#ぽぱーぺぽぴぱっぷ
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6月20日(金)open 12-19
毎日30℃を超える日々…
「この かんじ、ぜったい そうだ はじまったよ、はじまった!」
6月ですけど、これはなつだね。 今日も本が届いているので、またまたこちらに。 合田里美さんの新しい絵本『なつだね』を楽しみに開いて、まず見返し(表も裏も!)のデザインに、わぉ〜素敵〜!と感動しました。 そして合田さんの空気と水分を含んだような素晴らしい��の表現に心がピカピカに洗われました… どちらかと言うと夏は苦手な季節だけど、この絵本は気持ちが良くて、海に駆けだしたくなりました。 海、無いんだけどね。 だからこその、憧れ… ほとんど再入荷の本ですが、新しいものは 『なつだね』 『今日は昨日のつづきどこからか言葉が』 『さみしくてごめん』 の3冊です。
『K2 naokiishikawa』 『すべてを蒸したいせいろレシピ』 『brutus』No.1032、1033 はご注文品。
最後の写真は庭に落ちている地域猫のぽんちゃん。 ぽんちゃんも「なつだね」と言ってます。
#新再入荷の本#なつだね#ぽぱーぺぽぴぱっぷ#子どもと一緒に覚えたい野鳥の名前#うろおぼえ一家のおみせや#ポテトむらのコロッケまつり#ちいさな手のひら事典ねこ#ちいさな手のひら辞典子ねこ#ちいさな手のひら辞典とり#ゆうれい犬と街散歩#隙間2#隙間3#今日は昨日のつづきどこからか言葉が#私の好きな孤独#ことばのくすり#さみしくてごめん#世界の適切な保存#就職しないで生きるには#わからないままの民藝#パレスチナのちいさないとなみ#本屋#松本市#本中川#k2naokiishikawa#すべてを蒸したいせいろレシピ#brutus
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Romaji / ローマ字
Romaji is used to write the Japanese pronunciation using alphabets. It used to be used by Japanese speakers in order to write their name or something only in Japanese with alphabets, but currently by non-Japanese speakers to learn Japanese.
As you may already know, Romaji is not formally unified and there are some styles and it's confusing for me, too.
So herewith I would like to write in so-called "Hepburn style" which I think the most popular.
ローマ字 ヘボン式(Romaji in Hepburn style)
あ(A) い(I) う(U) え(E) お(O)
か(Ka) き(Ki) く(Ku) け(Ke) こ(Ko)
さ(Sa) し(Shi) す(Su) せ(Se) そ(So)
た(Ta) ち(Chi) つ(Tsu) て(Te) と(To)
な(Na) に(Ni) ぬ(Nu) ね(Ne) の(No)
は(Ha) ひ(Hi) ふ(Fu) へ(He) ほ(Ho)
ま(Ma) み(Mi) む(Mu) め(Me) も(Mo)
や(Ya) ゆ(Yu) よ(Yo)
ら(Ra) り(Ri) る(Ru) れ(Re) ろ(Ro)
わ(Wa) を(O)
ん(N)
濁音(だくおん)(Daku-on)~濁点付(だくてんつ)き(With ゛ Dakuten)
が(Ga) ぎ(Gi) ぐ(Gu) げ(Ge) ご(Go)
ざ(Za) じ(Ji) ず(Zu) ぜ(Ze) ぞ(Zo)
だ(Da) ぢ(Ji) づ(Zu) で(De) ど(Do)
ば(Ba) び(Bi) ぶ(Bu) べ(Be) ぼ(Bo)
半濁音(はんだくおん)(Han-dakuon)~半濁点付(はんだくてんつ)き(With ゜
Han-dakuten)
ぱ(Pa) ぴ(Pi) ぷ(Pu) ぺ(Pe) ぽ(Po)
拗音(ようおん)(You-on)
きゃ(Kya) きゅ(Kyu) きょ(Kyo)
ぎゃ(Gya) ぎゅ(Gyu) ぎょ(Gyo)
しゃ(Sha) しゅ(Shu) しょ(Sho)
じゃ(Ja) じゅ(Ju) じょ(Jo)
ちゃ(Cha) ちゅ(Chu) ちょ(Cho)
ぢゃ(Dya) ぢゅ(Dyu) ぢょ(Dyo)
にゃ(Nya) にゅ(Nyu) にょ(Nyo)
ひゃ(Hya) ひゅ(Hyu) ひょ(Hyo)
びゃ(Bya) びゅ(Byu) びょ(Byo)
ぴゃ(Pya) ぴゅ(Pyu) ぴょ(Pyo)
みゃ(Mya) みゅ(Myu) みょ(Myo)
りゃ(Rya) りゅ(Ryu) りょ(Ryo)
促音(そくおん)(Soku-on)= っ 小さい「つ」(Small“tsu”)
There is no romaji for single small “っ”,
because we add one more next character,
like”きって=Kitte
長音符(ちょうおんぷ)、横(よこ)棒(ぼう)、伸(の)ばし棒(ぼう)= 「ー」
あー(Ā) いー(Ī) うー(Ū) えー(Ē) おー(Ō)
かー(Kā)きー(Kī)…put a bar over the vowel
ハイフン(-)で繋ぐ…長い単語を分けて表記したい時
Phrases connected with “-“ mean literally they’re connected. Long words are written in multiple parts in Romaji, just for your easy reading.
Ex. Japanese 「では、お客様でございますね。」
Romaji “Dewa, okyaku-sama de gozai-masu-ne.”
English “Then you’re a visitor.”
In this case, “okyakusama” means “visitor”, and it can be separated into three: “o-kyaku-sama” at most. We don’t separate in another parts, because it consists of “o”, “kyaku”, and “sama”. Each part has each meaning.
注意!Uの発音が語尾に来る時の表記はこのブログでは基本的に省略しています。(ただし、言う、思う、誘う、吸うなどの動詞は省略すると分かりにくいので表記)
Writing "-u" words in Romaji is the biggest difficulty for me because there is no best answer. Japanese pronunciation of "-u" is a little weak, and if you pronounce real "u", it sounds unnatural.
Pronunciation of English word "so" is exactly the same as Japanese word 「そう」and if I write the pronunciation in alphabets, "so" is better than "sou", I think.
そうそうのフリーレン=So-so-no Furīren (Not Sou-sou-no ...)
ありがとう=Arigato. (Not Arigatou.)
But actually we have many similar words with u and without u, and in this way we can't tell whether the original word include u or not.
I mean, for example, both "葬式(そうしき:funeral)" and "組織(そしき:organization)" are written as "soshiki" in Romaji and it's very confusing.
However, as for this blog, I think it better to write in same way as you hear, so I didn't write weak "-u" pronunciation in Romaji.
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Symbols for The Sims 4 Gallery 🌟
Please note: The symbols displayed here on Tumblr might appear differently on the Sims 4 gallery. To see their true appearance, copy and paste them directly into the gallery description. Misc : ♨ ☏ ☎ ⚒ ⛘ ♠ ♥ ♣ ★ ☆ ♡ ♤ ♧ ♩ ♪ ♬ ♭ ♯ ♂ ♀ ※ † ‡ § ¶ 冏 웃 유 ⚉ 쓰 ヅ ツ 〠 ☜ ☞ † ↑ ↓ ◈ ◀ ▲ ▼ ▶ ◆◇◁ △ ▽ ▷ ◙ ◚ ◛ ▬ ▭ ▮ ▯ ▦ Ω ◴ ◵ ◶ ◷ ⬢ ⬡ ▰ ◊ ⬟ ⬠ ∝ ∂ ∮ ∫ ∬ ∞ √ ≠ ± × ÷ 兀 ∏ ㄇ П п ∏ Π π $ ¢ € £ ¥ ₩ ₹ ¤ ƒ ฿ Ł Ð ◸ ◹ ◺ ◿ ◢ ◣ ◤ ◥ ◠ ◡ Shapes : □ ■ ▒ ▓ █ ▄ ▌ ▧ ▨ ▩ ▒ ■ □ ▢ ▣◃ ▤ ▥ ░ ▁ ▂ ▃ ▄ ▅ ▆ ▇ █ ▉ ▊ ▋ ▋ ▌ ▍ ▎ ∇ ▵ ⊿ °○ ● ⊕ º • 。 ○ ◯ O ⓞ ◎ ⊙▹
Arrows : ⇧ ⇒ ↹ ↘︎ ↗︎ ↙ ↖ ↕ ↔ ︿ ﹀ ︽ ︾ ← → ⇔ ↸ Brackets: 〖 〗 〘 〙 〈 〉 《 》 「 」 『 』 【 】 〔 〕 ︵ ︶ ︷ ︸ ︹ ︺ ︻ ︼ ︽ ︾ ︿ ﹀ ﹁ ﹂ ﹃ ﹄ ﹙ ﹚ ﹛ ﹜ ﹝ ﹞ ﹤ ﹥ ( ) < > { } ‹ › « » 「 」 ≪ ≫ ≦ ≧ [ ] ⊆ ⊇ ⊂ ⊃ Lines: ☰ ≡ Ξ – — ▏ ▕ ╴ ‖ ─ ━ │ ┃ ‒ ― ˍ ╋ ┌ ┍ ┎ ┏ ┐ ┑ ┒ ┓ └ └ ┕ ┖ ┗ ┘ ┙ ┚ ┛ ├ ├ ┝ ┞ ┟ ┠ ┡ ┢ ┣ ┤ ┥ ┦ ┧ ┨ ┩ ┪ ┫ ┬ ┭ ┮ ┯ ┰ ┱ ┲ ┳ ┴ ┵ ┶┷ ┸ ┹ ┺ ┻ ┼ ┽┾ ┿ ��� ╁ ╂ ╃╄ ╅ ╆ ╇╈ ╉ ═ ║ ╒ ╓ ╔ ╔ ╔ ╕ ╕ ╖ ╖ ╗ ╗ ╘ ╙ ╚ ╚ ╛ ╛ ╜ ╜ ╝ ╝╞ ╟╟ ╠ ╡ ╡ ╢ ╢ ╣ ╣ ╤ ╤ ╥ ╥╦ ╦ ╧╧ ╨ ╨ ╩ ╩ ╪ ╪ ╫ ╬ ╱ ╲ ╳ Χ χ × ╭ ╮ ╯ ╰ ∧ ∨ ¦ ⊥¬ ∠ Punctuation: ‼ … ∷ ′ ″ ˙ ‥ ‧ ‵ 、 ﹐ ﹒ ﹔ ﹕ ! # $ %‰ & , . : ; ? @ ~ · . ᐟ ¡ ¿ ¦ ¨ ¯ ´ · ¸ ˉ ˘ ˆ ` ˊ ‵ 〝 〞 〟〃 " '′ ″ ‴ ‘’ ‚ ‛“ ” „ ‟ " '* ﹡* ⁂ ∴ ∵ Letters : © ® ℗ ∨ ㎖ ㎗ ㎘ ㏄ ㏖ ㏒ μ ℃ ℉ ㎍ ㎎ ㎏ ㎈ ㎉ ㎐ ㎑ ㎒ ㎓ ㎾ ㏑ ㏈ ㏐ ㏂ ㏘ ㎳ ㎭ ㏅ ㎪ ㎚ ㎛ ㎜ ㎝ ㎞ № ü ◂ ▾ ▿ ▸ ▴ ◖ ◗ ρ ∀ ∃ α β γ δ ε μ φ π σ θ ∈ ∑ ⁿ Α Β Γ Δ Ε Ζ Η Θ Ι Κ Λ Μ Ν Ξ Ο Π Ρ Σ Τ Υ Φ Χ Ψ Ω α β γ δ ε ζ η θ ι κ λ μ ν ξ ο π ρ ς σ τ υ φ χ ψ ω Æ Á   À Å Ã Ä Ç Ð É Ê È Ë Í Î Ì Ï Ñ Ó Ô Ò Ø ÕÖ Þ Ú Û Ù Ü Ý á â æ à å ã ä ç é ê è ð ë í î ì ï ñ ó ô ò ø õ ö ß þ ú û ù ü ý ÿ Ā ā Ă ă Ą ą Ć ć Ĉ ĉ Ċ ċ Č č Ď ď Đ đ Ē ē Ĕ ĕ Ė ė Ę ę Ě ě Ĝ ĝ Ğ ğ Ġ ġ Ģ ģ Ĥ ĥ Ħ ħ Ĩ ĩ Ī ī Ĭ ĭ Į į İ ı IJ ij Ĵ ĵ Ķ ķ ĸ Ĺ ĺ Ļ ļ Ľ ľ Ŀ ŀ Ł ł Ń ń Ņ ņ Ň ň Ŋ ŋ Ō ō Ŏ ŏ Ő ő Œ œ Ŕ ŕ Ŗ ŗ Ř ř Ś ś Ŝ ŝ Ş ş Š š Ţ ţ Ť ť Ŧ ŧ Ũ ũ Ū ū Ŭ ŭ Ů ů Ű ű Ų ų Ŵ ŵ Ŷ ŷ Ÿ Ź ź Ż ż Ž ž ſ ʼn ⓐ ⓑ ⓒ ⓓ ⓔ ⓕ ⓖ ⓗ ⓘ ⓙ ⓚ ⓛ ⓜ ⓝ ⓞ ⓟ ⓠ ⓡ ⓢ ⓣ ⓤ ⓥ ⓦ ⓧ ⓨ ⓩ Numbers : ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑴ ⑵ ⑶ ⑷ ⑸ ⑹ ⑺ ⑻ ⑼ ⑽ 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ Ⅵ Ⅶ Ⅷ Ⅸ Ⅹ ⅰ ⅱ ⅲ ⅳ ⅴ ⅵ ⅶ ⅷ ⅸ ⅹ ½ ⅓ ⅔ ¼ ¾ ⅛ ⅜ ⅝ ⅞ ₁ ₂ ₃ ₄ ¹ ² ³ ⁴ Japanese : ぁ あ ぃ い ぅ う ぇ え ぉ お か が き ぎ く ぐ け げ こ ご さ ざ し じ す ず せ ぜ そ ぞ た だ ち ぢ っ つ づ て で と ど な に ぬ ね の は ば ぱ ひ び ぴ ふ ぶ ぷ へ べ ぺ ほ ぼ ぽ ま み む め も ゃ や ゅ ゆ ょ よ ら り る れ ろ ゎ わ ゐ �� を ん ゝ ゞ ァ ア ィ イ ゥ ウ ェ エ ォ オ カ ガ キ ギ ク グ ケ ゲ コ ゴ サ ザ シ ジ ス ズ セ ゼ ソ ゾ タ ダ チ ヂ ッ ツ ヅ テ デ ト ド ナ ニ ヌ ネ ノ ハ バ パ ヒ ビ ピ フ ブ プ ヘ ベ ペ ホ ボ ポ マ ミ ム メ モ ャ ヤ ュ ユ ョ ヨ ラ リ ル レ ロ ヮ ワ ヰ ヱ ヲ ン ヴ ヵ ヶ ヷ ヸ ヹ ヺ ・ ヲ ァ ィ ゥ ェ ォ ャ ュ ョ ッ ー ア イ ウ エ オ カ キ ク ケ コ サ シ ス セ ソ タ チ ツ テ ト ナ ニ ヌ ネ ノ ハ ヒ フ ヘ ホ マ ミ ム メ モ ヤ ユ ヨ ラ リ ル レ ロ ワ ン゙゚ ㍻ ㍼ ㍽ ㍾ ゛ ゜ ・ ー ヽ ヾ 々 〒 〃 ※ 〆 Korean : ㄱ ㄲ ㄳ ㄴ ㄵ ㄶ ㄷ ㄸ ㄹ ㄺ ㄻ ㄼ ㄽ ㄾ ㄿ ㅀ ㅁ ㅂ ㅃ ㅄ ㅅ ㅆ ㅇ ㅈ ㅉ ㅊ ㅋ ㅌ ㅍ ㅎ ㅏ ㅐ ㅑ ㅒ ㅓ ㅔ ㅕ ㅖ ㅗ ㅘ ㅙ ㅚ ㅛ ㅜ ㅝ ㅞ ㅟ ㅠ ㅡ ㅢ ㅣ ㈀ ㈁ ㈂ ㈃ ㈄ ㈅ ㈆ ㈇ ㈈ ㈉ ㈊ ㈋ ㈌ ㈍ ㈎ ㈏ ㈐ ㈑ ㈒ ㈓ ㈔ ㈕ ㈖ ㈗ ㈘ ㈙ ㈚ ㈛ ㈜ ㉠ ㉡ ㉢ ㉣ ㉤ ㉥ ㉦ ㉧ ㉨ ㉩ ㉪ ㉫ ㉬ ㉭ ㉮ ㉯ ㉰ ㉱ ㉲ ㉳ ㉴ ㉵ ㉶ ㉷ ㉸ ㉹ ㉺ ㉻ ₩ ㉿ ー
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狂える時のシャドウ・オブ・ソーサー
〜誰が為に時は鳴る〜
_6.ナシュと空賊のラプソディ_✍
レオファードたちは、目立たぬように追っていた。その視線の先には、いつものようにマイペースに歩く冒険者の姿がある。
「……やはりそう簡単にはいかぬな」
ケット・シーが尻尾を揺らしながらぼやく。
どうにかアガレスに気付かれず、監視の目がない頃合いを見計らって、話す機会を狙っているものの――アガレスの気配が冒険者に付き纏うのを感じる。しかも冒険者が接触を試みようとする者たちは操られているのだろう、必ず巧妙に特設ステージへと誘導されてしまう。
「やれやれ、だな」
レオファードが、半ば投げやりに告げた。
特設ステージから聞いたことのある賑やかな音楽が流れはじめた――筋肉美のアフタヌゥーンのショーである。
今日もまた、冒険者は迷いなくそこへ足を運んでいく。
「……まったくだ」
ケット・シーは眉をひそめたが、仕方なくレオファードに続く。尾行の手を緩めるわけにはいかなかった。
大勢の客で賑わう特設ステージ。
中心にいるのはマンダウィル親子、そしてステージを取り囲むかのように筋骨隆々の男たちがきらびやかな衣装に身を包み、これでもかと肉体美を誇示している。
それを盛り上げるように、観客たちの歓声が響く。
レオファードは、周囲を一瞥したあと、ステージ上に目を向けた。そこで、あるミコッテの女性に目を留める――彼女は舞台の助手役として動いていたが、どこか様子がおかしかった。
明らかに『流れを知っている者の戸惑い』を見せている。
動こうとするたび、筋肉パフォーマたちにマッスルゥと押し戻される。何かを探るような目で、客席のほうをちらりと見ること数回。そして一瞬だけ、心底うんざりしたような表情を浮かべた。
気付いているなと、レオファードは確信する。
「おい、ちょっと聞け」
小声で呼びかけると、隣の小さな相棒が耳を動かす。
「なんだ?」
「……あのお嬢ちゃんは、この繰り返しに気付いているみたいだぞ」
レオファードの視線の先をケット・シーが辿る。ゴーグル越しに見据えてるのは舞台に立つ助手役らしきミコッテの女性だ。
「何を言っておる。そんなバカなことがあるというのか。アガレスの支配から逃れるなど、奇跡でも起きぬ限り……」
ケット・シーは思わず声を上げたが、レオファードの真剣な目を見て、ぐっと言葉を飲み込んだ。あのミコッテの娘が感づいているとな――本当にそうなのか? しかしレオファードの観察眼は確かだと思い直し、確信はないが渋々ながら付き合う事にする。
「――作戦はだな、舞台裏に引っ込むタイミングを狙うぞ」
レオファードは短く指示を出した。
「……そんで、ケット・シー、お前が潜り込め」
「小さいからって便利に使うな……!」
ぷんすかと文句を言いながらも、ケット・シーは小さな体を活かして、そっと動き出す。
「目立つ動きは絶対に避けろ。慎重にな」
「……私を誰だと思うておる」
レオファードの念押しに、ケット・シーはむっとしながら応じる。産まれたばかりの雛鳥でもあるまいに、レオファードは時折、親鳥の様に過保護な事がある。
「心配しちゃ悪いか? ネコじじい」
レオファードがニヤリとした。しれっと悪びれる事なく言うのだから、なおさら性質が悪い。
「ふん……余計なお世話だというものだ――それよりも」
「なんだ?」
「ネコじじいと呼ぶなと言うておろう!」
ショーは、一時小休止を挟んだ。
ミコッテの娘がそっと舞台裏に引っ込んでいくそのタイミングを逃さず、ケット・シーが忍び寄り、そして控室に入ったのを見計らい呼びかける。
「……おい、そこの娘よ。聞こえるか」
ミコッテの娘はかすかな呼びかけに、聞こえないふりをするかどうか、しばし葛藤する様子を見せたが――観念したのだろう。あたりをきょろきょろと見回して叫んだ。
「だ、誰ですかぁっ!? もしかしてオバケさんですか��?!」
声を上ずらせながら、ミコッテの娘は背中から爆弾を取り出し、両手で構えた。完璧な警戒ポーズだ。ケット・シーはその光景に耳をぺたんと寝かせ、心の中で深いため息をつく。
レオファードのやつめ、見誤ったな――反応を見る限り、ループに気付いているとは思えぬ。ここで猫の姿である使い魔の自分が出て正体を現したところで、ますます混乱が大きくなるのは間違いなかった。
「にゃ……あとは頼む」
「ったく、そうはうまくはいかねぇか」
「ほう……初めて意見があったのう」
「一言多いぞ、……ネコじじい」
レオファードが軽口を叩きながら現れ、ケット・シーもそれに続いた。
「オバケさんじゃなかったのです……黒猫さん……です?」
初めて見る生き物に、虚を突かれたミコッテの娘。レオファードが両手を見せるジェスチャーで、できるだけ優しく声をかける。
「おっと、俺たちは敵じゃない。ループを止めるために動いている。そう……だから、まずはその爆弾をしまっちゃくれねえか」
「えっ、あ、そ、そうだったんですか!?」
ミコッテの娘は慌てて爆弾を抱きかかえ、ごまかすように後ろ手に隠した――が、まったく隠れていなかった。
「…………………………………………��…」
――全然信用できねえってか。
レオファードはケット・シーの咎めるような視線をひしひし背中に感じながら肩を竦めてみせた。
「あ〜っと………まずは、自己紹介からだな」
警戒を解こうとレオファードがこれまでの経緯を簡単に説明するうちに、ナシュと名乗ったミコッテの娘は段々と目をきらきら輝かせ始め、両手を胸の前でぱんと合わせた。顔の前に手を寄せ、嬉しそうに片足をぴょんと跳ね上げながら声をあげる。
「思っていた通りです〜! やはり事件だったんですね!」
その瞬間、彼女が抱えていた爆弾が手からすっぽーんと抜けて、くるりと宙を舞った。
「うぉっとぉ!」
レオファードが反射的に手を伸ばし、がっちりと爆弾をキャッチ。しかし、爆弾の重みでバランスを崩しかける。
「わぷっ――!」
すかさずケット・シーも跳びつき、小さな体でレオファードの腕にしがみつきながら、爆弾の端っこを押さえる。
二人(正確には一人と一匹)は、無言のうちに絶妙な連携でバランスを取り直し、なんとか爆弾を地面に落とさずに済んだ。
レオファードが目配せしながらケット・シーに頷き、ケット・シーも小さく「にゃ」と頷き返し、そのまま慎重に、そぉーっと爆弾を地面に置いた。
「爆弾落とすなぁぁぁ!」
「わわわっ、ごめんなさいです~!」
ナシュはぺこりと頭を下げ、反省しているのかしていないのか、ぴょんぴょんと跳ねながらあたふたするのだった。
「はぁ………ナシュ殿の言う通り、見方を変えれば事件とも言えるかの」
ケット・シーは耳をぴくぴくさせながら、ナシュの反応に若干の戸惑いを見せつつ、ぽ��りと答えた。
ナシュはしばしの沈黙ののち、ぎゅっと両手を胸元で握りしめ、意を決したように前に一歩踏み出した。
「――あの! お願いしたい事があります〜。どうしても、ヒルディブランド様とゴットベルト様を正気に戻したいんです! ナシュにもお手伝いさせてください!」
「そいつぁ……頼もしい申し出だがな」
レオファードは腕を組み、ナシュを見下ろした。
「簡単な道じゃねぇぞ。相手は、アガレスの支配下にある。下手すりゃ、こっちが取り込まれる」
「それでもですっ!」
ナシュはぐっと拳を握り締めた。その小さな体のどこにそんな気迫があるのか。
「ナシュは……ヒルディブランド様に助けてもらったご恩があるんです! だから今度は……ナシュが助ける番なんですっ! それに事件屋ヒルディブランド様の助手ナシュ・マカラッカとして何もせずに見過ごすなんてできないのです〜!」
真っ直ぐな瞳に、レオファードは一瞬、胸を衝かれるものを感じた。ケット・シーも、しっぽを一度ぱたりと振ったあと、ふっと笑みを浮かべる。
「……筋は通っておるな」
「だったら――」
レオファードはにやりと口角を上げた。
「――いっちょ、力を貸してやろうじゃねぇか」
「はいです〜!」
ナシュはぱぁっと顔を輝かせた。その拍子にまた爆弾を取り落としかけたが、レオファードがさっと腕を伸ばして押さえた。
「爆弾をしまえって言ったろうが……!」
「わわわっ、ご、ごめんなさい〜!」
ドタバタと騒ぎながらも、新たな協力者を得たレオファードたちは、次なる作戦に向けて、作戦会議を始めるのだった――。
「――それで、ショーに出ているマンダヴィル親子の事だったか」
レオファードがそう返すと全力でナシュ頷いた。
「そうですそうです〜」
「して、お主らはどうして巻き込まれたのだ?」
ケット・シーが何気なくナシュに質問をした。
「えっと、それはですね〜。ヒルディブランド様の壊れた懐中時計を直すために、ここへ来たんです〜それでそのぅゴットベルト様が修理しようとしたら、光ってぇ、宙に浮いて〜それで……うーん。そこからはよく覚えてないんですけど」
――懐中時計が光って、しかも浮いただと?
ケット・シーの目が光る。
「それだッ!!」
声を潜めながらも、興奮気味に話し出す。
「懐中時計こそ、アガレスの依代(よりしろ)、つまり要である可能性が高いぞ!」
一瞬、空気が引き締まった。懐中時計を破壊、あるいは封印すれば、アガレスの力は大きく削げる。
だが、恐らくそれを守る力もまた強大だろう。
「破壊するにも封印するにも俺たちだけじゃ無理だ。……あいつの力が要るな」
レオファードは、冷静に結論を下した。
「……? あいつとは誰のことなんですか?」
「ふっ、聞いて驚くなよ。竜詩戦争を終わらせ、ついでに世界も救った英雄。そんで俺達、レッドビル空賊��の団員でもある!」
「……正確には雇っただけであろう」
勝手に仲間だと吹聴されたら当の本人が困るのではと、ケット・シーがレオファードを嗜めるが、レオファード本人はどこ吹く風――むしろ、間違っているのはケット・シーだと言いたいらしい。
「なに言ってんだ。戦友ってこたぁ、つまり仲間だろ」
「ふむ……たしかに、その点においては違いないな」
ケット・シーもそこに関しては同意だ。
「だろ」
レオファードが不敵な笑みを浮かべる。
「なんだか聞いていると頼もしいです〜!」
「うむ。もしかしたらナシュ殿も会った事があるかもしれぬしの」
「うーん、どうですかね?でも是非会ってみたいです―――!」
ここに、事件屋の助手と空賊団の奇妙な共同戦線が爆誕したのであった。
――しばらくしてのち、ショーの控室にて。
夜の爆破ショーの開演まで時間があるからと、ナシュの控室は一時的に空賊団のアジトとなった。休める場所がなかった二人にとって、ありがたい申し出であった。
「そういや……嬢ちゃんはなぜ正気でいられたんだ?」
レオファードが何気なしに尋ねると、ナシュは困ったように首をかしげた。
「あの……もしかしたら、目を回して倒れてたから、かも……です〜」
彼女は恥ずかしそうに頬を赤らめる。
「気がついたら、ちょうどショーが始まるところでした……」
つまり、ループ現象の発生時、意識を失っていたため、運良く干渉を受けなかったということらしい。
ほれみたことかと言わんばかりのレオファード、恥ずかしそうに手で顔を覆って照れているナシュ。ケット・シーは、危うくズッコケそうになった。
「な、なるほど……まさかほんとうに奇跡とな――」
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Season 2, episode 3 - ensoniq
「エンソニックは、良きライバルとして共に大きくなる会社や。」 〜伝・梯郁太郎氏
♬ ♬ ♬
「幻のジャイアント・インパクト」
1980 年代初頭アメリカ合衆国。当時世界で最も進んでいた黎明期のパソコン業界。
そこにSound Interface Device、略してSID(シド)なる音源チップが誕生。そのSIDは最初パソコン用音源ICとして開発。なるも、ちょっと歪んだその音が凶悪な個性を帯びているという評判から、やがて後世にてチップチューンの名ICとしてレトロフューチャー的に再発見。2000 年前後にはスウェーデンはelektron社きってのイカれた卓上シンセSID Stationの音源コアとなり、その希少な在庫が枯渇して入手不可能となった後はその音をモデリングしたエミュすら登場、今や伝説のチップとして名を轟かせる。
そこまでして時空を超えてひっぱる人気の名石SID。デビュー当時「ぴー」とか「ぶー」とかしか言わんブザーみたいなPC用の音源回路ばかりの中、すでにSIDは1台のシンセサイザーをまるっと内蔵、すなわち:
・3基のデジタルオシレーター:鋸歯状波、矩形波、三角波、擬似乱数ノイズ、この3基のオシレーターを円環状にカスケードさせたハードシンクすら可能 ・1基のステートバリアブルVCF ・3基のアンプ ・3基のEG ・3基のリングモジュレーター:3基のオシレーターを円環状にカスケードさせたリング変調も可能
...をすべて内包して3音ポリを実現。リングモジュレーター3基とかハードシンク3系統とかどっちも円環状に変調できるとか何気に凄いですね。さしずめ「リング状リング変調」「リング・リングモジュレーション」「リンリンモジュ♬」てとこでしょうかね。SID Stationではウェーヴシーケンスすらできたよね!すぐバグってメモリーがぱぁぷりんに吹っ飛んだけどね!
それもそのはず、SIDを設計した開発エンジニア・チームはパソコン業界を超えて、ゆくゆくはプロ仕様シンセサイザーに採用されることすら夢見てこれを作った。彼らに言わせれば当時のパソコン向け音源ICなんて、音楽のことなどまるで分かってないやつらがでっちあげた代物。そこにミュージシャンマインドでもって音楽的新風を巻き起こさんと取り組んだ意欲作 SID。唯一彼らが心残りなのは、イラチなクライアントのせいで開発期間が短すぎて音質を充分によくできなかったこと。
いや、もうひとつ。さらにもうちょっとだけ時間があれば3音ポリどころか空前絶後の32音ポリにすらできたこと。ただでさえ当時ありえない32音ポリしかも前代未聞3オシでリンリンモジュ。 聴こえますか、このぎゅるぎゅる言うエンドレスなリンリンモジュの音が。まさにタキオン粒子加速器、エネルギー充填120%!反物質砲ファイア!!!
いやぁ、もし当時そんな怪物チップが出来上がっていたら6音ポリしかなかったJUNOはおろかPolysixやJX-3Pはひとたまりもなく吹っ飛び、最大でも8音ポリだったJupiterやTRIDENTはもちろん名機prophetもOBもSynthexも大打撃、挙句DX7をもってしても16音ポリとあっては戦略やり直しとなったのであろうか。
大陸を一撃で殲滅しえた恐るべきオーパーツの如き破局、そのコアたりえた一個の種、秘石SID。
このICを誕生せしめた若きエンジニア・チームは、彼らの偉業にちゃんちゃら無理解なパソコン業界に嫌気がさして見切りをつけ、いっそ電子楽器メーカーにならんと進路変更。 その社名を新規に考えるべく、まずは出発点として「音に関するもの」を意味するsonic(ソニック)、おふらんせ〜ふうに洒落てみるべく最後1文字「c」を「q」に変更してsoniq、さらに「包み込む」というような意味の接頭語 in- をくっつけて insoniq としたいところを敢えてそうせず、その接頭語 in- を古語 en- へとひねることで洒落てみて ensoniq。英語で「エンソニック」と発音するときは「ソ」にアクセント。なんならついでに「エンソニック」と「インサニック」の中間みたいな発音で。その名のとおり理想の音でくるむように、包み込むようなイメージでどうぞ。
やがて目からウロコの次世代シンセメーカーとしてめきめきと頭角を現すばかりか、海外シンセメーカーたちが安価で高性能なメイド・イン・ジャパン・シンセたちとの競争に敗北し軒並みばたばたと倒産する中、唯一、並みいる日本企業たちを相手にその好敵手として大立ち回り、デジタル・エイジにて大活躍、創造性の国アメリカならではのとらわれない発想と国産機の痛いところを突いた名機の数々でもって全地球のシンセヲタどもをぐぬぬと唸らせることになるこの会社。 これまでこの連載で紹介した電子楽器メーカーはすべて 70 年代前半までに設立され、ヴィンテアナログシンセ時代から続いてきた古参企業ばかり。YAMAHA や KAWAI に至っては戦前から存在する老舗。だが、ここについに新しい生粋のデジタル世代が登場。黄金の80sにふさわしくちゃきちゃきのとんがったデジタル野郎たちが大暴れするそんな彼らが旗揚げしたのは、時に1983年、MIDIが公式に誕生しDX7が電子楽器の金字塔として堰を切ったように怒涛の快進撃で世界へあふれだしていたころであった。
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「ファーストインパクト:Mirage」
ensoniq社が最初に出したのは実はパーカッションパッドであったが、ほとんど無名。いい音がするらしい。そして創業2年後の1985年、急速に成熟しつつある電子楽器マーケットにおいて全くの無名だった彼らはMirage(ミラージュ)という名の価格破壊サンプリングキーボードをだしぬけに投入。 お歴々はご存じであろう、当時サンプラーといえば最高1億円したシンクラヴィアか、1,200 万円もしたフェアライトCMI、はたまたイーミュレーターやカーツウェルK250 といった300万円はくだらない電子楽器のロールスロイスみたいなやつばかり。そんなところへやにわに1,599米ドルというアゴ外れんばかりにありえない破格でガチ道場破りしてきたのがMirageであった。
SIDチップをベースに自社開発した音源IC「DOC(ドック: Digital Oscillator Chip)」、コードネーム「Q-Chip」。これはSIDで開発期間が短すぎて具現化できず無念の涙を飲んだ32ボイス仕様を実現した夢のチップ。だがすでにDX7が出てきた今、Mirageではこれをあえて戦略的に8ボイスに制限し、その代わり1ボイスあたり2オシレーター最大4波形を重ねてトリガーできる仕様とした。8ボイス✕4波形で32音、うまいっ! しかも強力な自社開発デジタルオシレーターチップに加えてカーティス社のVCFでもってデジアナハイブリッドな音の加工も可能という、自力でIC設計できるensoniq面目躍如。
その一方で7セグ2桁LEDが唯一の表示、しかもテンキーだけでパラメーターを打ち込むという、しかもそれは16進数という、無慈悲なカスタマーエクスペリエンス。そもそもあまりの音質のひどさにMirageはサンプラーではなく原音をとどめないシンセであるとまでジョークにされて叩かれるも、そんな噂どこ吹く風。フェアライトが登場して6年、みんなアート・オヴ・ノイズの真似したくてしたくて「んもぉぅ辛抱たまらん」うずうずしてたところへ欧米ではDX7よりも安いサンプラーが放り込まれたのだから猛獣の檻に生肉を放り込むようなもの。
しかもシンセまるっと入った音源チップを自社開発できることがensoniqのコア・コンピタンスだったわけだが、彼らの強みはそれだけではない。 記憶メディアだって業界初の3.5インチ・フロッピーディスク。当時、他のサンプラーが採用していたストレージはほんとうに「フロッピィ」だったぺらっぺらの5インチ。耐久性ヤワすぎて折れ曲がる上に薄いプラが劣化するやつ。なので硬質な樹脂カートリッジに守られていた3.5インチはハンドリングも楽でガシガシとスタジオでもライヴでも現場でミュージシャンがタフに使える頼もしい相棒。一層お安い価格破壊MIDI音源モジュール版までちゃんと用意。上級者にはオプションでMASOS(メイゾス:Mirage Advanced Sampler Operation System)という黎明期のエディターソフトすら完備する全方位っぷり。PC業界からスピンナウトしただけあって、なおかつミュージシャン・マインドなだけあって「分かってらっしゃる!」
一方、Mirageには妙なところもあった。ビット深度が8bitだったのは時代だとしても、量子化の目が粗すぎてループ時に波形ゼロクロス・ポイント同士が出会わないことがあり、そのときはサンプルをディチューンさせることで波長を無理くり変えてゼロクロス・ポイント同士をつなげてループさせたのだという!!! 野蛮!!!
Mirageの雄叫びを純正ライブラリーサウンドで聴いていただきたい:
Ensoniq Mirage Sound Demo
youtube
いいねぇ、粗さがインダストリアル♬ っていうか粗いくせに不思議にリアルというか、音楽的ですらある、圧倒的じゃないか...!
これですよこれ! 音楽的であればそれでいい。だってみんなこれがしたかったんでしょ? それにPC業界出身だからチップ設計はもちろん、ストレージメディア選択と��も時流を読んでばっちし的確。 デジタルに熟知した彼らはサンプラー市場にぽっかり空いたブルーオーシャンな窓を目ざとく見つけ、そこにピンポイントでMirageをぶちこんだのであった。そこまで狙い済ませたモデルが人気炸裂しないはずがない。それまでやれ音のクォリティだトータルな楽曲制作環境だとくそまじめに気にしていたやつらを尻目にMirageはパンクなまでに軽快なスペックでもってバカ売れ。この痛快さは、だがむしろ歴史の必然ですらあった。まさしく製造業界のパンク野郎ensoniqは、だがミュージシャンにとって大切なものが何かをよく分かっており、しかもそれをパソコンという外様の発想で具現化するヒーロー、旧弊であり様式美であった楽器業界を打破する新進気鋭の疾風怒濤であった。かっこいい!
同じ1985年、AKAI初代サンプラーしかもすでに12bitのS612やSequential Prophet-2000といったサンプラーが続出、CASIOからは庶民の味方SK-1 Sampletoneを見た。翌1986年には業界標準機となるAKAI S900、KORG DSS-1、Roland S-50/S-10などと個性派サンプラーが続々登場、世界はアナログとFMとサンプラーというサウンドが支配。それはまだPCMシンセが台頭する前のことであり、よってKORGもRolandもシンセメーカーでありながらフラッグシップはサンプラーというちょっと���け不思議な時代でもあった。
え? 当時PCMシンセってまだだっけか? 当時のPCMシンセって400万円したKurzweil K250だけ?
じつはMirageローンチの翌年、PCMワークステーションシンセの草分けensoniq ESQ-1リリース。Roland D-50の前年、KORG M1に先立つこと2年、ensoniqはすでに次の一手を打っていた。
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「セカンドインパクト:ESQ-1」
ESQ-1は実はMirageのアーキテクチャーを概ね引き継いでいる。同じ音源チップをあえて8音ポリに制限するところまで同じ。ただそれを3オシレーターとして見せており、
・3基のPCMオシレーター ・1基のVCF ・1基のVCA ・ハードシンクならびにリングモジュレーション可能
って、ちょっとSIDみたいな先祖返り的な構成。

とはいえ32の音源波形はPCMではあったがサンプルまるごとではなく1波のみ切り出してループさせたもの。それでも流石ミュージシャン・マインドを持った彼らだけのことあり、サンプル1波ループとはいえ切り出し方が天才的にうまくてリアルに聴こえ、それをフィルターやEGで加工すれば表情ゆたかなPCMシンセサウンドになった。すなわちKORG DW-8000やKAWAI K3にも近いがサイン波倍音加算合成でもなく一応はPCMだったのであり、音のリアルさや音色バリエーションの豊富さにおいてもこれらを凌駕するものであった。なによりも音が音楽的。これまたスペックや数値ばっか気にする当時の真面目人間からは出てこない「使えるサウンド」であった。
加えて最大2万4千ノートの8トラックシーケンサーも搭載。これは2年後のKORG M1が最大でも7千ノートでベースライン2〜3曲分でしかなかったことを思えばその3倍以上、楽曲制作に充分であった。電源をオフってもバックアップ・バッテリーでシーケンスデータは保持。8ボイス8パートマルチティンバー音源はそのまま8トラックに対応し、じつはKORG M1よりも前に史上初の本格的こんにち的ワークステーションシンセとしてデビューしていたのであった。この質実剛健なつくりを見るといかにM1がマーケティングの勝利だったかって分かるよね。
パソコン業界ゆずりは音源やシーケンサーだけではない。初めてファンクションキーを導入した操作性も流石PC。アバウトだがLCDよりも視野角が広いFL管を採用、今ならそのエモい表示がレトロフューチャー・コンピューター感。そしてensoniqはファンクションキーのことを「ソフト・キー」と呼び、画面によって機能が変わるから、すなわちソフトウェアに依存して規定されるからだと説明。このクールなネーミングセンスもPCならでは。なのだが、どういうわけかその説明が欠落したまま日本に伝わり「押した感じが柔らかい」と紹介されてしまう。 この操作性を活用し、1画面内に10音色を一気にならべて表示、ファンクションキーでよりどりみどり思いつきで音色選択できるすぐれた操作性もお初。40年くらいたってからKORG KRONOSにてSetlistという名前でふたたび採用。
そしてトドメのプライス1,395米ドル。日本価格はDX7や後のD-50、M1を上回る29万8千円であり事実上無名であったが、海外ではぐっと親しみやすい価格設定。おかげで5万台も売れたらしく、特に北米ではESQ-1と一緒にATARI STやCommodore AMIGA など黎明期のパソコンが綺羅星の如くならび、ESQ-1は海外コンピューターミュージック用キーボードとしても市民権を得た。そして日本のミュージ郎よりも先にゆくその普及率に、じつはその航跡を追うかの如くもうひとつの知られざるビジネスが勃興していたのであった。サードパーティ音色ライブラリーである。
ESQ-1が売れるところ、雨後のたけのこの如くあまたの音色ライブラリーメーカーが登場。中には不幸にして自宅を失って友人の土地に長さ6mのトレーラーハウスを停めて暮らし、膝の上にESQ-1のっけてそのローンに苦しみながら夜な夜な午前3時まで一心不乱に音創りするあぶね〜野郎まで登場。その彼が作ったESQ-1音色カートリッジは半透明のエポキシ樹脂にくるまれて生産され、それゆえにVoice Crystalシリーズと名付けられた。そう、Eye & I社Voice Crystalシリーズ。のちに大ヒットし、特にRoland D-50用のライプラリーはK社エンドースを受けていたキースさんまでを虜にしてクリスマス・アルバムまるまる一枚を制作せしめロゴをバミって隠したD-50とともににやけて雑誌宣伝広告写真にまで映ってしまったあのシリーズである。
同じ1986年、Apple社から初期のパソコンApple II GSが発売。GS とは Graphic and Soundの略であり当時盛んに言われていたマルチメディアへの対応を謳ったモデル。そしてここにも搭載されたのがまさにensoniqのDOC音源チップであった。Apple II GSは、これをそのまんま32ボイスのシンセ音源チップとしてフル活用、さらに15ボイスに達するステレオ波形再生も実現、Macintoshが登場するまで古典的時代の牽引役として輝ける看板機種となった。
一方、本業においてシンセとサンプラー、すなわちESQ-1とMirageというペアでもって時代を先取りしたensoniq。だが北米では絶好調でも日本では販売価格がむやみに高かったせいかあんまし認知されていない。そうこうしているうちにDX、CZ、FZ、S900、D-50、そして最後の大物KORG M1が「ワークステーションシンセ」というキャッチーなタームを繰り出してESQ-1のお株をさらってしまった。 そんなデジタル群雄割拠の中、ensoniqは音源チップDOCを進化させた DOC IIを開発。これをコアとしてESQ-1の後継機種SQ-80 と、Mirageの後継機種EPSことEnsoniq Performance Sanplerとを開発。中でもEPSはのちの電子楽器業界を大きく変えるコンセプトをはらんだ胎動となったのである。
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「サードインパクト:EPS, SQ-80」
EPSは、パン��ッシュだったMirageから一転、ただまじめに音が良いサンプラーになっただけではない。
確かにシンセと違ってサンプラーには写実主義という出自があった。勝手気ままに理想の音を追究してもゆるされる自由奔放天真爛漫なシンセとは違い、当時のサンプラーに几帳面でくそまじめなイメージがつきまとうのは、その命題が写実主義だったからに他ならない。原音忠実、ハイファイ再生、だからビット数もサンプリング周波数も内蔵メモリー容量もどんどん数値はうなぎのぼり。高音質それだけのために恐竜のように肥大化してゆく一途。 でもなんかそれって袋小路。
だからこそ、そこに異を唱えたのがEPSであった。不毛な量的拡大ではなく質的転換、鍵はアーティキュレーションにあった。
生楽器にはアーティキュレーションがある。具体的に言うとさまざまな奏法がある。例えばヴァイオリンであれば、 ・弓を押し引きするアルコ ・弦をはじくピッツィカート ・短く跳ねるように弓で弦をこするスタッカート ...などなどあるわけで、既存の日本製サンプラーでは各奏法を別々のプログラムに収録してライブラリーが作成されていた。つまりプログラムごとに高度に専門化された内容でライブラリーが制作されており、現場では奏法ごとに異なるプログラムを逐一サンプラーにロードして演奏する。すなわち...
・アルコ用プログラム ・ピッツィカート用プログラム ・スタッカート用プログラム ...などなどなど。
だがEPSでは必要な奏法をすべて収録したプログラムを1つ作成し、それをロードしさえすれば主要なアーティキュレーションすべてが自在に演奏できるようにした。プログラムの中にレイヤーを設け、そこに各奏法を収録したのである。
・ヴァイオリン用プログラム - アルコ用レイヤー - ピッツィカート用レイヤー - スタッカート用レイヤー ...などなどなど。
各レイヤーは単一奏法をサンプリングしたマルチサンプルで構成され、最大8レイヤーで1プログラムを構成する。 しかも奏法=レイヤーの切替は鍵盤左横の2連パッチセレクトボタンで行う。このパッチセレクトボタンがじつはensoniqならではの秀逸な発明であり、鈍重なプログラムチェンジを行うことなく、すばやく音色を切替えられる。プログラムを構成するレイヤーのみを切替えているからだ。だからタイミングよく反射神経で、それこそ演奏中その場の思いつきだけでぱっぱとアーティキュレーションを切替えられる。
なんならアーティキュレーションにとらわれず、まったく異なる音色を各レイヤーにもたせて切替えてもいいね。 なおこのパッチセレクトボタンは基本アンラッチ(モーメンタリー)だがラッチ設定にもできる上に、フットスイッチでも可能。
アーティキュレーションごとに個別プログラムを用意するのではなく、必要なアーティキュレーションをすべて網羅したプログラムをつくる。つまり楽器まるっと1つ、あるいは楽曲まるっと1つ収録したプログラムを制作する。そしてそれを最大限にぶん回せる構造にサンプラーを設計する。
ひょっとしたらライブラリーを先に規定し、あとからそれに合わせ込むようにしてハードを設計したのかもしれないサンプラー���それがEPSであった。 これは実に理にかなっていて、つまりコンテンツを最重要視した設計ということである。サンプラーたるものコンテンツありきなわけで、それが見抜けなかった当時の日本メーカーはやっぱハードしか念頭にない古典的ものづくり企業だったのであり、そもそもハードをなんのために使うのかがイマイチ分かっていなかったと言わざるを得ない。いや、それはE-muやKurzweil、Fairlightといった海外企業でも同じか。いかにensoniqがうがったものの見方をしていたかが分かろうというもの。
サンプリングはもう当たり前。次につくるべきは肥大化するあまりただのレコーダーへ堕ちようとしていたサンプリングマシンではなく、役立つ楽器としてのサンプラーであった。
もっと正せば、なぜサンプラーを使うのか?シンセがあるのになぜサンプラーなのか?サンプラーにしかできない事はなにか?と考えたとき、写実、というテーマがあるのであり、それを単に原音忠実としか捉えなかった既存メーカーと、アーティキュレーションという次元まで踏み込んで「写実」というテーマを考え抜いたensoniqとの違いであった。
そういやEPSではプログラムチェンジで切替えられる音色単位を「プログラム」とか「パッチ」とかって言わずに「インストゥルメント(楽器)」って呼んでたね。 歴史の浅いサンプラーがゆえに名称が固定化していない、そんな時代ならではの自由度の高さとはいえ、やっぱ示唆に富んでます。
もちろん当時これは目からウロコであった。今どきの大容量ソフトウェア音源には奏法の違いを切り替えるべく、最下1オクターヴをスイッチ代わりに打鍵させる機種があるよね。言わばその発想をすでに1988年に先取りしていたのがエンソ、偉い! 史上初めてアーティキュレー��ョンに着目しアーティキュレーションを切り替えながらリアルタイム演奏できたサンプラーだからEnsoniq PERFORMANCE SamplerイコールEPSだったわけ。
13bitといういささか中途半端な解像度だったEPSは、12bitの2倍も音が良いというだけでなく、サンプラーのパラダイムシフトを宣言するものであった。
他にもEPSには自動ループ作成機能があり、いろんなアルゴリズムが選べたばかりかSynthesized Loopという究極アルゴリズムに至っては波形そのものを書き換えてしまうことで若干音が変わろうがおかまいなし、無理くりでもループをとる。え、サンプラーって原音忠実が至上命題と違ごたっけ? でも結果が音楽的でありさえすればそれでいいでしょ? 持続音がほしかったんじゃないの? やろうと思えばオケヒからでもループとってじゃ〜〜〜〜〜ってサスティン効かせて流せるのよ。おかげでensoniqはループがとれない音はない!と断言しきっていた。もはや蛮勇。
演奏中に別の音色フロッピーを読み込ませることができるLoad while playもまた目からウロコ。ロード中は他になにもできないのが当たり前と思っていた私たちは、マルチタスクというものを知らん原��人だったわけだ。 おまけにポリフォニック・アフタータッチも装備。世が世ならばMPEとともに大注目されていたはず! オプションでFlash Memory Bank、今で言うSSDも先駆的に搭載され、特にディスクベースだったOSをストアしておくと起動が早くて便利。なんて80年代には早すぎて誰も知らなかったよ。
最初は、単に安くておもしろいサンプラーでありさえすれば良かったMirage。 その次に、すぐれたサンプリング「楽器」たらんとしたEPS。
この成長は、E-muですら成し得なかったものであった。E-mu社がEmulator IIの開発に難儀したのは「単なるサンプラーを超えてサンプリング楽器とはなんぞや?」という問いに対し有効解を見つけるのに苦心したからにほかならない。それをensoniqはやってのけたのであり、無から有を、ゼロから1を、理想解を具現化しえた唯一のメーカーであった。ぐぬぬと唸らされたのは全世界。

他メーカーにはない自由な発想の数々、そしてそれを惜しみなくつぎ込んだ豊かな果実EPS。当時メイド・イン・ジャパンを始めとする安価で高性能で高音質の機種が台頭していたときに、まったく違う発想のサンプラーが登場。それはそもそも何故サンプラーなのよ?サンプラーって何よ?という本質から考え直してゼロから起こした自由の国アメリカならではの機種のはずだった。
はずだった?
SQ-80とEPSはユニークな発想が光り他社の弱点を突いた問題作でありプロからの評判も上々だったが、銀行屋がもっと売上をと言い出した。欧米の銀行は日本以上に短期的成果を要求してくる。それゆえensoniqはすみやかに次世代機種を出す必要があった。そんなアクロバットを実現するためには今までと同じことを繰り返すわけにいかない。 果たしてensoniqはSQ-80にとってかわる次世代シンセを開発。そのために下した英断とは:
・音源チップDOC、DOC IIを廃番とし、さらなる新音源チップDOC IIIコードネームOTISを開発、かつ、これを初めて投入 ・ESQ-1、SQ-80と続けてきたシンセのアーキテクチャーも敢えて棄てる ・サンプラーEPSをベースに、なおかつそれにひねりを加えた次世代シンセ音源をつくる ・次世代シンセは初めてCDと同じくサンプリング深度16bitを実現 ・更にエフェクト用に優秀なDSPを新規開発。これによる新型24bitマルチエフェクトを内蔵させる ・すべてをかつてなく短期間で商品化する
時に西暦1989年、名機VFXが誕生する。
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「フォースインパクト:VFX」
世の中ワークステーションシンセだらけ、もうすっかりワーステ・ブーム。かつてESQ-1がその草分け的存在だったのに、マーケティングの勝利M1にお株を奪われたわけで。 しかしその流行に乗って百花繚乱に咲き乱れるワークステーションシンセたちの真っ只中にあって、VFXは真逆にワーステを捨て、ただただ音のキャラと表現力のみにこだわった素のシンセとしてまさかの逆張りデビュー。内蔵シーケンサーはおろか、フロッピーディスクドライヴがあったはずのところには意味不明の穴ぼこがぼこっと口を開けている始末。こんな後始末もろくにしないとは、よっぽど開発を急いでいたのであろうか。とにかく、ただただ個性的な新音源と強力エフェクトあるのみ。 その一方でCPUには名門モトローラM68000! これ当時Macやフェアライトに採用されていたガチなやつですよ。ちなみにAKAI S900のCPUはNEC PC-98と同じV30。prophet-5はZ80だったよね。そしてVFXの音源ICには前述のとおり第三世代チップensoniq謹製OTISを、内蔵エフェクトには最新DSPを投入。音源チップのほうは90年代に入ると通信カラオケやアーケードゲームの数々にも搭載されることになる。
驚愕したのは音、音、音、壮大な音。映画館のような重低音が出る出る満ちる、エピックなサントラなど朝飯前。低域にコンプかかってんじゃね〜か?って思うくらい。しかもとにかく太い、押しが強い、いやそんなもんじゃない、もう我が強い、腕っぷしが強い、サウンドの力こぶ筋骨隆々、そこのけそこのけ強強すぎてミックスの中でいくら音量を下げても俺が俺がと出てくる出てくる。ごりごりのシンベ。のしあがるオーケストラ。つんざくリード。自己主張はげしすぎてそこんじょらのシンセはもちろんメタルのディストーションギターの音の壁ですらもろともせず抜けて聴こえるシンセブラス。どやかましいロックなアンサンブル全体をたった1音で深々とせき止め、がっぷり四つに組んでガッツリ支える、ヘラクレス級に腕力を誇るストリングス。重低音重低音。もはやVFXは音世界を支える巨人アトラス。あんなランボーなやつ、ちょっといない。他機種の音色は皆さん荷物まとめて帰って行きよりましたわ。
プリセット音色��また秀逸、単体で聴くと「え?」と思う音色でもアンサンブルに混ぜると絶妙に良い音色になる。なんというミュージシャンだましいな耳でもって開発されたのか。 単に推しが強いメリケン・サウンドだけではなく、自分で音をつくるとそれはそれはもう深い深い幽玄なるたましいの深淵をのぞきこむ底なし沼にディープな音もつくれる。なんだか日本ではコムテツが多用したSYMPHONYというプリセット音色でばっか知られているようだが、なんともったいない! あんなもんオケヒ・ループにペットのサンプルをレイヤーしただけで自作できる。さらに工夫して作り込めばほんとうに深い味わいある音が、プリセットとはまるで違う音のパノラマが展開する名機。
・なんせPCM波形が実物以上に壮大な音がする ・その上に、PPGウェーヴテーブル音源の発想を取り入れた新開発TransWave波形もいろいろ搭載。楽しい! ・Oberheimにしかなかったモジュレーション・マトリクスも初めて採用 ・6系統の減算方式レイヤーによる重層的音創り ・強力エフェクトのおかげで何をやってもバルビエリ御用達どよよんサウンド ・そしてEPSゆずりのパッチセレクトボタンのおかげで、どぎまぎしながら音色選択ボタンを押すタイミングを狙いすます苦行さいなら

VFXはすぐれて他社の弱点や欠点をうまく突いた名機であり、ensoniqが他社シンセをよく研究していることの現れであった。というよりそれ以前に、そもそもシンセとは何か?どうあるべきか?と鋭く問うシンセ史上たぐいまれな名作であった。ひとことで言えば思いつきに即答えてくれる、難しい仕込み不要、そんな直感的デジタルシンセであった。
そしてこの広大かつフレキシブルに音が変化するアーキテクチャーを、ensoniq はDynamic Component Synthesis(各ブロックが動的に他ブロックに働きかける音源)と呼ん��が、さすが英語が母語だけあってうまくその売りとなる特徴をとらえている。
にもかかわらずVFXは不運なシンセとなった。 銀行屋が圧力をかけるゆえensoniqはVFXを手っ取り早くつくるはめに陥ってしまい、いい加減なつくりのまま量産してしまい基板や機構に不備が続出、バグも多くてクレーム続出。ついにアメリカにて「No more Ensoniq!」と言い出す楽器店まで現れた。それも最大手チェーンGuitar Center。 それでもなお音がいいのはなんでか?というと、これもやはりいい加減なつくりだったから! すなわちデジタルに強すぎてアナログ回路にむとんちゃくだった彼らがテキトーな最終段アンプをでっちあげてしまい、それが逆に奏功して良い音になったのだという!!!
度重なる蛮勇にクレーム殺到、それでもなおその音にこの上もなく恋い焦がれたユーザーたちアーティストたち。まさに「蛮勇引力の法則」ここに極まれりensoniq。
これゆえ不良撲滅すべ���改良を重ねたあげく、半年後にワークステーションシンセVFX-SD投入。VFX「-SD」は機能追加されたSequencer + Disk driveの略。それでもまだ故障が多々あり、VFX-SDのFL管ディスプレイの直下をぐいっと押すとてきめんにエラーが出る笑 のちにアコピ波形に重点を置いたVFX-SD II、さらにはSD1、そしてついにSD1 32 Voiceと世代交代を重ねるにいたりようやく不具合沈静化。VFX-SDをSD1仕様にまでアップグレードしてもらえる基板交換サーヴィスもあったが、ただでさえ十万円もした上にエンソニック・ジャパン社まで送り返さねばならず諦めてしまったは一生の不覚。いやそもそも最初からVFX-SDをじっくり開発して出すつもりが焦って先にVFXというカタチで半年くらい先にフライイングで出しちまったんじゃねーの?とすら勘ぐってしまうね笑
そのVFX-SDというワークステーションシンセが誇るは音源だけではない。

こちらもすぐれた最大24トラック内蔵シーケンサー。いにしえのOpcode 社 VISIONと同じく長大なパターンシーケンサーで構造的に作品が作れる。思いつきで断片的なシーケンスを12トラックでたくさん作り上げ、それがたまってきたら適当につないでソングにしてみたり順列組合せを変えてみたりと試し放題、思いつくままに発散しまくるアイディアを作品へと収斂させ昇華させてくれるクリエイティヴ・ツールとして最高! しかも12トラックのシーケンスをつなげてソングをつくると、ソング全体にわたりさらに12トラックのリニアトラックが追加。個々のシーケンスをまたぐオブリとか録音できる。
Undo / Redoも「オーディション機能」と変名された上で初搭載、シーケンストラックを再生しながらこれまた思いつきでbefore / afterを切り替えつつ比較試聴できるミュージシャンマインドな便利機能。当たり前ですがイベントエディットも充実しているばかりか、最後にオーディション機能で締めくくられるからホンマにエディットして良かったのかどうかbefore / afterで比較検証させてくれて気に入らなければもとに戻れるって、いかれぽんちな思いつきだけのクリエイターにとって至れり尽くせりじゃないですか。
デモ演奏も音楽的でセンスあふれる、もう立派な「いい曲」。 日本のワークステーションシンセのデモ曲といえば、マルチティンバー能力の限界に挑戦すべくアクロバティックなまでに各パートをぶん回した非現実的な曲芸「こんなことまでできます!ドヤ顔」みたいなもんばっかで聴いてるだけで目ぇ回ったが、ensoniqのデモ曲はちゃんと楽曲として成立しうるばかりか、落ち着きあってセンス良くてまとめ方もうまくて大人でかっこよくてデモだけでアルバム出来そう♬
ついでに機種名もロゴもアーティステイックでかっこいいね!
ミュージシャンマインドで設計された機械がミュージシャンを支援してくれる、理想のensoniqシンセ。 EPS 16 Plusという16bit化された新型サンプラーも発売、これにはVFXゆずりのグレイトなマルチエフェクトも搭載され、楽器としてだけでなくサンプル加工にも抜群に使えるようになった。EPS 16 PlusはVFX-SDとともに双璧をなし、その下にSQ-1(61鍵)、SQ-2(76鍵)、という廉価版ワークステーションシンセを配し、SQ-Rという1Uのコンパクトながらに実力派の音源モジュールも誕生、2Uの強力エフェクトアウトボードDP/4もスピンオフ、ensoniqは黄金時代を迎える。そればかりか音楽のたのしみを広げようと、補聴器まで試作していたというSDGsアクセシビリティ先取り!
その音は世界中で玄人ウケし、安いコモディティと化しつつあった日本製の機種とは一線を画す。そしてその高いプロファイルでもってensoniqは並みいる既存メーカーに対する異議申し立てとなり、それらの好敵手となった。
そしてついにensoniqは、EPS系の最終進化形ASRことAdvanced Sampling Recorderシリーズを経て、VFX以来5年かけて開発を重ねてきた夢のシンセを世に送り出すことになる。 同社最後の大輪、音源コアDOC IVコードネームOTTO、それを心臓として建造された双頭のフラッグシップシンセTS10とTS12。1994年のことである。
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「ファイナルインパクト:TS12」
Ensoniq TSシリーズ、それはそれは空前絶後に壮大な音がするシンセであった。構造はSD1をさらに発展させた完成形であり、音源波形も新規であるために既存機種との互換性は無い。比較して聴けばSD1もまだまだ粗削りだったのだと分かる。ド太い重低音はもちろん、澄みきった濁りのない深い音色もする。映画館「みたいな」ではなく今度こそまんま映画館そのものな音がした。

TS10は61鍵シンセタッチ鍵盤、お家芸ポリフォニックアフタータッチ完備。TS12は76鍵ハンマーアクション鍵盤搭載。このタッチはかなり独特なものでアコピとは似て非なるもの。Flying Action Weighted Mechanismという大仰な名前がついた。88鍵ではなく76鍵でハンマーアクションを採用したのはステージピアノとしてクルマに載せられるサイズを考えてのこと、つまり車社会アメリカならではの機動力を考えてのことであろう。
16波形を数珠つなぎにしてウェーヴシーケンスをつくれたので、KORGよりも波形ステップ数は少ないものの音色ごとに個別設定できる点では実はKORGを凌駕する長所があった。デイヴ・スミス対ensoniq、ここでもアメリカ人同士の対決! KORGも気にしたのか最近のwavestateではウェーヴシーケンスを1,000もメモリーできるという、とてつもない上限値でもって事実上問題ないレベルにまで回避している。

ASRシリーズのサンプルライブラリを読み込めたのもポイント、読み込むデータによって自動的にTSになったりASRになったりと二つの顔をもつ双頭シンセとなった。両者はアーキテクチャーが違うため、つまりこれはソフトを自動的に入替えることで機能が変わるパソコンのようなキャラをシンセでも具現化したことになる。
なによりも、とかく日本のデジタルシンセが冷たく痩せた音がするのに対し、あたたかく骨太で豊かでスケールの大きな音がする。これは4年後の1998年にあたかも打倒ProToolsと言わんばかりに出てきた同社DAWシステムPARISことProfessional Audio Recording Integrated Systemにも言えた。事実PARISは「あたたかい音がするDAW」としてハリウッド映画音楽業界でも話題であった。お得意の高性能DSPを6基も搭載したPCIカードを開発、これにより非力なパソコンでも高度な処理が可能となって文字通りレコーディング業界への福音のごときシステムだったPARIS。 そして巨大な体躯というか威容を誇る重厚長大なフラッグシップTSシリーズは、説得力あふれるビッグな音はもちろん、広大な仕様・性能を満載しているがゆえにensoniq最高傑作との呼び声も未だに高い。
だが、ensoniqは自分たちの理想郷を追い求めすぎた。
TSシリーズは業界最強な独自アーキテクチャーを貫きすぎたのか、SMFやGM、wavファイルといった互換性に欠ける孤高の存在であった。90年代ともなるとDTMが進展しユーザーが増大して市場の裾野が広がり、さほどパワーユーザーではないライトユーザーも参加した結果、今まで以上に簡単に音色やシーケンスデータをシェアできるよう互換性が求められるようになった。だからこそMIDI規格にもSMFやGMといったより細かいルールが制定されたのであり、MIDIと対をなすオーディオにおいてもwav/AIFF互換が必須となった。すべてはデータの再現性を担保するため。流通しやすく、誰でも同じような結果になるよう再現できるため。個性よりも普遍。普遍による流通とシェア文化。シェアラブルであること。
かつてPCからスピンナウトして誕生したensoniq、だが今ふたたびPCの軍門に下るときがきた。
このあとTSシリーズの中核を成していたVLSI音源チップDOC IVことOTTOはensoniq社製オーディオボードSoundscapeにも搭載され、そのままensoniqはPC系へと軸足をシフト。そして巨艦TSシリーズ亡き後、ensoniqから出てきたシンセは音はわるくないものの限定的なフィーチャーを帯びたモデルばかりとなった。
薄暮の迷路にさまよいこんだかにも見えたensoniq。 その中、唯一例外的に輝いていた変態シンセは第二世代TransWave音源を搭載したシンセFIZMO(フィズモ)。これはensoniqが物理モデリング音源を開発するも実現できず、「物理モデリング=physical modeling」略して「phys mo」そのつづりをストリート文化っぽく変えて「FIZMO」という機種名だけが残ってしまった機種である。今ならヴィジュアル系な外観はもちろん、ウェーヴテーブル音源として光る個性が注目されたやも。 さらには北米でいち早く台頭してきたhiphopサンプラー文化に着目、AKAI MPC対抗機種としてASR X を投入、卓越したサンプラーに強力無比なエフェクトを組合せた力作。音も太くてよかったよね、でもちょっとむずかしかったか。
やがてensoniqはSoundBlasterをつくっていたシンガポールのメーカー Creative 社の傘下に入り、そこでE-muと合併してEmu-Ensoniqとなり、そのままフェードアウト。
ちなみにKORG 01/Wは相当にVFX/SD1を参考にしたようで、VFXのモジュレーションマトリクスはKORGのAMS(Alternative Modulation Source)機能となり、アコピの音に重点的にPCM容量をあてがう戦術、内蔵マルチエフェクトのつくりや効き具合などなど、エンジニアをヘッドハントしたフシもある。ワーステ本舗のプライドとしては、ensoniqを無視できなかったのであろう。
そもそもなにがミュージシャンにとって一番うれしいのか、アーティストがやりたいことは何なのか?その本質「why?」をなによりも第一に見抜いてソリューションを提供していたensoniqの自由な着想と回答、それらはソフトウェアとコンテンツの天国アメリカならではのパラダイムに基づくものであったことを、お歴々はもうお気づきのことであろう。彼らが世に送り出した名機たちは、つねに物事の本質はどこかを探し、本質を問うところからはじまる斜め上をゆく自由さがあり、その外様ならではのすぐれた問題意識にはじまる思考と思索の旅路、その帰結であり果実であったに過ぎない。そして冒頭にかかげた都市伝説に語られるとおり彼らは日本メーカーと共に成長すべき良きライバルであったのだが、それだけに歴史の波に消えてしまったのはつくづく惜しいと言わざるを得ない。天才E-muですら思いつかなかった自由な発想、斬新な解、そして楽器業界の多様性、ロスト。
楽器進化論、その樹形図におけるミッシングリンクとなったensoniq。楽器というビ���ネスは、PCの前に消え去るしかないのであろうか? 当時SteinbergがVST規格を提唱し、初のプラグインシンセneonがぽよよんと出るに至り、さとい先取の精神の持ち主たちは異口同音にハードウェア退場論を盛んにぶちあげていたものである。そのあとも度々、特にpropellerheads社Reasonの宣伝などは「いつまでハードウェアを使ってるんだ? さっさと棄てて僕たちソフトの世界で完結しちまいなよ」という主旨の、ややもすると苛立ちすらこもったものであった。
だが、苛立つということはそれだけ彼らの足元がヤワであることの証左でもある。
次はPC時代になろうがネット時代になろうが、それどころかなんべん倒産しようが不死鳥の如く奇跡の復活を繰り返してきた未来志向メーカー、その輪廻転生を見ていきたい。舞台はアメリカから大西洋を渡ってドイツへと移る。
(2022年8月13日同人誌にて初出)
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ヴィクトルがネクタイをゆるめたので、ひゃあ!
バックパックを背負い、クラブから出た勇利は、あたりをきょろきょろと見まわして迎えが来ていないか確かめた。まだだった。何をして時間をつぶそうか、あたりをそぞろ歩きしようか、でもそうしたら彼が来たときにみつけられないかも、と迷っているところへ、黒くてぴかぴか光る高級車がすべりこんできて、すっと窓を下ろした。 「おまたせ、かわいこちゃん」 顔を出したのはヴィクトルで、片目を閉じた彼はスーツ姿だった。ヴィクトルのスーツ姿はこれまで何度も目にしたけれど、それで車を運転しているところを見るのは初めてだったので、勇利はいっぺんにのぼせ上がってしまった。バンケットなどでスーツを着ているのは当たり前だが、日常生活にとけこむようにしてこういうかっこうをしているのは、それとはまたちがってとてもふしぎですてきに見えた。勇利は緊張した。 ああ、かっこよか……。 ぎくしゃくと助手席に乗りこんだ勇利はヴィクトルに見蕩れた。 「どうしたんだい?」 ヴィクトルは車を発進させ、ちらと横目で勇利をうかがった。 「無口だね」 「うん……。スーツだなと思って……」 「仕事だったからね」 「そう……」 何か堅苦しいことだったのだろう。ヴィクトルは息をつき、ぐいとネクタイをゆるめた。そのしぐさがまたかっこうよくて、勇利はめろめろになってしまった。 「ゆるめるのを忘れてた。早く勇利に会いたくて、ほかのことなんて頭になかったんだ。めんどうな仕事だったよ」 「うん……」 「夕食は買ってきた。俺の家でいいよね? 一緒に食べよう」 「うん……」 「すぐ着くよ。でもすこし渋滞してるね」 「うん……」 同じ返事しかしない勇利にヴィクトルが笑いだした。 「どうしたんだい?」 「うん……」 勇利は頬を赤くし、うっとりとヴィクトルをみつめていた。ヴィクトルが苦笑いを浮かべた。 「勇利に見られるのは好きだけど、ちょっと困るね」 「どうして……?」 「これから俺の家に帰るんだし、俺の理性だって鉄壁というわけじゃないからね」 勇利は、ヴィクトルの家と、彼の理性と、自分が彼をみつめることに、なんの関係があるのかさっぱりわからなかった。だからヴィクトルをみつめ続けた。 「勇利、頼むから……」 「なに……?」 「まいったな」 ヴィクトルは髪をかき上げ、本当に困ったように溜息をついた。それから彼は信号待ちのあいだに上着��脱ぎ、勇利に渡した。 「持っていてくれ」 「どうして脱ぐの?」 「暑くなってきたよ。視線が熱いからだね」 勇利はヴィクトルの言っていることの意味がひとつもわからなかったけれど、彼が上着をあずけてくれたことはうれしかったので、それをぎゅっと抱きしめた。あたたかくて、ヴィクトルの匂いがしたから、つい顔を埋めるようにしてしまった。ヴィクトルの喉が何か詰まった音をたてた。 「なに?……」 「ああ……、勇利、おねがいだ……」 「何が……?」 「おまえがあんまりかわいいことをしていると……、俺は買った夕食を食べられなくなる……」 勇利は、何もかわいいことはしていないと思った。またヴィクトル独特の謎の思考なのだろう。 「どうして食べられないの……?」 「別のものが食べたくなるからさ」 「食べれば……?」 「そういう危険な発言をするんじゃない」 ヴィクトルは深呼吸をして自分を鎮めているようだった。鎮めるような何があるのか、勇利には見当もつかなかった。勇利は上着に頬を寄せたまま、とろんとした目つきでヴィクトルを見続けた。 「どうしてそんなに見るんだい?」 「かっこいいから」 「俺のスーツ姿なんていくらでも目にしてるだろう」 「普段に着てるところは見たことない」 「やれやれ……」 ヴィクトルはゆっくりとかぶりを振った。 「運転中じゃなかったらキスしてる」 「何に?」 「せめて、誰に、と訊いてくれ」 家に帰りついたとき、ヴィクトルは大きく息をつき、大変なひと仕事をようやく終えることができたといった様子だった。勇利はバックパックを背負い直し、ヴィクトルの上着を抱きしめたまま、彼について家に入った。マッカチンがやってきて、はしゃいだ声を上げた。もこもこした毛並みを撫でたところで、勇利は気がついて慌てた。 「ごめん。上着、しわになっちゃった」 「そんなことはどうでもいいんだ。運転も終わったことだし、キスしていいかい?」 「何に?」 ヴィクトルは溜息をつき、台所へ入っていった。勇利は居間に行き、言われるままに荷物を置いた。ソファに座って上着を抱きしめていたら、「いい加減にそれにすがりつくのはやめてくれ」と取り上げられてしまった。やっぱりしわだらけにしたのがよくなかったのだろう。 「ごめん」 「そういうことじゃないんだ」 勇利は顔を上げてヴィクトルを見た。ヴィクトルはベストを脱いだ。シャツとネクタイという姿になった彼も本当にかっこうよかった。 「だからそんなに見ないでくれ……俺が安全な男だとでも思ってるのか?」 「どんな危険があるの?」 「口では言えないようなことさ」 ヴィクトルが安全ではないなんてまったく想像もつかない勇利は、きょとんとして瞬きした。 「何もわかってないようだね。『危険』にもいろいろあるんだぞ、勇利。さあ、きみの望みどおり安全な男になるから、そこでおとなしくしていてくれ。食事の支度をするよ」 「手伝う」 「いいんだ。買ってきたものを皿に並べるだけだからね。そばに来られると危険になる」 「ぼくだって台所仕事くらいちょっとはできる」 「勇利、はっきり言っておくけど、俺の言う『危険』は俺が突然暴れだすことでもきみが皿を割ることでもない」 ヴィクトルはシャツの袖を幾度か折ってまくり上げ、何か仕事を始めた。 「着替えないの?」 「時間が惜しい」 彼はほほえんで優しく言った。 「すこしでも勇利と一緒にいたいからね。着替えるためにひっこんだら、きみとの時間が減る。もったいないだろう?」 勇利はどぎまぎした。ヴィクトルに言われたことのせいではない。彼が勇利の前で堂々と着替えないことが新鮮だったからだ。長谷津で暮らしているころ、ヴィクトルは当たり前のように���利のそばで着替えをしたし、温泉だって一緒に入った。日常生活はなじみ、ふたりにとって同じものだった。しかしいまはちがう。勇利はここではヴィクトルのお客で、だからヴィクトルは礼儀として勇利の前では着替えない。そのことがふしぎで、またあんなふうに親しくしてもらいたいと思う反面、新しい発見をしたような気がしてどきどきした。 勇利はヴィクトルから目を離せず、ソファから振り返って、台所にいる彼を見てばかりだった。ヴィクトルはネクタイの先を胸のポケットに押しこんで、邪魔にならないようにしていた。袖をまくってそんなふうにしている彼は初めてで、勇利はまっかになってしまった。 「勇利……」 ヴィクトルが咳払いをした。 「だからそんなに見ないでくれ……」 「え?」 勇利は何を言われたのかわからず、ぼんやりと訊き返した。ヴィクトルは溜息をついてかぶりを振った。 「あんまり信用しないでもらいたい……」 「何を……?」 「いったいなんなんだ、今日は……」 間もなく居間のテーブルに料理の皿が並んだが、勇利はやはりヴィクトルに見蕩れてばかりだった。食事のあいだも、ひとくち口に運んではヴィクトルを見るといったふうで、彼が「英語のチャンネルを映そうか」と言っても、「いい……」と静かに断った。ヴィクトルは台所にいたときと同じかっこうだった。スケートの衣装のときは最高にすてきで、練習着のときもたまらなくかっこうよくて、スーツ姿は胸がときめいて、いまのこの様子は──やっぱり最高に、たまらなく、胸がときめくほどきわだっていた。 「美味しいかい?」 「うん……」 「本当に?」 「うん……」 「聞いてる?」 「うん……」 「聞いてないだろう」 「うん……」 ヴィクトルは笑い、いとおしそうに勇利をみつめた。しかし勇利は彼のそんな様子も目に入らない様子で、自分のほうで勝手にヴィクトルをみつめ続けた。 「いったいなんのスイッチが入ってるんだ?」 ヴィクトルが笑いながら尋ねた。 「ヴィクトル好きスイッチ?」 勇利はヴィクトルに夢中だったけれど、その言葉は聞こえたし、意味もわかった。 「そんなの、いつも入ってるもん……」 「おっと……」 ヴィクトルが目をそらし、おおげさなしぐさでフォークを口に運んだ。 「本当に、理性なんていうものは捨ててしまっていいんじゃないかという気がするよ。でも、こうやって必死にあらがっているとき、自分の愛はなんて深いんだろうと酔いもする」 「そう……」 これの意味も勇利にはわからなかったが、ヴィクトルの優しくてあたたかい声と、彼がすぐそばにいる喜び、彼を見続けていられる幸福、彼が支度してくれた美味しい夕食で、すっかり満足してしまった。食事のあと、勇利は完全なしあわせを感じながらヴィクトルのそばに座っており、いつの間にかすやすやと眠っていた。 それほど長くは眠らなかったようで、まぶたをひらいたとき、時計の針はいくらも進んでいなかった。勇利はヴィクトルにもたれかかっており、ヴィクトルも勇利を肩で支えるようにして頬を寄せていた。 「ヴィクトル……」 勇利は目をこすり、ヴィクトルの顔をのぞきこんだ。どうやら彼のほうも寝入っているようで、かすかな寝息が聞こえた。勇利は大好きなヴィクトルのやすらかな寝顔をじっと見た。起きているときもすてきだけれど、眠っているときもたまらなくかっこうよかった。 うっとりとヴィクトルを見続けたあと、勇利は自分でも気がつかないうちに手を上げ、指をヴィクトルのほうへ伸ばしていた。そして指先で研ぎ澄まされた頬をつつき、ほとんど弾力のないすっきりしたその肌に感激した。勇利はいくら痩せてみても、頬にふれるとどうもふっくらしているのだ。「やわらかい」とヴィクトルに楽しげにつつきまわされることもある。「太ってるって言いたいの」とにらんだら、「いや、かわいいということだ」ともっとつつかれる。 ヴィクトルはすごい。ほっぺたも皇帝だ。 勇利は感心しながら、今度は指を彼のくちびるに向けた。うすくてかたちのよいそれに、勇利はふれられたことがある。ほんの一瞬のことだったけれど。驚かせるとかなんとか言って、キスされたのだ。変なひと。 勇利はくちびるにふれてみた。あたたかい息が指をかすめて、ひどくどきどきしてしまった。あんまりびっくりしたので、思わず手を引いてしまったほどだ。ヴィクトルのくちびるにさわっちゃった……。 勇利はもじもじし、それからしばらくヴィクトルに寄り添ったまま、指をいじっていた。ヴィクトルはいっこうに目ざめなかった。疲れているのかもしれない。それなら自分は早く帰ったほうがよい。けれど、帰るためには、ヴィクトルを起こさなければならない。いきなりいなくなったら心配するだろう。しかし起こすのは、せっかく気持ちよく眠っているのに気の毒だ。いっそのこと、書き置きでも残していこうか? だがヴィクトルは、夜にひとりで出歩くと怒るのだ。 勇利はまぶたを閉ざし、ヴィクトルにもたれかかって、幸福な時間を過ごした。ときおり目を開けては彼をみつめ、かっこよか……と頬を赤くして吐息をついたりした。いっこうに飽きなかった。しかし、幾度目か──ヴィクトルをみつめたとき、勇利は無意識のうちに、彼に顔を寄せていた。 ヴィクトル、キスしたら起きるかな? 揺り起こすのはかわいそう……。ホテルで同じ部屋に泊まったりすると、「キスで起こそうかと思ったよ」とか言ってくるんだ。つまり、自分を起こすときはそうしてくれって意味なのかな? そうかもしれない。ヴィクトルってよくわからないし……。 勇利はゆっくりと顔を近づけてゆき、まぶたを閉じて、ヴィクトルのくちびるにそっと接吻した。ヴィクトルは起きなかった。勇利はヴィクトルをみつめ、目をさまさないんだ、とぼんやり思った。そう思ううちに──気恥ずかしくなり、頬が熱くなってきた。 ヴィクトルにキスしちゃった! してよかったのかな? もしかしてぼく、すごいことをしちゃったんじゃない? キスするなんて信じられない。キスなんて簡単にしていいことじゃないんだぞ。なのにどうして? ヴィクトルにばれたらどうしよう! うろたえ、ヴィクトルから離れようとしたとき、ヴィクトルが何か低くつぶやき、静かにまぶたをひらいた。勇利は心臓が壊れそうなほどどきどきした。ばれたのかもしれない! もしかしてヴィクトルは寝たふりをしてたんじゃ? いま俺にキスしたね、って叱られたらどうしよう……。 「おはよう」 ヴィクトルが勇利に笑いかけた。勇利はしどろもどろになった。 「お、おはよう……」 「どうしたんだい?」 「ううん、ぼくもさっきまで寝てたから……」 「なんだか顔が赤いね」 ヴィクトルが心配そうに勇利の頬にふれた。 「寒かった? 何か身体にかけるべきだった」 「大丈夫。そういうのじゃない」 勇利はヴィクトルのおもてを見られず、ふるふるとかぶりを振った。ヴィクトルが笑った。 「さっきまで俺をずっと見てたのに、もう見ないのかい?」 勇利はどきっとした。 「う、うん」 「なぜ?」 「もういい」 「俺に興味がなくなった?」 「そんなんじゃない」 ヴィクトルが立っていき、「紅茶でも淹れるよ」と言って台所で仕事をし始めた。相変わらず彼はワイシャツにネクタイという姿で、たまらなくかっこうよかったけれど、やはり勇利はもうみつめることはできなかった。ずっとどきどきしていた。本当にヴィクトルは気がつかなかったのだろうか? 勇利がキスしたことを知らない? いまは知らんぷりをして、そのうち突然言いだすのかもしれない。ヴィクトルはそういう間合いの計り方がまったくじょうずなのだ。 どうなのだろうと、勇利はヴィクトルをまっすぐには見られないながらも、そろそろと観察せずにはいられなかった。彼は楽しそうに紅茶を淹れ、香りを楽しんでいる。 「なんだい?」 ヴィクトルが勇利の視線を感じたのか、首をまわした。 「どうかしたのかな?」 「な、なんでもない」 勇利はうつむいてもじもじと指をいじった。さっき俺にキスしたから照れてるんだな、なんて思われてたらどうしよう……。怒っていないのならよかったけれど、そうだとしても気恥ずかしい。 「ミルクやレモンは?」 「い、いらない」 「オーケィ」 ヴィクトルはカップをふたつ持って戻ってき、「さあどうぞ」と勇利の前に置いた。勇利は礼を述べてそれを両手で包むようにした。そっとカップにくちびるをつけ、すこしだけすすってみた。 「美味しい」 「そうか」 勇利は上目遣いでヴィクトルを見た。優しい青い目と視線が合って、慌てておもてを伏せると、袖をまくった彼のたくましい腕が見えた。男らしい筋が走って、なんともかっこうよかった。こんなにすてきなひとにキスをしてしまったのだと思うと、そわそわと落ち着かない気持ちになった。どうしてあんなことができたのだろう? 信じられない。いったいどういう了見なのだ。 「ずいぶん無口だね」 ヴィクトルが楽しそうに言った。 「どうかしたの?」 「ど、どうもしない」 「俺をずっとみつめたり、急に話さなくなったり、勇利は忙しい子だな」 勇利は、やっぱりばれてるんじゃ、という気がしてならなかった。おまえがそんなふうに態度を変えてしまったのはなぜか、俺は知っているぞ──そんなふうに言われているように思われるのだ。 「なんだかいい夢を見たよ」 ヴィクトルが陽気に言った。勇利は返事をしなくてはと焦った。 「ど、どんな夢?」 「どんな夢だったかな……おぼえてないんだ。でも、確かにいい夢だった」 「おぼえてないのにわかるの」 「そうさ。何か幸福なことが起こったにちがいない」 ヴィクトルはほほえんで片目を閉じた。 「俺にとってね」 勇利はのぼせ上がってしまった。 「き、着替えないの?」 「うん?」 ヴィクトルは、ネクタイをポケットにねじこんだままの自身の姿を見下ろした。 「時間がもったいないと言っただろう?」 「でも、そのままじゃ窮屈じゃない」 ヴィクトルはちいさく笑った。 「いまから着替えるとなると……」 意味ぶかそうに言葉を切る理由が勇利にはわからなかった。 「勇利も一緒に連れていかなきゃいけないな」 「手伝うことがあるの?」 「手伝うことはないけど勇利もいなくちゃ」 「いいけど……」 よくわからないままに勇利はうなずいた。どうしようと悩んでいるより、何かすることがあるほうが落ち着くというものだ。 ヴィクトルが笑いだした。 「いいのかい?」 「え? うん……」 「俺が着替えるのは寝室だよ」 「うん……?」 勇利は首をかしげた。 「……うん」 ヴィクトルが天井をあおいだ。 「だめだ。こんな勇利を連れていくのはあまりに罪深い」 なんなのだ。勇利はさっぱりわからなかった。 「お茶をもう一杯、どうだい?」 尋ねられて、勇利は自分が紅茶を飲み干してしまったことに気がついた。緊張と心配のあまり、無意識のうちに口に運んでいたらしい。 「もう帰らないと」 「まだいいだろう」 勇利はヴィクトルの前からすぐにでも消えたかったけれど、帰ったら帰ったで、やっぱりヴィクトルはわかっていたのではないか、ぼくがキスしたことを知っていたのではないかと思い悩むだろうと予想できたので、思いきることができなかった。 ヴィクトルが勇利の手からカップを取り上げ、紅茶を淹れて戻ってきた。勇利はそれを飲みながら、横目でちらと彼をうかがった。ヴィクトルはにっこり笑った。──気づいているような気がする。ヴィクトルにわからないわけがない。ソファで寝るのにそんなに深く眠るはずがないし……。 「どうしたんだい?」 ヴィクトルが丁寧に尋ねた。 「俺を見られないっていうふうだったのに、またそうやって見るんだね。何か話でもあるのかな?」 「えーっと、その……」 勇利は口ごもった。どうにか──さりげなく、それとなく尋ねることはできないだろうか? 「ヴィクトル……」 「なんだい?」 「あの……、何か変わったことはない?」 「変わったこと? どういう意味で?」 「つまり……、あきれるとか、不愉快になるとか、そういうことが身に起こったみたいな」 「俺はすてきな夢を見たからとても機嫌がいいんだよ。そう言っただろう?」 「そう……、でも、その夢を邪魔されたっていうようなことは……」 「何も邪魔されてなんかいないぞ。そもそも、どんな夢だったのかおぼえてないしね」 「…………」 勇利は口元に手を当て、深くうつむきこんだ。ヴィクトルはわけがわからないようで、「どうかしたの?」とふしぎそうだ。やっぱり知らないのだろうか? 勇利がキスをしたなんてわからなかったのだろうか? そうかもしれない。もし知っていたら、ヴィクトルなら、すぐにそのことでからかいそうな気もする。そうしないということは、あのときは眠っていたのだ。 いや、でも、本当にそうかな!? 勇利は混乱し、わからなくなってきた。キスなんてするのではなかった。こんなことになるなんて。どうしてしてしまったのだろう? まったくもう……。 勇利はまたちらとヴィクトルを見た。目が合うと、ヴィクトルがかすかにほほえんだ。勇利はたちまちとろんとなってしまった。ああ、かっこいい……こんなひとにキスしちゃった……ぼくはばかだ……。 あんまりヴィクトルがすてきなので、勇利はだんだんと、懺悔する気持ちが強くなってきた。ヴィクトルに勝手なことをしてしまった。まったく迷惑なことを。ああ……。 「あの、ヴィクトル……」 勇利はおずおずと口をひらいた。 「ぼく、ヴィクトルに言わなくちゃいけないことが……」 「なんだい?」 ヴィクトルは勇利をじっと見た。 「勇利が改まって何か言いだすと緊張するね」 緊張しているのは勇利のほうだ。しかし告白しなければ。 「謝らなくちゃいけないことがあるんだ……」 「ますます不安だ。こわいことを言わないでくれ」 「ヴィクトルも気づいてるかもしれないけど……」 「なんのことだ? 何も気づいてなんかいないさ」 「そうやって知らないふりをしてるのかもしれないけど……」 「勇利。どうしてそう思わせぶりなんだ。俺を振りまわすのはやめてくれ」 「あの……、」 勇利は胸に手を当て、大きく深呼吸をした。そしてヴィクトルをじっと見ると、思いきって打ち明けた。 「ぼく、さっき、ヴィクトルにキスしちゃって……」 「──え?」 ヴィクトルがぽかんとした。彼は目をみひらき、何を言われたのかわからないというふうに瞬いた。 「それで……、えっと、ごめんなさい……」 ヴィクトルはしばらく黙っていた。勇利はどきどきして待った。 「……いつ?」 「え?」 「いつキスしたんだ?」 「ヴィクトルが寝てるとき……」 勇利は口元に手を添えてもじもじした。 「わかってるかと思ったけど……」 「いや……気がつかなかったよ……」 ヴィクトルはまだぼうぜんとしており、信じられないという様子だった。勇利は心配になって身を乗り出した。 「ヴィクトル、怒った……?」 「え? いや……、怒ってないよ」 ヴィクトルはかすかに笑ってかぶりを振った。 「うれしいよ」 「こんなにかっこいいヴィクトルにどうしてそんなことができたの��、ぼくにもよくわからないんだけど。でも、悪かったと思ってるよ……」 ヴィクトルを見ていると、ああ、やっぱりかっこいい、どうしてもかっこいい、というときめきでまたいっぱいになって、勇利は彼から顔をそらしてしまった。 「怒ってないと言ってるだろう? 勇利、こっちを見て」 「無理」 「俺にキスだってできるのに、どうしてだ」 「だから、なんでそんなことができたのかわからないって言ってるじゃん」 「勇利がキスしてくれるなら、これからは眠りを浅くしておかなければならない。気づかないなんて惜しいことをした。せっかくの勇利からのキスだったのに」 ヴィクトルが何を言っているのか理解できないけれど、彼がすてきなので、勇利はまたしてもぼんやりととろけてしまった。 「勇利、聞いてるかい?」 「ん……」 「また聞こえてないんだろう」 「ん……」 「じゃあ俺も告白しよう。勇利、俺はきみにひとつ言わなければならないことがあるんだ」 「なに……?」 「これを聞いたら、そのうっとりした状態は打ち破られると思うよ」 「ん……」 酩酊状態の勇利にヴィクトルは笑い、ふいに耳にくちびるを近づけ、低くささやいた。 「俺もさっき、勇利にキスをした……」 「……え?」 勇利は大きな目をぱちりと瞬き、まじまじとヴィクトルを見た。彼の言うとおり、酩酊は破られた。 「うそ」 「本当さ……」 「……いつ?」 「きみが寝ているときに……。勇利のほうがさきに寝たからね」 「……どうして?」 「どうしてだと思う?」 ヴィクトルが真剣に勇利をみつめた。勇利は混乱し、のぼせ上がって彼を見返していたけれど、そのうち本当にキスをされたのだということがわかってきて、思わず声を上げてしまった。 「ひゃあ!」 ヴィクトルが目をまるくした。それから彼は笑いだした。 「勇利……なんて声を出すんだ……」 「だって驚いて……ヴィクトルがそんなこと……」 「キスしたのは俺がさきだからね。俺の勝ちだ」 ヴィクトルが勝ち誇っているけれど、勇利はそれどころではなかった。ヴィクトルにキスされた? 信じられない……。 勇利はふらふらと立ち上がった。 「どこへ行くんだ?」 「帰る……」 「なぜ? 怒ったの?」 「こんなにかっこいいひとにキスされたなんて、これ以上ぼくの精神がもたない……ちょっと落ち着いて考える必要がある……」 「帰したくないけど、勇利がどうしても帰りたいというなら仕方がない。送っていくよ。でも、その前に……」 ヴィクトルも立ち上がり、勇利の頬をそっと撫でた。勇利はまっかになり、心臓が爆発しそうになった。 「キスされて『ひゃあ』なんて色っぽくないことを言う勇利を、ますますいとおしく思う」 「そ、そうですか……」 「寝てるあいだにくちびるを奪ったのは悪かった。同じ状況になったらまたしてしまうだろうけど」 「そ、そう……」 勇利はヴィクトルの話すことの半分も意味がわからなかった。 「でも、起きてる勇利ともしたいんだ、俺は」 「何を……?」 「だから、つまり……」 ヴィクトルは咳払いをし、息苦しいのか、ゆるんでいるネクタイをさらにゆるめた。勇利は彼のそのしぐさが大好きなので、ますます陶酔してとろけてしまった。 「いま、キスしてもいいかな?」 勇利はふらつき、倒れそうになった。ヴィクトルがさっと支えた。勇利は自分がふらふらになっていることにも気づかなかった。 キスするの? ヴィクトルと? ヴィクトルがぼくとキスしたがってるの? そんなこととてもできない。無理。ヴィクトルとキスなんて、そんな……そんな……。 ──キス? 「ひゃあ!」
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☯
Bảng kí tự đặc biệt chữ cái đầy đủ
๖ۣۜA ๖ۣۜB ๖ۣۜC ๖ۣۜD ๖ۣۜE ๖ۣۜF ๖ۣۜG ๖ۣۜH ๖ۣۜI ๖ۣۜJ ๖ۣۜK ๖ۣۜL ๖ۣۜM ๖ۣۜN ๖ۣۜO ๖ۣۜP ๖ۣۜQ ๖ۣۜR ๖ۣۜS ๖ۣۜT ๖ۣۜU ๖ۣۜW ๖ۣۜV ๖ۣۜX ๖ۣۜY ๖ۣۜZ
Ⓐ ⓐ ⒜ A a Ạ ạ Å å Ä ä Ả ả Ḁ ḁ Ấ ấ Ầ ầ Ẩ ẩ Ȃ ȃ Ẫ ẫ Ậ ậ Ắ ắ Ằ ằ Ẳ ẳ Ẵ ẵ Ặ ặ Ā ā Ą ą Ȁ ȁ Ǻ ǻ Ȧ ȧ Á á Ǟ ǟ Ǎ ǎ À à Ã ã Ǡ ǡ Â â Ⱥ ⱥ Æ æ Ǣ ǣ Ǽ ǽ Ɐ Ꜳ ꜳ Ꜹ ꜹ Ꜻ ꜻ Ɑ ℀ ⅍ ℁ ª Ⓑ ⓑ⒝ B b Ḃ ḃ Ḅ ḅ Ḇ ḇ Ɓ Ƀ ƀ Ƃ ƃ Ƅ ƅ ℬ Ⓒ ⓒ ⒞ C c Ḉ ḉ Ć ć Ĉ ĉ Ċ ċ Č č Ç ç Ƈ ƈ Ȼ ȼ ℂ ℃ Ɔ Ꜿ ꜿ ℭ ℅ ℆ ℄ Ⓓ ⓓ ⒟ D d Ḋ ḋ Ḍ ḍ Ḏ ḏ Ḑ ḑ Ḓ ḓ Ď ď Ɗ Ƌ ƌ Ɖ Đ đ ȡ DZ Dz dz DŽ Dž dž ȸ ⅅ ⅆ Ⓔ ⓔ ⒠ E e Ḕ ḕ Ḗ ḗ Ḙ ḙ Ḛ ḛ Ḝ ḝ Ẹ ẹ Ẻ ẻ Ế ế Ẽ ẽ Ề ề Ể ể Ễ ễ Ệ ệ Ē ē Ĕ ĕ Ė ė Ę ę Ě ě È è É é Ê ê Ë ë Ȅ ȅ Ȩ ȩ Ȇ ȇ Ǝ ⱻ Ɇ ɇ Ə ǝ ℰ ⱸ ℯ ℮ ℇ ƐⒻ ⓕ ⒡ F f Ḟ ḟ Ƒ ƒ ꜰ Ⅎ ⅎ ꟻ ℱ ℻ Ⓖ ⓖ ⒢ G g Ɠ Ḡ ḡ Ĝ ĝ Ğ ğ Ġ ġ Ǥ ǥ Ǧǧ Ǵ ℊ ⅁ ǵ Ģ ģ Ⓗ ⓗ ⒣ H h Ḣ ḣ Ḥ ḥḦ ḧ Ḩ ḩ Ḫ ḫ Ĥ ĥ Ȟ ȟ Ħ ħ Ⱨ ⱨ Ꜧ ℍ Ƕ ẖ ℏ ℎ ℋ ℌ ꜧ Ⓘ ⓘ ⒤ I i Ḭ ḭ Ḯ ḯ IJ ijÍ í Ì ì Î î Ï ï Ĩ ĩ Ī ī Ĭ ĭ Į į Ǐ ǐ ı ƚ Ỻ ⅈ
Kí tự đặc biệt chữ Thái Lan
Những cái tên đặc biệt sẽ trở nên cực kì chất, độc lạ khi có thêm kiểu dáng chữ của Thái Lan
ก ข ฃ ค ฅ ฆ ง จ ฉ ช ซ ฌ ญ ฎ ฏ ฐ ฑ ฒ ณ ด ต ถ ท ธ น บ ป ผ ฝ พ ฟ ภ ม ย ร ฤ ฤๅ ล ฦ ฦๅ ว ศ ษ ส ห ฬ อ ฮ ◌ะ ◌ั ◌า ◌ำา ◌ิ ◌ี ◌ึ ◌ื ◌ุ ◌ู ◌ฺ ◌ฺุ ◌ฺ เ◌ แ◌ โ◌ ใ◌ ไ◌ ◌็ ◌่ ◌้ ◌๊ ◌๋ ◌์ ◌ํ ◌๎ ◌็่ ◌๊่ ๐ ๑ ๒ ๓ ๔ ๕ ๖ ๗ ๘ ๙ ฿ ๐ ๑ ๒ ๓ ๔ ๕ ๖ ๗ ๘ ๙ ๆ ๏ ☸ ฯ ๚ ๛ ะ ั ็ ่ ้ ๊ ๋ ์ ํ ๎
Kí tự đặc biệt tiếng Nhật Bản
Tên game đặc biệt mang phong cách game thủ Nhật Bản bằng cách sử dụng bảng kí tự của Xứ sở hoa anh đào
ぁ あ ぃ い ぅ う ぇ え ぉ お か が き ぎ く ぐ け げ こ ご さ ざ しじ す ず せ ぜ そ ぞ た だ ち ぢ っ つ づ て で と ど な に ぬ ね の は ば ぱ ひ び ぴ ふ ぶ ぷ へ べ ぺ ほ ぼ ぽ ま み む め も ゃ や ゅ ゆ ょ よ ら り る れ ろ ゎ わ ゐ ゑ を ん ゔ ゕ ゖ ゛ ゜ ゝ ゞ ゟ ゠
ァ ア ィ イ ゥ ウ ェ エ ォ オ カ ガ キ ギ ク グ ケ ゲ コ ゴ サ ザ シ ジ ス ズ セ ゼ ソ ゾ タ ダ チ ヂ ッ ツ ヅ テ デ ト ド ナ ニ ヌ ネ ノ ハ バ パ ヒ ビ ピ フ ブ プ ヘ ベ ペ ホ ボ ポ マ ミ ム メ モ ャ ヤ ュ ユ ョ ヨ ラ リ ル レ ロ ヮ ワ ヰ ヱ ヲ ン ヴ ヵ ヶ ヷ ヸ ヹ ヺ ・ ー ヽ ヾ ヿ ㍐ ㍿
Kí tự đặc biệt tiếng Hàn Quốc
Thử sử dụng bảng chữ cái của Hàn Quốc để tạo tên kí tự đặc biệt hàn quốc xem sao nhé!
ㄱ ㄲ ㄳ ㄴ ㄵ ㄶ ㄷ ㄸ ㄹ ㄺ ㄻ ㄼ ㄽ ㄾ ㄿ ㅀ ㅁ ㅂ ㅃ ㅄ ㅅ ㅆ ㅇ ㅈ ㅉ ㅊ ㅋ ㅌ ㅍ ㅎ ㅏ ㅐ ㅑ ㅒ ㅓ ㅔ ㅕ ㅖ ㅗ ㅘ ㅙ ㅚ ㅛ ㅜ ㅝ ㅞ ㅟ ㅠ ㅡ ㅢ ㅥ ㅦ ㅧ ㅨ ㅩ ㅪ ㅫ ㅬ ㅭ ㅮ ㅯ ㅰ ㅱ ㅲ ㅳ ㅴ ㅵ ㅶ ㅷ ㅸ ㅹ ㅺ ㅻ ㅼ ㅽ ㅾ ㅿ ㆀ ㆁ ㆂ ㆃ ㆄ ㆅ ㆆ ㆇ ㆈ ㆉ ㆊ
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「小生狸がよく喋る、でもないけど2020.02」
やあ困りましたね。
最近朝も夜も電車がよく止まってるんですけど、困りましたね。
昔は電車止まっちゃうと面倒くさくてその辺の居酒屋さんにふらーっと吸い込まれて3時間くらいぼんやり時間を過ごしたりしていたのだけど、最近は本当に体力が落ちてきてしまっていてそういうのも難しくなってきた。
電車の止まってる駅の様子は、眺めてる分には割と面白かったりもするのだけれど、なんだかとげとげしていてあんまり好きではない。
東京って街の脆弱さを見てる感じ。
今年は割とぷらっぷらしてる年になりそうで、先月はぷらっと福岡あたりにいってきた。5年か6年くらいぶりになるのかなあ。相変わらずいい街だった。
福岡すごく好きな街なんですけど、なんでこんなに好きなのかというところは判然としない。
ひとつ、空港がめちゃめちゃ近い。
国内で行くとしたら個人的には福岡か札幌の二択なんだけど、札幌、空港遠くない…?新千歳から札幌駅にたどり着くまでにラーメン食べてビール飲んでラムつついて、ついでにその辺ぷらぷらしてくらいの時間があるじゃないですか。遠すぎるやろ…
その点福岡はほんと良くて、昔の香港みたいな距離感で街の中にどてっと空港がある。地下鉄で二駅6分もあればもう博多駅だ。最高。…もっともこれは地元の方的には色々迷惑なとこもあるのかなと思ったりする。
ひとつ、街がコンパクトで何でもある。
東京あたりで暮らしてるとほんと、東京って広すぎるんですよね。歩いても歩いても都市があるじゃないですか。どうかしてる。こういうのって鉄道の路線図眺めて実際乗ってみると分かるんですけど、東京以外の大都市圏って環状線でぐるっと回ってみても山手線の半分以下の広さしかないんですよね。路線図みて似たような感覚で乗ってると「えっ!?」てなる。
福岡で言えば空港線で博多から祇園、中洲を経由して天神までざっと15分くらいになるのかな、その中で博多駅前の表側はこの数年で随分近代的になっていろんなお店があるし、これは今回地元の方に教えてもらって知ったのだけど裏っ��わは所謂「繁華街」で飲み屋さんがいっぱいあるらしい。裏っかわ行かないから知らなかったなあ…。海外からの西の玄関口でもあるから駅ビルには一通りのうまいもんもおみやも揃ってて、おのぼりさん的にはここだけでも事足りる感じ。
祇園のあたりは古い街で神社とか商店街とかある。緑が多くて清々する。このあたりは意外と夜は静かで昼の街という感じ。そこから中洲方面に向かうと夜の側面が出てくる。今回のみすぎてホテルに着いたのが12時過ぎくらいだったんだけど、中洲の辺りはほんとに活気があっててっぺんくらいじゃ「まだまだこれから!」って感じ。元気ありすぎでしょ…。遅くまでやってるラーメン屋さんとかも多くて有難い感じ。天神は個人的には「福岡のモダン」みたいな印象で、地上はでっかい百貨店がずらっと並んでて地下街も洒落てて綺麗。あの地下街は一見の価値あると思ってる。こぎれいなお店がいっぱいあるんだけど、ここは同時に若い商店街っぽさもあって、なんというのか綺麗なんだけど土着的みたいな感じがして、とても活気がある。このあたりは戦前の万博みたいなものの会場になっていたところが戦後再開発された一帯らしくて、街としての若さもあるんだろうなあみたいな感じがする。若い人が多いのでちょっと歩くとこじゃれた喫茶店とかもいっぱいあって、あと何故か福岡のこの辺りはソフトクリーム屋さんが異様に多い。やっぱり暑いのかな?わかんないけど、そういうお店に冬場でも若い人たちがいっぱい入っていたりしてなかなか面白い。ここから西に向かうと佐賀方面、松原とか見に行くことも出来るし西鉄に乗り換えて大宰府見物に行ったっていい。
福岡には何でもある。何でもあるし、これだけあってコンパクト。先に書いた地下鉄で言えば多分福岡ドームまでいっても30分くらいだろうし、歩いてみれば意外と天神から祇園まで小一時間くらいで歩けたりする。
それだけの距離の中にこれだけ多くの景色が詰まっているというところが個人的に思う福岡の魅力なのかな。
あと、福岡は人がいい。何か知らんけど、なんとなくいい。昔から人の往来が多いからなのかな、なんとなく見てても開けてる感じがする。田舎の街にありがちな閉鎖性があんまり感じられなくて、他所から来た人に対してもフランクというかあけっぴろげな印象がある。その一方でほっといてほしい時はほっといてくれる雑さもある。僕みたいなおのぼりさんにはこの街のこういうところはとても有難い。今回数年ぶりの友人たちとも顔を合わせたのだけど、ほんとに気さくに節制て貰えて嬉しかったな。なんか、距離があるようでない街なんじゃないのかな。
いやビールがうまくてさ。どういう訳だかアイリッシュパブみたいなお店がめちゃめちゃいっぱいあるんだよな。なんか市内で強いチェーンがあるらしい。混んでたら近くのお店と融通しあってくれたりもして、なんというか強かさがある。ハイカラと書いたけど個人的にこの街はジャズとかに強いところも好きだったりして。ジャズバーがいっぱいあるんですよね。今回時間無くて行けなかったけど天神のほうに沢山あって、これがまた楽しいんだ。また行きたいなあ。
なんか福岡の話してたら終わっちゃう感じになった。好きなんです福岡。次は日本酒もちょっと飲みたいんだけど時間あるかなー…うどんも食べれてないしなあ…
閑話休題。
で、今日は早く帰りたかったんです。
なぜならば、CDがおうちに届くので…。
https://twitter.com/RON_SDF/status/1224588002279604224
はい、えー、出ましたね…
やっと出た……長かった………………
ろんさんがやってるソロプロジェクト「STEREO DIVE FOUNDATION」。待望の1stアルバム、ようやくのリリースでございます。いやほんと、何年待ったと思ってるんですか。いい加減にしてください。
ろんさんの曲すきなんだけど、このSDFの楽曲というのは彼が色んな方に提供してきた曲とはちょっと違うのかなみたいな風に思っていて。さっき受け取ってきて一通り聴いたとこなんだけど、うん。期待通りのアルバムがスパッと出てきた感じ。
SDFの曲はすごくダンスっぽいというか、リズムトラックが前に出てるとこがいいなあと思っていて。ろんさんって初期OLDCODEXでも見せてくれてたみたいなギタープレイが印象に残ると思うのだけど、意外とKBな方でもあるんですよね。SDFでやってる彼の曲には、そっち側の彼の横顔がすごくでてる感じがして好きなんですよね。きっちり攻めたアガるサウンドのなかに、それでも突き抜け切らない緻密なテンションコントロールみたいな部分があって。多分盛り上がる曲って突き抜けてしまった方が音楽的にはむしろ簡単なんじゃないかと思うのだけど、ここでやってる音楽はその突き抜け切らない難しいところをやってる。アガってるし攻撃的なんだけどダウナーでフリーな感じ。そのバランス感覚が気持ちいいんです。いやーいいなあ。いいアルバムが出てくれた。めちゃめちゃ嬉しいです、今。
タイアップも良くて、GANGSTAもノブナガザフールもDimensionWもいい作品じゃないですか。GANGSTA2期やってくれないかなあ…様々な悲しい事情で難しいことも分かってるけど、それを望んでしまう…ああいう作品が昔からすごく好きだった人間としては、何とか、みたいに思う。んー、でもまあそのためにはきちんとお金を落とさねばね。
キラッキラしてるけどどこか無骨、みたいな感じで。そういうところが作品タイアップ上にすごく活きているんだよな。
んー、そだな。
最近、10年ぶり…20年ぶりくらいになるのかな、「新規開拓」みたいなことをしていて。僕は本質的にすごくオタクなところがあって、基本的には好きな音楽があったらそればっかり延々と聴き続けているようなタイプの人間なんだけど、どういうわけだかふとした感じで最近ちょっと知らないところに足を踏み出したりしてて。
知らないことに触れるのって、やっぱり楽しいね。
知らない事ばかりだから戸惑ったり困ったりもするのだけれど、そういうことも含めて、今は何でも楽しい。最近触れてる音楽は僕が昔、それこそ学生時代に慣れ親しんだ音楽に多分近いところにある何かだと思っているんだけれど、それって近いだけで全然違う別の何かで。近づいてみるとそういうことがはっきり分かってくる。やっぱり音楽って生きていて、変わっていっているんだなあと実感する。変わっていくものだから知らない事ばかりで、そういう知らないことに触れることが楽しいし、知らない筈のそれが何故か懐かしく感じられることが面白い。
知っていた筈のものが全然別の姿で突然目の前に姿を表わした、みたいな。そういう感じの感想で、最近は身の回りの音楽に触れてる。その楽しさがいい。楽しいというのは気楽でいいね。
先日福岡で友達と話してて、「僕らは<頑張らない>を頑張らないとできないとこがよくないね」みたいな話を少しした。
頑張ろうってつもりはないのだけれど、気づくと僕らは頑張ってしまっている。それ自体を悪い事とは思わないけれど、必死になるあまり自分でも気づかないうちに見落としてしまっていることは、間違いなくあると思っている。
個人的な2020年の目標に「頑張らない」を立てている。別のところにふらふら歩いてみても僕らは結局僕らのままで、ふと気づくと頑張ろうとしてしまっているようなところがある。そうして、その中で見落としてしまっていることが恐らく沢山ある。そのひとつは例えば僕が福岡にいく度に感じるような何らかであり、ひとつは例えば僕がSDFの音楽を聴いていて感じるような何らかであると思う。
「現在」に近づきたい、という欲求がある。「ありのまま」を捉えたい、という欲望がある。
そして、近づこうとするたび、捉えようとするたび、見失ってしまうものがある事を知っている。
今年は、何とかそれをきちんと見出して、形にしたい。そんなふうに思っている。
やあ困りましたね。
困ったことに、困ったときの僕はいつもワクワクしてしまっているのだなあ。ワハハ。
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まちカドディクショナリー(1~2巻)
いやー、アニメ『まちカドまぞく』、最高でしたね! 何より原作に対する深い愛が感じられる構成変更がバッチリ決まっていました。最終回はきららアニメ史に残るのではないでしょうか。 というわけで、今回はアニメ化した1~2巻の範囲に絞って、単語辞書を作成してみました。ネタバレ満載なので原作/アニメを知っている人推奨です。

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朝フル【あさふる】朝からフルマラソンの略。桃がたまにやっている。
暗黒役所【あんこくやくしょ】まぞく活動開始届の提出先。あんこ区役所ではない。本作にはめずらしく(現状)忘れ去られた設定。
一ヶ月四万生活の呪い【いっかげつよんまんせいかつののろい】吉田家にかけられた呪い。実は千代田桜の尽力でこの程度に抑えられていた。
薄皮いちご大福【うすかわいちごだいふく】できたてが一番美味しい。桃には少し苦手。
うどん【うどん】地味に本作の重要要素。シャミ子が桃に振る舞った結果、桃の好物がうどんになった。尊い。
エーテル体【えーてるたい】魔法少女の身体はほとんどこれに置き換わっている。ので色々できる。
エクスペリエンス【えくすぺりえんす】このような屈辱的なエクスペリエンスは初めてです!
小倉しおん【おぐらしおん】杏里の友人。本作屈指の重要人物。本領発揮は3巻以降。
お好み焼き【おこのみやき】シャミ子が封印を一部解いた日に吉田家皆で食べた思い出の料理。
お供え物【おそなえもの】ごせん像にお供え物をするとリリス空間に届くので積極的にお供えしよう。ゴミでもいいぞ!(ダメ)
おっきなタイヤ【おっきなたいや】人間の特性では持てない。つまり桃は人間ではない……?
お腹の横【おなかのよこ】シャミ子がすぐ痛くなる。
片手ダンプ【かたてだんぷ】桃の得意技(ではない)。流石に骨は折れる。
危機管理フォーム【ききかんりふぉーむ】シャミ子の戦闘フォーム。だいぶ肌色多め。特に胸の部分は前当てをベルトで抑えているだけというヤバさ。そりゃ二度見もする。
筋肉注射【きんにくちゅうしゃ】シャミ子の飛び道具(魔力)の攻撃力。わりと痛い。
コーラ【こーら】炭酸飲料。シャミ子に夢に入られた人間がやたら飲みたくなる。
ごせん像【ごせんぞう】リリスが封印されている邪神像。表情がわりと変わる。結構頑丈。
ごせんぞ様【ごせんぞさま】シャミ子がリリスを呼ぶ際の名前。
500円【ごひゃくえん】シャミ子が桃にした借金。返したい。返せない。
これで勝ったと思うなよ【これでかったとおもうなよ】シャミ子の決め台詞。これが決め台詞という時点でシャミ子の格がわかるというものである。でもたまに桃とかも言う。
56562【ごろごろにゃーちゃん】千代田家の暗証番号。覚えやすい。かわいい。
佐田杏里【さたあんり】シャミ子の友人。お調子者のようだがしっかり友達思い。スポーツ好きで活発。変な出来事に対する耐性がめっちゃ高い。
サンライズアロー【さんらいずあろー】ミカンの必殺技。シャミ子がすごい見たがる。
尻尾【しっぽ】ある朝シャミ子にいきなり生えた。意思で動く。興奮するとちょこまか動く。
シャドウミストレス優子【しゃどうみすとれすゆうこ】シャミ子のまぞくとしての活動名。他の候補は仮面X(かめっくす)、十五夜(ゆたか)など……。この名前で本当に良かった。
シャミ子【しゃみこ】本作の主人公。15歳。闇の力に目覚めて虚弱体質も治ったが力はへっぽこなので色々苦労している。ずっと桃にご執心。料理が得意。
しゃみ先【しゃみせん】シャミ子の先祖、の略。言うと怒る。
シャミりん【しゃみりん】一瞬だけ出てきたシャミ子のあだ名。桃はこの名前でスマホにシャミ子の電話番号を登録していた(今は不明)。
死霊のコサックダンス【しりょうのこさっくだんす】シャミ子とミカンが見に行った映画。泣ける。同時上映は『ゾンビの夏休み』。
せいいき桜ヶ丘【せいいきさくらがおか】本作の舞台となる街。実は様々な秘密がある。住人は奇妙な人たちに対するスルー力半端ない。名所は巨大な桜の木。
制服【せいふく】正しく洗わないと縮む。
そこは引っかからなくていい【そこはひっかからなくていい】桃の口癖。大事な事実を隠していることもある。ただの照れ隠しのこともある。
たこさんウインナー【たこさんういんな��】ガーリック味とバジルレモン味がある。すっぱじょっぱい。
多摩川【たまがわ】河川敷で決闘したり修行したりする。
多摩健康ランド【たまけんこうらんど】1720円。
たまさくら商店街【たまさくらしょうてんがい】桜ヶ丘にある商店街。
たまさくらちゃん【たまさくらちゃん】たまさくら商店街イチオシのゆるキャラ。設定が奇抜。桃がものすごくご執心。
ちぎ投げ【ちぎなげ】ちぎっては投げられるの略。シャミ子がよく妄想内で恐れる。
千代田桜【ちよださくら】桃の義理の姉。魔法少女。本作の謎と強く結びついた最重要人物。
千代田桃【ちよだもも】シャミ子の宿敵の魔法少女。最終的に共闘する仲にまでなった。シャミ桃尊い。シャミ桃尊い。そして筋肉は正義。
ツノ【つの】ある朝シャミ子にいきなり生えた。ワッサン。
Tシャツ【てぃーしゃつ】リリスがオフモード時に来ている。My blood sugar level is dangerous.
ドアストッパー【どあすとっぱー】→ごせん像
時は来た【ときはきた】→メタ子
ナビゲーター【なびげーたー】光の一族の使い。魔法少女を導く存在。動物の形をしている。
ナレーション【なれーしょん】各話の最後にシャミ子を応援する。その正体は……
ニューご先祖【にゅーごせんぞ】カサカサカサカサ……
ねぎとろデニッシュ【ねぎとろでにっしゅ】桃がシャミ子と初対面の際に��した菓子パン。
廃工場【はいこうじょう】桃の所有地。昔魔法少女が吹き飛ばした結果廃墟になっている。
パソコン【ぱそこん】シャミ子が桃に借りた。主に良子が使用している。
パンケーキ【ぱんけーき】吉田家(と作者の実家)では冷ごはんと豆腐でかさ増しするのが定番。
ハンバーグ【はんばーぐ】桃がシャミ子のために作った。尊い。シャミ子的には食べられる。
陽夏木ミカン【ひなつきみかん】桃の助っ人としてやってきた魔法少女。
フォーク【ふぉーく】シャミ子の武器。最初はギャグだったが、今ではアニメBD1巻のパッケージに描かれるまでに。
フレッシュピーチハートシャワー【ふれっしゅぴーちはーとしゃわー】桃の必殺技。名前が恥ずかしい。でもシャミ子の成長のためなら辞さない覚悟はある。
ほえる犬【ほえるいぬ】怖い。バウワウ!
保護結界【ほごけっかい】シャミ子の家にかけられていた。光の一族が関わるのを防ぐ効果がある。
まぞく【まぞく】闇の存在。魔法少女とは宿敵の関係。光の一族から追われる存在。悪い人も結構いるらしい。
まぞくころし【まぞくころし】日本酒。ポン酒風呂にすると(主にリリスに)効く。
魔法少女【まほうしょうじょ】光の存在。ナビゲーターと契約することでなる。まぞくの宿敵、らしい。その血は呪いを解く力を秘めている。
魔法の棒【まほうのぼう】桃が攻撃の際に振り回す棒。ハートと羽のデザインがかわいい。
マルマ【まるま】桜ヶ丘にあるショッピングセンター。大きい。宝船ではない。
目汁【めじる】涙ではない。
メタ子【めたこ】桃のナビゲーター。もうほとんど猫。よく「時は来た!」と言う。本名はメタトロン。
桃【もも】→千代田桃
八つ切りパン【やつぎりぱん】薄い。シャミ子は四つ切りが好き。それを知った桃も四つ切りにし始めた。尊い。
闇堕ち【やみおち】魔法少女がその立場を捨て魔族の眷属となること。本作のキーワードのひとつ。
優子【ゆうこ】→吉田優子
夢【ゆめ】シャミ子は他人の夢に潜ることができる。また、夢の中でのみリリスと会える。本作のキーワードのひとつ。
吉田清子【よしだせいこ】シャミ子の母親。普通の良い人に見えて実は色々秘密を隠していた。あとまぞくの眷属。
吉田優子【よしだゆうこ】シャミ子の本名。この名前で呼ぶ人はもはや両親くらいになってしまった。
吉田良子【よしだりょうこ】シャミ子の妹。姉を心から尊敬している。勉強熱心で、姉の参謀になろうと努力している。かわいい。趣味は写真。
ヨシュア【よしゅあ】シャミ子の父親。詳細不明のあれこれの結果、現在はミカン箱に封印されている。背は小さい。
依代【よりしろ】リリスが現世で動くための人形。桃が作るとやたらかわいい(シャミ子をモデルにしているので)。
ランナーズハイ【らんなーずはい】万物は流転する!
リリス【りりす】メソポタミア時代にごせん像に封印された、シャミ子のご先祖様。シャミ子の夢の中に現れて闇の力を呼び起こした。実はわりとかわいそうな人。
倫理感【りんりかん】小倉さんに欠けているもの。
わりばしでっぽう【わりばしでっぽう】シャミ子が何故か固執する武器。
(水池亘)
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ミコとマチ
リビングで目が醒めた瞬間あわてて手元のスマホで時間を見た。5時31分、やばい、40分には家を出ないとバイトに遅刻する。渾身のスピードで歯を磨いて顔を洗い自室に駆け込みばたばたとスウェットを脱ぎ床に脱ぎっぱなしの縒れたデニムを穿きYシャツを全力で着て一張羅の苔色のカーディガンを羽織ってほとんど空っぽのリュックを背負う。化粧は諦めて大きめの風邪マスクでごまかすことにした。幸い原稿を作成してるうちに座椅子に座ったまま寝落ちしていたので髪は乱れていなかった。平日ならマチが起こしてくれるのに、今日は土曜日だから私の部屋の向かいの彼女の部屋で、マチは一週間分の疲れを取るべく昼までおねんねだ。私は「いってきます」とぼそっと呟いて全力でドアから飛び出しオレンジのチャリに跨がり立ち漕ぎで駆けた。早朝の澄んだ空気を抜ける冷たい風が私の全開のおでこに当たる。三月の霞がかった曖昧な風景を私は右、左、右、とぐっとペダルを踏んで追い越して行く。それにつれ眼がだんだんと冴えて来た。息を切らしぐんぐんと駅までの道を走りながら私は書きかけの原稿の続きのことを考え出していた。どきどきと小さな心臓が高鳴り血が巡り、私の身体に熱が漲ってくるのを感じる。まだ人がまばらな駅前のロータリーを抜け、高架を潜り、なんとか出勤時間ぎりぎりに店に着いた。ドアを開くとコーヒーの温かくて甘い香りがふわっと鼻を突く。これを嗅ぐと私の頭はたちまちだらしがなくてうだつの上がらないワナビー女から「「鯤」のウエイトレスモード」にかちっと切り替わる。「おはようございますっ」私は店に入るなり弾丸のように一直線にバックヤードに突っ込みエプロンを着る。「おー、毎度のことながら作家さんは朝に弱いねえ」店長の蓮さんが茶化す。「朝まだなんだろ?これ食っちまえ」蓮さんは厨房からカウンター越しに私にロールパンを投げ渡した。「いただきます」私は風邪マスクをぐいとずらし、拳大のそれを口に詰め込んだ。それから蓮さんに渡された水をぐっと飲み干す。「鯤」は駅前の喫茶店なので、平日は開店するなりモーニングをしにくるサラリーマンなんかがぞくぞくと来て大童なのだが、今日みたいな休日は最初の30分なんかはかなり暇だ。コーヒーにつけて出すゆで卵もいつもならあらかじめいくつか小皿に分けて置くのだけど、今日はカウンターのバスケットにまだこんもりと盛ってある。その光景はまるで平和の象徴のような安心感を私に与える。しばらく待っても客が1人も来ないので、私はトイレで簡単な化粧を済ませ、カウンターにかけて蓮さんが淹れてくれたアメリカンをゆっくりと飲んだ。「原稿はどんな感じ?」「うん、方向性はだいぶ定まってきたからあとはそれを形にしていくだけかな」「なるほど、ついに俺の息子がミコが手がけたゲームをやる日がくるんだなあ、あっ今のうちサイン貰っとこうかな、店に飾るわ」「蓮さんってば気が早すぎ」蓮さんはことあるごとに茶化すけど、芯のところでは私のことをそのつど気��かけてくれているのが私にはありありとわかった。嬉しいことだ。
そうしていると、程なくして客がちらほらと入り出した。休日の朝は老人ばっかりだ。常連のみんなはお話し好きで、四方山話や身の上話を滔々と聞かせてくださる。いつものように私は給仕や食器洗いをこなしながらそれにふんふんと頷いた。でも頭の中は原稿の続きのことでいっぱいだった。先週、駆け出しライターの私に初めてクライアントからSNSのダイレクトメッセージで、ソシャゲのシナリオの執筆依頼が来たのだ。それは聞いたことないような小さな会社で、その依頼されたゲームも予算的にみてメインストリームに敵うポテンシャルがあるとはとうてい思えなかったが、なにせ執筆の依頼が来ることなんて初めてだったので、私は半端ない緊張ととめどなく沸いてくる意気込みでここ一週間ギンギンだった。原稿のことを考えると下腹のあたりがヒュンとする。これは誰もが知っているRPGのシナリオを手��けるという私の夢への第一歩だし、なにより、就職せずに創作活動に専心することにした私の決意が報われた心持ちだった。それはどう考えてもぜんぜん早計なのだけれど。とにかく、私は今とても浮かれていた。
正午前あたりから客足が徐々に増しなかなか忙しなり、あっという間に15時になった。退勤まであと1時間だ。
「いらっしゃい。おっ荘くん」だしぬけに蓮さんの朗らかな声が厨房から客席に向け広がる。荘くんが来ると、蓮さんは私を茶化す意味でわざと私に呼びかけるような声音で叫ぶのだった。これもいつものことだ。
私はお気に入りの窓際の2人がけのテーブルにギターケースをすとん立てかけて座る荘くんのところへ注文をとりにいった。心臓の音が高鳴るのが荘くんにばれている気がした。
「いらっしゃい、今日はスタジオ?いよいよ来週だね。」
「そうだな、あっ、チケット忘れんうちに今渡しとく」
荘くんにひょいと渡された黄色いチケットにでかでかと、
「jurar 初ワンマン!」と書いてあった。その楠んだチケットのデザインは全体的に少し古くさい気がした。
「ついにだね」
「うん、絶対に成功させるよ、やっとここまでこれたんだ。そろそろ俺たちもプロへの切符を勝ち取りたいな」
「うん、私応援してるから」荘くんの襟足から煙草とシャンプーの混じったえも言われぬ匂いがかすかに漂う。それは、ほんとうのほんとうに良い匂いだ。
「サンキュな、ミコちゃんも頑張ってるもんな、俺も負けてらんないよ。あっ、そうそう、そういえば…明後日柴さんにアクアマターのライブ来ないかって誘われたんだけど、ミコちゃんあのバンド好きだったよね、もし暇だったら一緒に来る?蕗川ビンテージだよ。柴さんももう一人くらいだったらチケット用意できるから連れて来ていいって」
「いいの?行きたい!」
「よっしゃ、じゃあまたラインするわ」
「まじか…」私は心中でひとりごちた。まさかのまさか、こんな地味な女が荘くんにデートに誘われたのだ。注文伝票をレジに持って行き蓮さんのほうをちらと見てみた。すると蓮さんははにかみながらしゅっと素早く腰のところでガッツポーズを出した。私は心中でもう一度、「ま、じ、か…」と丁寧にひとりごちてみた。
荘くんはブレンドを急いで飲み干して会計をし、「じゃあ」と去って行った。そうこうしているうちにやがて退勤時間となり、出勤してきた蓮さんの奥さんに引き継ぎをして、私はタイムカードを切った。「お疲れさまです」挨拶をして表口から店を出ると、スプリングコートのポケットに両手を突っ込んで含み笑いしているマチが立っていた。目が合った私たちはそのまま見つめ合った。一瞬、時間が止まったようだった。ピィ、ピィ、とけたたましい鳥の声が、狭い路地裏にこだました。
「オハヨ」マチは宣誓のように右手をしゅっと突き出してそう言った。
マチの手は真っ白で、春のひかりをぼんやりと帯びていた。ぼんやりとその手を見ていると、なんだか眠くなった。
「マチ、何してたの?」
「さんぽ」
「起きたばっかり?」
「寝すぎちった」
私は自転車を押してマチととぼとぼと散歩した。外は朝は肌寒かったけれど、今は歩いていると少し汗ばむほどの気温まで上がっていた。電線と雑居ビルたちに乱雑に切り取られた街の高い空を、鳴き交わしつつひっきりなしに飛び交う春の鳥たち、私たちはゆっくりと歩きながらそんな風景を見るともなく見ていた。
私たちはそれぞれあたたかい缶コーヒーを自販機で買い、駅から少し離れたところにあるたこ(多幸)公園へたどり着いた。私とマチは予定のない天気のいい日にはよくここで何となく過ごす。
「そういえばさ」
「ん?」
「さっき店に荘くんが来てね」
「なになに?」ブランコに座っているマチは両足をばたばたとせわしなく蹴っている。
「「明後日アクアマターのライブに誘われたんだけど一緒にこないか」って」
「デートか!」
「そういうこと」
「やったー!」マチはブランコからたんっと飛び降りて両腕を上にぐんと伸ばして叫んだ。
「いや、誘われたの私だし」
「わがことのようにうれしいっ」
「よーし今日はなべだー」マチは私に背を向けて起き上がった猫のように盛大なのびをした。
「なべ、若干季節外れじゃない?」
「めでたい日は鍋パって相場がきまってるのよっ。ミコの恋愛成就を祝って今日は私のおごりで鍋だー」
「マチってば気が早すぎ」
私たちはスーパーでたくさん鍋の具材と酒とつまみを買って、大きなレジ袋を2人で片側ずつ持って帰った。2人でわいわい作った鍋は多すぎて全然食べきれなかった。飲みまくって酔いつぶれた私たちはリビングでそのまま気を失い、翌朝私は風邪を引いていた。私がなにも纏わず床で寝ていたのに対して、マチが抜け目無く毛布を被ってソファーを独占していたのが恨めしかった。
荘くんは待ち合わせの駅前のマクドナルドへ15分遅刻してきた。10分でも20分でもなく15分遅れるというのがなんだか荘くんらしいなと私は妙に感心した。「蕗川ビンテージ」は私の家の隣町の、駅のロータリーから伸びる商店街の丁度真ん中のあたりにある。私はこの街に来たことがなかったのでライブハウスまで荘くんが先導してくれた。風は強く、空は重く曇っている。商店街や幾本かの路線でごちゃごちゃしたこの街は、私とマチが住んでいるところに比べてなんだか窮屈な感じだった。前を歩くやや猫背の荘くんに付いて駅からしばらく歩くとやがて「蕗川ビンテージ」に辿り着いた。荘くんが「あそこ」と指を指してくれなかったら私はそれがそうだと気付かなかっただろう。「蕗川ビンテージ」はどう見てもただの寂れた雑居ビルだった。よく見ると、ぽっかりと空いたビルの地下へと続く入り口の前に「アクアマター」のワンマンの掲示があった。その入り口の前に、いかにもバンドマンといった出で立ちの5人の男女が談笑していた。若いのか、それとも私たちよりずっと歳上なのか、いまいち判然としない風貌の人たちだった。その5人はやって来た荘くんを認めると手を振り、荘くんはそれに応えて私をほったらかしてポケットに手を突っ込んだまま5人に駆け寄った。荘くんが1人の男の横腹を肘で小突く、するとその男は笑いながら荘くんにヘッドロックを決め、ほかの人たちもげらげらと盛り上がった。どうやら荘くんととても親しい人たちらしい。少し話すと荘くんは突っ立っている私のほうに戻って来た。それから私の手を引いて、地下への階段を降りて行く。荘くんが近い、かつてないほどに近い荘くんのうなじから、シャンプーと煙草が良い塩梅に混じった私の好きな匂いが漂ってくる。匂いはたしかに近いけれど、暗すぎて当の荘くんの姿がよく見えない。なにかがずれている気がした。私たちは、どこか歪な気がした。私たちが、というか私だけが明らかに場違いだった。「マチは今どうしているだろう、そろそろ帰ってる頃かな、晩ご飯は私がいないから今日は外食なんだろうな」好きな男に手を引かれているというのに私の頭に浮かんで来るのはマチのことだった。やれやれ。
2人分のチケットを荘くんが受付の初老の男に手渡す、そして荘くんはまたその男としばらく談笑し始めた。「ちょっとお手洗い行ってくるね」と私はその間に用を足した。戻ってくると受付の前に荘くんを中心に人だかりが出来ていた。荘くんの周りにおそらく10人以上はいたが、その中の誰1人として私の知っている顔はなかったし、荘くんを含め、そこに誰1人として私のことを気にする人はいなかった。私はまるで透明人間にでもなったかのような心持ちだった。あそこで人の輪に囲まれ楽しそうに話しているあの人はいったい誰なんだろう。いつも「鯤」に来て親しく話してくれるあの人。私がいつか「アクアマター」が好きだとこぼしたことを覚えてくれていて、デートに誘ってくれたあの人。でも冷静に考えると当たり前のことだったのだ。界隈で突出した人気を誇る若手バンドのフロントマンの荘くんと、街の隅でこそこそと暮らしている私みたいな誰も知らない地味な女なんて、そもそもステージが違うのだ。私は知らないライブハウスの柔らかくて厚い防音材の壁にもたれながら、誰にも知られず夜空でひっそりと翳りゆく月のように、緩やかに卑屈になっていった。誰かここから連れ出してくれないかな、これがまさしく「壁の花」ってやつね。卑屈の次にやってくる自嘲。思えば幾度も覚えたことのある感覚だ。いままでに縁のあった男はみんな、折々こんな風に私のことをないがしろにした。
ほどなくしてライブが始まった。ライブは、よかった。横にいた荘くんは頻繁に何処かへ消えた。たぶん、知り合いの誰かと話しに行っているのだろう。そう、ここでは私以外のみんなが知り合いなのだ。ライブの終盤、ストロボが瞬くクライマックスの轟音の中荘くんは強く私の手を握ってきた。私はそれを知らんぷりした。スモークの甘ったるい匂いがやけに鼻についた。ライブ自体は、本当によかった。
外に出ると小雨が降っていた。荘くんはライブの終わりからずっと私の手を握ったままで、駅の方へ私を引いて歩いていく。私はなにも考えずにそれに従う。疲れて、頭がぼーっとしていた。商店街の出入り口のアーチの辺りで、荘くんは「じゃあいまからウチで飲もっか」と切り出した。私はまっぴらごめんだと思い「えーと今日はもう帰ろうかな、明日も朝早いし…」と丁重にお断りした。
「別にいいじゃん、ご近所さんなんだしバイトは朝、俺の部屋から出勤すれば」荘くんはしつこかった。
「いやーやっぱ何だか悪いしルームメイトもいるんで今日は家に帰ります。今日はほんとにありがとう」
私は返答に窮して言い訳にならない言い訳を口走っていた。そのとき私ははっと息をのんだ。荘くんは怒っていた。彼の表情こそ変わらないが、私なんかにプライドを傷つけられたこの男が激怒しているのがわかった。
それから突如荘くんは声を荒げ
「んだよ、俺とヤりたいんじゃなかったのか?」
と今まで私が聞いたことのない荒荒しい声音で言い放った。そのとき私は頭が真っ白になった。私はこの人が何を言ってるのかわからなかった。信じられなかった。この人も自分が何を言っているのかきっとわからないに違いない。そうであってほしい、と私は願った。
私はいつの間にか私の肘を強く掴んでいた彼の手をばっと振り切り、夢中で駅まで走った。後ろであの人がこっちに向かってなにか喚いている気がした。私はそれから逃げるために全力で走る。とつぜん視界がぐにゃあと歪んだ。音のない雨は、いつのまにか本降りになっていた。頬を伝って落ちる生温いものが春の雨なのかそれとも涙なのか、わからなかった。
マチは私に何も訊ねなかった。あの夜ずぶ濡れで帰ったきた私の
様子を見て何となく察したのだろう。お風呂から上がってきた私に何も言わずに中華粥を作ってくれた。荘くんはあの日以来鯤に来ることはなくなった。蓮さんは
「まあ今回は縁がなかったってだけさ。月並みな言葉だが男なんて星の数ほどいるんだぜ」と慰めてくれた。
でもそれを言うならば女だってそうだ。それこそ私は荘くんにとって星の数ほどいる「都合のいい女候補A」にすぎなかったんだ。私はまた卑屈になっていた。このことをマチに話すと「処置無しね」の表情をされた。マチの「処置なしね」の表情。白いつるつるの眉間に少し皺が走りいたましげに私の顎辺りに視線を落とすこの仕草が私は密かに好きだ。ソシャゲの依頼はなんとか納期に間に合ったが、私は次の賞に挑む気力が沸かなかった。スランプに陥ってしまったのだ。なんだかどうしても力が入らなくて、私は湯葉のようにふやけてしまっていた。このままなんの意思も目的も持たず、たゆたうクラゲのように何処かへ攫われてしまいたかった。あの失恋で、まるで私とこの世界とを繋いで私を立たせているピンと張った一本の糸が、ぷつりと切れてしまったようだ。私は休みの日のほとんどを寝て過ごすようになった。
私が一ヶ月以上もそんな状態だったので、放任主義のマチもさすがに見かねたらしく、「ミコ、餃子をやろう」と私に切り出した。パジャマの私はソファでクッションを抱いて寝転びながら「うぇえい」と曖昧に返事した、ミコが「マチはかわいいなあ」と言って後ろから抱きつこうとしてきたが私はそれをひょいと躱し、勢い余ったマチはフローリングでおでこを打ち「ぎゃっ」と叫んだ。そのとき私に被さったミコの身体はとてもひんやりとしていた。
餃子の買い出しから仕度まで殆どミコがやってくれた。私はソファに寝転んで夕方のニュースを見ながらミコが手際よく餃子を包んで行くのを背中で感じていた。辛い時は甘えられるだけ相手に甘えるのが私たちの生活の掟なのだ。私とマチは、いまままでずっとそうやってきた。
「いざ!」待ちくたびれて私がうつらうつらし出した時にマチは意気込んで餃子を焼き出した。しゅわあと蒸気が立つ音とともに、むわっとした空気がリビングに立ち込めた。私は薄目でせかせかと餃子を焼くマチの背中を見ていた。「このまま帰りたくないな」そんな素朴な気持ちが不意に、去来する。私たちには他にいるべき場所があって、いつまでもこの生活が続くわけないのはお互い、何処かで理解していた。けれど私たちはそれに気付かないフリをしている。
マチの背中って小さいんだなあ。そんなことを考えると何だか目頭が熱くなってきたので、私は寝返りをうち、狸寝入りを決め込んだ。クッションに顔を埋めてきゅっと眼を瞑っていると、まるで幽霊になって、空中を漂いながらミコのことを見守っているような、ふわふわと暖かくて寂しい気持ちになった。
「ほらほら引きこもりさん、餃子が仕上がって来たわよ。テーブルにお皿とビール出しといて」
「あいさー」
テーブルの皿に綺麗に連なって円になっているマチの餃子はつやつやでぱつぱつだった。マチは餃子の達人だ。マチよりおいしい餃子を作る女を私は知らない。
「じゃあ、餃子にかんぱーい」
「かんぱーい」
最初の一皿を私たちはあっという間に平らげた。
「じゃあ第2波いきまーす」
「いえーい」
マチは餃子をじゃんじゃん焼いた。私がもう食べられないよと喘いでも取り合わず焼きまくった。マチは何かに取り憑かれたようにワインを呷りつつ、一心不乱に餃子を焼き続けた。「餃子の鬼や…」私がそう呟くとマチはこっちを振り向いてにいっ、と歯を出して笑った。
餃子パーティも無事に終わり、私たちはソファで映画を見ながらワインをちびちびと飲んでいた。
「ミコ、この映画つまらないね」
マチがずっと見たいと言っていたから私がバイト終わりに借りてきてあげた映画だった。
「たしかに、脚本は悪くないけど演出が単調だね」
マチは冷蔵庫から新しい缶チューハイを持って来てぐびと勢い良く飲んだ。それから酒の勢いを借りたようにこう言った。
「ミコ、屋上に行こうか」
私は缶ビール、マチは缶チューハイを片手に最上階の廊下のフェンスを跨いだ。マチは私の手を引いて真っ暗で何も見えない中、屋上へと続く鉄骨階段を上がっていく。あれだけ餃子を焼いたにも関わらずマチの手は冷たかった。たん、たん、と微妙にずれたふたつのゆっくり階段を踏む冷たい音が闇の中密やかに響く。酒気を帯びたマチのにおいがする。なんだか懐かしいにおいだ。毎日のように嗅いでいるはずなのに。私はマチをぎゅっと抱きしめたかった。
屋上は無風だった。しんとしていて、まるで世界が止まったみたいだった。私たちの住むマンションは台地のてっぺんに建っているので、屋上からは街が良く見渡せる。酒の缶を持った私たちは並んで囲いの柵に凭れて、街の灯をぼんやりと眺めていた。不意にささやかな音で聞き覚えのあるイントロが流れ出した。最初はか細い月明かりのような調子のその曲は、やがて雲の隙間から抜け出して鮮烈な満月となる。
「Tomorrow never knows」
私はこの曲を聴いた時にいつもこんな印象を受ける。いつかマチはこの曲のことを夜の森の奥で誰にも知られずに燃える焚き火みたいと言っていた。思えば、性格がまるで違う私たちを繋ぐきっかけとなったのはこの曲だった。
あれは私がまだ大学一年生のときの冬だった。私はサークルの先輩に合コンに来てくれと頼まれて不承不承承知した。相手は同じ大学の違うサークルの連中だった。明らかに人数合わせで参加した合コンだ、面白いはずもなく、私はうんざりした。いつ「じゃあ私はこの辺で…」と切り出そうかずっと迷っていたが、二次会のカラオケにも流れで行くことになってしまった。そしてそのカラオケに遅れてやって来たのがマチだった。先輩の説明によると、マチは男側の知り合いだそうだ、それで先輩とも面識があったので呼ぶ運びとなったのらしい。部屋に入って来たマチを見て私は「きれいな女の子だなー」とうっとりとした。マチは空いていた私の横にすとんと座った。思わず頬が緩むようないいにおいがした。スキニーを穿いた華奢な脚のラインが綺麗で、横に座っていると、私の若干むくんだそれと比べずにはいられなかった。マチは終止にこにこしていた。男たちは明らかにみんなこの場で一番綺麗なマチを狙っていた。私は半ばいやいや参加したとはいえ、やはりみじめな気持ち��った。下を向いて鬱々としていると私にマイクが回って来た。あまり歌は得意ではないのだが…と思いつつ私は渡されたマイクを掴み、ええいままよとミスチルの「Tomorrow never knows」を歌った。歌っている時にマチがじっとこっちを見ていたのを不審に感じたが私は気付かないふりをして歌いきった。合コンはつつがなく終わった。解散してターミナル駅のコンコースを歩く私たちの集団は1人ずつ空中分解していき、やがて私とこの初対面で良く知らないマチという女の子だけが残った。私たちは無言で微妙な距離を保ちながら並んでしばらく歩いた。
「私って合コンとか苦手なんだ~」やにはにマチが間延びした調子で呟いた。それからふわあと大きなあくびをした。私はその様子を見てなんて美しいひとなんだろうとうっとりした。合コンのさなか、表面上は取繕っていたが、明らかに退屈そうにしていたのも見て取れたので、私はマチに好感を抱き始めていた。
「なんか私同世代の男の子って苦手だな、何話したら良いかよくわからないし」
「私もああいう場は少し、苦手」
「ねえ、お腹空かない?」
「ちょっぴり」
「ラーメンでも食べにいこっか」
「うん、いいよ。この辺?」
「うん、北口からちょっと歩いたところにおいしいラーメン屋があるんだ。塩ラーメンなんだけど、大丈夫?」
「大丈夫、塩ラーメン好きだから」
「それではお嬢さま、エスコートいたします。」
とマチは腰を落として片足を後ろに引く紳士の挨拶のポーズをした。
「で、では、よろしく」
私もコートの腰のところを両手でつまんで膝を曲げ淑女の挨拶でぎこちなく応じる。
私たちは改札の前で踵を返し、ラーメン屋へと向かった。
「ミスチル、好きなんだね」
「うん、親の影響なんだけど」
「私も好きなんだ。だから、君がさっき歌ってたとき嬉しかった。周りに音楽の趣味が合う人がいなくってさ、ミスチルとか今の若い人もうあんまり聴かないもんね」
「うん、カラオケとか行くとみんな今時の曲ばっかり歌うもんね。特に合コンなんかだと顕著」
「男も女もなんだかんだ言っても最終的に画一性を自分に強いたほうが楽なのだということなのかも知れんね。ところで君、名前は?」
「私はフジサワミコ。あなたは?」
「私も名前二文字なんだ。湊マチ」
「みなとまち」
「マチでいいよ」
「わかった、私のこともミコって呼んでよ」
「そうだ、ハタチになったら一緒に飲みにいこうよ。ライン交換しよ」
それがきっかけで私たちはことあるごとに2人でつるむようになった。私がこっぴどく振られた時も、マチの就活が難航を極めていたときも、いつも酒なんかを飲みながら互いに慰め合った。ルームシェアをしようと言い出したのはマチのほうからだった。それは私が就職を諦め夢を追うことにするとマチに打ち明けた次の日だった。
「私はミコがどんなでもそばにいてあげるよ」
マチはことあるごとにこんなことを言うのだった。
「どんなのでもって、もし私がアメーバみたいな真核生物でも?」
「アメーバでも好きだよ」
「私も、マチがアメーバでも好き」
赤ら顔の私たちは屋上で「Tomorrow never knows」を歌った。
「はーてしなーいやみのむーこうへーおっおー てをのばそー」
呂律の回らない舌で私たちは叫びながら柵の向こうへ両手をぴんと伸ばした。伸ばした指の先に、滲んでぼやけた街の灯りたちが、きらきらと輝いていた。
私はそのプロポーズを���けることにした。相手は麗さんという人で、マチの紹介で知り合った10歳上の高校の生物の教師だった。マチはあの失恋以来落胆している私を励ますために、荘くんとは真逆のタイプの男を紹介してくれたのだった。交際は、以前の私ではとても考えられないくらいにうまくいった。私は素敵な男をあてがってくれたマチに心の底から感謝した。彼はとても良く尽くしてくれたし、私も彼のことがとても好きだった。彼と付き合い出してから、彼の家に泊まって部屋に帰らないこともしばしばあった。そして私と対照的にマチはその頃からだんだんと不安定になっていった。なにかといらいらしてたまに私にあたるようになったのだ。私は何故そうなったかマチに聞くこともなかった、何となく察しがつくだけに余計聞く気がしなかった。喧嘩も私が帰らなくなった日のぶんだけ増えていった。
ある日3日間麗さんの家に泊まってから帰ると、私の部屋のものが全部廊下に放り出されていた。
「なにこれ」私はこっちを振り向きもしないリビングでソファにかけてテレビを見ているマチに問いかけた。
「もう出て行くのかと思って部屋を片付けといてあげたよ」
「ばかじゃないの?ほんとガキだね」
なんてみっともないんだ。私にいつまでもこだわって、ばかばかしい。
ずかずかと歩いてリビングに入ると不意にマチが振り向いてこっちをきっと睨みつけたので私は立ち竦んでしまった。
「ミコ、ミコの夢は、努力は何だったの?なんで…そんなに簡単に諦めるの?」
マチの声は掠れていた
「前にも言ったけど私には才能がないんだしもう筆を折ったんだよ」
「なんでも手に入れることのできるマチには私のことはわからないよ。知ったような口を聞かないで」
私はいつしか心の何処かで自分の夢と、マチから解放されたいと思い始めていた。
「そういえば言ってなかったんだけど私あの人にプロポーズされたんだ」
マチはまたテレビの方を向いて石像のように固まって何も言わなかった。
「おめでとうとか、ないの?」
マチは依然としてだんまりだった。
そのとき、私の頭のなかでぐわん、という音がした。誰かに後頭部を殴られたような衝撃だった。それから涙が、とめどなく溢れてきた。私は泣きながら廊下に放り出された荷物を出来る限りまとめた。それから麗さんに電話をしてワゴンを出してもらい部屋の私の家具や持ち物を全て、3往復して麗さんの家に運んだ。それっきり、あの部屋には二度と戻らなかった。それはあまりにもあっけない幕切れだった。麗さんは「人のつながりなんて、そんなもんさ」とやけに達観した口ぶりで私を慰めてくれた。3ヶ月後に披露宴の招待をマチにラインしてみたが既読すら付かなかった。
「もう、終わりにしよう」
別れを切り出したのは英治のほうからだった。英治はセックスが終わってしばらくして呟くようにそう言った。実のところ私は、英治のほうからそう言ってくれるのをずっと待っていた。いかにも安ラブホテルの調度品といった感じのチープなガラスのテーブルの上の、パフェ皿の底に残って溶けたソフトクリームがピンクの照明を反射しててらてら光るのを、私は裸でシーツも被らずに茫然と眺めている。英治がシャワーを浴びる音が聞こえる。英治が上がったら私もシャワーしなくちゃ。…どうしてこうなっちゃったんだろう…どうして。やにわにテーブルに起きっぱなしのスマホが震え出した。ガラスの上でがちゃがちゃ騒ぎ立てるそれに私はいらっとして。ぱっと手に取った。その画面には「麗さん」と表示があった。
「来月の裕太の体育祭どうする」
メッセージの内容はこれだけだった。私はスマホの画面を暗転させて枕元にぽんと投げ捨てベッドに潜り込んだ。麗さんと英太にはもう一年以上会っていなかった。毎日仕事漬けで夫と子供を捨てて出て行き、愛人と日中に安ラブホにしけこんでいる私のような女が今更どの面下げて元伴侶と息子に会いに行けばいいんだ。いやだ、このままなにもしていたくない。この地の底のような穴ぐらで、誰にも干渉されずにずっと踞っていたい。
「ミコ、ミコ、ミーティングに遅れちゃうよ。起きて」
そうだ、私は次の作品の企画ミーティングに行かなければならない。何せビッグタイトルのナンバリングだ。集中しなければ。
ミーティングはかなり難航したもののなんとかまとまった。私も英治も、いつものようにメンバーに振る舞った。私たちの関係に気付いている人は、どうやら1人もいないようだった。帰りがけに私と英治は小さな居酒屋に寄った。ここは私たちが関係を持ちだしたころ英治が教えてくれた店だ。
「今度のプロジェクト、うまく行くといいな」英治は燗を呷って少し上機嫌になっていた。昼間のラブホテルでの言葉を取繕うためなのかもしれない。
「なんたってミコには実績があるもんな。大丈夫、ミコならこの先一人でもうまくやっていけるさ」
「聞きたくない…」
「え?」
「「聞きたくない、そんな言葉」」
私は思わずそんなことを口走りそうになったが、かろうじてそれを飲み込んだ。
「英治はどうなの」
「どうって?」
「この前も辞めたがってたじゃん。この仕事、自分に向いてると思う?」
そうだ、私が英治の仕事や家庭の愚痴を聞いてあげるようになったのがこの関係の始まりだった。
「うーん…向いていようが向いてまいが、俺にはやるしかないな。やっぱり何度も言ってるけど、自分の夢のために邁進してきたミコと俺はスタンスが違うよね、それに俺…」
「俺?」促しても英治は先を言うのを躊躇うので私はいらいらした。握りしめた水割りを私はぐいっと飲んだ。
「俺…2人目ができたんだ…」
「ふうん、おめでとう、ね」
「そうなんだ、だから、この関係もそろそろ潮時なのかなって。」
私はカウンターに万札を叩き付けて店をあとにした。なにも英治に腹が立った訳ではない。私は全てがいやになってしまったのだ。夢も、仕事も、家族も。
「違う…私は…私は…」
私は無意識にそう呟きながら明後日の方向へ駆け出していた。後ろで英治が私を呼びかけながら付いてきていたが私はその声がしなくなるまで走り続けた。走って走って、私は知らないバーに駆け込んだ。それからジャックダニエルのロックを注文した。なにも考えたくなかった。ぼうとそれをちびちびなめていると、やにはにスマホがポケットのなかで震えた。英治がなにか取繕うためのメッセージを送ってきたのかと思い私はうんざりしながら画面を見た。しかしそこに表示されていた名前は「英治」ではなく「マチ」だった。
私は反射的にスマホをカウンターに伏せて置いた。そしてウイスキーを飲み干しておそるおそる画面をタップして内容を確認すると。
「久しぶり、突然ですみません。今度会えませんか。」とあった。
私は胸がざわざわした、けれどもう何も考えないことにした。すぐにマチに「いいですよ」と返信した。
待ち合わせは2人が分かりやすい場所が良いとのことで「鯤」にした。私は待ち合わせの時間より少し早くに鯤に来た。
「いらっしゃい。おお、ミコ」
蓮さんは最近白髪が増えたものの相変わらず元気だった。私は鯤には昔のなじみで今でもたまに来るのだ。
「ごぶさたじゃないか。仕事忙しいのか。なんか、顔が疲れてるぞ」
「うん、ちょっと最近いろいろあって、でも大丈夫だよ、ありがとう」
蓮さんはいつでもぶれずに蓮さんなので話していると私は安心する。蓮さんって私にとってオアシスのような人だ。
「今日ね、マチと会うんだ。ここで待ち合わせしてるの」
「マジで!すごいな、何年振りだ?」
「10年振り…」
「そうか、あれから10年も経つのか…なんかあっというまだな」
「うん、いろいろあったね」
本当にいろいろあった。でも、私とマチの時間はあの時のまま止まっている。私が部屋を飛び出したあの日のまま…マチはいったいどうしていたのだろう。
私は緊張してテーブルにかけて俯いていた、しばらくしてドアに取り付けたベルがからん、と鳴った。顔を上げると、入り口にスプリングコートを着たマチが立っていた。そのシルエットは背後から射す春の陽射しに象られていた。
「おおお、マチちゃん!久しぶりー!」
「マスター、お久しぶりです。」
「相変わらずべっぴんさんだね。ここに2人がいるとなんだかあの頃に戻ったようだな。ゆっくりしていってな」
「マスターも相変わらずみたいで。ありがとうございます」
マチははにかんだように微笑みながら、私の向かいに掛けた。私は気恥ずかしかった。何を話したらいいのか全くわからない。マチもそうなのだろう。ずっとそわそわして後ろを振り向いたりしていた。私はマチが少しだけふくよかになっていることに気が付いた。
しばらくしてマチが話し始めた。
「最近いろいろあって考えたの…私どうしてもあのときのこと謝っておきたくて…寂しくてミコを傷つけることしかできなかった。ミコがいないとだめなのは自分のほうなのに、そして、そう思えば思うほど心細かった。こんな風にミコを呼び出して謝るのも独りよがりだけど。どうしてもそれだけは伝えたくて、ほんとにごめんね、ミコ」
そう言ったマチの眼から涙がひとすじ流れ落ちた。
そうか、みんな寂しかったんだ。私とマチだけじゃない。麗も、英治も、それから荘くんだって。ミコの涙を見て私のなかで何かがはらりと落ちていった。それはたぶん、いつの間にか私の心に巣食っていた「あきらめ」のようなものだった。
「いいんだよ、マチ、もういい」
「あ、あり、ありがとう、ミコ、うわーん」
マチはぐしょぐしょに泣いてバッグから出したハンカチで顔を抑えていた。ほかの客もびっくりして、カウンターに掛けているおばあちゃんも「あれあれ」と茶化してきた。私もつられて泣きそうになったがこらえてマチの手をとって店の外へ出た。
私は泣き止んできたマチの手を引いてしばらく歩いた。
「見てマチ、ここのスーパーでよく買い物したよね」
「あっこの公園覚えてる?よくブランコ漕ぎながら酒飲んだよね」
マチは鼻をすすりながら「うん、うん」と相槌をうつ。
春の気持ちのいい暖かい風が、懐かしい気持ちを呼び起こす。マチの手は、あの頃と同じで冷たい。
私はマチの手を引きながらマチとの部屋を後にしてからのことを吶吶と話した。結婚して間もなく、昔穫ったグランプリの作品を目にしたディレクターに大手ゲーム会社のシナリオライターとして抜擢されたこと…麗さんとの子供が産まれたこと…仕事が多忙なのが原因で離婚したこと…仕事が忙しすぎて疲れていること…同僚の不倫相手との関係が終わったこと…
マチは私のところどころくすりと笑いながらただ聞いてくれていた。
「ぜんぶミコだね」
「え?」
「恋愛でポカするのも、仕事や夢に疲れて参っちゃうのもぜんぶあの頃と同じミコだ。ミコは私が知らない間もミコをやってたんだね」
「たしかに、全部わたしだ。わたしらしい…わたし」
そしてマチもずっとマチだ。あの頃と同じ、強い肯定も否定もせずただ私に寄り添ってくれる。そんなマチを見ていると今日の朝までずっと私を苛んでいた罪の意識や漠然とした憎悪が緩やかに解れていった。
「ねえマチ」
「ん?」
「屋上に行かない?」
私たちの住んでいたマンションはまるでタイムスリップしたかのようにあの頃と同じで、どこも全く変わっていなかった。
いけないことと知りつつ、私はマチの手を引きそうっと忍び足で、屋上への階段を昇る。
私たちは昔のように並んで囲い柵によりかかり街を見渡した。
「どこもかしこもなーんにも変わっていないね」
「そだね、あ、でも私は少し変わったかも」
「どんなところが?」
「私、結婚するんだ。式は挙げないことにしたんだけど。それでね、今お腹に赤ちゃんがいるの」
「え?」
私は不意をつかれて唖然とした。
「何ヶ月?」
「3ヶ月」
「えーっと…夫さんはどんな人?」
「優しい人だよ、今の職場で知り合ったの」
「おめでとう、マチ」
「ありがとう、ミコ」
私たちは手を繋いだまま顔を見合ってくしゃっと笑った。
「これ、覚えてる?」
私はスマホのプレーヤーを開いて再生をタップした。
「うわ、懐かしい、私今でも聴いてるよ」
「私も聴いてる」
あの夜この屋上でマチと一緒に歌った…そしてマチと私を繋ぐきっかけになったこの曲。
「Tomorrow never knows」
私たちはあの頃を思い出しながら小さな声で一緒に歌った。これまでと、これからの全てが、発酵するパン生地みたいに私のなかでふわり広がって行った。
心のまま僕は行くのさ、誰も知ることのない明日へ
そうだ、私とマチは私とマチのままで、あの頃のような万能感はなくともしっかりと歩いて行くんだ。癒えない傷を抱えながら。あらゆる柵に絶えながら。
私たちの目の前には、霞がかってぼやけたなんでもない街が広がっていた。
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Tカップ幼馴染
完全に自家発電用。
「128.3センチ、………どうして、どうしてなの。………」
するすると、その豊かすぎるほどに膨らんだおっぱいから巻き尺の帯が落ちて、はらりと床に散らばる。
「どうして、昨日から変わっていないの。……何が私に足りないの。………」
と言いつつ、顔よりも大きくなってしまったおっぱいを揉んだが、触り心地は昨日と、一昨日と、一昨々日と何も変わらない。柔らかく、ハリがあって物凄く気持ちが良い、――気分としてはバスケットボール大の水風船を揉んでいるような感じか。
「だったらまだ、……まだTカップ、………」
床に散乱した巻き尺を跨ぎ越して、ベッドの傍まで行って、二つ並んだ白いブラジャーのうち左手にある方を取り、顔の前で広げて、バサバサと振る。片方のカップですら顔をすっぽりと包むブラジャーには、U65という英数字が太文字で刻まれているけれども、アンダーバストが悲しいかな、70センチ弱ある紀咲(きさき)にとっては、かなり無理をしないとサイドベルトが通らない。恨めしくタグを見つめても、カップ数もアンダーバストも負けた事実は変わらず、ため息をついてベッドの上へ投げ捨てると、右手にあったブラジャーを手に取る。そのブラジャーのタグにはV65という字が印刷されているのであるが、全く擦り切れておらず、広げて全体を見てみても、どこもほつれていないし、どこも傷んでなどいない。ただ四段あるホックのみが軽く歪んで、以前の持ち主が居たことを示している。
「あいつ、もしかして寝ている時に着ていたのか」
――もしくはこのブラジャーを着けて激しく運動したか。けれども、Vカップにもなるおっぱいを引っ提げて運動など、どれだけ頼まれてもしたくないことは、Tカップの今ですら階段を駆け下りたくない自分を見ていたらすぐに分かる、況してやあの鈍くさい女がそう簡単に走るものか。昔から急げと言ってもゆっくりと歩いて、なのにすぐ息を切らすのである。羨ましいことに、初(はじめ)が着替えるのを手伝っているらしいのだけれども、彼がこんな高価な物をぞんざいに扱う訳も無いから、この歪んだホックはきっと、寝ている間ににすーっと膨らんでいくおっぱいに耐えきれなかった事実を物語っているのであろうが、未だに信じられぬ。およそこの世のどこに、一晩でVカップのブラジャーをひしゃげさせるほどおっぱいが大きくなる女性が居るのであろうか。しかもそれが、まだあどけない顔をしていた中学二年生の女の子だと、どう言えば信じてくれるのか。可愛い顔をしているのに、その胸元を見てみると、大人の女性を遥かに超えるビーチボールみたいなおっぱいで制服にはブラの跡が浮かび上がっているし、目障りなほどにたぷんたぷんと揺れ動いているし、しかもあいつはその揺れを抑えようと腕で抱え込むものだから、いつだってぐにゃりと艶かしく形が変わっているのである。それだけでもムカッとくるというのに、あいつはあの頃そんな速度でおっぱいを成長させていたのか。紀咲は、どこかバカにされたような気がして、〝あいつ〟が中学生の頃に着けていたVカップの大きな大きなブラジャーをベッドに叩きつけると、クシャクシャになって広がっているUカップのブラジャーを再び手に取って、そのカップを自分のTカップのおっぱいに軽く合わせながら、勉強机の横に置いてある姿見の前に向かう。
鏡に映し出されたのは上半身裸の、付くべきところにほどよく肉のついた、――もちろんおっぱいはTカップなのだから極端ではあるけれども、腰はくびれているし、お尻はふっくらと大きいし、日頃の食生活のおかげで自分でも中々のスタイルなのではないかと思っている、高校3年生の女の子。紀咲はストラップに腕を片方ずつ通し通しして、後髪をかき上げると、今一度カップにきちんとおっぱいを宛てがい少し前傾姿勢へ。Tカップのおっぱいはそれほど垂れてないとは言え、やはりその重さからすとんと、雫のような形で垂れ下がり、ブラジャーを少しだけずり落としたが、あまり気にせずにストラップを、ぐいっと引き上げ肩に乗せる。本来ならばこの時点で、ブラジャーのワイヤーとバージスラインを合わせなければいけないのだけれども、Tカップともなるとどうしても、おっぱいに引っ張られてカップが沈んでしまうので、その工程を飛ばしてサイドベルトを手の平に受ける。するりと背中へ持っていき、キュッと力を入れて左右のホックの部分を合わせ、腕の攣るのに気をつけながら何とかして金具を繋ぎ止める。――このときが一番恨めしい。………女子中学生におっぱいのサイズで負け、アンダーバストで負けたことは先にも言ったとおりだが、その事をはっきりと自覚させられるのはこの時なのである。
ホックが全部繋がるまでには結構な時間がかかるから、彼女がこのUカップのブラジャーを手に入れた経緯を説明することにしよう。元々の持ち主は紀咲の幼馴染である初の、その妹であり、彼女が〝あいつ〟と呼んでいる、今年高校生になったばかりの、いつもおずおずと兄の後ろを一歩下がってついていく、――莉々香(りりか)と言う名の少女。両者についてはこの先登場するから説明はしないが、ある日莉々香とたまたま帰り道が一緒になった紀咲は、隣で揺れ動いている股下まで大きく膨らんだ塊を目の隅に留めつつ、特に話すこともなく歩いていたところ、突然、姉さん、と呼び止められる。なに? と素っ気なく返事をすると、あの、……ブラジャー間に合ってますか、たしか姉さんくらいの大きさから全然売ってなかったような気がして、……昔私が使っていたので良ければ差し上げます。あっ、でも、どれも一回くらいしか着けてないから綺麗ですよ、それに買ったけど結局使わなかったのもありますし、――と莉々香が言う。確かにその頃紀咲のおっぱいは、努力の甲斐もあってPカップに上がろうかというくらいの大きさになっていたのであるが、よく行くランジェリーショップで、PはまだありますがQカップになりますと、アンダーを大きくするか、オーダーメイドになるか、……今私共の方で新たなブランドを探しておりますが、もし運良く見つかっても海外製ですからかなり高く付きます、――などと言われて弱っていたところだったので、二つ返事で承諾すると早速家に招かれ、珍しく初の部屋を素通りして莉々香の部屋へ入る。彼女のことは生まれた時から知っているけれども、そういえばここ5年間くらいは部屋に入ったことがない。昔と同じように綺麗なのかなと思って見渡すと、案の定整理整頓が行き届いている。けれども机の上の鉛筆すら綺麗に並び揃えられている有様には、莉々香の異常さを感じずにはいられず、鞄を置くのさえ躊躇われてしまい、ドアの前で突っ立っていると、どうぞどうぞと、猫やら熊やら犬やらクジラやら、……そういう動物のぬいぐるみが、これまたきっかり背の順に並び揃えられたベッドの上に座るよう促される。莉々香はあの巨大なおっぱいを壁にめり込ませながらクローゼットの中を漁っていたのだが、しばらくかかりそうだったので、すぐ側にあった猫のぬいぐるみを撫でつつ待っていると、やがて両手いっぱいにブラジャーを抱えてやって来る。プラプラと垂れているストラップは、幅が2センチくらいのもあれば5センチくらいあるものもあって、一体どれだけ持って帰らせようとしているのかと思ったものの、気になったのはその色。とにかく白い。初からオーダーメイドのブラジャーを買っているとは聞いていたから、こっそり色んな色のブラジャーがあるのだと決めつけていた紀咲は、がっかりとした目で自分の真横にドサッ、と置かれた白い布を見る。どうでしょう、姉さんのおっぱいがどれだけ大きくなるか分からないから、とりあえず私が1、2年生の頃にしていたブラジャーを持ってきましたが、ちょっと多すぎ、……かな? 下にあるのは結構大きめのなので、ちょっと片付けてきますね。たぶんこの一番上の小さいのが、……あ、ほら、Qカップだからきっとこの塊の中に、姉さんのおっぱいに合うブラジャーがきっとありますよ。と嬉しそうに言って、下の方にあるブランケットのような布地を再びクローゼットに持って行ったのであるが、その何気ない言葉と行動がどれほど心をえぐったか。紀咲は今すぐにでも部屋を飛び出したい気持ちをグッと抑えて、上半分にあった〝小さめ〟のブラジャーを一つ手にとって広げてみたが、それでも明らかに自分のおっぱいには大きい、……大きすぎる。タグを見ると、Y65とある。おかしくなって思わず笑みが溢れる。……一体この世に何人、Yカップのブラジャーをサイズが合うからと言う理由で持ち帰れる女性が居るといういうのか。まだ莉々香がクローゼットに顔を突っ込んでいるのを確認してYカップのブラジャーを放り投げ、もう一つ下のブラジャーを手に取って広げてみる。さっきよりは小さいがそれでも自分のおっぱいには絶対に合わぬから、タグを見てみるとV65とある。今度は笑みさえ浮かべられない。……どんな食生活を送れば中学生でVカップが小さいと言えるのであろう、あゝ、もう嫌だ。これ以上このブラの山を漁りたくない。でも一枚くらいは持って帰らないと彼女に悪い気がする。―――と、そんな感じで心が折りつつ自分の胸に合うブラジャーを探していたのであるが、結局その日持って帰れそうだったのは一番最初に莉々香が手にしたQカップのブラジャーのみ。もうさっさと帰って今日は好きなだけ泣こうと思い、そのQカップのブラジャーを鞄にしまいこんで立ち上がったところ、ひどく申し訳無さそうな顔をした莉々香がトドメと言わんばかりに、あ、あの、……今は奥の方にあるから取れないんですけど、小学生の頃に着けてたもう少し小さめのブラジャーを今度持っていきましょうか? と言ってくるのでその瞬間、――華奢な肩に手をかけてしまっていたが、胸の内に沸き起こる感情をなんとか抑えようと一つ息をつき、ちょっと意地になって、けれども今気がついたように、よく考えればこれから大きくなるかもしれないんだし、もうちょっと大きめのブラジャーももらっていい? と、やっぱり耐えきれずに涙声で言ってもらってきたのが、今彼女がホックを全てつけ終わったこのUカップのブラジャーなのである。
「くっ、ふっ、……」
前傾姿勢から背筋を伸ばした体勢に戻った紀咲は、胸下を締め付けてくるワイヤーに苦しそうな息を漏らしてしまう。ホックを延長するアジャスターがあることは知っているけれども、もうそんな屈辱はこのブラジャーを着けるだけで十分である。ストラップを浮かせて、おっぱいを脇から中央へ寄せている間も、ブラジャーの締め付けで息は苦しいし、肌はツンと痒くなってくるし、けれどもあんまりお金の無い紀咲の家庭では、オーダーメイドのブラジャーなんてそう何回も作れるようなものではないから、屈辱的でもあの女が中学生の頃に着けていたブラジャーで我慢しなくてはならぬ。
紀咲はブラジャーを着け終わると、姿見にもう一歩近づいて、自分の胸元を鏡に写し込む。見たところTカップのおっぱいは、溢れること無くすっぽりとU65のブラジャーに収まって、恐らく男子たちにとってはたまらない谷間が、クレバスのように深い闇を作っている。ちょっと心配になって、ふるふると揺らしてみると、ブラジャーからは悲鳴が上がったが、溢れること無くちゃんとおっぱいの動きに付いてきたので、これなら今日一日どんなに初に振り回されようとも、大丈夫であろう。紀咲はブラジャーの模様である花の刺繍を感じつつ深い息をつくと、下着姿のまま今度は机の前へ向かい、怪しげな英文の書かれたプラスチックの容器を手にとって見つめる。毎日欠かさず一回2錠を朝と夜に飲む習慣は、初と二人きりで遊ぶときも決して欠かさない。パカっと蓋を開いて真っ赤な錠剤を、指でつまみ上げる。別に匂いや味なんてないけれども、その毒々しい色が嫌で何となく息を止めて、口の奥へ放り込み、すぐ水で喉に流し込む。――膨乳薬と自称しているその薬を小学生の頃から愛飲しているために、ほんとうにおっぱいを大きくする効果があるのかどうか分からないが、世の中にTカップにまで育った女性は全く居ないから、たぶん本物の膨乳薬であろう。親に見つからないように買わないといけないし、薬自体結構な値段のするのに加えて、海外からわざわざ空輸してくるから送料もバカにならず、校則で禁止されているバイトをしないといけないから、毎日朝夕合計4錠飲むのも大変ではあるけれども、膨乳の効果が本物である以上頼らざるは得ない。依存と言えば依存である。だがやめられない。彼女には莉々香という全く勝ち目の無い恋敵が居るのだから。……
元々大きな胸というものに憧れていたのに加えて、初恋の相手が大の巨乳好きとあらば、怪しい薬を買うほど必死で育乳をし始めたのも納得して頂けるであろう。胸をマッサージし始めたのは小学4年生くらいからだし、食生活を心がけて運動もきっちりとこなすのもずっと昔からだし、意味がないと知っていても牛乳をたくさん飲���し、キャベツもたくさん食べるし、時には母親や叔母の壁のような胸元を見て絶望することもあったけれど、いつも自分を奮い立たせて前を見てきたのである。そんな努力があったからこそ彼女はTカップなどという、普通の女性ではそうそう辿り着けないおっぱいを持っているのだが、それをあざ笑うかのようにあっさりと追い越していったのは、妹の莉々香で。昔は紀咲のおっぱいを見て、やたら羨ましがって、自分のぺったんこなおっぱいを虚しい目で見ていたというのに、小学6年生の秋ごろから急に胸元がふっくらしてきたかと思いきや、二ヶ月やそこらで当時Iカップだった紀咲を追い抜き、小学生を卒業する頃にはQカップだかRカップだかにまで成長をしていたらしい。その後も爆発的な成長を遂げていることは、先のブラジャー談義の際に、Yカップのブラが小さいと言ったことから何となく想像して頂けよう。紀咲はそんな莉々香のおっぱいを見て、さすがに大きすぎて気持ち悪い、私はそこまでは要らないや、……と思ったけれども、初の妹を見つめる目を見ていると、そうも言ってられなかった、――あの男はあろうことか、実の妹のバカでかいおっぱいを見て興奮していたのである。しかも年々ひどくなっていくのである。今では紀咲と莉々香が並んで立っていると、初の目はずっと莉々香のおっぱいに釘付けである。おっぱいで気持ちよくさせてあげている間もギュッと目を瞑って、魅惑的なはずの紀咲の谷間を見てくれないのである。以前は手を広げて「おいで」と言うとがっついてきたのに、今では片手で仕方なしに揉むだけなのである。……
胸の成長期もそろそろ終わろうかと言う今日このごろ、膨乳薬のケースにAttention!! と黄色背景に黒文字で書かれている事を実行するかどうか、いまだ決心の付かない紀咲は薬を机の引き出しの奥の奥にしまい込んでから、コップに残っていた水を雑にコクコクと飲み干して、衣装ケースからいくつか服を取り出し始める。今週末は暇だからどこか行こう、ちょっと距離があるけど大久野島とかどうよ、昔家族で行った時には俺も莉々香もすごい数のうさぎに囲まれてな、ビニール袋いっぱいに人参スティックを詰めてたんだけど、一瞬で無くなって、………と、先日そんな風に初から誘われたので、今日はいわゆるデートというやつなのであるが、何を着ていこうかしらん? Tカップともなれば似合う服などかなり限られてしまうから、そんなに選択肢は無い。それに似合っていても、胸があまり目立つとまた知らないおじさんにねっとりとした目で見られてしまうから、結局は地味な装いになってしまう。彼女の顔立ちはどちらかと言えば各々のパーツがはっきりとしていて、ほんとうは派手に着飾る方が魅力的に映るのであるが、こればかりは仕方のないことである。以前彼に可愛いと言われたベージュ色のブラウスを取って、姿見の前で合わせてみる。丈があまり気味だが問題は無い、一年くらい前であれば体にぴったりな服でもおっぱいが入ったのであるが、Tカップの今ではひょんなことで破れそうで仕方がないし、それに丈がある程度無いと胸に布地を取られてお腹が見えてしまうから、今では一段か二段くらい大きめのサイズを買わなくてはならない。ただ、そういう大きなそういう大きなサイズの服を身につけると必ず、ただでさえ大きなおっぱいで太って見えるシルエットが、着ぶくれしたようにさらにふっくらしてしまう。半袖ならばキュッと引き締まった二の腕を見せつけることで、ある程度は線の細さを主張することはできるけれども、元来下半身に肉が付きやすいらしい彼女の体質では、長袖だと足首くらいしか自信のある箇所が無い。はぁ、……とため息をついて、一応の組み合わせに袖を通して、鏡に映る自分の姿を見ると、……やっぱり着ぶくれしてしまっている。どんなに胸が大きくなろうとも、決してそのほっそりとした体のラインを崩すことのないあいつに比べて、なんてみっともない姿なのだろう、これが薬に頼って胸を大きくした者の末路なのだろうか。
「私の努力って何だったんだろうな。……」
と床に落ちていてそのままだった巻き尺を片付ける紀咲の目元は、涙で濡れていた。
それから15分くらいして初の家の門をくぐった紀咲は、どういう運命だったのか、莉々香の部屋の前で渋い顔をしながら、またもやため息をつく。
「勉強って言っても、私よりあいつの方が頭良いんだから、教える必要なんてないでしょ。……」
ともう一度ため息をついてドアノブに手をかける。約束の時間に部屋に赴いたというのに、初はまだ着替えてすらおらず、ごめんごめん、今から着替えるから、暇だったら莉々香にあれこれ教えてやってくれ。今たぶん勉強しているから、と言われて部屋から追い出されたのであるが、昔から英才教育を受けてきた莉々香に教えられることは何も無い。むしろ今度の定期試験を乗り越えるためにこちらが教えてもらいたいくらいである。紀咲はいまいち初の意図が分からない時が多々あるけれども、さっきの一言はようよう考えても結論が出ないから、ただ単に莉々香と話をしていてくれと、そういう思いで言ったのだろうと解釈して、ガチャリと扉を開ける。相変わらずきっちりと無駄なく家具の置かれた、整理整頓されすぎて虚しささえ感じる部屋である、昔と変わっているのはベッドの上にあるぬいぐるみが増えたことくらいか。莉々香はその部屋の中央部分にちゃぶ台を置いて、自身の体よりも大きくなってしまったおっぱいが邪魔にならないよう体を横向きにして、紀咲が部屋に入ってきたことにも気づかないくらい熱心に、鉛筆を動かしている。覗いてみると、英語で何やら書いているようだが、何なのかは分からない。――とそこで、ノートに影が落ちたのに気がついたのか、ハッとなって、
「姉さん! 入ってきたなら言ってくださいよ」
と鉛筆を机の上にそっと置くと、立ち上がろうとする。
「あっ、いいっていいって。そのままで」
それを制しながら紀咲はちゃぶ台の対面に座って、ニコニコと嬉しそうな表情を浮かべる憎き恋敵と相対する。だがどんなに憎くとも、その巨大なおっぱいを一目見ると同情心が湧いてくるもので、片方だけでも100キロは超えているらしいその塊を持ちながら立たせるなんて、どんな鬼でも出来ないであろう。莉々香のおっぱいには簡単に毛布がかけられているのであるが、それがまた何とも言えない哀愁を誘っていて、紀咲もこの時ばかりは目の前の可愛らしい笑みが、少しばかり儚く見えてしまうのである。
「やっぱり、もう椅子には座れない?」
「そう、……ですね。椅子に座ると床に着くから、楽といえば楽なんですけど、それでも重くて。………」
「今バストは何センチになったの?」
「えっと、……ここ一週間くらい測ってないから正確じゃないけど、先週の木曜日で374センチでした」
「さ、さんびゃく、……」
果たしてその数字が女性のバストサイズだと分かる人は居るのであろうか。
「姉さんは?」
「128センチのTカップ。やっと中学生のころのあんたに追いついたわ」
どこか馬鹿にされた心地がし��ので、ちょっとだけぶっきらぼうに言う。
「いいなぁ。……私のおっぱいも、そのくらいで止まってくれると嬉しかったんですけどね。……」
あれ? と思うと先程感じていた同情心がどんどん消えていく。莉々香は恐らく、本音として紀咲のおっぱいを羨ましがっているけれども、やはり馬鹿にされている気がしてならない。
「あ、もしかして今私のブラジャーを着けてますか? 前、アンダーが合わないって言ってましたけど、延長ホック? っていうのがあるらしくて、それ使うといいかもしれません」
と、知っていることをどこか上から目線で言われて、カチンと来る。そういえば、いつからだったか、おっぱいのことに関してはすっかり先輩の立場で、莉々香は紀咲に色々とアドバイスをするのである。
「……知ってる。………」
――だから、余計にイラつかせられるのである。
「姉さん?」
「知ってるって言ってるの。なに? いつの間に私に物を言う立場になったの?」
「ね、姉さ、――」
「そんな化物みたいなおっぱいが、そんなに偉いって言うの? ねえ、答えてよ」
「化物だなんて、……姉さん落ち着いて」
「落ち着いてなんていられるかっての。今もあんたのブラジャーが私を締め付けてるの、分かる? この気持。中学生の女子におっぱいで負けるこの気持。世界で一番大きいおっぱいを持つあんたには分からないでしょうね。………」
この女の前では絶対に泣かないつもりであったが、今まで誰にも打つけられなかった思いを吐き出していると、一度溢れた涙は止めどもなく頬を伝って行く。
「何よ何よ。私がどれだけ努力しているのか知らずに、いつも見せつけるようにおっぱいを強調して、そうやって毎日あの変態を誑かしてるんでしょう? ――どうして、どうしてあんただけそんなに恵まれてるのよ。どうして。………」
とそこで、ぐす……、という鼻をすする音がしたので、そっと涙を拭って前を向くと、莉々香は机の上で握りこぶしを震えさせながら俯いている。ゆっくりと顔が上がって、すーっとした涙の跡が陽の光に照らされる。
「私だって、………私だって紀咲姉さんの事が羨ましい。ほんとうに羨ましい」
「………」
「Tカップって、まだ常識的な大きさだし、着る服はあるし、姉さんは私のお下がりのブラジャーを使ってますけど、ちゃんと売ってますから、ちゃんと市販されてますから。……私のブラジャーが一着いくらするか知ってますか? 8万円ですよ、8万円。ブラジャー一個作るのに10万円近く取られるんですよ。……ほんとうに姉さんくらいの小さなおっぱいが良かった。ほんとうに、ほんとうに、………」
「りり、……」
「いえ、姉さんが羨ましいのはそれだけじゃないです。どれだけ胸が大きくなっても兄さんは振り向いてくれないんですもの。……」
「えっ?」
「もう何回もチャレンジしましたよ。兄さんを押し倒して、姉さんみたいにおっぱいで気持ちよくさせようと。……けど駄目でした。どうしてなんでしょうね。私だったら体ごとおちんちんを挟んであげられるのに、体全体をおっぱいで包んであげられるのに、兄さんは手すらおっぱいに触れずに『紀咲、紀咲』って言って逃げちゃうの。……」
初のことだから、もうすでに欲望に負けてそういう行為をしていると思っていた紀咲は、驚いて彼の部屋の方を向く。
「だから、意味がなかった。意味が無かったんです、――」
と莉々香は体を捻って手を伸ばして、本棚の一番下の段から手にしたのは紀咲もよく知っている、怪しげな英文の書かれたプラスチックの容器。
「小学生の頃からこれを飲み続けてきた意味が無かったんです。……」
「りりもそれ飲んでたの」
そういえば昔、どうしてそんなに大きくなるんですか、と聞かれた時に一回だけ見せびらかしたことがある。
「ええ、……でもね姉さん、私の場合違うの。兄さんが、……えっと、そういう女性を好きなのは分かっていましたから、こう、……手の平にがさっと適当に出して、お水で無理やり飲んでました」
「それ一体一回何錠くらい、……」
「15錠くらいだったような気がします。駄目ですよね、注意書きにも駄目って書いてますし」
容器のAttention と書かれた下には、〝必ず一日4錠を超えてはならない〟と一番上に太文字であるから、莉々香は4日分をたった一回で飲んでいたということになる。そういうことだったのか。………
「でもどんどん大きくなっていくおっぱいが嬉しくって、最終的に一週間も経たずに一瓶開けるようになって、……最後は兄さんが救ってくれたんですけど、飲んでないのに、おっぱい大きくなるの止まらなくて、………もう着る服なんて無いのに、おっぱいは重くて動けないのに、でも全然止まる気配がなくて、………紀咲姉さん、私どうしたらいいんだろう」
と、さめざめと泣き出したのであるが、どうしたらいいのかなんて紀咲には全然分からず、ただ気休めな言葉を投げかけていると、しばらくして初がやって来たので、せめてこの哀れな少女の気を少しでも晴らそうと、その日は3人で日が暮れるまで淫らな行為をし続けたのである。
(おわり)
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小学校中退した私が婦人画報に載った YMO と出会うという、てれんこてれんこした書き下ろし

そう、私は小学校中退。
まじほんま、ほんまにほんま。卒業証書あらへんねんで。
合衆国の小学校を中退し、日本の中学校に途中編入。日米では年度が始まるタイミングが違うから、はからずもその間をすり抜けて帰国してしまったことになる。
在米生活中、まだ英語がそんなに出けんかったとき、ピンクレディーが合衆国の歌番組に出演してるのを、偶然テレビで見た。ワイよりよっぽどたくさん英語をしゃべってて、さすがーって思った。でも、なんか発音とかイントネーションに違和感。それでもよーけしゃべったはるさかい、なんや変やけど、やっぱさすがーって感心してたら、オカンが 「へたくそな英語やなー!」 って、一刀両断してもーてびっくりした。でもそんとき、違和感���正体がわかった。
私が米国で見たピンクレディーは、だが日本がお留守になって、人気凋落。 私が米国で見ることもなく、私が帰国するまでは存在も知らなかった YMO は、だが米国はじめワールドツアーに出ても、日本では人気が衰えるどころか人気うなぎのぼりだったらしい。
この違いは、なんで? アイドルとアーティストの違いかなぁ? せやさかい、客層も違うのかなぁ? 誰か教えてください、えらいひと。
帰国して途中編入した中学校。電子工作部があって、ある日そこに、NEC の原始的なパソコン PC-6001 か、6001 mkII だったかがやってきた。
ひとしきり皆でそれでわいわい遊んだのち、しばらくしてから先輩がそれに、何日もかかって BASIC でプログラムを打ち込み、RUN させると、曲が鳴るのだが、ビープ音がへぼい内蔵スピーカーで歪んでナチュラルオーヴァードライヴ。でもその歪んだ音色が速いテンポと相まって、かっこええ疾走感! この音色、この曲、かっこええなぁー、って、部室たる理科室の隅っこで ASCII とか I/O とか読みながら聴きながらひそかに感動してた。
今を思えば、元祖チップチューン。
これが、ワテが初めて聴いた YMO、かの「テクノポリス」。PC-6001 系のチップでも演奏できるよう、ちょっとアレンジしてあった。それがまたクール。でもそんとき、それが YMO とは分からんかった。曲名くらい先輩に聞いとけばよかった。
クラスの同級生は、みんな YMO ファン。大人気。 でも私は、わいえむおー、が何たるかを知らんわけです。そもそも「YMO は、全世界で有名になった」って言うけど、ワテが住んどったとこでは全く名前すら聞かんかったさかい、知らんかっとてんちんとんしゃんや。
ある日、中学校の先生に 「わえいむおー、ってなんの略ですか?」 ほな先生 「いえろー、もんきー.............おっさんず」
関西の先生やさかい、ええかげんなことを言うわけ! せやけどこっちも知らんさかい、信じてええんか悪いんか、わからへん! あんな当時、ファクトチェックしようがあらへん。
でも当時から私はヴァンゲリスにジャールにタンジェリンに冨田勲の音楽にお熱だったので、YMO を知ったあとも私は彼らを勝手にチャラいアイドル連中と決めてかかり、YMO を聴きもせず 笑
同級生は、みんな、オフコース、Queen、パープル、ツェップ、イーグルス、ジャーニーなどにも夢中。でれでぅ、でぅ、でぅ、あなざわんばいつざだすっ! って言ぅとった。 去年、ワイは映画「ボヘミアン」を観て、ああ、俺はこんな時代を生きてたんやなぁーって、遅すぎた感涙に。
ある日、クラスの友人が皆「YMO が解散するねんてー!!」って泣き叫んでた。ふん、諸行無常じゃ。冨田さんのクラシックは永年に timeless じゃぼけ。
はからずも元祖チップチューンのディストーションがかったサウンドにしびれてもーて、音色フェチの私は、のちにほんまの YMO の音をテレビで聴いたとき、なんやこのうすっぺらい音、ってがっかりw まぁ、音色フェチなんで、ごめんなさい。オフコースも、唯一「一億の夜を越えて」だけは、ギターがハードロックっぽぅて好みの音w
金持ちのボンボンたる友人が、JUNO-60 を買い、数年後には DX7を買い、うらやましー俺そんなん買うカネあらへんさかいしゃーないんよねーん、ってオモてたら、京町家に住んでた彼女が 「そういやウチにもシンセあるワぁ。なんやしらん昔カメラ屋さんで十五万くらいで売っててん。」 え? ほんま? って借りてみたらミニコルグ 700S!
そのころ、さすがに散開から時間もたち、ふと「皆そない夢中になってる YMO がどんなんか、いっぺんくらい聴いてみたろ」と思い、関西のスーパー「イズミヤ」の二階に売ってた赤いカセットテープ「アフター・サーヴィス」購入。へー、こんな音色かぁ。うすっぺらいけど、このエレドラの低音ええなぁ。
そんな私を知って、彼女が貸してくれた YMO のアルバムは、カセットテープ「BGM」。そん中の「Happy End」という曲が、ほとんどホワイトノイズにフィルターとフェイザーかけただけやのに、その音色が気に入り、へー、こないおもろいことしはる人らやってんやー。
そこから徐々に聴きはじめ。
大学に入っても、みーんな周りは YMO ヲタ。学祭で、シモンズのエレドラ持ってるパイセンとかが「東風」をコピー。友人の下宿にあるミニコンポとか、学生控室にあるラジカセとかでも、日に一度は彼らのアルバムがかかってた。そこで初めてスタジオ盤ソリステ聴いて、あのぷいぷい言ぅイントロの音のまぬけっぷりにひっくり返るw
でもさすがに大学に入ると、音楽とか人民服とかチャリ毛とかよりも、むしろ浅田彰とか柄谷行人とか、そこらへんのニュー・アカデミズムに関心が行く。文庫本「Eve Cafe」なんべん読み返したかしらん。あれはいろんなものへの入口を提供してくれる絶好のハブ空港みたいな本!
ヘーゲル、ヴェーバー、レヴィ=ストロース、クリフォード・ギアツ。 あれ、やっぱ「Eve Cafe」からにしても、行き先が変w
今を思えばきっとあれは、おっさん連中がメンターとして輝いていた最後の時代。あれ以降、フォローしたくなるおっさんがおらんよーんなり、子供が思想面での最先端になってしまったがために、世のおっさん連中は女子高生とかばっか追い回すようになった。 キッチュな音に隠れてじつはディープな YMO。それは、おっさん教養の最後の輝きやった。
再結成というべきなのか、ノット YMO。
あのライヴを見に行った人らは、みんな真剣に鳥肌たったらしく、熱っぽぅ語るんやけど、やがて本人らが「じつはあれは不本意でー、ファンの呪いにうながされてー」みたいなこと言い出すと、途端にあれはおもんなかった云々とか言い出す不思議。 ええやん別に。本人に忖度せんでも好きなんやったら良かったやん。あれを聴いて、そっからプロに目覚めた人もおるんやさかい。
心斎橋クラブクワトロで、いろんなバンドが出演する機会があって、そこでテクノバンドに参加、矢野アッコちゃん版「東風」をカヴァー、白いモーグ・リバレイションでシンベを弾き、挙げ句、重たいのに客席乱入まで果たしたワテは、若気の至れりつくせり、あんなもん桜田門外不出の変w
それから幾星霜。 先日、ついに婦人画報に特集されし YMO、これは前代未聞のネタやでー、ぜったいゲットしとかなあかんやろー、おーぉ本屋で御婦人の雑誌探すんは苦労しますなぁ、お、平積みやでー、あ、えらい婦人画報だけ冊数が少ないなー、ワイみたいなシンセヲタが買いしめたかー、っていうか、これがラストワンやん!
婦人画報がどういう雑誌なんか、今の今まで知らず。初めて購入、帰宅後じっくり拝見。
なんか婦人画報でアートをするなんて勘違い平行棒か? まぁ、初心者向けということか? 婦人という単語が、もはや古いなー、労働者、という言葉と同じくらい古ぅて、これまた勘違い平行棒。ご婦人、婦人部、婦人警官、婦人科、婦人服、どれもこれも女性という言葉で代替できる。古いなぁ。プロレタリア革命をこころざした時代か? ほんで YMO 世代も、今やご婦人ということか。
もはやおっさんメンターがおらん今、めんどくさい YMO ヲヂサンによるウンチク満載マシンガントークも要らん。せやさかい、おっさんではなく、おばはん向け「婦人」画報か。
ひやー、今見るとぜんぶ武道館ライヴみたいに広いステージングかぁオモたら、おもっきし狭いやん。んなとこにモーグとイーミュのタンス2台も押し込めてまぁ。パリ公演とかハンブルグ公演とか、んーまに狭いでー。
ほんでまた風吹ジュンさんのコメも、その時代の先端に、最初のライヴ、結成直後に実験的ライヴしたのを観た話とか、文字通り居合わせた人ならではの迫力あるなー。
でもいちばん印象的やったのは、冒頭の高橋源一郎さんの寄稿やな。 あの当時、YMO に夢中になった人々は「世界は一つ」であるということを音楽によって証明できると思っていた、とある。なるほどぉーぉ! これはずん!と、みぞおちにくる碧眼。
せやでー、あの当時、このまま人類はハイテクでもって諸問題を克服してって、約束された未来に向かって突き進んでって、そのうちみーんな地球連邦へと一つにまとまっていくんやー、いう、根拠レスな、なんとなーくな希望があった。テクノロジーに裏打ちされ、無邪気に信じる健全な未来観。 その最先端に、日本が、自分たち若者が位置するんやーっていう、そんな明るい自信に満ちとったわけ���。ニュータイプ、スペースノイドの楽園コロニー国家やで。
冷戦、東西両陣営、双方にものごっつい数の核兵器、最終戦争への恐怖、それらと対になっとった明るいハイテク社会、それが、いっつも善と悪の二項対立になって、僕らをとりまく背景画となっとった。その二項対立いぅんは、自分の理解を超えたテクノロジーへの狂喜と畏怖、その顕在化でもあったわけやな。
その陰陽二元論が崩れてもーて、今はすべてがグレイ、すべて灰色で白黒つけられず、人々はあせって答に飛びつこうとしてもーて無理やり白黒つけてまう、ほんで複雑なもんをそのまま受け入れられへんで過剰に単純化してまう。白黒つけられへんさかい、えらいまたよーけいろんな人がでてきた中で、俺のことも分かってくれぇと多様性を認めたものの、多様性のために他者は理解を超え、かえって誰も分からへん分かってもらわれへん孤独と幻滅とを呼んでもーた。恐るべき分断によって、すべてがずたずたに引き裂かれ、「世界は一つ」であるどころか、未来も信じることもできんよーんなった。 せやさかい、初心に帰るべく、YMO なわけや。なるほど。
かく言うワテも、かつて YMO 知らんかったけど、ワテなりに無邪気に未来を信じてたわけや。少年が見た合衆国は、まさに超絶ハイテク、底抜けに自由なクリエイティヴィティ、明るく豊かな感受性での交感能力、それらによって、差別や社会問題すらをもみーんな話し合ぅて解決していこう言ぅ、意志とやさしさとが共存するユートピアに思えた。日本にいたら想像もでけん多様性に満ちた世界が、その多様性を内包しつつ、ひとつになってくんや! ほんで俺はその最先端や!
そんな初心に立ち返って、今という英雄のいない時代に負けた無ぅて、ご丁寧に因果律によって YMO おじさんと、じじいのワイとがシンクロニシティを経験してるわけやね。
こないごっついでっかい重たい雑誌でアートをするのが勘違い平行棒なんかどうなんかはさておき、せやったとしてもワテみたいなおっさんが買い占めてもーて、肝心の読者には届かへんやろうことはさておき、レアな写真もあるし、もー、知らんことだらけや。
年齢だけなら YMO どんぴしゃ世代のはずが、日本におらなんだがために未だ YMO を知らず。 たぶん、永遠に知らんままやろなー。
まぁ、ええがな。
総括もないまま、ゆるゆる戦後時代を生き延びていく戦友会みたいなもんかな。
そのうちにまた、なんかおもろいもん見つけて、ほんで日々、愉快に暮らすって。

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拍手小話スティレオ猫の話
【猫の話①/スティレオ】
少年が猫になってしまった。 頭にぴょこんと生えた髪の毛と同じブルネットの三角耳。元あったはずの耳はもみあげの部分の髪の毛で隠れてしまっているが、頭に耳が生えた分『消えて』しまっているらしい。 ――本当に、不思議なことに。 呼びかける声に反応して、少年の三角耳がぴくぴく反応している。 触ると嫌がってつれなく首を振られてしまうが、肉厚でたっぷりとした毛のついた耳は極上の触り心地だった。 残念なことに、この耳が偽物ではないことも分かってしまったわけだが。
いくらヘルサレムズ・ロットが何でも起こりえる街だからと言って、あんまりだ。猫になるにしても実に中途半端な出来で、レオナルドは一見ほとんど人間のままだ。 確認した限りでは、耳と尻尾、それからおそらく舌も、人の頃とは少し違っているようだった。
そしてこの呪いに置いて一番厄介なのは、レオナルドの中身がそっくり猫になってしまっている事だろう。 今のレオナルドとはほとんど意思の疎通がかなわないことに気が付いたからこそ、ザップは慌てて事務所に飛び込んできたのだろうし。 いっそ体がすべて猫に変わっていた方が、いくらかましだったろうに。
猫だから、レオナルドはいつもなら自分の意思で隠している神々の義眼も、ぱっちりと開かれた双眸のせいであらわになっている。 話しかけて注意をしてみたが、返ってきた返事はいつもの少年の声で「にゃあ」と言ったくらい。目を隠してくれという意味は伝わっていないようだった。
とらえた術者曰く、この呪いは一週間もすれば元に戻るらしい。 「動物は専門外なんだけどね」と言っていたがルシアナ女史による健康診断も問題なくクリアした。
とはいえ、中身が猫の少年を、少年が住んでいるアパートへ返すわけにもいかず誰かが面倒を見なければならない、というのがこの呪いの尤も忌まわしきところか。
そしてその役目は、スティーブンに回ってきたのだった。 どうして、どうしてなんだと思おうにも、猫になったレオナルドがスティーブンに甘えて離れてくれないのが最大の要因の一つだろう。 スティーブンの膝を占拠して、頭を太ももにぐりぐり擦り付けるように押し付けては丸くなる少年。
これまで、レオナルドとこんな風に密着したことはない。 せいぜいお使いに行ってもらったお礼におつりは少年にそっくりチップとして渡すくらい。 二人きりでランチに行くことさえなかったのに、今じゃ恋人かと勘違いしそうになるくらいの距離でレオナルドはスティーブンに甘えているのだ。 喉も猫になっているのか、スティーブンにすり寄ってはごろごろとなっている喉が愛らしい。 スティーブンは犬派だったが今すぐ猫派に乗り換えてもいいなと思うくらいには、とち狂っている。
ああ、本当に困った。 少年に甘えられることが迷惑なわけはない。 スティーブンはレオナルドに片想いをしていた。 だからこそ困っているのだ。
猫になって理性のないレオナルドと一週間の二人暮らし。 果たしてどこまで自分を抑えられるのか、正直なところ自信はなかった。
【猫の話②/スティレオ】
レオナルドは猫にしては大人しい方だろう。 移動の際はスティーブンにぴったりついてくるし、外で鳴くことはほとんどないし、車に乗せても暴れることはなかった。
ヴェデッドにあらかじめ連絡を淹れて、食事は「小さな子供でも食べられるものを」と注文しておいたので、手が使えずともどうにか食べられるように食事を用意させたが、それ���前の問題となってしまった。 スティーブンが向かいの席にレオナル���を座らせようとしたところ、レオナルドはそれを厭がってスティーブンの膝の上に乗ってきたため、結局スティーブンがレオナルドに食事を食べさせる方向になってしまったのだ。 まるで小さい子供に介助しているようだ、と思いながら、レオナルドに小さく切った肉を食わせてちぎったパンを口元へ運ぶ。 少年に「あーんして」といって膝の上に乗せたまま食事をする羽目になるなど、いったい誰が想像したことか。 嬉しいような悲しいような複雑な気分で、レオナルドが咀嚼している傍らで自分も手早く食事を済ませた。
しかし、レオナルドはまるきり言葉がわからないと言うわけでも無さそうだ。 「あーんして」といえば口を開けるし、事務所にいる時や家の中ではぴったりくっついていたが、車に座らせた時は助手席で大人しくしていたのだ。 犬も訓練すれば人の言葉を理解して動くのだから、猫も気まぐれな側面が強いだけで人の言う言葉をちゃんと理解しているのかもしれないと思い直す。
ただやはり会話が成り立っていないので、レオナルドがにゃーにゃー鳴いて何かを訴えているのだとしても、スティーブンには理解が出来ない。
今現在、レオナルドがスティーブンの周りをぐるぐる回りながら必死で何かを訴えているのだが、悲しいほどに意味が通じない。 故に起きた悲劇だった。 顔を真っ赤にしたレオナルドは、スティーブンのシャツをつかんだまま、ぶるぶる震えて内股気味になりながら呻く。 聞こえてくる水音と、ズボンに広がっていく染みと漂うアンモニア臭。 呆けて一部始終を目撃したスティーブンは、遅れてレオナルドがにゃあにゃあ鳴いていたのは、トイレに行きたかったのだということを理解した。だがもう遅い。
「……すまん、レオ」 「にゃう……」 レオナルドは恥ずかしそうに顔を赤くして、耳をぺたんとさせている。身悶え漏らしてしまったレオナルドに少しばかり興奮した……いやかわいそうだなと思うのだが、ともあれしてしまったものは仕方ないし、ついでにお風呂に連れて行って身体を洗ってしまって、服は洗濯してしまうしかないだろう。
レオナルドをおいてバスタオルで軽く掃除を済ませてしまってから、バスタオル事風呂場に向かう。 「ここがお風呂だからな」とレオナルドに教えたはいいが、少年はきょとんとした顔でスティーブンを見つめるばかり。 まさかと思うが、そのまさかしか考えられなかった。猫のレオナルドが一人で服を脱いで風呂にはいるわけがない。 一瞬、心の中に嵐が吹き荒れたが、いつまでも少年を尿濡れにして覚悟の決まらない自分のせいでつらい思いを味あわせるわけにもいかなかった。
(これは、下心があってやるわけじゃない) (いや、下心はあるが必要なことですけべ目的じゃないからセーフだ……!)
暴れ出すわけでもない、ただレオナルドを風呂に入れるだけだというのに、スティーブンはひどく疲れる思いを強いられたのだった。
スティーブンの気持ちなどつゆ知らず、急遽部下に買いに行かせる羽目になったパンツと男のシャツを着てごろごろしているレオナルドを見て、スティーブンは重たく息を吐き出した。 これからこの生活があと六日もあるのだと思うと、一層理性を保てる自信がなくなるのだった。
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I really really really really love you.
試合が終わり、クリストフと話しながらナショナルジャージ姿で廊下を歩いているとき、横合いの通路から勇利が現れ、ヴィクトルは足を止めた。勇利もナショナルジャージを着て、いまは前髪を上げており、眼鏡をかけていた。 「やあ勇利、このあと──」 ヴィクトルが言いさした瞬間、勇利は両手を握りあわせ、赤い頬をして、伸び上がるようにしながら口をひらいた。 「あ、あの!」 その決死の覚悟をきめたという表情、いまにも気絶しそうな一生懸命の様子、泣き出しそうな目つきを見て、ヴィクトルは黙った。隣でクリストフもあぜんとし、なにごとが起こったのかというように勇利を注視した。 「あの、あの、あのあのあの……し、試合……」 勇利がどもりながら何か言おうとした。しかし緊張しているのか、言葉が出ないようで、「あの……」とまたくり返した。 「し、試合……見ました……」 クリストフが当たり前じゃないかという顔をした。もちろん見ただろう。同じ試合に出ていたのだ。見ていないわけがない。 「そ、その……すごく……えっと……ぼくは……つまり……」 勇利はそわそわと視線をそらし、口ごもり、それから思いきったようにまたヴィクトルをみつめた。 「……すてきでした」 クリストフが横を向いた。笑いをこらえているか、咳きこむのを我慢しているか、どちらかをしているのだろう。しかしヴィクトルは笑いも咳きこみもせず、ほほえんで礼を述べた。 「ありがとう」 「あの、いきなりこんなことを言ったらびっくりすると思うんですけど、でも言わずにはいられなくて……ごめんなさい……そう……だから……ぼくは……」 勇利は感情が高ぶったのかそこで言葉を切り、ゆっくりと深呼吸をした。彼はかわいそうなくらい頬を赤くしており、ふるえてさえいて、ヴィクトルは抱きしめてキスしてやりたくなった。 「だ、大好きです……」 勇利がささやいた。彼のひたむきなまなざしやばら色の頬、可憐なくちびる、慎ましやかな物腰や愛くるしい手つき──それらがすべてかわゆいとヴィクトルは思った。 「大好きです」 勇利がもう一度言った。ヴィクトルは黙って聞いていた。 「大好きです! 大好きです、ヴィクトル!」 勇利はいちずに告白を続け、ヴィクトルに顔を近づけてさらに打ち明けた。 「好き! 好き! 好き! 本当に大好き! ──大好き!!」 それだけ言うと、勇利はくるりと背を向け、ものすごい勢いで、一目散に駆けていった。ヴィクトルは彼のすらっとした後ろ姿を見送った。隣でぽかんとしていたクリストフが、そこでようやく我に返って笑いだした。 「なんだい? あれ……」 廊下を歩いていたほかの選手たちや関係者も、いったい何が起こったのかというようにきょとんとしていた。 「俺は時間が逆戻りしたんじゃないかと思ったよ。まるで君がコーチになる前の勇利みたいじゃないか? いや、あのころ、勇利は君にあんな愛の告白をすることはなかったけど……」 「気にすることはないよ」 ヴィクトルはにこにこしながら静かに答えた。 「いつものことだ。時間が戻ったわけじゃないし、俺たちがまぼろしを見ていたわけでもない。勇利がおかしいのでもない。ごく普通の勇利だっていうだけさ」 「ごく普通? あれで?」 クリストフがおおげさに肩を上下させ、勇利の走り去った方向に目を向けた。 「君たち、ロシアであんな日常を過ごしてるわけ?」 「毎日じゃないよ。でもたまにあるんだ。時にああいう気分になるらしい」 「ああいう気分? 好き好き言いまくる気分かい?」 クリストフはからかったのだろうけれど、ヴィクトルは平気でうなずいた。 「そのとおり」 「え? 本当なの?」 クリストフは驚いてヴィクトルを見た。 「勇利は君に好き好き言うのが日課なの? いや、毎日じゃないらしいけど」 「ひんぱんというわけじゃない。でも、ふいに、とにかく言いたくなるらしいよ」 「ヴィクトルが好きだって?」 「俺が好きだって」 ヴィクトルは歩きだしながら、重々しくうなずいた。 「なんだいそれ? まあ、確かに勇利は君が好きだろうから、そういう意味では何もふしぎはないけど、それにしてもあの態度は……」 「発作が起こるらしいんだよ」 「発作ね……君に好きだと言いたくなる発作?」 「そうさ。打ち明けたくてたまらなくなるようだね。言いたくて言いたくて我慢できないんだって。不定期にそうなるらしい。勇利の感情の問題だ」 「今回で言うと……君の演技を見て精神がみだれたっていうこと?」 「さあ……それも理由のひとつではあるだろうけど、勇利の気持ちはよくわからないよ。いままでの発作は、とくにそういう特別なことがないとき��も起こってたしね」 「つまり日常生活の中で?」 「ああ。普段どおりの暮らしをしてて、何か黙りこんで思いつめてるなと思ったら、あんなふうに好きって言いだしたことが幾度もある」 「へえ……」 クリストフは感心したような、あきれたような、なんともいえない表情をした。 「勇利は変わってるね……まあ勇利らしいという気もするけど。でも、前ぶれもなく、何度も何度もあんなに熱烈に好き好き言われたら、ちょっと慌てちゃったりするんじゃない? 今回だってこんな公の場だし」 「いや……?」 ヴィクトルはふしぎそうにクリストフを見た。 「うれしいだけだが?」 「……君に訊いた俺がばかだったよ。君たちはまったくお似合いだ。ぴたっと合ってる」 「どうもありがとう。俺もそうだと常日頃から確信してたんだ」 「なんでこんな話を聞かされなきゃいけないんだろう」 クリストフがぼやき、ヴィクトルは気にせず廊下を歩いていった。 こういう症状を起こした勇利がいつ冷静に立ち返るのか、それはヴィクトル自身にもよくわからない。数日こんな状態のときもあるし、ヴィクトルにぴったりと寄り添って好きだと言い続けたら数時間で落ち着くこともある。今回はどうだろう? ホテルの部屋は同じだ。勇利はその夜、机に向かって何か書き物をしていて、たいへん静かだった。こういうときむやみに話しかけてはいけないとヴィクトルは承知しているので、彼のおとなしやかな背中を愛情をこめて見守った。ひとことも口を利かなかったけれど、ヴィクトルは幸福だったし、勇利をかわいいと思っていた。 翌朝、ヴィクトルが目ざめると勇利はいなかった。朝食を食べに行ったのだろう。ヴィクトルも部屋を出たが、ちょうど廊下でクリストフと会ったのでふたりで行くことにした。 「昨日はどうだった?」 「どうだったって?」 「勇利、正気に返った?」 「彼はずっと正気だよ」 「いや、まあ……ヴィクトルヴィクトルって騒ぐのは確かに勇利にとっては普通のことなのかもしれないけど……そういうことじゃないっていうかね……」 「話はしなかったけど、たいへん健康そうな様子だった」 「そういう話でもないんだよ。君もすこしずれてるな。知ってたけどね」 「ああ、勇利だ」 廊下を曲がったとき、いくらかさきに勇利がいるのが目に入った。彼はピチットと歩いていた。ふたりでレストランへ行くところなのだろう。 「一緒に食べようって誘ったら?」 「やめたほうがいい」 「また好き好き言われたらうれしいんじゃないの?」 「勇利はものも言えなくなるよ。かわいそうだ」 「確かに赤くなってはいたけど、元気に告白してたじゃない」 「勇利から来るときはいいんだ」 ��のごとの道理をすべてのみこんでいるかのような落ち着きぶりでヴィクトルは説明した。クリストフはやれやれとかぶりを振った。 「見た!? ピチットくん、見た!?」 勇利が両手をこぶしのかたちにして握りしめ、胸のあたりに押し当てながらはしゃいで言った。 「ヴィクトル見た!? かっこよかった!」 「やっぱり試合が引き金だったんじゃない?」 クリストフがヴィクトルにちいさく言ったとき、勇利がたまらないというように叫んだ。 「あの立ち姿! ヴィクトルはそこに立ってるだけでもかっこいいんだよ!」 「…………」 クリストフが黙りこんだ。ピチットは勇利の話をにこにこしながら聞いているけれど、「うん、そうだね」ともう何度もこの会話をくり返したといういかにも熟練した態度で簡単に答えた。 「すらーっとしてるんだよ! すらーっと! 脚が長いの! 日本からロシアまでの距離より長い!」 ヴィクトルの隣でクリストフが妙な音をたてた。喉がどうにかなったのだろう。 「へえ、そんなに長いんだ」 「うん! 地球から太陽までの距離より長いんだ!」 「そんなわけないでしょ」 クリストフがつぶやいたけれどヴィクトルは黙っていた。 「それにね、腰に手を当ててリンクを見てるときなんか、もう、ポスターの撮影みたいにきまってて……あのとき、彼の頭の中にはきっと何か崇高な考えがあったにちがいないよ」 「どうせ、ふたりでエキシビションやりたいとかそういうこと考えてたんでしょ?」 クリストフに問われ、ヴィクトルは「まあそうだが」と答えた。 「じゅうぶんに崇高なことだろ?」 クリストフは肩をすくめた。 「声もすてきなんだよ。深みがあって、あたたかくて、優しくて、つやっぽくて……彼がコーチと話してるのを聞いたよ。陽気にしゃべってた。コーチには怒られてるみたいだったけど、彼は楽しそうだった」 勇利が上機嫌で語るのに、ヴィクトルは、「もっと甘い声を勇利は直接聞いてるはずなんだが」と考え深そうにつぶやいた。クリストフは返事をしなかった。 「途中から、ぼくは目を閉じて聞いてたんだ。たまらなく魔術的だったよ。ぼくはめろめろになっちゃったんだ……」 「コーチに怒られてるときの会話で?」 ピチットがからかった。しかし勇利は気づかないようだ。 「ヴィクトルはいつでもすばらしい声なんだ……。それから、あの微笑! ピチットくん、ヴィクトルにほほえみかけられたことある?」 「ないよ」 「ぼくもない」 勇利はきっぱりと言った。クリストフが横目でヴィクトルを見た。 「いつも君が勇利だけに意味をこめて笑いかけてるのを気づいてないの?」 「勇利はそういうところがあるんだよ」 勇利はヴィクトルの甘い声を聞いたことがないらしいから、ほほえみにしても同じなのだろう。 「でも、ぼくのほうを向いてほほえんだことはあるよ。もちろんぼくへじゃない。けど、ぼくに笑ってくれたんじゃないかって勘違いしそうになっちゃった」 「勘違いだそうだよ」 クリストフが勇利のほうを手で示した。 「勇利はそういうところがあるんだよ」 「ぼくへじゃなくてもいいよ……本当にかっこうよかったんだ……気品高くて、水際立って、すぐれて優しい……。きっとヴィクトルは愛してるひとにはああいう笑い方をするんだと思う」 勇利は両手を握りあわせ、うっとりしているようである。ピチットはそろそろ飽きてきたのか、「それはよかったね」と話を切り上げようとした。 「それに、あの目!」 勇利はかまわず力をこめて続けた。クリストフが笑いをこらえながら、気の毒そうな視線をピチットに向けた。彼はつぶやいた。 「俺もああいう役目をさせられたことはあるけど」 「ピチットくん、ヴィクトルのひとみはすごいんだよ。もうものすごい威力なんだ。ぼくはちらっと見られただけで腰から砕けて座りこみそうになるんだよ。実際座りこんだこともあるんだよ。あの澄んだ青い目……熱っぽくてこころのこもったまなざし……彼は落ち着いたひとだと思ってたんだけど、あれほど情熱的だなんて、ぼくもうどうしたらいいかわからないよ……」 「勇利に対してだけ情熱的なんじゃないの?」 「ああ、ヴィクトルって本当にすてきだよ……スケートがたまらないのは当たり前だけど、そこにいるだけでぼくをめろめろにするんだよ……あんなに高貴で誇り高いひと……ぼく……ああ……もう……」 そこまで話したところでふたりはエレベータに乗りこみ、扉が閉まった。ヴィクトルたちはゆっくり歩いていたので、同じエレベータには乗らなかった。 「……大丈夫なの? あれ」 クリストフがちらとヴィクトルを見た。ヴィクトルは肩をすくめた。 「いつものことさ」 「いつも発作のときはあんな感じなんだ……」 「かわゆいだろ?」 「いろんな意味で心配になるよ」 ピチットにたっぷりとヴィクトルのことを語ったのか、そのあと見かけたとき、勇利は機嫌がかなりよいようだった。しかし彼はあまり部屋にはおらず、ヴィクトルはなかなか会うことができなかった。次に顔を見られたのは記者会見のときだ。だが親しく言葉を交わすこともなく、それぞれ仕事にまじめに取り組んだ。それが済んで廊下へ出たとき、クリストフがヴィクトルに小声で言った。 「勇利の発作、まだおさまってないの?」 「そばに来ないんだからそうなんだろう」 「会見では普通に見えたけどね」 「俺と会話するわけじゃないからさ」 「いつになったらもとに戻るわけ?」 「さあ……」 それは勇利自身にもわかっていないことだろう。彼の感情の流れによるのだ。もっとも勇利は、自分の感情が高ぶっていることなど、落ち着かないうちは自覚していないだろうけれど……。 「あ、あの……」 ふたりが歩きだしたとき、後ろから声をかけられた。振り返ると、勇利が頬をまっかにして立っていた。 「やあ。なんだい?」 ヴィクトルは優しく尋ねた。それだけで勇利は感激したようにひとみをうるませたので、クリストフは見ていられないというように笑いをこらえてそっぽを向いた。 「突然こんなこと、失礼だと思うんですけれど……」 「何かな。どんなことでも言ってくれ。失礼なんていうことはすこしもないよ。俺はきみの話が聞きたいんだ」 勇利はしずしずとヴィクトルの前に進み出た。緊張しきっていながら、上品でしとやかな物腰だった。あんまりかたくなっているようなので、ヴィクトルは抱きしめてキスしてやりたくなった。──ヴィクトルは何かあると勇利を抱きしめてキスしたくなるのだ。 「あの……すみません……お時間をとらせて申し訳ないのですが……」 「かまわないよ。俺の時間はすべてきみのものだ」 「こ、これを……」 勇利はふるえる手で一通の白い封筒を差し出した。部屋で書いていた手紙だろう。子どものように、両手で持っていた。 「よかったら読んでください……本当に……ふいのことで戸惑うでしょうし、お困りでしょうけれど……すみません……」 「ちっとも困らない。うれしいよ。どうもありがとう」 ヴィクトルは手紙を受け取った。そのとき、指先がかすかにふれあったので、勇利は驚き、さっと手を引いた。彼は恥じらいにみちた泣きだしそうな目つきでヴィクトルをみつめ、ぺこりとお辞儀をした。 「失礼します!」 勇利がぱたぱたと駆けてゆき、ヴィクトルは彼の可憐な後ろ姿を見送りながら、大切そうにポケットに手紙をしまった。 「なに? 恋文?」 クリストフがひやかした。 「ああ」 「……もらい慣れてる感じだね。もしかしてこれまでの発作でも……」 「もらった」 ヴィクトルは誇らしげにほほえんだ。 「勇利の手紙がどんなものか教えてあげようか? それはうつくしい言葉で書いてあるんだよ。情緒にみちた、花雫のしたたるような清楚な手紙だ。なんとも慎ましやかでね。読んでいるときいい匂いがするよ。思慮深く、やわらかく、つづり方さえ甘美で、文字はみずみずしい。うっとりするような、たえなる手紙なんだよ。英語で書いてあるんだが、彼の国の言葉でならどんな表現をするんだろうと思う。俺は日本語をかなり勉強しているから、いつか勇利は日本語で書いてくれるかもしれないね」 ヴィクトルは部屋へ戻って、たかぶる気持ちをおさえながら手紙の封を切った。いつもは厚ぼったいのに、今日はうすかった。ヴィクトルはふしぎに思った。便せんをひろげたとき、彼は幸福にみちたたまらないという笑みを浮かべた。何枚もの便せんに書き連ねられた勇利の気持ちを読むのがヴィクトルは大好きなのだけれど、今日の手紙も、それにおと���ずすばらしかった。 出会ったときから、永遠に最愛のヴィクトルへ 突然のお手紙をおゆるしください。 ひとことだけ申し上げます。 貴方のことを愛しています。 永久に貴方に夢中の勝生勇利 長いあいだ机に向かっていたようだけれど、書いたのはこれなのだ。ヴィクトルはいとおしさのあまり、おかしくなってしまうかと思うほどだった。こんな発作を起こす勇利はなんとかわゆいことだろう。 「手紙、読んだ?」 クロージングバンケットのとき、何を聞かされるかと思うと尋ねるのもためらいがあるけれど、結局訊かずにはいられないというようにクリストフが尋ねた。 「読んだよ」 ヴィクトルは喜びの感情をおさえながら答えた。そうしないと、大声で勇利のかわゆさと可憐さを並べ立ててしまいそうだった。 「すごくいいことが書いてあったのはわかるよ」 クリストフがしみじみ言った。 「いまの君の様子を見ていればね」 「俺はおかしい男に見えるかい?」 「がんばってこらえてるのは伝わってくる」 「勇利の前でみっともないまねをするわけにはいかない」 ヴィクトルはきっぱり言った。 「彼ががっかりするからね」 「君がどんなにおかしな行動に出ても、勇利はやっぱりうっとりして、『ヴィクトル、かっこいい……』ってばら色の溜息をついてると思うよ。で、その勇利は?」 「さあ……会わないんだ」 「愛のあまり避けられてるのかい?」 「わからない。無意識のことだと思うが」 バンケット会場には、大勢の選手や関係者がいた。ざっと見渡したところ、勇利の姿はないようだった。 「いないようだね」 クリストフもあたりを観察しながら言った。 「またピチットに君のすばらしいところを語って時間を忘れてるのかな」 彼は、俺も話しかけられないよう用心しなきゃ、と笑った。 ヴィクトルは食事をしたり、適当に挨拶を済ませたりしながら、勇利のことを探した。勇利は日本チームの席にいなかった。途中、ピチットを見かけたけれど、彼は別の友人と話しこんでいた。どこへ行ったのだろう? まさか部屋へ戻っているのだろうか? 勇利はこういう場は苦手だから……しかしいままで、そういうことをしたことは一度もない。 「勇利見なかったかい?」 ヴィクトルは知り合いの選手に訊いてまわったが、みんなかぶりを振るばかりだった。彼らは「ヴィクトルが溺愛している生徒を追いまわしている」と笑った。 「そうさ。そうするだけの価値がある子だからね。彼のうつくしさは知ってるだろう?」 ヴィクトルが誇らしげに自慢すると、話していた相手が、ふいに顔を上げてヴィクトルの後ろを示した。 「来たんじゃない? 君の秘蔵っ子」 ヴィクトルは振り返った。そして目をみひらいた。確かに勇利だった。彼は前髪を上げ、ヴィクトルの選んだスーツを着こなし、凛と背筋を伸ばしてまっすぐこちらへ歩いてきた。すらっとした姿に、誰もが目を奪われて顔を向けた。こういうときの勇利の器量のよさはすばらしかった。 「……ヴィクトル」 勇利はヴィクトルの前で立ち止まると、静かに呼んだ。ヴィクトルはそのとき、勇利の発作がおさまったのかと思った。けれど彼はりんごのように赤い頬をしていたし、うっとりととろけた表情だったので、そうではないのだとわかった。 「勇利、どこに行ってたんだい? 探したよ」 「話があります」 ヴィクトルは瞬き、それからほほえんだ。 「わかった。部屋に戻る? それともバルコニー? ふたりきりになれるところへ行こうか?」 「ここでけっこうです」 勇利は両手を胸の前で握りあわせると、ヴィクトルをいちずな目でみつめ、何か言いたげな顔をした。彼のチョコレート色のひとみは静かにうるおいを帯び、初々しく、熱愛をふくんで可憐だった。ヴィクトルは夢中になり、視線をそらすことなど思いもよらなかった。 「……ヴィクトル」 勇利がささやいた。 「……なんだい」 「あの……」 「うん」 「ぼく……」 ヴィクトルはちいさく、かすかにうなずいた。勇利はひたむきに、すがるようにヴィクトルをみつめると、やわらかいビロードの声で真剣に告白した。 「……大好きです」 「…………」 「貴方が好きです」 「…………」 「それだけ……」 勇利は「それだけ」と言ったけれど、彼のひとみはそれ以上に愛を語っていた。好きだという言葉だけでは言いあらわせないすべての感情を、はっきりと、たぐいない熱っぽさで伝えていた。 「それじゃあ……」 勇利はこのうえなく大人っぽく、つやがあったけれど、背を向けた彼のしぐさはおさなげを失わず、ひどくかわいらしかった。ヴィクトルは抱きしめてキスしようかと思った。 勇利がいなくなると、ヴィクトルはまわりの選手た��からかなりからかわれた。もちろん喜ばしく、鼻が高かった。勇利のようなすてきな子に愛の告白をされて、うれしく思わないはずがない。 「見てたよ」 クリストフもやってきてひやかした。 「まったく、いろんな方法で君に気持ちを打ち明けるものだね。大騒ぎしたり、恋文を渡したり、静かに告白したり……」 「そういうものなんだ」 ヴィクトルは胸を張ってにこにこした。 「しかし、何度経験してもたまらないものだね。勇利のこの症状はうれしいんだが、毎回、いつ自分が抱きしめてキスしてしまうかと気が気じゃない」 「やったことないの?」 「ないよ」 ヴィクトルは笑った。 「あんな状態の勇利にしたら、彼は気絶しちゃうだろうからね」 ヴィクトルは部屋へ帰った。勇利はさきに戻っており、彼は上等な上着をちょうど脱いだところだった。 「今夜は酔っぱらわなかったでしょ?」 勇利は振り向いてヴィクトルを見るなり、いたずらっぽく言った。ヴィクトルはちょっと考え、ソチでのバンケットとくらべているのだと気がついて笑った。どうやら発作はおさまったらしい。 「そのようだね」 ヴィクトルは勇利に大股に近づくと、彼を抱きしめ、くちびるに接吻した。勇利は目を閉じてヴィクトルの背に手を添えた。彼はもちろん気絶などしなかった。 「酔わなくても楽しかったかい?」 「どうしてそんな意地悪言うの?」 勇利がヴィクトルをにらんだ。この目つきがじつに色っぽいとヴィクトルは常日頃から思っていた。それでいてかわいらしいのだからまったく……。 「バンケットは得意じゃないよ。楽しいも何もない」 「普通の人は得意じゃない場でダンスバトルなんかしない」 「ぼくはそれおぼえてないから、たぶんみんなのでまかせだよ。ぼくを騙してる」 「勇利、いつものことだけど今回も確認しておくよ。記憶は失ってないよね?」 「なんの?」 「試合が終わってからのいろいろについてさ」 勇利は目をまるくしてヴィクトルをみつめ、それから笑いだして口元に手を添えた。 「おぼえてるよ」 「そうか。それはよかった」 「みんな何か言ってた?」 「クリスはあきれてたね。あれはなんなんだって。もっとも、おもしろがってるというほうが正しいだろうけど。ほかのみんなもまあ……ひやかしはあったよ」 「恥ずかしかった?」 「いや、誇らしかったね」 「本当は、またやったなこのどうしようもない生徒は、って思ってるんでしょ」 「思ってないよ」 「だってしょうがないじゃん……」 勇利はちょっと目を伏せ、頬を赤くしてもじもじした。 「気持ちがあふれて、ヴィクトルに好きって言いたくてたまらなくなっちゃうんだもん……」 ヴィクトルの胸が激しくときめいた。勇利はヴィクトルを見ると、一生懸命にさらに言いつのった。 「どうしても我慢できないんだよ。よくわからないうちに感情がたかぶって、ああ、ヴィクトル好き好きってなっちゃうんだ。頭がへんになりそうなくらい。そういうことってない? ないんだろうね、ヴィクトルには」 「俺はいつだってそういう状態だ」 「クリスがあきれてたって? ヴィクトル、彼に言ったんでしょ。そうなんだ、もうあの勇利の態度には閉口してるんだよ、うんざりだ、って。一度や二度じゃないんだよって愚痴を言ってきたんでしょ。知ってるんだから」 「言ってないよ」 「また始まった、やれやれ、って溜息をついてたんでしょ。迷惑だなあって」 「ついてない」 「でもご安心ください。もう平静に戻りましたからね」 勇利は胸を張っておとがいを上げた。その宣言する様子がたまらなくかわゆかった。 「これからは平穏に暮らせるよ。……永遠に保証するわけじゃないけど」 勇利は言ってから、ちょっと首をかしげた。 「でも、どうしてあんなにとりのぼせちゃうのかな。ヴィクトル好き好きって思って本当におかしくなっちゃう……。ああいうときは感情の操縦はできない」 「クリスには発作って言っておいたよ」 「ちょっと、発作って」 「今回もかわいかったよ」 ヴィクトルは勇利の頬をてのひらでそっと撫でた。勇利はふれられているほうのまぶたを閉じ、じっとしていた。 「次の発作を待とう」 「ばかにしてる」 「してないさ……ついでに言うと、普段の勇利もたいへんかわゆい」 勇利が目を上げてヴィクトルを見た。チョコレートの甘さを秘めた彼の清純なひとみは、むこうみずなほど、星のようにきらきらと輝いていた。それは勇利が「感情がたかぶって気持ちがあふれてしまう」というときと同じだけのきらめきだった。 口に出さないときも、勇利の愛はいつだって、ひとみにあらわれているのだ。
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