Tumgik
#国分寺崖線
lonelycrowd1950 · 11 months
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2023/10/15
以前気になって撮っていたこちらの集合住宅が取り壊されていた。「富士ビュー」は国分寺崖線、多摩川左岸の段丘の上から富士を見たいという欲求を表しており、この欲求が昔からあったことを丘の上の古墳群が示している。隣の建物には「二子玉川園」の名が記されていた。
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aizumin · 2 years
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撮影会。
親戚のお姉さんと一緒に、国分寺市の殿ヶ谷戸庭園に行ってきました。午前中は雲が厚かったものの、時折青空も覗いて、春めいた気温だったこともあり気持ち良く過ごせました😊
これは入り口の門。
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元は三井財閥の岩崎家の別邸だったこともあり、とても風情がありますね。
庭園内の花は水仙、福寿草等が咲いていました。
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福寿草は1ヶ所に群生してました。水仙も撮ったのですが、ピントが甘かったのとメインの梅の花を多く🆙したいので省略😅
園内はどちらかというと花の咲く樹より常緑樹の方が多いかな。松をはじめとしてお茶の木や青木が所々に配置されてました。松は数本雪吊りがしてありまして、もう少し後ならもっと花を付けている樹や草が多いんだろうなとは思いますが、それだと雪吊りは見れなかった筈なので、花が少ない今の時期でもアリなのかも?
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あと万両。可愛い赤い実をつけている姿が素敵なんですよ😊💕私の好きな植物のひとつなんで、ちょっとテンション上がりました。
そして今回のメインの梅の花。梅園みたいになっているのかと思ってましたが、数本あるのみ。でも紅梅、白梅だけでなく源平もありまして喜んで撮影しちゃいました。
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この後、思いっきり曇るわ、降りはしなかったもののぽつりぽつりと雨粒が頬に当たるわ😰
解散して家に帰りつくまで天気が保ってくれて良かったです!!
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kachoushi · 1 year
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各地句会報
花鳥誌 令和5年5月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和5年2月2日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
厨女も慣れたる手付き雪掻す 由季子 闇夜中裏声しきり猫の恋 喜代子 節分や内なる鬼にひそむ角 さとみ 如月の雨に煙りし寺の塔 都 風花やこの晴天の何処より 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月4日 零の会 坊城俊樹選 特選句
暗闇坂のチャペルの春は明日あたり きみよ 長すぎるエスカレーター早春へ 久 立春の市の算盤振つてみる 要 冬帝と暗闇坂にすれ違ふ きみよ 伊達者のくさめ名残りや南部坂 眞理子 慶應の先生眠る山笑ふ いづみ 豆源の窓より立春の煙 和子 供華白く女優へ二月礼者かな 小鳥 古雛の見てゐる骨董市の空 順子 古雛のあの子の部屋へ貰はれし 久
岡田順子選 特選句
暗闇坂のチャペルの春は明日あたり きみよ 冬帝と暗闇坂にすれ違ふ 同 大銀杏八百回の立春へ 俊樹 豆源の春の売子が忽と消え 同 コート脱ぐ八咫鏡に参る美女 きみよ おはん来よ暗闇坂の春を舞ひ 俊樹 雲逝くや芽ばり柳を繰りながら 光子 立春の蓬髪となる大銀杏 俊樹 立春の皺の手に売るくわりんたう 同 公孫樹寒まだ去らずとのたまへり 軽象
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月4日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
敬􄼲な信徒にあらず寒椿 美穂 梅ふふむ野面積む端に摩天楼 睦子 黄泉比良坂毬唄とほく谺して 同 下萌や大志ふくらむ黒鞄 朝子 觔斗雲睦月の空に呼ばれたる 美穂 鼻歌に二つ目を割り寒卵 かおり 三􄼹路のマネキン春を手招きて 同 黄金の国ジパングの寒卵 愛 潮流の狂ひや鯨吼ゆる夜は 睦子 お多福の上目づかひや春の空 成子 心底の鬼知りつつの追儺かな 勝利
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月6日・7日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
潮騒を春呼ぶ音と聞いてをり かづを 水仙の香り背負うて海女帰る 同 海荒るるとも水仙の香の高し 同 坪庭の十尺灯篭日脚伸ぶ 清女 春光の中神島も丹の橋も 同 待春の心深雪に埋もりて 和子 扁額の文字読めずして春の宿 同 砂浜に貝を拾ふや雪のひま 千加江 村の春小舟ふはりと揺れてをり 同 白息に朝の公園横切れり 匠 風花や何を告げんと頰に触る 笑子 枝川やさざ波に陽の冴返る 啓子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月8日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
雪を踏む音を友とし道一人 あけみ 蠟梅の咲き鈍色の雲去りぬ みえこ 除雪車を見守る警備真夜の笛 同 雪掻きの我にエールや鳥の声 紀子 握り飯ぱりりと海苔の香を立て 裕子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月10日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
東風に振る竿は灯台より高く 美智子 月冴ゆる其処此処軋む母の家 都 幽やかな烏鷺の石音冴ゆる夜 宇太郎 老いの手に音立て笑ふ浅蜊かな 悦子 鎧着る母のコートを着る度に 佐代子 老いし身や明日なき如く雪を掻く すみ子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月11日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
朝光や寺苑に生るる蕗の薹 幸風 大屋根の雪解雫のリズム良き 秋尚 春菊の箱で積まれて旬となる 恭子 今朝晴れて丹沢颪の雪解風 亜栄子 眩しさを散らし公魚宙を舞ふ 幸子 流れゆくおもひで重く雪解川 ゆう子 年尾句碑句帳に挟む雪解音 三無 クロッカス影を短く咲き揃ふ 秋尚 あちらにも野焼く漢の影法師 白陶 公魚や釣り糸細く夜蒼し ゆう子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月13日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
犬ふぐり大地に笑みをこぼしけり 三無 春浅しワンマン列車軋む音 のりこ 蝋梅の香りに溺れ車椅子 三無 寒の海夕赤々漁終る ことこ 陽が風を連れ耀ける春の宮 貴薫 青空へ枝混み合へる濃紅梅 秋尚 土塊に春日からめて庭手入 三無 夕東風や友の消息届きけり 迪子 ひと雨のひと粒ごとに余寒あり 貴薫
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月13日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
浅春の眠りのうつつ出湯泊り 時江 老いたれば屈託もあり毛糸編む 昭子 落としたる画鋲を探す寒灯下 ミチ子 春の雪相聞歌碑の黙続く 時江 顔剃りて少し別嬪初詣 さよ子 日脚伸ぶ下校チャイムののんびりと みす枝 雪解急竹はね返る音響く 同 寒さにも噂にも耐へこれ衆生 さよ子 蕗の薹刻めば厨野の香り みす枝
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月14日 萩花鳥会
水甕の薄氷やぶり野草の芽 祐子 わが身共老いたる鬼をなほ追儺 健雄 嗚呼自由冬晴れ青く空広く 俊文 春の園散り散り走る孫四人 ゆかり 集まりて薄氷つつき子ら遊ぶ 恒雄 山々の眠り起こせし野焼きかな 明子 鬼やらひじやんけんで勝つ福の面 美惠子
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令和5年2月15日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
吹雪く日の杣道隠す道標 世詩明 恋猫の闇もろともに戦かな 千加江 鷺一羽曲線残し飛び立てり 同 はたと止む今日の吹雪の潔し 昭子 アルバムに中子師の笑み冬の蝶 淳子 寒鯉の橋下にゆらり緋を流す 笑子 雪景色途切れて暗し三国線 和子 はよしねまがつこにおくれる冬の朝 隆司 耳目塗り潰せし如く冬籠 雪 卍字ケ辻に迷ひはせぬか雪女 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月16日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
指先に一つ剥ぎたる蜜柑の香 雪 大寒に入りたる水を諾ひぬ 同 金色の南無観世音大冬木 同 産土に響くかしは手春寒し かづを 春の雷森羅万象𠮟咤して 同 玻璃越しに九頭竜よりの隙間風 同 気まぐれな風花降つてすぐ止みて やす香 寒紅や見目安らかに不帰の人 嘉和 波音が好きで飛沫好き崖水仙 みす枝 音待てるポストに寒の戻りかな 清女 女正月昔藪入り嫁の里 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月17日 さきたま花鳥会 坊城俊樹選 特選句
奥つ城に冬の遺書めく斑雪 月惑 顔隠す一夜限りの雪女郎 八草 民衆の叫びに似たる辛夷の芽 ふじほ 猫の恋昼は静かに睨み合ひ みのり 薄氷に餓鬼大将の指の穴 月惑 無人駅青女の俘虜とされしまま 良江 怒号上げ村に討ち入る雪解川 とし江 凍土を突く走り根の筋張りて 紀花 焼藷屋鎮守の森の定位置に 八草 爺の膝捨てて疾駆の恋の猫 良江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月19日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
古玻璃の奥に設ふ古雛 久 笏も扇も失せし雛の澄まし顔 眞理子 日矢さして金縷梅の縒りほどけさう 芙佐子 梅東風やあやつり人形眠る箱 千種 春風に槻は空へ細くほそく ます江 山茱萸の花透く雲の疾さかな 要 貝殻の雛の片目閉ぢてをり 久 古雛髪のほつれも雅なる 三無 ぽつねんと裸電球雛調度 要
栗林圭魚選 特選句
紅梅の枝垂れ白髪乱さるる 炳子 梅園の幹玄々と下萌ゆる 要 濃紅梅妖しきばかりかの子の忌 眞理子 貝殻の雛の片目閉ぢてをり 久 古雛髪のほつれも雅なる 三無 老梅忌枝ぶり確と臥龍梅 眞理子 山茱萸の空の広さにほどけゆく 月惑 八橋に水恋うてをり猫柳 芙佐子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月21日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
師を背負ひ走りし人も雪籠 雪 裏庭開く枝折戸冬桜 同 天帝の性こもごもの二月かな 同 適当に返事してゐる日向ぼこ 一涓 継体の慈愛の御ん目雪の果 同 風花のはげしく風に遊ぶ日よ 洋子 薄氷を踏めば大空割れにけり みす枝 春一番古色の帽子飛ばしけり 昭上嶋子 鉤穴の古墳の型の凍てゆるむ 世詩明 人の来て障子の内に隠しけり 同 春炬燵素足の人に触れざりし 同 女正月集ふ妻らを嫁と呼ぶ 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月26日 月例会 坊城俊樹選 特選句
能舞台昏きに満ちて花を待つ 光子 バス停にシスターとゐてあたたかし 要 空に雲なくて白梅すきとほる 和子 忘れられさうな径の梅紅し 順子 靖国の残る寒さを踏む長靴 和子 孕み猫ゆつくり進む憲兵碑 幸風 石鹸玉ゆく靖国の青き空 緋路 蒼天へ春のぼりゆく大鳥居 はるか
岡田順子選 特選句
能舞台昏きに満ちて春を待つ 光子 直立の衛士へ梅が香及びけり 同 さへづりや鉄のひかりの十字架へ 同 春の日を溜め人を待つベンチかな 秋尚 春風や鳥居の中の鳥居へと 月惑 料峭や薄刃も入らぬ城の門 昌文 梅香る昼三日月のあえかなり 眞理子 春陽とは街の色して乙女らへ 俊樹
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月 九州花鳥会 坊城俊樹選 特選句
ポケットの余寒に指を揉んでをり 勝利 黒真珠肌にふれたる余寒かな 美穂 角のなき石にかくれて猫の恋 朝子 恋仲を知らん顔して猫柳 勝利 杖の手に地球の鼓動下萌ゆる 朝子 シャラシャラとタンバリン佐保姫の衣ずれ ひとみ 蛇穴を出て今生の闇を知る 喜和 鷗外のラテン語冴ゆる自伝かな 睦古賀子 砲二門転がる砦凍返る 勝利 小突かれて鳥と屋や に採りし日寒卵 志津子 春一番歳時記の序を捲らしむ 愛
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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33macdougalalley · 2 years
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2023-2-12
鼻水が落ち着いた。今日も暖かいからとにかく歩きたかった。府中本町〜府中の森公園〜国分寺崖線近辺。野川沿いの道から崖のような坂道を一気に駆け上がると、息が切れ、午後の涼しい時間でも汗がぶわっと出た。資料探しのため西国分寺の多摩図書館にも足をのばしたかったが、途中に寄った画廊で少し話し込んでしまい、結局国分寺から電車に乗って帰ることにした。
府中市美術館で諏訪敦の展覧会を観た。中規模の美術館とはいえ、いまどき、企画展で一般700円というのも珍しくなった。静物画に挿入された塵のような光は、諏訪の病気によって映り込んでしまうものがモチーフだという(副題は「眼窩裏の火事」)。これについては、描き方としては単にペインティングナイフをさっと擦り付けた、絵の具を置いただけものが多いように見えた。倦むことなくモチーフを観察・描写してきたという画家の方法にしては少々ぞっとする「抜き」だけれど、これが彼の割り切り方だとしたら。
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nozawa-seminar · 2 years
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野澤ゼミの休日 in にこたま ②
皆さんこんにちは!
今回は、年末に3期生の有志で行った
『街歩き in にこたま』のレポートの後半編をお届けします!
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※前半編まだご覧になっていない方はこちら
都会でありながら、国分寺崖線や多摩川といった自然あふれるエリアの二子玉川。
今回は、屋上緑化や生物多様性への取り組みについて2人のメンバーが執筆してくれました!
5. 周辺の自然環境との一体感 と 心豊かな街づくり (なめこ)
6. 玉川高島屋の緑化・デザインについて (OT)
それではぜひ最後までご覧ください!!!
5. 周辺の自然環境との一体感 と 心豊かな街づくり (なめこ)
ここからは、ブログ初参加の なめこ が書かせていただきます!
読みづらい点が多々あると思いますが、どうかご容赦ください。
まず、二子玉川の自然環境や生物多様性について語るには、
二子玉川まちづくりのベースである
「国分寺崖線と多摩川をつなぐ」
という考え方は欠かせません!
そこで、二子玉川ライズは、環境に配慮した取り組みも多く行っています。
それを象徴する一つが、「ルーフガーデン」
眺めの良い広場やデッキだけでなく、めだかの池や菜園広場もあるんです!
ただ緑があるだけではなく、多摩川の生態系を学んだり、食育にも貢献できたり、盛りだくさんな楽しみ方をもつ屋上です。
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これによって、
“周辺の学生が生態系や自然への関心を持つきっかけづくり”
にもつながっているのではないでしょうか?
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また、このルーフガーデンが、国分寺崖線と多摩川の中間地点として
国分寺崖線の「みどり」
    ↓
二子玉川ライズの「ルーフガーデン」
    ↓
多摩川の「みず」
となることで、周辺の自然との連続性が維持され、一体感が生まれています。
以上のことから、二子玉川ライズの取り組みは、
「自然と人が繋がる場」と「自然同士が繋がる場」
の二つの役割を果たしているのではないか、と思いました!
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広場を抜けてまっすぐ歩いていくと、二子玉川公園に到着します。
まず感じるのは、圧倒的な見晴らしのよさ!
ここが東京であることを忘れてしまう程の空の広さです!
そんな二子玉川公園は「みどりとみずをつなぐネットワーク実現」のため、元々あった道路の一部をトンネル化し、その上部を公園にすることで“多摩川河川敷との一体性” を確保しています。
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そして、その影響で生まれた
“高低差を活かしたゾーニング”がされているのが特徴です。
憩い・くつろぎがテーマの「静のゾーン」には、
落ち着いた雰囲気の空間にベンチが多数設けられています。
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また、日本庭園や旧清水邸書院もあり、歴史を感じられます。
一方で、にぎわいがテーマの「動のゾーン」には、
開放的な広場や遊具が沢山あります。
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さらに、公園内にはスタバもあるんです!
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お気に入りの飲み物を片手に、多摩川の夕焼けを眺めることもできます。
まさに、都会の喧騒を忘れるにはもってこいの場所ですね。
どの世代の人でも、多様な楽しみ方ができる二子玉川公園。
みなさまも、ぜひ一度訪れてみてください^^
6. 玉川高島屋の緑化・デザインについて (OT)
ここからは、私、OTが玉川高島屋についてレポートします!
玉川高島屋については、前半編のブログでハナマルくんもレポートしているので、まだご覧でない方はぜひ見てください。
・本館ファザード
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駅からほど近くの二子玉川交差点に立つと、高島屋の本館を覆う、白くて有機的な構造物が目に飛び込んできます。
「なんかもにょもにょしててお洒落」としか私には表現しようがなく、駅をでた瞬間から圧倒されてしまいます。
これは、2010年の本館ファザード改修でできたもの。
手がけたのは隈研吾さん。
(ファサードとは、建物を正面から見たときの外観のこと。)
調べてみると、
「玉川髙島屋の中層棟に、歩行者用のアーケードを増築し、都市と建築(ハコ)をやわらかく接合しようと試みた。(中略)アーケードの下部にはプラントボックスを設け、やがて「緑の洞窟」となって、心地良い立体的遊歩道となるであろう。」 (隈研吾建築都市設計事務所HPより)
玉川高島屋S・C本館ファサード改修 | 隈研吾建築都市設計事務所 (kkaa.co.jp)
有機的なデザインには、直線的な建築物と緑を接合するという意味が込められているのでしょうか。
単なるオシャレさではなく、アーケードという機能があり、都市と建築の接合や緑化という意味とデザインがリンクしているのが素敵です。
さて、このファザードからは上のフロアに上がることができます。
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中から見ても日に照らされた板がなんかお洒落です。
・ローズガーデン
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上には居心地のいい空間が広がっています。
ここはローズガーデンという名前で、たくさんのバラが植えられていて、ヨーロッパっぽい雰囲気ですね!
壁面も緑化されていて木目調と相まっていい感じです。
天気のいい日には公園みたいな感じで読書しながら滞在できます。
訪れたときには、平日ということもあってかあまり使っている人は多くなかったようにも。
しかし、玉川高島屋の緑化はこれだけではありません。
・本館・南館にまたがる屋上庭園
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玉川高島屋 本館屋上庭園 | 子連れのおでかけ・子どもの遊び場探しならコモリブ (comolib.com)
屋上には入園料を払わなくていいの?と思ってしまうような庭園が広がっています。
それもそのはず、玉川高島屋は1969年の開業当初から屋上緑化を行っているそう。
現在の本館の庭園は、2003年に本館と南館の屋上の連絡が可能になる際にリニューアルされたんだとか。
かなり凝った空間です。エリアごとに分かれていて、滝が流れていたり、丘のような高低差があったり!子どもも大人も楽しめる空間です。
詳しくは玉川高島屋のHPがあるので興味のある方はぜひご覧ください!
フォレストガーデン - 玉川高島屋S・C (takashimaya.co.jp)
連絡橋を渡って南館に入ってもきれいな庭園が続いています。
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こちらはPARK&TERRACE OSOTOという名前で、2019年と最近リニューアルされました。
飲食店のテラスと一体となったような作りで、ブランコのようなベンチがあったり。
ちょっと遊園地みたいなビアガーデンみたいな、新しいけれど昔ながらの百貨店を彷彿とさせるように私は感じました。
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最後の晩餐が出来そうなテーブルも置いてありました。
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8階には見晴らしのいい空間が広がっています。富士山も見えました!
ここでは天体観測などのアクティビティが行われることもあるそうです。
 ・マロニエコート
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そして本館のはす向かいにも、高島屋の一部であるマロニエコートがあります。こちらも隈研吾さんによるもので、「緑の庇」により建物のバルコニーが囲われています。
隈研吾さん曰く、
「普通、建築物は、一番目につくところには、石やレンガを貼ります。しかし、建物の主役を緑にしたことで、その緑の印象が建築全体のイメージを決めることになります。建物の主役を緑にすることで、建物全体の印象を柔らかくしたい。そうやって自然豊かな玉川の街に自ずと馴染む建物にしたかったのです。」
玉川高島屋S・Cでつながる人と建物、街への思い | 玉川高島屋S・C (tamagawa-takashimayasc-sdgs.com)
たしかに、道路の街路樹の延長に緑が続いている感じですよね!
本館のファザード、庭園、そして西館(駐車場と店舗が入っている建物です)も含めた玉川高島屋全体を通して一貫しているコンセプトなのではないかと感じました。
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↑西館も緑化されてます
ということで、玉川高島屋全体を見てきたわけですが…とにかく盛りだくさんです。私の要約力不足もあるのですが、
S・Cという言葉では片づけられないスケールの大きさ。
それでありながら、植物・白・ガラスを用いて都心にある百貨店がもつ重厚感とは対照的な軽やかさを全体から感じる、とんでもなく完成された一連の建物群であると感じました(偉そうにすみません)。
そしていろいろな意味で余裕を感じさせる贅沢・ゆとりのある空間設計です。
さて、先ほどからたびたび引用している隈研吾さんのインタビューからのこの一節を。
「玉川SCは、いつも街全体のことを考えているのです。この街で人間がどう歩くか、どのように生活するのか。常に、総合的な視点を持って考えているなと感じました。その思いは、開発に携わった担当の方々とのやり取りからもすごく伝わってきました。」
玉川高島屋S・Cでつながる人と建物、街への思い | 玉川高島屋S・C (tamagawa-takashimayasc-sdgs.com)
私も高島屋全体を見ていて、回遊性の高さに驚きました。
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本館のファザードからはローズガーデンへ、南館の階段からは7階の屋上庭園へと、建物の中を通らずにたどり着くことができますし、本館と南館は2フロアごとにデッキが設けられている充実ぶり。
そして二子玉川駅方面からも、地上デッキと地下通路でしっかりとつながれています。
高島屋の建物に入らなくても、屋外にたくさんのベンチ・テーブルがあって、そこで憩うことができるつくりになっていて、形骸的ではなく開かれた空間になっていると思います。
治安などの問題が発生しないのか気になってしまうくらいです。しかも庭園にはゴミ箱も充実していて、デザインまで凝っていてすごい。これらが可能なのは二子玉川の土地柄ゆえなのか…
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少し話がそれましたが、実は玉川高島屋は「日本初の本格的な郊外型ショッピングセンター」だそう。
このことが、街全体を考えたショッピングセンターづくりや緑化に対する先進的な取り組みに関連しているのかもしれません。
そして、二子玉川ライズなどの後続の開発をみても、
玉川高島屋の開発こそが、二子玉川の街の在り方そのものを基礎づけた
といっても過言ではない、と感じます。
同時に、そのような開発を可能にしたものは何なのかについても考えさせられます。
百貨店だから当然ということもできますが、贅沢な空間の使い方ですよね。
「入園料を払わなくていいの?」と途中で書きましたが、庭園であればメンテナンスにも相応のコストがかかるはずですし、解放感のある空間づくりをするにも、そこをテナントにした方が儲かる、と考えることもできそうです。
第一にはブランディングの一環であるという風に言えると思います。でもそれだけなのでしょうか…別の要因があるのなら知りたいです。
最後に二子玉川街全体の緑について。
「緑というのは、生き物です。周辺に住んでいる方々、ここに遊びに来る方も、ある意味同じ‟生き物“です。生き物同士が色々と会話をしたり、友達になったりしているという感じがします。人間だけで住んでいる街と、人間と緑が一緒に住んでいる街は、豊かさの質が違うと思います。」
またまた引用。
私は一日FWをして、美しく整えられた植栽や広々とした空間の中にいる居心地の良さを満喫しました。
同時に、
二子玉川の魅力は、自然が豊かでありながら同時に都会的だということにあると思いました。
都会的という言葉を使ったのは、二子玉川の緑が洗練されていると同時に、それを可能にするものとして都心近郊の潤沢な需要が大前提となっていると思ったからです。
例えばただでさえ百貨店の存続が厳しい地方部に同じものを作るのは難しいのではないでしょうか。
ところで、マロニエコートのテナントにこんな掲示が。 
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↑「豊かな生活を送るのに大金は必要ありません」
「豊かさ」って難しいですね…
これから災害の激甚化などが見込まれる中、洪水リスクも抱える二子玉川。単に堤防で洪水を防ぐのではなく、河川流域周辺の保水力に注目する必要もでてきています。
自然を単に私たちを豊かにしてくれるものとしてではなく、脅威も含めたものとして捉え、それも含めて共存していく街になったらもっと面白い、と勝手に妄想してしまいました。
7.おわりに
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いかがだったでしょうか。
5人それぞれ、全く異なる視点からブログを執筆できるほど、二子玉川というエリアは街歩きスポットとして抜群の環境でした。
事前学習として、二子玉川エリアのまちづくり関係の資料集めをする中で、様々なデベロッパーや住民、行政の想いが詰まったまちづくりの姿を知ることができ、そして実際に歩ている中でもまた新たな発見があることを実感し、とても刺激的な経験になりました。
ふらっと思いのままに街を歩くことももちろん、
事前に設計者や様々な人の想いをインプットしてから二子玉川という街を歩いてみるのもぜひおすすめしたいと思います!
このように野澤ゼミには、まちづくりや都市政策を軸として様々な分野に関心を持つメンバーがたくさんいます!
そして、Instagramでもゼミ活動や、休日に行うまち歩きなどについて発信しています!
ぜひ、Instagramや他のブログ記事も覗いてみてください!
それではまたの機会にお会いしましょう!さようなら~
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siteymnk · 2 years
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2022年の文化活動(一覧)
昨年もあちこち行きました!全部で104か所。正直、あまり覚えていないモノもありますが、深層心理には刻まれていると信じて。 最も印象的だったのは、やはりフェルメールかしら。頑張って高層バスや新幹線で遠出したのも記���に新しい(ベルナール・ビュッフェ美術館、DIC川村記念美術館)。仙崖のヘタウマ日本画は新たな発見であった。メディア芸術祭が終了してしまったのは残念。
クリスチャン・マーク トランズレーティング [翻訳する]@東京都現代美術館
Viva Video! 久保田成子展@東京都現代美術館
ユージーン・スタジオ 新しい海@東京都現代美術館
Journals 日々、記す vol.2@東京都現代美術館
MONDO 映画ポスターアートの最前線@国立映画アーカイブ
多層世界歩き方@NTTインターコミュニケーションセンター
オープンスペース2021 ニュー・フラットランド@NTTインターコミュニケーションセンター
奥村土牛 - 山崎種二が愛した日本画の巨匠 第2弾@山種美術館
ウェアラブルEXPO
視覚トリップ展@ワタリウム美術館
絵画のゆくえ2022@SOMPO美術館
2022 都民芸術フェスティバル@東京文化会館
アジアの聖地 - 井津健郎 プラチナ・プリント写真展 - @半蔵門ミュージアム
第14回 恵比寿映像祭@東京都写真美術館
ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展@東京都美術館
岡本太郎現代芸術賞展@川崎市岡本太郎美術館
木村伊兵衛と画家たちの見たパリ色とりどり展@目黒区美術館
FACE展2022@SOMPO美術館
接近、動き出すイメージ@トーキョー・アーツアンドスペース本郷
オルタナティブ! 小池一子展 アートとデザインのやわらかな運動展@アーツ千代田3331
メトロポリタン美術館展@国立新美術館
VOCA展 2022@上野の森美術館
tagboat Art Fair 2022@東京ポートシティ竹芝
ミロ展@Bunkamura ザ・ミュージアム
どうぶつかいぎ展@PLAY! MUSEUM
きみとロボット@日本科学未来館
浜口陽三、ブルーノ・マトン展@ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション
生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展@東京都現代美術館
吉阪隆正展 ひげから地球へ、パノラみる@東京都現代美術館
Tokyo Contemporary Art Award 2020-2022 受賞記念展@東京都現代美術館
Chim↑Pom展:ハッピースプリング@森美術館
2121年 Futures In-Sight展@21_21 DESIGN SIGHT
SF・冒険・レトロフューチャー×リメイク~挿絵画家 椛島勝一と小松崎茂の世界~@昭和館
鉄道と駅展@ガスミュージアム
日本の映画館@国立映画アーカイブ
シダネルとマルタン展@SOMPO美術館
カリブラテンアメリカストリート2022@錦糸公園
デザインフェスタ vol.55@東京ビッグサイト
スコットランド国立美術館 美の巨匠たち@東京都美術館
技研公開2022@NHK放送技術研究所
特別展 宝石 地球が生みだすキセキ@国立科学博物館
ボテロ展@Bunkamura ザ・ミュージアム
ポーランドフェスティバル2202@渋谷ストリームホール
明治神宮御苑の花菖蒲
ゲルハルト・リヒター展@国立近代美術館
音楽の日 2023@アンスティチュ・フランセ 東京
2022 イタリア ボローニャ・国際絵本原画展@板橋区立美術館
自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで@国立西洋美術館
キース・ヴァン・ドンゲン展@パナソニック汐留美術館
アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真@東京都写真美術館
TOPコレクション メメント・モリと写真@東京都写真美術館
瞬間の記憶~創刊150周年~スポーツ報知 報道写真展@東京都写真美術館
ライアン・ガーダー われらの時代のサイン@東京オペラシティアートギャラリー
森鴎外記念館
ベルナール・ビュッフェ美術館
ヴァンジ彫刻庭園美術館
フカシル「旅する美術史」
浮世絵動物園@太田記念美術館
Indeoendent Tokyo 2022@東京ポールシティ竹芝
国立科学博物館附属 自然教育園
ルードヴィヒ美術館展@国立新美術館
日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱@東京藝術大学大学美術館
野口哲哉展 -armored space-@座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM
スイス プチ・パレ美術館展@SOMPO美術館
Perfume 9th Tour 2022@有明アリーナ
PROGRESSIVE LIVE 2022~エイジア イン エイジア イン 吉祥寺
仙崖のすべて@出光美術館
大倉山記念館オープンデイ
第52回 文化庁メディア芸術祭 受賞作品展@日本科学未来館
見るは触れる@東京都写真美術館
イメージ・メイキングを分解する@東京都写真美術館
ジャン・プルーヴェ展@東京都現代美術館
MOTアニュアル2022 私の正しさは誰かの悲しみあるいは憎しみ@東京都現代美術館
地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング@森美術館
学年誌100年と玉井力三@日比谷図書文化館
東京ビエンナーレ2023はじまり展@寛永寺
東京ビエンナーレ2023はじまり展@東京ドームシティ
鈴木大拙展 Life=Zen=Art@ワタリウム美術館
江東区まつり中央まつり@木場公園
DIC川村記念美術館
コミテコルベールアワード 2022 -The beauty of imperfection- 展@東京藝術大学大学美術館
WOW 25th Anniversary Exhibition「Unlearning the Visuals」 @寺田倉庫
アートウィーク東京2022
・HIROSHI SUGIMOTO OPERA HOUSE@ギャラリー小柳
・クリスチャン・ヒダカ&タケル・ムラタ展@銀座メゾンエルメス フォーラム
・第八次椿会 スバキカイ8 この新しい世界@資生堂ギャラリー
・吉増剛造展@タケニナガワ
・ストーリーテラー - 映像表現の現在 -@日動コンテンポラリーアート
・日に潜み、夜に現る@ペタロン東京
・Neue Fruchtige Tanzmusik@ユタカキクチギャラリー
・見附正康@オオタファインアーツ
・N@コタロウヌカガ
新木場&夢の島 わくわくおさんぽアートフェス
夢の島熱帯植物館
フジタが目黒にやって来た@目黒区美術館
つながる琳派スピリット 神坂雪佳展@パナソニック汐留美術館
大竹伸朗展@国立近代美術館
Maroon 5 World Tour 2022@東京ドーム
闇と光 - 清親・安治・柳村@太田記念美術館
初代国立演芸場さよなら公演12月定席公演(上席)@国立演芸場
生誕90年「事物の本質を見抜く眼」 バーニー・フュークスの世界@代官山ヒルサイドフォーラム
本屋の文化祭 チェコアニメ上映会@武蔵野公会堂
ピカソとその時代@国立西洋美術館
鉄道と美術の150年@東京ステーションギャラリー
今年も新たなアートとの出会いに期待。
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20221008
雑記(カチカチ車・雉の羽・漫画・フットボールなど)
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カチカチ車。またいらんもんを買ってしまった。
佐賀の郷土玩具らしいが既に廃絶してしまったという。カチカチとは杵島山(きしやま)地方でのカササギの呼び名でカチガラスともいうらしい。ハイダ族とか北米先住民の造形を思わせる。
隼人の盾の渦巻きの意匠を見た時にも思ったが色んなものがこの国に住む人々の感性の基底にはあるのだ。忘れとるだけで。
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カササギといえば岩明均の『七夕の国』という漫画が好きで(カササギがモチーフとして出てくる)昔ネットでカササギの羽を九州の人から買った。
カササギは本来日本の鳥ではなく豊臣秀吉の唐入り(朝鮮出兵)の際、佐賀藩主の鍋島直茂がカチッというカササギの鳴き声に勝ち縁起を担いで持ち帰った説と自然飛来説があるらしい。関東圏だと長野で繁殖が確認されているみたいだが私の地元にはいないみたいだ。
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そんで。
前回のカケスに続いて今度はオスの雉を拾った。一宮御坂のICの入り口んとこの道路の端で死んどったのだ。頭から血を流していたが体もまだ柔らかくて寝てるみたいだった。轢かれたばかりだったのかも。行く前に大きいビニール袋を二枚首尾よく車に入れておいたので今回も何か予感めいたものがあったような…いやねえわ。
その後色々回る用事があったのでスーパーで氷を買って冷やした。
雉固有の特徴なのか知らんが血が赤紫蘇みたいな鮮やかなピンク色をしていた。マゼンタみたいな色。羽毛の下からチラチラ見える耳の穴の感じがよくわからんが気持ち悪いというか���んか恐ろしい。ダムの吸水口に出来た水面の穴を見た感じだ。#poolcoreの亜種みたいな感覚か。
足の肉付きとか見てるとなんだかニワトリみたいで普通に食えそうな感じだった。畑に埋めたけど。
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なぜか尾羽は4枚しかなかった。
鳥の羽が抜けた後どうやって生え変わるかずっと謎だったのだが、靴ひもの先っちょの硬い筒状のカバーみたいなのに包まれて生えてくる。プラスチックみたいでちょっと作り物みたい。
それにしても今年はいろんなモンに出くわす年だ。
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話は変わって最近読んだ漫画。67歳の新人・ハン角斉短編集。
つげ義春、諸星大二郎、花輪和一、特に狂い始めた安倍慎一感があって個人的には好きだ。余談だが安倍慎一の『美代子阿佐ヶ谷気分』が”That Miyoko Asagaya Feeling”として英訳版が出ててアメリカの漫画賞(アイズナー賞)にノミネートされてたのを初めて知った。初期の安倍慎一の漫画に流れる空気の透明さみたいなものは普遍性をもつということか。
ハン角斉先生の漫画、黒ベタにホワイトの点々で星空を表現するのではなくビッチリ描いたグルグルの線で満天の星空を感じさせるのが妙に斬新だった。初見は違和感があるのだが後から立体視のような感覚になってくる。
著者本人が前書きで述べる通り画力という観点では一段、二段落ちるのかもしれないが、特筆すべきは女性の「目」の表現である。異様な迫力、色気。
陳腐すぎる表現だが目に魂がこもるとはこのことで(陳腐すぎる)慈非深い太母の眼差しであり、上位捕食者の目をうっかり覗き込んだかのような畏怖をも感じる。ピカソのマリー・テレーズの素描にも通じる女性の底知れなさ。
最終話の大ゴマの顔のアップに至っては目の前にその人がいるような錯覚を起こす。酩酊感がある。
目が合うだけで快楽物質のドーパミンが放出されるというが、そういや何年も前の『バイリンガルニュース』というpodcast番組の中で、二人で向かい合って目を凝視し合うと幻覚を見るという研究論文の記事を踏まえて出演者が試したところ、かなり早い段階で顔が歪んで見え出すと話していた。
もとい。
上から下へと流れ落ちる滝の水の向こうの崖壁に仄暗い洞窟が続いているかのように、絵の上手い下手という高低の向こうに奥行き、深さという領域がある。
「目」とは顔に開いた二つの暗い洞窟である。
自分で考えておいて何だか寺山修司の詩みたいなだなと思いながら読んだ。
人間の本質とは「目」にあるのではないか。
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昼飯に作った帆立とシメジとレタスのクリームパスタ。
五年ぐらいブログ書いてて料理を載せたのもしかしたら初めてかも。知らんがな。
普段仕事で作るから当たり前すぎるのかもしれない。
しかしパスタほど腹持ちの悪い食いものって無いと思う。私だけだろうか。
そんで先日の深夜にレアル・ソシエダの久保選手の試合を見た。1G1Aの大活躍だった。
レアル・マドリードからレンタルされたマジョルカ一年目以降、ビジャレアル(スペインの森保ことエメリ率いる)ヘタフェ(暴力団)マジョルカ2年目(降格争い)と見てるこっちも泥をすするような日々だったが臥薪嘗胆の甲斐あってかここにきてDAZNに月に2千円払うイラつきというのか舌打ち具合、その打音の烈しさが若干収まってきた。
思えばラ・リーガのデビュー前。
マドリーのプレシーズンの時の久保選手のプレーの輝きとその時感じた可能性がどんどん色褪せて行くのが見てて苦しかったわけだ。リバプールでの最後のシーズンの南野といい報われないことに金を払うことの悲しみといったら無い。
もうすぐW杯。
え?W杯か早。
それにしたって2018年のロシアW杯からたった4年で、ロシアがあんなことになるとは誰が予想しただろうか。「ロストフの悲劇」と銘されるあのベルギー戦の試合会場のロストフという地名をウクライナ東部の戦況説明の地図で見た時の困惑といったらない。
日露戦争で負けてロシア革命、アフガン侵攻に失敗してソビエト崩壊。ロシアは一体どうなるんだろうか。プーチンのがまだマシだったみたいなのはほんと勘弁して欲しい。知らんだけでカディロフみたいなのが今か今かと雌伏の時を過ごしているのだろうか。
安倍さんの国葬のニュースをちらっと見てて、安倍さんの「ウラジーミル。君と僕は同じ未来を見ている。ウラジーミル、2人の力で駆けて、駆け、駆け抜けようではありませんか。」みたいな謎ポエムを思い出す。
安倍さん最後にウラジーミルをあっちに連れてってくんねえかな、おんなじ未来見てたんなら、とぼんやり思って見ていた。
それにしてもベラルーシのルカシェンコの狸爺具合というのかプーチン相手にのらりくらりやる老獪さ。怪人だ。
gangsta(@takeren8)何某とかいう日本人義勇兵のツイッター見てて、性欲が戦場で邪魔だからタマキン摘出してあるって言っててこの世の広大さを感じた。色んな人がいる。
もといサッカー。
日本代表どうだろか。
もはや我が日本は結局のところ監督を戴くことは叶わず、引率の先生であるとこの森保さんに戦術など期待したとこでこの4年間虚無感しか無かったのだが、ここまできたら選手たちには頑張って欲しいところ。
現代サッカーにアレア(運)だけの森保式パルプンテサッカーでどこまでいけるのか?に楽しみ方を変えるしかない。
自分が変わるしかないのだ。
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jinno0116 · 5 years
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亀さんの坂にお邪魔。仙川から成城までの国分寺崖線は、坂が徐々にキツくなるクレッシェンド・モード全開。未知の坂って楽し過ぎる! #久々に全力で坂ダッシュ #周囲の桜を愛でる余裕なし #イリオモテヤマネコ生息地域 #坂を走る姿は美しい #ランニング #SKDSH #国分寺崖線 https://www.instagram.com/p/B-LKxQZhbNP/?igshid=tbk41z2agdu6
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unibas · 7 years
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駅からの帰り道。なんだかいい空だったので、二人で遠回りして帰りました。しばらくぼんやり眺めた西の山々。ここは地球。わたしたち地球人。 #富士山は遠くからでも富士山 #国分寺崖線立ってます
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oniwastagram · 2 years
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📸実篤公園(旧武者小路実篤邸)/ Saneatsu Park (Mushanokoji Saneatsu Museum), Chofu, Tokyo 東京・調布市の『実篤公園 / 旧武者小路実篤邸』が素敵…! 近代〜昭和に活躍した文豪 #武者小路実篤 が晩年を過ごした自邸敷地に開かれた公園、作庭は昭和の東京を代表する造園家のひとり #中島健 。国登録有形文化財の戦後の新興数寄屋建築“実篤邸”も素敵!🏡 『調布市武者小路実篤記念館』を併設。 東京・実篤公園(旧武者小路実篤邸)の紹介は☟ https://oniwa.garden/mushanokoji-saneatsu-chofu/ ...... 東京在住だった頃に自転車ですぐ付近を通りかかっていたものの立ち寄ったことがなかった実篤公園…2022年5月に初めて訪れました! . 学生時代に志賀直哉・木下利玄と交友を深め、25歳の時に志賀・有島武郎・有島生馬・柳宗悦らと共に『白樺』📖を創刊。 以来60年以上、“白樺派”の中心的な小説家🖋として作品を発表するだけでなく、“新しき村”の創設や美術・アート方面での活躍など幅広い創作活動で名を残した武者小路実篤。 . この実篤公園は氏が晩年の1955年〜1976年(昭和30〜51年)の約20年間を過ごした自宅の敷地・建築が没後に調布市に寄贈され、公園として開かれたもの。 公園としての開園時の設計を昭和の東京を代表する造園家のひとり・中島健が手掛けています。 . 武蔵野台地を形作る“国分寺崖線”の自然の斜面や湧水池を含む約5,000平方メートルの敷地内に自邸を構えた武者小路実篤。これは《水のあるところに住みたい》という実篤の子供の頃からの願いを実現させたもので、現在も園内には“上の池”“下の池”と2つの池泉があります。 続く。 ーーーーーーーー #japanesearchitecture #japanarchitecture #japanarchitect #japanesegarden #japanesegardens #tokyogarden #zengarden #beautifultokyo #beautifuljapan #japandesign #jardinjaponais #japanischergarten #landscapedesign #建築デザイン #庭園 #日本庭園 #東京庭園 #庭院 #庭园 #近代和風建築 #近代数寄屋建築 #数寄屋建築 #数寄屋 #sukiya #ランドスケープ #新興数寄屋建築 #文化財 #おにわさん (武者小路実篤記念館) https://www.instagram.com/p/CgdYjnZv9mu/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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kachoushi · 2 years
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各地句会報
花鳥誌 令和5年3月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和4年12月1日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
亡き母の言葉身に入む夕明り 喜代子 美人画を日毎見つめた古暦 都 湯豆腐や仕切向うの京言葉 同 榾の宿見知らぬ人と語らひし 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年12月3日 零の会 坊城俊樹選 特選句
愛妻は冬天に有り見得を切る 慶月 着ぶくれの肩に銀座ののしかかる 炳子 楽屋口より銀鼠のインバネス 要 懐手役者戻りし噂など 順子 木挽町の電線緩く短かき日 三郎 市松の歌舞伎のれんを出で嚏 慶月 団十郎の顔があちこち十二月 和子 薔薇の紙袋の中の聖樹かな 同 ベントレーの真つ赤に負けてゐる聖樹 三郎
岡田順子選 特選句
寒椿真紅へと歌舞伎めく 三郎 昭和めくショール纏ひて三越へ 俊樹 着ぶくれの肩に銀座ののしかかる 炳子 楽屋口より銀鼠のインバネス 要 半世紀前の残像獅子の冬 炳子 緞帳の街を冬日の揺りおこす 三郎 楽屋口興行なくば石蕗明り 光子 聖夜待つ靴職人の鉄の音 はるか 木挽町の電線緩く短かき日 三郎
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年12月3日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
水鳥の水曳きどこも濡れてゐず 睦子 LEDのひんやり灯る夜業かな 同 あさきゆめみし水鳥に忽と日暮 美穂 裸婦像の目に郷国の冬の虹 かおり 水鳥の陸に上がれば幼なけれ 睦子 水鳥の言問ふやうに漂へり 朝子 日向ぼこ石となりたき日のありぬ 美穂 昇降機空まで行ける聖夜かな 愛 出逢ひとは別れの序章おでん酒 朝子 よきことの一つ蜜入り冬りんご 美穂 忘れたきことも掃き寄せ落葉焚く 孝子 女医の手の結婚指輪冬ぬくし 久美子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年12月5日 花鳥さゞれ会 坊城俊樹選 特選句
じよんがらもよされも遠き虫の出湯 雪 枯るるもの枯るるにまかせゐる他は 同 裸木に巣箱が一つ傾ける 同 散りてなほ緋を極めたり櫨紅葉 笑 冬の蝶小さき花に身を委ね 同 綿虫の恋の信号飛び交はし 同 目に見えぬものが背押す街師走 かづを 新刊書表に並べ書肆師走 匠 長者町大名町も落葉降る 和子 正信偈声高々と十二月 清女 うつかりと仲直りするおでん酒 啓子 沈下橋今日も見えずに歳用意 天空
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年12月9日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
餌台に人を覗きて冬の禽 宇太郎 姉の忌の近し綿虫横を飛ぶ 和子 冬めくといふ風音の離れぬ日 同 かき混ぜて消ゆる泡みる夜の葛湯 栄子 菊に埋む引導なしの葬一つ 宇太郎 花石蕗や蜑の通ひ路九十九折 益恵 院殿の墓碑を囲みて霜柱 美智子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年12月9日 立待花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
大根を洗ひ干したる深庇 世詩明 白山の雪の白さを見え深め 同 筆太に妻の消息年賀状 同 戻られし神をねぎらふ注連飾 ただし 大いなる榊まつりし神迎 同 山眠る話時々ちぐはぐに 清女 幸不幸仏に委ね報恩講 同 初時雨韋駄天走りあちこちに 輝一 切り分けの聖菓較べる子供かな 誠 老い一人煙草を口に日向ぼこ 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年12月10日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
大年のバックダンサー出番待つ 登美子 大銀杏黄葉や夜道光りたる 紀子 白山を見て暮らす日々障子貼る 登美子 母と���と灯ひとつの根深汁 同 遥かにも雪の白山見ゆる橋 令子 年末や薪湯沸かして近所呼び みえこ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年12月10日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
言葉直ぐ固まつてゆく冬夜かな 秋尚 年惜しむ陽子の墓所に供華新た 幸風 一筋の日差しを纏ひ浮寝鳥 幸子 茶の花を飾る店主のハンバーグ 亜栄子 冬の夜機織るやうなものがたり ゆう子 多摩川の皺む波間に浮寝鳥 美枝子 それぞれは好みの椅子に冬の夜 ゆう子 折節に冬帝なごむ母の塔 幸風
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年12月12日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
蕪一個抜き来一人の夕厨 一枝 著ぶくれを拾ひ電車の満員に みす枝 越前の奥へ奥へと時雨降る 世詩明 時雨るるや村暗くなり小さくなる みす枝 生と死を考へながら柚子湯かな 信子 オブラート破れて苦き十二月 清女 煤払ひ古き薬を捨てにけり ただし 太平の色したたらす熟柿かな 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年12月12日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
お化粧の仕上げにマスクかけにけり 三無 湯ざめして婆ちやんいつも卵酒 和魚 「どうしました」マスクの医者の声やさし あき子 受け継ぎし神楽の面の儼乎たる 史空 御神酒吹き魂入れらるる神楽面 三無 神楽の音菜つ葉切る手はづませる ことこ マスクしても寡黙の人になり切れず 秋尚 鉦の音の早まる宵の里神楽 同 神楽面舞へば表情豊かなり 史空 母の手が湯ざめするよと襟押へ ことこ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年12月13日 萩花鳥句会
月の夜は銀の毬藻に浮寝鳥 祐子 七五三おんなの一生歩み出す 健雄 極月の破れ手帳の重さかな 俊文 故郷の煉物届きおでん鍋 ゆかり 思ひ出の中の障子を開ける朝 陽子 一人去り彼の人も去り山眠る 吉之 張り替へて色あせ目立つ障子骨 恒雄 影絵如障子に木々の写りゆく 美恵子
(順不同) ………………………………………………………………
令和4年12月16日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
残菊は残菊と云ふ色の香に 雪 穴無惨枯蟷螂となり切れず 同 煤払大仏様の膝の上に みす枝 雪起こし百貫玉の落つる音 同 師走来て一番のりの美容院 富子 雪囲ひ男結びの揃ひけり 真喜栄 一斗樽三つ仕込みて師走かな 玲子 道一筋孤高の山の雪化粧 嘉和 注連細く巻きて御幣に神宿る 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年12月16日 さきたま花鳥句会
黒煙を吐きて冬野へ陸蒸気 月惑 実南天御成座敷の窓明り 一馬 額縁門残る紅葉や泉岳寺 八草 終の地に老いて根を張る冬紅葉 裕章 散るやちる散るままなりし落葉道 紀花 結願の晴れ切る空や冬木の芽 とし江 店抜けて女将小走り酉の市 康子 取寄せし河豚ひとまづは仏壇に 静子 一人見る冬満月や奢侈極む 良江
(順不同) ………………………………………………………………
令和4年12月18日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
冬日向野良猫が来て完成す 千種 寒禽の古代広場の空に消ゆ 白陶 大枯木侘しや空の巣を抱き 圭魚 冬帝に眼見開く埴輪かな 三無 浮寝鳥にも攻防の濁り池 要 昃れば雪虫蒼く漂へる 炳子 群れてゐて己を尽くす野水仙 三無
栗林圭魚選 特選句
冬帝に眼見開く埴輪かな 三無 冬枯に錆朱のコート遠ざかる 要 日矢刻みつつ枯葉舞ふ小径かな 同 紅葉散る眩しき日矢を弾きつつ 三無 冬枯に詩吟朗々沁み渡る 要 浮寝鳥にも攻防の濁り池 同 昃れば雪虫蒼く漂へる 炳子 落葉ひとつひとつ大地へしじま足す 千種
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年12月21日 福井花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
ふり向けば虹もかかりて片時雨 笑子 日本海よりの潮風懸け大根 同 師走てふ町行く人も急ぎ足 啓子 山眠る小動物も夢の中 同 ゆつたりと領域守り浮寝鳥 千加江 惟みる中子師校歌能登小春 淳子 大焚火して棟梁の頰染めて 同 貫之の土佐日記なる波の花 同 アナウンス飛び交ふ案内駅師走 和子 極月や討入り語る講談師 泰俊
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年12月22日 鯖江花鳥俳句會 坊城俊樹選 特選句
越前の夜の更け行く菊膾 雪 帰り花ほどの身の上知るばかり 同 柏翠の調理師免許身に入みぬ 同 人の世にかくも爽やかなる別れ 同 猫じやらしてふ名全うして枯るる 同 近松忌男の持てる顔いくつ 同 シャッター通り歩く男の冬帽子 昭子 着膨れて隠しから出す小銭入 同 箱階段みしみしと鳴る日短 同 優男には近よらず雪女郎 同 み仏の膝に眠りし猫小春 ただし 彫り浅き千代女の句碑や風白し 同 荒るる潮崖を昇りて浪の花 みす枝 聞き上手相槌上手炬燵の間 同 追憶の母はつつましヒヤシンス 一涓
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年12月25日 月例会 坊城俊樹選 特選句
鯉はまだ水底に居て降誕祭 小鳥 片翳りして水鳥の消ゆる午後 炳子 羽根付けし少年少女クリスマス 順子 木枯や犬咥へたる赤きもの 和子 発声のなく群衆となる外套 光子 冬木の芽依代として時を待つ 三郎 寒禽の声やさしきは恋ならむ 昌文
岡田順子選 特選句
鯉はまだ水底に居て降誕祭 小鳥 青年は武道館へと冬木の芽 月惑 本殿の奥のひと揺れ年の果 三郎 零戦の真後ろに立ち懐手 小鳥 極月の鯉は黄金の鯉となり 俊樹 青といふ底なしの天なる寒さ 光子 繭白の提灯三列春用意 和子
栗林圭魚選 特選句
献木の葉も艶々と冬椿 佑天 鯉はまだ水底に居て降誕祭 小鳥 引つ掻きてみたき青空年つまる 順子 鴨の声幽かに聞きて九段坂 炳子 裸木の列柱なせる大鳥居 要 寒禽の鳴き交したる虚空かな 佑天 枯れ様をさらし尽くして濠の蓮 要
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年12月 九州花鳥会 坊城俊樹選 特選句
仲直りしたくて蜜柑剥いてやる ひとみ 細胞の溶け出してゐる日向ぼこ 同 少年は狐火を見に行きしまま 同 手回しのミル短日の音重ね 由紀子 花枇杷や八十路麗し名妓の家 久美子 鉄瓶のきりりと据る冬の朝 さえこ 花枇杷に愛を求むる虫来る 美穂 さよならと赤きマフラー振り向かず 同 神鈴を打ちて寒濤迫りくる かおり 蕪村忌や立てる襟なき放浪者 勝利 追羽根の一人一人に違ふ空 朝子 宇宙船帰還するらし葱刻む 愛 日おもてに人見知りの子枇杷の花 睦古賀子 波の上の禅定なるや浮寝鳥 同 狼の魂いまも大和に伏せしまま 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年11月2日 立待花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
熟し柿落す一つを拾ひけり 世詩明 渡り鳥集合離散離れざる 同 松手入れ空の明るさ戻しけり 同 病室の窓にもトンボ見舞はれし 輝一 耳遠く遅れて笑ふ老いの秋 秋子 生きるとはすさまじきもの蟻の列 同 静かなる大和三山星月夜 誠 新涼の後ろ姿の理髪台 同 心中にたむける回向近松忌 やす香
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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dempameat · 2 years
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やけに地理に詳しい孫悟空さんはTwitterを使っています: 「オッス、オラ悟空! おめぇ、知ってっか!? 府中市の分べぇ河原駅で、京王線から南部線に乗りけぇる時、階段を下んだろ? あれは、ホームが崖の下にあっからだ。 地理院地図で見っと、国分寺げぃ線 がはっきり分かる! 東京競馬場も同じく崖の下にあるのが分かるな。 おもしれぇなぁ! https://t.co/cvWwFyhTdj」 / Twitter
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hirakurakei · 3 years
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平倉研 卒論・修論/ポートフォリオ・博論タイトル一覧(2010-2024)
横浜国大平倉研究室、過去の卒論・修論/ポートフォリオ・博論のタイトル一覧をまとめてみた。誰かの参考に。
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公共広告の表現論―ACジャパンのテレビ広告分析― ポスト現代口語演劇論 線が描く動きと世界―宮崎駿に見る原形質性― デザイナー吉岡徳仁論―感覚をデザインする 立川談志の落語―「芸」とは何か― 2010年代のデータベース消費~東方ProjectとN次創作~ CRACKS スピルバーグの映画における「裂け目」 編集による創造 オートクローム研究――ロラン・バルト、スーザン・ソンタグ、多木浩二の思想とともに―― ここ/そこ/どこか もの派以降の芸術における場 正法眼蔵論―否定による身心脱落― 映画空間の発生 すべての述語 パーヴェル・フィローノフの作品分析 線が伝える感情 アンリ・マティス《主題とヴァリエーション》における線の探求 絵画が音を奏でるとき―パウル・クレー作品からみる、複数知覚の交流― 書の力の探求 型における「良さ」とは何か Correspondances(交感) ストローブ=ユイレの作品に見る、世界との交感 ジョン・カサヴェテス論――「触れ」られないものに「触れ」るために 刺繍という行為 ファン・ゴッホ、土で描く絵画 デジタル絵画論 ロベール・ブレッソン論 アンドレ・ブルトンと窓 循環する視線 寺山修司の映画と「虚」 清水宏の映画空間―「詩」と「メロドラマ」の相乗―/『DUGOUT』 チャールズ・チャップリン論――身体が生み出すサスペンス 別役実論――失語演劇が語りかけるために―― 三宅一生論――生きる身体、生きる衣服 空間は無意識にはたらきかけるのか まなざしと自由の映画論 剣劇のリアリティ 映像日記論――ジョナス・メカス『ウォールデン』を中心に アントニン・レーモンド論――混和する自然と建築の理論 地形パターンがもたらす渋谷の都市景観について―「Y字路」と「坂」の組み合わせがつくる街区構造の分析 森山大道写真集論―1993年以降の写真集が持つ多層性の分析― お化け屋敷論―楽しい恐怖をつくる仕掛け― 熊谷守一における転写の問題 《新しいルーブ・ゴールドバーグ・マシーン》:ダイアグラムを用いた展覧会キュレーションの可能性 計算機と計算者―模型と建築家について アブストラクト・フォトグラフィー ―デジタル写真の可能性― ダイアン・アーバス論―猶予的発話、越境、そして対顔― エルフリーデ・イェリネク論 ―『光のない。』における言葉の自律性― 環世界を見る: 身体|カメラ|環境 「編集」をパフォーマンスとして上演する アレキサンダー・マックイーンの〈ストーリーテリング〉 時間の圧力―タルコフスキー的空間― 人ではないものとして生きる ウォン・カーウァイ映画のナラティヴ研究 韓国現代音楽「サムルノリ」の伝統芸能化 「複数性」とはなにか――ハンナ・アレント『人間の条件』論 コメディアデラルテから見る笑いの共有 中西夏之の「平面」―絵画と言葉の関係性― マクドゥーガル通りにおけるイサム・ノグチ――第二次世界大戦終戦前後におけるインターロッキング・スカルプチャーについて 今敏のアニメーションにおけるビジュアル的表現力の分析 ドゥルーズの非美学――哲学と実践 セルゲイ・パラジャーノフ論――映像のパラレリズム 〈庭〉としての里山公園――郊外の入会はいかにして作られるか 展示空間における共在の実践と安全の制作 「ひろしま神楽」の本質と生存戦略としての娯楽化の動き 内的なリズムとは何か――絵本『三びきのやぎのがらがらどん』の積み重ね構造と瀬田貞二の翻訳 肖像画の交換制作にともない造形される眼 方法を渡り歩く 演劇創作における演技の開発と統合 断片のシークエンス――ショット群の連続として敷地を捉える設計スタディ 言葉と男性身体──ヴィト・アコンチの初期作品分析 天地耕作論──制作における物質と労働の観点から 崖に建つ家 体の持つ記憶をさぐる過程において生まれるダンス 事象が隣合うとき──リサーチから物語る制作実践──
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fey-t-ff · 3 years
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FF14地名:6.Xフィールド
自分用、6.Xエリアの地名日本語版・英語版まとめ。SSへの文字入れなどにご利用ください。ただし記事の丸々転載はご遠慮下さいませ。間違いなどあればtwitterの方に指摘もらえれば直しておきます。 *付は通常地図に載っておらず、探検手帳・釣り手帳から引っ張った地名。2023.10.23更新。
★北洋地域 The Northern Empty
●オールド・シャーレアン Old Sharlayan 知神の港 Scholar's Harbor  出入国管理所 Worldly Affairs  ペリスタイル The Peristyle  ラストスタンド The Last Stand  サリャク柱廊 The Thaliak Stoa  知神サリャク像 The Scholar  ニュンクレフの岩 Nyunkrepf's Sight   七賢人の庭 Archons' Design  エーテライト・プラザ Old Sharlayan Aetheryte Plaza  アゴラ The Agora  転送魔法研究所 The Confluence  バルデシオン分館 The Baldesion Annex  *碧き谷 Oinops  ニンファイオン The Nymphaeum  哲学者の広場 The Rostra  *哲学者議会議場 The Forum  アルティフィスホール The Hall of Artifice   沈思の森 Tranquility  *沈思の泉 Reflecting Pool  黙考のモノペトロス The Silent Monopteros  討論のモノペトロス The Speaking Monopteros  ヌーメノン大書院 Noumenon
シャーレアン魔法大学 The Studium  フェノメノン大講堂 Phenomenon  選者殿 Searchers' Meet  工匠殿 Makers' Meet  公開講堂 Learners' Meet   漂流者の丘 Journey's End  パフィン広場 Auk's Landing  ルヴェユール邸 The Leveilleur Estate   ●メインホール Main Hall   ●ナップルーム Andron     ●ラヴィリンソス Labyrinthos アウターサーキット The Outer Circuit  アルティフィスパス The Path of Artifice  アッパー・アクリンソス Upper Acrinthos  地下水排出路 The Phreatic Conduit  *一号天球口 Unmoved Source Alpha  *一号排出路 The Mover Alpha  アルケイオン保管院 The Archeion  恵みのトロス The Aesthete's Tholos  試作漁場河川 Hatching Canal  *二号天球口 Unmoved Source Beta  *二号排出路 The Mover Beta  パスメラン種畜研究所 Passemerrant Pasturponics  洞穴生物繁殖区 Troglophile's Deep  第三十三期拡張坑道 The Thirty-third Facet   朝露の森 Mornveil Forest  人工霧制御塔 Mistloom   ミディアルサーキット The Medial Circuit  メリオール実験農場 Meryall Agronomics  プシケ送風塔 Psyche  ポイボス制御塔 Phoibos  プネウマ送風塔 Pneuma  ロウアー・アクリンソス Lower Acrinthos  ミタト酪農場 Mitato   セントラルサーキット The Central Circuit  ロジスティコン・アルファ Logistikon Alpha  ククロの工房 Kokkol's Forge  リトルシャーレアン Sharlayan Hamlet  *ディープモート Deepmoat  ロジスティコン・ベータ Logistikon Beta  アポリア本部 Aporia  ロジスティコン・ガンマ Logistikon Gamma  タウマゼイン Thaumazein       ★イルサバード Ilsabard
●ラザハン Radz-at-Han ガシャシンハ大橋 Gajasimha Bridge   真眼門 The Gate of First Sight   誓約の階段 The Loyal Rise   アルザダール通り Alzadaal's Path  アルザダール廟 Alzadaal's Peace   パクシャ通り Paksa's Path  ラザハン・ランディング Airship Landing   ダーマ区 Dharma  ルヴェーダ製糸局 Ruveydah Fibers  *ルヴェーダ製糸局空中庭園 Ruveydah Fibers Rooftop Garden  ニーローパラ畜産局 Nilopala Nourishments  風の桑畑 Windweft  メーガドゥータ宮 Meghaduta  *メーガドゥータの飛沫 Meghaduta   ユジュ区 Yuj   カーマ区 Kama   アルタ区 Artha  エーテライト・プラザ Radz-at-Han Aetheryte Plaza  星戦士団本営 Hall of the Radiant Host  流星の間 Sundrop  *バルシャーン・バザール Balshahn Bazaar  バルシャーン・バザール西通り West Balshahn Bazaar  バルシャーン・バザール東通り East Balshahn Bazaar  メリードズメイハネ Mehryde's Meyhane  アルキミヤ製薬堂 The High Crucible of Al-Kimiya     ●サベネア島 Thavnair 微風の浜 Saltwind's Welcome  イェドリマン Yedlihmad  *イェドリマン沿岸 Yedlihmad  ウッサケイーク島 Ussaqeyiq  テブケイーク島 Tebqeyiq  アキャーリ Akyaali  スワルナの大蔵 Svarna  *サベネア島近海 The Thavnairian Coast  *アキャーリ南 Southern Akyaali  *アキャーリ西 Western Akyaali  *アキャーリ沖 Outer Akyaali  ジュニャーナ洋上祭殿 Jnanamandapa   薫香の丘 The Perfumed Rise  デミールの遺烈郷 The Great Work  *デミールの遺烈郷沿岸 The Great Runoff  *遺烈郷南 Southern Great Runoff  カジャーヤ演舞場 Kadjaya's Footsteps  ハンサ牧場跡 The Hamsa Hatchery  ギガントガル採石場 Giantsgall Grounds  *薫香の浜 The Perfumed Tides   衆園の森 The Shroud of the Samgha  トラーナ関門 The Wakeful Torana  パーラカの里 Palaka's Stand  パワナの悔悟 Pavana's Remorse  聖仙アガマの墳墓 Agama Temple  クシールローダ川 Ksiroda  マーヤーの幻泉 The Font of Maya  プルシャ寺院 Purusa  星戦士団の調練場 The Burning Field   夜番の崖 Night's Watch    *カドガの大岩 Khadga(?)     ●ガレマルド Garlemald エブラーナ氷原 The Eblan Rime  キャンプ・ブロークングラス Camp Broken Glass  *エブラーナ不凍池 The Eblan Thaw  ホレア・カンピ Horrea Campi  管理官舎G棟 Monitoring Station G  臣の褒賞 Victors' Spoils   大セルレア湖 Cerulea Ingens  タッパーズデン Tapper's Den  ユートゥルナG水上リグ Juturna Platform G   ガレアン・ドモルム区 Regio Domorum  第IV市外駅 Liminal Station IV  帝都高速路 Alta Strata  脱線した列車 The Runaway Train  テルティウム駅 Tertium  青燐パイプライン The Pipe  フォルム・パーテンズ Forum Patens  *セナトゥス駅 Senatus  エンセラダス魔導工廠 The Enceladeum   ウルバニッシマ区 Regio Urbanissima  パラディウム・ノヴム Palatium Novum  フォルム・ソリウス Forum Solius  ガレマール元老院 Senaculum Inperialis  潔白の環濠 The Stainless Course     ●神門の間 The Nethergate  
  ★星外宙域 The Sea of Stars   ●嘆きの海 Mare Lamentorum 涙の入江 Sinus Lacrimarum  涙の入江 Sinus Lacrimarum  監視者の館 The Watcher's Palace   嘆きの海 南 Southern Mare Lamentorum  霊水の剣 The Drowning Brand  痛みの峡谷 Vallis Vulneris  霊氷の剣 The Numbing Brand  *氷土の亀裂 The Frozen Fissure  霊土の剣 The Crushing Brand  クロロフォスグロット The Chlorophosgrot  *クロロフォス・ポンド The Chlorophospond   苦悶の入江 Sinus Tormenti  ヘイムダル級観察艇の残骸 Heimdall's Last Sight   嘆きの海 北 Northern Mare Lamentorum  霊火の剣 The Searing Brand  霊雷の剣 The Striking Brand  ラヴィングウェイの花園 Lovingway's Darlings  霊風の剣 The Biting Brand  シドニア・ノールズ Kydonia Knolls   闇の揺り籠 The Cradle of Darkness   ベストウェイ・バロー Bestways Burrow  ベストウェイ・バロー Bestways Burrow  ムーンセイル Moonsail  ホーパーズ・ホールド Hoper's Hold   グレーテスト・エンズヴィル Greatest Endsvale   キャロットリウム The Carrotorium     ●ウルティマ・トゥーレ Ultima Thule オストラコン・デカオクト Ostrakon Deka-okto  魔導船ラグナロク The Ragnarok  *ヘロス・デカオクトβ Apohelos 18-β  熔解した前哨基地 The Vitrified Fort  *ヘロス・デカオクトγ Apohelos 18-γ  リア・ターラ Reah Tahra  *ヘロス・デカオクトα Apohelos 18-α  アーム・ノール Ahm Nohl  *リムニ・デカオクト Limne 18   オストラコン・トゥリア Ostrakon Tria  逡巡の泉 The Wellspring of Regret  再受肉槽 Hollow of the Flesh  イーアの里 Abode of the Ea  辞世の連句碑 Elegeia  イーアの転移陣 The Tube  *リムニ・トゥリアα Limne 3-α  *リムニ・トゥリアβ Limne 3-β   オストラコン・デカークシ Ostrakon Deka-hexi  廃棄されたポータル Clouded Portal  オミクロンベース Base Omicron  寂れたポータル Fallow Portal  見捨てられたポータル Empty Portal  生命の木 The Tree of Life  スティグマ・ワン Stigma-1  忘れられたポータル Unmemoried Portal  ロスト・ハイドロリック The Lost Hydraulic   リサーチA4 A-4 Research   オストラコン・エーナ Ostrakon Hena  命なき街 The Nekropolis  カフェ「ラストレムナント」 The Last Dregs  最果ての中心 Absolute Horizon   ●エリュシオン Elysion 農業区画 Elysian Fields 海洋区画 Elysian Seas 遊園区画 Elysian Playgrounds 森林区画 Elysian Groves       ★古代世界 The World Unsundered   ●エルピス Elpis ノトスの感嘆 Philomythes Notos  プロピュライオン Propylaion  芽吹の玄関 First Bloom  アナ��ノリシス天測園 Anagnorisis  汐沫の庭 The Mourning Dew  異土の庭 The Cthonic Horns  十二節の園 The Twelve Wonders  ノエトン万華樹 Noetophoreon  ナビ・ノトス Notoneus   ゼピュロスの喝采 Kallimelios  Zephyros  ナビ・南ゼピュロス Southerly Zephyrneus  逍遥水径 Rumination's Ramble  ポイエテーン・オイコス Poieten Oikos  ペリペテイア晶蔵院 Peripeteia Krystalline  メタバシス六洋院 Metabaseos Thalassai  ナビ・北ゼピュロス Northerly Zephyrneus   ボレアースの黙劇 Ethoseletikos Boreas  ナビ・南ボレアース Southerly Boreneus  ヒュペルボレア造物院 Ktisis Hyperboreia  ナビ・東ボレアース Easterly Boreneus   エウロスの冷笑 Misopses Euros  ナビ・エウロス Euroneus  牙の園 The Hungering Gardens  *牙の園下層 The Lower Hungering Gardens  レーテー海 Lethe     ●パンデモニウム正門 The Gates of Pandæmonium          ★????(第十三世界)       ●赤き月 The Red Moon ●立方魔法陣 The Voidcast Dais     ★????   ●名もなき島 Unnamed Island(無人島 Island Sanctuary) 陸上 Surface Terrain  開拓拠点 Home Sweet Hideaway   名も無き浜 Islet Inlet   アイランドスクエア Hideaway Central   開拓拠点の丘・北 Hideaway North   広場横の開拓地 Hideaway Overlook   高台の開拓地 Hideaway Heights   開拓拠点の丘・東 Hideaway East   開拓拠点の丘・南 Hideaway Peak   一号耕作地 Cropland Section I   二号耕作地 Cropland Section II   三号耕作地 Cropland Section III   一号放牧地 Pasture Section I   二号放牧地 Pasture Section II   三号放牧地 Pasture Section III   島長者の開拓地 Islekeep's Ambition   島長者の展望地 Islekeep's Outlook    採集環境 The Wilds   青空池 Pristine Pond   横の川 Eastward Stream   サンゴ海岸 Coral Sands   三角岬 Peak Point   縦の川 Northward Stream   のっぺり丘 Gentle Slope   海賊たちの浜 Pirate Bay   飛び石岩礁 Rocky Reef   山の中腹 Sunrise Lookout   山の泉 Small Spring   とんがり山頂 True Summit   洞窟 Cave System  とんがり山の洞窟 Mountain Hollow   つらら洞 Shiny Spring   魔石の鉱脈 Spriggan's Delight   水晶の地底湖 Mother Lode  
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kurihara-yumeko · 4 years
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【小説】The day I say good-bye (1/4) 【再録】
 今日は朝から雨だった。
 確か去年も雨だったよな、と僕は窓ガラスに反射している自分の顔を見つめて思った。僕を乗せたバスは、小雨の降る日曜の午後を北へ向かって走る。乗客は少ない。
 予定より五分遅れて、予定通りバス停「船頭町三丁目」で降りた。灰色に濁った水が流れる大きな樫岸川を横切る橋を渡り、広げた傘に雨音が当たる雑音を聞きながら、柳の並木道を歩く。
 小さな古本屋の角を右へ、古い木造家屋の住宅ばかりが建ち並ぶ細い路地を抜けたら左へ。途中、不機嫌そうな面構えの三毛猫が行く手を横切った。長い長い緩やかな坂を上り、苔生した石段を踏み締めて、赤い郵便ポストがあるところを左へ。突然広くなった道を行き、椿だか山茶花だかの生け垣のある家の角をまた左へ。
 そうすると、大きなお寺の屋根が見えてくる。囲われた塀の中、門の向こうには、静かな墓地が広がっている。
 そこの一角に、あーちゃんは眠っている。
 砂利道を歩きながら、結構な数の墓の中から、あーちゃんの墓へ辿り着く。もう既に誰かが来たのだろう。墓には真っ白な百合と、あーちゃんの好物であった焼きそばパンが供えてあった。あーちゃんのご両親だろうか。
 手ぶらで来てしまった僕は、ただ墓石を見上げる。周りの墓石に比べてまだ新しいその石は、手入れが行き届いていることもあって、朝から雨の今日であっても穏やかに光を反射している。
 そっと墓石に触れてみた。無機質な冷たさと硬さだけが僕の指先に応えてくれる。
 あーちゃんは墓石になった。僕にはそんな感覚がある。
 あーちゃんは死んだ。死んで、燃やされて、灰になり、この石の下に閉じ込められている。埋められているのは、ただの灰だ。あーちゃんの灰。
 ああ。あーちゃんは、どこに行ってしまったんだろう。
 目を閉じた。指先は墓石に触れたまま。このままじっとしていたら、僕まで石になれそうだ。深く息をした。深く、深く。息を吐く時、わずかに震えた。まだ石じゃない。まだ僕は、石になれない。
 ここに来ると、僕はいつも泣きたくなる。
 ここに来ると、僕はいつも死にたくなる。
 一体どれくらい、そうしていたのだろう。やがて後ろから、砂利を踏んで歩いてくる音が聞こえてきたので、僕は目を開き、手を引っ込めて振り向いた。
「よぉ、少年」
 その人は僕の顔を見て、にっこり笑っていた。
 総白髪かと疑うような灰色の頭髪。自己主張の激しい目元。頭の上の帽子から足元の厚底ブーツまで塗り潰したように真っ黒な恰好の人。
「やっほー」
 蝙蝠傘を差す左手と、僕に向けてひらひらと振るその右手の手袋さえも黒く、ちらりと見えた中指の指輪の石の色さえも黒い。
「……どうも」
 僕はそんな彼女に対し、顔の筋肉が引きつっているのを無理矢理に動かして、なんとか笑顔で応えて見せたりする。
 彼女はすぐ側までやってきて、馴れ馴れしくも僕の頭を二、三度柔らかく叩く。
「こんなところで奇遇だねぇ。少年も墓参りに来たのかい」
「先生も、墓参りですか」
「せんせーって呼ぶなしぃ。あたしゃ、あんたにせんせー呼ばわりされるようなもんじゃございませんって」
 彼女――日褄小雨先生はそう言って、だけど笑った。それから日褄先生は僕が先程までそうしていたのと同じように、あーちゃんの墓石を見上げた。彼女も手ぶらだった。
「直正が死んで、一年か」
 先生は上着のポケットから煙草の箱とライターを取り出す。黒いその箱から取り出された煙草も、同じように黒い。
「あたしゃ、ここに来ると後悔ばかりするね」
 ライターのかちっ��いう音、吐き出される白い煙、どこか甘ったるい、ココナッツに似たにおいが漂う。
「あいつは、厄介なガキだったよ。つらいなら、『つらい』って言えばいい、それだけのことなんだ。あいつだって、つらいなら『つらい』って言ったんだろうさ。だけどあいつは、可哀想なことに、最後の最後まで自分がつらいってことに気付かなかったんだな」
 煙草の煙を揺らしながら、そう言う先生の表情には、苦痛と後悔が入り混じった色が見える。口に煙草を咥えたまま、墓前で手を合わせ、彼女はただ目を閉じていた。瞼にしつこいほど塗られた濃い黒い化粧に、雨の滴が垂れる。
 先生はしばらくして瞼を開き、煙草を一度口元から離すと、ヤニ臭いような甘ったるいような煙を吐き出して、それから僕を見て、優しく笑いかけた。それから先生は背を向け、歩き出してしまう。僕は黙ってそれを追った。
 何も言わなくてもわかっていた。ここに立っていたって、悲しみとも虚しさとも呼ぶことのできない、吐き気がするような、叫び出したくなるような、暴れ出したくなるような、そんな感情が繰り返し繰り返し、波のようにやってきては僕の心の中を掻き回していくだけだ。先生は僕に、帰ろう、と言ったのだ。唇の端で、瞳の奥で。
 先生の、まるで影法師が歩いているかのような黒い後ろ姿を見つめて、僕はかつてたった一度だけ見た、あーちゃんの黒いランドセルを思い出す。
 彼がこっちに引っ越してきてからの三年間、一度も使われることのなかった傷だらけのランドセル。物置きの中で埃を被っていたそれには、あーちゃんの苦しみがどれだけ詰まっていたのだろう。
 道の途中で振り返る。先程までと同じように、墓石はただそこにあった。墓前でかけるべき言葉も、抱くべき感情も、するべき行為も、何ひとつ僕は持ち合わせていない。
 あーちゃんはもう死んだ。
 わかりきっていたことだ。死んでから何かしてあげても無駄だ。生きているうちにしてあげないと、意味がない。だから、僕がこうしてここに立っている意味も、僕は見出すことができない。僕がここで、こうして呼吸をしていて、もうとっくに死んでしまったあーちゃんのお墓の前で、墓石を見つめている、その意味すら。
 もう一度、あーちゃんの墓に背中を向けて、僕は今度こそ歩き始めた。
「最近調子はどう?」
 墓地を出て、長い長い坂を下りながら、先生は僕にそう尋ねた。
「一ヶ月間、全くカウンセリング来なかったけど、何か変化があったりした?」
 黙っていると先生はさらにそう訊いてきたので、僕は仕方なく口を開く。
「別に、何も」
「ちゃんと飯食ってる? また少し痩せたんじゃない?」
「食べてますよ」
「飯食わないから、いつまでも身長伸びないんだよ」
 先生は僕の頭を、目覚まし時計を止める時のような動作で乱雑に叩く。
「ちょ……やめて下さいよ」
「あーっはっはっはっはー」
 嫌がって身をよじろうとするが、先生はそれでもなお、僕に攻撃してくる。
「ちゃんと食わないと。摂食障害になるとつらいよ」
「食べますよ、ちゃんと……」
「あと、ちゃんと寝た方がいい。夜九時に寝ろ。身長伸びねぇぞ」
「九時に寝られる訳ないでしょう、小学生じゃあるまいし……」
「勉強なんかしてるから、身長伸びねぇんだよ」
「そんな訳ないでしょう」
 あはは、と朗らかに彼女は笑う。そして最後に優しく、僕の頭を撫でた。
「負けるな、少年」
 負けるなと言われても、一体何に――そう問いかけようとして、僕は口をつぐむ。僕が何と戦っているのか、先生はわかっているのだ。
「最近、市野谷はどうしてる?」
 先生は何気ない声で、表情で、タイミングで、あっさりとその名前を口にした。
「さぁ……。最近会ってないし、電話もないし、わからないですね」
「ふうん。あ、そう」
 先生はそれ以上、追及してくることはなかった。ただ独り言のように、「やっぱり、まだ駄目か」と言っただけだった。
 郵便ポストのところまで歩いてきた時、先生は、「あたしはあっちだから」と僕の帰り道とは違う方向を指差した。
「駐車場で、葵が待ってるからさ」
「ああ、葵さん。一緒だったんですか」
「そ。少年は、バスで来たんだろ? 家まで車で送ろうか?」
 運転するのは葵だけど、と彼女は付け足して言ったが、僕は首を横に振った。
「ひとりで帰りたいんです」
「あっそ。気を付けて帰れよ」
 先生はそう言って、出会った時と同じように、ひらひらと手を振って別れた。
 路地を右に曲がった時、僕は片手をパーカーのポケットに入れて初めて、とっくに音楽が止まったままになっているイヤホンを、両耳に突っ込んだままだということに気が付いた。
 僕が小学校を卒業した、一年前の今日。
 あーちゃんは人生を中退した。
 自殺したのだ。十四歳だった。
 遺書の最後にはこう書かれていた。
「僕は透明人間なんです」
    あーちゃんは僕と同じ団地に住んでいて、僕より二つお兄さんだった。
 僕が小学一年生の夏に、あーちゃんは家族四人で引っ越してきた。冬は雪に閉ざされる、北の方からやって来たのだという話を聞いたことがあった。
 僕はあーちゃんの、団地で唯一の友達だった。学年の違う彼と、どんなきっかけで親しくなったのか正確には覚えていない。
 あーちゃんは物静かな人だった。小学生の時から、年齢と不釣り合いなほど彼は大人びていた。
 彼は人付き合いがあまり得意ではなく、友達がいなかった。口数は少なく、話す時もぼそぼそとした、抑揚のない平坦な喋り方で、どこか他人と距離を取りたがっていた。
 部屋にこもりがちだった彼の肌は雪みたいに白くて、青い静脈が皮膚にうっすら透けて見えた。髪が少し長くて、色も薄かった。彼の父方の祖母が外国人だったと知ったのは、ずっと後のことだ。銀縁の眼鏡をかけていて、何か困ったことがあるとそれをかけ直す癖があった。
 あーちゃんは器用だった。今まで何度も彼の部屋へ遊びに行ったことがあるけれど、そこには彼が組み立てたプラモデルがいくつも置かれていた。
 僕が加減を知らないままにそれを乱暴に扱い、壊してしまったこともあった。とんでもないことをしてしまったと、僕はひどく後悔してうつむいていた。ごめんなさい、と謝った。年上の友人の大切な物を壊してしまって、どうしたらよいのかわからなかった。鼻の奥がつんとした。泣きたいのは壊されたあーちゃんの方だっただろうに、僕は泣き出しそうだった。
 あーちゃんは、何も言わなかった。彼は立ち尽くす僕の前でしゃがみ込んだかと思うと、足下に散らばったいびつに欠けたパーツを拾い、引き出しの中からピンセットやら接着剤やらを取り出して、僕が壊した部分をあっという間に直してしまった。
 それらの作業がすっかり終わってから彼は僕を呼んで、「ほら見てごらん」と言った。
 恐る恐る近付くと、彼は直ったばかりの戦車のキャタピラ部分を指差して、
「ほら、もう大丈夫だよ。ちゃんと元通りになった。心配しなくてもいい。でもあと1時間は触っては駄目だ。まだ接着剤が乾かないからね」
 と静かに言った。あーちゃんは僕を叱ったりしなかった。
 僕は最後まで、あーちゃんが大声を出すところを一度も見なかった。彼が泣いている姿も、声を出して笑っているのも。
 一度だけ、あーちゃんの満面の笑みを見たことがある。
 夏のある日、僕とあーちゃんは団地の屋上に忍び込んだ。
 僕らは子供向けの雑誌に載っていた、よく飛ぶ紙飛行機の作り方を見て、それぞれ違うモデルの紙飛行機を作り、どちらがより遠くへ飛ぶのかを競走していた。
 屋上から飛ばしてみよう、と提案したのは僕だった。普段から悪戯などしない大人しいあーちゃんが、その提案に首を縦に振ったのは今思い返せば珍しいことだった。そんなことはそれ以前も以降も二度となかった。
 よく晴れた日だった。屋上から僕が飛ばした紙飛行機は、青い空を横切って、団地の駐車場の上を飛び、道路を挟んだ向かいの棟の四階、空き部屋のベランダへ不時着した。それは今まで飛ばしたどんな紙飛行機にも負けない、驚くべき距離だった。僕はすっかり嬉しくなって、得意げに叫んだ。
「僕が一番だ!」
 興奮した僕を見て、あーちゃんは肩をすくめるような動作をした。そして言った。
「まだわからないよ」
 あーちゃんの細い指が、紙飛行機を宙に放つ。丁寧に折られた白い紙飛行機は、ちょうどその時吹いてきた風に背中を押されるように屋上のフェンスを飛び越え、僕の紙飛行機と同じように駐車場の上を通り、向かいの棟の屋根を越え、それでもまだまだ飛び続け、青い空の中、最後は粒のようになって、ついには見えなくなってしまった。
 僕は自分の紙飛行機が負けた悔しさと、魔法のような素晴らしい出来事を目にした嬉しさとが半分ずつ混じった目であーちゃんを見た。その時、僕は見たのだ。
 あーちゃんは声を立てることはなかったが、満足そうな笑顔だった。
「僕は透明人間なんです」
 それがあーちゃんの残した最後の言葉だ。
 あーちゃんは、僕のことを怒ればよかったのだ。地団太を踏んで泣いてもよかったのだ。大声で笑ってもよかったのだ。彼との思い出を振り返ると、いつもそんなことばかり思う。彼はもう永遠に泣いたり笑ったりすることはない。彼は死んだのだから。
 ねぇ、あーちゃん。今のきみに、僕はどんな風に見えているんだろう。
 僕の横で静かに笑っていたきみは、決して透明なんかじゃなかったのに。
 またいつものように春が来て、僕は中学二年生になった。
 張り出されていたクラス替えの表を見て、そこに馴染みのある名前を二つ見つけた。今年は、二人とも僕と同じクラスのようだ。
 教室へ向かってみたけれど、始業の時間になっても、その二つの名前が用意された席には、誰も座ることはなかった。
「やっぱり、まだ駄目か」
 誰かと同じ言葉を口にしてみる。
 本当は少しだけ、期待していた。何かが良くなったんじゃないかと。
 だけど教室の中は新しいクラスメイトたちの喧騒でいっぱいで、新年度一発目、始業式の今日、二つの席が空白になっていることに誰も触れやしない。何も変わってなんかない。
 何も変わらないまま、僕は中学二年生になった。
 あーちゃんが死んだ時の学年と同じ、中学二年生になった。
 あの日、あーちゃんの背中を押したのであろう風を、僕はずっと探してる。
 青い空の果てに、小さく消えて行ってしまったあーちゃんを、僕と「ひーちゃん」に返してほしくて。
    鉛筆を紙の上に走らせる音が、止むことなく続いていた。
「何を描いてるの?」
「絵」
「なんの絵?」
「なんでもいいでしょ」
「今年は、同じクラスみたいだね」
「そう」
「その、よろしく」
 表情を覆い隠すほど長い前髪の下、三白眼が一瞬僕を見た。
「よろしくって、何を?」
「クラスメイトとして、いろいろ……」
「意味ない。クラスなんて、関係ない」
 抑揚のない声でそう言って、双眸は再び紙の上へと向けられてしまった。
「あ、そう……」
 昼休みの保健室。
 そこにいるのは二人の人間。
 ひとりはカーテンの開かれたベッドに腰掛け、胸にはスケッチブック、右手には鉛筆を握り締めている。
 もうひとりはベッドの脇のパイプ椅子に座り、特にすることもなく片膝を抱えている。こっちが僕だ。
 この部屋の主であるはずの鬼怒田先生は、何か用があると言って席を外している。一体なんの仕事があるのかは知らないが、この学校の養護教諭はいつも忙しそうだ。
 僕はすることもないので、ベッドに座っているそいつを少しばかり観察する。忙しそうに鉛筆を動かしている様子を見ると、今はこちらに注意を払ってはいなそうだから、好都合だ。
 伸びてきて邪魔になったから切った、と言わんばかりのショートカットの髪。正反対に長く伸ばされた前髪は、栄養状態の悪そうな青白い顔を半分近く隠している。中学二年生としては小柄で華奢な体躯。制服のスカートから伸びる足の細さが痛々しく見える。
 彼女の名前は、河野ミナモ。僕と同じクラス、出席番号は七番。
 一言で表現するならば、彼女は保健室登校児だ。
 鉛筆の音が、止んだ。
「なに?」
 ミナモの瞬きに合わせて、彼女の前髪が微かに動く。少しばかり長く見つめ続けてしまったみたいだ。「いや、なんでもない」と言って、僕は天井を仰ぐ。
 ミナモは少しの間、何も言わずに僕の方を見ていたようだが、また鉛筆を動かす作業を再開した。
 鉛筆を走らせる音だけが聞こえる保健室。廊下の向こうからは、楽しそうに駆ける生徒たちの声が聞こえてくるが、それもどこか遠くの世界の出来事のようだ。この空間は、世界から切り離されている。
「何をしに来たの」
「何をって?」
「用が済んだなら、帰れば」
 新年度が始まったばかりだからだろうか、ミナモは機嫌が悪いみたいだ。否、機嫌が悪いのではなく、具合が悪いのかもしれない。今日の彼女はいつもより顔色が悪いように見える。
「いない方がいいなら、出て行くよ」
「ここにいてほしい人なんて、いない」
 平坦な声。他人を拒絶する声。憎しみも悲しみも全て隠された無機質な声。
「出て行きたいなら、出て行けば?」
 そう言うミナモの目が、何かを試すように僕を一瞥した。僕はまだ、椅子から立ち上がらない。彼女は「あっそ」とつぶやくように言った。
「市野谷さんは、来たの?」
 ミナモの三白眼がまだ僕を見ている。
「市野谷さんも同じクラスなんでしょ」
「なんだ、河野も知ってたのか」
「質問に答えて」
「……来てないよ」
「そう」
 ミナモの前髪が揺れる。瞬きが一回。
「不登校児二人を同じクラスにするなんて、学校側の考えてることってわからない」
 彼女の言葉通り、僕のクラスには二人の不登校児がいる。
 ひとりはこの河野ミナモ。
 そしてもうひとりは、市野谷比比子。僕は彼女のことを昔から、「ひーちゃん」と呼んでいた。
 二人とも、中学に入学してきてから一度も教室へ登校してきていない。二人の机と椅子は、一度も本人に使われることなく、今日も僕の教室にある。
 といっても、保健室登校児であるミナモはまだましな方で、彼女は一年生の頃から保健室には登校してきている。その点ひーちゃんは、中学校の門をくぐったこともなければ、制服に袖を通したことさえない。
 そんな二人が今年から僕と同じクラスに所属になったことには、正直驚いた。二人とも僕と接点があるから、なおさらだ。
「――くんも、」
 ミナモが僕の名を呼んだような気がしたが、上手く聞き取れなかった。
「大変ね、不登校児二人の面倒を見させられて」
「そんな自嘲的にならなくても……」
「だって、本当のことでしょ」
 スケッチブックを抱えるミナモの左腕、ぶかぶかのセーラー服の袖口から、包帯の巻かれた手首が見える。僕は自分の左手首を見やる。腕時計をしているその下に、隠した傷のことを思う。
「市野谷さんはともかく、教室へ行く気なんかない私の面倒まで、見なくてもいいのに」
「面倒なんて、見てるつもりないけど」
「私を訪ねに保健室に来るの、――くんくらいだよ」
 僕の名前が耳障りに響く。ミナモが僕の顔を見た。僕は妙な表情をしていないだろうか。平然を装っているつもりなのだけれど。
「まだ、気にしているの?」
「気にしてるって、何を?」
「あの日のこと」
 あの日。
 あの春の日。雨の降る屋上で、僕とミナモは初めて出会った。
「死にたがり屋と死に損ない」
 日褄先生は僕たちのことをそう呼んだ。どっちがどっちのことを指すのかは、未だに訊けていないままだ。
「……気にしてないよ」
「そう」
 あっさりとした声だった。ミナモは壁の時計をちらりと見上げ、「昼休み終わるよ、帰れば」と言った。
 今度は、僕も立ち上がった。「それじゃあ」と口にしたけれど、ミナモは既に僕への興味を失ったのか、スケッチブックに目線を落とし、返事のひとつもしなかった。
 休みなく動き続ける鉛筆。
 立ち上がった時にちらりと見えたスケッチブックは、ただただ黒く塗り潰されているだけで、何も描かれてなどいなかった。
    ふと気付くと、僕は自分自身が誰なのかわからなくなっている。
 自分が何者なのか、わからない。
 目の前で展開されていく風景が虚構なのか、それとも現実なのか、そんなことさえわからなくなる。
 だがそれはほんの一瞬のことで、本当はわかっている。
 けれど感じるのだ。自分の身体が透けていくような感覚を。「自分」という存在だけが、ぽっかりと穴を空けて突っ立っているような。常に自分だけが透明な膜で覆われて、周囲から隔離されているかのような疎外感と、なんの手応えも得られない虚無感と。
 あーちゃんがいなくなってから、僕は頻繁にこの感覚に襲われるようになった。
 最初は、授業が終わった後の短い休み時間。次は登校中と下校中。その次は授業中にも、というように、僕が僕をわからなくなる感覚は、学校にいる間じゅうずっと続くようになった。しまいには、家にいても、外にいても、どこにいてもずっとそうだ。
 周りに人がいればいるほど、その感覚は強かった。たくさんの人の中、埋もれて、紛れて、見失う。自分がさっきまで立っていた場所は、今はもう他の人が踏み荒らしていて。僕の居場所はそれぐらい危ういところにあって。人混みの中ぼうっとしていると、僕なんて消えてしまいそうで。
 頭の奥がいつも痛かった。手足は冷え切ったみたいに血の気がなくて。酸素が薄い訳でもないのにちゃんと息ができなくて。周りの人の声がやたら大きく聞こえてきて。耳の中で何度もこだまする、誰かの声。ああ、どうして。こんなにも人が溢れているのに、ここにあーちゃんはいないんだろう。
 僕はどうして、ここにいるんだろう。
「よぉ、少年」
 旧校舎、屋上へ続く扉を開けると、そこには先客がいた。
 ペンキがところどころ剥げた緑色のフェンスにもたれるようにして、床に足を投げ出しているのは日褄先生だった。今日も真っ黒な恰好で、ココナッツのにおいがする不思議な煙草を咥えている。
「田島先生が、先生のことを昼休みに探してましたよ」
「へへっ。そりゃ参ったね」
 煙をゆらゆらと立ち昇らせて、先生は笑う。それからいつものように、「せんせーって呼ぶなよ」と付け加えた。彼女はさらに続けて言う。
「それで? 少年は何をし、こんなところに来たのかな?」
「ちょっと外の空気を吸いに」
「おお、奇遇だねぇ。あたしも外の空気を吸いに……」
「吸いにきたのはニコチンでしょう」
 僕がそう言うと、先生は、「あっはっはっはー」と高らかに笑った。よく笑う人だ。
「残念だが少年、もう午後の授業は始まっている時間だし、ここは立ち入り禁止だよ」
「お言葉ですが先生、学校の敷地内は禁煙ですよ」
「しょうがない、今からカウンセリングするってことにしておいてあげるから、あたしの喫煙を見逃しておくれ。その代わり、あたしもきみの授業放棄を許してあげよう」
 先生は右手でぽんぽんと、自分の隣、雨上がりでまだ湿気っているであろう床を叩いた。座れと言っているようだ。僕はそれに従わなかった。
 先客がいたことは予想外だったが、僕は本当に、ただ、外の空気を吸いたくなってここに来ただけだ。授業を途中で抜けてきたこともあって、長居をするつもりはない。
 ふと、視界の隅に「それ」が目に入った。
 フェンスの一角に穴が空いている。ビニールテープでぐるぐる巻きになっているそこは、テープさえなければ屋上の崖っぷちに立つことを許している。そう。一年前、あそこから、あーちゃんは――。
(ねぇ、どうしてあーちゃんは、そらをとんだの?)
 僕の脳裏を、いつかのひーちゃんの言葉がよぎる。
(あーちゃん、かえってくるよね? また、あえるよね?)
 ひーちゃんの言葉がいくつもいくつも、風に飛ばされていく桜の花びらと同じように、僕の目の前を通り過ぎていく。
「こんなところで、何をしていたんですか」
 そう質問したのは僕の方だった。「んー?」と先生は煙草の煙を吐きながら言う。
「言っただろ、外の空気を吸いに来たんだよ」
「あーちゃんが死んだ、この場所の空気を、ですか」
 先生の目が、僕を見た。その鋭さに、一瞬ひるみそうになる。彼女は強い。彼女の意思は、強い。
「同じ景色を見たいと思っただけだよ」
 先生はそう言って、また煙草をふかす。
「先生、」
「せんせーって呼ぶな」
「質問があるんですけど」
「なにかね」
「嘘って、何回つけばホントになるんですか」
「……んー?」
 淡い桜色の小さな断片が、いくつもいくつも風に流されていく。僕は黙って、それを見ている。手を伸ばすこともしないで。
「嘘は何回ついたって、嘘だろ」
「ですよね」
「嘘つきは怪人二十面相の始まりだ」
「言っている意味がわかりません」
「少年、」
「はい」
「市野谷に嘘つくの、しんどいのか?」
 先生の煙草の煙も、みるみるうちに風に流されていく。手を伸ばしたところで、掴むことなどできないまま。
「市野谷に、直正は死んでないって、嘘をつき続けるの、しんどいか?」
 ひーちゃんは知らない。あーちゃんが去年ここから死んだことを知らない。いや、知らない訳じゃない。認めていないのだ。あーちゃんの死を認めていない。彼がこの世界に僕らを置き去りにしたことを、許していない。
 ひーちゃんはずっと信じている。あーちゃんは生きていると。いつか帰ってくると。今は遠くにいるけれど、きっとまた会える日が来ると。
 だからひーちゃんは知らない。彼の墓石の冷たさも、彼が飛び降りたこの屋上の景色が、僕の目にどう映っているのかも。
 屋上。フェンス。穴。空。桜。あーちゃん。自殺。墓石。遺書。透明人間。無。なんにもない。ない。空っぽ。いない。いないいないいないいない。ここにもいない。どこにもいない。探したっていない。消えた。消えちゃった。消滅。消失。消去。消しゴム。弾んで。飛んで。落ちて。転がって。その先に拾ってくれるきみがいて。笑顔。笑って。笑ってくれて。だけどそれも消えて。全部消えて。消えて消えて消えて。ただ昨日を越えて今日が過ぎ明日が来る。それを繰り返して。きみがいない世界で。ただ繰り返して。ひーちゃん。ひーちゃんが笑わなくなって。��いてばかりで。だけどもうきみがいない。だから僕が。僕がひーちゃんを慰めて。嘘を。嘘をついて。ついてはいけない嘘を。ついてはいけない嘘ばかりを。それでもひーちゃんはまた笑うようになって。笑顔がたくさん戻って。だけどどうしてあんなにも、ひーちゃんの笑顔は空っぽなんだろう。
「しんどくなんか、ないですよ」
 僕はそう答えた。
 先生は何も言わなかった。
 僕は明日にでも、怪人二十面相になっているかもしれなかった。
    いつの間にか梅雨が終わり、実力テストも期末テストもクリアして、夏休みまであと一週間を切っていた。
 ひと夏の解放までカウントダウンをしている今、僕のクラスの連中は完璧な気だるさに支配されていた。自主性や積極性などという言葉とは無縁の、慣性で流されているような脱力感。
 先週に教室の天井四ヶ所に取り付けられている扇風機が全て故障したこともあいまって、クラスメイトたちの授業に対する意欲はほぼゼロだ。授業がひとつ終わる度に、皆溶け出すように机に上半身を投げ出しており、次の授業が始まったところで、その姿勢から僅かに起き上がる程度の差しかない。
 そういう僕も、怠惰な中学二年生のひとりに過ぎない。さっきの英語の授業でノートに書き記したことと言えば、英語教師の松田が何回額の汗を脱ぐったのかを表す「正」の字だけだ。
 休み時間に突入し、がやがやと騒がしい教室で、ひとりだけ仲間外れのように沈黙を守っていると、肘辺りから空気中に溶け出して、透明になっていくようなそんな気分になる。保健室には来るものの、自分の教室へは絶対に足を運ばないミナモの気持ちがわかるような気がする。
 一学期がもうすぐ終わるこの時期になっても、相変わらず僕のクラスには常に二つの空席があった。ミナモも、ひーちゃんも、一度だって教室に登校してきていない。
「――くん、」
 なんだか控えめに名前を呼ばれた気はしたが、クラスの喧騒に紛れて聞き取れなかった。
 ふと机から顔を上げると、ひとりの女子が僕の机の脇に立っていた。見たことがあるような顔。もしかして、クラスメイトのひとりだろうか。彼女は廊下を指差して、「先生、呼んでる」とだけ言って立ち去った。
 あまりにも唐突な出来事でその女子にお礼を言うのも忘れたが、廊下には担任の姿が見える。僕のクラス担任の担当科目は数学だが、次の授業は国語だ。なんの用かはわからないが、呼んでいるのなら行かなくてはならない。
「おー、悪いな、呼び出して」
 去年大学を卒業したばかりの、どう見ても体育会系な容姿をしている担任は、僕を見てそう言った。
「ほい、これ」
 突然差し出されたのはプリントの束だった。三十枚くらいありそうなプリントが穴を空けられ紐を通して結んである。
「悪いがこれを、市野谷さんに届けてくれないか」
 担任がひーちゃんの名を口にしたのを聞いたのは、久しぶりのような気がした。もう朝の出欠確認の時でさえ、彼女の名前は呼ばれない。ミナモの名前だってそうだ。このクラスでは、ひーちゃんも、ミナモも、いないことが自然なのだ。
「……先生が、届けなくていいんですか」
「そうしたいのは山々なんだが、なかなか時間が取れなくてな。夏休みに入ったら家庭訪問に行こうとは思ってるんだ。このプリントは、それまでにやっておいてほしい宿題。中学に入ってから二年の一学期までに習う数学の問題を簡単にまとめたものなんだ」
「わかりました、届けます」
 受け取ったプリントの束は、思っていたよりもずっとずっしりと重かった。
「すまんな。市野谷さんと小学生の頃一番仲が良かったのは、きみだと聞いたものだから」
「いえ……」
 一年生の時から、ひーちゃんにプリントを届けてほしいと教師に頼まれることはよくあった。去年は彼女と僕は違うクラスだったけれど、同じ小学校出身の誰かに僕らが幼馴染みであると聞いたのだろう。
 僕は学校に来なくなったひーちゃんのことを毛嫌いしている訳ではない。だから、何か届け物を頼まれてもそんなに嫌な気持ちにはならない。でも、と僕は思った。
 でも僕は、ひーちゃんと一番仲が良かった訳じゃないんだ。
「じゃあ、よろしく頼むな」
 次の授業の始業のチャイムが鳴り響く。
 教室に戻り、出したままだった英語の教科書と「正」の字だけ記したノートと一緒に、ひーちゃんへのプリントの束を鞄に仕舞いながら、なんだか僕は泣きたくなった。
  三角形が壊れるのは簡単だった。
 三角形というのは、三辺と三つの角でできていて、当然のことだけれど一辺とひとつの角が消失したら、それはもう三角形ではない。
 まだ小学校に上がったばかりの頃、僕はどうして「さんかっけい」や「しかっけい」があるのに「にかっけい」がないのか、と考えていたけれど、どうやら僕の脳味噌は、その頃から数学的思考というものが不得手だったようだ。
「にかっけい」なんてあるはずがない。
 僕と、あーちゃんと、ひーちゃん。
 僕ら三人は、三角形だった。バランスの取りやすい形。
 始まりは悲劇だった。
 あの悪夢のような交通事故。ひーちゃんの弟の死。
 真っ白なワンピースが汚れることにも気付かないまま、真っ赤になった弟の身体を抱いて泣き叫ぶひーちゃんに手を伸ばしたのは、僕と一緒に下校する途中のあーちゃんだった。
 お互いの家が近かったこともあって、それから僕らは一緒にいるようになった。
 溺愛していた最愛の弟を、目の前で信号無視したダンプカーに撥ねられて亡く��たひーちゃんは、三人で一緒にいてもときどき何かを思い出したかのように暴れては泣いていたけれど、あーちゃんはいつもそれをなだめ、泣き止むまでずっと待っていた。
 口下手な彼は、ひーちゃんに上手く言葉をかけることがいつもできずにいたけれど、僕が彼の言葉を補って彼女に伝えてあげていた。
 優しくて思いやりのあるひーちゃんは、感情を表すことが苦手なあーちゃんのことをよく気遣ってくれていた。
 僕らは嘘みたいにバランスの取れた三角形だった。
 あーちゃんが、この世界からいなくなるまでは。
   「夏は嫌い」
 昔、あーちゃんはそんなことを口にしていたような気がする。
「どうして?」
 僕はそう訊いた。
 夏休み、花火、虫捕り、お祭り、向日葵、朝顔、風鈴、西瓜、プール、海。
 水の中の金魚の世界と、バニラアイスの木べらの湿り気。
 その頃の僕は今よりもずっと幼くて、四季の中で夏が一番好きだった。
 あーちゃんは部屋の窓を網戸にしていて、小さな扇風機を回していた。
 彼は夏休みも相変わらず外に出ないで、部屋の中で静かに過ごしていた。彼の傍らにはいつも、星座の本と分厚い昆虫図鑑が置いてあった。
「夏、暑いから嫌いなの?」
 僕が尋ねるとあーちゃんは抱えていた分厚い本からちょっとだけ顔を上げて、小さく首を横に振った。それから困ったように笑って、
「夏は、皆死んでいるから」
 とだけ、つぶやくように言った。あーちゃんは、時々魔法の呪文のような、不思議なことを言って僕を困惑させることがあった。この時もそうだった。
「どういう意味?」
 僕は理解できずに、ただ訊き返した。
 あーちゃんはさっきよりも大きく首を横に振ると、何を思ったのか、唐突に、
「ああ、でも、海に行ってみたいな」
 なんて言った。
「海?」
「そう、海」
「どうして、海?」
「海は、色褪せてないかもしれない。死んでないかもしれない」
 その言葉の意味がわからず、僕が首を傾げていると、あーちゃんはぱたんと本を閉じて机に置いた。
「台所へ行こうか。確か、母さんが西瓜を切ってくれていたから。一緒に食べよう」
「うん!」
 僕は西瓜に釣られて、わからなかった言葉のことも、すっかり忘れてしまった。
 でも今の僕にはわかる。
 夏の日射しは、世界を色褪せさせて僕の目に映す。
 あーちゃんはそのことを、「死んでいる」と言ったのだ。今はもう確かめられないけれど。
 結局、僕とあーちゃんが海へ行くことはなかった。彼から海へ出掛けた話を聞いたこともないから、恐らく、海へ行くことなく死んだのだろう。
 あーちゃんが見ることのなかった海。
 海は日射しを浴びても青々としたまま、「生きて」いるんだろうか。
 彼が死んでから、僕も海へ足を運んでいない。たぶん、死んでしまいたくなるだろうから。
 あーちゃん。
 彼のことを「あーちゃん」と名付けたのは僕だった。
 そういえば、どうして僕は「あーちゃん」と呼び始めたんだっけか。
 彼の名前は、鈴木直正。
 どこにも「あーちゃん」になる要素はないのに。
    うなじを焼くようなじりじりとした太陽光を浴びながら、ペダルを漕いだ。
 鼻の頭からぷつぷつと汗が噴き出すのを感じ、手の甲で汗を拭おうとしたら手は既に汗で湿っていた。雑音のように蝉の声が響いている。道路の脇には背の高い向日葵は、大きな花を咲かせているのに風がないので微動だにしない。
 赤信号に止められて、僕は自転車のブレーキをかける。
 夏がくる度、思い出す。
 僕とあーちゃんが初めてひーちゃんに出会い、そして彼女の最愛の弟「ろーくん」が死んだ、あの事故のことを。
 あの日も、世界が真っ白に焼き切れそうな、暑い日だった。
 ひーちゃんは白い木綿のワンピースを着ていて、それがとても涼しげに見えた。ろーくんの血で汚れてしまったあのワンピースを、彼女はもうとっくに捨ててしまったのだろうけれど。
 そういえば、ひーちゃんはあの事故の後、しばらくの間、弟の形見の黒いランドセルを使っていたっけ。黒い服ばかり着るようになって。周りの子はそんな彼女を気味悪がったんだ。
 でもあーちゃんは、そんなひーちゃんを気味悪がったりしなかった。
 信号が赤から青に変わる。再び漕ぎ出そうとペダルに足を乗せた時、僕の両目は横断歩道の向こうから歩いて来るその人を捉えて凍りついてしまった。
 胸の奥の方が疼く。急に、聞こえてくる蝉の声が大きくなったような気がした。喉が渇いた。頬を撫でるように滴る汗が気持ち悪い。
 信号は青になったというのに、僕は動き出すことができない。向こうから歩いて来る彼は、横断歩道を半分まで渡ったところで僕に気付いたようだった。片眉を持ち上げ、ほんの少し唇の端を歪める。それが笑みだとわかったのは、それとよく似た笑顔をずいぶん昔から知っているからだ。
「うー兄じゃないですか」
 うー兄。彼は僕をそう呼んだ。
 声変わりの途中みたいな声なのに、妙に大人びた口調。ぼそぼそとした喋り方。
 色素の薄い頭髪。切れ長の一重瞼。ひょろりと伸びた背。かけているのは銀縁眼鏡。
 何もかもが似ているけれど、日に焼けた真っ黒な肌と筋肉のついた足や腕だけは、記憶の中のあーちゃんとは違う。
 道路を渡り終えてすぐ側まで来た彼は、親しげに僕に言う。
「久しぶりですね」
「……久しぶり」
 僕がやっとの思いでそう声を絞り出すと、彼は「ははっ」と笑った。きっとあーちゃんも、声を上げて笑うならそういう風に笑ったんだろうなぁ、と思う。
「どうしたんですか。驚きすぎですよ」
 困ったような笑顔で、眼鏡をかけ直す。その手つきすらも、そっくり同じ。
「嫌だなぁ。うー兄��僕のことを見る度、まるで幽霊でも見たような顔する���だから」
「ごめんごめん」
「ははは、まぁいいですよ」
 僕が謝ると、「あっくん」はまた笑った。
 彼、「あっくん」こと鈴木篤人くんは、僕の一個下、中学一年生。私立の学校に通っているので僕とは学校が違う。野球部のエースで、勉強の成績もクラストップ。僕の団地でその中学に進学できた子供は彼だけだから、団地の中で知らない人はいない優等生だ。
 年下とは思えないほど大人びた少年で、あーちゃんにそっくりな、あーちゃんの弟。
「中学は、どう? もう慣れた?」
「慣れましたね。今は部活が忙しくて」
「運動部は大変そうだもんね」
「うー兄は、帰宅部でしたっけ」
「そう。なんにもしてないよ」
「今から、どこへ行くんですか?」
「ああ、えっと、ひーちゃんに届け物」
「ひー姉のところですか」
 あっくんはほんの一瞬、愛想笑いみたいな顔をした。
「ひー姉、まだ学校に行けてないんですか?」
「うん」
「行けるようになるといいですね」
「そうだね」
「うー兄は、元気にしてましたか?」
「僕? 元気だけど……」
「そうですか。いえ、なんだかうー兄、兄貴に似てきたなぁって思ったものですから」
「僕が?」
 僕があーちゃんに似てきている?
「顔のつくりとかは、もちろん違いますけど、なんていうか、表情とか雰囲気が、兄貴に似てるなぁって」
「そうかな……」
 僕にそんな自覚はないのだけれど。
「うー兄も死んじゃいそうで、心配です」
 あっくんは柔らかい笑みを浮かべたままそう言った。
「……そう」
 僕はそう返すので精いっぱいだった。
「それじゃ、ひー姉によろしくお伝え下さい」
「じゃあ、また……」
 あーちゃんと同じ声で話し、あーちゃんと同じように笑う彼は、夏の日射しの中を歩いて行く。
(兄貴は、弱いから駄目なんだ)
 いつか彼が、あーちゃんに向けて言った言葉。
 あーちゃんは自分の弟にそう言われた時でさえ、怒ったりしなかった。ただ「そうだね」とだけ返して、少しだけ困ったような顔をしてみせた。
 あっくんは、強い。
 姿や雰囲気は似ているけれど、性格というか、芯の強さは全く違う。
 あーちゃんの死を自分なりに受け止めて、乗り越えて。部活も勉強も努力して。あっくんを見ているといつも思う。兄弟でもこんなに違うものなのだろうか、と。ひとりっ子の僕にはわからないのだけれど。
 僕は、どうだろうか。
 あーちゃんの死を受け入れて、乗り越えていけているだろうか。
「……死相でも出てるのかな」
 僕があーちゃんに似てきている、なんて。
 笑えない冗談だった。
 ふと見れば、信号はとっくに赤になっていた。青になるまで待つ間、僕の心から言い表せない不安が拭えなかった。
    遺書を思い出した。
 あーちゃんの書いた遺書。
「僕の分まで生きて。僕は透明人間なんです」
 日褄先生はそれを、「ばっかじゃねーの」って笑った。
「透明人間は見えねぇから、透明人間なんだっつーの」
 そんな風に言って、たぶん、泣いてた。
「僕の分まで生きて」
 僕は自分の鼓動を聞く度に、その言葉を繰り返し、頭の奥で聞いていたような気がする。
 その度に自分に問う。
 どうして生きているのだろうか、と。
  部屋に一歩踏み入れると、足下でガラスの破片が砕ける音がした。この部屋でスリッパを脱ぐことは自傷行為に等しい。
「あー、うーくんだー」
 閉められたカーテン。閉ざされたままの雨戸。
 散乱した物。叩き壊された物。落下したままの物。破り捨てられた物。物の残骸。
 その中心に、彼女はいる。
「久しぶりだね、ひーちゃん」
「そうだねぇ、久しぶりだねぇ」
 壁から落下して割れた時計は止まったまま。かろうじて壁にかかっているカレンダーはあの日のまま。
「あれれー、うーくん、背伸びた?」
「かもね」
「昔はこーんな小さかったのにねー」
「ひーちゃんに初めて会った時だって、そんなに小さくなかったと思うよ」
「あははははー」
 空っぽの笑い声。聞いているこっちが空しくなる。
「はい、これ」
「なに? これ」
「滝澤先生に頼まれたプリント」
「たきざわって?」
「今度のクラスの担任だよ」
「ふーん」
「あ、そうだ、今度は僕の同じクラスに……」
 彼女の手から投げ捨てられたプリントの束が、ろくに掃除されていない床に落ちて埃を巻き上げた。
「そういえば、あいつは?」
「あいつって?」
「黒尽くめの」
「黒尽くめって……日褄先生のこと?」
「まだいる?」
「日褄先生なら、今年度も学校にいるよ」
「なら、学校には行かなーい」
「どうして?」
「だってあいつ、怖いことばっかり言うんだもん」
「怖いこと?」
「あーちゃんはもう、死んだんだって」
「…………」
「ねぇ、うーくん」
「……なに?」
「うーくんはどうして、学校に行けるの? まだあーちゃんが帰って来ないのに」
 どうして僕は、生きているんだろう。
「『僕』はね、怖いんだよ、うーくん。あーちゃんがいない毎日が。『僕』の毎日の中に、あーちゃんがいないんだよ。『僕』は怖い。毎日が怖い。あーちゃんのこと、忘れそうで怖い。あーちゃんが『僕』のこと、忘れそうで怖い……」
 どうしてひーちゃんは、生きているんだろう。
「あーちゃんは今、誰の毎日の中にいるの?」
 ひーちゃんの言葉はいつだって真っ直ぐだ。僕の心を突き刺すぐらい鋭利だ。僕の心を掻き回すぐらい乱暴だ。僕の心をこてんぱんに叩きのめすぐらい凶暴だ。
「ねぇ、うーくん」
 いつだって思い知らされる。僕が駄目だってこと。
「うーくんは、どこにも行かないよね?」
 いつだって思い知らせてくれる。僕じゃ駄目だってこと。
「どこにも、行かないよ」
 僕はどこにも行けない。きみもどこにも行けない。この部屋のように時が止まったまま。あーちゃんが死んでから、何もかもが停止したまま。
「ふーん」
 どこか興味なさそうな、ひーちゃんの声。
「よかった」
 その後、他愛のない話を少しだけして、僕はひーちゃんの家を後にした。
 死にたくなるほどの夏の熱気に包まれて、一気に現実に引き戻された気分になる。
 こんな現実は嫌なんだ。あーちゃんが欠けて、ひーちゃんが壊れて、僕は嘘つきになって、こんな世界は、大嫌いだ。
 僕は自分に問う。
 どうして僕は、生きているんだろう。
 もうあーちゃんは死んだのに。
   「ひーちゃん」こと市野谷比比子は、小学生の頃からいつも奇異の目で見られていた。
「市野谷さんは、まるで死体みたいね」
 そんなことを彼女に言ったのは、僕とひーちゃんが小学四年生の時の担任だった。
 校舎の裏庭にはクラスごとの畑があって、そこで育てている作物の世話を、毎日クラスの誰かが当番制でしなくてはいけなかった。それは夏休み期間中も同じだった。
 僕とひーちゃんが当番だった夏休みのある日、黙々と草を抜いていると、担任が様子を見にやって来た。
「頑張ってるわね」とかなんとか、最初はそんな風に声をかけてきた気がする。僕はそれに、「はい」とかなんとか、適当に返事をしていた。ひーちゃんは何も言わず、手元の草を引っこ抜くことに没頭していた。
 担任は何度かひーちゃんにも声をかけたが、彼女は一度もそれに答えなかった。
 ひーちゃんはいつもそうだった。彼女が学校で口を利くのは、同じクラスの僕と、二つ上の学年のあーちゃんにだけ。他は、クラスメイトだろうと教師だろうと、一言も言葉を発さなかった。
 この当番を決める時も、そのことで揉めた。
 くじ引きでひーちゃんと同じ当番に割り当てられた意地の悪い女子が、「せんせー、市野谷さんは喋らないから、当番の仕事が一緒にやりにくいでーす」と皆の前で言ったのだ。
 それと同時に、僕と一緒の当番に割り当てられた出っ歯の野郎が、「市野谷さんと仲の良い――くんが市野谷さんと一緒にやればいいと思いまーす」と、僕の名前を指名した。
 担任は困ったような笑顔で、
「でも、その二人だけを仲の良い者同士にしたら、不公平じゃないかな? 皆だって、仲の良い人同士で一緒の当番になりたいでしょう? 先生は普段あまり仲が良くない人とも仲良くなってもらうために、当番の割り振りをくじ引きにしたのよ。市野谷さんが皆ともっと仲良くなったら、皆も嬉しいでしょう?」
 と言った。意地悪ガールは間髪入れずに、
「喋らない人とどうやって仲良くなればいいんですかー?」
 と返した。
 ためらいのない発言だった。それはただただ純粋で、悪意を含んだ発言だった。
「市野谷さんは私たちが仲良くしようとしてもいっつも無視してきまーす。それって、市野谷さんが私たちと仲良くしたくないからだと思いまーす。それなのに、無理やり仲良くさせるのは良くないと思いまーす」
「うーん、そんなことはないわよね、市野谷さん」
 ひーちゃんは何も言わなかった。まるで教室内での出来事が何も耳に入っていないかのような表情で、窓の外を眺めていた。
「市野谷さん? 聞いているの?」
「なんか言えよ市野谷」
 男子がひーちゃんの机を蹴る。その振動でひーちゃんの筆箱が机から滑り落ち、がちゃんと音を立てて中身をぶちまけたが、それでもひーちゃんには変化は訪れない。
 クラスじゅうにざわざわとした小さな悪意が満ちる。
「あの子ちょっとおかしいんじゃない?」
 そんな囁きが満ちる。担任の困惑した顔。意地悪いクラスメイトたちの汚らわしい視線。
 僕は知っている。まるでここにいないかのような顔をして、窓の外を見ているひーちゃんの、その視線の先を。窓から見える新校舎には、彼女の弟、ろーくんがいた一年生の教室と、六年生のあーちゃんがいる教室がある。
 ひーちゃんはいつも、ぼんやりとそっちばかりを見ている。教室の中を見渡すことはほとんどない。彼女がここにいないのではない。彼女にとって、こっちの世界が意味を成していないのだ。
「市野谷さんは、死体みたいね」
 夏休み、校舎裏の畑。
 その担任の一言に、僕は思わずぎょっとした。担任はしゃがみ込み、ひーちゃんに目線を合わせようとしながら、言う。
「市野谷さんは、どうしてなんにも言わないの? なんにも思わないの? あんな風に言われて、反論したいなって思わないの?」
 ひーちゃんは黙って草を抜き続けている。
「市野谷さんは、皆と仲良くなりたいって思わない? 皆は、市野谷さんと仲良くなりたいって思ってるわよ」
 ひーちゃんは黙っている。
「市野谷さんは、ずっとこのままでいるつもりなの? このままでいいの? お友達がいないままでいいの?」
 ひーちゃんは。
「市野谷さん?」
「うるさい」
 どこかで蝉が鳴き止んだ。
 彼女が僕とあーちゃん以外の人間に言葉を発したところを、僕は初めて見た。彼女は担任を睨み付けるように見つめていた。真っ黒な瞳が、鋭い眼光を放っている。
「黙れ。うるさい。耳障り」
 ひーちゃんが、僕の知らない表情をした。それはクラスメイトたちがひーちゃんに向けたような、玩具のような悪意ではなかった。それは本当の、なんの混じり気もない、殺意に満ちた顔だった。
「あんたなんか、死んじゃえ」
 振り上げたひーちゃんの右手には、草抜きのために職員室から貸し出された鎌があって――。
「ひーちゃん!」
 間一髪だった。担任は真っ青な顔で、息も絶え絶えで、しかし、その鎌の一撃をかろうじてかわした。担任は震えながら、何かを叫びながら校舎の方へと逃げるように走り去って行く。
「ひーちゃん、大丈夫?」
 僕は地面に突き刺した鎌を固く握りしめたまま、動かなくなっている彼女に声をかけた。
「友達なら、いるもん」
 うつむいたままの彼女が、そうぽつりと言う。
「あーちゃんと、うーくんがいるもん」
 僕はただ、「そうだね」と言って、そっと彼女の頭を撫でた。
    小学生の頃からどこか危うかったひーちゃんは、あーちゃんの自殺によって完全に壊れてしまった。
 彼女にとってあーちゃんがどれだけ大切な存在だったかは、説明するのが難しい。あーちゃんは彼女にとって絶対唯一の存在だった。失ってはならない存在だった。彼女にとっては、あーちゃん以外のものは全てどうでもいいと思えるくらい、それくらい、あーちゃんは特別だった。
 ひーちゃんが溺愛していた最愛の弟、ろーくんを失ったあの日。
 あの日から、ひーちゃんの心にぽっかりと空いた穴を、あーちゃんの存在が埋めてきたからだ。
 あーちゃんはひーちゃんの支えだった。
 あーちゃんはひーちゃんの全部だった。
 あーちゃんはひーちゃんの世界だった。
 そして、彼女はあーちゃんを失った。
 彼女は入学することになっていた中学校にいつまで経っても来なかった。来るはずがなかった。来れるはずがなかった。そこはあーちゃんが通っていたのと同じ学校であり、あーちゃんが死んだ場所でもある。
 ひーちゃんは、まるで死んだみたいだった。
 一日中部屋に閉じこもって、食事を摂ることも眠ることも彼女は拒否した。
 誰とも口を利かなかった。実の親でさえも彼女は無視した。教室で誰とも言葉を交わさなかった時のように。まるで彼女の前からありとあらゆるものが消滅してしまったかのように。泣くことも笑うこともしなかった。ただ虚空を見つめているだけだった。
 そんな生活が一週間もしないうちに彼女は強制的に入院させられた。
 僕が中学に入学して、桜が全部散ってしまった頃、僕は彼女の病室を初めて訪れた。
「ひーちゃん」
 彼女は身体に管を付けられ、生かされていた。
 屍のように寝台に横たわる、変わり果てた彼女の姿。
(市野谷さんは死体みたいね)
 そんなことを言った、担任の言葉が脳裏をよぎった。
「ひーちゃんっ」
 僕はひーちゃんの手を取って、そう呼びかけた。彼女は何も言わなかった。
「そっち」へ行ってほしくなかった。置いていかれたくなかった。僕だって、あーちゃんの突然の死を受け止めきれていなかった。その上、ひーちゃんまで失うことになったら。そう考えるだけで嫌だった。
 僕はここにいたかった。
「ひーちゃん、返事してよ。いなくならないでよ。いなくなるのは、あーちゃんだけで十分なんだよっ!」
 僕が大声でそう言うと、初めてひーちゃんの瞳が、生き返った。
「……え?」
 僕を見つめる彼女の瞳は、さっきまでのがらんどうではなかった。あの時のひーちゃんの瞳を、僕は一生忘れることができないだろう。
「あーちゃん、いなくなったの?」
 ひーちゃんの声は僕の耳にこびりついた。
 何言ってるんだよ、あーちゃんは死んだだろ。そう言おうとした。言おうとしたけれど、何かが僕を引き留めた。何かが僕の口を塞いだ。頭がおかしくなりそうだった。狂っている。僕はそう思った。壊れている。破綻している。もう何もかもが終わってしまっている。
 それを言ってしまったら、ひーちゃんは死んでしまう。僕がひーちゃんを殺してしまう。ひーちゃんもあーちゃんみたいに、空を飛んでしまうのだ。
 僕はそう直感していた。だから声が出なかった。
「それで、あーちゃん、いつかえってくるの?」
 そして、僕は嘘をついた。ついてはいけない嘘だった。
 あーちゃんは生きている。今は遠くにいるけれど、そのうち必ず帰ってくる、と。
 その一週間後、ひーちゃんは無事に病院を退院した。人が変わったように元気になっていた。
 僕の嘘を信じて、ひーちゃんは生きる道を選んだ。
 それが、ひーちゃんの身体をいじくり回して管を繋いで病室で寝かせておくことよりもずっと残酷なことだということを僕は後で知った。彼女のこの上ない不幸と苦しみの中に永遠に留めておくことになってしまった。彼女にとってはもうとっくに終わってしまったこの世界で、彼女は二度と始まることのない始まりをずっと待っている。
 もう二度と帰ってこない人を、ひーちゃんは待ち続けなければいけなくなった。
 全ては僕のついた幼稚な嘘のせいで。
「学校は行かないよ」
「どうして?」
「だって、あーちゃん、いないんでしょ?」
 学校にはいつから来るの? と問いかけた僕にひーちゃんは笑顔でそう答えた。まるで、さも当たり前かのように言った。
「『僕』は、あーちゃんが帰って来るのを待つよ」
「あれ、ひーちゃん、自分のこと『僕』って呼んでたっけ?」
「ふふふ」
 ひーちゃんは笑った。幸せそうに笑った。恥ずかしそうに笑った。まるで恋をしているみたいだった。本当に何も知らないみたいに。本当に、僕の嘘を信じているみたいに。
「あーちゃんの真似、してるの。こうしてると自分のことを言う度、あーちゃんのことを思い出せるから」
 僕は笑わなかった。
 僕は、笑えなかった。
 笑おうとしたら、顔が歪んだ。
 醜い嘘に、歪んだ。
 それからひーちゃんは、部屋に閉じこもって、あーちゃんの帰りをずっと待っているのだ。
 今日も明日も明後日も、もう二度と帰ってこない人を。
※(2/4) へ続く→ https://kurihara-yumeko.tumblr.com/post/647000556094849024/
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sciurus29 · 4 years
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8ヶ月前と同じ場所から。 #dahon #metro #minivelo #折り畳み自転車 #国分寺崖線 #ハケ #国立天文台三鷹キャンパス https://www.instagram.com/p/CJTPqd6LXNH/?igshid=1vugjwl8m598s
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