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#嚢胞性線維症
cudo29 · 5 months
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嚢胞性線維症は、粘液が濃くなって気道閉塞や慢性肺感染症を引き起こしてしまう遺伝病で、イオンや水の流れを制御するCFTRの遺伝子が変異して正常に機能しなくなることが原因になっています。このCFTRの機能を補う3種類の薬剤が治療薬として用いられ、また新たな治療薬の開発につながることを期待して別のイオンチャネルの研究もおこなわれている、というお話です。
詳しくは今月の分子「293: CFTRと嚢胞性線維症(CFTR and Cystic Fibrosis)」をご覧ください。
日本語訳(PDBj)
Cystic fibrosis is a genetic disease in which mucus thickens, leading to airway blockage and chronic lung infections. It is caused by a fault of the CFTR, which controls the flow of ions and water, causing it to no longer function properly. Three types of drugs that enhance the function of CFTR are used as therapeutic agents, and another ion channel is also researched in the hope of finding additional ways to treat it.
For details, please refer to the Molecule of the Month article 293: CFTR and Cystic Fibrosis
Original English Article(RCSB PDB)
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tumnikkeimatome · 6 months
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バーテックス(VRTX)嚢胞性線維症治療薬「トリカフタ」が売上げの9割:開発中新薬のパイプラインにも有望株が複数、難病に特化したバイオ企業として高まる成長期待
バーテックスの概要と主力製品「トリカフタ」 バーテックス・ファーマシューティカルズは、重篤な疾患に対する治療薬を開発している製薬企業です。 現在の売り上げの約9割を占めているのが、嚢胞性線維症の治療薬「トリカフタ」です。 トリカフタは今後も売り上げ増加が期待できるうえ、開発中の新薬パイプラインにも期待が持てる品目が複数あり、注目が高まっています。 バーテックスは1989年に感染症や炎症、自己免疫疾患、がんをコア領域とした創薬企業として設立されました。 「患者数は少ないが発症すると重篤な疾患に対する医薬品を創出する」というビジョンを掲げ、遺伝性疾患などの開発に取り組んでいます。 嚢胞性線維症とは 嚢胞性線維症とは、肺などの呼吸器や消化器で分泌される体液の粘り気が強くなる遺伝性の疾患です。 各種臓器で体液が詰まりやすくなり、肺炎や腸閉塞など様々な症状を引き起こす原因となります。 肺がダメージ…
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ayukoitakura · 10 months
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人々は壊滅的な「ワクチン」に対して声を上げるほどお互いを気にかけているのだろうか?
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この「mRNAワクチン実験」を容認し続ける時期は過ぎた。私たちは、新型コロナウイルス感染症の予防接種が「ウイルス」の拡散を阻止し、パンデミックを終結させると約束していましたが、騙されました。
2023 年 11 月 11 日:大惨事の定義は、「突然大きな損害や苦痛を伴う、または引き起こす」ことです。壊滅的なの同義語には、悲惨な、悲劇的な、致命的ななどがあります。
もしアメリカ人が新型コロナウイルス感染症の注射を直ちに中止するよう要求したらどうなるでしょうか?
1999年、 10,054人の小児ワクチン接種者のうち5人(0.05%)が呼吸器感染症を発症したため、ロタウイルスワクチン(ロタシールド)は米国市場から撤退した。 mRNA注射は、何百万ものアメリカ人と世界市民に壊滅的な被害をもたらしました。
この「異例のmRNA実験」を容認し続ける時期はとうに過ぎている。私たちは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防接種が「ウイルス」の蔓延を阻止し、パンデミックを終結させると約束されていた。私たちは騙されました。私たちは互いに対戦しました。ここ数年は「 ワクチン接種者対非ワクチン接種者」の状況だった。 」
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「人々は気にかけます。ただ話すのが不快なだけだ。」 - ジョー・ローガン
2021年だけでも、新型コロナウイルス感染症「ワクチン」は死者を含む100万件以上の有害事象を引き起こした
乳児の13%未満が3回接種シリーズのうち1回または2回しか接種を受けなかったロタウイルスワクチンが市場から撤退したのと比較すると、2021年だけでも、新型コロナウイルス感染症「ワクチン」は複数回接種した(1回) ) VAERS データベース(1,063,128)で報告されている 100 万件の有害事象。入院、後遺障害、アナフィラキシー、心臓発作、流産、成人、小児、新生児の疾患、および22,263人の死亡は、新型コロナウイルス感染症注射前の過去20年間に報告されたすべての小児用および成人用ワクチンによる有害事象を合計した数よりも多い。ロールアウト (1990 ~ 2020 年)。
mRNA注射の有害な影響は長年にわたって科学的に確立されている
2020年10月22日、FDAと「ワクチン」製造業者(つまりファイザー)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の注射が前例のない病気の発生率、永久的な障害、死亡を引き起こすだろうと立証した。
FDA は製造業者と会い、注射によって引き起こされる有害な臨床転帰のこの「作業リスト」を検討しました。
神経系疾患(けいれん、発作、ギラン・バレー症候群、脊髄炎、脳炎、脳症、脳脊髄炎、ナルコレプシー、脱力発作、髄膜炎、髄膜脳炎、急性脱髄疾患)
心臓病(急性心筋梗塞、心筋炎、心膜炎、脳卒中)
血液凝固および循環器疾患(播種性血管内凝固症候群、血小板減少症、静脈血栓塞栓症)
筋骨格系疾患(関節炎、関節痛)
生殖障害および妊娠障害(有害な妊娠転帰、有害な出産転帰)
自己免疫疾患(VAED、多系統炎症症候群)
そして死。
2022年6月18日 - ファイザーは、 mRNAを注射された150万人の患者からの500万件の有害な影響と疾患を文書化した
2022年6月21日付のファイザー社内文書によると、ファイザーは約150万人の患者から約500万件の傷害、疾患、障害、および/または死亡を記録しており、各患者は平均して次のような有害な影響を3~4つ報告している。
696,605 神経系障害
539,299 筋骨格および結合組織疾患
92,942 四肢の痛み
317,811 件の胃腸障害
224,633 人の皮膚、髪、爪の疾患、
190,720件の呼吸器疾患および胸部疾患
178,353人の女性および男性の生殖器系疾患(勃起不全、不妊症、過多月経)
167,382人の犠牲者が細菌、ウイルス、または寄生虫感染症を発症した
24,9010 ヘルペス感染症
126,993 件の心疾患
100,970 人の血液およびリンパ系疾患
77,148 件の精神疾患
73,542件の血管障害
61,518 件の眼疾患
47,038 人の耳および迷路障害
15,833 耳鳴り
31,895 件の自己免疫疾患
13,647 人の腎臓および泌尿器疾患
3,711 件の癌および良性嚢胞
4,056件の妊娠合併症
自然流産の合併症1,859件
1,143の遺伝性疾患
死者数は3,814人。
ファイザーは、mRNAを注射された150万人の被害者に対して500万件の有害な結果を記録した
·
6月15日
2023年6月15日: 昨日、ダン・ホロウィッツ氏は、mRNA注射により報告された有害事象に関するファイザーの社内文書を開示する記事をConservative Reviewに掲載しました。 393 ページのファイザーの社内文書は、緊急使用許可 (EUA) を受けてから 2022 年 6 月 18 日までのファイザーに報告または収集されたすべての有害な結果と、インターバル報告期間の記録です。全文を読む
米軍は任務のせいで多くの戦闘に相当する負傷や損失を被っている
8,400 人以上の兵士が除隊し、 国防医療疫学データベース (DMED)によると、2021 年に米軍の男女は次のような症状を経験しました。
高血圧が2,181%増加
神経系障害が 1,048% 増加
食道の悪性新生物が894%増加
多発性硬化症が680%増加
消化器官の悪性新生物が 624% 増加
ギラン・バレー症候群(麻痺)が551%増加
乳がんが487%増加
脱髄疾患(脳、視神経、脊髄の神経線維を保護するミエリン鞘の損傷)が487%増加
甲状腺および他の内分泌腺の悪性新生物が 474% 増加
女性の不妊症が472%増加
肺塞栓症が468%増加
片頭痛が 452% 増加
卵巣機能不全が437%増加
精巣がんが 369% 増加
そして頻脈は 302% 増加しました。共有
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)mRNAを注射された高齢者は、注射を受けなかった高齢者よりも感染率と入院率が高かった
2021 年 9 月 28 日の時点で、米国国防総省 (DoD) の統合人工知能センター (JAIC) が収集したデータによると、65 歳以上のメディケア受給者 560 万人のうち、ファイザーまたはモデルナの mRNA ナノ粒子技術の注射を受けたか、注射を継続した人は、非注射。
新型コロナウイルス感染症の71%はワクチン接種済みの高齢者で発生
新型コロナウイルス感染症による入院患者の60%はワクチン接種済みの高齢者だった
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jf3nka · 6 years
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 DeepMindがタンパク質の折り畳み構造(フォールディング)を予測する“AlphaFold”を開発し、先日メキシコで行われたタンパク質の構造予測コンペティション(CASP13)で他の研究グループを引き離して1位を獲得*1したようだ。
タンパク質の折り畳みとは
 細胞内で遺伝子情報にもどづいて翻訳(合成)されたペプチド鎖*2は、それぞれの配列に応じた3次元構造に正しく折り畳まれることによって、はじめてタンパク質としての固有の機能を持つようになる。
 例えば、私たちの免疫系を構成する抗体タンパク質はY字型の構造をとり、Y字の両腕の部分が抗原(病原体など)を捕らえて、その抗原の特徴を記憶する*3。また、コラーゲンタンパク質は、軟骨、靭帯、骨、皮膚の間の張力を伝達するために紐状の構造をとる。
なぜタンパク質の折り畳みが重要なのか
 アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、嚢胞性線維症などの疾病はタンパク質の折り畳みミスによって引き起こされると考えられている。
 これらの疾患の診断、治療に加え、体内でのタンパク質の役割を理解するためには、その構造を予測する能力が必要とされる。また、折り畳みの理解はタンパク質設計を可能とし、創薬や地球環境改善(廃棄物を分解するバクテリア設計)などへの応用にも資すると期待される。
タンパク質の折り畳み形状は計算可能か
 タンパク質の折り畳みは物理法則に基づいて進行するが、その法則(自由エネルギー最低状態の算出方法)が解明されていないため、アミノ酸配列から理論的に計算することができない。
 一方、もしランダム探索を使ってタンパク質が取り得る3D構造を網羅的に評価する方法を採ると、必要な計算時間は宇宙の年齢(138億年)をはるかに超えてしまう*4。
 過去50年の間、科学者たちは低温電子顕微鏡法、核磁気共鳴法、X線結晶構造解析法といった実験技術を使ってタンパク質の形状を追い求めてきた。が、これらの方法は多分に試行錯誤に依存する上、1回あたりの実験コストも高い。
AlphaFoldとは
 DeepMindが開発したニューラル・ネットワークに基づく計算システム「AlphaFold」は、以下の手順でタンパク質の折り畳み構造を“推論”する。
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既知のタンパク質構造を教師データとしてトレーニングされたネットワークAを用いて、未知のペプチド鎖中の各アミノ酸ペア構造について以下を推論する   a) アミノ酸ペア間の距離   b) アミノ酸ペア間の化学結合の角度
上で得られたアミノ酸ペアの距離分布を(何らかの評価関数を用いて)スコア化し、このスコアが最良解にどの程度近づいているかを推論するための別のネットワークBをトレーニングする
このネットワークの推論結果(好スコア構造)と合致する構造をタンパク質ランドスケープから検索する
従来の構造生物学で一般的に用いられる技術(ドメイン知識)を適用し、検索したタンパク質構造の断片を推論で得られたタンパク質の断片で置換する操作を繰り返す
上の操作で得られたタンパク質構造を新たな教師データとしてネットワークAとBのトレーニングを繰り返し、推論精度を改善する*5
一定の改善が進んだネットワークAと、新たに用意した別の評価関数(最急降下法に基づくもの)を使ってさらにトレーニングを行い、ネットワークを最適化する。ここでの最適化は上の工程のような断片構造ではなく、タンパク質鎖全体に適用する
下図は最終的なタンパク質構造の推論結果例
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緑:実際のタンパク質の構造 青:AlfaFoldが推論した構造
CASP13に参加したのは98の研究チーム。AlphaFold(エントリG043/A7D )は43種のタンパク質のうち25種の構造を正確に予測した。2位のチームは3種であった。
アミノ酸がペプチド結合によって並んだ分子構造
病原体の構造を記憶した抗体タンパク質は同じ構造の病原体を捕まえて排除する。従ってある型のインフル��ンザに対する抗体が体内にできれば、以降は同型には罹患しない
アミノ酸150個(150残基)から構成されるタンパク質を想定する。ひとつのアミノ酸が3種類の位置状態を取りうるとし、一回の状態変化に0.1ps(1x10-13秒)を要すると仮定すると、全探索に必要な時間は   3150 x 10-13 ≒ 1058秒 ≒ 1050年(宇宙の年齢は1.38 x 1010年) しかし実際のタンパク質は1ms程度で折り畳まれる。これは上の速度で1010回の探索回数にしか過ぎない(Levinthalのパラドクス)
トレーニングのイタレーション方法はDeepMindのブログ記事に詳しく書かれていないので、この一連のフローは多分に推測を含んでいる(権利化などの事情で詳しく書けない点があるのかもしれない。追って論文で明確になることを期待したい )。既知のタンパク質構造の教師データだけでは全く足りなくて、この工程を必要とするのだと思われる。が、下手をすると逆効果(精度劣化)を生じるだろうし、ドメイン知識を援用せざるを得ない点にもAlphaZeroとは違った困難さが顔を覗かせているように感じる。とは言え、そういった危険な隘路をくぐり抜けたからこそコンペで勝つことが出来たわけで、やはり手放しでお見事という他ない
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sitesirius · 5 years
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<p>「 #感染症 と #バイオセーフティー 」という課題で論文を書く機会がありましたので、ここに掲載します。<br/>
 <br/>
#感染症とバイオセーフティ 千葉科学大学危機管理学部教授 #吉川泰弘<br/>
Infectious diseases and #biosafety</p>
<p>1. はじめに<br/>
「感染症とバイオセーフティ」は、非常に密接な関係にある。感染症はヒトからヒトなどに感染する病原体に暴露され、体内で病原体が増殖し、宿主が異常を来した時、感染症に罹ったことになる。病原体に暴露されても感染が成立しない場合もあるし、感染しても発症しない( #不顕性感染 となる)場合もある。従って患者から病原体を分離することは非常に重要である。<br/>
感染症の原因となる感染病原体を実験室で安全に扱う方法(ハードとソフト)が #バイオセーフティ ということである。病原体の危険度に応じてリスクレベルが4グループに分類されており、それぞれのグループの病原体を安全に取り扱うための管理レベルがバイオセーフティレベル( #BSL1 ~ #BSL4 )である(安全管理のための封じ込めレベルとして #P1 ~ #P4 ともよばれている)。バイオセーフティは指針(ガイドライン)やマニュアルであり、法律ではない。<br/>
他方、感染症を統御する(予防、診断、治療、蔓延防止、再発防止)目的でつくられた法律が #感染症法 であり、病気の重要性に応じて1類から5類まで類型化されている。感染症の患者を見つけた場合の医師、看護師、獣医師(感染した特定の動物の届出)、行政官、動物取扱者等の役割が決められている。法律なので罰則規定を伴う。<br/>
感染症の病原体等を取り扱う規則は、感染症法に組み込まれており罰則規定を伴うが、この規則は、感染症統御ではなく #バイオテロ 防止を目的に整備された規則なので、テロに使用されるリスクの大きさに応じて病原体が第1種から第4種に分類されており、その取扱いについてはハード、ソフトの規定や申請・許可、届出、病原体輸送等に関する規則が定められている。これらのレギュレーションは、それぞれ目的が異なるので、同じ病原体であっても対応が異なる場合があり、しばしば病原体の取り扱いに関しては混乱が起きている。<br/><br/>
2、バイオハザート(註: #バイオハザード )と #バイオセーフティ<br/>
#バイオハザード ( #Biohazard 、#BiologicalHazard )は、 #生物学的危害 と訳されている。名の通り、生物に由来する有害性・危険性(物質)である。病原体は、これまでに多くの実験室での #感染事故 や #漏出事件 を引き起こしており、病原体の持つリスク(感染や事故を起こす確率と起きた時の影響の大きさ)のレベルを評価し、リスクを回避する方法を考えようというのが、 #バイオハザード の原点である。<br/>
かつては、病原体や感染性廃棄物がメインであったが、最近は、薬剤耐性遺伝子や遺伝子組換え体、 #生物兵器 も含まれるようになった。そのため、ハザードの観点よりも、リスク回避に主眼を置く立場から、 #バイオセーフティ や #バイオセキュリティ という言葉を使うようになった。最近ではバイオハザードという言葉はこの分野では、ほとんど使われなくなっている。しかし、多くのリスク評価では、ハザード(危害)の同定から始めており、リスク管理も #HACCP (ハザードアナリシス・クリティカルコントロールポイント、 #危害分析重要管理点 )のように、リスク科学では現在でもよく使われる言葉である。表1に実験室における #感染事故 の事例を示す。</p>
<p>表1 ���験室感染事故の事例 倉田毅先生提供</p>
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<p><br/>
3、病原体の危険度:リスク群1~4 (BSL1~4)<br/>
 病原体の危険度の表現は、ガイドライン(NIH/CDC、WHO、国立感染症研究所など)によりリスク群、グループ、などと表現されているが、内容的には類似している。病原体は海外ではBSL(Biosafety Level)としても分類されている。<br/>
リスク群1(BSL1)は、正常で健康なヒト(動物)に病気を発生させる見込みがないもの、病原体等取扱者および関連者に対するリスクがないか低リスクのものである。ここでいう関連者とは、病原体等取扱者との間に感染の可能性のある接触が、直接あるいは間接的に起こりうるその他の人々をいう。通常の環境に存在し、病原性がほとんどない微生物や弱毒化したワクチン株などが含まれる。<br/>
リスク群2(BSL2)は、病原体等取扱者に対する中等度リスクをもち、関連者に対する低リスクの病原体である。具体的には、ヒトあるいは動物に感染すると疾病を起こし得るが、病原体等取扱者や関連者に対し、重大な健康被害を起こす見込みがないもの。また、実験室内の曝露が、ときに重篤な感染を起こすこともあるが、有効な治療法、予防法があり、関連者への伝幡のリスクが低いもの。一般的には、人々の間でみられている感染症の病原体で、普通の生活の中で感染し、発症することもあるが、すでに多くのヒトが免疫をもっているものであり、適切なワクチンの接種などにより感染も容易に予防できるものが入る。この群の病原体の多くは経口感染、経皮感染、経粘膜感染を起こすが、空気感染やエアロゾル曝露により、飛沫核感染を起こす可能性は低い。<br/>
リスク群3(BSL3)は、病原体等取扱者に対する高リスクで、関連者に対する低リスクの病原体。ヒトあるいは動物に感染すると重篤な疾病(致死的な感染を起こす場合もある)を起こすが、通常、感染者から関連者への伝幡の可能性が低いものであり、有効な治療法、予防法があるもの。また環境中にいる病原体で、エアロゾル曝露により、飛沫感染の可能性が高く、正しい予防対策と治療により対応できるもの。<br/>
リスク群4(BSL4)は、病原体等取扱者及び関連者に対する高リスクのものである。ヒトあるいは動物に感染すると重篤な疾病を起こし、感染者から関連者への伝幡が直接または間接に起こりうるもの。通常、有効な治療法、予防法がないものである。一般には、多くの人は曝露される機会がほとんどなく、あえてそれが存在する地域へ渡航しない限り感染の機会がない病原体である。<br/><br/>
4、病原体のリスク群(BSL)分類例<br/>
 以下にリスク群2~4(BSL2~4)の代表的な病原体を挙げる。リスク群1(BSL1)は2~4に入らないものである。<br/>
 リスク群2(BSL2)の細菌:ブタ胸膜肺炎菌、Actinobacillus suis、牛放線菌、アエロモナス・ハイドロフィラ、アナプラズマ属(Anaplasma bovis、A. ovis、A. phagocytophilum他)、炭疽菌(34F2株)、セレウス菌、Bacteroides fragilis、バルトネラ属(Bartonella bacilliformis、猫ひっかき病菌他)、ボルデテラ属(気管支敗血症菌、百日咳菌他)、ボレリア属全種(ライム病菌他)、キャンピロバクタ―属(Campylobacter coli、C. fetus、C. jejuni)、カプノサイトファーガ属(Capnocytophaga canimorsus、C. cynodegmi他)、クラミジア科(Chlamydia trachomatis、流行性羊流産菌、ネコクラミジア、肺炎クラミジア、オウム病菌)、クロストリジウム属(ボツリヌス菌、気腫疽菌、ディフィシル菌、ガス壊疽菌、破傷風菌他)、コリネバクテリア属(ジフテリア菌、ネズミコリネ菌、ヒツジ偽結核菌、ウルセランス菌他)、エーリキア属(Ehrlichia canis、E. chaffeensis、E. muris)、バンコマイシン耐性腸球菌(Enterococcus faecalis、E. faecium)、豚丹毒(類丹毒)菌、大腸菌(腸管,尿路等における病原性株)、フランシセラ属(Francisella novicida、F. philomiragia、野兎病菌)、壊死桿菌、ヘモフィルス属(Haemophilus aegyptius、インフルエンザ菌、ブタパラインフルエンザ菌)、ヘリコバクター属(Helicobacter bilis、H. felis、H. hepaticus、 ピロリ菌他)、クレブジエラ属(Klebsiella granulomatis、肺炎桿菌)、Lawsonia intracellularis、レジオネラ属全種、Leptospira interrogans、リステリア属(Listeria ivanovii, リステリア菌)、Mannheimia haemolytica、ミコバクテリア属(鳥型結核菌、仮性結核菌、牛型結核菌(BCG 株)、M. caprae、M. intracellulare、M. kansasii、ハンセン病菌、M. marinum、M. simiae他)、マイコプラズマ属全種(M. mycoides subsp. mycoides を除く)、淋菌、髄膜炎菌、ネオリケッチア属(Neorickettsia risticii、ネオリケッチア・センネツ)、 ノカルジア属(Nocardia abscessus、 N. arthritidis、 N. brasiliensis、 N. niigatensis他)、 パスツレラ属(Pasteurella multocida:出血性敗血症又は家きんコレラ由来ではない株、 P. pneumotropica)、緑膿菌、Rhodococcus equi、サルモネラ属全種(パラチフスA菌、チフス菌、ネズミチフス菌他)、セラチア菌、赤痢菌属全種、ブドウ球菌属(Staphylococcus aureus subsp. anaerobius、黄色ブドウ球菌)、連鎖球菌属(Streptococcus agalactiae、S. canis、腺疫菌、S. equi subsp. zooepidemicus、肺炎球菌、S. suis他)、トレポネーマ属(梅毒菌、T. pertenue)、Ureaplasma urealyticum、ビブリオ属(コレラ菌、V. mimicus、腸炎ビブリオ菌、V. vulnificus他)、エルシニア属(腸炎エルシニア菌、偽結核菌)など<br/>
 リスク群2(BSL2)の真菌: アスペルギルス属(Aspergillus flavus*、A. fumigatus、A. parasiticus*)、Candida albicans、Cladosporium carrionii、C. trichoides、クリプトコッカス属 (Cryptococcus gattii、C. neoformans)、Epidermophyton floccosum、Exophiala dermatitidis、Fonsecaea pedrosoi、フサリウム属全種*、微胞子属全種、ペニシリウム属全種*(P. marneffei を除く。) ニューモシスチス属全種、 Sporothrix schenckii、トリコフィトン属全種(*は毒素産生株に限る)。<br/>
リスク群2(BSL2)の原虫:アカントアメーバ属全種、バベシア属全種. Balamuthia mandrillaris、大腸バランチジウム、Besnoitia属全種、Buxtonella sulcata、Caryospora属全種、クリプトスポリジウム属全種、Cyclospora 属全種、アイメリア属全種、エントアメーバ属全種、ジアルジア属全種、Haemoproteus 属全種、Hammondia hammondi、 Hartmannella 属全種、ヘパトシスチス属全種、へパトゾーン属全種、ヘキサミ��属全種、 ヒストモナス・メレアグリディス(黒頭病)、イソスポラ属全種、レーシュマニア属全種、 ロイコチトゾーン属全種、微胞子虫門全種、ネグレリア属全種、Neospora caninum、 腸トリコモナス、プラスモジウム属全種、住肉胞子虫属全種、七面鳥トリコモナス、タイレリア属全種、トキソプラズマ、膣トリコモナス、牛胎児トリコモナス、トリパノソーマ属全種<br/>
リスク群2(BSL2)の寄生虫(下線の寄生虫を除く以下の寄生虫属全種):Abbreviata、 多棘刺縁吸虫、ネコ肺虫、Agriostomum、Alaria、アメーボテニア、鉤虫、住血線虫、アニサキス、裸頭条虫、回虫、Ascarops、Aspiculuris、Avioserpens、Avitellina、食肉類回虫、 ベルチエラ、Brachylaemus、ブルギア、ブノストマム、Calicophora、Camallanus、 毛細線虫、Chabertia、Cheilospirura、Choanotaenia、肝吸虫、Cooperi、Cordonema、Cotugnia、 Cotylurus、Craterostromum、クレノゾーマ、シアトストーマ、シリコシクルス、Cylicodontophorus、Cylicospirura、Cylicostephanus、Davaincoides、ダバイネ、犬毛包虫、二腔吸虫、肺虫、Digramma、腎虫、ディプタロネーマ、裂頭条虫、Diplogonoporus、 瓜実条虫、犬糸状虫、ドラクンクルス、ドラスキア、Echinocephalus、Echinochasmus、エキノコックス、棘口吸虫、Elaeophora、霊長類蟯虫、Euparyphium、Eurytrema、肝蛭、 Fascioloides、肥大吸虫、Filaroides、Fimbriaria、Fischoederius、ジアルジア、ウマバエ(馬蠅)、Gastrodiscoides、ギガントビルハルジア、Globocepharus、顎口虫、ゴンギロネーマ、Gyalocephalus、ハブロネマ、 捻転胃虫、ネズミ螺旋線虫、Heterakis、Heterobilharzia、 Heterophyes、Himasthla、平腹双口吸虫、矮小条虫、Hyostrongylus、Hypoderaeum、 Inermicapsifer、クドアセプテンプンクタータ、頸部膿瘍回虫、舌虫、リトモソイデス・シグモドンティス、ロア糸状虫、 マモモノガムス、マンソネラ、メシストシルス、有線条虫、メタゴニムス、ブタ肺虫、メトロリアセス、Microbilharzia、ミクロプレウラ、Microtetrameres、モリネウス、モニエジア、Muellerius、サケ吸虫、ネカトール、ネマトジルス、ブラジル鉤虫、Notocotylus、Oesophagodontus、腸結節虫、ウシバエ(牛蠅)、Ollulanus、オンコセルカ、オピストルキス、Ornithobilharzia、Orthocoelium、エソファゴストム、オステルターグ、Oxyspirura、馬蟯虫、パラフィラリア、肺吸虫、 Paramphistomum、Paranoplocephala、Parascaris、パリフォストムム、ウサギ蟯虫、壺形吸虫、フィロメトラ、フィロメトロイデス、フィサロプテラ、Physocephalus、 Plagiorchis、 Poteriostomum、Probstmayria、Prosthogonimus、Protostrongylus、シュードテラノバ、プソロプテス、有輪条虫、桿線虫、住血吸虫、旋尾線虫タイプ X、セタリア(指状糸状虫)、Simondsia、Skrjabinema、Sobolevicephalus、芽殖孤虫、Spirocerca、スピロメトラ、Spirura、 Stephanofilaria、Stephanurus、Stichorchis、Stilesia、糞線虫、円虫、 Suifilaria、開嘴虫、Synhimantus、齧歯類蟯虫、テニア、Tanqua、 テラノバ、Tetrameres、テラジア、 Thysaniezia、Thysanosoma、犬小回虫 トキソカラ、トリヒナ(旋毛虫)、トリコビルハルジア、毛様線虫、犬鞭虫、Triodontophorus、十二指腸虫、バンクロフト糸条虫など<br/>
リスク群2(BSL2)のウイルス(原則としてvirus、ウイルス略):アデノ、Aichi virus、悪性カタール熱、アポイ、アロア、Asama virus、鶏脳脊髄炎、鶏エンテロ、鶏E型肝炎、鶏メタニューモ(七面鳥鼻気管炎)、鶏パラミキソ(ニューキャッスル病を含む)、鶏オルソレオ、 鶏レトロ、鶏アストロ、鶏痘、ボルナ病、牛アストロ、牛エンテロ1,2、牛流行熱、牛ヘルペス1(伝染性牛鼻気管炎)、牛ヘルペス 2(牛潰瘍性乳頭炎を含む)、牛コブ、ウシ丘疹性口炎、牛RS、牛ライノ 1,2,3 15、牛ウイルス性下痢、犬ジステンパー、犬ヘルペス、鶏貧血症、牛痘、 #コロナ ( #SARS コロナを除く)、サイトメガロ、デング、アヒル肝炎、アヒルB型肝炎、アヒルヘルペス 1(アヒルペスト、アヒル腸炎)、エプシュタイン・バール、エクトロメリア、馬動脈炎、馬ヘルペス、馬ライノ(馬A型・B型鼻炎を含 む)、猫ヘルペス、猫モルビリ、Fukuoka virus、タマリンGB virus B、ゲタ、山羊痘、Hazara virus、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、G型肝炎、単純ヘルペス1,2、馬痘、ヒトアストロ、ヒトエンテロA, B, C, D、ヒトヘルペス 6, 7, 8、ヒト免疫不全:HIV1(増殖力等欠損株)、ヒトメタニューモ、Human parechovirus、ヒト呼吸器融合(HRS)、ヒトライノA、ヒトライノB、ヒトライノC、Ilheus virus、伝染性ファブリキウス嚢病、伝染性喉頭気管炎、 #インフルエンザ ( #高病原性株 を除く)、日本脳炎、Junin virus(Candid#1 株)、Khabarovsk virus、乳酸脱水素酵素上昇、Langat virus、Lagovirus、LCM(リンパ球性脈絡髄膜炎)、Ljungan virus、哺乳類レトロ(HIV1, 2 を除き、HTLV1, 2 を含む)、マレック病、麻疹、七面鳥ヘルペス、伝染性軟属腫、サル痘、ムンプス、ネズミヘルペス1, 2, 8, 4, 7、ネズミ肺炎(Pneumovirus of mice(PVM))、粘液腫、ナイロビ羊病、ネルソンベイ・オルソレオ、 ノロ、Oita virus、O'Nyong•Nyong virus、オルビ(アフリカ馬疫を除く)、 Orf virus、オルソブンヤ、羊ヘルペス1(羊肺腺腫症関連ヘルペス)、羊ヘルペス2、パピローマ、パラインフルエンザ(センダイウイルスを含む)、パルボ(アデノ関連ウイルスを除き、ヒトパルボB19 を含む)、Pichinde virus、Poikilothermal vertebrate retrovirus、ポリオ1, 2, 3、ポリオ―マ(メルケル細胞ポリオーマウイルスを含む)、豚アストロ、豚サーコ、豚エンテロ B(ブタエンテロ9,10) 、豚繁殖呼吸器症候群、Porcine sapelovirus、豚テンショー、Prospect Hill virus、偽牛痘、オウムコロナ、狂犬病(固定株及び弱毒化株)、Rio Bravo virus、 Ross river virus、ロタ、風疹、サポ、セムリキ森林(増殖力等欠損株)、羊痘、ショープ繊維腫、サルエンテロウイルス A、サルヘルペスウイルス(B•virus、Herpes ateles virus を除く)、シンドビス、オーエスキー病、ブタサイトメガロ、ブタポックス、ブタ水疱病、タカリベ、タナポックス、脳心筋炎、トロウイルス、 Thottapalayam virus、Torque tenovirus、 Tula virus、水疱瘡・帯状疱疹、水疱性口炎(Alagoas、インデアナ、ニュージャージー)、 Vesivirus、ウッドチャック肝炎、ヤバポックス、ヨコセ、牛疫(生ワクチン株)、ワクチニア(LC16m8 株を除く)、哺乳類のプリオン(海綿状脳症因子)、スクレイピー、牛海綿状脳症(動物実験BSE prion をマウスに感染させる場合は ABSL2 とする。ウシ型、ヒト型prion 遺伝子導入マウス、サル類に BSE prion を感染させる場合は、ABSL3。その他の動物 prion の動物実験は個別に考慮)、クロイツフェルトヤコブ病(動物実験は ABSL3)<br/><br/>
リスク群3(BSL3):病原体としては細菌、真菌、ウイルスで、原虫、寄生虫はない。<br/>
 リスク群3(BSL3)の細菌:主なものは、炭疽菌、ブルセラ属(全種)、Q熱(Coxiella burnetii)、野兎病菌、牛型結核菌、結核菌、ツツガムシ病(Orientia tsutsugamushi)、リケッチア属(Rickettsia felis、日本紅斑熱、Rickettsia prowazekii他)、チフス菌、パラチフス菌、ペスト菌<br/>
リスク群3(BSL3)の真菌:主なものは、ブラストミセス病(Blastomyces dermatitidis)、コクシディオイデス病(Coccidioides posadasii)、ヒストプラズマ属(全種)<br/>
リスク群3(BSL3)のウイルス:主なものは、コウモリリッサウイルス属、豚コレラウイルス、口蹄疫ウイルス、ハンタウイルス属、ヒト免疫不全ウイルス( #HIV )、 #高病原性鳥インフルエンザウイルス 、 #中東呼吸器症候群 ( #MERS )ウイルス、アレナウイルス属、小反芻獣疫ウイルス、狂犬病ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、牛疫ウイルス、 #SARS ウイルス、重症熱性血小板減少症(SFTS)ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、西ナイル熱ウイルス、黄熱ウイルスなど<br/><br/>
(註: #新型コロナウイルス #2019nCoV #covid19 は #BSL3に含まれる?)
リスク群4(BSL4):リスク群4(BSL4)の病原体は、すべてウイルスである。 #マールブルグ ウイルス、 #エボラ ウイルス属(全種)、 #ラッサ ウイルス、 #クリミア・コンゴ出血熱 ウイルス、 #天然痘 ウイルス、 #南米出血熱 ウイルス(全種)。これらはすべて #1類感染症 の病原体である。<br/><br/>
5、物理的封じ込めレベルの対応( #P1 ~ #P4 、 #BSL1 ~4)<br/>
レベル1( #P1 、 #BSL1 )は、普通の微生物実験室で、実験室は他から隔離されている必要はない。微生物実験では、飲食・喫煙は禁止する。一般外来者の立ち入りを禁止する必要はないが、16歳未満の者の入室を禁ずる。微生物取扱者は、病原体取扱い訓練を受けた者でなければならない。<br/>
レベル2( #P2 、 #BSL2 )は、P1の封じ込めに加え、実験室の扉には #バイオハザード の警告を表示する。P2実験室には許可された者のみが入室できる。実験者は白衣を着用しなければならない。実験中は窓及び扉をしめ、ロックする。微生物実験は基本的に生物用安全キャビネット(クラスII以上)内で行う。 #エアロゾル が発生しない作業はキャビネット外でも実施できる。実験室にある必要はないが、施設には滅菌用に #オートクレーブ が設置されていることが望ましい。<br/>
 レベル3( #P3 、 #BSL3 )実験室では、実験室の扉には、 #バイオハザード の警告が表示されなければならない。また、廊下等からの立ち入りは制限する。白衣などに着替えるための前室にはエアシャワーなどを設置しなければならない。入室時には前後のドアを同時に開いてはならない。実験者は、作業着または白衣を着用しなければならない。実験中は窓・扉を閉めなければならない。施設には #オートクレーブ が設置されていることが望ましい(実験室内にある必要はない)。生物学用安全キャビネット(クラスIIA以上)を設置し、作業は基本的に安全キャビネット内で行う。また、壁・床・天井・作業台などの表面は消毒・洗浄可能なようにする。排気系を調節し、常に外部から実験室内に空気を流入させる。実験室からの排気は、高性能フィルターを通し除菌した上で大気に放出する。動物実験は生物学用安全キャビネットの中 or #陰圧アイソレーター の中で行う。作業員名簿に記載された者以外の立ち入りを禁ずる<br/>
 レベル4( #P4 、 #BSL4 )実験室は、最高度安全実験施設である。 #P3 に加えて、 #P4 の実験室は他の施設から完全に隔離され、詳細な実験室の運用マニュアルが装備される。 #P3 レベルに加えて、①クラスIII安全キャビネットを使用しなければならない。②通り抜け式オートクレーブを設置する。③シャワー室を設置する。④実験室からの排気は高性能フィルターで2段浄化する。⑤防護服未着用での入室を禁ずる。 #P4 にはグローブボックス型とスーツラボ型がある。<br/>
 世界では40を超すレベル4( #P4 、 #BSL4 )の実験室がある。国内では #国立感染症研究所 と #理化学研究所筑波研究所 に設置されている。しかし、 #理化学研究所筑波研究所 ではレベル3 ( #P3 、 #BSL3 )までの運用に制限されている。近年、国際的には高度にグローバル化が進み、人や動物、物の移動が盛んになり、輸入感染症や越境感染症がしばしば起こっている。日本もその脅威の例外ではない。リスク群4( #BSL4 )の病原体等による感染症が発生した場合の対処への遅れや、感染症の研究不足が心配されている。西アフリカの #エボラ出血熱 の #アウトブレイク 、米国やスペインへの感染者の入国を受け、2015年8月に厚生労働省は国立感染症研究所のレベル4( #P4 、 #BSL4 )施設を稼働できるようにし、遺伝子・血清学的診断などのウイルス学的検査の対応が可能となった。また、長崎大学へのレベル4( #P4 、 #BSL4 ) 施設の設置に向けた協議が進んでいる。<br/>
#ABSL (動物を用いたバイオセーフティレベルの実験に関する対応)を以下の図1に示す。<br/><br/><br/>
図1 #ABSL :Animal Bio Safety Level<br/>
(病原体等取扱動物実験設備の #ABSL 分類、実験手技、安全機器及び施設基準)</p>
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<p> <br/>
6、 #感染症法 と病原体の関係<br/>
 #感染症法 は正式には、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」である。この法律には一般の法律と違って前文があり、概要は以下のように書かれている。「人類は、疾病、特に感染症により、多大の苦難を経験してきた。 #ペスト 、 #痘そう 、 #コレラ 等の感染症の流行は、時に文明を存亡の危機に追いやり、感染症を根絶することは正に人類の悲願と言える。医学・医療の進歩や衛生水準の著しい向上により、多くの感染症が克服されてきた。しかし、新たな感染症の出現や既知の感染症の再興により、また、国際交流の進展等に伴い、感染症は新たな形で人類に脅威を与えている。<br/>
一方、我が国では過去に #ハンセン病 、 #エイズ 等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、教訓として今後に生かすことが必要である。こうした感染症をめぐる状況の変化や感染症の患者等が置かれてきた状況を踏まえ、患者等の人権を尊重しつつ、良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症への迅速かつ適確な対応が求められている。こうした視点に立ち、これまでの感染症の予防に関する施策を抜本的に見直し、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する総合的な施策の推進を図るため、この法律を制定する」。ここでは旧式の差別を生む危険性のある感染症患者の隔離という方法よりも、予防医療に重点を置くこと、患者の人権を尊重すること、患者にとってはヒトから感染しようが動物から感染しようが苦痛は同じであるという考えから動物由来感染症を加えることとなった。20世紀後半に出現し、世界の脅威となった新興感染症の多くが野生動物に由来する感染症であったことも影響していると思われる。<br/>
 感染症法の特徴は、感染症を類型化し危機管理対応を決めることでもあった。1類から5類まで細分化すること、新興感染症などを時宜に合わせて追加、改廃するという柔軟な対応は、過去百年間法律を変えなったことへの反省から生まれている。約5年ごとの改定により、新しい感染症が数多く追加された。 #1類感染症 は #エボラ出血熱 、 #マールブルグ病 のようなウイルス出血熱など、最も厳しい対応の必要な感染症で、患者の指定病院への隔離措置を必要とする(病原体の扱いはリスク群4( #BSL4 ))。2類は重篤な呼吸器感染症などで病原体の扱いには、ほとんどがレベル3( #P3 、 #BSL3 )施設が必要である。3類は就業制限を必要とする腸管感染症であり、病原体の取り扱いはリスク群3~2( #BSL3 ~ #BSL2 )のものがある。4類はほとんどのものが動物由来感染症であり、病原体取扱はリスク群3~2( #BSL3 ~ #BSL2 )のものと多様である。5類は全数把握あるいは定点観察の必要な、主にヒトからヒトに感染する感染症で、やはり分離された病原体の取り扱いは、リスク群3~2( #BSL3 ~ #BSL2 )のものと多様である。<br/>
以下の図2に、1類から5類の感染症を示す。前述のリスク群2~4( #BSL2 ~ #BSL4 )の病原体と感染症の類型の関係を比較していただければ幸いである。</p>
<p>図2 1類から5類の感染症( #感染症法 の疾病類型化)</p>
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7、感染症法に基づく「特定病原体等の管理規制」とバイオテロ<br/>
 2001年9月11日の米国同時多発テロにより、国家同士の戦争とは異なる、一群の政治集団と国家の戦いというテロリズムが世界の人々に再認識された。その直後に、封筒入りの白い粉事件として起きた炭疽菌テロでは、18人が感染し肺炭疽により5人が死亡した。日本でもオウム真理教が1994年6月に松本サリン事件で150名の患者と7名の死亡、1995年3月の地下鉄サリン事件で5000名の患者と12名の死亡という無差別市民テロを行った。オウム真理教は、他にボツリヌス毒素、炭疽菌散布、エボラウイルスの入手などバイオテロを計画していた。<br/>
このようにバイオテロが現実に起こり、また、世界各国がテロの脅威にさらされている。日本でも天然痘ウイルス、炭疽菌、野兎病菌、ボツリヌス毒素などによるバイオテロが発生した場合の危機管理を検討することになり、その結果、「特定病原体等管理規制」として、バイオテロに使用される恐れのある病原体等の管理が規定され、感染症法に包含されることになった。管理規制の趣旨としては、以下の点が述べられている。<br/>
日本では国民の生命・健康に影響を与える恐れがある病原体等の管理が、研究者、施設管理者等の自主性に委ねられている。また、その適正な管理体制は必ずしも確立されていない状況にある。国際動向では、生物テロ(バイオテロ)に使用される恐れのある病原体等の管理強化が重要な課題となっている(動物由来感染症の病原体の80%はバイオテロに利用可能と言われている)。厚労省は生物テロに使用されるおそれのある病原体等で、国民の生命・健康に影響を与える恐れがある病原体等の管理の強化を実施するため、この規則を制定する。この規制は平成19年6月から施行(一部規制は経過措置を実施)する。病院(検査室)、研究所、大学、ワクチン製造企業などが主な対象となる。病原体等の管理は1種病原体から4種病原体に分類し、レベルに応じて所持や輸入等の禁止、許可、届出、基準遵守等の規制が設けられた。感染症法の疾病類型が感染症統御の重要性に基づく分類であるのに対し、病原体管理規制は病原体のバイオテロのツールとしてのリスクによる分類であり、病気でなく病原体そのものの取扱いに関する点ではバイオセーフティの指針と共通点がある。<br/>
「1種病原体等」は、エボラウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、痘そうウイルス等。「2種病原体等」は、SARSコロナウイルス、炭疽菌、野兎病菌、ペスト菌、ボツリヌス菌等。「3種病原体等」は、狂犬病ウイルスや多剤耐性結核菌などが含まれている。「4種病原体等」には、インフルエンザウイルス(H2N2)、黄熱ウイルス、腸管出血性大腸菌、鳥インフルエンザウイルス等が含まれる。<br/>
 特定病原体管理規制による保有病原体の種類と管理手続き、及び特定病原体取扱いレベル(第1種から4種)、感染症類型(第1類から5類)及び病原体の種類について、以下に図示した(図3、4)。<br/>
この図からわかるように、結核は2類感染症で、感染症対応としては1類感染症に次ぐ重要な感染症である。病原体は容易にヒト-ヒト感染を起こし、重篤化するのでレベル3(P3、BSL3)の安全管理が必要である。しかし、テロのツールとしてみると、多剤耐性結核菌が3種、結核菌は4種という並みの扱いになる。他方、野兎病は4類感染症であり、安全管理はレベル3(P3、BSL3)である。しかし、病原体取扱いは、SARSやペスト菌と並んで2種という特に重要な取扱いとなっている。</p>
<p>図3 特定病原体取扱い管理規制</p>
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<p>図4 病原体取扱い規制と感染症類型の関係</p>
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8. 終わりに<br/>
 動物やヒトの感染症の統御には、診断、治療および予防が必須である。そのために患者、患畜から病原体を分離し同定することは必要な条件である。どのような封じ込め(ハードとソフト)対応で安全に取り扱うか、また、病原体を取り扱うにあたって受ける法的規制と安全のためのガイドラインがどのように組まれているかを紹介した。<br/><br/>
#バイオセーフティ ・ガイドラインの作成の背景、 #感染症法 の策定の経緯、病原体取扱の目的は、それぞれ異なっているために、医師、獣医師、研究者や一般の人にとって病原体の取り扱いがわかりにくくなっていると思う。十分に解説できたかわからないが、病原体を分離する、あるいはした際に、確認のため、もう一度利用していただければ幸いである。<br/><br/>
#Infectious diseases and #biosafety have a very tight relationship. When the host is exposed to the #pathogen , the pathogen grows in the body, and the anomaly has occurred, the host become suffering from an infectious disease. If the host is exposed to the pathogen, however, the infection may not be established, and even if infection has occurred, there are cases that the disease does not occur (subclinical infection). So, it is important to isolate pathogens from the patients.<br/>
#Biosafety is the safe way handling pathogens of infectious diseases in a laboratory. Risk levels of the pathogens are classified into 1 to 4 groups according to the degree of their risk. &ldquo; #Biosafety levels 1 to 4&rdquo; are the safety control levels for safely handling the pathogens of each group. And the physical containment levels for safety management are also called #P1 to #P4. #Biosafety levels are guideline or manual, but these are not the   law.<br/>
The law for the purpose of controlling infectious diseases is the &ldquo;Act on the Prevention of Infectious Diseases and Medical Care for Patients with Infectious Diseases (Infectious Disease Law)&rdquo;, and it has been categorizing from 1 to 5 classes according to the importance of infectious diseases. The role of doctors, nurses, veterinarians, administrative officials and animal handlers is described in the law, when they find patients or animals with the infectious diseases. The law involves penalty provisions.<br/>
In addition, regulations dealing with the specific pathogens are incorporated into the Infectious Disease Law, and accompanied by penalty provisions. This regulation was settled not for controlling infectious diseases but for preventing bioterrorism. Therefore, pathogens are classified from 1st kind to 4th kind according to the magnitude of the risk used for terrorism. Regarding its handling, regulations concerning hard and software provisions, application and permission, notification, and pathogen transportation etc. are described.<br/>
Since each of these regulations has different purposes, the correspondence may be different even for the same pathogens. Consequently, confusion often occurs with respect to the handling of pathogens. I will show examples of pathogens and introduce methods for handling safety management.<br/><br/>
キーワード:<br/><br/>
#バイオハザード #Biohazard #バイオセーフティ #Biosafety #バイオセキュリティ #Biosecurity #バイオセーフティレベル 1~4(P1~4) #BSL 1~4(P1~4) #動物バイオセーフティレベル #ABSL #感染症法 Infectious disease law  #特定病原体取扱い規制 Specific pathogen handling regulation #バイオテロ #Bioterrorism </p>
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dezainnet · 8 years
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コープ・ヒンメルブラウが計画している嚢胞性線維症患者のための治療施設「ATMOS」(designboom) Coop Himmelb(l)au plans mediterranean resort for patients with cystic fibrosis (designboom)
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lastscenecom · 5 years
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2019年には、オランダの科学者らが嚢胞性線維症患者の尿から「プロト・プロトタイプ」の腎臓を作成し、いくつかの薬を使って実験を行なった。また同年12月初めにはカリフォルニア州の研究者らが、10カ月齢のミニチュア脳から発達段階の胎児のものと似た脳波が放出され始めたことを報告した(脳オルガノイドがもたらす倫理上の問題について、再検討するときかもしれない)。
銀河のマッピングに、瓶の中のミニチュア心臓──『WIRED』が選ぶ、2020年のサイエンス|WIRED.jp
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yotchan-blog · 7 years
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Yahoo!ニュース( December 31, 2017 at 08:48AM)
【ショパンの死因 やはり結核か】ショパンの死因には、有力とされる「結核」説以外に、「嚢胞(のうほう)性線維症」説もある。研究者が最新技術を用いて診断を行った結果、やはり死因は前者である可能性が大きいという。 https://t.co/NPK38nSCfH
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tonboeye · 7 years
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ティナ・ギブソン(Tina Gibson)とベンジャミン(Benjamin)が25年前の凍結受精卵で妊娠出産!ほぼ同い年の子供が出来た奇跡!年齢や赤ちゃんの写真は?
ティナギブソン(Tina Gibson)とベンジ��ミン(Benjamin)夫婦が奇跡に遭遇!25年間凍結保存されていた受精卵を移植し無事エマちゃん( Emma Wren Gibson)を出産!科学史上初 2人に訪れた奇跡のストーリーとは? アメリカ・テネシー州東部に住むティナ・ギブソンさん(26歳)と33歳のベンジャミンさんは夫婦で子供を望んでいましたが、夫ベンジャミンさんは不妊の原因となる嚢胞性線維症を患っていたため子供を作ることができませんでした。 受精卵の里親(embryo adoption)という方法があることを知り、凍結胚移植を決断。たまたま選んだ受精卵が25年前のものだったといいます。夫婦は健康で自分たちの遺伝子に似た受精卵(胚)を300余りの提供者のリストから選んだと言います。…
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iryouhoken · 7 years
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米FDA 嚢胞性線維症治療薬Kalydecoの適応拡大を承認ミクスOnline米食品医薬品局(FDA)は5月17日、嚢胞性線維症治療薬Kalydeco(イバカフトル)について、同剤の投与対象となっている患者が持つ嚢胞性線維症貫通調節因子(CFTR)遺伝子変異を10種類から33種類に拡大することを承認した。拡大した適応は、臨床試験およびinvitro試験 ...
http://news.google.com/news/url?sa=t&fd=R&ct2=us&usg=AFQjCNFcWu_Byvatltb030YW-Y8yuunmvg&clid=c3a7d30bb8a4878e06b80cf16b898331&ei=cpYkWai5LtTN3QG9uZ6IDg&url=https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/57528/Default.aspx
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hiroyuki93-blog1 · 7 years
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ガングリオン
関節近くにある膜や粘液嚢胞にゼリー状の液体がたまる弾力性の腫瘤で、超音波検査上は低エコーの病変である。液体は穿刺吸引が可能である。内容物が線維化すると硬結と触知され、やや高エコーとなり穿刺吸引できなくなる。無症状だが、神経や腱を圧迫すると痛みを生じる。若い女性の発症率が高い(メルクマニュアル家庭版によれば男性の3倍)と言われている。発症メカニズムは現在も詳しくは分かっていない。「軟骨が出てきた」と誤解されている場合がある。
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blog-tsutomu · 7 years
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女性のメタボリックシンドロームと言われる多のう胞性卵巣(PCOS)を以前からずっと研究テーマにしているスウェーデンのエリザベート・ステナー・ヴィクトリン先生らのレビューです。全文無料でPDFをダウンロードできます。 わからないところは原文をそのまま後ろに残してあります。さしあたり訳してみただけの感じなのでわからないところはわからないままにしないようにしようと思います。とりあえずあげておきます。
レビュー:多のう胞性卵巣症候群:鍼灸の排卵誘発効果とそのメカニズム Julia Johansson 、Elisabet Stener-Victorin
要約
多のう胞性卵巣症候群(PCOS)は出産���齢期の女性に最も���く見られる内分泌疾患で高アンドロゲン血症、排卵障害、多のう胞性卵巣 (PCO)を特徴とする。PCOSは排卵が少ないために起こる女性不妊の主たるもので排卵の管理や月経障害は高額なPCOS治療費の1/3を占めている。 出産に関わる疾患への現行の薬物及び外科的治療は効果があるが心血管合併症や多胎妊娠などの負の副作用に、関連がある。PCOS女性の月経不順と排卵誘発に鍼灸は 効くとされてきた。興味深い結果にも関わらずコントロール群のないトライアルもあるが、このレビューはPCOSの女性での月経障害の調整や排卵誘発のための鍼のランダム化コントロールトライアルの結果にフォーカスしている。より機械的に説明できる見方が提供できるならば、動物実験研究についてもさらなる議論が行われるようになるだろう。
イントロダクション
PCOSは70年以上前から認識されたきたが、まとまった定義がなく、その診断は未だに議論の要因となっている。最も最近では国立衛生局(NIH)、ロッテルダム、高アンドロゲン血症とPCOS協会(AES)の診断基準が臨床で利用されている(table1)。その結果として有病率はまとめるのが困難となり、使われた定義や測定された集団の民族性によって変わる。ほとんどの研究は6〜15%と報告しているが、用いられた診断基準によって20%となることもある[1–3]。定義の違いはPCOSという病気の重症度の幅を広くし、異なる診断基準が用いられた研究を比較する際の懸念材料となる。最近行われたNIHのPCOSに関するワークショップではあらゆるこの先の臨床研究でPCOSのタイプをはっきりと報告するよう勧めている[4, 5]。
PCOSの病態生理と原因
その高い発症頻度にもかかわらずPCOSの原因は不明のままである。臨床症状や生化学的な特徴の不均一性によってPCOSは単疾患であるのか複合疾患であるのかという議論もされてきた。PCOSの症状はしばしば思春期に現れるが、大本は胎生発生期には既にプログラムされているかもしれない [6–8]。PCOSの最も一般的な特徴のひとつはPCOSの女性の85%に現れるインスリン抵抗性である [9]。PCOSの特徴は他にアンドロゲン値の上昇であり、PCOSの女性の60-80%に見られ、多毛、にきび、いくらかの人には脱毛症、といった臨床兆候が現れる[10]。PCOSではアンドロゲン、エストロゲン、性ステロイド前駆体の血中濃度が高くなり、グルクロン酸抱合されたアンドロゲン代謝産物がガスクロマトグラフィー液体クロマトグラフィータンデム質量分析(GC-MS/MS)により証明される[11]。PCOSでのアンドロゲン過剰の大部分は卵巣由来であるが、いくらかは副腎に由来する[12]。PCOSによく見られる高インスリン血症は性ホルモン結合グロブリンの産生を阻害し、さらなる血中遊離アンドロゲン値の上昇に寄与する[13]。Figure1にはPCOSの病態生理が要約してある。
Figure1:PCOSの病態生理の要約。(1)PCOSの高アンドロゲン血症の大部分は卵巣アンドロゲンである。高アンドロゲン血症は卵巣の変化への直接的な作用と(2)卵胞刺激ホルモンが少ないことに関連して、下垂体黄体形成ホルモンのパルス周波数と振幅を増加させる作用がある。(3)さらに副腎のアンドロゲンはPCOSのアンドロゲン過剰に寄与する。(4)代償性高インスリン血症を伴うインスリン抵抗性は卵巣のアンドロゲン産生を促進させ、(5)肝臓での性ホルモン結合グロブリンの産生を減少させ、どちらも生体利用可能なアンドロゲンの貯蔵を増加させる。(6)PCOSは高テストステロン血症、インスリン抵抗性、肥満に関連した筋交感神経活動の増加にも関係がある。(7)おそらく遺伝子の異常がPCOSの病態に寄与する。
LH:黄体形成ホルモン、 FSH:卵胞刺激ホルモン、SHBG: 性ホルモン結合グロブリン、DHEA:デヒドロエピアンドロステロン、DHEAS:デヒドロエピアンドロステロン硫酸
アンドロゲンはPCOSで中心的な位置を占めており、卵巣の携帯に密接に関連し、動物モデルや女性から男性への性転換者におけるPCOSのような状態の原因として十分である [14, 15]。アンドロゲンとインスリンはPCOSの重要な根底にある原因として存在している。いつどこで病態が事実上始まるのかがわかっていないため、いくつかの異なる仮説が存在する。出生前の男性化はPCOSの原因に関する確立された仮説を説明していて、サル、ヒツジ、げっ歯類での動物モデルに基づいて、出生児でのPCOSのいくつかの特徴を与えている[16–19] 。しかしヒトでは妊娠したPCOSの女性で高アンドロゲン血症は見つかっているが[20]、たった一つの研究がPCOSの母体からの新生児の臍帯静脈血中でテストステロン値の増加が質量分析でなく免疫測定法で測定することにより発見しているだけである[21] 。アンドロゲンへの思春期前の被曝が思春期の症状の発現に由来するもう一つの仮説であり[7, 8] 、それによりいくつかのPCOS動物モデルが開発されてきた[22–24] 。 診断基準には関係がないが、PCOSはインスリン抵抗性、高インスリン血症、2型糖尿病、脂質異常症 [25, 26]と強い関連があり、過体重や肥満となっているPCOSの女性の頻度は高い[27] 。アンドロゲンとインスリンのどちらも思春期に増加するので、これら2つはPCOSにおいて重要な役割を担っていると考えられている。
どちらも寄与していそうであるが、一体どちらが病因により関連しているのかはまだ不明である [7, 8]。
遺伝については別として、卵巣ステロイド産生の変化 [28, 29] 、交感神経活動の増加 [30]が原因となるメカニズムに関与するものとして言及されている。
2.1. PCOSの神経内分泌機能不全
PCOSでは視床下部-下垂体-卵巣(HPO)軸が大規模にレビューされてきた[31–34]。異常な卵胞を調節するPCOSの最も明白な神経内分泌的な特徴は少ない卵胞刺激ホルモンの分泌に関連した周波数と増幅の両方に関する黄体形成ホルモンの拍動性の増加である[35–39]。黄体形成ホルモン拍動性の周波数の増加は 低卵胞刺激ホルモン値が卵胞の成熟化と排卵を障害するのに対し、アンドロゲンの卵胞膜細胞産生を増加させる。PCOSでの黄体形成ホルモンの過剰分泌の原因はおそらくゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の分泌の増加というよりはGnRHへの下垂体の感受性の促進あるいはGnRH分泌パターンの変化による[35, 39, 40] 。おそらく慢性的なエストロゲン被曝によるPCOSでのエストロゲンとプロゲステロンのネガティブフィードバックは視床下部のパルス発生装置の後天的な感受性の障害の結果であるようだ [35, 38, 39, 41]。PCOSでの卵胞刺激ホルモン(FSH)値は低値あるいは低い卵胞領域(?)内のようであり、GnRHへの反応は排卵の調整に比較的似ている[35]。性ステロイド産生の変化、代謝機能異常、肥満は黄体形成ホルモン分泌パターンの変化によるものかもしれない。
高アンドロゲン血症そのものはゴナドトロピン分泌と粘稠サークルの原因となる卵巣アンドロゲン産生をさらに増加させるプロゲステロン/エストロゲンのネガティブフィードバックへの視床下部の脱感作を起こすかもしれない[42, 43]。そのメカニズムは不明だが[44–46]、BMIの増加は黄体形成ホルモン分泌の鈍麻効果を持ち[36, 39]、高インスリン血症とインスリン抵抗性は(卵巣ゴナドトロピン刺激性性ステロイド産生の促進による)直接的あるいは間接的に異常なゴナドトロピン分泌に寄与するかもしれない。これらのすべての要素が遊離アンドロゲン値を増加させ、無排卵を起こす。
2.2. PCOSでの卵巣機能障害
PCOSの卵巣機能障害は早期の卵胞成長の過剰と異常な後期段階で起こる期待された成熟以前の卵胞成長の停止による [47]。排卵前に残る主席卵胞の分泌不全を伴う卵胞成長パターンはPCOSと卵巣形態の特徴の一つである。PCOSの卵巣機能障害は臨床的に少/あるいは無排卵と同様に2-9mmの小さな胞状卵胞の集積として描写されるこれらの多嚢胞性卵巣という形態学的な特徴と関連がある。PCOSにおける 少/あるいは無月経という月経不順の頻度は用いられた診断基準によるが、およそ75%である[10]。もしわれわれがNIHの基準を用いればもちろんすべての患者は月経不順を経験する。最終的に妊娠困難のために不妊の原因となる不規則な排卵が認められるだろう。
さらに卵胞の異常は他にもあり、そのほとんど一致する特徴はアンドロゲンの過剰分泌である[48]。卵巣ステロイド産生は成長中の卵胞での卵胞膜と顆粒膜細胞の緊密な連携に基づき、ゴナドトロピンの入力を必要とする(Figure 2) [49]。卵胞膜細胞はΔ4あるいはΔ5経路のいずれかによってコレステロールからアンドロステンジオンを産生し、エストロンやエストラジオールへの変換は顆粒膜細胞を含むアロマターゼチトクロムP-450ヒドロキシラーゼ(CYP19)が独占的に認められる[50]。PCOSの女性は内卵胞膜の肥厚があるようで、卵胞膜細胞の厚い層がアンドロゲンステロイド産生の原因となっているようである。その上、それぞれの卵胞膜細胞は黄体形成ホルモン受容体を多く発現しており、黄体形成ホルモン刺激への感受性が高くなっている [33, 50, 51]。
卵巣内に卵胞細胞を集めて成長させる、PCOSでの卵胞発生障害の原因となりうる局所的なセレクターが存在している。抗ミュラー管ホルモンは早期の胞状および前胞状卵胞によって発現するが、発生の後期段階にはなく、卵胞プールのサイズと活性を反映している[52, 53]。原始卵胞の成長プールへのリクルートメントの調節におけるその関連を示すエビデンスがあるが、おそらく顆粒膜細胞の卵胞刺激ホルモンへの感受性の低下によるものである[54]。遺伝子の除去が比率を増加させるのに対して、抗ミュラー管ホルモンを卵巣培養に加えると成長している卵胞の数が減る[55, 56]。無排卵のPCOSにおける小さな始原的な移行期の卵胞において、抗ミュラー管ホルモンタンパク発現は減少すると報告されている[57]。これが成長中の卵胞の不適切なリクルートメントの原因かもしれない。さらにPCOSの女性の血液循環と胞状卵胞液の両方において抗ミュラー管ホルモン値は上昇しており、これらは治療に対する乏しい生殖反応性に関係している [58–63]。これらの高い血中濃度は発現の増加に代わる顆粒膜細胞の上昇を反映したものかもしれない。このように高い抗ミュラー管ホルモンの値は卵巣刺激ホルモンやエストラジオールの値が低いことと関連しており、抗ミュラー管ホルモンの過剰はPCOSにおいて卵胞の停止の特徴となる卵巣刺激ホルモンによるアロマターゼ活性の不足に関係があると示唆されてきている[62, 64]。さらにテストステロンの被曝は培養された低分子のウシの卵胞の顆粒膜細胞で抗ミュラー管ホルモン発現をダウンレギュレーションし、おそらくPCOSのメカニズム的な根本を表している [65]。
卵巣インヒビンは卵巣で発現し、卵胞刺激ホルモン値を抑制する調節因子として作用する。卵胞刺激ホルモン値の上昇への反応として、インヒビンAが主席卵胞で選択的に産生されるのに対して、インヒビンBは卵胞期の初期に小さな発生中の卵胞で多く発現する。なのでインヒビンBは総卵胞数に関係があり、卵胞の質のマーカーになりうる[66]。しかしインヒビンは卵胞膜細胞でエストラジオール産生のためのアンドロゲンの産生合成を刺激する局所作用もある[66-68]。大部分のPCOS研究は基礎循環インヒビンB値の違いを見出してはいないが、FSHへの反応の異常と増加を見出している。正常な基礎値はPCOSでFSH分泌が減少することによって、あるいは卵胞の質が低いことによって説明されうる。FSHへの反応の増加は単純に前胞状卵胞や小さな胞状卵胞の数の増加によるものであろう[67-70]。その上、PCOSの排卵の停止は卵胞液中のインヒビンAとインヒビンBの値の減少に関係があり、成長中の卵胞内でそれらのプールが増加するが、卵胞発生の障害における可能性のあるアクターとなりえることから、どちらも正常循環値を説明できる(訳が変で意味不明)[71]。 原文はこれ↓ Moreover, /follicular arrest in PCOS/ is associated with /reduced levels of both inhibin A and inhibin B /in follicular fluid, /which/ both/ could explain/ the normal circulating levels /although /their increased pool of growing follicles/, but also /making these /to possible actors in the impaired follicle development[71].
その上、卵胞発達の障害においてインヒビンAとBがその関連因子となる可能性があるだけでなく、成長中の卵胞での蓄えが増加しているとしても、PCOSでの卵胞の停止は卵胞液中のインヒビンAとインヒビンB値の減少と関連があり、これらは正常な血中濃度を説明できる[71]。PCOSにおける血中基礎インヒビンBを測定する診断的価値を示すエビデンスは低い[67,72]。 まとめると、PCOSにおける卵胞形成とステロイド産生には様々な要因があるようであり、おそらくアンドロゲン、インスリン、神経内分泌の変化などの卵巣以外の要素と卵巣内の局所的かつ固有的要素によって影響される。
2.3. 交感神経活動の増加
自律神経系は交感神経と副交感神経の2つからなり、神経伝達物質であるノルアドレナリンとアドレナリン、そしてアドレナリン受容体の活性化によりコントロールされる。正常な、健康な状態では、これらのバランスは良好であり、ホメオスタシスが確保されている。多嚢胞性卵巣や高インスリン血症に関連したインスリン抵抗性、中心性肥満、高血圧などの伝統的なPCOSの要素の多くは交感神経活動性の増加に関連がある[73-76]。それゆえに(交感神経活動性の増加は)この疾患の病因の少なくとも一部分を説明することが示唆されてきた[74,75,77]卵巣の交感神経刺激伝達の増加はカテコラミン作動性神経線維の密度の増加、NGF産生の増加そしてカテコラミン代謝の変化、そしてPCOSの卵巣での取り込みなどの臨床的エビデンスによって支持されるPCOSでの卵胞発達の障害の原因となるかもしれない[75,78,79]
運動後の心拍の回復と心拍変動は自律神経機能の非侵襲的なマーカーとして用いられる。PCOSの女性での測定はそれらがおそらく副交感神経要素の活動性の減少と交感神経要素の増加により、自律神経機能においてダイナミックに活動性を減少させていることを示している[80-83]間接的な測定法も存在するが、それらの正確性には疑問がある。そこでわれわれはPCOSの女性ではテストステロン値の上昇に関連して交感神経活動性が増加している筋交感神経活性(MSNA)の直接的かつ信頼性のある測定法としてマイクロニューログラフによって証明を行なった[30]。
0. PCOS: よく編成された病因論
アンドロゲンはPCOSの病因論において中心的な役割を果たしている。アンドロゲンは単独でこの疾患で障害される系の大部分に作用し、動物モデルや女性から男性への性転換者においてPCOSのような状態を呈すのに十分である[14, 15, 17–19, 84–86]。しかしこれらの変化はそれら自身をさらなる高アンドロゲン状態にしてしまう。その結果、それがいつ始まるのかは明らかではないが、個々がお互いを増強し悪循環が形成される。 PCOSでの高アンドロゲン血症は主に卵巣に由来し、卵巣ゴナドトロピン刺激性性ステロイド産生への効果を促進させるのと同様に、性ステロイドフィードバックシステムを介してゴナドトロピン分泌の上昇により中心的な作用を持つ [12, 42, 43]。アンドロゲンはまた直接的に卵胞発達と成熟を障害し、それによって多嚢胞性卵巣とアンドロゲン産生細胞の卵巣プールの原因となる[12]。これらは両方ともさらなる卵巣アンドロゲン産生と遊離血中アンドロゲン値の上昇させる加えて、そのメカニズムは完全には明らかではないが、副腎におけるアンドロゲン産生はPCOSでのアンドロゲン過剰の原因となる[87, 88]。
アンドロゲン過剰はインスリン抵抗性の第1の原因ではないかもしれないが、アンドロゲンはアテローム形成性の血中脂質プロファイル、脂肪細胞サイズの拡大、末梢インスリン抵抗性の増大と関連がある[89–91]。その上、肥満と共にこのことは2型糖尿病と心臓血管病(CVD)のリスクを増大させる[27]。アンドロゲンと同様にインスリン抵抗性と高インスリン血症は卵巣ゴナドトロピン刺激性性ステロイド産生を促進させ[12, 44–46] 、メカニズムは明らかではないがゴナドトロピン分泌異常の原因となるかもしれない[44–46]。高インスリン血症はまた生物的に利用可能な遊離性ステロイドの量を増やす肝臓での性ホルモン結合グロブリン(SHBG)の産生も減少させる[13]。
PCOSはMSNAの上昇に関連があり、特に興味を引くのはテストステロン濃度が強力な独立した予測因子となることが知られていることである[30]。交感神経活動性の増加は高インスリン血症を伴うインスリン抵抗性、中心性肥満と高血圧に関連があり[73–76] 、心臓血管病リスクの増大の原因となりうる[30]。さらなるアンドロゲン産生と多嚢胞性卵巣を生じうる[93]、卵巣への交感神経活動性の増加を支持するエビデンスもある[75, 78, 79, 92] 。これまでに示した要素はさておき、症例や症状の家族的な集合を伴う強力な遺伝的要素があり[94, 95] 、それはおそらくPCOSの病因と関係がある。要するに、PCOSは悪循環の中のそれぞれの要素が強く影響し合って病態を形作っていて、病因を個別に分けるのは困難である。
4.鍼灸メカニズムの仮説
鍼灸は現在より多くの症状の治療のため、西側世界で広く行われている[96]。比較的安全な治療で副作用がほとんどない[97]。
ツボあるいは経穴と呼ばれる身体中の領域で細い鍼を皮膚内や筋内に当てる鍼灸は伝統漢法医学(TCM)に由来する。 それから鍼を回旋させたり雀啄したりしててで刺激を加える。これをマニュアル鍼灸と呼ぶ。 電気を応用し、2本の鍼を電極にして電流を通すことで刺激を加える。これを電気鍼(EA)という。筋収縮を起こす強さの低周波(1-15Hz)電気鍼は運動作用に類似の生物学的作用を獲得すると考えらている。 西洋の科学的視点からの鍼灸は経穴特異性を確かめることはできず、代わりに相当する体節レベルでの求心性感覚神経線維の活性化を伴う作用を説明する[98, 99]。鍼灸は末梢(局所)、体節(脊髄内)、中枢神経系(CNS)内の上脊髄レベルで神経伝達路を活性化し調節する。 Figure 3 はPCOSでの鍼灸の作用を説明するメカニズムの仮説をイラスト化したもの。
Figure 3 : PCOSにおける鍼灸メカニズムの仮説の模式的な説明 (1)骨格筋での鍼灸針の刺激は求心性感覚神経線維を活性化する伸展受容器を興奮させる。これらのシグナルは脊髄に伝達される。(2)同じ神経支配の標的臓器への交感神経性出力の調節が脊髄反射を介して起こりうる。(3)シグナルは上脊髄経路を介して中枢神経系に届き、中枢神経系の効果を発現する。視床下部のβエンドルフィンが鍼の効果に関係している。βエンドルフィンは自律神経系を調節するだけでなくゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)とコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)の放出にも変化を及ぼしうる。(4)これらは生殖機能(黄体形成ホルモンや卵胞刺激ホルモン)に、副腎機能(ACTH)に、膵臓機能(循環βエンドルフィン)への効果を可能にしうる。
末梢レベルから始めてマニュアルと電気刺激はどちらもブドウ糖の取り込みと微小循環を増加させた[100-103]。鍼が刺入され、刺激された時に末梢神経終末は神経ペプチドY(NPY)、血管作動性腸管ポリペプチド(VIP)、サブスタンスP、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)といったいくつかの神経ペプチドを放出し、後ろ2つが関連するであろう即時的な微小循環の増加を伴う局所反応をもたらす[100, 104, 105]。その上オピオイド拮抗薬であるナロキソンを加えた場合のデータは低周波電化鍼は末梢でのオピオイド放出を刺激することも示している[106]。
機械的な圧力や歪みの反応する機械受容器は筋収縮によって活性化され、マニュアル及び電気刺激への身体の反応に関係がある[107, 108]。マニュアル及び電気刺激による機械受容器の活性化は感覚神経線維であるミエリン化Aα、δ、無髄のC線維を活性化させる[109, 110] 。これらのシグナルは脊髄(体節レベル)に伝達され、鍼が置かれたのと同じ神経支配の標的臓器への交感神経出力を調整する [111]。重要なことにこれらのシグナルは中枢神経系(CNS)内の上脊髄経路を介してコントロールされる[112]。
鍼灸の鎮痛作用は広範囲に研究され、広く利用されている。 中枢神経系内の内因性のオピオイドの関与が鎮痛を引き起こし、血圧を低下させる作用を仲介することが示されてきた[113–116]。末梢求心性神経終末や侵害受容と痛みに関連した中枢神経系内の領域でμ、δ、κの3つのオピオイド受容体が見つかっている[117, 118]。プロオピオメラノコルチン(POMC)の分解産物のひとつであるβエンドルフィンはμ受容体に高い親和性を持って結合し、特別な注意を引いている[117]。視床下部内基底側の弓状核で産生されたβエンドルフィンは中枢神経系内に放出されるが、下垂体でも産生され、末梢循環中に放出される[119–121]。下垂体で産生されたβエンドルフィンは痛覚と自律神経機能に影響を及ぼす中脳(特に中脳水道周囲灰白質)と脳幹の核に放出される[120, 121]。自律神経機能への作用は血圧調整と筋交感神経活動性(交感神経緊張のマーカー)を伴う血管運動中枢への作用を含む[122]。その他の系もコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)によって視床下部のコントロール下にあり、POMCが同量のβエンドルフィン、メラノサイト刺激ホルモン、副腎刺激ホルモン(ACTH)に分解され、循環中に放出される[123]。2つの系は独立しているが、鍼灸針のマニュアル及び低周波電化鍼の刺激や運動などの求心性神経の活性化によって活性化される[120]。
βエンドルフィン系は生殖機能、鎮痛、ストレス反応、炭水化物代謝など、中枢と末梢での多くの生理学的作用に関連がある[124]。血中と脳内のβエンドルフィンの値は共に鍼灸によって調節されることが示されてきている[125–127]。鍼灸が関連する自律神経機能の調節のさらなる影響はMSNAと血圧を降下させる作用である[128, 129]。鍼灸の痛みを和らげる作用はオピオイド受容体拮抗薬であるわずかな量のナロキソンでブロックされ、ナロキソンの投与量を増やすと血圧が抑制される[129, 130]。
中枢のβエンドルフィンと生殖機能の関係はGnRHとそれに続く黄体形成ホルモン放出の直接的かつ間接的な持続性阻害作用と関連があり、おそらくGnRHの生合成とも関連がある[121, 131]。オピオイドがエストロゲンの阻害作用を持つことは一般に受け入れられている[132]。その上、オピオイド阻害緊張の減少は黄体形成ホルモンの急な変動の発生と先行する排卵を増強し、また必須である [121, 133]。
循環βエンドルフィンは事実上の中枢オピオイド活性の反射よりもよりストレス刺激に関連があると考えらており、中枢活動性のマーカーとして用いられるべきではない[134]。それでもなお、βエンドルフィンは下垂体からのACTHと共に放出されるので、血漿βエンドルフィンの変化は視床下部下垂体軸(HPA)へのリンクを提供する[123]。調節因子のCRHはストレスによって放出されるが、それはGnRH分泌を減少させることが知られており、生殖軸に戻ることと関連がある[135]。鍼灸は視床下部内のCRH値を減少させることが示されており、それゆえにHPOとHPA軸のどちらにも効果を表しうる[136]。
4.1. 鍼灸のコントロール状況
鍼灸は心理的な要素が強くあるので、一般に鍼灸の作用は患者自身の期待によっても影響される[137]。そのため鍼灸の実験でのプラセボの利用はいつも議論の的であり、適切なコントロールを開発する努力がなされてきた。.しかしプラセボ鍼と呼ばれたり、ミニマルなあるいは偽の鍼は臨床研究において無効な治療でないことが示唆されているため、真のコントロールとは言えない[138, 139]。
4.2. PCOSにおける排卵の誘発のための鍼灸の影響
PCOSの特徴の多くがゴナドトロピン分泌の乱れ、インスリン抵抗性、中心性肥満を含むオピオイドの乱れあるいは交感神経緊張感と関連があり[74, 124]、オピオイドや交感神経緊張は病態の原因に関係している。PCOSの女性は血中のβエンドルフィン値が高いが、おそらく中枢神経系内のβエンドルフィンによるGnRHの不十分な阻害によるものかもしれない [124, 140–142]。様々な研究によりμ受容体拮抗薬であるナロキソンが性周期やSHBGを改善させ、アンドロゲン値、LH/FSH比、黄体形成ホルモンのGnRHへの反応を減少させることが支持されている[143–145]。
鍼灸とβエンドルフィン、交感神経の活動性との関係はPCOSにおいても一貫しているようである。 鍼灸治療は高βエンドルフィン血症と交感神経活動性を減少させ、手の低皮膚温を上昇させることが示されてきている[30, 128, 146]。交感神経系の関与と神経原生の卵巣コントロールの変化はPCOSの病因に関与している[111, 112, 147, 148]。自律神経と卵巣の作用を組み合わせた効果のための仮説的な媒介物質は神経成長因子(NGF)である。卵巣のNGF産生はPCOSの女性とエストラジオールと吉草酸エステルでPCOSにしたラットで卵胞液を増加させる[92, 149, 150]。形質転換マウスの卵巣でのNGFの過剰発現は卵巣の過剰神経支配、卵胞成長の停止、ゴナドトロピンへの卵巣ステロイドの上昇などを生じる[92]。卵巣のアドレナリン受容体は吉草酸エステルでPCOSにしたラットで増加することも示されており、卵巣機能の調節への交感神経系の関与が示唆されている[151]。電化鍼は吉草酸エステルでのPCOSモデルにおいて高濃度の卵巣NGFと[149, 150]、アドレナリン受容体を減少させ[152]、DHTでPCOSにしたモデルの脂肪におけるNGFのmRNAの発現過剰と交感神経活動性のいくつかのマーカーを減少させることが示されてきている[153]。マイクロニューログラフでの測定はPCOSの女性が鍼灸を14回受けるとMSNA高値が下がることが証明されており、PCOSの病因と鍼灸の機械的作用がともに交感神経系に関与していることを示している[30]。μ受容体拮抗薬であるナロキソンは排卵を引き起こし、黄体形成ホルモン濃度を下げることはPCOSにおいてβエンドルフィンの役割を示唆している[143–145]。βエンドルフィン値の低下と共に[146]類似した効果が電化鍼によっても仲介され[146, 154, 155] 基盤となるメカニズムにオピオイド系が関与していることを暗に示している。これは鍼灸針の電化刺激が月経周期を改善させ、血中テストステロン値を減少させると同時に、オピオイド受容体μとκがラットの視床下部での発現に影響するという我々の最近の実験研究も支持している [156]。
5. PCOSの生殖機能の治療法
PCOSの不均一性や病因の不確実性により、現時点では治癒することがない。そのため対症療法的に、しばしば長期にわたり治療が行われ、副作用に関連がある。
食事や運動などの生活習慣の改善が過体重あるいは肥満を伴うPCOSの大部分の女性への第1選択の治療法としてしばしば推奨される。体組成、高アンドロゲン血症、新血管代謝の概要、インスリン感受性や血中脂質、自律神経機能や炎症パターンなどPCOSの重要な特徴のいくつかが改善する[157–166]。クエン酸クロミフェン単独あるいはクエン酸クロミフェンを加えた場合[162]、効果には卵巣機能や妊娠の改善なども含まれ[158, 160, 163, 167, 168] 、適度な(5%)減量は代謝と生殖機能を改善すると報告されている[169]。
妊娠を希望しない女性には経口避妊薬と組み合わせることが月経パターンの調整とアンドロゲン値を下げるためにしばしば用いられる [25]。しかし経口避妊薬の使用は肥満やインスリン抵抗性、心血管病リスクに苦しむPCOSの女性では禁忌となりうる[25]。
定義れていない無排卵とPCOSの女性での鍼灸の非ランダム化研究は月経パターン、LH/FSH比、エストロゲン、テストステロンの改善が見られた[146, 154, 155]。卵巣機能の効果を調べたRCTは1回30分のマニュアル鍼灸刺激と2Hzの低周波電気鍼刺激がランデバプロトコルによる16週の運動よりも上であり[170]、どの治療介入も月経頻度の改善やテストステロン値の減少させなかった[166]。鍼は卵巣と同じ体節の神経支配の腹部と下肢に打った。治療の期間は16週で女性らは最初の2週は週2回、次の8週は週に1回、その後は隔週で計14回の治療を受けた。 同時に、Pastoreらは朴デバイスを用いて真の鍼と偽の鍼との効果の比較を行った[171]。彼らは14週にわたり12回、古いプロトコルに沿って真の鍼のグループでの鍼の位置と刺激を受けた[172]They received 12 treatments over 14 weeks and the needle placement and stimulation in the true acupuncture group followed an old protocol [172]。どちらのグループも月経周期を改善し、治療の前後で両グループに排卵比率の違いは見られなかったことから偽のデバイスはまったく無効とは言えないことを示唆している。より最近のRCTではさらに3ヶ月に渡る鍼灸あるいはアテンションコントロール治療期間でプロゲステロンの週1回の測定と月経出血登録によりPCOSの女性の排卵周期を決定した。この研究では女性らは前回の研究時と類似の鍼の位置で研究期間中週2回の鍼灸を受け、より高頻度という意味で強力であと言える。鍼灸治療に割り当てられたグループはアテンションコントロールグループに比べて高い排卵頻度があり[173],、治療回数の少なかった前のPCOSの臨床研究に比べた際に効果が増強されたことは刺激量に反応した作用だということを示唆している[166, 171, 172]。加えて、アテンションコントロールグループの排卵頻度[173]はCC刺激の期間中の排卵頻度[174]とは前のPCOSの鍼灸研究と同様に同等であった[171]。支持する動物のデータはDHTによるPCOSラットモデルでのプロゲステロン値の上昇[156]を伴う卵巣形態の改善[153]、発情周期の回復[47,156]がある[22]。その上、2つの様式:電気鍼刺激とマニュアル鍼刺激間の発情周期の改善の明らかな違いはなかった[156]。ラットとヒトでの研究における排卵に関するパラレル効果は橋渡し的な本質により結果を増強する。The parallel effect regarding ovulation in the rat and human studies strengthens the result by the translational nature. 最近のRCTにおける卵巣形態に先立ち、9mm以下の胞状卵胞や卵巣体積を数えた時、グループ間に違いが見られなかった[173]。Proceeding to ovarian morphology in the recent RCT, no group differences were observed when counting antral follicles ≤9 mm or ovarian volume [173]しかし、胞状卵胞の数と卵巣体積が減少する傾向が鍼灸グループ内で観察された[173]。これは電気鍼がDHTによるPCOSラットでの卵巣形態を改善させた先の動物実験とも一致している[153]。加えて、先の研究[60]と一致して我々は鍼灸後の血中インヒビンB値がAMHの変化なく減少することを見つけた[173] 。これは卵胞プールの減少と卵胞発達の改善の模倣?、卵巣性ステロイドの減少を表す[66–68, 71]。This may either represent a decreased size of the follicular pool or mimic an improved follicular development and reduced levels of ovarian sex steroids [66–68, 71]. その上、もっとも循環している性ステロイド(E1、E1-S、E2、T、free-T、DHT)、性ステロイド前駆体(DHEA、DHEA-S)、グルクロン酸抱合したアンドロゲン代謝産物(ADT-G、AD3G、AD17G)のデルタ変化は質量分析により決定され、介入グループ間で異なっていた。E1-S、E2、DHEA、free-TとADT-Gの違いはボンフェローニ補正・・・Differences in E1-S, E2, DHEA, free-T, and ADT-G held for bonferroni correction. 鍼灸はベースラインから治療後のE1, E1-S, E2, DHEA, DHEA-S, 4-DIONE, Tと遊離T 値を減少させた[173]。これはこれらのステロイドのいくつかが減少するとした我々の先のRCTと一致また展開している[166]。また臨床データはDHTでPCOSにしたラットでの低周波電気刺激を伴う鍼がテストステロン値を下げるという実験データと一致している[156]。排卵と性ステロイドに関する促進作用は鍼灸と運動の14回の治療と比べて、我々の先の研究が刺激量反応性の効果を推量させたように20回以上の頻回の治療を行ったことによって説明されうる[166, 173, 175, 176]。
5.2. 知識の空白
先の研究では鍼灸は排卵を引き起こし、PCOSの女性の妊娠につながるかもしれないことが示唆された[166, 173]。しかしどのトライアルも妊娠あるいは出産を研究するためにデザインされたものではなかった。この知識の空白は中共で進行中のヘッドトゥーヘッドの多施設RCT (ClinicalTrials.gov: NCT01573858)に取り組まれている。このトライアルはPCOSの女性での以下の仮説: (1)真の鍼とCCはコントロールの鍼とCCよりも排卵と妊娠を起こしやすくするであろうこと(2)コントロールの鍼とCCは真の鍼とプラセボCCよりも排卵を起こしやすくするであろうこと(3)真の鍼とプラセボCCはコントロールの鍼とプラセボCCよりも出産しやすくなるであろうこと、をテストした。
5.3. 鍼灸のPCOSにおける神経内分泌機能
PCOSの女性とDHTで作成したPCOSラットでの排卵への効果のための可能性のある説明を解明するために、黄体形成ホルモンの拍動性を測定する研究と他の神経内分泌機能を調査する実験的な研究が行われ、ばらついた結果が得られた[156, 173, 184]。
ラットではGnRH密度ののもっとも高いニューロンは吻側内側中隔(MS)、ブローカ対角帯、内側視索前野(MPO)に位置していた[185]。 ほとんどのGnRHニューロンは視床下部の内基底側を介してGnRHが下垂体門脈血に放出される正中隆起に投影される[186, 187]Most GnRH neurons send projections via mediobasal hypothalamus down to the median eminence where GnRH is released into pituitary portal blood [186, 187]. DHTで作成したPCOSラットではコントロールラットに比べて内側視索前野(MPO)でのGnRH免疫反応性 (GnRH-ir)細胞や対角帯水平脚(HDB)がより多く存在するようだった[184]。In DHT-induced PCOS rats, there seem to be more GnRH-immunoreactive (GnRH-ir) cells in the MPO and horizontal limb of the diagonal band (HDB) than in control rats [184]. さらにウエスタンブロット法と免疫組織化学(IHC)によりコントロールと比べて、PCOSラットは視床下部の機能的に活発なアンドロゲン受容体とMPOのアンドロゲン免疫反応性細胞のレベルが上昇していることが分かった。これはアンドロゲンがGnRHニューロンを調整する作用があることを意味している。その上、GnRH免疫反応性細胞と視床下部のARの増加は電気鍼治療後に減少していた[184]。エストロゲン受容体βはGnRHニューロンと共存することが既に示されているので、GnRHの調節へのエストロゲンの直接作用が示されている[188]。ARとGnRHニューロンとの共存も証明されているので、直接的なアンドロゲンの調整がGnRHをコントロールするという仮説を増強する[184]。It has also demonstrated a colocalization of AR and GnRH neurons that further strengthens the hypothesis of a direct androgenic regulatory control on GnRH neurons [184]. よって、GnRHの異常と電気鍼の作用は共に視床下部のARを介して伝達されていることを示している。その上先の研究は血中エストラジオール値はDHTで作成したPCOSラットでは変化しないことを示したので、これがアンドロゲンの作用であるという結論を支持する[22]。
弓状核はラットの脳でのGnRHパルス発生源の根本となる部位であると考えられているが、視索前野が排卵前期の黄体形成ホルモンの動揺をコントロールするGnRH分泌の動揺を調節していることは [132, 189]、MPOでの所見をより興味深いものにしている。 出生前にアンドロゲンを投与するとGnRHへの下垂体の反応性に影響なく黄体形成ホルモンの拍動性が上昇し、またGnRHパルス発生源での促進を示唆するエストロゲンによる黄体形成ホルモンの動揺の消滅が起こることが既に示されている。エストラジオールで引き起こされた視索前野でのプロゲステロン受容体(PR)発現の一時的な減少はアンドロゲンがこの作用にどれほど関係しているかの証拠と考えられる[190]。成獣ラットへの4日間に渡るアンドロゲンの投与は黄体形成ホルモンの動揺とプロゲステロン受容体発現の上で似たような結果を生じるが、代わりの黄体形成ホルモンとおそらくGnRHの低下と比べると、ヒトでのPCOSとは反対に、雄での反応[191, 192] と似たような結果を生じる。4-day administration of androgens to adult rats produced similar results on the LH surge and PR expression but with the contrast of an instead decreased LH and possibly GnRH secretion, similar to the male response [191, 192] and in oppose to human PCOS. これらの結果は成獣での高アンドロゲン血症の直接作用とは異なる出生前期間のアンドロゲンのプログラム効果を示唆する。DHTで作成したPCOSモデルでは、ラットは成獣までの21日間アンドロゲンに被曝させ続けたので、GnRH/LH動揺の消失を伴うGnRH分泌と起こることがありうる [191, 192]。MPOでのアンドロゲン受容体への作用によるGnRHの回復と黄体形成ホルモンの動揺は電気鍼後の発情周期の改善の背後にあるメカニズムの少なくとも一部分であると推測する方もいるかもしれない。後継の研究は視床下部のGnRHとARの発現の影響を確かめられてはいないが、これらの測定はmRNAレベルで行われた[156]。これはこの作用が遺伝子発現の変化よりもむしろ翻訳後の出来事に関連があることを意味している。しかし黄体形成ホルモンの拍動性の測定が生理作用を確かめるためにDHTでPCOSにしたラットモデルで電気鍼の前後で行われたことはない。
PCOSの女性での鍼灸による排卵頻度の高さはゴナドトロピン分泌の回復によるものだという仮説は最近のRCTでテストされた173]。しかしどの黄体形成ホルモンの拍動性の測定も3ヶ月に渡る週2回の鍼灸治療によって影響を受けなかった。鍼灸グループでの高い排卵頻度を伴う主要な作用と血中インヒビンB値の低下は血中性ステロイド、アンドロゲン前駆体、グルクロン酸抱合アンドロゲン代謝産物を治療後に低下させ、卵巣及び副腎レベルでの作用を指し示している。The major effect accompanying the higher ovulation frequency and reduced circulating inhibin B levels in the acupuncture group was the general decrease in circulating sex steroids, androgen precursors, and glucuronidated androgen metabolites after treatment, pointing towards an effect at ovarian and adrenal levels. しかしこれは中枢でのコントロールメカニズムの関連を除外するものではない[173]。
PCOSの女性で偽鍼と真の鍼を比較した早期のRCTはLH/FSH比かどちらのグループでも高い排卵頻度を伴って減少させた[171]。最新のRCT[173]での黄体形成ホルモンの拍動性への作用の不足は交絡因子となりうる月経周期のサンプリングタイミングによるものかもしれない[44, 193, 194]。エンドポイントの終夜の血液サンプリングの大部分は周期の4-10日目(卵胞中期から後期)に行われた。The majority of endpoint overnight blood sampling was performed during cycle day 8–10 (mid to late follicular phase). もし血液サンプリングが、卵胞前期に行われれば効果が見られたかもしれない[173]。
6. ディスカッション
PCOSの悪循環はアンドロゲン、インスリンあるいはその他の要素によってお互いに増悪しあうことが特徴だが、PCOSの女性の健康状態の改善のためにはそれを壊さなくてはならない。薬物療法は効果的であるが、好ましくない副作用にも関連がある[97]。このレビューはPCOSの女性での生殖系と内分泌系の障害のための治療オプションとしての鍼灸について言及している。複数のの臨時実験や動物実験が鍼灸はPCOSの卵巣機能障害に有効であることを示唆している。これは性ステロイドとおそらくインヒビンB値の低下にも関連がある。臨床データはこの作用のメディエーターとしての黄体形成ホルモン の拍動性/分泌パターンの変化を支持していないが [82]、中枢の要素がおそらくオピオイドと交感神経活動性の両方と関連があり、その作用はアンドロゲン受容体を介することを示す強力な証拠がある。しかし排卵や性ステロイドの変化の原因を決定することは困難であることは困難である。内因性の卵巣異常の正常化が卵胞成長の増悪を和らげることによってアンドロゲン値の低下は卵胞成熟過程を回復させ排卵に導く[12]。外的な因子、卵胞成長の回復、低いプールとアンドロゲン産生細胞の活性化によるアンドロゲン値の低下によって 排卵が改善するようなその他の方法もあるかもしれない[32]。It could also be the other way around that improved ovulation, possibly caused by external factors, restoring follicular growth and/or aberrations and thereby reducing androgen levels due to the lower pool and/or activity of androgen producing cells [32].
月経と排卵パターンの改善は妊娠を希望しない女性にとっても希望する女性にとっても有益であることは言うまでもない。 さらなる研究で鍼灸がPCOSの女性における妊娠と出生率を改善するかどうかを確かめる必要がある。
従来療法の戦略内で鍼灸を行う目的のためには第一選択の薬物療法オプションとの比較をすることも重要である。 これは鍼灸を治療法として支持し、認可するために大変重要だ。鍼灸作用の根底にあるメカニズムを研究することは薬物療法も含むその他の代替療法の探索にも役立ちうる。
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hakusyo · 7 years
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小児および若年成人における突然死 病気・事故・虐待の適切な鑑別のために SUDDEN DEATH IN THE YOUNG Third edition ロジャー・W・バイアード(著), 溝口 史剛(監訳 | 監訳) 発行:明石書店 B5判   912頁  上製 価格 45,000円+税 ISBN 978-4-7503-4254-2   C0047 在庫あり(出版社情報) 奥付の初版発行年月 2015年11月 書���発売日 2015年11月30日 登録日 2015年11月16日 紹介 小児期と思春期における乳児突然死症候群をはじめ、事故・虐待・感染症など、突然死の原因となる病態や疾病・外傷に焦点をあて包括的に解説。800点以上の剖検時所見・病理組織所見のカラー写真とあわせ巻末には司法解剖ガイドライン等を付した小児死亡の百科事典。 目次  『小児および若年成人における突然死』の刊行にあたって  原著(第3版)日本語版刊行によせて  原著第3版序文  第1版、第2版への書評抜粋  謝辞 第1部 序論 第1章 小児における突然死:概説、ならびに問題点の整理  はじめに  突然とは、どのくらい「突然」であるのか?  予期せぬとは、どのぐらい「予期しえない」ものであったか?  死亡前に全く健康状態に問題はなかった、とした場合の「全く問題ない」とは何を指すのか?  突然死をきたす病態のうち、主に報告が成人例のみに限られているものや、小児では理論的に起こりうるとしてのみ報告されている病態というものは存在するのか?  概説  頻度  突然死の原因  乳幼児ならびに小児の突然死症例の調査に関する問題点 第2部 非意図的損傷 第2章 事故  はじめに  損傷のタイプ  多発外傷  大動脈損傷  心臓震盪  腹部外傷  頭部外傷  溺死  窒息  塞栓症  熱傷  感電  中毒  異食症  違法ドラッグと薬物乱用  農場での死亡  穿通性損傷  銃火器損傷による死亡  動物との接触による死亡  高体温症  脱水症  低体温症  スポーツ関連死  医原性損傷  その他  事故と災害で死亡した事例の身元特定 第3部 意図的損傷 第3章 虐待死、ならびに自殺  はじめに  死亡現場調査  鈍的外力による頭部外傷  皮膚軟部組織損傷  骨折  胸腹部損傷  熱傷  銃火器損傷(射創)  鋭器損傷  所見に乏しい虐待死、稀な虐待死、およびその他の虐待死  性虐待/性暴力被害  医原性殺人  代理によるミュンヒハウゼン症候群  心肺蘇生にともなう損傷  宗教に関連する虐待(ritual abuse)  自傷  「虐待と酷似する病態」  心中(Murder-suicide)  自殺  専門家証言 第4部 自然死(内因死) 第4章 感染症  はじめに  心血管系疾患  呼吸器疾患  中枢神経系感染症  血液感染症  消化管感染症  泌尿生殖器感染症  全身性感染症 第5章 心臓疾患  はじめに  感染症および関連疾患  先天性心疾患  先天性心疾患と遺伝子  心筋症  筋ジストロフィー  弁膜異常症  腫瘍  刺激伝導障害  剖検時に所見が認められない病態(negative autopsy)  その他の病態 第6章 脈管疾患  はじめに  大動脈の異常  冠動脈異常  静脈の異常  先天性血管異常  肺血管異常  その他の血管障害 第7章 呼吸器疾患  はじめに  気管支喘息  上気道閉塞  気管支肺異形成症  急性肺炎  急性間質性肺炎  嚢胞性線維症  広範性肺出血  特発性肺ヘモジデローシス  緊張性気胸  Pickwic症候群/肥満 第8章 神経疾患  はじめに  脳卒中  腫瘍  てんかん  代謝疾患  感染症  中枢神経系の構造異常、発達異常  Rett症候群  Lafora病  Friedreich失調症  結節性硬化症(Bourneville-Pringle病)  神経線維腫症  透明中隔-視神経異形成症  多発性硬化症  急性出血性白質脳炎(Hurst病)  Guillain Barr  Djrine Sottas病  Joubert症候群  筋ジストロフィー  白質ジストロフィー  家族性自律神経失調症  先天性中枢性低換気症候群  嚥下性失神  新生児驚愕症  低酸素性虚血性脳症  乳児突然死症候群(SIDS) 第9章 血液疾患  はじめに  異常ヘモグロビン症  悪性血液腫瘍  凝固異常症  血小板疾患  貧血  溶血性尿毒症症候群  多血症  脾臓疾患 第10章 消化器疾患、および泌尿生殖器疾患  消化器疾患  泌尿生殖器疾患 第11章 代謝疾患、および内分泌疾患  代謝疾患  脂肪酸酸化異常症  炭水化物代謝異常症  アミノ酸代謝異常症  尿素サイクル異常症  有機酸代謝異常症  その他の代謝異常症  高脂血症  Menkes症候群  Reye症候群  出血性ショック脳症症候群  その他の疾患  内分泌疾患 第12章 その他の自然死  はじめに  結合織疾患  骨系統疾患  皮膚疾患  筋疾患  染色体異常/発達遅滞  免疫系疾患 第5部 母体疾患、胎児期疾患、および新生児疾患 第13章 母体疾患、胎児期疾患、および新生児疾患  はじめに  妊娠合併症:母体死亡  妊娠合併症:胎児死亡  新生児殺  水中出産による死亡  死後分娩(棺内分娩) 第6部 乳児突然死症候群 第14章 乳児突然死症候群  はじめに(歴史的背景を含めて)  疫学  診断  剖検実施前の諸段階  病理学的特徴  SIDSを引き起こしうる各種病態  虐待/殺人による死亡  結語 補足  補足Ⅰ 剖検に関しての情報を記載したパンフレット  補足Ⅱ 突然の予期せぬ(説明困難な)乳児死亡調査――報告用紙  補足Ⅲ 小児の司法解剖ガイドライン  補足Ⅳ 剖検に関する国際標準プロトコル  補足Ⅴ-1 CDC作成の成長曲線  補足Ⅴ-2 日本の成長曲線  補足Ⅵ 乳児期の組織重量一覧  補足Ⅶ 20歳未満の体重別標準心臓重量  補足Ⅷ 虐待の可能性がある場合の剖検時チェックリスト  補足Ⅸ 代謝性疾患の可能性がある場合の剖検時チェックリスト  監訳者あとがき  索引  症候群索引  微生物索引 前書きなど 『小児および若年成人における突然死』の刊行にあたって  死亡――これは、医学・医療がもっとも避けたい事象の1つであるが、ヒトは必ず死亡し、死亡には必ずその原因が存在する。多くの場合、年齢が高い人から順に死亡していくが、若年者が先に死亡することもある。これは逆縁といわれ、その悲しみは消えることなく、逆に強まるともいわれている。  小児や若い人を対象とする医療では、その保護者に対応する場合が多い。突然死亡した場合の経緯はいつも同じである。死亡した小児の保護者は、必ず「何故、子どもは死ななければならなかったのか?」と詰問する。そして、「二度と同じことが起こらないようにして欲しい」と切望する。時には、「あの時、公園に行っていいと言わなければ、あの子は遊具から転落死しなかったかもしれない」と自分自身を問い詰めることもある。  突然死に関わった医師は、「できうる限りの検査をしても何もわからない。どうしたらいいのか? 医師にできることは何なのか?」と無力感に苛まれる。しかし、すぐに次の患者が目の前に現れ、その治療に追われることになる。  こうした状況が毎日起こり続けているが、多くの場合、問題が解決することはなく、漫然と日々が過ぎていく。  最近、死亡した乳幼児の診療録を調査する機会があったが、突然死の事例では、なぜ死亡したのかまったくわからない事例がかなりの数みられた。中には、診療録はなく、救急搬送の記録であるA4の用紙1枚に、住所、氏名、生年月日が記載され、記録部分は「心肺停止」とだけ書かれたものもあった。臨床医からすれば、あとは警察や法医学の仕事で、自分たちの関わる領域ではないと考えたものと思われるが、これが現実なのである。すなわち、医学の領域の中では、「突然死」はそれぞれの病態の最終結果としてのみ認識され、「突然死」の原因を究明し、次の診療に役立てるという考えはほとんどみられない。  この本は、「突然死」を医学の一つの領域として明示しており、小児の突然死のすべてが網羅されている。今回は第3版で、前の版に比べ突然死の年齢層が幅広くとられている。事故によって死亡した事例では、みる機会がない写真がたくさん収載されている。各章末尾に示された文献の引用件数は膨大である。乳児突然死症候群(SIDS)にも1章が割かれ、1000編を超える文献が示されている。まさに小児の突然死の成書となっている。突然死を経験して困ったら、まずはこの本を開いてみるのがよい。  (…後略…) 著者プロフィール ロジャー・W・バイアード(ロジャー ダブリュー バイアード) オーストラリアの南オーストラリア州の州都アデレードにあるアデレート大学のジョージ・リチャード・マークス病理診断部部長、および南オーストラリア州の法科学部門の上級法医科学専門アドバイザーを務める。専門は小児期突然死であり、これまでに同領域の専門誌に600編に及ぶ論文を発表している。2008年から『法医学と病理学(Forensic Science Medicine and Pathology)』(Springer Publishers, New York)の編集長/編集主幹を務めている。 オーストラリア国家勲章(AO:Order of Australia)受章、オーストラリア国家公務員章(PSM:Public Service Medal)受章。 [主な著書] 共編書に、『乳児突然死症候群――これまでの進展と現在の問題点、および将来的な可能性(Sudden Infant Death Syndrome Problems, Progress and Possibilities)』(Arnold, 2001)、『乳幼児期・小児期の病理/法医学(Forensic Pathology of Infancy and Childhood)』(Springer, 2014)、『法医学事典【第2版】(Encyclopedia of Forensic and Legal Medicine 2nd ed.)』(Elsevier/Academic Press, 2015)、単著に『小児および若年成人における突然死【第3版】(Sudden Death in the Young 3rd ed.)』(Cambridge University Press, 2010)、共著に『病理/法医学アトラス(Atlas of Forensic Pathology)』(Springer, 2012)などがある。 溝口 史剛(ミゾグチ フミタケ) 群馬県前橋赤十字病院 小児科副部長。 1999年群馬大学医学部卒、2008年群馬大学大学院卒、医学博士。 群馬大学附属病院ならびに群馬大学小児科関連病院をローテート勤務し、2015年より現職。2012年より群馬県児童虐待防止医療アドバイザー。 日本小児科学会認定小児科専門医、日本内分泌学会認定内分泌代謝科(小児科)専門医、日本小児科医会認定子どもの心相談医、日本小児科学会小児死亡登録・検証委員会委員長、日本子ども虐待医学会評議員、日本子ども虐待防止学会代議員。 NCPTC(米国子ども保護トレーニングセンター)認定ChildFirstプロトコル司法面接研修講師。 RIFCR(TM)通告義務者向け性虐待被害児面接研修講師。 認定NPO法人チャイルドファーストジャパン理事、一般社団法人ヤングアシスト理事。 [主な翻訳書] 『プラクティカルガイド 子どもの性虐待に関する医学的評価』(監訳、診断と治療社、2013年)、『子ども虐待の身体所見』(明石書店、2013年)、『子ども虐待医学 診断と連携対応のために』(明石書店、2013年)などがある。
小児および若年成人における突然死 ロジャー・W・バイアード(著/文)…他1名(明石書店)| 版元ドットコム
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sitesirius · 5 years
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「 #感染症 と #バイオセーフティー 」という課題で論文を書く機会があり���したので、ここに掲載します。   #感染症とバイオセーフティ 千葉科学大学危機管理学部教授 #吉川泰弘 Infectious diseases and #biosafety 1. はじめに 「感染症とバイオセーフティ」は、非常に密接な関係にある。感染症はヒトからヒトなどに感染する病原体に暴露され、体内で病原体が増殖し、宿主が異常を来した時、感染症に罹ったことになる。病原体に暴露されても感染が成立しない場合もあるし、感染しても発症しない( #不顕性感染 となる)場合もある。従って患者から病原体を分離することは非常に重要である。 感染症の原因となる感染病原体を実験室で安全に扱う方法(ハードとソフト)が #バイオセーフティ ということである。病原体の危険度に応じてリスクレベルが4グループに分類されており、それぞれのグループの病原体を安全に取り扱うための管理レベルがバイオセーフティレベル( #BSL1 ~ #BSL4 )である(安全管理のための封じ込めレベルとして #P1 ~ #P4 ともよばれている)。バイオセーフティは指針(ガイドライン)やマニュアルであり、法律ではない。 他方、感染症を統御する(予防、診断、治療、蔓延防止、再発防止)目的でつくられた法律が #感染症法 であり、病気の重要性に応じて1類から5類まで類型化されている。感染症の患者を見つけた場合の医師、看護師、獣医師(感染した特定の動物の届出)、行政官、動物取扱者等の役割が決められている。法律なので罰則規定を伴う。 感染症の病原体等を取り扱う規則は、感染症法に組み込まれており罰則規定を伴うが、この規則は、感染症統御ではなく #バイオテロ 防止を目的に整備された規則なので、テロに使用されるリスクの大きさに応じて病原体が第1種から第4種に分類されており、その取扱いについてはハード、ソフトの規定や申請・許可、届出、病原体輸送等に関する規則が定められている。これらのレギュレーションは、それぞれ目的が異なるので、同じ病原体であっても対応が異なる場合があり、しばしば病原体の取り扱いに関しては混乱が起きている。 2、バイオハザート(註: #バイオハザード )と #バイオセーフティ #バイオハザード ( #Biohazard 、#BiologicalHazard )は、 #生物学的危害 と訳されている。名の通り、生物に由来する有害性・危険性(物質)である。病原体は、これまでに多くの実験室での #感染事故 や #漏出事件 を引き起こしており、病原体の持つリスク(感染や事故を起こす確率と起きた時の影響の大きさ)のレベルを評価し、リスクを回避する方法を考えようというのが、 #バイオハザード の原点である。 かつては、病原体や感染性廃棄物がメインであったが、最近は、薬剤耐性遺伝子や遺伝子組換え体、 #生物兵器 も含まれるようになった。そのため、ハザードの観点よりも、リスク回避に主眼を置く立場から、 #バイオセーフティ や #バイオセキュリティ という言葉を使うようになった。最近ではバイオハザードという言葉はこの分野では、ほとんど使われなくなっている。しかし、多くのリスク評価では、ハザード(危害)の同定から始めており、リスク管理も #HACCP (ハザードアナリシス・クリティカルコントロールポイント、 #危害分析重要管理点 )のように、リスク科学では現在でもよく使われる言葉である。表1に実験室における #感染事故 の事例を示す。 表1 実験室感染事故の事例 倉田毅先生提供 3、病原体の危険度:リスク群1~4 (BSL1~4)  病原体の危険度の表現は、ガイドライン(NIH/CDC、WHO、国立感染症研究所など)によりリスク群、グループ、などと表現されているが、内容的には類似している。病原体は海外ではBSL(Biosafety Level)としても分類されている。 リスク群1(BSL1)は、正常で健康なヒト(動物)に病気を発生させる見込みがないもの、病原体等取扱者および関連者に対するリスクがないか低リスクのものである。ここでいう関連者とは、病原体等取扱者との間に感染の可能性のある接触が、直接あるいは間接的に起こりうるその他の人々をいう。通常の環境に存在し、病原性がほとんどない微生物や弱毒化したワクチン株などが含まれる。 リスク群2(BSL2)は、病原体等取扱者に対する中等度リスクをもち、関連者に対する低リスクの病原体である。具体的には、ヒトあるいは動物に感染すると疾病を起こし得るが、病原体等取扱者や関連者に対し、重大な健康被害を起こす見込みがないもの。また、実験室内の曝露が、ときに重篤な感染を起こすこともあるが、有効な治療法、予防法があり、関連者への伝幡のリスクが低いもの。一般的には、人々の間でみられている感染症の病原体で、普通の生活の中で感染し、発症することもあるが、すでに多くのヒトが免疫をもっているものであり、適切なワクチンの接種などにより感染も容易に予防できるものが入る。この群の病原体の多くは経口感染、経皮感染、経粘膜感染を起こすが、空気感染やエアロゾル曝露により、飛沫核感染を起こす可能性は低い。 リスク群3(BSL3)は、病原体等取扱者に対する高リスクで、関連者に対する低リスクの病原体。ヒトあるいは動物に感染すると重篤な疾病(致死的な感染を起こす場合もある)を起こすが、通常、感染者から関連者への伝幡の可能性が低いものであり、有効な治療法、予防法があるもの。また環境中にいる病原体で、エアロゾル曝露により、飛沫感染の可能性が高く、正しい予防対策と治療により対応できるもの。 リスク群4(BSL4)は、病原体等取扱者及び関連者に対する高リスクのものである。ヒトあるいは動物に感染すると重篤な疾病を起こし、感染者から関連者への伝幡が直接または間接に起こりうるもの。通常、有効な治療法、予防法がないものである。一般には、多くの人は曝露される機会がほとんどなく、あえてそれが存在する地域へ渡航しない限り感染の機会がない病原体である。 4、病原体のリスク群(BSL)分類例  以下にリスク群2~4(BSL2~4)の代表的な病原体を挙げる。リスク群1(BSL1)は2~4に入らないものである。  リスク群2(BSL2)の細菌:ブタ胸膜肺炎菌、Actinobacillus suis、牛放線菌、アエロモナス・ハイドロフィラ、アナプラズマ属(Anaplasma bovis、A. ovis、A. phagocytophilum他)、炭疽菌(34F2株)、セレウス菌、Bacteroides fragilis、バルトネラ属(Bartonella bacilliformis、猫ひっかき病菌他)、ボルデテラ属(気管支敗血症菌、百日咳菌他)、ボレリア属全種(ライム病菌他)、キャンピロバクタ―属(Campylobacter coli、C. fetus、C. jejuni)、カプノサイトファーガ属(Capnocytophaga canimorsus、C. cynodegmi他)、クラミジア科(Chlamydia trachomatis、流行性羊流産菌、ネコクラミジア、肺炎クラミジア、オウム病菌)、クロストリジウム属(ボツリヌス菌、気腫疽菌、ディフィシル菌、ガス壊疽菌、破傷風菌他)、コリネバクテリア属(ジフテリア菌、ネズミコリネ菌、ヒツジ偽結核菌、ウルセランス菌他)、エーリキア属(Ehrlichia canis、E. chaffeensis、E. muris)、バンコマイシン耐性腸球菌(Enterococcus faecalis、E. faecium)、豚丹毒(類丹毒)菌、大腸菌(腸管,尿路等における病原性株)、フランシセラ属(Francisella novicida、F. philomiragia、野兎病菌)、壊死桿菌、ヘモフィルス属(Haemophilus aegyptius、インフルエンザ菌、ブタパラインフルエンザ菌)、ヘリコバクター属(Helicobacter bilis、H. felis、H. hepaticus、 ピロリ菌他)、クレブジエラ属(Klebsiella granulomatis、肺炎桿菌)、Lawsonia intracellularis、レジオネラ属全種、Leptospira interrogans、リステリア属(Listeria ivanovii, リステリア菌)、Mannheimia haemolytica、ミコバクテリア属(鳥型結核菌、仮性結核菌、牛型結核菌(BCG 株)、M. caprae、M. intracellulare、M. kansasii、ハンセン病菌、M. marinum、M. simiae他)、マイコプラズマ属全種(M. mycoides subsp. mycoides を除く)、淋菌、髄膜炎菌、ネオリケッチア属(Neorickettsia risticii、ネオリケッチア・センネツ)、 ノカルジア属(Nocardia abscessus、 N. arthritidis、 N. brasiliensis、 N. niigatensis他)、 パスツレラ属(Pasteurella multocida:出血性敗血症又は家きんコレラ由来ではない株、 P. pneumotropica)、緑膿菌、Rhodococcus equi、サルモネラ属全種(パラチフスA菌、チフス菌、ネズミチフス菌他)、セラチア菌、赤痢菌属全種、ブドウ球菌属(Staphylococcus aureus subsp. anaerobius、黄色ブドウ球菌)、連鎖球菌属(Streptococcus agalactiae、S. canis、腺疫菌、S. equi subsp. zooepidemicus、肺炎球菌、S. suis他)、トレポネーマ属(梅毒菌、T. pertenue)、Ureaplasma urealyticum、ビブリオ属(コレラ菌、V. mimicus、腸炎ビブリオ菌、V. vulnificus他)、エルシニア属(腸炎エルシニア菌、偽結核菌)など  リスク群2(BSL2)の真菌: アスペルギルス属(Aspergillus flavus*、A. fumigatus、A. parasiticus*)、Candida albicans、Cladosporium carrionii、C. trichoides、クリプトコッカス属 (Cryptococcus gattii、C. neoformans)、Epidermophyton floccosum、Exophiala dermatitidis、Fonsecaea pedrosoi、フサリウム属全種*、微胞子属全種、ペニシリウム属全種*(P. marneffei を除く。) ニューモシスチス属全種、 Sporothrix schenckii、トリコフィトン属全種(*は毒素産生株に限る)。 リスク群2(BSL2)の原虫:アカントアメーバ属全種、バベシア属全種. Balamuthia mandrillaris、大腸バランチジウム、Besnoitia属全種、Buxtonella sulcata、Caryospora属全種、クリプトスポリジウム属全種、Cyclospora 属全種、アイメリア属全種、エントアメーバ属全種、ジアルジア属全種、Haemoproteus 属全種、Hammondia hammondi、 Hartmannella 属全種、ヘパトシスチス属全種、へパトゾーン属全種、ヘキサミタ属全種、 ヒストモナス・メレアグリディス(黒頭病)、イソスポラ属全種、レーシュマニア属全種、 ロイコチトゾーン属全種、微胞子虫門全種、ネグレリア属全種、Neospora caninum、 腸トリコモナス、プラスモジウム属全種、住肉胞子虫属全種、七面鳥トリコモナス、タイレリア属全種、トキソプラズマ、膣トリコモナス、牛胎児トリコモナス、トリパノソーマ属全種 リスク群2(BSL2)の寄生虫(下線の寄生虫を除く以下の寄生虫属全種):Abbreviata、 多棘刺縁吸虫、ネコ肺虫、Agriostomum、Alaria、アメーボテニア、鉤虫、住血線虫、アニサキス、裸頭条虫、回虫、Ascarops、Aspiculuris、Avioserpens、Avitellina、食肉類回虫、 ベルチエラ、Brachylaemus、ブルギア、ブノストマム、Calicophora、Camallanus、 毛細線虫、Chabertia、Cheilospirura、Choanotaenia、肝吸虫、Cooperi、Cordonema、Cotugnia、 Cotylurus、Craterostromum、クレノゾーマ、シアトストーマ、シリコシクルス、Cylicodontophorus、Cylicospirura、Cylicostephanus、Davaincoides、ダバイネ、犬毛包虫、二腔吸虫、肺虫、Digramma、腎虫、ディプタロネーマ、裂頭条虫、Diplogonoporus、 瓜実条虫、犬糸状虫、ドラクンクルス、ドラスキア、Echinocephalus、Echinochasmus、エキノコックス、棘口吸虫、Elaeophora、霊長類蟯虫、Euparyphium、Eurytrema、肝蛭、 Fascioloides、肥大吸虫、Filaroides、Fimbriaria、Fischoederius、ジアルジア、ウマバエ(馬蠅)、Gastrodiscoides、ギガントビルハルジア、Globocepharus、顎口虫、ゴンギロネーマ、Gyalocephalus、ハブロネマ、 捻転胃虫、ネズミ螺旋線虫、Heterakis、Heterobilharzia、 Heterophyes、Himasthla、平腹双口吸虫、矮小条虫、Hyostrongylus、Hypoderaeum、 Inermicapsifer、クドアセプテンプンクタータ、頸部膿瘍回虫、舌虫、リトモソイデス・シグモドンティス、ロア糸状虫、 マモモノガムス、マンソネラ、メシストシルス、有線条虫、メタゴニムス、ブタ肺虫、メトロリアセス、Microbilharzia、ミクロプレウラ、Microtetrameres、モリネウス、モニエジア、Muellerius、サケ吸虫、ネカトール、ネマトジルス、ブラジル鉤虫、Notocotylus、Oesophagodontus、腸結節虫、ウシバエ(牛蠅)、Ollulanus、オンコセルカ、オピストルキス、Ornithobilharzia、Orthocoelium、エソファゴストム、オステルターグ、Oxyspirura、馬蟯虫、パラフィラリア、肺吸虫、 Paramphistomum、Paranoplocephala、Parascaris、パリフォストムム、ウサギ蟯虫、壺形吸虫、フィロメトラ、フィロメトロイデス、フィサロプテラ、Physocephalus、 Plagiorchis、 Poteriostomum、Probstmayria、Prosthogonimus、Protostrongylus、シュードテラノバ、プソロプテス、有輪条虫、桿線虫、住血吸虫、旋尾線虫タイプ X、セタリア(指状糸状虫)、Simondsia、Skrjabinema、Sobolevicephalus、芽殖孤虫、Spirocerca、スピロメトラ、Spirura、 Stephanofilaria、Stephanurus、Stichorchis、Stilesia、糞線虫、円虫、 Suifilaria、開嘴虫、Synhimantus、齧歯類蟯虫、テニア、Tanqua、 テラノバ、Tetrameres、テラジア、 Thysaniezia、Thysanosoma、犬小回虫 トキソカラ、トリヒナ(旋毛虫)、トリコビルハルジア、毛様線虫、犬鞭虫、Triodontophorus、十二指腸虫、バンクロフト糸条虫など リスク群2(BSL2)のウイルス(原則としてvirus、ウイルス略):アデノ、Aichi virus、悪性カタール熱、アポイ、アロア、Asama virus、鶏脳脊髄炎、鶏エンテロ、鶏E型肝炎、鶏メタニューモ(七面鳥鼻気管炎)、鶏パラミキソ(ニューキャッスル病を含む)、鶏オルソレオ、 鶏レトロ、鶏アストロ、鶏痘、ボルナ病、牛アストロ、牛エンテロ1,2、牛流行熱、牛ヘルペス1(伝染性牛鼻気管炎)、牛ヘルペス 2(牛潰瘍性乳頭炎を含む)、牛コブ、ウシ丘疹性口炎、牛RS、牛ライノ 1,2,3 15、牛ウイルス性下痢、犬ジステンパー、犬ヘルペス、鶏貧血症、牛痘、コロナ(SARSコロナを除く)、サイトメガロ、デング、アヒル肝炎、アヒルB型肝炎、アヒルヘルペス 1(アヒルペスト、アヒル腸炎)、エプシュタイン・バール、エクトロメリア、馬動脈炎、馬ヘルペス、馬ライノ(馬A型・B型鼻炎を含 む)、猫ヘルペ ス、猫モルビリ、Fukuoka virus、タマリンGB virus B、ゲタ、山羊痘、Hazara virus、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、G型肝炎、単純ヘルペス1,2、馬痘、ヒトアストロ、ヒトエンテロA, B, C, D、ヒトヘルペス 6, 7, 8、ヒト免疫不全:HIV1(増殖力等欠損株)、ヒトメタニューモ、Human parechovirus、ヒト呼吸器融合(HRS)、ヒトライノA、ヒトライノB、ヒトライノC、Ilheus virus、伝染性ファブリキウス嚢病、伝染性喉頭気管炎、 インフルエンザ(高病原性株を除く)、日本脳炎、Junin virus(Candid#1 株)、Khabarovsk virus、乳酸脱水素酵素上昇、Langat virus、Lagovirus、LCM(リンパ球性脈絡髄膜炎)、Ljungan virus、哺乳類レトロ(HIV1, 2 を除き、HTLV1, 2 を含む)、マレック病、麻疹、七面鳥ヘルペス、伝染性軟属腫、サル痘、ムンプス、ネズミヘルペス1, 2, 8, 4, 7、ネズミ肺炎(Pneumovirus of mice(PVM))、粘液腫、ナイロビ羊病、ネルソンベイ・オルソレオ、 ノロ、Oita virus、O'Nyong•Nyong virus、オルビ(アフリカ馬疫を除く)、 Orf virus、オルソブンヤ、羊ヘルペス1(羊肺腺腫症関連ヘルペス)、羊ヘルペス2、パピローマ、パラインフルエンザ(センダイウイルスを含む)、パルボ(アデノ関連ウイルスを除き、ヒトパルボB19 を含む)、Pichinde virus、Poikilothermal vertebrate retrovirus、ポリオ1, 2, 3、ポリオ―マ(メルケル細胞ポリオーマウイルスを含む)、豚アストロ、豚サーコ、豚エンテロ B(ブタエンテロ9,10) 、豚繁殖呼吸器症候群、Porcine sapelovirus、豚テンショー、Prospect Hill virus、偽牛痘、オウムコロナ、狂犬病(固定株及び弱毒化株)、Rio Bravo virus、 Ross river virus、ロタ、風疹、サポ、セムリキ森林(増殖力等欠損株)、羊痘、ショープ繊維腫、サルエンテロウイルス A、サルヘルペスウイルス(B•virus、Herpes ateles virus を除く)、シンドビス、オーエスキー病、ブタサイトメガロ、ブタポックス、ブタ水疱病、タカリベ、タナポックス、脳心筋炎、トロウイルス、 Thottapalayam virus、Torque tenovirus、 Tula virus、水疱瘡・帯状疱疹、水疱性口炎(Alagoas、インデアナ、ニュージャージー)、 Vesivirus、ウッドチャック肝炎、ヤバポックス、ヨコセ、牛疫(生ワクチン株)、ワクチニア(LC16m8 株を除く)、哺乳類のプリオン(海綿状脳症因子)、スクレイピー、牛海綿状脳症(動物実験BSE prion をマウスに感染させる場合は ABSL2 とする。ウシ型、ヒト型prion 遺伝子導入マウス、サル類に BSE prion を感染させる場合は、ABSL3。その他の動物 prion の動物実験は個別に考慮)、クロイツフェルトヤコブ病(動物実験は ABSL3) リスク群3(BSL3):病原体としては細菌、真菌、ウイルスで、原虫、寄生虫はない。  リスク群3(BSL3)の細菌:主なものは、炭疽菌、ブルセラ属(全種)、Q熱(Coxiella burnetii)、野兎病菌、牛型結核菌、結核菌、ツツガムシ病(Orientia tsutsugamushi)、リケッチア属(Rickettsia felis、日本紅斑熱、Rickettsia prowazekii他)、チフス菌、パラチフス菌、ペスト菌 リスク群3(BSL3)の真菌:主なものは、ブラストミセス病(Blastomyces dermatitidis)、コクシディオイデス病(Coccidioides posadasii)、ヒストプラズマ属(全種) リスク群3(BSL3)のウイルス:主なものは、コウモリリッサウイルス属、豚コレラウイルス、口蹄疫ウイルス、ハンタウイルス属、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、高病原性鳥インフルエンザウイルス、中東呼吸器症候群(MERS)ウイルス、アレナウイルス属、小反芻獣疫ウイルス、狂犬病ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、牛疫ウイルス、SARSウイルス、重症熱性血小板減少症(SFTS)ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、西ナイル熱ウイルス、黄熱ウイルスなど リスク群4(BSL4):リスク群4(BSL4)の病原体��、すべてウイルスである。マールブルグウイルス、エボラウイルス属(全種)、ラッサウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、天然痘ウイルス、南米出血熱ウイルス(全種)。これらはすべて1類感染症の病原体である。 5、物理的封じ込めレベルの対応(P1~P4、 BSL1~4) レベル1(P1、BSL1)は、普通の微生物実験室で、実験室は他から隔離されている必要はない。微生物実験では、飲食・喫煙は禁止する。一般外来者の立ち入りを禁止する必要はないが、16歳未満の者の入室を禁ずる。微生物取扱者は、病原体取扱い訓練を受けた者でなければならない。 レベル2(P2、BSL2)は、P1の封じ込めに加え、実験室の扉にはバイオハザードの警告を表示する。P2実験室には許可された者のみが入室できる。実験者は白衣を着用しなければならない。実験中は窓及び扉をしめ、ロックする。微生物実験は基本的に生物用安全キャビネット(クラスII以上)内で行う。エアロゾルが発生しない作業はキャビネット外でも実施できる。実験室にある必要はないが、施設には滅菌用にオートクレーブが設置されていることが望ましい。  レベル3(P3、BSL3)実験室では、実験室の扉には、バイオハザードの警告が表示されなければならない。また、廊下等からの立ち入りは制限する。白衣などに着替えるための前室にはエアシャワーなどを設置しなければならない。入室時には前後のドアを同時に開いてはならない。実験者は、作業着または白衣を着用しなければならない。実験中は窓・扉を閉めなければならない。施設にはオートクレーブが設置されていることが望ましい(実験室内にある必要はない)。生物学用安全キャビネット(クラスIIA以上)を設置し、作業は基本的に安全キャビネット内で行う。また、壁・床・天井・作業台などの表面は消毒・洗浄可能なようにする。排気系を調節し、常に外部から実験室内に空気を流入させる。実験室からの排気は、高性能フィルターを通し除菌した上で大気に放出する。動物実験は生物学用安全キャビネットの中 or 陰圧アイソレーターの中で行う。作業員名簿に記載された者以外の立ち入りを禁ずる  レベル4(P4、BSL4)実験室は、最高度安全実験施設である。P3に加えて、P4の実験室は他の施設から完全に隔離され、詳細な実験室の運用マニュアルが装備される。P3レベルに加えて、①クラスIII安全キャビネットを使用しなければならない。②通り抜け式オートクレーブを設置する。③シャワー室を設置する。④実験室からの排気は高性能フィルターで2段浄化する。⑤防護服未着用での入室を禁ずる。P4にはグローブボックス型とスーツラボ型がある。  世界では40を超すレベル4(P4、BSL4)の実験室がある。国内では国立感染症研究所と理化学研究所筑波研究所に設置されている。しかし、理化学研究所筑波研究所ではレベル3 (P3、BSL3)までの運用に制限されている。近年、国際的には高度にグローバル化が進み、人や動物、物の移動が盛んになり、輸入感染症や越境感染症がしばしば起こっている。日本もその脅威の例外ではない。リスク群4(BSL4)の病原体等による感染症が発生した場合の対処への遅れや、感染症の研究不足が心配されている。西アフリカのエボラ出血熱のアウトブレイク、米国やスペインへの感染者の入国を受け、2015年8月に厚生労働省は国立感染症研究所のレベル4(P4、BSL4)施設を稼働できるようにし、遺伝子・血清学的診断などのウイルス学的検査の対応が可能となった。また、長崎大学へのレベル4(P4、BSL4) 施設の設置に向けた協議が進んでいる。 ABSL(動物を用いたバイオセーフティレベルの実験に関する対応)を以下の図1に示す。 図1 ABSL:Animal Bio Safety Level (病原体等取扱動物実験設備のABSL分類、実験手技、安全機器及び施設基準) 6、感染症法と病原体の関係  感染症法は正式には、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」である。この法律には一般の法律と違って前文があり、概要は以下のように書かれている。「人類は、疾病、特に感染症により、多大の苦難を経験してきた。ペスト、痘そう、コレラ等の感染症の流行は、時に文明を存亡の危機に追いやり、感染症を根絶することは正に人類の悲願と言える。医学・医療の進歩や衛生水準の著しい向上により、多くの感染症が克服されてきた。しかし、新たな感染症の出現や既知の感染症の再興により、また、国際交流の進展等に伴い、感染症は新たな形で人類に脅威を与えている。 一方、我が国では過去にハンセン病、エイズ等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、教訓として今後に生かすことが必要である。こうした感染症をめぐる状況の変化や感染症の患者等が置かれてきた状況を踏まえ、患者等の人権を尊重しつつ、良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症への迅速かつ適確な対応が求められている。こうした視点に立ち、これまでの感染症の予防に関する施策を抜本的に見直し、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する総合的な施策の推進を図るため、この法律を制定する」。ここでは旧式の差別を生む危険性のある感染症患者の隔離という方法よりも、予防医療に重点を置くこと、患者の人権を尊重すること、患者にとってはヒトから感染しようが動物から感染しようが苦痛は同じであるという考えから動物由来感染症を加えることとなった。20世紀後半に出現し、世界の脅威となった新興感染症の多くが野生動物に由来する感染症であったことも影響していると思われる。  感染症法の特徴は、感染症を類型化し危機管理対応を決めることでもあった。1類から5類まで細分化すること、新興感染症などを時宜に合わせて追加、改廃するという柔軟な対応は、過去百年間法律を変えなったことへの反省から生まれている。約5年ごとの改定により、新しい感染症が数多く追加された。1類感染症はエボラ出血熱、マールブルグ病のようなウイルス出血熱など、最も厳しい対応の必要な感染症で、患者の指定病院への隔離措置を必要とする(病原体の扱いはリスク群4(BSL4))。2類は重篤な呼吸器感染症などで病原体の扱いには、ほとんどがレベル3(P3、BSL3)施設が必要である。3類は就業制限を必要とする腸管感染症であり、病原体の取り扱いはリスク群3~2(BSL3 ~BSL2)のものがある。4類はほとんどのものが動物由来感染症であり、病原体取扱はリスク群3~2(BSL3~BSL2)のものと多様である。5類は全数把握あるいは定点観察の必要な、主にヒトからヒトに感染する感染症で、やはり分離された病原体の取り扱いは、リスク群3~2(BSL3~BSL2)のものと多様である。 以下の図2に、1類から5類の感染症を示す。前述のリスク群2~4(BSL2~BSL4)の病原体と感染症の類型の関係を比較していただければ幸いである。 図2 1類から5類の感染症(感染症法の疾病類型化) 7、感染症法に基づく「特定病原体等の管理規制」とバイオテロ  2001年9月11日の米国同時多発テロにより、国家同士の戦争とは異なる、一群の政治集団と国家の戦いというテロリズムが世界の人々に再認識された。その直後に、封筒入りの白い粉事件として起きた炭疽菌テロでは、18人が感染し肺炭疽により5人が死亡した。日本でもオウム真理教が1994年6月に松本サリン事件で150名の患者と7名の死亡、1995年3月の地下鉄サリン事件で5000名の患者と12名の死亡という無差別市民テロを行った。オウム真理教は、他にボツリヌス毒素、炭疽菌散布、エボラウイルスの入手などバイオテロを計画していた。 このようにバイオテロが現実に起こり、また、世界各国がテロの脅威にさらされている。日本でも天然痘ウイルス、炭疽菌、野兎病菌、ボツリヌス毒素などによるバイオテロが発生した場合の危機管理を検討することになり、その結果、「特定病原体等管理規制」として、バイオテロに使用される恐れのある病原体等の管理が規定され、感染症法に包含されることになった。管理規制の趣旨としては、以下の点が述べられている。 日本では国民の生命・健康に影響を与える恐れがある病原体等の管理が、研究者、施設管理者等の自主性に委ねられている。また、その適正な管理体制は必ずしも確立されていない状況にある。国際動向では、生物テロ(バイオテロ)に使用される恐れのある病原体等の管理強化が重要な課題となっている(動物由来感染症の病原体の80%はバイオテロに利用可能と言われている)。厚労省は生物テロに使用されるおそれのある病原体等で、国民の生命・健康に影響を与える恐れがある病原体等の管理の強化を実施するため、この規則を制定する。この規制は平成19年6月から施行(一部規制は経過措置を実施)する。病院(検査室)、研究所、大学、ワクチン製造企業などが主な対象となる。病原体等の管理は1種病原体から4種病原体に分類し、レベルに応じて所持や輸入等の禁止、許可、届出、基準遵守等の規制が設けられた。感染症法の疾病類型が感染症統御の重要性に基づく分類であるのに対し、病原体管理規制は病原体のバイオテロのツールとしてのリスクによる分類であり、病気でなく病原体そのものの取扱いに関する点ではバイオセーフティの指針と共通点がある。 「1種病原体等」は、エボラウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、痘そうウイルス等。「2種病原体等」は、SARSコロナウイルス、炭疽菌、野兎病菌、ペスト菌、ボツリヌス菌等。「3種病原体等」は、狂犬病ウイルスや多剤耐性結核菌などが含まれている。「4種病原体等」には、インフルエンザウイルス(H2N2)、黄熱ウイルス、腸管出血性大腸菌、鳥インフルエンザウイルス等が含まれる。  特定病原体管理規制による保有病原体の種類と管理手続き、及び特定病原体取扱いレベル(第1種から4種)、感染症類型(第1類から5類)及び病原体の種類について、以下に図示した(図3、4)。 この図からわかるように、結核は2類感染症で、感染症対応としては1類感染症に次ぐ重要な感染症である。病原体は容易にヒト-ヒト感染を起こし、重篤化するのでレベル3(P3、BSL3)の安全管理が必要である。しかし、テロのツールとしてみると、多剤耐性結核菌が3種、結核菌は4種という並みの扱いになる。他方、野兎病は4類感染症であり、安全管理はレベル3(P3、BSL3)である。しかし、病原体取扱いは、SARSやペスト菌と並んで2種という特に重要な取扱いとなっている。 図3 特定病原体取扱い管理規制 図4 病原体取扱い規制と感染症類型の関係 8 .終わりに  動物やヒトの感染症の統御には、診断、治療および予防が必須である。そのために患者、患畜から病原体を分離し同定することは必要な条件である。どのような封じ込め(ハードとソフト)対応で安全に取り扱うか、また、病原体を取り扱うにあたって受ける法的規制と安全のためのガイドラインがどのように組まれているかを紹介した。 バイオセーフティ・ガイドラインの作成の背景、感染症法の策定の経緯、病原体取扱の目的は、それぞれ異なっているために、医師、獣医師、研究者や一般の人にとって病原体の取り扱いがわかりにくくなっていると思う。十分に解説できたかわからないが、病原体を分離する、あるいはした際に、確認のため、もう一度利用していただければ幸いである。 Infectious diseases and biosafety have a very tight relationship. When the host is exposed to the pathogen, the pathogen grows in the body, and the anomaly has occurred, the host become suffering from an infectious disease. If the host is exposed to the pathogen, however, the infection may not be established, and even if infection has occurred, there are cases that the disease does not occur (subclinical infection). So, it is important to isolate pathogens from the patients. Biosafety is the safe way handling pathogens of infectious diseases in a laboratory. Risk levels of the pathogens are classified into 1 to 4 groups according to the degree of their risk. "Biosafety levels 1 to 4" are the safety control levels for safely handling the pathogens of each group. And the physical containment levels for safety management are also called P1 to P4. Biosafety levels are guideline or manual, but these are not the   law. The law for the purpose of controlling infectious diseases is the "Act on the Prevention of Infectious Diseases and Medical Care for Patients with Infectious Diseases (Infectious Disease Law)", and it has been categorizing from 1 to 5 classes according to the importance of infectious diseases. The role of doctors, nurses, veterinarians, administrative officials and animal handlers is described in the law, when they find patients or animals with the infectious diseases. The law involves penalty provisions. In addition, regulations dealing with the specific pathogens are incorporated into the Infectious Disease Law, and accompanied by penalty provisions. This regulation was settled not for controlling infectious diseases but for preventing bioterrorism. Therefore, pathogens are classified from 1st kind to 4th kind according to the magnitude of the risk used for terrorism. Regarding its handling, regulations concerning hard and software provisions, application and permission, notification, and pathogen transportation etc. are described. Since each of these regulations has different purposes, the correspondence may be different even for the same pathogens. Consequently, confusion often occurs with respect to the handling of pathogens. I will show examples of pathogens and introduce methods for handling safety management. キーワード: バイオハザード Biohazard バイオセーフティ Biosafetyバイオセキュリティ Biosecurity バイオセーフティレベル 1~4(P1~4) BSL1~4(P1~4) 動物バイオセーフティレベル ABSL感染症法 Infectious disease law  特定病原体取扱い規制Specific pathogen handling regulation バイオテロ Bioterrorism
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hnwearlybird · 8 years
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 OneRepublic - I Lived
The sixth single from the album, Native (2014).
The song’s game of the name is “Carpe diem“ (Seize the day).
Wikipedia writes:
The video is dedicated to a 15-year-old fan of the band, Bryan Warnecke, who suffers from cystic fibrosis. [8] Bryan Warnecke talks about living with cystic fibrosis in the music video: ..
作者のライアン・テッダーはこの曲を4才の息子のために書いたそうだが、ミュージックビデオの主人公は、呼吸するだけでも痛みが走るcystic fibrosis(嚢胞性線維症)という生まれながらの難病と闘ってきた15才の少年だ。曲のキーワードは”Carpe diem (カーペディエム)英語だと”Seize the day” 「今を生きろ」「人生を楽しめ」などの意味。これは1989年の秀作映画「今を生きる」(原題: Dead Poets Society、ロビン・ウィリアムス主演、アカデミー賞脚本賞)のなかに出てくる古代ローマの詩人ホレスの言葉。映画は主人公である全寮制高校の国語教師が生徒に語る珠玉の言葉で溢れている。
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iryouhoken · 7 years
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米FDA 嚢胞性線維症治療薬Kalydecoの適応拡大を承認ミクスOnline米食品医薬品局(FDA)は5月17日、嚢胞性線維症治療薬Kalydeco(イバカフトル)について、同剤の投与対象となっている患者が持つ嚢胞性線維症貫通調節因子(CFTR)遺伝子変異を10種類から33種類に拡大することを承認した。拡大した適応は、臨床試験およびinvitro試験 ...
http://news.google.com/news/url?sa=t&fd=R&ct2=us&usg=AFQjCNFcWu_Byvatltb030YW-Y8yuunmvg&clid=c3a7d30bb8a4878e06b80cf16b898331&ei=ecMjWdjiG9e83gHn5bbIDQ&url=https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/57528/Default.aspx
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