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#壁に耳あり障子に目あり
herbiemikeadamski · 2 years
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. (^o^)/おはよー(^▽^)ゴザイマース(^_-)-☆. . . 10月23日(日) #赤口(己酉) 旧暦 9/28 #霜降 月齢 27.2 年始から296日目(閏年では297日目)にあたり、年末まであと69日です。 . . 朝は希望に起き⤴️昼は努力に生き💪 夜を感謝に眠ろう😪💤夜が来ない 朝はありませんし、朝が来ない夜 はない💦睡眠は明日を迎える為の ☀️未来へのスタートです🏃‍♂💦 でお馴染みのRascalでございます😅. . 「金曜日の宴」で激しく飲んだ 後遺症で昨日は午後から絶不調⤵️⤵️⤵️ 目覚めた時も辛いのですが薬が切れ る頃の午後には禁断症状ってのかね コンバットのジャンプニィが辛いので控えて たら大阪から移住して来たオバハンに 「あんた今日はて抜いてるのとチャウ」 って駄目だし食らった。。。_| ̄|○.. . そんなんで昨日は一日中、具合が 悪い上に、こんな時季に猛暑の様な 暑さでしたから😅💦流石に熊本は 南国ですよね🏖今朝も東京都は4℃ も違いますから🤣😆🤣今日も暑く なりそうです✋でも、寒いよりは 私は過ごしやすいと思う✋洗濯物 が二日分も溜まってしまった😅💦 . 今日一日どなた様も💁‍♂お体ご自愛 なさって❤️お過ごし下さいませ🙋‍♂ モウ!頑張るしか✋はない! ガンバリマショウ\(^O^)/ ワーイ! ✨本日もご安全に参りましょう✌️ . . ■今日は何の日■. #おいもほりの日. 大阪府大阪市に本社を置き、包んで焼くだけで簡単に美味しい石焼いもが完成する「石焼いも®黒サンホイル」  など、さまざまな食品容器や包装資材の製造・販売を手がける東洋アルミエコープロダクツ株式会社が制定。 多くの幼稚園や保育園の秋の行事となっている「おいもほり」は、自然とのふれあいや食育などの教育的な意義  があり、帰宅後も家族での会話が弾むイベントとして楽しまれている。  記念日を通して「おいもほり」の教育的な意義の再確認と、さらなる普及が目的。  日付を二十四節気の「霜降」の頃である10月23日としたのは「おいもほり」の主役であるさつまいもは霜が降り  始めるまで太り続けるとされており、この頃が「おいもほり」のピークを迎えることから。 . #赤口(シャッコウ・シャック).  六曜の一つ。  陰陽道の八嶽卒神が支配する日であり、公事・訴訟・契約などの凶日とされる。  「六曜」の中で「仏滅」の次に縁起が悪い日です。  この日は、陰陽道の「赤舌神(しゃくぜつしん)」という恐ろしい鬼神が支配する日とされます。 「火の元や刃物に注意すべき日」と言われており、凶や死のイメージが付きまとうため、お祝い事  では「仏滅」より避けられることが多くです。  この日は午の刻(午前11時ごろから午後1時頃まで)のみ吉で、それ以外は1日大凶となります。 . #降霜. 二十四節気のひとつ。秋が一段と深まり、霜が降りることが多くなるので「霜降」。  気温が下がり冬の近づきを感じる頃。 . #一粒万倍日(イチリュウマンバイビ).  選日の1つであり、単に万倍とも言われます。   一粒の籾(もみ)が万倍にも実る稲穂になるという意味である。 .  一粒万倍日は何事を始めるにも良い日とされ、特に仕事始め、開店、種まき、お金を出すことに吉であるとされる。  但し、借金をしたり人から物を借りたりすることは苦労の種が万倍になるので凶とされる。  また同じ意味合いで、借りを作る、失言をする、他人を攻撃する、浪費などもトラブルが倍増するので避けたほうがいいとされている。 . . #オーツミルクの日. オーツ麦から作った植物性ミルクブランド「goodmate」など、さまざまな飲料のブランド・マネジメントを行うHARUNA株式会社が制定。 . #ハンドメイドの日. 静岡県伊豆市に本拠を置く有限会社アドバンスネクストが制定。 . #津軽弁の日.#家族写真の日.#じゃがりこの日.#電信電話記念日. . . #眞子内親王ご生誕. 1991(平成3)年10月23日(水)、秋篠宮文仁親王の第一女子の眞子内親王が誕生、上皇明仁の初孫。 . . #不眠の日(毎月23日). . #国産小ねぎ消費拡大の日(毎月23日). . #乳酸菌の日(毎月23日). . #ハンガリー共和国宣言の日.#チュラーロンコーン大王記念日(タイ). #モルの日(アボガドロ定数). . . ■本日の語句■. #壁に耳あり障子に目あり(カベニミミアリショウジニメアリ). 【解説】 隠し事をしようとしても、どこで誰が見たり聞いたりしているか分からない。 秘密・密談は漏れやすいものだから、注意しなさいと云う戒め。 . . 1975(昭和50)年10月23日(木)先負. #小林タカ鹿 (#こばやしたかしか) 【俳優】 〔東京都〕. . . (Saburou, Kumamoto-shi) https://www.instagram.com/p/CkB8FEUytm695iBO8QnKgF9S6JgMiiGn5EPCoA0/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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kennak · 7 months
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20代で貧乏だった頃、毎食チキンラーメンを食べていたことがある。実家が微妙に健康志向であったので、子供の頃から袋麺やインスタント食品自体を口にする機会があまりなかったからだろうか。大学生の頃、自分で稼いだ金で食べるインスタント食品やファストフードがめちゃくちゃ美味しかった。会社勤めを始めた後も、零細に勤めてたのと、そもそも薄給で若者を働かせることが常態化していた業界だったので、慢性的に金がなく、それが不健康な食生活に拍車をかけた。なけなしの給料は、社会保障費と家賃と光熱費で消えていき、その残りで書籍を買うような生活だったから、夕飯を抜いたりすることが常態化していた。そんな生活の中で、すごく重宝したのがチキンラーメンだ。当時、袋麺は5つセットで200円台、セールなら198円とかで買えたので、安い時に買いだめて、しょっちゅう食べていた。ある時、ひょっとしたら、毎食チキンラーメンでもいけるんじゃないか?と思って、本当に毎食食べるようにしてみた。朝昼晩チキンラーメン生活の始まりだ。基本��に、食へのこだわりがなく、昨日の晩ごはんが今日の晩御飯と同じでも気にしない性質だったので、チャレンジ開始後は順調に家にあるチキンラーメンを消費していた。でも思いの外、終わりはすぐにやってきた。5日目の昼、14食目のチキンラーメンが美味しく感じなくなったのだ。そしてチキンラーメンを口に入れること自体を身体が躊躇し始めた。まずあの濃厚な香りが美味しそうだと感じなくなった。そして無理矢理口に入れても、飲み込むことができなくなった。麺をすすっても喉を通らないのだ。その時は無理矢理食べ切ったが、次の15食目、その日の晩はもう無理だった。あんなに好きだったものが目の前にあるのに、どうしても食べられないのだ。空腹を感じているのに、目の前のチキンラーメンを食べることを身体が拒絶するのだ。もっと空腹になれば、食べられるかもしれない���そう考えて、水以外は摂らないようにしてみた。空腹は最高の調味料というではないか。ましてやチキンラーメンは調味料ではない。食事なのだから、もっと美味しく食べられるはずなのだ翌朝は頭痛と空腹で目が覚めた。チキンラーメンの袋を開けると、あの濃厚な香りが、頭痛を悪化させ、吐気を感じさせた。まだ身体はチキンラーメンを受付ないらしい。つまり空腹が足りないのだ。水で空腹を紛らわせることにした。その晩、身体の震えが止まらなくなった。熱はないのに悪寒と頭痛がする。水を飲めば落ち着くが、チキンラーメンの匂いが少しでもすると、頭痛が悪化した。布団にくるまって寝ようとしたが、コメカミが脈動するほどの頭痛で寝られない。心臓の音が部屋に響く。安いワンルームの壁の向こうの生活音が鮮明に聞こえてくるような気がする。なんでこんなに苦しまねばならないのだろう自分は、ただ、チキンラーメンを食べたかっただけなのに思いたったように始まったこの生活は、唐突に終わりを告げた。学生時代から付き合っていた、県外に住む彼女が、翌朝訪ねてきたからだ。どうも前の晩、電話をかけてきた際、電話口の僕の様子があまりにもおかしいので、様子を見にきたらしい。僕はあまり覚えていないのだけれど、あとから聴いたところによると、耳元で喋られると、頭に響いて、頭痛が酷くなるとか、空腹でチキンラーメンが食べられないとかいって、泣いたり怒ったりしていたらしい。僕の部屋にやってきた彼女は、酷い顔で布団に包まる僕と、ゴミ箱に突っ込まれた大量のチキンラーメンの空袋と、食べるのを断念して流しに放置されたどんぶり、散乱するミネラルウォーターのペットボトルを見て、何かを感じたのだろう。とりあえずコンビニに走り、スポーツドリンクとゼリー飲料とプリンを買ってきて、少しずつ僕の口に押し込み、寝かしつけ、流しに放置されたチキンラーメンを片付け、部屋の空気を入れ替えた。夕方に目を覚ました僕は数日ぶりに頭痛から解放されていた。空腹は感じていたので、彼女にそういうと、とりあえずシャワーを浴びて服を着替えるように言われた。浴室の鏡に写る自分の顔は、眼だけギョロッとしているように見えた。僕たちは、ゆっくり駅前商店街を歩いて、普通のうどん屋に入って、僕はたまごとじ、彼女はキツネうどんを注文した。先に運ばれてきたのはキツネうどんだった。彼女は七味を手にとったけど、なぜかうどんにはかけず、そのまま僕から1番遠いテーブルの端においた。僕と彼女は、あまり話すこともなく、ゆっくりとうどんを食べて、店を出た。その足で駅に向かって、彼女はひとこと「また来週」とだけ囁いて改札をくぐって帰っていった。今でも年に数回、チキンラーメンを食べる。けれど、なぜあの時チキンラーメンだけでイケると思ったのかは思い出せない。スーパーで「完全食」という文字を見るたびに、これなら5日目を超えられるかもしれない、という思いが頭をよぎる。でもいまさらそれに挑むほど、僕は若くはないのだ。
毎日チキンラーメンを食べていた……
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kachoushi · 22 hours
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各地句会報
花鳥誌 令和6年6月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和5年3月2日 零の会 坊城俊樹選 特選句
撞かるるを待つ梵鐘にある余寒 美紀 春灯や蔦の絡まる家傾ぐ 和子 料峭やいつか御籤でありし紙 緋路 自転車の主婦涅槃寺も突つ切つて 瑠璃 春塵は仁王の筋肉のかたち 緋路 冴返る仁王は金の歯で怒る 慶月 鳥帰る空はとほくて累塚 小鳥 春北風や大釣鐘に隠れたし 風頭 春陰の暖簾に純白の屋号 緋路 貴婦人の大車輪のみ春光に 慶月
岡田順子選 特選句
料峭やいつか御籤でありし紙 緋路 下萌る輪廻途中に道草を きみよ 中華屋の春塵赤き椅子逆さ 小鳥 喪の列の消ゆ式台の春障子 昌文 窓飾る家族の数の紙雛 はるか 白杖のリュックに揺るる桃の花 眞理子 学僧は霞に昼の鐘をつく きみよ 春禽のつがひ卵塔あたたむる 千種 上人の絵のその上の春の雲 俊樹 父性めく陽春の木の温もりは きみよ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月2日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
中空を塞ぐ余寒の廃高炉 かおり 曲水の刻安寧の風美し 朝子 曲水宴美しきあぎとの並びたる たかし 春の闇400Hzの着信音 修二 曲水や配流の無念流れをり 同 バッカスの壁画翳ればアネモネも かおり 中也掌に詩片ふりくる春の雪 睦子 野火走る倭建命の影走る 美穂 北窓を開く復興兆す音 朝子 曲水や女人の盃のちと遅れ 久美子 朧の夜幻想一つ二つ三つ 光子 涅槃図の中へ入りたく近道す 美穂 紅をひき三寒四温横切りて かおり
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月7日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
春日射し昼寝の猫にやはらかに 喜代子 地の息吹すべての芽より放たれん さとみ 卒業生てかる制服光差す 同 雛見れば乙女心もらんまんに 同 啓蟄や老眼鏡に虫眼鏡 都 マネキンに呼び止められし春の窓 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月8日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
弁財天の目力強きご開帳 宇太郎 介護士の赤鬼追うて追儺かな すみ子 春動く大鍋洗ひ伏せてより 都 咲く椿落ちし椿も「太郎冠者」 美智子 無縁塚天の供へし犬ふぐり 都 閏日や何して遊ぶ春寒し 佐代子 観音の視線の先に吾と梅と 宇太郎 春氷􄼺曳く吾を映すのみ 悦子 風海へ菜花すみずみ靡かせて 都 薄氷や踏めばナイフの光持つ 佐代子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月9日 枡形句会
語り継ぐ作詞の謂れ春の野辺 百合子 陽子師の墓前満開蕗の薹 教 子 雛祭り白寿の母も祝はれて 百合子 一輪の菫映して句碑閑か 三 無 きめこみ雛偲ばる友を飾りけり 文 英 廃屋に繁るミモザの花明り 多美女 揚げ雲雀寺領に紛れ猫眠る 亜栄子 のんびりと牛横たはる春の野辺 幸風 年尾碑に晴れてまた降る淡き雪 美枝子 雲雀生む高原行けば雲の人 白陶 やはらかな春の野の音辿りゆく 秋尚
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月11日 なかみち句会
消えさうな跡をつなぎて蜷の道 秋尚 磴百段尾道水道朝かすみ あき子 閉院の看板掠れ三味線草 美貴 日溜まりの数多の道も蜷のもの ます江 夜霞の一隅までも大灯台 聰 魚屋の釣銭濡れて春の雪 美貴 目をつむりぺんぺん草の音を聞く 廸子 極楽は泥の中なり蜷の道 あき子 蜷の道水面流るる光の輪 三無 崖下の流れやさしくになの道 和魚 鐘声のこころ震はす夕霞 史空
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月11日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
老犬の矍鑠と追ふ寒鴉 清女 造花にも枯れは来たりぬ春愁ひ 昭子 お水送り達陀炎豪快に みす枝 春一番大手拡げて女子高生 昭子 全身を耳に涅槃の法話聞く みす枝 知らずともよき事知りぬ蜆汁 昭子 春眠の夢逝きし子の影おぼろ 時江 生死未だ仏に供へる桜餅 ただし 亀鳴くや遠くて近き爆撃音 みす枝 肩書を減らし北国の雪に住む 世詩明 鄙の里水滔滔と芋水車 時江 つまづいて梅の香りを逃しけり みす枝 浮御堂にそして巨松に春の雪 昭子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月12日 萩花鳥会
鼓草摩文仁の丘の兄の墓 祐子 風神は火の神鳥に野火揚る 健雄 春の空ここは宇宙のど真ん中 俊文 忘れ雪抗ふ漁師海胆を取る ゆかり 忘れ物鞄の中に山笑ふ 吉之 制服の丈短きや卒業生 明子 沈丁花色付く前より香り立つ 美恵子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月14日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
合格の電話の声は春光に みえこ 彼岸会へ母一張羅出してをり あけみ 手作りの雛微笑んで雛祭 実加 啓蟄や亡き友ふえて吾は生きて 令子 うららかや押絵の猫に会釈して 同
(順不同��選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月15日 さきたま花鳥句会
銀翼のきらめく空や木の芽風 月惑 昴座の星を砕きていぬふぐり 八草 古雛の神輿に残る能登の技 裕章 料峭や客船の無き海広し 紀花 杉玉も軒端に馴染む春日影 孝江 亀鳴くや飛鳥の山はみな蕾 ふゆ子 今晩も味噌田楽とまぜご飯 としゑ 雛客の手みやげ酒や国訛 康子 春しぐれ天皇参賀長き列 彩香 春愁や予期せぬ病電子辞書 恵美子 草の芽の小石動かす力あり みのり 浮世絵を抜け出す遊女万愚節 良江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月17日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
不器用は不器用なりに針供養 雪 我が町を春一番の素通りす 同 ぬるむてふ色を湛へて水温む 同 言の葉を育み春をふくらます 眞喜栄 雛飾り声なき顔に語りかけ 同 子供らの古墳探訪山笑ふ 同 道祖神肩を寄せ合ふ春の雪 同 雛見つめゐれば脳裏に母の顔 同 潮の香と水仙の香の一漁村 同 友の葬蝋燭揺らす涅槃西風 嘉和 風に棘あれど春日の燦々と みす枝 遠浅の水美しく蜆舟 ただし 雄叫びを似て左義長の始まれり 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月17日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
城山をもみくだくかに春疾風 眞理子 春野歩すダルメシアンの脚線美 亜栄子 蒲公英の丘膨よかに母の塔 斉 石鹸玉母の塔まで追ひかけて 亜栄子 涅槃会や外から一人手を合はせ れい 蓬生の城址や鬨の声遥か 炳子 洗堰磧にとよむ雉の声 幸風 機関車に用心深く初蝶来 幸風 ぽつとりと落ちて華やぐ花椿 れい 春塵を淡く置きたる母の塔 芙佐子 啓蟄の句碑のひらがな揺らめける 要
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月18日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
胸を張り農を継ぐぞと卒業す かづを 四脚門氷雨の中に凜と建つ 和子 僧逝くや枝垂れ桜を待たずして 千加江 畦の径青きまたたき犬ふぐり 啓子 雛の間をちらと横切る男の子かな 笑子 九頭竜に朱を透かせゆく桜鱒 同 鰤大根男料理の後始末 清女 古里に古里の香の土筆摘む 泰俊 上を向き涙湛へて卒業歌 同 陽炎や人の集まる船溜り 同 春塵の経蔵深く舞ふ飛天 同 水ぬるむ色ある如く無き如く 雪
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月20日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
雛納め飲まず喰はずの官女かな 世詩明 啓蟄や始発電車の一人旅 笑子 花ミモザ抱へふくらむ恋衣 同 けたたまし派手な身振りの春の鳥 同 啓蟄の土嗅ぐ犬の背の丸さ 希子 つくしんぼどこに隠れてゐるのやら 和子 麗しき新幹線で春来る 隆司 陽炎へる無人駅舎の降車客 泰俊 陽炎の中より来たる笑顔かな 同 啓蟄の啓蟄の顔穴を出づ 雪 懐かしやぬるみ初めたる水の色 同 蟲はただ蟲とし穴を出づるのみ 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月22日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
凍つるべき所に凍つる蝶一つ 雪 着膨れて弟母似吾は父似 同 ぬるみ来し水に映れる何やかや 同 都恋ふ紫式部像に東風 同 幽霊の飴買ふ話木兎の夜 同 春灯下術後の傷を見る夜中 洋子 婚約のナースの話院の春 同 春ショール黄色く巻いて退院す 同 花柊恋に桎梏あればこそ 昭子 春雪や深田久弥の百名山 ただし 春彼岸死んで句友に逢へるなら やす香 親の恩山より高し卒業す みす枝 拙を守り愚直に生きて目貼剥ぐ 一涓 児を一人傘に拾ひし春時雨 世詩明
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nancy-sy · 20 days
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壁に耳あり障子に目あり?
壁に耳あり障子に目あり? #そろそろ終活 #老後に向けて身辺整理 #蔵書の処分方法 #中国学専攻生求む
このダイアリーでも、最近は歳をとったこととか、定年後はどうするのか、老後はどんな風な生活を送るのか、そんなことを書くことが多くなりました。やはりどうしても老い先を見つめざるを得ない歳になっているのでしょう。 そんな話題は、このダイアリーだけでなく、母ともよくそんな話をしています。普通に考えれば、母があたしよりも先に亡くなることは当たり前ですが、こういう話題になると、意外にも母はあたしより長生きするつもりなのか、「お前の本をどうするんだ」と言います。必ずというほどその話題になります。 母に言わせれば、外に仕事に出ているあたしが事故に遭って死亡する確率がかなり高く感じられているようです。まあ、自分が事故を起こすよりも、事故をもらってしまう可能性もありますから、何とも言えませんが。 そうなると、本の処分が母にとっては一大事になるみたいです。そうだね、そうしようかね、などとよく話していて、つい数…
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kiriri1011 · 26 days
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魔法の唇(R18)
 汗ばんだ肌が重なる。  アスタリオンの膝を抱えたタヴが彼に折り重なるように抱きついてきたのだ。  彼女に呪文で疑似的に再現された男性器を挿入されながら、アスタリオンは黒い髪ごとタヴを抱いて唇を重ねる。  男の胸板にむにゅりと豊かな胸が潰される。  繋がったままキスをするというのはなんとも贅沢な時間だ。身体の芯が快楽に完全に馴染んでしまうのを待つ間、甘い唇を堪能させてもらう。  甘い蜜のかかったようにしっとりと濡れた唇は柔らかく、なめらかだ。夢中になって味わっていると、彼女の指が長い耳の生え際にかかって、するすると髪を掻き分けながら地肌を撫でていく。
「ん、っ……タヴ……」
 満たされたため息は彼女の唇に閉じ込められた。  タヴの両手に頭を抱え込まれ、深く口づけられる感覚に、恋しさとも渇望ともつかない胸の疼きが堪えられなくなる。両膝を伸ばして彼女の手を離れると、下肢にぴったりと密着した腰をさらに抱き寄せるように重ね合わせた。  固く腰を押しつけて、熱に浮かされたまなざしでアスタリオンは続く行為をせがんだ。それにタヴは優しく微笑み、もう一度男にキスしてから、ゆっくりと腰を揺らしていく。
「あっ……あぁっ、タヴ……。いい……っ、きも���いい……っ」
 タヴの張り詰めたペニスが内壁を擦って通り過ぎ、アスタリオンは彼女の背にしがみつく。  擦れ合う秘部からぬぷぬぷと潤滑液が溢れて髪と同じ色の銀毛を濡らした。その中でゆるく半立ちになった彼のペニスは先端から白い露を垂らし、タヴが腰を振るたび力なく揺れていた。
「あぁっ、あっ、あっ、タヴ……!」
 薄く涙の膜が張った視界に、タヴの美貌が霞む。  不明瞭な眼前とは裏腹、下肢に打ち込まれる快楽は鮮烈で、これ以上なくアスタリオンの心を串刺しにする。
「アスタリオン」
 熱のこもったささやき。  涙の伝うほほに手を添えられる感覚が走って、アスタリオンはゆっくりとまばたきする。
「……お前は完璧よ」
 タヴは微笑んだかと思うと、そっと唇を重ね合わせてきた。  その甘いささやきにびりびりと脳裏が焼け焦げるような至福を感じながら、アスタリオンはもう一度キスに耽る。そして両脚で彼女の腰をすっかり抱え込んで、もう二度と離すまいと自身を擦りつけた。  
 甘い事後の余韻に浸っていると、彼女は腕をあげて、アスタリオンの頭を撫でた。  しばらく心地よさに目を細めていたが、やがて我慢できなくなって、自分の頭を撫でる白い腕にじゃれつく。
「猫みたいね」
 「にゃ"ぁん」とふざけて鳴いてみせると、彼女はくだらなさそうに声をあげて笑った。  彼女の声は少し疲れていて、普段より低い声がアスタリオンの耳を惹きつける。  両手で抱いた腕を甘噛みし、牙で皮膚を破らない程度にやわやわと感触を楽しんだ。タヴの二の腕はすべらかで柔らかく、触れた唇が蕩けていきそうだった。
「お前の飼い猫になるのも悪くない。ずっと胸の上で甘やかしてくれ」
「こんな大きな猫に乗られたら大変ね」
 アスタリオンはわざと長い犬歯を見せながら、彼女の上にまたがって、その胸の中にゆっくりと顔を埋めた。  あたたかで、甘い匂いのする大きな乳房に柔らかく顔を包まれる。  呆れたようにため息をついたタヴがさらに頭を撫でてくるので、すっかり気持ちよくなったアスタリオンは彼女の胸の中で深く息を吸い込んだ。
「やだ、嗅がないで」
「恋人の匂いを楽しんだら悪いのか?」
「今度は犬みたいよ……本当にお前はとらえどころがないわね」
 すんすんと鼻を鳴らすアスタリオンの仕草をタヴは少し嫌がったが、その手はずっと頭を撫でていた。  花のような甘さの中に、汗の香りがまじった彼女の肌は官能的でありながらどこか胸の奥が深く満たされる。アスタリオンからすれば、タヴの魅力こそ言葉に尽くしがたい。しなやかな肢体と豊かな胸で恋人を優しく受け止めながら、魔法の力で生やした逸物を使って翻弄してくる。  こんな完璧な恋人こそこの世にほかといない。  胸の間にちゅ、ちゅ、とキスを落とし、タヴを讃えると、アスタリオンの顎に指がかかって持ち上げられる。
「お前は美しいわ」
 真正面から見つめながら、タヴは歌うように告げた。  最中に続けて褒められて、アスタリオンは若干得意な気分になる。
「いいぞ、お前の俺への賛辞はいくら聞いても聞き飽きない。今夜はそれを子守歌に眠るのも悪くないな」
 自分の顎を支える手をとり、ちゅっと口づけると、わざと気障な表情を作ってアスタリオンは言った。  鏡で自分を見ることのできないアスタリオンにとって、恋人であるタヴの唇で語られる自分の姿こそ本物だ。  それに恋人が自分を褒めてくれるのは気分がいい。  タヴは呆れたように微笑んでから、アスタリオンの顔を優しく撫でた。
「いいわよ。……美少年の天使みたいなくせ毛。真珠のような牙たち。思わずキスしたくなるスマートな鼻に、笑いじわまで美しい頬、」
 うんうん、とうなずくアスタリオンは彼女の手に頬をすり寄せながらその先を聞く。
「危険そうなのに、寂しがりな目は猫そっくりで、つい優しくしてあげたくなるわね。まあ意地悪もしたくなるんだけど……」
「おい」
 思わず目を半分にしてアスタリオンは突っ込んだ。  むすっとした顔を見て、タヴはくすくすと笑う。  そんな態度にアスタリオンはやや呆れつつも、彼女の言葉たちを思い出しておおむね満足することとした。  タヴはさっきのように意地の悪いところもあるが、アスタリオンの心を深くまで見てくれる優しさもある。さっきの行為のように、絶えず彼を喜ばせてくれる存在だ。献身的といっていいのかもしれない。  そしてアスタリオンはそんな恋人のことを愛しく思うのと同時に、ある考えに思い至った。
「……そうだな。お礼に俺からもお前に言葉を贈ろう、よく聞くといい」
「あら、そう」
 タヴは興味深そうに目をかがやかせた。  アスタリオンは形だけの咳ばらいをひとつ済ませると、彼女の手をもてあそびながら言った。   「お前は俺の夢そのものだ。優しく、愛情深いまなざし。献身的なふるまい。俺が今までの人生で手に入れ損ねたすべてをお前が持っているといっても過言じゃない。お前は本当にすばらしい、タヴ。お前の持つ全部が俺をこの世にふたたび生き返らせる……」
 タヴは黙って聞いていた。  そのまなざしはあたたかい。
「特に、夢と希望でふくらんだ豊かな双丘には、俺の情熱を受け止めるためにあるような深い谷間があって、そこはまさに天国だ、もう一度死んでもいいと思える。ああ、この場合死んでもいいというのは果ててもいいというのと一緒で……」
「ちょっと、ただ卑猥なことを言ってるだけじゃない」
 彼女を讃えるうちに、自分まで気持ちよくなって、アスタリオンはつらつらと欲望を声に出していた。  彼女の冷たい視線が顔を刺しても気にしない。  アスタリオンは本気で言っているからだ。
「ああ、タヴ。俺の恋人」
 指と指を組み合わせ、握り締めると、タヴが目を細めた。  アスタリオンは身を乗り出して、彼女の唇を奪う。
「お前は本当に完璧だ」
 恍惚とため息をついて、何度もキスをする。  次第にタヴの腕はアスタリオンの頭を抱いて、さっきの行為とは逆の体勢で抱き合うかたちになっていた。  今度は見下ろす側になったアスタリオンはうっすらと微笑んで、彼女の魅力的な首筋に舌を這わせていく。  繋いでいる手とは反対の手でタヴの股間に触れる。まだ実体を保っている魔法の結晶はすでに血が昇り、そそり立っていた。アスタリオンは器用な指先で彼女のペニスを刺激し、その息が荒くなるのを待つ。
「まだ楽しもう、ダーリン。今度は俺がお前を喜ばせる番だ」
 タヴは返事の代わりにアスタリオンの手を強く握った。  胸を揺らし、唇を噛み締め、下半身に迫る快楽を耐えているその様に、吸血鬼の笑みは深くなる。  やがてその麗しい唇からは自分への愛しか溢れなくなるだろう。  そのときが来たら、アスタリオンも自分の持つすべての愛をタヴに打ち明けるはずだ。  戯れではない、この胸の奥にたしかに息づく、本物の愛の言葉を。  
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niyuuhdf · 1 month
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行屋虚彦 プロフィール
行屋虚彦 キャラ設定メモ
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画家。 中学にはほとんど通わず、師である山雪のアトリエでいつも油絵を描いている。(油に限らずなんでも描く。カガリのドローイングの真似をしたりも) すでに画家として売れており、軌道に乗りつつある。 直人を超える早筆で多作。 自身の色覚障害を忌々しく思っており、それを才能だとは認めない。 母似の近寄りがたい面立ちをしているが、中身は普通の多感な15歳。
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作者から割り振���た疾患・病名:感覚過敏、軽度の識字障害(他にも発達障害傾向がちらほら)、視覚認知に拠りすぎた脳、市販薬依存症(幼少期から偏頭痛の鎮痛剤を濫用・多量摂取していた)、900℃(アイロンの熱は200℃までらしいが)の火で焦がされた激痛を痛みのマックスと捉えている、オトガイ未発達、体質全般(行屋家の遺伝的要素でもある)。
本名:行屋虚彦(Ikiya Utsuhiko) PN:hollow あだ名:イキヤ
?小学校→?中学校→? 高校中退、もしくは高校進学せず中卒、絵の仕事で稼いで生きてる
手記本公式年齢:13,14,15歳 直人パート手記本登場時で15歳 ?年(平成?年)11月22日生まれ 蠍座 身長164〜168㎝ 体重49kg B型
家族構成: 実父:行屋疾彦 実母:耀屋七 (実娘:行屋瞳)
人間関係: 師:山雪穣、名廊直人 画家仲間:カガリ、ユーコ、花 アトリエ仲間:景一、ユーコ、繭、花 主治医:近所のにーちゃん:新屋敷佐
髪の色:黒 目の色:黒(虹彩の模様:?) 趣味:? イメージ:? モチーフ:シーラカンス、カラス、死神、妖精に拐われた人間の子(チェンジリング)、オオミズアオ、背骨・脊髄(ムカデ?)、行灯(幽霊の出ずるところ)(アンドンクラゲ→海の中で遭遇したときの死の予兆)、 誰にも傷つけられないから孤独な心
体質: ・常に過緊張・過覚醒状態。 ・弛緩できない。(薬で弛緩する) ・薄く細いが筋肉が尋常でなく強く怪力。 ・いつでもごく自然に「火事場の馬鹿力」を発揮する死の淵に立つ精神状態。怪力。 ・非常に痩せやすい。が、痩せ衰えて骨のようになっても「火事場の馬鹿力」に足る筋肉は落ちない。 ・体幹・腹筋が鋼鉄のように強い。 ・皮膚は柔らかくかつしなやか。健康状態にもよるが基本的には強い。状態がよければトキさんと同じくらいの強さになる。 ・日焼けでサンバーンを起こし、火脹れまみれになりやすい。が、放置しても火脹れを無理やり潰しても痛むだけですぐに皮が剥けて回復する。細菌感染などを起こさない。強い。 ・喉が弱く、退化している。 ・全感覚過敏。極寒でごまかしている。 ・肌を虫が這う感覚。蟻走感、コークバク、あるいはシャンビリ。 ・腑を他人からくすぐられて弄ばれ刺激される幻触覚の病。
外見: ・洗濯されすぎて色褪せた、古着の黒い細身のパーカーをよく着ている。(フードの膨らみの部分で猫背隠し&視覚が苦しいときに気休めにフードを深く被って視界を真っ暗にするため) ・両耳に黒曜石(天然ガラス)のピアス。(小学校低学年のとき、冷泉さんがくれた。「二度と他人に同じ真似を強いることのないように 情動に飲まれそうになったらこのピアスに触れて思い出せ」) ・右胸から肩にかけてアイロンでひどく焦がされた火傷の痕がくっきりとある。(本人は、人体の上にあまりにも無機質なアイロンの型取りがあるさまを、他者から見ると不気味で気持ち悪いだろうと冷静に思っており、迂闊に見せない) ・目の下にはいつもクマがある。(母親をずっと緊張して気にかけて生活していて、不眠症。) (ベッドでしっかり横になって寝るのが苦手で、よく床に座って壁に背をつけた姿勢で少しだけ仮眠をとれている) (身体から力を抜いてリラックスしたりくつろいだり弛緩することを恐れている) ・独特の上斜視のような三白眼の目つきは、生来は母親と同じ大きく見開かれた四白眼。幼少期の顔立ちは四白眼である。幼い頃からの、面前DVや頭痛や市販薬の乱用やトラウマやPTSDなど複合的な身体的・精神的ダメージによって眼瞼下垂が進んだ姿。加齢とともにさらに瞼を持ち上げていられなくなっていき、常に眩しそうな・苦痛に耐えるような・疲れ果てたような、かなりの伏目の目つきになっていく。 (イキヤ(とトキさんも)の目元の表情、「満ち足りることを知らない常に餓えきった」ようなものを宿してる 初期コンセプト) ・病的に痩せきった骨と筋の目立つ薄い身体。体幹は強い。 ・肌は蒼白い。 ・顎が小さく細く弱い。口が開きやすくて、喉が乾燥したり炎症したりしやすい ・が、常に緊張状態で口を開けるのを恐れてもおり、口の中の肉をいつも噛んでしっかり閉じている。 ・喉がとても弱い。使えば痛み、熱く熱をもつ。少し話し込んだだけで声が掠れて裏返りだす。あまりにも他人との会話や発声を必要としなかった+話して言葉にすると自分の視覚がバレるため黙っていたため、喉が退化した。 ・人目のある場所では全身に緊張が駆け巡っていておそろしく姿勢がいい。一人きりの時間だけ、身体の苦しみを庇うように自然と猫背になりがち。 ・腹筋(体幹)がとにかく強い。腹とか腰とか薄くて細いけど、げっそり肋から下が削れて抉れてたりはしなくて、木刀で横薙ぎに腹にフルスイングして打ち込んでもびくともしないみたいな。 ・手は引っ掻いて怪我しないように深爪ぎみに爪を切る。痩せきった老人かあるいは生命力みなぎる飢えて痩せきった猛獣のよう。指がまっすぐでなく歪んでいるのは筆を持ったりして酷使しすぎたせい。痩せかたと筋や骨や血管は幼い頃からどこか老人のような手をしている。 ・感覚過敏。極寒でごまかしている。 ・肌を虫が這う感覚。コークバク、あるいはシャンビリ。 ・思春期を過ぎてイライラが落ち着いてからは、感覚過敏について開き直り受容し、感触フェチになる。不必要なものでも感触が好きなものは買う。布ものや紙などなんでも。 ・酒を飲めない? 幼い頃に大人から飲まされた酒で急性アルコール中毒で倒れて死にかけて以来、酒を飲んだことがない。
内面:?
エピソード:オオミズアオ標本、オオミズアオ もう死ぬ、って時に殺して標本にした
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ishikawachinshiru · 2 months
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壁に耳あり 障子に目あり 隙間にママあり
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t82475 · 3 months
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FTMのお客様
1. ここは日本有数の資産家で実業家でもある旦那様のお屋敷。
厨房で仕上がったポワ��ン(魚料理)をワゴンに載せて晩餐ホールへ運ぶ。 配膳担当のメイドは私を含めて2名。 ホールの扉の外に立つメイドが2名。そしてホール内に控えて様々なお世話をするメイドは4名。 今夜は旦那様のプライベートなディナーでお客様はお一人だけだから、私たちメイドも最小のチーム構成で対応している。 各国政財界の要人をお招きする公式の晩餐会なら数十名から100名近いメイドが働くことも珍しくない。
扉を開けて90度のお辞儀。ワゴンを押して中に進む。 本日のホールにはオブジェが飾られていなかった。 「オブジェ」は観賞用に女性を緊縛した作品のことで、その意図はお客様へのサプライズ、あるいは旦那様の趣味だ。 縛られるのはもちろん屋敷のメイドで、私たちは日頃からそのための訓練を受けている。 大抵の晩餐ではたとえお客様が女性の場合でもオブジェを飾るのが普通だから、今夜のように何もないのは珍しい。
お食事のテーブルには旦那様と向かい合ってお客様が座っておられた。 「・・失礼します。こちら焼津沖の真鯛のポワレとヴァンブランソース、アスパラガスのエチュベ添えでごさいます」 「ありがとう」 お客様から明るいご返事をいただけた。 黒髪のナチュラルショート。お召し物はネイビーのスーツ、チェック柄のボタンダウンシャツ。 ラベンダーのネクタイとポケットチーフがよくお似合いだった。 よく見るとスーツの胸元が膨らんでいるのが分かる。腰もほんの少し括れているように見えた。 今夜のお客様は女性だった。
この方は作家の天見尊(あまみたける)様。 大学在籍中の22才でSF文学新人賞を受賞し、26才の今は次代を担う若手SF作家のホープとまで呼ばれている。 FTM(生物学的に女性、性自認は男性)のトランスジェンダーで、それを秘密にせずブログやSNSで公開されていた。 旦那様はいろいろな方を招待されるけれど FTM トランスジェンダーのお客様は初めてのはずだ。
「・・ではもう長らく男性ホルモンを?」旦那様が聞かれた。 「はい。19のとき GID 診断を受けまして、その翌年から投与を始めました」天見様がお答えになる。 「いずれ手術もお考えですかな?」 「そうですね。なかなか決心がつかないのが困ったものですが」 「いやいや、お悩みになるのが当然です」
旦那様はずいぶん熱心に質問なさっている。 これでオブジェを置かない理由も理解できる。 今夜はお客様を驚かすよりも、ご自身の好奇心を満たしたいのだろう。
「その、ホルモンを使うと、本来女性である身体にはどういった変化があるものですかな?」 「変化ですか? 声が低くなったり、他にもいろいろありますが」 「例えば月のモノがなくなるのが嬉しいと、どこかで聞きましたが」 「それはありますね。実は僕の場合・・」
私は前のお料理のお皿をワゴンに回収し、頭を下げてテーブルから離れた。 旦那様は会話がお上手だ。 相手を機嫌よくさせて、普通なら口にするのを躊躇うような話題でも聞き出してしまう。 そうしてご自身が満足されたら、今度はお客様への心遣いも疎かになさらない。
・・ヴィアンド(肉料理)かサラダの後で始まるわ。心の準備をしておいて。 私はワゴンを押して出て行きながら、ホールの壁際に控えるメイドたちに目配せする。 彼女たちも無言で相槌を返してきた。 このお屋敷に勤めるメイドなら皆が分っている。 旦那様がなさるであろうこと、そして自分たちがすべきことを。
2. アヴァンデセール(デザートの一品目)をお出しするときに旦那様が仰った。 「そろそろメイドの緊縛は如何ですかな?」 「は?」 天見様は一瞬驚いた顔になり、すぐに落ち着いて応えられた。 「なるほど、これが噂に聞くH邸のサービスですか」 「ご存知でしたら話は早い。作家である貴方なら見ておいて損はありますまい」 「拝見します。いえ、拝見させて下さい」
待ち構えていたメイドたちが走ってきて横一列に並んだ。全部で8人。 「好きな娘を選びなされ。この中から何人でも」 「僕に決めさせてくれるのですか」 「もちろん。お望みなら裸にしても構いませんぞ」
旦那様はとても楽しそうにしておいでだった。 天見様はメイドたちを見回し、そして一人を指差した。 「この人をお願いします。裸は・・可哀想なので服を着たままで」 選ばれたのは私だった。 「務めさせていただきます。どうぞお楽しみ下さいませ」 私は両手を前で揃え180度の辞儀をする。 お屋敷直属の緊縛師が道具箱を持って入って来た。
両手を背中に捩じり上げられた。 肩甲骨の位置で左右の掌を合わせ、その状態で縄を掛けられる。 後ろ合掌緊縛という縛り方だった。 柔軟性が必要といわれるけれど、私たちメイドにとって特に無理なポーズではない。
旦那様と天見様の前で1回転して緊縛の状態をご覧いただいた。 それから私は靴を脱がされてテーブルに上がった。 本来なら晩餐のためのテーブル。 テーブルクロスを敷いた上にうつ伏せに寝かされる。
右足を膝で折って縛り、その足首に縄を掛けて背中に繋がれた。 さらに左の足首にも縄が掛けられ、左足がほぼ真上に伸びるまで引かれた。 背中に別の縄が繋がれた。口にも縄が噛まされる。
足首と背中、口縄。全部の縄を同時に引き上げられた。 私はふわりと宙に浮いた。 支えのない腰が深く沈んで逆海老になった。 口縄に荷重のかかる位置が耳の下なので、首を横に捩じった状態で吊られる。
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するすると引き上げられて、天井から下がるシャンデリアと同じ高さで固定された。 床からの高さは約3メートル。 すぐ下に旦那様と天見様のテーブルが見えた。
私は無駄に動かないように努める。 これは空中で女体を撓らせて見せる緊縛だから、あらゆる関節が固められている訳ではない。 もがこうと思えばもがける。 でも今夜のお客様に対して、激しくもがく緊縛は旦那様の意図ではない。 私に期待されているのは静物。 感情を表に出さないこと。耳障りな喘ぎ声や鳴き声をこぼさないこと。 お人形のように動かないこと。 動くなら、ときどき手足の筋肉に力を入れて無力であることをお見せする程度がよい。
私の中には縄に自由を奪われる切なさとやるせなさが既に芽生えている。 でもそれをお客様に知られるのはNG。 被虐の思いは自分の中で密かに楽しもう。 女として生まれメイドとしてご奉仕できることを感謝しながら、この時間を過ごそう。
テーブルではお二人がコーヒーを楽しんでおいでだった。 ときおり天見様は感嘆の表情で私を見上げられた。 そして旦那様はその様子を満足気にご覧になっているのだった。
お二人の歓談が終わるまで約2時間。その頭上に私はオブジェとして吊られ続けた。
3. 客室の扉をノックする。 「失礼いたします」 中から扉が開いて天見様が顔を出された。 「君は・・」 「伽(とぎ)に参りました」「え、伽」 「よろしければ朝まで一緒に過ごさせて下さいませ」 「知っていると思うけど僕の身体は女だよ」 「存じております。私どもはどんなお客様にもご満足いただけるよう教育されてますからご心配ありません」 「へぇ、面白いね。じゃあどうぞ中へ」 お部屋に入れていただいた。
天見様は客室に備え付けのスリーパー(丈の長いワンピースタイプのパジャマ)の上にナイトガウンを羽織っておられた。 お立ちになると身長166の私より10センチは小さい。 でもお身体はスーツをお召しのときよりがっしりして見えた。着痩せするタイプね。
「コーヒーか紅茶でも入れよう。ミニバーにお酒もあるみたいだけど」 「それは私にやらせて下さいませ。お飲み物をお出しするのはメイドの仕事です」 「じゃあ、お願いするよ」 「ご希望はございますか? ここにない品でしたらすぐに持って来させますよ」 「それなら暖かい紅茶をストレートで。言っておくけど君も一緒に飲むんだよ」 「分かりました。今ここにはインドのダージリンとアッサム、ニルギリがございますが」 「アッサムがいいな」 「承知いたしました。しばらくお待ち下さいませ」
ケトルでお湯を沸かす。 ティーカップのセットを2客とポットを出し、お湯をかけて温めた。 温まったポットに茶葉を量って入れる。 ふつふつと沸騰したお湯をポットに注ぎ、きっちり4分間蒸らす。
「丁寧に作るんだね」 「ごく普通の淹れ方ですよ。・・さあ、どうぞお召し上がり下さいませ」 「ありがとう。立ってないでここに座って」「はい」 小さなテーブルに向かい合って座った。 「うん、美味しい」「恐れ入ります」 「その手」 「はい? ・・あ」
天見様が見つめる私の手首には緊縛の痕跡がくっきり残っていた。 「これはお見苦しいものを・・。大変失礼いたしました」 「見苦しくなんかないさ。名前があるんじゃなかったかな、それ」 「『縛痕(じょうこん)』と呼びます。肌に刻まれた縄の痕でごさいます」 「いいねぇ。君が縛られた証拠だね」 「はい」
「えっと、君の歳を聞いてもいいかな?」 「私は19才でございます」「そうか、若いなぁ」 「お食事のときは私が一番年上だったのですよ」「え?」 「他に控えていたメイドは15から17才でした。もっと若い娘をお選びになると思っておりましたのに」 「15の女の子を縛っていいの?」 「もちろん構いません。もしお客様が15才のメイドを選んでおられたら今頃はその者が伽に参ったはずです」 「15の子が僕に?」 少し驚かれたようだった。
「どうして私を選んで下さったのですか? よろしければ教えて下さいませ」 「それはね、君が初めて好きになった子に似ていたからだよ」 「まあ、それは光栄です」 「中学2年生だった。・・女の子同士の同性愛だと思ってたんだ。でも彼女を抱きたいって思うと自分が女の身体であることが気持ち悪くてね。ずっと悩んでた」 いけない。無邪気に質問して嫌なことを思い出させてしまった。 「あの、ご不快な思いをされたら申し訳ありません」 「いいんだ。今となっては懐かしい思い出さ」 天見様はそう言って笑って下さった。
「僕はね、君に感謝したいんだよ」 「感謝、ですか?」 「だって僕のために緊縛を受けてくれたじゃないか。話に聞いてはいたけど、ああいうのを直接見たのは初めてなんだ。女の子を縄で縛って吊るす。・・すごいと思った」 「お楽しみいただけたのですね。よかったです」 「どうやら僕は女性をあんな目にあわすことに興奮するらしい。サドだね。こんなことを本人の前で言ったら嫌われるかもしれないけど」 「とんでもございません。男性が若い女性の緊縛に興味を持たれるのは自然なことです。天見様は立派な男性でいらっしゃいます」 「ありがとう。・・うわ、やっぱり僕、とんでもないことを告白しちゃった気がする」 天見様は急に立ち上がると頭を掻きむしられた。 その姿が可愛らしい。笑っては失礼だから微笑むだけにしていたけれど。
このお客様なら嗜虐プレイも大丈夫ね。 きっとお悦びいただけるだろう。 私は備え付けの道具を頭に浮かべつつ提案することにした。
「天見様。もう少し、次はご自分でお試しになっては如何でしょう?」 「試す? 何を?」 「少々お待ち下さいませ」 クローゼットを開けて一番下の引出しを手前に引いた。 そこには様々な拘束具や縄束、責め具がきちんと整理して収められていた。 「そんな物まであるのか、ここには」 「H邸の客室でございますから」
私は短鞭(たんべん)と呼ぶ棒状の鞭を取り出した。 乗馬鞭の一種で長さ50センチ。先端にフラップという台形のパーツがついていて正しく打てば大きな音が鳴る仕掛けになっている。
「これでしたら初めての方でも比較的使い易い道具です」 「柄の長いハエ叩きみたいだね。おっと君はハエ叩きを知らないかな」 「存じております。これでハエではなく女の尻をお叩きになって下さいませ」 「女というのは、もしかして」 「はい」 私はにっこり笑う。 「今、女といえば私だけでございます」
4. 天見様が短鞭を持って素振りをされている。 「そうです。手首のスナップを利かせて、先端の平らな部分が対象に平行に当たるように」 「えっと、鞭を打つ練習用の台みたいなものはないのかな」 「ございません。練習でしたらメイドの身体をお使い下さいませ」
手錠を2本出してお渡しした。 私は床のカーペットにお尻をついて座り込み、右の手首と右の足首、左の手首と左の足首をそれぞれ手錠で連結していただいた。 そのまま前に転がって膝をついた。 右の頬をカーペットに擦りつけ、天見様に向かってお尻を高く突き上げる。 これでメイド服のミニスカートの中に白いショーツがくっきり見えているはず。
「私の下着を下ろしていただけますか?」 「でも」 「構いません。どうか私に恥ずかしい思いをさせて下さいませ」 天見様は両手でショーツを下ろして下さった。
「ここは僕と同じだね。でも僕よりずっと綺麗だ。それにいい匂いがする」 「ありがとうございます。・・でも、そんなに顔を近づけて匂いを嗅がないでいただけますか? 恥ずかしいです」 「恥ずかしい思いをしたいと言ったのは誰だっけ」 「あ、私でした」 二人揃って笑う。少し空気が和らいだ。 「では始めて下さいませ」 「本当にいいんだね?」 「どうぞ、天見様」
鞭を持って大きく振りかぶり、・・ぺちん。 控えめな音がした。 「もっと思い切って当てて下さいませ」 ぱち。 「もっと強く」 バチッ。 ビシッ!! 鋭い音が出た。臀部に痛みが走る。 「あぅっ」 「ごめん! 痛かったかい?」 私は顔を向けて微笑んで見せた。 「今の打ち方で合格でございます。その調子でお続け下さいませ」 「やってみるよ」 「あの、」 「?」 「私この後も声を上げるかもしれません。お聞き苦しくないよう努めますので、どうぞお愉しみ下さいませ」 「・・分かった」
深呼吸。それから連続の鞭打ちが始まった。 ビシッ!! ビシッ!!! ビシッ!!! 「あっ」「あっ」「ああっ!」 鋭い痛み。被虐感。 お尻から頭までじんじん響く。 このお客様、筋がいい。
ビシッ!! ビシッ!! 「はぅっ」「はん!」 天見様は私のお尻だけを見つめて鞭打っておられた。真剣な表情。 もうお任せして大丈夫ね。 私も自分を解放しよう。 そっと性感を放流した。胸の中、子宮、身体の隅々へ。 少しずつ、少しずつ。・・とろり。
ビシッ!! ビシッ!! ビシッ!! 「あああ!」「はあん!!」「は、あああっ」 痛みの部位が移動するのが分った。 右側、左側。太もも。 同じ個所を打ち続けないように気を遣って下さっていると理解した。 ま��べんなく打ち据えられる。 嬉しい。 とろり、とろーり。
ビシッ!! 「はぁ、はあぁ・・ん!!」
鞭が止まった。 はぁ、はぁ。 天見様は鞭を握ったまま立ち尽くし、肩で息をなさっている。 額に汗が光っているからお拭きしてさしあげたいけど、今、私にその自由はない。
「辛くないかい?」 「辛いです。でも嬉しいです」 「それは君がマゾだから?」 「はい。それもありますが」 「?」 「同じ個所を何度も打たないようご配慮いただきました」 「気がついたのか」 「もちろんでございます。それからもう一つ」 「まだあったっけ」 「私、我慢できずに下(しも)を濡らしました。天見様もご一緒にお感じになって下さいませんでしたか?」
天見様の驚く顔。 今、天見様の目には赤く腫れた私のお尻、そしてその下にぐっしょり濡れてひくひく動く膣口が見えているだろう。 これは演技でやったことではない。 私は本当に官能の中で濡れてさしあげたのだった。
お客様のご満足のためにご奉仕する、それがH邸のメイドの役目だ。 メイドが醒めていたらお客様はお楽しみになれないし、逆にメイドだけが乱れてお客様を置いてきぼりにすることも許されない。 だから私たちはお客様を導き、お客様と一緒に高まるように訓練されている。 たとえ拷問を受けるときでもお客様の気持ちを測って苦しみ方を変える。
「・・うん、興奮した。僕が打つ鞭が君に痛みを与えている。その度に君が喘ぎ声を上げてくれる。たまらなく興奮したね」 天見様は仰った。 「もし僕が男の身体だったら絶対に勃起してるね。いや、男の身体で君を打ちたかったと心底思ってる。・・ん、ふぅっ」 その指先がご自身の下腹部を押さえていた。 天見様? 「ありがとう。・・これで終わろう」
5. 拘束を解いていただいた。乱れた髪と服装を整える。 ニーソックスの後ろが破れたので手早く交換した。 「お尻は大丈夫かい? 赤くなってるみたいだけれど」 「どうかご心配なく。この程度の腫れでしたら明日には消えるはずです」 本当は4~5日ってところ。 「そうか、酷くなくてよかったよ」
このお屋敷では、接待にあたるメイドの負傷はある程度避けられないとされている。 だから接待プランやお客様の嗜好データに基づいてAIがリスクを予測している。 例えば今夜の天見様ご接待の予測値は 10-20。 これはメイドが全治 10 日の軽傷を負う可能性 20% という意味になる。 予測値が高い接待では相応のスキルがあるメイドを割り当てたり、最初から大きな怪我をする前提でシフトが組まれたりする。 まれに 90-90 といった拷問そのものの接待があって、担当するメイドは命の覚悟をして臨むことになる。 当然ながらこれはお屋敷内部で管理される予測値だ。 お客様にお伝えすることは決してない。
二人並んでベッドに腰かけた。 私は自分の両手をそっと天見様の手に乗せる。 天見様が仰った。 「テストステロン(男性ホルモン)を使うとね、声が低くなったり生理が止まったりするけど、他にも変化があるんだ。それは性欲が強くなること」 そう言って先ほどと同じように指を下腹部にお当てになった。 「だからオナニーが増えたよ。女の身体が嫌なはずなのにクリを使ってね。・・実は今も触りたくて仕方ない」 「お気持ちお察しいたします。でも天見様は他の女性にご興味がおありではないですか?」 「うん。僕は FTM のヘテロ(異性愛者)だから、自分以外の女性は異性として好きだよ」 「それでしたら私も女です。私にお慰めさせて下さいませ」
私は床に降りて正面に膝をつき、天見様のスリーパーの裾を持ち上げた。 天見様は FTM 用のボクサーパンツを着用されていた。 パンツの上から触れただけで突起が分った。 「んぁ!」 「優しく触ります。どうぞお任せ下さいませ」 「ありがとう。君を、信じる」 ボクサーパンツを下ろしてさしあげた。 わずかに香る匂い。 膝を左右に開かせ、ベッドに座ったまま開脚していただいた。
そこにクリトリスが生えていた。 その長さは外に出ている部分だけで4~5センチ程度。 男性ホルモンは女の陰核をこれほど肥大化させるのか。 真上からそっと指を当てる。 「ん、あぁ」 「我慢しないで、感じるままに声を出して下さいませ」 「くぅっ、んあぁ!!」
根元を押して包皮を引き下げ、露出した亀頭を唇に挟む。 反対の手の指を膣口に挿し入れた。 そこは既に愛液で潤っていて、中指がするりと吸い込まれた。 軽く噛んで先端を舌で転がし、同時に挿入した中指の第二関節を折って内壁を刺激した。 「ひっ、・・あああっ!!」 さらさらした液体が噴出して私の顔と腕を濡らした。 あっという間だった。 この方はきっとGスポットでも自慰をなさっていると思った。
天見様は2度、絶頂を迎えられた。
6. 明け方。 私は天見様とベッドにいる。 天見様は裸の上にスリーパーだけを纏っておられた。 私は全裸で天見様に抱かれていた。
「ね、もう一回抱きしめてもいいかな」 「はい。力いっぱい抱いて下さいませ」 ぎゅう!! 強く抱きしめられ、その間息ができなかった。 「ごめん、苦しかった?」 「いいえ。でもすごいお力」 「テストステロンは筋肉が付くんだよ。でも放っておくと腹だけ膨らむから、ジムで筋トレしてるんだ」 「そうでしたか」 「・・生まれて初めて裸の女の子の抱き心地を堪能したよ。君のおかげだ。僕はここで人生最初の体験を重ねてる」 私も初めてでございました。FTM 男性との体験は。
「そういえば、君の名前を聞いてなかったね」 「私の名前はお客様がご自由につけて下さいませ」 「僕と君の間だけの名前か。面白いね。・・それなら『キツネ』ちゃんはどうかな?」 「まあ私はキツネですか?」 「君の髪がキツネ色だから」 「そんなに明るい色ではございませんよ。でもありがとうございます。可愛いお名前、私も大好きです」 「調子がいいねぇ。本当に思って言ってる?」 「あら天見様、私、商売柄調子のいいことを言いますが、嘘は申しません」 天見様はにやりと笑われた。 「いいねぇ、その返し。・・君には人を騙す尻尾が九本あるかもしれないな。あの玉藻前(たまものまえ)みたいに」 私も妖しく笑う。こういう返しは得意でございます。 「あいにく誰かに憑りついて生気を吸い取ることはしないよう努めております。前に一度やって主人に叱られましたので」 「・・ほぅ、知ってるのか」「はい、レキジョですから」 「え、本当?」「嘘です。天見様を騙しました」 「ぷ」 二人で声を出して笑った。
「君には感心したよ。賢くて機転が利く。察しがよくて心配りも行き届いてる。今どきこんな子がいるとはね」 「恐縮でございます」 私たちは皆そういうふうに躾られているのですよ。
「君なら僕がベッドでも服を脱がない理由が分かっているんだろう?」 「はい。・・ご自身の胸が目に入るのを避けておいでではありませんか?」 「そうだよ。できるなら見ないでいたいモノだ、自分の胸なんて。君はあれだけ僕の性器を刺激してくれたのに胸には一切触れなったね。女同士なら真っ先に乳首を触ってもおかしくないのに」 「天見様」 私は天見様の手を取った。それを自分の裸の乳房に当てる。 「女同士ではありません。男と女です。どうぞ男性としてこの女の胸を弄んで下さいませ」 「そうだね、僕は男だった」
きゅ。 乳首を摘ままれた。電流が走る。 「きゃん!」 天見様は悪戯をした男の子みたいに笑われた。 「自分のものでなけりゃ女の子のおっぱいはいいよね。顔を埋めたくなるよ」 「もう!」 私は身を起こし、仰向けになった天見様の上にのしかかった。 「それなら存分に埋めさせてあげます!」 乳房を顔面に押し当てて体重を乗せた。これでも一応Dカップ。 「うわぁっ」 「どうですか? 嬉しいですか?」 「て、天国」 「エロ親父ですか」
7. 作家の天見尊様がお泊りになってから4か月が過ぎた。 私は誕生日を迎えて20才になっていた。 メイドの一人が誕生日だからといって特別な行事がある訳ではない。 せいぜい仲間内でささやかなお祝いをする程度だった。
その日の午後は外出の命令があった。 お屋敷の用務かと思ったら、外部のお客様への接待だという。 本来、私たちメイドのご奉仕の対象は旦那様が招かれたお客様に限られる。 無関係な人や組織への接待は滅多に行われない。 仮に行う場合は相手に対して法外な対価が求められる。 昔、外務省からの緊急要請で同盟国の高官にメイドを派遣したとき、旦那様が要求なさったのは中央アジア某国でのレアメタル採掘権交渉を日本政府が支援することだった。 H邸に勤める者の間では今も語り継がれる伝説だ。 仮に現金で支払う場合はメイド1名に数千万円から数億円が請求されるらしい。 いったい私はいくらで派遣されるのだろう?
指定されたホテルまでお屋敷の車で送ってもらった。 ロビーでお待ちになっていたのは��� 「天見様!」 「やあ、キツネちゃん! 二十歳の誕生日おめでとう。お祝いにデートしようと思ってね」 「あの、メイドの誕生日は公開されていないはずですが、どうやってお知りになったのですか?」 「電話で聞いたら教えてくれたよ」 「・・」 「とても親切だったね。君をレンタルしたいって頼んだら料金も良心的で」 「あのあの、それはおいくらか、よろしければ教えていただけますか?」 「1時間ごとに 1113円。それ東京都の最低賃金だから、せめて 2000円くらい取ればいいのにね」 「・・」 旦那様、絶対に面白がっておられる。
「さあ行こうか」 「どちらへ?」「僕に任せてくれるかい」 ホテルを出て歩道を歩き出された。 「天見様、お車は?」 「持ってないんだ。タクシーも苦手だし、地下鉄で行くよ」 「あ、あの」 「どうしたんだい?」 「私、地下鉄に乗ったことがごさいません」 「本当かい? はははは」 大きな声で笑われてしまった。
8. 自動改札機がどうしても通れなかったので、天見様が別に切符を買って通らせて下さった。 お屋敷のIDカードでは改札機の扉が閉まることを初めて知った。 カードを手で擦って暖めたり、ひらひらさせたり、いろいろ工夫してみたのだけど。
ようやく電車に乗って連れてきていただいたのは英国ブランドのブティックだった。 「せっかくのデートにそんな地味な服は駄目だよ」 私は薄いグレーのワンピースを着ていた。確かに地味かもしれない。 対して天見様が着こなしておられるのは鮮やかなワインレッドのカラーシャツと黒のカジュアルパンツ。 小柄な身体にオーバーサイズを着けているから胸の膨らみも目立たない。
天見様は私にホルターネックの真っ白なミニドレスを選んで下さった。 キュートだけどバックレスになっていて背中が腰まで開いている。 上から覗いたらお尻の割れ目まで見えてしまうのではないかしら。 「よく似合ってるね。これを君にプレゼントするよ」 「あの、もう少し身体を隠すドレスの方がよろしいのでは」 「却下。僕の好みに従って下さい」 「・・はい、天見様」 これを着て帰ると伝えたら、それなら髪を上げた方が、それならお化粧も変えた方が、とお店のお姉さんたちが集まってきてあっという間に変身させられてしまった。 この人たちも絶対に面白がっていると思った。
お店を出て天見様と並んで歩いた。 髪をアップにされた上にハイヒールも履かされたから、私の方が30センチは背が高い。 でも天見様はそれをいっこう気になさる様子はなく、笑って左の肘を差し出された。 私は少しだけ溜息をつき、それから笑ってその腕にすがって密着した。
「駅は反対側ではありませんか?」 「少し歩いて見せびらかそう」 はぁ? すれ違う人々の視線が痛かった。 露出した首筋と肩、そして背中。 まだ風が冷たい季節ではないのにぞくぞくした。 お屋敷のパーティではこんなセクシーな衣装の女性をよくお見掛けする。 思い切り肌を晒して見られるのを楽しむセレブの美女たち。 でも今、見られるのは私だった。 せめて何か羽織るものをお願いすればよかったな。
「頬が赤いよ、キツネちゃん」 「天見様!」 「前は一番恥ずかしい場所を僕に見せてくれたのに?」 「知りません!」 「でもさ、僕は落ち着き払っている君よりも今の君の方が可愛いから好きだね」 ああ、もう。 可愛いと言ってもらえるのは嬉しいけれど。
9. プラネタリウムで星座を見て、湾岸の公園で夕日を見て、オーガニックのレストランでお食事。 庶民的なデートコースだった。 天見様はセレブじゃないものね。 でも15才でお屋敷に入って以来ほとんど外に出たことのない私にとっては珍しい場所ばかり。 お食事の後はスター○ックス。 抹茶クリームフラペチーノにストローを2本挿して二人でくすくす笑いながらシェアする。 何て楽しいのだろう。 セクシーな衣装にはすっかり慣れてしまった。
気がつくと天見様の手が私の肩に乗っていた。 しばらく一緒に歩いてから指摘する。 「あの、踵を上げたままお歩きになると大変ではありませんか?」 「そう思うなら君の方で何とかしてくれないかい」 仕方ありませんね。 私はその場でハイヒールを脱ぎ捨て裸足になった。 どうですか? これでずいぶん低くなりましたでしょう? 私の肩。 「おー、ちゃんと届くようになった」 「ご命令でしたら、この後ずっと裸足でおりますが」 「ふふふ、それもいいねぇ」 「ただし水溜りがあったら私を抱き上げて下さいませ」 「え?」 「よろしいですか?」 天見様はにやりと笑ってお答えになった。 「約束しよう。じゃあ今からキツネちゃんは裸足だ。・・これはもう要らないね」 脱ぎ捨てたハイヒールを拾うと自分のパンツのポケットに片方ずつ突っ込まれた。
「ところで、たまたま偶然思い出したんだけど、近所に僕のマンションがあるんだ」 「あら、それは偶然ですこと」 「来てくれるよね」「はい、天見様」 私は素直に従う。 もとよりそのつもりだった。 お屋敷で指示された内容は「お客様のお住まいでご奉仕」だったのだから。
二人並んで歩き出した。 私だけが裸足。天見様は私の肩をお抱きになっている。 「すぐ近くですか?」 「ん-、電車で20分、いや30分くらいかな」 「怒りますよ」
10. 天見様がお住まいのマンション。 玄関横の表札プレートには『徳山誠一』とあった。 天見尊はペンネームのはずだからご本名? もちろん余計なことは詮索せず、天見様について中に入る。
上がり框(かまち)のところで天見様が振り返って言われた。 「まさか本当に裸足で歩くとはね」 私はすまして応える。 「どこかに水溜りがあればと期待しておりましたのに」 ここへ来るまでの間、私は電車の中でも裸足を通したのだった。
天見様の行動は速かった。 私はその場で抱きしめられた。 むき出しの背中を天見様の手が撫でる。 私より小さいお身体なのに、前と変わらない、いえ前よりさらに強い力で抱かれた。 「んんっ」 天見様の右手がドレスの脇から侵入して乳房に覆いかぶさった。 「だ、駄目です。・・私の足、まだ汚い」 「後で拭けばいいさ」 ゆっくり揉みしだかれた。 「あぁ・・」 官能が湧き起こる。 この間は初めて女の子を抱いたって仰っていたのに、どうしてそんなに上手に揉むのだろう。
「君のレンタルを申し込んだときにね、聞きたいことはあるかと言われたからいろいろ質問したんだ」 「はぁ・・ん」 「君に何をしてもいいのかって。・・そしたらOKだって」 「んぁ!! ・・ああ」 「酷いことをしてもいいのか。苦痛を与えてもいいのか。怪我をさせてもいいのか。・・全部OKと言われたよ」 「あ、・・あん!!」
天見様の愛撫は執拗だった。 気持ちいい。このまま身を任せてしまいたい。 でもちょっと放っておけないことを口にしてらっしゃるわね。 少し脳みそをクリアにしなきゃ。
はぁ、はぁ。 激しく喘いでさしあげながら、天見様の表情を横目でチェックする。 大丈夫。自制なさっている。 これ以上暴走する危険はないわね。 おそらく今日のデートは入念に計画されたのだろう。 この後も何かご計画があるはず。きっと私への嗜虐行為だろう。 では今必要なことは? 私がすべきことは? ・・理解していただくこと、そして安心していただくことね。
「天見様」 ゆっくり呼びかけた。 「ご安心下さいませ」 「え」 「天見様のご満足のためでしたら何も拒みません」 「・・キツネちゃん?」 「ご奉仕させて下さいませ」 「そうか、君は知ってたんだね」 「はい。私をお好きなように扱って下さいませ。酷いことでも苦しいことでもお受けいたします」 私を押さえる手から力が抜けた。 「本当にいいのかい?」 「はい、天見様」 「悪かった。乱暴なことをしてしまったね」 「いえ、どうかお気になさらず」
ご理解いただけた。 ほっとすると同時に官能が戻ってきた。 とろり。下半身が熱い。 もしあのまま押し倒されていたら、どうなっていたかしら。 ああ、私きっとエロい顔をしているわ。
11. 天見様のマンションはリビングダイニングのお部屋の奥に階段があって、その上が吹き抜けのロフトのようになっていた。 メゾネットだよと教えて下さった。 浴室は階段の隣。
私はまずシャワーをお願いして、浴室を使わせていただくことにした。 服を脱いで裸になってから、ご一緒に如何ですかと聞いたら天見様も来て下さった。 裸になってから自分の胸を隠し恥ずかしそうになさっている。 もちろん私はそこに目を向けるようなことはしない。
天見様のお身体は贅肉がほとんどなくてよく締まっていた。 特に腕と背中にはアスリートのような筋肉がついて逞しかった。 股間には肥大したクリトリスが突き出していた。 それはまっすぐ立っていても見えるほどだった。
お背中を洗ってさしあげた後、当たり前のように正面に跪いた。 そしてそれを口に含んでご奉仕・・しようとしたらずいぶん慌てられてしまった。 前にもしてさしあげましたのにと指摘すると、あのときはもっと優しくて情緒的だったと抗弁された。 はっとした。 口でご奉仕、いわゆるオーラルセックスは男性のお客様にも女性のお客様にもお悦びいただけるスタンダードなサービスだけど、トランスジェンダーのお客様にはセンシティブだった。 これは失敗。お屋敷でやらかしたら罰を受けるレベルね。 胸の方は直接見ないように注意していたのに。
失礼をお詫びして、もう一度心を込めてご奉仕させて欲しいとお願いした。 その最中は私に何をなさっても構いません。 よろしければ私の手をお縛りになりますか、と言うと天見様の眉がぴくりと上がった。 本当に何をしても構わないんだね? と聞かれて私は頷いた。
私は浴室の床に跪き、後ろで揃えた手首をタオルで縛っていただいた。 その気になれば自分で解けてしまうような拘束だけど、��くつもりは絶対になかった。 顔を斜め上に向けて天見様のクリトリスを口に含んだ。 唇と舌ででご奉仕する。 それは私の口の中でびくんと震えた。
頭の上からシャワーのお湯が注がれた。 シャワーヘッドが目の前に迫り、ほんの数センチの距離からお湯を浴びせられた。 流れるお湯で視界が覆われる。 唇と舌のご奉仕は止めない。 天見様のそれは明らかに硬さを増して大きくなった。
天見様の片手が後頭部を押さえた。 顔面にシャワーを浴びせられたまま、髪をぐしゃぐしゃにかき乱される。 前髪を掴んで引き寄せられた。目と鼻を恥丘に強く押し当てられる。 鼻孔が塞がれて空気が入ってこなくなった。 すぐに胸の酸素が尽きて私はもがき、お湯が気管に入って激しく咽(む)せた。 慌ててそれを口に含み直す。必死の思いでご奉仕を続けた。 きっと私シャワーの中に涙と鼻水をぐずぐず流してる。
シャワーのお湯が背中に移動した。背中が暖かくなる。 と、お湯がいきなり冷水になった。 ひっ! 私は震えあがり、その瞬間、クリトリスの先端に露出した亀頭を歯で扱(しご)いてしまった。 絶対に噛まないよう細心の注意を払っていたのだけど。
天見様が小さな声を上げて絶頂を迎えられた。 しばらくしてから、最高だったよ、と言われてご奉仕は終了した。
12. ぐったりされている天見様のお身体をお拭きしバスローブを羽織らせてさし上げた。 幸福感に満ちたお顔。女性のイキ顔だと思った。 これが男性のお客様なら精を放たれて醸し出されるのは満足感や征服感。 これほど幸せそうな表情はなさらない。
「・・とてもよかったよ。やる前はあんなプレイのどこが楽しいのかと思ってたんだけどね」 「それは何よりでございました」 「ねぇ、キツネちゃんは男の客が相手のときにも、あんなご奉仕をするんだろう?」 「それは本来お答えしかねるご質問です。でも天見様だけにはお教えしますね。イエスです」 「ありがとう。もう一つお答えしかねる質問だけど、いいかな」 「何でしょう?」 「相手が射精したら、君はそれを飲むとか顔で受けるとかしてくれるのかい? ・・うわっ、ごめんっ。怒らないで!」
「・・天見様は男性の射精にご興味がおありなのですか?」 「そりゃそうさ。僕には絶対に叶わないことだからね。でも今興味を感じたのは射精そのものじゃなくて、女の子が口で奉仕することなんだ」 フェラチオに興味ですか?
「人間には手があるのにそれを封じてわざわざ口で尽くしてくれる。しかも飲むんだろう? あんな扇情的な行為はないね。・・強制されてすることもあるだろうけど、僕はそれを女性が自分の意志でやってくれることに感動するよ」 自分語りのスイッチが入ったみたい。 私は黙って拝聴する。
「・・考えてみれば男の快楽のために女が奉仕するってのは尊��ね。暴力的なプレイまで進んで受けてくれる。まさに君たちの仕事だよ。実に興味深い」 接待で二人きりのとき語り始めるお客様は珍しくない。ほとんどが男性。 そういうときに大切なのは、すべて聞いてさしあげること、小難しい話でも理解に努めること、適切なタイミングで相槌を打つこと。
「キツネちゃんはさっき顔面シャワーを受けてくれたよね。髪の毛を掴んで振り回されるのはどんな気持ちだろう。やはり惨めなものかい?」 「はい。でもそういう思いを甘受するのもメイドの務めでございます」 「ものすごく嗜虐的な気分になるね。もう一回ご奉仕して欲しいくらいだよ」 終わりそうにないわね。 そろそろ後のご予定を伺わないと。
「天見様、きちんとしたお召し物をお着け下さいませ。お風邪をひきます」 「ああ、そうだね」 「今夜は何かご計画があったのではありませんか?」 「え」 「私を使って嗜虐プレイをなさると思っておりましたが」 「どうして分かったんだい?」 分りますよ。 私に抱きついてさんざん "苛めたい" オーラを放っておいて、分からない方がおかしいです。
13. 天見様は壁際に置いてあった手提げケースを大事そうに持って来られた。 「あれからSMバーに通って一本鞭の練習をしたんだ。人並には打てるようになったよ」 ケースの中にはSMプレイ用の一本鞭が入っていた。 グリップ(持ち手)の先に皮を編んだ撓(しな)やかな本体が繋がっている。 長さは1.5メートルくらいか。
私はお部屋を見回してチェックした。メイドの習性だ。 吹き抜け部の天井高さは4メートル以上。広さは 2.5×3.5 メートルってところ。 大丈夫、ここなら長鞭を使えるわね。
吹き抜けには梁が一本通っていて、そこに小さな滑車が取り付けられていた。 滑車からフックのついたロープが下がっているのが見えた。 「天見様、あれは?」 「ああ、あの滑車は僕が付けたんだ。安物だけど人は吊るせるよ」 「ということは、私、あそこに吊られて鞭を打たれるのですか?」 「そうだよ。・・君を宙吊りにする技術はないから、両手を吊るだけのつもりだけどね」 天見様はそう言ってにやりと笑われた。 「どうかな? 怖いかい?」 「怖いです、天見様」 「嬉しいね。そう言ってくれると」
わさわざ私の誕生日のために準備して下さったのか。 きっとそうね。あの滑車とロープは新品だわ。 ご自分で掴まってテストするくらいのことはなさっているだろう。 お一人でぶら下がっている姿が浮かび、心の中でくすりと笑った。
天見様はジムでお使いのトレーニングウェアを着てこられた。 私は生まれたままの姿で、お借りしたバスローブを肩に掛けているだけ。 下着を着けてもいいと言われたけれど、私は自ら全裸を選択した。 ほんの4か月の練習ではブラやショーツを鞭で飛ばすテクニックはおそらく無理。 であれば、最初から肌をすべて晒して鞭打たれる方がお愉しみいただけるはず。 それにこの方は女が惨めな姿であることを好まれる。先ほどの会話で分ったことだ。
天見様が頭上の滑車からフックを下ろされた。 私はバスローブを床に落として前に立つ。 「両手を前に出して、キツネちゃん」 「はい、天見様」 この先はあらゆるご命令が絶対。私は絶対に逆らわない。
お屋敷を出るときに伝えられた今回のリスク予測値は 14-30 だ。 プレイの内容が不明なので信頼性の低い参考値と言われた。 でもここまで来たら私でも予測できる。 14-50 か 20-30。 私は今から打たれる。 無事でいられるかどうかは天見様の腕次第。 ・・ぞくり。 押さえていた被虐の思いが頭をもたげる。
前で揃えた手首に革手枷を締められた。 手枷のリングにフックが掛かって、床から踵が離れるまで吊り上げられた。 私は両手を頭上に伸ばし、爪先立ちの姿勢で動けなくなった。
「綺麗だね」 天見様が私をご覧になって仰った。 「ありがとうございます。・・どうぞ私をご自由に扱って下さいませ」 「じゃあ、お尻を打つから向こうを向いて」 「はい、天見様」 言われた通り身体を回して、天見様に背中を向けた。 「よーし」 鞭を持って構えられた。深呼吸。 「・・」 「?」 「一回練習する」
天見様は向きを変え、ソファのクッションに向かって鞭を打たれた。 ひゅん! ばち! 鋭い音がした。 鞭は全然違う方向に飛んで床を打っていた。 「あれ?」
訂正。 30-50 ね。
14. 天見様の鞭はとても速かった。 肘を曲げて素早く振り下ろす上級者の打ち方をマスターされていた。 ただしコントロールが悪かった。
天見様は真っ赤な顔をして何度か振り直された。 3回目でようやくクッションが跳ねた。 「待たせたね」 「いいえ、天見様。・・あの、まことに差し出がましいことですが」 「何?」 「一度ごゆっくりお座りになられては如何でしょうか。お座りになって、私をご覧になって下さいませ」
天見様ははっとした顔をされた。 ソファに腰を下ろし、一本鞭をテーブルに置いてから私に顔を向けられた。 「ありがとう、落ち着かせてくれて」 「とんでもございません」 笑顔で仰った。 「よく考えてみれば、いきなり鞭を打つなんて勿体ないことだね」 私も笑顔で応える。 「はい。今、天見様はこんな美少女の自由を奪って飾っておいでなのですよ?」 「本当だ。・・今どさくさに紛れて美少女って言ったね? もう二十歳のくせに」 「しまった。二十歳までは美少女の範囲でございます」 「あはは」「うふふ」
それからしばらく天見様はにこにこ笑いながら私をご覧になるだけで何もなさらなかった。 両手を吊られているからどこも隠せない。 天見様の視線が胸や股間に向いているのを感じる。 嫌ではなかった。 ・・乳首が尖るのが分かった。天見様はお気付きになったかしら?
10分ほども過ぎただろうか。 天見様がお立ちになった。 「もう大丈夫。・・覚悟はいいかい? キツネちゃん」 「はい、天見様」
15. ひゅん! ばち! 衝撃が走る。 私は身を捩って耐える。
ひゅん! ばち! ひゅん! ばち! ひゅん! ばち!
お尻。背中。太もも。 肌を切り裂かれる感覚。 お上手です、天見様。
ひゅん! ばち! ひゅん! ばち!!! 「ひぁっ!!」 声を出してしまった。 サービスで上げた悲鳴ではなかった。 ひゅん! ばち!!! 「ああーっ!!」
「キツネちゃん! 大丈夫かい!?」 天見様が駆け寄ってこられた。
はぁ、はぁ・・。 私は両手吊りのまま天見様に寄りかかった。 慌てて支えて下さるその腰に右足を回して掛ける。 太ももの内側を擦りつけるようにして絡みつかせた。 「!」 天見様が驚かれた。 私の右の内ももは股間から染み出た液体で濡れていた。 左の内ももにも粘液がふた筋、み筋。 はぁ、はぁ。
「お、お願いがございます、天見様」 天見様の耳元で話しかけた。 「私に、猿轡、をしていただけませんでしょうか?」 「さるぐつわ? いったいどうして」 「女の悲鳴は高く響きます。ご近所様に聞こえると天見様にご迷惑をおかけするかもしれません」 「・・」 「ご安心下さいませ。猿轡をされても私の味わう苦痛は変わりません。お耳に届かなくても私の悲鳴は天見様に伝わると信じております」
天見様はわずかに溜息をつかれたようだった。 「君はそんなことまで気遣ってくれるのか。そこまで濡れておきながら」 「メイドの務めでございます」 私はできるだけ艶めかしく見えるよう微笑んだ。 「どうか、思う存分お愉しみ下さいませ」
「・・本当にいつも君には、」 天見様はそこまで言いかけてお止めになった。 「それで僕はどうしたらいいんだい?」 「はい、とても簡単でございます。ハンカチなどの柔らかい布をできるだけたくさん口の中に含ませて下さいませ。私が嘔吐(えず)く寸前までぎゅうぎゅうに詰めていただいて構いません。それからダクトテープ、なければガムテープでも結構です。耳まで覆うほど長く切ってしっかり貼って下さいませ。2枚切って口の前でX(えっくす)の字に交わるように貼っていただければ、より剥がれにくくなります」 一気にまくしたててしまった。少し面食らってしまわれたかも。 「わ、分かった。・・ハンカチとガムテープだね? 取ってくるよ」
お願いした通りの猿轡を施していただいた。 口腔内に大量のハンカチが充填され、声も空気も通らなくなった。 鞭打ちが再開される。
ひゅん! ばち!!! 「んっ!」 ひゅん! ばち!!! 「んんーっ!!」 鞭が空を切る音。一種遅れて肌に当たる音。 衝撃が脊髄を抜けて脳天を貫く。
ひゅん! ばち!!! 「ん、んんっ!!」 鞭の当たる部位が識別できなくなった。 どこもかしこも腫れているのだと思った。 後半身はそろそろ賞味期限。まっさらな肌をご提供しないと。 私は少しずつ身体を回す。
ひゅん! ばち!!! 「んんっっ!!!」 脇腹を打たれた。
ひゅん! ばち!!! 「んんーーっ!!」 おへその下の柔らかい部分。
ひゅん! ばち!!! 「んんんんっっ!!!」 乳房。 赤い筋が浮かび上がるのが見えた。
私は両手吊りになった身体の全周をまんべんなく打っていただいた。 ときどき爪先で体重を支えきれず、手首に体重を預けてゆらゆら揺れた。 吊られた雑巾みたいに揺れた。
天見様はただひたすら鞭を振るっておられた。 どんなお顔をなさっているのか、見ようとしてもうまく見えなかった。 ぼろぼろ流れる涙が滲んで見えないのだと気付いた。
16. 「キツネちゃん・・?」 目を開けると、ソファの上だった。 私は天見様の膝に頭を乗せて寝ていた。 手枷と猿轡は外されていて、身体にシーツが掛けられていた。
下半身にどろどろした感覚があった。 無意識に股間に手をやると、そこにはまだ性感がマグマのように溶けて渦巻いていた。 あぁ!! びくんと震えた。全身に痛みが走って顔をしかめる。 自分がどうなっているのかよく分かっていた。 鞭で打たれた箇所が赤い痣とみみず腫れになっているのだ。 血が滲んで流れたところもあるはず。
「まだ寝てた方がいい���疲れ果てているだろう?」 天見様が仰った。 「出血の場所は洗浄スプレーで洗ったから心配しないで。後で起きたら洗い直してキズパッドを貼る、・・でいいんだよね?」 私は何も言わずに微笑んでみせた。 傷の手当くらい心得ておりますよ。
髪の生え際を撫でられた。 不思議と嬉しくなった。 「よく尽くしてくれたよね。・・嬉しかったよ、ありがとう」 あれ、どうしたんだろう。 また涙が出そうな感じ。 「ん? メイドとして当然の務めでございます、とか言わないのかい?」 「もう、天見様ぁ」 「キツネちゃんでも泣きそうな声を出すんだね。可愛いよ」 からかわないで下さいませ。 本当に泣いちゃいますよ。
天見様の指は髪から首筋に移動した。 人差し指と中指でそっと押さえられる。 エクスタシーが優しくさざ波のように広がった。 どろどろしていたモノが柔らかくなった。 「ああ、気持ちいいです」 「ここはね、僕がオナニーするときに好きだったポイントさ。テストステロンを始めてからは何も感じなくなったけどね」 私は黙って両手を差し伸べ、天見様の首に子どものようにしがみついた。 少しだけ甘えさせて下さいませ。
しばらくして天見様が仰った。 「・・君は女性を鞭で打つ愉しさを僕に教えてくれたね」 「はい」 「自分にこんな嗜好があったなんて、以前の僕には想像もできなかったことだよ。・・それで今日分かったことがあるんだ」 自分に言い聞かすように仰った。 「僕は SRS(性別適合手術)を受けようと思う」
天見様はご自身の嗜虐嗜好を認識して以来、女性の身体で女性を責めることに違和感を感じたと教えて下さった。 その違和感は男性ホルモンの投与だけでは緩和できず、それまで踏み切らなかった SRS を真剣に考えるようになられた。 「鞭の練習をしながら考えてたんだ。キツネちゃんをとことん責めて、僕が本当に求めていることを確認しようってね」
天見様の首にしがみついたまま質問した。 「では、私はお役に立てたのですか?」 「もちろんだよ。キツネちゃんが鞭で打たれて苦しむとき、その前にいるべきは男の身体の僕だ」
・・私はお役に立てた。 どろどろの澱みがなくなり、雪解けの水のように流れ去った。 「ありがとうございます!」 天見様の上によじ登った。頭を抱きしめる。 全身の鞭痕がずきずき悲鳴を上げたけど、気にしないことにした。
「・・ん、んんっ」 天見様の声がくもぐって聞こえた。 「ねぇ、もしかしてわざとやってる?」 私は全���で、天見様の顔はDカップの胸に埋もれていた。 「はい。痣だらけの胸でございますがお尽くしするのが務めと考えました。・・ご迷惑ですか?」 「迷惑だなんてとんでもない。キツネちゃんのおっぱいは天国だよ」 「お粗末様でございます」
17. マンションの玄関にあった『徳山誠一』は天見様のご本名ではなく私生活での通り名だった。 天見様のご本名は『徳山聖子』だと教えていただいた。 「SRS を受けて性別変更したら戸籍名を『誠一』にするつもりなんだ。そのときはまた招待してくれると嬉しいね」 「主人に申し伝えます」 「約束する。次は男性の身体でキツネちゃんを責めてあげるよ」 「はい!」
朝になって私は迎えの車でお屋敷に戻った。 鞭痕は全治20日と診断された。 全身の痣が赤から紫に変わり、数日の間、私は七転八倒することになった。
18. 天見様が再びお客様としてお越しになったとき、私は24才になっていた。 この年、天見様はSFではなく歴史小説で文学賞を受賞された。 同時に MTF トランスジェンダー女性との結婚も発表されて文壇の話題となっていた。
晩餐ホールに呼ばれて伺うと、旦那様と向かい合って天見様ご夫妻が座っておられた。 SRS を受け戸籍上も男性となられた天見様は4年前より一層筋肉のついた男性らしいお身体になっていた。 奥様は色白でとても綺麗な方だった。
「キツネちゃん!」 「お久しぶりにごさいます、天見様。ご結婚と文学賞受賞お祝い申し上げます」 「ありがとう。キツネちゃんはメイドを引退するんだって?」 「はい」 私は横目でちらりと旦那様を伺う。 「構わんよ、話しなさい」 「はい。・・婚約しました。来月結婚いたします」 「え、それはおめでとう! 聞いてもいいかな、相手は?」 「アメリカで会社を経営されています」 「そりゃすごい!」
婚約者は旦那様の事業のお相手だった。 何度かご奉仕をしてさしあげた後、先方から私を "購入" したいとのご希望があった。 表向きは結婚という体裁になる。 その金額がどれくらいなのか私は知らない。 人身売買のようだと思われるかもしれないが、彼は優しく誠実な人だ。 私は彼を愛している。 ちなみに彼の嗜好はエンケースメント(閉所拘束)。 結婚したら月の半分は妻として務め、残り半分は樹脂の中に密封されて過ごすことになる。 実は彼も FTM であることを知る人は、このお屋敷では旦那様の他数人だけだ。
「・・ところで、」 旦那様がおごそかに仰った。 「そろそろメイドの緊縛は如何ですかな?」 「え」 天見様は一瞬驚いた顔になり、それから奥様と顔を見合わせて微笑まれた。 「是非お願いします。・・ここにいる女性の中から誰を選んでもよいのですよね?」 「もちろん」 「それでは彼女を、キツネちゃんを縛って下さい。服は脱がせて全裸で、できるだけ厳しくて可哀想な緊縛をお願いします」 「ふむ!」
私は天見様に選ばれる前から前に進み出ていた。 お約束を果たすために来て下さったのですね。 今夜、私は天見様ご夫妻のお部屋に伺って責められる。 天見様と奥様が鞭打って下さるのだろうか。 それでも私と奥様が天見様から鞭打たれるのだろうか。 それは多分、このお屋敷で私の最後のご奉仕。
私は旦那様と天見様ご夫妻に向かい、両手を揃え180度のお辞儀をした。 「謹んで縄をお受けします。どうぞお愉しみ下さいませ」
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~登場人物紹介~ キツネちゃん: 19才。H氏邸のメイド。 天見尊(あまみたける): 26才。作家。FTM(生物学的に女性、性自認は男性)のトランスジェンダー。
2年半ぶりのH氏邸です。 確認したら前々回と前回の間も2年半開いていました(笑。
今回はトランスジェンダー界隈の情報ネタをストーリーに取り込みました。 私自身は FTM でも MTF でもありませんが、これらの方々が抱く嗜虐/被虐の思いには大変興味があります。 そこでH氏邸に招かれた FTM トランスジェンダー男性がメイドさんの接待を受けて、それまで潜在的に持っていた嗜虐嗜好に目覚めることにしました。 目覚めた嗜好が理由となり SRS(性別適合手術)を決心する、という設定ですが、これは作者(私)のファンタジーです。 現実世界にそんな人はおらんやろと思っていますが、さてはて・・?
なお私は、この界隈に関してネットで得られる以上の知識がありません。 トランスジェンダーの皆様の苦痛や悩み、ホルモン治療と SRS の詳細について不適切な記述があるかもしれないこと、あらかじめお断りしてお詫びします。
さて、メイドさん側の心理行動はこれまでのシリーズを踏まえて描いています。 よくあるドジっ子メイドとは正反対の超優秀なメイドさんです。優秀だけど立派なM女です。 現実世界にそんな女の子はおらんやろと確実に思っています(笑。
次に挿絵ですが、久しぶりにAIを一切使わずに手作業で描きました。 細かい手順をすっかり忘れてしまい大変苦労しましたが、対象をイメージ通りに描くなら手書きも便利と思いました。 これからも定期的に手描きを続けることが必要だなと痛感した次第です。
最後にシリーズの今後について。 長く続いた『H氏邸の少女達』ですが、次回で最終話にしようと考えています。 サイトへの掲載はずいぶん先になると思われますが、気を長くして待っていただければ幸いです。
それではまた。 ありがとうございました。
[Pixiv ページご案内] こちら(Pixiv の小説ページ)に本話の掲載案内を載せました。 Twitter 以外にここからもコメント入力できますのでご利用ください。(ただしR18閲覧可能な Pixiv アカウント必要)
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joemotofuji · 4 months
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🌃夜明けのすべて見てきました
*しっかりネタバレ+自我強めの感想です。
2024/02/09 (Fri.) 仕事終わりに駆け込んで見てきました。
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仕事上がりあるある、完全に戦闘モードのまま劇場に入ってしまいましたが、出る頃には深く呼吸ができるようになっていました。いつも概ね劇中のエピソード順に感想を箇条書きで書いてるのを今回は特に好きだった点について一点集中で書いてみます。
藤沢さんと山添くんの感じた引っ掛かりや焦りの描写について
作中全般、セリフで説明されたりわざわざカットを変えて強調したりということはないのに、なんだか気になる…な描写がありました。たぶん画面の中で藤沢さんや山添くんが戸惑ったり我慢したりしているシーンだったので、見ている側も一緒に引っかかったりする仕掛けなんだろうなと邪推しており、そのささやかさがとても好きだったので個人的に好きだったそれらを下記につらつらとまとめてみます。
冒頭、警察署で荷物などの受け取りのサインをするシーン、藤沢さんのお母さんがペンを落としてしまって警察官の方に笑って見せるところで、警察側の方が背中を見せている状態だからというのも相まってかめちゃくちゃ冷たいシーンに感じて悲しくなっちゃいました。
笑い返すでもなく「ああすみません」的な仕草を見せる訳でもなく、無言で見下ろしているような背中と暗い画面と藤沢さんの優れない顔色、あとナレーションでお母さんに心配されていることへの憂いのようなことを藤沢さんが話していたのが重なって悲しいシーンの印象で記憶に残りました。あと途中からのお母さんの様子的に、もし原因が脳梗塞など脳に由来するものだとするとこの時から症状が出ていたということ…?と思ってそれも切なくなりました。自分が藤沢さんだったらあとで思い返して「なんできづかなかったんだろう」「なんでもっと一緒にいなかったんだろう」て後悔しちゃう…
(2/11追記) パンフ読んで知りました、お母さんパーキンソン病を…😭受難多すぎる………
藤沢さんが婦人科にかかるシーン、最初からお医者さんが藤沢さんに体を向けずに電子カルテなのか画面なのかを見たまま話を進めるので、PMS で受診してる方に、しかも何度も見てる患者さんなのにそんな〜🥹な気持ちでした。今回作中のお医者さん二���とも「なんかちょっとヤ」でした🤣ヤ具合の塩梅が絶妙でした…
ここのシーン、藤沢さんが新しいお薬の説明を(あんなに雑な説明なのに真摯に)聞いて目がきらっとするような希望を見せるの、そのあとどうなるかを小説読んでて知ってただけに悲しかった……上白石萌音さんの表情の機微が本当に刺さりました……
(2/10追記) ここの先生は開口一番「まぁたなんかやっちゃったの?」みたいな言い方をしていたり、ピルの相談する藤沢さんに無理ですねって返事をする際に取り付く島もないトーンだったり、考えようによってはフランクで親しみやすい話し方ではあるんですが個人的に地味に苦手な感じだったのでそれがヤだったんだな…と気づきました🤣
栗田科学に転職後の藤沢さんが会社で PMS の症状が出てしまう最初のシーン、炭酸水のプシュッが耳に刺さる少し手前からすでに、なんだか耳に入る音全部がやたらハッキリ判別できて情報量が多く、アッなんだかこれはイライラしそう、と思いながら見ていました。登場人物の感覚が変に鋭くなっている描写��一環なのかなと思いつつ、見ている最中は全然気づかずなんとなくハラハラしていました。
メンタルクリニックで山添くんが彼女さんと待合室にいるシーン、番号で呼ばれて彼女さんがサッと立ち上がるのを見て謎に急かされている気がして見ながら焦りました。謎……どういう状態にせよ、お医者さんにかかっている方が俊敏に動けるとは思わないんだけどな〜いやでも変に病人扱いされるのも嫌かな…と悶々としていました🤔
このクリニックのお医者さんも、なんかこう、絶妙に「なんかちょっとヤ」でした😂婦人科医の先生よりさらにわかりやすくヤだったのですが、彼女さんが普通に「ふむふむ」みたいな表情で話を聞いていたので、あ、これはヤな描写ではないのか…?て思うなどしていました。できていたことができなくなって、思い描いていたキャリアからガンガン遠ざかっていて、山添くんが持っていた自尊心というよりアイデンティティ的な部分が目に見えて崩れて行っている最中にあの診察受けるのちょっときつそう…と思ってしまいました、が、どこが?なんで?て言われたら細かいとこ言えない 明日もっかい見るからなんで何がヤだったのかちゃんと言語化できるようにまとめよ…
あと関係ないんですが多分壁の本棚にハリーポッターが不死鳥の騎士団あたりまで置かれてて、賢者の石がなかったっぽくて「貸出中かな…」て思ってました🪄
山添くんが髪を切って二回目の診察のシーンでも変わらずヤだったのでやっぱちゃんと言語化できるくらいのメモ残そう✍️「なんか新しいことあった?」みたいな聞かれ方してたのが嬉しくなかったのかも・・・
(2/10追記) つぼいメンタルクリニックの担当医さん、二回目の診察のシーンで山添くんに本を片手で適当に渡したり「これも」と言いながら手渡さずに置いといたり、なんというかあまり患者さんを尊重してくれない感じがヤなんだな…と気づきました。お医者さんて大変な職業だ……
年始に藤沢さんが山添くんちにお守りを投函し、その直後に彼女さんもくるシーン、ピンポンを押す間隔に二人の違いが見えて好きでした。あのタイプのピンポンって押した人の力の強さや速さが音にそのまま出るので、彼女さんがピンポン!て爆速で押してるのを聞きつつ、あークリニックでサッと立ち上がる方のピンポンの押し方だなぁと思うなどしていました。
彼女さんが、もしも「恋愛感情なしで年始にお守り届けにくる…?」と一瞬でも疑っていたとしても、直後に紙袋から山盛りのお守りを取り出して「よかったら…☺️💦」て差し出すのを見て「ああ、この方はそういう人なんだ」て一発で通じる感じもまた好きでした
雨の日(だっけ?)に山添くんちに彼女さんがロンドン転勤+αの話をしに来たシーン、「外で話せる?」と言われた時の山添くんの表情が、単に別れ話の予感へのショックだけではなく、「そとで」と言われたことに対して「もしお店に入りたいって言われたら?」「もし外で話している時に誰か知り合いに聞かれていたら、または遭遇したら?」みたいな心配も垣間見えた、気がして、複雑だァ…と勝手に邪推していました。
仮に私が同じ立場だったとしたら、おそらく「もし相手がこのままバスに乗りたいって言ったら?それで乗れなかったら?乗れなかったことを責められたら?責められなくても「やっぱり」みたいな顔をされたら?」て起こってもない出来事をどんどん悪い方向に考えていくし、なんというか、この時の彼女さんの「外で話せる?」の真意を知りたい…
上記のようなこまごましたことにハラハラしたりヤだったりしていたので、日曜の夜に二人でオフィスで「パニック障害口実にしないの?」「PMS だからって言葉を選ばないで良い訳じゃない」みたいな軽口を叩き合ってる二人の絶妙な空気感があたたかかったです……
私がコミュ障すぎてこういう会話を友人とできないため、小説で読んでいた時は文字だけ見てなかなか脳内で優しいやりとりに変換できなかったのですが、映画で上白石萌音さんと松村北斗さんの声と表情の柔らかさに触れて、やっと優しい会話だなあと思えてほっこりしました。
あと細かいところで言えば山添くんが薬をシートから手のひらに押し出す時の仕草や寝起きに基礎体温を測りながらスマホではなく本を読んでいる藤沢さん、たい焼きを買ってきた山添くんに嬉しそうな社長(背景で全然ピント合ってないのに嬉しそうな光石研さん…!)、お母さんが編んでくれた一個目の手袋の親指付近の大きな編み目、初対面の転職エージェントさんとの面談に同席してくれた岩田さんのサムズアップ👍、年始に雨が降りそうな広場で息子とフリスビーする渋川清彦さん(ソレダケや閉鎖病棟のイメージ強すぎて今回一周回って怖かったです🤣)、藤沢さんと住川さんのインタビュー動画で左端の光にきらきらしているホコリなどなど好きなところがたくさんありました。
フィルム映画といえば去年公開の生田斗真さん主演「渇水」では画面のざらつきが夏の蒸し暑さも乾いた触感にしていてすごく好きで、それが今回は冬の空間で暖かさや温かさ、柔らかさに感じたのも面白かったです。これが、エモい…(?)
グッズはお馴染みクリアファイルとボールペンに加え、キューピーちゃんやスライドミラーをお迎えしました。ボールペンのライト、可愛すぎる…!!!家帰ってきてこれ打ちながら壁にピカピカさせて遊んでます。良すぎる。通販で保存用と布教用に買おうかと思います。パンフレットも(住川さんの名前を確認したくて開いた以外に)まだ読んでいないのでじっくり楽しみます。
今日見た分はムビチケ使い忘れたのもご縁な気がしてきました。上映期間中にまだあと二回くらい見に行きたい……
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lostsidech · 4 months
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5: Stairway to Heaven
「はっ!?」
 会場が壊れた。まず望夢が体感的に感じたのは、『足場が無くなり、落ちる』だった。
 そもそも高さのある場所で戦っていたわけではない。なのでこれは五感に伝わるただの幻覚なのだと、望夢は間もなく理解した。
 眩暈がする。そのせいですぐに状況を計算できない。五感のバグのくせに、しっかり落ちて転んだ痛みがある。そして体を圧迫する重量感と、微かに脳裏で鳴る異常事態のアラート。
 目を開ける。瓦礫の中に望夢は倒れ伏していた。
 悪夢のような光景が広がっていた。
 瓦礫が現れたり消えたり、ちかちかと景色を移り変わらせている。その途中で見覚えのある壁や岩、水流が出現してはくねり、視線を阻害する。ある場所では遊具のようなカラフルなキャラクターの顔が、ゴシック様の建築壁の中から突き出ている。
 半ば無意識で、自分の体を取り巻くように転がっていた瓦礫に、解析・解除を走らせた。ヴン、と音を立てて瓦礫が消える。
 この会場のためにセットされていた、ありとあらゆる仮想空間のストックが、暴走してこのありさまになっているのだと、しばらく見ていれば理解できた。
 自分の動きを邪魔していた周りの瓦礫が消えてしまえば、立ち上がることができる。おそるおそる、望夢は身体を立てるが、すぐに別のブロックが足元に出現して躓いた。
「でっ」
 足先を引っ掛けてまた転び、あやうく、そのブロックに膝を打ち付けそうになる。相当痛いだろう、とギュッと目を閉じたところで、ひらめく。この固形は仮想の感触だ。協会式のペタルがイルミナント意識点の持ち主に錯覚の圧力を与えているだけ。
 ペタルを込めなければ無視して動ける。協会式の仮想空間とはそういうものだ。日本の協会の演習場でもいつか瑠真とやったはずだ。
 とっさに脳を切り替える。望夢は元々協会式のペタル解釈には「合わせて」いるだけだ。大会のために常に協会式に合わせ、秘力を練り続ける方式を取っていたが、もう必要はない。
 ブロックにぶつかる前にイルミナント励起を解除。ぶつかったはずのブロックを膝がすり抜けた。そして少しだけもう一度、協会式ペタルを自身に込める。最後にクッション様に抵抗が生じ、転んだにも関わらずふわりと地面に手をつくことができた。
 何度か地面についた手を握ったり開いたりして、感覚を確かめてみる。
 この要領なら、多分このカオス空間の中も歩ける。
 望夢は見渡した。極彩色の景色に邪魔されているが、試合はどうなった 放送も音沙汰がないが、自分が聞こえていないだけなのか。点数はもう誰も見ていないのか
「……瑠真」
 それより何より、相方が何をしているのかが気になった。
 邪魔な障害物をすり抜け、迷路のような元アリーナを歩き始める。
 最も敵になるのが方向感覚だった。神経を研ぎ澄ましても、会場に存在するあらゆる出場者のペタルを吸い上げた仮想空間から、ペアのものだけを探すのは甚だ難しい。
 それでも歩き続ければ誰かとは遭遇するだろうと進んでいたとき、ふと五感の端に気配が引っかかった。
 ペアのペタルだけを探すのは難しい。そのはずだった。
「……瑠真」
 正確には。
 瑠真であるはずなのに瑠真ではない、瑠真のペタルをベースにしたような何か、を、感じる。
×××
 予期しなかった平衡感覚の混乱に、瑠真もまず尻餅を付き、ここがどこか見失うところから始まった。
「あ いたいた。いやぁ、君の場所は視認していたからすぐ来られたにせよ、このカオスは最悪だね」
 ──そこに聞こえてきたのは、考えうる限り最悪の声だった。
「は……」
 瑠真は咳き込みながら顔をあげる。これは……確か、望夢の先祖の。
 夏のヘリポートで聞いた、悪辣な少年の声だった。
 一度で覚えてやる義理はなかった。なのに覚えていたのは、それだけその声が身の毛もよだつトラウマのように耳朶に張り付いていたからだ。
 視界がぼやける。イルミナント意識点に過負荷が掛かっているのを感じる。会場にいたすべての異能者のペタルの残滓が増幅されて場を渦巻いている。感知系が苦手な瑠真にも明確だ。
 目を擦って、もう一度薄目を景色に向けたとき、その極彩色の光景の中に、黒服の少年が佇んでいた。
 初めて見る姿だ。子供が着るものとしては見慣れないお坊さんのような和服を着ている。
 だが、彼は背格好と顔立ちが──やはり望夢に、よく似ていた。
 高瀬誉。
 春姫の宿敵だ。なぜか蘇った幽霊なのだと聞いていた。
 だからだろうか。彼の輪郭は、まるで背後の仮想空間の景色の一部であるかのように、うごめき、刻一刻とブレている。
「待たせたね、悪魔のお迎えだよ、瑠真ちゃん」
 少年は、仄かに望夢より表情が薄く見える瞳をこちらに向けて、ことんと首を傾げた。
 瑠真はとっさに答えなかった。なぜこいつにこの状況で迎えられなければならない
「……何、これ」
 まずは周囲を示して、端的に尋ねた。
「試合中だったよね。アンタたちが何かしたの」
「うん。眺めてたら瑠真ちゃんが負けそうだったから、助けに来た」
 あっさりと、誉はそう言った。
「助けに こんな、試合無理やり壊して」
「だって、嫌だろ あんな大人の策略に乗せられるのなんか」
 誉は話しながら、瑠真の向かいに膝を折った。尻餅をついている瑠真に視線を合わせ、見つめてくる。そこはかとなくじっとりと嫌な感覚がし、瑠真はいざるように少し下がった。
「……まだやれた」
「どうだか」
 誉は首を振る。
「君は謀られたんだよ。極論、アメリカチームは君のことなんてどうでも良かった。日本の協会の邪魔をするのに良い釣り餌がそこに転がってただけ」
「アンタにそれを言われる筋合いはない」
「あー、そういう反応かぁ。まあ、いいよ」
 瑠真が噛みつくと、誉は肩をすくめてみせた。
「君もだいぶ鍛えられたみたいだし。ここまでの話はカノへの義理立て。振られたら続けて口説くもんでもないや」
「何言ってるの」
「俺には俺の目的があるって話」
 ぽん、と誉が手を叩いた。そのとき、周囲の仮想物体から一斉に蔓のようなものが伸びて、瑠真を巻き取った。
「はっ」
「待ってね。ここから本題」
 誉は言うと、瑠真に向けて膝を摺ってにじり寄ってくる。
「それ、私関係あるの 美葉乃のこと」
「カノへの義理立ては終わったって言っただろ。俺はあの子とは関係なく君に用事があるの。いや君の体、いつの間にか大分高瀬式ナイズされてて助かるよ。干渉しやすい」
 瑠真は迫ってくる誉を目線で威嚇した。
「縛り上げて何が用事よ」
「なんだろうね。これを話すのは初めてかな」
 誉は傍に腰を下ろして微笑む。友人としてお近づきになりたいとでも言わんばかりの微笑みだった。
「俺は君を見つけたときから、カノとはまた違う理由で君に興味を持っていたんだ」
 その微笑みを、口調を、瑠真は吐き気がするほど憎らしく感じる。瑠真のペアが絶対にしない表情をした同じ顔。
「三月の協会戦。君は神名春姫の力を身に借りて戦ったね 俺はその時から、君を個人的に追っていた。カノを通してね」
「……」
 そんなこともあった。だが誉はそれをどこから見ていたのか。わざわざ相槌を打ってやる義理も、問い返すほどの好意もない。
 誉は瞳を三日月のように細めた。
「いやぁ、ちょっと閑話休題してからにしようかな 自己紹介ができなきゃ寂しいもの」
 瑠真は自己紹介など望んでいない。だが誉も勝手であるのは百も承知で話しているのだろう。少年はあぐらをかいた膝の上にひじをついた。
「俺、もう死んでるって話は春ちゃんか望夢くんから聞いてるよね だったらどうして成仏できなかったんだと思う 瑠真ちゃんって幽霊信じる」
「今、いるんだから、それしかないでしょ……どうしてなんて知るわけない」
「俺に未練があったんだよ、結局。この世界の行く先にね」
 瑠真の小声の反抗に構わず、誉はゆっくりと言った。
 手元に持った数珠を弄っている。虎の模様のような色をした数珠だ。
「いや、理論的には春ちゃんが流し込んだ不老の神の力が俺の肉体を消しても存在を維持したとか、色々言いようはあるかもしれない。だけど俺の目線からしたらそう。俺は長いこと、『無』と呼べる時間の中で俺の魂が輪廻できない理由を考えていた」
 話の、意味は分からない。ただ、幽霊でしかなかったはずの誉の重量感が目の前で膨らんでいくようで、怖気をおぼえる。
「俺は殺される前、春ちゃんに少しだけ期待してた。旧弊した高瀬式が情報統制できる時代はとっくに終わってた。だからその後継を作るのはきっと俺たちとは違うものだって。
 だけどきっと俺も少し夢を見すぎていたんだろうね。彼女は結局、神さまであるよりも一人の女の子だった。俺は正直、それに失望してしまった。そうなるだろうと思ってたから、俺は高瀬式の精神が存続するよう望夢を残したんだけどね」
 誉は、瑠真の知らない長い時間をあまりに全て把握している。それが話術なのか、事実なのか。瑠真は、ブラックホールに浮かんでいるような錯覚にとらわれる。
「望夢の父親の篝は感知系がとにかく強くて、死人の俺と普通に話せた。だから俺はさっさと奥さん作って息子にも感知教育をするように言った。篝自身はちょっと古い男だったから、あまり春ちゃんと渡り合えそうにもなかったのだけど。生まれた息子は狙いどおり霊感が強かったから、俺はその霊感が薄れない子供の頃のうちに、ことあるごとに高瀬式の精神を囁きかけておいた。だから望夢の育て親は直球で俺みたいなもん」
「高瀬式の、精神……」
「俺はこの世界を自由にしたいのさ」
 誉はこともなげに言った。
「しがらみに囚われ、欲で傷つけ合い、己が正しいと思う者が殺し合う世界を救済したい」
「できるわけない。何カミサマみたいなこと言ってんのよ」
「俺、仏教徒だよ。そこはよろしく。西洋の神さまの考え方とはまた違うと思うな」
 瑠真に宗教の違いなどはわからない。ただ睨み返すと、誉はとん、と自身の胸を叩いた。
「とはいえ世界をより良くしたいという想いに貴賤はないからね。ヒイラギ会の子たちのことも普通に応援してる。『みんな望んだものが手に入って、みんなハッピー』」
「もっと無理よ。わかってて言ってるの? そんなの成り立たないでしょ」
「そう、でもだから君も聞いているだろう あの子達は、みんなを幸せにして、その瞬間世界を終わらせたいんだよ」
 誉はくつくつと笑う。それは朗らかで、子供の悪戯を愛おしむ祖父母のようにさえ見えた。
「死ぬ瞬間幸せだなんて、なんて幸福」
「……勝手に押し付けないでよ、そんな理想」
「ああ、そういうところが春ちゃんと相性いいのかね 俺は個人レベルで行える救済手段の一つだとは思うけどね。まあ、個人レベルじゃない視点でできることを、本当は神の力を持つ春ちゃんに望んでいたのだけど」
 瑠真の激高を、誉はこともなげにいなして頬杖をついた。
「ここで話題を戻って、ヒント。春ちゃんには『神の力』がある。俺は高瀬式の旧支配者。高瀬式が春ちゃんと仲良くなかったのは知ってるよね」
「……」
 瑠真はとっさに話題を辿った。何のヒントだ 内容は当然知っている。だから何だ。
「春ちゃんにある『神の力』。俺はそいつで殺されたから、分析サンプルは十分。やろうと思えば干渉操作することができる。ただ今あの子の力は、半分うちのご当主の協会式能力維持に使われている。『契約』だね。春ちゃんの憎き高瀬式に首輪をつけて自分の支配下に置こうっていう、あの子なりの復讐」
 これも事実としては知っているが、それを誉がどう解釈しているかなどは知らない。春姫が私情で望夢を使っていることはなんとなく知っているつもりだった。
「その『契約』のデータもちゃんと手元にあるのさ。斎くんが頑張ってホムラグループに流してくれたからね。俺たちはそれをホムラグループから拾ってる。
 有り体に言えば、俺も同じ契約ができるってコト」
 誉はそう言った。
「……待ってよ」
 じわじわと、脳内で話が繋がり始める。世界を救済したい誉。望夢と春姫の間にある契約。
「何、する、気」
「それを今説明してるんだってば。俺は春ちゃんに神の力を渡して後悔した。その未練が俺をここまで生かした。望夢は俺の救世主になり得る視点を持っているけれど、今のところ春ちゃんの犬で、世界の上に立つ覚悟も持ってない」
 誉はひらりと手を挙げ、人差し指を立てた。講釈する優しい先輩のような口調だった。
「神を降ろすには、新たな神を産むのが一番いいと思うのさ」
 その指が瑠真に向く。
「なに……」
 息をつまらせる瑠真の、胸に誉の手が這う。びくりと全身を強張らせた瑠真の胸元に、誉の、霊体の手が、『入り込んだ』。
 本人も言うように仮想空間技術で作られているだけの体だ。痛いはずも、感触があるはずもない。なのになぜか生命の危機を感じる。触れられてはいけないものが触れている気がする。
「望夢は君のことが好きだからね。君が力を持てば、春ちゃんの時よりその制御に必死になるだろう。それが目的だから、別に俺は君自身のことはどうでもいいわけ。とはいえ俺を悪魔として生かしてくれたカノへの義理はあるしね それに、俺は人を一人使うなら、その心に敬意を払わないことは本意に反する」
 誉の声がガンガン響く。それが心理的効果なのか、既に何か異常が始まっているのか瑠真は理解できない。
「タイミングが今だったことにも必然性はあった。まずは君が治癒の能力を得たこと。その願望の根底にあるのが『戦える力がほしい』であったこと。俺はその気持ち、よくわかるよ。眼の前にある世界に触れられないのはもどかしいものな。君の場合それが戦いという概念だった。極めつけに今、とやかく言う大人はみんな太平洋の海の向こう」
 誉の手は、最早とっぷりと手首まで瑠真の胸に埋まっている。身体の中で熱が暴れ狂う。平衡感覚が上下左右どれもわからなくなっていく。
「君はとても、とても強くなるよ、瑠真ちゃん」
 誉の声が、まるで身体の繋がりから直接伝わるように聞こえる。
「壊れても、傷ついても戦い続けられるだけの力が手に入る」
 その言葉は。
 誉には伝えたことのない叫びのはずで。知っているのかなんて、今更問うのも馬鹿らしく。
 耳元で、吐きそうなほど望夢とよく似た甘い声が囁いた。
「君の願い、叶えてあげる。一緒に終わろうぜ」
 その日、フラッシング・メドウズ・コロナ・パーク西部では崩落事故が起こり、ニューヨーク地下のメトロ路線まで会場の一部が落下した。
 偶然試合中でそこにいた少年が一人巻き込まれた他は、試合相手のアメリカチームも無事に引き上げ、現在は救助・捜索活動に当たっているそうだ。
 それ以降の瑠真の記憶はない。
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2023-11-14
【zshingoの日記】
【気まぐれ日記】
晴れ。午前七時四十五分、アラームで目覚める。強い、眠気を感じる。(昨夜は、二時半頃眠ったから)顔を洗い、歯を磨く。ハーバードと胸に書かれた赤い古着のニットに、グリーンのミリタリージャケット(胸にPEACEマークの缶バッチをつける)、ユニクロの色落ち加工したブラックデニム、バンズのスリッポンでアパートを出る。昨夜、近所の野良猫に与えた刺し身を食べているか?確認。完食。今日は、診察。そして本日、午前十一時から、天神のタトゥーショップで足に、フランケンシュタインのタトゥーを入れる予約をしているので、デイケアには参加しない。歩きながら、「涙くんおはようっ」を久しぶりに聴く。ミニストップにより、朝飯を買おうと思ったが、診察までの時間があと二十分しかないので、断念する。結局、コーラだけ買い、ミニストップをあとにする。九時、診察。診察終了後、処方箋をとりに、受付に行く。受付で、処方箋を受け取り、たまったデイケア通所代を支払う。2500円。徒歩で地下鉄へ向かう。天神に到着し、タトゥーショップの予約時間まで、まだだいぶんあるので、街をブラブラして時間をつぶす。特に、やることもないので早いが三十分前にタトゥーショップ(ビルの中)へ行くが、まだ開いてない。Tumblrに投稿する写真を適当に撮り、時間をつぶす。(実は、こういうどうでもいいところに、アートになりそうな物や壁のシミ、面白いポスターなどが貼ってあるのだ)五分前に、タトゥーショップの、若い男性スタッフが開店の準備をはじめる。男性スタッフに挨拶して「今日は、宜しくお願いします」と伝えると、男性スタッフは、不思議そうな顔をする。なんでも、今日の私のタトゥーを入れる時間は、夕方五時からのはずではなかったか?と言われる。しかし、私が、午前十一時からの認識と伝えると、中で確認するので少し待っていてくださいとの対応。中で、確認後、やはり、五時からですよと言われる。そう、多分、十七時と十一時を、私が聞き間違えていたのだ。仕方がないので、タトゥーショップをあとにする。ジュンク堂書店の前を通ると、古本市の張り紙。しかし、その日は平日で、デイケア通所の日なので行けない。ジュンク堂書店の中に入り、一階の奥の方に進む。赤瀬川原平著「路上観察学入門」という本に目がとまる。面白そうなのでインスタに投稿。続いて、ジッドの「狭き門」、「LGBTとキリスト」という本をインスタに投稿。二階へ上がると、ワニの図鑑らしき本を発見し、これも面白そうなので投稿。ジュンク堂書店をあとにして、H&Mへ向かう。レディース、メンズどちらもくまなくチェック。特に、欲しい服は見つからず。腹が減ったので、昔からよく行くラーメン屋へ行く。ラーメンいっぱい390円。しかし、私が食券を買ったのは、餃子白飯ラーメンセット。680円。食べ足りないので替え玉。勿論、バリカタ。130円。タトゥーを入れる五時まで天神で過ごすには、まだ時間がありすぎるので一旦帰宅。アパートに着き、たまった洗濯物を洗濯する。シャワーを浴びる。排便。眠気が襲ってきたので、洗濯機がまわっている間だけ仮眠。洗濯機が止まったので、外干しし、再び天神へ向かう。カッパのナイロンジャケットにカッパのジャージパンツにバンズのスリッポン。天神の、マツキヨで点鼻薬を購入。1800円。五時までまだ時間があるので、ドン・キホーテへ意味もなくふらりと立ち寄る。三十分前になったので、タトゥーショップへ向かう。タトゥーの針の痛みを和らげるため、バファリンを服用。五時から入れはじめて、入れ終わったのは八時四十五分。かなり、痛かった。(足は痛くないだろうと勝手に思っていた)しかし、カッコよく入った。帰りの地下鉄に乗ると、かなりの混みよう。しかし、たまたま、前に座っていた女性が運良く降りてくれたので、空いた席に腰掛け、ブログの日記を書き始める。電車内、男の子が、ママにダダをこねて大声で叫んでいるのが耳障り。書いている日記に集中できなくて、せっかく思いついた文章がどんどん記憶から飛んで行く。あまりにもうるさいので、一瞬、車両を変えようか?と考えたが、せっかく、座れたのに、別の車両に行くとまた立たなければならない可能性があるじゃないか。どうしようもない状況になり、だんだん、男の子に苛立ちを覚えはじめる。結局、その親子が途中で降りてくれたので、日記に集中する。日記が書き終わらないうちに、最寄り駅に着いてしまったので、書きかけの日記を保存して、電車を降りる。晩飯を買いに駅近のローソンへ入る。数点、食材を買い物かごに入れ、最後にパンを買おうと思い、パンのコーナーへ行ってみるも、どれもショボいパンしか残っていないので、買い物かごに入れた食材をまた、元あった棚に戻してローソンを出る。結局ローソンでは、何も買わなかったのだ。近所のセブンイレブンに行き、カレー味のカップヌードル、タルタルフィッシュバーガー、コーラ、タバコを購入。アパートに帰り、イソジンでうがいして晩飯。テレビをつけるとマツコ・デラックス。タトゥーを入れた箇所から、血と膿が出てきているのでシャワーで洗い流し、メンソレータムを塗り、ラップで巻いて、養生テープで補強する。久しぶりに、ミスチルの「ヘブンリーキス」と「ロードムービー」を聴く。日記の続きを書く。
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shukiiflog · 9 months
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ある画家の手記if.46 告白 冷泉慧鶴視点
海の横の崖を沿ってしばらく歩いたところに三階建ての一軒家がある。 潮風でも劣化しにくいように作られた頑丈な、洋館風の白く燻んだ屋敷。
自然の中で見晴らしはいいが交通の便なんかを考えれば不自由この上ないからまわりには人家一つない。とっくに錆びて形をなくした小さな物置が放置されてる程度で、本当になにもない。 街に出るには防風林を通らないといけない、その森に遮られて街の方からこの家は見えない。 崖の鋭く尖った硬い岩場に足をかけながら寒風に吹かれてコートのポケットに両手を突っ込む。 こんな場所で両手を塞いで歩いたら、少し岩場に足を取られて転んだだけで体を支えられずに致命傷だ。よほど歩き慣れてないと危ない。 実際それで死んだ人間もいる。そういうことになっている。 家の前まできたところで、鍵がかかってないのを知ってるからノックだけして扉を開ける。 だれも迎え出ない家。それでも人はいる。 「…」 まっすぐ進んで入っていった部屋の一番奥のベランダに、そいつは立っていた。こちらに背を向けて、手すりに乗せた両腕に顎を乗せてる。 「…学と瑪瑙は?」 「テレピンがなくなったと言って、買い出しだ 」 「相変わらず騒々しい街中は嫌いか」 「そうでもないさ」 こいつは、自分がくつろげるお気に入りの空間ではそれほど人を圧するような嫌な空気を出さない。 そういう数少ない場所の一つがこの自宅だ。 「…どういう仕組みで今ここに以前と同じように居るんだ?」 「さてね。俺に刑罰を与えるより一つでも多くの作品を作って欲しい人間のほうが、力ある者だったのか なにも知らないよ」 学と瑪瑙が名廊の家に見舞いにきたとき、だいたいのことを話していったらしい。別にこいつの口から聞くことにこだわらなくてもいいか。 俺がコートのポケットの中の手を握りしめるとそいつはようやく振り返って体ごとこっちを向いた。 家の中だからいつもの防寒はしてない、あったかそうなゆるい大きめのニットをざっくり着てデニムを履いている。大柄だし彫刻をやってるから体はしっかりしてるけど、引き締まってて腰は細くて、服装とあいまって一見穏やかでおとなしめの知的な印象だ。 実際それも完全に嘘とは言えないからたちが悪い。 「今週中には日本をたつよ。もうここは暑い」 「…一生帰ってこないほうがいいんじゃないか」 「そういえばお前の家は警察方面とも縁が深いんだったか」 それは事実だけどだから俺になにか特別な力があるわけじゃない。 もう何年も前にここにいてどうしようもなくなっていた名廊を連れ出すときも印籠みたいに家名を振りかざしてみたがそれが大した意味を持たないことも分かってた。 俺にできたことはこの家のバスルームに鎖で足首を繋がれて放置されて意識の朦朧としていた名廊をなんとか立たせて裸の体を毛布で包んで車に放り込んで連れ帰った、それだけだった。 その時もこいつはおろか誰も俺の邪魔をし��かったし、さも勝手に連れていけと言わんばかり。挙げ句の果てに繋がれた足首の鉄の輪には鍵が外れないようになる仕掛けすらもなかった。力を入れて回したら簡単に外れた。外れない仕掛けより外して逃げる発想のほうを相手の頭から潰す。こいつはそういう奴だった。 「相変わらずお前は俺を敬わないな」 「たかが数年自分より年食ってるだけで敬えるかよ。さっさと日本から出ていけ。……二度とあの二人の周りをうろつくな」 首をかくんと手すりの外にひっくり返すように天を仰いで言い返される。 「うろつくな?傑作だ。誰も愛せない、誰からも愛されたくない、あれだけ人と寄り添うことを怖がって逃げ隠れしていた慧が。あの二人だけは何か他の人間と違うような気がした?可哀想に。」 「あんたには関係ない」 仰向けた首を元に戻して俺を正面から見据えた眼鏡の奥の目が優しげに笑った。片手が俺の顔の近くに伸ばされてきて反射的に腕でそれを思いきり弾き返した。 「………慧。お前はその両耳のピアスさえなければ完璧だというのにな」 「…だからピアスしてんだよ、下衆野郎」 それ以上何も言わず、その場を後にした。
少し離れた道路に停めていた愛車に乗って名廊のマンションに向かう。 今回の件について俺が関わったのは、名廊に電話で香澄を見ててくれと頼まれた、あれだけだ。あの後少し気になって学に電話で確認して、事態の重さに気付いたものの、俺が動く間もなくほんの数日でなにもかも収束した。名廊一人ではこうはならなかった。 見舞いに行くタイミングをずらし続けて今日まできた。 そろそろ逃げ隠れするのをやめないといけない。 インターホンを押すと二人とも部屋にいてすぐに迎え入れてくれた。 「冷泉、いらっしゃい」 もう少しまだ調子を崩してるかと思ってた名廊は案外血色のいい顔で穏やかに扉をあけて俺を部屋に入れた。 「おう。長居する気はねえよ」 「ちょっと暑そうだね、黒手袋」 「これでも一応オールシーズン使っていい品だぞ」 リビングにいた香澄は三人分の飲み物と茶菓子を用意してるところだった。 「先生のお口に合うか分からないけど…」 そういって飲み物を並べる香澄の目先に土産のとらやの羊羹を下げた。 「こんなもの久々に買った。せっかくだから俺も食っていっていいか」 香澄にそう言った俺の隣で名廊が若干おたおたする。いつも俺が人前で食事するのを避けてるからだ。 とりあえずソファに三人とも腰掛ける。 名廊と香澄が隣り合って、名廊の向かいに俺。 座るときに羽織っていたコートを脱いだら名廊が目を見張った。それもそうか。俺も黒いハイネック以外の首まわりをはだけさせた服は久しぶりに着た。慣れなくて首筋がまだ少し寒い。 「ーーー冷泉、」 「その話はあとでな。…それより、二人とも体のほうはもうさわりないのか」 「…うん。治療がいるような怪我はもうないよ。痕だけまだ残ってるけどね」 「痕、ね……… 見せろ。」 そう言ったら目の前の名廊がきょとんとした顔をして、俺が黙っていたら、時差でだんだん焦り出した。 「い、や… 冷泉は…見ないほうが…?」 俺が人間の生々しさを感じるものが苦手なのを知ってて戸惑ってる。 「いーから見せろ。背中全面やられたって情香から聞いたぞ」 ソファから立ち上がると手袋をはめたままの手で名廊の片腕を掴んでこっちに背中を向けさせる。 「えええ、ちょ…何、慧、え、か、香澄…」 散々言葉を噛んだ挙句自分で決められなかったのか名廊は隣の香澄に視線を送った。 「先生には知っててもらってたほうが心強い気がする。直人が嫌じゃないなら」 あっさりとした顔でそう言った香澄のおかげで名廊は渋々シャツのボタンを外して片方の腕だけ袖から抜いた。 露わになった背中全面に走る悪趣味な言葉。 「………」 名廊はすぐにシャツを羽織って傷を隠した。 「ーーー少し洗面所借りるぞ」 それだけ言ってリビングから出ていった俺の後ろ姿を心配そうな名廊の視線だけがついてきた。 洗面台で水を出して顔を洗ってたら切れ切れに聞こえてきた。 ーーー潔癖症なんだ ーーー人前でものも食べないし手袋がないと触れない ーーー僕のために首を隠してくれてた ーーー血とか体液とか 気分悪くして吐いちゃうんだ 香澄に当たり障りなく説明してやってるらしい。 どれも別に隠してない。旧知のやつは知ってて気遣ってくれるくらいだ。 一度手のひらですくった水を口に含んで軽く口をゆすいだ。 乱れて落ちてきた長い前髪をかきあげながらリビングに戻ろうとして、途中の廊下でよろけてそばの壁に手をつく。 …気分が悪いんじゃない。 そのままその壁に背をついて床に座り込んだ。 開いた両脚の膝の上に腕を乗せて、腕に額を押しつけるようにして全身で脱力してうなだれた。 「ーーーーっ、先生…!」 服を着なおしてる名廊に言われて様子を見にきたのか、香澄が俺を見つけるなり俺の隣に膝をついて顔を覗き込んできた。 まだ顔があげられない。 「先生、吐きそうならトイレに案内…「いや、…大丈夫だ、…」 たったそれだけの言葉を言うだけでも声の震えが隠せないのがわかる。 隣で香澄が困惑してるのもわかる。 今回の件があってから今日ようやく二人の姿をこの目で見られた。 ーーー二人とも無事だった。 どっちも死んでおかしくなかった。 あの男を人間として軽蔑してるが見くびってるわけじゃない。 関われば誰かしら犠牲が出る。 もう今までに何人見知った人間をなくしたか。 「…、今度こそ、………失くすかと…、…」 顔を上げられない。 張り詰めていたものが切れたみたいに目頭から点々と床に安堵の涙が落ちた。堪えようとして手袋をはめた手を握りしめる。嗚咽を嚙み殺そうとして背中が震える。 俺は直人一人に人生をかけて寄り添うことのできなかった人間だ。直人がいくらそう望んでも、望まれることが怖かった。 自分の気持ちが俺を怯えさせることに直人は傷ついた。俺がそれにただ耐えようと眩暈を受け入れて許したせいで、直人は俺を傷つけて、それでお互いに心身ともにボロボロにしてしまった。 俺から離れていったスラムで直人はあの男に目をつけられた。 そのまま引き取られた先のあの家で取り返しがつかないほどあの男に認知を歪められた。 その全部を俺のせいだなんて思ってるわけじゃない。 それでも直人には誰かと寄り添いあって生きていける素養は充分にあった。 今回のことは奇跡に近い結末だ。 それでもこの二人からすれば奇跡ではないんだろう。 ここまで積み上げたものが結果を成した。 「ーーー」 一度腕に目を押し当てて涙を服に吸わせてから顔を上げた。 俺の隣でただ膝をついて黙って屈み込んでる香澄の顔を見上げる。俺より少し背が高い。 嵌めていた手袋の片手を抜いて、赤みがかった髪の上から頭を撫でた。想像より柔らかい髪だった。 香澄は少しだけ目を大きく開いたもののじっとしてる。 その頭を軽く叩いて微笑ってみせた。 「直人の人生に、お前が居てくれてよかった」 そう口にした時、また一筋、片目から涙が頬を伝って落ちた。 「香澄…?どうかし…っえ、慧?!吐きそうなら僕ゴミ箱もって…「いい。やめろ。なんでもねえ。」 しばらくして様子を見���きた直人に慌てられて、今度は違う意味でなんとなく脱力してうなだれる。二人して同じような反応しやがるな。 手袋をはめ直して少しぐらつくのに耐えながら立ち上がった。 そのまま、リビングには戻らずに玄関に向かう。 「…帰るの?」 「おう。妙に騒がせて悪かったな」 「……まだ、運転しないほうが…。僕のベッドで少し横になってから帰ったら?」 他人のベッドに横になれたら苦労しねえよ、なんて返しながら玄関の床で靴を履く。 つま先で地面を叩いて乱暴に靴に足を押し込みながら、懐から名刺を一枚とりだした。 名廊のななめ後ろで俺を少し心配そうな顔つきで見てた香澄の頭の上にそれを絶妙なバランスで乗せた。 「香澄。お前な、俺に興味ないのは知ってるがそろそろ名前くらい覚えろ」 「え。……えっ、」頭の上からヒラヒラ落ちる名刺を空中でなんとかキャッチしながら返事が出なくて縺れる様子に笑った。 「べつに今から呼び方無理やり変えろとまで言わねえよ。ただ名前も通じねえんじゃいざってとき力になりようがねえからな」 「…………慧。…あの。その服…」 もう帰ろうとする俺に名廊が指をさしていった。コートは腕に抱えてまだ着てない。俺が着てる、襟ぐりのゆったりした涼しげな服を指してる。 「ーーーもう俺の首と背骨に目眩なんてしねえだろ?」 しばらく名廊は嬉しそうな寂しそうな複雑な表情を浮かべてから、隣の香澄の頭を自分のほうに引き寄せるように撫でて答えた。 「うん。ありがとう」 そのまま部屋を出てきた。 今頃部屋で香澄になだめられて直人がめそめそ泣いてるのが目に浮かぶ。 それもまあ今回こそ、おあいこってことで。 車のハンドルに手を置いて、エンジンをかけた。 そういやバカ高い羊羹食ってくるの忘れた。
続き
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yanashin-blog · 10 months
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Security is always important
Hey! What in the world is going on with Japan's cyber security!
I can't live in Japan without feeling safe!
I'm just now seeing this news, and I'm very angry.
📰 China hacked Japan’s sensitive defense networks, officials say
🔗 https://www.washingtonpost.com/national-security/2023/08/07/china-japan-hack-pentagon/
Now, I started writing a sentence from a comment that was suddenly rough.
However, I would like you to calm down and think about it. Japan may seem to have a high level of security awareness at first glance. But don't you think that is a defensive security?
For example, when developing a system, once something is created, it is not changed. Therefore, security problems caused by external factors due to changes are
security problems caused by external factors due to changes are often taken, right?
Yes, it is so-called "Shioduke (塩漬け)", mothballing.
The means of attack against computers are becoming more and more diverse. This is not for me to say now, but I think everyone understands this as an indisputable fact.
This is the result of this fact, although the government keeps saying that we need to focus on cybersecurity. I would like to see the government do what it says it will do.
Let me say something with a touch of irony. The Japanese government is always late. The Japanese government is always late.
Well, so much for the grand ironic ice-breaker, what I want to tell you today is this.
"Walls have ears. Doors have eyes. (壁に耳あり障子に目あり)"
I think everyone knows this famous proverb.
The term used to be used about conversations between people. But times have changed. We now live in a computer society. And these computers are connected to the world via the Internet. It is not too much to say that everything is exposed to the world.
This saying is true for your system and your computer.
Security is always important. And you can never lose money by taking too many security measures. It is too late after an incident has occurred. I hope that you will take measures as early as possible on any given day.
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503rd-graffiti · 1 year
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【SS】(無題)
※これは夢日記を辛うじて読めるものに成形した何かです※ 人の夢を聞かせられるほど意味分からんことないって言われるけど、本当にそうだなぁ!って笑える暇人様だけご覧ください(笑)
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BGM:https://youtu.be/2q962vYlwKI
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目の前には鉄格子の森。カンカン、と音を立てながら鉄製の足場を歩いて行く。 夜の帳はとっくに下りていたが、電灯の明かりが点々としているのでそこまで暗くはない。 歩くのは細い一本道。何かの工事中か、鉄製のパイプが縦横無尽に張り巡らされており、奥はこの道よりもずっと暗くなっていた。 そんな鉄ばかりの森を抜けると、視界は一気に開ける。 工事現場もどきを貫くような一本道は余程大きな建物の真ん中に作られたのか、鉄格子郡の端が全く見当たらず、どこまでも続くかの様に広い道が左右に伸びているだけであった。 そんな建物は崖ぎわの高所に作られており、目の前の開けた場所へ歩を進め下を覗くと平凡な街並みが窺えた。視線を上げて辺りを見渡せば、装飾された街灯が並んでおり、道や腰壁はレンガ造りで少々洒落た雰囲気を醸し出していた。 そんな場所に1人、こちらに背を向けて下界の街を眺める姿がある。 「……あの。」 話しかけるなというオーラに対し、勇気を出して声をかける。しかし、その影は背を向けたままピクリとも動かなかった。 「……あの!」 しかしこちらも負ける訳にはいかなかった。 彼女に会う為に、ここまでやってきたのだから。 「聞こえてる。でも僕は君に用が無い。」 影が振り向く。 黒髪のボブヘアから覗く、いくつものピアスが銀色に煌めいている。黒のコートに黒のパンツ、黒のブーツ。全身黒づくめでまさに影のようだったが、瞳だけが赤色に瞬いていた。そんな姿は一見すると小柄な男のようにも見えたが、声は女性のそれだった。 「どうしてまたここに来たの。君にはもう会わないと言ったのに。」 およそ感情といったものは一切感じられず、氷のように冷え切った声音がこちらを貫く。 「わ、分かってる。あなたが私を連れて行く気が無いってこと。でも。そ、それだけで諦められる筈が無いじゃない!私は、私はきっとあなたの助けになれるから!」 震える体を押さえつけて、必死に呼びかける。 しかし彼女は冷たい視線を送るだけで何も答えない。 次の言葉を必死に考えていると、彼女が不意にこちらへ向かって歩き出した。 「それは何度も聞いた。そして何度も言った筈。 僕に君は必要無い。君には何もできはしない。 そして、」 言葉を区切ると、こちらの横をすり抜けてあの一本道へと進んで行った。 「もう二度と会わないとも。 でもそれは良い。僕がここに居るのは今日で最後だ。 ここにも用は無い。以降、君が僕を見かけることは無いだろうから。」 そして闇の中へ消えて行く。 だが、それで終わらせられてしまうほど何も準備をしていないこちらでもなかった。 「し、知ってたの!今夜、あなたがここから居なくなるのを。だからここに来れば会えるだろうって!」 私は駆け出した。 ここは一本道。彼女の姿はすぐに見えてきた。 「私に何もできない?そんなことないんだから!きっとあなたの助けになる。きっとあなたを助けられる! 他の誰にもできなくても、私なら、私ならあなたを救えるんだから!!」 彼女が振り向いた瞬間、その胸に用意してきた装置を叩きつけた。 「お、まえ……。」 ガチャン、と足場に倒れ込む彼女と私。 暴れ出さないように馬乗りになって、装置の起動準備に入る。 電灯の明かりに照らされ、二人の顔が露わになった。 それは機械でできた相貌だった。 顔面の半分は皮で覆われ、人間のような見た目をしていたが、もう半分、顎全体は鉄の骨子がそのままになっている。 彼女も、私も、機械人形だった。 「そ、んなことをしても、無駄。君に、は、できない。 もう、君は、」 「うるさい!うるさいうるさい、黙って! すぐに直してみせる。私にはできるんだから!!」 そう叫びながら、装置を起動させる。 耳障りな機械音をたてながら装置によって彼女の胸のパーツが外れると、彼女という筐体の中身が曝け出されることとなった。 そして彼女の眼球のライトは消え失せ、顎も開いたまま動かなくなる。 「大丈夫、直せる。大丈夫、大丈夫。私なら、直せる。私なら、私なら、私なら……」 うわごとのように溢れる独り言にも気付かず、持ってきた道具で回路の中身を一心不乱に掻き回す。 だが、その複雑さもさながら壊れているはずの場所も特定できず、目の前にはもう戻すことができない程ぐちゃぐちゃになった心臓回路の残骸が散らばっているだけだった。 「う、そ。なんで。私なら、できるって。私なら大丈夫って。そう。そうなのに。 どうして、どうして、どうして……?――。」 女の機械人形はふらりと立��上がった。 道に転がる機械をそのままに、来た道を戻る。 明滅する電灯。夜明けはもうすぐそこまで来ていた。 徐々に明るくなる道を歩みながら、彼女は一点を捉えながらぶつぶつと呟く。 「あと少し。あと少しで辿り着く。彼女は今日行ってしまうから、きっとあそこに居るはずなの。 大丈夫、私なら彼女の役に立てる。私ならあの子を助けてあげられる。私なら、私だけが。」 一本道を抜ける。 朝日がかかる街並みが下界に広がっている。 勿論、そこには誰もいない。静寂だけが支配していた。 「あア。あ、あなたは知ってたのね。 わた、わたシも、ここ壊レてたってコと、を。」 開けた視界に突き進んで行く。 レンガの腰壁にぶつかり、そのまま弧を描くようにくるりと落ちて行く。
朝日はいよいよ世界を照らし出す。 陽光に煌めく鉄格子の森。 どこからかやってきた雲雀の鳴き声が、 森の奥まで小さく響き渡った。
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itokawa-noe · 2 years
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つないだ瞳に空を映して
飛べない鳥と飛び方を忘れた女の子が視界をつなぐ話。
犬と街灯さん主宰「島アンソロジー」参加作品です。(5,197文字/2022年2月27日。2021年7月に書いたものを大幅に改稿しました)
掲載誌▼
『貝楼諸島より』https://inumachi.stores.jp/items/629b082bc359a8797455e6a6
ーーー
 青に夢中だった。家々のあいだや風よけの林のすきまに海の切れ端が見えるたび、飛びたつ鳥につられて空をあおぐたび、予感やら期待やら問いやらが体いっぱいにふくれあがり、居ても立ってもいられなくなった。  名前のせいだと誰かが言った。名前がわたしを遠くにつれ去ろうとするのだと。 「せいじゃなくておかげだよ」お父さんがそう返し、 「おかげというと押しつけがましくなっちゃうけれど」お母さんがこうつづけた。「ツバサっていう名前はね、あなたがどこかへ行きたいと思ったときにお守りになったらいいなって、そんな気持ちでつけたんだよ」  もともとすきだった名前が宝物になった日の記憶。発作のように襲ってくるそれを、寝返りをうって追いはらう。あの日のわたしはもういない。お父さんとお母さんをのせた船と一緒に海に呑まれて消えてしまった。  島じゅうどこにいても届く潮の匂いと波の音のせいで、今のわたしは島どころか部屋すらでられない。面倒をみてくれる叔母さんと叔父さんに申し訳なく思いながら一日のほとんどを布団ですごしていると、細切れのまどろみに何度もおなじ夢をみた。音もひかりもない海の底で空気をもとめて水を掻く。それだけの夢が繰り返されて繰り返されて繰り返されて死ぬまでつづくのかと思いはじめたころ、頭上を覆う黒を切り裂きけたたましい声がふってきた。  海が消え失せ、目をあける。  障子のむこうでジミコッコが鳴いていた。 「小さいころのツバサは、地面をよちよち歩く鳥をみんな『コッコ』って呼んでたの」 「そこに母さんが『土壁みたいに地味な色だから』って『ジミ』をくっつけてね」  耳もとによみがえった懐かしい声は、引き寄せようと手をのばす間もなくぎゃーぎゃーがーがーの大騒ぎにかき消された。ジミコッコは飛べない。その弱みを補うためか常に群れで暮らしている。臆病で用心深く、人家に寄りつくことはない。だから、庭で騒いでいるこれはドンだ。  強気なのか呑気なのか、ドンは人間をおそれない。このあたりを一羽でうろつくジミコッコを見かけたら、それは間違いなくドンだった。助走をつけて跳んでみたり、石段の低いところから羽ばたきながら飛びおりてみたり、空を飛びたがっているのだとしか思えない奇行がしょっちゅう目撃されているものの、カモに似たずんぐりとした体が地面を離れることは決してない。  身のほど知らずで鈍くさい、ばかなドン。そのドンのわめき声が、頭からかぶった布団も耳をふさいだ指もつきぬけ鼓膜をびりびり震わせる。たまらずわたしは飛び起きた。 「うるさい!」  が、ドンは動じない。ふつうの鳥だったら障子をあけた時点で逃げだしているだろうに、どっしりとかまえたまま、どころか、長い首をかしげて不敵にこちらをねめあげてくる。いらっとして睨み返し、目と目があった、その瞬間――  ぱちん。 ──わたしはわたしを見あげていた。巨人のように、どでかいわたしを。  それだけでもわけがわからないのに、周囲の様子もなにやらおかしい。なにもかもが異様にあざやかだし、見えるはずのない顔の真横や背中のほうまで広範囲がいっときに見渡せて、頭がくらくら目がちかちか、おまけに足もふらふらで、一歩たりともうごけない。なのに視界は移動する。小刻みにゆれつつ、よたよた、よちよち。なんだこれ。きもちわるい。まるで他人が撮影した映像を頭に流しこまれているような――  クワッ、クアッ、クワッ、カッ。変なリズムでドンが鳴く。その拍子と視界のうごきがぴたりと合っているのに気づいて息を呑む。  もしかして、これってドンの見ている景色?  まさかと笑いたかった。だけど、よちよち歩きのテンポといい視点の低さといい、一度そう思ってしまったらもうドンのそれだとしか思えない。  意味不明だし、こんなの困る。  かといって、どうすればいいのかもわからない。  とにかくいったん落ち着こう。自分で自分に言い聞かせ、あらためて視界に意識をむける。ふだんから桃色の首長竜みたいだと思っているウミアオイの花が、足もとから仰ぎ見るとますますもって恐竜っぽい。食べてもくちのなかが苦くなるだけだとわかっているはずのカイシイチゴの実がやたらとおいしそうにみえるし、梢から飛びたったカラスはシンドバッドの怪鳥を思いださせるし……  面白い。面白いけど、どうせ鳥の目を借りるなら空から地上を見てみたい。  そんなことを考えた矢先、ぱちん、スイッチを切ったように視覚が戻った。  げんきんなもので、失ったとたんに奇妙な感覚が惜しくなる。もう一度できないだろうか、どうせならば他の鳥と、と塀のうえを跳ねていたスズメや茂みからでてきたハトを睨んでみたが、うまくゆかない。ドンと試みる。ぱちん、すんなり接続される。  なんでドンだけ? よりによって飛べない鳥と。そんな不満はありつつも、わたしはこの遊びをおおいに気に入り、暇さえあればドンと視界をつなぐようになった。  はじめのうちは、ドンが庭にくるのを待っていた。  じきに待つのがもどかしくなり、自分からさがしにでかけてゆくようになった。  ドンの瞳をとおして見る空はどこまでも高く広く、澄んだひかりに満ちていた。  そのひかりをうけて輝く海もまた美しいことを、わたしは少しずつ思いだしていった。
 今ではもう溺れる夢を見ることはない。島じゅうどこへだってでかけられるし、崖のうえから海を見おろしてもへっちゃらだ。  だけど波打ち際には近づけない。当然船にも乗れず、飛行場のないこの島では試すべくもないけれど、海上をゆく飛行機の類もおそらく無理だ。  島には中学校がない。卒業後はみんな、連絡船で隣の島に通学することになっている。部活はどうするだの早く制服を着たいだの先輩が怖いらしいだの、そんな会話が、わたしが近づくなりぷつりと途切れる。気遣ってくれているのはわかる。わかるけれど、ひねくれたわたしは勝手に友人たちの心の声を聞きとって、勝手に胸が重くなる。  かわいそう。どこにも行けないツバサなんて。
 今日もドンは海をのぞむ崖で飛行訓練に励んでいる。せっかく視界をつないでも、先方が不毛な助走と羽ばたきに飽きないかぎり、見えるのは地面ばっかりだ。わたしのほうがさきに飽きてうとうとしはじめたころ、ようやくドンは翼をたたんだ。長い首をもたげるときのあのしなやかさで視点がすっと高くなり、ひかりをたたえた水平線が眼前にひろがった。  彼方に浮かぶ島影がふだんよりも多いのは蜃気楼のしわざ、のはず。断言できないのは、神出鬼没の島が紛れていることがあると先生が授業で言っていたからだ。ちゃんと土でできていてひとが住んでいるほんものの島なのに、気まぐれに消えたり現れたりを繰り返しながらこのあたりの海を回遊しているらしい。そんなことがありえるだろうか、と、そこまで考え、わたしはぶるぶる頭をふった。  気にするだけ時間の無駄だ。島の外のことなんて。わたしはドンみたいにばかじゃない。身のほどをわきまえない憧れは、自分を傷つけるだけだと知っている。 「こんにちは」  突然背後で声がした。ぎょっとした拍子に、ぱちん、接続が切れる。 「ごめん。驚かせるつもりはなかったんだ」  そう言って笑うのは、泥と草にまみれた登山靴をはいた、知らない女のひとだった。 「誰?」鋭く問うと、 「怪しい者じゃないよ」と双眼鏡を掲げてみせる。「私はただコジカカリを」 「コジカカリ?」 「そうだよ、確かこのあたりに──お、発見!」  獲物にとびかかる猫みたいな勢いで双眼鏡を向けたさきに、ドンがいた。 「あれはジミコッコだし」なんとなくむっとして呟くも、 「変だな」不審者は聞いちゃいない。「なにをバタバタ騒いでるんだろう。怪我をしてるようには見えないけれど」 「怪我じゃないよ、飛ぶ練習。ばかだよね。どうせ飛べない鳥なのに」 「ちょっと待った」  不審者が勢いよく顔をあげ、わたしはびくりと身を引いた。 「この島のコジカカリは飛ばないの?」 「だって飛べない鳥でしょう」 「面白い」 「なにが」 「彼らは飛ぶよ。本来なら」 「え?」 「飛ばないのだとしたら、それは飛ぶのをやめたからだ」 「やめる? どうして」 「気候がよくて天敵がいなくて食べものにも困らない、そのあたりの条件がそろったんだろう」 「そんな理由でやめちゃうの」 「彼らにとって、飛行は別段ロマンチックなものじゃないからね。見た目以上にコストのかかる行為なんだよ。飛ばずに済むならラクでいい」 「それ、鳥に訊いたの」反発したつもりだったのに、 「でも妙だな」相手の関心はすでにドンに戻っている。「環境に合わせた体の変化は、何世代もかけて進んでゆくものだ。この個体の場合はまだ、一般的なコジカカリと変わりなく見える。飛ぼうとすれば飛べるだろうに、どうして……」  唸りながら観察することしばし。 「うん、わからん」不審者は、ようやく双眼鏡を顔から離した。「敵わないな、彼らには」  悔しがるような口調とは裏腹に、表情は満足げだ。 「そんなに鳥が好き」呆れて言うと、 「君もでしょう」と返された。 「好きかどうかはわからない。けど」考えながら、わたしは答える。「話してみたいとは思うかも」  なんでそんなに飛びたいの。どうして諦めずに挑みつづけられるの。ひとりぼっちで寂しくないの。もしもドンと話せたならば、訊きたいことがたくさんある。 「そう遠い夢じゃないかもよ」 「え?」 「近年の研究で、鳥たちが複雑に発達した言語によって高度なコミュニケーションをとっていることがわかってきたんだ」自分の言葉に自分で興奮���たように、早口になって不審者はつづけた。「一般に考えられているより、彼らは遥かに賢いんだよ。というか人間の尺度では彼らの知性を測りきれないだけで、見方を変えればあちらのほうが賢いのかもしれない」 「冗談でしょう」わたしは笑った。 「冗談なものか」不審者は笑わなかった。「あなたは知ってる? 渡り鳥が何千キロ、何万キロという距離を迷うことなく行き来できるのは何故なのか」  考えたこともなかった。言われてみれば確かにふしぎだ。地図も磁石もつかわずに、どうして旅ができるのだろう。 「知らない。なんで?」 「私も知らない」 「へ?」 「太陽や星の位置、地球の磁気、匂いや地形の記憶、そういった様々な手がかりを段階的に使いわけて旅をしているらしいことはわかってきた。だけど未だに、完全な解明には至ってないんだ」 「じゃあ、本当のことは誰も知らないの」 「今はね。ま、気長に待っててよ。いつか突きとめてみせるから」 「おばさんが?」 「それが私の仕事なんだ」  なにそれ、面白そう。  声には出さなかったはずなのに、不審者はにやりとした。 「興味がある? だったら一度、梟島に遊びにくるといい」 「ふくろうじま?」 「大学や研究施設が集う学問の島だよ。好きなことに好きなだけ没頭できる、探究者の楽園だ」  行ってみたい。その島、どこにあるの。  前のめりになってくちにしかけた言葉は、だけど波にさらわれた。唇を噛んでうつむきかけた、そのとき。けたたましい声が響きわたった。  びっくりして顔をあげる。視線のさきをドンが駆けぬける。長い首を倒した前傾姿勢で一直線に断崖へ、風を集めるように羽ばたき足もとの地面が途切れるすれすれのところで踏み切って大空へと飛びたった、と見えたのは束の間のこと、わずかな滞空の後、真っ逆さまに墜落してゆく。 「ドン!」  目の前で波が逆巻き息が止まる。視界がつながったのだと自覚するより早く海面が迫る。悲鳴をあげることもできずに凍りついた直後、  落下が、止まった。  吸いこまれるように海へと落ちていた視点が、一転、上昇しはじめる。ぐんぐんのぼり、中空に達するとなめらかに滑りだし、後方に見えるわたしと不審者のすがたがみるみるうちに遠ざかり―― ──あとにはただ、一面の空。 「ね、飛べたでしょう」滲んだ景色の外側で、不審者の得意げな声がする。「それにしてもえらい勢いだな。どこまでいく気だ?」  どこまでも、どこまでも。あれほど水平線のむこうに焦がれていたのだ。もうここには戻るまい。  今にも離れんとする指をつかみなおすように、わたしは瞳に力をこめた。こみあげるものを押しころし、瞬きをこらえ、ドンの見ている色をひかりを焼きつける。  ずっとそうしていたかった。だけどやがて、瞼を支える筋肉が震えだし――  ぱちん。  いつもの音が鳴りわたる。同時に胸で、なにかがはじけた。 「え、ちょっと、どこ行くの?」  不審者の声を背に走りだす。吹きあげる風を体で切りひらいて前へ前へ、海岸までの坂を駆けおりサンダルをぬぎすて砂を蹴りあげしぶきと踊る、つもりが引き潮に足をすくわれて、波打ち際ですっ転んだ。  ずぶぬれの砂まみれで寝返りをうつ。視界がぜんぶ空になる。  風が鳴る。水がひかる。  さえぎるもののない青にむかって、わたしはおおきく腕をひろげた。  この名前でよかった。  ひさしぶりに、そう思った。
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shukiiflog · 11 months
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ある画家の手記if.4
「ーーーーうっ、く…」 耳障りな嗚咽と一緒に戻してしまったものをぼんやりと見て、それを水で流してしまいながらふらふらと立ち上がる。 口元をタオルで拭いながら部屋の隅までいってベッドの脇に崩れるように座りこんだ。 こうしている場合じゃないな、と時計を見て時間を確認する。 もうそろそろ病院は昼食が済んだかな。
最近はいつも頭の中が忙しなくて、沢山の人声がこだましている。 もっと静かだったはずだ、僕に関係ない音は僕にまで届かないもので、目の前にいる誰か以外の声はしなかった 目の前にいないのなら誰もいない、僕に見えないどこかにいることは僕には関係がなかった そして静物は喋らなかった。僕の世界はずっと静かだった。
ーーーー直人が ーーーー死んじゃったかと思った ーーーー怖いよ
うん お前の言うとおりだね
「聞いたよ。退院にはあと一ヶ月かかるんだって?」 「うん…大袈裟だよね」 「そう言わずにのんびりするんだね」 「のんびり……。」 香澄は怪我と心的外傷も加味して一ヶ月間ほど病院にいることになったそうだ。 本人はそれをあまり有難そうにはしていない。 とりあえず寝かされた個室の中にはまだ香澄の私物は一つもない。 「要るものがあったら僕が買ってくるよ」 「あ、財布……俺のアパートに少しなら「くだらないことを気にしてないでちゃんと休みなさい」 「う……。」 入院費も僕が払うつもりだ。面倒だから貯めすぎないように情香ちゃんにプレゼントを買ったりして使ってきたけど貯金はそれなりにある。 「なにか欲しいものはある? そういうことは僕より彼女のほうが手際よくしてくれるかな」 「彼女…」 「この前会った子。可愛い人だったね」 「…俺、あの子とは別れたんだ」 「いつ?」 「この前、直人の部屋に泊まってったあと…かな」 「…どうして?」 香澄はなにか言おうとしてやめると、少し考えるようにどこか遠くを見た。 「………………フランケンシュタイン…」 「ん?」 「………あ、あの、買ってきて欲しいもの、一度読んでみようかなって」 「いいよ、買ってこよう。でも少し怖いかもしれないよ、眠れなくなったりしないかな」 「俺は直人みたいに怖がりじゃないよ」 二人で見たホラー映画。 春の夜。なぜだか香澄は電気を消すし、たまに映画も見ていなくて上の空だったりして僕ばっかり画面を凝視して怖がっていた。 あの頃香澄がなにを考えているのか僕は知らなくていいと思っていた。 「香澄があんな厄介なものを持ち込むからだよ、見ないわけにもいかないじゃないか」 「…嫌なら嫌って言わない直人も直人だよ」 「お前は……」 だんだんふてぶてしくなってきたね。 前より俺は好きだけどね。 上着のポケットに手を突っ込むと指先に触れるものがあった。手にとってポケットから出してみる。 タバコの箱とライターだった。 「直人、吸うんだっけ」 「ああ、いや…僕のじゃないよ」 友人のものだ。ここにくる前に少し寄ってきたそこで ーーーーおめでとう ーーーーお祝いに一箱あげる ーーーー吸えばいいのに、似合いそう 壁を見回すとすぐに目に入ってきたタバコのマークに斜線の印。流石に病室では吸えないか。 ポケットに二つをしまい直すと、本を買ってくると告げて香澄の病室から出た。 廊下を出てこれまで意識したこともなかった喫煙所を探して歩き回る。 ようやく見つけた狭いスペースに入り込んで、タバコの箱をトントンと軽く叩いて拙い動作で一本取り出して口にくわえる。 ライターだけなら油絵の具を溶かすためによく使ったからその要領でくわえた先に火をつける。 ジリジリ焼けて白くなる先端を見ながら煙を吸い込む「っ、」思わず噎せて軽く咳き込む。 喫煙所の中でこれだけ不慣れで挙動不審な喫煙者もいないだろうな。 でも口内に広がる匂いも味も好ましいものだった。 それを暫くの間そっと、緩やかに喉に通していった。
本屋に行って、指定された本以外にも香澄の暇つぶしにといくつか余計な本も買い込む。 隣にあった花屋で病室にそのまま置けそうな花がないか見ていて、なんとなく気になったものを手にとる。 鉢植えは入院患者には縁起が良くなかったんだったかな、詳しくないので構わず買ってしまった。
「はい、ご指定の本と、一冊じゃ味気ないかもしれないから全然違う本も混ぜたよ」 香澄は礼を言って紙袋を受け取った。 手に下げていたもうひとつの紙袋から、サイドテーブルに僕は5センチほどの小さな鉢植えを置いた。 「………サボテン?」 「うん。香澄が寂しくないように」 ベッドで身を起こしている香澄は自分の横に並んだミニサボテンをじっと見つめている。 「…………」 「…………」 「………邪魔になったら捨ててもいいから」 あまりに無言で長く凝視する香澄を見て思わずつけ加えた。 「……直人…タバコ吸ったの?」 うーんやっぱり匂いが残ってたか。僕にはとても誤魔化せそうにないので白状する。 「少しだけ……。なにか、したことないことをしてみようかと思ったんだけど…」 手近なもので済ませすぎた気がする。今更、幼稚な発想だなと思わなくもなかったけど ーーーーおめでとう 「41年前の……今日が、  僕の生まれた日だ」 香澄はなにも言えずにいる。僕が、あまりにも言葉に似つかわしくない億劫で気鬱な空気を出してしまっている。 それでも続ける。呼吸が浅くなるのを感じながら。 「……正確な日付は、戸籍ではあと少し先だ。出生届を出すのが遅れて」 生きるか死ぬか曖昧なところを生まれてからしばらく彷徨っていた。 「僕が産まれたことを………喜ばない人も………」 ーーーこんな話、息が苦しくなるだけでこれから生きていくのに関係ないと思っていた。 過去なんて語ってもつまらない、まるで僕がなにかを赦されたくて言っているだけのようで心底気分が悪い。 でも毎年この日から誕生日までの短い間、僕は必ず体調を崩す、それを隠しながらここへは通えない。 ずっと上っ面だけ傷つけ合わない優しい言葉を交わしていたかった。香澄はそんな風に振る舞う僕をそのままにしておいてくれたけど ーーーーーそれじゃ寂しいと、僕の中の何かが騒ぐようになった。 「ひとが…産まれてくることが怖くて、僕は……」 「怖くて…それだけで命を……奪ってしまったことも…………」 取り返しのつかないことをした。 赦されたいんじゃない、受け止めて欲しかったのでもない、ただ話すのが困難なことを、煙を喉に通すよりずっとずっと困難なことを、僕が先に口にしなければ香澄もきっと永遠に口にすることはないだろう。 引っ掻かれた肋の爪痕がじわりと痛む。 ベッドの上、香澄の目の前に腰かけて香澄を囲むように手をついた。 「僕は……お前にも同じようなことを強いてるんじゃないんだ」 僕が吐いた分と同じだけお前も吐けなんてことを言ってるんじゃない。そんなことは望んでない、ただ 「教えてほしい…… お前のことが、知りたいんだ」 「お前はどうして僕に優しくしたの?」 僕には優しくなかったそれを、お前はどうしてただ繰り返したんだ 僕を見ていれば分かったはずだ 相手の姿を無視してまで、お前がしようとしていたことはーーーいつから始まったんだ? 「…………」 ベッドの上で両膝を抱えて、首を項垂れると香澄はそのまま身を強張らせた。 僕は香澄のほうへ腕を伸ばして、自分の体にタバコの匂いが染みついていることに一瞬躊躇ったけれど、香澄の体をそっと上から包み込むように抱き締めた。
続き
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