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#万華鏡紋様
bingata-nawachou · 1 year
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昨日の #紅型ナワチョウきものコーディネート ・ ・ 昨日は 最高気温25℃🌞 湿度も少し高めで 初夏のような一日でした🌞💦 ・ ・ ♦︎ #着物 ♦︎ #coten さまの @coten_official #艶着尺 を初おろし✨ 絹に漆でコーティングされた 和紙が織り込まれているという 特殊な着尺地に一目惚れ❤️ お単衣仕立てにしました🌞 #初夏🌞の体感には もうピッタリでした✨ ・ ♦︎ #紅型ナワチョウ帯 ♦ 最近、出番多めな👀 #月桃紋様 の帯 #博多織 の地紋に 浮き上がる月桃の 種と蕾と花✨ 最近の暖かさからか 開花した月桃の花と共に (pic.8) ・ ♦︎ #帯揚げ お着物と同じく #coten さまの @coten_official #マトリョーシカ の #地紋 浮き上がる帯揚げ🪆 グリーン系で合わせられる しあわせ✨←緑ラバー🙌 ・ ♦︎ #帯締め ♦︎ こちらも初おろし!! #ゑり正 さまの #SHARK 小紋 の #丸ぐけ の帯締め🦈 先日お客様がされていて 🦈と目が合ってしまいました👀 丸ぐけの帯締めは お初なのですが ………カワイイデス🦈 ・ ♦︎ #長襦袢 & #半衿 ♦︎ @petacofuji さんの #ジパン 日和🌞 ・ #刺繍半襟 は わたしの #万華鏡紋様 を 刺繍いただいた コラボレーション🙌 ・ 袖口から覗く ブルーの更紗紋様と ビーズが可愛くてですね😆 ・ ♦︎ #髪飾り ♦︎ @harukaakahane の 表情豊かなビーズの髪飾り❤️ ・ ♦︎ #下駄 ♦︎ #辻屋本店 さまと #紅型ナワチョウ鼻緒 コラボレーションの下駄 @tsujiyahonten ・ ・ #地紋紋様愛してるコーデ と題しちゃった #きものコーディネート 細かな地紋や紋様の重なりが 呼応し合う しあわせコーデ❤️ この着尺の艶は 動画でないと〜と この日のニヤニヤpostを 動画におさめました👀 ・ ・ #紅型 #縄トモコ #きものコーディネート #キモノ #着物 #kimono https://www.instagram.com/p/Coo4_MyrWDs/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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ari0921 · 4 months
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和五年(2023)12月27日(水曜日)参
    通巻第8070号
 AIは喜怒哀楽を表現できない。人間の霊的な精神の営為を超えることはない
  文学の名作は豊かな情感と創造性の霊感がつくりだしたのだ
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 わずか五七五の十七文字で、すべてを印象的に表現できる芸術が俳句である。三十一文字に表すのが和歌である。文学の極地といってよい。
どんな新聞や雑誌にも俳句と和歌の欄があり、多くの読者を引きつけている。その魅力の源泉に、私たちはAI時代の創作のあり方を見いだせるのではないか。
 「荒海や佐渡によこたう天の川」、「夏草や強者どもが夢の跡」、「無残やな甲の下の蟋蟀」、「旅に病で夢は枯野をかけ巡る」。。。。。
 このような芭蕉の俳句を、AIは真似事は出来るだろうが、人の心を打つ名句をひねり出すとは考えにくい。和歌もそうだろう。
 『春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣干すてふ 天香具山』(持統天皇)
 皇族から庶民に至るまで日本人は深い味わいが籠もる歌を詠んだ。歌の伝統はすでにスサノオの出雲八重垣にはじまり、ヤマトタケルの「まほろば」へとうたいつがれた。
 しかし人工知能(AI)の開発を米国と凌ぎを削る中国で、ついにAIが書いたSF小説が文学賞を受賞した。衝撃に近いニュースである。
 生成AIで対話を繰り返し、たったの3時間で作品が完成したと『武漢晩報』(12月26日)が報じた。この作品は『機憶(機械の記憶)の地』と題され、実験の失敗で家族の記憶を失った神経工学の専門家が、AIとともに仮想空間「メタバース」を旅して自らの記憶を取り戻そうとする短編。作者は清華大でAIを研究する沈陽教授である。生成AIと66回の対話を重ね、沈教授はこの作品を「江蘇省青年SF作品大賞」に応募した。AIが生成した作品であることを予め知らされていたのは選考委員6人のうち1人だけで、委員3人がこの作品を推薦し
「2等賞」受賞となったとか。
 きっと近年中に芥川賞、直木賞、谷崎賞、川端賞のほかに文学界新人賞、群像賞など新人が応募できる文学賞は中止することになるのでは? 考えようによっては、それは恐るべき時代ではないのか。
 文学の名作は最初の一行が作家の精神の凝縮として呻吟から産まれるのである。
 紫式部『源氏物語』の有名な書き出しはこうである。
「いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり」
 ライバルは清少納言だった。「春は曙、やうやう白く成り行く山際すこし明かりて、紫立ちたる雲の細くたなびきたる」(清少納言『『枕草子』』
 「かくありし時すぎて、世の中にいとものはかなく、とにもかくにもつかで、世に経るひとありけり」(道綱母『蜻蛉日記』)
 額田女王の和歌の代表作とされるのは、愛媛の港で白村江へ向かおうとする船団の情景を齊明天王の心情に託して詠んだ。
「熟田津に 船乗りせむと月待てば 潮もかなひぬ今は漕こぎ出いでな」(『万葉集』)。
 「昔、男初冠して、平城の京春日の郷に、しるよしして、狩りにいにけり。その里に、いとなまめいたる女はら���ら住みけり。」(『伊勢物語』)
 ▼中世の日本人はかくも情緒にみちていた
 「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶ泡沫(うたかた)はかつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」(『方丈記』)
 『平家物語』の書き出しは誰もが知っている。
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。 沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。 奢れる人も久からず、ただ春の夜の夢のごとし。 猛き者も遂にはほろびぬ、 偏(ひとへ)に風の前の塵におなじ」。
 『太平記』の書き出しは「蒙(もう)竊(ひそ)かに古今の変化を探つて、安危の所由を察(み)るに、覆つて外(ほか)なきは天の徳なり」(『太平記』兵藤祐己校注、岩波文庫版)
「つれづれなるままに、日くらし硯にむかひて、心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ」(『徒然草』)
 古代から平安時代まで日本の文学は無常観を基盤としている。
 江戸時代になると、文章が多彩に変わる。
 井原西鶴の『好色一代男』の書き出しは「「本��遊女のはじまり、江州の朝妻、播州の室津より事起こりて、いま国々になりぬ」
 上田秋成の『雨月物語』の書き出しはこうだ。
「あふ坂の関守にゆるされてより、秋こし山の黄葉(もみぢ)見過しがたく、浜千鳥の跡ふみつくる鳴海がた、不尽(ふじ)の高嶺の煙、浮島がはら、清見が関、大磯小いその浦々」。
 近代文学は文体がかわって合理性を帯びてくる。
「木曽路はすべて山の中である」(島崎藤村『夜明け前』)
「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜ぬかした事がある」(夏目漱石『坊っちゃん』)
「石炭をば早はや積み果てつ。中等室の卓つくゑのほとりはいと静にて、熾熱燈の光の晴れがましきも徒らなり。今宵は夜毎にこゝに集ひ来る骨牌カルタ仲間もホテルに宿りて、舟に残れるは余一人ひとりのみなれば」(森鴎外『舞姫』)。
 描写は絵画的になり実生活の情緒が溢れる。
「国境の長いトンネルをぬけると雪国だった」(川端康成『雪国』)
 谷崎潤一郎『細雪』の書き出しは写実的になる。
「『こいさん、頼むわ』。鏡の中で、廊下からうしろへ這入はいって来た妙子を見ると、自分で襟えりを塗りかけていた刷毛はけを渡して、其方は見ずに、眼の前に映っている長襦袢姿の、抜き衣紋の顔を他人の顔のように見据みすえながら、『雪子ちゃん下で何してる』と、幸子はきいた」。
 「或春の日暮れです。唐の都洛陽の西の門の下に、ばんやり空を仰いでいる、一人の若者がありました」(芥川龍之介『杜子春』)
 ▼戦後文学はかなり変質を遂げたが。。。
戦後文学はそれぞれが独自の文体を発揮し始めた。
 「朝、食堂でスウプをひとさじ吸って、お母様が『あ』と幽(かす)かな声をお挙げになった」(太宰治『斜陽』)
 「その頃も旅をしていた。ある国を出て、別の国に入り、そこの首府の学生町の安い旅館で寝たり起きたりして私はその日その日をすごしていた」(開高健『夏の闇』)
 「雪後庵は起伏の多い小石川の高台にあって、幸いに戦災を免れた」(三島由紀夫『宴のあと』)
和歌もかなりの変質を遂げた。
正統派の辞世は
「益荒男が 手挟む太刀の鞘鳴りに 幾とせ耐えて今日の初霜」(三島由紀夫)
「散るをいとふ 世にも人にも さきがけて 散るこそ花と 吹く小夜嵐」(同)
 サラダ記念日などのような前衛は例外としても、たとえば寺山修司の和歌は
「マッチ擦る つかのま海に霧ふかし 身捨つるほどの 祖国はありや。」
 わずか三十一文字のなかで総てが凝縮されている。そこから想像が拡がっていく。
 こうした絶望、空虚、無常を表す人間の微細な感情は、喜怒哀楽のない機械が想像出来るとはとうてい考えられないのである。
AIは人間の霊感、霊的な精神の営みをこえることはない。
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kachoushi · 7 months
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各地句会報
花鳥誌 令和5年10月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和5年7月1日 零の会 坊城俊樹選 特選句
あぢさいや錆ゆくときもずぶ濡れて 光子 雨に白く汚されてゐる木下闇 緋路 サイレンも街騒もまだ梅雨の底 久 鉄骨が叩く鉄骨濃紫陽花 緋路 見覚えのビルはもう無くサルビアに いづみ 夏草のつぶやくやうな雨であり 和子 鉄条網梅雨の蝶さへ寄せつけず 同 支へ切れぬ天へ石柱梅雨深し 昌文 飛石をぬらと光らせ五月雨 久 その人は梅雨に沈みながら来る 順子 五月闇不穏な波の来るといふ はるか
岡田順子選 特選句
列車音遠ざかるとき浜万年青 はるか 庭石は梅雨のものとて黄泉のもの 俊樹 サイレンも街騒もまだ梅雨の底 久 鉄骨が叩く鉄骨濃紫陽花 緋路 雨の日の桔􄼷のうしろすがたかな 美紀 萱草のそびらに恩賜なりし闇 光子 潮入りのみづは昔や通し鴨 いづみ 支へ切れぬ天へ石柱梅雨深し 昌文 瞬ける雨粒蜘蛛の囲の銀河 緋路 雨に白く汚されてゐる木下闇 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年7月1日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
鹿の子啼く隠れの島に入日濃く 修二 たはむれの莨にむせし桜桃忌 久美子 寂しさを下から崩すかき氷 朝子 茉莉花の別れ際こそ濃く匂ふ 美穂 不如帰久女の夢と虚子の夢 修二 首の無きマネキン五体暑き日に 愛 蟬生る瓦礫の闇の深きより かおり ひまはりの花と育ちて銃を手に 朝子 バレエ団の窓へブーゲンビリア満つ 愛 蔓薔薇をアーチに育て隠居せる 光子 うつし世のものみな歪み金魚玉 かおり バス停のバスまで覆ふ夏木かな 勝利 梅雨空にジャングルジムがひつそりと 修二 襖絵の孔雀の吐息寺炎暑 勝利 君嫁して香を失へり花蜜柑 たかし
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年7月6日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
らつぱ隊香り奏でる百合の花 さとみ 風鈴が相づちを打つ独り言 都 香水に縁の無き身や琥珀色 同 身ほとりの置き所無き土用の入り 同 滴りの奥にまします石仏 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年7月7日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
黒塀や蔵してをりし八重葎 宇太郎 ふりかへる砂丘の海の線は夏 同 葛切や玻璃にスプンの当る音 同 夏草の中の林道下りけり 同 ソーダ水斜めに建ちし喫茶店 同 向ひ風麦藁帽を光背に 同 白服を吊りたる明日の再会に 悦子 浜昼顔一船置きし沖を恋ふ 同 白南風旅の鞄をコロコロと 美智子 足跡や巡礼のごと砂灼けて 栄子 紫陽花やうた詠むくらし悔もなく すみ子 玫瑰の咲くや砂丘の果の路 益恵 躊躇なく風紋踏んで白い靴 都
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年7月8日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
早苗饗や手足を伸ばす露天の湯 幸風 はらからや薄れゆく過去心太 百合子 一品を後からたのむ心太 秋尚 青楓雄々しく抱ける年尾句碑 三無 天草の歯ごたへ確と心太 文英 朝顔に護符つけ市の始まりぬ 幸子 朝顔のつぼみ数へて市を待つ 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年7月10日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
西日射す鏡に海女の手櫛かな 昭子 兜山古墳を包む大夕焼 ただし 良き事の有りや無しやの今朝の蜘蛛 信子 信州に梅雨のかけらの雨が降る 三四郎 石も又涼しきものの一つかな 昭子 香水や周囲の心独り占め みす枝 梅雨寒や口を預けて歯科の椅子 信子 うなだれて少年の行く片かげり 昭子 僧逝きて久しき寺の夏椿 英美子 猛暑日や万物すべて眩しめり みす枝 天近き牧牛の背や雲の峰 時江 コップ酒あふる屋台の日焼顔 英美子 サングラス外し母乳を呑ませをり みす枝 かぶと虫好きな力士の名をつけて 昭子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年7月10日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
芋焼酎醸す香りの満つる街 三無 団扇さし出かける孫の下駄の音 ことこ それぞれが里の焼酎持ち寄りて あき子 老媼の団扇頷きつつ動く 和魚 児に送る団扇の風のやはらかく ます江 店先で配る団扇の風かすか ことこ 泡盛の味覚えたりこの良き日 同 団扇手に風のざわめき聞く夕べ 廸子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年7月11日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
沖縄の鳳梨乾いた喉癒す 裕子 青空や収穫の日の夏野菜 光子 夕暮れは車窓全開青田風 紀子 貝釦一つ無くした夏の暮 登美子 まだ聴けるカセットテープ夏深し 同 雲の峰送電線は遥かなり 令子 夕焼に路面電車が揺れてゐる 裕子 鐘を撞く寺は山上雲の峰 令子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年7月11日 萩花鳥会
透き通る海は自慢よ海開き 祐子 救助士の臀筋たくまし海開き 健雄 夏草や一対すべて青の海 俊文 生ビール久方ぶりや子とディナー ゆかり 引く波に砂山崩る海開き 恒雄 天の川点滅飛機の渡りゆく 美惠子
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令和5年7月16日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
羅を纏ひしものの身の一つ 世詩明 天国も地獄も自在孟蘭盆会 同 風の盆男踊りの笠深く 幹子 盆の供華華やいでゐる村の墓地 同 ギヤマンの風鈴揺れる蔵の街 嘉和 古団扇思ひ出の新しき 雪 縁側に男冥利の裸かな みす枝 ナツメロを口ずさみつつ草を引く 富子 蓮開く様自力とも他力とも やす香 神主の大きな墓を洗ひけり ただし 在りし日のままに夏帽吊し置く 英美子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年7月16日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
田舎家の土間のだんまり朝曇 要 炎帝の遣はす鴉黒く群れ 千種 会釈する日傘に顔をなほ深く 同 夫恋ひの歌碑を見てより秋近し 炳子 飴色に枯れ空蟬の垂れ下がる 久子 古民家の故郷の匂ひ壁に黴 経彦 三猿の酔ふ草いきれ庚申塔 眞理子 古民家の茅屋根匂ふ炎天下 三無
栗林圭魚選 特選句
蓮花の水面の余白空の青 亜栄子 カラフルな浮輪乗り合ふ市民バス 久 じやぶじやぶと揃ひのティーシャツ水遊び 三無 咲き足せる泰山木の真白かな 秋尚 森少し膨らませをり蟬しぐれ 慶月 水音に誘はれつつ灼くる道 眞理子 惜しげなく涼しさ放つ水車小屋 要 ひとときの静謐滝に対峙して 久子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年7月19日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
マッカーサーパイプ咥へてアロハシャツ 千加江 遠雷や織部の茶碗非対称 泰俊 二業地に一の糸鳴る夜涼かな 同 悠久の光り湛へて滴れり 同 青田風満目にして夕仕度 清女 脱ぎ様のまことしやかに蛇の衣 雪 退屈をもて余しゐる古団扇 同 洗ひ髪訪ふ人も無く待つ人も 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年7月21日 さきたま花鳥句会
沢蟹の渡る瀬石に日の名残り 月惑 空蟬や辞書に挟まる紙兜 八草 家眠る厨にひとりバナナ剥く 裕章 山の水集め男滝の帯となる 紀花 どら猫にまさる濁声夏の風邪 孝江 炎天に心字の池面雲動く ふゆ子 打水や土の匂ひの風生まる 康子 行くほどに街路華やぐ百日紅 恵美子 睡蓮の葉を震はせて鯉の道 みのり 八の字を書きて茅の輪を潜りけり 彩香 誘蛾灯今は無人の故郷駅 静子 枇杷熟るる眷属訃報また一人 良江
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令和5年7月22日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
半夏生何処が嫌ひと云はれても 雪 蛇にまで嫌はれさうな蛇苺 同 何処をどう突いてみても蟇 同 お隣りは今はの際と虎が雨 一涓 師の友は文教場址合歓の花 同 守宮まづ招き入れくれ舎入門 同 忘れじの人今も尚蛍の夜 同 入道雲天下制する勢あり みす枝 藍浴衣片方だけにピアスして 昭子 サングラス外して妻は母となる 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年7月23日 月例会 坊城俊樹選 特選句
空蟬や地中の記憶あるらしく 要 靖国の坂みんみんの急くに急く 昌文 炎天に零戦仰角三十度 佑天 鳥居へとまぬがれがたき炎天を はるか その日近付き靖国の灼けてをり 慶月 みんみんの高鳴く魂の声として はるか
岡田順子選 特選句
熱き骨ぽきぽきたたみ日からかさ 眞理子 真白な祢宜の出て来し木下闇 政江 笛の音の遠くに生まれ夏の果 光子 零戦を撮る少年の夏休み 慶月 下乗せし老女紅濃く夏詣 同 英霊に七日の魂の蟬時雨 政江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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nua-ap · 11 months
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白雪姫
AP_2022 / 名古屋芸術大学 舞台芸術領域2年 発表公演(プロジェクトワーク3)
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私はあなたを見たくなかった
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美しさに嫉妬し、母は何度も自分の娘を手にかける。しかし、偶然が重なり何度も娘は命を取り戻す。世界で最も有名な、魔法の鏡が映す母と娘の物語。2人が再会したとき、誰も知らない「白雪姫」の結末を迎える。
母は何を大切にして、娘は何を母に求めたのか。親子の在り方を問う名作童話のリクリエイション。
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開演日時
2023年7月30日(日)11:00、15:00
※開演30分前より開場 ※上演時間30分 ※駐車場あり ※場内車いすスペースあり ※未就学児入場不可 ※全席自由
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料金:無料
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会場
名古屋芸術大学 東キャンパス 8号館2階スタジオ 愛知県北名古屋市熊之庄古井281
公演当日受付場所:東キャンパス 1号館 1階ロビー
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ご予約(オンライン受付) https://forms.gle/Nd3FKuKtP7PuwB3Y8
※定員に達し次第、受付終了となります。
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出演
小菅紘史、木母千尋 成瀨瑠南(音楽総合コース2年)
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構成・演出:鳴海康平
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第七劇場、代表・演出家。Théâtre de Belleville、芸術監督。早稲田大学在籍中の1999年に劇団を設立。これまで国内25都市、海外5ヶ国11都市で作品を上演。ポーラ美術振興財団在外研修員(2012・フランス)。2014年、三重県津市美里町に拠点を移設。民間劇場 Théâtre de Belleville を開設。愛知県芸術劇場主催 AAF戯曲賞審査員(2015〜)。名古屋芸術大学 舞台芸術領域准教授(2021〜)。
写真:松原豊
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舞台プロデュースコース
宇野怜花、海野夏菜、小川真友香、小田原一華 金森万和条、河合恒平、関戸智咲、竹之下紋菜 田中大翔、中村仁美、山森歩美
演出空間コース(音響チーム)
植松風香、北川正菜、北川優凪、小林美羽音、夏目依吹 橋村怜央、藤本実夢、二木陽菜、松木花水実
演出空間コース(照明)
イ・ソヨン、今井歩、上本瑞和、酒井優、佐藤星希 鈴木日奈子、関楓奈、松浦萌衣、三浦琴葉、宮原羽菜
舞台美術コース
因幡美沙、元喜貞、大塚理央、大場有乃、小笠原瑠莉 加納由佳、清水琴音、椿原美優、中山凱斗、花井二葉、牧栞名
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照明協力(舞台芸術領域 演出空間コース3年 照明)
浅田彩友、石井日凪代、前田遥音、松原沙耶華
音響協力(舞台芸術領域 演出空間コース3年 音響)
飯田凌矢、井上裕貴、勝川美海、木村日菜、西郷卓哉 中根美咲、福浦雅楽、福冨隼大
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指導教員
[企画制作]梶田美香、鳴海康平、浅井信好 [音響]  岡野憲右、山口剛 [照明]  稲葉直人、神谷怜奈、福井孝子 [舞台美術]石黒諭、杉浦充、乗峯雅寛
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名古屋芸術大学 舞台芸術領域について
令和3年度に名古屋芸術大学芸術学部に設置された新しい領域。「あなたが舞台をつくる」をコンセプトに、舞台芸術作品を製作・上演するための知識と技術を専門的に学ぶことのできるカリキュラムで、未来の舞台芸術シーンをけん引する人材を育成する。
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ご来場のお客様へ
37.5度以上の熱がある場合や体調の優れない場合はご来場をお控えください。
会場内では検温やアルコール消毒、常時マスクの着用にご協力ください。
手荷物のお預かり、差し入れの受け取り、出演者のお見送りはいたしません。
以上に関しましては、状況に応じて変更となる場合がございます。最新情報は公式Twitterおよびこちらのwebsiteにてご確認ください。
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twitter / @NUA_AP instagram / nua_ap
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主催・お問い合わせ: 名古屋芸術大学舞台芸術領域
mail / [email protected] tel / 090-6798-8035(平日10:00〜17:00)
協力:第七劇場、名古屋芸術大学音楽総合コース
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私があなたを苦しめてる
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bar-suke · 2 years
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Bar すけ 新しい子が仲間入りしました。 __/ #江戸切子 /________________________   高野硝子工芸       伝統工芸士   高野秀徳さん作の ロックグラス        『アザミ』 _____________________________________/ 中から覗くと、花が開いたように華やかな柄が美しく、まるで万華鏡を覗いているかのようなロックグラスです。 アザミの花のシャープなイメージを繰り返す曲線で表現し、口元の細かい模様は菊籠目紋で、小さい菊の花が並んでいる間に八角形の籠目が浮かび上がって見えます。 中段の菱形の中は魚子(ななこ)紋と呼ばれる紋様で、一段深く彫っているため光を多く反射してより輝きをお愉しみいただけるこの子に是非、会いに来ていただけたらと思います。 _____________________________________/ 今週も21時〜3時まで営業しております。 皆様の御来店、心よりお待ちしております。 感染防止の為、店内にナノコロイド施工、店内の換気、空間除菌、入店されるお客様への検温、アルコール消毒のご協力をお願いしております。 _____________________________________/ ___/ #バーすけ /__/ #bar /__/ #すけ /___ _________/ #切子 #鹿児島 /______________        #酒器バー®︎ ______________________________________ 【住所】 鹿児島市山之口町7-16柚木ビル2F 【営業時間】21時〜3時 【定休日】 木曜日 【電話番号】090-8102-4078 【ホームページ】https://suke.style ______________________________________ ・個室6席 ・カウンター6席 ・テーブル4席 (Bar すけ) https://www.instagram.com/p/Ca9Mi_hvVN1/?utm_medium=tumblr
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araiso-chidori · 2 years
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トラッドな雰囲気が漂う
コンビネーションモデル。
特有の印象づよさと華美な装飾性が
引き算されたクールな佇まい
皆様、こんにちは。 岡山市北区平和町/駅前町/野田屋町 本町/磨屋町の眼鏡店「眼鏡と、」です。
チタンとアセテートのコンビネーション モデル。
YUICHI TOYAMA. model.UFO-069 size.48▢25 145
ブリッジとテンプルがメタルとなれば ボリュームに抜け感が出て、掛けた際 の印象にも軽快感がでます
眼鏡デザインとしてトラッドな印象の 強い このスタイルを、サラリと軽快に 品よく楽しむことができます
ポイントはレンズシェイプとアセテー トリムのボリューム感。
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・目元に素直に調和するレンズ形状
・リムの太さ細さと厚みの強弱
その絶妙なデザインバランスが、印象 をつくりやすく幅広いシーンにも使え る優等生に。
カジュアルにもドレススタイルにも、 守備範囲の広い万能な眼鏡です
ブリッジやテンプルには、ブランドの アイデンティティともいえる角をモチ ーフにした紋様が施され、シンボリッ クかつ装飾性も。
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メタルパーツとプラスチックパーツを 固定する構造には、堅牢かつ安定感の ある手法を採用し、日々の使用にも型 崩れしにくく快適な装用感を叶えてく れるはずです
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クラシカルになりすぎず、 強い個性を演出しすぎない 静かで品格を持ったユウイチトヤマの アイウェア。
軽やかで洗練された印象のカラーが 届きました
YUICHI TOYAMA.
是非とも店頭で、実際に御覧ください
ニシダ
『眼鏡と、』
岡山市北区平和町1-10 高塚ビル1階 ℡086-226-5388 ✉[email protected] [HomePage] https://www.meganeto.com [instagram] https://www.instagram.com/meganeto_optical_shop_okayama [facebook] https://www.facebook.com/meganeto.optical.sho [tumblr] https://www.tumblr.com/blog/meganeto-optical-shop
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kinnokuraya1 · 5 years
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ヤフオク1000円スタート出品 5/2 PM 21時終了 誠実屋で検索下さい。 今回、誠実屋から心を込めて出品させて頂きますのは、極上のお洒落な逸品 正絹 紬 手織り しつけ付 未使用 美品 八寸名古屋帯 朱色 幾何学模様 女性和服 お仕立て上がり です。 単衣の素敵な帯で、着物通の方をうならせる逸品でございます。 粋な印象の和姿を演出してくれることでしょう。 朱色地に幾何学模様が六通柄で織られ、 色使いが万華鏡のように色鮮やかでいて見ているだけでも うっとりしてしまうような帯になっております。 また紬地のほっこりした生地感が味があって粋美を感じます。 洗練された大人の女性の趣味性を感じさせてくれる逸品です♪ 織り、柄を見て頂いて分かるように日本製の現在着物の現行品の帯になります。 手先は松葉仕立てで、 お太鼓は生地を返してかがり縫い仕立てが施されております。 胴回りが単衣仕立てになりますので、年間を通して締めれる通年帯になります。 中々お目にかかることがない帯で、ワンランク上の和のお洒落を ―――― しつけ付未使用保管品ですので、 表地、裏地、シミや汚れはなく綺麗な状態のお品物でございます。 ※しつけは撮影と検品の為、外させていただいております。ご了承くださいませ。 しなやかで張りがありながら、適度に柔らかいので締めやすく御太鼓もしっかりとし 凛とした着姿になることでしょう。 お召、紬、小紋にピッタリな八寸名古屋帯でございます。 是非、素敵な着物の帯合わせを楽しんでくださいませ。 貴女の着姿が一段と素敵になることでしょう。 磨きぬかれた匠の技が創りあげる普遍の美しさに酔いしれるお品ですので、 この機会にぜひお手にとってご堪能ください。 ■素材 生地:正絹 ■サイズ 長さ:370㎝ お太鼓幅:31㎝ 是非、当店との“絆”の始まりとして、 こちらの商品をお手元に置いて頂き、末永く可愛がって頂きたいと存じます。 - [ ] #着物 #和装 #和服 #着付け #着付け教室 #和 #kimono #お茶会 #お茶席 #茶道 #書 #書道 #花道 #華道 #美 #美容 #美容院 #ヤフオク #きもの #着物好き #茶道教室 #帯 #名古屋帯 #八寸名古屋帯 #未使用 #美品 #正絹 https://www.instagram.com/p/Bw6ViwPlv9o/?utm_source=ig_tumblr_share&igshid=gqblrwp82tu2
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bingata-nawachou · 1 year
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#紅型被布 #紅型ナワチョウ被布 ・ 3年前…っと 言いたいところなのですが😅 1年遅れて制作した (4歳の時に七五三を🤣) 娘の #被布コート ・ 写真を見て ぜひうちの娘にも!!っと 友人が挙手してくだったので この度お貸しすることに✨ ・ #万華鏡紋様 を 鮮やかに艶やかに 赤でパキッと染め 地色を着物の 着物の地紋に合わせて #紅梅色 で染めました ・ 今の工房に移る前 借りていたアパートで この被布コートを 仕事の合間に 染めていましたね… ・ 被布コートを 制作してくださったのは Instagramで繋がった @pikku_milka さま 柄合わせも綺麗にしていただき 丁寧なお仕事に感激したこと 今でもよく覚えています ・ そして #水引 の #髪飾り は #和の暮らし展 で ご一緒している @kazumi_kimono さま のリボン型🎀の髪飾り ・ 友人のお嬢様にも ウキウキしながら お召しいただけますように🕊 そして #七五三 記念の衣装として 思い出に残りますように✨ ・ ・ #紅型 #紅型ナワチョウ #縄トモコ #びんがた #びんがたナワチョウ #なわともこ #七五三 #ハレの日の #置きコーデ #きものコーディネート #沖縄 #okinawa #bingata #tomokonawa #nawachou #bingatanawacho https://www.instagram.com/p/CoewB8ML2GR/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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cofgsonic · 7 years
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17.04.01 ハッピーナイトメア・ドライブ
※ルージュの過去捏造が暗いです
 人里離れた静かな大屋敷。外観に飾られた不釣合いなネオン。安っぽいクリスマスセールみたい。  中に入れば、赤い顔をした奴らがワイングラス片手に、荒唐無稽なダンスでお祭り騒ぎ。楽しいパーティがアタシたちを歓迎する。ハッピーな気分でずうっと踊ってなさい、って心の中で毒づいた。 「都会からはるばる、よくぞお越しくださいました、ミス・ジェニー。おや、そちらの男性は」 「パートナーよ。今夜はアタシ、彼から離れないから」 「ええ勿論、ボーイフレンド様も歓迎いたします。さあお二方、中にお入りください。ご主人様があなたたちを待っております」 「けっ、暢気にダンスパーティしてる場合じゃないぜ。この女は、今からな……」  ヒールで思いっきり男の革靴を踏みつけた。赤いハリモグラは目ん玉充血させてもっと真っ赤になる。ふん、いい気味よ。背を向けた屋敷の執事には見えないように睨み合う。 「邪魔すんじゃないわよバカモグラ」 「お前こそ足引っ張ったら承知しないぜ、コウモリ女」 「合図したら、わかってるわね?」 「遅れんなよ」  史上最悪の悪巧みの打ち合わせは浮かれたパーティ会場の騒がしさに溶け込む。アタシは颯爽とヒールを鳴らし、悪い顔をリセットする。アタシはここではジェニー。本物のジェニーは、さあ、どこへ行っちゃったのかしら? 今頃街はずれの倉庫で、素敵な夢でも見ている頃じゃない?  ナックルズはまだアタシの顔をじろじろ。なーんか期待してた視線と違うから胸糞悪いわ。今夜のためにドレスも化粧も気合入れたっていうのにウブな男、いえ無神経な男はこれだからね。まだ許してないわよ、ここへ来る前に言われた「化粧の上に化粧ってできるもんなのか?」っていう台詞をね。悪気がないから余計に神経を疑う。  広間の奥には参加者たちにただ見せたいだけの赤いシャンパンタワーが、きらびやかなルビーの壁を作っている。その下でダンスに不釣合いな羽つき帽子をかぶったマダムと握手する、銀色のお髭のミスターがいて、アタシは彼を顎で示す。ナックルズが周囲に聞こえないくらいの溜息をつく。そして苦虫を噛み潰すような顔で、 「今のオレらじゃエッグマンの悪事も咎められねえな」と言った。 「今なら、逃げ出すのも間に合うわよ。コソドロになりたくないなら帰っちゃえば?」 「盗みが目的なのはお前だけだろ。オレには別の目的がある。ちゃんと奴のところに案内してくれるんだろうな?」 「もちろん。アタシの盗みを黙視するっていう条件でね」 「癪だぜ」 「お互い様でしょ」  恰幅のいいミスターが歩み寄ってくる。口端だけはナックルズに向けて吊り上げる。「あんたは乗ったのよ。個人的な恨みを晴らしたいっていう、アタシが宝石盗むのと同じくらい綺麗じゃない目的のためにね。やるんでしょ?」  あんたは瞳をぶどうみたいにしっとりさせて、何も言わないのね。
「許せねえよ」  えずくみたいだった。  恐ろしい計画を口にするとき、人もケモノもまるで血を吐くように吐露するものなんだと知った。何を言われているのか最初はわからなかった。つまりはこいつがそんな風に、喉をわななかせながら恨み辛みを込めた声を出すなんて思わなくて――寒気が走った。エンジェルアイランドに吹く風がいやにべたべたと、まとわりついた。ビル風はおろか、どこかのハリネズミの坊やの風も滅多に吹かないまっさらな島なのに。こんなに不快な風が吹くの。ここにずっと居付いている、一族の最後の生き残りは、自分が目尻に不必要なシワをいっぱい作っていることに気づいているのかしら。それは印象のよくない表情だと教えてやるのを、ついに忘れた。  辺境の地に住むからこそ、冒険心に唆されて危険な場所へ赴くトレジャーハンターだからこそ、街の新聞には絶対に載らない事件を彼はいくつか知っていた。その中の一つ、少女誘拐事件のことをアタシに話してくれた。そしてその犯人は人間ではなくロボットだということも。  有能なロボットが主人の手を離れて一人歩きし、意思を持つなんてことは、オメガの存在をはじめ、アタシたちの身には痛いほど染みている事実。けれどロボットが無力な女の子を襲うなんて、そんな嫌な時代が到来していたなんてね。子狐ちゃんには口が裂けても教えられない。だからナックルズは、アタシに話すしかなかったんだわ。  奴の主人も沈黙を決め込んでいる。巨大な電力会社の重役だっていうから、これまた厄介。ロボット産業にも手を出しているが、躾がなっていないのか、過去に会社の職員に怪我を負わせたという話もあるから手に負えない。可愛がっているロボットの一人が犯罪を犯したことに彼が関係があるのか、はっきりしたところは定かじゃない。  問答無用で破壊すべきだ。主人が処分しないならオレが壊す。ロボットは普段、自宅にいる。「主人の前では忠実なのに、どうして?」少女を襲った夜、一時的なシステム障害を起こしたんじゃないか。ナックルズは長いようで��く、分析した。 「随分と事件についてお詳しいのね」  ナックルズの横顔には険があった。顎の内側、歯を食いしばっているのか、ギリリと音がした。 「神様って何でこう、タイミングを巡り合わせるのが上手いのかしら。彼の自宅の金庫には、前から狙っていた宝石があったのよ。でも彼は大手会社の重役。今の時代、ロボットを従えているくらいのお屋敷で、セキュリティのぬるいところはないわね。事を荒立てると、遠方でも気づかれるわよ。自宅と連携したセキュリティアプリをロボットに搭載するくらいやってるはずだわ」 「侵入だけでも気づかれないようにできる方法はないのか」 「鍵を開けて堂々と入るしかないんじゃない? 警備ロボットのお出迎えからは逃げられないでしょうけど。どうする?」
 補足しておくとここは、イケてるミスターであり誘拐ロボットのマスターであるおじ様の別荘なのよね。遊ぶための場所だから自宅から然程離れていない。屋敷を出れば海に囲まれた山沿いの道路を臨める。つまり道路沿いにあるお屋敷で、無駄に広い駐車場には車がいっぱいだった。もちろん、コンビニの駐車場に停まっているような普通のじゃない。売ればウン千万の高級車ばかり。  ジェニーは今日のパーティに呼ばれた、取引先の会社の重役の、女性部下だった。最低ね、取引先の社員に手を出そうなんて。ジェニーの上司はワイングラス片手にダンスホールで踊っていたわ、千鳥足で。彼女は男運がないみたい。ほんと、ロクでもない男に囲まれて可哀相。  でも、ミスターはジェニーの顔を知らない。だから彼の前でも、アタシはジェニーに成り代わることができた。  挨拶もそこそこに、ミスターに連れられて二階に上がる。  この屋敷は一階に大広間があって、いつもはファンタジー小説に出てくる魔法学校の食堂のような、ながーいテーブルに椅子を並べた食卓風景が広がっているらしい。でもこういう賑やかな夜は、それらを撤去して巨大なダンスホールにしてしまうんですって。ダイヤモンドの欠片のようなものがじゃらじゃら下がったシャンデリアが揺れてしまいそうなほど、ダンスホールでは人々が踊り狂う。異様な光景と言っても差し支えない、やばい夜には、やばい奴の周りにやばい連中が集まる、その法則を反映したようだった。見下ろしながら舌打ちを堪えた。嫌なフェロモンを漂わせる男の背中を追った。  螺旋階段を上ると、ある部屋に通された。  そこにはムードのあるソファーや、本棚、思わずドキッとするアロマが焚かれていて何とも居心地がよかったけれど、アタシはもう壁の電気スイッチしか見えていない。目端に飛び込んで来たのは男の指先だった。胸元に手を伸ばしてくるミスターを、軽くウィンクして一度落ち着かせて――パチン! 素早く部屋の電気を消した。  さて、ドレスの胸元に隠した小型通信機にこの模様が聞こえているはず。驚いて声を失うミスターの股間をスペシャルなキックを打ち込んだのはその直後だ。踏みつけたカエルのような声を上げさせ、ズボンのポケットから鍵束を引き抜いた。  ドアを蹴破ると屋敷全体が闇に落ちている。一階は騒然とした様子で、暗闇で慌てふためく人々の頭上を急いで飛んだ。そっと玄関を開けて、外へ身体を滑り込ませる。僅かな脇汗が瞬時に冷えた。 「奪えたわよ。ラッキーね、愛車の鍵まで一緒みたい。大事な鍵を全部持ち歩いているって噂、本当だったのね」 「うっとりしてる場合か。早くしないと誰か追ってくるぜ」 「わかってるわよ」  屋敷の電気を消したのはもちろんナックルズだった。ミスターの周りの執事までみーんなアタシが惹きつけちゃったから、彼が行方を眩ますのは他愛もないことだったわ。 「あーあ、おじ様たちに気を遣うの本当疲れた」  屋敷の脇に停めてあった真っ赤なオープンカーに飛び乗った。アクセルを踏み、勢い込んで車道に出る。  海沿いの道は死の王国のように真っ暗で静かだった。助手席のナックルズが遠のいていく屋敷に振り返って、「あばよ」と呟く。 「本当はあのオヤジもぶん殴るつもりだったんだぜ」 「彼が警察に連行されるときまで我慢しなさいよ。ねえ、本当に壊しちゃうの? ロボットの身柄を拘束して警察に突き出せば、指紋とか調べてくれるんじゃないの」  言ったあとで、拘束などしなくても破壊されたボディの方が隅々まで調べるには効率的だと気づく。今までドクターのロボットは飽きるほど壊してきたのに、何で今回ばかりは、まるでこの男の殺人を手伝うような気分になるのかしら。多分、隣で風に吹かれるナックルズを突き動かすのが、確かな殺気だからだ。  アタシはハンドルに力を篭める。篭められずにいられない。  メイクはケーキをデコレーションするのに似ている。スポンジにクリームを塗って、飾りつけして。年の数だけ立てるロウソクは決して実年齢と一致させない。  まずクレンジングオイルで乳化した素顔にファンデーションを塗る。パウダーを含んだタイプのファンデーションの方が早いけれど、きめが粗いから、ファンデーションとパウダーは別でつけた方がいい。  リキッドライナーで瞳のフレームを自然に強調して、シャドーはお気に入りのマリンブルー。前に一度ピンクで攻めたことがあるけれど、アイシャドーは瞳と同系色が基本っていうし、アタシらしさがばっちり出るのはこれ。彩ったら、マスカラに持ち替えて、睫毛を掬い上げる。  口紅はいつも丸みのある描き方だけど、今夜は鋭角的に。唇の輪郭を描いたあとに中を塗っていくのは爪と同じ、これで形がくっきり出る。ルージュ、この名に恥じぬ色気は唇から作り上げたものなのよ。メイクの仕方さえ知らなかった頃、鏡の前で大人っぽいグロスをなめては拭いて、を繰り返していた。  鏡よ鏡、この世で一番美しいのは? いつか鏡が「それはあなたです」と答えながら、素敵な女になったアタシを映してくれる。そう夢見てた。  本当に応えてくれるものね。本気でメイクした自分と見つめ合いながらそう思った。  そこには大人になったアタシがいる。子どもの頃、着せ替えゲームが好きな時期があった。インターネットのフリーゲームなんかでよく見る本当に単純なやつ。当時は自分の好みさえよくわからなかったのに、限られた服やアクセサリー、メイクの選択肢から可愛いと思うものを一生懸命選んで、遊んでいた。当時の自分には何一つ手に入らないものだったわ。だから束の間でも、自分がオシャレしているみたいで楽しかったの。今じゃすっかりオシャレや、自分の美を磨くことが、生活の一部になった。  ネイルサロンでジェルネイルしてもらった指先は華やいでいた。白いラインストーンのついたネイルチップをつけてもらっちゃったせいで、香水を吹き付けるたびにきらきら光る。エステにだって行った。あったかいオイルにまみれて、頭から胸元までのマッサージを堪能したわ。  紫のドレスはボディラインが余すところなく出るミディアムタイトスカート、目的はパーティじゃないからパンプスのヒールは低め。胸元には宝石のついたネックレスでアクセント。  宝石は、幼い頃からお守りだった。吸い込まれそうな輝きに魅了されたあの日から、アタシは宝石を愛してやまない。磨けば磨くほど光を増す、自分もそうなれるんだって信じてた。やがて恋をした今でも、そう信じてる。  オシャレは魔法の鎧。メイクは魔法の仮面。 「彼氏でもできたか?」  待ち合わせのとき、ついに言わせたの。何で? と、すましたアタシから目を逸らして「べ、別に」ととぼけるあいつの立派なタキシードの裾にわざと、口紅たっぷりのキスマークを刻み付けたくてたまらなかったわ。素敵なガラになったわよ、きっと。  でもねそのままでも、「あんた」みたいな男がいいの。  趣味悪いわよね? 「もしかしてジェラシー?」つん、と裾をつついてあげた。そしたらぷんぷん怒り出しちゃって。 「んなわけねえだろ! いや、だからさ」目を泳がせて。「いつもと違うなって……」 「あら、意外と察しがいいじゃない」 「化粧の上に化粧ってできるもんなのか」 「何ですって? 呆れた」  たまには乙女心ってものを考えて気の効いた褒め言葉でも返しなさいよ! 「ふーん彼氏じゃないのか」 「い・ま・せん。次に言わせたらスクリューキック」 「じゃあ、何でそんな気合入れてんだ」  このハリモグラは鈍いってレベルじゃないから泣けてくる。  でも当然よ。だってこいつにはあの誘拐ロボットしか見えていないんだもの。  屋敷に侵入すると案の定警備ロボットたちが一斉にアタシたちをライトで囲んだ。パトカーよりも攻撃的な光線が身体を貫いてきた。当然、すぐさま武力で反撃した。ドレスじゃ動きづらくてスピードは衰えるけど、タキシードのナックルズは何故だか衰えなかった。  砕いていった。次々と。吹き飛ばすんじゃない、砕くのよ、文字通り。中のコードがはみ出て、派手に機体が倒れる。足を引っかけそうになる。  ロボットたちのライトは少しずつ消えていって、やがてナックルズの横顔は――。熱を、咲かせて。もう一度いつもの暑苦しさを見せて、と思わず叫びそうになる。あんたの冷たくなった顔を、どこかで見学しなきゃいけない場面が来るんじゃないかと不安だった、その不安は今、的中した。でも今のあんたは、あんたじゃない。 「どうしたの?」  肩をすくめて、とぼけた。 「興奮しやすいクセして今日は随分無口じゃない」  まるで噴火前の火山が、そこにいる。  コウモリの耳は不愉快な超音波をキャッチする。怒りが、空気を通して、天井を床を電撃のように駆け抜ける。  アタシたちは闇の中で視線を合わせた。アメジストの双眸が、煌いた。 「何か言いなさいよ!」  アタシの潤んだ唇とナックルズの腕からそれが響いた。  彼はずっと腕輪をつけている。細くて目立たないけど、その正体はパーティ会場で役立った通信機。アタシは胸元から自分の通信機を出して、「応答しなさいハリモグラ。レディに無視決め込むなんてサイテー」と命令する。ナックルズはさすがに狼狽したようだ。 「驚いたじゃねえか、いきなり何だよ!」 「こっちの台詞よ。あんた何考えてんの、さっきから顔がマジすぎるってば」通信機をドレスの胸元にしまうと彼は仰け反った。「あら、胸ポケットに大事なものを入れるのは女スパイの基本よ」 「胸ポケットじゃねえだろもはや」 「ふふん、ならブラポケットね」 「ふざけんなっ!」 「ほーら、ちょっと肩の力抜けた?」  固かった表情筋を僅かに和らげたのには成功したけど……ナックルズは機嫌悪そうに鼻を鳴らして、ずかずか進んでいく。 「あんたこそガールフレンドでもできたのかしら? もしかしてその誘拐事件、好きな子が巻き込まれたとか」 「そんなんじゃねえ!」  警備ロボットの残骸に溢れた床に吐きつけるようにして彼は否定してみせる。――あからさまだった。 「そんなんじゃねえよ」  誰のためなの? あんたの頭をいっぱいにするのは誰なのよ。嫌よ。  ナックルズは勝手に奥へ奥へ進んでいく。追っているうちにアタシは自分の顔をどこかで落としてきたような錯覚に陥りかけた。  ある部屋に入って、彼が止まる。さっきまで彼を茶化していたはずのアタシはもう冷静じゃなくなりかけている。  ここだ、ここだ、ここだ。  電気の一つも探さずにここまで来た。拳でぶち破られたドアの向こうに広がるのは寝室か。キングサイズのベッドがある。家主は独身のはず。ずっと、配置もサイズも変わっていない、十年前から。人間の男の臭いを微かに探り当て、咽びそうになりかけて、アタシは――涙目で、顔を上げた。  時という概念が消え失せたのはそのときからだ。  およそ何分この部屋に滞在しただろう。まったく覚えていない。  そこに白いゴツいロボットがいるのは不気味以外の何物でもなかった。オメガよりは小さく、カラーリングももっとシンプル。だからこそ得体が知れず、後ずさるアタシと入れ替わりでナックルズが動いた。 「ちょっと待ちなさいよ……」  輪郭ごと、闇と一つになって今にもロボットを頭から食らわんとする何かの化物になるような気配をナックルズは背負っている。彼が一歩ロボットに近づくたび、心音がドンッと鳴る。  このロボットが犯人だって、どうしてあんたは気づいたの? 普通の家庭用ロボットじゃない。お掃除とか、身の回りを世話してくれるそういうタイプの奴よ、これ。 「こいつじゃないわ」  口を出していた。ロボットは四角い足を揃えて、何も言わない。ただアタシたちを見ている。突然喚き出したアタシにナックルズは怪訝な素振りを一切見せない。  まるで最初から……本当のことが、わかっていたかのよう。  誘拐事件。数多くの被害者の女の子たち。そのうち一人の名前は。 「命令に従っただけよ、こいつは」 「黙ってろルージュ」 「だって知ってるんだから!」  そのうち一人の名前はルージュ・ザ・バット。当時八歳。 「ねえ見たでしょ? あのオヤジ! ド変態はあっちよ! そのロボットはね、誘拐された女の子を世話するためだけに十年間ここに閉じ込められてるの! 被害者の子たちよりずっとずっと長く! アタシは――」  何言ってんの。 「アタシは幽閉されている間そいつと遊んでた! 家の宝石、たくさん見せてもらった……! 本当は監視役だってわかってたけど、それでも、こんな風に真っ暗で不安な夜、こいつの液晶でゲームして、くっついて一緒に寝てたの。だから、壊すのはちょっと待って……」  ああ。変よね。子どものアタシが乗り移っていたのを確かに感じた。壊さないで、じゃなくて、ちょっと待って、とか慎重ぶるところなんか特に。  ませた子どもだったの。そのくせ世間知らずだったから、このハリモグラみたいにホイホイ騙されて、ついていった。まさか十年もこんなこと続けてるとは思わなかった、ナックルズの話を聞くまで。  ナックルズのぶどう色の瞳は、怒りと悲しみを行き来していた。わざわざ深く息を吸ってから、白い八重歯で、下顎をすり潰していた。大袈裟に俯いて。やり場のない感情で両腕を厳らせて。  クソが、と咆えて。  その隣でアタシは「知られていた」と声に出さず泣く。  今すぐ逃げ出したい。知られていた。知られていた。もしかして、と怖くはなっていた。どうしてかわかんないけど知られていた! アタシが十年積み上げたプライドがゆっくりと倒壊していく。 「……アタシのためだったなんて粋なサプライズね。ハリモグラのくせに」 「だめなのかよ」  ガスの抜けた声だった。 「お前の苦しさをぶっ壊したら、お前ごと壊れんのかよ��  瞬間、崩壊が止んだ。とびきり大きな力に腕を引き上げられたような気持ちが、迸る。暗く沈んでいた世界を一閃する。 「噂好きなトレジャーハンターが、お前のことを話してた。真相を確かめるためにわざと連れてきたんだ、悪かった。そして真実なら、お前の目の前でぶっ壊してやろうと思った。オレには……それしかできないからよ」 「ハリモグラのくせに……アタシにカマかけたの……!?」 「悪かったよ」 「いいわよ、もう! あんたに謝られると気持ち悪い!」 「きもっ……おいふざけんな!」 「そんなんじゃねえ、とか強情なままでいりゃよかったのよ! 何よ、アタシのためって!」  唇を噛んだ。 「優しくしないで……!」  口紅の味が広がっていく。そういえばアタシは、オシャレを覚える前は口紅の味が大嫌いだった。  突然、腕の関節が外れたようだった。強引に引っ張り上げられたみたいで、犯人は当然、ハリモグラだ。目尻をくしゃりとさせたハリモグラだった。 「聞けよ、ルージュ。お前は綺麗だぜ。顔はな」  泣きそうにも見えた。パウダーをたっぷり乗せた頬にグローブを添えられる。 「けど目がキツい。おまけに口が悪い」 「あんたに言われたくないわ」 「あと、素直じゃない」  そればっかりは、ぐうの音も出ない。食い入るように真剣に、ナックルズはアタシの瞳を眼差し一つで縫いつける。いやだ。逸らせない。身体が、シビれそう。 「強情なままでいたってな、可愛くねえぞ。ちったあ、か弱い乙女の部分とやらを見せやがれ」  悔しくて、息も飲めなかった。  子供の頃か、いつか夢見てた王子様に――こんなガサツな奴が、一瞬でも重なったのが悔しい。ドレスで隠した胸が張り裂けそうなほど。その桃色に破れてしまったおっぱいをこいつに見せたいほど。 「決着つけるなら、ここでつけろ」 「わかった、から、ちょっと待ってて」  やがてハリモグラの肩を、そっと押し退けた。白い塊の前に立つ。 「覚えてる? アタシを。十年前にここにいたの。可愛い真っ白な白雪姫よ。今夜は泥臭い赤ニンジンをつれてきたわ」 「赤ニンジンってオレか?」 「元気にしてた……?」  ロボットは人間みたく小首をかしげる。とうに記憶はデリートされちゃったかしらね。  こっちはよく覚えているわ。主人の私物��らこっそり持ち出してくれた宝石や、アクセサリーまで全部。絶対に手に入らないけれど、眺めているだけで幸せだった。いつかこんな綺麗なものが似合うコウモリになりたいって思った。アタシがもっと見たいと言ったら、もっとたくさん持ってきてくれた。もちろんマスターには内緒で。 『あたし、これ欲しい。眺めているとドキドキするの。ねえ内緒にしててくれない?』 「皮肉よね。誘拐がきっかけで、自分も宝石専門の泥棒になっちゃったんだから」  ロボットの胸部には小さなモニターがあって、ドット文字が表示された。懐かしい。タッチ式でゲームができるの。飾り気のないパーツのロボットにしてはこれだけは優秀だった。画面はカラーだし、アクションゲームとかパズルとか、着せ替えゲームとか色々――。  オヤジは嫌いだったけど、あなたは結構好きだった。怖がるアタシと遊んでくれた。 「他の誰が噂したって、関係ない。何とでも呼ぶがいいわ。アタシは這い上がったの。死ぬ気で脱出して死ぬ気で生きてきた」  ロボットは何も言わない。瞳が時々、チカリと光る。この子は今でも喋れない。感情も示してくれない。ただ目の前の少女を喜ばそうと、  宝石を、両手で差し出してくる。 「ナックルズ」  彼のグローブがすでにロボットの首筋に当たっていた。 「――壊して」
 それから少しだけ。  彼の胸の中で、泣いた。素敵にか触れられた翼が、いやに彼のグローブの厚みと微かな体温を伝えた。  赤い宝石は素敵に輝く。  今夜は星降るいい夜だと思っていたのに、よく見上げると、汚らしい曇天がはびこって一雨来そう。アタシは何を見ていたんだろう。 「エンジェルアイランドまで飛ばせよ」 「……命令しないで」 「じゃあお願いだ」 「断るわ。あんたわかってる? 今回の件、バレたらシャレにならないんだからね! エンジェルアイランドなんて一発で嗅ぎつけられる場所に潜伏するは論外!」  高級車は海沿いを走る。この男はアタシを帰さないつもりだ。上等、そのつもりでこっちも派手に決めたのよ、今夜。でもタキシードの男にドレスの女の逃走劇って、どこの映画の世界ってカンジ。  世間じゃアタシたちが悪人になる。今頃パーティは滅茶苦茶でしょうね。とにかくジェニーが無事に発見されることを祈るわ。アタシたちは地の果てまで逃げるから。  スリル満点の人生は誰もが望んで手に入るものじゃない。アタシは幸せ者なのか、それとも悪夢からずっと目覚められないでいるのか、わかんないけど、この際考えたってしょうがない。考えたってわからない。人生はゲームみたいに、リセットボタンがないんだから。でも、いくらでもコンティニューはできる。  反して助手席のナックルズは暢気なもの。ふんぞり返って、曇天の隙間で僅かに光る星を数え始めてる。さっきまで怒り心頭に発してロボットを破壊した姿と同じとは思えない。  星に飽きると、最後にロボットがくれた赤い宝石を夜空に透かして眺めていた。不思議な宝石に見えるのはアタシの錯覚かしら。カオスエメラルドより一回り小さいけれど、角度によって吸い込まれそうな透明感が現れたり、まるで水分が閉じ込められたかのような深みが出現したり、何だか万華鏡みたいにくるくる印象の変わるの。光に当ててみたらまた違った輝きを放つのでしょう。  また一つコレクションが増えた。感謝するわ。  加速する夜の海がぼやける。拭って、風を切るくらいの大声で話しかけた。 「ところでマスターエメラルドどうするのよ」 「カオティクスに預けた」夜に塗られて、赤いドレッドヘアが褐色に沈んでいた。三日月形に連なるそれらは風を受けて、独立した旗のようにぱたぱたなびく。たくましく盛り上がった胸板。アタシがさっき全部を預けた場所。  アタシだけの場所。そう信じていいのよね? 「最初からこの予定だったわけ? 用意周到すぎてムカつく。涙出そう」 「いちいち馬鹿にしやがってお前は!」 「馬鹿にするわ! アタシみたいな女に惚れた時点でね!」  それに、本当は馬鹿にしたんじゃない。幸せすぎて涙が出たのよ! 「ああ寒い」怒鳴りながら会話する。「早く逃げたい!」 「どこへだ?」 「どこまでも、よ!」 「これじゃ、オレが攫われちまう」  悪びれた様子もなくナックルズはあくびをする。手の中で宝石が、星よりも明るく輝いている。二人の未来を示すように。
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kachoushi · 1 year
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各地句会報
花鳥誌 令和5年4月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和5年1月4日 立待俳句会 坊城俊樹選 特選句
年賀状投函ポスト音を吐く 世詩明 大冬木小枝の先まで空を突く 同 猫寺の低き山門虎落笛 ただし 福の神扱ひされし嫁が君 同 石清水恙の胸を濡らしつつ 輝一 阿弥陀様お顔に笑みや秋思かな 同 去年今年有縁ばかりの世なりけり 洋子 潮騒の聞こゆる壺に水仙花 同 羽根をつく確かなる音耳に老ゆ 同 時々は絵も横文字も初日記 清女 初電話友の恙を知ることに 同 暁に湯気立ち上がる冬の海 誠 大寒のポインセチアに紅のあり 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月5日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
初暦いかなる日々が待ち受けん 喜代子 おさんどん合間に仰ぐ初御空 由季子 病院の灯消えぬや去年今年 同 雪掻に追はれつつ待つ帰り人 さとみ 海鳴りや岬の水仙なだれ咲く 都
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月7日 零の会 坊城俊樹選 特選句
あをき空うつし蓮の枯れつくす 和子 蓮枯れて底の地獄を明るめる 軽象 枯はちす揺り起こすなり鐘一打 三郎 破れ蓮の黄金の茎の高さかな 炳子 枯蓮の無言の群と相対し 秋尚 弁天の膝あたたかき初雀 慶月 面差しの傾城名残青木の実 順子 男坂淑気を少し漂はせ 三郎 恵方道四方より坂の集まり来 千種 葬儀屋の注連縄なんとなく細い いづみ いかやきのにほひに梅の固くあり 要 枯蓮のやり尽くしたる眠りかな 佑天
岡田順子選 特選句
枯はちす揺り起こすなり鐘一打 三郎 鷗来よ枯蓮の幾何模様へと 俊樹 そのあとは鳶が清めて松納 いづみ 毛帽子にまつ毛の影のよく動く 和子 北吹けりもう息をせぬ蓮たちへ 俊樹 蓮枯れて水面一切の蒼穹 和子 人日の上野で売られゆくピエロ 三郎 石段に散り敷く夜半の寒椿 悠紀子 恵方道四方より坂の集まり来 千種 よろづやに味噌づけ買うて寒に入る 眞理子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月7日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
双六やころころ変る恋心 朝子 下の子が泣いて双六終りけり 孝子 短日は数が減るかもニュートリノ 勝利 歌留多とり式部小町も宙に舞ひ 孝子 小春日や生ぬるき血の全身に 睦子 骨と皮だけの手で振る賭双六 愛 京の町足踏み続く絵双六 散太郎 粛々と巨人に挑む年始 美穂 来世から賽子を振る絵双六 愛
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月9日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
双六の終着駅や江戸上り 時江 たかいたかいせがまれて解く懐手��昭子 てのひらの白きムースの初鏡 三四郎 火消壺母のま白き割烹着 昭子 木の葉髪何を聴くにも左耳 世詩明 街筋の青きネオンや月冱てる 一枝 姿見に餅花入れて呉服店 昭子 はじき出す男の子女子のよろけ独楽 時江 一盞の屠蘇に機嫌の下戸男 みす枝 初詣寺も神社も磴ばかり 信子 御降や傘を傾げてご挨拶 みす枝
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月9日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
初明かり故山の闇を払ひゆく かづを 万蕾にある待春の息吹かな 々 小寒や薄く飛び出る鉋屑 泰俊 勝独楽になると信じて紐を巻く 々 仏の前燭火ゆらすは隙間風 匠 筆箱にニトロとんぷく老の春 清女 二千五百歩小さな散歩寒に入る 天空
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月10日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
鋳鉄製スチームの音古館 宇太郎 始業の蒸気雪雲を押しあげて 美智子 溶けてなほ我にだけ見ゆる時雨虹 佐代子 失ふはその身ひとつや冬の蜂 都 寒灯下遺影に深く法華経 悦子 大木を伐られ梟去つたらし 史子 枯木立通り抜けたる昼の月 益恵
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月10日 萩花鳥会
人生の余白少なし冬の薔薇 祐子 裸木が絵になる空を展げゆく 健雄 山茶花や気は寒々と花紅く 俊文 守らねばならぬ家族や去年今年 ゆかり 一椀に一年の幸雑煮膳 陽子 故郷で一つ歳とる雑煮かな 恒雄 昼食後一枚脱いで四温かな 吉之 亡き人に届きし賀状壇供へ 明子 逆上がり笑顔満面四温晴 美惠子
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令和5年1月13日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
初生けを祝成人と命名す みえこ 薪焚の初風呂済ませ閉店す 令子 御降りに濡れても訪ひぬ夫の墓 同 初詣光􄽄現れて良き日かな あけみ 注連飾父の車の隅に揺れ 裕子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月14日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
閼伽桶の家紋色濃し寒に入る 多美女 養生の大樹潤す寒の雨 百合子 勤行の稚の真似事初笑ひ 幸風 いつもならスルーすること初笑 秋尚 臘梅に鼻近づけてとしあつ師 三無 寒椿堂裏の闇明るうす 多美女 多摩堤地蔵三体春立ちぬ 教子 均しある土の膨らみ春隣 百合子 掃初の黒御影拭き年尾句碑 文英 悴んで顔を小さく洗ひけり 美枝子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月15日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
飛石を跳ね蝋梅の香に酔うて 炳子 木道の先の四阿雪女郎 幸風 その奥に紅梅の蕊凜として ます江 黒き羽根なほ黒々と寒鴉 貴薫 不器用に解けてゆきぬ寒椿 千種 入れとこそ深き落葉へ開く鉄扉 同 谷あひに弥生の名残り水仙花 炳子 椿落つ樹下に余白のまだありて 三無 木道まで香り乱れて野水仙 芙佐子 寒禽の群を拒まぬ一樹かな 久子
栗林圭魚選 特選句
山間の埋れ火のごと福寿草 斉 空昏く寒林よぎる鳥の影 芙佐子 厚き雲突き上ぐ白き冬木の芽 秋尚 福寿草労り合ひて睦み合ひ 三無 そのかみの住居跡とや蝶凍つる 炳子 水仙の香を乱しつつ通り抜け 白陶 入れとこそ深き落葉へ開く鉄扉 千種 竹林の潤み初めたる小正月 要 椿落つ樹下に余白のまだありて 三無 せせらぎのどこか寂しげ寒の水 白陶
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月16日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
若きより板に付きたる懐手 雪 北窓を塞ぎさながら蟄居の間 同 昨夜の酔ひ少し残るや初鏡 かづを 九頭竜や寒晴の綺羅流しゆく 同 除夜の鐘八つ目を確と拝し撞く 玲子 初明り心の闇を照らされし 同 一点の客観写生冬の句座 さよ子 翳す手に歴史を語る古火鉢 同 笑つても泣いても卒寿初鏡 清女 餅花の一枝華やぐ奥座敷 千代子 年賀状手描の墨の匂ひたつ 真喜栄 若水を汲むほどに増す顔のしわ 同 裸木村は大きな家ばかり 世詩明 春炬燵むかし昔しの恋敵 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月18日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
水仙や悲恋の話知りしより 啓子 堂裏の菰に守られ寒牡丹 泰俊 餅花やなにやらうれしその揺れも 令子 左義長の遥けし炎眼裏に 淳子 寅さんを追つて蛾次郎逝きし冬 清女 飾り焚く顔てらてらの氏子衆 希子 御慶のぶ一人一人に畏みて 和子 眉を一寸引きたるのみの初鏡 雪 初髪をぶつきら棒に結ぶ女 同 束の間の雪夜の恋に雪女 同 マスクして睫毛に化粧する女 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月20日 さきたま花鳥句会
凍星や夜行列車の窓あかり 月惑 葉牡丹や鋳物の町の鉄の鉢 一馬 どら猫のメタボ笑ふか嫁が君 八草 小米雪運河の小船音もなく 裕章 老木に力瘤あり春隣 紀花 竜神の供物三個の寒卵 ふゆ子 医学書で探す病名寒燈下 とし江 おごそかに雅楽流るる初詣 ふじ穂 人のなき峡の華やぐ柿すだれ 康子 小正月気の向くままの古本屋 恵美子 寒梅や万葉がなのやうに散り 良江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月21日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
福引の種考へてゐるところ 雪 枯れ行くは枯れ行く庭の景として 同 懐手して身も蓋も無き話 同 思ひ遣り言葉に出さぬ懐手 昭上嶋子 言ひかねてただ白息を吐くばかり 同 きさらぎや花屋はどこも濡れてをり 同 父の碑を七十余抱き山眠る 一涓 藪入りを明日に富山の薬売り 同 人日や名酒の瓶を詫びて捨つ 同 一陣の風に風花逃げ廻る 世詩明 安座して児の母となる毛糸編む 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月22日 月例会 坊城俊樹選 特選句
舞ひ上がる金子銀子や落葉掻 千種 春近し湯気立つやうな土竜塚 昌文 寒林や父子のだるまさんころんだ 慶月 紅梅のどこより早く憲兵碑 同 冬帝に囲まれてゐる小さき者 いづみ 出征を見送る母子像の冷え 昌文 青銅となりて偉人は寒天に 千種 火の雨を知る大寒の展示館 いづみ
岡田順子選 特選句
狛犬の阿形の息を白しとも 俊樹 勾玉のほどけ巴に冬の鯉 千種 ただ黒し桜ばかりの寒林は 同 ボサノバを流し半熟寒卵 慶月 石に苔泥に苔あり日脚伸ぶ 和子 息白く母子像見てひとりきり 俊樹 寒林の一木たるを旨とせり 晶文
栗林圭魚選 特選句
冬の雲弛びそめたり大鳥居 要 朽木より梅百蕾の薄明り 昌文 ボサノバを流し半熟寒卵 慶月 能舞台脇座に現るる三十三才 幸風 日向ぼこして魂は五間先 俊樹 霜柱崩れ鳥居の崩れざる 同 青銅となりて偉人は寒天に 千種
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月 九州花鳥会 坊城俊樹選 特選句
大枯野太古は大海だつたかも ひとみ 初景色常の神木よそよそし 美穂 椰子の実のほろほろ落ちて神の留守 孝子 緋あけ色の空へ音ひき初電車 美穂 嫁が君大黒様の手紙持ち ひとみ おんちよろちよろと声明や嫁が君 睦古賀子 歌留多取対戦するは恋敵 睦吉田子 水仙はシルクロードの香を含み ひとみ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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carguytimes · 7 years
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東京モーターショーに行った気になる!? 吉田由美のプチ東京モーターショーガイドツアー
いよいよ始まりました!東京モーターショー2017。一般公開日は10月28日(土)~11月5日(日)までですが、10月25日(水)からプレスデーやもろもろ始まっています。すでに私は前半の3日間を終了。 東京モーターショーは技術とクルマの楽しさを発信するイベント。 何しろテーマは「世界を、ここから動かそう。BEYOND THE MOTOR」。 というわけでまずはトヨタ。 トヨタは7つのワールドプレミア。とはいえ、最も目に留まるステージの中心に展示されているのはすでに今年のCESで公開された四輪の「コンセプト愛i」。今のトレンド、EV、AI、自動運転はもちろん盛り込まれ、声のトーンや顔の表情などから人の感情を理解し、安心・安全に導くとのこと。東京モーターショーでは1人乗りのEV「コンセプト愛iライド」、1人乗りの「コンセプト愛iウォーク」を加えて「コンセプト愛iシリーズ」として展示。 そして20年ぶりのフルモデルチェンジとなったトヨタの真のフラッグシップモデル「センチュリー」も注目車。今回はハイブリッドが搭載されていますが、まさに菊の御紋が似合いそうな佇まい。ちなみに「センチュリー」の後部の窓は、外から見たときに額縁のようにデザインされているとか。新型にもそれは受け継がれているのでしょうか?こちら、テリー伊藤さんも絶賛していました。 わくわくしたのは「スズキ e-サバイバー」コンセプト。事前情報では「次期ジムニーでは?」と期待していましたが、実ではそうではない様子。とはいえ2020年に創立100周年を迎えるスズキが、これまでのスズキ車のいろいろな技術を詰め込んで次の100年に向かう提案とのこと。 そしておすすめしたいブースNo.1がホンダブース。 ブースの真ん中にある「ウエルカムゾーン」。AI技術を搭載したロボット「ロボットキャスト」がある場所ですが、ここでは座るスペースもあり、柱の穴を覗くと万華鏡のように中にいろいろなものが映し出されます。また、アロマン香りもふんわり漂ったり…。ワールドプレミアされたのは、雑誌などの事前情報ではチラ見せだった「ホンダ・スポーツEVコンセプト」がステージ上に展示されています。 会場で是非実車をご覧ください! 会場には今回ご紹介できなかったクルマが山ほどありますよ。 ちなみに私は今月31日(火)、11月1日(水)がAJAJガイドツアー、11月4日(土)は西展示場4階「LOVE CARS!」ブースからのLIVE中継に参加します!会場でもご覧いただけますので会場にいらっしゃる方は14時にこちらへお越しくださいませ。 (吉田 由美) あわせて読みたい * 【東京モーターショー2017】広大な会場を効率良く見学してモーターショーを120%堪能する方法を大公開! * 【東京モーターショー2017 隠れ名ブースその5】プロの指導を受けながら本物の工業用クレイで、クルマのモデラー体験をしよう * 【東京モーターショー2017】三菱が人気の「アクティブギア」をeKカスタム、eKスペースカスタムに設定して初公開 * 【東京モーターショー2017】クルマの将来は「この数年が鍵」になるというZF社が考える未来像とは? * 【東京モーターショー2017 コンセプトカー・デザイン速攻インタビュー】三菱e-EVOLUTION CONCEPTはライトウエイトスポーツ http://dlvr.it/Py72Cr
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舞台 刀剣乱舞〜燃ゆる本能寺〜を観ました
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yaminabedoh · 6 years
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小説:空白と痛み
C94の新刊『Re:Bloom』に同一世界観の新作「Re:Bloom ~幻想と渇き~」が出るのを記念して、『Log in』(2014)に掲載された「空白と痛み」を全文Web公開いたします。
◯空白と痛み
汚染された荒野の中に立つ巨大情報都市。過去そこにあった超高度文明の遺産を解析しながら発展してきたその街は、無から有を生み出すように、技術を糧に資源を生みだしていた。発見から二百年が経った今でも解析出来ないその超技術の心臓部、“ブランク・ルーム”の秘密に都市は血眼になっていた。その影で痛みに震える少女アイリスと、静かにそれを見守る天才ハッカー、ミコトがいることも知らずに――(伊万里楽巳)
作者の中では「サイバネティカ」シリーズとして正統続編も構想中というSF作品。どうぞお楽しみください。
Scene 1 :
 深い深い海の底のような暗い部屋にキーボードを叩く音が響いていた。ディスプレイの明かりによって映し出されるのは、まだ幼さを残した顔。ディスプレイ上では複雑なプログラム・コードが高速でスクロールしていき、眼鏡をかけた目は複数のスクリーンの間を行き来しつつも安定したリズムでコマンドを次々と入力していく。
 殺風景な部屋だった。内装と言える物はほとんどなく、ところどころ鉄骨がむき出しになっている。窓はなく、代わりに壁を這うのは無数のコードやパイプなど。それらは壁から床へ、あるいは天井へと経由しながらこの部屋の中心に鎮座する大きなカプセルへ収束していく。赤みを帯びた液体で満たされたそのカプセルーー生命球を連想させる閉じた空間の中には一人の少女が浮かび、そして苦しんでいた。
『っ……』
 歯を食いしばり、身体をよじるたびに水槽の中に細かい気泡が発生する。乱れた長い髪は一拍遅れて液体の中を泳ぎ回り、華奢な身体にまとわりつく。カプセルの上部から伸び、背中へと続いている大小二本の太いケーブルは彼女を磔にしているようにも見えるだろう。
『……んっ! 』
 苦悶の表情を浮かべ続ける彼女、その右手の指先から更なる異変が始まった。少しずつ、しかし確実に。酸の海に溶かされるがごとく少女の指先は小さな泡となって消えていく。蝕まれるように消えていく。
 少年はその傍らで淡々と作業を続けていた。時折様子を確認するようにカプセルに目を遣る以外はディスプレイ上に展開される情報に集中している。感情を殺した無表情と冷たい瞳はマシンのように決められた動作を繰り返す。
 少女の侵蝕は既に肘の手前にまで達していた。痛みの間隔は狭くなり、押さえきれなかった喘ぎ声がスピーカーからこぼれ出る。一際大きな悲鳴が上がって、ようやく彼女の異変は収束した。
『はぁ……はぁ……』
「何度聞いてもキミのその声は慣れないな、アイリス」
 少年は椅子から立ち上がり、カプセルの近くへと歩み寄った。そっとガラスの面に手を添える。
『……ごめんなさいね、ミコト。おさえようとは、思っているのだけど』
 痛みが治まっていないのだろう。スピーカーから出るその声は途切れ途切れだ。ミコトと呼ばれた少年は、気にすることはないと首を横に振った。
『システムの方は、どう? 』
「問題なしだよ。上手く行っている。少し休むと良い……もう休眠に入ったか」
 少女アイリスはミコトの返事を聞く前にその目を閉じていた。先ほどまでとは打って変わった穏やかな表情で目を閉じているが、だからこそ肘から先を失った右腕が痛々しい。どういうわけか傷口はすでに癒え、きれいに塞がっている。
 ミコトは先ほどまで自分が座っていたところへ目をやった。三つ並んだディスプレイの内左右の二つはブラックアウトしてお���、動いているのはセンターのそれだけだ。ディスプレイは白い文字で簡潔に、システム移管シークエンスが滞りなく終了したことを告げてきている。
「『誰にも迷惑をかけずに死にたい』か」
 ミコトはもう一度カプセルの中に浮かぶアイリスを見上げた。静かに微笑む少女の寝顔は初めて会った時と同じように穏やかで、だからこそ残酷だった。
Scene 2 :
 荒野の中に立つ巨大都市。周辺他都市とは比べ物にならないほどの高度な科学技術を誇るこの都市だが特に情報技術に関しては飛び抜けていた。ありとあらゆるインフォメーション・テクノロジーがすべて市庁舎の巨大システムに統合され、管理されている。
 高度に情報化された街。だが一歩外に出てみれば、そこで生きる市民の日常は案外変わらないということが分かるだろう。相も変わらず路上に店を出し、威勢のいいかけ声を上げ、品物を売りさばこうという気持ちのいい熱気にあふれている。ミコトはそんな繁華街の中を一人で歩いていた。右手には茶色い紙の袋をぶら下げている。
「はいはいはい、そこの兄ちゃんも姉ちゃんも!  天然肉のうちのホットドッグ買っていきな! うまいよ! 」
「新鮮採れ立て! 今朝工場から出荷されたばかりの青物野菜だ。お安くしとくよ! 」
 ふと立ち止まって空を見上げる。灰色のビルに切り取られた空は、それでも気持ちのいいほどに青く澄んでいる。埃っぽいこの地上とは別の世界だ。
「あれ、ミコトじゃねぇか。元気にしてたか? 」
 たたずむミコトに声をかけたのは近くの屋台の店主だった。オレンジ、アップル、グレープフルーツ。移動式のワゴンの中に所狭しと派手なフルーツが並んでいる。日ざしを受けて瑞々しく輝いていた。
「まあな……ターミナルの調子は? 」
「お前さんの調整のお陰で絶好調だよ。あれが動かないと売り上げの管理も出来ないからなぁ」
「そりゃよかった」
 ミコトの横で果物を品定めしていた主婦が「これくださいな」といって青りんごを指差した。はいよと答えててきぱきと重さを量る店主。アナログなバネばかりがぎぃという軋んだ音を立てる。手慣れたようにバイオプラスチックのビニール袋に詰め込むと愛想の良い笑顔とともにお客さんに渡したのだった。
「商売の方は? 」
「ぼちぼちだな。この前市長が変わっただろ。あれで工場の方に新しい規制がかかるんじゃないかって噂があるんだが、ひどい話だよまったく」
 店主はふんと鼻息をならして腕を組んだ。土地が汚染されたこの街では、食料生産はそのほとんどを工場ーーバイオプラントでの栽培にたよっている。よけいな物が入り込まないよう外界と隔絶されたボックスの中、産業用ロボットによってオートマチックに育てられる植物たち。その生産量、出荷量、税率などなどは何もかもが当局のコントロール下に置かれているのだ。
 街の中心に立つ巨大な総合庁舎、オベリスク。真っ青な空を縦に切り裂くその塔は、遥かな高みから市井の生活を監視していた。
「おっと、噂をすればだ」
 店主が向かいの電器屋を指差した。デモで置かれているいくつものテレビジョン。すべて同じチャンネルに合わされ、新任のキングストン=メイヤー市長の演説の様子が映し出されている。褐色の肌に短く刈り込んだ白い頭髪。大柄な身体をさらに大げさに動かしながら市民に語りかけるその顔には自信と野心があふれていた。
『ーー市民の皆さん。偉大な先人たちの努力によりこの街も多大なる発展を遂げてきました。しかしそれは未だ十分なものとは言えません。皆さんの更なる生活向上のため私キングストン・メイヤーはこの職に就きました。ありとあらゆる技術の発展、十分で安全な食料供給、行き届いた行政サービス。そしてなにより長年にわたり我々を悩ませ続ける”ブランク・ルーム”の解析を成し遂げることを、ここにお約束いたします』
「”ブランク・ルーム”の解析ね。どうなることやら」
 この街を支える技術は実は自分たちで生み出した物ではない。荒野に打ち捨てられた廃墟、そこにまだ生きているネットワークシステムが発見されたことがこの街の始まりだ。廃墟の至る所に張り巡らされたネットワークと、莫大なテクノロジーのデータが詰まったセントラルサーバー。そういった名も知らぬ者たちの遺産を利用しながらこの街は発展してきた。
 残されたシステムの解析を少しずつ進め、応用し、自分たちが使えるレベルに落とし込む。他の都市とは不釣り合いなほどの情報管理、交通管制、防衛体制などはそうやって生み出されてきたのだ。
 しかし街の再発見から二百年以上が経った現在に置いても、システムの中枢に解析不可能な領域が残されていた。外部からの干渉をことごとく跳ね返す強固なプロテクトが張り巡らされたブラックボックス。都市の心臓とも言える存在。現在利用されているシステムも最終的には全てそこに集約、処理されている。いつ頃からかそれは”ブランク・ルーム”と呼ばれ、この街の更なる発展を妨げる大きな障害になっていた。
「ミコトは興味ないのか? お前さんほどの天才ならちょちょいのちょいと解析できちまうと思うんだけどなぁ」
「無茶をいわないでほしいね。そんなに簡単な仕事なら今まで残ってる訳ないだろ? 」
「そういうもんかね。どっちにしろお前さんがその気になればもっと稼げると思うんだけどな。その紙袋だって角のバーガー屋のだろ。だめだめそんな不健康な物ばっか食ってちゃ。ちょっとまってな」
 店主はそういうと手近にあった果物を無造作にビニール袋につめ始めた。あっという間に袋がオレンジでいっぱいになる。
「ほいよ、持ってけ。プレゼントだ」
「おいおい、いいのか。簡単に商品渡しちゃって」
「いいっていいって、この前のお礼だ。少しは良いもん食べてまた活躍してくれよな。お前らエンジニアが俺たちの生活を支えてくれてるんだしよ」
 混じりっけのない善意を断る訳にも行かず、ミコトは少し困った顔をしながらもその袋を受け取った。みっちりと詰まった袋は結構重く、あやうくバランスを崩しそうになる。
「おっと」
「大丈夫か? 」
「平気さ。ま、ありがたくもらっとくよ」
「たくさん食べて、でっかくならねぇとなぁ」
「痛てっ! 」
 はっはっはと豪快に笑って、店主は小柄なミコトの肩を叩いたのだった。
Scene 3 :
 光と影。活気のある露店街が光の世界なら今ミコトが歩いている裏道は影の世界だ。薄暗く、じめじめとしている。背の高いビルに囲まれ日の光も満足に届かない。そんな道を彼は静かに進んでいく。
 いくつかの角を曲がったミコトは錆び付いた鉄の扉の前で立ち止まった。腰のホルダーからカードキーを取り出し、扉の脇の壁のひび割れに差し込む。ロックの外れるかすかな音。人目のないことを確認すると、ミコトはわずかな隙間にその身体を滑り込ませた。
 カードキー、指紋、声帯、虹彩。いくつもの認証をパスして下層への階段を降りていく。暗闇はだんだんとその濃度を増し、地上の喧噪から遠ざかる。ミコトはここに来る度に自分が深い海の底へ沈んでいくような錯覚を感じていた。最後の扉を開けると、目に入るのは部屋の中心に鎮座するほのかに赤く光るカプセル。ミコトが足を踏み入れるとカプセルからの明かりが少し強さを増した。
『ミコト? いらっしゃい』
「こんにちはアイリス。……寝てたか? 」
『ううん、平気』
 紙袋とビニール袋を作業用のテーブルに置く。手元を照らす最低限の照明をつけると、腰のケースからメディアキーを取り出しラップトップタイプのパソコンを起動させた。冷却用のファンが回りだす低い音。いくつかの認証を経てOSが立ち上がる。そのあいだ、ミコトは紙袋からハンバーガーと紙コップに入ったソーダを取り出していた。包装紙を剥き、ディスプレイに向かいながらかぶりつく。
『珍しいわね、ここで食事だなんて』
「まあな」
 軽く答えて左手一本でキーボードを操作した。ラップトップのディスプレイ上ではいくつものウィンドウが消えたり現れたりを繰り返している。時折ケースから別のメディア取り出して差し替えつつ、何かプログラムを組んでいるようだ。
『今日は何の用? それともお仕事かしら? 』
 カプセルの中からアイリスが話しかける。
「小遣い稼ぎさ。リニアトレインの運行システムの不具合が最近目立つんだと。バグだしと修正を頼まれたんだけど、リメイクした方が早そうだ」
『そんなにひどいの? 』
「素人がその場しのぎにいじりすぎてめちゃくちゃだよ。ったく、こんなざまじゃ作り手も浮かばれないな」
 ミコトはアイリスに目をやった。十字架にかけられた聖女はカプセルの中、一糸もまとわぬ姿で漂っている。その身体からは右下腕だけでなく、すでに左足全体と右足首が失われていた。
『でも、ミコトならもっとキレイに直してくれるでしょ? わたしはその方が嬉しい』
「ふん」
 微笑みかける彼女の表情は邪気を知らず、どこまでも純粋だった。
『それは? 』
「ん? これか? 」
『違うわ、そっちよ』
 アイリスが左手で差したのは丁寧に畳まれたハンバーガーの包装紙が入った紙袋ーーではなくその隣に無造作に置かれた白いビニール袋だった。
「フルーツだよ。オレンジだったかな。知り合いの店の店長がくれたんだ」
 答えるミコトの目は眠そうだった。まぶたを半分落としながらも、自由になった両手のタイピングは途切れることなく続いている。
『オレンジ……この辺りに出荷されているのだと二〇三ファクトリーのやつかしらね。ちょっとまって』
 彼女はそう言って目を閉じた。オリジナルシステムの管理者でもあるアイリスはその気になればシティのあらゆるネットワークにアクセスできる。外部デバイスを介さない意識レベルでのネットワークとの同化。現実ではカプセルの外に出られない彼女にとって、世界はどう見えているのだろう。
『……やっぱりそうね。糖度高めにおいしく出来たみたいよ』
「甘いのか。それじゃ食べてみるかな。単調すぎると眠くてかなわない」
 ミコトは小さくあくびをしながら立ち上がった。ツールボックスから折り畳みナイフを取り出し、アルコールを吹きかけて滅菌消毒。袋から適当なオレンジを一つ選び出しナイフの刃ををそっと滑らせると宝石のように輝く断面が現れた。食べやすい大きさに切りかぶりつく。
「……うまい」
『よかった。甘すぎるんじゃないかと思ったんだけど、安心したわ』
「……」
 ミコトは何も言わずに二口目を食べる。一切れ食べ終え、次の一切れに手を伸ばそうとしたところでステータス・ウィンドウがイエローアラートに変わった。
『っ! 』
 カプセルの中のアイリスが声を漏らして身体をのけぞらせた。水槽中の気泡が増えていく。アラートはイエローからレッドへ。市当局からのハッキングだ。
 すぐにワークステーションの方に椅子を移し、スタンバイ状態から起動させる。次々と更新される情報の奔流。眼鏡越しに目だけを小刻みに動かしながら必要なデータを読み取り、コマンドプログラムを即応状態へと持っていく。
「少しペースが上がってきたか。今度はどこだ」
『……右脚。交通ネットワークの、管制領域』
 喘ぐようにアイリスが答える。侵蝕はすでに始まっていた。足首から先だけでなく、その上までも培養液の中に溶かされて消えていってしまう。
 メディアディスクを差し替え、ほとんど書き上がっていた新システムのデータをワークステーションに読み込ませる。コマンドスタンバイ。システム移管シークエンス起動準備。
『ねぇミコト』
「なんだ? 」
 すでに弱々しくなってしまった声でアイリスが話しかける。右脚を襲う苦痛を押し隠しつつ、彼女はミコトに微笑んだ。
『お願い、ね』
「……まかせとけ。僕を誰だと思っている」
 軽やかな音とともにキーボードに命令が入力される。天才とまで称された稀代のハッカーは少女の願いを叶えるため、今日も全てを統括するネットワークの中を駆けてゆく。
Scene 4 :
 この街を支配する総合市庁舎オベリスク。市街のどの建物よりも、それどころか見える限りのあらゆる物よりも高く大きいそれは今日もシティを監視するようにそびえ立っている。その足下、オベリスクに隣接したセントラルホテルの一階ラウンジでミコトは柱に寄りかかりながら行き交う人々を眺めていた。
 市直営のこのホテルの下層階は市民のための空間だ。最上のサービスをリーズナブルな価格で提供している。単調な生活の中に少しばかりの潤いを。市民の間では自らへのご褒美としてこのホテルを利用することがステータスとなっている。
 あくまで市民サービスの一環としての下層階、それに対し上層階は市が接待するVIPのための宿泊フロアだ。政治家の密談、経済界の大物たちの会合、市外からの外交官の受け入れなどに利用される。彼らは空中回廊を通ってオベリスクと行き来するため、下層の宿泊客とは交わることはない。
 ミコトは腕の時計にちらりと目をやった。アナログかつアナクロな機械式時計の針は九時を少し回ったところだ。ラウンジを行き交う人の流れも少し落ち着きを見せ始めている。軽くため息をつきながら、窮屈なスーツのジャケットの襟を直した。
「……お」
 正面玄関から一人の男が入ってくるところが見えた。守衛にも親しげに挨拶するこの男は足早にラウンジの中へと進んでくる。ホールの中心でぐるっとあたりを見渡しーー柱に背を預けるミコトと目が合うとにんまりとした笑みを浮かべた。
「よおミコト」
「遅かったな、グレン。五分遅刻だ」
「わるいわるい。出がけに急な仕事が入ってな」
「相変わらず忙しそうだな」
「おかげさまでな」
 ミコト=カツラギとグレン=カミンスキー。CCIC(市中央情報技術カレッジ)の同期である二人は再開を祝して軽く握手を交わした。
 グレンに連れてこられたのはホテル最上階のバーラウンジだった。途中でエレベーターを乗り換え、ガードマンに見送られながらたどり着いたここからはシティを一望することが出来る。オベリスクに次ぐ超高層建築物、その最上階からミコトは街を見下ろしていた。
「何でも好きな物をたのんでくれ、ミコト。今日は俺のおごりだ」
「任せるよ。軽めのやつにしてくれ」
「まだ酒は苦手か? 」
「毎回入り口で年齢確認くらうんだ。めんどくさいから最近は行く気にもならない」
「はは。お前さん、いまだに高校生にも間違われそうな顔��てるもんな」
 グレンはカウンターの方に寄っていてバーテンダーに二言三言話しかけた。壮年のバーテンダーは慣れた手つきでシェーカーを操り、あっというまに二杯のカクテルが出来上がる。グレンはそれを受け取るとミコトと並んで街を見下ろせる席に腰掛けた。
「お前が市の技術局をやめて以来だから、直接合うのは二年ぶりか? 今日は来てくれて感謝してるよ」
「堅苦しいのはいいよ。もっとも格好はそうもいかないみたいだけどな」
 わざとらしくジャケットの襟を直す。元々ミコトはこういうばっちり決めた服装が苦手なのだ。
「悪い悪い。さすがにここでTシャツジーパンはないだろうと思ってさ。ま、なにはともあれ乾杯しようぜ」
 グラスを軽く持ち上げる。ぶつけられたグラスは澄んだきれいな音を立てた。赤みを帯びたカクテルを口に含み、ミコトは感心したように呟いた。
「……悪くないな。さすがはセントラルホテルといったところか」
「だろ? ここで飲むと他の店のが物足りなくなっちまう。ま、俺もまだここに来るのは二回目なんだが」
 くっとグラスを持ち上げあっという間に空けてしまうグレン。背が高く彫りの深いこの男はミコトとは対照的に良く飲む。アルコールに強く、悪酔いせずに味を楽しめる本当の意味での愛飲家だ。
 豪快で人当たりのいいグレンと小柄で皮肉屋なミコト。貧乏な母子家庭から二十歳を過ぎて奨学金を得て入学してきた努力家と圧倒的な知能と技量で飛び級を繰り返してきた天才。カレッジ時代は好対照な二人として学内では良く知られた存在でもあった。
「髭、のばすようになったんだな。昔はおっさん臭いとかいって嫌ってたのに」
「嘗められないようにな。若造が年功序列すっとばして昇進していくのが気に入らないってやつもいるってことだ。特にこれからはいっそう大変になってくる」
 グレンは顎の髭を撫でながらそう答えた。
 ミコトは特例として在学中から、グレンも卒業後には市のシステムエンジニアとしてオベリスクに勤務していた。ミコトの方は二年前に技術局をやめてしまっていたが、残ったグレンは順調にキャリアを重ね若くして行政システム保守の責任者になったのだと人づてに聞いていた。
「……知っているかもしれないが、実は今��市長直属の主席エンジニア��抜擢されることになったんだ。メイヤー市長がまだただの議員だった頃に知り合ったんだが、腕の良さを覚えていてくれたらしい」
「……噂では聞いていたよ。それに、こんなところに入れるのは限られた階級だけだからな。下っ端公務員のままじゃむりだ」
 主席エンジニア。市長直属のこの役職は他の一般エンジニアとは異なる職務を割り振られている。市の存在、その根幹をなすシステムと未知の領域”ブランク・ルーム”。歴代の主席エンジニアはそのセキュリティを突破・解析することを使命とし、数十万のシステムエンジニアの頂点として市長から特権的な地位を与えられているのだった。
「まだ三十にもなってない若造の抜擢は異例だそうだが、俺はやってみせるさ。先生も破れなかった”ブランクルーム”の謎、絶対に解明してやる! 」
「……」
 グレンは強い口調で言い切った。二人の恩師、ジョン=スチュワート教授もまた主席エンジニアとして”ブランク・ルーム”の解析にあたっていたのだが、ついにその夢を叶えることはなく職を辞したのだ。
『あの中には人類の希望が詰まっています』
『この街、ひいては人類の発展のためにはあの”ブランク・ルーム”の解析が不可欠です。残念ながらわたしはその夢を果たすことは出来ませんでしたが、優秀なあなた方ならきっと出来ることでしょう。わたしの目が黒いうちに、全ての謎が解き明かされることを願っています』
 講義中、年に似合わぬ熱っぽい口調でそう語った教授の姿と今目の前にいる親友グレン=カミンスキー。ミコトには二人の姿が重なって見えていた。
「今日ミコトに来てもらったのはほかでもない。勧誘にきたんだ」
「勧誘? 」
「ああ。お前、まだフリーでこまごまとした仕事をやってるんだろ? 別にそれが悪いこととは言わないが、お前ほどの実力があるんだったら他に使い道があると思わないか? 」
 ミコトはグラスに口を付けた。透き通る、それでいて血のように赤いカクテル。アルコールの苦みが舌と脳を刺激する。
「部下になれといっているんじゃない。俺と同格の待遇で迎え入れられるよう市長に掛け合ってみるつもりだ」
 ミコトは答えない。黙ってグレンの言葉を聞いている。窓の外、街はネオンに照らされ妖しく輝いている。
「なあミコト、俺と一緒にやってくれないか? ”ブランク・ルーム”を突破するにはお前の力が必要なんだ」
 グレンの目は純粋で、だからこそ危うさをはらんでいるようにミコトには感じられた。あるいは少し前の自分も同じような目をしていたのかもしれない。静かにグラスをテーブルに置く。
「グレン。悪いがその話を受けることは出来ない」
「……なぜ? 」
「やりたいこと・・・・・・やらなきゃいけないことがあるんだ。お前の仕事は他の人でもできるかもしれないが、こっちの方は僕にしか出来ない」
「……」
「僕が、やらなきゃいけないんだ」
 二人は無言でお互いを見つめていた。初めて出会ってから七年。別々の道を歩き始めてから二年。長い年月は親友だった二人の立ち位置を大きく変えてしまっていた。
 ふぅ、とグレンは張りつめていた息を吐く。バーテンダーに三杯目のカクテルを注文し、軽くあおってから崩れるようにだらしなく座り直した。
「そこまでいうんじゃしかたないか。お前が隣にいてくれれば百人力だったのに」
「すまない」
「いや、気にするな。そっちにはそっちの都合があるだろうよ」
 そういってグレンは唇の端を上げた。グラスを目の高さまで持ってきて、きらめきを楽しむように青のグラスをゆらゆらとさせる。
「なあ、最後にもう一つだけ聞かせてもらっても良いか? 」
「ん? 」
 視線はグラスを眺めたまま、気安い口調でグレンがミコトに話しかける。七年前、カレッジのカフェでたわいもない話をしていて時の口調で。
「そのやらなきゃいけないことってのは……女か? 」
「そんなたいしたもんじゃないよ。でも……」
「でも? 」
「放っては置けない。それだけだ」
 そっけない口調とは裏腹にその口もとが小さく笑っているのを、グレンは見逃さなかった。
Scene 5 :
「……コード認証、ダミー・プログラム適用……よし。シーリン、回線をこっちにまわしてくれ。直接仕掛ける」
「了解」
 部屋の空気はまるでピアノ線のように鋭く張りつめていた。オベリスク上層階、オペレーション・ルーム。シティを代表する腕利きのエンジニアたちが真剣な面持ちでディスプレイの前に座ってキーボードを叩いている。グレン=カミンスキーはその中心として周囲に的確な指示を飛ばしながら自らも最前線で戦っていた。  
「プロテクト五五六七七番から五六九二三番までクリア。最終フェイズに入ります」
 この日のために綿密に組み上げた攻性プログラム群はその能力を存分に発揮していた。次々とセキュリティ防壁を突破し、”ブランク・ルーム”の扉の鍵を開けていく。
(順調だ。これなら……)
 グレンはとっておきのツールを起動した。量子演算を応用した解析プログラム。オベリスクの超集積コンピュータ、その処理能力の大半を使用するこの重量級プログラムが”ブランク・ルーム”の扉を打ち砕かんとする。一撃、また一撃。そして……
「……最終プロテクト解除確認。第六六五ブロック、完全に解放されました」
 オペレーション・ルームに歓声が上がった。わき上がる拍手。ある者は握手を交わし、ある者は抱き合っている。
 一人のオペレーターが立ち上がり、グレンの元へと歩み寄っていった。脱力したように椅子に深く身体を預けていた彼だったが、その姿に気づくと軽く右手を上げて答える。
「やあ、シーリン」
「おめでとうございます、カミンスキー先輩。おつかれさまでした」
「ありがとう。それにしても肩が凝ったよ」
「ふふふ。ゆっくり休んでください」
 大きめの眼鏡越しにシーリンはにっこりと笑いかけた。エンジニアの女性は概して無愛想だったり容姿に無頓着だったりするのだが、彼女は非常に可愛らしい。つられてグレンの口元も緩んでしまう。
「そうだな。よければ今度一緒に……」
「カミンスキー君」
 引き締まった声がグレンの台詞を遮った。大柄な身体、褐色の肌、刈り込んだ白髪。発するオーラはこの部屋の誰よりも鋭く、歴戦の風格を漂わせている。グレンはすぐに立ち上がり姿勢を正した。
「メイヤー市長、いらしていたのですか」
「君を選んだのは私だからな。見届ける義務もあろうというものだ」
「光栄であります」
 シーリンはグレンの大きな背中に隠れるように一歩引き下がった。先日選挙で前職のスティーブン=スミスを破り当選したこの市長に対し、彼女は何となく敬遠した想いを抱いていた。メイヤーとは直接目の合わない位置に立ち、二人の会話に耳を澄ます。
「君が主席エンジニアに就任してからの進展には目を見張るものがある。私としても誇らしいよ」
「すべてここの設備とすばらしい仲間たちのお陰です」
「仲間か……」
 メイヤーはオペレーション・ルームの中を眺めた。市長に就任した際、私財を投じて設備を増強したこの部屋は従来を遥かに上回る処理能力を獲得している。そのスペックとグレンの能力が重なり合い、この一ヶ月で”ブランク・ルーム”のプロテクトの突破と解析は飛躍的に進んでいた。
「仲間と言えば、君が以前言っていたエンジニアはどうしたのかね。カツラギとかいったか」
「……残念ながら個人的な事情により協力することは出来ないとのことでした。彼がいればより早く、あるいは二週間もあればここまで到達できていたかもしれません」
「ほう」
 市長はそう呟いて自らの髭を撫でた。顔の輪郭部に短くのびたその髭はメイヤーの顔立ちをより精悍な物にしている。
「まあいい。その彼がいなくてもここまで来れたのは事実なのだからね。残りはどうなっている? 」
「事前の分析に寄れば、あと一つです。予定通り五日後には最後のアタックを開始できるでしょう」
「よろしい。君の働きには期待しているよカミンスキー君。お母上にもよろしくな」
「はっ」
 グレンの肩をポンと叩き、多くの秘書官を引き連れながら市長はオペレーション・ルームを後にした。
「いや、大変なお方だな、メイヤー市長は。プロテクトを相手にするよりも疲れたよ」
 グレンは大げさに肩をすくませながらおどけた顔を見せた。わざとらしく汗など拭いてみたりもする。強ばっていたシーリンの表情もついつい緩んできてしまう。
「市長に失礼じゃないんですか、それって? 」
「いやいや、敬意の表明のつもりだよ、俺としては」
「ふふ。そういえばさっき言ってたエンジニアって、ひょっとしてあのミコト=カツラギですか? 」
 名門CCICを史上最年少、それも主席で卒業した天才の名前はこのシティでは広く知れ渡っている。現在の動向についてはあまり情報が入ってこないが、てっきりどこかの企業の顧問エンジニアとして活躍しているのだとシーリンは思っていた。
「大学の同期なんだよ。この前久しぶりにあって勧誘してきたんだが、ものの見事に振られちまった」
「……ミコト=カツラギと言えば、あの噂って本当なんですかね? オベリスクの基幹システムに侵入したっていう」
 シティの全てを管理するオベリスク。最高の技術がつぎ込まれ、そのセキュリティは”ブランク・ルーム”にも引けを取らないといわれている。しかしそんなオベリスクも過去に一度だけ外部からの干渉を許したことがあった。その“犯人”として噂されたのが当時情報技術局の副局長であったミコトだ。ろくな証拠もなく結局捕まることはなかったものの、彼女たちエンジニアたちの間でまことしやかにささやかれているこの噂がミコトの名を業界の中で忘れがたい物としていた。
「……真偽は知らないが、その実力はカレッジの時点ですでにあったと思うね。うちのカレッジの管理システムにも容易く侵入できちゃうようなやつだったし」
「そんな人がどうして不参加に……? 」
 グレンは大きく首を振った。
「さあね。あっちにはあっちの都合があるんだろう。放っておけない女が出来たとか言ってたしな」
「それじゃ、ひょっとして今もデートの最中だったりして? 」
「どーだろうねぇ。そうだったらただじゃ置かないけどな。俺がこんなに苦労してるってのに! 」
 グレンはいたずらっぽくにやりと笑い、笑顔がすてきなシーリンは再びふふふと微笑むのだった。
「ふぅ……」
 仄かな赤い光に照らされる暗闇の中、ミコトはため息をついて背もたれに身体を預けた。ディスプレイは休む間もなく更新され彼に情報を送り続けている。
(さすがだな。ハッキングのペースが早い。予想通り……いやそれ以上か)
 カプセルの中に浮かぶアイリスの身体はそのほとんどがすでに失われていた。右腕、左腕、右脚、左脚。四肢はとうに溶け去り胴体の方も胸部より下は残っていない。長い髪が顔にまとわりつき表情を隠しているため、呼吸の度に上下する肩のかすかな動きがなかったら死んでいると思われてしまったかもしれない。
『はぁ……はぁ……』
 侵蝕が進むにつれアイリスが苦しむ時間も長くなっていった。彼女がどれほどの痛みを感じているのか、ミコトには知るすべもない。彼は自分の出来ること、自分に託されたことをするだけだ。ーーたとえそれがどのような結末をもたらすことになっても。
 ミコトはキーボードを軽く操作してテレビ・チューナーを起動した。ディスプレイの隅に小さく新たなウィンドウが現れ、会見場の様子が映し出される。画面の中ではキングストン=メイヤーがいつかのように、市民に向けて熱弁を振るっていた。
『ーーついにここまでたどりつきました。あと一歩、あとほんの一歩です。我々は歴史の瞬間に立ち会おうとしています。未だかつて誰も見たことがない”ブランク・ルーム”、その秘密を解明する直前まで我々は来ているのです。五日後日曜日の午後七時、我々は最後の挑戦を”ブランク・ルーム”に対して行います。その挑戦が終わったあと、この街の歴史は新たなステージへと突入していることでしょう』
 会見場で歓声が上がった。だれもが市長の巧みな弁舌にアジテートされ、熱狂している。おそらく家庭で、職場で、あるいは街角で。これを見ている市民も神経が興奮するのを感じているに違いない。彼は大衆をその主張に巻き込むことにかけて天才的な能力を持っている。そんなスクリーンをミコトは相変わらずの無表情で眺めていた。
『……ミコト』
「アイリス、起きて大丈夫なのか? 」
 いつの間に目覚めたのか、アイリスが頭を起こしてこちらを見ていた。
『いよいよ、ね』
「……」
『ごめんね。こんなつらいこと頼んで。でも……』
「言わなくていい」
 ミコトは乱暴にキーボードを操るとチューナーのウィンドウを閉じた。他のインフォメーションボードも次々と終了させ、あとにはブラックアウトしたディスプレイだけが残る。
「これは僕の義務だ。。キミが気にすることじゃない」
『……そうね、ごめん。でも一つだけ言わせて』
「……」
『ありがとう。今まで私の我がままにつきあってもらって、感謝している』
 カプセルからの光が弱まった。アイリスが休眠モードに入ったのだ。要求される休眠時間は以前に比べ長くなってきていた。
 穏やかな顔だった。寝ている彼女はいつだって静かな表情をしている。彼女は夢を見るのだろうか? ミコトは今までそんなことも考えなかったことに驚いた。
「……ふん」
 大きく背中を後ろに投げ出すと、椅子のリクライニング部分がぎしぎしという音を立てた。頭上には暗闇が広がり、その先には何も見えない。
Scene 6 : 
 最後の五日間はあっという間に過ぎていった。。アイリスの消滅後、オリジナルシステムがクラッシュしないようにつなげるバイパスプログラムの構成と検証。ハッキング誘導経路の確認。緊急時の干渉ルートの確保。計画に一分の隙も出ないよう、いつも以上に繊細にコードを確認していく。
「大丈夫、だよな」
 準備は怠っていないはずだった。千を越えるハッキングのパターンとその対処法はすでに用意している。さらに言えば以前までと違い、今では相手の顔が見えている。グレンの手法については誰よりも詳しいはずだ。それでもミコトの首筋にはちりちりと嫌な感触が焼き付いている。拭えない悪寒。思わず身震いしてしまったところをアイリスに見とがめられてしまった。
『ミコト、寒いの? 』
「……平気だよ、これくらい。多少寒い方が頭が冷えていい」
『私のせいで風邪なんて引かないでね。そんなの、イヤだから』
 アイリスはまだ心配そうな表情で赤い液体の中に浮かんでいた。肉体の八割を失った、もはや人間と言えるのかさえ疑わしい状態の聖女。ミコトは顔を向けずに答える。
「僕のことは良い。それよりも、そろそろ時間だ」
 ディスプレイの端に表示させたデジタル表示の時計が十八時五十七分を示している。ミコトはワークステーションを起こし、必要なアプリケーションを展開し始めた。最終チェック。あそこまで大体的に発表した以上、時間をずらしてくるということはないだろう。しかし時刻が予告されているというのは時限爆弾のタイマーを見せつけられているようで、かえって落ち着かなかった。
『……んっ! 』
 アイリスの喘ぎ声とともに、カプセルの中が俄に騒がしくなった。細かい泡が次々と彼女の周りに立ち上る。
 幾重にも張り巡らされたセキュリティ防壁がもろいところから突破されていく。だがこれはミコトの筋書き通りだ。
「よし、行くか」
 十九時〇〇分ジャスト、最後のハッキングは定刻通りに開始された。
 キーボードを操るグレンの額には汗がにじんでいた。ハッキング開始から既に二時間が経過している。”ブランク・ルーム”の最後の砦、第六六六ブロックはそう容易くは扉を開いてくれないようだ。
「……先輩、少し休んだらいかがですか」
「いや、変に流れを変えたくない。作業自体は順調だしこのまま行こう」
 シーリンが声をかけるが、グレンは首を振った。差し出されたボトルだけを受け取り水分を補給する。疲労は隠しきれないが、それを上回る充実感が顔に表れていた。
「もう少しだ、もう少しで突破できる。休んでいる暇なんてないよ」
 そういう間も手はキーを叩き続けている。ディスプレイは二八九番目のサブ・ブロックを開放したことを告げていた。
「キミも席に戻ってくれ、シーリン。終わったら何かおいしい物でも食べにいこう」
「……はい、楽しみにしています」
 ぺこりと挨拶をして定位置にかえっていくシーリン。グレンはそれを見送るとよしと気合を入れなおしてディスプレイに向き直った。
「進行度九八パーセント、了解。残るサブ・ブロックももうわずかか……」
 ミコトはインフォメーション・ボートからのメッセージを確認した。事態は順調に進んでいる。あと少し、最後までトラブルなく扉が開かれたときにミコトの仕事は終わる。
 アイリスは今、声を上げることもなくケーブルに吊られてカプセルの中で目を閉じている。腕と胴の外縁部が僅かに溶けたあとはごくゆっくりとしか侵蝕は進んでいない。これはシステムの中核が彼女の頭胸部に集中しているためであり、これもまた予想通りだ。
 予想通り、予想通りではあるのだが、ミコトはあのときに感じた嫌な感触を未だ拭えずにいた。
『……あっ』
 ごぽっ、と大きな気泡が生まれてアイリスの下胸部が崩れ落ちた。肉の欠片は底につくまでに溶かされ、何も残らない。剥がれ落ちたあと、生身の人間であれば心臓があるであろう場所には赤く不気味に輝く結晶体が埋め込まれていた。
 宝石のような煌めき。固形質の殻の内側にもやもやとしたものが閉じ込められている。彼女を磔にしていたケーブルは背中を貫通し、そのクリスタルに直結していた。アイリスの顔が苦痛に歪む。
「アイリス……」
『見ないでミコト。ちょっと恥ずかしい、かも』
 笑おうとするその努力が痛々しい。彼女の見えないところで唇をかむ。最後のサブ・ブロックが突破された。残されたのは最後の領域、”キー・ストーン”だけだ。せめて彼女がこれ以上苦しむことのないように、ミコトはバイパスブログラムを接続する準備を開始するーーその時だった。
 クリスタルの中のどす黒い物が急に実体を持ち始めた。それまで霞のようにぼんやりとしていた物がはっきりとした輪郭を持つように凝縮していく。ドクン、ドクン。本物の心臓のように脈拍を刻み始める。鳴り響くアラート。
「……なんだ? 」
 こんなパターンは想定していない。ディスプレイはしきりに警告を訴えてくる。ドクン。自分の脈拍も早くなってくるのも感じる。アイリスが泣きそうな声で叫んだ。
『ミコト、おかしなプログラムが起動してる! システムの管理権が奪われそう! 』
「なに? 」
 ミコトは素早くステータス・ウィンドウを開いた。外部からのハッキングではない。グレンの攻撃はまだ”キー・ストーン”の外側に向けられている。
(どういうことだ……? )
 シティの総合管理システムの状態をモニターするウィンドウを開きチェックする。
……イースト・ステーションで信号トラブル���リニアのダイヤに乱れ……ウェストブロック、エンド地区で小規模の火災、通報と避難誘導を実施済み……セントラル・バンク第二支店で警報に反応、ガードマシンを派遣……
 数百万の人口を抱える都市から溢れ出る情報の奔流。その中の一点に目を止めたミコトは吐き捨てるように呟いた。
「……お前を作った奴らはよほど意地が悪いらしいな、アイリス」
『どういうこと? 』
「内側から自壊プログラムが走り始めている。このままお前が消されると連動して総合管理システムがクラッシュする仕組みだ」
 シティの全機能を統括する総合管理システム、それが機能不全を起こすということはこの街が終わることと同じだ。データサーバーは全て飛び、リニアトレインや無人フライヤーはコントロールを失い墜落、社会インフラは全て停止する。いや、それだけにとどまらない。農業や畜産のプラントが止まれば食料がなくなり、濾過装置が止まれば水がなくなる。数少ない生活物資を巡って暴動が起きるのはさけられない。
『そんな……』
 グレンのハッキングは今も続いていた。完全に制圧されるのも時間の問題だ。そして今回の場合、それが破滅への引き金となる。
 ミコトはラップトップPCを有線でワークステーションに接続した。極限までチューンした特注のハイエンドモデルだ。瞬発的な処理能力ならワークステーションにも負けない。
 ワークステーションのリソースは今もシステム移管シークエンスに使われている。これ以上のことをこなすには多少のリスクは負わなければならないだろう。
「……オベリスクに干渉してハッキングの進行を遅らせる。時間を稼いでいる間に自壊プログラムへの対処だ。クラックするかループ回路に押しやって自滅させる」
 ハンデというには大きすぎるビハインドだった。一人が背負うにはあまりにも重すぎる。
『……できるの? 』
「できるさ。伊達に天才やってる訳じゃない」
 ミコトは彼女の不安を振り払うように不敵に笑うと、電子の海へとその意識を沈めていく。
「……ハッキングです! 攻性プログラムの能力六〇パーセントダウン! 」
「なんだって! 」
 シーリンの悲鳴のような報告にオペレーション・ルームの空気が一変した。偉業達成を前にしたざわつきから、これからどうなるんだという混乱へ。伝搬した不安は一気に室内を覆い尽くそうとする。パニック寸前になったメンバーを引き戻したのはグレンの力強い声だった。
「落ち着け! まだ失敗した訳じゃない! ーーシーリン、ハッキングの発信元は!? 」
「はっきりとはわかりませんが……おそらく市内です。ローカルネットに直接割り込んできています」
「アルファチームは攻撃を続行。ベータチームはシステムを守れ、サーバーのリソースを一部まわす。シーリン、キミはガンマチームと発信源の探知だ」
 元々ハッキングに対する防御なんて考えていなかったプログラムたちだが、それでも一度に六割も無力化されるとは想定外だ。いや、そもそもオベリスクのセントラルサーバーに置かれたこのプログラムが攻撃を受けているということがすでに異常なのだ。
(……オベリスクへの侵入か)
「まさか、な」
「先輩? 」
 シーリンが心配げな視線をグレンに向けてくる。彼は首を振ってそれを打ち消した。
「……なんでもない。ベータチームの指揮は俺が直接執る。俺の目が黒いうちはここのシステムに好き勝手はさせない」
 ミコトは自分の身体がだんだんと火照ってくるのを感じていた。こんな感覚はカレッジのシステム侵入を巡ってグレンとやり合ったとき以来だ。
 焼き切れるまで頭のエンジンをまわし続ける。一瞬たりとも気は抜けない。付け込まれ、蹂躙される。相手はそのグレンと、この街の創造主とも言える存在なのだから。
「・・・・・・強制アクセス、フラッグナンバリング変更。よし」
 画面の端に小さいウィンドウがポップアップする。送り込んだジャミング・プログラムからの救援信号だ。
「こんどはこっちか。プログラム二五八番から二八七番まで再展開」
 グレンの力量は予想以上だった。妨害プログラムは送り出す端から無力化され逆襲を受けてしまう。偽装のためのサーバーを噛ませる余裕すらなさそうだ。
(ーーもとより覚悟の上だ。好きなだけ暴れてやるさ)
 自壊プログラムの一部を切り離し、コマンドラインをループさせる。少しずつ自壊プログラムの攻撃能力を削ぎ落す。地味ながらも有効な戦術ではある。しかしーー。
『まただわ。いくら消しても次々発信されてくる』
 プログラムのマスターデータを直接クラックしないかぎり、コピーをいくら壊したとしても際限なく修復されてしまう。相手は起動条件が揃えばオートマチックに動くアルゴリズムだ。持久戦を挑めば勝ち目がないのは分かりきっている。
「選択の余地は無い、か」
 八十七回目のクラックを終えたあと、ミコトは吐き捨てるように呟いた。ため息をつき、電子キーを腰のケースから取り出すとワークステーションのメモリスロットに差し込む。
『……ミコト? 』
 「ーー五分だけ時間を稼いでほしい。総合管理システムを一時的にダウンさせてその隙に”キー・ストーン”に侵入する」
 自壊プログラムの本体を叩くにはそれを発信している”キー・ストーン”のプロテクトを突破しなければならないが、グレンとの二正面作戦ではここの設備はあまりに貧弱だ。向こうの動きを何とか封じ、全てのリソースを費やして初めて勝機が見えてくる。
『でも、それじゃ、街が全部止まっちゃうってことに……』
「だからキミに頼むんだアイリス。構造上、”ブランク・ルーム”の領域は外部からダウンさせることができない。オベリスクのシステムを止めている間、必要最低限のライフラインはキミが維持してくれ」
 ”キー・ストーン”から離れたアイリス自身の処理能力がどれほど残っているか。それはミコトにも分からない。あるいは彼女に大きな負担をかけてしまうことになるかもしれない。それも全て踏まえた上でアイリスは静かに頷いた。
『……わかったわ。街は任せて』
「すまないな。結局こんなことになって」
『いいの。みんなを守るのが私の仕事だから』
 まだ痛みはあるはずだった。速度が落ちてきているとはいえ、身体の分解は続いている。
(ーーどうして彼女が苦しまなければならない? )
 幾度となく繰り返してきた自問。答えは未だ見えてこない。これが彼女にとって最後の苦しみとなるようにと願いながら、ミコトはブレイク・プログラムの実行キーを入力した。
グレンはハッカーからの攻撃を跳ね返しながら、予感が確信に変わりつつあるのを感じていた。高度で洗練されたアルゴリズムは通常では考えられない速さでオベリスクの基幹部に侵入してくる。だが画期的なその手管も手の内を知ってしまいさえすれば対処は容易だ。グレンのカウンターアタックは徐々にではあるが侵入を跳ね返し、むしろ押し込みつつあった。
「すごいな……主席エンジニアに選ばれるだけのことはある」
「……」
隣では年上の部下が驚嘆の声をあげていた。主席エンジニアはそれには答えない。眉間にシワを寄せたままディスプレイを睨んでいる。 
  どれだけ優れたアルゴリズムだからといってそれがそのまま彼が組み上げたという証拠にはならない。むしろ元となるアイデアさえ共通ならば洗練させればさせるほどその姿は似通ってくるものだ。
(だが……)
プログラムに限らず、人が作ったものにはその端々に作り手のクセが出る。これは消そうと思ってもそう簡単に消せるものではない。
理性ではわかっていた。ただ感情が、積み上げてきた信頼がその事実を否定していた。
「……なんだ? 」
 オペレーション・ルームの照明が不意にちかちかと瞬いた。故障か? だとしたらずいぶんとタイミングの悪い……。
 グレンの嘆きは長くは続かなかった。照明の明滅が予備動作だったかのように、次の瞬間には照明を含むほとんどの電子機器の電源が落ちた。窓一つない室内が暗闇に覆われる。
「どうした! 」
「わかりません! システムが全部止まっています! 」
 叫び声での応酬は非常電源が作動するまで続いた。非常灯の頼りない明かりが室内をかすかに照らす。いくつも並べられたディスプレイが一斉に再起動を始めた。エラーログを読み取った各班から報告が上がってくる。
「アルファチーム、システムの強制終了のため接続がカットされました。制圧達成は未確認」
「ベータチームから報告、外部からの妨害は止まりましたがディフェンスプログラムにもエラーが発生しています。復旧までは時間がかかりそうです」
「ガンマチームは……」
 シーリンが報告を述べようとしたところでエアロックのドアが開いた。足音も荒々しく、キングストン=メイヤーが秘書官を引き連れ入ってくる。
「カミンスキー君、なにが起きた? 」
「……オベリスクの基幹システムがダウンしています。しかし、正副予備の三系統が同時に不具合を起こすとは考えられません。おそらく外部からの攻撃です」
 それもかなりの腕前の、とグレンは心の中で付け足した。心当たりは一人しかいない。
「それは先ほど解析の妨害をしてきたのと同じ輩かね? 」
「……確証はありませんが」
「ーーふむ。それなら……」
「あ、あの」
 シーリンが二人の会話に割り込んだ。傍らに控えていた秘書官が露骨に嫌そうな顔をするが、意外にもメイヤーが続きを促した。
「どうした、コール技術官? 」
「さ、先ほどの大規模攻撃のお陰で侵入者の居場所が分かりました。サウスブロック第九地区、ウィークストリートからで間違いありません」
 声は上ずっていたが端的に纏められた報告だった。メイヤーの顔つきが変わる。グレンが不可解そうに問いただした。
「フェイクという可能性はないのか? いくらなんでも特定が早すぎるが……」
「それがどういう訳か全く偽装がなされていなくて……」
 ミスか? グレンは自問する。まさかあいつほどのやつがそんな初歩的なミスを犯すはずがない。ということは……
(ーーなにか向こうにとっても予想外の事態が起きている……? )
「市長……」
「この件はこちらに任せたまえ、カミンスキー君。君たちエンジニアにはシステムの復旧と、何より”ブランク・ルーム”へのアタックを再開をしてもらわなければならない」
「攻撃の再開ですか? しかしこの事態です、まずは市内の安全がどうなっているか確認しなければ……」
「カミンスキー君、考えても見たまえ。敵がオベリスクにハッキングするだけの技術力をもっているとして、どうしてこのタイミングなんだ? 」
「それは……」
「向こうは明らかに我々の解析を妨害したがっている。ここで引くのは敵に無駄に時間を与えるだけだ。今解き明かさなければ永遠に機を逸することになりかねない」
 メイヤーの主張がもっともだということはグレンにも理解できた。あいつの目的が何であれ、”ブランク・ルーム”の中身を守りたがっている。次に相対したときにはさらに強固なプロテクトを築いていることだろう。
「ーーセントラルサーバー、一部ですが復旧しました! 情報処理能力平時の六〇パーセントまで回復しています! 」
「行きたまえシティ主席エンジニア、グレン=カミンスキー。私が何のためにキミを選んだのか分からない訳ではあるまい? 」
 わずかな沈黙があった。シーリンの場所からはグレンの表情が伺えない。しかし彼は背筋を伸ばし、市長に向けて恭しく敬礼を捧げた。
「わかりました。攻撃を再開させていただきます」
 シーリンが気遣わしげな目でこちらを見ているのが分かったが、グレンは気づかない振りをした。先ほどまでと同じように周囲に指示を飛ばし攻撃の準備を整えいく。市長はその様子を確認すると、足早にオペレーション・ルームを後にした。
 かつかつと廊下に革靴の音が響き渡る。早足で進むメイヤーの顔は冷たく、険しいものになっていた。非常灯のみの明かりの中、落としたトーンで秘書官が彼に話しかける。
「……市長」 
「”ハウンド”を出す。生け捕りが望ましいが最悪の場合射殺しても構わん」
 秘書官は無言で頷くと暗がりの中へ消えていった。
 エレベーターホールでメイヤーは立ち止まった。ガラス張りになった壁からは市街が一望できる。彼は窓際に立ち、数百万の市民の顔を思い描きながらそれを眺めた。
「ーーこの街は私たちのものだ。いつまでも掌の上で踊らされていると思うなよ」
 常に明かりがともり不夜城とも称されるこの街が今では暗く沈みきっている。もう何年も見たことのない月と星が夜空の中に浮かんでいた。
『……』
 アイリスは先ほどから目を閉じたまま一言も発していない。ライフラインの維持に集中しているのだろう。そしてミコト自身にも彼女を気にかけるような余裕は全くなかった。
 シグマドライバ。大学時代にグレンと思いついたアイデアを元に生み出したとっておきのツールだ。それを駆使して”キー・ストーン”��中を、深く深く潜行していく。
 システムダウンの影響はこの砦の中にも及んでいる。街の蠢きすら聞こえないしんと静まり返った部屋の空気は深海のように二人の身体を包んでいた。着底。システムの中の最古の記憶領域にミコトは辿り着く。
 残された日付はもう何百年も昔の物だ。埃にまみれた記憶領域の中を慎重に探索する。潜行開始からすでに二分、時間はない。逸る気持ちを抑えつつも、先へ先へと進んでいく。
「……あった」
 プログラム・アポトーシス。生命が個体をより良く保つために自らの細胞を死に至らしめてしまうという機構。そんな名を付けられたプログラムが深部階層に丁寧に格納されている。発動すれば数百万といった人々を殺しかねないそれは気が抜けるほど簡潔なアルゴリズムで記述されていた。
 これを消せば終わる。コードを選択し、デリートキーを押し込んでーープログラムは消えなかった。
 カチッ、カチッ。何度試してみてもプログラムは消えない。あざ笑うかのようにそこに存在し続けている。
「このっ……! 」
 それなら上位階層ごと消し去ってやる。ミコトは選択範囲を広げようとするが、「彼女」の声がそのその動作を押しとどめた。
『無駄だよ。それは大事なシステムの一部だからね。消させるわけにはいかない』
 声がしたほうにミコトは振り返った。赤い培養液に満たされたカプセルの中で、「彼女」はかすかに笑っていた。目は開かれ、身体の侵蝕も止まっている。確かに彼女の顔だった。確かに彼女の声だった。だがそこにいるのはミコトの知る少女ではなかった。
「アイリス……? 」
『アイリス、か。なるほど、確か前世紀の神話の中にそんな名を持つ女神がいたな。良い名だが、これにつけるには少々もったいない気もするな』
「誰だ、お前は」
 問いつめる声が震えていた。得体の知れないおぞましさをミコトはこの声の主に感じていた。そんな彼の心のうちを知ってか知らずか、「彼女」は口の端をわずかにと持ち上げてにやりと笑った。
『ここまで来たのは私が生み残されてから初めてだ、ミコト=カツラギ。たかだか二百年程度でここまで辿り着けるとは想像もしていなかった。称賛に値するよ』
 定型文のような祝辞を述べてから「彼女」は部屋の中をきょろきょろと見回し始めた。あちらからこちらへ。そっちから向こうの隅へ。興味深そうに眺め回す。
『よしよし。まだ設備自体に痛みは来ていないようだな。私の設計に誤りはなかったということか』
「さっきから何の話をしているんだ」
『おや、キミともあろうものがそんな質問をするのかな? どうせ察しはついているのだろう? 』
 ミコトは顔をしかめた。
『分かってはいるが認めたくないーーそんなところかな。誰しも直視したくない事実というのはあるものだ』
「黙れ。お前には言ってやりたいことが山ほどある」
 ほう、と「彼女」はわざとらしく目を大きく見開いてみせた。
『何かなーーといいたいところだが、まあ想像はつくよ。これのことだろう? 』
 これーーもう胸から上しかなくなった少女の身体を示しながら答える。カプセルの中、ケーブルに繋がれた聖女。何もない場所(”ブランク・ルーム”)を守るために捧げられた生け贄。
『しかしこれは仕方のない犠牲なのだ、ミコト=カツラギ。優れた技能をもつキミなら分かるだろう』
「分からないね、分かりたくもない」
『まあそう言うな。ここは一つ昔話をしようじゃないか』
「……」
 何も言い返さないのを了解の証と受け取ったのか、「彼女」は幾分芝居がかった口調で語り始めた。この街にとっての創世、その神話とも言うべき話を。
『あるところに、非常に科学が発達した街があった。彼らには作物を育てるための豊かな土地も、工業製品を作るために使える資源もなかった。ただ優れた頭脳と技術だけがそこにあった』
『街は技術を売り物にして生きてきた。人が生きるためには例外なく技が必要だ。技があればなんだって生み出せる、作り出せる。モノではなく技術を使い、街は偉大な発展を遂げた』
『ところがある日、街の中で諍いがおこった。技術は街の人々の生きる糧であり、富の源泉でもある。技術を独占しようとする人々とそれに反抗する人々の間の争いはほんの少しの火種のせいで大きく燃え上がった』
『街を守るための技術は街を焼くために使われた。人々を飢えから救うための技術は人々に毒を飲ませるために使われた。不釣り合いな技術に囲まれた人々は自分たちがどんなことを出来るモノを生み出してしまっていたのか、まったく自覚していなかった』
『街は滅び、人々は散り散りになった。後に残されたのは技術だけ。謝った使われ方をした可哀想な技術たちだ。数百年経ってーーそれを人々はまた手に入れようとしている』
 「彼女」はそこで言葉を切った。哀れむような、あきらめたような、そんな不思議な目でミコトを見つめる。
『我々はキミたちに同じ過ちを繰り返して貰いたくないのだよ。技術は残す。だが管理しなければならない。過ぎたる炎はその身を焼く』
「ーーアイリス一人に罪を負わせてもか? 」
『最高のプロテクトのためには必要だったんだ。生体分子の振る舞いはもっとも解析が難しい物の一つだったからねーーもっとも、そのプロテクトもキミたちの前に破られてしまいそうだが。独自に発展したのはハッキング技術ばかりとはね。まったく人間というものは欲深い』
 嘆くように「彼女」は言う。
『隠せば隠すほど暴こうとし、少しでも役に立ちそうなら何が副産しようが顧みない。そして今も技術を巡って争いを繰り広げている。何年何百年経とうが人間というものは変わらない』
「……なるほどね、アイリスが死にたがった気持ちも分かる気がする」
 ミコトは立ち上がった。声はまだ震えていた。恐れではなく、怒りのために。
『キミの同情は理解できるよ。だが無闇な争いを起こさないためにもーー』
「言い訳は寄せ。お前らのつまらない自己顕示欲につきあう気はない」
『自己顕示欲? 』
「ああ。お前らはなんだかんだいって自分たちが作った技術を抹消するのが惜しかったんだよ。だからこんな回りくどい方法で封印した。使いたくなったらいつでもまた引っ張りだせるように。僕が彼女に同情したのはそのつまらないエゴにつき合わされているからだ」
 ミコトはカプセルの中の彼女を見つめた。彼女の口を借りてしゃべっている「彼女」ではなく、だれよりもこの街と人々を愛していたアイリスを。誰にも知られることなく犠牲になっていた少女を。
『わからないね、ミコト=カツラギ。技術は富の源泉だ。何もないこの土地に人が生きるためには技が必要だった。我々の遺産がなければこの新たな街は存在しなかっただろう。もちろん、キミもだ』
「なければ良かったんだよ、この街なんて。過ぎた技術は世界を歪ませるーーお前の言った通りだ」
 ミコトはキーボードを操作した。起動したハッキング・プログラムはいとも簡単にロックを打ち破る。創造主は今、ミコトの目の前で無防備な姿で晒されていた。「彼女」の顔が驚愕に歪む。
『そんな……! 』
「どうした。ここの人間がハッキングが得意だと言ったのはお前だぞ? 」
『……私を消去するというのかね、ミコト=カツラギ』
 ミコトは答えない。
『いずれその決断を後悔することになるさ。パンドラの箱を開けてでてきたものが何か、知らない訳ではあるまい』
「でも最後に希望が残った」
 かたんと軽い音を立て、エンターキーが入力された。強制終了、メモリ・フォーマットスタンバイ。再起動を開始します。
「……」
 ミコトは無言でアイリスを見上げていた。ハッキングは再開され、わずかに残っていた身体の部分も分解が再び始まっている。まだ目は閉ざされたままだが、お陰で彼女が痛みを感じなくてもすむのならそれも良いだろう。
 自壊プログラムはデリートされ、システムのダウンも回復した。妨害のなくなったグレンの解析は順調に進んでいる。使ったラップトップやメディアディスクは記憶媒体部分を粉々に砕いたのでデータの復元は不可能だろう。今度こそミコトのやることは残っていない。
 長いようで短い二年間だった。心にぽっかりと穴があいてしまったような喪失感が身体の中を流れていた。
『……ミコ、ト? 』
「おはよう、アイリス」
 彼女が目覚めたようだった。眠たげな目がゆっくりと開かれ、綺麗な虹彩が現れる。まだ夢の中にいるようなぼんやりとした眼差しをミコトに向けながら、彼女は呟くように話しだした。
『良い夢を、見ていた気がするの。街の中を自由に歩き回って、みんな笑顔で、風のにおいがして、それでーー』
 不意に口をつぐむ。自嘲を感じさせる微笑みは諦めと憧れが入り交じっていて、ミコトは何も言えなかった。
『ごめんね。おかしな話をしちゃったみたい。忘れて』
「アイリス……」
 侵蝕はやむことなく淡々と続いていた。美しい身体は美しく、煌めくように消えていく。
『どうしてかしらね。もう痛くないの。だから、心配しないで』
 言葉が見つからなかった。ミコトは口を真一文字に強く結んだ。
『あなたにはいくら感謝してもしきれない。私の代わりに生きて、幸せになってほしい』
「……約束する。キミが安心して眠れるように」
 アイリスは最後に花のように笑い、泡の中に消えていった。彼女を長い間戒めていたケーブルは、カプセルの底に落ちてカランという音を立てていた。
 一人いて、二人になって、また一人になった。機能を果たしたカプセルはもはやその動作を止めている。静寂と余韻。苦闘の末に与えられた平穏。だがそれは長くは続かない。
「ーー突入! 」
 キャットウォークの上の入り口扉がけたたましい音とともに蹴破られた。総勢七名、ライフルを構えた黒ずくめの男たちが無遠慮に入り込んでくるのをミコトは冷めた目つきで眺めていた。
「ハウンドか。市長も容赦がないな」
「ーー動くな、システム不正アクセスおよび国家反逆罪の疑いで逮捕する」
 七つの銃口は訓練された動きでミコトの周りを取り囲んでいた。テーブルが押し倒され、上においてあった物が散乱する。床にぶつかったオレンジは無惨に砕けてその中身をさらけ出した。
「おいおい、あんまり汚さないでくれよ。ここの掃除は大変なんだ」
「黙れ! 必要とあれば射殺の許可も出ている! 」
 リーダーの男が脅すように銃を構え直した。しかし彼はたじろがない。薄ら笑いさえ浮かべている。
「投降しろ。おとなしくしている限り身の安全は保証する」
「ーーいやだね。彼女を裏切るくらいだったら、約束を破る方がましだ」
「っこの! 」
 ミコトはベルトに挟んでいた小型の拳銃を取り出しこめかみに押し当てた。乾いた銃声が、主のいなくなった部屋に鳴り響いた。
Scene 7 :
 街は今日もいつも通りだった。今日という日を生き抜き、明日という日を迎えるため。人々は相も変わらず路上に店を出し、威勢のいいかけ声を上げ、市場には品物を売りさばこうという気持ちのいい熱気があふれている。グレンはそんな通りのオープンカフェの席に座り、売店で購入した新聞を広げていた。
「……」
ーーメイヤー市長ブランク ・ルームの完全解放を宣言。主席エンジニアのカミンスキー氏は特別表彰へーー
 広場で演説する市長の写真がトップを飾り、紙面には長年の悲願がなされたことに対する威勢のいい言葉が並んでいる。しかし無表情なグレンの目は社会面の片隅に注がれてい���。
「はぁはぁ、すみません。遅れてしまって」
 駆け寄ってきたのはシーリンだった。いつもより少しだけ華やかな装い。走ってきたせいかその顔はほんのり上気している。
「いや、気にしなくていい」
「 でも……」
 グレンは新聞を畳むと近くにあったゴミ箱の中に無造作に投げ込み立ち上がった。
「行こう、シーリン。時間というのはあっという間に過ぎてしまうよ」
 二人連れ立って賑やかなストリートを歩く。ふとグレンは立ち止まって上を見上げた。真っ青な空を切り裂く総合市庁舎オベリスクは今日もそこにそびえ立ち、街のすべてを監視している。
「グレンさん? 」
「……いや、なんでもない」 
 グレンは巨大な墓標に背を向けると、シーリンと共に街の人混みの中へと消えて行った。  
fin. 
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ura-ki-blog · 7 years
Text
キスの日
は、昨日だったのだけど、取り敢えず書いたから上げる。
刀剣乱舞 二次創作 刀さに うぐさに
 そこは、まるで海の底のように美しかった。
 というのは例えでしかなく、そう今の自分の思考がその言葉を導き出したというだけだ。
 彼、鶯丸が立っているフロアには、濃紺のカーペットが贅沢にも敷き詰められている。壁、天井も全て濃紺で塗り固められ、その大広間一室がまるで海の底に沈んでいるかのようだ。
 吊り下がったシャンデリアの灯りは、そこに集っている人々の顔を青白く照らし出している。
 審神者であったり、刀剣男士であったり、政府関係者であったり、このフロアには様々な人が様々な目的で集っているのだ。 
 フロアの中央には人々が集い、食事が置かれているテーブルは端々にあり、奥には美術品を展示したブースが設けられている。 
 美しい衣装に身を包んだ人々は、海の中で鱗やヒレをひらめかせて���る魚たちの群れだ。フロアを行き交うスタッフたちは、まるで群れを離れて泳ぐ魚のようにその人波を上手く避けて歩く。
 今、鶯丸は政府主催の刀剣男士のお披露目という名目の譲渡会に参加している。様々な事情で審神者の手を離れた刀剣男士たちの中で、次の主を探している希望者のみが参加する譲渡会だ。
 刀解して本霊に戻る刀剣たちが通例の中で、現世で次の審神者に仕えることをよしとする刀剣は稀だ。しかも次の主を求める刀剣たちの練度は高く、精神面も安定しているため非常に頼りになる。
 戦力増強を求める審神者たちにとって、この譲渡会に名を連ねる刀剣男士たちは喉から手が出るほど手に入れたい存在なのだ。
 このフロアを海の底だと評した鶯丸もまた、その中の一振り。
 名前と同じ色の艶やかな髪と涼しげな目元、口元はどこか緩んでその端正な顔立ちに飄々とした雰囲気を添える。彼の戦装束はストイックなデザインであり、腰に佩いた太刀がなければどこかモデルのような出立だ。
 容姿だけでなくレア刀剣としても有名な彼は、皆の視線を一身に浴びている。
 今回は参加刀剣男士が少ない為、練度は上限を迎えており、かつレア刀剣でもある彼は間違いなく注目度が一番の刀剣男士というわけだ。
 自分に絡む様々な温度や湿度をもつ視線を気にした風もなく、鶯丸はフロアの中をやはり泳ぐように歩いている。
 人波を掻き分け、オードブルの並ぶ真っ白なクロスの掛けられた長いテーブルを横切り、漸く��当ての場所に辿り着いた鶯丸だったが、そこには先客がいた。
 目の前に突き立つガラスの柱に閉じ込められた、一枚の絵画を熱心に見ている少女の背中がそこにはあった。
 絵はアメリカの海岸沿いの街を描いたもので、レンガ色の建物、山肌の緑、海の青などが対比となっていて美しい小品だ。
 その絵を見ている少女のセーラー服に包まれた体は、布の余り方で随分と華奢だと分かる。肩甲骨まで伸びた黒髪とまっすぐな脚、日に焼けているから大人しい方ではないらしい。
 その絵画を真摯に見つめる横顔に、何故か強く惹きつけられた鶯丸だった。
 顎のラインに幼さを残した少女の、しかし凛とした表情はどこかアンバランスでその光景が心に爪を立てる。あの目に見つめられたなら、どれほどの心地がするのだろうか。
 彼女の視線が注がれ続けているその絵画が羨ましいと呟いて、鶯丸は足音を立てずに彼女の隣へと歩み寄った。
「───知っているとは思うが、その絵の作者は竹久夢二だ」
「え、これ、そうなんですか?これ、油絵ですよ?」
 彼女は鶯丸の言葉に驚いた様子で彼を見上げ、目を見開いている。
 驚いた様子がまるで小動物のそれだったので、鶯丸は堪え切れずに吹き出した。少女はあたふたと髪やら服やらを直し始める。どうやら自分の見目を笑われたと思ったらしい。
「容姿を笑ったわけじゃない、気にするな」
「あ、そうなんですね、よかった。制服なんて恥ずかしいし……私以外は皆さん大人だったから、場違いだしで気にしていて。あ、それで、あの絵の作者なんですけど」
「竹久夢二だと答えたが」
「それです! あの方は、こんな油絵も描いていたんですね」
「ああ、日本画で大成するまでは試行錯誤していたと伝わっている。その絵も、その一環で描かれたものだろう」
 少女の目はまるで万華鏡のように、様々な感情の破片を浮かべて煌めいていた。鶯丸は人の身を得てからついぞ感じた事のない焦燥感に苛まれ、思わず彼女の細い手首を掴む。
 驚いたのは少女の方だろう。見知らぬ刀剣男士に手を掴まれたのだ、彼女が慄いて体を引いたとしても仕方はない。
 身を捩った彼女のスカートが翻った。
 それはまるで魚が尾びれを揺らして危険を回避する仕草に見え、己の前から泳ぎ去ってしまうのではないかと危惧した鶯丸の手に力がこもる。
「刀剣男士を探しに来たんだろう?」
「そうです、けど。あの、手、痛いから離して」
「気にするな、それよりもさっきの答えを聞かせてくれ」
「気にします! 探しに来たけど、あの」
「そうか、ならば話は早い。俺にしておけ」
 これほど間の抜けた顔を人はするものか、と鶯丸は少女の顔をまじまじと見つめる。
 口をぽかと開けたままで、少女は空気を求める魚のようにはくはくと唇を震わせた。その幾分間抜けな表情に溜飲が下がった鶯丸は、自分が何に対してどういう感情を持っていたのかと考え始める。
 ひとりと一振りを取り囲む来場客と刀剣男士たちのざわめき、それら全てはこの海の底から立ち上る泡だ。ぱちぱちと弾けては不協和音を奏でている。
 鶯丸の手を外そうと躍起になっている少女を、どうして己は主にしたいと思うのか。当てはめても当てはめても該当する感情はなく、頭の中はエラーの文字で埋めつくされた。
 刀剣から人の身へと顕現していく過程で、鶯丸の頭の中に流れ込んだたくさんの言葉と知識と感情。顕現してより五年、彼はまだ、それらを上手く使いこなせていない。
 そも、それを必要とも思っていなかった……はずなのだが。
「……面白いな」
「何言ってるんですか? あの、自覚ありますか、鶯丸さんはここの一番の注目株なんですよ?」
「ああ、それは理解している」
「理解してるんですか?! なら、離して下さい!」
「いいや、それは出来ない。なぁ、それよりも俺の主にならないか?」
 二度目の勧誘を口にすると、周りのざわめきが一層激しくなった。
 鶯丸には気にするほどのことでもなかったが、少女の顔色が見る間に青ざめていく様子が見えるからこれでは駄目だと考え直す。
 彼女を守ることは、彼女の刀剣男士にしか許されない仕事だ。その仕事はきっと、己が好きなお茶のように甘美な思いを己にもたらしてくれるに違いない。
「審神者、俺が周りを黙らせることが出来れば主になってくれるか」
「……出来るなら、いいですよ」
 外野の言葉に傷つけられて眦に溜まる涙が青白いライトに照らされて光り、それは彼女を彩る宝石のようだ。心無い人の言葉に決して涙を落とすまいとする少女の矜持の高さが、また鶯丸の心の中に波紋を広げる。
「刀剣男士を欲してここに集っている審神者たち、主を求めてここに集った同胞たち、政府関係者たちに告ぐ。古備前の鶯丸は、この審神者を主とし、己の持てる全てでこの審神者を守ろう」
 高らかに宣言される鶯丸の言葉は、しかし、まだ外野を黙らせるまではいかない。ざわめきが一層激しくなったところで、鶯丸はその場に跪いた。
 そうして、少女の細い足を無造作に掴む。その動きに周りも少女も唖然とし、一瞬で辺りに水を打ったような静寂が訪れた。
 ああ、やはりここは海の底だと鶯丸はひとりごち、彼女の脛に顔を近づける。
少女は何が起こっているのか理解出来ず、ただただ鶯丸を見下ろしていた。彼女に、周りに見せつけるように、鶯丸はその滑らかな脛に唇を押し付ける。
「人の考えることはよく分からんが───今日はキスの日とやらだろう。これが何を意味する行為なのか分からない者もいるだろうから、無粋だが言っておく。この行動の表す意味は、〝服従〟だ。これを見てまだ異を唱える者がいるのならば、俺の太刀で相手をしよう」
 鶯丸の発した言葉は 全てを圧倒する響きを持って辺りに響いた。
 そうして、沈黙が続くフロアを見回した彼は、己が望む少女を見上げて眦を撓ませる。
「審神者、賭けは俺の勝ちだ。主になってくれるな?」
「……は、はい」
 有無を言わさない彼の言葉に、少女は頷くより他に選択肢はない。
 エラー音とエラーの赤文字を吐き出していた鶯丸の頭の中で、それら全てがオールグリーンになる一瞬が訪れた。
 そうして静まった頭の中に、ふつりと浮かんだ言葉が漸く腑に落ちて、彼は更に笑みを深める。
 彼がまず導き出した思いの名前───それは〝愛しい〟だった。
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