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#代官山 賃貸
ari0921 · 9 months
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和六年(2024)1月8日(月曜日)
    通巻第8084号 
書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW 
 中国の資本、土地買収、爆買いを歓迎した浅はかな日本
  移民を促進する日本政府は頭がおかしくないのか
佐々木類『移民侵略  死に急ぐ日本』(ハート出版)
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 中国の「静かなる日本侵略」の現場に飛んで、積極的な取材を重ねる『突撃隊長』の佐々木類(前産経新聞論説副委員長)がシリーズの第六弾に挑んだ。
 日本支配を狙う中国共産党の尖兵が在日中国人、あるいは既に帰化した中国人工作員。その数、帰化人をのぞき76万人!
 すでに日本列島のあちこちに「中国人居住区」がある。もちろん、全員がスパイではなく、ごく少数だが日本に溶け込もうと汗を流す中国人も、佐々木氏はちゃんとインタビューして公平を期している。
偏見をもって中国人を見ているのではなく客観的に彼らを観察し、その背後にある中国の対日戦略を読み取ろうとする。
 沖縄の離島を購入した中国人女性がいた。
国家の研究機関に巣くう学術スパイがいる。日本国内に中国公安の闇警察がある。栃木県小山市には「中国農場」があって、横浜中華街には中国人経営の激安八百屋、埼玉県川口にチャイナ団地、列挙すればキリがないが、いまどうなっているか。スパイ中国人らはいま、いかなる陰謀を展開しているのか。
 また日本政府が推進してきた移民政策の間違い、外国人土地所有法改正、改正入管法の問題点などホットな問題のすべてを簡潔に要領よく解説される。
 それにしても、中国の資本、土地買収、爆買いを歓迎した日本人、中国からの移民を促進する日本政府は頭がおかしくないのか? 
 いま日本が相手にしているのは「共産党の意向がすべてに優先する国家レベルの反社会勢力」なのである。
 そうだ、かれらは「反社」である。
 賃金が安いからと行って深く考えることもなく中国と合弁を組んだら、当てが外れ、撤退しようにも税金だとか、労働条件とかの難癖をつけられ、「官僚主義的な小役人に窓口レベルで小突き回され、賄賂を要求された挙げ句に『身ぐるみ脱いで全部置いていけ』となる」のが落ち。
 無国籍におちいり、国家利益は顧みないメディアがグローバリズムを煽り、それを真に受けた軽佻浮薄の政治家は、なんと中国企業系列にパーティ券を買って貰っていた。チャイナの買弁政治家が目立つのは、こうしたカラクリがあった。
 外国人の土地所有規制は、大正時代に制定された「外国人土地法」の活用で切り抜けられる筈だったのだ。
しかし結果は「仏作って魂入れず」。
実効性を高める政令を制定せずに戦後のドサクサで廃止された。
 「ところがどっこい。これを補うかのような法律が戦後日本に存在している。昭和二十四年に制定された「外国人の財産取得に関する政令51号」では「外国人や外国資本による財産取得に関して制限をかけることが出来たのである」(65p)
 当該財産とは「土地、建物、工場、事業所、財産の賃借権、使用貸借の基づく借り主の権利、地上権、著作権」だった。
ところが、これも国会で審議されないまま昭和五十四年に廃止されていた。 
 移民については欧米の悲鳴を聞いた方が良い。
人道的見地から無制限に受け入れた結果、ドイツではゲルマン精神は破却され、婦女子が強姦されてもメディアは報道しない。フランスはフランス語の国ではなくなろうとしており、米国は犯罪が急増し、治安が極度に悪化した。移民反対が多数派の聲となった。
 移民促進派がリベラル、人道主義であり、移民に反対もしくは規制強化けを唱えると、排外主義、レイシストと批判されてきた。脳幹が左翼ウィルスの侵された結果である
 「客人を自宅に招くとする。土足で家に上がるのを許すのか。冷蔵庫を勝手に開けて中の食べ物を食べるのを許すのか。家のルールを守って貰うのは当たり前のことだ」(222p)
 しかし「中国系移民は、移住先で出身地や宗族単位で強い絆で結ばれた共同体をつくる。自分たちが住んだ場所が「中国である」とばかりに受けいれ国の慣習に関心を持たず、聞く耳を持とうとしない例もある」
 このまま日本は自死するのか、目覚めるのか、日本はその瀬戸際にあると佐々木氏は訴えるのである。
 そろそろトランプのように、あるいはオルバンのように、「移民を追い返せ」と主張する政治家がでてきてもよいのではないか。
 日本の深刻な状況をえぐったルポである。
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kennak · 1 year
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国土交通省の元事務次官が昨年12月、羽田など各地の空港でビルの運営などを手がける民間企業「空港施設」(東京都)の首脳に対し、国交省OBの副社長を社長にするよう求めていたことがわかった。この元次官は、東京地下鉄(東京メトロ)の現会長、本田勝氏(69)。空港施設社を訪ねて自身の立場を「有力なOBの名代」と説明し、社長に就任させれば「国交省としてあらゆる形でサポートする」とも語っていた。  空港施設社は東証プライム上場。同社の事業をめぐっては、国有地の使用や、貨物施設の賃貸事業に必要な事業者指定など、国交省が多くの許認可権を持っている。そうした権限を背景に、国交省OBが民間企業の役員人事に介入しようとした可能性がある。  複数の関係者や朝日新聞が入手した会社側の記録によると、本田氏は昨年12月13日に同社を訪ね、乗田俊明社長と稲田健也会長と面会。元国交省東京航空局長で同社の副社長に就いている山口勝弘氏(63)を、今年6月に予定される役員人事で社長にするよう求めた。  同社では1970年の設立以来、国交省系のOBが社長に就いていた。しかし、社長肝いりの事業が損失を出すなどして経営刷新を求める声があり、2021年から、日本航空(JAL)出身の乗田社長とANAホールディングス(HD)出身の稲田会長という体制になっている。2社は空港施設社の主要株主。 先輩OBの名を挙げ「有力なOBの名代」  本田氏は面会の席で、「方針が固まった」「国交省の出身者を社長にさせていただきたい」と発言。自身の立場を「有力なOBの名代」と説明し、先輩の元次官の実名を挙げて、元次官も同様の考えだと伝えた。山口氏が社長に就任すれば「国交省としてあらゆる形でサポートする���とも語ったという。  空港施設社側は「上場企業なので、しっかりした手続きを踏まないとお答えが難しい」と答えたという。  本田氏は国交省で航空局長、官房長、事務次官などを歴任して15年に退官。損保会社の顧問を経て19年6月から、全株式を国と都が保有する東京メトロの代表取締役会長を務める。この会長人事は閣議了解もされている。東京メトロと空港施設社の間に資本関係はない。 本田氏「圧力をかけたわけではない」  本田氏は取材に、面会について「いろんな方々から頼まれて」と経緯を説明。「相談に行ったということ。あとは会社で手続きを踏んでほしい」という趣旨だったとし、「国交省としてサポート」との発言については「OBというか仲間としてサポートするという気持ち」と語った。自身の言動について「国交省を笠に着て圧力をかけたわけではない。そう受け止められたなら申し訳ない。軽率のそしりは免れない」と述べた。  本田氏が名を挙げた元次官は「2年前に国交省OBの(空港施設社の)社長が退任する際に調整を(本田氏に)頼んだことはあるが、昨年の面会は知らない」と述べた。  国交省人事課は取材に「国交省は関与していない。退職した者の言動についてコメントする立場にない」とした。  乗田社長は取材に本田氏の訪問を認め、「弊社は上場企業であり、取締役候補者は指名委員会で決める旨を回答した」と述べた。山口氏は会社を通じて「事実を承知していない」と回答した。 元公務員のあっせん、規制するルールなし  空港施設社は従業員約120人、22年3月期の売上高は約237億円。昨年6月時点で、役員13人のうち3人が国交省OBとなっている。  国家公務員法は、省庁による天下りのあっせんや現役職員による利害関係企業へのポストの要求などを禁じているが、元職員によるあっせんなどを規制するルールはない。(畑宗太郎、柴田秀並、編集委員・伊藤嘉孝)
国交省元次官、「OBを社長に」要求 空港関連会社の人事に介入か:朝日新聞デジタル
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yotchan-blog · 2 months
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2024/7/19 15:02:19現在のニュース
米共和党大会「大きな転換点となる可能性」中林美恵子・早大教授(毎日新聞, 2024/7/19 14:59:51) 体操女子・宮田笙子主将がパリ五輪代表辞退 喫煙・飲酒認める(毎日新聞, 2024/7/19 14:59:51) 高齢母が買わされた仕組み債、溶けた教育資金 損賠訴訟 - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2024/7/19 14:56:58) 兵庫知事、ワイン受け取り認める 公の場での発言を受け町長が届ける(朝日新聞, 2024/7/19 14:51:38) 泥酔者を送り届けた警察官2人が刺され負傷 男を殺人未遂容疑で逮捕(朝日新聞, 2024/7/19 14:51:38) 岩手内陸北部震源の地震、最大震度4 津波の心配なし(朝日新聞, 2024/7/19 14:51:38) 喫煙と飲酒を確認 体操女子・宮田笙子がパリ五輪出場を辞退 日本体操協会が緊急会見([B!]産経新聞, 2024/7/19 14:49:45) <社説>兵庫県知事告発 公益通報者守る制度に:東京新聞 TOKYO Web([B!]東京新聞, 2024/7/19 14:49:03) 群馬県営住宅家賃を過大徴収 計56万円 来年1月までに全容調査:東京新聞 TOKYO Web([B!]東京新聞, 2024/7/19 14:43:14) 「兵庫知事は辞めろ」パワハラ疑惑で市民ら100人が抗議集会 | 毎日新聞([B!]毎日新聞, 2024/7/19 14:42:54) 「ほとんどあの日のまま」 半年後でも「爪痕」が残る能登の光景 | 毎日新聞([B!]毎日新聞, 2024/7/19 14:42:54) 免許不要の電動「原付」、路線バス補う手段に…和歌山市で貸し出しサービス([B!]読売新聞, 2024/7/19 14:40:09) 宮田笙子選手のチーム離脱で日本体操協会が会見 喫煙疑惑で調査、代表剝奪なら異例の事態([B!]産経新聞, 2024/7/19 14:36:56)
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imassamayr · 3 months
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地方住宅供給公社の賃貸住宅の家賃に、借り主が「減額を請求できる」などとする借地借家法の規定が適用されるかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第一小法廷(深山卓也裁判長)は24日の判決で、「適用される」との初判断を示した。適用されないとした二審判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻した。裁判官5人全員一致の結論。 住宅供給公社は、都道府県などが出資し、住宅が足りない地域などの住環境整備のため住宅の整備・管理などを行う。地方住宅供給公社法は施行規則で、物件の家賃は公社が近隣の家賃状況や経済変動などを総合勘案して決定できると定める。一方で借地借家法には、賃料が不相当な場合は当事者が家賃の増減を請求できるとの定めがある。  この訴訟では、神奈川県内で約1万4千戸を管理する県住宅供給公社が2004~18年、月額の家賃を最大約5万6千円から段階的に3万円程度上げたことに対し、住民側が借地借家法に基づく減額などを求めた。一審・横浜地裁と、二審・東京高裁の判決は、公社法の規定が借地借家法の規定に優先されるとして、住民側の請求を退けた。  しかし第一小法廷はこの日の判決で、公社法の規定は、「公共的な性格を持つ公社が、賃貸業務を行う際の規律を補完的に定めたものだ」と指摘。借地借家法の定めとは別に公社に家賃の決定権を与えたとは解釈できず、公社の家賃でも減額を請求できると判断した。高裁で改めて、公社の家賃増額が適正だったかなどが審理される見通し。  住民側の代理人弁護士は「神奈川県以外の公社にも影響する判決。都市再生機構(UR)にも法律に同様の文言があり、URの賃貸住宅にも影響する可能性があるのでは」と話した。
住宅供給公社の家賃値上げ「借り主は争える」 最高裁が初判断(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース
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digdesign · 2 years
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茶色いコンクリートで打ちっぱなし メキシコのメリダのジャングルの中に建つ住宅。 海外で建築を造りたい方は声かけてください。 英語とスペイン語対応可能です。 台湾でも造りたいんですが言葉の対応が出来ないのでジェスチャーのみでなんとか伝えます。 なんとかします。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 設計:DIG DESIGN ◆成城オフィス 東京都世田谷区成城1-1-5 成城TNビル4F ◆代官山オフィス 東京都目黒区青葉台2-7-20 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー #成城 #住宅設計 #建築家 #土地活用 #建築士 #リフォーム #設計事務所 #成城学園前 #注文住宅 #木造住宅 #ディグデザイン #家づくり #リノベーション #リノベ #店舗設計 #空き家活用 #空き家対策 #オープンデスク募集 #空き家 #商業ビル #賃貸 #建築設計 #デザイナーズ賃貸 #マンション政策 #不動産投資 #スペイン語 #英語 #DIGDESIGN #メキシコ #台湾が好きすぎて向こうで設計したい https://www.instagram.com/p/CkWntu2Szr0/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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マンション・物件探しの小牧市。西向きの礼金なし
広告:育児しながら簡単に稼ぐには… LINEの様なチャット形式で、プロが1分で対応する不動産サービス、最高です。珍しい不動産の新サービス。専任プロが担当となり、深夜0時まで親身に相談に乗ってくれる。内見予約も設定してくれる。しかも無料。利用者の声「話をよく聞いてくれて、気づいたら0時。世間で言う『モテ部屋』を探している事を伝えると、親身に聞き取ってくれた後、すぐに探してくれました。対応の速さ、話を聞いてくれる姿勢から、このサービスを利用して、安心ができたと思っています。あと、理想の部屋に住めて満足です!」業界新で無料の不動産サービス。最高です。※全国展開を想定しています。 秒速チャット不動産!内見で1000円もらえる?キャンペーン! ―このサービスはご存じですか?―やってみたいことが、でも実際どうやるの?このツールを使ってるんだ!例・日常の作業、このツールで自動化が!・1か月かかる…
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deepspeed · 3 years
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カブで思い出した。昔世話になっていたバイク屋の社長から聞いた話。
かれこれ12〜3年前、1人の女の子が安い中古のスクーターが欲しいと来店した。その時在庫していたのは5〜6万のディオ。彼女はバイクの知識は皆無で、その値段に驚き、その時は帰ったそうだ。ある時、早朝社長が軽トラで街道を走っていると、パンクしたチャリを押して歩く女の子を見た。
軽トラを止めて声をかけると以前店に来た女の子だと分かった。その場所は店から結構離れた場所。何処か行く途中か尋ねると、専門学校に行くと。じゃあ送ってあげるからとチャリを積み、帰るまでにパンクを直しておいてあげるからと車に乗せた。近くだと思った社長は行き先を聞いて驚いた。世田谷区まで行くと。
此処は神奈川県の大和市。世田谷区までは246号線で行っても30km位ある。近所の駅までだと思った。でも少し遠くに私鉄の駅があるからそこまで行くと勝手に思った社長。急ぎの用事があったので近くの駅まで送った。その夜彼女から電話があり、今夜は遅くなるから取りに行けないと。でも社長は遅くても良いから大丈夫と告げる。そして彼女がチャリを取りに来た。夜も23時過ぎ。
社長はバイトして遅くなったくらいに考えていた。だが、彼女は電車代を節約する為にかなりの距離を何駅分か歩いて来たと言った。社長は驚くよりも怒った。何で電車代くらいをケチるんだ! こんな遅くに女の子が1人で何かあったらどうするんだ! 彼女は謝り、涙目で何度も頭を下げた。社長も気まずくなり、詫びた。
そして彼女は事情を話しはじめた。山梨県生まれの彼女は東京の看護学校に通っていた。実家は裕福ではなく、仕送りも殆ど無くバイトしながら勉強している。住んでいる大和市は、たまたま親戚が住んでいて安いアパートを世話してもらったから。家賃は安いが、学校までの交通費が高く、どうにか節約する為に彼女は大和市から世田谷区までの中間の駅まで三ヶ月間毎日往復4時間かけて自転車で通っていた。
そこで原付があれば楽だし早く帰って来れてバイトの時間も増やせる。で、たまたま近くにあった社長の店に来た。だが、彼女には即金で5万は出せなかった。社長は困った。親切心だけならば、どうせ乗換の下取り、タダで引取ったポンコツ。適当に直して売り捌くつもりだったから彼女にあげてしまおうか?
社長は奥さんに相談。奥さんは、どうせ業者に流すか常連客に二束三文で売るなら彼女に安く譲りなさいと。しかし社長は、たとえ原付でも命の危険に関わる。何のバイクの知識も無い女の子にポンコツに乗せる訳にはいかない。そこで、とりあえずキチンと動く様に整備だけでもしておこうと思った。
整備してテストして、これなら大丈夫。しかし、値段をどうするか? 社長はまた悩んだ。5万が出せないのなら、自賠責、任意保険なんて知らないだろう。それにヘルメットや何やら…そこでまた奥さん登場。「全部まとめて5万にしなさいよ! アンタの工賃なんて要らないわよ!」
何故奥さんはそこまで彼女に肩入れするのか? 奥さんも看護師だったから。看護師の苦労をよく知っていたからだ。社長は彼女に連絡を取る。まだバイク欲しいの? 事の経緯を話し夜になり店を閉めた頃に彼女が来た。
「これ、ちゃんと安全に走れる様に整備したから。」彼女はお金はすぐに払えないと言う。またまた奥さん登場。「即金じゃなくて良いわよ! ある時払いの分割 払いよ!」 社長「え?」
で、結局込み込みで5万、毎月五千円。彼女は涙ぐんで喜んだ。翌日、奥さんが彼女の委任状を持って登録に行き、その晩に渡す事になる。乗り方は知っていた彼女は近所を一回りして大喜び。お財布から一万円札を社長に渡す。そしてまたまた奥さんが、「五千円よ! 無理しちゃダメでしょ! そうだ、夕飯食べて行きなさい!」そして三人でカレーを食べる夜。
それから彼女は毎日大和市から世田谷までバイクで通う。往復で70kmを超えるらしい。月に2、3度店に来て点検をする。あれから半年以上経った後の年始のある晩、彼女が泣きながら電話して来た。バイクが盗まれた。年末を実家で過ごした彼女が帰って来たら、アパートの駐輪場から彼女のバイクが無くなっていた。
社長の奥さんに付き添われ警察に被害届を出しに行く。多分見つからないと言い事務的に受理する警官に奥さんがブチ切れた。慰める立場の奥さんをなだめる彼女。怒りプンプンで店に帰って来た。その晩は社長、奥さん、彼女はしこたま飲んだらしい。
そろそろ学校が始まる。通学にはバイクがなくてはならなくなった彼女。新しく買う余裕も無い。払いも残っている。社長は暫く自分の原付を貸す事になった。ある日彼女が「同級生がスーパーカブに乗っていて、自分も乗れるだろうか?」と。そこで社長は閃いた。
店の客には地元の信金、新聞屋がいた。そこで使われているカブの整備、販売をしていて、廃棄するカブが何台かある。店の裏にも部品取り、廃棄待ちのカブが数台分あった。これを何個かイチで組める。彼女にそれを提案し、またまた奥さんに相談。「お金の話しは後で良いからとっとと始めなさいよ!」と奥さんのGOサイン。
そしてまた、社長のタダ働きが始まった。マトモそうな車体を選び、使えそうな部品を外し組み立てる。足廻りはプレスカブの丈夫な車体を組む。エンジンはどれもガタが来てる。バラしてチェックして組む。出来た。わずか3日で。
奥さんが彼女に電話して店に呼ぶ。「ほらこれ! あなたのカブよ!ウチの人がちょちょいってやったの。3万円でいいわよ。ある時払いね!」見た目は傷もあるし色もおっさん臭い青のカブ。またまた彼女は涙ぐんで喜んだ。奥さんが手取り足取り乗り方を教える。若いっていいわね~、覚えが早くて、ガハハハハ! 何故か奥さんが大喜びしていたらしい。翌々日から彼女のスーパーカブライフが始まった。
若い女の子がカブに乗ってる! それだけで店の常連の男達の感心。彼女目当てで通うヤツらも出る始末。中にはちょっかいを出そうとするヤツもいたが、 奥さんの硬いガードと彼女の真面目で素直な性格でみんなの人気者。運転と慣れて、友達も増えてバイクが楽しいと言い始めた。数ヶ月経ったある猛暑の日、事件は起こった。
店は奥さんの両親の土地にあり、両親は土地の別邸に住んでいる。つまり社長はマスオさん。その猛暑日に義父(以下爺さん)が倒れた。おそらく熱中症だろう。その日奥さんは登録に行っていて社長と老夫婦しか居なかった。婆さんが慌てて店に来て、爺さんが倒れた! と。そこにまたまた休みだった彼女が点検の為に来た。
看護学生の彼女は慌て狼狽える2人の前で的確に冷静に処置をした。そして救急車到着。的確な処置に隊員が驚く。看護学生だと告げ同乗する彼女。大事に至らなく爺さんは回復。病院に駆けつけた奥さんは泣きながら婆さんと喜ぶ。そして何故か社長は殴られたそうだ。
大事を取りその日は入院し翌日退院。老夫婦は是非お礼をと彼女を招く。後日訪れた彼女は恐縮していたらしい。社長夫婦には子供がいなかった。若い頃に奥さんは流産したらしい。あの一件以来老夫婦は実の孫の様に彼女を可愛がった。社長夫婦も。毎月のバイクの支払いは、老夫婦が「あの子からお金なんて取るな!」と大激怒して「私たちが払う!」って。でも彼女は払い続けた。
そうして彼女は看護学校を無事卒業し、2年間のお礼奉公で県内の病院に勤務が決まった。それからも彼女はカブに乗り続け、山梨県の実家にも年に数度帰省している。社長は相変わらず奥さんの尻に敷かれ、老夫婦は爺さんが亡くなり、婆さんは存命。その後彼女は良い人に巡り会い結婚した。結婚式では社長家族が実の家族よりも号泣していた。
俺の聞いた話しはここまで。少し盛ったけど全て事実。ありがとう。
ヒロイモノ中毒 昔世話になっていたバイク屋の社長から聞いた話
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kennak · 11 months
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埼玉県川口市でクルド人の犯罪が激増して問題になり、その対策が川口市政の中心的課題になっている!というエントリが度々ホッテントリ入りしている。またyoutubeのゆっくり動画等でも「クルド人」「川口」のテロップが入ったサムネの動画が投稿されている。結論から言うとそんな事にはなっておらん。川口市は『広報かわぐち』という広報誌を配布しているが、この10月号で犯罪認知件数が過去最低を記録しているとの広報を打っている。https://www.city.kawaguchi.lg.jp/material/files/group/3/202310-04.pdfこの一年で��昼の強盗事件、沿道商店に突っ込む大事故や死亡ひき逃げ、クルド人による病院での喧嘩騒乱などの事件が報道されて体感治安が低下している故だ。でも実際には治安は過去最高となっている。この問題を喧伝しているのはagora出身の石井孝明というライターで、産経新聞と夕刊フジがそれを元に記事を書くという構造になっている。石井のやり方は、川口、蕨を中心として、肌の浅黒い中央アジア、東南アジア系の人間が事故や事件、不法な業務、反マナー行動をしたものにクルド人を匂わす文言を付けて宣伝するという方法だ。それ故クルド人が毎日事件や不法行為をしているように見える。そんなにクルド人は増えているのか?日本にクルド人は何万人いるのだろうか?だが実際のクルド人の数は2000人程度である。人口60万人の川口市人口の0.3%だ。「あれもこれもクルド人」の安物ネガティブキャンペーンが成功しているのである。 それで今回はちょっとこの問題の背景を説明するよ。「クルド人とは何か、どういう民族か」などは産経以外の大マスコミや大学人が記事を書いてるからそういうのを参考してくれ。 地理「埼玉県川口市」でgooglemaps検索すると川口市の県境が表示される。https://www.google.com/maps/place/%E5%9F%BC%E7%8E%89%E7%9C%8C%E5%B7%9D%E5%8F%A3%E5%B8%82この一番左側の蕨駅付近が問題の舞台だ。まず、駅の東側にやたら細かい碁盤目で緑の線が入った地域があるのが判るだろうか?ここは芝2丁目と芝4丁目という地域になる。ここは一見整備された住宅地に見えるが、実は都市計画に乗っ取ったインフラ整備が間に合わなかったスプロール地域なのである。この碁盤目は元々は大正時代に田んぼを整地したものだった。緑の線は用水路跡で、今でも暗渠化された水路敷きになっている。この付近は江戸時代に作られた見沼代用水が通り、その分水も充実していた。そこで碁盤目に畔と用水路を整備して土地の権利も整理したものだ。ちょっと脱線するが、こういう整備された元田んぼ住宅地の近くにはL字の道と変形交差点を組み合わせたような地区がある事が多い。またそこには寺や神社がある事が多い。その場合、そこら辺は嘗ての村の集落があった場所である。行ってみるとせせこましい建売の中に突然田舎の農家のような大きな庭付きの家、時に藁ぶきだったりゴルビジェのサボア邸のようなやたらハイセンスの家が建っていて驚かされる事があるのでおススメだ。そこは付近の建売の元地主やマンションの大家である。この田んぼが戦後の高度経済成長期に売りに出され宅地化されたのがこの芝2、4丁目地区なのだ。元あぜ道は公道化されているのが多いが、そこから奥に入る道は幅が狭い砂利道のままだ。これは私道だからであり「その道路の権利は細切れになって付近の家の持ち主が持っている。故に権利関係がごちゃごちゃなので金を出し合って舗装工事をするという事が出来ない。更にこの路地は通り抜けが出来ない。真ん中に水路敷がある為だ。水路は元々の地主が権利を持っている筈だ。通り抜けにはそこに橋を掛けなきゃならないが、誰もその費用を負担したくないので碁盤目に見えて行き止まりの路地ばかりという事になっている。 1990年代初頭に建築基準法が改正されるとセットバックの義務と接道義務が定められた。接道義務とは、幅4m以上の道に2m以上接していない土地には建物建築不可という事である。これでこの路地の奥にある家というのは建替えが不可能になった。また、水路敷は舗装されていて道路に見えても道路じゃないのでセットバックの義務が無い。だからいつまで経っても道は広がらないから接道要件を満たす道にならない。散歩する時はこのせいで魅力的なのだが不動産的には不良である。この路地をストビューで見れば判るが、公道に面した家は新しい低層アパートで路地は4m拡幅、その奥の一軒は新しい戸建て(公道側隣家のセットバックで接道要件クリア)、その奥は築30年以上の古い戸建てや古アパート、となっている。奥の方の家は建替え出来ないので古いままなのだ。奥の方の家やアパートを借している場合、家が古くて車も入れない砂利道なので客付けが困難である。蕨駅から徒歩5~10分という好条件なのだがこういう状態なのだ。高度成長期中期の昭和30年代後半からこういうスプロール現象が問題になって規制が強化されたのだが、その前に家が建てこんだ地域なのだ。私有地である用水路の暗渠化は市が行ったが、これは下水道整備が間に合わず、水路に垂れ流しとなった為の代替政策だ。 さて、外国人というのは部屋が借り難い。これは差別の問題もあるが、家主としては万が一の時の連絡の問題、家賃不払いや退出後の内装補償、突如国に帰ってしまうリスク、それと土足の問題などがある。室内に靴を脱いで入るのは日本だけなのだ。最近じゃ米国都市部も日本式になって来てるが。だから土足で生活されて畳床等がダメになるリスクがある。故に外国人が部屋を借りるのはとても大変だ。一方、建替不可で古くて前が砂利道で引っ越しのトラックも入れない、なんていう借家やアパートの大家は客付けが全然できない。この両者の利害が一致して賃貸借契約、とあいなる。お互い「こんなボロ屋なのに高いが…」「外国人でリスクが高いが…」という妥協の産物だ。 このやたら細かい碁盤目地区はもう一か所ある。駅の反対側に線路で分断された川口市の飛び地みたいな三角の土地があるだろう。ここは芝園町と芝富士という地区なのだが、そのうち芝園町は元鉄道車両工場のUR団地(電車から見える屏風みたいな建物)、芝富士は元田んぼの細かい碁盤目地区だ。この芝富士地区は先の芝2・4丁目地区と全く同様の特徴と来歴を持っている。路地のセットバックが進んで4m以上が確保されて建替え可能になっている所が多いなど、スプロール化の程度は2.4丁目よりも改善されているのだが、それでも水路敷による路地分断などはあり、また建替不可家屋が密集する地帯もある。更にここは飛び地状態なので見捨てられた感もあり市政が行き届きにくいという特徴もある。中学校や幼稚園が線路の反対側で遠いのだ。ここも同様の理由で昔から外国人が多かった。 「蕨」なのに「川口市」であるのはこういう事で、駅の左右に川口市の不良宅地地区がありそこのアジア系の住民が住む事が増えたというのが原初としてあったのだ。「川口市は小規模の鋳鉄工場があり外国人工員を必要とした」という説明をしている記事もあるが間違いだ。鋳鉄工場地域は西川口から南側であって、蕨周辺は田んぼから住宅地に転換している。その転換が早すぎてスプロール化してしまったのだ。 始まりはヘイトデモクルド人問題がおかしな奴らの飯のタネになっている問題の根幹は在特会のヘイトデモに遡る。2009年に在特会はオーバステイフィリピン人の子息が通う中学校付近で「叩き出せ」といシュプレヒコールを上げるデモを行うようになった。この中学校や居宅は蕨駅の南側、西川口駅寄りだ。このデモに左翼運動からの転向者が合流すると一気に過激化し、「殺せ」「殺しに来た」というコールになり、警察に掴まらないような巧い仕方の暴力や、近所のヤジに対して「○○人の家だ」「お前日本から出ていけ」「殺せ」と連呼したり、お散歩と称してデモの後に落書きをしたり通行人に因縁を付けたりという行動をするようになった(後に警察官が解散地から駅まで随行するようになった)。転びアカが合流すると大抵こういう事になる。これに呼応して掲げられる旗も日章旗から旭日旗やハーケンクロイツとなっていった。そんな中で在特会は芝園団地付近でクルド人に住民が迷惑しているという情報を掴む。そこでヘイトデモの開催地は蕨駅~西川口駅から蕨駅北方になる。そこで鍵十字の旗が沢山はためき、「悔しかったらクルド野郎出てこい殺してやる」などのデモがされるようになった。但し、彼らは居住地区を知っていたから疑問なので警察がそこから外れるルートを許可していても判らなかったかもしれない。 こういう経緯で中東系や中央アジア系の人間の犯罪、不始末を「クルド」と称する動機が生まれてきた。事件が有る度に「これは在日朝鮮人」という差別デマがずっと流れていたが、それの中央アジア版だ。 もう一つの理由がトルコの少数民族問題で、トルコは親日国で、そこで問題化している少数民族のクルドは敵だ、という単純な世界観によるもの。元々国際問題を親日反日でしか捉えれない人間の頭の中なのでこれ以上はバッファオーバーフローである。そもそも少数民族問題は国家の宿痾であって国際政治学では必ず履修する項目であるのにそれを焚きつけて利益にせんとするあたり、ガソリンスタンドでタバコを吸うバカの如しである。 故にそれよりこの方ずっと「クルド」はやべぇ奴らの間の符丁となり、民族問題を理解するという動機にはならずに、彫りが濃い人間の不祥事は「クルド」とする文脈が生まれたのである。 続く https://anond.hatelabo.jp/20231004185255
蕨と川口とクルド人の問題に関して その1
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yotchan-blog · 6 months
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2024/4/3 12:59:18現在のニュース
バイデン氏「激しい憤り」 イスラエル空爆でNPO職員死亡受け声明(朝日新聞, 2024/4/3 12:58:25) いのち輝く大阪万博にも「紅麹ショック」 大阪府・市と小林製薬、「健康パビリオン」で持ちつ持たれつ:東京新聞 TOKYO Web([B!]東京新聞, 2024/4/3 12:58:18) 外貨建て保険で不適切管理…金融庁調査、運用効果検証行われず([B!]読売新聞, 2024/4/3 12:58:10) 奈良佐保短大 最後の入学式([B!]読売新聞, 2024/4/3 12:58:10) 県文化財、新たに7件 唐招提寺・黒漆厨子など指定 /奈良 | 毎日新聞([B!]毎日新聞, 2024/4/3 12:54:29) 夜間中学で学んだ人生が映画に 「35年目のラブレター」手紙に書いた妻への思い([B!]産経新聞, 2024/4/3 12:54:26) 経団連企業、能登半島地震で寄付64億円 ボランティア派遣は20社 - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2024/4/3 12:54:10) 沖縄の津波注意報を解除 与那国で震度4 気象庁(毎日新聞, 2024/4/3 12:54:08) 山形城をARやVRで体験 江戸時代中期の姿、スマホに映し出され(毎日新聞, 2024/4/3 12:54:08) 満開 あと少し…宇陀・又兵衛桜([B!]読売新聞, 2024/4/3 12:51:57) 大阪市「4~5ブロックに」、都構想3度目挑戦は白紙…就任1年で横山市長([B!]読売新聞, 2024/4/3 12:51:57) 議会事務局長を巡り市長と議長が異なる内示、市長が新たな人事異動を発令([B!]読売新聞, 2024/4/3 12:51:57) アベノミクスのツケなのか…紅こうじで注目「機能性表示食品」と「トクホ」の違いは?急拡大サプリ市場の落とし穴:東京新聞 TOKYO Web([B!]東京新聞, 2024/4/3 12:51:16) ドローン迷走「糸」で防ぐ、マグロ釣りの自動技術で制御 - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2024/4/3 12:48:36) 台湾で最大震度6強、1人死亡 50人以上負傷 ビル住民閉じ込めか | 毎日新聞([B!]毎日新聞, 2024/4/3 12:42:23) 万博のために生まれ半世紀の12系客車 鮮やかなブルーの車体は冷房ありの「値引き特急」 時刻表は読み物です([B!]産経新聞, 2024/4/3 12:42:22) 新幹線に袋投げつけた男逮捕 ダイヤ乱れ5600人に影響([B!]産経新聞, 2024/4/3 12:42:22) 官房長官「リニア早期開業進めたい」 川勝平太・静岡知事の辞意受け(毎日新聞, 2024/4/3 12:39:57) 太陽光発電9社、林地開��トラブルで交付金停止 経産省 - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2024/4/3 12:36:44) 社説:北陸新幹線と地域交通 「住民の足」確保に知恵を | 毎日新聞([B!]毎日新聞, 2024/4/3 12:36:32) LRT貸し切り運行へ 5月中旬にも 運賃上限認可申請 /栃木 | 毎日新聞([B!]毎日新聞, 2024/4/3 12:36:32) 「黒部峡谷 観光の顔に」 西武鉄道から移譲車両 デザイン一新 富山地鉄 /福井 | 毎日新聞([B!]毎日新聞, 2024/4/3 12:36:32) 須藤元気氏が衆院東京15区補選に出馬を表明(東京新聞)|dメニューニュース(東京新聞のニュース一覧|dメニュー(NTTドコモ), 2024/4/3 12:35:11) 城と桜の共演 庭園などの150本見ごろ 屋台もずらり 北九州(毎日新聞, 2024/4/3 12:32:56) 関西経済同友会の角元代表幹事、賃上げ「予想超える勢い」 - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2024/4/3 12:30:42)
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xf-2 · 3 years
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香港デモ激化の背景に「中国マネー」
中国人は無類の不動産好きだ。日本においても2000年代後半以降、彼らによるさまざまな不動産取引が盛んに行われてきた。中国企業による億単位のホテル投資やオフィスビル投資、個人投資家によるワンルームマンションや民泊物件、極めつけはリゾート地や山林・水脈地にいたるまで、ありとあらゆる不動産が彼らのターゲットとなった。
2020年に入ってもその投資意欲は旺盛で、筆者にも何人かの中国の友人から「日本で不動産を買いたいのだけど」と相談が持ち掛けられた。
人口減少を最大の課題とする日本では、不動産業者が新たに住宅を分譲しても「即日完売」の札が下がるケースは実に少なくなった。中古市場でも値段を落とさなければ買い手がつかなくなる中で、一部の業界が購入意欲満々の中国からの投資に期待を寄せるのは無理からぬことだった。
しかし、ことはそんなに単純ではない。香港に目を向ければ、中国からの不動産投資が行き過ぎて高騰し、地元の庶民が住めなくなったという悲劇が起こっている。抗議デモがあれほど過激に発展したのは、中国マネーの流入が遠因だ。ここではその過程を振り返ってみたい。
リーマンショックの下落が「買い」だった
話は2000年代にさかのぼる。1997年7月の香港返還以降、中国では空前の「香港不動産投資ブーム」が到来し、芸能人や有名企業の経営者などが香港の不動産をこぞって買い求めた。しかし2009年、中国ではリーマンショックの影響を受け景気が落ち込んだ。政府はすぐさま4兆元(当時のレートで約64兆円)の財政出動を行ったのだが、このときのだぶついた一部の資金も香港の不動産投資に向かったといわれている。
香港不動産もリーマンショックの影響で下落したのだが、「このときがまさに“買い”でした」と、投資家の友人は語る。
「中国共産党幹部が香港に豪邸を構えている」――というまことしやかな噂も立った。かの香港紙「蘋果日報」(アップルデイリー)によれば、習近平国家主席も浅水湾(レパルスベイ)に6億4000万香港ドル、日本円にして約90億円相当の物件を所有しているという話だ。
しかし、資金源はいずれも極めて不透明だ。額に汗して稼げる金額ではない。共産党幹部にせよ政府官僚にせよ、利権を金に換え、膨大な資金をため込んだ疑念は払拭できない。
一方、持てる者からすれば、「中国本土に桁外れの資産を置いておくのは危険だ」という認識がある。これまで職権を乱用し“口利き料”を受け取ってきた高級官僚にとっては、政権交代や派閥闘争の結果如何で、いつ何時どんな罪名で牢にぶち込まれ、資産のすべてを没収されるかわからないからだ。中国では地位が高い者ほど、想定外のリスクに常時怯えている。
「取られる前に海外に資産を移す、隠す」――香港はこうした“曰く付きのマネー”の格好の投資先となった。
規制をかいくぐる香港のカラクリ
2014年、中国は外貨準備高が4兆ドルに達する一方で、海外への資金流出に歯止めがかからなくなってしまった。もとより、中国政府は海外への外貨持ち出しを厳しく制限してきたが、2016年に外貨準備高が3兆ドルの水準にまで落ち込むと、さらに資金流出に神経をとがらせるようになった。
一時は、銀聯カード(中国の銀行が発行するデビットカード)などを複数枚使いながら、国外のATMで中国の預金口座から繰り返し資金を引き出すという資金移転のやり方で、海外に億円単位の豪邸を買うなどの荒業も散見されたが、こうした攻略法も使いにくくなった。
外貨持ち出し制限が厳しくなる中、今なお香港で分譲物件を購入できるのはどういうわけなのだろう。筆者の中国人の友人も、2016年に日本円にして4億円超の戸建てを香港で購入している。そのあたりの抜け道について、ある中国人実業家に訊ねたところ、こう返ってきた。
「中国の高級幹部ならば、地下銀行を使って何百、何千億円単位の人民元を香港に送金することができる。中国の一般市民の場合は、深圳と香港の間を往復するブローカーに現金を運ばせるケースが多い。あるいは、海外に法人口座を持つ中国人に物件を購入してもらい、それに相当する対価を人民元で返すなど、友人同士のネットワークを利用するケースもある」
送金の抜け道はいくらでもある
「上に政策あれば下に対策あり」とはこのことだ。帳簿に載せられないカネを、無数に張り巡らされた“闇ルート”で中国から香港に運び出す、ひとたび香港に資金移転することができれば、香港の法治の下で、その資産は安全に維持管理することができるというわけだ。
表向きは「法治」、水面下には「無数の闇ルート」を備えた香港は、共産主義国家から資本主義国家への橋渡しするグレーなエリアであり、金持ち向けに実に都合よく設計された土地である。
ちなみに香港の不動産企業の管理職によると、2019年、香港の大手不動産仲介業者が取り扱った中古住宅の最高価格は、実に12億香港ドル(約168億円、1000平米の物件)だったという。東京でさえも聞かないとんでもない金額だが、「こうした巨額投資のほとんどが大陸からのものだ」(同)という。
前出の中国人実業家は、「不動産物件が高額になればなるほど、中国人にとって中国内地の資金を持ち出すのに好都合だ」という。香港ではこうした一国二制度の差を悪用したロンダリングや錬金行為が日常的に行われているのだ。まさしく、香港の闇の部分である。
香港の人間が家を買えない
“竹林のようにそびえる高層住宅”が香港の象徴であるように、香港の土地は有限だ。わずか1100万平方キロメートルと札幌市と変わらぬ面積に730万人超の人口がひしめく。香港は世界でも指折りの“住宅難都市”である。
過去20年の統計を見ると、香港で地価の高騰は2003年を底に急上昇を始めたことがわかる。2018年の住宅価格は2003年からの15年間で4倍に高騰した。「バブルだ、バブルだ」と騒がれた上海の住宅価格は2010年に東京の水準を超えたが、香港は上海の倍の水準である。日本では「住宅は世帯年収の5倍が適正価格」といわれているが、香港の平均住宅価格はもはや世帯収入の14倍だといわれている。
香港ではここ数年、一般市民向けの住宅が投資の対象になっている。住宅ローンの利率が大陸よりも低いことから、大陸の中間層が香港で住宅を求めるケースが増えたのだ。また、大陸では住宅の購入規制が導入され、自己居住以外の物件(賃貸事業用不動産)が取得しづらくなっている点がある。近年は、大陸の住宅価格が香港並みに上昇したため、香港の住宅は相対的に安く手に入れることができるようになった。
香港でこのように急激に住宅価格が上昇したのは、大陸からのチャイナマネー流入による高騰にほかならず、結果として、香港の住宅バブルは香港社会に深い断絶をもたらした。すでに持ち家に居住している人は資産価値が「億円単位」に跳ね上がるというバブルの恩恵に浴したが、これから住宅購入を検討しようという人にとっては絶望しか残されていない。若い学生たちがデモに参加して激しい怒りをぶちまけたのは、このような住宅事情にも由来する。
産業も「中国人好み」に舵を切り…
2003年、香港経済はSARSの蔓延により大打撃を受けた。その救済策となったのが、中国の一部の都市からの個人旅行解禁だった。その後、香港は中国人観光客を中心としたインバウンド産業が大いに発展したが、結果として香港の街は「中国人客好み」にガラリと変化してしまった。
現在の香港の街を象徴するのは、ビクトリアピークでも女人街でもない。今やどこに行ってもドラッグストアと宝飾品チェーン店ばかりが視界に飛び込んでくる。この光景こそが、中国人観光客にのめり込んでしまった香港の姿である。中国人観光客が欲しがる商品と店づくりを追い求めた結果、香港の街はドラッグ・コスメチェーンの「莎莎」「卓悦」、宝飾品チェーンの「周生生」「周大福」の商業看板に埋め尽くされてしまった。
中国人観光客がスーツケースを転がしながら徘徊し、買った商品を詰め込むシーンは「爆買い」に沸いた数年前の日本とまったく同じ光景だ。
中国依存を続けてきた末路
旺角モンコック在住の香港人は、「ラーメン屋が立ち退かされ、入ってきたのは中国人客目当てのドラッグストアだ。家の周辺にはすでにドラッグストアが10軒以上もある。こんなに何店舗も必要ないよ」と呆れて言い放った。香港経済が中国人客目当てのインバウンドに傾斜して生活環境が大きく変わったことも、地元民の大きな不満になっていた。
そして2019年、大規模な抗議デモが反中色を帯びると、大陸からの観光客は激減した。2018年の香港には日本の6倍にのぼる5100万人の中国人観光客が訪れていたが、2019年は4377万人と、前年比で14%も減少し��。
市民の反感を買いながらも店舗を増やしたドラッグストアだが、これにより化粧品や薬の販売も大幅に落ち込んだ。2020年には追い打ちをかけるように、コロナ禍が香港を直撃した。観光客の8割を中国大陸に依存し続けてきた香港は「中国一極依存のリスク」に直面し、香港のインバウンド事業者は「観光客ゼロ、収入ゼロ」に頭を抱えた。
中国マネーの本当の恐ろしさ
香港への不動産投資とインバウンド客の増大、そして香港への移民流入は、香港返還後に徐々に進んだ変化だった。しかし、その変化に気づいたときには、香港市民は自分の生存空間をすっかり失ってしまっていた。
香港だけではない。オーストラリアでも中国マネーが集中した都市では、地元民が住宅を買えないという本末転倒な事態が起こった。早晩、日本でも地元民が生まれ育った地元を離れなければならない事態が起こる可能性がある。
産業も「中国人好み」に舵を切り… 2003年、香港経済はSARSの蔓延により大打撃を受けた。その救済策となったのが、中国の一部の都市からの個人旅行解禁だった。その後、香港は中国人観光客を中心としたインバウンド産業が大いに発展したが、結果として香港の街は「中国人客好み」にガラリと変化してしまった。
現在の香港の街を象徴するのは、ビクトリアピークでも女人街でもない。今やどこに行ってもドラッグストアと宝飾品チェーン店ばかりが視界に飛び込んでくる。この光景こそが、中国人観光客にのめり込んでしまった香港の姿である。中国人観光客が欲しがる商品と店づくりを追い求めた結果、香港の街はドラッグ・コスメチェーンの「莎莎」「卓悦」、宝飾品チェーンの「周生生」「周大福」の商業看板に埋め尽くされてしまった。
中国人観光客がスーツケースを転がしながら徘徊し、買った商品を詰め込むシーンは「爆買い」に沸いた数年前の日本とまったく同じ光景だ。
中国依存を続けてきた末路 旺角モンコック在住の香港人は、「ラーメン屋が立ち退かされ、入ってきたのは中国人客目当てのドラッグストアだ。家の周辺にはすでにドラッグストアが10軒以上もある。こんなに何店舗も必要ないよ」と呆れて言い放った。香港経済が中国人客目当てのインバウンドに傾斜して生活環境が大きく変わったことも、地元民の大きな不満になっていた。
そして2019年、大規模な抗議デモが反中色を帯びると、大陸からの観光客は激減した。2018年の香港には日本の6倍にのぼる5100万人の中国人観光客が訪れていたが、2019年は4377万人と、前年比で14%も減少した。
市民の反感を買いながらも店舗を増やしたドラッグストアだが、これにより化粧品や薬の販売も大幅に落ち込んだ。2020年には追い打ちをかけるように、コロナ禍が香港を直撃した。観光客の8割を中国大陸に依存し続けてきた香港は「中国一極依存のリスク」に直面し、香港のインバウンド事業者は「観光客ゼロ、収入ゼロ」に頭を抱えた。
中国マネーの本当の恐ろしさ 香港への不動産投資とインバウンド客の増大、そして香港への移民流入は、香港返還後に徐々に進んだ変化だった。しかし、その変化に気づいたときには、香港市民は自分の生存空間をすっかり失ってしまっていた。
香港だけではない。オーストラリアでも中国マネーが集中した都市では、地元民が住宅を買えないという本末転倒な事態が起こった。早晩、日本でも地元民が生まれ育った地元を離れなければならない事態が起こる可能性がある。
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hananien · 3 years
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【SPN】土曜日の生徒
警告:最終話のネタバレあり
ペアリング:サム/ディーン(前提)
登場人物:ディーン・ウィンチェスター、少年(オリジナル設定)
文字数:約4100字
あらすじ:小さな町でサバイバル術を教えるディーンの人生は来る死を待つだけのものだったが、ある日現れた少年の才能により情熱を取り戻す。
言い訳:ウィリアム・トレヴァーの短編「ピアノ教室の生徒」をオマージュしました。とても年下×年上だったので思わず…
 『ディーンのサバイバル教室』――ベニヤ板を二枚繋げた看板(それも、端を重ねた所を釘で打っただけだから右半分が左半分より前に出ている)にはシンプルにそれだけ書かれている。ディーン・ウィンチェスター本人がニ年半前にそう書いた。当時は鮮やかなペンキの黄色だったが今はなぜか青っぽくなり、『ディーン』の頭文字が剥げかけている。生徒たちの何人かは彼に書き直したほうがいいというが、ディーンは放っておくつもりだった。もしも看板の文字が全て剥げて読めなくなり、客が誰も寄り付かなくなったらそれはそれで、野垂れ死ぬときが来ただけのことだ。
 『ディーンのサバイバル教室』は町の中心部から外れた小さなショッピングモールの一角にあって、隣は中華のデリバリー、反対の隣には息の長いビデオ店が細々と経営を続けている。昼間でも薄暗いこの貸店舗にディーンが看板を掲げた当初はカラテ道場と勘違いした親子がよく見学に訪れたが、そういった連中が悪評を振りまいてくれたおかげで今は物分かりのいい大人か世間ズレしたガキだけしか来ない。  サバイバル教室というからにはサバイバル教室なのだ。格闘技を教えるつもりはない。ディーンは生徒に本物の武器を扱わせている。  「ナイフなんて誰でも持ってる。だがナイフの正しい使い方を知っているヤツがどれだけいる?」 少年はまだ乾ききっていない涙と鼻水で丸い頬を濡らしている。赤く腫れた目をまっすぐにディーンに向け、彼の一言一句、一挙手一投足に注目している。  ディーンは右手に握っていたナイフの柄をくるりと反転させて刃先を自らのほうへ向けた。「持ってみろ」  少年はナイフの柄とディーンの手、それからディーンの目を順に見たあと、逆の順にまた視線を下ろしていく。そして震える手でナイフを受け取る。  少年の手の震えがナイフを握ったあとに消えたのをディーンは見た。  「ただ持つだけじゃない」 ディーンはいつも生徒に感情のない冷たい声を使う。「正しく持つんだ」  「そんなの知らない」 少年の声はか細いがしっかりと届いた。  「そうか」 ディーンはその声を意識して使っていたわけではなかった。いや、最初は生徒に過剰な親しみを持たせないよう、意図して冷たく扱っていたかもしれない。だが今ではもう装う必要もなかった。「おまえにナイフを突き付けて、パンツを下ろせと言った連中は、どんな持ち方をしてた?」  少年は戸惑ったように柄を握り直した。親指を持ち手の上方から刃の背にかけているのをディーンは指摘する。「必ず全ての指で持ち手を握る。そうしないと怪我をするし、逆にナイフを奪われる」  少年の手に力が宿ったのがディーンにはわかった。  「そうだ」 正しくナイフを握った少年の目を、屈んだディーンはまっすぐに見つめる。「これでおまえは奴らよりも賢くなった」  「僕は強くなりたい」  「賢いヤツだけが強くなれる」  少年の腫れぼったい目に理解が広がったのをディーンは認めた。
 その夏の夕方にいじめっ子たちから逃げてきた駆け込みの生徒は、他の生徒たちよりも格段に熱心でおまけに才能があった。  サバイバル教室に通う生徒たちの中で、武器の扱いに関して天才を感じ取ったことはかつてなかった。こんな田舎の場末のエセカラテ教室に通う者の中で、といってしまえばそれだけのことだった。だがディーンは少年の中に本物の熱意を感じたし、本物であればいいという希望も抱いた。何かについて希望を持つのは久しくないことだった。  最初に始めた時にはこれといってプランがあったわけでもなかった。近接格闘とサバイバル術は集団で教えるのが困難だと知ったのは教室を始めて半年ほど経ってからだ。それからは曜日ごとに生徒を振り分けて個人授業にした。火曜日はニューヨークから引っ越してきたモニカ、水曜日は同じ地区に妹と住んでいるITエンジニアのジョンソン、金曜の午前中は元警察官で今は私立探偵の資格を取得中のマーク、午後は薬物依存症のリリー。土曜日のデリーはしばらく来ないと思ったら窃盗で逮捕されていた。土曜日の午後に突然やってきた少年はそのまま土曜日の生徒になった。少年はいつも同じ服装をして、いつもどこかに新しい痣があった。  少年は寡黙でディーンの指示に従順だった。その従順さを心地よく感じながら、それが彼の本質でなければいいとディーンは思った。  少年は何でも上手くやった。ナイフによる戦闘、拘束から抜け出す術、錠前の破り方、銃を持たせても怯まなかった。彼が何に備えているのか他の生徒たちと同様にディーンは尋ねなかった。報酬もなかった。少年は一度もディーンにレッスン代を払わなかったし、それについて言及するのをディーンは毎回忘れたふりをした。時々、貸店舗のオーナーである出っ腹のニックが金曜日の夜に家賃の催促にやって来た翌日などは、何かいってやらなくてはという気になるのだが、彼の丈の短いジャージからのぞく華奢な足首や、ろくにシャワーも浴びていないような薄汚れたなりなのに、銃器を扱うなら手入れをするべきだとディーンが指示した翌週から整え始めた指爪を見ると、何もいえなくなってしまうのだった。  それでもディーンは土曜日が来るのが待ち遠しかった。時がたち、モニカは婚約者とニュージャージーに引っ越してしまい、体力に自信をつけたジョンソンは陸軍に入隊していった。少年が自分の手からナイフを奪い取り、完璧なダブルステップから強烈なパンチをディーンの下顎にヒットさせた時、彼は今までにない達成感と奇妙な切なさを同時に感じた。  少年の誕生日がわからなかったから自分の誕生日にディーンは新しいシャツを買ってやった。シャツよりも少年に必要なものは山ほどあるのは明らかだったがディーンに与えられるものは限られていた。少年は初めて会った時のように赤い頬をしてそれを受け取ったが、一度も教室に着てくることはなかった。  ディーンは少年を車に乗せて射撃場に連れて行き、実弾の訓練も受けさせた。才能ある撃ち手から放たれる音はそれ自体が美しい。少年が撃ち終わるころ、ディーンの胸は感動で震えていた。  私立探偵の資格を取ったマークも教室を離れ、リリーは本格的な依存症治療のために入院することになった。出所したデリーは土曜日の午前中に来ることになったが、トランクからの脱出方法をやけに真面目に習得したがるからまたすぐに刑務所送りになるだろう。  ディーンの収入源はなくなった。家賃の滞納はディーンにしても良心が痛む領域に到達し、彼の頭を過るのはついにこの時がやってきたのかという思いだった。最後の時をどこで過ごすか、それが問題だった。教室で倒れてもいいが少年に自分の死体を発見させるのはかわいそうだと思った。自宅にしている教室の二階でも同じことだ。バンカーも考えたが、あそこには戻りたくなかったし、そもそもガソリン代がなかった。栄養の足りない頭で考えている間に少年が同じ年ごろの子どもを連れてきた。親が金持ちだからレッスン代を弾んでもらえと、自分は一切払わないくせに堂々と主張した。それから毎週のように一人、また一人と、戸惑い怯えた表情のクラスメイトを連れてくるようになった。おそらくはかつて自分をいじめた連中をカモにしているんだろうとディーンは思った。  それからも何度かディーンが覚悟を決めるたびにどこかから新しいカモを連れてきて、少年は『ディーンのサバイバル教室』の看板を守った。同じ曜日に複数の生徒のレッスンが入るようになった。少年は青年になり、相変わらず寡黙だったがディーンの生活に口を出すようになった。部屋から酒瓶が減った。  ある土曜日――土曜日は今でも彼だけのレッスン日だった――射撃場からの帰り、「奨学金がもらえたから大学に行く」と青年にいわれた。ディーンは「そうか」とだけ返事をした。もう長い間出し方を忘れていた声を取り戻さなくてはならないなと思った。凍っていたディーンの心を青年の熱意と共に過ごした年月がすっかり溶かしてしまった。  わかっていたはずだった。自分はいつも置いて行かれるのだ。そしてそれは必然だった。停滞する自分とは違い、他の人間は成長し前に進んでいくものだからだ。  それでもまだ生きていけるはずだった。もう一度心を閉ざし、感情を凍らせて、ただこの心臓を動かす動力が尽きるのを待つだけだ。青年の――かつての少年の才能と熱意がディーンの唯一の動力だった。だからそれほど待たずに逝けるはずだった。ディーンは力尽きた先にあるはずの顔を思って自分を慰めた。死は解放であり再会だった。けれど諦めたような人生の閉じ方を天国で待つ人は喜ばないだろうと思うと自分が情けなかった。  翌日の日曜日に自宅のベルが鳴って、怪訝そうな青年の顔を目にしたときディーンはよく理解できなかった。なぜ彼はまだここにいるんだろう? 青年はディーンに着替えを押し付けて、階下の教室の事務スペースで待っていた出っ腹のニックと店舗を買い取る話を始めた。ディーンは青年が堪能に喋ることを初めて知った。ニックの表情で話の内容を推測することしか出来なかったが、どうやら青年の思惑通りにことは進んだようだった。ディーンは煙に巻かれたような気持ちで肩を叩く青年の満足そうな顔を見つめた。いつの間にか彼の背は自分よりも高くなっていた。  青年は変わらずに土曜日に通い続けた。時が経つにつれ、背の高さにふさわしい体格を備えるようになり服装や身だしなみも整えられていった。やがて土曜日以外の午後にも顔を出すようになり、ディーンの代わりに生徒を指導するようになった。報酬の話は一度もなかった。彼のレッスン代よりも彼が稼いだレッスン代のほうが高くつくはずだとディーンは確信した。収入はたっぷりあったから報酬を払うことはできた。それも青年が教室をうまく切り盛りしてくれているからだった。彼に話を切り出そうと思うたびに、あの一度も着てくれなかったシャツのことを思い出すのだった――それから彼が自分の下顎に当てたパンチ、射撃場で響かせた美しい銃声。一度も一人でなかった土曜日の午後。
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moja-co · 4 years
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■週刊現代2006年6/3号 「小沢一郎の“隠し資産”を暴く」を掲載。小沢氏の政治団体・陸山会が大半が都心一等地にある十件以上の不動産を「所有」しており、調査の結果、それらはすべて登記簿上、小沢氏の名義であると突きとめた。 これに対し小沢氏と民主党は名誉毀損で損害賠償を求める民事訴訟を東京地裁に起こした、しかし、07年8月10日東京地裁は「意見の前提となる事実の重要部分は真実」と断定し、小沢氏側の訴えを棄却した(小沢氏側は控訴したが控訴審でも棄却) 小沢氏側は、07年2月20日に記者会見し「確認書」なるものを掲げ、「私は最初から『陸山会』所有の全ての不動産について、いかなる権利も持っていません」と釈明。この「確認書」とは、小沢一郎氏が代表を務める陸山会(甲)と、個人である小沢一郎氏(乙)の間でかわされたもので、個人としての小沢氏(乙)が「本件不動産につき、何の権利も有さず、これを甲の支持なく処分し、または担保権の設定をすることはできない。売買代金その他購入に要する費用、並びに、管理費光熱費等本件不動産の維持に冠する費用は、甲がこれを負担する。」と明記している。 ■『アエラ』2007年10/15号 フリージャーナリスト・長谷川熙氏による「『政治団体が所有』という実態への疑念 小沢と都心マンション」の記事が報じた事実は下のとおり。 ・小沢一郎民主党代表の政治団体兼資金管理団体である「陸山会」が所有する資産として、赤坂な東京都心の一等地にあるマンション・8物件(*)が、平成18年ぶんの政治資金報告書に記載されている。 ・8物件の各居宅の所有者はいずれも、「岩手県水沢市袋町2番地38号(06年2月20日から奥州市水沢区袋町2番38号)小沢一郎」と登記されていた。 (*)問題の8物件が政治活動に使用されているのか。長谷川氏が小沢氏の秘書と電話で問答したところ、下記が現状だと報じている。なお、平成18年分の政治資金報告書によれば、関係マンションの賃貸料は陸山会の収入とされているという ・「元赤坂タワーズ902号室」と「チュリス赤坂701号室」は、小沢氏と秘書等の打つあわせなどの場として用いられており、後者は陸山会事務所もおかれている。ただし、後者は「小沢一郎東京後援会」に賃貸されている・ ・「ライオンズマンション赤坂志津林305号室」は小沢氏関係の書庫などに使われている。 ・「グラン・アクス麹町602号室」は「ジョン万次郎ホィットフィールド記念国際草の根交流センター」に賃貸されている。 ・「プライム赤坂204号室」は「株式会社エスエー・コンサルティング」賃貸しされている。 ・「クレアール赤坂203号」は英国人秘書の事務所兼居宅 ・「デュオ��スカーラ赤坂802号」は韓国人辞書の事務所兼居宅 ・「ラ・セーナ南青山502号」は中国人秘書の事務所兼居宅。 なお、長谷川氏は外国人秘書の職務、背景は不明だとしている ■「IZA!」2007年1月28日 産経新聞の阿比留瑠比氏が、自身のブログ『国を憂い、われとわが身を甘やかすの記』において「官報」を調べ、総務省に資金管理団体を届けている衆参両議院562人全員(引退議員、落選中議員らも含む)の資産をチェックした結果、資金管理団体が「建物」を取得している現役国会議員は5人(小沢氏を含む)、「土地」を購入していたのは小沢氏だけだという。 阿比留氏の調査によると、小沢氏の資金管理団体所有の土地は下記のとおる ・平成6年5月/東京都港区  1億1300万円 ・平成6年6月/同          1800万円 ・平成6年11月/東京都千代田区 1億1000万円 ・平成6年12月/同          1376万円 ・平成6年12月/同          1650万円 ・平成7年1月/同        1億7000万円 ・平成11年1月/同        2410万円 ・平成11年11月/岩手県水沢市 4200万円 ・平成13年1月/東京都港区  1561万円 ・平成13年12月/同    3320万円 ・平成15年3月/宮城県仙台市  3000万円 ・平成15年3月/岩手県盛岡市  2650万円 ・平成17年1月/東京都世田谷区 3億4264万円 計9億5531万円、建物代は別途計上 ■「週刊文春」2007年6/28号 「小沢一郎『現金25億円』の錬金術」で、小沢一郎民主党代表が25億3500万円もの巨額資金を溜め込んでいたことを報じられた。特に問題となっているのは、「改革フォーラム21」と「改革国民会議」という2つの政治団体。 ≪前者には約7億円、後者には約12億円6000万円という現金がプールされている≫という。 「改革フォーラム21」は新生党の、「改革国民会議」は新進党、後に自由党の政治資金団体。それが両党解党後にも生き残り、自由党解散当日(平成15年9月26日)、自由党から「改革国民会議」に対して総額約13億円もの寄付が行われている。 ≪最大の問題は、自由党から「改革国民会議にわたった約13億円のうち、5億6000万円が政党助成金だったことである≫と報じられた
党首は不動産王_!  小沢一郎衆院議員の豪華マンション一挙世界初公開
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monqu1y · 3 years
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持続可能な開発目標
 提唱者[国連]の正体を見抜けば、盲従の危険さが分かる。  17項目は、有機的に関連しあってるのに、個別にチェックしても無意味。互いの影響をシステム的に分析・解明しなければ…  また、17項目に拘れば、��子高齢化対策が後回しになる。  民族的道徳観の違いも重要な要素だが、タブー視することで、悲劇が起きる。  市営住宅集会所のコミュニティカフェに行った。 A:2000年9月、国連は、開発目標(MDGs: Millenium Development Goals)を掲げ、15年間で達成すべき旨決めた。
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B:開発目標は、8項目です。 1. 極度の貧困と飢餓の撲滅 2. 普遍的初等教育の達成 3. ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上 4. 幼児死亡率の削減 5. 妊産婦の健康の改善 6. HIV/エイズ、マラリアその他疾病の蔓延防止 7. 環境の持続可能性の確保 8. 開発のためのグローバル・パートナーシップの推進 C:15年経過したとき、国連は、開発目標を持続可能なもの(SDGs: Sustainable Development Goal)に替え、17項目と具体的指標169個を示して、次の15年間で達成すべき旨決めた。
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私:17項目の内容を並べてみますね。 1. 貧困をなくそう 2. 飢餓をゼロに 3. すべての人に健康と福祉を 4. 質の高い教育をみんなに 5. ジェンダー平等を実現しよう 6. 安全な水とトイレを世界中に 7. エネルギーをみんなにそしてクリーンに 8. 働きがいも経済成長も 9. 産業と技術革新の基盤をつくろう 10. 人や国の不平等をなくそう 11. 住み続けられるまちづくりを 12. つくる責任つかう責任 13. 気候変動に具体的な対策を 14. 海の豊かさを守ろう 15. 陸の豊かさを守ろう 16. 平和と公正をすべての人に 17. パートナーシップで目標を達成しよう A:[持続可能な社会]を実現するための17項目は、有機的に関連しあっているので、互いの影響をシステム的に分析・解明しなければ、目標達成できない。各項目を個別チェック・リストとして使うと、見当違いの結論に到達しかねない。   また、17項目を掲げることで、他の重要な課題を見落とし易くなる。   例えば、[少子高齢化]が喫緊な地域は少なくないが、17項目で事足れりとすれば、地域の衰退に拍車をかけることにもなる。   民族的道徳観の違いも重要な要素だが、タブー視することで、民族的道徳観の違いを理解しないことに基づく悲劇が起きてしまう。 B:提唱者の[国連]も胡散臭い組織ですね。
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C:[目標]を理解した心算で軽率な[行動計画]を立案し、それを国民に強要して社会を悪くしていることに気付かない指導者らが居る。 D:森林を守る目的を掲げた[割りばし]不使用運動は、間伐コスパを悪くして森林守るのを妨げた。 A:[レジ袋有料化]は、環境保護効果が殆ど無いのに、万引きを増加させ、全国の店主・店長を苦しめている。 B:プラスティック・スプーンの有料化強制も、業者を困惑させてるんですょ。 私:非科学的な思い込みで政治をやられたら堪りませんねぇ。
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〔参考:169ターゲット〕 01.貧困をなくそう:あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ 01.1_2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる 01.2_2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、全ての年齢の男性、女性、子供の割合を半減させる 01.3_各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する 01.4_2030年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、全ての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する 01.5_2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する 01.a_あらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する 01.b_貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援するため、国、地域及び国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する 02.飢餓をゼロ:飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する 02.1_2030年までに、飢餓を撲滅し、全ての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする 02.2_5歳未満の子供の発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処を行う 02.3_2030年までに、土地、その他の生産資源や、投入財、知識、金融サービス、市場及び高付加価値化や非農業雇用の機会への確実かつ平等なアクセスの確保などを通じて、女性、先住民、家族農家、牧畜民及び漁業者をはじめとする小規模食料生産者の農業生産性及び所得を倍増させる 02.4_2030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する 02.5_2020年までに、国、地域及び国際レベルで適正に管理及び多様化された種子・植物バンクなども通じて、種子、栽培植物、飼育・家畜化された動物及びこれらの近縁野生種の遺伝的多様性を維持し、国際的合意に基づき、遺伝資源及びこれに関連する伝統的な知識へのアクセス及びその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を促進する 02.a_開発途上国、特に後発開発途上国における農業生産能力向上のために、国際協力の強化などを通じて、農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発及び植物・家畜のジーン・バンクへの投資の拡大を図る 02.b_ドーハ開発ラウンドのマンデートに従い、全ての農産物輸出補助金及び同等の効果を持つ全ての輸出措置の同時撤廃などを通じて、世界の市場における貿易制限や歪みを是正及び防止する 02.c_食料価格の極端な変動に歯止めをかけるため、食料市場及びデリバティブ市場の適正な機能を確保するための措置を講じ、食料備蓄などの市場情報への適時のアクセスを容易にする 03.すべての人に健康と福祉を:あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する 03.1_2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減する 03.2_全ての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1,000��中25件以下まで減らすことを目指し、 2030年までに、新生児及び5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する 03.3_2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する 03.4_2030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する 03.5_薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する 03.6_2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる 03.7_2030年までに、家族計画、情報・教育及び性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスを全ての人々が利用できるようにする 03.8_全ての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する 03.9_2030年までに、有害化学物質、並びに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる 03.a_全ての国々において、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の実施を��宜強化する 03.b_主に開発途上国に影響を及ぼす感染性及び非感染性疾患のワクチン及び医薬品の研究開発を支援する。また、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)及び公衆の健康に関するドーハ宣言に従い、安価な必須医薬品及びワクチンへのアクセスを提供する。同宣言は公衆衛生保護及び、特に全ての人々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」の柔軟性に関する規定を最大限に行使する開発途上国の権利を確約したものである 03.c_開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において保健財政及び保健人材の採用、能力開発・訓練及び定着を大幅に拡大させる 03.d_全ての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康危険因子の早期警告、危険因子緩和及び危険因子管理のための能力を強化する 04.質の高い教育をみんなに:すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する 04.1_2030年までに、全ての子供が男女の区別なく、適切かつ効果的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了できるようにする 04.2_2030年までに、全ての子供が男女の区別なく、質の高い乳幼児の発達・ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする 04.3_2030年までに、全ての人々が男女の区別なく、手の届く質の高い技術教育・職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする 04.4_2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる 04.5_2030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子供など、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする 04.6_2030年までに、全ての若者及び大多数(男女ともに)の成人が、読み書き能力及び基本的計算能力を身に付けられるようにする 04.7_2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする 04.a_子供、障害及びジェンダーに配慮した教育施設を構築・改良し、全ての人々に安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供できるようにする 04.b_2020年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、並びにアフリカ諸国を対象とした、職業訓練、情報通信技術(ICT)、技術・工学・科学プログラムなど、先進国及びその他の開発途上国における高等教育の奨学金の件数を全世界で大幅に増加させる 04.c_2030年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国における教員研修のための国際協力などを通じて、質の高い教員の数を大幅に増加させる 05.ジェンダー平等を実現しよう:ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る 05.1_あらゆる場所における全ての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する 05.2_人身売買や性的、その他の種類の搾取など、全ての女性及び女児に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する 05.3_未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚及び女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する 05.4_公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供、並びに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する 05.5_政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する 05.6_国際人口・開発会議(ICPD)の行動計画及び北京行動綱領、並びにこれらの検証会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康及び権利への普遍的アクセスを確保する 05.a_女性に対し、経済的資源に対する同等の権利、並びに各国法に従い、オーナーシップ及び土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対するアクセスを与えるための改革に着手する 05.b_女性の能力強化促進のため、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する 05.c_ジェンダー平等の促進、並びに全ての女性及び女子のあらゆるレベルでの能力強化のための適正な政策及び拘束力のある法規を導入・強化する 06.安全な水とトイレを世界中に:すべての人に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する 06.1_2030年までに、全ての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ衡平なアクセスを達成する 06.2_2030年までに、全ての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。女性及び女児、並びに脆弱な立場にある人々のニーズに特に注意を払う 06.3_2030年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模で大幅に増加させることにより、水質を改善する 06.4_2030年までに、全セクターにおいて水利用の効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取及び供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足に悩む人々の数を大幅に減少させる 06.5_2030年までに、国境を越えた適切な協力を含む、あらゆるレベルでの統合水資源管理を実施する 06.6_2020年までに、山地、森林、湿地、河川、帯水層、湖沼を含む水に関連する生態系の保護・回復を行う 06.a_2030年までに、集水、海水淡水化、水の効率的利用、排水処理、リサイクル・再利用技術を含む開発途上国における水と衛生分野での活動と計画を対象とした国際協力と能力構築支援を拡大する 06.b_水と衛生に関わる分野の管理向上における地域コミュニティの参加を支援・強化する 07.エネルギーをみんなに そしてクリーンに:すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネ ルギーへのアクセスを確保する 07.1_2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する 07.2_2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる 07.3_2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる 07.a_2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する 07.b_2030年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、内陸開発途上国の全ての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う 08.働きがいも経済成長も:すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する 08.1_各国の状況に応じて、一人当たり経済成長率を持続させる。特に後発開発途上国は少なくとも年率7%の成長率を保つ 08.2_高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する 08.3_生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する 08.4_2030年までに、世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善させ、先進国主導の下、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組みに従い、経済成長と環境悪化の分断を図る 08.5_2030年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する 08.6_2020年までに、就労、就学及び職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を大幅に減らす 08.7_強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終らせるための緊急かつ効果的な措置の実施、最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅を確保する。2025年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する 08.8_移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、全ての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する 08.9_2030年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する 08.10_国内の金融機関の能力を強化し、全ての人々の銀行取引、保険及び金融サービスへのアクセスを促進・拡大する 08.a_後発開発途上国への貿易関連技術支援のための拡大統合フレームワーク(EIF)などを通じた支援を含む、開発途上国、特に後発開発途上国に対する貿易のための援助を拡大する 08.b_2020年までに、若年雇用のための世界的戦略及び国際労働機関(ILO)の仕事に関する世界協定の実施を展開・運用化する 09.産業と技術革新の基盤をつくろう:強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る 09.1_全ての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する 09.2_包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、2030年までに各国の状況に応じて雇用及びGDPに占める産業セクターの割合を大幅に増加させる。後発開発途上国については同割合を倍増させる 09.3_特に開発途上国における小規模の製造業その他の企業の、安価な資金貸付などの金融サービスやバリューチェーン及び市場への統合へのアクセスを拡大する 09.4_2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能力に応じた取組を行う 09.5_2030年までにイノベーションを促進させることや100万人当たりの研究開発従事者数を大幅に増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとする全ての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる 09.a_アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国への金融・テクノロジー・技術の支援強化を通じて、開発途上国における持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラ開発を促進する 09.b_産業の多様化や商品への付加価値創造などに資する政策環境の確保などを通じて、開発途上国の国内における技術開発、研究及びイノベーションを支援する 09.c_後発開発途上国において情報通信技術へのアクセスを大幅に向上させ、2020年までに普遍的かつ安価なインターネットアクセスを提供できるよう図る 10.人や国の不平等をなくそう:国内および国家間の格差を是正する 10.1_2030年までに、各国の所得下位40%の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる 10.2_2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する 10.3_差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、並びに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する 10.4_税制、賃金、社会保障政策をはじめとする政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する 10.5_世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善し、こうした規制の実施を強化する 10.6_地球規模の国際経済・金融制度の意思決定における開発途上国の参加や発言力を拡大させることにより、より効果的で信用力があり、説明責任のある正当な制度を実現する 10.7_計画に基づき良く管理された移民政策の実施な���を通じて、秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進する 10.a_世界貿易機関(WTO)協定に従い、開発途上国、特に後発開発途上国に対する特別かつ異なる待遇の原則を実施する 10.b_各国の国家計画やプログラムに従って、後発開発途上国、アフリカ諸国、小島嶼開発途上国及び内陸開発途上国を始めとする、ニーズが最も大きい国々への、政府開発援助(ODA)及び海外直接投資を含む資金の流入を促進する 10.c_2030年までに、移住労働者による送金コストを3%未満に引き下げ、コストが5%を越える送金経路を撤廃する 11.住み続けられるまちづくりを:都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする 11.1_2030年までに、全ての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する 11.2_2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子供、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、全ての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する 11.3_2030年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、全ての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する 11.4_世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する 11.5_2030年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす 11.6_2030年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する 11.7_2030年までに、女性、子供、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する 11.a_各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する 11.b_2020年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靱さ(レジリエンス)を目指す総合的政策及び計画を導入・実施した都市及び人間居住地の件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組2015-2030に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う 11.c_財政的及び技術的な支援などを通じて、後発開発途上国における現地の資材を用いた、持続可能かつ強靱(レジリエント)な建造物の整備を支援する 12.つくる責任 つかう責任:持続可能な消費と生産のパターンを確保する 12.1_開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、全ての国々が対策を講じる 12.2_2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する 12.3_2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる 12.4_2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する 12.5_2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する 12.6_特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取り組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する 12.7_国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣行を促進する 12.8_2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする 12.a_開発途上国に対し、より持続可能な消費・生産形態の促進のための科学的・技術的能力の強化を支援する 12.b_雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する 12.c_開発途上国の特別なニーズや状況を十分考慮し、貧困層やコミュニティを保護する形で開発に関する悪影響を最小限に留めつつ、税制改正や、有害な補助金が存在する場合はその環境への影響を考慮してその段階的廃止などを通じ、各国の状況に応じて、市場のひずみを除去することで、浪費的な消費を奨励する、化石燃料に対する非効率な補助金を合理化する 13.気候変動に具体的な対策を:気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る 13.1_全ての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する 13.2_気候変動対策を国別の政策、戦略及び計画に盛り込む 13.3_気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する 13.a_重要な緩和行動の実施とその実施における透明性確保に関する開発途上国のニーズに対応するため、2020年までにあらゆる供給源から年間1,000億ドルを共同で動員するという、UNFCCCの先進締約国によるコミットメントを実施するとともに、可能な限り速やかに資本を投入して緑の気候基金を本格始動させる 13.b:後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において、女性や青年、地方及び社会的に疎外されたコミュニティに焦点を当てることを含め、気候変動関連の効果的な計画策定と管理のための能力を向上するメカニズムを推進する。:※国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が、気候変動への世界的対応について交渉を行う一義的な国際的、政府間対話の場であると認識している 14.海の豊かさを守ろう:海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する 14.1_2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する 14.2_2020年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う 14.3_あらゆるレベルでの科学的協力の促進などを通じて、海洋酸性化の影響を最小限化し、対処する 14.4_水産資源を、実現可能な最短期間で少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量のレベルまで回復させるため、2020年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する 14.5_2020年までに、国内法及び国際法に則り、最大限入手可能な科学情報に基づいて、少なくとも沿岸域及び海域の10パーセントを保全する 14.6_開発途上国及び後発開発途上国に対する適切かつ効果的な、特別かつ異なる待遇が、世界貿易機関(WTO)漁業補助金交渉の不可分の要素であるべきことを認識した上で、2020年までに、過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁止し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業につながる補助金を撤廃し、同様の新たな補助金の導入を抑制する 14.7_2030年までに、漁業、水産養殖及び観光の持続可能な管理などを通じ、小島嶼開発途上国及び後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的便益を増大させる 14.a_海洋の健全性の改善と、開発途上国、特に小島嶼開発途上国および後発開発途上国の開発における海洋生物多様性の寄与向上のために、海洋技術の移転に関するユネスコ政府間海洋学委員会の基準・ガイドラインを勘案しつつ、科学的知識の増進、研究能力の向上、及び海洋技術の移転を行う 14.b_小規模・沿岸零細漁業者に対し、海洋資源及び市場へのアクセスを提供する 14.c_「我々の求める未来」のパラ158において想起されるとおり、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用のための法的枠組みを規定する海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)に反映されている国際法を実施することにより、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用を強化する 15.陸の豊かさも守ろう:陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る 15.1_2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する 15.2_2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる 15.3_2030年までに、砂漠化に対処し、砂漠化、干ばつ及び洪水の影響を受けた土地などの劣化した土地と土壌を回復し、土地劣化に荷担しない世界の達成に尽力する 15.4_2030年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う 15.5_自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、2020年までに絶滅危惧種を保護し、また絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる 15.6_国際合意に基づき、遺伝資源���利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を推進するとともに、遺伝資源への適切なアクセスを推進する 15.7_保護の対象となっている動植物種の密猟及び違法取引を撲滅するための緊急対策を講じるとともに、違法な野生生物製品の需要と供給の両面に対処する 15.8_2020年までに、外来種の侵入を防止するとともに、これらの種による陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入し、さらに優先種の駆除または根絶を行う 15.9_2020年までに、生態系と生物多様性の価値を、国や地方の計画策定、開発プロセス及び貧困削減のための戦略及び会計に組み込む 15.a_生物多様性と生態系の保全と持続的な利用のために、あらゆる資金源からの資金の動員及び大幅な増額を行う 15.b_保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するため、あらゆるレベルのあらゆる供給源から、持続可能な森林経営のための資金の調達と開発途上国への十分なインセンティブ付与のための相当量の資源を動員する 15.c_持続的な生計機会を追求するために地域コミュニティの能力向上を図る等、保護種の密猟及び違法な取引に対処するための努力に対する世界的な支援を強化する 16.平和と公正をすべての人に:持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する 16.1_あらゆる場所において、全ての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる 16.2_子供に対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する 16.3_国家及び国際的なレベルでの法の支配を促進し、全ての人々に司法への平等なアクセスを提供する 16.4_2030年までに、違法な資金及び武器の取引を大幅に減少させ、奪われた財産の回復及び返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する 16.5_あらゆる形態の汚職や贈賄を大幅に減少させる 16.6_あらゆるレベルにおいて、有効で説明責任のある透明性の高い公共機関を発展させる 16.7_あらゆるレベルにおいて、対応的、包摂的、参加型及び代表的な意思決定を確保する 16.8_グローバル・ガバナンス機関への開発途上国の参加を拡大・強化する 16.9_2030年までに、全ての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する 16.10_国内法規及び国際協定に従い、情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する 16.a_特に開発途上国において、暴力の防止とテロリズム・犯罪の撲滅に関するあらゆるレベルでの能力構築のため、国際協力などを通じて関連国家機関を強化する 16.b_持続可能な開発のための非差別的な法規及び政策を推進し、実施する 17.パートナーシップで目標を達成しよう:持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する 資金 17.1_課税及び徴税能力の向上のため、開発途上国への国際的な支援なども通じて、国内資源の動員を強化する 17.2_先進国は、開発途上国に対するODAをGNI比0.7%に、後発開発途上国に対するODAをGNI比0.15~0.20%にするという目標を達成するとの多くの国によるコミットメントを含むODAに係るコミットメントを完全に実施する。ODA供与国が、少なくともGNI比0.20%のODAを後発開発途上国に供与するという目標の設定を検討することを奨励する 17.3_複数の財源から、開発途上国のための追加的資金源を動員する 17.4_必要に応じた負債による資金調達、債務救済及び債務再編の促進を目的とした協調的な政策により、開発途上国の長期的な債務の持続可能性の実現を支援し、重債務貧困国(HIPC)の対外債務への対応により債務リスクを軽減する 17.5_後発開発途上国のための投資促進枠組みを導入及び実施する 技術 17.6_科学技術イノベーション(STI)及びこれらへのアクセスに関する南北協力、南南協力及び地域的・国際的な三角協力を向上させる。また、国連レベルをはじめとする既存のメカニズム間の調整改善や、全世界的な技術促進メカニズムなどを通じて、相互に合意した条件において知識共有を進める 17.7_開発途上国に対し、譲許的��特恵的条件などの相互に合意した有利な条件の下で、環境に配慮した技術の開発、移転、普及及び拡散を促進する 17.8_2017年までに、後発開発途上国のための技術バンク及び科学技術イノベーション能力構築メカニズムを完全運用させ、情報通信技術(ICT)をはじめとする実現技術の利用を強化する。:キャパシティ・ビルディング 17.9_全ての持続可能な開発目標を実施するための国家計画を支援するべく、南北協力、南南協力及び三角協力などを通じて、開発途上国における効果的かつ的をしぼった能力構築の実施に対する国際的な支援を強化する 貿易 17.10_ドーハ・ラウンド(DDA)交渉の受諾を含むWTOの下での普遍的でルールに基づいた、差別的でない、公平な多角的貿易体制を促進する 17.11_開発途上国による輸出を大幅に増加させ、特に2020年までに世界の輸出に占める後発開発途上国のシェアを倍増させる 17.12_後発開発途上国からの輸入に対する特恵的な原産地規則が透明で簡略的かつ市場アクセスの円滑化に寄与するものとなるようにすることを含む世界貿易機関(WTO)の決定に矛盾しない形で、全ての後発開発途上国に対し、永続的な無税・無枠の市場アクセスを適時実施する。:体制面:政策・制度的整合性 17.13_政策協調や政策の首尾一貫性などを通じて、世界的なマクロ経済の安定を促進する 17.14_持続可能な開発のための政策の一貫性を強化する 17.15_貧困撲滅と持続可能な開発のための政策の確立・実施にあたっては、各国の政策空間及びリーダーシップを尊重する。:マルチステークホルダー・パートナーシップ 17.16_全ての国々、特に開発途上国での持続可能な開発目標の達成を支援すべく、知識、専門的知見、技術及び資金源を動員、共有するマルチステークホルダー・パートナーシップによって補完しつつ、持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップを強化する 17.17_さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。:データ、モニタリング、説明責任 17.18_2020年までに、後発開発途上国及び小島嶼開発途上国を含む開発途上国に対する能力構築支援を強化し、所得、性別、年齢、人種、民族、居住資格、障害、地理的位置及びその他各国事情に関連する特性別の質が高く、タイムリーかつ信頼性のある非集計型データの入手可能性を向上させる 17.19_2030年までに、持続可能な開発の進捗状況を測るGDP以外の尺度を開発する既存の取組を更に前進させ、開発途上国における統計に関する能力構築を支援する
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kennak · 11 months
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国税庁の最終面接のことを思い出している。大学四年生の頃だ。今までの面接は、無機質な長机とパイプ椅子でのものだった。だがその時は、四角いどっかりとした檜机と、ふかふかの椅子だった。それでいて圧迫感のある面接であり、最後に「私達と一緒に働けますか?」と言われたのを憶えている。 「はい。私でよければ宜しくお願いします」といったことを告げると、その場で最終合格が遠回しな言い方で告げられた。内定通知は賃貸アパートに届いた。 こんなところに書くほどだから予想はつくだろうが、結構前に官僚を辞めている。仕事は大変キツかった(きっつー、というやつ)が、やりがいはあった。いつかは挑戦してみたい仕事もあった。 思えば、大学3年生の春からコツコツコツコツと勉強を重ねて、やっと第一志望のひとつだった官庁に合格できて、「やったー!」と無邪気に思っていた。案外こんなものだ。 国家公務員(課税部門)としての経験は20数��しかないが、せっかくのシルバーウィークだ。ちょっと語ってみたい。今は税務コンサルタントとして働いているが、夏前に大きな仕事が片付いた。今は仕事を少なくしてもらっている。 仕事のことを、はてな匿名ダイアリーに書いてる人を稀に見る。今回、私もやってみようと思った次第だ。企業との課税交渉の協議録とか、個人・法人の税額とかを載せない限りは大丈夫だろう。何かあったら責任は取るつもりだ。 高橋洋一や山口真由が自著で話している内容に比べれば、当日記はベジタブルのようなものだ。あの内容を出版して捕まらないなら、ここで書く内容など余裕でセーフだ。 なお、私ははてなユーザーの中では年寄り(フミコフミオさんと同い年)である。古い表現があってもお許し願いたい。 先に言っておくが、「霞が関に来なければ体験できなかったことは人生の財産」とか、「国のために働いている自負があった」とか、「苦しかったけどいい仕事ができて国民のためになった~」といったことはあまり書かない。 そんなに夢や理想のある官僚じゃなかった。僅かばかりはあったが。むしろ組織に負のイメージがあって、若い頃に限った語彙だと「こいつらクソ野郎だな」という感情を抱いていた。それで、40代になって数年後に転職した。再就職規制に引っかかる危険はあったが、グレーな方法で突破した。 当日記は、数パートに分かれている。できるだけ簡潔にまとめたい。以下、思い出を何点か挙げて回想する。思い出① 税金とは何か?という問い 中学生の頃から、「税ってそもそも何ぞや?」という疑問があった。大学に入ってからは、税理士の資格を取るために勉強していたが、どれだけ勉強しても税への理解はイマイチだったし、全科目に合格した後も結局わからなかった。※東大とか一橋大とか慶應とか早稲田とか、そういういい大学を出てるわけじゃない。偏差値50ちょっとの大学だ。たまたま会計学の講義を取ってみたら面白く、勉強にハマった。 税とは、一般的な説明だと、国や地方自治体が国家の維持や発展をめざして、民間では供給されにくい公共的なサービスを提供するにあたっての資金として「税金」を徴収している――ということになっている。 だが、おかしいと思っていた。だって、国はお金を自由に発行できる。地方自治体が言うのならわかる。あと、大昔だったら年貢を物納で納めてもらわないと国が維持できなかったはずだ。 だが、現代社会の国家がそんなことを言っても説得力はイマイチだ。税金をとらなくても、別にお金を刷ったらそれでいい。金本位制の時代を通り抜けて、今では発行された紙幣そのものに信用がある時代なのだ。お金というのは、それがお金であるがゆえにお金だ、というトートロジーである。 増田民の人も、わかってる人はわかってるだろう。税とは何かが。ここで答えは書かない。気になる人は、Yahoo!知恵袋とか、Quoraで求めれば賢い人が教えてくれる。 私が納得いかなかったのは、一応は国家公務員一種試験(昔だったら上級甲種試験)を通ってきたはずの人達が、入庁一年目だった私の質問に答えられなかったことだ。「そんな当たり前のことを聞くな」という人もいたし、「ここではちょっと…」と口を濁す人もいたし、「知らん。自分で調べろ」という人もいた。 税を納めるのは当たり前のこと、ただ、その原理と言うか……そう、原理が大事だろう。何も考えずに常識を信じていいのは中級者までだ。上をめざすのであれば、身も蓋もない本質を疑う必要がある。 こういうことを私が言っても説得力がないので、ちょっと引用させていただく。それぞれの原理を、その自然本性のかぎりで探求しようとしなければならないし、きちんと定義されるよう腐心しなければならない。というのも、原理はそのあとに続く事柄にとって、大きな影響をもっているからである。実際、原理は全体の半分以上であり、探求されているものの多くは、原理を経由することで明確になると思われるのである。 ニコマコス倫理学(上) P.62 なぜ国民から税金を取るのか、という新人職員の問いに答えられる職員は10人に1人ほどしかいなかった。思えば、この時から私はいつかここをやめようと思っていたのかもしれない。 実際、徴税は国民みんなから集めたお金を公共サービスに充てるため、というのはお題目だ。わかりやすく国民を納得させるための。本来の目的はほかにある。それに比べると、上の『お題目』はビックリマンチョコのおまけに近い。ウエハースだ。思い出② 課税処分の難しさ トラブルになりかけた事例になる。詳細は端折って書く。専門用語は補足するか、日常的な言葉に言い換えている。 キャリア官僚は現場を体験しないイメージがあるかもしれないが、別にそんなことはない。入庁二年目からは普通に現場だったし、30才を過ぎて地方支局で働いてる人もいる。 当時は、北海道某所にある国税局に勤務していた。一応は税理士に必要な科目は残りふたつというところまで取っていたが、それでも実務は難しかった。勉強しないといけないことは山ほどあるし、一年目は税務の学校で学ばせてもらったが、実務に必要な知識の何割も身に付いていない。税務の世界は広いのだ。 最初の頃はひたすら、簡単な事務とか雑用とか、先輩が受けた税務相談の回答案作りとか、上位機関からの調査ものとか、庶務全般(文書収受~会議日程調整~飲み会手配まで含む)に、兎に角いろいろやった。 すべて勉強になるとは思ったが、正直これは臨時職員がやった方がいいのでは……と感じるものもあった。まあ、とにかく新人らしく何でもやった。 赴任して半年だった。とある先輩を経由して、それなりの事業規模の法人の税務申告を最初から最後までやらせてもらえることになった。同じ年代の職員(※省庁キャリア)の中では遅い方だった。資本金が結構ある機械メーカーだったかな。これまで当業務では、先輩方を手伝う立場として動いていたから、割とすんなりいくように思えた。 申告内容は当然精査するのだが、日本の課税制度は一応性善説でいっている。国民(法人含む)が嘘をついたりごまかしたりしない、ということを前提にしている。その企業も、過去に税務に関して更正処分(支払う税額が誤っていると判断した場合に○円払いなさい、という措置)関係のトラブルを起こしたことはない。 一応は提出書類を三周ほどしたところ、申告書類も、帳簿も、領収書や請求書や契約書(請書)も、通帳関係も問題なし……それで、さあ決裁だといった具合に伺いをスタートした。 先輩方の場合は、スルッと起案が通るようだったが、自分の場合はそうはいかなかった。新人に厳重なチェックが入るのは当然だった。「不動産の項目がおかしい。取得した不動産価格が常軌を逸して安い。税をごまかそうとしているのでは?」 という、先輩及び直属の上司からのツッコミがあった。上司を納得させないと、次に進むことができない。思えば、あの先輩は、このことがわかっていて私に振ったのかもしれない。 当時の私の実力を超えた課題だった。頭を抱えたのを憶えている。あの時の思考過程を追っていこう。 かくして・・・ 探求の旅は はじまった まず何をすればいいかというと、不動産価格がしっかりしたものかを調べればいい。正当な根拠のある価格であればいいし、不適当な価格であれば……面倒なことになる。 不動産売買にかかる課税額は、比較的シンプルだ。普通の法人税と同じで基本は定率である(税額表を見ればいい)。ちょっと賢い中学生でも実務ができるだろう。 印紙税も、登録免許税も、不動産取得税(県税)も、固定資産税(市税)もそんな具合だ。不動産本体の価格については難しい計算が必要だが、焦る必要はない。市区町村にある固定資産税台帳には、固定資産税評価額が載っている。それを見れば、登録免許税の目安となる不動産価格がわかる。※固定資産税の納付書にも書いてある。 それを根拠に……と思ったが、そんなに単純な話ではない。ならば先輩も上司もツッコミを入れたりしない。イレギュラーなケースなのだ。 その物件は、なんと固定資産税台帳に載っていなかった。そういう土地だった。登記簿を見たところ、字名がとんでもないことになっていた。奥地にあって、大昔は栄えていたのかもしれないが、今では地域まるごと誰も手入れをしていない。そんな土地だった。しかし、幅4.0m以上の道路は通っている。江戸時代の人が整備したと思われる。 国税庁においても、外部公表している不動産価格の調べ方みたいなものはある(いわゆる路線価だが、当然奥地には路線価がない)。国でも地方自治体でも、不動産価格を求めるための要綱要領は具えているが、今回は通用しないのではないか。そういう案件だった。 若かりし日の私は思案しつつ、先輩にも相談して上司に2つの案を出したはずだ。懐かしい。 1. 比準価格(みなし計算のようなもの)を使って不動産価格を弾くと、今の数倍以上の価格になる   メリット…適正と思われる税を徴収できる   デメリット…上申や裁判等になった時に勝てる保証がない       県や市町村にも情報共有や協議・意見聞取が必要 2. 今回は大した金額ではないため、相手方の税額を受け入れる   メリット…百万にも満たない税額差であり、費用対効果を考えるべき   デメリット…相手方が悪質だった場合、前例を作ることになる 結局、2.の案が採用された。それで、起案はあっさり通った。協議や相談をしたのは直属の上司までであり、決裁の責任者には上司が一声かけたくらいだ。それで新人職員の一件目である課税処分は通ってしまった。 思えば、先輩や上司からすれば、最初から2.一択だったのだ。今の私の判断もそうだ。課税額の差として百万円にも満たない金額のために、そこまでの手間はかけられない。もっとほかに、日本の税務行政のためにやらないといけないことが山ほどある。 一応弁護しておくと、現場で働く公務員には、「法適用の裁量」と「エネルギー振り分けの裁量」がある。現場的な要素が強い職種だと、上司の指揮監督を受けるのが望ましくない場合がある。極端な例だが、警察官が凶悪犯をパトカーで追っている最中に、スピード違反や信号無視をしている者を放っておくのはやむを得ない、といった観点だ。 余談になるが、国税局職員が県税や市税の脱税を見つけた場合も、人や状況によって対応が変わる。情報提供する場合もあれば、見なかったことにする場合もある。 それこそ昔の話だが、飲み会でとある話を聞いた。ある個人納税者から地方税務署に相談があったという。要約すると「1年前に出した赤字決算の申告書だが、実は黒字で、税金を納めないといけないことがわかった。どうすればいいか」ということだった。追加で納付すべき税額は、約30円のようだ。このままでは脱税者になってしまうと焦っていたらしい。 その相談を受けた税務署員はこう答えたという。「実は、ボールペンとか消しゴムとか、事務用品を買っていたのを申告書に書いてないんじゃないですか? だったら、納付すべき税額はやはり赤字では? 問題ないですよ」と。※以後の話は不明 課税処分はもちろん、どのような行政処分であっても費用対効果という観点が重視される。税収1万円増のために2~3万円をかけるのは議論の余地があるにしても、20~30万円をかけるのは明らかに不合理だろう。 テレビやネットメディアやはてなブログでは、公務員は何も考えずに税金を支出しているイメージがあるかもしれないが、ちゃんと考えている人が多数派である。そこは信じてほしい。 数年後、私は北海道から霞が関に戻ることになった。それから退職するまで、ずっと法人課税部門にいた。
税務官僚だった頃の思い出 Part1/3
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hi-majine · 5 years
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火事むすこ
 むかしは、江戸の名物というと、「火事、喧嘩、伊勢屋、稲荷に犬のくそ」などと申しましたが、いやな名物があったもんでございます。  江戸は火事早いということをよく申しまして、火事のない晩はすくなかったそうでございます。  その時分は、ただいまとちがいまして、火事となると、半鐘が鳴りましたもんで……そうなると、若い連中なんかじっとしておられません。 「おいおい、火事はどこだって?」 「うん、なんだか知らねえが、北のほうへむいてるね」 「北? ただ北じゃあわからねえが、観音さまの手前か?」 「いいや、そうじゃあねえな。五重の塔のうしろにみえらあ」 「へーえ、五重の塔のうしろ? ……吉原じゃあねえか?」 「ああ、吉原かも知れねえ」 「そいつあどうも……しめたぞ!」 「なにがしめただ?」 「なにがって……えー、おう、どうだい、ひとつ、女《あま》をひきとりにいこうじゃあねえか?」 「なまいきなことをいうない。女《あま》ってなあだれだ?」 「おれのなじみよ」 「なにいってやんでえ。なじみにもなんにも……おめえ、吉原へなんぞいかねえじゃあねえか?」 「ええ?」 「いえ、吉原へいかねえじゃあねえか?」 「いったあな!」 「いつ?」 「八年前に……よ」 「ふざけるない。親のかたきをさがしにいくんじゃあねえぞ。八年前の女がいるかいねえか、わかるもんか」 「なにしろ、ためしにでかけよう」  なんてんでのんきなやつがあったもんで……そうかとおもうと、見舞いにいくうちもないのに、あわててとんでいくやつもございます。いわゆる弥次馬というやつで…… 「やあい、あらあらあらあら、やあ、えーい、じゃまだ、じゃまだあい」  なんてんで、自分のほうがよっぽどじゃまで……こんな連中は、火事場へいっても、なんにも用事はございませんから、片すみのほうに寄って立っております。 「どうだい、いせいよく焼けるなあ。風がいいからね……西北《いぬい》でよ。こいつあ大きくなるぜ。しめしめ……」 「なにがしめしめだ? ふざけちゃあいけねえ」 「あっ、おいおい」 「ええ?」 「あすこに大きな蔵があるな」 「うん」 「何屋の蔵だ?」 「質屋の蔵だ」 「質屋か。質屋なんてえものは、まぬけなもんだな。じゃまっけなところへ大きな蔵を建てやがって……しゃくじゃあねえか。あの蔵のために、あすこでとまってしまわあ」 「おいおい、戸前から火がでるぜ」 「え? 戸前から火が? ……なるほど、蔵へ火がへえった。こいつあありがてえ……」  なんてんで……なにがありがたいことがあるもんですか。人の憂《うれ》いをみて喜んでおります。しかし、火事の好きな江戸っ子になると、そんなものだったでございましょう。  こういう一般|町家《ちようか》の消火にあたりましたのが、いろは四十八組の町《まち》火消しというものでございました。なぜ町火消しというものができたかと申しますと、公儀の火消し屋敷の人足というものがおりましたが、これは、大名、旗本の屋敷に火災があったときだけに出動いたしましたので、町家の火事は燃えほうだい……そこで、大岡越前守が、江戸の町火消しをつくって、町家の火災の備《そな》えをしたと申します。で、火消し屋敷の人足を臥煙《がえん》と申しました。これは、いきで、いせいはよかったが、命知らずのらんぼうな連中が多かったようで、たいてい彫《ほ》りものをしておりまして、いざとなると、火よけになる刺子《さしこ》なんぞ身《み》にまとわずに、法被《はつぴ》一枚で火がかりをしたという、どうも荒っぽいはなしでございます。
 神田へんの伊勢屋という質屋の若旦那で藤三郎という人が、たいそう火事が好きで、火事と聞くと、すぐにうちをとびだしてい��ので、親御さんは気が気��ございません。半鐘が鳴ると、 「これよ、半鐘が鳴るから、せがれをよく気をつけておくれ……ああ、それから、火事はどこだい?」  なんてんで、せがれのほうをさきにいって、火事のほうをあとから聞くというくらいでございます。  それでも、若旦那のほうは、なんとか鳶《とび》の者《もの》(町火消し)になりたくてたまりませんが、店に出入りの鳶頭《かしら》はもちろんのこと、ほかの鳶頭連中も廻状《かいじよう》がまわってますから相手にしてくれません。親御さんも不承知で、たびたび叱言をいうのですが、若旦那のほうは、火事ばかり追いかけるという道楽のために、家にはとんと寄りつきません。  この若旦那、年は二十六、色白で小ぶとりにふとりまして、体格のいいところへ、背なか一面に牡丹《ぼたん》に唐獅子《からじし》のあざやかな彫《ほ》りものまでほどこしまして、いっぱしの火消し人足気どりですが、鳶の者になれないものですから、火消し屋敷へはいって、臥煙《がえん》の仲間入りをしようというさわぎ……おやじさんは、かわいいひとりむすこだが、親戚の手前もあり、世間の手前もあるというわけで、勘当同様、うちへの出入りをさしとめということにいたしました。ところが、ご当人は、かえってそれをいいことにして、わびをいれるようすもなく、そのままどこへいったのか、親御さんの前に姿をみせません。  親が子をおもう情は、むかしもいまもかわりはございません。子どものほうはそうでもないが、道楽むすこを持つ親御さんの苦労はたいへんなもので、暑いにつけ、寒いにつけ、「ああ、あの不孝者は、いまごろ、どこでどんな難儀をしているか」と、おとっつあんとおっかさんとが、ときどき寝物語をするくらいでございます。
 ある年、十一月の末のことで、ちょうど九つ(十二時)前という刻限、ジャンジャンジャン…… 「おい、番頭さん、半鐘が鳴るようだね」 「へえ、火事でございます」  といううちに、ジャンジャンジャンジャン、近火とみえまして、火の粉がどんどんかぶってまいります。 「番頭さん、こまったねえ。いや、ほかの商売ならいいが、うちは質屋で、人さまのものをおあずかりしてるのに、おまえ、蔵の目塗りをしなくちゃいけないねえ……きょうにかぎって、左官の八公がおそくてしょうがないなあ……こんなとき、目塗りもしてないようじゃあ、あんな店へ品物はあずけられないという評判が立っちまう……うちののれんにかかわるから、八公が間にあわなきゃあしかたがない……ねえ、番頭さん」 「へえ」 「おまえさん、ちょいと目塗りをしておくれでないか?」 「あたくしが目塗りを?」 「ああ、あれへあがって、おまえ、ちょいとやっておくれよ」 「へえ……ではございますが……あたくしは、どうも高いところへあがりますことが、まことに不得手で……」 「まあ、そんなことをいわないでさ……泥さえついていれば、それでなんとかいいわけは立つんだから……ねえ、あたしも手つだうからさ……おい、定吉」 「へい」 「おまえもこっちへきて、手つだいなさい」 「へえ、なにをいたしましょう?」 「おまえは、土をこねなさい」 「へえ、かしこまりました……旦那、こんなもんでいかがでございますか?」 「もっと大きくしな」 「へえ、では、このくらいでは?」 「もっと大きく」 「ええ、これより大きくなりますと、お値段のほうがずっと張りますが……」 「なにいってるんだい。たどんを買ってるんじゃあないよ……ああ、番頭さん、あぶないよ。しっかり、その折れ釘へつかまって……ああ、あやしい腰つきだな……片っぽうの手で、うまく泥がうけとれるかな……なに? 両方の手ははなせない? それはもっともだ……じゃあいいかい? 泥をほうるから、うまくうけとっておくれよ。そら、いいかい……あっ、おとしちまった! なんという腰つきをしているんだ? だめだな、そんなようすでは……第一、その……下からほうるものを、上でつまんじゃあいけないよ。なんのことだねえ……そら、いいかい? 手をこうひろげてうけとるようにするんだ。おまえだって、知ってそうなもんじゃあないか? かわら屋だの、左官だのが、泥をうけとるのをみたって、上からつまみゃあしない。いいかい、ほうるよ。小さいから、うまくおうけとりよ……ほら! あははは、おまえの顔へぶつかっちまった。おまえの顔を目塗りをするつもりじゃあなかったんだが、つい、はずみがついたもんだから……さあ、いいかい? こんどはしっかり……いや、どうもうまくいかないもんだな……」  と、さわいでおりますところへ、屋根から屋根をぴょいぴょいつたわって、とんできたのは、年のころ二十五、六になります、色白で小ぶとりの男、からだじゅう彫りものだらけで、法被《はつぴ》一まいというこしらえで、猿《ましら》のようにぴょいぴょいと屋根から屋根をとんでまいりましたが、 「おう、そんなこっちゃあいけねえ」 「へえへえ、どうも、これは……」 「待ちねえ。おれがうまくやってやるから……片っぽうの手じゃあいけねえ。帯をときねえ。それ、ここでゆわいて、この折れ釘へひっかけるんだ。それ、そっちの手をはなしてもいい……両方の手がつかえるだろう?」 「なるほど……へえ、どうもおそれいりました。これならだいじょうぶで……なるほど、うしろへひもがついていて……もし、旦那さま、こんどはだいじょうぶでございますよ」 「これはどうもありがとうございます。おかげさまで……いや、さすがはご商売がらだ……なるほど、折れ釘へしっかり帯をゆわえつけて……それなら、おちる気づかいはありませんねえ……番頭さんや、どうだい?」 「ええ、もうだいじょうぶでございます。これなら両手がつかえますから、たしかにうけとれます……もう、踊りでもなんでも……なんならかっぽれでもお目にかけましょうか?」 「なにをのんきなことをいってるんだ。早くやっておしまい」  ようようのことで、目塗りのまねごとができました。 「ああ、骨が折れた。みているだけだったが、じつにどうもくたびれた。どうも年をとっちゃあいけないな。ちょいとしたことでもたまらない……しずかになったようだがどうした? 定吉、もう消えたか?」 「へえ、ただいまやっとしめったそうで……」 「ああ、そうかい。そりゃあよかった。はいはい、どうもありがとうございます……あ、どうもありがとう存じます。お早や早やとどうも……」 「へい、こんばんは。近江屋でございます。どうもおそうぞうしいことで……」 「ええ、山田屋でございます」 「へえ、どうもわざわざありがとう存じます……へい、どうも……おい、定吉、あれはどちらの? なに? あれが加賀屋さんの若旦那かい? そうかい……うーん、いいせがれさんになんなすった……たしか、うちのばか野郎とおない年だったな?」 「へえ、うちのばか野郎とおない年で……」 「なんだ、おまえまでばか野郎なんていわなくてもいい……ああ、あれをみるにつけても、うちのせがれは親不孝、加賀屋さんのせがれはりこうもんだ……まあまあ、勘当したやつのことをおもってもしかたがないが……そうだ、お見舞いにみえたかたのお名���を帳面につけとかなきゃあいけない。ああ、番頭さんはどうしたい?」 「番頭さんは、まだ、折れ釘にぶらさがっております」 「えっ、そりゃあいけない。だれか手つだっておろしてやんなさい。ひとりでおりることができないんだ。早くおろしてやんなさい……ああ、おりてきたか。いや、ごくろうさま、ごくろうさま。さぞこまったろう?」 「へえ、どうもなれませんことは、しょうのないもんで……」 「顔を洗ったか? ……いや、どうも、おまえさんも店でそろばんをはじいていりゃあ一人前だが、高いところへあがっちゃあ、どうもだらしがないなあ……しかしまあ、ああしておけば、人さまにみられても恥ずかしくはない。いや、結構、結構……」 「ときに、……旦那さま」 「なんだい?」 「さきほど、あたくしがこまっているところを手つだってくださったかたがございます」 「ああ、そうだった。すっかりわすれていたよ……しかしまあおどろいたねえ。いかに商売とはいいながら、屋根から屋根へぴょいぴょいととんだときは、とても人間わざとはおもえないようだった」 「そのことについてでございますが……旦那さまが、あのかたにひとことお礼がおっしゃりたいのではないかと存じまして、あたくし、おひきとめいたしておきました」 「そりゃあよかった。よくおひきとめしてくれたねえ……じゃあ、さっそく会ってお礼を申しあげよう」 「へえ……けれども……むこうさまでは、旦那さまにお目にかかることは、まことにめんぼくないとおっしゃってるんでございますが……」 「なんだい、あたしに会うのがめんぼくない? へーえ、どういうわけなんだい? ……ふーん、すると、うちのお客さまだね? こちらでこまるという品物を無理に質に置きなすって、しかも、流してしまったというようなことじゃあないのかい?」 「いえ、そういうわけではないんで……」 「なんだい? それじゃあ……」 「へえ、せっかく、こういうときに、おかけつけなさいましたんでございますから……」 「せっかくかけつけた? なんのことだい? ちっともわからないじゃあないか」 「へえ、あのかたは、ご勘当になりました若旦那でございます」 「ええっ、あれがせがれかい!? からだじゅう彫りもので……」 「さようでございます」 「屋根から屋根をとんできた……あの男が?」 「へえ……」 「まあ、あぶないじゃあないか! もし、おまえ……屋根からおっこちたら……いやいや、あたしのせがれじゃあないから、そんな心配もいらないことだが……人さまだって、怪我をしていいということはない。なにはともあれ、こういうときにおかけつけになって、おまえの、ああやってこまってるところを……なにしてくだすったんだ。お目にかかって、お礼だけはいいましょうよ」 「へえ、どうもありがとう存じます」 「どこにおいでなさる?」 「ええ、裏口のほうから、台所の、あの二畳のところにいらっしゃいます」 「ああそうかい……では、いってお目にかかり、よくお礼をいいましょう」  番頭さんも喜んで旦那をつれてまいりますと、若旦那はきまりがわるうございます。法被《はつぴ》一まいで、太股《ふともも》のところも彫りものだらけでございますから、下帯のたれをとりまして、前だれのようにひっぱりましたが、どうしたってかくれるものではございません。しかたがないから、台所の隅で小さくなっております。 「ええ、旦那さま、ここにおいででございます」 「ははあ、おまえさんかい?」 「へえ……どうも、ごぶさたをいたしました。いつもおかわりがございませんで……おめでとう存じます。こうしてお目にかかりますのも、まことにめんぼくないことで……」 「はい」  はい……とはいったものの、おやじさんは返事もできませんくらいに、涙がいっぱいでておりますが、しかし、あくまで他人行儀に、 「いや、さきほどはありがとうございました。番頭から委細を聞きまして、ここまでお礼を申しあげにまいりました。どうぞこちらへおでましをねがいたいもんで、そんな隅にいらしったんじゃあ、暗くてしょうがございません」 「へえ、かような姿になりまして、お目にかかるのもお恥ずかしいようなしだいで……」 「へえへえ、どういたしまして……まあ、おまえさんもおかわりがなくと申しあげたいが、たいそうりっぱな絵がかけましたな。わたくしどもにおいでのころは、そんな絵なんぞかいてあげなかったが……まあまあ、おまえさんもおたっしゃで結構だが、親はばかなもので、おまえさんが、そういう道楽でとんで歩いているとは知らず、しばらくうわさにも聞かず、おもてでも会ったこともないが、ああいうやつだから、さだめしこまって、どこぞの木賃宿にでも住んでいやあしないかと、親はよけいな心配をしている……いや、親でない、子でない……お他人さまのことを大きなお世話だが……まあまあ、おたっしゃで結構……この寒いのに、そんなかっこうで歩くのも、おまえさんが好きですることだから、なにもいうことはないが……いまも、加賀屋さんのせがれさんが、火事見舞いにきてくだすったが、たしか、おまえさんとおない年だ。おない年でも、あちらはあの通りのりこうもの、おまえは、そんな服装《なり》をして、このへんをぶらぶら歩いて、『ああ、あれは伊勢屋のせがれの藤三郎さんか』と、人さまにうしろ指をさされる……親の顔へ泥を塗るというのは、おまえさんのことだ」 「へへへ、旦那なんか、さっき番頭さんの顔へ泥を塗りました」 「なんだ、定吉、おまえ、そんなところで聞いてたのか……あっちへいけ! ……お礼を申しあげまして、これでもうあたくしのほうでは用はございません。おひきとりをねがいます」 「まことにめんぼくしだいもございません。またおわびのかなう時節《じせつ》もございましょう。それじゃあ、これでおいとまいたします」  いっているうちに、小僧が奥へいって、母親にこのことをはなしましたから、母親は喜んで、抱いていた猫もなにもほうりだして、あわててでてまいりました。 「あの……おとっつあん、いま、定吉から聞きましたが、あれがきましたってね? ほんとうですか? どこにいます?」 「そこへ坐ってらあ」 「あらまあ……よくおいでだねえ。まあ、苦労をしたとみえて、わずかのあいだにずいぶん年をとっちまって、髪んなかへ白毛がまじって……」 「そりゃあ番頭だよ」 「あら、ほんとうだ。いやだよ、番頭さん、なぜおまえ、そこへ顔をだすんだ。まちがえるじゃあないか……藤三郎や、まあまあ、よくおいでだねえ」 「うかがえた義理じゃあございませんが、遠くからみておりますと、番頭さんがこまっておりましたんで、矢もたてもたまらず、ついお手つだいをいたしました……おっかさんもおかわりなくておめでとうございます」 「ああ、ありがとう……まあ、おとっつあん、みておやんなさい。このさむそうな服装《なり》……いいえ、おとっつあんとおまえのうわさばかりしてるんだよ……『こうやって身代《しんだい》はのびるばかりだが、これをゆずるものもない。どうかあれがまともになってくれれば、この身代はすっかりゆずってやるんだが……まあ、どうしているか? かわったことはないか? それとも死んでしまったか?』と、いって、いつもおとっつあんとうわさばかり……おまえが火事が好きだから、どうか世間に大火事があってくれれば会えるんだがと……」 「なにをばかなことをいうんだ!」 「ようございますよ。それくらいのことをいったって……わたしは、なにもこのうちへ火をつけようとは申しません」 「うちへ火なんぞつけられてたまるもんか」 「まあ、いいじゃあありませんか。そんなにぽんぽんおっしゃらなくても……男親というものは、いやにやせがまんをするというけれどほんとうですね。あなただって、お腹んなかで泣いていることは、よくわかってますよ」 「なにをばかな……」 「しかし、藤三郎や、おまえもいいかげんにまともにならなくっちゃあいけないよ。まあ、そんな服装《なり》をして、風邪でもひいたらどうするんだい? ……もし、おとっつあん、わたしは、この子のものを蔵へいってみると、胸がいっぱいになりますよ」 「なにもこんなやつのものを、蔵へなんぞしまっておくことはないじゃあないか。けがらわしいから、往来へすてちまいな!」 「それがあなたは頑固《がんこ》ですよ。すてるぐらいならやってくださいな」 「だからすてちまえっていうんだ……わからないなあ。すてりゃあ、着物でも、小づかいでも、ひろっていくからうっちゃれってんだよ」 「あはは、そうですか。よくわかりました。ええ、さっそくすてますよ。すてますとも……みんな、ちょいと手を貸しとくれ。たんすごとすてるから……」 「そんなにすてなくったっていいよ」 「小づかいは、どのくらいすてましょうね? 千両もすてますか?」 「そんなに一ぺんにすてずに、ちょくちょくすててやんなよ」 「それに、この子は、勇みの姿《なり》も似合いますけれども、色が白うございますから、ほんとうの……品のいい服装《なり》もよく似合います。あの……それ、いつでしたか、あなたのかわりに、年始まわりをしたことがございましたろう? ……一本、お太刀をさして、袴《はかま》、羽織で……ほんとうによく似合いましたね。あれは、伊勢屋のせがれだって、人がうわさをいたしました。あのとき、わたしは、もううれしくてたまりませんでしたよ……なにしろ、あの子は、あなたより男っぷりがようございますからね……」 「なんだい……つまらないことをいいなさんな」 「だって、ほんとうでございますもの……もし、あなた、これが色白でございますから、袴羽織で黒の紋付が、そりゃあもうよく似合います。どうか……ねえ、わたしはいま、これに……あのときの服装《なり》をさせて、小僧を供《とも》につけてやりとうございます」 「なにをいってるんだ。勘当したこんなやくざなせがれに、そんな服装《なり》をさせて、小僧を供につけて、いったいどうするんだ?」 「わたしゃあ、火事のおかげで……会えましたから、火元へ礼にやりとうございます」
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