Tumgik
findareading · 4 hours
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で、からさんの詩集を読んで。 もう、ぶっとんだ。比喩じゃなくて座っていた椅子から転げ落ちたよ。 衝撃っていうの? 眼から飛び込んでくる色と言葉の洪水に身体中が満たされちまって、何かもう自分の細胞全部が光り輝くみたいになっちゃってさ。 まぁこれもわかんないだろうけど、こう、歌とか聴いて感動して鳥肌が立つとかあるじゃない? そう、その感じのものすごい! みたいなもの。
— 小路幸也著『からさんの家 まひろの章』(2023年8月Kindle版、徳間書店)
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当然「松山天狗」を知っていたであろう上田秋成は、「白峯」のなかで相模坊をさりげなく登場させている。(ここでぼくは立ち上がり、背後のラックに歩みよって、『雨月物語』を引き抜く)
— 殊能将之著「樒」(『樒/榁』2002年6月、講談社ノベルス)
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findareading · 2 days
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君の声 凛々しい書体だったこと忘れずにいて本を読んでる
— 中村森著『太陽帆船』(2024年3月、KADOKAWA)
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findareading · 3 days
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彼女と夫、二人で夏の長い夕暮れに芝生に出て本を読む。夫はショートパンツ、彼女は小ざっぱりとしたスカートにブラウスで、はだしの足を夫の椅子のへりにのせている。もしかしたら傍らには彼女か夫の母親もいて、やはり本を読んでいるかもしれない。(中略)夕暮れどきに三つの折り畳み椅子を近寄せて座り、めったに会話も交わさず本を読む自分たちを取り囲む庭は、どんなふうであるべきかを話し合う。
— リディア・デイヴィス著/岸本佐知子訳「年寄り女の着るもの」(『分解する』2016年6月、作品社)
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findareading · 4 days
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彼は読書も好きだ。 彼がこの図書館に来たのは、それが興行中の大テントにいちばん近いから。サーカスではきびしい一週間だった。ライオン調教師が癇癪を起こして辞めてしまい、ライオンたちがずっと吠えつづけているからだ。ライオンたちは調教師を恋しく思い、他の誰もライオンたちをかわいがってやることはできない、だって何しろライオンなのだから。図書館にやってきた筋肉男は、ほっとして、そっと息をつく。
— エイミー・ベンダー著/管啓次郎訳「どうかおしずかに」(『燃えるスカートの少女』2003年5月、角川書店)
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findareading · 5 days
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『エセー』。 二週間くらい前から、妻は岩波文庫モンテーニュ『エセー』を読んでいる。「面白い。面白い」という。モンテーニュは、過去を振り返らない。先のことを考えない。いまを愉快に生きてゆくのがいいという考え方だという。そこのところが私の書いた『夕べの雲』と同じなのと妻はいう。『夕べの雲』(講談社文芸文庫)と同じとは有難い。
— 庄野潤三著『庭のつるばら』(2023年1月Kindle版、小学館P+D BOOKS)
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findareading · 6 days
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両手で支えた単行本に視線を落とし、こちらを向いてくる様子はない。本の重さに引っ張られて、いまにもよろけるのではないかと思ったが、彼女は直立不動を崩さなかった。薄く口が開いて動いているのは、本の内容をたどっているからだと分かる。荘一も読書に没頭するとたまにやる癖で、この熱中ぶりだと、女子はドアが開いたことにすら気づいていないようだった。
— 川崎七音著『完璧な小説ができるまで』(2023年6月Kindle版、メディアワークス文庫)
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findareading · 7 days
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ウインストン・チャーチルといえば、第二次大戦中イギリスの首相をつとめ、アメリカのルーズベルト、ソ連のスターリンと並んで三巨頭と称せられた大政治家である。 文筆家としても知られ、一九四八年から一九五四年にかけて執筆した『第二次大戦回顧録』六巻は、一九五三年度にノーベル文学賞を受賞したのだった。(中略) 暖炉の前でコナン・ドイルの作品などを読むのを趣味にした、大の探偵小説の愛好家でもあったのである。
— 山村正夫著『霊界予告殺人』(2019年9月Kindle版、講談社文庫)
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findareading · 8 days
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飲み会のない平日夜、用事がない日は、カフェに寄って読書するのが私の楽しみでした。(中略)とにかく何か飲んだり食べたりしながらゆっくり本を読むことは、なんだかんだ癒やされます。
— 三宅香帆著『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(2024年4月Kindle版、集英社e新書)
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findareading · 9 days
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ぼくは本を買っても、すぐには読まない。いつかまとまった時間をとれたときにゆっくり読もうと考えて、分厚い人文書や、複数冊で完結する長篇小説をレジにもっていく。 海岸沿いのカフェや、山荘や、海辺のホテル。 これまでの人生を振り返っても、そんなところで本を読んだ経験など一度もないのに、それでも頭のどこかには、そうしたバカンス先で、くつろいで本を開いている自分のイメージがある。
— 島田潤一郎著「団地と雑誌」(『長い読書』2024年4月、みすず書房)
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findareading · 10 days
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「僕は帰るさ。いろいろ読みたいものもあるしね。イギリスで出版された本を日本で買うほうが安いなんて変な話だ。それに風呂と便所が一緒になっている生活はやっぱり合わないね」
— 大野露井著「塔のある街」(『塔のない街』2024年2月、河出書房新社)
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findareading · 11 days
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July-August 心を落ち着けて、ぼんやりと本を眺める。 何も考えず、ただ風と波の音に耳を澄ます。好きなひと、好きな場所、沢山の好きなものたちを思い浮かべながら、ひとりで過ごす時間。
— 山本アマネ著「物語のはじまり」(『ものよむひと』2020年)
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findareading · 12 days
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いえ、わたし、あなたの詩が好きです。素晴らしいと思っています。わたし……いつか、宇宙に散らばったあなたの詩を集めて、詩集を作りたい、それが夢だったんです。あなたの詩には偽物も多く、その真贋を判定できる文学者はほんの数人しかいません。その人たちに師事したくて、無理をして銀河総合大学で学びました。そしてもっと無理をして、中央銀河市の出版社に就職したんです。
— 柴田よしき著『宙の詩を君と謳おう』(2010年3月Kindle版、光文社文庫)
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findareading · 13 days
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どうしても必要、というわけではなかった。二条の部屋を整理し、職場のデスクを整理し、また戻ってくる。部屋にあるCDや、読んでいない本を取りにいきたかったし、仕事の書類も整理しておきたかった。
— 中村航著『小森谷くんが決めたこと』(2017年10月Kindle版、小学館eBooks)
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findareading · 14 days
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世の中が騒々しく、すさんでいる時にこそ、一人心を落ち着け、戦争や年金や失業や憲法とは遠く離れた物語の世界を、旅したくなる。今、人間社会があれこれと大変なのは分かった。だからせめて夜のひとときくらい、本のページの静けさに心を泳がせる自由を、存分に味わいたいのだと、誰にともなく訴え掛けたくなる。
— 小川洋子著「異界を旅する喜びを味わう──『家守綺譚』」(『博士の本棚』2016年5月Kindle版、新潮文庫)
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findareading · 15 days
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二時間ばかりの後、帰宅してから為永春水の『春色梅美婦禰』をおもしろく読み、惜しみ惜しみ栞をはさんで、シャワーを浴びた。寝酒のシェリーもうまくて上機嫌で眠りについた。
— 丸谷才一著『輝く日の宮』(2013年4月Kindle版、講談社文庫)
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findareading · 16 days
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閉じた瞼を灼く光の眩しさに、私は眉をひそめて顔を背けた。 何度か細かな瞬きをして明るさに目を慣らし、ゆっくりと窓を見る。 細く開いたカーテンの隙間から真っ白な光が射し込んでいた。ゆうべは一時過ぎまで本を読んでいて電池が切れたようにベッドに入ったので、きちんと閉めきれていなかったらしい。
— 汐見夏衛著『ないものねだりの君に光の花束を』(2020年6月Kindle版、KADOKAWA)
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