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#サタスペ
hayosenaillust · 4 years
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チンスペ集合絵ファンアート
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maopaipai · 4 years
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とっところす太郎
誕生シナリオ/サタスペ『おひっこし・ザ・リバース』
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karasunoyasiro · 5 years
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地獄組 アロハ 少女 ツインテール メッシュ 和風 サングラス
TRPG サタスペ キャラクター
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usamimi-king · 7 years
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慟哭は復讐の声 2.僕は君たちのファンさ
2017年3月に行われたサタスペのキャンペーン・青空爆発ドッグスの最終話を小説風に脚色したものです。
 病院の朝はどこか静かで、掃除が行き届いているせいなのか空気が余計に澄んでいるような気さえした。パットは目を擦りながら昨晩を思い出して全員を見渡す。眠気に負けた我々を乃木先生は外に放り出さず、危篤状態のアリエルの病室に詰め込んだ。それなりに仲良くしているらしいマヤンだけは毛布が掛かっていて、恭ちゃんは備え付けの固いソファに沈んで帽子で顔を隠している。ヴィンスは扉の横で遅くまで警戒していたが結局腕を組んで胡坐で寝ていて、一松はベッドサイドにもたれ掛って細い指をアリエルの手にそっと重ねていた。こんな寝起きも今までの仕事でもよ��あることだったけれど、全員が死んだみたいに不気味だと感じてしまう。嗚呼、考えてはいけない、思惑は現実を呼ぶ。パットは雑に頭を掻いて眠気を散らした。その途端に電話が鳴り、慌てて取るとたぶん近所の人の声だった。パットさん、パットさんと呼ぶ声はどこか余所余所しく、脅えている。 「あなたの家燃えてますけど」
 車に置いてあった荷物を整理しながら、マヤンはいくつかの食糧やお酒を取り出した。備蓄しておいて良かったと言い、それらを均等に分配しておまけに手榴弾もつけて全員に渡してくる。パットだけはそれに目もくれず、清々しい空の向こうに星座を見ながらさめざめと泣いていた。青空爆発ドッグスはパットの「消防が遅すぎるぞー!」の叫び声で目を覚まし、彼のアジトが無くなったことを知った。そんな安いところ住んでるからですよ、と嫌味を言ったのは崔で、どうせみんな燃えるよ、と諦め気味なのは一松だ。一つだけわかったのは、この件は長引けば長引くだけ住処が爆破されると言うことだ。 「そういえばヴィンスには渡さなくちゃいけないものがあったね?」  気が付けばマヤンの姿がそこに居らず、さり気無くヴィンセントの背後に回っていたことに誰も気が付けなかった。素早く起勢を行ったかと思うと亜流の緩慢な動きで空気を扇ぎ、大きな背中に気を入れるように手を押し出す。しかし衝撃を与える前にヴィンセントが半身を振り返りそれを力強く受け止めた。 「前はちゃんと受けてくれたのに今回は受けてくれないんだね……」 「いや二回も同じことされたら流石にわかるだろ」  じゃあこいつは受け取っておくぜと武骨な手をひらひらとさせるが、他の三人からはなにも見えなかった。一体なにを受け取ったのだろう。 「そういえばヴィンス、今回は銃が欲しいって言ってたよね?」  どういう銃がお好みかな? 火力が欲しいのか、扱いやすいものが欲しいのか。マヤンはまるで商人のように例を上げていく。ヴィンセントはこの中では戦闘が得意ではあるが、今まで肉体だけに頼っていて武器の類は扱ったことがあまりない。そしてこれからもメインで使っていこうと言う訳ではない。大袈裟なものを貰っても宝の持ち腐れと言うものだろう。 「取り回しのしやすい小型の物が良いか」 「じゃあ牽制用で良いわけだ。自動拳銃で良さそうだね」  しかしそう言ったあとのマヤンの表情は曇っていった。何度か呻いた後に、まずいよヴィンスと呟く。 「ここって意外となんでも揃ってるわけじゃないんだよね」  具体的にはオススメしようとしたベレッタを取り扱っている場所が無いと言う。軍艦島に行けたなら話は別だが、今は普通に歩くことすらままならない状況だ。無理はしなくて良いと気遣ったヴィンセントとのやり取りを見ながら、崔が思い付いたようにマヤンの頭をポンポンと叩く。 「マヤンくん、君だったらデリバリーで買い物したついでにベレッタも手に入るんじゃないのかい?」  少年は一瞬ポカンとした。それから納得したように部屋の隅に移動して徐に札束を取り出す。それらをバラッと宙に舞わせたかと思うと、両手をパンと叩き真面目な顔で目を瞑った小気味好い音が白に溶けていく。 「時計仕掛けの、名の下に」  全員が聞き取れたのはそこまでで、あとはよくわからない架空言語を途切れなく紡いでいる。あれはマヤンがたまにやる奴なので今更突っ込んだりはしないが、舞った紙幣が金色の光を放ち彼の手に集まっていくのをいくら眺めても理解はし難いと思えた。合わせた手をそっと放していくと、光が一つの銃を象っていく。おまたせ!とニッコリ笑った手の中にはベレッタが既にあった。そう、欲しかったベレッタだ。ヴィンセントは一拍反応を遅らせてから受け取った。ついでに移動用のヴェスパの鍵も渡される。 「僕はJAIL HOUSのほうに顔出してくるよ」  もうちょっとご飯とか必要だしね、と軽快にシトロエンを出していった彼を見送ると、全員も行動しようとその場を後にした。
 とにかくミナミ以外にも行けるようにしなければ、と方針が決まったのでまずは取っ掛かりを見つけるためにパットが走り出した。大阪ドーム近くのコンビニへ行くと最近起こった奇妙な出来事でもないかと雑誌類を読み漁る。何故ドームに来たのかと言うと、ヴィンセントが推してきたからだ。 「ドームは敵がいっぱい来るじゃないか」 「……それは間違ってないけど間違ってるよヴィンス」  そんな会話をしながら乃木クリニックを後にしたが、なかなかの収穫があったかと思う。『話題のイメクラ森の仲間たち』とか『野球界の新星サザンクロスペンギンズ』とか『ドブネズミのように美しく生きる』とか、なんかあいつらっぽいではないか。亜侠の情報収集とはいつだってこういう違和感から始まるのだ。  さてみんなに報告しなければと携帯を取り出したところで、丁度良く電話が鳴った。番号は非通知だ。非通知?パットは前に大人たちから注意されたことを思い出していた。要は知らない人からの電話は出るなと言った忠告である。しかし今は出たほうが良いような気がする、微妙に悪いことをしている気分になったパットはキョロキョロと周りを見てからこっそり外に出てマルチボードでコンビニの屋根の上までやってきた。それから電話を取る。 「君たちが青空爆発ドッグスだね?」  声はなにかの機械を通したようにザラザラしていて、低音の男性のようだった。 「誰だお前は、名を名乗れ!」 「嗚呼、僕の名前はメガディプテス」  復唱しようとしたのどがつっかえる、なんだその滅亡した種類の古代生物みたいな名前。そんな覚え辛い男に電話番号を渡したこともなかったはずで、さてこの電話の向こう側にいる彼の気が知れない。 「一体何者だ貴様」 「僕は君たちのファンさ」  ファン。fanatic。狂信者と言う意味である。しばしば音楽やスポーツの文化活動に勤しむ者のことで、異常なまでに魅入られた楽しそうな人たちのことと思って差し支えないだろう。一体いつから我々はディスカバリーチャンネルを放送していたのか。まさか盗撮。現実と実績から遥かかけ離れた謎の支持者は、楽しそうに息を漏らしたあとに『奴らから身を隠す情報を教えてやるよ』と言った。 「なにが目的だ?」  当然ながら信じられないパットは誰も見ていないのを良いことに顔を強張らせていた。いきなり協力者が現れるなんて普通思わない、元より悲観的な性格だったので殊更に驚く。 「さっき言った通りさ」 「なにか言ってくるんだろ? 報酬だとかそういうので脅してくるんだろ?!」 「いやそういうのは良い」  そういうのは良いから落ち着け、と言われるが少年の手は今や色を失くして真っ白になっていたし、体の震えは収まりそうもない。その癖頭は沸騰しそうなくらいに熱く、千本針で刺されているような痛みがあった。震える声が、嘘だ、嘘だと呟き続けるので、メガディプテスはこれは駄目だと思ったのか簡潔に内容を答えた。ダンボールだ、ダンボールを被ると良い。システム的には、この国は変な人で溢れかえっているので変な人になろうという話だった。 「木を隠すには森さ」 「人を隠すにはダンボールか」 「そういうことだよ」  男はまたなにか見つかったら連絡すると言って電話を切った。通話終了の効果音を数回聞いてから、パットは苦しい鼓動を抑えながら携帯をしまう。そしてコンビニへ駆け込むとトイレの鏡の前でいつも使っている紅を取り出した。何故こんなものを持っているのかと言われると、そういう風習の元育ったのでと言わざるを得ない。どうしてそんなことをするのかについては、聞く前に親元を離れたためにさっぱりわかっていないし、勝手に魔除け厄除けの類なのだと思っていた。紅が底をついたときは、きっと化粧品を買うお金はないのでそのままやらなくなるだろうと思っているが、どうしてなかなかのびが良い代物で八年くらいは普通に持っている。今更もったいぶることもない。パットは赤を指で撫でると頬に描いていたペイントの延長線を加え始めた。  トイレから出ると店の隅に雑然と積まれているダンボールを吟味し始める。いくらまだ小さい体とは言え、人が一人入れる大きさのダンボールなどそうそう無い。あれこれと山を崩しているといよいよ店員が話しかけてきた。パットの渾身の隈取を見たその表情は引き攣っていた、そりゃそうだ。身を隠せるくらいのダンボールを、と尋ねると店員はバックヤードを探し始め、その通りに持ってくるなり逃げていった。なるほど確かに人払いの効果はあるようだ、悪いことをしたようにニヤリと笑うと、パットはいそいそとダンボールを被りいつも通りマルチボードに乗った。これで完璧だ、誰にも見つかることはない。彼はこの後、高速移動する箱型の飛行物体としてミナミを騒がせることを知らない。  その頃、先に乃木クリニックに戻ってきたのはヴィンセントだった。ミナミから出られない状況は思っていた以上に窮屈で、何処にも行けなかったのが正しい。仕方なく待合室に居座って知り合いに手当たり次第連絡しているところだった。ヨーロッパからやってきたハングリー精神を持つ輩は多く、境遇が同じと分かれば打ち解けるのも容易い。尤も蹴落とされるときは容赦も無い。今回はその時では無かったのか、二人ほどから有力な情報が貰えたのがラッキーだ。  一つ、欲の無い動物を信組とする新興宗教が多くなっていると言う話。これは動物園を支配しようとしていたキングの願望が大きくなった故の情��操作によるものではないか? そしてもう一つ、オオサカの水辺に流れ着く不法投棄で釣り人が困っていると言う話。あのロボットを作ったのだ、試作と失敗の数も多いだろう。それらはどこへ捨てたのか? どちらも調べればあの獣共に近付けそうではあった。  宗教に関しては崔が最近一悶着あったし、アウトドアは一松の日常である。二人に後は任せよう、そう思いながら一息つくために窓辺に近付いたヴィンセントは風を切って影を落とす塊を目にした。顔の半分くらいはある石だろうか、そう丁度鈍器になりそうな大きさの。そんなものが自分目掛けて飛んできている。思わずギョッとしながら、ヴィンセントは背中からバッドを抜き打線を見極めた。窓ガラスが派手に割れた次の瞬間には、かつてピンチヒッターとしてチームを勝利へ導いた一振りがその巨大な石を吹っ飛ばす。しかし強力なホームランを犯人の男は涼しい顔でその石を右手でパシッと掴んだ。長い虎の尻尾かと思ったが、辮髪のようだ。男は愉快そうに口角を上げると、スカジャンの背に鮮やかに映える虎の刺繍を見せながら茂みの中へ消えるように隠れてしまった。確か一松が言ってた奴かな。  若干苛立ちながら窓の外を睨んでいると、今度は電話が鳴った。番号は非通知である。雑に操作をして相手を尋ねると「嗚呼、今度はヴィンスかぁ」などとフレンドリーな口調で言われた。 「お前は誰だよ。まるで知り合いのようなことを言うな」 「パットから聞いてないのかい」 「いや、聞いてるけどお前のこと知らねぇし」 「そうか、そっかぁ……」 「名前も名乗らない奴を理解しろなんて無理だろ」 「メガディプテスだっつってんだろ」 「わかりにくいんだよその名前!」  理不尽なことで怒っているというのは、言ったあとに気が付いた。電話越しにしょんぼりした空気が伝わってくる。確かに善意で情報を与えているのに怒られるのはちょっと辛いかもしれないな……全く身に覚えのない相手だけど。 「で、なんの用事だ?」 「そうそう、新しい方法を見つけたんでな」  男はパッと明るい声で話し始める。今使ってるダンボールにセクシーなお姉さんのイラストを描けと言う話だった。これで敵の目を掻い潜ることが出来ると。真面目に聞くんじゃなかったとヴィンセントは頭を痛ませる。 「目立つけどヤバすぎるって目を逸らされる奴じゃないか」 「ふふ、君は馬鹿だなぁ。これに目を向けてる間にダンボールからスッと抜ければ視線を移すことが出来るではないか」  本当にその程度でどうにかなると思っているのか、こいつは。しかし胸を張っているのが目に見えるようなので、仕方なく生返事を返していると電話を切られてしまった。そもそもこの情報を話して実行する奴がいるか?と難しい顔をしているヴィンセントの耳に、ガコンとドアになにかがぶつかる音が聞こえた。またなにか敵がきたのかもしれない、しかし昨晩のリーダーの件もある。いや、そうでなくてもリーダーを島で一回殺しかけている身、次やったら信用問題に関わってくるだろう。ヴィンセントは考えてからそっと隙間から覗いた。大きな段ボールがあった。爆発もなにもしないようだとわかるとようやく扉を開けてその箱と向き合う。少しだけ空いた穴は視界確保の為だろうか、よく見知った大きく赤い目と視線が合った。 「ヴィンス?」 「リーダーか」  変にギクシャクしなくて良かったと思ったのも束の間、パットが段ボールから出てきた瞬間にその体は驚愕で固まった。顔面一杯に赤い線を広げた化粧が奇妙な他無かったからだ。 「顔どうした?」 「え、隈取だよ隈取。さっき電話で言っただろ」 「いや、俺の所にも電話来たけどさ、あいつ別に言ってなかったぞ?」 「念には念を、だ。ところでなにか手掛かりは見つかったか?」 「……嗚呼、そう、新しい策を教えてもらったんだが」
アダムスキー救世教大神殿は、その名前の割りには信仰心の薄そうな人々で溢れかえっている。あらゆるおまじないを心掛けている自分のほうがよっぽど神様を信じているような気もしたし、こんな奴らも救ってしまう神様など信じないほうが良い気もしていると、崔はドリンクバーをお代わりしながらエントランスを盗み見てからパソコンルームに戻った。席についているうちにホットコーヒーは冷めてしまっていて、質の悪さがまざまざとわかる。アダムスキーと言えばデジタル手法がお得意と言うのもあって、そちらの設備が充実しているのが有名だ。ずらっと並べられたコンピューターは宇宙人との通信手段の足掛けとして用意されたものを表向きは善意で市民に無料貸し出ししている。その実インターネットは独自のサーバーにだけ繋がっていて、信者があれこれとでっち上げつつ宇宙人を讃えただけのページに飛ばされるのだが教養に明るくない人間にはそれがわからないのである。そして宇宙人はなんでも解決してくれると思い込んだ彼らが入信するループだ。  しかしそのインターネットも抜け穴を使えばワールドワイドウェブへ飛ぶことも出来るし、おまけに動物占いが大人気と来た。どんな宗教でも動物はとかく密接に関わっているものであるし、神話なんか昔からアニマルパラダイスだ。つまりそこから新興宗教も着想を得ることが出来るのではないかと崔は思ったのである。今までお金をバラまいてきたけれどチームメンバーからは散々な言われようだったので、お大臣は封印だ。久し振りに集中してディスプレイを見続けている。わかったのは、自分たちがあまりにも唐突にテレビに出てきたので掲示板でアラサガシが行われていることと、秋頃にお世話になった紅葉狩りツアーが再開したことと、動物図鑑がamazonからオススメされることくらいか。よくわからないな、と思いつつドッグスの面々に連絡を取っていく。  最後に会話をしたのは一松だった。 「動物図鑑ってなにそれ。もうあいつら動物じゃないから意味無いじゃん」 「だって『もしかして:ムツゴロウ』とか出てくるんですよ。私たち完全に動物に詳しい人だと思われてますよ」 「その人一番遠い人だよね、保護もしてないし好きでもない」 「まぁこういうことなんですよ。一番有力そうなのは掲示板ですかねぇ」 「ちょっと見てみたけど、悪口流してるのが二、三人で固定されてるね。半年前の孤島の出来事も妙に詳しい、これがあいつらの手下だと特定出来れば情報は掴めるかも」 「なるほどなるほど、わかりましたよ……あれ?」  不意に画面にノイズが走ったのを崔は見逃さなかった。カーソルに砂時計が現れたと思ったらそのまま止まってしまい、うんともすんとも言わない。文字がブレていき、点滅にも似た状態になって数秒経つと恐らくパソコン関係者が一番見たくない青色��現れる。 「なに?」 「いや、ブルースクリーンになってしまいまして」 「えぇ……再起動してみたら?」  一松にそう言われて電源を落としてみるも、改めて点けた画面は相変わらずで崔は首を傾げながら本体をバンバンと叩き始めた。 「叩かないで恭ちゃん」 「テレビとかこうしたら直るじゃないですか」  直んないよ、と呟こうとした一松の耳に、なにやら不穏なざわめきが聞こえた。第三者の声がした。大丈夫かと聞こうとしたところで食い気味に大丈夫だよと崔が叫んだが、きっと自分に言ったのではないと唐突に切られた電話の通話終了音で察する。嗚呼、信者にバレたんだな……。
 JAIL HOUSへ行ったマヤンが食料を取りに来てほしいと連絡をしてきたので、一松は一通りうろついた後にそちらへ立ち寄った。ロボットの一件で場が混乱していたと聞いたが、一日経ってしまえば相変わらず亜侠が屯していて大量の酒臭さと品の無い会話が充満している。ここはこうでなくっちゃ、と思った一松の前にバーカウンターでつまらなそうに頬杖をしているマヤンが現れた。どうにもこの喧騒が苦手なのだと最初に集まったときに言っていたはずだ。詳しいことは聞かなくて良いと思ったので、どうこうしてやろうと言う気は無いがさっさと用を済ませてしまおう。 「マヤンちゃん、隣良い?」 「どうぞ」 「ついでに金くれ」 「……そう言われると思ってジャリ銭作っておきましたよ」  小さな拳が差し出されるので下に手のひらで器を作って待っていると、チャリチャリと金属の擦れる音が聞こえた。普段の生活ではほとんど聞いたことの無い音である、マヤンや崔にとってはゴミ同然らしいが少なくとも一松にとってはとても有用性の有る金額なのだ。ちなみに財布と言うものはドッグスの活動をするようになってから手に入れた。カエルの顔をしたポーチにそれをしまい込んでいるとさっき仕入れたバランス栄養食を並べてどれがいい? と尋ねてくる。メープルが好きだ。 「リーダーからダンボールの話聞きました?」 「なに言ってるんだろうねあの子」 「一応用意しましたけど僕たち凄く頭悪そう」  一応用意した辺りがマヤンの優しさと言ったところだろうか、一松は面倒臭いと思って探しもしなかった。 「嗚呼、恭ちゃんの話もしとくね」 「えっなに?」 「アダムスキーのところでパソコン壊したって。バレたら一日修理することになると思うんだよね、どうにか出来ないかな?」 「はい?」  まさに寝耳に水と言った表情でマヤンは目を丸くしている。わかる。こっちも吃驚した。少年は頭を抱えて変な声で呻いたあとに、ちょっとリーダーと相談する、と引き攣った顔で言った。手伝えることがあったら言ってね、と声を掛けて、一松はノートパソコンを起動する。  結論から言うと大した情報は得られなかった。場所を特定出来れば活動場所がわかるかと思ったが、掲示板を盛り上げている十数人を手当たり次第調べ上げる時間は恐らくない。だったら頭を叩いたほうが早そうだと思ったし、そうするべきだと。しかしまぁ、この年になっても知らない自分に会えるのだなと一松は重い胸の内を撫でるように息を吐きながらいくつかの文章を見つめた。酷い言われようだ。益体の無い屠殺だとか動物虐待だとか、あることないことをよく言えるものだ。並べられた誹謗中傷を、せめてリーダーやマヤンが知らないようにと願った。いや、本当は大したことなんかじゃない、皆はもっとタフだしこの程度なんともないだろう。別にいいんだ。皆のことが心配で勝手に苦しくなってるだけだから。こんなことは知られたくはないな。  ノートパソコンを雑に閉じて、珍しく深い溜め息が小さい口から吐き出された。その顔にいつもの飄々とした微笑みは無い。眉間に皴の寄った切れ長の目が人一人を恨みで殺せそうな程度に暗い色をしている。少しの間ぼぅっとしていたが、やがて隣から上回る負のオーラを感じ取って一松はビクッとしながらそちらを見た。マヤンはこのひと時で目の下にくまを作っていて目は煤けた金色で要するに死んでいる。肌と髪の艶も無くなって口元に力は入っていなかった。典型的な疲れた人がそこにいた。 「ご苦労様マヤンちゃん」  頷きのようなうたた寝のような首の動きをしてマヤンは椅子に腰掛けると懐から濃いオレンジ色の酒瓶を取り出した。ラベルはカルヴァドスの一種だったと思うが、正規品かどうかまではわからない。彼は直接瓶に口をつけると急な角度でそれを煽る。あんなに綺麗な体でいたいと言っていたのに、と思うのは野暮だろう。 「良い飲みっぷりだね」 「飲まなきゃやってられないって奴だよ」 「そう、お疲れ様」  まさか一枚だけ魔の鋭角に折れていたなんて、マヤンがブツブツ言い始めるともう一松にはよくわからない話だった。金を時に変換し比喩的同義物による時間逆行を感知した猟犬に見つかってSANチェックとかさっぱりだ。この子リーダーと別のベクトルでおかしいんだよなぁ。 「これあげるね」  ようやく一松がそこにいたことに気が付いたようにこちらに顔を向けると、手元に数枚の札を紐で丸めたものが転がってきた。何故これをと疑問をぶつける前にマヤンは席を立っていて、もう入り口に向かっているところだった。その手には貴重品を入れるしっかりした小型のケースと白い粉が握られている。これからキメにいく人みたいだ。後でハルシオン錠を粉末にしたものだと教えてもらった。 「じゃ、リーダーのとこ行ってくる」 「いってらっしゃい」  彼がそっと消えてしばらくしてから車のエンジン音が聞こえた。危ない運転だけはしないで欲しいな、と思いながら一松はもう一度ノートパソコンを開いた。他の掲示板、出来れば地域を限ったところに書き込みがないだろうか。完全に絞り込めなくても検討がつけられればなんとかなるかもしれない。あとは位置情報を照合してみよう。結構な時間と精神力を掛けて、敵はミナミの北部で活動していると見て良さそうだった。それからいくつか見つかった画像の中で建物の中からチームを盗撮したものがあり、目につく全ての店から住所を割り出して、薬局がテナントに入ったビルであるらしいことがわかる。ここに入ってきた人物を確定出来ないだろうか。とりあえず出来ることはここまで、一松は携帯を取り出してヴィンセントに一連を引き継いだ。
 マヤンと話した作戦は、なにも出来なくなるくらいなら無理やり眠らせて休ませようと言うことだった。OSの不調がこのオオサカでどれだけの災難かご存じだろうか、この町のパソコン��希に壊れやすく、文字通り寝る間を惜しんで直さなければならないのである。そして寝ないで過ごした亜侠と言うのは、それはもう使い物にならない。だからこその注射器とハルシオンだった。  乃木クリニックの玄関を蹴破ったまでは良かったがその後の動作が全くなかったマヤンを心配しながらヴィンセントとダンボールが出迎えてくれる。少年の柔らかい頬はげっそりとしているようで、一切の覇気は感じられない。もはや掛ける言葉も見当たらず、ヴィンセントは黙って車の荷物を運ぼうと外へ出た。 「どうしたマヤン、顔色が悪いぞ」  ダンボールから這い出ながら顔を芸術にしたパットが話しかける。一瞬の間を置いてから力無く手招きをした後、彼は上着から品の良い箱と白い粉を見せてきた。こそこそと悪巧みのように顔を俯け合い、やつれた声が使い方を説明していく。箱の中身は時計だった、ケースが二段に分かれていて下に細く小さい針のようなものが入っていて、マヤンはそれが弾だと言った。針を巻くためのつまみを押すと、この針が標的目掛けて飛び出すらしい。文字盤のカバーガラスを開けると照準器にもなる。 「えっなにこれ! 凄いスパイっぽいよ!」  対してパットのテンションは爆上がりだった。そりゃどこぞの高校生探偵っぽい装備の、しかもマジもんを使えるとなると心が弾まないわけがない。それだけで彼が良い仕事をしたと褒めてやりたくもなる。一体どこで見つけたのこんなもの、と勢いで尋ねたかったが、ただマヤンが取り繕えないほどに顔色が悪かったのでグッと飲み込んだ。それが通じてしまったのかマヤンは自嘲気味に笑う。 「正直これ買うときはノリノリだったんだけど途中で疲れちゃってさ……」 「そっかそっか……」  小さな肩をポンポンと叩くといよいよマヤンが泣きそうだったので、どうか休んでほしいと思った。ちょうど良いタイミングでヴィンセントも食事を持って戻ってきて、それらを必要な分だけ分けていく。昼食もまだだったらしく、棒状の栄養調整食品を貪るマヤンは「とりあえず後は任せたから」と良いながらベッドのある部屋を勝手に借りに消えていった。 「ついていくか?」 「ついてきてくれんの?」 「恭一囲まれてんだろ、全員と戦闘になったらどうすんだ」 「そうならないように頑張るけど、心強いよヴィンス」 「じゃあさっさと行こうぜ」 「うん、行こう」
 折角良い情報が手に入ったところなのにこんなトラブルに見舞われるとは。白い服に頭の円盤をくるくる光らせた信者に囲まれながら、崔は何度も壊れてないことを強調して説明した。モニターはとっくに電源を落としたが、どうしたどうしたと詰め寄ってくるものだからバレるのも時間の問題かもしれない。崔は人だかりの中心でいよいよ言い訳も思いつかなくなっていた。 「いやこれは違うんだよ、直る直るちょっと待って……!」  弁償だ何百万円だと怒鳴ってくる老若男女の声に普段の落ち着きも失くしてしまい、心情を表すように帽子がずり落ちてきた。こんなに囲まれては逃げることも難しい、そうでなくても狡いことは出来ない性質だと自負している。だから机の裏、自分の後ろにダンボールが迫ってきていることには気が付かなかった。 「悪いが恭ちゃん、眠って貰おう」  ヴィンセントが崔の位置を確認して伝えてくるなり、パットはダンボールを被り突撃してしまった。どうにも猪突猛進の衒いがあるようだ。しかし素早さとは最強のステータスである、先手を取るための手段に仁義などは無い。少年は誰かに見つかる前に、誰よりも早く狙いを定めて腕時計型麻酔銃を撃った。流石に初めて使う銃なので大分緊張はするし、一松が教えてくれた薬の回りやすい部位は分かり辛いにも程があるが、なんとか当たったようだ。僅か小さい針はキラリと光りながら、勢いを落とすことも無く崔のうなじに刺さった。途端に彼の体がグラつき、足を滑らせて後ろに倒れ込む。拍子にキーボードに後頭部がバァンとぶち当たり、いくつかのアルファベットが宙を舞う。白い幽霊みたいな恰好の人々がアストラル体が飛んで行っただの意識体だけが逃げただのと騒ぎ出し、追い掛けろと言い合いながらバタバタと去っていった。ミッションコンプリート。 「大変だな」  鮮やかに事を終えたリーダーのことを眺めていたヴィンセントはボソッと呟いた。頑丈な体は人波に薙ぎ倒されることはなかったが、まぁ倒れるような事態にならなくて良かったと思うべきか。そのままずるずると眠った崔を運ぼうとするので、流石に手を貸さなければと駆け寄る。脱力した崔に肩を貸すような体勢で移動すると、施設の影に停めてあった彼のスバル360R2の座席に横に放り込んだ。いびきはかいていないが眉間にしわが寄っていた。  ぐったり二人目のパットを車で待っているように言ってから、ヴィンセントは一松に教えてもらったビルを探し始める。住所がわかっているので割とすぐに見つけられたものの、怪しい人物に関しては五万といるからと訝し気にされてしまった。有力そうな心当たりは、カワイイ女の子のキャラクターの着ぐるみが近くでチラシを配っていて、休憩すると言ってビルの二階を使っていたことくらいだ。それがあの女の子かどうかは判別が付かなかった。こういうのは女のほうが得意だろう。一松を女扱いしていいのかという問題は、置いておいて。
 空には早く動く雲が浮かんでいて、見ているとちょっとだけ楽しい。崔の慎ましい寝息を聞きながら、パットは助手席で豆の缶詰をウォッカでつまんでいた。ヴィンセントがいなくなったあと、重たくなった肩を回しながらストレスの負荷を認識してしまってややしばらくはなにもしたくない気分だ。だと言っても他人にとっては知る由もないことで、遠慮無く鳴り響き始めたカンフー映画のテーマソングが携帯の呼び出し音であることをようやく思い出すと忌々し気に耳に押し付けた。 「誰だお前は!」 「やっほー!」  切った。またチャララとイントロが始まる。 「誰だお前は!」 「やっほー!」  やはり切った。  しかし二度あることは三度あるとも言い、こんなタイミングで前に言われたマヤンの「女性からの電話を切るのはとても失礼なことだと僕は思うな」との苦言を思い出して渋々、嫌々、やむを得ず、仕方なしに電話に出るともう一度砂糖が溶けたような可愛いソプラノで挨拶される。 「誰だお前は」 「リボンちゃんだよぉ」 「お掛けになった電話は」 「明日の朝デートしよ?」  パットは一瞬時を忘れ、眉間に手を当てながらゆっくり息を吐き出した。そして確認するように彼女の台詞を単語ずつ呟くと、啖呵を切るように言い放つ。 「この危機的状況でデートに誘うってどれだけ非常識か解ってない?」 「だってパットが一日会うなって言うから電話したのにそういう対応って無くなぁい?」 「なら仲間の危機をなんとかしてもらおうか?!」 「えーだって私には関係無いしぃ」  あいつらのやってることなんて知らないもんっ。拗ねるような口振りに、彼女が電話の向こうで柔らかい頬を膨らませているのが目に浮かぶようだった。それを考えると愛しさのあまり抱きしめて何度でも謝りたいし、機嫌取りとばかりにぷぅとした艶やかな唇にキスを、って俺はなにを考えているんだ。ふぁっく。余った百倍の憎しみが左手の中指をキッと立たせる。しかし、こう何度もちょっかいを掛けられるのも今後困るだろう、一度相手の要求を呑み込んでやって満足させるべきかもしれない。パットは狂犬のような唸り声が聞こえないように悩みながら、金は出せないから奢ってくれとだけ頼んでデートの誘いを了承した。嬉しそうな息遣いがそっと耳に届いた。 「パットは話わかるぅ」  嗚呼、それはもう花が咲くように美しく笑っていることだろう。想像するだけで胸が高鳴るが、苦しさのほうが勝って上手く声が出てこない。油の切れた機械のように、パットはぎこちなく抑揚のない声をしていた。 「どこにいけばいい?」 「なに言ってんのよ、デートって言ったら男の子が決めるもんでしょ」 「わかったよ……」  こんなにときめいていても女って面倒くさいな、と言うのも本音だ。ようやく出てきた安堵は溜め息になって台詞に混じり、大変に嫌そうになった。そんな態度も、素直じゃないんだからと彼女は笑う。さて、場所はどこがいいだろう。言い掛かりでも追われている身、出来るなら刺客の目を欺けて、他の不特定多数もこちらを気にしない場所が良い。木を隠すなら森と言ったか。 「悪いが大阪ドームに来てくれ」 「うんわかった、明日の十時ね」  楽しみにしてる、とリボンちゃんは慎まし気に言った。それから軽いリップ音がした気がするのだが、パットはもう意識を手放していた。眩暈と頭痛で耐え切れなかったのか少女のキスにハートを射貫かれたのかは、もう定かではない。日が傾き始めた頃に戻ってきたヴィンセントが発見した彼の姿は白く、魂が近くを浮遊していたと言う。
 俺たちはこういう奴らだよ。そう嘲笑ったのは他でもないリーダーだったと、一松は記憶している。青空爆発ドッグスはいつだってかっこよく決まらない。最後に依頼を成功させてはいるが、その過程は失敗ばかりだ。そんなものと言ってしまえば仕方が無いのかもしれないが、しかし今回はそれで良しとしてはいけないのだ。キャラクター物の情報を漁った挙句に辿り着いた「着ぐるみの中でセックスしたいあなたへ」とか言う広告がでかでかと表示された画面を見ながら、一松はモコモコした赤髪を両手でぐしゃぐしゃと乱した。テーブルには数十分前に食べたお菓子の箱がまだ転がっている。マヤンちゃんのあの哀愁漂う背中を思い出したら、悪い予感がしても頑張らないわけにはいかなかった。  バーテンダーがもの言いたげにこちらを見てくるので、小銭を投げつけながらジントニックを頼んだ。そうだ、整理し直そう。まだ辿ってない情報がある、水辺の不法投棄だ。流れてくるならそれまでに目撃証言があるはずだろう。オオサカの地図を見ながら水路を確かめつつ、発端を探していくとどうやら道頓堀近くに大量に廃棄されているものの内比較的重たいものが沈んでいるようだ。そしてこれらのパーツはロボットを作る過程のものだともっぱらの噂で、ある程度完成された精密機械を分解したところ動物の生態を真似た機構を使っているとのこと。そういえば動物に纏わる機械を作る会社が前に有名にならなかったっけ、と言う書き込みを見た瞬間、一松の携帯が鳴った。 「もしもし?」 「メガディプテスですどうも」  もはや恒例になった、ノイズ混じりの男の声だ。 「あー、あのうちのチームに変なことを吹聴して回ってる」 「変なこととは失礼だな全く」 「それで何の用かな?」 「吾研究所で開発されたキエテナクナールを使えば自分の姿を消して移動できるようになるんだよ」  そりゃまぁ唐突だな。ハハハ凄いだろーと見えもしないのに威張っている彼に、だったら最初からそれをくれれば良かったじゃないかと言う文句は飲み込んだ。 「凄いけど、それは貰えるのかな?」  自慢で終わりか? と尋ねた一松の元に、バタタタタタと小さな駆動音が近付いてくる。横を見ると丁度小さいヘリコプターみたいなものが空を飛んでいた。確かドローンと言う奴だ、それが小包を抱えてゆらゆらしていた。ドローンは大きく斜めに傾くと、その���動で箱を落として用は済んだとばかりに去って行く。味気無い包装は突然動き出すことも無かったので一松は手に取って蓋を開けた。  中身は更に小さくて、ペンギンを象った丸いピンバッジのようだった。くちばしの部分が出っ張っていてボタンになっている。一松がパーカーにバッジを取り付け躊躇い無くボタンを押すと平坦な胸の辺りから色が消えていき、周りが透けて見えた。 「周囲の反射率を即座に計算してマイクロ単位の物質を放射し君をガード、その反射率を再現して一分くらい風景と同化出来るのさ」 「結構とんでもないもの作るね」 「まぁ、これに見合う活躍を期待しているよ」
 いくつもの街頭とすれ違いながらスバル360R2は夜の道路を走り、僅かな振動を横たわる体に伝えていた。着メロはどうにもしっくり来ないので貰ってからずっと強めのバイブを設定していた携帯が、今震える。未だ朦朧とした意識のまま、崔は届いたメールを開くと説明も無しに画像ファイルが添付されていた。寝こけながら画像を確認するとどうやら知り合いのようだった。いや、知り合いと言えるものだろうか、確かに妙に世話を焼くようになったけれど。コンクリートが打ちっ放しの暗い室内に、簡易な木製の椅子、そこに座らされキツく縄で縛られたカスミの姿があった。眠い目を擦りながら更によく見ると、なんとも大仰にプラスチック爆弾やドラム缶が積まれている。またこの人は厄介事に巻き込まれたようだ、しかし今回は私の責任なのか? 崔はもう一度メッセージが無いことを確かめると、誰かから掛かってきた電話に対応した。 「もしもし?」 「へけっ!」  もう可愛らしい声を捨てたのによくもまぁ猿芝居をするものだ。崔は理解出来ないとでも言いたげに眉を顰める。 「なにか誤解があるようですねぇ。その人は私とはなんの関係もありませんよ」 「おや、それはどうかな?」 「え���、かたや亜侠の私と前回のクライアントで大手に努める人ですから。なんの接点もありません」  接点が無いというのも素っ気ないだろうが、深い間柄だと思われても困る。少なくとも今は他人であったほうが良い。しかし、公太郎は高笑いに臥すと、それならそれで構わないと言った。そう言えばネズミ総選挙では敵だったのか、個人的な恨みもあるわけだ。 「これ虎っ子には反対されてるけどね」 「嫌なネズミですねぇ」  愚痴を言うように呟く。 「これでもファンは多かったんだけどね」 「皮を被っていたからバレなかった、一部の人間が騙されただけでしょ?」 「タレント稼業なんてそんなもんさ」 「じゃあ引退ってことで納得して欲しかったんですけど」 「そうさな、もう人間だから引退はしてるさ」  ただやり残したことはある。その声にはなにか強い意志を感じたが、崔にはまるで興味の無い話だった。どうせこちらにはろくでもない話に違いない。他人事のように、まぁ上手く行くと良いですね、と思ってもない言葉を投げ掛ける。公太郎のほうはなにが楽しいんだが声を抑え切れないようで、この爆弾は一日で爆発してしまうよと宣言してきた。明日の夜にカスミが死ぬかもしれないと言うことだ。 「目の前でなにか起きるようでしたらこちらもそれなりのことはさせて頂きますよ」 「嗚呼、是非足掻いてくれよ」 「では近い内にお会いしましょう」 「その時を楽しみにしてるよ、へけっ!」  もはやただ不快な掛け声だけを残し、その通話は途切れてしまった。掛け直そうとも思わないし、今は眠気のほうが勝って面倒臭い。くあっと欠伸を一つ吐き出してから、運転席と助手席に誰かが座っていることに気が付く。嗚呼そりゃ、自分は寝ていたのだからチームの誰かに運ばれているわけだ……。なけなしの気力を振り絞って前を覗き込んでわかったのは、ハンドルを握っているのはヴィンスで、助手席には泣き声が聞こえるダンボールが鎮座していることである。 「ヴィンス、これなんですか」 「リーダーだよリーダー。運転中だからなんかあんならそっちに話してくれ」  それも道理かと納得しながら、リーダーと呼ばれた物体をトントンと叩くとダンボールが持ち上がって顔が見えた。なんというか酷い顔だった、化粧が落ちてドロドロになっている。憐憫極まりなく、崔がコートのポケットからハンカチを出しパットの顔から紅を拭き取ってあげると白くなった肌が現れた。血の気が無いと言う意味で。 「大変面倒をお掛けしたようですね」 「いやいいんだ、恭ちゃんのせいじゃない。ゾンビとデートしなきゃならなくてね」 「嗚呼そう言う……ええと、申し訳ないけど知り合いがこの件に巻き込まれてしまいまして」  画面を見せながら、携帯をパットに手渡す。もう少し面倒掛けることになりますよリーダー、崔はそれが限界だったのか返答も聞かないまま座席に寝転がった。閉じた瞼に、一瞬だけ画像のカスミを思い出す。可哀想に。自分を疫病神と言ったのは果たして誰だったか、昔から言われていたのか、それともドッグスに入ってからそんな不運に付き纏われているのか。周りを巻き込んで大抵のことが上手く行かない亜侠なんか珍しくない。 「私は疫病神でねぇ、私と関わってしまったらあなたにも悪いことが起きると思いますよ」  ならば敢えて逆手に取ろう。こちらも不幸に見舞われているが、あちらも最終的には大損だ。崔は届くわけもない皮肉めいた忠告を呟くと、一足早く夢を見始めた。
 マヤンからのお願いの電話で自分を取り戻したパットは、やることが残ってるヴィンセントと別れて乃木クリニックへ戻っていた。会計曰く、今日は疲れたから買い物が出来ないとのこと。朝にアジトが無くなったところなのでそれだけは確保しなければならない。力の抜けた成人男性を半身に背負いながら病院を訪ねれば、相変わらず知性に溢れた顔立ちの先生が怪訝そうにこちらを睨んでくる。パットは可愛い顔立ちではないから愛欲の目で見られることはないが、決して優しくもされない。土下座も辞さない勢いで必死に頼み込み、財布の中身をチラつかせてようやくしょうがねぇなと温情を貰うのだった。  通されたのは地下の倉庫だった。ある程度整理はされているものの、掃除は行き届いておらずこの季節には肌寒い部屋だ。薬品棚がひしめき合っていて通路に寝られるかも怪しい。ここなら空いてるから使っていいよと言い、先生はぶつくさ文句を垂れながら去って行った。せめて毛布くらい貸して貰えば良かったかもしれないと思いながらぴくりとも起きない崔をロッカーに押し込み、マヤンへの連絡用に写真を撮ってから自分はダンボールを被って眠る。どこにも怪しいところは無い完璧な擬態である。スニーキングスキルの高さ、是非褒められたいところだ。尤もドッグスのメンバーは一様に冷めているので褒めてくれないのが目に浮かぶ。  一方その頃、マヤンは送られてきた写真と「この中に恭ちゃんが隠れている」に対して、溜め息を吐いた。手の込んだクリアリングには感心するが、崔を隠した場所はどう考えても死体のそれである。ロッカーでしょ、わかるよ、リーダーの考えてることなんて僕にはわかる。敵から姿を隠すためとは言え、年上に対してこの扱いよ。場所はこの際どこだって構わないけれど。そう腹を括りながら辿り着いた新たなアジトで、疲労のあまり勢い良く酒瓶を煽ると僅か数滴しか舌に落ちず、いつの間にこんなに飲んでたのだろうと若干後悔しながら携帯から巨大掲示板へアクセスする。なんてことはない、近隣で怪しいことをしている輩を適当に告発しているスレッドだが、白衣の男が炎天堂に入っていったのを見かけたと言う書き込みを見つけるとカスミの一件を教えてくれたヴィンセントに折り返し連絡をした。今日はもうこれで休ませてほしい。マヤンは力尽きたように床に寝そべると、そのまま意識を手放した。
「カスミさんが攫われた?」  電話越しで一松が半ば呆れたように聞き返してくる。 「向こうからの嫌がらせだ、可哀想だしなんとかしようぜ」 「いきなり言われても」 「それに死んじまったら恭一、引き摺ると思うんだよ」  ヴィンセントはなんとなくそんな予感をしていた。それなりに彼と仕事をしてきたつもりである、崔と言うのは構いたがりな癖に理由を付けて相手との距離を無意識に置いて、もう随分会わなくなる相手でも心配していると話題に上げる男だ。誰かがいなくなるのが寂しいのに自分からは手を伸ばせないらしい。相手の手も取れないらしい。どこか悟ったような顔をして、黙ってしまう男なのだと考えている。本当のところははぐらかされてなあなあになっているからわからないけれど、とにかくカスミが死ぬのは駄目なのだ。 「……その相棒の勘に免じて協力するけど、手掛かりはあるの?」 「ある。軍艦島の労総本部ビルで爆弾を大量に購入していった白衣の男がいるとさ……あ、やっべコンビナートに見つかった、後は頼むな」  ヴェスパのエンジンをふかしたあとに大急ぎで切られた通話に耳を痛くしながら、一松はそりゃ無茶だろと思いつつパソコンから顧客名簿をハッキング出来ないかと打ち込んだが、接続直後に不審な添付ファイル付きメールが大量に送られてきてすぐさま引き返した。検索サイトのトップに『阪神まさかの敗北』の文字がでかでかと掲げられている。これはしばらく道頓堀に近付けないな。  パソコンを閉じるとわざとらしい咳払いが一つ、胡乱気なバーテンダーが昼と同じように注文を待っている。結構な時間座って酒を頼み続けていたし、これ以上は二日酔いが心配だ。弱いほうではないが、不調を持ち越したくはない。帰って寝なければ、と思ったところでそもそも帰る場所が無いことを思い出した。 「マスター、ご相談が」  一松は財布の蓋を開けると、そのまま下に向けてバラバラと小銭を落とした。バーテンダーどころか、周囲の客も驚いたようにこちらを見つめる。交渉に置いてインパクトと言うのは大事だ、路上生活者の手持ちなんてたかが知れているから普通に渡したところでどうせ相手にしてもらえないだろう。 「休める場所を探してるんだ。どの部屋でも良いから、これで買わせてくれ」  バーテンダーはお金を丁寧に懐に仕舞い込み、一松をカウンターの奥の部屋へ、そこから地下へ続く梯子を降り、カビだかホコリだかで汚れ切った場所へ案内した。樽が所狭しと並ぶ古い酒蔵だ。部屋の隅に蜘蛛の巣があるのが懸念されるが、屋根があるのは素晴らしい。あでもそこらへんの酒は飲むなよ、いつのだかわかんねぇから、バーテンダーは軽い口調でそういうと店のほうに戻っていった。  この部屋には蝋燭すら無いようだ。一松はいつもの癖でパーカーのポケットを漁ってから、ジッポーは失くしてしまったことを思い出して仕方無く壁にもたれ掛かった。部屋が暗いならさっさと寝てしまおう、明日だって朝から動かないといけないのだから。
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y2shina · 7 years
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与太郎の休日
推奨人数/2~3人
所要時間/2~3時間程度
難易度/作ったばかりのキャラ向け
いつも通りJAIL HOUSEで酒と与太話に明け暮れるボンクラ共の前に一人の女が現れた。
リンネ博士と名乗った女が言うには軍艦島のUMA調査を一緒に行って欲しいとのこと。一行は面倒事の気配を感じ、断ろうと考えたが彼女のちらつかせた札束に釣られ、ついつい依頼を引き受けてしまった。
一行の明日はどうなる!?
NPC/リンネ博士
丸眼鏡とハイソな服装が特徴的な女研究者。そこそこお金持ちの気配。今回の依頼人。
以下シナリオデータ
ターン数2日/戦闘1回
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murai-moonlight · 5 years
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TRPGメモ
むらいのTRPG関連メモです。
(本人の備忘録です)
🐥Twitter🐥
@muraimunrai
🎲参加するセッション🎲
ほぼDiscordボイセ
東京近郊でのオフセも予定が合えば。
📖所持ルルブ📖
・CoC (基本、2015、帝国、マレウスモンストロルム、キーパーコンパニオン)
・フィアスコ(PDF)
・サタスペ
・ガンドッグ
・D&D(プレイヤーズハンドブック第5版)
・インセイン(基本、ディオダディ荘)※未プレイ
・シノビガミ※プレイ1回のみ
・銀剣のステラナイツ※未プレイ
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draft-con · 4 years
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ドラフトコン2021 ゲーム紹介:サタスペ
ゲームマスターの名前、自己紹介
こんちゃっちゃどうもガリです。 好きな寿司はマトンです。 (逆)(名前はマトン)
システム名、システムの紹介
アジアン・パンクTRPG「サタスペ」
舞台は、現代に基本似ている世界。 場所は、暴力と金と権力が渦巻く法のなき都市と化し明日の保証もされない世界有数の犯罪都市オオサカ。 あなた達プレイヤーは、亜侠(あきょう)と呼ばれる自分の分身を操り、オオサカの街を犯罪を犯しながら縦横無尽に駆け巡ることが出来ます……とここまでが割と丁寧な説明……
【ここから中の人のやつね!!】
金っすよ金!! どんな世界になろうとも生きていくには、必要なのはやっぱ金よ。 無いっすか!! 『5000兆円ほじぃ……(切実)』って思うこと……俺はありますてか常に思ってます。 そんな夢をね、この世界では掴めるかもしれないんすよ! 金持ちサラって脅せば手に入るんすよ!! 銀行強盗すれば手に入るんすよ!! 成功すれば!! 成功すれば!! んじゃやりましょう、金をゲットしに行きましょう。
……あ、それと大きい声では言えないんですけどエッチなことできます……。 エッチなことが出来ます!!(クソデカ大声)
対応可能プレイヤー数
3~5人
TRPG初心者対応可否
おけまるです。私もサタスペ2年前くらいに1回やったくらいで初心者みたいなものです。
システム初心者対応可否
おけまるです。私もサタスペ2年前くらいに1回y…(2回目)
プレイヤーが使用するダイス(サイコロ)
6面体3個あれば十分かな!!
使用ルールブック(レギュレーションなど)
基本しか使わない予定ですけど面白いルールとかあれば追加します。 でもルールくらいで、カルマとかは追加しないですね!
キャラクター作成、持込可否について
キャラシは当日作成でやりたいなぁ!
シナリオ名、シナリオの出典
「甘々と食戟のグラフィティ~犯罪都市オオサカの寿司屋ダイゴ一番~」
シナリオのあらすじ、注意事項など
あなた達亜侠(プレイヤー)は、仕事を終え、依頼人「川池 士郎(かわいけ しろう)」と打ち上げにオオサカで一番と呼ばれる寿司屋「ダイゴ一番」へとやって来ていた。 酒を飲み美味い寿司を食いながら楽しんでいると、川池 士郎にとって因縁の相手「草村 雌川(くさむら しせん)」が現れ、大将のダイゴが出したイカ2貫を食べた瞬間、『この寿司はsupreme(至高)の寿司では無い!』と言い出し店を解体作業用の鉄球で壊そうとするが、川池 士郎が『数日待ってもらおう……俺たちが最高のネタを準備しそれを大将に使ってもらいultimate(究極)の寿司でお前の口を黙らせてやる』と言い出した……ん?? 俺……たちぃ~?? さぁ新たな仕事だ!! 仕事の内容?? そんなの決まっている!! 「川池 士郎」が勝つようにすれば良い!! ネタを準備するも良し!! 草村 雌川を処理しに行くでも良し!! Hey! Hey! スシカーで草村 雌川が乗ってる車とカーチェイスしても良い!! どんな方法でも良いから「川池 士郎」が勝てば良い!! 報酬は、5千兆円だ!! 誰が出すって?? 決まっているだろう大将だよ!! (勝負をしだしたのは……君たちに依頼を出したのは川池 士郎にも関わらずだ!!)
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mono74 · 4 years
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TRPG「サタスペ」シナリオ集
B5・無線綴じ
表紙デザイン担当
企画・文:彦山迷(行為判定倶楽部) 表紙イラスト:ワッキー
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deisui-blog · 5 years
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サタスペ、まよキン棚 https://www.instagram.com/p/B7-vctahCRK/?igshid=8kyms9yi8imn
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3meats-oniku · 5 years
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菅原ヴィンセント サタスペ
生活+戦闘亜侠
表の顔が非常勤講師の22歳殺し屋
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antsyouyu · 7 years
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文字を書くということ
ツイッターばっかやってたら脳が死にそうなので一人でまとまって何か書く場所を作ろうと思った。三日坊主かもしれないが。
周りに人がいることに疲れたのかもしれない。フォロー数146人らしいし、100人かそこらの人数が目の前で喋ってるの聞いてるということで、それって結構凄いことじゃない?みんな違う方向向いてたり、同じ方向向いてたり、そりゃ疲れるよな。それで、ツイッターをやってる私はそれのいくらかに反応して何か書く。反射みたいな感じで。文を書くのとはまた別の運動だな。ただ、私はコミュニケーションの運動神経も無いらしい。
ところで今は夏休みである。暇で死ぬのではないかと思っていたが、意外と趣味が忙しく、割と充実している。とりあえずやってるのは弐寺と、絵の鍛錬と、TRPGと。
弐寺は2年くらいブランクをおいて最近再開して、先週六段を取り直したところ。フローティングハイスピードというやつが結構よくて、明らかに2年前よりも調子が良く順調に☆9が埋まってきている。皿がクソ苦手だったのだが、最近感じが分かってきたというのもあると思う。それでも七段は流石に遠いかな。毎日ゲーセン行きてえ~
絵はこのあいだ思い立って『パース塾』を全巻買ってやってみた。流石にパースはめんどくさいとは思うが、クリスタのパース定規機能がチートかと思うほど便利なのでデジタルで描く分にはそんな気にならない。『グリッドで背景を描こう』も買って読んで思ったことは、背景を描く時により気にするべきはパースよりもスケールなんじゃないかということ。『パース塾』にも標準スケールは載っていたが、『グリッドで背景を描こう』の日本人標準グリッド単位が革新的でこれだけでも買ってよかったなと思った。普段の生活の中でもスケール感については特に気にして観察してみよう。
TRPG。シナリオ作り始めて1年と3か月くらい。最近はCoCのモチベがあんまり無く(やりすぎ)、旧約ビーストバインドとかピーカーブーとかサタスペとかやりたい気分。ただオンセだとCoCの流れが強くてなかなか誘いづらいところがある。CoCだったらいいかな…と参加を見送ってるうちに他の人の卓予定が埋まっててますます参加できなくなってきたりしてて意外と卓に関しては暇。コミュニティが活発なのはいいことだが。それはそれとして、そろそろサークルの合宿のシナリオとかキャンペーンの構想とか練らないといけない時期だ。まぁなんとかなるやろ。
ああ、あと部屋の掃除をしないといけないんだった。特に理由が無ければ掃除なんてやらない(そして住環境がゴミに。でもそれはそれで居心地良い)んだけど、たぶん5年か6年以上は使ってそうなこのパソコンがいよいよ死につつあり、買い替えようということになったので仕方なくちまちまと。2,3回起動とフリーズと再起動を繰り返さないと安定しない。オーバーヒートしてる? コンピュータのことについて無知すぎていつも親父に頼っているが、やっぱり自分でも色々知ってないともしもの時に危ないよなぁ。
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↑背景の練習で描いた自部屋(物が何もないバージョン)
そういえばこれ前のtumblr使いまわしなので2013~とかになってるけど気にしないでください。
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saksaksaktrpg · 6 years
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所持しているルールブック
SW2.0
基本ルールブック改訂版Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、EX、BB、GB、AW、BT、WT、CG、IB、LL、FC
ルーフェリア、PZ、PD、PDa、DF?、MC、FG、CL、FT、EM
ドラゴンレイド戦竜伝、バウムガルト、アシュラウト、モン☆ハカ
その他公式リプレイ多数
CoC
基本ルールブック、2010
ビギニングアイドル
チャレンジガールズ、ロードトゥプリンス、ハートステップ、フォーチュンスターズ、ビギニングロード
その他基本ルールブックのみ所持システム
グランクレスト、アリアンロッド2E、ダブルクロス3rd、ログ・ホライズン、モノトーンミュージアム、キルデスビジネス、ガンドッグ・リヴァイズド、シノビガミ大判、忍秘伝・改、正忍記・認、シノビガミ華、ドラクルージュ、ガーデンオーダー、片道勇者、コロッサルハンター、マージナルヒーローズ、デッドラインヒーローズ、アマデウス1~3、スカイノーツ、銀剣のステラナイツ、ソード・ワールド2.5Ⅰ~Ⅲ、グランゼール、エピックトレジャリー、キングスフォール、インセイン、ブラックジャケット、サタスペ、ゴブリンスレイヤー、アンサング・デュエット、キミに届け
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karasunoyasiro · 5 years
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足はムチムチ 胸はひかえめ 探偵(仮) おばか 少女
TRPG サタスペ キャラクター
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usamimi-king · 7 years
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慟哭は復讐の声 1.奴が帰ってきた
2017年3月に行われたサタスペのキャンペーン・青空爆発ドッグスの最終話を小説風に脚色したものです。
 いつの間にか久し振りに飲もうぜなどと言い合える連中になってしまった。それに二つ返事で喜べる仲になってしまったのだ。誰がなんと言おうとも、自分たちが実のところどう思っていようとも。
「みっちゃんとリーダーはまだ来てないみたいですねえ」  ダイキリを片手に呟いたのは崔恭一だった。紫の瞳は壁に掛かっていた時計を確認したがさっき見たときと変わらず二時十七分で止まっているらしく、当てにならないと顔をしかめては酒を煽った。よく見たらガラスが割れているし中に蜘蛛の巣が入り込んでいる。 「まあリーダーが時間にルーズなのは今に始まったことじゃないですしね」  酒を勧めてくる悪い大人にNOが言える優等生DB・マヤンはカラシニコフを玩具のようにして遊んでいる。チョコレートの盛り合わせは地下の籠った熱で溶け始めているところ。室内でのマナーと言って着こんでいた帽子とコートとジャケットも脱いでいた崔も少し暑そうだ。 「一松も適当なところあるしな」  黒くないビールをぐっと傾けて一気に飲み干したのはヴィンセント・ジョーンズ。空いた腹にアルコールは良くないと頼んだつまみに手を付けないまま三杯目だった。口に白いヒゲがついたのを褐色肌の少年が揶揄い、黙って手の甲で拭う大男を横目で見ながら、自分は次にどんなものを飲もうかと崔は考える。昔から所以だの謂れだのを考えるのが好きで、特に拘ってるのがジンクスだ。ちなみにダイキリについた意味合いとは、希望らしい。  例え亜侠などと言うボンクラであったとしても酒を飲むなら日が落ちてから、全員が揃ってからと思っていたのにリーダーであるパット・ユーディーともう一人の一松三子が現れる気配が無いので痺れを切らして諸々を注文したのが三十分前になる。お決まりになってしまったこの個室はそれはもう店の奥の奥で、料理の映えなど気にもかけない白熱灯が光るばかりで外が今どんな様子なのかは把握できない。相変わらず狭い部屋はあと二人を収容出来るのかも疑わしいくらいだがパットはまだ成長しきっていない少年だし一松は枝みたいに細いから結局は大丈夫なのだろう。 「なんだっけ? パソコンのCPUのクロックアップ? あれに凝ってるって言ってたっけ。僕わかんないです」  銃を傍らに置いたマヤンがもうぬるくなってしまったオレンジジュースを少しだけ飲んだ。 「まあ……一松のほうは最近恋人も出来たしな」 「最近? もう半年も前の話ですよ。若いんだからその感覚は治しましょうよ」 「いやいや忙しかったからさ、時間が経つのが早かっただろ」  最年長に老いを指摘されてヴィンセントが焦る。言い分はまぁ、わからなくもないが。 「この半年の間になにがありましたっけ?」  因幡の白兎が頼んできた件は何ヶ月前でしたっけという少年の問いに、三人は六ヶ月を思い浮かべ始めた。ワニとサメが合体した化物を海上に浮かぶ船から相手するのはシビアなものだった、舵を取ったマヤンは免許を取れる腕前に変わり果て、依頼人のウサギに騙されたとわかるとこういうときはパイにするんだよと一松が喜々として包丁を研いでいたこととか。さるかに合戦は親の敵討ちをとカニが頼んできたが実際にはサルはむしろ良い奴で、カニ率いる詐欺師集団が豪邸を奪い取る算段だったらしい。甲羅が嘘みたいに硬くて銃弾を物ともしないので崔が無理だと泣き喚き、結局ヴィンセントが手足をもいで物理で解決させた。あと一回だけ珍しく人間がやってきて某盟約で秘密裏に開発されているウィーゼルの詳細を調べてくれとのことがあったが、実際に生み出されていたのは洗脳された殺人イタチであった。結局動物じゃねえかとパットが叫んでいたが同情禁じ得ないぇ 「どうでもいいですけど本当に動物関係多いですね、ウチは」  ようやくグラスを空にして、店員を呼ぶのに立ち上がりながら崔は呟いた。 「なんか呪いなんじゃないですか」  マヤンが言った。割と呪い染みた運命だと。錬金術師が言うと洒落にならんなとヴィンセントは追加のジョッキを頼んでいた。
 それから十数分、パットと一松は未だ来て居らず、幸運にも趣味の近い者同士であったため途切れなかった会話に割り込んでマヤンの携帯が鳴った。数年前にヒットした映画の荘厳な主題歌はチープなアレンジに変えられ、すぐに通話ボタンを押される。聞こえたのは荒い息遣いで、その向こうから意味を成さない騒音が重なっていた。正確には動物の鳴き声がほとんどだった。苦しそうな呼吸が三回、それから相手は声を発する。 「すまぬ、マヤン」  この声を知っている。マヤンの脳裏にはエンペラーペンギンの顔が浮かんでいた。もう若干懐かしいくらいのあのペンギンである、一時は長電話した仲ではあるがその後についてはお互いなんの音沙汰も無く過ごしていた。 「どうしたんですか、なにがあったんですか?」  彼に何故こんなにも余裕がないのか心当たりがない。それはもう当然のように喉から出てきた。マヤンの不安を滲ませた声に崔とヴィンセントも動きを止める。 「奴が帰ってきた」  エンペラーの声に油断は許されていなかった。奴について尋ねる前に動物園の惨劇は彼を吞み込まんとしていた。多くを語れないと判断した彼が慎重に付け加える。 「私もここまでのようだ……奴らには気をつけろ」 「ど、どうしたんですか! なにがあったんですか、返事をしてください! エンペラー!」  続いて、爆発音。マヤンの耳が壊れる前に電話はぶつ切りされ、状況から取り残された故の空しい呼び掛けが残り、その余韻もいよいよ無くなると温情とばかりにラジオにノイズが走った。ブレイク三歩手前のバンドミュージックを流していた店内放送は公共の電波に切り替わり、たった今の速報を流す。 『臨時ニュースです、天王寺動物園が爆破されました。被害のほうはまだわかっておりません。近隣の住人はすぐさま避難をお願いします』  なんと他人事な声なのか。繰り返しを聞き流しながら、齢十三は呆然としたままなんとか携帯を落とさないように必死だった。 「一体なにが……」 「なにか……爆発があったとかなんとかって言ってますねぇ」  崔はいつの間にか上着を着ていた。エンペラーどうこうって、ひょっとしてあの? と腕を横に曲げて手のひらをぱたぱた動かしているが、それはペンギンのつもりなのだろうか。 「天王寺動物園は今や彼のキングダムです、そこが爆発されたということは」  言葉はどうしても続かなかった。予測出来た会話ほど無駄な時間があるだろうか。一瞬で誰もが無口になり、焦燥感が追い立てるように神経を焼く。この町で最も静かな場所に違いなかったが、やがて扉のノックが三人を、少なくともこちら側へ呼び戻した。しかしそれが安心できる切っ掛けだとは思えない。 「雲行きが怪しいですねぇ」  眉を顰める崔がちらりと長年の友人を見た。嗚呼、了解、言われなくてもとヴィンセントが扉に近寄る。何者だ、尋ねる前にガチャガチャと言った複数の銃の準備に気付いた。途端に吹き飛ばされたドアノブがマスターキーによるものだと言う認識は後で良い、それよりもまず。 「物陰に隠れろ!」  戦闘力に特化した男の剛腕が、物量が乗った木製のテーブルを倒した。入口を塞ぐように天板を向けたがしかし、食器が割れるよりも先に手榴弾が投げ込まれるのを目撃する。キン、と光が飛ぶような音が耳をつんざいた。 「ヴィンス!」  真っ先に反応出来たのはマヤンだったが余りにも唐突過ぎて体が追い付かない、足は床の凹凸に引っかかって大きくバランスを崩した。勢いのままヴィンセントを倒し、大男は幼い身を庇うために受け身を取らずに少年を抱えて壁際に転がる。後ろにいた崔は奇しくも巻き込まれ潰されたが、全員が部屋の隅でギリギリ爆風を避けたと言うことになった。  まだ晴れない土煙を薙ぐ如く重い一撃が振り下ろされたのも、ヴィンセントが咄嗟に起き上がってバットを握れたのも、片膝に体重を掛けて力任せにスイングしたのも、まるで瞬間的で、脅威は男の横に逸れてぐざんと床を抉った。ちょうど腰の抜けた崔の足元で、動きを止めてようやくごつい斧であることがわかった。ぱらぱらと破片が落ちる音。 「もう勘弁してくださいよ!」  崔が悲鳴を上げながら襲撃者を確認しようと上を向けば、開幕とでも言うように視界は良くなり、そこに蜜のような髪をふわりとなびかせた少女がいた。よくある組み合わせだと思う奴は現実を見たほうが良い、マヤンよりもずっと小さい女性が体格を遥かに凌ぐ斧を使ってこちらを真っ二つにしようとしてきたのだから。彼女は幼い顔立ちで丸く大きな目をしていたが、そこに光は見えず黒い鏡のような球に男を映すばかりだった。そしてまた同じように少女を凝視していた三人の傍へカツン、カツン、誰かがこちらへ近寄ってくる。 「モミジさんモミジさん、早まり過ぎですよ」  名前を聞いた瞬間に、全身が赤の匂いを思い出した。それが秋の葉の色なのか、血の溜まりだったか、判別を拒む程度に遠慮願いたい相手である。しかも非常に信じられないことにだが、やってきた男の声は知っているものだった。キングと呼ばれた男のものだ。 「その女はもしかして……あの……俺らが島で殺した奴か」  ヴィンセントは珍しくしかめっ面で、であるにも関わらずモミジと名称のある少女は静かにこちらを見つめるばかり。 「モミジさんは最近転生したばかりで言葉は喋れないようなんですよ、ご了承ください」  部屋に立ち込めていた砂埃はもうすっかり無くなっている。それでも聞き慣れない言葉を耳から入れた脳は困惑していた。一体何処のファンタジー時空からやってきた方々なのか、そう本気で思えたらどれだけ平静で居られたことだろう、まあ恐らく同時に死んでいるだろうけれど。  改めて確認すると、大斧を持ち必要最低限のプロテクターを身に着けた少女と、ペストマスクで顔の見えない軍服の男がいた。男のほうはやけに嵩張る外套と艶やかな素材で出来た傘を持っている。属性過多。その二人の後ろからもう一人が顔を出した。まだ増えるのかよ。 「やぁやぁやぁ! 皆さん、お久し振り……へけっ!」  うわ。 「いやー、この格好だと『へけっ』まで言わないとたぶんわかってもらえないからなー」  そう困ったように笑う白衣の青年は流石元マスコットの肩書を持っていただけあると言うか、だとしても素性を知っている分腹の立つ顔ではあるのだが、小動物的な愛らしさはあったかと思う。イメージカラーのオレンジが鮮やかだ。 「状況はわかってきたかな?」 「ジャパニーズノベルに帰れ!」  今まで黙っていただけだったマヤンが耐え切れず声を上げた。それでも歯牙にもかけないと彼らは笑っている、いや一人は無表情だしもう一人はマスクを被っているから読み取れないが。 「地獄の閻魔様に復讐がしたいと言ったら、帰してくれたんでね? このチャンスをものにしに来ただけですよ」  東洋の冥界というのは、サボタージュが問題にならないのかな。動物から人間に生まれ変わる確率と言うのはかなり低い、それを少なくとも三回通しているのだからちょっと仏様を信じられなくなる。 「今日はただ遊びに来ただけです。当初の目的は達成していますので」  そのうちまた顔を合わせることになるでしょう、キングは言った。 「今この場で即行二度と顔も見たくないんだけど」  間髪入れずにマヤンは返す。素直で良いことだ、苦い顔の少年にやはり男はさも愉快と息を漏らす。 「人の姿なら殺れるんじゃないんですか、ヴィンス。やっちゃってください!」 「そういう問題じゃないだろ」 「だってあの巨大なクマがその可愛い女の子なんでしょ? なんとかなるんじゃないんですか!」 「さっきの斧結構ギリギリだったぞ?」 「またまた御冗談を」 「恭一さん、ただの女の子が、斧を振り回したりなんか、しない」  ならば試しにと崔はヴィンセントを壁にしながらモスバーグの銃口を少女に向けた。この距離なら当たらないこともあるまい、引き金を引くまでの時間は一秒も無かったがそれを見越していたかのようにキングが前に躍り出て持っていた傘を広げた。随分広い面積のそれはどんな細工を施しているのか全ての散弾を受け止める。崔が短い悲鳴を上げたとき、ヴィンセントは飛び出した。防衛線なら破壊すべき、と、しかし傘の先端に穴が空いているのを見たとき、そして瞬時に火花が散ったとき、なんとか銃弾を受け止めたバットは手から撃ち落とされていた。 「手が早いのはそちらも一緒でしたか」  その声はもう悦を隠すのを止めたようだ。けらけらと明らかにこちらを下に見る態度にヴィンセントがいよいよ声を低く唸らせる。 「……舐められたままでいられるかよ」 「いえいえいえ? しかし、本気��なって貰えるのは嬉しいですね」 「命狙われて本気にならない奴がどこにいるんだこの野郎」 「本気を出してもらわなきゃ困りますよ、こちらも狩りのつもりで来ていますので」 「獣が人の姿を持ってから調子に乗りやがって」  その言葉にふん、と鼻を鳴らしたのは公太郎だった。細めた目にわざとらしく上がった口角、彼は耳に残る声で言い放つ。 「調子に乗っているのは皆さん人間のほうじゃないか」  ぎっとヴィンセントが睨み返せばやーいやーいと手をぴろぴろさせてくるので、駄目だこれは低レベルだとマヤンがスーツの裾を引っ張って静止させた。 「あなた方の命は私たちが頂きます。それまで余生をお楽しみください」  キングの右手が高く掲げられると、小気味好く高い音が響く。空気を弾くようなその合図は、遥か彼方からなにかを呼び寄せていた。それがなにか、と言うのは唐突に地層が軋み地下に位置するこのロクでもない酒場が崩壊しそうな揺れと激しい噴射音で、ただ大きなものであることしかわからない。そんな疑問も個室の天井の一角がごりっと盛り上がり穴が空くことで解決する。ちょっと訂正しよう、ロクでもない酒場が崩壊した。  冗談かなにかのように、ペンギンを象った巨大ロボがそこにいた。そうして差し込んだ手のひらにひょいひょいと元動物たちが乗り込み、用は済んだとこちらに振り返りもせずに帰っていく。そういえばロボットと戦ったこともあったな、あれは差し詰め百万ペンギン力と言ったところだろうか、パットが喜んだらどうしよう。ぽっかり空いた大きな穴から飛び去るロボットは憎しみを差し引いても恰好良かった。超絶技巧には付き物な盛大な効果音が聞こえなくなると、今度は結構な雨の音が聞こえる。季節外れにもほどがある夕立だ。 「夢じゃないですよね……」と崔恭一。 「ほっぺでも引っ張りましょうか?」とDB・マヤン。 「死にかけたのは現実だぞ」とヴィンセント・ジョーンズ。 「とりあえずリーダーとみっちゃんにも連絡を取らないと」 「……と言うか、二人の身のほうがよっぽど危ないんじゃないですか?」 「一人だしな」 「特に一松さんが一番危ない気がするんですけど」 「……アリエルがいるだろ?」 「なにはともあれ仲間がピンチなんだから急ぎましょうよ」 「おう、そうだな」  電話番号を探しながら三人は思う。どうか、どうか無事で居てくれと。
 ベンチマークの結果はなかなかに良いものだったし、今月中はランキング十位圏内は安定だろう。別に誰かと競争したいわけでもないが、記録は残しておきたかった。楽しすぎて時が止まったかのような感覚だったのだ。無論あくまで感覚の話で現実は足早に動き続け、結局約束の時間の五分後に家を出た。遅刻は確定しているとわかっているが出来るだけ急ごうと思う。半年前から愛用しているマルチボードに乗っかって人の合間を縫いながら最高速度だ。  しかし、JAIL HOUSEまであと十数分というところで。つまりは天王寺動物園を横切ろうというところで、その公共施設から大きな爆発音が聞こえ、パットは足を止めた。今日はなにかのパーティーだっただろうか、だとしたら随分オーバーすぎる花火だけど、領地を区別するための柵の向こうに煌々と燃え上がる火の海を見てしまえばそれは厄介ごとの類であるという認識に変わる。それにあの場所にはかつて依頼で知り合ったエンペラーがいるはずだった。荷物の中からごそごそと取り出すのはペンギン帽子だ。使えるかもしれない、いや使いたいわけじゃないけど、絶対に使いたいとかじゃないけど、念のため。誰に言うでもない言い訳が心に渦巻いているとその出会いは突然に訪れた。 「パーット!」  可憐ではつらつとした透き通る声だった。それは聞いた者の脳に春を呼んで蝶が飛ぶように目の前をチカチカさせた。体温は先走りすぎて夏の暑さだったし、比喩的に空まで跳ねた心臓はびくびくと脈打っていた。そういう体の症状を無視するかのように頭の上からサアと血の気が引いているような気がしている。目の前が真っ暗になりかけた。ここで意識を失ったらどうなってしまうのだろう、考えたくない。それでもパットはぎこちなく後ろを向いた。  見た目は全然知らない女性だった。天使を思わせる純白の髪に鮮やかな青いリボンのカチューシャ。目は大きくてあくまで美しく長い睫毛を持っている、虹彩は深い緑で、白い肌に際立っている。ブラウスは透けたフリルが軽やかで上品なリボンが装飾としてついていてまるでお嬢様のようだ。全然知らなかったが、重なる部分がどうしてもあのネズミを思い出してしまう女性だった。ロマンスの神様、この人でしょうか? 「誰だお前は?!」  これでどうかまったく違う名前だったら良かったのに、彼女はにこにこしながら、えー覚えてないのー、などとからかってくる。可愛い。違う。埒が明かないと思ったのでじりじりと後退りをしたが、柔らかな指がそっと腕を這うだけで鉛を飲み込んだように足が重たくなる。逃げないで。呟いたか、そうではなかったかは定かではないがパットの体は本当に動かなくなってしまった。 「パット、どこにいくのよ?」  全然怖くないちょっと怒った声でパットに詰め寄る。甘い良い香りがした。違う、違う今本当にそういうことはいらない。 「な、何故貴様が生きている?!」  あの時確かに死ぬような目に合わせたはずだった。ていうか一回死んだよな? 赤い糸って地獄まで続くものなのか、マジか、知らなかったなぁ。今すぐ縁を切りたいと思った。そんな心情を露ほども知らずにパットに愛玩的な視線を送る乙女は、やっぱり可愛いわーなどと非常にマイペースである。そこに前ほどの策略は感じられないが、それでも怖いものは怖いのである。年下の男の子に合わせて少し屈み、どうしたのと覗き込む愛らしい顔を見て、気が付いたら周囲が思わず振り向くほどの悲鳴を上げていた。パットの叫び声はそれはもう天を穿つほどで、曇り空からは破裂したように雨が落ちてくる。思春期の仁義無き戦いだった。  思考停止は悪手だ、アドバンテージをどうにか上手く使いたい。本当は金輪際アプローチをしてこないで頂きたいが果たしてこの百戦錬磨を言いくるめられるかと言われると残念ながら自信が無い。昔から女と付き合って上手く別れられた試しが無いんだよな。嗚呼、ここにチームの皆がいてくれたら形振り構わず助けを求めているところだ、最悪こういうのが得意な恭ちゃんだけでもいいから居て欲しかった、自分が遅刻したのが悪いんだけど。仕方ないからせめて時間を稼ごう、そうせめて皆に会いに行って対処を考える時間を、そしてチームを揃える時間を。ここまで1.4秒。 「……二十四時間」  臨戦態勢と言うべき状況に女はくすくすと笑うだけだった。潰したい、こいつを潰したい。 「二十四時間、俺になにもするな。関わるな」 「本当にいけずなんだから……そういうところも好きよ」  彼女はぱちんと器用にウインクをしてから、目線を外して考え込んだ。濡れてしまった細い髪が肌に張り付いている。暗い所にいたら幽霊と勘違いしてしまいそうだった。いや、幽霊かもしれないけれど。 「まぁでも、また会うことになると思うわ」  そう告げると、彼女は後ろを向いて花びらのような手をひらりと振りながらようやく離れて行った。凍っていた体が自由になると、パットは反射とばかりにチーフスペシャルを取り出して乱射したがやはり、まるで当たることはない。やっぱり幽霊なのではないか。スカートの裾が揺れて疎らで灰色の人ごみの中に消えていく。雨は落ち続けて、落ち続けて、道はどす黒くなっていた。  少年は大きく息を吐き出したが、動悸が収まる気配は無いようだ。いっそ心臓を取り換えることが出来たら良かったのに、彼女の笑顔が刻まれた脳みそだけ切り取れれば良かったのに。呪いのような愛だ。
 いつまでも濡れているわけにはいかなかったので軒下に潜り込めば、忍ばせていた携帯が鳴った。待ってた。相手を特に確認せず、パットは電話を取る。 「大変だ! 奴が! 蘇った!」 「嗚呼、そっちもか……」  疲れたような声をしていたのはヴィンセントだ。そのすぐ傍でマヤンと崔が生きてた良かったなどと喜んでいるのもわかる。死んでたほうがマシだったかもとは言い辛い。 「こっちもな、ちょっと色々変なことがあったんだよ。蘇ってきたような……人間型のペンギンに、人間型のネズミに、人間型のクマが」 「落ち着いてください、今までの仇敵が何故か知らないけど人になって戻ってきたんです」  擬人化って夢があるけど、これは悪夢です。マヤンが訴えるように言った。 「なるほど、擬人化が得意なフレンズが蘇ったと言うことだな、すごーい!」 「やばーい!」  お子様方は半ば自棄になっている、と大人二人は思う。島に行ったときからなんだか二人が狂いだしている衒いがあるが大丈夫だろうか、崔とヴィンセントは無言で相談していた。リーダーは元から狂ってた気がしないでもないが。 「ま、まさかとは思うがその敵の中にあのクソマスコットはいなかっただろうな?」 「……正直なところ、全員蘇ってても不思議じゃないんじゃないか?」 「待ってください、全てが蘇ったって言うんなら、一松さんが危ない!」 「アリエルがいるから大丈夫って言っただろ」 「お約束かと思って」  大変だったと言う割に電話の向こうは楽しそうだった。それにしても、一松がいないのか。でも問題ないだろう、アリエルがなんとかすると俺でも思う。むしろ敵と相打ちになってあわよくば死ね。たまに肉盾として蘇ってくれ。 「アリエルがボコボコにされてたら嫌でしょ? 急ぎましょうよ」 「お、おう、じゃあ車出してくれ車」  はーいと良い子の返事をしたマヤンがフェードアウトしていき、鍵ちゃんと持った? 大丈夫? と崔が再三確認していて、ヴィンセントはそれじゃあ沙京で一松を探そうと言って通話を切った。 「もう、やなんだけどあいつら相手にすんの」
 いつも持ってるジッポーを忘れたのだ。特別に思い入れがあるわけではないけれど、なんとなく身近にあったものだから無いと落ち着かなかった。無視も出来る軽い理由で後戻りの面倒臭い帰路を辿ったのは何故だろう、胸騒ぎがしたからだろうか、ちょっと遅れたくらいでは気に留める人はいないと思っていたのもあって、一松は自宅と言うにも憚られる居住地へ引き返していた。空は一雨来そうな面持ちで冷たい水を吐き出さんとばかりに鈍い色を広げている。ずっと外にいるわけにもいかないと空気を確かめながらふと、焦げた臭いが鼻を突いた。沙京で火を使った形跡なんて悪い予感しかしないし、余計なものは見たくないと避けて通っているにも関わらずその不穏は徐々に近づいてくるのが気に掛かる。そう、悪い予感がする、自分の身に降りかかる予感だ。  果たしてそれは的中する。狭い路地裏は炎を抱え込んでやけに明るく燃えており、一松が寝床にしていた鉄製の檻が熱の揺らめきの隙間から僅かに見えた。ぬいぐるみを詰めていたのだからさぞかし火が回ったことだろう、気まぐれに集めていたものだったけれどこうも儚い別れになるとは。頭のほんの隅っこで考えながら、炎の前に立つ男とその足元に倒れ込んだ恋人のアリエルを素早く確認した。ここを離れたほんの十数分でなにが起こったのか見当も付かない。 「君は誰だ?」  ある程度の距離を詰めて、捻らずに声を掛けた。彼が振り向くとタイミング良く装置を起動したかのように突然強く雨が降り始めた。痛みにも似た寒さは周囲を凍らせて緊迫を育てる。 「お前に復讐しに来たんだ」  そう語る彼の姿は、まあ彼と言うからには性別は男で、大体同い年くらいに見える。中国系なのかもしれない辮髪と虎の刺繍の入ったスカジャンより、唯々こちらを睨みつけてひび割れたように歪む表情だけが夢に出てくるレベルで印象的だった。正直こういうのは得意じゃない。ここ最近アリエルに致命傷の与え方を教わりはしたがまだ頻発出来るほどじゃないし、そのアリエルは地に伏せている。そういえば地に伏せている、大丈夫だろうか? 「悪いけど覚えてないね、恨まれるようなことはたくさんしてきたし」  かと言ってこの手の輩を上手く切り抜けるための手札は無かった、そりゃ勘弁してほしい、家が燃えてるのを確かめてまだ一時間も経ってない。放火犯であろう男は、呆れたような表情も滲ませながら言葉を返した。 「そうだろうな、お前は極悪人だ。心当たりなんて腐るほどあるんだろう?」  小さく頷いてやれば反比例する如く溜め息を吐かれる。その息は怒りのままに震えていて、獣の唸り声のように不明瞭に呟く。なんだかおかしいなと思ったけれど、感情がそれしか感じられないのがどうにも人間味に欠けているようだ。 「俺の母親はお前との決闘で負った傷のせいで亡くなった。父親もだ、あの日お前が天王寺動物園に来なければ……!」 「嗚呼、そう言われれば見たことがある気がするけど、それだけ?」  彼の目が怨嗟で濁った。黒目がちのその瞳が人間のそれではないと言うことに気が付くと納得も出来る、何故ならば不本意にも害獣専門になりつつある亜狭チームが自分の所属する青空爆発ドッグスだからだ。それもあの夏の日を思い出す滲むような暑さと殺意を向けられれば結成当日を思い出さないのも無理な話だろう。良い日だった。だけど親が後から死んだ責任を取れと言われても困る、昨今親を殺される話も親に殺される話もよく聞く。大体私がなにをしたと言うんだ、ほとんどなにもしてない。猫に気に入られる性分と言うのも考え物のようだ。 「畜生共の恨みねぇ」  こいつはトラだと一松は理解した。 「畜生と言うのは、ちょっと違うな」  見ているこっちが引き攣りそうな顔面をしながら彼は言った。どういう意味か、尋ねようとしたところで落方に巨悪の影が見えた。激しい雨が遮るこの距離で見えるのだから大したものだ、ちょうどミナミのほうにロボットが降り立っているのがわかった。それがペンギンなどとふざけた外見でなかったらなんか面白いことが起きてるなと勘違いしそうなくらいに非日常だ。馬鹿みたいに豪勢な地響きに揺られながら、もしかしたらあそこはJAIL HOUSEかもしれないと感じた。 「そうそう天王寺動物園は爆破したよ」 「へぇ、派手なことしたね」 「俺は興味なかったけどな、あそこにはキングの敵がいるし」  ペンギンと来たから絡んでるかと思ったけど嗚呼やっぱり。あとハムスターがいるな。最悪で熊も追加だ。振り返っては改めてトンデモな事件に巻き込まれていたと眩暈がしそうだ。 「まぁ今日は挨拶だけにしておけとキングが言っているからな、この辺にしといてやろう」 「猶予が貰えるならこちらとしてはありがたいけど」 「猶予じゃない、これは狩りだ。獲物をじわじわと追い詰めて本気で怯えたところを仕留めたい」 「じゃあ今度は本気になれることを頼むよ」 「……そうだな、今度は本気にさせてやる」  彼は刺すような視線を残しながら、かつてそうだったのだろう虎の如き身のこなしで建物の高いところまでジャンプするとそのままビルの陰へ隠れていった。雨音がようやく耳に入り込む沈黙が出来て、自分がずぶ濡れなことにも気が付く。見慣れた路地裏は天上から落ちる雨で炎が消えていて黒く焦げているばかり。もう判別の出来ない綿の塊と随分壊れかけていた檻の破片がちんまりと置き去りになっていた。明らかな、二度と使えないのだという無言の訴えだ。 「アリエル」  思い出したように、というかあのトラを前にして油断できなかった分、放置してしまっていた恋人の名を呼ぶ。どうしてここにいるのかはわからないが、やはり青年の手によって致命傷を負ったのだと思う。品の良いブラウスに血の色が大きく染み込んでいる。皮膚は色を失くして氷のようだったし、体の力は全て抜けていて、か細く呻いたきり眉一つ動かさなくなって十数秒。死んでほしくないなと思った。実の所、これは彼女の気の迷いでそのうち自分に飽きて離れていくか殺されるかされてるだろうと予想していたけれど、半年の間に随分絆されていたらしい。滴る赤い髪を撫でながらゆっくり、柔らかい体を楽なようにしてやってから横に抱く。気を失ってるのだから支えてくれる手は伸びない、それでも彼女を運ばなければならなかった、なにせここに治療できる設備がない。あってもちょうど燃えて朽ちたところだ。最近の若い女の子は軽い、これくらい大した労力じゃないさ。
 JAIL HOUSの中はやはり騒然としていて、ただでさえ人がゴミのように集まっているのに混乱する者は混乱して、固まる者は固まっていて、とにかく脱出までに時間がかかった。地下から這いずり出ても先程までロボットが現れていた現場である、この雨でこの野次馬の多さは呆れかえるほどだ。小さな体を駆使して群衆をすり抜けシトロエンに乗り込むと、マヤンは少々オーバー気味にエンジンを吹かし周囲を散らした。見計らって、ヴィンセントと崔が後頭部座席に座る。それからは轢いても構わないようなスピードで町を駆け抜けた。  ヴィンセントは携帯を持ったまま珍しく煙草に火を付けず、というか付ける暇も無いのだろうが、リーダーと違ってまるで出る気配のない一松に対して焦っている。崔は肘を膝に乗せて前屈みになって眉を顰めているが、その内車酔いでも起こすのではないだろうか。マヤンは面倒な事故を起こさないように視界を確保しようとしているが、ワイパーで何度上下しても力強い濁流にはまるで敵いやしない。ミナミの人通りはこの時間帯にしては多いようにも思えるし、酷い雨のせいか少ないようにも思える、ただ車で出掛けようと言う人は多かったのだろうとなかなか進まない大通りに苛立ちながら、場違いなバラードが流れるカースピーカーと単調な呼び出し音だけが狭い車内に響いていた。  そんな道から横に逸れて十分、目を凝らせばようやく沙京の橋まで一直線。思い切りアクセルを踏もうとしたところで見つけたかった���性を見つけ、マヤンは驚いたように声を上げた。急なドリフトは成人男性をも揺らし、耳障りな音を立てながら通りを遮るようにシトロエンが横になる。確認するように崔も助手席にしがみ付きながら身を乗り出し、みっちゃんだ、と呟いた。  突撃せんとばかりの車の目の前に、彼女はそこに現れた。真っ赤な髪も濃い色のパーカーも濡れて色を暗くしていて、長い時間外にいたのだということがわかる。肌を伝っていく雨のせいで泣いているようにも見えたけれどこちらが想像していたよりもずっと落ち着いた顔をしていた、いや一松はこんな奴だったかもしれない。ヴィンセントが鳴らすコール音にワンテンポ遅れて標準から変えていない着信音が鬱陶しく響いていた。携帯が取れなかったのは両手が塞がっていたからだと一松の腕の中でぐったりとお姫様抱っこされている血塗れアリエルを見て思う。春の嵐は花の蕾を断つ勢いでざくざくと轟いていた。 「一松さん!」  窓を開けてマヤンが叫んだ。すぐに発進出来るように握られたハンドルに伝うのが雨なのか汗なのか、正直よくわからない不快感だった。 「どうしたんだ一体」  ちょうど沙京側に座っていたヴィンセントが車��ら飛び降りると、ようやく一松は視線を合わせる。ぐっしょりと水を吸った背中を押すように歩くのを促し、ドアの前まで近付いてから彼女は運転手に聞こえるようにはっきりと声を出した。 「細かい話は後にしてくれ、病院に行きたい」  ドアが開くと、大きな体を屈ませたヴィンセントは中に座っていた崔に詰めるように言ってから自分は助手席へ移動した。崔は言われた通りに端に身を寄せながら、濡れた二人分の体が座った車の中が冷えていくのを感じていた。少しの間外へ出ただけのヴィンセントの肩も雨に打たれて重たそうだ。本当に随分な雨天である。一松がそっとアリエルの体を抱き寄せたのは、寒いせいだろうか、心細いからだろうか、誰にもよくわからなかった。 「飛ばしますよ? 乃木クリニックでいいですね?」 「嗚呼、構わない」  大きい病院なら他にもいくつかあるが、自分たちのような半端物を見てくれる医者と言われれば非常に限られている、どころか一ヶ所しかなかろう。シトロエンは来た道を引き返して宣言通りの猛スピードでミナミを走り始めた。
 一方でパットは、既に沙京に着いていて至る所へ奔走していた。しかし大した当てもなく人を探すというのは難しいもので、全く一松を見かけることが出来ずにいる。そもそもどこに住んでるのかも知らなかったしどこに行く人なのかも知らない。いや、前にいろんなところほっつき歩いてるとか言ってたな。なにも参考にならないじゃないか。本当に居ねぇ、何処だ何処にいるんだ。向かい来る大量の雨粒に打たれながらマルチボードを走らせていると実に偶然にも知っている気配のするシトロエンと並走し始めた。流水の隙間から見えたマヤンの金色の目が鈍い光を映したのを確認し、パットは声を張り上げる。 「一松はどこにいるか知らないかっ?!」  マヤンが一瞬呆けた顔をした。それから車の前方についているいくつかのボタンのうちの一つをぽちぽちと押すと。 「ここにいるけど」  右側の後ろ座席の窓から至って普通に一松が出てきた。 「えっ」 「もう後ろに乗ってるぜ」 「えっ?!」  ヴィンセントの対応はあくまでフランクで、逆に軽すぎてすっと力が抜けてしまって体重の掛からなくなったマルチボードが減速していった。驚いた拍子で飛び出た声がそのまま長い溜息と共に情けなく洩れていく。シトロエンは何事も無かったかのように走っていき、ついには濃い雨の壁に遮られて姿を消してしまった。どうせ定員オーバーで乗せてはもらえなかっただろうしかしこの仕打ちはなんだ。人間、努力の甲斐がどこにも求められないとなると遣る瀬無��が煮えてくるものである。パットは愚痴を零さないように努めて携帯を取り出した。運転しているのはマヤンだし行先も知っていることだろう。彼がすぐに出てくれたのは救いだった。 「どこに向かってる?」 「今は乃木クリニックに急行中です、特に指示が無ければリーダーもそちらにどうぞー?」 「あ、はーい……」  すぐに切られてしまうのは罪だろうか罰だろうか。頬を伝うのはただの雨だ、そうであってほしい、肯定してくれる人が誰もいない、辛い。必死に探したのに。辛い。濡れて肌にべったりと引っ付いた服がなお重く圧し掛かってくる。不幸に温度があったらきっとこんな感じなんだろう。あまり切らないでいた厚みのある髪が顔に張り付いてくる頃に、パットはもう一度歩き出す気になれた。マルチボードを起動させてのろのろと上に立つと、全てを振り切るかのような最高速度で指定された場所へと飛んで行った。  かくして、乃木クリニックには五分で着いた。入口にはクローズの札が下げられていて、明かりの消されている待合室は先生も看護婦もいるとは思えなかった。まぁ、亜侠が来るべきはこちらではない、そう思って裏口に回ったもののしっかりと鍵が掛かっていて入り込めそうも無い。おや、これはあれをする機会ではないか、パットはマルチボードの高度を徐々に上げていき、ついに二階の窓へ到達すると顔を交差させた腕で庇いながら「ダイナミックお邪魔します!」と叫んでガラスを打ち破った。派手な音が清潔感のある廊下を抜けていく。ここにも誰かがいる気配はないが、しかし階段の下から蛍光灯の光が漏れているのが見えた。みんなは一階にいるようだ。パットは一歩一歩に水溜まりを作りながらそちらへ向かった。
 乃木太郎丸と言えば年下の美形の男の子が好きと言うのが有名な話で、詰まる所ドッグスにはあまり優しくない印象があったのだが、今日に限っては顔を見るなり神妙な面持ちで小言の一つ無く中へ入れてもらえた。前に話をしたときだってここまでスムーズじゃなかったのに、とマヤンは思いながら誰よりも先にアリエルを抱えて車を降りた一松に声を掛ける。 「一松さん、なにはともあれ急いで」 「……言われなくても」  彼女の恋人は本当に助かるのか不安になるほどに動かず、怪我をしたところから血が滲んで全身を真っ赤にしていた。一松は腕が汚れていることも厭わずに先生の横を通り抜けていった。扉の横にはヴィンセントが愛用のバッドを構えながら周囲を警戒していて、あとの二人が入ってから外を睨みつつ中へ入る。それを確認してから先生も度が過ぎるほどに辺りを確認し、音がしないように扉を閉めた。 「随分物々しいですね」 「そりゃあ急患ですし?」  崔とマヤンが一言交わすと、先生は呆れたように溜め息を吐いた。顰めた眉こそいつもの面倒くさい彼だったが、視線には憐れみの情が見える。どういう意味だろうとヴィンセントは首を傾げた。 「君たちがここに来るとは……っ!」 「なんだ来ちゃいけないのか」  低く尋ねたのは一松だった。そこにあったストレッチャーの上にアリエルを乗せながら、細い目を彼に向けている。 「君たち状況を分かってないのか」 「なんか不味かったんです?」  マヤンが尋ねると、先生は黒い長方形を押し付けてアリエルを手術室へ運んで行った。それはリモコンだった、おそらくは部屋の隅に置いてあるテレビのものだ。電源の赤いボタンを押すと昔からやってるニュース番組の速報が流れていた。アナウンサーがぼそぼそとなにかを喋ってから、パッと画面によく知っている顔が映る。それは紛うこと無く自分たちだった。トランク二個分の懸賞金でキングが探しているということまで教えてくれた。 「あーそういうことか……気に入らねぇなあのペンギンは」  非常に不機嫌な声でヴィンセントが吐き出す。手術の準備をするために一旦戻ってきた先生が口を挟んだ。 「それに付け加えてあのロボットだろ? 大阪中大騒ぎさ」 「まぁ沙京からでも見えたしね」  一松はあの光景を思い出しながらテレビを眺めている。 「君たちは今世界の敵になってるんだよ」  世界の敵。細々と動物と戯れてきた自分たちが、よもやその肩書を手に入れることになるとは思いも寄らなかった。崔が眉間の皴を深くした。 「こうも大々的にやりますか。キングが懸賞金を掛けたなら厄介ごとが舞い込んでくるでしょう、さてどう動きますかね」 「……車に乗ってる奴らの顔なんてそんなに見ないだろうが、今後は気を付けて行かないとな」  マンハントとして自分たちを狙う亜侠どもが襲ってくることがあるだろう。それらを対処しながらキング率いる動物園を倒しに行かなくてはならない。身の隠れ方と、対峙するであるロボットの情報、彼ら個人の詳細も必要だろうか? マヤンは一松のほうを見た。一松もマヤンを見て、まぁ頑張るよと呟く。 「それに仲間の大事な奴も傷付けられたわけだしな」  ヴィンセントはぴったりと閉められた手術室の扉を見つめながら言った。どこからかつまみ出してきたバスタオルを頭にかぶって体を拭く一松は冷静に見えるが、心中穏やかなわけがない。押した背中が震えていたことは、触ったヴィンセントだけが知っている。ふと崔が見上げた時計が夜の九時だった。そろそろ寝ないと明日の朝がきついだろうか、窓の外はそれなりに暗く、結構な時間が経っているようだ。騒ぐわけにもいかない状況の中で彼がキョロキョロと外を観察している。 「そろそろリーダー来るんじゃないですか?」  ガシャン、と聞こえたのはそれが言い終わるか終わらないかというタイミングだった。叫びこそしなかったものの崔の肩は跳ねたし、その拍子で落としたモスバーグを即座に構えるのを見てマヤンも無言でカラシニコフを用意した。一松もそっとベレッタを取り出し、ヴィンスは迫りくる足音を仕留めようと扉の横でバッドを振り下ろさんとしている。それはぴちゃぴちゃと水滴を滴らせ、雨の匂いとともにゆっくりとこちらを探しているようだった。廊下の一つ一つの部屋を確認しているのか、開けては閉める扉の音がする。いよいよこの部屋の前、と言うところでヴィンセントがバッドを振り下ろした。 「ふぅ、えらい目にあっ」  扉を開けたパットが即座に息を呑んだのは自分に向けられる三つの銃口と硬度を感じるほどに近付けられたバッドのせいである。 「た」 「おっ……と」  危ない危ないと呟くのは、まさに致命傷を与えようとしていたヴィンセントだった。リーダー殺害未遂二度目だ。慎重にバッドを横に逸らしこっそり心臓を痛くしている。 「なんだ、リーダーじゃないか」  務めて冷静に言ったつもりだったが、ぎぎぎと緊迫したまま固く視線をこちらに向ける少年の顔は真っ青で気の毒だ。息が出来ているかも怪しい。ぼたぼたと床を濡らす雨の味はおそらくしょっぱいと思う。他の三人があれ? と銃を下ろしても、しばらくパットは動けないでいた。 「トランク二個って割高じゃねぇか?」  先生はぼそっとそんな評価を下し、清潔のための衣類に着替え終えた。やれやれと言った面持ちで体を石のようにしたパットを見つめる。崔は、いやごめんねと苦笑いをしてモスバーグをコートに隠し、一松はばつが悪そうに視線を逸らした。マヤンは言い訳も謝罪も言うタイミングを逃したような気がして、気を取り直して先生に振り向く。 「そういえば乃木センセイ、素朴な疑問があるんですけどいいですか?」 「おう、なんだ?」  褐色肌のショタが猫を被っている姿がお気に召したのか、先生は急ぐ足を止めて対応した。疑問が至ってシンプルで、巨大ペンギンロボットの被害はどの程度かと言う話だ。それは、JAIL HOUSが一軒潰れただけだと言った。続けて崔が盟約の動きはと聞いた。被害があったのがミナミであることと、狙いはあくまでも青空爆発ドッグスであるということで、今のところ動いてはいないらしい。中立地帯を上手く利用されたって感じですねぇ、マヤンが一通りを聞いてぼやく。 「しかも被害がジェイルハウス一軒ってことならこれはたぶん警告みたいなもんだろうな」  ヴィンセントがようやく煙草に火をつけ始めた。マールボロの丸味を帯びた苦い香りが彼の周りを漂う。 「復讐銘打っておきながら完全にどたま冷静じゃないですか、一番嫌なタイプだ」  マヤンが露骨に嫌な顔をしてまだ手に持っていたカラシニコフで遊び始める。そのままパットに顔を向けて、リーダーはどうする? と聞いてきた。要するに作戦会議の時間だった。まずは移動しやすいように人の目を欺く手段を見つけるべきだろうか? あるいは敵を知るべきか? 一松の壊れたアジトもどうにかしなければならないのか。当面の問題は尽きず、五人はやがて疲労によって落ちるように眠っていった。
「ま、それが人間の狩りと言う奴だろう」  冷たい空気が漂うのは、ここが日の当たらない場所で、金属に囲まれているからだろうか。尤もそれを気にする者はこの場には居らず、四人の人物が離れたところから会話していた。仲間ではあるが仲は良くない距離である。一人の青年が長く垂れた髪を逆立てるように唸る。 「でも、それをやる必要があるか?」 「大切な人を奪われる辛さは君がよくわかってるんじゃないかな?」  白衣を着込んだ男が確認するように言った。ねぇ、君もそう思うだろ、と人形のような佇まいをした少女にも尋ねるが、彼女は一切の反応はしなかった。ただ、これは呑み込んでおけと言うように青年をじっと見つめる。 「お前の恨みだけを晴らすわけにもいかないんでな。それに、これからもっとたくさんを巻き込むだろう」  ペストマスクの下で男が笑う。彼らにとって青空爆発ドッグスとは念入りに殺さなければならないと同時に最初の踏み台であった。これからオオサカを地獄にするようなヴィジョンが彼らにはあるのだ、たかだか人質を躊躇っている場合じゃない。 「上手くやってくれたまえよ、どうせあいつらは行動を起こすだろう。こちらも妨害しなければな」 「……俺はあいつらだけ狙うからな」  青年は素早く身を翻すと、瞬く間に外へ消えてしまった。残った三人の内ペストマスクと白衣が嘲りながら顔を見合わせる。 「しょうがないなあいつは」 「今更人間を庇ったってしょうがないのにね。まだ動物園が恋しいのかな?」 「パパとママが死んで寂しいだけだからな。私とは違うさ」 「ひっどいこと言うね、キング」
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saktarotrpg · 6 years
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サタスペ メンドーサ・ミゲル
カルマ:荒事屋(画像作った後に変更)
https://character-sheets.appspot.com/satasupe/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFgsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEYlcCnfAw
参加シナリオ:「ミラクルアニキ(流卓)」
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sytrpg · 16 years
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