防虫対策 VOL 5: 防虫剤
みなさん、こんにちは。
防虫対策シリーズも蚊と感染症をテーマに、
VOL 1 日本脳炎 と VOL 2 デング熱 で蚊が媒介する感染症について。
VOL 3 鎮痛剤 と VOL 4 経口補給 ORS で感染症の対処療法について。
今回のVOL 5 : 防虫剤 でやっと防虫対策にたどり着き、最終章となります。
虫害には寄せ付けないための対策が重要となります。
蚊を寄せない工夫や防虫剤などの使用です。
防虫剤としては蚊取り線香などによる散布型と、
禁忌剤として身体への直接塗布型の対策があります。
【蚊にさされやすい特徴】
蚊の習性としては、二酸化炭素密度の高い場所や
周りより温度の高い場所へと向かってきます。
足の臭いも好むことも解ってきました。
体温、匂い、二酸化炭素濃度の高いところへよってきて
吸血するターゲットを探しているのです。
体温が高く、呼吸回数が多い人。
普段は蚊に刺されない人でも、激しい運動や飲酒後は
刺されやすい状態となっている場合があります。
足の臭いが好きなので、足元に寄ってきます。
黒い服は熱を吸収しやすいために温度が高くなり刺されやすく、
白い服は熱を吸収しにくいので刺されにくいです。
蚊は明るさと暗さのコントラストで識別しますので、
縞柄(ボーダー)は特に刺されやすいです。
濃淡がはっきりする縞柄が特に、蚊が寄ってきます。
【足の臭いで寄ってくるのは?】
足が臭う主な原因は雑菌です。
足にもともと潜んでいる常在菌が、
汗と混ざった皮脂や古い角質、垢などの汚れを分解すると、
臭いの元となる物質ができます。
その物質は、納豆にも含まれている「イソ吉草酸」と、
酢っぱい臭いがする「酢酸」の二つです。
足にひそむ常在菌は本来悪いものではなく、
皮膚の表面を弱酸性に保ち、守るという役割があるのですが、
増えすぎると臭いのもとになってしまうのです。
この、足特有の臭いである「イソ吉草酸」という物質が蚊を誘引します。
「疲労臭」
疲労が体に蓄積されると、肝臓や腎臓の働きが弱るため、
本来尿として出てくるはずのアンモニアが血液によって全身を巡り、
皮膚から出てくるようになります。
特に立ち仕事などで疲れた足は血行が悪くなり、
下半身に血液と老廃物が溜まりやすくなります。
そのため、毒素のアンモニアが老廃物として排出され「疲労臭」が発生します。
足の臭いの原因の一つに「精神性発汗」もあります。
緊張する局面になると汗の分泌量が増え、結果的に臭くなります。
また、ストレスが溜まることで上述の「疲労臭」の原因にもなります。
ストレスによる「疲労臭」は、デオドランドスプレーなどでは消えません。
充分な睡眠やストレスを溜めないことなど、抜本的な解決策が必要です。
【足の臭いの改善法】
洗浄が基本です。
ボディソープは保湿成分が含まれているものが多く、
成分が汗や蒸れの原因になる場合があります。
垢すりや、ナイロンタオル等は皮膚を傷つけやすいので使用せず、
石鹸で手洗いしましょう。
足専用や、殺菌石鹸などもオススメです。
*ミョウバン
ミョウバンは、殺菌効果や制汗作用があるので、
ミョウバン水に足をつけたり、霧吹きスプレーに入れて塗布します。
ミョウバン水は500mlに20gのミョウバンを入れて撹拌します。
*重曹
足の臭いの素となる雑菌であるイソ吉草酸が酸性のため、
アルカリ性の重曹を使用することで中和され、
臭いが消えます。
2~3日試すと効果がでてきます。
洗面器に湯を張り、重曹を小さじ2,3杯程度入れて15分ほど足を浸けます。
ミョウバンと重曹はいっしょにすると効果が無くなりますので別々に。
シューズ自体の臭い対策としては、
シューズを袋に入れて冷蔵庫に保管することで、
臭いの原因菌を抑えます。
冷蔵庫の低温度では、雑菌が生き残ることができないので効果的です。
シューズのサイズが合わないと汗が増えて臭いの原因になります。
適正なサイズのシューズを着用しましょう。
靴下も洗濯機で洗う前に、殺菌石鹸で除菌してから選択しましょう。
【蚊取り線香】
蚊取り線香は除虫菊が成分で19世紀頃より盛んに使われ始めます。
日本でも明治以降に導入されています。
それ以前は、よもぎ、榧(榧)の葉、みかんの皮などを燃やして
「蚊遣り火」を焚いて虫除けとしました。
現在の蚊取り線香の成分はピレスロイド系の殺虫成分が主流です。
除虫菊の成分であるシロバナムシヨケギク(除虫菊)の花に含まれる成分
ピレトリン、ジャスモリン、シネリンとよく似た作用・構造の化合物です。
シロバナムシヨケギク(除虫菊)に含まれる天然殺虫成分を
ピレトリンと呼んでいる事から、
このピレトリンに似た化合物という意味で
ピレスロイドという言葉が生まれました。
即ちピレトリンと合成されたピレトリン類似化合物を総称して
ピレスロイド(Pyrethroids)と呼んでいます。
(株)児玉兄弟商会 パワー森林香 ¥2,052
蚊の他、ブユやアブ、マダニ にも殺虫効果があります。
成分:フルメトリン (30巻入り)
(株)児玉兄弟商会 ¥1,512
パワー森林香の携帯容器です。
通常の線香皿と比べ、煙の量が多くなるよう設計されています。
後ろ側に蚊取り線香を2巻入れられますので、合計3巻持ち運べます。
トレッキングの携帯線香としても使い勝手良いです。
【フルメトリン】
バイエル社のライネル・フック博士らの合成した
一連のピレスロイドの中で,
マダニに対し駆除効果の高い化合物が選別され,
1977年にフルメトリン(バイチコールの有効成分の一般的名称)
の精製と同定に成功しました。
ピレトリンは光、酸素、アルカリに不安定で、
環境中に揮発した後は速やかに分解・失活する短時間作用型の防虫剤です。
人体への影響も少なく、安全性の高い防虫成分といえます。
蚊取り線香の成分として使われるピレスロイドには、フルメトリンがあります。
フルメトリンは天然ピレトリンに比べ、
太陽光下においても安定的であるため、
屋外用の蚊取り線香に採用されているのです。
ピレスロイド系の殺虫成分は、
虫の神経系に作用して殺虫効果を示すものです。
しかし、人を含む哺乳動物に対しては、分解酵素の働きで速やかに代謝され、
尿などで短期間に体内から排出されてしまいます。
そのため、人を含む哺乳動物には安全性が高いといえます。
安全性は人と虫の体重差もあります。
「家庭用殺虫剤」は、このような小さな害虫を駆除するために、
極めて微量な殺虫成分しか使用しておらず、
人は害虫に比べると、数万、数千万倍も体重があるため、
このことからも安全性が高いといえます。
ピレスロイド系殺虫剤の自然界における分解の速さは、
安全性の高さとなりますので、
長時間の効力が必要となる田畑への散布には不向きです。
ピレスロイド系以外の殺虫剤としては、
以下の殺虫成分が挙げられます。
DDT (有機塩素系)
1930年代頃から使用されはじめましたが、
自然界で分解しにくく動物やヒトの体内に蓄積するため、
1960年代から有害性が問題にされ、その後多くの国で製造販売が禁止され、
あるいは生産が中止となりました。
*DDTは環境や人体に影響が高いのですが、
南アジアなどマラリアなどによる被害が遙かに大きい地域では
限定的に用いられる場合があります。
DDVT(有機リン酸系)
ピレスロイドと比較して相対的に毒性が高いため
防除業者用として用いられています。
1995年3月の「地下鉄サリン事件」に使用された
「サリン」も有機リン酸系の化学兵器です。
*有機リン酸系殺虫剤についての詳細は、
一般社団法人 日本中毒学会のウエブサイトをご参照ください。
ネオニコチノイド剤
ニコチンを基本にしつつ、ニコチンの人間に対する毒性を低下させた成分。
タバコが虫や蛇が嫌がることを利用して、
タバコを水に浸けた水溶液を野営地に散布したことがあります。
殺虫剤というよりは禁忌剤でしょうか。
殺虫効果がないものの、虫を寄せ付けない忌避剤があります。
【DEET (ディート)】
忌避剤であり殺虫力はありません。
主に野外活動時に皮膚に塗って使用します。
効力や実績がDEETに匹敵するものは今のところほとんどなく、
虫除け剤に一番多く用いられています。
(株)イクサス 蚊・マダニよけローション ¥1,382
耐水性のあるウォータープルーフタイプの虫除けローションです。
効能・効果:蚊(成虫)、ブユ(ブヨ)、サシバエ、ノミ、イエダニ、
トコジラミ(ナンキンムシ)、マダニの禁忌。
使用方法:首筋や腕、足に直接塗布してください。
成分:DEET (7%)、無水エタノール、ニトロセルロース、ジメチコン、香料)
(株)テラスピュア・C Miracle Pura 強力虫ガードプラス ¥939
成分:浄水、木酢液(広葉樹)、ミントオイル
天然木酢液とペパーミントのダブル効果で虫を寄せつけない
防虫スプレー です。
100%天然成分ですので、乳幼児にも安心して使えます。
ペパーミントの爽やかな香りとさっぱり感は、
トレッキング中のテントで、
足を拭いたり、汗を拭ったり防虫を兼ねながら清潔を保つことができます。
DEET配合の蚊。マダニローションは首筋や腕や足といった
刺されやすい箇所に限定的な使用にとどめ、
全身用の衛生に強力虫ガードプラスを使うと良いでしょう。
札幌の会社が製造しています。
(有)クリエイティブコスメラボ 森で日焼け止め。 ¥2,592
化学物質を配合しない天然成分の日焼け止めです。
ユーカリシトオドラ油、ラベンダー油、ハッカ精油、ヒノキ油などの
虫除け成分を配合しています。
みなさま、防虫対策ブログ、如何だったでしょうか。
みなさまへお伝えしたい内容が膨大な情報量となりましたので、
5回のシリーズに分けてご紹介させていただきました。
そんな情報の中から、かなり省略した内容となっていますので、
もっと詳しく知りたい方は、下記にウエブサイトのリンクを貼っておきます。
参考文献
国立感染症研究所
日本衛生動物学会
株式会社児玉兄弟商会 「よみもの:家と蚊取り線香」
住友化学株 新規ピレスロイド系殺虫剤メトフルトリンの開発
一般社団法人 日本中毒学会 その6 有機リン系農薬
日本医科大学救急救命センター :
教育講演 農薬中毒の診断と初期治療
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