スクエアンノウン.01.始まるよ
【なんか】今から黄色い奴に会いに行く【立てちゃった】
1 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square
というわけで俺の名前は六窓、そしてこれはクソスレ。
何を言ってんのか分からないと思うが俺も良く分かってない。勢いで立てた。
なんていうか、転生。
【体格の良い外国人然とした男と、背が小さく袖の余った学ランの少年、白髪の外国人と特徴的な髪形の外国人がなにやら焦った表情でこちらを見ている写真】
【頭に包帯の巻かれた、特徴的な前髪の赤毛の学ランの男の写真、困ったような笑いを浮かべている】
2 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square
オラオラオラオラオラオラ
【学校の保健室らしき室内で、鎖つきの学ランを着た男と袖の余った学ラン少年がにらみつけてくる写真】
【黒髪のセーラー服の女子を斜め前から見た写真。腕を突き出しているが、肘の辺りで不自然に切れていて、切れた先が何も無いところに横向けに浮いて見える】
【クレープを海苔巻きか何かのように食べ進める赤毛の学ランの少年の動画】
3 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:--------
>>2
もっとくれ
4 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:--------
>>2
な、ないわーと言おうと思ったけどもっと貼れください
5 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:--------
>>2
ガチショタかよどん引き~と思いきやJKもいるじゃねーか!
6 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:--------
>>2
クレープってこんな食べやすい食べ物じゃなかったやろwww
7 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:--------
>>2
セーラー服が違う、やり直し。
8 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:--------
この口のサイズはテンメイですわ……
9 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square
>>3-4
それは今後の展開によるってやつだな
まぁ別に信じなくて良いから適当に付き合ってくれ。
俺のスタンドの名前は「スクエア」
俺が「行ったことのある場所」に繋がる、ネットの窓枠みたいなやつ。最後に行ったのがあんまり昔だと繋げるまでに時間かかる。履歴検索してるみたいな感じだな。最初にネット繋げた時は一晩かかった。1年で1時間かかるっぽい。いつも行くところはすぐ繋がる。
承りに会うまでは「行ったことのある場所ならいつでも行ける程度の能力」とかって呼んでた。
四角い。3セット6個まで出る。だから六窓。浮く。最大2m四方。枠は幅1cm固定。
一応物理で殴れる。結構硬い。裏から見るとガラスみたいに透明。一応「道具型」だと思ってる。
ネットが見れる理屈だが、お前もネットのリンク飛ぶときとか、スレ移動する時「行って来る」って言うよな。窓を開いてる状態で移動していけば、そのまま指先で画面(?)に触れているので「行ったことがある」場所になっていくから、知らないリンク先も見れる。そういう理屈で、「行ったことがある」に該当するらしい。さすがにそっちの世界には繋がらなかったが。
10 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:--------
>>9
えっこの感じで続けんの?
11 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:--------
>>2
てかどこ済み? LINEやってる? 併せしよ?
12 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square
>>10
続くんだなぁこれが
>>11
女の子のことは詳しくは知らん、髪の毛がクソ長い。
ちなみに基本ROMだったから書き込みのちゃんとした要領とかよく分からん。
段々丁度よくなるとは思うが、なんか駄目だったらスマン。
13 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:--------
>>2
人間自体のクオリティの高さがガチすぎだろ
これCGじゃなくて?
14 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:--------
>>12
イッチのレス時空歪んでるやんけ
15 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:--------
>>12
なんでもいいけどあくしろよ
こちとらJOJOに飢えてんだよ
16 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square
>>12
こいつら、生きてるんだぜ…嘘みたいだよな……
>>14
それな
ROM専してないでもっと前から書き込めばよかったと思ったけどやっぱ写真とかねーと転生スレは信憑性なくて駄目か、なんでもねぇ。話に入るわ。
17 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:--------
>>16
なめらかな自己完結
.
.
----伝人視点----
俺の名前は曲木伝人。まがりきつてとである。乙女座18歳。悩みは背丈。145cmしかないせいで、じょうたろうさんじゅうななさい、つてとくんじゅうはっさい。みたいな比較を良くされる。俺に20cmくらいくれ。髪も染めていないし、付けてるアクセサリーと言えば右耳にイヤーカフが一つだけ。
ことの始まりは、花京院が眼鏡をかけていたことだった。
文庫本を持っているだけで、お絵かきもしていない。
思わず横顔を二度見してしまい、何か勘付かれるかと思ったが、この地域に馴染んでいない花京院は俺の行動の違和感を感じ取るまでに至らなかったらしい。承太郎の足をずっぱ切った後、文庫本をポケットにしまって、そのまま階段の下へ降りて行った。
ただの黒い眼鏡といえばそれまでだが、表現しがたいおしゃれな眼鏡だ。日本に来る際になんとなく、というものには見えない。長らく使うことを前提に拘って買ってこそ、というデザインに思える。派手すぎず、けれど地味すぎず。
「7人目とかでも、いや……どこの何でも、見たことが……」
しかし未来の平行世界に助けは求められない。ネットへの書き込みはできるようだが、文章だけじゃあ信憑性が全く無い。よって、未来を知りたければ自分でどうにか彼が始めから眼鏡をかけている話を探すしかない。たぶんそんな話はねぇ。
正史と全く違う展開では俺のスタンドは大分不利だ。大筋くらいは合っていて欲しい。
「おはよう承太郎」
「ああ」
階段下で、もらったハンカチを使いもせずにポケットへねじ込む承太郎へ声をかける。
「2万円もするズボンが破けてんな」
「妙なヤツに会った。恐らくソイツに切られたんだろうぜ」
「前髪が変なヤツか?」
「知ってんのか伝人」
「さっき見た」
承太郎は俺といるおかげでスタンドにもそこまで動揺することもなかったが、何故か律儀に牢屋にぶち込まれていた。
見に行こうかと思ったが、俺が行くと事態が余計にややこしくなること間違いなしなのでやめておいた。
「つーか、お前なんで捕まった? 別に勝手に暴れるとかなかっただろ?」
「……上手く、使いこなせなくてやらかしたぜ」
「ふーん」
「こういったもんは全て、『スタンド』というらしい。」
……史実と違うよりも嫌な王道パターン、修正力様の可能性。
それだけは勘弁して欲しい。何のために俺がこいつのレベリングしてきたと思ってんだ。
下駄箱へ着いたところで、学校の周りをぐるっと確認しておく。この人の出入りの多い時間にどうやって上ったのか。花京院は屋上で承太郎を待っていた。さりげなく医務室の様子も窺っておく。知ってる通り、不良が二人、ベッドの上に居座っていた。
承太郎が『見える』ようになって暫く経つ。あからさまに怪しい動きはできないので、確認はひとまずここまでにして一旦教室へ向かうフリをする。
「俺は医務室に行く。鞄は任せたぜ」
「りょーかい」
俺は鞄を預かり階段の方へ、承太郎は医務室の方へ。花京院がいつどのように医務室へ行くのか分からないため、教室へ向かうそぶりだけはしておく。
そしてしばらく踊り場に突っ立って、スクエアを発現。他生徒から見えないように、承太郎と俺の鞄を袖で隠して直接机に突っ込む。こういうのは変に警戒するから見つかるんであって、堂々とやっちまえば、案外細かいことは気にされないものだ。
「戻るか」
嫌な予感がしたと言えば十分言い訳は通るが、いきなり空間を捻じ曲げての登場は流石におかしい。普通に歩いて戻る。
改めて医務室につなげて承太郎を見ると、ズボンを脱ぐ手前だった。……あれ、ベルト二つとも外しちまうのか? 動き難くないか? 花京院遅くね?
そのまま承太郎がズボンを降ろすかという手前になって初めて、先生が万年筆を振り始めた。
「……?」
展開がおかしい。ハンカチだよ。ハンカチどうした承太郎、受け取っただろ。
承太郎、良いから。お前それ大事なシーンでズボンずり落ちるから見てないでベルト締めろ。
「それじゃあ良くッ! 見て、みなさいッ!!」
俺は自分の手元と不良Aの目の前にスクエアを1セット発現、背面で万年筆を受け止める。
金属がぶつかり合うような音を立て、彼の左目は守られた。
「ヒッ!? ま……万年筆が、空中で止まった?」
「おめーらとっとと逃げな」
「ゲェッ曲木!!」
「テメェー! またなんか厄介ごと引っ掛けてきたのかッ!!」
金属の扉を開けて中に入ると、不良たちから嫌そうな声が上がった。助けてやったのに失礼なやつだ。
「て、テメー、なんで戻ってきやがった」
ベルトを締めながら尋ねる承太郎と、俺に対して酷い濡れ衣セリフを浴びせながらバタバタと医務室から出て行く不良共。
せっかくずばっと登場したのにシリアスが死んでいる。もやつくので、役割を果たしたスクエアを手元でくるくると回転させて落ち着く。
「そりゃあ、無敵の承太郎様がケガをして登校来たとあっちゃあ、嫌な予感しかしないだろ?」
「……そういうことにしといてやるぜ」
「仕留め損ねたわぁ……ねぇJOJOォ……?」
先生が俺たちに向き直る。俺のスタンドでは、流石にこの人を無傷で助けるのは難しい。
難しいが、既に俺は、俺のスタンドでハイエロが急いで先生の体から出なければならない状況を作り出す方法を、考えて準備している。
「あなたはまさか万年筆に見えるなんて、言わないわよねーッ!?」
「う、なんだこの腕力! 女の力じゃあねぇ!」
今度は承太郎の目玉が危ないため、もう一度スクエアを構え、今度は腕ごと別の空間に逸らして助ける。
その隙を突いて、なんとか二人を引き離すことに成功した。
「そのとおり……」
「てめーは……!」
声のしたほうに視線を向けると、眼鏡院が窓枠に腰掛けていた。
……その眼鏡は一体なんだ? ここは花京院が眼鏡をかけている並行世界、またはn巡後だってか? ただ、俺がそんなことを考えている間にも、花京院は余裕たっぷりに説明している。その慢心が命取りだ。俺のスタンドの餌食となるが良い!
「だから! 貴様を……」
「スクエアッ!!」
「なっ何だと!?」
スクエアを3セット使い、校舎の医務室のちょうど上、屋上から地面に向かって突き落とす。
1セットで場所を繋げ、残りの2セットで足元をすくい、胸を殴りつける。スタンドはスタンドでしか攻撃できない。だが、スタンドからは物体に触れることができる。つまり、生身では押し出されているのに窓枠に掴まることができない、というわけだ。
「くっ……! ハイエロファント・エメラルド!!」
スクエアの窓と医務室の外。同時に焦った声がして、先生の口から光るメロンが飛び出してスクエアに滑り込んだ。
「伝人、もしあの緑色のが間に合わなけりゃあ瀕死の重傷だぜ」
「『スタンド』で襲ってくるぐらいだ。このくらいで死にはしねーだろ」
本体をキャッチして外から部屋へ戻ってくるまでのその隙に、気を失っている先生を無人の空き教室へ送っておく。これで騒ぎにはなるまい。
「……私の名前は花京院典明。空条承太郎と、曲木伝人だな」
「あ? 俺のことを……!?」
窓から帰ってきた花京院に、一応驚いて見せるが、想定済みだ。俺は能力者、もといスタンド使いであることを、隠してはいない。
いや、正確には『超能力があるとは言っていないが、能力は積極的に使って過ごして来た』わけだ。俺は普段から、悪いやつらをやっつける、所謂『自称正義の味方』として行動している。その際に、ちょっと攻撃をかわしたり、先回りしたり、道具袋代わりに使ったりする。
そんなことをしていて、ついた通り名は。
「小悪魔曲木。空間を捻じ曲げるようなトリックというのは、その窓のスタンドが正体だったということだ」
なぜ『小悪魔』って?
しんちょうひゃくよんじゅうごせんちだからです(白目)
花京院は自分が劣勢になった筈なのに、まだ余裕な態度だった。
いくら肉の��で操られているとはいえ、2対1、それも、俺のスタンド��はそれなりに長いと分かっているのに、何かがおかしい。そう思っていたが、その答えはすぐに、そして耳を疑う単語で示された。
「サユッ!」
「『サユッ』!?」
「日本に来てから黙りっきりだけど、どうかしたのかい?」
「さ、サユ……?」
この世界、そこかと思った。
だが、花京院は伝説の『サユッ』を叫んだあと、急に電話でもする様に空中へ話しかけだした。単語のインパクトで処理が遅れたものの、イントネーションも多少違ったし、それは人の名前らしいと理解できる。
「君がちゃんと教えてくれれば、彼の攻撃は防げたというのに。……私は無事だから待ってろって? 何を慌てているんだい?」
「誰と喋ってやがる」
「私の親友さ」
聞けば律儀に答えてくれた。親友。確かに17歳の少年には親友くらいいても全くどこもおかしい話じゃあない。だが、こいつは違ったハズだ。
ある筈だった17年の孤独がない。謎の眼鏡、相手は慌てている、日本に来て黙りっきり、『サユが教えてくれれば』防げた? ……まだはっきりとは分からないが、俺と『同じ』でなければ分からない質問をするしかない。
「花京院、『サユ』とやらに伝えろ。お前は『7人目』……いや、『奇妙な冒険』を知ってんのか?」
「しち、奇妙な……? ……フン、貴様に伝言だ。『質問に答えろだと? だが断る。この汚らしい阿呆がァ』だとさ」
「……」
ビンゴ、サユは、俺と同じだ。そして花京院は分かっていない、承太郎にも知らせていない。花京院を死なない程度にぶっ飛ばして、『サユ』の情報を聞き出さなくては。
向き直る花京院は尚も不敵に笑っている。おい、自称正義の味方様を舐めるなよ。
「さて、エメラルドスプラァッシュ!」
「何!?」
だが予想に反して、花京院は先手必勝不意打ち全開でいきなりぶっ飛ばしてきやがった。
スクエアでガードしようにも、承太郎の体格じゃあ、十分なサイズに拡張するのは間に合わない。スクエアを1cm×1cmから2m×2mにするまで2秒。かなり早い方だとは思うが、戦いの場における1秒2秒というのは大分重要だ。
「オラァ! ぐっ!」
弾丸を撃たれてから盾を構えたところで何の意味があるか。やっぱり庇いきれなかった。
承太郎はスタープラチナで多少払ったものの『不意を食らって胸を傷つけ』て派手に吹っ飛んだ。一方の俺は小柄なのもあり、しゃがみこんでスクエアの後ろに収まったことで無傷。
「ほぅ」
「……う、不意打ちたぁな」
「ふむ、初めてスタンド攻撃をもろに食らった筈だが……。ああ、JOJOも小悪魔と共に活動していたんだったな……サユ?」
承太郎がさほど動揺していないのが意外だったのか、足をガクガクさせながらも立ち上がってきたのが目に留まったか、注意が俺から反れた。その隙に俺は触手にも警戒しつつ、スクエアをある場所へ繋げ始めていた。
「承太郎ッ!」
「ああ分かったぜッ!」
「何を……?」
ところで俺は、高校1年の夏は海へ行った。こんな時に何をのん気にと思われるだろうが、俺の能力を踏まえた上で、沖合いまで行って潜って来た、と言いかえれば、意味合いは全く違ってくる。
接続が完了したスクエアの片割れを、花京院の背後に思いっきり広げてやる。
「海水砲!!」
「ハッー!!?」
直径1m四方。水圧で勝手に打ち出される超強力な水鉄砲、いや、水砲台だ。
「……しまっ……!」
「そして裁くのは、俺のスタンドだッー!!」
「お前も直接裁いてるけど」
こちらの方向へ吹っ飛ばされたがために『本体とスタンドの首』をそれぞれ捕まれ、天井まで殴り上げられる花京院。
ちょっとやりすぎた気もするが、まぁ手当てまでの時間は大分カットされるから、大丈夫だろう。とりあえず、俺の足元に落ちたこの気がかりな眼鏡は取り合えず拾っておく。
手に持ってみると、黒というより、透き通った暗い紫色のような色をしていることが分かった。
.
.
----承太郎視点----
青い腕の試運転で殴った道路標識がまさかあんな見事に空高く吹っ飛んで、車道からコンビニの駐車場にすら上がれそうもねぇ、地面すれすれの車高の車にぶッ刺さるとは流石の俺も予想しなかった。直後、当然だが色々とあって、俺はそのまま牢屋に入ることとなった。寝て起きた次の日の朝には、スタンドなりのワビのつもりなのか好き勝手に環境を整えられているやら、そのせいで同室のやつらは怯えているやら、看守は怯えて拳銃をぶっ放すやら。
ようやっと牢屋から出られたかと思えば、朝一番に妙なヤツに絡まれる。何故かそこから場を改めて襲ってくる。一体俺が何をしたってんだ。
血を流して意識を失った花京院を肩に担ぎ、伝人に向き直った。道路標識の反省を踏まえて加減はした。骨が折れたり内臓がやられたりはしてねぇハズだ。
今日はもう学校をフケるとするが、ここからケガ人を手荷物にして街中を歩くのは目立つ。
「伝人」
「ああ、繋げる。お前ん家の、門の影で良いか?」
俺の腹くらいまでしかない身長。
釣り目気味の大きな目は梟のようで、顔の割りに大きな口には、ギザギザに尖った歯が並んでいる。
「さっきの……『7人目』ってのは何だ?」
「俺の、因縁みたいなもんかな」
「因縁」
見栄と希望的観測によって準備したという学ランは、コイツには余りに大きく、裾だけを詰めて着ている。
母親が裾を詰めすぎた結果、短ラン気味になり、ズボンも幅は太めなのに変に短い。それはヒザまであるブーツで誤魔化して、怖いので袖はそのまま。やりたかった訳じゃあないとは言うが、伝人はついに改造制服のまま卒業しようとしている。
「細けーこたぁ良いんだよ。お前の事情と雑ざってるみたいだからな」
「俺が首突っ込んだのか、テメーが首突っ込んだのか分かりゃあしねーな」
伝人とは中学頃からつるみだした。そこから二年も友達付き合いをして、ある日『自分は超能力者だ』と打ち明けられた。
最初はついに中学二年生がかかるという例の病気になっちまったのかと思ったが、違った。本当に見えない板で空間を歪めて、学校から俺の家まで一瞬で送り届けて見せやがった。
それから、正義の味方ごっこをしていることも知った。俺は知ったがために巻き込まれた。その頃からガタイはいい方だったし、反吐が出るような悪をぶちのめすのもまんざらではなく、付き合っているうちに俺も喧嘩は強くなったし、いらない場数も踏んだ。
「言っとくが、俺の運命は百年の眠りから目覚めた吸血鬼退治らしいぜ」
それが今になって必要になってくるとは、話が上手すぎて笑えるくれーだ。
縁側を歩きながら、お互いの事情を話す。
「へぇー……。俺の因縁は二十うん年後あたりで世界が滅ぶっぽいから、なんとしてもそれを阻止しねーとってとこだな」
「俺の運命の規模を軽々と超えんじゃあねぇ」
「しょーがねーだろマジなんだから」
だが伝人のそれは、想像以上に頭の痛い話だった。俺のいない四日間に、こいつはこいつで色々あったんだろう。
直接狙われるようなことはないと言うが、放っておけば人類仲良くお陀仏たぁ洒落にならねェ。
「伝人の方は急ぎの話か?」
「んにゃ、最悪の最悪、滅ぶ直前までに原因の息の根を止めればなんとかなるハズだ。結局そうなる予感しかしてねーけど」
「やれやれだぜ……。てめーはいつも、どっからそんなややこしい話を見つけてくんだ?」
「いやー……なんか、成り行きでそうなる」
ただの善人気取りなら俺も止めた。
そうならなかったのは、こいつが貰うもんをきっちり貰い、一種の商売としてやっている節があるせいだ。正真正銘、自分のためにやってやがる。
「そういや承太郎」
「あん?」
「お前、花京院になんかもらってなかったか?」
「そうだったな」
ポケットの中にしまいこんだままのハンカチを取り出す。
……漢字を間違えていたので、丁寧に破いてゴミ箱へ捨てた。こんな時だってのにまるで危機感がねぇ。
じじいを探し、途中おふくろとも下らないやりとりをして茶室へと向かった。
茶室で花京院を見せると、頭に植わってる肉の芽の説明だとか、DIOとやらは今まで相手してきたチンピラどもとは別格だとかいう話をされた。それを聞きながら、俺は自分のスタンドがうずくのを感じていた。できる、そう言っている気がした。
「……でなければわたしも、この少年のように『肉の芽』で仲間に引き込まれていただろう。『スタンド』をやつのために使わされていたろう」
「そしてこの少年のように数年で脳を食い尽くされ死んでいたろうな」
「死んでいた? ちょいと待ちな。この花京院はまだ、死んじゃあいねーぜ」
スタンドの手で肉の芽を引っ掴む。体内に侵入するというのは聞いていなかったが、気力で無事に引き抜く。そのあとじじいの波紋で灰と化した。
伝人を見ると、柱に背を預けて何かを考え込んでいる。
「な……? なぜお前は自分の命の危険を冒してまで私を助けた……?」
「さあな……そこんとこだが、俺にもようわからん」
「……アッ!?」
「!?」
呆然とする花京院を置いて部屋を出ようとしたところで、急に叫んだ。
何事かと振り返ると、きょろきょろと辺りを見回したかと思えば、まだ頭に穴が開いてるってのにかなり慌てた様子で掴みかかってきた。
「ちょっと待て助けてくれたのは感謝する!! それでっサユリはどこだッ!?」
「サユリ?」
サユリというのは医務室で話しかけていた『サユ』で間違いないんだろうが、まさかあの時すでに一緒にいたとでもいうのか。
「ち、違う、眼鏡だッ! 眼鏡はどうした!? まさか置いてきたのか!?」
「……これか?」
「サユリ! ……よ、良かった……」
伝人が苦笑いしながら袖から取り出したのは、黒い眼鏡。拾っておいたのか今取り寄せたのかは分からんが、考え事はその眼鏡についてだったらしい。
花京院はそれが生きているかのように受け取り、眼鏡を庇うようにそのまま倒れる。
「おい、花京院……?」
「……」
「へんじがない、ただのしかばねのようだ」
「マジに気を失ってるぜ」
無理もねぇ。
花京院は布団で寝かせておいた。
.
.
----伝人(六窓)視点----
でかいテレビのある部屋で、ソファに座りながら暖かいホットミルクを啜る。斜め向かいに座るのがもうちょっと気を抜いていい相手なら、最高だったが……。
「孫がスタンドを扱えずに苦労してると大急ぎで駆けつけたというのに、まさか牢屋でマンガを読んでいるとは思わんかったわい」
「あれ? 承太郎から聞いた話じゃあ、スタンド? が上手く扱えなくて牢屋に入ったって聞いたんすけど」
「……承太郎なら、ベッドの上でビール飲みながらマンガ読んで不貞クサれておったぞ。標識がなんとかと言ったきり、詳しくは何も言わんかったが」
その日の晩、俺はジョースターさんに捕まっていた。
俺が超能力者(ガチ)であることはなんとなく前から知っていただろうから、ぶっちゃけ全く疑わないことはできねーだろう。承太郎と仲良くやってた信頼もあるが、それと同時に、色々と引っ張りまわして危ない橋を渡らせてもいる。100%信じてもらうには、ジョースターさん自身との信頼を詰まなければならない。
「標識……?」
俺に心当たりは全くない。
実は二周目でDIO戦でも思い出したか?
「警察に聞いた話じゃあ、なんでも走行中の車に道路標識を槍投げのように刺して揉め事になったらしい。詳しくは分からんが、あのスタンドを扱えなかったことが原因なのは事実じゃろう」
「道路標識を投げた……? ……?」
つまりどういうことなのかは良く分からないが、まぁ、それは追々聞いてみれば良いか。
「それはそれとして、いくつかお前さんに聞きたいことがあるんじゃが……」
質問タイム、知ってた。
俺はこのナリでも、ひとたび口を開けば人に無条件で信用してもらえるような純粋さも可愛らしさもゼロだし、『小悪魔』が余りにも定着している。いきなり転生の話をしたところでそこまで信じてもらえる気はしない。希望はほぼ見えない。
「お前さんのスタンド、超能力��んじゃが……いつ頃から使えるようになった? 生まれつきか?」
「いえ、俺のは小学生の頃です。ある日高熱が、いや、川で遊んでいたら何かで腕を切って、その晩から三日間、熱を出して寝込みました。それからっすね」
「腕を切った……?」
「はい。で、その時見た夢の中では、鏡のようなものが浮かんで見えるんすよ。始めは意味が分からないし怖かったんですが、その板状のものが、鏡なんかでないこと、自分の中にある像、ヴィジョンであることが分かってきて、なんで分かるって言われても分かるからとしか言えませんが、これは自分だって自信を持ったら、すっかり熱は引いて、自分のものになりました」
因みにその『矢』の欠片は、ちゃんと回収してある。
変に放置して余計面倒なことにするのは不味いし、かといって持ち運ぶのも余りにリスクが高い。だから結局、家の地下に俺だけの秘密倉庫を作り、そこにいつもの武器と一緒にしまっておくことにした。
「生まれつきでなく、後から……? DIOのスタンドも、眠りから目覚めたからではなく、そういう、外部的なことの可能性もあるな……」
ジョースターさんはひげを触りながら推察しだした。案外早く『矢』の秘密に気が付きそうだな。やれやれ勘が良くて困るぜってか。隠すのも変だから話したが、これが後々変に響かないことを祈るしかねぇ。
「ん?」
その時、遠くからチャリンコで急ブレーキをかけたような音がした。
空条邸の前で急ブレーキとなると、俺はちょっと嫌な予感がした。
「なんの音じゃ?」
直後にガッシャァアという派手な音が続く。大胆に乗り捨てたらしい。いよいよ嫌な予感がした。もちろんスクエアを出して身構えた。
「すいまっせェん!! 花京院典明がいるのはこちらでお間違いないですよね!?」
「女……?」
「例のサユリ……ですかね」
「じゃろうな」
花京院の名を唱えた大声は、女のものだった。花京院を探す女といえば、現時点で一人しか思い浮かばなない。彼女が敵か味方はともかく、広い屋敷だ。迷うだろうと思って声のした門へ向かった。が、何故か付いてみるとそこには誰もおらず。軽く塗装が擦り向けてこそいるが、壊れてまではいない自転車が転がっているだけだった。
「い、いねぇッ!?」
「花京院の方じゃ!」
「先に行ってますよ!」
ジョースターさんを置き去りに、スクエアをスケボーのようにして上に乗かった。コッチのほうが速い。いきなり部屋に登場したって良いが、知らないスタンド使いをあんまり驚かせて即死攻撃は絶対に嫌だ。
「あっずるいぞ伝人!」
数秒後に花京院の寝ている部屋へ着くと、縁側に黒いバスケットシューズが脱ぎ捨てられ、部屋の敷居から一本の黒い縄のようなものがはみ出しているのが見えた。
そこから聞こえる声は感極まって何を言っているのかも良く分からなかった。めちゃくちゃ入りにくかったが、意を決して部屋を覗き込む。
「典明助かったァアアアアアアアアアぴんぴんしてるぅううううう!!!!! 異常なし!! 奇跡かっ!!!!!!! うわぁあああああああああ柿ピー無事だァアアアァアアアアアアアア!!!!!!!!」
「あっ……、ど、どうも」
「ああ……。そいつがサユリで良いんだな?」
「ハァイ! 私が『カザミサユリ』にございますけど!? テメェよくも塩水ジェット噴射してくれたなァ!? 典明べったべただぞゴルァ!!」
勢い良く立ち上がり振り返ったのは、俺が拾ったあの眼鏡をかけ、花京院を背に此方を睨みつけてくるセーラー女子。
スカート丈はヒザががっつり出るくらいと今の時代にしてはかなり短いが、下に小豆色のジャージを履いている。そして相対した今、部屋からはみ出していた黒い縄が、縄なんかじゃあなく、ヒザ下まである長い三つ編みだと分かった。テンションについて行けず目線をずらすと、布団の傍に皮製の背負い鞄が置かれている。サユリのものらしい。
「……ですが」
俺が思い切り見上げるほどの身長。170cmはありそうだ。
サユリは攻撃してくるかと思いきや、急に声のトーンを落とし、少しわざとらしく眼鏡をかけ直して、こう言った。
「典明が危うく罪なき市民に対し傷害罪を犯すところを防いで頂いたことには、感謝します」
「んー、まぁ。止めたい、そう思った時、既に行動は終わってるっていうか……」
「そうですか……。ところで先ほどから随分回りを気にしているようですけれど、何を気にされているんですか?」
「何って……」
俺はそんなに分かりやすく動いていただろうか。
サユリは相手の動きを見切ったり、追跡したりするスタンドが使えるのかもしれない。サポート特化タイプか? にしては、こう、本体がでかいな……。
「伝人……騒がしいぜ」
「なんじゃ、敵ではなかったようだのォ」
「花京院の言っていた『サユリ』というものが、こちらに来ているのか……?」
星屑十字軍、全員集合。
開けっ放しは流石に寒い。取り合えず部屋に入り、アヴドゥルさんが戸を閉めた。花京院は布団を畳み、サユリと隣り合って座り直す。そしてやはり、俺のせいであるベタつきを気にしている動作が見えた。すまねぇ。
二人と向き合う四人という構図で、適当に落ち着く。
「さて、私はカザミサユリと申します。風を見るに、小さな百合と書きます。典明とは十年前、小学校へ入ったばかりの頃、お互いの特別な相棒が見えるという縁(えにし)により親友と相成りました」
「ご丁寧にどうも」
「じじいッアホらしいぜ」
サユリはぺこりと正座から綺麗なお辞儀をして見せるが、花京院の目はサユリに冷たい。そして承太郎の目もジョースターさんに冷たい。
何も分かりきった猫かぶりに真面目に対応することはあるまい。
「そして私の能力ですが……」
俺はサユリはサポート型だと推測していたが、彼女のスタンド能力、恐ろしさは、すぐに彼女自身によって証明された。
「空条承太郎、ジョセフ・ジョースター。お二人とも身長195cmとは、やはり大きいですね」
「……!?」
唐突に、『知っていなければ分からない』ようなプロフィールを述べ始めるサユリ。
「ジョセフさん、貴方のスタンドは中距���直接攻撃型、固有能力は探索系。能力が目覚めたのは最近、ということは、能力には伸び代があるかもしれませんね。と、承太郎さんのは、近距離パワー型。パワーに加え、精密動作特化。それと、お2人は首筋に星型の痣、ジョースター家の証をお持ちですね。ああ、それとスタンドの名前を教えていただければ、ステータスをアルファベットで表すこともできますが、まだ名前はありませんか?」
「なッなんじゃと!?」
メモかカンペでも見ているように語る。空中の何もないところをゆらゆらと彷徨う視線は、操られているのではないかと思わせるが、隣でそれを見る花京院は平然としている。
「加えてモハメドさん、貴方は特殊能力の欄に『マジシャンズレッド』の他、『占い』も見えます。占星術師ですね。本物の占い師ということが私の中で証明されました。お店はハンハリーリで宜しいですね?」
「そこまで分かるとは……!」
「おい……スタンドってのはマジになんでもありかよじじい」
「う、むむ……。スタンドについては未知の部分が多すぎる。何せ世間には全く知られておらんし、研究もほとんどされていない……。あり得ないとは言えんのだ」
まだ、俺はこの時点では信じきっていなかった。何故なら、『知っていなければ分からない』プロフィールということは、『知っていれば分かる』ということ。しかしその考えはすぐに打ち破られることとなる。
「そして曲木伝人さん」
「ああ」
他の奴らに比べて、僅かにもったいぶる。名前もフルネームだ。
言われなければ分からないような微妙な間だが、俺にはこの間が『見せてやる』というようにしか感じられなかった。
「貴方の『スクエア』は射程距離C、すなわち10数mせいぜいですが、能力が時空間干渉タイプであるため、射程距離は実質A。そして発動したのは10歳の時。始めは1セットであった窓も、今では3セットと見せていただきました」
「はァ!? 発動時期まで、成長過程まで分かるってかッ!?」
「嬉しそうだねサユ……」
ドヤ顔を決めるサユリの横で、花京院が呆れた顔をしていた。
しかしそのほかのジョースター一行は大分それどころではない。見ただけで個人情報が筒抜けなど、恐ろしすぎる。みんなかなり動揺していた。俺も怖いくらいだ。特に射程距離なんて、3セットフルに手元に出してしまうと一直線に並べた最大の大きさ、つまり12mが限界なのだが、そんな話は承太郎にもしていない。
「まぁ、貴方は随分と私の前で名前を叫んでくれましたし、『私に直接触れて』も頂いたので、結構見えるようになってます、よ」
「直接…………ハッ!?」
「となると、サユリ、テメーのスタンドは……!!」
「そう! 典明が必死で守り抜いてくれた、この眼鏡ですよ!!」
右手を左の肘に、左手を眼鏡の淵に。ズアッと逆の腕の位置で、眼鏡をズイッと持ち上げる。
そんなべらぼうにチートなスタンドがあってたまるか。
いや、花京院が置いてきたのかと掴みかかったりするくらいだ、自分で移動できないのかもしれない。それどころか……もしかすると。
「私の眼鏡はアン・ノウンといいます。能力は先ほど述べた通り。名前と姿があれば、大抵のことは知ることができます。しかし物理的にはかなりただの眼鏡です。スタンドなので象が踏んでも踏めないので壊れず、一般人には見えませんが、人型スタンドがちょっと力を込めて握れば、それだけで私はもれなく死にます。そういうスタンドです」
「ひ、貧弱すぎるのでは……?」
アヴドゥルさんが思わず呟いた。……やはりそうきたか。
例えば似たように相手のプロフィールを知る能力ならヘブンズ・ドアーやホワイトスネイクがある。
しかしその二つはかなり近くまで寄らなければ能力は使えないのに対し、このアン・ノウンというスタンドは、『名前を知る』ことさえ満たせればあとは『見るだけ』で良い。『知識持ち』ならこの上なく有利な能力。更に『一度でも触れる』ことができればもう何でも見放題。ただし、ステータスが余りにも特殊能力に極振りだ。
「……おかしな話だぜ。するってーと、なぜそんな貧弱なスタンドを花京院に預けていた? いつからだ?」
「……持って行ってもらうべきだと判断したからです。……典明、話していい?」
「いや、僕から話す」
「……!」
お前、花京院に話したのか? 思わず声に出そうになった。一体何の話なのかは大体予想がつく。つくだけに、マジかと思った。
花京院はびしっと座り直すと、真剣な顔で口を開いた。
「……サユリと私は、10年の腐れ縁。それ故に、彼女は私の簡単な運命が見える。そして……私は1年以内にDIOによって殺される運命にある!」
「しっ死ぬッ!? 肉の芽は抜いたぞ!? 何故きみが死ななければならない!!」
「そこまでは……分かりません。だが、逃げていては絶対に駄目だと思った。だから、あえて運命の地、エジプトカイロへの家族旅行を止めなかったし、小百合について来てもらったというわけだ」
「……」
「……」
その時、サユリと目が合い、薄く微笑まれる。
ネコを被っているようだが、『余計なことは話すんじゃねーぞ』とでも言いたげだった。
「エジプト、カイロ……?」
「じじい、写真はあるか」
「写真?」
9時間かそこらほどイベントが早まり、承太郎とジョースターさんのスタンド名が決まった。というわけで今夜は解散となったが、俺はサユリに用があるので花京院となんとか離れて欲しい。しかしその希望は、サユリ自身のほうから叶えられた。
「こうして勢いでここまで来てしまいましたが、私はどこへ寝たら宜しいでしょうか?」
「意外だな……サユのことだから一緒に寝るとか言い出すと思ったけど」
「まだ回復しきってない柿ピーと一緒に寝るとかのたまうほど無神経ではないわ。あと1回頭の穴に気をつけつつシャワー浴びて来い。塩落とせ塩」
「ああ、まぁ……。そうだね。浴室を貸してもらえるか?」
「……その『見ました? これがサユリですよ』って顔止めろ柿ピー」
「仲良いなお前ら」
花京院にこれほど信頼できる友がいるというのは既に救われた気になるが、彼女が『運命を見た』通り、まだ死亡フラグは折れていない。
ついでに言うと、あと1人と1匹の死亡フラグも、折れていな���。
「……あー、客間で良いだろ。伝人、2人は任せるぜ」
「俺が案内するのかよ、俺も客人なんだけど」
「テメーはいつも当然のよーに飯食って、自分で持って来た菓子まで食って、挙句布団なんかいらねーとか言ってテレビ前のソファで寝てるじゃねーか。偶には役に立て」
「ウィッス、言うとおりっス、やらせていただきます」
「仲良いですねお2人共」
そんな感じで承太郎とぐだぐだと分かれた後、先に花京院を風呂へ案内し、客間へサユリを連れて歩き出す。
「……んで、やっと2人っきりだな」
「ええ」
一瞬の無言、百年の因縁とは全く無関係、とは言い切れない、奇妙な縁がここにある。
「お互い、守りたい相棒がいるのは分かりきってますから、今更動機の話は良いですよね?」
「ああ、すっ飛ばして構わねーよ」
「承知しました。貴方の背景は大方『見えて』いるので、少し私のことをお話します。私も、生まれつきであることを除けばほとんど貴方と同じです。歳は典明と同学年。伝人さんが前回どこまで生きたのか分かりませんが、私の方が後輩ですね。それと、戦闘面において見えないところを補足するならば、私のことを侮っていると格ゲー女子の様な足で相手の股間を蹴り潰します」
「結構鍛えてんだな」
「ええ、10年前からですから、当然です」
この時代、夜は結構静かだ。そこまで騒がしい施設も近所にないし、空条邸は広く、塀もあるため尚更だ。
後ろ斜め上から聞こえる声に、振り返らずに応じる。
「ここからは簡単に、黄色いヤツのところへ行った結果をお伝えしますが、宜しいですか?」
「良いけど、黄色いヤツって」
「黄色いヤツです。……話を進めますが、向こうサイドに間違いなく『私達と同じ』『奇妙な冒険』を知るものがいました」
「ああ?」
「メタメタしい、私達には良く分かる台詞を使っていました。そして完全に黄色いヤツの味方です。残酷なことを好む性格なようで、3部悪の能力について悪い応用を憂い憂いと語っていましたね……」
「……マジか。ソイツはもしかして、勝った、第3部、完。その後が見たいタイプか?」
「動機については恐らく、としか言えませんが。それと、彼女はペレータと名乗っていましたが偽名でした。黄色いのにすらそう呼ばれているのに、詳しいプロフィールは見えませんでしたから。……筋書き通りだと侮っていては、やられるでしょうね」
思わず舌打ちした。嫌に響いた。
客間はもうすぐだった。
「ただ、貴方も『鍛えてはおいた』のでしょう?」
「既に成立しているフラグを折るために鍛えた訳だ。それを超えて向こうもパワーアップしてもらっちゃあ困る」
「それでも負けるつもりは毛頭ありません。典明は、誰にも見えない友達を、唯一見つけてくれたのですから」
「俺も承太郎には、大分『自称正義の味方ごっこ』につき合わせちまったからな……。俺だって最後まで付き合ってやらにゃあ気分悪いわ」
目の前に迫った障子を開けてやった。
サユリは背負っていた鞄を手に持ち直し、数歩先へ進んだかと、振り返って口を開いた。
「ところで」
「ん?」
「私のプロフィール、最終機密をお見せしましょう。ちょっとかけて見てください」
「最終機密?」
「少し部屋に入ってください。直ぐ終わりますから」
障子を閉めてひょいと眼鏡を外したかと思うと、俺にかけ直した。
サイズが若干大きかったが、すぐに丁度良くなる。スタンドはサイズを変えられるというし、俺のも良く考えたらそうだが、こんなにあっさりと。
「おっ……!? 何だこの視界すげぇ……そして、そして!! こ、この、キチガイスマイルで、四つんばいで這い寄るアスキーアートは!!」
「掛け算、それは魂に刻まれし宿命」
「……Oh、腐ってやがる、早すぎたんだ……」
なんていうか、アン・ノウンで見る世界は凄かった。
サユリの意識が細い白い糸のようになってわしゃわしゃ見えたし、半透明の文字で「風見小百合(カザミ サユリ)」という表示が頭の上に。さらに体の横には年齢性別、数種の格闘技、特殊能力アン・ノウン、など、プロフィールがずらっと並んでいた。そしてそこに、四つんばいで這い寄るあのアスキートもあった。
「最終機密はそれだけど、会話ログもあるからそっち覗いてみて。便利だから」
「いや、最終機密軽く流し過ぎじゃね……? ……まぁ、流してやるけど。ログはどうやって行くんだ?」
「ああ、……アクセス権開けますね」
「今ちょっと花京院に接するノリだったか?」
「それはだって、典明以外に私の眼鏡を使える人なんていなかったものですから」
音は聞こえなかったが、錠前のアイコンが目の前に出てきて、それが独りでに開いた。
次に出てきたのはパソコンでよく見るウィンドウ。中央に入力できそうな横長の四角がある。まるで俺のスクエアだった。
「ではアカウント名を決めてください」
「アカウント」
「パソコンとゲームが基礎になっている能力ですので。……今のアン・ノウンは大分機能解禁、拡張してあるんです。10年がかりで育てました」
「あー……。なら、英語で『Square』で」
「畏まりました。次にパスワードを入力してください。貴方なら脳内でキーボードを想像すれば直接打てると思います」
「分かった」
パスワードを打ったあと、エンターを押すイメージ。
みごとに*マークが並び、画面が溶けるように消えた。
「やはり才能ありますね」
「スタンドも窓だからな」
そのあと会話ログを見せてもらい、なるほど前のやり取りが遡れるのは便利だと分かったし、アン・ノウンを借りていれば小百合に視覚共有できる上、会話ログの窓を小さくして表示を小百合だけにすれば、離れていても小百合とのやりとりができる。花京院の『サユッ』の秘密はここにあったのだ。が、俺はここで気づいてしまった。
「……なぁ」
「はい?」
「俺のスクエア……ネットができるんだ」
「ええ……見せてもらいましたが……?」
「それは『行ったことがある』に該当するからだってのも見たか?」
「見まし…………あっ」
小百合も気づいたようだった。
そう、ここでようやく、全ては繋がる訳だ。
「で、俺、さっきお前に聞いたよな? 『どうやって行くんだ?』って」
「聞かれましたね」
「俺は今から、スクエアをアン・ノウン、会話ログへ繋げるぞ」
「私は今から、ID『Square』との重複ログイン状態をロックし、外部アクセス機能を作成します」
.
.
152 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square
長くなったけど、そんな感じ。
以上。第3部冒頭の回想、完。
153 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:--------
……回想、完じゃねーよ……
154 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:--------
もっとざっくりでも良かったんやでwwwww
155 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:--------
わりと静かにしててほぼ一人でこの進みwwwwww
156 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:--------
IDってそういう
157 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known
いや寝てないんですかwwwwwww
六窓先輩何してるんですかwwwwwwwwwww
うけるwwwwwwwww灰塔戦どうする気ですかwwwwwww
158 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:--------
話なげーなと思いながら誰も止めないwwww
159 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square
だって会話ログとってあるんだから詳しく書けるだろ?
書いてたら長くなっただろ? みたいな?
ってサユ来ちゃったとか今何時だ?
160 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known
>>159
ウォッチ☆
お外は明るいですよ☆
161 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:--------
>>157
162 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:--------
>>157
まじか、二人目の過去からの刺客かよ
163 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square
>>160
もしかして:朝
164 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:--------
>>160
もしかして:朝
165 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known
もしかしなくても:朝
166 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:--------
くっそwwwwwwwww
167 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:--------
お前らwwwwww
168 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square
じゃあこうしよう!
お前にスクエアで俺の手首預けるから、柱の(ような)男の所まで着いたらモーニングコールして!!
169 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known
灰塔戦は六窓先輩の能力がないと乗客の安全が厳しいので駄目です。
大事ことなので二回言いますが、駄目です。
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