしまう。さらには「わかりあえない存在」として、憎みあったりさえする。トランプ前大統領が引き起こした現在の米国のすがたは、異なる価値観をもつ人々の分断のいい(悪い)例だ。環境問題は地球規模の危機に達しているのに、あいかわらず人々は分断し続けている。よくあるSFみたいに、エイリアンをやっつけるために人類が一丸となって立ち向かう、なんてことはない。
「この先、どうなるのかしら?人類は破滅の道を歩むの?」
そんなことは起きてほしくないな、とわたしは思う。個人の世界観や行動を変えるのが難しいなら、もっと大きな枠組みを変えられないかしら。「サステナブルな商品を使おう!」といったライフスタイルの選択の枠や個人の世界観の枠をこえて、何も考えずともルールに沿って行動できるような仕組みはどうやったらつくれるだろうか。
循環する社会を実現するために
わたしが思い描く「ゴミゼロの世界」は、自然の循環と人々の暮らしが両立した世界だ。そして、多様な価値観があることを認めながら、相克せずに共によりよい社会を目指すような世界だ。そのためには、現在の「持続不可能なシステム」そのものを変えていかないといけない。ここでいうシステムとは、人々の思想、行動を超えた大きな仕組みのようなものだ。具体的には、法律のようなルールであったり、確固たる社会規範であったりする。
例えば日本の分別の仕組みは、法律面やインフラ面で廃棄物処理のフローが確立していて、かつ社会規範としても「するべき」と人々に認識されているシステムのひとつだ。こうしたシステムは一朝一夕でつくられるものではなくて、多大な時間と政策レベルと草の根レベル両者の協力が求められる。最近注目されているサーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行も、システムチェンジの一例だ。移行を促すためには、政策やビジネス慣行を抜本的に変えることはもちろん、市民社会レベルでの理解と自主的な活動もどちらも並行して進められていくのが鍵になる。
理念的な話はさておき、今ここにいる私は、循環する世界を実現するために何ができるだろうか。目下しているのは、買い物や生活のなかでごみをできるだけ出さないようにしながら、システムチェンジのために必要な知識とコネクションを大学で培っている。ごみを全く出さずに生活しているわけでも、国連で気候変動についてスピーチしているわけでもなくて、個人の範疇でつつましいことをしているに過ぎない。だけど、実現したい未来に向けて着実に準備をしている実感がある。学びの期間を終えたら、ビジネスや政策レベルでの循環型社会の実現に向けた働きかけを行っていきたい。
システムチェンジは数人の力で一夜にして起こるものではないからこそ、多くの人と理想像を共有して時間をかけて備えることが大事だ。今起きているパンデミックは、こうした準備の延期のための言い訳にならない。持続可能な社会を目指すための活動は、今からもう始めなきゃいけない。人間はしぶとい生き物だ。大飢饉だってスペイン風邪だって克服してきたし、このパンデミックも乗り越えるにちがいない。ただ、その乗り越えた先にある世界が尊厳をもって生きるに値するような環境でなければ、そもそも「持続可能にする」ことになんの意味があろうか。
60年前から提起されている課題は、相変わらずわたしたちの目の前に積み置かれている。まるでため込んできた夏休みの宿題みたいだ。今わたしたちは8月の最後の週にいる。今やるべきことをやろう。世界観の相違を乗り越えて、よりよいシステムを、ひいてはよりよい社会をつくるために。
参照文献 van Egmond, N.D., de Vries, H.J.M. (2011). Sustainability: The search for the integral worldview. Futures, 43, 853-867.
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[わたしのゴミゼロの世界 - my Zerowastism -] さつき:530 tumblr VOL.1
2021.01.15 FRI 21:00:00
530はゼロウェイストなライフスタイルを様々なコラボレーターとともに作っていくコミュニティです。ゼロウェイストというテーマを今まで取り上げてこなかった様々な視点で書き残していきたい。物質的なゴミの減量にとどまらないゼロウェイストの奥深さを、読者の皆さんと一緒に探っていきたい。そんな想いのもと、2021年1月から隔週でニュースレターを配信していきます。上半期のテーマは、530メンバーの「わたしのゴミゼロの世界 - my Zerowastism -」。
TEXT BY SATSUKI TATENO
はじめまして、530インターンのさつきです。国際基督教大学に通い、中高生の頃はどうしようもできないと諦めていた環境問題と向き合い、先輩との縁で530weekと出会いました。昨年、授業でSATOYAMAイニシアチブという国際的取り組みを知ったこと、宮城にて百(momo)というコミュニティに出会ったことで、今は里山の暮らしに興味あり。札幌出身/東京在住の都市・消費型だった自分の生活に、田舎・自給自足型の要素を組み込みたく、つい先日コンポストの実験を開始。初回のニュースレターでは、そんな私が考えたゴミゼロの世界を綴っていきます。
ゼロウェイストという言葉を聞いたことはあるだろうか? ごみや、資源の無駄がない。とても素敵な考えに聞こえる。
しかし、そんなことって可能なの? 縄文時代くらいに遡れば、、、いや、そもそもごみがないってありえるの?人間が生きている限り、食べ物をつくるし、モノをつくるし、最後には捨てる。今の消費生活を続けるのなら、たしかに実現されないだろう。
今回の投稿では、私なりの現代版ゴミゼロの世界の青写真を書いてみたいと思う。
先人に倣うゼロウェイストな暮らし
ゼロウェイストを語る時に、江戸時代の暮らしがよく引き合いに出される。ほとんどは自然に還る有機的な素材でモノが作られていて、何度も使用して壊れたものは修理する。修理できないものはリサイクルしたり、土に還す。土に還るのだから、ゴミという概念は存在しなかった。天然でコンポスタブルな資源の利用に加え、社会の静脈産業ともされるリユース/リサイクルショップ、修理職人、買取業が身近にいたことも重要なポイントだ。
特筆される当時の産業のひとつに、下肥買いがある。下肥というのは人の排泄物である。大消費都市である江戸で買い取られた下肥は、農村で肥料として使用された。そうして農作物を育む土は、肥えた状態に保たれ持続可能な生産を可能にしていた。特定の地区の下肥を選んで買うようなこだわりを持つ農人がいたり、収入源として下肥を利用する江戸っ子もいたらしい。庶民の食生活が下肥の栄養素に直結するんだろうな、面白い。この例からは、農村から都市への一方的な供給だけでなく、都市から農村への矢印もしっかりと存在したということがわかる。
モノだけでなく、暮らしの工夫もたくさんあったようだ。打ち水などの冷の取り方。居住空間にも、風の道をつくりだす設計、日射を遮るすだれなどの家具、調湿機能の優れた土壁や漆喰の施行など。また、道をわざと泥道にすることで天然の空調機として機能させていたり。目に見えない熱エネルギーや空気の流れも無駄なく利用していた。
いやぁぁ〜、感服!なんだか資源がとても美しく回っている感じがする! 自然資源の特性・循環を考慮したモノづくり。一度手に入れたら長く使うという当たり前の認識。そして回収したり直したりする人の手が加わることによって、作り手と使い手の距離を埋められ、循環の輪がいつまでも絶えない。
自然から資源を拝借して、いろんな工夫をしながら何遍も使い、最後まで使い切ってまた自然にとっての肥やしになるように還す。そんなふうにモノや自然と付き合えたのは、手にしたモノを大切に扱えるような知恵や技巧を持っていたり、どう自然資源が循環するかを身体を通して理解していたり、自然からの恩恵を受け取ろうとする暮らしがあったからではないだろうか。限られていた生活範囲だったかもしれないが、その中で作り手や修理の職人・買い取りにくる人・ご近所さんとの絶え間ないコミュニケーションが自然と生まれ、自分の生活を豊かに彩り、そのような生活を支えている社会の働きを持続させていたのだと思う。
日々感じる消費社会への違和感
江戸時代から時は経ち、いったい今のわたしたちの暮らしはどうなっただろう?
まず、質問をしたい。「あなたが最近お金を払って買ったモノはなんですか?」 食材、日用品、本、衣服、家電?外食をしたか?コンビニに行ったか? ショッピング街で買い物?Amazonでぽちっかな?
欲しいモノは、なんだって購入できるようになった。生活必需品だって簡単に手に入る。とても便利だ。今では海・空・陸を介して世界各国が繋がり、まるで永遠に困らないかのように地球資源を使ってる。そして、無機物に囲まれ、修理もせず、壊れれば捨て、新しいモノを買うことができる。食物生産でも肥料は化学物質から生成し、排泄物はトイレに流してバイバイだ。
なんだかむずがゆい。次から次へと新しい資源を見出し、利用しているが、それは資源が枯渇するまで使うのだろうか?そんなに急いで地球資源を掘り出して、製品化して、捨てさせていいのだろうか?
経済活動の否定をしたい訳ではない。ただ、壊れてもすぐ買い換えられるように、安いモノを買う、流行が去れば捨てて新しく流行っている服を買うというのは、現状の産業���造では環境負荷が大きすぎる。それならば、長く使えるように大切に扱ったり、すぐに不要になるモノは選ばない心がけをするべきだと思う。
今の消費社会は、自然資源の貴重さ・社会の静脈部分の認識がごっそり抜け落ちてしまっているように思えて仕方がない。
ゴミゼロの世界へ
「何かを手に入れて自分の生活を彩ることを止める必要はない。」
大事なのは、あなたが手にしたモノをどれほど大切にできるかだと思う。そのためにはモノの背景を知っていたり、愛着のわく繋がりがあったり、壊れてしまったときに修理できる方法を身につけていたり、といったモノとの付き合い方を思い出さないといけないだろう。
江戸時代に倣って、わたしの理想のゴミゼロな世界案を書き残しておく。
消費量が少ない/消費スピードがゆっくり
焼却埋め立てする前に、何度も資源として使う
もっと理想を言うなれば、最後は土に還す
これらを実現するためには以下のことが必要だと考える。
あなたの購買力の再認識/再定義
モノづくりの過程に、不透明な情報・好ましくない製作背景がある商品にお金を払い、その商品やサービスを応援するのか。はたまた、いちユーザーとしてこれからの改善・将来世代まで残って欲しいという思いを持って対価を払うのか。わたしたちは購買力によって、社会を変えられる。
2.モノづくり側のデザイン
作り手がモノづくりをする際に、使い手に渡ったあとのことまで考えてデザインする。使い手に育ててもらうようにデザインするのか、再資源化しやすいデザインにするのか、あらゆる面でどんなインパクトを残しうるのか。作り手には、怠惰な方向に傾斜しがちなユーザーの「欲望のエデュケーション」をする役目があるはず。この言葉はデザイナーの原研哉が2003年刊行の『デザインのデザイン』の著書の中で語られたものだ。
3.修理しやすい/再利用されるサービス
現状の社会には、この静脈部分が圧倒的に足りていない。ごみ箱へ捨てれば、あなたとモノの縁が切れてしまう。作り手の顔も、届けてくれた人も、最終処分してくれている業者とも誰とも繋がることがないだろう。見落としがちな静脈部分にスポットライトを当てることで、誰かと繋がることのできる新しい、もしくは忘れてしまっているサービスを構築したい。
これらをどう進めていくことが必要なのだろうか。購買力については、個人の意識改革が行われないといけないと感じている。私自身は自分の持つお金が世界を動かしてる!ほどの勢いで、購買力を意識するようにしている。また、身の回りにあるモノのデザインを未知化して自分ならどう作るだろうと考えたりもする。昔からある職人技や生活の知恵から学ぶものは大いにあると思い、自分の身体で学びながら、530の活動や日々の生活でアウトプットしていきたい。一般社団法人530は、企業とコラボして、捨てられてしまうものをもう一度商品化するアップサイクルという事業があり、私はその活動の一端を担いたい思いで手伝ってる。
そうして、今の社会に埋もれている「もったいない」資源やシステムが、ひとつずつ変えていくことで、いつの日か私的なゴミゼロの世界が実現すると信じています。
大事なことはたいてい面倒くさい
わたしの好きな言葉で
「大事なことはたいてい面倒くさい」
という言葉がある。
宮崎駿監督が、作業中に口にした言葉。「あぁ、面倒臭い。面倒臭えぞ。」と何度も何度も嘆いているなかで、ぽろっと発した言葉だ。
楽で便利でなにも考えずにすむモノに飛びついてしまう気持ちもよーーくよーーくわかる。でも、よりよい生活、よりよいモノづくりが生まれる土壌は、今生きているわたしやあなたの日々の選択にかかっているのではないか?
一夜にして理想の世界に変わっていればいいのに、、、そう思うこともしばしば。でもそんなことは起こらない(笑)だから、面倒くさいかもしれないけど、意識する。そして、この面倒くささは、生きていく上で大事なことなんだと。それは案外楽しいもんですよ!
【参照記事】
三井住友フィナンシャルグループ, 江戸の暮らしに学ぶ、新しい循環型社会の在り方, https://www.smfg.co.jp/sustainability/report/topics/detail086.html
IDEA FOR GOOD,「日本文化に学ぶサステナビリティ」江戸時代の循環型社会から学ぶサーキュラーエドノミー 【イベントレポート】https://ideasforgood.jp/2020/08/17/circular-edonomy-1-report/
ecotopia, 理想的なエコ社会!江戸時代のリサイクル技術が素晴らしい, https://ecotopia.earth/article-213/
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「530huddle-ゴミゼロ相談所-」 12月12日(土)のイベント『530week winter 2020』での530huddle-ゴミゼロ相談所-のブースに立ってくれる530メンバーとその仲間たちの紹介・第二弾!! 14:00-14:45 野村優妃 @yu_cafe_hi DLINK STRAW 代表 / Strawmaestro 世界一ストローに詳しいと豪語するストローマニア。様々な素材の個性を活かしドリンクごとにストローを選べる時代を創造する次世代ストローブランドDLINK STRAWを立ち上げオリジナルストローとして食べられるキャンディーストローを開発。カフェの中で消費を見直すきっかけを仕掛ける事業を準備中。 15:00-15:45 大川岳伸 @takenobuokawa 大川硝子工業所 代表取締役 @okawaglass 1979年墨田区生まれ。2008年に大川硝子工業所に入社。 創業100周年を迎えた2016年に5代目代表取締役に就任。近年は東京デザイナー学院との取り組みをスタートさせ、ガラスびんの新たな可能性を見出す商品開発や、廃番寸前にあった自社商品を自らリブランディングし再リリースを行う。また渋谷を中心に活動している530weekに所属し、ゴミ問題の解決にも取り組む。 【イベント概要】 ・12/12(土) 12:00-18:00 ・Shibuya CAST. ガーデンスペース #ごみゼロ #ゴミゼロ #ゴミゼロ相談所 #ゼロウェイスト #0waste #530week #DLINKSTRAW #大川硝子工業所 #大川硝子 #ゴミ問題 (渋谷キャスト/Shibuya CAST.) https://www.instagram.com/p/CIhWBbdlCd_/?igshid=19o90jzrgter8
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【ゲスト紹介:530huddle-ゴミゼロ相談所-】 12月12日(土)のイベント『530week winter 2020』での530huddle-ゴミゼロ相談所-のブースに立ってくれる530メンバーとその仲間たちの紹介・第二弾!! 16:00-16:45 小野りりあん @_lillianono_ 環境活動家・モデル スパイラルクラブ共同設立 @spiral_club Green TEA ~Team Environmental Activists設立 @green.tea.official 1989年八戸生まれ札幌育ち。 できるだけ飛行機に乗らず、環境活動家を尋ねる世界一周の旅の実践から、気候変動へのアクションを発信している。気候ムーブメントを広げるべく、さまざまなプロジェクトをオーガナイズしつつ、ひとりからでもできる様々なアクション方法を発信している。2020年春には、気候変動や社会に対して声を上げ、活動する人たちが集うアクティビストハウス @activistshouse をはじめる。 17:00-17:45 大山貴子 @takako.ohyama fog inc. 1987年仙台生まれ。米ボストンサフォーク大にてエルサルバドルでのゲリラ農村留学やウガンダの人道支援&平��構築に従事、卒業。ニューヨークにて新聞社、EdTechでの海外戦略、編集&ライティング業を経て、2015年に帰国。 日本における食の安全や環境面での取組みの必要性を感じ、100BANCH入居プロジェクトとしてフードロスを考える各種企画やワークショップ開発を実施後、株式会社fog創業。人間中心ではなく、人間が自然の一部として暮らす循環型社会の実現を、プロセス設計、持続可能な食、行動分析、コレクティブインパクトを起こすコミュニティ開発などから行う。 【イベント概要】 ・12/12(土) 12:00-18:00 ・Shibuya CAST. ガーデンスペース #ごみゼロ #ゴミゼロ #ゴミゼロ相談所 #ゼロウェイスト #0waste #530week #環境 #スパイラルクラブ #GreenTEA #気候変動 #食 #フードロス #循環 #循環型社会 #持続可能 (渋谷キャスト/Shibuya CAST.) https://www.instagram.com/p/CIfbKJ1FioY/?igshid=1gsdkczm0r3d3
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【ゲスト紹介:530huddle-ゴミゼロ相談所-】 12月12日(土)のイベント『530week winter 2020』での530huddle-ゴミゼロ相談所-のブースに立ってくれる530メンバーとその仲間たちの挨拶・第一弾!! 12:00-12:45 ノイハウス萌菜 @m0namona コミュニケーション・コンサルタント / の〜ぷら No Plastic Japan 代表 @noplasticjapan / 一般社団法人530(ゴミゼロ) 理事 1992年生まれ。イギリス育ちのドイツ人と日本人のハーフ。今は一児の母。 日本に引っ越してきてから周囲の「使い捨て」の多さに敏感になり、一人一人ができるところから変えていくべきだと感じ、プラスチックストローの代替品となるステンレスストローブランド「のーぷら No Plastic Japan」を設立。環境保護を自分ごととしてとらえ、それぞれが無理なく日常に取り入れられる環境保護活動やそれに繋がる行動を提案し発信している。 サステナビリティに関する活動を行うグローバル企業との連携プロジェクト、コンサルティング、広報を務めるなど、より持続可能で循環型のビジネスやライフスタイルを提案している。相談所ではライフスタイルに関する内容や、エコママとしての視点を提供! 13:00-13:45 佐藤李子 @rico0729 自然電力株式会社 エナジーデザイン部 @shizen.energy.group 自然エネルギーをつくり・広める自然電力株式会社に勤務。電気のことって考えたことない、という方、考えてみたけどわからないことがたくさん、という方、ぜひお話ししましょう。個人プロジェクトとしてアップサイクルのブランドも運営しており、大きな課題をどう身近にとらえて行動していくか!?ということに日々取り組んでいる。 #530week #ごみゼロ #ゼロウェイスト #0waste #相談 #NoPlasticJapan #自然電力 #DLINKSTRAW #大川硝子工業所 #大川硝子 #foginc #boomerangbags #ブーメランバッグ #CATstreet #キャットストリート #青山ファーマーズマーケット #FarmersMarketUNU #原宿 #harajuku #エコバッグ #ecobag #ショッピングバッグ #レジ袋 #レジ袋削減 #サーキュラー #循環 #地域活性化 (渋谷キャスト/Shibuya CAST.) https://www.instagram.com/p/CIcilVDl8j_/?igshid=16w1ngm08ot3x
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【ペットボトルつぶせるリサイクルBOX】 12月7日(月) 〜 12月12日(土)、Shibuya CAST. のガーデンスペースにて株式会社伊藤園と共同で進める、新しいペットボトル回収ボックスの実証実験を実施します。 ボックスをリデザインすることで、今まで回収できていなかったペットボトルを回収して、確実にリサイクルにつなげる(ボトルtoボトル)回収ボックスを実際に使っていただきます。 プロトタイプ版であり、これから多くの課題と向き合っていきながらいいものにしたいと考えています。530としてペットボトルの使用を推奨するものではなく、今目の前にあるペットボトルゴミの問題や海洋プラスチック汚染対策の一つの表現活動として協力しております。何と言ってもお茶は急須で飲むのが一番ですよね! プレスリリース https://www.itoen.co.jp/news/detail/id=25658 概要 12月7日(月) 〜 12月12日(土) (初日12:00から、最終日20:00まで) Shibuya CAST. ガーデンスペース #530week #winter2020 #CATstreet #Harajuku #ShibuyaCAST #伊藤園 #ペットボトル #海洋プラスチック問題 #おーいお茶 #リサイクルボックス #リデザイン (渋谷キャスト/Shibuya CAST.) https://www.instagram.com/p/CIZPTyglpX8/?igshid=fou4gou45at6
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【DIY KIT コラボレーションアーティスト紹介】 今回DIY KITを企画するにあたり、アーティストとコラボレーションすることによって、多くの人の生活に中にboomerang bagsの考え方が浸透して欲しいと考えています。売上は仕組みのさらなる強化に使用させていただきます。 DIY KITの購入はこちらから⬇︎ https://530week.official.ec/ 今後もコンセプトを理解してくださるアーティストと積極的にコラボレーションしていきたいと考えています。 横沢ローラ 「物語」を歌う日本の女性シンガーソングライター。宮沢賢治、遠野物語や各種絵本とミュージカルに影響を受け、学生時代にジャズ研でドラマーとしての活動を経たのち、ボストンの音楽大学にてJAZZ、R&B、ゴスペルのシーンを学ぶ。2011年に帰国後、現地のミュージシャンたちとレコーディングをした自身のアルバム2枚と、アレンジャー、キーボーディストの安部潤氏プロデュースでジャズ・フュージョンの名曲をリアレンジしたアルバム「Fusion-O-Potamus」をリリース。シロツメクサとカエルの物語や、世界一の男と結婚しようと思っている蚊の話など、ユニークな切り口とその世界観を形にした、飛び出す絵本のような立体CDジャケットや、絵、動画などの作品は、クリエイター、女性やキッズにも人気が高い。 https://www.laurayokozawa.com/ 小林ななこ 文化学園大学で染織を学んだ後、ロンドン芸術大学チェルシーカレッジオブアーツのテキスタイルデザインコースを卒業。 物の見方や価値観を更新するものづくりを目指す。ロスフラワーを使用したプリントや古着のアップサイクルなど、出来るだけ既にある物を活用して制作する。 https://www.nanakokobayashi.com/?fbclid=IwAR30BCDrqGqpXed5glpEb4tsulTC79rufiKyxH9PamKXr43Y1gA_xMq3Gos (渋谷キャスト/Shibuya CAST.) https://www.instagram.com/p/CIQygAVFtJz/?igshid=13crzxhpnz3r3
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【FOOD TRUCK】 イベント当日は530メンバーやキャットストリートに馴染みのある皆様が出店してくださいます。普段は食べれない特別メニューでお待ちしております。 1 YAWYE by CHOP COFFEE 2019年7月からスタートしたCHOPCOFFEE の新ブランドYAWYE (ヤウエ) 環境、カラダに優しいをテーマとし、魚と野菜、お米は愛媛の無農薬の玄米を使用しています。和食テイストにスーパーフードなどを取り入れ、食べ応えや栄養バランスを考えたお弁当を毎週水、木曜日で販売しています。 https://www.chopcoffee.com/ 2 OME FARM KITCHEN 青梅市にて農業と養蜂を営むOme Farmが運営するフードプロジェクト。普段は浅草橋"焼鳥うにか"の2階では無農薬・無化学肥料で育てた野菜を中心にタパスや食堂料理をご用意していますが、今回はShibuya CAST.まで出張します! http://www.omefarm.jp/ 【イベント概要】 ・12/12(土) 12:00-18:00 ・Shibuya CAST. ガーデンスペース #530week #wenter2020 #CATstreet #Harajuku #Organic #CHOPCOFFEE #YAWYE #OMEFARM #FOODTRUCK (渋谷キャスト/Shibuya CAST.) https://www.instagram.com/p/CILO6Ewl_aO/?igshid=1eiv1l68fk656
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