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#コナミ株式会社
kennak · 1 month
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国民的ゲームソフト「桃太郎電鉄」、通称「桃鉄」。目的地の駅を目指して日本各地を巡りながら地域の特産や名物の「物件」を購入して収益を上げ、総資産が勝敗を決するボードゲームだ。88年の第1作発売からおよそ35年が経ち、2023年11月には最新作「桃太郎電鉄ワールド」が発売された。  コナミは23年、この桃鉄を学校教育機関向けに無償で提供する取り組み(「桃太郎電鉄 教育版Lite ~日本っておもしろい!~」)を開始した。この教育版桃鉄をいち早く導入した大阪・枚方市立小倉小学校の6年生が2月7日、桃鉄制作者らを迎えてプレゼン発表会を行った。  プレゼンテーマは、「桃鉄に枚方を追加してもらおう」。枚方が桃鉄の駅として存在しないことに注目し、同校の6年生たちが枚方の魅力を全力でアピールした。  「ひらかたパークは明治45年に開園した日本最古の遊園地。アトラクション数は、USJや東京ディズニーランドを上回る40種以上もあります」と地元遊園地が持つ特色や強みを力説。地元ショッピングモールのくずはモールについても、「ショッピングセンターの満足度ランキング全国13位にランクイン。改装工事でフードコート付近がとても綺麗になりました」と写真を交えて紹介した。伝統文化や地元の工場、さらには食べログやGoogleマップで人気の飲食店を取り上げ、ランキングやグラフを用いた資料で説得力を高めた。  「枚方には子どもから大人まで楽しめる魅力がたくさんあります。教育版桃鉄に追加するしかありません」と力強く訴えた。 調べ方が足りない  「桃鉄に枚方を入れてくださいといろんな班の人が言いましたが、無理です」  プレゼンが終わり、桃鉄制作者からの講評は厳しいものだった。最初に「子ども扱いしない」と明言した、「桃太郎電鉄ワールド」監督/ゲームデザインの桝田省治(ますだ・しょうじ)さんだ。  「まず枚方に対して調べ方が足りない。どういう条件がクリアしないと入らないかということも調べられていない。なぜ選ばれて、選ばれていないかを言及している人がいません。なぜ近いまちが入っていて、枚方が入っていないか。実際の現実というのはライバルがいます。比べられます。それを押しのけた人が、自分の提案が採用されたり、されなかったりします」  「調べること、考えること、提案すること」には、時間はかかっても、お金はかからない。「採用されてから商品にするには、たくさんの人が関わってお金がかかるけれど、それまでの段階は、時間と根気、あるいは違う情報ソースを持っている友達さえいればタダです」  各班が提案した物件の多くが重複していたことを指摘し、「8割の人が同じことを言いました。これは採用されない。なぜなら、みんなと視点が同じだから」と語った。  また、ショッピングモールなどの短命な施設を挙げたことについて、「桃鉄の物件は、30年経っても8割は変わっていない。ということは、10年、20年持つ物件しか選んでいない。10年経っても今と同じようにありますか、というのを検討してください。点だけじゃなくて時間軸や面で考えた方がいい」と述べた。  桝田さん自身の若い頃も振り返った。「20代の頃、桃鉄のメインのゲームデザイナーのさくまあきらさんに言われたのは、お前ごときは100個考えて1個採用されればいい。99はボツだ。でもお前は才能があるから100のうち1個はいける。どんどん出せと。ゲーム制作だけじゃなくて、商品、サービスを作るのも全部同じ。ライバルがいて、コストがかかるし、採用できる人数にも限りがある。条件はいろいろあるけれど、たくさん調べて考える。いっぱい失敗すること。それしかない」と伝えた。  さらに、小学生の頃、地元新聞に短歌や俳句が採用された経験も語った。「岡山に住んでいて、山陽新聞に短歌や俳句を送り、採用されると5千円もらえた。図書館に行って、山陽新聞の過去10年、20年の採用された短歌や俳句を全部調べて、どんな傾向があるか、この審査員のときは何が採用されているかを調査した。それで、月に3、4本は採用された。人に採用されるには、自分だけがいいなと思っていることだけじゃなくて、周りの人たちにも認めてもらわなきゃいけない」 他の人と同じことをしていたらダメ  「ゲームが面白くないのは監督の責任。売れないのはプロデューサーの責任」  仕事の役割の違いを説明したのは、株式会社コナミデジタルエンタテインメントのシニアプロデューサーの岡村憲明(おかむら・のりあき)さんだ。「監督は作品を面白くするために全力投球する人で、プロデューサーはそうやって作られたものを世にどうやって届けるかを考える人です」  プレゼンについて、「より掘り下げた部分を伝えてくれた人がいて、それが印象的でした。他の人より前に出ていこうとするなら、他の人と同じことをしていたらダメ。他の人が何をしているのかを見て、自分なりの色を出していくことを考えてほしい」と述べた。  ゲーム制作者になるためのヒントにも言及した。「ゲームしかやっていない人は、正直に言うと、実際にはあまり使えないことが多いです。いろんなことに興味を持ってください。全然関係ないなと思っていることが、ゲーム制作に役に立つことがあります。ゲーム業界外の人と話していて、こんなのがあるんだと面白いと思うことが結構ある。なので、いろんなことに興味を持つことがゲーム制作につながっていく」  将来のアドバイスもした。「夢をずっと持っていてください。必ずかないます、思い描いて強く願っていれば。形は変わっても、この辺だったなというところにたどり着きます。夢をあきらめないで、いろんなことにチャレンジしていってほしい」とエールを送ったのは岡村さんだ。   逆に、「正直、夢は持たなくていいかなと思っています」と述べたのは桝田さん。「その代わりに持ってほしいのは目標です。夢は、どうやっていいか分からないけれど、なれたらいいなというもの。目標は、いつまでにこれになっているぞ、というもの。10年後になっていたい自分を想定し、そのためのスケジュール表をちゃんと作って、それに向かって何をやるべきかを考える。『いつまでにこうなっているぞ』は、目標であって夢じゃない」。目標は、成長に伴って変化もする。「知識が増えたら、何をやるべきかは変えてもいい。親は所詮応援しかできない。目標は自分で設定する。やり方を周りの大人やすでに目標を達成した人に相談するのもいいと思うけれど、最終的には自分で考えて、自分で動かないといけない」  最後に岡村さんは、「桃鉄の学校での使用に関して、いろいろ気付きがありました。皆さんが調査してくれたことを、教育版桃鉄にどう反映していくか。取り組みを進めていきたいです」と締めくくった。 知識ばかり教えていたらChatGPTに負ける  教育版桃鉄リリースの知らせをキャッチし、枚方市での導入をいち早く進めた立役者がいる。授業を参観していた枚方市教育委員会の浦谷亮佑(うらたに・りょうすけ)さんだ。   「4年生の社会科の都道府県の単元がどうしても暗記中心になりがちで、子どもたちが社会科を嫌いになるきっかけになっていた。教育版桃鉄を導入すれば、この問題を解消できるかもしれない」と考えたことが、導入の動機だという。現在では、枚方市の小中学校全63校に、教育版桃鉄のアカウントが配布されている。  導入に際して、不安を感じる教員たちを考慮した。月一で集まり、桃鉄を利用した授業案を共有する有志の研究会を立ち上げた。  「単に桃鉄で遊ぶだけじゃなくて、教科学習として先生がどう活用し、子どもたちがどう学びに変えていくかについて、きちんと研究しました。授業案は社会科が中心でしたが、国語科にも取り入れていました。ここ小倉小学校でも、6年生の『情報を適切に伝えよう』という授業で、自ら書籍とかインターネットで情報を集め、インタビューを行い、グラフ資料の作成などと関連付けました」  支援学級では予想外の効果が上がった。桃鉄で、所持金1千万円で500万円の物件を買ったとき、「残り500万か」と言えた。おはじきを使って教えても、数の概念や四則計算の理解が難しい子だった。  今回、桃鉄に枚方市を入れてもらうために説得するべき相手に実際に学校に来てもらった。「大人になると、相手の心を動かし、やってみたいと思わせ、アクションを起こさせなければならない時がある。クラスの友達に発表することも悪くないけれど、発表して『良かったね』と拍手をもらうだけでは不十分だと思っています。誰に何の目的で発表するのか、相手意識と目的意識が大事」。目指しているのは、「子どもたちがどれだけ本物に触れる体験ができるか」だという。  そのほかにも、枚方市ではICTを用いた積極的な取り組みが行われている。海外の日本人学校の子どもたちとオンラインで1対1の交流を行い、メタバース内に美術館を構築するためのクラウドファンディングにも挑戦している。枚方市の中学校が、文部科学省が進めるリーディングDXスクール事業「生成AIパイロット校」にも選ばれた。  「ICTはあくまでも子どもたちの学びを深めるためのツールです。本物に触れて、志とか夢とかをきちんと持ってもらいたいと考えています。今日の体験も、何人かに響けば、それだけで価値のあるものだと思います。先生方には、積極的に授業改善を進めていっていただきたい。これまでのように知識ばかり教えていたら、一瞬でChatGPTに負けますよ。あなただからできることは何か、子どもたちが学校に来るからこそできることは何かを考えてほしい」と訴えた。 悔しすぎたのでもう1回チャレンジしたい  ゲーム制作者からのリアルな講評を受け、6年1組担任の山本健斗(やまもと・けんと)先生は「先生も勉強になった」と授業を振り返った。  「授業の中での『物事を多角的に捉える』を先生もやった気になっていた。実際に学校の中で『それでいいよ』とされることと、社会で求められるレベルが違うと感じた。その分野で社会で活躍したいと思うなら、独自性を持ち、他と違うことをやってみることが大事。そんな話が、第一線で活躍している方から聞けた」  6年生たちにとっても、「一生に一度しかない貴重な体験」になったようだ。  資料の作り込みやプレゼンの練習を必死に行った分、「率直に『無理』は少し悲しかった」とショックを隠せない様子だった。だが、「プレゼンを作って、いいのできたなぁーとか思ってたから、だだの自己満足で終わっていたんだなと思った」「企画は、1回だけじゃ通らないという社会を知った」「自分たちが作ったプレゼンじゃあ説得できなかったし、もっと多角的に調べた方がよかった」「自分では調べたと思っていたけど、まだまだ調べる内容が薄かった」「辛口な講評が返ってきたけど、(他の班と物件の内容が)かぶりすぎているところとか、内容が薄いところとかが、その通りだと思った」と現実をしっかり受け止めていた。  「悔しすぎたのでもう一回チャレンジしたい」  「考えるのはタダだから、もっと頑張って大人の人でも納得ができるようなプレゼンをしてみたい」  「次はもっと詳しく、なぜそうなのかとかを調べてより説得力を上げたい」  「もっと調べて何回も提案して成功できればいい」  この悔しさこそが、次への成長のバネになる。
「桃鉄に枚方市を追加してください」 桃鉄ゲーム監督の前でガチプレゼン 大阪・枚方市小倉小学校の6年生(オーヴォ) - Yahoo!ニュース
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djcyberspace · 2 months
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桜井零士がボカデュオのfeat.メンバーに決定
ボカデュオ2024での新メンバーを募集するため開催した、グロウルボーカリストオーディション。厳正なる審査の結果、桜井零士さんがfeat.メンバーとして楽曲に加わることが決まりました。 桜井さんは現在38歳。18歳の時、音楽ゲームで有名なコナミ株式会社主催のオーディションに合格。同社の音楽シミュレーションゲーム「pop’n music」でデビューを飾ります。その後、Guitar…
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viciogame · 3 years
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🎮 Animaniacs (Mega Drive) Complete Gameplay: https://youtu.be/g--8EW3KPww #Viciogame #Animaniacs #MegaDrive #Gameplay #Warner #Konami #Sega #WarnerBros #株式会社セガ #TecToy #メガドライブ #SegaGenesis #コナミ株式会社 #LetsPlay
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nakamorijuan · 5 years
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コナミホールディングス株式会社
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syurinini · 6 years
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株式会社コナミアミューズメント様のアーケードゲーム「SOUND VOLTEX」にて9/6より配信中の、 Aoi vs. r0yさん楽曲 「Coldlapse」 こちらのジャケットイラストを制作いたしました。素敵な楽曲と合わせて何卒よろしく遊んでいただければ幸いです! (掲載につきましてはコナミ様より許可をいただいております) (c)Konami Amusement
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thefunkychicken · 3 years
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1日の東京株式市場で日経平均株価は5日続落し、前日比681円59銭(2.31%)安の2万8771円07銭で終えた。9月2日以来、約1カ月ぶりの安値となった。前日の米株相場の下落を受けて、東京市場でも幅広い銘柄に売りが出た。中国や米国の景気減速への警戒が改めて意識されるなかで、短期筋による株価指数先物への売りが膨らみ指数を下押しした。
前日の米株式市場で主要3指数がそろって下げたことを受け、東京市場でも朝方から売りが優勢だった。米国では12月までのつなぎ予算案が9月30日に議会上下院で可決したものの、連邦政府の債務上限問題は解決していない。量的金融緩和の縮小(テーパリング)の開始が間近に迫り、持続的なインフレ圧力が景気減速のリスクにつながるとの見方が強まるなかで、運用リスクを回避したい投資家は日本株にも売りを出した。
日経平均は約1カ月ぶり安値となり、菅義偉首相が退任を表明した9月3日以前の水準に下がった。市場では「10月4日に予定される次期政権の閣僚や今後の政策を見極めたいとのムードもあり、足元では買いを入れにくい」(国内運用会社)との見方があった。
取引開始前には日銀が9月の全国企業短期経済観測調査(短観)を発表した。大企業の業況判断指数(DI)は製造業、非製造業ともに市場予想を上回る内容だった。ただ、先行きへの警戒を示すような内容もあり、取引の材料とする向きは限られた。
東証株価指数(TOPIX)は5日続落し、前日比43.85ポイント(2.16%)安の1986.31で終えた。心理的な節目の2000を下回り、約1カ月ぶりの安値となった。JPX日経インデックス400もは5日続落した。
東証1部の売買代金は概算で3兆5442億円。売買高は13億8443万株だった。東証1部の値下がり銘柄数は1981と、全体の約9割を占めた。値上がりは173、変わらずは20だった。
きょうから日経平均株価に採用された任天堂は大幅安。村田製やキーエンスも下落した。コナミHDや住友化、SUMCOの下げも目立った。一方、楽天グループや日電硝、NTTは上昇した。
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eiko-yoga · 3 years
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先週から開催中のミッドパークヨガ&フィット。明日23日祝日の朝ヨガプログラムで講師を担当させていただきます! 今年は事前申込制となっており、現在どのクラスも満席となっております。 お近くの方、散歩がてら是非遊びにいらしてくださいね。ご予約いただいた皆さま、お会いできること楽しみにしております😊 【主催・企画】 東京ミッドタウン @tokyomidtown_official 【協力】 コナミスポーツ株式会社 @konamisportsclub https://www.konami.com/sportsclub/ 【協賛】 株式会社ロハシー @lohasy_d https://lohasy.co.jp/ 株式会社Nolook @barzagli_official_ https://nolook.co.jp/ 運動のプロが考えたプロテイン  アスボディ https://online.konamisportsclub.jp/page/ksc/products/original/drink-supplement/asu-body/index_lp.html #東京ミッドタウン #tokyomidtown #六本木 #roppongi #東京 #tokyo #MIDTOWNRELAXPARK2021 #midtownrelaxpark #朝ヨガ #夜ヨガ #ヨガ #yoga #フィットネス #朝活 #コナミ #コナミスポーツ https://www.instagram.com/p/CUHNARiBzwb/?utm_medium=tumblr
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jaguarmen99 · 3 years
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日本人に対する人種差別問題の渦中にあるスペイン1部バルセロナのフランス代表FWアントワヌ・グリーズマン(30)が、スポンサー契約を結んでいたコナミから契約を解除された。 グリーズマンは「遊☆戯☆王トレーディングカードゲーム」とアンバサダーに就任していたが、同社は今回の人種差別騒動を受けて7日に契約解除を発表。「株式会社コナミデジタルエンタテインメントは、スポーツの理念がそうであるように、いかなる差別も許されるものではないと考えています。遊戯王コンテンツでは、グリーズマン選手とのアンバサダー契約は解除することとしました」と明らかにした。 また、同社はバルセロナのスポンサーでもあるが「サッカーコンテンツでは、FCバルセロナに対してクラブパートナーの立場として本件の詳細な経緯と今後の対応の説明を求めていきます」と今回の問題についての経緯説明を強く求めていく方針を示した。 世界的スター選手による人種差別騒動が波紋を広げ続けている。
グリーズマン 日本人差別問題で「遊戯王トレカ」のアンバサダー外される - ライブドアニュース
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tak4hir0 · 4 years
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攻殻機動隊SACシリーズの監督を務め、日本のアニメーション業界を牽引してきた神山健治監督と、神山監督の大ファンでもあるNiantic(ナイアンティック)の川島優志氏が対談。前半に続き、後半は神山監督、川島氏がアニメーションやゲーム業界で求められる最強のITエンジニア像について熱く語り合った。モデレータをHEART CATCH 代表取締役の西村真里子氏が務めた。 神山監督、川島さんが考える最強ITエンジニアとは 西村:神山監督、川島さんが考える最強ITエンジニアとはどんな人材でしょうか。 神山:僕がアニメーションの現場でよく思うのは、作りたいものが具体的にあるのにコードを書けないアーティストが多いこと。一方で、その技術を持っている人はオペレータで終わってしまっていることが多い。CGアニメーションの創世記には、ゼネラリストと��ばれる人が多くて、コードを書けることを含め、絵作りをトータルでできる人が多かったんです。 しかし、今のアニメーションの現場では、ゼネラリストよりもスペシャリストが求められる。トータルでできる人がどんどん少なくなっているんですね。だからどうしても枯れた技術を使うしかなくなって、行き詰まってしまう。一方、アメリカではなんでもできるスーパーマンの数がすごく多いような気がします。 ▲アニメーション映画監督 脚本家 神山 健治氏 川島:僕は日本のGoogleでも米国のGoogleでも働いていたので、いろん���エンジニアを見てきました。僕が見るすごいと思うエンジニアの特徴は、第一に余力がある人です。 例えばコーディングをしている傍らで、実はクロスワードクイズの国内チャンピオンだったりします。バイクで全国を走ってその様子をYouTubeで流し、日本でも有数のYouTuberになっているというような。仕事以外でも、常に何か好奇心を持っている。天才だなと思う人はそういうタイプが多いですね。 今はわかりませんが、僕がいた頃のGoogleでは、どれだけ速くタイピングするかを競い会うサイトが社内にあって、何百人というエンジニアがそれに挑戦していました。そこで上位に並んでいたのは、エンジニアの中でもレジェンドと呼ばれているすごい人たちだったんです。単純に優秀で生産性のある人はタイピングも速いんだなと思いました。 ▲Niantic, Inc. アジア・パシフィック オペレーション 副社長 川島 優志氏 神山:天才アニメーターも描くのが速いですね。 川島:人の何倍も速くタイピングできたり、描ける人は、間違いも人よりも多く、その改善も多く経験できます。そういうイタレーション(反復)を速くできることも、最強のエンジニアの条件と言えるでしょう。 神山:僕もそう思います。 川島:速く手が動けば、同じ作業を人の半分の時間でできる。もう半分の時間で趣味に関することができます。Ingressのアニメの櫻木監督は、普通の人が3枚描く時間で5枚~10枚を仕上げるそうです。キーボードがとにかく小さくて、さらに不必要なキーは全部取っているとか。 神山:押さないキーは外しているらしいです(笑)。 川島:よく使うキーには、滑り止めのパッドが敷いてあるそうですね。とにかく何百回、何万回と、作品が終わるまでキーボードを打つので、ほんの数秒の節約が積み重なる。「何秒かの節約が積み重なると大きくなるんです」と話していました。デキる人は生産性が高くなる工夫をしているんです。 神山:私が思う最強のエンジニアは、プログラミングができて、ソフトも使えて、かつ最終的なゴールから逆算して、自分のやるべきことがわかっている人材だと思います。多くの人が入り口や目の前にあることに集中してしまうが、スゴイ人は最終ゴールから逆算しているような気がします。 もちろん、作ってみないとわからないところはありますが、ある程度ゴールをイメージし、途中経過でどんなものが必要か考える。この経過まで行くと遡れなくなるので、2個前の工程までに仕込むというように、俯瞰して見ることができる人。これができるのは、ゼネラリストの方だと思います。 例えばモデリングだけをやってきた人は、それをどのように動かすかは考えていないことも多い。リガー(リグと呼ばれる動かす仕組みを設定する人)も、俯瞰的に見ることができる人とできない人ではリグの入れ方も変わります。 勘のいい人は、「夕焼けは太陽のある側はオレンジだけど、太陽のない側はグラディエーションがかかってだんだん青くなるので、切り返しを青くしてほしい」と伝えると、絵を描いたことがなくても、すぐ取りかかってくれる。多面性を持っている人が、僕らの現場でも最強のエンジニアであり、最強スタッフだと思います。 西村:最強のエンジニアの条件である、ゴールを見て動ける人、ゴールが見えるような勘のいい人にはどうしたらなれるのでしょうか。 神山:僕はエンジニアではないので、もしかしたらちょっとずれたことを言うかもしれませんが、何かものを見るときには異なった視点で見ることです。僕は映画を観るとき、主観だけで見ていません。お客さま側の視点でも見るようにしています。これは作り手になった場合も同じです。 川島:もう一つ、別の視点を持つことはそうですね。例えば、ライゾマティクスの真鍋大度さんも最強エンジニアの一人だと思っています。真鍋さんはDJもやっているのですが、横断歩道で信号待ちをしているとき、目をつぶって周りの音を聞くことで、信号が変わったかどうかを判断して耳を鍛えているそうなんです。 真似してみると、普段歩いている道が、違うような音に聞こえるんです。異なる視点や考え方のヒントは身の回りのあちこちに転がっているのですが、それに気付くことはなかなか難しい。常に意識して探していくことが大事だと思います。 おそらくアニメ分野で活躍できるエンジニアとは、エンジニアの領分だけではなく、絵を描いたり、演劇したり。本業とは異なるエンターテインメント分野に積極的にチャレンジする好奇心がある人なのではないでしょうか。 【Q&A】会場から寄せられた質問を紹介 10分間の休憩の後、神山監督の「日本のエンジニアさんが、地位が向上してお金が稼げて楽しい仕事になりますように。乾杯!」という発声で後半戦がスタート。会場もリラックスした雰囲気となり、質問も多数寄せられた。 Q.小島監督のゲーム「ポリスノーツ」の映像監修をされていましたが、インタラクティブアニメーションに興味はありますか?どのような可能性を感じますか? 神山:「ポリスノーツ」は25年ぐらい前に、僕が初めてアニメーションの演出としてクレジットされた作品です。小島秀夫監督と仕事したことが、今の僕の基礎を築いたと言っても過言ではないぐらいの経験でした。 当時はまだアニメーションの業界にデジタルが入ってきていない時代。フィルムスキャンからデータ化するという小島監督のやり方を見て、僕たちは信じられないぐらい最先端技術に取り組んでいると驚いた記憶があります。ポリスノーツはアニメにすると7時間分ぐらいの脚本でした。 小島監督からは「ただ、アニメーションにしてほしい」というオーダー。本来は全編テレビアニメのように動いている絵がほしかったのかもしれませんが、こちらも何を発注されているかわからない状態でした。それぐらいゲーム業界とアニメ業界の間には深淵が存在している頃だったのです。 僕は当初、美術監督として呼ばれていました。しかし、何をどうすればいいのかわからないため、なかなか美術の発注がこないんです。その待っている間に台本を読んでいたんです。全部を映像にした場合、フィルムスキャンでデータ化するアニメスタジオはありません。 それをコナミ側でやってもらえるのか、予算が大きくなるけど難しくはないのかなどという話をしたところ、「じゃあ、君がやって」と(笑)。なぜか演出の作業をすることになりましたが、僕にとっては素晴らしい体験となりました。 西村:面白いですね。7時間の脚本を読む必要はなかったものの、読んだからこそ、次のキャリアにつながったということですね。 神山:インタラクティブに興味があるかという質問に戻ると、その時に、「ゲームはなんて深く掘りさげることができるんだ」という驚きがありました。小島監督のイメージでは、2時間の映画を作っているつもりだったそうです。ゲームもあってストーリーもある。いくつかの分岐を当時から遊べるようになっていました。 アニメは一方向なので、こちらが提示する絶対的な面白さがあります。実はこの面白さがあるから、映画がなくならないんです。映画はクリエイターが自分の任意で作った時間軸で相手を納得させる芸術。そこには絶対的な面白さがある。 映画を一回作った人は映画を作ることをやめないし、ゲーム業界から映画に入っていく人がいるのは、作り手になったときに映画が持つ絶対的面白さがあるから。双方向性とストーリー、この2つが書けるのはいいなと感じましたね。 西村:Pokémon GOのストーリーは、プレイヤーごとにストーリーがありますからね。 川島:そうですね。ゲームの中にストーリーがない半面、プレイヤーごとにストーリーがあるんです。 神山:Ingressは映画ではできない、フィクションが叶わないドラマが、次々と生まれています。 川島:インタラクションがスマホのゲームの中で行われているだけではなくて、実際にクラウドファンディングでセスナを借りて、アラスカまで飛び、難攻不落のポータルを崩しに行くようなことをするプレイヤーもいますからね。 西村:お二人が組んだら、今までにない面白いゲームができそうですね。ぜひ、作っていただきたいです。 川島:何かできればいいですね 神山:こちらこそ、ぜひ。 Q.もう一つの視点という話があったが、私はゲーム製作者だがゲームで素直に遊べません。制作者視点を排除できない。神山監督は映像鑑賞の時に製作者の視点を完全に排除して一本最後まで純粋に楽しめるのでしょうか。そのコツは? 神山:僕は楽しめます。誰もが複数の視点で映画を観ているそうなんです。単純にストーリーを追いかけていくという見方がありますね。次はどうなるのか。先を予測しながらストーリーを追う見方、過去に自分が体験したものと今起きている映像と照らし合わせながら見る視点。そして1時間経つから、そろそろ解決するだろうという違った見方です。 「こういうカットは作るのが大変だっただろうな」という制作者側の見方をすることもありますが、最初の1回は純粋に楽しめます。 川島:僕も楽しめます。株式会社ポケモンの石原恒和社長は、伝説的なゲーマーなんです。囲碁の腕前もスゴイですし、バックギャモンのスマホゲームでも日本国内で一桁台になったこともあるぐらい。Ingressを紹介したら、すぐ始めてくれました。忙しい方なのに、Ingressもかなりやりこんでくれたんです。 Googleの社内イベントで石原社長に、ポケモンがどのように世界を変えていったかという講演をしていただいたんですね。その講演の最後で、「ところでみなさん、Ingressをやっていますか?」と問いかけ、六本木界隈に多重コントロールフィールドをどうすれば引けるかという解説を淡々と始めたんです。 Ingressを知らない社員は、何が画面で行われているかがわからない。ですが、その全力で楽しむ姿勢が、Pokémon GOが誰からも面白いと思えるゲームにつながったんじゃないかと。こういう楽しむ気持ちは、仕事とは別に持つことが大事だと思います。   神山:そうですね。自分の作品を見なくなる時期がありますが、それも良くないと思います。ある日本の起業家が話していましたが、その方は自分の会社の商品は自分でお金を出して買うんだそうです。商品の価値がその金額に見合っているかどうかが実感できると。それにも通じる話だと思いました。 Q.僕はプログラムを勉強してエンジニアになりました。絵を描いたりするのは苦手で、弱点だと思っています。その弱点を攻略したいのですが、そのやり方やモチベーションを維持するコツがあれば聞かせてください。 神山:好きじゃないことをやるのは、なかなか難しいことです。新人の時に、上司に「好きに絵を描いていいよ」と言われて絵を描いたら、色のない絵ができ上がりました。その時、「致命的に色感がない。色感と構図はもって生まれた感性で作られる。だからお前に美術監督は無理だ」と言われました。 その時、僕は愕然としましたが、苦手なことを言葉にしてロジックで攻めることにしたんです。たくさん色が使えている人はどんな色を使っているのかを推理して、言葉にする。理屈で色の数を増やせるようにしたら、気がついたら、自然に好きじゃなかった色も使えるようになっていた。ガムシャラにやるのもいいですが、構造の部分を一度言語化してみることもお勧めします。 この方法は苦手な英語の克服にも使えると思っています。英語で何が苦手なのか考えたら、読めない文字があることを発見したんです。小文字のbとdが入っていると、単語が読めなくなるんです。そこで文字からアプローチするのではなく、音で覚えていくように視点を変えたら、開くのも嫌だったテキストが開けるようになりました。苦手だと思っていることを言語化することは有効です。 もう一つの方法としては、人に聞いてみること。質問しまくることです。「致命的な色感と言われましたが、これはどうやって描いているのですか」というように。すると天才タイプの人は説明できないので、「色は目で出すんだよ」などと言うのですが、観察していると隣に色を置いたりして確認しているんです。そんなかんじで苦手を克服したことがあります。   川島:僕もいまだに英語は苦手です。Googleに転職する前に働いていたロサンゼルスのデザインプロダクションの入社する際の面接で、マネージャーに英語のプレゼンをしたんです。無事入社することができ、1年後のクリスマスパーティーで当時のマネジャーと飲んでいたとき、「マサ、お前が1年前に入るときに、プレゼンしてくれたけど、何を言っているのかさっぱりわからなかった」と言われたんです。 僕は渾身の英語プレゼンをしたはずなのに、見せたもの以外は何も伝わっていなかった。 彼としては1年経って、ずいぶんとお前は英語が話せるようになったなという意図で言ってくれたのですが、それ以来、英語は苦手。息子にも発音を馬鹿にされる。それでも、話すしかないんです。 自転車と一緒で乗るしかない。話せば聞いてくれる。人間対人間なので、通じ合っているだろうと押し切る。そして分からないときは、プライドを捨てて聞くこと。こいつ英語がわからないんだなと思われたとしても、必ず聞いた方が良い。そして覚える。その繰り返しだと思います。 神山:相手は聞かれると意外に喜んでくれますからね。 Q.Pokémon GOを開発する上で一番大変だったこと。それをどう解決したのか���教えてください(技術面で)。 川島:僕はエンジニアではないので技術面を答えるのは難しいですが、現場の人間はあらゆる面で大変でした。Pokémon GOをローンチしたときは、ナイアンティックの社員は全体で50人。その内、専任のエンジニアは10人程度。その人数でものすごい量のアクセスを捌いてました。 大変なミスをしたり、上手くいかなかったりしたときに、チームの強さや本当の姿が出ます。大変だったのは、シカゴでポケモンGOの公式イベントを最初に開いたときに、通信障害が発生したことです。 何万人もの人がそこに集まっていたのに、プレイができない状態になったんです。そのときに現場で創業者のジョン・ハンケがステージの端に座り、一人ひとりに対応していったんです。その場所から逃げ出したくなるような問題が起こったときに、目の前のこと一つ一つに逃げずに取り組んでいく。それが一番大切なことだと思います。 神山:たくさんありすぎて思い出せません(笑)。日々、問題が発生します。スタッフと話しているうちに、誰かが対策を思いついたりするので、絶対、解決のできない問題はありません。僕だけの哲学かもしれませんが、最終的にゴールに行ければいい。なので、途中で失敗したり、解決できないことがあったら、一旦止めて、最短でゴールでいける方法を考えようと、フレキシブルに動くことだと思います。 川島:そうですね。ゴールを自分で決めたらそこに向けてやりきること。シカゴのイベントは、翌年も開催したんですよ。ちゃんと向き合って大成功させました。失敗を失敗で終わらせない。ちゃんと目標を定めてそこまでいくんだというガッツを持つ。それが最終的には力となり、キャリアを形成していくと思います。 西村:神山監督、川島さん、貴重なお話、ありがとうございました。 神山健治監督とNiantic川島優志氏が語る ──アニメとゲーム作りでこだわった「現実感」 を読む
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extremeeastfgc · 7 years
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#Lightning #Legend #DaigonoDaibouken #KONAMI #playstation #fightinggames #FGC #fightinggamecommunity #SONY #プレイステーション #ライトニングレジェンド #コナミホールディングス株式会社 #大悟の大冒険 #コナミ #ソニー #対戦型格闘ゲーム #格闘ゲーム #格ゲー
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xf-2 · 3 years
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1987年に日本で発売されたゲーム機、PCエンジン用ソフトのニセモノ、それも中古市場ではプレミア価格のついたソフトのニセモノばかりが、5年ほど前から国内外のオークションサイトを通じて盛んに流通している。
ニセモノの制作者が、全世界にはたして何人いるのかはわからないが、日本のゲームコレクター間で特に有名なのが、ドイツを拠点に活動している「PCE Works」と名乗るプロジェクトだ。
彼らは、今から30年近くも前に発売されたPCエンジン用ソフトの「新品」を製造・販売し続けている。ソフトは実機で動作するだけでなく、パッケージや添付のマニュアルなども本物そっくりに偽造している。
以前に拙稿「なぜ『中古ゲームソフトのニセモノ』が蔓延? その実態は」で紹介した、スーパーファミコン用ソフトのニセモノの作者はまったくもって不明だが、「PCE Works」のスタッフは自らの作であることをホームページで堂々と宣言している。
・参考リンク:PCE Worksのサイト
海外でも需要が高まる、日本のレトロゲームの「ニセモノ」
現在、PCエンジンの著作権を持つコナミ(コナミデジタルエンターテインメント)に、現地法人や代理店などと「PCE Works」間での契約状況について問い合わせたところ「現在調査中です」とのこと。なお、筆者が調べた限りでは「PCE Works」に対してソフトの製造・販売を許諾したメーカーは、コナミ以外でもまったく確認できなかった。
なぜ「PCE Works」は、昭和・平成の時代に発売された日本のゲームソフトを、未許諾にもかかわらず作り続けるのだろうか? 海外のアングラゲーム市場の調査を長年続けている、ルーディムス株式会社CEOの佐藤翔氏によると、昨今は海外でもレトロゲームの需要が高まっている背景があるという。
「最近の世界的な復刻系ゲーム機人気もあって、レトロゲーム系のリプロダクションや、かつての海賊版ゲーム機の復刻版・ミニ版などが各地域で勢いづいており、過去にそれらのゲーム機で遊んだことのあるユーザー間に広がってきていますね」(佐藤氏)
かつてヨーロッパ諸国では、PCエンジンが正式に発売されず(※後にフランスなどでは発売された)、一部のゲームショップが独自に輸入した日本語版のハード・ソフトを購入して遊んでいたマニアが多数出現し、やがてソフトの情報交換や貸し借りを目的にサークル活動を始めた歴史がある。そんな背景があったことも、「PCE Works」のような集団がドイツに出現した一因となったように思われる。
筆者の知人で、ゲーム業界にも詳しいフランス人ジャーナリストに聞いたところ、「PCE Works」のオフィスはミュンヘンにあり、パリ市内にもここからニセモノを仕入れて販売する中古ゲームショップがあるそうだ。この店では、ニセモノを仕入れる際は「PCE Works」の代表者であるTobias Reichという人物に直接連絡を取っているが、彼らの詳しい実態はドイツやフランスでもまったく知られていないという。
フランスには今も根強いPCエンジンファンが多く、本物よりも安値で取引されることから「PCE Works」版をこっそり買う人がいるものの、彼らの存在を憎みSNSでボイコットを呼びかけるなど、ネット上では「PCE Works」反対派のほうが圧倒的に多いそうだ。
日本のコレクターも舌を巻く「PCE Works」の旺盛なサービス(?)精神
はたして、彼らはいったい何者なのだろうか?
筆者は、佐藤氏の協力のもと「PCE Works」のスタッフにメールでインタビューを申し込んでみた。数日後、Shlomo Raskinと名乗る人物から届いた返信には「インタビューは受けられないが、質問の内容によっては答えられることがあるかもしれない」と書かれていた。
ならば、せめてメールでの取材はできないものかと、メンバー構成やソフトの製造方法など、いくつかの質問を送り回答を求めたが、残念ながら本稿の執筆時点で返信は届いていない。「活動内容が世間に詳しく知られてはまずい」と彼ら自身も自覚しているのだろう。
「欧州について見ると、かつてエミュレーターなどを制作していた人々は、ゲームの移植やローカライズなど、真っ当なビジネスに移っていったケースが多いと聞いています。しかし『PCE Works』の場合は、プレミア価格で取引されている過去作品のパッケージ版が欲しいファンを相手に、今でも故意犯的にリプロダクションを行っているようですね」(佐藤氏)
当事者からの返答がなかったので、今度はニセモノの流通事情に詳しいレトロゲームソフトのコレクター数名に話を聞いてみた。
元ゲーム雑誌の編集者で、PCエンジン用ソフトをほぼコンプリートしている張本氏に「PCE Works」について伺ったところ、以下のように解説していただいた。
「私が『PCE Works』の存在を初めて知ったのは、数年前にネットでPCエンジンの情報を検索していたら、偶然彼らのサイトがヒットしたのがきっかけでした。彼らは、あくまでファン活動の一環だと主張しているようですね。実際、彼らが販売しているソフトは中古市場でプレミア価格がついたものばかりで、ゲームファン心理を非常によく理解しています。
 技術力にも長けていますね。本物そっくりに作ったソフト以外にも、例えば『ときめきメモリアル』の中に入っているミニゲームだけが遊べるソフトを独自に作って売ったり、メーカーが開発を中止して未発売になったソフトのROMデータも持っていて、それをわざわざパッケージまで作って売ったりもしているんです」(張本氏)
では、「PCE Works」版のソフトを本物と間違えて買ってしまうなど、コレクター間で何か問題になっていることはないのだろうか?
張本氏によれば「そのような話は聞いたことはないです。せいぜい、ネットで検索するときに邪魔だと思うぐらいですね(笑) 」(張本氏)とのことで、彼らの作ったニセモノを熱心に集めるコレクターも特にいないそうだ。
ほかのコレクターにも聞いてみたが、やはり「PCE Works」版のソフトを間違えて、あるいはニセモノとわかったうえで購入したことは一度もないという。実はかなり以前から、コレクター間では本物と「PCE Works」版、すなわちニセモノとを区別する方法の情報共有ができているそうだ。
ゲームショップ間でも「要注意リスト」に
拙稿「『中古ゲームソフトのニセモノ』は許さない 真贋をチェックする査定現場は」でもご登場いただいた、中古PC・ゲーム専門店BEEPの出張買取班リーダー、小村方(こむらかた)伸氏にも「PCE Works」について聞いたところ「かなり前から、我々の業界でも悪い影響を及ぼすと話題になっていて、『未開封のエンジン用ソフトには気を付けろ』という共通認識みたいなものがあります」という。
「以前、未開封の『PCE Works』版ソフトの買い取り依頼を受けたことがあります。その際に、ROMのレーベル面を確認しないと本物かどうかがわからないことを、お客様にご説明したうえで『査定不可』としてご返却したことがありました。ニセモノが数多く出回ってしまうと、いずれはオークションサイトも含めて、ユーザーの皆さんが恐れて買わなくなるなどの影響が出てしまうと思います」(小村方氏)
査定の際にレーベル面を見るのは、「PCE Works」のロゴの有無をチェックするため(※「PCE Works」版は独自のロゴが印刷されている)である。ちなみに、未開封の本物ソフトと「PCE Works」版とを見分ける際は、主にシュリンク包装のティアテープ(ヒモ)の向きを見れば、ある程度はわかるそうだ。
「本物はヒモが横向きなのに、ニセモノは『PCE Works』版に限らず、縦向きになっていたりします。あるいは、パッケージ写真にヒモが写っていなかったり、包装がきれい過ぎる物も怪しいと思ったほうがいいでしょう」(小村方氏)
ただし、フランス人ジャーナリストからの情報では、「PCE Works」が活動を始めた直後に作ったニセモノには、彼らの贋作であることを示すロゴを印刷していなかったというから恐ろしい……。
「ヤフオク!ですと、今では『PCE Works版』と書いて出品されています。でも、悪意のある出品者がいないとは限りませんので、値段が異常に安いものには注意したほうがいいでしょう。これからコレクターになりたいという人にとっては、大変な時代になってしまったように思いますね」(張本氏)
なお日本のゲームショップでは現在、筆者が調べた限りでは「PCE Works」版のソフトを売買している所はない。とある元中古ゲームショップ店員に聞いたところ、数年前に都内でこっそり売っていた店が1軒あったが、周囲の競合店からクレームが入り、それ以降は取り扱いをやめたそうだ。
「PCE Works」の片棒をかつぐと、過去のゲームが二度と遊べなくなる!?
ゲームメーカー側でも「PCE Works」の存在によって、何か業務に支障が出ているのだろうか? かつてPCエンジン用ソフトを発売していた、あるメーカーのディレクターに聞いたところ「支障は確実に出ています」という。
「我々は過去に出したソフトを含め、すべてのタイトルを常に出すチャンスをうかがっています。ですから、このようなコピー品が出てしまうと、そのチャンスをつぶされてしまう恐れがあるのです。もちろんコピー品の取り締まりも行っていますが、一企業の力だけでは正直限界があります。
 権利者が現在不明で調査をしているため、移植に時間が掛かっているタイトルもいろいろあります。そんなゲームでも、もしコピー品が出回ったら権利者の皆さんのブランドを傷つけることになり、その結果IPごと殺されてしまう恐れがあるのではないか、と個人的には思っています」(某メーカースタッフ)
ニセモノソフトを堂々と作る組織や、転売ヤーの片棒をかつぐことの恐ろしさがおわかりいただけただろうか?
「PCE Works」版に限らず、ニセモノソフトの流通を止める手立てはないのだろうか? 筆者がコレクターの方々から聞いたところ、ネットオークションに「PCE Works」版が出品された際に、運営側に違法な商品であることを通報しても、まるで効果がないのが現状だという。
前出の佐藤氏によれば、「ウェブ上の記事や、オークションサイトなどを確認する限りでは、『PCE Works』版のソフトは日本語圏や英語圏はもとより、中国や韓国、中南米などでも出回っている模様です」というのだから、事は極めて重大なように思われる。
そもそも、我々がニセモノソフトを売買することは、法的に問題はないのだろうか? ACCS(一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会)に筆者が伺ったところ、明確な回答をいただいたので以下に引用させていただく。
日本のゲームソフトの海賊版を製造することは、日本の著作権法では著作権侵害、つまり著作権法違反にあたります。そして、日本は著作権に関する国際条約に加わっているため、海外のほとんどの国においても日本のゲームソフトは現地の著作権法で守られ、著作権法違反にあたります。
また、海外で作られた海賊版ゲームソフトを、個人売買サイトやオークションサイトなどで転売するために輸入することは著作権侵害となります。
そして、国内で作られたものも含め、海賊版ゲームソフトを海賊版とわかったうえで転売したり、転売するために所持することも著作権侵害となります。
著作権侵害は、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金またはその両方が科される重大な犯罪です。
お小遣い稼ぎに海賊版の転売に手を出すことは絶対にやめてください。
<ACCSから筆者に送られたメールより>
前出のジャーナリストによれば、最近レトロゲームに興味を持ち始めたフランスの若いゲームファンが、プレミア価格がついた本物のソフトには手が出せないため、「PCE Works」版を買うようになっているという。
「PCE Works」版に限らず、ニセモノソフトの流通をこのまま放置すれば、やがて日本でも同じようにニセモノを買い集める若いファンが出現し、最悪の場合は移植やリメイク版ソフト、あるいはPCエンジンminiのような復刻ハードが、もう二度と発売されなくなる日がやって来るかもしれない。
ゲーム業界団体などが中心となり、行政の協力を受けつつニセモノソフトのオークションサイトへの出品禁止、あるいは税関でのチェック体制強化など、具体的な対策をそろそろ打つべきタイミングであるように思われる。
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kennak · 11 months
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ネットの論調の大半は「コナミ(orサイゲームス)が好きか・嫌いか」で決まる気がする。任天堂がコロプラを訴えたときは、任天堂を好きな人、ソシャゲを嫌いな人が多かったので願望込みで任天堂が応援された。
[B! ウマ娘] 当社に対する訴訟の提起について | お知らせ | 株式会社Cygames(サイゲームス)
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jculture-ja · 4 years
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プロ野球が「バーチャル」で開幕!巨人とDeNAの一戦は9回まで目が ...
#歌舞伎 #坂東大和 [livedoor]NPB)と株式会社コナミデジタルエンタテインメント(以下、 コナミ)は29日、『プロ野球 “バーチャル”開幕戦 2020』を開催。本来であれば3月 …
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viciogame · 2 years
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🎮 Castlevania: Bloodlines (Mega Drive)
Complete Gameplay: https://youtu.be/WzsbuOZTKxA
#Viciogame #Castlevania #MegaDrive #Gameplay #バンパイアキラー #Walkthrough #VampireKiller #BramStoker #メガドライブ #Sega #Playthrough #TecToy #Vampire #コナミ #Longplay #Konami #Bloodlines #株式会社セガ #LetsPlay #Dracula #SegaGenesis
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kabukiinfo · 4 years
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774 · 5 years
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1998年以降、毎年1社以上の日本企業が上場していたが、2002年のコナミを最後に4年余りなかった。この背景には、2002年7月に制定された米国の上場企業会計改革および投資家保護法(通称SOX法)がある。 エンロンやワールドコムの不正会計事件を受けて制定された同法は、米国企業のみならず米国の証券取引所に上場する外国企業にも厳正なコーポレート・ガバナンスを求めており、この対応に多くの費用と時間を強いられるため、上場が敬遠されていた。 これをクリアしたみずほフィナンシャルグループは、公的資金の完済を果たしたこともあり、日本企業としては4年ぶりにNYSE上場を果たした。みずほ社長の前田晃伸は、SOX法への対応に100億円を費やしたと上場直後のインタビューで語っている。 さらに、NYSEでは日本の大手企業に上場の話を持ちかけており、景気の回復もあってさらに数社の上場が噂されている。一方、イトーヨーカ堂(現在では持株会社セブン&アイ・ホールディングスの完全子会社。当時アメリカ国内で株式・ADRを発行しており、IYGという証券コード名までNYSEから提示されていた)のように誘いを断った企業もある。また、1976年から株式を上場していたパイオニアは、2006年1月下旬に「株式事務の合理化」を理由にNYSEでの上場を廃止した。同様に1982年から株式を上場していたTDKも、「取扱高が少なく、上場を続ける経済的合理性が薄くなった」ことを理由に2009年4月下旬に上場を廃止した。1971年から株式を上場していた古参のパナソニックも、業績悪化に伴うコスト削減の一環として2013年4月下旬に上場を廃止した。
ニューヨーク証券取引所 - Wikipedia
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