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mlvoidchicken · 3 months
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ┃VOID Chicken Nuggets 2024年2月9日号<札幌アート特集> ┃‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
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┗━━━━━━━━━━━━━━2024/2/9━━━
C o n t e n t s
[1] 漫談「札幌国際芸術祭2024 めぐり」
[2] SIAFとあわせてまわろう札幌冬の展覧会など
[3] 編集後記
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [1] 漫談「札幌国際芸術祭2024 めぐり」 ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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ENESS Airship Orchestra 札幌雪まつり大通り2丁目会場
さぼ:札幌国際芸術祭の未来劇場、雪まつり会場、パラレルミュージアムをいそぎ足でまわって疲れたなー(チュー。アイスティーを飲む音)
さかぐ:札幌雪まつりシーズン!人ごみで疲れたよー
さぼ:未来劇場(東一丁目劇場施設)がメイン会場といっていいのかにゃ?(チュー)
さかぐ:ですね。北海道立近代美術館、札幌芸術の森、モエレ沼公園、SCARTSも会場だけど、ディレクター小川秀明さんの肝入りは、やはり未来劇場。
さぼ:チェ・ウラムの作品はよかったね。しかしいろんな作家がいて目が回ったなー。ちょっとオープン当時のICC(初台)かしら?的な既視感を覚える作品もあったけど。さかぐ的にはおすすめは何ですか?
さかぐ:やっぱりチェさんの4作品はじっくり見てほしいかな。あとは電気使った作品が多いなかで、国松希根太さんのストレートな木の彫刻が展覧会をぎゅっと締めてくれてよい感じです。
さぼ:うんうん。国松さん感動しました。手で触りたい衝動に駆られますがお手を触れはいけません。むき出しの木肌の誘惑に負けそう。
さかぐ:それとピカーと発光する部屋のシン・リウさんのちょっとグロい彫刻もじわじわきます。本人はスキー三昧でめちゃくちゃ冬を満喫してました。WIRED JAPANのインタビューも面白かった。タイランド・ビエンナーレにもでてる(らしい)注目のアーティスト。
WIRED JAPAN PODCAST SIAF as a tool #4 ゲスト:Xin Liu
さぼ:未来劇場といいながらも、古い劇場の裏舞台や地下を使っているのがドラマティックだな。座席にあるチェのデカい花が開くのを凝視して待ってほしいにゃ。
さかぐ:まるで劇場の生き血を吸って咲く花みたいな笑。そこから外に出てちょっと大通りの方に戻ると、雪まつり会場でENESSのポワポワバルーン「Airship Orchestra」が皆さんを癒やしまくってます。
さぼ:蹴り入れてたお子様がお母さんに叱られてましたな(笑い)。夜のバルーンもぜひ見てほしい。
さかぐ:SIAFの会期中、いろんな連携・公募プロジェクトとかあいのり企画で札幌はいま展覧会がいっぱい。札幌駅から大通りまでの地下歩行空間(チカホ)のあちこちでサッポロ・パラレル・ミュージアムていう企画もやってます。
さぼ:パラレルミュージアム初めてみたけど延々と地下道歩いて疲れたー(チュー)。マップ見てもなかなか場所がわからなかったぞよ。つか、我々が方向音痴なのか?
さかぐ:ちょうどラッシュアワーだったし、チカホの露店や看板に作品が紛れてしまって。。札幌ってこういう感じで公共空間をみんなに開きましょうっていうところがあって、ベンチもけっこう多いんだよね。1円も払わずに座っていられる場所があるっていいよねー(どっこいしょ)
さぼ:ベンチがあって助かりました(還暦過ぎたし)。そういえば「夜のトリエンナーレ」も2月20日から始まりますね。これは見逃しちゃだめだよね???私は過去のは見てないので教えて!!!
さかぐ:キャッチフレーズは「ハードでコアな夜の♡展覧会」。札幌アート界渾身の企画、いっぱい飲んでから行くといいよー
さぼ:いっぱい?一杯じゃなくて?詳細はウェブを見てくださいね、皆さん。話は少しそれるけど、未来劇場の隣に中央バスターミナルがあるよね。旭山動物園(旭川市)までの入場券付きバスチケットがあるとか?3日間有効なら泊まってもいいね。芸術祭と一緒に動物園も楽しめる! https://www.chuo-bus.co.jp/main/setticket/?ope=det&n=1
さかぐ:これに乗ってしろくまを見にいくぞ!中央バスターミナルは昭和の旅情爆発。地下食堂街もおすすめです。いろいろあるのできっと旅の元はとれるでしょう。あっという間に終わってしまう札幌国際芸術祭、ぜひいらしてください。
さぼ:あのねー、エゾヒグマのすなすけ🐻がめっちゃ可愛いのよ。みんな見てね。芸術祭も一緒に。 湯たんぽで遊ぶすなすけ
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ニセコ帰りのシン・リウさん。(SIAF2024 未来劇場)
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青木美歌(SIAF2024 未来劇場)
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横山裕一「ふくろ」(サッポロ・パラレル・ミュージアム)
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雪まつりの自衛隊の雪像、今年は「ゴールデンカムイ」。奥行きすごかったです。
────────────────────────────── 札幌国際芸術祭2024 (日本語) Sapporo International Art Festival 2024(英語) ウサ モシㇼ ウン アㇱカイ ウタㇻ サッポロ オッタ ウエカㇻパ Usa Mosir un Askay utar Sapporo otta Uekarpa 2024(アイヌ語)
会期:2024年1月20日〜2月25日 [37日間] ※札幌芸術の森美術館は3月3日まで ※さっぽろ雪まつり大通2丁目会場は2月4日〜2月11日 会場:未来劇場(東1丁目劇場施設)北海道立近代美術館 札幌芸術の森美術館 札幌文化芸術交流センターSCARTS モエレ沼公園 さっぽろ雪まつり大通2丁目会場ほか テーマ:LAST SNOW ディレクター:小川秀明 (アルスエレクトロニカ・フューチャーラボ共同代表/アーティスト) チケット情報はこちら https://siaf.jp/
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [2] SIAFとあわせてまわろう 札幌冬の展覧会など ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
サッポロ・パラレル・ミュージアム2024 2月3日〜2月11日 会場:赤れんが テラス、札幌駅前通地下歩行空間、sitatte sapporo、大丸札幌店、D-LIFEPLACE 札幌、(仮称) 北海道ビルヂング建替計画〈仮囲い〉 出展作家:石井海音、内田聖良、佐藤壮馬、平山匠、山本卓卓&三野新、横山裕一 https://www.parallelmuseum.com/
すすきの夜のトリエンナーレ♡2024 2月20日〜2月25日 18:00 〜 23:00 オークラビル7階(札幌市中央区南五条西2丁目1-14) 出展作家:Chim↑Pom from Smappa!Group、今村育子、遠藤麻衣、上遠野敏、小泉明郎、鈴木涼子、高橋喜代史、武田浩志、南阿沙美、鷲尾幸輝 入場料:1000円(ワンドリンク付き) 協賛受付中!ユニークなリターンあり。詳細&お申込みはこちら http://susukinotriennale.com/
是恒さくら「The warp and woof of a whale of a tale 経緯、その鯨ほどの余白」 1月15日~3月14日 9:00~17:00(土日祝休) 北海道文化財団アートスペース(札幌市中央区大通西5丁目11 大五ビルヂング 3階) https://www.sakurakoretsune.com/
第21回AAF戯曲賞受賞公演 『鮭なら死んでるひよこたち』札幌公演 2月22日(木)19:30 開演 2月23日(金祝)14:00 開演 会場:コンカリーニョ(札幌市西区八軒1条西1丁目ザ・タワープレイス1F) (JR琴似駅直結) 戯曲:守安久二子 演出:羊屋白玉 出演:遠藤麻衣、神戸浩、スズエダフサコ、田坂哲郎(非・売れ線系ビーナス)、リンノスケ(きっとろんどん) 全席自由 / 税込一般 : 前売 3,500 円 / 当日 4,000円 https://2024.siaf.jp/event/upaste-27/
伊藤隆介「Giggling Mirages(笑う蜃気楼)」 1月21日〜2月25日 11:00〜18:00(火水休廊) ギャラリー門馬(札幌市中央区旭ケ丘2丁目3−38) https://www.g-monma.com/exhibitions/20240121_ito/
武田浩志「Utopia MoMo-Iro 16」 TAKEDA system vol.11 大島慶太郎「シカとスズカケノキ」 1月20日〜2月25日 11:00~19:00(日祝休) salon cojica(札幌市北区北23条西8丁目3-33 coneco bldg.1F) https://www.salon-cojica.com/
増山士郎 「世界の果てで、動物と対話する」 1月20日〜2月25日 13:00~19:00(火水休) CAI03(札幌市中央区南14条西6-6-3) https://cai-net.jp/
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [3] 編集後記 ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「いろいろの人の思わくはかりかねて、今日もおとなしく暮らしたるかな。」(石川啄木)の気分です。(sabo)
札幌は飲み過ぎ注意です。東京ではこちらもぜひ。SIAFが終わったら能登へ行きたい。(さかぐ)
さわひらきドローイング展「きっかけとかたち」関連イベント  クロストーク/奥能登の未来を想う 日時:2024年2月16日(金)19:30~21:00 ON SUNDAYS
奥能登は、その地理的制約のみならず、日本有数の高齢化先進地域でもあり、今後、救援から復興へとシフトしてゆく過程でも、多角的な思考と想像力、そして高度な柔軟性と実践力が求められます。被災地の未来を、どう描き出してゆくのか。本展作家さわひらきが、長年、石巻の復興に文化芸術の立場から関わってきた和多利恵津子・浩一と共に考えるトーク・イベントを開催いたします。
出演:さわひらき + 和多利恵津子 + 和多利浩一 参加費無料(要予約) イベント当日は能登地震被災者への募金箱を設置します。 申込先:オン・サンデーズ [email protected]
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mlvoidchicken · 4 months
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ┃VOID Chicken Nuggets 2023年12月19日号 ┃‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
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┗━━━━━━━━━━━━━━2023/12/19━━━
C o n t e n t s
[1] 「アートサイト名古屋城2023」 by 鏑木朋音
[2] 東京アート日記 by 塩﨑浩子
[3] 「2023年公開映画セレクション」15選! by 木村重樹
[4] 告知 12/21(木)よりグループ展に参加します‼️
 「無 FOR SALE XMAS」展 from sabo
[5] 編集後記
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [1] アートサイト名古屋城 2023     文:鏑木朋音 ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2023年11月29日(水)-12月10日(日)
名古屋城内の各所(本丸御殿南側、二之丸庭園、茶席、カヤの木ほか)
先だって木造で復元が計画されている天守閣に高齢者や身障者のためにエレベーターを設置すべきか否か、がニュースになった名古屋城。 戦災で焼失した名古屋城は実測図や乾板写真による記録が残されていたことで精度の高い復元を実現したが、歴史を鑑みれば尾張徳川の居城として創建された慶長15年から現在までずっと整備や修復 を繰り返しながら変化を続けている。 このたび名古屋城で開催された初の現代アートプロジェクト「アートサイト 名古屋城 2023 想像の復元」(会期:11月29日から12月10日まで)は愛知とゆかりのある玉山拓郎+GROUP、寺内曜子、丸山のどか、山城大督、4組のアーティストが参加、それぞれまったく異なるアプローチで「現在も続く復元作業」から着想を得た作品を発表した。
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玉山拓郎+GROUP《Locus》2023 本丸御殿エリア 「アートサイト名古屋城2023 想像の復元」展示風景 撮影:ToLoLo studio
玉山拓郎+GROUPは2018年に復元された真新しい本丸御殿の中庭にダイナミックな光の空間を出現させた。 実際には数回しか将軍が利用しなかった本丸御殿だが日々維持管理は行われていたはずで、玉山は記憶には残されていない中庭を掃き清める人たちの所作を想像して作品の構想を得たという。 気鋭の建築家ユニット、GROUPとともに設計した鉄パイプは蛇行しながら流れる曲線を描き、そこに吊り下げられたLEDグリーンライトとモップを目で追うと、かつての人々の気配が残像のように見えてくる。
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寺内曜子《一即多多即一》2023 茶席エリア 「アートサイト名古屋城2023 想像の復元」展示風景 撮影:ToLoLo studio
70年代末にロンドンで活動を始めた当初から「世界は区別のない一つの物」という一貫したコンセプトで制作を続ける寺内曜子は、二つの茶室それぞれの床間に異なる作品、「一即多多即一」と「パンゲア」を展示。  茶室の狭いにじり口から入って作品と対峙するうちに私たちは世界の部分しか見えない」「そのことからさまざまな分断が生まれている」ことを気付かされる。 静謐な茶室で今なお紛争の絶えない世界へと想いを馳せることは、太平の世に茶を嗜んだ武将にもどこか似た行為なのかもしれない。
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丸山のどか《Labor to Blur》2023 二之丸庭園エリア 「アートサイト名古屋城2023 想像の復元」展示風景 撮影:ToLoLo studio
かつて織田信長の居城「那古野城」が築かれ、江戸時代初期に造園された二之丸庭園は江戸後期に拡張、明治期には陸軍所轄となった歴史を持ち、今また復元整備が行われながらそれぞれのエリアが緩やかに繋がっている。 丸山のどかは庭園でかつて使われていたであろう作庭の道具や茶会の茶器、兵士たちの暮らしの痕跡となるレンガ、今なお続く発掘調査に用いられる土嚢袋などとそれらを乗せた台車をイメージして木材を組み合せ塗装を施した彫刻を、あたかも当時の職人や武士、兵士などが移動させとりあえず置いたかのように風景に溶け込ませる。 庭園の樹々や石を邪魔しないシックなカラーリング��ありながら、自然界にはない余計なものを徹底的に削ぎ落としたフォルムの造形物を置くことで違和感を生じさせ、権力のある人間が作り出した庭の意味と労働者の価値を際立たせた。
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山城大督《SOUND OF AIR》2023 名古屋城 西之丸エリア 「アートサイト名古屋城2023 想像の復元」展示風景 撮影:ToLoLo studio
映像の時間概念を空間やプロジェクトへ応用し、その場でしか体験できない時間を作品として展開する山城大督は名古屋城築城以前の600年前から生きているとされるカヤの巨木に注目、専門家の手を借りてカヤの実からエッセンシャルオイルとフローラルウォーターを抽出して、菊花大会で利用されている屋形を使ったスペースを覆う大きな写真にその過程を収めた。 エッセンシャルオイルとフローラルウォーターは訪れた人が実際にその清冽な香りを嗅ぐことができ、それは築城以前からカヤの木を見ていた人たちや日々木を世話しながら生態調査を続ける名古屋城関係者らとも共通の感覚を持つ体験となる。
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丸山のどか《Labor to Blur》2023 二之丸庭園エリア  撮影:鏑木朋音
ベネチア・ビエンナーレ日本館のキュレーションも手がけた今回のプロジェクトキュレーターである服部浩之は「復元におけるズレや矛盾は、実は人間の想像/創造力が凝縮されたアート(技芸)のあらわれとも言えるでしょう」とステートメントで述べている。 名古屋城はかなり昔に訪れたことがあるのだが通りいっぺんの印象しかなく、今回��まざまな場所に散りばめられて展示された作品鑑賞のために城内を歩き回ることで改めてその歴史と特異性に気付かされた。 訪れたときはちょうど紅葉の真っ盛りで移ろいゆく季節の中に在る作品の美しさに感銘し、夜間公開では日中とはまったく別の表情を魅せることに驚愕するなど、4組のアーティストの企みにまんまと嵌められる快感を覚えた展示でもあった。
鏑木朋音(編集者/ライター)
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [2] 東京アート日記  文:塩崎浩子 ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
コロナと酷暑を経て少しずつ展覧会にも行き始めました。アート日記、少しずつ書き溜めていきます。
■ 小林正人「自由について」シュウゴアーツ(2023/09/22〜2023/11/05)
3点の大きな床置きの作品を中心とした展覧。作品が近い。画家の身振りをなぞるかのごとく体ごと画面にダイブしていくような感覚に包まれる。黄金の光があふれ絵が立ち上がる/産まれる足元にはパレットのように絵の具が散らばり、絵の具のチューブのふたや藁やらも。小林はこの世界の全ては「画(絵)の景色」だという(プレスリリースより)。見えないルールや枠だらけの不自由なこの世界で、小林は自由を象る画(絵)の景色とその枠(フレーム)を全身でこしらえ続ける。
■ 石川真生「私に何ができるか」東京オペラシティ アートギャラリー(2023/10/13〜2023/12/24)
沖縄を拠点に活動する写真家・石川真生の東京での初個展。回顧展的な意味合いもあるが、重心は近年精力的に取り組む《大琉球写真絵巻》シリーズに置かれている。困難な状況にある沖縄の現在とそこにつながる歴史を被写体である個人を通じて描き出す長大な写真絵巻。主人公は沖縄で生々しくたくましく生きる「私」である。技法やサイズなどの作品情報はキャプションから極力削ぎ落とされ、代わりに膨大なテキストが書かれたハンドアウトが手渡される(展覧会ウェブサイトで閲覧可能)。石川へのインタビューや被写体となった人々の言葉など20ページにも及ぶそのテキストを読みながら作品を見進めていくと、「私に何ができるか」の「私」は写真家石川真生、被写体の私、展覧会を見る私、すべての私なのだと思い知らされる。
■ 地主麻衣子《空耳》森美術館 MAMプロジェクト031(2023/10/18〜2024/03/31)
祖父の法事に行った日の夜、ホテルの部屋で聞いた不思議な音についての話。地主本人が語る声とその言葉を映す大型プロジェクション、 三半規管のような形のアルミダクトから聞こえる音、回転するモニターの映像、という一見関連しない異種組み合わせによるインスタレーション。地主が「新しいかたちの文学的体験」と呼ぶように(展覧会場の解説文より)、ささやき声の語りはスクリーンに投影されて文学となり観客は自分だけの物語の読み手になる。
■ 望月通陽「坂田さん、ぼくは今こんな仕事をしています」工芸青花(2023/10/27~2023/10/31)/青井義夫「古道具坂田の思い出」工芸青花(2023/11/24~2023/11/28)
古道具坂田の坂田和實氏(1945–2022)の個人美術館「museum as it is」を取材で訪れたことがある。暮らしや信仰のための実用の品々がありのままの姿で静かに息づく空間は、誰かの価値基準ではなく自分の眼で選んだ「美しいもの」を提示する姿勢が貫かれていた。そんな坂田氏と心を通わせた2人による2つの展覧会。語りかけるようなタイトルの望月通陽の展観は型染やつつ描染などによる作品。坂田氏を偲ぶ人物画や、ひとがたと植物や楽器などが混じり合うモチーフから祈りの音色が聞こえてくるかのようだ。古美術商「甍堂」の青井義夫氏による「坂田さんがよろこんでくれそうなもの」をあつめ(プレスリリースより)た展示は、長い時間の波に洗われ時代も国も場所も超越したものたちが寄り添うようにひとつの世界を作り上げている。静謐であたたかく、かつ凛とした2つの展示空間に、あの美術館の気配を思い出した。
文:塩崎浩子(ライター/校正)
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [3]VOID Chicken Nugget 読者に贈る 「2023年公開映画セレクション」15選!   文=木村重樹 ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
コロナ禍の自粛モードがほぼ解禁に向かった2023年。例年ならばこの師走の時期に、今年1年を振り返った「年間ベスト」的な企画があちこちでお目見えする頃合いでしょう。が、そこまで網羅的に「2023年公開作」を観ていたわけでもなく、と同時に(定額動画配信サーヴィスの普及によって)〝最新映画の話題の中心が、必ずしもロードショー新作に限らないという、映像鑑賞のプラットフォームの変化も手伝って……少なくとも、かつてのように「年間ベスト」が話題を呼ぶ時代も、そろそろ終焉が近づいているような?
ゴタクはこのくらいにして……そんな次第で、ちょっとだけ趣向を変えて「今年観た/観直した」映画作品のうち、印象に残ったタイトル15本を(いくつかの傾向に束ねて)振り返ってみました(ちなみに邦画はまたの機会に!)。 年末年始の暇潰しの参考になれば?!
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【トピック❶】巨匠たちの最新作の〝爛熟〟ぶり
欧米では昨年公開ズミの案件もあるが、今年日本での劇場公開にこぎつけたタイトルの中には、それこそ半世紀以前=1970年代あたりから気炎を吐き続けてきた+カルト的な人気を誇る、高齢監督の最新作が、チラホラ混ざっていた。
具体的に挙げれば、2月公開の、ポール・バーホーベン(85歳)の『ベネデッタ』(2021年)【*1】、4月公開公開の、ダリオ・アルジェント(83歳)の『ダークグラス』 (2022年) 、さらには8月公開公開の、デヴィッド・クローネンバーグ(80歳)の『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』【*2】(2022年)などが、それ。
これらの最新作、いずれも(名匠と崇められるだけの)作家性や作風を踏襲し「この監督にしか作りえない」異色作であることは間違いないが、同時に……そのアクの強い作風がキープされているわりには「彼らの最高傑作とは言い難いのでは?」みたいな感想もチラホラ。
たしかに『ベネデッタ』で繰り広げられた「修道女同士のいがみ合い」は、ラスベガスのヌードダンサーたちのマウンティング合戦を主題にした『ショーガール』(1995年)をどこかしら連想させるし、歴史ものとしての格調も、ナチ占領下のオランダを舞台とした『ブラックブック』(2006年)あたりと比べても、いささか安っぽい。
『クライムズ〜』に目を移しても、「久々のボディホラー回帰!」という前評判通りだったけど、登場する異形のクリーチャーや医療器具は、『戦慄の絆』(1988年)や『裸のランチ』(1991年)の焼き直しじみた造形。肝心のストーリーも「腫瘍の摘出手術をパフォーマンス=見世物化する」というレイヤーと「海洋汚染対策としての(プラスチックを食べる)新人類の誕生」というトンデモ進化論のレイヤーが、さほど上手く噛み合っていない。
とはいえ、こうした(傘寿を迎えた)老匠たちに、今さら「新境地を見せて!」と言うのも酷な話。過去作の焼き直しとか陰口を叩かれ、心身が衰えを見せても、とにかく「新作を撮り続ける」というガッツの部分にエールを送り、生暖かく見守ってあげるのが筋なのかもしれない。
「老匠の新作」といえば、10月公開の『キラーズ・オブ・ザ・フラワー・ムーン』【*3】(2023年)を手がけたマーティン・スコセッシ(81歳)や、12月公開の『ナポレオン』【*4】(2023年)を手がけたリドリー・スコット(85歳)も、傘寿を軽く超えているし、その少し下には、3月公開の『フェイブルマンズ』(2022年)【*5】を手がけたスティーヴン・スピルバーグ(76歳)がいる。来年1月の話だが『サン・セバスチャンへ、ようこそ』を引っさげて、セクハラ裁判以降のカムバッグとなるウディ・アレンも87歳だし、『クライ・マッチョ』(2021年)の次回作『陪審員2番』を制作中のクリント・イーストウッドに至っては、当年93歳!
20世紀に世界を席巻した「映画」はその後、テレビやゲームや動画配信といったライバルたちに視聴時間を奪われ、今後その王座に居座れる保証もないけれど……その担い手たちの老成と最後の打ち上げ花火を見届ける機会に、私たちは立ち会っているのかもしれません。
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【トピック❷】今日的テーマに根ざした話題作(PART1):ジェンダー、フェミニズム
「ジェンダー」や「フェミニズム」という言葉で括ってしまうと、逆に身構えられるかもしれないが……いわゆる「性別による格差や性差別」をテーマに据えたタイトルに注目が集まるのも、20年代映画のいちトレンド。近年、日本国内で公開される機会が激減した欧米のコメディ映画の中で、例外的な扱いとなり、注目を集めたのが、8月公開の『バービー』【*6】(2023年)。女の子の定番おもちゃである〝お人形さん〟に自意識を持たせ、ことアメリカ社会にて固定化された「男女の役割」をパロディ化し再解釈する試みを、エンタメ精神たっぷりに描いた本作の監督は、グレタ・ガーウィグ(40歳)。
遡って、6月公開の『ウーマン・トーキング 私たちの選択』【*7】(2022年)や、4月公開の『聖地には蜘蛛が巣を張る』【*8】も、性暴力や宗教的抑圧といったヘヴィな主題に則った作劇で、見どころが多かった。前者は「メノナイト」という(自給自足で生活する)キリスト教再洗礼派の集団内で常態化された「昏睡レイプ事件」をめぐり、村の女性たち(被害者集団)が男性たち(加害者手段)への処遇について議論を重ねるという、きわめて演劇的な趣向。監督は女優としてのキャリアも知られる、サラ・ポーリー(44歳)。
かたや後者は2000年代初頭、イランの聖地マシュハドで実際に引き起こされた娼婦連続殺人事件を追いかける女性ジャーナリストの悪戦苦闘ぶりを通じて、イスラム社会に深く根づいている家父長制と女性蔑視の価値観をあぶり出す。監督のアリ・アッバシ(42歳)は、出身地のイランから北欧に留学し、その地で暮らす変わり種。
これらの監督に(日本での公開時期こそ2022年だが)『秘密の森のその向こう』(2021年)でメガホンを取ったセリーヌ・シアマ(45歳)あたりを足して俯瞰すると……いわゆる「40代の映像作家」が進んで採用する問題意識の共通項が、ぼんやりと浮きあがってくる。もちろん今日的なテーマを意識的に取り扱う映像作家は、特定の世代に限らず広く存在するだろうが……先の【トピック❶】で紹介した「老匠」たちの約半分の年齢であることは、何かを示唆してはいないか?
【トピック❸】今日的テーマに根ざした話題作(PART2):だめんず、メンヘラ
世の趨勢として「強い女性キャラ」が人気を集める一方、「弱くて便りない男性キャラ」の台頭も、もしかすると現代的な必然なの? 4月公開作『レッド・ロケット』【*9】の主人公は、かつて一世を風靡した「伝説のポルノ男優」。落ちぶれて一文無しとなった彼は故郷に出戻り、別居中の妻の家に転がり込むのだが、近所のドーナツ店で10代のバイト少女と意気投合し、新進気鋭のAV女優として彼女をデビューさせるという起死回生のトンデモ野望を抱くのだが……現代アメリカ白人社会の静かな没落を活写するショーン・ベイカー(52歳)監督の才気が光る。
韓国から世界に飛躍した名匠として、今やポン・ジュノと並び称されるパク・チャヌク(60歳)の長編作、6月公開の『別れる決心』【*10】も、かつてのようなアクの強いエログロ描写は影をひそめ、刑事ドラマと恋愛ロマンスと、そこはかとないユーモアをゴッタ煮にした異色作。何よりも(殺人容疑者の中国訛りの未亡人に骨抜きにされる)刑事のダメダメぶりから目が離せない!
今回のエントリー作品中で最年少にあたるシャーロット・ウェルズ監督(36歳!)の長編デビュー作、5月公開の『aftersun/アフターサン』【*11】も、別居中の若い父親と久々に再会を果たした娘の、トルコのリゾート地における夏休みの回想録。陽気に振る舞う若い父には、人知れず苦悩を抱えた「別の顔」が……。フェミニズムの台頭の次のフェイズのひとつに「弱者男性」をめぐる言説の流行があるが「お父さんもつらいよ」ってか? 背景説明が最小限なので、いろんな考察が捗る一作でもあるが、劇半ばでクイーン&デヴィッド・ボウイの名曲「アンダー・プレッシャー」がかかるシーンのドンピシャ度は格別! その一瞬だけのために観ても損はない。
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【トピック❹】まだまだあるぞ、話題の新作
他にも、パワハラ・レズビアン・コンダクターの栄枯盛衰を描いた、トッド・フィールド監督作『TAR/ター』【*12】(5月公開)や、凄腕の殺し屋役をマイケル・ファスベンダーが演じるはずが……蓋を開けたら口先だけのドジっ子だという意外性の塊のようなデヴィッド・フィンチャー最新作『ザ・キラー』【*13】(10月公開)、リバイバル上映作では、エログロ悪趣味映画と曲解されながら、その実は弱者や逸れ者に対する全面的な人間讃歌だという異色のカルトムービー『悪い子バビー』【*14】が、1993年の製作から30年越しでこの10月、日本での劇場初公開となったことも記憶に新しい。 あと、VOID Chicken編集部のsaboさんから「ハッピー・エンディングものも入れといて!」というリクエストがあったので、ジェームズ・ガン監督(57歳)渾身の最新作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーvolume3』【*15】を滑り込ませておく。いわゆる「マーベル・コミック」や「DCコミックス」原作映画には、食指がほとんど動かないのだけど……この『GotG』シリーズは別格! トロマ映画ゆずりのバッドテイストが、ワールドワイドな巨大バジェット娯楽作に大化けした成果を、とくとご覧あれ! * 注目作はまだまだあれど、VOID Chicken Nugget読者の皆さんには、これら15本を紹介して、今年の総括とさせていただきます。
それでは、よい新年を!
木村重樹 (編集者/ライター)
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[4] 【告知】12/21(木)よりグループ展に参加します(さぼが)
Xmas Art Show 『無 FOR SALE XMAS』高円寺 VOID
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「無」をテーマに7人のアーティストが送るXmas Art Show 『無 FOR SALE XMAS』 参加作家: 楠見清、小田島等、木村華子、Nukeme、柘植響、前畑裕司、西原伸也 会期:2023年12/21(木)〜12/28(木) 時間: 13:00 - 20:00 月曜休 会場: 高円寺VOID 東京都杉並区高円寺北3-33-2 1F ◎油彩4点、写真2点、ハンドメイドブック「Say Nothing Book」10部出品します。 年末ご多用中とは存じますが、ぜひぜひ足をお運びくださると幸いです。 みなさまよろしくお願いいたします〜🙏
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [5] 編集後記 ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今年(2023年)は可も不可もない年でした……そして来年(2024年)の抱負は〝身体を鍛える〟です。編集を担当した『手塚治虫語辞典』(竹内オサム著/誠文堂新光社)が5年余りの制作期間を経て、12月上旬に全国書店で発売開始。ぜひ手にとってみてください…🙏 [きむら]
札幌で来月20日に始まる札幌国際芸術祭SIAF2024の準備中です。年末年始に佳境すぎて日々ドキドキが止まりません!一方、NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]での「坂本龍一トリビュート」展では、SIAF2017で発表した毛利悠子作品が再構成展示中。オープニングでは当時のスタッフや毛利さん、映画監督のフェリペとひさびさに再会。みんなの成長がまぶしいよ!今年もVOID Chickenをご愛読ありがとうございました。来年ものんびりお付き合いのほどよろしくお願いします。(さかぐ)
旧年中は大変お世話になりました。来年もよろしくお願い申し上げます。(さぼ)
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mlvoidchicken · 7 months
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C o n t e n t s
[1] さいたまんだん [2] Long Interview with O JUN in Sapporo 公開! [3] 編集後記
■■━━━━━━━━━━━━━━ [1] さいたまんだん ■■━━━━━━━━━━━━━━
さぼ さいたま国際芸術祭は順調ですかー?今年も手伝ってるんだよね?
さかぐ 10月7日本日からスタートです!今回はアーティスト集団の目がディレクターだよ。
さぼ アーティストがディレクターといえば、ヨコトリの川俣正、森村泰昌の前例があるかにゃ?
さかぐ そうだね。あと岡山芸術交流のリアム・ギリックとか、リクリットもだね。 川俣さんも森村さんも、自分の作品は出さずにディレクター業に徹してたのと違って、さいたまの場合は、会場の旧市民会館おおみや全体が目の作品といえるかな。何度来ても二度と同じ体験ができない「見逃す展覧会」。私は作家1人担当してて準備から出入りしてたけど、自分のところ以外は関わってなくて、みんなそんな感じで部分的にしか知らないから全貌は隠されている。「鬼滅」の刀鍛冶の里みたいな感じか?
さぼ 鬼滅?わかる人いるかにゃ?参加アーティストのテリー・ライリーはすでに完売。さすが大御所だにゃ。
さかぐ 展示作家数は少ないんだけど、いろんな仕込みがあって作品との境目がよくわからなくなるんだよね。何を見てもあやしい。あとからじわじわきます。 そして道に迷う!
さぼ そうなんだー。アートだけじゃなくて?映画とか?文学とか?演劇とか?音楽とか?
さかぐ ホールでは毎日違う演目があるらしいよ。通しパスを買うのがお得みたい。
さぼ いよいよ始まったね!現場は大変そう。お疲れ様ですにゃ。
さかぐ お客さんが入るまではどうなるのか想像つかないけど、自分で来て体験しなければわからない芸術祭なのはまちがいないね。あと蚊が多い!
さぼ おすすめのアーティストとか、あるのかにゃー?
さかぐ ガーベラが朽ちていくアーニャ・ガラッチオの「’preserve' beauty」はやはり別格。シンプルで力強くて象徴的で、目の荒神晴香さんが中学生の時に広島で見た初めての現代アート作品だったりと、なにかと意味深い。
さぼ そうか!それと会場もいくつかあるね。迷うにゃ。
さかぐ 市民プロジェクトがいろいろあって「ボンビ」こと大宮盆栽美術館がいいと聞いたよ、自分で調べてにゃ!
さぼ 第1回のマムアンちゃんのバックはいまだに愛用してるよー。サイズが大きめで使いやすいんだよね。
さかぐ グッズは、つなが竜ヌゥぐるみってさいたま市のご当地キャラが芸術祭のTシャツ着てたよ!
さぼ さいたまの次は札幌だね。国際芸術祭が続くけど、アートピープルにも馴染みの薄いアーティストが多い印象。一般客���はどうアピールするのかにゃー。雪まつりと同時開催にゃ!
さかぐ SIAFはコロナ禍の一回休みで前回が2017年とちょっと間が空いちゃったけど、次回はバリバリメディアアート展で知ってる作家ほとんどいないから逆に新鮮だと思うな。今年の冬は雪降るのかな〜
さいたま国際芸術祭2023 https://artsaitama.jp/
札幌国際芸術祭2024 https://siaf.jp/
★-★
さぼ さて、本題、O JUNさんのロングインタビューイン札幌をお届けします。さかぐはバーチャルで参加にゃ?つかインビジブル?(つか急に決まったんで全国飛び回って忙しいさかぐは同席できなかったにゃ(・・;))
さかぐ  おつかれー!ついこないだインタビューしてたのが、もう記事に。 ちゃんとしたメディアみたいだ!
さぼ なんとかひと月で終わった。奇跡です。ご協力いただいた皆様ありがとうございました。
さかぐ O JUNさんが一作家としてたくさん話してくれてて貴重〜。 夢の話も面白かった。大御所になっても絵描き人生は日々探求なんだね。
さぼ 懐の深い方で教え子にも慕われてるにゃ。勉強になるお話満載にゃ。アーティスト必読。読んだみんなの感想も聞きたいにゃ!メール待ってまーす。にゃ。リンクはこちら。
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [3] Long Interview with O JUN 公開! ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ art magazine VOID chicken
Long Interview with O JUN in Sapporo
多くのアーティスト、クリエーターに影響を与えている大ベテランの作家でありつつ、時代の先端を走り続けるO JUN氏。『六本木クロッシング2022展:往来オーライ!』(森美術館)では、多くのアートファンを魅了した。現代美術界のレジェンド、油画界の極北に、油彩画初心者saboが大胆にも制作についてお話を伺った。
本編はこちら https://mlvoidchicken.tumblr.com/
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [3] 編集後記 ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今週末はさいたまがスタートして白老がクロージング。白老もさいたまも、いい作品に関われて光栄です。皆さんぜひ来てください。O JUNさんのインタビューも必読です!(さかぐ)
暑いのは辛いが寒いのも辛いにゃ!(さぼ)
酷暑の夏が明け、ようやく秋が…と思いきや、寒暖差うつのせいか(?)ここ1週間ほど気分が上がらず大弱り。そんなさなかに公開されたO JUN氏のロング・インタビュー、関係各位の苦労の結晶です! ついでの告知として「東京ビエンナーレ2023」関連企画【RELATIONS: 批評とメディアの実践のプロジェクト】第2期のお手伝いも絶賛進行中。音声ファイルで聞くコンテンツもあり、ぜひ一度覗いてみてください。(きむら) https://relations-tokyo.com/
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mlvoidchicken · 7 months
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Long Interview with O JUN in Sapporo
O JUN 
Profile 1956年、東京生まれ 画家
「好きで始めたことは諦めない。結果はどうあれ、意地でも逃げないことです」
─ O JUN
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札幌、blueにて。撮影: Tsuge Hibiki
多くのアーティスト、クリエーターに影響を与えている大ベテランの作家であり、展示ではいつも私の予想を巧みに裏切り続け、時代の先端を走り続けるO JUN氏。『六本木クロッシング2022展:往来オーライ!』(森美術館、2022年12月1日〜2023年3月26日)では、3Dプリンターで制作した絵画と額縁とが一体化した斬新な作品から独特の色彩と構成の油彩画の大作まで、展示作品は多くのアートファンを魅了した。現代美術界のレジェンド、油画界の極北に、油彩画初心者saboこと柘植響が大胆にも制作についてお話を伺った。
Q 今回、大ベテランのO JUNさんにお話を聞くにあたり、アーティストからの質問をいくつか準備しました。まずはO JUNさんも府中市美術館で作品をご覧になっている美術家、三田村光土里さんから、「作家としていちばん大切にしているものはなんですか?」という質問です。制作の現場ではどんなことを大事にしているのでしょうか?
O パッと思うのは、絵のゴールや目的は設定しないということです。何度も繰り返し描くモチーフがあり、それは決まっています。自分の中で形骸化したフォルムやイメージですが、何度描いても、描くたびにそれが最初の1枚です。そして、描き始めたら諦めない。結果はどうあれ、出来不出来はおいといて、最後まで逃げない。意地でも逃げないことです。
Q Oさんでも途中で投げ出したくなることがあるのですか?
O ありますね。悔しいのだけど、どうしてもうまくいかない作品がありました。東日本大震災(2011年)が起こったときに、大変な事件に遭って絵筆を握れない作家もいましたが、僕の場合は逆にどんどん絵が描けた時期でした。そのときににっちもさっちもいかない風景画がありました。でも半年くらい経ってから気になって、それから数年かかって描き上げたのが『雪景』という作品です。それは制作において大きな体験でしたね。
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『雪景』2011-2013/油彩、キャンバス/116×116cm/撮影:宮島径 ©︎ O JUN Courtesy of Mizuma Art Gallery
Q 描けなくて前に進めないこともあるのですね。
O 絵は友人がガラケーで送ってくれた写真を描いたものです。軽井沢に行く途中の車窓から撮ったような風景で、描きたいと思って始めたのですが、これがどうしても最後まで描けず伏せておいたのです。しばらくしてから、いちど諦めた絵が描けるときが来ました。でも、それからこんどは何年も描き続けることになるんですけどね(笑)。「川に、入るまで」(『O JUN 描く児 1982-2013』青幻舎、2013年に収録)というエッセイにそのときの様子を詳しく書いています。
Q ベーシックに、絵を描き始めたら最後まで諦めないことが肝要ですね。
O こういう執拗さは画材が油絵具というのも影響していると思います。僕は紙にクレヨン、水彩、色鉛筆の仕事が多いのですが、描き直すことはまずないのです。油絵具は何度も描き変えられるので、求められる体力が違う気がします。僕は油絵がすごく苦手なんですよ。できれば触りたくない画材なのですけれど、触り始めると特有の面白さもあるし、面白さと引き換えにこちらの体力を要求してくるところがある。油絵はこういうふうに描くものだと自分の身体で感じるようにわかったのは、個展『描く児』(府中市美術館、2013年12月21日〜2014年3月2日)あたりです。苦手でも「逃げない」のがシンプルですが大事です。
そして、やっぱりいちばん大切なことは僕は絵が好きということですね。描くことも見ることも。好きなことはそれを諦めないし逃げないでしょ。言い訳もできないしね。そういうことをしないように工夫もするし、いろいろ試しもする。
Q 油絵は根気が要りますよね。絵と恥はたくさん「かけ」とおっしゃってましたね。次に、「絵画を始めたときから自分の中で変わっていないことはなんですか?」という画家の友人からの質問です。
O 僕は、絵は小さいころからよく描いていましたが、高校3年生のときに美大を受験するために予備校で油絵具を使うようになったというスロースタートでした。でも、例えば繰り返し出てくる絵のイメージがあるんです。ひとつは小学校1年生のときに描いたゼロ戦です。僕は戦後11年目に生まれたのですが、6歳当時、テレビでも戦争の番組がよくあって、戦争が身近だったんですね。兵隊として戦争に行った父親に軍歌を聞かされたし、家の中にも街の中にも戦争の名残りが散らばっていた。傷痍軍人がいたりとかね。
もうひとつのイメージは、4歳のときに幼稚園で隣の子が描いた機関車です。その子が中の機械も想像で描いているのを見てすごいなと思って、真似て描きました。ゼロ戦はクレヨンで隙間なく塗っているんです。いまでも色を覚えています。4歳と6歳のときのクレヨン画の感触がはっきり残ってます。子供のころに出会った感触が、いまでも薄まらないんです。言葉で伝えるのは難しいけれども、自分の肉体とその外にあるクレヨンや油絵具のような異質なものがぶつかる感覚が強く記憶に刻まれています。いまだに紙に描くときはその感覚がよみがえります。同じモチーフを繰り返し描いても、自分の身体の感覚も繰り返しよみがえるのでいつも不思議だなと思います。それが自分の中で変わっていないことです。
Q 4歳から数えて、画業63年間保ち続けている感覚ですね。次の質問は「表現形態を立体と平面とどうやって分けているんですか?」です。
O だいたい2、3枚描いたら、立体を1個作るペースなんです。分厚いマット紙にクレヨンで絵を描くように、立体も同素材で制作しています。ビルの立体の作品の場合なら、窓の四角を残して他を全部塗り潰したマット紙をカッターで切ってパタパタと組み立てているだけなので、立体も平面もじつは同じものなんです。
始めたきっかけは、ドイツに留学していたときの写真を母屋で見つけたことです。
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『少年の脳』1991/写真に卵白溶剤絵具で着彩/18x23cm/撮影:作家 ©︎ O JUN
2021年に京都のギャラリー、VOU/棒で『目 対 絵』という展覧会の準備をしていたころ、「ナニをやろうかな」と考え、描いた絵を額縁に入れたり外したりと額縁のことも気になっていました。ちょうど東京のアトリエを閉じて、自宅の娘の部屋だったところを制作場所にしたころです。そこは自分の子供時代の部屋でもあったので、そのころに戻った感じもありました。そのときに大学の職を辞して、いままで絵を描くのに必要だと思っていた環境とか、いろんなことから梯子を外してみたくなりましてね。今度はアトリエを母屋に移そうとしたんです。そこには昔のものを全部突っ込んでいたので、要らないものを捨てていたら、ドイツに留学していたころの写真作品が出てきました。ドイツでは風呂場に簡単な暗室を作って、現像、引き伸ばしを自分でやっていました。友人たちが大事にしているものを持っているところを撮るというポートレート作品で、そのなかの1枚に、戦艦大和かなにかのプラモデルを持っているのがありました。非常階段の踊り場で撮影していたので、人物の背景がバーッと開けていて、ビルやマンションが見えるんです。撮影した当時は気付かなかったけれど、人物の後ろにポコン、ポコンとあるビルが気になっちゃったんですよ。以前からビルは好きでよく描いていましたが、紙の工作でいいからビルを作ってみようと思ったのが、始めたきっかけです。パタンパタンと折って箱状になったときに、「あれ、これは自分の中になかったな」と感じました。大学を辞め、フリーランスの作家としてやっていくことを決めたので、これまで自分の中にあったものをなくしてみたり、なかったものを取り込むことを始めてみたりしていました。それで、ビルを作ったあとに、絵を描いて、そのあとにまたビルを作って、としているうちに、どんどん増えて、いまでは50棟くらいあるのです(笑)。
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『ビル』2021-2023/紙にクレヨン/撮影:上より1,3枚目 作家、2枚目 松見拓也 ©︎ O JUN Courtesy of Mizuma Art Gallery
Q 絵を描き上げるタイミングの質問なんですが、同じ「川に、入るまで」というエッセイに、絵のほうから「もうお前はさがってよろしい」と言ってくるので、それが完成したときだと書いてあるのを読み、絵の伝えてくる終わりのサインを感受することが肝なんだなと目から鱗が落ちました。それで、「何が絵画のゴールなのでしょうか?」という質問です。Oさんは「絵が明度を持ったら終わり」とも書いていらっしゃいますが、そのへんも教えてくださいますか?
O 暗い絵でもいいのですけれど、その絵が持っている明るさ、明度がフッと感じられると、自分はもうこれ以上描く必要がないなと思います。絵が明度を持つということは、絵が見えてくることですから、見えたらそれでおしまい。自分ではもうちょっと描こうと思っていたりもするのですが、それは自分の都合なので、絵のほうからしてみたら、「自分がこういう明るさを持つに至ったよ。もういいから」という感じなのです。「早く次の絵、描きなさい」と、なんとなくそう言っているような気がするんです(笑)。
Q 明度という言葉がキーワードのように感じます。
O 明度というものは自分で出せるもんじゃなくて、描く目的にはならないのです。絵の明度はこちらがコントロールすることはできないので、なんかの加減で、それを持つに至った明るさというのは、その1枚にしか通用しない、1枚に1回限りなんです。だから、そこに至る過程を学習して次の絵に応用することはできないのです。
Q 明度とは逆に暗黒という言葉がありますが、『六本木クロッシング2022展』のための動画(*)で 「暗黒に振り回されて(…)描くしかない」とおっしゃっていましたが、「暗黒」とはなんですか?
O 2022年、『畳に目』という個展を照恩寺(東京)でやったときに、『暗黒ドライブ』というリバーシブルの絵画を描きました。同じ山を描いた絵を2枚、両面から見ることができて、背の低いフレームに入れて、畳に座った状態で観えるよう展示したんです。暗黒という言葉は登山博文さん(画家。2021年11月没。享年54)の追悼文で触れたことがあるのですが、彼は車の運転が好きな人だった。絵は車が人間を運ぶようなポータブルなもので、あちこちに持っていけるよさがある。人がポータブルに持っているものは何かなと思ったときに、それは暗黒かなと考えたのです。無意識という言葉に言い換えてもいいかもしれないけれども、なにかの意味、ロジック、システムが出来上がる前の状態、『void chicken』のヴォイドみたいな状態ですよ。暗黒、ヴォイドからは言葉、思念が湧き出たり、絵や彫刻のイメージも出てきたりするわけです。得体の知れない、何も見えない状態なのですが、そういうものをみんな持っていて、いつも持ち運びしている。それが、何かがあったときに、その人間がポータブルに持っていたヴォイドから、あ���感情が露わになったり、ある行動に出てしまったりする気がするんですよ。それは美術の問題というよりは、人間の問題のような気がして、言い換えれば美術も人がやることですから、どんどん辿っていけば専門的問題を突き抜けて、目には見えない個人的な部分、不可思議な部分がそこにはあるように思うのです。
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『暗黒ドライブ』2022/紙にクレヨン/各71×71cm/撮影:宮島径 ©︎ O JUN Courtesy of Mizuma Art Gallery
Q それは、闇ですか?
O 闇という決して暗いイメージではなくて。善悪を超えた、一種のカオスの空間だと思います。暗黒ってね、明るいんですよ。漢字にはネガティブなイメージがありますけど、いつも自分といっしょにいる相棒みたいな。
Q Oさんの作品を観ると、悲しいものがそこにあるのかもしれないけど、観た人間が落ち込んだりはしないという明るさを感じます。
O  『練馬の鳥』、『川崎の公園』という作品がありますが、両方ともたまたま新聞に隣接して掲載されていた記事を読んで制作したものです。ぜんぜん違う事件だけれども、両方に共通しているのは「楽園」だなと思ったのです。練馬の事件は法律としては違法ですが、自分で捕まえた鳥を家で放し飼いにしていた。家の中で好きな鳥が飛び交っているという、鳥にしてみれば捕まっているから地獄だったかもしれないけど(笑)。鳥を飼っていた彼にしてみれば楽園だなと、事件に対してそんなに暗い印象を抱かなかったんです。  川崎のほうは外に出られなくなって公園に逃げた男性の話で、あくまでも僕の勝手な妄想では彼は最後に楽園を見たんではないかな、と。そこで実際に練馬と川崎の事件の起こった場所を見に行きました。世の中にはいろんなことが起こるのだけど、それをどう読むかで自分の中に落ちてくる「絵」が変わってきます。川崎のほうは亡くなってしまったので痛ましい事件ではあるのですが、僕には彼が最後に見た公園の明るいイメージがあります。「明るい暗黒」じゃないけれど。そして二つの関係のない事件が新聞紙の上で隣り合っていたのが面白いと思ったのです。絵については、「レイヤー」とよく言いますよね。それ以上に平面上でいろんなものが隣り合っていたり、分断されていたりする。それはそのまま僕らの社会だし、個人の日々の生活そのものだと思います。質が違うので絵と日常生活をいっしょに語ることはできないけれど、起こっている出来事は絵の中も外も変わらないのではないですかね。
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『練馬の鳥』2022/油彩、キャンバス/400×200×4cm/撮影:小山田邦哉 ©︎ O JUN Courtesy of Aomori Contemporary Art Centre, Aomori Public University
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『川崎の公園』2022/油彩、キャンバス/300×210×4cm/撮影:小山田邦哉 ©︎ O JUN Courtesy of Aomori Contemporary Art Centre, Aomori Public University
「パレルゴン/エルゴン」というデリダが言った言葉があるのですが、「エルゴン」は作品で、「パレルゴン」は作品の外を意味しています。額縁は装飾だとか、現代絵画をやっている人たちは額縁を外していきますよね。絵そのもので自立させられないか、と。その変化は近代、現代と変わっていきますから、必然なプロセスだと思います。でも、いままた変わってきていると思うんですね。自分の中でも行動の順番を組み替えることもあって、そこから額縁の問題も違う角度から見られないかなと思っています。調べてみたら、キャンバスというのは最近の素材で、昔は板に描いていたんですね。あまり知られていませんが、分厚い一枚板を彫り下げて額縁と中の平面を職人さんが作っていたのです。一体型のものが昔はあったのに、現代の額縁はなんのためなんだろう、と。持ち運ぶときに手が絵に付かないようにするといった物理的な役割もあったのでしょうけれども、それで同じようなものを自分で作ってみようかと思い、協力を仰いで3Dプリンターで一体型の作品を作ってみました。
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『skyblue』2022/ミクストメディア/30x25x5cm/撮影:作家 制作協力:東京藝術大学 藝大ファクトリーラボ、東京未来大学 横地研究室 ©︎ O JUN Courtesy of Mizuma Art Gallery
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『ivory』2022/ミクストメディア/30x25x5cm/撮影:作家 制作協力:東京藝術大学 藝大ファクトリーラボ、東京未来大学 横地研究室 ©︎ O JUN Courtesy of Mizuma Art Gallery
Q どうでしたか?
O あんまり面白いものにならなかったね(笑)。以前、3Dプリンターでモデルガンを作って試し撃ちした事件がありましたよね。写真で見ると重厚な色じゃなくて、薄桃色みたいなパステルカラーの銃で(笑)。その記憶が頭にあって、額と絵が一体型のものをいまの技術で作れるなと思ったんですが。
Q 拝見すると、どこか近未来的な作品です。Oさんは額に入れる作品と入れない作品がありますけれど、どんなふうに決めているのですか?
O そんときの気分です(笑)。最初に、もらったり買ったりして形が変なもの、面白い額縁を集めておき、あとから描いた絵が同じ大きさだったら入れてみるわけです。木に竹を接ぐような「接合」が絵の中と外で起きているわけですから、合おうが合わなかろうが入れるわけです。服に体を合わせる感じですね。最初に限界値があったほうがいろいろ工夫できると思うのです。いつか描きたいと思っていた富士山をこないだ描いたんです。『大沢崩れ』というタイトルで、山に寿命が来て山が崩れている姿なんですが、この絵の額縁が渋いんですよ(笑��。
Q 絵ができてからギュッと額縁に入れたわけですね。
O 微妙にサイズが違うと入らないことがあるので、ドキドキしながら入れたらなんとか入ったんですよ。
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『大沢崩れ』2023/油彩、キャンバス/72.7x72.7cm/撮影:作家  ©︎ O JUN Courtesy of Mizuma Art Gallery
Q (写真を見ながら)額に入れる前と入れたあとではぜんぜん違う絵のようですね。
O じつは、額屋さんの優美堂(東京)で9月から12月まで、公開で油絵を描く個展『絵と縁』(優美堂カフェギャラリー、2023年9月21日〜2024年1月23日)があるのです。
Q ええ! 3カ月も毎日通うのですか?
O 行けても週2回かな。やってみないとどうなるかわからないので、いま話しながらもドキドキしているのですけど(笑)。1枚だけ80号くらいのでかい絵を描くのですけどね。そのサイズに合う、すっごくいい額があるのですよ。そこでまず下地づくりのワークショップをします。キャンバスと紙といろんな下地があるので、板に膠とかね、紙に膠だったらエゴン・シーレみたいに使えます。それは難しい作業じゃないですから、それでみんなが作った下地に僕が絵を描いていくという。
Q 一石二鳥ですね(笑)。
O 優美堂にはいろんな人の絵が掛かっているのですが、僕が1枚描くたびに交換していって、最後は全部自分の絵になるという企画なんです。
Q ひとつ、油絵初心者として絵画の質問があります。Oさんが「ディメンションが変わることに気を付ける」と森美術館の動画でおっしゃっていたのを聞いて、初心者の私としては「どういうことなのだろう」と思ったのですが。
O それは、『三つの絵』(NADiff Gallery、2021年12月17日〜26日)という個展で展示した『石鏡のホテル』という作品があって、景色の中ではそれぞれの事物が距離感を持って近景、中景、遠景と地続きであるけれど、絵は1枚の平面の中に隣り合わせにある。建物があって、半分くらい手前の森に隠れていたり、建物によってくり抜かれちゃったりしているけど、後ろには空があるんだよ、とか。で、普段は実際の空間の中で見て学習しているから違和感はないのだけど、森の中に油絵具が塗られているわけじゃないですから、絵の中は異世界で、次元が一つ違うわけです。絵の中では、一つの地べたがあって、森のような部分、建物のような部分、空のような部分と塗り分けられたり、描き分けられたりしているということが、自分の中に「戒め」としてあるんです。
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『石鏡のホテル』2021/油彩、キャンバス/71.7×91cm/撮影:宮島径 ©︎ O JUN Courtesy of Mizuma Art Gallery
Q 「戒め」ですか?
O 描いているうちに実際の空間と絵を近づけようとするのだけど、普通は「きれいね」とか「そっくりね」と楽しむけれど、描く人のリアリティーは違うじゃないですか。そこはちゃんと土俵際に踏みとどまって一歩も引かないで、最後まで粘って、逃げない。その土俵際の俵が「戒め」かなと。
Q なるほど。よくわかりました。ところで、夢はよく見ますか? それを絵にすることはありますか?
O 見るときは見ますね。夢の絵はね、あんまり描かないんだけど、何年か前の正月の初夢で見た夢はあまりに象徴的だったから描きました。夢の中で、アトリエの母屋が火事になって燃えていました。その前に立って、「おお、燃えてる、燃えてる」とぜんぜん嫌じゃない。母屋から火の粉が飛んできたりもするなかで、そこにあった作品が全部燃えちゃうのかなと思って、気持ちよかったんですね。朝起きて、あまりにもリアルだったからクレヨンでダーッと描きました。なんでそんな夢を見たかというと、3月にそのアトリエを引き払うことになっていたんですよ。その絵はしばらくスマホの待ち受けにしていましたよ(笑)。
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『初���・燃えるアトリエ』2021/紙にクレヨン/30x15cm/撮影:作家 ©︎ O JUN
Q おお、燃えていますね。本日はお忙しいなか、ありがとうございました。
2023年9月2日、札幌にて
取材協力:ミズマアートギャラリー(東京)、blue(札幌)
*──「森美術館『六本木クロッシング2022展』インタビュー#3:O JUN」(https://www.youtube.com/watch?v=sgQ4JrNYftw&t=16s) 「森美術館「六本木クロッシング2022展」O JUN アーティストトーク|Mori Art Museum "Roppongi Crossing 2022" Artist Talk: O JUN」(https://youtu.be/OskvmrV4678?si=rct7AiH_Cly1X-85)
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札幌のアトリエで新作『水金地火木』と共に。撮影: Tsuge Hibiki
編集協力:Abe Kenichi, Kimura Shigeki (void chicken), Sakaguchi Chiaki (void chicken)
※記事や画像の無断転載、引用を禁止します。
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mlvoidchicken · 8 months
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[1] 漫談  [2] 特選・夏の終わりに、ぜひ観ておきたい〝A24〟映画10選!文・選=木村重樹 [3] 昼下がりのビアガーデン 南ドイツ シュトゥットガルトから byシェリン [4] 告知!ルーツ&アーツしらおい2023&北海道あれこれ芸術祭 [5] 読者プレゼント!VOID Chicken 2003年春号 [6] 編集後記
■■━━━━━━━━━━━━━━ [1] 漫談 ■■━━━━━━━━━━━━━━
さかぐ まだまだしつこく残暑お見舞い申し上げます。ようやく少しましになったけど、今年の酷暑はひどいねーげっそり。
さぼ 地球が溶けそうだね。私も熱中症デビューして、怖かったよ。OS-1初めて飲んだけどいいね。北海道のサツドラで買いだめしてます。こっちも暑いからね。
さかぐ 特に北の人たちは暑さに慣れてないしエアコンないしで災害級の暑さ。 みんな目が虚ろで、お気の毒です。 今年の夏は暑くてパソコンに向かうと眠ってしまう眠り病にかかって 全然仕事もはかどらず、その間に蔡國強の展覧会も終わっちゃいましたが、 初日とその前の白天花火のイベントに行けたのはよかった。 蔡さんには2003年の紙媒体のVOID Chickenで、北海道帯広でのデメーテルで空港までの道中でインタビューしたことがあったのでその号を探してみたら、あったの!いやーあれが20年前とは!
さぼ そうそう。でも蔡國強のインタビューの前にも何号かだしてるから、創刊は20年以上前ってことになるよねー。バックナンバープレゼントしちゃう?
さかぐ インタビューのタイトルが「火遊び好きのアーティスト蔡國強が語る!火薬はセックスみたいなもの。一度火がついたら止められない!」だからね、、飛ばしてたねーこの頃は。年に4回も出してたみたいバイリンガルで。すごいな! そして蔡さんの隣のページが森美術館オープン前の取材でデヴィッド・エリオットと故ピエール・ルイジ・タッツィが。豪華やん!
さぼ 豪華だし中身濃ゆい。zineなんて単語が生まれる前やね。Flash Artに紹介されたりワールドワイドに草の根だったよね(笑)しかし25年か30年かわからんけど、VOID からVOID chicken になって、インディペンデントアート出版活動はあっという間でしたな。玉手箱を開けたら白髪の爺さんになった浦島太郎の気持ちがよくわかる。(意味不明)
さかぐ そして、今読もうとしても字が小さすぎて、、当時よく「字が小さい!」って怒られた、その気持ちが今ならすごくわかるよ! そういえば岡本敏子さんにもVOID Chickenお渡ししたなあ。突撃インタビューもけっこうやりましたね。
さぼ そうだね。日向あき子先生も執筆してくれる予定だったことをいきなり思い出したわ。そういえば最近亡くなったケネス・アンガーと中原昌也の対談、2017年に札幌国際芸術祭にでたクリスチャン・マークレーとか。マークレーはその10年くらい前にインタビューしてて、さかぐのこと覚えてたんでしょ?昔は紙媒体だったな。折り作業が懐かしい。
さかぐ VOID Chickenの創刊0号はクリスチャン・マークレーのインタビューでした!両面コピーでつくったね。そのあと紙のVOID Chickenは9号まで出して、10号は記念号にしようっていって、ネタがなかったのか忙しくなったのかネットで事足りるようになったのか忘れたけど、、10号でてませんね。
さぼ そうだった。なんか10号の節目でいろいろ考えているうちに世の中はインターネットとスマホネイティブの時代に変わり。また紙もいいねーとは思うよ。手触りとか楽しめるしね。
さかぐ やる?
さぼ 資金集めにまずはクラウドファンディングだな。でも科博みたいに9億集ったら・・・トンズラしよー!■
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [2] 残暑こそ引きこもれ!  特選・夏の終わりに、ぜひ観ておきたい〝A24〟映画10選! 文・選=木村重樹
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季節は、夏! 山に海に、そして(エアコンのきいた)美術館やアートギャラリーに……と、予定を目一杯入れようとしていた貴君/貴女、この夏の未曾有の猛暑にめげてしまい、冷房全開の部屋の中に引きこもり、ひたすら秋の訪れを待ち侘びている方も少なくない、はず。
そんな〝ものぐさ〟な皆さんのために、今回は「この夏の終わりに、ぜひ観ておきたい〝A24〟【1】映画」と題し、せめて映画の世界内だけでも、クールでエッジがきいた若者たちの生態に肉薄し、プールやビーチやバカンスやキャンプ場や野外アクティビティ等々の雰囲気が味わえそうなタイトルを(牽強付会気味のタイトルも含め)10本ほど選定しました。【2】
さあ、いってみよう!(暑さでヤケ気味に)
【*1】〝A24〟とは?:2012年ニューヨークで設立された独立系エンタメ企業。新進気鋭のインディ映画の製作・出資・配給などに携わり、数多くの若き才能を発掘・紹介。独特のヴィジョンに根ざしたキュレーションとSNSを活用したマーケティングの結果、いわく「言葉で説明しづらいけれど、オシャレで今風で、どこかイケてる!」という〝A24らしさ〟のブランディングに成功。10年代以降のアメリカ映画界に旋風を巻き起こす。ここ日本でも(限られたシネフィル以外にまで)支持層を広げ、かの月刊誌『ユリイカ』が2023年6月号で「特集=A24とアメリカ映画の現在」を組んだほど。
【*2】ただし今回は「ホラー映画は除外」としました。「夏場にホラー」だとあまりにも意外性がなさすぎなのと、〝A24〟関連ホラーといえば……古くは『ウィッチ』や『イット・フォローズ』あたりから近年の『ミッドサマー』『ライトハウス』まで……いわゆる「プレステージ・ホラー/エレベーテッド・ホラー」(注:2000年代に流行した、俗情的なトーチャー・ポルノと対立する、登場人物の主観性を重視した高尚なホラー)の代表作として評価が定着しており、今さら紹介するのも野暮かと。
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01●『Never Goin' Back / ネバー・ゴーイン・バック』(Never Goin' Back:2018年)
──夏といえば非行!《ギャル版》🤮💩
最低賃金のウェイトレスをしながらテキサス郊外のシェアハウスで暮らす、高校中退のギャル2人組。憧れのビーチリゾートめざしてバイトのシフトを増やすも、部屋のドラッグが警官に見つかって即逮捕・勾留。旅行どころか、来月の家賃も払えないよ! 非行や逸脱を扱う若者映画は多々あれど、女性コンビというケースは比較的レア?(お下劣版『ブックスマート』とも)。まさにZ世代の窮状を煮詰めたような話だが、社会への呪詛に終始せず、何気に前向きなのが好感触。天敵の「ネオリベ」エロじじいに(吐瀉物と下痢便の)Wパンチを食らわすシーンは必見?!
02●『mid90s ミッドナインティーズ』(mid90s:2018年)
──夏といえば非行!《ボーイズ版》🛹🎤
かつての70sや80sのように、今や90年代がカルチャー的回顧対象に?! 90年代半ばのLAで、シングルマザーの母や粗暴な兄と暮らす13歳の少年。彼はある日、街のスケボーショップで年上の少年チームと出会い、連中の自由奔放さに憧れ、晴れて仲間入りをはたす。そんな兄貴分に認めてもらいたくて、つい危険なプレイに身を晒すうち、大怪我をして……。コメディアン・俳優のジョナ・ヒルが自身の体験を元にした初監督作。ハンディビデオで録画された映像のローファイ具合が郷愁をそそる。
03●『A GHOST STORY / ア・ゴースト・ストーリー』(A Ghost Story:2017年)
──夏といえばオバケ!👻👹
テキサス郊外の小さな一軒家で幸せな日々を送る若夫婦。だがある日、夫のCは交通事故で即死。病院で遺体と対面した妻のMは亡骸にシーツを被せ、悲しみをこらえて帰宅。かたやCは、シーツを被った幽霊の格好で自宅に戻り、悲観に暮れるMを見守る。ほどなく彼女は別の男性と親密になったり、最終的にはその家を引き払って転居。だが幽霊姿のCはその家に留まりつづけ……。魔法や妖精が出てこない、地に足のついた(オバケなのに!)リアル・ファンタジー。かの蓮實重彦氏が絶賛を惜しまないデヴィッド・ロウリー監督の一大傑作。
04●『アンダー・ザ・シルバーレイク』(Under the Silver Lake:2018年)
──夏といえばナンパと失恋!🕶🏄‍♂️
セレブやアーティストが好んで暮らす、LA市内の人気の街シルバーレイク。〝大物作家〟になるはずが仕事もなく、途方に暮れていた33歳のサムはある日、向かいに越してきた美女に一目惚れ、さっそくデートの約束を取りつける。だが翌日、〝妙な記号〟を残して彼女は突然失踪。真相究明に乗り出した彼は、億万長者やセレブが絡む「陰謀」に巻き込まれ……。『マルホランド・ドライブ』的であり、かつ『インヒアレント・ヴァイス』的でもあるが、そこまでドロドロしてないのが、いかにもデヴィッド・ロバート・ミッチェル流。ちなみに(A24配給作ではないが)同監督の長編デビュー作『アメリカン・スリープオーバー』(2010年)も〝夏を舞台にした青春映画〟の大傑作!
05●『スイス・アーミー・マン』(Swiss Army Man:2016年)
──夏といえばサバイバル?!🌴🦈
「十徳ナイフ(スイス・アーミー・ナイフ)」に引っ掛けたタイトルは、遭難して無人島に漂着し、今にも死にそうな主人公が出合った不思議な溺死体(ダニエル・ラドクリフ)のこと。ガス(おなら)を噴出して海上を高速走行し、口から飲み水を吹き出して乾きを癒す、まさに万能な〝死体〟との珍道中の末、はたして彼はわが家に帰れるのか……? 今年のアカデミー賞を総ナメにした『エブ~・エブ~』のブレイクで一躍名を馳せたダニエルズ(Daniels)監督の前回作。サバイバルものなのに全編に漂う〝希死念慮〟めいた諦念。映画後半で現れる幻想的な廃バス・シーンは、是枝裕和監督の『怪物』をも連想させる。
06●『aftersun/アフターサン』(aftersun:2022年)
──夏といえばパパとの日々!🌈💖
別居中の父と久々に再会をはたし、トルコのリゾート地でバカンスをすごす11歳の少女。兄妹と間違えられるほど父は若く、2人は仲がいい。美しい海と眩しい太陽の下、互いにビデオカメラを向け合い、親密な空気を収めてゆく親子だが、そんな父には(秘められた)心の不調があった。時は20年後、当時の父と同じ年齢になった娘は、ビデオ映像から記憶を手繰りよせ、当時は気づかなかった父の隠れた一面を見出し……。誰もが子供の頃、親とすごした夏休みの時間を思い出すだろう。1987年生まれ、30代半ばの若き女性監督シャーロット・ウェルズの長編デビュー作。
07●『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(The Florida Project:2017年)
──夏といえばママとの日々?🌞🥵
ディズニー・ワールド近隣の安モーテルで、目下失業中のヤンママと暮らす6歳の少女。似たような境遇の子供たちとつるみ、貧しくも楽しい日々をすごしていた。だがほどなく、そんな母娘に残酷な現実が……。2008年アメリカで発生したサブプライム危機の余波に苦しむ貧困層の窮状を、フロリダの陽光の下でポップかつカラフルに描いた異色作。監督のショーン・ベイカーは、LGBT当事者や街娼など、社会のはぐれ者にフォーカスした作品で定評があり、元ポルノ男優のダメおやじを主人公にした『レッド・ロケット』(2021年)も味わい深い。
08●『グッド・タイム』(Good Time:2017年)
──夏といえばヤンチャ?!🦹‍♂️🦹‍♀️
ニューヨークの最下層で生きる兄弟が一発逆転を狙って銀行強盗に成功。だが逃亡途中で、知的障害のある弟だけ逮捕される。愛する弟を救出するため、兄(『トワイライト』シリーズのロバート・パティンソン!)は警察病院に潜入し、包帯巻きの男を外に連れ出す。しかし、その男は弟ではなかった……。勢い任せの行動を重ねてドツボに嵌まってゆく浅慮遠望な人物を執拗に描き続ける、サフディ兄弟の傑作クライム・サスペンス。Prime Videoで観られる『神様なんかくそくらえ』(2014年)やNetflixオリジナルの『アンカット・ダイヤモンド』(2019年)もほぼ同様の趣向で、深思熟考こそが大事/かつ難しいことを教えてくれる。
09●『WAVES/ウェイブス』(Waves:2019年)
──夏といえば挫折と再起?🙅‍♀️🙆‍♀️
舞台はフロリダ州南部の高校。レスリング部の有力選手として活躍する男子高校生の兄は、恵まれた家庭で育ち、恋人との仲も順調、何不自由なく青春を謳歌していた。しかし、無理が重なって肩を負傷したことから、運命が大きく狂いだし、ついに人を殺めることに。事件から1年後、家族に起きた悲劇でふさぎこむ妹の前に、不器用だが優しい青年が現れ……。映画の前半と後半で〝主人公〟がスイッチする変わり種青春映画。ちなみに兄と妹は黒人で、妹に寄り添う彼が白人……というあたりの設定もミソ。
10●『ホワイト・ノイズ』(White Noise:2022年)
──夏といえば「地球滅亡」?!🌎💀
とあるアメリカの町で化学物質が流出する大規模な環境汚染事故が発生。大学教授のジャック(アダム・ドライバー)は妻(グレタ・ガーウィグ)と子供たちの命を守るため、車で避難所に向かう。その途中、有毒物質を浴びかけたジャックは死の恐怖に錯乱し、かたや妻の方も怪しい薬物を常習していたことが判明し……。『ヤング・アダルト・ニューヨーク』や『マリッジ・ストーリー』など〝意識高い系〟現代アメリカ人の苦悩に寄り添ってきたノア・バームバック監督が、ポストモダン文学の巨匠ドン・デリーロの災害小説を(A24+Netflix制作で)完全映画化。ポストコロナの今となっては、登場人物のパニックぶりを無邪気に笑えないシーンも。■
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [3] 昼下がりのビアガーデン 南ドイツ シュトゥットガルトから   byシェリン ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ジリジリする夏が恋しい。今年も6月にヨーロッパ中を熱波が襲い、ドイツ南部も40度近い灼熱に襲われたのは事実だけど、そんな後にはもれなくさめざめとした雨が付いてきて、長袖を手放せない肌寒さに肩透かしを喰らう、そんな夏がここ数年ありがちです。災害レベルに蒸し暑い日本と比べれば、なんて贅沢な悩みなんだ、と叱られそうですが、冬は寒いドイツだからこそ、今は暑さを全身で満喫したい。本当は暑さに弱いけれど涼しい夏は寂しすぎる。ああ、今年もか…とガッカリしていたら、夏も折り返しの今、急に抜けるような青空にぎらつく陽が差してくるではないか。なんて浮かれていたら家にはクーラーがないので、って、うちに限らずたいていの家にもないのだけど、一気に気温が上がって窓を開けずにはいられなくなってきた。
 さて、ヨーロッパの長い夏休み中には展覧会も映画もややお休みモード、今日の推しはビアガーデンです。とにかく外で何かすることが好きなドイツ人。真冬でも平気で散歩するドイツ人。乾いた夏の風景に欠かせないのはビアガーデン。
 昭和の高度成長期に育った私がビアガーデンと聞けば、デパートの屋上に提灯とカラー電球がぶら下��られた中で、サラリーマンがネクタイを緩めて枝豆や唐揚げを摘みながら、キンキンに冷えたジョッキを煽っている、そんなイメージだったのですけど、それはちょっと違う。もちろんビールがなくては始まらないものの、何より大事なのは、飲むこと以上にゆるゆる過ごす時間そのもの。気のおけない人と木漏れ日の下でただなんとなくそこにいる。ふらっと立ち寄って一休みもよし、話に花咲かせて延々と居座るもよし。だからビールもぐびっぐびっぷはー!ではなく、コクっと飲む。そしてほろ酔い気分のうちに席を立つ。こう書くとなんだか美しい。
 では、典型的なビアガーデンの姿をご紹介します。ビールは地元の樽生ものを筆頭に数種類が揃っている。南ドイツでは必ずあるヴァイツェンビア。これは小麦入りの濁ったビールで、どこかトロピカルフルーツのような香りがする。ちょっと前まではクリアタイプにスライスしたレモンを入れていたけど、古臭いのか最近見ません。あまり飲めない人にはラドラー。これはスプライトで割ったビールのこと。邪道ってのはごもっともですが、飲めば納得、意表をついて案外ありです。加えてワインもジュースもあれこれと。料理はソーセージとフライドポテトだけって店もあればこの地方名物、マゥルタッシェンというドイツの巨大水餃子的や、フランスのアルザス地方に跨るフラムクーヘンという薄焼きピッツァ的、中には相当凝った料理を用意しているところもありまして。そして食後のコーヒーやケーキ、アイスもあるのでフルコースも可能。
 そして空気感。街の中心を外れるまでもなく、ちょっと道を脇に入れば、栗と間違えらえるマロニエなんかの大樹があって、大抵その下にはビアガーデンが構えています。ベンチとビールメーカーの名入りの大きな四角いパラソル。街中でなくても、お城の中庭、山の崖っぷち、川の中洲と、思いつくところにやっぱりある。運営資金稼ぎなのか、テニスやスポーツクラブ、屋外プールもよくビアガーデンやってます。南の島のようにビキニで飲んでまた泳ぐ、なんて、健康的なんだかなんだかよくわからないけど楽しいのは確か。
そんな、カフェ以上に気負いない店構えなので、当然というか真昼間から営業中。仕事がないし用事もないし、いや、もしあったとしても、私、酔わないんで、でふらっと立ち寄れる気楽さ。まあ、緯度の高いドイツの8月の今、真っ暗になるのは21時頃ですから、仕事を終えた後でもまだまだ明るい。夕暮れを眺めながらのビールは実に良いものです。
ちなみに、大きな公園が近くにあるので、うちの近所にも数軒のビアガーデンがある。なのに友人たちは最近ちょっと飽きてきた、と衝撃的なことを言い放つ。短い夏を惜しむビアガーデン、ああ、一人気ままに行くしかないのだろうか。そして9月、パラソルが閉じ、ベンチが重ねられてたら来年の夏まで出番待ち。そこから一気に冷え込んで、ああ、秋が来たんだなと肌身を持って知るのです。■
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(左上から時計回りに)・ドイツで見かけるクロアチア料理。ひき肉で作ったソーセージ型チュヴァブチチが美味。 ・ミュンヘンの巨大なビアガーデン。夕方はすべて埋まるのだろうか?数百席もありそうでした。 ・こちらは未だ根強い人気のミニゴルフ。 ・入り口には可愛いアーチ。ここに自転車入れないで、とありますが、乗って帰るのはいいのか? ・メニューにはミニハンバーグやアラブ風サラダ、ベーガン向けまでお目見え。 ・ドイツの公園にはよくある卓球台。ジョッキ片手にほんとにラリーしてるって漫画かよ!と突っ込みたくなる。 ・白ビール、こちらもヴァイツェンビア。クリーミーな泡にうっとり。 ・あまり見なくなったレモンスライスの浮かぶヴァイツェンビア。瓶じゃなければ、この線まで必ず入れてくれます。ちなみに0.5リットルが標準。 ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [4] お知らせ!  開幕! ルーツ&アーツしらおい2023  北海道秋の芸術祭いろいろ
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コロナ明けインバウンド&国内旅行もリバウンドで、夏の北海道は激混み&ホテルも高騰、しかも猛暑でえらいことになってた北海道。アートは秋からが本番です。ホテルの値段も若干穏やかになり取りやすくなってきたでしょうか。道外からは、大おすすめのルーツ&アーツに加えて、せっかくなので2つ3つ予定をくっつけて回ってもいいと思います!
ルーツ&アーツしらおい2023 9/1-10/9 (木〜日祝オープン) 白老町内(北海道白老町) 太平洋と山々の合間、多くの川や湖など豊かな自然環境を有する、北海道南西部に位置する東西25kmの白老町。ウポポイ(民族共生象徴空間)のある町としても知られています。ルーツ&アーツしらおいは、土地に息づく文化や人々のいとなみ、地勢や自然など有形無形の地域資源に、アーティストが出逢うことで生まれる多彩な表現を発信します。(リリースより)
参加作家:青木陵子+伊藤存、梅田哲也、田湯加那子、ナタリー・ツゥー、野生の学舎(新井祥也)ほか
★9/1と9/2は梅田哲也の夜の展示公開と音響ライブミックスを行います。 会場はビール工場予定地の工事現場です。 9月1日 (金)・ 9月2日(土)17:30~19:30 (両日とも) 会場:THE OLD GREY BREWERY 直営店予定地    白老町大町3-4-11 (JR白老駅南口から直進徒歩3分 白老郵便局隣) 出演:梅田哲也 ゲスト:ナタリー・ツゥー 料金無料 途中入退場可  https://www.shi-ra-oi.jp/
あわせて巡るなら・・・
飛生芸術祭2023 9/9-9/17 飛生アートコミュニティ(北海道白老町) https://tobiu.com/
ムロランアートプロジェクト 9/9-9/24(週末祝日オープン、会場により日付異なります) 旧絵鞆小学校、千穐萬歳堂、中央町スピーカー(室蘭市) https://m-a-p.jp/
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [5] 読者プレゼント! ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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VOID Chicken2003年春号をプレゼント! 2023年ではありません、2003年号です! インタビューおまけ、蔡國強 失敗の系譜は必読です!
応募方法〜メルマガの感想、最近お気に入りのアーティストなど一言メッセージと共に下記メアドにお名前、送付先の住所を記入してお送りください。 当方送料負担にてお送りいたします。 occupiedvc(あっとまーく)gmail.com
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [6] 編集後記 ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
世界的な温暖 …ではなく灼熱化の毎日。皆さんいかがお過ごしでしょうか?今月も充実の内容。ご執筆いただいた皆さんに御礼申し上げます。
よく「こまめに水分補給をしましょう」と言うが、こまめに水なんか飲めるかこちとら江戸っ子でぇーベラボーメーと思っていたら、雑草と格闘した後に吐き気がしてきて 、熱中症に。ムカムカ、フラフラしてくる熱中症危ないです!怖いです!寝込みます!
 熱中症は本人の気づかないところでなってしまう。本当に無意識のうちになってしまうのです。それ以来、常時手の届くところに、OS-1を置いてます。
 いや、冗談なしで。この夏にバカな学校のせいで熱中症で命を落とした子供たちのニュースを聞くと怒りが湧いてきます。家族の皆さんに心からお悔やみ申し上げます。私なら学校を訴える。我が子を返せ!業務上過失致死!羊になっては命を取られるます!狼になれー!あ、ちょっと冷静になるため水分補給してきます …。皆さんもこまめに …。(さぼ)
白老で最後の調整中のアーティストの心地よい緊張感を分けていただきながらメルマガ編集してます。どの作家もすばらしいのでぜひ来てください。全力でご案内します!(さかぐ)
猛暑日が延々と続く昨今、さすがに調子が狂いますが、かといって地球上の何処にも逃げ場は…ない! 1999年ノストラダムスの大予言は外れたけれど、滅亡へのカウントダウンはすでに進展中?──と考えると怖いので、週末は話題の映画『バービー』を観て、現実逃避に走ります。(きむら)
+.d(・∀・)♪゜+.゜ h a p p y 2 0 2 3藝 術 y e a r +.d(・∀・)♪゜+.゜ t h a n k y o u f o r s u b s c r i b i n g VOIDCHICKEN is a Tokyo-based independent bilingual art paper
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┗━━━━━━━━━━━━━━2023/7/3━━━
C o n t e n t s
[1] 光州ニュースレター by 姜旻亨(キュレーター、Barimディレクター) [2]「現代韓国映画」の裾野の広さを俯瞰する8タイトル! by 木村重樹 [3] おすすめ展覧会 蔡國強「宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」 [4] Gallery Climate Coallition [GCC]/ギャラリー気候連合って何? [5] 読者からのお便り & 続:展覧会チケットプレゼント!アレックス・ダ・コルテ「新鮮な地獄」@金沢21世紀美術館 [6] 編集後記
■■━━━━━━━━━━━━━━ [1] 光州ニュースレター   by 姜旻亨(アートスペースBarimディレクター) ■■━━━━━━━━━━━━━━
日本を含め、海外生活約10年越え、光州に引っ越してもう9年が経つ。同じ時期、2014年に始めたBarim(バリム。韓国民画で使われる用語で、グラデーションという意味。ジャンルや背景の境界をぼかすという比喩で使っている)は、インディペンデント・スペースとしてまだ今も活動している。当時はAsia Culture Centerもまだオープンしておらず、インターナショナルなアートシーンとしてはビエンナーレの時期に人が集まるだけの静かな都市だった。観光都市でもないので、人々はここを民主化運動の聖地として知っていて、私もそうだった。特に光州ビエンナーレは、アジアで一番歴史の長いビエンナーレとして、その歴史の深さで知られていた。
今は光州だけではなく、韓国全体の雰囲気が少し変わった。これは、文化・芸能活動において国際を強く意識していた韓国政府の試みの結果が出ているからだと思う。それにYouTubeやインスタグラムで全ての個別の世界が平たくなり、それがよりわかりやすくなったのである。ここ数十年の韓国アートシーンの流れを見ると、日本とはとても違う雰囲気を感じる。2000年代から2012年まで日本に住んでいたので、2013年に韓国に戻ってきた私が、より敏感にそれを感じているのかもしれない。例えば、2000年代に入って、韓国の全ての地方都市に公立のアーティストレジデンスが生まれた。国立・私立の美術館、文化財団など、たくさんの都市で国内のアーティストのためではなく、海外のアーティストを招待するシステムが構築された。ビエンナーレもほとんどの大都市にできて、今は10個ほどになるかそれを超えると言われる。「世界のアートシーンに入りたい」というこの欲望は、直接ではないかもしれないが、今のKポップやドラマの成功にも繋がるものかもしれない。世界を意識した強い志向からいろいろな結果が出ている。それが現代芸術の持つ批評的で社会批判的な方向ではなく、資本の向く方向であることも事実であるが、方向性は確実に可視的だ。
こういうインターナショナルな動きに目を奪われてめまいがする反面、この全てがソウルで起きていることにも目がいく。地方にたくさんできた文化機関や国際レジデンスも、独自のルートで直接世界に出ていこうとするものではなく、結局ソウルに追いつこうとする動きだと思うと、分散している地方がそれぞれの役割を担いながら独立的に生きているというよりは、何かご当地特産品のようなアートをしながら孤立しているか、それともソウルに近づくために頑張っている様子にしか見えない時もある。
下の表は、2020年に国が行った調査で、ソウルとその他の都市の文化芸術の活動(2015-2020)を表している。政府が数えた公式行事なので抜けているものがたくさんあると思うが、偏りの度合いは明らかである。
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私は光州とソウルをこの9年、平均2週間から1ヶ月に1回は行き来しながら、両都市に暮らしているが、Barimが落ち着いていくある時から、KTX(韓国高速鉄道)で約2時間という距離の間ですら、ソウルと光州の時差を感じるようになった。ソウルのキュレーターや作家たちは、常に海外の動向を意識し適応するのがとても早く、展示の主題もヨーロッパのメインのアートシーンの主題とほとんど一緒だ。まるで波が来ることを知っていたサーファーのように、それに乗って誰よりも早く進んでいる。たとえば、最近よく目にするのは、脱植民主義(post-colonialism, decolonialism)、フェミニズム、障害者のための公平なシステム(barrier free)、LGBTQIAの権利などの主題がほとんどで、ディテールや文脈は多少違うが、ヨーロッパの流れとそこまで違わない。 日本の芸術大学を出て日本語も話せる者としてたまに日本に行くと、上記の流れとは違う日本の雰囲気を感じるし、それと共に、ソウルのシーンに追いつこうとするが追いついてない光州やその他の地方の都市に行っても、「何かちょっと違う」という違和感を感じる。例えば、今年の光州ビエンナーレも、いつものようにヨーロッパがベースである芸術監督が(今年は韓国人ではあるがイギリスをベースにしている監督である)来て、脱植民主義を含めて最新の主題を展示しているが、あまり光州では今まで話されてない主題であるため、まるでそこだけソウルになっている感じがする。ソウルと光州の時差を目にする瞬間でもあった。言い換えると、インターナショナルな動きがあり、それを積極的かつ早く受け入れるソウルがあって、そこにはおかしいほど時差はない。だが一方で、ソウルに追いつこうとする地方のインターナショナルな活動には、ソウルと時差がある、というおかしなことが起きているのだ。外の世界が中の世界より近いという不思議な感覚、それによる時差、行き来する人として道に迷う自分。そして光州ビエンナーレを見に来る海外の友達に光州やビエンナーレに関する感想を語っているという海外と韓国の同時代的なタイミング・・・。どこから話をスタートすればいいかわからなくなった私は、「うん、光州は美味しいのー」というとぼけたことを言いながら、いいレストランを紹介する。(それはそれでよかった��ど!)
最近はローカリティについて語ることが多い。光州で私がやっている活動はほとんどソウルには露出せず、海外でも取り上げられなかったが、2020年から始まったさっぽろ天神山アートスタジオとの交流やローカリティの時流から、たまに共同企画をしたり、招待されたりすることがある。ローカルも頑張ろうというトレンドに乗るよりは、物理的な場所から離れ、単位としての「ローカル」を読み取ろうという企画が最近Barimでやっていることだ。そして、とてもローカルな企画がインターナショナルな流れと繋がるという奇妙なことを目撃している。 度々思うことは、場所から離れること、場所にこだわらないこと、常に移動することをコンセプトにしているが、それが今の時代が大事に思っている、先住民の立場から冷戦の遺産を清算する*という世界の動きと、どこか真逆のようでいながら繋がっていて面白いと思っている。光州で、またどこかで、こういう話を交わせることが、これからもできたらいいなと思う。もしこのニュースレターを読んで興味を持った方は、是非とも声をかけてください。
―光のない光のまち、光州から。
姜���亨(カン・ミンヒョン) キュレーター、通訳・翻訳家、Barim(光州)のディレクターなど、現代芸術の様々な位置で活動している。脱中心的(decentralized)な芸術実践に関心を持っており、特に地域で活動しながらも、その地域性にとらわれない芸術活動を実践できるのかについて研究する。この超地域性(translocality)と自律性をデジタル技術の文脈で読み解き、デジタル技術を扱う芸術の別の形を考える「DEGITAL」プラットフォームを作り、運営している。アート・技術・社会の接点で起こる現象に関心を持ち、リサーチ、展示、ワークショップ、講演、トークなどが行われる一時的なプラットフォーム「Forking Room」の共同企画者としても活動している。
*冷戦の遺産について、帝国主義の反省やいろんな平和条約(日韓の間にはサンフランシスコ条約)、脱植民主義など…こういう動きを基本的に冷戦後の変化としてみる視点があります。ソ連とアメリカの関係や、世界戦争の余波の解決など……これらもこの動きに入ります。今の芸術系も世界戦争、イデオロギー戦争、帝国主義以降のことを意識しています。その中で帝国主義や植民主義への反省などにアプローチする方法として、先住民のことを呼び返していると思います。例えば、最近ポルトガルに行くとブラジルの先住民のことを展示してたりするようなコンテクストです。
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [2] 「現代韓国映画」の裾野の広さを俯瞰する8タイトル!   選・文:木村重樹
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『冬ソナ』のブレイクから始まった「第1次韓流ブーム」から、はや20年。過剰にエモくてバイオレンスな「韓流ノワール」が日本の映画マニアをざわつかせ、イ・チャンドンやキム・ギドク、パク・チャヌクといった韓国人監督が国際映画祭の顔になってから、10余年。
K-POPや韓流ドラマからコスメやグルメに至るまで……いまや日本のティーンエイジャーに定着し、熱烈な支持を受け続けている韓国カルチャー。同様に、日本における韓国映画の受容も年々幅と広がりをみせ、さらに動画配信サービスの普及によって、ジャンル映画からアート映画まで、韓流コンテンツの間口も広がってゆく一方。
愛好家にはおなじみだけど、門外漢はどこから手をつけていいかわかりづらい現代韓国映画。そこで、ここ10年以内の公開タイトルの中から──とりわけ、VOID Chicken読者に興味を持っていただけそうな──〝数奇な情景や展開が見どころ〟の映画タイトルを8作選んでみました(当初は10作選定したのですが、『バーニング 劇場版』(イ・チャンドン監督/2018年)と『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督/2019年)は超有名なので外した次第。未見でしたら、これらも要チェック!)。
ことアート映画に限定せず、アニメやホラーやサスペンスまで、できるだけ広いジャンルから選んでみました。気になるタイトルを見つけたら、ぜひ現物をチェックしてみてください! (※タイトル前の番号は公開年度順で、順位ではありません)
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1●『哭声/コクソン』(곡성(哭聲)・2016年:ナ・ホンジン監督) 2010年代後半に湧き起こったフォークホラー・ブームを(アリ・アスター監督『ミッドサマー』と共に)支える結果となった怪作。とある韓国の田舎町で村人が突然家族を惨殺する事件が頻発し、付近の山中に移住してきた〝謎の日本人(國村隼)〟が怪しまれる。ある日、地元警官が日本人宅を捜索した直後、彼の娘が錯乱状態に。高名な祈祷師が召喚されるも、悪霊払いは失敗。警官と村人たちは日本人を追いつめるが、彼を退治しても娘は治らない。悪霊の真の正体は……? 田舎ホラーに『ゾンビ』と『エクソシスト』を足して、シャーマニズム風味を振りかけた珍味。東アジア独特の湿気った不穏さがたまらない!
2●『ソウル・ステーション/パンデミック』(서울역・2016年:ヨン・サンホ監督) 韓国ではアニメ作品にも、同時代的な社会問題の影が……? 急速な経済発展の象徴たるソウル駅を舞台に、その波に乗れなかったホームレスを主人公に据えた、異色のゾンビホラー。社会から見捨てられた浮浪者がモンスター化して都市機能をダウンさせ、病原菌を撒き散らして国家的損失をもたらす。ヤクザや元風俗嬢から警官や軍人まで、職種や身分に関係なく、等しくゾンビの餌食になるのも示唆的。同監督の実写映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)もゾンビ・アクションものの傑作だったが、続編『新感染半島 ファイナル・ステージ』(2020年)は、しまりのないアポカリプスもの。残念!
3●『タクシー運転手 約束は海を越えて』(택시운전사・2017年/チャン・フン監督) 近年の韓国映画で頻繁に取りあげられるテーマのひとつに「民主化運動」がある。特に1980年5月に引き起こされた「光州事件」は、時の軍事政権とデモ隊が武装衝突した結果、多数の学生や市民が犠牲者となった、現代韓国最大の〝黒歴史〟。その実情をいち早く世界に発信した外国人ジャーナリストと、その協力者の実話を元にした本作。人気俳優ソン・ガンホの起用と、終盤のカーチェイスを含む緩急溢れる演出で日本でも大ヒット。本作に加えて、『弁護人』(2013年)、『1987、ある闘いの真実』(2017年)『KCIA 南山の部長たち』(2021年)あたりも観ておくと、同国の民主化の経緯をめぐるパズルのピースが少しずつ埋まってくる。
4●『はちどり』(벌새・2018年/キム・ボラ監督) 「厨二病」と揶揄されがちな思春期の不安定さと、従来の韓国社会で見過ごされがちだった「シスターフッド(女性同士の連帯)」を主題に据え、世界中の映画祭で絶賛された。舞台は経済発展を遂げ、民主化と国際化に邁進していた1994年のソウル。主人公のウニは、根深い家父長制のもとで窮屈に生きる中学2年生の少女。学校にも家庭にもなじめずにいたウニが、塾の新任女性講師ヨンジと交流することで、徐々に心を開いてゆく。実はこの(リベラルな)女性講師が、かつての民主化運動の学生闘士だったという趣向が、何ともせつない。
5●『夜の浜辺でひとり』(밤의 해변에서 혼자|밤의 해변에서 혼자・2018年/ホン・サンス監督) 映画監督との不倫を叩かれて目下休業中の女優が、隠遁先で酒に酔いクダを巻く、ただそれだけのミニマリスティックな映画。ちなみに実際の監督と主演女優も韓国での不倫スキャンダルが炎上し、手酷いバッシングを受けていたのだが……ベルリン国際映画祭に出品された本作は、銀熊賞(女優賞)を獲得。たいがいの韓国映画って、同国特有の時代性や社会性を反映しがちなのに対し、ホン・サンス映画は徹頭徹尾プライベート。「韓国のゴダール」「エリック・ロメールの弟子」などと評されていた、生粋のシネフィルにして映画エリートのホン・サンスだが、2010年代半ばにキム・ミニと邂逅して以降、手掛けられた全作品の主演女優が彼女で固定なのだ。キモすぎる!
6●『The Witch/魔女』(마녀・2018年/パク・フンジョン監督) 韓流バイオレンス・アクションの思わぬ収穫。施設を脱走して倒れていた少女が酪農家の夫婦に拾われ、育てられる。10年後、家計を助けんとTVのオーディション番組に出演した彼女は、ある特技を披露した結果、謎の集団から追われる羽目に……。ミュータント・キッズの超能力合戦というプロット自体は(いにしえの石ノ森章太郎マンガみたいで)さほど新味はない。だが、そのアクション描写が出色。主人公のアサシン少女(キム・ダミ)の無双さ具合が(大友克洋の『AKIRA』を彷彿とさせるくらい)しっかりと〝ヴィジュアライズ〟されている(ところが、続編『The Witch/魔女 ─増殖─』(2022)のアクションは凡庸きわまりない。これまた残念!)
7●『モガディシュ 脱出までの14日間』(모가디슈・2021年/リュ・スンワン監督) 南北朝鮮の根深い対立と、それを超克した〝協調〟のドラマ……それ自体、盛りあがらないわけがない。1990年、念願の国連加盟を目前にアフリカでロビー活動中の韓国と、その妨害工作に余念がない北朝鮮。おりしも巻き起こったソマリア内戦に巻き込まれた両国の大使が、互いに手を携えて決死の国外脱出を図った実話を元にしたアクション・スリラー。スタッフも主要キャストも全て韓国人クルーだが、撮影自体はモロッコでのオールロケ。アクション・シーンの迫力はハリウッド映画と見紛うばかりで「似たような企画を日本映画でも撮れるか?」と問われると、かの国の映画産業の成熟度に脱帽せざるを得ない。
8●『別れる決心』(헤어질 결심・2022年/パク・チャヌク監督) ポン・ジュノらと並んで早くから海外進出を果たしたパク・チャヌクの最新作、カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞したことも記憶に新しい。殺人事件を追う生真面目な刑事(パク・ヘイル)と、その容疑者である被害者の妻(タン・ウェイ)が、対峙しながらも惹かれ合う姿を、スタイリッシュかつ寓話的に描く。なので、サスペンスの肝である「真犯人探し」や「禁断の愛の行方」などは比較的どうでもよくて、見どころは異常なまでに凝りまくった映像表現(凝りすぎて鼻白むくらい)。もうひとつのポイントが〝中国からの密入国者〟だった容疑者女性が操る「片言の韓国語」。前作『お嬢さん』(2016年)において重要な役割を果たした「片言の日本語」が彷彿とされよう。
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [3] おすすめ展覧会 蔡國強「宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」@国立新美術館 ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
蔡國強「宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」 2023年6月29日(木) ~ 2023年8月21日(月) 毎週火曜日休館 会場 国立新美術館 企画展示室1E 主催 国立新美術館、サンローラン https://www.nact.jp/exhibition_special/2023/cai/ Netflixの「Sky Ladder」も涙だったけどいわきでの鎮魂と希望を込めた白天花火も泣けた。蔡さんの花火はいつもだれか見せたい人がいて、そして蔡さんはたくさんの人といっしょに見たいんだろう。全人類と、宇宙人と。80年代日本で無名時代の火薬ドローイングからAIとの対話から生まれたアーティストcAIとの合作まで、好奇心を爆破しつづける蔡さんの壮大な宇宙観が��公募展団体展用の仕切りをすべてとっぱらった広々1フロアに展開してます。悠々として爽快!会期短し、お見逃しなく!(さかぐ)
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [4] Gallery Climate Coalition [GCC] ギャラリー気候連合って何? ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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photo: NORI YAMAMOTO ※本文と画像は関係ありません。
ギャラリーや芸術機関による気候危機アクション「Gallery Climate Coalition(ギャラリー気候連合) 」、通称GCC。深刻化する気候危機に対してアート界における対応策やガイドラインを打ち出すことを目的に、2020年ロンドンで結成された。現在、800を超える美術館やギャラリー、アートフェア、芸術機関、アーティストが賛同者に名を連ね、ベルリン、ニューヨーク、台湾、ロサンゼルスとイタリアの各都市でも支部が活動している。 2021年GCCに加入したアーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]は、2023年に気候危機に積極的に取り組む日本初のアクティブメンバーに登録された。深いコミットメントと仕事が求められるアクティブメンバーは、ほかアートバーゼル、フリーズ、クリスティーズ、MoMA、カムデン・アーツセンター、テートなど世界78団体。AITはこれから「気候危機とアートから考えるアクション」をテーマに、スタディミーティングやラウンドテーブルを開催して、アクティブメンバーとして活動していく予定だ。 たとえば、展示室の温湿度数値の見直し、輸送手段の検討、会期の延長、梱包材や展示資材のリサイクルなど、日常のルーティンのなかでも改善できそうなことはある。しかし、それにはコストがかかるし業界のルーティンも根強い。だからこそ、この問題に関心を寄せる仲間たちとまずは一緒に考えてみない?というのがスタディミーティングの主旨だ。こうした取り組みからスタートして、やがて業界全体をいい方向へ動かすことになる��いいなと思う。 ところでAITのロジャー��マクドナルド氏いわく、「気候変動危機なんてフェイク!」という有識者は特に日本に多いんだそう。地震や台風といった自然災害が元々多い土地で暮らしてきた日本の民にとっては、ヨーロッパの気候変動アクションはヒステリックに思えるかもしれない。でもきっとこれからの国際的な展覧会は、コンセプトやキュレーションだけでなく実際の環境負荷まで評価されはじめる。その時に、欧米ではこうだからと慌てたり、とりあえずGCCに参加してポーズだけ装うのではなく、フェイクと切り捨てるのでもなく、今から自分たちの身の回りの環境を批評的に見渡して、そこからクリエイティブな実践を一歩ずつしていこうと試みるほうが、断然楽しそうだし、アート的だと思う。 GCCは自分のプロジェクトが排出する二酸化炭素を計算できるカーボンカリキュレーターをはじめ具体的なアクションをいくつも提案している。興味ある方はGCCのサイト(インフォグラフィックが秀逸!)やAITのグリーン活動を要チェックです。(さかぐ)
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [5] 読者からのお便り & 続:展覧会チケットプレゼント! アレックス・ダ・コルテ「新鮮な地獄」@金沢21世紀美術館 ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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art 21: Alex da Corte in"EVERYDAY ICONS" Alex da Corte "Flesh Hell" アレックス・ダ・コルテ「新鮮な地獄」 2023年4月29日(土) 〜2023年9月18日(月) 会場:金沢21世紀美術館
※展覧会チケット応募方法 メルマガの感想、最近お気に入りのアーティストなど一言メッセージと共に下記メアドにお名前、送付先の住所を記入してお送りください。 当方送料負担にてお送りいたします。 occupiedvc(あっとまーく)gmail.com
〜読者からのお便り〜 チケットをありがとうございました。 昨日、金沢21世紀美術館に行って見てきました。 あの巨大なボックスに映し出される映像を見始めると心の中に 「こんなばかばかしいものを見続けるのは時間の無駄だ。さっさと出よう」 という気持ちと 「このあとどう展開していくのか、きになるなぁ。あと少しだけ見ていよう」 という気持ちが葛藤し、結局最後まで見てしまうという作者の術中にはまってしまいました。そしてつぎの部屋はどうなのだろうかと、こりずに次の部屋を訪ねてしまいました。周りを見ていても結構辛抱強く作品を見続けている人ばかりなのでびっくりしました。
それにしても金沢市は県庁所在地とはいえ人口が46万人くらいしかないのに美術館があんなにあり、ひとびとが平日の昼間なのに詰めかけているのにはびっくりしました。街としての蓄積が江戸時代から続いているからなのかもしれないと思いました。 また欧米系のひとがいやに目につきます。行き交う人々を見ていても居住者と思われる人があっちからこっちへと歩き、観光客と思われる人がこっちからあっちへと歩いて行く。比率からすると東京よりも欧米人のうろついている比率が高いと思いました。もちろん21世紀美術館内を見てもあっちにもこっちにも。例のプールの下では欧米系の中年の女性2人組に写真を撮るのを頼まれ、シャッターを押してあげたら今度は向こうからお撮りしましょうかと言われてこっちも撮ってもらいました。このあたりが普通に進んでいくのにもびっくりしました。 調べると国内でも東京、京都、大阪についで欧米人の行く街として広島か金沢かみたいなランキングだそうです。 金沢の文化的な蓄積、厚みに驚いて東京に帰ってまいりました。 大変貴重な経験ができました。そのきっかけを作るチケットを頂き本当にありがとうございました。 (n.m.)
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [6] 編集後記 ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
5月にソウルと光州へ行きました。韓国へ行ったのは1988年以来。いろんな人に話しかけられては道端に座って話しこみ、毎晩誰かに酒を奢ってもらってた貧乏学生旅行。いつでもまた来れると思ってたらこんなに年月たっていた。あの時奢ってくれた人、ありがとう。(さかぐ)
本号内の拙稿(「現代韓国映画」〜)でも触れた、ホン・サンス監督の最新作『小説家の映画』(2022年)の日本公開が、6/30に開始。また同作品の公開を記念して、墨田区菊川のミニシアターStrangerでは監督の特集上映が組まれたり、映像特集ムック『フィルムメーカーズ』でも1冊彼を取りあげるなど、やおらホン・サンス人気が日本でヒートアップ!? 仏ヌーヴェルヴァーグのスタイルとメソッドを現代社会に継承している唯一無二の韓国人である彼の蛮勇ぶりが、改めて注目されつつある…のかもしれません。(きむら)
今月もボリュームたっぷりで寄稿いただいた皆さんありがとうございました。saboことおっちょこちょいの私ですが、先月風呂場で石鹸水で滑って転んで肋骨にヒビが入ってしまいました。この事件以来、見ただけで激痛が脳内に甦るのでボディソープを使うのをやめました。ボディソープは危険だ!ちゃんと泡を立て体を洗ったらしっかり流しましょう。私は使いませんけど。なんて年寄り臭い説教で締めてすいません。次号もお楽しみに。(さぼ)
+.d(・∀・)♪゜+.゜ h a p p y 2 0 2 3藝 術 y e a r +.d(・∀・)♪゜+.゜ t h a n k y o u f o r s u b s c r i b i n g VOIDCHICKEN is a Tokyo-based independent bilingual art paper
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mlvoidchicken · 1 year
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ┃VOID Chicken Nuggets 2023年4月13日号 ┃‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ┃快調アート小咄ブログ ⇒http://voidchicke.exblog.jp/ ┗━━━━━━━━━━━━━━2023/4/13━━━━━━
C o n t e n t s
[1]  フォトレポートTHE GILBERT & GEORGE CENTREオープン! [2]  漫談~坂本龍一追悼その他いろいろ [3] 「フレッシュパーソンにおすすめの映画」セレクション by 木村重樹 [4] チケットプレゼント!アレックス・ダ・コルテ「新鮮な地獄」 [5] 編集後記
■■━━━━━━━━━━━━━━ [1] フォトレポートTHE GILBERT & GEORGE CENTRE       オープン! ■■━━━━━━━━━━━━━━
2023年4月1日ロンドンにギルバート&ジョージ・センターがオープンしました。 ギルバート&ジョージ自らご案内されたプライベートツアーのフォトレポート! 写真提供: 西原佐季子 (キャプション編:voidchicken)
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彼らの住居兼アトリエからセンターまで徒歩でご案内。
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センター入口。お隣はパブ。
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地代の高いロンドンに広々としたギャラリースペース。なんと贅沢な!ギャラリーは地下、地上階、一階。「Art for All」の精神に基づき入場無料&予約不要。当面は金土日のみオープン。ドネーション大大歓迎!
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GGの限定���リントも買えるショップへ。御大自らドアを押さえてくださる!
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サイン入りポスターやアートブックが並ぶショップ。 今ならオープン記念に制作された21種の限定エディション「THE WHITE PRINTS」が販売中。
────────────────────── (公式ウェブサイトより)
To Be With Art Is All We Ask.
Our art is DEATH, HOPE, LIFE, FEAR, SEX, MONEY, RACE, RELIGION, SHITTY, NAKED, HUMAN, WORLD.
We welcome you to the opening of The Gilbert & George Centre on the 1 April 2023.
The inaugural exhibition at The Gilbert & George Centre will be THE PARADISICAL PICTURES, exhibited in London for the first time.
Love Always and All Ways
x Gilbert & George x 
アートと共にある それだけが私たちの望み 私たちのアートは、死、希望、生命、恐怖、セックス、金銭、人種、宗教、下劣、裸体、人間、世界です。 2023年4月1日、The Gilbert & George Centreへ皆様を歓迎します。 The Gilbert & George Centreの開館展は、 ロンドンで初めて紹介する「THE PARADISICAL PICTURES」です。
いつでも愛を あらゆる方法で
x ギルバート&ジョージ x
THE GILBERT & GEORGE CENTRE 5a Heneage Street London E1 5LJ https://gilbertandgeorgecentre.org
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [2] 漫談~坂本龍一追悼その他いろいろ ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
さぼ:「ダムタイプ2022:remap」展(アーティゾン美術館、5/14まで)を見終わって、やっぱり坂本龍一こと教授の気配が…ここにもあそこにも…。泣きながら見ちゃったよ。坂本さんがダムタイプのメンバーの一員になったいきさつは存じませんけど。
さかぐ:あの真ん中の空間の音楽が坂本さんの作曲かな。会場をぐるっと取り囲む世界のいろんな都市のフィールドレコーディングの音源も音むちゃくちゃよかった。あれも坂本さんのディレクションだってね。世界をremapしてから新しい旅に一人でたったんだなって、、、しんみり。。。
さぼ:フィールドレコディーングいいよね。まるでそのストリートにいるような気分になる。異なる街の音が重なり合う瞬間が数分あるね。
さかぐ:アピチャッポン・ウィーラセタクンが音源提供したというチェンマイのレコードを探して、暗くて見えなくて会場2周しちゃったよ。小鳥がさえずってました。
さぼ:そうそう。小鳥ちゃん、リアルに耳元に聴こえた。レコードプレイヤーとスピーカーが一体化した展示什器も凝ってたけど、LEDや他の装置も美しい!デザイナーも必見。
さかぐ:そして、その下階の「アートを楽しむ」展もお見逃しなく。珠玉の名画の数々が間近に見られます。さすがアーティゾン、いいコレクション持ってるなあ。
さぼ:森村泰昌の作品もありましたな。森村様の青木繁の自画像よかった!あ!そういえばさかぐに教えてもらったドキュメンタリー、「The Show Must Go On: The Queen + Adam Lambert Story」めちゃくちゃおもしろかったよ!AdamもQueenとツアーするまでに苦節ウン年あるんだね!
さかぐ:ダムタイプからクイーンへ飛んだ!でもメンバーの死を乗り越えていったグループっていう点は共通してるか(強引)。フレディの代わりじゃなくて新生クイーン+アダム・ランバートとして、クイーンのままアップデートしたストーリー。ブライアンが「アダムが若い血を輸血してくれた」って笑。ロジャーも若返ってた!
さぼ:あのBrianとRogerの満面の笑顔!歳を重ねても現役でステージで演奏して、世代の違う若いファンに熱狂的な声援を送ってもらえるのって素晴らしいよね。ウルーーーー。
さかぐ:長生きして元気にステージやってほしい。アダム・ランバートも最初のアメリカン・アイドルの初々しい感じから今や立派なディーバに成長!貫禄!
さぼ:新作「High Drama」はカバー集でDuran Duranの「Ordinary World」もいいけど、Billie Eilishの「Getting Older」もおすすめです。ディーバといえば!東京ビエンナーレじゃな(不明)。
さかぐ:強引なフリ!クラファンもう少しで達成ですね!頑張れー
東京ビエンナーレ2023 クラウドファンディング4/28まで! https://readyfor.jp/projects/tokyobiennale2023
────────────────────────── ・ダムタイプ2022:remap」展@アーティゾン美術館 https://www.artizon.museum/exhibition_sp/dumbtype/
・「Queen and Adam Lambert Story | The Show Must Go On」はNetflixで。字幕なしの録画もネットにあり。 ・Adam Lambert: "Ordinary World” (official video) https://youtu.be/N92SdfUyARg ・Duran Duran: “Ordinary World” (official video) https://www.youtube.com/watch?v=FqIACCH20JU
おまけ ・Bronski Beat “Smalltown Boy” https://youtu.be/alIRDysk3jk 現役で活躍中のゲイミュージシャン、Jimmy (61歳)の裏声に落涙。最初の手の振りに注目!
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [3] 全国の美大・藝大新入生にVOID Chickenが贈る「フレッシュパーソンにおすすめの映画」セレクション◆
文=木村重樹
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4月に突入! 新年度のはじまり! 真新しい環境に身を置いて緊張気味のフレッシュパーソンもいらっしゃることでしょう。そんなおり、VOID Chickenスタッフから今回下った指令は「美大新入生(あるいは、フレッシュ社会人クリエイター?!)に、ぜひ観てもらいたい映画セレクション」なるもの。
 果たしてそんなフレッシュパーソンが、当該メルマガを購読しているの? という疑念が一瞬脳裏をかすめつつ「当事者の周辺人物なら、居るだろうな!」という心持ちで(例によって思いつくまま)選んでみました。
 もちろん「美大新入生たる者、そんな年長者からの〝お勧め〟なんぞを鵜呑みにしてほしくない!」という、カウンターアクション的な心持ちも(ちょっぴり)ないわけではありません。ですが、〝お勧め〟を遠慮した結果、これらのタイトルと一切無縁なキャンパスライフを送られるのも、どうよ?……というわけで、えいやで選びました。では、さっそく!
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■PART-1:「制作」にまつわるヒントが得られる(かもしれない)日本映画・4選+α
●『ばしゃ馬さんとビックマウス』(2013年/監督:吉田恵輔)
▶︎「才能の有無��と「創作活動」を続けることの見極め
 自分の〝夢〟に向かって邁進する野心的な若者=クリエイター志願者たち。しかし一度抱いた〝夢〟は、叶えるのも諦めるのも難しい。それでもいつか〝夢〟に決着をつけなければならない時がやってくる。ゆっくりと、だが着実に。
 プロのシナリオライターをめざして、ばしゃ馬のように一生懸命を書き続ける独身女性(麻生久美子)が通うスクールで出会ったのは、まだ一度もシナリオを書いたことがないくせに、妙に自信たっぷりのビッグマウスな男子(安田章大)だった……。
 成功を夢みる全ての若者(と元若者の大人たち)のハートを揺さぶりまくる大命題「努力すれば夢は叶う(のか?!)」に真正面から対峙したラブコメ怪作。フレッシュパーソンにいきなり突きつけるのも酷だけど、説教臭くないのでお勧めしておきます。
●『JUNK HEAD』(2017年/監督:堀貴秀)
▶︎「ひとりでできた!」究極の個人制作から見えるもの
 「不老不死の人類が生殖機能を失った未来世界、地底に棲息する人工生命体の調査を志願した主人公は」みたいな筋書きの委細は、興味ある人が調べてもらえればいいとして……企画・制作・脚本を手がけた監督が、たった一人の独学で作り始め、約7年の歳月をかけて(100分近い長編アニメを)完成させた、SFストップモーション・アニメの大傑作。
 何が凄いと言って、このスチームパンク的異世界を、ほぼ〝ひとり〟だけで構築したこと(制作途中のメイキングが、エンドロールで明かされる)。かつまた、そこまでセルフメイドに徹しつつひとりよがりにならず、〝作家性〟と〝エンタメ性〟の匙加減が見事なこと(悪趣味ノリも、そこまでエスカレートしないので安心して観ていられる)。
 もちろん誰もがこんなスタイルとバランス感覚で創作活動を続けられるわけでもないが、「奇跡って、あるんだよね」という直近の参考例として。
●『街の上で』(2020年/監督:今泉力哉)
▶︎「学生映画」の現場としてのシモキタ
 恋愛群像劇の名匠・今泉力哉が、再開発の波に飲まれて久しい〝若者の街〟下北沢を舞台にした『ご当地映画』の傑作。下北沢の古着屋で働く青年(若葉竜也)は、いつも狭いテリトリーで代わり映えのない日々を送っていた。そんなある日、ある女性監督(萩原みのり)から自主制作映画の出演を依頼される。戸惑いつつ、渋々出演を決意した彼のもとに、新たな出会いと変化が次々と訪れ……。
 物語の焦点は〝恋愛群像〟だけど、自主制作にのめり込む若者の〝厄介さ〟が隠し味となっている。撮影現場として、控え室として、反省会を行う居酒屋として、上映会会場として……舞台となるシモキタ。そんなシモキタの各所で交わされる青臭い「制作談義」と、その生け贄にされる主人公青年。シニア観客は思わずむず痒くなるだろうが、若い諸君にとっては、存外にリアルで切実な寓話かも……?
●(映画版)『ハケンアニメ!』(2022年/監督: 吉野耕平)+TVアニメ版)『映像研には手を出すな!』(2020年/監督:湯浅政明)
▶︎「ひとりでできない!」からこその、アニメーション制作
 (映画や舞台やゲームと同様)企画やアイディアがあり、シナリオが書かれ、絵が描かれ、動きが、声や音が、編集が……と、複数スタッフの共同作業の結果、ひとつの作品が完成する、そんな〝アニメ制作〟の現場をめぐるドラマ。
 とはいえ、前者は辻村深月による小説の映画化/後者は大童澄瞳によるコミックのアニメ化。いずれも「アニメ制作をめぐる修羅場」が見どころではあるが、前者の主役は「同じ放送枠の〝覇権〟(そう、ここでの「ハケン」は派遣社員のことではないのだ。紛らわしい!)を争う、新人女性監督とカリスマ・アニメ監督」なのに対し、後者は「アニメーター志願の女子高生たち」。〝アニメ制作〟と言っても色々なのだ。
 最近ではファインアート界でも「アート・コレクティブ」みたいな体制がクローズアップされて久しいが、共同制作をめぐるドラマというのは、じつに21世紀的な〝クリエイターあるある〟なのかも?
       *
■PART-2:《創作》のヒントや刺激になりそうな、21世紀アート系映画への誘い・8選
▶︎ミュージシャンやグループ名で聴く音楽を選ぶように、著者名で買う本を、画家名で観る展覧会を選ぶように……評判の高い「映画監督」が作りあげた映画を何本か続けて観てみると、その監督の〝作家性〟なるものが浮かびあがってきます。こと、ヴィジュアル面に特徴を持つ監督の作品を、おすすめします。
●ギレルモ・デル・トロ監督作品(Guillermo del Toro、1964年生まれ)
▶︎『パシフィック・リム』(2013)、『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)
 まるでトトロのような丸っこい体格のメガネヒゲおやじ。日本の特撮映画やアニメへの偏愛を隠さない、メキシコ出身のオタク監督ギレルモ・デル・トロ。独創的な美術デザインやキャラ設計、クリーチャー造形などが特徴的で、それらを起用したダーク・ファンタジーやホラー映画で人気が高い。ジャンルの性格上、グロテスクなシーンが含まれるケースも皆無ではないが、単にグロい=悪趣味!というだけで終わらず、物語としての感動やエモみと背中合わせなのが素晴らしい。
 日本の怪獣映画へのオマージュも感じられる『パシフィック・リム』(2013)や、アカデミー賞4部門に輝く、男性版〝人魚姫〟の『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)あたりが比較的観やすい。絵コンテ集などのアートブックも刊行されています。
●ウェス・アンダーソン監督作品(Wesley Anderson、1969年生まれ) ▶︎『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2001)、『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014)
 上掲のデル・トロ同様、映画のワンシーンを見ただけで「ウェス・アンダーソン(WA)だ!」という分かりみが深い、記名性の高いアメリカ人監督。
当記事を執筆中の2023年4月、東京・天王洲の寺田倉庫で開催中の『ウェス・アンダーソンすぎる風景展』[
https://awa2023.jp/
]は「WAが監督を手がけた映画のワンシーンを切り取ったような世界観(例:ポップなパステルカラー、水平シンメトリーな構図、等)を備えた写真を集めた企画展。かような〝WAスタイル〟を確立させた映像作品……観といて損はないのでは?
 美術セットや衣装、画面構図に注目するなら『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2001)や『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014)あたりをお薦め。
●アリ・アスター監督作品(Ari Aster、1986年生まれ) ▶︎『ヘレディタリー/継承』(2018)、『ミッドサマー』(2019)
 90年代にブレイクした「映画オタクの名監督」タランティーノの登場以降、映画マニアが制作サイドに回り、高い作家性を発揮した例はいくつかあったけれど……アリ・アスターもまた、大のホラー映画ファンが嵩じて、新世紀ホラーの担い手として高い評価を得ている人物。
 とはいえ現時点で公開ズミの長編タイトルは、『ヘレディタリー/継承』(2018)と『ミッドサマー』(2019)の2本のみ。しかし、これら2作で展開するサイコスリラー/心理ホラー的な趣向、そして、各作品世界に独特の〝不穏さ〟を与えているのが、独特な造形美術の妙だ。『ヘレディタリー/継承』におけるミニチュア模型、『ミッドサマー』に登場するカルト教団の壁画や建造物……。グロテスクだったりショッキングなシーンに話題が集中しがちなアリ・アスター映画の〝造形センス〟に注目いただきたい。
●ジョーダン・ピール監督作品(Jordan Peele, 1979年生まれ) ▶︎『ゲット・アウト』(2017)、『NOPE/ノープ』(2022)
 コメディアン・俳優としてキャリアを積んだアフリカ系アメリカ人が、齢40近くで映画監督デビュー。そのデビュー作『ゲット・アウト』(2017)が高評価を得て以降、社会問題や人種問題を取り込んだ……つまり〝ひと癖ある〟ホラー映画の撮り手として要注目なのが、こちらのジョーダン・ピール。
 シュールなモチーフやサスペンスの要素を取り入れつつ、人々が内心に抱えている差別や偏見を絶妙な匙加減で浮き彫りに……この手の〝社会派〟タイトルって、とかくお説教臭くなりがちだけど、エンタメ・モードの隠し味にそれらを取り入れるあたり、とても巧妙かつクレバー。最新作『NOPE/ノープ』(2022)では、未確認飛行物体を目撃した牧場経営の黒人一家が〝親の仇のUFOの姿を見事撮影〟するまでの格闘が描かれる。ジャンル映画の体裁を取りつつも、衣装や調度品、撮影手法にも凝りまくっている。必見!
 *
■PART-3:先の見えない世の中で《希望》の灯りを見出す映画・1選
▶︎アメリカの「Z世代」に共通するマインドのひとつ、それは「先行きの暗さ/未来への絶望」なるもの。怒涛のような情報がスマホのSNSから流れ込む彼/彼女らの心中を察するに……というわけで、その反動としての〝ウェルビーイング(自分のご機嫌を取るためのメソッド)〟の重要性が問われてきます(仕事の「生産性」を高めるために瞑想するのとは、わけが違います)。そんな「観るだけで心が安らぐ/勇気を貰える」ような映画を見つけておくのも、いいですよね(以下は、そのサンプルです)。
●スパイク・リー監督:『アメリカン・ユートピア』(2020)  デイヴィッド・バーンによる伝説のブロードウェイ・ショーの完全映像化……なので、他の劇映画とは趣向が違うけど、最後に駆け込みでご紹介。チェーンのカーテンが四方に垂らされただけのフラットなステージ上で、楽器を抱えたメンバーとバーンが編成を組み、ある時はマーチングバンドのように、またある時はミュージカルのワンシーンのように、歌い/踊り/演奏じ/語りかける。  独特の振付とライティングのみというストイックな舞台演出にも関わらず、観る者を釘付けにする107分。そして(題名どおり)21世紀以降、深刻な社会的断絶が進展するアメリカにおいて、かりそめの《ユートピア》を創出する試みを、名匠スパイク・リーのカメラが収録。楽曲に元気づけられ、ステージングのメッセージに勇気を貰う。こんな映画体験も、たまにはいいものですよ!
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [4] 展覧会チケットプレゼント!(5組10名様)
アレックス・ダ・コルテ「新鮮な地獄」@金沢21世紀美術館 ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
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Alex da Corte "Flesh Hell" アレックス・ダ・コルテ「新鮮な地獄」 2023年4月29日(土) 〜2023年9月18日(月) 会場:金沢21世紀美術館
ビッグバード、ブランクーシ、自由���女神、デュシャン、ゴッホ、エミネム、トイ・ストーリー3、、、あらゆるイメージとキャラクターのファンタジア、アレックス・ダ・コルテのアジア初展覧会!トレーラーもすてきです。https://www.youtube.com/watch?v=uXGqq6QVgyA
※展覧会チケット応募方法 メルマガの感想、最近お気に入りのアーティストなど一言メッセージと共に下記メアドにお名前、送付先の住所を記入してお送りください。 当方送料負担にてお送りいたします。 occupiedvc(あっとまーく)gmail.com
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [6] 編集後記 ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
坂本龍一が亡くなって、いろんな映像や追悼文が流れてきたけどいまだに実感がわかないな。
いろいろ書きたいけど書き切れない。私のなかでは永遠です。教授、またあおうね。(さぼ)
春ですね…今年の春のミッションはズバリ《断捨離》▶︎文芸創作誌『Witchenkare(ウィッチンケア)』13号に〈アグリーセーター と「本当は優しい鬼畜系」の話〉というエッセイを寄稿しました。全国の個性派書店で取扱中。令和の世から見た《90s回顧》の箸休めに、ぜひ!(きむら)
メルマガ出すたびに誰かの追悼している。前回も同じこと言ったなあ。神宮外苑の森をみんなで守りたい。そしてRIP Ponta。楽しい思い出ありがとう(さかぐ)
+.d(・∀・*)♪゜+.゜   h a p p y  2 0 2 3藝 術 y e a r   +.d(・∀・*)♪゜+.゜ t h a n k  y o u  f o r  s u b s c r i b i n g VOIDCHICKEN is a Tokyo-based independent bilingual art paper
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strawberries sandwiches
4:59 Sapporo , 2023
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:
倉知朋之介
米村優人
「止め処ないローレライ展」
:
米村さんと倉知さんのふたり展。昨年冬の札幌のieからインスタレーションも進化して、映像も深化していました。3フロア使った展示は米村さんの立体と絡む倉知さんの映像を存分に味わえます。2/19まで。
artist ig
@kadojr91
@yonemura.d.a
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2022年12月17日号 追悼 篠田太郎さん/メルマガVOIDChicken Nugget 2022年12月17日号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ┃VOID Chicken Nuggets 2022年12月17日号 ┃‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ┃快調アート小咄ブログ ⇒http://voidchicke.exblog.jp/ ┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━━2022/12/17━━━
C o n t e n t s
[1] 追悼 篠田太郎さん by 小沢剛/高村美和 [2] VOID Chickenインタビュー!倉知朋之介さん [3] 漫談:札幌カフェめぐり [4] ドイツで暮らすコロナの時間 その6  #クリスマスマーケット by シェリン [5] VOID Chicken Nugget 読者に贈る「2022年映画ベスト10」by 木村重樹 [6] 編集後記
■■━━━━━━━━━━━━━━ [1] 追悼 篠田太郎さん ■■━━━━━━━━━━━━━━
僕が彼に貸したお金は無かったかと思い出そうとしたり、彼から借りたままの工具を思い出そうとした。ありそうだけどそんなものは無かった。 2001年のソウルと2003年のリオのレジデンスでは長く時間を共にし、制作と展示だけに没頭できる幸せに浸っていた。その時の僕らは毎日少年のように輝いていたはずだ。 太郎は自分の制作に厳しく、世間知らずで、過剰にピュアーで、人生を楽しむ力がある。そんなアーティストはなかなかいない。帰らぬ人となったとしても太郎の作品を見た体験と共有した時間の記憶は永遠だ。
小沢剛 (美術家)
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*撮影: ホウハンルー
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 《幼年期の終わりに》を巡って 高村美和(アートコーディネーター)
今年8月、篠田太郎さんの突然の訃報を受け取った。篠田さんとは、2021年夏のリボーンアートフェスティバル(RAF)で私が制作コーディネーターをしたご縁で、その数日前にメールをして、お返事がないな、と思っていたところだった。
私にとって篠田さんとの思い出は、篠田さんがRAFで発表した作品《幼年期の終わりに》を巡る思い出だ。篠田さんは携帯を持っていなかったので、連絡手段はメール、ごくたまのZOOMだった。実際にお会いしたのは数えるほどしかなく、石巻で数日、木更津での打ち上げの日、あとは東京で篠田さんが参加している展覧会のレセプションで、篠田さんは「こういうの苦手で〜。人の顔、全然覚えられないから」と笑って会場の外で立ち話をしたそれが最後だった。
石巻で作品を発表するにあたって、震災や復興といった側面に直接的に触れることを躊躇していた篠田さんは、自然や人の営みを大きく俯瞰するような作品を模索していた。気球で石巻上空を飛行するプランが第一候補だった。他にも同時進行で、スケールの大きい屋外作品のアイディアがいくつか届いた。中にはまだ実現していない以前からあたためていたプランも含まれているようだった。最終的に、牡鹿半島の海岸沿いの小学校の校庭で、子どもがお絵かきをしたような雲の形(篠田さんが作った3D模型から象った)をした透明なバルーンを浮かべるプランに決定した。
会期序盤は台風のせいで天候が不順で、バルーンを地上で待機させる日が続いた。結局、浮上できたのは展覧会が始まって13日目だった。バルーンを上げ下げするにはバルーンのエキスパートの下に10人のスタッフが必要で、最初は手順もコツも分からず、全員ヘトヘトになりながら作業した。会期後半は浮上できる日が増えてきた。来場者にとってはあがっているところが見られたらラッキーな作品として親しまれるようになっていった。私にとっても、風速予報をチェックしながら幅15mの巨大バルーンと奮闘したのは、毎日自分の自然観とスケール感が更新されていくような体験だった。
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*篠田さんと地上待機するバルーン。プレスツアーの日
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*photo: Taichi Saito 写真提供:Reborn-Art Festival
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最終日が近くなったある日、篠田さんから、会期が終わったらバルーンをトートバックに再生して、その売り上げを石巻に還元してほしいと提案された。春になって、ボランティアのこじか隊と切り出して縫製した100個のバッグのひとつひとつに篠田さんがドローイングを描いてくれた。作品ではなく気軽に使ってほしいから、誰でも買いやすい値段にしてほしいというのが篠田さんの願いだった。夏になってRAFの会場での販売がスタートしたことをメールで報告したけれど、結局お返事はないままだった。
篠田さん、できればまた仕事でご一緒したかったし、国内外の大勢のファンや親しい方々と同じように、私もこの先もっと篠田さんの作品を観たかった。最後にこれを書きながら、牡鹿半島に向かってドライブした車の中で、篠田さんが藝大のスタジオを改造したり、ゼミでスケボーを教えたりという破天荒な話をしていたことを思い出した。そして、篠田さんが軽快にスケボーをしている姿(めちゃカッコいい)をYouTubeで観ながら、今ごろ篠田さんはスケボーに乗って雲の間を颯爽と駆け抜けてるんじゃないかと想像してみたりしている。
高村美和
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [2] VOID Chicken インタビュー:倉知朋之介さん     Tumblrで公開! ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Instagramで話題を集め、CAF賞2022ファイナリストに選ばれるなど、現代美術の最先端をダァーッと疾走する倉知朋之介さんにVOID Chicken でインタビューしました! インタビューはこちらからどうぞ! https://www.tumblr.com/mlvoidchicken
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■■━━━━━━━━━━━━━━━ [3] 札幌カフェ漫談 ■■━━━━━━━━━━━━━━━━
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さぼ:札幌は雪が降ってホワイトクリスマスだにゃ、とゆーことで、さっぽろ雪まつり(2023年2月4日– 2023年2月11日)もあることだし、居心地のよいカフェin Sapporo 漫談でもしますか?
さかぐ:札幌は個性的なカフェ多いよね。氷点下の中を歩いて雪だるまになってカフェに入るの最高!溶ける〜
さぼ:アートファンなら大正15年に建てられた歴史的建造物であり、重要文化財にも指定された札幌市資料館の一階にある、SIAFラウンジに行きましょう。札幌札幌国際芸術祭が運営しているんだよね?
さかぐ:そうそう、大通り公園の西の端にあって建物はSIAFの会場にも使われてました。次回はどうだろう。
さぼ:ここは札幌のカフェになかなかないWi-Fi完備。珈琲、スィーツをいただきながら、建築・デザイン・現代アートなどの書籍も閲覧可能で、充実したアートな時間を過ごせるよ。待ち合わせにも良いですよ!
さかぐ:ちょっと駅から歩くけど、ま、散歩がてらってことで。
さぼ:ちょっとアートから離れて、コロナでもカフェが好き!というあなたにおひとり様専用カフェをご紹介。「珈琲と衛星」です。カウンター6席のみですが、平日なら確実に入れるはず。オーナーの昭和にこだわったアンティーク、インテリア、食器たちに囲まれて長居したくなる。
さかぐ:北海道立近代美術館のそばだよね、行ってみたいな。道近美2FのKINBI nicojicaもいいよ。いつでも空いてて仕事するには最適。 ただ同じフロアに眺めのいい無料スペースがあって、あれはライバルだろうなあ。自販機まであってさ。ところで今、道近美でやってる砂澤ビッキ展素晴らしかったね〜。レアな作品たくさんでてた。ビッキの言葉もいいんだよね〜
さぼ:砂澤ビッキは1月22日までだよー。本と漫画好きのあなた!ちょっとここに寄りませんか?つーことで、「ものがたり広がる書店ラボラトリー・ハコ」です。ここは書店オーナーが「本に囲まれる仕事をしたかった」ということで、本や漫画を読みながらお茶も飲めるまったり空間です。春から図書室や2階に新しいスペースもオープンするらしいよ。
さかぐ:このメルマガもラボラトリー・ハコのこたつで書いてます!ティーバッグじゃないハーブティおいしい!
さぼ:最近オープンしたケーキの美味しいカフェで一押しなのが、「一粒の麦」。男性ふたりで切り盛りしているのですが、料亭の女将さん顔負けのホスピリティ溢れるお店。お会計をテーブルで済ませたあとは、「寒いので風邪ひかないでくださいね」と優しいお見送りトークで女性客のハートを鷲づかみだよ。
さかぐ:季節のお便りとかていねいに直筆で送ってそうだね。ケーキも凝ってました。
さぼ:最後は定番ですが、札幌の現代アートの発信源であるカフェギャラリーの「TO OV café(トオンカフェ) 」はあげないとねー!
さかぐ:空間もメニューも隅々までセンスが行き届いていて、それでいてオープンで居心地いい場所で、大好き。
さぼ:東京からアーティストを呼んでトークをしたり、フリーマーケットしたりと常にいろんな催しがあって、目が離せないね。
さかぐ:カウンターに座ってたら札幌アートシーンの極秘情報もつかめるかも?
リンク
SIAFカフェ https://siaf.jp/siaf-lounge/
「珈琲と衛星」 https://instagram.com/coffeetoeisei?igshid=YmMyMTA2M2Y=
北海道立近代美術館 https://artmuseum.pref.hokkaido.lg.jp/knb
KINBI nicojica https://instagram.com/nicojica?igshid=YmMyMTA2M2Y=
ものがたり広がる書店 ラボラトリー・ハコ https://m.facebook.com/labohaco/
一粒の麦 https://instagram.com/kissa_hitomugi?igshid=YmMyMTA2M2Y=
cafe/ gallery TO OV トオンカフェ https://instagram.com/toov_cafe_gallery?igshid=YmMyMTA2M2Y=
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [4] ドイツで暮らすコロナの時間 #クリスマスマーケット           シェリン(アーティスト) ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
ドイツの夜はやっぱり寒くて長い。朝起きてうっすらと雪のように見えるのはバリバリと凍りついた霜だったりする。昼過ぎに窓へ目をやれば、ぼんやりした陽はすでに西に傾き、影が長々と成長中。春までこんな日々が続くわけで、晴れやかな気持ちでいるには多少の努力も必要。
コロナをきっかけにずっと寄り添ってもらっているサブスクを離れ、たまには思い切って外へ出たい。しこたま着込んで自然の中を延々と散歩という、苦行のようなドイツの習慣はハードル高めですが、だったらクリスマスマーケットがあるじゃないですか。おお、まさに冬を過ごすための先人の知恵です。
クリスマスはキリストの誕生日ではなくて、生誕を祝う日というのを知ったのもつい数年前のこと。11月末日曜日からクリスマス前までの一ヶ月間、この待降節にWeihnachtsmarkt(ヴァイナハツマルクト)が連日開かれます。クリスマスを迎えるための祭りですからね、昔、当日はさぞすごいのでは?とイブにワクワクして出かけていったら、字の如くすべては後の祭りで、ガックリ肩を落とした苦い思い出が。
ドイツのそこそこ大きな街には、真ん中にまず市庁舎、その前はたいてい広場になっています。そこに大きなもみの木が立ち、お店が軒を連なってマーケットができあがります。街によって趣が違うのもポイントですが、目的なしにただふらり、ゆっくりと練り歩いて雰囲気を味わうのがよし。さらにはイルミネーションが灯る夜こそが華。
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*ピラミッドと呼ばれる塔。ろうそくを点して回す卓上の飾りとしても有名
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*(左)店の屋根にも注目。動く大掛かりなものも (右)照明は常にほのかなのがドイツ好み。ソーセージ屋のスタッフのユニフォームが可愛らしい
こうして書いている中、どうしてもお伝えできずに残念なのがスパイスの香りです。冷えた体を芯から温めてくれるグリューワインや、レープクーヘンなどの焼き菓子に使われるシナモン、バニラ、カルダモン、クローブにスターアニス。この甘くエキゾチックな香りがマーケットに漂って、クリスマスの記憶と結びつきます。最近なんてこの香りの入浴剤やらハンドクリーム、シャンプーまで売られて、なんとも商魂たくましい。
ちなみに一番有名なニュルンベルグ、世界最古のドレスデン、そして私の住む南ドイツのシュトゥットガルトは世界最大らしく、コロナ前には日本から観光ツアーが組まれるほどに人気がありました。何しろコロナで3年ぶり、昨年なんてすべての店が建ち飾りつけも終わって、さあいよいよという2日前に中止の判断が下ってしまい、店主たちが黙々と撤去する風景は、誰の目にもあまりに切ないものでした。だからこそ今年はいよいよと鼻息も荒い。それでも結局、80ほどの店はもう開けずじまいだったそう。特に手作りできる蜜蝋のキャンドル、藁で作られたオーナメント、繊細なレース編みや刺繍のクロス、木組のおもちゃ、そういったこれこそクリスマスムードを盛り上げるハンドメイドの工芸店は時代とともに少しずつ消えています。 かたや移動式の巨大な観覧車、聖歌コンサート、さらには屋外スケートリンクなどは健在。ただ光熱費の関係からか、アイススケートがインラインスケートにとって変わっていましたが。
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*(左)シュトゥットガルト南東のエスリンゲンでは、細部までこだわった中世そのままのマーケットで有名 (右)有名なくるみ割り人形は旧東ドイツの小さな村、エルツから。すべて手作り
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*(左)クリッペ。キリストの生誕の様子を人形で表したもの。こどもたちは学校で演じることも (右)クッキー生地に模様をつける麺棒。一本と言わずたくさん欲しい
ところで移民大国ドイツ、宗教上、誰も彼もがクリスマスを祝うわけではありません。それでも、マーケットは別ものと、ブルカ姿の女性たちがナッツを口に放り込みながら歩く姿も増えてきました。そしてお正月後にクリスマスを迎える正教徒のウクライナ人も、初めてドイツでのクリスマスを迎えます。
今はコロナこそ下火になっているけれど、戦争にインフレ、エネルギー危機、人権問題と問題は山積みされるばかり。ああ、世の中、少しでも明るい方向に向かって欲しい。冬至を超えたクリスマスが終われば、確実に夜は短くなっていく。あとは春を待つだけ。そんな中、マーケットに溢れる人たちは飲んで食べて喋って、見知らぬ者同士も時折とてもいい笑顔を見せあって、どこか連帯感さえ漂っているように感じます。まあ、ワインの飲み過ぎで、酔っぱらっているだけかもしれないけれど。
ドイツ大使館のサイト。現地のサイトへリンクあり https://japan.diplo.de/ja-ja/themen/willkommen/weihnachtsmaerkte/915164
シェリン(アーティスト)
  ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [5] VOID Chicken Nugget 読者に贈る「2022年映画ベスト10」   by 木村重樹 ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
激動の2022年も残りわずか。本来ならば年明け以降に昨年1年間を振り返りつつ選定するのが「年間ベスト」の本意だろうけど……もうフライング気味に選らんでしまいました。今年日本で劇場公開された「長編映画」のベスト10!
とはいっても『トップガン マーヴェリック』や『シン・ウルトラマン』みたいな大ヒット作は、ここには1本も入っていません!(きっぱり)。どちらかというとVOID Chicken Nugget読者が少しは関心を持ってもらえそうな〝偏った〟セレクションを心がけた結果、期せずして「北欧」「女性監督」「ボディホラー」「憑依」……みたいなキーワードが浮上してきました(なんでかな?)。
レンタルDVDで/名画座で/リバイバル上映で/定額配信サーヴィス等々で、年末・年始に観られる機会も色々とありそう。気になるタイトルがあれば、ぜひサーチ&トライしてみてください![注:数字は合い番号で、順位ではありません]
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1■『見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界』(Jenseits des Sichtbaren - Hilma af Klint、Beyond the Visible – Hilma af Klint)
19世紀半ばのスウェーデンに生まれ、アカデミックな美術教育を経て職業画家として生計を立てる一方、カンディンスキーやモンドリアンよりも先に、独自の抽象的絵画を描いていた女性画家のドキュメンタリー。近年、グッゲンハイム美術館で大回顧展が催されるなど、再評価が進むヒルマの絵は、神智学や心霊研究といったオカルティックな時代潮流の影響を強く感じさせるものだが、映画の論調は「美術史から抹殺された不遇の女性画家」みたいな? 神秘思想方面の掘り下げは甘いものの〝知られざる逸材〟であるヒルマの幻想絵画の、とくにその独特のオーラが漲る作品のガイドとしては必要十分な内容になっている。 [公式サイト]https://trenova.jp/hilma/
2■『わたしは最悪。』(Verdens verste menneske、The Worst Person in the World) カンヌ映画祭やアカデミー賞にノミネートされるなど、北欧映画としては異例のブレイクをみせた本作。成績優秀な主人公の彼女は医大に進学するも勉強に身が入らず、突如カメラマンに転身。売れっ子コミック作家と知り合い恋仲になるが、彼と所帯を持つ気にもなれず。そんなさなかに出会った歳上男性に夢中になって、今の彼氏に別れを切り出す……。万事この調子で〝自分探し〟に明け暮れ、周囲の人間を振り回しまくる、痛すぎるアラサー独身女性の悪あがき。「そんなもの観たくないよ!」と言われそうだが(ヨアキム・トリアー監督の生地オスロを舞台にしたスタイリッシュな映像と郷愁溢れるサントラの妙で)これが存外に面白いんです。〝自分探し〟万歳! [公式サイト]https://gaga.ne.jp/worstperson/
3■『ハッチング─孵化』(Pahanhautoja、Hatching) デザインやメタルからミステリー等々で注目を集める北欧カルチャーだが、ことホラー映画の界隈でも話題作を度々輩出している。〝幸せファミリー〟の動画配信に夢中な母親を喜ばせるため、自分の意志や感情を抑え込み、体操選手としての特訓に明け暮れる12歳の少女。ある日、森で見つけた鳥の卵を家族に内緒で持ち帰り、温めていたところ、どんどん巨大化して、突然孵化する。卵から生まれた「なにか」はみるみる変貌を遂げ、家族や関係者に災厄をもたらすようになり……。ピチピチのレオタード姿で鉄棒に興じる美少女、いきなりゲロを吐く美少女──監督はどんな変態オヤジかと思いきや、これが長編デビュー作のハンナ・ベルイホルムは80年生まれの女性でした。 [公式サイト]https://gaga.ne.jp/hatching/
4■『TITANE/チタン』(Titane) これまた気鋭の女性監督ジュリア・デュクルノーによる最新型ボディホラーにして、第74回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作!と聞いただけで期待値は爆上がり。さらに「交通事故で頭蓋に埋め込まれたチタンプレート」とか「自動車とヒトの間に生まれた赤ん坊」といった趣向を聞くだけで、巨匠デヴィッド・クローネンバーグの作風を連想せずにもいられない。だが「連続殺人」や「身体破壊」といったモチーフは、あくまでも描きたい主題を展開するうえでの方便でしかなく、所謂ホラー/スラッシャー映画の文脈に収めるには(よくも悪くも)観念性が色濃く、いかにもフランスのカトリック的な作品、のような印象がする。 [公式サイト]https://gaga.ne.jp/titane/
5■『パリ13区』(Les Olympiades) 「パリを舞台にした男女の愛憎劇」といえばフランス映画の定番だが、主役の男女が(いわゆる白人カップルではなく)アジア系フランス人やアフリカ系フランス人……しかもミレニアル世代の若者だったとしたら? 再開発による高層マンションやビルが立ち並び、多くの移民が集まり暮らす13区を舞台に、都市生活者の儚く脆い人間関係を、シャープなモノクロ映像と大胆な性愛描写で描きだす。かくも瑞々しい若者群像を描き出した監督のジャック・オディアールが齢70近いのも驚きだが、原作者エイドリアン・トミネの、何本かの短編グラフィック・ノベルを再構成した女性脚本家陣の功績も見逃せない。 [公式サイト]https://longride.jp/paris13/
6■『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』(Babardeală cu bucluc sau porno balamuc) 2021年ベルリン国際映画祭で金熊賞に輝く3部構成のルーマニア映画。ブカレスト市内の名門校に勤める女教師と夫のセックス動画がネット上に拡散され、関係者は大騒ぎ。保護者会の前に事情を説明するため、彼女は(新型コロナ騒動で苛立つ市民達を脇目に)校長の家に向かう……のが第1部。第3部は当日夜の保護者会、という名の糾弾裁判。では第2部は? ルーマニア国家と国民の抱える矛盾点が、映像モンタージュや暗喩によって多角的に示される。どうも日本の観客には、この第2部が不評みたいだけど、これぞヨーロッパ映画のオールドスクール! 劇内で女教師を糾弾する面々のレイシスト、ミソジニスト、歴史修正主義者ぶりが露見してゆく第3部も痛快極まりない。 [公式サイト]https://unluckysex-movie.com/
��■『WANDA/ワンダ』(WANDA) 女優のバーバラ・ローデンが監督・脚本・主演を務める、1970年製作のアメリカのインディー映画。ヨーロッパで高い評価を得るものの本国では黙殺され続け、近年の再評価から日本初公開が実現した。ある日、夫から離婚を宣告され、住まいも、子供の親権も、仕事まで一挙に失ったワンダ。手元の現金まで盗まれた彼女は、とあるバーで男性と知り合い、一夜を共にする。翌朝、男が強盗犯だと気づいたワンダだが、そのまま彼と行動を共にし、さらなる犯罪の片棒を担ぐ羽目に……。真っ当な判断力や自立心を持ち合わせない主人公は発達障害の気配すら漂わせるが、アメリカン・ニューシネマを先取りしたかのような寂寞感は唯一無二。多才なバーバラは本作公開の8年後、乳がんで死亡する。 [公式サイト]https://wanda.crepuscule-films.com/
8■『NOPE/ノープ』(NOPE) コメディアン・俳優から映画監督・脚本家に軸足を移し、近年評価が爆上がり中のアフリカ系アメリカ人、ジョーダン・ピールの最新作。田舎町の牧場に空から異物が降ってきて、牧場経営者の父親が絶命する。殺害現場に居合わせた長男は、天空に浮かぶ不思議な雲が謎の飛行物体であることに気づき、妹と共に動画撮影を試みるのだが……。「『未知との遭遇』かと思いきや、実は『ジョーズ』だった」という本作の要約は、まんまネタバレになりかねないのだが、SFホラーと西部劇をクロスオーバーさせつつ、人種問題や〝視ることのアレゴリー〟にまで抵触する手腕には思わず唸らされる。先鋭的表現とエンタメ性の匙加減が素晴らしい! [公式サイト]https://nope-movie.jp/
9■『窓辺にて』 邦画も1本ぐらい……というわけで、当代きっての売れっ子監督・今泉力哉の最新作から。編集者の妻が担当作家と不倫関係にあることに気づくも、心が微塵も揺れ動かないことにむしろショックを受けたフリーライターの主人公(稲垣吾郎)。自身も不倫関係の只中にいる、旧友のスポーツ選手(若葉竜也)や、ひょんな縁から交友が始まった、新進気鋭の女子高生作家(玉城ティナ)らの提言を受けて、彼は妻との関係を見直す決意をする──という話が、じつに上映時間143分! 膨大な会話の積み重ねによって繰り広げられる。「映画は倍速視聴がデフォルト」みたいな難儀なご時世において、かくも反動的なスタイルを貫き通している姿勢には、感服しかない! [公式サイト]https://www.madobenite.com/
10■『女神の継承』(ร่างทรง、The Medium) 最後に極私的「2022年ベスト映画」、タイ東北部・イサーン地方の村を舞台にしたフォーク(民俗)ホラーの異色作をご紹介。ある日突然体調を崩し、凶暴な言動に歯止めがきかなくなった娘に悩んだ母親は、妹の祈祷師に救いを求める。2人は先祖代々、地元で信仰されている地霊神の霊媒一族の出身だった。姪っ子の豹変は新たな後継者に選ばれた証か? 叔母が除霊を試みるも力及ばず、ついに悪霊祓いの剛者が続々と召喚されるのだが……。アジア特有のエキゾティズを最大限に活用した21世紀版『エクソシスト』。擬似ドキュメンタリー形式がいささか鼻につくものの、畳みかけるように怪異現象がエスカレートし、動物も赤子も容赦なく酷い目にあう中盤以降は、一見の価値あり。アピチャートポン・ウィーラセータクンの見世物小屋版! [公式サイト]https://synca.jp/megami/
木村重樹
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [6] 編集後記 ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
半年ぶりのメルマガになりましたが、来年も細々と発行続けますのでご愛顧のほどよろしくお願いします▶︎tumblerで公開したアーティストの倉知朋之介さんのインタビューはいかがでしたか?木村重樹さんには寄稿だけでなく、今回からtumbler編集を担当していただくことになりました。木村さんの多大なるご尽力で何とか間に合いました!多謝!心強いデジタルもグイグイな辣腕編集者の新メンバーを加え、来年も3人で頑張りますよ。▶︎さて、イーロン・マスクが垢バンしたマストドンにアカウント作ったのでお知らせします。 https://fedibird.com/@artvoidchicken ▶︎YouTubeも新規開店しました。
ART void chicken channel https://www.youtube.com/@artvoidchicken 特に何か企てているわけではありません。お暇なら来てよねーわたしさみしいわー♪なノリですので誤解なきようよろしくお願いします。では皆様良いお年をお迎えくださいませ。(さぼ)
今回から、本誌《VOID Chicken Nuggets》への記事寄稿に加えて、Tumblerアーカイヴへの反映作業をサポートすることになりました。以後よろしくお願いします。紙の書籍では、さる2022年10月下旬に『ヒプノシス ロック名盤デザイン秘話』(オーブリー・パウエル著/シンコーミュージック)の編集をお手伝いしました。時は1960〜70年代、ダダやシュルレアリスムの手法を応用したロックの名盤ジャケットの裏話を多数収録。1冊¥8,800と美術書並みに高額ですが、最寄りの公立図書館に入っているかも?(例:板橋区・世田谷区・千代田区・中野区・目黒区)それ以外の地区の方は、試しにリクエストを出されてみては?!(きむら)
今年もご愛読ありがとうございました。追悼が増えていくなあとしんみりしつつ、若いアーティストの躍進に心躍ります。長寿VOID Chicken を来年もどうぞよろしくおねがいします!(さかぐ)
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mlvoidchicken · 1 year
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倉知朋之介インタビュー
Interview with Kurachi Tomonosuke by VOID Chicken (柘植響、坂口千秋) Oct.25, 2022, Sapporo City 【倉知朋之介(くらち・とものすけ)プロフィール】
1997年愛知県生まれ。2020年京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)情報デザイン学科卒業。2022年東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻在籍。 主な展覧会に「NITO09」(アート/空家 二人、東京、2021)、「ARTISTS’FAIR KYOTO 2022」(京都新聞ビル 地下1階、京都、2022)、「惑星ザムザ」(小高製本工業株式会社跡地、東京、2022)、「愛着再考」(神戸アートヴィレッジセンター、神戸、2022)「獸(第1章/宝町団地)」(CONTRAST、東京、2022)、「P.O.N.D.」 (渋谷PARCO、東京、2022)、など。 Twitter  https://twitter.com/kadojr91 Instagram  https://www.instagram.com/kadojr91
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Instagramで話題の作家で、CAF賞2022ファイナリストに選ばれるなど、現代美術の最先端をダァーッと疾走する倉知朋之介氏。滞在制作のため札幌にいるところ、お話を伺った。
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VOID Chicken(以下、VC):いつ頃から映像の作品を作り始めたのですか?
Kurachi Tomonosuke(以下、K):小学校の頃からお母さんのビデオカメラを使って、叫んだり、走り回っている自分を撮っていました。小学校3年生のときに兄がケータイを買ってもらい、そのときに僕もGPSで居場所がわかる子ども向けの携帯電話を買ってもらったんです。そのケータイで動画をまわして、一時停止して、もう一度撮影を開始できる機能があって、僕がジャンプして、止めて、場所を変えて着地するという、よくある動画を友だちと撮ったり、映像を使って毎日ひとりでも遊んでいました。
VC:子どものときからデジタル映像を使って遊ぶ、という世代なのですね。
K:はい、たくさん撮っていました。で、中学くらいからYouTube(2005年オンライン動画配信サービス開始)に友だちと投稿をし始めて、そこらへんが出発点です。YouTuberに憧れがあって、高校のときもこっそり投稿していました。中学の同級生とつくった動画が海外でバズったこともあって、みんなにいじられていました(笑)。その頃は、ザリガニで鼻をはさんだりしていました。小さい頃から映像に興味があって、絵を描くのも好きだったので、芸大に進もうと。
VC:たしか京都造形芸大へ進学したのですね?
K:はい。大学ではカワイオカムラさんなど、現代美術寄りの先生が結構いて、自分は情報デザイン学科という広告系の学科だったんです。その学科は8割ぐらいが就職するんですけど、就職しないのは僕ぐらい。2年間アルバイトしながら作家活動をして、6年京都に居たので拠点を変えてみたいのと、もっと勉強したい気持ちがあり、大学院に行こうと思って、東京藝術大学大学院映像研究科に行きました。
VC:学生時代に投稿していた動画って、今も観られるのですか?
K:高校のときは、TikTokのはしりみたいなVINEというアプリに投稿してたんですが、それはもうアプリ自体が終了しています。ネット上で見られるかもしれないですが、昔の日記を見られているようでメチャクチャ恥ずかしいです(笑)。子どもの頃も、表現するのは好きだけど人前でやるのは恥ずかしくて、動画を撮っても「お母さん、ちょっと見て!」って(笑)。
VC:ご両親はアーティストになる背中を押してくれたのですね?
K:両親が飲食店を経営しているのですが、父親が「俺も好きな仕事してるから、自分の一番やりたいことをやれ」と言ってくれました。父も漫画や映画が好きで、子どもの頃に「これ面白いぞ」といって『まことちゃん』などを教えてくれました。
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VC:倉知さんの作品を観て、「Attack of the Killer Tomatoes!」(1978年アメリカ映画。邦題『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』1995年日本公開)を思い出しました。古い映画ですが、観てますか?
K:知らなかったです。映画の影響もありますけど、海外のYouTuberとかSNSの動画の影響の方が大きいかもしれないです。映画だとクエンティン・タランティーノの「Death Proof」(邦題『デスプルーフinグラインドハウス』(2007年)から影響を受けています。タランティーノはメチャクチャB級映画好きじゃないですか。この映画も最悪、下品というか、B級映画のいろんなものがサンプリングされて詰まってるんです。ずっとアホみたいな映像が流れてるんですけど、最後にCGじゃなくて、本物のカーアクションで締めることで、映像の説得力が表現されている。自分もバカげているものが続くけれど、映像として説得力のあるものをつくることを心掛けています。
VC:影響を受けたYouTuberは誰ですか?
K:ニュージーランドのコメディ番組で、「MoonTV」(2002年〜2010年)というチャンネルがYouTubeにあるんですけど、それにはすごい影響を受けています。一番有名な動画は「Speed Cooking」というのがあって、最初にこの料理を作るよっていった瞬間からお皿とかガシャーンと割って、ワーッって感じなんですけど、最後にオーブンからメチャクチャきれいな料理が出てくるっていうのが人気で。それを小学生のときに観て、ゲラゲラ笑ってました。
VC:今回の京都のギャラリー&ショップ、VOU/棒と札幌の多目的空間、ieの交換プロジェクト「Trading Home展」での作品について、テーマなどはありましたか?
K:ieで展示をやるにあたって、VOUのオーナーの川良謙太さんが、面白くなりそうな3人(堀奏太郎、倉知朋之介、工藤玲那)を集めたんですけど、VOUは京都の大学時代から通っててめちゃくちゃ憧れの場所でした。2020年にアーティストの山下拓也さんがVOUギャラリーで「熊と多分インディアンと市長か警察官と背中、他」展を開いた際、僕と山下さんがでかい着ぐるみを着てうどんを作るというパフォーマンスをやって、川良さんと面識ができました。それで今回、川良さんに声をかけてもらったからには新作を作らないと!と思って、ここ(北海道)に来て制作しました。
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VC:なるほど。意気込みを感じさせる作品でしたね。制作の進行はどんなふうに?
K:今回は2週間ぐらいさっぽろ天神山アートスタジオ(札幌市運営のアーティスト・イン・レジデンスの拠点)に滞在している間に、グルグル回ってロケハンしながら撮影しました。最初はエゾモモンガがいいなぁと思ったんですけど、なかなかグッとくるモチーフが決まらなくて……。最後にモチーフは「北海道」と。海外の人が日本に抱く漠然とした、ちょっとズレたような、ステレオタイプなイメージ……歌舞伎町のネオン、アニメの『AKIRA』みたいに、ありきたりな北海道のイメージを誤読するというのが作品のテーマになりました。  これ、知り合いの方が教えてくれたものなんですが、『東京物語』(1953年・小津安二郎監督)を宣伝するガーナ共和国(西アフリカにある共和制国家)で作った映画ポスターなんですが……。
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VC:すご��ですね。これ。映画に関係ないものが……。
K:そうなんです。ゾンビとか出ているのがめちゃくちゃおもしろくて。僕も北海道に来たけれど歴史的なことは詳しくないし、中途半端に北海道の文化について扱うのも失礼だし……。漠然と誤読した「倉知から見た北海道」のイメージであればいいかなぁ、と。カニ、牛、牧場とか。
VC:北海道ロケのインタビューシーンは?
K:映像にはいつもインタビューシーンが登場するのですが、それもMoonTVから来ていて、なんかマイクを向けられると強制的に喋らされる、みたいなのがおもしろくて、毎回入れています。映像をつくるときはストーリーを考えるというより、今回の場合は北海道から連想されるキーワードをたくさん出して、最後にぎゅっと繋げる編集のやり方をしています。
VC:映像で喋っている言葉は何語でもないから、世界共通言語ですね?
K:僕は子どものときからディズニーや海外の映画を観ていて、アメリカ文化に対する憧れが刷り込まれてるので、本当は英語を喋りたいんですけど、まだ喋れないので(笑)。でも、MoonTVでもナニ言ってるかわからないけれど、「はっ!(驚く表情とポーズ)」というのがめちゃくちゃ好きで……(一同爆笑)。叫ぶだけとか、一本の映像にしたらどうなるかなとやり始めたのが、その何語でもない言葉のきっかけです。
VC:ジェスチャーだけでも伝わりますよね。
K:そうですね。今回出演してくださった大学の先輩の米村優人さん(1996年生まれ、現代美術家)が、作品のことをよく一緒に考えてくれるんですけど、「倉知、これ好きやろ?」みたいなものを教えてくれます。
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*息のあった米村氏とのコンビネーションが名作を産みだす。
VC:作品を観ていて米村さんが出てくると、空気が違うなぁと感じますよね……。
K:そうですね、ベテラン感があるっていうか(笑)、馴染んでますよね(一同爆笑)。今回の映像では、金魚と強盗(北海道のお笑いコンビ)さんとか、0地点(築96年の古民家をリノベしたアートスタジオ兼ギャラリースペース)のメンバーの鷲尾幸輝さんや、造形作家のマシロさんなど、札幌の人たちにもたくさん出てもらってます。
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VC:カメラは何を使っているのですか?
K:SONYのごく普通のビデオカメラです。TV番組感、ドキュメンタリー番組のチープっぽさを出すようにしています。iPhoneだと、その〝ぽさ〟が出ないんです。編集はAdobe PremiereProでやっています。
VC:今回は撮影と編集とで、時間が足りなくなかったですか? あと音声がクリアで、すごいなぁと思いました。
K:北海道で知り合った方や米村さんにすごい助けられました。音声はワイヤレス・マイクで飛ばして録っています。カメラに取り付けられていて、距離10メートルぐらいだったら大丈夫です。音はちゃんと録ろうと思って。音の聴こえ方で、おもしろさがだいぶ変わるので。
VC:シーンが変わるときに入る効果音も凝っていますよね。
K:あれでおもしろさが倍増します(一同爆笑)。音はライブラリーにたくさん集めています。映像エフェクトもいろいろ試したんですけど、白が一番滑稽でスッキリする。あれでシーンが繋がっちゃうおもしろさがあると思います。ナレーションの入れ方なんかもドキュメンタリーとかをよく参考にしています。それから展示中に観客の反応を見て、編集を変えたりもしています。
VC:ロケ先のひとつ、「サケのふるさと 千歳水族館」は、どうしていいと思ったのですか?
K:ieの和田典子さんに「北海道っぽいとこないですかね?」って聞いたら、「生鮭とか、こう、持ったら(胸の前に抱えてるポーズ)、いいんじゃないですかね」と言われて(一同爆笑)。めちゃくちゃ撮りたいと思ったんです。それで知り合いの釣り師の方も紹介してもらったんですけど、スケジュールが合わなくて……それで水族館に行きました。下調べしないで行ったんですけど、展示構成がおもしろくて、思った以上に撮影スポットがあって助かりました。ざっくりと箇条書きにメモは作るんですけど、やることリストみたいに。理屈抜きでおもしろいことを入れています。
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VC:理屈抜きでおもしろいことをやるって、大事ですね。
K:学部卒業してから、リサーチワークとかやっていたんです。「美術っぽさ」とかを意識しすぎたりしていて、でも僕がやりたいことと全然合ってなくて、出来上がったものは自分のなかで滑ったな……と。
VC:そういえば、ブルース・リーは好きですか? 面影を見るのですけど……。
K:ブルース・リーは身体の動きとかだいぶ影響されてますね。決め顔とか(笑)。小学生のときからずっと空手をやっていて、黒帯なんです。型をいかにきれいに見せるかという空手なので、身体の動きの「キレ」も映像では考えます。あと習字もやっていたので、腕の動きの「はらい」とか「とめ」といった所作なんかからも、影響を受けています(笑)。あと、ヒカシューの巻上公一さんのパフォーマンスもよく見ています。MoonTVのどうでもいいところで「ん?」みたいな目の動きとかも巧いんで、勉強になりますね。これがグッとくるのはなんでだろうな、と深掘りしたときがあって、それはブルース・リーとか『Dr.スランプ アラレちゃん』(原作・鳥山明の漫画、アニメ)とか見ていたからだよな、と思いました。
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VC:普段はどんなところで発表しているのですか?
K:展示はギャラリーですが、普段はInstagramのストーリーを使って、短い動画を上げています。カッコよく言うと、それがドローイング的な位置になってます。急にやりたくなった湧き出るものを動画に上げるのは、ストレス解消みたいになっていますけど(笑)。自分のストーリーを見返して、「あ、これやってみたかったな」とかいう感じで思い出して、作品に取り入れたりします。
VC:なるほど……おもしろい! デジタルの新世代らしい。
K:親しい友達は、「おまえのインスタのストーリーはミュートしてるから」って。うるさいって(笑)。仲いいんですけど、電車の中で見ると音がワーッて鳴るから。
VC:今後の展開は? YouTubeのチャンネルを開設するとか?
K:それも思ったのですが、自分はYouTubeよりもInstagramの方が合っていて。なんでかっていうと、編集が入ると考えちゃうんです。編集は「作品を作るぞ」ってなるまで、なるべく入れたくないなと思って。めちゃくちゃブワーーーッて湧いてくるものを入れるゴミ箱みたいなのが、Instagramのストーリー。
VC:なるほど。じゃあ将来はNetflixで世界同時配信ですね!
K:やりたいです! 海外には行きたいです。めちゃ高解像度になってるかもしれません(笑)。
VC:北海道のシャケみたいに大きくなって戻ってきてください。
(2022年10月25日、札幌にて)
『ビッグ・ロード』 シングルチャンネル(10:23) 
出演:川良謙太、強盗(金魚と強盗)、マシロ、米村優人 カメラマン:マシロ、鷲尾幸輝 撮影協力:ie、タレ目 制作協力:米村優人 協力:さっぽろ天神山アートスタジオ、高田奨也(996プロダクション) ── 取材協力: 棒/VOU京都 ie 札幌 さっぽろ天神山アートスタジオ
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mlvoidchicken · 2 years
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/Naebonart2022/ なえぼのアートスタジオのオープンスタジオに行く。元缶詰工場をリノベした古いけどひろーーーいスタジオで札幌在住の中堅どころのアーティストが制作してる。明日10/10まで。今日スタジオで説明いただいた武田 浩志さんを始め、今村育子さん、小林知世さんらの作品は3331ART FAIRに出品されますので、東京にいる皆さん見てください!西田卓司さんもよかった。気になる作品を全部で70枚近くも写真を撮ったので、動画スライドにしました。近くの若手アーティストのスタジオ、0地点も寄ったので後ほど動画あげます。#3331artfair #naebonart #contemporaryart
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mlvoidchicken · 2 years
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2022年5月25日号 追悼 池田修さん
メルマガVOIDChicken Nugget 2022年5月25日号
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┃VOID Chicken Nuggets 2022年5月25日号 追悼 池田修さん
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┃快調アート小咄ブログ ⇒
http://voidchicke.exblog.jp/
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2022/5/25━━━━━━
C o n t e n t s [1]「 池田修よ、やすかれ」 by 山野真悟 [2]「池田くん、さようなら。」 by村田真 [3] 愛する人を失った時に観たい映画! by 木村重樹 [4] ドイツで暮らすコロナの時間 その5  #ペリメ二、ボルシチ、ウクライナ    by シェリン [5]  編集後記
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [1] 池田修よ、やすかれ 
 山野真悟(黄金町エリアマネジメントセンター 理事) ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━   池田君の方が7歳ほど年下だったが、彼の体調を考えると、私より早いかも、と思っていた。そして、ある日突然いなくなるかも、とも思っていたが、こんなに早いとは思っていなかった。 最後に会ったのは、なくなる1ヶ月前の2月15日だった。BankART KAIKOのバックヤードでビールを飲み始めた。短い入院が終わったばかりのようで、左腕を捲り上げてぽりぽり掻いていたが、体調はよさそうだった。私はウィスキーをもらって、つきあった。本当はビールを飲んではいけないとか言って、彼もウィスキーを飲み始めた。病人にしては飲み過ぎだ、と思ったが、機嫌がいいので止めなかった。その後、彼は周辺施設の案内をしてくれて、タクシーで一緒に帰ろうと言い出した。どこへ向かうのかまったく知らなかったが、とにかく一緒に乗った。タクシーは私が住むマンションまで歩いて行けるほどのところで止まった。彼は私の部屋に来たことはあるが、私は彼がどこに住んでいるかを知らなかった。「いつからここに住んでる?」と聞いたら、「最初から」という。これが池田とのお別れだった。私は彼が置いて行った1000円に200円を足して、タクシーを降りた。 で、そのはじまりは、40年前にさかのぼる。1982年11月22日、私と帯金章郎(当時福岡市美術館)、江上計太(アーティスト)は、私たちの福岡における活動を紹介する1回だけの講座をBゼミで行った。これは福岡で活動を共にしていた若いアーティスト数名がその後のステップとしてBゼミに行った、という縁による。そのときBゼミの生徒、池田修君と初めて会った。私はその日、福岡出身の誰かの部屋に泊めてもらった。同じアパートに池田君も住んでいたようで、夜も彼と話をした。私のかすかな記憶によると、床板の真ん中が四角に切り取られ、床下の地面が見えていた。これが池田君の部屋だったのか。 そして、1990年から2000年代にかけて、P.Hスタジオ池田修に何度か仕事を依頼した。 ときには、金額の面で見合わないような、無理筋の仕事もあったような気がする。 「船、山にのぼる」はどうしても見せたかったらしく、トークか何かの名目で、呼んでくれた。 結局、私たちは横浜で再会することになった。スタートの時期は違うが、同じ創造界隈拠点の運営者として。まちがいなく、彼の方が働き者だった。その仕事量と、彼が自分の職場で過ごす時間の長さは普通ではなかった。大きな場所を何度も転々としたが、彼はいつも自分がつくった場所が好きだったと思う。 彼は、どのような状況でも、公私の両面を見せる、という癖があったようだ。「公」の方は何かと反対意見を言うことが多く、また人に厳しい態度を示すこともあったが、「私」の方は思いついたことを楽しそうに話す場面が記憶に残る。この両方があったので、彼のBankART事業は場所を転々としながらも、その場所ごとに必要な意味を見出し、それが支持を得て継続できたのだろう。 横浜で再会してから、意外なことに、彼と仕事をする機会はむしろ少なくなった。 最後の時も、これからの計画をいかにも楽しそうに話していた。そして、貯金を始めたとも言っていた。そしてあと3年がんばる、とも。 結局それはお別れの日にふさわしい話だった。 池田君、いつかまたどこかで。さようなら。 山野真悟
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撮影:中川達彦 写真提供:PHスタジオ
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撮影:中川達彦 写真提供:PHスタジオ
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [2] 池田くん、さようなら。
   村田 真 (現代美術家・美術ジャーナリスト) ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━   3月16日、池田修が急逝した。享年64。  急逝といっても以前から心臓を患い、4年ほど前から人工透析を受けていたので、いつ倒れてもおかしくないと自他ともに承知してはいたけれど、それにしても急だった。せめて病床に見舞いたかったが、仕事中に倒れてそのまま逝ってしまったので、それも叶わなかった。まあ池田くんらしい死に方ではあるけれど。ここでは池田くんとの出会いから時間を追って記していきたい。  ぼくが池田くんと知り合ったのは、ちょうど40年前の1982年11月22日。なぜ日にちまでわかるのかというと、その日、池田くんが通っていたBゼミで、福岡から来た3人の美術関係者の特別講義があり、当時『ぴあ』の編集者だったぼくも聴きに行ったからだ。企画したのはBゼミの生徒で福岡出身の牛島智子さん。彼女が呼んだのは、IAFという研究所を主宰していたアーティストの山野真悟氏と江上計太氏、福岡市美術館の学芸員だった帯金章郎氏。山野氏はその後、地元で「ミュージアム・シティ・天神」を立ち上げ、2005年には川俣正氏がディレクターを務めた横浜トリエンナーレにキュレーターとして参加、その縁で横浜に移住し、現在は黄金町エリアマネジメントセンターの事務局長を務めている。江上氏は一貫してミニマルな作品を制作し続け、ミュージアム・シティや越後妻有アートトリエンナーレ「大地の芸術祭」などに出品。帯金氏はその後、福岡市美術館から東京の朝日新聞社事業部に移り、横浜トリエンナーレなどを担当。当時は3人とも30歳前後で、ぼくは帯金氏を除き、山野氏とも江上氏とも池田くんとも初対面だった。講義が終わってから牛島さんのアパートで飲み会になり、ぼくは彼女の隣に住んでいた池田くんの部屋に泊まったらしい(実はよく覚えていない)。グズグズの出会いだ。  池田くんはその後、川俣氏のアシスタントチームとしてPHスタジオ(以下PH)を結成。川俣氏がニューヨークに長期滞在すると、PHは美術だけでなく家具や建築も手がけるアーティスト・コレクティブとして活動するかたわら、池田くん個人では、北川フラム氏の率いるヒルサイドギャラリー(現在のアートフロントギャラリー)のディレクターとして多くの展覧会を企画。このとき学んだ展覧会のつくり方やアーティストとの付き合い方、お金の集め方、パブリシティ戦略などは、その後のPHの活動やBankART1929の運営に大いに役立っていくだろう。その間ぼくはぴあを辞めてしばらく海外に遊んでいたので、池田くんとよく会うようになるのは80年代半ばからのこと。当時PHは恵比寿界隈にスタジオを転々と変えており、ぼくも目黒、恵比寿、渋谷と仕事場を移っていたため、しばしば行き来した。また、海外にいることが多い川俣氏も中目黒に事務所を構えていたので、帰国中はみんなでよく飲んだ。いま振り返って、ぼくがいちばん酒を酌み交わした相手は池田くんではないだろうか。学生時代もぴあ時代もよく飲んだが、40年の長きにわたって飲み続け、語り続けた相手は池田くんしかいない。もっとも語るのはいつも池田くんのほうで、ぼくは相槌を打つ程度だった。  こんな話をするとただの飲み友達と思われるかもしれないが、もちろん仕事も一緒にした。というより、一緒に仕事をしたから飲む機会も増えたというべきだ。とりわけ1987年に横浜のふたつのアートイベントに関わってから交流が密になる。ひとつは開港記念会館での「横浜パフォーマンス・フェスティバル May Garden 87」、もうひとつは大倉山記念館での「大倉山アート・ムーヴ87」。どちらもPHが出品作家で、ぼくはコーディネーターという関係だった。このとき「May Garden」にボランティアで参加した横浜市の職員たちは、約20年後、池田くんたちが立ち上げたBankARTの運営に市の幹部として関わることになるだろう。  1990年から福岡で「ミュージアム・シティ」が始まると、たびたび山野氏が打ち合わせのため上京してぼくの仕事場に泊まるようになり、そのつど池田くんを呼び出しては飲んだ。またPHも「ミュージアム・シティ」をはじめ、各地で活発��していくアートプロジェクトにも呼ばれるようになる。そのなかの代表的なものが、1994年から広島で始まる灰塚アースワークプロジェクトだ。これは灰塚ダム建設予定地に作品を設置して地域を活性化させようという計画で、ぼくは事務局の岡崎乾二郎氏から依頼され、参加作家としてPHと韓国の陸根丙を送り込んだ。PHが現場を見て練り上げたプランは、ダムの造成で伐採される大量の木を使って全長60メートルほどの船をつくり、水位の上昇とともにダム湖畔に乗り上げようというものだ。題して「船をつくる話」。ダム建設により住人も田畑も引っ越しするのだから、樹木も引っ越してもらおうという発想だ。まるで「ノアの方舟」のように壮大、かつメルヘンチックでもあるので、ぼくは(おそらく事務局も)必ずしも実現を目指すものではなく、机上のプランとして受け止めていた。ところがPHは、というより池田くんは本気だった。その後、事務局からゴーサインが出なかったため、PHはプロジェクト実現に向けて独自に動き出す。というのは簡単だが、実際には作品制作だけでなく、建設省(当時)や自治体との交渉から資金集め、広報活動、地元住人への協力要請まですべての作業を自分たちでやらなければならない。しかも遠隔地なので毎年ある時期だけ現地制作し、そのつどテーマを変え、ゲストを呼んで展覧会やシンポジウムを開いていく。それを10年にわたって続け、2005年にほぼプランどおり完成にこぎつけた。その前年から池田くんはBankART1929の運営に集中するようになったので、「船をつくる話」がPHの最後のライフワークになった。  それにしても、最初に聞いたときはおとぎ話のようにしか聞こえなかったプランが、推薦したぼくがいうのもなんだが、よくも実現したものだと感心する。ぼくも何度か足を運んだが、いちど雑誌の取材で訪れたときは、空港への車での迎えから道の駅でのランチの予約、数カ所の自治体職員へのインタビューのアポまで、分刻みのスケジュールを立ててくれていた。おかげで助かったというか、適当に酒でも飲みながら話を聞いてまとめようと安易に考えていた自分が恥ずかしい。あとで聞くと、このプロジェクトは3町にまたがるため、それぞれ話を聞いてもらう必要があると考え山道を連れ回したとのこと。いつの間に池田くんはこんな根回しや気配りまでできるようになったのだろう。その実行力とタフネゴシエーターぶりは、その後のBankARTでも遺憾なく発揮されるはずだ。  BankARTについてはおそらく多くの人が語ってくれると思うので、個人的なエピソードを述べるにとどめたい。横浜で「文化芸術創造都市構想」の拠点となる施設のコンペに参加するという話を池田くんから聞いたのは、確か2003年の11月。自宅近くの飲み屋で池田くんの描いた構想について何度か聞かされ、意見を求められたが、ぼくは「いいんじゃない?」とうなずく程度で、プランはほぼ最初から池田くんの頭のなかで固まっていたようだ。PHはその直前に名古屋港の倉庫を文化施設に改修する設計を手掛けており、アイディアは豊富にあったのだ。コンペの結果、池田くんたち(PHではなく、YCCCという名称で応募)はもうひとつのチームとともに採用され、2004年、開通したばかりのみなとみらい線馬車道駅近くの2つの銀行跡を改装した「BankART1929」の運営に乗り出す。ぼくも行きがかり上、BankARTスクールの校長を引き受けることになり、これまで以上に頻繁に会う(飲む)ことになる。  BankARTが始まってから1年ほど経ったころ、ぼくは美術雑誌の依頼でBankARTの記事を書くことになった。ちょうど、2つの建物のうちのひとつが東京芸術大学大学院に新設される映像研究科の校舎として使われることになり、横浜市から移転を通告されていた時期だったので、市の対応を批判的に書こうとした。すると池田くんは、横浜市が国立の芸術大学を誘致したのは「創造都市構想」にとって喜ばしいこと、それはBankARTの活動が認められて場所の価値が上がった証であり、またBankARTも代替地を保証されたのでむしろよかったと、大人の対応を見せたのだ。いや、それはそうなのだが、最初にその移転話があったとき池田くんが憤っていたのを見ていたぼくとしては、肩透かしを喰らわされたような複雑な気分になったのも事実。いずれにせよ、結果的にBankARTは日本郵船の巨大な倉庫を使えるようになったのだから、ヘタにごねたり反対したりするより、ウィンウィンの関係に持ち込んだ池田くんの手腕には感服せざるをえない。  あるとき池田くんに聞いたことがある。もし信頼する上司が不正をしでかしたとき、上司に従うか、それとも告発するかと。これはなにかそういう事件があったときに聞いたのだが、池田くんの答えは「上司に従う」だった。意外にも思えたが、そうかもしれないと納得もした。池田くんは祖母に育てられたせいか古風というか儒教的なところがあって(修という名からもうかがえる)、基本的に年上の人に敬意を払う。彼が最大限の敬意を払っていた「上司」は川俣正氏であり、北川フラム氏であり、そして横浜市の都市デザイン室長を務めた故北沢猛氏だった。BankARTを単なるNPOのアートスペース以上の存在に育て上げたのは、敬愛する北沢氏が「創造都市構想」のレールを敷いたからであり、そのミッションをまっとうするために文字どおり自分の命を削り、ミッション以上の成果を出してきたのだ。味方につければ強いが、敵に回したくない相手ではある。誤解を恐れずにいえば、彼はビジネスマンでも、いや軍人でも出世したに違いない。その強引とも思える手腕・手法がときに軋轢を生み、パワハラまがいの言動があったのも事実だが、それは限られた条件の下で彼が目標に向かって突き進む一途さゆえに生じたインシデントだったと理解している(だからといって許されるものではないが)。  かつて「コンピュータ付きブルドーザー」と呼ばれた政治家がいた。本人は嫌がるだろうけど、これは池田くんにも当てはまりそうだ。透析を始めて多少しぼんだとはいえ威圧的な体躯、その体躯に似合わない計算の速さ、さまざまな困難を乗り越えていく粘り腰、休日もプライベートもほとんどなく毎日遅くまで仕事をするパワーは、まさにコンピュータ付きブルドーザーというにふさわしい。しかしこのコンピュータ、電気の代わりに酒で動くせいかたまにトンチンカンな発言をして周囲をハラハラさせた。彼はいつもは人なつこくおしゃべりなので、よくBankARTに来るお客さんに気軽に声をかけていたが、「このカフェはみかんが設計した」とか「あれを設計したのはゾウの弟子」とか謎の説明をすることがあった。建築に詳しい人でも一瞬「?」となるのに、一般のお客さんだったら「この人だいじょぶかしら?」と思ったはず。いちおう説明すると、「みかん」とは建築設計事務所の「みかんぐみ」、「ゾウ」とは「象設計集団」のこと。池田くんにとってみかんぐみや象設計集団はだれでも知っている有名人だから、省略してもわかると思っていたようで(省略しなくてもフツーの人は知らないだろう)、そこに一般常識とのズレがあった。また、彼が倒れる前にロシアがウクライナに侵攻し、ぼくとの会話でも何度かそのことが話題になったが、彼はロシアのプーチンのことを「ソ連のエリツィン」と最後まで言い間違えた。ボケたのではなく、部分的に更新されていないのだ。あちらに行っても、田中信太郎さんや原口典之さんを相手に「ソ連のエリツィンが戦争を」と「最新情報」を伝えているだろうか。おっと、死者をネタにしてはいけない。  そうそう、最後のエピソードをもうひとつ。ロシアが戦争を仕掛けてからぼくはウクライナに関連する2点の絵を描いて、画像を知り合いにメールで送った。何人かからさまざまな反応が寄せられたが、池田くんはただ一言「おいくらですか?」と返してきた。最初カチンときたが、池田くんらしいなと思い直した。値段を聞くということは、買う意志があるということだ。また、池田くんがいつもいっていた「アーティストは絵を描いて終わりではなく、作品を売ってなんぼ」というメッセージでもあるだろう。さっそく値段をつけて送ったが、返事がないまま逝ってしまった。寂しいよ。もっともっと話がしたかった。 村田 真
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[3] 「愛する人、家族、親友を失った時」に観るといい(……かもしれない)映画8選?!
  by 木村重樹
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いわゆる〝死別の悲しみ〟は、はたして映画鑑賞によって緩和・解消できるものなのか? そんな観点から思いついた古今東西の映画タイトルを(順不同で)8本チョイスしてみました。
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●『岸辺の旅』(2015年、黒沢清監督)
︎3年前に失踪した夫がある日、妻のところに帰ってくる。わけを聞くと「俺、死んだよ」という……。そんな(もう死んでる/けれど/目の前で喋っている)亭主を静かに受け入れた妻(深津絵里)が、彼がお世話になった人々の元を一緒に巡りながら、永遠の別れに向かって旅を続ける、湯本香樹実の同名小説の映画化。黒沢映画にしては、すごく〝わかりやすい〟部類だが、「永遠の別れ」の前にこうした準備ができれば、あらゆる死別はそこまで悲しい経験ではなくなるだろう。死者役を演じた浅野忠信がホントに死んでるみたい。第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門監督賞受賞作。
●『死ぬまでにしたい10のこと』(2003年、イザベル・コイシェ監督)
︎主人公が余命宣告を受けた若いお母さんでこのタイトルでは「お涙頂戴の難病もの映画」と受け取られても仕方ないが……それって日本のテレビ局映画に毒されすぎです!(きっぱり)原題は〝My Life Without Me〟つまり「自分を抜きにした、私の人生」みたいな話。ちなみに本作の日本人によるレビューの大多数が「不倫はよくない(……ので、主人公には全く共感できない)」みたいな頓珍漢な感想だらけで軽く死にたくなりますが、余命宣告を受けたお母さんから「元気」を貰ってください。
●『エンター・ザ・ボイド』(2009年、ギャスパー・ノエ監督)
︎いわゆる「臨死体験」を映像化した試みはいくつかあれど、2時間余りのほぼ全編「絶命した後の死人」が主人公であり、カメラの一人称視点が連続する劇映画は、ちょっとレアかも。とはいえ、実験的なのは映像表現だけで、あらすじは「ストリッパーの妹と歌舞伎町に住む〈ヤクの売人〉の外国人男性が射殺され、成仏する前に辺りを彷徨う」という、俗っぽさの極みで贈るトリップムービー。ともかく、主人公である「死人」の〝視点〟から見た歌舞伎町を彷徨うだけで……軽くトベます。
●『MIND GAME マインド・ゲーム』(2004年、湯浅政明監督)
︎「死者が主人公のトリップムービー」といったら、こちらも負けず劣らずの大傑作。そして、『エンター・ザ・ボイド』の舞台が新宿歌舞伎町ならば、こちらは大阪の場末の居酒屋。20歳の若さで(肛門から頭を撃ち抜かれるという)無様な死に方をした主人公が、驚異的な生への執着から生き返りを果たすまでの冒険譚。ロビン西の同名コミックをSTUDIO 4℃製作で完全アニメ化した本作は、アニメとサイケと死とドラッグの相性のよさを改めて痛感させてくれる。
●『パーマネント野ばら』(2010年、吉田大八監督)
︎かくも多くのバイラル・メディアが勝手放題言いっぱなしなご時世に「ネタバレ注意」も何もないのかもしれないが……いきなり核心を明かすのは心苦しいので、とにかく「実はある男性キャラが、もうずうっと前に亡くなっていた」という現実から、全ての登場人物が目を背け続けることでかろうじて成立していた世界についての寓話劇。近年、色々と残念な西原理恵子がまだイケてた2000年代の代表作を、菅野美穂主演で映画化。死者とは若干タイプが違うけれど……本作のトリッキーさが嫌でなければ、『勝手にふるえてろ』(2017年)や『私をくいとめて』(2020年)といった綿矢りさ原作/大九明子監督作も、併せてお勧めしておく。
●『ブンミおじさんの森』(2010年、アピチャートポン・ウィーラセータクン監督)
︎人々を取り巻く大自然との距離感のせいか……いわゆるアジア人の死生観は、西洋人のそれとはかなり異質なところがある。そんなわけで、第63回カンヌ国際映画祭の審査委員長ティム・バートンの心を鷲掴みして、タイ映画史上初のパルム・ドールを受賞。タイのイサーン地方で死に際を迎えたブンミおじさんが(イタコよろしく)すでに先立っている先妻や息子を冥界から召喚し、そこに己も加わって森に帰ってゆく。ただそれだけの話なのに、同じアジア人からすればノスタルジーの塊だろう。
●『異人たちとの夏』(1988年、大林宣彦監督)
︎アピチャートポン映画のことを思い返していたら、久々にこちらのタイトルを思い出した。人気の中年シナリオライター(風間杜夫)が幼い頃に住んでいた浅草で、子供の頃に事故死したはずの両親と出会い、通いつめる。前後して、同じマンションに住む不思議な女性・桂(名取裕子)とも出会い、愛し合うようになる。しかし、この2つの出会いを機に、彼の身体はみるみる衰弱し……。山田太一の原作小説を市川森一脚本、大林宣彦監督で映画化。全編に漂う〝死の芳香〟は、原作由来であるのと同時に、全ての大林映画に共通する不穏な〝匂い〟でもある。
●『空白』(2021年、吉田恵輔監督)
︎昔の映画ばかり挙げてても何なので、最後の最後に近年の邦画から1本。万引き疑惑を引き起こして逃走中、交通事故に巻き込まれて轢死した女子中学生の身の潔白を証明せんと、スーパーマーケットの店長(松坂桃李)を筆頭にした関係者に(気狂いクレーマーばりの)追い込みをかけまくる、クレージーな父親(古田新太)の暴走っぷりを描く。結局のところ、父の思考と言動に修正を促したのは、別の「死」が浮き彫りにした遺族の佇まいと、娘の忘れ形見だった……。
   *
「死別」は耐え難く、何にも増してつらいものだし、どんなに足掻いても死者は戻ってこない。だけど心の持ちよう次第で、ほんの少しだけそれを軽減させることはできる。映画のストーリーに没頭し、エンドロールを目にするまでの束の間のあいだ、つらい現実から目を逸らすことができるのならば、あらゆる「映画鑑賞」に「死」のつらさを忘れる効用があるのかもしれない……。
木村重樹(編集者、文筆業)
*宣伝:来たる2022年5月29日・東京流通センターで開催される「第34回文学フリマ東京」にて、《ウィッチンケア書店》というブースのお手伝いをします。当日は個人誌『Shigeki-ZINE [2022] ──70sロック=ギミック/ギャルバン/コスプレ』を頒布予定。ブース「ウ-1」にお立ち寄りください!
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [4] ドイツで暮らすコロナの時間 #ペリメ二、ボルシチ、ウクライナ シェリン(アーティスト) ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
コロナに振り回されるのにも慣れてきたと思ったら、まさかの戦争。長らくトップニュースで不動の座だったコロナが、今ではウクライナの戦況にとって代わっています。2ヶ月前、青と黄色にライトアップされたブランデンブルク門だかをテレビで見て、一瞬イケア?って思ってしまった自分が恥ずかしい、いや懐かしい。
 もう娘のクラスにもウクライナから生徒が転校してきたらしい。学校といえば私も悪戦苦闘でドイツ語を学ぶ身でして。特に今のクラスは公的援助が受けられることもあって、15名いる学生の多くは、というか私以外全員が移民か難民です。シリア、クルド、アフガニスタンといった国から自分も混乱の戦禍から逃げてきた、そんな人たち。知り合えたのも何かの縁だし、この戦争の見解を聞いてみたいものですが、それが不自然なほど話題に上がりません。というのもクラスメイトに2人ロシア人がいてそれぞれどう切り返されるかわからない、誰もが空気を読む状況というか。とはいえ、戦争で犠牲になるのはいつも市���だ、と校舎の端っこで呟いて、そっと頷かれている人もいるのだけど。
 対立する国を知るのもまず興味から。ウクライナ、ロシアの争点を正面から議論するのもいいけど、そこに息づく暮らしの一端を想像するのもよし。ということでやはり食べもの、スーパーに行ってその一端をたぐってみようではないですか。
 そもそも移民大国ドイツにはいろんな国のスーパーや食材店が混在していてこれが大層面白く、スーパー視察はいまや私の趣味のひとつ。ベルリンにはベトナムスーパーがあるそうでとても羨ましい。ですが今回はあえてうちの近所の大手チェーンのREWE(レーヴェ)など、ごく普通のスーパーから美味しいものを、ではなくて、ビジュアル的に面白いものをご紹介します。
 どこでも必ず売っているのが冷凍のペリメ二。ころんと丸い帽子のような形のロシア、ウクライナのこれはまさに水餃子。世界中に似たような一品があるけれど、この中身は牛豚のひき肉と玉ねぎ、たまににんにく、ナツメグと至ってシンプルです。サワークリームどっさり乗っけて食べるのが定番、なかなか美味。
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昔懐かしい練乳ことコンデンスミルク。なぜかドイツではロシア的グラフィックなパッケージを見かける。ロシア人の友達に聞けば、練乳は必ず家に常備されていてお菓子に使ったり、なんと煮詰めてキャラメルにするそう。それってフランスのミルクジャム、コンフィチュール・ドゥ・レみたいだし。惜しくも苺にはかけません。
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粉末スープみたいなボルシチのもと。そういえば、国を代表する有名料理ですが、ロシアとウクライナでボルシチの本家争いしているそうな。企業買収されたか裏にネスレと書いてある。
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保存食の多い旧ソ連の食材ですが、これは肉の缶詰。そしてどうでもいいけど、デザイン的に麗しい女性のイラストを使ったものが大変多いように思えます。いわゆる昭和的だったりでジャケ買いしたくなるようなもの多し。各種お菓子のパケも相当いい感じ。
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ん?と立ち止まってしまったスイカの瓶詰め。桃缶みたいなシロップ煮じゃなくて、陳列からしてどうもピクルスのようです。買う勇気がなかったので味はわかりません。
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番外編。ここしばらくサラダ油的なものがまったく手に入らなくなっていたのですが、つい先日、久しぶりのその姿を拝めました。ひまわり油、平常時の3倍以上の値段で5ユーロ、600円以上もするではないか。一つはポーランド、もう一つはモルドバから。モルドバという国については、経済的には厳しい「恋のマイアヒ」の国ってことくらいしか知らない。今、同じく戦争の窮地に立たされてながらもウクライナ難民を受け入れています。買って支援できる訳でもないだろうけど、と手に取る。
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国境をたった2つ超えたところで戦争が起きていても、普通の生活は普通に動く。戦争反対と言葉にするだけでは変わらないんだよなあとぼやきながら、今夜は冷凍ペリメニを茹でてしばし思いを巡らせることにします。
 ウクライナへの連帯を。ウクライナ関連の展覧会も。シュトゥットガルト 、ミュンヘン。美術館やオペラハウス、劇場や市庁舎にはウクライナカラー。
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■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [5] 編集後記 ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
BankARTの「食と現代美術」にVoidchickenで参加したことを除けば、私は池田さんと直接仕事をしたことはなく酒を一緒に飲んだこともありません。でもBankARTでビールをおごってもらったことは何度もあります。いつも会うとBankARTの重たいカタログをどっさり渡されるので、それがいやでこっそり避けたこともありました。BankART以外の場所で池田さんの姿を見たことはほとんどありませんでした。本当におつかれさまでした。やすらかに。(さかぐ) 池田さんとはPHスタジオからのお付き合いだった。だから、池田さんの長い長い活動(わたしが知るのはそのほんの一部に過ぎないけれど)に折々に触れ、会って交わした言葉(多くはないけれど)が、自分のなかには印象深く残っている。BankARTで顔を合わせると必ず「いまなにやってるの?」と声をかけてくれて、わたしの近況を聞き、それからBankARTで考案中の企画、将来の活動に関するアイディアをいろいろと話してくれた。「まあ、どうなるかわからないけどね」といつも最後にひとこと付け足すのだが、目が輝き、生き生きした表情の池田さんを���えている。いつ頃からか、会うと体調の話が多くなった。最後に会ったときは「飲み過ぎちゃってね」と事務所のソファで目を瞑って静かに座っていたので、いつもと違うな……と心配だった。それからひと月後、訃報が届いた。思い出すことがある。ある夜遅く、事務所でアコギ片手に、ひとりパソコンの譜面をみて歌っている姿を見かけたことがあった。熱唱する池田さんには近づき難い雰囲気が漂っていた。彼が自分の孤独のようなものに向き合っているようにわたしには感じられた。わからないけれど……。彼は自分の世界に没入していた。  大昔、BankARTの「食と現代美術」展のイベント企画に、voidchickenが呼ばれた。わたしたちがゲストアーティストとハチャメチャなことをしている現場に池田さんがやってきて、笑って(たぶんあきれて)見守っていたことが懐かしい。本当にお世話になりました。  池田さん、あちらでもお酒はほどほどに。心よりご冥福をお祈り申し上げます。  最後に本号に寄稿いただいた山野様、村田様、木村様、シェリン様、ありがとうございました。御礼申し上げます。 (柘植 響 aka sabo)(さぼ)
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mlvoidchicken · 2 years
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VOID Chicken Nuggets 2021年11月29日号
C o n t e n t s [1] Reborn art festival 思い出し(子連れ)日記 by 水田紗弥子 [2] 深く険しい「Netflixオリジナル映画」の森を逍遥する?! by 木村重樹 [3] ドイツで暮らすコロナの時間 その4  #オプ選挙    by Chelin [4] 「人工知能美学芸術展:美意識のハードプロブレム」 [5]  編集後記
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [1] Reborn-Art festival 2021-22 [夏会期] 思い出し(子連れ)日記 
 水田紗弥子(インディペンデント・キュレーター)
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リボーンアートフェスティバル(以下RAF)の最終日に撤去の立会いのために石巻入りして、旧荻浜小学校へサエボーグの作品を見に行って、篠田太郎さんのバルーンの最後の浮遊を見届けた。その日は、おにぎりの絵が描いてあるところにもう一度泊まりたいと、あさお(息子、3歳)に要望されていて、コト研(コトのアート研究所)に泊まらせてもらった。あさおが仙台駅で(私に)買ってもらったばかりのドクターイエローのおもちゃをなくして、駐車場まで戻り車の中を探したけど無かった。もしかして、とスーパーに電話したら落とし物として預かってくれていた。
電話に出た店員さんが優しくて「なくして大変だったんじゃない?」と言ってくれた。スーパーのレジで会計が終わる前のジュースが飲みたいと騒ぐ息子にブチ切れたことを深く反省した。
気を取り直して私たちは「夜のドライブしよう」と言って石ノ森萬画館まで夜20時にドライブに出かけた。最終日はピンクに照らされていた。オープニングの日は赤い色で、2人でちょっと怖いねと話していたことを思い出す。道は真っ暗で迷って遠回りして到着した。
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髙橋匡太《光の贈り物》 筆者撮影
RAFの準備期間中からあさおが助手席に座って、石巻から荻浜、女川までずいぶんたくさんドライブした。朝は保育園に送る短い時間、羽黒の家の前の急な坂道を車で下るのが怖くて、2人で毎日ふざけて叫んでいた。そのあとに通るメガネの相沢店のシャッターに若い男女がキスしているイラストが描かれているのだが、2人で恥ずかしいわね~と笑いながら保育園に向かう。3歳児には刺激的なイラストなのだけど「お母さんが怒っていても、これ見たら笑っちゃうんじゃない?」といつも言われた。石巻の保育園で覚えてきた「はらぺこあおむし」の歌はドライブ中に繰り返し歌った。やたら長い歌だなと思って、後日エリック・カールの絵本を読んだらテキストがそのまま全部歌になっていた。約10年ぶりの運転で、車庫入れも山道も怖かったけど、息子とのドライブは本当に楽しかった。 最終日の翌日、スタッフたちは秘密?の打ち上げパーティをしていて羨ましかったけど、わたしはあさおを保育園に迎えに行って打ち上げは参加しなかった。わたしとあさおはいつも通りヨークベニマルに買い物に行きおかずを買って、ドクターイエローを取り戻し、2人で適当にごはんを食べてiPadを見てお風呂に入って眠った。 芸術祭は非日常の演出だから、規則正しく平穏に過ごしたい子育てとの相性は悪すぎたけど、みんなに支えられてがんばったと思う。結局、すべて子連れでチャレンジすることになった(パートナーのことはいろいろあるがここには登場しない)。当初はできるかな?という不安ばかりで、友人に東京から一緒に出張についてきてもらったり、仙台まで家族が同行してくれたり、いろいろ試したが、無事に現地で保育園も見つかり展示準備期間の約3週間は石巻に滞在した。初めて出張した2020年12月に2歳だった息子はオムツがとれて3歳になって、イヤイヤ期もちょっと落ち着き、自分の言いたいこともガンガン話してくれるようになった。それと、RAFの期間ですごく成長した。
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設置準備期間の最初のピークは女川で行なった加藤翼さんの車両の引き起こしイベントだった。 この時期は昼間でも女川の港から霧がかかっているのが見えた。空は青く澄んでいるのに霧が真っ白に映える、はじめて見る風景だった。引き上げ会場のシーパル女川汽船の事務所には子連れで何度も出かけたが、いつも温かく迎えてくださり、会場になる場所の工事の様子なども逐一教えてくれた。白地に赤い模様の「しまなぎ」という汽船の模型のおもちゃをあさおが気に入って、いつも触らせてもらっていた。とてもきれいな状態の「しまなぎ」の模型は、津波で流されなくて無事だったものだった。あさおはフェリーが大好きになってリクエストされたので、オフの日に実際の「しまなぎ」に乗って周遊した。出島や江島など、小さい島々の景色や岸壁の隆起など、女川一帯の神々しくも寂しい風景が、あの晴れ渡った日々の霧とともに目に焼き付��ている。 翼さんの作品は、海中に沈んだ車両を人力で引っ張り上げる大変な作品で、その調整役は書類仕事も関係先も多かったが、役場の方のかなりのアシストとスタッフ総出で当日アシストしてもらい、参加者もおおぜい集まって順調に引き上げられた。引き上げの当日は日曜で、保育園は休日。予想通りお昼寝をうまくできなかったあさおは、ちょうど引き上げている真っ最中に大泣きで、抱っこしていないと大暴れだった。わたしはスタッフ業がほぼできず、無力と申し訳ない気持ちと、約15キロの息子をずっと抱き歩き回って背中と腕がパンパンで、正直なんだったのかあっという間に終わってしまったという感じだった。引き上がった頃に息子も元気になって、機嫌も直り、新聞店の阿部さんに肩車してもらいずっと質問を続けていたらしい。「なんで津波がきたの?」「なんで地震がきたの?」
海中から引き上げられた車両は、モンスターのように貝や海藻をまとっていた。その後、車両の持ち主の方(Sさん)が見つかり、RAF会期が始まる前日に会いに行くことができた。東日本大震災の日、普段は徒歩通勤だけれど、用事があって偶然車で移動をしたために流されてしまったハイラックスサーフの話をSさんに聞いた。その日はあさおが保育園に行っていたので、わたしは随分熱心にSさんの話が聞けた。 東日本大震災や津波のことを当事者でない私はうまく想像できない。私は遠くから眺めていただけで、RAFの仕事も遠くから来て、調整役をして帰るだけだ。そういう罪悪感のようなものがいつもあった。RAFに限らず、アートの仕事をしているとそういう後ろめたさみたいなものがあって、いつも現場では精神を揺らさないで、できることをするように強いている。そうしないと、気持ちが落ち着かなくて仕事を前に進められないときがある。特に子どもができてから、そんな風に心がけているかもしれない。でもSさんとの出会いや、車が長い時間をかけて陸に帰ってきたこと、あさおが生まれるずっと前に大きな津波がきたこと、などを考えててその日の夜は頭が混乱してうまく眠れなかった。 Sさんと翼さんと、海底に沈んで時がとまっていた車を見に行った。近くの水路には、津波の往来で瓦礫がつけた痕跡が生々しく残っていた。さけます孵化場だったその場所は、やはり津波の影響で今は使われていない。しん、とした場所で、翼さんたちにヘドロをだいぶ片付けてもらって少しすっきりした車が置いてあった。あの場所で話したことも含めて、翼さんの作品の生きている過程は、女川の歩んできたこと、選択してきたことが、行ったり来たりする生々しさがあって、わたし自身の記憶も映画のように断片的な映像となって今も現れる。 会期がはじまる前にすでに限界を迎えていたあさおは、「家に帰りたい」「東京タワーが見たい」と繰り返していて、朝がた寝言で言う「保育園に行きたくない」も増えてきた。会期が始まってプレスツアーを終えたら早々に東京に帰ることにした。保育園の最終日、プレスツアー後に迎えにいくと、お友達が総出で見送ってくれた。「あさおくん、またきてね、げんきでね」そして、色紙まで用意してくださった。私は忙しくて、保育園には必死で送り迎えをするだけで、保育園の最中の様子も大して気にしていなかったのだが、みんなが気にかけてくれてお友達として認識してくれていたんだなと思ったら急にボロボロ泣いてしまった。あさおは「?」帰ろうよーという感じで別れの意味をまだ知らない3歳だった。 東京の保育園に行くと、そっちであさおを待っていてくれたお友達は、お迎えのときに「あっくんまたきてねー」と言ってくれた。 (水田紗弥子)
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[2] 深く険しい「Netflixオリジナル映画」の森を逍遥する?!
  by 木村重樹
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ここ2年近くの〝おこもり生活〟で確実にシェアを伸ばしたのが、映画やドラマ、アニメ番組などの動画配信サービス。音楽やアート(視覚芸術)の場合、ネット配信やライヴ中継などの手軽さが受けているとはいえ、その一方で〝生のライヴ鑑賞〟や〝美術館・ギャラリーでの実物の鑑賞〟に体験的プライオリティが置かれていることもまた事実。その点、映像コンテンツの場合「家に居ながらにして、観たい時間に観たいタイトルを何度でも観られる」という仕組みはお手軽だし、たいへん魅力的。もちろん〝劇場〟での映画鑑賞には、自宅では得難いものがあるとはいえ……その敷居は低くない。
そんなご時世に、ふと思いを寄せてみたのが「配信サービスでしか(映画館では)観られないタイトル」の存在。さらにその〝配信サービス〟まで限定して、ここではズバリ「Netflixオリジナル映画」にフォーカスをあて、振り返ってみる次第です(注:Netflixの回し者では、断じてありません)。
古くはポン・ジュノ監督の『オクジャ/okja』(2017年)や、アルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA/ローマ』(2018年)、ノア・バームバック監督の『マリッジ・ストーリー』(2019年)にスパイク・リーの『ザ・ファイブ・ブラッズ』(2020年)等々……映画界の中堅~ベテラン監督を起用した話題作を続々と世に輩出したのも「Netflixオリジナル映画」の貢献のひとつ(そのうちのいくつかは、劇場公開もされた)。その一方で、前述の〝巨匠たち〟程の知名度こそないものの、キラリと光る魅力を備えた新企画やシナリオを拾いあげ、チャンスを与えていったのも、「Netflixオリジナル映画」の別の側面。
とはいえ、同サービスのメニュー画面にたち並ぶ、アイコン画像の左上に、小さな赤い〝N〟がついた「Netflixオリジナル映画」は、毎月・毎年きら星のごとく量産され、正直何が何やら……というユーザーも少なくないはず。
ここでは(手放しで絶賛できる大傑作ばかりではないけど)そんな「Netflixオリジナル映画の森」を渉猟するための〝足がかり〟になりそうなクセの強い10タイトルをピックアップして、駆け足でご紹介。動画配信サービスの可能性と限界に想いを馳せるもよし、来たる年末年始の暇つぶしの一助にもなれば、幸いです!【各レビュー巻末の星の数は、極私的なオススメ度です】
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《大味な���ャンクフード映画を愛する貴方への2作》
■『タイラー・レイク─命の奪還─』(2020)
テーマパークのような映画・その1。『マイティ・ソー』や『アベンジャーズ』シリーズで知られるクリス・ヘムズワース主演。Netflixによる全世界独占配信開始後、1週間で9000万件以上の視聴世帯数を記録した超メガヒット作。バングラデシュのマフィアに誘拐されたインドの麻薬王の息子を救うため、単身ダッカに潜入した傭兵タイラー・レイクの活躍を描く117分。どうも「Netflixオリジナル映画」って、尺が2時間前後の場合が多い気が(劇場と違って、上映時間の制約が弱いのか?)。筋書きとしてはとてもシンプルな「救出もの」だが、本作で監督デビューを果たしたサム・ハーグレイブがスタント・コーディネイター出身ということもあり、ド派手なアクションやカースタントの連続には目を見張るものがあり、バングラデシュの混沌とした街路や裏路地の景観も、場末マニアにはたまらない。【★★★】 ■『アーミー・オブ・ザ・デッド』(2021) テーマパークのような映画・その2。「ラスベガスがゾンビに侵略され、カジノに眠る膨大な埋蔵金を強奪すべく、命知らずの傭兵が決死の潜入を試みる」……筋書きはこれ以上でも以下でもない本作。オープニングで、虚飾の街ラスベガスがゾンビに占拠されるまでのシークエンスがテンポよく矢継ぎ早に繰り広げられるのだが、実はそこが本編で一番の見どころで、残りの上映時間120分は、そのオツリみたいな展開なのが何とも歯痒い。監督は『ドーン・オブ・ザ・デッド』や『ウォッチメン』のザック・スナイダー。主演は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』や『DUNE/デューン 砂の惑星』のデイヴ・バウティスタ。【★★★】
《こころの闇や生きづらさに向かい合う2作》
■『もう終わりにしよう。』(2020) 大味なタイトルはこのくらいにして、ミニシアター的なアート映画もご紹介。ある冬の日、ひとりの女が交際男性の自動車に乗り込む。男は両親に恋人を紹介するため実家に車を走らせるが、女は男との関係を終わらせることを考えており、彼にそれを伝えられずにいる。実家では、女は彼の両親から歓迎されつつも、家全体の不自然な調子に違和感をおぼえる。吹雪のなか2人が帰途につく途中、男の母校に立ち寄る。深夜の学校で彼とはぐれた女は、現実が溶解する体験に囚われ……。現実と空想の境目がしばしば曖昧になる本作の監督は、『マルコヴィッチの���』や『エターナル・サンシャイン』の製作・脚本で知られるチャーリー・カウフマン。イアン・リードの同名小説を原作にした、シュールで物悲しい一作。【★★★★】 ■『この世に私の居場所なんてない』(2017) 世を拗ねたようなタイトルですが〝地味女のリベンジもの〟にして、アメリカ社会独特の自警団(ヴァリアンテ)精神の発露と取れなくもない、思わぬ拾いもの。ある日、気弱で目立たない看護助手ルース(メラニー・リンスキー)の自宅に空き巣が入るが、警察は何もしてくれず、世間の反応も冷たい。仕方なく彼女は、格闘技とヘヴィメタが大好きな変わり者の隣人トニー(イライジャ・ウッド)と手を組んで、自分たちの手で犯人探しを始めるのだが、思わぬ危険に2人は巻き込まれ……。『ブルー・リベンジ』や『グリーンルーム』に出演歴のある俳優メイコン・ブレアの監督第一作にして、2017年サンダンス映画祭の審査員大賞受賞作。イライジャ・ウッドのボンクラぶりは一見の価値あり!【★★★★】
《アメリカの悪と正義を考え直す2作》 ■『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』(2020) J・D・ヴァンスの筆によるベストセラー・ノンフィクション『ヒルビリー・エレジー:アメリカの繁栄から取り残された白人たち』を原作とした「白人労働者階級層から抜け出した男性」の実話を映画化。名門イェール大学に通う青年ヴァンス(ガブリエル・バッソ)は、理想の就職を目前にして突然の連絡を受け、オハイオの田舎へと帰郷する。そこで彼を待ち受けていたのは、薬物依存症に苦しむ母親ベヴ(エイミー・アダムス)の姿。幼いヴァンスを育ててくれた祖母マモーウ(グレン・クローズ)との思い出に支えられながら、彼は自身のルーツを受け入れる覚悟をし、そして……。原作は「トランプ政権が選ばれた理由を知る6冊」のうちの1冊でもあり、現代アメリカの階級問題を垣間見せてくれる。監督は名匠・ロン・ハワード。【★★★】 ■『悪魔はいつもそこに』(2020) タイトルだけ見たら「オカルト映画」と思うかもしれないが、ジャンル的には正調のスリラー。ここで言う〝悪魔〟とは人智を超えた霊的存在ではなく、ほかでもない〝罪深く邪悪な人間たち〟のこと。第二次世界大戦後〜ベトナム戦争時代のウエストバージニア州が舞台。幼い頃に敬虔な両親を亡くしたアーヴィン(トム・ホランド)が祖母の元に身を寄せ、義妹と静かに暮らしていると、それを邪魔するかのような隣人──セクハラ大好きのゲス牧師や猟奇殺人鬼のカップル、クズ保安官どもが次々と姿を現して……。登場する〝悪漢〟や〝変態〟の佇まいが、リンチやコーエン兄弟の諸作を彷彿とさせ、陰惨な暴力や悪徳が横溢する趣向は観る人を選ぶが、ダークな怪作マニアには格好のご馳走。監督は若干30代のアントニオ・カンポス。【★★★★★】
《振り切れた〝色眼鏡〟を耽溺できる2作》 ■『ケイト』(2021) ヤクザ、ゲイシャ、アイドル、カワイイ──欧米人が考える〝表層的なニッポン〟を舞台にした映画といえば、古くは『東京暗黒街・竹の家』から『ブラック・レイン』や『キル・ビル』あたりが連想されるが、言わば本作は、その最新アップデート版。凄腕の女性暗殺者ケイトが日本国内で暗躍中に毒を盛られ、病院で余命24時間を宣告される。真相を求めて東京の街を奔走するうち、かつての標的の娘と親交を深めてゆき……。ケイト役のメアリー・エリザベス・ウィンステッドを筆頭に、ウディ・ハレルソン、國村隼、浅野忠信、MIYAVIと日米豪華キャストが目を引くが、物語のリアリティが希薄なうえ、照明やセットがド派手なだけで、ペナペナな(ロボット・レストランまがいの)日本像が展開するので、思わず脱力。「アップデートされても、この程度」という〝ニッポン観〟を噛み締めるには、いい教材かも。監督は『スノーホワイト/氷の王国』のセドリック・ニコラス=トロイアン。【★★】 ■『ユーロビジョン歌合戦 〜ファイア・サーガ物語〜』(2020) シリアスものやホラーやアクションばかりでも何なので、コメディからもご紹介。アイスランドの漁村に住むラース(ウィル・フェレル)は幼い頃から(ABBAのような)歌手を夢見てきたが、その夢は家族からも周囲からも理解されなかった。そんなある日、ラースが率いるバンド「ファイア・サーガ」が(度重なる偶然のいたずらで)「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」のアイスランド代表に選出! 夢を叶えるラストチャンスと喜ぶラースは、長年の相棒の女性シンガーと共に本選へと乗り込むが、ロシア代表のイケメン野郎に彼女を奪われ、意気消沈……果たして優勝国は? ものすごく乱暴に紹介すると、アイスランド版『翔んで埼玉』みたいな話! アイスランドがいかにダサくて鈍臭いかを、ヨーロッパの芸能界を舞台にあげつらい、笑い飛ばす。アイスランド人に申し訳なくなる一作!【★★★】
《LGBT映画といってもピンキリなことを教えてくれる2作》 ■『彼女』(2021) 邦画も紹介しときましょう! 自分を慕うレズビアンに夫を殺させた女性と、好きな女に懇願されて殺人を犯したレズビアン女性……2人の女のあてなき逃避行を描いたロードムービー。原作は中村珍が手がけたコミック『羣青』(ぐんじょう)。映画化の監督を務めたのは廣木隆一。主演の2人・水原希子とさとうほなみの〝大胆な濡れ場〟が話題を呼んだが、全体的に「(不用意に)金のかかったピンク映画」的なムードは払拭できず。概してNetflixは、LGBTをテーマにした作品を多く手がけ、そちらのマーケットを意識していることが特徴的だが、本作におけるレズ・セックス・シーンは、エンタメ・ポルノ臭がちと強すぎて、素直に観るのが厳しかった(が……これがNetflix経由で「日本産LGBT映画」として、全世界に向けて配信されていることも、また事実なのです!)【★★】 ■『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』(2020) これで終わるのも申し訳ないので、最後の最後に「ウェルメイドなLGBT映画」を。片田舎町に暮らす中国系アメリカ人のエリーは、内向的な性格で周囲となじめずにいたが、秀才ゆえ、クラスメイトの宿題代行で小遣い稼ぎをしていた。ある日、エリーはアメフト男子のポールから「アスターに送るラブレターの代筆」を依頼される。実はエリーは、ひそかにアスターを好いていたが、その感情を隠して依頼を引き受ける。それを機にポールはアスターと交際を始め、ポールとエリーの間にも友情が芽生えるものの、ある日、エリーのアスターに対する恋心がポールにバレてしまい……青春のきらめきとマイノリティの佇まいを巧妙に織り込んだ佳作。同性愛者にして少数派民族という主人公の境遇は、本作で16年ぶりにメガホンを取った監督・脚本のアリス・ウーの実体験に根ざしたもの。【★★★★★】
(木村重樹) ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [3] ドイツで暮らすコロナの時間 その4── #オプ選挙    by シェリン  ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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2017年の選挙時。メルケルが元気そう。お疲れ様でした。
まだサマータイムだった9月末、日本が衆議院選挙に沸く前に、ここドイツでも連邦議会の選挙がありました。日本とドイツは議会制である事も、小選挙区と比例代表制という選挙方法も似ています。ただ、どこかドイツの選挙の方がとっつきやすい気がする。ドイツ語にはまだまだ頭を抱える私でも。 ドイツの政治についてはネットでいくらでも掘れるので、流れだけをざっと。今回は16年も首相を務めたメルケル氏の引退とあって、多くの注目を集めました。その結果は民意が思いのほか反映されて、中道左派の社会民主党(SPD)が勝利。これまでの与党、中道右派のキリスト教民主党(CDU)は惨敗して、いよいよ政権は交代へ向かいます。 ただ、SPDは確かに勝利したものの議席過半数に届かず。そこで政党同士が連立を組んで過半数勢力を作る必要があるのですが、それがトップで勝利した党でなくても構わないのでややこしい。現時点までもSPDとCDUの大連立だったのですが、今回は現実的にもう無理ってことで三党連立しかなさそう。当然それぞれの党の公約がぶつかり合うので、ね、一緒に仲良くやりましょうよ、と簡単に済む話ではないのです。ないのですがSPDの交渉は案外スムーズに進行中。 コロナだけじゃない、問題山積みでぐずぐずしてられないってことでしょうか。次期首相の座はSPDのショルツでほぼ間違いない。環境問題を最優先とする緑の党、経済優先の自由民主党(FDP)との連立で、左だ右だに固執せずに、得意分野をうまく活かしていただきたい。 さて、そんな選挙も投票しなくちゃ始まらない。どの候補者が、どの党がいいのか、情報を得る方法はたくさんあるけど、ここで視覚的に訴えかけてくるのは、やはり街に溢れるポスターです。選挙前、極右政党のポスターをボーッと見ていたら「差別主義者にいていい場所なんてない、だろ?」と笑いながら通り過ぎていく人がいてちょっと驚く。 ポスターは各党独自にグラフィック要素が統一されて、遠目でもどの政党だかすぐわかります。選挙前にいくつか他の州にも行ったけれど、やはりデザインは同じ。そんなポスターは街角の広告板に小選挙区の候補者がまとめて貼られる。加えて車社会を反映してかか、大きな通りには道沿いにもドライバー目線に掲げられて、投票まで毎日いやでも目にすることになる。 何よりも視覚的な効果の一つは、政党ごとにカラーがあること。政策のカラーではなくて、本当に政党の公式カラー、色があるのです。SPDは赤、CDUは黒、緑の党は当然の緑、FPDは黄色、左翼党はピンク、話題に事欠かない極右のAFDは爽やかな青。他にもミニ政党、例えばドイツ海賊党(著作権の海賊版から来ている)などはコンビ色で黒とオレンジといった具合に。 日頃からこのカラーやロゴマークが、一市民に浸透するように最大限活用されています。会見時の背景にはもちろんそのカラーとロゴが。コロナになってからはマスクにお目見えする事も。こうやって視覚的に差別化することが、政策さえもよりはっきり差別化し個を際立たせる結果につながる、なんてことはないのだろうか? 日々そういうのを目にしていると、投票後の開票結果もパッと見、一目瞭然。モニターに映るグラフも、色だけで判断できるのは便利。どこの州、都市でどの政党が優勢か、それでも旧東ドイツ一部で極右政党が支持されている事実、何よりも自分が投票した行く末が、瞬時に観て取れる。視覚が思考に直結します。 さらに、先述の連立与党の憶測も、政党カラーを組み合わせてアンペル(赤、緑、黄で信号)、ジャマイカ(黒、緑、黄がジャマイカ国旗の色)などと呼ばれています。これも政党名を書き連ねるよりもイメージが簡単。
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2017年、FDPのリンドナー党首はいつもモデルばり。
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今年2021年のポスター。こうやって落書きや破り捨てられている事も多くて驚く。特にAFDはかなりの確率。
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「ドイツの実力」ロシア構成主義的。こちらが次期首相と予想されるオラフ ショルツ氏。
その他メディアを見渡してみれば、選挙にまつわるあれこれも、なかなかデザイン的に優れているものも多し。もちろん何を置いても大事なのは政策そのものだし、何たってドイツの投票率も別段高いわけでもありません。でも、政治とデザインの関わり方に考えさせられたというか、自分ごとのような人ごとのような、中途半端な立ち位置で眺めていた総選挙なのでした。 (シェリン)
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [4] おでかけのすすめ展覧会
「人工知能美学芸術展:美意識のハードプロブレム」   アンフォルメル中川村美術館+ハチ博物館+旧陶芸館(長野県上伊那郡中川村)
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今年もあとひと月ですが、年内にぜひお出かけいただきたい展覧会をご紹介。 中央アルプスと南アルプスに挟まれた人口約5,000人の長野県中川村で開催される人工知能をテーマとした展覧会「人工知能美学芸術展:美意識のハードプロブレム」。人工知能美学芸術研究会(代表:中ザワヒデキ、企画制作:草刈ミカ)が企画制作するこの展覧会は、群知能、AI愛護団体、コンセプチュアル・ウィルスをキーワードに、40名近い作家の作品を展示。さらに会期中は、音楽コンサート2回、研究会シンポジウム4回、映画試写会1回行うという盛り盛りスケジュール。アーティスト企画のパワーすごい。 大自然を相手に暮らす里山の懐で、人間ではないものたちが畳み掛ける芸術創作の2週間。中川村のハチ博士、富永朝和氏がハチを操ってつくらせたという世界最巨のハチの巣もマッドで必見です。名古屋からも東京からもちょっと遠いけど、行き方も宿泊先も公式ウェブサイトに情報全部載ってるし(小さい村なので選択肢少ない)、どうしようかなーと思ったら、まずは行って見て体験することをおすすめします!(さかぐ)
♢♢人工知能美学芸術展:美意識のハードプロブレム♢♢
2021年12月4日(土)- 19日(日)(会期中無休)10:00-17:00
【会場】アンフォルメル中川村美術館+ハチ博物館+旧陶芸館(長野県中川村)
【主催】人工知能美学芸術研究会、アンフォルメル中川村美術館、ハチ博物館
【後援】中川村教育委員会、公益財団法人八十二文化財団
【協賛】米澤酒造株式会社 今錦
【協力】中川はちみつ工房、望岳荘、いろりなかがわ亭、タクラマカン、合同会社寺平自動車、長野県西駒郷、BSフジ科学番組ガリレオX、株式会社メガネフウフ、森田ピアノ工房、有限会社リタピクチャル、株式会社ウェブエイト、TAV Gallery、3331Arts Chiyoda、スタートバーン株式会社、在日メキシコ大使館
【助成】文化庁「ARTs for the future!」補助対象事業
【入場料】
3館共通展覧会鑑賞パスポート(何度でも再入場可)(ArtStickerならびに各会場受付にて販売)
▶一般 1800円
▶中川村在住者および勤務者・小中学生 1300円
▶未就学児無料
【中川村までは】
新宿から:中央高速バスで3時間30分/車で3時間30分
名古屋から:中央高速バスで2時間30分/車で2時間
※望岳荘宿泊者は中央高速バス停(飯島または松川)まで送迎有り
https://www.aibigeiken.com/exhibition2021/index.html
【お問い合わせ】
■人工知能美学芸術研究会(AI美芸研)
info[at]aibigeiken.com
(代表)
yoyaku[at]aibigeiken.com
(コンサート、シンポジウム、試写会の予約)
■アンフォルメル中川村美術館
0265-88-2680
museuminf[at]cek.ne.jp
■望岳荘(パスポート持参で宿泊割引あり)
0265-88-2033
info[at]bougakusou.com
パンフレット
www.aibigeiken.com/exhibition2021/img/ex_2021.pdf
展覧会サイト
www.aibigeiken.com/
ArtSticker
https://artsticker.app/share/events/927
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [4] 編集後記 ■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今週ワクチン2回め打ってばったり寝込んで以来どうも調子があがらず。いろいろできてないことは全部ワクチンのせいにします。(さかぐ)
北国で静養中のさぼです。コロナで展覧会会期が延長になったり、予約満員で見られなかったりと、複雑な感じですね。今回も盛りだくさんの内容です〜。ご寄稿くださった皆様ありがとうございました。編集はさかぐ担当。お疲れ様でした。(さぼ)
Sabo’s Art Days
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+.d(・∀・*)♪゜+.゜   h a p p y  2 0 2 1 藝 術 y e a r   +.d(・∀・*)♪゜+.゜ t h a n k  y o u  f o r  s u b s c r i b i n g VOIDCHICKEN is, Tokyo-based, an independent bilingual art paper Blog: VOID Chicken DAYS http://voidchicke.exblog.jp/ Facebook: https://www.facebook.com/voidchicken tumblr: https://mlvoidchicken.tumblr.com/
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mlvoidchicken · 3 years
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VOID Chicken Nuggets 2021年9月6日号
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┃VOID Chicken Nuggets 2021年9月6日号
┃‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ┃快調アート小咄ブログ
⇒http://voidchicke.exblog.jp/ ┃ ┗━━━━━2021/9/6━━━━━━ 
 C o n t e n t s
[1]   Still Staying at Home: 2021 Autumn ── おうちで楽しむオンライン映画〝監督〟のオススメ[アート&カルト系]2021  by 木村重樹
[2]ドイツで暮らすコロナの時間 ── ワクチンへの道  byシェリン
[3]  KEEP の人生、「あと5秒頑張れ!」  by 東京特派員 張小船ボートチャン  
[4]   編集後記
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 [1] Still Staying at Home: 2021 Autumn ── おうちで楽しむオンライン映画〝監督〟のオススメ 2021 [アート&カルト系]
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昨年5月「長びく〝おうち時間〟をやり過ごすため……」という前置きで、動画配信サイトの定額サーヴィスで観られる映画タイトルを都合10本ほど紹介してから、はや15ヶ月余。まさか今年の夏まで、緊急事態宣言が続いているとは!!!
……というわけで、海外旅行はもとより、遠出や帰省すらろくにできず、テンションだだ下がりなVOID Chicken Nuggets読者の皆さんに、今回は「監督名で〝観る〟」配信映画セレクションという趣向で、合計10名の監督とその代表作をご紹介。
レンタルDVDになり代わり、いつのまにか自宅映画鑑賞の基幹産業となった動画配信サーヴィス。でも、既存の「おすすめ」作品や「お気に入り」登録などでは、なかなか視聴の幅が広がらず、いかにも大衆受けしそうなビッグタイトルや人気アニメ〜ドラマなどに埋もれて、なかなかお好みのタイトルにたどり着けず、「もう観たい作品がない!」とお嘆きの方も少なくない、はず。
そこで(やや反動的ですが)「監督の名前から作品へ…」という、かつてのカルチャー雑誌の特集っぽい映画ガイドを試みてみました。今後の映画シーンを牽引するような逸材揃い。依然として出口のみえない〝対パンデミック=引きこもりライフ〟の一助になれば、さいわいです!
*各監督紹介の下に列記した参照リンクは、Amazonプライム・ビデオ(【プライム会員・定額視聴】と【有料配信(レンタル料が発生)】に大別)とNetflix(こちらは定額視聴)に限定しましたが、これら以外の大手配信サーヴィス(U-NEXTやdTV、Apple TV、Google Play ムービー& TVなど)でも、視聴可能なタイトルはあります。また、配信条件は日々更新されるので、気になるタイトルは即アクセスした方が……各自の視聴環境に合わせて、トライしてみてください。
【1】アリ・アスター(Ari Aster: 1986年生まれ)
長編デビュー作『ヘレディタリー 継承』と第2作『ミッドサマー』の相次ぐ大ヒットにより、30代半ばにしてテン年代映画界を代表する監督の座にのぼりつめたアリ・アスター。今さら紹介するのも……と思いつつ、各種動画配信サーヴィスにもしっかり食い込んでいるので、取りあげておきます。鮮烈なイメージを的確にビジュアライズできるスキルとセンス、しばしばトラウマ映画と評されるようなショック演出……これらを兼ね備えていることで、マニアックな評価と商業的成功の双方を獲得しているのだろう。異例としか言いようがない。
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『ヘレディタリー 継承(字幕版)』(2018)https://www.amazon.co.jp/dp/B07NMYWVZD【プライム定額視聴】/https://www.netflix.com/title/80238910
『ミッドサマー(字幕版)』(2019)https://www.amazon.co.jp/dp/B08B5384PC/【有料配信】
『ミッドサマーディレクターズカット版(字幕版)』https://www.amazon.co.jp/dp/B08WKS2DTL/【有料配信】
【2】ノア・バームバック(Noah Baumbach: 1969年生まれ)
Netflix資本で制作された『マリッジ・ストーリー』が第92回アカデミー賞��大挙ノミネートされたことも記憶もあたらしいノア・バームバック。プライドばかり高くて才能のない芸術家を主人公にした物語/あるいは/家族や世代間の価値観の相違を冷ややかに浮き彫りにした物語を、飽きもせず発表しつづてきた。「話せばわかる」とか「努力すれば成功する」といったきれいごとに収まらないビターな説話は一般受けこそしづらいものの、(彼の作品世界の常連たる)「大人になりきれない大人たち」の健気さから、ある種の元気を(逆説的に)もらえるという効用がある。
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『フランシス・ハ』(2012)https://www.netflix.com/watch/70257412 https://www.amazon.co.jp/dp/B07S1CRSCF/【プライム定額視聴】
『ヤング・アダルト・ニューヨーク』 (2014)https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B01MRZ855C/【有料配信】
『ミストレス・アメリカ (字幕版)』https://www.amazon.co.jp/dp/B01LW6T8TE/【有料配信】
『マイヤーウィッツ家の人々 (改訂版)』(2017)https://www.netflix.com/watch/80174434
『マリッジ・ストーリー』(2018)https://www.netflix.com/watch/80223779
【3】グレタ・ガーウィグ(Greta Celeste Gerwig: 1983年生まれ)
先に紹介したノア・バームバックの『フランシス・ハ』に脚本家+主演女優として関わり、さらに2019年には、彼とのあいだに男児を出産したグレタ・ガーウィグ。もともと彼女は制作者志向が高く、ゼロ年���にはマンブルコア映画運動(USインディー映画のいち潮流)に深くコミットしていた。ともに監督・脚本を手がけた『レディ・バード』と最新作の『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』の成功により、優れた〝シスターフッド〟映画の担い手として注目されている。
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『レディ・バード』(2017)https://www.amazon.co.jp/dp/B07H2TV31K/【有料配信】
『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』(2019)https://www.amazon.co.jp/dp/B08GL261JG/
【4】デヴィッド・ロバート・ミッチェル(David Robert Mitchell: 1974年生まれ)
お泊り会の一夜の若者群像劇『アメリカン・スリープオーバー』、セックスで不可視の「呪い」(イット=it)が転移してゆく若者ホラー『イット・フォローズ』、失踪した階下の美女を追いかけるうち陰謀に巻き込まれるノワール・サスペンス『アンダー・ザ・シルバーレイク』……毎度、通俗ぎりぎりな設定だが、いずれも凡庸なジャンル映画に終わらせない滋味あふれる作品の担い手、デヴィッド・ロバート・ミッチェル。いずれもカンヌ映画祭で上映され、国際的評価も高い。はたして彼は(先輩格にあたるリンチやクローネンバーグ、フィンチャーのような)〝カルトなデヴィッド〟の仲間入りを果たせるかどうか……ぜひ一度チェックしてもらいたい。
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『アメリカン・スリープオーバー』(2010)https://www.amazon.co.jp/dp/B07CV4Y226/【プライム定額視聴】
『イット・フォローズ』(2014)https://www.amazon.co.jp/dp/B01H68NTBU/【プライム定額視聴】
『アンダー・ザ・シルバーレイク』(2018)https://www.amazon.co.jp//dp/B07QG6KGLF/【プライム定額視聴】
【5】S.クレイグ・ザラー(S. Craig Zahler: 1973年生まれ)
他愛もない会話劇がだらだらと続く(タランティーノ?!)かと思いきや、次の場面ではとんでもないゴア描写が容赦なく炸裂……ジェットコースター的な展開と作劇が話題となり、ジャンル映画以外のシネフィル層からも注視されているのが「暴力の伝道師」こと、S.クレイグ・ザラー。前職はブラックメタル・バンドのドラマー兼・作詞家にして、バイオレンス小説家でもある(日本でも早川書房から翻訳書が刊行されている)。毎回120分を下らない長尺の上映時間につきあえる心理的・時間的余裕がある際に、ぜひご賞味あれ!
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『トマホーク ガンマンvs食人族(字幕版)』(2015)https://www.amazon.co.jp/dp/B01N6BCIX1/【有料配信】
『デンジャラス・プリズン ー牢獄の処刑人ー(字幕版)』(2017)https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B07DGMK1YY/【有料配信】
『ブルータル・ジャスティス(字幕版)』(2019)https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B08M5NQ4ZF/【有料配信】
【6】テイラー・シェリダン(Taylor Sheridan: 1970年生まれ)
40代半ばで俳優から脚本家へと転身したテイラー・シェリダン。2015年公開の『ボーダーライン』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)、翌16年に公開された『最後の追跡』(デヴィッド・マッケンジー監督)と、話題作のシナリオを次々と担当。これら2作と合わせて「フロンティア3部作」として執筆された『ウインド・リバー』では、ついに自身が監督デビューを果たし、第70回カンヌ映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞。これら3作の設定や登場人物には特に明確なつながりは認められず、いわばそれぞれが独立した話なのだが、「現代アメリカの隘路」とも言うべき社会問題(とりわけ白人貧困層の窮状)が、いずれの作品にも深い影を落としているのが特徴的。社会派エンタメ最前線?!
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『ボーダーライン』(2015)https://www.netflix.com/title/80046311
『最後の追跡』(2016)https://www.netflix.com/title/80108616
『ウインド・リバー』(2017)https://www.netflix.com/watch/80173524
【7】ヨルゴス・ランティモス(Yorgos Lanthimos: 1973年生まれ)
いずれの作品からも漂ってくる、独特の〝居心地の悪さ〟と〝閉塞感〟が特徴的な、アテネ出身のヨルゴス・ランティモス。テン年代からカンヌやヴェネツィアなどの国際映画祭で高く評価されてきた彼だが、ギリシャ経済危機を契機にイギリスへ。以後、英語作品を手がけるようになって、より広範な注目を集めるようになる。目下の最新作である『女王陛下のお気に入り』では、他人のシナリオを初映画化。ランティモス映画特有の〝わかりづらさ〟が緩和されたぶん、黒いユーモアや辛辣さが際立った寓話的傑作に仕上がっている。
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『ロブスター』(2015)https://www.amazon.co.jp/dp/B01LYHY4QH/【有料配信】
『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(2017)https://www.amazon.co.jp/dp/B07FMQGNFP/【有料配信】
『女王陛下のお気に入り』(2018)https://www.amazon.co.jp/dp/B07RTZBGB6/【有料配信】
【8】ディアオ・イーナン(刁亦男: 1968年生まれ)
改革開放路線への転換に伴う高度経済発展以降、現代中国を舞台にしたノワール映画が多数生み出され、一時期はジャ・ジャンクー(賈樟柯)あたりが牽引していたものだった。そうした潮流を引き継ぐ、中華ノワールの旗手として期待が高まっているのが、こちらのディアオ・イーナン。やりすぎ寸前にまで振りきったド派手なライティングや舞台美術、ケレン味たっぷりのアクション、湿気を纏った場面設定など、アジアならではのノワール表現を追求している。第64回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した『薄氷の殺人』と、日本では昨年春の緊急事態宣言下に劇場公開された『鵞鳥湖の夜』、いずれもAmazonプライムビデオで視聴可能(と書いていたら、前者の公開期限が切れていた!)。
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『薄氷の殺人』(2014) https://www.amazon.co.jp/dp/B088R49VXZ【2021年8月12日現在、日本地域での公開休止中】
『鵞鳥湖(がちょうこ)の夜』 (2019)https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0982MW7T3/
【9】ビー・ガン(畢贛: 1989年生まれ)
当年32歳でありながら、世界各地の映画祭から引っ張りだこなのが、中国映画の新鋭、ビー・ガン。2015年ロカルノ映画祭で新進監督賞を受賞した『凱里ブルース』と、2018年カンヌ国際映画祭で初上映された『ロングデイズ・ジャーニー』……いずれも日本では2020年春に短期劇場公開され、十分な配給体制でなかったにもかかわらず、作品の評判が雪だるま式に膨らみ、同年秋にNetflixで配信がスタートして以降も、カルト的な人気が増殖している。異常なまでの「長回しカット」や3D映像への導入などで、あたかも他人の夢の中にダイブしてゆくかのような気分に観衆を誘う。彼がこよなく愛するアンドレイ・タルコフスキーの世界観を現代中国風にリブートしたかのような映画……と言ったら、その魅力の片鱗を想像いただけるだろうか?!
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『凱里(かいり)ブルース』(2015)https://www.netflix.com/jp/title/80103429
『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』(2018)https://www.netflix.com/watch/81026644
【10】クレベール・メンドンサ・フィリオ(Kleber Mendonça Filho: 1968年生まれ)
ここ10年間ぐらいに頭角を現した注目の新鋭監督を思いつくまま挙げてきたけれど、個人的に今一番推しておきたいのが、ブラジル映画界から世界に飛翔したクレベール・メンドンサ・フィリオ。映画評論家から監督へと転身した彼の最新作『バクラウ 地図から消された村』は、単館ロードショーからNetflixでの配信公開へとシフトしたのを機に視聴者が爆増。「意味不明だ」「つまらない」などの酷評も少なくないが、彼の映画こそ、21世紀社会を席巻する「新自由主義」や「市場主義経済」……さらには格差やレイシズムや不寛容に関する、もっとも批評的な映画作品だと断言しておこう(同時にそれらは、ブラジル現代社会が抱えている圧政や不条理への抵抗の姿勢でもある)。とにかく劇中に登場する「高齢者たち」の佇まいが素晴らしい。必見!
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『アクエリアス』(2016)【Netflixでの配信が2021年1月12日に終了。初老の女性音楽評論家の静謐な暮らしと、非情にもそれを破壊しようと企むデベロッパーの対決を描いた超傑作なので、またの公開を切望する!】
『バクラウ 地図から消された村』(2019)https://www.netflix.com/title/81071935
木村重樹(編集者、文筆業) https://twitter.com/kimurashigekix
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[2] ドイツで暮らすコロナの時間 ── ワクチンへの道
(2021.8.19)
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まだわずかにヘロヘロ。先週、2回目のワクチンを接種完了。初回アストラゼネカ、今回ファイザー。どちらも副作用はしっかりと、特に今回は38℃以上の熱は出るわ体は痛いわ、寝返りも面倒なほどのだるさ。いきなり来た症状はいきなり去ってはくれず静かにフェイドアウトへ。でも実際に感染する大変さを想像すればなんて事ありません。これからの方はご心配なく。
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※自宅で簡単にできるキット。陰性です。
さて、現時点でドイツのワクチン摂取率は63%、うち2回完了が58%。ちなみに日本は50%、39%。さすがドイツ?実は当初こそ対策万全と褒めちぎられたドイツも、ワクチンに関しては完全に出遅れました。私たちの世代に届いたのは、ホームドクター(と勝手に決めているんじゃなくてちゃんと登録する)で接種できるようになってからです。
ところで当日、説明から横に逸れて医師とよもやま話。「オリンピック後、日本で新規感染がやはり増えた。なぜ接種がこんなに遅れたんだろう?」「たぶん日本独自の検証や契約で手間取ったり、自国開発が間に合わなかったとか。あ、これBBCとかに書いてあったことですけど。」「けれどオリンピックが5年前に決まっていたのに。もしワクチンさえ済んでいたら無観客も避けられたかもしれない。最悪、オリンピックが中止になったとしても、ワクチン接種率が高くて困るってことはないよね。」心の声は言う。はい先生、まさにおっしゃる通りでございます。「いつでも誰もが公平に、という考えが事態に合わなかったのかもしれません。足りないからこそ感染爆発した都市優先としたりと、反対意見が出るような切り札も必要だったのかも。」「同じコロナでも国はそれぞれ違うからな。」と、ビールでも飲みながら、さらに続きを伺いたいところでした。
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※ ⬅︎ワクチンセンターはこちらです。
2020年3月からのロックダウンで、たぶんザ・標準なドイツ人に相当なダメージ与えたのがホリデー問題でしょう。そもそもドイツは休暇への気合いが違います。誰にも束縛されずに自分の好きなように過ごすことこそが休暇。それが人生。長けりゃ数週間単位、本気で休暇をとる。この季節なら帰省だけでなく、太陽が燦々と輝く海辺で寝転んだり、遥かアルプスを眺めたり。普段、そういうのに慣れちゃってると指図されまくりの近場での休暇なんて、そりゃもうしょぼくて辛いもんです。とにかく休暇のためなら、と高まる期待が、普段は乗り気でないワクチン接種への道へと、多少なりとも一役買ったに違いありません。実際に6月あたりは、トップニュースはスペインのマヨルカ島に旅行できるかどうかでしたから。
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※ 市の体育館がワクチンセンターに様変わり。
もちろん反対、中にはワクチンだけでなくそれ以外の理由で拒む人もいます。例えば、政府の一方的な押しつけは嫌だという反体制の人。ナチスと旧東ドイツの背景もあって、個人の自由のためなら体張って抗う。デモする。まあ間違ってはないけど、さすがに内容によるんじゃないですかね。なんでも看護師が食塩水を8000人に投与って衝撃的な事件までありました。
そして今、以前と比べたら外もだいぶ自由です。さらに8月末からはドイツもフランスをならって衛生パスなるものを導入予定です。パスはQRコード付きのアプリやカードなので、持って出かけるのも簡単。つまりワクチンが完了している人は、これがあったらそのまま施設などを利用できるというもの。もう罹った人やこども、ワクチンが打てない人は検査が無料。じゃあワクチンを拒否している人は?というと、今後は有料で、つまり自腹で事前に検査をしなくてはいけないのです。
これまで、多分日本と大きく違ったのは、買い物でも映画でも展覧会でも、予約に加えて陰性証明が必要だったことです。PCRより簡単に15分で結果が出る簡易検査場ができ、面倒でも検査がグッと身近になりました。廃車のバスを利用したり、テントや倉庫を使ったり、美容院の店先も。学校でも生徒が自分で定期的に検査できる便利さ。それも無料だったのですから当然国家支出もそれなりに。
ターゲットは、そんなワクチンを拒否した人たち。これまでSolidarität、連帯という言葉を何度聞いたことか。国は市民のためにできることをしてきました。ならば協力できることは自らすすんでやるべし。これを体制の脅しと感じるか、当然と感じるか。
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※ワクチン接種証明書。コロナに限らず生涯接種した記録をすべてここに。世界中に普及させたい。
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※先月は暴風雨で屋根が破損しながらも頑張ります。シュトゥットガルトオペラ。ちょっと前のポスターですが。
いま願いは空の路。ワクチンパスポートは吉と出るのか。飛行機でしか行けない日本から離れて、私はいまだユーラシア大陸に立っています。もう絶対に帰れないってわけではないけど、時間もお金も手間も容赦なく、まだまだ元通りとは程遠いのです。代わりと言ってはなんですが、明日からフランスへ出かけます。国境はすでに審査なしの完全スルーです。ああ、日本のワクチン状況が好転しますように。頼みますよ、ほんと。
シェリン(アーティスト)
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 [3] アプリレビュー  
 KEEP の人生、「あと5秒頑張れ!」     
ベルナール・スティグレールへのオマージュDedicated to Bernard Stiegler  
張小船 Boat ZHANG(ボートチャン) 
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私は、どれくらいの間かわからないが、自分がこの世界の抽象的な知覚者だと感じた。ーールイス・ボルヘス 
次のエクササイズ:デッド・バグ ーー KEEP(アプリ)
コロナの大流行が始まってから、私はどこにも行けなくて、日本人の彼氏の家で引きこもっていました。横長のパソコン画面と縦長のスマホ画面に囲まれて、1時間ごとに100gのアイスクリームを食べないではいられませんでした。アイスクリームじゃないと、チョコレートでした。チョコレートじゃないとチョコレートクッキーでした。ある時、彼女は氷砂糖のパックを全部食べてしまったこともありました。もちろん一度にではありませんが、一度にとも言えます。だから、あなたが婚姻届を出すときに「アイスクリームの日」を選んでもおかしくありません。少なくともその後は毎年その日、罪悪感なくアイスクリームをたくさん食べられるでしょうから。彼女がすぐに20キロも太ったのは当然の結果です。 
実はアイスよりももっとハマっていることがあります。家にこもって昼夜問わずYoutubeを見ているのです。時々古い(たまには新しい)「いい映画」をもう一遍見るのは、かつての自分の「観る」の基準を思い出させるためです。だけど、私はこの1年でYoutubeの短編動画をより多く見るようになりました。あなたもそうでしょうね。彼女もそうでしょうか。大勢がもう決まったのでしょうね。1.75倍速のオーディオ·ビジュアルの習慣、プログレスバーへの心理的依存、そして絶え間なく表示されるポップアップ広告への圧倒的な耐性—ヘルツォークの「いい映画」を見ていても、画面の隅々から急にポルノ広告がスクロールしてきました。
 毎日毎晩、痩せて健康になって進歩しようと誓っているのに、毎日毎晩、あなたは相変わらずゴミビデオとゴミフードの快適な慰めに陥っていました。本当の慰めにはならないので、いつももっともっと消費しなければならなくなりました。 感情や湿疹から逃れるために、パンデミックや分断、孤立などによる外国に取り残された(そして滞在して、怪しげな「新移民」になった)時のあらゆる不快感や葛藤から逃れるために。 
デブになってから1年近く経ったある日、彼女は「KEEP」という中国のフィットネスアプリをダウンロードしました。 グレーのアイコンをクリックすると、「自分を律することで自由になる」という大きな文字が現れ、彼女が理解する前に消えてしまい、次の広告に変わっていていました。それも「5-4-3-2-1」ですぐに消えてしまって、次へ。 自分に行動を促すために、サブスクリプション(定期課金)でKEEPの会員になりました。彼女は消費主義に反対しながらも、消費を続けていました(あーあ、申し訳ないです!なんてダメなんだろう私!)。 そして、私たちの人生にKEEPが登場したのです。 だんだんと離れられなくなりました。 ほら、オンラインミーティングのときも、黙々とKEEPのエクササイズをやっているじゃない、マルチタスクとマルチアイデンティティがオシャレとされる時代じゃない。KEEPは、「私のために作られた 」とされるワークアウトを私に押し付けてきた。「28日間カロリー激落ち」では、エクササイズをするだけでなく、食べたものも毎日報告しなければなりません。「バナナには必須ビタミンと食物繊維がたっぷり含まれていますので、あなたは素晴らしい選択をしました!」、あるいは「アイスクリームは糖分が多くて太りやすい!」とかのフィードバックをもらいました。はいはい、悪いアイスを直ちにやめよう! タバコやめた時にタバコ中毒をアイス中毒��交換したように、アイス中毒をKEEP中毒と交換しましょう。 現代の生活ではなにかに依存しがちですよね。何に中毒するかは問題ではなく、何でもいいですよねーータバコ、マリファナ、アルコール、宗教、恋愛、セックス、ポルノサイト、ユーチューブ、SNS、Amazon、アート、正義、フライドチキン、アイスクリーム…… そしてもちろんジョギングや色々なスポーツなど、「腹筋の縦線」とか、または、(聞いたことがないかもしれませんが)「桃尻」、「スワンネック」、「直角肩」、「少女の背中」、「石原さとみのようなフェイスライン」などです。こういう「自分を律する」趣味は、ポジティブで健康的で美しいものに見えますが、おそらく古典的依存症よりもさらに恐ろしい致命的依存症です。 
「KEEPは、2015年にスタートし、現在では3億人のユーザーを抱え、毎日600万人以上がKEEPで汗を流しており、フィットネス、ランニング、サイクリング、デートやダイエット指導、機材購入、スポーツ実況などの機能を網羅した中国最大のスポーツ向けソーシャルプラットフォームとなっています。」 
普段は、日本人の夫の邪魔にならないように、Airpods(ワイヤレスイヤフォン)を着けて、リビングでKEEPアプリで運動しています。そして、夫もAirPodsを使って、私の真向かいに、時には横に座り、彼のバーションのYouTube世界にハマっています。彼は私に妙な笑みを浮かべているように見えたが、すぐにそれが私に向かってではないことが分かりました。 
 「2020年初頭コロナの発生により、ステイホームが広がり、スポーツソーシャルアプリの利用者が急増しました。KEEPの新たな利用者が同時期に大幅に増加しました。KEEPは今年中に米国市場に上場を計画しており、約20億ドル以上をシリーズFラウンドで調達する見通しと発表した。」  「創業者兼CEOはZ世代です。」 
彼女は、自分がまだ心の中で少女だと思っていても、おばさんの年齢になっていることに気づきました。だって、今ある種のおばさんの活動にも参加しているじゃん。はい、「スクエアダンス」という中国のおばさんに人気の夕食後エクササイズです。ただ、彼女が参加しているのはオンラインの「スクエアダンス」で、何千万人もの人々が巨大なのパラレルワールドにいるのです。  それでは、さっそく音声コマンドに従って、人気商品「桃尻トレーニング」を体験してみましょう。  
「準備したの?行きますよ!」「最初のエクササイズ:クランチ。12レップスのセット、3-2-1、ゴー! 」
コーチはポニーテールのDカップの女の子で、背景を消したような空間にあるヨガマットの上にいます。その真っ白で「完璧」な空間は、現代美術展のホワイト・キューブのようでもあり、あるいは..... 
「1-2,呼吸のリズムに注意!3-4」
13分間のフルセットは13種類の動きの組み合わせであり、1つの動きは30秒以下で、それをランダムに何度も繰り返すように再編成しているので、13分間が断片的な時間の集合のようになっています。画面上部には全体のプログレスバーがあり、終わった動きが緑で、まだ残りの動きが灰色で表示されます。それぞれの動きは、より小さな動きにまた分割され、画面下部のプログレスバーでより詳細に表示されます。 なんて思いやりのある製品でしょう!人間の意志力の弱さをよく理解しています。
  「......5-6、上体を持ち上げるときに息を吐き、戻すときに息を吸う、8-9-10、腹筋の力を感じて、11-12」 「次の動き:デッドバグ、15レップ 、3-2-1、GO! 」 
音声コマンドが「休憩しよう!」と言ったら、スクリーンに10秒か20秒のカウントダウンが現れ、と共に「 いつまでたっても年とらず、いつも心じゃ泣いていて、さ ーー ジャック・ケルアック」という名言も引用されています。運動プログラムやトレーニング時間に応じて様々な名言がポップアップし、脂肪を燃やすために奮闘する私たちにタイムリーな自己感動を与えてくれました。世界中の文芸スターが集まって私たちに伴走するだけでなく、エクササイズの好きな中国人も世界中から集まって一緒にいます。画面の右下の小窓には、この時点で同時に練習している一人一人のアバターが点滅します。そのアバターは、現実に滝のように汗をかき、「桃尻」目指して一生懸命に頑張っている人々を表しています。彼女がちらっと見ると、今では420人が一緒にこの練習をしていました。ああ、「KEEP」の巨大な人海、一瞬でアイデンティティの感覚を見つけ、コミュニティも見つけました。あなたは、もう一人ではありません! (もっと不思議なのは、最近ではトレーニング画面に急に「弾幕」が表示されるようになりました。ヤバイ!何これ?!馬鹿じゃないの?どうやって体を回転させながら弾幕を送っているのか誰か教えてくれませんか?現実にあなたたちの体をローリングしながら、画面中にいる彼女たちの「弾幕」もローリングしています。)  
「次の動きはシチリアクランチ、15レップスのセット、3-2-1、ゴー!」「1-2、腰は床に着けたまま、3-4-5-6、腹筋を意識して行う、8-9、手を上げて! 10-11-12、素晴らしい!そうですよ!はい、キープして! 14-15」。  
こういう音声コマンドに添えられたワークアウト・ミュージックを想像してみてください。リズム感の強い音楽ないと、反復的で静かに単調な動きはすごく変でしょう。
「次の動き……」 「最後の動き, 持続は勝利です!」 「腰は床に!」「呼吸を止めないで!」「足先から頭までを一直線に!」 「腹筋を鋼のように硬くして!」 「お尻を締めて!"」「深呼吸を続けて!」 「胸を張って!”」「腹筋のストレッチを感じよう!」「素晴らしい!」「あと5秒頑張れ!5-4-3-2-1」 「...... おめでとうございます! よく頑張りました。『いいね』を獲得するために、KEEPのSNSに記録を忘れないで!」   
SNSに記録すると、利用者のアバターや半裸の体がフィットネス商品の広告と同じようにポップアップします。最初は、それが目にうるさいうえに、恥ずかしいので、慌ててすぐ閉じました。しかし、日に日に彼女は「1ヶ月で20kg痩せた」や、または「期間限定で半額」などのタイトルに引き込まれていきました。KEEPのSNS「 コミュニティ」には、あなたと同じような人たちがたくさんいます。彼女たちは彼女たちの太っていることを、痩せていることを「展示」していて、「フィット」になり、「可愛く」なり、「健康」になり、「成功」になり、「特別」になり(そしてインフルエンサーになり)たいという欲望を「展示」しています。あなたの「ハードダイエットの歴史」は、オンラインショッピングモールに高密度に並び、アルゴリズムで画面にスクロールする商品と大差ありません。  
「KEEPは、ビッグデータとAIの技術をスポーツに統合し、AIアルゴリズムの技術を用いてユーザーエクスペリエンスとスポーツニーズの精度を高めています。」 
私たちはもう、何も知らない、何もできない人間になってしまいました。私たちは「生活の知識(savoir vivre)」 ( ベルナール・スティグレール)を喪失しています。体は自分でどう動けばいいのかわからなくなったので、小さい動きに分解したエクササイズの音声コンマンドに依存しています。休むことも忘れてしまって、指示されなければ休まない。自分で道を選んだり、迷ったりすることをできなくなって、ただ位置情報とナビゲーションに従っています。セックスも、実際の人間とのセックスも忘れて、絶えず更新されるポルノサイトやアダルトビデオじゃないとできません。普段の生活にも、なんでもグーグルで、「ライフティップス(生活の知恵)」が欠かせません。世界の料理、ベランダガーデニング、おしゃれママになる方法、バレない二重の作り方、ミニマリストのスタイリング、鉄とテフロンのフライパンの違い、姑と嫁との付き合い方、マルクスやチョギャム・トゥルンパ(Chögyam Trungpa、チベット仏教の行者で学者)のコアアイデア、米中貿易戦争、アメリカ選挙、どうやって「アジア人への差別に反対する」かやどうやって「パレスチナを応援する」かなど、私たちは様々な人気のユーチューバーをフォローして、そういうことを学んでいます。また勉強すべきなのは、やぱり新疆綿への反対或いは支持、H&Mへの支持或いは反対、氷河の融解、地球の温暖化、世界の終わりをどのようにサバイバルするとか、目前に迫っている不老不死の技術、そして新型コロナウイルスとその連続的な変異、それがどうやって人間の世界をめちゃくちゃにしてしまったのか。
ある日、野菜作りを学んでいた彼女は、Googleの画像ではなく、偶然にも現実に花が咲いているネギを初めて見ました。彼女はまる一日、そのことに驚いていました。葱はもはや調味料としてではなく、生きている主体(Subjectivity)である「葱」として、あなたの目に映りました。大葱(ネギ)の上に大きな白い花のボールが現れ、その隣に小葱(チャイブ)が夢のようなピンクパープルの花を咲かせていました。
 KEEPアプリの記録によると、彼女が最もよく運動をする時間は、オンラインの仲間がほとんどいない真夜中ですね。おそらく、彼女はやはり孤独が好きなのでしょう。あるいは、ただいつも先延ばしにする癖があるのかもしれません。今日のタスクを今日中に終わらせるべきなので、どうしても夜の12時に間に合わない場合、彼女はあるトリックを「発明」しました。それは、スマホを東京時間から上海時間に変えて、つまり1時間遅らせることで、その日のうちにタスクを終えられるというというトリックですね。これは絶対にカンニングではありませんよね。彼女はそういう方法で簡単に時間を打ち負かしました。すごくない?! SF的、哲学的ではないだろうか。もしシンデレラや謝徳慶(Tehching Hsieh、アーティスト)も、意のままに時間を早くしたり遅くしたり調整できたらどうだろう?......時間が23:01から22:01になったことで、彼女は嬉しそうにKEEPをクリックし、再びその指示に従う気になった...... (体に従うのではなく)ただ指示に従って、ただフォローして、フローして、波に乗り、流れに身を任せていました。一つのタスクを完成して、一つのチェックをしますチェックすることで少し満足感が得られるが、アイスクリームを食べたりするのと同じように、この満足度を維持するためにはもっともっとチェックし続ける必要があるようです。 
しかし、少なくとも今のところ、巨大な失望感はまだ襲ってきていません。KEEPは、今でも彼女に効果がありますね。それでは、どうぞ、続けてみましょう。 ある日、あなたも私もそして彼女も、飽きてしまうでしょう。 いえ、その日はもう、来ないかもしれません。 
原文:中国語 日本語翻訳:自分、DeepL 日本語校正:西岡一正
張小船 Boat ZHANG(ボートチャン) 
1983 年中国生まれ。ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ卒業。2020年、上海から東京に移住。これまで中国、日本、イギリス、キューバなどの展覧会に参加。グッドアーティスト。アーティストグループ「row&row」、「•• PROPAGANDA DEPARTMENT」、「チームやめよう」のメンバーとしても活動してる。または、コーヒー費を稼ぐために他の名前で文章も書いてる。 
※このテキストは、2021年7月ドイツ・ケルンのAkademie Der Kuenste Der Weltでの展覧会「Hands」にて、アーティストグループ••PROPAGANDA DEPARTMENTが出版した「Etc., Etc., Catalogue No.005 ー Unintelligent Work」に中国語と英語で初掲載されました。
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[4]編集後記
緊急事態宣言下ですが、Reborn-Art Festivalひっそり開催中です。すいてます。見やすいです。展示すごくいいです。海辺のダイニングでランチも最高です。ぜひ来てくださいとは言いづらいけど、お誘いしませんけど、9月26日までやってる予定です。(さかぐ)
https://www.reborn-art-fes.jp
予期せぬ自然災害に見舞われた日本の夏でした。台風、豪雨、土砂崩れなど、被災された皆様が一日でも早く笑顔に戻れますよう。またオリンピック後、新型コロナウィルス感染症が急減に全国蔓延しているのは明らかに人災です。家族や親しい友人を失くされた方に、心よりお悔やみ申し上げます。私たちの生活はこれからどうなるか見通しも不透明。人命より面子を優先する為政者には「なめたらあかんぜよ」と。そして入管よ!ただではすまんよ。「この桜吹雪とお天道様がお見通しだわい」(金さんより)
(さぼ)
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mlvoidchicken · 3 years
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VOID Chicken Nuggets 2021年4月25日号
C o n t e n t s 
[1]  「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」展―コロナ禍の舞台裏―    by  黒岩朋子
[2]  追悼:キム・ギドク ──〝性愛と暴力〟に妄執し〝性愛と暴力〟で名を成し、且つ〝性愛と暴力〟で失墜した、異才の映画監督 by 木村重樹
[3]   [3]  ドイツで暮らすコロナの時間 ー 映画館で逢いましょう byシェリン
[4]   編集後記
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[1] 「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」展―コロナ禍の舞台裏―
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展示の準備が難航するときには「開かない展覧会はない!」と自己暗示をかけたりするのだが、昨年11月から今年の2月にかけて話題をさらった東京都現代美術館の石岡瑛子展をコーディネートしたときは、「本当に開くのか?」の連続であった。作品借用や権利関係が一筋縄ではいかなかったうえに、パンデミックの影響が直撃。開催は半年延期されて巡回の話が立ち消えた。似たようなことがほかでも起きたであろう、コロナ禍での制作現場。本展の内容とその舞台裏をあわせて紹介したい。
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石岡瑛子(1938-2012)は、1966年の資生堂サマーキャンペーンのポスターで前田美波里を起用、日本人の美の価値観に揺さぶりをかけたことで知られるアートディレクター、デザイナーだ。独立後は大阪万博のポスターや黎明期のパルコや角川のグラフィックデザインほか、パッケージデザイン、装丁なども手掛けた。多くのクライアントのもとで、コピーライターや写真家、デザイナーとコラボレーレションしながら、広告のなかで時代のありようを鋭く提示、数々のヒットを放つ。1980年末には、自作を収めた作品集『EIKO by EIKO』を履歴書がわりにニューヨークに移住。以後、「オリジナリティ、タイムレス、レボルーショナリ―」を信条にハリウッド映画や舞台、音楽の場でさらなる表現の場を広げた。その活動は、マイルス・デイビスの「TUTU」のレコードジャケットでグラミー賞、フランシス・フォード・コッポラの映画「ドラキュラ」でアカデミー賞の衣装部門を受賞するなど世界な評価を得た。発表の舞台はサーカス、オペラ、オリンピックと拡張しつづけ、作品も平面から衣装へと変化。病で倒れなければ、いまでも現役だったであろう。2012年の映画「白雪姫と鏡の女王」の衣装で2度目のアカデミー候補になるが、その報せを知ることなく急逝した。
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同館の藪前知子キュレーターが石岡の多岐にわたるプロジェクトを国内外から集結させ再評価を試みた本展は、幅広い客層に熱列に迎え入れられた。副題「血が、汗が、涙がデザインできるか」は、石岡の講演会でのセリフだ。石岡デザインのキーカラーとなる赤を多用した会場は、実際の衣装や映像のほか制作プランやドローイング、校正紙を含む膨大な関連資料をプロジェクト毎に紹介。今みても斬新な渡米前のグラフィックデザイン群を「Timeless:時代をデザインする」、コッポラ、レニ・リーフェンシュタール、ポール・シュレーダなど、名だたるクリエーターと協働することを恐れずに生み出されたプロジェクトを「Fearless:出会いをデザインする」、サーカスやオリンピック、オペラ、コンサート、映画などの領域横断的な衣装デザインを「Borderless:未知をデザインする」に分け、空間全体を石岡のインタビュー音声がつなぐ。展示最後には、十代後半の石岡による自分の生い立ちと将来の夢を描いた手製の絵本『えこの一代記』と王子に頼らず自力で道を開く現代版白雪姫の遺作映画が、石岡の有言実行の創作人生と見事に重なりあう様を提示した。
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渡米前のグラフィックデザインをのぞいて作品のほとんどは海外機関が所蔵のため、本展では各地の感染事情に左右された。私は、海外との仲介役だったのだが、各国で始まった昨年3月から夏にかけては、交渉機能が完全にダウンした。なかには、シルク・ドゥ・ソレイユのようにコロナ禍で倒産したところもある。深夜に、担当から「レイオフされたので、さようなら」とメールが来たときは、慌てて連絡して関係をつなぎとめた。変わった担当は3人。ロックダウンと民事再生中のなか、4人目の担当から行方不明とされたヴァレカイの衣装を発見したと聞いたときは、皆で奇跡!と喜んだ。開催まで一か月を切っていた。
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展示現場に立ち会う借用先のクーリエも当然ながら来日できず、現場では映像資料を何度も再生して専門の衣装チームに見せて着付けてもらった。海外の借用先では通常起きないような珍事も起きた。リモートのためか担当に連絡が行き届いておらず、サイズを間違えられたり、衣装のパーツが欠品だったり、別の衣装が届いたり。すべての展示品を搬入し終えたのはオープン前日の夕刻であった。
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ロックダウンは、意外な方面でも余波を及ぼした。石岡は出版物に使ったプロジェクト毎の写真を大量に残していたが、コロナ禍のためポジからのデーター変換が現地で一部叶わなかった。米国のアーカイブが意外とアナログのままだと知ると同時に石岡研究はこれからということも感じさせた。
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コロナ以外では、馴染みのない、ハリウッド事情に振り回された。監督や衣装デザイナーよりも配給会社に権利があり、何事にも許諾が必要なのだ。映画「セル」の上映などは、クリップ映像に登場する役者全員のサイン入りの承諾書が事前に必要で、皆で該当スターのエージェント探しから始めたりもした。なかなか辿り着けず、ヴィンセント・ドノフリオには、彼のツイッターへDMしたほど(もちろん返事はなかったが)、思いつく限りの方法で連絡を試みた。開催直前にジェニファー・ロペスほかのレターが揃い滑り込みで配給会社に申請した。
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国内でも各方面への連絡が必要で、遺族からの許諾がむずかしかった日本未公開の映画や米ウォルト・ディズニー本社とひと悶着あったポスターの扱いなどにキュレーターが奔走した。圧倒的な作品数とイメージは、このように絡まった許諾の糸をほぐす地道な作業の積み重ねによって展示にいたった。
また、作業の過程で、石岡の当時のコラボレーターたちから届く敬愛に満ちたメールには心打たれた。彼女とのパーソナルな想い出が綴られた長文のメールからは、巷のイメージとは異なる石岡瑛子像をみた思いだった。
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ほかもいろいろあり話は尽きないが、オープンできたのは、関係者一同で石岡展を実現させようとしたからにならない。国内はもとより、海外の借用先などは、通常業務が半年近くも停滞するなかで日本便を仕立ててくれた。そしてなにより、展示が延期しても借用が危ぶまれても本展を諦めなかったキュレーターがいたからこそ実現した展示であったことも添えておきたい。
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最後に一つ朗報がある。同館のスピンオフ企画として、本展のアーカイブが近々公開となるそうだ。そこでは、360度バーチャル・リアリティー(VR)により、各展示室を細部に至るまで好きなだけ堪能できる。本展を見逃した方、もう一度観たかった方、そして本稿の読者のみなさま。公開の暁には、バーチャルでも故人の熱量がつたわる石岡瑛子展。オンラインでもぜひアクセスしてみてほしい。
黒岩朋子 (キュレーター 。コーディネーター。東京在住。 東京都現代美術館「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」展のコーディネーター。 森美術館学芸部勤務を経て、2009-18年までインドでくらす。在印中は現地から現代美術情報を美術雑誌に紹介するほか、日本の国際展や展覧会の現地コーディネイトおよび調査に携わる。主な活動に、第5回福岡アジア美術トリエンナーレ2014協力キュレーター(インド)、小沢剛「The Return of K.T.O.」(2017)の現地制作コーディネーター(コルカタ)など。 2022年開催の国際芸術祭「あいち2022」のコーディネーター。)
全写真クレジット:「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」展示風景、東京都現代美術館、 2020年 Photo: Kenji Morita Installation view of  “Eiko Ishioka: Blood, Sweat, and Tears—A Life of Design” 2020, Museum of Contemporary Art Tokyo Photo: Kenji Morita
~ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ [2]  追悼:キム・ギドク ──〝性愛と暴力〟に妄執し〝性愛と暴力〟で名を成し、且つ〝性愛と暴力〟で失墜した、異才の映画監督 2020���12月11日、韓国人映画監督キム・ギドクの訃報が世界を駆け巡った。やんごとなき理由で祖国・韓国の映画界と断絶し、ラトビアへの移住を計画しての来訪中、新型コロナウイルスに感染して、あえなく絶命。その唐突すぎる顛末は、生前も常に絶えざる毀誉褒貶の渦中にいたキム・ギドク自身の生涯が〝見えざる力〟によって強制終了させられたかのような印象を……関係諸氏に与えた。 海兵隊出身ながら文化芸術に興味津々で、絵画の勉強のために1990年単身渡仏(!)。20世紀も終わり近くになって「画家になりたくてパリに(私費)留学」なんて行動からして、若干ズレてるような気もしないでも……とはいえ、尋常ならぬ〝表現衝動〟を抱えていたことは間違いなさそうだ。そんなキム・ギドクは、留学先のパリで偶々観た『羊たちの沈黙』と『ポンヌフの恋人』に感銘を受けて映像表現を志し、韓国帰国後、シナリオ作家としてのキャリアを積み始めたかと思いきや、1996年に自主制作低予算映画『鰐〜ワニ〜』で映画監督デビュー。 それから10年もたたないゼロ年代半ば、キム・ギドクがメガホンを取った映画作品は、ヴェネツィア、ベルリン、カンヌ等々の国際映画祭で続々と上映され、名だたる賞を受賞。パク・チャヌクやポン・ジュノなど、時を前後して登場した現代韓国映画の名匠たちの仲間入りを果たし……いや、最大瞬間風速的には彼ら以上の勢いで、国際的映画監督の地位にのぼりつめた。 その後も年1〜2本のハイペースで、彼独特の(アクの強い)映画作品を量産。ただし、そんな「黄金時代」はそう長くは続かなかった。2008年の『悲夢』撮影中の事故を契機にスランプに陥り「映画が撮れなく」なったり、果てはいくつかのスキャンダルに見舞われ、満足な活動が国内でできなかった時期も短くはなかった。 とくに2017〜18年、複数の女優から(キャスティングや撮影の過程で)「キム・ギドクと彼の相棒俳優から、セクハラや性的暴行を繰り返し受けた」という告発と一連の訴訟を受けたことで、晩年の彼は韓国映画界から半ば「干された」状態だった(本稿の冒頭で「やんごとなき理由で祖国・韓国の映画界と断絶」と記したのは、そんな事情からだった)。
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いわゆる「#MeToo 運動」の世界同時な隆盛によって足元をすくわれてしまったキム・ギドク。いくつかの訴訟については、すでに韓国の裁判所が判決を下しているが、いずれも被告側敗訴という結論であり(さらに控訴された案件もあるにはあったが)最終的には被告人が急逝したこともあり、今後新たな事実が掘り起こされ、彼の名誉が復活するという事態も……どうも、なさそうだ。
翻って、そうした「セクハラ暴行騒動」がキム・ギドクに巻き起こった際、長きに渡って彼の映画を繰り返し鑑賞してきた〝キム・ギドク・ファン〟の一人として思ったことは「ああ、やっぱり……」みたいな感想だった(あくまでもこれは、彼の〝作品〟と〝作風〟から連想される憶測や所感にすぎないのだが)。 先に「アクの強い」映画作品と称したように……キム・ギドクの映画には、必ずといっていいほど、過剰なまでの「暴力衝動」や「性衝動」の発露が認められる。同時にそれらは、過剰なまでの「痛み」として、観る者に恐怖と衝撃を与え……どころか、そうした一連のエクストリームな苦痛や衝撃こそが、キム・ギドク映画の醍醐味であったことは、否定すべくもない事実だ。ただし、創作や寓話としての「暴力」や「レイプ」と現実世界でのそれらは、当然のごとく一線が引かれなくてはならず、その区別がつかなければ、単なる〝非理性的な存在〟だ。「作品だから」「表現だから」という方便は、もはや許されるはずもない。 試みに、彼の映画監督デビュー作『鰐〜ワニ〜』の筋書きを振り返ってみると、「(ソウル市内を流れる)漢江に投身自殺した者の遺体から金品を盗み取って生活していた、卑劣な浮浪者青年が、自殺未遂に終わった女性にレイプした後、手なづけ、同じような境遇の少年や老人と擬似家族を形成する」みたいなあらすじだった。 かたや、ベルリン映画祭のコンペにもノミネートされた、2002年の出世作『悪い男』においては、「街中を歩く女子大生に一目惚れした(もの言わぬ)ヤクザの男が、彼女を罠に陥れて売春街に売り飛ばし、風俗嬢として客に奉仕する彼女の姿を、隣部屋から覗き続ける」といったもの。 いずれのストーリーも、現実社会でやらかしたら即逮捕ものの刑事犯罪行為だが、映画表現としての巧みさ(監督の的確な演出力と、キャストやスタッフ陣の創意工夫)によって「極端だけど滋味深くもある物語」としての味わいが熟成され、支持層を獲得した。 だがしかし、『鰐〜ワニ〜』の浮浪者役を、そして『悪い男』での無口なヤクザ役を演じた(キム・ギドク映画の常連)男優チョ・ジェヒョンが「監督とつるんで女優たちに性行為を強要していた」と告発され、糾弾されてしまうと、これらの映画をニュートラルな視点で観るのが難しくなってくる。
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キム・ギドク作品には、類似するモチーフや設定が(作品の垣根を越えて)しばしば姿を現わした。そこには、混血児やいじめられっ子や落ちこぼれ、障害者に妊婦、やくざや娼婦といった「はみ出し者」たちの系譜が、炙り出されてもくる。 こうしたドロップアウトやアウトサイダーへの〝優しいまなざし〟の一方、いわゆる彼の「女性観」を突き詰めてゆくと、決してそれは先進的なものではなく、ある意味保守的で(非モテ系独特の)こじれた感性が見透かされてくる。結果、作中の理想的女性像もまた「(非モテ系男性に都合のいい)娼婦」と「(ダメなオイラを無条件に包んでくれる)母的な聖性」に収斂してしまうというのは……何とも惜しまれる事態だ。 キム・ギドク作品の妙味や独特さが(旧態依然とした)韓国社会で共有されていた、所謂ホモ・ソーシャルやミソジニーの裏返しとしての〝エクストリーム〟表現だったとすれば、それらがギリギリ容認され、面白がられていた20世紀末〜21世紀初頭と約20年後の現在とでは、社会や映画を巡る状況も、あまりにも違う。 『はちどり』(2018年、キム・ボラ監督)や『82年生まれ、キム・ジヨン』(2020年、キム・ドヨン監督)といったフェミニズム視線の韓国映画の傑作が立て続けに公開されたこの数年のうちに、かたやキム・ギドクが迷走を続け、果ては異邦の地で客死を遂げてしまったことが、何かの〝符丁〟のようにも思えてしまう。それは、考えすぎ、穿ちすぎというものだろうか? 木村重樹(編集者、文筆業) https://twitter.com/kimurashigekix
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[3]  ドイツで暮らすコロナの時間 ー 映画館で逢いましょう  相変わらず閉まっています、あれこれ。そんな最中の2021年3月、一度ロックダウンが緩くなった隙に現代美術館、シャウヴェルク ジンデルフィンゲン(Schauwerk Sindelfingen)へ行ってきました。ああ、やっぱり対面に勝るものなしと作品の周りの空気も味わいながら。この一年、文化施設の運営は耐え忍びが続いてどこもタフそうです。そもそも美術館なら人の行動をコントロールしやすい気もします。ただでさえ何もかもが沈みがちな今、ここまで閉め出してしまう必要があるのだろうかとどこかモヤモヤ。ただモヤモヤだけど先には何かあるに違いない、そんな前向きな勢いもまだまだ感じられました。  それよりも心配なのは、コロナ前から窮地に立たされている街の映画館。規制がゆるくなれば人数制限やパーテーションといった工夫を打ち出していたけれど、ほぼ閉められたままです。ちなみにシュトゥットガルトはトーキー以前から映画が大盛況でした。きっと「月世界旅行」や「嘆きの天使」なんぞも上映されたのでしょう。それもやがてシネコンにとって変わったのはいずこも同じで。  そして先の大晦日、あと少しで100周年だった映画館メトロポールが幕を下ろしました。街の顔だった映画館がふっと姿を消してしまうのはあまりに切ない。商業的映画に加えて、毎年春に開催されるシュトゥットガルト国際アニメーション映画祭の上映もあり、2年前には映像作家マックス ハトラー(Max Hattler)や海外の美大(中には東京藝術大学も)の実験的な作品などもここで観たものです。何にせよ長年の経営難だったとこ���にコロナの追い討ちときて、文化遺産としての支援を求める声が多く上がったものの、やはり決定を翻すことはできませんでした。
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在りし日のMetropol。19世紀には何と駅舎だった。隣には一押しのジェラートショップが。映画館なき後は何が入るのだろう。
 ちなみにシュトゥットガルト、ハリウッド映画もドイツ語吹き替えが主流です。オリジナルの英語は封切りかレイトショーばかりで字幕さえないんですから。私の語学学校の友達たちはそんな理由でここの映画館に行ったことがない。それでも映画が観たいとくれば流れはNetflixです。日頃ただでさえ言葉に苦労している身としては、母国語が使えるってだけでも嬉しいし。ちなみに私は例の「愛の不時着」ブームをきっかけにし、今では家族でがっつり元を取っています。何しろ規制で夜21時(4月の今は20時過ぎでもまだ明るい)には自宅にいなくてはいけない今、ストリーミングのメリットを実感しています。だけどこの状況に慣れすぎて、ますます大勢の人たちが家だとラクだし出かける意味なくない?と、自ら宅映画のみに流れてしまったら困る。いつでもどこでも映画が観られるのは素晴らしいのだけど、映画に行くってのはそうじゃない。  映画館をやけに身贔屓するのはこどもの頃のワクワクする非日常感、その鮮明な記憶が映画館だったからに違いあり���せん。特に今はなき京橋のテアトル東京や日比谷の日劇の大スクリーンにはいずれも刺繍織だったかたっぷり重そうな緞帳が下がり、大人たちがパンフレットを片手にざわついていたり、ちょっと緊張するくらいの雰囲気がありました。加えて帰り際の銀座の不二家レストランの思い出も。言うまでもなく、美術館に行くことが作品を中心に建築物、ミュージアムショップ、その他もろもろが体感のひとまとまりとして記憶されるのと同じです。このメトロポールも、様式美の外観、左右対象の階段、大理石のディテールと高揚感を演出してくれました。出向くことで一呼吸が整えられて、作品の見え方も思い入れも変わるという当たり前のことを今また考えます。  もちろん映画館とストリーミング、どっちもよい。カウンターで食べるお寿司と出前のお寿司ではその目的が違うように、どちらも選んで映画全体が元気でいてくれたらよい。でもやっぱり、たとえ高級でなくてもカウンターで食べるお寿司のようなよさを知っていることは大事だと思うのです。特に大人になる前に。  メトロポールのようなアイコン的映画館だけでなく、地味で希少なアート系映画館はいうに及ばず、大規模なシネコンにしても厳しい状況は続きそうです。支える形はいろいろあれど、基本はやはり足を運ぶこと。私の語学力ではネットのネタバレ検索であらすじの反芻が免れませんが、上映が再開されたらまた外国語で映画を観るという闘いに挑む意気込みです。ちなみにNetflix、映画一つ観ると興味深い作品がどんどんリストにお勧めされてしまい、せっかくの「愛の不時着」にはいまだに手をつけられていません。 シェリン(アーティスト)
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シュトゥットガルト一等地にある映画館GLORIA。こちらは会社が土地オーナーなのでまだ大丈夫。
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[4] 編集後記
三度の緊急事態宣言でましたが、今日は遠藤ミチロウさんの3回忌です。インタビュー読み返してる日曜日。すごい。(さかぐ)
・お忙しいなかご執筆等ご協力いただいた皆様、ありがとうございました。(さぼ)
遠藤ミチロウインタビュー(2019.12.31公開)
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