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#水性塗料で塗ったお気に入り模型上げようぜ
takahashicleaning · 8 months
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TEDにて
ハナ・ブルクシュトゥマ:印刷できる柔軟な有機太陽電池?
(詳しくご覧になりたい場合は上記リンクからどうぞ)
見慣れた太陽電池とは違い、有機太陽電池は、インクに溶かせる化合物でできていて、単純な手法で好きな形に印刷できます。
それによって得られるのは、軽量で柔軟で半透明な、太陽エネルギーを電気に変えるフィルムです。
それが、どうやって作られ、世界の電力事情をどう変え得るかを、ハナ・ブルクシュトゥマが解説します。
私が左右で違う靴を履いているのに気付かれたかもしれません。
見た目がおかしいし、履き心地がすごく変ですが、これで示したいことがあったんです。
左の靴は、持続可能なフットプリントを示していて天然資源を地球が再生できる範囲内で利用し、二酸化炭素を森や海が吸収できる範囲内で排出します。
安定した健全な状態です。今日の状況は、むしろもう一方の靴のようです。大きすぎます。2017年には、地球が再生できる1年分の資源を8月2日の時点ですでに使い切っていました。
これはいわば、ひと月分のお金を18日までに使い切ってしまいその月の残りは、借金で暮らすようなものです。
そのようにして何ヶ月か過ごすことはできるでしょうが、暮らし向きを改めなければそのうち大きな問題を抱えることになります。
この過剰利用の破壊的影響については、みんな知っての通りです。
地球温暖化、海面の上昇、氷河や極地の氷の融解、ますます極端になっていく気候、この問題の大きさには苛立ちを禁じ得ません。
これが余計に苛立たしいのは、解決法があるというのに、みんなやり方を変えようとしないことです。
今日は、新しいソーラー技術が持続可能な建物の未来にいかに貢献できるかという話をします。
エネルギー需要の4割は、建物で消費されているためこの消費に取り組むことで地球温暖化ガス排出を大幅に減らせます。
持続可能性の原則に沿って設計された建物は、必要な電力を自分で作り出します。
これを実現するには、たとえば断熱性の高い壁や窓を使うなどして、まずエネルギー消費を極力抑える必要があります。
そのような技術は、既に商品化されています。でも、普及に時間は膨大にかかるのも事実です。
それから温水や暖房のためのエネルギーが必要です。これは太陽熱利用システムやヒートポンプで地面や大気から再生可能な形で得ることができます。
この技術も既に利用可能になっています。でも、普及に時間は膨大にかかるのも事実です。
あと必要なのは電気です。
再生可能な発電方法は原理的にいくつかありますが、屋根に風車のある建物や水力発電設備のある庭というのをどれほどご存じでしょうか。
たぶんあまりないでしょう。理に適わないからです。でも太陽は、屋根や壁面に豊富なエネルギーを送ってくれています。
このエネルギーを建物の表面で集めることの可能性はとても大きなものです。ヨーロッパを例に見てみましょう。
太陽に対して適切な向きであまり陰にならない面をすべて使うなら太陽電池から得られる電力で総エネルギー需要の3割を賄えます。
でも、現在の太陽電池には、問題があります。
費用効率は良いのですが、デザイン的にはあまり柔軟性がなく美観という点で問題になります。
太陽電池のある建物というとこのようなものをイメージするでしょう。
レイカーツワイルの言うように、さらに発電効率も何回かイノベーションが必要です。
太陽光発電所には、良いでしょうが建物や通りや建築物となると美観が問題になります。太陽電池のある建物をあまり目にしない理由が、ここにあります。
単にそぐわないのです。
私たちのチームでは、まったく異なる太陽電池技術に取り組んでいます。
有機太陽電池です。「有機」というのは、光の吸収や電荷輸送に金属ではなく炭素を主体とした素材を使っているということです。
私たちが使うのは、真珠の首飾りみたいに異なる繰り返し単位が連なった高分子化合物とフラーレンというサッカーボールみたいな形の小さな分子の混合物です。
この2つを混ぜて溶かしインク状にします。すると柔軟な素材のロールに連続的に塗装するスロットダイのような印刷技術を使って印刷できるようになります。
印刷された薄い層は、太陽エネルギーを吸収する活性層になります。
この活性層はとても効率的です。ほんの0.2μmの薄さで太陽エネルギーを吸収できます。髪の毛の太さの100分の1という薄さです。
別のたとえをするなら、この高分子1キロでインクを作ったならその量でサッカー場の広さの太陽電池を印刷できます。
有機太陽電池は、極めて少ない原料で製造できこれは持続可能性という点で重要なことだと思います。
印刷するとこのような太陽電池モジュールができます。これはプラスチックフィルムのように見え性質も似ています。軽量で曲げることができ半透明です。
それでも屋外の太陽光や室内の光を集めることができ、ご覧のとおり小さなLEDを灯せます。これはプラスチックの形で使え軽量で曲げられる点を生かせます。
軽量という点は暖かい地域の建物では重要です。屋根が重い物を余分に載せられるようには、デザインされていないからです。
たとえば冬期の積雪は、想定していません。重いシリコン製の太陽電池は使えませんが、この軽量なソーラーフィルムならぴったりです。
曲げられるという点は、膜状の建築構造と太陽電池を組み合わせる場合に重要になります。
シドニーのオペラハウスの「帆」が、発電所になるところを想像してみてください。この太陽電池フィルムはまたガラスのような通常の建築資材と組み合わせることもできます。
どのみち外壁のガラスは、多くの場合、安全合わせガラスとして膜を挟んだ構造になっているので製造プロセスでもう一層、膜を追加するのは大変ではなく、それによって太陽電池を含んでいて発電のできる建築材料ができます。
見た目が良いという以外にも、この統合型の太陽電池には大きな利点が2つあります。
はじめにお見せした屋根の上の太陽電池を覚えていますか?
この場合、最初に屋根を葺きそれから2番目の層として太陽電池を設置します。これは設置のコストを高くすることになります。統合された太陽電池の場合、建築現場で設置する物は1つで済みます。
建物の外側と太陽電池を同時に取り付けられるのです。設置コストを節約できるだけでなく資源の節約にもなります2つの機能が1つの要素に統合されているからです。
前に光利用の話をしました、私はこの太陽電池パネルが気に入っていますが、皆さんの好みやデザイン上の必要は違っているかもしれません。でも大丈夫、この太陽電池は印刷過程で形やデザインを容易に変えることができます。
これは建築家や建物の所有者に柔軟に対応でき好きな形でこの発電技術を取り入れてもらえます。
これが研究所の中だけのものでないことを強調しておきたいと思います。広く普及するまでには、まだ何年かかかるでしょうが、もう商品化の間際に来ており、すでに製造ラインを持つ企業が何社かあります。
企業では製造能力を拡大しており、私たちもインクを量産できるようにしています。
フットプリントは、小さい方が快適です。
適切な大きさ適切な規模です。私たちはエネルギー消費を適切な規模に戻す必要があります。建物をカーボン・ニュートラルにするというのも重要です。
ヨーロッパでは、2050年までに既存の建築の脱炭素化をするという目標を掲げています。そのために有機太陽電池が大きな役割を果たすと期待しています。
実例をいくつかご覧にいれましょう、有機太陽電池を大々的に印刷した初の商用事例です。「商用」と言ったのは、太陽電池が産業設備に印刷されたということです。
これは「ソーラーツリー」という名で2015年ミラノ万博のドイツ館です。日中には日よけとなり、また夜の照明のための電気を作っています。
太陽電池の形に六角形が選ばれた理由が分かりますか?
簡単です。建築家は、床に影で模様を作りたいと思いそう依頼し、その通りに印刷されたのです。実際の製品とはだいぶ違いますが、この自由な形の作例は私たちの予想以上に訪れた建築家達の想像力を刺激したようです。
こちらの事例は、私たちがターゲットとしているものにより近い形のものです。ブラジルのサンパウロにあるオフィスビルで半透明な有機太陽電池パネルがガラス外壁に統合されていていくつもの役割を果たしています。
1つには、中の会議室に日陰を提供すること。
もう1つは、革新的な方法で会社のロゴを表示することです。そしてもちろん発電によって建物のエネルギー消費を抑えています。
これは建物が、エネルギーの消費者でなく生産者になる未来を指し示しています。太陽電池が建物の外面に調和して取り込まれて資源効率と見た目の良さを両立している様を見たいと思います。
屋根用にはシリコン製の太陽電池が適する場合もあるでしょう。でも、すべての外壁やその他の部分も生かそうと思うなら半透明な部分や曲面や日よけなどには、建築家が望むどのような形にもできる有機太陽電池が大いに役に立つことでしょう。
ありがとうございました。
マイケルサンデルは、メリトクラシー(能力主義)の陳腐さを警告し、諌め(いさめ)ています!
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SDGsや気候変動対策は、再生可能エネルギーのことではありません。パンデミック対策の一環です!それ以外の活動は派生物。権力濫用の口実に注意!
注意事項として、基礎技術にリープフロッグは存在しません。応用分野のみです!
こういう新産業でイノベーションが起きるとゲーム理論でいうところのプラスサムになるから既存の産業との
戦争に発展しないため共存関係を構築できるメリットがあります。デフレスパイラルも予防できる?人間の限界を超えてることが前提だけど
しかし、独占禁止法を軽視してるわけではありませんので、既存産業の戦争を避けるため新産業だけの限定で限界を超えてください!
(個人的なアイデア)
電気を作る熱力学のサイクルで熱効率は、ほぼ50%、45%~50%の効率まで高めることは可能ですが・・・
高温の物体から熱を受け取り、電気という「使えるエネルギー」に変換できる機械を一般的に「熱エンジン」と呼んでいる。
高温の物体から受け取った熱エネルギーのうち、どれだけ活用できたかという比率を「効率」と物理学では定義している。
この効率は、原理的に超えられない「カルノー効率」という上限があることが知られている。
カルノー効率が達成されると、効率は上がるが、同時に仕事率がゼロになる現象。
つまり、熱エンジンの効率を最大限に上げると出力がほぼゼロになることを意味しています。そして、効率100%は物理的に不可能ということです。
中世で試行錯誤が行われたことに終止符が示され、機械での永久機関は作れないことが、この現象から理解できます。エネルギー保存の法則からも理解できます。
他には、燃料の持つエネルギーをどれだけ動力として取り出すことができるか?これをエンジンの熱効率と定義しています。
2020年の段階で、ガソリンエンジンの熱効率は最高で40%前後あり、10年くらい前までは30%程度。低燃費の技術競争もあるけどカルノー効率から限界も見え始めています。
だから、ガソリン自動車から電気自動車へ世界中の法人が開発を加速して切り替えている潮流があります。
その他には
日本の法人99%は、自転車操業これが普通。世界でも経済的に普通。
再分配、事前分配をする政府は、一部の大企業や裕福層から増税が原則です。
民主党以前の連休が少ない日の多いのはパンデミック分散対策の一環かもしれない?女性活躍ウィズ実力!能無しがトップにつくと女性でも、権力濫用。混乱必死です。
そして
プラネタリー・バウンダリー提唱者のヨハン・ロックストロームもSDGsに採用されてる。
SDGsは、一神教での法人倫理を統合し数値化している可能性もあります。
多神教ではブッダの八正道です。
SDGsや気候変動対策は、再生可能エネルギーのことではありません。パンデミック対策の一環です!それ以外の活動は派生物。具体的にSDGsの数値を示さない権力濫用の口実に注意!
これらの源流は、Spaceship Earth(宇宙船地球号)のバックミンスターフラー。
バックミンスターフラーは、思想家というか製品デザイナー?
ガイア理論の方が馴染みがあって、こっちの方が腑に落ちるが、それがスティーブジョブズに継承し、今のAppleParkに繋がる影響を与えた。
AppleParkは、バックミンスターフラーの弟子が建築しています。
経済学者で、ケンブリッジ大学名誉教授のパーサ•ダスグプタが、イギリス政府に提出した報告書の中に登場。
経済学を学ぶと、登場する資本や労働などの生産要素の投入量と算出量の関係を示す生産関数があります。
こうした関数は、様々な前提条件に基づきますが、経済学者は、収穫逓減の法則と言うものをよく知っています。
このような人工的な生産関数とは、他に天然由来の生産関数。
つまり、自然から収穫できる生産関数を導き出し、地球全体の生産関数というエコシステムを数値化することでバランスをコントロールできるかもしれないというアイデア。
ここでは、自然資本と呼びます。
自然資本を加味すれば現在の経済成長ペースがどこまで持続可能かを分析することもできます。
人間は、国内総生産GDPを生み出すため、自然から資源を取り出して使い、��要になったものを廃棄物として自然に戻す。
もし、自然が自律回復できなくなるほど、資源が使われて、廃棄されれば、自然資本の蓄積は減少し、それに伴い貴重な生態系サービスの流れも減っていくことになります。
さらに、教授は、経済学者も経済成長には限界があることを認識すべきだと説いています。地球の限りある恵みを効率的に活用しても、それには上限があります。
したがって、持続可能な最高レベルの国内総生産GDPと言う臨界点の水準も存在するということが視野に入るようにもなります。これは、まだ現時点では誰にもわかりませんので解明が必要です。
なお、地球1個分は、ずいぶん昔に超えています。
<おすすめサイト>
デイビッド・マッケイ: 再生可能エネルギーの現実
ダニー・ヒリス: 太陽光を使った地球工学は進めるべきか?
レイ・カーツワイル:今後現れるシンギュラリティ(技術的特異点)を学ぶ大学
Solar Roadways(道路としても敷き詰めて活用できる太陽光発電パネル)
「考えるクルマ」が世界を変える―アーバン・モビリティの革命
Powerwall 2 & Solar Roof Launch - Teala Motors
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stylelexus · 3 years
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#水性塗料で塗ったお気に入り模型上げようぜ 1/144 「ザ・バング」全てファレホでエアブラシ塗装 1/144 「バッシュ・ザ・ブラックナイト」全てファレホで筆塗り https://www.instagram.com/p/CPYsStHD0XS/?utm_medium=tumblr
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hiraharu · 4 years
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かたぞめ 【型染め】 ・ 〔名詞〕日本の伝統的な染色技法の一つ。型紙または、木型、金型などをを用いて布地や紙などに模様を染める染色法。 ・ 〔工程〕 1:型のデザインを決めて型を彫る。 2:彫り上げた型紙に紗(しゃ)という細かい網を油性塗料で張り合わせる。 3:餅米を炊きネバ糊を作りネバ糊に糠、塩、石灰、水を混ぜ「糊」を作る 4:布を張り準備する。 5:糊置き。型を布に置き、染めない部分(白く残る部分)に糊を置いていく。その後、型を慎重に剥がし次の場所に設置する。絵柄は繋がり繰り返される。 6:乾燥。竹ひごをつけて、布がたるまないように張っていく。天気が良いと外で乾燥することもある。 7:引き染め。糊が乾いた後染料をのせ、色をつける。 8:水洗い。糊を落とすとようやく絵柄が浮き上がる。 9:完成。 ・ 〔対比〕ステンシル:切り抜いた型紙を生地の上に合わせ、色を付けたい部分にインクなどを置く。型染めは、防染糊によって染めない部分を作るという、ステンシルとは逆の用途になる。 ・ 〔属性〕手作業 ・ 〔対抗馬〕 草木染め・藍染でおなじみの宝島染工 ・ 〔わざわざ取り扱い〕コースター、名刺入れ、大がま口、手ぬぐい ・ 〔縁〕わざわざ姉妹店「問tou」の暖簾 ・ 〔URL〕https://wazawaza.shop-pro.jp/?mode=grp&gid=2099862 ・ #newitem (パンと日用品の店 わざわざ) https://www.instagram.com/p/B649dp4nISN/?igshid=o5lkvjf3iuij
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2ttf · 12 years
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iFontMaker - Supported Glyphs
Latin//Alphabet// ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZabcdefghijklmnopqrstuvwxyz0123456789 !"“”#$%&'‘’()*+,-./:;<=>?@[\]^_`{|}~ Latin//Accent// ¡¢£€¤¥¦§¨©ª«¬®¯°±²³´µ¶·¸¹º»¼½¾¿ÀÁÂÃÄÅÆÇÈÉÊËÌÍÎÏÐÑÒÓÔÕÖ×ØÙÚÛÜÝÞßàáâãäåæçèéêëìíîïðñòóôõö÷øùúûüýþÿ Latin//Extension 1// ĀāĂ㥹ĆćĈĉĊċČčĎďĐđĒēĔĕĖėĘęĚěĜĝĞğĠġĢģĤĥĦħĨĩĪīĬĭĮįİıIJijĴĵĶķĸĹĺĻļĽľĿŀŁłŃńŅņŇňʼnŊŋŌōŎŏŐőŒœŔŕŖŗŘřŚśŜŝŞşŠšŢţŤťŦŧŨũŪūŬŭŮůŰűŲųŴŵŶŷŸŹźŻżŽžſfffiflffifflſtst Latin//Extension 2// ƀƁƂƃƄƅƆƇƈƉƊƋƌƍƎƏƐƑƒƓƔƕƖƗƘƙƚƛƜƝƞƟƠơƢƣƤƥƦƧƨƩƪƫƬƭƮƯưƱƲƳƴƵƶƷƸƹƺƻƼƽƾƿǀǁǂǃDŽDždžLJLjljNJNjnjǍǎǏǐǑǒǓǔǕǖǗǘǙǚǛǜǝǞǟǠǡǢǣǤǥǦǧǨǩǪǫǬǭǮǯǰDZDzdzǴǵǶǷǸǹǺǻǼǽǾǿ Symbols//Web// –—‚„†‡‰‹›•…′″‾⁄℘ℑℜ™ℵ←↑→↓↔↵⇐⇑⇒⇓⇔∀∂∃∅∇∈∉∋∏∑−∗√∝∞∠∧∨∩∪∫∴∼≅≈≠≡≤≥⊂⊃⊄⊆⊇⊕⊗⊥⋅⌈⌉⌊⌋〈〉◊♠♣♥♦ Symbols//Dingbat// ✁✂✃✄✆✇✈✉✌✍✎✏✐✑✒✓✔✕✖✗✘✙✚✛✜✝✞✟✠✡✢✣✤✥✦✧✩✪✫✬✭✮✯✰✱✲✳✴✵✶✷✸✹✺✻✼✽✾✿❀❁❂❃❄❅❆❇❈❉❊❋❍❏❐❑❒❖❘❙❚❛❜❝❞❡❢❣❤❥❦❧❨❩❪❫❬❭❮❯❰❱❲❳❴❵❶❷❸❹❺❻❼❽❾❿➀➁➂➃➄➅➆➇➈➉➊➋➌➍➎➏➐➑➒➓➔➘➙➚➛➜➝➞➟➠➡➢➣➤➥➦➧➨➩➪➫➬➭➮➯➱➲➳➴➵➶➷➸➹➺➻➼➽➾ Japanese//かな// あいうえおかがきぎくぐけげこごさざしじすずせぜそぞただちぢつづてでとどなにぬねのはばぱひびぴふぶぷへべぺほぼぽまみむめもやゆよらりるれろわゐゑをんぁぃぅぇぉっゃゅょゎゔ゛゜ゝゞアイウエオカガキギクグケゲコゴサザシジスズセゼソゾタダチヂツヅテデトドナニヌネノハバパヒビピフブプヘベペホボポマミムメモヤユヨラリルレロワヰヱヲンァィゥェォッャュョヮヴヵヶヷヸヹヺヽヾ Japanese//小学一年// 一右雨円王音下火花貝学気九休玉金空月犬見五口校左三山子四糸字耳七車手十出女小上森人水正生青夕石赤千川先早草足村大男竹中虫町天田土二日入年白八百文木本名目立力林六 Japanese//小学二年// 引羽雲園遠何科夏家歌画回会海絵外角楽活間丸岩顔汽記帰弓牛魚京強教近兄形計元言原戸古午後語工公広交光考行高黄合谷国黒今才細作算止市矢姉思紙寺自時室社弱首秋週春書少場色食心新親図数西声星晴切雪船線前組走多太体台地池知茶昼長鳥朝直通弟店点電刀冬当東答頭同道読内南肉馬売買麦半番父風分聞米歩母方北毎妹万明鳴毛門夜野友用曜来里理話 Japanese//小学三年// 悪安暗医委意育員院飲運泳駅央横屋温化荷開界階寒感漢館岸起期客究急級宮球去橋業曲局銀区苦具君係軽血決研県庫湖向幸港号根祭皿仕死使始指歯詩次事持式実写者主守取酒受州拾終習集住重宿所暑助昭消商章勝乗植申身神真深進世整昔全相送想息速族他打対待代第題炭短談着注柱丁帳調追定庭笛鉄転都度投豆島湯登等動童農波配倍箱畑発反坂板皮悲美鼻筆氷表秒病品負部服福物平返勉放味命面問役薬由油有遊予羊洋葉陽様落流旅両緑礼列練路和 Japanese//小学四年// 愛案以衣位囲胃印英栄塩億加果貨課芽改械害街各覚完官管関観願希季紀喜旗器機議求泣救給挙漁共協鏡競極訓軍郡径型景芸欠結建健験固功好候航康告差菜最材昨札刷殺察参産散残士氏史司試児治辞失借種周祝順初松笑唱焼象照賞臣信成省清静席積折節説浅戦選然争倉巣束側続卒孫帯隊達単置仲貯兆腸低底停的典伝徒努灯堂働特得毒熱念敗梅博飯飛費必票標不夫付府副粉兵別辺変便包法望牧末満未脈民無約勇要養浴利陸良料量輪類令冷例歴連老労録 Japanese//小学五〜六年// 圧移因永営衛易益液演応往桜恩可仮価河過賀快解格確額刊幹慣眼基寄規技義逆久旧居許境均禁句群経潔件券険検限現減故個護効厚耕鉱構興講混査再災妻採際在財罪雑酸賛支志枝師資飼示似識質舎謝授修述術準序招承証条状常情織職制性政勢精製税責績接設舌絶銭祖素総造像増則測属率損退貸態団断築張提程適敵統銅導徳独任燃能破犯判版比肥非備俵評貧布婦富武復複仏編弁保墓報豊防貿暴務夢迷綿輸余預容略留領異遺域宇映延沿我灰拡革閣割株干巻看簡危机貴揮疑吸供胸郷勤筋系敬警劇激穴絹権憲源厳己呼誤后孝皇紅降鋼刻穀骨困砂座済裁策冊蚕至私姿視詞誌磁射捨尺若樹収宗就衆従縦縮熟純処署諸除将傷障城蒸針仁垂推寸盛聖誠宣専泉洗染善奏窓創装層操蔵臓存尊宅担探誕段暖値宙忠著庁頂潮賃痛展討党糖届難乳認納脳派拝背肺俳班晩否批秘腹奮並陛閉片補暮宝訪亡忘棒枚幕密盟模訳郵優幼欲翌乱卵覧裏律臨朗論 Japanese//中学// 亜哀挨曖扱宛嵐依威為畏尉萎偉椅彙違維慰緯壱逸芋咽姻淫陰隠韻唄鬱畝浦詠影鋭疫悦越謁閲炎怨宴援煙猿鉛縁艶汚凹押旺欧殴翁奥憶臆虞乙俺卸穏佳苛架華菓渦嫁暇禍靴寡箇稼蚊牙瓦雅餓介戒怪拐悔皆塊楷潰壊懐諧劾崖涯慨蓋該概骸垣柿核殻郭較隔獲嚇穫岳顎掛括喝渇葛滑褐轄且釜鎌刈甘汗缶肝冠陥乾勘患貫喚堪換敢棺款閑勧寛歓監緩憾還環韓艦鑑含玩頑企伎忌奇祈軌既飢鬼亀幾棋棄毀畿輝騎宜偽欺儀戯擬犠菊吉喫詰却脚虐及丘朽臼糾嗅窮巨拒拠虚距御凶叫狂享況峡挟狭恐恭脅矯響驚仰暁凝巾斤菌琴僅緊錦謹襟吟駆惧愚偶遇隅串屈掘窟繰勲薫刑茎契恵啓掲渓蛍傾携継詣慶憬稽憩鶏迎鯨隙撃桁傑肩倹兼剣拳軒圏堅嫌献遣賢謙鍵繭顕懸幻玄弦舷股虎孤弧枯雇誇鼓錮顧互呉娯悟碁勾孔巧甲江坑抗攻更拘肯侯恒洪荒郊貢控梗喉慌硬絞項溝綱酵稿衡購乞拷剛傲豪克酷獄駒込頃昆恨婚痕紺魂墾懇沙唆詐鎖挫采砕宰栽彩斎債催塞歳載剤削柵索酢搾錯咲刹拶撮擦桟惨傘斬暫旨伺刺祉肢施恣脂紫嗣雌摯賜諮侍慈餌璽軸叱疾執湿嫉漆芝赦斜煮遮邪蛇酌釈爵寂朱狩殊珠腫趣寿呪需儒囚舟秀臭袖羞愁酬醜蹴襲汁充柔渋銃獣叔淑粛塾俊瞬旬巡盾准殉循潤遵庶緒如叙徐升召匠床抄肖尚昇沼宵症祥称渉紹訟掌晶焦硝粧詔奨詳彰憧衝償礁鐘丈冗浄剰畳壌嬢錠譲醸拭殖飾触嘱辱尻伸芯辛侵津唇娠振浸紳診寝慎審震薪刃尽迅甚陣尋腎須吹炊帥粋衰酔遂睡穂随髄枢崇据杉裾瀬是姓征斉牲凄逝婿誓請醒斥析脊隻惜戚跡籍拙窃摂仙占扇栓旋煎羨腺詮践箋潜遷薦繊鮮禅漸膳繕狙阻租措粗疎訴塑遡礎双壮荘捜挿桑掃曹曽爽喪痩葬僧遭槽踪燥霜騒藻憎贈即促捉俗賊遜汰妥唾堕惰駄耐怠胎泰堆袋逮替滞戴滝択沢卓拓託濯諾濁但脱奪棚誰丹旦胆淡嘆端綻鍛弾壇恥致遅痴稚緻畜逐蓄秩窒嫡抽衷酎鋳駐弔挑彫眺釣貼超跳徴嘲澄聴懲勅捗沈珍朕陳鎮椎墜塚漬坪爪鶴呈廷抵邸亭貞帝訂逓偵堤艇締諦泥摘滴溺迭哲徹撤添塡殿斗吐妬途渡塗賭奴怒到逃倒凍唐桃透悼盗陶塔搭棟痘筒稲踏謄藤闘騰洞胴瞳峠匿督篤凸突屯豚頓貪鈍曇丼那謎鍋軟尼弐匂虹尿妊忍寧捻粘悩濃把覇婆罵杯排廃輩培陪媒賠伯拍泊迫剝舶薄漠縛爆箸肌鉢髪伐抜罰閥氾帆汎伴畔般販斑搬煩頒範繁藩蛮盤妃彼披卑疲被扉碑罷避尾眉微膝肘匹泌姫漂苗描猫浜賓頻敏瓶扶怖附訃赴浮符普腐敷膚賦譜侮舞封伏幅覆払沸紛雰噴墳憤丙併柄塀幣弊蔽餅壁璧癖蔑偏遍哺捕舗募慕簿芳邦奉抱泡胞俸倣峰砲崩蜂飽褒縫乏忙坊妨房肪某冒剖紡傍帽貌膨謀頰朴睦僕墨撲没勃堀奔翻凡盆麻摩磨魔昧埋膜枕又抹慢漫魅岬蜜妙眠矛霧娘冥銘滅免麺茂妄盲耗猛網黙紋冶弥厄躍闇喩愉諭癒唯幽悠湧猶裕雄誘憂融与誉妖庸揚揺溶腰瘍踊窯擁謡抑沃翼拉裸羅雷頼絡酪辣濫藍欄吏痢履璃離慄柳竜粒隆硫侶虜慮了涼猟陵僚寮療瞭糧厘倫隣瑠涙累塁励戻鈴零霊隷齢麗暦劣烈裂恋廉錬呂炉賂露弄郎浪廊楼漏籠麓賄脇惑枠湾腕 Japanese//記号//  ・ー~、。〃〄々〆〇〈〉《》「」『』【】〒〓〔〕〖〗〘〙〜〝〞〟〠〡〢〣〤〥〦〧〨〩〰〳〴〵〶 Greek & Coptic//Standard// ʹ͵ͺͻͼͽ;΄΅Ά·ΈΉΊΌΎΏ��ΑΒΓΔΕΖΗΘΙΚΛΜΝΞΟΠΡΣΤΥΦΧΨΩΪΫάέήίΰαβγδεζηθικλμνξοπρςστυφχψωϊϋόύώϐϑϒϓϔϕϖϚϜϞϠϢϣϤϥϦϧϨϩϪϫϬϭϮϯϰϱϲϳϴϵ϶ϷϸϹϺϻϼϽϾϿ Cyrillic//Standard// ЀЁЂЃЄЅІЇЈЉЊЋЌЍЎЏАБВГДЕЖЗИЙКЛМНОПРСТУФХЦЧШЩЪЫЬЭЮЯабвгдежзийклмнопрстуфхцчшщъыьэюяѐёђѓєѕіїјљњћќѝўџѢѣѤѥѦѧѨѩѪѫѬѭѰѱѲѳѴѵѶѷѸѹҌҍҐґҒғҖҗҘҙҚқҜҝҠҡҢңҤҥҪҫҬҭҮүҰұҲҳҴҵҶҷҸҹҺһҼҽҾҿӀӁӂӇӈӏӐӑӒӓӔӕӖӗӘәӚӛӜӝӞӟӠӡӢӣӤӥӦӧӨөӪӫӬӭӮӯӰӱӲӳӴӵӶӷӸӹӾӿ Thai//Standard// กขฃคฅฆงจฉชซฌญฎฏฐฑฒณดตถทธนบปผฝพฟภมยรฤลฦวศษสหฬอฮฯะัาำิีึืฺุู฿เแโใไๅๆ็่้๊๋์ํ๎๏๐๑๒๓๔๕๖๗๘๙๚๛
see also How to Edit a Glyph that is not listed on iFontMaker
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日本の防衛費:10兆円時代の到来 本気の中国と米国の及び腰で、原潜・核の保有も不可欠に 1 朝鮮戦争前の戦略環境に逆戻りする東アジア  政府は、5年ぶりに「防衛計画の大綱(防衛大綱)」を見直し、今年末までに新防衛大綱を策定することになった。正しい判断だ。  北朝鮮に核装備を止める意思はなく、仮に米国がこれを阻止できなければ日本を敵と公言する北朝鮮の核の脅威が現実化することは間違いなかろう。  また、2020年から2030年にかけて、中国は海洋侵出を進展させるために、その足がかりとなる第一列島線上の日本や台湾などに対する直接的な軍事的圧力を強めるであろう。  したがってこの1年、我が国の防衛力の質量の強化に向けた決断と実行は死活的に重要である。  しかし、マスコミは米国や中国、あるいは、北朝鮮に関する細かい報道には熱心だが、専守防衛の足枷のままで日本は守れるのか、どうやって米国を巻き込みこの国を守るのか、そのために予算などの国家資源をどれだけ投入しなければならないか、など真の防衛論議に世論を導いているとは思えない。  一言で言えば、アドルフ・ヒトラーの台頭を許した英国の「宥和政策」と同じことをやっていないだろうか、との疑念である。  もちろん野党は、中国の習近平国家主席が軍隊に対して「戦争に勝て」と演説し、北朝鮮の金正恩委員長が「日本を火の海にして太平洋に沈めてやる」と言っても国内の些事が大事なようなので論外だ。  肝心な与党だが、最近中国を訪問した与党の幹部が、中国の「一帯一路」への日本の参加に含みを持たせたり、昨年10月の中国共産党大会で表明された「人類運命共同体」を理解できると述べたりしたことは驚きである。  昨年、筆者は中国を訪問し一流の学者や高級軍人と防衛について論議したが、その時、中国側は、米国は「覇道」であり中国は「王道」であるとし、米国はアジアから出て行けと強く主張していたことを思い出す。  筆者は、「確かに米国は覇権国家であるが、一方で米国は自由や民主主義、そして失敗を恐れぬチャレンジ精神などの夢を見させてくれている。中国は、米国はアジアから出ていけと言い、中華民族の復興と中国の繁栄ばかりを言うが、一体我々にどのような夢を見させてくれるのか」と問うた。  中国の答えたのは「運命共同体」であった。 中国の言う運命共同体とは、中華の秩序の中で、個人の自由を奪ったうえでの中国共産党員のための繁栄でしかないことは分かっている。  チベットやウイグルを苦しめ、香港や台湾の基本的人権を脅かしている、そんな国との運命共同体が「宥和政策」の末路ではないか。  一部マスコミは、中国の潜水艦が尖閣諸島の接続水域を潜没航行した後も、日本は冷静に対応し、最近の日中関係の改善の流れを推し進めなければならないと説く。これが宥和政策である。  日中の友好関係の発展と言うが、現実は中国が日米離反に本腰を入れ、日本の取り込みにかっているのに、自ら首を差し出す愚を犯していないか今一度考える必要がある。  やみくもに中国と交流するなとは言わないが、外交、防衛、そして経済も中国に対する十分な警戒と備えなくしては危険である。  一方、米国は、ドナルド・トランプ大統領の一般教書演説では北朝鮮を攻撃する可能性は高いと考えるが、日本は米国が北朝鮮を今年前半までに攻撃する場合と攻撃しなかった場合の両面を考えておかなければならないだろう。  日本のマスコミは、トランプ大統領の揚げ足を取ってばかりだが、核兵器の保有を絶対に諦めず、日本に敵意を明確にしている北朝鮮に対して、犠牲はあっても今、米国が北朝鮮を攻撃することは日本の生存のために必須である。  仮に米国が今年前半に北朝鮮を攻撃しなければ、トランプ大統領は世界からの信頼を失うばかりでなく、北朝鮮の日本に対する脅威の除去は永遠に困難になるだろう。  つまり、このような切迫した危機事態には、「平和主義」という決意のない考え方は無用である。  しかし、万一米国が軍事的解決を果たしたとしても、東アジア情勢の今後は楽観できない。  いずれ米国の朝鮮半島への駐留の意義は薄れ影響力を失い、一方中国の影響力は増大し、やがてはっきりとした親中反米・反日の政権が出現するだろう。東アジアは、朝鮮戦争前の「アチソンライン」に戻るということである。 つまり、北朝鮮が潰れようと潰れまいと、日本に残された選択肢は、核兵器を含む防衛力の増強しかないのである。  さらに筆者は、「北朝鮮は前哨戦」であり、「中国こそが本丸」であると論じてきたが、まさに、米国の新たな国防戦略では、「中国は地球規模での優位を確立し、米国に取って代わろうとしている」と指摘し、「中国との大国間競争が国防の最優先課題である」と明記したのである。  米国は、北朝鮮という眼前の脅威に対処しながら、時代の大きな節目に気がついたのである。本丸は「中国」であると。  ここにおいて日本は、当面の脅威は北朝鮮であり、中長期的な脅威は中国であることを明確にすることを躊躇してはならない。戦略環境が180度激変したことを深刻に認識したうえで、新防衛大綱を論議することが重要である。 2 新たな防衛大綱は従来の思考の延長線では成り立たない  昨年の中国共産党大会の決定は、極めて重大な意味を持っており看過してはならない。その中で、覇権獲得のための時程表を明らかにしているからである。  習近平総書記は、米国の軍事力を睨みながら、中国軍を「世界一流の軍隊」にすると、ややぼかした言い回し��しているが、その原型は2012年に中国人民解放軍のシンクタンクである軍事科学院の「強軍戦略」にすでに謳われていたものである。  すなわち、2020年までにアジア太平洋地域で優位な地位を確保し、35年までに同地域での絶対的な優位を確立し、49年までに世界の平和維持に大きな影響力を持つとの国家目標を明確にしたものである。  もっと分かりやすく言えば、南シナ海をほぼ手中に収めた今は、2020年までに尖閣諸島を奪取し、東シナ海を手中に収めるということである。  そして中国が、2035年までに日本や台湾、フィリピンなどを軍事的に無力化するか支配して東太平洋以東へ米国を追い出し、併せて軍事的・経済的にアジアから中東、アフリカ、欧州などを傘下に収めてしまえば米国はもはや中国の敵ではないことになる。  日本の中国の「一帯一路」への支援は、中国の覇権拡大を手伝うことになる。このように周辺国を揺さぶりながら、事実上、2035年までに米国との覇権争いに決着をつけようというのである。 そこでトランプ大統領は新しい国防戦略の中で、中国を主敵と位置づけたのである。しかし、その国防戦略では、米軍自体が劣化していることを認め、中国との戦いも敵の攻撃間に「展開し」「生き残り」「作戦する」となっている。  このことはエアシーバトルを巡り米国で長年にわたり議論されてきたことであり、当面、中国の長距離ミサイルの脅威を回避するため後方へ退避し、態勢を立て直して「長期戦」で決着をつけることである。  そして、米国の作戦は、中国よりもさらに長射程のミサイルなどで攻撃する「長距離打撃」に戦い方が変わることを意味している。つまり、米軍の空母も航空機もしばくは日本近海に来援しないということである。  したがって、現防衛大綱下の「中期防衛力整備計画(中期防)」で謳われている、日本が当初から海上・航空優勢を取って防衛作戦を遂行するという考え方はもはや成立しない。  日本も、いかに「生き残り、戦い続けるか」を追求しなければならない。しかも国民を守りながら、自衛隊の能力を補完する米軍の作戦の土俵を作らなければならないのである。  このような中で、海上自衛隊が単独で東シナ海で作戦することは極めて困難であり、航空自衛隊は民間飛行場も最大限に使用し「生き残り、戦い続ける」ことが要求されているのである。  むしろ、米軍は、対空ミサイルに防護された陸上自衛隊や米陸軍による長距離の地上発射型対艦ミサイルなどで中国海軍の動きを封じ込めつつ、米海・空軍や陸海空自衛隊の長距離精密対艦ミサイルなどにより中国海軍に大きな打撃を与える態勢を確立することによって、中国の海洋進出を断念させる方向に向かっている。  (この詳細については、共著、SB新書『日本と中国もし戦わば』、共著、国書刊行会『中国の海洋侵出を抑え込む日本の対中防衛戦略』を参照されたい)  残念ながら、アウトレンジから射撃する長距離精密ミサイルは日米よりも中国の方が進んでいるため、これに勝つには中国よりもさらに長い多様な長距離精密ミサイルを日米が多数装備することが必須である。  以上を踏まえ、新防衛大綱の策定に当たっては、次の点を考慮しなければならない。 (1)新防衛大綱(防衛戦略)の策定は首相直属の国家安全保障局(NSS)を主役とし、政治家はそれを可能とする防衛政策を考え、予算を与えよ。  自民党の国防部会は、次の防衛大綱を作ると言っているが、「防衛戦略」とゲームチェンジャーを含む「装備体系」の骨格を策定するのは、5年前にその役割を持って設立された国家安全保障会議(NSC)であり、その事務方である精鋭な国家安全保障局(NSS)である。  米国の国防戦略でも謳われているように、資源(予算)が与えられなければ意味がない。  日本も、直面する国難突破に当たって、戦略と必要な装備体系が提示されたら財政主導をやめ、大胆に国家予算を振り向け短期間に強力な防衛力を作り上げなければならない。それが政治家の使命である。  トランプ大統領にとって、アジアの信頼できる同盟国は日本しかない以上、NATO(北大西洋条約機構)と同様に「防衛予算GDP2%」の確保は最低限の義務である。もちろん、装備品の性能と日本の防衛技術の向上を考えない米国装備品の爆買いはやめるべきである。  さらに、この環境の中で、自衛隊の手足を縛っている、「専守防衛」と非核三原則の内の「核を持ち込ませず」は非現実的であり、政治家はこれを撤廃することを真剣に議論すべきであろう。  もし核の持ち込みを認めないというのであれば、日本は厳しい生存競争の中で生き残るため核の保有について検討を開始すべきだ。このような根本的な政策を議論することが政治家の務めである。 (2)「空白を埋める防衛力(基盤的防衛力)」の考えを棄て、北朝鮮や中国の具体的な脅威に対抗する「脅威対抗の防衛力」に転換せよ。  すべての誤りは「基盤的防衛力」の考えにある。今の日本の防衛力は、自らが空白となって、敵の侵略を誘発しないという極めて曖昧な「哲学」からできている。非現実的な防衛政策を変えることができないのもこの哲学に原因がある。  こんな考え方だから、ショーウインドウに装備を並べるだけの防衛力しか保有しておらず、実際に戦力となるミサイルや弾薬は貧弱であり、自衛隊は米軍が日本に期待する1~2か月の戦いも遂行できなければ、防衛費を倍増することすらできない。  例えば、北朝鮮が300発のミサイルを持っているならば、これを全部迎撃できる防衛力を持つことが、脅威対抗の防衛力である。 イージスアショアは施設を作るだけで1000億円、北朝鮮のミサイルを迎撃するだけでも数兆円のミサイル数が必要である。このような真実を国民には語る必要があろう。  中国の軍事力を「張り子の虎」という向きもあるが、基盤的防衛力の考え方に毒された我が国では、「張子の虎」は実は日本であることに気が付いていない。  脅威対抗だと莫大なお金がかかるだろうし、そもそも中国には勝てやしないとうそぶく学者もいる。もちろん、今の防衛費では日本は守れない。  しかし、筆者などが米国と腹を割って議論した末に導いた「米国と一体となった日本の防衛戦略」と、確固たる最新技術に裏づけされた「ゲームチェンジャー」といわれる装備を開発・装備化することにより、かって元寇で中国(元)・朝鮮連合軍を打ち破ったように、中国海軍を壊滅させ、中国の軍事的野望を断念させることは、日本の経済力と技術力をもってすれば十分に可能である。(2冊の共著参照) 3 新防衛大綱の柱はこれだ  新防衛大綱は、日本と米軍が一体となり中国に立ち向かうことが大前提であり、この際、米軍が日本に期待する役割は明確である。  1つは、中国の対米国「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」を逆手に取って、日本に対中国A2/ADネットワークを構築させ、米軍の西太平洋における戦力展開を支援してもらうとともに、ハリス米太平洋軍司令官が号令をかけているように「船を沈めよ」を実現することである。  2つ目は、不正規軍に先導された「潜り込む攻撃」、すなわち、海上民兵に支援された精強な地上軍の攻撃を日本自ら撃破することである。当然、尖閣諸島は日本独自で守らなければならない。  これを踏まえ、今新しい防衛大綱の柱とすべきは、陸海空の作戦領域がクロスドメインになっていない現防衛大綱の「統合機動防衛力」を改め、真に陸海空戦力が統合された「積極拒否防衛力」を目指すべきである。その柱は、 (1)南西諸島に対艦ミサイル、防空ミサイルおよびこれらを守る地上部隊を配置して防衛拠点を拡大・強化することである。  平時からその態勢を作り上げなければ、中国の東シナ海および南西諸島の支配の流れに大きく遅れてしまう。  また、西太平洋の支配のために、中国が南西諸島を支配しようとする意志は揺るがず、自衛隊がいるから紛争に巻き込まれると言うのは為にする議論にほかならない。  さらに、朝鮮半島の不安定化に伴い、南西諸島防衛に加え、日本の防衛拠点を、対馬、隠岐の島、佐渡島、さらに津軽・宗谷海峡に拡大することは喫緊の課題である。 (2)前述したように、米太平洋軍司令官が号令をかけ、特に米海軍が狙う「船を沈めよ」こそ、日米一体化作戦の焦点であり、日本を守る切り札でもある。  この考え方の背景は既に説明したが、日米の陸海空の戦いの領域を一体化することにより、中国の虎の子である中国海軍の息の根を止めることで、中国の軍事的野望を打ち砕くことができるのである。  ここで大切なポイントは、1つは自衛隊による地上発射型、空中発射型の対艦ミサイルと米海空軍の長距離精密対艦ミサイルとの連携であり、2つ目は潜水艦、機雷、無人艇などによる「水中の支配」の追求である。  1つ目の長距離精密ミサイルは、今導入しようとしている米国製の「LRSAM」などがあり、これは極めて正しい選択である。  本来、LRSAMは空母艦載機である「F-18」のために開発されているものであるが、イージス艦や地上からも発射可能である。このため、たくさんミサイルを撃てる日本の「F-15」が装備化することで、格段と日米の連携が深まるだろう。  これに併せて、国産の地上発射型の対艦ミサイルの射程を少なくとも500キロ以上として、高速化を図るとともに、中国が保有する空母キラーと言われる高速飛翔弾などを、日本も早く開発し装備化する必要がある。  また、海上自衛隊も安全な太平洋側から対艦攻撃が出来るように、LRSAMなどを導入する必要があろう。  間違えてはいけないが、長距離精密ミサイルは、核弾頭をつけない限り敵基地攻撃のために導入するものではない。なぜなら、北朝鮮には少し効果があるかもしれないが、本丸の中国に対しては全く効果がないからである。  2つ目は、米海軍も極めて重視している「水中の支配」に海上自衛隊の重点を移していくべきであろう。  この際、対地・対艦のミサイルを発射できるような原子力潜水艦か、技術革新による新たな動力源を持った潜水艦の装備化を急ぐべきである。  この際、中国にはない「P3C」や「P1」などの対潜水艦哨戒機が日米の潜水艦、護衛艦(駆逐艦)などと一体となり作戦ができるのは、島嶼に配置された対艦・対空の防衛網があって初めて可能になることを忘れてはいけない。 (3)新たな技術革新によるゲームチェンジャーの新装備と従来の装備を組み合わせたミサイルディフェンス(MD)網の早期構築が喫緊の課題である。  イージスアショアに対する期待が強いようだが、その効果は限定的だ。もちろん、導入することは防空のシステム化、統合化のために必要ではあるが、北朝鮮、中国の弾道ミサイルや巡航ミサイル、無人機などの飽和攻撃には効果が薄い。  また、本丸の中国と対峙する時は、東シナ海に入ることが難しいイージス艦によるMDは困難であろう。  米国は、中国やロシアのミサイルは多弾頭化され、中・露のミサイル飽和攻撃にはミサイルで迎撃することは困難として、2010年からレーザ兵器、レールガンや電磁波兵器に軸足を移している。日本は周回遅れだ。  ロシアは既に電磁波兵器、および大出力電波妨害兵器を車両化して装備化しているが、米国はまだ保有していない。  驚くことに、これらの新装備に欠かせない技術力などはかなり日本に集中している。  中国や米国はこのことに数年前から気がついており、今、国を挙げて日本にアプローチしている。これに対して日本の経産省などはあっさりと外国に売ってくれという始末である。  米国はこれに乗じて日米同盟を盾に、日本の技術と技術者の獲得に乗り出し、中国は得意の札束で買収などを仕かけてきている。誰も盾になり守らない。これが日本の実態である。  技術と技術者を日本の宝だと思わず、その流出を放置して逆に日本を苦しめている。第2次世界大戦時、日本で八木アンテナを発明しておきながら、その価値の認識や開発が遅れ、逆にその発明を直ちに採用した米国でレーダが完成し、日本を打ち負かしたことと同じことが今起こっていることに愕然とさせられる。  セグウエイは日本で発明されたのに、日本にはない。戦闘機のステルスの塗料は日本が発明したのに、中国や米国が使っている。  さらに、米国の某軍事産業は、日本の技術でゲームチェンジャーを作りそれを中国に売ると言っている。これが、米国の軍需産業の実態だ。このような面からも外国との兵器開発競争に日本は負けてはいけないのである。 日本がゲームチェンジャーとなる技術と技術者を国家として守ることは死活的に重要なことである。  今、このことに気づき、速やかに対策を取り日本の企業が呼応したならば、まだ日本はゲームチェンジャーといわれる幾つかの兵器を手にすることができるだろう。  日本人がこの国を本気で守ると決意し、2番でいいという負け犬根性を棄て、世界で1番を取るんだと覚悟を決めることが前提である。  地理的に中国や北朝鮮に近い日本こそゲームチェンジャーを必要としている。  特に、最悪の環境にあっても日本国民を守り切るためのMDは、陸上自衛隊が既に保有している世界で唯一航空機と巡航ミサイルを迎撃できる短距離・中距離SAMおよび航空自衛隊の「PAC3」を最後の砦として、ゲームチェンジャーと組み合わせ最強のMDの体制を構築しなければならない。  幸いにも、防衛省はゲームチェンジャー技術の��用を打ち出す方針を固めたと言われているので、従来の考えにとらわれず、また、脅威認識が欠けた悠長な開発時程を改めて速やかに結果を出して頂きたい。そのための政治決断も必要である。 4 大局を見て日本の針路を誤るな  この1年の新防衛大綱の策定に関する議論が、日本の将来を決めるだろう。わが国は、そのような日本の生死を分ける重大な局面を迎えている。  中国は、日本に対して「日中関係が早急に平常化し、発展の軌道に戻るよう期待する」と言うが、平常化を壊して軍事的覇権を拡大し続けているのは、米国も「主敵」と考える中国だろう。  今年が日中友好条約締結40周年とは皮肉なもので、それに浮かれて日本を滅ぼすか、ぐっとこらえて日米で中国に立ち向かう実態のある防衛力を構築できるかの曲がり角である。  繰り返しになるが、この1年の真の防衛努力が、日本民族の存亡を左右するであろう。
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groyanderson · 4 years
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ひとみに映る影 第五話「金剛を斬れ!」
☆プロトタイプ版☆ こちらは無料公開のプロトタイプ版となります。 段落とか誤字とか色々とグッチャグチャなのでご了承下さい。 書籍版では戦闘シーンとかゴアシーンとかマシマシで挿絵も書いたから買ってえええぇぇ!!! →→→☆ここから買おう☆←←← (※全部内容は一緒です。) pixiv版
◆◆◆
 ポーポーポポポーポポポー…
 「こちらは、熱海町広報です。五時になりました。 よい子の皆さん、気をつけてお家に帰りましょう…」
 冬は日が沈むのが早い。すっかり暗くなった石筵霊山では、 防災無線から地元の小学生の声と、童謡『ザトウムシ』の電子リコーダー音だけが空しく響いている。 一方、霊山中腹に建つ廃工場ガレージで、私は…
 「ピキィェェェーーーーッ!!!」  「紅さん、落ち着いて下さい!」  「うっちゃあしぃゃあぁあーーー!!こいつがあ!鼻クソッ!殺人鬼のクソ!私の口、口にッ! お前も間接クソ舐めろゲスメド野郎おぉぉ!!こねぁごんばやろがあぁぁあああああああ!! キエェェーーーーッ!!」
 その時私は言葉にならない奇声を上げながら、皮を剥かれた即身仏ミイラに向かって、半狂乱で錆びついたグルカナイフを振り回していた。 そこそこ大柄な譲司さんや、ガタイの良いアメリカ半魚人男性の霊を憑依したイナちゃんに取り押さえられていたにも関わらず、 どこから出ているかわからない力で、ミイラをジャーキーになるまで切り刻もうと試みていた。
 そのまま体感二分ほど暴れ、多少ヒスが冷却してきた頃か。 突然ガレージ外からオリベちゃんがツカツカと近寄ってきて、
 「!」
 私の顎を強引に掴み上げた。 ラメ入りグロスを厚く塗られた彼女の唇が、私の唇に男らしく押し当てられる。
 「んっむ…オ…オリベちゃん…!?」  <同じライスクッカーからゴハンを食べる、それが日本流の友情の証だそうね> 同じ釜の飯を食う?まさか、彼女も見てたのか。あの衝撃的なサイコメトリー回想を。 それでいてなお…私の汚い口に、キスを…?  <それが何?子育てしてたら鼻吸いぐらいよくやる事よ。 だぶか(『逆に』を意味するヘブライ語のスラング)、これであなたも私のベイビー達の鼻水と間接キスしちゃったわね!> 嘘つき。今時医療機器エンジニアが、だぶか鼻吸い器も使わずに育児するわけがない! 私の思っている事を読み取った彼女が、テレパシーで優しい嘘をつきながら私を抱きしめてくれたんだ。  「お…お母さぁん…!」 これが人妻の魅力か。さりげなくナイフは没収されていた。
 <ほらジャック、あんたもよ!>  「は!?」 次にオリベちゃんは、イナちゃんの肉体からジャックさんを引っ剥がして私に宛がった。 互いの唇が触れ合っている間、ジャックさんのコワモテ顔がみるみる紅潮していく。  「ぶはッ!」 唇が離れると、ジャックさんは実体を持たない霊魂にも関わらず、息を吸う音を立てた。 そして赤面したままそっぽを向いてしまった。  「や…やべえ、俺芸能人とキスしちまった…!」 たぶん彼は例のサイコメトリーを見ていないんだろう。ちょっと悪い事をした気分だ。
 しかしオリベちゃんは既に譲司さんまでも羽交い絞めにしていた。  <コラ怖気づくんじゃないわよ!> 譲司さんは必死に抵抗している。  「そうやなくて!さすがに俺がやるとスキャンダルとかがあかんし…」  <男でしょおおおおおおぉぉぉ!!?>  「ハイイィィィィ!!!」 次の瞬間、譲司さんはとても申し訳なさそうに私と接吻を交わした。 そのまま何故か勢いでリナやポメちゃんともチューしちゃった。
 全員が茫然としていると、いつの間にか意識を取り戻していたイナちゃんが私を背後から押し倒した。  「きゃっ!イナちゃん!?」  「みんなだけズルい!私もチューするヨ!」 そ、それはまずい!私はプロレスの手四つみたいな姿勢でイナちゃんを押し返そうとする。  「違うのイナちゃん!これにはわけが…うわーっ!!」 しかしなす術なく床ドンされ、グラデーションリップを精巧に塗られた彼女の唇が、私の唇に男らしく押し当てられる。
 互いの唇が離れるのを感じて私は薄目を開けると、 目の前ではイナちゃんが『E』『十』の手相を持つ両手の平を広げていた。  「これ。ロックサビヒリュのシンボル」 肋楔の緋龍。さっきサイコメトリー内で、肉襦袢の不気味な如来が言っていた言葉だ。 どうして彼女がそれを?  「…見てたの?」  「意識飛んで、暗いトンネルでヒトミちゃんとヘラガモ先生追いかけた。 そしたらアイワズが、赤ちゃんのヒトミちゃんに悪さしてた」 アイワズ?もしかして、あの肉襦袢の事?イナちゃんは何か知っているのか…。
 すると突然ポメラー子ちゃんが「わぅ!」と小さく鳴き、動物的霊感で床に散らばった半紙の一枚を選んで口に咥えた。 そのまま彼女はそれを私達の足元に置く。半紙には『愛輪珠』と書かれていた。  「これ、小さい頃私が書いたやつ…!」  「愛輪珠如来(あいわずにょらい)…」 譲司さんが呟いた。その語感は、忘れ去っていた私の記憶の断片とカチリと噛みあった気がした。
 イナちゃんも、別の半紙を一枚拾い上げる。あの『E』『十』が書かれた半紙を。  「私、悪いものヒキヨセするから、 子供の頃から、韓国で色んな人見てもらってた。 お寺、シャーマン、だめ。気功行った、教会で洗礼もした。だめだった。 でも幾つかの霊能者先生、みんな同じ事言うの…コンゴウの呪いは誰にも治せないて」 私と譲司さんが同時にはっとする。 金剛…愛輪珠如来に続いて、またイナちゃんの口からサイコメトリーと合致するキーワードが飛び出した。
 「まえ、気功の先生こっそり教えてくれた。地面の下はコンゴウの楽園あって、強い霊能者死ぬとそこ連れて行く。 アジアでは偉い仏様なアイワズが仕事してて、才能ある人間見つけると、 その人死ぬまでにいっぱい強くなるように、呪いかけていっぱい霊能力使わせる。 私のロックサビヒリュもそれで付けられた。 それ以上は私あまり知らない。たぶん誰もよく知らないこと思う」 地底に金剛の楽園?まるで都市伝説みたいだ。 でも、その説明を当てはめれば、愛輪珠如来と赤僧衣がしていた会話の意味が、なんとなく理解できる。
 「なんだそりゃ。じゃあお前の引き寄せ体質は、呪いとやらのせいだったのか?」 ジャックさんの眉間に微かな怒りのこもった皺が寄った。  「うん。私、本当は悪い気をよける力使いヨ。でも心が弱ると、ヒリュが悪さするんだ!」 イナちゃんは悪霊を引き寄せた時と同じように、両手をぎゅっと固く握り合った。 今の私達はもう、この動作の意味を理解できる。 これはキリスト教的なお祈りのポーズじゃなくて、両掌に刻まれた呪いを霊力で抑えこんでいたんだ。
 「…ねえアナタ」 突然リナがイナちゃんに問いかける。  「高校生ぐらいよね?年はいくつ?」  「オモ?十六歳だヨ」  「1994年生まれ?」  「そだヨ」
 リナは暫く神妙な顔つきで何か考え、やがて口を開いた。  「どうやら、アナタにも…いいえ。 もうこの際、この場に集まった全員に知る権利があるわね」 そして顔を上げ、私達全員に対して表明した。  「紅一美と即身仏、そして倶利伽羅龍王について。アタシが知ってる事洗いざらい話すから、よく聞きなさい」
◆◆◆
 1994年、時期は今と同じく十一月頃。アタシは紅一美という少女によって生み出された。 いや、正確には、アタシは石筵霊山に漂う動物霊の残骸をアップサイクルした人工妖精だ。 当時はまだ、リナという名前も人間じみた知性も持っていなかった。
 アタシは与えられた本能に従って、自分を本物の鳥だと信じて過ごしていた。 そんなある日、金色の炎を纏った大きな赤い蛇に襲われて、食べられそうになった。 アタシはソイツを天敵だと見なして、無我夢中で抵抗した。
 結論を言うと、ソイツはこっちが情けなくなるぐらい弱っちかった。 というより、戦う前から手負いだったみたい。 返り討ちされたソイツは、アタシを説得するために知能を与えて、こう語りだした。
 「俺様は金剛の魂を金剛の楽園へ導く緋龍、その名も金剛倶利伽羅龍王だ。 本来ならお前如き軽くヒネってやれるが、今の俺様は裏切り者に大事な法具を盗まれ、満身創痍なのだ。 お前を生み出した者の家から金剛の赤子の肋骨を持ってきてくれるなら、お前の望みを一つ叶えてやるぞ」 そこでアタシは、そのクリカラナントカと名乗ってきたソイツに、人間になりたいと祈った。 知能を授かって、自分が人工の魂だと知ったとき、自分も霊魂を創って生み出してみたいと思ったからだ。 でもクリカラは、「今の俺にそこまでする力はない」と言って、アタシの顔だけを人間に変えた。
 アタシは肋骨を取り返しに行く前に、まず人里に降りる事にした。 一刻も早く人間の世界を知りたかったから。それに、人間の顔をみんなに自慢したかったからだ。 ところが霊感のある人間達は、みんなアタシを見ると笑った。クリカラはアタシに適当な顔を着けたのだと、その時初めて知った。 だからアタシは腹いせに、クリカラの目論見を全て『裏切り者』にチクってやろうと考えた。
 改めて自分が生み出されたガレージに戻ると、アタシは初めて内部に仕組まれたトリックアートに気付いた。 そのガレージ内は、なまじ霊感の強い人間が見ると、まるでチベットの立派な寺院みたいに見える幻影結界が張られていたの。 緑のトタン壁や積み上がった段ボールは、極楽絵図で彩られた赤壁とマニ車に。 黄ばんだ新聞紙の上に砂だらけの毛布が敷かれただけの床は、虎と麒麟があしらわれた絨毯に。 中央に置かれた不気味なミイラは、木彫りの立派な観音菩薩像に。 人間の霊能者並の知性と霊感を得たアタシにも、それは見えるようになっていた。
 すると、漆塗りのローテーブル、もとい、ベニヤ板を乗せたビールケースの上で物書きをしていた小さい子が、元気よく立ち上がった。頭は丸坊主だけど女の子だ。 その子に…一美によって生み出されたアタシには、女の子だとわかった。  「書けた!和尚様、書けましたぁ!」 幼い一美は墨がついた手で半紙を掲げる。そこに書かれているのは少なくとも日本語じゃない、未知の模様だ。 すると観音像から白い気体が浮かび上がり、とたんに人間形の霊魂になった。
 「あぁ…!」 思わず感嘆の息が漏れた。その霊魂は、結界内の何よりも美しかったのだ。 赤い僧衣に包まれた、陶器のような滑らかで白い肌。 まるで生まれつき毛根すらなかったかのような、凹凸や皺一つない卵型の頭部。 どの角度から見ても左右対称の整った顔。 細くしなやかで、かつ力強さをも感じ取れる四肢…。 これこそ真の『美しい人』だと、アタシはその時思い知った。 和尚、と呼ばれたその美しい人は、天女が奏でる二胡のような優雅な声で一美と会話したのち、アタシに気付いて会釈をした。
 一美が昼寝を始めた後、その美しい人はアタシに色々な事を語った。 その人の名前は金剛観世音菩薩(こんごうかんぜおんぼさつ)、生前は違う名を持つチベット人の僧侶だったらしい。 金剛観世音…(ああ、面倒ったらしいわ!次から観音和尚でいいわね!)は生前、 瞑想中に金剛愛輪珠如来と名乗る高次霊体と邂逅した。 その時、如来に自分の没後全身の皮膚を献上するという契約を交わし、悟りを開いて菩薩になった。 皮膚を献上するのは、死体に残留した霊力を外道者に奪われなくするためだと聞かされて。 だけど、実際はその如来や、如来を送りこんできた金剛の楽園こそ、とんでもない外道だったの。
 イナちゃんが話していた通り、愛輪珠如来はアジア各地の霊能者に、苦行という名の呪いや霊能力、特殊脳力を植えつけていた。 しかも金剛の者達は、素質のある人間は善人か悪人かなんてお構い無しに楽園へ迎え入れる方針だった。 それこそ、あの殺人鬼サミュエル・ミラーだって対象者だった。 そして、サミュエル・ミラーが水家曽良となって日本に送られてくると、 金剛の楽園で水家の担当者は愛輪珠如来になった。
 だけど、愛輪珠如来と幽体離脱した観音和尚が水家の様子を検めた時、水家はNICの医師達によって、既に脳力や霊能力を物理的に剥奪されていた。 そこで如来は、水家と同じ病院で生まれた一美に、水家の霊能力を無理やり引き継がせたの。 それだけじゃ飽き足らず、一美の肋骨を一本奪って、それを媒介に、呪いの管理者である肋楔の緋龍を生み出すよう観音和尚に指示した。 観音和尚はここで遂に、偽りの仏や楽園に反逆する決意をしたのよ。
 彼は如来の指示に従い、石英を彫って、緋龍の器となる倶利伽羅龍王像を作った。 但し、一美の代わりに自分の肋骨を自ら抜き取って、それを媒介に埋め込んだ。 この工作が死後金剛の者達に気付かれないように、彼はわざわざ脇腹の低い所を切って、そこから自分の体内に腕を潜らせて肋骨を折ったの。 そして一美の肋骨は、入れ替わりに自分の体内に隠した。
 観音和尚は脇腹から血を流したまま七日七晩観音経を唱え続けた後、事切れて即身仏となった。 すると即座に生死者入り混じった金剛の者達が現れ、契約通り彼の遺体から生皮を剥いでいった。 霊力を失い、金剛の楽園にとって価値がなくなった遺体は、心霊スポットとして名高い怪人屋敷のガレージに遺棄されたわ。
 一方何も知らないクリカラは、一美のもとへ向かっていた。 そして一美に重篤な呪いをかけようとしたその瞬間…突然力を失った! クリカラが自分の肋骨は一美のものではないと気付いた時にはもう遅かったわ。 仕方なくクリカラは、一美を呪う事を一時断念して、金剛の楽園へ退散した。
 観音和尚はアタシに以上の事を打ち明けると、穏やかな顔で眠る一美の頬をそっと撫でて、続きを語った。
 没後、裏切り者として金剛の楽園から見放された観音和尚は、怪人屋敷に集う霊魂や人工精霊達に仏の教えを説いて過ごしていた。 そして四年の歳月が流れた1994年、彼のもとに、不動明王に導かれし影法師の女神、萩姫が現れた。
 「どういうわけか、金剛倶利伽羅龍王が復活しました。 龍王は県内各地のパワースポットを占拠して力を得ています。 一美は私達影法師にとって大切な継承者ですが、磐梯熱海温泉を守る立場の私は龍王に逆らえません。 どうか彼女を救うのを手伝って下さい」
 これはアタシの想像だけど…クリカラは同時期韓国で、新たな金剛のターゲット、イナちゃんから力を奪ったんじゃないかしら。 萩姫に導かれ、観音和尚が猪苗代の紅家に向かうと、一美の胸元には確かに緋龍のシンボルが浮かび上がっていた。
 観音和尚と一美の家族は協力してクリカラを退けたが、少ない霊力を酷使し続けた彼の魂はもう風前の灯火だった。 クリカラが完全に滅びていない以上、一美がいつまた危険に晒されるかわからない。 だからアナタの両親は、アナタを一人前の霊能者にするために、観音和尚に預けたのよ…。
◆◆◆
 「以上、これがアタシの知っている事全て」 リナは事の顛末を語り終えると、改めて全員と一人ずつ目を合わせた。 私をさっきまで苦しめていた色んな感情…不安や悲しみ、怒りは、潮が引くように治まってきていた。  「この話、本当なら、アナタが二十歳になった時にご両親が話す予定だったの。…ていうか、明後日じゃないの。アナタの誕生日。 はっきり言って、観音和尚はアナタの友達が猪苗代湖で騒ぎを起こした頃には既に限界だったわ。 だから彼は最後に、アタシを猪苗代へ遣わせたの。 それっきりよ。以来、二度と彼を見ていないわ…」
 数秒の沈黙があった後、私は口を開いた。  「リナにとって…観音寺や和尚様は、美しかったんだよね?」 物理脳を持つ人間と違い、霊魂は殆ど記憶を保てない。 だから彼らは自分にちなんだ場所や友人、お墓、依代といった物の残留思念を常に読み取り、 そこから自分の自我目線の思念だけを抽出して、記憶として認識する。 リナがこの観音寺を美しいと表現したのは、単に私の記憶を鏡のように反射しただけなのか、それとも…。  「少なくとも、この場から思い出せる景色を見て、今アタシは美しいと感じたわよ」  「…そうなんだね」
 お蕎麦屋さんの予約時間はもうとっくに過ぎているだろう。 けど、私は皆に一つお願いをした。  「すいません。十分…ううん、五分でいいんです。 ちゃんと心を落ち着かせたいので、少しだけ瞑想をしてもいいですか?」 皆は黙ったまま、視線で許してくれた。  「わぅ」 構へんよ。と、ポメラー子ちゃんが代表して答えた。
 影法師使いの瞑想は、一般的な仏教や密教のやり方とは少し異なる。 まず姿勢よく座禅を組み、頭にシンギングボウルという真鍮の器を乗せる。 次に両手の親指と人差し指の間に、ティンシャという、紐の両端に小さなシンバルのような楽器がついた法具をぶら下げる。 その両手を向かい合わせて親指と小指だけを重ね、観音様の印相、つまりハンドサインを作れば準備完了だ。
 瞑想を始める。目を瞑り、心に自分を取り囲む十三仏を思い描く。 仏様を一名ずつ数えるように精神世界でゆっくりと自転しながら、じっくり十三拍かけて息を吸う。  「スーーーーーー…………ッフーーーー…………」 吐く時も十三拍で、反対回りに仏様と対面していく。 ちなみに一拍は約一.五秒。久しぶりにやったけど、相当きつい。肺活量の衰えを感じる。 でも暫くすると…。
 …ウヮンゥンゥンゥン…ヮンゥンゥンゥン…
 <何?何の音!?>  「この1/f揺らぎは…ああっ!紅さんや!」 私の頭上のシンギングボウルが一人でに揺らぎ音を奏ではじめ、皆がどよめいた。 実はこれは、影法師を操るエロプティックエネルギーという特殊な念力によるものだ。
 …ワンゥンゥンゥン…ヮンゥンゥンゥン… テャァーーーーーン…!
 息苦しさと過度の集中力が私の体に痙攣を引き起こし、時折自然とティンシャが鳴る。 波のように揺らぎ、重なり合った響きが、辺り一帯を荘厳な雰囲気で包み込む。 その揺らぎを感じて、私も精神世界で変化自在な影になり、万華鏡のように休みなく各仏様の姿に変形し続けている。 私は影、私は影法師そのものだ。完全黒体になれ。 そして心まで無我の境地に達した時、この身に当たる全ての光を吸収し…放出する!
 テャァーーーーーン…!
 「オモナ…すごい!」 そっと目を開ける。眼前に広がる光景は、もはやガレージ内ではない。  「そうか。ここが…あんたが信じ続けた故郷なんだな」 今ならイナちゃんやジャックさんにも見えるようだ。 懐かしい赤と真鍮のお御堂。窓辺から吹き抜ける爽やかな風。 そのお御堂の中心で、とりわけ澄んだ空気を纏って立つのは、仙姿玉質な金剛観世音菩薩像…和尚様。 そして、頭と両手に法具を置き、和尚様とお揃いの赤い僧衣を纏った私。 ここは、石筵観音寺。私が小さい頃住んでいたお寺だ。
 『よく帰ってきましたね』 和尚様の意思が聞こえた。声でもテレパシーでもない、もっと純粋な波動で。 彼はまだ滅びていなかったんだ。  「あの…私達、申し訳ありません。和尚様の記憶、見ちゃって…それで…」  『一美』
 和尚様は私の両手を取り、彼の胸の中に沈めた。ティンシャが「チリリリ」とくぐもった音をたてた。 心なしか暖かい胸の中で、私の手に棒のようなものがそっと落ちてきた。 両手を引き出してみると、それは細長い小さな骨…赤ん坊の頃に失われた、私の肋骨だった。 顔を上げると、和尚様の優しくも決意に満ちた微笑みが私の網膜に焼きつき、瞑想による幻影はそこで分解霧散した。
 『行くのです』 彼は成仏したんだ。
 次の瞬間、私達を取り巻く光景は薄暗いガレージに戻っていた。 でも、今のはただの幻影じゃない。和尚様のお胸には穿ったような跡が残っている。 私が握っていた肋骨はいつの間にか、何らかの念力によって形を変えていた。  「これは…プルパ」  <プルパ?> オリベちゃんが興味津々に顔を寄せる。  「私知てるヨ。チベットの法具ね。 煩悩、悪い気、甘え、貫く剣だヨ」 イナちゃんが私の代わりに答えてくれた。
 そう、プルパは別名金剛杭とも呼ばれる、観世音菩薩様の怒りの力がこもった密教法具だ。 忍者のクナイに似た形で、柄に馬頭明王(ばとうみょうおう)という怒った容相の観音様が彫刻されている。
 「オム・アムリトドバヴァ・フム・パット…ぐっ!!」 馬頭明王の真言を唱えてみると、プルパは電気を帯びたように私の影を吸いこみ…
 ヴァンッ!…短いレーザービームみたいな音を立てて、刃渡り四十センチ程の漆黒のグルカナイフに変形した。  「フゥ!あんた、最強武器を手に入れたな」 影を引っ張られてプルパを持つ手さえ覚束無い私を、ジャックさんが茶化す。  「武器って、私にこれで何と戦えって言うんですか!?…うわあぁ!」 途端、プルパは一人でに動き、床に落ちていた『金剛愛輪珠』の半紙にドスッと突き立った。  「ウップス…」 ジャックさんも思わず神妙な顔になる。 どうやら、和尚様は…本気で怒っているらしい。 憤怒の観音力で、私に偽りの金剛を叩き斬れと言っているんだ!
◆◆◆
 私達はガレージのシャッターをそっと閉じ、改めて公安警察内のNIC直属部署に通報した。 自分達はひとまず怪人屋敷内で待機。 譲司さんがお蕎麦屋さんにキャンセルの連絡を入れようとした、その時だった。
 カァーン!…カァーン! スピーカーを通した鐘の音。電話だ。譲司さんはスマホをフリックする。 案の���、画面に再びハイセポスさんがあらわれた。  『やあ、ミス・クレナイ。さっきはすまなかったね。 石筵にあんな素晴らしい観音寺があるなんて、僕は知らなかったのさ』  「いえ、こちらこそ取り乱してすみませんでした。 …あの光景、ハイセポスさんも見られてたんですね」  『おっと、幻影への不正アクセスも謝罪しなければいけないかね』 彼はいたずらっぽく笑った。
 『また電話を繋いだのは他でもない。ミス・リナの一連の話を聞き、一つ合点がいった事があってだな… ああ、その前に、アンリウェッサ。蕎麦屋の予約は僕が勝手にキャンセルしちゃったけど、構わないね?』  「え?あ、どーもスイマセン!」 譲司さんはスマホを長財布に立てかけようと四苦八苦しながら、画面に向かってビジネスライクな会釈をした。
 『実は僕には兄がいて、中東支部で彼も殺されたんだ。 だが彼はある時突然、「俺はこいつの脳内で神になってやる」とかなんとか言って、水家の精神世界で失踪してしまった。 それから暫く経ち、僕達NIC職員のタルパが兄を捕獲すると、彼はこう言ったのさ…「俺は龍王の手下に選ばれた、神として生きていく資格があるんだ」とね』  「龍王!?」  「どうして水家の脳内に!?」 私達全員が驚きにどよめいた。
 『そう、お察しの通り。君達の宿敵、金剛倶利伽羅龍王の事だろうさ。 龍王はなんでも、水家の脳内に蠢く『穢れ』を喰らっていたらしい。 そして僕の兄は、穢れを成長させるには沢山の感情が必要だから、あまりタルパを奪い尽くさないでくれとのたまったんだ』  「穢れ?」  『ジョージとオリベは知っているだろう』  「穢れ」譲司さんの額から汗が流れ落ちた。「…自我浸食性悪性脳腫瘍(じがしんしょくせいあくせいのうしゅよう)」 彼の口から恐ろしい言葉が飛び出した。
 自我浸食性悪性脳腫瘍。私も知っている病名だ。 通称タピオカ病とも呼ばれるそれは、脳に黒い粒々の腫瘍ができて、精神がおかしくなってしまう病気だ。 発病者は狂暴になって、自分が一番大切な人を殺したり、物を壊したりするという。 ただでさえ殺人鬼の水家がそれに感染していたとなると…恐ろしいの一言に尽きる。  『その通り、穢れとはタピオカ腫瘍だ。 本来は生きた人間を狂わす脳腫瘍だが、霊魂にそれを感染させれば、そいつは強力な悪霊と化す。 だから龍王は、水家の脳内に閉じ込められたタルパ達を、穢れた腫瘍粒に当てがっていたんだ。 悪霊をたらふく喰って強くなるためにね。兄はその計画にまんまと利用されていたのさ』
 ジャックさんが画面を覗きこむ。  「水家は、安徳森に俺達が救出された時には失踪していたんだよな? まさか、奴は今もどこかで、龍王のエサ牧場としてこっそり生かされ続けてやがるのか!?」  『そこまではわからない。だがこうは考えられないだろうか? 観音和尚の計らいで一たび力を失った龍王は、ミス・パクから霊力を吸収し、更に福島中のパワースポットを乗っ取って復活した。 すると金剛の楽園にとって因縁深い男、水家曽良を見つけ、更に水家の精神世界でタピオカ病という副産物を発見する。 彼は、水家の精神を乗っ取ってタルパを生ませ続ければ、ほぼ無限に悪霊を生み出し喰らえる半永久機関に気づいた。 そして自分が楽園で高い地位を獲得できるほど強大化するその日まで、フリードリンクのタピオカミルクティーを浴びるように飲み続けているのさ!』  「は、半永久にタピオカミルクティーを…アイゴー!」 イナちゃんが身震いする。いや、さ、さすがにそれは飛躍しすぎでは…。 とはいえ、この仮説が正しければえらい事だ。
 「けど…」 譲司さんがおずおずと手を挙げる。  「もし水家の脳内でそんな強い悪霊が育っとったら、霊感を持つ誰かが既に発見しとるのでは? 水家はNICの強力な脳力者捜査官がおる公安部だけやなくて、マル暴にも指名手配されとります。 俺の友人にも、マル暴で殉職した霊がいますが…そんな話聞いたことありません」  <そうね。悪霊説は無理があるわ。 それでもあの殺人鬼は一刻も早く見つけ出さないとだけど> オリベちゃんが同調した。
 私はその時、ふと閃いた。オリベちゃんといえば…  「そういえばオリベちゃん、ここに来た時、怪人屋敷の二階に気配がするって言ってましたよね?」  <え?…ええ。でも、一瞬だけよ。 ファティマンドラのアンダーソンさんを見つけた時には消えていたから、てっきりアンダーソンさんの霊だったんだとばかり…>  『二階?…ああ、でかしたぞオリベ!これは灯台もと暗しだ!』 突然、ハイセポスさんがはっとした顔を画面いっぱいに近寄らせた。  『誰か、そこの階段を上ってごらん。そうすれば大変な事実に気がつくだろう! ああ、僕達は今までどうしてこれを見落としていたんだ!!』
 画面内で心底嬉しそうにくるくる踊るハイセポスさんとは裏腹に、私達の頭上にはハテナマークが浮かんでいる。 とりあえず、私とオリベちゃん、ジャックさんで階段へ向かった。
◆◆◆
 階段脇には館内図ボードがあった。影燈籠で照らしてみると、この工場は三階建てのようだ。 ジャックさんがボードを指さしながら、水家と共通の記憶を辿る。  「そういや、水家が潜伏していたのも二階だったな。 二階はほぼ一階の作業所と吹き抜け構造で、あまり大きな部屋はないんだ。 ええと、更衣室、事務所、細菌検査室…ああ、そうだそうだ!あいつが占拠していたのは応接室だ。」  「じゃあ、二階の応接室に向かいましょう! 影燈籠は光源がない場所では使えないから…」 私とオリベちゃんはそれぞれスマホを懐中電灯モードにした。
 一つ上のフロアに出て、真っ暗な廊下を進む。 幾つかのドアをドアプレートを読みながら素通りしていくと、確かに『応接室』と書かれた部屋があった。 鍵は開いていたから、私達は速やかに入室する。
 室内を見渡すと、端に畳まれたパイプ椅子と長机、それに昔小学校などによく置いてあった、オーバーヘッドプロジェクターが一台見える。  <応接室というより、まるで工場見学に来た子供達向けの教室みたいね>  「水家の私物はもう警察が回収したんでしょうか?それより…」 それより気になる事がある。オリベちゃん、ジャックさんも同じ事を考えていたように頷いた。  「…この部屋、あいつの残留思念や霊がいた気配を全く感じねえ。 あいつが潜伏していたのはここじゃねえみてえだな」  「本当にここが応接室なんでしょうか?ドアプレートは誰でも簡単に付け替えられますよね」  <ええ。それに、さっきの廊下、広かったわよね? 左右どちらにも沢山ドアがあって。どこが吹き抜けだっていうの?>
 私達は改めて階段へ戻った。ここは…三階だ。  「二階が、ない!?」 私はまた階段を下ってみる。一階。上る。三階。 だからといって、一つ分フロアを隔てるほど長い階段じゃない。明らかに次元が歪んでいる!
 イナちゃんや譲司さんも含めて、一階の階段前に全員集合する。 私は外灯が当たる場所に移動し、影の中のリナに呼びかけた。  「あんたはどうだった?私絶対二階がなくなってたと思うんだけど…」  「そうね。アタシ、途中で外に出て壁から入ろうとしたけど、それもダメだった」  <でも、次元が歪むなんて事、本当にあるの? NICは心霊やエスパーの研究でも最先端だけど、人間がテレポーテーションする現象は見た事ないわ> オリベちゃんは欧米的にわざとらしく肩をすくめた。  「現代解明されとる量子テレポーテーションは、SFみたいな瞬間移動とは別物やしな。 だったら、逆の発想や…イナ」  「オモ?」 譲司さんはイナちゃんに、スマホで音楽をかけながら一緒に階段を上るよう指示する。
 『背後からっ絞ーめー殺す、鋼鉄入りのーリーボン♪』 ビクッ!…音楽が鳴り始めるやいなや、私は思わず身構えて、キョロキョロと周囲を伺った。 イナちゃん、よりにもよって、どうしてその曲を選んだんだ。  「あははは!ヒトミあんた、ビビりすぎよ!」  「う…うるさい、リナ!」 休みの日には聴きたくなかった声。 この曲は、私を度々ドッキリで連れ回す極悪アイドル、志多田佳奈さんのヒットソング『童貞を殺す服を着た女を殺す服』だ。タイトル長すぎ!
 『返り血をっさーえーぎーる、黒髪ロングのカーテン♪』  「歌うで、イナ…仕込みカミッソーリー入りの♪」  「「フリフリフリルブラーウス♪」」 二人は階段を上がりながら、暗い廃工場の階段というホラー感満載の場に似つかわしくないアイドルポップを歌う。 しかし、  「「あーあー♪なんて恐るべき、チェ…」」  『…リー!キラー!アサシンだ!』 二人は突然、示し合わせたようなタイミングで歌うのを止めた。 イナちゃんのスマホから、佳奈さんの間抜けな声だけが階下に響く。  「なんだあいつら。歌詞を忘れたのか?」 肩でリズムを取りながら、ジャックさんが見上げた。  <…待って。あの二人、意識がないわ!> オリベちゃんが異変を感知。慌てて彼らを追いかけようとすると、その時!
 「「…リー!キラー!アサシ…ん?」」  『わ・た・し・童貞を殺す服を着た女を…』  「オモナ?もうサビなの?」 彼らはまるで時を止められていたかのように、また突然歌いだした。 スマホから流れる音楽との音ズレに、イナちゃんが困惑する。  「やっぱりそうか。オリベ! 今から…ええと、ひーふーみー…八秒後きっかりに、俺に強めのサイコキネシスをうってくれ!」 何かに気付いている譲司さんは、そう言うと階段を下りはじめた。
 五、六、七…八!  <アクシャーヴ!>ビヤーーーッバババババ!!!  「わぎゃぁばばばばばば!!!死ぬ!死ぬーっ!!」 オリベちゃんの頭が紫色に光るのが傍目から見えるほど強烈なサイコキネシスを受け、譲司さんは時間きっかりに叫び声を上げた。  「げほっ、げほ…あーっ!ほら!行けたで、二階!皆来てみ!!」 少し焼けた声で譲司さんが叫ぶ。  「わ、わきゃんわきゃん!?」 飼い主の危機を察してポメちゃんが階段を駆け上がる。 私達もそれに続くと、途中で全員譲司さんに器用に抱きとめられ、我に返った。  「わきゅ?」  「あれ?」  「俺達、今…」
 「どうやらこの階段には、二階周辺を無意識に飛ばしてまう、催眠結界が張られとるみたいやな。 それならテレポートより幾分か現実的や。 ただ、問題は…これ作ったん誰で、どうやったら開けられるかって事やな…」 譲司さんが目線で、二階入口の鉄扉を指し示した。 そこには、白墨で複雑極まりないシンボルが幾つも丁重にレイアウトされて書かれた、黒い護符が貼ってあった。
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-yama-san- · 7 years
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衝撃☆魅惑のストリート巡り☆
 シンガポールの夏は蒸し暑い。  よく、「日本の夏は海外と違って蒸し暑いからぁ~。」などと何人目線なのか分からないコメントをドヤ顔でのたまっていたのだが、少なくともシンガポールの湿度は日本と同等以上に高いらしい。何の根拠もなく「赤道付近の国々は日差しこそ強いが湿度は低いため日陰にいれば乾いた風が吹き抜け快適に過ごせる。」というイメージを抱いていたが、どうやらそれは間違いだったようだ。  気温も高く湿度も高い、言うまでもなく日差しも強い。  日本の夏をサウナとするならば、こちらはサウナに入った状態で赤外線ヒーターを当てられ続けていいるようなものだ。なぜ死者がでないのか不思議だ。  開始早々愚痴ばかりになってしまって申し訳ないが、時はシンガポール旅行二日目。  まさに今、私と友人はホテルから徒歩でマーライオン公園に向かおうとした結果、道に迷って死にかけているのだ。  訪れるもの全てを落胆させるというシンガポール1のがっかりスポット、マーライオン公園。  当初訪れる気はさらさらなかったこの公園だが、意外とホテルから近いことが判明し、せっかくならばと2日目朝に立ち寄ることとなったのだ。  汗だくとなった我々が辿り着いたマーライオン公園はガッカリスポットの名をほしいままにしているにも関わらず、多くの観光客でごったがえしていた。  公園の大きさは学校のグラウンド程度で、植え込みの中に小ぶりなマーライオン像が立ち、中央の噴水では5、6メートル程のでかいマーライオンが口から水を吐いている。  つまりマーライオン像のある普通の公園だ。
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 終わった。  この公園に着いた瞬間、一目で観光すべき部分を見尽くした。  内心そう悟ってはいたのだが、数十分歩き回ってたどり着いた場所の観光を数秒で終わらせるようなことはできない。  どうやらマーライオンの背越しにマリーナベイサンズの写真を撮るのが人気であるらしく、我々も周りの観光客に倣い写真を撮る。ついでにそれぞれマーライオンとの写真も撮る。遠近法を利用してマーライオンのように口から水を吐く友人とマーライオンの水を口で受ける友人を撮る。  終わった。  限界まで楽しもうと努力したが、ここで他にできることはもうない。
 帰ろう。  友人と私は薄ら笑いながら、どちらともなく公園を後にした。滞在時間は多めに見積もっても十分程度だった。  それでも、正直なところ思いのほか楽しめたのも事実だ。  期待値が極限まで低かったせいもあるかもしれないがなんやかんやでシンガポール=マーライオンというイメージが強いのと、公園からの景色が良好なことで「お、シンガポールに来たな!」という気分を十分に味わえたのだ。もはやガッカリスポットではない。道すがら寄るのはイイじゃんスポットだ。  数分程度の観光でそれなりに充実した気分を味わった我々は、いよいよ本日のメインイベントであるシンガポールエスニックタウン巡りに向けて地下鉄へと飛び乗った。  シンガポールは雑多な国の人々が厳格な法の下好きに暮らしている国らしく、その結果横浜の中華街的なそれぞれの国柄の色濃く出ている街が随所にあるらしいのだ。  有名なところだとアラブストリートにチャイナタウン、リトルインディアにプラナカン、といったところだ。  このうちプラナカンとは中国系の移民が現地のマレー系女性と結婚したことにより生み出されたとする文化で、とにかく全般的にカワイイ。プラナカン文化の色濃く残る街ではピンクやモスグリーンのパステルカラーを基調とした人形の家のような建物が立ち並び、他にもキュートな雑貨が盛りだくさん、と、もはやオシャレOLのインスタグラムを具現化したような存在なのだ。  そんな存在なのだが旅に出る前に友人と意思疎通を図った結果、「ごめん、プラナカンって興味ある?」「正直…ほとんど無いわ」「よかった!私も全然ない」と全会一致で方針が決定したため、この旅では割愛したい。  可愛さを旅から全面的に削ぎ落した我々が最初に向かった街、それがアラブストリートだった。友人も私も何故か中東あたりのタイルに施されているような細かな模様がたまらなく好きで、ついでに言うならモスクなどの建物も美しくて大好きなのだ。正直治安さえ良ければ今回の旅でトルコに行きたかった。死ぬ可能性があるので諦めたけれども。  最寄りの地下鉄BUGIS駅で降りた我々は、アラブストリートの目印であるサルタンモスクを目指して歩いた。  余談だが、シンガポールの地下鉄は駅構内が無駄に広く、ガイドブックに「○○駅より徒歩7分」などと記載されていても駅内の移動だけで10分、地上に出てさらに7分、なんて事はザラだ。田舎暮らしの私と友人は地下鉄の駅=地上の認識で旅のプランを立てており、そのせいで何度も疲労し汗だくの中地下鉄の構内を全力疾走することとなった。  しばらく歩いた我々の前に、突如として金色の玉ねぎ状のドームが現れた。  これだ!間違いない!アラジンで見た!  急激にテンションが上がり、遠目にもかかわらずモスクの写真を激写する私と友人。
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 近づいてみるとモスクは想像以上に大きく、入り口付近で来場者をチェックする警備員のようなおじさんが何人か待機していた。  モスクの礼拝堂は当然ながら異教徒の立ち入りは禁止なのだが、その手前までなら入ってもいいらしく、その際に露出度の高い恰好をしている人間にはここで羽織るローブを貸してくれるのだ。  私も友人も服装については事前に調べきっており露出などほぼない状態だったのだが、せっかくなのでローブを「え?必要なくない?」と怪訝な表情を浮かべるおじさんから借り受けモスク内へと入った。真っ青なローブで俄然気分が高まる。  モスクは入ってすぐが待合所のようなちょっとしたスペースになっており、その先に異教徒は立ち入り禁止の礼拝のホールが広がっていた。この礼拝ホールがもう、黒や緑を基調とした中に金色で細かな月や星が描いてあるのだが、とにかくもう美しいのだ。とにかく美しい。窓枠などの流線型の模様もそこから差し込む白い日の光も、穏やかで繊細で、全てが美しかった。
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 礼拝堂の前方には十数人の子供たちがカーペットの上に点々と座っており、それぞれが何かの本を読んで勉強している。張りつめた空気を想像していたのだがそんなこともなく、昼下がりの体育館のような静かで和やかな時が流れていた。
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 「すっごいな、これはもうちょっとしたトルコだわ」  「やっぱりアラブ系の模様が一番美しいね。めっちゃタイルの写真撮った」  モスクを出るなり各々思うことを好き勝手語り合い、我々はそのまま目の前の通りへと足を延ばした。モスクの前にはそこそこ大きな通りが二、三本まっすぐ続いており、その両脇にずらりと雑貨屋や飲食店が並んでいるのだ。  せっかくなのでなんかアラブっぽい綺麗なものを買いたい。  そう思い何気なく薄暗い店に入った我々は、入った途端に叫ぶことになった。  「ひゃぁぁー、めっっっちゃ綺麗!!!!���  比喩ではなく叫んだ。事実「めっちゃ綺麗!!!」だったのだ。  薄暗い店内には見渡す限り、大小様々な大きさのモザイク模様のランプが所狭しと吊るされており、その全てが青や緑、ピンクやオレンジの美しい光の欠片を周囲に少しづつ落としていた。ランプのモザイク模様もそれぞれ違っており、氷の結晶のようなものや花のようなもの、直線的で無機質なものなど、とにかくそのどれもが心がギュッとなる美しさなのだ。
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 「凄くない?凄くない?え?どうゆう状態?凄くない?」  あまりの出来事に私と友人が混乱しながら驚いていると、ニコニコしながら一人の老人が近寄ってきた。  このおじいちゃん、どうやらこの店の主で奥にいたようなのだが、私達の出川哲郎ばりのリアクションを聞いて店先まででてきたらしい。  笑顔のおじいちゃんは私と友人を店の奥まで招き寄せると、ある位置に立つよう身振り手振りで示した。  そこは店内でもとりわけ大きな、人一人でも抱えきれないほどの大きさのランプが飾ってあるところで、この位置でこのランプに手を添えて写真を撮ると綺麗な記念写真が撮れるよ、ということらしい。  実際に友人がその位置に立ち一番大きな青いランプに手をかざすと、ちょうど店内の数十個のランプ達とも同じフレームに映ることとなった。まるでこの世界のものではない、物語の中を切り取ったような一枚だった。  「ヤバくない?こんな写真無料で撮らせてくれるの?マジで金取られるんじゃない?無料?無料なの?」  物語とは程遠い俗世感溢れる私の確認に、半ば呆然としながら友人は答えた。  「無料っぽいよ。このお爺ちゃん優しすぎない?やっぱモスクが近いから徳高いのかな」  そんな会話が日本語で繰り広げられているとはつゆ知らず、お爺ちゃん店主は私にも同じように写真を撮るよう勧めると、その後、店内を好きに見て回るよう言った。  冷静になって店内を見て回ると、ランプのほかにも絨毯や陶器など、様々な雑貨が置いてあった。  そしてもう一つ気付いたことがあった。この店には値札が一切ないのだ。  コースターや小皿なども本当に可愛かったのだが、私と友人の心はすでに決まっていた。ランプだ。  さすがに天井から吊るすシャンデリア型のものは無理でも、スタンド式の卓上タイプのものならば我々の旅行ケースにですら何とか入る。せっかく旅先でこんなにも美しいものを見つけたのだ。その欠片くらいは持ち帰りたい。  意を決して値段を尋ねる我々に、お爺ちゃん店主は人好きのする笑顔で答えた。  「この大きなシャンデリアだと70万くらいだけど、この一番小さなスタンドライトなら2万円だよ(実際は英語なのでイメージ和訳)」  ひぇぇえー!!!度肝を抜かれるくらい高い!!もう宝石の値段じゃん!?もしかしてこれ、ガラスじゃなくて宝石でできてるのか!?  またしても出川ばりのリアクションをする我々を見て、じいちゃんは「ワァオ!」と、コミカルに驚くと言葉を続けた。  「けれどもあなた達は今日最初のお客さんで特別だし、私は日本人の友達がいるからスペシャルな値段にしてあげるよ。1万6千円にね!」  めっちゃ安くなった!それでも高いけど!  実際1万6千円は変えない値段じゃないがそれでも高い。旅の二日目でそんなにお金を使ったら今後に影響すること請け合いだ。けれどこんなに綺麗なランプを買わずに帰ったらそれこそ後悔することも必須…。  頭を抱えて悩む我々にさらに言い募るおじいちゃん店主。  「日本で使えるようコードも付け替えてあげるし、これはいい品だから壊れるようなこともない、ほら」  指し示すほうを見れば、若い店員が横倒しにしたランプの上で片足立ちし、頑丈さをアピールしている。なんて雑な扱いなんだ。  「もう時間だし、ちょっと落ち着いて、昼ご飯食べてからまた来ようか」  友人の冷静な提案に私も頷いた。ちょうど昼食をリトルインディアの有名店、ヒルマンレストランで予約していたのだ。  「ご飯食べてくるの?いいよ!リトルインディア?近いから車で送ってあげるよ!」  じいちゃんの過剰すぎる親切。それを固辞しタクシーに乗ること数分、我々はリトルインディアへと降り立った。  そして、数秒もたたずに物凄い違和感を覚えることとなる。  道行くほとんどの人間がインド人。  アラブストリートでも店員や道行く人々の大半がアラブ人だったのだが、彼らは何というか、顔の彫が深いだけで大半がニコニコしており、正直とっつきやすかったのだ。  けれどもインド人は違う。理由は分からないが道行くインド人の大半が男性で、しかもその全てが「目がこぼれ落ちるのでは?」というくらい目を見開いて真顔でこちらを凝視してくるのだ。  ベースの顔自体が色黒で彫が深く迫力があるのに、街にいるその顔の人間全員が無言��こちらをガン見してくるのだから正直言ってめちゃくちゃ怖い。  すれ違う人がシンガポールにしては珍しく自分の腹にリュックがくるように背負っていることからも、ここでの基本的な治安の度合いが伺われる。  なんにせよなんでこんなに穴が開くほど見られるんだ?何かマズイことをしているのか?とにかく怖いからやめて欲しい。普段神経の太さに定評のある友人ですら猫背で縮こまり、「マジでヤバいマジでヤバい。早く出ようよココ」と小声で連呼していた。私も完全に同意見だった。  死ぬまでに一度はインド旅行をしておこうと思ったけれど、これはちょっと考え直すべきかもしれないな。リトルでこれなら、本物のビッグインディアはどうなってしまうんだ?生きて帰れるのか?インド、こえぇー。とずっと思っていた。  それでもせっかくリトルインディアまできたからには、一件くらいは店に寄っておこうという貧乏根性を炸裂させ、我々は恐る恐るムスタファセンターに入った。ここはリトルインディア一のショッピングセンターで、日用品から食料、薬品までとにかくなんでも揃っているのだ。  正直怖すぎてあまり記憶がないが、ここでチリクラブソースやブラックペッパーソースを買った事と、シンガポール名物のタイガーバームを飛び切り安く買った事だけは覚えている。  タイガーバームとは虫刺されや蕁麻疹、果ては頭痛に至るまで、とにかく何が起こってもこれさえ塗っとけばオッケーというシンガポールが誇る万能軟膏だ。シンガポール名物なだけあって本当にどこにでも売ってあり、それゆえにその店での物価というか、おおよそのぼったくり具合の指標としても機能している。  ちなみにこの旅を通してダントツでタイガーバームが安かったのはこのムスタファセンターで、ダントツで高かったのはこの後訪れることになるナイトサファリだった。  とにもかくにもショッピングセンターに入って少しだけ落ち着いた我々は、足早に次なる目的地、ヒルマンレストランに向かった。  載っていないガイドブックなどないのではないかとも思える有名店ヒルマンレストラン。ここの名物ペーパーチキンは醬油や紹興酒で味付けした鶏肉を紙で包んで油で揚げたもので、香ばしくジューシーでとにかく旨いという評判なのだ。  否が応にも高まる期待。そして注文からたっぷりまたされた後に運ばれてくるペーパーチキン。パリパリのペーパーシートを箸で破き、中のジューシーな鶏肉に箸をのばす。
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 うん、旨い!  旨いけど…と思い向かいの友人を見ると、微笑みとも真顔とも取れない微妙な顔をしていた。アルカイックスマイルだった。  「どう?」  その顔のまま、私に話を振る友人。言い辛いことをこちらから切り出させようとしているのだ。  「いや、美味しいよ」  「うん」  「美味しいけど…、正直お母さんが作るやつだわ」  途端に友人の笑みがアルカイックスマイルから通常の邪悪な笑みへと変わった。同意したのだ。  そう。旨いけど、これはお母さんが家で作るようなやつなのだ。出されたら美味しいと言って食べるが自分からリクエストする事はない。ましてやわざわざ外食で頼むようなものではなかった。  またしても勝手に高すぎるハードルを設定し勝手に失望してしまったようだな…。しょせんは焼いた鶏肉なのに、知らずめちゃくちゃ期待してしまっていたようだ。チリクラブが旨過ぎただけに、同等の期待をこの千円そこらの鶏肉にもかけてしまった。  にしてもこの店、見渡す限り客の大半は日本人観光客だしメニューも日本語。現地の店というよりは完全��観光客のためだけの店だ。なんでこの店が軒並みガイドブックで絶賛されるのだろう。やっぱりガイドブック会社に掲載店はバックマージン的なものを支払っているものなんだろうか…?  自分の評価とガイドブックのあまりの齟齬にそんな失礼な妄想を抱きつつ、一通り店の品々を堪能した我々は、話を本題へと移した。そう、ランプ購入問題だ。  「本気で欲しいけど、本気で高すぎるよね」  全てはこの友人の言葉に集約されていた。  「マジでね。しかもあの店に一時間近くいたせいで他の店全然見れてないし。夕方のナイトサファリのツアー前までにアラブストリートとチャイナタウン、巡り終われるかな…?」  早朝から出発したものの時刻はもうとっくに昼過ぎ。うかうかしている時間はないのだ。  「とりあえずここでガイドブックで行きたい店の目星をつけて、そこを中心にちゃちゃっと回ろうか」  友人からの提案に同意した私は、共にガイドブックを覗き込んだ。まだほとんど巡れていないものの、アラブストリートの魅力的な店々が並んでいる。  「あっ!さっきのランプ屋もあるよ!」  友人の言葉でガイドブックの一角に目を移した私は、友人と同時に息をのんだ。  そこには今まさに我々が欲しいと思い悩んでいる1万6千円のランプの写真が掲載されていたのだ『ランプ(小)6,000円』の文字と共に。  「…あのジジイ!」  怒り狂う我々。  「嘘だろ…信じられん。普通そこまでぼったくる?」  「あんな孫に対するような親密さで接した相手にそんなぼったくる?」  「あんな親しみのこもった笑顔向けた相手にそんなぼったくる?もう3倍近いじゃん?これでもぼったくりって言うの?どんな感受性してるんだ?」  「人間不信になるわ。何がスペシャルプライスだよ。ある意味スペシャルだけど」  止まらないじいさんへの悪口。エターナルジジイディス。  しかしまぁ、適正価格ならばランプが予算範囲内だということが判明した事も事実だ。なにせ買うか迷っていたボーダーラインから一気に3分の1近い価格になるのだ。これはもう買うしかない。  「じゃぁとりあえず他の店見て、ランプと他に良さそうなものがあったらそれを買おう。じいさんの事は忘れよう」  そう結論付けた我々は、再びアラブストリートの店へと戻った。  アラブストリートの店を何件か流し見た結果、ようやくいくつかの事実を学んだ。  まず、ここの店の商品の大半には値札がない。  客が気になる商品を手に取って見ているとどこからともなく店主が寄ってきて、「それは1万円(超ぼったくり価格)だ。だが貴方は特別な客なので7千円(ぼったくり価格)にしてあげよう」と言い出す。  そこで客が「それならいらない」と言うと店主が「いくらなら買う?」と尋ねる。  そして客が「4千円(適正価格)だ」と返答すると店主が『おいおい、何のジョークだい?』というおどけた顔をし交渉開始。  …と、おおよそここまでがこのあたりの店の当然の挨拶、様式美なのだ。  「貴方は特別な客だ」とする理由は「今日最初の客だ」「日本人の友達がいる」「私の友人に似ている」など様々なパターンがあるが、ほとんどがこの流れで事は進んでいく。  他の大半の店でランプの提示価格が最初は1万円、特別な客だから割引で6~7千円だったことからしてもあの爺さんがハイパーぼったくり戦士だったことは間違いないのだが、おそらく私と友人の出川ばりのリアクションを見て「こいつらなら3倍でもイケる!」と踏んだのだろう。事実買う寸前までいったのだし、じいさんの先見は正しい。年の功だ。  ひとまずランプはいろいろな店を見てから決める事にして、まずは純粋に通りを楽しむことになった。  「これほんとにカシミアか?」と疑わしくなるような中東風の模様で織られた格安カシミアストールや『パシミナ』と銘打たれたあからさまに怪しいカシミア風のストール。そしてとにかく多い絨毯。  どれもわくわくするような品物ばかりだったのだが、中でも特に私と友人の心を捉えたのがアラブストリートの一角にある香水瓶のお店だった。  エジプトやドバイから直輸入しているという嘘かホントか分からない香水瓶たちは色も形も見ているだけでうっとりしてしまう程美しく、ラクダや象をかたどった可愛らしいデザインのものまであった。  手作りのためか手に取って見ると完全に密封される仕様ではないため実際に香水を入れたら物凄い勢いで揮発しそうなのだが、そんなことはこの美しさの前では些細な問題だ。外からの光を浴びて輝く香水瓶たちは、その美しさだけで十分すぎるほどの価値があった。
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 迷いに迷って幾ばくかの香水瓶を購入した私たちが満足げに店を出ると、友人があるものを見つけて駆け寄った。  「ここここ!チャイのお店!」  友人が事前に調べてくれていたアラブストリートですこぶる美味しいチャイを出すというその店は、見るからに年季の入った店構えで、年季の入った店内で年季の入った店主のおじさんが年季の入った食器をかちゃかちゃさせながら素手でチャイを作っていた。  泥水やん。  と思ったが友人には言えなかった。友人はここのチャイを飲むのを本当に楽しみにしていたのだ。店に近づくと店の前にはシンガポール政府がホーカー(屋台)につける衛生度でB(ギリギリセーフ)と書かれたステッカーが貼ってあった。  どんな感情でかは分からないが、その店でチャイを飲むことを決意した友人は店のおじさんからコップに入ったチャイを受け取ると店外の席に腰かけ、いそいそと飲み始めた。チャイは濁ったウーロン茶ともニンジンジュースともつかない色をしており、心なしか泡立っていた。  私は正直この旅で、もう友人は脱落したな、と思った。BのおやじがBの手で作りBの食器に入れたBのチャイを飲んでいるのだ。食中毒待ったなしだ。
 一口二口飲んだ友人は顔をあげてこちらを見、「マジで美味しいよ!一口飲まない?」と言ってきた。私は「えー!?いいよぉー」と言った。よくそんなもの他人に勧めるよな、といった気持だった。  結論からいうとこのBのチャイは友人の体調に何の変化ももたらさず、私はこの時飲まなかった事を今でも少し後悔することになったが、それはもう結果論だ。あのBのチャイを飲んで無事に済む奇跡がたまたま訪れたにすぎない。  ともあれチャイも飲んですっかりアラブストリートに慣れた我々は、人の好さそうな夫婦の店で四千円でトルコランプを、そして数百円で謎のストールたちを買い集め、達成感と共にアラブストリートを後にした。  きっとこれでもまだぼったくられているのだがもうそれでもいい。日本でトルコ人おやじと対等に渡り合い価格競争できる人間なんてきっと大阪人くらいのものだろう。私の力では遠く及ばないのだ。  ちなみにこの時買ったトルコランプ、「本当に綺麗でうっとりしちゃう!」のは間違いないのだが日本の電圧の関係か明るさが四割減ぐらいになっており、「日の光の中では明かりをつけても全く分からないため完全なる暗闇の中でしか使えない。そしてとりたてて周囲の何かを照らすほどの光量もないため、ただ暗闇の中ぼんやり光るこいつの美しさを愛でることしかできない道具」と化している。  暑さと交渉疲れでだいぶ疲弊してきた我々だが、再び地下鉄を乗り継ぐと次なる目的地へと向かった。  辿り着いたチャイナタウンは、比較的慣れ親しんだ光景だった。基本的にカラフルな建物が多く、頭上にはずらりと提灯が吊るされている。台湾の夜市で見かけたようなカラフルな布に入った箸やけばけばしい色の中華風雑貨がところ狭しと並び、明らかにパチモンの面白Tシャツやキーホルダーなどが売っている。どちらかといえば日本にある中華街に近い陽気で雑多な雰囲気だ。  せっかくなのでちょっと見て回るか、と店をひやかして歩いていると、ヒンドゥー教のものだろうか、原色で色を塗られた神様や牛の像が雛人形の祭壇よろしく高く積まれた寺院が目に入った。
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 「凄い!凄くない!?」  宗教施設に目のない私と友人が吸い寄せられるように近寄ると、寺院の前には大きな看板が出されていた。この施設の由来か何かだろうか。  興味津々でそれを読むと、そこにはこう書かれていた。  『この寺で写真を撮ると金を貰います』  凄い…。中国人の生きる力凄いわ…。神をも上回る集金力。そう思うと我々は、そっとその場を後にした。  元来、私たちがこのチャイナタウンに来た目的は、寺社めぐりでもなければ中華アイテムを入手したかったからでもない。どうしても食べたいスイーツがあったからだったのだ。  このチャイナタウンには多くのスイーツショップがひしめいており、中でもマンゴーとストロベリーアイスを雪のようにふわふわに削り、その上からフルーツソースとイクラのような謎の球体をかけたスイーツが飛び切りおいしそうで有名なのだ。  目当ての店に入り注文を終えた我々は、空いている席に適当に腰かけた。  店内は超満員で食べ終わった人間が席を立つとすかさず店員が食器を片付け、それと同時に別の客が座る、といった具合だったのだ。  私と友人は件のマンゴーストロベリーアイスを頼んだ。友人に至ってはそれとは別に、マンゴータピオカミルクまで頼んでいた。  実際に席まで運ばれてきたスノーアイスはパンフレット通りの鮮やかさで、大きさは想像の1.5倍ほどだった。そのうえ横には苺とマンゴーが添えられている。
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 「めっちゃ綺麗!めっちゃ美味しそうじゃん!」  「いいね!良くない!?」  乏しい語彙でひとしきりアイスを称賛した私と友人は、ついにスプーンをとってアイスをひとすくいした。  雪よりも軽く柔らかいそのアイスは、すくっている手ごたえがほぼないほどだった。  ふわりとすくったアイスを口に入れる。  雪だった。結論から言うと、良くも悪くもこれは雪だった。  そのガッツリとした色味から、もっとパンチのあるマンゴー味を想像していたのだが、基本的にはマンゴーの香りが少しする雪、くらいの味だった。つまり、雪。味がほとんどなかったのだ。  「・・・このイクラみたいなの何なんだろ」  誰ともなく呟き横の謎の球体を口に運ぶと、無味無臭の球体がはじけ中から無味無臭の液体が出てきた。  マジでなんなんだこれは。  ふと向かいの席を見ると、友人が肩を震わせて笑っていた。  「どうしたの?」  気味悪がって尋ねる私に、友人は自分の頼んだマンゴーミルクを差し出した。  「食べてみて、これ」  一口食べて、息をのんだ。  「ふふっ…。これ、常温で、無味…無臭…」  何がおかしいのか笑い続ける友人を見て、私も何故か笑いが止まらなくなっていた。  本当だ。はるばるチャイナタウンまできて結構な金を出し、得たものは無味無臭の氷の山。しかも友人の小皿いっぱいあるマンゴーミルクに至っては完全に常温。常温で無味無臭。これ、どうすればいいんだ…。  「無味…無臭…」  爆笑しながらそう呟き続ける私たちのもとに、刻々とナイトサファリツアーの時間が迫っていた。
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thyele · 4 years
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2020年7月7日
コロナ空気感染の可能性、世界の科学者239人が警鐘 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News https://www.afpbb.com/articles/-/3292384
ロイターさん「イベント制限緩和で了承、緊急事態時と「状況異なる」=西村再生相」 https://twitter.com/ReutersJapan/status/1280090243371347969
毎日新聞さん「コロナ専門病院化の方針を受け一般外来の診療を休止していた大阪市立十三市民病院が、外来診療を27日から再開します。」 https://twitter.com/mainichi/status/1280091621715881986
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版さん「コロナ迎え撃った人々、エクアドルの逆転劇 #新型コロナウイルス」 https://twitter.com/WSJJapan/status/1280090370899095554
SankeiBizさん「「ただの風邪」と軽視のブラジル大統領が新型コロナ感染か 既に検査を受け、7日にも結果が判明するという。ボルソナロ氏は新型コロナ感染症を「 #ただの風邪 」と軽視し、しばしばマスクをしないで公の場に姿を見せることなどで知られる。 #ボルソナロ #ブラジル大統領」 https://twitter.com/SankeiBiz_jp/status/1280293972406145024
日テレNEWS / 日本テレビのニュース・速報さん「【横浜市 大規模な成人式中止 オンライン開催へ】 横浜市は新型コロナウイルスの影響を受け、毎年成人の日に横浜アリーナで行っている全国最大規模の成人式の開催を中止し、来年はオンライン形式で行うことを決めました。 #オンライン成人式」 https://twitter.com/news24ntv/status/1280032488115408899
毎日新聞ニュースさん「熊本豪雨 浸水6100戸超 死者44人、不明10人 迫る「72時間」雨の中捜索続く」 https://twitter.com/mainichijpnews/status/1280092323225862144
TBS NEWSさん「午前8時半ごろ、大分県と福岡県を流れる筑後川の上中流部で「氾濫発生情報」が発表されました。氾濫発生情報は5段階の大雨警戒レベルのうち、危険度や緊急度が最も高い「レベル5」に相当する情報です。川が氾濫した場所の近くにいる方は、今すぐ命を守るための最善の行動をとって下さい。」 https://twitter.com/tbs_news/status/1280301012754915328
朝日新聞東京編集局コブク郎さん「香港、令状なしの捜査を一部許可 香港国家安全維持法に基づき、施行規則を決定しました。 捜査対象者が香港を離れることを制限する措置や、ネットユーザーが国家の安全に危害を加える情報にアクセスできないよう当局がプロバイダーに指示できる内容が盛り込まれました。」 https://twitter.com/asahi_tokyo/status/1280140344437256192
毎日新聞さん「「ニュー・シネマ・パラダイス」「荒野の用心棒」などで知られる映画音楽の巨匠、エンニオ・モリコーネさんが亡くなりました。91 歳でした。」 https://twitter.com/mainichi/status/1280090391534899202
BARKS編集部さん「デフトーンズ、9月にニュー・アルバムのリリースを計画 #Deftones」 https://twitter.com/barks_news/status/1279984453952008192
halkaさん「怒りの 鑑賞会しました 先週の話です メンバー4人」 https://twitter.com/halka3719/status/1280007964271603712
lucy+peter=esolagotoさん「今日のAmazon、ちょっと変」 https://twitter.com/lucy_peter/status/1280015761050726401
YOSHIP0Nxxxさん「昨夜は久しぶりのluinで音出しでしたー 7/13手刀で初配信に向けてリハビリ。。。」 https://twitter.com/YOSHIP0NxxxTOR/status/1280065632961089536
lucy+peter=esolagotoさん「急ぎの御仕事が山積みの中 突如イヤホンが右しか鳴らなくなった 今月の俺、キテる・・・♡」 https://twitter.com/lucy_peter/status/1280136488546480129
キリ(luin/…。【サイレンス】)さん「また、カレーの本を買ってしまった(๑°﹃°๑) 」 https://twitter.com/kiri_drums/status/1280342070872272898
UNCLOCK LOVER 頼田陵介さん「アンクロの曲で一番ハイトーンなのは線上戦歌という曲なのですが、全力で3回歌ったらバテた😱 この辺りも調整しなくてはだ‼︎ 走るか。。。 色々山積みや😅」] https://twitter.com/yorita_ryosuke/status/1280029509614354432
太三さん「熊本の人吉市はいいとこばい!」 https://twitter.com/taizodiac/status/1280044132711272450
KING OFFICIALさん「【NEW ONLINE LIVE】 2020.7.14(火) 渋谷GUILTY KING ONEMAN LIVE-猿王- START19:00 mahocast(有料) TICKET/ストーン400個(¥4,400/税込) [チケット]」 https://twitter.com/KINGOFFICIAL114/status/1280064106284773377
KINGRYOさん「皆様よろしくお願いします✨」 https://twitter.com/kingryoworld/status/1280065032735219712
KING OFFICIALさん「【KING WEB予約】 ■ 2020.7.19(日) 大塚Welcome back 「自動返信なし受付」にお申込み頂きました皆様への「フライング通知」「タイムスタンプ付き受信確認メール」のお送りが完了しました。 未着の方がおられましたらお手数ですが[email protected]までご連絡ください。 よろしくお願いします。」 https://twitter.com/KINGOFFICIAL114/status/1280126953740099584
KING OFFICIALさん「2020.7.5 振替公演のお知らせ 振替公演:2020.11.14(土) お手元のチケットは当日そのまま有効となりますので大事に保管ください。 キャンセルをされる方への払い戻しも行います。 https://t.co/re8V0eyy7P 払い戻し期間:〜2020.7.20 23:59まで よろしくお願いいたします」 https://twitter.com/KINGOFFICIAL114/status/1280155623359836160
KINGRYOさん「眠れない夜のど真ん中で〜 歌詞書いてます…。」 https://twitter.com/kingryoworld/status/1280189209823678464
RYUICHI KAWAMURAさん「【明日20:30〜 Ryuichi Kawamura Channel #ニコ呑み 放送!】配信ライブ Ryuichi Kawamura Live2020「Home」#1 のあとは #ニコ呑み !おつまみ3種リクエストで決定した、1位枝豆、2位チーズ、3位柿の種とお飲み物の準備を忘れずに!!」 https://twitter.com/RYUICHIofficial/status/1280091246308933632
RYUICHI KAWAMURAさん「【Ryuichi Kawamura Live2020「Home」#01 公演グッズ販売のお知らせ】 エコバッグ ¥2,000 画像は実際の商品とデザイン・大きさ・色味等が異なる場合がございます。明日7/7(火)より『RYUICHI KAWAMURA POP UP STORE』(エンタバアキバ by SHINSEIDO @Entaba_akiba )にて販売いたします。」 https://twitter.com/RYUICHIofficial/status/1280091093388820480
KISAKIさん「すごい数のバンドに賛同して頂きリリースの発表まで漕ぎつける事が出来ました。今俺が出来る90年代最強のオムニバス盤だと思います。絶対に聞いてほしい!!」 https://twitter.com/KISAKI_OFFICIAL/status/1274282473204051968
aさん「今夜はドーランを塗りつける47歳、モノローグ老人への門をくぐるかも・・・†」 https://twitter.com/giboaiko_japan/status/1280096159906721793
emmuree 朋さん「明日7/7は一生に一度あるかないかと言われている、ムニムニの七夕ツイキャス有料配信ギグw/cosmo-shikiです。 2020円にて14日間視聴可能さんです。 https://t.co/o4SWF5ZdeQ ムーニーズの出演は20時から。 お楽しみにどうぞー。」 https://twitter.com/manicure_ojisan/status/1280152750093787136
ジグラットofficialさん「#ジグラット のワンマン(雨) 〜社のお誕生会〜 7/6@池袋手刀 ご来場いただいたジグラットのおともだちの皆さん、ありがとうございました! [サポートメンバー] Dr.kaname Ba.真 Gu.邪〜takuto〜鬼(about tess) [飛入りゲスト] Gu.加納〜ミドリ〜摩天楼」 https://twitter.com/ziggrat_info/status/1280144288798568449
Shintaroさん「Next Gig 7/7 MUNIMUNI at 本日配信GIG 🎋🎋🎋」 https://twitter.com/Shintaro_iod/status/1280260424785510400
takuto_さん「昨夜はジグラットワンマン@池袋手刀でギター弾きました。俺がそう感じただけかも知れないけどコロナ渦以前のライブとは全く違う空気感の中それは初めてのライブの様なあまりにも新鮮な体験でした。ライブって不思議ですね。ジグラットにお客さんに感謝。ヤシロさん誕生日おめでとうございます。」 https://twitter.com/takuto_/status/1280334412744282113
木村飛香/やもりさん「明後日販売日、明日フラゲワンチャン☺︎☺︎ 音源は一時的にサブスクで聞けるけれど、歌詞カードもサイコーでテンションぶち上がるので是非ともお手に取っていただきたいのです! 流石の百眼やで⁽⁽꜀(:3꜂ ꜆)꜄⁾⁾ ワンマン予約もお願い◎ #百眼 #アリスオブザデッド」 https://twitter.com/pekori_o00/status/1280045099523571713
歌鈴さん「7月8日は #アリスオブザデッド サントラ&DVD発売日! 7日でもフラゲできるかも…💥 歌詞カードも劇中写真が載っていたりと豪華で楽しくて可愛い!是非実物を手に取ってお家でも楽しんでいただきたいです…🥂 対象店舗では初回購入特典も付くのでHPをチェックしてみてね🌹」 https://twitter.com/utasuzu_karin/status/1280108375766757376
石井飛鳥さん「最速で明日にはフラゲできるとの噂です! #百眼 #アリスオブザデッド」 https://twitter.com/ishiiasuka/status/1280101886608109569
十三月 紅夜さん「🌟まもなく発売🌟 『不思議の国のアリス・オブザデッド』 DVD & サウンドトラックは7月8日発売! お店によっては明日フライングゲット出来ちゃうかも……!?⚡️✨🌹 初回限定豪華特典等、詳細はこちら🌞 ギャラリーも更新されてるよ〜❣️ #百眼 #アリスオブザデッド」 https://twitter.com/jusangatsukouya/status/1280121338720485376
こもだまり/昭和精吾事務所さん「わみお誕生日おめでとう🎂 過去写真詰め合わせ! 「殺しの神戯」シーン作戦会議がきっかけで語りの話するようになって、フェリーちゃん朗読企画に出演したりのご縁も。 4枚目は数年前のFOXPILL CULTワンマンの打上げ中。このわみ可愛くない?? 次の共演は7/22 廻天百眼レコ発ライブ!よろしくね🎤」 https://twitter.com/mari_air/status/1280123077922181121
西邑卓哲(FOXPILL CULT) Takaaki Nishimura🌚さん「廻天百眼『不思議の国のアリス・オブザデッド』DVDとサウンドトラックが明後日、7月8日に全国発売開始🔥 サントラは劇団という枠を越えて1枚のアルバムとしても名盤になるよう全身全霊で作り込みました。サブスクでも聞けますが歌詞と合わせてこそ真骨頂なのでCDも是非!! ※各レコード店にて特典有」 https://twitter.com/takaaki_FOXPILL/status/1280125153351892992
桜井咲黒さん「廻天百眼本公演『不思議の国のアリス・オブザデッド』のサントラ&DVD明日にはフライングゲット出来るようです!! 買って!! ワンマンも22日に開催だから会いたいなー! 来て!!!」 https://twitter.com/sakurai_zakuro/status/1280123604949061632
こもだまり/昭和精吾事務所さん「昨日は瞬くん@mayumi_shun が教えてくれたGoogleのARでひとしきり遊んだ。 めためた部屋着ですけど」 https://twitter.com/mari_air/status/1280127421006483456
西邑卓哲(FOXPILL CULT) Takaaki Nishimura🌚さん「廻天百眼「不思議の国のアリス・オブザデッド」の公演DVDはまだ観劇したことのない初百眼の方にも超オススメです!!!! これぞアッパーグラウンドな天と地が同時に爆発するような作品なのは勿論、小劇場とは思えぬ台数のカメラを駆使して公演を美しく捉えており臨場感も凄いです。(特に後半圧巻!)」 https://twitter.com/takaaki_FOXPILL/status/1280129937211486210
こもだまり/昭和精吾事務所さん「このMV曲収録のサントラは7/8発売🔥(明日フラゲ!) ディスクユニオン/タワレコ/ヴィレヴァン高円寺店にて初回限定特典付きます。 MV感想さくさん感謝✨プラトニアの住人か可愛いのは知ってる(*´ω`*) でも陛下も可愛いを振りしぼったから褒めていいのよ!拗ねるわよ!ウミ&グリに撃たれるわよー!」 https://twitter.com/mari_air/status/1280133665511489537
西邑卓哲(FOXPILL CULT) Takaaki Nishimura🌚さん「すごい動画だ……元気出る……」 https://twitter.com/takaaki_FOXPILL/status/1280136470682939398
西邑卓哲(FOXPILL CULT) Takaaki Nishimura🌚さん「あざらしがコロコロ転がっている……」 https://twitter.com/takaaki_FOXPILL/status/1280137492314742784
西邑卓哲(FOXPILL CULT) Takaaki Nishimura🌚さん「見て……0:30からアザラシがコロコロ転がっていくのを……」 https://twitter.com/takaaki_FOXPILL/status/1280139243809980416
ooshimatomoeさん「そして愈々まもなく07月08日、 虚飾集団廻天百眼 劇場本公演 『不思議の国のアリス・オブザデッド』 公演DVD・サウンドトラックCD、発売です! 明日07月07日に、お求めいただけたりするかも...(所謂フラゲ日てやつですね...!) 特典のつく店舗もあります。詳しくはコチラ↓」 https://twitter.com/tomomochi/status/1280155325052542977
辻真梨乃さん「『不思議の国のアリス・オブザデッド』のDVDとサウンドトラックは7月8日発売!!店舗によっては明日7日に入手できるとの事…!! https://t.co/pt9YoKJnZs 発売記念ワンマンももうすぐだ🐛 #アリスオブザデッド #百眼」 https://twitter.com/tsujimarino/status/1280151062423277568
ふなもと健祐さん「@takaaki_FOXPILL 俺は42秒くらいの犬にペロペロされてるアザラシの顔にヤられたッス!!!」 https://twitter.com/funamoch1/status/1280166468374589441
西邑卓哲(FOXPILL CULT) Takaaki Nishimura🌚さん「@funamoch1 👼👼👼👼👼👍👍👍👍👍」 https://twitter.com/takaaki_FOXPILL/status/1280172206341804032
こもだまり/昭和精吾事務所さん「#こもだ先生業 五期5日目。リズム練〜アイソレーション。皆出会った時に比べたら身体の[部分]に意識が及んで来てるはず。音楽かけると勢いでできることもあり。時空の変化を身体で表現するイメージ練。言葉でなく積極的にサンプルを見せていこうと思う。「おはよう」エチュード。来週は台詞に入る。」 https://twitter.com/mari_air/status/1280215731448102913
こもだまり/昭和精吾事務所さん「連絡LINEが各所からバンバン来た日。 #stayhome一人芝居 at T heatre も着々とキャスト集まってるみたい。 募集は7/10迄。詳細はnoteにて。 今井夢子の脚本で、 私と20分の一人芝居作りませんか? 私達と一人芝居フェスしませんか? コワクナイヨ。」 https://twitter.com/mari_air/status/1280220919705657344
Keita Kobayashiさん「ゲゲ… 一般公演じゃなかったやつなので、是非行ってみてください〜」 https://twitter.com/k_illuminations/status/1280229500781916161
🕸𝔛𝔛𝔛𝔄𝔗𝔖𝔘𝔖ℑ🕸さん「リキジ君とこのIMOCD!の新曲 stone temple pilotsを思い出した カッコいいな〜」 https://twitter.com/xxxxvalentine/status/1280119569294614530
山崎怠雅さん「昨年録音したThe Silenceのアルバムがやっとリリースされます。 アナログと配信はシカゴのドラッグシティ、CDは国内盤のみディスクユニオンから。買ってね!」 https://twitter.com/taigayamazaki/status/1280062505327276032
金髪豚野郎K助(偽殿下)さん「自分の舌打ちで目が覚める程度のあんま良くない夢で目が覚めた (°_°)」 https://twitter.com/goldenpigdrumer/status/1280259625783144448
金髪豚野郎K助(偽殿下)さん「破裏拳ポリマーを観た 幼い頃レコードを持っていたのだがポリマーの 「アチョー」的な声がとても不気味で怖かった アニメの後半では全く「アチョー」的なやつ言わなくなった かなり不評だったんだろうな (°_°) コスプレの悪の組織多すぎてウケる」 https://twitter.com/goldenpigdrumer/status/1280326180357300224
CRAZY PUNK KID公式さん「THANX 1st ANNIVERSARY. VIVA LA BIRTHDAY!」 https://twitter.com/CRAZYPUNKKID/status/1280262090524028930
NakamuraEmiさん「🎋七夕配信ライブまで0日 本日。 笹は太いところの1関節に、穴や切り口を開けてあげると水が入ります。 あと水3:酢2 がいいらしいです。 夜まで元気にいてくれますように。 7/7 火 @配信ライブ 🎫¥1,500 📱7/7 20:00〜21:10予定 👓 視聴期間 7/10 23:59まで」 https://twitter.com/nakamura_emi/status/1280289807428489217
Hir0shiKawamuraさん「いよいよ本日です🔥 短冊に何書こうかしら。。。 皆々様 どうか今日も一日気をつけて そして 今宵はぜひ🔥🔥🔥!!!」 https://twitter.com/Hir0shiKawamura/status/1280295534452826112
B a n d w a g o n 公 式さん「【NakamuraEmi 配信ライブお知らせ】 Streaming Live 「七夕はそこへ。2020」 7/5(日)21時までのコンビニ入金期限で未入金のお客様は、本日7/7(火)15時以降に再度お申し込みいただけます。 現在、クレジットカード決済のみでの販売となっております。 #NakamuraEmi #七夕」 https://twitter.com/bandwagon0718/status/1280336139723902977
岸田奈美| 7/25までバースデーパーティーさん「いい文章を爆速で書ければ、いい場所に爆速で連れてってくれると思うのです。記事中でもお名前出ておりますが、いい人にどんぶらこっこと見つけてもらえて、幸せなんや…!」 https://twitter.com/namikishida/status/1280320844468609024
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19.08.01.
バラックのような寂れたアーケード そこにはある事務所があった���
暗殺を生業としている男 彼がそこの主だった。
私は雨の降る日、母の運転する車に乗って 町に一軒しかないカメラ屋を訪れた。 フィルムの現像はそこしかやっていなかった。
扉を開け、店の中を見渡す 誰も居ない。 薄暗く電気はカウンターのみ付けられていて 棚や商品は埃を被っていた。 じめじめとした店内、物音に気付いたのか店主が現れた。 痩せた頬、白髪交じりの髪はセンター分けで気難しい人格のように見受けた。 時代錯誤の重たいガラス製のメガネ、汚れて黒くなっているエプロン。 私は少し怖くなった。
口を開いた店主はやや面倒くさそうな顔をして 「デジカメのプリント?」 「うち、やってないんだよねー」 「最近そういうナメた奴が多くてホント困ってるんだよね。」
「あの」
私はフィルムの現像をしたくてここに来たんだと伝えた途端 彼は頬を桃色に染めて嬉々として言った。 「なんだ!そうだったの」 「もっと早く言ってよ」 「いいよ、わかった。」 「明日とりにおいで!」
記憶はそこで途切れている。
バラックのような寂れたアーケード そこには事務所があった。
暗殺を生業としている男 彼の事務所の前に私は立っていた。
扉を開けた。
和風な造りの建物だった。 入ってすぐは土間になっており 左手に何部屋かあるのだろう引き戸で間仕切られていた。
何故私がここに訪れたのかはまったく覚えていない。 ここは仕事や面会の受付だろうか?小奇麗なカウンターがあった。 誰も居ない空間、外の喧騒だけが聞こえる。
間仕切られた部屋の一角から甘い匂いがする。 好奇心に負けた私はその扉をそっと開けてみた。
「わあ」
そこはお姫様の部屋と例えるにはあまりにも生活感が強く 夢見がちな少女の部屋と例えるには懲りすぎていた。
天上は羽衣のようなふわふわとした布があしらわれており 小さなシャンデリアのようなものも釣り下がっていた。 壁はきらきらとした宝石のような粒や、少し悪趣味な兎の絵が飾られていて 部屋の四隅にはふんわりと光を放つ丸いランプがそれらを照らしていた。
あまりにも情報量が多い部屋だが 畳の部屋に起毛素材のセンターラグが敷かれ その上にメルヘンなローテーブルが置かれている事に気付いた私は謎の安堵感を覚えた。
「お客さん?」
一目で解った。 背後に立っていたのは、先刻まで私の心を奪っていたその部屋の主だった。 白い花の柄があしらってある桃色のワンピース。ふわふわとウェーブのかかった栗色���毛。 きれいにカールした睫毛。ぱっちりとした眼。桜色の唇。
「お客さん・・・ですか?」
「あ、いえ、あの、」
何故自分がここに居て 何故自分がこんなにも泣きそうになっているのか解らなかった。
気付けば私はその『家族』になっていた。 暗殺を生業としている男の事務所 そこの管理をする者として住み込みで働いていた。
事務所の主である男は忙しく、買出し・掃除など手が回らないらしく 記憶の無い私は、なぜか成り行きで働く事になった。
この鰻の寝床の一角のような建物に私含めて4人の人間が住んでいた。 一人はここの主、職業は暗殺者 二人目は受付担当の女、彼女は元々男性だったそうだ。 ここの主が甚く気に入り一緒に住むことになったらしい。別に愛人とかそういうのではない。 三人目は姫、彼女は在る意味カモフラージュ的存在らしいが じゃあ一体この建物は何屋として世間の目を欺いているんだとおもう。 そして私。掃除・洗濯・買出し・姫の話し相手をする。 姫は料理ができ、お菓子作りが趣味のため、そこはとても助かった。私は料理ができない。
ここの生活は毎日が楽しかった。 夕暮れ、下町の八百屋や青果店、精肉店などに足を運び買出しをする。 姫と一緒に寄り道して町の夕焼けを眺めたり、笑いあったりした。 夜になると姫の部屋で内緒のガールズトークをしたりした。 タロット占いや星座の話、空想の生き物の話をした。
ここの主は帰ってくるのは太陽が昇る少し前で、昼間は寝ている事が多かったが 時間がある時は一緒に町の穴場を巡ったりした。 彼は人殺しではあるが、とてもそうは見えないくらいにチャーミングな表情をしていた。 背も高く細身で、無精ひげと伸ばされたマスタッシュ。不思議な人だった。
受付の女性の姿を見る事は無かった。 たまに来る客の相手をしていたが、若い女性が多く 彼女達をエスコートしていた。多くの女性がなぜかスマホのカメラ機能を起動させ写真を撮っていたが なぜそんな事をしていたのかわからなかったし、仮にもここは暗殺者のアジトだ。いいのだろうか。
ぼんやりとだが記憶が戻ってきたある日の事。 最近流行りの作品の映画実写化の挨拶イベントのチケットが当り、母を誘って行く事になった。 隣国の主催で、多くの人間が当選したらしい。やはりお金のある国のやる事は規模が大きい。 事務所の主は「行って来い」とアッサリ許してくれ、久々の『本物の家族』との外出になった。
なにか興味のなさそうな顔の主だったが、今思えば止めてくれたら良かったのにと今は恨んでいる。
イベントは屋外でとても広い海に面した会場だった。 天気は晴れ、会場には多くの人が押しかけており、私達は舞台が見えるかどうかといったブロックだった。 「たのしみだね」 そんな話をしていたとおもう。 何せ久々の『本物の家族』だ。とても嬉しい。
いよいよ挨拶が始まる。 司会が映画の紹介をし、出演者が登壇した。
その瞬間だった。
黒い塊が空を飛んだ。
ミサイルだ。
最初は舞台の先頭 取りこぼしの無いように次は舞台の右斜め前、左斜め前 そしてその後方・・・次々に放たれるミサイルは私達の眼前まで迫っていた。
「逃げよう!!!!」 私は母を一緒に走った。 間に合うとか命が助かればとか関係なかった。 ただ本能に従うまま走った。
そこから記憶が途切れていた。
逃げてこられたのだろう。 私は事務所に居た。主に対して私は怒った 「気付いてたのから止めてくれたってよかったのに!!!」 「・・・私も隣国の主催と解っていたのになんで行ってしまったんだろう・・・」 当時の情勢として隣国との関係は最悪で、一触即発状態だった。
気持ちがぐちゃぐちゃだった。 折角の『本物の家族』との時間が台無しになった悔しさ。 危うく命を落とすところだったその恐ろしさ。
そしてその日はやってきてしまった。
勢い良く事務所の扉が開かれた。 途端、私の頬を何かがかすめた。
銃弾だ。
私は咄嗟に部屋に逃げ込んだ。 主も臨戦状態に切り替え、弾を撃ってきた相手を狙う。相手は女だった。
突如日常に現れた混沌の中、私達は忘れていた。
いつも当たり前のように家族として存在し、また、衣食を共にし、生きてゆけると信じていた。
姫が撃たれた。 彼女は殺し屋のカモフラージュとして住んでいた。 おっとりとした彼女は逃げ遅れ、そして死んだ。
物凄くあっけなかった。 目の前でさっきまで一緒に生活していた家族が死んだ。 死んだ。 死んだ。
背中を撃たれて死んだ。 死んだ。
私は主と相手の女が撃ち合いをしている銃声をただ、耳と目を塞ぎ、うずくまってやり過ごすしかなかった。 受付の女性はその日も姿を見せる事は無かった。
それからは戦争の日々だった。 在る日、戦争試合という試合に出された。 ルールは簡単、広い浜でお互い代表者が殺し合いをするというなんとも惨い『公開型戦争』だった。 殺し屋の一員という事で参戦させられた。当たり前だが私は運動もできなければ武器も扱えない ただ逃げ回るだけの人員だった。今日が命日でも仕方ないとおもっていた。
相手は見覚えがあった。 姫を殺した女。そいつが居た。
どうやら、うちの人員はいつもの寝床にいるメンバー以外にも居るらしく 同い年くらいの女の子や、ぱっと見頼りなさそうな初老の男性、どこにでもいそうなおじさん すこし変わったメンバーだが、どうやら腕前は立派なものらしかった。 じゃぁ、何で私が参戦してるんだ。余計にわからない。
戦闘開始。 姫を殺した女の目はいつも真っ黒で血と争いを求めていた。 金髪に染め、肩にかからないように短く整えられた髪の毛は太陽の光を返し眩しく輝いていた。
私は逃げる。 逃げた。 そこから記憶が飛んだ。
姫のいない生活、何事もなかったように回る世界。 町は平和なものだった。 一人で買出しに行き一人で家路につく。
「ただいま」
居間の扉を開ける。 誰かがこちらを見た。 赤子? 1~2歳くらいの女の子がこちらを見て微笑んでいた。
「だれ?」
「過去のお前だ。」
留守にしているとおもっていた主が後ろからヌッっと現れる 心臓によくないからやめてほしい。
「お前、コイツのお守りしろよな」
そういって、彼は自身の寝室へと消えていった。 独りっ子の私は子どもの世話などわからないし、そもそもこの子は会話できるのか ご飯は何をたべるのか。さっぱりわからない。あと、過去の私って何?
「いいよ、べつにきにしなくて」
近くで声が聞こえた。 あたりを見回す。
「べつにいいから」
目を疑った。これは・・・目の前の女の子から発せられた声だった。
夜、その女の子は絵を描くのが好きらしく 一緒に絵を描いてすごした。 夜の風はすずしく、静かな町には虫の声が響いていた。
「でもたいへんだよねー」
女の子・・・過去の自分はそう言って紙の上で鉛筆を遊ばせて私に話しかけてきた いくら私が始めて喋った時あまりにも明瞭な日本語を話したとて こんな話のわかる子どもがいてたまるかと思いつつ会話をする。
あれから主は寝室から出てこないのでこっそり部屋を覗いた。 スーツも靴も身につけたまま、ベットに横たわり、ガーガーと五月蝿いいびきを立てて眠っていた。 ただ、一点だけ気になる事があると言えば彼の下には似つかわしくない桃色の布が敷いてあった。
少し近づいて覗いた。
姫のワンピースだった。
姫がいなくなってから、葬儀も悲しみの声も何も無かった。 姫の部屋はそのままで開けられる事の無い部屋となり まるで本当に彼女は世界から消えてしまったのではないかという感覚に陥るくらいの日々だった。
主は彼女の事を不器用ながら想っているのだろう。 そうに違いない。 とても苦しかった。泣きたくなった。 そっと戸を閉じ、私は寝る仕度をした。
ある夜の事だった。 2歳くらいだった過去の私は尋常ではない速度で成長をし、たった数日で3~4歳くらいの見た目になっていた。 すっかり二人でお風呂に入って色々な世間話をしていた夕刻風呂場の戸を叩く音がした。
「はい?何?主?」
「おう」
何かと思って思わず扉を開けた。 ビシャッ 水をかけられた。
「エッなに?なに?」
思わず声をあげる。
「これ、掃除しといてくれ」
今朝、トイレの汲み取りが終わり 洗浄につかっていた小型のタンクの清掃を私にさせたいらしい。 にしても風呂に入っている女性をわざわざ呼ぶ必要もないだろうに。何故。
そこにひょっこりと見知らぬ客人が三人。 顔が似て目がきょろっとした男の子三人。 3歳5歳10歳といった具合だろうか。子どもが三人顔を覗かせていた。
「誰?」
「新しい家族だ。俺が育てる」
そう言って洗浄用タンクの汚水をジャブジャブかけてきた。
「ちょっと!なにするんですか!!!」
ニヤニヤしながらでも、なにか物悲しそうな顔をして主は笑った。 私も笑った。 また体を洗わなければと思いつつ、今はこの奇妙な状況に甘んじた。
「ただいま」 朝の内に買出しをして帰ってきたら見知らぬ女性が立っていた。 と、日中滅多に見ない受付の彼女が立っていた。 客人かと思い、私はいつも通り台所へ向かおうとしたその時、違和感を覚えた。
白く塗られた壁 窓から入る光 窓辺に飾られた白く小さな薔薇 アンティーク調のベッドには黒地に白の花がプリントされているワンピースが 枕に足を向けるような形で寝かされている。
いつもの鰻の寝床の雰囲気とは打って変わった様相だった。 おかしい。 だってここは鰻の寝床。 窓なんて在るわけがない。
客人と思われる女性はスマホで写真を撮りながら、受付の彼女の説明を聞いている。
後ろで扉が強く開けられる音がした。
「みーつけた」
気付けば先ほどの客人も受付の彼女も居なくなっていた。 そしていつもの薄汚い我が家。 声の主はアイツ、姫を殺した金髪の女だった。 真っ黒で、血を求める眼がこちらを見ている。
主も居ない、この建物には私しかいない。 逃げるという選択肢すら無い。 どうすれば。
担いでいた銃をこちらに向けて発砲した。 私は土間の中をひたすら逃げ回る。
そこで私の記憶は無くなった。
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y24klogs · 5 years
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白そびえる鎮魂町
秋の月末に町をあげての祭をやっていたのは、 鎮魂を謳う町。白がそびえる、死を隣にする町。
町の周りには、南瓜やぶどう畑が広がっている。 辛気臭いわけでは無いが、牧歌的とも言えない。 人が集まる忙しい場所という訳でもないのに。
今、空は赤味を残している。夜も近い。 ・・・さあ、行ってみようじゃないか。
町の中心部へやって来た。 蝋燭と蛍鉱ランタンで彩られた広場だ。
薄暗くはあるものの、足元は見える。 普段ならば避けて当然の灯りの弱さが、 今は、亡くした何かの安眠を誘うものだった。
それはただただ、白かった。 ぬっぺりとした、無機質な存在感がある。
特に美しい細工が施されているわけではない。 せいぜい、根元に飾りが施されている程度だ。 ヨルド : ……
それなのに、何故だろう。 つい、見てしまう。見上げてしまう・・・。 ヨルド (凝視している。) 【売り子くん】 鎮魂の町へようこそー!! お菓子やスナックはこちらで売ってるよ! 取引をしました。 15ルド失った。 [サラダ・ボウル] を手に入れた。 [レンガ・ブラウニー] を手に入れた。 [干しエノキ肉] を手に入れた。 ヨルド (色々買ってしまった。つい) ヨルドは、サラダ・ボウルを使った。 ぱりっぱりのヘルシーという概念。    ヨルドは4回復した。  ([1]+3) ヨルドは、干しエノキ肉を使った。 アゴが割れても当店は保��しかねます。    ヨルドは5回復した。  ([2]+3) 【売り子さん】 いらっしゃい、弔いにようこそ。 お腹を満たすものをお探しかしら? (視界の隅に、なにか)
少し先に、酒場が見えた。 腰を落ち着けて飲むのも、良いかもしれない。 ヨルド (ふらっと酒場に寄った)
酒場内は、流石に明るかった。 薄暗さに慣れた目には、強く思えるほどに。 ヨルド : うぐ ヨルド : まぶしい・・・ 【酒場の主人】 ・・・いらっしゃい。 うちは、そこまで品ぞろえが良くねえんだ。 あんまり難しい注文は、勘弁してくんな。 ヨルド : ああ 【酒場の主人】 ウチの名物といやぁ、そうだな・・・。 揚げたカブと、ブラックエールくらいなもんだ。 ヨルド : それで 【酒場の主人】 じゃが芋揚げろっつぅんなら、そのくらいは出来る。 アイスは出せるが、パフェ?とかいうのも無理だ。 ヨルド : 構わん。 【酒場の主人】 ・・・んま、名物を聞くってこたぁさ、 なんか注文してくれんだよな? 【酒場の主人】 ・・・いらっしゃい。 うちは、そこまで品ぞろえが良くねえんだ。 あんまり難しい注文は、勘弁してくんな。 【酒場の主人】 依頼?あんた冒険者か、賞金稼ぎか? こんな町に大きなモンは転がってないよ。 ヨルド : そうか…… 【酒場の主人】 妙な現象とも仲良くやってきてんだ。 除霊だの、物騒な事は考えないでくれよ。 ヨルド : わかった。 【酒場の主人】 ・・・いらっしゃい。 うちは、そこまで品ぞろえが良くねえんだ。 あんまり難しい注文は、勘弁してくんな。 【酒場の主人】 ・・・嫌いだよ。大っ嫌いだ。 こんなに思い出の詰まった町はねえ。 ヨルド : そうか 【酒場の主人】 だからこそ、ここで酒場やってんのさ。 親も友人もツレも、みんなここで寝てるかんな・・・。 ヨルド : じゃあな
町の中心部へやって来た。 蝋燭と蛍鉱ランタンで彩られた広場だ。
薄暗くはあるものの、足元は見える。 普段ならば避けて当然の灯りの弱さが、 今は、亡くした何かの安眠を誘うものだった。
人気のない道が続いている。 喧騒から外れた、この町の墓場への道だ。
目ぼしい灯りも無い、町の墓場。 この土地だけではない人々も、共に眠るという。 ヨルド : …… ヨルド (墓石には見慣れない名前が並んでいる。) 自動スクロールを解除しました。
広場へ戻る? 自動スクロールを有効にしました。
町の中心部へやって来た。 蝋燭と蛍鉱ランタンで彩られた広場だ。
薄暗くはあるものの、足元は見える。 普段ならば避けて当然の灯りの弱さが、 今は、亡くした何かの安眠を誘うものだった。 自動スクロールを解除しました。
この先を行くと、町の通りに出るらしい。 少し毛色の違う店があると聞く。 自動スクロールを有効にしました。
どこからか香を焚く匂いがする。 その匂いは優しい。線香というほどではない。 石造りの中を、香が満たしていく・・・。
桃色と蜂蜜色が混ざった、花のような龍のはく製。 さほど大きくはない。3mあるか程度の身体だ。 ヨルド : ・・・
片目は龍眼そのものが残っているが、もう片方は宝石だ。 出来るだけ同じ色であるようにと、苦心されたのが察せる。 ヨルド (目が合ったような気がした)
この死体は愛されている。 誰が最初に、愛し始めたのだろう。 【鎮魂の教会】 青を基調としたステンドグラス。 にじむ蝋燭のひかり・・・。 【盲目のシスター】 ・・・おや、お客さんでしょうか? わたくし共に出来る事は、少ないけれど。 どうぞ、ゆっくりしていってくださいね。 ヨルド : ああ 【シスター】 静謐の教会へ、ようこそ。 ・・・男のわたしがシスター服は、まあ目立ちますよね。 ヨルド : ?そうか 【シスター】 この教会では、性別の垣根なくシスターなのですよ。 身は神に仕えし器。男も女も、色の違いでしかありません。 【シスター】 植物はとっても素直です。 この辺りに植えてあるのは、全て薔薇ですけれど。 【シスター】 広場の方から、花園にいけるのはご存知ですか? 我が教会も世話の一端を担っております。 ・・・是非、見ていってくださいね。 ヨルド : そうか 【シスター】 お祈りですか?それとも、呪い避けでしょうか。 怪我があるならば、微力ながらもお手伝いしましょう。 【シスター】 では、ささやかながら清めの祝詞を。 ・・・その後に、聖水に手をつけてくださいね。 ヨルド (じゃぽっ) 【シスター】 ・・・この辺りでは、あまり見ない方ですね。 落ち着かぬ事もありましょう。せめて肩の力を抜いてください。
どこからか香を焚く匂いがする。 その匂いは優しい。線香というほどではない。 石造りの中を、香が満たしていく・・・。 【惡喰の蟒蛇】 あくじきのうわばみ、と読むらしい。 濃厚なスープの香りがする。 【惡喰の蟒蛇】 どうにも、特殊な食事処らしい。 (人を選ぶ内容です。ご注意ください) 【ア・ルヴィーシカ】 (店主の顔は非常に見づらい) (店主はただただ、灰汁を取っている・・・) 【ア・ルヴィーシカ】 ・・・あん?ああ、すまんな。 喰いに来たのか?それとも提供か? ヨルド : 食いに来た 【ア・ルヴィーシカ】 ・・・今日はアリアヴィル。 アリアヴィルのスープ。 ヨルド : アリアヴィル? ヨルド : 頼もうか。
店主は黙ってキッチンに籠る。 ・・・しばらくして、あなたの前に食事が置かれた。
深皿に、沢山の野菜がはいったスープが盛られている。 ・・・あなたは、それが根野菜のみだと気づいただろうか? ヨルド : ん。
明るいところで見れば彩も悪くはない、そのスープの奥。 野菜に埋められるようにして出て来た、小さな骨つきの肉…。 【ア・ルヴィーシカ】 ・・・今日はアリアヴィル。 アリアヴィルのスープ。 【ア・ルヴィーシカ】 ・・・今日はアリアヴィル。 アリアヴィルのスープ。 【ア・ルヴィーシカ】 それで、何のご用かね。 うちはそこまで飯は豊富じゃないよ。 【ア・ルヴィーシカ】 その日のスープ。それか、ステーキ。 どっちかだよ。そのどちらかしか、無いよ。 【ア・ルヴィーシカ】 材料を持ってきてくれるヤツ次第なんだよ。 そいつがどっちで喰いたいかで、メニューが決まるのさ。 【ア・ルヴィーシカ】 ・・・何の肉か、だって? 誰かが愛した血肉さ。愛しくてたまらない何かだ。 ヨルド : あ ヨルド (食べちゃったな。と思った) 【ア・ルヴィーシカ】 それで、何のご用かね。 うちはそこまで飯は豊富じゃないよ。 【ア・ルヴィーシカ】 最低限の灯りだけにしてるんだ。 当たり前だろ。・・・喰う時は静かにするもんだ。 【ア・ルヴィーシカ】 誰かの情と年月の詰まった肉を喰うんだ。 派手な灯りなんか必要ねーんだ。 【ア・ルヴィーシカ】 それで、何のご用かね。 うちはそこまで飯は豊富じゃないよ。 【ア・ルヴィーシカ】 死んだ動物を卸してくれる事さね。 一応、人間は避けてるよ。一応・・・ね。 【ア・ルヴィーシカ】 ・・・愛おしすぎて、離れがたくて、 自分じゃ燃やすことも埋める事も、出来ないヤツ。 そういう苦しみを、誰かの胃で片づけるとこだ。 【ア・ルヴィーシカ】 大事な者の死を、食べて受け止めるヤツもいる。 血肉とすることで前に進めるヤツも存在する。 そういう思いにすがるヤツだって・・・。 【ア・ルヴィーシカ】 ・・・気持ち悪いと思ったなら、向いてねーから。 主義が違っただけ。普通の店を紹介してやるよ。早く出な・・・。 ヨルド : そういう風習もあるか。 ヨルド : どうも。悪くなかった。たまには来る。
どこからか香を焚く匂いがする。 その匂いは優しい。線香というほどではない。 石造りの中を、香が満たしていく・・・。 【ナイン・ソウルズ】 扉には鎖が交差していた。 鎖の中心に、絵筆がぶら下がっている。 言わんとすることは、分かる気がした。 【アトリエ・死生】 あなたを迎えたのは、画材の詰まった棚だった。 絵筆、彫刻刀、ノコギリ、にかわの元・・・。
小型のキャンバスや紙が詰まっている。 よく叩いた木の皮なども乱雑にまとめられていた。 ヨルド : 絵を ヨルド : 描くのか? 【シトー】 ・・・いらっしゃい。 あんまバタバタ走ってくれるなよ。 ヨルド : 走りはしない。無意味だろう 【シトー】 見ての通り、画材屋だよ。 大事なアトリエを兼ねている。 【シトー】 買うものがあるなら、そこらから持ってこいよ。 値段はいちいち覚えてられない。その場でつける。 【シトー】 ・・・いらっしゃい。 あんまバタバタ走ってくれるなよ。 【シトー】 死んだ生物の絵を描いてる。 誰かの伴侶だったり、長年連れ添った犬だったり・・・。 【シトー】 想い出を描き留めてるんだよ。文字通り。 ・・・アンタも描いてやろうか?(ニヤリ) ヨルド : 俺はまだ止まっていないが。 【シトー】 ・・・いらっしゃい。 あんまバタバタ走ってくれるなよ。 【シトー】 いいよ。でっけえ火は使うなよ? そっちの棚の奥、青い階段を下りてくんな。 【シトー】 画材は持ちこむなり、ここの使うなりしてくれ。 でも、そこに入る時は絶対オレに話しかけろ。いいな? ヨルド : わかった。
階段を下りていくと、作業場に出た。 僅かながら、地下室らしい空気の重さがある。
換気はできるし、床は石造りだ。 しんと静かな空間・・・。 自動スクロールを解除しました。
あなたは作業を始めた。 判定に失敗しました 目標値:12 達成値:9([1,3,5]) ヨルド : 何故だ
あなたは作業を始めた。 判定に成功しました 目標値:12 達成値:12([6,5,1]) ヨルド : 問題無い
良い具合に集中できている。 もっと手を動かせそうだ。
あなたは作業を始めた。 判定に失敗しました 目標値:12 達成値:7([2,1,4]) ヨルド : 何故だ
想像していたよりも小さくまとまっている。 これではいけない。修正しなくては。 ヨルドは1のSPを失った  
あなたは作業を始めた。 判定に失敗しました 目標値:12 達成値:5([1,2,2]) ヨルド : 何故だ
違う。違う違う違う。 こうじゃない。これじゃない。どこで間違った? ヨルドに1のダメージ   ヨルドは2のSPを失った  
あなたは作業を始めた。 判定に成功しました 目標値:12 達成値:13([6,2,5]) ヨルド : 問題無い
良い具合に集中できている。 もっと手を動かせそうだ。
あなたは作業を始めた。 判定に失敗しました 目標値:12 達成値:8([4,3,1]) ヨルド : 何故だ
イメージ通りに手が動かせない・・・。 あなたは産みの苦しみに浸った。 ヨルドは2のSPを失った   ヨルド : ……!!!
あなたは作業を始めた。 判定に失敗しました 目標値:12 達成値:10([5,2,3]) ヨルド : 何故だ
想像していたよりも小さくまとまっている。 これではいけない。修正しなくては。 ヨルドは1のSPを失った  
あなたは作業を始めた。 判定に成功しました 目標値:12 達成値:12([2,4,6]) ヨルド : 問題無い
良い具合に集中できている。 もっと手を動かせそうだ。
あなたは作業を始めた。 ファンブル! 判定に失敗しました 目標値:12 達成値:6([2,2,2]) ヨルド : 何故だ
あなたは作業を始めた。 判定に失敗しました 目標値:12 達成値:11([3,6,2]) ヨルド : 何故だ
あなたは作業を始めた。 判定に失敗しました 目標値:12 達成値:10([1,6,3]) ヨルド : 何故だ
冷たい水が出てくる。 道具を洗うもよし、水を飲むもよし。 ヨルドは5回復した。  
冷たい水が出てくる。 道具を洗うもよし、水を飲むもよし。 ヨルドは5のSPを回復した。  
階段を登れば、店に出る。 自動スクロールを有効にしました。 【アトリエ・死生】 あなたを迎えたのは、画材の詰まった棚だった。 絵筆、彫刻刀、ノコギリ、にかわの元・・・。
どこからか香を焚く匂いがする。 その匂いは優しい。線香というほどではない。 石造りの中を、香が満たしていく・・・。 【納本堂】 扉の横に、看板がぶら下がっている。 開かれた本が描かれていた。 自動スクロールを解除しました。 【ガーディー】 ・・・納本しにきた訳ではなさそうだね。 何か、お求めの遺本でも? ヨルド : 気になっただけだ。何だここは 【ガーディー】 そのままの意味だよ。本を納めるのさ。 ここは、納骨堂ならぬ納本堂。故人の書物が集う。 ヨルド : ?理解しがたい 【ガーディー】 古い本から個人出版、手記まで。 値段がつけられないものに、値段をつけている。 【ガーディー】 ・・・つまり、ここにある紙束たちはね。 一度は死を記憶したもの、ってわけだよ。 ヨルド : そうか。 【ガーディー】 ・・・納本しにきた訳ではなさそうだね。 何か、お求めの遺本でも? 【ガーディー】 ボクかい?しがない活字中毒者だよ。 足をダメにするまでは、冒険者をやっていた。 あちこち駆け回ったもんさ。 【ガーディー】 今はこうして、隠居生活と本屋を営んでいるよ。 ああ、鑑定も多少はかじってるから、何かあったら持っておいで。 料金はもちろん頂くけれどね。 ヨルド : ああ 【ガーディー】 ん、ちょいと待つんだ。 この先は勝手に入られちゃ困るよ。 【ガーディー】 ・・・ああー、知ってるなら良いか。 通すのは構わないけど、奥の本は"強い"ぞ。 持ち出しは許可出来ないから、そのつもりで頼むよ。 自動スクロールを有効にしました。
扉が背中で閉められた。 ほんのりと照らされる本棚と、肌に刺さる魔の意思。 怨念じみたものも感じ取れるそこは、異空間。
随所に見られる封印や封鎖魔法には、苦労の痕がある。 どうかあなたが、この本達に魅入られませんように。
この棚の書籍は、装丁に皮が使われていた。 ネズミ、コボルト、オーク、ハーピィ、人間、獣人・・・。
顔の皮や手足の皮など、分かりやすい"アイコン"にされている。 内容もあまりよろしくないものばかりだ。強い薬草の匂いもする。
この棚にある書物は、大小バラバラで素材にも統一がない。 ただ、どれをめくっても中身は真っ白だった。
勘のいい冒険者ならば、それの一枚を光にかざすかもしれない。 極薄に掘られた文字共が、直接脳内に入って、く   る 。
気になった一冊を広げてみると、錆びのような匂いがした。 呪文が書き連ねられているが・・・これは、インクではない。
体液だ。ありとあらゆる体液が混ぜられたインクだ。 血や涙だけではない。脳髄、骨髄、唾液、それから・・・。
知性あるもの、二足歩行をするもの、身近に存在するもの。 それらを捕らえて閉じ込め、育て、好みに太らせた時・・・。
訪れるのは、食事の時間である。 この棚にあるのは、飼育のススメ。調理指導。皮や骨の活用。 味の詳細や街の死角を細かに書いた手記ばかりだ。
鎖や魔封じの紐に巻かれた本…ではなく、 巻物や板、竹などに書きつけられた文章たちの群れ。
どこかの貴族の手紙だったり、王族の証明書だったり。 しかし、眉唾にも思える。疑心暗鬼と策略の山が、詰まっている。
宗教の本だろうか? なかには遠い昔に弾圧された教祖のものまである。
しかし、危険■無いと思いこんではいけない。 不用心に読めば読むほど、あ■■の思■は蝕まれ、■■■■. ■脳ト魅子が詰ね■まれな*&■■■■■。ああ!素晴らしき■
禁書の棚から抜け出しますか?
どこからか香を焚く匂いがする。 その匂いは優しい。線香というほどではない。 石造りの中を、香が満たしていく・・・。 【アトリエ・死生】 扉前の看板には、そう書かれていた。 混ぜ物をした蝋で作成された、精巧な面。 それらが並ぶガラス窓。
小さめの薪釜だ。 奥で炎がごうごうと燃えている。
金属のマスクが焼かれている。 熱をあまり感じないのは、何故だろう・・・。
釜で焼く前のマスクだ。 ただの灰色じみた塊に見える。 【カプラキャスタ】 ああ、ちょっと、そこ、きをつけて。 蝋がまだ柔らかいの。振動を与えると骨格が・・・。 ヨルド : っと、すまん。 【カプラキャスタ】 ・・・デスマスクって、知ってる? ひとが最後に残せる、数少ない面影よ。 ヨルド : 聞いたことはある。 【カプラキャスタ】 死人の顔を、石膏や金属葉で模るの。 出来るだけ差異の無い様に作り、遺す・・・。 何に使われるかは、知らないけど。 【カプラキャスタ】 ・・・いちおう、普通のマスクも受け付けてる。 生きてる人のためにも、仮面を遺したいしね。 ヨルド : そうか 【カプラキャスタ】 ああ、ちょっと、そこ、きをつけて。 蝋がまだ柔らかいの。振動を与えると骨格が・・・。 【カプラキャスタ】 デスマスク職人。名前は、カプラキャスタ。 この仕事について・・・ようやく十何年?かな。 【カプラキャスタ】 ・・・ね、あなたの眼幅、測って良い? 結構好きかも。あなたの目元、ユニークだわ。 ヨルド : そう、か? 【カプラキャスタ】 ああ、ちょっと、そこ、きをつけて。 蝋がまだ柔らかいの。振動を与えると骨格が・・・。 【カプラキャスタ】 ・・・ええと、普通の仮面がほしいの? それともデスマスク?詳しい話を聞かせて・・・。
蝋で作られた老人の顔がある。 しわくちゃだらけの表情は、穏やかな雰囲気だ。
どこからか香を焚く匂いがする。 その匂いは優しい。線香というほどではない。 石造りの中を、香が満たしていく・・・。
沈香通りよりも、空気が重く沈んだ道。 沼の水のようによどんではいない。ああ、静寂。 【グリザイユ・キアロ】 黒い扉にかかる看板は、美しかった。 小粒の宝石が、キラキラしている・・・。 【グリザイユ・キアロ】 いわゆる宝石商なのだろう。 分厚いカーテンが閉じているところをみるに、店主は外出中らしい。
近日、引っ越します。 そう書かれた紙が貼ってあった。 【苔枕】 大きな宿屋が見える。 そこの扉だけは、白かった。 【苔枕】 なんてことはない、ただの宿屋だ。 値段も良心的だが・・・満室らしい。 【未亡人】 あら、見かけない人・・・。 どうしましたの?この先へ行きたいのかしら。 【未亡人】 ごめんなさいね、この先はちょっと閉鎖してて。 大掃除中なの・・・ええ、そうよ。葬儀場・・・。 【未亡人】 大掃除というより除霊に近い、なんてぼやいてたけど。 ・・・私?葬儀屋のいとこ。今は・・・お手伝い中。 ヨルド : そうか。
どこからか香を焚く匂いがする。 その匂いは優しい。線香というほどではない。 石造りの中を、香が満たしていく・・・。
この町の扉は、黒塗りばかりだ。 ・・・広場に戻ろうか。
町の中心部へやって来た。 蝋燭と蛍鉱ランタンで彩られた広場だ。
薄暗くはあるものの、足元は見える。 普段ならば避けて当然の灯りの弱さが、 今は、亡くした何かの安眠を誘うものだった。 (視界の隅に、なにか)
お菓子や蝋に混ざった香とは違う匂いがした。 道や柵に絡まるツルを見るに、花園への道だろうか。
咽そうなくらいの薔薇が咲いていた。 アーチや天蓋の輪、または高壁のように剪定されている。 ヨルド : う、
町の人々が丁寧に世話をしているのだろう。 花弁の膨らみも棘の鋭さも、美しい。
そういえば、青い薔薇がどこかにあると聞いたが。 一体どこに咲いているのだろう……。 自動スクロールを解除しました。 ヨルド (薔薇だ。本当にどこを見ても薔薇ばかりだ。) ヨルド (どうにも目が疲れてしまう。ゴーグルを降ろした。)
薔薇と蝋で根元が彩られた、白い塔だ。 薄明りの中にぬぼっと建つ姿は、不気味さすらある。 ヨルド (この部分だけ、浮いているようにも見えるが薔薇に突かれてしまった目には優しい) カサッ....         ガサッ   ガサッ…… ヨルド (棘が、少しだけ指に当たった。)
蒼黒い月桂樹と骨で根元が埋まった、白い塔だ。 月桂樹の別名はローリエ。こんなに蒼黒い葉だったろうか? (何かの囁きが聞こえる……)
広場へ戻る? ヨルド (出よう) 自動スクロールを有効にしました。
町の中心部へやって来た。 蝋燭と蛍鉱ランタンで彩られた広場だ。
薄暗くはあるものの、足元は見える。 普段ならば避けて当然の灯りの弱さが、 今は、亡くした何かの安眠を誘うものだった。 (今、誰かにぶつかったような)
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yukiosa-progress · 5 years
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30th Dec. 2018, Sunday
PLPロンドン_15週目_Yuki OSA
《旅の備忘録》
12/22 05:55 LTN → 09:50 BRI
N16のバスに乗って、旧市街手前で降ろしてもらう。バスの中の譲り合いや、チケットの受け渡しに南伊の人々の暖かさを感じる。
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歩いて15分ほどで大通り沿いにある宿の近くまで着いたが、Googleマップの場所に宿がなく、右往左往。近くのビルの警備員の人に聞いてみたところ、その人もわからず、一緒に探してくれる。キオスクの友人に聞いてくれたりして、地図のポイントがワンブロックずれていることが判明。御礼を言って別れる。
宿の中は旧式のエレベーター。それを取り囲むように階段が螺旋状に上がっている。エレベーターは少し乗るのが気が引けて、階段で登る。
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4階の宿に着く。両開き扉が狭い。片側だけ開いていて、肩幅ぎりぎりで荷物が引っ掛かる。
中には宿のおばさんと招き猫の人形が腕を振っている。受付前に立つイタリア人らしい長髪に少しパーマのイケメンがおばさんと話している。挨拶をするとその人もなんとフローレンスで学んだ建築家らしい。今晩エンジニアの友人とご飯を食べるけど一緒に来て語らわないかと言われたが、アルベロベッロに経つのでいけなかった。誘ってくれるだけで嬉しいと伝えた。またマテイラに行くことも伝えたら、マテイラは来年ヨーロッパのカルチャー首都に2019からなるという情報を教えてくれた。
部屋から若い女性がチェックアウトをして出て行く。
支払いを済ませると、おばさんが入浴用タオルを貸してくれた。優しい。お茶も飲まないかと言われたが、アルベロベッロ行きの電車が迫っていたので、丁寧に断った。
宿泊用の荷物を置き、手提げだけ持ちバーリの駅まで徒歩で向かう。10分ほどだが碁盤の目状の道はとても長く感じる。
駅に着いてみると掲示板に乗る予定の電車がなく焦る。駅員のおじさんに聞くと、違う駅だから地下を歩いて左に行けと言われたが、行ってみても何もない。引き返し通行人のおばさんに聞くがイタリア語でわからず。そうこうしているうちに、時間が迫りのこり3分。焦っていたところ、駅員の若い女性が地下に潜り反対側の車線のところが違う駅なのだと教えてくれる。ややこしい。
また地下に潜り反対側の車線まで走ってなんとか間に合うことができた。
12:03 Bari central→ 14:05 Alberobello
プッティガーノに着くとバス停があり、そこで待機。待つこと30分ようやくバスが来る。そこでもタバコを吸ったおばさんに助けられる。南伊の優しさに感謝。
アルベロベッロに到着。するも新市街に降ろされ場所不明。Wi-Fiもないので右往左往。ガソリンスタンドの売店のおじさんに教えてもらう。
トゥルッリの地域着。石積みのとんがり屋根状の家々が建ち並ぶ丘陵の眺めに感動。
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インフォメーションセンターを探していると、美味しそうなパン屋。朝から何も食べていなかったので、プンチャをオーダー。15cmほどの温められた丸く薄べったいパンに、トマト、モッツァレラチーズ、ベーコンが挟まっている。美味。
バンダナっぽい旧式の帽子を被ったパン屋のダンディなおじさんに、インフォメーションセンターの場所を聞くと、何しに行くんだと聞かれ、地図をもらいにと答えると、うちにもあるからちょっと待ってろ、と引き出しを開けて地図を取り出すと、名所や巡った方が良いところを丁寧に教えてくれた。感謝。
プンチャを片手に食べながらトゥルッリの街並みを登る。石積みの狭い階段の両脇は、観光客向けの店で犇めいている。お土産には興味がないが、トゥルッリの内部が気になるのでいくつか入ってみる。とんがり屋根の裏側上部まで塗装されているところが多いが、石積みをそのまま見せているところも。円形の平面を長い二本の木製の梁が流れる。
観光店通りを離れ、住居群を歩くと、屋根の補修工事現場にあたる。しばらく眺めていると、その場で石を砕き、丁寧に石を積み上げていく技術はまさに職人技。1273年から続く技術の伝承。厚さ大きさの違うライムストーンを使い分け積み上げていく。分厚く大きな石は円形の壁に使われ1.3~1.8mほどよ壁を形成する。その上に木製の梁を二本流しつつ、屋根が上に乗る。屋根は三層構造で、まずはじめに屋根の構造となる20cmほどの少し厚めの石を内部空間側の斜め状の角度に合わせカットしながらとんがり状に積んでいく。この角度には緩やかさ加減を徐々に変えて、長年の構造に耐えうる知識が詰まっているらしい。次に隙間を埋めるための砕けた細かい砂礫を詰め込んで、最後に薄い石板を瓦状に積んでいく。屋根の最上部には、十字架だけではなくユニークなシンボルが、キリスト教の様々な願いや想いを込めた形豊かなかたちで表現されていると同時にキーストーン同様の役割も持ち、屋根全体のアーチ構造の重しにもなっている。外壁を白く塗装するようになったのはいつからか不明だが、1つの家が同じ素材で出来上がっていく光景は感嘆に値する。しかもその素材は、同じ地域から産まれた石なのだ。風景に対して相性が良く感ずるのはそういう事由であると感心。
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17時過ぎに日が暮れて、そこからは夜のバスまでの6時間をどうするか考える。最近の色々な悩みなどを抱えつつ、思索に耽りながら直線上に歩き続けていると、大きなバシリカ様式の教会にあたる。中世の都市構成の誘導的意図を感じる。
中へ入り、お祈りなどをしつつ、座っていると、子供のためのクリスマス礼拝が始まる。賑やかな子供達が礼拝を済ませ帰っていく。
どれくらい座っていただろうか。気がつくと今度は大人たちのクリスマス礼拝が始まっていた。壮大なパイプオルガンの音や賛美歌の音、僧侶の聖書を読む声などが、幻想的に礼拝堂内に響き渡り、目を閉じて耳を澄ませる。
教会に滞在すること3時間半。とても心が落ち着いていた。
あてもなく夜の街を歩く。
夜のトゥルッリは、昼とは違った趣を見せる。月明かりと街灯に照らされた影の陰影が深いためか。
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子供達が夜にもかかわらず大人も伴わず出かけていく。街角には井戸水の蛇口があり、そこへ首を傾けて口を近づけ飲んでいる。私も飲んでみようか。
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20分ほど歩くと、広場にでる。広場はとても賑わっており、様々な店舗が出ている。
徐々に子供の数が減っていき夜も更ける。
23:25 Alberobello → 00:40 Bari
バスの中で寝過ごさないか心配であったが、なんとか宿に到着。
STAY@ Bari “MoViDa CaVour”
12/23
カフェでバスを待つ。本場のカプチーノは濃い。
クロワッサンも密度あり。
7:25 Bari → 8:35 Matera
マテーラに到着する。が、徒歩30分程度離れた新市街にて降ろされる。
途方に暮れていたところ、同じバスでバーリから来た、2人の若いカップルに話しかける。2人ともバーリで法律を学んでいて、来年就職らしい。今日はクリスマスイブ前日のワンデートリップにマテーラまで来たと言う。彼女の方は日本に二回も行ったことがあるらしく、話が弾む。旧市街広場までは道のりが同じで、一緒にローカルバスに乗り向かう。
旧市街着。カップルと別れる。
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別れ際に教会になぜドクロが彫り込まれているのかについて少し話した。
南伊では結構多いらしい。
STAY@ Matera “L'Ostello dei Sassi”  
宿着。荷物を置��。荷物といってもA4サイズのリュックだが、一日中担ぐのは応える。
15分ほど待つと受付の人が出勤してきたので、荷物を置いて良いかと聞くと、チェックインもできるということなので、そうする。イタリアのユースは一泊16ユーロくらいが相場で、どこも安い。
今回泊まるところは、マテーラ特有のサッシと呼ばれる岩窟住居をホステルに改装したところ。
荷物を置き、街へ出る。
光と影のコントラストが素晴らしい。街全体がどこを切り取ってみても彫刻作品として成り立つのではないか。
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階段の折り重なる迷路のような街路を歩き、散策する。
サンタルチア教会を前に、殉難をあらわす聖杯のシンボルを目にする。この土地の人々が受けてきた、耐え抜いてきた苦悩や災難を思う。私事の悩みが小事に思える。
農家の家の跡、復元などを見つつ、土地の特性に合わせて工夫された生活様式を学ぶ。雪を貯めるシステムなども面白い。
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歩き続け、登り続け、大聖堂手前の高台の道の途中にあるカフェで立ち止まる。
昼もとうに過ぎていた。
喉がとても乾いていたため、カフェアメリカーノを頼むと、バシリーカ州産のクッキーを一緒に出してくれた。とても美味しい。
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1時間ほど座りながら景色を眺め、考え事をする。
続きの坂道を登ると、大聖堂があり、その眼下のもう1つの集落が見渡せる高台に着く。
日も上りきり15時くらいにはなっていたかと思うが、高台広場にあるベンチで、鞄を枕に横になる。
とても心地よい。
太陽と、風と、温湿度が最高のバランスでミックスされた感じ。
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その後は当てもなく歩き続け、日も傾き、そろそろ帰ろうかという気持ちがよぎった時に、ダリの作品である彫刻が見えた。
どうやら、サルバドール・ダリの美術館が岩窟住居の跡地に整備されているようだ。
ダリの天邪鬼というべきか、すべてに対する反骨主義の徹底した作品コンセプトに感銘を受ける。
時間の速度は個人の感情や心の景色、触感、聴感、嗅感、立場であったり、周りの環境であったり、すべてに触発されて、まったくもって安定したものではない。不合理、不条理とい��言葉を久しぶりに目にした気がする。合理的なものと非合理的なものの狭間。不条理は時に災難もあれば、圧倒的な美を生み出す時もある。それを取り持つ合理的な知性といったところであろうか。
また、女性の秘める美しさに対する彫刻表現にも驚嘆した。シュールレアリズムの作家についてはほかにあまり知らないが、コンセプトはとても強い不条理に対するメッセージやイデオロギーを持ち合わせているが、その反面コンセプトと作品自体の一貫性はとても強く感じると思う。これほど説明を聞いて、なるほど、と感じる芸術作品はあまりないと思った。
だいぶ遠くに来ていたのか、帰路がかなり長く感じる。
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旧市街を出ると、新市街との境界沿いの細長い広場に出る。そこを東の端にある宿まで、歩いていく。
途中で突然名前を呼ばれ、誰かと思い振り向いたら、今朝のバーリから来た法律を学ぶ学生カップルであった。どうやら彼らは30分後のバスでバーリへ帰るらしい。一日中誰とも話していなかったからか、珍しくとても話したい気分ではあったが、彼らのバスの時間もあるため、惜しみつつお別れをした。
宿に荷物を置き、寒さに耐えられる服を着込み、夜の街へ再び出かける。
ラビオリを食べる。
量は少ないが、黒トリュフの香りがとてもよい。
旧市街へ再び行き、今朝とは違うルートで歩く。
満月である。
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ふと、隙間風を感じる。
崖沿いの厚さのある石積みの手摺に腰をかけ、崖に足を投げる。
12/24
08:35 Matera → 12:20 Naples
朝起きて、30分程度歩く。
バスを待つ。
ナポリへ向かう。
マテーラは高木と呼べる木々がとても少なく、そのために岩窟住居が発展していったのかもしれないが、西へ向かうにつれて、風景が変化し、木々が増えていく。
太陽の照らす芝に寝そべる牛を見る。
ナポリに昼に到着する。
いつものようにインフォメーションセンターで地図を貰うべく、探すが一向に見つからない。
昼も食べてから宿に行こうかと思っていたが、仕方なく、歩き始める。
街が汚い。
パリ北駅などの治安の悪さと同質の雰囲気を感じる。
足早に歩き続ける。
いつのまにか道幅がとても狭い旧市街へ。
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歩いていると、上の方から名前を呼ぶ声が聞こえる。ユースホステルを利用して、こんなことは今までなかったから正直驚いた。
むしろ、呼んでもらえなかったら入口を見つけられなかった、と後から思う。
STAY@ Naples “Giovanni's Home”
3階に上がり、ジョバンニの家に入る。
70過ぎの小太りな優しいお爺さんといった印象だ。
奥の方で、1人の青年が手作りパスタを、丁寧にトレイの上に並べている。
ジョバンニ曰く、今からこのパスタを茹でて、宿泊している皆んなとランチを食べるという。
もちろんお前も食べるよなと言われ、驚く。
状況が読めない。
奥の青年は誰なのか。
ジョバンニは荷物をとにかくロビーにおいて、キッチンに来いと言う。
バシリーカ州特有の、とてもシンプルなパスタを作ると言う。Stracinati con i peperoni cruchi e mollica と言うパスタのようだ。ドライチリペッパーと乾燥したパン屑を使うガーリックとオリーブオイルの効いた素材の味がわかるパスタ。
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その後、シンガポール人の2人が宿に帰ってきて、さっきパスタを並べていた青年(ブラジル人のジョアオと言うらしい。彼も私の2時間ほど前に到着し、突然パスタ作りを手伝わされたと言う)と、ジョバンニと私のその日宿にいたメンバー全員で出来上がったパスタを頂く。
とても美味しい。
話が弾み、全員の距離がぐっと縮まる。
今日がクリスマスイブであることを忘れていた。
その後、ジョアオとともに、ジョバンニからのナポリレクチャー(とても歴史に対しても話が深く、地理学的な観点から、火山の種類、彫刻芸術、現代建築家の作ったメトロの駅まで話が及ぶが、とにかく話が長い。)を聞く。
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16時前になっていた。
ジョアオとともに街に出る。
ジョバンニお勧めの教会や円形競技場が住宅に変化したところ、地下通路などを探してみるが、どこもクリスマスイブのため閉まっていた。
途中雨が降ってきた。
やたらとジョアオはセルフィを撮っている。
彼からすれば私はやたらと路地を撮っている、と思っただろうか。
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旧市街はどこも開いていないから、海でも見に行こうと言うことになり、海岸沿いの城や広場などを眺めつつ歩く。
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彼とビールを片手に海沿いで飲む。
In to the wildの映画の話で盛り上がる。
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さておき、彼はなんと19歳。私より10歳も若い。political science の中のstates sienceという、地方行政のマネジメント、デモクラシー、それらの歴史を学んでいるという。特に中世が好きらしい。シンガポール人にあとでブラジルの政治は酷いよねとからかわれていたが、そんな事はない、夢のある学問だと思う。
12/25
8:30 Naples → 10:00 Amalfi
アマルフィ着。
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クリスマスなのでナポリにいても仕方がないと思いアマルフィに来たが、ここもほぼ閉まっている。
一件だけ海岸沿いに開店しているカフェを見つける。
とりあえずエスプレッソ。
海と崖と集落の奏でる光景が素晴らしい。
1時間ほど座りながら景色を眺める。
ガラガラだった周りの席も、客で賑わいを見せる。そろそろかと思い、立ち上がる。
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クリスマスで唯一開いているのは教会。アラブシシリア様式の縞模様の入った列柱廊のある大聖堂に繋がる大階段を登る。
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天気が良い。
太陽がクリスマスを祝福している。
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教会に入るとミサの最中であった。
アルベロベッロの経験でクリスマスミサの流れや、お祈りの仕方なども分かっていたので、参加する事にした。
特に隣の人々と握手をして、隣人を愛し助け合うことを確認することがとても良い。
太陽の差し込む礼拝堂と、とても美しい歌声に、本当に自分でも驚いたが、涙が止まらなかった。
ハンカチで顔をふく姿が周りの人々には不思議だったかも知れないが、感動したのだから仕方がない。
ミサの後、街に出た。
観光客の姿が朝よりも増えている。朝閉まっていた店もぽつぽつと開いていた。2割弱の開店率といったところか。
中央通りを登っていくと紙に関する美術館があるとの情報を得たので登っていくが、見当たらず。当然のように閉まっていて見つけられなかっただけなのか。
その代わり、その道を登り続け、途中から獣道に変わる。
渓谷が深くなってゆく。
地元の人がBBQをした跡などがあったが、基本山道で枝を避けながら進んでいく。
渓谷の反対側は陽があたり、レモン畑が傾斜地に並んでいる。
どうにか反対側へ行く事はできないかと思い、渡れる橋を探すが見当たらない。
まっすぐ行くと、唯一昔の水道橋のような廃墟が現る。入口手前まで歩いて行ったが、昼にも関わらず、先が見えない暗闇。
仕方なく引き返す事にする。
アマルフィの街は、渓谷の中央に車が一台通れるくらいの幅の一本の道が海岸まで貫通していて、基本的にその道沿いに商店や薬局、クリニック、教会、ホテルなど小さいながらに隣りあいながら並んでいる印象だ。その道から一つ脇に入ると渓谷の両側に登るような感じで入り組んだ階段状の通路が張り巡らされている。通路の幅は人1人が歩ける程度なので80センチくらいだろうか、すれ違うのは肩を傾けなければいけない。とにかくこの通路が面白い。階段を登っては等高線に並行に歩き、また登る、を繰り返す。陽が当たるところもあれば、洞窟状に家々の下をくぐり抜けるものもある。
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どのくらい登っただろうか、階段の両脇は家や高い壁で囲われているので、自分のいる場所を把握するのが難しい。
谷側の廃墟の壁の柵状の開口部から、明るく漏れる光があった。
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覗くと廃墟の中には陽が溢れんばかりに入り込み、青々と茂る草の上に寝そべる一匹の猫がいた。最初警戒していたが、やがて堂々と再び寝そべりこちらを眺める。こちらも優しく見つめ返す。
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猫を側に、頭をあげて目の前を見ると、廃墟の谷側の壁は崩れほぼ在らず、アマルフィ全体の街並みが見渡せた。
先程のクリスマスミサを受けた教会やその塔も見える。渓谷の反対側の家々もよく見渡せる。
足元にはレモン畑も広がっている。
そこからは素晴らしい景色が続いていて、等高線状に歩みを進める。
テラスがあり、そこの手摺に腰掛ける。
誰も来ない。
洗濯物を干しているおばさんが家の中の誰かと話をしている。
犬が吠える。
猫が足元のレモン畑をこっそりと通り抜ける。
波の音がざわざわと耳に届く。
すべての音が陽の光と調和しているように感じる。
傾斜地の家々が開けている狭い通路をそれらの音が風に乗って通り抜けてくるかのような感触。
もちろん陽で暖められた風の音だから、気温は寒いが暖かく感じる。
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夕日が沈み、中央広場に行く。
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16:45 Amalfi → 18:15 Naples
待ち合わせ時間の15分前に運転手が来ていた。
礼をいい、ナポリまで乗せてもらう。
途中アマルフィ側では沈んでいたように見えた太陽が山を越えると、まだそこにいて、ナポリの街を紅く照らしていた。
ヴェスーヴィオ火山の稜線が綺麗に浮かび上がっていた。
尾根と谷側をぐるぐると回りながら降りていくので、同じ景色を微妙な高さの違いと、刻一刻と太陽が下がっていく時の変化を感じながら降りるのが面白い。
STAY@ Naples “Giovanni's Home”
ナポリの中央駅で降ろしてもらい、宿まで30分ほど歩いて帰ると、パスタ(ペンネアラビアータ)を全員分の量をまとめて料理している最中だった。
宿泊する人が昨日の3人から6人に増えている。
全員男。
バーリで農業を学ぶイラン人、アメリカ人、耳の聞こえないフィンランド人だった。
夕食は筆談で盛り上がり、さすがアメリカ人はデリカシーないこともずばすば聞くんだなと、思いながらも夜は更けた。
普段はお酒が禁止なホステルだが、今日はクリスマスだからと、解禁してみんなで瓶ビールを開けた。
即席の旅のチームを結成し、明日のポンペイ日帰り計画の予定を立てている。どうやらみんなは明日7:30の列車に乗るらしい。早起きなのにこの時間まで起きていて大丈夫か。
私はすでに別行程で予約を取っていたので、フィンランド人と筆談を続ける。
12/26
朝10:20のバスだったので、8時頃には宿を出て、ナポリの街を散策することにした。
朝起きた時には即席チームメンバーの姿はなかったので、無事起きれたのであろう。
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8時半からカペラ・サンセベッロがオープンするということなので、行ってみた。
噂には聞いていたが、とても地味な路地裏にチケット売り場と入口がある。
フリーメイソンの集会所としての教会でもあったらしい。
路地裏に着くとまだ10分くらい時間があったので、周辺をふらついていると、お馴染みのペペロンキーホルダーを大量に持ったおじいさんがいたので、五つお土産用に購入することにした。
ペペロン=チリペッパーはナポリの特産品であることを、ここに来て初めて知った。
カペラ・サンセベッロに入ると、教会としてはかなり小振りな側廊もなく、長方形の中廊のみがある小さな空間であったが、中は至極の彫刻であふれていた。時間を忘れて作品の前に立ち尽くす。
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他にナポリでは古代地下通路なども見てみたかったが、時間が無いため諦める。
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Half day Pompeii tour from 10:20
ポンペイ着。
ギリシャ人達がクリスチャンニズム以前に神達を祀っていた神殿がバシリカといい、それがローマ人によって教会として使われるようになったという話を聞く。
他にも2度のヴェスーヴィオ火山の噴火の話、2万人いた都市の4千人しか遺体が見つかっていない話、都市の1/3は未だ地中に眠っていること、ローマ人の円形劇場の一日の使い方、パン窯がシェルター兼保存食置場になっていたこと、ローマ人は朝7時から13時までの6時間しか働かず、その中に1時間の昼食時間が含まれており、ロバの馬車で渋滞を作りながら、商店のカウンターに並んだ話、商店の昼食のテイクアウト皿はパンで出来ていて、それを奴隷達に食べ終わった後に与えていてそれがピザになったのでは説の話、仕事が終わるとスパに並び、風呂に入り家に帰っていた話、風呂場のトイレのお尻を拭くスポンジは一つしかなく、遅くいくと他の人が使ったやつで尻を拭かなければいけないことからsomeone’s spongeということわざができた話、下水処理設備が無かったため、道路の車道を垂れ流しで、膝高さ程度の歩道が整備されて道を渡るときは飛び石が使われていた話、その飛び石はロバ二匹に馬車を引かせていて120センチの車輪幅でそれが今でもヨーロッパの鉄道規格として使われている話、娼婦館のレッドライトの起源の話など、いろいろ驚くべき話を英語フランス語スペイン語を使い分けるガイドから聞き、ポンペイで半日過ごす。
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フロリダに家族を置いて一人旅をしているお爺ちゃんのジョンと仲良くなる。
ジョンが奥さんにハート型のお土産を買っている。
ナポリに到着。
PLPで同僚のマリアと15時に海岸沿いのピザ屋で待ち合わせ。
時間通りに着くが、一向に現れず。
30分ほど待ち、仕方がないので道行く子供連れのピンク色のダウンジャケットを着たお母さんに、iPhoneのネットワークをシェアしてもらい、WhatsAppでマリアに連絡する。
どうやら車で来ており、駐車場が激混みで見つからないとのこと。
マリア到着。
まだ駐車場が見つからないらしい。
車に移動。
マリアの妹のリザが助手席に座っている。
リザめちゃくちゃ美人。
2人ともナポリ生まれで、クリスマスに合わせ実家に帰省しているとのこと。
リザはマドリードでエクスペディアでイタリア担当の企画マネジメントをしているらしい。
ファッションも好きで、将来は自主ブランドを立ち上げたいらしい。確かにオシャレ。
車を止めて、ピザ屋を探す。
当初の行こうとしていた店はすでにいっぱい。
ウェイティングリストも一杯で名前をかけないほどの人気店。
仕方なく、3人で海沿いを歩く。
雲ひとつない快晴の天気だ。
時間は4時を回り、太陽はすでに夕日と呼べるほど空を紅く染めている。
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リザが足を止め、店のウェイターに声をかける。
他にも列を作り並んでいる客がいるにも関わらず、即座にテラスの座席に案内してくれる。
これが美人の力か。
男一人旅にはありえない光景を目の当たりにする。
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マリアが赤ワイン大好きなので、MOIO57(モイオ チンクエットセッタ)という赤をボトルで頼む。
運転大丈夫?と聞きつつ、イタリアはいいのよ、と自慢気。
ダメだろ、と思いつつ聞き流す。
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ここまでパスタしか食べておらず(ラビオリ、ストラッシナーティ、パスタグリル、タッリアテッレ、ペンネアラビアータ、トルティーニといった感じ)、ようやくピザを食べることができた。
1人ひとつづつ注文し、みんなで分ける。
3時に遅い昼飯をブランチ的に食べようと言っていたのが、もはや夜飯も兼ねることに。
定番のマルゲリータは最高。
シシリアーナピザは旧シチリア王国の南イタリアならではのピザで、マルゲリータと同じトマトベースだが、茄子や諸々地域の野菜が使われていて美味。
そしてホワイトベースのサルシッチャ&フリィアリエーリ パンナ プロスキュート エ マイスは、リザの好物らしく、スパイシーなソーセージと青物の葉とチーズが相まってとても美味しい。
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そのあと店を変えて、リモンチェッロを3つ食後酒としてみんなで飲んで、お別れ。
バスの出発時刻に遅れそうで走ることになったが、なんとか間に合いローマ行きのバスに乗る。
21:00 Naples → 23:30 Rome
ローマ23:30着。
バスターミナルなのでタクシーなども見当たらず、ローカルバスもこの時間だけに止まっている。宿までの地図も分からず、仕方なしにターミナルの誘導員の黄色いジャケットを着たおじさんに、タクシー乗り場知らないかと聞いてみると、まってろといい、バスターミナル外の柵側の暗闇にひたすら誰かの名前を呼び続ける。
そういうシステムか、と思いつつ、暗闇から現れたタクシーもどき運ちゃんらしき人を紹介される。
まぁ他に手段がないから仕方ないと思い、値段と行き先を交渉する。一応値切り交渉は成功。
英語があまり喋れないらしく、なぜかフランス語で道中会話。ローマの治安情報や、ローカルバスの乗り方や、オススメのレストランなどを聞く。
宿に到着。
STAY@ Rome “The Yellow”
イエローホステルは受付ロビーと宿泊部屋、バー、などが普通の二車線道路を向かい側に挟んで、道路やテラス席などを取り囲むように構成されている。
先程まで暗く治安が悪そうに感じたローマの街がこの道の中央の一画だけ明るくかつWi-fiも飛び、人で溢れ、とても安全に感じた。
6人部屋の二段ベットの下に荷物を置き、バーで1人IPAを飲みながら、明日の飛行機までの時間とルートを考える。
プライベートな悩みも相まってすこし孤独モード。
周りはパーティらしく、おそらく知らない人同士が出会い話し盛り上がっているが、混ざる気になれず、地図を眺める。
1時半に就寝。
12/27 
8時前にチェックアウトをし、荷物を預け街に出る。
道端の地元民が行きそうなカフェでエスプレッソを飲む。
パンテオンに向かう。
30分程度の道のりを50分程度かけて歩く。
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途中トレビの泉をたまたま通り過ぎたが、朝にもかかわらず、観光客が中央でセルフィーを撮らんと押し合いしている。
昔は泉の水の循環システムってどうしていたんだろうか、などぶつぶつ考えながら通り過ぎる。
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パンテオン着。
9時開館と書いてあったが、すでに開いている。
人少なめ。
1時間以上滞在する。
太陽の動きを見る。
想像していたよりスケールがとても大きく感じた。
重機ない時代にどうやって施工したんだろうか。
そして幾何学の床モチーフ含め、厳格な構成美を体感する。
あとで帰り道にもまた来よう、陽の光がどう動いているのか確かめようと思い、パンテオンを出る。
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人通りの少ない裏路地やノヴァ広場、駐車場などを抜けて、エンジェル橋を渡りながらバチカンに到着。
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サン・ピエトロ広場は確かに大きいが思っていたよりもヒューマンスケールよりかな、と感じつつ列に並ぶ。
途中のインド人らしき自称ガイドが、列に並ぶと数時間入れないけど���ガイドツアーチケット(75€)買えば並ばずに入れるよ、と言っていて胡散臭いなと思っていたが、案の定、何のことない30分ほど並べばセキュリティゲートに着き、無料で入れるではないか。
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並んでいる途中、そのチケットを買ったであろう人が列を抜かして行ったが、セキュリティゲートの手前で止められて結局並ばされていた。詐欺なのか。騙されなくて良かった&よく教皇のいるバチカンの目の前で詐欺ができるもんだ、と感心しながら並ぶ。
広場と反対に教会の建物自体は若干のオーバースケール感を感じた。ただ中の光の取り入れ方は計算され尽くしているように感じ、来場者が神秘性を感じるように光の移動と芸術品の配置や側廊のリズムなどが決められているように感じた。
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ただアマルフィで感じたような涙は出なかった。権力的な威圧感も同時に感じたからだろうか。
建築が言葉なくも語りかける空間の性格みたいなものに、この旅の中で敏感になっているように感じた。
クーポラに登る。
ひたすら螺旋階段をあがり、最上部に到着。サン・ピエトロ広場だけでなく、ローマ全体が見渡せる。素晴らしい都市軸。
すべての道はローマに通ずという言葉があるけど、正確にはローマのどこを目指しているのだろう、バチカンか、でもそうも見えなかったなぁ、などとぶつぶつ言いながら螺旋階段を降りる。
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帰り道パンテオンに立ち寄る。
正午過ぎの光。
奥まで入り込んでいたが、不思議なことに、朝よりも全体が暗く感じた。
なぜだろうか。
コントラストを強く表現して、神秘性を高める効果を狙っているのだろうか。
ちなみに中央の屋根のガラスはもともとガラスだったのだろうか、勉強不足だからあとで調べよう、などと思いつつ宿へ荷物を取りに帰る。
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昼食をとりつつ、空港までのバスを待つ。ローマはFCO空港まで1時間ほどかかる。
遠いいが、国際線なので早めに到着。
18:00 Rome FCO → 20:40 Croatia ZAG
STAY@ Zagreb “Hotel Central”
クロアチアの首都ザグレブに着く。
22時前にホテルに着き、MJS同期2人と待ち合わせ。
3人で夜の広場を巡る。
三ヶ月振りの再会で、近況を話し合う。
やはり楽しい。
12/28 Zagreb
朝からマーケットや旧市街を巡る。チェッダーチーズというヨーグルトを固めたようなチーズが有名らしく、同じ商品を10人くらいのお爺さんお婆さんがそれぞれ違う屋台を出して、売っている。買う人はどこを選べばいいのやら。
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クロアチアの伝統料理を食す。サルマという名のロールキャベツうまし。
チーズと薄肉ポークのハムカツにチェッダーチーズをすこし付けて食べる料理もうまし。まさにハムカツだよね、といって盛り上がる。
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午後4時のバスでプリトヴィッツェ国立公園へ向かう。
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12/29 Plitvice Lake,  Dubrovnik
朝8時15分に宿の主人に車で国立公園第二入口まで送ってもらう。
5時間歩く。
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虹鱒の唐揚げが有名らしいが、食べることができなかった。
ザグレブ経由で、ドブロブニクへ向かう。
ドブロブニクの宿23時着。
夜の城壁で囲われた街を散策。
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12/30 
朝、日の出を海岸沿いから眺める。
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カフェで朝食を食べ、城壁を巡る。
一周するのに約2時間。天然の要塞と人工の石積みと自然の美しさを兼ね備える素晴らしい都市である。
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その後ロープウェイで山頂まで登り全体を見渡す。
クロアチアの国旗が快晴の空をはためいている。
旅もここまで。
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ドブロブニク特有の海鮮料理をみんなで食し、お別れ。
次会うのは9ヶ月後になるか。
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後ろ髪引かれる思いの中、空港へ向かう。
ロンドンへ向かう。
16:30 DBV → 20:45 LHR
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ama-gaeru · 6 years
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錯視上ブルーエンド⑤
5話:8月15日(午前10時32):団地x兄妹
 ひび割れだらけの黒ずんだ団地の階段を駆け足で上る。
 団地の中はいつも洞窟みたいに湿ってて、外よりも少しだけ空気が冷たい。
 踊り場には奥様連中が溜まっていて、団地の住人特有の言葉で今年の団地内夏祭りの相談をしていた。
 俺ん家(ち)含めて、この団地の住人の大半はブラジルから関西に移住してきた人々の末裔だ。末裔っつーと「織田信長の末裔」とか「西郷隆盛の末裔」みたいに何百年も前から続いてるような大げさな感じがすっけど、うちの場合は爺ちゃんの代からの移住だから、俺で3代めだ。なんか、3代めっていうと酒造の若旦那とか、料亭の若旦那とかっぽくなる気がする。関係ねーけど。
 爺ちゃんは長年関西の自動車工場で働き、親父がガキの頃に新しい仕事を求めて千葉のこの団地に越してきた。他の住人もそんな感じ。
 だからこの団地に住んでいる一定の年齢より上の人たちの言葉はちょっとばかし独特だ。関西の訛りがあって、時々ブラジルの公用語であるポルトガル語が混ざってる。
 顔見知りのおばさんが俺に「あら、おかえりさん。随分早いねぇ」と声をかけてきたので、「今日、半ドンなんで」と嘘をついて軽く頭を下げる。サボってんのはバレバレだろうけど、それ以上何か言われることはない。
 おばさんは奥様連中のお喋りに戻っていった。相手を気にはかけるけど、ベタベタはしねぇ距離感、俺は好きだね。
 「エステアーニョ(今年)のお祭りはインポッスィボ(無理やわ)。人が少なすぎやん。クリオンセス(子供ら)には可哀想やけど、規模を小そうして、みんなで山車(だし)でも引くんでええやろ。まだ共同倉庫にあるんやろ。飾りだけちょっと変えて、風船つければなんとかなるわぁ」とかなんとか。
 「お祭りよりもホームレスやんか、問題は。1階の空き部屋、誰かが勝手に住み着いてたらし���んやわ。うちの子が夜中に誰かがベランダから中に入ってくのを見たって。次にきたらポリィサ(警察)呼ばなきゃ。まぁ、役に立つかどうかで言うと立たんやろうけども、おらんよりマシやし、なんもせんよりもマシやろ? 本当に人が減っちゃってからトラブルばっかりで困ったもんやわ」とかなんとか。
 「男の人たちに見回りしてもらえんのかしら? あんたんとこの旦那さん、元ラグビー部やろ? それから管理人さんの息子さんもおっきな体しとるから、夜中にちょっと見回りしてもろたら、変なのも怖がって出て来ななるんちゃう?」とかなんとか。奥様連中は止まることなく喋り続ける。
 数年前まではこの団地にはもっと人がいて、団地内の公園でやる夏祭りはそりゃど派手だった。
 次々と焼かれる謎の肉。開けられる謎の酒。踊りまくる謎のおっさんとおばさん。どっからか出てきた謎のバルーンアーティストと謎の一輪車乗り。自転車で引っ張るタイプの異国風の山車。なんだかよくわかんねーけどとにかく楽しかった。山車に乗ってたのが「とっとこ名探偵ピカえもんマウス」としか形容しようがない紙人形だったのも、まぁ、それはそれで味があったんじゃねぇかと思う。
 団地の外の子供達とその親も遊びにきたりして、団地の中と外とを繋ぐぎこちないなりに平和な交流もあるにはあったんだ。
 それが今は静かなもんだ。
 何年か前にリーマンショックがなんたらかんたらって騒ぎになってたけど、親父が言うにはその影響がもろに出たってことらしい。
 アメリカのバカがやったバカなことのダメージが、巡り巡って日本の冷凍食品会社の脇腹をぶん殴って、労働者を口からゲロみたいに吐き出させたってこと。
 ほとんどの家族が「やってけねぇよ!」っつてブラジルに行っちまった。俺の団地のダチの大半もだ。
 この団地もシャッター通りと同じ運命をたどるんだろう。
 湿ったコンクリの臭いは、土地が死んでく臭いなんだ。
 2階と3階の間の踊り場には樹理(じゅり)と実華流(みげる)の神原(かんばら)兄妹がいて、子供用ビニールプールの側に「風呂のやつじゃん」としかいいようのねぇプラスチックの椅子を置いて、それに腰掛けていた。
 プールの中には氷とスイカとタマリンドジュースの缶が浮いていて、樹理はビーサンを履いたままその中に足を突っ込んでいる。
 樹理はヒョウ柄のタンクトップとショッキングピンクのミニスカート。もちろん、ヒョウ柄というのは、ヒョウそのものの姿が描かれているというやつだ。イケてんぜ。
 実華流はシマウマ柄のタンクトップと迷彩柄のパンツ。もちろん、シマウマ柄というのは、シマウマそのものの姿が描かれているというやつだ。イケてんぜ。
 2人とも玩具のビーズで作ったブレスレットやネックレスをつけて、メッシュをいれた髪にラメったヘアピンを刺しまくっている。
 まさにヤンキーとファンシーの複合体。
 相変わらず超(スペリオール)オシャレで、超(アンキャニー)センスいい。こいつらの神がかったファッションセンスには脱帽するしかねぇ。あと2年くらいすれば、世界一ガルフィーとヴェルサーチの似合う兄妹になるんじゃねぇかと思う。
「お、コータ君じゃん。何、サボり?」と樹理が言う。
 顔の右半分と左半分が別人だ。右はアイドルみたいな美少女で、左は高校球児。どちらも樹理の本当の顔じゃない。
「相変わらず怖ぇメイクしてんな、お前」
 最近いつもこんな顔してるから、元々の樹理の顔がどんなだったか忘れつつある。
「Tik Tok(ティックトック)で受けるんだよー。私(アッシ)のメイクテク、プロ級だからサー」
「暇なことしてねぇで中学(ガッコ)いけよな。今日、中学も登校日だろ? おめぇらこそサボりじゃねぇか」
「こんな日に学校とかねぇわー。俺、高校(コーコー)いかねーし。中学とか意味ねぇっしょ」
 実華流はだるそうに言う。またピアスが増えてる。
「高校は出とけよ。お袋さん泣くぞ。お前、勉強好きだろ。うちに遊びに来るたびに俺の宿題とか、数学のプリントとか勝手に解いてたじゃねぇか」
「あんなのただの暇つぶしのパズルだよ。ひーまーつーぶーしー。そんなのに学費払うのバカじゃん。それに中卒で働いた方が俺みたいなのにはお得なの。早めに金稼げるしさ。俺、工場に就職決まってっし。非正規(ヒセーキ)だけど月に16万だって。やばくね? 16万だぜ、16万。お年玉16年分だぜ? マジで富豪じゃん、俺!」
「はーい! 私ね、私ね、グリッターインジェクションズのアイシャドウ欲しい!」
「おうおう、お兄(に)ぃに任せときな!」
「お兄ぃ大好きー!」
「知ってるぅー!」
 2人は両手で指ハートを作って「イェーイ!」と叫んだ後、俺にも指ハートを向け「コータ君も大好きだぜぃ! イェーイ!」と叫ぶ。
 俺はビニールプールに手を突っ込んで「知ってるぅ」と怠く応えて社交辞令の指ハートを向けた。
 好きじゃない相手になら、いくらでもできるんだけどな。
 キャッキャキャッキャと騒ぎ続ける樹理と実華流を置いて階段を上がり、4階にある自分の家の鍵を開けた。 
 家には誰もいない。夏休みが終わるまで家にいるのは俺だけだ。最高の夏isスーパーカミン。
 爺さんの姉、つまり俺にとっては大叔母さん? にあたる人が観光客の乗った車に跳ねられて体中の折ったとかで、爺さんと母さんは大叔母さんの世話をしにブラジルに行ってる。大叔母さんはお年寄りだし、独身主義で家族がいないから身の回りの世話をしてやれる身内がいないと困るだろうって。
 俺も一緒に来るようにかなりしつこく言われたけど、そうやって親戚の事故の見舞いを装ってブラジルに連れて行かれて、だまし討ちみたいな形でその後もブラジルに住み続けることになった団地のダチがいたので、俺は絶対に首を縦にふらなかった。
 結局、大叔母さんは本当に怪我をしていたから、俺の心配はただの杞憂だったわけだけどな。2人が向こうについた日に包帯とギブスだらけの大叔母さんの写メが送られてきた。
 もしも叔母さんが札束で一杯になった風呂に入っていなくて、カニエ・ウエストみたいなサングラスをかけていなくて、こちらに向けてダブルピースとかしていなければ、もう少し神妙な気持ちになれたんじゃねぇかと思う。たまたま自分を跳ね飛ばした車の持ち主が、アラブの石油王である可能性って、一体何パーセントなんだろう。
 親父は夏休みが始まる前から、東北に新しくできたマルハラ食品の新工場の立ち上げ支援のための出張に行っていて、こっちに帰ってくるのは冬休みの終わり頃の予定だ。
 爺さんと母さんがブラジルに行ったこと、俺だけ団地に残っていることを電話で告げると、親父は「火の元栓と、戸締りにだけは気をつけろよ。それから女の子を連れ込むのはいいとして、母さんにはバレるなよ」と、「俺にはお前のやることは全てお見通しだ」風の声で言った。連れ込むような相手なんかいねぇし、連れ込みたいのは女の子じゃねぇし。
 歩きながら服を脱いで洗濯機に投げ込み、水のままのシャワーを浴びて汗を流し、タンスから引っ張り出した学校指定の水着を履く。
 学校の指定水着で海ってどうなんだ? って思うけど、これしか持ってねぇんだからしょうがねぇ。
 水着の上からジーンズを履いて、シャツを着て、気に入ってる青いアロハを羽織って、少し悩んでからネックレスを掛け、財布と鍵をポケットに突っ込んで玄関を後にした。スマホはいーや。濡れたら嫌だし。
 踊り場に戻ると樹理と実華流が手すりに体を預けて外を見ていた。樹理はおもちゃの双眼鏡を覗き込んでいる。
「あそこのクールビューティって、コータ君の友達でしょ?」
 樹理の指差す先には、団地の入り口の花壇の縁に腰掛けている先輩の姿があった。ほんっと、喋んねぇで黙ってると別人だな。
「あぁ。陸上部の先輩。前にテレビとか出てた人」
「ウッワー。テレビより全然美形じゃん。何、あの足! 長っ! ありえない! 何頭身だよ! 私、リアル8頭身、初めてみたよ! 気だるげな雰囲気超エローい。あ、汗拭いた。エローい!」
「団地から先んとこの人?」
 実華流の問いに俺が「そー」と答えると樹理は「そっかー」と言いながら双眼鏡を離した。樹理の目からスーッと興味が消えていくのがわかる。……。
「痛いっ! なんで髪引っ張んの!」
 さぁ。なんでだろうな。
「プールかたしとけよ。邪魔だからな」
 後付けで理由をでっち上げる。
「あ。コータ君、オシャレしてじゃん。ネックレスつけてるー。イケメンと歩くから気合いいれてんの?」と樹理がからかってくる。ウッゼ!
「うっせぇな、バァカ、オシャレじゃねぇよ、タコが」
「コータ君も、好きな人は好きな顔だと思うぜぇい。ほら、意外とウツボとかサメとか好きな女子って一定数いるから、そこ狙ってこうぜ。レッツ隙間産業!」
「うっせぇ! 捻り潰すぞ!」
「キャァー! コータ君が怒ったぁー! こわぁーい!」
 神原兄妹は南米に生息してる派手な色の小型の猿みてーな笑い声をあげる。ウッッッゼェ!
 2人のキャハハハキッキ笑いを背中で聞きながら、俺は階段を駆け下りた。
 団地の入り口に戻ると先輩が「お、きたきた。お疲れぇ」と手を振ってきた。
 俺がいない間に冷静さを取り戻したらしい。いつもの先輩だ。
「相変わらず西郷どんの私服のセンスはチンピラリティが高いな! なんだその骸骨柄は! 骸骨とコウモリと桜って! どういうアロハだ!」
「いーっしょ、別に」
 超(インクレディブル)カッケーのに。んでわかんねぇんだろ。
「身軽だねぇ? 水着とタオルは?」
「水着は中に着てるんで。暑いんだし、歩いてりゃ体なんか乾くでしょ」
「そりゃそうか。あ、そのネックレスはいいな。お前に似合ってるよ」
 先輩は俺のネックレスを指で摘む。顔が近づく。
「小さいドリームキャッチャーだな。インディアンのお守りだよな? 寝てる間にこの網の部分で悪夢を捕まえるっていうやつ」
 先輩の形のいい爪の先がドリームキャッチャーの網を突く。網の先端についた鳥の羽とトルコ石が揺れる。
「ふーん」
「ふーんって、知らんでつけてたのか?」
「トルコ石の青いのが気に入ってるだけなんで。由来なんかどうでも」
「あぁ。トルコ石ね。そういやお前の私物、じわじわ青いの増えてるよな? 前から青、好きだったっけ?」
「なンスか。悪いっすか」
 先輩は歯を見せて笑う。
「いーや。お前は明るいブルーがよく似合うよ」
「うっす」
 顔を太陽に向ける。顔が赤いのは太陽のせいだということにする。
 そのまままた坂道を登り、団地から先の住宅街に入る。
 ここにくると歩道は一気に広くなり、足の下はコンクリからパステルカラーのタイルに変わり、ボロい街灯は全て新しい物に変わる。
 全ての道が京都みたいに碁盤の目に走り出す。どの道も、どこまでも見通せる。地図だけでこの地区をみたら、さぞ立派でオシャレな場所に見えるんだろう。地図だけで見るのならな。
 この地区にある建物のほとんどが公営住宅だ。びっくりするぐらい人は住んでねぇ。あとはいわゆる「箱物」。この一帯だけ国営のなんたらかんたら支援センターやら、なんたらかんたら学習センターやらが乱立してる。
 そいつらは1つの例外もなく、ぜってーにいらねぇだろって広さの自転車置き場を備えていて、それらの自転車置き場には1つの例外もなく「希望」とか「光」とか「未来」とかいう凡なタイトルの変な銅像が備え付けられてる。それとツツジの花壇も。
 時々みかける一軒家は、どれも屋根と壁が錆だらけのトタン��できていた。窓ガラスには内側からベニヤが貼り付けられていて、人が住んでるのかどうか判別すらできねぇ。誰かが捨てたゴミが屋根の上に溜まっている。そういうのを見るたびに、胸が締め付けられる。
 不必要に広い歩道から伸びた細い路地からは、生ゴミとションベンの混ざった臭いが漂ってきた。路地には誰かが吐いたゲロや、ぶちまけられた生ゴミや、猫の死体が広がっていて、鴉のいい餌場になっていた。
 学校でも駅でも、最初に落書きされる場所ってぇのがある。
 体育館の裏側の壁とか、男子トイレの奥の個室とか。他の場所となんら変わりないはずなのに、ちょっと日陰になってるからとか、ちょっとだけ目につきにくいとか、そんな理由で悪意を持った落書きが集まってくる。最初は1つだけ。それが2つ、3つと増えてゆき、気がつけば『何を書いてもいい場所』になっていく。
 この住宅地はいわゆるそういう場所だ。それもずっとずっと昔から。
 今はとりあえず真新しいペンキを塗って、落書きを見えなくしたところ。だけど、それも長くは持たない。そんな気がする。
「俺ん家、超ボロいから西郷どんはびっくりすると思うぜー」
「そうっスか」
「西郷どんの憧れの先輩像が崩れちまうなぁー」
「憧れてねぇっスから」
 またしてもビシッと先輩は俺を両手で指差し、体をぐーんと横に傾ける例のポーズをした。
「素直になれよ! お前が俺を大好きなのはお見通しなんだぜ!」
 胃が痛い。
「……いや、そこまで怒ることはないんじゃないか。顔が怖いぞ、西郷どん」
「怒ってはねぇッス」
「人食いザメみたいなお顔で怒ってねぇって言われてもなぁ」
 先輩は笑い、背伸びをして俺の頭を撫でる。クソ。
「俺がいなくなったら西郷どんをからかう奴いなくなるなぁ。西郷どんは顔と態度が怖ぇから、またみんなから遠巻きにされちゃうんじゃねぇかなって、俺は心配よ?」
「からかってるって自覚はあったんスね」
「西郷どんは誤解されやすいタイプだからねー。繊細なのにねー」
「っせぇな! とっとと着替えてきてくださいよ! 行くんでしょ、勝浦!」
 先輩は俺の頭から手を離す。
「じゃぁ、ゆっくり駅の方に歩いててくれ。追いつくから。あ、路地には入るなよ! 道を聞かれても無視しろ! ワンボックスが歩道に寄せてきたら逃げろ! いいな! 日野原先輩との約束だぞ!」
「この時間ならいくらここら辺でもそんなことないでしょ。女子ならともかく、俺、男っすよ。つーか、家の前で待ってますよ」
「あー。ダメダメ」と先輩は顔の前で手を振る。
「言っただろう。俺の家はボロいのだ。だから、見せたくないんだよ」
「俺は気にしねぇっス」
「見せたくないと言っている」
 先輩の声が少しピリっとした。タレ目の陽気な顔つきという錯視が剥がれて、酷く冷たい顔が姿を見せ──たかと思ったらまた戻る。先輩は微笑んだ。
「西郷どーん。俺は嫌がっているのだよ? だからほら」
 シッシ! と先輩は手を振る。
「駅の方に歩いてろ。追いつくから」
 こうまで言われちゃどうとも言えず、俺は「うっす」と言って言われた通りに歩き出す。先輩は元来た道を駆け足で戻ってゆく。
 きっと、通り過ぎてきたボロ屋のどれかが先輩の家なんだろう。
「……俺は気にしねぇし」
 俺のこと全然わかってねぇし。俺のこと勝手に見限るから、そーゆーことがわかんねぇんだ。俺はあんたが思ってるよりずっと、良い人間なんだ。クソ。
 どんなに普通に話しているつもりでも、どんなに仲良くなったように思えても、先輩は俺のことを、見限ったまんまなんだ。
前話:次話
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oshimatakuromemo · 6 years
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クリエイターインレジデンス
Date:2018/02/21(Wed.)~3/28(Wed.) @MTRL KYOTO(京都)
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テーマ:車のウィンカーを用いたグルーヴの探求 制作物:NB-606
【準備編】
はじめまして、おおしまたくろうです。僕は京都精華大学で助手として勤務する傍で、身近な道具や現象を改変した自作楽器・装置を制作する「PLAY A DAY」と称した作家活動をしています。2月23日から3月28日の約1ヶ月にかけてマテリアル京都に滞在して、新作のプロトタイプを制作したので、その滞在レポートをお届けします。
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・制作のきっかけ(1月16日〜24日)
今回の滞在制作では、車のウィンカーに使われるリレーという電子部品を使って、複雑なリズムを刻む楽器・音響装置を作りました。今回の制作の動機として、1)これまでパフォーマンスを中心に活動を展開してきたので、ギャラリーなどで展示できる形態の作品を作りたいと思ったこと、2)学生さんが卒業制作として「グルーヴをモチーフとした楽曲」を作りたいと相談されたことがあります。 音楽における「グルーヴ(Groove)」とは、言葉で定義することが難しい言葉です。ノリのいい感じ、踊れる雰囲気、明るい印象…。日本文化の「わびさび」のように、言葉で定義したとしてもどこか言葉からこぼれ落ちてしまう印象があります。 そこで僕は自分が身近に感じるグルーヴを作品として作ることにしました。僕が身近に感じるグルーヴ、それは「車のウィンカーのズレ」です。ウィンカーの明滅のタイミングは車の機種や電球の寿命で微妙に異なります。交差点で右折を待つ車の列を見ていると、ウィンカーの明滅が同期していたのに段々とズレていって裏拍になったりします。それぞれの車は反復的に明滅しているだけなのに、それらが組み合わさると無限にも思える複雑なリズムパターンが生まれる。これが僕の思う「グルーヴ感」でした。
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▲初期の構想ノート(1月16日)
・シミュレーション(1月24日〜2月1日)
車のウィンカーのズレがグルーヴになる。この単なる思いつき(ジャストアイデア)が本当に作品の体験として成立するのかを確認するためにシミュレーションを行いました。シミュレーションにはヴィジュアルデザインに使用されるプログラム言語のProcessingを使いました。一定のタイミングに合わせて車のイラストのライトが明滅し、ウィンカーの音が鳴ります。
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▲4台の車によるタイムシーケンスを考慮したシミュレーション映像
これまでの制作ではあまりプログラミングを使わなかったのですが、今年から社会人になり、机に向かって制作できる時間が減ってしまったので、通勤の電車の中でも作業できるプログラミングでプロトタイピングしようと思い、今回の制作のために勉強しました。Processingの勉強にあたっては『Processingをはじめよう 第2版』を参考にしました。 シミュレーションの結果、それぞれのウィンカーの明滅のズレから生じるグルーヴを確認できたので、シミュレーション映像を持ってマテリアル京都(MTRL KYOTO)に相談したところ、今回の滞在制作が決まりました。
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▲ビジュアルやタイムシーケンスの設定(1月24日、30日)
・ダーティプロトタイピング(2月21日〜22日)
滞在制作にあたって3Dプリンターでの出力や電子回路の組み立てなど、地味な絵面の作業が多くなると思ったので、早めに周囲と作品のアウトプットを共有するために段ボールでのモックアップを制作しました。これはダーティープロトタイピングと呼ばれる手法で、実際に動作するわけではありませんが、作品のサイズや鑑賞者の見る視点などを検証するのに用います。このモックアップがあったおかげで、現場のスタッフさんや見学者の方と作品の最終形を共有でき、具体的な議論やアドバイスがいただけたと思います。
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▲段ボールで制作したプロトタイプ
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▲段ボールのプロトタイプでアイデアを説明する様子
当初の計画では3Dプリンターで車の模型を出力してシリコン型を作り、「ジェスモナイト」という水溶性の樹脂で車を複製しようと思いました。ジェスモナイトはレジンのような臭いもなく、乾燥すると陶器のような高級感ある仕上がりになるので、今回使ってみたい素材のひとつです。 また車の土台にあたる部分はウィンカーの音を共鳴させるパーツとなっており、「飛騨の木材」など様々な木材をレーザーカッターで切り出して試作することで、音の響き方をいろいろと試せるのではないか、と思いました。
【制作編】Creator in Residence
2月末から大学が春休みに入ったので、本格的に滞在制作を開始しました。自宅の電子部品や工作機器をマテリアル京都に置かせてもらって作業しました。ここからは各作業に分けて詳しく説明していきます。
・電子回路のテスト
まずは電子回路の設計についてです。車のウィンカーは、1)リレーという電子部品と2)明滅のタイミングを決める部品で構成されます。リレーには電気の流れを自動で切り替える役割(スイッチング)があり、ウィンカーが明滅するときのカチッカチッという音は、リレーが動作する時にスイッチ内部の金属板が接触して生じる音です。 このような金属板を接触させてスイッチングを行うリレーを「メカニカルリレー(有接点リレー)」と呼び、アメリカの発明家ジョセフ・ヘンリー(1797~1878)がリレーを発明してから長らくはリレーの基本的な構造でした。しかし、近年の車のウィンカーには電子的にスイッチングを行う「電子リレー(無接点リレー)」が主流になっており、寿命やメンテナンスの面で不利なメカニカルリレーはウィンカーに使用されなくなっています。今回制作する作品では、あえて電子リレーでなくデッドメディアとなりつつあるメカニカルリレーを使用しました。 また回路の設計には『Make; Electronics 作ってわかる電気と電子回路の基礎』を参考に、コンデンサーと抵抗のみでリレーの明滅をコントロールしようとしました。できるだけアナログな電子部品と単純な回路でウィンカーの明滅が実現すれば面白いと思ったからです。
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▲コンデンサーと抵抗による回路実験の失敗の様子(2月22日)
ただ残念ながら、先の動画のようにコンデンサーと抵抗のみの簡単な回路で安定したウィンカーの明滅を実現できず、結局市販されているウィンカーを分解して内部のタイマー回路を流用する方針に変更することになりました。可変抵抗を回すことで明滅の速度を調整することができる仕様になりました。
ウィンカーでのLEDの明滅を成功させたところで、段ボールのプロトタイプに実際にウィンカーやフロントライトのLEDを取り付け、より最終形に近い形のプロトタイプを制作しました。これで基本的な電子回路の実験は完了です。
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▲段ボールプロトタイプに電装している時の作業机
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▲段ボールプロトタイプにLEDとウィンカーの回路を実装
・ボディの設計
ここまで段ボールでプロトタイプを制作していましたが展示に用いるには耐久性に難があるため、ここからは3Dプリンターを用いて樹脂材料で車のボディを制作します。段ボールも素材として味わいがあって良いのですが、自身の経験から段ボールに萌えるのは大人が多く、子供たちは外装がしっかりパッケージされた方を好む印象です。どちらが良いという話ではないですが、段ボールで作るという態度自体が今回の作品の体験にはあまり寄与しないと思いますし、せっかくマテリアル京都で制作するのだからデジタル工作機器を使ってみたい、という思いもありました。
ボディの設計にあたっては、最初にスタイロフォームで曲線的なデザインの模型を作りました。段ボールでプロトタイプを作った時には、作りやすさとサイズ感を優先しており、角のアール感やルーフのパース感などは無視して作っていたので、スタイロフォームで作る際には、実際にどの位置にアール加工を施すのか、パース感は適切か、などを検討しながら作りました。スタイロフォームで曲線的な造形モデルを作るアイデアは『Prototyping Lab 「作りながら考える」ためのArduino実践レシピ』の第1版で紹介されている手法です。
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▲スタイロフォームで立体的な造形を確認する(3月4日)
車のデザインに関して、当初はリアル路線で検討していましたが、実車をモデルにすることで発生するデザインの権利問題や車のリアルさが、作品の体験の邪魔になると考え、むしろ「車っぽいデザイン」で留めるアイデアに落ち着きました。
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▲初期のデザイン案は実車がモデルだった(2月6日)
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▲曲線的なデザインになった車(3月4日)
スタイロフォームで切り出したモデルが納得のできる形状になったら、実際のモデルを測定して方眼紙に図面を描きおこします。方眼紙に描いた図面を頼りに3Dプリンターで出力するための3DCADデータ(STLデータ)を作成します。 CADデータの作成にはFusion 360を使用しました。車の内部にLEDを仕込んで配線を土台へと通すので、窓ガラスの透明パーツで内部が見えたり、車のボディと土台の間に隙間があると配線隠しが面倒です。そこで車の窓ガラスは凹形状で表現し、タイヤはボディの側面に取り付けることで配線が見えないように工夫しました。実際の車ではありえない形状ですが、おもちゃっぽい外見が逆に作品の見立てを強調しているように思います。
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▲設計したCADデータ(3月4日)
・3Dプリンターでの出力と研磨
制作したCADデータを3Dプリンターで出力しました。はじめに完成品の1/5サイズの小さなモデルを出力しました。3Dプリンターは樹脂を積層して形状を作るため、大きなモデルより小さなモデルの方が構造的に弱くなるので、はじめは小さなモデルで出力して耐久性のチェックします。ちなみに3Dプリンターで出力する材料としてABSとPLAと呼ばれる2種類の樹脂があります。それぞれ特徴があり、ABSは頑丈なので実際に触るものや負荷がかかるものに適していますが加工中に反りやすいというデメリットがあります。今回作るボディではABSのような丈夫さは必要なく、むしろ反りにくく造形の正確さに優れたPLAを使用しました。
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▲1/5サイズの小さなモデルで出力した(3月5日)
3Dプリンターの出力には時間がかかるのですが、設計したボディを一度に出力すると予想される作業時間が11時間となってしまいマテリアル京都の営業時間ギリギリになってしまうため、今回はボディを3分割して出力しました。3分割に分けて出力しても1つのパーツに6時間程度かかってしまいますが、3Dプリンターの出力も必ず成功するわけではないのでリスクを回避する意味でもパーツを分割しての出力は有効だったと思います。
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▲3Dプリンターでの作業の様子(3月7日)
3Dプリンターから出力したボディは積層痕が残っているので、ラッカーパテを塗ってから紙やすりで削ることで積層痕を埋めました。鑑賞の妨げにならない程度までボディの表面を整えるには、パテ埋めとやすりがけがそれぞれ3回ずつ必要でした。
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▲出力したばかりのボディは積層痕が残っている
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▲ボディの表面をラッカーパテで埋める
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▲パテ埋め3回、やすりがけ2回したボディ
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▲パテ埋め3回、サーフェイサー2回、やすりがけ4回したボディ
3Dプリンターで作ったボディからシリコン型を取ってジェスモナイトを流し込む予定だったので、ジェスモナイトの販売店の型に使い方をレクチャーしてもらいました。ジェスモナイトは2つの白色の無機溶剤を混ぜることで効果が始まり、一晩で固まるので部屋の中でも安全に作業できます。滞在先のマテリアル京都はカフェとしても経営しているため、基本的に有機溶剤のような臭いのきついものはNGなのですが、ジェスモナイトはマテリアル京都でも使用できる流し込み造形の樹脂です。ジェスモナイトの基本色は白色ですが、溶剤を混ぜる際に着色料や金属粉を加えることで様々な色やテクスチャを与えることができます。
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▲ジェスモナイトのレクチャーの様子(3月8日)
ただ予想以上にボディを型取るのための表面仕上げが大変だったことと、シリコン型からの型抜きを想定してボディを設計していなかったため、今回はジェスモナイトは使わない方針に変更して、車のボディ4台分を全て3Dプリンターで出力することになりました。そのため今回の滞在制作では、4台分のボディを3Dプリンターで出力して積層痕を処理する作業にかなりの時間を費やしました。 パテ埋め作業は地味な上に乾燥に時間がかかるので、最初はイライラしながら作っていましたが、3台目の積層痕を消す作業のあたりで、この作業がとても精神的な作業に感じられました。作品の体験の邪魔になるものは排除しなければなりません。3Dプリンターの積層痕は作品の体験の妨げになるため、可能な限りパテ埋めで消す必要があります。パテ埋めしたボディを紙ヤスリで削るたびに作品の完成に近づいていることを実感して「ああグルーヴの神に近づいているなぁ」と思うのでした。
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▲積層痕を消す作業(パテ埋め、やすりがけ)の様子
・塗装作業
表面処理を終えたボディはサーフェイサーを吹いてカラー塗装の段階に入ります。マテリアル京都には常設された塗装ブースがないので中庭を塗装場所として借りました。日によっては1階でイベントがあるときなどは、2階のテラスにビニール袋を敷いて作業しました。塗装作業が始まる頃には滞在制作の残り期間も1週間ほどになっていたので、夜も作業するために自転車のライトを設置して作業しました。ただカラーの塗装はちゃんと昼間の明るさの中で作業した方が傷や塗り残しを発見したりできるので、夜の塗装作業はあまり効率的とは言えませんでした。
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▲中庭の塗装ブース
ボディの色は4台の車が並んだ時に左から赤、橙、黄、白の順番になるようにしました。今回の作品がリズムやビート、グルーヴに関わる装置なので、Roland社の伝説的なリズムマシンTR-808のキーの色をイメージしました。あとは作品の体験が耳を傾けてじっくり待つハードコアな体験なので、せめて作品の印象だけでもポップするために明るいカラーを選択しました。作品の門戸は広く、体験は深くですね。
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▲カラー塗装されたボディ
・土台パーツの制作
土台パーツは電子回路や音を反響させるための部品で飛騨の木材などで試作する予定でしたが、レーザーカッターで加工できる厚さに制限があるため薄い木材として市販のシナベニア合板を使いました。レーザーカッターで箱物を作る際には、木材の縁を凹凸に切り出して組み立てる方法が一般的なのですが、最近ではフリーで公開されているソフトウェアを使えば、箱のサイズや切り出す板の厚みなどの条件を与えるだけでレーザーカッターで箱物のデータを自動的に作成してくれます。
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▲土台パーツのアイデアスケッチ(3月2日)
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▲レーザーカッターで切り出した木材(3月12日)
土台パーツの正面には装飾として横向きの長穴加工を施し、ウィンカーの音が抜けるようにしました。これはラジカセのデザインなどを参考に音の出る部分を���調するアイデアです。 また正面にはPLAY A DAYのロゴマークを入れるために白いアクリル材からレーザーカッターで切り出しました。ロゴマークのイメージはギターアンプなどに楽器メーカーのロゴが貼り付いてるのを参考にしました。切り出したロゴの縁はマスキングゾルでコーティングして黒色に塗装した後、やすりで削ることで背景の黒地は残ったまま白い文字が浮かびあがります。
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▲ロゴマークの塗装作業
・制御回路の制作
今回の作品では1台ずつの車は明滅するだけの簡単なリレー回路を仕込み、それぞれの起動のタイミングをArduinoで管理することで体験のタイムシーケンスを設計しました。具体的には『Prototyping Lab 「作りながら考える」ためのArduino実践レシピ』の22章「AC100V機器のオンオフをコントロールしたい」を参考にしました。 滞在終了後は作品をマテリアル京都で展示していただけるとの話を聞いていたので、スタッフさんが混乱しないように起動・撤収はシンプルに電源スイッチをON/OFFするだけで良いように工夫しました。
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▲全体システムのアイデアスケッチ
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▲制御回路はタッパに入れた
作品のタイムシーケンスに関しては、最初は一度の体験を3分くらいに設定していましたが、マテリアル京都のスタッフの方たちに体験していただき「体験が長い」とのアドバイスをいただいたので、タイムシーケンスを2分くらいに変更しました。「インスタ映え」や「バズる」などの近年の勢いや感情を重視するような評価の台頭に疑問を持ち、もっと我慢強くじっくり耳を傾けないと味わえないような作品のあり方を志して、今回の作品もぱっと見の第一印象はポップでも実際の体験の難易度は高めになるように設定しました。ただ、難易度が上がりすぎると多くの人に届かなくなるので、さじ加減が難しく、僕はいつも他人に感想を求めてチューニングするようにしています。特に作品を展示するマテリアル京都は作品を鑑賞するマインドの人ばかりが来る場所ではないため、体験のエッセンスだけでも味わう設計でも良いかなと割り切りました。展示する場所が変われば再びタイムシーケンスをチューニングし直すと思いますが、マテリアル京都では1〜2分くらいが鑑賞者の足を止められるギリギリの長さではないかと思います。
・組み立て作業
ボディ、土台パーツ、回路が出来上がったので、最後にこれらを組み合わせて完成させました。結局、組み立て作業は滞在制作の成果発表のプレゼン当日まで行われ、最後までドタバタでしたがなんとか発表までに完成しました。なんか作業の進め方が学生時代と変わってないな〜と実感してヘコみました。 ボディにLEDを仕込む際に工夫した点として、LEDの表面を紙ヤスリで削って曇り加工にすることでLEDの光を面発光にしました。作品では車同士が隣り合うため、無加工のLEDのままだと車の側面に取り付けたLEDの光が隣の車に直接当たってしまいます。そこでLEDを面発光にすることで光が強く当たらないようにしました。 また土台パーツにウィンカーを取り付ける際に、取り付ける位置や向きを変えることでウィンカーの動作音が少し変化させています。4台の車から鳴るウィンカーの音はそれぞれ変えた方が、音が混ざり合って生まれるグルーヴを体験しやすいからです。 また作品の体験の開始のタイミングは作品の横に設置した赤いスタートボタンを押すことで開始します。スタートボタンのケースもレーザーカッターで加工しました。
【発表編】Fab Meetup Kyoto vol.24
約1ヶ月におよぶ滞在制作の成果を発表する場がマテリアル京都で定期的に開催される発表会「Fab Meetup Kyoto vol.24」でした。毎回いろんなジャンルの方が登壇されるイベントで、僕も実際に制作した作品を展示して作品のテーマや制作の苦労ポイントをプレゼンしました。
・展示
3mほどの長さの机の上に作品を並べ、その横には作品の完成に至るまでのプロトタイプを資料として置きました。僕は作品の仕上がりよりもプロセスを重視したいので、できる限り活動のアーカイヴを保存し、自分がどんな思考や実践を経て作品に至ったかを見えるようにしたい欲求があります。こうした作品資料はギャラリー展示では邪魔かもしれませんが、今回のような滞在制作においては過程の変化などが見えると意義あるものだったか俯瞰できると思います。 印象的だった反応として、プレゼンの準備をしていて作品から少し離れていた時に、お客さんが作品に近寄りスタートスイッチを押したのですが「じっくり見なきゃいけない作品は苦手だな」と言ってすぐに立ち去ってしまいました。とても残念な反応でしたが、自分が問題視している「バズる」とか「インスタ映え」といったリアクティヴな価値観が正義とされている現状を打ち砕くには、まだまだ高い壁があるんだなぁと改めて感じました。
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▲展示の様子
・プレゼンテーション
プレゼンではあまり資料を十分に用意できていなかったので出たとこ勝負で臨みました。もともと話すことが得意ではないので映像や写真の資料を多く用意して、僕が喋らなくても大体の流れがわかるようにしました。作品のコンセプト自体がシンプルでわかりやすいものなので、お客さんの反応も悪くなく、僕が何をしたいかが伝わっていたようなので良かったです。プレゼンが苦手な僕の中では良いプレゼンだったと言えるのではないでしょうか(自問)
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▲緊張で前を見て話せていないプレゼンの様子
・交流
登壇者のプレゼンが終わった後はお客さんと交流の時間が設けられています。地味な作品ですが、作品のコンセプトはしっかり伝わっていたようなので良かったです。 お客さんからのアドバイスとして一番多かったのは「車ごとにウィンカーの機種を変えてみてはどうか」ということでした。今回はウィンカーの取り付け位置で音を少し変化させているとはいえ、ウィンカー自体を全く別物に変えてしまえば更なる音の変化を期待できるかもしれません。あとは「車を交換式にする」というもので、土台に乗っている車ごと交換してウィンカーを交換すれば自分好みの音を楽しむインテリアになるかもしれません。他には「おもちゃっぽくするより高級路線にいってほしい」「街の他のLEDの明滅もグルーヴになりそう」など色んなアドバイスをいただきました。 個人的にアドバイスをもらう時に大事にしていることとして、一人の人しか言わない特異なアドバイスより他の大勢の人も言っていたアドバイスにも注目します。大勢の人が指摘するポイントにはある種のベタさ(≒ポピュラーさ)が付き纏います。このベタさに乗っかるか、ベタさを裏切るかは作家の指向性だと思いますが、何がベタなのかは理解しておくと大勢に共感されながらも違和感を含んだ表現が可能になるのではないかなと思います。今後も作品の敷居の低さと体験の深さを追求していきたいです。
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▲交流の様子
【まとめ】
・感想と反省
感想として、大学院を卒業後は自宅のアパートに閉じこもって作品制作することが多かったので、久しぶりに制作プロセスから他人の意見を聞きながら作業できたのは楽しかったです。作家さんにはいろんなタイプがいますが、僕は他人の意見に左右されながら作るのが基本的なスタイルなのでマテリアル京都のようなオープンな作業場は居心地が良かったです。 3Dプリンターに関しては簡単に複雑な造形物が作れる一方で、出力にかかる時間の長さや積層痕を消す大変さを身をもって理解したので、作品の最終完成品をつくる用途よりもプロトタイプの道具として割り切って使う方が無難かもしれません。一方で滞在制作の後半では3Dプリンターと友達になれたような感じで、出力されたモノを見て「そろそろメンテナンスが必要だな」とわかるようになっていました。また積層痕を消す作業も、最初の1台目は4日ほどかかっていた作業が3・4台目では2日ほどで済むようになり、自分のスキルが上昇していることにも気づきました。 こうした経験からデジタル工作機器の使い方に関して、機械だけで全ての作業を賄おうとするのでなく、素材の特性や人間の手わざと組み合わせて機械と人間、デジタルとアナログのお互いの得意なことは何であるかを理解して作業を割り振るべきでしょう。
反省点としては、当初考えていたジェスモナイトや飛騨の木材といった新素材を使う計画はどれも実現しなかった点が挙げられます。これは今回の作品の最終形のイメージが最初から決定していたので、イメージから外れて素材と一から対話する余白がなかったためだと思います。つまりアイデアが先にあって素材はその後にあったため、アイデアを優先した結果、今回は新素材は使いませんでした。次作を構想する際は素材をお題にアイデアを考えるような発想で考えてみても良いかなと思います。
・グルーヴとは何だったのか
結局、グルーヴとは何だったのだろうか。今回の滞在制作に際してわかりやすいテーマが必要だと考え「車のウィンカーを用いたグルーヴの探求」と題しましたが、探求という言葉は大抵ゴールがないので便利な言葉としてついつい使ってしまいます。なので「グルーヴとは何か」と問われたら「わからない」と答えることもできますが、それではあまりにも味気ないので制作を通して考えたことをまとめてみます。
音楽作品の中で最初にグルーヴらしきものを意識したのがミニマル・ミュージックの第一人者のひとりであるスティーヴ・ライヒの『Come Out』(1966)という作品です。この作品は黒人暴動の犯人の疑いをかけられた青年の弁明の言葉をテープで録音し、音源の断片を反復的に再生して少しずつズラしながら重ねることで、政治的な意味の強い言葉をただの音響のうねりに変化させます。僕はこの作品の後半部分を聴いている時に「なんか踊れるな〜」とひらめき、反復的な音とその差異から生まれるグルーヴらしきものを意識しました。
ライヒの次に作家として海外でも活躍しているDJのAOKI takamasa(青木孝允)に注目しました。青木さんは京都精華大学でも非常勤講師として教鞭を執っておられ、ポピュラーミュージシャンとしての活動は一言で言えばミニマルなエレクトロダンスミュージックという印象です。少ない音数の電子音をコントロールしながら、いつまでも聴いていられる音楽は、よく聴くと複雑に変化し続けていることに気づきます。青木さんの活動や制作態度を知るうえでCINRA.NETの良いインタビューがありました。 このインタビューの中で印象的だったことは、青木さんもライヒの影響に言及されていることと、自身のことをミュージシャンだとは思っておらず、ただ現象を提示しているだけだと話している点です。青木さんはライヒについてフラクタルと関連させて言及していますが、反復と差異から生じるグルーヴ(らしきもの)にはシンプルな音の要素が生み出す無限とも思える展開の複雑性が隠されているように思います。 また青木さん自身は音の現象を提示しているだけなのになぜ踊れるのかについて、聴者のバイオリズムに注目されています。音は究極的にはただの空気の振動であり、どの空気の振動から音という意味を見出すのは聴者の文化的な背景が関わっていると思います。また音の羅列をなぜ音楽と思えるのかは、聴者が音の反復と差異の経験から音のまとまりを認知するからだと思います。どの空気の振動を音のシグナルとみなすか、さらには音のまとまりを音楽とみなすか、これらの判断は聴者に託されており、何がグルーヴであるかは生理的な反応や社会的な背景とは切り離して語れないでしょう。つまり、何にグルーヴを感じるかは一義的に定まるものではなく、各個人によって異なるということです。
この作品を体験した人が、街でウィンカーの明滅のズレを見かけた時に「おっ、グルーヴだ!」と思ってもらえれば作品の狙いは成功したと思います。そして、今回の作品のようにもっと多くの多様な立場の人が自分の感じるグルーヴを表現するようになれば、その表現の総体が「グルーヴとは何か」の答えではないでしょうか。
みなさんはどんなものにグルーヴを感じますか?終
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villa-chitose · 7 years
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艶と硬度を備えた新しいオリジナル ガラスコーティング「ドゥレッザ ガラスコーティング」
ドゥレッザ ガラスコーティングは秋田県横手市と新潟県新潟市でも施工可能です。 住所:秋田県横手市柳田字持田185 住所:新潟県新潟市南区神屋682 TEL:03-6231-4919 TEL:045-334-3033 秋田県全域のおよそ90%の地域が特別豪雪地帯に指定されており、雪が多く降り積もりやすく、冬季には対馬暖流の影響もあってか日本海側から湿った冷たい風が吹き、みぞれや雪を降らせる地域のガラスコーティングは通常のガラスコーティングよりも膜厚が厚くなければ塗装の保護にはなりません。 ドゥレッザ ガラスコーティングは劣化しない硬度としては最高硬度7hで通常ガラスコーティングの硬さが2倍以上!膜厚は10倍以上あるので雪国には最高のガラスコーティングと言えるでしょう。 ディーラーやガソリンスタンドとドゥレッザ ガラスコーティングの違いはこちらをクリック
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ガラスコーティング・車 コーティングってどれも同じ?
まずは硬さの違いもありますが、ガラスコーティングの厚さが全く違います。 上記画像の左側は通常のディーラーやエシュロン、GZOX(ジーゾックス)などのガラスコーティングの成分であり、右側の画像はドゥレッザ ガラスコーティングになります。 通常のガラスコーティングは硬化させても「でんぷん」の粉のようにしかなりませんが、ドゥレッザ ガラスコーティングは本物のガラスなので上記右側のようにガラスになります。 ガラスコーティングは塗装の保護なので、上記のようなガラスにならないと塗装の保護にはなりません。
Massima durezza rivestimento di vetro ドゥレッザ  ガラスコーティング
新しいガラスコーティング剤: 低分子シラン ドゥレッザ ガラスコーティングとは 従来のガラスコーティングとは違う硬く、しなやかな最強無機質ガラスコーティング ガラスだから硬いのは当たり前、衝撃や湾曲などのストレスによるひび割れが発生しにくい柔軟性を持たせました。 柔軟性が(硬いだけより)耐傷性を高めます。また、酸化劣化しないことと合わせ、将来の剥がれ、ひび割れ等の弊害に対する心配ををゼロにします。 ドゥレッザ  ガラスコーティングは単一成分98%の高密度ガラスコーティングです。限りなく無機質に近いコーティング剤ですが2%のアルコキシドを混合する事により3~4ミクロンの甲膜厚を実現しました。また硬度7hの高度を持ちながら高膜厚のコーティング剤でもあり非常にバランスのとれた撥水角100℃を超えた撥水性ガラスコーティング剤です。
Hard-supple 硬く・しなやか
衝撃や湾曲などのストレスによるひび割れが発生しにくいガラスコーティングでは最高硬度の7h! セラミックガラスコーティングのように9hなど硬さが増すほどクラックが発生しやすくなります。 このため弊社のガラスコーティング剤では、多少の柔軟性を持たせて、あえて鉛筆硬度9Hとはせずに7H前後に調整して、クラックの発生を防いでいます。 ※ペルヒドロポリシラザンは高硬度9hであるが、クラック発生を防ぐため膜厚は薄く、意外にも微細な擦過キズにも弱く、膜厚をあげるために何層にもコーティングを施工すると剥離する。 ディーラーガラスコーティングは殆どがオルガノポリシロキサンを使用しており高分子の為、定着性が粘着テープのような定着性の為、柔軟性はあるが硬度が3h位しかなく耐久性も実際は1年半位。 弊社ガラスコーティングは低分子シランガラスコーティングの為、高硬度7h~8hであるが柔軟性があるためクラックしづらく、また、低分子のため塗装面の微細な凹凸に浸透しやすく、強靭な密着力が違う。  
High hardness flexibility 3D 高硬度柔軟性3Dネットワーク構造被膜
従来の3Dネットワーク構造被膜ですと硬度5hで耐久性は1年半ぐらいでしたが、低分子シランは硬度7h以上で長期耐久を実現しました。
No machine quality moths La scan the membrane 無 機 質 ガ ラ ス 被 膜
無機ガラス主鎖+有機官能基側鎖構造:酸による腐⾷や撥水・低撥水にもかかわらず無機汚れ(ウォータースポット・イオンデポジット)固着し難い。 低分子のため高濃度無溶剤化により高密度化ができる。このため汚れがつきにくく、汚れを落としやすい皮膜を形成できる。 従来のガラスコーティングは塗装色により撥水や親水の選択が必要であったが撥水角も100℃以上でもウォータースポット・イオンデポジットも低減できます。 有機質ヨゴレと結合しにくいので、ピッチ・タールなどの油類、無視やのフン・あか、チリやホコリなどが付着しにくく、水洗いで簡単に落とせる。 耐紫外線性、耐熱性、耐油性、耐水性、耐薬品性が高く塗装面を強靭に期間保護する。
Thickness コーティング剤膜厚
低分子だから実現できる1層塗りでも3μ以上 多層でも20μも可能。 通常のガラスコーティングですと、高分子ペルヒドロポリシラザンですと硬度が9hにはできますが、1μ以下なのでクラックしやすく、オルガノポリシロキサンは硬度も膜厚もない。硬度9hを高膜厚にすると柔軟性がないため劣化します。
Quality クオリティー
ドゥレッザ  ガラスコーティングは外国製原料ではなく、現在世界最高の機能や性能と安定した品質を誇る日本製低分子シランを原料として、自動車塗装や建築内外装向けのガラスコーティング剤として求められる「耐久性・防汚性・施工性・光沢美観・メンテナンス性」を追求。 アルコール系溶媒なので、塗装面・人体・環境に優しい。
Price
今現在のガラスコーティングの相場は硬さに高硬度になればなるほど金額も上がっていきます。 ハイモースコートやセラミックガラスコーティングなどはお店によってことなりますが、15万円以上20万円以上の高額な金額になりますが、弊社は中間コストを省略することで安く提供することに成功しました。 硬度7h以上のガラスコーティングではお求めやすい金額になりました。
ドゥレッザ  ガラスコーティングを塗ったプロテクションフィルムを指で曲げても、ひび割れしません。
通常のガラスコーティングですと、数μでもここまで曲げるとひび割れしますが、ドゥレッザ  ガラスコーティングは低分子の為、膜厚が厚く、そして硬くても衝撃や湾曲などのストレスにも強い。
※今現在、コーティングの硬さは最高硬度で7hが最高です。 7hと言えど完璧ではありません、たまにセラミックガラスコーティングなどの9hガラスコーティングも存在しますが、研究者のなかでは車の湾曲に塗れる9hはないそうです。 例として、メガネのレンズは7hでアイフォン(携帯電話)の表面は9h?なのでしょうか。 この両者を道路などに落とした場合メガネは割れませんが、アイフォンは表面レンズがバキバキに割れ、よく割れたアイフォンをそのまま使用してるのをよく目にします。 なぜ、9hのほうが硬いのに割れるのか? 今現在の技術で劣化しない9hがでればノーベル賞ものだからです。 メガネが割れないのはある程度柔軟性を持たせた7hなので劣化しないのでしょう。
硬度とクラック
硬度が硬いほど良いと言われるガラスコーティング商品やサービスがありますが、ガラスコーティングは化学合成品であるため、被膜の硬さが増すほどに脆く壊れやすくなり、「クラック」と呼ばれる微細なひび割れ損傷が発生しやすくなります。
クラックは硬化の過程や使用中の物理的化学的刺激などより発生し、見た目の「クスミ・濁り」になったり、「被膜が剥がれ落ちやすくなる」ことの弊害の原因になります。
今の技術で作ることができるガラスコーティング(非晶質ガラス)は、鉛筆硬度9H程度が最高硬度となりますが、コップや窓ガラスなどの厚みのあるものと比べて、ミクロン(μm)単位の被膜では硬さゆえの脆さの影響が大きくなります。 クラック発生を回避するためには、少し粘り気を持たせる必要があり、6H~8H程度の硬度が最適であると考えます。
膜厚と硬度
膜厚はある程度厚い方が良いと思います。しかし硬度が同じ場合被膜が厚くなるほどクラックが発生しやすくなりますので、上記のような若干の粘り気のある6H~8H程度のガラスコーティングでは2~4μm前後の膜厚が、微細な傷からの保護という意味でもバランスが良いのではないかと考えます。
硬度が同じ場合は、膜厚が厚くなるほどクラックが発生しやすくなるため、硬度9H程度のガラスコーティングでは0.5μm~1μm程度の薄い膜にしないと、クラックの発生が問題になります。 このように余りにも薄い被膜では、摩耗や微細傷も塗装まで達してしまう可能性が高まります。
ドゥレッザ ガラスコーティング施工例
ガラスコーティング・カーコーティング・ボディーコーティング・ガラスコーティング四日市 ご来店の多いエリア: 東北地方(とうほくちほう)は、日本の地域のひとつであり、本州東北部に位置している。「奥羽地方(おううちほう)」ともいう。 その範囲に法律上の明確な定義はないものの、一般には青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県の6県を指す。これら6県は、本州の約3割の面積を占める。東北地方は東日本に位置するが、気象や歴史地理学などでは北海道と一緒に北日本とされる。 地理 人口は約963万人(2005年10月1日-国勢調査) 面積は66,889km² 人口密度は1km²あたり約144人(2005年10月1日-国勢調査) 東北六県の県民総生産の合計は33兆3007億円(2007年度-県民経済計算) 地形 プレート理論では、東北地方は北海道とともに北アメリカプレート上に存在し、東側から太平洋プレートが日本海溝で潜り込んでいる。そのため、海溝型を中心に地震が多く、ときには東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)のようにマグニチュード9を超える大規模な地震が起こることもある。東北地方の中央には、日本海溝と平行に南北に那須火山帯が走っている。この火山帯の上には、下北半島の恐山山地、および、南北に長く奥羽山脈が連なっており、北から恐山、八甲田山・八幡平・岩手山・栗駒山・蔵王連峰・吾妻連峰・安達太良山・那須岳などの火山が多くある。那須火山帯(奥羽山脈)の上には十和田湖・田沢湖・鬼首カルデラ・蔵王の御釜周辺などのカルデラ地形が見られ、火山の恩恵である温泉も多い。なお、猪苗代湖は断層湖である。 日本海側には、ユーラシアプレートと北アメリカプレートの境界が南北に走っているため、那須火山帯と平行に鳥海火山帯が南北に走っている。この火山帯の上には、白神山地・出羽山地(太平山地・朝日山地・飯豊山地)・越後山脈が連なっており、岩木山・鳥海山・月山などの美しい稜線を持った火山が見られる。山地が海に接する部分では、海岸沿いに温泉が湧いており、海を眺めながら入浴することができる。 太平洋側には北上山地と阿武隈高地がある。これらは、隆起地形が侵食され、現在は老年期地形となった、なだらかで低い山地である。残丘として標高1917mの早池峰山があるが、基本的になだらかな山地で、奥羽山脈より日本海側と比べると積雪も少ないためスキー場がなく、火山帯ではないため温泉も少ない。ただし昔、海底にあって隆起した証拠である鍾乳洞などの石灰岩地形が多く見られる。北上山地が海にせり出しているリアス式海岸の三陸海岸では、石灰岩が波に洗われてつくりだされた複雑な海岸線や真っ白な砂浜が見られ、親潮のコバルトブルーの海とコントラストを作り出している。阿武隈高地と太平洋の間は離水海岸となっており、リアス式海岸の間の海が埋め立てられたような小規模な沖積平野が小高い山地と交互に存在しながら延々と続く。 これら3連の南北に連なる山脈・山地の間には、北上川、阿武隈川、雄物川、最上川などの河川が流れ、多くの盆地や平野を作り出している。 気候 気候は、小地形による修飾があるが、大きく日本海沿岸、那須火山帯山麓と西側(盆地)、那須火山帯山麓を除く東側(盆地)、太平洋沿岸 の4つのグループに分かれており、それぞれ異なった傾向を持っている。また、それぞれのグループごとに、北と南で微妙な違いもある。宮城県・福島県の太平洋沿岸を除いて全域が豪雪地帯で、一部特別豪雪地帯もある。 日本海沿岸と那須火山帯山麓と西側(盆地)の「日本海側グループ」は、日本海側気候となっており、夏季はフェーン現象により、晴天が多く、非常な高温になることがある(山形市で40.8度を記録)。しかし、昼間の高温の割りに夜間は気温が下がって過ごし易い。冬季は、日照時間が少なく、豪雪地帯となっているところが多いが、特に奥羽山脈西側の盆地の降雪量が多い。 太平洋側の那須火山帯山麓を除く東側(盆地)は、太平洋側気候と内陸性気候を併せ持つ。夏季は、フェーン現象により高温となる日と、太平洋沿岸地域のような曇天で気温が低い日との両方がある。冬季も、寒気団や北風・西風などの諸要因が強いと日本海側のように雪が降る場合がある一方、太平洋沿岸地域のように、晴天になる日も多い。 太平洋沿岸は、太平洋側気候と海洋性気候を併せ持つ。夏季は、北部・中部は通常曇天で気温が上がらず、数年毎にやませの流入により、低温で悪天候の冷夏となる年がある。南部(福島県浜通り)の夏季は、太平洋高気圧の影響下に入り易く、高温で晴天の日が多い。中部・南部は、冬季の積雪量は少なく、晴れて空気は乾燥する。 地域 東北地方内の区分 古代の東北地方において、(1)多賀城が設置されて早くから畿内に本拠地を置く政権の勢力が及んだ南東北、畿内政権の影響力が弱く、俘囚や奥州藤原氏の本拠となっていた北東北、といった古代からの南北区分と;(2)陸奥国の「内陸国」「政治勢力の地盤」、出羽国の「沿岸国」「商業勢力の地盤」の境界であった奥羽山脈による東西区分が、意味を変えながらも現代の東北地方内の区分と似た状況になっている。 ただし、文化的には戦国時代の大名の支配圏や、江戸時代の藩による区分の方が影響を残しており、また、新幹線・高速道路・空港から遠い三陸海岸沿岸や下北半島も、少なくとも意識の上では他の都市圏から独立した独自の地域圏を形成している。 太平洋側と日本海側[編集] 東北地方を「太平洋側」と「日本海側」に区分することがある。両者の境界は、那須火山帯上にある恐山〜奥羽山脈の線、または中央分水嶺[7]による竜飛岬(津軽半島)〜奥羽山脈とする線などがある。 この分類は、気候 による区分でよく用いられ、日本海側は脊梁山脈である奥羽山脈の西側にあるため冬の降雪量が多く、太平洋側は少ない。夏の気候では、日本海側はフェーン現象のために晴天で気温が上昇し易いが、太平洋側はやませの影響で気温が低い年がある。盆地を見ても、奥羽山脈の東側は内陸であるが、冬の降雪量は奥羽山脈の西側ほどは多くない。 また、海流の面で、太平洋側は親潮と黒潮、日本海側は対馬海流(とリマン海流)の影響を受けるため、海運 の面でも「太平洋側」と「日本海側」に区分する。前近代においては、太平洋岸は波が荒く、航海が危険であるため、日本海側と比較して海運は活発ではなかった。現在は、動力を積んだ大型船の時代であり、また、太平洋ベルトに近い利点から、太平洋側の海運が活発である。 陸奥国と出羽国 「内陸国」と「沿岸国」 陸奥国の国府が仙台平野の多賀城に置かれ、出羽国の国府が庄内平野の酒田に置かれたことでわかるように、陸奥は「内陸国」の、出羽は「沿岸国」の傾向が見られる。 陸奥国(内陸、太平洋沿岸)は、沿岸平野がいわき市周辺、仙台平野、八戸周辺と乏しく、波も荒く海流も強いため、陸上交通による関東地方との関わりが深い「内陸国」としての歴史が綴られている(→みちのく)。 一方、出羽国(日本海沿岸)は、沿岸に庄内平野、秋田平野、能代平野、津軽平野と、内陸部につながる沿岸平野がほぼ均等な間隔で存在し、北前船に代表されるように、古代から明治時代まで、海運による近畿地方との関わりが深い「沿岸国」としての歴史が綴られている(→越後国の先にある地域)。 藩政時代には、おおむね日本海沿岸の地域は銀遣い、太平洋沿岸の地域は金遣いであり、その境界線はおおよそ下北半島の東岸であった。 境界 陸奥国と出羽国の境界とされる奥羽山脈は、所々で山脈自体が低い部分があり、かなり低い峠が存在したりする。更に、奥羽山脈から太平洋沿岸や日本海沿岸に至る途中でも山地が峙えているため、一口に「陸奥国」「出羽国」とは括れず、境界は時期によって変わっている。 令制国 の区分では、「陸奥国」に、奥羽山脈の西側に位置する会津地方や津軽地方を含んでおり、その他の日本海側の部分が「出羽国」となっている。しかし、特に古代においては陸奥国と出羽国の境界は、時期により変更されることが度々あった。現在の山形県内陸部や秋田県内陸部(仙北三郡)も、当初は出羽国ではなく、陸奥国の一員であった。 基本的に、奥羽山脈東側盆地群(国道4号沿線)と太平洋沿岸(国道6号沿線、国道45号沿線)が陸奥国、日本海沿岸(国道7号沿線)が出羽国であり、その間に挟まれた奥羽山脈西側盆地群(国道121号沿線、国道13号沿線)は、陸奥側の政治勢力の盛衰によって陸奥国と出羽国の間で所属が変化していたようである。 奥羽山脈東側盆地群:北上盆地、福島盆地、郡山盆地 奥羽山脈西側盆地群(斜字 は令制国の陸奥国):青森平野 (青森湾)、鹿角盆地、横手盆地(仙北三郡)、新庄盆地、山形盆地、米沢盆地、会津盆地 即ち、測量された地図が無かった時代には、東北地方の「内陸勢力」の版図が陸奥国、日本海側「沿岸勢力」の版図が出羽国とされていたと考えられる。鎌倉時代以降は、日本海沿岸地域は政治勢力化せずに商業勢力に留まることが多く、陸奥国側の内陸政治勢力が、陸奥国と出羽国を一体的に「奥州」として管轄した。 分割 戊辰戦争終結の直後、1869年1月19日(明治元年旧暦12月7日)に、陸奥国は分割され、陸奥国 (1869-)・陸中国・陸前国・岩代国・磐城国が設置され、同じく出羽国も羽前国・羽後国に分割された。羽前と羽後の総称として「両羽」、陸奥・陸中・陸前の総称として「三陸」という地域名が使われることもある。 北東北と南東北 東北地方は、主要都市の間に東北新幹線・山形新幹線・秋田新幹線が通ることで、全ての県に新幹線が通っている唯一の地方となった。そのため、新幹線が優位に立つ中距離移動(200km〜800km)が便利である。また、東北地方内陸を南北に貫く東北自動車道の他、太平洋側と日本海側を結ぶ高速道路がいくつも整備され、運行本数が少なく割高な在来線よりも、安価で速く便利に移動できる高速バスが、各都市間で運行されるようになった。すると、それまで空路で東京とつながってバラバラだった主要都市間の関係が、新幹線によるつながりや高速道路(高速バス)によるつながりによって再編成されることになった。 北東北三県は、各県知事の政治主導で「三県連合」の枠組みがつくられたが、元々各県都間の地理的距離があり、うち青森市や秋田市の場合、陸路では東京からの所要時間が長いため、新幹線が開通しても空路から陸路への旅客シフトが劇的には起きなかった。その結果、新幹線の結節点である盛岡市を中心とした相互交流や、高速バスの低廉化・高頻度化などはあまり発生しなかった。 一方、南東北三県においては、各県の県庁所在地や中心都市が元々近接していたこともあり、仙台市との経済的結び付きが強い地域が「仙台経済圏」を形成している。南東北三県都(仙台市・山形市・福島市)がある中枢部は、南東北中枢広域都市圏という名称の協議会を結成して、人口334万人を抱える大都市圏行政を行っている他、「三県都連合」が経済後追いの形で形成されている。 定義域と名称 この地方の名称は、歴史的に変遷している。まず、古代には、畿内から始まる海道(後の東海道)と山道(後の東山道)の各々の道の奥にあることから「みちのおく」「みちのく」とされ、当地方南部(南東北)に「道奥国」(みちのおくのくに)が設置された。後に陸奥国と出羽国が設置されると、両者から1字ずつ取った「奥羽」「奥羽両国」「奥羽州」と呼ばれた。また、両者を一括して実効支配を敷いた奥州藤原氏や奥州探題などの例から、単に「奥州」ともといわれた。 明治元年12月7日(西暦1869年1月19日)、奥羽越列藩同盟諸藩に対する戊辰戦争の戦後処理の一環として、陸奥国が5分割(磐城・岩代・陸前・陸中・陸奥)、出羽国が2分割(羽前・羽後)されると、「陸羽」または「三陸両羽」との呼称が生まれた。この場合、現在の福島県全域と宮城県南端に相当する磐城・岩代の2国を除いた、残りの「陸」と「羽」が付く5国の地域を指し、「奥羽」とは指し示す領域が異なっているが、分割前の「陸奥国」と「出羽国」と見ることもできるため、混同されて使用される例も見られる。明治前半に奥羽両国は、明治元年成立の旧国の数から「奥羽7州」「東北7州」、あるいは、新設の県の数から「東北6県」とも言われるようになる。 「東北」と称する文献例は、主に江戸時代・天保期以降の幕末になってから散見されるようになり、この場合、「東北国」と称する例もある。地方名としての「東北」の称が公的な史料で初見されるのは、1868年(慶応4年)正月に佐竹義堯(秋田藩主)に下賜された内勅とされる。ただし、この場合の「東北」は五畿七道の内の「東北3道」(東海道・東山道・北陸道)、すなわち、天皇の在所である畿内からみて東あるいは北東側にある全ての地域を指しており、西南4道(山陰道・山陽道・南海道・西海道)と対比される。または、東国と北陸の合成語とも考えられる。 明治政府による中央集権的・統一国���的な地方支配が進められる中、当初は政府直轄の石巻県牡鹿郡石巻が当地方(軍事的には北海道を含む)を支配する際の拠点とされた。間もなく廃藩置県が実施されて全国が政府直轄となると、当地方から北海道が切り離され、仙台県宮城郡仙台(後の宮城県仙台市)に国家の出先機関などが置かれていった。これらの管轄範囲が公的には「奥羽」と呼ばれる一方、在野の民権派は「奥羽」「奥羽越」あるいは「奥羽および北海道」の範囲を指す美称として「東北」を(「西南」と対比して)用いるようになった。明治の後半になると民間でも「奥羽」の範囲を「東北」と呼ぶのが通例となり、公的にも「東北」が用いられるようになった。 結果、「東北」は日本の地域の中で唯一、民間由来の地方名として定着し、明治以降135年以上に渡って、東北地方の主要企業・国家の出先機関・大学などの名称に多く用いられてきた。そのため、現在は雅称の「奥羽」よりも美称の「東北」の方が当地方の呼称として一般的である。 現在でも、法的・経済的に新潟県が東北地方に区分される場合がある。それは、明治時代から始まった水力発電との関係が強い。当地での電源開発の最重要地域の1つに阿賀野川(只見川)があるが、これは新潟県下越地方と福島県会津地方(両地域とも分水嶺である奥羽山脈の西側)を流域としており、電力において下越地方と会津地方は不可分であった。このため、「東北7県」を供給範囲とする電力会社として、戦中の1942年(昭和17年)には国家総動員法と配電統制令により東北配電が設立された。戦後占領期になると進駐軍により「東北7県」のくくりで統治が行われ、1950年(昭和25年)には電力事業再編政令により東北電力が設立された。1952年(昭和27年)のサンフランシスコ講和条約発効後になると、「東北7県」を対象範囲とする地域開発の法律がつくられた。 近代 1869年1月19日(明治元年12月7日)、戊辰戦争に敗けた奥羽越列藩同盟諸藩に対する処分が行われた。同日、陸奥国は、磐城・岩代・陸前・陸中・陸奥国に、出羽国は、羽前・羽後に分割された(この分割によりできた「陸前・陸中・陸奥」は「三陸」とも呼ばれ、リアス式海岸の「三陸海岸」や、世界三大漁場のひとつ「三陸沖」などの語に用いられている)。1871年8月29日(明治4年7月14日)の廃藩置県などを経て、現在の東北6県が作られた。 この時期、戊辰戦争により明治政府はその権力基盤を確立し、幕藩体制に則った社会秩序は完全にその権威を失った。西南諸藩に比べ、もともと経済基盤が弱かった東北地方の諸藩では、秩禄処分によって経済的な困窮へと追い込まれた各地の領主と家臣団による窮余の策として「北海道移住」と「帰農」が広く行われた。また後進地域だった東北地方では、農村部の商工業や貨幣経済の浸透も遅れていたため、土地の産物ではなく貨幣により税金を払うシステムが初めて導入された地域では、現金収入を得ることに慣れない人々に大きな混乱を与えた。 また明治以降の富国強兵・殖産興業の時代においても、郡山盆地における安積疏水、宮城県の野蒜築港、東北帝国大学設置、岩手県の釜石製鉄所などの例外を除いて、政府は東北地方での大規模な投資や開発に積極的ではなかった。野蒜築港が台風によって破壊された後も修復や代わりの港の建設はされず、鉄道のうち最初に敷設された東北本線は官営による国家計画としては行われなかった。 大蔵卿・松方正義による松方デフレは、農産物の価格下落をもたらし、全国的に小作農の比率を上昇(小作農率の全国平均38%→47%)させた。その影響によって、全国的には富裕層による地主所有の寡占化が進み、また産業化(生糸産業・造船業など)が進んでいた関東の都市部などは経済が好調となった一方、常磐炭田周辺などを除き工業化の遅れていた東北地方は更なる経済的ダメージを蒙ることとなった。そのため多くの者が女工や各種労働者として都市部などへと働きに出ざるを得なかった。 さらに、日清・日露戦争後に顕著となった日本の対外進出指向は、日本内地の開発の軽視につながり、地方の近代化を遅らせる結果を招いた。特に1910年の韓国併合後は、朝鮮半島から廉価な米が流入したために米価の低下を招き、東北地方にとっては大きな痛手となった。また昭和になってからは、農家の次男・三男などを中心に旧満州国などへの移民が活発化した。1930年には昭和東北大飢饉が発生し、身売りや欠食児童が続出、二・二六事件を起こす要因の一つとなった。 第二次世界大戦後は農地改革により、従来の封建的な地主小作関係は過去のものとなった。東北地方でも工業化が進み、生活水準に顕著な向上が見られたが、太平洋ベルト地域の著しい発展に取り残され、高度経済成長時代には東京方面への出稼ぎ、集団就職は非常に広い範囲で行われた。 方言 東北地方の方言、いわゆる東北弁は、東日本方言に属する。太平洋側では関東方言(特に東関東方言)との共通点が多くみられるほか、日本海側では近世の北前船の影響から関西方言との共通点もみられる。地域内でも方言差が激しく、隣県同士はもちろん、同一県内でも互いに通じ合わないほど特徴の違う方言が存在していることも少なくない。 アクセントは、太平洋側南部(宮城県中部・山形県内陸と福島県)の無アクセント、南部日本海側から北部の大半にかけて分布する北奥羽式アクセント(外輪東京式アクセントの亜種)、三陸海岸北部の外輪東京式アクセントに大きく分かれる[16]。 かつては聞き取りにくい・理解しにくい方言の代表として鹿児島弁とともに挙げられることが多く、他の地方と比べて開発が遅れていたこともあり暗いイメージや否定的な印象を持たれることもあったが、現代においては、温かい人情や素朴さの象徴とする肯定的な見方も生まれた。しかし、方言話者自身にとっては「勝手なイメージ付け」に過ぎない点で従来の否定的な評価と何ら変わらず、必ずしも好意的に受け取られるとは限らない。現代では東北地方でも若い世代では共通語化が進んでいる一方、従来の古いイメージに最初から囚われない人も増えてきている。 なお、「一般的に東北弁と思われている特徴」としては、 シとス、ジとズの混同(中舌母音、いわゆるズーズー弁) イとエの混同 「んだ(「=そうだ)」「だべ(=だろう)」などの語尾(後者は関東方言の特徴でもある) 「べこ(=牛)」「めんこい(=可愛い)」などの語彙 などがある。しかし当然ながら、これらの特徴が当てはまる方言と当てはまらない方言がそれぞれ存在する。 東北地方以外で東北方言を聞ける場所の代表として、かつては上野駅(厳密にはJR東日本=旧国鉄の上野駅。特に長距離列車が多く発着した地上ホーム)がよくいわれた。実際に石川啄木の短歌や、高度成長期の望郷ものの流行歌にも登場していたが、東北新幹線の東京駅への乗り入れ(1991年)などによって上野駅と東北地方との結びつきは劇的に弱まり、すでに過去のイメージとなりつつある。 人口 東北地方全体としての人口動向を見てみると、戦後は自然増(第一次ベビーブーム)を中心に人口増の時代となり、1960年には東北地方全体で約970万人に達した。1960年代の高度経済成長時代には、「金の卵」の名の下に、主に京浜方面に集団就職したり出稼ぎに出たりするようになり、民族移動にも似た人口減(社会減)の時代に入る。この流れは1970年初頭まで続き、第二次ベビーブームによる大幅な自然増があったにも関わらず、1970年には924万人にまで人口が減った。その後、ニクソンショックとオイルショックによって低成長時代に入った東京への流出が減少し、東北地方は再び人口増の時代に入る。ベビーブーム終了後は、900万人を越える市場性と第三次産業への産業転換により地方中核都市の社会増が起き、日本全体の長寿化(死亡率低下)も手伝って堅調に人口は増え続けた。バブル景気期には、一時、東京圏から転入超過ともなり、20世紀末に約985万人に達した。21世紀に入り、東北地方全体の景気低迷と、高度情報化や金融の東京一極集中のために、人口は再び社会減による減少に転じている。今後は、長寿化の限界と団塊の世代の高齢化による死亡率の増加、及び少子化の影響で自然減になり、人口は引き続き減少していくと見られている。 交通 東北地方は、白河の関から本州最北端の大間崎まで道なりに630km以上あり、東京〜姫路間の道のりより距離がある。そのため、東北地方の陸上交通路は、東京までの到達時間短縮が第一に重視され、街道、鉄道、道路の整備は、まず南北を結ぶ交通路が整備された。また、太平洋側の交通の整備が先に進み、日本海側については概してその後に整備された(以下は主要駅間の路線距離の5km毎概数。東北地方の諸都市の間隔に近い太平洋ベルトの都市を示す)。 東京浜松名古屋大阪岡山 東京郡山仙台盛岡青森 大阪福山広島下関熊本 現在、南北陸上交通においては、主に東北新幹線・東北自動車道により関東地方と連結され、旅客では新幹線が優位に立っている。東京への到達時間短縮のために高速交通機関が発達したが、一方で東北地方内の旅客移動も活性化させ、特に太平洋側は、距離に関わらず南北間の都市間交流が盛んとなっている。また、本州・北のターミナルである青森県は、津軽海峡を挟んだ北海道との間に青函トンネルが開通し、諸都市間の関係が深まっている。以前は青森・函館間に青函連絡船が運航されていたが、トンネル開通でフェリー航路が設定され、東北道・八戸道と連動したトラック流通に対応している。なお、近年、南東北と東京との間に都市間ツアーバスが格安で参入し、高速バスと熾烈な旅客獲得競争を繰り広げている。 他方、東西の交通については、山脈・山地などに阻まれながらも明治時代から鉄道や国道が整備されてきたが、高速交通への対応は遅れた。東西高速交通は、「幹」である東北新幹線や東北自動車道と接続する「枝」のように整備され、20世紀末に秋田新幹線や連絡線の高速道路が整備された。この結果、郡山と会津若松、仙台と山形、盛岡と秋田となどとの間で、自然障壁を越えた地域圏や経済圏の形成が進んでいる。 東西交通の高速化により、現在の東北地方は、交通インフラの利便性の違いにより2つの地域に分類される。東京との交通上の関係で見ると、太平洋側から奥羽山脈西側に隣接する盆地群までがいわば「新幹線派地域」、それ以外の日本海沿岸地域が「航空機派地域」に分けることができる。両者の東西の境界はほぼ出羽山地である。 「新幹線派地域」にある仙台空港(仙台都市圏内の名取市・岩沼市)は、多数の国内線や国際線が就航していて、国際線に至っては利用者の半分以上が宮城県居住者以外となっており、「新幹線派地域」の拠点空港となっている。日本海沿岸地域(津軽平野・秋田平野・庄内平野)は、東北新幹線に接続するまでに時間がかかるため、東京とは空路需要が多く、「航空機派地域」となっている。 空港 現在、東北地方の各空港同士を結ぶ路線は存在しないが、かつて仙台空港からは直線距離が300km程度まででも東北地方内を含めて4路線が定期路線として就航していた。 仙台空港〜羽田空港(直線距離:約305km) (参考)新幹線…東京駅〜仙台駅:351.8km(東京駅〜名古屋駅:366.0km) 仙台空港〜青森空港(直線距離:約290km) 仙台空港〜三沢飛行場(直線距離:約288km) 仙台空港〜新潟空港(直線距離:約160km) (参考)高速道…仙台宮城IC〜新潟中央IC:253.5km 1982年の東北新幹線開通(大宮駅〜盛岡駅)によって羽田便が同1982年に廃止され、三沢便も廃止に至った。新潟便は、磐越自動車道が次々整備される中、1992年に廃止された。青森便は、新幹線の利便性が得られない地域であったために設定されたが、JRとの運賃値下げ競争に負けて廃止された。 その他にも新幹線の開通で空港の旅客数が顕著に減少する例が多い。参考として、空港に近い主要都市からの平成28年3月26日ダイヤ改正時点での最速所要時間を併記する。 岩手県(花巻空港)盛岡駅 - 東京駅間の新幹線での最速所要時間は2時間10分。 花巻空港〜羽田空港間に航空路が設定されていたが、東北新幹線が盛岡駅まで開通したため、最大の利用客居住地の盛岡市から離れた花巻空港は、トータルで東京都心までの到達時間での優位性がなくなり、かつ、東北新幹線の方が運行頻度が高かったことから採算割れして羽田便は廃止となった。 山形県(山形空港)山形駅 - 東京駅間の新幹線での最速所要時間は2時間27分。 山形空港では、羽田便を中心に1991年に70万人以上の年間利用客があり、ピークとなったが、1992年の山形新幹線開業で減少傾向に転じ、最盛期の3分の1以下の20万人となった。山形新幹線がミニ新幹線であり、福島駅で列車接続をするため、所要時間短縮効果がフル規格新幹線と比べて大きくないことから、自治体の支援で羽田便が1日1便で運行している。 秋田県(秋田空港)秋田駅 - 東京駅間の新幹線での最速所要時間は3時間39分。 秋田空港では、1996年に約150万人の年間利用客があったが、1997年に秋田新幹線開業、1998年に大館能代空港開港により利用客が減少した。しかし、秋田新幹線がミニ新幹線であることにより東京までの所要時間がそれほど短縮しなかったため、空路から新幹線への旅客の移動はあまり進まず、130万人程度で横ばいとなっている。 青森県南部地方(三沢空港)八戸駅 - 東京駅間の新幹線での最速所要時間は2時間42分。 三沢飛行場では、全体の年間利用客数が2001年に58.3万人に達したが、2002年12月1日に東北新幹線が八戸駅まで延伸されたため、主に羽田線の旅客が減少し、2004年度には33.4万人まで旅客数を減らしている。 青森県津軽地方(青森空港)新青森駅 - 東京駅間の新幹線での最速所要時間は2時間59分。 青森空港も1998年〜2002年は150万人以上の年間利用客がいたが、東北新幹線の八戸延伸以降減少し続けている。 ひとつの空港から東北地方内の全ての空港に就航している路線はない。(例として、羽田からでは福島・仙台・花巻線がなく、伊丹からでは庄内・大館能代線がない。) ガラスコーティング青森 ガラスコーティング岩手 ガラスコーティング宮城 ガラスコーティング秋田 ガラスコーティング山形 ガラスコーティング福島
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groyanderson · 4 years
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ひとみに映る影 第四話「忘れられた観音寺」
☆プロトタイプ版☆ こちらは無料公開のプロトタイプ版となります。 段落とか誤字とか色々とグッチャグチャなのでご了承下さい。 書籍版では戦闘シーンとかゴアシーンとかマシマシで挿絵も書いたから買ってえええぇぇ!!! →→→☆ここから買おう☆←←← (あらすじ) 私は紅一美。影を操る不思議な力を持った、ちょっと霊感の強いファッションモデルだ。 ある事件で殺された人の霊を探していたら……犯人と私の過去が繋がっていた!? 暗躍する謎の怪異、明らかになっていく真実、失われた記憶。 このままでは地獄の怨霊達が世界に放たれてしまう! 命を弄ぶ邪道を倒すため、いま憤怒の炎が覚醒する!
(※全部内容は一緒です。) pixiv版
 ◆◆◆
 石筵霊山きっての心霊スポット、通称『怪人屋敷』。 表から見えるそれは、小さなはめ殺し窓が幾つかあるだけの灰色の廃屋で、さながら要塞のように霊山来訪者を威圧する。 でもエントランスに入ると、意外と明るくて開放感がある。 北側がガラス張りになっていて、外の車道から街灯のオレンジ光が射し込んでいるからだ。 そのコントラストはまるで、世間の物々しい噂と私の楽しかった思い出のギャップを象徴しているようだった。
 C字型の合皮張りソファで囲まれたローテーブルに、譲司さんはスマホを立てかけた。 煌々と輝く画面内には、翼の生えた赤いヤギが浮遊している。  「やあ、アンリウェッサ。何度もすまないね」 スピーカーから、男性的な口調のヤギの声が流れた。でもその声は人間の女の子みたいだった。 アンリウェッサとは、NIC内で使われる譲司さんのコードネームだ。 このヤギさんはNIC関係者なんだろう。  「姿を変えられたとはさっき伺いましたが…性別どころか、人間ですらなかったんですか」 譲司さんは分厚い眼鏡をつまんで画面を凝視した。
 「この方、お知り合いですか?」 私は画面を見たまま尋ねた。  「はい。彼はNIC元幹部のハイセポスさんです。 あの時中東支部でサミュエルに殺害された一人で…ほら、オリベ。キッズルームのガブリエルお兄さんや」  <ああ!もちろん覚えてるわ! 人を騙す脳力を持った、イタズラ好きの嘘つき先生ね!> 情報をまとめるとつまり、ハイセポス元幹部は本名ガブリエルさん、 中東支部でサミュエルに殺害された被害者で、キッズルームの養護教諭の一人だったらしい。 ハイセポス元幹部はにっこり微笑むと一瞬発光して、恐らく生前の姿であろう、人間の男性に変身した。  「やあ、オリベにジャックも久しぶりだね」 本当の彼は、きりっと賢そうな三白眼を持つ、小柄な黒人さんだった。
 「ハイセポス元幹部は、さっき俺とポメが新幹線に乗っとった時に電話をくれたんや。 ファティマンドラのアンダーソン氏がジャックを目覚めさせた事とか、さっくり教えてくれはってな」  「それでさっき、皆して一美がアンダーソンと会ったって話に飛びついてきたのね」 私の影でくつろいでいたリナが、胸から上だけ出てきて話題に参加した。  「それで、ご用件は何でしょうか」 譲司さんが改めて伺う。
 「ああ。すまないが、僕はアンリウェッサの補佐として、ずっとこの端末から君達を監視させて貰っていた。 そこでどうしても確認したい事を聞いてしまって。質問してもいいかな…ミス・クレナイ」 え、私?  「な…何ですか?」
 「君はさっきから、この石筵に観音寺があると話しているね」  「はい。私が小さい頃、和尚様と住んでいたお寺さんです」  「その和尚の名を教えてくれるかい?」  「いいですよ。和尚様のお名前は…」 あれ?
 「その観音寺はどこにあるのかい?」  「あ、はい。ここからすぐ近くですよ。 外に出て、丁字路を右…いや、左…」 あれ?え!?
 「ヒトミちゃん?」 イナちゃんが訝しげに私の顔を覗きこむ。 おかしい、有り得ない。そんなはずはない。 観音寺と、和尚様に関する記憶���…ほとんど思い出せないなんて!  「ちょっと待ってください。忘れるはずないんです。 だって、最後に会ったのは上京する直前…」 いや、違う。
 『ひーちゃん、和尚様は今いないから、私がお土産を渡しておくね』 私の脳裏に、ファティマンドラの安徳森さんと出会った日の、萩姫様の言葉がよぎる。 そうだ。あの日は会えなかったんだっけ。 だから最後に会ったのは、玲蘭ちゃんとハゼコちゃんの事件の時…中学一年生。 中学時代に会っているんだから、せめて和尚様の顔ぐらいは…顔ぐらいは…顔は…
 ハイセポスさんはばつが悪そうに顎を引いた。  「ミス・クレナイ。とても言い難いんだが、石筵に観音寺はないんだよ」 観音寺が、ない?  「ああ…なくなっちゃったんですか?跡継ぎ不足とかで…」  「違うんだ。ないんだよ。 …そんな寺は、この地に歴史上一度も存在していなかったんだ」 そんな…  「そんな、バカな!」
 画面から顔を上げると、みんな私を怪訝そうに見ている。 リナはまた私の影に引きこもった。  「ち…違うんです、観音寺は本当にあったんです! だって現に、私は怪人屋敷の中に入った事があるし…あ!」 そ、そうか!オリベちゃんはさっき、ハイセポスさんを『人を騙す脳力を持つイタズラ好き』って言ってたじゃないか。  「な…なーんだ!ハイセポスさん、ドッキリはやめて下さいよ! そりゃあ私は『したたび』でいつも騙されてますけど、あれはテレビの演出でして…」  「嘘だと思うなら、探してみるといい。 すぐ近くなんだろう」
 ◆◆◆
 私は咄嗟にイナちゃんの手を引いて、怪人屋敷を飛び出した。辺りは既に暗くなっている。 灯りが必要だ。私は二人分の足元の影を右手の中に集めた。 影が圧縮されて行き場を失った光源を親指と人差し指で作った輪に閉じ込めると、『影灯籠(かげどうろう)』という簡易懐中電灯になるんだ。 なにかと便利なこのテクニックを教えて下さったのだって、和尚様だったはずなのに…。
 「イナちゃんは、信じてくれるよね?」 山道のぼうぼうの草を蹴りながら私は独りごちた。  「色んな事を教えてもらったんだよ。 知ってる?チベット仏教の本尊は観音菩薩様なんだよ。 だから観音菩薩様は、タルパとか人工霊魂も、ちゃんと救済して下さるんだ」 足元でバッタが一匹逃げた。
 「ヒトミちゃん…帰ろうヨ…」 振り返ると、イナちゃんは寒そうに肩を狭めていた。 早くお寺を見つけなきゃ。お蕎麦屋さんの予約時間も近づいている。  「ねえちょっと、一美…」 影灯籠からリナが滑り落ちる。  「あんまり気が進まないけど、この際だから言うわ。あんたの和尚は…」「真言だって!」 私は苛立って声を荒らげてしまった。  「…ちゃんと言えるもん。オム・マニ・パドメ・フム…」
 「ヒトミちゃん」  「念彼観音力、火坑変成池(観音様に念じれば、火の海は池に変わり)… 念彼観音力、波浪不能没(観音様に念じれば、溺れて沈むことはない)…」
 リナは私から離れ、イナちゃんの影に宿った。 私は足を泥だらけにして彷徨った。 何だか泣けてくる。でも両目から滲み出た涙は、すかさず乱暴な北風に掠め取られる。 もうリナとイナちゃんはついてきていない。
 「オム・マニ・パドメ・フム…オム・マニ・パドメ・フム…」 夜の山の寒さと焦りも、私をあざ笑っている。
 「オム・マニ・パドメ・フム…」 真言を繰り返す度に、思い出とか、影とか、自分の色々な物が剥がれていく。
 「オム・マニ・パドメ…あ」
 我に返って見ると、手から滴り落ちた影は一筋の線になって、私達の行くべき道を示していた。  「ほら…私、ちゃんと覚えてたでしょ?」 私は再びイナちゃんの手をとって、影が示す方向へ進んだ。
 ◆◆◆
 影の糸を回収しながら進むと、私達は怪人屋敷に戻っていた。 いや、糸の先端は…怪人屋敷に隣接する、ガレージの入口で途絶えているみたいだ。
 ガレージのシャッターはやすやすと持ち上がった。鍵がかかっていなかったんだ。 背後の街灯に中が照らされると、カビ臭い砂塵が舞い上がり、コウモリや蛾がパニックを起こして飛び出してきた。 街灯の光が行き渡るようにガレージ内の影を調節すると、そこには…
 「なに、これ…」 そこにあったのは、床に敷かれたままの小さな花柄の布団。錆びついたグルカナイフ。薪と木炭。鍋。 山積みの『安達太良日報』1994年刷。どこかの斎場のタオル。塩。干し柿。干しキノコ。干しイナゴ。 ���かがここで生活していた跡のようだ。何故かすごく懐かしい感じがする。
 壁に光を当てると、おびただしい枚数の半紙が貼られている。 写経、手描きのマンダラ、チベット守護梵字、真言、女の子と観音菩薩様が仲良く焚き火を囲う絵。 そして、それらに囲まれたガレージの中央最奥には、私の背より少しだけ大きな何かが、白い布で覆われていた。
 「ヒトミちゃん、ここ怖いヨ」 イナちゃんがガレージの入口から囁いた。  「怖い?なんでかな。あ、コウモリならもういないみたいだよ」 私は天井を照らしてみせた。でも、イナちゃんはまだ萎縮している。  「出てきて、ヒトミちゃん。ここやだヨ」 どうしてそんなに怯えてるんだろう。  「平気だよ!だってここは…ここは私が住んでた観音寺だもん!」
 私は壁の半紙を幾つか剥がして、イナちゃんに差し出した。  「ほら、これ。和尚様に書道を教わってたの。 凄いでしょ、幼稚園生でこんな難しい漢字書いてたんだよ! だから私、今でも字の綺麗さには自信があるんだ」 半紙を一枚ずつ丁寧にめくって見せる。『念彼観音力』『煩悩即菩提』、どれも仏教的な文章だ。  「なーんて、本当はね、影絵で和尚様の本を写しながら書くから、こんなに上手く書けてたんだけどね」 『而二不二』『(梵字の真言)』『(マンダラ)』『金剛愛輪珠』…  「オモナアァッ!!」 突然イナちゃんが後ずさった。 手元の半紙を見ると、書かれていた文字は… いや、これは…アルファベットの『E』と『十』の字に似た、記号… どうしてイナちゃんの手相がここに…?
 「イナ?紅さん?」 怪人屋敷から皆が集まってきた。 イナちゃんはリナと抱き合い、震えている。 皆もそんなイナちゃんの怯えた様子を見て、不穏な表情になった。  「だ…大丈夫だってば!そ、そうだ! 観音菩薩様の御本尊を見てもらえば、きっと怖くなくなるよね! すごく優しいお顔なんだよ。ほら!」 私はガレージ最奥の観音像にかかった白い布を、思いっきり引き剥がした。
 「あぃぎいぃぃやああああああああ!!!!!」 隣の安達太良山にまで響くほどの声で、イナちゃんが絶叫した。
 「え…?」 イナちゃんは白目を剥き、口の両端から泡を吹き出して倒れた。  「ガウ!ギャンッギャン!!」 歯茎を見せて吠えるポメラー子ちゃんの横で、オリベちゃんと譲司さんは腰を抜かしている。 するうちジャックさんが気絶したイナちゃんに取り憑き、殺人鬼や暴力団も泣いて逃げ出すような形相で私の胸ぐらを掴んだ。
 「テメェ馬鹿野郎!!この子になんて物見せてやがる!!!」 え…なに言ってるの、ジャックさん?  「ううっ…うっ…」<ヒトミちゃん、そ…それ、隠して…!> 嗚咽しながらオリベちゃんがテレパシーを送る。 私は真横にある観音像を見た。 金色の装飾品に彩られた、木彫りの…
 「は?」 私は真横にある観音像を見た。 それは全身の皮膚を剥がされ、金色の装飾品に彩られた、即身仏のミイラだった。
 ◆◆◆
 「なに…これ…」 私は一瞬、目の前にある物が何だかよくわからなかった。 変な話、スルメイカやショルダーハムでできた精巧な人体模型がお袈裟を着てネックレスをしているような、 それぐらい意味不明でアンバランスな物体に見えた。
 <と、ともかく…公安局に連絡を! さっきのファティマンドラの件もあるし…> 腰を抜かしたままのオリベちゃんが、譲司さんを揺さぶって電話を促す。  「あ…ああ!せやな!C案件対策班に…」  「やめてください!」  「<え?>」
 私は気がつくと叫んでいた。  「つ…通報はやめてください!だ、だって…」 だって、何なのか?自分でもわからない。 ただ、ここが警察に暴かれてしまったら、何かとてつもない物を失ってしまうような気がして。
 「何言ってやがる…。ここに変死体があるんだぞ! 花生やして腐ったミンチどころじゃねえ、マジの死体がだ!!」 ジャックさんがイナちゃんの身体で私を責める。  「ち…ち…違います!観音様を変死体だなんて、罰当たりな事言わないで下さい!! これは…この人は…このしどわあぁぁ…!」 嗚咽で言葉が出てこない。もう、本当はわかってるんだ。 この即身仏は…私の…和尚様なんだ。
 混乱と涙とガレージ内のハウスダストと鼻水で、私は身も心もぐしゃぐしゃになっていた。 皆はまだ何か怒鳴ったり喚いたりしているみたいだけど、もう何もわからない。 私はただ、冷たい和尚様の足元にすがりついてひたすら泣いた。
 「ジャック、もうええやん。やめよう」 すると譲司さんがガレージに入ってきて、私の髪を掴んで逆上していたジャックさんを宥めた。  「紅さん、わかりました。通報は後でにします。 その前に…紅さんの和尚様に、ご挨拶させて下さい」 彼は私の頬を優しく指で拭い、小さい子に向けるような微笑みで言った。 そして和尚様の前に立つと、うやうやしく一礼し、  「失礼します」と呟いて、合掌されている和尚様の両手にそっと触れた。
 譲司さんはそのまましばらく静止する。和尚様の記憶を、読んでいるみたいだ。  <ジョージ…> オリベちゃんがまたテレパシーによる視界共有を提案しようとする。 でも譲司さんは視線でそれを断って、  「紅さん」 私に握手を求める仕草をした。
 「行きなさい」 リナが私を促す。  「私も知らない真実。ちゃんとぜんぶ見届けるのよ」 私は頷いて、譲司さんの手を握る。 そのまま影移しで譲司さんの影に意識を溶け込ませ、彼と同じ視界へ飛んだ。
 ◆◆◆
 ザリザリザリ…ザザザ…。視覚と聴覚を覆う青黒い縞模様とノイズ音が晴れていくと、目の前が病院の病棟内のような風景になった。 VHSじみた安徳森さんの時と違って、前後左右を自由に見ることができる。
 「ずいぶん鮮明な記憶ですね」 気がつくと隣で、ノイズがかった譲司さんが私と手を繋いで立っていた。 今、私は彼の影だ。  「和尚様は、どこでしょうか…?」 辺りを見渡すと、昼間なのに全ての病室のドアが閉まっている。 案内板を見るに、ここは精神科の閉鎖病棟らしい。 ふと、私ば病室の一つから強い霊的な電磁波を察知した。  「譲司さん」  「そこですよね」 彼も同じ部屋にダウジングが反応したみたいだ。 ただ、空気で物を感知する彼が気付いた事は霊ではなかったらしい。 彼は『水家曽良 様』と書かれたドアプレートを指さしていた。
 意識体の私達は幽霊のように病室のドアをすり抜ける。 中にいたのはベッドに横たわるサミュエルこと水家曽良と、彼を見下ろす二人の霊魂だ。 私から見て左側の霊は、すらっとした赤い僧衣の男性。 顔は指でこすった水彩画のようにぼやけていて、よく見えない。 一方右の霊は、顔と股間の部分だけくり抜いた人間の皮膚を肉襦袢のように着ている、不気味な煤煙だ。 水家曽良はまだ子供の姿。日本国籍を得て間もない頃なんだろう。
 「この子の才能は実に惜しい物だった」 肉襦袢の霊が言う。喋り方は若々しいけど、声はおじいさんみたいだ。  「タルパはそう誰でも創造できる物ではない。 まして彼は、我々が与えた『なぶろく』のエーテル法具をも使いこなした。 それを享楽殺人の怪物を生み出すために使った挙句、浅ましい精神外科医共に脳力を摘出されるとは。 この子に金剛の朝日は未来永劫訪れないだろう」 なぶろく?と聞こえた箇所だけ意味はわからなかったけど、 どうやら彼は水家に何らかの力を与えた霊魂らしい。  「エーテル法具…NICで聞いた事があります。 エクトプラズム粒子を含んだ何らかのタンパク質塊、 人間の脳を覚醒させて特殊脳力を呼び覚ます、オーバーテクノロジー…」 譲司さんはそれに何か心当たりがあるようだ。
 「ともかく、これ以上損失を出す前に、彼の魂を楽園へ送るのは諦めましょう。 彼はまだ子供ですが、余りにも残虐すぎました」 赤僧衣の霊が、隣の肉襦袢の霊の顔色を窺うように言う。まだいまいち話が見えない。  「その通りだ。しかし、私達もただで金剛の地に帰るわけにはいくまい」
 すると肉襦袢は、眠っている水家の鼻に指を突っ込んだ。  「フコッ」 水家が苦しそうな声を発する。彼の耳から水っぽい液体が垂れ、頭の中で何かがクチャクチャと動き回る音がする。 でも水家は意識がないのか、はたまた金縛りに遭っているのか、微動だにしない。 やがて肉襦袢が鼻から指を引き抜くと、その指先には、薄茶色い粘液でつやつやと輝くタコ糸のような紐が五十センチほど垂れていた。  「どうなさるおつもりですか」 心配そうに赤僧衣が問う。 肉襦袢は紐を丁寧に折りたたむと、水家の病室から去っていった。 私達と赤僧衣は彼を追いかける。
 肉襦袢は渡り廊下を通って、違う病棟に移動した。 彼が立ち止まったのは、新生児のベッドが並ぶ、ガラス張りのベビールームだった。 彼は室内に入り、生まれたばかりの赤ちゃん達の顔を一人ずつ覗いていく。 そして、壁際から五番目の赤ちゃんの前でぴたりと静止した。
 「見なさい。この子だ」 肉襦袢は赤僧衣に手招きする。 赤僧衣は赤ちゃんを見ると、感嘆のため息をついた。  「この子の顔の周りだけ、不自然に影で覆われているだろう。 天井の光が金剛のように眩しくて、無意識に影を作っているんだ。これは影法師という珍しい霊能力だ。 この子は金剛級に強い素質を持っている」 安らかな顔で眠る赤ちゃんの頭上で、肉襦袢が興奮気味に語る。 あれ、そういえば…
 「譲司さん。水家曽良が日本に来たのって、具体的にいつなんですか?」  「日付までは覚えとりませんが…たぶん、1990年の十一月上旬です。 俺日本の家に引き取られて最初の行事が弟の七五三やったんで」 1990年十一月、影法師使いの赤ちゃん…偶然か? 私の生年月日は1990年十一月六日だ。 まさかここ、石川町の東北総合病院じゃないよね?違うよね!? そんな不穏な想像が脳内で回っている一方、肉襦袢は目を疑うような行動に出た。
「金剛の力は金剛の如く清き者が授かるべきだ」 肉襦袢はさっき水家から引き出した糸を広げると、その先端を…赤ちゃんの口に含ませた! チュプ、チュプ、チュパ…ファーストキスどころか、まだお母さんのおっぱいすら咥えた事もない新生児は、本能的に糸を飲み込んでいく!  「ほら、こんなに喜んでいるだろう」  「そ…そう…ですね…」 表情の見えない赤僧衣も露骨にドン引きしている。 譲司さんが真っ青を通り越して白塗りみたいな顔色で私を見た。  「あ、あの…紅さん、一旦止めま」「譲司さんうるさい!!」「アハイすいませェェン!!!」 背中から火が出そうだ。
 永劫にも思える時間をかけて、赤ちゃんは糸を全て飲み込んでしまった。  「これでこの子はタルパの法力を得た!」 肉襦袢が人皮の手で拍手する。  「失礼ですが如来、一度穢れた者の法具を赤子に与えるのは、この子の人生に悪いのでは…?」 如来?如来って言った今!?この赤僧衣、如来って言ったの!? こんなエド・ゲインみたいな格好したモヤモヤの外道が如来!?有り得ない有り得ない有り得ない!!
 如来と呼ばれた肉襦袢はキッと赤僧衣の方を向いた。  「ではどうしろと?サミュエル・ミラーの死後霊魂を収穫する価値がなくなったと確定した今、 これ以上金剛の楽園に損失を出してはならないだろうが!」  「ですが…「くどいっ!!」 事情を知らない私にも赤僧衣の言っている事は正論だとわかるが、彼は肉襦袢に逆らえないようだ。
 「よかろう。お前がそこまでこの子の神聖を危惧するなら、この子に金剛の守護霊を与えてやろう」 肉襦袢は赤ちゃんの胸に煤煙の指を沈めた。  「な…待って下さい!肋骨なら、私の骨を!」 肋骨?  「ええい、既に『なぶろく』を捧げたお前に何の法力が残っているというのか?出涸らしめ! 『ろくくさびのひりゅう』は金剛の霊能力を持つ者の肋骨でなければ作れん!」 肉襦袢はわけのわからない専門用語を喚きながら、赤ちゃんの胸の中で… うそ、まさか!?  「この赤子に金剛の有明あれーーッ!」
 プチン!
 まるで爪楊枝でも折ったようなくぐもった軽い音がした後、  「ニイィィィーーーギャアァァアアアアァア!!!!!」 赤ちゃんは未経験の恐怖と激痛で雄叫びを上げた。  「みぎゃーーっ!」「あーーーん!」釣られて他の赤ちゃん達も阿鼻叫喚! すかさず看護師がベビールームに飛びこんで来るが、赤ちゃんを泣かせた原因を彼女らが知ることはない。
 「お前は石英で龍王像を彫り、この金剛の肋骨を楔として奉納するんだ。 さすれば『肋楔の緋龍(ろくくさびのひりゅう)』はこの子を往生の時まで邪道から守り、やがて金剛の楽園へ運ぶだろ���。 象形は…そうだな、この福島の地に伝わる、萩姫と不動明王の伝説に因んで、倶利伽羅龍王像にするといい。 この子に金剛の御加護があらん事を…」 肉襦袢は赤ちゃんの小さな肋骨を赤僧衣に手渡すと、汚らしい煤煙を霧散するようにして消え去った。 霊的な力で肋骨を一本引き抜かれた赤ちゃんの胸には、傷跡の代わりに『E』『十』の形の痣ができていた。
 「すまない…ああ、本当にすまない…」 肋骨を奪われた赤ちゃんの横で、赤僧衣の霊魂は崩れ落ちるように土下座して咽び泣いた。 看護師さん達はそんな彼の存在を完全に無視して、この突然発生したパニックの対応に追われている。
「こんなん嘘やろ…」 譲司さんが裏返った声でそう呟いた時、私は『生まれつき一本少ない』と言い聞かされていた自分の肋骨のあたりを抑えて震えていた。 それから文字通り気が遠くなるような感覚を覚え、私達はこのサイコメトリー回想から脱出した。 不気味な如来を讃える赤ちゃん達の叫び声が、だんだんと遠ざかっていった。
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