#ほうれん草と切り干し大根のおひたし
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「入梅」である。
梅雨入りとは違い、暦の中で6月11日くらいがそうなっているらしい。
今年はまだ梅雨入りしていないが、まるで梅雨明けのような天気であった。

午前は立川に。
近未来である。

昼飯は「バジリコスパゲッティ」である。
やっぱり好きだわ、これ。



晩飯は「さばのおろし煮」「油揚げともやしの炒めもの」「ほうれん草と切り干し大根のおひたし」である。
切り干し大根はおひたしにすると、まるで漬け物のようにぽりぽりと歯応えがあって面白い。
これも子どもの頃から好きなもののひとつなのである。
明日も暑くなるそうだ。
ごちそうさん。
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その事件は私が1歳の時に起きました。覚えていることはありません。 中国人の父と母は、大きくなってからも私に語ろうとはしませんでした。 中国政府は事件の死者数を319人としていますが、それよりもはるかに多いという指摘もあります。 あれから35年。真相は今も、明らかにされていません。 あの時、私のもう1つの祖国で、何が起きたのか。 (中国総局 高島浩) 日本人の祖母と中国人の両親 私の祖母は日本人です。満蒙開拓団として旧満州に渡りました。 戦後、帰国できずに大陸に残った「中国残留婦人」で、養子に出されていた中国人の男の子を引き取り、育てました。のちの私の父です。 父は中国人の母と結婚。1988年に中国東北部・黒竜江省で私が生まれました。そして6歳の時、国の援護事業のもと家族4人で帰国し、私と両親は日本国籍を取得しました。 私が生まれた翌年に起きた「天安門事件」 1989年6月4日。中国の首都・北京で、あの事件は起きました。 天安門広場に集まった民主化を求める学生や市民たちを、当時の共産党指導部が軍を出動させて武力で鎮圧した「天安門事件」です。 軍による発砲などで多くの犠牲者が出ました。中国政府は死者数を319人としています。 しかし当時、北京に駐在していた各国の外交官の報告などから、犠牲者の数はそれよりもはるかに多いという指摘が根強くあります。 中国政府はこの事件を、政治的な「騒ぎ」で「すでに結論が出ている」という説明を繰り返しています。 「知る必要はない」父のひと言 戦車の前に立ちふさがった市民の姿。民主化の動きを武力で制圧した事件。 天安門事件の前の年に生まれた私は、日本の教育で学ぶまで、こうした事件の表面的な情報でさえ、知りませんでした。真相を公表せず、事件を人々の記憶から消し去ろうと腐心してきた中国政府からみれば、もくろみどおりに育った、ある意味で“優秀な中国国民”だったでしょう。 中学生の時、一度だけ父に事件について尋ねたことがあります。そのときの父のことばが記憶に残っています。 「よく知らないし、知る必要はないよ」 記者になって、父と私のもう1つの祖国でもある中国のことを話すことが増えました。父は自分が共産党員だったことを明かしてくれました。共産党の実態を知っているからこそ、私に忠告したのです。 「天安門事件に関心を持つことで、いつか中国に赴任した時、どのような理不尽な目に遭うかわからない」 遺族取材の担当に もう逃げない 4年前の2020年、希望がかなって中国南部の広州駐在の記者��なりました。 当局の厳しい監視下に置かれた人権派弁護士の家族などを取材。私自身も当局者に連行され、警察署に留め置かれる経験をしました。 国家の安全を最優先する習近平指導部は言論統制を一段と強め、外国メディアの取材環境はますます厳しくなっていることを身をもって感じてきました。 天安門事件は、そうした中国社会の中でも最もタブー視されていて、深く取材すればどんな目に遭うのか。恐怖すら感じていました。 私と同じように中国の若い世代は事件を知りません。私がおおまかな概要を話すと、「うそを創作するのが上手ですね」と、まるで信じようともしません。今の中国社会の現実です。 事件がまた1つの節目を迎えたことし、北京に赴任、遺族取材の担当となりました。 そして、誓いました。事件を深く知ろうともしてこなかった過去から逃げず、まっさらな気持ちで取材しようと。 集会を断念した遺族グループ 6月4日に向けて取材を始めたところ、ある情報が入ってきました。 これまで5年ごとの節目に、遺族グループが開いていた追悼集会が断念に追い込まれたというのです。原因は当局による厳しい監視のためでした。政府が例年以上に神経をとがらせていることが感じられました。 遺族グループの名は「天安門の母」。グループは集会の代わりに先月(5月)、海外の動画投稿サイトに声明を公開しました。 「私たちには軍隊が銃撃に及んだ真相を知る権利がある」 「政府は社会に謝罪し、私たちに公正と正義を返しなさい」 事実を隠ぺいし、遺族の日常生活への干渉を続ける政府を強く非難する内容でした。 そして、いまなお分からない犠牲者の正確な数や名前の公表、犠牲者と遺族への賠償、責任者への法的な追及を求めました。 厳しい監視、通信遮断の面会 声明が公開される少し前、グループの中心メンバーの遺族を訪ねました。今の気持ちを伝えたいと、当局の監視をかいくぐって取材に応じてくれた張先玲さん(86)。 遺族に直接、話を聞くのはこれが初めてです。心臓がバクバクと打つ胸を必死でおさえました。 張先玲さん 呼び鈴を鳴らすと、張さんがやや固い表情で出迎えてくれました。周囲をうかがうように招き入れてくれたあと、すぐに携帯などの電源を切るよう伝えてきました。当局の盗聴を警戒していたのです。 自身も自宅の通信設備の電源をすべて切っていて、奥の部屋に移るまで、会話もしないよう身振り手振りで伝えてきました。 記者を志した息子の死 張さんは、事件で当時19歳だった息子の王楠さんを亡くしました。 記者を志していた王楠さん。天安門広場で起きている歴史的なできごとを記録に残したいと、事件前日の3日深夜、カメラを持って自転車で現場に向かったそうです。 張さんの息子 王楠さん そして4日午前1時すぎ、人民大会堂の北門の向かいで軍の銃撃を頭部に受けました。地面に倒れた王楠さんを現場にいた人たちが助けようとしましたが、軍の部隊が近づくことさえ許さなかったといいます。兵士たちはひざまずいて助けさせてくれという人たちの懇願に対し、「あいつは暴徒だ」と聞き入れなかったそうです。 のちに現場で目撃した人から聞くなどしてわかった当時の状況です。張さんは、中国政府がひた隠しにする、あの事件の真相の1つだと信じています。 なぜあの時… 消えぬ後悔 張さんの自宅のリビングの壁には笑顔の王楠さんの遺影がかけられていました。毎日のようにその写真に手をあわせながら、張さんは胸にある後悔を拭いきれずにいます。 なぜ、あの時、息子を送り出してしまったのか… 張先玲さん 「天安門広場に向かう前、息子が私に聞いてきました。『まさか軍が発砲することはないよね』と。私は『まさか、ありえないよ』と答えてしまったのです。今もずっとあの言葉を後悔しています。生きていれば、今ごろは父親になって家庭を持っていたでしょう。私の脳裏にある息子は、永遠にあの日の、あの晩の、19歳の時でとどまったままです」 黙り続けることは許されない 王楠さんの遺体はほかの犠牲者とともに天安門の西側にあった中学校前の草むらに��められていました。雨で遺体は地表から露出し、3日後、衛生当局などによって発見されたそうです。変わり果てた姿の息子。 張さんの脳裏から焼きついて離れず、毎年6月4日が近づくにつれて、張さんは体調を崩しています。 息子はなぜ死ななければならなかったのか。この日も体の調子が悪く、取材に応じてくれた時間は10分余り。それでも張さんは気力を振り絞るように、遺族の声を広く伝えてほしいと、1人の母親としての怒りを伝えてきました。 張さん 「国家が進歩していく上で、この事件が解決されないのは正常なことではない。『人民のために奉仕する』という中国政府が、人民の尊い命を奪っておきながら、なんの説明もなく、30年以上も知らないふりをして黙り続けるのは到底許されない」 「ごめん、生きてくれ…」最後のことば 今、遺族グループの活動の中心は犠牲者の親たちから、そのパートナーや兄弟に移っています。その中の1人に会うことができました。 尤維潔さん 尤(ゆう)維潔さん(70)。事件で当時42歳だった夫の楊明湖さんを奪われました。 政府系の経済団体の職員だった楊さんは、当日の深夜、銃声を聞き、広場に集まった学生たちを心配して現場に向かったといいます。そこで、下腹部に銃弾を受けました。倒れた楊さんをその場にいた人たちがリアカーで病院に運びました。撃たれた骨盤は粉々に砕けていたといいます。 病院に駆けつけた尤さんに、手術室から出てきた楊さんはこう漏らしたそうです。 尤さんの夫 楊明湖さん 「ごめん、しっかりと生きてくれ」 2人が交わした最後の会話となりました。2日後、楊さんは息を引き取りました。わずか6年の結婚生活。国によって突然、終止符を打たれました。 尤さん 「35年がたっても、あのときの記憶は少しも消えていません。一瞬一瞬が頭の中に残っています。夫を見守った2日間で涙は流し尽くしてしまい、今はもう出ません。遺族は皆、この世を去らないかぎり、暗い記憶の中を生き続けるのです」 若者たちはなぜ立ち上がったのか 天安門事件とは結局、何だったのか。その疑問を持ちづけていた私に、尤さんは「若者たちが立ち上がったのは、社会に対する責任感だった」そう説明してくれました。 天安門事件は、1980年代に共産党トップの総書���を務め、言論の自由化など政治改革にも前向きだった胡耀邦氏が4月15日に突然、死去したことに端を発しているとされています。 胡氏は、学生の民主化運動に理解を示したなどと保守派に批判され、失脚していました。 学生や市民による胡氏の追悼集会は、民主化を求めるデモに変わり、各地に拡大。5月には10万人が参加する大規模な集会に発展していきました。訴えは汚職の撲滅や言論の自由などを求める社会的なうねりとなっていったのです。 天安門広場に集まった市民や学生たち 尤維潔さん 「当時、北京の市民は皆、天安門広場にいた学生たちをとても心配していました。特に印象深いのは、戒厳令が最初に出された日です。市民たちが天安門広場に軍隊を行かせてはいけないと、路上にバスを止めて道路をふさぎました。多くの人たちが、ハンガーストライキを続ける学生たちに食料や水を届けていました。すべてが自発的な行動だったのです。その光景に私はとても感動しました。政府はなぜこうした状況を理解できなかったのか、思い出すと、今でもとても腹立たしい」 “隠ぺい”と“沈黙”の35年… さらに大事なことを話してくれました。 当時、軍によって制圧された天安門広場やそれに続く大通りなどあちらこちらには死体の山があったそうです。連絡が取れない人も多く、尤さんの夫とともに病院に運ばれ、その後死亡した男性も身元が分かっていなかったといいます。 しかし、中国政府は事件発生から犠牲者や行方不明者についてほとんど説明を行ってきませんでした。それどころか、事件から1年余りの間、政府は「天安門広場に行ったのか」や「デモに参加したのか」など多くの人に聞き取りを行うなど徹底的に調査していました。 尤さんはこうした政府の心理的な圧力が、今の中国社会につながっていると語気を強めて訴えました。 尤さん 「政府の圧力によって、市民は自分たちの家庭で何が起きたのか、言い出すことを恐れていきました。時間の経過とともに真相を語る人を探し出すことはいっそう難しくなっています。今では多くの人が事件についてよく知りません。35年がたち、若い世代は天安門事件に関心すらない状況です。これはこの間、政府が隠ぺいと沈黙を続けてきたからだと思います」 メッセージアプリに突然、使用制限 今、中国政府は、事件を国民の記憶から消し去ろうとする動きをさらに強めています。 遺族グループの今の活動の中心メンバーとなっている尤さんに対する監視は、6月4日が近づくにつれて厳しさを増していました。 尤さんのメッセージアプリ「ウィーチャット」は、4月ごろから機能が突然、制限され、ほかの遺族とのグループでのやりとりが一切できなくなりました。 ウィーチャットは中国国内では、使っていない人はいないほど、最もポピュラーなSNSです。“遺族どうしがつながることを阻みたい”、35年という節目に当局が神経をとがらせている様子がうかがえました。 尤さんが所在不明に 警告、そして尾行 尤さんに話を聞いてから、およそ1か月半たった先月(5月)31日。私は再び彼女の自宅を訪れました。もう一度話を聞きたい、そう思ったからです。 しかし、不在でした。連絡すらつかず、所在がわからなくなっていました。 自宅から立ち去ろうとした時、突然、警備員に呼び止められ、「何をしに来た。2度と来るな」そう警告されました。さらに、私服警察官とみられる2、3人の男たちが、私のあとを追うようについてきました。尾行は、私たちが車に乗り込むまで続きました。 尤さんとようやく連絡がついたのはその4日後、6月4日の午後でした。電話口の声は重く、監視役としてそばにいるとみられる当局者らしき女性の声が聞こえました。 「しばらく自宅にいることができない。近況も話しづらい。ごめんなさい」 短く状況を伝えてくれました。身に危険はないか心配する私に、彼女は「大丈夫」そう返し、電話は切れました。 男たちに囲まれて警告、墓地に近づけず あの日が近づくにつれて、天安門を東西に突き抜ける大通り「長安街」は異様な雰囲気に包まれていきました。前日3日午後、同僚のカメラマンが、多くの犠牲者が見つかった木※せい地という場所に向かいました。(※木へんに「犀」) 今は地下鉄の駅があり、隣には警察の派出所が設けられています。撮影機器が入ったリュックサックを開けようとした瞬間、十数人の男たちに取り囲まれ、立ち去るよう警告されました。 厳しい警備の共同墓地 6月4日の様子 そして4日当日。犠牲者が埋葬されている北京郊外の共同墓地には、多くの警察官が配置され、厳戒態勢が敷かれていました。近づくことすら許されず、命日の墓参りに訪れる遺族への取材はできませんでした。 天安門の叫び、今も 「天安門事件は、中国共産党による『国民の虐殺』にほかならない」 遺族たちのこうした訴えは「人民のために奉仕する」という共産党の正当性を、根幹から揺るがすことになりかねない、そう政府は考えているのかもしれません。だからこそ、政府は沈黙を貫き、時がたち人々が事件を忘れ去るのをじっと待っているように感じます。 かつて、私に「知る必要はないよ」と語った父と同じように、多くの国民が知らされずにきた35年。 それでも中国国民のなかには、天安門広場で民主化を叫んだ若者たちと同じように、一党支配への不満や、社会への責任感を持つ人がいます。 北京での白紙運動(2022年11月) おととし、中国政府のゼロコロナ政策への不満を背景に起きた抗議活動「白紙運動」。 そして去年、李克強前首相の急死後に各地で広がった追悼の動きと現指導部を暗に批判する追悼のことば。 私は、もう1つの祖国で今、事件とどう向き合うのか。 取材に応じてくれた張さんと尤さんの2人のことばを反芻しています。 「生きている間に事件の解決は見ないかもしれないが、それでもかまわない。 息絶えるその瞬間まで、生きているかぎり、訴え続ける。あなたも、この声を多くの人に届けてほしい」 (6月4日 ニュース7などで放送)
中国の習近平政権下で強まる抑圧と監視 天安門事件35年 記者にも尾行が?遺族が訴え続ける意味とは? | NHK | WEB特集 | 中国
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高取山近辺 断片的な記憶
思ったより移動に時間がかかり、駐車場についたのが12時。これから登るのはスタートが遅い。でも仕方がない。 準備を簡単にする。何年か前に買ったポストペットの日焼け止めをやっと使い切る。登山に際して少しでも軽くしようとビニールのパッケージを外し、SPF情報は手で書き直したもので少し思い入れがある。塗った後にタイヤの下に入れるように日焼け止めを置いた。
下っていくとハイキング帰りの人が見える。こんな時間に駐車場から登山装備で出てきた私のことをどういう目で見るのか。気にしても仕方がない。目を合わさずにすれ違う。
今日は携帯のアプリで見るオフライン地図がない。最近のYAMAPは地図のダウンロード制限が厳しく、無料会員ではここぞというときにしか地図が使えない。 しかし、低山でGPSに頼っていては仕方がない。これは訓練だ。
道祖神で分岐する。地元の老人会が作ったという手書きの地図を念のため写真に収めておく。 舗装された道を登るが、ときどき蜘蛛の糸の感触を顔や手に感じる。これが残っているということはあまり登山者がいないのかもしれない。1m程度のヘビが自分の前をゆっくり横切るのを待つ。
聖峰にはすぐ着いた。四人組のパーティが二つのテーブルを使っていた。一人がタバコを吸っていて、ライターを落としたので拾って渡した。右の二の腕に大きな蜘蛛の巣のタトゥーが入っていた。
何人かの左手の薬指に指輪をしているのが見える。自分が育った家では誰も指輪をつけていなかった。
四人組が去り、私が単眼鏡でスカイツリーを探していると上の方から中高年の二人組が下ってきた。一人はゲイターを足に巻き、もう一人は長ズボンの裾を靴下に入れていた。明らかにヒル対策と思われるため、ヒルが出るの��聞いた。道は選ぶと思うが、それなりに出るらしい。塩を持参しているから大丈夫だ、と答えた。
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二匹の蝶々が飛んでいる。お互いを追いかけるようにくるくると回転している。 どちらかが求愛していて、それをかわそうともう一匹が逃げているようにも見える。 蝶々がムードをどのようにとらえているかはわからないが、そんなことに時間とエネルギーをつかわずにさっさと交尾すればよいのにと思った。 けれどその直後に自分の考えが甘いことを恥じた。おそらく、愛を証明しろということなのだ。さっさと逃げられて、それで諦めるような相手であれば、そこまでだったということだ。時間とエネルギーを愛の証明に使わずして、一体何に使うというのか?
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梅の風味ののど飴を口に入れる。最適な登山ペースというのはギリギリ口の呼吸をしない程度であると前本で読んだ。 飴をなめている間は口で呼吸することが難しいのでペース管理に役立つ。 放っておくとすぐにペースがあがり、結果バテることになる。自分のことは自分が一番知らない。
高取山山頂はすぐだった。木の間から少しだけ大山方向が見える。大山の中腹に雲がかかっている。ほのぼのとした絵本のような山。先ほどの四人組とまた会った。会うのが二回目に���ると挨拶をするのは野暮だ。疲れていないので休まずそのまま大山方面の尾根を進む。 ちょっとだけ歩くと林道に出るはずで、今日はそこまでは見ておきたかった。いつかこの林道から大山に上ることができれば、自分の歩いた道筋で大山山頂までをつなぐことができる。
ゆるやかな下りの途中、草むらにタヌキがいた。こちらに気づくと逃げた。逃げる速度はシカや猿よりも遅かった。本気で走れば追いつくだろう、という速度。 小熊だったらどうしようか、親が来てもどうすることもできないが、ちょっとだけ気を張った。そのあとすれ違った人には「クマに襲われたらすみません」と心の中で謝った。
山ではすれ違う人には挨拶をすることが一般的だ。ただ、すべてのひとが挨拶を徹底しているわけではない。挨拶されたら返す、というスタンスの人も一定いる。 相手が挨拶を返すことができない、すれ違うギリギリで声をかけることを置き挨拶と心の中で呼んでいる。
目的の不動越までついたので引き返す。
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今日はコミティアがあった。私にはコミティアで買いたい本があったが、行くつもりはなかった。大学のころはサークルで同人誌を作り、発布したことがあった。私はいま本や漫画を描いたりしていない。 せめてと思い久しぶりに日記を書こうとこの時に決めた。
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また高取山に戻ってきた。ここからは一旦南に向かって下る。 緩やか��走りやすい道なので軽く走りながら下山する。5分ほど下りて、妙に日差しが明るくなって町に近づいていることに違和感を覚える。秦野の街が見える。方向が違う。 地図アプリで現在地を見る。尾根を間違えて真西に下りていた。 このまま下りても駐車場にはたどり着くことができない。 仕方なく来た道を引き返すことにした。走って下りた道を登り返すのは本当に馬鹿らしい。軽快に下りたことを心底後悔する。 自分の信じる宗教によっては、これは神が与えた試練であると考えることもできるだろう。 それについて私は、自分の都合のために神を利用するということだろうかと考えた。これも機会と考え、単にトレーニングとして活用すればよい。 いや、起きた事象を自分の何らかに利用するという考えが愚かであると感じた。 「せずにすめばよいのですが」。これは筆耕人バートルビーの象徴的なセリフだ。 全てのこと、すべての選択に対して、イエスでもノーでもなく、オルタナティブな態度を貫く。それこそ私たちがなすべきことではないか。バートルビーであれば今どう考えるか?そのように利用されることも快く思わないだろう。思い上がりなのだ。 院生の時に私にバートルビーを教えてくれたあの人は、今も神戸にいるのだろうか。
空の色が反射して枯れ葉が青く光る。ラジオで聞いた「煩悩即菩提」という言葉を思い出す。 煩悩があっても悟りに至ることができる。むしろ、煩悩がなければ悟りに至ることはできない、という説明だった。 煩悩を知ってこそ、煩悩の輪郭を知ることができ、そこから脱することができる、と解釈はできる。しかし、これは慈悲の言葉にも見える。煩悩があろうが正しく生きることが大事なのだ、まだ引き返せる、がんばれ、みたいな。 それはどうなんだろうか。煩悩���知らずとも悟りに至ることは理論上可能だろう。 煩悩を利用して悟りに至る。すべてのものを利用するという態度が気に食わない。 理由はなく、すべてのものがそこにある。ただ一切は過ぎていきます。
また、高取山の頂上に着く。居た人と会話する。私の経路のことを話すが、全然話が通じない。高取山に一度ついてから別の尾根を2回下りて登って、という人は少ないはずだし、意味が分からない。 親切なことに「昼下りのジョニー」という名前のヒル避けスプレーを貸していただけた。靴にかけるのが下手くそで無駄に何度も使ってしまい、心から申し訳なく思った。
ここからはそのまま帰っても面白くないので正しく南下して弘法山方面に向かうことにした。 17時に駐車場が閉められるが、まだ余裕はあるはずだ。
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行きの車では「サカナクション山口一郎のナイトフィッシングRadio」の録音を聞いた。 ジッタリン・ジンの特集で、ドライで明るい感じが心地よかった。 「君がいた夏はとおい夢の中 空に消えてった打ち上げ花火」。 そんなことがあったか?と自分の昔を思い出す。
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ざっくりした緩やかな下りで、スピードを上げやすい。 多少衝撃があったほうが骨にも良いだろうと雑に駆け下りていく。
昨日の夜、若干寒気を感じた。風邪を恐れているので葛根湯を飲み、肌着を一枚増やし、ズボンの上にさらにズボンを履いて寝た。 朝は特に風邪っぽさはなかった。でも不安はあった。 登山することで自分が風邪でないことが逆説的に証明できると考え、そのために今自分が山にいる。そんなストーリーを一瞬、後付けで理由として考えた。
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亡くなった犬のことを思い出す。 僕らには忘れないことぐらいしかできない。
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ちょっときつい急登を登る。木の根を探してそこを頼りに登っていく。 頂上からは東に下りることができるが、南下して弘法山方面に向かう。
大昔、山を切り開いて作った切通しのあとがある。 その道端に頭が石で置き換えられた地蔵が二体いる。
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来る途中、後ろの車が前方のGEOに入店するために一時的に対向車線に入り、右折して駐車場に入るところを見た。その際、右折のタイミングを間違えたのかサイドスカートを縁石にぶつけ、周囲に大きな音を立てていた。縁石にはこすったパーツの跡が見えた。
森を一人で歩いているとこういう、よくわからない事を何度も思い出す。 登山の良さは何なのか。圏外になって誰とも繋がれない時に自分の暮らし、過去、将来などから距離をとって考えることができるのが魅力だと思う。それができれば頂上は必要ない。
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あなたが私の本をわざと返していないことを知っている。
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すでに16時が近く、時間的な余裕、体力的な余裕、足が壊れないことの保証(最近アキレス腱の調子が若干よくない)もないので、弘法山までは行かずに、246のトンネルの上付近で東に下ることにした。 吾妻山の頂上でミックスナッツと水分を補給した。見晴らしはいいが、標高が低く建物が縦方向に圧縮されてあまり見栄えが良くない。
勢いで下山する。だがこれで終わりではない。駐車場まで戻るのだ。駐車場まではあと2kmある。しかも登りだ。 公共交通機関の登山と自家用車の登山は訳が違う。何があっても必ず車に戻るのだ。行きて帰りし物語なのだ。
施錠30分前に駐車場についた。学生が一人、吹奏楽の練習をしていた。 混んでないはずなのになぜ私の車の横に車が止まっているのか、気にはなったがタイヤの下の空になった日焼け止めを回収して、靴を履き替え、服を着替え、ドライブスルーができる店を手早く探し、車に乗って帰った。
2025-06-01
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五月にみたもの覚え書き
世がゴールデンウィークだからといって別に休みでもないのは毎年のことなのだけれども、なんもせんのもなんなのでなにかしらやることにしている。今年は東洋美術史をざっくり勉強する、と決めて、4月の末に武蔵野美大出版局の『東洋美術史』を買ってきた。ゴールデンウィーク中に通読することを目標にしていたものの、すっとろくて半分もいかず、五月も終わろうかという頃にようやっと読み終わった。ついでなのでずっと積んでいた美術出版社の『東洋美術史』も併読して、こちらも完走した。
で、先日、用があって神戸に帰省した。ついでなので奈良に寄ったりして、あれこれ見てきた。その覚え書き。
大和文華館にはずっと行きたいと思っていたのだけれどもなかなか機会がなく、あっても逃し、行きたいな行きたいなと思っているうちに十年くらい経っていた。行けてうれしい。老若男女がバランスよくおり、そのどの層も、出されているものを信頼してじっくり見ているかんじがあってよかった。健全な集中力が展示室内をひたひたにしている。
静かな衝撃だったのが北魏の石造二仏並坐���で、字の通り、仏と仏が並んで坐っている。こういう形式の仏像をはじめて見た。ほんのわずかに顔がお互いの方に傾いている。小ささも相俟って、閉じた、親密なかんじがする。とてもいい。
青花双魚文大皿。二匹の魚のまわりに水草を二種描いている。一種は金魚藻みたいな形のやつで、もう一種は一枚一枚の葉の長いもの。前者が星を散らしたみたいな効果を出しているのに対し、後者はストロークの長い有機的な曲線が水の流れを感じさせるような効果を出していて、この取り合わせの妙がいい。外側は陸の植物複数種が切れ目なくぐるりと囲む(四季の花を組み合わせることで永続性を象徴させているらしい)。魚は、描かれている見込みの面積からすると小さめなのだけれども、背びれをグッと立てて全開にし、胸を張っるようにして頭のほうを起こし、口をギュッと結んで、上げた顎ごしに下を睨みつけるような、気合の入った顔をしている。でも小さい。小さい体に大きいガッツというかんじがして、いい。真横から描かれているが、胸びれも腹びれも左右両方が見えるようにズラしてあり、それが動きと若干の立体感を感じさせて、イキイキして見える。「魚」は中国語の発音がと「余」と音が同じなので縁起がいい、ということらしいけれども、たとえ縁起が最悪だったとしてもぜひ見たい、いい絵。
『大和文華館所蔵品目録』として矢代幸雄直筆の書類が展示されていた。使われている紙が大和文華館仕様の原稿用紙なのだけれど、これがとても素晴らしくて、上部に広くスペースが設けられているので図なり註なりをたっぷり書き(描き)込める。一枚あたりがA5くらいの縦長で、ふつうの原稿用紙のハーフサイズ(だから200字?)になっている。もしやミュージアムショップに売ってやしないかと覗いてみたけども、なかった。売るべきだと思う。売ってください。
国宝展開催中の奈良国博は噂に違わぬ大混雑。奈良国博が、というより奈良がもう全体的に大混雑で、鹿にしても飽食状態なんかして人間に対する関心がやや薄く、煎餅差し出されても「まあそんなに言うんやったらもらってやってもいい」くらいの反応でしかない。しんどいので、見たかったやつだけじっくり見た。
百済観音は細身な印象が強いが、腕は案外太い。肩の丸みがそのまま腕の太さになって、そのまま肘までおりるかんじ。本体のS字のシルエットに共振するように、装飾の曲線がつく(耳飾りと袖)。全身のシルエットそれ自体��蝋燭の灯のようにも見える。
宝菩提院願徳寺菩薩半跏像。ウナギの群れのごときぐりゅんぐりゅんの衣文がすごい。衣自体にはほとんど嵩がなくて、濡れた布が体にまとわりついているようでもある。滝を描いた山水画をなんとなく彷彿とさせる。菩薩の体を源として、なにかが激しく流れ落ちているかんじがする。この作品を取り囲む人だかりからおじさまがひとり、「ピカイチやな……」と呟きながら出てきた。ほんまやね。
中宮寺菩薩半跏像。この一軀のために一室設けられている。白い空間の真ん中に、黒い仏像が置かれている。シルエットの簡潔さが際立つ。パッと見は安らいだ表情のようにも思えるのだが、単眼鏡で眺めてみると小鼻の上あたりの肉にやや緊張したかんじがあり、差し迫った表情のようでもある。左目の下に筋状に漆の乱れがあるようで、これが涙の跡ようにも見える(同展出品の法隆寺地蔵菩薩立像の左目下にも筋みたいなものを見つけたけどなんなんだろう)。肘の位置が左右でけっこう違うが、肩は水平で、前後にもずれない。後ろ姿がいい(今回の展示では360°どこからでも見ることができる。一生分見とくつもりで、長いこと真後ろに立ってボーっと眺めていた)。肩甲骨などの凹凸は彫り出されず、中央の溝だけが一本、すばらしい微妙さで彫られていて、背中のなめらかな曲面の連なりをつないでいる。やや前側にかがみこむような姿勢なので背中がわずかに丸まっていて、そのことによって高い集中力を感じさせる。尻は体重で潰れることなく、高さを保ったまま小ぶりに締まる。それで腰の位置が高く見え、上半身に若干浮遊感が生まれているように思う。
神戸にいる間に空いた時間で白鶴美術館にも行ってきた。ここは春季と秋季だけ開館していて、対する私は夏と年末年始くらいしか帰省しないので、行きたいな行きたいなと思っているうちに十年くらい経っていた。行けてうれしい。阪急御影から山側に十数分くらい歩いたところにある。
おもに本館一階の展示室の古代中国の青銅器をじっくりみた。図版で見るといかにもいかめしいかんじがあって、近寄りがたく思っていたのだが、実物を見ると案外まろやかな印象を受ける。表面がなめらかな部分なんかは翡翠みたいに見える。単眼鏡で細部を観察するのがとても楽しい。饕餮夔龍文方卣は特にのびのびとしたかんじがあって、把手のつけ根のひょうきんな顔(キリンのツノみたいなのが生えている。顎がしゃくれていて、ちょっと口角が上がって見える)とか、フタの持ち手の犬の顔がついた鳥みたいな造形とか、見ていて飽きない。象頭兕觥は字の通り象の頭が象られていて、おもしろい。
西周時代の車馬具のなかに「節約」という名称のパーツがあっておもしろかった。綱紐をつなげるのに使う、K字状のもの。
金象嵌渦雲文敦は足とフタのついた球形の青銅器で、器形がまずたいへん愛おしい。三本足(動物の足のような形。こどもの虎のみたいなかんじ。かわいい)に二つの把手(虎?の顔)がついていて、顔に正面から向きあうようにして見ると足の一方が近く、もう一方が離れて見えることになり、そこにリズムが生まれている。なおフタには環が三つついていて、今回は足の位置に揃えて置かれていたけれども、ズラしてみるとまた違うリズムが生まれそうで、妄想していると楽しい。この環というのがやや外向きに開くように配置されていて、その点でも大らかさというか開放感みたいなものが感じられ、好きにさせられてしまう。
二階は漢から唐ぐらいまでの金工作品が出ていた。
鍍金花鳥文銀製八曲長杯は八辨の花形を横に引き伸ばしたような変わった形をした器で、杯というには浅いようにも思えるけれども、皿というには深さがある。外側側面は、銀色の地の上に金色の植物と鳥の文様がたっぷり詰めこまれている。他にも唐代の小品がいくつも出ていたけれども、いずれもたいそう趣味がよくて、なんという時代であろうかと思った。自分が遣唐使だったらたぶん、船に積む品物が選べなくて泣いちゃう。
二階の展示室の端っこの小さい区画(昔は貴賓室だったらしい)が次の展示の予告のコーナーということになっていて、出品予定の南宋と明のやきものが出ていた。次は陶磁器の名品展的なことをやるらしい。自前のコレクションであれこれ展示を組み立てて回していけるからこそできることなんだろうなと思う。賢い。
新館ではコーカサスの絨毯をみた。閉館間際であんまりゆっくりはできなかったのだけれども、眼福だった。V字型の鳥がたくさん織り出されたカザック絨毯が特によかった。絨毯の真ん中の淡い緑色の菱形の区画に、クリーム色、黄土色、朱色、こげ茶色の鳥がわんさかいる。絨毯の縁の枠の部分にもちらほらいる。
帰りは住吉川沿いを少し歩いた。それからどういう道を通ったのかあんまり覚えてないのだけど、途中に時間が止まったような小さい公園を見つけた。一度は通りすぎたものの、やっぱり気になったので引き返し、写真を撮った。近くのどこかの部屋からピアノの音が聞こえていて、同じフレーズがつたない指で繰り返し練習されているようだった。

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Oct. 26th, 2023 おにぎりの顔、また失敗したですよ。具は高菜漬けにしたです。ぎうにくと糸コンのきんぴら、切り干し大根の煮物、ほうれん草のおひたしなどですなあ。
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アクセントだけじゃない 薬味の凄さ!
大根おろし、ゆず、かぼすなどの柑橘類・・・何を連想しますか?
実は、これらは薬味として使われることの多いものなんです。
薬味には、様々な種類があり辛味や独特な香りで食材のおいしさをより一層引き立てる香味野菜や香辛料のことです。
麺類や鍋ものなどの料理には欠かせない薬味には、どのような種類と役割があるか。
今回は薬味について取り上げてみました。目次
アクセントだけじゃない 薬味の凄さ
薬味とは
薬味から得られるさまざまな効能
薬味の歴史
薬味の種類と味や具体的な役割
野菜類
ネギ
ニラ
タマネギ
大根
セリ
三つ葉
シソ
タデ
木の芽
ショウガ
ミョウガ
ニンニク
行者にんにく
わさび
ホースラディッシュ
クレソン
パセリ
セロリ
コリアンダー(パクチー)
ミント
ドクダミ
ウイキョウ
ケッパー
バジル
ルッコラ
レモングラス
菊の花
かいわれ大根
海草類
海苔
青のり
あおさ
ヒトエグサ
とろろ昆布
香辛料
唐辛子
コショウ
カラシ
山椒の粉
花椒の粉
クミン
パプリカ
カルダモン
アニス
八角
ナツメグ
ターメリック
シナモン
ローリエ
陳皮
柑橘類
レモン
ライム
ゆず
カボス
スダチ
シークヮーサー
ダイダイ
種子類
ゴマ
ラッカセイ
クルミ
松の実
マカダミアナッツ
果実類
梅干し
干しブドウ
クコの実
魚・動物性のもの
削り節
サクラエビ
ちりめんじゃこ
その他
天かす
油揚げ
油条
最後に
関連
アクセントだけじゃない 薬味の凄さ

薬味とは
薬味とは、料理の風味を良くしたり、食欲を増進させたりするために添えたり、料理に混ぜたり、つけたりする調味料のことです。
薬味には、わさび、ネギ、生姜、ミョウガ、大根のつま、すりごま、シソ、唐辛子、青のりなどがあります。
薬味は、料理の味を整えるだけでなく、食欲を増進させたり、消化を助けたり、殺菌効果を発揮したりするなどの効果があり焼き魚や鍋料理、冷奴や麺類などにひっそりと添えられていたりもします。
そして薬味を添える食品に合ったものを選ぶのが大切で、辛味や酸味、香りなどを引き立ててまた違ったおいしさに変えてくれます。
また薬味とともに食べる料理はおいしいだけではなく、体にとって様々な利点を得られるところも薬味の魅力です。
少量でもクセになるおいしさを引き出す薬味は、呼び名の通り薬のような効果を得られることも。
薬味は漢方薬の薬方を作る際の生薬であり、料理に添えられる薬味の中には漢方の材料として使われるものがたくさん存在します。
薬味から得られるさまざまな効能
世界中で脇役ながら欠かせない薬味は種類がたくさんあります。
日本で使われている代表的な薬味は、ネギや三つ葉、生姜やミョウガ、わさびや大葉など非常に豊富に食べられていますが、これらの薬味からは殺菌作用や疲労回復、血流促進、免疫力向上、精神的安定、食欲倍増効果、消化促進など、挙げだしたらきりがないほど得られる役割が多いのですよ。
薬味の種類の部分で後述しますが、料理の質を上げるために薬味はなくてはならない食材の一部となっています。
薬味の歴史

普段様々な料理に合う薬味を添えて食べていますが、薬味の歴史は深いものです。
もともと薬味は世界中でスパイスやハーブとして多方面で活用してきました。
広大な国土の中で調達した食料を何日もかかって運ぶ必要があったヨーロッパでは保存を目的としてスパイスが活用され、耐え難い暑さの中で生活を送るインドや東南アジア諸国では、食欲を回復させるためにスパイスやハーブが使われてきました。
また、強い臭いを放つ肉類の臭み消しに使用したり、反対に香りを付けたりと、用途を選ばないスパイスやハーブは食生活を送る上で今も昔も手放せなかったものです。
しかし、日本ではこれだけ多くの薬味が定着したのはつい最近のことです。
1970年代半ばまでは浸透しておらず、商品が店頭に置かれることはあまりありませんでした。
もちろん家庭で常備してあるはずもなく、スパイスやハーブを積極的に使うという概念がなかったのです。
日本は島国ということもあり、海の幸や山の幸が豊富に取れ、国の中で運んでも新鮮な状態を維持したまま食べられます。
したがって、日本は他の国のように何かを得るために使用する目的ではなく、食材にアクセントをつけるために薬味を使ってきました。
さらに、スパイスやハーブを日本人が薬味として扱っている理由は、魚介類に慣れていることも挙げられます。
至る場所で魚類の入手が可能なこともあり、素材の味がダイレクトに出る刺身や寿司の新鮮さをそのまま生かせる薬味としての使い方が促進されてきました。
ただ、日本で薬味の歴史が全くなかったかというとそうでもありません。
日本で薬味の始まりはうどんの食べ方からだと記録が残っています。
江戸時代初期の1661~1672年には、江戸に住む町の住人たちにうどんが人気となります。
この頃にうどんを口にする際は、薬味も取り入れられるようになったとされています。
江戸時代の古典書籍では、「薬味として梅干し、垂れ味噌汁、鰹の汁、胡椒、大根、醤油汁がよい」という記録が残っています。
そのため、江戸時代で使われていた薬味は現代の薬味でいうコショウや大根などだったと言われています。
薬味の種類と味や具体的な役割
刺身には大葉やわさび、鍋ものには大根おろしなど、人によって薬味を使う料理は様々です。
好みもあるため、この料理には必ずこの薬味を使わなければいけないということはありませんが、薬味の種類と味を知って、詳しい役割なども覚えておくと良いと思いませんか。
野菜類
ネギ

薬味では定番のネギは、シャキシャキとした食感と鼻を通り抜ける辛味が食材のアクセントになる薬味です。
辛味成分である硫化アリルと呼ばれる成分が含まれており、殺菌、抗菌の他にも血流促進や利尿作用などもあります。
ニラ
ネギとはまた違った独特の風味があるニラは、渋めの香りで食材の味に奥行きを持たせてくれる風味に仕上がります。
ニラもネギと同様に硫化アリルが含まれており、腸内環境を整えて高血圧や糖尿病を予防し、代謝を良くする役割などもあります。
タマネギ
料理の材料として登場する頻度の高いタマネギは、歯応えの良いショリショリとした食感と控えめな辛味で、食材の持ち味を引き立てる薬味です。
タマネギのツンとした香りもネギやニラと同様の成分が含まれているためです。タマネギは動脈硬化や血栓予防、抗炎症作用などにも良いとされています。
大根
焼き魚や鍋物などに添えられる大根おろしは、ピリッと辛い風味がクセになる薬味です。
大根おろしを薬味として使った料理は刺激を感じる風味はありますが、口の中で馴染みやすいためよりおいしさがアップします。
大根はすりおろすことでイソチオシアネートという成分が生まれ、殺菌や抗酸化作用、老化防止や肝機能などの向上に良いとされています。
セリ
歯応えがしっかりと感じられ、独特のクセが強めのセリ。主に香りを楽しむために使われることが多く、好き嫌いが分かれる薬味の一つです。
苦味があり、和風料理だけではなく洋風の料理とも相性ピッタリです。
抗酸化作用や認知症予防、解熱作用などの役割があります。
三つ葉
和風料理に鮮やかをプラスする三つ葉は、香りや味わいが濃く感じられる薬味です。
濃いめの味付けに仕上げた料理に負けない風味があるため、緑を足したいときにも役に立ちます。
三つ葉は美肌効果や高血圧予防、視力維持などの役割をします。
シソ

魚や肉などのどんな食材とも合うシソは、万人受けする香り高い薬味です。
鼻をくすぐるような香りは、マンネリした料理をパッとおいしく変えます。
シソは動脈硬化の予防や皮膚や粘膜の細胞を健康的に維持するなどの役割があります。
タデ
刺身の横にひっそりと添えられている赤身みがかったタデは、強い辛味がある薬味です。
特に香りの強い魚と合い、川魚の塩焼きなどと一緒によく食べられています。
血流改善や加齢性眼病予防、高血圧改善などの役割があります。
木の芽
木の芽は山椒の若葉のことを指し、手で叩くことで香りが出ます。
お吸い物やちらし寿司などの香りや風味がダイレクトに出る料理に良く使われ、木の芽のほのかな香りが楽しまれています。
食欲増進や胃腸の働きを良くする役割があります。
ショウガ

舌の上でピリピリと感じる辛味がどんな料理とも合うショウガは、料理に使うと隠し味のような存在になります。
口の中で広がる辛味と、じんわりと残る温かさがおいしい薬味です。
生のものと加熱させたものでは役割が異なりますが、抗菌作用や代謝促進、冷え症の改善などの役割をします。
ミョウガ

ふっくらとした歯応えのあるミョウガは、薬味の中ではさっぱりとした味わいをしています。
苦味もあり、料理に使うと爽やかな香りを感じるミョウガは、血行促進やむく��防止などの役割を持ちます。
ニンニク
ショウガに続いて使用頻度の高い薬味であるニンニクは、料理に使うとふわっと広がる香りで料理の味を包みます。
食欲をそそる香りがするため、風味を強くしたいときにもニンニクが役立ちます。
ニンニクは糖代謝を促進したり、疲労回復、かぜ予防などの役割をします。
行者にんにく
行者にんにくもニンニクに似た香りがする薬味です。好みが分かれる香りですが、シャキシャキとした食感は醤油漬けや酢味噌和えにして食べられています。
血流の流れを良くし、心筋梗塞や脳梗塞、生活習慣病の予防などに良いとされています。
わさび

混じり気のない自然な辛さが爽やかに感じられるわさびも薬味としてお馴染みです。
突き抜ける辛さは食材のおいしさを引き立たせます。
わさびは抗菌作用に加え、消臭効果や発がんの予防などの役割をします。
ホースラディッシュ
ホースラディッシュの和名は西洋わさびです。
和わさびと比較すると色が白っぽく、1.5倍の辛さがあります。
肉類との相性が非常に良く、マヨネーズやサワークリームなどと組み合わせてソースを作ってもおいしく頂けます。
ホースラディッシュは抗菌作用で食中毒を予防し、血栓予防などの役割もあります。
クレソン
近年食べる方が多くなってきたクレソンは、独特な苦味や辛味がある薬味です。
ステーキやハンバーグにアクセントを加え、そのままサラダとして食べることもあります。
クレソンは筋肉痛やこむら返りの改善やアンチエイジング、口臭予防や食中毒の予防などの役割をします。
パセリ
唐揚げなどに添えられているだけで、あまり食べないという方も多いパセリは、強い苦味と青臭さがあります。
肉料理などを食べたあとにパセリを食べると、口の中がさっぱりとします。
パセリは、貧血予防や免疫力の向上などの役割をします。
セロリ
セロリも薬味の中で好き嫌いが分かれる食材です。
風が通ったようなスーッとした独特の香りは爽やかに感じられ、みずみずしい食感を味わえます。
セロリはストレスの緩和や止血の促進、高血圧の改善などの役割をします。
コリアンダー(パクチー)
スパイス系の薬味であるコリアンダーは、カレーのスパイスとしてよく使われています。
コリアンダーは名前が違うだけでパクチーと同じ植物です。
強く青々しい香りがありつつも、後を引かないすっきりとした味は、風味を引き立てる薬味です。
コリアンダーは美肌効果や消化促進などの役割があります。
ミント
強くすっきりとした感覚が明確なミントは、はじけるような清涼感の強い薬味です。
ミントを使うとスースーとする味わいで、口の中をさっぱりリフレッシュしてくれます。
ミントは、鎮静作用や乗り物酔いの予防、胃腸の働きを整える役割があります。
ドクダミ
お茶としても活用されているドクダミも薬味として使えます。コリアンダーに似た味わいがあり、爽やかな風味もあります。
ドクダミは、利尿作用や解熱、解毒などの役割をします。
ウイキョウ
ウイキョウは甘さと苦味を感じる奥深い味わいと、クセのある香りを出せる薬味です。
ウイキョウは母乳の出を良くしたり、消化器系の鎮静をするため痙攣を防止する役割があります。
ケッパー
ケイパーとも呼ばれるこの薬味は、つぼみの酢漬けのため、ケッパー独特の風味と酸味が楽しめます。
しかし、ケッパーの存在が強調されるような味わいではなく、あくまで添える料理がメインとなる味や風味です。
ケッパーは、リウマチや便秘改善や食欲増進、抗がんなどの役割があります。
バジル
バジルは強い爽やかな香りと少しの苦味を持つ薬味です。
料理に添えると食欲が刺激される良い風味を楽しめます。
バジルは、がんや動脈硬化の予防、リラックス効果などの役割があります。
ルッコラ
ルッコラはゴマのような風味と舌の上で少しはじけるようなピリッとした辛さがあり、ものによっては強い苦味があります。
ルッコラは、高血圧予防や骨粗しょう症、粘膜を健康に保つなどの役割をします。
レモングラス
レモングラスは一般的なレモンと同じ香り成分が含まれているため、レモンとほぼ同じ香りと味がします。
透き通るような爽やかな香りと、クセのない酸味を引き出すことができます。
レモングラスは、腹痛や下痢の緩和、食あたりの予防、殺菌と抗菌作用の役割があります。
菊の花
鮮やかな黄色で薬味としてよく見かける菊の花は、爽やかな香りと少しの甘みが感じ取れます。
菊の花は、抗酸化作用や殺菌、解毒、皮膚と粘膜を丈夫にする役割をします。
かいわれ大根
かいわれ大根は比較的強めの辛さを感じる薬味です。そこまで強い香りはないため、様々な料理の薬味として使われています。
かいわれ大根は、ホルモン調整や抗酸化作用、がん予防などの役割があります。
海草類
海苔
淡白ながらも奥深い味わいをしている海苔は、クセがほとんどないため少し香りを感じたいときに役立つ薬味です。
海苔は血中コレステロール値の低下や貧血予防、二日酔いや慢性肝炎予防などの役割をします。
青のり
青のりは磯の香りが非常に良く味わえる風味をしています。
青のりは、便秘改善やむくみ予防、美肌効果などが期待できます。
あおさ
青のりとよく似たあおさは、独特の苦味がある薬味です。
もちろん磯の香りもしっかり楽しめます。
あおさは、骨や歯の健康維持や腸内の善玉菌を増やす役割があります。
ヒトエグサ
青のり、あおさと並んでよく似ているヒトエグサは、葉が厚めで香りが良く、柔らかい食感が楽しめます。
ヒトエグサは、免疫力の強化や疲労回復、整腸作用などに働きかけます。
とろろ昆布
見た目で好き嫌いが分かれるとろろ昆布ですが、昆布の香りや味が十分に楽しめる薬味です。
とろろ昆布は、糖分や脂肪分の吸収を抑制したり、便秘解消などに良いとされています。
香辛料
唐辛子
辛さが明確な唐辛子には青と赤がありますが、より辛味を感じるのは赤唐辛子の方です。
唐辛子は引き立つ強烈な辛味があるため、辛い薬味が欲しいときに���ッタリです。
唐辛子は、基礎代謝をアップさせたり、体を温める役割をします。
コショウ
調味料としてのイメージが強いコショウも薬味の一つです。
種類がいくつかあるコショウはそれぞれ風味や味が異なります。
ブラックペッパーはコショウを強く感じる独特の風味があります。
ホワイトペッパーはブラックペッパーより風味が控えめになっており、青コショウは辛味がある反面、爽やかな風味がある種類です。
赤コショウは色合いが綺麗でマイルドの風味を楽しめます。
コショウは、血行促進や消化機能の向上などの役割をします。
カラシ
カラシはマイルドな辛さがあり、後からくる旨みを引き出せる薬味です。
ただ辛いだけではなく、優しい辛さの中においしさがあります。
カラシは、殺菌作用や動脈硬化の予防などの役割があります。
山椒の粉
薬味として使う山椒の粉には柑橘系に似た香りを持ち、軽く舌が痺れる辛味があります。
山椒の粉は、骨や歯を構成したり、たんぱく質の合成などを行う役割があります。
花椒の粉
鮮やかな色合いが美しい花椒の粉は、爽やかな香りと口の中で広がる痺れが味わえる薬味です。
花椒は、消化液の分泌を促したり、消化不良を改善する働きがあります。
クミン
クミンは強い芳香がありますが、苦味と辛味は思いのほか控えめの薬味です。
口の中で広がる風味を味わえます。
クミンは、髪や爪などの細胞を再生、免疫機能を維持するなどの役割を担っています。
パプリカ
パプリカとピーマンは同じ野菜であり、パプリカはハンガリー語でピーマンを意味します。
味は控えめな甘みと微かな苦味があります。
パプリカは、細胞を保護する作用やむくみ予防、動脈硬化などの予防に働きかけます。
カルダモン
カルダモンは辛味があまり強くない代わりに香りが非常に強い薬味です。
上品で爽やかな引き立つ香りを楽しめます。カルダモンは、鼻詰まりや痰を抑制し、発汗作用などの役割があります。
アニス
アニスはリキュールの香り付けにも使用されるほど甘さと爽やかな香りを楽しむことができます。
胃もたれ防止や消化促進作用などの働きをします。
八角
八角はアニスと同じ主成分であるため香りがよく似ていますが、植物としては別物です。
八角はシナモンをギュッと集めて凝縮したような甘い魅惑の香りがしますが、苦味も感じられます。
八角は、新陳代謝を高め、風邪や咳止めなどにも使われています。
ナツメグ
スパイス系調味料としてお馴染みのナツメグは、甘く立つ香りと苦さを感じます。
しかし、マズイと感じる苦味ではなく、ほろ苦いような食材を引き立てる苦さです。
ナツメグは、鎮静作用や消化改善などの役割があります。
ターメリック
ターメリックは漢方に似た少し苦味が残る味わいです。
辛味は一切なく、土のような香りだと感じることもあります。
ターメリックは、抗アレルギー作用や月経調整などの役割を担います。
シナモン
シナモンはお馴染み、甘い香りが特徴です。
辛味は特になく、マイルドな風味が味わえます。シナモンは、血行改善やコレステロールの改善などに役立ちます。
ローリエ
ローリエは甘い香りがしますが、そんな甘さを感じさせない苦味があります。
また、ローリエは、防腐作用や消化促進、食欲倍増などの役割を持ちます。
陳皮
陳皮(ちんぴ)はみかんの皮のことです。陳皮はみかんの皮ですから、柑橘類特有の甘酸っぱい爽やかな香りを放ちます。
味は少し苦味があり、漢方として重宝されています。
陳皮は、咳止めや痰を切る作用があり、食欲不振に良いと言われています。
柑橘類
レモン
心身ともにリラックスする香りとさっぱりとし��口辺り、そして強い酸味が持ち味のレモン。
はじけるような酸味と言えばレモンが最適です。
レモンは、毛細血管を丈夫に保つ働きや、動脈硬化、血栓予防などに役立つ役割があります。
ライム
柑橘類の薬味として定番のライムは、レモンと同じように酸味がある薬味です。
しかし、酸味の中に独特の苦味を感じられます。
レモンに近い香りを放ちますが、より角が立つ香りをしています。ライムは、疲労回復や免疫力アップ、成人病予防などの役割があります。
ゆず
ゆずは香酸柑橘と呼ばれる品種で、果肉を食べるのには向いていないとされています。
そのため、ゆずは主に果汁の酸味を風味付けする用途で使われる薬味らしい柑橘類です。
酸味と少しの苦味を感じるゆずは、悪玉コレステロールを抑制したり、炎症性の痛み、膀胱炎などにも効果があるとされています。
カボス
カボスもゆずと同様に香酸柑橘類に含まれる品種です。
しかし、カボスは香酸柑橘類の中では酸味が少ないのが特徴で、余計な酸味が不要な場合に適しています。
食材の持ち味を邪魔することはないため、薬味として香りのみを味わいたい際にピッタリです。
カボスは、筋肉に溜まった乳酸を原因とする肩こりや頭痛の緩和、胃液の分泌を正常にする役割などもあります。
スダチ
スダチは上品ながら引き立つ香りと酸味を味わえます。
カボスとよく似ていますが、カボスは控えめな香りをしているため、香りの感じ方が大きく異なります。
柑橘類で薬味として使うなら、スダチを選ぶ方も多いようです。
スダチは、新陳代謝を高めたり、疲労回復や体の中の不要な塩分を外に排出する力を持っています。
シークヮーサー
シークヮーサーは、レモンに近いくらいの強い酸味を感じます。
人によってはレモン+みかんを足して割ったような味と表現する方もいます。
爽やかで酸味感の強い味を感じられます。
シークヮーサーは、血糖値の上昇を抑制し、高血圧の改善などに役割があります。
ダイダイ
ダイダイも香酸柑橘類に含まれます。ダイダイも柑橘らしい強い酸味とさっぱりした味わい、苦味が特徴ですが、香りにクセがないため扱いやすい薬味となります。
ダイダイは、蓄積した乳酸の代謝分解を促して疲労回復や高血圧予防などに働きかけます。
種子類
ゴマ
小さい粒に旨みが詰まったゴマは、すったものも人気です。
粒が残っているゴマも、歯に当たるとプチッと弾けるような食感を楽しめます。
ゴマは、コレステロールの減少や脂質代謝の促進などに働きかけます。
ラッカセイ
おやつやおつまみのイメージでお馴染みのラッカセイ。
香ばしく食欲を刺激される風味と凝縮された旨みは格別です。
ラッカセイは、感染症の予防やアレルギー症状の緩和、皮膚や粘膜などの働きを手助けする役割があります。
クルミ
クルミは、強いコクと苦味や渋味を感じる奥深い味わいをしています。
クルミは心地良く鼻から抜けるまろやかな香りを楽しめます。クルミは、睡眠の質を向上させ、薄毛対策などにも役立つとされています。
松の実
松の実は、口の中でほんのりと広がる甘さと油分が風味をまろやかに感じさせます。
中には苦味や酸化したような香りを感じるものも多いですが、松の実の味は非常に贅沢な味わいです。
松の実は、炎症や発熱を抑制し、アトピーやアレルギーの緩和などに働きかけます。
マカダミアナッツ
ナッツの中で食べられていることが多いマカダミアナッツは、淡白ながらも油分が多く、ナッツらしい旨みやコクを感じます。
マカダミアナッツは、糖尿病予防や美肌効果、貧血予防などに役割を果たします。
果実類
梅干し
使う食材を選ばない梅干しは、強烈な酸味が鼻を突きぬける風味でお馴染みです。
物によってはしそ漬けや甘みを重視したフルーティーな味わいの梅干しもあります。
梅干しは、老廃物の蓄積を抑制し、血流促進やカルシウム、鉄などの吸収を促す役割を持っています。
干しブドウ
ブドウを乾燥させた干しブドウは、別名レーズンと呼ばれていますよね。
干しブドウは、乾燥させた実から溢れ出す微かな酸味と甘さが楽しめます。
干しブドウは、腸内環境を整えて血糖値の上昇を抑制する役割などがあります。
クコの実
クコの実は、非常に薄い味わいをしています。生臭い香りを放つものもあり、トマトに似たような味わいをしています。
クコの実を生で食べる機会はあまりないと言えますが、中国では漢方薬の成分に使われることもしばしばです。
クコの実は、眼精疲労の回復や抗酸化作用、滋養強壮などに良いと言われています。
魚・動物性のもの
削り節
動物性のものには削り節も薬味の一つです。削り節は周知の通り、風味も味も非常に高いものです。
上品な香りを手軽に食べられる薬味の一つと言えるでしょう。
削り節は、生活習慣病予防や血圧の正常化などの役割があります。
サクラエビ
サクラエビは、エビの強い旨みが凝縮された風味と味があります。
淡白な食材と合わせると、格段においしさがアップする薬味です。
サクラエビは、筋力の維持や血流促進、コレステロールを減少させる役割があります。
ちりめんじゃこ
ちりめんじゃこは天日干しされて乾燥しているため、イワシ類の旨みやふわっと広がる香りを楽しめる薬味の一つです。
ちりめんじゃこは、骨や歯を形成し、中性脂肪の低下やアルツハイマー病の予防にも役立ちます。
その他
天かす
天かすは淡白な味の食材にインパクトをプラスしてくれます。
天かす単体ではそこまではっきりとした味わいではありませんが、卵料理や豆腐料理などの薬味として使えば味のレベルがグッと上がります。
たんぱく質や脂質、炭水化物、ナトリウムなどが含まれていますが、高カロリーのため薬味として少量ずつ食べると良いですね。
油揚げ
油揚げは口いっぱいに広がる強い旨みと、コク、香ばしい風味を楽しめます。
油揚げは、認知症予防効果や骨密度の維持などの役割を担います。
油条
油条(ヨウティアオ)は、中華揚げパンのことです。小麦粉を練って油で揚げて作られます。
単体では味がそこまではっきりしているものではありませんが、小麦のふくよかな香りが楽しめます。
油条は小麦粉と油で出来ているため、薬味として少量程度楽しむ食べ方が良いでしょう。
最後に
様々な料理に何気なく添えられている薬味には、種類によってあらゆる役割があることが分かりました。
少しクセがありますが、どの薬味も料理にアクセントを与える重要な存在です。
どの料理に何の薬味が合うか分からないといった点や、どのような味に仕上がるのか分からないという方は是非今後の参考にしてみてくださいね。
#ワサビ#ショウガ#ネギ#大葉#七味唐辛子#塩#醤油#ポン酢#辛子醤油#ゴマ#柚子胡椒#わさび醤油#刻み海苔#ガリ#シークワーサー#鰹節#ごま油#青しそ#オリーブオイル#ハーブ#にんにく#みょうが#パクチー#レモンピール
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TEDにて
スティーブ・ラミレスとシュウ・リュウ:ネズミ・レーザー光線・操作された記憶
(詳しくご覧になりたい場合は上記リンクからどうぞ)
私達の記憶の内容は、果たして編集することが出来るでしょうか?
SFじみた発想で、スティーブ・ラミレス氏とシュウ・リュウ氏は、MITの研究室で実験用のネズミの記憶を操作しようと生きたネズミの脳にレーザー光パルスを射込みます。
二人はこの奇想天外な内容を、研究方法を示しながら語ると共に、もっと大切なその研究の理由を、私達に問いかけます。(TEDxBoston)
たぶん、このアイデアは映画の 「トータル・リコール」や 「エターナル・サンシャイン」「インセプション」 を思い出させる事でしょう。
今日、皆さんに分って欲しいことは、我々は実際に脳内の記憶を瞬時に光速で安全に活性化出来るということです。
それに必要なのは、たった2つのステップです。まず、脳の記憶を探し、ラベルをつけ、あとはスイッチを押し記憶を活性化するだけです。
思い出している時の脳は、驚く程あらゆる部分が活発になっているのが分ります。特に、海馬と呼ばれる脳の部分が盛んに活動しているのです。それは様々な私たちが大切に思う記憶のプロセスに携わっているといわれて来た場所です。
これは記憶を探し見つけて再活性化するのに理想的なターゲットとなります。
脳内の記憶を探すのは、そう簡単ではないのです。本当にそうです。干し草の山から針を見つけ出すよりずっと難しいのです。というのは少なくとも針は、実際に触れられる物だからです。でも記憶はそうではありません。その上、脳には干し草の山の藁の数より、ずっと多い細胞があります。
この仕事は本当に根気がいる様です。しかし幸いにも脳自体に助けられました。基本的に脳に新しいことを記憶させるだけでその特定の記憶に関与する細胞が何処にあるか脳自体が示してくれると分ったのです。
私の脳では何が起きているのでしょう。倫理的な話は一時置いておくとして、脳をスライスしてみるとします。するとそれを思い出している時の脳は、驚く程、あらゆる部分が活発になっているのが分ります。特に海馬と呼ばれる脳の部分が盛んに活動しているのです。
それは様々な私たちが大切に思う記憶のプロセスに携わっているといわれて来た場所です。これは記憶を探し、見つけて再活性化するのに理想的なターゲットとなります。海馬を拡大化してみると勿論多くの細胞が見えますが、ある特定の記憶にどの細胞が携わっているかを見つける事が出来ます。
なぜなら細胞が、記憶を形成している時の様に活発な時は必ずその細胞が活性化していたことが後でわかるような手がかりを残してくれるからです。
夜、ビルの電気がついていると、そこで誰かが仕事をしていると分かる様なものです。細胞内の生���学的なセンサーも細胞の活動直後のみオンになっているという事です。いわば、生物学的な窓に明かりがついていれば、その細胞が直前まで活発だったと解ります。
このセンサー部分を切り取ってそれを細胞を制御するスイッチにくっつけて、このスイッチを遺伝子組み換えでウイルスに埋め込みマウスの脳に注入しました。ある記憶が形成されると、その記憶に働く細胞にも又、このスイッチが設置されます。
これが、恐怖の記憶を、形成した後の海馬の様子です。ここに見れるブルーの海が、密に詰まった脳細胞です。緑色の脳細胞を見てください。緑色の脳細胞は、ある特定の恐怖の記憶にしがみついている細胞です。
これは瞬時に抱く恐怖が結晶化された脳です。これは記憶の横断面図です。ここでお話ししているスイッチは、瞬時に作動してもらわなければなりません。数分や数時間の単位でなく、千分の1秒の脳のスピードが求められます。
シュウ、どう思いますか?脳細胞を活性化したり不活性化したりするのに、例えば医薬品とか使えるでしょうか?いやあ、薬品はあちこち広がり問題を起こすし、細胞に作用するには時間もかかるから、リアルタイムで記憶をコントロール出来ません。
スティーブ、脳に電気ショックを当てたらどうだろう?電気は速いけど、特定の記憶を持つ細胞だけをターゲットにするのは無理だね。それに脳を焼いてしまうかもしれません。
そうでしょうね、光速で脳に影響を与えるもっといい方法を見つける必要があります。光速は、勿論、光の速さですね。それなら、記憶を活性化・不活性化させるのに光を使えるかもしれません。それはかなり速いですね。脳細胞は普通、光パルスには反応しません。
光パルスに反応するのは、感光性スイッチの組み込まれた細胞だけなので、脳細胞を操作しレーザー光線に反応する様にします。脳細胞を操作しレーザー光線に反応する様にします。今お聞きになった通り脳にレーザーを射込もうとしています。
それを実現させるのが光遺伝学です。それはスイッチひとつで脳細胞のオン・オフを可能にさせてくれる。それはスイッチひとつで脳細胞のオン・オフを可能にさせてくれるチャネルロドプシンと呼ばれるものです。この脳細胞の緑色の斑点がそれです。
チャネルロドプシンは光に敏感なスイッチだと考えてもいいでしょう。チャネルロドプシンを人工的に脳細胞に組み込み、それをクリックするだけで、脳細胞を活性化したり不活性化したりできるのです(人体なら本人の同意の上で)
この場合、光パルスでクリックします。このチャネルロドプシンの感光性スイッチを先ほどのセンサーにつけて脳に注入します。記憶が作られると、その特定の記憶を司る細胞は感光性スイッチをその中に設置させ、私たちは、これらの細胞をここにあるようなレーザーを使いコントロール出来るのです。
実際に実験してみましょう。マウスを使ってみるのです。ちょうどここにある様な箱にマウスを入れます。そして足に軽い刺激を与え、この箱に対する恐怖の記憶を作ります。ここで何か悪い事が起きた事をマウスは学びます。
さあ、私たちのシステムでこの記憶作成時に活性化された海馬の細胞だけにチャネルロドプシンが含まれてることになります。
あなたがマウス程小さいとしたら追いつめられた様な気持ちだと思います。そんな時、身を守る最善の策は察知されまいとする事でしょう。マウスが恐怖を感じる時の典型的な行動がこれです。箱の片隅で身動き1つしなくなります。
これは、フリージングと呼ばれます。もしマウスが何か悪い事が、この箱の中で起きたと記憶するなら同じ箱に戻した時、フリージングを起こします。それはこの箱の中で、どんな脅威にもさらされたくないからです。
フリジーングとはこんな感じです。あなたが呑気に道を歩いていて、突然、別れた彼女か彼氏に、ばったり出会ったとします。さあその恐怖の2秒、あなたは「どうしよう?挨拶する?握手する?、背を向けてさっと逃げる?他人のふりをする?」などと考え始めます。
浮かんでは消える不安な思いに身動きすら取れなくなります。ヘッドライトの中に立ちすくむ車の前の鹿のようです。でもそのマウスを次の様な全く新しい箱に入れたなら、その箱は恐れないでしょう。新しい環境を恐れる理由はないからです。
でもこの新しい箱にマウスを入れ、同時に前の恐怖の記憶をレーザーで活性化させたらどうなるでしょう。この全く新しい環境で最初の箱の恐怖の記憶を呼び戻す事が出来るでしょうか?はい、これは値千金の実験です。
あの日を思い出すとレッドソックスが勝ち、緑が一杯の春の日でした。川遊びをして、ノースエンドに行って、お茶を飲むには絶好の日でした。一方、シュウと私は、窓のない真っ暗な部屋にいて瞬きさえせず、目は一点を見つめ、コンピューターの画面に釘付けになっていたのです。
このように、光遺伝学に頼らなくても人間は、瞑想訓練すれば、記憶を思い返すことができるようになりますが、この方法で初めて記憶を活性化させるためマウスを観察していたのです。
これが私たちが見たものです。この箱に最初マウスを入れた時、マウスは探索し、嗅ぎ回り、歩き回っていました。勝手に動き回っていました。普段のマウスの行動ですね。ネズミは好奇心の強い動物です。この新しい箱で何が起きているのか知りたがっています。面白いです。
しかし、レーザーをつけた途端、この様に全く突然フリージング状態に入ったのです。その場でビクリともせず、じっとしていました。明らかにフリージングです。最初の箱の恐怖の記憶をこの全く新しい環境の中で呼び起こすことが出来た様です。これを見てスティーブと私は、マウスと同様、衝撃を受けました。
実験後、私たちは何も言わず部屋を出ました。それからしばらく、ぎこちない沈黙が続き、やがて、スティーブが口を開きました「うまくいったんじゃない?」「うん うまくいったみたいだ!」私たちは本当に興奮しました。
そして学術雑誌の「ネイチャー」に研究成果を出版したのです。私たちの研究成果が公に出て以来、インターネット中であらゆるコメントを頂いてます。その中のいくつかを見てましょう[ついに実現!バーチャル・リアリティの世界?][神経操作?���ジュアル夢模倣?神経コーディング?]
最初に気づく事は[「記憶を書き直す」すごい未来!]
このような研究は議論を呼ぶ内容だということです。
私はこの最初の楽観的な見方に全く同感です。私たちにとって今までに一番胸に沁みる褒め言葉です。でも、そんな楽観的な意見だけではありません[恐ろしいことだ。これが簡単に?][人に出来るようになったら!?何てことだ。人類は終わりだ!(基本的人権があるので違法です)]
確かに2番目のを見れば、誰の目にもポジティブではないことが分ります。しかし、これで思うことは研究はまだマウスの段階ですが、記憶コントロールにおける倫理的な問題について、そろそろ議論する時期だということです。
次に、私たちは「インセプション」と呼ばれるプロジェクトも行っています。[映画のネタにぴったり。人に記憶を植え付け利用する。その題は「インセプション」]記憶を呼び戻す事は、納得して頂けましたが、もし、その記憶をいじったら、どうなるでしょう。それを虚偽記憶にしてしまえるでしょうか?
全ての記憶は精巧で絶えず変化しています。でも、もし記憶を単純に映画の1カットだと想定すると、今まで話した事は「再生」ボタンを押して同じ場面ををいつでも何処でも観る事が出来るということです(光遺伝学に頼らなくても人間は、瞑想訓練すれば、記憶を思い返すことができるようになります)
実際には、脳内に入ってこの映画のシーンを編集して違った物を作り上げる。そんな妄想が可能でしょうか?マウスでは可能なんです。前回と同様にレーザーを使い、記憶を回復させるだけでいいのです。この時に新しい情報を古い記憶の中に組み込ませたら記憶は別のものになります。リミックステープを作る様なものです。
それは、どうやって行うのでしょうか?脳内に恐怖の記憶を見つけるやり方ではなく、実験に使う動物をこのような青い箱に入れ、青い箱を表す脳細胞を見つけ、光パルスに反応するようにさせます。ちょうど先に話したようにです。その次の日、動物を取り出し今度は赤い箱に入れます。青い箱の記憶を、呼び起させる目的で脳内に光パルスを照射します。
そして、記憶を呼び起こさせると同時に、足に軽い刺激を2,3回与えます。どうなるでしょうか?足に与えた刺激と青い箱の記憶をここでは人工的に結び付けようとしているのです。2つの情報を繋ぎあわせるのです。結果を検証する為に動物を再び取り出し、青い箱に戻します。青い箱の記憶を呼び起こしている時、足に軽い刺激を与えてましたから突然、動かなくなりました。
実際、起きなかった事なのにここで電気ショックを与えられたと思い出したかの様にです。つまり虚偽記憶を作り上げたのです。マウスは実際には、何も悪いことが起らなかった環境を恐れているのです。今まで光制御「オン」スイッチの事について話しましたが、実は光制御「オフ」のスイッチもあり、そのスイッチを設置する事で記憶をいつでも何処でも消す事も可能だと容易に想像されます。
今日話した事全ては、神経科学の哲学的原則に基づいています。倫理学も。
そして一見神秘的な特質を持つと思われる心は、実は私たちが操作出来る物理的なものだということです。個人的には私は皆が好ましいと思われる記憶を呼び起せるような世界や好ましくない記憶を削除出来る医療の世界が見えてきます。
今や脳に障害を与えるような記憶を編集出来る医療分野の世界��え、現実のものとなってきています。なぜならSFからあらゆるヒントを得、それを実験し、現実化することが可能なそんな時代になっているからです。
研究室内だけでなく、世界中、医療分野で似た様な方法で様々なデータが復活されたり編集されています。それはデータの年代や使用目的の如何を問わずです。そうやって私たちはメモリーの仕組みを私たちは理解出来ています。
例えば私たちの研究のグループは、恐怖の記憶を司る脳細胞を見つけ出し、それを喜びの記憶に変えることに成功しました。これが、丁度その、脳に障害を与えるような記憶を編集するという事なのです。
雄のマウスに雌のマウスの記憶を呼び戻すことに成功したケースもあります。マウスにも面白い経験だったそうです。胸躍るような時代に今私たちはいます。科学の発展のスピードは、とどまるところを知りません。あとは私たちの想像力次第です。
最後に、今までの話を聞いてどう思いますか?この技術をどう善性方向に進めて行きましょうか?これらの質問は、研究室だけに留めておくべきではありません。
今日のトークの目的は、現在の神経科学での可能性を皆さんにご紹介することです。
しかし、それと同様に大切なことは、皆様にこれに関し真剣に考えて頂く事です。この研究の意味。これからの可能性。そしてこれから取るべき道を一緒に考えましょう。なぜなら、この先、実に大きな課題が待っているとシュウと私は思っているからです。
有り難うございました。
こういう新産業でイノベーションが起きるとゲーム理論でいうところのプラスサムになるから既存の産業との
戦争に発展しないため共存関係を構築できるメリットがあります。デフレスパイラルも予防できる?人間の限界を超えてることが前提だけど
しかし、独占禁止法を軽視してるわけではありませんので、既存産業の戦争を避けるため新産業だけの限定で限界を超えてください!
<おすすめサイト>
コナー・ルッソマンノ:あなたの心を増強するための強力な新しい脳神経技術ツール
データ配当金の概念から閃いた個人的なアイデア2019
エド・ボイデン: ニューロンの光スイッチ
ファン・エンリケス: 我々の子孫は別の種になる?
ルネデカルトの「方法序説」についてOf Rene Descartes on “Discourse on Method”
デイヴィッド・ブルックス:人間の本質と社会的動物
マイケル・サンデル:失われた民主的議論の技術
アンバー・ケイス:誰もがすでにサイボーグ
脳と直接通信できるステント
エリザベス・ロフタス:記憶が語るフィクション
ダニエル・ギブソン:DNAを人工的に作りインターネットで送る方法
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20250519

忙しかったGWも終わり。
時間を見つけ植物の植え替えをした。やり始めるまではすんげーめんどいがいざ始めると良い気分転換になる。
これをやって私の冬が終わる。
睡蓮
今年も無事冬を越して三年目の温帯睡蓮。マニー・サイアムとワンビサ。耐寒性の睡蓮とはいえ寒冷地の冬を二度越した事で少しだけ自信がついた。

マニー・サイアム

ワンビサ
写真は去年か一昨年のもの。
白い花の方が成長が早くもう花芽を付けていた。
ISG(亜属間交配)種という、耐寒性を持つ温帯睡蓮と青系の花を咲かせる熱帯睡蓮を掛け合わせた品種をあと一株増やしたかったが既存株の増えた脇芽を捨てるのも忍びなく、カインズの120Lの桶を二つ増設。
冬越しが上手くいくかどうかはわからないが寒色系の睡蓮が欲しくて熱帯睡蓮を二株ほど買った。横に横にと球根が伸びていく温帯睡蓮と違い小さめの丸鉢で育てられる。ただムカゴ苗を買ったら思ってたより数段小さい苗。葉っぱがまだ1cmぐらいしかなくて今年花をつけるかは微妙なところ。
あとは大賀蓮という古代蓮。
2000年前の弥生期以前の遺跡から出土した種が発芽、開花しその後代を重ねたという株の、その子孫。何年か前に真如蓮を種から実生したが結局冬終えに失敗して蓮の花を見ることは叶わなかったのでレンコンから再挑戦。
蓮の花の構造を一度ちゃんと観察してみたい。
まだまだ夜が寒いからか熱帯睡蓮も大賀蓮も動く気配はない。
畑に行く途中の近所のおばちゃんに毎回睡蓮と蓮の違いについて説明を求められるのだがその度に初耳みたいな顔をされるので多分タイムリープしてる。
サボテン
なんつうか飽き性の私がよくもまあと思う。
私が生まれる何年も前に亡くなった父方の祖父がサボテンに凝っていたとは後から聞いた。
パンダだか蚕だったかは人間に世話をさせることでその遺伝子を残す戦略を取るとかなんとか聞いたことがある。それと同じでもはや植物に世話をさせられているのではないか。そんな疑念を浮かべちらっとサボテンたちに一瞥をくれてみたが彼らはただ沈黙するばかりだった。
かのソクラテスが言ったか言わなかったか「桃栗三年柿八年」と。
それで言えば桃栗どころかそろそろ柿がなっとる訳で熱量をかける植物を果物の木とかにしときゃ良かったと若干後悔している。
腹の膨れないもんに全ベットしてるような時代ではなくなりそう。

銀冠玉(Lophophora fricii)はもう花を咲かせていた。2018年播種。太くて長い直根が有星類のように腐ることもなく丈夫な品種だ。
トゲで武装しないサボテンは毒をもってその身を守る。内部で生成される幻覚性の有毒アルカロイドのメスカリンが昆虫にも影響を与えるのかはわからないが、たまに虫が齧った形跡を見つけても一口でやめた感じには見える。


銀冠玉は綴化が二株出現した。
普通の兄弟株たちは開花株になって2年目だが綴化株は今の所一度も花をつけていない。今年咲いたら綴化した株同士の種が採れるかもしれない。綴化株の種だと芥子粒みたいな大きさの種が5粒で2千円とか馬鹿みたいな値段してた。

翠冠玉(Lophophora diffusa)は斑入りが一株出現。葉緑体が少ないからか成長が遅い。

烏羽玉(Lophophora williamsii)
原産地の環境の違いか比較的日焼けしやすい。ロホホラの三種一様に熱を逃がしにくい構造をしているのに烏羽玉だけなんでなのか。
自家受粉するので毎度気づくとピンク色の種鞘を付けている。

天晃(Thelocactus hexaedrophorus)何年か前ホムセンでハダニにやられて枯れかけてた株だが今はよく花を咲かす。たしか198円だった。
綾波

綾波(Homalocephala texensis)
たしか去年の植え替えでは、棘を吹く割りに根っこが貧相で無理する子扱いだったが今年は鉢いっぱいに根が回っていた。
まだ開花球ではないが結実すると赤くて甘い実をつけるという。オルトランという根から吸収させる防虫薬を土に混ぜているので出来たとこで食べられないが。

白刺翠平丸(Echinocactus horizonthalonius)
2020年播種。種を20粒程播いてビギナーズラックで5株生き残った。最近はオークションでも中々種子は見かけない印象。出品されてもかなり値段が上がる。安い値段でよく落とせたなと思う。

2023年の春の状態
一昨年��ら置き場所を変えて最適解的な環境をなんとなく掴んだためか年を追う毎に刺を吹いて大きくなってきた。
プチプチで遮光した衣装ケースの簡易温室を終日強光線下、中に遮光ネット二枚重ねという暖房つけてtシャツでアイス食うみたいなよくわからない環境。
花を咲かせる開花球に育つまでは大体7年ほどかかるという。初期に置いた場所の日照が悪く出足が遅れたため多分10年以上はかかるのではないか。

毎度思うが成長点から刺を吹く時のサボテンの内部がどうなってんのか気になる。どういう造形方式なのだろう。
刺や肌のシマシマの模様が3D印刷の積層痕にも見えるので成長点のところで3D印刷みたいに徐々に作られ出力されるように出てくるのだろうか。
バイオミメティクスというか合理性を突き詰めると同じような仕組みに辿り着くのかも。

花王丸(Echinocactus horizonthalonius)
うちに来てもう6、7年なのでもしかすると今年花を咲かすかもしれない。

袖ヶ浦接ぎの翠平丸
台木がパンパンに太った種親用の株。今年花が咲けば花王丸の交配相手にどうかというところ。こう見ると割りに短く太い刺。良い草姿だ。
太平丸、雷帝、花王丸、翠平丸、尖紅丸、小平丸などと色々なバリエーションがあるが亜種や変種ではなく園芸上の愛称のようなものらしい。

竜剣丸(Echinofossulocactus coptonogonus)
2020年播種の実生株。丈夫で途中で落ちることもなく淡々と育つ。数が多いため売るなりして整理したいがこのくらいだと二束三文だろう。

小さい苗で買った株。徒長したが場所を変えて2年で持ち直した。やや短刺か。

誰が呼んだか「なるほど柱」(Trichocereus macrogonus f. monst.)
「なるほど柱」とは何か?と調べると男根様のあれな草姿と「珍宝閣」という品種名に「なるほど…」と納得させられる謎のギミック。
カキコを買ったら刺がすごすぎてグサグサ刺さりまくり爪切りで少し切る。
成長したら根元にだけ刺がある感じになってちん毛みたいになるのではないか?つかちん毛って久しぶりに聞いたってか書いた。
40代の語彙。
炭疽病っぽい怪しい黒点があって腐れる可能性が高い。

うちに来て7年目のスーパー兜(Astrophytum asterias ‘Super Kabuto’)もうちょい良い名前なかったか。

今日見たら咲いてた。花弁が細く先端が巻く形質。

実生のスーパー兜。2018年播種。かなり播いた気がするが残った株も数える程となった。白点がV字のパターンになる形質は結局一つも現れず。
この種を売っていた四国かどっかの爺さんの出品アカウントを久しぶりに覗いたら種子ではなく種親株自体をひたすら出品していた。終い支度とかそういうことなのだろうか。
出品タイトル欄が品種名のみならず「これからすごいとげが出てきますたのしみですうれしいです」みたいなあれな文章になっていてそういう領域に入っていくんだなと。

実生のオベサ 。2020年播種。種が採れまくるが結局めんどくさくて放置。相場は種一粒120円ぐらいだった気がする。熟すと種鞘が弾けて飛ぶので対策がめんどい。ネットで推奨されてたストローを種鞘にかぶせる方法を試したが熱で種がやられる。お茶とか出汁の空パックとか被せるとか良いかもしんない。

花サボテン(蝉衣)
サボテンはその珍奇な見た目や草姿に惹かれてきたがここにきて地味な見た目でも美しい花を咲かすロビビア等の花サボテンに手を出し始める。
草姿的にはホームセンターで298円のエキノプシス的な感じなのに付ける花の価値でその10倍ぐらいの値段なのがなんか変な感じ。高山性で比較的難物というが花を咲かせられるだろうか。

2年前ホムセンで買ったビフルカツム。在りし日のホイットニー・ヒューストンを偲ばせる。多分毛量。鉢はKintoのハンギング。
板付けのビーチー種は結局枯れてしまったがこちらは普及種だからかテキトーな管理でも丈夫だ。このあと株分けして鉢が4つも増えてしまった。
植え替えはあと金鯱等刺物の普及種と2ダースのアガベと葉物の観葉植物が残っている。
サボテンの動き始めた成長点や新しいトゲの気配みたいに満ちてくるエネルギー。庭をせわしなく歩く蟻んこやコモリグモや色々な虫たち、彼らを見て私も同じだと思った。
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各地句会報
花鳥誌 令和7年5月号

坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
………………………………………………………………
令和7年2月1日 色鳥句会
おのづから一幅の絵に冬木立 成子 すれ違ふ白秋の歌水の春 朝子 切り口は春へ向きたる粉砂糖 かおり 春隣夫あしらひに慣れもして 光子 春場所や塩撒く胸の真つ赤なり 睦子 ランドセルに入れては出して春を待つ 修二 豪快で情ある人の初便り 孝子 春の日を包みくるりと鉋屑 成子 個室へと移りし看取り寒に入る 朝子 背ナを向け手を振る別れ春の人 久美子 体温の抜けて重たき裘 かおり 雪降り込む家に育ちてつつましく 光子
………………………………………………………………
令和7年2月1日 零の会 坊城俊樹選 特選句
愛憎のかたちにねぢれゐて盆梅 和子 冬菫ボクシングジムある街に 美紀 春を呼ぶものにナショナルマーケット はるか うかれ猫仙台坂を駆け上る 六甲 十字架に最も遠き冬すみれ 和子 ポケットにテディベアちよこん春を待つ 美紀 春待つとカットモデルを募集中 はるか 少年の英語四温の池すべる 慶月 六階の麻布の蒲団干されをり 三郎 梅の香の白き流れとすれ違ふ 同 極楽を麻布で迎へ鳴雪忌 佑天
岡田順子選 特選句
十字架に最も遠き冬すみれ 和子 滿つること散りぬることもあたたかく 光子 三味線の糸道深しはん女の忌 佑天 水鏡のなかに春待つ木と空と 光子 ブランコの声讃美歌の声包む 俊樹 蝋梅の香を置きざりにこぼれゐて 季凜 野の起伏あたたかに飛び越ゆるなり 光子 ひかりとは蝋梅ふふみゆくことと 緋路
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年2月3日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
うす紅をちらり零して梅の花 笑子 風花の舞ひて揺蕩ふ思案橋 同 もてなしの干菓子の薄紙女正月 希子 白梅のふふめる蕾覚めやらず 同 水子観音野路に御立ちて鬼は外 数幸 青空を暫し塗り替へ春時雨 千加江 握手する手を手袋に温めて 雪 今はただ凍つる他なき蝶一つ 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年2月8日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
風よ波尖るふるさと雪ごもり 百合子 頰なでる潮香近しき島の春 多美女 若布拾ふ旅の途中の相模湾 亜栄子 枡形は青春の地よ春間近 教子 鐘響く二月礼者の読経漏れ 亜栄子 観音の背ナ汚れなき白椿 三無 寒明けの陽射し従へ野を歩せり 和代 笹鳴きの途切れ途切れに囁き来 秋尚 潮の香の雫を砂へ若布干す 同 早春の軽き足音追ひ越され 亜栄子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年2月10日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
蕗の薹摘み来て地酒封を切る 三無 やはらかな色に膨らむ蕗の薹 秋尚 海苔干し場幾重に並び磯の風 ます江 引き締まる水に色濃き海苔を摘む 聰 景一変黄沙を喰らふ春一番 同 船べりに海苔の色付け戻りけり 秋尚 往診の医者にふるまふ海苔むすび 美貴 隠沼の水面の騒ぐ春一番 秋尚 海苔粗朶を育てる人に朝日さす ます江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年2月10日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
節分の夜も護摩火は衰へず あけみ 滑稽な鬼のお面へ豆撒かれ 実加 自転車の小さく見えて浅き春 裕子 過疎町に子等の声あり草青む 紀子 春の風邪流行の服を選りてをり 裕子 雪原を駆けづる犬の尾の黒き あけみ 生きること教へてくれる葱坊主 令子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年2月11日 萩花鳥会(二月十一日)
迷ひつつ卵焼く子や春隣 吉之 小春日や豆の蔓伸び膝の上 俊文 豪雪の屋根は死の渕雪をんな 健雄 枯れて見ゆ老木なれど梅ひらく 恒雄 恙無い日々願ひ食む恵方巻 綾子 父は言ふ運動後には梅干しを 健児 一点前終へれば消ゆる春の雪 美恵子
………………………………………………………………
令和7年2月13日 うづら三日の月句会(二月十三日) 坊城俊樹選 特選句
春立ちて夫生き生きと畑に出る 喜代子 艶話榾燃え尽きて夜も更けて 都 如月の老舗のポスター江戸火消し 同 寒戻る木々の梢の震へたり 同 窓辺にて春待つ唄を繰り返し 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年2月14日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
万両の姿万両外連なく 宇太郎 記憶より小さな橋よ蕗の薹 都 ポストにも小さな庇雪解風 美智子 浅利汁一人なれども音立てて 悦子 上京や春セーターと乗る列車 美紀
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年2月16日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
小流れの淵に盛られし春の泥 久子 篁を音なく撫でる春の風 秋尚 暗渠より出づるまぶしさ春の川 千種 薄紅梅枝垂れて空を深くせり 三無 星あまた大地に散らし犬ふぐり 芙佐子 園児らを森に攫ひし蜆蝶 経彦 石仏の陰から影へ猫の恋 月惑 閼伽桶を飛び出し春の水となり 三無 下萌や蹴上げしボール子に逸れて 久子 陽の中の砦の武士の春愁ひ 軽象
栗林圭魚選 特選句
輪になつて体操の声草青む ます江 句碑の辺に師の気配満ち梅開く 三無 記念樹の梅香拡げて年尾句碑 亜栄子 春の川翡翠の色映したる 久 蒲公英の黄の輝きて母の塔 文英 土ほこと梅見の客を迎へ入れ 千種 園児らを森に攫ひし蜆蝶 経彦 励めよと句碑の真白きしだれ梅 千種 富嶽より枡形山へ雪解風 月惑 鳥寄せて何処か揺れをり藪椿 芙佐子 句碑裏の蕗の薹三つ初々し 文英 梅林の香りの仄と径険し 斉
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年2月19日 福井花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
数多なる柚子も生家も売られけり 世詩明 此の路地に名も無く老いて冬籠 雪 それなりに良き事ありし古暦 同 水仙やかつて柏翠町春草 同 猫の恋北斗七星輝けり かづを しろがねの波砕け散る冬怒濤 笑子 ほうほうと訪ひ来る黒衣寒修行 同 大地より膨らむ兆し蕗の薹 希子 天空の霞流れて城遥か 同 紅椿あの人の地に咲いたろか 令子 早春の風やふんはり髪を梳く 千加江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年2月21日 さきたま花鳥句会 紀元選 特選句
畑打や夕日に長き鍬の翳 八草 冴返る秒針のなき外時計 紀花 春泥を跨ぐに足らぬ我が歩幅 久絵 揉みほぐし叩きほぐして春の土 順子 馬の��が笑つてゐたり春の蝶 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年2月16日・21日 柏翠館・鯖江花鳥合同句会 坊城俊樹選 特選句
胸中に温石と言ふ石一つ 雪 力瘤これ見よがしの冬木立 同 父の膝覚えて居りしお年玉 同 雪に生れ雪に老い行くだけの事 同 己が色使ひ果して枯るる草 同 口髭に豆撒く父の男振り 同 不器用を父の所為にしちやんちやんこ 同 初雀話はづんでゐるらしき 同 浅き春乗せ九頭竜は流るのみ かづを 風と来て風花風と去りゆけり 同 神の森三日三晩の大焚火 洋子 土の面ひたすら見たく雪を掻く 同 日脚伸ぶ硯の海に気を満す 真喜栄 樹には樹の忍ぶ月日や春の雪 同 野仏のやはらぐ笑みや水温む 同 道の辺の一花一仏風花す ただし 雑巾の縫目千鳥に針供養 嘉和 雪解水堰音荒き橋の下 英美子 ちらちらと降りて重たき雪の嵩 みす枝 雪地獄なる山からも海からも 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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ブラッディマリー〈祈りは闇に届かずとも〉
初冬、街ゆく人はみな防寒着を着込み、心なしか足取りは早い。風がびゅうと吹けば身を縮めてやり過ごす。そんな寒空の下、宿場通りは早々に暖を取ろうと宿屋に立ち寄った旅人や商人、そして冒険者で賑わっていた。温かいスープで腹を満たして、エール酒で喉を潤す。屋内にまで冷たい空気は入ることはなく、あるのは人の熱気であった。店の前を通りがかれば吟遊詩人の陽気な歌声とリュートを奏でる音色が鳴り響いてくるだろう。
だが、その喧騒も通りから道を外れると途端に静まり返る。
宿場通りとは違い、この辺りは古い通りだ。夜になれば暗闇に包まれてしまうような場所で、昼日中ですら人通りは少ない。
その道を歩くのは一人の少女だった。
外套に身を包み、頭巾を深く被っているため顔はよく見えない。
少女の足元には大きな荷物が置かれている。それが重たいのか時折よろめいた。道の端々にある石畳の小さな段差につまづきそうになりながらも懸命に歩き続ける。やがて少女はある屋敷の前で足を止めた。どこか古めかしい佇まいをした建物である。少女は入り口の前に立つと扉を叩き、中に向かって呼びかけた。しかし反応はない。それでも少女は諦めることなく、何度も声を上げながら扉を叩いた。するとしばらく���て返事があった。
「こんな時間に何の用だ?」と不機嫌そうな男の声が聞こえてきたのだ。
「あの……私です」
「 なんだって?」
「私です! リリーです!」
男はその言葉を聞くなり黙ってしまった。ややあって扉が開かれる。そこには白髪交じりの男がいた。無精髭を生やし、少しやつれた男はじろりと少女を見た後、何かを思い出したかのように目を見開いた。
彼女はリリー・ウィスティン。ウィスティン男爵家の一人娘であり、治癒師でもあった。
「お邪魔します!」
「こらっ、勝手に」
男が止める間もなく、少女はひらりとすり抜けて奥の部屋を目指す。
「おいっ!」
そこは寝室になっており、ベッドでは女性が穏やかな表情をして眠っている。その女性は痩せ細っており、頬は痩けていた。病的なまでに青白い肌はまるで死んでいるようにすら見える。呼吸音がなければ生きているかどうか判断することは難しいほどだ。少女はそっと女性の顔を覗き込んだ。それから持ってきていた荷物の紐をとき、中から目当ての物を取り出した。
「母様……」
それは薬瓶だった。中には透明な液体が入っている。それを見て男の目がつり上がった。
「おい、お前、まさかそれを彼女に飲ませるつもりなのか?」
「えぇ、もちろんですよ父様。これを母様に飲んで頂くんです」
「馬鹿を言うんじゃない。そんなものッ、もはや意味がないんだ!」
男は怒鳴ったが、少女は全く気にしていない。それどころか慣れているといった様子でもある。
「とにかく駄目だ、さぁ、ここから早く出ていくんだ今すぐにっ!」
「嫌よ!」
少女は叫ぶようにして言った。強い意志を持った瞳で父親を睨み付ける。
「これは私が見つけた薬草で作った特別な薬なの! 今まで誰も治せなかった母様の病気を治すために苦労して手に入れたものなの!」
「だからどうしたと言うんだ?」
「絶対に良くなるもの!」
頑として譲らない娘に対し、父親は深い溜め息をつくと「……分かっていると思うが、リリー、母様はもう病気ではない。そう! これは契約によってもたらされた福音の眠り。超越者である彼女はもうじきに目覚める。だから、ここにお前は、いてはいけないのだ」
「……何を、何を仰っておられるのですか? お願い父様。一度でいいから、私の言うことを素直に聞いて下さい」
「断る」
父親が首を横に振ると同時に少女の手から薬瓶を奪い取った。
「あっ!」
少女は慌てて手を伸ばす。しかし彼女の手が触れる前に、薬瓶ごと床に叩きつけて割ってしまった。パリンッ、という音が部屋中に響き渡る。
少女は呆然としていた。ずっと探し求めていたものが目の前で粉々になってしまったのである。割れた破片を拾い集めようとする少女の腕を、父親が掴んで止めた。
少女の顔がくしゃりと歪む。
「どうして!?」
悲鳴のような声で少女は叫んだ。だが男は何も言わず、ただ虚ろな視線を向けるだけだった。少女の目にはみるみると涙が溜まっていく。溢れ出た雫が頬を伝い落ちた。それでもなお、少女は食い下がろうとした。しかし、それも長くは続かない。力なく項垂れると、ぽつりと言った。少女はゆっくりと顔を上げる。
「そう……分かったわ」
そして、ふらりと踵を返す。おぼつかない足取りで玄関まで向かうと扉を開いた。���たい風が入り込んでくる。少女はその風に身を任せるように外へ出ると振り返った。
「さようなら、父様」
そう言って寂しげに微笑み、少女は歩き出す。一歩、また一歩と、しっかりと地面を踏みしめながら前へ進んでいく。やがてその姿は闇夜に紛れて見えなくなった。
残された男は再び寝室へと戻り、ベッドの上で眠る女性の傍らに立つと、じっと見下ろした。女性は微動だにしない。ただ静かに呼吸を繰り返すだけである。
男はしばらくの間、何も言わずに見つめていたが、不意に手を伸ばして女性の髪を撫ぜた。指の間をさらさらとした髪が滑り落ちる。男はその感触を慈しむように何度も繰り返した。
すると女性が僅かに動いたような気がした。しかし相変わらず目は閉じたままだ。
それでも男は満足げな笑みを浮かべている。
彼は知っていたのだ。女性がいつ目覚めるかを。
だから、今はこれで良いと思っている。
「おやすみ、マリー」
囁くような声だった。
すると、その声に応えるように女性の唇が震えた。
「……………………?」
女性が発したのは、とても小さな声だったが、確かに彼の名を呼んだ。
男は嬉しそうな表情をして、それから優しく「あぁ、そうだよ」と答えた。
「ねぇ……喉が渇いたわ。それにとても……とても」
女性はそこで言葉を切った。それから掠れた声で呟く。
血を飲みたいの……。その言葉を聞いた途端、男の目に宿っていた優しい光が消えた。代わりに狂気にも似た光を灯らせる。
「……さあ飲んで」
そっと女性の耳元に口を寄せた。
君が求めるものは、たっぷりと用意してある。
男の口から漏れたのは、この世の者とは思えないほど低い笑い声だった。
それはどこか遠くの方から聞こえてくるようだった。あるいは頭の中で響いているだけかもしれない。
いずれにせよ、全ては相成った。
「……本当にいいんだな」
「ええ……、父様は正気を失っていたわ。闇に魅入られてしまった……だからお願いどうか父様と母様を……!」
両親を解放して欲しいというリリーの依頼を受けたアルバートら一行は、彼女の案内のもと件の屋敷に来ていた。この辺りで失踪事件が相次いでいることも恐らく関係があるのだろう。屋敷を出入りしている人ならざる者の目撃情報も、冒険者ギルドに寄せられてきていた。
「ま、でもリリーさんの事を巻き込みたくなかったってことよね。何ていうかその……追い出されたって話だし」
「父親として思うところがあったのかもしれない」
「ふん、何を躊躇する必要がある? 俺たちがすることはいつもと同じだ」
荒々しいガルジェンドの男――ブランデンが吐き捨てるように言った。この屋敷で起きていることは、間違いなく闇の手の者によるものである。変わり果ててしまった両親は今は闇の眷属としての本能に従っているだけなのだ。ならば、彼らを滅することこそが救いになるだろう。
「よし、行くぞ!」
アルバートの言葉に全員がうなずく。一行は覚悟を決めて屋敷の中に足を踏み入れた。屋敷の中に入るとそこに人影はない。が、しかし何かが確実にいる。
「どうやら歓迎してくれているみたいね」
ミステルの弓使い――レンダ・レイが放った矢は、暗闇の中から現れた骸の剣士を正確に貫いた。
「――そのようだッ!」
アルバートが大振りの両手斧で一つ目の悪魔をぶった斬ると、そのまま前方からこちらへ向かってくる魔物の群れに突っ込んでいった――「あ、ちょっと待ちなさいよ!」と小柄なドワーフ族の治癒士――ラミットがアルバートを追いかけるように後に続いた。
屋敷は妖異で溢れた空間へと様変わりしていた。
「いやぁぁぁ。もう、次から次へときりがないわ。浄化してもしきれないっ! 大元を叩かないと埒が明かないわよアルバート!!」
魔力というのは有限である。無尽蔵に湧き出る妖異には敵わない。ラミットはエーテル薬を鞄から1本取り出し、一気に飲み干した。空になった薬瓶を襲いかかってくる腐乱死体に投げ、辺り一面を片っ端から浄化していく。
「わぁってるって!」
ラミットの文句に応えながらアルバートは周囲を見渡した。状況から鑑みて生き残りがいる可能性は低い――屋敷内に蠢く者達のほとんどが、恐らく最後までいた使用人たちの成れの果てだ。
「全く酷えことしやがる。そうは思わんか」とブランデン。
「同感だ」
根源を断たない限り、時間が経てばいずれまた復活してしまう。彼らの魂は永遠に囚われたままになる。しかしながら、その根源は未だ姿を現さずにいる。
「一体どこに……」
見当たらないのだ。まるで忽然と姿を消してしまったかのようだ。
「――見て! あれ!!」
レンダ・レイの指差す方へ全員が視線を向ける。吹き抜けになった階段の中央。そこにちょうどステンドグラスから光が差しみ、歪な翼が映えた妖異が映し出された。
「あいつか!」
「逃がすかよ!」
アルバートが手斧を宙へ向かってすかさず投げる。狙った獲物は逃がさない――レンダ・レイが放った矢とほぼ同時、両翼を射抜いたはずだった。しかし実際は陽炎の様にゆらりと搔き消え、それはそこに変わらず立たずんでいる。纏う衣や顔の輪郭にかつて人であった頃の面影ーー少女の両親でありこの屋敷を支配する妖異であった。
「……父様、母様」
リリーの震える声が、誰よりも先に響いた。
アルバートたちが驚いて振り向くと、そこには屋敷を離れたはずの少女――リリーの姿があった。肩を揺らしながら、必死の思いで追ってきたのだろう。今にも倒れそうな足取りで、それでもまっすぐに妖異を見上げている。
「な、なんで来たの! ここは危険よ!」
ラミットが駆け寄ろうとするが、それよりも早く、影が音もなく舞い降りた。床板を軋ませ、リリーの数歩先に降り立ったその父であり母であったものは、かつての理性を思わせるような穏やかな眼差しで娘を見つめていた。
「おまえの声……ちゃんと届いていたよ、リリー」
優しげなその声に、リリーの表情が一瞬緩む。だが、次の瞬間、影の後ろから、べったりと血の滴る足音が聞こえた。現れたのは“母”だった。蒼白い肌に血の紅を引いた口元――その微笑みは慈しみに満ちているようでいて、どこかおぞましい。
「リリー、あなたを待っていたのよ」
「あぁ……そんな……」
ふたりの姿は、確かに“両親”だった。けれども――その体に宿っているのは、もはや別の“何か”だ。
「アルバート……!」
レンダ・レイが弓を引き絞るが、リリーが振り向きざま叫んだ。
「待って!! お願い、まだ……まだできることがあるの!」
「できること、だと?」
ブランデンが低く唸る。目の前の存在がもはや人ではないことを彼は知っている。
「私は……母様のために、ずっと祈ってきたの。どれだけ拒まれても、どれだけ怖くても、私の手で“救う”って決めたの!」
リリーは震える手で、胸元から取り出した小瓶を掲げる。それは割られたものとは別の薬――彼女がもしものために隠していた、最後の一本だった。
「お願い、もう一度だけ……母様の、本当の声を聞かせて!」
少女が瓶を開けた瞬間、淡い光が部屋全体を包み込んだ。
母の身体がびくりと震え、膝から崩れ落ちる。そしてその唇が、嗄れた声でつぶやいた。
「……リリー……?」
その言葉に反応するように、妖異の気配が一瞬、揺らいだ。父と母――二つの存在がまるで引き裂かれるように苦悶する。
「……っ今だ!」
アルバートが叫ぶ。
だが、その時――「フフフ……甘いな、小娘」
母の口元から漏れたのは、先ほどまでとはまったく異なる声だった。闇が、リリーの祈りを嘲笑うかのように形を変える。
母と父の身体が闇の渦に呑まれ一つとなる。
――それは禍々しくも美しい、黒き羽根を持つ女神のごとき妖異。
リリーの想いを利用し、より強大な存在として「顕現」したのだ。
響き渡る絶叫。
黒き女神が空にその姿を現したとき、空間そのものが悲鳴を上げた。
空は裂け、時間の流れすら歪み、言葉を発することさえ躊躇われるような“圧”が押し寄せる。
「な……に、これ……」
リリーの声はかすれていた。足が震え、視線が定まらない。
「……っ、こいつは……!」
アルバートの喉奥が本能的に唸る。
「……身体が……動かねぇ……っ!」
ブランデンが前に出るが、その歩みも重い。
「ただの威圧じゃない。“信仰”が具現化してるのよ……!」
ラミットが顔をしかめる。
「これが、君の“救い”だよ……リリー」
声が幾重にも響く。
「アルバート!」
「……分かってる。終わらせてやる――お前たちの救いとやらは間違ってるってな!」
アルバートが再び斧を構え、仲間たちも武器を構え直し、闇の真核へと迫る。
戦いの幕は、今、真に上がった。
「さア、終ワり二しよウ。オ��エタチも……クルシみから解放シテやろウ」
空間そのものを捻じ曲げるほどの瘴気。蠢く触手が天井近くまで伸びたかと思いきや、女神の腕が振り上げられたその刹那、無数の刃が空から降り注ぎ、地を貫いた。
アルバート、ブランデンらが前に出てが防御に徹するが、地面ごと吹き飛ばされる。
「ぐはッ!!」
ラミットが咄嗟に防壁を張るも、魔法が砕かれる音が響く。
レンダ=レイは咳き込みながら立ち上がって、弓を構え直した。
「もう、やめてえええええ!!」
リリーの叫びに、黒き女神の手が止まった。
ほんの一瞬、わずかにその顔が歪む。
レンダ・レイは、ほんの一瞬の迷いを見逃さなかった。
「感情がある……まだ“完全体”じゃない……どうにか隙を作らないとね」
ラミットがその背に小さな体を押しつけるように立った。
「無茶しないで!」
補助魔法をレンダ・レイに重ね掛けする。
「ありがとう、ラミット!」
レンダ・レイは小さく息を吐いた。
「行くよッ!」
矢を二本を同時に弦に番え、跳躍しながら詠唱中の“触手”を正確に射抜いて封じる。
「ッ……来るぞ!」
アルバートが叫んだ。詠唱は封じたが、物理攻撃は防げない。地面が隆起し、闇の触手が床を高速で這い回り、突き破って、引き裂こうと猛襲を仕掛けてきた。
「下がれ、ラミット!」
「下がったら誰が回復するのよ!? ちゃんと自分の体力見なさいっての!」
ラミットが怒鳴りながらも、素早く聖水を振り撒き、アルバートの足元に現れた傷を淡く癒す。次の瞬間、触手の槍がアルバートの背後から迫る。
「ッ――!?」
「任せな!」
ブランデンが飛び出し、その大盾で槍を弾くと、衝撃に地面が震える。
「お前らな、前ばっかり見てんじゃねぇ! 背後の守りは俺がやる!」
「頼もしいわね! じゃあ私、こっちの瘴気を浄化するわ!」
ラミットが小瓶を取り出し、広がる瘴気の中心に叩きつけた。破裂した浄化水が白く輝き、周囲の瘴気を一時的に押し戻す。
「チャンスよ!」
「了解――!」
レンダ・レイの弓が唸る。矢が連続で放たれ、狙いすました一撃が妖異の片目に突き刺さった。
「こいつ……まだ動けるッ!?」
だが、妖異は怯むどころか怒り狂ったように咆哮し、無数の触手を荒れ狂わせた。
「ブランデン、援護する!」
「任せろ!」
ブランデンが前に出て、巨大な盾で触手の一撃を正面から受け止める。衝撃で足元の石畳がひび割れたが、彼の足は一歩も退かなかった。
「こんなもんかよ……!」
横合いから迫る別の触手を、彼は盾の縁で叩き落とし、逆手に持ち替えた剣で断ち切った。その隙を突いて、レンダ・レイが素早く位置を変え、物陰から別の矢を番える。今度は瘴気の源と思しき胸元の核を狙った。
「……これなら、どう?」
風を裂いて飛んだ矢は光の尾を引き、妖異の胸を正確に射抜いた。妖異が身をよじり、再び咆哮する。
「数は不利でも的はでっかい!」
「くっ……! でも これじゃ近づけねえ!」
周囲は触手の棘だらけだ。接近戦にもちこみたいが、ままならない。
「だったら私が道を開ける!」
ラミットがぎゅっと唇を噛み、全員に向けて小さな声で祈りをささやいた。彼女の体から淡い金の光が広がり、味方の体を包み込む。
「今だけ、少しだけでも耐えられるように……!」
「いけるッ!」
アルバートが突っ込み、振るった斧が触手の一つを引き裂く。返す刃で切り上げたもう一撃が、腕のような部分を叩き斬った。
だが――。
「っ、来るぞ! 全方位攻撃だ!」
妖異がのけぞり、無数の触手を地面に叩きつける。瘴気が炸裂し、棘のような瘴気弾が放射状に飛び散った。
「下がって! 遮蔽物を使って!」
レンダ・レイが叫び、矢の連射で一部の飛来物を撃ち落とす。ブランデンはラミットの前に飛び出して盾を構え、衝撃を受け止めた。
「ふん、そんな子ども騙しじゃ割れんぞ!」
「ラミット、回復はまだか!?」
「今、かけ直してるからっ! ちょっと待って!」
そのとき、後方にいたリリーが膝をつきながらも、必死に両手を組んで祈りを捧げる。
「どうか……どうか、この願いを届けて。彼らが、無事でありますように――!」
小さな祈りが空気に溶け、微かな風のような光が仲間たちに流れ込む。淡く青い輝きがラミットの魔法と重なり、治癒の力を補強していく。
「っ……!? リリーの魔法、増幅してる……!」
ラミットが目を見開いた。リリーの祈りが、彼女の術をさらに強くしていた。
「ありがとう、助かるわ!」
「リリー、もう少し耐えてくれ!」
「はい、わたし、祈り続けます……!」
レンダ・レイがさらに高く跳び上がり、矢を連続で番える。矢にまとった光が、夜空を裂く流星のように煌めいた。矢の軌道がより鋭く、正確に妖異を射抜いていく。その一矢一矢に、瘴気を払う微かな浄化の祈りが添えられていた。リリーの魔法が矢を導いていたのだ――。
「……触手の動きが鈍ってる。こいつ、少しずつ弱ってる……! もう一息よ!」
ブランデンも大盾で突進し、敵の懐へと踏み込んで押さえ込む。
「今だ、畳みかけろ!」
「もうっ、ほんっと無茶ばっかり! 倒れる前に回復くらい受けなさいよね!」
「ラミット、援護頼む!」
「任されましたっ!」
ラミットの治癒の光に、リリーの祈りがその光をそっと支える。まるで聖女の加護のような優しい風が、味方の傷を癒していく。
レンダ・レイの矢が夜空を裂き、ブランデンは前線で攻撃を引き受ける。
「アルバート、最後行くわよ!」
「ああ、任せた!」
ラミットがエーテルに祝福を込めて力を流し込む。その力がアルバートの斧へと流れ込み、白光が周囲を照らした。同じく、リリーも両手を胸元に重ねてそっと目を閉じる。震える声で、しかし迷いのない言葉を口にする。
「風よ、導いて。光よ、照らして……どうか、この願いを力に変えてどうか祈りよ、届いて――!」
その想いは静かに、確かにアルバートの背を押した。
「――全てを断ち切るッ!!」
一閃。
光に包まれた一撃が振り下ろされると同時に、空気が爆ぜるような衝撃が広がり一陣の風が沸き起こった。闇を纏っていた妖異の身体に、深く、潔く、白光の斬撃が刻まれた。
「――がっ……ああああああアアアァア!!」
黒き女神が、悲鳴とも咆哮ともつかぬ声をあげる。闇が裂け、空間そのものが震え、引き裂かれた口から煙のような怨嗟の叫びが噴き出す。
「……これで、終わりだ」
ブランデンがゆっくりと盾を下ろし、後ずさる女神の姿を睨みつける。
「父様……母様……」
リリーが、震える声で呼びかけた。
光に貫かれ、崩れかけたその姿の中に、確かに“両親”の面影があった。
「……リリー……」
その声は確かに――母の声だった。
リリーの目から、堰を切ったように涙があふれた。 「母様……!」 彼女は駆け寄ろうとするが、父の影がそれを制するように前に立ち塞がる。
「リリー……近づいてはいけない……」 その声も、確かに父のものだった。しかし、その顔には葛藤と苦悩、そして――愛情があった。
「私たちは……もう元には戻れない。だが、ほんのわずかでも……お前の願いに応えられるなら、それでいい」
彼は振り返り、崩れ落ちた妻――マリーの手を優しく取った。その手を、彼女もまた、かすかに握り返す。「ごめんね……リリー……。苦しい思いを……させたわね……」 その声は震えていたが、確かに母親としての彼女の言葉だった。
アルバートたちは、ただ静か���見守っていた。 ラミットは涙を拭い、レンダ・レイは震える手で弓を下ろした。 ブランデンは腕を組んで目を伏せ、何も言わなかった。
リリーはそっと膝をつき、両親の前で深く頭を下げた。 「……ありがとう。……私、もう、泣かない。だから……どうか、安らかに――」
その瞬間、光が再びあたりを包んだ。 それは祈りのような、穏やかな光だった。
二人の姿は、光の中でゆっくりと溶けていく。 それは、まるで永い眠りから解放されるような―― 安らぎに満ちた別れだった。
やがて、屋敷の中から妖異の気配は完全に消え去っていた。
「……終わったな」
アルバートの静かな声に、誰もが無言でうなずいた。
***
空が晴れ、屋敷には静寂が戻った。
リリーはしばらく何も言わずに空を見上げていたが、ふと顔を上げて――微笑んだ。
「ありがとうございます、みなさん」
ラミットが、目元をぬぐいながら近づき、リリーの手を握る。
「もう大丈夫。あとは私たちがちゃんと見てるから」
「……ふぅ。とんだ騒ぎだったな」
ブランデンがぼやきながらも、どこか安心したように盾を背負い、レンダ・レイが矢筒を背に戻しながら笑う。アルバートは斧を肩に担ぎ、空を見上げる。
長い夜を越えて――新しい朝を迎えたのだった。
※おまけの話※
静かな夜だった。
深い森の奥、一行は簡素な野営地を設け、焚き火を囲んでいた。
戦いの興奮が収まりきらぬまま、それでも皆、どこか安堵したような顔をしている。
ラミットは、火を見ていた。
薪がはぜるたび、過ぎた戦いと、リリーの涙が思い出される。
「あの子、きっと、これからも迷うでしょうね」
隣に座るアルバートに、ぽつりと声をかけた。
「……それでも、進むんじゃねぇかな。あの子は強えよ」
彼は当然��ように答えた。
まっすぐで、少し不器用で、だけどその言葉には真実がある。
ラミットは目を伏せる。
そのまっすぐさに、時々、どうしようもなく胸を衝かれる。
「……いつもそうやって、簡単に言うのね」
「ん? 何がだ」
本当に分かっていない顔で振り向く彼に、ラミットは小さく息をついた。
「……いいの。べつに」
わたしが何を思ってるかなんて、気づかなくていい。
気づかれたら、たぶん、困るから。
でも、ほんの少しだけ、気づいてくれたらとも思う。
そんな矛盾を、彼は知らずに隣にいて、火を見ている。
ラミットはそれだけで、少し心がほどけるのを感じた。
――あぁ、もう。ほんとに、ずるいんだから。
「……ありがとう、ね」
「ん? なんか言ったか?」
「……別に。聞き間違いでしょ」
「そうか」
ラミットはひざを抱えるようにして黙りこむ。アルバートは何か考えるふうでもなく、火に木をくべている――ラミットはちらりとその横顔を見つめ、目を細めた。静かな夜が、またひとつ、ふたりを包んでいた。
(終)
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心と体においしいレシピ~その148
2回続けて「七草がゆ」についてお伝えしてきました。今回が最終回。といっても「七草がゆの日に作ろう」と準備してきたという、友人からのとっても貴重なお料理のお話。
友人から届いた、まずは写真。

『私は山形風に納豆汁を作りました、色々いっぱい入れようって年末から準備してて、
大根・人参・ごぼう・里芋・こんにゃく・かのか茸・なめこ・干し椎茸・蕨・芋がら・油揚げ・豆腐で12種類ですね。
これにすりつぶした納豆と味噌、吸い口はセリとねぎのみじん切りで4種類プラス、16種類となりました。あっ七味もふりかけると😉
かのか茸は月山の麓西川町産の缶詰で閉業につきラストひと缶、蕨の塩漬けは昨秋にパンジーの苗を薬莱へ買いに行った時に物産館で、それに絶対に忘れてはならない芋がら、山菜たっぷりが山形の味です。
山形を離れてもう40年ほど、どうしても食べたくなる母の味です。
仙台の人はあまり山菜を食べないイメージでしたが物産館などで手に入ることを知り味の再現が出来てとっても嬉しい。』
「七草がゆ」の日に作ろうと年末から準備していたという「お母さんの味」でもあり「ふるさとの味」でもあるという納豆汁・・・そんな料理や味があることはなんと豊かで幸せなことでしょうか。
ひとつひとつの食材を「これも揃った!」と喜んでいる様子も目に浮かびます。
そんな貴重な「納豆汁」、実は私もお福分けいただいたんです。「夕方にお鍋持ってきて」と・・・この頃ではお鍋持ってお福分けいただきに行く、ということあまりないのではないかしら?そのメールが届いただけで胸がいっぱいに・・・
この納豆汁、一緒に食べた家族と「美味しいねえ」「何もかもが完璧なバランス!」と感動しました。そして心も体もあったくなって、思わずホロリ、となりました。
ちょっとよそゆきの器でいただきました。

ご飯は、夏に仕込んだこれまた野菜いっぱいの味噌漬けのお茶漬けにしました。

友人のメールに「吸い口はセリとねぎのみじん切り」とありましたが、それは別にしてあって、よそった後に乗せられるようになっていました。(お茶漬けにも吸い口ちょっといただきました)
「七草がゆ」の日に、こんなに栄養たっぷり、愛情たっぷりのお料理をいただけたこと、本当にありがたく思いました。
素敵な素敵な美味しくあったかい「お福分け」ありがとうございました。ご馳走様でした!
今年元気に過ごせること、間違いなし、です!
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今日のお弁当。
コロッケとほうれん草のおひたしとたまご焼き。
鮭のふりかけ旨し。
寒いので長袖のインナーダウンを羽織る。
もう極端なんだよなァ。


晩飯は肉豆腐と切り干し大根の煮物。
前にも書いたけれど、ぼくの実家は父が牛肉を苦手にしていたので肉と言えば鶏か豚だった。
当然それを食って育ったので、ぼくも肉と言えばそうなっている。
まあ安上がりなのでいいのだけど、その食習慣は「吉野家」に訪れた事でコペルニクス的転回を求められた。
「牛肉うめぇ...」
それ以来たまに牛肉を買うようになったが、それでもまあ基本的には鶏か豚なのである。
ただ牛肉はしっかりとダシが出るので、今日のような時は牛肉を使うのである。
しかし朧どうふを使ったのでヤワヤワになってしまった。
ごちそうさん。
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去年7月、奈良県安堵町で住宅火災が発生。消防車など19台が出動しましたが、住宅のかやぶき屋根など約60平方メートルが焼けました。けが人はいませんでした。 火災が起きたのは、江戸時代初期の1659年に建てられた「中家(なかけ)住宅」。武士が住んでいた屋敷の姿をそのまま残す貴重な建造物として国の重要文化財に指定され、地元住民らに親しまれてきました。 歴史ある建物が焼損した今回の火災。原因は近所の「たき火」とみられていて、中家住宅の住人は「腹が立って仕方がない」と憤っています。 『吉田兼好ゆかりの屏風』『日本一古い梅干し』が… 火災から3か月後の去年10月、取材班は中家住宅を訪ねました。話を聞いたのは、この家に住む中八代さん(62)。中家は21代目で、350年以上住宅を守ってきました。 (中八代さん)「ちょうど『大和棟』と言われるとてもきれいなかやぶきの屋根があったんです。かやの部分がほとんどもう燃え落ちてしまっています」 数年前に張り替えたばかりだったというかやぶき屋根は跡形もない状態に。建物の中から見ると、屋根組みにぽっかりと大きな穴が空いていました。 被害は火によるものだけではありません。12時間以上続いた消火活動により室内が水浸しになったのです。白い壁は茶色く汚れ、屋根を支える梁には大量のカビが生えていました。 (中八代さん)「次の日の朝来たら、全部水浸し。奥には5部屋ありまして、全部畳が敷いてありましたが、畳の一部は焼けて、一部は水浸しで。暑い時期に水が入ると、すぐにカビが生えてきて。家財道具・机・いす・たんす・じゅうたん、全部がダメになってしまって」 中家住宅には、先祖代々受け継がれてきた貴重な骨董品も数多くありました。例えば、400年前につけられ、“日本一古い”という梅干し。焼け落ちた天井の瓦が当たり、壺ごと破損しました。屋敷には吉田兼好らが書いたとされる貴重な屏風もありましたが… (中八代さん)「ひどい状態になってしまいました。もう腹が立って仕方がないです。数時間前までの家とは大違いで、最初見た時は涙も出なかったんですけど、後でじわじわと被害のひどさにいら立ちと憤りと悔しさと悲しさと、もういろんな思いが出てきました」 近隣住民による『たき火』が原因か「20回くらいやっていた」 なぜ火災が起きたのか。当時、中家住宅の“少し離れたところ”でも煙が上がっていました。警察は、この場所で枯れ草が燃やされ火災が発生し、その後、中家住宅に火の粉が燃え移ったとみています。実は、この場所でのたき火は初めてではありませんでした。 おととし11月には、茂みの奥で炎が上がっている様子を中さんが撮影していました。 (中八代さん)「(過去2年間で)20回くらいはやっていたと思います。そのつど注意したり、『困るからやめてほしい』とか『もうちょっと小さな火にしてほしい』とか、消防からも言っていただいたり…。それで、なおかつ燃やしてたんですよね」 たき火をしていたのは近所の人で、注意をしてもやめなかったといいます。中さんは行政にも相談し、職員が直接やめるよう伝えていました。 (安堵町 住民生活部 吉田彰宏課長)「軽微なものでも『なんか燃やしていて臭い』という連絡がありましたら、現地に赴いて、小さい町なのですぐに動いております」 (安堵町 事業部 榧木純一さん)「『必ず火事のもとになるのでやめてください』というお話をさせていただきました。(Qそれにもかかわらず火災が起きたことは?)非常に悔しいですね、正直なところ。安堵町の数少ない重要文化財のひとつなので。火のもとも含めて、細心の注意を払ってそこに住むべきだと」 火災から7か月が過ぎ、今年3月6日、警察の捜査が一つの区切りを迎えました。警察は、たき火に関わっていた近くの住民の男女2人(50代)を重過失失火容疑で書類送検しました。火の確認を怠り、その場を離れた重大な過失により火の粉が燃え移った疑いが持たれています。 MBSの取材に対し、書類送検された男性は「たき火がぶわーっと燃えていくところを見ているわけでもないから、本当にわからない」と話し、注意を続けてきたという中さんや町の話については、「(中さんに)特に注意をされたわけではない。(町から)燃やすなと言われなかった」と答えました。そして、男性はもう1人の女性について、「火の確認を怠ってはいないと思う」と言い、女性本人は、取材には「答えられない」と話しました。 修復費用は約5億円…所有者負担は約2500万円 中さんと夫の寧さんは、中家住宅の再建に向けて動き出しています。修復費用をクラウドファンディングでまかなおうとしていて、今年1月、県内の観光案内所を訪れました。 (中八代さん)「火災の後、修復にずいぶん費用がかかりますので…。チラシを100部お持ちしました」 文化庁や県の試算では、修復費用は総額約5億円。そのうち95%は国・県・町でまかないますが、残り5%、約2500万円は所有者の負担となるのです。 (中寧さん)「今は物価高なので、修復途中に費用が上がることもあるとおっしゃっていた。それが本当にどこまで上がるんだろうと心配しています」 (中八代さん)「何度もたき火をして後始末もしなかった、その結果がこんなことになった。なぜこんなことが起こらないといけなかったのか、まだわからない部分が多いので、本当に悔やまれます」 中家住宅は4年後には修復が終わり生まれ変わる予定です。しかし、一度失った物や思い出が元に戻ることは決してありません。 (2025年3月7日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『発掘!憤マン』より)
近隣住民の『たき火』が原因か…過去に何度注意しても止めず「20回くらいはやっていた」国の重要文化財の屋根が焼け落ちた火災(MBSニュース) - Yahoo!ニュース
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#お弁当 #お弁当の記録 ささみとキャベツのマスタード和え。切り干し大根としらすの和物。ほうれん草のおひたし。もやしとセロリのナムル。盛り盛りになってしまった。
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ひどくもろくみえづらくさわれないもの
たとえば /むきだしの内臓 /メモワールの墓標 それなりの垂移にSpinを捧げる この『たまらなく はがゆいうた』 あなた自身を映し出すわたしの瞳が存在を憶えているから、それ以上も、逸らすことも不能だった。ひらかれた例題にも、観測できず くそったれな月光の結合を視するうちに、(自嘲を溢している。)念入りな退屈の宙吊りを見物しながら……驚きのあまりに際して、睡ネブるのみ/では、影絵の受け答えはつづきもの、あの子はまだ遠くを眺めながらおはなししているらしかった。 あの摩耗したグリーンハウスの、ぬるめ触れ書きは無学の昔を留置している波が、羽根が、梢が躊躇うばかりの類例を喚ぶのだとおもった。死後に伴う永い切符を、いま、わらう主人を――芽生えだしたものは、また唄い肇めるまでわずかの差異を。 憐れな___を。跨ぐばかりで 振り子時計の針も戻った気がして。あんな虚ろな風貌を見せかける弱さを寂しさとして。ざらざらと遮るもの/ふわふわと授かること。隠蔽色に赤らめて(やまない)幸せを抱いたげて/こう平然とした古書だけが残る。斜向かいの馴染の靄に後ろが荒ぶるといえる駄物である。 見世物に記するグロテスクな溝にある関係をこうしてあらわにさせるが、今更 ないような感覚 思い浮かべたメロディを等分した インチキは贈呈品の一泡にすぎない。すべて空々しい鋳露に 色彩ができるなら。 やわらかな殖えは貧しさと撒く、入江に張り詰める、自我と対象と比べられない。水平線が熔けゆく有り様を来訪者と、見紛う 経帷子の花のきみわるさをチラつかせる、〝夕暮れ・朝焼け〟などに/余すところなく震えている。 海龜の泪をみた気がする これは無自覚な両腕が掬う古びた箱。じかに封にするには。おそらくは乱暴ないい方では底の浅い人間 丁寧なわらい肩で。口元だけ温むけれども。掻爬したものの、きれぎれのいっぺんは荒野を泡立て無垢ないしのかけらを求め、喉に絡まる観賞魚を養いながら。垂れ込める鱗翅類の大池、むさぼり眺める、むしのいどころ/止め処無く、憐れむのですが。 なんていっても 帆を上げれない・なんて。おもえば・座敷に経る波紋に抜かれる。(もう掴めない風通しの両足、枝々と祀られる卑しい蛇を消せない、恋人が溺れている)〝有り触れて〟ゆずらない ほんとうのことは。手のひらで著アラワすけれども。迂曲するばかりに蔑んだ価値判断を、確かに。胸苦しい山頂には残照が灰で煤で、泥を吐く冬戯フユザれに、ある寂寥の旋律はふと咲ワラう。 意識朦朧の閃光でしょうか あまり立見席はまだを識らないが。切ないおもいででも、途して締まって。塊の体系をまた肩紐の堅物の片方の形見だけ傾きつつある。白栲シロタエの余情だなとやはり責め立てるこのザマだ。引きだしの天井にのしかかり、わななく粒子と気体は こきあげるように巡り、両の眼だけ傍で在り続けるなら、しまいを頂戴。とあちこち空々しいばかりの雨 ぽつぽつと染み込んだあの、 よこしまな序文について (いままでを畏れ、従いましょう) 忘れ果て 無感覚になる 浮薄時半 徒労もないくせに、物静かに褪色する体言・壇 少焉は、薔薇色だった亡骸を。 描写するおろそかな滑車に軋み、うつ伏せの息吹の音一本ずつ。目眩に窃ヌスまれる砂を房で、咲かせたら? 餞ハナムケに由来するたなざらしの、ありきたりの見解や、次第に薄れゆく生形キナリ海図に応じて。複雑で干潮で頼りない朽葉が仰山、渇いた枝に絡まる名残/なんぼかの膨らみ。慢性的な土壌が折れ半角の目合い、相場より。あとが/ものが。どちらかを――刺し抜いた薄紫の風が気だるさに削られたほど小刻みに押しつぶされて。いきをのむ島へ、 けれど燦燦と域の音を絆ホダし残響を鳴らした鴉は? あたりいちめんそれきり。しどろも��ろの――むこうは知っていたのでしょうね。こう揃えられた腹と腿と、つばさとハンカチと、言いなりの耳朶。まぁ小さな蜘蛛でしたわ。たったひとつだけ展望台で、しげく。 (いくつかの私物の糸があった。) 近く遺作の計画は前髪が濡れている あらやだ。/「襟が汚れているな。」 ……末尾の賑やかなこと (さきもみえない/私は/あとがない) たまゆらに咲きかけた水面下に、 『いまにして大地に、作り笑い 慎ましく 寂しかったよ』 ――おそらく輪郭は僅かにヌメる累の血を 磨りガラスの表紙に やぶれかぶれと当たり散らしました 平行線の綱渡りと、たまらなく かゆいうた それはきっと浜昼顔のように易しく有りましょう 私は 息苦しい みぎてのゆびきり。 すまなそうに被る月はそっとおぼろげ、意固地な人形の 星を鏤め埋め戻した、遊戯の最中でなきやんで。手渡されたこのごろも晴れて あえかに寄せた情景を鮮やかに遷した、完璧な欠乏がこうして呼吸を投げ出すとき。――それほどの多岐に亘り。 気が遠くなるほど 波をひきしだいて、いきものの美星は狭間で、無作為リズムひとつ。切手を貼らずに〝ふむ、潰す、つまむ、捻る〟黙想の腕、中だるみに痺れた約束とこれはもう雪の華だろうかねぇ。 不条理はその見栄を戸に預け、ひょろひょろと櫂をしずくを、崩れ落ちた小言を並べていった。一度にあたえる心臓のあたりが軽薄な童謡を焦らないように 譜を生きて往く尽きか展翅だった。たからかな理念か痩果・容姿類似がおおく夙に奔放とも閉口して。天明アシタにいいなおせるから、 そうだろ。感傷的なオラシオンならまだ追い縋る、暗外。完結済の。出入り口だというのに理コトワるまでもなく、手順を通りすがりの流行りにのせ。脈の目撃者の凹みを緩衝するこの完全な密室では、またずいぶん人馴れしていて暮色の濃淡とほおずりする、宴席がある。 どの少女も寝言なんて華やかな悪知恵だって とんと音は溶けて、瞬間の真ん中に転がりこむ 『詞先シセンの助手は台本と斎サイを留めた罪人の献花をはじめる』 碑が透る思惑は鉛の頭が引き起こします。 またあなたは郵便受けから、かすかに若草の展望にひらかれた。浮世、ほのかにあふれる丘の靴音だけを期待し、踏み惑う木の葉と散り歩くこと。いくつもの汀線を/視線を気にして/眼尻を決して。闇に湾曲した傷だからこそ、空々しい獣を抱きかかえてみせるのに。この手を離れた影を再び見つけ全身に戯れてた香りはなんというか、伝わるのだろうが。――切り開いた気配として未来を天に還し、そして過去としてひかりを探りあて海に翔けることができます。 詩篇が胚を箸に変えることは指を汚すけれど、慌ただしく泥濘むだけで。延延とむずがる諦めだろ、と罵る鼓翼。事実より塵架かる。蛍火が細濁ササニゴり、惨い/ともしび。と夜を混めて流れ落ちた襞の暁は、「果たして衝動的な気分なのか。」 2024/06/15
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2024.7.18
女の細長い指が自らの足を這うのを眺めていた。つややかな黒髪が女の痩せた肩口で溜まって、部屋の灯りを反射して光る。わたしの小作りな足の爪が、女の手で鮮烈に赤く塗られていく。彼女とは同い年なのだけれど、あまりに体の造作が違うものだから、我ながらなにか倒錯的な感じがする。
「塗ってみるとなんか、ちがうかも。」
「そお?」
女は俯けていた顔を上げる。ややするどい、きつめな眼差しがやさしげに細められている。これが彼女の好きな女に向ける表情なのだと毎度のように思う。この手の表情のつくりかたをする女ばかり好きになる。わたしには不相応だと感じる。不相応でもほしいものはほしいわけだから、しかたのないことだ。
「じゃあ塗り直すね。何色がいい?」
彼女はきれいに並べられたマニキュアの瓶を指でなぞる。わたしに似合うと思う色。そう答えると、彼女は悩ましげに首を傾げた。
「なんでも似合うもの。困るなあ、……やっぱり、ピンク?」
「じゃあそれで、お願い。」
彼女はわたしの爪を一本一本ていねいにコットンで拭う。彼女の指先はすこし荒れていて、除光液はしみるだろうに眉ひとつしかめない。痩せぎすの体にふさわしい、ひょろりと長い指をした薄い手だ。わたしの力でも折れてしまいそうだと思う。じっさい彼女は、わたしが彼女を害そうとしてもいっさい抵抗をしないだろう。
夜更けのココアにはラム酒を入れるのが好きだ。金色の液体がとろとろとマグカップに注がれるさまが良い。やけどするくらい熱くて、どろどろに濃いココアでなくてはいけない。彼女は明日も早いのに、わたしに付き合って同じものを口にする。
「ありがとう。寝たっていいのに。」
「すなちゃんと過ごす時間が一日で一番大事なの。」
彼女の目が愛しそうに、困ったようにわたしを映す。もちろん嬉しいのだけれど、わたしの小さな、薄っぺらな身には余るわけだ。
「わたし、明日は遅いよ。」
彼女の両の手が、大切そうにマグカップを包んでいる。細く乾いた、節の目立つ彼女の手は、わたしのそれよりは大きいわけだけれど、あまりに華奢なものだから、大きさを感じさせない。疲れた頼りなげな手だ。
「知ってる。待ってるね。」
薄い唇が弓なりに引き伸ばされる。彼女の痛ましい笑顔がわたしはすこし苦手だ。下がった眉はやさしげなのにわたしを責めているみたいだと思う。弱さの不用意な露出というのは、一種の攻撃だ。彼女はわたしを相手にしているから見せている弱みなのだろうけれど。こっそりと溜息をついた。
わたしの傾向として、健気で愛らしくて、むき身で生きていそうな人を好きになるけれど、わたしとおなじくらいにずるくてだめな人でないと疲弊するということを、それなりに昔から自覚している。
とはいえままならないのが恋である。
マグカップのなかみを飲み干す彼女の華奢な喉仏がうごくのを眺めていた。あとで首でも絞めてやろうと思った。
半地下の薄暗いカフェバーがいまのわたしの職場である。店内にはコーヒーと煙草の匂いがしみついて、はいるたびいくつか歳をとったような気分になる。嫌いな匂いというわけではないのだけれど、不特定多数の副流煙を浴びるというのはけっして気持ちのいいことではない。髪をきっちりと括って、制服のエプロンの紐を縛った。そう賑わっているわけでもなく、常通り暇な夜だった。暇な夜はねむたくて、彼女のことを少しだけ考える。
わたしが仕事を終えて帰るのは4時ごろになるけれど、ちゃんと眠れているだろうか。電気もつけずに暗い部屋で、じいっとその充血した目だけひからせて、ひたすらに佇んでいるのだろうか。2時間ほどの浅い眠りの果てに、音をたてないようにひっそりと部屋を出ていくのだろうか。インスタントコーヒーの湯気に、疲労のにじむ深い溜息を隠すのだろうか。
なぜだか今すぐ彼女に会いたいと思った。
「このケーキ、もし余ったら持って帰ってもいいですか。」
チェリーパイを指し示して言う。そもそもケーキは夜中にそんなに出るものではないし、消費期限に問題がないからというのと、店の華として昼過ぎから出しっぱなしにされているだけだ。
「ああもちろん、そうしたら、佐弓さんのぶん、もうとっておいていいよ。ほかにほしいのあったらとっていいし。」
店長は柔和なほほえみを浮かべた。これで経営をやっていけるものかと思うほどに、ひとの好さそうに穏やかなひとだ。まなじりのしわが照明をうけてじっさい以上に深くみえる。
「夜にあんまり食べると肥っちゃうので……、一緒に住んでる子のぶんもふたつ、頂いてきます。」
パイのそばに添えられたケーキサーバーをつかんで、二切れをテイクアウト用のプラスティックの容器に載せた。裏の冷蔵庫にはこぶ。彼女の好物が余っていてよかったと思った。わたしが特段好きだというわけではないのだけれど、彼女は一緒にとかおそろいとか、そういったことに特別の意味を見出す性質の女だから、気まぐれにすこしでも喜ばせてやろうと思ったのだ。わたしとしては、この店でいちばん美味いのは一切れですっかり酔っ払えてしまうくらいに甘く重たいサバランだと思っている。そのことは彼女も知っている。
常通りの退屈な勤務を終えて、エプロンの紐をほどいた。夜道を歩くのは好きだ。人間じゃない、なにかべつのいきものになったような心地がする。地上でそう感じるということは、かつてわたしがそうであったそれとは確実に違うなにかだろう。酔っぱらいの喧騒を聞きながら、踊るような足をそうっと踏み出して静かに歩いた。涼しい風のなかでアスファルトがやわらかい心地すらした。
鍵穴に鍵をさし入れると、すぐに室内から足音がきこえた。鍵を回す。立て付けの悪いドアは、いつも怒っているのかと思うくらい乱暴な音を立てて開く。暗い玄関に、彼女の白い細面が浮かび上がる。
「おかえり。」
「寝ていていいのに。」
「うん、少し眠っていたみたいで、鍵の音で起きたの。」
よく見れば彼女の唇の端にはわずかに涎のあとがある。髪は無防備に乱れていて、帰って服を脱いだままらしく下着しか身につけていない。骨の構造が一目で窺えるくらいに薄っぺらな胸元があらわだ。
「……ちゃんとベッドで寝てていいのに。」
うん。彼女は童女じみて肯いた。夢の残滓として寝ぼけた口調ながらにうれしそうで、わたしは彼女を少し憐れんだ。こんな女が帰ってきて喜ぶなんて。……いや、好きな相手が自分のもとに帰ってきたら嬉しいし、好きな女の「好きな相手」であることも嬉しいことであるはずだ。
彼女に抱きしめられて、そして居室にはいる。満ち足りている。狭く薄暗い部屋は、かすかにバニラの匂いがする。好きなはずだ。愛おしいとは、思う。
「ケーキもらってきたよ。食べる?」
ケトルのスイッチをいれながら訊く。首肯する彼女を横目に紅茶の缶を覗くと、茶葉はもう残っていなかった。しかたなしにインスタントコーヒーを取り出す。
「牛乳?」
「すなちゃんと、おなじの。」
マグカップふたつをコーヒーで満たして、そのかたわれを彼女に渡す。容器をあけて、キッチンの抽斗からフォークを二本取り出す。コーヒーも濃いほうが好きだ。たっぷりの砂糖とミルクを入れるのが好きだけれど、今日は甘いものだからブラックでいい。
プラスティックの容器のままに、二人でチェリーパイをつつく。
「好きなの、覚えててくれたんだ。」
彼女はパイを頬張りながら、嬉しそうに笑みを浮かべる。笑い慣れていないことがよくわかる、いかにも不器用な笑顔である。彼女は一方的にわたしを好いていると思っている節がある。それならば、それでいいけれど。彼女がどう思うかだなんて、わたしにどうすることができるものでもないから、彼女がいいなら、もう、いい。
「もちろん。」
一緒にシャワーを浴びる。すこし痩せたかと思う。言及はしない。疲れているのはわかりきっている。彼女はねむたげに、しかし優しい手つきでわたしの髪を乾かす。わたしもというと、今日はめずらしく受け入れた。彼女の髪を撫でると、細く乾いたそれがわたしに絡みつくみたいだった。ドライヤーは重たくて好きじゃない。
床に就く。空が白みはじめるころ、彼女にかたく抱きしめられて目が覚めた。閉じられた瞼の下、彼女の瞳はなにも映さずに、ただ眉根が悲しそうに顰められている。
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