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#今から去年のケーキを食べるぜ! …すみません小学生みたいなこと言って
numasaaan · 1 year
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milkteabonbon · 1 year
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2023.1
1/1
あけましておめでとうございます。久しぶりに自分の家でお正月を迎えました。おぜんざいをいただいてからちょっと遠くの神社まで腹ごなしに歩いて初詣。お屠蘇が三種類くらいから選べました。いい神社だ。
1/2
釣り始めしてくる!と家人が出かけて行ったので刺繍始めでもしよう…と図案を写す。この布、雰囲気あるけど全然チャコが乗らない!ひえ〜と鳴きながら必死に写しました。消えたところはイメージでなんとかします。ハートの葉っぱのニオイスミレの図案でハッピー気分。
1/3
前厄の年なのでお世話になっている神社で御祈祷してもらう。苗字を三回くらい間違えられて笑ってしまった。神様にちゃんと伝わったかなぁ。御祈祷のあとに御神酒をいただいたのですがさすがお酒の神様の神社、ものすごーくおいしいお酒でした。帰りにいつもの山の中のお店でおぜんざいと飲み比べセットをいただきお正月大満喫。
1/4
冬休みどうして行ってしまうん……。あまりに辛いので顔剃りとまつパに行きました。気合いが入った。えがったです。
1/5
久しぶりに仕事着を着たらパツパツになっており冷や汗が出た。冬ッ!
1/6
明日のためのパン生地を仕込んだ。
1/7
ピクニック始めをした。年末に謎のテンションで買った高いロースハムをリュスティックに挟んでサンドイッチに。熱々のコーヒーとりんごを携えて河川敷までてくてく歩く時間がたのしい。七草見つかるかなーって探してみたのですがだめでした。家人が作ったバードコールを鳴らしてみたらシジュウカラに返事をされて面白かった。
1/8
薔薇の剪定。人のを預かっているのでただいま4鉢育てている。勢いが良いので深めに切ったんだけど大丈夫かしら。春に答えが出るでしょう。ビオラと一緒に植えたムスカリの葉っぱがどんどん伸びてきてたのしい。チューリップ 買い足したい。
1/9
オーダーの御依頼が舞い込んできてうれしい年始。今年はどんどん頑張りたい。
1/10
手羽先が安かったのでいっぱい買ってきてお酢とお醤油でほろほろ煮。なんでも圧力鍋で炊くと美味しい。
1/11
なんだか捨て鉢な気持ちでお仕事をこなした。お昼に食べたバナナブレッドが気持ちを明るくしてくれた。作ってよかった。
1/12
コンテストまで残りわずかなのでグラスアイを探しにテディベアーズクラブへゆく。やっぱり茶色のポンチ目が好き!単色で買ってフェルトで白目つけても良いんだろうけど。今回の子は新しいヴィンテージがテーマです。
1/13
なんだかあったかい日だったので春の服を買いました。気づけばワードローブに黒がほぼない。
1/14
自分の作品に自信が持てない期(よくある)に入ってしまった。とぼとぼとお教室に向かうと先生があれこれ提案してくれたり他の生徒さんの作品を見せてもらったりして元気をもらいました。可愛い子ができるよ。
1/15
オーダーの御依頼を受けにカフェへ行く。本物のクランペット初めて食べた!自分で作ったのとけっこう似てたな〜。依頼主様の思いがこもった子を作るよ。がんばろう。
1/16
豚のすね肉が安かったのでアイスヴァインとはほど遠いがポトフのいとこ関係くらいの煮込み料理を作って食べました。白ワインで煮るととてもおいしい。家人がバゲット浸してもくもくと食べていてかわいい。たくさんお食べ。BSで「西の魔女が死んだ」のレターボックス版をやっていて、やっぱり画面がきれいな映画が好きだなあと思った。
1/17
家人と震災の思い出話をするなど。今朝偶然目が覚めた時間がちょうど5時40分くらいでした。
1/18
仲良し育休同僚ちゃんとランチ。ベビーの帽子を編むことになりました。魔女はこういうの大好きなのでセレモニードレスも編みたくなるわよ。
1/19
二件目のオーダーを受けました。なんだか楽しいくまができそう。直接会って話してオーダーを受けるのって、今の時代と逆行してないかなと思うけど、会ってみないと分からないことたくさんあるし、話していると思わぬところからインスピレーションを受けたり、依頼主さんも自分の心に気づいたりする瞬間があって、それがすごく尊い時間に感じるのです。誰かのためにものをつくることの意味にすこし触れられるというか……。今後も当面はこのスタイルです。
1/20
ハンドクリームがなくなってしまいました。一度良いやつを使うともうドラッグストアの商品で満足できない。学生の頃はハンドクリームやボディクリームをもらっても持て余していたのに、今や必需品となっています。楽しみが出来てうれしいね。
1/21
休日だけど早く目が覚めたのでひとり朝ごはん。静かな冬の朝が好き。静謐で厳か。シナモントーストと紅茶が聖餐に変わる。
1/22
同僚ベビーへの贈り物完成!編み物の達人のお友達に教えてもらいながら編みました。喜んでもらえるといいなあ。
1/23
寒波が来る来ると言うのでお昼休みに気まぐれでスティック粉末タイプのロイヤルミルクティーを買いました。お湯で溶かしてもいまいち薄くてこれじゃないんだよな……て感じなんでしょ?と思っていたら知らんうちに技術革新されていたようで買い置き決定のお品になりました。これは特別な時に飲むやつだ。普段はトワイニングのティーバッグです。
1/24
去年から悩みに悩んでいたコートを買っちゃった!キャメル色のロングトレンチコートです。襟を立てるとスパイ風になれる。買ってよかった。来冬はオフホワイトの襟巻きと合わせたいです。
1/25
大寒波到来。すべての電車が止まっているので家でのんびり過ごしました。氷を踏んで遊ぶ小学生たちに混じってそっと足を乗せてみる大人。
1/26
アールグレイブーケティーラテが美味しすぎるので定番にならないかな?と思いつつ寒いホームで電車を待っている。
1/27
目が覚めるとしんしん雪が降っていた。はしゃぎながら歩いていたら家人が「この人遅刻するわ……」の顔をしていました。ギリギリ間に合いました。
1/28
髪の毛をチョコレートブラウン(ラベンダー入り)に染めてもらいました。もうすぐバレンタインです。
1/29
ヘリックス開けたくなって病院に行ったら今日の分のニードルが無くなったからピアスガンのみという旨が書かれた札が提げてあって大分ガッカリしながら帰りました。
1/30
アトリエでお茶をいただきながらよもやま話。コンテストに出したテディベアのことや近くのおいしいケーキ屋さんの話など。
1/31
百貨店のバレンタインフェアでソフトクリームを食べ、焼き菓子をニヤニヤしながら買いました。会期中あと二回は行きたい。かわいいクッキー缶は心の癒しよ。
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ichinichi-okure · 4 months
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2024.1.26fri/tokyo
満月のせいか昨日は夕方から背中が激痛で早く就寝したため、今朝は5時前に起きる。 背中の痛みは消えていてよかった。もしかして行ける?とドアの外に出て外気を確かめる。まだ空は暗く満月がポワっと輝いてた。 寒いは寒いけど、大丈夫かも!とすぐに身支度を始める。
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去年の夏から持病が悪化して、いわゆる難病指定の病を完治できるという東洋医学とめぐり合い、���質から変革しようと鍼灸と食事療法で治療中。長い月日がかかるだろうと診断され秋からゆっくりと取り組んでいる。大人になってほぼ体重変動なかったのに初めて10キロも落ちた!いっぱい食べても吸収しないのだ。普通の日常を過ごせてはいるものの全く動作が進まないことが多くなった。 日頃から時間や予定どおりにこなすことが苦手なのに、当たり前な簡単なことも輪をかけて思うようにいかない。 きっと今朝もゆっくり寝ていた方がいいとなるけど、目覚めてなんだか快調な感覚だ。 直前でも変更することもあるように、立ち止まりからだの今の声を聞き、直感で行動するようになった。
朝のルーティンは体重、体温を測る。ご先祖さまと色んな存在への感謝のお祈り。白湯とお茶を飲んで玄米餅が入った味噌汁をいただく。たくさん着込んでカイロも貼って支度。6時: よし、いくぞ!と外に出て自転車を走らせる。まんまるになったばかりの満月が澄んだ冬の夜明けの空にくっきりまだ見える。
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実は2年半前から始めたこと。ある深夜、お導きのように突然入ってきた「武道」というワード。 全く自分の頭になかったこと、情報ゼロのまま入門。名前や自分のこと、相手のことも知らない、ほぼ言葉も交わさない世界に別次元にいるような心地よさがあった。この感覚を大切にしたいとほとんど周りに告げず、自分の内側だけで鍛錬していこうと思った。何も身についてもいないのに発露すると何か薄い感じになってしまう思いもあった。このことはそろそろ自身がもうひとつの段階の始まりが来る頃でもあり、どこかで改めて綴りたいと思っている。
今朝の稽古は仙人のような師だ。言葉少なく独特な空気を醸し出し私は好んでいる。しかし前の晩寝るのが遅くなるとなかなか出れない。 今日は支度が遅れ、掃除には間に合わなかった。本来は掃除もひとつの大切なこと。でもできなかった自分も許そう。薄暗いなか、各々が拝礼から身体を温める動きや柔軟体操する。そして静かに師のそばに集まるように始まる。 力を出力するとき、手を伸ばす時、からだのどこに収まるかを観察していく。作用反作用、地味にとてもむずかしい。 朝日が道場に差し込みはじめ神秘的だ。普段の稽古と違い激しく動かないからとにかく冷える。少し動いていても、つま先がどんどん感覚がなくなっていく。1人ずつ教えていただく時間になり、私はあまり出ないから一番最後の順。1時間以上は待つ。しばらく待っていたが冷えは大敵、今は体調を思い諦め切りあげる。 ロビーで暖をとっていたら、特別に自衛官の禊稽古があったようで居合わせた。この人たちが国を守っているのだなぁという貫禄。
外に出るとすっかりお日様が照って日差しが暖かったので少し日向ぼっこしていこう。同志も「一緒にいいですか?」とふたりで何気ない話でぼーっとするひととき。辰年にちなんだキャンディをくれた。かわいい。誰もいない冬の空気、木の影が美しい。都心とは思えないこの風景と時間が好きだ。 あら、もう9時半!またね!と別れ家路に。
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食事療法は昔の日本の食生活がお手本にすればいいと改めて思う。このところ発酵づくりにスイッチ入っている。 「自分の菌を取り入れるといいんだって」と最近色々作っている市子チャンに教わる。自分の住むところ、ルーツの産地のものを取り入れるのもいいと聞き、父の故郷・安曇野の麹とお水も用意した。塩こうじを先日仕込み、ひと瓶ずつに「ありがとう、美味しくな~れ!」と声かけしながら毎日混ぜ混ぜ育んでる。 昨夜仕込もうとしていた味噌づくりをこれからする。2晩以上浸した大豆を弱火でじわじわ煮る。 時々灰汁をとったり、煮汁がなくならないように見守らなければならない。灰汁がミステリーサークルみたいに浮き上がり、渦がぐるぐる古事記の神様の国産みたいだ。 3月の展覧会のためのお財布制作の革カットも並行して進める。この作業はパズルで神経と力を使うので一苦労。
もうすぐ大豆が煮えそうなところで、午後の稽古も出ようと決めた。 なかなか体調が定まらないけれど、行けると思う時は途中でギブアップも承知で行く。今心がけているのはできるだけがんばらなく普通な行為となるように途切らせないリズム。無理をしないで氣を枯らさないようにしていく鍛錬からの体力づくり。あとは何となくな気持ちに任せる。 昨日姉が持ってきてくれた豚汁をお昼に頂いて、再び道場へ向かう。
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午後は館長の稽古。今朝の自衛官たちの話から始まった。 「日本の自衛隊は今も能登災害にあるように救助復興に活躍する立場と世間では認識されているが、本来は国防というお役目。彼らはそうであるが、じゃあ我々は何ができるのか?同じようにはいかないけれど一人一人にお役目があることを改めてそれぞれが考え、まずはからだをつくるということ。」まさに自分が今軸としている「からだづくり」。基礎体力をつけていきたい。 先日はスタミナ切れになり途中ギブアップしたが今日は最後まで通せた。 よく教えてくれる学生さんとお話ししながら門を出る。
17時:お客様のオーダーのイヤリングの納品へHELENHEIJIに向かう。 通りがかりに木材の端材が路上販売していた。いくつかお店のディスプレイ用に頂いていく。 その先のオーガニック店でネギと赤かぶ、煎餅を買う。今グルテンと乳製品のスィーツを控えているので最近はお煎餅ばかり買っちゃう(揚げNG)。 食材も原材料を細かく見ちゃうし、買い物にも時間を要する。お弁当とか揚げ物は油が多いので買えなくなったし、病気を通して食の見直しのタイミングなのだと思うようになって面白い。 HELENHEIJIで納品&少しおしゃべり。まだミッションあるから!といつもより早く帰る。切らしていたティッシュを買い、すっかり暗くなり朝と同じ風景に満月が再び昇っていた。
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帰宅後、すぐに大豆煮と仕事を再開。小腹が空いて、おやつにこの前作った豆腐とヨーグルトの干柿ケーキを一口。保存瓶の煮沸、麹と塩もすり合わせていく。 経理をしてくれている姉から去年の経費報告の催促。事務作業、いつも溜めてしまう。 やっと豆が柔らかくなり、次の工程なんだっけ?と調べつつ、とにかく豆を潰す作業。これがまた大変。やっと瓶にぎゅうぎゅう詰めて仕込み終わった。初めての味噌作り、わずかな量なのになかなか時間がかかってしまったけれどその分愛おしい。味噌として出来上がりが待ち遠しい!
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22時:遅い夕食。ささっと作れ、消化に良く身体を温める大根とネギ鶏むね肉の梅干し鍋。 兵庫のあげちゃんが私の体調を知った途端に秘蔵の貴重な梅干しと味噌、糠床を送ってきてくれた、2020年の梅を使う。何も調味料入れず梅だけで濃厚な味がこんなにでるのか!と驚く。きっと滋養番長のあげちゃんの愛が凝縮されている。普段なかなか会えない友人たちにいざという時に支えてもらえありがたい。 経費整理が終わらず一区切りなところで今日は終了。姉に送信。 0時半:お風呂に入る。首まで温まって、出てお灸をすえる。まぁまぁメンテナンスも時間を要するから寝不足になることが多々。睡眠が一番なのに、、な矛盾!
常に食べられるものは何か?からだに合った食材、料理。日々からだの巡りを整えること、仕事をこなしつつ、1日がアッという間で他のことがほとんどできない。今日もあの人に連絡できなかったーとか、お礼もちゃんと伝えられてない、先送りや何かを観に行ったりなど諦めることが増えた。それも良しとしていく自分の中の手放し。 人と比べず自分が今できることを、ひとつひとつからだの声を聞く。2歩進んで3歩下がることもあるけど、自分に与えられた命は何かのメッセージ。日々積み重ねていく小さなことが、やがて積もって本来の自分と一致した「ヒト」となれるよう、今日も一日ありがとう、おやすみなさい。と眠りにつく。
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-プロフィール- フクシマミキ 東京 mïndy @mindy_22 www.mi-ndy.com
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animekirbyserifu · 6 months
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フームその2
11話 ・「違うわよパパ。(砂糖と塩を間違えたケーキを食べさせられたのは)それは去年のあたしの誕生日。」 ・「それにカービィは、あなた(カワサキ)の料理の良き理解者でしょ?」 ・「(ポポンを一刀両断するメタナイトを見て)かっこいー!」 ・「カービィ、(カワサキが投げたフライパンを)吸い込むのよ!」
12話 ・「(エスカルゴンは)それでブン達を買収したのね。」
13話 ・「そこがステキなんじゃない。」 ・「誰のやり方にも縛られず、新しいお祭りを(毎年)作るなんて。」 ・「(デデデが美しいお祭りを開催すると聞いて)聞き違いかしら?」 ・「パパの応援が必要?皆がしたいことをすればいいじゃない。」 ・「(警察署を爆破させたカービィに対して)あなたに説明しなかった私たちが悪いの。」 ・「キュリオさんはそうねぇ…。プププランドの歴史(を模した花火山車)を作ればいいんじゃない?」 ・「カワサキさんは、花火で得意(?)のお料理をデザインしたらどう?(カワサキはいつも呼び捨てなのに、何故か「さん」付けされている)」 ・「署長さんもお仕事をデザインするのよ。」 ・「デデデが武器を作ってるらしいの!」 ・「カービィ!あれ(デデデ山車)は本気であなたを狙ってるのよ!」 ・「来て、ワープスター!」
14話 ・「何がスピーチよ、またどうせカービィをバカにしてんでしょ?」 ・「メタナイト卿!デデデは何を企んでるの!?あんなインチキ枕配らせていいの!?」 ・「(メタナイトに提案されて)じゃあ、私もあの枕で寝ろってわけ?�� ・「(オクタコンが現れたのは)カービィが初めてこのプププランドに来たときよね。でも、なぜ(ブンと)一緒に同じ夢を見たのかしら?」 ・「カービィは危険なヤツなんだ…。カービィを追い出せ…カービィを追い出せ…カービィを追い…。」 ・「この枕で寝ると、これまでの出来事を思い出すのよ!でも、どんなことでも嫌な思い出になるの。カービィを憎むようにさせるために。」
15話 ・「(ブン達に対して)ちょっと!なんてことするの!?(※勝手にカービィが缶を追いかけて転がり落ちただけです)」 ・「あなたたち!カービィを虐めてそんなに楽しい?」 ・「そうかしら~?ではなぜいつも転がるのはカービィなの~?」 ・「(カービィは)一番小さいからいつも赤ん坊扱い…。成長過程のあなたには、弟が必要なのかもね。」 ・「こんにちは、ガングさん。」 ・「(オモチャを買ってもらえない弟に対して)いつもカービィをノケモノにするバツよ。」 ・「えぇ、(カービィは)小さいからちょうどいい遊び相手がいなくて。」 ・「今日はあなたにステキなプレゼントがあるのよ、カービィ。」 ・「えっと…『一回尻尾を引くだけで、全機能が起動…。』これね!(説明書を読みながら)」 ・「カービィ、(ロボット犬を)しっかり面倒見てね。」 ・「あのペット、そろそろカービィに懐いたかしら?」 ・「ブン、どうしてそんなに意地悪なの?せっかくカービィに弟ができたのに(そりゃおもちゃ屋に来たのにオモチャ買ってもらえないし、ロボット犬に近づいただけでジュース噴射されるし、ブンが拗ねるのも無理はない)。」 ・「よかった、私たちもあれくらい仲が良いといいのにね。はい、私の可愛い弟~(ブンの口にアメを押し込む)。」 ・「えぇ、何ですって!?カービィのペットがでんきショックを?」 ・「(ロボット犬の箱に描かれた)このマーク…もしかしたら…。」 ・「ホーリー…ナイトメア…トイズ…、もしかしたら、デデデも知らない、魔獣よ…。」 ・「待ってカービィ!お願い、私の話を聞いて!もうあのペットには近づかないで、あのオモチャは危険なのよ!」 ・「聞いてちょうだい!カービィ。あの(ロボット)犬はナイトメアが送ってきた魔獣かもしれないの。」 ・「カービィのためを思って言ってるのよ。どうしてあなたは分かってくれないの(いやロボット犬起動したのはフームでしょ)。」 ・「カービィ、危ない!離れて!(ロボット犬を追い払い、崖から落とす)」 ・「分からない…。でもカービィにとってはステキな弟だった。それだけは確かね…。」
16話 ・「これは…古代プププ文字。」 ・「フーム様、あなたを一目見て好きになりました。毎日、日の暮れるまでこの貝のあった海辺で、あなたの来るのを待っています。カイン(※貝殻ラブレターの内容)」 ・「貝殻の手紙なんてロマンチックだけど、誰かのイタズラかしら。」 ・「えぇ、海洋生物学は私の趣味の1つだけど?」 ・「だって…、あなた…魚でしょ?」 ・「(深呼吸して)私、海の中じゃ、息ができないでしょ、息ができないと…。…いい?あなたと私じゃ住む環境が違い過ぎるの。」 ・「ならカイン、もしあなたが陸に上がってきたら考えてあげる。さよなら…。」 ・「あら私だって魚は嫌いじゃないけど?」 ・「(カインは)同じ脊椎動物の仲間よ、バカにしない方がいいわ(この発言からフームは「脊椎動物」らしい)。」 ・「動物の、起源は1つ。私たちだって魚から進化したかもしれない。とくに口を利く魚なんて大切にしなくちゃ。」 ・「生き物に隔たりはないわ。もしそうなったら、恋人だろうがデートだろうが何でもするわ。」 ・「何言ってるのよ!いい?カインは魚よ、魚!(さっきと言ってることが…)」 ・モブ村人「ん~デートの相手が魚とは、流石パーム大臣の娘さんだ。」 ・「お似合い~?(キュリオにお似合いと言われて半ギレ)」 ・「違う!陸と海とじゃ大違い!」 ・「(水槽を押すのに疲れたブン達を指さして)分かった?ちょっと動くのも(カインにとっては)陸地は大変なとこなの。」 ・「だから言ったでしょ?あなたは陸には住めないの。」 ・「(デデデは)それでカインを利用したんだわ。」 ・「あんなにサンゴを壊しちゃって…カービィ、頼むわ(潜水艦からカービィを発射する)。」 ・「こちらこそ、あなた(カイン)を傷つけてしまって…。私が海の中で生きられれば良いのにね。」 ・「カイン、元気でね。」
17話 ・「ブン、忘れたの?今日は特別な日でしょ?」 ・「これがパパとママの結婚式よ。で、今日がその記念日。皆で食事に出るのが決まりなの。」 ・「(指輪を無くしたカービィに責任を求める感じで)カービィ分かってんの?」
18話 ・「眠り病…。」 ・「信じらんない、最低!それでも友達?(カービィのことを知っているメタナイトがいたならともかく、魔獣の知識がない子供のブンに責任を押しつけるのは流石にかわいそうである)」 ・「でも彼(カービィ)をこのまま放っておく気?誰のせいでこうなったの!(※ブンではなくデデデのせいです)」 ・「それが責任でしょ、ロロロとラララもよ。今すぐにピューキーの花を取ってきなさい!(つまりバババヶ原に行って死んでこいと)」 ・「(調子にのるブンを見て)呆れた…、メタナイト卿のおかげとも知らずに。」 ・「勇気って言うか、無鉄砲っていうか、先が思いやられる。」 ・「…ったく、あれだけ怖い思いをしたのに、(ブンは)自信過剰なんだから。」 ・「あーもーむかつく勘違いしちゃってー!ガツンと言ってやりたい!」 ・「今までにたくさん危ない目に遭ってきたでしょ?」 ・「ブン、あなたは何拗ねてるの?じゃああなたは英雄を気どるためにここまで来たの?違うでしょ、カービィを救うためでしょ?」 ・「カービィ、吸いこみよ。」 ・「メタナイト卿のおかげでなんとかね。」
19話 ・「(トッコリは)危険なツッパリ小僧のことを知らせるのよ!」 ・「いい?カービィ。もし見つかっても(ナックルジョーと)絶対戦っちゃダメよ。とにかく逃げて。」 ・「ワープ…(エスカルゴンに拘束される)」 ・「ナックルジョー…お父様はあなたに会いたい一心だったのよ。」 ・「ナックルジョー…(あなたは)魔獣になる可能性があるの。あなたがカービィにしたことを見て!」 ・「カービィ吸い込んで!」
20話 ・「どうしたのー?急に涼しくなってきた。」 ・「あ!これだ!分かったわ!これは「雪」よ。北の国だけに降る、雪っていうものよ!」 ・「変だと思わない?なんで(南国の)この村に雪が降るのよ。」 ・「ということは、この雪はアンタ(デデデ)の仕業!?」 ・「(チリーに対して)何なの…これ?雪のかたまりじゃない。」 ・「チリー?あなたどこから来たの?空?確かに雪は空から降るわね…。でも、そんな姿にしてくれたのは誰?…まぁ、この村に雪が降るぐらいだから、雪だるまも動くかもしれないけど。」 ・「チリー、アンタ今(カービィに)何をしたの?」 ・「カービィ…ダメよ!そいつと遊んじゃ!…もう。」 ・「「チリー」じゃないわよ。あなたのせいでカービィも溺れるとこだったじゃない!どうゆうつもり?」 ・「カービィとチリーは今2人っきりなのね!?」 ・「あの魔獣が村を凍らせたのね…。そして、チリーをつくった。」 ・「プププランドは氷河期になっちゃうわ!」 ・「カービィ、吸いこんで!」 ・「彼(チリー)はこんな南の国では生きていけない…。でも、きっと雪の降る北の国で生き返るわ…。さようなら…チリー。」
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shukiiflog · 10 months
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ある画家の手記if.33   告白
僕の好きなお店っていうのは、冷泉の親戚がオーナーをしてる小さなリストランテで、百貨店や大型デパートが立ち並ぶビルだらけの街の中心の、煉瓦造りの小さな路地の隙間から入っていった場所にある。 僕は背を少しかがめないと路地で頭を打つ。
料理にはさっぱり詳しくないけど、ここは雰囲気もいいし、調度品も綺麗に磨かれたアンティークが活きてて、いつきても騒々しすぎなくて、人とゆっくり話ができる。冷泉が小さな頃からここに出入りしてたらしい、冷泉とこの店には納得できる良い親和性があると思う。
香澄はこういうところがあんまり慣れないのか最初は少し緊張してたけど、僕が寛いでるのにつられてだんだん馴染んだみたいだった。 確かに大学生だけで入れるお店ではないかも。僕たちも普段より少し品のある服を着てきたし。 「直人、メニューに値段書いてない…」 香澄が困った顔でメニュー表を見る。 「ん…?気にしなくていいよ。好きなの食べて」 値段聞いたら食べてくれなくなりそうなので黙っておく。 いつも食事は家で作るばっかりだし、せっかくだからこういうときは贅沢なもの食べてほしいな。 注文して食事が運ばれてくるまで、僕はテーブルの上で香澄の片手をとって指を見ていた。綺麗な指だな。きめが細かくて白くて、爪の形も綺麗な楕円形で、女性みたいだ。 「…直人?」 「…どんな指輪が似合うかなと思って」 「ほ、ほんとに買うんだ…」 香澄は僕の金銭感覚に若干引いてる。僕がかなり高価なものを買うと知ってる顔だ。僕にわりとお金の余裕があるおかげもあるけど、僕は買うときは中途半端なものは買わない主義。 「学校であんまり目立たないようなやつがいいな…」 「学校行くときは外してていいよ」 「それもなんかなー…」 「鎖とおしてネックレスにするとか」 二人で駄弁ってたら料理が運ばれてきて、僕はいつもみたいにゆっくりペースでもそもそ食べる。 香澄は美味しいって喜んでくれた。食べるペースもいつもより心なし早いような気がす��。 僕は冷泉に連れられてここを知って、大学の頃からよくここにこっそりきてたから、香澄もここに連れてこれてよかった。 僕が知ってる好きなものを、香澄にも知ってもらえたら嬉しい。好いてもらえたらもっと嬉しい。 僕は食べてる間、香澄を見てずっとにこにこしてたと思う。 デザートは今日はケーキだって聞いてたけど、僕と古い知り合いのオーナー自らが運んできてくれたケーキは、いつもの美味しそうな小ぶりのケーキの上に、ちょっと不似合いな小さなサンタさんが乗っていた。 こっちに腕をいっぱい広げた、赤い服と白いひげの砂糖でできたサンタさんだ 「わぁ……」 僕のにも香澄のにも一人ずつ乗ってる。このお店はなんでも綺麗に雰囲気を統一するからちょっと俗っぽいサンタさんなんてクリスマスでも普通のメニューでは使われないんだけど 「直人くん、昔からこういうのに弱いよね」 長いブロンドを後ろで一つに結んだオーナーが笑って言った。僕は頷くしかなかった。自分でも目がうるうるするのがわかる。 「他のお客には内緒にしてね。今日のお連れ様はなんだか特別みたいだから、俺も嬉しくてさ」 「ありがとう、咲さん」 「恋人?」 香澄のことだ。僕は笑顔で頷いた。 食べるのがもったいなくてサンタさんを長い間じっと見てた。香澄はそんな僕をじっと見てた。
デザートを食べ終わって、香澄がよそ見してるうちに会計を済ませた。 手を繋いで路地を出る。 外は雪が降っていた。わきに抱えていたマフラーを香澄の首に通して巻く。去年も僕、何度かこれやったね。 香澄の方が指先が冷たい。僕の手で覆うように手を繋いで温める。 「直人は次、どこ行きたい?」 「…。」 「わ、わかってるよ、指輪でしょ」 香澄は指輪になのか、買いに行くことになのか、少し照れてる感じがする。 二人ですぐ近くのデパートに入る。夜だけど中は明るくて、香水や化粧品の匂いが漂う。 絵を描いてた頃は展示スペースを借りる時くらいしか縁のない場所だったけど、今の生活になってから服とかはこういう場所で買うようになった。おかげで僕は身なりだけ少し上等になった。一緒にいる香澄にそんなことで恥をかかせたくないし。
探さなくても入ってすぐ見える位置にそういうお店があるのが見えたから、香澄の手を引いて迷わずそっちへ行く。 キュッと香澄の靴底が音を立ててその場で止まった。 「あの店に入るの…?! 俺、無理、だって凄い高級ブランドじゃん、俺でもあの名前知ってるよ、もっと安いとこ…」 「かーすーみ、往生際が悪い。僕がこういうものには出し惜しまないの知ってるくせに」 香澄の首を掴んでグイグイ押すようにして歩く。 「えええ、だって、不相応だよ、俺大学生だよ?!」 「僕は今年で41だ。相応じゃない?」 「ちょちょ、えええ」 いつまでも入店をためたう香澄に背中からのしかかって入店する。奇妙な入店にも店員はまったく驚かずに丁寧に対応してくれた。 シンプルなデザインがいい。ということで巨大なダイヤがついてるほどの凄い値段にはならなかった。僕もお揃いで買った。
店から出て、二人で嵌めた指輪を手を広げて���げしげと見る。 「これって直人は情香さんとダブっちゃわない?」 「情香ちゃんは引っかかって仕事の邪魔だって言って買わせてくれなかったよ…」 「そ、そう…情香さんらしいな」 情香ちゃんとは一緒にクリスマスを過ごす、なんてこともしたことないな。 「香澄はクリスマスってこれまで何をして過ごしてた?」 「うー…ん、何してたっけ…  彼女がいたときは一緒に遊んだりしてたんじゃないかな」 「去年のクリスマスごろに僕と二人で出かけたりもしたね」 僕が香澄にサンタの帽子をかぶせたり、クマを持たせたり、あの日初めてメガネを買ったり。 あの頃の香澄は何度訪ねてきてくれても必ず帰っていってしまう存在だった。 まるで帰ってきたような温かさでいつもきてくれるけど、僕の部屋ではない場所へ帰る。でも今は僕が香澄の帰る場所だ。 嬉しくて香澄を後ろからぎゅうぎゅう抱きしめながら、デパートの真ん中の大きなクリスマスツリーを二人で見る。そこだけ吹き抜けで、雪が少し積もってて綺麗だった。 一年前… 「ーーー…。」 思い出した。一年前、あのあとなぜか急に香澄が僕の部屋に泊まるって言い出して、あの日初めて香澄にキスされて……… 「〜〜〜…。」 今度は恥ずかしくなって香澄のマフラーに顔を埋めた。僕なに考えてたんだあれ… 今は香澄とするだけでいちいちドキドキするのに、あの頃は気持ちいいだけでなんとも思ってなかったな… 挙動不審な僕を背中にくっつけた香澄は、マフラーを一度とると僕の首と一緒にぐるぐる巻いて、二人でバランスを崩してよろけながら笑ってた。
続き
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projectyn · 11 months
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【レビュー】硬くなる椅子 ―y/n『Q&Q』における居心地の悪さについて 寺田健人
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撮影:菅原康太
1. 橋本清と山﨑健太2人のユニットy/nの『Q&Q』は、2023年4月城崎国際アートセンター(KIAC)のアーティスト・イン・レジデンスプログラムでの試演会を経て、同年5月末にアトリエ春風舎で上演された。y/nによる教育をテーマにした作品には東京芸術祭ファーム2022 Farm-Lab Exhibitionでのパフォーマンス『Education (in your language)』があり、本作はこれを引き継ぐものである。日本の学校における規範的なもの、校則、法律などが舞台上の黒板を模したスクリーンに投影され、それらについて橋本が説明をしていくという流れでパフォーマンスが進行していく。しかし、その内容の善悪について橋本が意見を口にすることは積極的に避けられ何か明確な答えが作中で提示されるわけではない。いわゆる「Q&A」が質問と答えなのだとすると、『Q&Q』はスクリーンに投影された規範(Q)に対して鑑賞者の中に生まれる(Q)を観測するためのレクチャーなのかもしれない。私は、城崎国際アートセンターでのレジデンスプログラムにy/nの二人と俳優の和田華子と共に参加していた為、本稿はアトリエ春風舎で上演された内容だけではなく、試演会との違いなども含めた内容にしたいと思う。
2. 「えー、席の座り心地はどうでしょうか?」 これは『Q&Q』の冒頭、橋本が観客に向けて初めて話かける言葉である。「教育」というテーマからも連想されることだが、その後の台詞からもどうやら橋本が先生役をやっているようだと自然に受け取ることができる。「まわりに座っているのはどんな人たちでしょうか?」「よく見回してみましょう。笑顔がかわせたでしょうか。」と橋本が聞くと、観客はキョロキョロとして周りを見渡す。お互いに笑って見せたりもする。橋本曰く冒頭の台詞は「中三になって最初の日、新しい担任が教室に入ってきて、一番はじめに口にした挨拶の言葉」なのであるが、この一連の芝居から舞台を教卓、客席を座席とした教室が出来上がったように感じられた。しかもそれが、橋本の芝居や黒板を模した舞台美術によって作り出されたのではなく、観客側が自ら生徒役になったことで完成されたようだった。 そこから観客席の照明が落とされ、日本(ニッポン)の教育の基本中の基本を確認するレクチャーがスタートする。
3. レクチャーでは、いくつかのレベルの規範が提示されていた。一つは教育基本法や学習指導要領、明治期に定められた「学校建築図説明及設計大要」などの法律や要領である。それらの文言は、舞台奥に設置されたスクリーンに投影され、それを橋本が読み上げていく。しかし映し出された文字をそのままを読み上げるわけではない。教育基本法の一文「我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。」では、「我々」とは読まず「日本国民」と読み、「我が国」を「日本」と読む。諸々の規範における「我々」と距離をとる表現であり、その読み方の変更は橋本の小さな反抗、あるいは同類に送るサインにも思える。その後もこれらの規範において誰が想定されているのかを確認していく作業が続く。例えば「学校建築図説明及設計大要」では「教室の窓は南側につくって、生徒の左側から太陽の光が入るようにし、利き手と逆の側から光が入るつくりにすること」を求めておりその基準は日本人の9割を占める右利きの人たちになっていることが明かされる。上演前、開場中には、日本国憲法第二六条が映し出されていたが、そこには「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひ���しく教育を受ける権利を有する。」とあった。「すべて」に含まれない、法律によって記されていない「我々」の居場所はどこにあるのだろうか。 別の規範としては、学校独自のルールが挙げられていた。机の並び方がアイウエオ順であることや、教室の黒板の両サイドに扉があることなど、橋本の個人の経験らしき内容が語られる。「教育とか学校の話って、誰でも、何かしら言いたいことがあるというか、しゃべれる話があって。けっこう盛り上がれるって意味では使える話題だと思う」とパフォーマンス中に橋本は言うがまさにそうだと思う(そう思えてしまうのはなぜだろう。「我々」が問うべきQのひとつかもしれない)。教室の作られ方の違いや座席の順番などについては城崎での滞在制作中、参加者同士で話し合ってそれも大変盛り上がったことを覚えている。実際、試演会でも橋本の個人的な経験を回想するような場面が作られており、鑑賞している身としては学生時代を思い出しながら話を聞く場面が多かったように思える。しかし、アトリエ春風舎で上演されたものでは回想や個人の経験などに関しての描写が大幅にカットされている。個人的と思われる描写、例えば「生活日記」は橋本と当時の担任とのやりとりが記されており橋本がそれを朗読する場面では、日記に描かれなかった内容、つまり「記されること」と「記されないこと」について意識を向けさせる機能を持っているし、席順で当時好きだった人の話をする際も、橋本の性的指向を読み取るためのフックとなっており学校話にありがちな懐かしさやエモさに回収されないようにしていることがわかる。
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撮影:菅原康太
4. さらにもう一つの規範、校則としては「不純異性交遊」の話を挙げている。「不純異性交遊」という用語が端的に言えばセックスを禁止している点を確認した上で、最新版の学習指導要領の中に記される「生きる力」にセックスが含まれていないことを指摘する。学習指導要領のなかに「妊娠の経過は取り扱わないものとする」という文言があり義務教育の中ではセックスは教えない。また、「不純異性交遊」は異性であることを前提としており妊娠を伴わない「性的逸脱行為」はそこに含まれていない。禁止される規範にすらも記されない「誰か」の存在が見えてくるようだ。この「不純異性交遊」を語る場面では、橋本は突然タバコを吸い出したり、バナナを食べ始めたりする。その橋本は、先生でもなく、y/nの橋本を演じているわけでもない。誰なのかは明かされないまま、その橋本は口から白い煙を吐き、バナナを咥えて指を舐める。ここで重要なのは奇妙な存在であるその橋本が、他の橋本と同じように舞台上に立ちそれらの行動をして、台詞に戻ってくることだ。役がシームレスに繋がり、橋本の存在が宙に浮く。
5. 最後の場面では、冒頭に登場した先生が再び登場する。先ほどの先生が新学期、あるいは入学式の先生だとしたら、この先生は学年末、卒業式の先生かもしれない。 「ここにいる人たちと一緒に過ごす時間も、もうすぐおしまいです。でも、私たち、は、これからも同じ時間を共有しています。まわりに座っているのは、どんな人たちでしょうか? まわりに座っていないのは、どんな人たちでしょうか?」 橋本の台詞の中で「私たち」が強調されていた。「私たち」とは誰なのだろうか。また、「私たち」に含まれない人たちとは誰なのだろうか。『Q&Q』を観ながら、「LGBT理解促進法案」の内容を思い出していた。LGBT理解促進法案の第十二条に「措置の実施等に当たっての留意」を新設し、「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとする。この場合において、政府は、その運用に必要な指針を策定するものとする。」と報道されていた。「全ての国民」は文字通りの全てではない。『Q&Q』の中で扱われていた諸々の規範の中で「我々」とされているものがいるように、誰かによって規定された「全ての国民」なのだ。 「よく見回してみましょう。笑顔が交わせるでしょうか。」 冒頭には笑顔を交わしていた隣の人がこちらを観ない。というより誰も周りを見ていなかった。『Q&Q』で、何か規範に対して特定の答えが明示されていないのはその答えが新しい規範を産む可能性があるからかもしれない。また、学校の話を誰もが盛り上がれる話題として扱わなかったのは、学校教育を懐かしめる「我々」にならない為だったのだろう。試演会の時に、どこか懐かしさを感じて喜んだ自分はある規範に乗ることができた「我々」だったのだろう。繰り返し問われる規範についてのレクチャーの中で、かつて学生時代にそれらに抗えなかった過去の自分も、規範に知らないうちに取り込まれ、受け入れてしまっている今の自分も同時に感じることになり、パフォーマンスが終わるとすぐに席を離れたい衝動に駆られた。「えー、席の座り心地はどうでしょうか?」という最初の先生のセリフを思い出す。『Q&Q』で作られた仮の教室に配置された座り心地が程よいあの椅子は、みんなにとって座り心地がいいものではないのかもしれない。「私たち、は、これからも同じ時間を共有しています。」学校は小さな社会というが、『Q&Q』を観て以来、「私たち」は今もあの教室の中にいる。
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撮影:菅原康太
寺田健人 1991年沖縄県生まれ。社会が作り出した「性」や「生まれ」に関する諸規範によって人々の行動・思考が決定されていく生政治に関心を持ち、ラディカル・フェミニズムが生み出した「個人的なことは政治的なこと」の実践として、主にパフォーマンスと写真を軸にして制作を行なっている。主な展示に、「想像上の妻と娘にケーキを買って帰る」BankART Under35 2022(BankART KAIKO、横浜、2022年)、『琉球の横顔 ー描かれた「私」からの出発ー』(沖縄県立博物館・美術館、那覇、2021年)。
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evkkmag · 1 year
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2023.6.5
今回は『売り言葉 』 にはじめて挑まれる女優さんにもコラムいただきました
新まおりさん [A]に出演
皆様はじめまして。新まおりと申します。 はじめましての方に優しくないこの苗字、読み方はアタラシです。ぜひお見知りおきを。
さて、先日外輪さんから「WEBマガジン用になにか書いてくれないか」と頼まれました。もー!そういうことは早めに言ってほしいですね。
私は書くことが得意ではありません。ただでさえ莫大なエネルギーと時間を消耗するのに、テーマ探しからとなると、それはもう気が遠くなるような大仕事なのです。
今回がevkk初参加ですので、自己紹介でも書こうかと思ってやめにしました。なぜなら、私は自己紹介も得意ではないから!(��ゃあ何が得意なの?なんて聞かないでくださいね。)
自分でも自分をよく分かっていないというのに、何を紹介しろというのでしょう。元気よく紹介できるのはせいぜい名前くらいなもんで、そんなもの最初の一行でとうに済ませてしまいました。そもそも、これから芝居を観ようという方々に "新まおり" の中身を知ってもらう必要なんて無いのかもしれません。
自分では不思議なのですが、今の私は30代にも、20代にも、ときには10代にも見られる事があります。(10代の頃は頻繁に30代と間違われていました。よくも勝手に私の20代をうばったな!)
そして、しばらく一緒に過ごしてみると「話が大人だよね」だとか「話すと子どもだよね」とかって言われるのです。
これは一体どういうことなのでしょうか。決して相手や状況に応じて、私が巧みに演じ分けているわけではありませんよ。(それができたら役者に苦労していませんから)
私はずーっと私のままです。私は全然変わっていないのに、違って見えるらしいのです。
「そうか。出逢った人の数だけ "まおり" が存在しているんだ。」
その事に気がついてからというもの、私はできる限り自己の紹介はしないようにしています。
とはいえ、当然 "私が思う私" も存在しているわけで。
外輪さんは私と出逢ってからの一年間、ことごとく "新まおり" を勘違いしておられました。後から「思ってたのと違う!」とクレームをつけられても困るので、外輪さんのイメージする私像を訂正、訂正、訂正…。その都度訂正を重ねてきました。しかし、それはそれで "外輪さんから見た新まおり" という一種の正解だったんですよね。
必死に訂正してきたことを、お詫びして訂正いたします。
人にも自分にもウソはつきたくないけれど、「相手が描いている人物像を崩さない」ための努力はある程度必要かも、と思えてきました。 それはすなわち「相手のニーズに応える」ということでもあります。ある程度どころか必須のスキル。仕事の一環。社会の一員として果たすべき責任。
私も社会の一員として、そして何より役者として、その責任を全うすべきです。少なくとも『売り言葉』が無事に終演するまでの間、私は外輪さんの思う "新まおり" でいなければなりません。
そう書いて私は、なんだか心配になってきました。イヤな予感がしませんか。(何のこと?と思われた方はぜひ劇場へ)大変なことになる前に、やっぱり訂正しておくことにします。
皆さん、そして特に外輪さんへ 私はあなたの考えているような人間ではありませんからね!たぶん!
《追伸》 はじめて通し稽古をしたときの動画が送られてきました。自分の姿を客観的に見られるので、とても有り難いです。
そして、それは私の宝モノになりました。
通し稽古の様子が、ではありません。その動画には少しだけ続きがあって、ほんの数十秒しかない続きの部分が、です。
収められていたのは、通し終わりの空っぽになった舞台。張り詰めていた空気が一瞬にしてフッと緩み、そこにいた全員が大声を上げながら笑っていました。確認できるのは声のみですが、皆がどんな顔で笑っていたのか私には想像できます。きっと子どもみたいな顔をしていたに違いありません。
あんまり楽しそうに皆が笑っているもんで、夜な夜なひとりでその動画を見ながら「なんかもう、この瞬間さえあれば人って生きていけるよなあ」と涙を流してしまうほどでした。
と、そこへチラッと私の姿が写り込みました。それはそれは楽しそうに全身を駆使して笑っています。
あれ?おかしいな。動画の中の私は間違いなく、外輪さんがおっしゃる "新まおり" に見えました。私を勘違いしていたのは私自身なのか!?
やっぱり、それぞれの考え方に「ぶっぶー。間違い」なんてものはなくて、全てが「それはそれで正解」なのだと思います。
芝居だって例外ではありません。観る人の数だけ正解が存在します。もっと言えば、観る人が同じでも、観る回数やタイミングによってそれぞれ別の正解が生まれるかもしれません。
そういうわけで、ぜひとも沢山の方々に観ていただきたいのです。難しいことは抜きにして、ね。それも一度と言わず、二度三度と観てくださっていいんですよ!
そうして生まれた沢山の、それぞれの『売り言葉』が、皆様の中にほんの少しでも存在してくれるなら本望です。
それでは、劇場でお会いしましょう。
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中谷桜さん [B]に出演
昨日、白桃パフェをたべた。近所、というには少し歩くけど散歩には丁度良い距離のところにある小さなパーラーで、かなり年季の入った外観と内装だけどもそれが居心地良い。期間限定、と壁に貼られたカラーマッキーの手書き文字につられて何の気なしに頼んだパフェは、オールデイズの有線放送を2曲ほど聴いたところでやってきた。
ことん、と紙ナプキンを敷いた花柄の平皿へグラスが置かれる。運んできてくれたおばあちゃんの手は濡れていて、その皺には桃の果汁や香りや皮の感触が残っているであろうことがしのばれた。ありがとうございます。一礼してスプーンを手に取る。細長いぎんのスプーンは清潔ながら、長年の使用によりできた無数の細かな傷で薄く曇っている。鏡のように自分の顔を映すことはできないが、とにもかくにも、最初のひとさじめに取り掛かった。
カンヅメのモモではなく、きちんと剝きたてで、つるんとした中に柔らかい毛羽立ちが残る生の桃だ。真っ白とは異なり、どこかほんのりと落ち着いたあかるさを宿す色。種に近かったであろう部分はぎゅっと紅く、くちびるにふれる瞬間ほんわりとかぐわしい香りが鼻腔を撫でる。ひんやりした果実はつぐんだ口内でたちまち華やかに溢れるジュースとなって、とろんとした甘味が喉の奥へ流れると共にベールのような繊維と微かな苦みが後を引く。
きらきらプルプルの細かなゼリー、しゃりっと消えていくさっぱりしたシャーベット、そういった適度なコントラストを演出する名脇役たちと、みずみずしい生の桃。潔くプレーンなヨーグルトの海にもごろごろと果肉が入っていて、底のコーンフレークから掘り返すように混ぜつつ食べるとざくざくした感触が何とも小気味よく、素朴でさっぱりした味わいが自然と涼しさを誘う。初夏にぴったりの爽やかなひととき、なかなかどうして素敵な一品だった。
 嘘である。
繰り返す、嘘である。嘘です。白桃パフェなんて食べてません。うちの近所にレトロなパーラーは無いし、無論のこと白桃を剥いてくれる感じのいい物静かなおばあちゃん店主なんてのも居ない。あるかそんなもん。今回コラムを書くにあたり外輪さんから「昨日食べた白桃パフェがおいしかった的な雑記の方がいいかもしれません」とのアドバイスを受けて思いついた奇行である。ほんとのところ昨日の私はバイト先で馬車馬の如く働きづめるばかりで、次々に入るパフェだケーキだジュースだの注文に着実な殺意を溜めていた。そう、カフェ勤務の私はどっちかっつーと作る側なのである。その立場からするとパフェってのはマーーージで面倒臭い。手間がかかる!!!コーンフレークはそこらじゅう飛び散るしヨーグルトはすぐ在庫が切れるしアイスクリームは一玉掬うだけで腱鞘炎モノだし、見目の良い盛り付けにも神経が磨り減っていく。果物のコンディションは個体ごとに全然違うし、ましてや桃なんて繊細なモノを扱おうものなら十個用意しても売り物になるのはほんの二三個だろう。ちょっとしたオタノシミの一品、の裏には安時給アルバイターの汗と歯ぎしりと死んだマナコが隠されているのである。
ぶっちゃけついでに加えると、初夏のこの季節、飲食業界は桃だのメロンだのミントだのレモンだの、こぞって爽やかさ・清涼さを美徳として売り出すが、そういう風潮が嫌いだ。桃もメロンもミントもレモンも大好きだけど、「ほどよくさっぱり、あっさり、すっきりしたものがいいよね」なんて感覚を持て囃す人間の空気が嫌だ。
だから某スターバックスが数年前の真夏「スモアフラペチーノ」なるものを発表してくれた時は嬉しかった。スモアというのはアメリカで主流なおやつで、炙ったマシュマロとチョコをクラッカーやビスケットで挟んだなんともヘヴィーで濃ゆいスイーツだ。そのスモアをイメージしたフローズンドリンクである、不味い訳がない。8月の猛暑でもおかまいなしに濃厚なチョコレートソースとこんがり煮詰めたキャラメル、バターのずっしり効いたクランチがざくざく入ったたっぷりの生クリーム、マシュマロ。それは鬱屈とした夏を生き延びる心強い味方だった。
甘すぎる、濃すぎる、重すぎる、そういう「過ぎる」ものが私は好きだ。それぐらいでないと心の奥底までは埋まらない。孤高を気取るつもりはないが、「ほどよい」「ちょうどいい」「さっぱり」という言葉はどうも寂しく感じる。普通の適度は私にとって寂しい。スモアはそんな子供じみた私の、よく分からない孤独感や不安感を甘やかして満たしてくれる。どろどろに焼け付くように甘い、熱く濃くべたついた甘さと重さ。爽やかさを美徳としなければならない時もあるけれど、それに従うこともあるけれど、私個人はあくまで過多に、トゥーマッチに、ベタベタなものを愛してる。そういうものが無ければ押し込められて消えてしまいそうに感じる。もし消えてしまえば、第三者は私の不安なんて知らずに、私のあっけない去り際を儚いとか清涼だとか切ないとかコンテンツ化して消費するだろう。だから私は今日もふてぶてしく嘘を書き、傲慢にうそぶく。レモン哀歌調のこの世の中で、スモア讃歌を歌う。
[中谷桜扱い 予約フォーム]
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《サワイのヨモヤマ》
こんにちは!澤井里依です
私事でございますが、今年の4月に13年続いたケーブルテレビの番組『三関王』が最終回を迎えました。
第一回放送から調査員田中としてリポーターを続けてきた番組で、人生で初めてのレギュラー番組でした。はじめてのロケの時はまだ大学生で、右も左もわからないまま現場へ。体当たりの調査が多く、サーカスの空中ブランコに挑戦したり、泳げないのに飛びこみをしたり、奈良公園の真ん中で鹿に追いかけられながら踊ったり、、色々なんでもやらせてもらって、今の私が積み重なってきたなぁ・・・・と感慨深い思いです。
ディレクターさんはじめ、沢山のまわりの大人のスタッフさんたちに育てていただき、最終回まで調査員田中をまっとうする事ができました。13年特別な時間を過ごすごとができたのは応援していただいた皆さまのおかげさまです。本当にありがとうございました。
そんな時に『売り言葉』再演のお話があり、三関王ロスの沼に落ちる事なく創作に打ち込むことができています。
『売り言葉』初演は30歳記念、池袋演劇祭の2回目はなんと自身の結婚式の直前(笑)と・・・・たまたまですがなんとなく私のライフステージの大切な時に関わる思い入れのめちゃくちゃ深い作品です。
体当たりのお仕事で鍛えられた性格や、家事・育児・仕事・創作とパンパンで生きてる日常と、これまで2度の『売り言葉』の公演の智恵子と女中を経て・・・・今の私の“今の女中”にたどり着きそうです。 前回観た方も、はじめての方もぜひ、ご期待ください!
[澤井里依扱い 予約フォーム]
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《ソトワコラム》外輪能隆
演出を担当していた「きのくにプロジェクト」で、武庫川KCスタジオでの上演が中止になったのが昨年8月。そして捲土重来(?) 劇場の大きさに合わせて二人芝居、ホンはもうまちがいのない『売り言葉』でのぞみます
十代から死ぬまでの数十年を、舞台というリアル3D空間でどう描くのか。最近は映像を使って当時を再現させることも可能になりました。しかし零細劇団であるEVKKではなかなか難しく(例のごとく)ご都合主義的演出で解決を試みます。
時間というのは客観的な指標ですが、主観的にも流れますよね。楽しい時間は短く感じる、というアレです。歳をとると一年が早くなるという実感があります。つまり、時間は人間がコントロールしているものでありながら正確である、ある人にとってはあっという間に過ぎた楽しかった1年と、苦しくてしょうがなく永遠とも感じられた1年は、正確に同期されるのです
この作品では、智恵子の希望にあふれた十代から、絶望のなかで死んでいくまでが描かれますが、その時間の流は智恵子によって早まったり遅くなったり、あるときは大きなうねりとなり、はたまたか細くなったりします。一方で、外から見ている女中は正確に刻んでいるようにみえ、それがある1点で同期します。この同期した1点から、物語がどのように流れていくのか――それがこの演劇の醍醐味でしょう
この「時間の流れ」を今回の会場である武庫川KCスタジオの特徴を生かした、ある仕組みで表現しようと考えています。���といっても零細劇団ですので、何ら大がかりなものでありません。ご覧になって「なんじゃそれ」と思われるやもしれず、では先に言っておけばそう見えるようになるやもしれず、この場で言っておこうと思いました
そんなリクツはともかく、この売り言葉、EVKKの作品の中でうちのオカンが「面白かった」とのたもうた唯一の作品ですので、老若男女問わず楽しんでいただけるとおもいます。ぜひご覧ください
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たくさん書いていただきましたので、公演案内が最後になってしまいました。
EVKK 6月公演『売り言葉』
作 野田秀樹 演出 外輪能隆
日程 6/16(金)~6/18(日) 会場 武庫川KCスタジオ
詳しくはこちらをごらんください
http://www.evkk.net
魅力的な役者さんがいっぱいです。ぜひご覧ください
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usickyou · 1 year
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セカンダリ・ラバーズ
「アイドルやめてきた」  と加蓮が言う。  私はミルをまわすのを中断し、手をあげる。てのひらを指のまたの間までうんと広げ、返事を待つ。加蓮はいかにもアイドルらしくしゃなり歩き、そして思いきり振りあげた手を、「やったぜ!」とぶつける。音は心地いい。爆発して、私たちの好きだったもの嫌いだったもの大切すぎたものそれらなにもかもを吹き飛ばしていく。 「お疲れさま」と私はふたたび手を動かす。遠くない港から届いた汽笛の音が時間を知らせる。シロクマじるしの遊覧船は四十分に一本、港を出て新陽新島群をまわると五十分で帰ってくる。だから汽笛は、島々の浜や青い浅瀬を思わせる。 「疲れたぁーっ!」  加蓮はバッグとか贈答品らしい手提げとか、いろいろなものをひたすら放り投げ、ソファに寝ころぶ。背もたれのむこう伸ばした両手足が見え、ひらいた手のひらがひらひら羽ばたく。疲れることなんてあったの、私はたずねる。ちょうど若い子たちがいてさあ、加蓮はこたえる。さしがねだったんじゃない。そうかも、握手会やってきたよ。すてきね、私も並べばよかった。おとなは遠慮してーっ……。  やめてきた、というのを正確に言い直すなら、プロダクションとの契約終了が今日だった。アイドルをやめることについては加蓮は三ヶ月前、私やあとなん人かと揃ってのラストライブをもってすべての活動を終えていた。私の退所のほうが二ヶ月早かったのは契約期間の都合でしかない。 「あれほんとに助かったよ。贈り物の手配」  私の退所日には雨が降っていたのを思い出す。そういう時節だったのだ。思えば最初の契約書にサインをした日にも雨が降っていたような気がするけれど、景色は遠くぼやけている。温かい雨だったように思う。どちらも音だけが、はっきり感じられる。 「もーひゃっぺん頭さげた……ってかそうだ、守衛の畑沢さん。知ってる? あのひとも今日でやめるんだって」 「畑沢さんって、よくロビーにいたあの?」 「ロビーってかA棟」 「よね。私もお会いしたかったな……」 「奏のぶんも挨拶してきたよ。なんかいっしょに住んでるの知ってたし、仲良しだったもんねえって」 「あら嬉しい。理由は聞いた? まだお年ではなさそうだけど」 「長野できょうだいと住むんだって」 「そう、幸せでいてくれたらいいけど……」 「あのひとなら大丈夫でしょ、コーヒーありがと」 「ええ。ケーキも食べるでしょ?」 「お願いしまーす」  私は冷蔵庫のケーキボックスを取り出し、テーブルに並べる。加蓮のうるさくかがやく目は、過ぎ去ってもう久しい少女が気まぐれに戻ったみたいに見える。お皿や、フォークを持ってソファへ戻ると、起きて場所をあけてくれる。私は隣へ腰かけると、かたちを崩さないようケーキをお皿に移す。  私たちお気に入りのふたつ離れた駅の洋菓子店の、いちばん好きだったももとあんずのミルクレープはこの日を待たず店頭から消えていた。少し残念に思っていたけれど、次に愛したタルトタタンをテーブルへ広げてみると、これが最善だったよう感じられる。私は加蓮を見る。加蓮もそう思っているのがわかる。ありがと、加蓮は言う。十一年お疲れさま、私はあらためて言うと、タルトタタンを先に食べるよううながす。 「その前に」と加蓮は言い、私を見る。ああ。私は心の準備をする。加蓮のてのひらが頬に添えられ、ゆっくりと、引き寄せられるのに私は応じる。そうして加蓮がくちづける。私は目を閉じてこたえる。それは清潔にもちょっと続く。けれどもせっかく冷えたケーキやコーヒーの香りを台無しにしてしまうほどではない。それくらいの私たちは、どちらともなくくちびるを離す。すると加蓮が身を寄せてくる。ほとんど倒れこむみたいで、予想しなかったので少し驚く。「おっぱいすき」「バカ」加蓮はけらけら笑って言う。「ちょっと、疲れたかも」  私は、「うん」とこたえて加蓮の髪をなでる。今日はもう出かけないのだから、セットをくずしてもいいと思う。「いいよ」と私は続ける。加蓮は服をぎゅっと掴む。それは切実に重い。 「握手会、若い子ばっかでさ、なんかこんなだったっけとか、思っちゃった」  思い出す。十年前、私も”こんな”だったはずだ。初めてプロダクションに足を運んだ日、エレベーターで川島さんと乗り合わせた。川島瑞樹さん。社員らしい男性が降りていって数階ぶんだけふたりきりになり、私は声をかけたかった。何を話すのかなんてわからなかったけれど、結局彼女は先に降りた。こんなことなら制服を着ていったほうがましだった。アイドルの説明を受けるあいだ、ずっと肌寒かったのを覚えている。  十年前。  新陽はまだこの世にないし私はサーフィンにもダイビングにも興味がなくアイドルを始めたならいつかはやめる日がくるなんて考えたこともなかったけれど、それでも今日へ向かっている。 「ちゃんとアイドルをしたのね」  私は言う。  がんばったんだ、と加蓮はささやく。  そうして、私たちはケーキを食べる。いちカットで満足できず、もうひとつ。コーヒーを飲みながら今後の予定について確認をしていると、また汽笛が鳴る。そびえたつ陽泉山系を反響し、汽笛は天頂の日と折り重なって降ってくる。加蓮の視線に気づく。私は見返しもそうそう、ジェスチャーで返事をする。加蓮はてきぱき後片付けを始め、私は予定しなかった外出の準備をする。新陽の午後にいい波が立つのは珍しい。でも今日がその日かもしれない。
 カットバック・アンド・リッピング。  しぶきは火炎のようにひらめく。  加蓮は華麗に波濤に消える。  いつか、加蓮が溺れたときのはなしを聞いた。小学生だった。加蓮は夏休みに合わせた再入院が決まっていたので、最後のプール授業になんとしても出たかったのだけど、医師が許してくれなかった。だから放課後、忍び込んだ。鍵のかかった柵を乗り越えると、準備体操もそこそこにプールへ飛び込んで溺れた。死ぬってふたつあって、加蓮は教えてくれた。炎か影。結局、駆けつけた教師に引き上げられたということだった。 「もー!」加蓮は波を飛び出すと、髪をかきあげサーフボードにのそっと乗る。「最悪! 絶対いけた!」  ことばと裏腹に大口をあけて笑っている。この波で今日は終わり。私たちは浅瀬から浜へ戻る。波は背中を押したり後ろ髪を引いたりする。日はおよそ暮れかけ、新陽新市街の[[rb:白黒 > モノクローム]]LEDが銀の銀河の星のくずのように光っている。  新陽は六年前、××半島の突端に三の大島、三十三の小島をあわせて建造された。なんらルーツのない新陽にはさまざまな出自の人間――あるいは非人間――が集まり、多様で多層で多重かつ多面的な多人種、多秩序都市が形成された。つまり雑多な街だった。一方で、陽泉海岸周囲がもともと有していた豊かな自然は厳格に保全されており、新島群をつづら折って形成される波はサーファーの人気が高く、また本州有数のダイビングスポットとしても知られている。  そして新陽には、さらにいかした性質がある。  私たちが今晩の食事について話しながら歩いていると、三人連れの男たちが声をかけてくる。彼らには色がない。  新陽には色がない。  都市設計時に忘れられていたため、新陽では現在も白と黒以外の色が存在していない。  新陽あるいは新陽に属するあらゆるものにおいて、色は白と黒の濃淡になんらかのモチーフを加えて視覚される。  私たちには彼らの肌の色がわからない。着ている服もそう。もっとも、左端の男が黒髪であることはそのべたっと濃厚な黒色で知覚される。しかしあとのふたりの、微妙な濃淡の違いは私たちに色を伝えない。顔立ちから日本人であることは予想されるのだけれど、新陽に限ってはそれですらあてにならない。  初めて来たんだけどいい店を教えてほしい、と彼らは言う。  おそらく外から来ているのだろう。  マック、と加蓮はこたえる。  彼らは返事を聞く気もないのか行き方をたずねるところから案内してほしいというところまで流れるように続ける。きっと、練習を重ねたのだと思う。脚に感じる視線もさほどひどくない。どちらかと言えば、ウェットスーツのジッパーを落としたいのかもしれない。できれば新陽でない場所で。  どこかで会ってないか、と彼らがたずねる。  そうかもね、と私はこたえる。  無駄な会話だと思う。おかげで夕食を決められない。私たちはもういい歳をしたおとななので、おなかが空いているとあまり人にやさしくできない。うんざりして無視をきめこみ更衣室までくると彼らは捨て台詞を言う。なにか軽薄で汚いことばに、よせばいいのに加蓮が反応する。なんつったお前、とすごんできびすを返す。加蓮のそういうケンカっぱやいところを私は好きじゃない。男たちは喜んで応じる。加蓮の構えるのを見て残酷に笑う。加蓮は彼らをぶちのめすだろうか。たぶん無理だろう。ヤヤンに習ったシラットは最強の武術だけれど無敵の魔法ではない。でも、一人くらいはいけるかもしれない。私もやればもう一人。 「どーうしったのっ!」  そのとき奇妙な節とともに、フアンがあらわれる。よかった。私は息をつくし、加蓮も構えを解く。男たちは肩に乗せられた巨大な腕を、それからフアンを見て驚く。彼らはサノスを知っているだろうか。インフィニティ・サーガを見ただろうか。フアンはサノスの思想に強い感銘を受け、もともと外見に近しいところもあったのを運命と感じ、敬虔な信仰と壮絶な修行の結果ほとんどサノスそのものになったという、狂気の聖人だった。色を伝えるモチーフには当然インフィニティ・ガントレットを選んでおり、フアンの巨体は私にはサノス・パープルに見える。  新陽のいかした性質。  ここではひとは――ひとでなくても――望めばなんにだってなれる。  私たちはフアンにハンドクラップをおくると、更衣室へ入った。 「ヤヤンに怒られるわよ」  ロキシーのジッパーを下ろし、私は言う。 「ごめんって……黙っててください」  私のは、加蓮が下ろしてくれる。  シャワーのあいだにお店と加蓮の奢りは決まって、更衣室を出るとビーチハウスに寄る。フアンはなんだかものうげに焼飯を作っていたけれど、私たちを認めると柔和にほほえんでくれる。男たちの姿はない。私たちは感謝を告げる。フアンにハグをすると、かれの家族の営むお店、プラチャーナ宮へ行くことを伝える。フアンは喜びながら、やはり憂いをたたえて見える。もしかして彼らになにか、私はたずねる。フアンは静かにこたえる。 「スナップを、したくなったんです」 「……ああ、指パッチン?」 「はい。わたしはまだまだサノス師に遠い……あまりに……」 「えっと、元気出してよ。サノスさんもさ、畑が虫に荒らされてパッチンしたくなることもあったと思うよ……」  私たちはかれに優しくしたいけれど、おなかが空いている上に焼飯がいい香りをあげすぎるのでうまくできない。それでもフアンはふたたびほほえみ、私たちを送り出してくれる。入れ違いに、焼飯の香りにつられたのかサメ人間がやってくる。頭はメジロザメ、体は人間。こんなところで出会えるなんて。サメ人間はそのサメのくちでフアンと話し、焼飯を受け取ると牛串のできあがるのを待った。その、太古の頃より研がれ続けた鋭い牙。数千万年研磨されたオブシディアンのように美しい眼……。サメ人間は、恐ろしくもたくましい顎を繊細にはたらかせストローでメロンソーダを飲んでいる。その姿に、私は惹かれかけている。ひとめ惚れだったのだ。加蓮が私を引きずっていく。  陽泉海岸を離れること十数分。新陽駅に着く。駅南は景観保護のため規定された厳格なルールがあり、線路を渡るとそのすべてが消滅する。線路沿いには住宅を兼ねた十席ほどの小料理屋が並び、それらは〈大父母〉によって経営されている。大父母は、新陽の建築に資産を投じた不動産、都市計画事業体のお偉方の集まりであるらしい。北口を出てすぐ広がる新陽新市街――これらも大父母がもっている――はオフィスやモールではなばなしく、そびえ立つ六つの巨大ビル群、〈新陽・サンシャイン・ビルディングス〉通称〈SSB〉はその名の示す通り新陽じゅうの光を略奪している。北部の最高峰、陽泉山脈よりもよほど高いのだから、かれらの罪はどれほだけのものだろう。  SSBの麓を横切り、大父母経営のお店をすべて通り過ぎると、屋根のないアーケードに入る。旧市街。屋台町。汗や香草、フルーツ、そして二十四時間なにかの焼け続けるにおいが心地いい。さまざまな人/非人が集まり、思いおもい食事を楽しんでいる。プラチャーナ宮は十坪ほどの店舗と同じくらいのテラス席でできている。私たちはムーガタやパッタイ、カオマンガイを頼む。それに私はウーロン茶、加蓮はアユタヤ・ビール。ミーチャ、フアンの奥さんは紫色ではない。私たちの知る誰よりも二重のぱっちりした恰幅のいい女性で、頼んだものをすべてを一度に運んでくる。前腕に刻まれた刺青のため、彼女��肌はかわいいイチゴ色に見える。 「はい、お疲れさま」 「次の波に」  グラスをぶつけると、真後ろのテーブルから乾杯の合唱がとんでくる。かんぱーい、私たちも輪唱する。それはそう。フルーツレディ、アロサウルス、ビーグル犬のピーターやスヴェトラーナがテーブルを囲んでいるのだ。  フルーツレディ。フルーツが好きすぎるあまりフルーツになりたがっている。フルーツショップを営んでおり、イチゴカラーのワンピースからブドウモチーフの髪、バナナのピアス、マンゴーやキウイやドラゴンフルーツの指輪……あらゆるフルーツで全身すべて彩っている。声が大きく、やることなすことせわしない。ほんとうの名前は捨てたらしい。  アロサウルス。身長百七十センチ。かれの名前も私たちは知らない。父より母より朝のコーヒーよりアロサウルスを愛しているのだけれど、アロサウルスが臆病な恐竜であったと明らかになって悲しんでいた。私も、アロサウルスは繊細な恐竜だったのだろうとかれを見て思う。だぼっとした着ぐるみの見た目で、スペアリブを食べている。  ビーグル犬のピーター。アロサウルスが飼っている。もともとは人間だったのかもしれないけれど、それはわからない。乾杯の合唱のとき、ワンワン、かれは言った。  スヴェトラーナ。ふるいロシアの伝承の魔女”ヴィイ”に憧れているらしい。無色の肌に落ち窪んだ頬、鼻は鉤のようにいかつく、たるんだ瞼の目の奥があやしく光っている……外見は悪くないのだけれど、性格がどうにも明るい。張りのなくしゃがれた声でテーブルの会話をリードしていて、スヴェトラーナがいてくれるとみんなが楽しい。  私たちはかれらと近況を報告し、最近はやりのSSBの陰謀論とかを聞くとテーブルに戻る。とうとうアイドル卒業となったので、私たちには話したいことしたいことが山ほどあった。稼いだお金はまあまあ残っているし、私は大学の夏期休講があと一ヶ月あるし、前期の簿記二級を六十八パーセントで落ちてけっこうやる気をなくしている。加蓮のダイビングスクールも日程はけっこう自由がきく。時間がある。車も買った。私たちはいま、けっこうどんなことでもできる。
 加蓮がソファで眠っている。  シャワーを浴びたばかりでまだ、私は髪が濡れている。指の先のしずくをぬぐい、つけっぱなしたテレビの音量をしぼる。それから、加蓮にふれる。お酒が肌の濃淡を塗り変え、頬はほんのり温かい。驚くべきは、加蓮が歯みがきの最中に眠ってしまったことだ。くちびるから歯ブラシが飛び出し、ソファによだれがこぼれている。加蓮はお酒に強くない。悪いことに、酔い潰れるのが好きだ。潰れて介抱されるのが好きだという困った、面倒な、厄介な嗜癖を持っている。たまにちょっといらつく。いらつくのと愛おしいのと、心はまだらに明暗変わる。  加蓮には色がない。  ミントモチーフのヘアピンさえなく、ゆるっとしたロングスリーブシャツ一枚の加蓮には、白と黒の濃淡のほかどんな色もない。  加蓮、と私は呼ぶ。  加蓮はこたえない。 「加蓮、起きて」 「起きへふ」 「いいから。途中でしょう」 「起きへあふ」 「ばかみたいに飲むから」 「……」 「寝ないで」 「ふぇー……」  加蓮はどうにか体を起こし、おざなりに手を動かす。テレビのニュース〈新陽・ナイト・プラネット〉をぼんやり眺めている。ウサギとリスのキャスターが、まじめにニュースを読み上げる。立てこもりが……溺死者が……動物園のヒヒが子どもを救って……。人面ウェルシュ=コーギーの学者が含蓄豊かなコメントを添える。機械人間の気象予報士が吉報を、明日もよく晴れ真夏日になるという知らせを届けてくれる。  加蓮は歯みがきを済ませると、私にまとわりついてくる。さみしいよ、とうそぶく。フロスもしなさい、と私は指示する。加蓮は素直にしたがう。 『……第十六島で起こった立てこもり事件の続報です。人質救出は失敗に終わり、三人の人質は全員死亡、犯人はその場で射殺されたもようです。現場から……』  私が歯みがきをするあいだ加蓮はももで眠っている。ソファを立とうとするとしがみついて離れない。ジェスチャーで説明をして、すると加蓮は腰にひっついてくる。結局、寝支度を済ませるまでそばにいる。頭をなでると嬉しそうにして、加蓮はもしかして犬になれるかもしれない。私はアロサウルスみたいに、いつか加蓮を飼うかもしれない。サーファー犬。それは悪くない。あごをなでると加蓮は拒否する。  私は加蓮の寝室へ行く。加蓮のベッドに横になり、加蓮の隣で眠る。寝室は別々にあるけれど、時間があまりにもずれるときやどちらかの調子が悪いとき、もしくはひどめの喧嘩をしたときとか以外だいたいいつもいっしょに眠る。セックスをすることもある。最初の頃にし過ぎたから最近はそれほど盛り上がらないけれど、たまに爛れる。  奏ちゃん、と加蓮が呼ぶ。  明日も早いのよ、と私はこたえる。  いいじゃん、ねえ、髪染めたいとか思ったことある?  あまりないわね、似合わなそうだから。  あはは、そうかも。でも考えてはみたんだ?  それくらいね。加蓮は? 他の色って考える?  あんまりないかなあ……なんでだと思う?  知らないわよ。  ひど、つめた……ねえ、ごめんね。  ……。  やば、謝っちゃった。ちがうの、じゃなくて……ね、おやすみ。  おやすみ、加蓮。ちゃんと起きてね。  ふふ、大丈夫だよ。奏、またあした。  そうして加蓮はすぐに眠ってしまう。首すじに息を感じる。寝息はぬるく、くすぐったい。肩越しにまわされた加蓮のてのひらにさわってみる。なでたりもんだり、指先でひっかいたりする。加蓮は眠っている。そんなふうに、てのひらで遊んでいるうち私も眠る。夢を見る。夢だけがまだ、絢爛色彩りに満ちている。朝にはもう忘れてまた次の一日の始まりに、私たちはサーフボードをかかえて陽泉海岸を駆け出すと白黒銀の波へ飛びこんでいる。
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numasaaan · 1 year
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今から去年のケーキを食べるぜ! …すみません小学生みたいなこと言って https://www.instagram.com/p/Cm216tTpoAO/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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galradio · 4 years
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201126 庭ラジ#77
さあ〜、クリスマスまであともう一ヶ月切りました
・皆さんはどんなクリスマスを過ごされるのでしょうかね?
・家族でしょうか?はたまた恋人でしょうか?お仕事ですか?
・俺の2020年はどんな感じなんでしょうかね?想像がつかんけども
・まあ、いつも通り頑張って、日々生きていくだけです僕は。フンッ(鼻で笑うれんれん)
・セブンイレブンさんでそろそろケーキ予約していただけた方もいらっしゃるんじゃないでしょうか、ね?
・うん…美味しいからあ…去年もやらしてもらって、最高のケーキです。今年もグッズも色々出るので、是非ケーキ食べてみてください。
・今気づいた人おるかなぁ?“King & Prince”のことを“キングアンドプッス”って言ったのね(何回聴いても言ってるところ見当たらなかった…)
・いや違う違う、俺、わざとなのこれ
・最近さ、“King & Prince”って言わんでも、“キングアンドプッス”って「プリンス」って言ってることになるんじゃね?って考え始めてて
・どうでした?ガイさん、今? ガイさん「いや、引っかかったね」
・引っ掛かったんかい! ガイさん「噛んだなと」
・マジで?噛んだ風に聞こえた?じゃあもう辞めます…
・“キングアンドプッス”はもう、いけるか思ったけど、全然無理でした
 ・もう11月は冬よね。何か今、これ撮ってんのがまだ11月の最初の方やから
・何か色々さ、気忙しい毎日というか、何か季節の変化をゆっくりと楽しめるような心のゆとりをね、持ちたいものですよ、本当にもう…
・1年早い!
王様のお悩みスイーツ
・前回甘い言葉言うのを忘れてたやん?だからかわからんけど、めちゃめちゃスイーツのような一言っていう部分強調されてんのよね、台本。忘れないように。
・わかってますよ!大丈夫ですよ!(ロリボイスゥゥ〜)
「私は毎月お小遣い3000円もらってます。しかし、King & PrinceのグッズやCDを買ったり、友達と遊びに行く時に3000円だと少し少ないかなと感じています。欲しいものがある時、親が買ってくれることもあるので、なかなかお小遣いアップの交渉を切り出せずにいます。何かいい方ありませんか?」 メール
・いや、これ難しいよ〜。お金問題は。シビア!
・15歳ってことは、中3か高1か…
・でも俺子供の頃お小���いじゃなかったなあ
・欲しい時にお願いして、買ってくれる時もあれば買ってくれん時もあるって感じやったから、なおかつもう中3高1、ジャニーズ入ってたから、ある程度は自分で…
・このぐらいの歳って、そんなさすがにさアホみたいに高いもんとか欲しいと思わんから、ゲームとかいっぱい自分で買ってたから
・わからんねんなー、そこら辺のお小遣いアップの交渉とかは、俺。
・手伝いとかしてさ、それをその時にお金をせびらず、まとまった手伝い何日もして、でその中で「これ買って」って言うのがいいと思うんねんけど、その過程で「欲しいもんあるんだろうな」っていうのをあんまバレずにナチュラルにやったほうがいいよね(れんれん賢い)
・そういうの出ちゃうから、人間ってやっぱ。そういう下心というか。それをうまく隠しつつっていうのができたら一番いいんだけどね
・中3やった場合バイトもできんし、ただシンプルに「お小遣いアップして」って言っても「受験なんだしさ…」みたいな
・でもお手伝いはやってもらって嬉しいやん、親も
・その中で何個か何日も続けてって、「ねえねえ、これ欲しいんだけど」って言ったら、「普段お手伝いしてくれてるからいっか」ってならなくもない気がするけどね
・それかシンプルにテストでいい点取るか、ちゃんと褒めてくれるぐらいの目標設定をして、点数のね
・それを超えたら「じゃあこれ買って」って頼んで、勉強も頑張れるし、結果が出たら欲しいものも貰えるしって、一石二鳥の気がするけど
・どうやろう?この中でいいのがあるかなあ
・あとは、ニコニコ永瀬ローンがあるけど…お金貸してあげますけどぉ…ンフハハハハ
・ニコニコ永瀬ローンですから、大丈夫です、利子はつきません
・そういうとこかなあ〜(かわいい…)
・そのほかあるかな?でも俺が思いついたのはこれぐらいかな
・甘い一言 「いっぱい媚び売って♡」
・下心のない感じでね、ここ一番重要ですから
・「肩もんであげようか?」とか「お風呂洗ってあげようか」とか「お背中お流しましょうか?」とか
・ガイさん「露骨じゃんw」
・「一杯お付き合いしましょうか?」とか「私はウーロン茶ですけど」って言って(笑)
・めちゃめちゃ露骨
・今のはダメだけどぉ、そういうお手伝い系を下心なく、頑張ってやってください 
「突然ですが、私の恋愛相談してほしいです。先日おみくじを引いたら、恋愛のところに『諦めなさい』ときっぱり書いてありました。今私は、学校などで気になってる人や好きな人はいないですがはっきり書かれると、どこまで自分の恋愛を諦めるべきなのかを深く考えてしまいました。どうか私の未来を明るくしてください」メール
・おみくじとか俺信じないね
・ただ引くことあるから“大吉”とか来たら嬉しいし、ぐらい。俺のおみくじに対する感情
・でもわかるよ、信じてなくてもさ金運とか仕事運とかっていう欄は一応見ちゃうよね〜 
・「どこまで諦めるべきなのか」って最初から諦めてるやん、もう
・高3ってさ、大学か就職かするわけでしょ?もしかしたら、留年とかかもしれんけど
・この時期の高3って忙しいからさ、諦めるってよりかは、好きな人であったりとか彼氏とか欲しいって思ってない時ほど現れるやん?そういう人って
・そんな気しないかな、なんか共感者おるとは思うねんけど
・今は高3で受験とか色々やるべきことがあると思うから、そっちに集中したらいいんじゃないかな?諦めるっていうよりか、忘れる
・それ以外にすべきことがある訳ですから、そんなおみくじの「諦めなさい」をどこまで諦めるかとか、考える必要ないんじゃないかなと思うけどね
・もう恋愛というものを一旦忘れるみたいな
・そして11月ですから…あと一ヶ月で終わってしまいますから、まあそんなおみくじの内容が気になるなら、初詣で良い結果出るまで引いたらいいのよ、おみくじなんてね
・いい結果が出るまで。もう「明日現れます」っていうのが出るぐらいまで引いたらいいと思うし
・だからおみくじなんかで諦める必要ないと思うよ〜?
・甘い一言 「初詣に行きなさい」
 ・いい結果が出るまで引いてください!
「私には8年間続く悩みがあります。それは霊感があることです。小さい時からよく見えてはいけないものが見えてしまい、最近では見ることはなくなりましが、中学生になって怖くてお留守番すらできません。なんとか一人でお留守番できるようになりたいです。廉くんは霊感とかありますか?」
・ないですね。周りにある人もおらんなー
・全然気持ちがわからんわ、ごめんやけど…見えたことがないから
・お化け屋敷とか行けんのよ、偽物とわかってるから。人間ですから所詮は。
・ホラー系はちょっとそうやな〜、見れるけど、一人では見ないよねやっぱさすがに 
・中学生はちょっと怖いとかあるよね、お留守番とか 
・小学生の頃とかって、リビングで家族居る状態で、お手洗いってだいたいさ、廊下についてるやん?廊下って暗いやんやっぱ。お手洗いに行くのがすげー怖かった
・夜中って、もうみんな寝てるから部屋暗いやん?寝てるときにお手洗い行きたくなったら嫌やから、もう寝る前めっちゃギリギリまでお手洗い行って、夜中絶対行かんようにしてた、っていうぐらい怖がりやった、小学生の頃
・一人でお留守番できるようになるっていうのは、何かで気紛らわせてた、俺の場合はゲームかな
・だから僕の事が大好きって言ってくださってるんで、キンプリの曲を爆音で流して、イヤホンプラス家にあるスピーカーからも二重で流して、もう頭からキンプリが離れんようにしたら、怖いって感情がなくなるんじゃないかな?
・だから、とりあえず他のことを考えるように自分の頭仕向けるっていうことがいいんじゃないかなあ
・霊感がないからどれくらいの恐怖を感じるかっていうのが実感がないから、僕が想像してる以上に怖いもの見てるかもしらんし
・甘い一言 「大丈夫、キンプリがついてるよ」
・はいはい…きました、これやっと…(満足げ)
・やっと全リスナーが納得するような企画の答えが出ましたね
・ガイさん爆笑
・皆さんお待たせしました。聞きましたか?「大丈夫だよ、キンプリがみてるよ…ついてるよ、か」
・いや良かったんじゃないでしょうか?本日も、うん
曲:I promise
(30分ver TVサイズ)
30分ver
思い出リクエストガーデン
リクエスト/関ジャニ∞ 罪と夏
「この間少クラin大阪で大吾くんが思い出の曲で廉くんと正門くんが歌ったこの曲を出してくれました。『廉と正門がすっごい楽しそうな顔してた。豪華なカラオケを観てたみたいでめっちゃ良い』と言ってました。『嬉しいねんけど決めたいみたいな瀬戸際の顔、廉がうぇ〜いってするときはめちゃくちゃ嬉しいとき』と解説してくれました。廉くんのこのときのエピソードもぜひ教えてほしいです」メール
・当時、関西とキンプリがコラボするみたいなやつで、俺と正門だけやったの、「罪と夏」で
・俺もそのときはテンションがあがったのは覚えてるし、「あ、西畑はおらんなあ」っていうのもあったけど
・正門とギター弾きながら僕は歌って、嬉しいし、シンプルに見抜かれてますね、大吾には
・そうだから、これっきり東京では会えてないから3人で、会いたいなーとも思うんですよ
リクエスト/西野カナ Best Friend
「この曲がリリースされたとき私は転校したてで友達もできず、クラスでも浮いてしまってました。でも、そんなのも気にせず話しかけてきてくれた友達がいて、たまたま音楽番組で観たとき子供ながらにその子のことを大切にしよう、と思った記憶があります。その友達は転校してしまいましたが、なんだかの手紙とかで連絡をとり今では12年目の仲です」メール
・いいね〜、12年来の仲とか、そんだけ続く友情っていうのは美しいですね
・でも、僕もやっぱ普段、支えてもらってる友達とか大切にしようかなと思うよね、こういうエピソード聴くと
エンディング
・6枚目のシングル「I promise」が12/16にリリースされます
・来年の春に放送されるNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」に及川亮役として出演させていただきます
・健栄製薬「ヒルマイルド」のCMに出演しております、塗ってください!
雑学コーナー
「廉くんは出身地の定義について知っていますか?実は15歳になるまでの間に一番長く住んでいた場所のことを出身地というんです。廉くんの出身地=東京都問題がこれで解決です。ちなみに出生地は生まれた場所なので、廉くんは東京になるらしいです。」
・あっ、てことは、俺、大阪出身でいいのか、15歳になるまでやもんね
・8年間、大阪ですわ…じゃ、俺エセ関西人じゃないやん、ね?
・うわっ!今日をもって、本物の関西人になりました、僕は!
・8年間住んでるからあ〜、15歳の半分くらい住んでるから
・そうやん…出身大阪やん。でも今さら事務所のプロフィール変えんのも大変よねえ
・しょうがない、知るのが遅かったってことで
・でも心は大阪出身っていうことで生きていきます、ありがとうございます!
・でも、意外と多いかもしれんもんね、俺みたいに出身地どこにしよ?って俺みたいな転勤族の人、そういう人たちもこれで解決ですね
30分verだとちょくちょく言葉カットされてたりするね、ニコニコ永瀬ローンとか
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heyheyattamriel · 4 years
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エドワード王 二巻
昔日の王の一代記、二巻
ファーストホールドでの再会
エドワードは赤い空に目を覚ましました。太陽は西の山々に上ったばかりです。彼らは各面が炎に輝く塔のすぐそばに来ていました。ドラゴンは急に方向を変えて近くに飛び、炎の長い息を吐き出しました。彼らが突然高度を下げると、塔の頂上で何度か光が点滅しました。エドワードのお腹はとても変な感じでした。彼はため息をついて身体を動かすと、モラーリンが右手でエドワードを抱けるように体をずらしました。彼は身体を伸ばしてあくびをしました。
「もうすぐだ。クリスタルタワーからファーストホールドまでは馬で数日だが、アカトシュは1時間以内に連れて行ってくれると思う」
「塔には寄らないの?アイリック―」
「軽々しくその名前を使うんじゃない。私にさえもだ。アーチマジスターは向こう何日かは戻らない。ユニコーンは風の兄弟分で、同じぐらい早く旅をする。荷物があってもな。だが、ドラゴンが飛ぶほどじゃない。エルフの故郷がドラゴンの帰還の始まりを迎えているのがわかるだろう。人類の幸運を祈るんだな」
エドワードの視線は深い森の中と、無骨な丘をさまよいました。人のいる印は見えませんでした。「きれいだね」彼は謙虚に言いました。「でもハイロックほどじゃないや」忠誠心からそう付け加えましたし、それは事実でした。「街も、村も農場もないの?」
「ファーストボーンは森の奥深くに住まって��る。彼らは大地を引き裂かないし、新しく植えもしない。だがオーリエルが差し出すものは喜んで受け取る…そしてお返しをする。ああ、成長するものの青臭いにおいだ」
確かに、その空気はエドワードが父のカップからすすったことがあるワインと同じような感じがしました…「お腹空いた」
「そうだと思った」少し体を動かし、モラーリンの左手が小さな葉っぱの包みを取り出しました。浅黒い手は大きくて力強く、人にも動物にも見えませんでした。エドワードは嫌悪しながらその手を見つめ、やがてその手に触れないように極めて慎重に包みを取りました。モラーリンが身体を強張らせるのがわかり、エドワードを抱く手が少しその力を弱めました。エドワードは自分の行動を恥ずかしく感じました。この状況で気を悪くさせるのは、親切でも賢明でもありませんでした。モラーリンは簡単に彼を落とすことができるのです。「僕お風呂に入りたいけど、君もだよね」彼はぎこちなく言いました。モラーリンがわざと彼の反応を誤解してくれたことを、エドワードは知っていました。「ああ、私はとても汚れている」エドワードがケーキをかじると、それは見た目よりずっとおいしいことを証明しました。「母さまはそんな風に僕を見ていたよ―少なくとも、そうだった。でも多分、僕はまずお風呂に入るべきだよね?」
「お前はその選択の必要はないと思うが。ああ、やっとだ!」ドラゴンはその翼を広げて空に舞い上がり、巨大な炎の固まりを吐き出すと、広い空き地に降り立ちました。着陸は急角度で、大きな衝撃がありました。エルフたちが急に現れて、彼と、やっと目を覚まして半狂乱でぐるぐる走り回り、エドワードの足元で喘ぐシャグに腕を伸ばしました。
銅の色の炎のような髪をした背の高いエルフが、礼儀正しく彼らに挨拶しました。「ご機嫌麗しゅう、我が王よ。ご婦人がお待ちかねです。エドワード王子、ファーストボーンの地へようこそおいでくださいました。我が民に成り代わり、歓迎申し上げます。ここでのご滞在が心地よく、実りあるものでありますように」
モラーリンは恭しく頷きました。「ありがとう。わが女王は十二分にお待ちになった。すぐにお目にかかろう」エドワードの肩に置いたモラーリンの手が、彼を見たこともないほど大きな木に導きました。その幹は空洞で、中に入ると上に導かれました。開口部にはさらに階段があり、丈夫な枝に橋が架かっています。彼らは大きなひさしがついた、部屋のように椅子とチェストがしつらえられた台に着くまで、それに沿って前に進みました。金色の肌の女性が彼らに微笑みかけ、手招きをして立ち去りました。背が高くほっそりした、蒼白い肌の黒い髪の人間の女性が彼らに歩み寄りました。彼女の眼はエドワードを捉えていました。エドワードだけを。
「どうしていなくなっちゃったの!」その叫び声は彼の深いところから現れ、彼の全身に響き渡りました。その声は彼の数歩手前で彼女を立ち止まらせました。今度は彼女の目がモラーリンを見上げました。彼はエドワードが聞いたことのないような厳しい調子で言いました。「お母様に敬意を持ってお話をなさい、無作法な子だ!」その瞳の一瞥の衝撃で、彼の目に水が溜まりました。
アリエラは素早く彼に近寄り、両手を彼の胸に置きました。「おかえりなさい、旦那様。あなたと息子を無事に私の下に連れてきてくださったノトルゴを称えましょう」
「竜たちの盟主と盗賊さんにも感謝いたしますわ。彼らなしでは私のぼうやをあれ以上きれいに連れてくることはできませんでした。アーチマジスターもうまくことを運んでくださったのね」モラーリンの浅黒い手がそっと優しく彼女の腕に置かれました。彼は落ち着いて幸福そうに笑いました。でも、彼の胸に置かれた両手は、彼を労わるようでもあり、障壁を作っているようでもありました。
「私は本当に恵まれているわ。でも、息子と話すのは久しぶりなのです。二人だけなら、もっと話がしやすいかもしれません」
モラーリンの笑顔がさっと消えました。「3人でいるより2人の方が言葉が見つけやすいと?まあ、そうかもしれないね。時にはね、奥さん」彼は踵を返して去って行きました。橋が揺れて軋みましたが、彼の足は少しも足音を立てませんでした。
アリエラは彼の背中を見ていましたが、彼は振り向きませんでした。エドワードは、また彼の敵に苦痛を与えたことで、好奇心と満足感と後悔が混ざったような気持がしました。「エドワード、私の坊や。ここにきて座ってちょうだい」
エドワードはその場に立っていました。「お母さま、僕は何年も待って、答えを求めて何リーグも旅をしました。僕はもう待ちません。一歩だって動きません」
「何と言われていたの?」
「父が客の名誉を信頼しながら夜眠っている間に、魔法の助力を得て最も卑劣な方法で誘拐されたと」
「お父さまがそう言ったのね。モラーリンは?」
「完全に自分の意思で来たと言いました。あなたの言葉で聞きたいのです」
「私がなぜあなたのお父さまの下を去ったか、どうしてあなたを連れて行かなかったのか、どちらが聞きたいですか」
エドワードは間を置いて考えました。「母上、僕は本当のことが聞きたいんです。ですから、僕は本当のことを知らされなければいけません。あなたが僕を置き去りにしたことを。もう一つの方は、僕は知っていると思います。あなたがそれ以上に、またはほかに話したいと願わない限り、僕はわかっているだろうし、わかると思います」
「真実ですか?真実とは、それを理解している者から独立して存在するたった一つのものではありませんよ。でも、あなたに私の真実を話しましょう。そうすればきっと、あなたは自分の真実にたどり着くでしょう」
アリエラは静かにクッションのおかれた椅子に歩いて戻り、姿勢を正しました。ルビーの色をした小鳥がすぐそばの小枝に停まって、彼女の穏やかな声に伴奏をつけました。
「私の両親が私の結婚を故郷の習慣通りに決めてしまったのです。私はコーサイアを愛していませんでしたが、初めは彼を尊敬していましたし、良い妻でいようと努めました。彼は私を気にかけもしなければ、世話もしてくれませんでした。ですから、彼は私の尊敬を失い、手をかけてもらえない植物が枯れていくように、私は毎日少しずつ死んでいたのです。あなたといる時だけが私の幸福でしたが、コーサイアは私があなたを軟弱にすると考えました。『女みたいに』と彼は言いましたわ。そうして、あなたの3回目の誕生日のあと、私は毎日たった1時間だけ、あなたと過ごすことが許されました。あなたの泣き声を聞きながら、何も考えられずに座って泣いていました。ようやくあなたが泣き止んで私を求めると、私の心は空っぽになりました。私は護衛を一人か二人しか付けずに、長い時間一人で散歩をして、馬に乗るのが癖になりました。そんな時、モラーリンがやってきたのです。彼はロスガー山脈にある黒檀の鉱山を欲しがっていました。彼が使いたがっていた土地は、私の持参金の一部でした。彼は私たちの民に彼の技を喜んで教えてくれましたし、ダークエルフが作った武器を差し出してさえくれました。そのお礼に、私たちの民はゴブリンを遠ざける彼の手助けをして、ハイロックに彼の民の植民地を作ることを許したのです。コーサイアは土地には興味がありませんでしたし、本当に武器をとても必要としていました―最上のものでしたからね―ですから、彼はその申し入れを喜んだのです。話し合い、決めるべきたくさんの細かい事柄があって、その交渉への干渉が私にも降りかかりました。コーサイアはダークエルフを嫌っていましたし、タムリエルで最も優れた戦士として既に名声を得ていたモラーリンに嫉妬していたのです。
「でも、モラーリンは熟練の戦士以上の人でした。彼は読書家で、太陽の下にあるものすべてに興味を持っています。ヤー・フリーとジム・セイから教えを受けたように歌い、演奏することもできました。彼は、私が夢でしか会えないと思っていた、それ以上のお相手でした…誓いますわ。私たちは二人とも外にいるのが好きで、話し合いは乗馬と散歩の間でしたが、いつも彼の部下とコーサイアの部下が一緒でした。すべてが整った時、コーサイアは条約を祝って大きな宴会を開きました。ハイロックのすべての貴族がやってきて、他の地域からもたくさんの人たちが訪れました。最後に、酔っぱらったコーサイアが血でなければ洗い流せないような侮辱の言葉を漏らしました。私は他の貴婦人たちととっくに席を立っていましたから、それが何だったのかは知りません。でも、私はコーサイアがそのような言葉をため込んでいることを知る程度には、個人的に充分聞いてきました。モラーリンは決闘を申し込み、それまでに彼がウィットを取り戻すかもしれないと、コーサイアに昼までの猶予を与えました。
「そしてモラーリンが独りで私の部屋に来て、何が起きたかを話してくれました。『奥様、彼はあなたの弟君を決闘相手に選ぶだろうと思います。いずれにせよ、もう二度と関わることのできない血の河が、私たちの間に流れるでしょう。私はあなたの愛なしで生きていくことはできます。だが、あなたに憎まれることには耐えられない。共に来てください。妻として、あるいは名誉ある客人として、それはあなたの選択です。そして、ご親族の代わりに、あなたは血の代価として貢献なさるでしょう』
「そして、月明かりの下で、恐れおののいて、眠っている貴婦人たちのそばで、私は彼を愛していることを知ったのです。彼なしで生きて行けるかは疑わしかったけれど、それでも、あなたをそれ以上に愛していたの!『息子は』私は囁きました。『置いては―』『奥様、選ばなければなりません。お気の毒ですが』わかるでしょう、エドワード?もし留まれば、私の弟の死が―彼の無垢な若い血が流れるのです。あるいはあなたのお父さまの血が!あるいは、そんなことは起きないと思っていたけれど、私の愛する人の血が流れたかもしれません。モラーリンの戦闘技術はそれだけでも優れていましたし、この類の出来事には、彼は同じくらい優れている魔法の力も借りるでしょう。『連れて行けますわ』でもモラーリンは悲しげに首を振りました。『私にはそんなことはできない。父と子を引き離すことは、私の名誉に反する』
「愛する者を一人ぼっちにする、私は義務には慣れていました」アリエラは誇らしげに言いました。「あなたを父親から、あなたの大好きなおじさまから盗んで行けばよかったでしょうか?そして、おそらくコーサイアは生き残り、この件で私を責め、私を遠くにやってしまう言い訳にしたはずです。コーサイア��私がいなくなれば喜ぶだろうと考えました。彼が本当に武器を欲しがっていることは知っていました。あなたと過ごす時間を得るために、それで取引することもできると私は考えました。モラーリンが私を見ずに立って待っている間、すべてが私の中を駆け巡っていました。
「マーラ様、正しい選択をお助け下さいと私は祈りました。『本当に私を妻にしたいのですか?私は―私は厄介ごと以外何ももたらしませんのよ』
『アリエラ、私はあなたを妻に迎える。私が求めているのはあなた自身だけだ』彼はマントを脱ぎ、布団を引き剥がしながら私の体を包みました。
『モラーリン、待って―これは正しいことかしら?私がしようとしていることは?』
『奥様、もし間違いだと考えているなら、私はここに立ってなどいない!あなたに与えられた選択肢の一つは、私には最も正しいことに思えます』彼は私を抱き起して、馬に運んでいきました。そうして、私は彼のマントだけを身に着け、彼の前に座って馬に乗り、あなたのお父さまの家を去ったのです。野蛮な喜びと悲しみが混じって、自分がどう感じているかわかりませんでした。これが、私の真実です」
エドワードは静かに言いました。「でも、彼は結局、僕とお父さまを引き離した」
「本当に渋々だったのです。そして、ドラゴンが、本当には、あなたとお父さまの心は既に離れてしまっていると言ったからです。何リーグかだけのことです。これはあなたの安全を保つ方法なの。モラーリンはここに来ることを決めるのは、あなたの自発的な決断であるべきだと言いました。それと同じに、戻りたい時に戻っていいのですよ」
「モラーリンは僕をただ連れて行こうとした!アイリ―その、アーチマジスターが同意しなきゃいけないって言ったんだ」
「彼は忍耐強い性質ではないのです。そして、彼はコーサイアを傷つけてしまわないか不安でした。彼がその議論をどこかほかの場所で続けられると考えていたことは間違いありません」
「肝っ玉の小さい王だって呼んだんだ。そして笑ったよ。どうして?ダガーフォールの人の肝臓はエボンハートの人のより小さいの?第一、それに何の関係があるの?父さまはとても怒ってた。きっと戦いたかったと思うな。でも、父さまが僕を嫌ってるのは本当だよ。わかってるんだ。でも、わかりたくなかった。だからそうじゃない風にふるまっていたんだ。モラーリンはそうじゃないと思うけど」
「ええ」
「でも、彼は嘘をついた。彼は僕の父親だって言おうとしてた。わかるんだ」
アリエラは頭を後ろにそらせて、鈴を転がすような声で笑いました。彼は遠い記憶からそれを思い出し、背中がぞくぞくしました。「もしあなたにそう思ってもらえたら、きっとものすごく、心からそう言いたかったに違いないわ。彼はいつでもせっかちなの。そして、彼は誓いの下では決して嘘をつかないし、愛するものを傷つける嘘はつかないわ」
「僕のことを愛してなんかいないよ。僕のことを好きでさえないんだ」
「でも、私は愛しているのよ、私の大切な坊や。あなたは―」エドワードは彼女が大きくなった、と言おうとしているのだと思いました。大人たちはいつでも彼の成長を見てそう言うのです。一週間前に会ったばかりでも。奇妙なことに、年のわりに、彼は小さかったので。彼女はその代わり、「私が考えていた通りだわ」と母の深い満足を湛えて言いました。
「彼はあなたのことを愛してる。でも彼は使いっぱしりの小僧じゃないと言った。でも、あなたは彼がそうみたいに下がらせた」
アリエラの顔と首が真っ赤になりました。
「確かに、私は召使いに格下げされたようだね」うず高く食べ物が積まれたお盆を持って、モラーリンが静かに入ってきました。「椅子を取ってくれないか、少年。私が給仕役をやれるなら、お前も給仕役をやれるだろう。お前はお腹が空いているだろうし、妻が私の欠点の残りの部分を話す前に戻った方がいいと思ったのでね。それを挙げ連ねるのにほとんどまる一日かかるから」彼は鎧を脱いで風呂を浴び、細いウエストの周りに銀のサッシュを巻いて、洗い立ての黒いジャーキンとズボンを着ていました。でも黒い剣は、彼の横で揺れていました。
「まあ、なんてこと。小さな軍隊がお腹いっぱいになるほどの食べ物を持っていらしたのね。それに、私は朝食を済ませましたの」アリエラは小さな手でエルフの腕に触れ、愛撫するように下に滑らせて彼の手を握って力を込めると、それをまだほてっている首に持ち上げ、唇でその手をなぞりました。彼女の美しさに向かい合う浅黒い肌に居心地の悪さを感じながら、エドワードは素早く目を逸らしました。
「これは私用と、少しは坊やのためにね。でも、ご相伴してくれると嬉しいよ。君は痩せてきている。私にとっては針みたいだ、本当にね」彼女の黒い巻き毛の束を指に巻き付け、軽く引っ張ってにやりと笑いました。それから、食べ物に移ると、人間がするように指で食べるのではなく、小さな銀色の武器で飢えた狼のように襲い掛かりました。その食べ物は―素晴らしかったのです。エドワードはもう何も入らなくなるまで食べました。
「立ち聞きしていたんだが」彼は思慮深そうにもぐもぐと言いました。彼は食べている間、モラーリンの欠点を口の中でもそもそと挙げ続けていました。そして、もっと早く大きな声で言えばよかったことがわかりました。
「ゼニタールよ、坊や、君たち人間は、個人的な話を木の上全体に聞こえるような大きな声で叫んでも、私が耳に綿を詰めて聞かないでいてあげると期待��ているのかね?」彼は大きなとがった耳をとんとんと叩きました。エドワードは急いで何を話したか思い出そうとしました。嘘をついたと言いました。ああ、なんてことでしょう。彼が聞いていませんように。
「それで、私は嘘つきなんだって?坊や」ヴァー・ジル、彼に救いの手を、エドワードは溺れ死ぬような気持がしました。このエルフは心を読めるのかしら?彼はそれが父親が彼に使った侮辱の言葉ではないことを願いました。「僕―僕は、そのことを考えていると思ったって意味で言ったんだ。口ごもったもの」エドワードは喘ぎました。彼はものごとを悪い方に転がしていました。
「たぶん、私は思い出そうとしてたんだよ…」皮肉っぽい響きが戻ってきました。
「僕のことなんか好きでもないくせに!」エドワードが大きな声で言いました。
「だからって、本当の父親がお前に主張するのを止めることになるようには思えないね」
「モラーリン、やめて!」アリエラが遮りましたが、エルフは片手を上げて彼女を黙らせました。
「わからないんだ」エドワードがちらりと見ました。
「どうしてあんなことを言ったんだね?」
「わからない―ロアンが言ってた―ことなんだよ―そして、僕はちっとも父さまに似てないんだ。みんなそう言うよ。そして話をやめてしまうの」
「言ってたこと―とは何だね?言いなさい、坊や!」
「二人が若かったころ、どれほど母さまがおじさまのことを好きだったかって。母さまが連れていかれたあと、彼がどんなに悲しんで怒ったかって。弟じゃなくて恋人みたいだったって彼女は言った。とってもかわいらしくそう言ったけど、何か他の意味があるみたいだった。口に出すのがとても汚らわしい何かだよ。他の時には、あの人は僕がとてもエルフっぽく見えるって。僕が結婚したあととても早く生まれたことも。あの人の一人目の息子みたいじゃなかったって」
モラーリンは跳び上がりました「何だって!戻ってあの女狐の首を絞めてやる!人間は―」彼は悪態をかみ殺しましたが、その赤い瞳は怒りに燃え上がり、筋肉がはちきれるように膨らんで、髪は逆立っていました。「お前はエルフと人間の子供には見えない。私が母上に出会ったのは、お前が母上のおなかに宿ってから4年後だ。どうやらロアンはどちらの嘘を使いたいのか決めかねたのだろうね。だが、近親姦などと!私ができないなら、ケルが代わりに鉄槌を下しますように」背の高いエルフは怒り狂って部屋の中を歩きました。カジートのようにしなやかで、片手は剣の柄を撫でています。その台が揺れて、少し下がりました。
「エドワードに比べれば、彼女は自分の息子たちに大望を持っている。疑問なのは、彼女の話を信じる者がどれほどいるかだ。彼を殺させる計画をしているなら、充分ではないだろう」アリエラのなだらかな眉に小さなしわが寄りました。「あのね、私は彼女を嫌ったことはないのよ。彼女もそう。あの方は私の立場を欲しがっていて、私はエドワードを救うために喜んで譲ったわ」
「僕に王様になってほしいんだね。そうしたら黒檀の鉱山を持てるから」エドワードはパズルを解きました。
「まあ、黒檀なんてどうでもいいの。おそらく彼が手に入れるでしょうし。あなたのお父さまがお亡くなりになったら、ロアンの子供たちと協力するより良いチャンスを持っているの。彼らには感謝する十分な理由がありますし、いい取引よ。そうは言っても、彼らの両親のことを考えると、契約にサインするのに充分なほど、自由に口が利けるかどうかは見込み薄だけれど」
「それじゃ、なぜ?僕のこと好きでもないのに」
「マーラ、お助けを!人を『好き』と思うことは人間の概念だ。ある日、彼らはお前を好む、次の日は好まない。火曜日にはまたお前のことを好んで戻って来る。私の妻は私に対してそうするが、彼女が私を好きじゃない時でも私を愛していると言うよ。彼女がどちらもしない日と、リアナの騎士団に加わる話をする時以外はね。そんな時は、私は彼女が正気に戻るまで狩りに行く」
「大げさね、そんなの一度しかなかったし、よく知っているくせに」
「回復期間は大いに楽しんだのを覚えているよ。もっとあってもいいかもね」二人はお互いににやりと笑いました。
「だけど、どうして僕に王様になってほしいの?」エドワードは食い下がりました。
「言っただろう、それはアカトシュの意思なのだ。それと、アーチマジスターのね。私は遠乗りに付き合っただけさ。彼らに聞いてごらん」
「アーチマジスターに会ったら聞いてみよう」
「素晴らしい考えだ。我々と北に旅立つ前に、お前は2、3週間タワーで過ごすことになるだろう」
「それだけ?」
「お前の母上と私と一緒に冬を過ごす計画がそんなに嬉しくないかね?」
「そんなことは…ないです。でも、アイリックと一緒に行くって言ったんだ」お前じゃなくて、口に出さなかった言葉が、二人の間にありました。
「そうなるだろう、そのうちね。今、そこでの数週間は、魔法の訓練を始めるのにちょうどいいだろう。私はお前に呪文を教えてやれる。だが、お前は強くならなければならない。お前の体が心に追いつかなければいけないんだ。それはアーチマジスターの意思なのだよ」
「戦闘の魔法?僕は他のことを勉強したいな。獣の呼び出し方、癒し方、そして浮き方…」
「それも学ぶだろう、必ずね。それと、お前は戦士は癒せないと思っているのか?それはお前がいちばん最初に学ぶ呪文だ。だが、王は戦い方を知らねばならない」
「得意じゃないんだ」
「ドラゴンの歯だよ、坊や!まさにそれがお前が学ばねばならない理由だ」
「もしできなかったら?」
「お前は勇気があって、澄んだ頭を持っていて、魔法を学ぶ潜在的な力がある。それは大抵の者が持っている以上のものだ。残りの部分は私が教える」
エドワードの頭が、不慣れな賞賛にぐるぐる渦を巻きました。「僕が?本当に?君が?」
「お前はお父上の愚かな王宮の者たちがドラゴンとユニコーンの前に丸腰で向き合って、アーチマジスターとタムリエルの英雄に、彼らの正義を要求すると思うのかね?正義だって!そんなものを前にしたら、彼らはどうにか慈悲を請うのが関の山さ、それだって疑わしいが、口が利けるものならね」
「僕、そんなことした?したのかなあ?」エドワードはすっかり驚いてしまいました。彼は知らなかった、考えたこともなかったと付け加えたいと思いました。
「ああ、したとも。そして、それはここからモロウィンドに向けて歌われる行いだ。私はそのバラードを作曲しよう―昼寝をしたらすぐにね。ドラゴンの背中の上ではあまりよく眠れないんだ」
「僕とシャグに眠りの魔���をかけたね!」
「そして城の他の者にもだ。友人に手伝ってもらってね」
「うわああ。宙にも浮けるの?見せてくれる?」
「そう急ぐな。私はドラゴンの背中に一晩中とどまっているように、動きを固める魔法を全員にかけていたんだ。休むまではマッチを使わずにろうそくに火を灯すこともできないよ」
「ああ、わかった。それでも僕は、戦士よりもアーチマジスターみたいになりたいな」
「はっ!アーチマジスターが戦えないなんて、そりゃニュースになるな!彼がお前に杖の扱い方を見せる時間があることを願うよ。初期の訓練には最適の武器だ。そして彼以上の講師は望めない。さあ、お前が前に見た四人の中で、誰が一番優れていると思う?」
エドワードは数分の間、慎重に考えました。「僕の判断は本当に粗末だけど、それでもよければ、タムリエルのチャンピオンって称号を使う人が一番優れているはずだと思う。でも、アーチマジスターは君の魔法の先生ではないの?そして武器の扱いもよく訓練されているみたいだ。だから、誰が勝っているか?ドラゴンの炎と爪と歯に太刀打ちできる人間がいるかな?それに、とても足が速くて、尖った角と蹄があること以外、僕はユニコーンのことは何も知らないんだ。とってもおとなしかったし。それで、君が尋ねたその質問には、正しく答えられそうにないんだ」
「いい答えだ、坊や!単体の近接戦闘ならユニコーンは簡単に勝てる。人間も、ドラゴンでさえ、あんなに早く一撃を当てられないし、炎で焼くこともできないし、魔法や属性の力も効かない。その蹄は致命的で、その角は一度触れただけで、どんな敵でも殺してしまう。角自体は燃えてなくなってしまうけれどね。それでも、一番強力なのは、それをすぐに再生できることだ。
「そして、4人のタムリエルの英雄は、互いに戦えばおそらく敗者になるだろうが、その称号は馬鹿げた自慢ではない!モラーリンは一流であることに慣れていない。結果として、私の行儀作法は苦しんでいるかもしれないがね」
「わが王よ、あなたには心から感謝申し上げます。あなたは僕に偉大な栄誉と貢献を与えてくださいました。ご恩返しできることがあれば、致しましょう。僕の乱暴な言葉と不躾をご容赦ください。僕は粗野で粗暴な中で暮らしてまいりました。そして、僕には父がないようです。あなたをそう呼ぶことをお許しいただけない限りは」エルフは少年に手を差し出し、彼はその手に自分の手を置きました。エドワードの味気ない気分はすっかり消え…まるで魔法のように…思考が彼の心を漂います…すると彼は手を離して、モラーリンの腰にしがみつきました。エルフの手は黒い髪を撫で、薄い肩を掴みました。
「ありがとう、奥さん。結婚からたった5年で、君は私に9歳のすばらしい息子を贈ってくれた。非凡で、本当に…魔法のようだ」
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voyagemiz · 4 years
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✈︎ウィーン2日目
昨日はだいぶ疲れていたのでぐっすり眠り、朝もゆっくり。ろくな物を食べていなかったのでホテルの朝食が本当に幸せ…スタッフも親切👨‍🦰
ソーセージが死ぬほど美味しかった。
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今日はまずウィーン分離派会館へ。
大学生の頃からずっと行ってみたかった場所だったので、前日から楽しみにしてた。前回は時間の関係で行くことができず、悔しい思いをしたので今回ウィーンにでの重要なミッションだった。
今日はとにかく風が強くて、踏み出す足が風であおられて自分の意思とは違う方向へ歩いてしまいそうだった。気温は6〜8℃あたりだったけど、体感は1℃くらい寒かった!みんなコートのフード被ってたけど、あのスタイルは大正解だ。
ウィーン分離派会館が見えて、まず外観に驚く。不思議な建物…
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チケットを購入しようとしてカードを出すと、なんか色々言われて全然わからなかったが、どうやら10€以下はカードが使えないので、ポストカードとか買って10€以上にして。との事。大人しく現金で払った。笑ってごめんー!と言えばなんでも許してくれる🤗
中に入って地下に行くと、お目当のクリムトの第九の壁画が。去年上野でレプリカを見たけれど、本物は訴えてくる物がちがった。日本語のパンフレットがあったので、きちんと内容を理解することができた。
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人が希望を持って進もうとする時、必ず敵対するものが現れる。(欲望、恐怖、不健康、不安…)でも希望はこれらを超えて行けるそう。クリムトがその様に言っていたみたいです。
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けむくじゃらの体に蛇の足を持つ伝説の怪物ティフォーン。
色々圧倒されすぎて15-20分くらい観てたかも。人も居なくて良かった。
分離派会館ってシーレとかもあるのかと思ってたけど、ここと現代アートくらいだった。
そこからはノープランだったから、とりあえず適当に歩きながらなんとなくデメルを目指す。途中から寒すぎて本当に本当に辛かったので、本気でデメルを目指して歩くことに。
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前回も居た働き者の馬ちゃん達!挨拶してくれたので、撫でてあげた🐴
前回はデメル20-30分待ちだったけど、今回はほぼ待たずに座れた。メニュー表見てもケーキの欄が本気で分からなかったので、乱暴に伝えたら分かってくれた。
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美味しかったんだけど、甘くて重くてクリームは残した…🤭
デメル出て、お土産屋さんで定規購入。次の仕事でちょうど良い本のサイズを考えなきゃならないのに、定規を忘れたのでやっと手に入った。
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お土産用だけどね。これで安心。
そこからはもう本当にノープランなので極寒の中をフラフラ歩く事に。高い建物はないので、遠くに良さそうな建築物があればそこを目指すって感じ。
途中で入った教会が、久々にゾクッと来てすぐ退散した。昼なのに誰も��ないし、入ってすぐにココはやばいとこだ。と気がついたので退散。ドアを開ける前に、帰して貰えるかな?となぜか思うほど。
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気を取り直してフラフラしていると、なんか良さげな坂。登ってから反対側を降りて地図を見たら、近くにベートーベンの記念館がある。行かねば!と思い建物を探すも、全然見つからずグルグル…結局、最初に見た良い坂の登った右側にあった。。建物の4階にあって、螺旋階段をひたすら登った。パンクなお兄さんからチケットを買い、見学。オーディオガイドが無いので説明書きをgoogleで翻訳。うっすら理解。もっと深く知りたかったなぁ。
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ベートーベンのデスマスク…
小顔だ
見終わってから、またフラフラして色々見たけど、夕方になり本気で凍りそうだったので本日の観光終わり。
スーパーで食べ物買って、持ってきたお味噌汁飲んであたたまる。
明日はおにぎり食べて、荷物減らさなきゃだな。🍙
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kahi-kohi · 4 years
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旅する珈琲 Vol.4
さてさてどうしたものかな、とサーチャー氏は首を傾げました。 友人の待つ北の街に向かっていた列車が、途中の小さな駅でどうにも立ち行かなくなってしまったのです。 この雪じゃあね、と車掌さんが帽子をあげ、申し訳なさそうな顔になりました。 「しかたがないですよ」 その帽子にはこんもりと雪が積もっています。 サーチャー氏がそこに視線を移したものですから、車掌さんは気恥ずかしそうに苦笑いして帽子を脱ぐと雪をはらいました。きっとさっきまで外で雪かきをしていたのでしょう。 ふわふわのマシュマロのように見えますが、こういう雪は指にくっついてとても冷たいものなのです。サーチャー氏は気の毒に思う気持ちと感謝の気持ちでいっぱいになりました。 「除雪車が来てくれますから明日には動くでしょう。でもとにかく今日はこの駅で足止めです」と車掌さんが言います。 「駅の近くには宿もありますから、温かいベッドで眠れるはずです。そちらへどうぞ」 「ありがとうございます」 サーチャー氏は丁寧にお辞儀をしました。それから「車掌さんや機関士さんたちはどうするんですか?」と尋ねます。 この列車の乗客はサーチャー氏をいれても3人ほどです。ほとんどのお客は1つ手前の大きな駅で降りてしまっていました。 3人くらいなら小さな駅にある町の小さな宿でも泊まれるでしょうが、この列車を動かしている人たちは車掌さん以外にも機関士や運転士たちといった鉄道員が何人もいるはずです。 車掌さんはちょっと驚いたように目を瞠ってから肩を揺すって笑い出しました。 「さあさあお客さん、私たちのことは心配せんでもいいんです。どのみち私たちは列車から離れるわけにはいきません。でも冬のたびにあることですからね。駅舎には毛布もストーブもあります。慣れていますよ!」 サーチャー氏は「そうですか」ともうひとつお辞儀をして客車を降りました。
空からはしんしんと真綿のような雪が降り続いています。 サーチャー氏はマフラーをしっかり巻き直して毛織りのコートの襟を立て、駅から出ました。 振り返ると鉄道員たちが雪かきをしている姿が見えます。丁寧に列車の雪を払っている姿は頼もしいものでした。 遠くに除雪機関車の汽笛が聞こえてきましたから、確かに明日には動けそうです。 無理しなくてもいいのになあ、とサーチャー氏は思いました。クリスマスまでには間に合うようにたっぷりと余裕を持って列車に乗りましたから2、3日遅れたところでどうということもありません。 けれど、すぐに思い直します。 隣の客車に乗っていたえんじ色のコートを羽織った背の高い紳士は、小脇に大きなぬいぐるみを抱えていました。もしかしたら彼は出来るだけ早く家族のもとに帰りたいかもしれません。 サーチャー氏の友人はいい大人ですから、サーチャー氏の訪れが少し遅れたところでお土産話がひとつ増えたくらいに思ってくれますが、ぬいぐるみを待っているのが小さな子供ならそんな風には思えないでしょう。子供の世界はいつだってとても小さくて大切なものばかりで、はち切れそうなのです。 きっと、列車を動かす人たちはそういうことがよくわかっているのです。だからあんな風に懸命に雪を除けてくれているのです。駅はいつだってそんな人たちの群像劇で溢れているのですから。 サーチャー氏は鉄道員という仕事に改めて深い敬意を抱きました。幸せを運ぶ人のことをサン���クロースと呼ぶのなら、彼らだって立派なサンタクロースに違いありません。
そんな風に考え事をしていたせいでしょうか。サーチャー氏はいつの間にか小さな町の外れに出てしまっていました。 真っ白な雪景色の木立がずっと向こうまで続いています。 (おやおや) いつのまに駅前の通りを過ぎてしまったのでしょう。もしかしたら宿屋のあるほうと反対側へ歩いてしまったのかもしれません。雪の日というものはいろんな感覚を不思議な方へと引っ張ってしまうので油断は禁物です。 急がないと夕暮れになってしまいます。引き返そうかと思いましたが、もう少し歩いた辺りの木立の影に、ちらりと家の灯りが見えました。 他に家らしきものはありません、ぽつんとひとつだけ小さな屋根が見えます。窓には灯りが点っていました。 サーチャー氏はその家で少し温まらせて貰おうと考えました。 何故って、その家の窓辺の灯りがとても素晴らしく居心地良さそうに見えたのです。洋燈の光以外に赤や緑や金色の小さな灯りがきらきらしていて楽しそうです。そんな風に窓辺を灯りで飾っている家の住人がひと嫌いであるなんて思えません。 サーチャー氏は雪に滑ったりしないよう慎重に、けれど足早に近づいて行って扉をノックしました。とても古風な石造りの家ですが、扉は綺麗で明るい緑色です。 「すみません、こんにちは!」 扉はすぐに開きました。 「こんばんは、いらっしゃい!」 なかから出てきたのは驚いたことにトロルでした。サーチャー氏は目を瞬きます。トロルはふつう南の国にいるものです。こんな雪深い町に好んで住んだりしません。とても寒がりなのです。 「ははあ」 トロルはサーチャー氏の顔を見てにこにこしました。 「僕がトロルなので驚いているんですね! 僕は変わりもので、南の国と北の国と行ったり来たりしているんです。さあさあお入り下さい。旅の話を聞かせて頂けるなら、美味しい晩ごはんと温かい寝台がご用意出来ますよ!」 もちろんサーチャー氏は大いに感激してトロルの招待を受けることにしました。
 「僕はチョコミントロルのフォラステロといいます」 トロルは自己紹介しました。 なるほど毛並みはチョコレート色ですし、鼻の色は爽やかなミントの色あいです。 「僕は一年の半分をカカオの農園で過ごして、もう半分をこの辺りの森で過ごすことにしているんです。何しろいい香りのミントの葉がつめるのでね!」 フォラステロは素晴らしく滑らかなホットチョコレートにマシュマロをたっぷり浮かべてくれました。 ひと口飲んだだけで体の内側からぽかぽかしてきます。 「こいつは凄い」 サーチャー氏は冷えた鼻先までかっかとしてくるので驚きました。 「そうでしょうそうでしょう」とフォラステロは得意そうです。 「最高の金色のカカオで作った特製のホットチョコレートです。唐辛子を少し入れるんです。冷えた時にはこいつが一番ですよ!」 それからフォラステロはとても美味しい料理を次々に振る舞ってくれました。 カカオで煮込んだ肉料理はスパイスとカカオの良い香りがして柔らかく美味でしたし、添えられていた芽キャベツとジャガイモはちょうど良いゆで加減でほくほくでした。鱈とリーキのスープも思わずおかわりをしてしまうほどの美味しさでした。 デザートはもちろんチョコレートのケーキです。 濃いチョコレートが染みこんだ生地にキルシュに漬けたさくらんぼが挟まっていて、生クリームと一緒に食べるのです。 サーチャー氏は大喜びで、「御礼に、ぜひ君に珈琲をご馳走したい」と申し出ました。 一緒に食事をして打ち解け、すっかりくだけた物言いになっていました。 「こ��ケーキに最高にあう、おすすめの珈琲豆があるよ!」 サーチャー氏が旅をしながらあちこちで集めてきた鞄一杯の珈琲豆は、生の豆と焼いてあるものと両方あります。どちらも大切な友人へのお土産ですが、旅の途中で良くしてくれたひとたちにいれてあげることはちっとも惜しくはありません。そんな話をこそ、友人は喜んで聞いてくれるはずだからです。 フォラステロは大喜びでした。 サーチャー氏が丁寧にいれた珈琲の香りにミントグリーンの鼻をひくひくさせて、「やあこれは素敵な香りだぞ!」と手を打ちます。 それから何かに気付いたように、ぱっと明るい顔になりました。 「君はなんて素敵な珈琲を持っているんだろう。これは僕がいた国の珈琲だね!」 もちろんそうなのです。料理を食べながらカカオ農園の話を聞いていたサーチャー氏には、それがどこの国のことなのかわかりました。大小の島がいくつも集まって出来ている国です。海に囲まれ、濃い緑と濃い色の花とたくさんの動物たちがいる国です。そこでは果物と一緒にカカオがつくられていますが、珈琲もたくさんつくられていました。 サーチャー氏は友人から貰った愛用のポットで珈琲をたてながら片目を瞑ってみせました。 「君さえ良かったら、僕がこの珈琲豆を手に入れた島の話も聞いてくれないかい」 「もちろんだとも!」 フォラステロは身を乗り出して、にっこり笑いました。 それから少し茶目っ気のある顔になりました。 「その前に、ちょっとした提案があるんだ」 「なんだい?」 「ゆっくり君の話を楽しむ前に、珈琲を飲んで体を温めてから、僕の家の大きな魔法瓶にホットチョコレートをいれて、駅に差し入れにいかないか。そろそろ本格的に冷え込んでくる時間だろう?」 サーチャー氏はびっくりしました。 それはまさしく、「そう出来たらいいな」と思っていたことだったからです。 ホットチョコレートを飲んだ時、頭に浮かんだのは雪まみれで働いている鉄道員たちのことでした。彼らがこの素晴らしいホットチョコレートを飲むことが出来たら、どんなに喜ぶだろうと思ったのです。 「どうしてわかったかって顔をしているね」 フォラステロはミントグリーンの鼻を得意そうに動かしました。 「簡単だよ。僕はトロルだから君が『いいやつ』だってことはすぐわかる。そして君は食事の時にどうしてこの町に来たのか話をしてくれたね。その時、列車の車掌さんや鉄道員さんたちの話をしてくれたろう。彼らの帽子の上に積もった雪のことや、ぬいぐるみを抱えた紳士のことも」 フォラステロはにっこりと笑顔になります。 「『いいやつ』の考えそうなことはたいてい決まってるものなんだ。だから僕はホットチョコレートのちょっとした配達を提案してみたってわけだよ!」 サーチャー氏はすっかり感激してフォラステロの手を握りました。 「嬉しいな! 君はなんていいひとなんだ」 「僕らは『いいやつ』同士ってわけだね!」 気に入った冗談のようにふたりは笑い合いました。 そうときまれば善は急げです。 サーチャー氏のいれた香り高い珈琲を飲みながら、ふたりは大きな魔法瓶を用意し、特製ホットチョコレートをたっぷりと入れました。それから、サーチャー氏が鉄道員たちの珈琲をいれて別の魔法瓶にいれている間に、フォラステロはベーコンとチーズとチコリのサンドイッチを手早く作ります。それをチョコレートのケーキの大きな塊と一緒に布に包み、ついでに林檎のジェリーボンボンもおまけにして支度はすっかり出来上がりました。
ふたりは荷物を持ち、コートを着込んで夕闇に沈んでいく雪の世界に足を踏み出しました。 「心配はいらないよ!」と、帽子を被ったフォラステロがカンテラを持って笑います。 「このカンテラは特別製なんだ。僕の一番の友達が、僕が決して迷わないようにって火と水と鉄で作ってくれたものなんだ。友達が願いを込めて作ってくれたものはいつだってそのひとを守るものだよ。知ってるだろう?」 もちろんサーチャー氏にも分かります。サーチャー氏もそういうものを大切に持っているからです。
2人は雪降る夜の中に歩き出しました。雪は相変わらず静かに落ちてきていましたが、お腹のなかが温かいせいで、あまり寒さは感じません。一面の雪景色でしたが、道がわからなくなるようなこともありません。ふたりは北の国の歌と南の国の歌を2つづつ歌い、そうしているうちにちゃんと駅に着きました。 駅と列車の周りでは幾人もの鉄道員たちが総出で線路の雪かきをして働いています。 彼らは、サーチャー氏とフォラステロからの思いがけない贈り物に大層驚き、歓声をあげました。 小さな駅舎のなかにはストーブがありましたから、鉄道員たちはみなそこに集まり、寄せ集めた大きさの違うカップでホットチョコレートを飲みました。ふわふわの雪に覆われた手袋の下の冷たく固まってしまった指先も、ホットチョコレートが溶かしていきます。あっという間に体中が火照ってくることに、鉄道員たちは驚いたように顔を見合わせました。非常用の冷たいパンと薄い豆のスープでは物足りなかったお腹も、フォラステロのサンドイッチとチョコレートケーキ、サーチャー氏の珈琲で満たされました。 鉄道員たちは嬉しそうに目を細め、いくにんかは目尻を拭っていました。とても寒いときに温かいものを体に入れると、じんわりと涙が滲むものです。それは天国のように幸せな心持ちなのです。 みんなチョコレートや珈琲をおかわりしていました。 カップを両手に持ち、「ああ温かいですねぇ」と白い髭の機関士さんが目を細めます。 「ありがとう。お二人のご親切でお腹も心もとても幸せです」 口々に御礼を言いながら幸せそうに溜息をつく鉄道員たちに、トロルとサーチャー氏もすっかり満たされた気持ちになって顔を見合わせました。 「そう言って貰えて、僕らもとても幸せな気分です」 「幸せはいつだってお互い様で、かわりばんこですからね」 フォラステロが哲学者のような顔で言うと、みんなの間に優しい笑いが零れました。 黒い眉毛の機関士さんは逞しい胸を叩き、「こんな素晴らしい贈り物を貰ったのだから、一晩中だって私たちはあの列車のかまどくらいに赤々と燃えて頑張る事ができますよ! 今度は私たちがお客さんに幸せを贈る番です。かわりばんこです!」と言いました。
 駅舎を去るころには雪はすっかりやみ、夜空には満天の星が広がっていました。これならば明日は列車も動きそうです。 フォラステロは「明日、君の見送りに一緒に駅へ来るよ。その時に魔法瓶を持って帰れば良い」といい、ホットチョコレートと珈琲のはいった魔法瓶を鉄道員たちのために二つばかり置いてきました。 「ねえきみ、僕は今日とても素敵な友人を得たよ」 「奇遇だね、僕もそう思っていたところだよ!」 サーチャー氏とフォラステロは握手をしてうなずき合いました。
 新年を迎えたらお互いの友人も連れて4人でお祝いをする約束をして、サーチャー氏は翌日、もっと北の街へと出発しました。 きっとあちらでは友人のロースター氏が首を長くしてサーチャー氏の訪れを待っていてくれるに違いありません。珈琲豆も土産話も新しい友人のことも喜んでくれるでしょうけれど、ロースター氏が何より喜んでくれるのはサーチャー氏の元気な姿です。 サーチャー氏はかたんかたんと揺れる温かい列車のなかで帽子を顔に下ろして微笑み、短い眠りについたのでした。
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nikaibun · 5 years
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十二月
 今年の十��月は鞄の中が牛乳まみれになったことから始まった。ボストンバッグに入れていた瓶の蓋が、事もあろうに外れてしまっていたのである。そして、まず手洗いにでも駆け込むべきところを、そのまま列車に乗ってしまった。気が動転していた。しかししばらく時間の経つうちに平静を取り戻して、終わってしまったことはどうにもならないことに諦めがつき、仕事場についたときに鞄をまるごと捨てた。そのあと、仕事仲間に笑い草にして語った。その鞄は、このように牛乳塗れになるまでに、約十ヶ月のあいだわたしに担がれてきた。それは買い付けたときは安売りをしていて特段たいした痛手にはならなかったし、捨てた瞬間は厄介払いでもしたかのように清々しい気さえしたものだが、こういうことが積み重なると、さすがに心が弱ってくる。
 ここ最近、二週間に一回は、牛乳塗れの鞄のような災難があるような気がしている。それを多いと捉えるのか、少ないと捉えるのかは、その人の人柄や性格などにも寄るのだろうが、わたしからしてみたら致命的に多かった。鍵を忘れて家族の帰宅する二十三時まで外に居なければならないとか、たった五分目を離した隙に自転車の盗難に遭うとか、些細なものだと、間違ったものを買ってきてしまうとか、ハンバーグに玉ねぎを多く入れすぎがためにただのひき肉炒めになってしまったことだとか。本当につまらない話だと思う。つまらない話は、積み重ねても積み重ねてもつまらない話でしかないが、それをたくさん乗せられた人は重さに耐え切れず死ぬんじゃないか知ら。  気丈なつもりでいたわたしも、いよいよ、押しつぶされそうになってしまったというわけである。
 もうすっかり十二月だった。人生で十二月を迎えるのは、なんだかんだ言って二十五回目である。そのくせ、いつも初めて迎えるような気持ちになってしまう。人間は、生きるのに必要なこと以外は忘れるようにできている。  九月末に仕事場が移転した。企業拡大により、自分の部署だけが引っ越すことになった。列車の乗り換えも変わり、仕事場への道のりが少し長くなった。変わってからもう二ヶ月は経つのに、わたしの足は今でも稀に以前の乗り換えを目指そうとする。  仕事場では、毎日ちがう笑い話をする。愚痴を笑いに変えるのである。何も解決しないが、単に憂さ晴らしのためだった。でも、意外とこれが労力の要る作業なのかもしれない。強いふりをしているだけの人には。つまり、わたしである。
 ハッピー・メリー・クリスマス! ケーキはいかがですか、お嬢さん。  樫の木でできた重厚なドアを開けると、店主が恥ずかしげもなくそう迎え入れてきた。わたしが店に入ってくるのが、硝子越しに見えたのだろう。その言葉は間違いなくわたしにだけ向けられたややおふざけ気味のものだった。 「ハッピー・ハッピー・メリー・クリスマス。楽しい時期ですね。」 「そんなしけた顔で言われちゃあね。」  店主は髪を無造作にかきあげて苦笑した。 「まあおれもそんなハッピーじゃないんだけどね。なにしろ十二月が誕生日だから、おれもいよいよ三十路なわけよ。」  わたしは、おめでとうございます、と言って、なるべくカウンターから離れた席に座った。 「いつもの?」店主でなく、カウンターの端っこに頬杖をついて座っていたノラが言った。わたしは黙って肯いて椅子に座る。ノラは、店主に「いつもの。」とそのまま伝えてまた雑誌を読み始めた。いつもの、といっても、そんなに格好いいものではない。カフェラテである。  わたしはこの店に繁く通う。なぜなら、いつ来ても席が空いているからである。広いわけではない。かといって、狭すぎるということもない。客足が思わしくないのは、駅前の道からやや外れたところにあるためだろう。しかし潰れる気配もない。それはわたしのような常連客が、まるで自分の家かのように通い詰めているからである。  ノラもまた常連だった。いつも同じ席に座っていた。人気のない席なのである。なにしろ、カウンターの端っこには雑貨が山盛りに置いてあるのでとても狭い。そして、しっかりした椅子ではなく、わりと簡易的な椅子が配置されている。ほとんどノラのために用意されたような席だった。 「随分と元気がないようで?」  ノラはくるっと振り返って、めずらしく機嫌よさそうにわたしに話しかけてきた。 「年の瀬は殺傷能力があるね。」わたしは無表情のままで言った。「物憂さだ。」  わたしの吐き出した言葉に彼は、ふうん、だか、へえ、だか、音で言い表せないような返事をして、また目線を雑誌に戻した。スウェットみたいなズボンの膝小僧を居心地悪そうに掻いて、息苦しかったのか薄いキャメルのセーターの胸の部分を軽く引っ張りおろした。ノラを一言でいうなら、近所のこぢんまりとした部屋に住む貧乏大学生といったところか。いつ来ても居るので、たしか学生だったとは思うのだが、授業に行っているのか否かはよくわからない。  店主はカウンターに座るご年配と話し込んでいる。景気良く世間話に花を咲かせながら、ほとんどノラのほうを見ずにカフェラテをカウンターの端に置いた。それを、ノラがわたしのいるテーブルに運んだ。 「もう半分、新年に足を入れているようなもんだ。」ノラが言う。 「どういう意味?」 「諦めと自棄みたいなもんですかね。」  口が止まらないのか、ノラはそのまま席へは戻らなかった。わたしの横へ細い身体をするりとくぐらせ、隣の席とわたしの席とのちょうど真ん中あたりに収まった。 「あの爺さん、ずっとマスターと話し込んでやがんだ。しかも、宝くじの話ですぜ? 当たりもしない紙切れのことを延々と。暇ったらありゃしないね。」 「そう? 夢があっていいと思うけれど。」 「おや。あなたはおれと同意見だと思ってましたけどね。」 「同意見といえば同意見だけどね。」 「なんと。嘘がお上手で。」  カラン、コロロン。ドアに取り付けてあるベルがのっそりとした揺れに躊躇いがちになると、二人目のご老人が杖をついて入ってきた。先にいた宝くじを夢見るご老人が元気に声を掛けるので、どうやら二人は知り合いらしい。 「単位は平気なの。」  何の気なしに、ノラに聞いてみた。彼は肩をすくめて見せる。「あなたに心配されるほどじゃありませんぜ。」
 悲しみよこんにちはという言葉が似合うのは素敵な異国の十七歳の女の子だけであろう。  マリオンは艶めく赤みがかった髪をシャンパン・ゴールドを纏った指先で梳きながら「あーあ。ふたご座流星群見られなかったなあ。」と言い言いわたしの隣へ座ってきた。  それは冬のわりに暖かい日の一瞬のことであった。やたら風だけが強くて、わたしは何度も帽子を吹っ飛ばされた。そのくせ曇っていて、空の彼方で繰り広げられていたはずの流星群は沢山の人に待ち侘びられていたのに、ついに姿を見せることはなかったという。わたしは仕事に追い回されぐっすり眠っていたのでわからなかった。  マリオンはきらきらの爪を眺めて溜息をつく。星のことで頭がいっぱいなようだった。何も言わずとも、彼女の目の前にはココアが運ばれてきた。言わずもがな、ノラの手によって。  彼女は知らないだろうが、今日はとある旅客車の廃車日である。わたしは特に列車が好きなのではないけれど、仕事に行くのに乗っているだけでその情報はいつの間にか頭に刷り込まれていた。駅前はいつも通りの賑わいであった。  一昨日のことである。仕事帰りの列車で、大騒ぎをするスーツの群れが流れ込んできた。夜遅かったので、酒でも飲んでいたのだろう、良い歳をして、大きな声で喋っている。忘年会か、とぼんやり思った。きっと、自分の立場も年齢もマナーも、何もかも忘れてしまったのだろう。それが良いことなのか悪いことなのかは、わたしなぞが決めるようなことではない。  ただ、あらゆることを忘れて良い日というのは、なんだか素敵な響きを持っていると思える。
 十二月の折でさえ初雪なんか降らなかった。昨年は天から鍋やフライパンさえ降ってきたというのにだ。風に乗って聴こえる歌は、 Gloria in excelsis deo という遠い国の言葉だった。 「��サだ。」リュカさんが言う。「大聖堂でみんな練習してる。」  街の中には杉の木が点々と生えていたが、どれも等しく雪の衣を纏いはしなかった。不思議とさみしげな光景である。  リュカさんと昨年のストライキは大変だったねと話した。そうそう、鉄の塊が空から落ちてきたのは、さじを投げた料理人および主婦たちの怒りの声だったのだ。とはいえ鈍器が空から落ちてくる様は、今風の言葉を借りて言えば「普通に危ない」はた迷惑なものだったけれど、公安が一日で鎮めてくれて事なきを得た。その一連の流れを何をするでもなく眺めていたノラは、公安が一言漏らした「こんな事があってたまるか。」という真面目一徹の正統派の愚痴に一日中狂ったように笑い転げていた。あれから、一年経つのか。 「一年が早いです。リュカさん。」 「きみはまだ若いから分からないかもしれないけれど、ぼくほどになるともっと短く感じるよ。」 「そんなに歳変わらないじゃないですか。」 「きみの三倍は生きてる。」 「うそつき。」  リュカさんは学校に通っていた頃の二つ上の先輩である。  三倍、とは随分大きく出たものである。読書の量でいえば、わたしが一生読む文章の三倍は摂取しているのかもしれない。リュカさんは学生時代から図書館が友達だった。ヒトの友達がいないわけでもない。その教養の豊富さと人望から、リュカさんは何処へ行っても人に囲まれる性質の人物だった。 「知識の量とか、そういう意味でした?」 「んー。なんのこと?」 「なんでもありませんでした。」  わたしの三倍生きているリュカさんに、わたしの言葉足らずの疑問は届かなかったようである。
 同じような不幸が訪れるのではない。人はそれぞれ毎日なにかしらの困難に立ち向かっている。「まただ。」そう思うときは、その類の不幸を貴方が乗り越えられていないでいるから、何度もぶつかっているように感じているだけだ。  これほど真理に近い言葉を耳にしたのは、そう、おそらく七歳ぶりである。
 十二月二十七日。樫の木のドアを開けた。耳あたりの良い「カランコロン。」は今日は耳に届かない。おもわず上を見てやると、ベルが取り外されてしまっている。 「いらっしゃい。」店主はグラスを拭きながら言った。「今日は端へすわんないで、こっちへおいでよ。」  店主の手招く先には、ノラだけが居た。今は、ノラしか客が居ないようだ。ノラを客と言っていいものか、そういったところから議論する必要があるなら、頭が冴えるようにチョコレート・ココアをオーダーせねばならないだろう。 「今ね、一年は早かったねって、おれが言ったところ。」店主は人の良い笑みを浮かべた。 「おれは、早かったなんて思わないんですがね。」  ノラは、湯のみを持って緑茶を啜った。どう考えても、裏メニューとしか思えないシロモノである。 「お嬢さんはどう? 今年は過ぎるの早かったかな。」 「そうかもしれないと思ったこともあったけど、やっぱりそんなに変わらない気がします。去年も同じ早さで一年は過ぎていった。」 「ああそうなんだ。じゃあおれだけかあ、今年一年が早かったの。さすがだね、輝かしいね、二十代。」 「最後、三十路川柳みたい。」 「ださ。」  ノラの放った二文字で店主は笑いながら憤慨する。それを見たノラが、史上最高に面白いものを見たとでもいうような人の悪い笑みを浮かべる。まったくもって対象的な二人がゲラゲラと笑うさまをその横で見るような、そんな年の瀬を過ごすなんて、まるで今年の集大成だなあとわたしは残念な気持ちになった。
「リュカさんってすてき。」マリオンは瞳の中にうつる光彩をゆらゆらうっとりさせながら、両手を口の前であわせた。「あたしの三倍生きてるんだって。」 「騙されてるよ。」すかさずわたしは突っ込んだ。でも、マリオンはどうでもいいという風に首を大きく振った。そのたびにスモーキーピンクの髪が揺れ、甘いいちごの薫りがする。 「騙されたっていいわ。」
 あした、きみは死ぬかもしれない。あさって、わたしは居なくなるかもしれない。
 私小説を書かう。  と筆を持つまでして辞めたわけですよ。わかりますかね、お嬢さん。私小説なんかくだらない。不幸の積み重ねよりつまらない文の集まりですぜ。一つのことを言いたいがために、何百文字と捏造をでっち上げるなんて。酔っ払ったノラは、喉をひっかけひっかけそう言った。  本当にそうだと思った。  十二月二十七日。ドアベルの外された店の中で、流れに任せただけの忘年会が始まった。「おれたちは忘れる必要がある。」当然の権利のように、声高に叫ばれたのがそもそもの原因だった。この喫茶に酒のメニューはないが、店主とノラは家にあるだけの缶ビールを掻き集めて、ささやかな宴の幕を開いた。そして早速、ノラが酔っ払いに成り下がった。  酒に強いらしい店主は、冷蔵庫の奥からケーキを取り出してわたしに出してくれた。クリスマス用の材料が余ったからさあ、と明るく笑う。本当��ことなんだか、どうなのだか。  わたしは、この場にリュカさんがいてくれたらなと思った。店主とノラの埃が舞いそうなほどの古臭い漫談には飽き飽きだった。なにせ、これはもう今年一年たっぷりと見ている。気乗りがしない。  じつは友人とけんかわかれをした。わたしがこの店へ来るほんの五分前ほどである。わたしが友人の集まりに顔を出さなかったことが原因だ。この手の不仲話は女子の中ではよくあることだった。  決定的なけんかがなくたって、友情というものはだんだんと色褪せていってしまう。今そばにある人が自分の今のすべてで、その先もその前も、何ひとつ同じものなどない。そうやって独り前に向かって歩くのだ。それが堪えないようにするために、人は飯を食らうのであろう。ケーキなどでは、なく。
 さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい。ノラが言った。世にも奇妙な年越しケーキだよ。  いやいやいや。店主が言う。まだ二〇XX年だから。年越してないから。  ノー・ノー。もう半分二〇XY年に踏み入れているようなものさ。冬至を超えた瞬間から冬の本番っていうのは始まっていて、ある種、一年の始まりは真冬から始まるようなものなんだから、もう年越しと名乗ったって不思議じゃない。第一、三百六十五日あるうちの一日も十日も変わりゃしないんだから、そんな細かいところばかり気にするなんて、きみ、どだい時代遅れっていうものだぞ。ノラが言う。  店主はワイングラスをくっと傾けた(いつから缶ビールがなくなったのだろう)。「そういうの英語でなんて言うか知ってる?」  ノラは外国じみた身振りで首を傾げてみせた。 「GOOD GRIEF!」  そしてまた二人は大笑いをする。ノラは、意味をわかっているのだろうか。ちなみにわたしはよくわからなくて、その場ではただ苦笑いを穏やかな死海のボートのように浮かべているだけだった。家に帰ってキーボードを叩いて調べたら、画面に「ああ、呆れた。」という意訳が載っていた。
 煉瓦を積み上げて渡した橋があって、その真中でリュカさんは時計を直していた。年末になると、人間が身勝手に区切った時間軸と自然の時間に僅かな隙間が出来てしまって、放っておけばあっという間に昼夜が逆転してしまう。その一年分のズレを、ほとんど凍って水位の下がった川の上にある橋のところで、調節を施すというわけである。街中の時計も、この時期すでに来年に合わせたものもあれば、今年のままの時計もある。そのため、年末の待ち合わせはちょっとした騒ぎになることもある。  つじつまを合わせるために言っておくと、時計の針は年明け後の一秒から一年を均等に区切る速度で回っていないから、夏頃には結構ずれているのだそうだ。でも、一年の中で昼と夜の長さは引っ張り合って移ろいゆくため、人間は意外にもその科学的事実に気づかない。  客は随分とまだらだった。別の目的があって橋を渡る人が、小さな木の椅子に座ってドライバーを片手に腕時計をこじ開けるリュカさんを見て、もうこんな時期か、と気づいて、ついでに直してもらう、というくらいのものだった。年末の風物詩なのだ。 「ぼくからしてみたら、まだ二〇一三年の夏さ。」リュカさんはご婦人の華奢な腕時計を、結構乱暴に開けて、言い放った。ご婦人のうっとりとした表情を見る限り、彼が商品をずさんに取り扱っていることなんて微塵も気が付いていないのだろう。リュカさんは端正な顔立ちをしているので、人生がうまくいきすぎる。ご婦人は多めのチップをリュカさんの右手にしっかり握らせ、足取り軽く橋を渡って行った。 「電池を交換していないことをそんなに格好良く言えるものなんですね。」 「そうかな? お嬢さんも、詩でも勉強したらいい。」  リュカさんはドライバーをチェスターコートの大きなポケットに仕舞い込んで、椅子を肩に担ぎあげた。閉店の合図だ。 「そういえば、きみ、まだノラと会ったりしてるの。」 「会うっていうか、店に行ったらいつもいるので。」 「ふうん。そう。」  リュカさんはそれ以上何も言わなかった。これから何処へ行くのか訪ねると、市役所へ行くとの事だった。取られすぎた税金の帳尻合わせに行くんだとか。良かったら、それが終わった頃の、七時に待ち合わせをして、パスタでも食べに行きませんかと誘ってみた。 「それはもちろん、今年の時間のだね?」  リュカさんは、世界中のやさしさをかき集めたように穏やかに笑った。
 待ち合わせの時間まで、いよいよ暇になってしまった。図書館は昨日で閉館してしまった。わたしはボンヤリ橋の上で、寒さも凍えも忘れて、頬杖をついてしまう。  色々あったな。今年も。小さな溜息をついた。  でも、そのほとんどを、もう忘れてしまっていた。きっと生きるのに不要だったのであろう。つまらない話は、必要がない。  わたしの時計は、今年の時間を刻み続けている。このまま刻んでいったら、わたしはみんなより遅く歩いていけるのだろうか。みんなの一度歩いた安全な道を、踏みしめられるのだろうか……これもつまらない話なので、明日には全部忘れてわたしは時計の針を来年に合わせていることだろう。  あと三日で、十二月が終わる。誰がどう思おうと、きっかり三日だ。そうしたら、今年のことは、いとしい過去になる。
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hyouset · 2 years
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九日目
こんにちは。九日目です。あと一回で二桁です。一桁の日最後の日記、がんばります。
前回の続きを書くのがいいのか、今、思っていることを書けばいいのか、迷っています。多分、別に何を書いてもいいです。昨日書こうと思って結局書けなかったことは、カラオケに行ったことと「恋せぬふたり」というドラマの五話目を見たことです。今日の夜に六話が放送されます。楽しみです。
最終的には昨日続きも書けるかもしれませんが、とりあえず、今思っていることを書こうと思います。前にも書いたような気がしますが、今思っていることが一番ホットだからです。書きやすいからです。じゃあ書き始めます。
突然ですが、机に向かった状態で何かを考え始めることができる人は、いったいどのくらいいるのでしょうか。一度滑り出してしまえば座ったままでも考えられるような気がするのですが、糸口を掴むのは、いつだって歩いていたり、掃除していたり、何か他のことをしているときだと思います。お風呂でいいアイデアを思いつくっていうのは、よく聞きますよね。ちなみにこれは今日書こうと思っていたこととまったく関係がありません。
関係ないついでにもう一つ書きます。自分以外の人のことで悲しむこと、喜ぶことができる人は、広大な自分を持っている人なのではないかと思います。たとえば、肉親が亡くなったときに涙を流すのは、まるで自分の一部を失ったかのような感覚に陥るからじゃないでしょうか。最近「失った悲しみは、出会えた喜びだ」という言葉がずっと頭のなかにあります。尊敬する方、尊敬ってなんか違うな、敬愛かな、とにかくその方の言葉です。本気で愛せているときは、変な話、その対象ももはや自分なのだと思います。いや、あれですよ。自分の一部だから全部自分の言う通り動くべきとか、そういう話ではないですよ。あくまで、自分とその対象は、違う存在です。でも、本気で愛しているときは、その対象も自分の一部であると、錯覚してしまっているのではないかということです。物理的に自分の一部というわけではもちろんありません。使い古された言い方になりますが、自分のなかに、自分にとってのその人だったりものを作ってしまって、それを自分の一部として扱う、ということかもしれません。あ、なんか分かったような気がします。
今、僕が考えている自分というのは、そこに立っている一人の人間のことではなくて、一人の人間が持つ内面世界のことなのだと思います。何かを好きになれば、内面世界の中にうねうねっと、新しく人形みたいなものが生えてきます。こうして「自分」は拡張されていきます。
多分、絶対に揺らがない、確立された自分と、揺らぎまくりのゆらゆらした自分と、二種類あるのだと思います。なんでこんな哲学っぽいことをやっているのでしょうか。とにかく続けます。物理的に自分は一人だし、その人が見ている世界と、今、僕の隣に座っている白のロンTに黒いズボンを履いた人が見えている世界は、間違いなく違うものです。でも、なんていうか、その人の主観の中では世界は果てしなく広がっていっていて、僕が考える横の人も、僕なのだと思います。反対に、横の人が考える僕も、横の人です。僕にとっては、世界の全部が僕です。でもそれは、僕に限った話ではありません。世界中の誰にとっても、世界の全部がその人なのです。ひとりひとりが、とてつもなく広大な自己を保有しているのだと思います。そして勉強すること、外の世界について学ぶことで、その世界は少しずつ装飾されていきます。何かを学ぶということは、外から未確認生命体が去来することではなく、地面から、ニョキニョキなんとなく懐かしさを感じるけど見たことのないものが生えてくることだと思います。
今、書いてて、おれけっこうすごくない? なんかめっちゃそれっぽいこと言ってない? って思ってしまいました。多分、僕が今言ったようなことをもっと的確に唱えている人が過去にいたのだと思います。すぐに調子に乗る癖をやめたいです。いや、でも調子には乗ってもいいのかな。調子に乗っているとき、調子に乗っている自分に気付けたらそれでいいのかもしれません。
全然書くつもりのなかったことを書いてしまいました。でも頭の中が整理されたので良かったのです。この日記は、頭の中を整理するために書いているところがあります。ここに書くから整理されるのです。ノートに書くとか、スマホのメ機能に残すとかではだめです。誰かが見てくれるかもと思うから、ちょっと緊張感を持って書くことができます。ちょっと第三者目線を持って書くことができます。え、これで第三者目線持ってるつもりなん? と思われたかもしれません。そうです。これでも見られることを意識しています。実際、僕がここに書いていることは、どのくらい伝わることなんだろう。ハローハロー。そういえば、川上未映子の「ヘヴン」という小説の「コジマ」は「僕」への手紙の冒頭に「ハロハロ」と書いていました。なんか素敵です。あと、コジマと「僕」が美術館に電車で向かっていて、あと何駅かで目的の駅に着くとなったとき、コジマが「ねえ、もう少しで着いてしまうよ」と言うところがとても好きです。「着いてしまうよ」ってなんかいいです。〜してしまう、と言うと、良くないことをしているみたいな感じがしますが、このセリフはなんというか、ワクワクしすぎて着くのが怖いみたいな趣があって好きです。
書きたいなー、というか一回書くことで整理したいと思っていることがここ最近ずっとあるのですが、なかなか書き始めることができません。今日も書けなさそうです。ぴえん。
「ぴえん」がめちゃ���ちゃ嫌いだったのですが、一回自分で言ってから好きになってしまいました。完全に���めているというか、あの目のうるうるの中には一歳本心が混じっていないのだろうなと思うと、もはや清々しく感じられて好きです。
突然ですが、最近、一人暮らしを始めるかどうか悩んでいます。僕は今年の春から大学四年になるので、留年しない限りは、これが最後の一年になります。残りの単位数的に、卒業は十分射程圏内です。でも、それなりに頑張らないといけないのも事実です。一年の後期学校が嫌すぎて、四単位くらいしか取れなかったツケが回ってきています。何もかも嫌になって学校に行けなくなる可能性は否めません。そして、何もかも嫌になって学校に行かなくなる可能性が高いのは、多分、一人暮らしを始めた場合です。でも、そのくらいがいいんじゃないかとも思っています。延命措置は終わりにしようぜ。
今日の日記は、これまでと雰囲気が違うような気がします。今まではそれなりに淡々と書いていたつもりだったのですが、今日はなんだか、感情、というかモヤモヤした心の一部が前に出てきています。悪くないです。こういうのも好きです。好きにやろうぜ。
多分、一人暮らしを始めると、生活習慣が良くなります。最近、バイトがある日は、8時に起きて深夜の1時に寝ています。自分を律することに成功した場合です。ダラダラしてしまうと、2時をすぎてから寝ることになります。そうなれば睡眠時間が六時間を切ります。六時間は寝たいです。完全に余談ですが、睡眠時間は偶数にしたいです。どうしてでしょう。
バイトがある日だと起きてから一時間、帰ってから寝るまでの四時間、ない日だと起きてから三時間、帰ってから寝るまで四時間、それ以外の時間を外で過ごしています。ちなみに今もスタバでこの日記を書いています。おしゃれですね。僕のパソコンはピンク色のマックです。このパソコンは兄が買ってきてくれたのですが「この色のパソコンでスタバで作業とかしてたらめっちゃかっこいいですよ!」と店員さんに言われたらしいです。今、僕は格好いいです。ふふ。
閑話休題、要するに、最近、僕は1日の大部分を外で過ごしています。それ自体に問題は特にありません。僕はなんだかんで、人がいるところが嫌いじゃありません。東京とか大阪の人混みは嫌ですが、そんなに混んでないスタバくらいの人口密度はけっこう好きです。多分一人暮らしを始めても、僕は外に出ると思います。問題は、実家暮らしだと、帰りたくても帰れない状態が頻発するということです。帰ってはいけない状態があるわけではありません。僕が勝手にそうしているだけです。好きなタイミングで帰ればいいです。でも、一度家に帰ると生気が吸い取られるのです。一人暮らしを始めれば、好きなタイミングで家に帰って、ちょっと休憩したり、することができます。ちょっとお腹空いたからおにぎり作りに帰ろとかできます。今だとお腹が空いてもそのへんで買うしかないので、お金がかかります。僕はくそ贅沢なので、外にいるとすぐカフェでケーキとか食べてしまいます。安くても500円、高いと千円近くかかります。
一人暮らしを始めるメリットは、好きに家に帰れるということ、それと、自分で生活を回しながら授業を受けてバイトに行くという生活がどれほど苦しいものなのかを味わうことができる、ということがあります。一人暮らしを始めたところで、そのくらい苦しくなるのかは分かりません。僕が一人暮らしを始めて生まれる環境以上に、劣悪な環境で、生活を送っている大学生はたくさんいると思います。でも少なくとも、一人暮らしを始めれば、今の暮らしよりは確実に忙しくなります。家に帰ったらご飯が用意されている。これはすごく贅沢なことなのだと思います。一人暮らしを始めれば、まずこれはなくなります。
疲れてきました。色々と書きましたが、どれも僕が一人暮らしに対して思っていることと、少しずつずれているような気がします。多分、もっと単純な話です。僕は、家族と距離を置きたいのだと思います。大学もバイト先も実家の近くなので、物理的に距離を置くことは難しいですが。
今日はここまでにします。今までで一番ばらばら書いたと思います。また明日、多分明日、よろしくお願いいたします。明日はもうちょっとまとまったことを書きたいです。
今日の日記
八時十分に起きた。昨日の夜に返したLINEの返信はなかった。当然だと思う。
お昼ご飯にカツ丼とうどんのセットを食べた。美味しかった。バイト先の方にご馳走していただきました。本当にありがとうございます。このご恩はいつか返さないといけないと思う。
バイト終わりにいちごのパフェを食べにいくか悩んだ。閉店まで一時間強くらいしかなかったので、今日は断念した。カフェに入ると二時間は居座りたくなる。常識がないのかもしれない。
アオアシの最新刊を買って読んだ。面白かった。アオアシを読むと自分にもこんな未来が訪れる可能性はなかっただろうかと考える。多分なかったと思う。サイドバックって楽しいのかな。
また次回!!
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kuro-tetsu-tanuki · 3 years
Text
裕の誕生日
この小説は同好者の間だけで楽しむために作られた二次創作の小説です。
原作者様とは一切関係ありません。
本編のネタバレ、及び各キャラクターのルートネタバレを含みます。 メインキャラクター5人のルートが終わってない方は読まない事を推奨します。
世界観等への独自解釈アリ。 定晴さんトゥルーED後の妄想。 定晴さんトゥルーED後と言いながら定晴さんが殆ど出てこない罠。 裕の誕生日パーティーしようぜ!いえーい!的な。 同年代組がわちゃわちゃしてるとこが書きたかったんですよ!!!
裕の誕生日
・・・初めて打波島を訪れて約一年。 蛭子の干渉がなくなり、その庇護下から離れた打波島はその豊かさを失いつつある。 けれど、それでも島の人達は今を生きるため少しずつ前に進んでいる。 禍月もなくなり、月狂いの性質もほぼ鳴りを潜めたようだ。 生活にも変化が現れ、禍憑きだのなんだのと言った差別も表向きは解消されたようだ。 さて、そんな打波島の景観はというと一年やそこらで大幅に変わるわけでもない。 が、明らかに以前より様々な建物が増えているのがわかる。 どちらかと言うと建設中のものが多い、という印象か。 急激な変化も軋轢を生むとの事で、尊久さん主導のもとゆっくりと生活の近代化が進められている。 これは元々尊久さんが行っていた事業でもあり、その点に関しては特に問題は無い。 潮の結界が無くなったため島から本土へ足を運ぶ人が多くなり、文明開化さながら色々な情報が飛び交っている。
そんな変化を始めた打波島に、俺は再び足を運んでいた。 色々あったし、母さんの一周忌くらいはキチンと島で迎えたかったのだ。 とは言え、お寺の住職がいるという事もなく、立派な墓があるわけでもない。 簡単な墓参りみたいなものだ。 そんな訳でちょっとだけ大学を休みつつ、俺は連絡船に飛び乗ることになった。 泰蔵さんとはちょくちょく連絡を取っていたためそこまでそこまで目新しさは無かったが、この一年間島と本土を恐ろしい頻度で行き来していたのを知っている。 曰く、「一年の1/3は船上の生活だった」とかなんとか。 それが比喩なのかどうかは分からなかったけど、去年会った時より若干やつれたような印象を受けたのも事実だ。 本当に忙しかったのだろう。
島に着き、伯父さんと崇と一年ぶりの再会。 崇は少し背が伸びており、成長期に入ろうとしていた。 学校にも通い始めたようで楽しくやっているようだ。 屋敷に再びお世話になりつつ、三人で母さんの墓へと赴いた。 読経を上げるわけでもないが、墓の前で皆で腰を下ろす。 持ってきた弁当を広げながら、伯父さんから母さんの思い出を聞き、崇の近況を聞き、俺の近況を話す。 本当にただの墓参りの光景だった。
前より本土との行き来が楽になったとはいえ、あまり島に長居するわけにはいかない。 以前お世話になった人たちに挨拶回りをして島内を移動する事約一日。 体力を使い切った俺は屋敷の部屋で突っ伏していた。
「むり・・・もう歩きたくない・・・」 「何だよ、向こう帰って軟弱になったんじゃないか?裕」 「俺は元々都会のもやしっ子だっての・・・。常に体力持て余してるお前らとは違う生き物なんだよ・・・」
突っ伏す俺の横で千波がからからと笑う。 千波もあの後色々とあったようで中々大変だったようだ。 最近はその状況も少し落ち着いたようで、何度か本土の方にも足を運ぶ機会もあったようだ。
「で、明日には帰っちまうのか」 「まぁな。大学自主休講してこっち来てるわけだし長居するわけにはいかないよ」
明朝には島を離れ、夕方には本土に到着予定だ。 潮の結界が無くなったおかげで迂回するルートを使う必要が無く、片道6時間足らずで動けるようになったのは本当に有難い。
「なぁ、裕!」 「ん、どうした?」 「お前、もうちょっとで誕生日だろ?誕生日ぱーてぃーしようぜ!」 「確かにそうだけど・・・俺本土に帰るんだぞ?」
唐突な提案に面食らいはするが、そもそも自分は明日には本土に帰るのだ。 この様子だと今からという事でもなさそうだ。 その辺をわかっているのだろうか。
「おう!だから、俺も一緒についてくぜ!」 「・・・はぁ!?お前、漁はいいのか?」
確かに島の住民は本土に出れるようになったし、千波も数回本土に来たらしい話は聞いている。 だが、こいつの本業は漁師だろう。 そんなホイホイ島から出ても良いものなのか。
「おう!実は、父さんから内地での用事を頼まれててな。薬だの医療器具だの色々受け取りに行かなきゃいけねんだ。そのついで、ってワケじゃねえけど」
成程、耕平先生のおつかいか。 あの人の事だからそれにかこつけて千波が本土に来る機会を作ってるんだろうとも推察できる。
「・・・やっぱ、ダメか?」
不安そうな、しゅんとした雰囲気を出された顔をされて無下に扱える程俺は人でなしではない。 そもそも、向こうが厚意で祝ってくれると言っているのだ。嬉しくない筈がない。
「・・・いや、嬉しいよ。千波がいいって言うならありがたく祝ってもらおう!」 「いよっしゃあ!辰馬にはもう連絡して約束してあんだ!」
嬉しそうに叫ぶ千波。辰馬にも連絡済みと来た。 そんな話は聞いてないけど・・・辰馬の事だ、秘密にしてたってところだろう。
「用意いいな・・・。辰馬も来てくれるのか」 「へへ��デンワって便利だよな!連絡したら即決で乗ってくれたぜ。よっぽどお前の誕生日祝いたかったんだろうなあ」 「まぁ・・・去年はそれどころじゃなかったしな」
電気が広く普及し、文明の利器が入り始めた打波。 新市街等一部の施設にはあった電話も、だいぶ広く普及したようだ。 去年の8月頃にたまたま誕生日の話になって「何でもっと早く言わないんだ!」なんて怒られたこともあったっけ。 あの時は母さんの事や島の事で自分の誕生日の事すらどうでもよくなってたからなあ。 ・・・そう言えば、イザナギに誕生日おめでとうって言ってもらったっけ。
「なあ裕、洋一さんも呼ぼうぜ!勇魚のおっちゃんや海堂のおっさん、冴の姉ちゃんとかもさ!」 「ちょ、落ち着けって。第一、皆自分の生活があるんだからそんな急に来れる訳ないだろ・・・」 「えー・・・」
確かに旺海邸で生活したあの面々とまた一堂に会したいという思いもある。 たった2か月という時間だったが、あの人たちはそれだけの思い入れと感謝他様々な気持ちもあるのだ。 幸いそれぞれの連絡先は聞いている。 自分の誕生日という機会を使うことに若干の気後れもあるがそれはそれとして。 誘ったら、来てくれるだろうか。 そんな期待が仄かに浮かぶのも事実だった。
「わかったわかった、聞くだけ聞いてみるから・・・」 「頼むぜ裕!」
そんなこんなで各方面に連絡したが、やはりと言うか皆各々の仕事・予定がある為来ることは難しい、となってしまった。 が、大学に通い始めたという洋一さんは時間が取れるということで、俺達4人で集まる事となった。 幸いな事に今年の誕生日は日曜日という事で、土曜日から集まってそのまま夜更かしコースとなった。
「お、いたいた!おーい!洋一さーん!辰馬ー!こっちだこっち!」
当日、千波と先に合流していた俺は2人との待ち合わせ場所に向かっていた。 遠目で見てもすぐに判別の付く洋一さんを目印に、千波が声を掛ける。
「久しぶりだな、裕、千波」 「お久しぶりです、裕さん。千波も元気そうだな」
2人は千波の声にこちらに気づいたようで無事合流することができた。 島から戻って来た後もこの2人とは連絡は取っており、何度も会う機会があったのでそこまで久しぶりという訳ではないけれど。
「お久しぶりです、洋一さん。辰馬も元気そうだな!」 「ああ。裕達も健勝そうだな」 「あはは、ラガーマンは健康第一ッスからね。風邪ひいてる暇なんて無いッスよ」 「なんだよ辰馬、俺は風邪ひきそうな貧弱ってか?」 「そ、そんなつもりは・・・!いやでも、裕さん製作で結構不規則な生活してるってこの間・・・。そういう点は関心しないッス」 「そうだぞー。だから島回っただけでバテるんだぞ」 「うっ・・・藪蛇だったか・・・」 「あはは!裕、ちゃんと早寝早起き快眠快食快便は大事だぜ?」 「うむ。生活のリズムを崩すのは心身共によくない。バランスの良い食事、適度な運動、規則的な生活、これが乱れれば様々な不調が現れるぞ」
あれ、なんで俺こんな説教されてるような状況に? 今日は俺を祝ってくれるための日じゃ無かったの・・・?
「う、今日はその辺で勘弁してくれ」 「はは、裕さんの健康指南はまた今度改めてやるとして」 「先延ばしにはされたけどやるつもりなのか・・・」
意外と辰馬はそういう時スパルタだからなァ。 島に居た時の特訓を思い返す。 そういう所は一般人の限界を考慮しないと言うか藤馬さん仕込みの厳しさというか。 うん、今日はもう考えないようにしよう。不安な気持ちになって来た。
「じゃ、行きましょうか」 「おー、裕の家行くのは初めてだな!」
千波の言う通り、この面子を家に呼んだことは無かったなあと思いながら冷蔵庫の中身を思い出す。 帰って来てからもバタバタしてたからロクな物がないぞ。
「いや、その前に買い物行かせてくれ。準備する時間なかったし色々足りないから」 「ならご飯の用意も考えなきゃッスね。どうしましょうか」
今からの時間なら俺が作るのもアリか。 この面子なら皆で夕飯を作るのもそれはそれで楽しそうだ。
「あ、俺ぴざ食いてえぴざ!前に見て食ってみたかったんだよな!」 「ふむ、ピザか」
誕生日パーティーにピザ。 こう、フライドチキンとかコーラとかそういうジャンクな感じの食べ物が集まったパーティーにつきものなチョイスだ。 良いかもしれないけど家にあるオーブンで焼くには小さ目のものになってしまいそうな気もする。 それも悪くはないけれど、どうせならでっかいピザを皆でカットして食べたい気持ちもある。
「いっその事買うのもアリか・・・?」 「おー!〇ざーらか?どみ〇ぴざか?」 「いいけど、出せる金も限界があるからな���
嬉々として店を上げる千波。楽しそうでなによりだ。 だがしかし俺達は学生の身。 バイトをして収入を得ていたとしても日頃の生活だってある。 出せるお金だって多いわけではないのだ。
「いや、資金に関しては気にするな」 「え?」 「巌から結構な額の金を渡されている。巌にも裕の誕生日に皆で集まらないかという話をしたのだろう。自分は当直で行けない代わりにこれで楽しめと」
資金繰りを気にしていると、洋一さんが懐から厚めの封筒を取り出し手渡される。 渡されるままに中身を確認すると、諭吉様が・・・いっぱい。
「うわ、こんなに!?かなりの金額ポンと出しましたね。何か申し訳ないな・・・」 「気にするな。裕宛に巌からの手紙も預かっている。これだ」 「なになに・・・」
『皆と楽しくやれよ。んで、洋一を目一杯楽しませてやってくれ。それと、誕生日おめでとうさん』
(過保護かよ!!ていうか俺の誕生日ついでかよ!!)
海堂さんと洋一さんの事情は島から帰って来た後になんとなくは聞いている。 この人達はこの人達で様々な苦労をしてきたのは知っている。 本土に戻ってから海堂さんにも頼まれはしたが、暇がある時は洋一さんと連絡を取って時には一緒に出掛けたりもしている。 それはそれで楽しいし、洋一さんにとっても良い刺激になるかとは思っているが・・・。
(初めて打波島に行く時からしたらえらく変化したもんだなあ・・・。いや、良い事だな。それに、これも海堂さんなりの気遣いか。ありがたく使わせて貰おう)
去年の打波行きの連絡船での出来事を思い出しつつ、頬が少し緩む。 あの時と比べたら、皆色々と変わった。きっとそれは良い事なんだろう。
「俺も母ちゃんと父さんから幾らか持たされてるぜ!金なら心配すんなって!」 「沙夜さんまで・・・。ちょっと流石に申し訳ないな」 「うう、こういう時に沢山出せない自分が悔しいッス・・・」 「辰馬は父さんと同じ医者になるんだろ?なら医者になってその後裕に色々してやりゃいいじゃんか」 「そ、そうかな・・・」 「そうだな。その時は稼いでる筈の辰馬先生に奢ってもらおうかなー」 「なら頑張るッス!その時はまた皆で集まりましょうね!」
脳裏に浮かぶ耕平先生と沙夜さんの笑顔に感謝しつつ、今度お礼をしなければと脳内にメモする。 苦学生の辰馬が申し訳なさそうに眉を下げるが、すぐさま千波がそれを引き上げる。 こういう時千波の真っ直ぐ純粋な精神は、生真面目過ぎる辰馬をガッチリとフォローする。 光属性のメンタルは周りすらも照らし出す。 ・・・プリキュ〇かな?
「そしたら後でピザー〇でも寄ってくか。持ち帰りの方が安いし」 「ピザ・・・高級品ッスね」 「確かに。なんでピザってあんな高いんだろうな」 「人件費、配送料の関係上割高になるのだろう。メニューにもよるのだろうが生地や材料の原価、それに基づく粗利率、定価から逆算しても明らかな乖離があるからな」 「だから持ち帰りで一枚タダとかやってるのか」
先に買い物をする為スーパーに向かう途中、ピザの価格について話したり。
「ビールはスーパードゥライでいいか?」 「あ、俺ドゥライ好きッス」 「裕ー!これ!俺ポテチ食いてえ!」 「ああ、いいぞ。好きなもの入れろよ。洋一さんは何か欲しいのあります?」 「えり好みはしない。任せよう」 「あ、コーラとかも買ってくか。辰馬も酒だけだとキツイだろ?」 「助かるッス」 「他のソフトドリンクも多少あった方が良いだろう。割り材にもなる」
皆でワイワイ喋りながら菓子や飲み物を選んだり。
「後はケーキか?」 「どうせならばホールで良いのではないか?」 「ホールっスか!?そんな高級品を・・・」 「いやまぁ今回は軍資金も潤沢なので・・・」 「裕、どれにすんだ?どれも美味そうだぞ!」 「うーむ・・・これは迷う」
ケーキ屋に入って色々悩んだり。
「ジューシーステーキか、アスパラベーコンか・・・」 「クォーターもアリッスすねぇ」 「洋一さん、このなげっとってなんだ?」 「ナゲットは貴金属の塊という意味もあるがこの場合はチキンナゲット、つまり鶏ひき肉に衣などをまぶして調理した料理のことだな」 「おい千波、お前が食いたいって言ったんだからお前も選べよ」
ピザー〇でメニューを前に唸ったり。 終始皆でワイワイと騒ぎながら買い物をする。 こういうノリ、大学の友人とはあまりした覚えがないからそれがまた楽しい。 そんなこんなで買い物を終えた俺達は今日の会場である俺の家へと到着したのであった。
「おっじゃましまーす!」 「お邪魔します」 「邪魔をする」 「おお、4人もいるといつもより狭く感じるな・・・」
男四人というむさくるしい図というのもあるが、辰馬や洋一さんの体格が大きいのもあるかもしれない。 決して狭い部屋ではない筈なのに、部屋の中が妙にみっちりした気分になる。
「おー、裕の家結構綺麗だな!なんかこう、裕の家!って感じ」 「なんだそりゃ」 「裕、冷蔵庫を借りるぞ」 「ええ、ケーキと飲み物はそっちに。今テーブル出しますね」 「千波。飾り付けしようか」 「おう!まかせろ」 「え、飾りつけ?そんなものまで用意したのか?」 「だって内地の誕生日ぱーてぃーはこれが当たり前なんだろ?」 「いや、そうなんだけど・・・それをやるのって大体子供じゃ」 「いいじゃないスか。折角準備したんですし、俺達がやりたいので」 「・・・じゃ、お言葉に甘えて。頼んだぞ」
飾りつけまで準備してくれた千波と辰馬に面食らいつつ、パーティーの準備にそれぞれ手を付けていく。 軽い掃除は流石に済ませているのでテーブルや食器を用意し、食べ物類と一緒に準備していく。 と、そんな時だった。 『ピンポーン』 家の呼び鈴が鳴り、何かと思い玄関のドアを開けた。
「はーい」 「こんちゃー!ノラネコヤマトです。旺海裕さんでお間違えないですか?お荷物お届けにあがりましたー!」 「・・・何か頼んでたっけ?・・・あ、ここにサインですね。ご苦労様です」 「床に失礼しますね。重量ありますのでご注意ください。ありがとうございました~!」
やって来たのはノラネコヤマト便。 特に何かを頼んだ覚えはないけれど俺宛なのは間違いないらしく受け取りのサインを記入する。 ノラネコのお兄さんはニカッと笑って礼をして去って行った。 床に置かれた大き目の四角い段ボール。 重量あるって言ってたけどどんなもんだろう。
「って重っ!」
持ち上げた段ボールはかなりの重量があり、ひーこら言いながら持ち上げる。 と、その重量が一気に軽くなる。 段ボールの反対側にはいつの間にか辰馬が来て一緒に支えてくれていたようだ。
「裕さん、大丈夫ですか。持ちますよ」 「助かる。しかし一体誰から・・・冴さんから!?」 「これ結構な重量ありますね。何が届いたんスか?」 「えっと・・・ワレモノ、酒類・・・ああ、うん。実に冴さんらしいプレゼントだ」
段ボールに貼られた依頼主の名前を見て一気に納得する。 冴さんからの贈り物、と言ったところだろうか。 誘った時に皆で集まる旨を話したので行けない代わりにお酒を、という事だろう。 辰馬に台所まで運んでもらい、早速中身を検分させてもらう。
「日本酒、焼酎、ウィスキー・・・え、これウォッカ、にスピリタス・・・?え、アルコール96%!?お、リキュール類もある。カシスにピーチにコーヒー。どんだけ詰め込んだんだあの人」 「ふむ。流石冴だな。豊富なラインナップだ」
『裕、誕生日おめでとう。誘ってもらったのに行けなくて悪いわね。代わりに私のオススメを入れたから皆で楽しんで頂戴。面白い事態になったら仔細の報告よろしく���。P.S.今度は別日に是非呼んで頂戴ね。あなたの料理が食べられなくてちょっと口寂しいわ』
(祝ってくれてる・・・んだよな、これ?)
前半部分は兎も角、後半と追伸がメインの文章に見えて仕方がない。 贈られてきたお酒もバラエティ豊かで色々と楽しめそうではあるが、どう見ても冴さん専用のお酒としか思えないものもある。 ・・・これは後日お礼も兼ねてお招きしなければならないんだろうな。
「いっぺんに消費できる量じゃないな。取りあえず楽しめる分だけ使わせてもらおう」 「裕ー!こっち準備出来たぞー!」 「おー!じゃあ始めるか!」
取り合えず冴さんからのお酒は一旦しまい込み、台所から離れる。 部屋側に戻ると壁や天井、テーブルに様々な飾り付けがされており、正にパーティーの雰囲気だ。 俺の家なのに別の場所みたいだ。
「・・・凄いな」 「へへ、辰馬と一緒に頑張ったんだぜ!」 「どうッスか?中々いい感じに出来たと思うんスけど」 「ああ、これは凄いよ。ありがとうな、2人とも。さて、準備万端という事で始めようか」 「飲み物の準備もOKだ」 「千波、音頭頼むぞ」 「おう!一日早いけど裕の誕生日を祝って。かんぱーい!」 「「「かんぱーい!」」」
一斉にグラスを掲げ、乾杯。 皆でピザにかぶりついたり。 辰馬がピザにちなんだ苦労話を零したり。 ポテトのフレーバーで論争になったり。 洋一さんがナゲットをひたすら食べ続けたり。 結局食べ足りなくて俺が台所に立ったり。 俺がケーキのロウソクの火を一本消し損ねたり。 千波が初めて食べた苺のショートケーキに目を輝かせたり。 楽しい時間はあっという間で、飲んで食べて騒いでいる間に時間は0時前になってしまった。 そして。
「お、日付変わったな!というワケで、裕、誕生日おめでとう~!」 「裕さん、誕生日おめでとうッス!」 「裕、誕生日おめでとう」 「うん、皆ありがとう・・・ははっ」
誕生日おめでとう、という言葉と共にパンパン!というクラッカーの音が鳴り響く。 クラッカーから飛び出た火薬臭い紙テープが降りかかる。 そんな匂いすらも嬉しく、愛おしく感じる。
「本当にありがとうな、皆。去年の今頃はそれどころじゃなかったし」 「裕さん・・・」 「だから、凄く嬉しいよ。千波、企画してくれてありがとうな」 「おうよ!俺もまさか内地の裕ん家来て誕生日ぱーてぃーできるとか思ってもなかったぜ。ありがとうな!」
千波の笑顔がすごく眩しい。 ああ、お前は本当に良い奴だなあ。 思わず感極まって千波を抱き込んで撫でまわす。
「千波・・・。この、可愛い奴め!」 「うわ、やめろよー!」 「うりうりー!っはははは!」 「うひっ、そこやめろって!あはははは!」
一通り千波を弄りまわして解放する。 千波はくすぐったかったのか、未だに笑っている。 そんな俺達を眺めていた辰馬と洋一さんに改めて向き直る。
「辰馬も、洋一さんも今日は来てくれてありがとう。こうやって皆に祝ってもらえるなんて思いもしなかったよ」
身を正して礼を言うと、辰馬がふるふると顔を振る。
「お礼を言うのはこっちの方ッスよ、裕さん」 「島でも、島から戻って来た後も、皆お前には世話になっている。俺達が何かをして喜んでもらえるならば嬉しい」 「ええ。色々、本当に色々ありましたけど、皆裕さんには沢山感謝してるんスよ。だから、少しでもお返ししたいッス」 「辰馬、洋一さん・・・」
2人の言葉に思わず涙ぐむ。 本当に、本当にあの島に行って皆に出会えて良かった。 こんなに暖かくて、幸せで、掛け替えのない友に出会うことができたのだから。
「・・・ちょっとしんみりしちゃったな。さ、夜はこれからだ。呑むぞー!」 「おーっ!」
折角の誕生日にこんな空気は似合わない。どうせならもっと楽しい思い出にしたい。 そう思い、再びグラスを掲げようとすると辰馬がゴソゴソと動き出した。
「と、その前に。裕さん。俺達から裕さんに誕生日プレゼントッス!」 「お、おお・・・!マジか、そんな用意もしてくれたのか」
誕生日プレゼント! 俺にとってはこのパーティーだけでも十二分にプレゼントのようなモノなのにまだあるのか! 驚く俺に、辰馬は笑顔で紙袋を手渡してきた。
「俺からはコレッス!どうぞ開けてください」 「じゃあ遠慮なく、って重っ!リストバンド・・・にしては随分ゴツいというか重いような」 「リストウエイトとアンクルウエイトッス!これなら日常生活でもトレーニングできるッスよ!」 「えっ・・・?」 「裕さんはもうちょっと鍛えておいた方がいいッス。ただでさえこっちは物騒なんスから。製作作業で運動不足ぎみって言ってましたよね?これなら日常生活でもトレーニングできるし健康にも良いし、いざって時に動けるッス!」
(これ、1パーツ毎に5kgって書いてあるように見えるんだけど・・・)
「ふむ、これはいいな」 「俺の使ってたのよりは軽いですけど動きを阻害しないし吸汗性も抜群ッス!おすすめッスよ!」
ラガーマンの辰馬にはこれでも軽いくらいなのかもしれないが悲しいかな文系の俺にはかなりキツい代物なんだが。 とはいえ島で教わった武術の型は今でも継続してるんだ、基礎体力と筋力だって去年よりは上がってる筈。 折角だしこれを機に改めて鍛えてみよう。
「ありがとう、辰馬」 「どういたしましてッス」 「次俺な!俺はこれだ!」
次は千波か。 千波がそう言って取り出したのは本、本、本。 あっという間に目の前に本の山が築かれる。
「おお・・・これは・・・」 「こっち来るたび色々読んでみたけど俺のおススメ10選!特にこの『白猫ジロ』シリーズが凄い良くてな・・・!」 「あ、これ前にサキが読んでた奴ッスね。めっちゃ泣けるって言ってたッス」
10選という割には冊数が15を超えているという事は10冊ではなく10種類といったあたりか。 本の虫である千波の選んだものに外れはないだろう。これは楽しみだ。
「さんきゅな、千波」 「おう!読んだら感想も聞かせてくれよな!」 「俺からはこれを」
最後は洋一さん。 カサリという音と共に手渡されたのは小さ目の紙袋。 辰馬の時と違って随分と軽い。
「おお、これは・・・んん!?」
開けてくれ、と促されたので早速開封。 出てきたのは馬の写真がプリントされた薄く、手のひら大の黒い箱。 なんか見覚えのある形状だ。 表面には英語でデカデカと商品名が書かれていた。
「ぎがんとほーす?・・・洋一さん、これは・・・?」 「コンドームだ」
こんどーむ・・・コンドーム!? 今洋一さんコンドームって言った?
「えっ?」 「えっ!?」 「・・・?」
聞き間違いかな?と思い聞き直そうとすると、辰馬も声を上げた。 千波は言葉の意味が分からないのか不思議そうな顔をしている。
「ああ、避妊具のコンドームだ。何を贈るべきか色々迷ったのだが、実用性、希少性を鑑みてこれにした。あまり流通量が多くないのだな」 「え、あの・・・」 「以前、勇魚との性行為の際に避妊具の調達が大変だと言っていただろう。色々調べたがこれが最も頑丈且つ大きいサイズのものでな」 「アッハイ」
ああ、やっぱり聞き間違いではなかったのか。 純粋な厚意なのだろう。 洋一さんはそういう人だ。 その気遣いは有難い。有難いんだけどちょっと違うよね? なんかこう、誕生日に贈るものとしては揶揄いとかを含むチョイスだよこれは。 海堂さんか。 海堂さんチョイスなのか。やはりあの髭親父とは一度決着をつける必要がありそうだ。
「すまん、誰かに贈答をするなど余り経験がなくてな。巌にも相談したのだが自分で考えてみろと言われてしまってな。・・・不適当だっただろうか」
まさかの洋一さん自身のチョイス。 珍しくしゅんとした表情の洋一さん。 んー!千波とは違う方向のこの純粋培養メンタル!たまんねえな! あの髭親父とは一度洋一さんの情操教育について話し合う必要がありそうだ。 しかし、不適当どころかピンポイントで適切すぎるというか。 実際、勇魚さんとシてる時にゴムの方が持たない事はままあるのだ。 大体そのままなし崩し的に生でやる事になってしまう時も多い。 実際凄く有難いチョイスでもあるというのは流石と言うべきか。 兎も角、洋一さんの顔を曇らせるわけにはいかない。 中身にツッコミどころはあれど、俺の為に選んでくれたプレゼントなのだ。 そう思うと表情が緩むのを感じた。
「いいえ、助かります。ありがとうございます、洋一さん」 「ああ、喜んで貰えてなによりだ。今後誰かに贈呈する時の参考にもなった」 「次は俺も手伝いますよ!何なら巌さんにも相談しましょう!」 「む?・・・ああ、そうだな。そうしてくれると嬉しい」
次なる犠牲者を増やすわけにはいかない。 そんな思いで食い気味に洋一さんに協力を申し出ると、案外満更でもなさそうに洋一さんも笑う。 海堂さん、後でちょっとお話ししましょう・・・。 そんなハプニング?もありつつ3人からのプレゼントを受け取り、自分の机に一旦置きに行く。 戻ってくると、辰馬がもう1つカバンから何かを取り出した。
「その、裕さん。あの・・・兄さんとおじいさんからも預かってるッス」
ちょっと顔を曇らせながらも辰馬がごそごそと取り出したのは風呂敷に包まれた箱のようなもの。 ・・・来た。来てしまったか。
「なぁ辰馬。これって・・・」 「兄さんとおじいさんから裕さんに、と。その、誕生日プレゼントらしいッス」 「お、おう。ありがとう・・・」
いやね、今日辰馬に会った時から感じてはいたんですよ。 あの島でも感じたビリビリとくる感覚というかエネルギーというか。 明らかにヤバげな物を辰馬は持ってきているな、と。 気付かないふりをしていたけど出された以上は避けることは不可能。 辰馬自身もそれを感じとっているのだろう。 こう、何とも言えない表情がそれを物語っている。 しゅるりと風呂敷を解くと、中にあったのは厳重に封をされた桐箱。
「おおー。何か凄そうだな!」 「こういった贈り物も趣きがあるな。参考になる」
千波と洋一さんが無邪気な感想を言っているがこっちはそれどころじゃない。 藤馬さんとおじいさんの贈り物だ。変なものでは絶対ない。 純粋に俺を思って贈ってくれたものなのはわかる。 わかるのだが、あの人たちの好意というか善意を本土基準で考えてはいけない。
(ええい、ままよ!)
意を決して桐箱の蓋を取る。 と、箱から突風が吹いたような衝撃を受けた。ような気がした。
「うわっ!」 「おい裕どうした!?大丈夫か?」 「お、おう。大丈夫だ、ちょっとびっくりしただけ」
叫び声をあげた為千波に心配されつつ、呼吸を落ち着ける。 大丈夫、大丈夫だ。 自分にそう言い聞かせつつ桐箱の中を改めてのぞき込む。
「これは・・・」 「勾玉、か?御守のようだが」
中に入っていたのは小さめの勾玉。 ぱっと見は御守やアクセサリの類に見えるものだ。 淡い水色をしているが、光の当たり方では赤い色にも見える気がする。 が、問題はその中身というか性質というか。 箱を開封した瞬間、部屋の中の空気が一気に清浄化されたのが理解できた。
「裕さん、これ・・・」 「うん・・・これはヤバい。いや、確かにこれは凄まじい御守だわ・・・」
辰馬も少なからず感じ取っているのか圧倒されている。 そうだよね、そう思うよね。俺自身もヤバイと思うもん。 これ、あれじゃん。ヒヒイロカネじゃん。 島に居た時適当に採掘してたら出てきたヒヒイロカネの欠片。 いつだったかテンションがおかしかった時の細工に使ったけど、余った分を海皇神社に奉納したんだった。
『裕殿の誕生日と聞き、おじいさんと共に贈り物を用意させて頂きました。これが裕殿にかかる厄を祓ってくれるでしょう。機会がありましたら、また島に遊びに来てください。裕殿の息災を願っております』
『御子殿、ご生誕の日誠におめでとうございます。何か贈り物を、と思い以前御子殿が神社に奉納してくださったヒヒイロカネの欠片を加工して御守をこしらえました。これが御子殿を災いから守ってくれるでしょう。どうぞ息災であられますよう』
はい。ありがとうございます。 お気持ちは嬉しいです。本当に。 けど・・・。
(・・・重い)
��というか、思いが重い。 ギャグで言ってる訳じゃないよ? 給料3か月なんてレベルじゃない。下手すれば一生ものの贈り物だ。 いやでも元々は俺が採掘したものが材料だしいやでもこれはちょっと洒落にならんブツというか。 色々な考えが頭の中を駆け巡り、俺はやがて考えることをやめた。
「取り合えず、普段身に着けるものに入れておこう」 「そ、そうッスね・・・」
余談ではあるが、この御守を貰ってから島に居たときのように『勘』が鋭くなった、ような気がする。 島に居た時に聞いた、ヒヒイロカネの『勾を増幅する』というその性質。 本土にいてもその性質は有効なのか、虫の知らせというか直感というか。 明らかに日常における危険というか災難が減ったと言いますか。 ・・・凄いな、コレ。
色々衝撃が走ったけど仕切り直して改めて乾杯。 ここからは本格的にお酒も解禁だ。 冴さんから貰ったお酒たちもさっそく開封させてもらおう。
「これだけ種類があればカクテルも色々作れるな」 「幅広く使えるリキュールの種類。入っているのも甘めのものが多い。流石冴だな」 「なぁ裕。この銀色の水筒はなんだ?」
段ボールの中に入った中身を検分。 本当に様々な種類の酒が入っている。 と、千波が銀色のボトルのようなものをを見つけて持ち上げる。
「ああ、シェイカーだな。簡単に言うと、これを使ってカクテルを作るんだ」 「かくてる!ヘミングウェイが愛したって言われるアレか!」 「これだけ材料が豊富にあれば結構な種類を作ることができる。何か作るか?」
シェイカーまで用意されているとは流石冴さん。 そして洋一さんのこのスキルである。
「え、洋一さんカクテル作れるんですか!?」 「見よう見まねだがな。レシピにはよるが混ぜるだけでも作れるカクテルはある。シェイカーを必ずしも使う必要はない。やろうと思えば誰でもできる」 「へぇ・・・」
ホントに洋一さんは何でもできるな。 関心している間に、洋一さんは段ボールの中身の検分を進めている。
「ラムはあるな。・・・ライムジュースを買っておいて正解だったようだな」
取り出したシェイカーを洗い、キッチンペーパーで丁寧に水気を拭き取り準備完了。 シェイカーにカラカラと氷を入れ、ラムとライムジュースとシロップをメジャーカップで量ってシェイカーに入れる。 蓋をして、映画とかでよく見る動きでシェイカーを振る洋一さん。 洋一さんの太い腕が振られると、シャカシャカ、カシャカシャという軽快な音が響く。
「「「おおー!」」」
何て言うか、凄く様になっている。 これでバーテンダーの恰好してたら本職の人かと勘違いしてしまいそうだ。 洋一さんだったらバーテンダーの恰好も様になるだろうなぁ。 そんな妄想はさておきシェイカーが振り終わり、グラスに静かにカクテルが注がれていく。 流石にカクテルグラスなんてないから普通のグラスだが。 そのグラスがスッと千波の前に差し出される。
「フローズンではないが、ダイキリだ。生ライムや生レモンを使うレシピもあるが、今回はライムジュースを使った簡単なレシピだ。ヘミングウェイに縁のあるフローズンダイキリの元になったカクテルと言えばわかるか?」 「おー!これが!・・・うめえ!すっきりした甘酸っぱさだな!」
ヘミングウェイとかフローズンダイキリとかはよくわからないが、千波にとっては馴染みあるワードだったようだ。 嬉々としてグラスを傾ける。 千波はダイキリを気に入ったのか、少量ずつではあるが何度もグラスを口に運んでいる。
「辰馬ー!お前も飲んでみろよ、だいきり!甘酸っぱくて美味いぞ!」 「そうなのか?じゃあ一口だけ・・・」 「あっ、千波、バカ!」
カクテルってモノにはよるけどかなりの度数あるんだよね。 特にダイキリの元はラム。蒸留酒で結構の度数の酒だ。 だからこそよっぽど軽めのモノを作らない限りビールよりアルコール度数が高くなりやすいわけで。 材料はラムとライムジュースとシロップ。どう見てもダイキリって度数高いよな。
「おー、うまい!それに体が温まってきたッス!」 「だろー!うまいよなー、だいきり!」
ダイキリを飲み終わった辰馬の顔が一気に赤くなる。 グラスに残っていた量は結構少なかったのだが辰馬にとっては十分すぎる量だろう。 さり気なく千波の顔も真っ赤に染まっている。
「ああ、遅かった・・・」 「あのダイキリで辰馬のアルコール許容量がオーバーしたようだが」 「ですよねー。・・・洋一さん、もし辰馬のベアハッグが俺に来たら助けてください」 「善処しよう」
この後に起こるであろう惨劇をなんとなく感じ取り、洋一さんに救助要請をしておく。 そして俺はその未来を回避するため、すぐさま台所に行きグラスに水を用意した。
「ほら、水飲んどけ。千波」 「おー。さんきゅ、裕。んぐ、んぐっ・・・はー、水うめー!あはははは」
そう言って水を千波の前に置く。 千波は酔ってはいるものの意識はハッキリしているらしく水を一気に呷る。 が、やっぱり結構酔ってはいるらしく水を飲みながら爆笑している。 だがこの状態なら千波はまだ大丈夫そうだ。 問題は―
「辰馬、大丈夫か?水飲めそうか?」 「うー・・・」
顔を真っ赤にしながらゆらゆらと揺れている辰馬だ。 声を掛けても唸り声をあげるだけ。
「ほら、水だ。後が楽になるからちょっとでも飲んどけ」 「ん、ぐ・・・んぐ、んぐ」
自発的に動きはしないが、グラスを口元に運ぶと少しずつ水を飲み始める。 辰馬の喉もゆっくりと動いているのできちんと水を飲んでいるようだ。 なんかこう、子供をお世話しているような感覚になってきて微笑ましい。
「お、ちゃんと飲めたな。よし、えらいえらい」 「へへへぇ・・・」
グラスが空になったのを確認してテーブルに置く。 まだお世話している感覚が抜けていなかったのか、思わず辰馬の頭を撫でる。 辰馬も満更ではないのか子供のようにへにゃりと笑う。 うん、もう少し水を飲ませれば落ち着くかな。 そんな風に考えて、完全に安堵した瞬間だった。
「裕さん・・・裕さーん!」 「おごっ!?ちょ、辰馬・・・」 「裕さん裕さん裕さん裕さん裕さん!だーい好きッスー!」
案の定というか分かっていた結末というか。 辰馬が弾丸のようなスピードで俺に飛びついてきた。 当然俺がそれを受け止めきれる筈もなく、肺から空気を漏らしながら運動エネルギーに飲まれるまま床に激突する。
「ごふっ!ちょっ・・・苦し、しまって・・・ギブギブ!イデデデ!よ、洋一さん、ヘルプ!」 「ああ」 「なら俺は洋一さんに抱き着くー!」 「むっ。構わんが・・・」
辰馬が俺を床に押し倒し、千波は洋一さんの背中に飛びつく。 ていうか辰馬、抱き着くのはいいけど締まってる、首締まってるから。 なんというか、酔うと人にくっつきたがるなあお前ら。 そんな感想が頭に過ぎりながら意識が遠のきはじめる。 あ、本格的に締まってるっぽい。
「辰馬、それくらいにしておけ。裕、大丈夫か」 「かはっ、けふっ・・・た、助かりました。っ痛つ・・・」
白み始めた視界に唐突に色が戻ってくる。 体が酸素を求め多少咳き込むも、意識はハッキリしている。 むしろ、辰馬のベアハッグによるダメージの方がデカい。
「うー・・・何で邪魔するッスかぁ!裕さぁーん!」 「裕、大丈夫かー?っと、洋一さんやっぱでけー!高ぇー!あははははは!!」
切なげな辰馬の声につられて前を見ると、洋一さんが辰馬を羽交い締めにしながら持ち上げている。 その洋一さんに千波がおぶさるようにくっついており、肩越しに楽しそうな顔が見える。
「千波、すまないが辰馬についてくれるか」 「いいぜー。おりゃー、今度は辰馬にはぐだー!あはははー!」 「裕、もう一杯水を用意してくれるか。2人の面倒は俺が見ておく」 「はい、お願いします。辰馬、ちょっといい子にしてろよ」 「裕さぁーん・・・」
洋一さんに頼まれ、水の準備するために立ち上がる。 辰馬の鳴くような声に仔犬を連想してしまい、後ろ髪を引かれつつも俺は台所に向かう。 もうグラスじゃ足りないだろうからピッチャーで出すか。 というか、最初からピッチャーで水を用意しておくべきだったな。失敗した。 軽くピッチャーを洗い水を用意して戻ると、随分と静かになっていた。
「あれ・・・?」 「2人とも完全に意識が落ちた。裕、すまないがお前のベッドを借りていいか?」
辰馬が洋一さんを背もたれにした状態で眠っており、その辰馬に抱き着くような体勢で千波も寝ている。 普段中々見ることのない光景だ。
「ええ。こっちです」 「すまない」
洋一さんは2人を起こさないようにゆっくりと抱え上げる。 俺は誘導するように寝室のドアを開ける。 洋一さんがゆっくりと2人をベッドにおろし、タオルケットをかける。 筋肉のついた野郎2人を乗せたせいで俺のベッドがギシギシと悲鳴を上げているが、そこは頑張ってもらおう。 2人は横向きで向かい合うように眠っており、スースーと寝息を立てている。
「よく寝ているな」 「ふふ、顔は似てないのに兄弟みたいだなァ」
そんな2人の寝顔を眺めた後、リビングへと戻る。
「少し飲ませ過ぎてしまったようだな」 「飲ませ過ぎたというか自ら呑まれに言ったというか・・・」 「だが、辰馬も千波も楽しんでいたようだ。俺も、楽しかった」 「俺も楽しかったですよ」
テーブルの上を軽く片付け、もう使わない食器は先に洗ってしまう。 洗い物、軽い掃除程度ならば洋一さんと一緒にやればすぐ終わってしまう。 片付いたテーブルの上に、改めてお酒の準備をしていく。 正直なところ、飲み足りなかったのでもう少しだけ2人で飲むことにしたのだ。
「改めて、今日はありがとうございました。洋一さん」 「構わん。言っただろう、裕には感謝していると。お前が喜んでくれたならば、何より嬉しい。それは千波も辰馬も同じだ」
いつもより饒舌に語る洋一さん。 酔っているのせいなのかはわからないが、目じりが緩み、口角が少し上がっている。 洋一さんがこうやって感情を少しずつ表に出せるようになってきているのが、友人として素直に喜ばしい。
「はい、ありがとうございます。で、今日のお礼に俺に一杯作らせてください」 「ふむ?カクテルか」 「ええ」
レシピはさっき見ていたので覚えている。 ラム、ライムジュース、そしてシロップ。 シェイカーに氷をガラガラと放り込み、メジャーカップで量って注いでいく。 注ぎ終わったらシェイカーの蓋をして、シャカシャカとシェイクする。 中身がよく混ざり合ったら、グラスに静かに注ぐ。
「ダイキリか」 「ええ。洋一さん、カクテル言葉って知ってます?」 「ああ。ダイキリのカクテル言葉は希望・聡明だったか」
ホントに何でも知ってるなこの人。 俺なんてさっき軽く調べて初めて知ったのに。
「流石ですね。俺の、誇らしい聡明な友人に。その友に、希望ある未来があることを願って、なーんて。ちょっとキザっぽいかな」 「そんなことはない。・・・ありがとう、裕」
その後は、洋一さんにカクテル作って貰ったり、互いの近況を話したりしながらゆっくりと飲んでいた。 ふと気づけば3時を回ろうとしている。
「俺達もそろそろ寝るとしよう。裕は今日これから勇魚に会うのだろう?しっかり休んでおいたほうがいい」 「え、知ってたんですか」 「いや、もしこの集まりに勇魚が居なかったのなら何かしら贈っているか日付が変わった時間に連絡してきているだろうと思ってな。そんな風にも見えなかったからな。そんなところだろうとあたりをつけたのだが」 「流石・・・」
洋一さんの推理力というか察しの良さに脱帽しつつ、後片付けを終える。 ベッドをあの2人が占有しているため、使える布団が1つしかないためどちらがソファー使うかでひと悶着もありつつ消灯。
「おやすみ、裕」 「ええ、おやすみなさい。洋一さん。・・・千波も、辰馬も」
翌朝、昨晩の記憶がバッチリ残った辰馬による謝罪の嵐と、カクテルの飲みすぎで二日酔い状態な千波による騒動が起こったりしたものの。 朝飯を食べながら、また皆で互いの誕生日を祝おうと約束をしながら解散。 21歳の俺の誕生日パーティーは楽しい記憶で満たされて幕を閉じた。
��で、終わるワケもなく・・・」 「裕、スマン・・・その・・・大丈夫か?」 「・・・ええ、だいぶ落ち着きました」 「・・・なら、もう一発、な?」 「え・・・ちょ、もうちょっと休ませ、ンッ・・・」
夜、久々に勇魚さんと会い、誕生日のディナーに連れて行ってもらいつつ、その後は当たり前にホテルにエスコートされ。 誕生日というシチュエーションだったせいかお互いに盛り上がってしまい、折角もらったゴムも余り使うこと無く。 そのまま朝まで激しいコースと相成りましたとさ。
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