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#カイロ大学声明
fa-cat · 5 months
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①A氏案の〈カイロ大学の卒業名簿にその記載がある〉〈卒業の判定は大学としての公正な審理と手続きを経てなされたものである〉が削除され、〈卒業証書はカイロ大学の正式な手続きにより発行された〉と変更されていること ②A氏案の〈日本、エジプト双方の法令に基づき適切な対応を検討している〉が〈エジプトの法令に則り、適切な対応策を講じることを検討している〉と変更されていること
小池氏は政治生命の危機!元側近「爆弾告白」で学歴詐称疑惑は最終局面に
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ari0921 · 2 months
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和六年(2024年)8月2日(金曜日)
   通巻第8351号 <前日発行>
 ハニヤ暗殺の謎は深まるばかり。イスラエルの関与はあったのか
  イスラエルの目的はハニヤの政敵=シンワール殺害だ
*************************
 2024年7月31日、ハマスの最高指導者ハニヤがテヘランの「居宅」でボディガードとともに暗殺された。すわ、イスラエルの仕業かと誰しもが反応しただろう。ところが、真犯人はわかっていない。
過激派内部の内ゲバの可能性も否定できないことは前号でもみた。
 イランの最高指導者ハメネイ師は「イスラエルへ直接報復をせよ」と呼号した。ハメネイ師は「イスラム共和国の国境内で起きたこの悲惨で悲劇的な事件を受けて、復讐するのは我々の義務だ」と述べた。
「犯罪者でテロリストのシオニスト政権は、我が国の親愛なる客人を殉教させ、我々を悲嘆させたが、自らに対する厳しい処罰の土壌も整えたのだ」と主張した。
イランのマスード・ペゼシュキアン大統領は「イラン・イスラム共和国の領土保全、名誉、尊厳を守り、テロリスト占領者に卑怯な行為を後悔させる」と誓った。
 イラン革命防衛隊(IRGC)も、イランとその同盟国による「厳しく痛みを伴う対応」でのぞむとした。「ハニヤ暗殺はシオニストの犯罪者、殺人者、テロリスト集団が、国際ルールや規制を一切考慮せず、ガザでの9か月に及ぶ戦争の恥ずべき失敗を隠蔽するために、いかなる犯罪行為も躊躇しないこと」を示していると述べた。
 またイランの国連大使は「暗殺は米国とイスラエルの連携のうえで行われた」と批判した。
モスクワはこうして危険な趨勢に警告し、報復がつづけば中東全域を巻き込む戦闘となり、世界大戦に発展する危険性があるとした。
かくして暗殺関与を名指しされたイスラエルだが、ネタニヤフ首相は7月31日、テレビ演説し、パレスチナのイスラム組織ハマスやレバノンの民兵組織ヒズボラなどの親イラン勢力に「壊滅的な打撃を与えた」と強調したもののハニヤ暗殺に関しては言及しなかった。
ネタニヤフ首相は国民に対し「困難な日々が待ち受けているが、あらゆるシナリオに備えている。いかなる脅威にも断固として対応する」と呼びかけた。
 ▼中国の和平仲介努力は水泡に帰した
 ハニヤ暗殺の一週間まえ(7月23日)、中国の王毅外相はパレスチナ自治区で反目し合うハマスと自治政府主流派のファタハの代表、他に12のパレスチナ過激派の代表を北京に招いた。
中国の仲介で「ガザ地におけるイスラエルとの戦争の終結後、占領下のヨルダン川西岸とガザ地区に暫定的な『国民和解政府』を樹立する」という提案に対して各派が同意した。 
この会議は北京で3日間にわたって開かれた、パレスチナの過激派、14グループが参加したことは画期的であり、中国の外交力の表れだとも言えるだろう。
しかし率直に言って、各派は、中国の顔を立てて、何回も反古にしてきた紙切れに署名しなおしたに過ぎない。
実際には同じ合意が2017年10月にエジプトの仲介によってカイロでなされたが、その後の進展は何もなかった。
王毅としては「中国の外交成果だ」と宣伝したいところだろう。中国はイランとサウジアラビアの関係修復を仲介した『実績』もある。
中国外務省の毛寧報道官は「中国とパレスチナは信頼できる兄弟であり、良きパートナーだ」とし、中国はパレスチナの結束と和解に向けて「すべての関係者と不断の努力をする」と述べた。
2007年にハマスがガザ地区からファタハを追放して以来、両グループは対立を解消できていない。
ハマスは30日になって声明をだし「各派閥の和解に向けた中国の取り組みや、これまでの「パレスチナの大義に対する賛同姿勢、大量虐殺の阻止」を称賛した。
しかし北京の和平会談では停戦達成に向けた取り組みや、イスラエルの攻撃によって引き起こされた「悲惨な人道状況」、中国によるガザへの人道支援の強化などが議題になっただけだった。
中国のパレスチナ支援は、毛沢東時代からである。「民族解放」運動を支援するため、パレスチナ人に武器を送った。ガザをめぐって中国政府高官や習近平国家主席までが、パレスチナの独立国家の必要性を強調してきた。北京でアルール(ファタハ代表)は、中国によるパレスチナの大義への支援に感謝した。
ハマス政治部門幹部はイランの首都テヘランで記者会見し、ハニヤ暗殺を受け、パレスチナ自治区ガザでの戦闘を巡るイスラエルとの停戦交渉に意味がなくなったと訴えた。
 北京の『努力』にかかわらず中東の安定にはほど遠い。
 第一にガザを支配するハマスとヨルダン川西岸を統治するパレスチナ政府とは、口もきかないほどに反目している
第二にアッバスに対しての批判はパレスチナ全体に根強い。
第三にハマスの内部はセクトに分かれ、お互いが対立しており、とくにイスラエル撲滅を叫ぶ強硬派と人質解放を和平の交渉手段としたハニヤとは先鋭的な対立関係にあった。ハニヤはカタールを拠点とし、人質交換などの交渉をイスラエル側と展開してきた。カタール政府もハニヤを支援してきたのだ。つまりイスラエルにとってはハニヤ殺害の動機はあっても、現時点ではメリットが薄いのである。
 
▼だれがハニヤのテヘランの隠れ家を知っていたのか?
 さてハマス指導者の暗殺である。
 7月31日、ハマスは「最高幹部イスマイル・ハニヤ氏が殺害された」と発表した。同日早朝にイランの首都テヘランにあるハニヤの滞在先が「そらからの飛翔体」(ドローン?)で攻撃され、警護の1人も殺害された。ハニヤはガザ地区にはおらずカタールの首都ドーハを拠点としており、イランのマスード・ペゼシュキアン新大統領宣誓式のためテヘラン入りしたのだ。
 ハニヤはガザ地区のシャティ難民キャンプの難民の家庭に生まれた。イスラム大学在学中から政治活動に携わり、ハマスに関与した。1980年代後半にイスラエルで数回逮捕され、投獄された。ハマスの創設者兼精神的指導者シェイク・アハメド・ヤシン師につかえ、ヤシンが暗殺されると、2006年にパレスチナの「首相��に選出された。
2007年にハマスがクーデターでガザ地区を制圧し、ハニヤが事実上のガザ支配者となった。2017年にハマスの政治指導者となってカタールに移住した。ガザ地区のハマス軍司令官であるシンワールとハニヤの間には個人的な対立があった。
 ハニヤはハマス指導部内で穏健派とみなされ、イスラエルとの長期フドナ(停戦)を支持し、1967年の国境内にパレスチナ国家を樹立するという解決策に同意するとさえ述べていた。同時にハニヤはテヘランに接近することを選び、それが「パレスチナ人の戦略的奥深さ」であると説明し自らの立場を固めた。
 
1993年の「オスロ合意」以後、ガザ地区が拠点の「ハマス」と「パレスチナ・イスラミック・ジハード」活動し、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区はファタハが統治するという色分けが出来た。
PLO主流派「ファタハ」傘下の「アル・アクサ殉教者旅団」はイスラエルで自爆テロを相次いで実行した。「ハマス」以外にも、「パレスチナ解放人民戦線総司令部派」(PFLP-GC)、「エルサレム周辺のムジャヒディン・シューラ評議会」(MSC)なる謎の組織がガザ地区に出現した。MSCはハマスの分派とみられる。
ヨルダン川西岸地区では「獅子の巣窟」と自称する新たな組織が出現するなどした。
 このほか、「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)、ISILを支持する「エルサレムのイスラム国支持者」など謎めいる組織が出現した。過激派セクトの相互不信と対立も、見落としがちな視点である。
▼ガザのハマス軍事指導者シンワールがイスラエルの暗殺目標だ
 
 ハニヤはガザ地区指導者とは異なった外交アプローチをしていた。
 たとえば2024年5月23日、アフガニスタンのタリバン代表団がテヘランを訪れ、カタールの首長と同時にハマスのハニヤと、このイランの首都で会談しているのだ。
タイミング的にはライシ大統領(当時)がヘリコプター事故で死亡した直後だった。
専門筋は、ハマスはイランとタリバンとの関わりを可能な限り最小限に抑えようとしているとし、逆にテヘランはハマスとの絆をより強めようとしていた。ガザの軍事的なハマス指導者シンワールの考え方では、たとえ銃撃戦で夥しいガザ住民が犠牲になろうとも、イスラエルとの戦争をできるだけ長く続けることにある。この点でハニヤとは対立しており、またイランはハニヤの扱いに苦渋の様相だった。
イスラエルのガザ攻撃によってハマスが外交上の得点をあげたのは事実である。アイルランド、スペイン、デンマークなどが「パレスチナ国家を承認する」と決定したが、米国内でもパレスチナ支援が急激に増えていた。ハマスはむしろハニヤによって国際的孤立か抜けだそうとしていた。つまりハニヤが鬱陶しい存在となったのがガザの軍事指導部シンワールと、イランである。
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kennak · 5 months
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日本在住のある友人が、小池百合子の学歴詐称に関する『デイリー新潮』の4月16日付けの記事のリンクを送ってくれました。 『文藝春秋』の五月号の記事を基にしている書き方です。 「文春砲」の原文を読むことの出来ない環境にいるF爺には知り得なかったことが書いてありました。 記事の冒頭に 「【小池知事・学歴詐称疑惑】私文書偽造で立件されたとしても、政治家としては逃げ切る可能性…サッチーの“コロンビア大卒”とも比較」 とあります。記者の名前は、分かりません。 引用 F爺の目を瞠(みは)らせた部分を引用します。太字は、F爺が勝手に施しました。なお、文中の「小島さん」は、小島敏郎氏のことで、『女帝』は、石井妙子氏の著書『女帝 小池百合子』のことです。 ***** 小島さんによると、6月6日に小池氏から呼び出されたそうです。『女帝』の出版で困っていると明かした小池氏に、小島氏は卒業したか確認すると、小池氏は『したわよ』と即答。小島氏が『卒業証書や卒業証明書を見せればいいじゃないですか』と助言しても、小池氏は『卒業証書などはあるが、それで解決しないから困っている』などと返答するだけで、最も簡単で確実な証明方法である卒業証書や証明書の開示は拒み続けたそうです」(同・記者)  小島氏は新しい卒業証明書などの発行を大学に申請するよう助言。その上で、都知事選が目前に迫っていることから、カイロ大学の学長から「卒業した」と明言してもらう方法を思いついたという。  新しい卒業証明書が届くまでの方策として、学長が「卒業した」と明言する声明文のようなものを、PDFなどで送ってもらえばいい──小島氏の提案に、小池氏は安堵の表情を浮かべた。 ■キーパーソンの「A氏」  すると小島氏が予想もしなかったことが6月9日の午後2時過ぎに起きる。突然、カイロ大学学長の署名が入った声明文が、駐日エジプト大使館のFacebookに掲載されたのだ。あまりにも早すぎる展開に、小島氏は少し違和感を覚えたという。  だが都知事選が目前に迫っているため、小島氏は様々な業務に忙殺されてしまう。一方、声明文の効果は絶大だった。大手メディアが一斉に報道し、学歴詐称疑惑はあっという間に沈静化した。結局、7月5日の都知事選で小池氏は圧勝、再選を果たした。  都知事2期目の小池氏は、自民党や公明党との協調路線に切り替える。21年7月の都議選では選挙応援に消極的な態度を示した。こうしたことから小島氏は事務総長を辞め、小池氏と距離を置いた。そして、ことあるごとに「なぜ小池氏は卒業証書や証明書を出さなかったのか」という疑問と、「自分は小池氏の学歴詐称に加担してしまったのではないか」という不安に苛まされることになったという。  ところがある日、《小池さんのブレーンの一人で、私とも旧知の間柄》である《元ジャーナリストで表には出ていない》A氏と話した際、小島氏は声明文を提案したことに忸怩たる想いを抱いていると打ち明けた。 ■最高裁の判例も  するとA氏は小島氏に《「声明文は、私が日本語で書いた文案を書き換えたものを英訳、カイロ大学の声明文として学長のサインを付けて発表したものです》と真相を語ってくれたというのだ。  小島氏はA氏の告白を聞き取っただけでなく、A氏から小池氏とのメールなど“証拠”も入手。どのようにしてカイロ大の声明文が偽造されたかを記事で詳細に描写している。ここでは割愛するが重要なポイントとして、声明文の原文が英文だったことなど、根本的な疑問を示した部分だけ、小島氏の記事から引用させていただく。 《そもそもカイロ大学が出した声明文なら、アラビア語で記されているのが普通ではないでしょうか。それに英語・日本語訳が付いているのならわかりますが、英語・日本語だけなのも不思議な話。またカイロ大学学長の文書が、カイロ大学のHPに掲載されず、駐日エジプト大使館のフェイスブックにだけ載るのも、今思えば奇妙なことです》 ***** 「カイロ大学がわざわざ声明文を出す」ということ自体が妙な話でしたが、なんと、その「声明文」が偽造だったというのです。 この記事の内容が正しいとすると、そして勿論 この記事の元になった『文藝春秋』の記事の内容が確かなことだとすると、 小池百合子の学歴詐称は、揺るがない事実だということになります。 小島敏郎氏や石井妙子氏の今後の動向が興味深いものになりそうです。 折しも日本では衆議院の補欠選挙。「名の知れた」政治家の露出度の高くなる時期です。
小池百合子の学歴詐称に関する『デイリー新潮』の記事 - F爺・小島剛一のブログ
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reportsofawartime · 4 months
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ところで、国家社会主義に直結するヤセル・アラファトの政治的出自は興味深い。 ヤセル・アラファト大統領の模範であり指導者は、第二次世界大戦中、エルサレムのムフティであるアミン・アル・フセイニであり、彼は第二次世界大戦中、ナチス政権とムスリム同胞団の協力を仲介した。彼もそのメンバーだった。 1941年にはアドルフ・ヒトラーにも会った(映画を参照)。 ムフティは親衛隊の一員となり、バルカン半島からイスラム教徒を武装親衛隊に動員し、東ヨーロッパからのユダヤ人の逃亡経路を封鎖し、こうして数千人のユダヤ人をホロコーストに送り込んだ。 ムフティは終戦直前までドイツに滞在し、その後フランスへ空輸された。そこから彼はなんとかエジプトに逃げ、そこで1946年にエジプト人のヤセル・アラファトに会った。 そこでアル・フセイニは、当時カイロに留学していたエジプト人のヤセル・アラファトに対し、ユダヤ人との戦いで指導力を求めるよう奨励した。エジプトへのムフティに同行した元ドイツのナチス将校は、アラファトに秘密の教訓を与えた。その結果、アラファトは1948年にエジプト・ムスリム同胞団とともにイスラエルに対するパレスチナ戦争に参加した。 アル・フセイニは後に、1958年に設立されたアラファトのファタハに資金を提供した。 1964年に制定されたPLOの最初のパレスチナ国家憲章はアル・フセイニの目標を採用した。 1974年にムフティが亡くなったとき、アラファトはベイルートでの葬儀で棺のすぐ後ろを歩き、葬列を先導した。 1994年にノーベル平和賞を受賞したナチスの訓練を受けたテロリスト、アラファト氏は、親衛隊の一員だった指導者であり後援者であるアラファト氏から決して距離を置くことはなかった。 2002年のインタビューで、彼は西側諸国が「ナチスの同盟者とみなし」、排除しようとしたムフティを「私たちの英雄」と呼んだ。彼は彼の兵士の一人でした。アラファト大統領は、2004年に生涯を終えるまで「ユダヤ人のいない」パレスチナという目標を維持した。 これらの声明の後、パレスチナのナショナリズム全体が国家社会主義に基礎を置いていると言えるでしょう。アイデアの発案者は親衛隊隊員であり、最初の「パレスチナ人」指導者はナチスによって訓練され、国際社会に認められたいわゆる「パレスチナ人」の現在の「指導者」であるマフムード・アッバスは悪名高いホロコースト否定論者である。 左派諸君、あなた方には素晴らしいロールモデルがいるのです!
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toshihikokuroda · 3 months
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特別対談!疑惑の小池百合子を刑事告発した元側近小島俊郎氏にインタビュー。学歴詐称、カイロ大学声明文発表の裏側!小池都政はあまりにもおかしい!元朝日新聞・記者佐藤章さんと一月万冊
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htmillll · 5 months
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 小池百合子は、「上昇志向の塊だ」「権力に憑かれた女だ」と評されている。私も執筆中、そのように考えた。また、自分の「噓」を守るためにも、権力を保ち続けなくてはならなかったのだろう、と。しかし書き終えてみて、彼女が権力を得ようとするのも、すべては自分への賞賛を求めてのことではないか、と感じるようになった。礼賛の声を聞くために、光を求めて荒野を彷徨い、より強い光を浴びようと欲して権力の階段を上り続けているのではないか、と。  都知事になってからの行動や政策にも、それは明らかだろう。
(2ページ目)小池百合子都知事が「学籍詐称疑惑」に対して、常に「カイロ大学は“認めております”」としか回答できないワケ | 文春オンライン [bunshun.jp]
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yotchan-blog · 5 months
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2024/4/19 18:02:17現在のニュース
東京都、湾岸部開発の緑化率50%に上げ 壁面も要件に - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2024/4/19 18:00:26) 教員給与「残業代なし」を維持 壁になったのは…(朝日新聞, 2024/4/19 17:56:56) 少子化対策法案、衆院通過 「支援金」に批判集中も参院成立の公算大(朝日新聞, 2024/4/19 17:56:56) 「感染症はまた必ず発生する」 政府の行動計画、初の抜本改定へ(朝日新聞, 2024/4/19 17:56:56) 今夏の甲子園、一部日程で午前・夕方の「2部制」を実施 暑さ対策で(朝日新聞, 2024/4/19 17:56:56) Apple、中国でメタの対話アプリを削除 当局命令で - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2024/4/19 17:54:21) 小池百合子知事、元側近がメール暴露した学歴詐称疑惑をまた否定 カイロ大の声明「私自身が関知してない」:東京新聞 TOKYO Web([B!]東京新聞, 2024/4/19 17:54:12) 改憲を急かす党派に立民が待った「数年単位かけるべき」 維新「今日にでも条文化作業を」 衆院憲法審査会:東京新聞 TOKYO Web([B!]東京新聞, 2024/4/19 17:54:12) 那須2遺体遺棄 事件発覚の前夜、死亡男性の姿がアメ横に(毎日新聞, 2024/4/19 17:53:18) 閉じ込められたクマ、通気口から逃走か 洗面台が足場?換気扇外す?(朝日新聞, 2024/4/19 17:46:58) 「お父さんは頑張って生きた」と伝えたい 池袋暴走5年、現場で献花(朝日新聞, 2024/4/19 17:46:58) 急ごしらえのライドシェア、運行開始 地域交通全体見据えた議論を(朝日新聞, 2024/4/19 17:46:58) 夏の甲子園、午前と夕方の「2部制」導入 酷暑対策で(毎日新聞, 2024/4/19 17:45:46) 「ヘイトスピーチ」訴訟 泉南市と市議は請求棄却求める 大阪地裁(毎日新聞, 2024/4/19 17:45:46) 6歳の自分と母がくれた原点 重圧に涙した五輪、我慢比べからの解放(朝日新聞, 2024/4/19 17:39:30) 「海底熟成酒」 1年間海に眠らせまろやかに 沈没船の酒に憧れ(毎日新聞, 2024/4/19 17:38:00) ポッドキャスト:友野くんアフタートーク感想紹介&100回記念クイズ答え合わせ(毎日新聞, 2024/4/19 17:38:00)
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yymm77 · 5 months
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文春砲炸裂!小池百合子学歴詐称疑惑に実名告発・新証言!小池百合子都知事が自ら指示して「カイロ大学学長声明」を偽造!偽造にかかわった元側近が衝撃の告発!
文春砲炸裂!小池百合子学歴詐称疑惑に実名告発・新証言!小池百合子都知事が自ら指示して「カイロ大学学長声明」を偽造!偽造にかかわった元側近が衝撃の告発!元朝日新聞・記者佐藤章さんと一月万冊
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ichinichi-okure · 8 months
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2024.1.26fri/tokyo
満月のせいか昨日は夕方から背中が激痛で早く就寝したため、今朝は5時前に起きる。 背中の痛みは消えていてよかった。もしかして行ける?とドアの外に出て外気を確かめる。まだ空は暗く満月がポワっと輝いてた。 寒いは寒いけど、大丈夫かも!とすぐに身支度を始める。
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去年の夏から持病が悪化して、いわゆる難病指定の病を完治できるという東洋医学とめぐり合い、体質から変革しようと鍼灸と食事療法で治療中。長い月日がかかるだろうと診断され秋からゆっくりと取り組んでいる。大人になってほぼ体重変動なかったのに初めて10キロも落ちた!いっぱい食べても吸収しないのだ。普通の日常を過ごせてはいるものの全く動作が進まないことが多くなった。 日頃から時間や予定どおりにこなすことが苦手なのに、当たり前な簡単なことも輪をかけて思うようにいかない。 きっと今朝もゆっくり寝ていた方がいいとなるけど、目覚めてなんだか快調な感覚だ。 直前でも変更することもあるように、立ち止まりからだの今の声を聞き、直感で行動するようになった。
朝のルーティンは体重、体温を測る。ご先祖さまと色んな存在への感謝のお祈り。白湯とお茶を飲んで玄米餅が入った味噌汁をいただく。たくさん着込んでカイロも貼って支度。6時: よし、いくぞ!と外に出て自転車を走らせる。まんまるになったばかりの満月が澄んだ冬の夜明けの空にくっきりまだ見える。
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実は2年半前から始めたこと。ある深夜、お導きのように突然入ってきた「武道」というワード。 全く自分の頭になかったこと、情報ゼロのまま入門。名前や自分のこと、相手のことも知らない、ほぼ言葉も交わさない世界に別次元にいるような心地よさがあった。この感覚を大切にしたいとほとんど周りに告げず、自分の内側だけで鍛錬していこうと思った。何も身についてもいないのに発露すると何か薄い感じになってしまう思いもあった。このことはそろそろ自身がもうひとつの段階の始まりが来る頃でもあり、どこかで改めて綴りたいと思っている。
今朝の稽古は仙人のような師だ。言葉少なく独特な空気を醸し出し私は好んでいる。しかし前の晩寝るのが遅くなるとなかなか出れない。 今日は支度が遅れ、掃除には間に合わなかった。本来は掃除もひとつの大切なこと。でもできなかった自分も許そう。薄暗いなか、各々が拝礼から身体を温める動きや柔軟体操する。そして静かに師のそばに集まるように始まる。 力を出力するとき、手を伸ばす時、からだのどこに収まるかを観察していく。作用反作用、地味にとてもむずかしい。 朝日が道場に差し込みはじめ神秘的だ。普段の稽古と違い激しく動かないからとにかく冷える。少し動いていても、つま先がどんどん感覚がなくなっていく。1人ずつ教えていただく時間になり、私はあまり出ないから一番最後の順。1時間以上は待つ。しばらく待っていたが冷えは大敵、今は体調を思い諦め切りあげる。 ロビーで暖をとっていたら、特別に自衛官の禊稽古があったようで居合わせた。この人たちが国を守っているのだなぁという貫禄。
外に出るとすっかりお日様が照って日差しが暖かったので少し日向ぼっこしていこう。同志も「一緒にいいですか?」とふたりで何気ない話でぼーっとするひととき。辰年にちなんだキャンディをくれた。かわいい。誰もいない冬の空気、木の影が美しい。都心とは思えないこの風景と時間が好きだ。 あら、もう9時半!またね!と別れ家路に。
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食事療法は昔の日本の食生活がお手本にすればいいと改めて思う。このところ発酵づくりにスイッチ入っている。 「自分の菌を取り入れるといいんだって」と最近色々作っている市子チャンに教わる。自分の住むところ、ルーツの産地のものを取り入れるのもいいと聞き、父の故郷・安曇野の麹とお水も用意した。塩こうじを先日仕込み、ひと瓶ずつに「ありがとう、美味しくな~れ!」と声かけしながら毎日混ぜ混ぜ育んでる。 昨夜仕込もうとしていた味噌づくりをこれからする。2晩以上浸した大豆を弱火でじわじわ煮る。 時々灰汁をとったり、煮汁がなくならないように見守らなければならない。灰汁がミステリーサークルみたいに浮き上がり、渦がぐるぐる古事記の神様の国産みたいだ。 3月の展覧会のためのお財布制作の革カットも並行して進める。この作業はパズルで神経と力を使うので一苦労。
もうすぐ大豆が煮えそうなところで、午後の稽古も出ようと決めた。 なかなか体調が定まらないけれど、行けると思う時は途中でギブアップも承知で行く。今心がけているのはできるだけがんばらなく普通な行為となるように途切らせないリズム。無理をしないで氣を枯らさないようにしていく鍛錬からの体力づくり。あとは何となくな気持ちに任せる。 昨日姉が持ってきてくれた豚汁をお昼に頂いて、再び道場へ向かう。
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午後は館長の稽古。今朝の自衛官たちの話から始まった。 「日本の自衛隊は今も能登災害にあるように救助復興に活躍する立場と世間では認識されているが、本来は国防というお役目。彼らはそうであるが、じゃあ我々は何ができるのか?同じようにはいかないけれど一人一人にお役目があることを改めてそれぞれが考え、まずはからだをつくるということ。」まさに自分が今軸としている「からだづくり」。基礎体力をつけていきたい。 先日はスタミナ切れになり途中ギブアップしたが今日は最後まで通せた。 よく教えてくれる学生さんとお話ししながら門を出る。
17時:お客様のオーダーのイヤリングの納品へHELENHEIJIに向かう。 通りがかりに木材の端材が路上販売していた。いくつかお店のディスプレイ用に頂いていく。 その先のオーガニック店でネギと赤かぶ、煎餅を買う。今グルテンと乳製品のスィーツを控えているので最近はお煎餅ばかり買っちゃう(揚げNG)。 食材も原材料を細かく見ちゃうし、買い物にも時間を要する。お弁当とか揚げ物は油が多いので買えなくなったし、病気を通して食の見直しのタイミングなのだと思うようになって面白い。 HELENHEIJIで納品&少しおしゃべり。まだミッションあるから!といつもより早く帰る。切らしていたティッシュを買い、すっかり暗くなり朝と同じ風景に満月が再び昇っていた。
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帰宅後、すぐに大豆煮と仕事を再開。小腹が空いて、おやつにこの前作った豆腐とヨーグルトの干柿ケーキを一口。保存瓶の煮沸、麹と塩もすり合わせていく。 経理をしてくれている姉から去年の経費報告の催促。事務作業、いつも溜めてしまう。 やっと豆が柔らかくなり、次の工程なんだっけ?と調べつつ、とにかく豆を潰す作業。これがまた大変。やっと瓶にぎゅうぎゅう詰めて仕込み終わった。初めての味噌作り、わずかな量なのになかなか時間がかかってしまったけれどその分愛おしい。味噌として出来上がりが待ち遠しい!
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22時:遅い夕食。ささっと作れ、消化に良く身体を温める大根とネギ鶏むね肉の梅干し鍋。 兵庫のあげちゃんが私の体調を知った途端に秘蔵の貴重な梅干しと味噌、糠床を送ってきてくれた、2020年の梅を使う。何も調味料入れず梅だけで濃厚な味がこんなにでるのか!と驚く。きっと滋養番長のあげちゃんの愛が凝縮されている。普段なかなか会えない友人たちにいざという時に支えてもらえありがたい。 経費整理が終わらず一区切りなところで今日は終了。姉に送信。 0時半:お風呂に入る。首まで温まって、出てお灸をすえる。まぁまぁメンテナンスも時間を要するから寝不足になることが多々。睡眠が一番なのに、、な矛盾!
常に食べられるものは何か?からだに合った食材、料理。日々からだの巡りを整えること、仕事をこなしつつ、1日がアッという間で他のことがほとんどできない。今日もあの人に連絡できなかったーとか、お礼もちゃんと伝えられてない、先送りや何かを観に行ったりなど諦めることが増えた。それも良しとしていく自分の中の手放し。 人と比べず自分が今できることを、ひとつひとつからだの声を聞く。2歩進んで3歩下がることもあるけど、自分に与えられた命は何かのメッセージ。日々積み重ねていく小さなことが、やがて積もって本来の自分と一致した「ヒト」となれるよう、今日も一日ありがとう、おやすみなさい。と眠りにつく。
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-プロフィール- フクシマミキ 東京 mïndy @mindy_22 www.mi-ndy.com
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dearsun16 · 8 months
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1ヶ月ぶりのこじけんの日!最近遊ぶ度になんか久しぶりやなーって言うてる気がするけど、月1って一般的にはそんな久しぶりちゃうよな。でも俺からしたらめっちゃ久しぶりに感じる。今回は南京町リベンジだけ決めてたから合流してすぐ南京町へ。俺的に1番美味しくていつも行列のお店があって、こないだ来た時は夕方やったからか閉まってて悔しかってんけど今回は開いてたからスタートダッシュはここの焼き小籠包と魯肉飯。焼き小籠包は何回も食べたことあって大好きやねんけどこじけんもめちゃくちゃうまいなって言うてくれて嬉しかった!魯肉飯は初めて頼んだけどこれもめっちゃうまかったから多分この店はどれ頼んでも間違いない。他のメニューも食うてみたいなー。食べ終わってから1回南京町往復して、俺はゴマ団子と豚バラバーガー、こじけんは揚げもちとココナッツ団子食べて。どれもうまかったしめっちゃ楽しめたけど、流石に寒すぎたから次はもうちょいあったかくなったら行こ!南京町よりもそこから一駅分歩いてった道中の方がもっと寒かってんけどな…。俺が片手こじけんの小脇に挟んでもう片手はあったかい飲み物で暖取ってたら"いやずるいねん"って文句言いながらも、俺がさむ!って言う度に脇閉めてくれてたからなんだかんだやっぱりええ奴やわ。寒すぎた時のためにカイロ2つ持ってきてたから途中で1つこじけんにあげたら、カイロの素晴らしさを今更知ったらしくてめちゃくちゃ感謝されました。俺は冬場ほぼ毎日お世話になってるから良さを知ってくれて良かった。途中日向歩けた時に、"ここは天国?"ってくらい幸せやったから日光ってほんま偉大やな。寒い寒い言いながらなんとか到着して、ゲーセンで100円5プレイのおやつに挑戦したけど1個も落ちんくてうまいこと出来てんなーって嘆いた。その後調子乗ってカメレオンのぬいぐるみ取ろうとしてんけど、300円の時点でこじけんがガチで止めに入ってくれたから助かりました。止められんかったら多分沼ってた。ほんまに危険すぎる!ゲーセン出てようわからんファンシーショップみたいなとこでポケモンとかマリオのぬいぐるみ物色して、筆箱コーナーで自分が今小学生やったらどの筆箱がいい?って聞かれてガチで選んだりしてたらレジにNARUTOの一番くじあるのに気づいて、うわこれめっちゃええやん!って2人で1回ずつ引いてみた。そしたらこじけんは本命の賞当ててその中でも欲しいやつしっかり当ててた!運良!!中身見る時、先見て…って言われたから俺から見てんけど、こじけんの欲しいやつやんって気づいた瞬間思わず声出たもんな。…あ、俺ですか?俺はこれ当たったら困るなーって言うてたタンブラーが当たったよ。うん。ええねん、こじけん専用のタンブラーとして置いとくことにしたから!そうこうしてる内に気づいたら15時とかで、はよ喫茶店行かな晩メシ入らん!って急いで行きたかった喫茶店へ。店内もめちゃくちゃいい雰囲気やったし、珈琲もデザートもおいしくて癒されたなー。あそこで2時間半くらい喋ってたもんな俺ら。なんなら全然喋り終わってへんけど閉店時間来たから出たみたいな感じやったもん。いくら落ち着く空間言うても落ち着きすぎやろて。マスターもちょっと天然やけどいい人やったし、絶対また行きたいお店。新たないい店見つけた時って幸せな気持ちになる。ほんで駄菓子屋で計算せずに食べたいもんカゴに入れて300円に近い方が勝ちって勝負したんやけど、こじけんが315円くらいで俺が345円くらいで。めっちゃ惜しくて悔しかった!300円超えるかも…と思って我慢した駄菓子あってんけど、どうせ負けるなら買えばよかったわ。悔し!ほんでさっむい中駄菓子食べながら海ぼーっと眺めたりしてたらもう19時半で、いや今日ほんまに時間経つの早すぎるわ!って嘆きつつ某ファミレスへ。去年から行きたい行きたい言うてたからやっと行けてテンション上がった!案内された席が眺めが最高にいい場所で、夜景綺麗すぎ!って無邪気に写真撮ってた俺らかわいい。ここでもこれでもかってくらいずーっと喋ってた。めっちゃびっくりしたのは俺は大人の変さじゃなくて子供の変さって言われたこと。確かにこじけんって俺のことをやたら赤ちゃんで例え話するなーとは思ってたけど、俺はこじけんに大人やなぁと思われてると思ってたからかなり衝撃受けたよな。それ言うたら笑いやがって、いやこっちはガチやぞ!?って。同い年やけどお互い自分の方がお兄ちゃんしてると思ってて、真顔で"嘘やん"って言い合ってたのしんど。大晴は守りたくなる感じって言うから、俺はもし今大地震が起きたらこじけんに覆い被さって守る覚悟はあるよって言うたら、いやそれは物理的な守るやん、ほんまそういうとこやでって言われて。俺は真面目に言うてたのに!こじけんこそいつも大人ぶってるけど赤ちゃんやのになー。自覚ないんやろなー。明日早くないん?って聞いた時にちょっと目泳がせてから"…うん"って嘘バレバレ���返事してきて、いや絶対嘘やろ!バレバレやねん!ってつっこんだら嘘やけど!そういう演技や!って言うてきたのも意味わからんくて赤ん坊やったし。可愛いとこあんねんこいつ。夢中で喋ってて時計見たら21時半やったから、まだ帰らんでいいん?って聞いたら22時くらいまではええよって言うてたのに、22時過ぎてるでって言うた時には22時半くらいなら…って言うし、ファミレス出て駅向かってる時に"まだ全然体力はあるのに!時間が無さすぎる!"って言うてたからじゃあもうちょい喋ろかーって冗談で言うたらまあ終電に間に合えば…って言い出すからこじけんの甘やかしは危険やでほんまに。俺がそこに甘んじたら大変なことになるから!でもただ俺を甘やかしてくれてるだけじゃなくて、実際まだ喋りたいなーって思ってくれてるのも伝わってくるから愛おしい生き物よな。てな感じで、この日もあっという間の11時間半でした。
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ken-tum · 4 years
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都知事選。。。小池百合子は出馬するのか?
嘘を誠にするためにすべての力を尽くして自分の階級を保ちたいだけの人にしか見えない。
大学出てようが出てなかろうが、仕事ができるなら関係ないと考えるのは当たり前。。。
それを前提に考えても、仕事やってますか?
やってる振りしてるだけでしょ。。
自分より良い意見の持主をやり込めるためにだけ力を尽くし、都民の事など全く考えていないとしか思えない態度。。。
それでいて東京の金を全部使い切る。。
完全なる役立たず。
不要な都知事だと私は考えます。
私の勝手な考えですが、会見の時の目を見てください!
あの本気じゃない目を!!
完全に何も考えていない、腑抜けの目です。
ただ自分の階級を守りたいだけです。。
そんな風にしか見えません。
都民の方、よく、検討してください。
都知事が変わってから、何か良くなりましたか?
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isakicoto2 · 4 years
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青と金色
■サイレンス
この部屋のインターフォンも灰色のボタンも、だいぶ見慣れてきた。指で押し込めて戻すと、ピーンポーンと内側に引っ込んだような軽い電子音が鳴る。まだこの地に来た頃はこうやって部屋主を呼び出して待つのが不思議な気分だった。鍵は開かれていたし、裏口だって知っていたから。 「…さむっ」 ひゅうう、と冷たい風が横から吹き込んで、思わずそう呟いて肩を縮めた。今週十二月に入ったばかりなのに、日が落ちると驚くほど冷え込む。今日に限って天気予報を観ていなかったけれど、今夜はいつもと比べても一段と寒いらしい。 近いし、どうせすぐだからと、ろくに防寒のことを考えずに部屋を出てきたのは失敗だった。目についた適当なトレーナーとパンツに着替え、いつものモッズコートを羽織った。おかげで厚みは足りないし、むき出しの両手は指先が赤くなるほど冷えてしまっている。こんなに寒いのならもっとしっかりと重ね着してこれば良かった。口元が埋まるくらいマフラーをぐるぐるに巻いてきたのは正解だったけれど。 いつもどおりインターフォンが繋がる気配はないけれど、その代わりに扉の奥からかすかに足音が近付く。カシャリ、と内側から錠の回る音がして目の前の扉が開かれた。 「おつかれ、ハル」 部屋の主は片手で押すように扉を開いたまま、咎めることも大仰に出迎えることもなく、あたたかい灯りを背にして、ただ静かにそこに佇んでいた。 「やっと来たか」 「はは、レポートなかなか終わらなくって…。遅くなっちゃってごめんね」 マフラー越しに笑いかけると、遙は小さく息をついたみたいだった。一歩進んで内側に入り、重たく閉じかける扉を押さえてゆっくりと閉める。 「あ、ここで渡しちゃうからいいよ」 そのまま部屋の奥に進もうとする遙を呼び止めて、玄関のたたきでリュックサックを開けようと背から下ろした。 遙に借りていたのはスポーツ心理学に関する本とテキストだった。レポート課題を進めるのに内容がちょうど良かったものの自分の大学の図書館では既に貸し出し中で、書店で買うにも版元から取り寄せるのに時間がかかるとのことだった。週明けの午後の講義で遙が使うからそれまでには返す、お互いの都合がつく日曜日の夕方頃に部屋に渡しに行く、と約束していたのだ。行きつけのラーメン屋で並んで麺を啜っていた、週の頭のことだった。 「いいから上がれよ」遙は小さく振り返りながら促した。奥からほわんとあたたかい空気が流れてくる。そこには食べ物やひとの生活の匂いが確かに混じっていて、色に例えるなら、まろやかなクリーム色とか、ちょうど先日食べたラーメンのスープみたいなあたたかい黄金色をしている。それにひとたび触れてしまうと、またすぐに冷えた屋外を出て歩くために膨らませていた気力が、しるしるとしぼんでしまうのだ。 雪のたくさん降る場所に生まれ育ったくせに、寒いのは昔から得意じゃない。遙だってそのことはよく知っている。もちろん、帰ってやるべきことはまだ残っている。けれどここは少しだけ優しさに甘えようと決めた。 「…うん、そうだね。ありがと、ハル」 お邪魔しまーす。そう小さく呟いて、脱いだ靴を揃える。脇には見慣れたスニーカーと、濃い色の革のショートブーツが並んでいた。首に巻いたマフラーを緩めながら短い廊下を歩き進むうちに、程よくあたためられた空気に撫ぜられ、冷えきった指先や頬がぴりぴりと痺れて少しだけ痒くなる。 キッチンの前を通るときに、流しに置かれた洗いかけの食器や小鍋が目に入った。どうやら夕食はもう食べ終えたらしい。家を出てくる前までは課題に夢中だったけれど、意識すると、空っぽの胃袋が悲しげにきゅうと鳴った。昼は簡単な麺類で済ませてしまったから、帰りにがっつり肉の入ったお弁当でも買って帰ろう。しぼんだ胃袋をなぐさめるようにそう心に決めた。 「外、風出てきたから結構寒くってさ。ちょっと歩いてきただけなのに冷えちゃった」 「下旬並だってテレビで言ってた。わざわざ来させて悪かったな」 「ううん、これ貸してもらって助かったよ。レポートもあと少しで終わるから、今日はちゃんと寝られそう……」 遙に続いてリビングに足を踏み入れ、そこまで口にしたところで言葉が詰まってしまった。ぱちり、ぱちりと大きく瞬きをして眼下の光景を捉え直す。 部屋の真ん中に陣取って置かれているのは、彼の実家のものより一回り以上小さいサイズの炬燵だ。遙らしい大人しい色合いの炬燵布団と毛布が二重にして掛けられていて、丸みがかった正方形の天板が上に乗っている。その上にはカバーに入ったティッシュ箱だけがちょんとひとつ置かれていた。前回部屋に訪れたときにはなかったものだ。去年は持っていなくて、今年は買いたいと言っていたことを思い出す。けれど、それはさして驚くようなことでもない。 目を奪われたのは、その場所に半分身を埋めて横になり、座布団を枕にして寝息を立てている人物のことだった。 「…えっ、ええっ? 凛!?」 目の前で眠っているのは、紛れもなく、あの松岡凛だった。普段はオーストラリアにいるはずの、同郷の大切な仲間。凛とはこの夏、日本国内の大会に出ていた時期に会って以来、メールやメディア越しにしか会えていなかった。 「でかい声出すな、凛が起きる」 しいっと遙が小声で咎めてくる。あっ、と慌てたけれど、当の凛は起きるどころか身じろぐこともなく、ぐっすりと深く眠ってしまっているようだった。ほっと胸を撫で下ろす。 「ああ、ご、ごめんね…」 口をついて出たものの、誰に、何に対してのごめんなのか自分でもよく分からない。凛がここにいるとは予想だにしていなかったから、ひどく驚いてしまった。 凛は今までも、自分を含め東京に住んでいる友達の部屋に泊まっていくことがあった。凛は東京に住まいを持たない。合宿や招待されたものならば宿が用意されるらしいけれど、そうでない用事で東京に訪れることもしばしばあるのだそうだ。その際には、自費で安いビジネスホテルを使うことになる。一泊や二泊ならともかく、それ以上連泊になると財布への負担も大きいことは想像に難くない。 東京には少なくとも同級生だけで遙と貴澄と自分が住んでいる。貴澄は一人暮らしでないからきっと勝手も違うのだろうが、遙と自分はその点都合が良い。特に遙は同じ道を歩む選手同士だ。凛自身はよく遠慮もするけれど、彼の夢のために、できるだけの協力はしてやりたい。それはきっと、隣に並ぶ遙も同じ気持ちなのだと思う。 とはいえ、凛が来ているのだと知っていれば、もう少し訪問の日時も考えたのに。休日の夜の、一番くつろげる時間帯。遙ひとりだと思っていたから、あまり気も遣わず来てしまったのに。 「ハル、一言くらい言ってくれればいいのに」 強く非難する気はなかったけれど、つい口をついて本音が出てしまった。あえて黙っていた遙にじとりと視線を向ける。遙はぱちり、ぱちりと目を瞬かせると、きゅっと小さく眉根を寄せ、唇を引き結んだ。 「別に…それが断わる理由にはならないだろ」 そう答えて視線を外す遙の表情には少し苦い色が含まれていて、それでまた一歩、確信に近付いたような気がした。近くで、このごろはちょっと離れて、ずっと見てきたふたりのこと。けれど今はそっと閉じて黙っておく。決してふたりを責めたてたいわけではないのだ。 「…ん、そうだね」 漂う空気を曖昧にぼかして脇にやり、「でも、びっくりしたなぁ」と声のトーンを上げた。遙は少しばつが悪そうにしていたけれど、ちらりと視線を戻してくる。困らせたかな、ごめんね、と心の中で語りかけた。 「凛がこの時期に帰ってくるなんて珍しいよね。前に連絡取り合ったときには言ってなかったのに」 「ああ…俺も、数日前に聞いた。こっちで雑誌だかテレビだかの取材を受けるとかで呼ばれたらしい」 なんでも、その取材自体は週明けに予定されていて、主催側で宿も用意してくれているらしい。凛はその予定の数日前、週の終わり際に東京にやって来て、この週末は遙の部屋に泊まっているのだそうだ。今は確かオフシーズンだけれど、かといってあちこち遊びに行けるほど暇な立場ではないのだろうし、凛自身の性格からしても、基本的に空いた時間は練習に費やそうとするはずだ。メインは公的な用事とはいえ、今回の東京訪問は彼にとってちょっとした息抜きも兼ねているのだろう。 「次に帰ってくるとしたら年末だもんね。早めの休みでハルにも会えて、ちょうど良かったんじゃない」 「それは、そうだろうけど…」 遙は炬燵の傍にしゃがみこんで、凛に視線を向けた。 「ろくに連絡せずに急に押しかけてきて…本当に勝手なやつ」 すうすうと寝息を立てる凛を見やって、遙は小さく溜め息をついた。それでも、見つめるその眼差しはやわらかい。そっと細められた瞳が何もかもを物語っている気がする。凛は、見ている限り相変わらずみたいだけれど。ふたりのそんな姿を見ていると自然と笑みがこぼれた。 ハル、あのね。心の中でこっそり語りかけながら、胸の内側にほこほことあたたかい感情が沸き上がり広がっていくのが分かった。 凛って、どんなに急でもかならず前もって連絡を取って、ちゃんと予定を確認してくるんだよ。押しかけてくるなんて、きっとそんなのハルにだけじゃないかなぁ。 なんて考えながら、それを遙に伝えるのはやめておく。凛の名誉のためだった。 視線に気付いた遙が顔を上げて、お返しとばかりにじとりとした視線を向けた。 「真琴、なんかニヤニヤしてないか」 「そんなことないよ」 つい嬉しくなって口元がほころんでいたらしい。 凛と、遙。そっと順番に視線を移して、少しだけ目を伏せる。 「ふたりとも相変わらずで本当、良かったなぁと思って」 「…なんだそれ」 遙は怪訝そうに言って、また浅く息をついた。
しばらくしておもむろに立ち上がった遙はキッチンに移動して、何か飲むか、と視線を寄こした。 「ついでに夕飯も食っていくか? さっきの余りなら出せる」 夕飯、と聞いて胃が声を上げそうになる。けれど、ここは早めにお暇しなければ。軽く手を振って遠慮のポーズをとった。 「あ、いいよいいよ。まだレポート途中だし、すぐに帰るからさ。飲み物だけもらっていい?」 遙は少し不満そうに唇をへの字に曲げてみせたけれど、「分かった、ちょっと待ってろ」と冷蔵庫を開け始めた。 逆に気を遣わせただろうか。なんだか申し訳ない気持ちを抱きながら、炬燵のほうを見やる。凛はいまだによく眠ったままだった。半分に折り畳んだ座布団を枕にして横向きに背を縮めていて、呼吸に合わせて規則正しく肩が上下している。力の抜けた唇は薄く開いていて、その無防備な寝顔はいつもよりずっと幼く、あどけないとさえ感じられた。いつもあんなにしゃんとしていて、周りを惹きつけて格好いいのに。目の前にいるのはまるで小さな子供みたいで、眺めていると思わず顔がほころんでしまう。 「凛、よく寝てるね」 「一日連れ回したから疲れたんだろ。あんまりじっと見てやるな」 あ、また。遙は何げなく言ったつもりなのだろう。けれど、やっぱり見つけてしまった。「そうだね」と笑って、また触れずに黙っておくけれど。 仕切り直すように、努めて明るく、遙に投げかけた。 「でも、取材を受けに来日するなんて、なんか凛、すっかり芸能人みたいだね」 凄いなぁ。大仰にそう言って視線を送ると、遙は、うん、と喉だけで小さく返事をした。視線は手元に落とされていながら、その瞳はどこか遠くを見つめていた。コンロのツマミを捻り、カチチ、ボッと青い火のつく音がする。静かなその横顔は、きっと凛のことを考えている。岩鳶の家で居間からよく見つめた、少し懐かしい顔だった。 こんなとき、いまここに、目の前にいるのに、とそんな野暮なことはとても言えない。近くにいるのにずっと遠くに沈んでいた頃の遙は、まだ完全には色褪せない。簡単に遠い過去に押しやって忘れることはできなかった。 しばらく黙って待っていると遙はリビングに戻って来て、手に持ったマグカップをひとつ差し出した。淹れたてのコーヒーに牛乳を混ぜたもので、あたたかく優しい色合いをしていた。 「ありがとう」 「あとこれも、良かったら食え」 貰いものだ、と小さく個包装されたバウムクーヘンを二切れ分、炬燵の上に置いた。背の部分にホワイトチョコがコーティングしてあって、コーヒーによく合いそうだった。 「ハルは優しいね」 そう言って微笑むと、遙は「余らせてただけだ」と視線を逸らした。 冷えきった両の手のひらをあたためながらマグカップを傾ける。冷たい牛乳を入れたおかげで飲みやすい温度になっていて、すぐに口をつけることができた。遙は座布団を移動させて、眠っている凛の横に座った。そうして湯気を立てるブラックのコーヒーを少しずつ傾けていた。 「この休みはふたりでどこか行ってきたの?」 遙はこくんと頷いて、手元の黒い水面を見つめながらぽつぽつと語り始めた。 「公園に連れて行って…買い物と、あと、昨日は凛が何か観たいって言うから、映画に」 タイトルを訊いたけれど、遙の記憶が曖昧で何だかよく分からなかったから半券を見せてもらった。CM予告だけ見かけたことのある洋画で、話を聞くに、実在した人物の波乱万丈な人生を追ったサクセスストーリーのようだった。 「終盤ずっと隣で泣かれたから、どうしようかと思った」 遙はそう言って溜め息をついていたけれど、きっとそのときは気が気ではなかったはずだ。声を押し殺して感動の涙を流す凛と、その隣で映画の内容どころではなくハラハラと様子を見守る遙。その光景がありありと眼前に浮かんで思わず吹き出してしまった。 「散々泣いてたくせに、終わった後は強がっているし」 「あはは、凛らしいね」 俺が泣かせたみたいで困った、と呆れた顔をしてコーヒーを口に運ぶ遙に、あらためて笑みを向けた。 「よかったね、ハル」 「…何がだ」 ふいっと背けられた顔は、やっぱり少し赤らんでいた。
そうやってしばらく話しているうちにコーヒーは底をつき、バウムクーヘンもあっという間に胃袋に消えてしまった。空になったマグカップを遙に預け、さて、と膝を立てる。 「おれ、そろそろ帰るね。コーヒーごちそうさま」 「ああ」 遙は玄関まで見送ってくれた。振り返って最後にもう一度奥を見やる。やはり、凛はまだ起きていないようだった。 「凛、ほんとにぐっすりだね。なんか珍しい」 「ああ。でも風呂がまだだから、そろそろ起こさないと」 遙はそう言って小さく息をついたけれど、あんまり困っているふうには見えなかった。 「あ、凛には来てたこと内緒にしておいてね」 念のため、そう言い添えておいた。隠すようなことではないけれど、きっと多分、凛は困るだろうから。遙は小さく首を傾げたけれど、「分かった」と一言だけ答えた。 「真琴、ちょっと待て」 錠を開けようとすると、思い出したみたいに遙はそう言って踵を返し、そうしてすぐに赤いパッケージを手にリビングから戻ってきた。 「貼るカイロ」 大きく書かれた商品名をそのまま口にする。その場で袋を開けて中身を取り出したので、貼っていけ、ということらしい。貼らずにポケットに入れるものよりも少し大きめのサイズだった。 「寒がりなんだから、もっと厚着しろよ」 確かに、今日のことに関しては反論のしようがない。完全に油断だったのだから。 「でも、ハルも結構薄着だし、人のこと言えないだろ」 着ぶくれするのが煩わしいのか、遙は昔からあまり着こまない。大して寒がる様子も見せないけれど、かつては年に一度くらい、盛大に風邪を引いていたのも知っている。 「年末に向けて風邪引かないように気を付けなよ」 「俺は大丈夫だ、こっちでもちゃんと鯖を食べてるから」 「どういう理屈だよ…って、わあっ」 「いいから。何枚着てるんだ」 言い合っているうちに遙が手荒く背中をめくってくる。「ここに貼っとくぞ」とインナーの上から腰の上あたりに、平手でぐっと押すように貼り付けられた。気が置けないといえばそうだし、扱いに変な遠慮がないというか何というか。すぐ傍で、それこそ兄弟みたいに一緒に育ってきたのだから。きっと凛には、こんな風にはしないんだろうなぁ。ふとそんな考えが頭をもたげた。 遙はなんだか満足げな顔をしていた。まぁ、きっとお互い様なんだな。そう考えながら、また少し笑ってしまった。 「じゃあまたね、おやすみ」 「ああ。気を付けて」
急にひとりになると、より強く冷たく風が吹きつける気がする。けれど、次々沸き上がるように笑みが浮かんで、足取りは来る前よりずっと軽かった。 空を仰ぐと、小さく星が見えた。深く吐いた息は霧のように白く広がった。 ほくほく、ほろほろ、それがじわじわと身体中に広がっていくみたいに。先ほど貼ってもらったカイロのせいだろうか。それもあるけれど、胸の内側、全体があたたかい。やわらかくて、ちょっと苦さもあるけれど、うんとあたたかい。ハルが、ハルちゃんが嬉しそうで、良かった。こちらまで笑みがこぼれてしまうくらいに。東京の冬の夜を、そうやってひとり歩き渡っていた。
■ハレーション
キンとどこかで音がするくらいに空気は冷えきっていた。昨日より一段と寒い、冬の早い朝のこと。 日陰になった裏道を通ると、浅く吐く息さえも白いことに気が付く。凛は相変わらず少し先を歩いて、ときどき振り返っては「はやく来いよ」と軽く急かすように先を促した。別に急ぐような用事ではないのに。ためらいのない足取りでぐんぐんと歩き進んで、凛はいつもそう言う。こちらに来いと。心のどこかでは、勝手なやつだと溜め息をついているのに、それでも身体はするすると引き寄せられていく。自然と足が前へと歩を進めていく。 たとえばブラックホールや磁石みたいな、抗いようのないものなのだと思うのは容易いことだった。手繰り寄せられるのを振りほどかない、そもそもほどけないものなのだと。そんな風に考えていたこともあった気がする。けれど、あの頃から見える世界がぐんと広がって、凛とこうやって過ごすうちに、それだけではないのかもしれないと感じ始めた。 あの場所で、凛は行こうと言った。数年も前の夏のことだ。 深い色をした長いコートの裾を揺らして、小さく靴音を鳴らして、凛は眩い光の中を歩いていく。 格好が良いな、と思う。手放しに褒めるのはなんだか恥ずかしいし、悔しいから言わないけれど。それにあまり面と向かって言葉にするのも得意ではない。 それでもどうしても、たとえばこういうとき、波のように胸に押し寄せる。海辺みたいだ。ざっと寄せて引くと濡れた跡が残って、繰り返し繰り返し、どうしようもなくそこにあるものに気付かされる。そうやって確かに、この生きものに惚れているのだと気付かされる。
目的地の公園は、住んでいるアパートから歩いて十分ほどのところにある。出入りのできる開けた場所には等間隔で二本、石造りの太い車止めが植わるように並んでいて、それを凛はするりと避けて入っていった。しなやかな動きはまるで猫のようで、見えない尻尾や耳がそこにあるみたいだった。「なんか面白いもんでもあったか?」「いや、別に」口元がゆるみかけたのをごまかすためにとっさに顔ごと、視線を脇に逸らす。「なんだよ」凛は怪訝そうな、何か言いたげな表情をしたけれど、それ以上追及することはなくふたたび前を向いた。 道を歩き進むと広場に出た。ここは小さな公園やグラウンドのような一面砂色をした地面ではなく、芝生の広場になっている。遊具がない代わりにこの辺りでは一番広い敷地なので、思う存分ボール投げをしたり走り回ったりすることができる。子供たちやペットを連れた人たちが多く訪れる場所だった。 芝生といっても人工芝のように一面青々としたものではなく、薄い色をした芝生と土がまだらになっているつくりだった。見渡すと、地面がところどころ波打ったようにでこぼこしている。区によって管理され定期的に整備されているけれど、ここはずいぶん古くからある場所なのだそうだ。どこもかしこもよく使い込まれていて、人工物でさえも経年のせいでくすんで景観に馴染んでいる。 まだらで色褪せた地面も、長い時間をかけて踏み固められていると考えれば、落ち着いてもの静かな印象を受ける。手つかずの新品のものよりかは、自分にとって居心地が良くて好ましいと思えた。 広場を囲んで手前から奥に向かい、大きく輪になるようにイチョウの木々が連なって並んでいる。凛は傍近くの木の前に足を止め、見上げるなり、すげぇなと感嘆の声を漏らした。 「一面、金色だ」 立ち止まった凛の隣に並び、倣って顔を上げる。そこには確かに、すっかり金に色付いたイチョウの葉が広がっていた。冬の薄い青空の真下に、まだ真南に昇りきらない眩い光をたっぷりと受けてきらきらと、存在を主張している。 きんいろ、と凛の言葉を小さく繰り返した。心の中でもう一度唱えてみる。なんだか自分よりも凛が口にするほうが似つかわしいように思えた。 周囲に視線を巡らせると、少し離れた木々の元で、幼い子供ふたりが高い声を上げて追いかけっこをしていた。まだ幼稚園児くらいの年の頃だろうか、頭一個分くらい身の丈の異なる男の子ふたりだった。少し離れて、その父親と母親と思しき大人が並んでその様子を見守っている。だとすると、あのふたりは兄弟だろうか。大人たちの向ける眼差しはあたたかく優しげで、眩しいものを見るみたいに細められていた。 「な、あっち歩こうぜ」 凛が視線で合図して、広場を囲む遊歩道へと促した。舗装されて整備されているそこは木々に囲まれて日陰になっているところが多い。ここはいつも湿った匂いがして、鳥の鳴き声もすぐ近くから降りそそぐように聞こえてくる。よく晴れた今日はところどころ木漏れ日が差し込み、コンクリートの地面を点々と照らしていた。 休日の朝ということもあって、犬の散歩やジャージ姿でランニングに励む人も少なくなかった。向かいから来てすれ違ったり後ろから追い越されたり。そしてその度に凛に一瞥をくれる人が少なくないことにも気付かされる。 決して目立つ服を着ているわけでもなく、髪型や風貌が特に奇抜なわけでもないのに、凛はよく人目を惹く。それは地元にいたときにも薄っすらと浮かんでいた考えだけれど、一緒に人通りの多い街を歩いたときに確信した。凛はいつだって際立っていて、埋没しない。それは自分以外の誰にとってもきっとそうなのだろう。 いい場所だなぁ。凛は何でもないみたいにそう口にして、ゆったりとした足取りで隣を歩いている。木々の向こう側、走り回る子供たちを遠く見つめていたかと思えば、すぐ脇に設けられている木のベンチに視線を巡らせ、散歩中の犬を見て顔をほころばせては楽しそうに視線で追っている。公園までの道中は「はやく」と振り返って急かしたくせに、今の凛はのんびりとしていて、景色を眺めているうちに気が付けば足を止めている。こっそり振り返りながらも小さく先を歩いていると、ぽつぽつとついてきて、すうと寄せるようにしてまた隣に並ぶ。 その横顔をちらりと伺い見る。まるで何かを確かめるかのように視線をあちらこちらに向けてはいるものの、特にこれといって変わったところもなく、そこにいるのはいつも通りの凛そのものだった。 見られるという行為は、意識してしまえば、少なくとも自分にとってはあまり居心地が良いものではない。時にそれは煩わしさが伴う。凛にとってはどうなのだろう。改まって尋ねたことはないけれど、良くも悪くも凛はそれに慣れているような気がする。誰にとっても、誰に対しても。凛はいつだって中心にいるから。そう考えると苦い水を飲み下したような気持ちになって、なんだか少し面白くなかった。
遊歩道の脇につくられた水飲み場は、衛生のためだろう、周りのものよりずっと真新しかった。そこだけ浮き上が��たみたいに、綺麗に背を伸ばしてそこに佇んでいた。 凛はそれを一瞥するなり近付いて、側面の蛇口を捻った。ゆるくふき出した水を見て、「お、出た」と呟いたけれど、すぐに絞って口にはしなかった。 「もっと寒くなったら、凍っちまうのかな」 「どうだろうな」 東京も、うんと冷えた朝には水溜まりが凍るし、年によっては積もるほど雪が降ることだってある。水道管だって凍る日もあるかもしれない。さすがに冬ごとに凍って壊れるようなつくりにはしていないと思うけれど。そう答えると凛は、「なるほどなぁ」と頷いて小さく笑った。 それからしばらくの間、言葉を交わすことなく歩いた。凛がまた少し先を歩いて、付かず離れずその後ろを追った。ときどき距離がひらいたことに気付くと、凛はコートの裾を揺らして振り返り、静かにそこに佇んで待っていた。 秋の頃までは天を覆うほど生い��っていた木々の葉は、しなびた色をして��らはらと散り始めていた。きっとあの金色のイチョウの葉も、程なくして散り落ちて枝木ばかりになってしまうのだろう。 「だいぶ日が高くなってきたな」 木々の間から大きく陽が差し込んで、少し離れたその横顔を明るく照らしている。 「あっちのほうまできらきらしてる」 中央の広場の方を指し示しながら、凛が楽しげに声を上げた。示す先に、冷えた空気が陽を受け、乱反射して光っている。 「すげぇ、綺麗」 そう言って目を細めた。 綺麗だった。息を呑んで見惚れてしまうほどに。いっぱいに注がれて満ちる光の中で、すらりと伸びる立ち姿が綺麗だった。 時折見せる熱っぽい顔とは縁遠い、冴えた空気の中で照らされた頬が白く光っていた。横顔を見ていると、なめらかで美しい線なのだとあらためて気付かされる。額から眉頭への曲線、薄く開いた唇のかたち。その鼻筋をなぞってみたい。光に溶け込むと輪郭が白くぼやけて曖昧になる。眩しそうに細めた目を瞬かせて、長い睫毛がしぱしぱ、と上下した。粒が散って、これも金色なのだと思った。 そうしているうちに、やがて凛のほうからおもむろに振り返って、近付いた。 「なぁ、ハル」少し咎めるような口調だった。「さっきからなんだよ」 ぴん、と少しだけ背筋が伸びる。身構えながらも努めて平静を装い、「なにって、何だ」と問い返した。心当たりは半分あるけれど、半分ない。 そんな態度に呆れたのか凛は小さく息をついて、言った。じっと瞳の奥を見つめながら、唇で軽く転がすみたいな声色で。 「おれのこと、ずっと見てんじゃん」 どきっと心臓が跳ねた。思わず息を呑んでしまう。目を盗んでこっそり伺い見ていたのに、気付かれていないと思っていたのに、気付かれていた。ずっと、という一言にすべてを暴かれてしまったみたいで、ひどく心を乱される。崩れかけた表情を必死で繕いながら、顔ごと大きく視線を逸らした。 「み、見てない」 「見てる」 「見てない」 「おい逃げんな。見てんだろ」 「見てないって、言ってる」 押し問答に焦れたらしく凛は、「ホントかぁ?」と疑り深く呟いて眉根を寄せてみせる。探るような眼差しが心地悪い。ずい、と覗き込むようにいっそう顔を近付けられて、身体の温度が上がったのを感じた。あからさまに視線を泳がせてしまったのが自分でも分かって、舌打ちしたくなる。 「別に何でもない。普段ここへは一人で来るから、今日は凛がいるって、思って」 だから気になって、それだけだ。言い訳にもならなかったけれど、無理矢理にそう結んでこれ以上の追及を免れようとした。 ふうん、と唇を尖らせて、凛はじとりとした視線を向け続ける。 しかしやがて諦めたのか、「ま、いいけどさ」と浅くため息をついて身を翻した。 顔が熱い。心臓がはやい。上がってしまった熱を冷まそうと、マフラーを緩めて首筋に冷気を送り込んだ。
それからしばらく歩いていくうちに遊歩道を一周して、最初の出入り口に戻ってきた。凛は足を止めると振り返り、ゆっくりと、ふたたび口を開いた。 「なぁ、ハル」今度は歩きながら歌を紡ぐみたいな、そんな調子で。 「さっきは良いっつったけどさ、おれ」 そう前置きするなり、凛はくすぐったそうに笑った。小さく喉を鳴らして、凛にしては珍しく、照れてはにかんだみたいに。 「ハルにじっと見つめられると、やっぱちょっと恥ずかしいんだよな」 なんかさ、ドキドキしちまう。 なんだよ、それ。心の中で悪態をつきながらも、瞬間、胸の内側が鷲摑みされたみたいにきゅうとしぼられた。そして少しだけ、ちくちくした。それは時にくるしいとさえ感じられるのに、その笑顔はずっと見ていたかった。目が離せずに、そのひとときだけ、時が止まったみたいだった。この生きものに、どうしようもなく惚れてしまっているのだった。 「あー…えっと、腹減ったなぁ。一旦家帰ろうぜ」 凛はわざとらしく声のトーンを上げ、くるりと背を向けた。 「…ああ」 少し早められた足取り、その後ろ姿に続いて歩いていく。 コンクリートの上でコートの裾が揺れている。陽がかかった部分の髪の色が明るい。視界の端にはイチョウの木々が並んできらめいていた。 「朝飯、やっぱ鯖?」 隣に並ぶなり凛がそっと訊ねてきた。 「ロースハム、ベーコン、粗挽きソーセージ」 冷蔵庫の中身を次々と列挙すると、凛はこぼれるように声を立てて笑ってみせた。整った顔をくしゃりとくずして、とても楽しそうに。つられて口元がほころんだ。 笑うと金色が弾けて眩しい。くすみのない、透明で、綺麗な色。まばたきの度に眼前に散って、瞼の裏にまで届いた。 やっぱり凛によく似ている。きっとそれは、凛そのものに似つかわしいのだった。
(2017/12/30)
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kennak · 5 months
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月刊「文藝春秋」5月号に掲載された「 『私は学歴詐称工作に加担してしまった』小池百合子都知事元側近の爆弾告発 」。この手記の中で学歴詐称工作に加担した一人と名指しされる現千代田区長の樋口高顕氏(41)が、月刊「文藝春秋」の発売日である4月10日から12日まで区役所に登庁せず、13日の公務をドタキャンするなど、行方不明となっていたことが「 週刊文春 」の取材で分かった。  当時、都知事2期目を目指していた小池百合子氏の「国立カイロ大学首席卒業」という経歴に疑惑が生じたのは2020年のこと。同年5月、ノンフィクション作家・石井妙子氏が上梓した「 女帝 小池百合子 」がベストセラーとなり、6月には都議会でも追及を受けた。  だが、6月9日に都議会自民党、共産党などから「小池都知事のカイロ大学卒業証書・卒業証明書の提出に関する決議案」が提出されると、同日、駐日エジプト大使館は、突如としてフェイスブック上にカイロ大学長名で〈コイケユリコ氏が、1976年10月にカイロ大学文学部社会学科を卒業したことを証明する〉との声明を発表したのだ。 駐日エジプト大使館の声明文案を依頼  この声明をめぐり、偽装工作を告発したのが、元「都民ファーストの会」事務総長の小島敏郎氏だ。  そして手記の中で偽装工作にかかわったとされたのが樋口千代田区長である。 〈大学ないし国からの、望ましい声明文面案、作っていただけないでしょうか。すいません 本人から声明文案、作っていただけないかと依頼ありました。かなりつかれてました〉  メールの送り主は樋口氏で、送信先は声明の原案を作ったとされる元ジャーナリストのA氏。文中の“本人”とは小池氏のことだ。カイロ大学の声明文がエジプト大使館のフェイスブックで発表される2日前、小池氏から命を受けた樋口氏がA氏に声明文案を依頼していたのだ。 『文藝春秋』の取材から逃げ回り、公務もドタキャン 「樋口氏は、元警視総監の樋口建史氏の長男で、京都大学在学中に小池氏の事務所でインターンをしていた。2017年の都議選では、都議会のドンこと内田茂氏の後継候補への刺客として千代田区から出馬し当選。都議になった後も小池氏の秘書のように働いていた。偽装工作が行われてから半年後の2021年1月、樋口氏は、小池氏の熱烈な支援を受け、千代田区長に当選しています。また小心者で知られており、『文藝春秋』の取材から逃げ回っていたそうです」(都民ファ関係者)  その樋口氏は、前述したように4月10日から12日まで千代田区役所に登庁せず、区長が例年出席する13日の「千代田区海洋少年団入団式」という公務もドタキャン。 「4月の初旬までは、毎日区役所に登庁し、千代田区の談合問題に関して都内をお詫び行脚していた。ところが、『文藝春秋』発売の10日以降、ぱったり姿を見せなくなったのです。また、この間、樋口氏は区役所職員に対し、公務を入れないよう指示していました」(区役所関係者)  千代田区広報課に樋口氏の勤務実態を聞くと、「2月頃に4月10日から12日まで休暇を申請していた」とし、13日の公務欠席は「承知していない」と説明した。  4月17日(水)12時配信の「 週刊文春 電子版 」および18日(木)発売の「週刊文春」では、小池氏の学歴詐称工作疑惑について5ページにわたって特集する。小島氏の学歴詐称工作についての証言の他、カイロ大声明文の発表後に東京都のエジプト関連予算が9700万円計上されたこと、高校時代から小池氏を知る濱渦武生元副知事へのインタビュー、小池氏と関係の深い自民党・萩生田光一氏の“クーデター”指示について詳報している。
《小池百合子“学歴詐称疑惑”》「文藝春秋」告発手記で渦中の千代田区長が「公務ドタキャン」行方不明になっていた!(文春オンライン) - Yahoo!ニュース
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chikuri · 4 years
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舛添氏は9日、ツイッターを更新し、「カイロ大学が小池都知事が1976年に同大学を卒業したと声明。卒業証書や卒業に至る経過、成績表は公開せず」と言及。「先進国の大学なら、全ての記録を保管し公表できる。声明など出すこと自体が政治的で胡散臭い。日本からの援助を期待する外国政府まで使う。立候補前の政治工作だろう」と私見を述べ、「私はパリ大学とジュネーブ大学に籍を置いたが、大学が声明まで出してそれを追認することはない。出すなら声明ではなく当時のデータだ。データ抜きなら政治的都合で何とでも言える。エジプトという専制国家ならではの腐敗の極みだ。証拠も出さずに○○が卒業生だと声明を出す先進国の大学は絶対にない」とした。
舛添氏、カイロ大の小池知事卒業声明は「胡散臭い」 - 社会 : 日刊スポーツ
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toshihikokuroda · 5 months
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文春砲炸裂!小池百合子学歴詐称疑惑に実名告発・新証言!小池百合子都知事が自ら指示して「カイロ大学学長声明」を偽造!偽造にかかわった元側近が衝撃の告発!元朝日新聞・記者佐藤章さんと一月万冊
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sorairono-neko · 5 years
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彼はいい匂いだと言う
 中国大会が終わってから、ヴィクトルと勇利は親密だった。少なくとも勇利はそう感じていた。ヴィクトルは勇利に笑いかけ、寄り添い、髪を撫でて、いつもそばにいた。彼は口数が多く、絶えず勇利に話しかけ、愉快そうだった。ヴィクトルの手はあたたかく、大きく、力強かった。それを改めて知る機会が勇利には幾度もあった。ヴィクトルがそんなふうだということは──楽しそうに笑い、愛嬌があり、勇利と仲がよく、おりにふれて接触するひとだということは──前からよくわかっていたのだけれど、勇利はこのところ、それをひどく強く感じていた。ヴィクトルと勇利は、非常に──たいへん親密だった。  何なんだろう、と勇利はときおり考えこんだ。ヴィクトルの気まぐれなのだろうか。もともとよくわからないひとではある。しかし、ヴィクトルの目つきは、前とはどこかちがうのだ。長谷津へ来たときから彼は優しく、勇利を大切そうにみつめてくれたが、さらに何かが強まった──熱烈なものを感じるような気がするのである。だが、確かに「気がする」だけなのかもしれない。ヴィクトルは以前の通りなのかもしれない。勇利ひとりが勝手にそういう妄想をしているに過ぎないのかもしれず、だとしたら、ヴィクトルにとっては迷惑な話である。そう……、「熱烈」はおおげさかもしれない。「以前に増して」くらいが適当だ。きっと。  しかしそう思えば、やはり前とは何かがちがっているということになるのだ。中国大会のあたりから。中国大会で何があっただろう? 思いつくのは自分が泣きわめいて癇癪を起こしたことくらいだけれど、それでヴィクトルが勇利への気持ちを深めるのはなんだか変だ。コーチとして学ぶところはあっただろうが、個人的には、よく泣くし、その泣き方が普通ではないし、めんどうくさいやつだと思われている気がする。実際勇利が泣いたとき、ヴィクトルはやっかいごとに出会ったという感じだった。彼は勇利を泣きやませるための解決法がわからず、なげやりな提案をしたりした。キスでもすればいいのかいってなんだよ。そういう問題じゃないんだよ。ヴィクトルは何もわかってない! ……いや、その話はいまはよくて。  まあ、実際キスをされたりはしたけど……。勇利は溜息をついた。しかしあれもとくに意味はないだろう。「キスされた」というより「キスされた?」というあいまいな気持ちだ。されたと思うのだが、一瞬のことだったし、勇利の勘違いかもしれない。勇利としては、絶対にふれたと信じているけれど、それが事実と同じとは限らない。そもそも、本当にキスしていたとしても、あれはただ勇利の四回転フリップに対抗したヴィクトルの「手段」だったのだ。それで「キスしたから親密になったんだ!」と大騒ぎするほど勇利も愚かではなかった。  まあ……ああいう騒動があって、コーチと生徒としてひとつ乗り越えて……その結果っていう気がしないでもないけど……。  しかしそれにしては、ヴィクトルのそぶりは、師弟という領域を飛び越えているように思えるのだった。もっとちかしい何かを感じる。だが、人と「ちかしい」関係を築いたことのない勇利に、「これは特別な感情だ」などときめつけられるはずもない。気のせいなのかなあ、でもなあ、と迷う日々だった。 「勇利、どこ行くの?」  夜、入浴を済ませて部屋へ戻ろうとすると、ヴィクトルが必ずそう尋ねる。正直に自室へ帰るのだと答えたら「じゃあ俺も」となぜかついてこようとする。 「いやいや、ぼくの部屋で何するの」 「勇利は何するの?」 「べつに……一日の成果を振り返ったり……ヴィクトルの動画を見たり……」 「俺はここにいるだろ?」 「それはそうだけど」 「俺のそばでは一日の成果は振り返れない?」 「そういうことじゃない」  あの狭い部屋にヴィクトルとふたりで落ち着いてどうすればよいのかわからず、勇利は結局、居間にとどまることが多かった。すると手持ち無沙汰になるので、なんとなく携帯電話をいじったりする。 「勇利、何してる?」 「いや、友達から連絡が入ってたりするから」 「ふうん」  中国大会の成績について、おめでとうと言って���れる知り合いのことだ。昔のバレエ仲間やスケート仲間で、ひどく親しいというわけではないけれど、こういう祝いを伝えあう人たちは何人かいた。 「日本人?」 「海外の人もいるけど」 「なるほど」  ヴィクトルは勇利を後ろから抱きしめ、携帯電話の画面をぼんやり眺めていた。日本語はわからないだろうし、英語の文章を理解できたとしても、特別な内容ではないので構わない。 「ヴィクトル、あんまり体重かけないで。重いよ」 「そうかい?」 「そう」 「じゃあ勇利が俺に体重をかければいい」  すこし離れて欲しいという意味だったのだけれど、ヴィクトルはそうは受け取らなかったらしい。彼は姿勢を正すと勇利の身体を引き寄せ、寄りかからせてかるく抱いた。勇利は、そういうことじゃないんだけどなあ、と思いつつ、いやだと抵抗するのも妙なので、されるがままになっていた。 「これならいいだろ?」 「うーん。うん」 「俺も勇利に何かメッセージを送ろうかな」 「なんて?」 「今日のトリプルアクセルはひどかったねとか」  勇利は頬をふくらませた。 「それはもうリンクで言われたからいいよ」 「かわいいねとか」 「何を企んでるの?」 「いい匂いがするねとか」 「なにそれ」  勇利は笑い出した。ヴィクトルは勇利の髪に鼻先をくっつけ、匂いを確かめた。 「本当だよ。勇利は甘くてすてきないい匂いがする」 「まあ、お風呂上がりだからね」 「勇利」 「ん?」 「…………」  ヴィクトルが何も言わないので、勇利は首をねじり、彼のほうへ顔を向けた。ヴィクトルも勇利のおもてをのぞきこんで、物穏やかな青い目を瞬かせていた。 「なに?」 「いや……」 「もう、変なヴィクトル」 「ああ、そうだね」  ヴィクトルの携帯電話が音をたてた。ヴィクトルはちらと見て、「あ、クリスからだ」と言い何か返信を始めた。ふたりは寄り添ってそれぞれ作業をしていた。真利が部屋の前を通りかかり、あきれたように声を上げた。 「あんたら何やってんの?」 「え?」 「何が?」 「くっついてないとスマホもいじれないわけ?」 「いや、そういうわけじゃないけど、ヴィクトルがくっついてくるから」 「勇利がいい匂いするから」 「もういいわ……」  真利は行ってしまった。ふたりは顔を見合わせた。自然と笑みがこぼれる。 「あきれられちゃったね」 「そうだね」  笑いあったあと、勇利はなんとなく目をそらさなかった。ヴィクトルも勇利をずっと見ていた。なんで見てるんだろう、と勇利はさらに見返した。ヴィクトルはもっと勇利をみつめていた。勇利はだんだんどきどきしてきた。ヴィクトルはどうして何も言わないの? なんか……なんか、顔が近づいてきた気がする……いやいや、まさか。気のせいだ。ヴィクトルの前髪が額にふれてくすぐったかった。勇利は頬が熱くてたまらなくなった。身体にまわっているヴィクトルの腕を意識してしまう。べつにきわどいところに手を当てられているわけではないのだけれど……なんというか……そういう……雰囲気が……。  ヴィクトルがふとまぶたをほそめた。青い色ならひんやりとした印象を受けるはずなのに、彼の目はたいへん情熱的だと勇利は感じた。鼓動が速い。伝わっていたらどうしよう? 「…………」 「あっ、あー……、ぼく、そろそろ部屋に戻ろうかな……」  唐突に勇利はヴィクトルの腕を外し、身体を離した。ヴィクトルはもう引き止めなかった。階段を上がるとき、全身がほてっているようだったのはなぜなのだろう。まったく解せないことだ。  トイレットペーパーがない。買ってきて。そう真利に命じられ、勇利は素直に夜の買い物に出掛けた。 「トイレットペーパー……ダブル……」  ついでに自分用の湿布なども購入することにする。 「あとは……」  トイレットペーパーだけのはずが、指示のメモはずいぶん長かった。あまりこういうところで買い物をしない勇利は、店内をくまなく歩きまわることになった。ラップなんか売ってるのか。へえ。お風呂用洗剤どこだろう。歯磨き粉……使い捨てカイロ……芳香剤……。棚から棚へと探索を進めていた勇利は、あるひとすみで足を止めた。  最初は、これはなんだろう、という気持ちだった。医療品? 日用品? 見慣れない商品だ。勇利はなんとなく手に取ってみた。てのひらからはみ出る大きさの箱に、数字が大きく書いてあるだけだった。だからよくわからなくて目に留まったのだ。勇利はひっくり返して裏の説明書きを読んでみた。瞳がまるくなり、彼はあやうく箱を取り落とすところだった。勇利はさっと箱を棚に戻した。それはコンドームだった。  なんだ。そういうことか。何かと思った。こういう感じなんだ。勇利は慌ててその場から離れようとした。しかし彼は立ち止まり、また棚に向き直った。興味があったわけではないのだけれど、無視することができなかった。ぼく、ひとつ、買っておいたほうがいいんじゃないのかな?  おそるおそる、もう一度同じ箱を手に取ってみた。そしてほかのも調べた。〇・〇一とか〇・〇二とかいうのはなんのことなのだろう。それ以外にもいろいろ種類があるようで、コンドームはその一角でなかなかの面積を占めている。いったい何がちがうのだろうか。勇利は別の箱を取り、慎重に見くらべた。材質? へえ、どれでも同じじゃないんだ。それから……あったかいって書いてある。えっ、ゴムがあったかいの? なんで? こっちは香りつきモイストタイプ……匂いとゴムとどういう関係があるんだろう……モイスト……湿りつつ匂いつき……?  勇利はくらくらしてきた。よくよく調査してみると、こういうものにも大きさがあるのだとわかった。そうなんだ、と戸惑った。まあ確かに、人によってちがうものだろう。ヴィクトルはどれが合うのかな、と勇利は真剣に考えた。温泉で見たことはあるけれど、凝視しているわけではないし、眼鏡もかけていないし、そもそも、温泉に入るときと��ういったときとではまたちがうだろう。  そこではっとし、勇利はまっかになった。ぼくは何を考えてるんだ……。しかし、まったくの的外れでもないという思いもあった。ヴィクトルとの親密さは、なんとなく、そういうことに発展しそうな何かを秘めていた。性的なことを言われたわけでも、そんなふうにふれられたわけでも、裸に関心を示されたわけでもないのだけれど、どこか、いずれ彼とそういうことになる、と予感させるものがあるのである。いざ、ふたりの時間にのぞみ、ゴムがない、どうしよう、とうろたえるのは感心できなかった。けれど、ゴムならあるよ、はいこれ、と差し出すのもどうだろう。ヴィクトルはびっくりするのではないだろうか。いかにもそういうことをしたくて支度していたみたいだ。いやらしいやつだな、と思われたらどうしよう。期待しているとかそういうことではないのだ。いま彼とのあいだにある雰囲気からの、そうなるかも……きっと……というごく自然な想像だ。いつか、自分たちは……。  いやいや、と勇利はぶんぶんかぶりを振った。キスしたこともないのに──あるけど、あれはちょっとキスと数えるのはどうかな──ぼくは何を考えてるんだ、と思った。こんなことを思案して、ヴィクトルが知ったらあきれるにちがいない。勇利って俺とセックスするつもりだったの? 笑い出す彼が目に浮かぶ。いやだ。そんなふうに言われるのは。たまらなく恥ずかしい。勇利はふっとうつむいた。しかし──しかしだ。しかしそれでも、そう思わせる何かを、近頃のヴィクトルは持っている。キスをしたことなんてなくても──抱きあうことがなくても、なんとなくそれを感じさせる何かが──。  勇利は溜息をついた。やめよう。ひとりでばかみたいだ。こんなことで悩んでるなんて知られたらヴィクトルになんて言われるか。ひとりよがりの妄想なんだ。そんなことあるわけないじゃないか。何を考えてるんだろう。  勇利は箱を戻し、急いで棚から離れた。  か、買ってしまった……。机に向かい、茶色い紙袋に包まれたものと対峙しながら、勇利はひとりで赤くなっていた。買ってしまった。結局買ってしまった。レシートが同じでは姉に何を思われるかわからないので、わざわざ別にして買ってしまった。ものすごく気恥ずかしかった。もう二度としたくない。そんなことまでして買ってしまった。 「はあ……」  勇利は頬に手を当て、吐息を漏らした。ばかなことをしたと思う。こんなの絶対使う日はこない、と泣きたくなった。あんなに自分たちには必要だと思えたのに、いざこうして購入してみると、ふたりにはいちばん縁遠いものに感じられた。どうして買ってしまったのだろう?  勇利は丁寧にテープを剥がし、紙袋から中身を取り出してみた。もう、まともに見るのも恥ずかしかった。ヴィクトルは大きい気がする、と思って大きめのものを選んでみたけれど、そういう自分の思考すら恨めしい。そんなことはどうでもいい。そもそも、この品物自体がどうでもいい。  長く見ていられず、勇利はすぐ袋にそれを戻した。机のひきだしに急いでしまおうとしてためらった。あまり目につくところに置いておきたくない。見るたびに思い出して赤くなってしまいそうだ。こういうものは押し入れに隠すに限る。  勇利は押し入れを開け、紙袋を無造作にそのあたりに押しこんだ。そしてぴしゃりとふすまを閉めた。  きっともう、あれに手をふれることは二度とないだろう。  夜、勇利が走りに行っているあいだ、ヴィクトルはつまらなかった。一緒に行けばよかったといつも思うのだけれど、勇利は知らないうちにさっと出ていってしまうのだ。勇利は勝手だ、とヴィクトルはぶつぶつ言った。 「ちょっと、ねえ」  居間でぼうっとしながらテレビを見ていると、真利に声をかけられた。 「なんだい?」 「あんた、寝るとき寒くない?」 「一緒に寝ようと勇利を誘っても『うん』と言ってくれないんだ」 「そんなこと訊いてないのよ。古い家だからね、隙間風も入るし……、気になるなら毛布を出すけど」 「ありがとう。なくても問題ない」 「ならいいけど」 「勇利は?」  自分は寒さには強いけれど、勇利はそうでもないだろう。すこし気になった。 「そうね。あの子にもそろそろ出してあげないといけないな」 「どこにある?」 「なに? やってくれんの? あの子の部屋の押し入れに入ってるわよ」  そこでヴィクトルは勇利の部屋へ行き、勇利のために寝床を整えることにした。アスリートの敵は怪我と病気だ。とにかく、防げるものは防がなくては。注意しすぎるということはない。  ヴィクトルは押し入れから毛布をひっぱり出した。そのとき、毛布の端が何かに当たり、それが足元に転がり落ちるのがわかった。ヴィクトルはベッドまで毛布を運び、きちんと敷いて寝床の乱れを直してから、落としたものを拾ってみた。茶色い紙袋だった。振ってみるとかなりかるい。中身はなんだろう?  ヴィクトルはなにげなく袋をひらき、逆さにしてみた。箱が落ちてきた。それを目にした瞬間、ヴィクトルはぎょっとした。何かはすぐにわかった。文字は日本語で書いてあるけれど、たやすく想像はつく。スキンだ。品物自体はとりたてて驚くようなものではない。しかし、それを勇利が持っているということはヴィクトルに衝撃を与えた。彼は驚愕した。  なんで? どうして? 勇利、恋人がいるのか? 誰のために買ったんだ? ヴィクトルは完全にとりみだした。うそだと思った。うそだ。だって勇利は……。  勇利は魅力的な若者である。かわいいし、綺麗だし、品があるし、可憐でそぶりが初々しく、笑顔はみずみずしい。性格も、頑固だけれど優しくて、でもつめたいところもあって、わがままで、感じやすく、凛々しく、かなり不思議だ。誰だって彼に惹かれるだろう。ファンもたくさんいる。みんなが彼と親しくなりたがる。女性に声をかけられているところもよく見かける。恋人がいてもおかしくはない。しかしヴィクトルは信じられなかった。  だって勇利は俺と──。  勇利は昔からヴィクトルが好きだったという。だがそれはこういう意味ではないだろう。そのことはわかっている。けれど、このところふたりのあいだにある親密さ、やわらかな感じ、なんとも言えないあまずっぱさ、くすぐったさを思えば、こんなものを彼が持っているのはとうてい承服できかねるのだった。ヴィクトルは勇利といてひどくしあわせだったのだ。そんなふうに思っていたのは自分だけだったのだろうか? 勇利にはちゃんとした相手がいるのに、ヴィクトルがひとりで喜んでいたのだろうか。確かに自分たちは、何かを約束したことはない。しかし──。  もちろん、勇利に想う相手がいるのならけっこうなことだ。ヴィクトルは勇利の笑顔が好きである。彼には笑っていてもらいたい。愛し愛されるのはすてきな経験ではないか。勇利がしあわせなのはよいことだ。けれど、でも、だけど──。ヴィクトルは溜息をついた。だけど、勇利は俺と──。  気がつくと、ずいぶん長い時間が経っていた。ヴィクトルが我に返ったのは、階段を上ってくる足音が聞こえたからだった。これは勇利のものだ。いつも彼は走り終えて帰宅すると、そのまま温泉へ行き、身綺麗になって戻ってくる。ヴィクトルの好きな匂いをさせて。  ヴィクトルは勇利に尋ねるべく、はらはらする気持ちを抑えて待ち構えた。  部屋から明かりが漏れている。勇利は驚かなかった。姉から、ヴィクトルがいると教えられていたからである。 「ただいま」  勇利は中に入った。 「真利姉ちゃんから、ヴィクトルが毛布出してくれてるって聞いたけど、ありがとう。ごめん、めんどうだったでしょ?」  床に座っていたヴィクトルが顔を上げた。目が合った。勇利は首をかしげた。 「どうしたの?」 「…………」 「変なの。ヴィクトル、何かあった──」  の、と最後まで言うことは勇利にはできなかった。勇利の視線がヴィクトルのおもてから下に下がり、彼のあぐらの前に置いてあるちいさな箱に行き着いたからである。  勇利は衝撃のあまり、言葉もなく口をひらいた。なんでこれが、と思った。どうして。片づけたはずなのに。もちろん、考えるまでもなくわかった。毛布を出すときに、何かの拍子で転がり出てしまったのだろう。しかしそんなことはどうでもよかった。かんじんなのは、ヴィクトルにこれを見られた、ということである。 「あっ、あっ、そ、それ、それは──」  勇利はあっという間にのぼせ上がった。 「それは、なんていうか、とくに意味はなくて、あの、ぼくは、べつに、そんなことは、えっと、」 「勇利」  ヴィクトルが床を示した。 「座って」 「…………」  勇利はしおしおとその場に腰を下ろした。しとやかにうつむき、上目遣いでヴィクトルをうかがう。ヴィクトルは眉根を寄せて、悩ましい表情をしていた。 「まず訊くが」 「……はい」 「これを買ったのは勇利、きみかな?」 「……はい、そうです」  勇利はうなだれて認めた。 「なんのために?」 「…………」 「なぜこれが必要だったのかな」  勇利はまっかになった。そんなこと、ヴィクトル当人に言えるわけがないではないか。いつか貴方に抱かれることがあるかと思って支度しました、なんて、どんな勇気をかき集めれば口にできるというのだ。 「勇利」  赤くなっておもてをさしうつむけている勇利に、ヴィクトルはふいに優しく問いかけた。 「誰か好きなひとがいるの?」  その声はひどくやわらかくて、最初のころ、「恋人はいるのかい? 昔の恋人は?」と陽気に尋ねてきたヴィクトルとはまるでちがっていた。しかし、やはり勇利は答えられなかった。 「恋人なのかな?」  勇利はくちびるを引き結んだ。恋人なんかじゃない。そんなことはヴィクトルがいちばんよくわかっているではないか。勇利だって、べつに恋人になりたいわけではないのだ。ただ──ただ──そういうことをするかなと思っただけで──。 「俺には言えない?」  ヴィクトルだから言えないのだ。 「もしかして──」  ヴィクトルがすこしためらった。 「俺の知ってる人なのかな」  当たり前だ。ヴィクトルが知らないわけが──。そう思いさして、勇利はふと違和感をおぼえた。どうしてヴィクトルはこんな話しぶりなのだろう? 「俺とも親しい人? 顔見知り程度? 勇利の友達はよく知らないはずなんだけど。スケート関係の人かい? それともバレエ?」  変だ。勇利は戸惑った。ヴィクトルはなんの話をしているのだ? 「友達から連絡が来るって言ってたよね。その中の誰かなのかな。ああ、日本人じゃない? デトロイト時代の知り合いとか。べつに俺はからかうつもりはないよ。ただ、勇利のことを知っていたいなと思っただけさ。もちろん──なんていうか──さびしくはあるけどね。だって勇利、俺たちはこのところ──」 「ヴィクトル」  勇利は顔を上げてつぶやいた。 「なんだい?」  ヴィクトルが丁寧に問い返した。 「ヴィクトルだよ」 「え?」 「だから、ヴィクトルなんだ」 「……何が?」  ヴィクトルが不思議そうに勇利を見た。勇利は一生懸命に見返した。ヴィクトルは、勇利がどこかに好きな相手をつくったと思っている。なぜそんな考え方になったのかわからないけれど、とにかくそのようだ。それは完全な誤解である。 「よそに好きなひとなんていないよ」  勇利はたどたどしく告白した。 「いつかヴィクトルとそういうことするかなって思って、それで──それで買ったんだ」 「…………」  ヴィクトルがきょとんとした。勇利は息をつめた。しばらくすると、勇利は猛烈に恥ずかしくなってきた。言ってしまった。そんなつもりはなかったのに。ヴィクトルが変な思い違いをしているようだから、それを正そうと正直に話してしまった。これでは、笑ってくださいと言っているようなものではないか。勝手に貴方とのことを想像していましたと包み隠さず打ち明けるなんてどうかしている。 「あっ、あの、べつに、ぼく、ぼくは、ヴィクトルにそれをしてくれって求めてるわけじゃなくて……」 「…………」 「だから気にしないで欲しいっていうか、その、ばかだって……ばかだってわかってるんだけど──」  さっとヴィクトルが目をそらし、首を横に向けた。勇利はあきれられたのだと思ってうろたえた。しかしヴィクトルは、口元を片手で覆い、急に顔を赤くして、気が抜けたようにつぶやいた。 「……俺だったのか……」  あきれているというより照れているように見える彼の態度に、勇利はぽかんとした。 「俺か。俺か……。俺だったのか……」 「……え、えと」 「俺と。そうか。勇利、そうだったのか……」  ヴィクトルがぶつぶつ言っている。どうやら笑われることはなさそうだ。勇利はほっとし、安堵のあまり、妙なことを口走ってしまった。 「そ、そうだよ。ヴィクトル、それ、サイズ合う?」 「えっ、サイズ?」  初めてそのことに思い至ったというようにヴィクトルが視線を落とした。勇利はまっかになった。ぼくなに言ってるんだ!? サイズとかいまどうでもいいだろ! 「ああ……」  ヴィクトルは箱を調べ、それからひとつうなずいて勇利を見、にっこりした。 「合ってるよ」 「そ、そう」  勇利は緊張ぎみに返事をした。 「よかった」  何がいいんだ!? 何がいいんだ!? ぼくなんなの!? 勇利はこのうえなく混乱していたけれど、それをおもてに出せないほどのぼせ上がっていた。 「俺だったのか。そうか。勇利、俺と。俺と……」  ヴィクトルはまたそんなことを言った。もうそのことはいいじゃん、と勇利は怒りそうだった。そうだよ。ヴィクトルとそうすること考えたんだよ。何回言うんだよ。ヴィクトルのばか。  しかし、この沈黙にどのように決着をつければよいのだろうか。ふたりには必要ないだろうかと尋ねることなんてできないし、いつごろ使いそうかと訊くなんてもっとできないし、捨てたほうがよいかという質問も、ふたりの関係を決断しろと迫っているみたいだ。 「……勇利」  ヴィクトルは、思い惑う勇利のこころになど気づかないように、急に顔を上げて両手をひろげた。勇利はぱちぱちと瞬いた。ヴィクトルはにこにこ笑っている。えっと、これは、おいでっていうことなのかな……。勇利は、おずおずと手を伸べてヴィクトルに近づいた。ヴィクトルがぎゅっと勇利を抱きしめて頬ずりした。 「そうか。俺のだったのか……」 「え、えっと、はい……」 「そうか……」  勇利はヴィクトルの腕の中におとなしくおさまり、彼の肩に頬を押しつけてじっとしていた。ヴィクトルが吐息をついてやわらかくささやいた。 「勇利、いい匂いがするね」  勇利はその箱をしまっておいた。そのあとは、ヴィクトルはそれについては何も話さなかったし、勇利もひとことも言わなかった。ロシア大会で離ればなれになり、帰国してヴィクトルへの思慕とせつなさを知り、グランプリファイナルを経て、ふたりは輝かしい愛を手にした。勇利は春にはロシアへ渡り、ヴィクトルのもとへたどりつき、彼の胸に飛びこんだ。ヴィクトルはその夜、彼のベッドで勇利にキスした。 「勇利、あれを持ってる?」  期待でいっぱいの甘いささやきに、勇利はうっとりしながらすこしつんとして答えた。 「あんな恥ずかしいもの持って、ロシアへなんて来られません」  途端にヴィクトルは眉を下げた。 「今夜はできないのかい?」  勇利は笑い出し、身体の後ろに隠していた箱を差し出した。ヴィクトルの目が輝いた。それを見て勇利の頬は燃えるように紅潮した。  その夜、ヴィクトルは箱の中身をいくつか使った。箱は数日でからっぽになった。しかし、勇利はもう、それをひとりで買いに行くことはなかった。ヴィクトルの身体に隠れながら、手をつないで彼が選ぶのを見、「これがいい?」「この色は?」「こっちはどうかな?」と相談してくるのに、「知らない。ヴィクトルが使いたいやつでいい」と口早に答える気恥ずかしい時間が、勇利は嫌いではない。  さて勇利は、「ゴムがあったかいの? なんで?」という疑問の答えは最近ついに知ったが、「香りつきモイストタイプ」については、いまだ謎のままである。
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