詩集「時喰う人たち」
詩集『時喰う人たち』
1.「Dépaysement -ルネ・マグリットによろしく-」
2.「Paranoiac Critic -DALIsm-」
3.「THINKING-MAN」
4.「Lonely Boy -ゴッホの丘-」
5.「ヒプノシス叙事詩」
6.「青年空想画家」
7.「WALKING-MAN」
8.「Never Ending Journey -まだ見ぬ君に逢うために-」
9.「Postwar -逃亡者たち-」
10.「恋愛依存症」
11.「契約社会」
12.「付箋 -初恋-」
1.「Dépaysement -ルネ・マグリットによろしく-」
シュルレアリスムな夢を見た
気まぐれな魔術師に逢った
レディ・メイドに裏切られた
水平線に惑わされた
海沿いのカフェでどんなに
カフェ・ド・ベルジグを口に運ぼうとも
取り止めもないカオスの海へ
身を投げたまま - 孵れない!
リアルで生きるのを諦めて
逃亡者になると決めた時
まさかキミに出逢うとは思わず
懐かしい気持ちになったよ
今もウィンクが悩ましい
ブルトンの狂気に���かされて
ダダイズムの街で泣いてしまった
火薬庫を水に染めたヴァルタン
愛を忘れたままのジャミラのように
気づけば僕も銀河女(スペース・ウーマン)
都会の狂騒に怯えた
裏切られたままのイメージ
飼い慣らしていたはずのダルメシアン
聴こえるのはリンゴの呼吸だけ
英雄 厭人 厭世者
花が泣かぬよう
満面の笑みで
大好きな人を惑わせてしまおう
甘い恋よりカオスを愛す者として
さあ誇りを忘れずに……
2.「Paranoiac Critic -DALIsm-」
私は旅に出るの
港の黒���で
愛を取り戻すために
夢幻の宇宙へ
荷物はパンがあればいい
そして明日への羨望
瑠璃色の怪獣や魔性の女も
微笑みに囚われたまま
今の私ならできるよ
昨日の私と違うんだ
当たり前のことを当たり前にやる
たったそれだけなんだよ
後悔の渦が私を強くしたんだ
今に見てろよ
罵りの声も好奇の視線も
すべてエネルギー
モーターなんかいらない
スチームもいらないよ
永遠を知らぬ人類だから
永遠を知るための旅へ出よう
私は旅に出るの
港の黒舟で
夢を描くために
現実の世界へ
おもしろいと自称する人ほど
いざ喋ってみるとつまらないよ
そして……何も知らないジーニアス
革命に気付かないペシミストのように
いつしか胸に浮かばなくなった
愛の言葉さえ
この旅が終わる時に私は
生きる意味を知るだろう
風は時を語らずに
今を教えてくれる
現世のその先へ
幻想旅行へ
私あれ!
3.「THINKING-MAN」
Who are you Thinking-Man??
Who are you Thinking-Man??
T・H・I・N・K
誰も知らない謎がある
誰も解けない事件がある
そんな時はアイツの出番だ
ひとふき笛を鳴らせば
一瞬で飛んでくるよ
悲しい時こそ上を向こう
嬉しい時こそ下を向こう
忘れないで 今のキミを
諦めないで 明日の青空を
T・H・I・N・K
どんな光もどんな影も
背中合わせさ
世界を揺るがす謎がある
世界を脅かす事件がある
いつだってアイツの出番だ
百万馬力のボディで
必ず闇を振り払うよ
つらい時こそ上を向こう
おいしい時こそ下を向こう
離さないで 愛する人を
諦めないで 明日の青空を
T・H・I・N・K
どんな愛もどんな夢も
背中合わせさ
いつかアイツを忘れる日が
僕らの願う平穏な日々
キミはどこから来てどこへ向かうのか?
悲しい時こそ上を向こう
嬉しい時こそ下を向こう
忘れないで 今のキミを
諦めないで 明日の青空を
T・H・I・N・K
どんな光もどんな影も
背中合わせさ
Who are you Thinking-Man??
Who are you Thinking-Man??
T・H・I・N・K
4.「Lonely Boy -ゴッホの丘-」
愛する人には裏切られ
描いた絵画は認められず
失くした夢の欠片を
今も闇雲に拾い続ける
Ah 孤独な闇よ
そのまま包み込んでおくれ
ヒマワリの種を形見に
抱きしめたいのは君だった
信じてみたいのも君だった
最期は君とさえ拗れてった
僕はいつだって独りだった
涙さえも枯れ果て
どうだってなればいい
ただ忘れないで
僕のような男が居たことを
生まれた時には信じてた
まっすぐな夢ってやつを
もう一度信じようとした
あの日の僕を殴りたい
Ah さよなら夢よ
夢のままであり続ければいい
揺れ動く星月夜
愛したいのは君だった
嫌いたいのも君だった
時は素直に過ぎてった
僕も君達を信じていた
真夜中の果てに
どうだってなればいい
ただ泣きじゃくる
赤ん坊のように
求めていたものと
捜してたものが
傾斜して交錯する
数十億分の一の生命
決して届かぬ使命
Ah アイリスに願う
歪んだままの藍よもう一度
やり直せるなら……
抱きしめたいのは君だった
信じてみたいのも君だった
最期は君とさえ拗れてった
僕はいつだって独りだった
涙さえも枯れ果て
どうだってなればいい
ただ忘れないで
僕のような男が居たことを
さよなら
ある男此処にありき
5.「ヒプノシス叙事詩」
【A】
神秘の港で
新世代のブルースを奏でる少女
想像は現実を越え
さらなる超絶技巧を求める
走るウマグマ
心臓をすげ替えた男
虹色の牛が街をたむろし
不気味に帽子が笑う
その名は誰も知らず
その顔も知らず
いくつもの噂の果てに
虚構の素顔が生み出される
打ち棄てられたエシクス
解れたままのイデア
【B】
電気の武者が
やさしく老人の世話をする
おせっかいなほど丁寧に
不似合いな言葉を並べる
電子・光・管弦楽団
聖地巡礼
土曜・早朝・写真
百眼の巨人アーガス
この世のすべてを飲み込む
未だ序章 トリロジー
自動車の群れ
ハイウェイは狂騒に包まれる
突然雲の影
Crying Laughing Loving Lying
ロマニーの愛
オリビアの嫉妬
狂気が誘う
殺戮のハイタッチ
Pair! Pair! Pair!
第三世界の曙に
さらなる深みへ……
【C】
聖なる館
灰は燃ゆる
四枚目のウィッシュボーン
バンドよ駆け抜けろ
ブロードウェイ 眩惑される
競獅子 不安は募る
悪に染まる会社 運命のカード
見つからない……エルドラド
精神の波……いつかのトイレ
あなたがここにいてほしい
アラビアンナイト
火星の女神
荒廃した街角で
アメリカを越えてゆけ
己に酔いしれてもいい
悪戯電話プレゼンス
愛ゆえに泣き叫んだ後の
突然やって来た静寂よ
空が燃えている
生き物たちは笑ってる
【D】
究極 顔を合わさなくとも
大都会の孤独 乗り越えられる
スリリントンはロンドンで唄う
デイヴ・ギルモアのギターが唸る傍で
薄濡れの夢
トマトを食べろ
そして残ったのは三人の勇者
Never Say Die……
神に誓おう
宇宙を取り戻すまで
終わらない Resistance!!
血塗れの旅人
滅亡したインカ帝国
銀河のヒッチハイカー
ようこそ愛のドライブへ
【E】
やけに乾いた愛 - Yes, Sir!!
やけに吼える狼 - Yes, Sir!!
昨日逢えませんか?
夕闇をひとり
彷徨う少女
共同戦線
闇からの一撃!
【F】
銀河船VOYAGER
ダイヤモンドは粗く深く
君を見つめるだろう
恋の炎のままに
銀河船VOYAGER
ダイヤモンドは粗く深く
君を見つめるだろう
恋の炎のままに
銀河船VOYAGER
原子力で駆動する棲家
銀河船VOYAGER
狂気の先へ行こう
ヒプノシス 永遠に
6.「青年空想画家」
涙が止まる前に
その涙を書き留めよう
世界を忘れる前に
この世界を形にしてしまおう
こんな時代に夢は見れない
そう思い込んでた
時を止めてカンバスに向かう時だけ
私は私になれる
色なんかいらないよ
言葉もいらないから
この世界を創ろう
街も空も星だって描けるさ
涙 流れっぱなしの涙
未来を紡ぐ涙
虹が消えないうちに
その虹の向こうへ行こう
雨が止まないうちに
この雨で舞踏会しよう
こんな世代と分かり合えない
そう思い込んでた
時を抱いてカンバスに向かう時だけ
私は私になれる
躊躇はいらないよ
憂いもいらないから
新たな星を創ろう
街も空も星だって描けるさ
光 照らすのは光
未来を紡ぐ光
ひとつのいいねが変えた
私の今を変えた
ひとりのスキが変えた
私は少しだけ強くなった
昨日には帰れない
明日にも飛べないよ
だから今を照らそう
私だけの翼で
瞳 大切な瞳
世界を映す瞳
明日を生きるために
今を描くよ
7.「WALKING-MAN」
砂漠を舞うライオンのように
僕らは明日を探してた
夢にまで見た未来の瞬間
それは愛車(クルマ)との出逢い
今まで行けなかった場所や
気付けなかった自然に気付いた
時は流れ 歳を重ね
いつしかあの頃の時めきを忘れてしまった
最初に一歩を踏み出した時の
感覚が忘れられない
どうしてこれが動くのだろう
疑問と称賛が胸に轟く
時を越え キミに伝えたい
人が歩んだ記憶を……
空を舞う三つ星のように
僕らは愛を捜してた
僕が紡いだ夢を継ぐのは
そこにいる私かもしれない
思い込みで決めつけてた幻想
投げつけられた偏見
明日を切り拓く者の傍に
一輪の花を僕は贈りたい
最初に一歩を踏み出す前の
恐怖が���れられない
どんなに大粒の雨が降っても
挫け諦めそうになっても
続けるよ キミに伝えたいから
僕が選んだ夢を……
叶えるまで
夢を見れなくなったり
現実に打ちのめされたり
いろんなことがあった人生
その先も誰かに名前を呼ばれたい
すべてのエンジンになる
最初に一歩を踏み出した時の
感覚が忘れられない
最初に一歩を踏み出す前の
恐怖が忘れられない
今を越え 夢のつづきを
キミが描くんだ
Full Throttle!!
8.「Never Ending Journey -まだ見ぬ君に逢うために-」
トンネルを抜けたら
そこは不思議の国
小さな人間が手と手を取り合い
静かに暮らしておりました
毒牙を持つ巨大なバッタや
一突きで怪獣を殺るトカゲがいる森で
巨木の天頂に住居を構え
生活を営んでいたのであります
君と初めて逢った日に
口に運んだレベンドの味
とっても苦かったのですが
気付けば珍味と呼ばれる御馳走に……
僕が忘れたくないのは
君のまっすぐな瞳
それだけさ
出逢った人の数だけ
別れもあった
伊達に長く生きてませんから
色んなことがありました
交差点の真ん中で振られたこと
イモリをサソリと間違えそうになったこと
露店の牡蠣に当たったこと
忘れられない思い出達よ
君が大人になったとしても
忘れてほしくないレベンドの味
僕らが生きた青春に
君も幸あれ……と願う大人心
誰も知らない旅へ
消えない情熱
いつまでも
君に出逢った日の時めき
君と食べたアカシアの皮
君のルージュに惑わされ
君がくれた夏を憶いだす
僕が忘れたくないのは
君のまっすぐな瞳
それだけさ
誰も知らない旅へ
消えない情熱
いつまでも
新しい一日をまた明日も始めよう
Postwar -逃亡者たち-
なぜ兄弟で殺し合わねばならないのか?
なぜ夢を捨てなければならないのか?
青春時代を通り過ぎた先は
終わりのない最終戦争(Final Wars)
アルザス・ロレーヌの誇りにかけて
己のエゴとエゴをぶつけ合う国々
だけどそこにはかつて血を分け合った兄弟も
有無を言わさず戦禍の中心へ
Vive La France!!
消えない憎悪の記憶
僕らは愛と平和のために闘う
Vive La France!!
癒えない屈辱の記憶
僕らに明日などないのさ
そこにあるのは憎しみと悲しみだけ
遺体の山の中に知り合いを見つけた
恩師が面影なく息絶えていた
虹彩迷走の歴史の果てに
血に染まる民族たち
クリスマスまでには終わると信じてた
でも闘いは終わらなかった
幾多の裏切りと熱狂の兄弟よ
そこにあるのは運命か宿命か?
Vive La France!!
懺悔は今はいらない
僕らは愛と平和のために闘う
Vive La France!!
薄汚れた愛国心よ
僕らに明日などないのさ
願いは未来の平穏だけ
繰り返される歴史(Last War!!)
裏切られた約束(Last War!!)
消耗する民族(Last War!!)
二度と繰り返してはならない(Last War!!)
Première Guerre mondiale!!
勝者なき闘いの先に
歴史の火薬庫
ベルサイユ宮殿
火種は未だ消えぬ
Vive La France!!
消えない憎悪の記憶
僕らは愛と平和のために闘う
Vive La France!!
癒えない屈辱の記憶
僕らに明日などないのさ
そこにあるのは憎しみと悲しみだけ
Vive La France!!
懺悔は今はいらない
僕らは愛と平和のために闘う
Vive La France!!
薄汚れた愛国心よ
僕らに明日などないのさ
願いは未来の平穏だけ
Postwar……
束の間の平穏に
現実を見ない逃亡者たちが唄う
虚飾と虚構の歴史
彼らはなんのために今を生きているのか
10.「恋愛依存症」
通い慣れた駅
事を済ませたホテル
吹き抜ける風の冷たさに
私の終焉を悟る
今夜で終わりと
きっぱり約束したけど
また明日を何度も繰返し
昨夜も愛のまま
One Night Dreamで終わらぬ恋は
カクテルみたいに渇きを癒さない
星空より暗闇がよく似合う
所詮 使い捨ての大恋愛
Kissも飽きたしSexも疲れた
Virtualな恋の結末は
Realへの羨望
One Night Dreamの忘られぬ恋は
カクテルみたいに渇きを癒さない
太陽よりも物陰がよく似合う
所詮 使い捨ての青春
告白の言葉も何度聞いた?
口説かれすぎて聞き飽きたの
もう一度くらいはトキメキたいけど
褪めた恋心が邪魔をする
One Night Dreamで終わらぬ恋は
カクテルみたいに渇きを癒さない
星空より暗闇がよく似合う
所詮 恋も青春も使い捨て
夜の静寂(しじま)に
愛を誓った
あの日に戻りたい
いつの日か……
11.「契約社会」
今日の仕事が終わったら
明日は何もしなくて良いんだ
紙切れ一枚で決まる世界
僕らは何故生きるんだろう?
太陽が昇る時
街へ繰り出す人々
詰め込まれた Aluminium Jail
そしてアスファルトを染めあげる箱達
いつか終わるなら
今日から始めてみたい
でもそんな勇気すらなくて
いつも誰かを批判してばかり
誰かのせいにする前に自分を顧みて
新たな一日のために駆け出してみたい
自分の足元を見つめ直せば
きっと明日への希望が見えるはずさ
だから……
舟を出すんだ
今日の続きはまた明日
明日の続きはその先へ
代わりはナンボでもいる
癒えない言葉の傷
太陽が沈む時
色づく街並み
家族団欒 Stay Home
今日は涙が隠せなくて
あなたを守るために
今日まで頑張ってきたよ
でも僕は疲れたんだ
頑張ることに疲れたんだ
勇気を出して打ち明けた時
あなたはぎゅっと抱きしめてくれた
その温もりが僕に勇気を
与えてくれたのさ
だから……
僕を生きるんだ
絶対などない人生
誰もが思い悩む
あなたと育んだ愛
これからも温めたいから
辞表を出した瞬間
上司は驚きを隠さずに
なぜ『今なのか』と声を荒げて
剥き出しの怒りをぶつけてきた
太陽が昇り切る時に
僕はいつもの電車に揺られてた
人生の意味にやっと気付けたんだ
それはあなたに出逢えたこと
だから……
家族で行くんだ
あなたと私とキミを守るために
付箋 -初恋-
教室で目を合わせるだけで胸がときめいた
ふと気づいてしまったんだ ― 「これが片想いなの?」って
届かないとわかってても「好き」という気持ちは募るばかりで
ある晴れの日に貴方を呼び出して終わらせようとしたの
その日が恋の始まりでした
貴方が顔をくしゃっとして笑うとことか
私が作ったお弁当をいつもめっちゃ美味しそうに食べてくれるとことか
いつもは素直なくせに肝心な時にカッコつけようとするとことか
こんなに好きになれる人に出逢えるなんて思わなかった
貴方を好きになるまでは
付き合って一週間が経って名前で呼び合うようになり
一ヶ月の頃には手を繋ぐようになった
距離が縮まるほど好きがもっと強くなって
デートをするたびにちょっとずつ垢抜けていく気がした
貴方も貴方のペースで頑張ってるんだよね
学校の誰も使わない物置が私たちの定位置でした
そこでお弁当を食べたり動画を撮ったり
とにかく「青春!」ってことを何もかもやったよね
いつかは終わりが来るのは薄々感じてたけど
今は貴方の傍にいることが最高の幸せ
高校三年の夏に私の進路が決まった
貴方は悩み抜いた末にふたつの未来を目指した
私はどちらの未来も応援したかったけど
もうひとつの道だけは応援できなかったの
遠距離恋愛なんて無理だよ
卒業式の夜に貴方と一夜を明かした
淋しさを紛らわすために身体に刻もうとした
私の想いを聞いた貴方は少し戸惑って
「やっぱ出来ないよ」と私に服を押し付け
無言で部屋を出てった
別れの朝に私は貴方を見送らなかった
貴方と言葉を交わすことが一番怖かった
私の青春のすべてに貴方が笑っていた
でもすべて私が壊してしまったの
貴方との信頼も温もりも
あの時素直に謝ってたら未来は変わったのかな
LINEも電話も出来なくてこの恋は上の空
何度も何度も手紙にしたためようとして埃を被った手紙未満
涙の嵐が私を襲う度に死にたくなったよ
まだ本当は終わってないのに
ある夏の朝
貴方に会いに行った
結局連絡も出来ぬまま正門の隅に立ってた
ここで何もしないと本当に終わってしまう気がして
何かに突き動かされるように身体が動いてた
永遠を信じた私たちの恋を
続けるのか終わらせるのか貴方に委ねたい
私はもう決める資格がないと思ってた
貴方を苦しめてばかりと本当はわかってるのに
また貴方に委ねるしかなかった
数時間後の夕方
貴方は帰り道にこちらに気付いた
一瞬固まってたけど
数秒後に私と目を合わせた
第一声は「やっと来てくれたんだね」
「僕は貴女のことをわかってるつもりだった」
「貴女を世界でいちばん愛してると信じたかった」
「でも実際に夜を過ごすと緊張の方が勝ってしまって」
「いつかは通る道だと知ってたんだけど」
「貴女を傷つけたくなくて逃げてしまったんだ」
あんな縋るような瞳の貴方を私ははじめて見た
それだけ誠実に考えてくれてたんだと私の鈍感さを憎んだ
ふたりの数ヶ月の距離感がいきなり縮んでいった
ひとりだけを信じて生きてきて本当に良かった
モノクロームの日々に再び色が生まれた
見知らぬ街を貴方はいろいろと紹介してくれた
それから私たちは数ヶ月に一度会うようになった
前よりも距離が縮まった気がした
今なら私は自信を持ってこう言えるよ
「あなたのどんなところも愛しくてたまらない」って
最初のデートで貴方と約束したよね
『お互いがお互いの幸せを願える関係でいよう』と
歳を重ねるごとに戸惑うこともいっぱいあった
でも戸惑いがふたりをもっと強くした
最強の恋人になった
青春がセピア色になる前に
また新しく始めるため
とっておきのプレゼントをふたりで買いに行った
ふたりが二十五になる年の四月十一日に婚姻届を一緒に出しに行った
それは数年前ふたりが出逢った日だった
梅雨の朝
ベッドで微笑む貴方に手招きされ
ふたりで抱き合った瞬間
あの日の答え合わせだと気付き
激しいほどの情熱がぬくもりに変わった
これから健やかな家族をふたりで築いていこう
どんなに冷たい海もふたりなら渡っていけるはず
私に気付いてくれて本当にありがとう
好きになってくれて本当にありがとう
私も貴方と出逢えて本当に良かったよ
左手薬指に光る指輪は私たちが愛を育んできた証
友の祝福を照れ笑いしつつも受ける貴方は
私の世界でいちばん大切な人
今日は貴方と愛を誓いあう日……
ウェディング・ベルが高らかに鳴り響く
詩集「時喰う人たち」Credits
詩・デザイン:坂岡 ユウ
Respect to:ルネ・マグリット, サルバドール・ダリ, オーギュスト・ロダン, フィンセント・ファン・ゴッホ, ヒプノシス(=ストーム・トーガソン, オーブリー・パウエル, ピーター・クリストファーソン), すべての画家を夢見る人, アルベルト・ジャコメッティ, ウィリー・ウォンカ, サンプラザ中野くん, モーリス・ルブラン, アルセーヌ・ルパン, ある女性, 高見沢俊彦, サラリーマン金太郎, ポストイット
2022.1.29
坂岡 ユウ
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