エルリの香水の話
《この記事は》
Celesさんの推し活企画(https://www.celes-perfume.com/product/oshi_katsu/)で、香水をお願いした記録です。
《依頼文》
パブリックでの姿とプライベートの姿、それぞれを内包した、奥行きのある香水が欲しいな〜!というのが譲れない願望だったので、世界観等は一切省略し、人柄に焦点を絞って文章を書くよう心がけました。
それから、来る日も来る日も誰かの推しと向き合っていらっしゃるであろうスタイリストさんに、長文を送りつけるのもよろしくなかろう、ということで、推しの説明は、1香水につき原稿用紙1枚程度に定めています。(実際は、1枚半くらいになってしまったものもありますが……)。
実際に送った説明文は以下のとおりです。
◆エルヴィン
体格がよく、190cm近くあります。
金髪の七三分けで、彫りが深く、老成した雰囲気がありますが、大きな瞳が控えめな幼さを面影に添え、アンバランスな魅力を形作っています。
瞬きをあまりしません。平生は、物静かに周囲を観察しています。
しかし有事とあらば雰囲気は一変、類稀なる演説力で場のイニチアシブを握り、人を導いてゆきます。
仕事は自ら先頭に立って采配を振るいます。よく通るテノールの声で、末端の人間にまで、的確な指示や励ましの声をかけることを忘れません。
その仕事ぶりから、部下からの信頼は非常に厚いのですが、一方、結果のためには犠牲を問わぬ傾向が強く、悪魔のような人、と罵られてしまうこともあります。
知的探求心が強く、それをどこまでも追い求めたがる無垢な幼さを有していますが、その性質のせいで、間接的とはいえ、唯一の肉親を死に追いやっており、罪の意識にとらわれています。
その贖罪と、贖罪の障害となる好奇心を押し殺すうち、次第に、己の本心を人に話さなくなりました。
彼の本音は、ひとりの腹心だけが、正しく理解しています。
推しの名を、エルヴィン・スミスと言います。
◆リヴァイ
身体能力が抜群に抜きんでており、その力で数々の窮地を捩じ伏せてきた、誰もが一目を置く存在です。
小柄な東洋人風の出立ちで、センター分けの前髪から覗く瞳は三白眼。目つきだけでなく口も悪く、近寄りがたい雰囲気を醸し出しています。
見た目のせいで人となりを誤解されがちですが(事実恐ろしい人なのですが)、実際は非常に面倒見がよく、部下に慕われています。
神経質ともいえるほどの綺麗好きで、いつも清潔感のある身なりを心掛けています。
嗜好品として、紅茶をこよなく愛しています。
生涯の魂の主と決めた相手がおり、彼が己に何を望むのかを的確に見極め、その望みを叶えることに全力を注ぎます。
冷静さと抜群の決断力・行動力を有しますが、彼が絡むと、感情が先行し、判断力がやや低下する傾向が見られます。
幼少期、親代わりの伯父に置いていかれた過去があり、以降、慕っている人に先立たれる運命に見舞われがちです。
そうした運命に翻弄されるにあたり、大きな決断を迫られてばかりですが、自らの意思で選択肢をし、どのような結果でも受け止める覚悟と度量があります。
生涯の魂の主と決めた相手との望まぬ別れも、彼が、自分自身で終止符を打ちました。
推しの名を、リヴァイと言います。
今読み返すと、占いの診断文みたいですね。
《試香の記録》
注文から12日後に発送準備に入った連絡が入り、14日後に商品が到着しました。
開封して4時間くらい、この2本の香水に遊ばれていたように思います。悔いはない。
以下記録です。
◆エルヴィンの香水/ディプティック - フルール ドゥ ポー
2019年に、特別香水賞、ならびに女性香水賞最高賞を受賞したオードパルファン。
「女性」の文字に、「celesさんと私の道は分たれたのだ!私の文章が至らないばかりに!」と反省会をするところからはじまりました(※なおcelesさん的にはこれはユニセックス香水)。
そんなこんな、自分の至らなさを散々大袈裟に悲しみ、おそるおそる舐めるように香りを嗅いだ感想ですが、
ねぇリヴァイ、君エルヴィンからこんな香りがして大丈夫なの?息できる?
でした。えっこれ……やばない……?
公式サイトの商品紹介文言は以下の通り。
ーーウォルプタス(快楽の意味)という名の娘を生むことになるプシュケとエロスの神話の愛にオマージュを捧げます。
この伝説を表現する香りがムスクです。「フルール ドゥ ポー」のムスクはコットンのように柔らかく、ふんわりとして、心地よい香り。
アイリスとアンブレットシードがムスクの香りを引き立て、触れられるかのような錯覚を覚えます。
(https://www.diptyqueparis.com/ja_jp/p/fleur-de-peau-eau-de-parfum-75ml.html)
か、かいらく……!
アンブレットシードとは、麝香の代用品。麝香は、過去媚薬として使われることもあったムスクのことですが、その香りには「気持ちを前向きにする、不安解消」などの力があると言われているようで、これはたぶん、推し説明の際に力説した、観察をベースとした助言と鼓舞のあたりを汲んでくださったのだろうなと……
あと、アイリスは、有事の際にオリンポス山と人間界の橋渡しをしていく女神の化身と言われた花で、調査兵団団長への餞か⁉︎と大騒ぎしました。
(なんでもこじつけて喜ぶことができる女です。特技なので見逃してください。)
で、肝心の香りの印象なのですが、最初、当たりがキツいんです。はっきりとスパイシー。たぶん、ピンクペッパーの香りなのですが、これが、しだいに燻るように引き下がってゆくと、なんだか古書の香りが立ち上がってくるんです……ち、父との絆の源にある、歴史書のことですか……?のっけからありがとうございます……
あとちょっとファーストインプレッションがとっつきにくいの、最高です、解釈に合います。
あとに続くのは、泡立ちが滑らかな石鹸の清潔感と甘さ。
洗い立てのシーツ、風に煽られたカーテンの柔らかい香り、お香のような持ち重りのする香り。
これ、試香用のカードにワンプッシュしてからかれこれ1時間はくんくんしているのですが、離れがたい香りなんですよ……くんくん……
たぶんスパイシーさがずっとあとを引くからこその、飽きの来なさなのだと思うのですけれど……くんくん……
これがあのガタイのいい、体温の高そうな男からそっと香るのか……?と思うと……えっ兵長どうやって職務に戻るの……?無理では……?以外の語彙がすっかり失せてしまう……
調べてみると、この香水は、celesさんの香水ガチャ「神秘的なムードの大人の香り」の中にピックアップされているそうで、さもありなん、という気持ちです。
今は甘さが少し薄れて、雨の日のくすんだ香りがほんのりしています。時間経過による変化は、またどこかで書き殴りたいと思います。
現段階の総括:リヴァイが仕事に戻れないので困ります
◆リヴァイの香水/ペンハリガン - エンディミオンコンサントレ
何はともあれ公式の説明をご覧ください。
ギリシャ神話から名付けられたロマンチックな香り
2003年に登場したエンディミオン コロンの世界観を再解釈し、より濃密でラグジュアリーな香りに仕立てた男性用オードパルファム。香りの軸となるのは、スパイス、レザー、フローラル。中でも、コロンより存在感を増したレザーノートは、香り全体に力強さと官能的な深みをもたらし、コンサントレならではの魅力を引き立てます。 トップノートは、アロマティックなセージとラベンダー。やがてスエードとゼラニウムがセンシュアルに香り立ち、美しく鮮烈なハーモニーを奏でます。ラストは、肌の上で温められたレザーノートとクリーミーなナツメグが相まって、華麗なセミオリエンタル調の香りに。清々しさを残しながら、陶酔を誘うような甘く魅惑的な香りが長く続きます。
香調:ウッディ アロマティック
(https://latelierdesparfums.jp/products/endymion-concentre-edp-spray)
神話香水が揃った。
これ以上めでたいことはない。
エンディミオンって、女神に不死を与えられた羊飼いのことではないですか……実質リヴァイの人生の抽象化では? ありがとうございます????
ペンハリガンは、フォロワーさんがよく言及されております、英国王室御用達の理髪師兼香水商、です。
先の団長のディプティックはフランス産らしい甘やかさがありましたが、こちらはかなりキリッとした、真面目な香りがします。
香りの感想ですが、最初に感じたのは、ソリッドな夜のイメージ。
初プッシュでびっくりするほど液体が出てしまって、慌てているうち、トップの華やぎを嗅ぎ落とした感じがありますが、私が最初に感じたのは、男性が整髪料で髪をしっかり固めた時のあの、ツンとした香りでした。
自信があるな、若いな、という印象で、びっくりしたのですが、これは……もしや……ゴロツキ時代の香りでは……????
そのうちレザーの動物的な香りが、甘い香りを牛皮のように包んだ感じになり、あーっこれは隠しきれないリヴァイの優しさですねオーケーよくわかります!!!!と得意顔をキメました。
まだ鋭さも健在で、なんとも不思議な香りがします。これは苦手な人もいるかもしれない近寄りがたさ……そう、近寄りがたさ……これはもはや彼の全人生を通した第一楽章ですので……
ところでここまでの香りですが、はっきり言って、団長のトップ〜ミドルが並ぶと喧嘩しそうな雰囲気です。さすが英国産と仏国産。と納得はしつつも、これは私の中で大問題でした。大変よろしくない(CP的な意味で)。
で、一旦晩御飯を食べ、試香カードを改めて嗅いでみたのですが、柔らかくなってるんですよ、香りが。ジャワティーが紅茶花伝のミルクティーになったくらいに。柔らかくなっているんです……なんで……?
檜のような木の香りの中から、キャラメルみたいな柔らかな香りがするんです。
これは、人の体温に乗ると、さらに柔らかくなるのではないかしら。
びっくりするほど静かで、そう、まるで余生のような……ここまで再現してなんて誰も言ってないのになんてことを……リヴァイの余生の話をされると私の情緒はぐちゃぐちゃになるんだ……
2枚の試香カードを重ねてラストノートを楽しんだのですが、ゆったりと歩調が合っていて、怖かったです。ありがとうございます……
現段階の総括:ゴロツキから車椅子までリヴァイのすべてを包括した抽象化の香りがして大変
《おわりに》
エルヴィンにはもっと西洋的なゴツいのが来ると思っており、(それは私が普段使いできないので)リヴァイには、紅茶だとか東洋系だとか、香りに繋げやすそうなワードを意図的に散りばめてお願いしていました。どれか当たれば、くらいの感覚でいたのですが、小手先の誘導を一蹴され、とても愉快な心持ちです。
私はエルヴィンの内奥のやわらかいところが猛烈に好きなので、この香りは結果として大大大正解だったのですけれど、やっぱり女性寄りのユニセックス香水には違いないので、人によってはピンと来ないやも知れません。
(金銭のやり取りが発生してはいますが)贈り物と同じく、良いものを贈ろうと気合を入れすぎて外したり、センスが合わなかったり等の、人間づきあいにおけるエラーは必ず発生すると思うので、のんびり構えつつ、たとえば、はっきりとキャラ化した性別個性を出してもらいたい場合には、推しの説明文の「男らしさ/女らしさ」(この言葉好きじゃないけど)を表す分量割合を増やすなど、工夫が必要なのかなぁと思います。外せないイメージワードに順位をつけるとか。
最後の最後に。
散々香水に狂った夜の睡眠波形がめちゃくちゃ優良成績を収めていたので、誇らしげに胸を反らしながらグラフを貼り付けておこうと思います。
生活に推しがいることの幸いがぎゅっと詰まっている良質な睡眠……これが推し活……
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