「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和六年(2024)3月15日(金曜日)弐
通巻第8176号
明日(3月16日)、北陸新幹線が金沢から敦賀へ延長
福井県は観光と経済活性化の期待に湧いている
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北陸新幹線は日本海沿岸の糸魚川(新潟)から富山、金沢を通り、��狭と越前の境にある港町・敦賀まで延長される。『古志の国』の再現だ。
敦賀駅は新幹線駅で最高位の三階建て、駅前は商店街が整備され、あちこちに歴史的な遺物やら銅像、記念館がならんで観光客を待ち受けている。気比神宮から金ケ崎城跡は後醍醐天皇の御代の激戦地、信長潰走のおりは明智光秀が鉄砲隊を組織してみごと殿軍を務めた。
松原海岸から南へ歩くと、水戸藩の武田耕雲斎以下の天狗党を祀る松原神社、このあたりに渤海使をむかえた迎賓館があった。敦賀は観光資源に恵まれているのである。
筆者、古代史最大のミステリーのひとつである応神天皇、そして継体天皇の取材を数年つづけているため何回も訪れてはいるが、訪れるたびごとに新しい発見がある。
記紀では応神天皇が武内宿弥に連れられて禊ぎに気比神社へ赴き、地元の神と名前を取り替えた。なぜ?
気比神社は仲哀天皇、神功皇后、応神天皇を祀るが、猿田彦と竹内宿彌もちゃんと祀られている。敦賀の応神を祀る神社のほぼすべてで、武内宿彌を祀っている。その謎を解明するために現地の稗史を調べているのです。
継体天皇は三国に育ち、坂井市にある『天皇宮』に大和朝廷からの使者、大伴金村と物部荒鹿火を迎えた。その近くには執務した高向宮跡がある。また謡曲「花かたみ」の舞台と想定されるのが越前市の「花かたみ公園」と味真野神社。そこから奥へぐんと這入り込むと五星(ごおう)神社がある。応神から継体までの五代をまつる神社だ。このあたりが「文室」(ふむろ)とよばれるのは継体天皇の学問所があったとされるからだ。
脱線すると能の『花かたみ』は各地の能舞台で演じられるが、ことしは3月17日に長野で催される。残念ながら筆者、先約とかさなって鑑賞に行けない。越前郊外の味真野神社境内には、この能を再現する継体天皇と越前妻とが並ぶふたりの銅像が建立されており、王冠は金で輝いていた(それにしても駅から遠いです)。
脱線すると雇ったタクシーは日産EV。『タクシーの電気自動車は初めて』というと運転手は「寒いから暖房を入れると電池の消耗がものすごい」と愚痴をこぼした。
新幹線のはなしに戻すと福井駅前には「ふくみち」として商店街が整備され、武生駅は従来線駅よりかなり遠い田圃の真ん中に「越前たけふ」駅が新装されていた。
沿線にはカメラマンがズラーリ、最後の従来線の車両と新幹線の一番列車を撮影しようと全国から鉄道ファンがあつまって壮観だった。彼らには応神、継体天皇に興味はない。
さて糸魚川、富山(射水)、伏木、倶利伽羅峠、加賀の小松、そして坂井市の称念寺、敦賀気比神宮と、それぞれに芭蕉の句碑が建立されている。『奥のほそみち』は『古志のほそ道』であったというのが筆者の持論である。(拙著『葬られた古代王朝・高志国と継体天皇』、宝島社新書を参照。古志は「高志」、または「越」とも書きます)。
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((( 演目事典より )))
越前国味真野(現在の福井県越前市味真野町周辺)に、応神天皇の子孫である大迹部(おおあとべ)皇子(男大迹皇子、男大迹邉皇子とも表記)が住んでいました。皇子は武烈天皇より皇位を譲られ、継体天皇(450~531)となり都へ旅立ちました。帝は味真野にて寵愛していた照日の前に使者を送り、手紙と愛用した花筐(はながたみ:花籠のこと)を届けます。出先で使者を迎えた照日の前は、天皇の即位を喜びながらも、突然の別れに、寂しく悲しい気持ちを抑えられず、手紙と花籠を抱いて、自分の里に帰りました。
大和国玉穂の都(現在の奈良県桜井市池之内周辺)に遷都した継体天皇は、ある秋の日、警護に当たる官人らを引き連れて、紅葉見物にお出かけになりました。そこに照日の前と花籠を持った侍女が現れます。彼女は天皇への恋情が募るあまり、狂女となって故郷を飛び出し、都を目指して旅をしてきたのでした。狂女・照日の前が、帝の行列の前の方に飛びだすと、官人が狂女を押し止め、侍女の持つ花籠をはたき落します。照日の前はこれをとがめ、帝の愛用された花籠を打ち落とす者こそ狂っていると言い、帝に逢えない我が身の辛さに泣き伏してしまいます。
官人は帝の命令を受けて、照日の前に対し、帝の行列の前で狂い舞うように促します。照日の前は喜びの舞を舞った後、漢の武帝と李夫人との悲しい恋の顛末を物語りつつ、それとなく我が身に引き寄せて、帝への恋心を訴えます。
帝は、照日の前から花籠を受け取ってご覧になり、確かに自分が愛用した品だと確認し、狂気を離れれば、再び以前のように一緒になろうと伝えます。照日の前は、帝の深い情愛に感激し、正気に戻ります。この花筐以降、「かたみ」という言葉は、愛しい人の愛用の品という意味を持つようになったと伝えられています。かくして二人は、玉穂の都へ一緒に帰っていくのでした。
(( 以上ご参考までに )))
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アゴリスト・ネクサス独占:コルベット・リポートのジェームズ・コルベットが、アゴリズム、コビッド・サイオプ、日本でのリバタリアンライフについて語る。
by Graham Smith April 10, 2021
https://www.agoristnexus.com/agorist-nexus-exclusive-james-corbett-of-the-corbett-report-weighs-in-on-agorism-the-covid-psyop-and-libertarian-life-in-japan/
ジェームズ・コルベットは、オルタナティヴ・メディア界では実に侮れない存在である。コルベット・リポートでの彼の多作で、厳格で、目を見張るような仕事は、世界中のアゴリストやアナーキスト・サークルで当然の尊敬と注目を集めている。こうした影響力の圏外でも、彼は大きな影響を与えている。Agorist Nexusの寄稿者であるグラハム・スミスは最近、彼をデジタル・インタビューのために探し出し、アゴリズム、コビッド・サイオプ、日本でのリバタリアン生活などについてジェームスに意見を求めた。
アゴリスト・ネクサス:「アゴリズム」という言葉があなたの意識に最初に入ったのはいつですか?アゴリズムという概念を初めて聞いた人に、どのように説明しますか?
ジェームス・コルベット:アゴリズムに初めて触れたのは正確には覚えていないが、ウェブサイトでこのトピックを最初に探ったのは2015年のことなので、それ以前のことだろう。コンキンに倣って、私はアゴリズムを「国家を弱体化させ、真に自発的な社会の創造に必要な平和的革命を達成するために、反経済理論を用いること」と定義している。
AN:私たちは今、潜在的なワクチン・パスポートや企業向けの「WELLヘルス・シール」の導入を目の当たりにしている。この強力な世界的権威主義的権力に打ち勝つ希望はあるのでしょうか?
JC:お住まいの地域にもよりますが、ワクチン・パスポートの導入には法的・政治的な課題がいくつもあります。しかし、実践的な反経済学者として、唯一実行可能な長期的な解決策は、中央集権的な権力の指令の外で平和的に取引を行いたい人々のために、グレー・マーケットやブラック・マーケットの空間を作り出すことです。
AN:日本文化にアゴーリスティックな要素やアナーキズム的な要素があるとすれば、どのようなものがあるとお考えですか?
JC:日本の家庭は一般的に、いまだに家族経営の農場/田んぼ/庭とのつながりを持ち、田舎の「ふるさと」空間を偶像化しています。これは、中央集権的な食料生産・流通メカニズムに代わる手段が、少なくとも(減少しつつあることは認めますが)存在することを意味します。このことはまた、食糧供給が途絶えたときに、コミュニティ・ガーデンやファーマーズ・マーケットが生まれる(あるいは脚光を浴びる)機会があることを意味する。これは、(少なくとも他の多くの国と比べて)日本ではすでに比較的広く普及している暗号通貨を含む、コミュニティ通貨や代替通貨などを組み込んだ、日本における反経済的抵抗勢力を構築するために利用できるレバレッジポイントである。とはいえ、日本では反経済活動に対する哲学的な理解(あるいは関心)はほとんどないし、日本人の封建的な条件付け(現在は企業封建主義として現れている)が、大規模な経済的混乱が起きない限り、ここでのアゴリスト革命の可能性を低くしている。
AN:現在カナダやイギリスなどで起きているような、国家による全面的な封鎖が日本でまだ行われていないのはなぜだと思いますか?このような規制はいずれ日出ずる国にも及ぶのでしょうか?
JC:一言で言えば、オリンピックです。日本は、ますます不正確な名称になりつつある東京「2020」オリンピックが、どのような去勢された形であれ開催されるように、まだ平常心を装おうとしている。それが実現すれば(あるいは大会が完全に中止されれば)、歌舞伎のショーは終わり、より厳しい規制が導入されるだろう。政府はすでに、(罰金という形で)店舗の営業時間などを都道府県の手に委ねようとする新たな法案を可決している。そのため、オリンピックが一段落した後、日本がどこまで迅速に「正常化」(つまり、非人道的な封鎖規則を導入)するかは、この新たな緊急権限に対する法的挑戦によって決まるだろう。
AN:政治家、保健当局者、その他の著名人が、マスクに関する自らの勧告や警告に従わなかった例はたくさんある。ジョー・バイデンは、連邦政府敷地内でのマスク着用を義務付ける自身の大統領令に従わなかった。ここ日本では、女子サッカー日本代表がオリンピックの聖火リレーでマスクをせずに走った。なぜ大衆は、このような明らかな矛盾にもっと注意を払わないのだろうか?
JC:大衆が気づいていること、気づいていないこと、信じていること、信じていないことについて、主流メディア��私たちの認識を形成しないように注意しよう。国民の大部分には大きな不満の兆候があり、その怒りがほとんどの主流メディアに反映されていないからといって、それがそれほど強力でないということにはならない(例えば、クオモ知事やその他の役人が路上で憤慨した市民に立ち向かっている動画がソーシャルメディアにいくらでも出回っているのを見てほしい)。真の問題は、政治家やその他の人々が、いかなる種類の説明責任からも完全に隔離されていることであり、こうした明らかな偽善行為を指摘されても、一般人は何もできないと感じるのだ。
AN:2025年の世界をどう見ていますか?
JC:未来はまだ書かれていない。もし私たちがグレート・リセットのアジェンダを野放しにするのであれば、2025年までに、私たちはバイオセキュリティ国家の制度化への道を歩むことになるでしょう。このシステムは、中央銀行のデジタル通貨や「ユニバーサル」ベーシックインカムの支給に連動するバイオメトリクスIDや社会的信用スコアに結びついたワクチンパスポートによって促進されるだろう。大規模な市民的不服従が起これば、このアジェンダは後退するか、最悪のシナリオでは当分の間頓挫することも考えられるが、反経済革命が分散型通貨を使った平和的で自発的な個人間の真の自由貿易の場を切り開かない限り、そして切り開かない限り、このアジェンダが本当に阻止されることはないだろう。
AN:2020年初頭にコビッド・サイオプが一般大衆に向けて開始されて以来、あなたの報道は驚異的なものだった。ビル・ゲイツに関する暴露記事は驚くほど詳細で、目を見張るものがあります。何があなたをそこまで深く掘り下げ、数え切れないほどの時間を費やしてこの重要な情報をまとめ、あなたのファンやフォロワーに提示する原動力になっているのでしょうか?
JC:自分のことを深刻に考え過ぎないようにしていますが、同時に、私が提示しようとしている情報は極めて深刻に受け止めています。ゲノム編集技術や脳チップ、中央銀行のデジタル通貨など、テクノロジーの進歩が優生主義者たちの手の届くところになってきており、人類の未来が危機に瀕していることを実感しているからだ。私たちが直面しているアジェンダの本質を真に理解し、警鐘を鳴らし、峠を越えてそれを阻止するために全力を尽くさない者は、すでに人間性を喪失している。
AN:もし、あなたがたった3つの言葉で世界にひとつのメッセージを伝えることができ、誰もがそのメッセージを聞き、理解し、行動するとしたら、それは何ですか?
JC: You. Are. Free.
ー
Agorism - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Agorism
アゴリズム(Agorism)とは、非暴力革命の側面と関わりながら、対経済学によって人と人との関係がすべて自発的な交換であるような社会を作ることを提唱する社会哲学である。アゴリズムはアナーコ資本主義と似た要素を持つが、一部のアナーコ資本主義者とは異なり、ほとんどのアゴリストは望む結果を達成するための戦略として投票に厳しく反対している[1]。 アメリカのリバタリアン哲学者サミュエル・エドワード・コンキン3世(1947-2004)によって、1974年10月のCounterCon Iと1975年5月のCounterCon IIという2つの会議で初めて提唱された。
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『久しぶりに、旅へ⑦(帰路。旅の終わり)』
天候不順で危ぶまれたこの旅も、なんとか乗り越えて、輪島の朝市も、実り多い散策となった。
売場のお母さん達に細かなサービスもいただき、ささやかながら、旅の思い出にもなった。
実はこの時仕入れた買物に、お店側のミスで、包装物内の商品が間違っており、後に気付いて、宅配にて交換してもらった。出店の当人(お婆さん)の連絡先が不明で、仕方なく付近のお店と連絡とったところ、そのお店の方が出店のお婆さんと仲の良い方だったため、親切に仲介していただいた。地域の繋がりが深いからこその応対に、良き日本の姿を感じた。こんなエピソードも、高齢化進む輪島の朝市の魅力の一つなのかもしれない。(写真のお店ではありません)
閑話休題。
この日は石川県輪島市から、東京都内への帰路。あまりのんびりもしていられないのだが、長距離ドライブに慣れている私は、幾分かマヒしている事もあり、紙の地図を見ながら、あちこち立ち寄る事になる。
こちら軍艦島(見附島)。長崎県の有名な軍艦島(端島)でないのは一目瞭然。でも、立派に軍艦のような姿の小島で『えんむすびーち』なる愛称で親しまれているようだ。鐘を鳴らすと良縁に恵まれるという。念の為3回ほど鳴らしてきたが、今のところ音沙汰無い。
さて、この軍艦島(見附島)のすぐ付近に、日本酒の『宗玄酒造』がある。素晴らしい佳酒を醸す酒蔵であり、この酒蔵でしか手に入れられないお酒もあるので、それらも頂いてきた。
実はこちらの『宗玄酒造』、現在の天皇陛下が即位される直前に訪れていて、和かな写真が飾られていた。陛下も宗玄を楽しまれているかと思うと、親近感が湧いてくる(笑) 酒蔵の方に当時のお話もお聞かせいただいたが、日本酒の好きな方らしい。余談だが、この地域から遠くない『白川郷』付近もお好きなようで、何度か立ち寄られている話しも耳にしている。
さて。
できるだけ下道で〜と走っていたが、上記以外にも旧道の峠越えとかしていたら時間が押してきたのだが、道中にこんなモニュメントが設置してある、道の駅『イカの駅つくモール』に遭遇、立ち寄り撮影会(笑)
このイカさん。隣のテトラポッドで解ると思うが、かなり巨大な造りもので、ご丁寧に、人間が捕まるシチュエーションや人間などが喰われるシチュエーションも演出できる。お試しを!
さらにその先。道中の『能登ワイン』の看板に引き寄せられ、たまたま私達だけだった事もあり、ワイナリーの方から詳しい説明紹介をいただいて、ワイン購入。
写真右は自宅での一枚だが、なかなか先を期待させる素敵なワインでした。少し寝かせても良かったかな。
結局、日本海側の天気が崩れてきたこともあり、その後は出来るだけ下道を使いながらの帰路へ。のんびり帰るので600km近いドライブも、渋滞もなく心地よいものであった。
台風の影響を受けていたにも関わらず、要所要所では天気に恵まれ、久しぶりの旅らしい旅となった。ただ次回石川県に向かうときは、数日かけて、のんびり巡ろうと思う。
さて、次はどこに行こうか。。
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手ごろで美味しい持ち帰り店 ~ ひなたはるはる
福岡方面から日向峠を越えてきたところ。毎度気になりつつもいつも前を通るだけでした。今回は近くを訪問したので初めて寄ってみました。天気が良く外でお弁当を広げたい気分だったところにピッタリ!。目につく「だんご汁」も持ち帰りOKで、具もたっぷりでとても美味しかったです。
この日は日曜日でしたが開店してました。ファミリーのお昼にちょい追加にも良さそうです。
↑ 糸島方面 ↓ 日向峠・福岡方面
開店直後の11時ちょい過ぎでした。「何があるかな~?」と覗いてたらご主人が奥(調理場)から出てこられました。
だんご汁のお持ち帰りができるか聞いたところ見本を見せてくれました。「(これ冷めてるので)温めるか10分ほど待てば出来立てを出しますよ」と言うことで、時間もあったしせっかくなので作ってもらいました。
待ってる間に女将さんがやって来ました。で、だんご汁とかしわおにぎり(2個)を頼んでたのですが、受け取る際に女将さんが「初めてですか?」と尋ねられました。「ええ、気にはなっていたんですが、」などと答えてると「そうですよね、通り過ぎちゃいますよね」みたいに言われてました。そして、「初めての方にはお漬物かおこげを差し上げてます」とのことでお漬物を頂きました。「おこげ」にも惹かれたのですがパックにしてあるということはある時は購入できる?
集落の路地を150��ほど先に進んだ神社横で頂きました。
かしわおにぎりには炭火焼きの鶏肉がのせられてました。頂いたお漬物もとても美味しかったです。家庭料理風のだんご汁も具だくさんで大満足でした。
ついつい通り抜けてしまうお店ですが買い出しに良いお店です。また機会があれば寄りたいと思ってます。(2023.3.19)
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年内最後?フィッシングセンター竹の内へ釣行
2022年11月、フィッシングセンター竹の内(南河内郡太子町) iPhone11
どうも、こんにちは。FC竹の内に行って来ました。前回の釣行で、即席釣り大会(14時から1時間程度、1枚長寸)で3位に入り、金券300円を獲得したので使いたかったってのもありますw。金券を使ったので、2000円−300円=1700円になりました。
2022年11月、フィッシングセンター竹の内(南河内郡太子町) iPhone11
FC竹の内の規定は、竿は10尺〜15尺。10尺あれば良いんだけど、新べらを放流しているし、並びの人たちが10尺で釣ってたので、13.2尺の「げてさく」を出してみました。
2022年11月、フィッシングセンター竹の内(南河内郡太子町) iPhone11
7時開場で、7時半前には着いたんだけど、仕掛けを作ったりして用意が遅く、釣り開始は8時42分になりました。エサは「野べらグルテン」。約30分後に1枚目が釣れました。大阪の釣り池は、箱池はマブナを混ぜてるところが多いんだけど、野池に桟橋って感じの釣り池はヘラブナ限定?の放流が多いみたい。FC竹の内も体格の良いヘラブナが釣れる。水深もそこそこあるし、13尺の「げてさく」で釣ると気持ち良い。
2022年11月、フィッシングセンター竹の内(南河内郡太子町) iPhone11
FC竹の内は峠越えの途中にあるので、日が当たらないと結構寒い。昔買ったシマノの防寒着のインナーのダウンジャケットを愛用してるんだが、寒いので車に上着を取りに行った。
2022年11月、フィッシングセンター竹の内(南河内郡太子町) iPhone11
紅葉が綺麗。中央桟橋に座って午前の日差しに照らされる紅葉を見てるとうっとりする。いかんいかん、ウキに集中しなければ。
2022年11月、フィッシングセンター竹の内(南河内郡太子町) iPhone11
「野べらグルテン」は3枚だっけ?「グルテン四季」+「凄グル」にチェンジ。チェンジ直後はウキの動きが良くなったので期待を持ったが、意外と渋い。ポツポツと2枚釣れた後、視線を外したらウキが大きく沈んでいる…アワセると引きがおかしい。掻いたかな〜と思ったが、一荷でした。上のヘラブナは多分35cmを超えていて、他の池だったら大助かな〜。FC竹の内で検寸持ち込みできる大助は40cm以上です。ちなみに大助は、西池が35cm以上、こしが池と茨木新池が36cm以上だったかな。
2022年11月、フィッシングセンター竹の内(南河内郡太子町) iPhone11
11時23分にお昼休憩に入って午前中は7枚でした。隣にある「二上山万葉の森」の食堂で昼食です。
2022年11月、フィッシングセンター竹の内(南河内郡太子町) iPhone11
今までエビフライ定食一択でしたが、初めてハンバーグ定食を頼んでみました。ヒジキとか健康に良さそうなものが付いてるのでお気に入りの定食なんですが、ハンバーグが小さい…まあ、お味噌汁とコーヒーゼリーを入れて8品もついているのでボリュームは十分。1100円です。FC竹の内に来たらお昼はいつもココ。
2022年11月、フィッシングセンター竹の内(南河内郡太子町) iPhone11
今日も美味しかった。余は満足じゃw。食堂から見たFC竹の内。FC竹の内の正式名称は「二上山万葉の森 フィッシングセンター竹の内」らしい。
2022年11月、フィッシングセンター竹の内(南河内郡太子町) iPhone11
午後のエサは「いもグルテン」+「グルテン四季」にしました。時合いが悪いのか、釣りが下手なのか、午後の3時間で4枚しか釣れなかった。上鉤のハリス25cmだったんだけど、もっと伸ばした方が良かったかな〜。糸付きの鉤を買ってるので、切れたわけでもないのに鉤を捨てるのが勿体なかったw。
2022年11月、フィッシングセンター竹の内(南河内郡太子町) iPhone11
今日はワールドカップの日本戦もあるし、大阪屋さん(ヘラ釣り専門店)で鉤とか小物を買いたかったので、15時で竿を納めました。大阪屋さんは18時閉店なので、営業終了の16時まで釣りをして片付けしてから帰ったら時間も余裕ないんですよ。お客が居なかったら18時前でもシャッター下ろしてる時あるしw。峠越えの途中にあるFC竹の内は15時過ぎでこんな感じ。日陰になって冷えてきます。だから、晩秋のうちに来ておきたかったのです。冬は、平地の箱池が良いかな〜。そういえば、今年は阪奈園へら鮒センターに1回も行ってないな…あそこも山の上で冬は凍ったり。
ということで、11月27日は、ヘラブナ11枚でした。20枚釣りたかった。
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ラダック2-4日目のメモ。
2日目は1日目の現金盗難とスマホ破壊のショック疲れで休養日にしてた。結局ゲストハウス近くの別の宿でスクーターを借りた。初日行ったところより200ルピーも1日あたりで安く、状態も悪くなかった。その後レー王宮とナムギャル・ツェモに歩いていった。ナムギャル・ツェモははじめて行ったチベット寺院で、小さいけれどインパクト大だった。道なき道をひとりトレッキング状態で靴の踏み跡に励まされながら必死に登り。普段閉じていることが多いらしい部屋が2つ開いていて。瞑想する人、五体投地する人。溢れんばかりのお供え。圧倒された。帰りに道なき道を行こうとする仲間を見つけると嬉しくなった。
3日目からスズキのアドレス125でスクーター旅開始。まずは日帰りで上ラダックのゴンパめぐり。巡ったのはティクセゴンパ、タクトクゴンパ、チェムレゴンパ、へミスゴンパ。本当は6つ周る予定がやっぱりじっくり見たくなっちゃうし、チェムレゴンパへの道が工事中で回り道探しで相当時間ロスしたので4つになった。4つでも相当お腹いっぱいになった。
道中はめちゃくちゃよかった。ヒマラヤ山脈の絶景まみれ。写真じゃ伝わらない山々の表情。写真にするとあれもこれも岩山やん、ってなりそうなんだけど。みんな表情が違うんだよね。郊外の奥に行けば行くほど交通量は減り、チンタラ行っても気にしなくていいし、かっ飛ばしても車通り少ないから安心できるし、楽しかった。あ~なんとか来れて良かった〜と何度も思った。初日からメンタルクラッシュしていたのが本当に蘇った。
そしてゴンパ巡りも感動した。
朝イチでティクセゴンパの朝勤行に行った。起きた瞬間これほんとにスクーター乗れるか?っていう疲労度で絶望感。6時-7時実施予定と思い5時前に起きて5時半頃に出発しよう、と思ったら宿の部屋移動や荷造りで出発が遅れ、6:40頃到着。終わっちゃう!とダッシュで大広間まで階段駆け上がったらまさかの7時開始で単に超息を切らした人になってしまって恥ずかしかった。
朝勤行は圧倒的だった。太鼓やラッパをジャンジャン楽器を鳴らすタイミングが多く、ややPerformativeな面もあるかなぁと思ったけど、でもそれもまた確実に祈りの伝統の系譜であることは確実で。圧倒された。10人くらいのお坊さんと3人の少年僧がいて。2種類くらいのお経が同士に混ざっては1つになり、偉いお坊さん代表なのかソロでお経を読むシーンとした時もあり。
写真や動画撮っている方多かったけど畏れ多くて出たところからそっと記録だけと撮らせてもらった。記録ってなんだろう、と思った。でもやっぱり記録しないと記憶から薄れてしまうことや人に伝えづらいこともあって。難しいなと思った。瞑想合宿でスマホや電子機器を全部預けた時のことを思い出した。とはいえお坊さんもスマホ持っていて、場所によっては休憩所でごろ寝しながらスマホ動画見てたりイヤホンしてたりするお坊さんもいた。現代だなと思った。
少年僧が私の近くにいて、時折お経のわかる部分なのかを唱えては止まったり、少年僧同士で喋ったりしていた。バターティーを注いでくれた。朝の寒い中、朝食もなしにダッシュした身に染みた。
ゴンパ内の地図や順路がないか少ないところがほとんどで、何よりも修行と祈りの場なんだなと思った。鍵がかかってて見れないと思った部屋の近くにちょうどお坊さんが通りがかって開けてくれる、というラッキーなときもあって。そうやって入れたお部屋はそこはかとないご縁を感じた。
タクトクゴンパは駐車場からの道で超迷ってやっと洞窟にたどり着いた。すごい場所にあった。中の洞窟はお供えのお金がびっしり貼られていて信仰を感じた。
チェムレゴンパはかなり思い出深い。けっこう離れたエリアにあるから訪問者数も少ない。GoogleMapの案内する道は思い切り工事中で、途中完全に道が途絶えている。ここからは徒歩で行くか?と行ったら幅20cmくらいの建設中の橋の端っこを通らされたりしてやばかった。その先に車が通っているのを見てぜったい裏道ある、と思って見つけた。のどかな村の中を3km近く延々と行く道。時々路面が数メートル単位で荒れていてスクーターだとガタガタする。やっとの思いでたどり着いたゴンパ。巨大なグル・リンポチェの像の部屋で一人きりになったら、よくここまで来れたな、という思いがこみ上げてきた。
帰ろうとしたらキッチンの料理人さんから声をかけられ、キッチンルームでバターティーとクッキーをいただいた。猫ちゃんがうろうろする。傍らでは若い僧侶が寝転がってスマホで動画を見ている。たぶん女性と話しているのを揶揄してるんだろうなという僧侶と料理人さんのど付き合いを眺めたりしていた。道迷いと空腹と睡眠不足でへろへろだったところでかなり回復した。
へミスゴンパも圧巻。ゴンパの中ではかなり大きいほうで撮影禁止エリアが特に多い。Museumも時間があったらもっともっといたかった。電子機器持ち込み禁止でロッカーにヘルメットもカメラもスマホも預けて見に行く身軽さと相まっていくらでもいられそうだった。
スクーターでよかったな、と一番思ったのがレーへの帰宅ラッシュ。朝はティクセゴンパの朝勤行めに6時前に出発したからレー周辺はガラガラだった。これが18時頃に帰ったらTheインドの洗礼。車間距離なんてものはない、割り込み、この車密度で!?ってなる追い越し、飛び出してくる歩行者や犬や牛、ルールの概念のないラウンドアバウト、突然ドアの開く路駐車。これ重たいMT車でどうにかするのマジできつかったと思う。たちゴケしたら終わる。しなくてもきつい。
睡眠時間は早朝便なりトラブル続きの情緒不安定なりでインドついてから4時間・3.5時間・6.5時間・6.5時間とかの睡眠負債貯め放題、しかも高山病なのか乾燥なのかで2,3度は確実に中途覚醒していてかなり疲労がやばいのを絶景とゴンパの荘厳さでどうにか持たせてた。
クラクションは鳴らすし鳴らされるしでもうまったく動じなくなった。これまでクラクション鳴らすのなんてブラインドカーブとウィンカーとの触り間違いくらいだったのに、一生分鳴らすし鳴らされてる気分。
4日目も盛りだくさんで書きたいことたくさんだけど。今日こそ早く寝る。
ざくっと印象的なことをメモるなら。
アドレス125にオイル交換ランプが出たからお店行ったらインドホンダのアクティバ125に交換になった。ちょっと古そうに見えたから不安だったけど燃費よくて航続距離200km超えとアドレス125より長く、これならダーハヌーまで日帰りしても持ちそうと思えた。スピード上限が付いているらしく60kmしか出ないがまぁなんとかなる。追い越し最低限しかしないし。40kmくらいしか出てない軍車両とか故障寸前の車両が前のときで対向車線ガラッガラのときしか追い越さないし。のんびり行く。後ろに付かれたらガンガン追い越ししてもらってる。
スクーターでもなんとかモンベルバッグくくりつけられた。ただ縦置きにしたらヒップバッグと合わせてかなり座る場所がきつい。背もたれっぽくはなるが。
山だらけ、飽きない?と思ったらぜんぜん飽きない。あの山を超えたらまた違う表情の山。直線ありワインディング峠あり村あり。
リキルゴンパの人の少なさ、辺境ぶりがまたすごい。立体曼荼羅やスワスティカがあった。ここでもお坊さんと遭遇して鍵開けてもらえた部屋あってラッキー。
時々ヒッチハイクで手上げられる。すまない二人乗りできる自信はないのとシートに空きがない。
アルチ村で当てつけてたゲストハウスがどうしても見つからない。高級めホテル以外看板がなさすぎる、GoogleMapがあてにならなさすぎる。スクーター止めて降りて足で探すのが吉。
宿探ししてたら新鮮な牛のフンを踏んづけて滑りかける。でもそのうち土に帰るだけだしなぁ、と思う。
初日はゲストハウスのつもりがホームステイにしたらほぼゲストハウス並ではという設���。子供がかわいい。ニコニコの奥さん。奥さんの娘さんかな?のチョンタ作りを眺める。WiFiないのはむしろ今の気分に合っている。
だんだん風呂洗髪毎日、洗濯毎回はいらないなという気持ちが強まってきた。この感想気候で驚くほど服が汚れた感じがしない。砂っぽくはあるが。なんか衛生命の日本からすると開放感すら出てきた。乾燥は正義。肌と唇は荒れるが対乾燥と対湿度だと後者のほうがはるかにコストかかると思う。オイルまめに塗ってれば乾燥はなんとかなる。サボるから良くない。
ぜんぜんざっくりメモじゃなくなった。どうあがいても今晩は10時には寝る。
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生命拾いと戯れる~草加健康センターと戦後~
「人生の楽園」と題されたテレビ番組がある。西田敏行のナレーションで、四半世紀も続いている。都会暮らしの勤め人を脱した家族が田舎に逃れてパン屋や蕎麦屋を営む様を、楽園を得たひとに見立てて紹介するという筋立てだが、子供の頃のわたしは手品に魅入るように番組を眺めていた。近年、この番組に紹介された人々の七割が元の都心に戻っているという風説が囁かれている。それ自体は驚くに足りない、だが自ら築いた楽園をあっさり放逐される寓話は、逆説的にメーテルリンクの戯曲の有名な教訓を証明しているようだ。
草加健康センターの話をしよう。
わたしがこの地を踏んだのは8月10日。日本がポツダム宣言を受諾した日からちょうど77年後、北千住駅から東武スカイツリーライン快速に乗ること二駅の草加駅から送迎バスで10分、或いは徒歩で一時間で辿り着くこの場所は既に多数のサウナ愛好家たちにより紹介されており、さらに付言して汚すのはしのびない。
しかし百聞は一見に如かず。高温ながら高湿度に保たれたサウナ、真夏日でも15度を保つ清涼なハイブラの水風呂、小体な施設内で最大限に設置された外気浴の椅子。そして、サウナ室の入口と水風呂がおなじ露天スペースに設置されている為に一連の動作を円滑にする親切な導線は、灼熱の煉獄から逃れて救いの泉を得、その後微風に扇がれつつ身体に沸々と涌く余韻を味わうまでに些かの遅疑もさせまいとする心遣いを表している。その快楽は、身体に即せば高温からの急激な冷却を経ての血管の急激な収縮、拡張による血流や自律神経への好影響ということになる。だが、暑さ寒さの彼岸を好んで彷徨った挙句、外気浴スペースの椅子に背を預けて空を仰いだとき、晩夏の午後の光が雲をふちどる風景をふと目にして感じる瞑想的な法悦は、ただ身体の機構に帰して済ませてよい類のものだろうか。
走っている
火の海のなかに炎の一本道が
突堤のようにのめりでて
走っている
その一本道の炎のうえを
赤い釘みたいなわたしが
走っている
走っている
――宗左近『燃える母』より
思いつく限りの戦時における空襲の描写を挙げれば、どこかで必ず火の海を逃げ惑う様子であったり、水を求めて煮えたぎる川に飛び込んで落命したひとの姿に行き当たる。『方丈記』以来の生き地獄の描写である。わたしは冗談ではなしに、高温のサウナに炙られている最中、先に挙げた宗左近の詩を連想する。信濃町で、母と二人で炎のなかを逃げ惑い、つい手を離してしまったが為に母は焼け死に、詩人が悔恨から鏤刻した凄まじい詩のことを。
だが、サウナがひとを殺すことは殆どない。わたしは自由に出口から抜けて出て、水風呂に浸かることが許されている。この水風呂も十秒以上浸かれない程に冷たく、一瞬で身体を覆う火照りを剥がしてしまう。水面に浮かぶ無数の泡が時に光の反射で無数の砕氷のように錯覚することすらある。それでもこれは八甲田山の死の彷徨ではない。
あくまで戯れに抑えられた灼熱と寒冷の往還とその余韻はどこか生命の危機から九死に一生を得る体験に似ている。次第によっては神仏の実在をひとに確信させるに至る、真の九死に一生の体験も身体の出来事だけに焦点を当てれば急激な緊張からの解放という一連の運動であり、これが浄化の感覚を否応なく引き起こす。草加健康センターがわたしに幾度となく追体験させてくれる快楽、それは極言すれば死の恐怖を抱く手前で精密に抑制された九死に一生ということになる。
解剖学者の養老孟子は90年代の講演集にて、くり返し「仏教の古い経典に描かれている極楽は『空腹も寒暖もない世』である」として彼の都市批判に繋げている。この極楽は日本において概ね達成されて久しい。コンビニでおにぎりもアイスも買えるし冷暖房が一家に一台備えられている世界は古人の夢見た極楽の姿をしている。日本国憲法の序文に綴文された「わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」て今日まで幸運や、反対に薄氷を渡るような危機を躱して、今日楽園を前提と出来る程の世を享受している。そして、わたし達が世に抱く不平不満も煎ずれば極楽を足場に叫ばれている。
古人の想像力は、しかし果たして灼熱と寒冷の彼岸に戯れる、この草加健康センターのような施設にまで到達しただろうか。これはどんな古賢さえ夢にも見なかった楽園の一形態である。そしてわたしたちは他者により隅々まで保障の行き届いた施設にて生命拾いの快楽と戯れることさえ許されている。過去の悔恨も未来への恐怖も束の間忘れて、他者の承認も不要としながら独り身体的快楽の余韻に身を任せるとき、楽園のうえに更に築かれた楽園の到来に戦慄しないだろうか。
一方、誰が語ったか人生百年の時代であると言う。地上の至るところで戦禍がやまない世に先人の建立した砂上の極楽浄土が永続すると仮定して平和裡に制度維持の恐怖に震えること自体が既に慢心であると一瞬でも掠めたひとがどれほどいるだろう。遠い未来、わたしたちは抑制された灼熱ではなく、本物の火に生命を奪われるかも知れないのだから。
故にわたしは草加健康センターへふたたび通う。細心の注意により存続する楽園が、楽園として享受出来る限りにおいて。滅びの予感のなかで穏やかな現在はいっそうかけがえなく在る。そしてセンターの隣の自販機でアイスを贖い、舐めながら草加松原駅に至るまでの鄙びた道のりを歩き、暑さの峠を越えた夜風や虫の音に、これも優しい秋の気配を感じながら。
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紅の深染めの衣色深く
みかつるが主である審神者を探しに黄泉路へ行く話。
序
「次の作戦が終わったら、三日月宗近をお前の隊の副隊長にしようと思うんだ」
大阪へ出陣前の朝、第一部隊隊長であり近侍でもある鶴丸国永を私室に呼び付けるなり、まだ幼さの残る横顔で審神者が明るい調子で言った。
寒さも残る初春の日だった。袖を通さずに羽織を肩から掛け、折り畳み式の文机の前に審神者が寛いだ様子で腰かけている。そのすぐ傍の火鉢からは、パチパチと小気味よく炭の音が鳴る。
「これまた突然な話だな」
刀としての性か、寒さにはあまり耐性のない鶴丸が、審神者の背後を陣取る形で火鉢に近づき、両腕を摩りながら言った。
主である審神者の生きる時代では「くーらー」なる物があり、これが中々快適なのだが、電気の通らない今居る元禄の時代には、用意できるのは火鉢くらいなものだった。
「突然でもないよ。前々から考えていたんだ。で、その報告が今日になっただけの話」
寒そうにする鶴丸に、審神者が体を半分傾けて灰式懐炉を投げてよこす。
受け取った灰式懐炉から漂う木炭の強い燃臭が、鼻腔にこびりついた。どうもこいつの臭いは好きじゃない。灰式懐炉を両手で包み込むと、ほんのりだが掌にぬくもりが広がる。
浮かない様子の鶴丸をじっと見つめながら、審神者が不思議そうな顔をした。
「何か問題が?三日月は人当たりも良いし、実戦経験はまだ少ないけど第一部隊でも十分通用するくらい強いよ」
「別に問題はないさ。……ただなあ……」
「ただ?」
「いやいや、何でもない」
まだ本丸に来て日が浅い三日月宗近が、鶴丸はどうにも苦手だった。避けている訳ではないが、積極的に関わりたいとも思わなかった。
師弟刀という仲でもあるし、今回が初対面という事でもない。美術品として共に隣同士に並んだ過去もある。人見知りしている訳じゃあない。
本丸では、実直でよく笑う男と評判だったが、鶴丸にはそれが今一つしっくりこなかったからだ。
確かに良く笑うし、人当たりも良い。強いというのも、経験上何となく感覚として知っている。だが、以前内番で手合わせした時は、本気を出さずのらりくらりとかわされてしまった。予測が出来ない男、そう思った。
鶴丸は驚きが好きだ。予測出来ない事が起こるとわくわくするし、それをどう乗り越えてやろうかと熱くなる。
その点では、鶴丸にとって三日月宗近という存在は、何を考えているか分からない、予想出来なくて面白い存在の筈だった。
だが、だからこそ、三日月が苦手なのかもしれないと、鶴丸は思う。
三日月宗近は冷めている。驚きとは、全く無縁の境地に達している様に見えるのだ。一言でいえば、心が死んでしまっているようだった。
なら、いっそ驚かし甲斐があるではないか?そう考える半面、彼と居ると、そちら側へ引き込まれてしまいそうになる気がした。三日月の瞳には、そんな力がある。これは確信だった。
心が死んでしまう事は、鶴丸が一番危惧している事だ。それだけは、あっちゃならない。
「しかし、きみは随分と彼を買っているんだな。いっそのこと三日月宗近を近侍にしてみたらどうだい」
顎に右手を当てて、面白半分で言ってやれば、審神者はむっとした表情になり、鶴丸の正面に向き直るとむすっとした声できっぱりと言い放った。
「それはお前じゃないと駄目だ」
「おやおや、嬉しい事を言ってくれるねぇ。それまたどうしてだい?まさか俺に惚れているなんて言う訳じゃないだろう」
「お前を見ていると、昔貰った千羽鶴を思い出すんだよ」
「そりゃ何だ?」
軽口をするっとかわした主の思いもよらない返答に、鶴丸はきょとんとした。
「折り紙の折り鶴を、文字通り千羽作って糸で綴じて束ねた物だよ。鶴は長寿のシンボルだろ?病気快癒や長寿の俗信があって、床に伏せてる人への贈り物として好まれてるんだ。って折り紙から説明しないとダメか」
そういうと審神者は、懐から四角い手拭いを出すと器用にそれを畳んでいく。すると、みるみる内にそれはただの手拭いから見事な鳥の形になった。ほう、と鶴丸はため息を吐いた。
「こういうの。本当は和紙で作るんだけど」
ピン、と、両翼に当たる部分をひっぱると、鶴丸に良く見えるように掌に乗せて見せた。
「こいつは驚いた!人間ってのは器用なもんだ…成程確かに鶴らしい」
「あはは、まあね」
素直に感心する鶴丸に、審神者が微笑む。それから、真面目な表情になってどこか遠くを見る目で言った。
「昔さ、事故に遭って死にかけた事があるんだ。その時の事は、正直あまり覚えてないんだけど。目が覚めた時、病室に真っ白い千羽鶴が飾られていたんだ。縁起が悪いからって、ご丁寧に首が折られてない奴がね。本当は折るのが正解らしいけど、嬉しかった」
「……きみは慕われてたんだな」
「そうだね。まあ贈り主に再会する前に、面会謝絶のままとんとんと審神者になったんだけど」
軽く肩をすくめて見せた後、昔話だと笑う。
鶴丸も主の立場を深く知っている訳ではないが、時の政府とやらは結構強引らしい事が感じ取れて、権力者というのは何百年経っても変わらないのだなと、心の中で嘆息した。
「それで?その千羽鶴が、中途半端に鶴らしい所が俺を思い出すってのかい?」
「ああ、違う違う。縁起が良いなあって思うんだよ。鶴丸は時々変に卑屈になるね」
別に卑屈になった訳じゃない、言えば向きになっていると返されそうなので、言いかけた言葉を喉元に留める。
「縁起が良いから、お前を近侍にしたいんだよ。僕を死地から連れ出してくれた、真っ白な千羽鶴みたいにね。それに鶴はめでたいだろ?」
「あっははは、験担ぎって訳か」
「そういうこと」
にっと笑う審神者に、鶴丸もつられて笑う。
この人は、相も変わらず何の迷いもなく俺を鶴だと言ってくれる。鶴丸は、灰式懐炉のじんわりとしたぬくもりが心の中にも広がるような心地だった。
「と、そろそろ出陣の時間だね。三日月の話は作戦が終わったらまた話すよ。相変わらず僕は本陣で待機だけど、戦果を期待して待ってるよ」
懐中時計をちらりと見て、審神者は鶴丸に顔を向けて再び悪戯っぽく笑いかける。
「ああ、驚きの結果をきみにもたらそう」
一
時は元禄から慶長一九年、大阪冬の陣。
歴史修正主義者率いる江戸改変大坂方面家康暗殺隊に対して、鶴丸率いる第一部隊は、形勢不利に陥っていた。
大口を叩いておいてこの様だ。だが、本陣まで追い詰められての隊長同士の一騎打ち、鶴丸は負ける気がしなかった。小傷は負ったがまだまだいける。
ちらりと背後に控える総大将である主を見やれば、険しい面持ちで一騎打ちを見守っている。
主である審神者と一瞬だけ視線を交わすと、鶴丸は「任せておけ」とニッと口元に笑みを作る。
それに一拍子遅れて、審神者の表情が少し和らぐ。意味が通じたらしい。ここで負けたら主の懐刀としても名折れである。
助走をつけながら分身とも言える刀を軽く右手で構え、素早く背後に回り隊長を切り捨てると、鶴丸に届かなかった敵の刃は、空しくその場の地に突き刺さる。
後は敵総大将の首を頂きに行くだけだ。そう思うより先に鶴丸の視界の隙間に入った”それ”に悪寒が走った。
鶴丸の様子に気付いた他の隊員たちが、審神者の元へ駆け寄る。
まずい。どちらも共に距離がある。
「ええい」
軽く舌打ちをし、すぐさま足場近くの地に突き刺さった刀の鍔を蹴りあげる。
回転しながら宙を舞う切っ先がそれの左目に命中すると同時に、甲高い銃声が鳴り響いた。
この時代の物ではない拳銃を握ったまま、にっかりと笑ったそれが、血飛沫を上げながらゆっくりとした動作で倒れる中、鶴丸の背後でどさりと鈍い音がした。
遅かったか!鶴丸が振り返ると、守るべき存在である主が仰向けに倒れ、どくどくと血を流していた。
鶴丸は、さっと血の気が引いて行くのが分かった。
「主ッ!!!」
「きゅうしょは、はずしました……でも……」
鶴丸が駆け寄ると、隊員の一人である今剣が言う。真っ先に審神者の元へ駆けつけ覆いかぶさったらしい彼の衣服は、審神者の血で染まっていた。
「急いで弾を除かないと感染症の恐れがありますね」
傷口に触れながら太郎太刀が静かに言った。
気を失いながらも、呻く審神者の顔色は、平常、色素の薄い鶴丸よりも白かった。それとは対照的に、彼の真っ白な斎服袍は左の肩口から赤に染まっており、これではどちらが鶴か分かったものではない、そう鶴丸は思った。
「……すまん、俺が油断したばかりに」
「いえ、鶴丸。あなたの判断は正しかったですよ。あそこで敵の総大将を討っていなければ弾丸は逸れることなく急所を討ち抜いていたでしょう。これは隊全体の問題です。まさか結界が施された本陣に潜んでいるとは……」
「そこの御仁たち、反省会は後にしてくれないかい。作戦も一応は成功したし、早い所応急処置をして主を本丸へ連れ帰ろう」
今剣の両肩に覆いかぶさる様な姿勢でいた審神者の右肩を担ぎ直し、歌仙兼定が呆れた声で言う。それに続く様に、無言で山姥切国広が、左肩を気遣うように支える。その表情は、何時も以上に暗かった。
二
(弾は除かれました。今夜が峠でしょう)
本丸の救護班の報を受けた鶴丸は、灯りも持たずに主の部屋の前で立ち尽くしていた。
「峠、か……こりゃまいったね」
障子一枚を隔てた向こう側で、主である審神者は伏せっている。肉体だけが伏せっていた。
確かに息はある、しかし魂とも呼べる気配がなかった。
数は僅かばかりだが、特に霊力の強い刀剣男士たちは、その事に気付いていた。
気付いた者は、皆一様に思う所のある様な顔をして各々の寝所へ戻って行った。だが、鶴丸はその場から離れる事が出来なかった。
今朝方に見た、折り鶴を折って見せた主の顔が脳裏をよぎる。まだ、僅か十数年しか生きた事のない少年の顔。
鶴丸は両の手に握り拳を作り、わなわなと拳を震わせた。
「すまん、主……。俺は器用じゃないから、千羽の鶴は折れそうにない……。だが……」
「鶴丸」
意を決して、その場から立ち去ろうと背を向けたその背後から、たおやかな声に呼び止められる。
振り返ると、灯りを手に佇むように彼は立っていた。
視線の先は、鶴丸ではなく、審神者の部屋だった。彼も事態に気付いたのだろう。
「……遠征から帰っていたのか、三日月宗近」
「ついさっきな」
「そうかい、ご苦労さん。じゃあな」
何処かこの場には不釣り合いな、穏やかな声で話す彼に少し苛立ちを感じながら、さっさと切り上げようと背を向けた。
悪いが、今は三日月の相手をしている暇はない。
が、間髪いれずに三日月に右手首を掴まれる。存外力が込められていて、振り払う事が出来ずにいると、静かな声で尋ねられる。
「その傷で何処へ行く?」
「おいおい、傷を見ればわかるだろう。手入れ部屋に決まっている」
もう一度振り返れば、三日月の瞳とかち合う。
蝋燭の灯りに照らされて鈍く光る、闇夜に浮かぶ青の光にじっと見つめられると、まるで全てを見透かされているような気分に陥る。
「手入れ部屋とは逆方向のように見えるが?」
「……俺は方向音痴でね、ちょいと間違えただけさ」
「とてもそうは見えないが?」
「そりゃお宅の思い込みだろう」
「見た通りを言っただけだ。思い込みなどではないさ」
「それを思い込みって言うんだ。いい加減、この手を放してくれないかい。傷口が痛くて仕方ないんでね。さっさと手入れに行かせてくれ」
「鶴丸」
ばつが悪くなって、鶴丸は、はあ、と溜息を吐きながら空いた手でボリボリと頭を掻いた。
ここで再び言い逃れをしたとして、彼は見逃すだろうか?普段なら、曖昧な笑みを浮かべてはぐらかされてくれよう。だが、今宵はそうはしてくれないであろう力強さが、己の手首に込められていた。
今宵、何故こんなにも三日月が自分に執着してくるのか分からないが、存外この男は強情なのかもしれない。鶴丸は、そんな事をふと思った。
もう一度深い溜息をこぼすと、やれやれと観念したように鶴丸は白状した。
「黄泉の国へ、主を迎えに行ってくる」
「イザナギのように禁忌を犯すのか?」
「ああ」
見つめ合ったまま答えると、鶴丸の右手首に込められた力が、少しだけ緩んだ。だが、まだ解放する気はないらしい。
「……先程太郎太刀は今日が峠と言っていたが?鶴丸よ、それではまるで、審神者が死んだと言っているようではないか。確かに今あの部屋には…」
「おおっと、早とちりは止めてくれ。主はまだ死んじゃあいないさ。だが、主は”あちら側”に居る」
三日月の言葉を遮るように、鶴丸は手首を掴まれたままの手を挙げて言った。
「どういうことだ?」
少し怪訝そうな声で、三日月が問う。
「っと、そうだな……何て言えばいいか……。俺はこうして現世の肉体を得る以前に、主とそこで出会っている。丁度その時、主が黄泉の釜戸で煮炊きしたものを食べようとしていたからな、気まぐれに手を叩いてこちらへ引き戻したんだ」
「それはまた初耳だな」
「誰にも話しちゃいなかったからな。自然の摂理に背いたんだ。石切丸辺りが聞いたら、呆れるか怒るかのどっちかだろうな」
そう言って鶴丸が、少しニヤリと口元を歪めると、
「それはあるな」
三日月が、続く様に袖を口元へ寄せて笑った。
あれほど敬遠してた三日月と笑い合うなどと、鶴丸は少し奇妙な気持ちになり、表情を引き締める。
「まあ、経緯は話すと長くなるから手短に話すが…。兎に角、主は”あちら側”へ引き寄せられやすい体質になってる事は確かだ。だから、一刻も早く迎えに行ってやらないと、手遅れになる可能性がある」
「と、言うと」
「ヨモツヘグイを為す前にって事だ」
黄泉戸契、それは文字通り黄泉の国の食べ物を食べ、黄泉の国の住人になる儀式の事だった。ヨモツヘグイを為した者は、神であろうがあちら側の住人となってしまう。
かつて昔の主と共に葬斂された過去のある鶴丸は、それをよく知っていた。幸か不幸��、鶴丸はヨモツヘグイを為す前に現世へ舞い戻る事になったのだが。
「しかし今から黄泉比良坂へか?」
三日月の知る黄泉への入り口は、本丸からは遠かった。とても人の身では、一昼夜で行ける距離ではない。
すると、再び鶴丸が「誰にも言うなよ?」と、前置きをしてから白い歯を見せる。
「黄泉への抜け道を知っている。行くだけなら時間はかからない。それに俺にとっちゃ遊び場みたいなもんだ、連れ帰るだけなら何の事はないさ」
「……鶴丸、お前、かなり危険な遊びをしているようだな」
「人生には驚きが必要だろ?その一環みたいなもんさ」
実際、黄泉の国の住人を驚かすのは大層楽しかった。これは鶴丸だけの秘密である。
「そういうこった。だからこの手を放してくれ」
白状すべきことは大体白状した、もう良いだろうと、鶴丸がその手を強引に振り解こうとすると、あっさりと解放された。
拍子抜けして三日月の方を見ると、彼は何時もの曖昧な笑みを浮かべながら、口を開いた。
「あいわかった。では、俺も行くとしよう。一人より二人の方が心強いだろう」
思わぬ提案に鶴丸は少しぽかんとしたが、直ぐに眉を顰めた。
「遊びじゃないんだ、ほいほいついて来られちゃ困る」
「遊びで行くつもりはないよ」
「分からないのか?足手まといだ」
明るい調子で言う三日月を睨むようにして、語気を強めて言うが、彼は意に介していない様子で言い返す。
「こう見えても俺は強いぞ?」
「実戦の話をしてるんじゃあない。それに、黄泉への抜け道は俺だけの秘密なんだ。周りに知れ渡ったら、困るだろう」
黄泉の国へ頻繁に出入りしていたことが白日の下に晒されれば、今まで通りともいかなくなる、鶴丸はそう考えていた。それに三日月には、心を許すつもりはなかった。
「戦わぬ戦ならば、俺の方が経験豊富だぞ?それに、俺は口は堅い方だ。秘密は守ろう」
「食い下がるな……理由でもあるのか?」
あまりのしつこさに、そう漏らしてから、鶴丸はしまったと思った。このままでは押し通される。
「……まだ俺は給料分も働かせてもらっていないのでな」
言葉や表情とは裏腹に、彼の瞳は摯実そのものだった。恐らく鶴丸が初めて目の当たりにした真剣な眼差しだ。
無意識に、こくりと喉が鳴る。それから、軽く首を振ってから、三日月の目を見据える。
「どうやら本気みたいだな。分かった…ついて来い」
「あいわかった」
根負けした鶴丸に、三日月は破顔した。
三
「ついたぜ。ここが入り口だ」
「これはまた珍妙な場所が入り口だな」
「ま、本来は出口みたいなもんだけどな。ここはそのひとつさ」
鶴丸の後を付いて行ったその先は、本丸にある刀装部屋だった。
それから鶴丸が「よっと」と、声を出しながら、本殿の中心に鎮座する鏡を端に退ける。鏡が置かれていた場所は、ただの板張りの床であった。
その後ろ姿を見つめながら、三日月は、鶴丸の傷口から染みた衣服の血が既に黒ずんでいる事を、少し残念に思う。あれが朱色ならば、さぞ映えた身ごしらえであろうと思ったからだ。
三日月宗近は、鶴丸国永に好意を寄せていた。それも、恋の歌を詠う方の好意である。
審神者の気まぐれによる采配で決まる内番で、鶴丸と当たった時も、ついうっかり見とれてしまう程度には、自分は重症らしかった。
刀が恋とはまたおかしな話だが、一目見たその時から、鶴丸のその長く美しい細身の刀身に、自分にはない濃い血の臭いを感じ取り、惹かれた。一目惚れというやつだった。
鶴丸とは、祖を同じくする師弟刀という間柄であり、同じく平安の時代に生まれ、同じくうぶ姿で生き続けたが、片や三日月は、長年見守ってきた主の最期に、ただ一度だけ振われただけの身であった。
血を知らぬ不殺の剣との呼び声は、聞こえが良い。だが、三日月には、そんな己が酷く不格好に思え、鶴丸がいっとう眩しく見えた。あの血の宿る刀身が欲しい。
その点では、審神者は己を刀として振ってくれる。助けに行くには、十分すぎる理由があった。
鶴丸への好意は、現代で言うところの「こんぷれっくす」とやらが由来するのかもしれないが、三日月には、そんな事はどうでもよかった。ただ、戦場で赤に染まる鶴丸をずっと見てみたかった。さぞ、美しい事だろう。
だが、どうにも自分は好かれていないらしい。嫌われてはいないが、距離を置かれている。理由はわからないが、それだけは気付いていた。
故に、今回同行を許可してくれたのは意外であった。我を通してみるものだなと思いつつ、鶴丸は思いの外押しに弱いのかもしれないと、まるで弱点を見つけたようで、少し愉快な気持ちになる。
そう一人ほくそ笑んでいる時だった。
「俺の手を握ってくれ」
鶴丸のほっそりと、だがしっかりとした青白い手が、己に向かって差し出される。
「世話されるのは好きだが、流石の俺もそこまで童ではないのだが…」
少しはにかんで、遠まわしに拒否してみると、鶴丸が面倒くさそうな顔をする。
「……これはあちら側へ向かう時の約束事みたいなもんだ」
「そういうものか」
「ああ。今から俺が言った事は、必ず守ってくれ。俺達は付喪神と言っても、今は人の身だ。下手をすると戻れなくなる可能性が出てくる」
「あいわかった」
何時になく真剣な様子で言う鶴丸に、三日月は、何時もの調子で雅やかに頷いた後、鶴丸の左手を固く握りしめる。その手は、想像以上に薄く張りがなく少々心配になった。
そんな己を胡乱気な目で見ながら、鶴丸は一呼吸置いてから続けた。
「ひとつめは、俺の手を決して離さない事だ」
「この手を離してしまったら、俺の魂ごと引き裂かれてしまいそうな話だな」
ふと、そんなフレーズが頭に過り、口をついて出る。存外この状態は悪いものではない気がしたのだ。
「真面目に聞いてくれ。ふたつめ、何があっても絶対に抜刀するな」
「何があってもか?」
「そうだ。これも人の身である俺たちの約束事だな。黄泉の国の連中は、食い意地の張った奴らが多いが、下手に刺激しない限り手を出しては来ない。勿論手を出して負けるなんて事は思ってないが、今回は主探しが主役だからな」
手を出した事があるのか?と、少し思ったが、敢えて口を噤んだ。これ以上鶴丸を刺激したら、連れて行ってもらえなくなる可能性があるからだ。
「そして、声をかけられても後ろは振り返るな。何があってもだ。破ったらどうなるかは、流石の俺も知らないんでね」
「それで最後か?」
「そうだな、それからこれは後の話になるが……黄泉の国から帰ったら必ず禊を行う」
これについては、神である三日月もピンときた。黄泉の穢れを流すための儀式だ。神は穢れを嫌う。刀の付喪神である三日月も例外ではなかった。そう思うと、鶴丸の血に惹かれる己は、もう妖刀なのかもしれないな、と心のどこかで思った。
と、そこまで考えた所で、ある事に気付く。
「……もしや、怪我もしてないお前が時折、手入れ部屋に入ってるのは……」
「何で知ってるのかは知らないが、そういうこった」
悪びれもせずに言ってのける鶴丸に、三日月は思わず嫣然と笑った。
「さて、覚悟は良いな」
「ああ、出来ているぞ」
合図するように鶴丸の左手を握りしめると、鶴丸が何かを思い出したような顔をする。
「おおっと、そうだ。少しだけ目を瞑っててくんな」
「あいわかった」
「それじゃあいっちょ、行くとするかねぇ」
三日月が、鶴丸に応じた瞬間、足場が揺らいだ。
ふわふわと宙を浮いたかの様になったかと思うと、次の瞬間、まるで氷の壁を強引に突き破るような、激痛と冷たさが同時に襲い、思わず目を見開く。真っ暗闇だ。
「さーて、鶴丸御一行の到着だ」
鶴丸が事もなげに告げると、痛みは消え去り、足場も安定していた。しかし、視界は暗いままだった。
「……先に説明して欲しかったものだなあ」
「文句は言いっこなしだぜ。入口の開き方は秘密にしときたかったんでね。それに、最初に言った筈だぜ?”出口みたいなもん”だってな」
ニヤニヤとした声だ。どうやら鶴丸に、からかわれてしまったらしい。
「しかし黄泉の国とは、斯様に暗いのか」
「ここはまだ入り口だ。先はもっと暗くなるぜ?」
鶴丸が一人で行きたがった理由が、分かった気がした。これは一人の方が格段に楽だ。
そこへ己を連れてきた。鶴丸の覚悟を考えると、三日月は心が躍った。
「っと、そうだ。これを持っててくれ。流石に片手じゃ難しいからなあ」
そういうと鶴丸は、何やら四角い小さな小箱を手渡してきた。そのまま動かすなよ、と念を押して。
なにしろ暗くてよく見えないが、ひとしきり物音を立てた後、じゅっという音がしたかと思えば、一瞬だけ場が明るくなる。どうやらマッチ箱だったらしい。それにしても、マッチとは驚いた。審神者にでも貰ったのだろうか。
そして、暫くしてから微かだが蓬の臭いがした。
「煙管か?」
「ご名答。こいつはまあ、魔除けみたいなものだな」
「それなら俺も持ってるぞ。遠征土産にと、貰ってきたものがある」
懐から黄色い手拭いで包んだ物を得意げに見せてみるが、鶴丸の反応はいまいちだった。
決まりが悪くなって、懐にそれを戻すと、三日月は本題に入った。
「して、審神者をどう探す?霊力を辿るのが簡捷と思うが……」
「ああ、それは俺も考えていた。だが、それだけじゃあ頼りない」
この途方もない闇の中、流石に審神者のまだ小さい霊力を辿るのは至難の業だ。かといって三日月にはそれ以外の方法は知らない。
「すると?」
「見当を付けておいた」
「ほう」
成程、これは一度この地で審神者と出会った経験が生きるな。三日月は、素直に感心した。
「黄泉の釜戸へ向かうぜ。道案内は任せておけ」
「ならば俺はその助け舟となろうぞ」
三日月は、頭の房紐を解くと、ふっと己の息を吹きかけた。すると、房紐がするすると音を立てながら、蔦に変化して伸びて行く。
「葡萄葛の蔦だ。これをしおり糸としようではないか」
そう言うと、蔦の先が鶴丸の右手小指に巻きつき、余りの蔦が地面に落ちた。興味本位に引っ張れば、ピンと張る。なるほど見事なしおり糸だ。
「こいつは凄いな、お宅、そんな芸当が出来るのか」
「はっはっは……これくらいは造作もないぞ。では、ゆくとするか」
四
鶴丸の歩調は淀みなかった。目的地へ迷いなく進んでいる足取りだ。相当こなれている事が分かる。
暫くすると、腐った果実の香りが辺りに満ちた。どこか心惹かれる、危険な甘さを孕んだ香りだと、三日月は思った。
奥へ進むほど、その腐った果実の様な、甘く濃い匂いは強くなっていく。臭覚が麻痺しそうだ、そう思った時、三日月は、ある事に気付いた。この匂いには覚えがある。
「鶴丸よ」
「何だ?」
握った手を強引に引き寄せると、そのまま三日月は、自身の腕の中に鶴丸を収める。その弾みで鶴丸の煙管が、ぽとりと地面に落ちた。
鶴丸の、さらりとした滑らかな髪の毛が頬に触れる。少々こそばゆいが、そのまま鶴丸の頭に鼻を寄せると、いよいよ疑惑は確信へと変わった。
「やはりな」
「いきなり何だ」
片手で軽く押しのけようとする鶴丸の背を空いた手で押さえながら、三日月は呟いた。
「お前からは、良い匂いがするな」
「おいおい、いくら俺が男前だからって、こんな時に口説くかい?するなら後にしてくれ。今はそれどころじゃあ……」
「だが、それは死の臭いだ」
「何だと?」
笑いを含みながらも戸惑った様な鶴丸の声が、一瞬で張り詰めた。
「お前からは、死臭がすると言っているのだ」
静かに、だがはっきりと、三日月は告げる。
「……もう一度言ってみろ。ただじゃあ置かないぜ」
少し怒気の含まれた声音だ。だが、三日月はそれを受け流す。
「何度でも言うぞ。鶴丸よ、これ以上黄泉の国への出入りは止めろ。このままでは、自身で審神者を傷つける事になるぞ」
暗に妖刀になるぞ、と、念を押せば鶴丸の殺気は一層強くなった。
「三日月宗近。てめぇに指図される筋合いはない、俺がどうするかは、俺が決める事だ。少なくともてめぇじゃあない」
初めて聞く、押し殺したような低い声だった。だが、三日月には、それは強がりに思えてならなかった。
「そんなに死ぬのが怖いか」
「何を」
闇の中で、鶴丸が引き攣るのが分かった。
「黄泉へ出入りしているのは、死への恐怖からではないのか?死が満ち足りたここならば、自分が生きている事が実感出来るからなあ」
辺りを軽く見回しながら、歌うような抑揚を帯びた口調で三日月が言う。
すると鶴丸は、何時もの調子を取り戻したように、笑いを含んだ声で返した。
「おいおい、俺たちは刀だ。何時折れるかも分からない刀が死ぬのを怖がってたら、話にならないだろう」
「卵の白身の方だ。心、とも言うな」
鶴丸が反発するより早く、三日月は続ける。
「心が揺れなくなるのが、そんなに怖いか?」
「いい加減に……」
詰問するような三日月に、うんざりした様に鶴丸が口を開くが、やはり彼は意に介さず、口元を綻ばせた。
「驚きなら、俺が与えてやろう。さすれば不安も解消されるであろう」
まるで名案だと言わんばかりの、自信満々な声で言う。
沈黙が辺りを包んだ。
力を抜き、黙って答えを待つ三日月の胸に身を預けると、鶴丸はぼそりと、呟く様に言った。
「…………そりゃ無理な話だな。三日月宗近、心が死ん���まってる人間に、ゆで卵のお宅に、そんな芸当出来る筈がない」
「ゆで卵……俺がか?」
きょとんとした声で、三日月が問い返すと、鶴丸は真面目な様子で言った。
「ああ、凝り固まって、何をしても揺れないゆで卵だ」
まるで確信した様な言い回しに、三日月は苦笑した。
「俺だって、揺れる事はあるぞ。今も揺れに揺れておる」
「どうだかな」
ぶっきら棒に、鶴丸は否定する。
「好きだ」
「は?」
「鶴丸よ、お前を好いていると言っているのだ」
突然の告白に、鶴丸がいよいよ当惑した顔になる。が、三日月はそれに気付かない。
「どういう意味だ、そりゃ」
「こういう意味だ」
そう言って、三日月が空いた手で、鶴丸の頬に触れる。辿るように、その手に柔らかなそれを見つけると、そこに己の唇を押し付けた。
鶴丸の痩身が強張るのと同時に、三日月の足を踏みつけ、押しのけようと必死にもがく様が伝わった。
足の痛みに構わず、さらに深く口付ける。暗闇の中で、卑猥な音だけが響いた。
生温かいそれを口内に侵入させると、鶴丸はより一層激しく暴れたが、繋いだ左手を離そうとはしなかった。何とも律儀な奴だな、と、三日月は苦く笑うと、解放してやる。
「ん……ふっ……はっ……は」
「分かってくれたか?」
ぜえぜえと息を吐く鶴丸に、三日月は真剣な声で問うた。
呼吸を整えると、己の腕の中で鶴丸がくつくつと喉を鳴らし、体を震わせる。
「あっはっは、こりゃ愉快だ。刀が恋だって?しかも天下五剣様が、この俺にかい?」
さっきまでの暴れ様とは裏腹に、鶴丸は平常心を保っていた。
「そうだぞ。一目惚れだ」
「ふざけるのも大概にしてくれ」
ひとしきり大笑いした後、鶴丸は呆れた声で告げた。
「どうやっても信じてくれんか」
意気消沈した声で聞けば、鶴丸は少し考えるように答えた。
「そうだな、俺を心の底から驚かしてくれたら信じてやるさ……だが、それは主を」
「では試そうか」
鶴丸が言い終わるのを待たずに、す、と、三日月の手が離された。
「おい、馬鹿!」
鶴丸が離された手を掴み直そうとするが、空しく空気を掴む。空気を掴むと同時に、気配が一瞬で消えた。三日月の霊力を辿ろうにも、ぷつりと糸が途切れてしまっている。これは意図的に消されたものだ。
「くそっ!!!あの野郎!!!」
三日月の房紐だけが、鶴丸の小指に残された。
五
ざわざわと、しだれ柳が揺れる様な音がする闇の中、審神者は辺りをふらふらと彷徨っていた。
ぼんやりとした意識の中、審神者は思った。ここには覚えがある。以前、真っ暗闇の中で白く光る鶴を見た場所だ。
「今回は居ないなあ……」
きょろきょろとあたりを見回すが、鶴は見当たらなかった。
「……腹、減ったなあ」
あれほど嫌悪していた無味無臭の兵糧丸が、今は恋しかった。
「ん?」
くん、と鼻を鳴らすと、どこからか良い匂いがした。
その匂いを釣られるように辿っていくと、ぐつぐつと音を立てる釜戸のある場所に辿り着く。
辺りは先程までの暗闇と違い、やや明るかった。周りにはうっすらだが人影が沢山見える。
釜戸の前には、何やら列が出来ていた。列があると並びたくなる。そんな習性に従って審神者が最後尾につくと、後ろから枯れた声がした。
「今日はあなたが最後です」
「最後って?」
何となく振り返ってはいけない気がして、振り向かずに尋ねる。
「千人目ということですよ。ささ、お食べなさい」
後ろの声が、脇から手を差し出す。その手には、とりめしに似た握り飯が乗っていた。何の肉かはわからないが、とても食欲のそそる良い匂いがして美味しそうだ。
「ありがとう。凄くお腹が減ってたんだ」
手に取ろうとしたその時だった。背後から瑞々しい音と共に「ぎゃ!」という喉を絞った様な悲鳴が上がり、審神者が手に取るより早く握り飯が地に落ちた。
形を崩した握り飯からは、じゅうじゅうと音を立てながら煙が上がり、中からは大量のウジ虫がうぞうぞと蠢いている。
「ひっ」
思わず飛び退くと、暫くして、むっとした強烈な腐臭が辺りに広がる。噎せていると、その背をやさしく撫でる大きな手の感触があった。
「これ審神者、それを食べてはならないぞ」
「……三日月?三日月じゃないか!」
振り向くと、審神者を覗きこむように伺う三日月の顔があった。
「はっはっは。捕まえたぞ」
そう言って、背後から三日月が審神者を優しく抱きしめてくる。気付けば腐臭は消え去っていた。
「それにしても、三日月はどうしてここにいるの?」
「お前を探しておったのだ」
「探す?探すって……そうだ、ここは何処なんだろう?三日月は知ってる?」
気付いたらここに居た。そうだ、自分はどうしてここに居るのだろう。前後の記憶がぷっつりと途切れてしまっていた。
「さあなあ」
とぼけた様な三日月の声。これは知っている声だ。でも教えてもくれない声だ。審神者はそれをよく知っている。
「ねえ……」
「出しにしてすまんな」
言いかけた声を制止して、くしゃりと審神者の頭を撫でながら、三日月が言う。
その声音は、何時になく柔らかく、そしてすまなそうだった。
「何の事?」
あまりにもすまなそうな声だから、不思議に思い、尋ねたが、やっぱり笑って誤魔化されてしまう。
面白くなくて、頬を膨らませれば、益々すまなそうな顔をされので、ここは大人になろうと審神者は思った。
「さて、ここは危険だ。早々に立ち去ろうぞ。……待ち人も居るからなあ」
腕の中の審神者を解放してやりながら、三日月が微笑んだ。
「待ち人って、もしかして……」
審神者が言いかけた、その時だった。
「見つけたぜ」
聞きなれた声がした。
「その声は……鶴丸!」
振り返れば、血の付着したぼろぼろの衣を纏った鶴丸が立っていた。表情は良く見えないが、少し硬いように思えた。
慌てて駆け寄ってみれば、鶴丸は審神者を認めてニッと笑う。良かった、いつもの鶴丸だ。そう安心して息を吐く。
「俺より先に主を見つけて驚かそうとしたんだろうが……生憎だが、予想通りだぜ」
鶴丸が、淡々とした口調で言った。何の話だろうか。
「ふむ、駄目だったか」
対して三日月も、独り言のように零した。何となくピンとくる。さっきの謝罪はこれだ。
「実直と評判の三日月宗近様だ。主をほっぽって俺を驚かそうなんて考えないだろうからな」
そう言う鶴丸の言葉が、何時になく尖っているものだから、審神者はぎょっとして顔を見る。冷たく醒めた笑い顔だ。
喧嘩でもしたのだろうか?二人とも、ああ見えても大人だったので、審神者にはそれが想像が出来なかった。
「まだ怒っておるのか」
「もう怒っちゃいない。人生は長い。ま、ただの戯れだと思っておくさ」
「戯れ、か」
そう呟いて、微笑む三日月の顔が少し曇った様に、審神者は見えた。
「つ……」
審神者が口を開きかけた時だった。審神者でも分かるくらいに周囲が殺気立ち、ぞくりと背筋に冷たいものが走った。
どうやら周囲を何かに囲まれたらしい。ぶつぶつと何か言っている声が聞こえるが、うまく聞きとれない。
「……三日月宗近。俺が居ない時に一体何をしたんだ」
審神者を守るように傍に寄り添い、周囲を見渡しながら、鶴丸が尋ねる。
「審神者に飯を供する輩がいたものでな。桃を投げてやったぞ」
剣は抜いてないぞ、そう言いたげな三日月に、鶴丸は溜息をついた。
「……やれやれだぜ」
已むを得まい、そう鶴丸が刀に手をかけた時だった。
「鶴丸よ。下がっておれ」
鶴丸の前を三日月が立ちはだかった。
「三日月宗近?そこをどけ。尻ぬぐいは俺がやる」
「さっきも言ったであろう。これ以上穢れれば、ただでは済まぬと」
「ただで済まないのはお宅の方だぜ。今回ばかりは、天下五剣様の出る幕じゃあない」
ここは黄泉の国だ。黄泉の国では剣の強さより、穢れへの耐性がものを言う。
その点では、三日月より勝っていると、鶴丸は自負していた。
だが、三日月は退こうとせず、鶴丸の指に結ばれた房紐が垂れる方角を見て、そちらへ身体を向けた。
「はっはっは、審神者は頼んだぞ」
そう一笑すると、鶴丸が剣を抜くより早く、三日月が抜刀した。
「分らず屋!」
鶴丸の叫びを振り切るように、黄泉の者を斬り付けると、腐った肉片が、びちゃりと音を立てて、三日月の衣服に飛び散った。
「押し通る」
そのまま構わずに、黄泉の穢れを浴びながら三日月は道を作り、走り抜ける。
審神者の手を引きながら、その背に続く鶴丸は、案じた。
ある意味、穢れに馴れ切ってしまっている自分とは違う。血の穢れすらもまともに知らぬ三日月に、黄泉の穢れは刺激が強過ぎる。
鶴丸の予感は的中した。
闇が薄まり、出口まで後僅かばかりかという時だった。がくりと、三日月が膝をついた。
「三日月!!」
思わず鶴丸が声を上げる。
「やあ、嬉しいな……三日月と呼んでくれるか」
「どうして抜いた!!」
三日月も馬鹿ではない、こうなる事くらいはわかっていたであろう。だからこそ、鶴丸にはそれが理解できなかった。
「これ以上、鶴丸が穢れたら困るからなあ……審神者も悲しむだろう」
「三日月!三日月!!」
枯れた様な三日月の声に、審神者が縋りつく。
「泣いてくれるな。審神者よ、少し穢れを被っただけだ。死ぬわけじゃないぞ……」
その頬に触れながら、三日月は諭す様に言った。
「……くそ、約束を二つも破りやがって……やっぱり足手まといじゃないか」
苦虫を噛み潰したような顔で鶴丸が言えば、三日月は笑った。
「はっはっは……それでもお前は、俺に来いと言ってくれたではないか」
「それは」
本気の目をしていたから。そうだ、最初から三日月は本気だった。それなのに、鶴丸はどこかでそれを否定していた。分らず屋は、自分だったのだ。
「もう、見守っているだけというのは、嫌だからなあ……」
そう呟く三日月に、鶴丸は思い知らされた。
三日月宗近は達観などしていない、ただ、大らか過ぎるだけだったのだ。どうして、そんな単純なことにも気付かなかったのか、鶴丸は、奥歯を噛み締めた。
彼だって、普通に傷つくし、寂しいと思うこともあるだろう。だが、自分と形は違えど同じように、悠久とも思える時の中で、凪いだ海の様に振舞う事で心を守ってきただけなのだ。鶴丸は、そう思った。
「もういい、喋るな。すまん……ゆで卵なんて言って」
「……鶴丸?」
三日月が不思議そうな顔をする。
「気持ちは分かったって、言っているんだ」
判然とした、確かな声で鶴丸は三日月に告げる。自分への好意は本物なのであろう、と。
「そうか、そうか……俺は幸せ者だなあ」
別に気持ちを受け入れた訳じゃない、そう言う前に三日月は静かに瞼を閉じた。
「鶴丸!どうしよう、どうしよう……」
三日月の手を握り、審神者が鶴丸を見る。蒼白で、今にも泣き出しそうな顔だ。
「……大丈夫だ。三日月の言うとおり、死んだわけじゃない。少し穢れを浴び過ぎただけだ」
だが、このままではまずい。手入れ部屋まで行き禊をするまでには、時間がかかり過ぎる。
考えろ、何か手はある筈だ。鶴丸がそう頭をひねった時だった。三日月の懐から黄色い手拭いがちらりと見えた。
「これは……」
六
「三日月!良かった!」
三日月が、瞳を開くと、薄闇の中で安心したような審神者の声がした。
「気付いたか、三日月。……遠征先の人に感謝するんだな」
ぶっきら棒に、しかし明るい声音で鶴丸が言う。
鶴丸の手には、三日月の手拭いが握られていた。
桃の木は霊木で、その木から生る桃は穢れを払う。どうやら鶴丸は、自分に桃の汁を飲ませて穢れを払ったらしかった。
どのようにして飲ませたのか、三日月は胸が高鳴ったが、あえそこには触れない事にする。
「礼を言うぞ、鶴丸」
「礼なら遠征先の人に言ってくれ」
微笑めば、鶴丸が少しばつの悪そうな顔で告げる。
「それもそうか」
言いながら、三日月が立ちあがる。それを認めてから、鶴丸が息を吐いた。
「さて主、主とは一先ずここでお別れだ」
不安そうに鶴丸の顔を見上げる審神者の頭に、鶴丸がぽんと手を置く。
「心配するな。ここを抜ければ、きみは元の肉体に戻る。ここでの事も、忘れちまうだろう」
「そういうものなの?」
「ああ。主にとって、ここは夢みたいなもんだからな」
「そう……でも、良かった」
「何がだ」
不思議そうにする鶴丸に、審神者がはにかんだ。
「三日月とのこと、少し心配していたんだ。でも、これなら彼を副隊長に据えても大丈夫そうだね」
「何の話だ?」
三日月がきょとんとしている。
主の危機に、鶴丸はすっかり忘れていたが、そういえば朝そんな話をしていたことを思い出す。
三日月に近寄りたくなくて、嫌がっていた、朝の自分。それが今はおかしくて仕方が無かった。
「……ああ、そうだな。これから右腕として、宜しく頼むぜ」
そう言って鶴丸が三日月の肩に手を置く。
「はっはっは。右腕、か」
「不満かい?三日月の旦那」
笑みを含んだ声で鶴丸に聞き返されれば、三日月は改まった声で言う。
「あいや、よきかなよきかな」
戦場で、朱に染まりながら舞う白い鶴を傍で見れる。
三日月は、それが慶賀に堪えなかった。
終
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2024年3月24日(日)
6時起床、ホテルの朝食を頂いてから<湯島天神>まで朝の散歩。チェックアウトして向かったのは<ユニクロ御徒町店>、落語協会の100年グッズが販売中なのだ。次は名古屋へ移動、初めての<大須演芸場>で小ゑん・梅團治の鉄道落語会を楽しんだ。京都駅で弁当買って帰宅、楽しくも疲れる旅を終えたのだ。
今回のホテルは<相鉄フレッサイン上野御徒町>、鈴本演芸場とは目と鼻の先で大変便利。朝の散歩は<湯島天神>と決めている。
御徒町駅横のユニクロ、落語協会の100周年記念Tシャツ、好きな柄を選んでプリント出来るのだが、時間の都合で紙切りをモチーフにした<線香花火>を彼女に、私には<宝船>を購入した。
名古屋へ移動、大きな荷物を抱えているのでコインロッカーに預けたいのだが何処も使用中ばかり。仕方なく、地下鉄で<大須観音>まで移動、こちらには古いタイプの300円のロッカーの空きを見つけたが小銭無し、自販機でお茶を購入しようとするが<釣り銭無し>の状態。仕方なく地上へ上がると目の前にコンビニ、1000円札でお茶を購入、お釣りの500円玉で今度は彼女がお茶を購��、ようやく100円玉の用意ができたので地下へ戻って荷物を預けることができた。
大須演芸場は初体験、<鉄道落語会3(東西編)>と銘打って、まずは撮り鉄で有名な梅團治師の写真を見ながらのトーク、場内には鉄オタが一杯で説明のミスに突っ込みが入る。続いて落語は北陸新幹線をテーマにした「酔い鉄」、「代わり目」をモチーフにした自作、鉄ちゃんには大うけ。そのまま多さへ戻って仕事があるとかで、ここで仲入り。後半は地元の登龍亭獅鉄「1時間59分」、鉄道マンの経験を活かした自作、2時間を越えると特急料金が払い戻しになるのでそれを死守する会社・運転手・車掌のやり取りで大いに笑う。声がきれいで聴きやすい方だ。トリは小ゑん師、なんと大好きな「恨みの碓氷峠」!CDを持っているので、就寝前に何度も聴いているがやはりライブはいい。所作も確認出来て大満足。
京都駅着が17時29分、弁当買って京阪京都交通バスで帰宅した。
私は明日の大型ゴミ用のチケットを買うためにファミリーマートへ、その間にツレアイはココに点滴する。
「弘」の牛肉弁当は種類が多いが今夜は中の上程度、それでもとても美味しい。
録画番組視聴、<らくごのお時間>から笑福亭たま<ロケ天神>。
続いて、刑事コロンボから
第11話「悪の温室」/ The Greenhouse Jungleシーズン 1, エピソード 11
深夜、キャシーのもとに夫トニーを誘拐したという電話がかかってくる。キャシーは、トニーの秘書グロリアに電話をかけた後、叔父ジャービスに電話をかける。ジャービスは、1時間経ってトニーが帰ってこなければ、警察に連絡するようアドバイスするが、実は、誘拐はジャービスとトニーの狂言だった。
私は途中でダウン、布団に吸い込まれた。
歩数は12,890、とにかく疲れた。
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2024年3月24日
アストラム延伸部分 全区間のイメージ動画を地元住民に公開 己斐地区には新しい道路も 広島市(RCCニュース 3月25日)2024年3月24日に追記
広島市を走るアストラムラインの延伸計画について、地元で住民説明会がはじまり、詳しい予定ルートなどが初めて示されました。
アストラムラインは、広島市安佐南区の広域公園前駅から、西広島駅まで延伸する計画です。計画ルートの住民に向けた説明会は、きのうから始まりました。説明会では、新たに設置される6つの駅の詳しい位置や構造が初めて明らかにされたほか、延伸区間のイメージ映像が公開されました。
延伸ルートは、現在の広域公園前駅から高架や地上を走って佐伯区の五月が丘団地に入ります。そして、”ジ・アウトレット広島”がある石内東地区へ向かい、そこからはトンネルになります。
己斐峠の地下を通って己斐上に出ると、再び高架を走って西広島駅へと向かいます。西広島駅では、南側広場の上にアストラムラインの駅ができる予定です。
また、歩道がなかったり道幅が狭かったりする場所の多い己斐地区では、新たに片側1車線の車道と、幅が4メートルの歩道を設置する新しい市道”己斐中央線”を整備し、その上をアストラムラインが走る計画です。
松井一実市長(2015年)「広域公園前駅からJR西広島駅までの延伸を、事業化することといたしました」
延伸計画は、2030年前後の開業を目標にしていましたが、コロナ禍の影響もあって需要予測が遅れ、先月、広島市は2036年ごろの全線開業を目指すめざす方針を固めました。総額760億円の巨大事業。今の街並みが大きく変わる可能性があります。
五月が丘団地の住民 「便利になるかなーと、でも12年後なんですよね? なんかかなり先だなーというのが」
「立ち退きになるかならないのかっていうのが早く知りたい。もしなったときに、引っ越すんなら早めに引っ越したいとかありますし」
石内東の住民 「トンネルの部分の説明がきょうすごく聞きたくて、振動とか騒音とかが心配なんで、何m下とか、どのぐらいのところに通すかとかが知りたかったんですけど」
◆スタジオ解説
改めてルートを見ておきます。現在の発着駅である広域公園前駅から、西広島駅までおよそ7キロを延伸するという計画です。計画ルートの周辺には、己斐や五月が丘という大きな住宅地もありますし、広域公園前駅周辺には大学もあります。周辺へのアクセス向上などが整備を進める理由となっています。また、現在はマイカーやバスが主なアクセスとなっている”ジ・アウトレット広島”の敷地の北東に仮の名前ですが”石内東駅”ができる予定です。
大きく変わりそうなのが、ジ・アウトレット広島からトンネルを抜けた先にある己斐地区です。
学生時代を己斐地区で過ごした田村友里アナウンサー 「己斐エリアは、住宅が多くて道幅が狭かったです。主な移動手段はバスで、結構道が混んだりもしていたので、アストラムラインができると便利になるのかなと思います」
己斐地区は、現在のバス通りとは違うルートに、広い新しい道路”己斐中央線”をつくって、その上を高架でアストラムラインを走らせようという計画です。”己斐上駅”と”己斐中駅”という2つの駅をつくる予定です。
開業も2030年前後だったのが2036年に遅れたり、いろいろ心配されている市民も多いのですが、広島市は「丁寧に説明して、理解をいただけるよう努めていきたい」としています。
アストラムライン延伸計画で住民説明会はじまる 広島市 開業は2036年度ごろの見込み(広島テレビ)2024年3月24日
広島市はアストラムラインの延伸計画を巡り、24日から地元住民への説明会を始めました。
延伸区間の、広島市佐伯区で開かれた説明会にはおよそ320人が参加しました。
アストラムラインは、「広域公園前」駅から「JR西広島」駅までを延伸する計画です。開業は、新型コロナの影響などで当初より遅れ、2036年度ごろの見込みです。広島市は、再開発が進む西広島駅へアクセスしやすくなることなどを説明しました。
住民 「アストラムラインが延伸することを前提に家を購入したので、できてもらわないと困る。」
広島市は、沿線の3つの会場で来月にかけて24日を含め5回、説明会を開く予定です。
尊富士が110年ぶり新入幕Vの快挙!右足負傷を乗り越え歴史的賜杯、所要10場所の“史上最速V”で三賞も総なめ(TBS NEWS DIG)
尊富士 強行出場で110年ぶり新入幕V!記録ずくめの初賜杯、所要10場所は史上最速 やったぞ!大拍手(スポニチアネックス)
尊富士の母は感涙 優勝の瞬間は「会場の近くでスマホで」「震え止まらず」心配で急遽大阪入りも館内入れず(スポニチアネックス)
大相撲春場所千秋楽の取組が24日、エディオンアリーナ大阪で行われ、東前頭17枚目の尊富士(24=伊勢ケ浜部屋)が西前頭6枚目の豪ノ山(25=武隈部屋)を押し倒しで破り13勝2敗で初優勝を決めた。前日の朝乃山戦で右足首を負傷し、出場も危ぶまれた中での強行出場で気迫の一番を見せた。新入幕優勝は1914年(大正3年)夏場所の両国以来110年ぶりの快挙。初土俵から所要10場所目での優勝は両国の11場所目を抜く史上最速となった。
取組後は土俵上で少し表情を崩し万感の表情。場内から「凄いぞ~!」「良くやった!」「尊富士!」「バンザ~イ!」の大歓声と、割れんばかりの大拍手を浴びながら花道を引き揚げた。花道では関係者が涙する中、笑顔で握手や熱い抱擁を交わしていた。
館内に歓声がこだました。勝てば歴史的初賜杯となる豪ノ山との大一番。右足首の負傷を感じさせない五分の立ち合い。そこから豪ノ山の圧力に屈することなく前へ出続けた尊富士は、徐々にペースを握り、最後はこん身の押し倒しで110年ぶりの快挙を手繰り寄せた。
強行出場する息子を心配し、いてもたってもいられなかった。尊富士の母・石岡桃子さん(47)は「心配で急遽来ました。勝ってほしいのと、足が心配なのと…複雑でした。大丈夫かな?という気持ちで見てました。急遽でチケットが取れなかったので、会場の近くにはいたけど、スマホで見てました」とドタバタだった千秋楽の大阪入りを明かした。「今朝9時の飛行機で来ました。顔を見て安心したかったので。(学生時代)毎回いいところまでいった時にケガしてきてたので、それがちょっとよみがえってしまって…。初めての日本一がこの形でって震えが止まらなかった」。これまでを思い返し、言葉を絞り出すと感極まり涙がこぼれ落ちた。
その後、支度部屋で無事対面。偉業を成し遂げた息子と抱擁を交わし再び涙した。
優勝力士インタビューでは24歳の孝行息子が「おかげさんで、僕もそんなに体は大きくないですけど、こうやってしっかり幕内の土俵で勝てるように育ててくれて、感謝しても感謝しきれないです」と母への感謝の思いを照れ笑いを浮かべながら口にした。
年6場所制となった1958年以降、幕下付け出しも含めた初優勝の最速記録は1972年夏場所に初土俵から15場所目で賜杯を手にした輪島だった。尊富士は日大の大先輩でもある偉大な横綱の記録も塗り替えた。
最速新入幕を果たした尊富士は今場所、初日から11連勝。9日目には三役初挑戦で小結・阿炎を下すと、10日目には大の里との新鋭対決を押し出しで制した。11日目には大関・琴ノ若を寄り切りで破り、1960年初場所の大鵬に並ぶ歴代1位タイとなる新入幕初日からの11連勝を達成。出世が早過ぎて大銀杏の結えないちょんまげの24歳があの大横綱がつくった記録に並んだ。
12日目には99年度生まれの同学年の大関・豊昇龍に土俵下まで投げ飛ばされて初黒星を喫したが、「何も考えずに自分を信じてやるしかない」と切り替え。13日目は関脇・若元春を圧倒し、歴史的な新入幕優勝に王手を懸けた。しかし、14日目の朝乃山戦で右足首を負傷。花道を自力で歩けず車椅子で医務室に直行し、ギプスで固定した状態で救急搬送されていた。
尊富士はこの日、午後2時17分、エディオンアリーナ大阪に到着した。14日目の朝乃山戦で右足首を負傷。この日はゆっくりとした足どりで、右足を少し引きずっているようにも見えた。1差で追う大の里(24=二所ノ関部屋)は午後1時25分に会場入りしており、尊富士は通常よりかなり遅めの到着だった。そして、負傷した右足首にサポーターを装着も、しっかりとした足取りで土俵入り。大歓声にも表情を崩さず、鋭い眼光で前を見据えていた。
青森県五所川原市出身で鳥取城北高、日大と強豪校を歩んだ。22年秋場所で初土俵を踏むと序ノ口、序二段、三段目は1場所で通過。今年初場所に新十両に昇進すると13勝を挙げて新十両優勝を果たし、部屋の横綱・照ノ富士とアベック優勝でパレードでは旗手を務めた。
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二篇 下 その九
それより手越の里(静岡市)に着いたら、またもや、雨が降りだして、たちまち前も見えないほどのどしゃぶりになったので、半合羽を取り出してかぶると、足を早めて、まもなく丸子の宿(静岡市)についた。
ここで昼飯にしようと茶屋へ入り、北八が、
「やれ、飯を食おうか。ここはとろろ汁が名物なのか。」
茶屋の中を見まわして言うと、弥次郎兵衛がそれに答えて、
「そうよ、もし御亭主、とろろ汁はありますか。」
それに、茶屋の亭主が答える。
「へい、今、出来ず。」
弥次郎兵衛は、それを聞いて、
「なんだ、出来ねえのか。しまった」
実は、この辺の方言で、すぐ出来ることを今出来ずと言うのだが、弥次郎兵衛は、それを知っていてふざけているのである。
「へいへい、すぐに出来ますから、ちょっと待っててください。」
と、亭主は、芋の皮もむかずに、さっさっとおろしだし、
「おなべや、おなベ。この忙しいにのに何をしている。
ちょっとこっちにこい。」
と、けわしく呼び立てる。
すると、裏口から小言をいいながら出てきたのは、女房とみえ、髪は全然梳かしていないし、背中に乳飲み子を背負って、険しい顔をしている。
「今、弥太のとこのおん婆どんと、話をしていたのに、やかましい人だ。」
亭主それに答えて、
「何が、やかましいだ。ほれ、そこへお膳を二膳用意しろ。
ええい、それ、前だれが引きずっている。」
女房は、仕方がないと言う感じでゆっくりと支度を始めたが、しきりにきょろきょろしている。
「お前さん、洗った箸は、どこにあるんだい。」
「なに。俺が、知るもんか。おい、その箸をよこせ。」
女房が、手元の箸をつかみ上げて、顔の前でぶらぶらさせながら、
「これかい。」
「ええい、箸で芋がすられるか。すりこぎのことだ。
何年この仕事をやってるんだ。ほれ、その膳へつけるのじゃない。
ここへよこせと言うことよ。本当に、じれったい女だ。」
と、すりこぎをとって、ごろごろと芋をすりだす。
女房は、その様子をおかしそうに眺めながら、
「それ、お前さん、すりこぎが逆さまだ。」
「いいから、俺のことはほっとけ。このほうが、キメが細かくなるんだ。
それより、ほら、海苔がこげている。」
と、がみがみと言う。
「やれやれ、やかましい人だ。」
と、背中の子が、泣き出した。
「あらあら、またこの子は、おんなじように吠えだした。」
「おい、このすり鉢を押さえてくれ。
ええい、そういうふうに持ったら、擦られないじゃないか。
まったく、馬鹿な女だ。」
と、女房に言うと、
「なんだって、あんたのほうがよっぽど、馬鹿だよ。」
「なにを、このアマ。」
と、すりこぎで一つ殴ると、女房はやっきになって、
「この野郎め。」
と、さっきまでここの亭主が擦っていたすり鉢を取って投げつけた。
すると、そこら辺りにとろろが飛び散る。
「なんてことをしやがる。」
と、すりこぎを振り回して殴り掛かったが、とろろ汁のせいで滑って、その場にどっさりところんでしまた。
「あんたなんかに、負けているもんか。」
と、女房もつかみ掛かろうとしたが、これもとろろ汁に滑ってこけてしまった。
この騒ぎを聞きつけ、向かいの家のおかみさんが駆けて来て、
「あれまあ、また始まった。みっともないからやめなさいな。」
と、両方をなだめにかかったのだが、これもとろろで滑ってころんでしまった。
三人が体中を、とろろだらけにして、あっちへ滑り、こっちへころんで大騒ぎしている。
弥次郎兵衛は、
「こりゃ、埒があかねえ。先へ行こうか。」
と、おかしさをこらえて、ここを立ち出て行った。
北八は、茶屋をでると、
「変な奴等だ。あのとろろ汁で一首詠んでみた。」
喧嘩する 夫婦は口を とがらして 鳶とろろに すべりこそすれ
それより宇津の峠に差し掛かったが、雨は激しくなる一方で、杖にすがって、峠の細道を歩いていたが、小さな団子を十個串にさした名物の十団子を売る茶屋の近くで、弥次郎兵衛が、思わず坂道で滑りころげてしまった。
降りしきる 雨やあられの 十団子 ころげて腰を うつの山道
その辺りには、岡部の宿場の客引きが待ちうけて、
「お泊りでございますか。」
と、袖を引こうとするので、
「いや、俺らは今日、川を超すつもりだ。」
と、弥次郎兵衛は答える。
すると、岡部の客引きが、
「大井川は留まりました。」
と、増水で川留めになったと言う。
大雨が降ると、川越しは危険として通行が禁止される。
これを川留めといい、雨が止んで水位が下がって、川越しが許可されることを川が明けるといった。
「そうか。この雨じゃ無理もないが。」
と、北八が弥次郎兵衛の方を見ていう。
「さようでございます。先へいかれても、お大名様が五組、島田と藤枝にお泊りでございますから、あなた方の泊まれるような宿はありません。岡部で、お泊りなさいませ。」
弥次郎兵衛は、仕方がないというふうに、
「そんなら、そうするか。」
と、北八と、顔をみあわせる。
「で、お前、何屋だ。」
「はい、相良屋と申します。すぐ、お供いたしましょう。」
と、連れ立て行き、早くも大寺河原の坂道を越え、岡部の宿場に着いた。
豆腐なる おかべの宿に つきてつく 足にできたる 豆をつぶして
二人は、この宿場に泊まって、川留めの明くまでしばらく旅の疲れを癒すことにした。
これで、二篇 下は終わりです。三篇 上に続きます。
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【シェフの休日 義母の誕生日】
3月3日は母の83歳誕生日
プレゼント何するかずっと考えてたけど
何も思いつかず・・・・
前から片方しか使えなくなってたコンロにした
さらにキッチン暗いからLEDライトを追加
ほんまはちょっとでも安心な電気コンロにしたかったけど
使い方わからんって頻繁に電話かかってきそうなんでガスにした
今回もシェフの休日は義母のためにすぎてゆく~~~(;^_^A
元々あった電気をコンロの上につけて
流しの上にLEDつけた
配線を吊戸棚の中に穴あけて通して・・・
古くてボロボロのコンロを捨てて新しいコンロ設置
問題発生!!!
前のコンロより3CM程小さいΣ( ̄ロ ̄lll)ガーン
結局周りの隙間埋めてたキッチンパネルのコーキング外してやり直し
さらに隙間を埋めるのに倉庫さがしてたら良いのがあったとステンレスのとゆを切って
ちょうどの形にして前の部分で手切ったらあかんから板をはめてコーキングして保護
次は玄関の水槽大小掃除
キッチンのアルカリイオン水生成器から浄水を何回も運ぶのめちゃ大変なんで
10mホースを買って来た
何十回と往復してバケツで運んでたけど・・・すっごく楽になった(笑)
実はこの日の前日香芝市レストラン営業日終わって
夜に高見峠越えて松阪の母とこに21時頃到着
母の愛犬リコの毛が汚れてるのが気になって
お風呂入れてシャンプーした
んで一晩寝て
シェフは朝食食べながら義母の話し相手
朝からLEDとコンロ設置
水槽掃除
庭の八朔全取り
シェフが上記の諸々やってる間に
シェフ嫁はリコの肉球と爪の周りの毛をバリカンでカット!
その後シェフがリコの爪切り
結局帰りめちゃ用事あって帰りは夜(;^_^A
シェフいつも母のために色々してくれて有難う
https://marunii-kitchen.amebaownd.com/posts/52061051
#キッチン #コンロ交換 #LED電気設置 #庭木手入れ #金魚とメダカの水槽掃除 #愛犬入浴 #愛犬爪切り #愛犬ブラッシング
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2024.1.18thu_tokyo
あいさんから連絡があり、急遽日記を書く事となりました。
能登半島地震で被害を受けた地域への支援へ向かった日についてです。
能登に行く事となった経緯ですが、現在働いているリトルナップコーヒーではとあるスタッフの呼び掛けにより、1月2日から二日間に渡り急遽お店をオープンして募金を始めた事や我々のオーナーが昔から震災の復興に力を入れていることが大きなきっかけとなりました。
その他、復興団体や職場のスタッフの協力もあり今回の炊き出しに参加させて頂ける運びとなりました。
以下、出発当日からの日記です。
1月16日
出勤して前日から用意した荷物を積み込み同伴するもう一人のスタッフと当日の流れを確認。
その日は石川県までの道のりが降雪で通行止めになるなどして予定の時間より2時間早く出発。
オーナーともう一人のスタッフ三人でまず富山へ向かう事に。
峠はアイスバーンが凄く乗っていた車が軽くスリップしたり、余震で震度5弱の地震があったりなど肝を冷やした。
復興支援に向かう人達は優しさだけではなく勇気や覚悟を持ち合わせていないと務まらないなと当事者になって強く実感。
富山にはオーナーの実家がありそこで仮眠させて頂ける事に。
6〜7時間の道のりを経て富山に到着。現地は水分が不足しているということで予め用意しておいたタンクに水を入れて軽く暖をとった。
九州では普段見かけない薪ストーブに感動。ん?九州にもあるけど俺がみた事ないだけ、、?
まあいっか。笑
本来なら都内では食べたい物を好きなタイミングで食べれるし、次の日休みなら何も考えずお酒を嗜めるのに、薪ストーブをみてこの一本分の暖ですら必要としている人が沢山いると考えると悲しい気持になってしまった。
そこから暖かいお茶と薪ストーブの温もりは被災した方へ還元する自分のパワーにするというマインドへ。
都合が良いのかもしれないけど何事もポジティブが大事だよね。
1月17日
2、3時間程仮眠して富山を出発。
高岡で他の復興団体の方たちと合流して6台連なって石川県へと入る事に。
今回の復興支援は許可を得なければ入る事ができず、勿論のこと道もまだ改修されておらずあちこち隆起しておりでかなりの時間を要すると言う話を伺った。
暗い道のりを走って警察車両や自衛隊の待機している検問所?をパスして能登に入った。
建物が崩壊していたり道がギリギリ車一台が通れる道だったり、不穏な空気感というか今までに体験したことのない雰囲気。
映画の中に入り込んだような感じ。
海岸沿いを走っていると土砂崩れで転がってきた大きな岩など上も横も危険な状態で恐怖心と車内で戦った。
まず最初の炊き出しを行う小学校に到着。丁度日の出の時間で凄く綺麗で力がみなぎってきた。
普段は町場のコーヒー屋さんなんだけど僕はパンケーキを焼くことに。
電気の問題などあり開始は思い通りにいかず少し待たせてしまった。しょうがない反面、もっとできることがあったんじゃないか、自分の予測する力が不足していたなと第一反省。必要な瞬間に最大限の事もままならないようじゃまだ人間として半人前です。
子供が多いかなと思ったけど意外にもおじいちゃん、おばあちゃんからの注文が多かった。
被災された方は意外にも穏やかな感じでしっかりと順番も守ってくれたりで中盤からはスムーズに提供できた。
ボランティアでリーダーの様な役割で動いていた女性がおり、被災状況やこれからの事など色々と話を伺った。
彼女自身も被災していてそれなのにボランティアとして人を統率している姿に驚いた。
命の危機に立たされているのにも関わらずリーダーシップと慈悲の心を持ち合わせている人間は周りの人たちにとっ��も有難いし僕ら炊き出しチームも非常に助かる。
次の場所へ向かおうと片付けをしていたところ一人のおばあちゃんがコーヒーをまだいただけますか?と尋ねてきた。
勿論と返事をして提供すると、のむや否や泣きながらありがとうと言われた。
もらい泣きをしてしまって、でもさっきのリーダーの女性を前にして泣いている場合じゃないとなるべく堪えた。
あまり悟られたくなかったのでありがとうの返事はとんでもないです、というような簡単な返しになってしまった。
もっと寄り添える言葉をかけてあげたかったけどコミュニティ能力がまだまだ低いなと第二回目の反省、、、
反省ばかりの人生!
そこから中学校へ移動。
そこでも先程と同じ様な流れでコーヒーを提供しみんなに喜んでもらえた。
餅つきしたりラーメン食べたりでみんなの活気がすごく、見ているこちらも元気をもらえた。
医療従事者、役所のボランティアの方々にもコーヒーを飲んでもらいリラックスしてもらえた。
中学校からは海と山の絶景が見えた。事故が起きた場所とは到底思えない。
支援者じゃなく復興が終わって観光客としてまた来れるといいな。
自然は美しいのにいきなり命を奪ったり、命を繋ぐ食材を産んだり。
それとそこにいる人達の空間は悲しさと優しさが同居していたり、
優しさで動く人間もいればこの状況にあやかって悪事を働く人間がいたりとこの世界は表裏一体だな〜
そんな事を考えながらみんなと集合写真を撮り11時間かけて都内に戻りました。
震災だけでじゃなくて他の国は戦争が起きてたり食糧難が起きてたり人間が存在している間は問題が山積みだな。
今回は高校卒業して今の会社に入社するまでずっと飲食業に従事していた僕が初めて経験した炊き出しの経験を綴りました。
沢山の人に愛を受けてここまできて、30歳にしてやっと今愛が必要な人達に飲食を通じて愛を分け与えることができました。
ないに越した事はないんだけれど、こういった貴重な経験に参加することができてよかったです。
まだまだリトルナップでは復興支援の募金箱を設置しております。
是非、機会があれば美味しいコーヒーを飲むついでに協力していただければ幸いです。
-プロフィール-
小山将汰
30歳
東京
料理人、バリスタ
リトルナップコーヒースタンド/ロースターズ
instagram @shotatheselfish
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『久しぶりに、旅へ②(岐阜県高山市方面)』
新潟県妙高市関温泉の朝は、幸いにも大雨が通り過ぎ、雲や霧はあるものの穏やかな様相を見せた。
旅の2日目は、ここ妙高市から岐阜県高山市迄の下道ドライブ。大雨が無ければ、新潟県から長野県へのアクセスをフラットダートの林道で小谷村へ抜ける予定だったが、路面状況が読めない為、信濃信州新線(県道36号線)から、長野県戸隠(旧戸隠村)を通り、白馬へ抜けるルートに切り替えた。
道中の鬼無里村を走る頃には、時折青空を見せてくれて、この先のロケーションに気持ちが高まる。
国道を避け、白馬岳大町線(長野県道325号)に入り、素朴で実りある風景を抜けて行く。
その道中、ポツンと食堂が。そこの蕎麦が、これまた美味だったのでご紹介。『おらほの味 蕎麦処 しみず』旨味香りも良く、喉越し良く。お勧めです。
昼を終え、上高地方面へ。
渓谷と、時折見せる青空が美しい。国道158号線は、いつ通っても裏切らない美しさを見せてくれる。この天気に期待して、さらに安房峠(旧158号線)を目指す事にした。峠の登りでは、この先に期待を持たせる風景が、チラリチラリと。
…しかし、そこは残念ながら深い霧に包まれ、晴れていれば観られたはずの焼岳はお預けとなった。ともあれ、走り抜ける道はいずれも素晴らしく、久しぶりの旅に、印象深い記憶を残してくれた。
この日の宿のある『福地温泉』には、穏やかな露天風呂あり、泊り客のみの風情ある足湯もあり、何度か通っている。奥飛騨温泉郷も幾度か出掛けているが、近年はやや素朴な、こちらに来る機会が増えた。
この足湯の為だけの、贅沢な建屋が一軒。囲炉裏があり、宿だけの出会いではなく、福地温泉に来たお客さん全体への出逢いを演出するところが、なんとも心地よい。
さて、この日は何キロ走っただろう。
この次の日は、もう少し楽な旅路になる…はず(笑)
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2023.12.24〜28 越後駒ヶ岳(駒の湯から道行山の手前まで往復)
ラッセル厳しく一人ではまったく歯が立たずでした。
メンバー:kwt
1日目(12/25) 晴れ→夕方から小雪
8:40除雪終了点〜14:00駒の湯〜17:00標高500m地点(泊)
早朝に東京発。上越線小出駅からタクシーで除雪終点まで。
ここから駒の湯まで4kmの車道歩き。スノシュー履いて脛ぐらいの積雪。ずっと平坦だけどかなり疲れた。駒の湯まで5時間かかった。
駒の湯の吊り橋は冬期は板が外されていて渡れず、最短ルートの小倉尾根は使えない(気合の入った人は無理やり吊り橋を渡ったり、渡渉したりするのだろう)。今回は銀の道コースから明神峠経由のルートをとる。銀の道コースは、道標は発見できたが登山道はよくわからなかったので適当に登りやすそうなところを登りはじめる。なかなかの急登で、空身でラッセルしてザックをとりに戻るを繰り返す。
この日は標高500mくらいの尾根上に無理やりテントを張った。予定では地形図で918mのピークまで行くはずだったので、かなり遅れ気味。
除雪終了地点
冬期通行止めの車道歩き。時折り越後駒ヶ岳が見える
駒の湯まであと2km
駒の湯の吊り橋。板は外されてブルーシートで覆われている
銀の道コースの道標
標高500m地点の尾根上に無理やりテントを張った
2日目(12/26) 晴れ→夕方から小雪
7:00標高500m地点〜16:00標高1000m地点(泊)
明神峠目指してひたすらラッセル。沢を挟んで対岸の小倉尾根が常に見える。小倉尾根に比べると銀の道コースはかなり遠回り感があり、恨めしい気持ちで小倉尾根を眺めながらひたすら空身ラッセル&ザックとりに戻るを繰り返す。この日は小倉山まで行けるかと見積もっていたが、まったく読み甘で明神峠までも届かず標高1000mのコルで幕営。
小倉尾根と越後駒ヶ岳のヤバい北面。郡界尾根もヤバそう
だんだん天気が悪くなってきた。
ごはん用のお椀を持っていった。アルファ米も多少おいしく感じられる
3日目(12/27) 晴れ→夜から雪
7:00標高1000m地点〜12:00明神峠〜15:00道行山まであと700mの地点
この日に小倉尾根まで届かなかったら引き返そうと思っていた。標高1235m明神峠はひたすら遠く、ピークを越すと次のピークが現れ本当にうんざりする。ようやく辿り着いた明神峠からは越後駒ヶ岳、中ノ岳、荒沢岳、奥只見湖などがバッチリ見える。この時点で正午、大休止した。この先は道行山まで大きなアップダウンはないがラッセルは相変わらず。小倉山ははるか遠く、道雪山までもあと700mもある地点で行動をやめた。15時だった。この日は夜から雪が降った。
越えても越えてもピークが続く
ようやく明神峠が見えてきた
明神峠より周囲の山々
明神峠より荒沢岳。この山はカッコいい。冬に登りたい
明神峠より越後駒ヶ岳
小倉山へ続く尾根道。近そうで遠い。トレースは動物のもの
小倉山への尾根道。傾斜は落ち着いたが空身ラッセル&ザックを取りに帰るを繰り返す
越後駒ヶ岳の裏に陽が沈んだ
4日目(12/28) 小雪→曇り
8:00道行山まであと700mの地点〜14:00駒の湯(泊)
昨夜からの雪は勢いは弱まったがまだ降っている。天気も悪いしこれ以上進む気力もなく、雪が落ち着くまでテントの中でうだうだして、8時頃テントを出て、来た道を引き返した。昨晩からの雪でトレースが消えているところもあった。明神峠から銀の道への下降ポイントはコンパスを出して方向を確認した。初日から三日目までとても苦労した登りだったが、下りはやっぱり楽で14時には駒の湯に戻ってきた。気温が高く雪がグサグサのなか4kmの車道歩きが嫌だったので、駒の湯登山口にテントを張ってこの日の行動を終了した。
3日目の幕営地。夜は雪が降り続いた
来た道を引き返す。トレースは消えつつある
あっという間に駒の湯まで降りてきた。雪が減った。初日はここの看板は雪に埋もれていた
5日目(12/29) 晴れ
8:30駒の湯〜10:40除雪終了点
昨日の午前中は駒の湯あたりでは雨だったようで、初日に比べると雪がかなり減っている。初日のラッセルの辛さに比べるとなんの苦労もなくスタート地点に戻った。
天気は良いが疲労困憊。さよなら越後駒ヶ岳
結局、今回の山行はスノーシューとストックしか使っていなくて、アイゼン・ピッケルが必要なところまではたどり着けなかった。この時期にひとりで山頂にたどり着けるほど自分は強くなかった。冬の北鎌尾根や硫黄尾根、剱岳、黒部横断などに行く人は本当にすごいと思う。もしまた冬の越後駒ヶ岳にチャレンジすることがあれば、その時はラッセルと荷物と喜びを分かち合える仲間と一緒に行きたい。
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