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#2017年世界一周半の旅
ari0921 · 2 months
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和六年(2024年)8月2日(金曜日)
   通巻第8351号 <前日発行>
 ハニヤ暗殺の謎は深まるばかり。イスラエルの関与はあったのか
  イスラエルの目的はハニヤの政敵=シンワール殺害だ
*************************
 2024年7月31日、ハマスの最高指導者ハニヤがテヘランの「居宅」でボディガードとともに暗殺された。すわ、イスラエルの仕業かと誰しもが反応しただろう。ところが、真犯人はわかっていない。
過激派内部の内ゲバの可能性も否定できないことは前号でもみた。
 イランの最高指導者ハメネイ師は「イスラエルへ直接報復をせよ」と呼号した。ハメネイ師は「イスラム共和国の国境内で起きたこの悲惨で悲劇的な事件を受けて、復讐するのは我々の義務だ」と述べた。
「犯罪者でテロリストのシオニスト政権は、我が国の親愛なる客人を殉教させ、我々を悲嘆させたが、自らに対する厳しい処罰の土壌も整えたのだ」と主張した。
イランのマスード・ペゼシュキアン大統領は「イラン・イスラム共和国の領土保全、名誉、尊厳を守り、テロリスト占領者に卑怯な行為を後悔させる」と誓った。
 イラン革命防衛隊(IRGC)も、イランとその同盟国による「厳しく痛みを伴う対応」でのぞむとした。「ハニヤ暗殺はシオニストの犯罪者、殺人者、テロリスト集団が、国際ルールや規制を一切考慮せず、ガザでの9か月に及ぶ戦争の恥ずべき失敗を隠蔽するために、いかなる犯罪行為も躊躇しないこと」を示していると述べた。
 またイランの国連大使は「暗殺は米国とイスラエルの連携のうえで行われた」と批判した。
モスクワはこうして危険な趨勢に警告し、報復がつづけば中東全域を巻き込む戦闘となり、世界大戦に発展する危険性があるとした。
かくして暗殺関与を名指しされたイスラエルだが、ネタニヤフ首相は7月31日、テレビ演説し、パレスチナのイスラム組織ハマスやレバノンの民兵組織ヒズボラなどの親イラン勢力に「壊滅的な打撃を与えた」と強調したもののハニヤ暗殺に関しては言及しなかった。
ネタニヤフ首相は国民に対し「困難な日々が待ち受けているが、あらゆるシナリオに備えている。いかなる脅威にも断固として対応する」と呼びかけた。
 ▼中国の和平仲介努力は水泡に帰した
 ハニヤ暗殺の一週間まえ(7月23日)、中国の王毅外相はパレスチナ自治区で反目し合うハマスと自治政府主流派のファタハの代表、他に12のパレスチナ過激派の代表を北京に招いた。
中国の仲介で「ガザ地におけるイスラエルとの戦争の終結後、占領下のヨルダン川西岸とガザ地区に暫定的な『国民和解政府』を樹立する」という提案に対して各派が同意した。 
この会議は北京で3日間にわたって開かれた、パレスチナの過激派、14グループが参加したことは画期的であり、中国の外交力の表れだとも言えるだろう。
しかし率直に言って、各派は、中国の顔を立てて、何回も反古にしてきた紙切れに署名しなおしたに過ぎない。
実際には同じ合意が2017年10月にエジプトの仲介によってカイロでなされたが、その後の進展は何もなかった。
王毅としては「中国の外交成果だ」と宣伝したいところだろう。中国はイランとサウジアラビアの関係修復を仲介した『実績』もある。
中国外務省の毛寧報道官は「中国とパレスチナは信頼できる兄弟であり、良きパートナーだ」とし、中国はパレスチナの結束と和解に向けて「すべての関係者と不断の努力をする」と述べた。
2007年にハマスがガザ地区からファタハを追放して以来、両グループは対立を解消できていない。
ハマスは30日になって声明をだし「各派閥の和解に向けた中国の取り組みや、これまでの「パレスチナの大義に対する賛同姿勢、大量虐殺の阻止」を称賛した。
しかし北京の和平会談では停戦達成に向けた取り組みや、イスラエルの攻撃によって引き起こされた「悲惨な人道状況」、中国によるガザへの人道支援の強化などが議題になっただけだった。
中国のパレスチナ支援は、毛沢東時代からである。「民族解放」運動を支援するため、パレスチナ人に武器を送った。ガザをめぐって中国政府高官や習近平国家主席までが、パレスチナの独立国家の必要性を強調してきた。北京でアルール(ファタハ代表)は、中国によるパレスチナの大義への支援に感謝した。
ハマス政治部門幹部はイランの首都テヘランで記者会見し、ハニヤ暗殺を受け、パレスチナ自治区ガザでの戦闘を巡るイスラエルとの停戦交渉に意味がなくなったと訴えた。
 北京の『努力』にかかわらず中東の安定にはほど遠い。
 第一にガザを支配するハマスとヨルダン川西岸を統治するパレスチナ政府とは、口もきかないほどに反目している
第二にアッバスに対しての批判はパレスチナ全体に根強い。
第三にハマスの内部はセクトに分かれ、お互いが対立しており、とくにイスラエル撲滅を叫ぶ強硬派と人質解放を和平の交渉手段としたハニヤとは先鋭的な対立関係にあった。ハニヤはカタールを拠点とし、人質交換などの交渉をイスラエル側と展開してきた。カタール政府もハニヤを支援してきたのだ。つまりイスラエルにとってはハニヤ殺害の動機はあっても、現時点ではメリットが薄いのである。
 
▼だれがハニヤのテヘランの隠れ家を知っていたのか?
 さてハマス指導者の暗殺である。
 7月31日、ハマスは「最高幹部イスマイル・ハニヤ氏が殺害された」と発表した。同日早朝にイランの首都テヘランにあるハニヤの滞在先が「そらからの飛翔体」(ドローン?)で攻撃され、警護の1人も殺害された。ハニヤはガザ地区にはおらずカタールの首都ドーハを拠点としており、イランのマスード・ペゼシュキアン新大統領宣誓式のためテヘラン入りしたのだ。
 ハニヤはガザ地区のシャティ難民キャンプの難民の家庭に生まれた。イスラム大学在学中から政治活動に携わり、ハマスに関与した。1980年代後半にイスラエルで数回逮捕され、投獄された。ハマスの創設者兼精神的指導者シェイク・アハメド・ヤシン師につかえ、ヤシンが暗殺されると、2006年にパレスチナの「首相」に選出された。
2007年にハマスがクーデターでガザ地区を制圧し、ハニヤが事実上のガザ支配者となった。2017年にハマスの政治指導者となってカタールに移住した。ガザ地区のハマス軍司令官であるシンワールとハニヤの間には個人的な対立があった。
 ハニヤはハマス指導部内で穏健派とみなされ、イスラエルとの長期フドナ(停戦)を支持し、1967年の国境内にパレスチナ国家を樹立するという解決策に同意するとさえ述べていた。同時にハニヤはテヘランに接近することを選び、それが「パレスチナ人の戦略的奥深さ」であると説明し自らの立場を固めた。
 
1993年の「オスロ合意」以後、ガザ地区が拠点の「ハマス」と「パレスチナ・イスラミック・ジハード」活動し、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区はファタハが統治するという色分けが出来た。
PLO主流派「ファタハ」傘下の「アル・アクサ殉教者旅団」はイスラエルで自爆テロを相次いで実行した。「ハマス」以外にも、「パレスチナ解放人民戦線総司令部派」(PFLP-GC)、「エルサレム周辺のムジャヒディン・シューラ評議会」(MSC)なる謎の組織がガザ地区に出現した。MSCはハマスの分派とみられる。
ヨルダン川西岸地区では「獅子の巣窟」と自称する新たな組織が出現するなどした。
 このほか、「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)、ISILを支持する「エルサレムのイスラム国支持者」など謎めいる組織が出現した。過激派セクトの相互不信と対立も、見落としがちな視点である。
▼ガザのハマス軍事指導者シンワールがイスラエルの暗殺目標だ
 
 ハニヤはガザ地区指導者とは異なった外交アプローチをしていた。
 たとえば2024年5月23日、アフガニスタンのタリバン代表団がテヘランを訪れ、カタールの首長と同時にハマスのハニヤと、このイランの首都で会談しているのだ。
タイミング的にはライシ大統領(当時)がヘリコプター事故で死亡した直後だった。
専門筋は、ハマスはイランとタリバンとの関わりを可能な限り最小限に抑えようとしているとし、逆にテヘランはハマスとの絆をより強めようとしていた。ガザの軍事的なハマス指導者シンワールの考え方では、たとえ銃撃戦で夥しいガザ住民が犠牲になろうとも、イスラエルとの戦争をできるだけ長く続けることにある。この点でハニヤとは対立しており、またイランはハニヤの扱いに苦渋の様相だった。
イスラエルのガザ攻撃によってハマスが外交上の得点をあげたのは事実である。アイルランド、スペイン、デンマークなどが「パレスチナ国家を承認する」と決定したが、米国内でもパレスチナ支援が急激に増えていた。ハマスはむしろハニヤによって国際的孤立か抜けだそうとしていた。つまりハニヤが鬱陶しい存在となったのがガザの軍事指導部シンワールと、イランである。
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canty-essay · 8 months
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考えてみる、サバイバル
              
                                  
 今年は元日に突然携帯の地震を知らせるアラームが鳴り出し、ギョッとなった。まもなく、能登で大きな地震があったことを知った。本当にいつどこで地震に遭うのかわからない今日この頃だ。日頃の備えが大事というが、どんな備えをすればいいのだろうか。どうすれば、自分や家族や周りの人の命や財産を守れるのだろうか。
 「サバイバルファミリー」という映画を観た。どういう話かというと、主人公は東京のマンションに住む、中年の夫婦と高校生の息子と娘の一家。お父さんは平凡なサラリーマンで、会社から帰れば、晩酌しながらテレビをみている。息子と娘は親に関心がなく、勝手なものを食べている。お母さんはひとり台所で、実家の鹿児島から送られてきた大きな丸一匹の魚を捌こうと格闘しているけれど、誰も手伝わないし、食べたがらない。
 そんなある日朝、突然電気という電気がみな停まってしまう。電気ばかりでなく、乾電池や車のバッテリーも全く働らかなくなる。お父さんと子どもたちは、文句を言いながらとりあえず会社や学校に向かう。自分のマンションだけでなく、かなり広範囲に停電していることがわかってくる。スマホで検索しようと思っても、画面には何も映らない。お母さんがスーパーに行くと、みな買い出しに来ているが、レジが動かずそろばんで計算するので、長蛇の列となる。
 三日ぐらいは、ロウソクとカセットコンロとレトルト食品で凌いでいるが、水道からの水も出なくなり、会社や学校も休みとなり、多くの人がだんだんと東京脱出を始める。大勢の人が家族を伴って、ガラガラとスーツケースを引いていく。この一家はお父さんがうまく調達したおかげで、一人一台自転車がある。途中の商店では、ペットボトルの水が一本2500円の高値で売りに出されている。この家族も高値承知でありったけを買い占め、旅を始める。お母さんの実家の鹿児島を目指して。途中のお米屋さんでは、水や食べ物を持って行くと、お米一合と交換してくれる。そこにロレックスや高級車の鍵を持って交換に来る人物が現れるが、「そんなもの食えるかい! 」と突き返される。
 「大阪から先の関西では電気が来ているらしい」という噂が飛び交い、今や車の走らない東名高速道路を大勢の人が歩いたり、自転車だったり、中には荷車を引く人も、西に向かう。途中のサービスエリアで野宿。寒い季節ではないのが、まだよかった。寝ている間に、水を一本盗まれて、息子がすぐに追いかけるのだが、盗んだ家族には赤ちゃんがいて、取り返すのをやめる。
 脱出から16日目高速道路を降りて、川で洗濯をする。水が一見きれいだからと飲んだお父さんが下痢をする。強風に煽られて転倒し、自転車やお母さんのメガネが壊れる。次に通りかかったちょっと大きい街の無人のホームセンターを覗くと、食べ物はとうに無いが、キャットフード、精製水( コンタクトレンズに使うもの? )、自転車の修理材料などを手に入れる。火おこししようとしたもできないお父さんを横目で見つつ、おいしくないキャットフードを食べる。
 さらに高速道路を走り続ける。長いトンネルの入り口で報酬と引き換えに、トンネルの案内を買って出る盲目のお婆さんたち。無視してトンネルに入るも、真っ暗な中、停まっている車や障害物に阻まれて進めなくなり、盲目のお婆さんに手引きしてもらう。
 次はいやに元気な家族と遭遇する。彼らは日頃サイクリングしながらキャンプをしているらしく、装備も揃っていて、みなで楽しそうに食事をしている。「食料や水はどうしているんですか」と尋ねると、山の中の岩場の間から湧き出ている水は、周りに苔が生えていればそれは安全な証拠なのでそういう水を汲んだり、地面から直に生えているオオバコのような植物は食べられますよ、セミなどもおいしいですよ、と教えてくれる。
 43日目、やっと大阪に到着。電気は来ていない。通天閣のタワーの入り口には、たくさんのメモ紙が貼ってある。「岡山のおじさんのところに行く。◯◯」などの伝言が。娘がブチ切れて「もう嫌だ! お父さんが大阪に来ればなんとかなるって言ったよね?」「そんなこと俺いったか? 」「ほら、そうやってまたいつもの責任のがれ」「親に向かってなんだ、その口の聞き方は! 」すると息子が「親らしいことしてくれたことあったかよ! 」今度はお母さんが、「いい加減にして! そんなこととっくにわかっているじゃないの、お父さんがそういう人だってこと」ここでお父さんはがっくりとなってしゃがみ込んでしまう。水族館の前で、飼っている魚を調理した炊き出しの列に並ぶも、自分たちの前で終わってしまった。お父さんは調理していた人に、土下座をして「せめてこの子たちだけにでも何か食べ物を」と懇願するが、「無いものは無い」と断られる。
 67日目、食料も水も無くなり、岡山あたりの田舎道をとぼとぼ歩いている。と、一頭の豚が目の前を通り過ぎていく。えっ、となり夢中で追いかける。四人でやっと捕まえてみたものの、どうやってとどめを刺すのと手間取っているところ、後ろから「うちの豚に何をする! 」とお爺さんの怒鳴り声。お爺さんのうちの電気柵が働かなくなり、豚たちが逃げ出したのだった。お爺さんが、持っていたナイフで手早くとどめを刺し、豚を運ぶのを手伝い、そのお爺さんの家に。庭先の井戸水を汲ませてもらい、ごくごく飲む。久しぶりの白いご飯に、卵や野菜のおかずに豚肉の燻製。近所のお婆さんがキャベツや大根を届けてくれる。「あれまあ、お客さん? お孫さんたちが帰っているのかと思った」お爺さんの家族はアメリカにいて、連絡もつかないのだ。
 ご飯の後は、さっきの豚の解体を手伝う。バラバラにした肉に塩をすり込む。一週間ほど熟成させてから燻製にするのだそうだ。逃げた他の豚も、みんなで追いかけ回して捕まえる。井戸水をバケツで汲んでは、お風呂に運び薪でお風呂を沸かす。何十日ぶりのお風呂に入り、夜はお孫さんたちが着る予定だった新しい寝巻きを貸してもらい、これまた久しぶりの布団に横になる。
 毎日薪割りしたり、洗濯をしたり、お爺さんの手伝いをして過ごす。一週間後、豚肉を燻製にしながらお爺さんが語る。「お前さんたちさえよければ、ここにずーっと住んでもいいんじゃぞ。わしも年取って、一人で車も洗濯機も使えない生活では大変でなぁ・・」と誘われるが、この一家は鹿児島にいるお母さんの実家のお父さんの安否も気になっていて、結局お爺さんの申し出を断り、たくさんの食料をもらって、また自転車の旅を続ける。
 そのあともいろいろあって、命の危険にも晒されて、奇跡的に誰かが動かしてくれたSLに拾われて、ようやく108日目に鹿児島のお祖父ちゃんの家にたどり着く。お祖父ちゃんは元気だった! お祖父ちゃんは浜で魚釣りをしていた。それからは村人同士助け合って、魚を捕りに行ったり、畑をしたり、鶏の世話をしたり、お婆さんに機織りを教えてもらったりして、みんなで元気に楽しく一生懸命に暮らし始める。
 それから、2年と126日目の朝、突然村のスピーカーから埴生の宿のメロディーが流れてくる。みんなが驚いて家を出てみると、街灯が次々と点き始めた。すっかり忘れていた電気が戻ってきたのだ。そして場面は変わって、東京の一家のマンション。日常を取り戻し、以前の生活に戻る。テレビからは、「世界同時停電の原因は、太陽フレアか彗星の異常接近ではないかと、専門家からは語っている。サイバーテロの疑いはなくなったとのことです・・」停電前はそれぞれ勝手に心もばらばらに生きていた家族だったのが、思いやりのある温かい家族になっていた。
 とまあ、そういう話であったが、いろいろといいヒントがあった。非常時にはアナログが強いこと。キャンプ生活などに慣れておくこと。北杜市に住んでいて、地震などで自分の家が壊れていない限りは、ここにいた方が湧き水もそばにあるし、薪や焚き木を燃やして暖を取ったり煮炊きすることもできる。むしろここは、首都圏からの避難地域となるだろう。今できることといったら、いつでも人を迎えられるように、家の中を整えておくこと、食料や薪を備蓄しておくこと?
 もうひとつ気になるのが、「年長者としての知恵」のようなもの。年長者はパソコンやスマホに弱く、操作方法などは若者に訊かないとわからないことばかり。でももしパソコンやスマホが一切使えない世の中になった時に、どこまで年長者がサバイバルの知恵を出せるだろうか。本当に長く生きた分だけいい知恵があればいいけど。
 さっきの映画の話では、最初はばらばらだった家族の気持ちもだんだんとひとつになり、お互いにかけがいのない家族として心が結ばれる。停電が終わり東京に戻るのだけど、本当に戻る必要はあったのかなぁ。鹿児島にいた二年半は、みなで漁をしたり、畑をしたり、はた織りしたりして、お金も介在せずに生きていたわけだ。これからこの地震や災害の多い日本で生き抜くには、都会を出て地方でコミュニティを作って、いろんな年齢の人が、各々出せる力を合わせて生きていく以外の得策は無いのではないかしら。
 2024年1月
映画「サバイバルファミリー」は、2017年2月に公開された。監督 矢口史靖。
主演 小日向文世、深津絵里、泉澤祐希、葵わかな
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acore-omiya · 3 months
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【レポート】「平山郁夫 ―仏教伝来と旅の軌跡」 平山郁夫シルクロード美術館
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開館20周年記念 山梨放送開局70周年記念「平山郁夫 ―仏教伝来と旅の軌跡」5月、プレスツアーへ参加しました
2024年に開館20周年を迎えた、山梨県北杜市にある平山郁夫シルクロード美術館。
戦後日本を代表する画家・平山郁夫(1930~2009)の絵画とシルクロードの美術品を展示し、シルクロードの魅力や文化保護の大切さを体感できる美術館です。
開館20周年を記念して「平山郁夫 ―仏教伝来と旅の軌跡」と題し、平山郁夫の画業の起点となった《仏教伝来》(1959 年)やその翌年に発表した《天山南路 夜》などの初期作、釈迦の生涯を描いた「仏伝シリーズ」、シルクロード各地を題材とした作品、制作に関連した資料を展示。
多彩な平山郁夫の絵画世界を紹介しています。
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挨拶 平山東子氏(平山郁夫シルクロード美術館 館長)
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ギャラリートーク 井上隆史氏(NHK番組「新シルクロード」統括プロデューサー)
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平山夫妻が半世紀近くかけて集めたシルクロードに関する美術品は、世界屈指のコレクションとなっています。
生前の平山郁夫の画室を再現したコーナーや、習作や未公開のスケッチも紹介されていました。
シルクロードを旅し、文化財保護活動に従事してきた画家・平山郁夫。
美術館周辺には観光スポットが多数あり、観光も楽しめます。
八ヶ岳、南アルプスの眺めながらくつろげる、館内にあるカフェ「キャラバンサライ」はおすすめです。
「平山郁夫 ―仏教伝来と旅の軌跡」は9月9日(月)まで開催中。
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JR小海線「甲斐小泉」駅すぐ前にある平山郁夫シルクロード美術館
開館20周年記念 山梨放送開局70周年記念 「平山郁夫 ―仏教伝来と旅の軌跡」 ●会期:2024年3月23日 (土)~9月9日(月) ●会場:平山郁夫シルクロード美術館(山梨県北杜市長坂町小荒間2000-6)
●開場時間:10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)※会期中無休 ●入館料:一般1,200円、高大生800円、小中学生無料 など
●問い合わせ:Tel : 0551-32-0225
●ホームページ:
現在、アコレおおみやホームぺージ(https://acore-omiya.com/)はリニューアル中です。(2024年5月)
リニューアル完成まで、こちらのblogで発信いたします!
今までの記事は旧アコレおおみやホームぺージへ ↓
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i-19-r · 10 months
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触れて確かめられたら 形と音をくれるよ
2023/11/26
気仙沼に行った話。行く話。
初めて気仙沼に行ったのは19歳の夏だった。2週間の一人旅行の中で訪れた1つだった。その日は東日本大震災から2年半が経つ日だった。
気仙沼に行こうと思ったのは、高校生の頃に起きた、起きてしまった出来事をこの目で確かめたかったからだ。住んでいる所からは遠く離れていてどこか他人事みたいになってしまっているのが嫌だった。自分の目で見て、他人事を自分の中のことにしたかった。
烏滸がましい考えだった。気仙沼の駅前から港に進んで行く度にそう感じた。あちこちに津波の水位を示すものがあった。最高水位はどこも自分の身長の何倍もあるものだった。港の周辺は未だ津波で荒れてしまった建物が残っていた。更地になっていた所もあったが、目につくのは荒れたまま取り壊されもせず残されている建物だった。2年半経つのにこんなにも傷跡が残されていることを初めて知った。
自分の中の出来事にするなど当人たちにとっては、お前なんぞに分かるわけがないと一蹴されるような考えだった。それでもこの街は強く生きていた。浅い心持ちで訪れたわたしを強く優しく迎えてくれた。そこでは人が生活し、経済を守り、着実に前へ進んでいた。本当に強い人たちと街だと思った。数年後に「強い」とは少し違うのだと目の当たりにするのだけれども。
2回目に訪れたのは前回から3年ほど経ってからだった。特別狙いすましたわけではないけど2017年3月14日、震災から丸6年と3日が経った日だった。
初めて気仙沼を訪れてから、わたしは色んな人に気仙沼を知ってほしいと思っていた。関西にいると、東北に行ったことがない人もたくさんいる。仙台くらいなら行ったことあるけど沿岸部は周りの人間たちもほとんど行ったことがない人ばかりだった。でも、行ってみたいと言っている人も少なからずいた。その気持ちの背中を押して、気仙沼に一緒に行った。
その人は綺麗な写真を撮る人だった。わたしはその人の目で、レンズで、気仙沼の今を切り取ってほしかった。そしてそれを忘れないでいてほしかった。
満足してくれただろうか。何か得られるものはあっただろうか。気仙沼の街や人を好きになってくれただろうか。どうかもう一度行ってみたいと感じていてほしい。忘れないでいてほしい。
2回目の気仙沼は1回目と比べても明らかに進んでいた。被災当時のままという建物ががくんと減っていた。その代わりに更地が増えていた。何もない場所が増えていた。残された建物は更に荒れていた。6年経ってやっとゼロに近くなっていた。復興というにはまだ遠い。元の街並みを知らないわたしにはそれでも進歩に思えた。気仙沼はこれからまた街になっていくのだと思った。
3回目は2018年の2月。わたしは社会人になっていた。過去2回訪れた中でわたしはなんとなく、ただの観光客として訪れることに負い目を感じていた。興味だけで「被災地」を観光することが正しいことなのか疑問となっていた。せめてこの場所の経済を支えようと目一杯のお金を使おうと決めていた。それが正しいのかは今も分からない。
リアス・アーク美術館という施設を知っているだろうか。わたしはこの3回目の気仙沼で初めて訪れた。ここでは被災当時の資料を常設展示している。息が詰まる思いだった。初めて気仙沼を訪れたときのことを思い出した。でもそれ以上の生々しさを残してくれている本当に重要な展示だった。
救われたことがあった。負い目に感じていた「観光」として気仙沼に来ることについてだ。展示の中で、「観光として来るのはいいことか」みたいな内容を問いかけるものがあった。気仙沼で起こったことを、現在を世界中の人に知ってもらいたいという答えをくれた。
気仙沼を訪れた人々が抱く印象として、この街の人たちは強いというものがあると思う。先述したとおり、私もその一人だった。展示ではこれについても伝えてくれていて、「強い」のではなく、「強くならないと生きていけなかった」のである。どれだけの苦難と葛藤が、彼らにこんな答えを導かざるを得ない状況にさせしめたのか。私は本当にこれを見届けねばならないと感じた。彼らが出した答えは何一つ間違いではなく、生活をするために不可欠なものである。それを周囲の人間が否定する権利はどこにもない。
4回目の気仙沼は2022年4月29日。私は、毎年アラバキロックフェスに行っていて、この年はコロナの流行以来初めての開催だった。前回気仙沼を訪れたときから時間が経っていることもあり、どうしても行きたかったのでアラバキ3日間のうち1日を気仙沼に行くための日に使った。
どうしても行きたい所があった。東日本大震災遺構・伝承館だ。数年前に開館したことはニュースを見て知っていたが、情勢もありなかなか行くことができなかった。そしてなにより、これを見て私は平気でいられる気がしなかった。
5月を迎えるにしてはとても寒い日だった。その日は地元の高校生がボランティアか何かで受付の案内をしていた。この子たちが被災したときは小学生の低学年くらいだっただろう。その子たちがやって来る人に向けて、知ってほしいという気持ちを添えて出迎えてくれたことにどうしようもなく揺さぶられてしまった。少しだけ話をして、「お疲れ様です、頑張ってください」と最後に伝えた。きっと向こうは休みの日にこういう活動をすることに対する「頑張ってください」だと捉えただろうけど、もっともっと伝えたいことがあった。
伝承館の展示は、今まで見た気仙沼の光景の中で一番辛いものだった。それと同時に見なくてはいけないものだった。被災した高校をそのまま残していて、割れた窓、たくさんの瓦礫、流れ着いた廃車、様々なものがそこにあった。展示を観ている間ずっと泣いていて、当時は目に見えるもの全てがこういう状態だったのかと、地獄を表すならこれもその一つだと感じた。本当に、これを遺すという決断をよくしてくれた。他地方の人間が当時を知るには、こういったものを体験するしか今となっては方法があまりない。そもそも当時も今も何もなかったというのが一番良いのは当然として、起こってしまったことを後世に遺すことがどれだけ苦痛を伴うものなのか、それは当事者だけが抱えられる、抱えてしまうものだから、それを少しでも私たちに分けてもらえればと思う。
わたしはきっとこれからも東北に行くし、気仙沼にも数年おきに行く。
この街が出した答えの「海と生きる」ということに対して最大限の尊敬の念を込めて。
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takahashicleaning · 1 year
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TEDにて
マット・ルッソ:宇宙の音を探る音楽の旅
(詳しくご覧になりたい場合は上記リンクからどうぞ)
宇宙の世界とは、よく描写されるように生物の存在しない静かな場所なのでしょうか?
恐らく違うでしょう。天体物理学者であり音楽家のマット・ルッソが、宇宙に隠されたリズムと惑星の軌道が奏でるハーモニーの秘密を紐解きながら私たちを壮大な宇宙の旅へと誘います。
「宇宙は音楽で溢れている。私たちはただその聴き方を学べばいいのだ」とルッソは言います。
皆さん。目を閉じて下さい。そして、広く開放的な野原に座っているところを想像してみて下さい。
太陽が右手に沈んでいきます。日が沈むにつれ今宵は、夜空の星が見えるだけでなく、星が現れる音まで聞こえてきます。
一番明るい星々は、ひと際大きな音を立てていて高温の青い星々は高い音を出しています。
異なる種類の星々で出来た星座たちは、それぞれが個性的なメロディーを奏でます。
例えば、ヒツジの牡羊座。そして、狩人のオリオン座。さらに、ウシの牡牛座も。
私たちは音に溢れた宇宙に住んでいます。このことを活かして新しい視点からその宇宙を体験したり、その視点を幅広い人々と共有することもできるのです。やってみましょう。
大抵の人は、私が天体物理学者と聞くと、とても感心してくれます。そして、音楽家でもあると伝えると「ええ、知ってますよ」ってね。
どうも誰もが、音楽と天文学には深い繋がりがあると知っているようなのです。これは、実は大昔からある概念で2000年以上前のピタゴラスまで遡ります。
ピタゴラスがつくった定理といえばピタゴラスの定理です。
ピタゴラスによると「弦のうなりには幾何学がある���天球の間では音楽が響いている」と。ピタゴラスはまさに惑星たちの天球に沿った動きが協和音を創り出していると考えたのです。
じゃあなぜ何も聞こえないのかと訊かれたら「それは当然だ。なぜなら何も聞こえないこと。つまり、本当の意味での沈黙を知らないからだ」と答えたでしょう。
停電してはじめて普段、冷蔵庫がうるさかったことに気づくのと似ています。何となく分かりますよね。アリストテレスのような人には、理解できなかったみたいですが。
本当のことです。
アリストテレスの言葉を噛み砕くと「良い考えではあるが、もし天空ほどの莫大な何かが独りでに動いて音を創り出しているとしたら聞こえるどころではなく、地球など破壊してしまうほどの音を出すはずだ。我々はここに存在するのだから天球の音楽などないのだ」
脳が血液を冷ますためだけのものだとも説いているような人なのでそんなもんでしょう。
でも、本当はどちらの言うことも正しかったということをお見せします。
まずは、何が音楽を音楽たらしめるのかについて理解しましょう。馬鹿げた質問だと思うかもしれませんが、なぜ同時に奏でた音と音は、こんなにも相対的に心地よく共鳴するのかと思ったことはありませんか。
例えば、この2つの音。あるいは、もっと緊迫した不協和な音もあります。この2音とかね。ほらね、なぜでしょう?
そもそも音程がある所以は?なぜ音程が合ったり外れたりするのか?実はこの質問には、ピタゴラス自身が答えています。一番左にある弦を見て下さい。この弦を弾いてみると高速で前後に振動して1つの音を出します。
この弦を半分に切って2本の弦にすると、それぞれが2倍の速さで振動し、それに対応する1つの音を出します。これは3倍の速度で。これは4倍の速度です。
音の協和の秘密は、簡単な比率にあったんですね。2つの音の比率が簡単であるほど、その2音は心地よく響き合い協和音になり、比率が複雑であるほど、不協和音になってしまうわけです。
このような音が持つ緊張と解放。あるいは、協和と不協和の相互作用が、音楽というものを創り出しています。
ありがとう。
まだ終わりではないですよ。
次は音楽の特徴である音の高さとリズムについてです。実はこの2つも先ほどの例と同様です。お聞きください。
(遅いリズム)
これはリズムですよね?スピードを早めるとどうなるか?
(徐々に早くなるリズム)
(高くなる音)
(低くなる音)
(遅いリズム)
1秒あたりに刻むリズムが20回を超えると脳は処理を切り替え、その音をリズムとしてではなく音の高さとして捉えます。
これが天文学とどう関係するのか?
ここでトラピスト1惑星系についてお話ししましょう。これは太陽系外惑星系で昨年2017年2月に発見され皆を興奮させました、
近くの赤色矮星を地球サイズの惑星が、7つも周回していると判明したのです。そして、そのうち3つは、水が液体でいるのに適した温度になっています。
また、地球から近いので今後数年のうちにそれらの惑星の大気中に酸素やメタンのような生命の兆候にあたるかもしれない物質を検出できるでしょう。
しかし、このトラピスト惑星系は非常に小さいのです。これは、私たちのいる太陽系内にある岩石惑星の軌道です。水星、金星、地球、火星です。
そしてトラピスト1に属する地球サイズの7惑星は、全て水星の周りに軌道を置いています。この写真を25倍に拡大してやっとトラピスト1の惑星の軌道が見えます。
地球サイズの7惑星が恒星を周回していると言いましたが、大きさでいえば実は、木星とその衛星系にずっと近いのです。
皆を興奮させたもう1つの理由は、アーティストが描いた惑星の予想図です。水もあれば、氷も存在する。もしかしたら陸地もある。このような綺麗な夕日を前に泳げるかもしれません。
皆が心を踊らせました。すると数ヶ月後、違う論文が発表され実はこんな場所かもしれないと言うのです。
論文によると地表は溶岩で出来ているかもしれないうえに中心の星からは非常に有害なX線が、出ていると言う兆候があったそうです。
地上を不毛にすると共に大気をも消し去ってしまうようなX線です。幸いにも数ヶ月前、2018年に入ってより精巧な測定結果を記した新たな論文がいくつか出てきて先ほどの美しい予想図に近いものに落ち着きました。
トラピスト1の惑星のいくつかには、豊富な水があると分かっています。全球海洋です、またいくつかは、厚い大気で覆われているので生命の可能性を探るにはうってつけの場所です。
しかし、もっと興味深いことがこの惑星系にはあるのです。私にとっては特にね。それは、トラピスト1が鎖状の共鳴関係だということ。
1番外側の惑星が2周する間に、その1つ内側の惑星は3周し、その内側の惑星は4周し、続いて6周、9周、15周、24周と軌道を重ねています。
これらの惑星の軌道周期が、とても簡単な比率であると分かりますね。1周毎に1ビート鳴らすとして周回速度を上げるとリズムが生まれるのは明らかですよね?
ですが、周回速度をもっと上げてみると音程が生まれます。この惑星系に限っては、これらの音はうまく混ざり合い人間の音楽のようなハーモニーさえ生み出します。
トラピスト1の音響を聞いてみましょう。最初に聞いてもらうのは、それぞれの惑星の軌道の音です。覚えていてほしいのは、この音楽は惑星系自身が奏でているということ。私は音程やリズムをいじっていません。
ただ人間が聞き取れる周波数帯域にしただけです。全7惑星の音が出揃ったところで今度は、2つの惑星が隣り合うたびにドラムの音を鳴らします。この時、2惑星は互いに近づき引力による引き合いを起こしています。
(1つの音)
(2つの音調)
(3つの音調)
(4つの音調)
(5つの音調)
(6つの音調)
(7つの音調)
(ドラムの音)
(音楽終わり)
これは、この星自身の音でありその輝きを音へと変換したものです。
こんなことがあり得るのかと思いますよね。オーケストラに似ていると考えれば良いと思います。
人が集まって演奏するオーケストラでは、好き勝手に音を出すわけではなく皆で同じ音調を奏でますね。
自分の奏でる音をちゃんと周りの楽器と共鳴させなければなりません。トラピスト1の発生初期にこれとよく似たことが起こっていました。
この惑星系の形成初期には、惑星たちが円盤状のガスの中に軌道を描いていてその円盤の中にいる間、互いにぶつからぬよう避けて通り軌道修正をくり返すことで完ぺきに調子を合わせたのです。
この軌道修正が功を奏しました。この小さな惑星系は、狭い空間に大きい質量が詰まっているのでもし、この協和状態に少しでも狂いがあったならあっという間に互いの軌道を邪魔し合い惑星系全体が崩壊していたでしょう。
なので、まさに音楽がこの惑星系とそこに存在しうる生命を生かしているということです。
では、私たちの太陽系の音はというとあまり言いたくはないですが、心地良い音ではありません。
それには理由があって私たちの太陽系はトラピスト1よりはるかに大規模なので全8惑星の音を聴くには、まず人間の可聴域の下限付近の海王星から始まり、可聴域の上限ギリギリの水星まで音域を目一使わなければなりません。
それに、太陽系の惑星は密集しておらず、かなりの広範囲にバラけているために互いに軌道修正する必要がなかったので惑星たちは、それぞれの音を思い思いに鳴らしてるだけなのです。
では、心苦しいですがその音色をお聴きください。
(1つの音)
これが海王星。
(2つの音)
天王星。
(3つの音)
土星。
(4つの音)
木星、そして更に火星が合わさります。
(5つの音)
(6つの音)
地球。
(7つの音)
金星。
(8つの音)
そして、最後に水星。うーん、止めましょう。
実はこれはケプラーにとって夢でした。ヨハネス・ケプラーは「惑星運動の法則」を発見した人です。
音楽と天文学と幾何学の間に何か関係性があると強く信じてやみませんでした。そして、太陽系の惑星におけるいかなる音楽的な協和をも探し求めそれだけを綴った1冊の本を残しました。
かなり大変だったようです。トラピスト1に暮らしてたらもっとずっと簡単だったでしょう。それか、別の惑星系K2-138とか。
これは2018年の1月に発見された5つの惑星から成る新たな惑星系でトラピスト同様、誕生間もない頃は、惑星たちが見事に協和していました。
この惑星たちは、2000年以上前にピタゴラスが提唱した調律法どおりに音が合っていたのです。ですが、ケプラー宇宙望遠鏡で発見されたためケプラーの名を冠しています。
そして、ここ数十億年でK2-138の調律は、トラピストに比べかなりずれてしまいました。そこで今から時間を遡ってK2-138の形成当時は、どんな音がしたのかを推測することにしましょう。
ありがとうございます。
さて、皆さん。この話はどこまで広がるのか宇宙にどれだけ音楽があるのか気になりますよね。私も昨年の秋、同じ疑問を抱きました。
トロント大学のプラネタリウムで働いていたときです。芸術家のロビン・レニーと彼女の娘のエリンから連絡がありました。ロビンは夜空が大好きですが、著しい視力低下により13年間夜空を満喫できずにいました。
どうにかできないかと相談を受けた私は、思いつくかぎりの宇宙の音を収集し、1つにまとめ「Our Musical Universe(音楽に溢れた私たちの宇宙)」を作りました。
宇宙のリズムやハーモニーを探索する音を基としたプラネタリウムショーです。
ロビンはこれにとても感動し、帰宅後に自分が体験した感覚をこの見事な美しい絵にしてくれました。私がポスター用に木星を付け足して汚してしまいましたが
さて、このショーに視覚の自由・不自由は、関係ありません。あらゆる人を夜空を抜け観測可能な宇宙の端まで音声を使って宇宙の旅に案内します。
しかしこれは、新しい目と耳で宇宙を体験するための音楽による知的探求の始まりに過ぎません。皆さんの参加をお待ちしています。
ありがとうございました。
(個人的なアイデア)
この世界中に太古からあるストリングのアイデアを統合し、数学と融合した理論物理学がスーパーストリング理論です。
2023年にはジェネレーティブ人工知能が登場し、このアイデアから観測データを個々の恒星のリズムとして個々の音で表現すれば良いのでは?
というインスピレーションが来ました。
こうすれば、全銀河の観測データを音で比較することが可能になり個々の音が複合的に重なり合いつつ・・・
シンフォニーの音色から新たな似た恒星系や銀河などの特徴も音階で比較解析できるようになるかもしれません。
ダークマターやダークエネルギーの特性の発見にも近づきそうな感じはします。
何か未知の銀河を発見するかもしれないし、瞬時にシンフォニーから特徴も一目瞭然にジェネレーティブ人工知能から意味が整理され、分かりやすくなるかもしれません。
さらに、スーパーストリング理論の素粒子からの知見の活用。
つまり、音に変換してアプローチする新たな理論も構築できるし・・・古代から音楽家は、感性で脳と共振させて譜面にしてた?
巨大な銀河からも音という形式でアプローチする理論を構築するためのデータの裏付けも精密に得られるかもしれません。
また、精密にデータにできるので同じ音という統一形式で極小の素粒子の理論と極大な一般相対性理論を融合できる可能性も開けます。
ひょっとすると、物や人間の固有振動数も精密なシンフォニーとして表現できるかもしれません。
「パワーか?フォースか?」の本での人間のレベルの数値化とも合致します。統合できる可能性もあります。
精密なドラムやベースの音は、重力波が合いそうです。
このような視点から見てみるとジェレーティブ人工知能により、天文学分野他に・・・探索ということで・・・
演奏だけでは生活できない音のプロである音楽家の人達の知識や経験、絶対音感を活用した天文学分野とともに仕事をする雇用が新たに産まれそうな兆しを感じとりました。
経済学的な視点からもみると・・・
地上の土地よりも銀河の星々の音というデータ資源の数は、無限にありますし、 今後、西洋占星術でいわれる200年続くと言われる風の時代にも最適になります。
<おすすめサイト>
ジェームズ・ビーチャム: 物理学の未解決問題をいかに探求するか?
ブライアン・グリーン:スーパーストリング理論を語る
ギャレット・リージ:万物のE8理論
ジュナ・コールマイヤー:銀河とブラックホールと星々の最も詳細な地図
ガブリエラ・ゴンザレス:LIGOはどのように重力波を見つけたのか - そしてその先は
重力波のデータ観測に成功。世界初
ジャナ・レヴィン:宇宙が奏でる音楽
フェルミバブルと素粒子の偶然の一致について2022
デビッド・バーン:いかにして建築が音楽を進化させたか!
バーニー・クラウス:自然界からの交響曲
スティーブン・ジョンソン:音楽がもたらしたコンピューターの発明
ジョン・グラハム=カミング:かつて存在しなかった最高のコンピューター
ニック・ヴィーシー:見えない物を透かし出すテクノロジー
<提供>
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zumoriclub · 2 years
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2022年振り返り
ご無沙汰しております。ZUMORICLUBです。
まえがき
今年 (特に後半) はあまり創作活動や作品発表ができませんでした。環境が大きく変わったわけではないのですが、本業も忙しくなったし、他のことにも色々手を出しすぎたと、いうのが原因でしょうか。 とはいえ、SNS上での交流は今後も増やしていきたいし、創作活動も水面化では進めております (後述)。今後ともよろしくお願いいたします!
アジェンダ
今年聴いた音楽
アルバム5選
シングル5選
今年作った音楽
その他
SAVE THIS UTILITY 1stアルバムサブスク配信中
Spotifyのお気に入りリスト
限界旅行アカウント
1. 今年聴いた音楽
  
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今年の音楽に限定していません。また、サブスクも積極的に使うようになって、曲単位でビビっときたものも多くなってきたので、アルバムx5 + 曲x5  (順不同) という枠組みにしてみました。Spotifyのリンクを貼っています。
1.1. アルバム5選
● Pasajero Luminoso - El corazón de las ballenas (2017)
アルゼンチンのピアノ・カルテット。落ち着きつつ美しいメロディが良い。特にオススメ: #2
● 曇ヶ原 - 曇ヶ原 (2021)
ライブがあれば物販で買おうと思っていた。春に来阪ライブがあったので赴き、ついに入手。フォーク成分がすごく良いし、激しいパートも圧巻だった。今年後半に出たシングルも良かった。
● The Bad Plus Joshua Redman - The Bad Plus Joshua Redman (2015)
うおおJazzの21世紀や!!!特にオススメ: #6
● MIRINN - polaris (2022)
ポップロック意外と好きなんです。展開の凝り方が気持ち良くてとても楽しい。
● Pollaid - lead me, drive me (2022)
鼻につくところが全然ない爽やかさ。高頻度でドライブのとき聴いていました。
1.2. シングル5選
● Zopp - You (2022)
2022年にもなってこんな音が!?(サイコー) と思ったけどプロデューサー陣を見て納得。カンタベリーは不滅
● RYUTist - うらぎりもの (2022)
全体的にとても良い曲なんだけど、変拍子に揺らぎ (*1) まで入れてくるので痺れた。 (*1) 分子を±1したりすることを勝手にそう呼んでいます
● 佐井好子 - 胎児の夢 (1977)
あまりにも狂気的なアウトロでノックアウトされた。大野雄二さんプロデュースということですがピアノを弾いているのもそうなんだろうか...
● 結束バンド - なにが悪い (2022)
メロディがほぼ満点レベルで綺麗。00年代を思い出す
● Parry Music Library - I'm Yours Tonight (年代不明)
幼少期にウォォカッケェとなったCMの曲なんだけど、サブスクにあったのにびっくりした。良いディスコミュージックだった。
1.3. おまけ
以前から引き続きなので上には挙げていませんが、UNICORNとPUFFYとB’zはよく聴いていました。PUFFYのベストをドライブで聴くととても楽しくなるのでオススメです。
2. 今年作った音楽
昨年末に掲げた目標が下記でした。
①3曲以上作る ②Mystic Maryの新曲を出す
残念ながらこれらは達成できず、今のところ今年は1曲も公開できていません... (*2) 水面化では色々進めていたのですが、怠惰になってしまっていました。以下進捗を報告します。来年は頑張るぞ!
SAVE THIS UTILITY の曲を1曲作曲しました。思ったより難航したけどかなり良い曲になったんじゃないかと思います。現在、ボーカル録音まで終わってMIX作業中。来年公開予定!
Mystic Mary、歌ものポップスを各1曲、制作中です。展開がしっくりこなかったり歌詞が作れなかったりで停滞中。来年にはなにかしら着地させたいですね。
(*2) 曲ではないけどこういう即興演奏はしました。
3. その他
3.1. SAVE THIS UTILITY 1stアルバムサブスク配信中
キーボード等で参加しているアヴァンギャルドメタルバンド、SAVE THIS UTILITYの1stフルアルバム「回顧する∞」が、今年1月から各種サブスクで配信されています!
詳しくはこちらをチェック!たくさんの方に聴いていただき感謝です。 Bandcampでのフィジカル(CD) の販売も行っているので、そちらもよろしくです。
3.2. Spotifyのお気に入りリスト
Spotifyに登録して暫く経って、せっかくならプレイリスト機能を使ってみようということで、ここ10年ほどでよく聴いたアーティスト/お気に入りの曲で100曲のプレイリストを作ってみました。
こちら!
単に思いついたまま並べるのでも面白くないなと思い、下記のルールを設けています。
1アーティスト1曲 
バンド/ソロは別カウント
似たようなジャンルは連続させない
唐突な流れにならないように
結果、Meshuggah→上原ひろみ、渡辺麻里奈→Porcupine Treeのような一見謎な繋ぎもあり、なかなか節操がないですが、なんとか完成しました。 また100曲しかないのに11時間超と、そこそこ長めのリストになっています (10分超の曲が24曲ある)
興味ある方は覗いていただけると幸いです。
3.3. 限界旅行アカウント
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旅行の様子を実況 (*3) するTwitterアカウントを作りました。 昨年までは公式アカウントの方でやっていましたが、TL占有率が高くなってしまうので分離した形です。旅行すると大体限界旅行になるので、限界旅行アカウントと勝手に呼んでいます。
(*3) 時差投稿機能を利用して、数日後の同時刻に投稿されるようにしています。厳密には実況ではないかも。
今年の頭に折り畳み自転車 (DAHON K3, 写真) を買ったこともあり、自転車でのぶらり旅を主に行ってきましたが、自動車での旅行もこれまで通り続けています。
今年行った主な行程は下記のような感じです。もしご興味あれば見ていただけると幸いです。
自転車旅
嵐山(京都)〜奈良〜吉野〜和歌山 (1泊2日)
日吉(京都)〜周山〜花背〜鞍馬 (日帰り)
桜井(奈良)〜榛原〜曽爾〜伊勢奥津〜松阪(三重) (日帰り)
自動車旅
京都〜彦根〜敦賀〜小浜〜舞鶴〜京都 (日帰り)
舞鶴(京都)〜小樽(北海道)〜札幌〜稚内〜斜里〜根室〜釧路〜えりも〜苫小牧〜敦賀(福井) (4泊7日)
ではでは、来年もよろしくお願いします!
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dididiver · 4 years
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. . 旅に出れなくて かなり病んでるから IGやってなかった頃の 旅の思い出をふり返って 旅に行った気になってみようかな🤔 . . なにかの雑誌で見かけてから のんびり旅できるときには 絶対行こうと思ってた プリトヴィツェへ✨ . ザグレブのバスターミナルから🚌で3時間弱で最寄りのバス停に到着 そこからは広大な国立公園をひたすら徒歩移動(真冬以外はいろいろと乗り物あるみたいだけど)👣👣👣 . ほんとは夏に行くつもりだったけど いろいろあって真冬になっちゃった… けど 真冬のプリトヴィツェは ほぼ貸切(1日1便の🚌で降りたのは6人だけ)だったので結果オーライ😆😆😆 . でも もし帰りの🚌を逃したら ヒッチハイク or レスキューになっちゃうので 迷子と時間にはくれぐれもご注意☝️ しかも🚌の時刻表はあてにならないという罠もある😱 . あと 夏場は人で大渋滞になっちゃうほど混むらしい😅 . . #plitvicelakesnationalpark #プリトヴィツェ湖群国立公園 #worldheritage #世界遺産 #plitvice #プリトヴィツェ #lake #湖 . #croatia #クロアチア . #trip #travel #journey #旅 #2017年世界一周半の旅 #お気に入り (at Plitvička Jezera) https://www.instagram.com/p/B_yUDSFAL9S/?igshid=i8y15ltp5mp5
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myonbl · 4 years
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第27回露新軽口噺@動楽亭
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露の新治・新幸師弟の研鑽の場「露新軽口噺」、スタートはかつて新幸さんが経営していたライブバー・太陽の月、場所を動楽亭に移して今夜が27回目。新治さんがめざす<70歳70演目>、コロナの影響で予定よりズレてしまいましたが今夜で無事、見事に完結しました。新治さん、おめでとうございます!
「めがね屋盗人」新幸(12分)
新治さんに入門しての初高座が2014年12月27日(土)のこと、ネタは「東の旅・発端」でした。丸刈り頭の初々しい高座姿は、今でもよく覚えています。3年の年季明けが2017年11月23日(木)、一席目が「ちりとてちん」、二席目は初めての紋付きで登場しての「権兵衛狸」でした。あれから3年、このところ感心するのはマクラ、実に自然にその日の会場・客との交流が始まります。<客の気を取り込む>と入った泥棒ネタ、口慣れた・聞き慣れた噺ではありますが、安心の運びで聴いているこちらを気分良くサゲまで運んでくれました。
「男の花道」新治(35分)
先日なくなられた四代目旭堂南陵先生の供養にと選ばれたネタ、私ははじめて聴きました。近鉄百貨店のソフトクリーム・東京吉野家の牛丼・チキンラーメンの登場、一体どんなつながりかと訝っていると、最後は自身の手術体験から<麻酔>がいかに凄い発明かということから本編へ。歌舞伎役者・三代目中村歌右衛門の眼病を<麻酔なしの手術>で治療した長崎帰りの眼科医・半井源蔵、お礼にと差し出されたカネを断わる、それならと、何時でも手紙一本で歌右衛門がどこであろうと参上して舞うとの約束。その約束を果たす運命の日、その後の源蔵の出世・・・。いかにも講釈ネタらしい展開ですが、最後はちゃんと落語として下げました。講談はもちろん、映画にもなっている有名なストーリーなのですね。知るべき世界が広がりました。
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師匠の着替えタイムで登場した新幸さん、写真撮影に応じながらの情報提供。お時間ある方、是非よろしくお願いいたします。
「くやみ」新治(24分)
<70歳70演目>、一席目の「男の花道」が69番目、いよいよ最後のネタは・・・、今夜の2演目クイズに応募している身としてはつい力が入ります。そんな客席を軽くいなすように、目と口の動かし方のレクチャーから本編に入りました。お馴染みの登場人物が次々とくやみならぬ惚気・宣伝をしてくれますが、私の周囲では70席目がこれとは意外だったとの声がポツポツ。
仲入り
「帯久」新治(52分)
上がるなり、「これが本当の70席目」。ご尊父の職場が大阪市内のこ��辺りにあって私もよく手伝いをしたので地理には詳しい、東横堀の瓦屋町という説明から、をを、帯久か! 残念ながら私の予想は外れましたが、上方落語屈指の大ネタをたっぷりと聴かせていただきました。和泉屋と帯屋、別家の武平、それぞれの社会的経済的位置と人格を丁寧に描き分けます。後半に登場する奉行・松平大隅守、「鹿政談」の若きエリートとは一味違う余裕のある裁き方に新治さんの口跡が冴えます。密かに滑稽話を期待していた私ですが、これなら70席目として誠に相応しい好演でした。
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スタンプラリーも無事コンプリート、次回、そして最後の露新軽口噺は12月11日(金)、もちろん予約してから帰路につきました。
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xf-2 · 4 years
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日本企業にまで入り込んだ中国共産党組織
 筆者は3年前、JBpressに記事を投稿し、在中国日本企業の多くは中国共産党の統制監督下に置かれていることを指摘した。
 その際、在中国の日本企業が中国で生産した物資が、非常時には中国の「国防動員法」によって徴用されることを明らかにした。
 そして、中国進出企業のみならず、日本政府もその危うさに対する対策が必要であるという警鐘を鳴らした。
 今その指摘が、日本で「必要なマスクが手に入らない」という切迫した問題となって現れているのである。
 JCASTテレビウォッチ(2020年3月6日)によると、 新型コロナウイルスによるマスク不足の原因の一つは、中国で製造した日本メーカーの製品が輸入できなくなっていることだ。
 同記事の中で、マスク販売会社「ファーストレイト」の長谷川友彦社長は、同社の中国の工場にはマスクが山積みになっているが、2020年1月25日以降、出荷制限がかけられ、「残念ながら出荷できないのが現状です」と明かした。
 同社の工場前には「弊社が生産するマスクは国家応急備蓄物資に含まれるため、輸出をお断りしております」と書かれた赤い看板が立てられ、周囲を警察官が見張っている。
 別のマスク輸入会社も、中国で生産した分はすべて接収されたという。
 なぜ、中国では、そのようなことが起きるのか。
 その理由の一つは、当初に述べたように、在中国日本企業を含め、ほとんどの外資系企業に中国共産党組織が設置され、その統制監督を受けているからである。
2016年10月19日、中国共産党中央組織部の斉玉副部長は、中国共産党大会の記者会見で、2016年末までに国営企業14万7000社のうち93.2%に党組織が設立され、民間企業273万社のうち67.9%、さらに外国企業10万6千社のうち70%に上る7万5千社に党組織を設立した旨を明らかにした。
 これは、4年前のデータであるから、現在はさらに中国共産党の統制監督体制は強化されているに違いない。
 その際、斉玉副部長は、企業内に共産党組織を設立することは、企業の経営発展を促すことになり、党組織のアドバイスにより、中国の政策を理解し、雇用問題の解決を図れるためだと説明した。
 しかし、それはあくまで表向きの説明であって、国内外におけるイザという時に、中国共産党の方針に従って、企業を統制し監督することが主たる狙いであることは、今回の事態が証明している。
 それは、次に述べる中国の「国防動員法」と大いに関係しているからである。
非常時、中国に徴用される在中国日本企業
 中国は、2010年7月に「国家の主権、統一と領土の完全性および安全を守るため」として「国防動員法」を制定した。
 この法律によれば、「召集された予備役要員が所属する単位(役所や企業など)は兵役機関の予備役要員の召集業務の遂行に協力しなければならない」(同法第31条)。
 在中国日本企業が雇用した中国人従業員が予備役として招集される場合はそれに従い、職場を離れている間も、雇用主である日本企業は給与支給などの処遇を続ける義務が生じる。
 また、同法には「金融、交通運輸、郵政、電信、報道出版、ラジオ・テレビ・映画、情報ネットワーク、エネルギーおよび水資源の供給、医薬衛生、食品と食糧の供給、商業貿易などの業種に管制を敷く」(同法第63条)との規定があり、最悪の場合は日本企業の中国の銀行口座凍結や金融資産接収のほか、売掛金放棄なども起こり得る。
 さらに、「備蓄物資が国防動員の需要を延滞なく満たすことができなくなったときは民生用資源を徴用できる」と規定し、「社会生産、サービスおよび生活に用いる施設、設備及び場所その他物資」(いずれも同法第54条)がその対象となっており、自動車や電機など、現地工場の生産設備や物流のためのトラックなどのモノが根こそぎ徴用されてしまうこともあり得るのである。
日本企業が中国で生産し、日本へ輸出を準備していたマスクが日本へ届かず、日本がマスク不足に陥っているのは、まさに先に述べた外資系企業に対する中国共産党の統制監督と「国防動員法」の思想に、その理由を見て取ることができる。
 ニューヨーク・タイムズによれば、米ミネソタ州を拠点とする世界的化学・電気素材メーカーのスリーエム(3M)社は、上海にマスク製造工場があるが、同社製造のマスクは中国国内で流通しているが米国には届いていない。
 また、カナダのモントリオール拠点のマスクメーカー・メディコムは、同社上海工場で1日に300万枚のマスクを製造しているが、中国政府がすべてのマスクを買い取っていると報道されている。
 中国は、日本のみならず、米国やカナダなどの中国に進出している医療用品製造会社に対しても自国へのマスクの輸出を制限している。
 また、ブラジル政府は、人工呼吸器を含む医療用品の購入を要請したが、中国側が拒んだことも明らかにしている。
中国共産党に支配される日本人の命
薬や医薬品、医療機器…中国依存は危険
 日本で出回っているマスクの約8割は、中国などからの輸入である。
 残り2割の国内生産分についても、原材料の不織布(織らない布=織ったり編んだりせず、化学的・物理的な作用により繊維を結合させたシートやウェブのこと)、ゴムひも、鼻部分のワイヤーはほとんど中国からの輸入に頼っている。
 世界の医療用マスクの半分は、中国で製造され、中国は世界のマスク生産能力の85%を占めていると言われている。
 さらに、中国は、3MのN95マスク(米労働安全衛生研究所(NIOSH)のN95規格をクリアし認可された微粒子用マスク)に使われている0.3μmの微粒子を95%以上捕集することができるポリプロピレン繊維の主要な生産国でもある。
 国連のデータによると、ポリプロピレンフィラメントを含む不織布の世界輸出市場の18%を占めるとの報告がある。
このように、マスクをはじめとする薬や医薬品、医療機器など、人命や生存に関わる国の戦略物資を極度にまで中国に依存し、脆弱性を露呈した現実を突きつけられたのである。
 一方、中国は、1~2月まで世界各国で約20億枚のマスクを買い占めると同時に、逆に欧州や南米などに対して、自国では使えそうもないマスクや検査キットなどの不良品や粗悪品を輸出して顰蹙を買っている。
戦略物資の自国製造・供給率の向上を
「中共肺炎」あるいは「武漢肺炎」と名づけてもいい新型コロナウイルスによる肺炎は、元を正せば、意図的に情報の隠蔽偽装工作を行い、結果的に初動対処を遅らせた中国に責任がある。
 さらに、中国に操られた世界保健機関(WHO)のテドロス・アダムス事務局長の共犯によってパンデミックを引き起こしたと言ってもいいだろう。
 世界中の経済社会活動に大打撃を与えるとともに、数え切れないほどの尊い命を危険に晒しており、「第2次世界大戦以来の最大の災難」をもたらしている。
 今般の新型肺炎の危機により、中国に進出している日本企業が、中国共産党の統制監督を受け、「国防動員法」に縛られている危うさが白日の下に晒され、国民の知るところとなった。
 近年、中国に出張中の日本人社員が、スパイ容疑で拘束され、逮捕される事件が頻発しているのは周知のとおりだ。
 有事の際には日本人駐在員やその家族が人質になる恐れがあり、また、社内の企業秘密やノウハウなどがすべて中国側に筒抜けになってしまう危険性も排除できないのである。
 冒頭に述べた日本企業をはじめとする外資企業を中国共産党の統制監督下に置こうとする狙いと「国防動員法」の目的は、基底で繋がっており、相互に関連している構図をしっかり認識した上での中国における企業活動が求められよう。
 この際、在中国日本企業は、「国防動員法」が発動されると、前述のような事態が起きることを想定して、情勢緊迫時には、すみやかに国外へ退去し、あるいは資産を移せるよう普段から準備を行う必要があるだろう。
そろそろ、このような「邪悪な国家」における企業活動にはハッキリと見切りをつけ、他の有望な国や地域への移転を促進するのが賢明ではなかろうか。
 また、国民の命を託する薬や医薬品、医療機器など、国の戦略物資のサプライチェーンを共産党一党独裁下の中国に、危険なまでに依存し過ぎている恐ろしい実態が明らかになった。
 我々が学んだ大きな教訓は、中国から一定の距離を置き、サプライチェーンを多様化すべきということである。
 特に、日本人の生命や国家の安全保障にかかわる戦略物資については、自国での製造と供給率を高める努力を一段と強め、このような危険極まりない状態から一刻も早く脱却しなければならないということだ。
 そして、危機の最中に必需品を買いだめし暴利を貪ろうとしたり、危機から旨味を得ようと考える者がわが国の近隣にいることに、警戒を怠るわけには行かないのである。
 特に、武力紛争事態には、これ以上の極限的な危機に見舞われることは自明であり、新型肺炎によって被った甚大な損害や影響を生きた教材として、安全保障・防衛上の対応を忘れてはならない。
 例えば、中国の「国防動員法」は、日本国内で仕事をしている中国国籍保持者や中国人旅行者にも「国防動員の平時準備と任務完遂の義務」(同法第5条)が適用される。
 2017年現在の在日中国人数(在日華僑を含む)は、約73万人(法務省統計)。
 同じく2016年の中国から日本への旅行者は約637万人(日本政府観光局(JNTO)統計)で、合わせると、年間約710万人の中国人が日本に滞在していたことになる。
 それらの中国人に対し、突発的に国防動員がかかる可能性は十分にあり得ることだ。
 その場合は、わが国の安全保障・防衛に重大な影響を及ぼす危険性があり、そのことについて重々認識し、有効な対策を練っておかなければならない。
 しかし、対応の中心となるのは全国約25万人の警察官、そして約15万人の陸上自衛官であり、それらの要員をもってしても、対応に限界があるのは歴然としている。
 このように、中国の厖大な「人口圧」によってわが国が押しつぶされる可能性を決して甘く見てはならない。予想される事態は、容易ではなく、至って深刻である。
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日本に「見えない戦争」を仕掛け始めた中国
日本は「全政府対応型アプローチ」で備えよ
2020.11.16(月)
樋口 譲次
「新しい戦争」の形
 21世紀の戦争は、国家が堂々と紛争の解決を軍事的手段に訴える分かりやすい従来型の戦争から、知らないうちに始まっている外形上「戦争に見えない戦争」へと形を変えている。
 この「新しい戦争」の形を初めて実戦に採り入れたのはロシアである。
 その実戦とは、2014年のロシアのクリミア半島併合と東部ウクライナへの軍事介入であり、西側では「ハイブリッド戦」と呼んでいる。
 ハイブリッド戦���、『防衛白書』(令和2年版)によると下記のように説明されている。
 軍事と非軍事の境界を意図的に曖昧にした現状変更の手法であり、このような手法は、相手方に軍事面にとどまらない複雑な対応を強いることになります。
 例えば、国籍を隠した不明部隊を用いた作戦、サイバー攻撃による通信・重要インフラの妨害、インターネットやメディアを通じた偽情報の流布などによる影響工作を複合的に用いた手法が、「ハイブリッド戦」に該当すると考えています。
 このような手法は、外形上、「武力の行使」と明確には認定しがたい手段をとることにより、軍の初動対応を遅らせるなど相手方の対応を困難なものにするとともに、自国の関与を否定するねらいがあるとの指摘もあります。
 顕在化する国家間の競争の一環として、「ハイブリッド戦」を含む多様な手段により、グレーゾーン事態(純然たる平時でも有事でもない幅広い状況)が長期にわたり継続する傾向にあります。(括弧は筆者)
 東西冷戦が終結して2000年代に入り、複数の旧ソ連邦国家で独裁的政権の交代を求めて民主化と自由を渇望する運動が起こった。
 非暴力の象徴として花や色の名を冠した、グルジア(ジョージア)のバラ革命(2003年)、ウクライナのオレンジ革命(2004年)、キルギスのチューリップ革命(2005年)などがそれである。
 また、アラブ諸国においても「アラブの春」と呼ばれた同様の運動が起こり、2010年から2011年にかけてチュニジアの民衆が蜂起した「ジャスミン革命」を発端として、エジプト、リビア、イエメンなどでも独裁・腐敗の政権が倒された。
 シリアでは激しい内戦が最近まで続いている。
 これらの民主化と自由を求める運動によって、かつての衛星国を失ったロシアでは、本運動は米国や欧州などの西側が介入・扇動し、旧ソ連邦国家やアラブ諸国住民の「抗議ポテンシャル」を活性化させた意図的な体制転覆あるいは陰謀であり、一種の戦争であるとの見方が強まった。
 そして、ロシアもまた、このような脅威に晒されているとの認識が高まり、安全保障・国防政策上の中心的テーマとして急浮上したのである。
 それを背景として、2013年2月に発表されたのが、ロシア連邦軍の制服組トップであるヴァレリー・ゲラシモフ参謀総長による「予測における科学の価値」(『軍需産業クーリエ』、2013年2月27日付)というタイトルの論文である。
 ゲラシモフ論文は、「21世紀には近代的な戦争のモデルが通用しなくなり、戦争は平時とも有事ともつかない状態で進む。戦争の手段としては、軍事的手段だけでなく非軍事的手段の役割が増加しており、政治・経済・情報・人道上の措置によって敵国住民の「抗議ポテンシャル」を活性化することが行われる」と述べている。
 そして、ゲラシモフ論文による21世紀の戦争では、非軍事的手段と軍事的手段との比率を4対1とし、非軍事的手段の役割の大きさが強調されている。
 そのように、ゲラシモフは「戦争のルールが変わった」と指摘しており、いわば「新しい戦争」の到来を告げたのである。
 その後、2014年にウラジーミル・プーチン大統領が承認した「ロシア連邦軍事ドクトリン」は、前年のゲラシモフ論文の考え方を踏まえて作成されたとみられている。
 ロシアの2014軍事ドクトリンでは、政治的、外交的、法的、経済的、情報その他の非攻撃的性格の手段を使用する可能性が尽きた場合のみ、自国およびその同盟国の利益のために軍事的手段を行使するとの原則を固守するとし、最終手段としての軍事とその他の手段との連続性を示唆している。
 そして、同ドクトリンでは「現代の軍事紛争の特徴および特質」と題して10項目を挙げ、ハイブリッドという言葉こそ使っていないが、ハイブリッドな戦い方が現代戦の特色であることを強調している。
「現代の軍事紛争の特徴および特質」を時系列的にまとめると、次のようになろう。
平・戦時の境目のない戦い→ハイブリッド戦/グレーゾーン事態
①軍事力、政治的・経済的・情報その他の非軍事的性格の手段の複合的な使用による国民の抗議ポテンシャル(相手国民への宣伝戦・心理戦による懐柔)と特殊作戦(リトル・グリーンメン)の広範な活用
②政治勢力、社会運動に対して外部から財政支援および指示を与えること
③敵対する国家の領域内において、常に軍事活動が行われる地域を作り出すこと(東シナ海:尖閣諸島~沖縄、南シナ海)
軍事活動への移行
④軍事活動を実施するまでの準備時間の減少
軍事活動
⑤グローバルな情報空間、航空・宇宙空間、地上および海洋において敵領域の全縦深で同時に活動を行うこと(マルチドメイン作戦)
⑥精密誘導型兵器および軍用装備、極超音速兵器、電子戦兵器、核兵器に匹敵する効果を持つ新たな物理的原理に基づく兵器、情報・指揮システム、無人航空機および自動化海洋装置、ロボット化された兵器および軍用装備の大量使用(技術的優越/先進的兵器)
⑦垂直的かつ厳密な指揮システムからグローバルな部隊および指揮システムネットワークへの移行による部隊および兵器の指揮の集中化および自動化
⑧軍事活動に非公式の軍事編成および民間軍事会社が関与すること
(以上、括弧は筆者)
 つまり、「新しい戦争」の特徴・特質は、まず、純然たる戦時と認定しがたい条件の範囲内で、軍事的手段と非軍事的手段を複合的に使用し、相手の知らないうちに外形上「戦争に見えない戦争」を仕掛ける。
 それによる可能性が尽きた場合には一挙に軍事活動へと移行し、最終的に最先端技術・兵器を駆使したマルチドメイン作戦による軍事活動をもって戦争の政治的目的を達成することにあると言えよう。
 ロシアは、旧ソ連邦国家やアラブ諸国の民主化や自由を求める運動を西側による体制転換の脅威として非難しているが、むしろそれを逆手にとり、実際にウクライナやシリアで「新しい戦争」を展開しているのはロシアの方である。
 そして、最近ロシアとの軍事的接近を強めている中国が、「孫子」の伝統と2人の軍人によって提唱された「超限戦」の思想と相まって、従来と形を変えた「新しい戦争」を描く「ロシア連邦軍事ドクトリン」に関心を示さないはずはないのである。
すでに始まった中国の対日“戦争”
 習近平国家主席は、故毛沢東主席のほかに、ロシアのプーチン大統領をロール・モデルとしていると言われている。
 クリミア半島併合などの実戦で採用された「ハイブリッド戦」に代表されるロシアの軍事ドクトリンは格好の教材である。
 習近平主席は、中国のシンクタンクにその研究を命じ、それによって、中国の台湾統一戦略や尖閣諸島・南シナ海などへの海洋侵出戦略に大きな影響を及ぼしていると見られている。
 そこで、中国がわが国に対して仕掛けている「新しい戦争」について、ロシアが挙げる「現代の軍事紛争の特徴および特質」に沿って分析してみることにする。
①「軍事・非軍事手段の複合的使用等」について
 中国は、軍事や戦争に関して、物理的手段のみならず、非物理的手段も重視しているとみられ、「三戦」と呼ばれる「輿論(よろん)戦」、「心理戦」および「法律戦」を軍の政治工作の項目としているほか、軍事闘争を政治、外交、経済、文化、法律などの分野の闘争と密接に呼応させるとの方針も掲げている。(令和2年版『防衛白書』)
 米国防省によると、輿論戦は、中国の軍事行動に対する大衆および国際社会の支持を得るとともに、敵が中国の利益に反するとみられる政策を追求することのないよう、国内および国際世論に影響を及ぼすことを目的としている。
 心理戦は、敵の軍人およびそれを支援する文民に対する抑止・衝撃・士気低下を目的とする心理作戦を通じて、敵が戦闘作戦を遂行する能力を低下させようとする。
 また、法律戦は、国際法および国内法を利用して、国際的な支持を獲得するとともに、中国の軍事行動に対する予想される反発に対処するものである。
 中国は、海洋侵出の野望を実現するため海軍および海警局の先兵として海上民兵(リトル・ブルーメン)を活用している。
 海上民兵は、普段、漁業などに従事しているが、命令があれば、民間漁船などで編成された軍事組織(armed forces)に早変わりし、軍事活動であることを隠すため、漁民などを装って任務を遂行する。
 東シナ海の尖閣諸島や南シナ海で見られるように、海上民兵は、中国の一方的な権利の主張に従い、情報収集や監視・傍受、相手の法執行機関や軍隊の牽制・妨害、諸施設・設備の破壊など様々な特殊作戦・ゲリラ活動を行う。
 同時に、係争海域における中国のプレゼンス維持を目的とし、あるいは領有権を主張する島々に上陸して既成事実を作るなど幅広い活動を行い、中国の外交政策や軍事活動の支援任務に従事している。
 その行動は、「サラミ1本全部を1度に盗るのではなく、気づかれないように少しずつスライスして盗る」という寓意に似ていることから、「サラミスライス戦術」と呼ばれている。
「サラミスライス戦術」を行う海上民兵が乗船する漁船などの周りを海警局の艦船が取り囲み、公船の後方に海軍の艦艇が待機し、島や岩礁を2重3重に囲んで作戦する様子が、中心を1枚ずつ包み込んでいるキャベツの葉に似ているので、これを「キャベツ戦術」と呼んでいる。
 そこには、前述の通り、計算尽の巧妙な仕掛けが潜んでいる。
 まず、中国は、歴史的にも国際法上も日本固有の領土である尖閣諸島を、中国の「領海・接続水域法」で自国領土と規定した「法律戦」に訴えつつ、妥協の余地のない「核心的利益」と主張している。
 その虚構の上に、尖閣諸島周辺海域で漁船(海上民兵)を活動させ、その保護を名目に法執行機関(海警)を常続的に出動させている。
 そして、「釣魚島は中国固有の領土である」という題目の白書を発表するとともに、いかにも尖閣諸島を自国領として実効的に支配しているかのように国際社会に向けた大規模な「輿論戦」を繰り広げている。
 同時に、日本および日本国民に対しては力の誇示や威圧による士気の低下を目的とした「心理戦」を展開している。
 このように、中国の日本に対する「戦争に見えない戦争」は、すでにこの段階まで進んでおり、中国の尖閣諸島奪取工作は危機的状況にまで高まっている。
 そして、中国は、同島周辺地域で不測の事態が起きることを虎視眈々と窺っており、もしそのような事態が発生すれば、力による現状変更の好機と見て軍隊(海軍)を出動させ、軍事的解決に訴える態勢を整えているのである。
②「敵対国家内の政治勢力や社会運動に対する財政支援・指示」について
 米有力シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は2020年夏、「日本における中国の影響」についての報告書を発表した。中でも、中国の沖縄工作が注目される。
 報告書は、中国が世界中で展開する戦術には、中国経済の武器化(取引の強制や制限)、 物語的優位性の主張(プロパガンダと偽情報)、エリート仲介者の活用、在外華人の道具化、 権威主義的支配の浸透などがあるとした。
 こうした工作を中国は日本に対しても行い、表向きの外交から、特定個人との接触などの隠蔽、強制、賄賂による買収(3C=covert, coercive and corrupt)を用いているとしている。
 特に、尖閣諸島を有する沖縄県は、日本の安全保障上の重要懸念の一つであり、米軍基地を擁するこの島で、外交、ニセ情報、投資などを通じて、日本と米国の中央に対する不満を引き起こしていると指摘する。
 報告書は、中国共産党が海外の中国人コミュニティに影響を与えるために使用する多くの方法の一つが中国語メディアであり、ニュースメディアを通じた中国の影響力の最も重要なターゲットは沖縄だと指摘する。
 この件については、日本の公安調査庁も年次報告書(2015・17年の『内外情勢の回顧と展望』)において、中国官製メディアの環球時報や人民日報が、日本による沖縄の主権に疑問を投げかける論文を複数掲載していることを取り上げ、沖縄で中国に有利な世論を形成し、日本国内の分断を図る戦略的な狙いが潜んでいるものとみられ、今後の沖縄に対する中国の動向には注意を要すると問題提起している。
 そのように、中国が沖縄に「独立宣言」させる工作を進めている可能性があるとして懸念が広がっている。
③「敵対国家の領域内における軍事活動地域の創出」について
 中国は、尖閣諸島周辺の日本の領海や接続水域に法執行機関である海警局の艦船を絶え間なく送り込み、同諸島の領有をかたくなに主張している。
 この動きは、2019年から強まっており、今年、各国が新型コロナウイルスへの対応に迫られる中でもその攻勢はむしろ激化し、これまでとは違った危険な局面に入っていると見られている。
 尖閣諸島周辺での中国公船等による接続水域内入域および領海侵入は、今年4月中旬から110日以上連続した。
 そして、5月8日、日本の領海に侵入した中国海警局の2隻が、そこで漁をしていた日本漁船を追尾し続け、3日間にわたって領海への侵入を繰り返した。
 この件について中国外務省の報道官は、「日本漁船が中国の領海内で違法な操業をしたため海域から出るよう求めた」と主張した。
 すでに尖閣諸島は自国領であるとの前提に立ち、あくまで自国の海で主権を行使しているに過ぎないとうそぶく始末である。
 中国では、2018年1月に人民武装警察(武警)部隊が、また同年3月には武警部隊の傘下に海警局が、それぞれ国務院(政府)の指揮を離れ、最高軍事機関である中国共産党中央軍事委員会(主席・習近平国家主席)に編入された。
 この改編を通じ、海警局の法執行の強化および武警・人民解放軍と融合した軍隊化が図られた。
 その結果、尖閣諸島周辺海域で行動する中国海警局の艦船は、準軍隊としての性格と役割を付与され、東シナ海を管轄する人民解放軍の「東部戦区」とともに一元的に作戦行動をとる体制が整ったことになる。
 さらに、中国の立法機関である全国人民代表大会(全人代)は今年11月初め、海警局(海警)の権限を定めた「海警法」案の全文を発表し、国家主権や管轄権が外国の組織、個人に侵害されたときは「武器の使用を含めたあらゆる必要措置」を取れると規定した。
 また最高軍事機関である中央軍事委員会の命令に基づき「防衛作戦などの任務」にあたることも明記された。海警局の艦船は、大型化し、軍艦並みの兵器を装備しており、法制定後は海軍との連携を一段と強めるとみられている。
 前述の通り、海警局の艦船は、尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返しており、周辺で操業する日本漁船も「海警法」の対象となるのは間違いなかろう。
 このように中国は、日本領域内の尖閣諸島ひいては南西諸島周辺を焦点に軍事活動を行う地域を意図的に作り出していると見ることができ、今後、不測の事態が生起すれば、一挙に軍事活動へとエスカレートさせる危機が迫っていると考えなければならない。
④「軍事活動への短時間の移行」について
 中国は、東シナ海の尖閣諸島、南シナ海そしてインドとの国境で、領土的野心を露わにしている。
 今年6月に中国とインドの国境付近で発生した両国軍の衝突は、中国が自国周辺の領有権主張を巡り、一段と強硬姿勢を取るリスクを浮き彫りにした。
 また、その衝突によって、中国が国境付近の現状を変えるため、現場の比較的小規模な小競り合いを利用しごく短時間に軍事作戦へ移行することも明らかになった。
 同じように、中国の尖閣諸島を焦点とする日本に対する軍事作戦は、「Short, Sharp War」(迅速開始・短期決戦の激烈な戦争)になると見られている。
 そのシナリオの一例はこうだ。
 米国がINF全廃条約の影響で、東アジアに対する中距離(戦域)核戦力による核の傘を提供できない弱点に乗じて、中国軍は日本を核恫喝してその抵抗意思を削ぐ。
 同時に、対艦・対地弾道ミサイルを作戦展開し、それによる損害を回避させるべく米海軍を第2列島線以遠へ後退させるとともに、米空軍を北日本などへ分散退避させる。
 その米軍事力の空白を突いて、中国軍は、海空軍を全力展開して東シナ海の海上・航空優勢を獲得し、その掩護下に海上民兵や日本国内で武装蜂起した特殊部隊などに先導されて尖閣諸島をはじめとする南西諸島地域に奇襲的な上陸作戦を敢行し、一挙に同地域を奪取占領する。
 まさにその軍事作戦は、迅速に開始され短期決戦を追及する激烈な戦争、すなわち「Short, Sharp War」を追求している。
 その際、米陸軍および海兵隊は、中国軍の侵攻に遅れまいと第1列島線への早期展開を追求するため、中国軍の侵攻と米地上部隊の展開が交錯する戦場でいかに主導権を握るかがカギである。
 したがって、日本や第1列島線の国々は、米陸軍・海兵隊の受け入れをスムーズに行う体制を平時から整備することが重要である。
⑤「マルチドメイン作戦による戦争」について
 中国は、日米などが新たな戦いの形として追求しているマルチドメイン作戦(MDO)という言葉を使用していないが、それに相当する概念を「情報化戦争」と呼んでいる。
 中国は、2016年7月に公表された「国家情報化発展戦略綱要」などで表明しているように、経済と社会発展のための道は情報分野に依存しているとし、軍事的側面からは情報化時代の到来が戦争の本質を情報化戦争へと導いていると認識している。
 そして、「情報戦で敗北することは、戦いに負けることになる」として、情報を生命線と考えるのが中国の情報化戦争の概念であり、そのため、従来の陸海空の領域に加え、敵の通信ネットワークの混乱などを可能とするサイバー領域や、敵のレーダーなどを無効化して戦力発揮を妨げることなどを可能とする電磁波領域、そして敵の宇宙利用を制限する宇宙領域を特に重視して情報優越の確立を目指している。
 この際、中国の情報化戦争は、米国のような全般的な能力において優勢にある敵の戦力発揮を効果的に妨害する非対称的な能力を獲得するという意味合いもあり、新たな領域における優勢の確保を重視している。
 前述の通り、「孫子」の忠実な実践者である中国は、情報化戦争の一環として政治戦や影響工作も重視している。
 また、1999年に発表された中国空軍大佐の喬良と王湘穂による戦略研究の共著『超限戦』は、25種類にも及ぶ作戦・戦闘の方法を提案し、通常戦、外交戦、国家テロ戦、諜報戦、金融戦、ネットワーク戦、法律戦、心理戦、メディア戦などを列挙し、これらのあらゆる手段で制限なく戦うものとして今後の戦争を捉えており、中国の情報化戦争に少なからぬ影響を及ぼしていると見られている。
⑥「技術的優越の追求と先進的兵器の使用」について
 中国は、2019年10月1日の建国70周年の軍事パレードで23種の最新兵器を公開し、軍事力を内外に誇示した。
 その中で、超音速ミサイルや無人戦闘システム、電子戦などに力を入れていることが明らかになったが、パレードで公開された最新兵器はすべて実際に配備されていると説明されている。
 その一部を紹介すると下記の通りである。
 新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「DF-41」、極超音速滑空ミサイル「DF-17」、超音速巡航ミサイル「CJ-100/DF-100」、超音速対艦巡航ミサイル「YJ-12B/YJ-18A」、最新鋭ステルス戦略爆撃機「H20」、攻撃型ステルス無人機「GJ-11」、高高度高速無人偵察機「WZ-8」、無人潜水艇(UUV)「HSU001」など
 中国は、全般的な兵力やグローバルな作戦展開能力、実戦経験でなお米国に後れを取っているとはいえ、今や自国からはるか遠くで作戦を遂行する能力を持ち、インド太平洋地域の紛争を巡る米軍および同盟国軍に対する接近阻止・領域拒否(A2/AD)能力を有する自国製兵器を幅広く取りそろえている。
 中国は、米国に対する技術的劣勢を跳ね返すため、特に、海洋、宇宙、サイバー、人工知能(AI)といった「新興領域」分野を重視した「軍民融合」政策を全面的に推進しつつ、軍事利用が可能な先端技術の開発・獲得に積極的に取り組んでいる。
 中国が開発・獲得を目指す先端技術には、将来の戦闘様相を一変させるゲームチェンジャー技術も含まれており、技術的優位性の追求を急速かつ執拗に進めている。
⑦「ネットワーク型指揮システムによる部隊指揮・兵器運用の集中化・自動化」について
 中国は、建国以来最大規模とも評される「軍改革」を急ピッチで進めている。
 軍改革は、2016年末までに、第1段階の「首から上」の改革と呼ばれる軍中央レベルの改革が概成した。
 2017年以降は、第2段階の「首から下」と呼ばれる現場レベルでの改革を着実に推進し、そして「神経の改革」と呼ばれる第3段階の改革に着手している。
 中国は、中央軍事委員会に習近平総書記を「総指揮」とし、最高戦略レベルにおける意思決定を行うための「統合作戦指揮センター」を新設した。
 これをもって、習近平総書記が、統合参謀部や政治工作部などで構成される中央軍事委員会直属機関の補佐を受け、統合作戦指揮センターにおいて中国全軍を集中一元的に指揮する体制が整ったことになる。
 また、中央軍事委員会/統合作戦指揮センターの直下に、従来、総参謀部が持っていた多くの作戦支援部門の機能を統合し、航空宇宙部、ネットワークシステム(サイバー)部、電子電磁システム部および軍事情報部から構成され、情報の戦いを一元的に遂行できる戦略支援部隊が編成された。
 さらに、これまでの「七大軍区」が廃止され、軍全体で統合運用能力を高めるため、統合作戦指揮を主導的に担当する「五大戦区」、すなわち東部、南部、西部、北部および中部戦区が新編され、常設の統合作戦司令部がおかれている。
 これに先立つ2014年7月、環球時報(電子版)は、中国軍が2013年11月、東シナ海に防空識別圏を設定したのに続き、「東海(東シナ海)合同作戦指揮センター」を新設したと伝えた。
 合同指揮センターは、中国各軍区の海、空軍を統合し、東シナ海の防空識別圏を効果的に監視し、日本の軍事的軽挙妄動を防止するのが目的だと報じている。
 このように、中国は、マルチドメイン作戦としての情報化戦争で「戦える、勝てる」(習近平総書記)よう、統合作戦遂行能力の向上と効率的な部隊・兵器運用に向けて、ネットワーク型指揮統制システムによる部隊指揮および兵器運用の集中化・自動化に注力している。
⑧「軍事活動への非公式の軍事編成および民間軍事会社の関与」について
 中国は、2010年7月に国防関連法制の集大成となる「国防動員法」を制定した。
 同法は、有事にあらゆる権限を政府に集中させるもので、民間の組織や国内外に居住する中国公民に対して、政府の統制下に服する義務を課している。
 国防動員の実施が決定されれば、公民と組織は、国防動員任務を完遂する義務を負い、軍の作戦に対する支援や保障、戦争災害の救助や社会秩序維持への協力などが求められる。
 同法は、日本国内で仕事をしている中国国籍保持者や留学生、中国人旅行者にも適用され、突発的に国防動員がかかった場合、中国の膨大な「人口圧」がわが国の安全保障・防衛に重大な影響を及ぼす。
 そのことについて深刻に受け止め、有効な対策を練っておかなければならない。
 また、同法は、国が動員の必要に応じ、組織および個人の設備施設、交通手段そのほか物資を収容しおよび徴収することができると定め、その際の徴用の対象となる組織や個人は、党政府機関、大衆団体、企業や事業体等で、中国国内のすべての組織と中国公民、中国の居住権をもつ外国人をも含むすべての個人としている。
 つまり、本法律は、中国に進出している日本企業や中国在住の日本人をも徴用の対象としている点に注意が必要である。
 コロナ禍によって、マスクをはじめとする薬や医薬品、医療機器など、日本人の生命や国家の生存に関わる生活必需品や戦略物資が不足した。
 その原因は、中国でマスクを生産していた日本企業が中国の国防動員の徴用の対象となったことにあり、医薬品などを極度にまで中国に依存し、脆弱性を露呈した厳しい現実を決して忘れるわけにはいかない。
 他方、中国は、2017年に軍隊と民間を結びつけ、軍需産業を民間産業と融合させる「軍民融合」政策を国家戦略として正式採用した。
 その狙いは、軍の近代化のために民間企業の先進的な技術やノウハウを利用することにある。
 中でも、最先端の軍民両用(デュアル・ユース)の技術を他国に先駆けて取得・利用することを重視していることから、民間セクターと軍事の壁を曖昧にし、あるいは排除して軍事分野に活用する動きを強めている。
 そのため、国有企業と民間企業の相互補完的な関係づくりに取り組みつつ、米国の軍産複合体を目指すとともに、国有企業の規模・シェアの拡大と民間企業の縮小・後退を意味する「国進民退」を積極的に推進し、政府の官僚を「政務事務代表」としてアリババやAI監視カメラメーカーのハイクビジョン(海康威視)などの重点民営企業に駐在させ、政府官僚による民営企業の直接支配を始めている。
 このような共産党一党独裁体制下での軍民融合は、軍事力の近代化・強化がすべてに優先する「軍国主義」化に拍車をかける危険性がある。
 軍民融合政策と同時に警戒しなければならないのが、「国家情報法」である。
 同法は、「国家情報活動を強化および保障し、国の安全および利益を守るため」(同法第1条)、国内外の情報工作活動に法的根拠を与える目的で作られた。
 その第7条では「いかなる組織および国民も、法に基づき国家情報活動に対する支持、援助および協力を行い、知り得た国家情報活動についての秘密を守らなければならない」と定め、国内外において一般の組織や市民にも情報活動を義務付けている。
 つまり、中国は軍民融合政策と国家情報法を一体として運用しており、そのことは、日本の企業や研究者が意図せずして、あるいは気付かないうちに、人民解放軍によるドローンや人工知能(AI)などの民間の最先端技術や専門知識の取得を助け、新たなリスクを生み出す可能性があることを意味している。
 このように、中国は、軍事活動に民間の組織や公民を動員する体制を敷き、また、軍の近代化のために民間企業の先進的な技術やノウハウを利用するため、民間セクターと軍事の境界を曖昧にし、あるいは排除して軍事分野に積極的に活用する動きを強めている。
 以上、ロシアが挙げる「現代の軍事紛争の特徴および特質」に沿いながら、中国がわが国に対し仕掛けている「新しい戦争」の形について概要を説明した。
 それから読み解けることは、中国は、ロシアの軍事ドクトリンとほぼ同じ軌道をたどった行動や工作を行っているということだ。
 ロシアが、当初ウクライナで行ったこと、すなわち純然たる平時でも戦時でもない境目において、軍事的手段と非軍事的手段を複合的に使用し知らないうちに始められた外形上「戦争に見えない戦争」、それと同じあるいは更に厄介な戦争を、中国は日本に対しすでに仕掛けていることは疑う余地のない事実である。
 もし、それによる可能性が尽きた場合には一挙に軍事活動へと移行し、最終的に最先端技術・兵器を駆使した情報化戦争をもって戦争の政治的目的を達成しようとすることも、ロシアのクリミア半島併合や東部ウクライナへの軍事介入と同じと見なければならない。
「全政府対応型アプローチ」で備えよ
 「新しい戦争」の形である外形上「戦争に見えない戦争」の大きな特徴および特質は、軍事力を背景とし、軍事的手段と非軍事的手段を複合的かつ連続的に使用することにある。
 したがって、わが国の防衛も、軍事と非軍事の両部門をもって構成されなければならない。
 その軍事部門を防衛省・自衛隊が所掌することは自明である。
 では、これまで説明してきた中国の非軍事的手段である「輿論(よろん)戦」、「心理戦」および「法律戦」の「三戦」、そして政治、外交、経済、文化などの分野の闘争、さらに常態化しているサイバー攻撃などに対しては、どの行政組織がどのように備えているのであろうか。
 それ以前に、わが国が中国の「戦争に見えない戦争」の挑戦を受け危機的状況にあるとの情勢認識があるのか、ななはだ疑わしい。
 そこでまず、「日中関係は完全に正常な軌道に戻った」や習近平国家主席の国賓来日など、誤った対中情勢認識に基づいた日中関係の推進は、直ちに是正されなければならない。
 そのうえで、中国の複雑多様な非軍事的手段による脅威を考えると、政府内各省庁のそれぞれの任務所掌事務・機能を結集した「全政府対応型アプローチ」(all government approach)を取ることが何よりも重要である。
 しかし、各省庁の縦割り行政では、効果的・実効的な対応は期待できないので、その弊害をなくし、政府が総合一体的な取組みを行えるよう、行政府内に非常事態対処の非軍事部門を統括する機関を新たに創設することが望まれる。
 例えば、内閣府または総務省に「国土保全庁」(仮称)を設置するか、米国の「国土安全保障省」のように、各省庁の関係組織を統合して一体的に運用する「国土保全省」(仮称)を創設する選択肢もある。
 そして、国家安全保障局(NSS)の補佐の下、国家安全保障会議(NSC)を国家非常事態における国家最高司令部とし、内閣総理大臣、内閣官房長官、外務大臣および防衛大臣(4大臣会合)を中核に関係閣僚をもって国家意思を決定し、最高指揮権限者(NCA)である内閣総理大臣が軍事部門の自衛隊および非軍事部門を集約する「国土保全庁」あるいは「国土保全省」に対して一元的に指揮監督権を行使するピラミッド型の有事体制を作ることが必要だ。
 他方、わが国は「自然災害大国」であり、平成7(1995)年1月の阪神淡路大震災や平成23(2011)年3月に発生した東日本大震災をはじめ、ほぼ毎年全国各地で大規模自然災害が発生し、その都度、共助、公助の不足が社会的課題として指摘されてきた。
 近い将来、南海トラフ地震や首都直下地震などによって国家的危機の発生が予測されている。
 併せて、中国による広範なサイバー攻撃や高高度電磁パルス(HEMP)攻撃があれば、一般住民をも直接的・間接的に巻き込まずには措かないのである。
 このように、国民保護や重要インフラ維持の国土政策、産業政策なども含めた総合的な対応を、いわば「国家百年の大計」の国づくりとして、千年の時をも見据えながら行っていくことが求められる。
 つまり、わが国の安全保障・防衛を強化するためには、社会全体でわが国を守る仕組み・取組みが不可欠であり、国民の「自助、共助、公助」への責任ある参画を促し、それを「民間防衛」の組織へと発展させることが更なる喫緊の課題である。
 一方、軍事部門を見れば、わが国は、戦後の「経済重視・軽武装」政策を引きずり、いまだにその充実強化が疎かにされている。
 最大の課題は、列国と比較して防衛費が極端に低く抑え込まれていることだ。
 日本は、中国の「情報化戦争」を念頭に、30防衛大綱で「領域横断(クロスドメイン)作戦(CDO)」を打ち出し、自衛隊の能力構築を始めた。
 CDOでは、従来の陸上、海上、航空の活動領域が宇宙空間へと拡大し、さらにサイバー空間や電磁波空間といった新たな活動領域が加わった。
 そのように、軍事活動の領域・空間が3つから6つへと一挙に倍増し、多領域・多空間に拡大して戦われるのが近未来戦の際立った趨勢である。
 そのため、これまでの自衛隊の組織規模をスクラップ・アンド・ビルト方式で再編成するのには一から無理があり、従来の防衛力を基盤として、中国の新たな脅威に対抗できるCDO能力を付加的に強化するには、自衛隊の組織規模の飛躍的拡大や最先端のハイテク装備の取得が必須である。
 また、CDO(米軍はマルチドメイン作戦:MDOと呼称)を前提とした日米共同作戦には、両軍のC4ISRをネットワーク化することが不可欠であり、そのような防衛力の整備には防衛費の倍増は避けて通れない。
 米国は、中国との本格的かつ全面的な対決に踏み出し、そのため今後、世界の分断が進むと予測されている。
 つまり、米中対立は、米中間に限られたものではなく、自由・民主主義を支持する国々と共産主義中国との対立であり、他ならぬ日本自身の問題である。
 その対立が前提の世界において、日本が二者択一で同盟国の米国をさて置き、中国を選択することがあってはならない。
 同盟が成り立つには、①価値の共有、②利益の共有、③負担の共有、そして④リスクの共有、すなわち戦略的利害の共有が必要である。
 米国が中国との新冷戦を決意している時、日本が安全保障・防衛上の利益のみを享受し、新冷戦において生じる米国の通商や金融、テクノロジー、外交、それに安全保障・軍事などの負担やリスクを、中国との経済関係を重視するあまり、日本が共有する明確な姿勢を示さない場合、同盟は成り立つはずがない。
 そのうえ、米国からは見放され、中国からは経済面で裏切られた上、安全保障上の敵対心を露わにされるのは必定である。
 コロナ禍とともに戦後最大の安全保障の危機に直面している今こそ、日本は米国との同盟関係を一段と深化させ、米国と同じ構えで中国に備えることが強く求められるのである。
 そして、日米同盟を基軸として、インド、オーストラリアの4か国(クワッド)に台湾などの周辺諸国やASEANなどを加えて、「自由で開かれたインド太平洋」構想(戦略)の下、インド太平洋版「NATO」へと発展させることが今後の大きな課題でもある。
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Missing the Target
N Engl J Med 2020; 382: 1353-9.
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8月某日, Bostonに住む58歳の男性が, 約2週間の経過で左下腹部から腰部, 鼠径部に広がる激しい痛みを主訴に救急外来を受診した. 痛みの他, 臍周囲から両側下肢の知覚鈍麻もあるとのこと. これらの症状に先行して外傷を負ったり, 足腰を酷使したりといったことはなかった. 尿失禁や便失禁, 発熱, 頭痛, 羞明, 体重減少, 皮疹の自覚, 血尿, 排尿困難, 下痢はなかったが, 受診3日前から排便がないとのこと. 
Radiculopathyを認めた場合には, 脊髄圧迫, 馬尾症候群, 硬膜外膿瘍の除外が必須である. 本例では, 横断性脊髄炎も鑑別疾患には挙がる.
Mantle細胞リンパ腫の既往があり, また, 数年前より脂質異常症, 逆流性食道炎に対して, Simvastatin, Omeprazoleの内服を継続しているとのこと. 
悪性リンパ腫の既往があることから, その中枢神経再発による脊髄圧迫の可能性は考慮すべきである. 
Mantle細胞リンパ腫については, 約5年前に全身リンパ節腫大と脾腫を契機として発見され, 典型的な(11;14)(q13;q32)転座が確認されており, 予後予測因子として知られるKi-67 proliferation indexは10%であった(※Ki67 proliferation indexが高値であるほど, 予後不良とされる). LDHは366U/Lであった(※MCL International Prognostic Index(MIPI) ☞ Age/Performance status/LDH/WBCより算出され, International Prognostic Index(IPI)よりも予後予測能が高い). Rituximab とBendamustineによる化学療法を3サイクル受けた後, RituximabとCytarabineによる治療が追加された. それらの治療後に自家造血幹細胞移植を受け, 完全寛解に至った. 
特記すべき家族歴として, 弟がParkinson病, 叔父がHodgkinリンパ腫をそれぞれ発症しているとのこと. 喫煙歴・飲酒歴・違法薬物使用歴はなかった. 受診8ヶ月前にJamaicaへ旅行し, 受診2週間にNew York州北部で家族と過ごしていた(New York州北部を訪れた際にはすでに症状を自覚している状態であったと). 鯉を飼っており, 妻とともに園芸も楽しんでいるが, 特に虫に刺された覚えはないとのこと. 
Mantle細胞リンパ腫診断時のLDH及びKi-67 proliferation indexからは, 再発を起こし得るような病勢であったとは考え難く, 悪性リンパ腫の中枢神経再発以外の鑑別疾患についても引き続き考慮する必要がある. 
Vital signは体温36.8℃, 心拍数63/min, 血圧157/89mmHg, 呼吸数18/min, SpO2 99%(室内気)であり, 呼吸促迫や苦悶様表情はないものの, なんとなく具合の悪そうな様子であった. 眼球結膜に黄染なく, 咽頭所見に異常は認められなかった. 口腔粘膜は湿潤しており, 項部硬直はなく, 頚部リンパ節腫大も認められなかった. 心音及び呼吸音に異常所見はなかった. 腹部やや膨隆し, 腸蠕動音は聴かれないものの, 触診上は軟で圧痛はなかった. 肝脾腫も認められなかった. 背部に発赤や熱感, 傍脊柱筋の圧痛や脊椎のアライメント異常も認められなかった. 浮腫はなく, 末梢循環は保たれていた. 明らかな皮疹は認められなかった. 意識清明で見当識障害なく, 第II~XII脳神経障害を示唆する所見は認められなかった. 筋萎縮やトーヌス異常, 筋力低下はなく, 腹壁運動の非対称性も認められなかった. 左膝蓋腱反射が僅かに減弱している以外には, 明らかな腱反射異常は認められず, Babinski徴候は両側とも陰性であった. 臍より尾側では, 右下腹部から右下肢前外側部に痛覚低下を認めた(第11胸髄〜第2腰髄のデルマトームに一致する範囲). 肛門周囲の感覚障害はなく, 歩行異常も認められなかった. 
(参考)Superficial Abdominal Reflex; https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1308153
血小板数110,000/μL(基準値; 150,000~450,000/μL)であり, 平時の数値(80,000~120,000/μL)と比べて変化はなかった. 白血球数及び好中球数は基準値内であり, 貧血もなかった. 電解質・腎機能・肝機能は何れも基準値内であった. LDH 238U/Lで上昇を認めなかった. 尿定性及び沈渣に異常所見はなかった. 腹部~骨盤部CTで明らかな異常所見は認められなかった. 脊髄造影MRIでは, 胸髄レベルの髄膜に広範な造影効果が認められた. 馬尾神経根にも僅かな肥厚と造影効果が認められた(Fig. 1).
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Figure 1. Thoracic and Lumbar MRI Showing Leptomeningeal Enhancement around the Thoracic Spinal Cord and Thickened Cauda Equina. 
患者は悪性リンパ腫の中枢神経再発の疑いで, 腫瘍内科へ入院となり, 腰椎穿刺が施行された. 初圧は基準値内であり, 髄液糖は67mg/dL(基準値; 40~70mg/dL), 髄液蛋白は165.9mg/dL(基準値; 44mg/dL未満)であった. 白血球数は190/μL(リンパ球比率 77%)であり, 4本目のスピッツでの赤血球数が530/μLであった(1本目のスピッツでの赤血球数は30,000/μLであった). 細胞診にて悪性細胞はなく, Flow cytometryでも悪性リンパ腫を示唆する異常所見は認められず, 形質細胞様リンパ球や免疫芽細胞を含む, 多様な形態のリンパ球浸潤が認められるのみであった. 血清及び髄液検体は, 梅毒, 結核, Lyme病, VZV, HSV, HHV-6, West Nile virusに関するスクリーニング検査へ提出された. 頭部造影MRIでは, 橋前槽に於ける両側三叉神経の造影効果を認めた(Fig. 2). 眼科的検査では, 硝子体及び網膜に明らかな異常所見は認められなかった. FDG-PETを施行したところ, 頚部及び腋窩リンパ節に複数の集積が認められた. 下位腰髄にも僅かながら集積が認められた. 
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Figure 2. MRI Scan of the Brain.
リンパ球優位の髄液細胞数増加に関して, 感染症科へのコンサルテーションがなされた. 感染症科医による診察では, 左鼠径部から左前大腿部にかけて, 境界明瞭な環状の紅斑が認められた(Fig. 3). 鱗屑付着や苔癬化, 潰瘍形成は認められなかった. 他の部位には明らかな皮疹は認められなかった. 患者自身はこの皮疹に気づいていなかった. 
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Figure 3. Patient’s Left Groin and Anterior Thigh, with an Annular, Erythematous Rash(※有害指定回避のため一部改変).
Lyme神経Borrelia症の診断で, 4週間のCeftriaxone投与が行われた. なお, 12誘導心電図検査では伝導障害は認められなかった. ELISA法にて陽性であったものの, Western Blot法ではIgM/IgGともに陰性であった. 髄液検体による他の病原体に対するスクリーニング検査は陰性であり, 塗抹及び培養検査でも抗酸菌は検出されなかった. 
(参考)国立感染症研究所(NIID; National Institute of Infectious Diseases)HP; https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/524-lyme.html
米国国内に於ける2017年のLyme病報告例は, 29, 513例に上るものの, 未診断例も含めると, 年間300, 000例ほどと推測されている.
Borrelia症患者のうち, 10~15%に何らかの神経合併症(Neuroborreliosis)が生じるとされるが, 臨床症状は多岐に渡り, 診断が遅れる理由のひとつとなる. 特徴的な皮疹は診断に有用であるものの, しばしば見逃されてしまう. 
本例では初診時, 知覚鈍麻, 便秘, 複数領域のデルマトームに一致する神経根痛が認められていた. 造影MRIでは三叉神経, 胸髄, 馬尾といった広範な部位での造影効果が認められた. Mantle細胞リンパ腫の既往があったことから, その中枢神経再発が強く疑われたものの, 同リンパ腫診断時のKi67 proliferation indexは10%であり, 中枢神経再発が起き得るとされる値(>30%)を大きく下回っていた.
本例の臨床経過は, Borrelial meningoradiculitis, いわゆるBannwarth症候群に合致する. Borrelial meningoradiculitisは, (1)激しい神経根痛, (2)筋力低下, (3)脳神経障害, (4)リンパ球優位の髄液細胞数増多, (5)髄液糖低下を伴わない髄液蛋白上昇を特徴とする, Lyme神経Borrelia症の稀な病型であり, 欧州での報告例が多い. 男性により多く, また, 7月~10月に多いとされ, 何れも本例に合致する.
米国では殆どがBorrelia burgdorferi sensu stricto(いわゆるB. burgdorferi)によるものである一方, 欧州では殆どがB. garinii, あるいはB. afezeliiによるものであり, この違いが臨床症状の違いに関連している可能性がある.
米国では全ての州でBorrelia症を発症する可能性があるが, 特に北西部~中北部が流行地とされる. マダニの活動性は湿度と気温に依存するため, 気候変動により今世紀半ばまでに, Borrelia症が20%以上増加すると推定されている.
Borrelial meningoradiculitisは数週間の経過で亜急性に進行する. 神経根痛と筋力低下に加え, 不眠や頭痛, 倦怠感, 感覚異常, 遊走性紅斑, 顔面神経麻痺などが認められる. 神経根痛はほぼ全例で認められる症状であり, 皮疹部位に一致, あるいは隣接する複数のデルマトームに渡るのが一般的である. 上行性筋力低下, 弛緩性麻痺を呈した症例報告もある. 脳神経障害としては顔面神経麻痺が最も多く, 三叉神経麻痺は少ないとされる. 約半数の症例で, 経過中に遊走性紅斑が認められる. 本症例でも認められた腹痛や便秘, 偽性腸閉塞といった消化器症状は, 報告されてはいるものの, 一般的ではない.
診断については, ELISA法でスクリーニングを行ない, 陽性例に対してWestern blot法で確定するのが標準的ではあるが, 発症1ヶ月以内の患者では感度・特異度ともに十分ではない. 特に流行地に於いて, 典型的な遊走性紅斑が認められる場合には, 血清学的検査の結果に関わらず, 治療を開始することが推奨される. また, 近年では, B. burgdorferi C6 peptide antibodyが発症早期のスクリーニングに利用されている. 本例では, Rituximab及びBendamustineによる化学療法と自家造血幹細胞移植が, 患者の液性免疫に影響を与え, Western blot法の結果を修飾した可能性があるが, 治療終了時には, B. burgdorferi C6 peptide antibody陽性が確認されている. Lyme神経Borrelia症の診断に於いて, 確立されたガイドラインはないものの, ペア血清及び髄液での抗体価を確認することが推奨されている. 画像検査は他疾患の除外には有用であるものの, Lyme神経Borrelia症自体に特異的な所見はない.
Lyme神経Borrelia症の治療反応性は良好であり, 適切な抗菌薬治療を10~28日間行なえば, 約95%の症例で改善が期待出来る. そのため, Lyme神経Borrelia症が強く疑われる患者では, 検査結果を待たずして治療を開始することは妥当である. Penicillin, Ceftriaxone, Cefotaxime, Doxycyclineが有効であり, 欧州で行われた β-lactum系抗菌薬静注とDoxycycline内服の無作為比較試験では, 両者で治療効果に有意差はなかった. 
Lyme病流行地の居住歴や渡航歴のある患者が神経根症状を呈している場合にはLyme神経Borrelia症を疑うべきであること, そして, 皮膚所見も含めた身体診察が診断に重要であることが本例の教訓である. 
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straightlittle · 5 years
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 武漢市の封鎖は1月23日10時から始まったが、通告時刻は同日午前2時5分。その間数十万の武漢市民が脱出した。なぜこの時間的ゆとりを与えたのか?解答を追いかけていくうちに、とんでもないことが判明した。
◆武漢市の封鎖通告時刻と実行とのずれ
 「武漢市新型コロナウイルス感染による肺炎流行予防制御指揮部」は、1月23日午前2時5分に武漢人民政府の名において、「市新型コロナウイルス感染による肺炎流行予防制御指揮部(第1号)」を発布した。「長江日報」は中国共産党武漢市委員会の機関紙なので、そのウェイボー(weibo)は権威ある発表となる。但しweiboはこの情報を見た場所の時差を調整して表示するので、1時間の時差がある日本時間「03:05」と表示されている。
 念のため、以下に現地時間のweibo情報を貼り付けておこう。
 
また、「武漢市人民政府」のHPの通告もご紹介しておく。何れの場合も、通告内容は以下の通りである。
==
 新型コロナウイルス感染による肺炎の流行を防御することを全面的に遂行し、効果的にウイルスの伝染経路を遮断し、疫病の蔓延を断固阻止し、人民群衆の生命安全と健康を確保するために、ここに以下のことを通告する:
 2020年1月23日10時を以て、全市のバス、地下鉄、フェリーボート、長距離旅客輸送を含む公共交通を全て、暫定的に停止する。特殊な原因がない限り、市民は武漢を離れてはならない。武漢から外部に移動する飛行場や列車の駅は暫時封鎖する。いつごろ回復するかは追って通知する。
 広大なる市民と旅客の理解と協力を求める!
== 
 この通知は22日の夜中、正確には23日の午前2時5分に発布されているので、「封鎖実行」と「封鎖予告」の間には約「8時間」のゆとりがあることになる。
 それを証明するかのように、中国政府の通信社である新華社通信の電子版「新華網」も23日の午前「03:15:55」に通告を発布している。こちらには「街の掲示板」による通告も載っている。また、これはweiboではないので、現地で発表された時間(転載された時間)がそのまま表示されている。
 「通告」と「実行」の時間差「8時間」は何を意味するのか?
 こんな通告を知って、武漢市を逃げ出さない方がおかしいくらいだ。逃げ出せる財力と脱出先のある者は、封鎖される前に逃げ出すに決まっているだろう。ましていわんや春節を控えている。30億人の大移動が始まると中国政府は早くから言っていた。事実、この間に数十万人の武漢市民が武漢市を脱出したと、中国のネットは一時燃え上がった。次々に削除されているが、中国大陸外の中文メディアには「8時間の間に数十万の武漢市民が脱出した」という情報が数多く残っている。
◆空白の「8時間」を追え!
 なぜ武漢市はわざわざ「さあ、脱出するなら今だよ!」というような通告の仕方をしたのか。伝染が拡大するのを本気で防ぎたいと思うのなら、こんなことはしないはずだ。
 私は1947年から48年にかけて、長春において中国共産党軍(八路軍)による食糧封鎖を受けている。封鎖を事前に知らせるどころか、封鎖は気づかれないようにジワジワと迫ってきた。気が付いたら長春市全体が鉄条網で包囲され、市民は長春市から出られないようになっていたことを知った。長春市内にいる国民党の一派(正規軍から差別待遇を受けていた雲南60軍)が共産党軍側に寝返って長春は48年10月に陥落したが、その間に餓死した中国人一般庶民は数十万に及ぶ。
 長春食糧封鎖という経験と中国政府の事実隠蔽に関して生涯をかけて闘っている私にとって、この「空白の8時間」は「あり得ない措置」なのである。
 「なぜだ?」「何があったのか?」を、ここのところほとんど寝ずに追跡した。
 おまけに1月24日付のコラム<新型コロナウイルス肺炎、習近平の指示はなぜ遅れたのか?>に書いたように、武漢市レベルの封鎖となったら、中央政府・国務院の決定がある。だからこそ、武漢市政府の通告とほぼ同時に新華網の通知がネットで公開されている。それも真夜中に!
 国務院が封鎖の決定を出す際の法律的根拠を、さまざまなケースに分けて明記した情報もある。
 1月24日付のコラムで書いた武漢市政府の、あの救いがたいほどの「愚かしさ」のせいかとも思ったが、なぜ武漢市政府がそこまで愚かしいのかを追跡しても「これだ!」と合点するような因果関係には遭遇せず、むしろ今度は「なぜ新華網が真夜中に封鎖通告を発布したのか」という事実に考えが集中した。
 そこでハッとしたのがWHO(World Health Organization=世界保健機関)との関係だった。
◆WHOの緊急委員会開催に時間を合わせていた!
 今般の新型コロナウイルス肺炎の発生と流行が「緊急事態に当たるか否か」を協議するため、WHOの緊急委員会が、日本時間の1月22日午後8時頃からスイスのジュネーブで開催されることになっていた。
 そのため習近平は1月22日にフランスのマクロン大統領やドイツのメルケル首相などと電話会談し、今般の新型肺炎の対策について、「中国は感染発生以来、予防制御の措置を周到に行い、WHOなどにも速やかに情報を提供している」したがって中国は「国際社会と協力して対策を取る考えである」ことなどを強調している。
 これは、「したがって、どうか今般の新型コロナウイルス肺炎の発生と流行に対して“緊急事態宣言”をしないでくれ」と、発言力のある関係国に頼んだことを意味する。
 スイスにおける会議の開始時間は日本時間午後8時頃。
 武漢と東京の時差は「1時間」。
 したがって武漢時間の1月22日午後7時から会議が始まるという計算になる。
 22日真夜中に封鎖令を通告しても、もう遅いのだが、フランスのマクロン大統領と習近平国家主席との間の電話でもあったように、おそらく「WHOとは緊密に連絡し合っている」のだろう。だから、もうすぐ封鎖令を出すこともWHO事務局には「情報提供」しているはずだ。会議は長引いたようなので、滑り込みでギリギリ間に合ったのだろう。
 結果、習近平はWHOに「緊急事態宣言」をさせないことに成功している。
 日本時間の1月23日、WHOのテドロス・アダノム事務局長は「緊急事態判断を保留する」と、記者会見で発表した。つまり「緊急事態宣言」の先延ばしをさせることに習近平は成功したのだ。すなわち、「封鎖令も出して、きちんと新型肺炎の感染を防ぐための予防制御をしていますから緊急事態宣言を出す必要はありません」というシグナル発信が功を奏したことになろうか。
 もしもここで「中国は緊急事態にある」などということを宣言されたら、米中覇権争いは中国にとって壊滅的打撃を受けるだろう。それを避けるためにも、習近平は必死で「奥の手」を使ったと推測される。
◆習近平とWHO事務局長との関係
 その相手こそが、このWHOのテドロス・アダノム事務局長だ。
 彼はエチオピア人で、習近平政権になってからエチオピアとの蜜月は半端ではない。2013年6月14日、習近平国家主席は訪中したエチオピアのハイレマリアム首相と北京の人民大会堂で会談し、2014年07月9日にはエチオピアの当時のムラトゥ大統領と同じく人民大会堂で会談している。2017年5月12日にはやはり人民大会堂でエチオピアのハイレマリアム首相と会見。今日まで李克強のエチオア訪問など枚挙に暇がないが、近くは、2019年に4月24日に習近平国家主席は訪中したエチオピアのアビー・アハメド首相と人民大会堂で会見している。
 今ではエチオピアへの最大投資国は、言うまでもなく中国である。
 2017年7月からWHOの事務局長になったテドロス・アダノム氏はそれまで外務大臣を務めていた。習近平との接触は長い。どれだけ懇意にしているか計り知れないほど入魂の仲なのである。そして緊急事態宣言の最終決定権はWHO事務局長の手の中にある。
 あの空白の「8時間」は、首の皮一つでWHOによる「緊急事態宣言回避」のためにあったと結論付けていいだろう。23日の朝10時の封鎖令実行と同時か、それ以降に発表したのでは遅かったのである。
 
◆パンデミックを招きつつある習近平
 しかしその「策略」がもたらした負の影響は、恐るべき結果を招きつつある。
 新型コロナウイルス肺炎の潜伏期間は10日間前後で1~14日間くらいの幅があるそうだ。仮に10日間だとして、武漢から脱出した数十万人と推計されている人たちは中国全土あるいは世界のどこかに散らばってしまった。ということはウイルスも同時に拡散しているわけで、「人から人」感染があり、かつ二次感染もあるとのことなので、1月23日以降から最大14日間として2月5日までは爆発的に患者が増えていく危険性をはらんでいる。パンデミック寸前だ。
 本日(26日)、中国政府の関係当局は「ウイルスの伝染力が強くなりつつあるかもしれない」と言ったが、それもあるだろうが、急激に広がったのは武漢市民の脱出が関係しているだろう。WHOの「緊急事態宣言」を回避するために「8時間」の空白を生み出したためにウイルスを持っている可能性が高い武漢市民数十万を一気に各地へと分散せてしまったのだから。発生源となっている海鮮市場では大量の新型コロナウイルスが検出されたと北京は発表したばかりだ。
 だとすればパンデミックを招きつつある犯人は習近平国家主席だということになる。
 1月24日のコラム<新型コロナウイルス肺炎、習近平の指示はなぜ遅れたのか?>では、元凶は地方政府の「北京しか見てない役人根性の愚かさにある」と書いたが、今回は、それを受け止めた北京の「巨大な保身」にあると言っていいだろう。
 中国人民の命を守ることが大事なのか、それとも世界に対するメンツを守ることが大事なのか。
 全人類に対する責任を重視することが大事なのか、それともWHOからの処罰を一時的に免れることが大事なのか。
 たとえ「緊急事態宣言」を受けたとしても、パンデミックを起こさないことの方が遥かに重要だと思うが、それを選択できないところに中国の欺瞞的な構造がある。地方政府の危なさと共に、こういった所に「ポキッと折れるかもしれない」中国の脆弱性が潜んでいるのである。
 このような国の国家主席と「責任を共にすると誓い」、国賓として来日させようとしているのが日本の安倍内閣だ。天皇陛下と握手する場面を全世界にばらまかせることによって、習近平政権のやり方に正当性を与えようとしている。
 このような状況にあってもなお、習近平を国賓として招聘するなどということが、どれほど恐ろしい未来を日本にそして全世界にもたらすか、安倍内閣は真相を見る目を持つべきだ。
 野党も何をしているのか。習近平の国賓来日が、どれほど危険な将来をもたらすか、そのことにも目を向けた大局的な国会議論を望む。
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sorano-mukou · 6 years
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「いざ青春の二次会のスタート」
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卒業式前夜。24時間後には最も慣れ親しんだ「学生」という肩書きを捨てている事になる。
正直な所これといった感傷はない。大学院に進学するということは、周りの友人の大多数は就職しているわけで。会えば話題は近況の、つまり仕事の話をに及ぶことも多かったし、近い将来の予習のつもりで会話していた節があったのかも。というか本当に追い込まれていた時期に8時登校23時下校でひたすら実験執筆というブラック企業真っ青なスケジュールをこなしてた時もあるから、これはお給料いただいても割とバチは当たらないのでは??ってなった時も正直に言えばあるから。
けど年末とか進級進学といった節目の機会にこれまでを振り返って身の振り直すのは嫌いじゃないので、ちょっとこの2年間の記憶を掘り起こしてみる。要するに私も自分語り大好きなんですよ。
仕事(研究):これは達成感7割、後悔3割といったところ。
まずかなりの数の発表(今正確な数数えたら36回)をこなした結果人前で話すということに何の恐怖も抱かなくなった上に、きちんと原稿を用意すれば言いたいことの精度を上げて伝えられるようになったと思う。あといわゆる正しい日本語を使った文書的なモノを仕上げるスキルも身についた。その弊害としてブログとかTwitterも変にかしこまってしまうのはご愛嬌。ここは上手いこと崩して使い分けたいですねぇ。
後悔としては、自分の研究以外の仕事を手早く済ませられなくて、本来のやるべきことの進捗が致命的に遅くなったこと。本来自分がやるべきことはどこまでなのか、優先順位が一番高いのはどれか。これを常に念頭に置くこと。「自分で全部やらないと不安」なんて傲慢。一人のキャパシティなんてたかが知れているんだよ。
好きなこと(趣味):胸を張って言える「楽しみ尽くしました」
サークルにいた大学生時代と変わらず音楽は聴くのも弾くのも好きでいれた。結局自分に一番フィットしていて世界を広げてくれる趣味は音楽なんだろうなって。映画鑑賞をサボりがちな性分を直すために一昨年くらいから目標に掲げてた「年間映画52本鑑賞」も去年達成できました。
あまり生涯No.1の映画とか曲とかって聞かれても軽々しく決められないタチなのですが、ライブ部門については1年生の時に観たTHE NOVEMBERSが内定しました。本編で演奏した曲の出来に満足しなかったメンバーがダブルアンコールで同じ曲を爆音で叩きつけた挙句叫び狂い、「大人気ない大人でごめんなさい!」とのたまった2017/11/08。初めてライブで笑い泣きした夜。彼らについていくことを決意した夜。
大学生時代はサークルに時間とお金を取られすぎて出来なかった、一人での旅行もちょくちょくいった。尾道・金沢・名古屋・京都。やっぱり居心地よく過ごせるのは「適度な都会」なんだなって。うまく説明できないけど、20時すぎにスーパーが閉まる商店街、朝日を遮る高層ビルがない街並み、自分の町を好いてるひと。そういうところがいい。卒業旅行で華々しく海外に行く院生おきまりのアレは出来なかったけど、どの旅行も楽しかった。今度は一週間くらい泊まって、地元の人みたいに過ごせたらな。
前々から興味があったフィルムカメラも縁があってちょうど大学院生活が折り返したタイミングで手に入れた。「現像した後編集しない」なんでこのご時世そんな縛りを課したんだ俺。ちょっぴり後悔することもあるけど、まぁいいでしょう。フィルムでしか表れない美しさがあるって信じてもうしばらくはこのスタイルを崩さずにいようと思います。フィルム写真を通じて「一緒に撮りに行きたい」「自分を撮って欲しい」と必要としてくださる方にも出会えるなんて思いもしなかったから、初めてよかったなぁ。好き勝手にやってて必要とされるってなんて贅沢。とりあえずカメラ購入から500日くらい経ったいま、一番好きな写真を貼っておきますね。写真アカウントはこちらです↓
 https://accidents-in-thirtyfive.tumblr.com/
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人間関係(言葉):割と反省することが多いかな。
人との距離のはかり方が下手すぎることを痛感した2年間でもあった。今の自分と相手の距離感ならどこまで言っていいのか。その言葉は無意識のうちに相手を縛り付けていないか。そういったことにまるで意識が向いていないと気付かされた。一番タチが悪いのは私は善意すら持って相手を傷つけたことがあったこと。多分その時の自分は「無難にやり過ごすならいないのと同じ」なんて考えで言葉を選んだんだろうけど。それでより相手の気持ちを曇らせてどうする。一度ならずとも二度もそういう事件があったのは胸に刻んでおきたい。
それでも。酔っ払った時に冗談半分で海外に住んでみたいよねー、なんてうそぶいたら「でも俺がここに居続けたい理由のだいたいは皆だなぁ」って真顔で言ってくれる人もいる。「学生時代にできた友達だけがホンモノ」なんて俗説これっぽっちも信じていないけど、今仲良くしている友人は「絶対に裏切ってはいけない」人たちだ。
元を辿ればもうなんで仲良くなったかも不確かな人。よく考えるとなんで知り合えたのか分からない人。気づけば周りにそんな人々が増えてきた。うわべだけで人間関係をやり過ごすことが上手いって不本意ながらも分かった自分だからこそ、その人たちを裏切りたくないって本気で思うし、願わくば自分が関わることで少しでもその人の人生が楽しくなったらもっと嬉しい。これからはどんな人と出会えるんだろうね。怖くてでもちょっと楽しみ。
SNS(発信):これは進行形だからまだ評価を下せるわけじゃないけど。
およそ投稿内容だけで特定されるようなことはしていないのに、いまだに自分を思う存分ネット上で出すことができない。恥ずかしさが何を発信するのにも付きまとってくる。「どの立場からそんな偉そうに…」って。
たぶん、ネット上で話題をさらうために使われる「やたら強い言葉遣い」や「無駄に誇張された形容詞」とかに対するアレルギーがそういう遠慮に繋がっているんだろう。なんというか、「SNSで注目を集めるために」やる、ということ全般に対してずっと形容しがたい違和感がある。Twitterで写真にタグ付けすると「写真本体には目もくれずに押される、自分の存在を知らせるためのいいね」をもらうことが多いけど、それすら?と疑問符が浮かんでいる。なに中身見ずにいいねしてんだ。そんな軽々しくなんでもいいって言ってたらそんな人のセンスは信じられないよ。
SNSはいいね稼ぐゲームでしょ、別に誰かの邪魔してるわけでもないし、なんて言われたらぐうの音も出ないけど、この風潮に乗れるのは私にはどうも無理そうだ。やめないけど。SNSで知り合えた人だっているから完全にネガティブなイメージな訳ではないけど、きっと延々とグレーな印象のままだと思う。だから写真に関して言えばある程度纏まったモノが作れそうなら写真集を作ったりどこかのお店で展示したり、と形の発信も今後は検討したいとぼんやり考えてる。
うーん。珍しく家でお酒飲んだのがヘンな方向に出た気がする!
もう少しで夜が明けそうな時間になってしまった。学生が終わろうとここで書くことはこれっぽっちも変わらないと思うので引き続きよろしくお願いします。
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technocat1026 · 6 years
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押尾学冤罪事件のコピペ乙
森喜郎は悪魔崇拝フリーメイソントップだからな
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オリンピック委員長森喜朗長男と押尾学冤罪事件
酒気帯びコンビニ突入容疑、森元首相の長男逮捕
2010年8月7日(土)
引用元
http://voicevoice.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/post-3036.html
酒気帯びで乗用車を運転し、コンビニ店に突っ込んだとして、石川県警小松署は7日、森喜朗元首相の長男で、自民党県議の森祐喜容疑者(45)(石川県能美市下ノ江町)を道交法違反(酒気帯び運転)の疑いで逮捕した。
調べに「飲酒運転をして事故を起こした」と供述しているという。
森容疑者は同日、秘書を通じて県議会議長に辞職願を提出し、受理された。
発表によると、森容疑者は同日午前10時10分頃、石川県小松市大島町の県道を、酒気帯び状態で乗用車を運転した疑い。
森喜朗 VS 押尾学の「最終決戦」が近づいている! 暴露本出版で“ドス黒い闇”に言及、東京五輪にも影響必至か!?
tocana / 2017年4月28日 9時0分
引用元
https://news.infoseek.co.jp/article/tocana_51887/?p=2
元内閣総理大臣の森喜朗氏が、著書『遺書 東京五輪への覚悟』(幻冬舎)を今月21日に発売した。これに続いて、とある人物も本の出版計画を進めているという情報が浮上している。そこでは、闇に葬られた“あの事件”の真相にも触れられているというから穏やかではない。
 森氏といえば、文部大臣や建設大臣などを歴任後、2000年に内閣総理大臣に就任した政界における重鎮中の重鎮。首相在任期間は約1年と短かったが、今でも隠然とした影響力を放ち続けている。現在は2020年に控えた東京五輪組織委員会の会長として、辣腕を振るう毎日だ。
「今でも、安倍晋三首相とは懇意です。東京五輪組織委員会の会長に就任したのも、安倍さんの後押しがあったから。それに、森さんは今でもロシアのプーチン大統領と親交があり、北方領土返還交渉の際は、安倍さんにアドバイスを送ることも少なくありませんでした。さらに、長年にわたり日本ラグビー協会の会長も務めました。その人脈は政界からスポーツ界、芸能界と幅広いですね」(永田町関係者)
 そんな森氏が、残りの人生のすべてを賭けて取り組んでいるのが東京五輪だ。ガンと闘病しながら、最後の力を振り絞りながらのエピソードが、今回の著書にも記されている。
「日本オリンピック委員会や東京都の小池百合子知事との確執は思った以上に赤裸々に語られています。そして、自身のガンについてもあけすけに明かしていますね。もともと文芸春秋社で出版する予定だったそうですが、森氏が五輪をめぐる記事で名誉を傷つけられたとして週刊文春を訴えたため、幻冬舎から出版することになったそうですよ」(出版関係者)
 だが、この森氏の活動が頓挫する可能性が高まっているとしたら、関係者は青ざめるに違いない。実は、もう1人、赤裸々な内容の本を出版しようとしている人物がいるとささやかれているからだ。それが、元俳優の押尾学だという。
 押尾は、2009年にホステスの女性に合成麻薬を渡した疑いで逮捕された。その後、一緒にいた女性の容態が急変。そのまま放置して死なせたとして、保護責任者遺棄罪や麻薬取締法違反などで懲役2年6カ月の実刑判決となったのが世間の耳目を集めた。
「実は、当時からささやかれていたのは、『あれは押尾だけに罪をなすりつけたのではないか』とするものでした。というのも、事件にかかわっているとして、有名芸能人やIT企業社長、スポーツ選手などの名前も取り沙汰されていたのです。そして、そのうちの1人として、森氏の息子・森祐喜氏(故人)の名前まで挙がりましたが、結局、真相は藪の中。証拠もなく、ただの噂なのかもしれないのですが……」(事情を知る関係者)
石川県議会議員だった祐喜氏は、父親と同じく幅広い交友関係で知られていた。特に夜の世界ではつとに有名だった。そして、2010年8月に飲酒運転での交通事故が問題視され、その2カ月後に多臓器不全のため急逝。押尾事件後、あまりにもショッキングな出来事の連続に、噂が一人歩きする事態にまでなった。前出の関係者が続ける。「2014年に出所した押尾には、多数の出版社がオファーしたそうです。押尾は、その中の1社を決定し、執筆を開始。トークイベントやSNSなどを開始したのも、出版への地ならしが理由だと聞きます。そして現在、すでに本は書き終えていて、あとは発売のタイミングを待つだけらしいのですが、もちろんあの事件にも触れている。万が一、そこに祐喜氏の名前があるとすれば、父親、ひいては東京五輪への影響は避けられません」押尾は1年前の「週刊新潮」のインタビューに「事件にはいろいろな人が関わっていました」「僕は何もしゃべっていない。仲間を売ることはできないと思ったからです。でも、フタを開けたら、皆が“押尾がやったこと”と僕を売っていた」「これは一生、忘れることができない」などと証言していた
押尾学
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14193901724
より重要部のみ引用
そんな彼は獄中で、冤罪に関する本を読み漁り、出所後は謎の豪遊生活を送り、インスタグラムにはスリランカの経済大臣との会食の写真をアップしたり、名前は言えませんが森喜朗という国会議員から資金援助を受けているなどの噂があったりします。
https://www.instagram.com/p/BOR3PtshBEV/?utm_source=ig_embed
引用元
http://www.asyura2.com/10/senkyo92/msg/142.html
写真は押尾薬物事件で死亡した田中香織さんと一緒に写る森元総理と息子の森祐喜
http://ameblo.jp/spellbound1227/image-10406905801-10334745309.html
https://ameblo.jp/spellbound1227/entry-10406905801.html
押尾 学に合成麻薬を渡した泉田勇介が中国残留孤児を主体とする暴走族「��羅権=ドラゴン」の構成員であったという噂。
泉田は中国マフィアか?
押尾学の親友と言われているネット販売業の泉田勇介が海外組織の中国マフィアと関係しているのではないかと噂されている。
中国残留孤児の2世や3世と、手下の日本人で組織されていて一時は「ヤクザも恐れる?暴走族」という触れ込みで悪さをしてミカジメ料まがいの集金活動もしていた。
その「怒羅権」=以下ドラゴンの何代目かの元リーダが逮捕された泉田勇介であるとの噂。
ドラゴンは引退したが現在は本物の中国マフィアと緊密だといわれている。
一方関係者の話によると、日本国内に拠点を置く中国系犯罪組織に対して在日中国大使館は強い懸念を示しているという。
新総理の長男・裕喜の愛人の告発テープ
(平成12年4月14日)
http://www.rondan.co.jp/html/news/mori/index.html
原文サイトは既に閉鎖されている。
森喜朗 新総理の長男・祐喜 に愛人関係清算の慰謝料 3000万円を要求した女は、六本木の高級クラブ 「セリーネ」 の元ホステス 「I」。 源氏名は 「M」。
 「I」 が告発した独白テープ <注・テープ起こしをしたもの>、A4版6枚流出。 アンチ森派、コピーをとって、議員会館周辺にバラ撒く。
 以下、その全文。 なお、文中アルファベットは編集部の判断でイニシャルにしました。
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桜井澪の談話
 森さんと知り合ったのは今年の2月13日(日)でした。 以前から店のお客さんとして知っていたブティック 「O」 の息子さん (社長の息子の意味か?) から家に電話があって、「皆で代官山に集まっているから出てこないか」 と誘われたんです。 その時に、「森幹事長の息子も来ているから」 と話していました。
 セリーネの女の子を一人連れて、代官山ヒルズにある 「K」 さんの家に行きました。 
「K」 さんは外資系証券会社の人みたいです。 その日、来ていたのは 「O」 さん、小渕さん、 「F」 さんと 森祐喜 さん。 小渕さんは、小渕恵三の兄の息子だったかな。 「F」 さんも、小渕さんの親戚だったと思います。 バレンタインの前だったので、チョコレートをあげたことを覚えています。 
 その後、森さんとは暫く会いませんでした。森さんはセリーネにも全然来てくれなかったんです。 次に森さんにあったのは6月14日(火) でした。  「O」 さんの友達の 「A」 さんと森さんが突然、セリーネに来たんです。 「A」 さんは城山ヒルズにある 「B」 証券に勤めている人で、前から知っている人です。
 私はその日、店を休んでいたんですが、接客についた女の子から電話を貰い、夜中の12時すぎに店に出ていきました。 私と葵 (伊藤の親友、現在、六本木のクラブ、プロポーションに勤めている。源氏名ミカ) が担当していたので、葵から家に電話を貰ったんです。 
 葵は 「 「A」 さんと森さんが来ているよ。 あんたは会ったことがあるらしいじゃん」 と教えてくれました。 それで、12時すぎに行って、「森さんが来てるから来ちゃった」 みたいな事を行って、店が終わった後、ジョルジオに遊びに行きました。 ジョルジオは1階から2階がカジノで3階がカラオケボックスみたいになっているんです。 
 その次の日に森さんから電話があって、6月17日(金) に店が終わった後、待ち合わせをしました。 そしてその直後、土曜日か日曜日から付き合いだしたって感じですよ。なんとなくかな。 その時、森さんに 「 「O」 くんと付き合いたいの」 と聞かれ、「 「O」 さんとは男女の関係じゃないし、そんなんじゃない」 って言ったんです。 「じゃあ、僕とつきあおう」 って感じになったんです。
 2月に会ったときは、森さんは私のことを 「O」 さんとつきあっているというか、 「O」 の連れている女って感じだったと思うんです。 それで、そうじゃないというこ��が分かったから、付き合いを始めたわけです。
2月に会ったときはふてぶてしいひとだと思ってたのね。 森さんは 「クラブなんてすぐにやらせる女がいなかったら行かない」 とか喋っていたので、「そういうのがいるよ」 と言うと、「じゃあ行く」 って感じで・・。 なんて奴だろうと思ってました。
 でも、14日にあって、カラオケボックスに行ったときに 「あれは、男同志が集まっている時の会話だったから、そう言ったんであって、本当は違うんだよ。 女の人と付き合うんだったらチャンと恋愛したいし、真面目につきあいたい」 と言うので、印象が随分違ったんです。 私も、「ああ、本当はこう言う人なんだ」 と思ったわけです。
 それからは、お店が終わるのを待っててくれたりしてたから、毎日じゃないけど、結構会っていました。 もちろん、私の方が都合が悪いときはあったけど、付き合いはじめころは、毎日くらい会っていました。 
森さんの仕事?。 森さんはカラオケが仕事みたいでした。 一応、人と会わなきゃいけないとか、出張で石川県に行かなきゃいけないとか言っているけど、私、一緒に行ったことあるんだけど、何をしているわけじゃないんですよ。 たまに石川県のJCの人と会ったりとかしても、ご飯を食べたりしてるだけで、なにをしているというわけじゃない。 
 カラオケは結構うまいです。そのとき、そのときで新しい曲を歌うから、何を歌うというのはないんだけど、ジョルジオに行ったときは郷ひろみの 「言えないよ」 とか歌っていた。演歌は歌わないけど、何でも歌う。 毎日カラオケ行っているんだから上手いのよ。
 ジョルジオに 「森さんいますか?」 と電話すると 「今日はまだ来てません」 とか言うもん。 今はジョルジオに 75万円も売掛が溜まってしまって、「Y」 さんも怒っていたから、行ってるかどうかはわかりません。 私は森さんと会うと必ず、ジョルジオか西麻布の店に行っていました。
 付き合っていたのは、7月の末くらいまででした。彼の言っていることがあまりに違うんで、別れたんです。 例えば、「7月中に沖縄に行こう」 って言ってたのに、行かなかったりとか、私の引っ越しも、「俺が部屋を探してあげるし、俺の名義で借りてあげる」 って言ってたのにしてくれなかった。
 これは、あった当時に言っていた。 6月の14~16くらいに言ってたのに、全然やってくれなかった。 せっついても、「ウーン」 とか言うだけで・・。 「早く、家とか広い所に住みたいな」 とか言うでしょ。 「恵比寿のガーデンプレイスでもいいじゃない」 とか言う。 私が 「神宮とか表参道でもいいな」 と私が言うと、「赤坂でもいいんじゃない」 とドンドン話をすり替えてくる。 そして、実際には動かないんですよ。
 大体、高いマンションというのは、借りるのが大変じゃないですか。 仕事も固くなきゃいけないし、だから、自分の名義で借りてあげると言ってたんですよ。 その時は一緒に住むということではなかったです。 森さんは 「近くに俺も部屋を借りるよ。 俺も引っ越ししたいんだよね」 と言ってました。 彼は、その時、赤坂のマンションに住んでいました。
 マンションというか、1~2階建てくらいの家みたいなマンションみたいなのを借りてた。 私は行ったことはなかったんですが、用賀の家と赤坂と半分、半分くらいで住んでいたみたいです。 森さんの言ってることが段々辻褄が合わなくなってきて、おかしいなと思い出したのが、別れた原因の一つでもあるけど、その他にもあるんです。
一緒にいるときに、よく森さんの携帯電話に電話が掛かってきたんですが、森さんが 「あー後で掛けなおす」 って切ることが多かったんです。 絶対、女の人からの電話ってわかる電話があってね。 しばらくは変だなと思いながらも、怒っていなかったんですけどね。
7月10日に 「F」 パーティーがあって 「I」 さんの所に森さんと一緒に行ったんです。 そこで、 「I」 さんがパーティーに来ていた知り合いの女性を森さんに紹介したんですね。 ボブカットの 28歳くらいの下着屋のババアだったんだけど、その女が森さんを気に入って、結構プッシュしてたんですよ。
 私が森さんの横にいるのに、「アッチに行って踊ろう」 とかね。 で、パーティーの途中で森さんが私に 「帰ろう」 と言ってきた。 「ほっといて悪かった」 みたいな感じでね。それで、私は森さんに送ってもらって帰ったんですが、別れ際に森さんは 「俺は今日は風邪気味でだるいから真っ直ぐ家に帰るわ」 って言ってたんです。
でも、後から、 「I」 さんに聞いたら、森さんは私を家に送ったあともう一度、そのパーティーにもどったんだって。 それを、聞いて、「何でそういう事をするわけ」 と思っちゃった。 それで、後から 「I」 さんにしつこく 「森さんていつもそうなの?」 って聞いたら、そしたら 「いや、なんかジョルジオの女ともやったみたいよ」って言うしね。 それなのに森さんは 「 「I」 さんは俺には女の子を紹介してくれないんだ」 ってぼやく訳よ。
 「そうなの?。 さっきみたいなのも紹介にはいるんじゃないの?。」 って言っても 「あれは違うよ」 って言うの。 7月19日に、 「I」 さんに私が友達 (六本木 クラブセリーネ在籍ナオコ) を紹介したことがあったんだけど、そしたら、「なんで、「I」 に女を紹介したりするの」 ってブツブツ言ってきたわけ。 「本当は 「I」 の事が好きなんじゃない」 ってね。
別に、私が 「I」 さんの事を好きだなんてそんなことはないのよ。自分だって、 「I」 さんに女を紹介して貰っているくせにね。 そしたら、自分は 「I」 に女の子を紹介してもらったことはないってね。 それで 「I」 さんにもう一度 「森さんに女を紹介してるでしょ」 って聞いたら、「うん、二人ぐらいは紹介した。俺の知っている女もエッチしちゃってどうのこうの」 って言ってたのよ。
 結局は、余りにもやっていることがだらしない。 不信感は前から感じていたんだけど、パーティーの事ですごく腹がたったのね。 で、決定的なのは、「7月中に絶対、沖縄に行こう」 って森さんは言っていたのね。 私は森さんが忙しいんだと思っていたから、あまり強くは言えなかったのね。私には、忙しいって言っているしね。 でも、だんだんわかってくるじゃない。 忙しくもないし、大した用事もないってことが分かってくる。
それなのに、なんで連れていかないんだろうとか思って、余計、腹がたった。
 森さんと結婚を考えたこともあったんです。 始めはね、私の周りの人が政治家の息子とかというのは、結局、政略結婚だからって言ってたし、そう思っていた。 それで、森さんとそういう関係になる前に、「女の人は男の人と付き合っていて、結婚したいなって思ったときには結婚をしたいわけじゃない。 でも、そういう家のしがらみとかあるよね」 って言ったのね。
 そしたら「いや、俺は政治家の息子でも、政略結婚なんて思わないし、仕事なんてどうでもいい」 って言っていた。 私のことが一番優先で、仕事なんてどうでもいいって訳よ。歯を治してくれると言ってたこともあった。 「私、歯を治したいんです」 って言ったの。私の女の子の友達の友達の彼氏の歯医者さんが私の友達の歯を治してあげているのね。
すごく遠い関係だけど、その歯医者さんは、彼女の友達の歯を治してあげている。
 「いいよね、そういうの」 って私が言ったら、森さんが 「歯くらい俺が治してやるよ。ちょっと遠いけど、大阪の歯医者だけど、矯正なら3回もいけば治っちゃうよ。 一緒に行ってあげるよ」と言ったの。 「大阪じゃなくてもいいのに」 って言ったのに聞いていないのね。 
 森さんから現金をもらったことは一度もない。 セリーネにきたのは一度だけだった。 それでね、来るって言っておいて来ないのよ。 例えば、「俺の友達の 「N」 さんが土曜日やっている店を知らないから、セリーネを紹介してあげたい。 俺ももしかして、行くかもしれないから。 女の子を集めておいてね、絶対、アフター皆でカラオケに行くからとか」 と言っておいて、私が土曜日は普通休むのに、わざわざ出ていったのね。 それなのに、来ないの。 
  「N」 さんもこない。 それで、「どうしたの?。」 って電話を入れると「いや、俺さっき 「N」 と別れちゃったからわかんない」とか言うわけよ。 私は女の子をすでに集めてるでしょ。迷惑を掛けられた。 その前とかも、金沢に旅行に行ったときに森さんが後援会の人とかに、「東京に行ったら、絶対にセリーネに行きましょうね」 とか言ってたのよ。
それなのに、来ない。 で、「後援会の人が来たんでしょ。どこに行ってたの?。」 と聞くと、全然関係のない店に言っているの。 初めは、店の売上にも協力してくれるといってたのに全然協力してくれないわけ。 忙しいとかいってね。それで、私が「店に行こうかな」 と言うと 「今日はどうすんの。休んじゃえば」 とかいうしね。
 土曜日に友達と用事が入っていても、「エーッ」 とか言って、電話が掛かってきて、「今から迎えに行く」 とか言うわけ。 でも、友達と用事があると言うと今度は 「俺ってかわいそうだよね」 みたいな事を言う。 で、友達の約束をキャンセルしなきゃならないことになる。 私は森さんを優先してたし、森さんに振り回されてたわけよ。 でも、向こうもそうだと思っていたのよ。
 でも、私は元々、小渕さんの友達を知っていたりして、それで、森さん絡みの話を色々きくのよ。 すると 「森さんって本当はこんな人だよ」 ってことが入ってくる。 例えば「P」では森さんは飲んでいるときにホステスに向って 「パスポート持っている奴、手をあげろ。香港行きたいやつは、手をあげろ。 ゴールデンウィーク暇なやつは?。 ああ、お前でいいや。 一緒に行こう」 みたいなね、そういう話を聞いたりね。 
 たまたま、セリーネに元「P」に居たユウミちゃんという女の子がいたのね。 あんまり森さんが来ないから、ユウミちゃんに 「森さんって、あんまりクラブとか来ないのかな」と聞いたら「いやー、「P」の時は毎日でしたよ」 って言うの。 私が森さんに同伴してくれって頼んだときには「俺は同伴なんて全然したことがないから。 でも、君が本当に困ったときには俺が同伴してあげる。 同伴はそれ以外は絶対にしない」 って言ってたのに 「P」 の時は 「毎日来てて、毎日ママと同伴してた。 終わってから、アフターも毎日行っていた」 って言うのよ。
 そういうのでも、腹が立ったわけ。 段々、森さんのことを周りに聞けばドンドン情報が入ってくるし、私だけで判断していたことと全然違っていたのね。 それで 「なんで「P」には毎日行っていたのに来ないの?」 ってことで揉めたこともあったしね。 そしたら「忙しい」。 それで、こんど 「I」 さんとか森さんの周りの男の人に聞くと 「全然、忙しくない」 ってことなのよ。 だから、知り合いが増えれば増えるほど森さんが嘘を付いていたことがハッキリしてくるのよ。 
 アメリカに行っていたときの話も聞いているの。  「N」 さん (国会議員NEの息子) と一緒で、コカインをやっていて、 「N」 さんが絵の裏にコカインを隠していて見つかりそうになってトイレに全部、棄てたとかね。  「N」 が暗証番号つきの金庫にかくしていたんだけど、あいつは暗証番号を忘れてしまって、しょっちゅう開けに来てもらっていた。それで、開けてもらったあとに “ちょっと中は見ないでください” とか言って部屋から出てもらうんだよ」 とか言ってたから、一緒にやっていたんじゃないの。
どこの大学だか覚えていないけど、ボストン、ワシントンとか何処かで聞いたことのある大学だった。 ホテルに泊まったのは2回だけ。 
2回ともキャピトル東急だった。 キャピトル東急に泊まってコカインを使ったのは7月11日(月)。 その日は私は12時でセリーネを早退したんです。
 前の日がさっき言ったように 「F」 のパーティーで、私は森さんに送ってもらったと言ったでしょ。 その時に 「森さんが明日もう一回会おうよ。 その時は泊まろうよ。」 という話をした。 それで、翌日店にでている時に電話があって 「もう、俺はホテルに入っちまったし、着替えちゃった」 というので私は 「じゃあ、可哀相だから、わたしも12時早退するよ」 って言ったのね。 それで、12時に早退したの。 でもモタモタしてて、結局店を出たのが12時30分くらいで、ホテルに着いたのが1時前くらいだった。
 電話で話をしていたから、部屋の番号を知ってい��ので、そのまま部屋にあがったんです。 部屋はツインでした。森さんは 「今日はダブルが取れなかったんだ」 と言ってました。 部屋に着いたとき森さんはスーツを着てました。私に 「お腹すかない」 ときいたので 「食べたいのか、たべたくないのか良くわからない状態」 と応えました。
 そしたら 「じゃあ、飲み物でも取ろうか」 って話になって、コーヒーとミルクセーキみたいなやつとアイスクリームみたいなシャーベットみたいなものを頼んだんです。 で、私はルームサービスが来る前に顔を洗ったり、シャワーを浴びたりとかしてと思っていたら、その間にルームサービスが来てた。 
 で、シャワーを出たら、森さんがルームサービスの銀のトレイの上に紙を広げて、六本木の 「K」 というゲイバーというかショーパブみたいな店のメンバーズカードで白い粉を切るというか細かくしていた。 紙はもしかすると、ルームサービスのトレイの下に引いてある紙かもしれない。 でも、ハッキリは覚えていない。
 私が見たときには粉はすでに粉末になっていたから、元の形が錠剤だったかどうかもわからないな。 すでに粉になっていたけど、それでも、それを切っていた。 この粉末は直径2センチくらいの緑色のピルケースの中から出してきた物だったみたい。 多分、いつももっているビトンのセカンドポーチの中にいれていたんだと思う。
 その緑色のケースはペットの近くのサイドテーブルの上においてあって、最後に森さんが 「こういうものは全部キレイに片付けないとダメなんだ。 こんなの持っているのが発覚したら大変だ」 と言ってたから。 「これなあに」 と聞いたら森さんは 「茶路 (金沢のクラブ 「D」 のママ) のお土産」 って。 コカインとはハッキリ聞いていないと思う。
 茶路は西麻布のレストランのオープン記念パーティーのために、7月7日に上京してたのね。 その時のお土産だと思う。 だから、使う前はなんだか知らなかった。 その後、森さんが 「いいんだよ、こういうのを使うと」 という話になったわけ。 「ヘェー」 と思っていると、もう、森さんは鼻から吸っていたの。
 ミルクセーキに付いてきたストローを部屋についているソーイングセットの鋏かなんかを使って、3センチくらいに切って、片方の鼻に差し込んで、もう片方の鼻を塞いで、粉を吸い込んでいたわけ。 初め黙ってみてたら、私の歯茎にそのコナを塗ってくれた。 「チョットだけすってごらん」 と言われて、「でも、私はそういうのは使ったことが一度もないから」 って断ったんだけど、でも、そういうものだとハッキリわからなかったから、よく睡眠薬じゃないけど、ハルシオンとか害のないものもあるじゃない。 別にそんなに害のないものだと思って。 彼は 「最初はチョットだけのほうがいいよ」 って言っていた。
 森さんは何度もそれを吸ったことがあるように見えた。 でも、あまり効かないというか変化がないので「これ、なあに?。全然効かないよ」と言ったら 「量が少ないのかな」 と言って、また歯茎に塗ってくれた。 鼻から吸うのも教えてくれた。 それで、エッチをしてる途中も吸ったりとかして、最後は全部使い切っちゃった。 寝たのは朝方だったと思う。
 
 薬を使いおわったときに 「これってなんなの?。 覚醒剤っていうやつ?鼻から吸ったりするのはエスっていうやつ?。 LSD?。」 ってまた聞いたのよ。 そしたら「混じっているのがエスで、不純物のない奴がいわゆるコカインだ」 と言っていた。 「要するに、打つのは覚醒剤で、エスというのはどうのこうの」 と一般的なことを言っていて、その時に 「これがコカインだよ。 鼻から吸う奴は」 と言ってた。 
 その薬の影響があったのかはわからない。 森さんには特に変化はなかった。 でも、朝、8時とか9時とかに目覚ましをセットしておいたけど、結局、起きられなかった。 で、12時頃に目を覚した時にあの人が 「凄く眠い」 って言ってまた寝たの。 それで、私が帰る準��をしてる時に 「なんでこんなに眠いんだって思ったら、昨日、クスリをやったから凄く眠いんだ」 って言っていた。
 最後にはプラスチックの 「K」 のカードも折って棄てた。紙は棄てたかどうかわからない。丸めてすてたかどうかはわからない。 森さん 「何度もコカインをやったの?」 ときいたことはないけど、前から、 「N」 さんがやっていた話とかを聞いていたし、 「N」 さんは会えばすぐ 「クスリをやっている人」 とわかる人でしょ。 だから、森さんは何度もやってたと思った。 
 それに、前に金沢に旅行をした事があったのね。 7月2日(土)~4日(月)の間に金沢に行ったのね。 一泊目は全日空か日航ホテルに泊まった。 2泊目は小松のホウシという温泉宿に泊まった。 このホウシは森さんの知り合いのJCの人だった。 その時に、クラブDで茶路って人ともずっとクスリの話をしていたから。 茶路は森さんに 「健ちゃんの持ってきた薬が良かった」 と言っていた。
 それで、7月2日にクラブDに行ったの。 そこは茶路の店で、カウンターバーみたい。 その時はなんの薬かわからなかったのよ。 どこか痛くて薬飲んだのかもしれなかったしね。 でも、たまたま、その後にカラオケに行ったら、健ちゃんという人がいたのよ。 その健ちゃんに森さんが 「あまり、茶路に変な薬をあげないで」 とか言ってた訳よ。なんか、健ちゃんがいつもそういう物をてはいしている様な感じだったし、森さんもそれを良く知っているという感じだった。
 で、わかったのは、健ちゃんと言うのは、森さんの後援会長の息子だったってこと。
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NEWSLETTER  vol.48
ニュースレターの第48号をお届けします。
今回は2018年6月8日に Art Jewelry Forum に掲載された、リン・チャン氏へのインタビューをお届けします。
翻訳をはじめたのはもう何か月も前ですが、思いのほか時間がかかって前回配信から10か月も経ってしまいました…今後も不定期の配信となりそうですが気長にお付き合いいただけますと嬉しいです。あいかわらず、メールに埋め込むと画像が小さくなってしまうので、ぜひ元の記事もご覧になってくださいね。
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https://artjewelryforum.org/lin-cheung-0
2018年6月8日
リン・チャン
日常性と非日常性 その共存を実現させるもの
アドリアーナ・G・ラドレスク
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リン・チャン《遅ればせながらの応答:混乱、言葉もない、意気消沈》、2017年、ブローチ、ラピスラズリ、金、各51 x 9 mm、撮影:リン・チャン
リン・チャンの作品は絶えず議論を呼ぶ。《敵か味方か》のネックレスや《室温》のオブジェ、書籍にインスタレーションから、最近作の《遅ればせながらの応答》のブローチや《保管》シリーズに至るまで、彼女の作品は、人のありように対する一解釈であり、作り手の思想や感情の運び手であり、ジュエリーの意味を模索する飽くなき探求である。
リン・チャンはこれまで、数多の賞を受賞してきた。最近では、2018年にフランソワーズ・ファン・デン・ボッシュ賞とヘルベルト・ホフマン賞を受賞。2017年には英国のBBC Radio 4が主催するウーマンズ・アワー・クラフト・プライズにおいて、1500名の応募者から最終選考12名のうち1名に選出された。
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アドリアーナ G. ラドレスク:あなたは今年、その作品と、コンテンポラリージュエリーの振興における国内外での示唆に富む役割が認められ、栄誉あるフランソワーズ・ファン・デン・ボッシュ賞を受賞されましたね。そのすべてがどのように始まったのか、お聞かせいただけますか? いつごろからジュエリーを作りたいと思うようになりましたか? また、どこで勉強されましたか?
リン・チャン:ありがとうございます! 今年はこれまでのところとてもいい年で、フランソワーズ・ファン・デン・ボッシュ財団には心から感謝しています。彼らは独立機関として、熱意をもって主体的に、人々の想像を超える優れた仕事をしています。これは今の時代にあって珍しいことで、それだけに特に光栄に感じています。
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リン・チャン、《遅ればせながらの応答:動揺》、2017年、ブローチ、ベルジャンブラックマーブル、ハウライト、金、54 x 9 mm、撮影:リン・チャン
私は、なんでも手作りしたり修理して使うことを良しとするごく堅実な家庭で育ちました。裁縫や編み物、刺繍にくわえ、ものが動く仕組みや素材に興味が湧いて、何かを分解したりもしました。でも、ジュエリーを作った記憶はありません。私は子ども時代とティーンエイジャーを経て成人してからも、もらったものも自分で買ったものも含め、たくさんのジュエリーを身に着けてきましたが、自分で作るようになったのはずいぶん後のことです。
私は、ブライトン大学の学士課程(通称WMCP、(訳注:木工、金工、陶芸、樹脂の英単語の頭文字をつなげたもの))で陶芸と金工を専攻しました。そこで偶然ラルフ・ターナーの著作である「ニュー・ジュエリー」を手に取りました。それからというもの、この道一筋です。それ以降、私が置かれたすべての環境や訪れた場所、出会った人々は何かしらこの本と結びついているので、遠い親戚のような縁を感じますし、それだけにこの本は私の考え方に深い影響を与えた存在です。作品の素材や技法は何なのか、思いを巡らせながら夢中になってページをめくっては「これはおもしろい!」と思っていました。
あなたは今年、石を彫ったブローチのシリーズ、《遅ればせながらの応答》でヘルベルト・ホフマン賞を受賞され、忘れがたい1年のスタートを切られました。
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リン・チャン、《遅ればせながらの応答:バラ色》、2017年、ブローチ、ローズクォーツ、金、43 x 8 mm、撮影:リン・チャン
審査員から「時事問題とその意味との関係性を表現した、政治的見解の表明」と評されたこの作品は、英国のEU離脱を決する国民投票と世界の政治情勢への個人的な応答として作られたとのことですね。この作品は缶バッジの形をしており、表面に絵文字やシンボルを思わせる顔が描かれていますが、一般の缶バッジのようにプレスした金属やプラスチックでできてはおらず、半貴石を研磨し、表面に金を点在させて作られています。政治キャンペーンで多用される、安価で息の長い定番アイテムであり、質素ともいえる装着型の伝達装置である缶バッジと、高価な素材とを結びつけようと思ったのはなぜですか? また、タイトルの「遅ればせながら」にはどのような意味が込められていますか?
リン・チャン:私が石という、硬くて容赦なく、永続する素材でこのブローチを作ることにしたのは、使い捨てで瞬時に作れるお手軽な金属製のバッジとの対比を表現しようと思ったからです。皮肉なことに、私は、メッセージの内容が浅いか深いかにかかわらず、一度使えば用済みとなるはずの缶バッジをいつも大事に取っておきます。手元に残しておくと、その時の気持ちや信条、出来事、気分を鮮明に覚えていられるので。これが、私が半貴石を使った理由のひとつです。つまり、一部の発言や行為はやり直しがきかないから、ほんの一瞬の出来事でも人の心に長く残りうるということを言いたかったのです。
タイトルの「遅ればせながら」は、すぐさま反応するのとは逆のリアクションの仕方を表しています。私は、国民投票の前後の情勢を目にして悲しくなったのをはっきりと覚えていますが、それをどう表現すればよいのかわかりませんでした。ただ、いつかこの思いを作品にすることだけはわかりました。後から行動に出るということは、蓄積された何かが、時間を経てから展開していくということです。私は、実際の出来事からかなり時間がたってからようやく、抑圧された思いやぐるぐると混乱した感情を、石の研磨を通じて解放できるようになりました。
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リン・チャン、《遅ればせながらの応答:しかめ顔》、2018年、ブローチ、ラピスラズリ、金、54 x 9 mm、撮影:リン・チャン
また、「遅ればせながら」は、石の加工にともなう労力と、石や石の研磨から連想される隠喩的な意味も表しています。さらに、研磨や切削は、熟考や仕上げ、そぎ落としていく過程も意味します。つまり、考えを整理し、遅まきながら納得し決心が固まるまで時間を稼ぎ、じっと待つという、時間のかかる肉体的行為を表します。石の研磨はほぼ独学で習得しました(最初だけ、シャルロッテ・デ・シラスによる5日間の特別クラスで専門的な講義を受けました)。そのため、新しい素材に初挑戦する時の常として、時間こそ余計にかかりましたが、素人であったことがむしろ好都合に働きました。知識のなさに妨げられず、失うものがないまっさらな気持ちで制作に打ち込むことができました。
コンセプチャルなジュエリーは、政治的な意識の向上という点で、大衆を説得する力を持ちうると思いますか?
リン・チャン:ええ、その力があると信じています。また、すでに知られていたり、こうだと信じ込まれている方法以外のやり方で、そういった力を量る方法にも興味があります。ただ、《遅ればせながらの応答》シリーズが必ずしも「大衆の政治的な意識を向上させる」とは思いません。このシリーズはそれ自体が議論の一部をなす当事者性の強い作品で、すでに広く認識されている問題を扱っているため、意識の向上というよりはタイムリーなコメントとしての趣が強いでしょう。私は今も、この決定がもたらした損害を忘れてはならないと思いますし、今後は今以上に不確かな時代になるでしょう。だからこそ、ジュエリーには、自分たちの周囲で起きている出来事について考えさせる存在であり続けてほしいのです。大衆の政治に対する意識の向上という点では、エスナ・スーこそシリアの難民危機を表現した作品でそれを実行しているといえます。彼女は私たちに、時間とエネルギーを費やして作品について考えることで、難民危機の問題を忘れないよう促しています。
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リン・チャン、《遅ればせながらの応答:逃げ腰》、2018年、両面装着式のブローチ、ハウライト、ベルジャンブラックマーブル、金、49 x 12 mm、撮影:リン・チャン
作品の持ち主がご自身の考えに共感してくれるかどうかは重視していますか?
リン・チャン:自分の考えや見解に共感してもらえるといつでもうれしいです。私の場合、それを知るのは直接人と会った時なので、会話ができたり、同じ考えを持っていることに気づいたりできるのは、私にとってはありがたいおまけです。私は時間の許す限り、工房にこもるようにしているので。外に出て別の視点から作品を見られるのはいいリフレッシュになりますが、共感してもらえなくても構いません。私は自分の考えが伝わるよう素材や大きさ、造形を制御しはしますが、作品は独立した存在です。私の手元を離れたら、自由の身です。勝手に別の意味や価値観を帯びたり、身につけてもらえたりもらえなかったり、好かれたり嫌われたりすればいいのです。それは自力では制御できない領域ですし、制御したいとも思いません。私は、最善の方法で考えや意見を表現することにやりがいや興奮を感じますし、そこが重要なポイントなのであって、自分が答えを知っていると思えるかどうかという点は重視していません。
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リン・チャン、《真珠のネックレス:グラデーション》、2017年、ネックレス、淡水パール、金、ビンテージのケース(修繕済み)、ネックレスの長さ:406.5mm
あなたのウェブサイトには、「《真珠のネックレス》シリーズは、母親から譲り受けたものの使わずにいた真珠のネックレスをインスピレーションの源とした。このネックレスは自分に似合わないと思ったし、たった一種類の女性性を信じているわけでもない」と書かれています。男性モデルに着用させたこの作品は、淡水真珠を1粒1粒削り出し、ホイットビージェットのチェーンと同じ構造でつなげてネックレスにしたものです。このシリーズは、装飾品としてのジュエリーや、個性の形成におけるジュエリーの役割の探求の一環として作られたものですか? また、ジュエリーは新たな形のジェンダー表現を推し進める上で効果的な手立てだと思いますか? この作品には、どのようなメッセージや意図が込められていますか?
リン・チャン:後から思えば、この作品はずいぶん複雑な意味を帯びていますね。一方では、ごくシンプルな作品で、元のネックレスを手に取って加工するに至ったのも、チェーンにできるかどうか試したかったという単純明快な動機からです。実験が済んでチェーン全体が完成してはじめて、どんな意味を持ちうるか、なぜこんなことをしたのか、それがどうなったのかを考える時間を持てました。このネックレスは、身に着けるとお高く留まって見えるような気がして、長い間しまったまま使うことはありませんでした。
真珠にはさまざまな意味合いが込められています。そして、形状や機能の面で可能性の幅が広いダイヤモンドや金などと違って、ジュエリー素材としての革命がもっとも起こりづらい素材ではないでしょうか。その意味では、この真珠作品では、おそらくその形が一番の理由で、少しだけその遅れを取り戻せた気がします。真珠の「ジュエリーらしさ」は丸い形に生まれついた時点で既定路線であり、人はなぜかそこに女性らしさだと受け止めるのです。私が真珠を研磨してチェーンを作って、最初に、そして一番強く感じたのは、これはもはや真珠のネックレスではない、ということです。そのことで、真珠にまつわる意味合いを薄められましたし、おめかしや着飾ることを目的にジュエリーを着けていたのは過ぎ去った昔の話であって、ジュエリーとは単に着けたいから着けるものだという私自身のジュエリー観に沿った作品になったと思います。
私は女性性とは何であるかに興味を引かれます。それは必ずしもジェンダーと関連づいているわけではありません。私は女性性をもっと広義にとらえていて、体力とは別の、知的な精神力や思考、思いやりと関わるものだと考えています。作品を男性モデルに着用させて撮影したのは、実験的な見せ方をしたかったからです。そして、それが真珠のネックレスは女性的なものだという狭量な考えを打ち破ったと伝える上で有効な手段であるかどうか、そして、それでも依然として残る繊細な強さと多義的かつ対照的な複数の側面が、また別の女性性を表現しうるのかどうかを確認したかったのです。つまり、自分が身近に感じられ、さらに女性という自分のジェンダーも手放さずにいられるという形の女性性です。そうですね……この作品については、完成してからもそのインパクトについて考えていますが、今もまだ、的確に言い表すのが難しいです。が、そうやって考えるのも、とても面白いことですね。
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リン・チャン、《真珠のネックレス:マチネー》、2016年、ネックレス、淡水パール、金、長さ:560 mm、撮影:リン・チャン
《真珠のネックレス》シリーズの一部の作品は、修理を施したビンテージの真珠のネックレスの専用ケースがついていますね。このようにケースに手直しをして再利用するという行為には、どのような意味があるのでしょうか?
リン・チャン:アンティークのケースを再利用することで、過去の所有など、物語に歴史という側面が若干加味されます。最初に作ったネックレスと箱は母の所有物で、それ以降のネックレスと箱は、最初につくったものの形式を借用したものです。
作品が装着されることについては、どれくらい重要視していますか?
リン・チャン:どちらでも構いません。着用性の高いデザインであっても、実際につけるかどうかは別問題で各自が判断することです。私はどちらの考えも理解できます。私自身、身に着けないジュエリーをたくさん持っていますが、そのことが物への愛着に影響するわけではありません。手に取って眺めて、またしまうということも好んでやります。時に実用的でないジュエリーをじゃらじゃらつけることもあります。このようなアイテムは注意が必要ですし、つけている間ずっと気になってしまうものです。おまけに針先がとがっておらず、ブラウスやTシャツに大穴が開いてしまうこともあります。それでも、ジュエリーとしての出来がよければ、その価値はあるのです。同じものを数週間つけっぱなしにすることもあります。装着するしないにかかわらず、ジュエリーが喜びをもたらしてくれることに変わりありません。
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リン・チャン、《保管:紙と輪ゴム》、2016年、ブローチ、合成石、金、輪ゴム、70 x 22 x 15 mm、撮影:リン・チャン
《保管》シリーズは、あなた自身のジュエリーの保管方法を扱った作品です。このシリーズは、こう言っては何ですがとても生活感があって、《紙》や《輪ゴム》と題されたブローチでありふれた物体を描写しています。この作品では、合成石や金という耐久性のある素材と、輪ゴムという長持ちしない素材が混在しています。この袋に何が入っていたのか、また、この作品のコンセプトは何なのか、興味を惹かれます。この素材の組み合わせには、どのような意味が込められていますか?
リン・チャン:私はよく、ティッシュやキッチンペーパーやトイレットペーパー、チャック式のビニール袋やただの紙など、その時手元にあるものにジュエリーをしまうことがよくあります。私はよく旅行をするので、ジュエリーに箱やケースがある場合はそこから出して、もっと実用に即した方法で収納するようにしています。《紙》と《輪ゴム》のブローチは、私が紙と輪ゴムで包装してきたすべてのブローチを表現していると言えるかもしれません。自分がつけるジュエリーはいつもこの方法で収納します(そのほとんどは自分で作ったものではありません。自分の作品はめったにつけません)。なので、この保管方法自体はごく普通で生活感がありますが、興味深いことに、それによってそのアイテムが私にとって特別な存在になるのです。この作品を白い合成石で彫り出して作ったのは、紙の質感を表現するためで、本物の輪ゴムを用いたのは日常性を加味するためです。ここにおいて私は、ジュエリーの秘密の生活を覗いてみませんか、作品を通じて価値や意味が表明されているさまを見てみませんか、と誘いかけているのだと思います。高価な素材や予期せぬ素材やプロセスを用いて日常のディテールを描写することで、単なる人工物を超えたジュエリーのおもしろみについて考えることを促しているのかもしれません。
この《保管》シリーズでは、特に私自身の持ち物であるジュエリーの私的な生活と公的な生活、そして、同じ作品でも配慮の度合いが変わりうるのかという点を考えました。紙やプチプチ、ビニール袋による収納方法は、退屈に見えるかもしれませんが、私にとってはとても便利で安全ですし、それによって自分だけのものになるのです。私は、ジュエリーを買った時ではなく、生活をともにしてはじめて、そのアイテムが自分にとってどんな意味を持つのかについて気にかけ、注意を払えるようになります。作り手やブランドによる包装は、提示方法や、その魅力、モノのコンセプトの延長、作り手の創造性や配慮を通じて、ジュエリーを商品とみなしています。購入後の私だけの管理方法は、所有、つまり自分の持ち物であり日々の生活の一部であることを表します。
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リン・チャン、《保管:古い真珠のネックレス》、2018年、ペンダント、ロッククリスタル、62 x 42 x 20 mm、撮影:リン・チャン
同じシリーズの《古い真珠のネックレス》や《ベニータのブローチ》では、ジュエリーの形は見えません。そのかわり、それをしまうための(ロッククリスタルを研磨した)透明な袋が主役になっています。これは、姿は見えずとも存在する、あるいは過去に存在したジュエリーを示唆し、その記憶を保持する手立てということでしょうか? この作品の背景とはどのようなものでしょうか?
リン・チャン:おっしゃる通り、どちらも実在するジュエリーです。古い真珠のネックレスも、ベニータが作ったブローチも私の持ち物です。それらが小さなビニール袋の中で占める空間を観察し、石を研磨して造形しました。どちらも、空っぽであるようにも中身が入っているようにも見えます。また、モノが持つ日常的な側面と非日常的な側面との対比を考察した作品でもあります。ジュエリーはその両方の性質を兼ね備えられるところが、すごく好きです。
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リン・チャン、《遅ればせながらの応答:困難な時代》、2018年、ブローチ、ロッククリスタル、金、54 x 9 mm、撮影:リン・チャン
あなたの作品の中には、パブリックな仕事も見られます。2012年ロンドンパラリンピック大会のメダルをデザインされましたし、2014年には唐奨のメダルデザインのコンペでファイナリスト10名の1人に選ばれました。2年前には、唐奨教育基金会から、2016年の賞状のデザインと制作を依頼されたそうですね。このようなパブリックな仕事と、個人の作品とでは、工程の面でどのような違いがありますか? また、どのようなことが課題になりましたか?
リン・チャン:特にパブリックな依頼は、往々にして極度のプレッシャーにさらされます。莫大な予算と、短い納期での納期厳守に対する大きな責任が常にのしかかります。株主や資金提供者、プロジェクトマネージャーやマーケティング部門、CEOやインターンなど、あらゆる立場の人たちとチームを組んで仕事をするのは一見怖そうですが、実際のところは共同作業について学ぶにはすばらしい方法です。アーティストという立場で一大プロジェクトに携わるということは、全体を見渡し、常時すべての場に存在するかのような独自の立場に置かれるということです。私はあらゆる視点からプロジェクトを眺め、はじまりから実現に至る過程を見るのを楽しめるタイプなのでしょうね。また、プロジェクトの一員になれることは、大きな見返りがあります。
こうした学びは有益ですが、多くの依頼は問題解決からプロトタイプの制作、完成品の仕上げが息をつく暇もなく、同時に進行する感じです。先を読んであらゆる結果を予想し、プロジェクト管理をやりこなし、チームのメンバーに仕事を任せて、仲間からも自分からも最高の力を引き出せるよう、短期間で学ぶわけです。こんなことまでできてしまうんだ! と自分でもよく驚きます。スタジオでの作業はそこまで込み入っていません。当然ですが、それは私ひとりだからです。プレッシャーもさほど強くかかりませんが、多くの場合プロセスは酷似しています。同じような悩みを抱え、大勢でやる時と同じような会話を自分とします。葛藤もありますが、最初から確固たる決まり事もないですし、委員会からの承認がないと次に進めないというわけでもありませんから、後戻りをしたり、手抜きをしたり、自分の意志で課題を設定したり、リスクのある道を選んだりできます。これは周囲からの許可が必要な場合はそう簡単にはできないことです。
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どのような流れでデザインを進めますか? スケッチやモデル、モックアップの制作から始めるのでしょうか? コンセプトを伝える上で素材の選択はどの程度重要なものですか?
リン・チャン:つい最近までは、最初にコンセプトやイメージを考えたら、そのまま制作に突入していました。私はすごく大雑把なスケッチ以外は紙にイメージを描きません。線画や、ひとつかふたつの単語、文章で十分な時もあります。その意味では、私は多くの作り手と違うのかもしれませんね。明快なプロセスでデザインを進めるわけではないですから。
素材の選択はとても重要です。アイデアを思いついたら、自分の考えや感覚と合致する素材を探します。可能性のある選択肢を考え抜いて「こうすれば思い通りの雰囲気になるかしら」とか「やっぱりこっちかもしれない」と迷いながら自分の仮説を検証します。石の加工をした時は、コンセプトよりも素材が先でした。それまで、具体的な素材や技術からアイデアを発展させていくことはあまりなかったので、新たな感覚で制作に燃え、手の中の素材の変化や自分が目にしているものを基にアイデアやコンセプトを練る間じゅう、強迫的なまでに熱心に打ち込みました。
外部からの特にパブリックな仕事の依頼の場合は、コンセプトや工程、プロトタイプの制作、実制作、情報の記録、納品に至るプロセスを厳守せねばならず、その順番が狂うことはめったにありません。
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リン・チャン、《保管:ベッティーナのブローチ》、2018年、ペンダント、ロッククリスタル、52 x 34 x 23 mm、撮影:リン・チャン
あなたはアーティストとしてご活躍されているだけでなく、2009年以降、ロンドン芸術大学のセントラル・セント・マーチンズのジュエリーデザイン科の学士課程の上級講師として教鞭を執っていらっしゃいます。その傍ら、レクチャーやワークショップの講師や、書籍や記事の執筆活動もされていますが、限られた時間のなかでそれをどう両立されていらっしゃるのでしょうか? またそれらすべてをやりこなす強い意志はどこからきているのでしょうか?
リン・チャン:確かに、全部並べて見るとずいぶん抱え込んでいるように見えますね! あまりの多忙さに、混乱に陥ってしまう時があることは否めませんが、ジュエリーへの好奇心が、さまざまな魅力的な形をとって、私を突き動かすのです。
忘れないでいただきたいのは、プロジェクトによっては構想に何年もかかるという点です。ずっと前にまいた種を折に触れては世話してやり、立派に育て上げるのです。コラボレーションもありますし、自分がやりたくてやるものもあります。人に教える仕事は、どれもとても楽しいです。セントラル・セント・マーチンズで、いきがよくて一生懸命な学生たちを大勢相手にしていると、ジュエリー界の今後の行方が見えるような気がする時があります。これは役得ですね。また、コンテンポラリージュエリーをまるで知らない別分野の作り手の人たちと一緒に何かをするのも楽しいです。ザルツブルクで行われた国際芸術サマーアカデミーの際に行ったワークショップがその例です。ほかにも、近々コロンビアで開催されるEn Construcción IIIでワークショップを行う予定があり、とても楽しみにしています。
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リン・チャン、《遅ればせながらの応答:無能(※)》、2018年、ブローチ、コーリアン、金、55 x 9 mm、撮影:リン・チャン(※訳注:英語タイトルはTwitで、Twitterとかけていると思われる)
私は、プレッシャーや日々の雑用に邪魔されることなく、スタジオや作業場でひとりになってジュエリーについて自分だけの考えに��頭したり、表面の具合を観察したり、何に注意を払ってやればよいのか、自分が何をしたいのかを考える、ユニークで貴重で特別な時間を確保するためならなんだってします。常にそれを達成できるとは限りませんが、いつも虎視眈々とそのタイミングを狙っています。
最近感銘を受けたり、作品に影響を与えたり、興味を引かれた映画や音楽、本、展覧会、ニュース、旅行などはありますか?
リン・チャン:《遅ればせながらの応答》シリーズの《しかめ顔》というブローチが今年度のロイヤル・アカデミー・オブ・アーツの夏期展覧会に出品されたので何度か足を運びましたが、その時の作品の多様性には驚かされました。この展覧会は、優れた偉大なアーティストと一緒に、アーティストの卵や無名の作り手、「凡人」(グレイソン・ペリーが私たちのような人を親しみを込めて呼ぶ時の愛称です)の作品が一堂に並ぶことで有名です。目玉となる作品ばかりを見ないよう努めるうちに、若手作家のリー・カッターの作品に目が留まったのですが、この作品には心から感動しました。
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リー・カッター、《監獄文化》、彫刻、刑務所で支給されるバターミルク石鹸、画像はロイヤル・アカデミー・オブ・アーツの厚意により掲載
それは《監獄文化》と題された、彫刻を施した大量の石鹸を何段もきれいに並べて額に収めた作品でした。私は、日常の素材を再評価させ、当たり前だと思われているものや状況を見直させてくれる作品や、想像する以外に知りようのない世界を見せてくれる作品が好きなのです。器用かつ無心に彫られているだけでなく、骨や象牙の細工や、木彫品、彫像、ストリートファニチャーを見た時と同じような感情を抱かせ、人生のおかしみと哀愁とが一体となって表れていました。
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リン・チャン、《遅ればせながらの応答:無能》、2018年、ブローチ、コーリアン、金、55 x 9 mm、撮影:リン・チャン
現在はどのようなプロジェクトに取り組んでいらっしゃいますか?
コロンビアで行われるコンテンポラリージュエリーのシンポジウム、En Construcción IIIの一環として、マーク・モンゾとセス・パパック、テレーザ・エスタぺと一緒に1週間のワークショップを行う予定です。また、2019年のミュンヘン・ジュエリー・ウィークでMicheko Galerieで行う個展の準備も進めています。ほかには、通常の依頼品やリサーチ、構想に加え、フランソワーズ・ファン・デン・ボッシュ賞の賞金で、2019年の年末か2020年の初頭からオランダで開催される個展に向けて作品を制作するという、刺激的なひとときを過ごしています。近いうちにまた皆さんに詳細をお知らせできるのを楽しみにしています。
ありがとうございました。
アドリアーナ・G・ラドゥレスク:建築家、ジュエリー作家。ワシントンD.C.在住。ルーマニア、ブカレストのイオン・ミンク建築都市大学にて建築と都市計画の修士号を取得。ワシントンD.C.のコーコラン・スクール・オブ・ジ・アート・アンド・デザインにて金工を学ぶ。2013年よりAJFに参加。
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dididiver · 7 years
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