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彼らは読みつづけた
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読書で見つけた「読書(する人)」
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findareading · 5 hours ago
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(46)午後を浴室で過ごすようになった時、何もそうした態度をひけらかしていたわけではなかった。時々台所にビールを取りにいきもしたし、自分の部屋をひとまわりして窓から外を眺めたりもした。ただ、一番気分がいいのが浴室にいる時なのだった。初めのうちは肘掛椅子に腰を下ろして読書していたのだが、やがて──仰向けに寝そべって読みたくなったので──浴槽の中に横たわったのだ。
— ジャン=フィリップ・トゥーサン著/野崎歓訳『浴室』(1995年6月第2刷、集英社文庫)
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findareading · 1 day ago
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助かる希望が出たとたん、かえって不安に苛まれるのは人の常である。移籍話がとんとんと進みつつも、桑幸は土壇場で糸が切れることを確信していた。結局のところ再び地獄へ真っ逆さまに転落していくだろうことを覚悟していた。そうしないと不安で気が狂いそうだったからである。桑幸は芥川の『蜘蛛の糸』を何十年ぶりに読み返し、夜ごと涙した。
— 奥泉光著『桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』(2021年11月Kindle版、文春文庫)
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findareading · 2 days ago
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しかし、あえて出版史でなく「読書」史の観点から見ると、書店では購書だけでなく「立ち読み」という読書も行われてしまっていたわけである。書店は「読書装置」でもあったことは、書店を実際に使ったことのある人にはうなずけよう。
— 小林昌樹著『立ち読みの歴史』(2025年4月、ハヤカワ新書)
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findareading · 3 days ago
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二〇二一年の六月から週一回、金曜の夜(十八時三十分〜二十二時三十分)にお堂を〝夜の本屋〟に変身させることになりました。 「本を読んでもいい。読まなくてもいい。座って読んでも立って読んでもいい。好きな本を持ってきてもいい。パソコンを持ってきて仕事をしてもいい。ただじっとしていてもいい……」というのが日野岳住職の言葉です。「来てもいい、来なくてもいい」とも続けているのですから、本当に自由です。
— 栗澤順一著『本屋、地元に生きる』(2023年2月、KADOKAWA)
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findareading · 4 days ago
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安子は、あっという間に物語の世界へと引き込まれていった。 静かな部屋に、時おりページをめくる音だけがペラリ、またペラリと流れていく。読みながら食べようと持って来たケーキも、ずっと手付かずのままだ。
— 秦本幸弥著『パティスリー幸福堂書店はじめました②』(2018年6月Kindle版、双葉文庫)
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findareading · 5 days ago
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郁子が立ちあがり、二〇ワットの蛍光灯をつけた。 まさにその時である。灸太郎は見たのだ。郁子が布団の中で読んでいたらしい、枕もとの一冊の本を。
— 筒井康隆著「小説「私小説」」(『ホンキイ・トンク』平成31年4月Kindle版、角川文庫)
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findareading · 6 days ago
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「幸田文や青木玉を読んだことある?」 幸田露伴の娘と孫だ。李奈は思わず笑顔になった。「大好きです。『季節のかたみ』と『小石川の家』」 「須賀敦子とか白洲正子、庄野潤三は?」 「どの作家も愛読してます。『コルシア書店の仲間たち』『かくれ里』『庭のつるばら』」
— 松岡圭祐著『écriture 新人作家・杉浦李奈の推論Ⅲ クローズド・サークル』(令和4年2月Kindle版、角川文庫)
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findareading · 7 days ago
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その次も、またその次の日も。私たちは昼休みの間じゅう、窓際のテーブルで向かい合ったまま黙って本を読むだけ、という間柄になりました。一緒に本を読む友達……そういうの友達と呼べるのかな、わからないけど。
— 坂本葵著『その本はまだルリユールされていない』(2025年3月Kindle版、平凡社)
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findareading · 8 days ago
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そして、本と読者が出会ってる姿にはいつも心を打たれます。勉強に来てる高校生が、ひょっと書棚の前に立って目にとまった一冊を抜き出して、勉強そっちのけで読んだりしてる。それが彼にとって、運命的な出会いになるかもしれないと思うと、「あ、本がほんとに生きてるな」と感動します。
— 井上ひさし著『本の運命』(2011年3月第2刷、文春文庫)
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findareading · 9 days ago
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風呂に読む本波打てる暮春かな ヘミングウェイ読めば腹減る斑雪かな X線検査機通過す読初の『檸檬』と鍵
— 榮猿丸著『句集 点滅』(2013年12月、ふらんす堂)
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findareading · 10 days ago
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その日の三上は何冊目かの本を読みはじめ、友美は肌を焼きながら欧米人の休暇の過ごし方を観察した。紫外線を嫌う日本の女性が見たら気絶しそうな光景がビーチに広がり、彼らは貪欲なほど太陽の恵みと向き合う。男にも女にも本読みが多く、若い裸体が二十も並んで、全員が本を読んでいるさまは壮観ですらある。日本のビーチでは見られないので、彼女は貴重なものに眺めた。
— 乙川優三郎著「すてきな要素」(『地先』2019年8月、徳間書店)
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findareading · 11 days ago
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それでも、豆ランプのもとで何度も繰り返しその豆本を読んだ。
— クラフト・エヴィング商會著『アナ・トレントの鞄』(2005年7月、新潮社)
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findareading · 12 days ago
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戸口のほうをむいた。キムが本を読んでる。外で銃声が聞こえたり、上の階に住んでるライアンさんが夫婦げんかでどなりあったりしてると、キムは本を読む。今のところ、キムはだいじょうぶそうだ。本を読んでいれば落ちつく。
— ジュエル・パーカー・ローズ著/武富博子訳��ゴースト・ボーイズ─ぼくが十二歳で死んだわけ─』(2021年4月、評論社)
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findareading · 13 days ago
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翌日。 子供らの帰った雀堂の窓辺で、冬吾は本を広げていた。昨日、助佐から借りた黄表紙だ。 冬吾はじっくりと読み込んだ本を閉じ、また最初から開いた。今度は挿絵を見ながら、ざっと目を通していく。
— 氷月葵著『すずめのお師匠 身代わり与力捕物帖』(令和6年4月Kindle版、角川文庫)
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findareading · 14 days ago
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ふだん本を読んでいても、どこかに名言・名セリフを探す習慣がつきました。もちろん、熱中するとそのことを忘れますが、いい言葉を見つけると、やったあ、という気持ちになるんですね。素敵な言葉を見つけるための読書があってもいいんじゃないか、と気付きました。
— 岡崎武志著『読書で見つけた こころに効く「名言・名セリフ」』(2023年9月Kindle版、光文社知恵の森文庫)
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findareading · 15 days ago
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冒頭数ページでヘクターがクリスタと出会う。テンポがよくて、僕でもすんなり内容に入っていけそうだった。なにかのリハビリをするみたいに、時々安心しながら、そっとページをめくっていく。
— 半田畔著『執事の本棚は騒がしい 風見七士と数奇な図書館』(2024年8月Kindle版、富士見L文庫)
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findareading · 16 days ago
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私は健さんの部屋まで珈琲を届けた。窓からの海風が心地よい。ベッドを背にして伸ばした脚は窓際にまで届いている。 私は思わず、「この部屋、狭くないですか」 「そうかな。僕にはこれがあるから気にならないよ」 そう言うと読んでいた本を高く上げた。 「旅先に持ってくるのは本と、好きな映画のビデオだけ」 そして、健さんがよく使うフレーズが飛び出した。 「好きな本を読んで、ぐっと来るものがあれば、その旅は最高だよ」
— 谷充代著『高倉健の図書係 名優をつくった12冊』(2024年10月Kindle版、角川新書)
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