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triflingdoodle · 20 days
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在日をやってると100
 最近、文章やスピーチをお願いされることがチラホラとあって、内心、「僕なんかに依頼して大丈夫なのか」と戸惑いながらもせっかくだしと引き受けては後になって後悔するというのを繰り返している。
 自分で読み返すと、語彙力も無いしなんて程度の低い感想文なんだろうと思うし、後になってあれも書けなかったこれも書けなかったと気が付いて反省することが多い。
 このブログでもシェアしたけれど、関東大震災の朝鮮人・中国人虐殺から99年目の2022年の9月1日にはGQ JAPANに「関東大震災朝鮮人虐殺事件から99年目──僕たちは差別を止める側、弱者を助ける側に回れるのか?(https://www.gqjapan.jp/culture/article/20220901-great-kanto-earthquake-massacre)」というコラムを書かせてもらった。2年経ったいまは在日クルド人をターゲットにしたヘイトスピーチがかなり危険ところまできていて社会はなかなか良い方向に進まないなと暗い気持ちになってしまう。  過去も現在も未来も、あの問題もこの問題も繋がっているというのがわかるようなのが書きたいなと思いながらなんとか書き上げて掲載してもらえたけれど、読み返すと、あのこともこのことも書けなかったし書くべきだったなと密かに反省していた。特に虐殺された中国人や社会主義者のこと。虐殺された社会主義者のことは僕の記事では完全に抜け落ちてしまっているし...。まとめて語られがちだけれど、数の多い朝鮮人の話がメインで語られる傾向があるけれど、そうなることでみえなくなっていることがある。虐殺された中国人ついてはぜひ @fukuyoken3daime さんのツイートの連投を読んでみてほしい。 (https://x.com/fukuyoken3daime/status/1830043385396342866)
 今年はいまのところ、2つのコラムを書かせてもらっている。一つは8月6日に発売された、広島から平和を希求するマガジン「TO FUTURE ZINE 2024 -ISSUE 18-」で、2023年と2024年の入管法改悪についての文章を書かせてもらった。もう一つは、先日開催された「スナック社会科横浜映画祭#2 特集:飯山由貴」の配布資料に掲載される文章。
   TO FUTURE ZINEの方はネット(https://online.recordshop-misery.com/items/88231992)で購入可能です。「スナック社会科横浜映画祭#2 特集:飯山由貴」の方ですが、公開して良いとのことなのでせっかくなので掲載しておこうと思います。作品をすでに観た人もまだ観たことない人も少しだけ違う視点をで作品を観れる文章が書けたらいいなと思いながら書いたけれど、読み返すとやっぱり上手く書けていないなと思ってしまって、あちこち手直ししたい気持ちになってしまう。でもいまそれをする時間の余裕もないのでそのままにしておきます。 
無題(スナック社会科横浜映画祭#2 特集: 飯山由貴映画祭 によせて) 
初めて飯山由貴さんの作品を観たのは、2022年10月15日、16日と京都の龍谷大学響都ホールでの「オールドロングステイ」の上映会に実行委員会の一人として参加させてもらった時だった。 
ヘイトスピーチデモのカウンター行動で知り合った友人が、 僕が入管収容の問題に関心を持ち 大阪入管に収容されている人たちや一時的に収容から解放された仮放免の状態で生活してい る人たちの支援をしていることを知っていて映画に興味があるのではと声をかけてくれた。 
入管の被収容者や仮放免者を支援するようになって、 難民、 犯罪等で在留資格を取り消され た人、 技能実習先から逃げ出すなどさまざまな理由で非正規滞在となりそれが発覚し収容され た人、ほんとうにいろいろな人と出会ってきた。 いつも支援をしながら 「特別永住」という在留 資格で生活する自分の状況と彼ら彼女らの状況を照らし合わせて考えてしまう。 
支援を始めてすぐの頃、「永住者」 が犯罪で在留資格を取り消され退去を迫られている現実に 衝撃を受けた。「日本にしか生活基盤がない人に帰れってどういうこと?」 という僕の素朴な疑 問は世間一般の日本人にはなかなか理解してもらえない。 
難民が入管に強制的に収容されているというのも衝撃だった。 「特別永住」の在日朝鮮人の 中には戦後、政治的な迫害(済州島四・三事件など)から逃れるために「密航」してきた人たちも いる。 元技能実習生の面会では彼らが戦前戦後の朝鮮人労働者の状況と重なった。 
特別永住の資格ができる狭間で在留資格を得られなかった韓国人の老夫婦の帰国の支援を したことがある。 最初は「密航」で日本に来日し、親戚を頼って生活していたが、あるとき摘発さ れて大村収容所に収容され強制送還となってしまった。 「特別永住」の資格ができたあとに観光 で来日し、在留期限が過ぎた後もオーバーステイのまま滞在しずっと大阪でひっそりと生きてた という。 僕と出会った時の夫婦の年齢は80歳前後。 病気で倒れるまで現場作業でバリバリ働 いていたけれど、 非正規滞在のため健康保険も非加入で公的支援も何も受けられず、どうにも ならないと帰国することになってしまった。 1度目の強制送還がなければもしかしたら 「特別永 住」を取得する道もあったんじゃないだろうか。 僕よりも長く (最初の来日から数えると50年 以上)、ただ働いて生きてきただけなのになぜ医療も生活保護も受けられず日本から追い出さ れないといけないのかいまだに理解ができずにいる。 
日本人と外国人の間に引かれた線、 特別永住の外国人とそれ以外の外国人の間に引かれた 線、 永住の外国人とそれ以外の外国人の間に引かれた線、 あちこちに引かれた見えない線がほ んとうに正しいのか社会に問いかけるにはどうしたらいいのか。 そういうことを日々考えてい たときにたまたま観ることになった「オールドロングステイ」は大きなヒントをくれたように感じている。  外国人登録令による日本国籍喪失とその後の参政権や社会保障からの排除、 民族教育を否定 する通達、日本国憲法の制定過程など植民地主義を根にするさまざまな問題、ハンセン病療養 施設における朝鮮人差別と格差是正運動、 帰化制度における差別、 在日朝鮮人の中の障害者差別など、 在日であり障害者であることで受ける差別の背景に広く深く迫ることで引かれた線を次々に可視化しているのが良かったし、普段はなかなか可視化されない声なき声を描くのに、安易にわかりやすくして伝えない、受け手の本気度が試されるような表現の仕方もおもしろいと思った。  その後に観たのは、戦前に都内の私立精神病院に入院していた2人の朝鮮人患者の診療日 誌のことばをモチーフに、ラッパー・詩人の FUNI の声と身体で映像化した作品「In-Mates」。 この作品は東京都の指定管理施設「東京都人権プラザ」で開催された企画展「飯山由貴 あな たの本当の家を探しにいく」 (2022年8月30日~11月30日) において上映が禁止とさ れて大きな話題となった。 (詳細は記事を参照→東京都人権部による飯山由貴 《In-Mates》上 映不許可事件は、何を問うのか https://t.co/7fk561FzCn )
上映禁止について語られることが多いこの作品。 自分自身が在日朝鮮人であり、さらには父 親がアルコール依存症で精神科病棟に強制入院となってその中で死亡していること、そして、今 現在、入管の収容施設に強制収容されている人たちや、仮放免という身分で一時的には外に出 られたものの、 就労も、 健康保険加入も、移動の自由も制限され、ほとんど何もできない生活を 強いられている人たちの支援をしていることもあって、 強く心を打つ作品となった。 患者 A、患 者Bの生きてきた環境やそれによって形成されたアイデンティティを想像すると言葉にならな い感情が湧いてきた。 
入管の被収容者や仮放免者の支援をするようになって”自由”に対する感覚が随分とかわっ た。 アクリル板の向こう側、 握手すらできないところで何ヶ月も何年も小さな部屋に閉じ込めら れている人との会話。 仮放免された瞬間の表情としばらくして就労もできず結局は自由がない 生活に苦しんでいる表情。 
「In-Mates」のエンディング、ニーナ・シモンの「I Wish I Knew How It Would Feel To Be Free」は支援で出会った人たちの表情を思い出してしまいとても重かった。 
無いことにされてしまっている声、 叫びに気付き可視化していく飯山由貴さんの作品。 この先も追いかけたい。
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kennak · 5 months
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彼の家族は、父親が亡くなったときに閉店した元オートバイ店の隣の地下の家に住んでいました。 私の家から彼の家までは、鹿がたくさんいる美しい森の中を歩いて1時間かかりました。 貨物列車が目の前をゆっくりと通過していくのを、私は頻繁に家の視界に入り込み、列車が通過するまで木の切り株に座っていました。 以前のオートバイ店には、石鹸で汚れた窓の前にドクターペッパーの機械があり、私は鍵を持っていて、彼の母親がたくさんの仕事の1つをしている間、私たちは外泊のときにこっそり店を探索するために忍び込みました。 彼女はチェーンスモーカーでめったに話さず、ビデオゲームをレンタルするために私たちを地元のビデオ店まで車で連れて行ってくれたとき、よく一本のタバコに燃えているチェリーで火をつけていました。 マークの兄もその家に住んでいたが、部屋から出ることはほとんどなかった。 ほとんどの場合、タバコの煙が充満した家の中でジャーマン・シェパードがゼーゼーと咳��込む中、私たち二人が監視されずに飛び跳ねたり、古い映画を観たり、ソーダを飲みすぎたりしていました。 このような家族は、福音派キリスト教徒のターゲットになることがよくあり、福音派キリスト教徒は、仕事中に子供たちを楽しませることができる青少年グループのオファーで家族を誘い込もうとすることがよくありました。 ある時点で、青年牧師の一人がマークの母親に、私たち二人を彼の教会に行かせるよう説得しました。 ブロックバスターの代わりに、私たちはトウモロコシ畑に囲まれた暗い田舎道にある、十字と頭上にブンブンと光る照明がついた、匿名の鉄骨倉庫の前で降ろされました。 父親と母親がバイカー文化に深く関わっていたため、マークは宗教にあまり触れていませんでした。 私はすでにこの種の場所を以前に見たことがあり、次に何が起こるかを恐れていました。 私たちが中に入ると、「マイケル牧師」を紹介されました。彼はサンタクロースが極端なダイエットをして連続殺人犯の眼鏡を買ったかのように見えました。 マークは飛び上がって質問を始めたが、私は距離を置いた。 その前年、私は古い駅の修復にボランティア活動をしていた。それには、駅をホームレスの避難所に変えようとする原理主義キリスト教会の「監督」のもと、大勢の若者が参加した。 私たちは鉱山に隣接するこの小さな町の中学校の床で寝て、日中はペンキを剥がしたり床を研磨したりして過ごし、夜は性の悪さやアメリカがどのように「文化戦争」に陥っているかについて講義を受けました。 今にして思えば、児童労働として鉛塗料を除去する際にもっと保護具が必要だったような気がしますが、それは神次第だったのでしょう。 起立させられ、結婚するまではセックスしないと約束させられた長いセッションの後、割り当てられた教室に戻る途中で私が冗談を言ったところ、すぐにグループの先輩の男の子に詰め寄られました。 。 彼は軍隊風の髪型をしていて、星が見えるほど私をロッカーに叩きつけました。 私は毎週日曜日にカトリック学校とミサに通い、水曜の夜はカトリック教徒のための日曜学校のようなCCD(キリスト教教義連盟)に通って育ちました。 これらすべては、私がかなり確立された「クリスチャン」資格を持っていることを意味していました。 この少年は、私が悪影響を及ぼしている偽クリスチャンだと思っていること、鍵のかかった教室で毎晩彼や彼の友達と二人きりになるから気をつけるべきだと言いました。 この経験により、私はこれら福音派カルトに対して極度の警戒心を抱くようになり、教室の床で寝袋に静かに横になり、明らかに忘れ去られた回し車で走るハムスターの音を聞いていた。 この世界に詳しくない方に、少し背景を説明させてください。 私のカトリック教育は、聖なる人物との全く異なる関係を示しました。 神が直接語った人はほとんどなく、ほとんどが聖人でした。 自分は神との幻視や直接会話に値するような人間であると信じる罠に陥ってはいけない、という多くの警告を受けて育ちました。 これは神の介入というよりは精神疾患である可能性が高いと、やんわりと示唆されました。 彼はあなたの心に入り込み、あなたの行動を変え、あなたに平安を与えますが、あなたはチャットが正当化されるような稀な個人の階層に属していません。 したがって、私にとって、 神と直接会話 できると主張する福音派は異端であり、ランダムな「牧師」が自分たちが聖人であると主張するのと同じで、ひどい冒涜でした。 会衆が列を作り始め、その後に起こったのは、私の人生の中で最も非現実的な2時間の1つでした。 私の知り合い、図書館で働く女性、地元の郵便局員などが、自分たちの健康問題をサタンのせいにして叫び、手を振り始めた。 それからある時点で、怖いサンタクロースは震え始め、発作を起こしているように見えました。 彼は大声でせせらぎをし始め、部屋中を動き回っていました。そして、 このせせらぎに何か意味があるふりをして 、自分たちでそれをする人がどんどん増えているのを私は見つめました。 明るい光と大音量の音楽が、これらの普通の人々を狂気に陥れたようでした。 携帯電話のないこの時代、この状況を放置するために私にできることはあまりありませんでした。 私はマークがこれらの人々が神の声を伝えていると確信するのを待って見ていました。 「すごいですね、本当に何かを感じました。部屋にはエネルギーがありました!」 私がドアから目を離さないと、彼は私にささやきました。 青年牧師の一人が、私の中に霊が動いているのを感じましたか、参加したいという衝動を抑えるべきではないと尋ねました。私は大丈夫だとつぶやき、トイレに行かなければならないと言い、それから個室で待つまで待ちました。サービスはほぼ 2 時間後に終了しました。 他の子供たちと話していて、彼らがこれを信じているという現実が頭から離れませんでした。 「それは神の言葉であり、聖霊が私たちを通して語っておられることを理解できるのは、選ばれた少数の人だけです。」 その言葉は非常に強力で、牧師が教会の選ばれた会員に預言を明らかにし、彼らの経済的投資を支援することができました。 これは致命的な重大な仕事であり、これらの普通の人々は完全に信じており、時々 ある種の 言葉のように聞こえるこのナンセンスなおしゃべりは、文字通り神が彼らを通して話していると確信していました。 私は、普通の理性的な人々は決してそのようなナンセンスなことを信じないだろうと確信して帰りました。 これらの人々はだまされやすいので、一度この死んだ町から出てしまえば、このレベルの妄想にさらされる必要は決してなくなるでしょう。 それで、数年後、私がサンフランシスコの巨大な会議場に座って、Google の CEO が聴衆に AI がどのような未来になるかを説明しているときの私の驚きを想像してみてください。 ランダムな単語をつなぎ合わせたこのシステムは、群衆の中の私たち全員を置き換え、地球温暖化を解決し、あらゆる仕事を変えることになるでしょう。 これには、健康保険を失うことに興奮しているようだったグループから万雷の拍手が送られた。 これらすべては、テクノ音楽と明るい照明、そしてより多額の予算を投じた教会の礼拝によって始まりました。 私が行った会議はどこも、スタッフをこの神聖なテキスト ジェネレーターに置き換える可能性について有頂天になっている人々でいっぱいでした。 会議のために元の Google キャンパスまで私と Uber をシェアしたフランスのベンチャー キャピタリストは、興奮で息が上がりそうになっていました。 「間もなく、スタートアップを立ち上げるのにプログラマーさえ必要なくなるかもしれません。ただ、創業者とそのアイデアが、夢見る限り早く市場に投入されるだけです。」 彼をLLMに置き換えることができる可能性が高いとコメントしたくなりましたが、それは意地悪だと感じました。 まだ人間が運転しているテスラに私たちが座っているとき、「それは世界を変えるだろう」と彼はつぶやいた。 私の人生の中で、信心深い人たちから、私のコミュニティ、つまり無宗教のテクノロジー愛好家がテクノロジーを宗教の代わりに利用しているのではないかとよく言われてきました。 私たちは神や聖人という空想的な概念を拒否し、それを未来の妄想的な考えに置き換えるだけです。 自動運転車は、その問題が実際には難しすぎることが明らかになり、私たちが静かにそれについて話すのをやめるまでは避けられませんでした。 火星に植民地を設立するということは、たとえそれが私たちの能力の10倍を超えているとしても、あたかも「すぐに」であるかのように議論されることがよくあります。私たちは紙幣をデジタル通貨に置き換えようと試み、そして管理しました地球の破壊を加速する世界的なネズミ講を創設するために。 通常、私はこのロジックを拒否します。 テクノロジーは、多くの欠点がある一方で、実際に利益をもたらす多くのものを生み出しますが、これは宗教が主張できることではありません。 しかし、AIの力に対するこの盲目的な信仰を数か月聞いた後、私が今聞いていることと、礼拝後に信者が私に言ったことを比較すると、不気味なほど似ていました。 これは単なる集団妄想であり、新しいアイデアがないにもかかわらず、依然として 1 兆ドルの価値があると信じ込ませようとしているテクノロジー企業による必死の試みなのでしょうか? ここに何かありますか?
AIは異言を話す
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benediktine · 10 months
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【チャリを交通の主役に 魅力発信、片山右京の挑戦 疾走チャリノミクス(1)】 - 日本経済新聞 : https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFK132ME0T10C21A2000000/ : https://archive.is/XQzTa 2021年3月21日 2:00 (2021年3月22日 2:00更新)
環境に優しく、健康によく、密も避けられる夢の乗り物――。脱炭素や新型コロナウイルス禍で改めて脚光を浴びる自転車。チャリンコと侮るなかれ。IT(情報技術)などの最新テクノロジーを取り込み、自転車経済圏は国内外で広がる。競技から開発、安全対策までそれぞれのフィールドを全速力で走るチャリダー(自転車乗り)を追う。
■《自転車競技の中心にカミカゼ右京》 東京五輪の競技運営責任者に、新設するプロリーグのチェアマン――。いま日本の自転車競技界の中心には、元F1レーサーの片山右京(57)がいる。かつて怖い物知らずの走りから「カミカゼ・ウキョウ」と呼ばれた男だ。
 {{ 図版 1 : 東京五輪の自転車競技スポーツマネジャーも務める片山 }}
「あなたの街へ興奮と感動を届けます」。こんなうたい文句で3月27日にシーズン1年目の幕を開ける自転車ロードレースのプロリーグ、ジャパンサイクルリーグ。新設に汗をかいた一人が片山だ。チェアマンとして組織体制作りやスポンサーの獲得に奔走。メインスポンサーには不動産大手の三菱地所が就いた。「多くの人たちが自転車に関心を持ち、スポーツとして応援しようとしてくれている」
人生最初の挑戦は小学校5年生の時、三重県から神奈川県の自宅まで走破した自転車旅行だったという。いったん遠ざかったが、F1レーサー時代、体力トレーニングで再び自転車に乗るようになった。引退後はその魅力に取りつかれ、数々の市民ロードレースに参加。2012年には自らロードレースチームを立ち上げた。「40代半ばから本格的に始めても、毎年記録が上がったり、200キロメートル以上走れたりする。頑張った分だけ確実に力がつき、生きてるという感覚をもらえる」
■《登山で環境破壊に危機感》
自転車に託すのは競技への思い入れだけではない。F1引退後、自転車とともに登山にのめり込み、キリマンジャロなど世界6大陸の最高峰登頂に成功した。だが、そこで見たのは消えゆく氷河やプラスチックゴミなどの環境破壊だった。
人力でペダルをこいで進む自転車は二酸化炭素(CO2)を一切出さない。脱炭素への意識が世界的に高まるなか、究極のクリーンモビリティとして注目され始めた。片山は「今後30年で公共交通の構造が変わり、自転車はその中心の一つになる。皆が自転車に乗って動き回るようになれば、自動車が入りにくい裏通りの価値も変わる」と訴える。
■《日本の自転車利用、拡大の余地》
特定の移動手段の利用頻度から算出した「交通分担率」をみると、日本の自転車は13%。最も高いのは自動車の48%だが、国土交通省の調査によると、自動車の移動距離は5キロメートル未満がうち43%を占める。同省は「短距離の移動で今後、自動車から自転車へ交通手段がシフトする可能性がある」(道路局)とみている。
 {{ 図版 2 : 日本の交通分担率の内訳 主要国の交通における自転車分担率 }}
■《車椅子に乗る15歳の社長》
「自転車産業はITとの融合でもっともっと成長する」。シェアサイクル事業、チャリチャリを展開するneuet(ニュート、東京・港)の社長、家本賢太郎(39)は、真っ赤な自転車が並ぶ本社内のガレージで力を込める。家本は15歳でネット関連のコンサルティング企業、クララオンライン(同)を立ち上げた異色の経歴を持つ。
 {{ 図版 3 : クララオンラインとニュート社長を兼務する家本(東京・港) }}
脳腫瘍の手術の後遺症で14歳から18歳まで車椅子生活を送った。電車など公共交通機関での移動に大変な不便を感じ、「移動に選択肢があることは幸せと感じるようになった」。特に羨望のまなざしで見たのは、自らの力だけで自由に移動できる自転車だ。
車椅子生活を終えた後、自転車は家本の趣味になる。そしてITを武器にアジアへ事業を拡大した際、中国で目の当たりにしたのはシェアサイクル事業の勃興だ。鍵となっていたのが、あらゆるモノがネットにつながるIoTだ。ITに精通した家本は「これなら自分にもできる」と思い立つ。
■《ITからシェア自転車に》
17年秋には福岡市でシェアサイクル事業を展開しようとしていたメルカリから「一緒にやりませんか」と声がかかり、IoT関連のサポートなど裏方仕事に携わった。そして19年夏、「ここから先は僕にリスクを取らせてほしい」と事業譲渡を持ちかけ、チャリチャリとして再スタート。今は名古屋、東京と事業を広げ、専用駐輪場(ポート)は430カ所、保有台数は2000台に達した。
 {{ 図版 4 : シェアサイクル「チャリチャリ」の専用駐輪場は430カ所に達した }}
チャリチャリはITの塊だ。利用者はまずスマートフォンにアプリをダウンロードし、付近のポートにある自転車を探す。見つけたらサドルの下にあるQRコードをアプリで読み取り、解錠。利用後は近くのポートに駐輪し、施錠する。料金は1分4円で、アプリに登録したクレジットカードに課金される。24時間365日利用できる。
全地球測位システム(GPS)が搭載されているため、万が一ポート以外に放置されても、すぐに見つけ出せる。買い物や通勤などの短距離移動はシェアサイクル、サイクリングなどの遠出は自分の自転車と住み分けが進めば、「日本が長年抱える放置自転車の解決につながる」。
日本のシェアサイクル事業は地方自治体が関わっていることが多いが、チャリチャリは行政から補助金を一切貰っていない。自立には利用率の向上が必須で、昼間人口の多さや人口密度の高さに加え、公共交通機関の乗り換えが不便な場所などを狙ってポートの候補地を探す。「シェアサイクルが日本でちゃんと事業として成り立つことをみんなに見せたい」
■《環境派市長「パリをつくり替える」》
チャリノミクスは国境を越える。「環境保護を進めるため、今すぐパリをつくり変えなければいけない」。市長のアンヌ・イダルゴ(61)は自転車でパリ中心部を疾走する。優先レーンを作るなどして、全ての道で24年までに危険なく自転車を利用できるようにする目標を掲げる。
 {{ 図版 5 : イダルゴ市長は環境保護のため、市民に自転車の利用を呼びかけている(パリ)=ロイター }}
14年に就任したイダルゴは環境派として、セーヌ川沿岸の一部を自動車進入禁止にするなどの政策を取ってきた。コロナ禍で人との接触を避ける動きが強まったのをきっかけに自転車の利用を一層促す。20年には自転車用レーンを60キロメートル分延ばすと表明した。
かつて自動車で混雑していたルーヴル美術館前の有名なリボリ通りはいまや、自転車で混み合うほどの様変わりだ。「大気汚染や騒音が著しく減っている」。イダルゴは胸を張る。
フランス政府も自転車の利用を後押しする。コロナ発生後、自転車の修理費を50ユーロ(約6500円)まで補助すると発表した。一時は数カ月待たないと予約が入らないほど修理業者がにぎわった。市場は爆発的に拡大している。仏テレビLCIによると、20年の仏自転車販売台数は330万台と19年比3割近く増えた。
■《自転車経済、年7%で成長》
今後も世界的に自転車市場の拡大は続きそうだ。英調査会社テクナビオによると、20年の世界の自転車市場は約540億ドル(約5兆9000億円)で、25年まで年平均7%で成長するという。
 {{ 図版 6 : スポーツ自転車が大きく伸びている(1店舗あたりの国内販売台数の前年比) }}
日本国内の20年の自転車市場規模(国内生産と輸入の合計)は約1300億円。最近では特にスポーツ自転車の伸びが大きい。野村証券チーフエコノミストの美和卓(53)は「スポーツ車は単価が高いだけでなく、ヘルメットやライトなどを追加購入しないと走れない。アパレルや付属品など周辺市場の広がりに期待できる」と話す。自身も約15万円でロードバイクを購入し、本体以上のお金をかけてギアやホイールを好みの部品に取り替えた。
 {{ 図版 7 : ロードバイクで通勤をする野村証券チーフエコノミストの美和(東京・千代田) }}
前日のニューヨーク市況のチェックから始まる美和の朝は早い。西東京市の自宅から東京・大手町の職場まではロードバイクで1時間半。夜の喧噪の名残ある新宿の繁華街を抜け、大手町が近づくころには皇居のお堀に反射する荘厳な朝日が見えてくる。6時過ぎに会社近くの駐輪場に愛車を止め、サイクルジャージからジャケットに着替えると、今日も美和の一日が始まる。
=敬称略、つづく
(生田弦己、松本萌、福井環、パリ=白石透冴)
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namansharma0950 · 17 days
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不飽和ポリエステル樹脂(Unsaturated Polyester Resin)市場概要:現在の価格、トレンド分析、将来の予測
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不飽和ポリエステル樹脂 (Unsaturated Polyester Resin) は、その優れた機械的、熱的、化学的特性により、建設、自動車、海洋、電子機器などの業界で広く使用されている多用途のポリマーです。不飽和ポリエステル樹脂の価格は、原材料のコスト、市場の需要、サプライ チェーンの混乱、経済状況などのさまざまな要因の組み合わせによって左右されます。UPR は通常、不飽和酸または無水物とグリコールの 2 つの主要成分から製造されます。これらの原材料の価格が変動すると、UPR の全体的なコストに直接影響します。
不飽和ポリエステル樹脂の製造における主要な原材料の 1 つは、石油ベースの製品であるスチレン モノマーです。スチレン モノマーの価格は原油価格の変動に非常に敏感であるため、世界の石油市場の変動は UPR の価格に直接影響を与える可能性があります。地政学的緊張、生産の混乱、または世界の石油の需給の変化により、スチレンのコストが大幅に変動し、それが UPR の価格に影響を与える可能性があります。同様に、無水マレイン酸や無水フタル酸などの他の原料も UPR 製造に不可欠であり、これらの化学物質の価格変動も UPR コストを決定する上で重要な役割を果たします。
主要なエンドユーザー産業からの不飽和ポリエステル樹脂の需要も価格変動を引き起こします。建設部門では、UPR は屋根材、配管、複合材などの用途に使用されており、この部門のパフォーマンスは UPR 需要の重要な指標です。インフラ開発や不動産拡張などの建設活動が活発な時期には、通常 UPR の需要が増加し、価格の上昇圧力につながります。逆に、景気後退や建設活動の減少は UPR の需要を低下させ、価格を安定させるか、または低下させる可能性があります。
自動車業界では、不飽和ポリエステル樹脂は自動車部品用の軽量でありながら強度の高い複合材料の製造に使用されています。自動車部門は燃費と軽量材料に重点を置いているため、UPR の需要は安定しています。しかし、世界的な経済減速やサプライチェーンの混乱(COVID-19パンデミック中に見られるような)などの自動車生産の低迷は、UPRの需要と価格に悪影響を及ぼす可能性があります。
UPRの価格に影響を与えるもう1つの重要な産業は、海洋製造です。UPRは、耐水性と耐薬品性があるため、ボート製造やその他の海洋用途で広く使用されています。レクリエーションボートや産業用船舶の需要増加など、この分野の動向はUPRの価格を押し上げる可能性がありますが、海洋生産の減速は逆の効果をもたらす可能性があります。
環境規制と持続可能性への取り組みも、不飽和ポリエステル樹脂の価格に影響を与えています。業界がより環境に優しい慣行に移行するにつれて、UPRメーカーは、スチレン排出量が少ない樹脂やリサイクル材料から作られた樹脂など、環境に優しい代替品の開発にますます重点を置いています。これらの持続可能なオプションには、多くの場合、より高い生産コストが伴い、それがより高い価格という形で消費者に転嫁される可能性があります。さらに、揮発性有機化合物(VOC)や生産プロセスからの排出物を削減することを目的とした規制は、UPRメーカーの運用コストを増加させ、市場価格の上昇につながる可能性があります。
リアルタイムで不飽和ポリエステル樹脂 (Unsaturated Polyester Resin)価格: https://www.analystjapan.com/Pricing-data/unsaturated-polyester-resin-3453
輸送費、物流問題、原材料の入手可能性などのサプライ チェーンの動向も UPR の価格設定に影響します。自然災害、政情不安、産業事故などにより原材料の供給が途絶えると、市場で UPR が不足し、価格が上昇する可能性があります。さらに、特に国際市場では、輸送費や輸送費が増加すると、UPR を顧客に届ける総コストが増加し、価格変動につながる可能性があります。
UPR メーカー間の世界的競争も価格動向に影響します。競争の激しい市場では、メーカーは市場シェアを獲得するために価格を下げることがありますが、需要の増加や供給の制約がある時期には、入手が限られているため価格が上昇する可能性があります。通貨の変動や国際貿易政策も価格変動に寄与し、特に輸入原材料に依存している企業や製品をさまざまな地域に輸出している企業にとってはその傾向が顕著です。
結論として、不飽和ポリエステル樹脂の価格は、原材料費、主要産業からの需要、環境規制、サプライ チェーン要因、および世界市場状況の複雑な相互作用によって形成されます。建設、自動車、海洋などの産業が進化を続ける中、UPR の需要は引き続き堅調に推移すると予想され、価格はこれらの動的な要因に応じて変動します。UPR の価格設定の背後にある主要な要因を理解することは、企業が調達および生産戦略に関して情報に基づいた意思決定を行うのに役立ちます。
ANALYST JAPAN
Call +1 (332) 258- 6602 1-2-3 Manpukuji, Asao-ku, Kawasaki 215-0004 Japan
Website: https://www.analystjapan.com
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heyatoengeki · 7 months
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部屋と演劇 対談② 宮崎玲奈×中村大地
部屋と演劇の中村、野村、福井が話したい同世代かつなんとなく距離の近そうな作り手三人にお声がけをして実現した対談企画です。当初は六人全員でワッと実施する予定でしたが、スケジュール的に無理があったため一対一に分けて実施しました。8月にSTスポットでおこなった『部屋と演劇』vol.1を見ていただき、後日オンライン上で話したものを書き起こして編集しています。今回は宮崎玲奈さんと中村が話しました。
中村 今回なんですが、『部屋と演劇』vol.1もそうですし、個人的には円盤に乗る場の活動もそうですが、ただ劇場で公演する以外のことも含め、“作品の手前”みたいなことを共有したいという欲望を持つ作り手が増えているのかなということが個人的にはあって、宮崎さんも「発酵シアター」をやられてますし、そういう話をしたいなという経緯で対談するかたちになりました。
宮崎 途中発表みたいなことでいうと、わたしはワークインプログレスという発表形態が好きじゃないなと思ってて、でも中村さんは「テーブルマナー(仮)の初稿を読む会」みたいなこともしていて、そのあたりの話ができたらいいのかなって思ってたんですけど、なんで積極的にやろうと思えてるんですか?
中村 根本のモチベーションとしては、円盤に乗る場の活動報告会で書きかけの小説を発表してみたり、戯曲を書いてみたりした経験があって、小さな規模でも外に発表することで、サボらずに書くことができるっていうのが大きいかな。それを自劇団でやってみようというのが「戯曲を読む会」。でも、そこに観客がどう参加するかみたいなことは正直まだあんまり考えられてないところはある。『部屋と演劇』Vol.1もそうだったけど。
宮崎 これが誰のために行われているのか?というのが私の引っかかるポイントで、作家ないしカンパニーや作品のためでしかないのだとしたら、観客が必要なのか?それとも見てくれる友達とかを呼べばそれが叶ってしまうのか、そのあたりが気になっているところです。
中村 そこにいる観客のことについてうまく言語化はできていないんだけど……でも、演劇の上演以外のプロセスに面白いことはたくさん起きていて、そのことを上手にシェアする方法はあるんじゃないかとは思っていて、シェアしたいとも思う。でもその形態としてワークインプログレスが最適解なのかは正直わからない。あるいは作品って消費者として“観る”みたいな態度をとる以外にいろんな触れ方があるんじゃないかなみたいな感覚もあるかな。それとただ戯曲を読むということはマッチしてるのかも、と。
宮崎 作る側として消費されたくないというのもありますよね。
中村 東京はやっぱり圧倒的にコンテンツの数が多いから。仙台にいたときとだいぶ感覚が違うんだよね……。でももしかしたらそれは仙台で想定していた観客の知り合い度がかなり高いということだけかもしれないけど。東京では、自分が観る側にいてもだけど、コンテンツを消費する見方をしてるなとは感じている。
宮崎 演劇の暗黙のお約束とかあるじゃないですか、映画館でもそうだけど、最低限邪魔にならない感じで見るみたいなことをどんどん共有することが難しくなってるのかなっていうことを、感じていて。その暗黙の約束を共有するにはどうすればいいんだみたいなことを、最近考えたりしてますね。
中村 難しくなってるっていうのはどういうこと?
宮崎 観劇の最中に自分が何かをすることが、劇に作用したりとか、他の観客に作用したりみたいなことが、これまでは小劇場で集まって、ギュッと作品を見るというなかで暗黙のルールになっていたけれど、そのルールみたいなものがどんどんカスタマー優先みたいになりつつあるのかなって。小劇場はそんな時代にどのくらい会社的・企業的に振る舞うべきなのかとか。でも、そもそも周縁化されたカルチャーだったはずだったな、とか。
中村 自分の現場で、そこまでカスタマー優先みたいな場面を僕は感じたことがないけど……。「お客様は神様です」的なことだよね?
宮崎 そうそう、
中村 テレビ見てるみたいな感じで、
宮崎 これくらいの金額払ってるんだしって。大きい声で怒鳴って良いのかって、
中村 客席から?
宮崎 受付のちょっとしたミスとかに大きい声で言ったり、
中村 えっ、そんなことあるの?
宮崎 わたしは結構去年色々あったから、
中村 そうなんだ、
宮崎 そういうルールをいちいち観劇のときに言うと、「してください」がいっぱい、みたいになってしまうけど、戯曲を読む会にしろなんにしろ、何かの集まりで観方をひらいていくというか。ルールがあるんだよという形で対応することはできるなと思っていて、そういう意味で作品を上演するというかたちじゃない可能性を探りたいという気持ちは結構高まっているかもしれない。
中村 あの、見れてないけど野外でやったやつもそうですか?
宮崎 あ、野外のやつは、演劇しんどすぎて結構セルフケア的にやりました。
中村 へえー。どういうあれなんですか?
宮崎 去年の11月の上演で色々ヘイト的なものが起こって、言い返したくても言い返せないみたいな、こっちは言われるだけなのかっていうもやもやがあったときに、それを発散する方法が欲しい、このままじゃなんか来年後編なんかできない!みたいになっちゃって。そのときに友達と「なんかこういうことがあってさあ」って自分自身のことをちょっと演劇にしてみようかという流れでやりました。すごく鬱々とした話だったから、実際に野外でやって、後ろの川でサップボードしてるみたいな風景が広がっていたのが良かったかな。自分たちとお客さん以外はすごい穏やかな景色が広がってる中でやるというのが。
中村 やっぱそれには発表するっていうチャンネルが必要だったってこと?
宮崎 うん。
中村 それで言うと思い出したのは、2020年度に「再建設ツアー」やって、その後『パラダイス』やって、コロナ真っ盛りのタイミングで両方ともお客さんが来ようもないみたいな状況だったから、なんかやってる意味あんのかみたいな気持ちのなか躁状態みたいな感じで駆け抜けて、そのあとかなり落ちて。だから2021年度は全然公演やらなかった。
宮崎 え、それでも逆に休めて健康でしたか?
中村 あ、ちょうどでも乗る場がはじまって、劇団員が目的なく稽古場に集まるみたいなことが起こりだして、そこでテアトロコントに呼ばれて。お金になるわけじゃないんだけど、でも、週1,2回の稽古をやりながら、つくるってそもそも楽しかったよな、がっちり上演っていうサイズで綿密に色々たててつくるのはもちろんやりたいのはあるけれど、短いけどこれおもろいよね、みたいなことで自分たちをケアした感がすごいあった。
宮崎 それすごい大事だなと思ってて。11月にやったら絶対疲れることはわかってるから、12月のクリスマスにみんなで楽しいだけの公演しようって言ってて、ほんとうにその週1,2とかで集まって、ぱっと作る、みたいなことで。それないと結構忘れるものが多いなって思った。
中村 めっちゃそうね。
宮崎 それめっちゃhonninman救世主じゃないですか。
中村 そう、honninman、ていうかテアトロコントの小西さんが救世主かもだけど。
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『ムニのクリスマスホリデー!』(2023) 撮影:黒澤多生
宮崎 最近稽古のやり方を変えて。タスクが多すぎしんどいって感じもあって。普通の稽古ってしんどくないですか? 中村 えーとね、あんまりしんどくないかなあ。 宮崎 うおぁ。 中村 うーん、俺稽古結構好きだからなあ。昔に比べると、自分たちの理想の稽古時間とか定まってきたのもあって、苦しい時はもちろんあるけど、あまりしんどくはない。どうしんどいんですか? 宮崎 事前にその日にやると決めたシーンやタスクはその日に全部決めたいんですよね。今、シーンの一回目触るみたいな稽古段階で、稽古スケジュールを組んで、その日までに覚えて、プラン立ててきてくださいねって俳優さんとやってみるみたいな感じでやってて。でもなんだろう、稽古場に行けばすごく楽しいんだけど、宿題��すごい多いなっていうのが今、しんどいのかも。 中村 それはわかるかも。でもそれが仕事だしなみたいな……僕はいつも稽古に向けて準備していったことが、「よしやってみましょう」ってやると、全部なぎ倒されていく感じ。でも準備していった方がいいなっていう。なぎ倒されるために準備していくっていう感じはある。 宮崎 なんかもっと昔は身軽に稽古場に行けてた気がするんですよね。だんだんこうしたいああしたいが増えていくことにより、行けば楽しいが、行くまで色々考えちゃうみたいな。 中村 ほんとそれ知りたいんだよね、演出の仕事どういうのしてんのっていうか、 宮崎 え、中村さんどんな準備してるんですか? 中村 とりあえず、とにかく戯曲を読みこんでいく。『父の死と夜ノ森』のときは一回全部役者の配置を決めたりはしてた。 宮崎 やっぱ、配置は決めていきますよね。 中村 あ、でも俺はじめてやった。 宮崎 あ、そうなんだ。 中村 あんまり場面が変わることがなかったからさ、屋根裏ハイツって。最初の形だけ決まればあとはナリで動いていくというか、 宮崎 え、じゃあ読むって何? 中村 本当に単純にテキストを読んで理解する……、自分の書いた台本でも、書いてるときはわかってても、あらためて現場で俳優の声で聞くと意味が通ってなかったり、わかんないところがあったりするから、英語の構文分析みたいにここをカッコにくくって、この形容詞が名詞にかかってまして、とかを書き込んでいく。まあなんとなく、多少の動きも想像していくかもしれないけれど。 でも宮崎さんの戯曲は配置を決めてかないとどうしようもないよね、同時多発のやつとかは特に。 宮崎 最初に舞台を、縦に2本線引いて、横に2本線引いて、9個のマスをつくって、マスの中で、囲碁みたいにつくってく。だからいっぱい囲碁の紙みたいのをつくって、それを稽古場で試すってやるかな。でも同時に動くやつとかはみんなで考えることが多かった。自分のタスクだけではなくて、他の人の動きを全部把握しとかなきゃいけなかったので、みんなで一緒につくる感が結構あって。それが前は稽古場楽しいなっていうマインドを担保してたのかもって思う。今は物語のほうが強くなってて、同時多発のときとは同じつくり方にはならないから、 中村 自分が1回ゼロイチを持ち込まないと始まらないというかんじ? 宮崎 そう。ただ、わたしはプラン決めてくるんだけど、それだけだと面白くないから、今回は俳優さんにも同じタスクを頼んでいて。「全体じゃなくていいから、自分の役の整理をつけて、このシーンがこういうふうに見えると良い、このシーンはどういうシーンだ」というのを、準備してきてもらうようにしている。 中村 あ、それ良さそう。ムニって出演者多いじゃん、それも稽古が大変な要素なんじゃね?って個人的には思う。演出が準備をめちゃくちゃしないと稽古場がなりたたない規模感ってあるなって。「父の死」の7人でも思ったくらいだから、人数多いともっとなるんだろうなって。 宮崎 準備って言っても、俳優11人いたらみんな違うから、たとえばこの人は辻褄合わせるとわりとその次に行きやすい人、この人は結構喋るの好きだけど、わたしとしてはもっと立ち稽古したいな、とか。え、めっちゃパターンあるじゃん!って。 中村 そうね、俳優ごとにどう話すかは変わるよね。 宮崎 それも相まって、「え、めっちゃタスク多くない?」って。 中村 たしかに、どういう稽古場をつくるかっていうのがまず一番しんどいもんね、このメンツとどうやっていくか、それがいい感じに乗るまでが一番しんどい。ちなみに僕は、本当は稽古からの帰り道がひとりでいたい(笑) 宮崎 え、ひとりで帰らないんですか? 中村 電車の方向が結果かぶるみたいなときに、繋がなきゃいけない言葉、みたいなのが一番しんどい。みんなでいる間は大丈夫なんだけど、ひとりでいさせてくださいみたいな気持ちに。 宮崎 わたし、トイレとか行って次に乗っちゃう。 中村 ああ、もはや!そうしようかな、俺も。 宮崎 あれすごい大変すよね。 中村 あれめっちゃつらいんだよな。 宮崎 普通にもう稽古のこと話したくないし、みたいな、 中村 そうそうそう!もうこれ以上うまく言えることはないみたいな状態になって……(笑)
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青年団若手自主企画vol.81 宮﨑企画『つかの間の道』(2020) 撮影:伊藤香奈
宮崎 今の稽古場は1回目のシーンが決まれば、2回目はそんなに大変じゃないのかなって気はしてます。 中村 最初が決まるまでは。そもそも前編とまったく同じメンツでしょ? 宮崎 そう。だからこの間面白かったのが、9月3日くらいに完本してはじめて読み合わせしたんですけど、キャラクターがもう出来てる!って思って。 中村 ああ、それ面白いね。 宮崎 だから、去年よりはもう土台がある状態でやっていく感じになってます。今回の発表スタイルの稽古はいいなと思ってる。 中村 発表スタイルって、みんなが各々自分のプランを考えて、 ドンでぶつけるってこと? 宮崎 それがいいなと思ってやり始めたんですよね。だったら同じだけ私も考えるし、俳優も考えるしで平等やなって。本の読み方は練習してるから、その読み方の上で決まったシーンを立ってやりましょうって、発表する。 中村 俳優同士は事前に相談するの?それともぶっつけ? 宮崎 あ、2人のシーンとかは事前に相談したりするけど、だいたいぶっつけ。ただ、台詞にニュアンスをいれないから、どっちかが自分の持ってきたプランを先行するみたいなことにはならなくて。役としてこう見えたらいい、ということだけクリアすればいいから、まだこの時こう動かなきゃいけないというのがあんまり入ってない感じ。 中村 確かに。それが一番良さそうね。演出家がウンウン唸ってる時間って無駄だからな…… 宮崎 でもだから、なんかむずいっすよね、質問されないはされないで大丈夫かなって思ったりもするんだけど、でも質問できたほうがいいとかそういうわけでもないから、質問なくてもその発表でうまくいってればそれでいいかな、みたいな。 中村 人によるよね、掘って整合性を取ったほうがいい人とかもいると思うけど。僕好きな話があって、瀧腰さんがはじめてでてくれた時に、稽古の中で「言ってることはよくわかりました、けど今はできません。そのうちできるようになります」って言って。それめちゃいいなって思ったの。その言い方が「がんばってできるようになります」って感じでもなくて、こっちがああ、じゃあ任せますって、言える感じで。なんかそういうのって言ってくれればすごい楽っていうか。だから俳優側が好きなこと言える状況はでかいなって思う。常連がいるとかね。でも今回はみんな持ち上がりだから余計強そうだね。 宮崎 そうすね。ゼロからじゃないのは大きいかもしれない。 中村 再演の集まり方なのに新作つくるっていうのがなかなかないよね。俳優同士も相談しやすそうだなって。再演ってすごく俳優との関係がフェアでいいなって思う。 宮崎 え、わたしは再演嫌なんですけど(笑)。 中村 あ、そうなんだ! 宮崎 今、『ことばにない』終わったら再演できない作品つくりたいと思ってるくらい。 中村 再演できないってことはどういうこと? 宮崎 今つくりたいのが、5年くらいかけてつくるやつで、俳優もキャラクターも5歳歳をとるっていう、それで毎年公演するやつをやりたい、 中村 『6歳のボクが、大人になるまで。』的な? 宮崎 ああ、でもそんな感じかも。でも記録されないから一回しかできないっていう。 中村 それは同じ登場人物なんだ? 宮崎 お休みとかもあるんじゃないですか? 中村 この人今年いないんだみたいな、 宮崎 そうそう。 中村 『ことばにない』もそうだけど、そういう長いレンジで書きたいってなったのはなんでなんですか? 宮崎 え、でももはや90分とか無理かもしれない。逆に。 中村 えー、すごっ、 宮崎 一回全部書ききったろう、みたいな気持ちで『ことばにない』をはじめたけど、それをしたことで何を短縮したら良いのかがあんまり。もちろん8時間でも短縮してるものはあるから、そこから探ればいいんだろうけど、まだそこまで圧縮することにあんまり興味が持ててない。 中村 だって、その結果5年になるわけでしょ? 宮崎 うん。 中村 それはきっかけがあったの?それとも結果的に長くないとできないものができたって感じ? 宮崎 『ことばにない』はそんな感じ。書きながら90分ではないなこれって。で、5年に関しては、もうちょっとライフワークみたいなやつをやりたいかもって思って、別に小さい規模でもいいから5年間やるみたいな。そのクリスマスのときにやる、楽しい時にやるみたいなのがあってもいいのかもって。
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ムニ 『ことばにない』後編(2023)  撮影:黑田菜月
中村 発酵シアターは、どういう経緯で始まってるんですか? 宮崎 元々は今年「ことばにない」は後編だけ上演やるから、前編の上映会をしようってなっていて。でも前編やったあとに、ムニこれまで作品いろいろやってきたけど、「ことばにない」から知ってくれた人もいたから、他のも一緒に見れるイベントにしようっていうのが企画の最初だったかもしんないすね。 中村 そこにいろんなひとの発表が挟まるみたいになったのは、どういう感覚なんですか? 宮崎 なんだろう、でもそれも、身軽に発表できるといいよねって思って。3月に山縣太一さんのワークショップ受けた時に発表楽しい!ってなって。テクニックや形式的なことを教えてもらいつつ、それぞれ自分の発表をつくる的なことをやって。もっと発表を身軽にできる場があってもいいよなって。ちゃんと公演にすると、場所とかお金とか色々要素があるけど、もっとイベント的に発表ってやれていいんじゃないか、自分自身がそういう場を求めていたというのもあって、つくりました。 中村 発表する人は公募? 宮崎 何人かこっちから声かけた人もいるけど、基本は募集して。 中村 どうでした?それは。 宮崎 え、めっちゃ良かったっす(笑) 中村 それは、試演会的なニュアンスとはちょっと違うんだ。 宮崎 うーん、発表会。完全に完成してなくてももちろんよくて。発表ということのハードルを下げたいとはずっと思ってて、誰でも発表していいというか。でも自分が発表するってなるとちょっと違って来ると思います。中間発表といいつつ、ちゃんと発表ってことにムニのこともなってたと思うから、企画と自分のことは別に考えているかも。 中村 そこにいる観客はどう捉えるの?そのイベントを楽しみに来た人って感じ? 宮崎 色んな人が参加してたのもあって、発酵シアター期間のなかでイベントが一番人数パンパンになって。で、イベントとセットで「ことばにない」4時間みて帰るみたいなことがあって、これをセットでやるのが結構いいのかもって思った。寄席みたいな感じかもしれない。 中村 それは確かに、乗る場のNEO表現まつりもすごいそんな感じしたな。 宮崎 それに、福岡のカンパニーのマルレーベルの加茂くんが参加してくれて。今度STで公演するんだけど、その宣伝も兼ねて東京でひとりでムニの発酵シアターをつかってくれたりとか。乗る場もいいけど、参加する人が固まらないのが良かったなって。 中村 うんうん、公募することの良さが。 宮崎 そうですね。最低限選んでもいるんですけど、結構バラエティがあったのがよかった。リハーサルもやるから、「ここ、こう見えました」的な相互批評的な感じにもなって、その過程があったのも良かったなって。 中村 公募の条件はどんな感じなんですか? 宮崎 お金はムニから払えないけど、カンパを募るのはありで、場所を貸しますって感じです。それも、もしムニからお金払ってお願いするってなると、またちょっと空気が変わってきたのかもって思うかな、 中村 たしかに、今聞いたやつのほうが健全にやれる気がした。部屋と演劇でも、そもそも多少お金くらい払ったって作品つくってたよねっていうのがあんまりネガティブな意味じゃなくある。ギャラなんかなくたって楽しんでやってた部分もあるじゃないのよっていう。それから部屋と演劇がああいう形になったのは「上演」までいかないと試せないことがたくさんあるっていうのが共通の認識としてあって。一日しか稽古してないけど、発表す���っていう気合が一つモチベーションになってるなと思う。
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『ムニの発酵シアター』内「発酵イベント」(2023)
中村 ちなみに、今回のイベント、観客の体験として「パッワッサッ」感はありましたか?
宮崎 あー、でもまず環境としては、あの、平台の上に座る感覚とか久々で良かった(笑)
中村 (笑)
宮崎 ああ、これ、「パッワッサッ」だわ~って。
中村 あんまり設えられてない。
宮崎 入ってるチラシもめちゃ薄くて、これくらい作る側も身軽でいいよなって思った。椅子をいっぱいならべるわけでもなく。
作品でいうと、一番作品してるって思ったのは福井さんかなあ。ただ、普段してることとも関わって来る気がするから、普段から形式がある人のほうが「パッワッサッ」しやすいのかなって気がした。
中村 福井くんは今回ある意味、すっごい準備してた気もするかも?
宮崎 えっ、じゃあ演出家の準備はパッワッサッじゃないんですね。
中村 どうだろ?どんくらい演出家の準備がパッワッサッなのかは、わからない。
宮崎 それ気になりました、俳優どれくらいパッワッサッなのか、とか。
中村 たしかに、みんなそれぞれどんくらいパッワッサッ感があったのか……
宮崎 でも“集まり”の話でいくと、わたしは集まりのなかで戯曲を読めば上演になりうる、っていう思想だから、それは結構パッワッサッ的なことなのかもしれない。
中村 え?
宮崎 なんで上演するのかがずっとわかんない、5人くらい集まって戯曲読む集まりがあればそれで上演されたことになんないのかって結構思ってて。わざわざ上演する意味ってどういうこと?って考えてる。
中村 積極的な読書会とかって、演劇の稽古にかなり近いし、観客(参加者)がある種安全にテキストとの距離を取れたりとかもするよなとは思う。まあ上演でしか得られない満足感っていうものは観る側にはあるとは思うけど、なんかいいもん見たなみたいな……でも、そうやって上演を見に来るときの「消費する」的な感覚を変えるのは上演レベルでは不可能というか��そのモチベーションを劇場に金払って見に行くという身体でそうじゃないものを強く求めるのはこちらが設えを変えないと無理だなって最近思ったな。テアトロコントで笑いに来てる人に対してその条件を変えることにはあんまり意味がないっていうか。そこを疑うなら上演じゃないアイディアを作る必要があるんだろうなって思った。ほんとに戯曲を読むだけなら、みんなで読んだりしたらいいのかもね、
宮崎 でもそれわたしなら上演ですって言っちゃいそう。これは上演ですって。10人くらいあつまって上演しましょうって。
中村 それって、参加しない枠もある?
宮崎 あ、いないで考えてました。
中村 その場合、上演とはってなりそう、
宮崎 なんか、わたし瀧腰さんとかと3年位「ゴドーを待ちながら」を野外で読み続けるっていうのやってて、それもあって読めば上演になるんじゃないかって、しかもそれが集まりのなかでなされるってことを上演の定義にしてたんですけど、
中村 でそれは、お客さんはいないんだ?
宮崎 街の人がいますよ。
中村 あ、路上パフォーマンスみたいになるってこと。
宮崎 そう、上野のパンダ橋とかでやってました。3,4時間かかるんですけど。
中村 え、ハード。動きとかなく、読むだけ?
宮崎 読むだけ、しかも誰がどの役をやるとかも決めずに読む。しかもト書きも全部読む。みたいな感じでやってました。
中村 へー、
宮崎 最後の方は写経してました。
中村 ゴドーを?
宮崎 写経も集まりの上で全員が同じ時間に共有された行為をしているので、それは上演になるのかみたいな、ことを試してた。
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部屋と演劇Vol.1 中村大地『複声にうつしてみる』リハーサル風景
中村 野村くんに聞いたんだけど、ドイツの公共劇場の稽古スケジュールって、最初に3時間やって、休憩3時間やって、後3時間やるっていうスケジュールなんだって。それ面白いなって思って。お昼休みって1時間じゃ、1時間半でもあんまり休めた気しないけど、3時間もあればもはや合間に他の打ち合わせとかいれられて。だから今度城崎でやろうと思ってる。
宮崎 え、ご飯食べて温泉入ってまでできますね。
中村 そうそうそう。もちろん東京じゃ出来ないけど、それくらい一回シャットダウン挟むのやってみよっかなって。「パッワッサッ」とは違う話だけど。 今回試しに8月に戯曲を読むだけのことを4日間やって、城崎まで、1ヶ月半くらい空くんだけどその間稽古はなくて。クリエーションの中でわざとそういう空白つくることで、さっきの「ことばにない」の前編をやって今年後編やる、みたいなときのスタートダッシュの切り方と同じような効果が生まれないかな、セルフ再演みたいなことになんないかなって思ってる。
宮崎 えじゃあ、8月やって、再演が10月があって、12月が再再演みたいな?
中村 そうそう、だから10月18日に発表があって、次12月のために集まるのが11月の半ばでって。
宮崎 逆に俳優は大変ですね。
中村 どうなんだろう、どっちが大変なんだろうね。短くワッて作れちゃうならそれはそれでいいけど。でも、今回公募で募集した時には、こんだけ時間かけてつくってみたい、っていう応募理由も結構あったな。クリエーション期間の中でいっぺん仕事に戻れたりしたほうが経済的には楽なのかなって思ったり。
宮崎 なんかでも、4ヶ月毎週発表をやり続けるとかしんどくないすか?
中村 人に見せるってことを?
宮崎 そうそう、
中村 あーでも、ダラダラ4ヶ月やるわけじゃないから。1回1回区切れがあれば、そこに向かって頑張ろうみたいな。まあ、やってないからわかんない。これですごいしんどかったらどうしよう(笑)
宮崎 そのスタイルやってみたいなと思ってる、4ヶ月毎週発表、解散!みたいなの、
中村 それは一般に見せるの?
宮崎 見せる、そのシーンを。
中村 連ドラみたいなことになんのかな
宮崎 そうそう、えーでも、再演システム……。
中村 とにかく上演を細かく挟んでいく、それはでも稽古場を公開しますよりはちょっと気合を入れつつ、でもラフな設えでやれたらなって。
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屋根裏ハイツ『すみつくす』2023年 撮影:本藤太郎
宮崎 なんか『父の死と夜ノ森』でいうと、あれは死の一回性、死が生と同居しうることを前提にして書かれてると思うんだけど、それを(屋根裏では)演技もだし、舞台上にモノが存在している重さで持って繰り返すっていうのが気になってて、
中村 あれをマレビトで見た時に、あの作品だけ一回きりじゃなくていいんじゃないかなって思ったんだよね。スケッチじゃなくて、戯曲として取り扱っていいものでは?って思ったんだよな。繰り返しに耐えうるというか。
宮崎 舞台上でも死が再演できないとするなら、あれは再演できないのでは?と思ったんですよね、松田さんは死を上演の際に「軽さ」を重要にして再現可能とするんだろうけど、上演が一回しかないということが、想定外の働きをしてしまったのではないかと。
中村 うーん、でも嘘だからなあ、死んでないし、
宮崎 でも、一回しかやらないってなるとそれを一回性の死として扱えるかなって、
中村 なるほどね、
宮崎 5回この死が繰り返されるっていう意味が繰り返すならば出来てくる、
中村 それでも別に、どうなんだろう、松田さんの戯曲よく人死ぬしな……それがどういう意図をもって描かれていたかはわからないけど、僕も舞台上で死を書いたことはないけど……
宮崎 死が見えない状態で舞台上にあることって結構あると思うんですけど、舞台上で死そのものが描かれることってあんまりないかなって。
中村 そうか…?まああれはああやって軽々しく死んでいくことが結構大事なのかなって思っていたけど、その一回性を大事とは思ってなかったかも。まあ俳優が、瀧腰さんはハードっていうか、いっぱい人殺すのはハードだったと思うけど。稽古場でもそういう話はでたかもね、本当に本気で色々乗っけてやるのは食らうから、ライトにやったほうが良いみたいなことは話としてでてた。それはもちろんニヒルな意味ではなくて、そのほうが現実感もあるかなとか。
中村 結局死そのものを舞台上で起こしたいとは、自分で書く分には思わないけど、
宮崎 でも他のレベル高すぎて、わたしには一生の問いみたいな感じがあるかも。
中村 出来事として死を描けるかってこと?
宮崎 そうそう、
中村 それはどういう感じなんですか?
宮崎 再現できないものをどう舞台上で起こすかみたいなこともそうだし、死が見えないってすごく普通のことだから、死を見せない、間接的に描くってのは形式に落ち着いていると思っちゃう。わたしたちは生きてていろんな場面で死が見えることを経験してるけど、なのに舞台上では死が見えないってどういうことだろう?とか思ったり。
中村 死んでないから死が描けないんですかね、
宮崎 ファンタジーとしての死ではなくて、もうちょっと想像の余白が残された出来事としての死ってなんかあるんじゃないかなって思ってるんです、
中村 それは死の気配が横たわってるとかではなく、
宮崎 じゃなく、
中村 なんか、上演の一回性に対する感覚が僕は結構もう薄れてるのかも、
宮崎 ええ?(驚)
中村 どうせもう絶対に一回性だから、みたいな感覚。
宮崎 屋根裏の稽古は再現性高める系ですか?
中村 再現性高くないと思うけど、「ここでこうしてください」という細かい振り付けはしないというか、なんか道路があって、そこにポイントはあって、そこは通過しなきゃいけないけどその通過の仕方は問わないという風にできたらいいなとは思ってる。でもわりに細かいとは俳優から言われるかな。
宮崎 それはポイントの数が多いみたいなこと?
中村 うーん、どうなんだろう。なんかサッカーみたいな、作戦はいっぱい練るけど結果はボールの動き方でかわるよねって思ってつくってる。
宮崎 ずっとそのやり方ですか?早く言ってとか言わずに、
中村 うん、2017年くらいからかな。「とおくはちかい」から。その頃からこちらが細かく操作するよりも、俳優が自分で立ち上げる方がいい結果になることが多いなと思うようになって。てか、演出が言ってくれたことを俳優がやってくれるのって気持ち悪くないすか?
宮崎 なんかわたしそれ、やられることが嫌なんじゃなくて、待たれることが嫌なのかもしれない。振り付けでもなんでもいいんですけど、言う事を待たれるのが。言うことが百になるのが嫌というか、
中村 うん。だから、言う事を待たれる感じにしないための空気づくりを頑張るのかもしれない。そうすると、俳優が「あなた(演出)今気づいてないかもしれないけどこうしてみましたけど」みたいなことが起きやすくなるなって。
宮崎 そう、稽古場をお客様いらっしゃいみたいなかんじにしないほうがいいと思ったりもします。ファシリテーターみたいにならないっていうか。稽古場自体にはよっしゃ行こうってしないと今行けないけど、稽古場でウェルカム~みたいな感じじゃなく、気を使いすぎないでいれてれば結構うまく行きやすいのかもなって思ったりする。
中村 ウェルカムにしたほうが俳優が観客みたいに待っちゃう気がするね、なんかサービスしてくれるんですか?みたいな状態になっちゃうというか。
宮崎 そうそう。
2023年9月中旬 ZOOMにて
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プロフィール 宮崎玲奈(みやざき・れな) ムニ主宰・劇作家・演出家。1996年高知県生まれ。明治大学在学中に演劇学校無隣館に通い、2017年ムニを旗揚げ。青年団演出部に所属した。第11回せんがわ劇場演劇コンクールにて『真昼森を抜ける』で演出家賞。大学卒業制作の『須磨浦旅行譚』が令和元年度北海道戯曲賞最終候補。その他の作品に『ことばにない』など。
〈次回公演〉 ムニ『つか���間の道』『赤と黄色の夢』二本立て公演 2024年3月9日(土)-17日(日) 会場:アトリエ春風舎 作・演出:宮崎玲奈(『つかの間の道』) https://muniinum.com/2024/01/25/tukanomaakakiyume/
【演出】 那須塩原市ART369プロジェクト実行委員会 劇「わたしのまち」 2024年6月7日(金)-9日(日) 会場:那須塩原市図書館みるる ホール
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shintani24 · 7 months
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2024年2月12日
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ラジオは滅びゆく? 浜村淳さん「十分可能性がありますよ」(毎日新聞)
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インタビューに答えるタレントの浜村淳さん=大阪市北区で2023年11月10日、川平愛撮影
「ついに来たか、と。あと50年、せめて100歳まで続けたかった」
御年89歳。ラジオパーソナリティーの浜村淳さんは、半世紀続く冠番組の節目を局側から打診された時をちゃめっけたっぷりに振り返る。
MBSラジオの長寿番組「ありがとう浜村淳です」が3月末、平日の放送を終了し、土曜のみとなる。深い知識とユーモアに裏打ちされた語りで、関西のリスナーに愛されてきた。浜村さんはラジオに、音だけで勝負する媒体ならではの可能性を感じてきたという。
番組は1974年4月にスタート。現在は月~土曜の午前8時から平日は2時間、土曜は3時間半、新聞や週刊誌情報、ラジオドラマなどを生放送で紹介する。平日の放送終了は、同局側が50周年を一区切りとして打診し、本人も「長時間の生放送でどんな事故が発生するか分からない」と了承した。
親しみやすく、なるべく楽しく
「さて皆さん」で始まる柔らかい関西弁の語りは、浜村節とも称され、親しまれてきた。信条は「難しい言葉は使わず、分かりやすく話すこと」だ。朝刊各紙をめくりながら時事問題を解説するコーナーでは「親しみやすく、なるべく楽しく、聴いて良かった」をモットーに、記事をそのまま読み上げず、言葉をかみ砕いて紹介する。
「例えば、政治の話題で『可及的速やかに』とあれば『なるべく速く』と言い換えます。事件を扱う時も朝の番組なので、陰惨になりすぎないように、ほんの少しだけポップに」
映画評論家としても知られる。登場人物の衣装や景色を細かく描写しながら、見どころやあらすじを講談調で語り、ファンから「本編よりも面白い」と評されることも。
例えば、最近はどんな映画を? 水を向けると、特攻隊をテーマにした「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」について名調子が始まった。「現代の女子高生がタイムスリップして昭和20年に行ってしまうんですね。そこで出会うのが初恋の相手、彰さん。これ特攻隊員なんですよ。いよいよ出撃命令が下ります。小型の飛行機に乗って、腹に針金で爆弾巻いて、片道だけの燃料で飛び立っていく……」
数年前、鹿児島の鹿屋航空基地史料館を訪ねたこともあり、周辺の情景も加える。「絵空事でなく、実感を持ってしゃべりたい」。これまでの取材経験が語りに深みを持たせている。
「今ほど悪事がはびこる時代はない」
「ありがとう~」が始まった当時は、既に大衆の人気がラジオからテレビへと取って代わられていた時代。当初はテレビに対抗心を燃やしていたが、放送を重ねるうちにラジオの強みを実感するようになったという。
音声だけだからこそ、一人一人が頭に思い浮かべるイメージは多様で広がりがある。「ラジオは説得のメディアやと思います」と、浜村さんは表現する。「映像で見えない部分を言葉で補う。そのために、しつこくしつこく説得し続ける。だからラジオに出る人間は、相当な勉強や修業が必要になってきます」
関西ローカルの番組はインターネットラジオの登場で全国で聴けるようになり、取り巻く状況は大きく変わった。「滅びゆくメディアと悪口を言う人もいますが、『まあ皆さん聴いてください』と聴き手が興味を持つように語りかけると、(リスナーは)必ず引き込まれるんです。だからこそ、愛してくれる人はこれからも居続けるはずです。ラジオには十分可能性がありますよ」
まだまだ「心身ともに健康」と胸を張る。4月以降は土曜の放送のみとなるが、「政治も事件も、今ほど悪事がはびこる時代はないと思います。それらをどのように伝えるのか課題です」と浜村さん。「聴いて役に立ったと思わせる部分が少しでもあるように、迷いながらもやっていくだけですね」。穏やかにほほ笑んだ。
番組50周年を記念したイベントを4月15日、「SkyシアターMBS」(大阪市北区)で開催する。問い合わせは06・6676・8466。【谷口豪】
川内原発延長認可後、初の県原子力防災訓練の実効性は 専門家「能登地震ふまえ最悪シナリオ組み込む必要ある」[02/12 19:22]
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川内原発は、ことし7月に1号機の運転延長を控えています。また、元日には志賀原発が立地する石川県で能登半島地震が発生し、鹿児島でも不安の声が聞かれます。
道路の寸断や建物の倒壊、生き埋めなどが発生した場合、本当に避難はできるのか?今月10日に行われた県の原子力防災訓練で見えた課題を検証します。
10日午前6時半、川内原発が立地する鹿児島県の薩摩川内市役所です。幹部職員の参集から原子力防災訓練が始まりました。
(田中良二市長)「能登半島地震のこともあり、市民の大きな注目を集めている。強い緊張感をもってやりたい」
川内原発30キロ圏の9市町と県が行う原子力防災訓練。今回は去年、川内原発の運転延長が原子力規制委員会に認可されて初の訓練ともなりました。
住民600人も含め4000人が参加し、薩摩半島西方沖を震源地とする最大震度7の地震で外部電源を喪失したとする川内原発では、2号機が非常用電源も失われて炉心損傷に至るとのプロセスで訓練が進みました。
また被ばくした職員を病院に搬送し、手当てする手順も確認しました。
川内原発から2.5キロ南の薩摩川内市寄田地区です。重大事故が起きた場合、原発5キロ圏内はただちに避難することになります。能登半島地震を受け、倒壊した建物から住人を救助する訓練もあり、住民12人は鹿児島市までバスで避難しました。
同じく、原発5キロ圏にある高江こども園です。避難指示を受け、園児6人をバスに乗せ、避難場所に向かいました。
(高江こども園・成松まつみ園長)「(能登半島地震は)かなりショックだった。実際にああいう状況になったときに、子どもたちが孤立するのが一番心配。(備えを)見直さなければならないと感じた」
住民たちが懸念するのが、ことし1月1日に起きた能登半島地震です。見過ごせないのが地震の規模。マグニチュード7.6は27年前、薩摩川内市で震度6弱を観測した県北西部地震の30倍、直接死5500人余りの阪神・淡路大震災を3倍も上回るすさまじいものでした。
石川県の災害危機管理アドバイザーも務める専門家は…
(神戸大学・室崎益輝名誉教授)「前例のない地震が起きた。質が違くというか、ことごとく壊れている。過疎地だったので230人~という犠牲者ですんだ。人口密度当たりの犠牲者の比率は阪神・淡路大震災より多い」 ※室崎名誉教授の「崎」は、たつさき
薩摩川内市によりますと、5キロ圏内の住民が避難し、被ばく者を病院に搬送する県道43号などは、いずれも土砂災害警戒区域にひっかかります。また、オフサイトセンターを始め、県や市の拠点自体が川を埋め立てた軟弱地盤の上にあり、液状化の危険性もぬぐえません。
そもそも市や県の職員を集められるのか…能登半島地震で最悪の被害となった石川県輪島市では、職員280人のうち、初日に40人しか登庁できませんでした。
神戸大学 室崎益輝名誉教授 「情報網や道路網が寸断されて、家がたくさんつぶれて、その下に閉じ込められた人たちが相当数いる。(石川県の事前想定は)最悪の事態をみるという姿勢にはなかった」
「能登半島地震の事態で気に留めておかないといけないのは、いつまでたっても奥能登から抜け出せないということは、放射能が漏えいするとみんな汚染されてしまうということ。本当に緊急に一斉に人が避難できるか?最悪のシナリオのうちのひとつには組み込まないといけない」
訓練の実効性をさらに高める必要はないのか?塩田知事は…
塩田知事 「基本的な動作をしっかりと住民含め、手順を確認するということが一番大きな役割。そういう過酷な状況も引き続き検討はしていきたい」
一方の薩摩川内市 田中市長は…
田中良二 市長 「能登半島地震が行政の防災対応に与えている影響も翻って議論をすべき。見直し改善、次回の防災訓練に生かしていきたい」
川内原発の30キロ圏に住む住民は19万5400人。原発5キロ圏の高江こども園の成松園長は、住民側の温度差に危機感も感じています。
高江こども園 成松まつみ園長 「放射線が漏れてしまった際は5キロ圏内だけに止まらない。温度差というか、緊迫感がないなと、危機を感じる」
訓練を終えた子どもたち 「(地震は)いやだ。逃げる」「身を守ります!(毎月)避難訓練をやっています!」
能登半島地震で改めて浮き彫りになった地震災害のすさまじさ。川内原発の運転延長を7月に控え、私たち一人ひとりが問われています。
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straycatboogie · 1 year
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2023/08/15
BGM: Pop Will Eat Itself - Not Now James, We're Busy
今日は早番だった。朝、さすがにこの台風一過の中バイクで通勤するわけにもいかないので歩いていく。そして仕事を始める。仕事前はどうなることかと思ったが、やってみると何とかこなせた。���休み、すっかり人のいなくなったイオンで半額になっていたお弁当を買い、それを食べる。イオンももうお盆が終わりつつあるということで秋の装いが始まっていた。夏も終わるのか……この仕事を始めてからこんな風にお盆期間も仕事・仕事で暮らすようになり、したがってまとまった夏休みを取るということもできない。いや、不満があるわけではないのだけれど……ぼくは根っからの貧乏性なのかせっかちなのか(どっちも発達障害から来ている気もするけれど)、休みをもらってもその休みに「飽きる」のだった。いや、これはほんとうにぜいたくな話ではあるけれど何なら生きていることそれ自体に倦怠感・疲れを感じているとも言える。これは一方では「それはあんたが生ぬるい平和な日本に暮らしているからこそ言えることだ」という話になる(だから「ぜいたくな話」と書いた)。この平和は過去、さまざまな戦争の惨禍で苦しんだ人たちの苦労があってのことだ。戦争、ひいては亡くなられた人たちの生と死を肯定するか否定するかは議論の余地があろう。だけど彼らがとことん苦しんだことまで疑うつもりはない。今日はそんなことを考えた。
だが、詩にしてそうした事柄(つまり「戦争や平和とは何か」「人の死はどういうことを意味するのか」)を扱おうとしてもいつも空振りに終わるのが常なのである。今日の詩でも、死についてぼくなりに考え始めたつもりがそれが『完全自殺マニュアル』の話になりそしてFacebookの知人の話へと思いっきり脱線してしまった(転落事故さえ起こしたかもしれない)。とんだ詩作もあったものだ。だけど、そうして書く過程で「語るは最大の治療なり」という断酒会の鉄則/セオリーを思い出させられた。それがぼくがつい最近になって考え始めたこととつながる。自分の中で思いを溜め込むことをせず、それが時に「失言」「言葉足らず」の可能性に陥るとしてもともかくもライブ感というか、その時にしかできない「勢い」に任せて語り尽くしてしまうこと。「吐き出す」こと。それが大事ではないかと思ったのでそれを詩に表現した……と、こんなことをしたり顔でカッコよく(?)語ってしまっているがいつも書く時は「いきあたりばったり」の「ぶっつけ本番」である。ただ、そうして書きなぐったものをそのままウェブに載せることはしない。夜に清書してブログに載せることにしているのだった。じっと我慢の子。
それで仕事が終わり、徒歩で帰宅する。思っていたほど雨も風も強くなかった。その後夕食を摂り部屋でくつろぐ。松浦寿輝『わたしが行ったさびしい町』を読む。これは松浦寿輝が書き記したさまざまな「さびしい町」に関する旅行記で、ぼくは旅行というものをぜんぜんしないのでその点参考になるところが多かった。ナイアガラの滝を見に行ったり台南に行ったり、アクティブに動いていることに唸る。人は基本的に旅に出る時、その旅を「一過性」のものとして楽しむのではないかと思う。もちろん「気に入ったからここに住もう」とか「将来はここに住もう。今回の旅はその下見だ」と考える可能性もなくもないけれど、それは稀なことではないか。旅とはどこか無責任・ノンシャランにその地を「通過点」として楽しむ活動形態ではないかと思う。それはそして(なんだかもったいぶった、しかもそのわりに陳腐でもある書き方になってしまうが)「人生」と似ている。ぼくたちの人生もまた漂泊・流浪の活動であり止まることはない。止まるとしたらそれは死ぬ時のことだ。生きていることを「旅」として捉えると、ぼくたちの生はそうしたあてどのない「旅」の連続であると言える。
畠山地平を聴きながら読んだ『わたしが行ったさびしい町』を読み、ふとぼく自身にとっては「読むこと」もまた「旅」ではないかと思った。ぼく自身が体験できない・できなかったこと、そして誰かが体験・想像したこと。それが紙やディスプレイに刻み込まれ、いまどきの言い方をすれば「シェア」される……そうして読んでいく過程でぼくは松浦寿輝の筆致についつい彼が敬愛する(そしてぼくも好きな書き手である)吉田健一や大森荘蔵の残響を聞いてしまった。当たり前のことがらに立ち返ると、書いている時は「旅」をいったん離れて書く作業に取り組ん��いるわけだ。そこではメモを参照することはあれど、基本的には記憶に頼らざるをえない。だが、その記憶はどこまで確かだろうか。松浦寿輝はこの『わたしが行ったさびしい町』を書く過程でそうした記憶の確かさ(あえて難しく書くと「認識の限界」……なんだかウィトゲンシュタインみたいだけど)をも問うているように思った。そうした誠実・愚直な思考のたたずまいこそがぼくが彼を敬愛・尊敬する理由である。今回の読書でぼくはさっそく彼が好意的に触れている阿部昭の本を読みたくさせられた。ぼくも阿部昭の『単純な生活』は好きだからだ。
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everycathasitsday · 1 year
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よーやく建築プランの許可降りました〜
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ケ(ケン): すっかりごぶさたしてるうちに、よーやく新しいフロア・プランに許可が降りました。めっちゃ時間かかった〜。これまでの経過を簡単に書いておきますと、改訂版のフロア・プラン(オリジナルでは住居だった場所をネコ部屋#2にしたもの。下の図)を役所に提出したのが2月1日でした。
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ところが、このプランでもピンクと赤のエリアを防火壁で分けないとダメだと言われてしまいました。防火壁の費用がかかりすぎるから住居を諦めたというのに、すべて猫カフェとして2階を使用するとしても防火壁がいるなんて!
リ(リッシェ): これにはふたつ理由があって、ひとつはもともと「ネコ部屋#2」はオフィスとして使用されてたので、使用目的を変更すると、役所が新しい規制のルールを導入してくるのです。それは、1階と2階のビジネスが別な時には、2階が1階の床面積に対して50%(だったかな?)以上だと、防火壁で区画を区切らないとダメだというもの。なんかもう、規制が多すぎて。
ケ: やってられるか〜!っと投げやりになってたのが3月中旬。なんとか費用を節約して猫カフェの再開にこぎつけたいと、赤の部分は顧客と猫は使用しない(そうすれば使用目的の変更にならない。下の図)というプランを提出し、まあこれなら許可あげてもいいけど新しいファイア・プランを出してね、と言われ、その提出ができたのが3月28日でした。
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リ: で、よーやく許可が降りたのが、5月末。時間かかりすぎよねー。しかも、この改訂版プランの許可にかかった費用が20万円。オリジナルの時にすでに、40万ぐらい払ってるんですよ。大した変更してないというのに、こんなにお金と時間がかかるんや… 許可の降りたプランは一番上に貼ってあります。
ケ: この間、自分たちでできることはいろいろやってます。上のプランでオフィス/倉庫とランドリーにあたる部屋のペンキ塗りは終えました。空調のダクトも付いてるのがわかるかと思います。
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トイレの壁の補修とペンキ塗りもやりました。before の写真撮るの忘れたけど。
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リ: そして、これはもっと早くにしておくべきだったんですが、屋根の補修(これは業者)も終わりました。全面を吹き替えするのはコストがかかりすぎるので、雨漏りしてるところやサビがひどい所のみの補修だけですが。
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まだ錆びてるところもあるけど、これは春になってからケンが掃除してペンキ塗って補修する予定。自分たちでやらなきゃいくらかかるかわからんもんで。がんばってね。
ケ: この補修の前に、オレ掃除もやってんねんで! 屋根の上にはカモメが巣を作ってたから、それ取り除いて苔とか生えてたんもとって、雨どいも掃除して… あーしんど!
リ: ご苦労さま! で、最近の一番いいニュースといえば、ようやく新しい賃貸の家が見つかったこと! キャビンの後、今のシェア・アパートに引っ越して7ヶ月経ちますが、もう限界やったよね… 床が震える���らいの音楽が週末に下のバーから聞こえてくるし、同居人はキッチン使った後掃除しないし、ゴミの分別もしないし…
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ケ: こっちでペット可の物件を見つけるのって、日本より厳しいと思うわー。ほとんどの物件がペット不可やもん。自転車で勤務可能なエリアを探してたことも制限がかかった理由やけどね。とにかく、ウチの店から車で5−10分(渋滞しやすい道)、自転車で15分(帰宅には20分以上。坂道上がるもんで)、徒歩30分のところにある一軒家を借りることにしました。引っ越しは今週の日曜日25日。お手伝いお待ちしております〜。日本からの方には宿と食事は提供しますが、交通費自費で!😁 
リ: 長くなってきたんで、今回はこの辺で。また近々報告入れます! 日本は空梅雨で暑いみたいですので、みなさん、お体に気をつけて!
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ari0921 · 1 year
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我が国の未来を見通す(71)
『強靭な国家』を造る(8)
歴史から学ぶ「知恵」の適用(その3)
宗像久男(元陸将)
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□はじめに
この度の自衛官候補生による発砲事件は、自衛隊を
退職して14年も過ぎた一OBの立場からしても、
とてもショックで、心が痛み、やるせない気持ちに
させる事件でした。言うまでもなく、たとえその動
機がいかなるものであっても、武器の使用が認めら
れている自衛官が万が一にも絶対に起こしてはなら
ない事件であるからです。
犠牲になられた二人の隊員に心よりご冥福をお祈り
申し上げますとともに、負傷された隊員にお見舞い
申し上げます。陸上自衛隊は調査委員会を立ち上げ
たようですので、警察の調査と協力して、事件発生
に至る原因と様々な角度から背景の解明、そして再
発防止を徹底してもらいたいと願いながら、それら
の全容が明らかになるのを見守りたいと思います。
この事件によって、全国津々浦々の自衛官たちの意
気消沈は想像を超えていると思いますが、事件の影
響により、陸上自衛隊が前向きのエネルギーを失い、
組織力の低下につながることがないよう切に祈りた
いと思います。
▼「相応の力を持つ」──気候変動・エネルギー問
話題を戻しましょう。現下の情勢から、“最悪”の
事態を視野に入れて、「相応の力を持つ」ことは、
エネルギー問題にも求められることは間違いないと
考えます。つまり、エネルギーの自給率を向上する
など、未来永劫にわたるエネルギーの安定確保体制
を維持することが求められています。
確かに、国際社会を挙げて気候変動対策が求められ
ていることから、2050年まで地球上の「脱炭素」
を推進するとしても、それまでの過度期にあっては、
再生エネルギーの供給不安定性と化石燃料の供給不
足、そしてそれに伴う価格高騰が経済不況やスタグ
フレーションと重なって、エネルギー争奪戦を引き
起こすリスクがあるといわれています。
現に、ウクライナ戦争の結果、そのような“悪夢”
がすでに現実のものになっていますが、米国コロン
ビア大学のジェイソン・ボードフ教授らはこの過度
期のエネルギーをめぐる新たな地政学を「グリーン
大動乱」と呼称して警鐘を鳴らしています。
このたび、我が国においても「GX(グリーントラ
ンスフォーメーション)」を推進するための法律が
可決されましたが、その目標に向かいながらも今後
30年間近く、化石燃料と原発と再生エネルギーの
最適な組み合わせに加え、世界に先駆けたエネルギ
ー分野の「イノベーション」も求められることは必
定です。
その意味では、先のG7広島サミットにおいて、
(あまり話題にはなりませんでしたが)日本の主張
が他の6カ国と違っていたにもかかわらず、それが
反映された声明がありました。まずは「脱炭素」化
の手法です。焦点となっていた石炭火力発電の廃止
時期が盛り込まれず、石炭火力にアンモニアを混ぜ
て燃やしCO2排出量削減を図る「アンモニア混焼
の導入」が掲載されました。英国やカナダなどが
「それではCO2削減効果が不十分」と批判する中
で、日本の主張を反映されたのです。
また、電気自動車など走行中にCO2を排出しない
ゼロエミッション車(ZEV)の数値目標導入をめ
ぐっても米国や英国と日本の意見は対立しました。
これらの背景に、我が国は太陽光発電などの適地が
少なく再生エネルギー発電を増やしにくいという事
情があるに加え、アンモニア混焼や低燃費車の技術
はG7の中で日本が最も優れていることから、我が
国には珍しく、安易な妥協に踏み切らなかったので
す。
「グリーン大動乱」も予想される中にあって、エネ
ルギー自給率の低い我が国が最優先すべきは、
(「脱炭素」の早急な達成よりも)“安定的なエネル
ギー源の確保”にあることは論を俟ちません。この
たびのG7サミットにおいて、我が国は、国の向か
うべき方向を明確にしたことは評価できると私は考
えます。
加えて、私自身もこの技術については最近詳しく知
ることになったのですが、読者の皆様は「ペロブス
カイト太陽電池」という名前をご存じでしょうか。
厚さ1マイクロメートル(0.001ミリメートル)
ほどの極薄のフィルムに「ペロブスカイト」と呼ば
れる結晶の構造をした物質を塗ることで太陽光を電
気に変えることができるという“優れモノ”で、桐蔭
横浜大学の宮坂力特任教授が発見した日本発の技
術です。
このフィルムは、従来の太陽光パネルに比べて厚さ
100分の1、重さが10分の1と薄くて軽い上に柔軟性に
優れているため、折り曲げて設置することができ、
これまでは重さがネックとなって設置できなかった
ビルの壁面や建物の屋上、さらに曲面の部分にも貼
り付けることができます。
実は、もっと重要なことがあります。「ペロブスカ
イト」という結晶構造の主な原料はヨウ素���という
ことです。我が国の国土の地下にはヨウ素を豊富に
含んだ地下水があり、ここからヨウ素を取り出すこ
とができるため、我が国はチリに次ぐ世界2位のヨウ
素生産国になっています。つまり原料を国内で調達
できるということです。よって、これが広く普及す
れば、我が国は、再生エネルギーに関して、現在の
ように“生殺与奪の権利”を外国に握られないです
むのです。
ただ、残念ながら、実用化まではまだ少し時間がか
かるようです。特に、現時点ではフィルムの劣化が
激し過ぎて、すぐ使い物にならなくなるとのことで、
フィルムを保護する技術の実用化が急がれています。
現在、関係企業、大学、東京都などが連携して世界
に先駆けて実用化を目指していますが、諸外国も最
優先して国家投資を行ない、実用化に向けてしのぎ
を削っています。宮坂教授に言わせると、「我が国
と諸外国では開発費の投入に雲泥の差がある」との
ことで、この分野の「人材育成がカギ」と述べて
“現状”に不満を漏らしています。
岸田総理も先日、テレビで「ペロブスカイト太陽電
池」という名前を口にされていましたので、その存
在はご存じなのでしょう。そうであれば、他に優先
して、政府が率先して実用化に向けた最大限の投資
をすればよいと誰もが考えますが、政府が本気にな
っているという声は聞こえてきません。
我が国は再生エネルギー分野においては悲しい歴史
があります。従来の太陽光パネルにおいて、我が国
は2000年代前半まで世界トップのシェアを誇っ
ていたのですが、中国との価格競争に敗れて次々と
撤退し、すでに紹介しましたように、今では世界シ
ェアの大半を中国に奪われてしまったのです。
それだけに、関係者は日本発のフィルム型太陽電池
で巻き返し、世界の新たなスタンダードを作りたい
と意気込んでいるようですが、私自身は、先日のテ
レビで、宮坂研究所がその製造プロセスを惜しげも
なく“公開”していたことに疑問を感じながら見入
っていました。
この“脇の甘さ”も重なって、またしても、我が国
発祥で、純国産の原料で実用化が可能な「ペロブス
カイト太陽電池」においても、中国など他国に追い
抜かれ、“後れを取る可能性がある”と言わねばな
らないのです。
ウクライナ戦争や米中の対立などで原材料のサプラ
イチェーンや供給網の強化が課題となっている中、
経済安全保障の強化という観点からも国策として
「ペロブスカイト太陽電池」の早期実用化に向かっ
て万全を期すべきと考えます。
気候変動、なかでも「脱炭素」政策に関する実行の
可能性や問題点などについてはすでに詳しく触れま
したので省略します。先日、エネルギー分野で仕事
をした経験を有する有識者と率直な意見交換をする
機会がありました。私が「我が国のエネルギー自給
率は12%」と述べると即座に「原発の再稼働がな
ければ、4%のみ」と即答され、改めてその厳しい
実態に驚愕しました。
2010年代以降から今般のウクライナ戦争に至る
間に、フクシマ、CO2、自然の気まぐれ、ロシア
のリスクまで、原子力、石油・石炭、再生エネルギ
ー、天然ガスのいずれのエネルギー源も大きなリス
クを露呈しました。このことは、すべての熱源や電
源をバランスよく使用しなければ、エネルギーの安
定確保は持続しないことを意味しており、このたび
人類は、ドイツをはじめとする欧州列国のように、
“エネルギーの安全保障なしに「脱炭素」の取り組
みは挫折する”ことを学びました。
エネルギー資源小国の我が国にとっては、この事実
がさらに重くのしかかることは自明です。エネルギ
ー分野においても、「相応の力を持つ」ために、ゆ
めゆめ“策の優先順位”を間違えないことが肝要で
す。
そのためにも、様々な分野の基金の乱立を見直すと
ともに、「脱炭素」に向けて15兆円もの税金を投
入して、“バラマキ”のような政策を即刻中止して、
これまで触れたような「原発再稼働」「核融合技術」
などに加え、「ペロブスカイト太陽電池」の実用化
など、“我が国の存立を左右する”「イノベーショ
ン」に特化して、国策として取り組むべきでしょう。
当然ながら、これらの技術は、結果として「脱炭素」
にも貢献し、国際社会に対する約束も果たすことが
できるため、国内外への説得力は確保できると考え
ます。政府の決断と政策の早期実行や望まれます。
次回以降、歴史から学ぶ「知恵」の3つ目である
「時代の変化に応じ、国の諸制度を変える」という
“難題”について、我が国の未来に向かっていかに
適用するか、について考えてみましょう。
(つづく)
(むなかた・ひさお)
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yamanaka-lab · 2 years
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2022建築レビュー#4
-建築レビュー#4(設計者:Helen&Hard)発表者:伊藤(M1)講評者:新倉-
 建築レビュー第4回目は、ノルウェーに拠点が置かれているHelen&Hardが取り上げられた。Helen&HardはStavangerとOsloを中心に木造建築を得意とした29名のチームである。既存を利用した作品が多く、場所性を生かし、人々が集う空間の計画などがある。
 特に彼らは「木造」「トランスフォーメーション」「社会的持続可能性」「システム設計」の4つに着目し、設計を行っている。
 今回は、彼らがつくりあげた3つの住宅を取り上げ、それぞれの計画によって異なる活動を考察する。
事例1 「Vindmøllebakken Housing」[2019]
 元々倉庫のようなものが敷地内に分散しており、既存の外壁の一部を残し、周囲の外部空間の敷居として機能させている。
 「Gaining by Sharing(共有による利益)」モデルに基づいた住宅。
 現在の社会的ニーズに応えられないことの多い標準的な住宅の建て方への対策案である。時間・空間・資産を共有することで、環境だけでなく、社会的・経済的・建築的な面でも、より持続可能なくらいを実現させる。
 全体構成は、40の共同生活ユニット、4つのタウンハウス、10のアパートメントである。3〜5階建ての低層建築で計画され、プレハブの木造部材で建てられ、人間、社会、環境のニーズを持続可能な方法で満たすモダンな住宅タイポロジーとなっている。
 平面的には、円形劇場を起点にアパートメントへ分かれている。
 屋上にはライブラリーや温室へと続くオープンな階段室とギャラリーが配置されている。この部屋は、空間と人との視覚的なつながりを生み出し、居住者に共同生活への参加の選択を自由に提供する。
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事例2 「Venice Biennale」[2021]
 1959年にSverre Fehnによって設計されたパビリオン内に設置された構造である。実験的なコハウジングのプロジェクトとして、コミュニティの設計と構築のためのフレームワークを提示しており、「Vindmøllebakken Housing」の住民参加と持続可能性を基盤にしている。
 平面的には中央に共有スペースが位置し、その周りに住宅が位置する。
 個人の自由を守るプライベートゾーン、プライベートとパブリックの間の中間的なゾーン、
 すべての住人が集うことのできる、中央の共有ゾーンの3つの空間である。
 3つのレイヤーを重ねた空間は、プライバシーと共同性のグラデーションを作り出し、住むための場を提供する。
  共有スペースにはランド、スケープのように水平に伸びる棚のような木材があり、空間的に地面と関係させている。屋根を最良の状態に保ち、壁、地面、階段、梁などの連接要素を集合させてできた空間を守り、活用する。
 共同住宅モデルの空間構成は、床、壁、家具を作るセルフビルドシステムにしている。
 そのため、この提案は持続可能であり、時間の経過とともに変化する可能性がある。
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事例3 「Samling Library 」[2020]
 この建築は、図書館の機能をメインとし、参加への敷居を低くした住民のための新しいリビングルームのような集いの場である。
 楕円形のアトリウムから放射状に広がる空間は、建物を超え、周囲環境へと広がる。また、重厚な木造の骨組みは、地域の豊かな木材の歴史と呼応し、ガラスのファサードを通して周囲の森林とつながる。自然と建築の対話を示唆している。
 木造フレームは放射状に配置され、様々な用途に応じた空間を分離・結合させる働きをも持つ。
 中央に開放的なアトリウム的空間が位置し、そこから放射状のジオメトリーによって建物の構成を作り出している。この構成によって、建物の中心機能にリビングルームとしてのライブラリー、その周りに各機能が集まる静かな空間を置き、人々をつなぐ。
 中央の開的なスペースは、壮大さと控えめさを併せ持ち、居心地のよいヒューマンスケールを持つ。
 木材を、ほぼすべての建築要素に使うことにより、木造建築の文化遺産と地域の木材産業を反映し、より持続可能で責任ある社会を鼓舞している。
 天井と構造体に見られる柔らかな曲線は、銀行、図書館、共有スペースでの部屋の体験と質を高めるための重要な要素である。
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 私は、Helen&Hardの設計について、小さなスケールの集合の中に差し込まれたヴォイド空間が利用者の居場所となり、多様な機能を付加させ行動を促進させる。木材が生み出す温かさに包み込まれた空間が持続可能な暮らしを誘発させるのだと感じた。
 山中は、Helen&Hardの作品から、コモンの役割を場所ごとに模索し、コモンにただ場所を与えるのではなく機能を設定するといったコーポラティブハウス的な視点を用いることにより、建築・空間にして落とし込んでいると捉えた。
 北欧の建築は、福祉に対して国全体で意識が高いため、共有部をシェアすることに注目する理由の一つになったのではないか。木材の使われ方も、北欧ならではの特徴が見られる。またコモンは、吹き抜けや劇場など場所ごとに異なった役割を果たしていると述べた。
出展
https://www.archdaily.com/?ad_name=small-logo
https://helenhard.no/work/samling/
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kennak · 1 year
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台風で仕事が休みになりそうなので暇つぶしに。3年くらい前に日本の半導体産業の近況をまとめたのですが、ここ数年で政治家の先生たちが何かに目覚めたらしく状況が大きく変わりつつあるので各社の状況をアップデート。前回の記事 https://anond.hatelabo.jp/20200813115920先端ロジック半導体■ JASM (TSMC日本法人)熊本工場:28nm, 22nm (工場稼働時) / 16nm, 12nm (将来計画)日本政府の補助金とソニー・デンソーの出資という離れ業により、業界人が誰も信じていなかったTSMCの工場進出が実現した。現在は建屋の建設が進んでおり、順調にいけば2024年内には量産開始となる。生産が予定されているプロセスはいずれも世界最先端に比べると古いものだが日本では最先端であり、HKMG(ハイケーメタルゲート、トランジスタの性能を上げる技術)やFinFET(フィンフェット、性能の良い3次元トランジスタ)といった技術が新たに導入される。工場で生産される半導体の主なクライアントは出資者のソニー。衰退の激しい日本の電機業界だが、ソニーはまだ世界と戦う余力を残しており年間半導体購入金額世界10位で日本トップである。ただし、PS3のCell Processorを長崎で作っていたように先端プロセッサをここで作れるわけではない。PS5のCPUはTSMCの6nmプロセス製造であり、この工場では製造できないのだ。識者の予測ではイメージセンサー向けロジック半導体を生産すると想定されている。■ Rapidus (ラピダス)千歳工場:2nm日本政府の国策で、IBMから技術を導入し自前で最先端の半導体製造を狙う野心的なプロジェクト。量産開始は2027年を予定。社長を務めるのは御年70歳になる小池氏。彼は日立→トレセンティテクノロジーズ(ルネサスの那珂工場の前身)→SANDISK→Western Digitalという国内外の半導体メーカーを渡り歩いた華麗な経歴の持ち主である。以前に社長を務めていたトレセンティテクノロジーズは2000年に日立と台湾の大手ファウンドリUMCとの合弁の半導体製造会社で、世界に先駆け現在の標準となる300mmウェハに対応した先進的な工場であった。ファウンドリ全盛の今から後知恵で見れば、限りなく正解に近い経営戦略と先進性を併せ持っていたがビジネスとしては成功しなかった。工場はルネサスに吸収され、小池氏はSANDISKへと移籍することに。そんなわけで今回の国策ファウンドリRapidusの社長就任は小池氏の二十数年越しのリベンジマッチでもある。なお、氏のポエミーなプレゼンは業界でも有名。記者会見で日本半導体衰退の原因を「驕り」と一刀両断した一枚のパワポが話題をさらったが、本人が一番驕っているのではと不安がる声もある。■ ルネサスエレクトロニクス那珂工場:40nm日立・三菱電機・NECのロジック半導体部門が統合した日本を代表する半導体メーカー。5万人いた従業員を1/3にする大リストラ、先端プロセス製造からの撤退、海外メーカーの買収ラッシュを経て復活。そして大躍進。昨年の売り上げは1兆5千億円を超え、はじめて統合直後の売り上げ(ピークは2011年3月期の1兆1千億)を抜いた。もう1+1+1=1とは言わせない。旺盛な車載半導体需要にこたえるべく、政府の補助金を得てリストラで閉鎖した甲府工場の再稼働を決定。コロナ禍では働き方が柔軟になり、リモートワークは全国どこでもできるようになった。ルネサスは開発拠点も大リストラで統廃合しており、三菱系の伊丹やNEC系の玉川をはじめ全国にあった設計拠点を日立系の小平に集約している。地元の拠点が閉鎖されて単身赴任をしている人も多かったのだが、最近ではリモートワークを活用して単身赴任先のマンションを引き払った人も出てきている模様。■ ユナイテッドセミコンダクタージャパン三重工場:40nm増大する車載半導体需要にこたえるべく、デンソーが出資してパワー半導体のIGBTの生産を始めた。筆者はパワー半導体は専門外で、家電芸人が語る家電の説明程度にしか話せないため軽く紹介するにとどめたい。■ タワーパートナーズセミコンダクター魚津工場:45nm半導体部門を手放したがっていたPanasonicがイスラエル企業のTower Semiconductorと共同で運営していた工場。Panasonicが台湾Nuvoton technologyに持ち分株式を売却したため、現在ではイスラエル・台湾共同運営という珍しい業態になっている。さらに、半導体最大手のIntelがTower Semiconductorの買収を進めているため、将来的にはIntelの拠点となる可能性があり、日本でIntelのCPUが作られる世界線もあるかもしれない。が、本案件は米中対立のあおりで中国での買収審査が長引いているため、先行きには不透明感が漂う。メモリ半導体■ キオクシア四日市工場 / 北上工場:3D NAND 162層日本を代表するメモリ半導体メーカー。前回からの3年で、積層数は96層 → 112層 → 162層と2世代進化した。競合他社は232層品の量産も始めている(キオクシアは開発完了 / 本格量産前)が、最近の3D NANDは闇雲に積層数を増やせば低コストで作れるというわけでもない模様。なお世間では半導体不足のニュースの印象が強く、半導体はもうかっているとの認識があると思うがコロナ禍でのIT投資ブームが終了したメモリ業界はリーマンショック以来の大不況である。キオクシアも例外ではなく、最新の4半期決算で1000億円単位の赤字を計上してしまった。Western Digitalとの統合のうわさがあるが、もちろん筆者は何も知らないし、仮に知っていても絶対にここには書けない。■ Micron Memory Japan (旧エルピーダメモリ)広島工場:DRAM 1βnm世代ルネサスと同じく、NEC、日立、三菱電機のDRAM事業統合で生まれたエルピーダメモリを倒産後に米Micronが買収。前にも書いたが、DRAM業界はプロセスのサバ読みが横行しており、20nmを切ったあたりから具体的な数字ではなく1X, 1Y, 1Z, 1αときて、ついに1βnm世代の量産にたどり着いた。広島サミットに合わせて、社長が来日。岸田総理と会談後大々的な設備投資を発表。1γnm世代を目指して日本初の量産用EUV露光装置が導入されることが決まった。このEUVというのは波長が13.5nmの極超紫外線(Extreme Ultra Violet)を使った露光装置で1台200~300億かかる人類史上最も高価で精密な工作機械でありオランダのASML社が独占的に製造している。もっとも、メモリ業界の大不況を食らっているのはMicronも例外ではなく、岸田総理と華々しく会談している裏で数百人規模のリストラを慣行。こういう外面の良さと裏でやってることのえげつなさの二面性は、いかにも外資だなと思う。■ Western Digital東芝と共同でフラッシュメモリの開発を行っていたSANDISKをHDD大手Western Digitalが買収。キオクシアの四日市工場と北上工場を共同で運営している。Western Digitalはメモリコントローラーを内製していることで知られSSDの性能の良さに定評があり、スマートフォン向けの売り上げが多いキオクシアとは、同じ工場を運営していても得意としている販売先が微妙に異なり、住み分けがなされている。(そのため、2社統合によるシナジー効果が期待されたびたび観測気球的な記事が出回る。)なお、もともと日系半導体メーカーが大リストラをしていた時の人材の受け皿として中途をたくさん採用していた経緯もあり、人材の流動性は高い。在籍時の仕事ぶりがよければ、他社へ転職していった元社員の出戻りも歓迎と聞く。前述のRapidus社長の小池氏は、つい先日までここの社長をしていた。余談だが、上記Micronの米国本社の社長も旧SANDISKの創業者でWestern Digitalによる買収後に引き抜かれている。こういう話を聞くと、いかにも外資だなと思う。イメージセンサー■ ソニーセミコンダクターソリューションズグループイメージセンサーで世界最大のシェアを誇るソニーの半導体部門。2020年、2021年は米中対立のあおりを受けて主要顧客のHuawei向けの出荷減少に苦しんだが、2022年度は大幅に売り上げを伸ばし、1兆4千億円となった。他の半導体の例にもれずイメージセンサーも国際競争が過酷であるため、対抗して人員増強を進めている。Panasonic系エンジニアを引き抜くために関西に設計拠点を開設し、各地の工場の拡張も並行して進めている。調子のいい半導体メーカーはどこも人員増強を進めているが、ここ10年ほどは理工系の学生の半導体業界人気がどん底、かつ人材ニーズも少なかっため、新卒で半導体メーカーに就職した絶対数が致命的に少なく30~40歳くらいの中堅技術者の確保にどこも苦労している模様。なお、スマートフォン向けカメラの次の飯の種として、車載用途に数年前から注力開始。最近徐々に成果が出始めている。ファブレス半導体■ ソシオネクスト富士通とPanasonicのLSI設計部門が統合してできた日本最大のファブレス半導体メーカー。昨今の半導体ブームの波に乗り、株式上場、売り上げ2000億突破と非常に好調。3年前は1000億程度の売り上げだったので、すさまじい成長である。もっとも、母体となった富士通・Panasonicはピーク時の半導体売上が1社で5000億近くあったので、少々物足りなさを感じなくもない。復活は道半ばである。■ メガチップスソシオネクストが誕生するまで日本最大のファブレス半導体メーカーだった。もともと任天堂向けの売り上げが大半だったのだが近年は多角化を進めている。昨年の売り上げは約700億とSwitch人気がピークだった時と比べるとやや劣るが営業利益は過去最高を記録している。■ ザインエレクトロニクスかつては日本を代表するファブレス半導体メーカーと言えばここだった。昨年の売上高は54億と、3年前紹介したときの30億から伸びたものの、ファブレス上位2社からはかなり離されてしまっている。大昔は韓国のサムスン電子に自社製品が採用されたのがウリで創業者の武勇伝にも頻繁に登場していたが、今では売り上げの75%を国内に依存しており海外展開の出遅れが否めない。非先端ロジック・マイコン・アナログ・ディスクリートなど■ 東芝車載用途のパワー半導体需要が伸びており、石川県の工場に300mmウェハ対応ラインを建設。この記事でよく出てくる300mmウェハとはシリコンの基板の直径であり、大きい方が製造効率が良い。125mm → 150mm → 200mm → 300mmと順調に大型化が進み次は450mm化と思われたが、大きすぎて弊害が大きく、ここ20年間はずっと300mmが最大サイズである。従来はCPUやメモリといった分野の製造にしか使用されていなかったのだが、ここ5年くらいでパワー半導体にも300mm化の波が押し寄せてきている。■ ローム何かと癖のある京都系メーカー。車載事業が好調で売り上げが順調に伸びている。次世代パワー半導体材料と呼ばれていたSiCで日本国内の他のメーカーをリード。余談だが、筆者は学生のころSiCを実験で扱っていた。単位を落としまくっていた不良学生だったので、教授がワクワクしながら話していたSiCの物性の話はすべて忘れている。今では家電芸人並みのトークしかできないのでSiCについて語ることはご容赦いただきたい。研究から本格量産まで20年超の時間がかかっていることに驚きである。基礎研究の大変さを実感する。■ 三菱電機パワー半導体大手。半導体に力が入っていないシャープから福山工場の敷地を取得し、300mmウェハ対応のラインを構築。SiCのラインも熊本に作るぞ!パワー半導体には詳しくないからこの辺で勘弁な。■ ミライズテクノロジーズ日本の半導体産業が衰退しまくっていたころに、トヨタが危機感を覚えてデンソーとの合弁で設立した車載半導体メーカー。コロナ禍中に行われたオンライン学会に知らない会社の人が出てるなと思って調べたらここだった。■ TI米系のアナログ半導体世界最大手。富士通とAMD合弁のNOR FlashメーカーSpansionから買収した会津若松工場と茨城県の美浦に工場を持つ。最近は日本法人の話をあまり聞かない。■ On semiconductor米系のアナログ半導体大手。三洋電機の半導体部門を買収したが、旧三洋の新潟工場は日本政策投資銀行出資のファンドに売却した。現在の日本拠点は富士通から買収した会津工場。富士通が半導体事業から手を引き工場を切り売りしたため、会津若松市内には米系大手半導体メーカーの工場が立ち並ぶことになった。■ Infineon Technologies (インフィニオン)ドイツの大手電機メーカー、Siemenseが20年ほど前に半導体部門を分社化して誕生した。従来欧州系半導体メーカーは日本での存在感があまりなかったのだが、富士通のマイコン半導体部門を米Spansionが買収、そのSpansionを同じく米Cypressが買収、そのCypressをInfineonが買収した結果、日本市場でも存在感を示すようになった。もともとInfineon自体が車載半導体に力を入れており、有力自動車メーカーがそろう日本市場に注目しているというのもある。■ Nuvoton Technology (ヌヴォトン)台湾の半導体メーカー。半導体から撤退したがっていたPanasonicから、Tower Semiconductorと共同運営している工場と、マイコン設計部門を買収する。Panasonic時代は、自社家電向けの独自マイコンをメインに作っていたのだが、Nuvotonに買収された後はArmベースの汎用マイコンに設計品目が変わった。日本法人は車載やモーター制御向けのマイコン開発に特化させていく方針で台湾の開発チームとは住み分けを図る模様。富士通ほどではないが、Panasonicも半導体部門を切り売りしており、所属していたエンジニアはバラバラになってしまった。研究室が一緒でPanasonicの半導体部門に入社した友人がいたが、彼は今どこに流れ着いているのだろう?
令和05年最新版 日本の半導体産業の現状について
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tagchan · 2 years
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「ととと便り」 『先日のととと的語る部』 先日の日曜は「ととと的語る部」開催。 前半は2名参加、遅めにチェックインしたゲストさんも後から合流。 今回のシェアご飯はは人数が少なそうだったのと 最近だいぶ暖かくなってきたので たこ焼きにしてみました。 カナダのゲストさんは人生で初めてたこ焼きを作ったそうです。 食べるのはカナダにも日本人がたくさんいるから何度もあるそうですが。 今回はレギュラーメニューの「たこ」「ミニトマト」の他に 「もち&キムチ」「キムチ&チーズ」を試してみました。 キムチが予想以上に美味しく、もちも思ったよりも粘らずに食感だけ柔らかくなり、 食べてて全然邪魔になりませんでした。 キムチは今後のレギュラーになる可能性大ですね。 もちもお正月の切り餅がまだ残っているので、ある限りは使おうと思います。 カナダのゲストさんは少し日本語が話せるものの (Duolingoを毎日やっているそうです) ボクらが話す日本語を理解するのは難しく 日本語を話しながら、脳内同時通訳をして 日本語を話し終わったらすぐ英語で話しました。 これ、ものすごい英作文トレーニングになりますね。 もちろん全部を瞬時に正確な英語で話せるわけではないですが 正確さよりも瞬発力重視で、まずは思いつく英語を話して 通じなかったら別の表現を探すということの繰り返しでした。 後半は三鷹の森ジブリ美術館の話をきっかけにジブリトークになり YouTubeでジブリ映画の曲を流していました。 日本のアニメや音楽や海外の方と共通の話題になってくれるのでありがたい。 後から合流したゲストさんは夏油高原スキー場で滑って来たそうです。 夏油高原と安比高原は通常はゴールデンウィークまで滑れるのでまだまだシーズンは続きます。 ぜひぜひ岩手にも滑りに来てくださいね。 「ととと的語る部」は次回は12日(日)開催予定。 次もたこ焼きにしようかな? 参加お待ちしています。 #ととと #ととと盛岡 #ととと便り #ととと的語る部 #盛岡 #岩手 #morioka #iwate #もりおか #岩手においでよ #盛岡のととと #盛岡ゲストハウス #岩手ゲストハウス ------------------------------------------------------- ととと -盛岡の泊まれるたまり場- 住所:岩手県盛岡市鉈屋町1-2 [���泊] チェックイン 17:00-20:30頃到着まで ※泊まったのことのある方は21時到着まで 宿泊料金 1名1泊3,850円(税込)~ [たまり場利用] たまり場営業時間 17:00-23:30 ※最終入館 初めての方は21時まで 利用料 1時間まで:600円 / 1時間以上:1,000円 ※学生料金あり とととのたまり場(リビング&キッチン)は泊まらなくても利用できます。 宿泊ゲストの皆さんとの交流をぜひお楽しみください。 飲食物持込自由。キッチンで自炊可能。 ※来館前にあらかじめ連絡をください。10分前でもかまいません。 ※宿泊がない場合は休館の場合もあります。 ※現在、夜以外の時間のたまり場営業を検討中。曜日、時間帯などご希望があれば教えてください。 ※営業時間内の見学無料。お気軽にお越しください。 ご予約、詳細な情報はHPから! https://bokunohosomichi.fun/ ------------------------------------------------------- (ととと ―盛岡の泊まれるたまり場― Tototo Morioka) https://www.instagram.com/p/CphjTIMBq_L/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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namansharma0950 · 3 months
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ポリプロピレン価格分析: トレンド監視、インデックス更新、予測ニュース
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広く使用されている熱可塑性ポリマーであるポリプロピレンの価格変動は、原材料費、市場の需要、サプライ チェーンの傾向、技術の進歩、およびより広範な経済状況など、いくつかの要因の影響を受けます。
ポリプロピレンは、石油精製および天然ガス処理の副産物であるプロピレンから生産されます。プロピレンの価格は原油価格と密接に関連しています。原油価格が上昇すると、プロピレンの生産コストが増加し、ポリプロピレンの生産コストが高くなります。逆に、原油価格が下落すると、プロピレンの生産コストが下がり、ポリプロピレンの価格が下がる可能性があります。地政学的緊張、自然災害、石油生産レベルの変化など、原油の需給に影響を与える世界的な出来事は、ポリプロピレンの価格に大きな影響を与える可能性があります。
ポリプロピレンの世界的な需要は、その市場価格を決定する上で重要な役割を果たします。包装業界はポリプロピレンの主要消費者であり、容器、ボトル、フィルムなどの製品に使用しています。人口増加と消費パターンの変化によって引き起こされる包装用品に対する消費者の需要の増加は、ポリプロピレンの価格に大きな影響を与えます。同様に、自動車業界では、バンパー、ダッシュボード、内装トリムなどの軽量で耐久性のある部品にポリプロピレンを使用しています。消費者の需要増加と電気自動車や自動運転車の進歩による自動車生産の増加は、需要と価格を押し上げる可能性があります。建設業界でも、パイプ、断熱材、屋根材などの用途にポリプロピレンを使用しており、この分野の変化は市場価格に影響を与える可能性があります。
原材料の入手可能性や製造能力などのサプライチェーンの傾向は、ポリプロピレンの価格に大きく影響します。地政学的イベント、自然災害、物流上の問題によるプロピレン供給の混乱は、不足と価格変動につながる可能性があります。さらに、メーカーが遅延や中断なしに市場の需要を満たす能力は、価格の安定を維持するために不可欠です。生産施設への投資と、効率と収量を向上させる技術の進歩は、供給の安定と価格の低下に役立ちます。
ポリプロピレン生産の技術の進歩は価格に影響を与える可能性があります。製造効率を向上させ、エネルギー消費を削減し、製品品質を向上させるイノベーションは、生産コストを下げ、より競争力のある価格設定につながる可能性があります。たとえば、重合プロセスの進歩や新しい配合の開発により、ポリプロピレン生産の効率が向上し、コストが削減され、価格が下がる可能性があります。ただし、より厳しい環境規制に準拠するには、よりクリーンな生産技術や廃棄物管理システムへの投資が必要になる可能性があり、これにより生産コストが増加し、ポリプロピレンの価格に影響する可能性があります。
ポリプロピレン生産者間の市場競争も価格戦略に影響します。複数のサプライヤーが存在すると、企業が市場シェアを獲得しようとするため、競争的な価格設定のダイナミクスが促進されます。逆に、業界の統合や少数の主要プレーヤーによる支配は、競争圧力を軽減し、生産者は供給管理に基づいてより高い価格を維持できます。
リアルタイムのポリプロピレン価格を入手: https://www.analystjapan.com/Pricing-data/polypropylene-pp-64
世界的な経済成長、インフレ率、為替レートなどの経済要因は、ポリプロピレンの価格に間接的に影響を与えます。景気後退により産業活動と消費者活動が減少し、ポリプロピレンの需要が低下し、市場価格に影響する可能性があります。逆に、経済拡大期には需要が刺激され、価格が上昇する可能性があります。通貨の変動は、原材料の輸入と完成品の輸出のコストに影響し、全体的な生産コストと価格戦略に影響する可能性があります。
ポリプロピレン生産を含む化学業界では、環境規制と持続可能性への懸念がますます重要になっています。環境基準を遵守するには、よりクリーンな技術や廃棄物管理システムへの投資が必要になる可能性があり、これが生産コストや価格に影響します。二酸化炭素排出量の削減やエネルギー効率の向上など、持続可能な慣行への重点が高まっていることは、環境への影響を減らす世界的な取り組みと一致しており、市場価格に影響を与える可能性があります。さらに、環境に優しく持続可能な方法で生産された製品に対する消費者の需要は、持続可能な方法で生産されたポリプロピレンの需要を促進し、その価格に影響を与える可能性があります。
要約すると、ポリプロピレンの価格は、原材料費、さまざまな業界にわたる世界的な需要、サプライチェーンの動向、技術の進歩、市場競争、経済状況、規制環境などの要因の複雑な相互作用によって影響を受けます。ポリプロピレン市場の利害関係者は、これらの要因を注意深く監視して、傾向を予測し、情報に基づいた決定を下し、価格変動に関連するリスクを管理する必要があります。業界が成長し続けるにつれて、ポリプロピレンの需要も増加し続けると予想されます。
ANALYST JAPAN
Call +1 (332) 258- 6602 1-2-3 Manpukuji, Asao-ku, Kawasaki 215-0004 Japan
Website: https://www.analystjapan.com
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soobakjjang · 2 years
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自分の気持ちは埼玉公演の前に整理したつもりだったけれど、もう少しすっきりしておきたい。
もうこの話題にとらわれてるのって私だけかな。。
埼玉公演のあとに、恐らく例の人々がメッセージかなんかをヘンレコに送っているのだろうし(お堅い書類も送ってるんだっけ?)、きっとツアーが終わって、もしかしたら今頃そういったものに目を通しているのかもしれない。
私も問題提起された当時は動向をうかがったりした。自分のスタンスに自信が無かったのもあるし。
プロジェクトに関心がある人か無い人かもわからないけど、運営がよくないといった意見をちらほら見かけた。私はチーム風を長く知っているわけじゃないから、まだそういった判断をする段階にはない。
文春で、��津さんがインタビューに答えているけれど、予備知識の無い人や計画に賛同している人があの記事を読んだら、熱心に訴えるファンを粗雑な物言いであしらっているように思われてしまうのだろうか?おまけに最後に良い人エピソードを入れてくるのが、もしや風に洗脳されているのではないか?くらいに思われたりしていないだろうか。ちょっとネガティブに考え過ぎか??
記事の前半部分と比べると、説明不足感は否めないけど、それが答えなんだろうなと思う。
こうしてインタビューに応じていること自体、疑問を持つファン達をスルーしていない。納得いく回答ではなかったのかもしれないけど。
1人1人公正な判断ができるよう、誰の影響なのか明示すべきだ。
これは、ステルス布教じゃないのか?
という問題提起に対し、
明示すれば、布教活動になってしまう。
特定の宗教を広める意図はない(文春より)。
終了。
…ってことなのかなって。簡潔過ぎ??
あの人たちは、明かすことを具体的にどういうフローで望んでいたのだろうか?…そういえば考えたことなかったな。
自分たちだったらどう伝えていくのか、聞かせてほしい。
自分はこういう信仰があって、このタイトルはここから引用したりしてるんですけど、どうします??聴きます?みたいなことをしたらと??
そんなことしてるアーティスト聞いたことないよね。。
より多くの人に自由に聴いてもらえるように、明言しないということなんだろうと私は判断したのだが、どうだろうか。
そこまで意識していたかどうかはわからないけど、他教の教えを得てはならないようなあの人みたいな人だとか、そういった、信仰を持つ人への配慮なのでは。明示しないことにより踏み絵自体を回避するというか(極端過ぎ?)。
開示しないことで救われる点もあると思うんだけど…。グレーにしておくことを皆は良しとしないのだろうか。
それと、信仰を持たない人への配慮もあるんじゃないのではと思う。開示されることによりフラットな状態では聴けなくなる。
日本の宗教観はもっとカジュアルであるべき、という発言はどういう意味だったのか。
某かの宗教に入信するとかではなく、瞑想だとか、自分にとってよき習慣となりそうなものを取り込んだらいいといったようなこと??そういうふうに理解したから、私は彼に特定の信仰がないのかなと推測していた。
あとは、いわゆる宗教アレルギーぎみな人たちへのメッセージだったのではないかと思ったのね。
人の信仰に寛容であってほしいというか、そういうのがあったりするのかなって(いやいやそれブーメランだからというツッコミは一先ず置いといて)。自分も自由でいたいし、他人に対しても自由でいてほしいと思ってるんじゃないかと思うけどね。
宗教っぽいものの考え方を止めさせるかどうか、といったような話からの流れだったから、こちらの方が自然なのかもしれない。
それで、“宗教チックなマインド”といった言い方をしたのがあちら側の人たちの反感を買ったのではないだろうか。○○信仰、みたいに単純に一言では言い表せないようなことだから、そのような言い方になったというだけなような気がするけど。
確かに、何らかの信仰がある人からしたら、軽い物言いに聞こえ、嫌な気分になったかもしれないけど、宗教を軽視している印象は受けなかった。出処を明言せずに活動��るところが他信仰者を軽視していると言いたいのだろうけど、私は他信仰者を尊重しているからこその方針と予測している。思想を止めさせるという話は極端な例えとしてあげただけだと思う。
あと前にも書いたけど、翻訳による誤解のようなもので解釈をややこしくしてしまっているような気がするのだが。これについてはまた後日書く。
もし、気楽に捉えるべきという意味合いなら、HEHNやLASAが誰からの言葉なのか、別に言っても良くないか?とも少し思った。
だけど、固有名を出したら、リスナーは先入観を持って聴くことになる。意識せずに聴くというのは不可能だと思う。特定の宗教を広める意図はないとのことなのに、それでは望んでいない布教に繋がりかねないし、思考の自由(内心の自由か)を奪うことに近いと思う。
多くの人が、“死ぬのがいいわ”を他人への愛の歌としてとらえていた。NHKの番組内で歌詞について話していたけれど、自分への歌と知って、皆はどう思っただろうか?
他人への愛じゃなかったってことに対してと、思ってたことと違ったということ自体に対して、何かスーッとクールダウンしていくような感覚にならなかっただろうか??それなら正解を知りたくなかったという人もいたかもしれない。種類は違うが、明示する、ということは、そのような自由を奪うことだと思う(知ったあとでも自分の中で解釈を勝手に変えることは出来なくもないかもしれないけど…)。もちろん、作者が誤解して欲しくないことに関して解説するのは必要なことだけれど。
アルバムタイトル等が何由来なのか公表することにより、信仰の告白としてイコールでとらえられてしまうのは必然ではないだろうか?そこは沈黙の自由として憲法で護られるべき部分なのではないか。そういった、法律上の理由か、もしくは業界に暗黙のルールみたいなものがあるのかもしれない。だから、“隠しているわけではなく、言う必要がない”と判断しているのだろうか(最早出処もほぼ明らかな状態で、言う必要がないだけ、ってのも意味あるのかなって思うけど)。あのレストランでもモットーとして使っているけれど、具体的に明かしてないわけで。布教をしてはいけないという教えに基づいているからというのは大きいかもしれない。ん?そういうこと??
文春の記事のタイトルは、事実に即したもっともなタイトルだと主張していたけれど、私はそうは思わなかった。同じような話になってしまうが、“伝道”するつもりは無いのだから。
教えは彼を形成するのに重要な役割を果たしてはいるだろうけど、世に出しているのは、彼の見てきたこと感じたこと学んだことなど、彼自身を通して生まれたものなわけで、そこに例の聖職者の名前を出す必要は無いと思う。同じように生きなさい考えなさい信仰しなさいだとか強要なんてしていない。
私は、好きになってから、おや、もしかして…?と思い始めた少しあとにこのような問題が提起された。やはり引っかかっていたのが2つのスローガンの物販への使用で。私はTシャツ問題の呪縛から逃れられないのかと笑。
知らずに布教活動に加担してしまっていると問題視しているが、誰が言ったというより、普遍的な言葉の意味を重視しているということなのだと思うし、さっきの話に通じるけど、あくまで風のグッズなんだから、持ってても良いと思うんだけどな。
それでも、後ろ指をさされるかもしれないと心配したり、抵抗のある人に、持たないという選択肢は与えられている。
graceのMVや、物議を醸したパナスタの装飾や演出などは、私が予測した多方面への気遣いとは少し離れている気がする。MVに特定の神様っぽい存在を出していたり(ディレクターの意向もあるのかもしれないけど)。
ライブは、考えていることの視覚化がテーマとのこと。遅かれ早かれ、いつかはこんな感じになったのだろうか??ベジタリアンメニューの提供やフードロスについてのブースなど、マインドの部分はわかる。
ヴィジュアル面(衣装や会場の雰囲気)ではgraceからの連動?影響?が大きかったのだろうか。
でも、みんなの中の風くんは、ミッチャムや寝そべりのあの部屋のイメージが大きかったのではないだろうか(ちがう??)。
それが、袈裟だとか作務衣(甚平か)を思わせる衣装で神々しく現れたんだから、あれ、いつもと違う…みたいなあわあわ感があったのではないかと考えているのだけれど。どうだったんだろうか。
インドで見てきたものや、雰囲気をお客さんにもシェアできたら、といったところだったと思う。
だけど結果それが、“匂わせ”として捉えられてしまった?
不安になったり、戸惑ったりした人もいたのだろうし、今まで何となく心に引っかかっていたものが結びついてしまったと認識した人もいるかもしれない。匂わせという捉え方とは異なるが、“それっぽいもの”として認識し、否定し、アレルギーを引き起こした人もいただろう。それらがこの後起こることに拍車をかけたのかもしれない。私は体感していないので想像の域を出ないのだけれど。
さて、ここまで長々書いてきたが、この辺の話でヘンレコの動きは現状ない。
それでも、IIYYの主張は大手の週刊誌にも取りあげられ、河津さんからも“隠しているわけではありません。言う必要がないから言っていないだけです。”という発言を引き出した。
文春はじめ、こぞってネットニュースなどで取りあげられ、風くんの音楽性を未だ知らぬ人々も聴いたことある人々も今回の話題を知ったかもしれない。つまり、持続的ではないかもしれないが、選択することができる状態は実現したのではないか。これはある種功績なのでは??
本人サイドからの説明がなければ意味が無いと言うのかもしれないけど、主張を読み進めていくと、まるで悪いものを信奉していると告白させようとしているような構図に見えなくもない。彼を陥れるためと思われても仕方ないようにも見えるし、先にそういうことをしたのはあなたでしょう?と言いたげで、何だかなあと。何を一番望んでいたのか…。
風くんたちはきっとこの先も、もっと大規模なステージに立とうが、いや、会場のキャパシティだとか知名度だとかに関係無く、一貫して、言葉に共感してくれたら良いって言うんじゃないのかな。
改変?の見込みがないと思ったのか、運営をダサいと吐き捨てた。その発言に対して色々思うことはある。更に上を行く稚拙な物言いしか出来そうもないから、書かないけど。
この約4ヶ月間かなりの時間を費やして考えた。皮肉ではなく、良い機会を与えてもらったと思っている。
客が妄信的だと揶揄されるのは(どこのファンも言われてるだろうけど)いやだなあと思う。
まあ、また私の拡大解釈というか、深読みしすぎなのかなという懸念はある(都合の良い解釈とも捉えられるかも)。いつだって自信なんて無い。
彼本人はぶれることはないと思うので、心配など無駄なことなんだろうけど。
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shintani22 · 2 years
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2022年12月5日
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広島城「三の丸」整備と運営事業予定者に RCC代表の企業グループ(RCCニュース)
民間の資金やノウハウを活用して広島城のにぎわい創出を目指す広島市の事業で、施設の整備と運営を担う事業予定者に、RCCを代表とする企業グループが、選ばれました。
広島市は、民間事業者に商業施設の営業を許可し、その収益を施設の整備費などに充てる「パークPFI」と呼ばれる手法で広島城三の丸を整備します。
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その事業者予定者として、RCCが代表で、TBS・中国新聞社・フジタなどあわせて11社でつくるグループ「広島城アソシエイツ」を公募で選びました。市の公募に応じたのは、このグループだけでした。
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広島城アソシエイツは、2025年以降、三の丸に飲食店や土産物店を開業するほか、イベントなどに活用する多目的広場や駐車場を整備する計画です。
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事業者予定者に選ばれたことについて代表企業のRCCは、「当社は広島城址に社屋を構えるロケーションをこれまで番組やイベントの制作に生かしてきました。中央公園一帯で新施設の整備が進む中、広島城をさらに魅力的なスポットにし、その価値を広く発信していけるよう関係事業者や行政とも連携し取り組んでいく所存です」とするコメントを発表しました。
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広島市は、三の丸に歴史博物館を建設するほか、松井市長が天守閣の木造復元を目指す方針を表明するなど、広島城の観光拠点化を進めています。
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「この価格そろそろ限界かも」 激安弁当、広島のスーパーがポップに込めた切ない思い(中国新聞)
食料品や電気代の値上げラッシュで、10月の消費者物価(生鮮食品を除く)は40年ぶりの歴史的上昇率となった。そんな中、スーパーの300円未満の「激安弁当」が家計の味方として存在感を増す。原材料の値上げは店にも大きな打撃。超低価格の裏側にある思いとは―。広島市のスーパーを訪ねた。
「ノドの渇きは肉汁で潤せ」。ユニークな手書きポップの並ぶ南区のスーパーたかもり宇品本店で、ひときわ切なさが漂う文言があった。「原料高騰しすぎ この価格そろそろ限界かも」。13年間続く250円(税込み270円)弁当のコーナーだった。
開店まもなく来店した無職女性(75)=南区=は息子のために酢とり弁当と牛カルビ弁当を選んだ。「おいしいから喜ぶんよ。売り切れる前に買っておきます」と、ジムに行く前に立ち寄った。電気代の節約のため部屋にビニールカーテンを取り付けたという会社員男性(61)=同=は「安くてボリュームがある。そりゃ家計は助かります」と、さけ弁当を手に取った。
大型店の進出で瀬戸際の経営を迫られていた2009年、起死回生を期してディスカウント路線にかじを切った。その象徴が250円弁当だった。安いといえどもサケやサバは脂の乗った海外産を目利き。調理済みキットはかえって割高になるため使わず、味付けも自前でする。売れ残った肉や魚を弁当に回すわけでもない。副社長の伊木英人さん(49)は「うちは手作りの『人間味』で挑むしかありません」と言い切る。
週末には広島市外からもファンが訪れるが、2年前にはもうけの出ない商品になった。さらに物価高騰が続き、サバの仕入れ原価も当初の2倍以上に。以前はたびたび補充したが、今は翠店(南区)と合わせ200食前後の数量限定にせざるを得ない。ブラジル産の鶏を使っていた唐揚げ弁当は250円での提供を諦めた。一方、より良い肉を使って適正価格で買ってもらう模索も始めた。
天候の影響を受けやすい生鮮食品を除く消費者物価指数は10月、前年比で3・6%上がり、1982年2月以来の伸び率となった。一方、原材料の仕入れの際の企業物価指数は9・1%の上昇。乖離分を小売店が負担するのももう限界という。伊木さんは「お客さんを呼んでくれた250円弁当をやめる度胸がないのが正直なところかもしれません。何とかインフレを乗り切り、お客さんも店も笑顔になれれば」と切望する。
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「物価の優等生」鶏卵も値上がり…卸値は過去30年で最高値、鳥インフルも直撃
輸入飼料高 鳥インフル 直撃…経済再開 需要も増加
店頭価格が比較的安定していることから「物価の優等生」とされてきた鶏卵が値上がりしている。原材料高と円安による輸入物価の上昇を背景に、11月の卸値は過去30年で最高値となった。飼料価格の上昇や例年にない鳥インフルエンザの流行も重なり、高騰に拍車がかかれば家計の負担はいっそう重くなる。
逆風
鶏卵卸最大手のJA全農たまご(東京)によると、11月の1キロ・グラムあたりのMサイズ(東京地区)の卸値は前年同月比26・6%上昇の262円。11月としては猛暑の影響で秋以降の産卵数が減った2013年の260円を上回った。
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値上がりの背景には、供給面での逆風に需要の拡大が重なったことがある。
鶏卵生産のコストはトウモロコシなどの飼料費が約半分を占めるとされるが、飼料の9割近くは輸入に頼る。コロナ禍による海上輸送の混乱や、ウクライナ危機に端を発した国際的な穀物価格の上昇で、9月の配合飼料価格は1トンあたり10万287円と前年同月比で2割、20年9月比で5割上昇した。
鶏卵は手頃なたんぱく源として生食のほか幅広い調理に使われ、もともと消費量が多い。とくに年末はケーキやおでんなど鍋物の需要が高まるため価格も上がりやすい。今年はコロナ禍からの経済活動再開で外食需要も回復し、需要がさらに押し上げられている。
猛威
鳥インフルの猛威も、価格の押し上げ要因となりそうだ。
今年度は岡山や鳥取、鹿児島県などで感染が確認され、12月5日朝時点で殺処分数が約399万羽と、過去最多だった20年度を上回るペースにある。このまま感染が拡大すれば、年明け以降も需給が逼迫する恐れがある。
すでに店頭価格も値上がりしている。11月の東京都区部の鶏卵(10個)の店頭価格は前年同月比5%上昇の247円だった。
東京都足立区の「スーパーさんよう」で仕入れを担当する阿部芳邦取締役(47)は、購入頻度の多い鶏卵の値上がりに「ライバル店との競争を考えると、上昇分全てを価格に転嫁するのは難しい」と話す。サイズの小さい卵を増やすなどして価格を抑えることを検討しているという。
牛乳も
鶏卵以外にも様々な食品で値上げが広がっている。
輸入品が多いバナナ(1キロ・グラム)は、11月の東京都区部で前年同月比13%高い277円となった。日本が輸入するバナナの76%を供給するフィリピン政府は今年6月、生産や輸送にかかるコストが上昇しているとして、日本の小売業界に店頭価格の引き上げを求める要望を行った。
原料の大豆の高騰などで豆腐(1キロ・グラム)は同じく11%高い266円、乳牛の飼料コスト増で牛乳(1リットル)が9%高い235円など軒並み価格が上昇している。
スーパーなどの店頭で集客の目玉商品となり、安値で販売されることも多い食料品の値上がりは家計にとって一段の負担となりそうだ。
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山崎製パン「薄皮シリーズ」内容量5→4個に ランチパックも値上げ(ITmedia 12月6日)
製パン大手の山崎製パンは、2023年1月1日出荷分から「薄皮シリーズ」(全7品)の内容量を変更すると発表した。「ランチパック」3品(ピーナッツ、たまご、ツナマヨネーズ)も価格改定する。小麦粉などの原材料価格の高騰に対処するため。
薄皮シリーズは01年発売の「薄皮つぶあんぱん」を皮切りに、5個入りでシェアしやすいスタイルが長年支持されてきた。内容量は4個に変更する。
1984年に開発したランチパックは、かばんに入れて携帯できる便利さで人気を博してきた。ピーナッツ、たまご、ツナマヨネーズの3品の出荷価格改定率は平均4.7%としている。
同社は今年1月と7月にも食パンと一部菓子パンの値上げを実施したが、油脂類や糖類など原材料価格の高騰やエネルギーコストの上昇が現在も続いており、「企業努力による吸収の範囲を超えた大変厳しいもの」であるとして値上げに踏み切った。同社は「経営の効率化とコスト削減に向けた努力を継続する」としている。
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大塚製薬「ポカリスエット」「エネルゲン」など値上げ、2023年4月1日価格改定(食品産業新聞 12月6日)
イチゴに小麦粉、牛乳も…2022年冬シーズン「クリスマスケーキ」価格調査
大塚製薬は12月6日、一部製品の値上げについて発表した。2023年4月1日納品分から、「ポカリスエット」などを対象に実施する。
メーカー希望小売価格ベースで、「ポカリスエット」の価格改定率はプラス5.9%~10.0%。「ポカリスエット イオンウォーター」はプラス6.3%~10.0%。「エネルゲン」は7.1%~15.2%。「アミノバリュー」は4.8%~11.9%。「ジョグメイトプロテイン ゼリー」は15.2%。
「ポカリスエット」500mlペットボトルの値上げは2000年以来、23年ぶり。現行価格の税別140円から、税別150円になる。
大塚製薬によると、生産効率の向上や経営の合理化などで価格を維持しつつ製品の安定供給に努めてきたが、原材料価格やエネルギーコストの高騰などにより企業努力だけでは現行価格を維持することが困難な状況となったという。
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クリスマスケーキの平均価格は前年から約200円のアップに
相次ぐ値上げ「クリスマスケーキ」にも 平均価格は約200円アップ、価格は平均3800円台 → 4000円台へ(帝国データバンク 12月6日)
物価高騰や円安による値上げの波が「クリスマスケーキ」にも及んでいる。全国の大手コンビニエンスストアや百貨店、スーパー、著名な洋菓子店など計100社で販売される2021-22年シーズンで比較可能なクリスマスケーキの価格(苺ショート・5号サイズ、税抜)を調査した結果、今年の平均価格は前年(3831円)から約5%・209円アップした4040円となった。
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クリスマスケーキの平均価格
���景には、店頭価格ベースでも1.5倍に上昇した小麦粉(強力粉)のほか、イチゴなどのフルーツや砂糖、牛乳、鶏卵など原材料のほとんどが値上がりしていることがあげられる。また、10%程度値上がりしたテイクアウト用の化粧箱や食品フィルムなどの資材費、さらに電気・ガス代、物流費なども高騰が続いており、前年価格から10%以上の大幅な値上げに踏み切ったケーキが目立った。他方で、前年から価格を据え置いたケーキもあり、商品の値付けに苦戦する様相もみられた。
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ケーキの「値上げ幅」動向
前年から価格が上昇したケーキをみると、値上げ幅として最も多いのは「200円台」で23社に上った。特に量販店やスーパーなどで販売される3000円台のケーキに多く見られた。次いで多いのが「300円台」の19社で、イチゴやチョコレートを多く使用した4000~5000円台の中高価格帯ケーキが目立つ。以下「100円台」(16社)、「500円台」(10社)、「400円台」(5社)と続き、調査対象の100社のケーキのうち79社で値上げが判明した。原材料費の高騰を要因にあげる企業が多く、「今回の値上げは最低ライン」など、今後もやむを得ず価格転嫁せざるをえないとった声が多かった。また、値上げのショックを和らげるためイチゴを増量したものの、「粗利益を削っておりかなり厳しい」といった声も聞かれた。
一方で、店頭価格が前年から変わらない「据え置き」も21社確認できた。多くのケーキが値上がりするなか、コスト削減などで対応し「戦略的に値上げしていない」などのケースがみられた。
原材料価格の上昇が続き、クリスマスケーキの値付けは「難しい」と指摘も
クリスマスケーキは平均価格が前年から約200円アップするなど値上げ傾向が鮮明となった。クリスマスケーキは2~3日で多くの販売量が確保できるなど収益面でメリットも多い反面、イチゴなど生もので日持ちしない原材料が多く、事前の量産が難しい面もある。そのため、昨今続く物価高の影響など、原材料価格の動向が読めないなかでの価格設定は難しく、価格を据え置いたケーキと値上げを実施したケーキ、値上げ幅などで動向にばらつきがみられた。
一方、今年1年間で値上げされた食料品は約2万800品目に上り、来年も4000品目超の値上げが控えている。こうした食品値上げにより、世帯平均で年間約7万円、平均支出額の約2%に相当する家計負担増が見込まれ、今冬シーズンは家計に厳しい冬となる見込みだ。そのため、嗜好性の強いクリスマスケーキは価格帯や値上げの有無によって傾向が分かれることも予想され、年に1度の特別なケーキの値上げをめぐる企業と消費者の「駆け引き」が続きそうだ。
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自民・萩生田氏「増税は間違ったメッセージ」防衛費(産経新聞 12月6日)
自民党の萩生田光一政調会長は6日の党会合で、防衛力の抜本的な強化に向けた防衛費増額の財源について「全てを税でまかなうとか、来年から増税が始まるような間違ったメッセージを統一地方選前に出すのは大きなマイナスだ」と述べ、増税議論が先行することを牽制した。
萩生田氏は岸田文雄首相が5日に来年度以降5年間の防衛力整備に関する総経費として約43兆円を確保するよう関係閣僚に指示したことについて「重く受け止めながら、国民の生命・財産を守るという本質的な目標をしっかりと見定めながら、与党間、政府との間で詰めの調整をしていきたい」と述べた。
財源については「将来の財源確保の議論を始めると承知をしているので、税制調査会とも連携を取りながら対応していきたい」とも語った。
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中期防衛力整備計画(5年間)での防衛費の推移
防衛費5年で最大43兆円 政府検討、来年度から(共同通信 12月2日)
政府は、今後の防衛装備品などの経費額を示す「防衛力整備計画」を巡り、2023年度から5年間の総額について、最大43兆円とする方向で検討に入った。最低40兆円は確保し、43兆円までの間で収めたい考え。43兆円となれば、現行の中期防衛力整備計画(19~23年度)の27兆4700億円程度から1.5倍超となる。中国や北朝鮮の軍事動向を踏まえ、岸田文雄首相が掲げる「防衛力の抜本的強化」を裏打ちする内容。首相が来週にも最終判断する。関係者が1日、明らかにした。
防衛費の大幅増額は、軍事大国にならないとしてきた日本の安全保障政策の大きな転換となる。
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【本日(12/5)の広島県内の感染状況】(広島県)
新型コロナ 県内で1509人感染確認 1人死亡(5日発表)(NHKニュース)
広島県では5日、新たに1509人が新型コロナウイルスに感染したことが確認され、1人が亡くなったと発表されました。
感染が確認されたのは▼広島市で610人、▼福山市で322人、▼東広島市で122人、▼尾道市で77人、▼廿日市市で61人、▼呉市で54人、▼府中町で48人、▼三次市で38人、▼府中市で30人、▼庄原市で28人、▼三原市で27人、▼海田町で14人、▼熊野町で13人、▼安芸高田市で11人、▼大竹市と江田島市で9人、▼竹原市と神石高原町で8人、▼世羅町で7人、▼安芸太田町で5人、▼坂町で4人、▼北広島町で3人、▼大崎上島町で1人のあわせて1509人です。
1週間前の月曜日より185人多く、これで県内での感染確認はのべ54万9637人となりました。
また、県内では患者1人が亡くなったと発表されました。県内で新型コロナウイルスに感染し、その後、死亡した人は887人となりました。
新型コロナ 広島県内の病床使用率 46.5%(4日時点)(NHKニュース)
4日時点で病床の使用率は46.5%です。(確保病床数776床、入院患者361人)。
このうち重症患者用の病床使用率は20%です。
(確保重症病床50床、重症の入院患者10人)。
軽症の人や症状がない人が入る宿泊療養施設は10���2室を確保し、317人が過ごしています。
(利用率31.0%)。
直近1週間の人口10万人あたりの新規感染者数は709.28人です。
現在、広島県の感染状況はレベル0から4の5段階のレベルのうち、医療体制への負荷が生じはじめていることを示す「レベル2」です。
【新型コロナ 厚労省まとめ】117人死亡 4万7621人感染 (5日)(NHKニュース)
厚生労働省によりますと、5日発表した国内の新たな感染者は空港の検疫などを含め4万7621人となっています。また国内で亡くなった人は117人で、累計5万461人となっています。
東京都 新型コロナ 14人死亡 5388人感染確認 前週比380人減(NHKニュース)
大阪府 新型コロナ 4人死亡 新たに2329人感染確認(NHKニュース)大阪府内の感染者の累計は231万2422人となりました。府内で感染して亡くなった人は合わせて6783人となっています。
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【決戦考察】W杯、今夜対戦の「クロアチア」が手強い理由
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ミキッチのInstagramのストーリーで、今日がサンフレッチェ広島の引退セレモニーから丸5年ということで動画が上がっています。同じ日にクロアチアと日本が対戦するとはこれまた運命的。
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ari0921 · 4 years
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渡部先生の論稿より
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JB Pressより
ついに登場、自衛隊の宇宙部門「宇宙作戦隊」
その画期的意義と課題、中国・ロシアへの対応
2020.5.21(木)
渡部 悦和
「宇宙作戦隊」が、5月18日、航空自衛隊の隷下の部隊として20人態勢で発足しました。
 20人という極めて小規模な部隊ですが、宇宙戦を遂行する部隊が誕生したことは、自衛隊の歴史において画期的な意義を有します。
 なぜならば、宇宙戦は現代戦において不可欠な要素ですが、今まで自衛隊は宇宙戦を担当する部隊を持たない不完全な組織だったからです。
 小さく生まれた「宇宙作戦隊」を大きく育てるべきです。
「宇宙作戦隊」の創設は、米国の「宇宙軍」の創設と関連づけて考察すべきです。
航空自衛隊「宇宙作戦隊」と米宇宙軍
 米国のドナルド・トランプ大統領は、2019年12月20日、2020会計年度の国防権限法に署名し、これにより「米宇宙軍(US Space Force)」が正式に創設されました。
 宇宙軍の創設については、米軍内部からも「宇宙軍の創設は屋上屋を重ねるものであり、現在の体制で十分だ」という根強い反対がありました。
 トランプ大統領は、軍の反対にもかかわらず宇宙軍の創設にこだわりました。
 彼の狙いは、陸・海・空軍と同格の第6の軍種として宇宙軍を創設することにより、「歴史に名を遺す大統領になる」ことでした。
 トランプ大統領の宇宙開発へのこだわりは、彼が尊敬してやまないロナルド・レーガン大統領に触発されたものです。
日本の宇宙開発能力
 日本の宇宙開発の能力は世界的に見ても高く評価されています。
 日本が初めての人工衛星「おおすみ」(100%国産技術の固体燃料ロケット)を打ち上げたのは1970年2月のことであり、これは中国よりも早く「アジアで最初、世界で4番目」の快挙でした。
 さらに1998年には火星探査機「のぞみ」を打ち上げ、火星探査機を打ち上げた世界で3番目の国になりました。
 また、探査機「はやぶさ2」を地球から約3億キロメートルも離れた小惑星「リュウグウ」に着陸させるなどの大きな成果を挙げています。
 H2Aロケットについては、35回連続で打ち上げに成功しているほど信頼性が高いロケットであり、その打ち上げ成功率は97.5%です。さらに日本は、国際宇宙ステーション運用の参加国です。
 以上のような実績を積み重ねてきた日本ですが、宇宙戦の分野では宇宙大国である米中ロに引き離されています。
 宇宙戦において、日本はG7構成国の中では最も遅れた国です。
「宇宙作戦隊」の創設によりやっとスタートラインについた状況です。遅れた理由は、憲法第9条に起因する「宇宙の平和利用」というイデオロギーです。
日本の宇宙開発能力
 日本の宇宙開発の能力は世界的に見ても高く評価されています。
 日本が初めての人工衛星「おおすみ」(100%国産技術の固体燃料ロケット)を打ち上げたのは1970年2月のことであり、これは中国よりも早く「アジアで最初、世界で4番目」の快挙でした。
 さらに1998年には火星探査機「のぞみ」を打ち上げ、火星探査機を打ち上げた世界で3番目の国になりました。
 また、探査機「はやぶさ2」を地球から約3億キロメートルも離れた小惑星「リュウグウ」に着陸させるなどの大きな成果を挙げています。
 H2Aロケットについては、35回連続で打ち上げに成功しているほど信頼性が高いロケットであり、その打ち上げ成功率は97.5%です。さらに日本は、国際宇宙ステーション運用の参加国です。
 以上のような実績を積み重ねてきた日本ですが、宇宙戦の分野では宇宙大国である米中ロに引き離されています。
 宇宙戦において、日本はG7構成国の中では最も遅れた国です。
「宇宙作戦隊」の創設によりやっとスタートラインについた状況です。遅れた理由は、憲法第9条に起因する「宇宙の平和利用」というイデオロギーです。
40年間続いた非軍事利用のイデオロギー
 宇宙開発事業団(NASDA)を設置する際、日本の宇宙利用を非軍事に限定*2したいという思惑がありました。
 そのため、「非軍事利用が平和目的の利用である」ことを明確にするために、「(日本の宇宙開発は)平和利用に限る」という国会決議が1969年に採択されました。
 しかし、国際的には、「平和目的の宇宙利用とは、防衛目的の軍事利用を含む」という了解があります。
 日本が約40年続けてきた、この「宇宙の非軍事利用=平和利用」というガラパゴス思考を打破するきっかけになったのは、北朝鮮が1998年に行った弾道ミサイル「テポドン」の発射でした。
 日本の安全保障が北朝鮮の弾道ミサイルにより直接的に脅威を受けている現実を目の当たりにして、政府は情報収集衛星の保有を1998年に決めます。
 自衛隊は衛星保有を禁止されていましたから、内閣が所有・運用するという仕組みを取りました。
 この自衛隊が衛星を保有できないという規定は現実に合致せず、結局、2008年5月に制定された「宇宙基本法」により、「防衛的な宇宙利用は宇宙の平和利用である」という国際標準の考え方がやっと認められたのです。
 つまり、宇宙基本法は、日本の宇宙政策に最大の転換点となったのです。
 宇宙基本法がもたらしたこの変化により、防衛省自身が衛星を所有することが可能となりました。
*2=青木節子、日本の宇宙政策、nippon.com
「防衛計画の大綱」に見る宇宙利用の変遷
 宇宙基本法の成立を受けて、宇宙を防衛目的のために利用することを初めて明記したのは、2010(平成22)年12月に決定された防衛計画の大綱(「22大綱」)です。
「22大綱」では、「宇宙空間を使って情報収集をする」という限定的な表現をしました。
 2013(平成25)年12月に決定された「25大綱」では、衛星を用いた情報収集や指揮・統制・情報・通信能力の強化、光学やレーダーの望遠鏡で宇宙空間を監視すること、宇宙状況把握(SSA:Space Situational Awareness)が具体的な「防衛的な宇宙利用」であるとして記載されています。
 つまり、防衛目的の宇宙利用はより積極的なものとなったのです。
 2018(平成30)年12月に決定された「30大綱」では、「宇宙・サイバー・電磁波といった新しい領域における優位性を早期に確保すること」と記述され、「宇宙における優位性を早期に確保する」という表現で、世界標準の考え方が示されました。
「30大綱」ではまた、陸・海・空という伝統的な空間にプラスして宇宙・サイバー・電磁波の領域を加えた6つの領域(ドメイン)を相互に横断して任務を達成する、「領域横断作戦」が採用されたことも特筆すべきです。
「30大綱」に規定された自衛隊の宇宙に係る役割は次の通りです。
①日本の安全保障に重要な情報収集
②通信、測位航法等に利用されている衛星が妨害を受けないように、宇宙空間の常時継続的な監視を行うこと
③妨害を受けた場合には、どのような被害であるのかという事象の特定、被害の局限、被害復旧を迅速に行うこと
 これらの任務が「宇宙作戦隊」の任務に直結します。
 我が国は「30大綱」でやっと宇宙戦を遂行するスタート地点に到達したのです。
日本の宇宙戦の課題
 2015年、私は米国のシンクタンク・戦略予算評価センター(CSBA)を訪問し、エア・シー・バトル(ASB)について議論しました。
 彼らは、中国やロシアの攻撃による米国の衛星インフラの被害を非常に憂慮していました。
 CSBAの対策案は、衛星インフラの強靭化(通信妨害やレーザー攻撃などに耐えられるものにすること)、攻撃された衛星を代替するための小型衛星を打ち上げること、無人航空システム(UAS)で衛星を代替すること、報復手段の保持による抑止などを挙げていました。
 相手の攻撃にいかに対処するかは日本にとっても喫緊の課題なのです。
 世界中で報道されている内容を分析すると、宇宙戦は、戦時だけではなく平時においても実施されていると認識すべきです。
 日本の衛星も平素から通信妨害やレーザーによる妨害などを受けていても不思議ではありません。
 したがって、各省庁がバラバラに宇宙開発を担当する体制から、平時から宇宙戦に対処する国家ぐるみの体制を整備すべきです。
 例えば、SSA体制を完成するためには内閣府・防衛省・国立研究開発法人宇宙航空研究開発機(JAXA)が協力しなければいけません。
 我が国と米国との連携・協力のためには内閣府・防衛省・外務省・JAXAが協力しなければいけません。
 宇宙予算の確保は内閣府が担当しますが、将来的には宇宙開発全体を担当する「宇宙庁」の新編が議論される可能性もあります。
「航空宇宙自衛隊」構想
 防衛省は、国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画(中期防)、宇宙基本計画・工程表を根拠にしながら宇宙に係ってきました。
 そして、防衛省にとってもう一つの重要な柱である「日米の宇宙分野での協力」は、「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」を根拠にしながら、米国との協議や対話を行ってきました。
 防衛省・自衛隊は、いよいよ「宇宙作戦隊」を編成し、将来的には「航空宇宙自衛隊」構想が報道されるようになりました。
 ただ気になることがあります。
 まず、日本の宇宙分野を統括するのは内閣府の宇宙開発戦略推進事務局ですが、その他の機関としてJAXA、内閣衛星情報センター、三菱重工業などの民間企業などがあります。
 それらの機関の宇宙領域の任務などの関係がどうなるのかが問われます。
 次いで、「航空宇宙自衛隊」は、宇宙を担当して何をするのかが問われます。
 SSAだけでは中国やロシアの宇宙戦に対抗できません。SSAの次にくる重要な任務は「宇宙交通管理(STM: Space Traffic Management)」です。
 この「宇宙交通管理」をどの組織が担当するのか、その担当組織と「航空宇宙自衛隊」との関係をどうするかなど、明確にしておかねばならないことが山積しています。
 さらに、「航空宇宙自衛隊」は日本の衛星の防護にも関与するのか、さらに対象国の衛星の破壊や機能麻痺を引き起こす対宇宙(攻撃的な宇宙戦)にまで踏み込むのかなどが問われます。
 筆者は、中国人民解放軍の宇宙を担当する戦略支援部隊の能力を勘案すると、対宇宙の能力を抑止力として保有すべきだと思います。
 また、自衛隊のミサイルなどの長射程化が予想されますが、攻撃目標の絞り込み(ターゲティング)などに宇宙をベースとしたC4ISR(指揮、統制、通信、コンピューター、情報、監視、偵察)能力は不可欠です。
 この機能も「航空宇宙自衛隊」が担当するのかなど、検討すべき事項は多いと思います。
 さらに、宇宙戦と密接な関係にある情報戦、サイバー戦、電子戦を担当する日本の各組織との関係をいかに律するかも課題です。
 その意味で、人民解放軍の「空天網一体化(空・宇宙・サイバー電磁波領域の一体化)」という4領域を融合する考え方は参考になります。
 いずれにしろ、日本が宇宙戦において普通の国になるために克服すべき課題は多く、着実にその課題を克服していくべきです。
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