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#グレン・グールド
anamon-book · 6 months
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グレン・グールド アットワーク-創造の内幕 アンドルー・カズディン、石井晋・訳 音楽之友社
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goodwaytofly · 1 year
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2023/05/21
ガソリンスタンドにある洗車機、あの洗車機に洗われる車の中にいると、子供の頃に戻ったような感覚になる。洗車機が嫌いだった。洗車機が車をまたぐと車内は暗くなり、不穏な機械音が響く。怪物の体毛のようにだらんと垂れたゴムの束が一度死んで蘇ったみたいに突然回転し始めて、私を容れる固い鉄の塊にむかって無感情にぶつかってくる。即席の豪雨がフロントガラスに降り注いで、ゴムの束がバタバタと音を立てて車の表面を這う。洗車の間、後部座席でぎゅっと目をつぶって耳を塞ぎ縮こまっていたのを覚えている。早く終われ。そう思いながら。
時間が直線に流れているということを疑い始めたのはいつ頃からだろう。時計の読み方は幼いころ誰かに教わったはずだが、時間は直線上に流れるもので、過去はすでに経験した時間であり、現在は今滞在している時間であり、未来はまだ経験していない時間のことを指すという感覚を、人はどうやって体得するのだろう。
腹が立つほど明るく晴れた日のガソリンスタンドで、門型の洗車機の中へと車が進んでいく。洗車機が車を跨いで陽をさえぎり、車内がほの暗くなる瞬間、まただ、と思う。助手席に座りながら、後部座席で息を潜めて体を縮こまらせている自分の、つぶったまぶたの硬さを感じる。ゴムの束が車を擦る音が不快だと言うたびに運転席の母が曖昧な笑顔で無視するから、私は耳の穴に指を突っ込んで塞ぎながら、先ほどスーパーで買ったアイスクリームがトランクで溶け始めているのではないかと心配する。洗車のためにエンジンを切った車の中は、さみしい永遠のにおいが充満している。洗車機が風を吹き出してフロントガラスの水滴が下から上にのぼっていくのを見てはじめて、ずっと昔にも車の中で同じ水滴を見つめたこと、あの時も不快なゴムの音と車体の振動とを今と同じ体で感じたこと、同じ体のはずなのに腰のふくらみもふくらはぎの硬さも首の曲線もあの時からすべて変わっていること、助手席に座る私は硬直せずともゴム毛の怪物の蠢きを直視できること、トランクにアイスクリームはないということに気付く。
機械から発進してくださいと繰り返す女性の声が流れて車は進み、陽がふたたび車内に差し込む。眩しさに目を細め、サンバイザーをおろすと私は後部座席にいて、窓についた水滴が洗車機の風に吹かれてスローモーションみたいにゆっくり移動していくのがおかしかったと母に言う。運転席の母は軽く振り返り、口元だけ笑う表情を作ってすぐに前を向く。私は助手席で、その仕草がずっと嫌いだったのだと思う。運転中にサイドミラーで化粧崩れを確認する癖はそのままだが、耳にかけた髪の根本は白く光っている。車内に流れるグレン・グールドのゴルトベルク変奏曲に耐えかねた母が、もっと気分が上がる曲をかけて、と言う。私は横目に流れる電柱の数を諦めながら、この先また同じ時を過ごすのだろうと予感する。
時間は本当に不可逆的なものなのだろうか。過去が経験という形で現在と未来の選択に作用するのなら、未来が現在と過去に作用することもありえるはずだ。
あるいは時間とは星座的なものなのかもしれない。リニアにつながる時間軸というものはなく、体験と感情は星座のようにランダムに点在し、それらの星座を観測する要領で点と点をつなぎ合わせた時、自分という存在が見えてくる。
別々の体験が同じ感覚へと集約されていく際も、過去から未来へと直線につながる時間軸を疑うものだ。実家で飼っている犬の毛並も、疲れた時にかくいびきの音量も、コンビニで買うスナック菓子も、道具としての言葉の使い方も、私の背中を撫でる時の手のひらの厚みも、それぞれまったく異なる人たちをそれぞれに愛し、そしてそれぞれが私の中で死んでいくのを感じ始めた瞬間、まただ、と思う。すべての体験が別個であり、その都度私の実感も別個のものなのに、ずっと同じ一人を愛そうとして失敗しているような感覚に陥るのだ。円環状の繰り返しを認めているのではなく、デジャヴを味わっているというのでもない。過去の経験が現在と未来に地続きになっているとしたら、どうして人は常に適切な選択肢を選ばないのだろう。経験があるとすれば、それらは終わることなく点々と今も存在し続けており、私はただひたすらにその点を増やしながら生きているだけのような気がする。傷ついてもいいから愛そうと思った時、傷つくのなら愛さなければよかったと思う瞬間にいる。一瞬に永遠を見出したとき、一瞬の短さを知る。私の中で死んでいった人たちは無限に死に続け、別の点において有限に生き続けている。私の中で終わった出来事が、別の点においては起こり続けているのだ。
直線的な時間軸を確かに証明できるものはなく、時間の経過が人間の記憶という感覚に依るものならば、色褪せない記憶や忘れられない思い出はやはり過去ではなく、現在であり未来でもありうる。体験とそれに付随する感情は、時を超えて、洗車機の風に吹かれる車窓の水滴のように、下から上にのぼっていったり、後ろから前へと進んでいく。味わったことのない感覚に繰り返しを見出したり、無意識の習慣に目新しさを感じたりしながら。時という点は直線にはならないが、移動したり重なり合ったりして私たちの中に在り続けるのかもしれない。直線につながる時間軸なんて本当はないから、人は傷ついても、一度も傷ついたことがないみたいに、また誰かを愛するのだろう。
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yohko-amemiya · 3 hours
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評論家・吉田秀和が生まれた日(1913年9月23日)。9月23日著作は多数あり、指揮者ヴィルヘルム・フルトヴェングラーなど巨匠音楽家らの音楽に触れ、また当時日本では未知の存在だった作曲家ジョン・ケージやピアニストのグレン・グールドなどを日本の聴衆に紹介した。音楽教�� http://dlvr.it/TDZwXr
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評論家・吉田秀和が生まれた日(1913年9月23日)。9月23日著作は多数あり、指揮者ヴィルヘルム・フルトヴェングラーなど巨匠音楽家らの音楽に触れ、また当時日本では未知の存在だった作曲家ジョン・ケージやピアニストのグレン・グールドなどを日本の聴衆に紹介した。音楽教… http://dlvr.it/TDZwXr
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nagaihiru-lineup · 14 hours
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古本/文藝別冊『グレン・グールド』/河出書房新社/¥500
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takmiblog · 2 months
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音楽とオーディオの一体化(実のある音楽の実のある鑑賞)
我が家では「好きな音楽」を「いい音」で聴きたい一心なので「音楽とオーディオ」がおおよそ一体化している積りだが、いったい「いい音って何?」と考えさせられたのがこの本だ。
<「クラシックの核心 バッハからグールドまで」>
著者は「片山杜秀」(かたやま もりひで)氏。(中略)本書では様々な作曲家や演奏家について取り上げている。たとえば 1 バッハ  精緻な平等という夢の担い手 2 モーツァルト  寄る辺なき不安からの疾走 3 ショパン  メロドラマと“遠距離思慕” 4 ワーグナー  フォルクからの世界統合 5 マーラー  童謡・音響・カオス 6 フルトヴェングラー  ディオニュソスの加速と減速 7 カラヤン サウンドの覇権主義 8 カルロス クライバー  生動する無 9 グレン・グールド  線の変容 といった具合。
この中で特に興味を惹かれたのが「フルトヴェングラー」と「グレン・グールド」の項目だった。
前者では「音は悪くてかまわない」と、小見出しがあって次のような記述があった。(137頁)
「1970年代以降、マーラーの人気を押し上げた要因の一つは音響機器の発展があずかって大きいが、フルトヴェングラーに限っては解像度の低い音、つまり『音がダンゴになって』聴こえることが重要だ。
フルトヴェングラーの求めていたサウンドは、解析可能な音ではなくて分離不能な有機的な音、いわばオーケストラのすべての楽器が溶け合って、一つの音の塊りとなって聴こえる、いわばドイツの森のような鬱蒼としたサウンドだ。したがって彼にはSP時代の音質が合っている。」
(中略)次いで、グールド論についても興味深かった。(中略) そして、本書ではそれとは別に次のような論が展開されている。(188頁) 「グールドによると、音楽というのは構造や仕掛けを徹底的に理解し、しゃぶり尽くして、初めて弾いた、聴いたということになる。 たとえばゴールドベルク変奏曲の第七変奏はどうなっているか、第八変奏は、第九変奏はとなると、それは生演奏で1回きいたくらいではとうてい分かるわけがない。たいていの(コンサートの)お客さんは付いてこられないはず。 したがって、ライブは虚しいと感じた。よい演奏をよい録音で繰り返し聴く、それ以外に実のある音楽の実のある鑑賞は成立しないし、ありえない。」 以上のとおりだが、40年以上にわたってグールドを聴いてきたので “いかにも” と思った。
(https://blog.goo.ne.jp/jbltakashi/e/d37218bcba0df9e96a07fa1a4d67f5f5)
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practiceposts2 · 4 months
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20240605
昼休み、服にチョコレートをつけてしまった。洗っても洗っても、しみはなかなか落ちなかった。
いい天気だった。自動車の運転席で『存在と時間』を読んでいたら、遠くの雲の中で稲妻が光った。もうすぐ夏だなと思った。
「書くこと。祈りとしての。」(フランツ・カフカ)
最近、toe の音楽をまた聴いている。お気に入りは『Because I Hear You』と『Rhapsody』。どちらの曲も、かすかに死の香りがするから。
なんとなくテレビをつけたらニュースしか流れていなかったから、すぐに電源を切った。
さっさと仕事を切り上げて、みんなで会社の鍵を閉めた。同僚たちと15分ほど立ち話をした。
HさんとSさんは夕ごはんを食べに行った。Iさんはパチンコをしに行った。わたしは真っ直ぐ家に帰った。
自動車の中では、ずっと映画音楽を聴いている。バックミラー越しの風景は、そこはかとなく離人的で、まるで映画のカメラのようだ、と思う。
お客さんがフルーツグミのつめあわせをくれたから、この頃、毎日そればかり食べている。
一度だけ、会社のオフィスでひとりきりになったので、思いきり大きな音でグレン・グールドの『平均律クラヴィーア曲集』を流したことがある。気分がすっとした。
YOASOBIの『アイドル』がきらいだ。あと、adoの『新世界』も。街中で流れているのを聴くたびに、もうやめてくれと言いたくなる。
夕ごはんはそんなに食べなくてもいい、夜は眠るだけだから、カロリーはそんなに必要ない、となにかで聞いたから、その通りにしてみたら、ひと月で二キロ痩せた。
わたしの部屋の壁には八角形の時計が掛かっている。木製の枠に真っ白い文字盤の、とてもシンプルな時計だ。
夜、窓を開け放つと、すずしい風が部屋を吹き抜けて、気持ちいい、と思う。
わたしは眠ると十中八九夢を見る。夢は目が覚めてから15分ほどはあざやかな余韻を漂わせているが、一時間ほどで七、八割方減衰し、正午までに完全に消滅する。
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tomokoogawa · 5 months
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reflections-in-t · 5 months
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ドイツ・グラモフォンから2017年
『Philip Glass: Piano Works』で
ソロデビューして以来
破竹の勢いで名声を高めている
アイスランド/レイキャビク生まれの
ヴィキングル・オラフソン / Víkingur Ólafsson
グレン・グールドの再来ともいわれシーンに衝撃をあたえ続けているこの若きピアニストの演奏をひとたび耳にすれば、誰もがその魅力の虜に
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#VikingurOlafsson
#ヴィキングルオラフソン
#1984年
#アイスランドレイキャビク生まれ
#ジュリアード音楽院
#2017年ソロデビュー
#PhilipGlassPianoWorks
#煌めきと輝きはグールド以上
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#ブラームス
#シューマン
#ラモー
#ドビュッシー
#AppleMusicClassical
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rumrumraisin · 7 months
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1981年レコーディング
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nannerl78 · 8 months
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皮肉屋の一面もあるグレン・グールドが、グリーグの室内楽曲を非の打ち所のない音楽だと好んでいた。
(Eine Violinsonate in der „Schicksals“-Tonartから)
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sika0728 · 9 months
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日記
ロケが終わり、疲れが露わになりめまいと不眠の仲良しコンビが招きもしていないのにご来訪。震えて眠れとも言われていないのに震えて眠るしかない始末。
レコードを買う散歩に出かけたいのだが身体がその欲求に従うこと能はず血界戦線を読み返すのみ。世界を救う秘密結社の物語、既刊21巻。次は実家から送ったスラムダンク。
グレン・グールドのバッハ平均律や、メルドーの名作の数々や、デイヴィッド・ボウイの名作レコードを探しているうちに関係のない素敵なレコードに遭遇して、コーヒーを飲みながらうっとり聴きたい週末だった。
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kamanori · 10 months
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グレン・グールド/ジョナサン・コット『グレン・グールドは語る』(訳:宮澤淳一、ちくま学芸文庫)を読む。宮澤さんの訳は自然で、とてもいい。原著を持っているけれど、これならば喜んで訳書を手にとろう、と思える。
グールドに興味を持ったのはユクスキュルの生物理論の基礎である「対位法 Kontrapunkt」を理解しなければならなかったため。音楽理論の本を読むのは気が引けるので、ユクスキュルもよく聴いていたであろうバッハをSpotifyで垂れ流すようになった。ある日、心地いい演奏が耳にとまる。その演者がグールドだった。
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yohko-amemiya · 8 months
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Eine Violinsonate in der „Schicksals“-Tonart
皮肉屋の一面もあるグレン・グールドが、グリーグの室内楽曲を非の打ち所のない音楽だと好んでいた。
100人の大作曲家 Eine Violinsonate in der „Schicksals“-Tonart 2024年1月18日 おしらせ いよいよ、というか、ようやくなのか。WordPressサポートを騙る事件。 2024年1月15日 100人の大作曲家 Parliament PLP-132 Romeo And Juliet, Ballet Suite by Prokofiev 2023年12月19日 Violin Music. 愛聴すべき室内楽曲 Schcksals-Tonart c-Moll. EdvardGrieg Eine Violinsonate in der „Schicksals“-Tonart 〝運命〟の調のヴァイオリン・ソナタ Edvard Grieg: Sonate für Violine und Klavier Nr. 3 in…
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無人島に持って行くピアノソロ・ライヴ録音の名盤 ― 感動を言葉に直すことの魅了。自身の耳と心で感じた音楽の質を率直に著す吉田秀和の豊かな言葉は人々の道標となった。
「 無人島に持って行くピアノソロ・ライヴ録音の名盤 ― 感動を言葉に直すことの魅了。自身の耳と心で感じた音楽の質を率直に著す吉田秀和の豊かな言葉は人々の道標となった。」を通販レコードとしてご案内します。 評論家・吉田秀和が生まれた日(1913年9月23日)。 9月23日 著作は多数あり、指揮者ヴィルヘルム・フルトヴェングラーなど巨匠音楽家らの音楽に触れ、また当時日本では未知の存在だった作曲家ジョン・ケージやピアニストのグレン・グールドなどを日本の聴衆に紹介した。音楽教育にも貢献し、桐朋学園大学音楽学部の母体である「子供のための音楽教室」の創設にかかわり、小澤征爾、中村紘子らを育てた。 DE DGG 419 499-1 – Vladimir Horowitz – HOROWITZ IN MOSCOW DE BLUE LINE, STEREO DIGITAL 1枚組…
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hdf1995log · 8 years
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グレン・グールド 模写
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