#台南風俗お嬢様
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freepecec · 4 months ago
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台南叫小姐外約LINE:688vb
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台南叫小姐外約LINE:688vb 未成年勿擾!一律現金交易,全數台妹服務
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kkagneta2 · 5 years ago
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ボツ2
おっぱい、大食い。最後まで書いたけど胸糞なのでここに途中まで投稿してお蔵入り予定。
時: 午前8時05分
所: ○○中学正門前
身長: 標準的。155センチ程度。
衣服: 〇〇中学指定の制服。黒のセーラー。リボンの色より二年生と断定。
年齢: 中学二年生なので14、5。
持ち物: 右手に〇〇中学指定の鞄。左手にスマホを所持。
同行者: 友人1名。興味無しのため略。
背格好: やや細身か。冬服のため殆ど見えなかったが、スカートから覗く脚、そして周りの生徒と見比べるに、肩や腕も細いと思われる。腰回りもほっそりとしていると感じた。正確には引き締まっていると言うべきか。
顔: いと凛々し。小顔。頬は真白く、唇には薄い色付き。笑うと凄まじく整った歯が見え隠れする。この時髪をかき上げ血の色の鮮やかな耳が露出する。
髪: ボブ系統。ほぼストレートだが肩のあたりで丸くなる。色は黒、艶あり。
胸: 推定バスト98センチ、推定アンダーバスト62センチのK カップ。立ち止まることは無かったが、姿勢が良いのでほぼ正確かと思われる。しっかりとブラジャーに支えられていて、それほど揺れず。体格的に胸元が突出している印象を受ける。隣の友人と比べるとなお顕著である。制服のサイズがあっておらず、リボンが上を向き、裾が胸のために浮いていた。そのため、始終胸下に手を当てていた。揺れないのもそのせいであろう。制服と言えば、胸を無理に押し込んだかのように皺が伸び、脇下の縫い目が傷んでおり、肩甲骨の辺りにはブラジャーのホックが浮き出ている。されば制服は入学時に購入したものと思われ、胸は彼女が入学してから大きくなった可能性が大である。元来彼女��ような肉体には脂肪が付きづらいはずなのだが、一年と半年を以てK カップにまで成長を遂げたところを見ると、期待はまずまずと言ったところか。要経過観察。名前は○○。胸ポケットに入れてあったボールペンが落ちたので拾ってあげたところ、「ありがとうございます」と丁寧にお辞儀をされる。
  時: 午前10時28分
所: 〇〇駅構内
身長: 高い。170センチ強
衣服: 薄く色味がかった白、つまりクリーム色のファー付きコート。内には簡素なグリーンのニットを羽織る。首元に赤のマフラー。
年齢: 22、3。休み期間中の大学生かと思われる。
持ち物: キャリーバッグ。手提げのバッグ。
同行者: 友人2名。先輩1名。何れも女性。貧。
背格好: 体格が良いと言った他には特に無し。腕も見えず、脚も見えず、首も見えず。肩幅の広さ、腰つきの良さから水泳を営んでいると推定される。
顔: その背に似合わず童顔。人懐っこい。マフラーに顔を埋め、視線を下げ、常に同行者に向かって微笑む。愛嬌よし。
髪: ショート。これより水泳を営んでいると断定。色は茶、染め上げてはいるがつやつやと輝く。
胸: 推定バスト129センチ、推定アンダーバスト75センチのR カップ。冬である上に、胸元が目立たないよう全身を地味に作っており、某コーヒーショップにてコートを取っても、無地のニットのために膨らみが分かりづらかった。さらに、胸の落ち具合から小さく見せるブラジャーを着用しているかもしれない。そのため、推定カップはR カップより3、4カップは大きい可能性がある。コートを取った際、胸元が一層膨らんだように感じられた。机の上に胸が乗って、本人は気にしていないか、もしくは気づいていなかったが、柔らかさは至高のようである。他の男性客の腕が肩にぶつかって、驚いた際に胸で食べかけのドーナツを落とす。以降会話は彼女の胸に話題が移ったらしく、左右に居た友人二名が所構わず触れるようになり、両手を使って片胸片胸を突っついたり、揺らしたりして遊ぶ。「机まで揺れる」と言う声が聞こえてくる。「ちょっとやめてよ」と言いつつ顔は相変わらず微笑むでいる。しばらくして四人とも席を立って、地下鉄筋の方へ消えていく。童顔ゆえに顔より大きい胸は驚くに値するが、体格からして胸元に自然に収まっているのを見ると、やはりなるべくしてなったとしか思えず。
  時: 午後00時14分
所: 〇〇市〇〇にあるスーパー前
身長: 低い。150センチに満たない。
衣服: 所謂マタニティウェア。ゆった���とした紺のワンピースに濃い灰色のポンチョ。
年齢: 26、7
持ち物: 買い物袋。ベビーカー。
同行者: ベビーカーの中に赤ん坊が一人。女の子である。
背格好: 小柄。寸胴で、かつ脚も長くはあらず、そして手足が細く、脂肪が程よくついている。つまりは未成熟な体つき。身長以上に小さく見える。
顔: かなりの童顔。着るものが着るものであれば高校生にも見える。可愛いがやつれていて、目の下に隈あり。子供が可愛くて仕方ないのか、そちらを見ては微笑む。
髪: セミロングを後ろで一束。中々の癖毛であるかと思われるが、目のやつれ具合からして、もしかしたら本当はもっと綺麗なのかもしれない。髪色は黒。可愛らし。
胸: 推定バスト110センチ、推定アンダーバスト58センチのQ カップ。体格が小柄であるのでQ カップよりもずっと大きく見える。というより迫力がある。私が訪れた時は買い物袋をベビーカーに吊っている最中であった。ほどなくして赤ん坊が泣き出したので、胸に抱えてあやしたが、赤ん坊は泣き止まず。片胸と赤ん坊の大きさはほぼ同じくらいであっただろう。また、胸と赤ん坊とで腕は目一杯伸ばされていた。胸に抱いて「よしよし」と揺らすのはしばらく続いたが、赤ん坊が泣き止むことはなかった。そこで、座る場所を求めて公園へと向かおうと、一度ベビーカーへと戻そうとしたのであるが、一度胸に食らいついた赤ん坊は離さない。「さっきも飲んだじゃない」とため息をついて片手で危なっかしくベビーカーを引こうとする。「押しましょうか」と接近してみたところ、意外にもあっさりと「よろしくおねがいします」と言って、私にベビーカーを預けた。中には玩具が数種類あった。道から離れた日差しの良いベンチに腰掛け、ケープを取り出して肩にかけ、赤ん坊をその中へ入れる。それでもしばらくは駄々をこねていたであったが、母親が甘い声をかけているうちに大人しくなった。私が「お腹が空いてたんですね」と笑うと、「困ったことに、食いしん坊なんです。女の子なのに」と笑い返して赤ん坊をあやす。話を聞いていると、母親の母乳でなければ我慢がならないと言う。授乳が終わってケープを外した時、子供はすやすやと眠りについていた。「胸が大きくなりすぎて、上手く抱っこできなかったんです。大変助かりました。ありがとうございます」と分かれたが、その言葉を考えるに、妊娠してから一気に胸が大きくなったのであろう。授乳期を終えたときの反動が恐ろしい。むしろベビーカーの中に居た赤ん坊の方に興味を唆られる。
  時: 午後01時47分
所: 〇〇市市営の図書館。某書架。
身長: 標準的。158センチ程度。
衣服: 白のブラウスにブラウンのカーディガン。
年齢: 30前後か。
持ち物: 白のタブレット
同行者: 無し
背格好: 小太りである。全体的に肉がふっくらとついている。けれども��を煩わすような太り方ではない。豊かである。ただし、著しく尻が大きい。
顔: 目尻は美しいが、柔らかな頬に愛嬌があって、どちらかと言えば可愛らしい方の顔立ち。鼻がやや低く、���元はリップクリームで赤々と照りを帯びている。色白とは言えないが、光の加減かと思われる。眼鏡をかけており��リムの色は大人しい赤。非常によく似合う。
髪: ストレートなミディアムヘア。髪色は黒であるが、不思議なことに眼鏡の赤色とよく合い、前髪の垂れかかるのが美しい。
備考: 司書である。
胸: 推定バスト128センチ、推定アンダーバスト81センチのO カップ。本日の夜のお供にと本を物色中に、書架にて本を正していた。胸が喉の下辺りから流麗な曲線を描いて20センチほど突き出ているばかりでなく、縦にも大きく膨れており、体積としてはP カップ、Q カップ相当かもしれない。頭一つ分背が低いので上からも望めたのであるが、カーディガンで見え隠れする上部のボタンが取れかけていた。本を取る度に胸が突っかかって煩わしいのか、肩を揺すって胸の位置を直す。本棚に胸が当たるのは当然で、文庫本などはその上に乗せる。一つの書架を片付け終わった辺りで、適当に思いついたジャンルを訪ねて接近すると、如何にも人の良さそうな顔で案内をしてくれた。脚を踏み出す度に甲高い音が鳴るのは、恐らくブラジャーのせいかと思われる。歩き方が大胆で胸が揺れるのである。途中、階段を下りなければならないところでは、一層音が大きくなって、臍のあたりで抱えていた本を胸に押し付けて誤魔化していた。そのため、ブラジャーのストラップがズレたかと見え、書棚の方へ目を向けている隙に、大胆にも胸を持ち上げて直していた。なまめかしい人ではあるが、年が年なので望みは無い。
  時: 午後02時22分
所: 〇〇小学校校庭
身長: 140センチ前後か
衣服: 体操服
年齢: 10、11歳
持ち物: 特に無し
同行者: 友人数名
背格好: ほっそりとしなやかである。幼い。腕も脚もまだ少女特有の肉が付いている。今日見た中で最も昔の「彼女」に似ている体つきであったが、この女子児童は単に骨格が華奢なだけで、痩せ細った体ではない。健康的である。脚が長く、短足な男子の隣に立つと、股下が彼の腰と同位置に来る。
顔: あどけなさは言うまでもないが、目元口元共に上品。笑う時もクスクスと擽るような、品の良い笑い方をする。眼鏡はテンプルに赤色が混じった、基本色黒のアンダーリム。そのせいで甚だ可愛らしく見えるが、本来は甚く聡い顔立ちをしているかと推定される。が、全般的に可愛らしい。
髪: 腰まで届く黒髪。ほぼストレートだが若干の癖あり。また、若干茶色がかっているように見えた。髪の質がかなり良く、時折肩にかかったのを払う度に、雪のように舞う。
胸: 推定バスト81センチ、推定アンダーバスト48センチのI カップ。体育の授業中のことである。男子は球技を、女子はマラソンでもやらされていたのか、校庭を走っていた。身体自体は小柄であるから胸はそう大きくはないのだが、無邪気に走るから激しく揺れる。揺れるごとに体操服が捲れ上がって腹部が見えそうである。明らかに胸元だけサイズが合っていない。何度か裾を直しながら走った後、耐えかねて胸元を押さえつけていたのであるが、いよいよ先生の元へ駆け寄って校舎内へ入った。そして出てきてから再び走り初めたけれども、その後の胸の揺れは一層激しくなっていた。ブラジャーに何かあったのだろうと思われる。顔には余裕がありながら、走る速さがこれまでとは段違いに遅く、これまで一緒に走ってきた友人に追い抜かれる。結局、彼女は胸を抑えながら、周回遅れで走りを終えた。しかし可哀想なことに、息を整えていると友人に後ろから手で掬われて、そのまま揉みしだかれる。小学生の手には余る大きさである。寄せあげて、掬い上げて、体操服をしわくちゃにしながら堪能する。私にはそう見えただけで、実際にはじゃれついていただけであろうが、指が深く沈み込んでいる様は男子児童の視線を寄せるのに足る。なされるがままにされていた彼女は、そのうちに顔を真っ赤にして何かを言いつつ手をはたき落とし「今はダメ」と言い、以降はすっかり両腕を胸元で組んで、猫背になって拗ねてしまった。この生徒は要観察である。下校時に再び見えてみれば、制服下の胸はブラジャーは着けていないながら見事な球形を為している。先程の光景から張りも柔らかさも極上のものと想像される。名前は○○。名札の色から小学5年生だと断定。ここ一ヶ月の中で最も期待すべき逸材。
  時: 午後05時03分
所: 〇〇市〇〇町〇〇にある某コンビニ
身長: やや高い。163センチほど。
衣服: ○○の制服。
年齢: 17歳
持ち物: 特に書くべきにあらず
同行者: 無し
背格好: 標準的だがやや痩せ型。恐らくは着痩せするタイプである。一見してただの女子高生の体であるが、肩、腰つきともに十分な量の肉量がある。その代わり腕は細い。右手に絆創膏。
顔: あどけない。非常に可愛らしい顔。人柄の良さが顔と表情に出ていると言ったところ。眉は優しく、目はぱっちり。常に口が緩んで、白い頬に赤みが差す。が、どこか儚げである。分厚くない唇と優しい目が原因か。
髪: 後ろに一束したミディアムヘア。一種の清潔さを表すと共に、若干の田舎臭さあり。後ろ髪をまとめて一束にしているので、うなじから首元へかけての白い肌が露出。これが殊に綺麗であった。
備考: 高校生アルバイター
胸: 推定バスト118センチ、推定アンダーバスト68センチのP カップ。服が腰元で閉じられているので、高さ24センチほどの見事な山が形成されている。そのため余計に大きく感じられる。手を前で組む癖があるのか胸が二の腕によって盛り上がって、さらに大きく見える。レジ打ちを担当していた。面倒くさい支払い方法を聞いて接近。レジにて紙を用いて説明してくれるのであるが、胸元が邪魔で始終押さえつけながらでの説明となり、体を斜めにしての説明となり、終いには胸の先での説明となる。ブラジャーの跡あり。よほどカップが分厚いのか胸と下着との境目がはっきりと浮き出ている。この大きさでこのタイプのブラジャーは、1メーカーの1ブランドしかないため、懐かしさに浸る。大体分かりました、では後日よろしくおねがいしますと言うと、にこやかにありがとうございましたと言う。腕の細さと胸の大きさとが全くもって合っていない。腰つきとは大方合っている。顔があどけないところから、胸に関しては期待して良いのではないだろうか? それを知るには彼女の中学時代、ひいては小学時代を知る必要があるが、そこまで熱心に入れ込めるほど、魅力的ではない。
   本日も予が真に求むる者居らず、―――と最後に付け足した日記帳を、俺は俺が恐れを抱くまでに叫び声を上げながら床へと叩きつけ、足で幾度も踏みつけ、拾って壁に殴りつけ、力の限り二つに引き裂いて、背表紙だけになったそれをゴミ箱へ投げつけた。八畳の部屋の隅にある机の下に蹲り、自分の頭をその柱に打ちつけ、顎を気絶寸前まで殴り、彼女の残した下着、―――ブラジャーに顔を埋めて髪を掻き毟る。手元に残りたる最後の一枚の匂いに全身の力を抜かされて、一時は平静を取り戻すが、真暗な部屋に散乱した日記帳の残骸が肌へと触れるや、彼女の匂いは途端に、内蔵という内蔵を酸で溶かすが如く、血管という血管に煮えたぎった湯を巡らせるが如く、俺の体を蝕んでくる。衝動的にブラジャーから手を離して、壁に頭を、時折本当に気絶するまで、何度も何度も何度も打ちつけ、忌々しい日記帳を踏みしめて、机の上に置いてあるナイフを手にとる。以前は右足の脹脛(ふくらはぎ)を数え始めて26回切りつけた。今日はどこを虐めようかなどと考えていると、彼女の残したブラジャーが目につく。一転して俺のこころは、天にのぼるかのようにうっとりと、くもをただよっているかのようにふわふわと、あたたかく、はれやかになっていく。―――
―――あゝ、いいきもちだ。彼女にはさまれたときもこのような感じであった。俺の体は彼女の巨大な胸が作り出す谷間の中でもみくちゃにされ、手足さえ動かせないまま、顔だけが彼女の目を見据える。ガリガリに痩せ細って頬骨が浮き出て��いるが、元来が美しい顔立ちであるから、俺の目の前には確かにいつもと変わらない彼女が居る。我儘で、可愛くて、薄幸で、目立ちたがり屋で、その癖恥ずかしがり屋で、内気で、卑屈で、でも負けん気が強くて、甘えん坊で、癇癪持ちで、いつもいつもいつも俺の手を煩わせる。冷え切った手で俺の頬を撫でても、少しも気持ちよくは無い、この胸、この胸の谷間が冬の夜に丁度良いのだ。この熱い位に火照った肉の塊が、俺を天に昇らせるかの如き高揚感を與えるのだ。
だがそれは後年の事。床に広がったブラジャーを拾って、ベッド脇のランプの燈を点けて、ぶらぶらと下へと垂れるカップの布をじっくりと眺める。華奢で肉のつかない彼女のブラジャーだったのだから、サイドボーンからサイドボーンまでの距離は30センチ程もあれば良く、カップの幅も中指より少し長い程度の長さしかない。が、その深さと広さはそこらで見かけるブラジャーとは一線を画す。手を入れれば腕が消え、頭を入れればもう一つ分は余裕がある。記念すべき「初ブラ」だった。
それが何たることか! 今日、いや昨日、いや一昨日、いやこの一ヶ月、いやこの一年間、いや彼女が居なくなってから実に6年もの間、このブラジャーが合う女性には出会うどころか、見かけることも出来ないではないか。細ければサイズが足りず、サイズが足りればぶくぶくと肥え、年増の乳房では張りが足らず、ならばと小学生の後を付け回してはお巡りに声をかけられ、近所中の中高にて要注意人物の名をほしいままにし、飽きる迄北から南の女という女を見ても、彼女のような体格美貌の持ち主は居なかった。風俗嬢へすら肩入れをし、ネットで調子に乗る女どもにも媚びへつらった。
恭しくブラジャーを箱へと収めて床に散らばりたる日記帳の屑を見るや、またしても怒りの感情が迸ってくる。今日は左太腿の上をざっくりとやってやろうか。紙屑をさらに歯で引きちぎり、喉に流し込みながらそう思ったけれども、指を切る程度に留め、代わりに床を突き抜ける位力を入れて、硬い板の上に差す。今日書いた文面はその上にあった。
「なんで、なんで俺はあんなことを、……」
気がつけば奇声を上げつつ髪の毛を毟り取っていた。時計を見れば午後11時28分。点けっぱなしにしておいたパソコンの画面にはbroadcasting soon! という文字が浮かび上がって居る。忘れた訳では無かったが、その英単語二文字を見るだけで、怒りも何も今日の女どもも忘れ、急に血の巡りが頭から下半身へと下り、呼吸が激しくなる。まるで彼女を前にした時のようである。急いで駆けつけて音量を最大限まで上げて、画面に食い入ると、直にパッとある部屋が映し出され、俺の呼吸はさらに激しくなった。
部屋はここと同じ八畳ほど、ベッドが一台、机が一つ、………のみ。
机の上にはありきたりな文房具と、食器類が一式、それに錠剤がいくつか。ベッドの上には質の良さそうな寝具、端に一枚のショーツ、その横に犬用のリードが一つ。これはこれから現れる者が、謂わばご主人さまに可愛がられるために着けている首輪につながっているのである。そしてその横に、あゝ、彼女がまだ傍に居ればぜひこの手で着けて差し上げたい巨大なブラジャーが一つ、………。ダブルベッドをたった一枚で埋め尽くすほど大きく、分厚く、ストラップは太く、今は見えないが12段のホックがあり、2週間前から着けているらしいけれどもカップは痛み、刺繍は掠れ、ストラップは撚れ、もう何ヶ月も着たかのようである。
しばらく見えているのはそれだけだったが、程なくしてブラジャーが画面外へ消えて行き、ショーツが消えて行きして、ついに放送主が現れる。病的なまでに痩せ細って骨の浮き出る肩、肘、手首、足首、膝、太腿、それに反して美しくしなやかな指が見える。顔は残念ながら白い仮面で見えないが、見えたところで一瞬である。すぐさま画面の殆どは、中央に縦線の入った肌色の物体に埋められるのだから。その肌色の物体は彼女の胸元から生え、大きく前へ、横へと広がりながら腰元を覆い、開けっ広げになった脚の間を通って、床へとゆるやかにの垂れており、ベッドに腰掛けた主の、脚の一部分と、肩と、首を除いて、体の殆どを隠してしまっている。床に垂れた部分は、部分というにはおかしなくらい床に広がる。浮き出た静脈は仄かに青々として、見る者によっては不快を感ずるだろう。
言うまでもなく、女性の乳房である。主は何も言わずにただそこに佇むのみで、何も行動をしない。仮面を着けた顔も、たまに意外と艶のある黒髪が揺れるだけで動かないのであるが、極稀に乳房を抑える仕草をして、愛おしそうに撫でることがある。けれどもそれは本当に極稀で、一回の配信につき一度の頻度でしかなく、殆どの場合は、一時間もし���らベッドに倒れ込んで寝てしまうのである。
この配信を見つけてからというもの、俺の日中の行動は、その寝姿を見るための暇つぶしでしか無い。彼女そっくりな体つきに、彼女そっくりな胸の大きさ、―――しかもこちらの方が大きいかもしれない上に、彼女そっくりな寝相、………見れば見るほど彼女に似て来て、また奇声を発しそうになる。無言で、手元にあった本の背表紙で頭を打ちつけて落ち着きを取り戻し、画面を見ると、ゴロンとベッドから落ちてしまったその女の姿。彼女もよくやった寝相の悪さに、途端懐かしさが込み上げて来て、
「あゝ、こら、叶(かなえ)、寝るんだったらベッドの上で寝ないと、……。手伝ってやるからさっさと起きなさい」
と頬を叩いたつもりだが、空を切るのみで、消息不明となっている者の名前を呼んだ��け、羨ましさと虚しさが募ってしまった。
   幼馴染の叶が居なくなってから早6年、片時も忘れた事はないのであるが、隣に住んでいながら出会いは意外と遅いものであった。当時俺は11歳の小学5年生、物凄く寒かったのを思えば冬から春前であったろうか、俺の家は閑静な住宅街の中に突如として現れる豪邸で、建物よりも庭に意匠を凝らしたいという父上の意思で、洋館が一つと離れが一つ庭に面する形で建てられ、俺はその離れを子供部屋として与えられていた。球状の天井を持つその部屋は、本当に子供のために閉ざされた世界かのようだった。庭の垣根が高く、木に埋もれる形で建っているのであるから、内は兎も角、外からだとそもそも離れがあることすら分からない。音も完全に防音されていて、車が通りかかるのすら、微妙な振動でようやく分かるくらい外界から切り離されているのである。いつも学校から帰ると、俺はその部屋で母上と共に話をしたり、ごっこ遊びをしたり、宿題をしたりする。食事もそこで取って、風呂には本館の方へ向かう必要はあるけれども、学校に居る7、8時間を除けば一日の殆どをそこで過ごしていた。だから、近隣の様子なぞ目については居なかったし、そもそも父上から関わるなというお達しがあったのだから、あえて触れるわけにはいかない。学校も、近くにある公立校へは通わずに、ずっと私立の学校へ入れられたのだから、関わろうにも、友人と言える者も知り合いと言える者も、誰も居ないのである。
そんな生活の中でも、よく離れの2階にある窓から顔を突き出して、燦々と輝く陽に照らされて輝く街並みを眺めたものだった。今はすっかりしなくなってしまったけれども、木々の合間合間から見える街並みは殊に美しい。一家の住んでいる住宅街というのが、高台に建っているので、街並みとは言ってもずっと遠くまで、―――遥かその先にある海までも見えるのである。
そう、やっぱり冬のことだ、あのしっとりとした美しさは夏や秋には無い。いつもどおり、俺はうっとりと椅子に凭れかかって街並みを眺めていたのであるが、ふとした瞬間から、女の子の声で、
「ねぇ、ねぇ、ねぇってば」
と誰かを呼びかける声がしきりに聞こえてきていたのだけれども、それが少し遠くから聞こえてくるものだから、まさか自分が呼ばれているとは思わず、無視していると、
「ねぇ!」
と一層激しい声が聞こえてくる。下を見てみると、同年代らしい女の子が、彼女の家の敷地内からこちらを不満そうに見つめてきている。
「僕ですか?」
「そう! 君!」
と満面の笑みを浮かべる。
この女の子が叶であることは言及する必要も無いかと思うが、なんと見窄らしい子だっただろう! 着ている物と言えば、姉のお下がりのよれよれになった召し物であったし、足元には汚らしいサンダルを履いていたし、髪は何らの手入れもされていなかったし、いや、そんな彼女の姿よりも、その家の��さ、ボロさ、貧しさは余りにも憐れである。流石に木造建築では無いものの、築20年や30年は越えていそうな家の壁は、すっかりと黒ずんで蜘蛛の巣が蔓延っており、屋根は黒いのが傷んで白くトゲトゲとしているし、庭? にある物干し竿は弓なりに曲がってしまっていて、痛みに傷んだ服やタオルが干されている。全体的に暗くて、不衛生で、手に触れるのも汚らわしい。広さ大きさは普通の一軒家程度だけれども、物がごちゃごちゃと置かれて居るのでかなり狭苦しく感じられ、俺は父上がどうして近隣の者と関わるなと言ったのか、なんとなく理解したのだった。目が合った上に、反応してしまったからには相手をしなくちゃいけないか、でも、できるだけ早く切り上げて本の続きでも読もう。―――俺は一瞬そう思ったが、ようようそう思えば思うほど、彼女に興味を抱いてしまい、小っ恥ずかしい感情がしきりに俺の心を唆していた。
それは一目惚れにも近い感情だっただろうと思う。というもの、その時の叶の外見は、着ているものが着ているものだけに見窄らしく見えただけで、顔立ちは悪くないどころかクラスに居る女子どもなぞよりずっと可愛いかった。いや、俺がそう感じただけで、実際は同じくらいかもしれないが、普段お嬢様と言うべき女の子に囲まれていた俺にとっては、ああいう儚い趣のある顔は、一種の新鮮さがあって、非常に魅力的に見える。どこか卑屈で、どこか苦心があって、しかしそれを押し隠すが如く笑う、………そういう健気な感じが俺の心を打ったと思って良い。また、体つきも普段見るお嬢様たちとは大きく変わっていた。彼女たちは美味しいものを美味しく頂いて、線の細い中にもふっくらとした柔らかさがあるのだが、叶はそうではない。栄養失調からの病気じみた痩せ方をしていて、ただ線が細いだけ、ただ貧相なだけで、腕や脚などは子供の俺が叩いても折れそうなほどに肉が付いておらず、手や足先は、肌が白いがために骨がそのまま見えているかのようである。兎に角貧相である。が、彼女にはただ一点、不自然なほど脂肪が蓄えられた箇所があった。
それはもちろん胸部である。叶は姉から譲り受けた服を着ているがために、袖や裾はだいぶ余らしていたのであるが、胸元だけはピンと張って、乳房と乳房の間には皺が出来ていて、むしろサイズが足りないように見える。恐らく裾を無理やり下に引っ張って、胸を押し込めたのか、下はダボダボと垂れているけれども、胸の上は変にきっちりしている。体の前で手をもじもじさせつつ、楽しげに体を揺らすので、胸があっちへ行ったり、こっちへ行ったりする。俺は最初、胸に詰め物をしているのであろうかと思われた。そう言えば、一昨日くらいにクラスの女子が、私の姉さんはこんなの! と言いつつ、体操服の胸元にソフトボールを入れてはしゃいでいたが、その姿がちょうどこの時の叶くらいであったから、自然にやっぱりこの年の女子は大きな胸に憧れるものなのだと納得したのである。だが、叶の胸は変に柔らかそうに見える。いや、それだけでなく、ソフトボールを入れたぐらいでは脇のあたりが空虚になって、はっきりと入れ物だと心づくが、彼女の体に描かれる、首元から始まって脇を通り、へその上部で終りを迎える曲線は、ひどく滑らかである。手が当たればそこを中心に丸く凹み、屈んで裾を払おうとすれば重そうに下で揺れる。
俺が女性の乳房なるものに目を奪われた初めての瞬間である。
それは物心ついた少年の心には余りにも蠱惑的だった。余りにも蠱惑的過ぎて、俺の体には背中をバットで殴られたような衝撃が走り、手が震え、肩が強張り、妙に臀部の辺りに力が入る。頭の中は真っ白で、少しずつ顔と耳たぶが赤くなっていくのが分かる。途端に彼女の胸から目が離せなくなり、じっと見るのはダメだと思って視線を上げると、さっきとは打って変わって潤いのある目がこちらを見てきている。微笑んでくる。その瞬間、徐々に赤くなって行っていた顔に、血が一気に上る感覚がし、また視線を下げると、そこにはこれまで見たことがない程の大きさの胸。胸。胸。………あゝ、なんと魅力的だったことか。
「こんにちは」
「うん、こんにちは。今日は寒いね」
彼女に挨拶されたので、俺はなんとか声を出したのだった。
「私は全然。むしろあったかいくらい」
「元気だなぁ」
「君が元気ないだけじゃないの」
「熱は無いんだけどね」
「ふふ」
と彼女は笑って、
「君どのクラスの子?」
「いや、たぶん知らないと思う。この辺の学校には通ってないから」
「どおりで学校じゃ、見ないと思った。何年生なの?」
彼女がこの時、俺を年下だと思っていたことは笑止。実際には同い年である。
「へぇ、あっちの学校はどうなの?」
「どうもこうもないよ。たぶん雰囲気なんかは変わんないと思う」
「そうなんだ」
と、そこでトラックが道端を通ったために、会話が区切れてしまって、早くも別れの雰囲気となった。
「ねぇ」
先に声をかけたのは彼女だった。
「うん?」
「またお話してくれない?」
少年はしばし悩んだ。近くの者とは関わるなと言う父上の言葉が頭にちらついて、それが殆ど彼女の家庭とは関わるなとの意味であることに、今更ながら気がついたのであったが、目の前に居る少女が目をうるませて、希望も無さげに手をもじもじと弄っているのを見ると、彼女の学校での扱われ方が目に見えてしまって仕方がなかった。そっと目を外すと、隣に住んでいなければ、多分一生関わること無く一生を終えるであろう貧しい家が目に飛び込んできて、だとすれば、良い育ちはしていないに違いはあるまい。だが、今言葉を交わした感じからすれば、意外にも言葉遣いはぞんざいではなく、笑い方もおっとりとしている。それに何より、自分がここまで心臓の鼓動がうるさいと思ったことはないのである。少年の心はこの時、「またお話したい」などというレベルではなく、彼女に近づきたい気持ちでいっぱいであった。近づいて、もっともっとお話をして、その体に触れて、夜のひと時をこのメルヘンチックな我が部屋で過ご��たら、どんなに素敵だろう。この窓から夜景を見て、手を取って、顔を突き合わして、行く行くは唇を重ねる、………あゝ、この部屋だけじゃない、綺麗に見繕って、二人で遊びに行くのも良い、いや、もはや二人きりでその場に居るだけでも僕の心は満足しそうだ。………実際にはこんなに沢山ことを考えた訳ではなかったけれども、しかしそういうことが、父上の言いつけから少年をすっかり遮断してしまった。つまりは、彼女の言葉に頷いたのである。
「もちろん。こうやって顔だしてたら、また話しかけてよ」
「ふふ、ありがとう。またね」
「またね。―――」
これが俺と叶の馴れ初めなのだが、それから俺たちは休みの日になると、窓を通じて10分20分もしない会話を楽しんだ。尤もそれは俺が父上と母上を怖がって、勉強しなくちゃいけないだとか、習い事があるとか、そういう理由をつけて早々に切り上げるからではあるけれども、もし何の後ろめたさも無かったら日が暮れても喋りあったに違いない。
「えー、……もう? 私はもっとお話してたい!」
「ごめんね。明日もこうやって外を眺めてあげるからさ」
その言葉に嘘はなく、俺は休日になれば、堪えきれない楽しみから朝食を終え、両親を煙に巻くや窓から顔を突き出していた。すると叶はいつも直ぐに家から出てきて、
「おはよう」
と痩せ細った顔に笑みを浮かべる。彼女もまた、楽しみで楽しみで仕方ないと言った風采なのである。
「おはよう。今日はいつにもまして早いね」
「ふふ」
会話の内容はありきたりなこと、―――例えば学校のこと、家のこと(彼女はあまり話したがらなかったが)、近くにある店のこと、近くにある交番がどうのこうのということ、近くにある家のおばさんが変人なことなど、強いて言えば、近所の人たちに関する話題が多かった。というのも、この住宅街に住んでいながら、今まで何も知らなかったので、俺の方からよく聞いたのが理由ではあるけれども、話に関係ないから述べる必要はあるまい。
それよりも、あんまり叶が早く出てくるので、いつのことだったか、聞いてみたことがあった。すると、彼女は心底意地の悪い笑顔で、
「私の部屋から丸見えなんだもん。そんなに楽しみ?」
と言うので、無性に恥ずかしさが込み上げてきたのは覚えている。どう返したのか忘れたが、その後の彼女の笑う様子が、強烈に頭に残っているのを考慮すれば、さらに恥ずかしい言い訳を放���たのは確かである。………
そんなある日のことであった。確か、叶と出会って一ヶ月経った日だったように思う。何でも学校が春の休み期間に入ったために、俺達は毎日顔を合わせていたのであるから多分そうで、非常に小っ恥ずかしい日々を送っていたのであるが、この日は俺しか俺の家には居ないのであった。それも朝一から深夜まで、何故だったのかは忘れてしまったが、両親も居なければ、ハウスキーパーも、確実に居ないのである。然れば初恋に目の暗んだ少年が悪巧みをするのも当然であろう。つまり俺はこの日、叶をこのメルヘンチックな離れに招待しようとしていたのである。
一種の期待を胸に抱きながら、いつもどおり窓から顔を突き出して、今や見慣れてしまった貧しい家の壁に視線を沿わせては、深呼吸で荒れそうになる息を整えようとする。一見、「いつもどおり」の光景だけれども、この時の俺はどうしても、初めての彼女をデートに誘うような心地よい緊張感ではない、恐ろしい罪悪感で押しつぶされそうだった。別に子供が同級生の女の子を連れてくることなど、親からしたら微笑ましい以外何者でもないかもしれない。が、これから呼ぶのは、父上が関わるなと言った、隣家の貧しい娘なのであるから、どうしても後々バレた時の事を考えると、喉が渇いて仕方ないのである。―――出来れば叶が今日に限って出てきてくれなければ、なんて思っても、それはそれで淋しくて死ぬ。まぁ、期待と緊張と罪悪感でいっぱいいっぱいだった少年の頭では、上手い具合に言い訳を考えることすら出来なかったのである。
「おはよう」
そうこうするうちに、いつの間にか外に出てきていた叶が声をかけてきた。一ヶ月のうちに、さらに胸が大きくなったのか、お下がりの服の袖はさらに長くなり、………というのは、服のサイズを大きくしないと胸が入らないからで、その肝心の胸の膨らみは今やバレーボール大に近くなりつつある。
で、俺は焦ることは何もないのに、挨拶を返すこともせずに誘うことにしたのであった。
「ねぇ」
「うん?」
「きょ、今日、僕の家にはだ、だれも居ないんだけど、………」
「え? うん、そうなの」
それから俺が叶を誘う言葉を出したのは、しばらくしてのことだったが、兎に角俺は彼女を頷かせて門の前まで来させることに成功して、庭を駆けている時に鳴った呼び鈴にギョッとしつつ、正門を開けると、さっきまでその気になっていた顔が、妙に神妙なので聞いてみると、
「なんか急に入って良いのか分からなくなっちゃった」
ともじもじしながら言う。それは引け目を感じると言うべき恥であることは言うまでもないが、一度勢いづいた少年にはそれが分からず、不思議な顔をするだけであった。それよりも少年は歓喜の渦に心臓を打たせており、今日という今日を記憶に焼き付けようと必死になっていた。というのは、普段遠目から見下ろすだけであった少女が目の前に現れたからではあるけれども、その少女の姿というのが、想像よりもずっと可愛いような気がしただけでなく、意外と背丈がひょろ高いことや、意外と服は小綺麗に整えてあることや、手も脚も、痩せ細った中にも一種の妖艶さが滲み出ていることなど、様々な発見をしたからであった。特に、胸元の膨らみにはただただ威圧されるばかり。大きさは想像通りだったものの、いざ目の前に来られると迫力が段違い。試しに顔を近づけてこっそりと大きさを比べて見ると、自分の頭よりも大きいような感じがし、隣に並んでみると、彼女の胸元にはこんな大きな乳房が生えているのかと驚かれる。
「ちょっと、どうしたの」
と言われてハッとなって、叶の手を引きながら広大な庭を歩き始めたが、少年の目はやはり一歩一歩ふるふると揺れる彼女の乳房に釘付けであった。
庭の様子は今後必要ないから述べないが、一方はお坊ちゃん、一方は女中にもならない卑しい少女が手を取り合いながら、花々の芽の萌ゆる庭園を歩く様子は、��いは美しさがあるかもしれない。
離れについて、「や、やっぱり私帰るね」と言い出す叶を無理に押し込んで、鍵をかけると、一気に体中の力が抜けて行くような気がした。何となく庭を歩いているうちは、誰かに見られているかのようで、気が気でなかったのに、今となっては何と簡単なことだったであろう。とうとう成功した、成功してしまったのである、叶を一目見た瞬間に思い描いていた夢が、一つ叶ったのみならず、この心の底から沸き起こる高揚感はなんだろうか。期待? それとも単に興奮しているだけ? いや、恐らくは彼女が隣に居ること、手を触れようとすれば触れられる位置に居ること、つまり、彼女に近づいたという事実が、嬉しくて嬉しくて仕方がないのだ。そしてそれが、自分の住処で起こっている、………俺は多分この時気持ち悪いくらいに笑っていたように思ふ。頭は冷静に叶をもてなしているつもりでも、行動の一つ一つに抜けている箇所が、どうしても出てしまって、土足のまま上がろうとしたり、段差に足をひっかけて転けそうになったり、お茶を溢しそうになったり、最初からひどい有り様であったが、彼女は引け目を感じながらも笑って、
「ほんとにどうしたの、熱でも出てるんじゃ、………」
と心配さえもしてきて、その優しさもまた、俺には嬉しくて仕方がなくって、ますます惚けてしまったように思われる。が、それが出たのは昼前のことだったろう、あの時俺は、目の前ある叶の乳房が大きく重たく膨れ上がっているのに対し、それを支える身体が余り痩せすぎている、それもただ単に痩せているのではなくて、こうして間近で見てみると、骨格からして華奢であるので、身長はどっこいどっこいでも(―――当時の俺は背が低かったのである)、どこか小さく感じられるし、そのために、余計に体と胸元の膨らみとが釣り合っていない上に、胸が重いのか、ふらふらとして上半身が風で煽られているかの如く触れる時がある、それが緊張で体が強張っている今でも起こるので、段々と心配になってきて、
「す、すごい部屋、………」
ときちんと正座をしながら目を輝かす彼女が、今にも倒れてしまいそうに思われたのだった。しかし惚けた少年の頭では、ああ言えば失礼だろうか、こう言えば婉曲的に尋ねられるだろうか、などと言ったことは考えられない。ただ、この眼の前に居るかぁいい少女が、かぁいくってしょうがない。あれ? 叶ってこんなにかぁいかっただろうか? と、彼女の一挙一動がなんだか魅力的に見えて来て、手の甲を掻くのすらもかぁいくって、言葉が詰まり、今や何とか頭に浮き出てきた単語を並べるのみ、彼女を一人部屋に残して外で気持ちを落ち着けようにも、今ここに叶が居るのだと思えばすぐさま頬が燃え上がってくる。再び部屋に入れば入ればで、自分の思い描いていたのよりかぁいい少女が、きちんと正座をしながらも、未だに目をキラキラとさせ、口をぽかんと開けて部屋中を眺めている。そんなだから、一層少年の頭は惚けてしまった。同時に、胸の前で、乳房を押しつぶしながらしっかりと握られている両の手が目について、その細さ、そのか弱さに惹き込まれて無遠慮に、
「ねぇ、前々から気になってたんだけど、どうしてそんなに細いの? どうしてそんなに痩せてるの?」
と、彼女の正面に座りながら聞いた。
「あっ、うっ、……」
「ん? だって手とか僕が握っても折れそうだし」
「え、えとね?」
「うん」
「その、食べては居るんですけれど、………」
叶はここに来てからすっかり敬語である。
「食べても食べても、全然身につかなくって、………その、おっぱいだけが大きくなってしまってるの。だから、こんなにガリガリ。骨も脆いそう。………あはは、なんだか骸骨みたいだね」
「全然笑い事じゃないんだけど」
「うん、ありがとう。それだけでも嬉しいな」
とにっこりするので、
「もう」
とにっこりとして返すと、叶はすっかり普段の無邪気な顔に戻った。
「あ、でね、もちろんお母さんも心配してくれて、お金が無いのに、私のためにたくさんご飯を作ってくれててね、―――」
「たくさんって、どのくらい?」
「えっと、………」
と言葉に詰まるので、
「まぁ、別に笑わないからさ。言ってごらん?」
とたしなめた。すると返ってきた言葉は、俺の想像を軽く飛び越していたのだった。
毎日微妙に違うから昨日のだけと、はにかんだ叶の昨夜の夕食は、米を4合、味噌汁が鍋一杯、豆腐を3丁肉豆腐、その肉も牛肉1キロ、半分を肉豆腐へ、半分を焼いて、野菜はキャベツとレタスと半々に、鶏胸肉2枚、パスタ500グラム、………を食した後に寒天のデザートを丼に一杯、食パンを2斤、牛乳一リットルで流し込んだ、と、ご飯中は喉が乾いて仕方がないと言って、水もペットボトルで2本計4リットル飲んだ、いつもこれくらいだが、それでも食欲が収まらない時は、さらにご飯を何合か炊いて卵粥として食べるのだと言う。
笑わないとは言ったけれども、流石に苦笑も出来ずに唖然とするばかりで、俺は、スポーツ選手でも食べきれない食い物が、一体全体、目の前で顔を覆って恥ずかしがる少女のどこに入って、どこに消えたのか、想像をたくましくすることしか出来なかったが、そうしているうちに、今日の朝はねと、朝食までおっしゃる。それもまた米が4合に、やっぱり味噌汁を鍋一杯。そして、知り合いが店を構えているとか何とかでくれる蕎麦を、両手で二束、大鍋で茹でてざる蕎麦に、インスタントラーメンを2人前、水を2リットル。言い忘れてけどご飯は大きなおにぎりとして、中に色々と具材を入れて食うと言って、最後に、デザートとは言い難いが、デザートとしてシリアルを、やっぱり牛乳1リットルかけて食べる。その後パンがあればあるだけ食べる。水も何リットルか飲む。で、大体食事の時間は1時間半から2時間くらいで終わるけれども、お腹が空いていたら30分でもこれだけの量は平らげられるらしい。
「いやいやいやいや、………えっ?」
俺のそんな反応も当然であろう。ところで以上の事を言った本人は、言っちゃった、恥ずかしい、と言ったきり黙って俯いているが、益々見窄らしく、小さく見え、やはり可哀想でならなかった。
ポーン、と鳴っ��、時計が12時を示した。叶の告白から随分時間が経ったように思っていたら、もうそんな時間である。空腹を訴えかけている腹には悪いが、今ここで食事の話題を振れば恐ろしい結果になるかもしれない、一応自分の昼食は、父上が予め出前を取ってくれたのが、さっき届いたからあるし、母上が夕食もと、下拵えだけして行った料理の数々があるので、それを二人で分けて、一緒に食べる予定ではあったのだが、しかし先の話が本当だとすれば、とても量が足りない。だが、恐ろしい物は逆に見たくなるのが、人間の常である。俺は、叶がご飯を食べている様を見たくてたまらなかった。普段、外食は両親に連れられてのものだったけれども、幸い街を歩けばいくらでも食事処にはありつける。日本食屋に、寿司屋に、洋食屋に、喫茶店に、中華料理屋に、蕎麦屋饂飩屋鰻屋カレー屋、果ては創作料理屋まであるから、彼女をそこに連れて行ってみてはどうか。もちろん一軒と言わずに何軒も訪れて、彼女が満足するまでたくさんご飯を食べさせてあげてみてはどうだろうか? 俺はそんなことを思って、心の内で嫌な笑みを浮かべていたのであったが、偶然か必然か、その思いつきは叶の願いにぴったり沿うのであった。
「あはは、………やっぱり引いた?」
と叶がもじもじしながら言う。
「若干だけど、驚いただけだよ」
「ほんとに?」
「ほんとほんと」
「じゃ、じゃあ、もう一つ打ち明けるんだけどね、………あ、本当に引かないでよ」
「大丈夫だって、言ってごらん?」
と言って顔を緩めると、叶は一つ深呼吸してから、もじもじさせている手を見つめながら口を開くのであった。
「えとね、私、………実はそれだけ食べても全然たりなくて、ずっとお腹が空いてるの」
「今も?」
「今も。ほら、―――」
叶が服の裾をめくり上げると、そこにはべっこりと凹んでいる腹が丸見えになる。
「すっかり元通りになっちゃった。君と会うために外に出た時は、まだぼっこりしてたんだけど、………」
「お昼は?」
「え?」
「お昼。お昼ごはん。どうするの?」
「我慢かなぁ。いつもお昼ごはんは給食だから、全然平気だよ!」
この時、図らずも俺の画策と、彼女の願い、というよりは欲望が、同じ方向を向いたことに歓喜したのは言うまでもない。俺はこの後のことをあまり覚えていないが、遠慮する叶に向かって、
「ご飯一緒に食べよう!!」
と無理やり立たせて、取ってあった出前を彼女の目の前に差し出したのは、微かに記憶に残っている。彼女はそれをぺろりと平らげた。口に入れる量、噛むスピード、飲み込む速度、どれもが尋常ではなく、するすると彼女の胃袋の中へと消えていった。母上が下ごしらえして行った料理もまた、子供では食べきれないほどあったが、5分とかからなかった。こちらは食べにくいものばかりであったけれども、叶は水を大量に飲みつつ、喉へと流し込んで行く。それがテレビでよく見る大食い自慢のそれとは違って、コクコクと可愛らしく飲むものだから、俺はうっとりとして彼女の様子を見つめていた。食べ終わってから、俺は彼女の腹部に触れさせてもらった。��の腹は、3人前、4人前の量の食事が入ったとは思えないほど平たく、ぐるぐると唸って、今まさに消化中だと思うと、またもや俺の背中はバットで殴られたかのような衝撃に見舞われてしまった。ちょうど、叶の乳房に目を奪われた時と同じような衝撃である。思わず耳を叶のヘソの辺りに押し付けて、たった今食べ物だったものが排泄物になろうとしている音を聞く。ゴロゴロと、血管を通る血のような音だった。
「まだ食べられる?」
「もちろん!」
叶は元気よく答えた。俺は彼女がケチャップで赤くなってしまった口を、手渡されたナプキンで綺麗に拭き終わるのを待って、
「じゃあ、行こうか」
と、財布と上着を取りながら聞いた。
「どこへ?」
「今日はお腹いっぱいになるまで食べさせてあげるよ」
俺の昼食夕食を軽く平らげた彼女は、今更遅いというのに遠慮をするのであった。「いや、私、もうお腹いっぱいで」とか、「お金持ってない」とか、「別にいいって、いいってば」とか、終いには「ごめん、ごめんなさい」と言って泣き出しそうにもなったり、なんとかなだめて離れから飛び出ても、動こうとしなかったり、自分の家に入ろうとする。「だ、大丈夫! 嘘! 嘘だから! 忘れて! もう食べられないから!」など、矛盾に満ちた言葉を放っていたのは覚えている。俺はそれをなんとかなだめて、気持ちが先行してしまって不機嫌になりつつも、最終的には弱々しい彼女の腰を抱きかかえるようにして引っ張って行った。
「ごめんね、ごめんね。ちょっとでいいからね。私よりも君がたくさん食べてね」
と食べることには堪忍したらしい叶が、物悲しそうにしたのは、確か家からまっすぐ歩いて、3つめの交差点を曲がって、広めの県道を西に沿ってしばらく行った所にある小綺麗な中華料理屋だっただろう。前にも述べたが、俺はこの日のことをあまり詳しく憶えていないのである。何故この中華料理屋に訪れたかと言えば、ようやく落ち着いた叶に何が食べたい? と聞くと、渋々、春巻きが食べたいとの答えが返ってきたからであるのだが、この店は昔も今も量が多いとの文句が聞こえてくる名店で、俺はよく、父上が天津飯一つすら苦しんで食べていたのを思い出すのである。とまぁ、そんな店であるのだから、そんな店にありがちな、所謂デカ盛りメニューなるものがあって、例えば丼物、―――麻婆丼だったり、炒飯だったり、それこそ天津飯だったり、そういうのはだいたい揃ってるし、酢豚とか、八宝菜の定食メニューもそれ専用の器すらあったりする。そしてそれを30分以内に食べきったら無料なので、これならお金を気にする彼女も安心してくれるだろうと、少年は考えた訳であったが、いざ入ってみて、奥の席へ通されて、
「この春巻きを10人前と、デカ盛りメニューの麻婆丼一つと、それと僕は、………エビチリ定食をご飯少なめでください!」
と注文すると、
「ぼ、僕? 冗談で言ってる?」
と、まず俺を見、そして叶を見して怪訝な顔をするのであった。
「冗談じゃないよ。ねぇ?」
と叶を見るが、彼女は静かに俯いている。
「ま、そういうことだから、お金��出すんだから、早く! 早く!」
「でもね、これはとっても量が多いんだよ?」
「うん、知ってる。だけど叶ちゃんが全部食べてくれるから、平気だよ」
「え、えぇ、………? この子が? 嘘おっしゃい」
そういう押し問答は10分乃至15分は続いたのであったが、とうとう店側が折れる形で、俺達の前には山になった春巻きと、山になった麻婆丼と、それ比べればすずめの涙程のエビチリが、テーブルの上に現れたのであった。俺も驚いたし、店員も驚いたし、何より他の客の驚きようと言ったら無い。奥の席だったから、人気はあまりないものの、写真を撮る者、頑張れよと冷やかしてくる者、わざわざ席を変わってくる者も居れば、自分たちも負けじとデカ盛りメニューを頼む者も居る。彼らの興味は殆どテーブルの上に置かれた理不尽な量の料理と、それに向かう華奢な少女であったが、妙に俺は良い気になって、ピースして写真に写ったり、冷やかして来た者を煽ったりして、相手をしたものだった。本当に、あの時の俺は、自分が一時の有名人になったかのような心持ちで、サインでも握手でもしてやろうかと思った。いや、そんなことよりも、もっと写真に撮って、もっと騒ぎ立てて、もっと人を集めてくれという気持ちであった。有頂天と言っても良い状態だった。が、ふと叶の方を見てみると矢張り俯いたままでいる。―――あゝ、こんなに騒がしかったら美味しいものも美味しくは無いだろうな、早く食べないと冷えてしまう、それに、自分もお腹が空いて仕方がない、そろそろ追っ払おうかしらん。叶の様子にいくらか冷静になった俺はそう思ったのであった。
「ごめんね、彼女、恥ずかしがり屋だから、ほら、あっち行ってて」
そう言うと、店主のハラハラした視線だけはどうすることも出来なかったが、皆次第に散り散りになった。叶もまた、周りに人が居なくなって安心したのか、顔を上げる。
「騒がしかったね」
「うん」
「まったく、野次馬はいつもこうだよ」
「うん」
「足りなかったら、もう一つ頼むことにしようか」
「あ、あの、………」
「うん?」
「いただきます」
この時の彼女の心境は、後になって聞いたことがある。たった一言、ああいう状況に慣れていなかったせいで、食べて良いのか分からなかった、と。実際には、中華店へ入る前から匂いに釣られて腹が減って死にそうになっていたところに、いざ目の前に好物の春巻きと、こってりとした匂いを漂わせている麻婆丼が現れて、遠慮も恥も何もかも忘れて食らいつきたかったのだそうである。事実、麻婆丼は物凄い勢いで彼女の口の中へと消えていった。
ところで麻婆丼は、後で聞けば10人分の具材を使っているのだと言う。重さで言えば8.7キロ、米は5合6合はつぎ込んで、女性の店員では持ち運べないので、男が抱えなければならない。時たま米の分量を誤って、餡のマーボーが指定分乗り切らない時があって、そういう時は乗り切らなかった餡だけ別の器に盛って出す。かつて挑戦した者はたくさんいるが、無事にただで食べられたのはこれまで1人か2人くらい、それも大柄な男ばかりで、女性はまだだと言う。
そんな麻婆丼が、11歳の、それも痩せ細った体つきの少女の口の中へ消えていくのである。休むこと無く蓮���を動かし、時折春巻きを箸に取っては、殆ど一口で飲み込むが如く胃の中へ流し込み、真剣ながらも幸せの滲み出た顔をしながら、水をグイグイ飲む。見れば、心配で様子を見に来ていた店主は、いつの間にか厨房に引っ込んで呆れ顔をしている。叶はそれにも気が付かずに黙々と口を動かして、喉が微かに動いたかと思ったら、蓮華を丼の中に差し込んで、幸せそうな顔で頬張る。あれよあれよという間にもう半分である。こういうのは後半になればなるほど勢いが落ちるものだのに、叶の食べるスピードは落ちないどころか、ますます早くなっていく。やがて蓮華では一口一口の大きさが物足りないと感じたのか、一緒に付いてきたスプーンで上から米もろとも抉って食べる。叶は普段から綺麗に食べることを心がけていて、大口を開けて食い物を口へ運んだとしても、それが決して醜くなく、逆に、実に美味そうで食欲が掻き立てられる。優雅で、美しい食べ方は、彼女が言うには、体の動かし方が重要なのだと、かつて教えてもらったことがある。気がついた時には、もう普通の麻婆丼と殆ど変わらない分量になっていた。一個もらうつもりだった春巻きは、………もう無かった。
俺は、叶の料理を食べている姿をついに見ることが出来て、ただただ感激だった。先程は恐ろしい勢いで食べたと言っても、量は大食いの者ならば簡単に平らげる程度しか無かったのである。それが今や10人前の巨大な麻婆丼を前にして、淡々と頬張っていき、残るは殆ど一口のみになっている。彼女はここに来てようやくペースが落ちたのだが、その顔つき、その手付き、その姿勢からして、腹が一杯になったのではなくて、あれほどあった麻婆丼がとうとうここまで無くなったので、急に名残惜しくなったのであろう。その証拠に、一口一口、よく噛み締めて食べている。俺は、またもや背中をバットで殴られたかのような衝撃に身を震わせてしまい、その様子をじっくりと穴が空くほどに見つめていたのであったが、汗もかかずに平然と、最後の豆腐に口をつける彼女を見て、とうとう食欲がさっぱり無くなってしまった。代わりに無性に苛立つような、体の内側が燃えるような、そんな堪えきれない欲が体の中心から沸き起こってきて、今までそんなに気にしてなかった、―――実際は気にしないようにしていた胸元の膨らみが、途端に何かを唆しているように思えて、もっともっと叶の食事風景を見ていたくなった。
「ごちそうさまでした」
と、声がしたので見てみると、澄ました顔で水を飲んでいらっしゃる。俺は慌てて、店主がテーブルの上に乗せて行ったタイマーを止めて時間を見てみた。
「16分39秒」
「えっ? 食べ終わった?」
「ほんまに?」
「本当に一人で食べたんだろうか。………」
気がつけば観客たちがぞろぞろと戻ってきていた。彼らの様子は、もうあんまりくだくだしくなるから書かないが、俺はまたしても注目を浴びている彼女を見て、ただならぬ喜びを感じたということは、一言申し上げておく必要がある。少年は輪の中心に居る少女の手を取るに飽き足らず、その体に抱きついて(―――何と柔らかかったことか!)、
「やったね叶ちゃん。やっぱり出来るじゃないか」
と歓声を放ち、
「ほら、ほら、この子はデカ盛りを16分で食べきったんだぞ。男ならそれくらいで��なきゃ」
と、まるで我が手柄のように、奮闘中の大学生らしき男性客に言うのであった。俺の感性はまたしても有頂天に上り詰めて、多幸感で身がふわふわと浮いていた。隣で叶がはにかんで居るのを見ては、優越感で酔っ払ってしまいそうだった、いや、酔いに酔って、―――彼女の隣に居るのは僕なんだぞ。少年はそう叫んだつもりであるのだが、実際には心の中で叫んだだけなようである。俺がこの日の記憶をおぼろげにしか覚えていないのは、そんな感情に身も心も流されていたからなのである。………
騒ぎが収まってから、俺は半分近く残っていたエビチリを叶にあげた。もちろんぺろりと平らげた訳なのだが、しかしその後余りにも平然としてデザートの杏仁豆腐を食べているので、ひょっとしたら、………というよりは、やっぱりそうなんだなと思って、
「もしかしてさ、もう一回くらいいける余裕ある?」
「あ、………もちろん」
もちろんの部分は小声で言うのであった。そして小声のままその後に続けて、今体験した感じで言うと、もう一回あのデカ盛りを食べるどころか、さらにもう一回くらいは多分入ると思う。なんて言っても、まだ空腹感が拭えない。実のことを言えば、あれだけ店主が期待させてくるから楽しみだったのだけれども、いざ出てきてみれば、美味しかったものの、いつも食べてる分量より少なかったから、拍子抜けしてしまった、30分という時間制限も、頑張ったらさっきの麻婆丼2つ分でも達成できると思う。い���、たぶん余裕だと思う、出来ることならもう一回挑戦してみたいが、あの騒ぎを起こされた後だとやる気は起きないかなと言う。少年は彼女の食欲が未だに失せないことに、感謝さえしそうであった。なぜかと言って、この日の俺の願望は、彼女の食事姿を眺めること、そして、街にある食事処をはしごして、彼女が満足するまでたくさんご飯を食べさせてあげること、―――この2つだったのである。しかし、前者は達成したからと言って、それが満足に値するかどうかは別な問題であって、既に願望が「彼女の食事姿を飽きるまで眺めること」となっていた当時の俺には、元々の望みなどどうでもよく、叶がお腹いっぱいになっちゃったなどと言う心配の方が、先に頭に上っていた。が、今の彼女の言葉を聞くに、彼女はまだまだ満足していない。腹で言えば、三分ほどしか胃袋を満たしていない。となれば、第二の願望である「彼女が満足するまでたくさんご飯を食べさせてあげること」を達成していない。然れば、僕が叶の食事風景を飽きるまで眺めるためにも、そして叶が満腹を感じるまでに食事を取るためにも、今日はこのまま延々と飯屋という飯屋を巡ってやろうではないか。そして、あのメルヘンチックな子供部屋で、二人で夜景を眺めようではないか。………斯くして三度、俺の願望と叶の欲とは一致してしまったのであった。
結局叶は、春巻きをもう一度10人前注文して幸せそうな顔で味わい、その間に俺は会計を済ましたのであったが、あっぱれと未だに称賛し続けている店主の計らいで杏仁豆腐分だけで済んでしまった。本当にあの体にあの量が入ってるとは信じられんとおっしゃっていたが、全くその通りであるので、店を出てから叶に断ってお腹に手を触れさせてもらったところ、ちょうど横隔膜の下辺りから股上までぽっこりと、あるところでは突き出ているようにして膨らんでいる。ここに8.7キロの麻婆丼と、春巻き20人前が入っているのである。ついでに水何リットルと、申し訳程度の定食が入っている。そう思うと、愛おしくなって手が勝手に動き初めてしまいそうになったけれども、人通りの多い道であるから、少年は軽く触れただけで、再び少女の手を引いて、街中を練り歩き出した。
それから家に帰るまでの出来事は、先の中華料理屋とだいたい似ているので詳しくは書かないが、何を食べたかぐらいは書いておこう。次に向かった店は近くにあったかつれつ屋で、ここで彼女は再びデカ盛りのカツ丼4.3キロを、今度は初めてと言うべき味に舌鼓をうちながらゆっくりと、しかしそれでも半額になる25分を6分24秒下回るペースで平らげ、次はカレーが食べたくなったと言って、1つ2つ角を曲がってよく知らないインドカレー屋に入り、ご飯を5回おかわり、ナンを10枚食べる。おぉ、すごいねぇ、とインド人が片言の日本語で歓声を上げるので、叶はどう反応していいのか分からずに、むず痒そうな顔を浮かべていた。で、次はラーメン屋が目についたので、特盛のチャーシュー麺と特盛の豚骨、そして追加で餃子を頼んで、伸びたらいけない、伸びたらいけないと念仏のように唱えながら、汁まで飲み干す。この時既に、一体何キロの料理が彼女の腹に入っていたのか、考えるだけでも恐ろしいので数えはしないが、店を出た時に少々フラフラとするから心配してみたところ、
「いや、体が重いだけで、お腹はまだ大丈夫」
という答えが返ってくる。事実、その移動ついでにドーナツを10個買うと、うち9個は叶の胃袋へ、うち1個は俺の胃袋へと収まった。そして今度は洋食屋に行きたいとご所望であったから、先の中華料理屋の向かい側にある何とか言う店に入って、ナポリタン、―――のデカ盛りを頼んで無料となる19分17秒で完食す。とまあ、こんな感じで店をはしごした訳であったが、その洋食屋を後にしてようやく、ちょっと苦しくなってきたと言い出したので、シメとして喫茶店のジャンボパフェを食べることにした。彼女にしてみれば、どれだけ苦しくても甘いものだけはいくらでも腹に入れられるのだそうで、その言葉通り、パフェに乗っていたアイスが溶けるまでにバケツのような器は空になっていた。そして、喫茶店を出た時、叶は急に俺の体に凭れかかってきたのであった。
「あ、あ、………苦しい、………これがお腹一杯って感覚なんだね」
と、俺の背中に手を回してすっかり抱きついてくる。うっとりとして、今が幸せの絶頂であるような顔をこちらに向けたり、道の向かい側に向けたりする。人目もはばからず、今にもキスしそうで、その実ゴロンと寝転がってしまうのではないかと思われる身のこなし。心ここにあらずと言ったような様子。………彼女は今言った量の料理を食べて初めて、満腹感を感じられたのであった。―――あゝ、とうとう僕の願望と叶ちゃんとの欲望が、叶い、そして満たされたしまったのだ。見よ見よこの満足そうな顔を。ここまで幸せそうな顔を浮かべている者を皆は知っているか。―――少年も嬉しさに涙さえ出てくるのを感じながら、抱きついてくる少女のお腹に手を触れさせた。妊娠どころか人が一人入っているかのようにパンパンに張って、元の病的なまでに��んでいた腹はもうどこにもなかった。胸元だけではなく、腹部にある布地もはちきれそうになっていた。思えばここに全てが詰まっているのである。今日食べた何十キロという食べ物が、………そう考えれば本来の彼女の体重の半分近くが、この腹に収まって、今まさに消化されているのである。少年と少女はついに唇を重ねるや、そっとお腹に耳をつけてその音を聞いてみると、じゅるじゅると時々水っぽい音を立てながら、しかしグウウウ、………! と言った音が、この往来の激しい道沿いにおいても聞こえてきて、この可愛らしい少女からこんな生々しい、胎児が聞くような音を立てているとは! 途端に、股間の辺りから妙な、濁流を決壊寸前の堤防で堰き止めているかのような、耐え難い感覚がして、少年は咄嗟に彼女から身を引いた。今度の今度は背中をバットで殴られたような衝撃ではなく、内側からぷくぷくと太って破裂してしまいそうな、死を感じるほどのねっとりとした何かだった。そしてそれは何故か叶の体、―――特に異様に膨らんだ胸元と腹を見るだけでも沸き起こってくるのであった。少年は恐怖で怯えきってしまった。この得体の知れない感覚が怖くて仕方なかった。目の前でふらふらとしている少女から逃げたくもなった。が、無情なことに、その少女はうっとりと近づいてきて、少年の体にすがりつくので、彼は逃げようにも逃げられず、為されるがままに、その痩せきってはいるけれども上半身の異様に膨れた体を抱いてやって、少女の希望ゆえにお腹を両手で支えながら帰路につくのであった。
「お母さんに何言われるか分からないから、楽になるまで遊んで」
離れに戻ってから、叶はそう言って俺の体に寄りかかってきた。道沿いでしてきた時はまだ遠慮があったらしく、俺はすっかり重くなった彼女の体を支えきれずにベッドに倒れてしまい、じっと見つめる格好になったのであるが、そのうちに堪えきれなくなって、どちらからともなく、
「あははは」
「あははは」
と笑い出した。
「ねぇねぇ」
「うん?」
「さっきキスしてきたでしょ」
「………うん」
俺はこっ恥ずかしくなって、素っ気なく答えた。
「もう一度しない?」
「………うん」
今度はしっかりと叶の顔を見つめながら答えた。
これで俺たちは二度目の接吻をした訳であるが、俺の手はその後、自然に彼女の胸に行った。この時、叶の方がベッドに大きく寝そべっていたので、俺の方が彼女より頭一つ下がった位置にあり、目の前で上下する乳房が気になったのかもしれない。俺の手が触れた時、彼女はピクリと体を震わせただけで、その熱っぽい顔はじっとこちらを向けていた。嫌がっている様子が見えないとなれば、少年は図に乗って、両手を突き出して乳房に触れるのであったが、それでも少女は何も言わない。思えば、少年が恋する少女の胸に手をかけた初めての時であった。やわらかく、あたたかく、頭ぐらい大きく、手を突っ込めばいくらでもズブズブと沈み込んでいき、寄せれば盛り上がり、揉めば指が飲み込まれ、掬い上げれば重く、少年はいつまででも触っていられそうな感じがした。と、その時気がついたことに、着ている物の感触として、女性にはあって然るべき重要な衣服の感覚が無いのである。
「ぶ、ぶ、ぶ、ぶらは、………?」
と少年は何度もどもりながら聞いた。
「高くって買えないの。………それに、��っぱいが大きすぎて店に行っても売ってないの。………」
と少女は儚げな表情を、赤らめた顔に浮かべる。
それきり、言葉は無かった。少年も少女も、大人にしか許されざる行為に、罪悪感と背徳感を感じて何も言い出せないのである。少年の方は、父上の言いつけに背くばかりか、この部屋に連れ込んで淫らな行為に及んでいるがため、少女の方は、相手が自分の手に届かない物持ちの息子であることから、果たしてこんなことをして良いのかと迷っているところに、突然の出来事舞い込んできたため。しかし両者とも、気が高揚して、場の雰囲気もそういうものでないから、止めるに止められない。そして、どうしてその行動を取ったのか分からないが、少年は少女に跨って下半身を曝け出し、少女もまた裾を捲って肩まで曝け出した。玉のような肌をしながらも、はちきれんばかりになったお腹に、少年はまず驚いた。驚いてグルグルと唸るそれを撫で擦り、次に仰向けになっているのにしっかりと上を向く、丸い乳房に目を奪われた。生で触った彼女の乳房は、服を通して触るよりも、何十倍も心地が良かった。少年は、少女の腹を押しつぶさないように、腰を浮かしながら、曝け出した物を乳房と乳房が作る谷間の間に据えた。と、同時に少女が頷いた。右手で左の乳房を取り、左手で右の乳房を取り、間に己の物を入れて、すっぽりと挟み込み、少年は腰を前後に振り始めた。―――少年が射精を憶えた初めての時であった。
叶の腹がほぼ元通りに収まったのは、日も暮れかかった頃であったろうか、彼女を無事家まで送って行き、すっかり寂しくなった部屋で、俺はその日を終えたのであるが、それからというもの、お話をするという日課は無くなって、代わりに、休みの日になると叶を引き連れて、街にある食事処を次々に訪れては大量に注文し、訪れてはテーブルを一杯にし、訪れては客を呼び寄せる。その度に彼女は幸せそうな顔を浮かべて料理を平らげ、満足そうな顔を浮かべて店を後にし、日の最後は必ずその体を俺に凭れさせる。彼女にとって嬉しかったのは、そうやっていくら食っても俺の懐が傷まないことで、というのは、だいたいどこの店にもデカ盛りを制限時間内に食べられれば無料になるとか、半額になるとか、そんなキャンペーンをやっているのだけれども、叶はその半分の時間で完食してしまうのである。「頑張ったら、別に2倍にしても時間内に食べられるよ」と言って、見事に成し遂げたこともあった。その店には以降出入り禁止になってしまったけれども、痛いのはそれくらいで、俺は俺の願望を、叶は叶の欲望を満たす日々を送ったのであった。
だが、叶を初めて連れて行ってから一ヶ月ほど経った時の事、父上に呼ばれて書斎へと向かうと、いつもは朗らかな父上が、パソコンの前で真剣な表情で睨んで来ていらっしゃった。俺は咄嗟に叶との行動が知れたのだなと感づいて、心臓をドキドキと打たせていると、
「まぁ、別に怒りはしないから、隣に来てくれ」
とおっしゃるので、すぐ傍にあった椅子に腰掛けて、父上が真剣に見ていたであろうパソコンの画面を見てみた。そこには家中に配置されている監視カメラの映像が映し出されていたのであったが、その映像をよく見てみると、若い少年と少女が手を繋いで庭を渡る様子と、端に俺が叶を連れ込んだ日の日付と時間が刻銘に刻まれているのである。俺は頭が真白になって、どういい訳をしたらいいのか、どうやれば許して頂けるのか、―――そういう言葉ばかりが浮かんで結局何も考えられなかったが、兎に角、叶と会っていたことが父上にバレた、それだけははっきりと分かった。
「この映像に思い当たる節はないか?」
無いと言っても、そこに写っている少年の顔は俺であるし、後ろ姿も俺であるし、背丈も俺であるし、況や叶をや。言い訳をしたところで、事実は事実である上に、父上に向かってこれ以上見苦しい姿を見せたくなかったし、嘘を言うなんて事は俺には出来ないので、正直に告白することにした。もちろん、彼女に一杯物を食べさせてたなんて言うべきではないから、ただ一言会っていたとだけ伝えることにした。
「ふむ、正直でよいよい。そんなとこだろう。いや��それにしても、いきなり自分の部屋に連れ込むとは」
と、一転して朗らかになったので、急に恥ずかしくなってきて、キュッと縮こまったのであった。
ところで俺がこの監視カメラを甘く見ていたのには、少しばかり理由がある。1つには、庭は木が生い茂っていて見通しが悪いこと、そしてもう1つには、子供部屋として使っている離れには設置していないこと、だから俺はあの日の朝、部屋にさえ連れ込んだらこちらのものと思っていたのであったが、それ以上の理由として、父上がその防犯カメラの映像をあまりチェックし給はないことが挙げられる。父上は抑止力としてカメラを設置していらっしゃるだけで、その映像を見ることは月に一回あるかないか、それもたまに半年間もすっぽ抜かすこともあれば、チェックをするのも適当に何日かを選んで、早送りをして見るだけというずさんさがあった。俺はしばしばその様子を眺める機会があったのだが、いまいち鮮明でない画面であるがゆえに、もはや人が居るかどうかが辛うじて分かる程度であった。だから、俺はあの時、叶を部屋に連れ込んだとしても、見つかるはずは無いと高をくくっていたのである。
で、子供が一人で家の中で何をしているのか気になった父上が、ひょんなことから防犯カメラの映像を、ぼんやり眺めていると、何者かと共に離れにまで入っていく事を確認し、それが何とも見窄らしい格好をした少女であるから、2、3回繰り返して見ているうちに、隣家の貧家の娘であることに気がついたのであろう。
俺はそれから、また真剣な顔つきになった父上に、たんまりと諭されてしまった。この住宅街は、その大半が一般庶民の暮らしている家で埋められているのであるが、とある一画にだけは物騒な人(に売られる)が住んでいる。不幸なことにこの家を建てる時に、上手い土地が無かったために、ある一つの家を挟んで、そこと向かい合わせになってしまった。それならば、せめて家の裏にして、木で生け垣を作って完璧に仲を隔ててしまおうと思って、お前の部屋からも分かる通り、風景は見えるようにだけしたのである。もちろん、それなら別に他の所に住めば良いではないかと思うかもしれないが、しかしこの地は俺が子供時代に何年か過ごしたことがある土地であって、そして、お前のお母さんの生まれ育った土地である。つまりは夫婦の思い出の地であって、(言葉を濁しながら、)つまりは俺もお前と同じ穴の狢であるから、近所に住む女の子を一人や二人呼んだところで何も言いはしない。が、裏にある地区だけはダメだ。別にそういう地区ではないが、何しろ物騒な噂ばかり聞く。で、彼女の家はそんな地区と我々とのちょうど境目に建っていて、一番可哀想な境遇を経ているのであるが、向こうから色々と入れ知恵されていると人はよく言う。もし問題が起これば面倒事になるかもしれないし、お前に怪我でもあったら良くない。実際、昔お前のお母さんの友人が、あの地区にいる人といざこざを起こした時に、上辺だけは丸く済んだけれども、その後に復讐として連れ去られそうになったことがあった。彼らは放っておくとどこまで非情なことをするのか分からない。だからあの言いつけはお前を心配してのことだったのだ。そもそも、俺はお前にはもっとふさわしい女性とお付き合いしてほしい。ほら、一人二人くらい学校で仲良くなった子は居るだろう。いたらぜひ言ってくれと、最終的には学校生活の話をするのであったが、父上は諭している途中ずっと真面目であった。俺はそれをふんふんと頷きながら、その実父上がそういうことを話てくれることが嬉しくて、内容はあまり耳に入ってなかった。ただ叶が可哀想なんだなと思うくらいで、始まった父上の詰りに、すっかり考えを逸らされてしまったのであったのだが、
「しかし、可愛い子だな。あんな家に住ませておくのがもったいない。転校して会えなくなる前に、分かれの挨拶くらいは許してやるから、やっておけよ」
と、突然父上が衝撃的な事を言ってのけるので、
「え? 転校?」
と聞き返してしまった。全く、転校するなどとは俺には初耳で、椅子の上でぽかんと口を開けたまま固まってしまった。
「もう少ししたら、気晴らしに別荘の方で何年か過ごすからな、―――あゝ、そうそう本当に何年間かだぞ、一週間などではなくて。だからそのつもりでな」
俺はぽかんと口を開けたまま固まってしまった。
それからは急に頭がぼんやりとしてしまって、引っ越しまでどう過ごしたのか憶えて居ない。ただ、最後に叶に会ったことだけは憶えていて、彼女は泣いていたように思う。ようやく自分が満足する量の食事を隔週ではあるけれども、取っている彼女の体つきは、微かに肉付きがよくなっているのだが矢張りガリガリに痩せ細っていた。逆に、胸元だけは一層膨らみ始めていて、その大きさはバレーボールよりも大きかった。俺は木陰に入って、最後にもう一度触らせてもらった。もうこれが最後だと思うと、お腹にも耳を当てた。朝食後直ぐに出てきたというその腹からは、矢張りゴロゴロと中で何かが蠢く音が聞こえてきた。そして泣いて泣いて仕方がない彼女と最後のキスをして、また会う約束を交わして、蕾を付け始めた桜の花を、雲の下にてあわれに見ながら袂を分かった。
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myonbl · 5 years ago
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2020年3月23日(月)
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今年の春休みは、例年とはずいぶん異なった展開となっている。落語に興味を持つ学生が現れ、米朝全集をテキストに、DVDを鑑賞して解説を加える。それが漫画・映画へと広がり、Evernote & Facebook を併用して、2か月に及ぶ「集中講義」となっている。こんな授業なら、一年中やっても良いのだが��
ツレアイと次男は出勤、三男は夜勤明け。
洗濯1回。
熊野つながりの I姉からのお誘いで、「竹田恒泰氏による山崎雅弘さんへの名誉毀損裁判費用への寄付のお願い」の「呼びかけ人」に名を連ねた。早速、内田樹先生からメールで連絡を頂く。微力ではあるが、周囲に広げていこう。
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IM嬢と阪急北千里駅で待ち合わせ、落語とは関係ないが、「船場カリー」で早めのランチ。彼女はネギ、私はいつものナスではなく、日替わりサービス(100円引き)のホウレン草を選択。ネギのトッピングの量に、ちょっと驚く。
「できる女プロジェクト〜落語編〜」、今日の課題は「愛宕山」、例によって米朝全集の分からない言葉・事象を Evernote に書きだし、DVDを観てから解説を加えるというスタイル。<レンゲ・タンポポ・ヒバリ>という春景色、<置屋><茶屋><仕出し屋>の花街での役割分担、<煙草>は植物であること、<円><銭><厘>という通貨体系等々・・・。こうしてみると、社会風俗の学習に大変便利なテキストであることが分かる。
13時から「人事委員会」、食物栄養学科の非常勤講師採用1件。急に入った会議だが、これが本当に今年度最後の会議になって欲しい。
後半は、「できる女プロジェクト〜映画編〜」今日は���めがね」。
春まだ浅いころ。この世界のどこかにある南の海辺の小さな町に不思議な予感が漂う。「来た」プロペラ機のタラップを降り、小さなバッグひとつを手に浜を歩いてくる、めがねをかけたひとりの女。待ち受けていた男と女に向かい、彼女は深々と一礼する。静かな波が寄せては返す。時を同じくして、同じプロペラ機からもうひとりの女が降り立った。名前はタエコ(小林聡美)。大きなトランクを引きずりつつ、手描きの地図を片手に浜を歩き、奇妙ななつかしさの小さな宿・ハマダにたどり着く。出迎えたのは宿の主人ユージ(光石研)と愛犬コージ(ケン)。迷わずにたどり着いたタエコに彼は「才能ありますよ」と告げる。「ここにいる才能」。次の日宿の一室で朝を迎えたタエコの足元に不敵な微笑みをたたえためがねの女サクラ(もたいまさこ)の姿があった。それから起こるのはいちいち不思議なことばかりだった。(C)2007 めがね商会 監督 荻上直子 主演 小林聡美, 市川実日子, 加瀬亮
(amazon当該ページより)
小林聡美ともたいまさこ、まさにゴールデンコンビ。「たそがれ力」の試される映画、面白い!
帰路の阪急桂駅フレスコで惣菜購入して帰宅、今夜は手抜きをするのだ。
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自���に戻って、台所の壁に貼ってある「愛宕さんのお札」を確認。ずいぶん前になるが知人からの頂き物、落語の中で紹介されているとおりかなりの坂道、自分で参詣してお札を頂こうとは決して思わない。
買って来たコロッケや唐揚げ、作り置き惣菜を並べて先に息子たちの夕飯開始。写真忘れる。
ツレアイは遅い帰宅、明日は昼から出勤なので少しノンビリ。
録画番組視聴。
SWITCHインタビュー 達人達(たち)「ブレイディみかこ×鴻上尚史」
著書「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」で、多様性世界に暮らす親子を描いたブレイディみかこ。教育・育児にも鋭い論を放つ鴻上尚史と意見をぶつけ合う。
鴻上が長く続けている人生相談を読んで、会いたいと思ったというブレイディ。むだな縛りから子どもたちを解放し、才能を伸ばすために、常に具体的な実践術を唱え続けてきた鴻上に共感した。一方鴻上は、イギリスでブレイディが体験してきた多民族、貧富の差などによる多様性世界について切り込んでいく。ボーダレス化と分断化がともに進む日本でどう生きればよいか、2人の会話からそのヒントが見えてくる。
【出演】保育士・ライター・コラムニスト…ブレイディみかこ,作家・演出家…鴻上尚史,【語り】六角精児,平岩紙
いやぁ、素晴らしい内容。しかし、こんな上質の番組作りと、政権太鼓持ち報道とのギャップは何なのか。
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駅と職場を徒歩で往復すれば、それだけ��3つのリング完成。これだけでも、電車通勤の価値はある。
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2ttf · 13 years ago
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see also How to Edit a Glyph that is not listed on iFontMaker
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okwokwwok-blog · 8 years ago
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よくある質問
askやお題箱でよくある質問をまとめました。
Q.名前の由来はなんですか? A.ないです!ツイッターのIDこれにしたらそう呼ばれるようになりました。 Q.なんの仕事をしてるんですか? A.ピザポテトの転売です。 Q.風俗嬢なんですか? A.匿名掲示板鵜呑みにすんな!してね〜〜! Q.同担拒否ですか? A.4.5年前のはじめてハマった俳優さんとその役にはガチ恋同担拒否しましたが、それ以降はないです。 同担だろうが他担だろうが嫌いな人は嫌いですし、好きな人は好きです。 Q.ジャンル遍歴を教えてください A.二次元(テニスの王子様)→三次元(俳優)→二次元(あんスタ)→三次元(あんステ)→三次元(地下ドル)(イマココ) 二次元はジャンプとかラノベとかリジェとかエムマスとかイナイレとかAPHとか一通り通って、三次元もジャニ、LDH聞きかじりという感じです。 Q.地下ドルにハマったキッカケはなんですか? A.あんステの赤澤くんが好きだったのでよしみで小南さんのイベントに行き、そこでゲストに来ていた地下ドルとそのオタクを見て面白そうだな〜〜と思い行き始めました。 Q.よくDMして〜とおっしゃってますが本当にしても大丈夫ですか? A.いいよ〜〜ん♡むしろ本当にして欲しい時に言ってるので嬉しいです。 Q.レジェンドキチってなんですか? A.わたしも知らん。匿名掲示板でそう言われてたのが面白かったので… Q.もう安西くんはいいんですか? A.役者として一番好きだし、大人として尊敬してます。 ただもう通わなくなって2年くらい経つし最後に舞台みてから1年くらい経つのでわたしが安西くんについて言えることはないな〜〜と思って話題にしません。 どこが好きだったかとかわたしが知ってる限りの激推せエピソードとかは聞かれれば全然答えますし当時は役者としての安西くんについてだいたいのファンよりも見て聞いて知っている自信はありましたが、多分今は今好きな人の方が安西くんの良さを知ってると思うのでそれを見てる方が楽しいです。 Q.もう晃牙くんはいいんですか? A.好きです!晃牙くんとは誠実に向き合いたいので他のものに夢中になってる時に中途半端に接したくないので今は距離を置いています。 Q.なんでそんな��晒されてるんですか? A.インターネットイキリオタクだからです。 Q.何歳ですか? A.20前半です!
Q.推しにアカバレしてますか?
A.多分してません!たぶん!
(最終更新2017.10.04)
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tatcadeubiet · 6 years ago
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gw-novel · 7 years ago
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終わり
ある夏だった。Kは鬱鬱な人文大学の裏口から熱のむらがりに向かって全身でもぐりこんだ。Kは幽霊のように歩いた。熱気からは目的も意味も感じ取れなかった。
Kは空虚よりは清潔さに近い感情の中にいた。そして、その感情があまりにも初めて感じてみたものであったため、Kは内面の奥の一番低いところですら呆然としていた。寂しさとは違う。不幸とも違う。自分の血管には、世界と自分を媒介する感覚を妨げるなんらかの砂の粒たちのようなものが流れている。
Kが入った生ジュース屋のすずしい座席から竹林の緑が見えた。それを背負って、汗をかきながらJ教授がペダルを漕いでいた。前に学生たちの話を偶然耳にしたことがある。このあたりにある安いワンルームと人文大学を行き来する彼の姿が、彼を知っている生徒たちには頻繁に目撃された。思索をしているのか、生徒たちとはろくに挨拶を交わさない。誰もが変人だと噂する。けれどKの考えは異なった。
J教授は純粋だ。偽りがなく、社会性が低く、一度原則を確立すると、中道半端と適当を許さない。まるであそこで葉を揺れる竹のような存在だ。KはJ教授が消えた後にも、彼に対する心象に灯りをつけたまま消さなかった。
夏休みの間、彼とKも頻繁にぶつかった。彼は来る日も来る日も人文大学の研究室にいて、Kはほぼまいにち人文大学2階にある自分のロッカーに荷物を置��に行った。
Kは「家出」を大げさにしたくはなかったし、そうする力もなかった。だから、いちおう家にある自分の荷物を重要な順番にこのロッカーへ運ぶ計画を立てた。その作業が終わると、いつ何が起きようが、ほとんど体一つで微塵も動揺せず家出ができる。そう考えると、重い本が10冊ほど入ったスポーツバックの紐を握り持って、夏の日差しを散々浴びながらも、なぜか穏やかな気持ちになれるのだ。ただ、その気持ちも一時の慰めにしかならず、やがてKの意識の白い平面に落ちて音も出さなくなった。
Kは、その日その日の運びを終えて、ぼうっと、2階のロッカーちかくの椅子に座っていることが多かった。そしてJ教授の研究室もその近くにあった。3時間ほどじっと座っていることもあったから、椅子の前の浄水器に水を飲みに来るJ教授ともよくぶつかるようになった。
あのような未来はどうだろう。
J教授の存在が余韻になって最終になす塊とは、そのような問いだった。
未来。
いかに気力が残っていないのだとしても、真っ白な画用紙から描ける無限の可能性があった。
今のKにはそれしか持たされていなかった。
過去の意味たちはすべて、地図の上、もう接近することもできない境域のなかに閉じ込まれていた。そしてその境域であった事柄すべて、白の平面の上に思いっきり放り捨てねばならなった。Kが真夏をくぐり抜く列車に乗ってこの都市に戻ったからには、過去はないものと同然だった。
多くのものを失った。
純粋を失い、心を失った。
それを嘆かわしく思うこともできなかった。Kの体からむしり取られていった記憶は、言語を許さないものだった。生まれた途端血まみれになって死んだ赤ちゃんのような、言葉すら出てこない鮮明な過酷。そのようなものがある。
何といえばいいか。何が起きたか。
愛という単語自体が己を踏んでは過ぎ去った。今までは生暖かい愛の国で生きた。今からは全然違う。Kの世界に一度生じた欠陥が、冷えて凍えた忘却の風を絶え間なく運んだ。
Kは食べて、遊んで、頑張って、生々しく生きることすべてに「臭み」を感じていた。
忘却。
J教授はKがしている忘却の眼にふたたび戦いた。
恐怖。   
一番最初に彼女に恐怖を感じ��のはいつだったか。
彼女が自分より年の多い男とキスをする場面を見てしまった以来、それは触れるほど確実になった。
しかしもっと前、しかもKと初めて遭遇したその日から、恐怖のふたは取り除かれたのである。
Kは、美大の生徒だった。
なのに哲学科四年生の講義に登録した。J教授は講義紹介の日、彼女に登録の取り消しを勧めた。 Kは強く言い張った。
「単位が取れなくてもいいから、始めてみるも前にそんな簡単にあきらめたくはないです。」
「単位も重要だけど、単位のことだけを言っているんじゃない。哲学的訓練もしたことがない状態で、この授業が理解できるはずがないから、考え直せというのだ。それでもあきらめたくないなら、まず認識論とか、分析哲学などの先行科目を受講しなさい。」
ふと見つめたら、孤独が、そのままKの目を潰しそうに燃えていた。
どうしても受けたいというので、結局許可した。
その夜、綾影の女体につながりを求めた。いつも金曜日に訪れる河辺の無人モテルだった。行為を終えて窓を開けると、まだがさがさする初春の空気が肺腑を突いた。ふたり寄り添ってぽつぽつと会話をした。
「そのKって子、あたしの講義も受けるのよ。あたしの場合は微分方程式。それは三学年の科目よ。最初は登録システム的な何らかのミスだと思ったわ。だけど本人は強い受講意志があるといってるし、その科目を受けるために独学をしてきたって。美大でしょう? 頭の病気なのかしら、妙な違和感があったわ。とりあえず大学数学の基礎問題をメールに送るから、日曜までそれを解けてみせなさいと伝えたの。」
「お前も何もそこまでする必要あったのか。ある意味で素晴らしい挑戦精神だと感心してあげてもよかったのに。どうせ単位が取れなければ自己責任なんだし、大学はそういうのまでケアしてくれる場所じゃ無いだろう。」
J教授の眼鏡が鋭敏に震えた。小さい地方都市。知に消極的な大学だった。知を手段としてしか見つめない傾向が支配していたし、そもそも、多くの生徒たちはその手段にすらも大した興味を見せなかった。その状況で彼女みたいな挑戦者が現れたということだけで、一つの事件だともいえた。
次の授業からJ教授の感情は驚きとも切なさとも不気味とも名指せない大きなものに変わった。名指せないものに対して考えを続けた。
学期中には、もしかするとKの作品が見当たらないのではないかと思い、わざと美大の前を経由してワンルームに帰った。外観に飾っている生徒たちの作品を見ると、それがKのものかどうが識別はできないが、背筋が凍った。生徒たちが出席したり欠席したりでほぼ七人くらいで動く討論授業では、教授としての威厳を守るためにやたらと厳格だった。
普段の授業は、生徒たちが毎週決まっている主題を調べ、それを発表し、発表内容にかかわる討論を始める形で進行する。
Kの発表が終わったとたんJ教授は言った。
「たぶんKがやろうとしてるのは哲学ではなさそうだ。明確に知らない概念に対して自由に使って、今学んでる主題とは全く違う話になる変な発言をしてる。そんなのは、格好よく見せるために過ぎない。格好いいための哲学ではない。それは勉強の姿勢が確立されてない証拠ではないか。今後、注意しろ。」
Kならその言葉の意味を、J教授自分の厳格さの意味を、曲げずに理解してくれるはずだと確信した。Kは自分なりの純粋さを追求している。徐々にそのような命題が自分の中で力を得ていた。
案の定、Kはそのいらい飛躍的に成長した。最後の授業では、もっと正確で、もっと飾らぬ、芯の固い深さを得るようになった。
J教授は嬉しかった。
Kのレポートが提出されたメールアドレスで、少し会わないかと、会って作品を見せてもらえないかと、そういった一対一の私的な内容を書くことはできなかった。
その代わりにKのメールアドレスから検索をして、Kのブログに接続してみた。接続者が希にいる細やかで静かなサイトだった。
画家たちの作品にKなりの感想をつけるカテゴリの下に、日記があった。
花たちが夢のようにあらゆるところから咲いていた季節、Kと車の窓ガラスの中で熱いキスを交わしていたあの男の正体も分かった。
本の名前を入力して探してみたら、大衆から高い支持をもらっている純文学の作家だった。もともと彼は名門大学の数理統計学部を卒業したあと企業に勤めていたが、登壇してまもなく専業作家になって執筆活動を続け、今は十冊ほどの本を出していた。
Kは七年近くその男と生活をしていた。大学合格以後は彼と離れて寮に住んでいたものの、週末や休日となれば必ずあの男の都市に帰っていった。
この夏の半ばからKの文体は豊かさを失った青白いものに変わった。Kはやがて男との生活を清算し、学校からバスで四十分ほど離れた実家に居ることになった。
まともな故郷だといえるはずがなかった。
家出だ。
だからKは哲学科の友たちに借りたロッカーに荷物を運んでいるのを知った。
家出をするのなら行き先はあるのだろうか。
J教授は今度こそKに話をかけた。
「いつも見かけるけど、ここで何をしているのか。」
自分の中から引き出せる、いちばん柔らかい声だった。Kがその声に頼って、己に内面を近寄らせてほしかった。
「いや、別に、何もしていませんよ。」
Kは無表情を取り消して、健気に笑った。
芝居をしてる。俺が行くと、また空っぽになるだろう。
J教授はKがまだ自分には心を開いてないのを見た。
そのとき、J教授が一歩だけの勇気を出して、「今どこに住んでるの」と尋ねたら、Kも素直に、「行くところがないんです」と打ち明けたかもしれない。
Kはたった一人、自分に居場所を提供するかもしれない人間のしぐさを思い浮かべた。
筆を絡む白い指がしなやかに動く。大学建物の挟間にあるパラソルテーブルで彼と芸術哲学授業の発表の準備に取り組んでいた。彼は三才年下の哲学科の生徒だった。夕陽が黒い肌を持っていることに対照し、男の子は純白の肌を持っていた。夕陽が骨が透き通るほどやせていることに対照し、男の子はむっちりしていた。Kはその完璧な対照を観察しながら、この男の子と寝たいと思った。
文波は断らなかった。むしろ満面に意地悪い笑いを浮かべた。彼はその日の午前零時近くに電話をかけてきて、早くやりたいけどどうにかならないのかと強請った。
彼が親から引き継いだモテルは河辺にあった。だから窓を開けるとすぐに河のせせらぎが広がった。河は日と時間によって表情を変える。それが分かるようになるまで文波と体を混ぜた。
Kにとっては義務的で儀式的な作業だった。何の喜びも緊張感も生み出さないセックスが続いた。文波はこの行為のどこが好きで相変わらず自分を求めてくるのだろう、時々疑問を感じた。
「いつか君も本物の恋をしなくちゃあね。」
ぼんやり、巨大な水の動きを眺めながらそうつぶやいた。
「浮気している女がそういうこと言いますか?」
Kは文波を選んだ。彼がKの中の欠乏を補ってくれるからではなく、KとKの男が守り抜くべき本物の恋を補ってくれるから。Kは確認しておきかった。自分が夕陽と結ばれているのは俗の仕組みによったものではない。みっともない見た目を持った男が自分を所有することができるのは、自分がそんな男にしか選ばれない価値を持っているからではない。己は若いし、無口で憂鬱な表情をしているけれど、今最も美しい女性だ。己の青春の価値は文波の承諾、そして己の外面に対する文波の執着で証明できる。若い女に恵まれた年下の男の子も自分をきれいだと平価する。やっぱり俗の仕組みは狂ってはいなかったのだ。だとしたら、夕陽に向かって伸びていく感情はこの世の汚いものすべてを超越してる崇高なものなのだ。Kはその論証を完成させるために、青年から関心の視線を浴びるのも不可能ではないことを確かめる必要があった。
「本物の恋っていうのはよくわかりませんけど、俺は浮気に関しては大賛成です。俺もいつになっても浮気しますから。だって、楽しさは多いほうが勝ちでしょう? この女にはこの女の魅力が、あの女にはあの女の魅力があるはずですから。」
「今あたし以外に会う人あるの?」
「いません。姉さんもご存知のとおり、おれ勉強頑張ってますから。でも、将来のために今を犠牲にしているだけなんです。もしいいところに就職できたら、それからはホント美人たちと格好いい人生過ごしたいですね。」
こういう発言をされるときには必ず夕陽の真剣さが懐かしくなった。己を頑固に包んでくれる夕陽の小さい体の中に飛び込みたかった。文波にもらうのは若さだけど、夕陽にもらうのはその若いとか、女だとかという限界をはるかに超えた地点で成立する精神のアイデンティティだった。文波との交流は、己の青春をあんな男のドレン口に捨て流してるという挫折感を一時的に緩和してくれた。
その文波と、夏休みに入ってから当たり前のように連絡を交わしていなかった。
一か月半が経っただけなのに、夏花は川辺の散策路から姿を消していた。Kは建築して十五年もたつ赤い煉瓦の建物の中に入った。カウンタ代わりの小さい窓を開いて文波が白い顔を出した。古臭いにおいを我慢しながら冷房もない階段を上った。四階にある例の懐かしい部屋で過ごせるのかと思いきや、展望のない部屋に案内された。
「姉さん、世の中にただものはないですよ。金がないんでしたら一日三時間はここの掃除を助けてくださいね。」
「四千円くらいならあるわ。それで何とかならないの?」
「おお、金あったんですか? じゃあ、それもらいますね。安くしてあげたんですよ。」
文波と一緒に階段を下りていくとき、掃除機を持って階段を上がる若いベトナム人の女性とぶつかった。
文波は彼女のことを掃除担当のプオンだと紹介した。彼女は一日に三時間ここで働いてまたどこかに働きに行くらしかった。
ある日、河の向こう側の高級マンションのベランダでJ教授が見たのは、水のすぐ近くまで降りてきて一緒にビールを飲むKとプオンの姿だった。
「何を見てるの?」
後ろを向くと綾影が洗濯籠を抱いていた。
「あれうちの生徒なのかなと思って。」
「ああ、その子だね。」
「あの子、数学はついていった?」
「すごく頑張り屋さんだからね。発展という言葉を思い知らせる生徒だったわ。」
J教授は顔を赤くしながらこの最南端都市の暑さを責めた。
夕焼けが始まるごろには必ずKとプオンの影が向こう側に垂れた。彼女たちは時には水に浸かった岩の上に座っていたし、時にはモテル村から河に向けて滑り倒れる石の階段の上に座っていた。一度座ったら一二時間くらいは動かなかった。それを見るためにわざと煙草を始めた。台所では綾影が皿を洗う物音が恒例のように随伴した。
長い夢から目が覚めると、綾影のベットをこっそりと抜け出して誰もいない夜明けの人文大学まで車を走った。やるべき調査と書くべき論文が山ほどあるのに、ある女の肉体とある女の精神に振り回されている自分が情けなかった。どの女にせよ、これ以上振り回されるのは断りたかった。だからJ教授は、アメリカにある数多い大学の中の一つからでも採用通報が来ることを、今はただ待つしかないと考えた。
J教授が浄水器の前で話をかけた以来、人文大学からKの気配はなくなっていた。故郷の母が自分にガラスの花瓶を投げたからもう家出するしかないという筋の日記が書いていた以来、Kはブログも更新しなかった。Kの考えているすべてを読みたいという気持ちが頂点にまで進んだとき、無意識にKのアイディーをふたたび検索した。するとブログのほか、インスタグラムが出てきた。
Kは「Kの男」との思い出を記録するためにそのサイトを開設したらしく、当然ある時点から更新されていなかった。J教授は沸騰する感情を抑えながら説明のついたKの思い出の写真集を辿った。それをやっていると気が付かないうちに研究室が青に染まった。慌てながら携帯を出して確認すると綾影の電話は一通も入っていなかった。
二人は夜のビストロで食事をした。綾影の背中越しに都市の光を抱えて揺らぐ真っ黒い水が見えた。
「ね、旅行、行かない?」
綾影は喜ぶ顔もせず躊躇う顔もしなかった。
「なんで?」
J教授は一人でワインに酔った。
「君が好きみたいだし、君のことがもっと知りたいみたい。」
「そんな文系のセリフいう人だったっけ? それで、私のどこが好きなの?」
Kのどこが好きなのか。
彼女は俗の世界を超越している。彼女は清潔な理想の世界で生き、自分が救い上げた理想のためなら現実を構成する殆どのものをあきらめることができる。彼女は最も完璧で単純な原則の下でしか自分を生かさない。禅僧のように。それはJ教授がプラトンとフレゲの影響を受け、論理学をやりつづけてきた理由とも折り合う。
旅行は決まったものの、休暇の季節もピークを迎えていた。Kが学期のごろ、金曜日の授業を終え、裏口で待っている彼の車に飛び込み、そのままふたりで向かった自然の中のペンションたちはどれも予約が取れなかった。そしてKと彼がピクニックに出た渓谷、Kと彼が夜の釣りに行った海辺、どちらも人が混んでるはずだった。人影のない所ほどいいのは当然だった。そんな目でKのインスタグラムを見てるとたったひとつの場所が胸を刺してきた。
運転席に座っているだけでも汗をかいてしまう日、綾影を乗らせてKが書いた里の情報をもとに出発した。河の二つの淵源の中で北のほうの淵源に向かい一時間を走った。ビルがなくなり、山が無垢になり緑の稲がつづき、そして時折発見のように集落があらわれては消えた。隣にはKとは真逆な人が背もたれに体重をかけていた。
綾影は一生を自分の学問の枠組みから出ずに通すだろう。未知の領域からの誘いなど切り払いながら自分の手前だけを見て進む女。さっぱりした性格で、一見強いようでも実は脆弱な女。でも本人はその危なさを受け入れようとはしないだろう。一生を自分は自分の意志をもってゆるぎなく生きたと弁解しつづけるだろう。
日和見主義者。
真実が自分を破壊するのを根強く見守ることなんてできないお嬢様。
そんなお嬢様だから四十を超えた今でも女であり続けたいのだ。仮に老いてしまったことを鏡の前で認めることがあっても、そう簡単に生の分厚い制限―そのペルソナを脱ぎ捨ててKのように純粋になろうとは思わないはずだ。
この女を大学時代には結構好きだった。
あの若い日々に、己に初めて高潔さを教えた女性だった。極度に言葉を惜しんだし、浅さと薄さのない上品な顔をしていた。
その恋情があったから何十年もたって体を求められたとき、たやすく彼女の腕の中に吸い込まれた。
混じり合って一つになりたいという欲望が大きいほど、最後に残るのは挫折感でしかなかった。
無為なのは分かっていた。
そして、無為であったからこそ、切迫に体同士を絆したい気持ちになれたのだ。
でも間もなく、結末の時点がやってくる。
長い竹林のトンネルで思う存分みどりに化すると、終わりには太古の景色が広がった。Kの写真では遠望に映っていた三兄弟松が車のすぐ隣に現れた。三つの松と竹林の間に人気のない古宅が蹲っていた。銀色の案内板にざっと目を通すと朝鮮時代の学者の遺跡らしかった。
道は雑草だらけだった。綾影の靴が慎み深く道を選んだ。河のほうを見て綾影が��嘆した。
「すごい数の鳥。百匹以上になるかしら。」
体の大きい鳥たちが真っ白に輝きながら水辺に沿って並んでいた。
そして開発を避けた水は鳥たちの影をそのまま描くほど透明だった。
J教授は綾影に声をかけた。
「ね、あそこまで行ってみない?きっと水は冷たいはずだよ。」
「でも、河に降りていく道が草の茂みなのにどうやって……? 蛇に噛まれるかもしれないでしょう?」
「じゃ、車でクーラーでもつけて待っていて。」
J教授は一人で茂みが吐き出す熱気の中に入った。草でできている最後の部分からはしばらく泥沼が続いた。やっと乾いた石を踏み、後ろに背を向くとKのアングルで世界が見えた。
『石は永遠性の象徴だから石をもらった以上、結婚指輪なんか要らないと言ったら、彼が感動した。』
Kのアングルは、何の拠り所もない純粋そのものから始めなさいと主張しているようだった。そして案の定己の手を引き、綾影の肉体に抵抗した。
ナビゲーションが教える通りに行ったのがまずかった。来た道とは違い、高速道路を経由して帰る道は海に向かう避暑客たちのせいで渋滞した。もやもやしい気分を抑えながら先の見えない車両の行列を凝視していると、綾影が言い出した。
「なんか変。いったい誰に愛をしているの?」
綾影はJ教授の返事を待たずに、恥辱感に震えながらすすり泣きを始めた。
「来年には子供と旦那がイギリスから帰ってくるんだって? どうせ、最初から自分で終わらせようと思っていたくせに。こんな関係ってやっぱり、お互いに傷でしかないんだよ。」
太陽が地面に近づくごろ、綾影のマンションの前に車を止めた。発令さえ通告されれば、もう二度と見ることはないかもしれない人の後ろ影だった。J教授は金色の河辺に降りて、Kとプオンの姿を探したが彼女たちはどこにも座っていなかった。
Kはその時、大学山岳部の閉ざされたドアの前に座っていた。Kは一年生の時若一か月間山岳部の部員として活動した。山岳部特有のマッチョイムズが苦手で脱退したいらい、部員たちとは一度も連絡を交わしていない。もはや連絡先すらも除去されていた。だから彼らに助けを求めるためにはいつまでも部室のドアの前で待つしかなかった。大きな助けは求めない。倉庫でいくつかの使わないテントのうち一個だけを借りてもらうことはいけないだろうか。
木々の緑に囲まれて、スレートぶきの部室たちが一列に並んでいた。いつまで待っても山岳部員に出会わなければ、ドアの開いた部に入部して泊めてもらうことも可能かもしれない。でもいざとなったときに体が動かなかった。もう、新しい人の温もりによって新しい希望を持つこと自体が非常につらかった。
夜になって、Kは二十四時間灯りの消えない大型カフェに入った。普段からも不眠症がひどく、騒音の絶えないカフェではなおさらぐっすり眠れることは期待してなかった。
何に使ったのか、残りの財産は七百円程度しかなくなっていた。カフェで徹夜をするのも明日が限界というわけである。香ばしいコーヒーを一口含んではプオンに罪意識を感じた。
プオンにはコーヒーの贅沢をする金すらなかった。彼女は自分の足を壊した旦那から逃げて不法の一間部屋に自立していた。文波はこの国の人たちより安い人件費で彼女を雇った。ほかのバイト先でも状況は同じだった。ほとんどの店は彼女の足が不自由なのを問題視して雇用し難いと伝えてくる。そんな中で、言い分があっても黙々と働くしかなかった。
深淵がのぞき込まれないほど傷ついた女性がKより明るく健気に笑っていた。
「プオンはなんで笑っていられるの?」
「今はとても幸せですよ。」
いつもそんな風に、プオンは正確なことは言ってくれなかった。Kには分からなかった。幸せに至る方法ではなく、幸せとは何かが追体験できなかった。Kの中から、確かなものは一つもなかった。ただ体が生きるために頑張っていることは認知していた。Kは食べて、飲んで、歩いて、息を吸って、絵までを見る自分という塊を取り戻しつつあった。
時折圧殺されるほど不毛な気持ちがKを襲ったが、プオンの沈黙が命綱を投げてくれた。
プオンとは言語のせいでいろんな会話を交わすことはできなかった。簡単なことを話し合うためにも多くの横道が必要だった。だけどKはむしろそれに救われた。匿名の存在、生きとる器官の塊となる地点に向かって自然に流れて行けた。挙句にディテールを要さない堅固な同質感がKとプオンを貫いた。
だからプオンが彼女を探してモテるにやってきた旦那にひどく殴られながら引っ張られていくとき、Kは理性を失い、あの男を殺す覚悟で飛びついたのである。Kがこぶしで打たれて倒れている間、旦那は彼女を車に乗せてどこかに消えた。
この暴行事件が起きたのが文波のモテるの一階であった。カウンター代わりの窓は閉ざされていたが、文波はその中にいた。文波が携帯からKの鼻のほうに視線を回した。
「大丈夫ですか? ティッシュはここに。」
ティッシュを渡して文波はまた携帯を拾い上げ、ゲーム画面のほうに視線を移した。
Kは血を拭きながら自分の全身が熱く揺さぶっているのを発見した。
あの男と同じ屋根の下で眠っていた。
そう思うだけでも鳥肌が立つのに。
自分の大切な素肌をあの男に託していた記憶は全身に決してとれない汚れを刻み込んだ。
そこも去るべきだった。Kはもう一度荷物をまとめた。
初めてこうして荷物をまとめたのは青少年時代だった。
書店からであった彼の本は俗世を見下げる懐疑のにおいが濃い。
厳しい競争社会を生きる娘が、なるべくゆがんだ懐疑を抱かずに、普通に順応して育ってほしい親。そんな親に反旗を翻したいほど、Kは彼の普通ではない懐疑の産物を体化するようになった。
純愛がそこから咲いた。
愛に免疫もないまま、愛の導きに従って、Kは彼に接近した。
彼と住み始めた。
まもなくしてKは、自分に訪れたたった一つの愛が、空中ブランコのようなものだと気づいた。
彼によってKは、人間の臭みを禁じられ、食欲を禁じられ、性欲を禁じられ、美容すら禁じられた。彼はそれを浅はかだと叱った。彼はKに理想の被造物であることを望み、そうでなければならない根拠を文法の欠がない長いテクストに組み立て、いまだ鋭い主体の判断力が完全に形成されていない青少年の頭に絶え間なく吹き込んだ。
底知れぬ優越意識にKは無理やり引っ張られて行った。
そのような捕縄を切らないと、対等になることなんて出来なかった。
わざと地方都市の大学を選んだ。そして、できる限り彼がもっとも知ったふりのできない分野に進学した。男の禁忌が破られる最初の瞬間だった。男ががっかりするほど、男の欲望で作られたKの骨も傷んだ。Kの頭の半分は、自分はもう価値のない人間だから死ぬべきだという悲しみで満たされた。でも残りの半分はそうではなかった。
『これを革命につながらせなければいけない。』
幸い、大学での経験はKの批判能力を柔軟にしてくれた。男の支配の陰で生きていくべきとは思わなくなった。
でも簡単に離れることができなかったのは、彼があまりにも多くの種を己の精神に移植したからである。
いくら他人でもそれほど己に近づくことはできない。もう彼はKにとって他人だとは思えなかった。
逃れようともがくほど、潔白な愛だけが戻ってきた。
だけどやはりそれを愛と呼んではいけなかった。
結婚宣告のために、夕陽の実家を尋ねた日、緊張してお母様と一言もまともに交わさずに帰る道。夕陽がKに言った。
「お前は俺の恥だ。」
二十三歳だったKは麗らかなワンピースを着て、清楚なストレートをしていた。
屈辱のない年。
あるがままの欲のせいで一番幸せである年。
頭の完璧な理想の中に閉じこもり、世界と仲良しであったことがほぼなかった夕陽は、そんなKに羞恥を感じ、Kと付き合っている自分に羞恥を感じた。
夕陽を愛している女である前に、一人の人間としてのKのプライドはその時点で破産した。
Kは文波と浮気をすることになった。
夕陽が呪っていた物質の混濁な世界に本物の根を下ろし、勝利の気分で夕陽の利己的な要求を聞いてあげた。
Kは夕陽の服を洗濯し、アイロンかけ、掃除し、ごみ袋を捨て、湿疹になるめで夕陽の台所で食事の準備をさせられても何の文句もなく、夜には「愛してる」と夕陽の耳にささやいてきた。
「愛してる。」
一か月も持たず、夕陽はこう答えた。
「お前とは食事��セックスしかできない。しかし俺はそれらをちっとも重要に考えてない。俺が重要に思うのは精神的価値だけだ。お前は、俺とこんな生活をやり続けたいのか? いつかこりごりになって、俺から離れていくのではないのか? 愛してるなんて、お前は本当に無責任なことをいう。いま俺たちの関係の中のどこで本物の愛を見つけ出せばいいのか。お前のやさしさは俺の核心にまで浸透することがない。いまの俺は数年前よりももっと寂しい。本当に俺が愛されているのならば、こんなに寂しくてもいいのか。」
Kが築いてきたすべてが霞になった。
Kが築こうとしたすべてが白い平面になった。
夕陽の頭の中を走る��車で生きることは不可能だった。けれどその汽車から降りたことで己が壊されたくはなかったため、曖昧に残った最後のものに「私を壊さないで」と、訴えていただけだ。
夕陽は自分という名の汽車を降りたものは容赦なく壊してしまう男だ。そんなものは少しも大切じゃない。己がどんな努力をしたって、愛は完成されない。
そこまでいけば、夕陽を去ることは簡単だったものの、以後のKの居場所は段々と狭くなってゆくありさまだ。
金だけがないのではない。心から求める美しさがない。
『だとしても、これからは自由に生きないと。』
誰の言いなりにもならずに、誰とも無関係に、自分で選んだ人生を、自分で責任とっていかないと。
きっとそのために、たくさんのものを諦めなければ駄目だったのだし、これからも諦め続けなければ駄目なのだろう。
胸が引き裂かれそうな喪失感がKの白い心に鮮やかな色彩の線を描いた。描くことへの感覚が蘇った。
もう、一週間が経てば夏休みが終わる。その前にどうしてでも自分の絵に出合いたかった。
山岳部のドアに連絡をくれと書いた紙を貼ってから、芸術大学に向かった。子供の時から、才能があるという言葉は聞いてきた。夕陽さえ登場してこなかったら、自分の人生は哲学とか数学とは無縁なものになれたのかもしれない。本当にやりたいことは自分が一番才能ある芸術なのかもしれない。
美大に入り自分のロッカーから筆と染料とオイルバーを引き出した。もっと中には、学期中に作って置きそのまま使わなかったカンバスがあった。実習室なら夏休みの間にも開いていた。そこで描けばいいはずだった。
イーゼルの前で数時間座っていても、何も生まれてこない。
突然携帯のベールが鳴って、下意識から意識の地平に上がってきた。出てみたら」山岳部員だった。詳しい事情は説明できなかったけれど、テントと寝袋は借りそうであった。
七百円で一週間を持つために、一日の食費は百円にすると決めた。
それでコンビニの電子レンジにいれて即席に食べれるお米を一つ買った。おかずは美大と人文大の挟間にあるカフェテリアで、誰でも接近できる場所に放置されている沢庵とキムチにしよう。
学期が始まると、一年分を支払い終えた寮で今年の十一月までは食べて行ける。一日一食はそれまでの辛抱だ。
そして学期が始まると勉強よりはバイトを探して稼ぐ必要があるのかもしれない。漠然だったばかりの金に対する切実さが耐えられない涙と化し零れ落ちた。改めて、あの男にささげた己の青春が己の手には何も残さなかった不毛なものであったことを知る。
もっと己のために生きたならこんなことにはならなかった。
でもまだ手掛けてる絵がいい絵になれる可能性は消えてない。絵に対する僅かな希望を抱いて、山岳部のそばに設置したテントの中で目を閉じた。
とこでも寝れる体質じゃなかった。薄い眠りの幕を引き裂いて太陽と向き合ったら、莫大な疲労が全身をくるんでいた。
うがいもできないままイーゼルの前に座った。やっぱり、数時間が経っても線一つ描く自信がなかった。
末梢神経で蠢く睡眠欲と食欲を倒し得る精神的能力の欠如が、絵に対する自信の欠如にもつなかった。
もう、駄目なんじゃないか。
必死に描きたいことを考えるほど何にも集中することができなくなった。
痛い心で窓辺に立つと人文大学が見えた。あの建物の二回でJ教授は研究にふけているに違いない。
自分の頭で考えることの大事さをKの頭ではなく骨に響かせたのはJ教授だった。
夕陽は嘲笑で物事を疑い、J教授は臆病なつつましさで物事を疑う。J教授は自分は無知だと言い続ける。彼は生徒が無知を細かしたときに叱る。彼は論証の純度をそれ以上あげられぬことにいつも落ち込みながら野生の言語と戦っていく。難しい、優越だという偽物の装飾を捨てた本当の哲学者だ。本当に頭のいい人はあのような堅実な謙虚さを持っている。
KはJ教授がいるから、自分も何とかしていけるのではないかと安心した。人生の純度を上げる過程は複雑ではない。まだ白いとはいえ、己の内面は本有のものである。周りが静まり返ったところで、己の直観をひたすら磨いていけばいいだけの話だ。J教授を見て、J教授の歩き方を、熟達するまで自分も真似ればいい。
カフェテリアの夕食タイムまで木炭でドローイングを終えた。それぞれの形をしたたくさんの瞳に囲まれている人間たちの体には目がない。そういう絵にする。
次の日。
割れそうな頭で教養館のソファーで休んでいたら哲学科の事務室から連絡がきた。
「J教授が急にうちの大学をやめられまして…… えっとだから… ほかの大学に行くことになりまして、学生さんのJ教授の講義に対する受講登録を変形してもらいたいんですが。」
体にあるすべての幹と枝が凍りつけた。
J教授が捨てたごみ箱に自分も入ってる感覚がたまりえなかった。
このままじゃもっともっと立ち直れない。
震える拳でJ教授の研究室のドアをノックした。
誰もいないかと思うと涙があふれた。そのとき、目の前のドアが開け広げられた。
立っていた人物は泣いてるKだった。取りあえず荷物を片付けている研究室に入らせた。
「元気にしていたか?」
「先生、行かないでください。」
「その根拠は?」
「先生が私を変えさせてくれると思うから。」
「俺にその義務があるのか?」
「私はいったいどうすればいいんですか?」
J教授は考えた。自分はこの女が誰なのか知っている。そして自分はこの女を愛している。でも、それだけでは物足りない。
『俺のような種族に愛は毒だぞ。』
Kを見つめ続けていると、ひどく下りかかった隈に目が行った。いつもこぎれいな格好だったが、その日は妙に薄汚かった。放っておくわけにはいかなかった。
「いま、どこに住んでるのか。」
「……露宿を。」
「疲れて見えるな。」
「はあ……」
「では露宿をしながら何をやっているのか。」
「絵を描いてます。学期が始まる前までは完成させようと思ってます。」
「ご飯は?」
Kは苦笑いして見せた。
「絵を持って、うちで泊まることにしなさい。どうせ俺は今日荷物の整理が終わるなりこの都市を去る予定だし、家賃は今年の九月まで払わなければいけないんだ。つまり今日から俺の家には誰も住まないというわけだ。鍵をあげるから、先に行って休んでいなさい。そこに置いてあるものは、本以外はほとんど捨てていくつもりだから、勝手に使ってもいい。」
そして彼はKの携帯に家の位置を入力して渡した。
「先生の携帯ナンバーは?」
「それを教えるわけにはいかない。」
J教授が今日まで研究室を片付けなきゃならないというので、Kはろくに挨拶もできず研究室から離れた。
パッキングを済ませたJ教授は待っていた郵便局の訪問宅配員と一緒に荷物を運んだ。大学院生を使わず、一人で掃除を成し遂げた。建物を出たら空は暗い。もう、この大学にはさらばを告げる。
帰り道にスーパーにより、Kのための食材を買った。帰った家にKがいると思うと世界が感情に満ちた。
けれど、去らねばならない。己には野望がある。誰にも、何にも邪魔されず学問だけを愛し続け、新論理主義を賦活させ、スターの哲学者になる。誰にも己のやることの意味が理解できないこんな地方では夢は遠ざかる一方だ。己の作業に対して、それなりの待遇をしてくれるアメリカに行くのは当然な決断だ。
残念ながら、己はKのように人生にまで純粋でいるつもりはない。学問の純粋と人生の純粋は違うものだ。人生の純粋は時々学問の純粋を制限する。人生の純粋に徹底していたら今の位置には上がってこられなかったはずだ。Kを尊敬しているが、Kのように生きる勇気はない。代わりに、己は学問の理想のためならなんだってできる。あえて選択しろというなら、己は人工の真実を所有し、それの代弁者になりたい。それが己の隠された野望だ。それ以外は漂白していかねばならないと思ってる。
こんな酩酊の熱気も今日で最後だ。
玄関に入るとたん狭い部屋の隅々までが見えてくる。
暖かいスタンドライトの色が女の脱いだ肩を潤沢に染めている。傍らにはイーゼルに乗せられたカンバスがあった。台所にビニル袋を置いて、気づかれず絵に近寄った。孤独な絵。
やはりKは自分が十分陥りえた立派な落とし穴だった。
おとなしく寝ていると思っていたKが体を起こした。
まぶしいほど完璧な屈曲だった。
喝求の夜が始まった。だが、そのような夜は始まりとともに終わっていることをKは知っていた。
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kurihara-yumeko · 7 years ago
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【小説】龍とトラガス (2013)
「俺さ、卯年の大晦日から、辰年の元旦にかけて生まれたらしいんだよね。だから、龍と兎で、龍兎(りゅうと)って名前にしたんだって」
 大きな透明のケースの中に積み上げられた、ウサギのぬいぐるみの山。アタシはそれを崩すべく、アームの操作に集中していた。横に立ってひとりで話していた男は、そう言いながら嵌めていた革の手袋を外し始める。
 UFOキャッチャーのアームは、機械が古いのか調子が悪いのか、今にも止まりそうなほど、キリキリと音を立てて動く。ボタンから手を離すと、ガクガクと震えながらアームが開いた。その先端がぶつかった拍子に、山の中腹あたりにあった、ピンク色し���ウサギのぬいぐるみが、ぼとりと落ちる。その一瞬の落下を見て、飛び降り自殺をしたら、こういう風に落ちるのかなと連想した。
 アタシはそこで、男の両手に目を移す。男は手袋を外し終えた両手を、揃えて突き出していた。
 パッと目を引く、黒い影が二つ。
 男の右手の甲にはウサギの、左手の甲には龍の、黒一色のタトゥーが施してあった。影絵のようなデザインのウサギと龍はそれぞれ向き合っていて、右と左で一対なのだという印象を与える。
 タトゥーを見つめたまま、何も言わないでいると、男は笑いながら口を開く。まるで鼻で笑ったような笑い方だったのが、やけに耳に残った。
「自分の名前にちなんで、スミ入れたんだ。兎と、龍」
 視界の隅で、開いたアームが再び音を立てて閉じ始めていた。アームが当たった先にいたぬいぐるみたちが、取り出し口へ向かってぼとぼとと落下していく。
 アタシは黙ったまま、男の左手に手を伸ばした。
 龍のタトゥーの上には、縦横無尽に切り傷が走っていた。ついさっき負ったばかりなのか、まだ血が滲んでいるような赤々とした傷もあれば、古い傷なのか、痕となって残っている傷まで、数えきれないほどの赤い線。
 アタシの手が触れるよりも早く、男はすぐに左手を引っ込める。分厚い革の手袋をさっさと嵌め、留め具をぱちんと鳴らすと、何食わぬ顔でアタシを見下ろした。
「で?」
 男は小さなピアスが三つ連なっている左眉だけを器用に上げて、表情を歪ませてアタシを見ていた。
 唇の両端から牙のように覗く、尖ったキャッチの口ピアスが二つ、きらりと光る。その口の奥、舌の上にももうひとつ、ピアスがあいているのが前歯の隙間から見えた。右の小鼻にも、ピアスがひとつあいている。被っている帽子は耳まで覆うようなヒダがついているから、確認はできないけれど、この男、きっと両耳にもたくさんのピアスをぶら下げているんだろうと思った。
 男は手袋を嵌めた左手を、UFOキャッチャーの台の上に置き、その長身をかがめるようにしてアタシと目線を合わせ、顔を近付けてきた。体重をかけているのか、ぎしり、と台が軋んだ音を立てる。まだ手袋を嵌めないでいた右手で、アタシの顎を持ち上げる。アタシの全身を舐め回すように見た後、男は言う。
「それで、あんた、いくら?」
 UFOキャッチャーの景品受け取り口には、四匹のウサギが死んだように動かないで転がっていた。アタシの視界の隅には、男の手の甲で黒いウサギが歪んだ姿でいるのが見える。
 アタシ、行くとこ無いんだよね。
 そこで初めて口を開くと、男は蔑むような目でアタシを見つめたまま、小さく何度も頷いた。
 上等だ、うちに来いよ。
 男が低い声で、唸るようにそう言う。
 ――雪も降らなかったクリスマスの深夜。ピアスだらけの顔面と、ウサギと龍のタトゥーを持つ男、龍兎にアタシは出会った。
 風俗店がずらりと並ぶネオン街の片隅。
 安アパートの一室が、龍兎とアタシの住み家。
 目の前に建つ廃ビルに日射しを遮られ、昼間でも薄暗いこの部屋は、アタシたちにお似合いに思えた。
 アタシは分厚いカーテンの隙間から、外の様子を窺う。朝六時のネオン街は、白けていく空に反比例するように夜の華やかさを失い、ここから見下ろせる路地には、疲れた顔のホストや酒で顔がむくんだキャバ嬢が気怠そうに行き交っていた。
 ベッドを振り返ると、龍兎は肩まですっぽり毛布にくるまって、静かに寝息を立てている。
 そっとその毛布をまくって龍兎の左手を確認した。黒い龍の上には、真新しい赤い線が三本増えている。龍兎は毎日、新しい傷を左手の甲、龍のタトゥーの上に作る。テーブルの上にはカッターが置いてあった。そっと毛布を戻す。
 床に落ちていた服を拾いながら、龍兎がゴミ箱めがけて投げたくせに入らず落下したままだった、使用済みの避妊具を捨てる。その時、真新しい薬のゴミが捨ててあるのを見つけた。
 毎晩自傷行為して、毎晩薬を飲んで、毎晩アタシを抱く。龍兎はそういう奴だった。そういうアタシは、別段龍兎の自傷を止めるでもなく、なんの薬なのか尋ねることもなく、抵抗ひとつせず大人しく従う。
 いつまでも裸でいるのはさすがに寒くて、パンツを履いてブラのホックを留めていると、首についている南京錠が小さな音を立てた。
 アタシの首にはスタッズがいくつもついた首輪が嵌まっていて、自分では外せないように小さな南京錠が掛かっている。南京錠の鍵は龍兎が持っていると思うけれど、もしかしたらとっくに捨てたかもしれない。
 アタシは龍兎に飼われている。
 そして龍兎は、アタシを自分の好みの女にしていく。
 出会ったその日にこの部屋に連れて来られ、最初に着ていたワンピースとコートを捨てられた。代わりに龍兎は自分のクローゼットの中から、アタシが着られそうな服をいくつか引っ張り出して、首輪と南京錠を嵌めさせた。
 龍兎はアタシにピアスもあけさせた。今日もバイトが終わったら、ピアス屋へ行くと言っていたから、きっとまたアタシの身体には穴が増えるんだろう。
 彼の服を着て、彼と同じ場所にピアスをあけて、アタシと龍兎はまるで仲の良い恋人同士みたい。アタシをそんな風にして、どうするつもりなのだろう。
 でも、そんなの全部、どうでもいい。
 アタシは服を着て、テーブルの上に出しっ放しだったピルケースを手に取る。今日の分のピルを一粒取り出すと、コップに半分ほど残っていたぬるい水と一緒に飲み込んだ。ごくり、とわざと音を立てて飲み込むと、アタシの喉は首輪が邪魔だと言わんばかりに、小さく震えた。
 龍兎は朝の九時から夕方まで、ほぼ毎日、パンク系のヴィンテージものばかりを扱う服屋でバイトしている。バイト帰りにアタシをピアス屋に連れて行きたい時は、バイト先まで迎えに来るよう言ってから出掛けていく。
 服屋は裏道に一本入ったところにあって、客はコアな常連客ばかり、店が混むといったことは滅多に無い。店員は龍兎だけで、店長はゴツいシルバーアクセばかりを身に着けた、ホスト風の若い男。
 アタシが言われた時間の五分前に行くと、店内には店長の姿しかなかった。店の中はいつも潮風を連想させる香水の匂いがして、この店で買った服にも、この店で働く龍兎の身体にも、その匂いがこびりついていた。
「ああ、いらっしゃい」
 店長がアタシに気付いてそう声をかける。もう何度もこの店を訪れているので、店長とも顔見知りだ。
「龍兎なら裏で今ちょっと仕事してるから、もう少し待っててくれる?」
 アタシが黙って頷くと、悪いね、と店長は言う。
 店長はいつも、いやらしい目でアタシを見る。アタシが以前売春していたことを龍兎が話したのだろう。龍兎がいない時、いくらだったらヤらせてくれんの? と訊かれたことだってある。以前ならば、なんのためらいも無く関係を持っただろう、それがお金になるのであれば。でも今のアタシには、そんな���力も活力も無い。
 どうでもいい、と思ってしまう。自分の身体も、自分の未来も、自分の生死さえも、まるでどうでもいい。なんとも思わない、なんとも感じない。
 最近のアタシの生きる世界は色彩を失い、まるで現実味が無い。長い夢を見ているような、そんな気分の毎日だ。龍兎に出会う前のアタシは、一体どうやって生きていたんだろう。何に希望を見出し、何を求めて生きていたんだろう。今では昨日のことまでもぼんやりとしか思い出せない。いつからこうなったのかもよくわからない。
 ただひとつ確かなことは、アタシはもう疲れてしまったということだけ。生きることに疲れ切ってしまった、そんな感じがする。
 龍兎はまだ出て来ない。いつの間にか店長はすぐ側にまで来ていて、アタシの胸を触ろうとしていた。
 今日はTシャツの上から、ライダースジャケットを着ている。このライダースだけは、龍兎のサイズではどれも大きすぎて、この店で新しく買ったものだ。店長はそのライダースのジッパーを慎重に下げる。それから左手をアタシの腰に回して動けないようにし、右手で左胸を服の上から撫で回し始めた。
 腰細い割に、胸デカいんだな。アタシの耳元で低く囁くように店長が言う。その吐息は思っていた以上に熱く、息遣いは興奮しているようだった。店長から、この店に漂う潮風の匂いがする。
 アタシはぴくりとも動かず、店長のされるがままになっていた。今の自分の状況を冷静に見つめている一方で、なんの感情も湧いてこなかった。もっと触って欲しいという欲情も、やめてくれという拒絶も、今のアタシには抱けない。アタシには何も無い。生きているのに死んでいるような、きっとそんな虚ろな顔を、しているんじゃないだろうか。
 店長の右手がTシャツの胸元から侵入してこようというところで、龍兎が店の奥に通じるドアから出て来た。咄嗟に店長はアタシから手を引く。お疲れ様でしたと言う何も知らない龍兎に、何事も無かったかのような平気な顔で、お疲れ様、と店長は言った。緊張も焦りもその表情には欠片も無い。余裕すら感じられる口元だった。たいしたものだと内心思いながら、龍兎に連れられて店を後にした。
 龍兎は長身で細身、身体はさほど筋肉質でなく、どこか中性的な印象を与える外見。
 黒髪は少し伸びていて、その襟足だけが脱色して白い。鼻筋はあまり通ってはいないけれど、目は切れ長の一重で、いつも冷めたような顔をしている。両耳と顔はピアスだらけで、すれ違う通行人たちは、思わず凝視するか、一瞬で目を逸らすかのどちらか。でもピアスとは違って、両手のタトゥーだけは、外出時には手袋を着用して、ひたすら隠していた。
 店の外に出ると外気は驚くほど冷えていて、アタシはライダースのジッパーを上げた。両手をポケットに入れ、首をすくめるようにして少し後ろを歩いていると、ふとこちらを振り返った龍兎が、さみぃな、と言った。
 アタシがそれに小さく頷くと、龍兎はウサギがいる方の手の手袋を外し、アタシの左ポケットに突っ込んできて、そのままアタシの手を握り締めた。龍兎の手は特別温かいという訳ではなかったけれど、黙ってそのままでいた。
 あのクリスマスの晩、龍兎が声をかけてきた時、アタシはすぐにナンパだとわかった。一夜の宿のつもりで誘いに乗った。それからもう一ヶ月が経とうとしている。寝て金を貰ったのは最初の晩だけ。それでも龍兎は毎晩アタシを抱くし、アタシも未だに龍兎の部屋で暮らしている。
 アタシたちは一体、なんなのだろう。龍兎は店長に、アタシのことを「俺の女」と紹介していた。アタシは、龍兎の恋人なのだろうか。龍兎はどういうつもりで、アタシを側に置いているんだろう。
 訊こうと思えばいつでも訊けるけれど、尋ねる気にはならなかった。今の生活にこれといって不満も無いし、訊いたところで何かが変わる訳でもない。
 アタシと龍兎はお互いの話をほとんどしない。龍兎の名字も年齢も知らないし、龍兎もアタシが亜野(あや)という名前なのは知っているけれど、小嶋という名字なのは知らないはずだ。
 アタシが龍兎の側にいることに、大きな理由は無い。龍兎がそうさせているから。ただそれだけ。
 ピアス屋は、龍兎のバイト先よりもさらに裏通りにある。ゆるやかな下り坂の途中にあるテナントビルの五階、それがピアス屋「蛇腹」の在り処だ。
 薄暗い店内。壁には「なんでそんなことしたの」と訊きたくなるようなピアスをした人々の写真が飾られている。入ってすぐのところに小さなカウンターがぽつんと置かれていて、その奥に施術室があるのだけど、今は薄汚れたカーテンでその入り口は塞がれている。カーテンには「空室」と書かれたプレートが引っ掛かっていた。
「いらっしゃい」
 カウンターの下の方で何やら作業していた男が、龍兎とアタシが店に入って来た物音を聞きつけて、カウンターの向こうに頭を覗かせた。
 頭はつるつるのスキンヘッド、その頭頂部から額、鼻筋にかけて大蛇が渦巻いているデザインのタトゥー。龍兎みたいに耳も顔も���アスだらけ。この男は、この店の店主だ。
 龍兎は彼のことを「蛇腹さん」と呼んで慕っている。古くからの知り合いらしく、龍兎のピアスをあけたのも、彼なのだと聞いた。詳しい年齢は知らないが、彼はその大蛇のタトゥーと大量のピアスという外見のせいでほとんど外出はせず、男のくせに透き通るような白い肌をしている。
 蛇腹さんはこの日の空模様と同じ、灰色のパーカーを着ていて、フードを深く被っていた。彼の派手なタトゥーは、鼻筋よりやや左側に描かれた、蛇の尾の部分しか露出していない。
「待ってたよ。アヤちゃんに新しいピアスあけるんだろ?」
 ハードな見た目に似つかわしくなく、ほんの僅かな空気の振動にすらかき消されそうなほど、淡々とした静かな声。
「今日はどこにあけようか?」
 蛇腹さんがそう言いながらアタシを見た。その目線が髪に隠れている両耳を見ているのだと気付いて、アタシは耳が見えるようにサイドの髪を両耳にかけた。
 アタシは右耳に三つ、左耳に二つピアスをあけていて、右はヘリックス二つにイヤーロブひとつ、左はイヤーロブ二つだ。ヘリックスは耳輪の上部のことで、イヤーロブっていうのは耳たぶのこと。ピアスをあけている人を見たことはあるけれど、自分の身体にそんな名前がついているなんて、ピアスをあけるまで知らなかった。
 アタシの身体はアタシのものなのに、アタシはそこに名付けられている名称を知らない。アタシの身体にはあといくつ、知らない名前がついているんだろう。
 アタシのピアスたちはどれも、龍兎が自分のピアスと同じ場所にあけるように蛇腹さんに頼んだものであり、どうやら龍兎は、自分とアタシの耳のピアスの位置と数がそっくりお揃いになるようにしたいらしい。お揃いになるためにはあと、右のイヤーロブに二つ、左はインダストリアルとコンクを、それぞれひとつずつあけなくてはいけない。
 耳のピアスが完成したら、龍兎は顔のピアスまで真似させるだろうか。眉ピが左に三つ、鼻ピが右にひとつ、口ピは口の左右にひとつずつ、舌ピがひとつ……。それが終わったら、どうするだろうか。アタシの金髪は龍兎と同じ黒髪にされるかもしれないなと思った。
 そして龍兎は、きっとアタシの身体にタトゥーを入れることを要求するだろう。ウサギと龍。その二つのタトゥーを。そしてアタシはきっと、何一つ抵抗せず、大人しく従うのだろう。そんな気がした。
「こないだは左のロブにあけたんだっけ。じゃあ今日は右にしようか。リュウと同じように、ロブでいいの?」
 蛇腹さんは龍兎に向かってそう言った。蛇腹さんはピアスについて、アタシには一切意見を求めない。龍兎も同意を求めない。アタシも何も言わない。
 右の耳にあけるとしたら、イヤーロブの残り二つのどちらかだ。左耳じゃなくて良かった、と思う自分がいることに気がついた。インダストリアルもコンクも、なんだか面倒くさそうなピアスだから。
「……いや、ロブは後でいいや。今日はこいつに、トラガスあけてやって」
 トラガス、という単語に一瞬アタシは戸惑った。咄嗟に振り返り、カウンターの上に常備してある耳ピアスの部位とその名称一覧表に目をやった。案の定、トラガスは龍兎の耳にはあいていない部位だった。「耳の穴の、顔寄りの方」、としかアタシには表現できない、ちょっとだけ指でつまめる軟骨部分が、トラガスだ。
「トラガス?」
 蛇腹さんも怪訝そうな表情をしていた。
「トラガス、お前あいてないだろ」
 俺もそのうちあけるんだよ、と龍兎が言った。
「俺の真似ばっかじゃつまんねぇじゃん。たまには俺がこいつの真似するわ」
「真似するためにやらせるんじゃ、意味無いだろ」
 龍兎の言葉に蛇腹さんはうっすら笑いながらそう言って、じゃあトラガスね、とやっとアタシの方を見た。アタシは頷きもせず拒否もせず、ただ黙って立っていた。
 蛇腹さんはカウンターの中から手招きして、施術室に通じるカーテンを開けた。アタシがいつも通りカーテンの向こう、施術室へ足を踏み入れようとしたところで、あれ、と蛇腹さんが声を上げる。
「リュウ、お前見に来ないの?」
 アタシがピアスをあけてもらう時、いつも後ろに龍兎がいて、施術の様子を見ている。位置はどうしろだとか、穴の大きさはいくつにしろだとか、さんざん口うるさく指示して、蛇腹さんはいつもそれを適当にあしらって苦笑していた。てっきり今日もいつものようについて来るだろうと思っていたけれど、龍兎はカウンターのところでガラスケースに並んでいるピアスの数々を眺めていた。
「あー、うん。俺とおんなじとこにあける訳でもないし。よろしく頼むよ、蛇腹さん」
 龍兎はふと顔を上げるとアタシの顔を見て、気の緩んだ表情をした。いつもぶっきらぼうで無愛想な龍兎のそんな顔を見て、ああこれがこの人の笑顔なんだと、アタシは少し遅れて気がついた。微笑んだのだ。龍兎が笑ったところなんて、今まで見たことがあっただろうか。でもそういえば、アタシが新しいピアスをあける時、いつも嬉しそうな顔をしていたような気がする。あれは、笑っていたのだろうか。
「あっそ。じゃあアヤちゃん、こっちおいで」
 アタシが施術室の中に入ると、蛇腹さんはプレートをひっくり返して「施術中」にするとカーテンを閉めた。蛇腹さんが、そこ座って、と台の側にある椅子を目で示したので、アタシは黙ってその椅子に座る。すると、蛇腹さんは作業の手を止めて、隣までやって来る��、アタシを上から下までじろりと見た。
 龍兎のバイト先の店長がするような、いやらしい目つきではない。無機質な、感情を感じさせない目だった。何故かアタシは、以前偶然立ち寄ったペットショップで見た、赤い目を持つ白い蛇のことを思い出した。
 蛇腹さんはアタシの耳元で囁くように言う。
「ずっと気になってたんだけど、アヤちゃんってリュウとどういう関係? カノジョ?」
 アタシを見つめる蛇腹さんの目は、飲み込まれそうなほど真っ黒だった。カラコンだ。すぐにそう気がついた。蛇腹さんは、黒目の大きなカラーコンタクトを両目に入れている。だから、爬虫類みたいな印象を与えるんだ。
「あいつとヤッてんの?」
 瞳に圧倒されて、答えるのを忘れて黙っていると、さらに声を潜めてそう言ってきた。アタシは黙っていた。否定も肯定もいらないだろうと思った。
 蛇腹さんは手を伸ばす。アタシの髪を耳にかけ、右耳に触れる。トラガスという、そういう名前がついていることを初めて知った、アタシの一部。蛇腹さんは「ここにあけるから」と言って、強くつねった。その痛みにアタシは僅かに顔をしかめる。
 蛇腹さんは一度アタシに背を向け、台の上に置かれたピアスをあけるための道具をいじり始めた。
「人によってはイヤホンが耳に入りづらいとか、耳掃除が面倒になったりするけど、大丈夫? あと最初のうちは膿が出たり腫れたりするから、何かあったらすぐ連絡して。俺の番号は、前に教えたよね」
 16Gと14Gならどっちがいい? と付け加えるように訊いてきたので、アタシは「16」とだけ答えた。わかった、と低く蛇腹さんは返事をして、棚の引き出しを開ける。ピアスはサイズの書かれたビニール袋に個別に入れて保管してあって、蛇腹さんはたくさんのピアスの中から16Gのものを探していた。
「あいつ、HⅠⅤだよ」
 唐突に、蛇腹さんが言った。一瞬、何を言われたのかわからなくて、蛇腹さんを黙って見つめた。蛇腹さんはそんなアタシの視線に気付いたのか、ピアスを探す手を止めてこちらを見た。頭に描かれたタトゥーの蛇の目と、アタシの目が合う。
 蛇腹さんの口元は微かに笑っていた。まるで卑しいものでも見るかのように、アタシのことを笑っていた。
「知らなかった? リュウは、HⅠⅤだよ。HⅠⅤに、感染してる」
 蛇腹さんはそう言うとピアスを探す作業に戻る。あった、と小さくつぶやくように言って袋をひとつ手に取り、これからアタシの身体に食い込んでいくであろう、小さなピアスを取り出した。
 あのピアスは、きっとアタシに痛みを与える。
 そっと自身のトラガスに触れてみた。ここに穴があく。龍兎には無い、穴があく。アタシは一体、どこに向かおうとしているのだろう。アタシにはわからない。きっと龍兎にも、蛇腹さんにもわからないだろう。
 じゃあ始めるよ、と準備ができたのか、蛇腹さんはそう言った。アタシは目を閉じた。ピアスをあけられている間は、目を閉じる。いつの間にかそういう習慣になった。
 蛇腹さんの手が耳に触れる。突き刺さる痛みと同時に、ごりごりという音が、頭の中に響いた。
 アタシがどこへ向かっているのか、誰にもそんなことはわからないし、そんなことがわかったところで、何の意味も無い。
 その夜、龍兎はいつになく上機嫌で、スーパーで買ってきた、割引シールが何枚も貼られた売れ残りの惣菜を頬張りながら、アタシのトラガスに触れ、「どう?」と何度も訊いてきた。「痛かった」ぐらいしか感想が持てないアタシは、そう訊かれる度にその通り答えた。あんまりにもしつこく訊いてきて正直うざったかったけれど、日頃無表情で無愛想な龍兎が穏やかそうな顔をしているので、そこまで悪い気はしなかった。
 シャワーを浴びて、いつも通り龍兎は薬を何錠か飲んでからアタシを抱いた。いつも通りの、前戯はほとんど無い、性欲をただ処理するかのような性交。言葉は何も発さず、短い吐息を鋭く吐き出して龍兎は果てた。もう事が済めばアタシなんか必要無いんだとでも言うように、すぐさま男性器を抜き、精液の溜まった避妊具を外してその口を結ぶとゴミ箱へ放り投げる。ティッシュ数枚で性器を拭うとそれも丸めてゴミ箱へ投げた。
 龍兎はいつも通り枕元のカッターを引き寄せて、左手の甲、その龍のタトゥーの上に切り傷をひとつ新しく作ると、そのままカッターを投げ出し、アタシに背を向けた。ずっと無言のまま、毛布にすっぽりとくるまって、おやすみも言わずに眠ってしまう。いつもと同じだ。
 龍兎が始めて龍兎が終わらせた一方的な行為に、アタシはまだ呼吸を上手く落ち着けることもできずに、同じベッドの上、しばらく天井を仰いでいた。
 龍兎の寝息が聞こえ始めるのを待ってから、アタシはそっと起き上がって、枕元にあるティッシュの箱へ手を伸ばした。股間を拭い、ゴミ箱へ捨てる。
 自分の鞄から、財布を取り出す。レシートが何枚も入っているその中から、見たことのある大蛇がデザインされた名刺を見つけるのに、たいして時間はかからなかった。
「これはお得意様にだけ渡してる、特別な名刺だから」
 出会ったその日、この名刺を渡してきた時に言った、あの男の口元を歪めただけの笑みを思い出す。文字が何も印刷されていないその名刺には、携帯電話の番号がペンで走り書きしてあった。
 アタシは龍兎が脱がせた服を、順に拾い上げて身に着ける。眠りに就いたばかりの龍兎を起こさないように気をつけた。物音をできる限り殺してブーツを履いて、ライダースを羽織る。スキニーパンツには携帯と名刺だけを入れた。行かなくちゃいけない。何かがアタシにそう急かす。
 化粧もせず、髪もとかさずに、手ぶらのまま龍兎の部屋を出た。外の空気は冷え切っていて、その寒さに首をすくめた時、あけたばかりのトラガスが、ずきん、と痛んだ。アタシはまるで逃げ出すかのように早足で歩き出しながら、名刺に書かれた数字を携帯に打ち込み、迷わず「通話」ボタンを押した。
 ピアス屋「蛇腹」まで駆けて行くと、もうとっくに閉店時間は過ぎているはずなのに、店の扉の鍵は掛かっておらず、カウンターの一番奥の照明だけが点いていた。
「待ってた」
 掠れた声でそう言う蛇腹さんは、薄暗い店内でアタシを見て笑った。カウンターの中から出て、アタシの横をすり抜けると、店の表のドアを施錠する。
「施術室、入って」
 振り返りもせずにそう言うので、アタシは黙って従った。「空室」のプレートの下がっているカーテンを開けると、施術室の中はカウンター同様に薄暗かった。部屋の隅に小さ��ストーブが置いてあって、オレンジ色の炎が闇の中で揺れていた。
 アタシはトラガスをあけた時と同じ椅子に腰を降ろした。カウンターの灯かりを消した蛇腹さんが、施術室へ入って来る。蛇腹さんはカーテンを閉め、アタシからは一番離れた位置にある長椅子に腰掛けた。
「で、なんで電話してきたの」
 蛇腹さんの声が、微かに部屋の空気を震わせる。その爬虫類みたいな目で、アタシを見ていた。
「リュウと別れたくなった?」
 答えないアタシに、蛇腹さんはそう訊いてくる。
 ――アタシは龍兎に飼われている。あの部屋で抱かれることだけが、アタシの存在理由。
「……教えて、龍兎のこと」
 それだけ言うと、蛇腹さんは素っ気無く答えた。
「言ったろ、あいつはHⅠⅤだって」
「……なんで、HⅠⅤに感染したの」
「あいつ、左手に刺青があるだろ」
 アタシの脳裏に、龍兎の左手がよぎる。影絵のような、黒一色の龍のタトゥー。その上に刻まれ続ける、自傷の痕。
「あの龍の刺青入れた時、HⅠⅤに感染したんだよ。針の使い回しだったそうだ」
 アタシは黙ったまま蛇腹さんを見た。蛇腹さんもアタシを見ていた。
「二年ぐらい前だったかな。あいつ、スミ入れたいって言い出してさ。それで、俺に蛇の刺青入れた、彫師を紹介したんだよ。先に彫ったのは右手の、ウサギの絵の方だった。左手の龍の絵を彫るってなった時、彫師がいろんなデザインを描いたんだが、リュウは全部却下した。刺青って一生モンだろ? リュウもこだわりたいし、彫師だって自分の作品にはこだわりたい。そんな時、あいつ、刺青のイベントに行ったんだとさ」
 ――タトゥーイベントで龍兎はひとりの彫師と意気投合した。その彫師が即興で描いてくれた龍のデザインに心惹かれ、その日のうちに下絵を彫った。後日続きを彫ってもらい、完成させるはずだったが、突然、その彫師と連絡がつかなくなった。それで中途半端なタトゥーはカッコ悪いと、最初の彫師に頭を下げて頼み、続きを完成させてもらったのだが、その数ヶ月後になって、HⅠⅤに感染していることが発覚した――。
「どうして発覚したと思う?」
 蛇腹さんはそう訊いてきた時、嘲笑うかのような表情をしていた。蛇腹さんが決して、龍兎の前ではしない顔だった。
「あいつ、当時付き合ってた女にガキができたってんで、病院に行ったらわかったんだとさ。女の方が感染してるのがわかって、リュウも検査を受けたら感染してた。その頃になって、イベントの参加者に、HⅠⅤに感染した人がちらほらいるって噂になってきてな。リュウはその女と結婚するつもりでいたんだが、破局。子供は中絶。女は今もリュウから金もらって、リュウと同じ、エイズの発症を抑える薬を飲んでどっかで生活してる」
 喉の奥を震わせるようにして、蛇腹さんは笑っていた。
「それからだ。それからリュウは、女をとっかえひっかえしてる。適当にその辺をぶらついては女をひっかけてきて、半ば無理矢理、自宅に軟禁して。新しい女ができる度にここに二人でやって来て、自分と同じ場所にピアスをあけさせる。あんたとおんなじだ。大抵、女たちは途中でリュウがどっかおかしいことに気付く。リュウが見ていない隙に、『あの人ちょっとおかしい』と俺に訴えてくるようになって、俺があいつの過去を話すと、皆、気味悪がって逃げ出す」
 蛇腹さんはそう言いながら立ち上がり、アタシのところまでやって来た。椅子に腰掛けたままのアタシを見下ろし、首輪に手を伸ばす。蛇腹さんの指が、アタシの首に嵌められた首輪を少しだけ乱暴に引っ張った。その指が闇の中、ぼんやりと輪郭を失って、白く光っているのを黙って見つめた。
「だが、こんなの首に嵌めた女は、あんたが初めてだな」
 蛇腹さんは首輪に掛けられた南京錠を手に取りながら、それに顔を近付けていた。
「ただの市販の南京錠か。近所に腕の良い鍵屋がいる。紹介してやってもいい。すぐに��鍵くらいできるだろ」
 蛇腹さんは南京錠からも首輪からも手を放し、言った。
「リュウから逃げたいなら、こんな首輪さっさと外して、あの部屋を出て行けよ。あいつは女に捨てられるっていうのが一種のトラウマなんだ。女に捨てられた後は、まるで鬱病みたいになっちまって、逃げた女を探し回る気力も無い」
「……ほんとなの?」
 蛇腹さんは怪訝そうな顔をした。
「俺の話を疑ってるのか?」
 蛇腹さんの声は話している間、一貫して淡々としていた。それは不気味なほど、平坦な声音だった。まるで催眠術にでもかけられているみたいだ。
「疑ってるなら、部屋に戻って本人に訊いてみろよ」
 アタシは何も答えなかった。返す言葉がアタシの中にはどこにも見つからなかった。
 何も想像できなかった。この話を切り出した時、龍兎はどんな表情をするのだろう。アタシは龍兎のことを何も知らない。彼がどうすれば喜ぶのか、どうしたら傷つくのか、まるでわからない。
 そうだ。一緒に暮らすようになって一ヶ月。アタシは今まで一度も、龍兎を喜ばせようと思って、何かをしたことなんて無かった。
 帰る、と言ってアタシは立ち上がる。
「あの部屋に帰るのか」
 蛇腹さんはどこか呆れたような声でそう言うと、眠たそうに欠伸をした。
「わかっただろ。リュウはそういう駄目な奴で、誰かをがんじがらめに束縛したいんだ。お前を必要としている訳じゃない。お前じゃなくたって別にもいい、側にいてくれる女なら誰でもいいんだよ」
 蛇腹さんは台の上に無造作に置かれた煙草と、コンビニでもらえるような安っぽいライターを引き寄せながら、そのおまけだとでも言うような投げやりな口調で言った。その言葉に、ずきん、とアタシのトラガスが痛んだ。
「ああ、でもそれはお前も同じか」
 蛇腹さんは煙草を咥え、火を点けながら言う。
「お前だって、泊めてくれる男だったら、誰でもいいんだもんな」
 まるで全てを見透かしているかのような冷たい目で、アタシを見つめていた。アタシはありがとう、と礼だけ伝えて蛇腹さんに背を向ける。店を出る時、まだ施術室で煙草をふかしている蛇腹さんが何か言ったのが聞こえたけれど、アタシはそれに耳を貸さなかった。
 右耳のトラガスに触れる。そこにあるピアスの感触を、何度も何度も冷え切った指先で確認しながら、この虚ろな世界のことをぼんやり思った。
 初めての性交の相手は、義父だった。
 アタシが小学四年生の時にママが再婚して新しくやってきた父親は、ママのいない時にアタシを素っ裸にしては欲情していた。
 アタシはまだ初経も迎えていない子供だったはずだけど、当時の記憶はぼんやりとしていて、あまりはっきりとは思い出せない。思えば、あの頃からアタシの心は空っぽだった。
 義父の次におかしかったのは、六年生の時、クラス担任だった若い男の教師で、アタシの成績が悪く、こんなんじゃ中学校に進んだらたちまちやっていけなくなる、補講授業を夏休みに行う、と言ってきたのが始まりだった。成績が悪かったのは本当のことで、アタシは元々勉強が苦手だった。担任の教師は、アタシを人気の無い教室に呼び出して、やってこさせたプリントを見ることもなく、持ってこさせた教科書を開かせることもなく、ひたすら卑猥な言葉を言わせるだけ言わせて、無理矢理にアタシを犯した。それは夏休みの間、ほぼ毎日続いた。
 中学に上がってからは、男の先輩たちが近寄って来た。いかにも頭の悪そうな、不良の先輩たちは、遊びに行こうと誘い出しては、大勢で順番にアタシを抱いて楽しんでいた。先輩の家で、カラオケで、学校で。どこででもヤッた。
 アタシはその頃も、家にママがいない日は義父に抱かれる生活をしていて、義父に連れられ産婦人科を受診し、生理不順だからという理由でピルを処方してもらっていた。定期的に性病の検査も受けた。
 まだ義務教育も終えていない義理の娘と性交するような男を、尊敬の目で見たことなんて当然無かったけれど、義父の存在に感謝した。義父が変態じゃなかったら、アタシは何回堕胎手術を受ける羽目になっていたのかわからない。
 高校に上がったばかりの頃、義父に犯されている場面をついにママに見られて、アタシの家庭は終わった。義父が家に来てから、毎日のように犯されて、五年が経っていた。
 今までずっと黙っていたせいで、ママは何も知らなかった。ママの受けたショックは計り知れない。ママは頭がおかしくなって、アタシの顔を見て話すことすらできないまま、精神科に入院した。
 親戚たちの手によって、ママと義父は離婚、義父は警察に突き出された。以来、ママも義父も、どうなったのか知らない。
 その頃ちょうど、高校ではアタシが援助交際をしているという噂が立ち、アタシを停学にしようという話が職員室で持ち上がっていた。高校を辞め、「ひとりで自立した生活を送る」と、親戚たちにはそんな嘘をつき、短期のバイトと援助交際でお金を稼いで、その日暮らしを始めた。
 最初は親戚たちを欺くために、小さな安いアパートを借りたけれど、契約が切れるのを機に、そこを出た。頭も愛想も悪かったアタシは、親戚たちにはこぞって嫌われていて、アタシの行方や生活の様子を心配する人はいなかった。
 カプセルホテル、ネットカフェ、街角で出会った知らない男の家。そこを転々としながら生活した。 
 アタシの家族が崩壊して、三年。
 身体を売って、金を得て、眠る日々だった。
 この淀んだ、薄汚い、虚ろな世界。
 アタシの身体も、心も、中はすかすかで、そこには何も無い。ただ空っぽだ。生きていても、空しい。死んでいるのと変わらない。
 龍兎と出会った日、あの日はクリスマスだった。
 街には一夜の相手になりそうな女を狩る男たちがうろついていた。アタシに声をかけてくる男は何人かいたけれど、もう自分の身体を売る気にもなれなくて、乾いた笑顔で見え透いた嘘をついて、男たちを振り切った。
 どこにも行く気になれなくて、どこにも行く場所なんか無かった。
 生きることにも、死ぬことにも、なんの興味も関心も湧かなかった。過去の出来事も、これから起こる未来のことも、全てなんだってよかった。
 なのに、あの時声をかけてきた龍兎に、ついて行ってしまったのは何故だろう。でも、それはたいしたことじゃないのかもしれない。龍兎について行くか、行かないか、なんてことは。だって、興味が無かったんだ。それでこの先がどうなるのかなんて。
 もうアタシはどこへも行けない。
 だから、どうだってよかった。
 そう、どうだっていい、全部。
 ぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶ、どうだって、いいんだ。
 ずきん、
 と、
 アタシのトラガスが痛んだ。
 ぼんやりした頭で目を覚ました。
 アタシは知らないホテルの一室で、知らない男と同じベッドで、裸で寝ていた。テーブルの上には、酒の缶の山。どれくらい飲んだのか覚えていないけれど、頭ががんがんと痛む。気持ち悪い。吐き気がした。
 今は何時だろう。時計を持たないアタシには知る術が無い。携帯をスキニーパンツのポケットに入れて来たはずだけど、床に落ちていたアタシの衣類を拾い上げて探ってみても、見つからなかった。まぁいいや。どうせ、連絡する相手もいないし、連絡してくる人もいない。寝ている男を起こさないように衣類を身に着けながら、笑った。
 アタシには何にも無い。家族も、友達も、恋人もいない。家も、職場も無い、居場所なんて存在しない。大切な人もいないし、誰からも大切と思われてなんかいない。
 アタシは何なんだろう。誰が、アタシのことをアタシだと証明してくれるんだろう。ピルをもらう時に必要な保険証だけが、存在を証明してくれるモノだなんて、笑える。
 アタシはホテルの部屋を出た。吐きそうだったけれど、トイレで��音を立てたら寝ている男が目を覚ましそうな気がして、こらえた。
 昨日の記憶が、だんだん蘇ってくる。
 蛇腹さんの店を出て、龍兎の部屋に戻ることをためらってしまったアタシは、知らない男に声をかけられて、コンビニで酒を大量に買い、ホテルに入り、酒を飲んで、性交して、寝た。アタシは昨日、ピルを飲んだかどうかどうしても思い出せなくて、早く部屋に戻って確かめなくちゃ、と思った。そしてすぐに、部屋にいるであろう龍兎のことを思った。龍兎は目が覚めた時、アタシが部屋にいないと気付いたら、どう思うだろう。
 怒るだろうか。それとも、最初からアタシなんかいなかったとでも言うように、いつも通りの日々を過ごすのだろうか。
 わからない。わからなかった。アタシは、龍兎のことを何も知らないから。
 じゃらり、と金属の揺れる音がする。首の南京錠が、いつもより重く感じた。
 ホテルを出ると、外は眩しかった。太陽は真上に昇っている。昼だ。
 と、ホテルを出てすぐ、数人の女たちがアタシを取り囲んで声をかけてきた。胃の中がひっくり返りそうだったのと、頭が割れそうなほど痛むのとで、女たちが何を言っているのかよく聞こえなかった。断片的に、「私の男」「ホテル」「一緒に」「見た」「許さない」「クソ女」という単語だけが、かろうじて聞き取れたけれど、その意味を頭が理解するよりも早く、女の拳が腹に食い込んで、アタシは滅茶苦茶に吐きながら崩れ落ちた。倒れたアタシの背を、胸を、顔を、尻を、足を、女たちが力いっぱい蹴りつけてくる。その痛みにアタシは呻き、変な動物みたいな声を上げた。
 道路のアスファルトに思い切り頬をこすりつけながら、中学生の頃も、よくこんな目に遭ったことを思い出した。下校途中の路地裏で、女子の先輩たちがよく待ち伏せしていた。女子たちは大抵、アタシのことを輪姦した先輩たちの彼女か、その友人たちだった。一対一ならともかく、こうやって複数人に暴力を振るわれたんじゃ、抵抗の仕様が無いし、そもそも抵抗する気力すら湧かない。
 思考も神経もおかしくなりそうだった。殴られても蹴られても、途中から痛みを痛みとして感じなくなっていた。身体は重く、意識は黒く染められていく。死ぬのかな、と思った。男と寝て、それを恨まれて女にボコられて死ぬなんて、汚れたアタシにはお似合いな末路だ。
 幸せに生きて、愛に包まれて眠るように死ぬなんて、そんな温かい人生、アタシには似合わない。ドブに捨てられて、汚物にまみれて、他人から目を背けられ死ぬ���うな、そんな最期しか、自分の人生の結末を思い描けなかった。
 でも充分じゃないか。アタシは充分、今日まで無様に生き延びた。今更しがみついてみじめったらしく守るべき生なんか、アタシにはこれっぽっちも残っていない。
 もう意識を手放そうとした、その時。
 ずきん、と猛烈な痛みがトラガスに走った。
 その痛みではっとした。
 アタシの名前を、呼ぶ声がする。
 一斉に、アタシの周りにいた女たちの気配が無くなる。走り出していく無数の足音と、こっちへと駆け寄って来るひとつの足音が聞こえた。アタシは重たく動かない身体に精いっぱい力を入れて、微かに瞼を持ち上げた。
 男の声がする。アタシの名前を呼んで、ダイジョウブカ、ダイジョウブカと言ってくる。これがダイジョウブに見えるのかよ、と思わず言いたくなるくらいに。でもアタシの喉も、舌も、唇も、もう声を発する機能なんか持っていない。
 おまけに、視界は霞んでいて、よく見えない。倒れているアタシには、地面しか見えていないのだけれど、地面の上に、何か白っぽいものが見える。なんなのかよくわからない。何か模様がついている、白っぽいものだ。なんの模様だろう。アタシは懸命にそれを見ようとする。
 しばらく奮闘して、やっとそれがなんの模様かわかった。
 それは、一匹の黒い龍だった。
 身体にいくつもの傷を負い、その痛みに悶え、哭いている龍。
 アタシは動かなくなった身体を無理矢理動かす。左腕が肩から外れそうなほど、強烈に痛んだけれど、それでも構わず、龍に向かって手を伸ばした。
 その龍の傷に、触れた。
 龍が哭いている。
 傷が痛むから、哭いているの? 違う、きっとそうじゃない。そうじゃないはずだ。
 男の声が、耳元でしているはずなのに、とても遠くから叫んでいるように聞こえた。
 アタシの名前を、呼んでいる。
 その声が聞こえなくなるまで、アタシは龍の傷を撫で続けた。
 アタシの身体が、動かなくなるまで。
 アタシの意識が、消えてなくなるまで、ずっと。
 気がついた時には、病院にいた。
 目を覚ました時、アタシの右手を握ったまま、ベッドに寄り掛かるようにして、ひとりの男が眠っていた。
 龍兎だった。
 龍兎は目の下にうっすら隈を作っていて、アタシが眠っていた一日半、ほとんど眠らずに側にいてくれたんだと後でわかった。アタシが寝ている間はずっと起きていて、目覚めた時に寝ているなんて、間抜けな男だ、と思った。
 龍兎はあの朝目が覚めて、アタシがいないことに気付き、街中を探し回っているうちに、たまたま運良く、ホテルの前を通りかかったらしかった。
 アタシは女たちからの暴行で全治一ヶ月の怪我を負った。極めつけは、上の前歯を二本とも折られていたことだった。前歯が無いとアタシの顔はとってもおかしなことになっていて、見舞いに来た蛇腹さんは、アタシの顔を見るなり思い切り噴き出し、病室中に響くほどの大声で笑った。普段は聞き取りにくいほど小さな声で話すのに、大きな笑い声だった。
 それから蛇腹さんは、口の中をよく見せてみろ、と言い、折れた前歯をじっくり観察した後、「これなら大丈夫だ、差し歯が作れるだろうよ」と言った。
「いっそのこと、オリジナルの差し歯でも作ったらどうだ。豹柄とかさ。ギャルは好きだろ、豹柄」
 そんなことを言ってにやにやと笑う蛇腹さんは、病院に来るために頭のタトゥーをフードで隠し、顔のピアスを全て外して、カラーコンタクトもしていなかった。病人には優しくしないといけないからな、攻撃的なルックスはやめただけだ、と言っていたけれど、ピアスも無い、瞳も小さい蛇腹さんの顔も、見慣れないからか面白くて笑えた。
 龍兎は毎日のように見舞いに来てくれて、アタシの身の回りの世話を甲斐甲斐しくこなした。ずっと無愛想な表情で、口数もいつもよりずっと少なく、常に不機嫌そうだった。だからアタシは、いつも以上に龍兎に声をかけなかった。でも元からアタシたちは、会話なんてろくにしたことが無いのだ。
 退院の日も、龍兎は来てくれて、まだ松葉杖が無いと上手く歩けないアタシの代わりに、荷物を持ってくれた。二人肩を並べて、そうするのが当たり前のように、龍兎の部屋へ続く道を歩いて行く。雪が降りそうな天気で、寒さのためか、黙って歩いた。
 龍兎が口を開いたのは、もうすぐアパートがビルの向こうに見える、という距離に来た時だった。
「……蛇腹さんから、聞いたんだろ、俺のこと」
 龍兎の声は、どこか投げやりな声音だった。龍兎は立ち止まって、しばらく黙っていたけれど、やがてポケットから何かを取り出した。
 小さな金属片。鍵だ。
 龍兎はアタシの首についている首輪の南京錠にその鍵を差し込むと、回した。鍵は呆気無く回る。
 がちゃん、と音を立てて、南京錠が地面に落ちた。
 この鍵が外れた時、それは龍兎にとってアタシがいらなくなった時だと、ずっと思っていた。
 龍兎は首輪も外して、それを南京錠と同じように地面に落とす。龍兎の顔は不機嫌そうで、それは叱られた子供の表情に似ていた。
「嫌なら、出てけよ。もういいよ、お前なんか。いらねぇよ」
 龍兎はそう言うと、突然、荷物が入った紙袋をアタシに押し付けて、自分だけさっさと歩き出してしまう。
 アタシは松葉杖を両手で突いていて、荷物を持つ余裕が無い。紙袋の中を覗いてみたけれど、着替えが入っていただけで、大切なものは何も無かった。保険証はライダースのポケットに入っているし、携帯はどこに落としたのか、まだ見つかっていない。
 大丈夫だ。必要なものなんか無い。アタシはいつも、何も持っていないのだ。
 紙袋をそこに置いて、龍兎の後を追いかけた。入院中に松葉杖の使い方に慣れたとは言え、大股で歩く龍兎の足には追いつけない。それでもずっとその背中を追いかけていると、不意に龍兎は立ち止まり、こっちを振り向いた。
「……なんでついて来るんだよ」
 その声は明らかに怒っている。
「もう知ってんだろ、俺がHⅠⅤだってことも、別れた女の治療費払ってるってことも、頭のおかしい奴だってことも。そうだよ、俺はそういう奴だよ。好きでもねぇ女に首輪つけておかないと、いてもたってもいられなくなる、精神異常者だよ。俺と同じとこにピアスあけさせて、俺と同じようにしてやらないと、俺のこと理解してもらえないんじゃないかって不安になる、馬鹿みたいな男だよ。ああ、わかってるよ、どうせ、理解なんかされないってことは」
 龍兎はそう言った。その声は明らかに怒っているのに、どうしてだろう。
 龍兎は、泣いていた。
 立ち止まってそう言っている間に、なんとか龍兎に追いついた。両目から、ぼろぼろと涙を零す龍兎の顔を、アタシは黙って見上げた。
 アタシは龍兎の左手を取った。手袋を外せば、そこに龍が姿を現す。
 傷だらけの、龍。
 アタシが入院している間、龍兎は自傷行為をしていなかったようで、新しい傷はひとつも無かった。思えば、初めて出会った時からずっと気になっていた、傷まみれの龍がいる左手。
「龍兎、ピアスあけてよ」
 アタシは無意識のうちにそう言っていた。
「右耳のトラガス、あけて。アタシも、この龍のタトゥー、左手に入れるから」
 龍兎の目が、驚いたように見開かれる。
 右耳のトラガスは、龍兎には無いアタシだけのピアス。
 まるで心臓のように、ずきんずきんと、何度も痛む。
 ――アタシは、ここにいる。
 この先の人生が、どうなっても別にいい。いつどこでどんな風に死んだって構わない。この灰色の世界がどうなろうと興味なんて無い。龍兎がHIVのキャリアでも、精神異常者でも、どうでもいい。
 アタシにあるのは、トラガスの、突き刺さるような痛みだけだ。
 そしてアタシは知っている。龍兎にあるのは、あの左手の、自傷の痛みだけだってこと。
 だから龍兎はトラガスにピアスをあけ、アタシは左手に龍を描かなくてはいけない。
 龍兎は、よくわからない表情をした。口元を緩めたその顔が、笑っているんだ、と気付くのに、五秒かかった。その五秒のうちに、龍兎はアタシのことを、両腕で抱き締めていた。
 龍兎の、アタシとお揃いのライダースの肩越しに、空から雪が舞っているのと、自分の息が空中で白く輝いて、霧散していくのを見た。耳元では、龍兎が声を押し殺して泣いている。アタシにはそれが、あの龍が哭く声のように思えた。
 痛みに哭いているんじゃない。アタシたちはそんなことすら満足にできないくらい、不格好で哀れな生き物だ。
 松葉杖を捨てた。どこにも行けないのだから、こんなもの、もういらない。空いた両手を伸ばして、龍兎の身体を抱き返す。
 そうして、ふと、こんな風に龍兎を抱き締めたことも、抱き締められたことも、初めてのことだと気がついた。
 龍兎の涙がアスファルトに落ちる。一滴、二滴と染み込んでいく。アタシは、最後に泣いたのがいつだったのかさえ思い出せずに、ただそれを見つめる。
 アタシたちの身体も心も空っぽで、そこには何も無いとしても。いくら交じり合ったところで、この肉塊を温め合うことすら、できないとしても。
 でもそれで���いい。それでもアタシは、この痛みを知っている。
 冷たい風に晒されて、龍兎の身体は特別温かくはなかった。でもそれでも、充分だった。
 それだけで、ただ良かった。
 了
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discasdvd-blog · 7 years ago
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ロケ中止もあった『新宿スワン』主演の綾野剛、完成に感無量
週刊ヤングマガジンで連載された同名漫画を、園子温監督・鈴木おさむ脚本で実写化した映画『新宿スワン』の公開日が5月30日に決定し、併せてビジュアル&特報映像が公開され、新キャストも発表。主演の綾野剛の金髪姿と彼の兄貴分を演じている伊勢谷友介の銀髪姿が披露された。
 新宿・歌舞伎町を舞台に、女性たちに水商売をあっせんするスカウトマンたちのだまし合いや、頂点へと成り上がろうとする熱いロマンを描いた本作。綾野ふんする白鳥龍彦は、一文無しでさまよっていたところを真虎(伊勢谷)に助けられ、真虎が幹部を務める会社「バースト」に所属する新人スカウトマン。龍彦と過去に因縁を持ち、ライバルスカウト会社「ハーレム」に所属する南秀吉を山田孝之、龍彦を救いの王子様として慕う風俗嬢アゲハを沢尻エリカが演じている。
 同作のロケ時には、あまりのギャラリーの多さに撮影が中止される事態となり、出演者たちが自らのSNSで協力を呼び掛けるなど緊迫した事態が続いていたが、無事昨年5月にクランクアップ。綾野は「皆さま、お待たせしました。映画『新宿スワン』完成いたしました。ようやくお届けできること、感謝の極みです。園子温組、スタッフ、キャストと共に魂を込めて暴れさせていただきました。遠慮なく、皆さまに爪痕を残す所存です。いざ」と感無量の様子。 新宿スワン DVD  
 山田、沢尻、伊勢谷もそれぞれ、「孤独で賢く不器用な彼(秀吉)は、今でも僕の中にとどまり続け、時折その凶暴性に精神を乗っ取られそうになります」(山田)、「アゲハを通してこの作品に恋をしました」(沢尻)、「以前から参加したかった園子温監督作品に初めてがっつり関わらせていただきました。全38巻からなる原作の壮大なスケールを感じさせる、まさにそんな作品に仕上がったと思います」(伊勢谷)と本作への思いをコメントしている。
 そして新たに発表されたバースト側のキャストには、深水元基(関玄介役)、村上淳(時正役)、久保田悠来(洋介役)、豊原功補(山城神役)など。そして、ハーレムの幹部・葉山豊役には金子ノブアキ、社長・松方役には安田顕が決定。さらに裏社会を暗躍する高級クラブのママ・涼子役に山田優、龍彦にスカウトされるキャバ嬢・栄子役に真野恵里菜、関の彼女・梨子役に丸高愛実といった女性陣が華を添える。 韓国ドラマ ソロモンの偽証 DVD
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socialmoviesblog · 8 years ago
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■映画「堕ちる」のメモ
▼地下アイドルに恋した実直な織物職人の、可笑しくも切ない末路を描く話題のドルヲタ映画「堕ちる」。先日、ようやく観ることができた。最近、アイドルの曲を聴くようになったこともあり、身につまされる部分もあって(笑)、なかなか面白かった(※注1)
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▼「仰ぎ見られる対象」=偶像(アイドル)でありながら「地下」で活動するという矛盾に満ちた存在「地下アイドル」…
▼そんな存在を扱う作品だからというべきか映画は「上昇」と「下降(堕ちる)」のモチーフに満ちている。
▼物語は地面に顔を突っ伏しながら(下降)嗚咽し落涙(下降)するおじさんのドアップから幕を開ける。彼の名は、耕平さん。群馬県桐生市の織物工場で働く職人(独身)だ。
▼これは「下降と上昇」の映画。その落涙のシーンからカットが変われば今度は、古びた工場内に白い綿ぼこりが舞い上がる(上昇)。それは天使の羽のようにもみえる。
▼だが、そんな舞い上がるホコリと対照的に、布を織り上げる機械を、黙ってうつむきながら(下降)作業している耕平さん。後輩が何やら聞いてくるもうなずくだけで一切しゃべらない(その後のシーンでも、耕平さんはずっと無言だ。)まさに実直そのもの。それでも、ミスをしたのか社長に「布の出来が悪くてつっかえされたよ。うちも不景気なんだからたのむよ」と叱られる。ひたすらうつむいて頭を下げるのみ(下降)の耕平さん。
▼まさに、下降(堕ちる)を運命づけられたような耕平さんだったが、床屋へ行き髪を洗ってもらおうと洗面台に仰向けになり天井を見あげるや(上昇)、運命の人に出会う。
▼床屋の主人の娘だ。お客の顔にタオルをかぶせようとするもうまくいかないメガネっ子のドジっ子。その愛くるしさに、思わず時めいてしまう。
▼そして…後日、髪を切ったばかりなのにまたも床屋に行ってしまう耕平さん(笑)。するとそれを察したのか床屋の主人が言う。「うちの娘、地元でアイドルやってるんですよ。よかったら、ライブ観に行ってやってくださいよ。」そう言ってチケットを渡される。これまでの人生で、楽しみといえる趣味など1つも持ったことがなかった。ましてや「アイドル」なんて…
▼と、思いきや…カットが変われば、チケット片手にライブハウスを探す耕平さん(笑)。表情も若干上気(上昇)しているよう。しかし、地下アイドルだけに、ライブは「地下」で。会場への階段を「下降」していく耕平さん。
▼勝手がわからず、チケットをモギリに渡し、戸惑いながらも会場へ。
▼すると狭い会場には、「めめたん」の文字がプリントされた黄色いTシャツを着たドルヲタたちがごったがえす。
▼そんな彼らに「来てくれてありがとう!それでは新曲ワンダーランド!」とコールするのは床屋の娘、いや、地下アイドル「めめたん」だ。
▼「♪恋に落ちたら~気持ちはワーンダランド」とめめたんが跳ねる(上昇)とドルオタたちもPPPH式コールで飛び跳ねる(上昇)。
▼そんな「めめたん」をみて、さらに時めき上気(上昇)する耕平さん。めめたんのダンスにあわせ、無口で実直なおじさんの口角が微妙に上がっていく(上昇)。その表情を映す、やや悪意のあるアップに思わず笑ってしまう。
▼ライブが終われば、恒例の握手会。だが、真面目で実直な耕平さんにそんなお約束など分かるはずもない。作業服姿で、オロオロしていると、後ろから古参のオタが「あれ、新規さん?めめたんに握手してもらいなよ」とルールを教えてくれる。
▼言われるがまま握手。と、その時、めめたんが「あれ?床屋の?来てくれてありがとう。でも、私が床屋で働いてることは言わないでね♥」と耳打ち。秘密を共有する特別な関係になったようで、またも上気(上昇)。
▼思わずCDを買い(買わされ)上気した気分のまま家へ。狭い部屋の押し入れの下の段(下降)にもぐる耕平さん。取り出したのは、長らく使っていなかったCDコンポ。
▼買った(買わされた)CDをセット。するとライブで聞いたあの「ワンダーランド」の歌声が!またも口角があがる耕平さん(上昇)。
▼その後は、まさに毎日が天にも昇る気持ち。部屋はめめたんのポスターだらけに。常時イヤホンをして曲を聞きながら仕事。歩く様子も飛び跳ねる(上昇)ように軽快に。
▼めめたんのツイッターもフォローし、つぶやきがなされると、めめたんの声で知らせてくれるアプリまで���ウンロード。つぶやかれるたびにテンションUPの耕平さん。
▼そんな彼は、ついにオフ会デビュー。古参のヲタに誘われライブ後のファミレスで「めめたんの今後を考える会議」に参加(笑)。
▼とはいえ、慣れていないためまたも終始無言でうつむきがち(下降)。しかし、所在なさからアイスコーヒーをストローで吸い上げる(上昇)や、耕平さんにミッションが回ってくる!めめたんの誕生日にあわせ、織物職人の腕を駆使して、ライブ衣装を作り上げる使命だ。
▼これまでの技量を総動員し「自分にとっての天使」がまとうべき、そして、彼女がアイドル界を舞い上がっていくべき「天の羽衣」(上昇)をデザインしていく耕平さん。
▼しかし、下降あるところ上昇あり、上昇あるところ下降あり…
▼仕事中も、デザインのことにかかりきりになり、次第に業務がおろそかになっていく耕平さん。また毎晩のように徹夜していたため朝も起きあがれず、、(下降)、会社も欠勤…
▼そして誕生日ライブでは、ペンライトの使い方を教えてもらうが、慣れないため振ろうとして落としてしまい(下降)、そこを飛び跳ねていたヲタに踏んずけられてしまう…
▼激痛の中、ファミレスで衣装をめめたんにプレゼント。喜んでもらいテンションもUP!指先が痛くてたまらない中、手で♥を作ってめめたんや、他のヲタたちと一緒に集合写真に写る耕平さんが、なんとも切な可笑しい(笑)…
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▼だが、下降あるところ上昇あり、上昇あるところ下降あり…
▼上昇の衣装である「天の羽衣」をめめたんに渡した後日…耕平さんは、彼女がメジャーデビューし、地元桐生を離れ東京で活動することをネットニュースで知る。自分にとっての天使が、文字通り羽ばたいて、自分の前から姿を消してしまうことに意気消沈(下降)。さらに、悪いことに仕事の欠勤などがたたり、勤務先を解雇。人生、奈落の底へ(下降)…
▼そしてせっかく手渡した「天の羽衣」も、床屋の父から「ごめんね。せっかくいいもん作ってもらったんだけど。娘は、東京行っちゃうから」と、紙袋に入れて突っ返されてしまい…さらに意気消沈。家でうなだれる耕平さん(下降)。
▼そしてもう訳がわからなくなってしまった耕平さんは、絶望マインド(下降)のまま、上昇の服である「天の羽衣」を羽織って街をさまよい歩く。そしてかつてめめたんが立っていた屋外ステージに目がうつろなまま立つと、そのまま吸い寄せられるように、解雇された工場へ。そして自分が織った帯を首に巻き付け、簗に登り(上昇)、首吊り…
▼だが間一髪、帯はちぎれ耕平さんは地面に叩きつけられる(下降)。
▼そして今まで一言もしゃべらなかった彼は大声で泣き叫ぶ「めめ~た~ん」
▼「今まで一言もしゃべらなかったのに、やっと口を開いたらそれかよ!」と壮大な前フリゆえにどうしても笑ってしまう。超悲しいシーンなのに(笑)。
▼だが、上昇あるところ下降あり、下降あるところ上昇あり…
▼「あんた!何やってんだよ!」耕平さんが立てた物音を聞きつけ工場の社長がやってきたのだった。
▼社長の目の前には人生の希望を失い、それでいて死のうにも死にきれず……まさに奈落の底にある耕平さんの姿が。しかし、その時…「それ、いいよ!」耕平さんが羽織っていたステージ衣装を見た社長は、グッドアイディアを思いつくのだった。
▼場面変わると、かつてめめたんが立っていた屋外ステージにあの羽衣を来た別のアイドルが。そう、社長が思いついたのは自分の工場の織物を衣装に使った地方アイドルプロデュースだった。
▼そして…ライブする新人アイドルと、彼女を盛り立てるファンたちの後ろで、じっとその様子をみている男が。耕平さんだ。いつも着ていた作業服などどこへやら。Vネックのシャツにグラサンを刺し、斜に構える。今やすっかりプロデューサー風情(笑)!!
▼自らがプロデュースしたアイドルを、めめたんのごとく羽ばたかせるため(上昇させるため)彼は、人生の再スタートを切ったのだった…
 ▼斜陽産業の古びた工場に漂う綿ぼこりが、同時に空中を舞う天使の羽にみえるように、「堕ちる(下降)」ことと「昇る(上昇)」こととが緊密に結びついた映像劇。
▼それは…アイドルにのめり込み「まともな社会生活」から「堕ちる」人が増えれば増えるほど、当のアイドルは光り輝き、芸能界を「昇っていく」。そしてアイドルが「昇っていけばいくほど」、ファンから存在が遠ざかっていき、そのことでファンは、うれしい反面、気分が「落ちる」…そんなアイドルを巡る皮肉の隠喩でもあるのだろう。
▼しかし、そうやって自分が堕ちても、そのことでアイドルが昇るのならば、それはそれで幸せではないか。また「まともな社会生活」から堕ちることで「堕ちた者どうしの連帯」=「ライブの後のサイゼリア会議(笑)」へと導かれるのなら、それはそれで幸せではないか。いや、むしろ、郊外化の中で、近隣とのつながりがなくなっていく今、そんな連帯こそ「希望の星」であるようにもみえる(地方アイドルの「経済効果」の有無についてはよく論じられるが、こうした「連帯効果」についても論じられるべきだと思う)。
▼とはいえ、自分の人生に「どうやっても昇る道」がないようにみえるからこそ、まだ若く、失敗しても人生をやり直せそうな少女に「上昇の夢を託す」…そんな社会であること事体は幸せなことなのか?
▼��た「堕ちた者どうしの連帯」=「ライブの後のサイゼリア会議」にもなじめず、そこからも堕ちてしまった者が、離れていったアイドルや社会に憎悪を燃やし、痛ましい事件を起こしてしまうとしたら…そのことはどう考えればいいのか?
▼映画に漂う「切な可笑しさ」を堪能した後に、いろんなことを考えさせてくれる良作だ。チャンスがあれば、ぜひとも観てもらいたいと思う。
 (※注1)
■とはいえ、自分の場合は突然、アイドルが好きになったワケではない。もともと中学高校と、ヲタクまではいかないものの、なかなかに痛いアイドルファンだった(笑)。初めて買ったアイドル雑誌は1993年の「Momoko」最終号(爆)、、高橋由美子とか、CoCoとか、寺尾友美とかが「喪服グラビア」で廃刊を追悼していた記憶がある(笑)。
■80年代アイドルの最盛期に現れた菊池桃子をその名に冠した雑誌の終わりは当然、「アイドル冬の時代」の幕開けでもある。
■当時中学生の自分にとっては、高橋由美子や、ribbon、CoCo、Qlair、など「乙女塾」系の人たちは、ちょっと「姉さん」に感じていた。同世代だと思えたのは「桜っ子クラブ」だろうか。今から考えれば、あのグループは結構いい結果を出している(菅野美穂、中谷美紀、加藤紀子、井上晴美、持田真紀らを輩出)。
■ともあれ「ポスト乙女塾」の時代にファンになったのでアイドルシーンは「真冬も真冬」だった。だから、今のように「歌って踊るアイドル」なんて壊滅状態。ましてやライブハウスなど「現場」なんてほとんどなかった。いや雑誌「投稿写真」などではカメラ小僧が撮ったイベントでのアイドルパンチラ写真紹介コーナーがあったので、俺が見てないだけかもしれない。また、東京ではTPDや、Ski、南青山少女歌劇団などががんばっていることは知ってはいた(名著「アイドルバビロン」など参照あれ)。だが当時は、地方に住んでおり、金も、行動力も、ネットもなかったため(niftyのパソ通もあっただろうし、windowsも出てはいたけど、俺は使えなかった)、そのシーンの詳細には触れられていない。どっちにしてもふつうの人の目には入らない話だ(笑)。
■いや、「歌って踊るアイドル」は沖縄アクターズスクール勢(speed、max)やTKプロデュース勢(安室、篠原、鈴木あみ)に代替されていた、という見方もできるかもしれない。とはいえ、一般的にイメージする「歌って踊るアイドル」はほぼほぼ観られなかった。彼女たちの少ない活躍の場はNHKBS2の「アイドルオンステージ」くらいだった。だからこれは観ていた(遠野舞子とかきれいだなと思っていたことを覚えている)。
■しかしながら「グラビアアイドル」は、イエローキャブ勢を中心に盛り上がってはいた。また、今の地下アイドルにもつながるかもしれない「天使のUBUGE」勢もいた(華原朋美を輩出)。さらに、内田有紀や、広末涼子など「画になるスタークラス」も、その後出てきた。そういうこともあってか、「大海賊」はなくなったものの「BOMB」や「アップトゥーボーイ」などグラビア雑誌はなんとか存続。後に「BLT」も登場。で、そういうものを買い集める中高生時代だった、、
■ちなみに、自分は「本質を逃さない男(笑)」であったので、当時は、菅野美穂、広末涼子、加藤あい、とかが好きだった。「なんだ超人気女優さんじゃん」と思うかもしれないが、当時はアイドルで、雑誌にほぼほぼ始めて載った時から(加藤あいはAsayanか何かのオーディションが初見だったのでTVだったが)「これは来るぞ!」とファンになり、たいがい「本当に来た」のだった。(松原朋子とか、仲根かすみとか、外す時もけっこうあったけど…。)
■しかし、アイドルはファンになった時はいいが、突然、変なことが起きるのでショックもデカい(泣笑)。菅野美穂は突然ヘアヌードになるし、広末涼子も突然おかしくなっちゃうし…結構ヘコんだものだ。菅野美穂の時は、気持ちが「世界には愛しかない」の冒頭のように「うわーーっ」となり、気づけば「サイレントマジョリティ」の冒頭のゆいぽんのように、家から自転車を走らせていた(笑)(この辺は、この映画の耕平さんを見ていて身につまされるところ。といっても、高校生の時だけど)
■その後、大学に入ると、映画も観たいわ、本も読みたいわとなり、また社会人になると忙しくもあり、結婚もするしで、アイドルへの興味は次第になくなっていった。
■そんな自分と入れ替わるように、モー娘。AKB、ももクロ…とアイドルシーンが再び盛り上がっていった。けれど、もはや、かつてのようにはハマれなくなっていた(※ただAKBは「documentaryofAKB」シリーズを観て彼女たちの本気に感動。「マジすか学園シリーズ」もみるようにはなった。しかし、総選挙でバトルロイヤルをさせたり、選抜に落ちたり、受かったり、チーム●にいたと思ったら突然、地方や外国に飛ばされたり…など、受け身の取れない素人にバックドロップをかけてガチの反応を楽しむ…的なエンターテイメントを本当に楽しんでいいのかどうか躊躇していた。)
■しかし、去年、欅ちゃんが颯爽と現れ一瞬で心をつかまれた。今や中高校生の時に気持ちが逆戻りだ…(笑)
■ともあれ…そういう「特殊な時代の特殊な環境」でファンをやっていたので、アイドルといえば、「グラビアか画面でみるもの」という習慣ができている。今でいえば「在宅」というカテゴリーになるのかもしれないが、自分的には「現場」or「在宅」という選択肢があって「在宅」を選んでいるというつもりではなく、それしかない感じだ。
■なので「握手会」や「現場」が活況を呈していても、耕平さんのようには、足が向かわない。あんまり「会いたい」と思わない。いや、そもそも39歳が10代とかの女の子に「握手してください」というのは、自分にはどうにも異次元すぎて…という思いもある(笑)。向こうだって困るだろうし…(いや、個人的見解なので…そう思わない人は楽しんでく���さいw)
■また、握手会のコンセプトにもちょっと乗れないところがある。握手会は理屈的に言えば「CDのおまけ」でなくてはならない。つまり「お金はCDのお金」であり「握手は無償」でなくてはならない。そうせずに握手券だけを売れば「金を払った分、手を握ってくれ」になり、それは「金を払った分、竿を握ってくれ」と原理的には差がなくなってしまう。別に風俗の人を差別するつもりはないが、アイドル自身は風俗嬢になろうと思ってやっているわけではない。だからやはり握手会は「CDのおまけに、別にやらなくてもいいのに、アイドルが好意(無償で)でやってくれている」ととらえるべきだ。
にもかかわらず、「金払ったんだから、この数秒間は俺の好きに使わせろ」的な「風俗マインド」でやってくる「勘違いな人」が絶対に出てくる。中には「金払ったんだから好きにさせろ」とばかりにアイドルに悪態をついたり説教をしたり…というのもいるそう、、
ここで本当ならば、「握手会はCDのおまけに、別にやらなくてもいいのに、アイドルが好意でやってくれている」のだから、そんな人がいるなら「やりませんよ」と言えばいいはずだ。しかし、握手券があるからCDを買っている人がいる現状もある。「ふーん、だったらCD買わないよ」というヤツがおり、すると、運営側としては困ってしまうので、強く出られない。それが分かっているから風俗マインドは治らない。そもそも「マインド」の話なので外見からは分からないという点もある。かくして、そのシワ寄せがアイドルに来る…という現状があると思っている。
だから、握手会というコンセプトにはあまり乗れない…が、あんまり「正論」を言うと、多くの人たちの楽しみを奪ってしまうことになりかねないので、小声で言うことにする(楽しみをつぶす正論は俺も嫌いだ)。しかも、今では女性や子供も来るし、その人たちにとってみればアイドルに純粋に感謝の言葉を言いたいのだろうから。
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freepecec · 6 days ago
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