☆ピンクのドア☆ ピンクのドアプロジェクト Facebookでお友達の丸ちゃんが たった一人で作り始めた ピンクのドア コロナに負けない! みんなに笑顔を✨ 子供たちに夢を❤ ピンクのドアプロジェクト🎶 奥津温泉大釣りと 笠岡ベイファームに設置 とのことだったので まずはベイファームへ訪れました 青空に映えるピンクのドアは めっちゃ可愛い この日のコスモスは あんまり元気がなかったけど ピンクのドアで笑顔になったよ きっと、みーんな笑顔になっちゃうね #ピンクのドアプロジェクト #笠岡ベイファーム #笠岡道の駅 #コスモス畑 #ピンクのドア #コロナに負けない #みんなに笑顔を #子供たちに夢を #おかやま #笠岡 #岡山へ行こう #瀬戸内 #ちょこっと寄り道岡山県 #おかやまハレ旅 #おかやまアキ旅 #find_new_okayama #sumasumatai_love #日本を元気にしたい · · · 大釣り温泉にも 行ってみたいが もぉ何年も行ってないや (笠岡ベイファーム) https://www.instagram.com/p/Cj2eiwgviHA/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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前日までの雨のせいか、ピンクのドアがうまく開かない
@中山ひまわり団地
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やがて終わる空
この道を抜ければ私たちは自由になれるのに
母が留守にするとき、私の家には菜実さんという女の人がやってくることがあった。それは、物心つく前からのことで、特におかしなことだと私は思わなかった。
ただ、菜実さんも、菜実さんの肩を抱く父も、母にはすべてを黙っておくよう私を戒めた。その理由を訊けない私は、父が母には見せない笑顔を菜実さんには向けているのをただ見つめた。
何か、おかあさんが仲間外れみたいで可哀想。
そう思ったけど、パートとか友人との食事から帰ってきた母に、私はおとなしく何も言わなかった。
父と母は、互いに相手に向かって微笑むことがなかった。私のことはかわいがってくれるけど、リコン、という言葉を知ったときには、やがて私の家にはそれが来るだろうと思った。私はどちらかを選ぶのかと悩み、夜、寝つけないときもあった。
父と母は、口論するわけではないし、どちらかが暴れるわけでも、怒鳴るわけでもない。でも、何というか、冷めている。何とも想っていない無関心が伝わってくる。
なのに、なぜ結婚したのだろう。結婚って、好きな人とするものでしょう?
「秋果にはそろそろ話しておくけどね。おとうさんには、昔から好きな女の人がいるの」
父が残業で帰宅が遅くなった夜、母とふたりで夕食を取っていた。メニューは、母のお手製の豆腐ハンバーグで、私はもうじき小学校に上がる春先だった。
私がつねづねの質問を投げかけるまでもなく、機会を待っていたように、母がそんな話を始めた。
「おかあさんは、何にも知らずにおとうさんと結婚しそうだったけど、その女の人、一度おかあさんに会いにきたの。そして、おとうさんと一緒に暮らしてる鍵をおかあさんに返して、『今、あの人の部屋には私とペアで買ったものがたくさんあるけど、どうせなら捨てずに使ってくださいね』って」
おかあさんは、食器棚のお揃いの湯のみとかお皿とかを見た。そして、「負けるか、と思って使ってるけど、やっぱりつらいね」と泣きそうに笑った。
私の頭によぎったのは、当然、この家を訪ねてきては、父に寄り添う菜実さんだった。そう、このとき私は、はっきりと心に決めたのだ。
ああ、私、おかあさんについていこう。
「秋果ちゃん」
小学校に上がって、校庭に咲いているのは、桜からつつじになった。よく晴れた五月の中旬、ちょっと暑いくらいで今年初めて半袖を着た日だった。白とピンクのつつじに目を移していきながら、私は車道沿いの通学路を下校していた。
聞き憶えのある声に、足を止めて顔を上げると、母のあの話を聞いてから避けるようになった菜実さんがいた。家の外で菜実さんに会うのは、初めてだった。
「学校、終わったの?」
無視しようと思ったけど、それを菜実さんが父に言って、父が私を怒ったら?
私は菜実さんと目を合わせないようにしながら、とりあえずこくんとした。「そっか」と菜実さんは私がそっけなくなっても優しいままの声で言う。
「あのね、秋果ちゃん」
「……何」
「私、秋果ちゃんと行きたいところがあるんだけど」
私は精一杯の拒絶で、つつじとそれに集まる蜂を見ていた。けれど、菜実さんの視線は折れないし、沈黙も気まずくて、やっと菜実さんを見た。
茶色の髪を梳いて軽くする菜実さんは、水色のスーツを着ていた。化粧がいつもより濃いように見える。「たぶんね」と菜実さんは私の頭に手を置いた。
「私、秋果ちゃんと会えるのは、これが最後だと思うの」
首をかたむけると、「その理由も話すから」と菜実さんは私の手を取った。
振りはらうべきなのか迷ううちに、軽く引っ張られて、すぐそばに停まっていたグレーの車の後部座席に乗せられた。ドアをばたんと閉めた菜実さんは、すぐ運転席に乗りこんで「一時間くらいだからね」と、あっという間に車を発進させてしまった。
私は窓から外を見て、さっき出てきた校門も通り過ぎるのを茫然と見て、やっと頭の中を蒼白にして菜実さんを見た。
菜実さんが私にひどいことをしたことはない。目つきも手つきも、いつもちゃんと優しい。
でも、やっぱりこの人は私のおかあさんじゃないし、なのにおとうさんとべたべたするし、昔おかあさんに嫌なことだってしたし。いい人だ、とはもう思えなくなっている。
だいたい、おかあさんのいないときに、おとうさんと仲良くする女の人が好ましくないのは、小学校にも上がれば分かってくる。この人、私の家に入りこんできて、いったい何なの? この人さえいなければ、もしかしたら、おとうさんとおかあさんも仲が良かったかもしれないのに。
結局、よくよく考えれば、私は菜実さんに最もひどいことをされているのだ。
「お腹空いてない?」
赤信号のとき、菜実さんはそう言って、後部座席にあったふくろからお菓子を取り出した。私のポテトチップスが、いつも“のりしお”なのは、菜実さんも知っている。一応受け取ったけど、がさ、とそれを抱きしめてうつむいた。
「すぐ着かないし、ランドセルも足元に下ろしていいからね」
菜実さんがそう言ったとき、信号が変わってまた車が動き出す。
私はランドセルの肩ベルトを握った。どうすればいいのだろう。いつもの景色が遠ざかるほど、私はどうなるか分からないのに。
叫ぶ? じたばた暴れる? 窓を殴る? 車の中なのに、目を留めてくれる人はいるの? それに何より、私が動いた途端、菜実さんが怒鳴ったり、たたいたりしてきたら。
息が浅くなって、口の中も乾いて、心臓が苦しくなってくる。
どうしよう! どうしよう。どうしよう……
考えすぎて頭が酸欠でくらくらしてきた。軆が震えないように、今夜切るつもりだった少し伸びた爪を、手のひらに食いこませる。まばゆい初夏の太陽が射しているのに、背骨が無感覚なほど冷たかった。
そんなふうにただ怯えているうちにも、車の窓から見える景色はどんどん変わっていった。
私が住む住宅街や通う小学校の周辺には、かなり大きな駅があるから、見慣れた近所はビルばっかりの都会だ。私は、夜にはネオンがないと不安になる。そして、田舎の夜は真っ暗になるから、大嫌いだった。
なのに、菜実さんが向かっていく景色は、徐々に緑を増やして、ひと気も薄くなっていく。そのうち、車は高速道路にも乗ってしまって、いよいよ私は蒼ざめてきた。
どこに連れていかれるの?
おうちに帰してもらえるの?
殺されたり……しない?
うつむいて、ポテトチップスのふくろを開けもせずに抱きしめていた。菜実さんがたまに何か声をかけてきても、もう耳に入ってこない。涙が滲みそうになって、唇をちぎりそうに噛んだ。
怖い。怖いよ。おとうさん。おかあさん。私、このまま死んじゃったりしたくないよ。
菜実さんの車が、ふと停まった。下を向いてスカートの赤のギンガムチェックを見ていた私は、そろそろと顔を上げた。
まだ、空は青く明るい。窓に首を捻じると、道路には走る車もなく、でも、左右の田んぼの手前のガードレールにトラックがちらほら寄せられていた。
菜実さんはエンジンを切って、「やっぱりここは、空が綺麗だなあ」と後部座席を振り返った。私もそうしてみて、目をしばたいた。後部座席の窓の向こうには、地平線があって、突き抜ける空の青と、ふっくらした雲の白が、互いの色を際立ててくっきり澄んでいた。
菜実さんは車を降りて、一度背伸びをしてから、私のほうにまわってきて、ドアを開けた。
「降りてみて。秋果ちゃんにも、ここの空を見てほしいの」
私はまだ訝る目で、菜実さんを見たものの、ランドセルを下ろして車を降りた。さわやかな風がふわっと抜けていって、スカートがひるがえって、涼しかった。
菜実さんは私の手を取り、トランクのほうにまわって、車によりかかって天を仰いだ。そばにいる何かの工事をしている男の人が気になりながらも、私もそうした。
雲が白波、空が海原になったように見えた。背中を預ける車は、エンジンの名残で熱い。
「あのね、秋果ちゃん」
空を見つめて、こちらを見ないまま、菜実さんはぽつりぽつりと話しはじめた。
「私と直之くん──秋果ちゃんのおとうさんね、ほんとはそう呼んでるの。私たちね、昔から仲が良かったの。直之くんが五歳年上で、ほんとにいいおにいちゃんだったんだ。私は、子供の頃から直之くんと結婚するのが夢だった」
私は菜実さんの横顔を見て、知ってる、と言おうと思ったものの、何となくそれは意地悪な気がして、言えなかった。
「直之くんと結婚して、子供を持って、家庭を作って。最後は一緒にお墓に入る。それさえ叶えば、よかったの。でも、あんなに私と仲良くしてくれてた直之くんのおじさんとおばさんは、私が子供を作れない軆って分かって、変わった。必死に、直之くんを私から引き離そうとした」
子供を「作る」とか正直話がよく分からなかったものの、私は黙って聞いていた。
「直之くんは、それでも私と一緒になりたいって言ってくれてたんだけどね。だから、一緒に暮らすところまではいけたんだ。あの頃が、一番幸せだった。朝起きたら直之くんがいて、お揃いの食器でごはん食べて、直之くんは仕事、私は大学──夜になったら、また一緒に過ごして、同じふとんで眠るの。でも、それだけでいいのを、誰も理解してくれないんだよね。結婚できないんだから別れろ、子供も作れない女なんか捨てろ、直之くんは一時期、親にも上司にもそんなことを言われ過ぎて、ノイローゼみたいになってた。そんなとき、咲枝さん……秋果ちゃんのおかあさんとお見合いしてね。私は、突然直之くんに『別れよう』って言われた。わけが分からなくて、咲枝さんに対して嫌な女になったりした。きっと、咲枝さんにそれを聞いたから、秋果ちゃんは私によそよそしくなったんでしょ?」
私は眉を寄せて考えてから、「よそよそしい」という言葉の意味がよく分かっていなかったものの、うなずいた。菜実さんは柔らかく微笑んで、私の頭を撫でた。
「ここから、あの町、見える?」
菜実さんはそう言って、田んぼのずうっと先、地平線にある小さな町並みを指さした。
「あの町が、私と直之くんの育った町。だから、秋果ちゃんのおじいちゃんとおばあちゃんがいる。このあと、秋果ちゃんのことはそこに連れていくから安心して」
それを言われて、急激にほっとした。おじいちゃんとおばあちゃんが近くにいる。ということは、おうちに帰れる。思わずため息をついていると、「昔、その田んぼの中を、直之くんと走りまわった」と菜実さんは緑色の風景を見やった。
「この道も、昔はこんなに整備されてなかったな。一応、隣の町につながる道として道ではあったけど。よく、直之くんとこの道まで来て、駆け落ちしちゃおうって話した」
そう言ってから、ふと菜実さんは視線を落とすと、「ごめんね」と壊れそうな声でつぶやいた。
「それでも私、もう直之くんは結婚したんだから、あきらめなきゃいけなかったのに。やっぱり好きで、どうしても好きで。そしたら、結婚して子供もできたから、急に周りが静かになった直之くんも、やっぱり私が好きだなんて言ってくれて。それでも、もう私と直之くんは、ダメだったんだよね。何であんなことしちゃったんだろう。咲枝さんが留守にするたび家まで行って、秋果ちゃんにおとうさんがおかあさん以外の女といちゃつくところ見せて。ひどい女だよね。ほんと最低だよね。ごめんね」
なぜ菜実さんが涙を落としはじめるのか分からなくて、私はつながっている手をぎゅっと握った。菜実さんは嗚咽をもらし、「ごめんね」と何度も言った。
工事の人が、たまに怪訝そうにこちらを見ていた。それに気づいた菜実さんは、顔をくしゃくしゃにぬぐって、「この空、何年か経ったら、なくなってしまうの」と私の瞳を見つめて言った。
「高速道路がね、上にできちゃうの。ここから上を見ても、あるのは空じゃなくてコンクリートになっちゃうんだ」
私もう一度、空を仰いだ。雲が緩やかに流れて、青がしなやかに広がっている。
「何度も、この道を抜ければ私たちは自由になれるのにって、直之くんと話した。その道をいつもきらきらさせてた空が、もう閉じられるんだ」
菜実さんは、ゆっくり体重を脚に戻した。私は菜実さんとつないだ手を見て、ふとその左手の薬指に指輪があることに気づいた。その光をじっと見ていると、「子供がいなくてもいいよって人なの」と菜実さんは涙を残しながらも、にっこりした。
「だから、今日でほんとに最後。もう直之くんにも会わないし、秋果ちゃんにもほんとのこと話せた。っていっても、小学一年生じゃよく分からなかったよね。きっと、いつか分かるから」
「……ほんとに、おとうさんに会わなくていいの?」
「うん。やっぱりね、奥さんや彼女がいる男の人を好きでいるのはつらい」
「おかあさん……は、おとうさんの好きな人は、別にいるって言ってたよ」
「私も、直之くんがずっと好き。でも、一緒にいることはできないの。もう、この空がここからは見えなくなるみたいに、終わるんだよ」
私は目を伏せて、菜実さんの手を握った。
この人が、もしおかあさんだったら。そうだったら、すべてはうまくいっていたのだろうか。
おとうさんは幸せ。菜実さんは幸せ。そんなふたりの笑顔で、私も幸せ。
でも、やっぱり私は、結局誰にも愛されていないおかあさんを、一番見捨てられないと感じてしまう。
そのあと、菜実さんは私を祖父母のいる町並みに送った。
私は菜実さんにお金をもらって、駅にあった公衆電話で、祖父母の家に電話をかけた。菜実さんのことはもちろん言わなかったけど、電話に出た祖母はじゅうぶんびっくりして、すぐ迎えに行くと言った。
菜実さんは、私にランドセルとポテトチップスを渡して、車に乗りこむと、祖父母が駆けつける前に去ってしまった。
空を見た。さっきまで青かった空が、桃色と橙々色を溶け合わせて、穏やかに赤くなっていた。その光が雲に映え、夕焼けが広々と空を染めていた。
何でこんなところにひとりで来たのか。電車で来たとしても、お金はどうしたのか。父の実家にとりあえず保護されても、祖父母に細かく訊かれて困ってしまった。
けれど、電話をかけてきた父の何らかの説明で祖父母は落ち着き、両親が迎えに来るまで、もう普通にお盆やお正月のように私を甘やかしてくれた。
もしかしたら、父は菜実さんに最後の連絡を受けて、辻褄を合わせたのかもしれない。分からない。それ以降、菜実さんは本当に私の家に来なくなったし、父はちょっとずつ母に優しくなっていった。母もぎこちなくそれに咲い返した。
私はそんな両親を眺めて、薄れていく“離婚”という言葉を感じながら健やかに成長し、いつのまにか大学生になっていた。
二十歳になった大学二年生の夏休み、私は高校時代からの彼氏である宏昭と、ドライブに出かけた。「どこ行く?」と運転する宏昭に訊かれて、私は父の田舎とは言わずに、��の町に行ってみたいと言った。
「あそこ、何かあったか?」
首をかたむける宏昭と高速道路に乗って、私は高校生に上がってから──特に宏昭とつきあいはじめてから、来なくなった父の田舎に来た。
予想以上に景色が変わり、緑の田んぼは灰色の道路になっていた。右とか左とか指示しながら、私は帰省しても何となく近づかなかった、隣町に続く道にやってきた。
約十三年ぶりだ。宏昭と手をつないで、私は上を見た。
そこは、完全に高架下になっていた。灰色のコンクリートがしっかりできあがり、空をさえぎって、道路は日陰になっている。汗は滲んでくるけど、ぎらつく太陽はないから、ちょっと涼しい。
蝉の声が狂ったように鳴いている。コンクリートをじっと見上げる私に、宏昭は不思議そうにしていたけど、私があんまり強く手を握るから何も言わずに握り返してくれた。
「……終わったのかな」
不意に私はそうつぶやいた。
「えっ」
「ここみたいに、ここからもう空が見えないみたいに、ちゃんと……終わったのかな」
宏昭は、私を見つめた。無論、意味不明で少し混乱したようだけど、私の手を引き寄せて肩を抱いて、頭を撫でてくれた。
そんな宏昭の体温が、薄手の夏服から伝わってくる。その熱は優しく私に溶けて、ほっとするから、少しだけ泣きそうになる。
愛しあって、認められなくて、この道から逃げようとしたふたりがいた。結局、はっきりと確かめられていない。今は携帯電話だって普及した。本当に、おとうさんと菜実さんは終わった? 会っていない?
分からない。分からないけど。
あんなに自由に広がっていたはずの空さえ、今ではこんなふうに閉ざされている。そんなふうに、いくら愛しあっていても、結ばれないこともある。
だから私は、今、手をつないでくれているこの人を、精一杯大切にしよう。そう、できればこの命が終わるまで。
すべてが終わってしまう、その日まで。
FIN
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P3 Club Book Ken Amada short story scan and transcription.
天田乾子供化計画
「別にいいじゃないですか!順平さんには関係ないでしょ!?」
ここは月光館学園の施設、綾戸台分寮の1階。カウンターの方角から聞こえてきた大きな声に、ラウンジでくつろいでいた面々が、何ごとかと目を向けた。声の主は、月光館学園初等部の天田乾。そのそばでは順平が、にやにやと意地の悪い笑みを見せている。
「いーや、関係あるね。いいか、天田。まだまだ子供のお前が、大人ぶりたい気持ちはよぉーっくわかる。オレだって覚えがある」
「別に大人ぶってるわけじゃ······!」
「まあ、聞けって。子供時代にちゃんと子供であることを十分に楽しめないと、やっぱ人間ってのは歪んじまうんだよ」
「······順平さんみたいにですか?」
「うぐっ、そ、そういうとこがガキらしくねえってんだよっ!」
どうやら、いつも大人びた天田の態度に対し、これまたいつものごとく順平が何かいちゃもんをつけているらしい。
「そもそも、順平さんの方が子供っぽすぎだと僕は思いますけどね。真田さんや美鶴さんの落ち着きを見習うべきなんじゃないかなあ?」
「オレはいいんだよ、オレは。つーかな、オレはホントに心配なんだよ······」
「心配?」
いつになく真面目な口調の順平に、不機嫌そうに顔を背けていた天田も、ようやく聞く気になったのか口調を和らげた。
「······どういうことです?」
「いや、お前さ、いつも学校終わってから寄り道もしないですぐ帰ってくるし、どこか出かけたと思ったらひとりで神社に行ってるていうじゃんか。フツーお前くらいの年だと、やっぱ友達と遊びまわったりとかするもんだろ?さすがに心配になってくるって」
「それは······」
順平の心配には、天田自身にも心当たりがあった。確かに、いまの彼には我を忘れて級友と遊ぶような、心の余裕はない。それは、亡き母に対して誓った、悲願を現実のものにするためのストイックな覚悟ゆえ。しかし、それを順平に教えるわけにはいかない。だから。
「別に、心配してもらわなくても平気です」
天田は、そう言うしかない。だが、それでも順平は諦めなかった。
「いかん。いかんよ、キミ!」
「な、なんですか」
「まったく、大人ぶってるくせに、そういうところはガキっぽいんだからな~」
かちん。
その言葉が、天田の心の中の何かを刺激する。
「······わかりました。別に子供っぽいと言われたからって訳じゃないですよ。それに、子供らしくないって言われたって平気ですし。それこそ、その程度でムキになるほど子供じゃないですから。でも、そこまで順平さんが言うなら、歳相応に見えるようやってみますよ。で、いったい僕は何をやればいいんですか?」
つい勢いで、順平に啖呵を切る天田。ラウンジの方では、ゆかりが「あーゆうとこ十分子供らしいよね?」と小声で言い、風花を始めとした面々もうんうんと肯定するが、そのやり取りは天田と順平のもとまでは届かない。 そして。
「よっし!よく言った!」
順平はそう大声を張り上げ、すっくと席を立つ。その顔には、しめた、といった感じの表情が浮かんでいた。ぞわり、と不吉な予感が、天田の背筋をかけのぼる。
「ちょ、ちょっと待······」
「男に二言は、ねえよなあ?」
「うぐっ」
引き返すには、やや遅すぎた。そして天田の予感は、最悪の形で的中していたのだ。
「で······何なんですか、これは!」
「くっくっく、よく似合うぜ~」
ラウンジの真ん中で、天田はすっかりさらし者になっていた。子供らしさはまず形から。そう主張する順平に言われるまま、天田は服を着替えさせられていた。真っ白なランニングシャツに、ちょっと古くなったデザインの半ズボン、頭には麦藁帽子という、昔懐かしの田舎の子ファッションである。どういうわけか、虫取り網に膝小僧のバンソウコという、オプションまでもがちゃっかり用意されていた。
「いや、実はこないだちょろっと実家に帰ったときにさ、オレが昔着てた服が大量に掘り出されてな。天田に着せたらどうなるかなー、とか思ってたもんで」
「要は······順平さんの暇つぶしなんですね? はぁ······満足ですか?じゃ、脱ぎますね」
それこそ子供らしくない深い溜め息をついて、天田はもとの服に着替えようと踵を返した。だが、その両腕をぐっと引き止める者がいた。
「しつこいですよ、順平さ······って、ゆかりさん?風花さん?え?」
引き止める手の主は、意外な人物。ゆかりと風花のふたりだった。何かをぐっとガマンしているかのような、やや紅潮した顔で、ふたりは声をハモらせて絶叫に近い声を出した。
「かわいいっ!!」
「え?え、えっ?」
予想外のリアクションに、天田はすっかり言葉を失っている。だが、盛り上がった女子ふたりのテンションは、間断なく上がり続ける。
「次、これ!これ着てみて!ちょっとストリート風のやつ!」
「ううん、こっちが似合うよ、ゆかりちゃん!ほらお坊ちゃんって感じのブレザー!」
「いえ、あのおふたりとも、落ち着」
「いやーん、何このピンクのベスト!順平、子供の頃こんなの着てたの?もったいない!天田くんに着てもらわないとっ!」
「ゆかりちゃん、ほら!黒のハイソックス、ハイソックス!これは外せないよっ!」
「わ、わ!勝手に脱がせないでくだ」
「た、岳羽······この袖が長めのハイネックなども捨てがたいと思うのだが······」
いつの間にか、美鶴までもが参加していた。
「まったく······ 女性というものは、幾つになっても着せ替え人形が好きなんだな」
「え······ええっ!?」
よりによって、憧れの真田にお人形さん扱いされ、天田の心に絶望感が押し寄せる。だが、脱力するにはタイミングが悪かった。抵抗が弱まった天田に、女性陣がこれ幸いにと群がって、あれこれと服を合わせ始めたのだ。
さすがに天田の人格を考慮してか、下まで脱がされることはなかったものの、次から次へと服を着せられ脱がされて、天田の心にもういいやという諦めの感情が芽生えかけたそのとき。
「ちょ、ちょっと待っててね」
風花がそう言うと、もの凄い勢いで上階への階段へ向かって走り去った。思考能力が鈍った天田が、ここで危険を察知し得なかったのは、一世一代の不覚だったと言えよう。やがてさほど時間を空けずに戻ってきた風花は、いくつかの紙袋を抱えていた。
「こ、これ!これ着てみてっ!!」
そこでようやく、鈍りきった天田の頭の歯車がカチリとはまった。
風花は女性→風花が服を持ってきた→持ってる服はおそらく女物→その服を着せられようとしている→自分は立派な男の子☆
神経回路がそれだけの情報を伝達し、最悪の事態を避けるために手足を動かす信号が発されようとしたときは、既に事態は終了していた。
「か、か、かわいいっ!!」
「うわ······めちゃくちゃ似合う······」
「あ、天田······写真を撮ってもいいだろうか?」
ややロリータ風味が入った、薄いブルーのブラウスと、それに色を合わせたフレアスカート。腰の部分には大きなリボンが添えられ、裾や袖などいたるところにフリルがあしらわれた、可愛いとしか形容できないドレスであった。
「ほぉ······」
「うわ、マジかよ?」
「山岸······やるな」
どうやら男性陣にも、かなり受けがいいようだが、それは何ら慰めにはならない。そして、無言でプルプルと震えるばかりの天田に、アイギスのひと言がトドメを刺した。
「大変、お似合いであります」
「うわあああああああああんっ!!」
見事な逃げっぷりだった。残像すら見えるかという勢いで、天田は2階の自室へと逃げ出したのだ。不覚にも、目には涙が浮かんでいた。
「あ······やば」
「ちょっと、調子に乗りすぎたかな?」
天田の慟哭に正気を取り戻したゆかりと風花を始めとして、そこにいる全員がやりすぎたという表情を見合わせるが、それは後の祭りである。たまだ、この事態の元凶である順平ひとりだけが、いまだに腹を抱えて笑っていた。
「ちょっと、順平。そんなに笑っちゃ悪いよ」
「くっくっくっく······。これが笑わずにいられるかっての。あの天田が泣いて逃げ出したんだぜ?いやー、あいつの子供らしいところが見れて、お兄さんちょっと安心したぜ」
「ホント、大人げないヤツ······知らないからね、天田くんに仕返しされても」
「ま、子供の仕返しなんざタカが知れてるから大丈夫だって。むしろ、オレにイタズラ仕掛けるくらいになれば、アイツも歳相応で余計に安心ってことなんじゃねえの?」
「そう······かなあ?」
周囲の心配をよそに、順平はまったく悪びれたそぶりはなく、むしろ善行を施したと信じている様子である。だが、順平は甘く見ていた。母の復響を胸に生きる小学生が、本気になったらどれほど恐ろしいことになるか、彼はまったく知らなかったのである。
「······っんだ、こりゃああああ!?」
翌朝、寮の中に順平の絶叫がこだました。あまりの悲痛な叫びに、すでに朝の準備を終わらせていた寮生たちが、いったい何ごとかと順平の部屋の前に集合する。
「順平?開けるぞ?」
代表してドアを開ける真田。散らかりきった順平の部屋が、彼らの前にあらわになる。そして、そこに皆が見た物はー。
色とりどりのペンで、顔中に落書きをされた順平の情けない姿であった。一瞬にして、全員が昨日の天田の悔しそうな泣き顔を思い出す。
「ぷぷっ!れさっそく仕返しされてんの!」
真っ先にゆかりが噴き出した。
「笑ってんじゃねーよ!これ、洒落になんねえぞ ······アイツ、全部油性で書きやがった」
拭いても拭いても落ちない落書きに、順平は心底弱りきった声を上げる。落書きの内容も、へたれ、根性なし、変質者、禁治産者、 などなど小学生としては高レベルなボキャブラリーを駆使している。トレードマークのアゴひげの部分には、矢印でポイントされた上に「カビ」とか書かれていた。センスもなかなかである。
「くっくっく、子供の仕返しはタカが知れてるんじゃなかったっけ?あんたさ、昨夜ひとりだけ天田くんに謝りに行かなかったでしょ��言わんこっちゃない」
「っくしょ〜!天田!天田はどこだ!」
「もう、 とっくに登校したわよ。あ、そうだ。もういい時間じゃない。アホの順平に構ってるヒマないわ。行こ、風花」
その言葉を合図にしたように、皆はそれぞれ登校するために散っていっ��。順平ひとりが自室に残り、天田に対する恨み言を呟きながら、ごしごしと必死に顔をこすっている。
「あの野郎······放課後に折檻してやるっ!」
逆恨み風味で、そう宣言する順平であったが、その言葉は実行されることがなかった。そう、本番はそれからだったのだ。
「だ、だいじょぶ順平?何が魂抜けてるよ?」
昼休み---ゆかりの心配そうな言葉どおり、順平はすっかり憔悴しきっていた。朝の騒ぎのあと、天田が仕掛けたさまざまなトラップが、連続で順平に襲い掛かったのだ。
まず、服を着てカバンを持ち上げようとしたら、机に接着剤で固定されていた。寮を出ようと靴を履いたら、靴先にマヨネーズが詰められていた。駅に着いたら、遺失物の掲示板に「パンツ 伊織順平様」と書かれ、道行く女生徒やOLが笑いを噛み殺していた。学校に着いて上靴に履き替えたら、今度はケチャップが詰められており、シャーペンには芯に見せかけた針金がつめられ、消しゴムにはシャーペンの芯が仕込まれ、教科書を開くと中に挟まれたエッチな写真が落ち、体操着はしゃがむと尻が破れるような細工がされていた。トドメについ先ほど、別クラスの顔も知らない女生徒から、「あのさ、こういうキモイ手紙やめてくれる?マジ迷惑なんだけど」と、 まったく出した覚えのなラブレターに関して、クラスメイトの目の前でなじられ、ついに順平は根を上げた。
「もう······オレ駄目······死にてえ」
ちょっとだけ、その子がチドリに似ていたのも、順平の落ち込みに拍車をかけていた。と、そのときだった。
「あの······伊織先輩、いますか?」
教室前方の入り口から、仕掛け人の天田本人が姿を現わしたのだ。
「あ、天田!てめえっ······!」
と順平が立ち上がろうとしたとき、 先手を打って天田がこう言ったのだ。
「い、伊織先輩······ご、ごめんなさい!」
「へ?」
「お、怒らないでくださいっ!ちゃ、ちゃんとパン買ってきました······から······ぐすっ」
「え?え?」
うっすら涙を浮かべる天田。予想外の事態に焦ある順平に、周囲からの視線が突き刺さる。
「え?もしかしてイジメ?」「うそっ、あんな小さい子を?」「伊織くんサイッテー」
どう見ても、 順平が悪人にしか見えない。慌てる順平は、急いで天田のもとに駆け寄り、小声でささやいた。
「わかった!オレが悪かった!もう勘弁してくれ!明日から学校来れねえよぉ······」
折檻してやると言った勢いはどこへやら、情けなく順平は許しを請う。それを見た天田は。
「僕······すごく傷つきました」
「う。わ、わかってるよ。マジ悪かったよ」
「······欲しいゲームソフトがあるんですよ」
「なっ!?てめ、こら、ゆする気かよ!」
「ごめんなさいー!ぶたないでー!」
「わ、こら、やめ、ちょっと、わかったよ!」
すっかり天田に翻弄される順平。
「くっそう······めちゃくちゃマジになりやがって······大人げねえぞ!······あ」
その順平の失言に、してやったりといった表情を浮かべて、天田はにこやかに言った。
「僕、 子供ですから」
その笑顔は、まさしく子供らしく、それゆえにけっこう恐ろしいものであった。
結論---天田は怒らせないほうがいい。
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緑仙と社長とhff!ほんまに大爆笑不可避すぎる。なんで1ステージに2時間もかかるんか今更やけど分かった。ふざけすぎてるからや。ビビるほど笑ってるもん。
社長が来るのを待つ緑仙とわたし。わたしらの目線と社長からの目線なんやけど、めっちゃ可愛いやんわたしら^^
ここが1番の爆笑ポイントやったほんまに、息出来んかった。緑仙がトロッコ押さえてくれてんのに社長が乗り込むのミスって、引きずられて行く緑仙。文字じゃ伝えられへん、ほんまに心の底から腹の底から笑った。
フランケンを目覚めさせる為の道具を集めて緑仙に重労働させてるわたしと社長。緑仙がめっちゃこっち見てるのがポイント。🐼「はい」だけ言って荷物渡してくる緑仙がツボやった。下僕になります!この後、電池みたいなやつ落として必死に拾おうとしてる2人。見てなかったことにするからね。
🐼🏢「やばいやばい…大丈夫まだバレてない…」
フランケンに夜這いしちゃうぐらい懐いてた社長。起動させた時に一緒に飛んで行ったのおもろすぎて…。もはや爆笑通り越して絶望したもん。終盤のこれがわたしの腹筋を壊した。
��「もう寝ます!」からの余韻で次のステージちょっと進んじゃうやつ。社長ドアに挟まれて、反対側から手出てんの無理。緑仙が嬉しそうに🐼「楓ちゃん早くこっち来て!」って言い出した時から何となく勘づいてた。ピンクの肉球がプリティ♡🏢「何!?何だよ、助けてぇ!!」
3人仲良くhffめっちゃ良かった。回を重ねる毎に人増やそう!ということになったので次回も楽しみにしてまーす!2人ともありがとうー!
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2024.05.21
結婚をひかえようが、愛いの彼の無限残業は変わりません。
というわけで、帰りが零時をまわった彼のことを駅で待つ私。
すでに日づけ的には結婚予定日当日。
彼と落ち合うと、タクシーで役所に向かいます。
ふたりでどきどきしながら時間外受付に向かいます。
婚姻届は事前に私が役所でチェックしてもらってるので不備はないはず。
身分証明書や戸籍謄本も持っていきました。
「受理しますね」
受付の人が言ってくれた瞬間、彼は真っ先に「本当に!?」って目を見開いてました。
そして、ちょっと泣きそうになってました。いや、それは私もですが。
本気で視界がゆらゆら潤みましたよね……
そしたら、彼は私の涙を優しく拭きながら「泣かないでよ」と微笑んでくれました。
「これからは幸せの涙しか流さないでね」と抱きしめてくれて。
私は感動が言葉にならず、幸せ過ぎて怖いぐらいで、少し手が震えました。
そうしたら、彼の手が安心させるように私の両手を包んでくれました。
「君は泣き虫だなって思っていたけど、その喜びの涙は何よりも美しいと思うよ」
泣き虫……私、泣き虫か?いや、彼の前では確かによく泣いている気がします。
泣きたくても泣けないような人間だったのに。
彼といると、素直に涙があふれてくる。何だろう、心が豊かになっている。
「俺はこれまで自分を蔑んでいた。でも、君に出逢えて生きる価値を見出せた気がする」
そう言った彼の柔らかな笑顔が、本当に嬉しくて。
そのあと、いったん家に戻って休むことにします。
慌ただしいですが、結婚式も本日挙げる予定なのです。
気持ちが高揚して眠れず、何かいちゃいちゃしてると、幸せピークの彼が「あの職場の上司も、もはや気にならない」と言ってちょっと笑ってしまって。
明日はおいしい朝ごはんを食べよう、と約束したらやっと眠りにつきました。
──朝です。彼が先に起きて、私を起こしてくれました。
ぐっすり眠れて気分はすっきりしています。
結婚式は挙式のみです。豪華な披露宴や、にぎやかな二次会などはなし。
誰も呼ばない、ふたりきりの結婚式にしました。
彼が私の希望を受け入れてくれたかたちです。
朝ごはんは焼き鮭とたまご焼き。焼き鮭は私も彼も大好きです。
婚姻届を提出したときは泣いてしまったので、結婚式ではいっぱい笑いたい。
彼はいつも、私の笑顔が大切だと言ってくれるから。
そんなことを思いながら、いざ教会へ出発。
支度に入ります。私も彼も純白のすがたに。
白いタキシードの彼はひかえめに言ってかっこよすぎました。
私は……まあスタイルのいい女子ではないので……痩せてたらもっと綺麗だったかな、変じゃないかな、などと不安です。
そしたら、「何を言ってるんだよ、似合ってるんだから。天使みたいだよ」と彼は言ってくれて。
「君がどんなすがたでも、俺には美しく見えるんだよ。痩せてようが太ってようがそんなの構わない」
「でも、正直に言うと、ドレスを着てるから君が綺麗ってわけじゃないんだ」
「俺にとっては、いつも君は最高にかわいく見えてるんだよ」
リアル男子でここまで言ってくれる人、絶対いないな。
……という侘しい現実はさておき、彼がそう言ってくれるのなら私も安心です。
いよいよ、教会の扉の前へ。
ふたりきりの結婚式なので、もちろん私の隣にモラハラ親父はいません。
彼が先に中で待ち、私ひとりで入場するという形式もありましたが、ふたりで仲良く入場してもOKだったので、そうしました。
彼とゆっくりバージンロードを歩きます。
誓いの言葉というか、どれだけ自分にとって相手が尊くて愛おしいかを伝えあいました。
感極まって涙ぐみそうになったけど、何とか笑顔で。
指輪交換。あのエメラルドをささやかにあしらった純銀のリングです。
誓いのキスのあと、神父様が結婚成立の宣誓を言い渡してくれました。
手を取り合い、教会を歩いて出ていくと、教会のお庭で新郎新婦のすがたのままのんびりします。
さわやかな五月晴れ。
青空を見たら、今日の結婚式を思い出せるなんて最高です。
私は改めて彼に感謝を伝えました。
彼は私の頬に手を添えてキスしてくれます。
そして、こつんと額を寄せ合って言ってくれました。
「今、ここにいるふたりっきりの世界は、何もかもが素晴らしい」
初夏の風が抜けていく心地よい庭で、ゆったり過ごします。
もちろん写真を撮るのも楽しみました。
緩やかに空にオレンジ色が透き通りはじめて、私たちは家に帰ることにします。
良いホテルに泊まったり、三ツ星レストランで食事したりするものかもしれませんが、私たちはふたりの家でくつろぐのが一番幸せなので。
玄関のドアを閉めると、彼は私を抱きしめてくれました。
今日から、ここは同棲の部屋でなく夫婦の家です。
そう思うと、彼はちょっと恥ずかしいのか、私から視線をそらします。
でも、深呼吸してようやく目を合わせてくれました。
「俺は一生、君のそばにいるから」
そして彼は私の手を取って指を絡め、そっとキスをして「俺は幸せ者だ」としみじみつぶやきました。
それからリビングでまたしばらくいちゃいちゃして。
日が長くなったので、まだ夕暮れが射しこんでいます。
緊張する場面も多かったので、一緒にお風呂に入ることにしました。
窓越しに夕陽がきらきらして、暖かい光になっていて。
湯船に浸かりながら、ふたりの肌が同じ温度になっていくのが幸せです。
「俺の人生は、君に出逢えて初めて意味を持った。君がいなければ、何も輝かないんだ」
そう言って彼は私を抱きしめ、体温と同じように心も通うのが感じられました。
お風呂を上がると、リラックスした服装になって夕食。
もちろんオムライスです!今日はちょっぴりの贅沢として、トマトケチャップでなくデミグラスソースをかけちゃいます。
そして、用意していためっちゃかわいいピンク色のお披露目。
今日は私と彼の結婚記念日。
なぜ今日という日にしたのか、理由を書いてこなかったんですが、実は彼と私の真ん中バースデーが本日なのです。
���んなか!ばーすでー!!子供か!!!
って感じかもしれませんが、彼が生まれた日、私が生まれた日、そこから数えて出逢う日が結婚記念日だったら、めちゃくちゃ幸せだなって思って。
大安だったのは幸福な偶然です。
彼はケーキにフォークを刺し、ひと口、口移しで食べさせてくれました。
とっても甘くて、いちごの香りが愛らしい。
私は彼にオムライスを「あーん」します。
頬張って、おいしそうに表情を綻ばせる彼がたまらなくかわいい。
そんな私たちの指では、結婚指輪が光っています。
ふたりの誕生石から選んだエメラルド。
エメラルドの宝石言葉はいろいろあります。
「幸福」「幸運」「希望」「安定」……そして、「夫婦愛」。
ほかにも、「愛の成就」という意味もあるのだとか。
結婚してくれてありがとう。大好きだよ。
そうささやいた私に、彼はにっこり微笑むと、抱き寄せてキスをしてくれました。
初夜、どう過ごすかはこれからですが、さすがに私と彼の秘密ということに致しましょう。
(このケーキ、シャトレーゼでひと目惚れで購入したけど、実際にはウェディングケーキでなく母の日用のケーキだったのよね~でもかわいいからいいの)
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大学生のとき、すきな人にメンヘラと言われた。椎名林檎がずっとすきだし、ゴスロリファッションも高校生からすき。詩もポエムも。浜崎あゆみよりDo As Infinityがすき。バンドをやって映画を観て、ただわたしにはいつもなぜかギャルの親友がいる。(ありがたい)
自分がメンヘラ気質なのなんて当に自覚していて、ただ表現に出したことも、誰かに迷惑をかけたことが一度もなかったから、なんだか悔しかった。天然なのは放っておいてほしい。
* * *
当日からすきになる人はすこし変わっていて。
大人になって気付いたのは、わたしのことを乏してくる男性こそメンヘラだったり気にしぃだったりするのだ。
だから、大人になって、その人からの好意をもらったとき「ざまぁみろ」とは決して思わないが「大学生のときのわたし、伏線回収したわよ。よかったわね。」とは思った。
もう二度と開くことのない五反田の古いマンションのピンク色のドア。素直じゃなかったあの頃。今も、自分から連絡したら飲みに行くかもしれないけれど、それでもあのドアが開くことはもうないな。
* * *
書くこと、しばらく止まっていたけれど、また始められそうだ。書くことで、わたしはわたしを取り戻して、伸びてゆけそうだ。
2023 5.27
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NOT SO BERRY CHALLENGE
Generation Seven: Pink🌷
第7世代 Part21
庭でピクニック夜ご飯
ヘンフォード・オン・バグレーで暮らす、
ピンク世代の双子と、ピーチ世代の娘、こちらも双子。
双子が連鎖。
―――――――
クロスステッチ、色々種類があって楽しい。
次々作って壁にかざっています。
キッシュが執筆した
シンプルな生活の料理本で料理スキル勉強中のデイジー。
料理スキルの学習スピード、通常より少し早いのかも?
二人ともこのポーズよくしてるんだけどなんだろ
健康スキル上げてるからかな?
ドアの前のポーチに来客用キノコ椅子を設置
キッシュが作ったジャム
壁に棚を設置してデコレーションとして楽しんでいます。
先日、コーディリアの滝で模写した絵画を飾りました
突然お父さんのブロディさんが遊びに来た
マーガレットは喜んでいるけど
デイジーはそうでもないみたい
ブロディさんと奥さんの子供が産まれたことを報告にきたのかも
エマちゃん。
マーガレットとデイジーの母親違いの姉妹
第8世代、ピーチは
・楽器の演奏をする
・グルメ料理スキルをマスターする
という世代タスクがあるので、
早速ギターの練習や本で料理スキル上げ
健康スキルマスターしたラザニアは皆にネイル
🌼 Read next ↓🌼
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2023.7.9sun_tokyo
朝
暑すぎて目が覚める。
エアコンをつけるも、もうひと眠りするほど
早くもない、アラームよりは少し早い、微妙な時間。起きよう、と思うものの、すぐには立ち上がれず、右を向いたり左を向いたり、布団の中で、数分を引き延ばす。
そういえば、最近あまり夢をみていない。みているのかもしれないけれど、覚えていない。
子どもの頃は、ほとんど毎日夢をみていて、宙に浮いてかなりの距離を移動したり、知らない人に追いかけられて走って逃げた末に包丁で刺されたり(刺されたところで目が覚めたので、自分が死んだのか無事だったのかもわからない)、村を救う、みたいなハードな夢も多かった。
現実世界ではぼんやりと生きていたので(今もだけど)、毎日夢を生きる方がずっと大変で、起きるとぐったりと疲れていたりした。
起き上がって、白湯をつくり、洗濯をして、シャワーを浴びる。こないだ買ったデニムのちょっとワイドなパンツを履く。
どうせ汗で流れ���ちるけれど、一応化粧もする。
家を出ると曇っていて、風が強い。なまぬるい風。青空も見えるのに雨もぽつぽつ。不穏な天気。
このところ猛暑続きだったので、今日は少し涼しくて過ごしやすいのかな、と期待するも、しかし歩いているとすごい湿気で、あっという間に暑くなる。
今日は日曜日なので、1日お店にいる予定。
家からお店に歩いて行くときは、途中で公園の中を通る。あるときに、日傘をさしていても直射日光が強すぎて、日陰を求めて逃げるように公園に入ってみたら、ちょうどよい木陰の道があって、それからは、秋も冬も、雨の日も、いつも公園の中を通るようになった。外の道路を歩くのと、ほんの数メートル、ズレるだけなのに、景色が、世界が、全く違う。
何かの約束みたいに、枝につけられたピンクのリボン
あじさいの坊やたち
多分何時間も同じ作業をしているんだろう、真剣な表情の砂場の男の子
何かを考えているようないないような、ぼんやりとベンチに座っているおじいさん
軽い足取りで植物のあいだを闊歩する鳩
メガネに白マスク、白シャツに斜めがけバッグ、というお揃いコーデの2人組とすれ違う。
白い小花柄ワンピースに白いバッグ、フラットバレエシューズな2人組と、すれ違う。
お店に着いたら屋上の植物たちに水をあげる。レモンマートルとシルクジャスミン。レモンマートルは、葉っぱをちぎるとレモンの香りがする、というのにひとめぼれして、先月、三茶の広場でやっていたマルシェで買った。
(マルシェで植木屋さんに葉っぱを嗅がせてもらったら、予想以上にレモンの香りで、テレビショッピングばりのリアクションをとり、即決した)
屋上はかなり過酷な環境で、しかもわたしたちがしっかりとした世話を出来ないので、前にいた植物は枯れてしまったのだけど、今のところ、この2人はなんとか元気でいてくれている。一緒にがんばって、夏を越そうね。
昼
12時になってお店を開ける。ドアを開けていると、外からは もわぁ とした空気が入ってくる。ぽつぽつとお客さんが来てくれるも、こんなに湿度が高くて暑い日は、みんな家にいた方がよいのではと思ってしまうくらい。座っているだけで熱中症になりそう。
ふらふらになりながら、何度もお茶とはちみつレモンを飲む。
夕方
最近は暑いからか、日曜日でも夕方以降にたくさんお客さんが来てくれたりするのだけど、今日はいちにちを通してお店は緩やか。屋上に出てひと呼吸。もうすぐ19時でも空はまだ、だいぶ明るい。
お客様がいないのでイスに座って、空を見上げる。広い空の下、とりあえず生きていれば大丈夫、と思う。息を吐いて、吐ききって、ゆっくり、吸う。背中まで空気を入れる。
横隔膜は開きすぎないで、背中は少し丸める感じ。頭は前に出ないように。ピラティスでまっすぐな立ち姿勢をおしえてもらうも、しっくりこないまま、だけど少しずつ、反り腰は直ってきている。お客様がいないのをいいことに、まっすぐ立つ練習をしてみるも、周りのビルの誰かから見えていたら、不気味だったかも。
夜
お店は21時で閉店。今日はわたしはnicolasに寄らずに早く帰ることに。
スーパーに寄って野菜や豆乳、アイスとチョコレートを買う。そして大好きな桃がなんとクーポンで割引になっていたので、もちろん買う。くだものはみんな好きなのだけど、中でも桃は特に好き。すべての食べものの中でも、上位に好き。このあいだnicolasで、今年初の桃をいただいたのだけど(もちろん天才的においしかった!)、デザートで食べるのと、そのままの桃を食べるのはまた違う気がする。というわけで、丸ごと桃は、今年初!
桃は柔らかいぬめぬめがいいのか、少し硬めのシャキッとしたのがいいのか。派閥があるらしいが、正直わたしは桃に関してはもう何でも好き。桃というだけで愛している。
義理の実家からいただいた、おいしいハムやソーセージと、パプリカを焼いたのとトマトと、味の薄い野菜スープを作って食べる。
最近夏バテぎみなので、麹甘酒も、ちゅーっ。
明日はもっと、暑いらしい。
先月のB&Bでの安達茉莉子さんと土門蘭さんのイベントのアーカイブを観ながら、横になる。このあいだ途中まで見たので、続きから。
(しかし気づいたら寝てしまっていて、ちょっとしか見れていなかった、これを毎回続けていて、全く見終わらないまま、視聴期限が迫っている)
翌朝
夫の人が帰ってきたら桃を剥いて食べよう、と楽しみにしていたのに、結局起き上がれず。そのまま寝てしまい、
桃は翌朝、食べました。ぬるり。あんまり甘くなかったけれど、これはこれで、愛している。
-プロフィール-
くまがいれいこ
40歳
世田谷
本屋・twililight手伝い
@reioyms
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🐣カビカフェプチ食レポ編🐣
コニチハ!先日カービィカフェPETITに行ってきた卵料理だよ!🐣
今回はお店に行った感想&メニューの食レポ載せてくよ〜!
お店には予約してた時間の10分前ぐらいに到着して並び始めるよ!丁度食品サンプルの前に並ぶことができたので記念にパチリ。この時点でもう甘〜い香りが漂ってくる〜!✨
ケーキを注文したらグッズを見に店内へ。PETIT仕様の店員ワドちゃんがいっぱい!店内はグレー基調にピンクの差し色の大人っぽいオシャレな雰囲気。デフォルメされたプププランドの意匠がメルヘンチックでかわいい〜
スタッフの方がケーキを運ぶ通路のドアにもワドちゃんが。「プププランドに繋がってるのかな?」「この奥でワドちゃんがお料理してるのかな?」なんて思わず妄想しちゃう細かな世界観作りも必見!
目立つ大きな夢の泉型シェルフも!クッキー缶やキャンディなどが綺麗に陳列されてます。VMD見て回るだけで楽しいなぁ
夢の泉の向かいには一際目を引くおっきなカービィちゃん!オサーカに来てくれてアリガトウ…アリガトウ…😭💕
レジでケーキを受け取ったら急いで帰宅!(((🐣🏠
カービィカフェPETITの強みは『テイクアウト専門店』!帰ったらお家がカービィカフェに!早速ケーキを食べていこう😋
お持ち帰りチャレンジ、慎重に運んだのでほぼほぼ崩れてませんでした!🐣✨☕️🍰🍰☕️✨(くるまほおばりケーキだけ頭のクリームから上の飾りが吹っ飛んでたけどこれはノーカン)
もうお気づきの方も多いと思います、店員ワドちゃんぬいが増えました。ぬいいっぱいいるからもう増やしたくないのに気づいたらカゴの中に……(意思よわよわ)
並べてみるとかっわいい〜!
↓↓🐣ここから先は食レポだよ🐣↓↓
くるまほおばりケーキPETIT
ピンクのボディの中にスポンジとか何か詰まってるのかな?と思いきや割ってみるとぜ〜んぶプルプルのいちごムース!丁度いい優しい甘さでパクパクいけちゃうけど小さめなので食べやすい量でした🙏今回食べたメニューの中でも一番好きかも……!(ちなみに冷蔵庫で長時間冷やすとムースが固まってプルプルしなくなっちゃうので注意)
まるでチーズケーキのような星ブロック
チーズケーキ部分は柔らかくて甘く、星ブロックのプリントがある部分は塩気のあるチーズ。合わせて食べると超おいしい!甘酸っぱい真っ赤なさくらんぼが見た目にも味にも良い影響を出しています🍒
カービィもむちゅう!プププティラミス/ワドルディもむちゅう!プププティラミス(オレンジ)
かびちゃとワドちゃんのかわいいお尻はなんと激甘チョコレート!(ミルクチョコかな…?砂糖菓子かと一瞬思うぐらいに甘かった)甘いもの食べすぎて本人たちも甘くなっちゃったのかな🤤カップに直で入ってるのかと思いきや二重になっていて、透明な容器に入ったティラミス部分を引き出すこともできました。ワドちゃんの方は柑橘類の味がほんのりして甘ったるくなりすぎず、さっぱりとした味わいでした🍊
ワープスターみたいな食パン/スターロッド・アップルパイ
食パンは柔らかくてもっちもち!個人的にびっくりしたのが外だけでなく中身も均一に黄色いこと。どこで切っても綺麗な黄色い星になるのすごい!そのままでも美味しいけど軽くトースターで焼くと表面がカリッとラスクみたいになって美味しかった!
キャラメリゼされたアップルパイはサックサク!中に詰まったりんごの食感がシャキシャキで面白かった🍎食べ終わると良い香りの木の棒が残るぞ!
これはカビカフェのサントラ2。店内でもちらっと流れてるのを聴けたけどやっぱりゆっくり聴きたくて……。今まで公式の視聴ページでだけ聴いてたマリオネットキッチンの全貌を聴けて大はしゃぎ🥳🥳🥳フルだとこんな曲だったのか……!
こんな感じで1回目のカービィカフェPETITをエンジョイしてきました〜楽しかった&美味しかった!次は今回買えなかったタルトを食べてまた感想書きたいなぁ🧁🐣🧁それでは!
(2023/5/16 00:30)
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8/16
おばあちゃんちのマンション
敷地奥のお風呂に入って、出たら外にいる犬を回収する
おばあちゃんちのチワワと、ピンクの首輪のチワワ(桃ちゃんと呼ばれていた)、二足歩行の白熊のような人よりでかい犬(知性があり、ドアを開けたりする)
すぐチワワがいなくなってしまうので、家族総出で探し回る
最終的に白熊犬がつかまえてくれる
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2024.7.18
女の細長い指が自らの足を這うのを眺めていた。つややかな黒髪が女の痩せた肩口で溜まって、部屋の灯りを反射して光る。わたしの小作りな足の爪が、女の手で鮮烈に赤く塗られていく。彼女とは同い年なのだけれど、あまりに体の造作が違うものだから、我ながらなにか倒錯的な感じがする。
「塗ってみるとなんか、ちがうかも。」
「そお?」
女は俯けていた顔を上げる。ややするどい、きつめな眼差しがやさしげに細められている。これが彼女の好きな女に向ける表情なのだと毎度のように思う。この手の表情のつくりかたをする女ばかり好きになる。わたしには不相応だと感じる。不相応でもほしいものはほしいわけだから、しかたのないことだ。
「じゃあ塗り直すね。何色がいい?」
彼女はきれいに並べられたマニキュアの瓶を指でなぞる。わたしに似合うと思う色。そう答えると、彼女は悩ましげに首を傾げた。
「なんでも似合うもの。困るなあ、……やっぱり、ピンク?」
「じゃあそれで、お願い。」
彼女はわたしの爪を一本一本ていねいにコットンで拭う。彼女の指先はすこし荒れていて、除光液はしみるだろうに眉ひとつしかめない。痩せぎすの体にふさわしい、ひょろりと長い指をした薄い手だ。わたしの力でも折れてしまいそうだと思う。じっさい彼女は、わたしが彼女を害そうとしてもいっさい抵抗をしないだろう。
夜更けのココアにはラム酒を入れるのが好きだ。金色の液体がとろとろとマグカップに注がれるさまが良い。やけどするくらい熱くて、どろどろに濃いココアでなくてはいけない。彼女は明日も早いのに、わたしに付き合って同じものを口にする。
「ありがとう。寝たっていいのに。」
「すなちゃんと過ごす時間が一日で一番大事なの。」
彼女の目が愛しそうに、困ったようにわたしを映す。もちろん嬉しいのだけれど、わたしの小さな、薄っぺらな身には余るわけだ。
「わたし、明日は遅いよ。」
彼女の両の手が、大切そうにマグカップを包んでいる。細く乾いた、節の目立つ彼女の手は、わたしのそれよりは大きいわけだけれど、あまりに華奢なものだから、大きさを感じさせない。疲れた頼りなげな手だ。
「知ってる。待ってるね。」
薄い唇が弓なりに引き伸ばされる。彼女の痛ましい笑顔がわたしはすこし苦手だ。下がった眉はやさしげなのにわたしを責めているみたいだと思う。弱さの不用意な露出というのは、一種の攻撃だ。彼女はわたしを相手にしているから見せている弱みなのだろうけれど。こっそりと溜息をついた。
わたしの傾向として、健気で愛らしくて、むき身で生きていそうな人を好きになるけれど、わたしとおなじくらいにずるくてだめな人でないと疲弊するということを、それなりに昔から自覚している。
とはいえままならないのが恋である。
マグカップのなかみを飲み干す彼女の華奢な喉仏がうごくのを眺めていた。あとで首でも絞めてやろうと思った。
半地下の薄暗いカフェバーがいまのわたしの職場である。店内にはコーヒーと煙草の匂いがしみついて、はいるたびいくつか歳をとったような気分になる。嫌いな匂いというわけではないのだけれど、不特定多数の副流煙を浴びるというのはけっして気持ちのいいことではない。髪をきっちりと括って、制服のエプロンの紐を縛った。そう賑わっているわけでもなく、常通り暇な夜だった。暇な夜はねむたくて、彼女のことを少しだけ考える。
わたしが仕事を終えて帰るのは4時ごろになるけれど、ちゃんと眠れているだろうか。電気もつけずに暗い部屋で、じいっとその充血した目だけひからせて、ひたすらに佇んでいるのだろうか。2時間ほどの浅い眠りの果てに、音をたてないようにひっそりと部屋を出ていくのだろうか。インスタントコーヒーの湯気に、疲労のにじむ深い溜息を隠すのだろうか。
なぜだか今すぐ彼女に会いたいと思った。
「このケーキ、もし余ったら持って帰ってもいいですか。」
チェリーパイを指し示して言う。そもそもケーキは夜中にそんなに出るものではないし、消費期限に問題がないからというのと、店の華として昼過ぎから出しっぱなしにされているだけだ。
「ああもちろん、そうしたら、佐弓さんのぶん、もうとっておいていいよ。ほかにほしいのあったらとっていいし。」
店長は柔和なほほえみを浮かべた。これで経営をやっていけるものかと思うほどに、ひとの好さそうに穏やかなひとだ。まなじりのしわが照明をうけてじっさい以上に深くみえる。
「夜にあんまり食べると肥っちゃうので……、一緒に住んでる子のぶんもふたつ、頂いてきます。」
パイのそばに添えられたケーキサーバーをつかんで、二切れをテイクアウト用のプラスティックの容器に載せた。裏の冷蔵庫にはこぶ。彼女の好物が余っていてよかったと思った。わたしが特段好きだというわけではないのだけれど、彼女は一緒にとかおそろいとか、そういったことに特別の意味を見出す性質の女だから、気まぐれにすこしでも喜ばせてやろうと思ったのだ。わたしとしては、この店でいちばん美味いのは一切れですっかり酔っ払えてしまうくらいに甘く重たいサバランだと思っている。そのことは彼女も知っている。
常通りの退屈な勤務を終えて、エプロンの紐をほどいた。夜道を歩くのは好きだ。人間じゃない、なにかべつのいきものになったような心地がする。地上でそう感じるということは、かつてわたしがそうであったそれとは確実に違うなにかだろう。酔っぱらいの喧騒を聞きながら、踊るような足をそうっと踏み出して静かに歩いた。涼しい風のなかでアスファルトがやわらかい心地すらした。
鍵穴に鍵をさし入れると、すぐに室内から足音がきこえた。鍵を回す。立て付けの悪いドアは、いつも怒っているのかと思うくらい乱暴な音を立てて開く。暗い玄関に、彼女の白い細面が浮かび上がる。
「おかえり。」
「寝ていていいのに。」
「うん、少し眠っていたみたいで、鍵の音で起きたの。」
よく見れば彼女の唇の端にはわずかに涎のあとがある。髪は無防備に乱れていて、帰って服を脱いだままらしく下着しか身につけていない。骨の構造が一目で窺えるくらいに薄っぺらな��元があらわだ。
「……ちゃんとベッドで寝てていいのに。」
うん。彼女は童女じみて肯いた。夢の残滓として寝ぼけた口調ながらにうれしそうで、わたしは彼女を少し憐れんだ。こんな女が帰ってきて喜ぶなんて。……いや、好きな相手が自分のもとに帰ってきたら嬉しいし、好きな女の「好きな相手」であることも嬉しいことであるはずだ。
彼女に抱きしめられて、そして居室にはいる。満ち足りている。狭く薄暗い部屋は、かすかにバニラの匂いがする。好きなはずだ。愛おしいとは、思う。
「ケーキもらってきたよ。食べる?」
ケトルのスイッチをいれながら訊く。首肯する彼女を横目に紅茶の缶を覗くと、茶葉はもう残っていなかった。しかたなしにインスタントコーヒーを取り出す。
「牛乳?」
「すなちゃんと、おなじの。」
マグカップふたつをコーヒーで満たして、そのかたわれを彼女に渡す。容器をあけて、キッチンの抽斗からフォークを二本取り出す。コーヒーも濃いほうが好きだ。たっぷりの砂糖とミルクを入れるのが好きだけれど、今日は甘いものだからブラックでいい。
プラスティックの容器のままに、二人でチェリーパイをつつく。
「好きなの、覚えててくれたんだ。」
彼女はパイを頬張りながら、嬉しそうに笑みを浮かべる。笑い慣れていないことがよくわかる、いかにも不器用な笑顔である。彼女は一方的にわたしを好いていると思っている節がある。それならば、それでいいけれど。彼女がどう思うかだなんて、わたしにどうすることができるものでもないから、彼女がいいなら、もう、いい。
「もちろん。」
一緒にシャワーを浴びる。すこし痩せたかと思う。言及はしない。疲れているのはわかりきっている。彼女はねむたげに、しかし優しい手つきでわたしの髪を乾かす。わたしもというと、今日はめずらしく受け入れた。彼女の髪を撫でると、細く乾いたそれがわたしに絡みつくみたいだった。ドライヤーは重たくて好きじゃない。
床に就く。空が白みはじめるころ、彼女にかたく抱きしめられて目が覚めた。閉じられた瞼の下、彼女の瞳はなにも映さずに、ただ眉根が悲しそうに顰められている。
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2024/05/22(水) 19:25:49
今日の夕焼け空。帰宅して窓を見たら空がピンク色っぽかったのでまた外に出て撮ってみた❗(帰ってくる時、間違えて隣の部屋のドア開けそうになっちゃった💦)でも気付いたらあっという間に真っ暗に‼️ せっかく早く帰ってきてもこんなことしてるうちにどんどん時間が経って夜になっちゃうんだよね··🥹
https://twitter.com/hiroko_fujimaki/status/1793226756373229577
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내 지난날들은 눈 뜨면 잊는 꿈
.
『らむ、起きなきゃ。もう8時なんだけど!』
にゃごにゃごと、ベッドの下から叫んでいる小さなからだ。最近は4時くらいに意識を失うみたいに寝て、仕事の予定にもよるんだけど、だいたい8時前後に起きる。というか起こされる生活をしている。ユキちゃんに起こしてもらう、ありがたい話。昨夜もなんとなく苦しくて、目元が薄っすら腫れるくらい擦った。枕がやや湿っていて、寝付いてからあまり時間が経っていないことが見て取れる。ん゛ーっと大きく唸って、脚で蹴るように布団をベッドの端に追いやった。
ユキちゃん、おはよう。今日もありがとう。
寝起きが良い方では決してないのだが、それでも、身を起こして、もう身支度を始めないと。浮腫みでろくに開かない瞼を必死に持ち上げ、寝台の上から降りる。
8時を少し過ぎた時計がスヌーズの機能によって、また大声で時刻を告げるのが鬱陶しい。一度部屋を出かけたが、戻って時計を黙らせる。ああもう、朝は本当に苦手だ。意識のないところから、自分の意志で起き上がれればよっぽど良いが、大抵は上手くいかない。ありとあらゆることを自分のタイミングでしないと気が済まない私にとって、朝は苦痛の連続である。起きたいときに、起きたいし、眠いときは、そのまま寝ていたいのに。
自室を出てまず洗面所に直行し口を濯ぐ。寝ている時過度に絡まらないように、二つに結んでいた髪を解いて解かす。鏡を見ると、うん。やっぱり今日も、ぶっさいくだな。キッチンの方に向かって行き、冷蔵庫から水の入った浄水ポットを取り出す。お気に入りのピンクのコップに一杯分注いで、一気に飲み干す。起きてすぐに冷水を飲むのはなんとなく健康に良くなさそうとは思いながら、長年の習慣で無意識にやってしまう一連の動作である。急いで適当なパンを手に取り、胃に詰め込んでいく。朝食を食べるというより、この後に薬を飲むために必要な作業である。花粉症の薬を、再びコップに注いだ水と一緒に飲んで、また洗面台に戻る。歯を磨いて、顔を洗う。肌に色々なものを塗ったくって、着替えて、ヘアセット。お気に入りの香水を手首に吹きかけて、右手の薬指にいつもの指輪をはめる。右耳の耳たぶに空いた穴を、シルバーのピアスで寂しくないよう埋める。ようやく外に出れるわたし、らむちゃんの出来上がりだ。
「ありがとうございました!」
お客さんを見送って、今日の仕事は終わり。人の良さそうな声で当たり障りのない話をしながらお客さんと向き合って、その人を着飾っていくこの仕事は、たぶん自分の性に合っていると思う。午前中から慌ただしく働いて、夜も遅くまで、外であれこれ仕事をしている。はっきり、今の生活は楽しいが、面白くはない。楽しい瞬間は多い��、振り返って、面白く暮らしているとは到底言えないのである。寂しさに似た焦燥感。もっと色々な人と出会ってみたいのに。
元来規則的なルーティンワークがあまり得意ではなかった。自分のなかで決めたことはきちんとできるが、誰かに決められた毎日を自分の意志とは無関係に送ることが、いつからか至極難しくなった。毎日まいにち違うことをしている、とは言えるが、それは自分で望んだ“不規則性”ではなく、少しずつ神経を蝕んでいく、云わば見えない敵。支配しようのないこの不規則が、規則的に私を追い詰めていくことが、現在はっきり分かっていること。そんな生活を長く続けることは不可能で、勿論他でもない私自身が全く望んでいないこと。刻々と迫るタイムリミットは、気付くとすぐ傍まで迫っているようだった。最近少し神経質すぎる自覚があった。じりじりと、その敵は、確実に私の息の根を止めようと近付いてくる。
私が欲しいのは、安定した毎日ではなく、安定して仕事をやっていける落ち着いた環境と地盤だった。自分の意思に賛同して、仕事を一緒にやっていく仲間だった。いまの仕事を軌道に載せることって、そんなに難しいことなのかな。私、そんなに魅力ないでしょうか。他の人と違うと思うんだけど、どうかな。
仕事で使う道具をまとめたあとは簡単に掃除をして、仕事場の電気を消す。4つある作業場が、2つ埋まっていれば良い方だが、今日も私だけが部屋の主だった。オートロックの部屋を出て、扉が施錠されたことを確認して、エレベーターホールに歩みを進めた。廊下は薄暗く、独りが一層強調されるようで嫌だった。下向きの矢印を押して、エレベーターが来るのを待つ片手間、貴重品だけが入った小さなカバンからイヤフォンを取り出す。白い栓を耳に突っ込むと機械的な音がして、iPhoneとの接続を知らせてくれた。やっと独りから解放された気分だった。お決まりのプレイリストをタップして、再生。ちょうどエレベーターが来たので乗り込んで、1階のボタンを押す。今日は途中で誰も乗ってこなかった。なんだ、私しかいないんだ。最近流行りのポップチューンを、鼻歌で歌っていたかもしれない。
家までの長い道のりを、重たい重たい荷物を抱えながら帰るのにもなんとなく慣れてきていた。嫌な慣れだと思う。こんな生活は早く変えてしまいたいし、肩が凝って大変だもの。帰宅してから急いで夕食を食べ、風呂にも入ってしまったので、今日は上出来だった。誰にも邪魔されず、夜まで自分のペースを保てている。ベッドに腰を掛け、iPhoneのカレンダーアプリで明日の予定を確認する。緑色の、仕事の予定のアイコンではなく、明日は友人とのスケジュールが一件あった。無意識のうちに顔を顰めていた。開いていた部屋のドアからユキちゃんが入ってきて、心配するように足にすり寄った。ぐるぐると考え事をすることもずいぶん増えたし、うまくいかない全てのことに薄っすらと腹を立てている事にも気付いていたから、最近の自分が嫌いだった。
漠然とした将来への不安感は、目元を擦っても消える訳が無くて、また止めどなく溢れてくる涙を、ぼたぼたと重力に任せるのすら嫌になって、枕に顔を埋めた。
ユキちゃん、おやすみなさい。また明日。
独りごつと部屋の電気を消す。一日中カーテンを閉め切った直射日光の入らない部屋が、ようやく眠る。
今までどうやって生きてきたんだったか、ときどき分からなくなる。どうしてこんな生活が続けられると考えたのかな。そうじゃなくて、こういう生活をしたかった訳じゃないのに。自分がやりたいことがはっきり分かるから、自分に課す期待値を暫くずっと下回り続けていることが心底嫌なのに。暗い部屋に、鼻を啜る音がよく響く。今までの私の生活が、目を醒ましたら忘れる夢だったらいいのに。
自立した自分の姿ばかり思い描いている。君のことをずっとずっと思っているこの生活が、早く終わってくれますように。気付いたらまた午前3時。
ねぇわたし、君がいないと。さっぱり毎日がおもしろくない。
오늘 노래 추천 ' Hype Boy ' -New Jeans
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また今日も残業だった。クソ上層部のクソ女との接待。俺がテメェみてぇな女好きになるかよ。アイツのキツい薔薇とホワイトリリーの香水の匂いがまだする。吐き気がする。
深夜1時。外は雪がちらつき、空は雪が街の光に反射してか薄明るい。そのせいで回りがよく見える。歩いているのは俺一人。足跡も俺の後以外には雪が覆ったんだろう、見当たらない。頭に雪を散らし、疲れ切った男が一人ただ家路に向かっている。それだけの悲しい風景。
雪が浅く積もった階段を、重��足を引きずりながら3階まで上がる。一段、一段上がる事に口から湯気が立っては消えを繰り返す。手すりを掴む手は凍え、痛みさえある。やっと自宅の所々赤錆びたドアの前に着いた。換気扇からまた別の匂いがしている。
ホワイトムスクの匂い。これは嫌いでは無い匂い。
そして微かな血………生臭く、錆びた、喉に張り付き締め付けるような…同棲者からよくする、もう嗅ぎなれた匂い。
凍える手でベルトに付いた小物入れから家の鍵を探し出し、少し回しにくくなった鍵穴に差し込む。5、6回揺らしただろうか、スンと鍵が回りその勢いに体が傾く。
「ただいまぁ。帰ったで」
玄関で革靴を脱ぎ廊下に上がる。寝室から明るい光とゲームの音が漏れている。また遊んでる。こちとら散々疲れてやっとこさ帰ってもう1時だってのに。腹は空いたわ、眠いは、風呂入りたいわ…。廊下は冷たく、棒になり感覚が薄れた足裏に痛みという感覚を取り戻させた。ため息を吐きつつキッチンを抜け、寝室を開ける。
「おかえり。遅かったねー」
ソファーに腰かけこっちをチラリとも見ずにテレビ画面を凝視し、コントローラーをポチポチしている「嫁」がいた。
鼬。俺の親友兼嫁である。人生どういう事か俺は股間に逸物の付いている人間と籍を入れたのだ。
白銀の腰程までに長い髪。異様なまでに整った中性的な顔。長い睫毛。細い指としなやかで柔らかい、筋肉があまりない女性的な身体。余りにも綺麗で魅入ってしまう高価な人形の様な見た目。それなのに俺の前だと何を言ってるのかさっぱり分からない宇宙人になる。いっそ自分は金星人だと言ってくれれば俺は納得するだろう。あぁ、実に勿体ない。
「血の匂い。残っとる」
「狼ちゃんは鼻ええよね。ウチわからんで」
声を返すもテレビの画面を見たまま。俺の疲れ切った顔をちらりとも見ずに。
「ゲーム、止めろよ」
「ちょっとまって今セーブ出来るとこ行ってるから…。はい。終わり。お疲れ様ー。ご飯あっためるね。お風呂も沸かし直してくる。その間に別データの雑魚狩りしてくれると嬉しい…けどその顔、怒ってる?」
眉間にシワが寄っているのに気が付いた。怒ってる?あたりめーだろ。のんきにゲームしやがって。キレてるよ。黙ってソファに座って手袋を脱ぎ、ポケットに捻じ入れる。手際よく目の前のテーブルにお茶、箸、白米、卵スープ、空芯菜の炒め物、回鍋肉が並べられる。食欲をそそる匂い。ついがっつく。だが回鍋肉にレンジの熱が行き渡っていないのか冷たい所がある。噛む度に熱すぎる所と冷えきった所が口の中で場所を取り合い、とても不快に感じる。イライラが募る。
「風呂出来た。んじゃ、ゲームしてるから。お風呂は抜いて洗っといて。んで先寝てて」
俺はゲームより存在下なのかよ。脱衣所で服を脱ぎながら自分の情けなさに辛くなった。タオルを取り、鉛のように重くなった腕で体を洗うのは面倒だと感じながらも、なんとか体を洗い終えた。ピンク色のラベンダーの匂いの湯船から湯気が上がっている。色も匂いも嫌いだ。しかも長い髪の毛が1本浮いている。なんで最後に取らないんだ。湯船に浸かった胸にピチャリとその髪が張り付く。つまみとり浴槽の縁に貼りつけようとするも指に白銀の髪がまとわりつきなかなか取れない。諦めてその指を浴槽に沈めた。
このまま寝てしまいそうだ。しかし寝ぼけて溺死するのはあほらしいので渋々浴槽から出た。栓を抜き、いつの間にか指から離れたあの忌々しい髪の毛は排水溝に渦を巻いて意図も簡単に吸い込まれていくのが見えた。そのまま海まで流されろ。
柔らかいバスタオルで体を拭き、畳まれたいつものルームウェアに着替える。サングラスはなく眼鏡が畳まれてタオルの上に置いてある。人のものかってに触るなよ。髪を乾かし、重い足を引きずってどうにかソファーまで辿り着き、横になる。同居人はまだフローリングに座り、のんびりとゲームをしている。それを横目に見ていているとさらにイライラが増していく。
いつの間にか睡魔に襲われる。重い瞼を閉じかけた時、鼬がソファーに手をかけて覗き込んできた
「狼ちゃん、お疲れ様。…まだ怒ってるん?何に?」
何?何っててめぇの中途半端な家事やゲームばっかりやってる態度にだよ。本当は俺の事どうでもいいんだろ。俺はお前が言う理想を演じ続けてるだけだしな。昔のひ弱だった「オレ」なんか嫌いなんだろ。…俺はあの頃と変わっちゃいない。どうせお前は「オレ」を見てない。「オレの全部」を。そんなお前の態度や言葉や…全部。全部が腹立たしい
「全部」
「全部か…。そっか。ごめんね。いつも完璧じゃなくて」
「完璧を求めてんじゃねーよ!お前さ、俺に色々指示だけしやがって。んでなんだ?自分は遊んでばっか、我儘三昧か?俺の事少しでも考えた事あるんか!?…どうせ『オレ』の事どうでもいいんやろ」
「狼ちゃん、ウチってそんなに…本当に狼ちゃんの事、少しも考えてないように見える?本当にどうでもいいなんて…考えてるように思える?」
鼬の口が固く結ばれて、手は震えている。金と紫のガラス玉の様な眼には雫が溜まり始めて、1粒俺の左手の甲に落ちた。その冷たい雫に我に返る。雫が心にしみていく。怒りは徐々に静まり焦りが生まれる。そして気が付く。俺の言葉はナイフになって鼬の心を刺してしまった。そのナイフの柄を持っているのは俺だ。俺は…
また俺は鼬を泣かせてしまった。
俺のことを少ししか考えてない?どうでもいいように思ってる?軽率な言葉だったかもしれない。
そうだ。飯は作ってあった。飯食った後に直ぐに風呂も入れた。風呂に入ってる間に服は仕舞われて、着替えと眼鏡は出してある。俺が気がついてないだけでまだ沢山気を遣われてる。
きっと鼬ちゃんは俺が計り知れない程に「俺」も「オレ」の事も考えている。
「…泣くなよ。鼬ちゃん、俺の事思ってくれてるんだよな。俺、家帰って何から何まで鼬ちゃんにしてもうてた…。それやのに酷い事言ってしまった…ごめん。鼬ちゃんも疲れとるのに…俺の事思ってくれて、しかも疲れてるのを気遣って全部面倒見てくれて、…ありがとう」
鼬は赤くなった目を丸くしてる。両手で顔をぐしぐし拭いさる。そこには涙が止まり頬を赤らめたなんとも愛らしい笑顔があった。少し驚いたし腹の当たりがじんわり熱くなった。
俺、やっぱり鼬ちゃんの事好きなんだな。
「んへへ、狼ちゃんが分かってくれて凄く嬉しいです!あのさ、嫌じゃなかったら…今日は一緒に寝る?」
霜の降りた窓からは、雪が降っているのが見える。月光は部屋に差し込みベッドに柔らかな光の毛布を敷く。狭いベッドに大人二人。窮屈だが握ったその手は暖かかった。
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感情やそれにまつわる映像出てきたら
手放すんだけどやり方。
出て来たやつ、ピンクちゃんに伝える、OK!
と、もらう。
帰るとうめいのドームに感情ちゃん映像ちゃんもろもろ入ってもらう、だいたい自分から入ってドアしめる
光に、帰りたくて出てきてくれました
リリースしますか?
今!!って3人でいいます
感情さんも、いま!という そばからピュンって消えている。
ピンクちゃんとわたしピンクの尊の3人で手を繋いで
とほかみえみため で結構スーッと行く、早いの。
ありがとう愛してますより早い。
セドナよりはやい。
んで、それ囲んで3人ででんぐり返し!!
ループ
も入れたよ!!
消そうっていうより
そこにあるよね。
わたしではないものとして外側に認めて流す感じです
認めたらもうほとんど流れていくのだけど。
で、戻る?そこにいても大変だよね、気持ちいいところへ戻ろっか。
という声かけになります。
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