Tumgik
#八角一段弁当箱
myonbl · 2 years
Text
2022年8月1日(月)
Tumblr media
5月連休の不摂生に端を発した減量計画、順調に推移していたのだがここへ来て少し反動が出てきた。この1週間はむしろ増加傾向にあるのだが、日付をみて納得、前期授業が終わったことで気が緩んだのだ。今日から8月、改めて気持ちもお腹も引き締めよう。
Tumblr media
5時起床。
日誌書く。
Tumblr media
納豆そば+そば湯+ヨーグルト。
洗濯1回。
Tumblr media
ツレアイの弁当と珈琲を用意して、職場まで送る。
Tumblr media
調べ物に便利な<JapanKnowledge Personal>に登録、15,000円/年とのこと。
Tumblr media
イオンモール八条の無印良品まで買物、私のサンダルと家族用の箸を購入する。
Tumblr media
ランチ、3男には素麺、私は納豆丼。
軽く午睡。
昨日はデスクまわりの掃除、今日は溜まりに溜まった段ボール箱の処理。大きいものは古紙回収に出すが、小さな物は可燃ゴミとして処理、30L*3。
今月用の参考資料の整理。
マウスからトラックパッドにしたことでまだ操作に慣れないが、2本指・3本指・4本指、慣れてくればかなり快適に使えそうだ。
Tumblr media
ツレアイから連絡、一緒に食事できる時間なので大皿で用意する。ベーコンとキャベツのクタクタ煮/ちきんじゅーしー/鱧皮と胡瓜の和え物/キュウリと人参のぬか漬け/トマト。味噌汁はタマネギ、ワインは南ア。
録画番組視聴。六角精児の呑み鉄本線・日本旅
「サンライズ&四国の鉄道を呑む!」
初回放送日: 2022年7月30日
俳優・六角精児が「酒」と「鉄道」という偏った視点で旅する
▽寝台特急サンライズ号で四国へ!うどん・すだち酒・渦潮・天然タイ&「線路を走るバス」に大興奮▽語り・壇蜜 「呑み鉄(のみてつ)本線・日本旅」第26弾は「サンライズ瀬戸」と香川・徳島の鉄道にたっぷり乗車する89分スペシャル▽夜の東京から朝の高松へ寝台特急で一直線!さぬきうどんも堪能▽日本一小さい?徳島の酒蔵▽謎のトンネルは幻の新幹線…?▽鳴門の天然タイ&「幻の魚」に大はしゃぎ▽ついに実用化!DMV(デュアルモードビークル)がスゴい!▽今回も魅惑の壇蜜ナレーションと六角さんオススメの曲にのせて列車は走る!
今日から再度減量を心がけ、早めに終了して必ず風呂に入ってから寝ることを徹底する。
Tumblr media
辛うじて3つのリング完成、水分は1,800ml。
5 notes · View notes
chw131 · 3 years
Photo
Tumblr media
Repost @kaoruru.mama おはようございますꕤ…˖* #今日のお弁当 *#ゴーヤバーグ *だし巻き *ミックスビーンズのサラダ *海老とブロッコリーのコクうま炒め *紫キャベツのナムル *蓮根磯部焼き *人参グラッセ *とうもろこしご飯 今日はいろいろと失敗だらけ💔 冷蔵庫で萎びれかけたゴーヤ救済のために、メインはゴーヤバーグにしようとしてたのに いざ作ろうとしたら挽肉がなかった(*꒪꒫꒪)チーン 仕方なく冷凍貯金のハンバーグを解凍💦 詰め終わったと思ったら、だし巻きがポツンと残ってるし笑 トマトやラディッシュもなくて赤色が欲しかった〜😂 せめてお弁当クロスだけでもと赤を添えて… ふぅ💬 残念なお弁当となりました。 さて、気持ちを切り替えてお仕事行ってきます! 皆さまも良い一日をお過ごしくださいね🍀 . . @tsunekichibox #八角一段弁当箱 #おうちごはんLover #おうちごはん #おうちごはんで世界へエールを #wp_deli_japan #wp_deli_recipe #wp_deli_style #snapdish #マカロニメイト#フーディーテーブル #お弁当 #キッチングラム #みんなの暮らし日記online #私のおいしい写真 #eatathomeandshare #アルペンザルツ #オリーブノート #オリーブノートアンバサダー https://www.instagram.com/p/CQUykqZAWrw/?utm_medium=tumblr
3 notes · View notes
2ttf · 12 years
Text
iFontMaker - Supported Glyphs
Latin//Alphabet// ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZabcdefghijklmnopqrstuvwxyz0123456789 !"“”#$%&'‘’()*+,-./:;<=>?@[\]^_`{|}~ Latin//Accent// ¡¢£€¤¥¦§¨©ª«¬®¯°±²³´µ¶·¸¹º»¼½¾¿ÀÁÂÃÄÅÆÇÈÉÊËÌÍÎÏÐÑÒÓÔÕÖ×ØÙÚÛÜÝÞßàáâãäåæçèéêëìíîïðñòóôõö÷øùúûüýþÿ Latin//Extension 1// ĀāĂ㥹ĆćĈĉĊċČčĎďĐđĒēĔĕĖėĘęĚěĜĝĞğĠġĢģĤĥĦħĨĩĪīĬĭĮįİıIJijĴĵĶķĸĹĺĻļĽľĿŀŁłŃńŅņŇňʼnŊŋŌōŎŏŐőŒœŔŕŖŗŘřŚśŜŝŞşŠšŢţŤťŦŧŨũŪūŬŭŮůŰűŲųŴŵŶŷŸŹźŻżŽžſfffiflffifflſtst Latin//Extension 2// ƀƁƂƃƄƅƆƇƈƉƊƋƌƍƎƏƐƑƒƓƔƕƖƗƘƙƚƛƜƝƞƟƠơƢƣƤƥƦƧƨƩƪƫƬƭƮƯưƱƲƳƴƵƶƷƸƹƺƻƼƽƾƿǀǁǂǃDŽDždžLJLjljNJNjnjǍǎǏǐǑǒǓǔǕǖǗǘǙǚǛǜǝǞǟǠǡǢǣǤǥǦǧǨǩǪǫǬǭǮǯǰDZDzdzǴǵǶǷǸǹǺǻǼǽǾǿ Symbols//Web// –—‚„†‡‰‹›•…′″‾⁄℘ℑℜ™ℵ←↑→↓↔↵⇐⇑⇒⇓⇔∀∂∃∅∇∈∉∋∏∑−∗√∝∞∠∧∨∩∪∫∴∼≅≈≠≡≤≥⊂⊃⊄⊆⊇⊕⊗⊥⋅⌈⌉⌊⌋〈〉◊♠♣♥♦ Symbols//Dingbat// ✁✂✃✄✆✇✈✉✌✍✎✏✐✑✒✓✔✕✖✗✘✙✚✛✜✝✞✟✠✡✢✣✤✥✦✧✩✪✫✬✭✮✯✰✱✲✳✴✵✶✷✸✹✺✻✼✽✾✿❀❁❂❃❄❅❆❇❈❉❊❋❍❏❐❑❒❖❘❙❚❛❜❝❞❡❢❣❤❥❦❧❨❩❪❫❬❭❮❯❰❱❲❳❴❵❶❷❸❹❺❻❼❽❾❿➀➁➂➃➄➅➆➇➈➉➊➋➌➍➎➏➐➑➒➓➔➘➙➚➛➜➝➞➟➠➡➢➣➤➥➦➧➨➩➪➫➬➭➮➯➱➲➳➴➵➶➷➸➹➺➻➼➽➾ Japanese//かな// あいうえおかがきぎくぐけげこごさざしじすずせぜそぞただちぢつづてでとどなにぬねのはばぱひびぴふぶぷへべぺほぼぽまみむめもやゆよらりるれろわゐゑをんぁぃぅぇぉっゃゅょゎゔ゛゜ゝゞアイウエオカガキギクグケゲコゴサザシジスズセゼソゾタダチヂツヅテデトドナニヌネノハバパヒビピフブプヘベペホボポマミムメモヤユヨラリルレロワヰヱヲンァィゥェォッャュョヮヴヵヶヷヸヹヺヽヾ Japanese//小学一年// 一右雨円王音下火花貝学気九休玉金空月犬見五口校左三山子四糸字耳七車手十出女小上森人水正生青夕石赤千川先早草足村大男竹中虫町天田土二日入年白八百文木本名目立力林六 Japanese//小学二年// 引羽雲園遠何科夏家歌画回会海絵外角楽活間丸岩顔汽記帰弓牛魚京強教近兄形計元言原戸古午後語工公広交光考行高黄合谷国黒今才細作算止市矢姉思紙寺自時室社弱首秋週春書少場色食心新親図数西声星晴切雪船線前組走多太体台地池知茶昼長鳥朝直通弟店点電刀冬当東答頭同道読内南肉馬売買麦半番父風分聞米歩母方北毎妹万明鳴毛門夜野友用曜来里理話 Japanese//小学三年// 悪安暗医委意育員院飲運泳駅央横屋温化荷開界階寒感漢館岸起期客究急級宮球去橋業曲局銀区苦具君係軽血決研県庫湖向幸港号根祭皿仕死使始指歯詩次事持式実写者主守取酒受州拾終習集住重宿所暑助昭消商章勝乗植申身神真深進世整昔全相送想息速族他打対待代第題炭短談着注柱丁帳調追定庭笛鉄転都度投豆島湯登等動童農波配倍箱畑発反坂板皮悲美鼻筆氷表秒病品負部服福物平返勉放味命面問役薬由油有遊予羊洋葉陽様落流旅両緑礼列練路和 Japanese//小学四年// 愛案以衣位囲胃印英栄塩億加果貨課芽改械害街各覚完官管関観願希季紀喜旗器機議求泣救給挙漁共協鏡競極訓軍郡径型景芸欠結建健験固功好候航康告差菜最材昨札刷殺察参産散残士氏史司試児治辞失借種周祝順初松笑唱焼象照賞臣信成省清静席積折節説浅戦選然争倉巣束側続卒孫帯隊達単置仲貯兆腸低底停的典伝徒努灯堂働特得毒熱念敗梅博飯飛費必票標不夫付府副粉兵別辺変便包法望牧末満未脈民無約勇要養浴利陸良料量輪類令冷例歴連老労録 Japanese//小学五〜六年// 圧移因永営衛易益液演応往桜恩可仮価河過賀快解格確額刊幹慣眼基寄規技義逆久旧居許境均禁句群経潔件券険検限現減故個護効厚耕鉱構興講混査再災妻採際在財罪雑酸賛支志枝師資飼示似識質舎謝授修述術準序招承証条状常情織職制性政勢精製税責績接設舌絶銭祖素総造像増則測属率損退貸態団断築張提程適敵統銅導徳独任燃能破犯判版比肥非備俵評貧布婦富武復複仏編弁保墓報豊防貿暴務夢迷綿輸余預容略留領異遺域宇映延沿我灰拡革閣割株干巻看簡危机貴揮疑吸供胸郷勤筋系敬警劇激穴絹権憲源厳己呼誤后孝皇紅降鋼刻穀骨困砂座済裁策冊蚕至私姿視詞誌磁射捨尺若樹収宗就衆従縦縮熟純処署諸除将傷障城蒸針仁垂推寸盛聖誠宣専泉洗染善奏窓創装層操蔵臓存尊宅担探誕段暖値宙忠著庁頂潮賃痛展討党糖届難乳認納脳派拝背肺俳班晩否批秘腹奮並陛閉片補暮宝訪亡忘棒枚幕密盟模訳郵優幼欲翌乱卵覧裏律臨朗論 Japanese//中学// 亜哀挨曖扱宛嵐依威為畏尉萎偉椅彙違維慰緯壱逸芋咽姻淫陰隠韻唄鬱畝浦詠影鋭疫悦越謁閲炎怨宴援煙猿鉛縁艶汚凹押旺欧殴翁奥憶臆虞乙俺卸穏佳苛架華菓渦嫁暇禍靴寡箇稼蚊牙瓦雅餓介戒怪拐悔皆塊楷潰壊懐諧劾崖涯慨蓋該概骸垣柿核殻郭較隔獲嚇穫岳顎掛括喝渇葛滑褐轄且釜鎌刈甘汗缶肝冠陥乾勘患貫喚堪換敢棺款閑勧寛歓監緩憾還環韓艦鑑含玩頑企伎忌奇祈軌既飢鬼亀幾棋棄毀畿輝騎宜偽欺儀戯擬犠菊吉喫詰却脚虐及丘朽臼糾嗅窮巨拒拠虚距御凶叫狂享況峡挟狭恐恭脅矯響驚仰暁凝巾斤菌琴僅緊錦謹襟吟駆惧愚偶遇隅串屈掘窟繰勲薫刑茎契恵啓掲渓蛍傾携継詣慶憬稽憩鶏迎鯨隙撃桁傑肩倹兼剣拳軒圏堅嫌献遣賢謙鍵繭顕懸幻玄弦舷股虎孤弧枯雇誇鼓錮顧互呉娯悟碁勾孔巧甲江坑抗攻更拘肯侯恒洪荒郊貢控梗喉慌硬絞項溝綱酵稿衡購乞拷剛傲豪克酷獄駒込頃昆恨婚痕紺魂墾懇沙唆詐鎖挫采砕宰栽彩斎債催塞歳載剤削柵索酢搾錯咲刹拶撮擦桟惨傘斬暫旨伺刺祉肢施恣脂紫嗣雌摯賜諮侍慈餌璽軸叱疾執湿嫉漆芝赦斜煮遮邪蛇酌釈爵寂朱狩殊珠腫趣寿呪需儒囚舟秀臭袖羞愁酬醜蹴襲汁充柔渋銃獣叔淑粛塾俊瞬旬巡盾准殉循潤遵庶緒如叙徐升召匠床抄肖尚昇沼宵症祥称渉紹訟掌晶焦硝粧詔奨詳彰憧衝償礁鐘丈冗浄剰畳壌嬢錠譲醸拭殖飾触嘱辱尻伸芯辛侵津唇娠振浸紳診寝慎審震薪刃尽迅甚陣尋腎須吹炊帥粋衰酔遂睡穂随髄枢崇据杉裾瀬是姓征斉牲凄逝婿誓請醒斥析脊隻惜戚跡籍拙窃摂仙占扇栓旋煎羨腺詮践箋潜遷薦繊鮮禅漸膳繕狙阻租措粗疎訴塑遡礎双壮荘捜挿桑掃曹曽爽喪痩葬僧遭槽踪燥霜騒藻憎贈即促捉俗賊遜汰妥唾堕惰駄耐怠胎泰堆袋逮替滞戴滝択沢卓拓託濯諾濁但脱奪棚誰丹旦胆淡嘆端綻鍛弾壇恥致遅痴稚緻畜逐蓄秩窒嫡抽衷酎鋳駐弔挑彫眺釣貼超跳徴嘲澄聴懲勅捗沈珍朕陳鎮椎墜塚漬坪爪鶴呈廷抵邸亭貞帝訂逓偵堤艇締諦泥摘滴溺迭哲徹撤添塡殿斗吐妬途渡塗賭奴怒到逃倒凍唐桃透悼盗陶塔搭棟痘筒稲踏謄藤闘騰洞胴瞳峠匿督篤凸突屯豚頓貪鈍曇丼那謎鍋軟尼弐匂虹尿妊忍寧捻粘悩濃把覇婆罵杯排廃輩培陪媒賠伯拍泊迫剝舶薄漠縛爆箸肌鉢髪伐抜罰閥氾帆汎伴畔般販斑搬煩頒範繁藩蛮盤妃彼披卑疲被扉碑罷避尾眉微膝肘匹泌姫漂苗描猫浜賓頻敏瓶扶怖附訃赴浮符普腐敷膚賦譜侮舞封伏幅覆払沸紛雰噴墳憤丙併柄塀幣弊蔽餅壁璧癖蔑偏遍哺捕舗募慕簿芳邦奉抱泡胞俸倣峰砲崩蜂飽褒縫乏忙坊妨房肪某冒剖紡傍帽貌膨謀頰朴睦僕墨撲没勃堀奔翻凡盆麻摩磨魔昧埋膜枕又抹慢漫魅岬蜜妙眠矛霧娘冥銘滅免麺茂妄盲耗猛網黙紋冶弥厄躍闇喩愉諭癒唯幽悠湧猶裕雄誘憂融与誉妖庸揚揺溶腰瘍踊窯擁謡抑沃翼拉裸羅雷頼絡酪辣濫藍欄吏痢履璃離慄柳竜粒隆硫侶虜慮了涼猟陵僚寮療瞭糧厘倫隣瑠涙累塁励戻鈴零霊隷齢麗暦劣烈裂恋廉錬呂炉賂露弄郎浪廊楼漏籠麓賄脇惑枠湾腕 Japanese//記号//  ・ー~、。〃〄々〆〇〈〉《》「」『』【】〒〓〔〕〖〗〘〙〜〝〞〟〠〡〢〣〤〥〦〧〨〩〰〳〴〵〶 Greek & Coptic//Standard// ʹ͵ͺͻͼͽ;΄΅Ά·ΈΉΊΌΎΏΐΑΒΓΔΕΖΗΘΙΚΛΜΝΞΟΠΡΣΤΥΦΧΨΩΪΫάέήίΰαβγδεζηθικλμνξοπρςστυφχψωϊϋόύώϐϑϒϓϔϕϖϚϜϞϠϢϣϤϥϦϧϨϩϪϫϬϭϮϯϰϱϲϳϴϵ϶ϷϸϹϺϻϼϽϾϿ Cyrillic//Standard// ЀЁЂЃЄЅІЇЈЉЊЋЌЍЎЏАБВГДЕЖЗИЙКЛМНОПРСТУФХЦЧШЩЪЫЬЭЮЯабвгдежзийклмнопрстуфхцчшщъыьэюяѐёђѓєѕіїјљњћќѝўџѢѣѤѥѦѧѨѩѪѫѬѭѰѱѲѳѴѵѶѷѸѹҌҍҐґҒғҖҗҘҙҚқҜҝҠҡҢңҤҥҪҫҬҭҮүҰұҲҳҴҵҶҷҸҹҺһҼҽҾҿӀӁӂӇӈӏӐӑӒӓӔӕӖӗӘәӚӛӜӝӞӟӠӡӢӣӤӥӦӧӨөӪӫӬӭӮӯӰӱӲӳӴӵӶӷӸӹӾӿ Thai//Standard// กขฃคฅฆงจฉชซฌญฎฏฐฑฒณดตถทธนบปผฝพฟภมยรฤลฦวศษสหฬอฮฯะัาำิีึืฺุู฿เแโใไๅๆ็่้๊๋์ํ๎๏๐๑๒๓๔๕๖๗๘๙๚๛
see also How to Edit a Glyph that is not listed on iFontMaker
4 notes · View notes
hi-majine · 5 years
Photo
Tumblr media
たがや
 このごろでは、交通事情のためになくなってしまいましたが、両国の川開きというものはたいへんなものでした。  花火見物の客で混雑をきわめて身うごきもできなくなるんですが、それでも花火がきれいにあがると、「たあまあ屋ー」なんてんで、ほうぼうから声がかかると、みんなもう夢中になってみとれております。  しかし、花火のほめかたというものは、たいへんにむずかしいそうですな。ご年配のかたにうかがいますと、上へいってひらいた花火が、川へおちるまでほめているのが、ほんとうのほめかたなんだそうで……だからうんと長いあいだほめていなくてはいけないと申します。 「たあまあ屋あーい」  てんで、じつに長い。  これと反対なのが、役者衆のほめかたで、ごくみじかく、ぱっとほめます。  歌舞伎のほうだと、「たやっ」なんて声がかかります。ほんとうは、音羽屋というべきところをみじかく「たやっ」とかけるわけです。  新派のほうでも、「水谷っ」「大矢っ」と、やはりみじかくほめます。  これを花火のほめかたでやったらぐあいのわるいもんで…… 「おーとーわーやあー」 「うるせえやい、こんちくしょう」  なんてんで、張り倒されてしまいます。  また、役者衆のほめかたで花火をほめたら、これもぐあいのわるいもんで…… 「玉屋っ」 とみじかくやったら、花火が上へあがったまんまおちてこなかったりして……まさかそんなこともありますまいが……
 むかしは、玉屋と鍵屋と二軒の大きな花火屋がありましたが、玉屋のほうは、天保十四年五月、将軍|家慶《いえよし》公が日光へご参詣のときに自火をだしましたために、おとりつぶしになってしまいました。ですから、あとにのこった大きな花火屋といえば鍵屋だけなのですが、どうも鍵屋という声はかかりません。  端唄《はうた》にも、「玉屋がとりもつ縁かいな」というのがありますし、小唄にも「あがったあがったあがった、玉屋とほめてやろうじゃないかいな」というのがあって、鍵屋のほうはまったくとりあげられておりません。ですから、江戸時代の狂歌にも、   橋の上玉屋玉屋の人の声    なぜか鍵屋といわぬ情《じよう》(錠《じよう》)なし  なんて同情したのがあります。
 さて、むかしは、五月二十八日が川開きの日でしたが、その当日、夕方になりますと、両国橋の上からそのあたりは黒山の人だかりで、爪も立たないようなさわぎ。みんな押したり押されたりしながら夢中で花火をみております。  その混雑の最中に、本所のほうから徒士《かち》の供ざむらいをつれて、仲間《ちゆうげん》に槍を持たせたさむらいが馬を乗りいれてまいりました。  まことに乱暴なはなしですが、そのころは、士農工商という身分制度がきびしくできあがっておりましたから、みんな苦情をいうことができません。 「寄れ、寄れ」  とどなられますと、たださわいで道をあけようとするばかり…… 「おい、馬だ、馬だ、馬だ。そっちへよってくれ」 「寄れないよ、もう橋の欄干《らんかん》にべったりはりついてるんだから……」 「もっと寄れよ、なんなら川の中へとびこんでくんねえな」 「じょうだんいっちゃあいけねえ……おっとっと……押すなよ。押すなってば……死んじまう!」  みんな必死になって馬をよけておりますが、さむらいのほうではそんなことは平気で、なおも人ごみのなかをすすんでまいります。
 一方、両国|広小路《ひろこうじ》のほうからまいりましたのが、たが屋で……このたが屋という商売は、いまではすっかりなくなりましたが、むかしは、桶《おけ》のたがをなおしてあるくことを稼業にして、ほうぼうの家をまわっておりました。  そのたが屋が、仕事を終えて両国橋へさしかかってまいりました。 「あっいけねえ。うっかりして、きょうが川開きだったことを忘れてた。こう人ごみにまきこまれたんじゃあどうにもしょうがねえ。あとへもどることもできやしねえや。しかたがねえ、通してもらおう……すみません。通してやっておくんなせえ」 「いてえ、いてえじゃねえか。だれだい? あっ、たが屋だ。こんな人ごみのなかへそんな大きな道具箱をかついできちゃあしょうがねえなあ。早く通れ、早く通ってくれよ」 「へい、すみません……みなさん、すみません」  てんで、たが屋は、まわりの人たちにあやまりながらすすんでまいります。  一方、さむらいのほうも、 「寄れ、寄れ、寄れい」  と人をかきわけながら、だんだんと橋のなかほどまでやってまいりましたが、これがたが屋と橋のまんなかででっくわしてしまいました。 「寄れ、寄れ、寄れと申すに……」 「へえへえ、すみません」  寄れといわれても、爪も立たないような人ごみのなかで、道具箱をしょってるのですから、たが屋としてもおもうようにはなりません。ただもじもじとするばかり……こうなると、さむらいのほうでもじれったくなってきたとみえまして、 「ええ、寄れと申すに、なぜ寄らんか」  といったかとおもうと、ダーンとたが屋の胸をつきました。不意のことなので、たが屋は持っていた道具箱を、おもわずドシーンととりおとしてしまいました。  間のわるいときはしかたのないもので、道具箱のなかの巻いてある竹のたがが、おちたひょうしに、つっつっつっつっと伸びていったかとおもうと、馬に乗っていたさむらいの笠《かさ》をはじき飛ばしてしまいました。あとは、さむらいのあたまの上に、お茶台のようなものがのこっているばかりで、まことにまぬけなかたち。 「無礼者め!」  さむらいは烈火のごとく怒りました。 「へえ、ごめんください。いきなり胸をつかれましたんで、道具箱をおとしてしまいました。すみません。かんべんしてやっておくんなさい」 「いいや、ならぬ。この無礼者め。ただちに屋敷へ同道いたせ」 「すみません。どうかゆるしてくださいまし。お屋敷へつれていかれたら、この首は胴についちゃあいねえんだ。そうなると、家にいる目のみえねえおふくろが路頭にまよわなくっちゃなりません。ねえ、どうか助けてくださいまし」 「いいや、勘弁まかりならん。いいわけがあらば屋敷へいって申せ。さあ、まいれ」  ただでさえ人ごみなのですから、たが屋とさむらいのやりとりをかこんで黒山の人だかり。うしろのほうにいる連中はなんだかわからずにあつまってるようなことで…… 「なんだ、なんだ、なんだ」 「巾着《きんちやく》切りがつかまったんで……」 「ああ、よくあるやつだ。巾着切りは男かい、女かい?」 「いいえ、巾着切りじゃありません。お産ですよ」 「お産? このさなかに赤ん坊ができるんですか?」 「ええ、この人ごみで押された上に、パーン、パーンという花火の音ですから、赤ん坊だってうかうか腹のなかにはいっちゃあいられないとおもうんですよ。だから、お産にちがいない」 「ちがいないって、みえたんじゃないんですか」 「いいえ、これはあたしがそうおもったんで……」 「いいかげんなことをいうなよ。こっちはほんとうにするじゃねえか……あっ、こっちにずいぶん背の高い人がいらあ、この人に聞いてみよう。もし、そこの背の高い人、ねえ、そこの背の高いおかた」 「なんです?」 「なかはなんです?」 「気の毒に……」 「気の毒?」 「そう、気の毒だよ」 「へえ、そんなに気の毒なことがおこってるんですか」 「いいや、おまえさんが、なかがみえずに気の毒だ」 「なんのこった。みえねえで気の毒だってやがら……しゃくにさわるねえ。なんとかしてなかがみてえもんだ……えーと……そうだ。こうなりゃあ最後の奥の手をだして、股ぐらくぐって前へでちまえ。えー、ごめんよ、ごめんよ」 「あっ、びっくりした。股ぐらからでてきやがった……やい、泥棒」 「なんだと、この野郎、泥棒とはなんだ。いつおれが泥棒した?」 「泥棒じゃねえか。おれの股ぐらくぐったとき、てめえは、股ぐらのできものの膏薬をあたまにくっつけてもってっちまいやがって……」 「えっ、股ぐらのできものの膏薬? あっ、あたまにひっついてやがらあ、きたねえ野郎だなあ……えっ、どうしたんです? ……え? あのたが屋が? たがで、さむれえの笠をはじき飛ばしたんで……うんうん、かわいそうに、意地のわりいさむれえじゃねえか。かんべんしてやればいいのに……供ざむれえもいばってるけど、馬に乗ってるやつはひどく意地が悪そうだねえ……やい、意地悪ざむれえ、ゆるしてやれ。かわいそうじゃねえか。この人でなしの犬ざむれえめ」 「もし、あなた」 「なんです?」 「なんですじゃありませんよ。あなたがさむらいの悪口をいってくれるのはうれしいんですけれどね。あなた、人がわるいや、悪口いっちゃあ、すっと首をひっこめるでしょ? だから、馬上のさむらいがこっちをにらんだときには、ちょうどあたしの顔が真正面。気味が悪くってしょうがないよ。たが屋ともども屋敷へ同道いたせなんていわれちゃあたまったもんじゃない。だから、悪口をいったあとで首をひっこめるのはやめてくださいな」 「えっ、そうなるかしら……どれ、どれ、もういっぺんやってみようか……やい、この意地悪ざむれえ、ばかざむれえ……ああ、なるほど……こうやって首をひっこめると、あなたの首が真正面だ。こりゃああなたがにらまれるわけだね。まあにらまれたのが因果だとあきらめて、あなたもたが屋といっしょにお屋敷へいらっしゃい」 「じょうだんいっちゃいけないよ」
「ねえ、おさむらいさん、さっきからいう通りの事情だ。どうか助けてやってくださいな」 「いや、勘弁まかりならん。この場において斬りすてるぞ」 「ねえ、そんなことをいわずに、助けてくださいまし」 「いいや、ただちに斬りすててくれる。そこへなおれ」 「じゃあ、どうしても斬るってんですかい。どうしてもかんべんしてくれねえってんで……」 「くどい斬りすてる」 「なんだ、この丸太ん棒」 「丸太ん棒とはなんだ」 「そうじゃねえか。血も涙もねえ、目も鼻も口もねえやつだから丸太ん棒てんだ」 「無礼なことを申すな。手はみせんぞ」 「みせねえ手ならしまっとけ。そんな手はこわかあねえや」 「大小が目にはいらんか」 「そんな刀が目にへえるぐれえなら、とっくとむかし手づまつかいになってらあ」 「ええい、二本さしているのがわからんかと申すのだ」 「わかってらい。二本ざしがこわくって、でんがくが食えるかよ。気のきいたうなぎをみろい、四本も五本もさしてらあ、そんなうなぎをうぬらあ食ったことああるめえ……おれもひさしく食わねえが……斬るってんなら、どっからでもいせいよくやってくれ。斬って赤くなけりゃあ銭はもらわねえ西瓜《すいか》野郎てんだ。さあ斬りゃあがれ」  たが屋がいきなりたんかをきりはじめたので、こんどは供ざむらいのほうが押され気味になってまいりました。  形勢《けいせい》不利とみた馬上のさむらい、ぴりぴりと青筋を立てて、 「斬りすてい!」  と命じたからたまりません。 「えい」  とばかり、供ざむらいが抜けば玉散る氷の刃《やいば》とくればいせいがいいんですが、ふだん貧乏で内職に追われてますから、刀の手入れまで手がまわっていない。すっかりさびついてるやつを、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッガサッガサッ……ひどい音を立てて抜いたやつで、いきなり斬りつけてきました。たが屋はこわいから、ひょいと首をひっこめると、刀が空を斬って、供ざむらいのからだがすーっと流れた。そこへつけこんで、いきなりその利腕《ききうで》をぴしりっと手刀で打ちました。ふだん桶の底をひっぱたいていて力がありますから、供ざむらいは、手がしびれて、おもわず刀をぽろりとおとしてしまいました。 「あっ、しまった」  と、ひろおうとするのを、たが屋が腕をつかんでぐっとひっぱったから、とんとんとんとむこうへ流れていくところを、おちてた刀をひろいますと、うしろから、「やっ」と袈裟《けさ》がけに左の肩から右の乳の下へかけて、斜《はす》っかけに斬ってしまいました。くず餅みたいに三角になっちまいました。 「わあ、えらいぞ!」  弥次馬たちは大拍手。  こうなると、馬上のさむらいもだまっていられません。ただちに馬からとびおりまして、仲間に持たしてあった槍をとりますと、石突きをついて鞘をはらい、キュッ、キュッ、キュッとしごいておいて、ぴたりと槍をかまえました。 「下郎、まいれ!」 「なにを! さあこい!」 「やっ」 「えい」 てんで、双方にらみあいとなりました。
「どうです、たが屋の強かったこと、おどろきましたねえ、供ざむらいが三角になっちまった」 「しかし、こんどはいけない。主人のほうは強そうだ。この調子じゃあ、たが屋はやられちまうよ。なんとか加勢してやりたいねえ」 「これが町なかなら、屋根へあがって、かわらをめくってたたきつけるって手もあるんだけれど、橋の上じゃあそれもできやしねえ」 「かまわねえから、下駄でも草履でもあのさむれえにぶつけてやろうじゃねえか」  わあ、わあとまわりの弥次馬が、さむらいめがけていろんなものをぶつけるのですが、腕のちがいというのはしかたがないもので、たが屋はじりっじりっと押されて、欄干《らんかん》間近かになってしまいました。これ以上押されると、欄干にからだがついてしまって、もうよけることができなくなってしまいます。  どうせ田楽《でんがく》刺しになるんなら、身をすててこそ浮かぶ瀬もあれ、一勝負やってやれってんで、くそ度胸をきめたたが屋が、ひょいっとさそいのすきをみせました。  これに乗らなければいいんですが、さむらいとしても、まわりの弥次馬がわあわあさわぎながらいろんなものを投げつけてくるのですから、だんだん冷静さをうしなってきておりました。そこへすきがみえたんですから、「えいっ」とばかり槍を突きだしました。ところが、たが屋のほうは、さむらいをさそうためにつくったすきですから、ひょいとからだをかわすと、満身の力をこめて槍の千段巻きのところをぐっとつかんでしまいました。やりくりがつかない。しかたがないからはなしちまった。やりっぱなしというのはここからはじまったというけれど、あんまりあてにはなりません。  さむらいがあわてて刀の柄へ手をかけようとするところへ、たが屋が飛びこむと、 「えいっ」  とばかり斬りこみました。  いきおいあまって、さむらいの首が空高くぴゅーっとあがります。  これをみた見物人たちがいっせいに、 「あっ、あがった、あがった、あがった、あがったい、たあがあやーい」
2 notes · View notes
xf-2 · 6 years
Link
「女子高生コンクリート詰め殺人事件」の犯人だった湊伸治が今度は殺��未遂で逮捕!
湊伸治以外の犯人たちも出所後に犯罪をしており、「少年法」は更生の役に立たないどころか、むしろ更生を妨げている!
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180821-00547408-shincho-soci 綾瀬女子高生コンクリート詰め殺人の“元少年”が、今度は殺人未遂で逮捕されていた! 8/21(火) 11:45配信、デイリー新潮  8月19日、埼玉県川口市の路上で、32歳の男性の肩を警棒で殴った上、首をナイフで刺したとして45歳の男が殺人未遂の疑いで緊急逮捕された。逮捕された男は川口市の無職、湊伸治――。 「18時5分に被害者の男性から『警棒で殴られ、刃物で首を切りつけられた』との110番通報があり臨場しました。男性は首の後ろから流血がありましたが、幸いなことに命に別状はありませんでした。湊はその場におりませんでしたが、駐車トラブルの原因となった車輌は残っていた。ナンバーから自宅を割り出し自宅に行くと、犯行を認めたため、19時50分に緊急逮捕しました。湊は『刺したことは間違いないが、殺すつもりはなかった』と言っています」(捜査関係者)  警棒は3段の伸縮式で全長41センチ。実際に警察が使用しているものとは少し異なり、いわゆる護身用として販売されているものだという。刃物のほうは折りたたみ式で、刃渡りは8センチ、広げたときの全長は19センチになるという。  殺人未遂罪の法定刑は、死刑または無期懲役、もしくは5年以上の懲役である。しかし、死刑や無期懲役になることはめったになく、多くは懲役3年前後からおよそ7年程度とされる。  ちなみに正当な理由なく、刃渡り6センチを超える刃物を携帯すれば、銃刀法違反で2年以下の懲役、または30万円以下の罰金となる。 「ええ、そちらも視野に入れています」(前出・捜査関係者)  捜査関係者は、いつにも増して徹底して罪に問おうとしているかのようだ。 . ■野獣に人権はない 「湊伸治」という名を聞いてピンとくる人は、多くはないだろう。しかし、すでに一部のネット民の間では話題の男なのだ。  今から30年近く前になる。彼こそ1989年、日本中を震撼させた、綾瀬「女子高生コンクリート詰め殺人事件」の4人の犯行グループの1人なのだ。 「当時16~18歳の少年が、見ず知らずの17歳の女子高生を拉致し、40日間に亘り監禁した上、なぶり殺し、遺体をドラム缶に入れてコンクリートで固め、江東区の埋め立て地に遺棄した――鬼畜としか思えぬ犯行でした。しかも彼らが監禁に及んだ部屋は、少年の両親が同居する実家の2階の自室。その少年こそ、湊伸治(当時16歳)です。両親は共産党系の診療所に勤務し、父は診療所の経営する薬局の薬剤師、母は看護士でした。2人とも共産党員だったため、警察への対応も筋金入りでした。家宅捜索も弁護士立ち会いの下で認めるという具合で、そのために捜査が遅れたと言われたほどでした」(社会部記者)  湊には懲役4年以上6年以下の不定期刑が下された。  当時、実名で報じたのは週刊文春だ。記事を担当したコラムニストの勝谷誠彦氏(57)が振り返る。 「少年法の名の下、実名報道はできないという風潮は今も変わってない。だけど、取材すればするほど、あの事件は酷かった。だから、“野獣に人権はない”と言って、実名報道に踏み切ったわけです。だって名前も報じられない彼らは、数年経ったら世の中に出てきて平気で歩き回るんですよ。逆に殺された、あんなに可愛い女子高生の名前は、じゃんじゃん報じられていた。どっちの人権が大事なのかと思ったけど、人権派という方々からは随分いじめられたね。日本は出所した者に甘すぎるんですよ。アメリカなんて性犯罪者にはGPSまで付けているわけですから。あれほどの性犯罪者、重犯罪者の名を、若いからというだけで実名で報じないのは、むしろ一般庶民に危険が及ぶのだから」 ■駐車トラブルじゃない  その言葉が実現してしまったということか――。では、現在の湊はどんな男になっていたのか。自宅周辺の住民からの評判はすこぶる悪い。 (中略)  実際、階下の住民に聞いてみると、 「ああ、そうなんですよ。夜中の3時でもお構いなく、2階の床をドンドンドンドン踏み鳴らしたり、大声上げたりするんで、うるさくてしょうがない。天井に付いている照明がグラグラしちゃってるの分かります? それで19日の朝も、うるさいから話し合おうと2階に上がってベルを押したんだけど、出てこない。僕が下に降りて部屋に入ると、またドンドンドンドン。その繰り返し……。しばらくすると外に出て行くのが分かったから、追いかけて行って、なんであんなことをするのか問い詰めたんですよ。でも、話をそらして、違う話をしてくる。『何か聞こえるの?』とか言ったりね。頭がおかしいんじゃないかと思ったけど、なんとか止めてもらえるようになったんですよ。そしたら夕方には、あの事件でしょ。ビックリしましたよ、下手をしたら刺されたかもと思うと、今になって恐くてね」  事件の原因は駐車トラブルと発表されているが、目撃者たちの証言は異なる。 「駐車場に軽トラックが入ってきたんですけど、湊は仁王立ちして立ち塞がっていたんですよ。駐車トラブル? そんなんじゃないよ、因縁付けてたんだから。それで軽トラックの運転手が窓を開けたら、いきなり棒で殴ったんだよ」 「いつ刺したのかは分からなかったけど、軽トラには助手席にも人がいてね。その人があの男をぶん殴っていました。それを止めようとしていたのが刺された人です。刺された人は弱っている感じではなかったけど、長袖Tシャツの背中は血に染まっていたね……」  湊立ち会いの下で行われた現場検証を見ていた人は、次のように話す。 「なんだか、まったく悪びれる風もなく『ここら辺でやられたかな、こっちもやったけどさ』なんて言ってましたよ」  29年前の事件から更生したとはとても言い難い。 週刊新潮WEB取材班 2018年8月21日 掲載
>8月19日、埼玉県川口市の路上で、32歳の男性の肩を警棒で殴った上、首をナイフで刺したとして45歳の男が殺人未遂の疑いで緊急逮捕された。逮捕された男は川口市の無職、湊伸治――。
首をナイフで刺したのだから、殺す気満々だな。
>湊は『刺したことは間違いないが、殺すつもりはなかった』と言っています
首をナイフで刺しておいて、『刺したことは間違いないが、殺すつもりはなかった』とか量刑を軽くする戦術なのだろうが、世の中を舐め切っている!
>「湊伸治」という名を聞いてピンとくる人は、多くはないだろう。しかし、すでに一部のネット民の間では話題の男なのだ。
>今から30年近く前になる。彼こそ1989年、日本中を震撼させた、綾瀬「女子高生コンクリート詰め殺人事件」の4人の犯行グループの1人なのだ。
「女子高生コンクリート詰め殺人事件」の犯人=鬼畜は、やはり更生しなかった!
「湊伸治」以外の犯人たちも、更生せずにその後も犯罪をしている。
一日も早く少年法を廃止しろ!
> 「当時16~18歳の少年が、見ず知らずの17歳の女子高生を拉致し、40日間に亘り監禁した上、なぶり殺し、遺体をドラム缶に入れてコンクリートで固め、江東区の埋め立て地に遺棄した――鬼畜としか思えぬ犯行でした。しかも彼らが監禁に及んだ部屋は、少年の両親が同居する実家の2階の自室。その少年こそ、湊伸治(当時16歳)です。両親は共産党系の診療所に勤務し、父は診療所の経営する薬局の薬剤師、母は看護士でした。2人とも共産党員だったため、警察への対応も筋金入りでした。家宅捜索も弁護士立ち会いの下で認めるという具合で、そのために捜査が遅れたと言われたほどでした」(社会部記者)
女子高生コンクリート詰め殺人犯の1人で、今回また殺人未遂で逮捕された湊伸治の両親は2人とも共産党員だった!
共産党員というのは、「大量殺人による独裁支配」を目指している殺人テロ集団の連中なのだから、例外なく殺人テロリストなのだ。(
関連記事1
関連記事2
両親が2人とも共産党員(殺人テロリスト)の鬼畜なのだから、そいつらの子供が鬼畜となってもおかしくない。
そして、監禁、強姦、リンチ、殺害の現場は、この共産党員どもの家の中(2階)だった!
日本共産党幹部自宅2階でリンチ虐殺 
女子高生誘拐監禁集団リンチ虐殺コンクリート詰め死体遺棄事件
>湊には懲役4年以上6年以下の不定期刑が下された。
>当時、実名で報じたのは週刊文春だ。記事を担当したコラムニストの勝谷誠彦氏(57)が振り返る。
> 「少年法の名の下、実名報道はできないという風潮は今も変わってない。だけど、取材すればするほど、あの事件は酷かった。だから、“野獣に人権はない”と言って、実名報道に踏み切ったわけです。だって名前も報じられない彼らは、数年経ったら世の中に出てきて平気で歩き回るんですよ。逆に殺された、あんなに可愛い女子高生の名前は、じゃんじゃん報じられていた。どっちの人権が大事なのかと思ったけど、人権派という方々からは随分いじめられたね。日本は出所した者に甘すぎるんですよ。アメリカなんて性犯罪者にはGPSまで付けているわけですから。あれほどの性犯罪者、重犯罪者の名を、若いからというだけで実名で報じないのは、むしろ一般庶民に危険が及ぶのだから」
成人の「人権」と未成年者の「人権」を差別するのは間違いだ。
人権は、万人に平等に適用されるべきだ。
特に「女子高生コンクリート詰め殺人事件」の犯人の場合には17歳だろうが20歳以上だろうが、鬼畜に変わりないのだから「人権」なんてそもそも関係ない。
日本の「少年法」のように異常なまでに未成年者の犯罪者を甘やかす内容の法律は、世界的にも極めて珍しい。
日本の死刑にはEUなど海外の一部から批判が出ているが、日本の少年法には海外の多くから批判が出ている。
更生の観点からも、少年法で甘やかすから逆に更生の妨げになっている!
後述するが、実際に女子高生コンクリート詰め殺人事件の犯人たちは誰も更生していない!
少年法なんて、百害あって一利なし!
一日も早く少年法を廃止しろ!
> 湊立ち会いの下で行われた現場検証を見ていた人は、次のように話す。
>「なんだか、まったく悪びれる風もなく『ここら辺でやられたかな、こっちもやったけどさ』なんて言ってましたよ」
>29年前の事件から更生したとはとても言い難い。
少年法で甘やかしたこともあり、湊伸治は更生しなかった。
実は、女子高生コンクリート詰め殺人事件の犯人たちは、誰も更生していない。
この機会に「綾瀬女子高生コンクリート詰め殺人事件」について、おさらいしておこう。
40日間、共産党員の家で、鬼畜共によって監禁、強姦、リンチ、殺害された県立八潮南高校3年吉田順子さん(当時17歳)
左上が主犯格の宮野裕史(A) →横山と改姓して横山裕史→再犯(詐欺)
左下が小倉譲(B) →神作と改姓して神作譲→再犯(拉致監禁暴行)
右上が湊伸治(C)→再犯(殺人未遂)
右下が渡邊恭史(D)→引きこもり症候群
https://matome.naver.jp/odai/2135216420298176301 女子高生コンクリート詰め殺人事件の全貌【史上最悪な殺人事件】 女子高生コンクリート詰め殺人事件とは1988年11月25日、18歳Aは埼玉県三郷市内で当時17歳の女子高生をわいせつ目的で拉致、ホテルに連れ込み強姦した。その後、A、17歳B、16歳C、17歳Dの4人で東京都足立区綾瀬のCの自宅に女子高生を監禁して殺害した事件。 【事件番号】平成2う1058 女子高生コンクリート詰め殺人事件は、1988年(昭和63年)11月から1989年(昭和64年)1月の間に、東京都足立区綾瀬で起きた猥褻誘拐・略取、監禁、強姦、暴行、殺人、死体遺棄事件の通称である。 この事件は、加害者が全て少年(未成年)であったこと、犯罪内容が重大・悪質であったこと、犯行期間も長期におよび、少女が監禁されていることに気づいていた周囲の人間も被害者を救わなかったことなどの点で社会に大きな衝撃を与えた。 1988年11月25日、18歳Aは埼玉県三郷市内で当時17歳の女子高生をわいせつ目的で拉致、ホテルに連れ込み強姦した。その後、A、17歳B、16歳C、17歳Dの4人で東京都足立区綾瀬のCの自宅に女子高生を監禁。同28日、17歳E、16歳Fも加わり、6人で女子高生を集団で強姦。その後もCの家の部屋で監禁、強姦、傷害など虐��行為が続いた。 ▼事件概要▼ 1988年(昭和63年)11月8日、A、B、Cの3人が足立区内で自転車で帰宅中の女性(当時19歳)に声をかけ、3人で輪姦した。このときはAが運転するシルビアにB、Cが乗り込み、ドライブの誘いに応じないとみるや車を横づけにして行く手をはばみ、Bが自転車の鍵を奪って嫌がる女性を車に乗せた。逃げられないように常磐高速道路に入り、「少年院を出てきたばかりだ」「大洗(おおあらい)に行こう。大洗の海は寒いし、波が高いぞ」などと脅し、観念させてホテルに連れ込んだのだった。 11月25日午後6時ころ、AはCの自宅に行き、Cに対して、「今日は給料日だから金を持っているやつが多い。ひったくりに行こう」と誘った。Cは友達からバイクを借りて、2人で出かけ、ひったくりをした。 午後8時過ぎ、埼玉県三郷(みさと)市内をバイクで走行中、アルバイト先から自転車に乗って帰宅する途中だった県立八潮(やしお)南高校3年生の古田順子(17歳)を見かけると、AはCに対し、「あの女、蹴れ。あとはうまくやるから」と命じ、Cは言われた通りに、バイクで順子に近づき、左足で右腰を思いっきり蹴って、角を曲がって様子をみていた。 順子はバランスを失い、自転車に乗ったまま転倒、側溝に落ちた。そこへ、Aが近づき「大丈夫ですか」と声をかけ、助け起こすと「あいつは気違いだ。俺も脅された。危ないから送っていってやるよ」と言って、近くにある倉庫の暗がりでと脅し、ホテルに連れ込んで強姦した。 午後10時ころ、Aは自宅に戻っていたCに電話をかけると、そこにはBの他にDがいたが、Aはこの3人を外に呼び出した。その後、4人の少年たちは東京都足立区綾瀬のCの自宅の2階のたまり場に順子を連れ込んだ。 この日、Cの父親は3日間の社員旅行で沖縄に出掛けたため、自宅には母親とCのひとつ上の兄がいた。 11月28日、Aは「いいモノを見せてやる」と言って、呼び出されたE(当時17歳)とF(当時16歳)が加わって、家人が寝静まった深夜に順子を輪姦した。順子は必死の思いで抵抗した。階下の母親は目を覚ましたようであったが、寝具などで顔面を押さえつけられたため、叫び声を上げることはできなかった。 11月30日午後9時ころ、Cの母親は、このとき初めて順子の顔を見ている。Cに対し「早く帰しなさい」と言った。だが、1週間経っても順子がいることに気づき、直接、順子に「すぐに帰りなさい」とは言ってみるもののなかなか帰ってくれなかった。 また、この頃、順子に自宅へ電話をかけさせ「家出しているのだから、私の捜索願いは取り消して欲しい」と言わせている。それも、一度きりでなく、5日ごとに3回に渡って電話をかけさせており、順子の親は家出だと思っていたという。 その後、昼夜の別なく、順子の体を弄び、そのあまりの暴行に、順子が気を失うと、バケツの水に頭を漬けて気を取り戻させて、また犯すということを繰り返していた。その間、交代で見張りを続けた。 12月初めの午後4時ころ、、順子は少年たちが夜遊びで昼寝をしていた隙を見て、2階から1階の居間に降りてきて110番に電話した。だが、運悪く、近くで寝ていたAに気づかれてしまった。すぐに逆探知で警察からかかってきた電話に、Aが出て「なんでもない。間違いです」と返事した。 AとBは、このことをきっかけとして、順子に対し、手荒いリンチを加えた。殴ったり、蹴ったり、手足の甲にライターの火を押し付けたりして火傷を負わせた。また、シンナーを吸わせたり、ウィスキーや焼酎を飲ませて楽しんでいた。 Aは武田鉄矢の『声援』という歌に「がんばれ、がんばれ」という歌詞があって、いじめているときにそれを歌いながら順子に対し「お前も歌え」と言って歌わせた。自分たちが何もしていないときにも順子は小さな声で「がんばれ、がんばれ」と自分に言い聞かせているときがあった。 ▼被害者に行われた行為▼ ◆アルバイト帰りの女子高生を誘拐して不良仲間4人で輪姦 ◆不良仲間の家に監禁し暴走族仲間十数人で輪姦���関係者は100人に及ぶ ◆殴打された顔面が腫れ上がり変形したのを見て「でけえ顔になった」と笑う ◆度重なる暴行に耐えかねて、被害者は「もう殺して」と哀願 ◆顔面に蝋を垂らして顔一面を蝋で覆いつくし、両眼瞼に火のついたままの短くなった蝋燭を立てる ◆衰弱して自力で階下の便所へ行くこともできず飲料パックにした尿をストローで飲ませる ◆鼻口部から出血し、崩れた火傷の傷から血膿が出、室内に飛び散るなど凄惨な状況となった ◆素手では、血で手が汚れると考え、ビニール袋で拳を覆い、腹部、肩などを力まかせに数十回強打 ◆1.74kgのキックボクシング練習器で、ゴルフスイングの要領で力まかせに多数回殴打 ◆揮発性の油を太腿部等に注ぎ、ライターで火を点ける ◆死んだのでコンクリート詰めにして放置 ◆腕や足は、重度の火傷で体液が漏れ出していた ◆脳が萎縮して小さくなっていた 【判決】 主犯格の少年Aに対しては「主犯格で罪責は極めて重大」として懲役20年。 少年Bに対しては懲役5年以上10年以下の不定期刑。 少年Cに対しては「被害者を自宅に監禁し、手加減なく強度の暴行を加えた」として懲役5年以上9年以下の不定期刑。 少年Dに対しては「終始犯行に加わり、すさまじい暴行に及んだ」として懲役5年以上7年以下の不定期刑。 東京高裁は、「少年法によって責任を大幅に減じることは相当とは言えない」として、少年法としてはやや厳しめの判決を下した。
鬼畜どもの顔!名前!その後!
主犯少年A:宮野裕史(現在氏名 横山裕史)
1970年4月30日生まれ
懲役20年の刑で千葉刑務所に服役、2008年出所。
出所後に養子縁組で名字を横山に。
2013年に振り込め詐欺で逮捕。
女子高生監禁コンクリート詰め殺人事件主犯格の宮野裕史(現在氏名 横山裕史)は2013年1月、東京・池袋で銀行からお金をおろす振り込め詐欺の「受け子(出し子)」として逮捕された。
少年B:小倉譲(現在氏名 神作譲)
サブリーダー。1971年5月11日生まれ
裁判では5年から10年の不定期刑が確定し、1999年に出所。
2002年に結婚、養子縁組で神作譲に改名。
2004年に三郷市逮捕監禁致傷事件を起こし再逮捕される。
「オレは人を殺したことがあるんだぞ、本当に殺すぞ」
「オレは10年間懲役を受けてきて、そこで警察や検事を丸め込むノウハウを学んだ。何があっても出て来られる」
「(コンクリート事件を振り返り)アレはマジで楽しかったなあ。サブリーダーとか言ってるが、オレこそ本当の主犯なんだよ。」と吹聴していた!
小倉譲(神作譲)から拉致監禁暴行を受けた青年(当時27歳)
少年C:湊伸治
1972年12月16日生まれ
被害者の女子高生を監禁した犯行現場は湊伸治の自宅部屋。
伸治の兄、湊恒治も監禁に関わったとされる。
両親はバリバリの共産党員だった為、警察の現場検証には弁護士を立ち会わせるなど最大限の権利行使をした。
また「しんぶん赤旗」では被害女性を遊び人のワルだったかのように連日デマ報道を行なった。
5年から9年の不定期刑
出所後はムエタイ選手に。
2018年8月19日に殺人未遂で再逮捕される。
少年D:渡邊恭史
1971年12月18日生まれ
定時制高校に入学も、すぐに登校拒否をし退学。
宮野らのグループに加わり、犯行を行なった。
5年から7年の不定期刑
少年院でいじめに合い、引きこもり症候群に
中村 高次(E)
現在は地元スナックでこの事件のことを面白おかしく語る無反省人間。
伊原 真一 (F)
詳細不明
人気ブログランキング
(ドラマ画像)全身数百カ所にナイフで切られた後、全身数十カ所の骨折
少年法を廃止するべきだ!
少年法(昭和23年7月15日法律第168号)は、占領軍(GHQ)の指導の下に成立した法律だ。
戦後の混乱期に、食料が不足する中、生きていくために窃盗や強盗などをする孤児などの少年が激増し、また成人の犯罪に巻き込まれる事案も多く、これらの非行少年を保護し、再教育するために制定されたものだった。
終戦直後に、生きるために食料を盗んだ少年少女を全て刑務所に入れていたら刑務所が足りないために制定された特殊で一時的な法律だった。
そんな戦後の特殊状況において占領軍(GHQ)によって一時的に制定された「少年法」が約70年経った今もそのまま存続していることは、極めて異常なことのだ!
食料泥棒や、大人の犯罪に巻き込まれる少年がある程度減少した時点を見計らって、廃止すべき法律だった。
日本の「少年法」のように異常なまでに未成年者の犯罪者を甘やかす内容の法律は世界的にも珍しい。
平成27年2月に「川崎国」(神奈川県川崎市)で、舟橋龍一(母がフィリピン人で、父の母が韓国人)ら3人が上村遼太君を殺害した事件においても、3人が逮捕された直後に海外では、異常な日本の少年法を批判し、「日本は少年法を廃止すべき」とする意見が多数上っていた!(
関連記事
更生の観点からも、少年法で犯人を甘やかすから逆に更生の妨げになっている!
実際に、例えば「女子高生コンクリート詰め殺人事件」の犯人たちは誰も更生しなかった。
少年法なんて、百害あって一利なし!
一日も早く少年法を廃止しろ!
●関連記事
実況見分で舟橋は箱の中!少年法を廃止しろ!「スマホを川に投げ捨てた」・樋口、事件後に証拠隠滅
http://deliciousicecoffee.jp/blog-entry-5753.html
実名報道自粛は李珍宇の2件の「殺害→死姦」の後・小松川事件・1960年代まで新聞も実名&写真
http://deliciousicecoffee.jp/blog-entry-5769.html
少年殺害の犯人5人を特定・東松山市の河川敷で「5人で石で殴り、けいれんしたので水に押しつけた」
http://deliciousicecoffee.jp/blog-entry-6343.html
留学生が審判殴り10針縫う怪我・延岡学園バスケ部1年コンゴ出身エルビス・被害届は出さない意向
http://deliciousicecoffee.jp/blog-entry-7118.html
56 notes · View notes
judachigeiju · 6 years
Text
紀伊半島原付旅行記
早めの夏休みをもらったので、原付で伊勢湾フェリーを渡り紀伊半島を一周しようと思い立った。思い立って二週間後に出発した。紀伊半島とは精神の方面である。
Tumblr media
七月二日:浜松から新宮へ
排気量五十CCの原付〈一つ目家鴨〉号はキックスターターを使わないとエンジンが動かなかった。一抹の不安を抱えながら、七時半、原付に跨がった。曇空の下、国道一号線を西に進み、弁天島を回って国道四十二号線、表浜街道伝いに渥美半島を西へ進んだ。
坪井杜国の故地
赤羽根港に付属する道の駅で休んだあと和地交差点から西北に進路を変えて高田交差点で左折、高田西交差点で右折し、右手にある潮音禅寺こと潮音寺を訪れた。境内には柳原白蓮歌碑と山頭火句碑があり、空米売買で尾張徳川家の領地から追放され、渥美半島へ来た坪井杜国の墓碑がある。
Tumblr media
杜国墓碑の前に立っていると住職から 「俳句をやっているのですか?」 と声をかけられ、その日に咲き始めたという蓮を見せてもらった。蓮の初日はあまり開かないのだという。血統書付きの大賀蓮の水鉢もあった。住職は黒目高も二千匹に繁殖させたらしい。川を渡って「杜国屋敷跡」の看板のある角を左折すると畑のなかに小さな杜国公園。〈春ながら名古屋にも似ぬ空の色/杜国〉の句碑が建っており、投句箱もあった。
Tumblr media
十時を回っていたので急いで西へ向かい、二十分ほどで伊良湖岬のフェリー乗り場に着いた。標識交付証明書がなくても排気量を口頭で伝えただけで発券してくれた。合わせて三千九十円で、十円だけ人の方が高い。十時五十分発、五十五分に及ぶ伊勢湾の航海。波が荒かった。伊勢湾を渡っていると雨に降られた。船内のテレビで天皇の病態が報じられ、平成が来年五月までもたないかもしれない、と思った。鳥羽に着くと雨は止んだ。
嶋田青峰の故地
フェリーを出ると正午になろうとしていた。鳥羽フェリーターミナル二階のレストランで食事をとろうとすると係員のおっちゃんから「ここのレストランはおすすめしない。近くの錦屋がいい」と勧められ、錦屋でてこね寿司と伊勢うどんを食べた。若女将の愛想が良かった。食べているうちに梅雨晴間。志摩半島を縦断し、的矢で渡鹿野島を望もうとしたら、的矢は、ホトトギス同人から除名され新興俳句弾圧事件で逮捕された俳人嶋田青峰の郷里だった。句碑〈日輪は筏にそそぎ牡蠣育つ/嶋田青峰〉も、弟である嶋田的浦の句碑〈海うらら水平線は汽船を引く/嶋田的浦〉も夏草のなかにあった。杜国といい青峰といい不遇な俳人ゆかりの土地ばかり巡った一日だ。志摩半島の浦はどこも簡素で好きになった。尾鷲で小雨に遭い、虹を見た。ひたすら走り、いくつもの浦の潮が戻るのを見ながら走り、十九時に新宮駅近くへ投宿した。
Tumblr media
七月三日:新宮から田辺へ
目覚めるとサッカー日本代表が白耳義に惜敗していた。六時半に新宮市の「路地」を見てから霧雨の国道百六十八号を熊野本宮大社まで走った。
Tumblr media
山岳信仰とサッカー
観光客がほとんどいない大斎原や本殿を見た。熊野は大学一年生のとき以来だから十年以上ぶりだ。拝殿にサッカーワールドカップ関連の展示があったが、侍ブルーのユニフォームを着たスタッフが取り外していた。熊野の神に勝ったのだから確かに白耳義は赤い悪魔だった。
Tumblr media
八時半に給油してから山を下り、新宮市街まで戻ってから那智の滝を見た。数年ぶりに絵馬を書いたり護摩木を焚いたりした。熊野本宮よりも那智の滝を神体とする信仰の方が私にはわかりやすい。
鯨焼肉はレバーの味
十一時には那智を離れ、正午に太地町へ着いた。くじら博物館は千五百円を惜しんで入らなかったけれど鯨恵比須の鯨骨鳥居と燈明崎の山見を見て、道の駅たいじで鯨焼肉定食を食べた。血臭いのでやはり鯨肉は揚げた方がいい。
Tumblr media Tumblr media
尻ではなく太腿で乗る
国道四十二号線をひたすら西へ。里野で水泳パンツに着替えたがちょうど日が陰って寒くなり、海水浴はあきらめた。見老津のあたりで和歌山県警の軽パトカーに跡をつけられたので、先に行かせたら、また後ろに回られてスピーカーで停められた。職務質問だ。「浜松市」ナンバーを見なれないから停めたとのこと。浜松から原付で来たと説明すると「どうしてそんな気になったんですか」と訊かれた。「お尻が痛くならないんですか」とも訊かれたので「尻ではなく太腿で乗ると痛くならない」と答えた。ズボンの下は水泳パンツなので、ズボンの中まで調べられたら即逮捕だっただろう。別れ際に夜間に掛けられる光る反射タスキをもらった。それから道の駅ごとに休み、田辺を目指した。
交番へ出頭
十六時過ぎに道の駅椿はなの湯で休んだ。ベンチに座ってのんびりしていると別のベンチに座っていた老爺が「そろそろ行くか」と独り言を言い、軽トラックでどこかへ行った。老爺のベンチが日陰だったので日射を避けるべく私はその日陰のベンチに移動した。するとベンチの上に財布が落ちていた。あの老爺の財布だと思い、私は戻ってくるまで待つことにした。でも戻ってこなかった。道の駅は定休日で閉まっていた。仕方なく私はその財布を持って近くの椿駐在所まで行った。しかし駐在さんはおらず、備え付けの電話を架けると婦警が富田駐在所まで来ていただけるかと言った。住宅街のなかにある富田駐在所へ出頭し拾得物物件預り書一枚で解放された。一日に二回も警察沙汰だ。交番を出て国道四十二号線に出た途端に雨が降り出した。晴れ間をぬって沿岸を北へ進み田辺駅近くの美吉屋旅館へ投宿した。自動扉が開くと禿親父がソファに寝そべって歌謡ショーを観ていた。客かと思ったけれど主人で間違えなかった。夜風が吹いただけで骨組が唸る旅館の「菊」の部屋に泊まった。若旦那から純喫茶桂のご主人が亡くなって看板を下ろしたと聞いた。灯りが点いているのはどきどき奥さんがいるからだとのこと。
Tumblr media
七月四日:田辺から大和高田へ
北上するには二通りあった。海岸沿いに国道四十二号線を進む海ルートと高野山を経る山ルートだ。高野山は魅力だが山ルートにはガソリンスタンド問題があった。ただでさえ燃費が四十キロ前半まで落ちているのにガソリンスタンドが少ない山中を百数十キロ走るのはガス欠リスクが高い、それに近畿地方の天気予報は全域で雨なのであえて天候の見えにくい山間部を通ることもなく海ルートに決めた。
台風七号ブラピルーン
フロントに鍵を置いて五時半過ぎに出発した。みなべ町の岩代で、四つのH音のやるせなさが素晴らしい〈家有者笥尓盛飯乎草枕旅尓之有者椎之葉尓盛/有間皇子〉が詠まれたという磐代の結松と畑のなかの寺脇にある歌碑を観た。八時くらいまで台風七号はおとなしかったがトンネルを出て由良町になってから本気を出し、激しく雨が降り出した。それでも走り続けたのでジーパンはもちろん下着までぐっしょり濡れた。なぜ走っていたのかと言うと大阪は午後から曇るという予報に賭けたからだ。和歌山市まで強く雨が降っていた。大阪府に入ると小雨になり時々晴れ間も見えた。雨雲レーダーを見ると高野山はもっと強く降っていたので山ルートにしなくて本当に良かった。岸和田城の横を通り和泉市で冷えた体の血流を回復させてから東へ折れ、富田林から河南、水越トンネルをくぐって大和の葛城に出た。山はやはり雨が降っていた。
葛城一言主神社では二人の男性が階段下の祓戸神社へ参拝してから昇段し、一言主神社の拝殿へ参拝していた。一言さんは地元の信仰を集めているらしい。それと拝殿に参拝する事前準備として拝む祓戸神社というシステムは熊野本宮にもあった。祓戸神社の祭神はいずれも瀬織津姫、近畿地方の格式ある神社の様式だろうか。大和高田のネットカフェで刃牙を読んだあと大和高田駅近くの福の屋旅館の「菊」に泊まった。また菊だ。女将一家の生活スペースと部屋が廊下一つを隔てて隣りあっているので、おばあちゃん家に泊まった感があった。女将は、橿原神宮の神武天皇が奈良県を大災害から守っていると言った。そういう信仰は美しい。
Tumblr media
七月五日:大和高田から浜松へ
近鉄大和高田駅のミニストップで食事をとった。ちょうど通学時間帯で女子中生・女子高生が目に入る。それは揚羽よりも速いという女子高生に会いに吉野へ行くからだろう。
Tumblr media
三重県南部は雨時々曇りという予報を見て急ぎ八時半には宿を出た。女将から缶珈琲をもらった。桜井を経て九時半過ぎに宇陀の阿騎野へ。吉野とは飛鳥の平地から見上げるような山地のことだった。東の野にけぶりの立つ見える阿騎野は菟田吾城という古代城郭があったらしい。鎌を持った小母さんから「この地は薬草で有名」「元伊勢」と聞いた。
人間のクズが国栖に
吉野川まで南下して国栖の里を眺め十一時前には国栖奏伝習所の横を通り浄見原神社を訪れ記名した。「鯨は人間のクズだ。ちなみにクズは国栖、先住民族の名だ」と言われてからずっと気になっていた土地「国栖」に立てた。
Tumblr media Tumblr media
県道十六号で国道百六十六号線に戻り、鷲家八幡神社の桂信子句碑・前登志夫歌碑・宝蔵寺の能村登四郎句碑を見て、高見山を仰いだ。そういえば吉野で女子校生は見なかった。汗に冷えた体で高見山トンネルをくぐった。それから虹の泉のほかは伊勢までひたすらに走った。
Tumblr media
近畿地方はあちこちで豪雨らしいが、幸運にも私は雨を数粒受けただけで水泳パンツを履いた意味がなかった。猿田彦神社を参拝し十六時前には鳥羽のフェリー乗り場に着いた。十六時半発のフェリーには間に合ったがガソリンが空になりそうだった。あこや真珠と中国産の淡水真珠の違いを聞いた。
Tumblr media
雨の帰浜
フェリーは伊勢湾に出ると波に揺れた。恋路ヶ浜を見下ろしてから国道二百五十九号線を通って豊橋市を目指した。国道二十三号線からは私が「ほぼ原付専用道路」と呼んでいるバイパス横の側道を通り湖西市へ。昼夜食堂港屋本店で浅蜊汁と鯵の開きを食べた。食堂を出ると雨が降り始めた。弁天島を経て国道一号線で帰宅した。四日間の走行距離は九百三十五キロメートルだった。あとヘルメットのシールドが割れていた。
Tumblr media
2 notes · View notes
y24klogs · 4 years
Text
剣の従者は血を求め
ツバキ君、リィベ君、ディードさんといっしょ
アルシエル : さて、今日の依頼は4人でだったか?呼ぶ相手は合ってるのかディード ディード : ……まあそいつらが手ぇ空いてるってんならってとこだが ディード : (ちら、と二人の冒険者を見る…リィベの方は知り合いだが…一人は…) ディード : よっ、お前さんは初めましてになるかね ディード : たまにここいらにいるようだし、同業さんだろ ツバキ : 御明察 はじましてー、ってね リィベ : ……まあ、腕は十分に立つ方だな(ツバキを見下ろし アルシエル : リィベの知り合いなのか。じゃ話は早いな。 ディード : っと、そっちが知り合いだったか ディード : んだな、どうだ…手ぇ空いてたら一仕事 リィベ : ああ、知っていて呼んだのだと思っていたが…まあ、問題はあるまい ツバキ : 構わねーけれど、前衛として期待されても困るぜ 専門はこれだからさ(親指で首を掻き切る仕草 ディード : うんにゃ、メンツ合わせなんざ大体流れでなるだろうよ…っと ディード : なるほどな…そんじゃまあそれこそ同業に近いな…(ツバキを見て ディード : 俺ァ賞金稼ぎのディードだ。よろしくな。 ツバキ : へぇ・・・ アルシエル : 私はアルシエル。アルでいいぞ ツバキ : 僕は・・・そうだなあ(きょろきょろ ツバキ : まあ、いいか ツバキってんだよ よろしくね~ ディード : …なんだ?今の間は…まぁいいが ディード : ツバキな。…覚えとくよ アルシエル : して、依頼なのだろう。宿に行かねば話にならん。行くぞ ツバキ : おかまいなく~(ひらひら手を振ってアルくんの後を追った ディード : だな、改めてよろしく頼むぜ(ははっと笑いを零して リィベ : やれやれ……(軽く溜息を吐いてその後を追った ディード : そんじゃまあ依頼依頼っと…金になりそうなやつな ディード : (そう言って男は銃を背負い直し、掲示板の方へと向かう) ツバキ : (こっちはこっちで依頼書の束を手にとってぱらぱら捲り アルシエル : (眠そうにしている) リィベ : ……(ちらりと剣の従者は血を求めの依頼書に目を留めた ディード : お?なんか気になったか?(目敏くその様子を見て) ツバキ : おや?(ろくに目を通してなかった紙束を投げ捨て リィベ : …いや、注釈が少し気になってな…(ぺらり、と他の者にも見せつつ アルシエル : うあ?(居眠りから起きた) ディード : 処分ごときに二人以上…?ふぅん ツバキ : 寝てた?いま アルシエル : 寝ていた。 ディード : …テメェは寝てんじゃねえよ!爺さんか! ツバキ : 素直でよろしい アルシエル : お前が選べばいいだろうが……私が選ぶより良いのを選ぶだろう! ディード : 寝ていい理由にゃならんだろ… ディード : んで?どうする?その依頼に行くかい? ツバキ : 信頼の裏返しかねえ・・・? ま、僕は構わねえよ リィベ : ……まあ、魔術師なら魔道具に関してそれなりに知見もあるだろう アルシエル : 良いよ。なんでも リィベ : (二人のやり取りに少し眉間を抑つつも リィベ : では、話を聞いてみるとしようか ツバキ : あいよ~
リィベがクエストの参加を募集しています。 クエストを開始します。 君達は依頼を受け、依頼人宅を訪れていた。 此度の依頼は魔道具の処分の予定だ。 詳細を依頼人に聞こう。 依頼人: ああ、君達が今回の。 そこに掛けてくれ。説明をしよう。 依頼人は椅子を引き、君達に座るよう促した。 君達は依頼の話を聞く事にした。 ツバキ : (突っ立ったままぼんやり見下ろした アルシエル : (さっさと座った) リィベ : (丁寧な所作で座り ディード : (一応見張るようにアルシエルの隣へ、うたた寝でもかませばすぐに対処できるようにということだ) アルシエル : (コイツ……といった視線を向けたがすぐに真面目に依頼人に向き直った) 依頼人: どこから話したものかな…… リィベ : ……まずは依頼の概要から聞かせて頂きたい リィベが[今回の依頼の概要]を選択しました 依頼人: 張り紙にも書いておいたように、魔道具の破壊依頼だよ。 その魔道具というのは…… 依頼人は立ち上がると、壁に立てかけられた箱を手に戻ってきた。 おそらくはこの中に魔道具とやらが入っているのだろう。 机の上に箱を置き、幾つかの留め具を外し、 依頼人は箱を開けて君達にも見るよう促した。 君達がめいめい箱を覗き込むと、そこには剣が納められていた。 さしたる装飾も無いそれは、単なる量産品にも見える。 磨き上げられた鏡面が君達の顔を映し出した。 アルシエル : ほう(遠目に覗いた) ツバキ : ふーん・・・? フツーの剣に見えっけど(矯めつ眇めつ ディード : 魔道具っつうかこりゃ、剣… ディード : どうだ、アル…なんかわかるか? リィベ : ……ふむ 依頼人: 魔道具というのはこの剣でね。 これは所持者の力を高め、熟達の剣士のように戦わせる…… そういった魔道具だよ。 アルシエル : え~……普通の剣に見えるが。少し魔力があるかなというくらいだ。 ツバキ : 持ったら強くなる・・・ね・・・ ディード : ほーなるほど… リィベ : oO(……正直なところ、怪しい効果だな…) ディード : 武器に振り回されるがまさしくヤバイ方面に行ったような品だねえ アルシエル : 力を得ても本体が伴ってないと厳しい気もするが……大体わかったよ ディード : ま、俺ァその手のは専門外だが…これの処分ねえ ただの剣を破壊することは困難には思えない。 魔道具というからには何か事情があるのだろう。 君達は続きを話すようにと促す。 ツバキ : わざわざ依頼に出すってこたあ、まあ・・・ リィベ : ……簡単にはいかない理由がある、ということだろう ツバキ : ――だねえ 依頼人: これは不活性状態だと破壊が難しくてね。 起動させてから破壊するために君達を呼んだというわけだ。
アルシエル : 起動させるってことは…… リィベ : ……ふむ?力の大半を保護に回しているという事か ツバキ : (ぐるりとメンツを見渡した ディード : 俺ァ剣も魔術もよくわからんぞ(とビシッと手を挙げて) 依頼人: 活性化状態に移行するには…… この剣を誰かが使う必要がある。 アルシエル : そういうのでも使えるように造られてるんじゃないか。そういう用途でしょ ディード : ……(だよなという顔をした) ツバキ : ま、使い潰しの効く駒に持たせちまえってー意図だろうなあ リィベ : …むしろ、下手に心得がある者が使えば始末に負えない恐れがあるな ツバキ : (ニヤ ディード : (目線をそっと逸した) アルシエル : むしろ苦手な奴が使った方がいいんじゃない? リィベ : そうだな……となると 依頼人: 君達の中の一人がこの剣を使って戦い、そうして負ける。 それでこの剣の魔力は使い果たされ、破壊が可能になるんだ。 ツバキ : 僕ぅ~ 剣とかぁ~ 苦手かもですぅ~ リィベ : ……最も適役なのは君かな(スルーしてアルシエルの方に視線を向け アルシエル : ええ~……痛そうだな~…… ツバキ : ちぇ リィベ : 治療の準備は万全にしておくよ(苦笑し リィベ : まあ、無理強いはしないがね… ディード : (まあコイツなら下手打っても死なんだろうが…大丈夫かねえ…?) アルシエル : じゃ、良いよ。私がやってあげても。あんまり痛くしたら後で殺すぞ ツバキ : ヒェ ディード : (そんな事を考えつつも余計なことは言わなかった。なぜなら自分はその役回りは嫌だからである) リィベ : ……善処はしよう ディード : (依頼の為に相棒を差し出すことに躊躇いは普通になかったのだ…) ディード : (男は静かに頷くと) ディード : よし、任せたぜ アル。 ディード : (すごく軽いトーンでそう言った。) 依頼人は値踏みするように君達を見渡した。 同士討ちをしろという事なのだろうか…… 依頼人: どこから話したものかな…… アルシエル : 後で覚えていろ…… ツバキ : こいつに持たせんのが一番楽だと思うんだがねえ・・・(小声 リィベ : ………(内心同感なのだが、聞かなかったことにしつつ アルシエル : そういえば、注意点とかはあるのか? ディード : (へっと笑い飛ばしている) アルシエルが[注意点]を選択しました 君達は依頼の注意点について聞く事にした。 依頼人: 誰か一人がこの剣を使うわけだけど、そうだな…… 何もしなかったり、あとは剣を手から外すのは危険だな。 アルシエル : そうなのか。 ツバキ : ほーお? 依頼人: 剣と持ち主は魔術的につながりを持つからね。 無理矢理引き離した場合、精神への衝撃は計り知れないな。 アルシエル : うえ~……(嫌そうな顔をした) リィベ : oO(……控えめに言ってもたちの悪い呪物にしか思えんな) ツバキ : こりゃマジモンの貧乏くじ引いたね ご愁傷様だぜ、アルくん(けたけたと笑って アルシエル : 本より重い物はもたないつもりだったというに…… ディード : まあ、コイツなら平気そうだがなァ コイツもタチ悪いレベルで図太いし ツバキ : ハハ そりゃ頼もしいこって 依頼人: 何もしない場合、剣の魔力が周囲の精神力を奪うんだ。 適度に戦うようにしてくれよ。 リィベ : まあ、更に危険を招く行為をする必要はあるまい アルシエル : ふーん…… 依頼人: どこから話したものかな…… ツバキ : ま、大体は把握したかね アルシエル : 大体はわかったよ ディード : んな厄介なモン作るたぁ…とんでもねえな リィベ : ……まあ、何処にも倫理の枷を外した者は居るということだろうさ ツバキ : 含蓄深い台詞だこと ディード : 大方私兵かどっかの戦時に用いられたとかかねえ… アルシエル : 私兵を鍛えるほどの余裕も無かったんじゃないの。多分 リィベ : …まあ、これ以上聞くことは無さそうか ツバキ : んだね リィベが[聞く事は無い]を選択しました 依頼人: そうか。 それじゃあ剣は渡しておくよ。 依頼人: なるべく戦うのが不得意な人が持つのが良いんじゃないかな。 その方が楽だと思うよ。それじゃ、宜しく頼んだよ。 リィベ : oO(全員、戦闘慣れ自体はしていると思うがな……) アルシエル : ほれ、私が持って行こう。寄越せ。 リィベ : ああ、では頼んだ ツバキ : (いち早く手を伸ばしてひょいと剣を取り、ちろっと見てから差し出した 相手プレイヤーの決定を待っています。 トレードが成立しました。 0ルド失った。 アルシエルが[左手]の装備を解除しました。 ツバキが[右手]に[短刀"幻"]を装備しました。 アルシエルが[左手]に[従者の剣]を装備しました。 ツバキが[左手]に[短刀”夕霧”]を装備しました。 アルシエル : お~(左手に従者の剣を持った) ディード : んー見れば見るほど普通の剣なんだがな… アルシエル : 軽い。私でも振り回せそうだな ツバキ : そいつは結構 ・・・室内は勘弁してくれよな アルシエル : じゃ、行こうか リィベ : ああ ディード : やるなら外だぜ、つっても弾当てんのもなあ
君達は郊外の荒地を目指し、歩を進めた。 午後の日差しが目に眩しい。
少しだけ日が傾いているらしかった。 君達は郊外の荒地まで来ていた。 この場所であればどれほど争っても迷惑にはならない。 既に月が登り、日は暮れていた。 アルシエル : もう夜か…… ツバキ : いーい月だ(ぐぐーっと伸びて リィベ : 辺りに民家も無いし、多少喧しくても問題はないだろう ディード : まあ、旅人に見っかって止めが入るよか都合いいしな アルシエル : うむ。容赦なくやれるし都合が良いだろ。 君達は各々武器を構えた。 アルシエル : (剣を構えた。思いの外様になっている) ツバキ : そんじゃ、始めますか(生身の腕と、鋼の義手に短刀を構え リィベ : さて……(刀身の歪んだ銀の剣を鞘から抜き出し ディード : ……ナイフもあったんだが、まあ…こっちでいいか。(銀色のナイフを一瞬アルシエルに見せて) ディード : (すぐに銃の方へと手をかけた) アルシエル : そっち使ったら怒るぞ(ぼそぼそ) ディード : へーへー んじゃ、まあ ディード : 奇妙な依頼だがこんなもんでいいなら…そこそこ美味いほうだろ。お手柔らかにな リィベ : そうだな……始めよう Round 1 アルシエルは[剣の従者]になった ツバキは移動した。    ツバキは[4,4]へ移動した。 リィベは移動した。    リィベは[4,2]へ移動した。 アルシエル : 悪いが加減をする気は無いよ 従う! アルシエルは剣を振るった!  達成値:9 ([2,1,1]+5) ディード : ブレイクスルー!    ディードは勢いを止めずに回避する!        ディードは回避した。  達成値:15 ([5,4,1]+5)        ディードは1のAPを回復した。   ディードは移動した。    ディードは[4,0]へ移動した。 ツバキは移動した。    ツバキは[6,4]へ移動した。 リィベ : フレイムケージ! 炎の檻がアルシエルを捉える!  達成値:20 ([6,2,5,1]+6)    アルシエルに24のダメージ  ([3,6,3]+11) ディード : チャージ! ディードは力をためた!    ディードは[チャージ]になった アルシエル : 混沌の焔! 地を焼き尽くす焔が奔る  達成値:18 ([6,2,1,4]+5)    ツバキは回避しようとした。        ツバキは回避した。  達成値:24 ([3,6,4]+11) ディード : インベナム! アルシエルに猛毒の一撃が襲う!  達成値:20 ([5,1,3]+11)    アルシエルは防御した。    アルシエルはWillを使用した!        ダメージを5軽減!  ([]+9)    アルシエルに10のダメージ  ([2,3,3,1]+15)    アルシエルは[毒]になった ツバキ : 八重霧霞! ツバキはふらりと姿を消した。    ツバキは[ステルス]になった    アルシエルに4のダメージ      ディードは[チャージ]でなくなった Round 2 リィベ : 気は抜けそうにないな… フルエンハンス! リィベの体に刻まれた刻印が輝きを増す───! ツバキは移動した。    ツバキは[4,4]へ移動した。 ディードは移動した。    ディードは[2,0]へ移動した。 アルシエルは移動した。    アルシエルは[4,2]へ移動した。 リィベ : フレイムケージ! 炎の檻がアルシエルを捉える!  達成値:33 ([3,4,6,5,3,6]+6)    アルシエルは防御した。    アルシエルはWillを使用した!        ダメージを0軽減!  ([]-1)    アルシエルに20のダメージ  ([1,4,3]+11) ツバキは移動した。    ツバキは[4,2]へ移動した。 ディードは移動した。    ディードは[0,1]へ移動した。 アルシエル : チッ……近い方を狙うのか…… 抗う! アルシエルは剣を押さえ付け斬撃を放った!    リィベは防御した。    リィベはWillを使用した!        ダメージを7軽減!  ([6]+1)    リィベに0のダメージ  ([6,2,3,2]-7)    アルシエルに4のダメージ   Round 3 ツバキ : 朧月! フェイクと斬撃が同時にアルシエルへ襲いかかる。  達成値:12 ([3,2,1]+6)    アルシエルは防御した。        ダメージを5軽減!  ([]+9)    ツバキは[ステルス]でなくなった    アルシエルに12のダメージ  ([5,5]+16)    アルシエルは3のAPを失った   リィベ : これは厄介だな───ツバキ、君に任せるよ リィベは移動した。    リィベは[6,4]へ移動した。 ディードは移動した。    ディードは[1,2]へ移動した。 アルシエルの従うはAPが足りず失敗した。 リィベ : フレイムケージ! 炎の檻がアルシエルを捉える!  達成値:18 ([4,4,3,1]+6)    アルシエルは抵抗しようとした。        アルシエルは抵抗に失敗した。  達成値:16 ([2,6,6]+2)    アルシエルに16のダメージ  ([1,2,1]+11)        アルシエルは[重傷]になった アルシエル : ……鬱陶しい ディード : インベナム! アルシエルに猛毒の一撃が襲う!  達成値:19 ([2,2,4]+11)    アルシエルは防御した。    アルシエルはWillを使用した!        ダメージを5軽減!  ([]+9)    アルシエルに7のダメージ  ([5,1]+15)    アルシエルは[毒]になった ツバキ : へ、了解しましたよっと ツバキは攻撃した。  達成値:14 ([4,3,1]+6)    アルシエルに15のダメージ  ([2,1,4]+17)    アルシエルに4のダメージ   Round 4 アルシエル : いった……おいこらお前ら……!加減しろ!! ツバキ : ハッハー! やられる前にやれってね! ディード : (その標準は剣の動作によく注視しており、機を伺っている) ツバキ : 無明”流し雛”! 白刃が閃き、アルシエルに無数の斬撃が襲い掛かる。  達成値:13 ([1,1,5]+6) リィベ : (躊躇いなく振るわれる刃と、構えられた銃に魔力を抑え) アルシエル : (剣を前に、弾こうと構える    アルシエルは防御した。        ダメージを5軽減!  ([]+9)    アルシエルに18のダメージ  ([2,2]+14)        アルシエルは[気絶]になった アルシエル : …… リィベ : oO(……これ以上は過剰か…) リィベは待機した。 ディード : デッドエンド! アルシエルに止めの一撃を与える!  達成値:19 ([1,4,3]+11) ディードはWillを使用した!    アルシエルに41のダメージ  ([3,3,6,6]+15) Round 5 アルシエル : うぐう…… 剣は砕け散り、静かに砂と化していく…… 君達は依頼を成し遂げたのだ! 倒れた仲間を助け起こし、 君達は依頼の報告に向かう。 ディード は全回復しました。 リィベ は全回復しました。 アルシエル は全回復しました。 ツバキ は全回復しました。 クエストをクリアしました。 リィベ : お疲れ様、無事で何よりだ ツバキ : ・・・思ったとおりに期待はずれだ アルシエル : お疲れ ディード : ちったァ足しになりゃいいがねェ… ツバキ : おつかれさん、っと ディード : だーーー��妙なモン作りやがって アルシエル : お前ら……もう少し加減をしても良かっただろうが! ツバキ : あはは ディード : 加減したろーが、俺は剣を狙って撃ったぜ アルシエル : クソ……なぜ私がこのような目に…… リィベ : oO(……完全に急所を狙っていたように見えたのだが……) ディード : 日頃の行いと適材適所だろ…(次いで可能性があったことには触れない) ツバキ : ま、死んでねえしめでたしめでたしってことで リィベ : ……まあ、後に引く怪我も無かったのなら良いだろう リィベ : 詫びと言ってはなんだが、後で何か奢るよ アルシエル : じゃあケーキ リィベ : ああ、わかった……といっても、あまり甘味には詳しくないのだがな ツバキ : ケーキったらあれだよあの・・・あれ・・・ リィベ : …いや、ケーキが解らないというわけでは無くてな? アルシエル : 美味いのを知らんということか…… ツバキ : わかってますがな ツバキ : じゃなくってさ なんだっけな・・・ ディード : 甘いもん好きだなあ お前さんは ツバキ : ――ああ、そうだ なんだかっつーパンケーキ専門店?が評判良いみたいだぜ アルシエル : パンケーキか。私はそういうのも好きだな。甘いし リィベ : ふむ……なら、そこにしようか ディード : え、これは俺らも行くのか? ツバキ : 僕ぁパス 興味ねーや アルシエル : ええ……場所くらい教えろ……私は結構迷子になるぞ。 ツバキ : 場所?・・・・・・ ツバキ : 場所か・・・・・・・・・・・ ツバキ : あの・・・・・・あのへん?(適当な方角を指差した リィベ : ……… アルシエル : ………… アルシエル : 今度で良いから教えろ。今日は疲れたし。 ツバキ : 教えろったってなあ・・・ ディード : ……お前さん、ひょっとして方向音痴か ツバキ : ナンノ コトヤーラ アルシエル : そうなんだな。 リィベ : ……時々とんでもないところに迷いでると聞いた事��あるが ディード : 話題に出した割に教えられんとはまあなかなかだな… ツバキ : (んべ ツバキ : 迷わない人生なんてクソ程も面白くねー 良いんだよ~だ アルシエル : あっ誤魔化したな リィベ : …物理的に迷うのは何かが違う気がするが リィベ : まあ、いいか… ツバキ : うるへえ! ディード : 土産モンでいいならほら、表通りのカラスムギだったか。あのパン屋のケーキでも買ってアルマに預けとけよ アルシエル : じゃ、今日は解散でいいかな。 ツバキ : お、名前は知ってるな・・・ あーいよ ディード : なんか気に入ってるらしいぜ アルシエル : あ!あそこのか。それは好き リィベ : ああ、そうだな…… ツバキ : また機会があったら呼んでくれよ 暇してっからさ ディード : ほいほい…まあ急所は的確に外してたみてえだし、言うだけはありそうだ ツバキ : ・・・殺しても死ななさそうだったけどね? ディード : 次は敵同士じゃねえことを祈るよ……っと…ハハ ディード : (俺もそう見えると小声で言って) リィベ : ……では、私も失礼するよ ツバキ : 敵か~ そういうのも、楽しそうだな・・・ アルシエル : そう簡単に死ぬか。ではな。 ツバキ : おつかれさんだよ そんじゃあ、またね(ひらひらーっと手を振って ディード : 俺もまあ後でなんか奢ってやるかねえ…っと ディード : おう、またな。 リィベ : ああ、ではな(ひらりと手を振って ディード : そんじゃ解散だ…リィベ、お前さんもありがとな リィベ : こちらも予定が空いていただけだ、気にすることはないさ リィベ : 次も合わせられるとは限らないがね ディード : いいさ、元々そう都合なんて付く職じゃねーだろ ディード : (ひらっと手を振って見送れば)
ディード : おい、アル ここで寝るなよ ディード : (人の気配がなくなったのを見れば目の前にそっと、赤の詰まった小瓶を差し出して) アルシエル : ん ディード : ん。 アルシエル : 寝てない。疲れたから目閉じてただけ アルシエル : ありがと ディード : …へーへー じゃあ俺も失礼するぜ ディード : (そう言えば宿の階段を上がって奥へと消えていく) アルシエル : ん。そうか。じゃあまたね(空の小瓶を仕舞い込んだ)
0 notes
kachoushi · 5 years
Text
4月の各地句会報
花鳥誌 令和元年7月号
Tumblr media
坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
平成31年4月1日
第七十三回忌森田愛子法要句会
かすみ草森田愛子として生れて 省吾 愛子忌や森田銀行休館日 紀之 薄命に遺品少なき愛子の 忌涼   花冷や虹屋に虚子と柏翠と 清美 椿落つ女が落ちて行くやうに 雪   愛子忌や愛子を知らぬ者ばかり 世詩明 愛子の忌墓前に花の絵蠟燭 芳江 愛子逝き七十余年雁帰る みす枝 三国へと雲雀野急ぐ愛子の忌 健吉 紅椿愛子の海を染め分けて 良一 御代うつる愛子の春を遠くして 二三枝 愛子忌や三国港に波立つ日 清女 春風に燭消えもせで愛子の忌 匠  
(順不同 特選句のみ掲載)………………………………………………………………
平成31年4月3日 立待花鳥俳句会 俊樹選
ものの芽の一つ一つに神宿る ただし 霾天の島の灯台かすみゐる 誠  風花や軒でたばこを吸ふ漢 清女 春の夜や今なら判る母の愚痴 すみ子 (順不同 特選句のみ掲載)………………………………………………………………
平成31年4月4日 うづら三日の月句会 俊樹選
おぼろ月友は何処と尋ぬれど 喜代子 黄昏に煙は淡き花の色 喜代子 九頭竜の水面うつすら夕おぼろ 英子 マネキンが微笑むやうな春の風 都   気紛れな風に桜のあつけなく 都
(順不同 特選句のみ掲載)………………………………………………………………
平成31年4月8日 武生花鳥俳句会 俊樹選
置きしごと椿撒きたるごと椿 雪   囀や五百羅漢の耳は千 みす枝 花換に海の汽笛と波の音 世詩明 大枝垂桜一寺を荘厳す 越堂 落椿千には千の声あらん 雪 
(順不同 特選句のみ掲載)……………………………………………………………… 
平成31年4月8日 なかみち句会 圭魚選踊子草土の香りの中に舞ひ 三無 花馬酔木より吟行の歩となりぬ 秋尚 桜咲く木々のみどりに抱かれて 和魚 しなやかに風を捌きて山吹黄 三無 二輪草妹はまだ保育園 有有 枝伸ばし池に翳ひく花楓 ます江 宿木を抱きて桜満開に ことこ 切り通し垂れ桜の迫り出して せつこ ほんのりと少女の頰や二輪草 美貴 (順不同 特選句のみ掲載)………………………………………………………………
平成31年4月8日 鳥取花鳥会 順子選 耕の田を漁りをり鳥の群 俊子 花吹雪鉄棒の空傾かせて 都 全きの新人花の句座に来る 幸子 誰誘ふ蝶々黄色ばかり飛び 佐代子 春暁や茅葺屋根を濡らす雨 幹也 道の辺のたんぽぽ供花に石仏 和子 何もかも咲いてゐる里蝶の昼 栄子 枝垂桜に風やメリーゴウラウンド 悦子 弁当に声の彩り百千鳥 史子 獣めく春泥踏みし靴の跡 益恵 天と地を明るくさせて散る白梅 立子 霾るや海も砂丘も一色に すみ子 春陰やスカーフに巻く憂さひとつ 美智子
(順不同 特選句のみ掲載)………………………………………………………………
平成31年4月9日 萩花鳥句会 野良猫に餌やる日課老い長閑 祐子 小さき嘘ついてうふふと四月馬鹿 美恵子 春愁や名前連呼の選挙カー 吉之 春愁や四億寄贈の学友忌 健雄 朱の鳥居蛇行の先や春怒涛 圭三 ゆく春や平成の世をなつかしむ 克弘
(順不同 特選句のみ掲載)………………………………………………………………
平成31年4月10日 枡形句会 圭魚選
柳絮飛ぶ満州語る皺深く ゆう子 囀のほど良きリズム城址へと 文英 囀や日毎に空の高くなる 恭子 多摩川にくるり膨らむ春の風 美枝子 みちのくや草餅の餡ぽつてりと ゆう子 緩き坂登れば若葉年尾句碑 恭子 げんげ田を揺らす浜風無人駅 多美女 川浪に空拡がりて柳絮舞ふ ゆう子
(順不同 特選句のみ掲載)………………………………………………………………
平成31年4月11日 花鳥さゞれ会
春愁や豊麗線の溝深く 清女 花揺れる度師の句碑をこちよこちよと 清女   花吹雪空の青さに生まれては 雪 あの花の雲より下りて来し人と かづお なき人に花の筵を少しあけ 雪子 花の宴先づ手始めに花林糖 数幸 花衣衣桁にかける前夜かな 寿子
(順不同 特選句のみ掲載)………………………………………………………………
平成31年4月12日 さくら花鳥会 順子選
また母に楯突く娘春の海 登美子 思ひ出の数だけ散つてゆく桜 実加 盲目の人の瞼に触るる花 登美子 目刺干す浜の古老の細き腕 登美子  二胡を弾く髪に枝垂の桜触れ みえこ 花賞づることも野点の至福なる 寿子 朔月の稀なることに春の雪 令子
(順不同 特選句のみ掲載)………………………………………………………………
平成31年4月16日 伊藤柏翠俳句記念館 俊樹選
花筏流れゆるやか橋の下 直子 鯉の髯花の筏を押し分けて みす枝 菜の花や延命地蔵目を細め 一仁 この土地の風知りつくし初燕 同
(順不同 特選句のみ掲載)………………………………………………………………
平成31年4月17日 福井花鳥句会 俊樹選
春月に濡れて山河の匂ふごと 越堂 学僧の通ひし山路濃山吹 嘉子 春愁や簞笥に眠るパスポート 千代子 雪柳こぼれてこその花ならめ よしのり 夜桜の向かうの宙の涯不思議 美代 笑ひ声はみ出してゐる花筵 雪
(順不同 特選句のみ掲載)………………………………………………………………
平成31年4月21日 鯖江花鳥俳句会 俊樹選
天心に潤むを以て朧月 雪 又の世を花なれば我黒椿 雪 散り敷きし千の椿の吐く呪縛 雪   海棠の花咲く門に一佳人 昭子 目に痛きほどの菜の花畑かな 昭子  ふらここは嫌と砂場に姉を待つ 一涓 糸遊や戦後の母をはらからを 一涓
(順不同 特選句のみ掲載)………………………………………………………………
平成31年4月21日 風月句会 俊樹選
亀鳴くや竪穴の屋根くづれ初む 野衣 縄文の人になりたし春の昼 佑天 一閃を五月人形纏ひけり 亜栄子 緋牡丹へ向き錆びゆける如来かな 慶月 山笑うても鋭角の研究所 野衣 ちらちらと哀しきまでの蝶の恋 斉
圭魚選
軽鳧の子に波の揺籃風の綺羅 三無 八重桜幹のそびらに闇兆す ゆう子 茅葺きに日の斑のやさし若楓 斉   石鹸玉子の手を離れ風の手に 三無 湧水の涸れて静かや二輪草 文 英 蟻穴を出づ縄文の黒を持て 俊樹 金鳳花濡れゐるやうに乾きをり 千種 青饅や人来て席をちよいと詰め 千種
(順不同 特選句のみ掲載)………………………………………………………………
平成31年4月25日 九州花鳥会 俊樹選都府楼址の空の高さよ葱坊主 寿美香 一片が母の背に花月夜 朝子 ゆく春の引き潮の端踏みてをり 美穂 夕さりの黙にほむらの牡丹崩ゆ 志津子 ひとりづつゐなくなる村花は葉に 朝子 水兵の首のタトゥーや燕 伸子 阿蘇谷は陸の孤島や葱坊主 和子 干拓を覆ひ尽くして葱坊主 阿佐美 春潮の海傾けて渦生るる 孝子 花筏いくたび迷ふ岐れ道 寿美香 春の灯に吾を待ちかぬる母のゐて 光子 面接の硬き机に窓のどか 勝利
(順不同 特選句のみ掲載)………………………………………………………………
平成31年4月28日 花鳥月例会 俊樹選
春宵の宴惑星重なりて 七湖 ぼうたんの揺れて縁の話など 小鳥 蝶吹かれありけり耳のうしろより 和子 蒲公英やゆつたり過ぎるものの翳 眞理子 揺り椅子も木馬も揺れてゐる遅日 千種 春の蚊の鬱鬱として低く飛ぶ 炳子 尖塔の上に十字架桐の花 千種 鉄の柵のあちらとこちら草のわた 和子
順子選 武具飾る菊の御紋の揺るがざる はるか 少年の擦れ違ふ時夏近し 炳子 水漬きつつ残んの花を映しけり 炳子 坂下る背の重なりて遅日かな ゆう子 蝶吹かれありけり耳のうしろより 和子 警衛の巡査袖擦るつつじ垣 佑天 衛士の面にまだらの陰や夏近し 小鳥 牡丹の香の占むる座標軸に佇つ 野衣 北濠のすかんぽポキと折れにけり 炳子 掠れたる松羽目拭ふ若葉風 佑天
圭魚選 尖塔の上に十字架桐の花 千種 武具飾る菊の御紋の揺るがざる はるか 少年の擦れ違ふ時夏近し 炳子 一礼を斎庭に春を惜しみけり 光子 穴を出し蟻をシテとし能舞台 順子 蒲公英やゆつたり過ぎるものの翳 眞理子 連休のたんぽぽの絮先達に 眞理子 新緑に日章旗映ゆ九段坂 て津子 薫風や万年筆を新調す 七湖 牡丹の咲き神池の風甘し 順子
(順不同 特選句のみ掲載)………………………………………………………………
平成31年3月30日 零の会 俊樹選 春の夢とは白象を着飾りて 光子 稚児大師像の前なる菫かな 眞理子 芹の水ゆるり多摩川へと注ぐ 梓渕 御仏のぬるり甘茶の手をかざす 慶月 花御堂小さき仏は美少年 美紀 桜蘂降るくれなゐもむらさきも 順子 稚児大師を囲みきれずに花菫 野衣 龍の口より打つ春の水あをし ラズリ 磨崖仏へと春陰のひと滴 三郎 神鈴の谷の朧を渡りけり 光子
順子選 ブルースのごとく鳩啼く花の昼 久 春の夢とは白象を着飾りて 光子 谿谷といふごつごつの春の川 俊樹
(順不同 特選句のみ掲載)………………………………………………………………
平成31年3月31日 武生花鳥俳句会 俊樹選
山笑ふ山より野猿ぞろぞろと 文子 方言を聞きたかつたと帰省の子 芳子 ほやほやと武生なまりのあたたかし 芳子 踏青も杖頼りなる弱法師 越堂 雛人形今年も暗き箱の中 錦子 冬の虹立てば山河の橋渡し 世詩明 涅槃図の嘆きの中へいざなはる 時江 盆梅の香や金屏に銀屏に 雪 三面鏡たたみ余寒の顔たたむ 越堂 美しく春泥を跳ぶ若さかな 雪 婆さまと九九のおけいこ春炬燵 みす枝 風光る石を出られぬ道祖神 信子
(順不同 特選句のみ掲載)
0 notes
Text
2019年・夏【往路】
【はじめに】
8月9日、仕事を片付けて帰宅。さて、明朝から旅に出るぞ!と、上機嫌に洗濯を回していると何やら・なぜか・何かがおかしい。アマゾンプライムで流していた「いろはに千鳥」の音が急に消えたのだ。アレ、アイフォンで流してるはずだけどな?そろっとアイフォンに目を遣ると画面は真っ暗、全く充電されていないのである。アラ、旅直前にして壊れちまった!これは困るなあ、とトチ狂ったようにガシャガシャ充電のケーブルを抜き差し。しばらく格闘し爽やかに汗を流した直後、気付く。愕然。もしかすると。ハア。ご名答である。普段、マックにぶっ刺したハブ経由でアイフォンを充電しているのだ。その通り。なんと「ひんし」だったのはアイフォンではなくマックの方だったのだ(通りでアイフォンまで電気が通らない)。さて、ド真夜中。ポケモンセンターなら24時間営業・無償かもしれんが、アップルストアは要予約、はてさて一体おいくら万円掛かるのかしら。どうあれ、マックをマサラタウン(実家)まで連れて行くのは取り止めだ。旅行先で細かい仕事を片付けるつもりだったのになあ。しかし、自宅に置いておくとはいえ旅から戻ってもマックが壊れたまんま、というのは色々とマズイ。ライトニングケーブルと闘い続けたボクサーは、明朝アップルストアに殴り込むべく改めて拳を高く掲げるのであった。余談だが、ポケモンセンターのお仕事って、とってもブラックではないだろうか。ずっとナースのネーチャンいるよなあ。兎にも角にも、明日はホワイトな林檎マークに向かい「めざせ!ポケモンセンター」すると決めて、私は軽やかに寝落ちしたのであった。
【1】
明朝。日付で言えば8月10日。フツーに寝坊した。11時半、めちゃくちゃ素敵なお昼時である。マックどうのこうの、の件で出発を遅らせたが、そもそも朝の出発は難しかったのではないか、いやはや。さて、9時過ぎ。早速アップルストアに問い合わせる。お姉さんの声・電子音ver.が流れた後、人間のお姉さんが対応する。「あの、マックがブチ壊れてしまって」(中略)「赤坂見附のビックカメラであれば本日受付可能です」。というわけで、「まずは湘南を目指して」「熱海をカメラに収めたい」はずの青春のひとり旅は、「まずはポケモンセンターを目指して」「赤坂のビックカメラに任せたい」を経由して始まることが確定。マック赤坂当選ならぬ、マック・赤坂見附・通せんぼである。
最寄りの中野駅発、中央線・丸ノ内線を乗り継いで赤坂見附へ。ビックカメラに到着するや否や、特筆すべき話題もなく私のマックはカウンターの奥へと引き取られ消えて行った。達者でな、というかお前壊れるタイミング考えろや、という本音ダダ漏れで見送った後、急に腹痛が。こちらのダダ漏れはヤバイ。一旦四ツ谷駅まで移動し、やけにオシャレなトイレへと駆け込んだ。ハイ。ここまでの文章を、電車を乗り継ぎ、だらだらと、最終的にはトイレでウ◯コしながら書いている。この上「性春18禁」などとタイトルを決めてしまったので最早ほとんどスカトロAVである。フツーに出発してフツーに終わると思っていたけれど、どうも私はいつでも地獄を突き進むらしい。こんな調子ではございますが、「性春18禁ひとり旅」開幕です。
【2】
四ツ谷で始まるとは思っていなかった「性春18禁ひとり旅」。元々1日目で京都まで行きたい!と思っていたけれど本日の残された時間を考えると中々に難しい。難しいならいっそ四ツ谷でめしを食ってしまうか!と思い切り、街へと飛び出した(「飛び出した」と言っても駅前の横断歩道を一本、二本渡っただけだが)。パッと目に入った店に入ろう、と決めてテキトーに歩いていると「アジア大衆料理」を謳う独特なカラーリングの看板を見付けた。冷静に考えると、「アジア料理」って何やねん。店の前にはベトナムと書いてある。ドアにはパッタイの写真。最早和食すらあるんちゃうか?という謎の店構え。ええやん、入ったるわ、と猛スピードで飛び込んだ。横断歩道を渡るのとはワケが違う。店に入ると気のイイ感じのオバチャンが「イラッシャーイ」とお出迎え。「アジア料理屋のオバチャン」って一体ナニジンやねん、というツッコミは色々とアレなので避けておき、颯爽と席へ着く。一人も客おらんがな。オバチャン大丈夫かいな。メニューをパッと開いて目に入ったのはパッタイ(タイ風やきそば)だった。どうやらイチオシらしくデカデカと載っているのだ(キャッチコピー付き)。なるほどタイ人の方なのね、とアジアンオバチャンを呼ぼうとしたその時。オバチャンが客入っとんのに華麗にYouTubeをみているではないか。「オイ注文やで」と声を掛け「コレくださいな」とオーダーするその間、私はタイ風焼きそばのことなど一寸と考えていない。オバチャンが何を視聴しているのかが気に掛かって仕方ないのだ。目を細めて画面をみる。みえないので姿勢を変える。おっ、みえた。アレ?並んでんの漢字だな。ん?コレ中国版「朝まで生テレビ!」的なヤツじゃね?うむ、どうやらオバちゃんは中国の方らしい。しかし中華料理はメニューに並んでおらず、「エスニック」と括られる系の異国の料理の写真ばかりが載っている。一体全体彼女はどういうルーツの方なのよ、と小さな飲食店で「坩堝」的な何かすら感じてしまっている。
【3】
色々な生き方があるもんだね、と妙に感心して間もなく気付く。アレ、この店厨房ないやんけ!ぐるぐる店の中を見回しても、ない。暫くぎょろぎょろと周りを眺めているとアジアンオバチャンが、私が口を開くまでもなく質問事項を読み取り、「リョウリハ、ウエヨ」と先回りして教えてくれた。二階で料理しとんのかいな。わざわざ持って降りるんかいな?と思ったその時。ウィーン。リフトである。こういうタイプの店でリフト採用しとんのかいな。高架下と駅二階両方に入り口あるタイプのマクドナルドかい。
色々とツッコミどころのある店だったが、こういう類のぐちゃぐちゃ感はなぜか憎めない。遂にオバチャンはYouTubeをみながらめしを食い始めた。ぜんぶ許しましょう。もう暫く滞在したい気持ちもあったが、せめて今日中に熱海までは出てしまいたいのである。金を支払い出発する直前、オバチャンが話し掛けてきた。「ナツハ、オヤスミカイ」「あい、休みでこれから旅しますねん」。そう伝えると急にオバチャンが奥からゴソゴソと箱ティッシュを取り出した。旅にティッシュ?旅人を見送る中国特有の伝統か?ワケもわからずティッシュを引き出す私。困惑する私に、オバチャンが「ハナミズ」と。私が鼻水垂らしてるだけかいな。気付かんかったわ。どんなタイミングでティッシュ差し出しとんねん。ありがとう。
やることなすこと一つとして納得できない店だったが、妙に愛らしく思えてしまう。今回の旅はこんな素朴な出会いから始まった。いや、まだ始まってないのか。ちなみにマクドナルド四ツ谷店のパッタイは大変すこぶるビミョーであった。
【4】
「青春18きっぷ」には、「四ツ谷」と判子が押されている。さて、まずは新宿へ。湘南新宿ラインと東海道本線を乗り継ぎ熱海を目指すのだ。そう言えばフツーに「性春18禁ひとり旅」なんて言っているが、これって一体なんぞやと。ハイ、私の故郷は東京より西に下ったその先の、鳥取という地にありまして。そちらを終点と定めて夏・冬に鈍行ひとり旅(帰省)を決行しているのでございます。この度も御多分に洩れず東京は四ツ谷を始点(図らずも)として旅が始まろうとしているのでした。「性春18禁」に深い意味・意図はございませんので悪しからず。
さて、熱海に着いた後間に合えば名古屋まで走りたいところだが、はてさてどうするか迷いどころ。ビミョーなパッタイを濃い味・名古屋めしで搔き消したいのだが、そもそも電車の本数があるかないか次第なのである。一旦流れに身を任せ。
ひとり旅漸くスタート!と言ってもぶっちゃけ電車の中は暇。今回はマックがブチ壊れてしまったので、車内で映画みる・ゲームするなんてことも難しい。もうホント、やることがない。画面真っ暗のせいで、お先真っ暗である。
代わりにいくらか本棚から摘んだエッセイを持ち込んだ。この辺りを読み込んで時間を潰したが、暫くして飽きた。コーヒーを飲んだ。お茶を買い忘れた。もうそろそろ熱海に着く。名古屋まで行きたいな、などとぼやいていたが辿り着くにはやっぱり時間が足りないらしい。というワケで、本日の終着点を浜松と定めた。その前に、どうあれ熱海で2時間ほど休むことにしたのである。
【5】
間もなくして熱海に到着した。大して歩いてもいないのに、身体が痛い。さてこの地では何が起こるか。地獄へGOしてしまう性分の私に何が待ち受けているか。地獄巡りとは、本来そんな意味ではないのだが。温泉だよなあ、温泉。温泉?いや、やっぱり熱海に来たからには海なのか?海に臨まねば。テキトーに歩いている内に、目的地は海へと変わっていた。しかし土地勘のない私はひたすらに歩き回る。テキトーに辿り着けない立地ではないはずだ。潮風の方へ(グーグルマップを見ろよ)。
暫くして海に到着した。しかし、防音壁なのか何なのか、真っ白の壁に覆われているではないか。壁の向こうに海があるのに見えない状況。思い付いたのは超古典的「高台」作戦である。シンプルに高い所から見下ろせばいいのでは?と、目に入った「何に繋がるのかワカラナイ階段」を登った(今思えばアレ、廃病院とかだったんちゃうか)。まあ良き夜景の広がること。スゲー!と言いたいものだが、流石に熱海じゃ街の光量が足りず、海は真っ暗、街明かりもまあまあ許せる程度といった感じである。この弱さ・儚さがイイんだよな、と私はにやけているが、私の周りにいたお兄さんお姉さん方はこの夜景をどう思っているのかしら。隣りのニーチャン・ネーチャンは海を見ながらラーメンの話をしていた。
【6】
海を見たら満足した。やけに満足してしまった。折角来たのに熱海は終わりかなあ。しかし、海だけで終わらせるのはどうにも勿体ない。時間もあるのでフラフラと散策した後、軽食を摂ることにした。道中、坂を登ったり階段を走ったり。熱海特有・街の高低差に体力を奪われながら、昭和の香り漂うスナック喫茶「くろんぼ」へと辿り着いたのである。
渋さと可愛らしさを兼ね備えた看板を眺めつつ階段を降りていくと、「よくある喫茶」と「よくあるスナック」が融合した憩いの空間が広がっていた(当たりだ!)。出迎えてくれたのはアジアンオバチャンとは異なるタイプのお淑やか・オバチャンだった。このオバチャンも看板・内装に負けず劣らず渋&キュートを極めている。席に着いて思わず「フーッ」と息を吐いた私に、「旅です?」と投げ掛ける渋キュー。「ええ、東京から来てんス」と返すとその後は特に何を語ることもなく、一人微笑んでいた。
ザ・日本食、花柄の皿に盛られたカレーライスと緩く冷えたアイスコーヒーをいただく。渋キューさんに向けて道中について話そうと試みたが、ぶっちゃけ道中であったことなど何もなかった(マックが壊れた、パッタイがビミョーだったなどは決して旅の話ではない)。ふと我に返る。そっか、まだ旅してないんだなコレ。そう思い始めると少し笑ける。目的も持たず、観光地を巡らず、ただ歩く。一般的に言えばコレは旅ではないのかもしれん、と思うと笑けてきた。どうせフツーに旅などできないのだ、もうこの砕けた旅を続けるのも一つアリではないか。そんなことをぼうっと考えている内に、緩く冷えたコーヒーは放ったらかしすぎて半分水になっていた。
また来ますねえ、と目処の立たない口約束を交わして喫茶「くろんぼ」を後にする。てくてくと熱海駅に戻る道中にホンモノのマクドナルドを発見した(パッタイはない)。立ち寄らねば。決してハンバーガーを食べたいわけではない。充電がないのだ。先程コーヒーを飲んだところなので、またコーヒーを頼むのと胃が破れる。紙パックのミルクをオーダーし、暫し場を繋いだ。結局充電は10%ほどしか溜まらず、胃の中の水分だけが増えたのだった。
【7】
さて。電車は走る。お次は沼津へ向かうのだ。時刻は22時。現在静岡。近くで花火大会があったのだろうか、電車の中は浴衣を纏った中高生やマイルドヤンキーたち(見た目の話)で溢れている。マイルドヤンキーといえば、いつの時代もその類の人々は見た目で何となしに分かってしまうものだが、��分私のガキの頃とはルールなのか、流行りなのか色々と変わっているらしい。昔はキティちゃんのサンダルにプーマのジャージを着た輩風のニーチャン・ネーチャンがなんかイケてる扱いをされていた。当然私は、といえば冴えないフツーの子だったために(エッヘン)。そんな文化に染まることなくコンバースのスニーカーを履いていたのだった。
充電の溜まらなかったアイフォンを触っていては後々困るからと、手持ちの本を読み進める。しかし一度読んだ本。流石に早々飽きが来る。満員電車内で座ることもできず、いつの間にか旅が面倒臭くなっている自分がいる。誰が決めたんだ、ああ。お前がやる言うたからやんけ、と自身を奮い立たせるべく、ウコンの力スーパーを激しく一気飲みした。効果は未知数(何もない)。旅に対するだらけた気持ちが芽生えた頃、取り敢えず身体だけでも沼津へと到着した。さて、ここから静岡・浜松と移動して今日の旅はお終いなのだ。後一踏ん張り、飽きずに頑張って欲しいものである。ぜひ良ければ心も、追い付いていただきたい。
【8】
浜松に到着、日付変わって8月11日0時26分。青春18きっぷに2つ目のスタンプが押された。この時期はやっぱり18きっぷで旅する人々が多いらしい。改札にスイカを翳して(あるいはイコカなのか)、すっと抜けて行く人々の横、駅員さんによる目視での確認を待つ行列が伸びていた(青春18きっぷはJR一日中乗り放題の権利を、なんと5日分も手に入れられるという魔法の切符なのである。使い方は簡単。1枚の切符に例えば「8月10日」のスタンプが押されれば、後はそのスタンプを駅員さんに見せることでどこへでも行けてしまうのである)。もちろん私も青春18きっぷを確認していただくべく、その行列に追随する。おや、私の前のオッチャンが何やら揉めているのだ。どうやら、8月10日中に浜松に到着したかったのに乗り換え等々失敗してしまったらしい。繰り返すが、日付変わって8月11日0時26分。たったの26分過ぎたことで、青春18きっぷには次の日のスタンプを押されてしまうのだ(私の場合は明日もどうせJR乗り回すからスタンプ押されてもオッケーなのだ。どうもこのオッチャンは翌日JRを乗り回す予定がなかったらしい。すると1日分の切符が無駄になってしまうんだね)。どうもこの仕組みに納得できず、ギャーギャーごねていたのだ。遂には話を捻じ曲げて、「電車が遅延したんだ!」と言い出す始末。スタンプ押さずに通せ!と。おお、駅員さんも大変やね、という気持ち半分。早くしてくれ、という気持ち半分以上(足して100%越えているのは悪しからず)。しかし強面の駅員さんは、青春18切符にそんなルールはねえんだ、とハードボイルド対応で眉間に銃を突き立てていた(嘘ですよ)。結局たったの26分にスタンプ1個を捺印され、オッチャンは儚くも浜松の地に散っていった。次に並んでいた私もスタンプを1個押されてしまう。ま、先述の通り、私は明日も旅をするので全く関係ないのだけれども。
さて、浜松に着いたはいいが、ここから何をするということもあるまい。お宿を探すのだ。残り数%しかないアイフォンでグーグルマップ。近くのカラオケを探し出す。北口に「まねきねこ」があったので今夜はここで歌い叫びながら一泊することにした。烏龍茶を注いで、14号室へ。よし、折角歌える宿に来たのだ。何か歌ってから寝よう、と何も考えなくても歌える、くるりやら何やら数曲を予約した。「ロックンロール」を歌っていると、途中金髪のニーチャンが間違えて入って来た(天国のドアを叩いている途中に地獄のドアを開くなよ)。歌い疲れて靴を脱ぐ、靴下を脱ぐ。ソファの上に横になる。グー。就寝前、タオルで身体を拭き、Tシャツを着替えたが、本当は流石に一風呂浴びたかった。明日は米原経由で京都に向かう。京都に着いたらサウナに行こう。梅湯に行こう。
【9】
アラームが鳴る。5時40分。さて、3時間ほど寝れたので旅を再開する。浜松駅から米原までは直通で2時間半。寝ようと思ったがどうも寝付けず、じゃあ本でも読むか、と読み始めて間もなく眠気が襲った。ふと目が覚めた時には既に米原。車内の人々が乗り換え時の席の奪い合いのためか、ほとんど競走馬然としている。ここが勝負だからな、とハイテンションに語るジーチャンはいざドアが開くと若者たちにガンガン抜かれていった。京都駅まで1時間。米原まで散々寝た私は、まあ座れんでもええか、くらいに考えていたのでこの熱気に共感できなかったが、案の定座れなかったジーチャンは、悔しそうに、クソ、クソ、などと申していたのが逆に笑けてしまった(言葉、ママではない)。とはいえ、ジーチャンなのですから誰か譲ってあげてもいい気がするが。
座れなかった、もとい座らなかった私は、本を読んだりアイフォンを突っついたりして時間を潰す。すると、急にオッサンがマスターベーションに興じている動画がエアドロップで送り付けられてきた。ははん、最近巷で噂のエアドロップ痴漢ってヤツだな、と若干興奮を覚えながらも充電食いそうだったので拒否しておいた。スマンな、オッサンのチ◯コ。躍動感ある下腹部の様子はサムネイルのみ拝見させていただいた。
そんなこんなで松沢呉一を読み耽り1時間を費やす。
【10】
いよいよ古都・京都府へと馳せ参じたのだった。駅構内を進んでいると、ぽてっと落ちている免許証を発見。改札出るついでに渡しておいた。これは割とどうでもよい話。
まだまだ発育している途中、伸び続けていると噂の京都タワー(嘘です)。デカブツを横目に東へと、北へと進み目指すは「サウナの梅湯」である。「性春18禁ひとり旅」の際、毎回立ち寄る素朴な銭湯。その名の通り、レトロな浴槽並ぶ向こうにサウナが併設されているのだ。カラオケで一夜を過ごした私は、汗ばんだ身体を癒すべく、この古びた湯屋の暖簾をくぐるのであった。
至福の瞬間である。汗を流して、湯に浸かる。壁面にはスタッフが手作りで仕上げた新聞が並んでいた。他に眺める物もないので、手書きの文字をじーっと追う。「京都に住んでいたわけではない、大学に入ってはじめてこの土地に来たのだ」という女子学生の手記。暫く読んで、「最近くるりの“京都の大学生”を聴く」、と続く。わかっているねえ。京都の大学生、心に来はったわ。
サウナと水風呂を繰り返し、腕時計(防水)に目を遣る。そろそろか。実はこの無計画の旅にも多少の計画が成されておりまして。なんと、同期のイラストレーター・もちがわが、丁度京都にて個展を開いているのであった。折角なら酌み交わそうと、電車乗り換え・梅湯の隙間に時間を作り、フラフラ新京極へと向かう。
【11】
五条から四条。地下鉄で走り新京極に降り立つ。「この店で昼呑みをしたい」と事前にもちがわから提案されていた酒屋(定食屋?)があった。「京極スタンド」である。12時開店に合わせて行ったのだが既に行列が続いている。早めに向かって正解だった。ちなみにスタンドへ向かう途中に、有名な判子屋さんで「ターバン男」という名の判子を買った。これもそこそこどうでもよい話。
中は素朴。「イイ意味で」小汚い単なる定食屋である。昼呑み目的で来ていることは店員・顧客ともに同意の上なのか、席に着くや否や酒のオーダーについて声を掛けられる。大瓶とグラス2つ、暫くしてポテサラ・ハモ天・冷やしトマト・うにくらげ・ホルモン焼き・ハムカツという奇跡の役満オーダーを叩き出した。いつも東京で呑んだくれている二人が敢えて京都の地でアルコールを摂取する。
「昔から京都にちらほら来てたんよねえ」「そうそう」同期・もちがわのこれまで、などというと大袈裟か、どうか。そんな類の話を聞いた。いつも会っている同期のはずが、場所と食事を変えればまた違う。そして、どう話しても、どう黙っても塩山椒の乗るハモ天は旨い(旨いなあ、と思いつつ最後の一切れをもちがわに譲った私はとてもエライのである)。ホルモン焼きはこれまでか!という量のガーリックにまみれていた。うにくらげも、クセなく絶品。
【12】
ごちそうさんでした、と出口へ。そろばんでのお会計。丁度よい程度に酔いが回った。地下鉄が来ちまうから一旦四条駅近くまで移動しよう、と炎天下のアーケードを闊歩する。東京のカラっとした熱気とは異なる、じんわりと体力を奪う熱、夏。会話も、あっちいなあ、あっちいなあ、ばかり。途中、言うても次の列車まで時間あるよなあ、ということでパッと目に入った喫茶に入った。夏バテ予防に、普段頼まないトマトジュースを注文し、飲み干す。程良い酸味が頭をしゃっきりさせる。書き忘れていたが、京極スタンドに入店する直前に八つ橋を買った。東京からの帰省なのだから、実家で待つ家族たちは東京土産を待っているだろう。依然無視して土産は京都の生八つ橋である。正直有り難みはない(地元鳥取は言うても関西が近いので、八つ橋くらい簡単に入手できてしまうのである)。でも旨いよなあ、ニッキの八つ橋。色もイイよなあ。
さて、「めざせ!ポケモンセンター」から始まったこの旅も終盤に差し掛かっている。マサラタウン(実家)に戻るため、改札前、もちがわに見送られつつ私はエンジュシティ(京都)を旅立つのであった(というと、そもそもマサラタウンのモデルは静岡県だったはずだ。マサラタウンに向かう、というのは、はてさて「カラオケ「まねきねこ」まで戻るという意味に捉えられるのではないか。いえ、それはご勘弁願いたい)。
京都から姫路、姫路から上郡。上郡からは智頭急行に乗り換える。JRではないため、上郡から鳥取までは青春18きっぷが使えない。とはいえ、1200円のフリー切符で移動できてしまうのだから、お安いもんである。今回タイミングが合わなかったのか、上郡から鳥取まで直通で移動できる列車に乗れなかった。一旦「大原行き」に乗り込んで降車。大原から鳥取まで向かう列車を待つ。その間、何となしに待合室にあったご当地鉄道ピンズガチャガチャを回す。「スーパーはくと」が当たった。ちょっとカワイイ。
【13】
最後の列車に乗り込んだ。流石にもう何もない。後はこの列車に乗っていれば故郷、鳥取に辿り着くのだ。寝るか。ちょっと本読むか。旅の終わりをどう過ごすか考えていた、その最中。ボックス席に一人で座っている私に、一人のオバチャンが近付いてきた。私の向かいの席にドーン!と何かを投げ付ける。からあげクンである。「これ、ローソンに売っててん」。うん、からあげクンはローソンに売ってるだろね。「食べ物に悪魔ってネーミングしてんねん!(ガチギレ)」。おう、めっちゃキレてんな。その後暫く黙っていたが、車内の全員に向けて演説を始めたのだ。「コンビニは変なものを売っている!日本を取り戻せ!」といった趣旨のお話である。添加物がどうのこうの!この話をSNSで拡散しろ!だの色々とまくし立てている(正直笑い話に昇華してよいのか甚だ絶妙なラインである)。散々お言葉を述べられたオバチャンは結局、再び私の元へ来て、からあげクンを回収した(くれないのかよ)。その後、なぜか裸足で大量のおかきを食べ漁っていたのである(おかきはいいんだね)。しかし、他にも乗客がいた中でなぜ私が「からあげクン事件」のターゲットになってしまったのか。そして、なぜコンビニ嫌い・悪魔ネーミング嫌いのオバチャンは、このからあげクンを購入し売り上げに貢献してしまったのか。平和に終わると思われた私の旅は幾多の謎を残したまんま、やっぱり地獄に終わってしまうのだった。食べ物に対する意見は様々だろうが、公共の場を荒らすのはなるたけご勘弁いただきたい。ここまで書いて、今度はオバチャンから「スパイシーひまわりの種」が飛んで来た。はてさて。他の人を当たってくれ。
【おわりに】
途中、列車に乗っているだけの時間が続き張り合いのない文章になってしまうなあと思っていたところに、最高に悪魔風でスパイシーな話題が飛び込んだのだった。事故である。それはさておき、知らない間に故郷へ着いてしまった。
さて、「おわりに」という形で〆にしようとしているが、どうせ実家に滞在している間もたくさんの地獄に出会うのであろう。ちょこちょことメモして残しておくとする。さて、長々と書きましたが一旦この辺で終わります。
一体何のために書いたのか。実はこの性春18禁ひとり旅、実に3回目なのである。毎度それぞれドラマが生まれるので文章で記録したら面白そうだなと。本当にそれだけの気持ちで始めたものだったのだが、多少は笑けるエピソードが生まれたのではなかろうか(やけにオバチャン多めだったのはなぜだろうか)。ぜひぜひ、復路もご期待いただきたいのである。こんな形で「往路」編、終わります。再び地獄で会いましょう。
フチダフチコ
0 notes
chw131 · 5 years
Photo
Tumblr media
Repost @nonchi_nonki - Friday☔. ٠ 今日のお弁当🍱. ∗おにぎり #こっそり雑穀 を使用しています✨. ٠大葉&明太子 ٠きんぴら蓮根 ٠ケチャップライス&うずら目玉焼き ٠錦ごま ∗鶏もも肉のレモンソテー ∗いんげんとツナのマヨおかか和え ∗マカロニサラダ ∗紫キャベツと人参のナムル ∗オクラ白だし煮 など ٠ おはようございます(^-^) 今日は子供たち終業式です♡ 1学期3人とも皆勤✨. 健康で、楽しく登校してくれて💕. *:・'°☆thank you( ^-^).:*:・'°☆ ٠ 中学生は終業式の日も午前中授業があって、午後部活だそうです。しかも娘は水泳の授業で、平泳ぎのテストらしい…大雨だけど、水泳も部活もあるのね(^-^;ファイト!! ٠ 私パートなので、末っ子の置き弁含めて4つ作りました♪お友達と食べてもいいように~❣️. ٠ Pic3は、長男の陶芸の作品✨. 6月初めにあった宿泊学習、微熱で体調が優れない中参加したけど、いいものが作れたみたい。昨日持ち帰ってきました(*^.^*)何焼きなんだろう?ずっしりしていてツヤツヤ✨. ٠ 今日も良い一日になりますように🍀. ٠ ٠ #わっぱ弁当 #お弁当作り楽しもう部 #お昼が楽しみになるお弁当 #豊かな食卓 #おうちごはんlover #wp_deli_japan #フーディーテーブル #かりんほんぽ #曲げわっぱプレゼント1907 #snapdish #私のおいしい写真 #マカロニメイト #オベンタグラム #ママリクッキング #oben365 #otap弁当部 #おにぎり弁当 #八角一段弁当箱 #ラブマルシェ #モンマルシェ #缶バサダー https://www.instagram.com/p/B0ZTxiJgwh3/?igshid=55vmo3ygl0l9
2 notes · View notes
find-u-ku323 · 4 years
Text
『部分的にそう』
 あなたのことは前からそんなに好きじゃなかったし、と、呆気ないほど素っ気なく恋の幕は閉じられた。情けない姿を晒すまいと閉じ込めていた気持ちはいつのまにか溢れだしていて、ただ黙って、告白の舞台として僕が指定した中庭をとぼとぼと歩いて帰るしかなかった自分が、本当は一番情けなかった。  忘れなければいけないのだろう。本当は、忘れなければ大変なことになると、自分でもそう分かっているはずなのに、高嶺の花相手に挑んだ無謀な恋愛の後遺症は、僕が思ったよりも強く深く抉れた傷を僕に与えてきた。まるで誰も足を踏み入れることができない山岳地帯に咲いている白いサザンカを自らのものにするために、命懸けでそこに分け入っていったら、何か逆らえない神の逆鱗に触れたような重力で全身を強打したみたいな、そんな痛々しい気分だった。  じゃあ、なんであんなに気のあるフリをしたんだよ! ああいうことをするから、僕みたいに勘違いして傷つく奴が出るんだろ、って。そうは思わないかい、──。  僕は路傍にあった石ころ、その全てを転がして、晴れない気持ちを全てそこに籠めるかのように、制服が汚れるかもしれないという懸念も頭に浮かぶことなく水溜りの方へシュートしてみせた。瞬間、汚い水しぶきが上がるのを見たが、もちろんそんなものでは何の気休めにもなりやしなかった。  家に帰って来てから、晩御飯を食べる気力もなかった。休んだ部活の同級生から来たメッセージを横目で消していくだけで、なんとなく精一杯だったから。きょうのことがなかったことに出来たなら、ちょっとは楽なのにな。告白した相手に僕の感情が漏れていたなら、正直、女々しいんじゃないの? って言われてしまいそうだった。  晩夏の夕空にかかった飛行機雲を見ながら、明日は雨なら学校に行かない、と憂鬱な気持ちを飛ばしていった。コップに注いだ強めの炭酸水の泡が抜けていく音が、魂の抜けていくような気持ちと重なって哀しい。名前のない感情が、声のない声に漏れ出ている。  力の抜けた片手で、さっき落としたスマホを拾い上げる。相変わらずメッセージを読む気力はない。  しかし、メッセージアプリの上のほうにいつも表示されている広告に、今日はなぜか目がいった。その広告は、どこか気味が悪くて自分の知らない異国の言葉で飾り立てられていたけれど、イメージを示す絵だけで、すぐにそれが意味するところが分かってしまった。  そのバナーを押したときに、自分は何をしているんだ、と内なる理性が僕を押しとどめようとした。なんの未練もないはずなのに、そんなに不確実なことをしてまで知りたいなんて、どうかしている、と。  内なる衝動もそれに答える。別に、自分にはどうでもいいことに成り果てたが、恋もつい先ほどまで生きていたんだから、供養をしてあげなければいけない。それに少し時間を割くことまで否定されるのは、なんとも耐え難い、と。  自分の中で延々とループし続ける善悪の秩序に、流れる無音の精神は鎮まらないままに、耳にはサイトから流れるエキゾチックな音楽、もう発狂しそうだった。情報が整理できない。こんなところで情報を受け取ってしまったら、もう二度と自分の消し去りたい過去から逃れることが出来ないんじゃないか、と散々悩んだ挙句、結局、そのサイトに描かれている珍妙で勝ち誇ったような顔をしたランプの魔神の導きに僕は従っていった。  サイトにある「人やキャラクターを思い浮かべて」というメッセージに従って、まさにきょう振られたばかりの女子を思い浮かべる。なんて甘えた妄想をしてしまうのだろう、と少し頭を振る。そして「スタート」の文字をタップすると、その魔神が、誰にでも簡単に答えられるような質問をしてくる。僕はそれに答えていれば、それでいいようだった。 『男性ですか?』  いいえ。 『30代ですか?』  いいえ。 『名前に漢字が入っている?』  はい。 『眼鏡をかけていますか?』  うーん、たぶん、いや絶対かけていたはず。 『セクシーなビデオに出たことがある?』  そんなの、いいえ、に決まってる。 『その人は個人的にあなたを知っている?』  これはどうだろう。僕は間違いなくあの子のことを知っていたけど、彼女が僕のことを知っていたかどうかは全く分からない。 『学生ですか?』  はい、間違いなく。 『その人は人気者ですか?』  ……たぶんそう、部分的にそう。 『その人の部活動は、体育会系?』  残念、ガチガチに文化系なんだよね。 『背は高いですか?』  はい。身長の低い僕がコンプレックスを抱くくらいには。 『さっぱりした性格?』  これも間違いなくそう。表向きに振る舞う顔は明るく利発そうな優等生だし、僕の告白を断った時だって、まるで僕の気持ちを慮ったからねと言いたげに、さらりと流れるように済ませたけれど、きっとひとりでいるときの彼女はもっとずっと暗くて深い。僕がそうなんだから、彼女もきっとそうなんだ。 『その子は、白いシュシュをしている?』  即座に自分の指は「はい」を押していた。核心をついた問いを突然ぶつけられて、処理能力を越えてしまったのだ。どぎまぎするのは、なんでこんな個人的なことを知っているんだろう、という疑念。狂気。僅かな恐怖。  誰も目にかけないほど小さなシュシュのことを思い浮かべるのは、彼女に執着しているから、どれほど細かなことでも見えてしまうくらいに見つめていたってこと。そんなことを、なんで初対面のはずの魔神が? 僕はスマホに映っている魔神の目を見ている間、ずっと密かに困惑した。だけど、偶然に当たってしまっただけのことかもしれない、と思いたい気持ちもどこか端々にはあったのも事実だった。  生唾を飲み込んだ。少し手汗をかいていた。緊張が顔以外の場所に出るのは、自覚している限りでは初めての経験だった。 『その子は、──ですか?』  やはり、か。僕は自分がしたことの重大さと軽率さに呆れかえるほど悲しんだ。しかし、同時に奇妙な達成感も味わってしまった。見つけてしまったと思うことで、失恋相手をコンピューターに学習させ、これからの彼女の人生をほんの少し変化させるくらいの、いや、バタフライエフェクトを起こすくらいのことが起こるのではないかという期待すら感じた。  だが、それだけなら僕は自己満足の自慰行為に勤しんだ虚しさで寝転んでしまってもおかしくなかったはずなのだ。無為なことだと斬り捨ててしまえば、それまでだったんだから。  僕がそれでもスマホの画面から目を離すことが出来なかったのは、彼女の顔写真を誤操作でタップしたときに表示された、彼女を象る個人情報の暴走のせいだった。  そこに出ていたデータは、名前や生年月日から、住所や電話番号、家族構成、自室の写真まで、有象無象森羅万象が全て記載されていた。  僕は、最初、それを全く信じなかった。名前や誕生日だったらまだ知れないこともないけれど、どう見ても本人しか知り得ない質問にも回答されてしまっている以上、こいつは嘘デタラメを書き記しているんじゃないかと思ったのだ。それでも何度か見返すうちに、その記述内容がどんどん彼女の本来持っている気性である根暗な性格にぴったりと当てはまるようにして見えてきてしまった。  ベンチウォーマーだった自分のことなんか見ているはずもないのに、彼女は彼女なりに「誰にでも分け隔てなく笑いかける華凛な少女」を演じようとしていたのだろう。しかし、運の悪いことに、それが僕を不機嫌にさせてしまったのだから、仕方ない。  窓の外は、スマホにくぎ付けになっている間にもう闇の中へと溶けていた。全てを凍り付かせる月の光は、ぴきり、ぴきりと心の壁まで冷気で覆う。もう、目の前のサイトがいかにして個人情報を手に入れているとか、人智を越えたものに対する畏怖とか、そういうものをすっとばして心は既に歪なほうへとねじれていた。
 人を騙すつもりはない純粋な少女の姿を目で追ってしまう、そんな歪んだ独占欲のせいで、あのサイトを使った次の日から、僕は世間一般でいうところのストーカーになってしまった。そうでもしなければ、一人で満足に承認欲求も満たせやしないのだ。  いつかの歌に『怖がらないでね、好きなだけ。近づきたいだけ、気づいて』なんて歌詞があって、初めて聴いたときはまったく共感できなかったけど、今なら分かる。全て知ってしまった今だからこそ、僕には彼女にいまさら何度もアタックする勇気も根気もない代わりに、彼女のことをずっと見ていたいという気持ちだけがふつふつと湧き上がっていた。怖いくらいに、そんなことがとても純粋だと自分の中で思いあがっていたのだ。  現実にリンクしない世界の話じゃないのに、ゲームを操作している感覚を持って浮遊している。いま、自分はあの魔神が操作するアバターで、彼女は間違いなく最終ターゲットのヒロインに違いなかった。そう、視野狭窄だから、この眼にはボクとキミの二つしか映っていないのだ。  角を曲がって商店街の花屋が見えるあたりに、彼女が足繁く通う古めかしい喫茶店が見える。きっと、午後五時きっかりに彼女はこの店を出て、家に帰っていくのだ、とあのサイトに書いてあった。であれば、いつものようにここからつけていけば、彼女の一人きりの姿を独占できるに違いない、今日だってそう思っていたのだ。  そう「思っていた」と過去形になったのは、彼女が店を出たときに感じたただひとつの違和感によってだった。彼女はいつもジャムトーストとミルクティーのセットを頼んでいると書いてあったが、今日はいつもと違って口の端にストロベリージャムをつけたまま、どこか落ち着かないような気持ちでもって辺りをきょろきょろと見渡す(そのしぐさは相変わらず可愛かった)。しかしその後に、思いもかけないような光景を目にしてしまって、僕は思わず眩暈を感じた。くらくらしたのだ。  彼女は、店の中の方へ誰かを手招きしたと思ったら、財布を鞄の中に仕舞いながらドアを開けた男の手を握った。とてもその姿が仄かに輝いていて、僕は暗闇の中の宝石を見つけた気分だった。しかし、その輝きも、横にいるよく知りもしないような男のせいで一気にくすんでしまう。こ、こ、こいつは誰だ。一体、誰なんだ。俺の知らない人間を招き入れるのだけでも何か純粋なものを汚された気分になるのに、そんなに近しい距離で彼女と男が歩いているということで、もう、世の中に不条理しか感じなくなる一歩手前まで自分の心が乱されてしまう。  彼女たちに与えられた風はそのまま僕の方まで平等に吹き抜けた。そのおかげか、雨の匂いを敏感な感覚器官で感じ取るが、生憎、僕には傘がない。知り得た情報だけでは何にもならないように、いまここで降りそうな雨を防ぐには鞄を屋根代わりにしただけじゃ不十分に違いないのだった。 「僕の知らないところで……何で告白を……受けたんだ……」  僕の私怨を飲み込むほど彼女も子供じゃないことは分かっていた、つまり僕の方があまりに幼い精神のもとで行動していたことは相手にもバレているんじゃないか、と恐れながら生きていた。しかし、ここまで来てしまった今、もう止まることはできない。  僕はすぐさまスマートフォンのシャッター音が鳴らない改造カメラアプリを起動し、彼女と一緒に��いている男の写真を撮った。もちろん、名前も、素性も、いやもしかすると僕と同じ高校であるという確証すらないのかもしれない。それでももしかしたら、彼女を『解体』したときと同じように、名前すら分からなくとも何者かが分かるはずだ、と僕は察知したのだ──本当にできるかどうかはともかく。  興奮のあまり、通信料を気にしてしまうなんてこともなく、その場で例のサイトにアクセスした。僕は、そこで先に撮ったイメージを想起し、彼女を思い浮かべたときと同じような要領で、魔神が出してくる質問にただただ淡々と答えていった。 『男性ですか?』  はい。 『背は高いですか?』  はい。 『その人は百八〇センチ以上ありましたか?』  こればかりは、平均より背が低い僕がいくら相対的にといえども評価することはできないだろう。だから、分からないとだけ言っておいた。 『人気者ですか?』  これも全く分からない。この男のことを一度も見たこともないから、判断しようがないのだ。 『眼鏡をかけていますか?』  魔神は眼鏡フェチなんだろうか? (問いに対して、)いいえ。 『あなたの近くに住んでいる人ですか?』  正直、『近く』という言葉の定義次第だろうとは思うが、まあ、あの喫茶店から出て来たのだから、近所に住んでいるという解釈でだいたい間違いはないだろう。 『その人は目つきが悪いですか?』  その質問を見たとき、少し思い当たる節があって、さっき撮った写真を拡大してみた。男の目のあたりを比べてみると、たしかに鋭くて吊り上がった狐目が特徴的だった。 『どちらかというと暗い雰囲気ですか?』  彼女といたときの彼からは、──無表情気味ではあったけれど──どこか人格に欠損のあるような後ろ暗さを持っている感じはなかった。そして彼女もそんな奴を選ぶほど落ちぶれてはいないはずなんだろうって、そう信じたいだけだった。 『その人は、あなたの大切な人の横にいますか?』  魔神はなぜこんなにも意地悪で、絶望を促すようなことで僕を揺さぶるのだろう。好きになったのに、好きになれなかったという屈辱的な現実に死にたくなるけれど、しかしそれは厳然たる事実を示しているに過ぎなかった。彼女は好きになりたかった大切な人で、その傍にあの憎き男がいたのだ。それは僕の目が捉えた紛れもない、正しいことなんだと、再び絶望の淵に突き落とされた気分だった。  そして、それが最後の質問だったようだ。僕は、魔神の考える姿を見て、この魔神は電子空間上の存在だから感情の正負もないし誰かの悪意も感じないはずなのにどうしてこんなに「悪意」の姿が見え隠れするのだろう、と訝しんだ。  数分の後、やはり僕の知らない男の名が画面に表示される。彼女と同じように顔の画像はタップすることが可能となっていて、やはりこれも彼の個人情報を確認することが出来る。  男の名を知り、その住所や電話番号、学年やクラス(僕が知らないだけで、彼は同じ高校の同級生だった)、好きなものや嫌いなもの、所属する部活動、家族構成、果てには性的嗜好やバイタルデータ、その全てを知った時に覚える慄然とした気持ちを、僕は否定しようとした。  ──イマ、ボクハナニヲシヨウトシテル?  否定しようとした気持ちは間違いなく理性だった。しかし衝動はもはやあのサイトに出て来た魔神のコントロール下にあって、彼を罰せよ、彼を憎めよ、と原始的な生存本能でもって敵対する雄を蹴散らそうとする。なぜ魔神の制御を受けていると言えるのかというと、もはや今この場所に立っている自分は、あのサイトを見て行動を起こす前の失恋したときの自分とは、まるきり行動規範が違うからだ。いくら誰を否定しようとも、それを傷つけることを選ばなかった自分が、「復讐」の二文字さえ頭によぎるくらい、それくらい海より深く山より高い嫉妬に狂わされていた。  ──オイ、オマエノテキッテノハ、アイツラダロ?  内なる声のナビゲーションは、僕を路地裏への暗がりへと誘って、そのまま潜む。  ぐらぐらと実存が脅かされる音がする。魔神が把握していた位置情報によれば、彼女と男は、喫茶店から商店街を突き抜けるかと思いきや、そこから脇道に外れて、地元でも有名な治安の悪い通りへと進んでいった。  通りの悪評は、ネットで調べなくたって、この町では暗黙のうちに知れ渡っているところだ。路には吐き捨てられたガムと鳥の糞が交互に撒き散らされていて、使い捨てられたコンドームの箱であるとか、あるいは良く知らない外国産の薬のゴミ、タバコの吸い殻、そういったものがあちらこちらにあった。何度綺麗にしたってそうなるのだから、周囲の人々もほとんど諦めているに違いない、と僕は思っている。  ──大丈夫だ、僕にやましいことなど何一つない。  そんなステートメントとは裏腹に、やましいことだらけの僕が足を進めた。  辺りは灯も少なくて、闇の青さがすぅっと浮かび上がっているのだ。その青さが、心霊現象すら思わせるくらい非人間的な冷たさを含んでいて、僕はまだ秋にもなっていないのになぜか背筋が凍るように寒かった。  慎重に、痰とかガムとか糞を踏まないように気を付けながら、彼女らの後ろをつける。もはや気づかれることが怖い、なんて地平はいつのまにか超えていた。もう、死ねない僕は幽霊になって足跡を残さずにどこにでも付いていければいいんじゃないかって、そのくらいのことはずっと考えていたのだから。  暗い路地の隙間から、一軒、また一軒と光が漏れ出しているのを僕は見た。藍色の中から浮かび上がるそれを神々しいと表現するのは、とても浅はかなことだ。なぜなら、その光は林立するラブホテルからラブホテルへとつながっていたのだから。  光を追えば、必ず彼女たちへと繋がった。それは、到底避けられないような類の天災に似ていた。月並みな表現だが、雷が落ちたときって、こんなにビリビリするものなのか、と雲一つない空に思うのだった。  そして、こんなときに限って、あの告白を断られたときに言われた台詞が思い浮かぶのだ。 「──……君って、なんで私のことが好きなの? だって、私は……君のこと、まったく知らないし、興味もないのに」  知らないわけないだろう、と思っていた。彼女のことなら何でも知っていると勘違いして告白して、そして彼女のことを全て知ることが出来たと錯覚した今もまだ、勘違いしている。きっと僕がストーカーだと彼女が知ったなら、それはそれで彼女はゾッとするだろうが、何よりそのときに僕に向けられるであろう視線で僕は瞬間冷凍されるだろうと思った。一方通行の愛でもない、まがいものを見るような顔をするだろう……、ふたりとも。  しかし、歩き出した足は止まろうともしなかった。もう、これは魔神のせいなんかではない。自らの本能が、それでも自らの愛を受け入れなかった彼女らに罰を与えんとしているのだ。  汚れっちまった悲しみに、なすところもなく日は暮れるのだ。何も生まないことは知っている。  彼の背中を目がけて、一気に距離を詰め、家から持ち出した果物ナイフを何度も突き刺す、何度も突き刺すのだ。一度じゃ、人は死なないから、念入りに、何度も刺すのを忘れずに。ついでに、目撃者となる彼女にも、そうした鋭い苦痛を分け与えてやる。誰かに返り血でバレたって構わないのだ。もはや復讐は目的であって手段でもあった。 『あなたが復讐したい相手はいますか?』  魔神に問いかけられる声がして、ふとナイフを取り出す手が止まる。……そりゃあ、もちろん、殺してやりたいほどなんだ。それをなんだ、今更どうしたんだ、と僕は少し愚痴るような表情で心の中のランプに問いかけた。 『あなたは、相手があなたのことを知っていると思いますか?』  どうだろう。彼女が僕のことを知らないはずはない──覚えていないかもしれないが──、だから彼女から男へと「こんな情けない男がいたんだよ」くらいのことは伝わっているのかもしれない。答えは『部分的にそう』ってところだろうか。 『あなたは、相手があなたのしようとしていることを知っていると思いますか?』  そんなことはない! 僕は叫びたくなるのを抑えた。  死にたくなるほど惨めで飢えた獣が何をしたって構わないと思われているのかもしれないが、相手は僕のことを「覚えていない」とか言った奴なんだから、知らないに決まってるだろうよ! 『あなたは、相手のやろうとしていることを知っていますか?』  全く、ひとつとして知らない。それが答えで、特にそれ以上のこともない。大体、相手は間抜けにも復讐されて殺される側なんだから、これ以上彼女のことを考えるのは時間の無駄だ。  もう、さっさとめった刺しにしてやりたい。だが、魔神の声は質問が終わるまで僕を離してはくれないのだ。  魔神は、突然すっとぼけたような声でこんなことを問うた。 『あなたは、いま、幸せですか?』  幸せの定義にもよるだろうな、と僕は思った。そもそも、僕の周りにある大体のことは僕が不幸になるように出来ている。それを前提にして彼女や傍にいるクソ男を恨むという今の状況は、一面的に見れば幸せとは程遠い。しかし、反対から見てみれば、彼ら彼女らさえ消してしまったなら、恨まざるを得ない対象から解放されるのだから、それを幸福と呼ぶことだって僕は厭わない。  僕はそんなことでもって、結局『部分的にそう』としか答えられないのだった。  そして、それきり魔神の声は聞こえなくなった。  僕は、魔神が何をしたかったのかさっぱり分からなかったが、それを聞いたことによって、復讐をすることの意義であるとか正統な理由を獲得することに成功したのは確かだった。  まるで霧に包まれたかのように謎深き彼女のことも、あるいは隣で見せつけるように笑って彼女の手を繋いでいる男のことも、今では僕のスマホの中にある情報によって、地獄まで追いかけてやることすら可能だって、いったい誰が想像したんだろうね?  僕は人の悪い笑みを浮かべて、鞄から想像通りに果物ナイフを取り出す。そこから何十歩か歩めば、彼の背中に、満願叶って二度と消えない傷を刻めるのだ。その瞬間に僕はこの世で受けて来た耐え難い苦悩から逃れることができるし、くだらない集団から一抜けすることもできる。ああ、ようやくこの時が来たのだ! 晴れがましい気持ちで、すっかり夜になったこの町の空気を、一度だけ大きく肺に取り入れる。……少しだけ、煙草臭かった。  恐ろしい計画は、血飛沫で清々しく終わりたかった。だから、勢いをつけて、彼の背中へと突進する構えでもって飛び込んでいった。  ぐさり。  その擬音が生じたのは、彼の背中ではなく僕のお腹であった。瞬間、内臓の中を抉られるような深く鋭い痛みと、今にも沸騰しそうな血の熱さが僕の中を駆け巡る。  イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ──イタイ──イタイ…… 「お前がやろうとしてたことなんか、全部バレてんだよ。  知ってるだろ、このアプリ?」  男は、息絶えかけている僕にとても不快な微笑みを向け、スマホの画面を見せた。朦朧とする意識と、刺された衝撃でかけていたメガネが吹っ飛んだせいで弱まった視力でも、それは確かに分かった。『部分的にそう』なんて玉虫色の回答をするつもりもない。 「ああ、知っているよ」  魔神の顔は、俺を嗤うように口角が吊り上がっていた。思い返してみれば、さっきの声は警告だったのか? ……なんにせよ、全ては、あの魔神の掌の上で出来上がっていたことであって、きっと世界のシステムの中に仕組まれていたことだったのだ。  イタイイタイイタイ……イタイイタイ……タスケテ……イタイイタイイタイイタイイタイイタイ!  きっとこんな腐った路地じゃ、助けを呼んでも誰も来ない。おまけに僕は果物ナイフを持っていたから、仮に彼が罪に問われるとしても正当防衛として弁護されてしまうのだろう。  僕は意識を手放す前に、僕の中に現れた魔神に問いかけた。 『これは、僕が死ぬために仕組まれたことだったのか?』  答えは、なかった。答えるはずもなかった。これは憶測でしかないが、僕の中に魔神はいなかったのだ。あくまで、純粋な狂気が詰め合わされただけの自分を、あのサイトが後押ししただけだったのだ。  ああ、ああ、思考する能力がだんだんと弱まっていく……。  とある恋を葬るための赤い噴水が、僕の身体から吹きあがるときに──、白いサザンカが彼岸に揺れているのを見た。  その花言葉は、『あなたは私の愛を退ける』。
1 note · View note
shibaracu · 4 years
Text
◆◆床の間(とこのま)
本文を入力してください
◆◆床の間(とこのま) きのせみかさんの日記の中に次の一文があった。 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 日本古学(国学、古道学、皇道学)によると、「床の間」の由縁は、宮中における大祭である新嘗祭において、新穀を天皇陛下が御自ら神々に奉げられ、また御自らもお召し上がりになる神殿が一段高い所に設けられていることにあるとされています。 つまり「床の間」は「神域」を表しており、床の間を物置のようにしたり、皇室や神道に関係のない外来宗教や新興宗教のものを置くことは凶とされており、神殿と同じように常に清浄に保つことがその家に福をもたらす秘訣とされています。 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ココまでのことは知らなかったが漢字から「床」だから寝る床だったとは知っていた。 貴族などが寝る場所で戦国時代の間にだんだんと隅に行き置床 何か有れば外してその空間を使う。 秀吉が権力を傘にきてソコに座ったために頭に来た千 利休が壁に貼って貼りどこにした。 そこで頭に来た秀吉が切腹を命じた。 一つの説であると。 逸話として残っているとか。 切腹の原因の一つだと。 でもコレはないと思うけど。 秀吉とて一角の武将ソレも天下の大将なのに床の間の意味も知らずにそんな事するとは思えない。 カレはいろんな方面の知識を備えていた。 都合の悪い人間が後で捏造して付け足した伝説ではないかな。 秀吉に疑心暗鬼は無かったとは言えないけど。 専門化ではないのでこの辺になると判らない。
床の間一つでもこれだけの風呂敷を広げられる。 日本て面白い国だ。
◆床の間 - Wikipedia http://bit.ly/wFObLr 床の間(とこのま)とは、日本の住宅の畳の部屋に見られる座敷飾りの一つ。 正しくは「床(とこ)」で、「床の間」は俗称とされる。 ハレの空間である客間の一角に造られ、床柱、床框などで構成されている。 掛け軸や活けた花などを飾る場所である。
◆床の間のページ床の間の種類と収まり、出書院、平書院 大工さんが作ったページ http://bit.ly/yJaj0b  床の間の名称など  建築大工用語集    ●出書院とは|住まい・住宅関連の用語集 2320用語を収録【住辞苑】 https://www.juujien.net/w/1936.html 出書院とは、付け書院の別称で、縁側のほうにはみ出して設けられたものをいいます。   ●平書院 とは 建築工事 | 住宅建築専門用語辞典 http://www.what-myhome.net/27hi/hirasyoin.htm 平書院 用    語 平書院 よびかな ひらしょいん 別    名 略書院(りゃくしょいん) カテゴリー分類 工事・施工関係/名称・呼称/部位/和室 構造分類 全般 工事分類 木工事 関連用語 和室・床の間・書院 平書院 とは. 平書院. 書院の一種で、付書院を略した形式の書院で、床の間脇の縁側の壁に書院窓を設け、付書院のような地袋や棚板がないもの。 平書院は略書院(りゃくしょいん)とも呼ばれています。 【相対語】・・・付書院   ●付書院 http://www.what-myhome.net/18tu/tukesyoin.htm#01 用    語 付書院 よびかな つけしょいん 別    名 出書院(でしょいん) カテゴリー分類 工事・施工関係/名称・呼称/部位/和室 構造分類 全般 工事分類 木工事 関連用語 和室・床の間・書院 付書院とは、 書院の一種で、床の間脇の縁側に張り出した棚(机)で、下を地袋などとし前に明かり障子を立てたもの。 また、付書院は出書院(でしょいん)とも呼ばれ、付書院の張り出しをなくした書院を平書院と呼ばれています。   ◆仏壇・神棚・寝室・床の間の吉凶について 九星気学運気予報2018年5月3日 https://00m.in/N7EKU 2018/05/03 お年寄りや幼児は弱いということを考えて部屋を決めたいですね。 広い部屋と狭い部屋は気圧が違うので広過ぎない、狭過ぎない大きさで南東方位が取れれば最高ですね。 寝室は一日の疲れを取るそして明日への活力を得る為には 東や南東が最高です。朝一番に酸素一杯の空気が流れ込むからですね。 ●いけばな百科(Ikebana pedia) https://00m.in/AVCTG 「本勝手」 1 書院「本勝手」(右勝手)の床の間とは、向かって左から採光し、左に床、右に床脇棚があるものを言う。 2 茶の湯の「本勝手」(右勝手)では、客が主人の右手に座る茶席のかたちとその点前を指す。 3 いけばなの「本勝手」(右勝手)では、向かって左側を長く、右側を短くする花型(右長左短)を言う。 「逆勝手」 1書院「逆勝手」(左勝手)の床の間とは、向かって右から採光し、右に床、左に床脇棚があるものを言う。 2 茶の湯の「左勝手」(左勝手)では、客が主人の左手に座る茶席のかたちとその点前を指す。 3 生け花の「左勝手」(左勝手)では、向かって右側を長く、左側を短くする花型を言う。 「勝手」とは「利き手」のことで、主が動作する右側にゆとりを持たせるために、茶室では書院とは逆に右から採光する床の間を「本勝手」とする。いけばなでは、採光の右左で「本勝手」「逆勝手」を決めることから、書院も茶室に合わせて、右に床、左に床脇棚を「本勝手」とする流派も多い。すると、今度は書院に活ける「本勝手」(右長左短)の花の向きと採光を巡って混乱が生じる。けっきょく、床に飾る花の位置も含めて、流派によってばらばらの主張になった。 現在では、多くの流派で、「本勝手」「逆勝手」の花の向きに拘らず自由に花を活けることが主流になって、この問題は消滅している。 ◆「床の間」 その空間に、一幅の軸、一輪の花を見る http://bit.ly/Azs7z7 ◆和の知識   2.床の間     http://bit.ly/yPf2Mq   ◆【意味】 床の間とは、日本建築で座敷の床を一段高くしたところ。掛け軸・壷・花などを飾り、上座とする。 【床の間の語源・由来】 床の間の「床(とこ)」は、奈良時代から用いられた語で、人が座る「座」や「寝床」の意味として用いられていた。 室町時代、他の部屋より一段高くした押し板がつけられ、主君や家臣が会うときなどに用いられた「上段の間(ま)」を「床(とこ)」と言うようになり、一段高くなったところを「床の間」と言うようになった。 今日で言う「床の間」の形は、茶室が造られるようになったことで、上段と押し板が縮小されてひとつとなったことによるものである。   ◆File56 床の間|美の壺  http://www.nhk.or.jp/tsubo/arc-20070720.html まずは「床の間」の配置に注目しましょう。 江戸中期になると、武家だけでなく、裕福な 商家も「床の間」を設けるようになりました。 「床の間」は、落掛(おとしがけ)、床柱(とこばしら)、床框(とこがまち)という木材で四角く囲まれています。
◆ 【床の間】三省堂 大辞林 座敷の正面上座に一段高く構え、掛軸・置物・花瓶などを飾る場所。室町時代の押板(おしいた)と上段を原形として生まれた。ゆかの仕上げにより畳床と板床があり、また形式としては本床・蹴込み床・踏み込み床・洞床(ほらどこ)・袋床・釣り床・織部床・置床などがある。   【押(し)板】 中世、壁に掛けた書画の下に置いて、三つ具足などを飾る板や台。また、それが作り付けとなったもの。現在の床の間の原形の一つと考えられる。   【本床】 本式につくった床の間。柱はすべて面取りをした角材を用い床框(とこがまち)を取り付け、畳敷きとし、床脇に違い棚と付書院を備える。   【床▼脇棚】 床脇に設けた棚。違い棚・袋戸棚など、多くの種類がある。床棚。床脇。   【付(け)書院】 書院造りで、床の間わきの縁側に張り出して設けた出窓のような部分。文机(ふづくえ)ほどの高さの板張りの前方に明かり障子をつけたもの。鎌倉末期から室町時代にかけて住宅に設けられた造りつけの出文机(いだしふづくえ)が、座敷の装飾となったもの。書院床(どこ)。書院棚。書院構え。明かり床。明かり書院。   【▼蹴込み床】 床の間の形式の一。床框(とこがまち)を用いず、床板(とこいた)と畳寄せの間に蹴込み板を張ったもの。   【床▼框】とこがまち 床の間の前端で、床畳または床板の端を隠すために用いる化粧横木。とこぶち。   【洞床】ほらどこ 床の間の形式の一。床の間口より内部の方が広く、洞の形をとる床。主に茶室に用いられる。   【袋床】 床の間の一形式。床の間正面の左右いずれかの端部に袖壁を設け、その部分を袋のようにした床の間。   【壁床】 床の間の一。床板や床柱を用いず、上に落とし懸けを入れて床の間としたもの。釣り床。   【置(き)床】 床の間の代用とする移動できる台。付け床。
◆床の間(とこのま)とは?意味や使い方について WABI SABI https://jpn-wabisabi.com/jp/japanesestylehouse-betweenfloors/ 2019/06/01 日本古来の住宅の特徴のひとつである「床の間(とこのま)」。 「床の間」はただの飾りではなく、意味を持たせた空間にもなりうることをご存知でしょうか。 当記事では、「床の間」の歴史から、他文化との関わり、「床の間」のある有名な建築までをご紹介します。 目次    1 「床の間」とは?    2 「床の間」の歴史    3 床の間と茶の湯/茶の湯文化により芸術に昇華された「床の間」    4 「床の間」の使い方    5 「床の間」と“上座”(かみざ)    6 「床の間」のある建物、見学できるところは?        6.1 妙喜庵(みょうきあん)国宝【待庵(たいあん)】        6.2 源光庵(げんこうあん)        6.3 小泉八雲旧居(ヘルン旧居)    7 さいごに    8 あわせて読みたい   ●【その1】茶の湯と京都 http://www.digistyle-kyoto.com/study/culture/chashitsu/chashitsu01.html 華道、茶道・・・というと、女性が年頃になると花嫁修行でみんな揃ってお行儀よく、強制的にさせられるものというかんじがしていて、あまのじゃくだった私は、じつは敬遠していたんですね。ところが、なぜか京都出身の女性というと、世の中では、茶道、華道は当然身につけていると思われている!!とくに地方へ行くと、必ずといっていいほど、あたりさわりのない会話の中で、「お茶をやっているので、年に一度は京都へ行くんです」とか、「うちの家内がやっていまして・・・」という話になるんです。その度に、私は「いやぁ~そうですかぁ~」と、特別バージョンの甲高い京都弁で、冷汗たらたらで切り抜けてきたんですね。(笑)まぁ、今さら習いに行くというのも気恥ずかしいかんじがして、きっかけがつかめずにいたんですが、そろそろ、この歳では笑って許されなくなってきたぞとあせっていたところ、御縁があって、ようやく茶道をはじめることなりました。まだまだロボット状態でしか動けない私はあたたかいお師匠様のまなざしに見守られ、足のしびれと格闘しています。   ◆【その6】茶室の空間/床の間:京都を知る・学ぶ | DigiStyle京都  http://bit.ly/z6Us5z 床の間は、茶室にとってもっとも重要な空間といわれています。亭主はまず床(とこ)の掛物を考えることからはじまり、それを中心に他のお道具の取り合わせを決めていくのです。茶会の会記(いわゆるその日のメニューのようなものでしょう)にも、まず最初に掛物が書かれているのです。この床の間というのは茶室に限らず、日本人にとって何か特別な精神的な思いのある空間のような気がします。
◆意外と知らない「床の間」の意味や起源とは?使用しない場合の有効活用も合わせて紹介 https://o-uccino.com/front/articles/58381 2019/12/27 目次    床の間とは?意味や目的を確認    床の間を現代風におしゃれにリフォーム    使わない床の間を有効活用しよう    本来の目的を理解し、自分の環境にあった使い方をしよう! みなさんは、床の間をご存じでしょうか。一軒家に住んでいる方は知っている方も多いでしょうが、マンションなどの集合住宅に住んでいる方の中には、聞いたことがない方もいるでしょう。 今回は、床の間の意味や起源から本来の目的、床の間の空間の有効活用方法まで紹介します。   ◆床の間の役割と変遷 - 日本床の間文化普及会 http://tokonoma-culture.com/role/ 歴史 究極の日本のおもてなしである茶道から数寄屋建築へ 安土桃山時代に発展した茶室(数寄屋)は、格式や権勢を重んじる荘厳な書院造(床の間、棚、付書院を備えた座敷)が主流だった時代に、茶道の思想を背景に質素で格式を排除した会所をめざした。 江戸時代以降は茶室から住宅などへとその幅を広げ、現代では料亭や住宅でも数奇屋建築に習ったものが造られるようになった。   ◆床の間とは(飾り方と歴史)【住宅建築用語の意味】 https://polaris-hs.jp/zisyo_syosai/tokonoma.html 床の間とは、 和室の代表的な座敷飾りです。 床の間は来客者を通す客間に設けられ、床柱、床框、落とし掛けなどで構成されていています。 掛け軸や置物、花瓶などを飾るスペースで、床の間のある方が上座です。 お勧め記事 この記事をご覧になった方は、次の記事もご覧になっています 他の部屋の部位へ和室の部位【名前・名称】  「和室」の各部位の名称・・・鴨居、敷居、長押など https://polaris-hs.jp/interior/partsmame_washitsu.html 他の部屋の部位へ床の間の部位【名前・名称】  「床の間」の各部位の名称・・・床框、違い棚、書院など https://polaris-hs.jp/interior/partsmame_tokonoma.html 他の部屋の部位へ「床の間」の様式と種類|真・行・草  真・行・草(しんぎょうそう)・・・本格的な床の間からラフな床の間まで https://polaris-hs.jp/interior/partsmame_toko_syurui.html 「床の間」の詳細説明 目次 ・「床の間」には何の意味があるのか?   おもてなしをするための装置 ・「床の間」の飾り方   季節を感じさせるしつらえを ・「床の間」の歴史   床の間の誕生と変遷 ・「床の間」を設ける方角   家相では南向きか東向きが良いとされている ・本勝手と逆勝手>>別ページ   書院・床の間・床脇の並び方 ・「床の間」の種類>>別ページ   代表的な床の間の形式8種類をご紹介 ・「床刺し」はタブー>>別ページ   全ての床の間でタブーとされている事があります 床の間とは、和室の代表的な座敷飾りです。 床の間は来客者を通す客間に設けられ、床柱、床框、落とし掛けなどで構成されていて、掛け軸や置物、花瓶などを飾るスペースです。 奥行きは半間(91センチ)で、間口は部屋の広さに応じて半間~1間半の範囲で設けるのが一般的です。 なお、床の間というのは俗称で、「床(とこ)」というのが正式名称です。   ◆和室にある床の間って何に使うの?|歴史を知れば使い方が見えてくる https://phkkoomde.com/tatami/alcove/ 2017/07/06 私が京都で畳修行してた頃、いくつもの美しい床の間に出会いました。 長さ五尺ぐらいの床の間に、ハクション大魔王の壺のような器(怒られますねw) に季節のお花が活けてあって、遠くからみても日本の美を感じることができる。 とても美しい光景でした。 とはいえ、そのような床の間の使い方をしている御宅もあれば、 どう使えば良いかわからず物置になってる床の間もしばしばお見受けしました。 では、和室にある床の間はどう使ったら正解なのか。 床の間とはそもそも何なのか?和室にある床の間は何に使うのか? その答えは、床の間の歴史を理解すればわかるのではないかと思います。 そこで今回は、和室にある床の間って何に使うのか。 床の間の歴史を振り返りながら床の間の使い方を紹介します。 この記事でわかること ・床の間の歴史 ・床の間の形式 ・床の間の決まり ・和室にある床の間って何に使うの? 目次    1 床の間の歴史    2 床の間の形式    3 床の間の決まり        3.1 床刺しは縁起悪い        3.2 床の間の位置    4 和室にある床の間って何に使うの?    5 最後に ◆床の間とは?何のためにあるの? - 日本文化研究ブログ https://jpnculture.net/tokonoma/ 2017/05/18 床の間とは?何のためにあるの? どんな種類があるの? 起源や歴史とは?英語で何ていうの?   ◆床の間の起源は仏教思想から : 心のおもちゃ箱 https://gahoo959.exblog.jp/651028/ 2007/02/11 床の間は、仏画を掛ける壁とその前に置いた台(三具足を飾る台)が、造り付けになったものです。書院は、書見のための場所、違い棚は本棚の変形したものであります。 いずれも僧侶の信仰生活の日常の必要から生まれたものですが、後世にこの三者が一体になって書院造りの様式に発展し大成してからはその意匠的な評価が高まりました。 それが、次第に地位と権力の象徴として取り上げられる傾向が顕著になり、床の問は規模も形式も豪華なものに変わっていきました。(『真』の形式、これは書、花、画、武道等全てに共通する日本の形式美学のひとつです。) また、茶室に取り入れられた床の間は、書院のそれとは別に自由な表現形式を取り、いわゆる『行』『草』の形式を生み、当時の庶民階級に浸透して一般住宅にも使用されるようになりました。   ◆床の間| 畳の張替えは【まごころ畳】 https://magokorotatami.co.jp/topics_tatami1-14.html 床の間とは、日本の住宅のなかの畳の部屋に見られる座敷飾りのひとつです。正しくは「床(とこ)」といい、「床の間」は俗称とされています 特徴としては、ハレの空間である客間の一角に造られ、床柱や床框などで構成されています。掛け軸や活けた花などを飾り、絵画や観賞用の置物などを展示する空間です。 歴史的にみると、かつて北朝時代に付書院や違い棚と共につくられはじめた、押板(おしいた)は、掛け軸をかける壁に置物や陶器などを展示する机をあわせたものでした。その用途をそのままに、近世の茶室建築につくられた「上段」が床の間となったのです。近世初期の書院造、数寄屋風書院をもって床の間は、完成とされました。 ひと昔前の日本の住宅では、なじみ深いものでしたが、最近の住宅では床の間が取り付けられることは、少なくなっています。 その用途についてですが、近世には、有力者の館や城の広間、有力者の家臣が、仕える主人を迎え入れるため邸宅の客間に座敷飾りが造られ、その一部として採用されました。上段の主人のいるところに装飾を施した床の間などの座敷飾りをつくり、その家の主人の権威を演出しました。書院造の建築にある「広間」では床の間のある方を「上座」といい、その反対を「下座」といいます。江戸時代以前の大名屋敷や城郭の御殿において上座のことを「上段」、それ以下を下段や中段などといい、座敷飾りの施された上段は、領主や当主などの主人の部屋とされました。江戸時代になると、庄屋などの一部の庶民の住宅において領主や代官など家主よりも身分の高い客を迎え入れるために床の間などの座敷飾りがつくられました。時代が流れ、明治時代以降になると、都市部の庶民の客間にも床の間が一般化するようになりました。 現在では掛け軸をかける習慣が少なくなり、畳の部屋であっても床の間を省略することも多くなりました。床の間の起源に戻る形で、簡素な飾り棚を置くようなケースも見受けられます。 構造としては、床の間には、床板と畳の上面を揃えた「踏込み床(ふみこみどこ)」、畳より床板の上面を高くした、「蹴込み床(けこみどこ)」、床の間の袖一角を袖壁と正面に幅の狭い壁で半ば隔て袋状にしたものを「袋床(ふくろどこ)」といい、「置き床(おきどこ)」は移動できる簡易な床をさします。   ◆床の間のお話。 - 「京都・北山丸太」 北山杉の里だより - Goo ブログ https://blog.goo.ne.jp/kyotokitayamamaruta/e/0c2d4834d0d7c18ba5c5ea9ddf30960e 2012/08/23 8月も後半に入り、夕方にになるとツクツクボウシの声。朝晩は大分過ごしやすくなってきました。 今日は突然、雷とともに激しい雨が降りましたが、雷に打たれて命を失うこともあります。 小説「古都」では美しい雨宿りのくだりがありましたが、激しい雷の時は間違っても大きな木の下に入らないように気を付けましょう。 今回は少し、床の間のお話をしてみようと思います。 今では無駄なスペースだと、失われつつある「床の間」。けれどそこにはきっと歴史と意味があるはずです。どんな背景で生まれどのように使われてきたのか・・・。 室町時代、僧侶の住まいで仏画の前に机を置き、香炉・花瓶・燭台の三具足(みつぐそく)を並べたものが起源と言われています。そして机を造りつけにした押し板が登場し、貴族や武士の住まいでは飾り物を飾るようになりました。 やがては書院造に発展し、他の部屋よりも一段高い押し板が付けられ、主君が家臣と会う時などに使う「上段の場」となっていきます。 それは主君の座。聖なる空間でありハレの場であり、その人の権威を象徴する場であるとも言えます。 トコという日本語は、人が座る「座」「寝床」などの意味のほか、「とこしえ(永久)」「とこよ(常世)」などと使われるように、絶対に変わらない「永遠」というイメージもあるそうです。   ◆実は畳は五角形?床の間って何をする部屋なの?和室からみる日本の歴史と文化 https://mag.japaaan.com/archives/86534 2018/11/27 和室には必ずある「床の間(とこのま)」。「床(とこ)」とは、もともと「座る場所」、「寝る場所」という意味があり、もともとは身分の高い人たちが座る場所を一段高くしたものが、その始まりと考えられています。 床の間が現在のようになったのは、室町時代から安土桃山時代にかけてのこと。僧侶が部屋の一番良いとされる場所に仏画を飾ったり、お香をたく入れ物や花瓶を置くための棚を作り、それが書院造(しょいんづくり)という住宅様式として確立され、貴族や武家の家で取り入れられるようになりました。 やがて、床の間は、自分より身分の高い客人をもてなすための客間の装飾として商人や庶民への間に広がっていきました。 ところで、和室に敷かれている畳、一見長方形に見えますが、長方形のものは中心にあるもののみ。それ以外の中心を囲っている畳はそのほとんどが五角形で、なかには六角形や七角形をしているものもあります。これは、和風家屋は建築の際、形が微妙にゆがんでしまうためで、その微妙なゆがみに合わせて職人が畳を変形させて作ったからです。   ◆日本だけ?西洋のように絵を壁に飾らず、床の間に飾る理由は? https://goto-man.com/faq/post-10690/ 掛け軸を床の間に飾る理由をご紹介します。 床の間の歴史 床よりも一段高い、奥行きがある、床柱などで装飾されているなその特徴を持つ「床の間」は和室に設えられた空間で、和室の上座・下座を見分ける際の基準となります。 和室に床の間が作られるようになったのは室町時代頃といわれています。 日本が公家社会から武家社会に移行するさなか、住居の形式も寝殿造りから書院造りへと変化していきました。書院造りでは家臣と君主を分けるために、君主が座る「上段の間」と、家臣が座る「下段の間」が作られるなど、寝殿造りとは異なる様式が用いられています。 また、僧侶は壁に仏画を飾り、その下に台を設けて香炉などを置くという形式をとっていましたが、室町時代になると香炉などを置く台が「押し板」と呼ばれる作り付けの台に変化しました。 現在の床の間は、武家社会での「上段の間」と、僧侶の住宅に用いられた「押し板」が混ざり合ってできたものです。このような理由から、床の間は現在でも「上座」として定着しているということです。 床の間は「神が宿る場所」   ◆上座と下座|日本文化いろは事典 http://iroha-japan.net/iroha/B06_custom/04_kamiza.html 読み方:かみざとしもざ 関連語:畳・座布団・正座・日本画 部屋の中で目上の人や客人が座る席を上座、目下の人やもてなす側が座る席を下座といいます。特にビジネスの世界ではこの席次が重んじられます。「かみざ」「しもざ」又は「じょうざ」「げざ」とも呼ばれます。 ●床の間と出入り口を基準に 一般に、和室では床の間や床脇棚〔とこわきだな〕に近い席が上座、部屋の出入り口に近い席が下座となります。床の間がない部屋では出入り口から遠い席が上座、近い席が下座となります。また洋室では、暖炉や暖炉の飾り棚があれば、そちらに近い席が上座となります。出入り口から遠い位置にソファー(2人以上がゆったり座れるもの;1人掛けはアームチェア)がある場合もそれが上座です。 ソファーが上座になるのは、「2人分のスペースがある広いソファーに1人で座ってもらい、よりくつろいでもらいたい」という大切な客人や年配者などへの配慮が込められています。また出入り口に近い方が下座なのは、出入りが頻繁にあると落ち着かない気分になるため、大事な人を座らせるわけにはいかないからです。   ◆床の間の意味とは? 仏壇を置いてもいいですか? | ジャパノート ... https://idea1616.com/tokonoma/ 床の間というのは不思���なもので、そこにある掛け軸や置物などを見ていると、時間が経つのを忘れてしまうようなところがあります。 また、目上の人を訪ねてかしこまっているときに、床の間の書画が話のきっかけになってくれたりもします。 今回は、そもそも床の間とは何か、床の間はどんな意味を持っているのか、床の間はどのような飾り方をするのかについて考えてみることにしましょう。 目次    1 床の間とは?    2 床の間の意味は?    3 床の間の飾り方は?        3.1 一般的な飾り方        3.2 床の間に仏壇は?    4 まとめ   ◆日本の建築-床の間・違い棚(だな)・書院の成立 - 国立歴史民俗博物館 https://www.rekihaku.ac.jp/exhibitions/project/old/070110_ke/index.html 趣旨 国立歴史民俗博物館では、日本の建築史にとって重要な建築の建築模型を所蔵しています。これは縮尺10分の1で、現実にある建物を忠実に再現したもので、現場ではわかりにくい建物の全体的な姿や、細部、構造を見ることが出来ます。また模型によって、実際にはできない建築相互の比較をすることも出来ます。 開館以来、これらの模型を順次展示してきましたが、今回は慈照寺東求堂と今西家、旧北村家という民家2棟を取り上げます。この3棟によって日本住宅史の上で重要な問題である、日本住宅を特徴づける床の間・違い棚・書院というものがどのようにして形成されていったかを示したいと考えて企画しました。ただそれには模型が充分ではありませんが、関連する絵画史料なども援用して、あなたの想像力を駆使してご覧いただければ幸いです。
0 notes
Text
【小説】JOKER 第二部ジョーカーvsラットマン
第一章 異邦人
 〈1〉
   慶田盛探偵事務所所長慶田盛敦は、たった一人の事務員兼秘書三島陽菜と仕出し弁当で昼食を取っていた。
 応接セットはそれなりのものを使っているが、職員の机は開業した時のまま、譲り受けたスチール机と華奢な椅子だけだ。
「所長、お昼が終わったら相談一件、二時半から地裁掛け持ちですよ~」
 呑気な口調で陽菜が言う。
 陽菜は敦より二十歳ほど年下の娘のような女性だ。
 元々長年に渡り陽菜の母親が事務と秘書をやっていたのだが、失業中の娘をどうにかしてほしいというので採用したのだ。
「相談は日本人ではないって話だったね」
「はい、日本語があまり上手では無かったですし」
「友人が殺人事件の容疑者にされたと」
 つたない日本語と慣れない事務では詳細は望めない。
 殺人事件の容疑者という事で早くも脳裏に三浦探偵事務所への連絡が浮かんでいる。
 日本では立件されたが最後99%が有罪となる。
 それを嫌がらせのように押し下げようとしているのが、慶田盛弁護士事務所と三浦探偵事務所だ。
「殺人事件って本当に多いですよね~。どうして年間百件に収まるのかな?」
「それを知った所で僕らの仕事が減る訳ではないよ」
 言って慶田盛は弁当を食べ終わって、簡素なシンクで軽く洗って事務所の前に弁当箱を出す。
 そこで薄暗い階段を上ってくる浅黒い肌の青年と目が合った。
「時間早かったですか?」
 青年の言葉に敦は頭を振る。
「いや。僕が事務所にいる時間ならウェルカムだよ」
 慶田盛はドアを開いて青年を招き入れる。
 陽菜も弁当箱を洗っている所だ。
 青年を応接セットのソファーに座らせると陽菜が湯飲みを差し出す。
「あの、これ、お茶ですけど、コーヒーや紅茶の方が良かったですか? 普段は何を飲んでるんですか?」
「気にしない、いいよ。お茶飲める。ケダモノセンセイ?」
 青年が顔を向けてくる。名前が一字違うだけで犯罪者のようになるのはなぜだろう。
「ケダモ、リ。ね。ケダモノだと犯罪者になってしまうからね」
 慶田盛は冗談めかして言う。
「日本語難しいね。やっぱり分かってきたよ」
 青年がポケットからスマートフォンを取り出す。
 Google翻訳にした方が手っ取り早いと判断したのだろうか。
「センセイこれ見る」
 音量を絞ったスマートフォンの暗い映像の中で、人間の姿が揺らめいている。
 だが、暗いと思ったのは無数の黒い物体のせいだった。
 首から上はシャンプーハットを逆さにして守っているが、全裸の身体に無数のネズミが食らいついているのだ。
 映像の中の女性が声の限りに叫ぶが、ネズミは本能のままに肉を貪る。
 慶田盛は食べたばかりの昼食が逆流するのを感じる。
 仕事柄死体の写真は見慣れているが、死んでいく姿を見る事は稀だ。
「これが被害者なのか?」
 慶田盛の言葉に青年が頭を振る。
「ニャンの妹。ニャンはヤクザを殺したと言われて警察に捕まった」
「どういう事かな……この映像は被害者ではないと?」
 こちらの言う事はちゃんと分かるらしい。青年が首を縦に振る。
「フホウタイザイシャだけど、フホウタイザイシャじゃない。二百万円払って日本に勉強に来たよ」
 それを聞いて慶田盛はヤクザの外国人ビジネスを考える。
 発展途上国で日本で日本語と職業の勉強ができると言って人を集める。
 集めた人間を女性なら性風俗、男性なら肉体労働で強制的に働かせるという訳だ。
 しかも、金を払っているのに違法な形で就労している為に警察に訴える事もできない。
「ヤクザが殺されて、この映像を見つけた警察が僕たちがフクシュウしたんだと決めつけた。でも、家族や仲間がどこでどんな風に働かされているか、僕たちには分からないね」
「このスナッフビデオが出て来たから、ヤクザを殺したのは外国人だという話になった訳か」
「たぶん、そう」
 青年の言葉に慶田盛はため息をつく。
 いつもながら警察の短絡的な発想には驚かされる。
 映像の被害者の兄だから、ではなく、外国人だから、という理由が正解なのだろう。
 強制送還で母国の警察に引き渡してしまえば万事解決だ。
「状況は分かった。詳しいアリバイ何かは当事者のニャンさんに聞かないと分からないだろうね」
「ニャンはもっと訳が分かっていないね。ビデオも見てないと思うね」
「それは分からないだろうね。でも、弁護する為には本人と契約しなきゃならないんだ。それと、君の名前を聞けるかな」
 映像で驚いてしまったが、最初に聞くべきなのは相手の素性だった。
 慶田盛は待ち受ける裁判を思い身体を奮い立たせた。
  〈2〉
  「さみー。何でヒーター壊れてんだよ」
 屋内でダウンジャケットを着た健が、真夏の蠅のように両手をこすり合わせる。
「いきなり大金使ったら税務署に嗅ぎつけられるからでしょ」
 こちらもダウンベストを着た加奈が身体を丸めて言う。
 三浦探偵事務所は目下冬将軍と熾烈な戦いを繰り広げている。
 コートに身を包んだ清史郎は残念な思いで石油ファンヒーターを眺める。
 五年ほどしか使っておらず、特に壊れるような事もしていないのだが、十二月に入りいよいよという所でスイッチを入れた所全く反応しなかったのだ。
 ファンヒーターくらい買っても税務署は動かないだろうが、先の事を考えるとジョーカーとして稼いだ金はなるべく温存しておきたい。
「そもそもさ、何で調査費用が十万円とかなんだよ。一週間以上かかってんだからもっと取らねぇと割に合わねぇだろ」
「私一人の時はそれでもやれてたんだ」
 清史郎はため息をつく。健と加奈はよくやってくれているが、急に価格を上げたりしたら慶田盛探偵事務所が潰れてしまう。
「私、あんまり役に立ってないのかな」
「そりゃ、俺たち寒がってるだけだもんな」
「営業に行けとは言わないよ。仕事が増えてもこなせないんじゃ意味がない」
 清史郎は苦笑する。
 実際、健と加奈は充分に捜査の役に立っているし、依頼もこれまでにないほど順調にこなせている。
 ――問題は価格設定か――
 清史郎は今更ながらにどんぶり勘定の事務所の事を考える。
 商店街の好意が無かったら今頃廃業していてもおかしくないのだ。
 と、事務所の電話が着信を告げる。
 すかさず加奈が電話に応答する。
「はい、三浦探偵事務所でございます。はい……ああ、慶田盛さん?」
 声のトーンが余所行きのものから身内のものにトーンダウンする。
「……今から、いいですけど……��時半から地裁だから? ミンさんを置いていく?」
 加奈の通話を傍から聞いているだけではさっぱり意味が分からない。
「分かりました」
 言って受話器を置いた加奈が顔を向けてくる。
「ヤクザが不法滞在者を使ってスナッフビデオを作ってて、ヤクザが殺されたから犯人は不法滞在者だって事になって、ミンさんの友達のニャンさんが警察に捕まったんだって」
 要点をまとめた話だが、まとめられ過ぎていて話を理解しづらい。
「詳しい事は慶田盛さんとミンさんから。で、慶田盛さんは二時半から地裁で裁判があるから、長居はできない」
「相変わらずあのオッサン、無茶振り半端ねぇな」
「それだけ多くの人に信頼されてるんだよ」
 清史郎は健に答えて言う。
 加奈がガスコンロで茶を入れる為に湯を沸かし始める。
「なぁ、ジョーク、スナッフビデオって何だ?」
 手持ち無沙汰な様子の健が訊いてくる。
「殺人の様子を写したビデオや死体を損壊するビデオだな」
「それって写したヤツは殺人犯か死体損壊じゃねぇのか?」
「殺人ほう助にも相当するな」 
 清史郎が言うと健がPCのキーボードを叩く。
「どの道ヤクザが人殺しをしたって事には変わりないんでしょ?」
「今の段階では何とも言えないな」
 清史郎は腕組みをして言う。
 ジョーカー事件で矢沢が失脚した為、矢沢組は現在若頭の緒方が臨時的に取り仕切っている。 
 新庄市でトップにならないという事は、緒方にはそれなりに慶田盛や清史郎のリスクが見えているという事になるだろう。
 だとすれば、理性的な緒方がスナッフビデオなどというリスキーでリターンの小さいビジネスに手を染めるとは考えにくい。
「問題は殺されたヤクザが本当に不法滞在の外国人によるものなのかって事だ」
 清史郎はかじかむ手を揉みながら言う。
 加奈がガスコンロをつかっているせいか室温が幾らか上がった気がする。
「警察はそう考えてるんだろ」
「もっと穿った見方をすれば、日本語も満足に話せない外国人を犯人に仕立て上げて、強制送還で証言できないようにすれば検挙率を上げられるという話にもなるな」
 健に答えて清史郎は言う。
 目下最も高い可能性がそれなのだ。
 ヤクザの死体発見がいつで、被告がいつ逮捕されたのか不明だが、殺人事件がそんなに簡単に解決する訳が無い。
 ドアが開き、慶田盛と浅黒い肌の東洋人が姿を現す。
「清史郎、すまん。次の裁判まで時間が無い」
 慶田盛が息を切らして言う。
「分かった。そこの……ミンさんから話を聞けばいいんだろう?」
「また後で話を聞かせてくれ」
 慶田盛が慌ただしく事務所を出ていく。
「どうぞおかけ下さい」
 加奈がミンを事務椅子に誘導する。
 座面の破れていない唯一の椅子だ。
「私たちは依頼者の秘密は守る。盗聴の心配は無用だ」
「まぁ、絶対の防諜ってのは無ぇんだけどな」
 健が余計な事を言う。
 ミンがスマートフォンを取り出して経緯を語る。
「ジョーク、すまねぇ、俺、トイレ行ってくる」
 スナッフビデオを見た健がトイレに行こうとする。
「ちょっとあんた我慢……」
 加奈が胃袋の辺りを押さえて言葉を詰まらせる。
「二人とも、トイレは一つだからな」
 清史郎が言うと二人が先を争うかのようにしてトイレに向かう。
「殺されたヤクザの事は?」
「私たち知らない。分からないよ」
 ミンが皆目見当がつかないといった様子で言う。
「つまり現状では訴えの被害者すら分からないという事か……」
 拘留中のニャンに会いに行かない事には、殺されたヤクザの名前も分からないという事だ。
 慶田盛が弁護士として拘留中のニャンに会いに行く事は正当な権利として認められるが、清史郎は会いに行った所で面会すらさせてもらえないだろう。
「うえぇ~、今日絶対うなされるわ、これ」
 げんなりした様子で健が戻ってくる。
「殺されたヤクザはヤザワグミとかいうヤクザ」
 やはり、と、言うべきか。新庄市最大、関東広域指定暴力団ともつながりの強いヤクザだ。
 健がヘッドフォンをつけてPCの操作を始める。
「矢沢組構成員畑中猛二十八才。住所は市内。仕事は外国人労働者のブローカー。矢沢組の方から捜査依頼をかけたらしい」
 健が早速情報を拾って来る。何度か新庄市警に侵入し、健に言われた通りに機材を設置して来たのだ。
 お陰で警察のデータベースは好きなように見る事ができる。
「現場の写真って……これもスナッフ何とかじゃねぇか!」
 PCの画面からのけ反るようにして健が言う。
 風呂の椅子程度の椅子に立たされ、首に輪をつけられた男が吊るされており、回転ノコギリが片足に押し当てられる。
 それもすぐに切り落とすのではなく、職人が金箔を張るようにゆっくりと嬲るようにだ。
 被害者のヤクザは何とか首つりを逃れようとする。
 映像を早送りすると片足が切り落とされた時点で、まだヤクザは持ちこたえている。
 覆面をした男がヤクザの頭から蜜のような粘液室のものをかける。
 覆面をした男が消えると画面に丸々と太った無数のネズミが現れる。
 ネズミたちが先を争うようにヤクザの身体に食らいつく。
「何、今度は拡大して見てんの?」
「違うって。こっちは殺されたヤクザの方だ」
 戻って来た加奈に答えて健が言う。
「殺人の手口を見ると同一犯のようだな」
 清史郎は考える。
「健、ミンさんの映像とこの殺人現場の映像の場所を比較できるか?」
 清史郎の言葉を受けて健がキーボードを叩く。
 ミンのデータが引き延ばされ、画面に表示される。
 二台のディスプレイにそれぞれの殺人現場が表示される。
 部屋はどちらもコンクリート打ちっぱなしの地下室のような光源の無い部屋だ。
 もっとも、被害者は絶叫しているだろうから防音も兼ねているのだろう。
「似てるけど……違う」
 画面を観察しながら加奈が言う。
 一見すると同じような部屋に見えるが、加奈は早くも何か発見したのだろうか。
「被害者の目。光の映り込みがニャンさんの妹さんは左右からなのに、ヤクザは正面全体になってる」
 加奈に言われて観察すると確かに被害者の瞳に反射している光の光源が違う。
「床もホラ……最初の部屋はフローリングっぽいのに、二回目の部屋は床がリノリウムみたいにフラットになってる」
 加奈がグロテスクな映像を確認しながら言う。
「つまり殺害現場は別という事か」 
 清史郎は腕組みをして考える。
「死体遺棄現場の映像出すぜ」
 健が言うとヤクザの方の画面に静止画像で全身を食い荒らされ、正体不明になった男の映像が映る。
 場所は矢沢組の門の前、車から放り出されたらしく血が飛び散っている。
 少なくとも遺棄された時点では瀕死とはいえ息はあったという事か。
 死体の傍らにはスナッフビデオのDVDのディスクの入ったケース。
 これは死体を放置した後に放られたものらしい。
「こりゃ矢沢組キレるって」
 健がため息をついて言う。
「指紋や遺留物は?」
「ケーサツそこまで調べてねーよ」
 健がミンが持ってきたのと同じ映像を画面に表示させる。
 画面が分割され、加えて七件のスナッフビデオが映し出される。
「つまり、八人の外国人が殺されたから、同じような方法でヤクザを殺したって考えた訳?」
「そーゆー事らしいぜ? これまでの八人は死体も出てねぇんだし、模倣犯の線が濃厚だ……と」
 加奈に答えて健が画面に事件のファイルを表示させる。
 被害者は十二月三日、矢沢組の門の前で見つかった。
 矢沢組は警備会社と契約しており、門には監視カメラがあったがタイムラプスビデオで軽トラックが近づく所と去る所しか映されていない。
 タイムラプスビデオとは長時間録画をする為に数秒間に一コマの映像となっている。
 従ってタイミングを知っていれば数秒間は完全に画面から消える事ができるのだ。
 画面に移された軽トラックは流通量の最も多いハイエース。
 ナンバープレートには段ボールで覆いがしてあり陸運局に問い合わせる事はできない。
 運転席に映っている運転手と助手席の人物は目出し帽子を被っており性別の確認もできない。
 DVDを見た刑事課は市内の工場で不法滞在で働いているニャンを逮捕。
 強制送還の方向で事件は解決に向かっている……。
「不法滞在者による狂気の大量殺人……これが警察のプレス発表だっての?」
 加奈が声を上げる。
「ええと……現在国内には多くの外国人がおり、犯罪が頻発しています。今回の事件はこうした外国人の起こした猟奇的なものであり、日本国民が傷つけられるという最悪の事態を引き起こしました。警察は今後外国人の取り締まりをより厳重なものとし、厳罰化していく所存です」
 健が警察発表の草案を読み上げる。
「何かおかしくない? 仮に八件と別の犯人だとしても、殺されているのは外国から来ている人なんでしょ?」
「論点をすり替えているんだ。事件が起こった事が問題ではなく、外国人がいる事が問題なんだとな」
 加奈に答えて清史郎は言う。
「誰がどこで働こうと勝手じゃない。それに外国人の人たちは保険や年金も使えないんでしょ?」
「日本人の税金を外国人に使うな、って意見の方が多いみたいだぜ?」
 プレス発表より先に漏洩したネットニュースに反応した人々の書き込みを健が表示する。
「外国人が日本に来て死ぬのは当然の結果か……モラル低下もここまできたか」
 清史郎は苦い気分で言う。安い労働力として何の保障もなくこき使っておきながら犯罪者扱いする。
 外国人がアジアから来ている場合には特に顕著だ。
「この事件、このままじゃダメだよ。ね、ジョーカー」
 加奈の言葉に清史郎は頷く。
「まずは警察側の発表を覆さないとな」
 清史郎は合計九件のスナッフビデオを画面に表示させる。
 犯行個所は三か所と見られ、外国人が殺されている映像と畑中の殺されている場所が同じものが二つ存在している。
「ホラ見ろビンゴだ」
 健が声を上げる。これで九件の事件は同一犯の可能性が高くなった訳だ。
「そもそもこれだけ大量のネズミを飼育しておける環境が必要なんだ。模倣しようとしてもネズミを急に揃えるなんて事ができる訳が無い」
 清史郎の言葉に加奈が画面の一転を指さす。
「白いネズミ! どの映像にも必ず白いネズミが映ってる」
 よくよく見れば薄汚れているがグレーに近い灰色のネズミがどの映像にも混じっている。
「よっしゃ! これで犯人は同一犯ってこったな」
 健が声を上げてPCのキーボードを叩く。
 事件現場の映像とネズミの映像��まとめてファイリングする。
「でも真犯人に近づいたって訳じゃない」
 加奈が苦い表情で言う。
 確かに警察のロジックは崩せるが、肝心の犯人については不明のままなのだ。
「警察の野郎、市内の外国人を抜き打ち調査するつもりみたいだぜ」
 データを引き抜いた健が眉を顰める。
 大規模な取り締まりをすれば市民の目が逸れると考えているのだろう。
「この事件を起こしたのが何人かなどという判断は現段階ではできない。まずは事件の真相を探る」
 清史郎の言葉に健と加奈が頷く。
「よろしくオネガイシマス」
 ミンが小さく頭を下げた。
  〈3〉
 
  清史郎は新庄市警本部の窓口を訪れている。
「三浦探偵事務所の三浦清史郎です。捜査一課の風間警部補にお話しがあります」
 周囲が警察官だらけという落ち着かない環境下で、清史郎は周囲を観察する。
 事件の事を知っている者も多いのだろう、清史郎が来ただけでおおよその要件は掴めているようだ。
「まずはアポイントメントをとって下さい。取材であれば後日広報が応対致します」
 窓口の女性警察官が言う。
「これから警察が嘘たれ流そうとしてんだよ! 証拠持って来てやったんだぞ!」
 健が声を上げると周囲の警察官の目が集中する。
「情報提供です。警察が入手されているスナッフビデオに関して重大な証拠がありました。お会いできないと言うのであればインターネットで公開します」
 清史郎の言葉に受付の警察官が動揺を浮かべる。
「インターネットは情報として証拠能力を持ちません。情報をどのように流されようと結果は変わりません」
 上席らしい警官が窓口に現れて言う。
「そうでしょうか? ではスナッフビデオも画像加工された証拠能力の無いものとみられるはずです。それを根拠に犯人を捜される事の正当性を伺いたい」
「捜査情報はこちらからは漏らせん。貴様どこから情報を得た?」
「矢沢組です」
 清史郎の言葉に警官が気圧されたような表情を浮かべる。
「少々お待ち下さい」
 矢沢組の名前を出した途端、警官の態度が変わり内線で電話をかける。
 ややあって捜査一課の風間真一が姿を現す。
 髪をオールバックにした固太りの男で二人の警官を従えている。
「どうぞこちらへ」
 睨みつけるようにしながら顎をしゃくる。
 清史郎は二人を連れて警察署の廊下を歩く。
 盗聴器は手にしていないが、仕掛けてある盗聴器は作動している。
 三人は風間に続いて取調室に入った。
「ワレ、矢沢組の名前だしてどういうつもりじゃゴルァ!」
 風間がスチールのデスクに拳を叩きつけて声を上げる。
「被害者の一人は組員でしょう?」
「ア、   コラ、適当抜かすと任意同行でしょっ引くぞ」
 風間が息がかかる程の距離に顔を近づけてくる。
「一つ忠告する。矢沢組の組員が被害者になっている事件で、適当な真似をすれば報復を受ける事になる。立件した後に模倣犯が出て矢沢組の組員に死者が出た時どう落とし前をつけるつもりなのか伺いたい」
 清史郎の言葉に風間の顔色がどす黒いものとなる。
「随分上から目線じゃのぉ、警察ナメとんのかドルァ!」
「目線の問題ではなく、事実を申し上げたまでです。今後同様の事件が起きた時、矢沢組に対してどう釈明するつもりですか?」
 清史郎の淡々とした口調に風間が奥歯をぎりりと鳴らす。
「なんぞ証拠があるんかい。出せるもんなら出してみぃや!」
 清史郎は健の肩を叩く。
 健が落ち着かない様子でDVDディスクを取り出す。
 DVDを手にした風間が顎をしゃくると警官がノートPCを抱えて慌てて戻ってくる。
 DVDの映像を見ていた風間の額に汗が滲む。
「映像情報から判断する限り、全九件は同一犯の可能性が濃厚です。外国人が報復したというシナリオは使えません」
 清史郎の言葉に風間が鼻白む。
「だからなんじゃ、映像が証拠になるとでも思うとるんか」
「そっくりそのままお返しします。映像証拠で外国人を摘発するんですか?」
 清史郎の言葉に風間がスチールデスクを殴りつける。
「ド畜生の三流探偵が!」
「矢沢組の体面、もう少し慎重に捜査された方がよろしいかと」
 清史郎の言葉に風間が舌打ちする。
「去ねや! 顔も見たくないわ!」
 言うだけ言って室内から風間が出ていく。
 これで風間はプレス発表を控えるだろう。
 警察が体勢を立て直す前に真犯人を捕らえて起訴するのだ。 
 
 
〈4〉
  「もーやだ。警察行きたくねー」
 警察署を出た健ががっくりと肩を落として言う。
「任意同行って、何の容疑だっつーの」
 加奈が肩を怒らせる。
「これから何度でも相手をする事になるんだ。慣れておけ」
 清史郎の言葉に二人がため息と共に首を縦に振る。
「で、これからどーすんだ? 警察のプレス発表遅らせただけだぜ」
「矢沢組だ。これからようやく捜査ができるんだ」
 清史郎が言うと健がさも嫌そうな表情を浮かべる。
「警察の次はヤクザなんてどんな厄日だよ」
「そういう職業なんだよ」
 清史郎は改造したフォルクスワーゲンビートルに乗り込む。
 健が後部座席に、横に加奈が乗る。
 清史郎はエンジンをかけながら矢沢組の短縮ダイヤルを押す。
『はい、矢沢組です』
「三浦探偵事務所の三浦清史郎と申します。若頭の緒方さんに取り次いで頂けますか?」
『少々お待ち下さい』
 清史郎が車を走らせていると、ややあってよく通る低い声が響いた。 
『緒方です。三浦探偵事務所様がどういったご用件ですか?』
「昨日未明に玄関で殺されていた畑中氏の事件を調査しております。是非一度現場を見せて頂きたく思いご連絡させて頂きました」
 清史郎が言うと一瞬間を開けて。
『その事件については警察は既に解決したと言っています』
「それを覆す証拠が出たのです。警察はこのまま冤罪を推し進めるでしょうが、それが矢沢組にとって有益だとはとても思えません」
『覆す情報?』
「全九件の画像を確認した結果、犯行は同一犯によるものである可能性が濃厚になりました。畑中氏が殺されたのは外国人による報復という事は文脈から読み取れません」
『そういう事であれば……』
「これからお伺いさせて頂いて構いませんか?」
『現場は若い衆に命じて掃除してしまいましたが……』
「可能な限り可能なものを収集させていただきたいと思います」
『分かりました。調査の邪魔にならないよう手筈を整えます』
 言った緒方が電話を切る。
「何かヤクザのが警察よか紳士的じゃね?」
 後ろで聞いていた健が言う。
「実るほどに頭を垂れる何とやらでな、力を持ってるヤツの方が謙虚なんだよ。まぁ、怒らせれば話は別だがな」
 清史郎が言う脇で加奈が頷く。
「私たちは貧乏でも謙虚じゃない?」
「お前たちは充分人間ができてるよ」
 清史郎は苦笑して言う。
 今回の事件はまだ何の手がかりも無いに等しいが、この二人が居れば難解な事件も解決できる筈だった。
  「ご苦労様です。緒方です」
 鋭角的な顔立ちの、ビジネスマンといった風体の細身の男と清史郎は握手を交わす。
「三浦探偵事務所の三浦清史郎です」
 清史郎が言うと緒方は軽く息を吐いた。
「堅苦しい話は無しで行きましょう。同一犯の証拠というのは?」
 清史郎は健の肩を叩く。
 健がラップトップを叩いて画像を表示させる。
「犯行現場、殺害方法、殺害に用いたネズミが一致するんです」
 清史郎はかいつまんで言う。
「なるほど、確かに。しかし、彼らが同胞を殺したという見方もできるのでは?」
「そうなると犯人がどのようにターゲットを絞っているのかが不明になります。畑中さんは明らかに日本人ですから」
 清史郎の言葉に緒方が顎を摘まむ。
「畑中は外国人労働者を買うブローカーをしていました。シノギとしては小さなものです。外国人労働者から恨みを買う事は充分に想像できます」
「確かにその通りです。だとするなら同胞を殺した事は……」
「理屈に合わない。確かに。ではこの事件は外部何者かによる意図的なものであると?」
「意図は分かりませんがね。玄関の監視カメラの映像を見せて頂いて構いませんか?」
 清史郎が言うと緒方以外の組員が身体を固くする。
「ご自由にご覧下さい」
 清史郎は緒方についてモニタールームに向かう。
 矢沢組の周囲と内部を写したカメラ映像が二十四枚並んでいる。
 清史郎は潜入した事があったが、これだけの監視カメラを潜り抜けるのは至難の業だった。
「犯行の映像が映っているのは玄関のカメラだけでした」
 緒方が言うと組員が畑中が捨てられていく一瞬を映し出した。
「残念ながら映像は捨てる前と後しかありません」
「タイムラプスビデオでは仕方がありません。ですがここに見逃せない点があります」
「ここに?」
「まず、タイムラプスビデオの六秒の間に瀕死の畑中さんを捨てなければならなかった。これは玄関のビデオのタイムラグを知らないと不可能です」
「内部犯という訳か?」
 緒方の口調が苦いものとなる。
「更に六秒という事を考えると、一度車を停めてから降ろす時間的余裕は無かったはずです。だとすれば荷台に最低二人は乗っていないと実行は困難。即ち運転手と助手席に人間を合わせ最低四名は犯行に必要だったという事です。従って単独犯という事はあり得ません」
 清史郎が言うと健と加奈も驚いたような表情を浮かべる。
「タイムラプスビデオに映っているという事は時速二十キロ以下に減速していたことは間違いないでしょう。大人二人で荷台から放り投げたと考えるのが現実的です」
「つまりはこの映像を入手できる者で、なおかつ四人以上のグループという訳だな?」
 険しい顔で緒方が言う。
「そういう事になります」
 清史郎は二十四枚のディスプレイを眺める。
 普通の人間は他人の家の防犯カメラの映像など入手できない。
 しかし、警備関連の企業に勤めていたり、矢沢組を出入りする人間の数を考えると途端に関連する人間の数は多くなる。
「組員では無いと信じたい。あのような拷問を無差別に行う組織だと思われれば商売が成り立たなくなる」
 緒方が眉間に皺を寄せる。口調こそ穏やかだが、犯人が目の前にいれば問答無用で殺すかも知れない。
「畑中さんの当日の動向は分かりませんか?」
「畑中はフューチャー人材ネットという会社の社員をしていました。会社の方に記録が残っているはずです」
「その会社は……」
 清史郎が訊こう���すると緒方が口元に薄い笑みを浮かべた。
「現代の奴隷商人ですよ」
 本当に恐ろしいのは風間のようにがなり立てるのではない、こういった事を涼しい顔で言える人間なのだ。
  〈5〉
  「ヤクザって結構マトモっぽくね? もっと警察みたいに怒鳴られるのかと思ったぜ」 
 フューチャー人材ネットに向かう途中、キーボードを叩きながら健が言う。
「私は何か怖かったな。人があんな惨い殺され方をしてるのに」
 加奈が恐ろしいものでも見たかのような口調で言う。
「ヤクザはナメない方がいい。殺す時は問答無用だし、殺されても死体なんぞ出てこないからな」
「マジっすか?」
 健が声を上げる。
「お前、工事現場で働いてたのに何も聞いてないのか?」
「現場とヤクザっすか? 仕事を回してもらうとかあるみたいっすけど」
「コンクリートミキサーに死体を放り込んでみろ、DNAも出てこないぞ。大型の開発やビルなんかじゃ何人砂粒になってるか分からない」
 清史郎が言うと加奈が首を竦める。
「怖っ!」
 健が声を上げる。現場勤めが長かったから光景が想像できたのだろう。
「で、これから行くフューチャー人材ネットってのはどんな会社なんだ?」
「黒い人材派遣会社っすね。有給が使えないとか、病欠したくても電話がつながらないとか」
 検索していた健が言う。
「良かったぁ~。私登録しようとしてたんだ」
「やめとけやめとけ。解雇通告無しに解雇して保証金も払わない会社だ」
 加奈に答えて健が言う。
「まぁ、ヤクザが経営している人材派遣会社だからな」
 清史郎は苦笑する。元から人材派遣などという業態は真っ当ではない。
 労働量が同じでも正社員のように保障がある訳ではなく、退職金も出ないのだ。
 気概があるなら独立した方がまだまともな人生を歩めるだろう。
「世の中にまともな部分がどれだけあるかって考えちゃう」
「考えるだけ無駄だって。この会社が不法滞在の外国人のブローカーの表の顔なんだろ」
 健が加奈に答える。
「腐る大捜査線かぁ~」
 加奈の言葉に清史郎は小さく噴き出す。
 昔似たような名前の刑事ドラマがあったからだ。
 近くのコインパーキングにビートルを停め、フューチャー人材ネットの入った雑居ビルに足を踏み入れる。
 フューチャー人材ネットは広さは三浦探偵事務所とさほど変わらないものの、水色の絨毯が敷いてあり、パーテーションで区切られた現代的な雰囲気の事務所だった。
「三浦探偵事務所の三浦清史郎です」
 清史郎が受付で言うと奥から同年代のハゲタカを思わせる痩せた男が出て来た。
「フューチャー人材ネット代表鴻上純也です」
 名刺を交換し、パーテーションで区切られた面談室に案内される。
「緒方さんから話は聞いています。可能な限り協力しろと言われています」
 清史郎は内心で頷く。緒方は既に手を回してくれているらしい。
「まず、畑中猛さんの一昨日の勤務状況を伺えますか?」
「九時五時ですね。実際には六時半まで残業、以降は一人で帰っています」
「寄り道、例えば行きつけのバーなどはありませんか?」
「最近の若い子はあまり飲まないようですね。オフの事は残念ながら分かりません」
「勤怠について最近異常はありませんでしたか?」
「ありません。何故いきなり死んだのか分かりません」
 鴻上は本気で当惑しているようだ。
「念のため畑中さんの住所と電話番号を伺えますか?」
 鴻上が持参していたラップトップを操作する。
「住所は新庄市高台十二―五メゾンハイツマンション五〇五。電話番号は070―××××―××××です」
「御社は海外の人の派遣も行っていたそうですが、トラブルはございませんでしたか?」
 清史郎が言うと鴻上は意外にも同様した素振りも見せなかった。
「海外の人材とのトラブルは特にありませんでした。彼らは日本では地盤がありませんし、地元ではヤクザの力が強い。ご存知無いかも知れませんが世界最大のマフィアは日本の組なんですよ。経済力で言うと最大の組だけで日本の企業上位六位の八兆円の規模になります。弱小国家など相手になりません」
 鴻上にとって組に所属する事は汚名では無いようだ。
「つまり逆らう事など思いもよらないと」
「そういう事になりますね。もっとも現地では現地人を使っていますが」
 鴻上が言った所で四人に茶が運ばれてくる。
 剣呑な話をしているはずだが、事務員に動じた風は無い。
「同業他社とのトラブルは考えられませんか?」
「日本のヤクザは互いに杯を交わして兄弟となっています。互いのビジネスに悪影響を及ぼす事は代紋に泥を塗る事になります。それは断じてありません」
 最もありそうな可能性が早々に否定された。
 もっとも、あったとしても表ざたにはできないという所もあるのだろう。
「単刀直入にお聞きしますが、殺された事に心当たりはありませんか?」
「ありません。あったとすれば、殺された外人が高跳びしたと考えて探し出そうとしていた事くらいです」
「では外国人労働者の死亡も知らなかったと」
「寮の連中も突然消えたと言っていたくらいです。とはいえ隠している可能性もありましたので地元とも連絡を取って探してはいました」
 フューチャー人材ネットは消えた外国人労働者を捜索していた。
 実際に捜索していたかどうかはミンなりニャンなりに訊けば分かるだろう。
「では捜索中に殺されたという可能性もある訳ですね?」
「何をしている最中だったかは分かりかねます」
 鴻上が答える。これ以上質問しても有意義な答えは返ってこないだろう。
「外国人労働者の寮のある場所を伺えますか?」
「パレステラスガーデンの二階が寮になっています」
 清史郎はパレステラスガーデンの住所を控えると健と加奈を連れてフューチャー人材ネットを後にした。
  〈6〉
   清史郎は家主に事情を言って鍵を開けてもらい、畑中のマンションを訪れていた。
 ワンルームの壁の薄い建物で、床にはカップ麺とスナック菓子の袋が散乱している。
「健、あんたの部屋とどっちが汚い?」
「せめてどっちが綺麗って聞き方しろよ。俺の部屋の方がきれいだって!」
 健が加奈に応じて言う。
「健、PCで分かる事を探ってくれ。加奈は俺と一緒に部屋の中を探ってくれ」
 清史郎が言うと健が畑中のPCに取り付き、加奈が口元をハンカチで押さえながら部屋の奥へと入っていく。
 健が持参したPCを畑中のPCに接続して操作し始める。
 画面上でパスワードの黒い●が点滅している。
「健、何をしているんだ?」
「パスワードを割ってるんっす。文字の数字の組み合わせは天文学的な数になるから手作業なんてしてられねぇっつーか」
「〇〇三一五は?」
 デスク回りを見て清史郎は言ってみる。
「あー! 何で分かったんっスか! ジョークすげぇ!」
「すごいも何もデスク周りの写真がかたっぱしから自撮りだろ? それだけ自分が好きならオレサイコーって入れてもおかしくないだろう」
「超馬鹿っぽい! でもパスワード解析する手間が省けたぜ」
 健が猛然とキーボードを叩き始める。
 加奈は部屋のクローゼットの前に屈みこんでいる。
「加奈、何かあったのか?」
「いや、意外に勉強家だったんだなぁ~って」
 加奈が調べていたのは語学のテキストの山だった。
 海外の人材を集めていたのだから英語は必須スキルだったのだろう。
「ヤクザでも仕事は一生懸命にやってたって事か」
 一所懸命に悪事をするというのは依然知り合った殺し屋円山健司を思い出す。
「そっちは英語の参考書っすか?」
「ああ。そっちはどうだ?」
「英語のオンラインレッスンとゲームとエロサイトばっかりっすね」
 畑中は英語だけは真面目にやっていたらしい。
 清史郎は玄関に戻ってドアの周りを丹念に調べる。
 ピッキングされた形跡は無く、靴の乱れも無い事から突然押し入られたという事でも無いらしい。
 部屋から連れ去られたので無ければ、移動中に拉致されたという事だろうか。
 ――やはり顔見知りの犯行が濃厚か――
 しかし、それならば緒方が何か知っていても良さそうなものだ。
 ――今は地道に情報を集めるだけだ――
 外国人労働者の寮は一階に大日警備保障という警備会社の入ったマンションにあった。
 立地から考えて大日警備保障も矢沢組系列だろう。
 清史郎たちが訪ねるとミンが仕事から帰った所だった。
 ワンルームの部屋に二つ二段ベッドが並べられ四人が生活しているようだ。
「ミウラさんこんにちは」
「ミンさんこんにちは」
 清史郎が挨拶するとミンが同僚に向かって早口の外国語で説明する。
 狭苦しい中に招き入れられ、ジャスミンティーを勧められる。
「これまで殺された人はみんなこの寮の人かい?」
 清史郎は心苦しく思いながらも八人の映像を見せて訊ねる。
「ちがう人もいるよ。知らない人もいるよ」
 残酷な映像に顔を顰めながらもミンが言う。
「同じ寮の人は?」
「リンとホワン」
 ミンが二人を指さす。この寮の人間は合計三人殺されたという事だ。
 この寮で働く人間にとっては気が気ではないだろう。
「殺された人たちに共通点は?」
 映像を確認する限りある程度若いという以外は年齢も性別もバラバラだ。
「分からない」
 残念そうにミンが言う。
 言葉が足りないせいでこちらも質問する言葉が出てこない。
「ニャンさんの妹さんの家族か同僚の人は?」
「女の子の寮は別にあるよ。ニャンは警察に捕まったよ」
 ミンの言葉に清史郎はため息をつく。
「女の子の寮は?」
「会社が違うから分からないよ。フウゾクの会社だよ」
 連絡が充分につくという環境でも無いらしい。
「最近誰かに見られてると思ったり、尾けられてるって思った事は?」
「ツケラレテル?」
「尾行されてる……追われている……追跡されてる……」
「ごめんなさい。分からないよ」
 ミンが頭を振って言う。
 どうやらこれ以上聞き出せる内容は無いようだ。
「邪魔したね。取り合えず身の回りには充分に気をつけて」
 言って清史郎は健と加奈を連れてパレステラスガーデンを後にした。
  第二章       錯綜
  〈1〉
   十二月四日午前四時。
 スマートフォンの着信音で清史郎は目を覚ました。
 このような機械を発明した人間を呪いたくなりながら通話ボタンを押す。
「はい、三浦です」
『緒方だ』
 切羽詰まった口調で電話をかけて来たのは矢沢組の緒方だ。
「こんな時間にどうしたんですか? 事件に進展でも?」
『鴻上が殺された。例のネズミ殺しだ』
 突然の言葉に一気に目が覚める。昨日フューチャー人材ネットで会ったハゲタカのような男が一夜と経たずに殺されたのだ。
「警察には?」
『警察から連絡があった。新聞配達のバイトが死体を発見したらしい』
「場所は?」
『フューチャー人材ネットの入っているビルの真ん前だ』
 死体を発見したバイトはさぞかしびっくりした事だろう。
「分かりました。現場に向かいます」
 言って通話を切った清史郎は愛車のビートルに乗り込んだ。
   フューチャー人材ネットのビルの前には二台のパトカーと救急車が停まっていた。
 三人もの警官が動員されており、死体は既に救急車に搬入されている。
 周囲は黄色いテープで保護され、警官たちは近づこうとする人々を制止している。
「掃除が終わるまでしばらくの間近づかないで下さいね~」
 現場を見ようとした清史郎に警官が言う。
 証拠品は無いのか、何か手がかりになるようなものは。
 清史郎が身を乗り出すと赤黒い染みが見えた。
 鴻上が放置されていた場所だろう。
 フューチャー人材ネットの入っているビルの前には監視カメラは無く、今回の加害者は時間的余裕をもってビルの前に放置した事だろう。
 証拠は幾らでもありそうなものだが、警察が浚った後ではロクな収穫は望めない。
「三浦さん、朝早くからすみません」
 朝早くから一分の隙も無くスーツを着こなした緒方がやって来る。
「そういう商売なんでね」
「オイ、そこの警官。先生をお通ししろ」
 低い声で緒方が警官に向かって言う。
「……あの、どういったお話……」
「矢沢組の緒方だ。署長にでも確認を取れ」
 言ってズカズカと現場に踏み入って行く。
「三浦さん、犯罪捜査じゃこちとら素人だ。どうすればいいですか?」
 怒りを滲ませながら緒方が言う。
「被害者の身体はネズミに食い荒らされて指紋の類は無いでしょうし、犯人は手袋をしていた可能性が高いです」
 清史郎は赤黒い染みに近づいていく。
「車から降ろされたならまずブレーキ痕。後、血液に付着した微細証拠品がカギになる場合があります」
「ポリ! 先生の言う通りにしやがれ」
 緒方が言うと警官たちが右往左往する。
 どうやら鑑識キットも準備もして来ていないらしい。
「仕方ない。私の方で調べます」
 空が白々としてくる中、清史郎は道路に残された血液のサンプルを採取する。
 更に周囲を歩き回り、ブレーキ痕を確認する。
「ブレーキ痕は一般的な軽自動車のものです。急停止し痕が残ったものと思われます」
「前はタイムラプスビデオを避ける為だったな」
「今回は人目を避ける為でしょう。これは仮説ですが、死体にはブルーシートか何かがかけてあったのではないでしょうか」
 ビニールシートで巻いた死体を端を持って車から放り出したのだろう。
 やり方は荒っぽいが、証拠は残りにくい。
「現場にDVDは残されていませんでしたか?」
 清史郎が警官に尋ねると険悪な視線が返ってくる。
「DVDは無かったかと聞いているんだ」
 緒方が言うと警官がDVDを差し出してくる。
 差し出された所で再生できる機器も無い。
「指紋を採取してこれまで警察で採取されたものと照会して下さい」
「差し出がましい事を言いやがると……」
「言われた事をやりゃあそれでいいんだ」
 緒方が言うと血を上らせかけた警官が大人しくなる。
「後は近くの防犯カメラに軽トラックが映っていないかどうかですね」
 清史郎は言う。幸い三件隣にコンビニエンスストアがある。
 トラックの影くらいは残っているかも知れない。
「緒方さん、私はこれで」
「朝早くから済まなかったな。明日は畑中の葬儀だ。何か分かるかも知れない」
 緒方の言葉にうなずいて清史郎はコンビニエンスストアに足を向けた。
  〈2〉
  「新庄工科大学?」
 モーニングコールでいつもより早く呼び出された健が清史郎の言葉に問い返す。
 事務所の寒さは外気温と左程変わらず、早急なヒーターの購入の必要性が感じられる。
「それって鑑識的な事をするって事?」
 加奈が朝七時にも関わらず張り切った口調で言う。
「ああ。血液とネズミの唾液くらいしか出ないだろうが、死体は少なくとも現場に一度は降ろされたはずだし、何かに包まれて遺棄現場まで運ばれたはずだ。つまり、殺害現場と包んだものの痕跡が残っている可能性があるんだ。血液には粘着力があるからね」
 清史郎は採取した小さなビニールの密封パックを見せる。
「でも、現場に最初からあったゴミも付いてる訳よね?」
「それを大学の分析機器で分析してもらうんだ」
「ジョーク大学のセンセに顔がきくのか?」
 驚いたように健が言う。
「付き合いがあるからね。じゃあ出発だ」
 清史郎は二人を連れて市内の工科大学に向かう。
 前もって連絡していたせいもあり、工科大学の環境科学科の柴田一太教授が生徒たちと共に準備を整えている。 
「三浦さん久しぶりだね」
「柴田さんお久しぶりです」
 柴田は中肉中背よりやや中年太りをした男だが、ふくふくとした顔立ちをしておりメタボリックにありがちな不健康な印象は受けない。
「血液に付着したサンプルを採取したいという事だね」
「ええ。現場でこそげ取ったので道路のカスも多いと思いますが」
「それは優先的に除外するよ。確か現場候補のサンプル映像があるとか」
 柴田が興味深そうに言う。
「かなりグロテスクですが……」
 清史郎は健に映像を表示させる。
 柴田が口元を押さえながらも映像を食い入るように眺める。
「証拠らしい証拠は出ないかも知れませんよ?」
「と、言うと?」
「床がフローリングやリノリウムのような材質で、殺人の前後に清掃されている可能性が大きい。輸送中のビニールシートか何かに付着した物質なら検出可能だろうけど」
「おっさん、ここでは何を調べられるんだ?」
 健が柴田に向かって言う。
「ガスクロマトグラフィーと液クロマトグラフィー、更に原子吸光器もある。分析化学に必要な機材は揃っているよ」
「具体的にはどういった物質が検出できるんですか?」
 加奈が健が訊きたいであろうことを尋ねる。
「血液であればたんぱく質や鉄分や塩分が検出できるし、それを除外して町中を車で移動したなら排気ガスなんかを検出する事もできる。ビニールシートが新品なら保護用の粉末なりがあるだろうし、死体を縛ったなら何かの繊維が検出されるかも知れない」
「そんな細かいモンで何が分かるんだ」
 健が不思議そうに言う。
「それを考えるのが探偵だ。じゃあここは柴田さんに任せて慶田盛にニャンさんの話を聞きに行こうか」
 清史郎は一同を促してビートルへと戻った。
  「奇妙な事になったね」
 ニャンの弁護をする事になった筈の慶田盛が事務所の応接セットで言う。
「加害者が拘置所の中にいるのに十番目の被害者が出た」
 清史郎は湯飲みを両手で包み込むようにして言う。
 茶の淹れ方は加奈の方が上のようだ。
「警察側は不法滞在者の組織的犯罪として押してくるかも知れないね」
 慶田盛が茶をすすりながら言う。
「不法滞在者は矢沢組の監視下にある。寮の下に警備会社が入っているくらいだ」
 清史郎は昨日得た情報を慶田盛に告げる。
「警察にとっては犯人を逮捕する事が重要なんであって、逮捕する相手が誰かという事は自分たちに都合さえ良ければいいという事なんだ」
 慶田盛の言葉を清史郎は反芻する。
「矢沢組の外国人ブローカーは社長まで殺された。外国人ビジネスから撤退するのであれば警察との間で手打ちができるか……」
「外国人ブローカーがいいとは言わないけど、それじゃ何の解決にもなっていないんじゃない?」
 加奈が言う。確かにこれで十一番目の被害者が出てくるという事になれば外国人を一斉摘発しても元の木阿弥という事になる。
「つーかさ、気になってたんだけど、このエグいビデオって他人に見せるのが目的なんだろ? ンでこんな凝った殺し方してんだろ? だったら視聴者がいるんじゃねぇか?」
 健が指摘する。確かに他人に見せるつもりが無いのであればこれほど凝った殺し方をする理由が見当たらない。
「スナッフビデオの愛好者は世界中にいるからな……」
 慶田盛が腕組みをする。
「最初は八人連続でアジアの労働者だった。次はブローカーだ。外国人の労働者の失踪が珍しくない事なのだとしても、日本人でしかも会社の社長というのはな」
 清史郎は考える。単にスナッフビデオを撮影するというだけなら、残酷な話だが外国人労働者だけで良かったはずだ。
 ここに来てヤクザを殺し始めたというのは一体どういう風の吹き回しなのだろうか。
「一応、外国人保護のNPOに連絡はとってある。矢沢組との兼ね合いはあるけど、摘発という事になったら保護する段取りはできているよ」
 先手を打ったらしい慶田盛が言う。
「矢沢組もこれ以上組員の死体が出ればなりふり構わないだろう。犯人だってその恐ろしさは分かっているはずだ」
「これってアレだな、ラットマンV��ジョーカーって感じだな」
 健が緊張感の無い事を言い出す。
「犯人の行動指針が全く読めない。これで事件は完全に終わりなのか、続きがあるのか、その行方も分からない」
 ラットマンがこの先も犯罪を続けるなら、警察の一斉摘発も空振りに終わるだろう。
 そうすれば警察の面目は丸つぶれだ。
 ――犯人の狙いはそれなのだろうか――
 だとしても根拠が薄弱すぎる。
 清史郎は健と加奈を引き連れてビートルに戻った。
  〈3〉
  「ジョーク、頼みがあんだけどさ」
 ビートルの車内で健が頼みづらそうに言う。
「何だ? 言うだけならタダだぞ」
「途中のホームセンターで石油ファンヒーター買ってくれ。外と室内とどっちが寒いか分からねぇし、指がかじかんでキーボード叩けねぇんだよ」
 清史郎はため息をつく。寒いのは仕方ないにしても、キーボードの叩けない健は文字通りただ飯食らいだ。
「しょうがないな。まぁ、長く使うものだしヒーターくらい買ってもバチは当たらないか」
「やりぃ!」
 健が嬉しそうに声を上げる。
「その分仕事もたくさんこなさないとね」
加奈の声も弾んでいる。
「所で健、さっきの話だが、誰かに見せる為に撮影したなら、その誰かを探し出すような事はできないのか?」
「ムリっす。動画配信だとしても、会員制になってるだろうし、そんなサイト幾らでもあるだろうし」
 確かに健の言う通りだろう。発信者と受信者のどちらも分からないのでは手の打ちようがない。
「気になるんだけどさ、あのビデオライト当たってたじゃん? あれって相当強いライトなんじゃない? 芸能事務所が使うようなさ」
 加奈の言葉に清史郎は頷く。
 確かに映像が鮮明過ぎた。普通のPCやスマートフォンのカメラで、普通の照明で撮影されたのであれば、あそこまで鮮明な映像にはならないはずだ。
「まさか……芸能事務所がそんな事をしてるとは思えないが」
「それは無いと思う。前に光源の話をしたと思うけど、芸能事務所やスタジオならレフ版とか使って光の当たり方を均一にするはず」
 加奈がその可能性を既に考えていたのか意見を述べる。
「じゃあ、4KカメラをPCにつなげて強い光を当てて……って、投光器あんじゃん! 現場用の」
 健が声を上げる。
「投光器ったって、ホームセンターで幾らでも買えるだろう?」
 清史郎の言葉に健が肩を落とす。
 ホームセンターで石油ファンヒーターを買い、ガソリンスタンドで灯油を買い込んで事務所に戻る。
 前の石油ファンヒーターは五年頑張ってくれたがこれで引退だ。
「はあぁ~、生き返る。これぞ文明の機器」
 健がファンヒーターの前で頬を緩ませる。
「あんたがそこにいたら室内に温風が回らないでしょ」
 コーヒーを沸かしながら加奈が言う。
「少しくらいいいじゃねぇか。減るもんじゃなし」
「ったく、事件の事も考えてよ。ジョーカー、何か分かった事無いの?」
「ブレーキ痕があったくらいだよ。深夜とはいえ急いでたみたいだな」
「フューチャー人材ネットに的かけてるとか?」
 健が席に戻りながら言う。
「それは昨日話したし、それなら外国人労働者を殺している理由が成り立たない」
 加奈が冷静に言う。
「誰かがフューチャー人材ネットの不正を暴こうとしてる」
「その為に殺人をも厭わないというのは、正義を働こうとしている人間のする事じゃないだろうな」
 清史郎は健の言葉をやんわりと否定する。
「何か良く分からない事件よね。殺人にはすごく凝ったり、痕跡にはすごく気を使ってるのに、殺す相手は行き当たりばったりみたいな」
 加奈の指摘は的を得ているかも知れない。
 被害者が外国人労働者だけで、これまで通り死体を残さないのであれば事件にすらなっていなかったはずだ。
 それが日本人の被害者が出て、スナッフビデオまでが現場に残された。
 しかも二人目の日本人はブローカーの社長で、裏のビジネスを知っていたとするならヤクザだという事も知っていたはずだ。
 それならばその報復が半端なものではない事は簡単に想像がつくだろう。
「犯人の目的ってそもそも何なんだろな。スナッフビデオで儲けるっつっても、普通に売れるような代物じゃねぇんだろうし、性別だってバラバラだろ? エロビデオなら大体若い女の子じゃね?」
 健が首を捻りながら言う。確かに言われてみればスナッフビデオとして売り出すとしても客層はネズミを使った殺人方法にしか興味が無い事になる。
 それでは商売にならないだろう。
「大量のネズミを飼ってるんだ。コストや隠し場所も馬鹿にならないだろう」
 清史郎は脳裏に新庄市の地図を描きながら言う。
 機材も使っているのだし、どこかに手がかりがあるはずだ。 
 清史郎が考えあぐねていると電話の呼び鈴が鳴った。
「お電話ありがとうございます。三浦探偵事務所飯島でございます」
 加奈が電話を取って言う。
「はい、三浦ですね。少々お待ち下さい」
 加奈が受話器を置いて清史郎に顔を向ける。
「工科大学の柴田さん」
 清史郎は受話器を取る。
「三浦です。何か分かりましたか?」
『参考になるかどうかわかりませんが、興味深い事が分かりましたよ』
「どんな些細な事でも結構です」
『トウモロコシ何かの穀物の微粉が検出されました』
「それはどういった意味になるのでしょうか?」
『あくまで仮説ですが、犯人はネズミを飼育するのに犬の餌を使っているんじゃないですか? 他にもそれを示唆するような牛骨粉も検出されています』
 現場に関する証拠は見つからなかった。
 ――しかし……犬の餌か……――
 これまたホームセンターで簡単に手に入る代物だ。
「ありがとうございます。また何か分かりましたら教えてください」
清史郎は通話を切る。
「ジョーカー、何だって?」
「犬の餌が検出されたんだそうだ。犯人は普段はネズミに犬の餌を与えてたんだろうな」
「餌ならホームセンターで買えんじゃね?」
「ちょっと待って、ケージはどう? あれだけたくさんのネズミを飼っておけるケージは相当大きいか幾つかに分けられているんじゃない?」
 加奈が言う。確かに狭いケージに肉の味に慣れたネズミを押し込んだら共食いをする事だろう。
「あ! 昔町の外れの方にデカいペットショップが無かったか? もう潰れちまってるけど」
「行こう」
 健の言葉に清史郎はビートルの鍵を手にする。
 ようやく手がかりらしい手がかりが見えて来たようだ。
   郊外型の大型ペットショップは廃棄されたままの姿で佇んでいた。
 正面のガラスが近隣の悪ガキの悪戯で割れており侵入が困難という事は無い。
 スナック菓子の袋やペットボトルが散乱しているが、どれも古く最近のものでは無いようだ。
 ここでかつて何が行われていたかは考えるまでも無いだろう。
「汚ぇトコだな。ま、誰も掃除なんかしやしねぇんだろうけどさ」
 健がぼやきながら先に進んでいく。
 清史郎はポケットから取り出したマグライトで床を照らす。
 床にはホコリが溜まっているが、何者かが侵入したような形跡がある。
 ――当たりを引いたか――
「見てジョーカー、バックヤードにだけ新しい鍵がついてる」
 清史郎は加奈の言葉を受けてバックヤードの観音開きのドアにライトを向ける。
 取っ手に鎖が巻き付けてあり南京錠でロックされている。
「それじゃあお宝を拝見するとするか」
 清史郎にとって南京錠などは鍵とも言えないものだ。
 ピッキングツールで難なく開いたドアを開けて中へと足を踏み入れる。
 瞬間、小便を腐らせて煮詰めたような強烈な臭いが鼻を突く。
「うげっ! 何だ? この臭い」
 健が顔を背ける。
「嫌な予感しかしないんだけど」
 口を押えた加奈が言う。
 清史郎は袖で鼻と口を押えながらマグライトでバックヤードを照らす。
 が、そこにはがらんとした空間が広がっているだけだった。
 ……床の汚泥のような物体以外は。
「何も無ぇ……てか、これ……」
「ネズミの糞だろうな。飼い主は閉じ込めておくのに耐えかねたんだろう」
 バックヤードでケージを積んでネズミを飼っていたのだろうが、飼い主の方が臭いに耐えかねる状況になったのだろう。
「この臭いじゃ毎回運ぶ気にもならない……ジョーカー、床に引きずったような痕がある」
 加奈の言葉にマグライトを下に向ける。
 確かに汚泥が削られたようになり、ケージを引きずり出したような痕がある。
 犯人はネズミのケージをここからもっと風通しのいい所に移動させたのだろう。
「何だよ。また振り出しに戻るのかよ」
「いや、これで犯人がネズミを飼育していた事は判明した」
 清史郎は健に向かって言う。
「犯人はどこに消えたのかしら? たくさんのネズミを飼っておける場所って……」
「郊外に出れば廃屋なんて幾らでもあるし、廃棄された養豚場や養鶏場もあるだろう」
 清史郎は郊外の様子を想像しながら言う。
 新庄市の北部の山林地帯にはかつては多くの畜産業者が存在していた。
 その残骸の多くはハイウェイを通る時に見る事ができる。
「一軒一軒回るのか? このクソ寒いのに?」
「寒いのはともかく、当てもなく山を探し回っても拉致が明かないんじゃない?」
「警察なら人海戦術でやるんだろうな……」
 清史郎はひとまずペットショップの外に出る。
 寒空だが悪臭の中に比べると北風の方がマシに思える。
「ジョーク、何か案は無ぇのかよ」
「あんたこそ空撮とか何かできないの?」
「googleearthだってそこまで精密には見れねぇよ」
 健の言葉を清史郎は反芻する。
 犯人も忘れ去られたような施設まで把握はしていないだろう。
 だとすればハイウェイから見えてなおかつ、一般道では入り込めない場所という事になる。
 更に移動に軽トラックを使っている事から、車の乗り入れのできる場所という制限も付けられる。
「とりあえず、ハイウェイから入っていける横道を探した方がいいだろうな。もしこの犯人が利用している施設ならネズミの糞が乾燥していない事から、最近場所を移動したんだろう。だとすれば脇道を封鎖する私有地の看板みたいなものは新しいはずだ」
「なぁるほど、確かに。でも、誰かの家に出ちまったらどうなんだ?」
「聞き込みに来たって言えばいいじゃない」
 健に答えて加奈が言う。
「じゃあドライブに行くとするか」
 清史郎はビートルの後部座席に健を乗せると運転席に乗り込んだ。
  〈4〉 
 
 「どーせ森林浴するなら秋とかのが良かったんじゃね?」
 幾度目かの横道を試す中、健が愚痴をこぼす。
 街乗りの車として作られているビートルは車高が低く、エンジンなどは新型に換装してあるが底がこすれ振動もひどい。
 岩で車体の下を破壊されたら帰る事もままならない。
「森林浴ってどっちかって言うと夏じゃない?」
 加奈が健に向かって言う。
「だって夏の山って蚊が出るじゃんよ」
「あんたって本当にアウトドアに向かないわよね」
「海には行きたいぜ。目の保養に」
 健の言葉に加奈がため息をつく。
 ハイウェイからの脇道は意外に多かったが、多くが途中から藪に包まれていた。
 まともに通れた道もあるが、高齢者の農家が猫の額のような畑を耕しているだけだった。
「ジョーカー、私たちで人海戦術は無理があるんじゃない?」
 加奈の言葉に清史郎は山道の中でブレーキを踏む。
 ビートルの新型のエンジンの振動が静かに車体を震わせる。
「確かにそれはそうなんだが……」
「もう少し条件絞った方がいいんじゃねぇの?」
 健の言葉に清史郎は考える。
 私有地の新しい看板は想像以上に多かった。
 恐らくは土地の相続が難しく売りに出されたものだろう。
 農家もそれとほぼ同数存在している。
 ――だとすれば――
「健、不動産で売り出されている土地の情報と、農協に作物を収めている農家のデータを検索してくれ」
「不動産はネッ���見れば分かるけど、農協には何の仕掛けもしてないし侵入できないぜ?」
 健が答える。健はITの天才のように見えるが、種と仕掛けが無いと普通のITボーイなのだ。
「近くの農協に仕掛けてくれればやるけど」
 キーボードを叩きながら健が言う。
「いいわよ。こっちで直接電話で聞くから。新庄神谷の田舎なんてそんなに人が住んでないでしょ」
 加奈がスマートフォンとシステム手帳を広げて言う。
「じゃあ、俺は一旦ビートルを戻してコーヒーでも買うか」
 清史郎は近場のコンビニに向かって車を走らせた。
  「で、不動産で売り出されている土地を除外して、農家も除外した結果がこれ」
 コンビニの駐車場で健が地図を表示する。
 地図が色分けされ、幾つかの空白地帯が出現している。
「土地って言っても宅地と農地と山林を省いて、酪農? 的な所は空白のままにしてる」
「昔酪農をしてた農家があったんだって。丁度この辺」
 加奈が地図の一点を指さす。
 二人はほぼ条件にそってターゲットを絞り込んでいたらしい。
「じゃあラットマンとご対面と行くか」
 清史郎はビートルを発進させた。
 黄色いプラスチックの鎖を外し、立ち入り禁止の看板を無視して山道にビートルを乗り入れる。
 まだ新しい轍が山の中へと続いている。
「なんかそれっぽくね?」
「でもジョーカー、犯人がいて、武器とか持ってたらどうするの」
「そういう時の為にくぎ抜きがあるんだよ」
「頼りねぇなぁ、モデルガンでも持って来れば良かったじゃねぇか」
「ああいうのを持ち歩いていると職質された時に面倒なんだよ」
 清史郎がビートルを走らせていると、林が開けて納谷と牛舎が姿を現した。
 エンジンを停めて外に出てみる。
 納谷を後回しにして牛舎を見るが静まり返っている。
 が……
「あったぜ! ジョーク、ネズミの糞だ!」
 牛舎の床の部分に大量のネズミの糞が散らばっている。
「ジョーカー! こっちに犬の餌がたくさんあるよ」
 納谷を覗いていた加奈が言う。
「よっしゃあ! ラットマンのアジトを突き止めたぜ!」
 健がガッツポーズを取る。
「だが、ネズミがここにいないという事は、犯人は次のターゲットを既に拘束している可能性がある」
 清史郎の言葉に健と加奈が目を見開く。
「おそらく窓の無い遮音性の高い部屋を幾つか確保しているんだろう。一日二日ならネズミに餌をやらなくても死にはしないだろうしな」
 清史郎はスマートフォンを取り出して緒方をコールする。
『緒方だ。捜査に進展はあったか?』
「犯人がネズミを飼っていた場所を確認した。が、今は運び出されている。恐らく次のターゲットを拘束したか、そうでなくても狙いを定めたんだろう」
『仕事が早くて助かる。こっちは組員の点呼を行う』
「外国人労働者の方は?」
『フューチャー人材ネットの社長と社員が死んだんだ。手を回せる状況ではない』
 組関係者が立て続けに死んでいるというだけで緒方は手一杯だろう。
「とりあえず地図は送る。犯人が来たら捕らえられるようにしておいてくれ」
『捕らえるだけで済めばいいがな』
 緒方が通話を一方的に切る。
 清史郎は現場の写真と地図をメールに添付して送る。
「ヤクザが味方ってのは心強えな」
「裏を返したら失敗したらタダじゃ済まないって事でしょ」
「とりあえず事務所に戻ろうか」
 清史郎はビートルに足を向けた。どの道ここに留まっていても何かができる訳ではないのだ。
  〈5〉 
 
 「NPO法人ジャーニーオブアースの高田美恵と言います」
 四十代のキャリアウーマン風のスーツ姿の女性を前に、緒方は戸惑いを感じていた。
 ラットマンの事件がようやく片付きそうだと言うのに、どんなトラブルが舞い込んだのだろうか。
「慶田盛弁護士からこちらで違法に働かされている外国の方がいらっしゃるとか」
「ウチはただのケツモチでビジネスは企業がやっています。我々が直接関与している訳ではありません」
「それならばどうして外国の労働者に続いてそちらの企業舎弟の方々が殺されたのですか? 無縁という事は無いはずです」
 頑として引き下がらない様子で高田が言う。
「だとして一体どうなさりたいのですか?」
 緒方は尋ねる。NPOなどという胡散臭いものがヤクザに一体何の用があると言うのか。
「我々は国内の外国人の人権を保護しております。滞在に違法性がある場合、また、行政が適切な援助を行っていない場合、司法的手続きによって人権と合法的滞在を要求します」
 面倒くさい相手だと緒方はため息を押し殺す。
 外国人ビジネスはそこそこの収益率がある事と、麻薬の生産地である現地との繋がりもある事から簡単に手を引く事はできない。
 ――フューチャー人材ネットを切るか――
 フューチャー人材ネットで管理している外国人はせいぜい二百人といった所だ。
 だが、二百人も司法で戦うという事になればNPOも音を上げるだろう。
「いいでしょう。我々の知る限り、外国人労働者のデータをお渡ししましょう」
 言って緒方は若い衆にフューチャー人材ネットの裏帳簿を持ってくるように命じる。
 ――矢沢組はここの所踏んだり蹴ったりだな――
 
 「ニャンさんとの面会も上手く行ってね。不法滞在の外国人の滞在許可を正式に取得する為にNPO法人に依頼したよ」
 事務所に戻ると早々に慶田盛がやって来た。
「不法滞在者の弁護なんてできるものなのか?」
 慶田盛に椅子を勧めながら清史郎は訊ねる。
「そこが法の難しい所だ。パスポートはあるがビザは無い。本来強制送還という所だが、強制的に働かされており、今後も働かされる予定が存在し、生活の基盤も日本に存在している。と、なれば彼らの人権を守る為に裁判をすることはやぶさかじゃない」
 慶田盛が加奈の淹れたコーヒーに口をつける。
「今後も、と、言うが、フューチャー人材ネットは社員に続いて社長が殺されて運営が危うくなっている。緒方は会社を捨てるかも知れないぞ?」
「日本で働いていたなら、本来労基法が適用される。それが無視された状態で働かされていたなら、当然順守が求められる。フューチャー人材ネットが倒産したとしても、就労実態があったとして国は失業保険を支払わなければならないし、フューチャー人材ネットも相応の保証金を支払わなければならないだろう」
 そもそも、と、慶田盛は続ける。
「日本国憲法の基本的人権という考え方は国籍を問うていないんだよ。帝国憲法は臣民の、と、書いてあるから明らかに天皇の主権統治下にある、と、読めるけど現在の日本国憲法はそうじゃない。一九七九年、最高裁のマクリーン判決でも憲法第三章の基本的人権の保障は在留する外国人に等しく及ぶべしと言っている。判例が前例として存在するんだ」
 慶田盛が全員に聞かせるようにして言う。
 確かにその通りなら不法滞在などという言葉そのものが違憲という事になるだろう。
「これは一九四八年の国連の世界人権宣言でも批准されている事で……」
「言いたい事は大体分かった。要するに人類皆兄弟という事だろう」
「まぁ、それが理想ではあるんだけどね。最近は何かと閉鎖的になって来ている気がしてね」
 やれやれと慶田盛が肩を竦める。
「とにかく、外国人の保護はNPOに依頼したから何とかなるだろうし、法廷闘争という事になれば僕の出番だし何とかなるよ」
 言ってコーヒーを飲み干した慶田盛が席を立つ。
「ニャンさんの容疑が晴れそうだと思ったらまた地裁だよ。じゃあな」
 慶田盛が嵐のように事務所を去っていく。
「慶田盛のオッサンって法律の鬼みてぇだな」
「だから法の番人なんだろ」
 健に答えて清史郎は言う。
「不法滞在の人たちの弁護なんかしてお金になるの��な……」
「なるようなら俺たちだって���っといい暮らしをしてるだろうさ」
 加奈の言葉に清史郎は苦笑で答える。
 慶田盛弁護士事務所と三浦探偵事務所は利益度外視が持ち味なのだ。
  『組員は厳戒態勢だ。ラットマンのアジトも確保した』
 スマートフォン越しに緒方が言う。
『に、しても会社一つ取られるとは思ってもみなかった』
 緒方の言葉は苦い。どうやらフューチャー人材ネットの外国人労働者は慶田盛が解放する形になったのだろう。
「太っ腹だと思われた方が近所受けはいいんじゃないのか」
 清史郎が言うと苦笑が漏れる。
『震災の炊き出しの方が余程いい宣伝になる。まぁ、これでラットマンを仕留められれば意趣返しにもなるんだがな』
 緒方が好戦的な口調で言う。不法滞在者でスキャンダルを抱え、組員を殺された事で怒りのベクトルがラットマンに向いているのだろう。
 に、しても、と、清史郎は考える。
 矢沢組が総力を挙げるという事は矢沢組の中にはラットマンはいないという事になるのでは無いだろうか。
 だとすれば畑中の事件のタイムラプスビデオのトリックが仕掛けられない事になる。
 矢沢組の外の人間で三浦探偵事務所以外にハッキングを仕掛けている所があるとは思えない。
「警察に突き出すつもりなら殺さないでくれよ」
 清史郎が言うと小さな笑い声と共に通話が切れた。
  第三章       ジョーカーVSラットマン
  〈1〉
   十二月五日。清史郎は目覚まし時計で六時半に起きると地元のニュースにTVのチャンネルを合わせ、玄関に新聞を取りに言った。
『……速報です。本日午前六時新庄市警組織対策本部長が惨殺体が発見されました。新庄市警は連続殺人事件との関係を捜査中としており、同一犯の場合フューチャー人材ネットを狙った二つの殺人に続く第三の殺人であるとして捜査本部を設置し……』
「何だとぉ!」
 清史郎は思わず声を上げた。
 ヤクザが厳戒態勢の中、ラットマンは市警の、それも最もヤクザと緊密な組織対策本部長を狙ったというのか。
 ヤクザが警戒しているから警察を狙ったとでも言うのか。
 ――そんなバカな話がある訳が無い――
 清史郎はワンルームの室内を動物園の熊のようにうろつき回る。
 昨日ラットマンはネズミを運び出していた。
 ラットマンは昨日の時点でターゲットを捕捉していたのだ。
 と、言う事は最初から狙いは警察の組織対策本部長だったのだ。
 ――何故組対なんだ?――
 ヤクザを庇っているように見えたからか。
 だがこの殺人は外国人労働者による殺人という文脈から完全に外れている。
 ラットマンの狙いは一体何だと言うのか。
 清史郎は身支度を整えると事務所に向かう。
 定時の九時を待たずに加奈と健が事務所に現れる。
「ジョーク、ラットマン何考えてんだよ?」
 健が訳が分からないといった様子で言う。
「それが分かれば苦労しないし、この事件も起きていない」
「ヤクザの守りが固いからって言っても市警の組対本部長も相当よね」
 加奈が言う。個人としては狙う事もできるだろうが大物と言えば大物だ。
「でもこれで外国人労働者の線は完全に消えた事になる」
 清史郎は言う。外国人労働者が無差別に狙ったとして市警の組織対策本部長に当たる可能性は限りなく低いからだ。
「現場にはやっぱりお巡りがいっぱいいんのかな?」
「そりゃ、警察は警官が殺されたら本気になる組織だからな」
 清史郎は健に答える。警察は民間人の被害者には冷淡な事が多いが、身内の警察官となると目を血走らせて犯人を追いかけるものなのだ。
「何か納得できない。今回の殺人も死体を見せつけた訳でしょ? ラットマンは外国人の時は見せつけるような事はしなかったけど、ヤクザから先はわざわざ死体を見せつけてるのよね? 何かメッセージがあるんじゃないのかな?」
「殺人ビデオを作ってたヤツがか?」
 加奈の言葉に健が答える。
「それよりこれから市内は検問だらけの戒厳令みたいな事になる。ラットマンはアジトに戻るか高跳びしていないと逃げ場がなくなるだろうな」
 清史郎は腕を組む。
「軽トラックにネズミ乗っけてれば簡単に見つかりそうなモンだけどな」
 健が頬杖をついて言う。
「これが最後の犯行だとすればネズミを下水に逃がせばいいだけだ。ケージだって畳むなりプレスに紛れ込ませるなりすれば見つからないだろう」
「そっか……この殺人事件って、凶器は逃がせば消えるって事なんだよね」
「でもよ~、どういうミスリードなんだ? 全然繋がらねぇじゃんよ」
 清史郎は冷えたコーヒーに口をつけて考える。
 何かが引っかかる。単純だが、見落としてはならないもの。
 矢沢組の玄関のタイムラプスビデオ、市警組対本部長。
 ――まさか――
「健、大日警備保障に警察OBがいるか分かるか?」
 清史郎が言うと健が不思議そうな視線を向けてくる。
「大日警備保障は矢沢組のフロントだろう? で、警備会社とくれば警察OBの天下りだ。大日警備保障なら矢沢組のセキュリティも分かるだろうし、市警の組対本部長のスケジュールも手に入るかも知れないだろう? しかも大日警備保障はミンさんたちの寮を監視するみたいに事務所を構えていた。外国人労働者を監視するのが大日警備保障の役目だったとすればどうだ?」
 清史郎が言うと健が猛烈な勢いでキーボードを叩き始める。
「大日警備保障の人が外国人のスナッフビデオで小遣いを稼いでいて、それがバレそうになったからフューチャー人材ネットの社員と社長を殺した、って言うのは分かるんだけど、その後どうして警察の幹部を狙ったのか分からない」
 加奈が首を傾げて言う。
 清史郎にはその言葉に答える術が無い。
 まだパズルのピースは穴だらけのままなのだ。
「従業員の三分の一は警察OBだぜ。ほとんどシルバーだけどな」
 健がPCのディスプレイに一覧を表示させる。
「ヤクザと警察のパラダイスね」
 皮肉るような口調で加奈が言う。
「大日警備保障の昨日のシフトは分かるか? なるべく現役に近いヤツで非番のヤツは?」
「新田卓ってヤツかな……警察を暴力事件でクビになって採用されてる」
 健が履歴を表示させる。
 新田卓三十四才。空手三段柔道五段。元警備部巡査部長。デモの警戒で出動中市民に対する暴力で謹慎。謹慎中にNPOの代表を襲撃して重傷を負わせて依願退職となっている。
「空手三段柔道五段じゃあ私らじゃあ手も足も出ないんじゃない?」
 加奈が忠告するようにして言う。
 三人がかりでも新田を捕らえるなどという事はできないだろう。
 しかも現状ではただ怪しいというだけなのだ。
「新田の住所は分かるか?」
「もちろん。でもどうすんだ?」 
「スナッフビデオを動画配信で売ったならPCに痕跡があるはずだろう?」
 清史郎が言うと健が珍しく考えるような表情を浮かべる。
「新田本人がやったなら別にいいんスけど、新田が完全に肉体派で家にPCも無かったらどうすんだ? それに最初複数犯って言ってたじゃねぇか」
 健の指摘に清史郎は額に手を当てる。
 その可能性を忘れていた。
「新田のメールを覗く事はできるか? 組織的犯行なら組織が割れるかも知れない」
「もしかしたら組織だから組対本部長を消したのかも」
 加奈が言うと健がさも人使いが荒いといった様子でPCを叩き始める。
「だが、普通組対というのは暴力団対策部の事だぞ?」
「それくらい知ってるってば。でも、暴力団の中の暴力団って事もあるじゃん?」
「それなら一昨日の時点で刑事部の風間が何か知っていても良さそうなものだろう?」
「風間から組対に話が行ったって可能性は?」
「可能性はあるが、それならどうして風間を殺さなかったんだ? ラットマンを追う可能性があったのはあの時点では風間だったんだぞ?」
 清史郎が言うと突然健が触っていたPCから『君が代』が流れ出した。
「何だ? どうした?」
 清史郎が言うと健がPCの音声をミュートにした。
「新田は愛国防衛戦線って団体の構成員だったみたいだ。これサイトな」
 画面上では日章旗がはためき、スナッフビデオへのリンクも張られている。
「こいつらが外国人を殺してたっての?」
 加奈が声を上げる。
「でも、それがどうしてヤクザを殺す事になった?」
 清史郎は画面をのぞき込む。
『日本を愛し、日本を守る。汚らわしいドブネズミ、土人どもを取り除き、美しい日本を取り戻す。子供たちに残そう愛すべき祖国』
 清々しい程のヘイトだがそれがこの団体のスローガンであるらしい。
「これを素直に読むと、外国人を呼んでくるヤクザもターゲットになるって事じゃない?」
 加奈の言葉に清史郎は虚を突かれる。
 そこまで短絡的だったとするなら、フューチャー人材ネットを襲った惨劇には納得が行く。
 しかし、警察の組織対策本部長を殺した事には依然として結びつかない。
「健、この組織の構成員何かは分からないのか?」
「これ、ロシアのサーバーに作られてんだ。結構腕のあるヤツが組んでるっぽいし、相手のIPアドレスを掴んだくらいで組織が割れるなんて事は無いと思うぜ?」
 健の言葉に清史郎はスマートフォンを取り出して緒方をコールする。
『予想外の展開だな』
 挨拶も無く緒方が応じる。
「一つ聞きたいんだが、愛国防衛戦線という組織に心当たりは?」
『右翼団体で最近はネットを中心に活動しているらしい。親は同じだが組が違うから詳細は分からん』
「お宅の大日警備保障の新田がメンバーだった。で、そのサイトでスナッフビデオが垂れ流しになっている」
『大日警備保障は確かに親は同じだが組が違う。だが、大日警備保障か……』
「心当たりがあるのか?」
『外国人に警備が必要だと言って頭超えてから割り込んできたのが大日だ。てっきり小遣い稼ぎをしに来ているものだとばかり思っていたが……』
 緒方も知ってはいるものの詳細は分からないらしい。
『愛国防衛戦線は無動正義という男が代表を務めている……現在は新庄市に移り住んでいるらしい』
「その無動正義というのは何者なんだ?」
『ヤクザとしては三流だが、ネット右翼の最先鋒で荒しなんかで稼いでる男だ。与党を宣伝する書籍や中国や韓国を罵倒する書籍も発行している。最近は新しい道徳と歴史の教科書も作ってるそうだ』
 緒方も何か調べているらしい様子で言う。
 健が無動正義を検索してウェブサイトを表示する。
 『愛国心』と大きく書かれた下に禿頭の男の写真が載っている。
 よくよく見れば小さく愛国防衛戦線へのリンクも存在している。
「こっちでも確認した。一応文化人というカテゴリーには入れられているようだな」
 与党側のご意見番といった形でTVやラジオにも出演しているようだ。
『矢沢組としては親に判断を仰ぐしかないな』
 苦々しい口調で言って緒方が通話を切る。
「ジョーカーどうするの? 一応文化人らしいけど」
「やっている事は石器人並みだがな」
 実行犯ではないにしろ、無動正義の指示で愛国防衛戦線と大日警備保障が動いた事は間違いないだろう。
「無動って野郎をふん捕まえて吐かせりゃいいんじゃねぇか?」
「大日警備保障を忘れないでくれよ。俺たちは探偵で警察じゃない。暴力じゃなくて知力で物事を解決するのが仕事なんだ」
「それには証拠を探さないとね」
 加奈が応じて言う。
「見つけるべき証拠は殺害現場、軽トラック、ネズミが入っていたケージ、投光器、撮影用のカメラ。こんな所か」
「軽トラックなんて警備会社は幾らでも持ってんじゃねぇのか?」
 健が言う。
「新田の事務所の軽トラックからルミノール反応が出ればビンゴだ」
「大日警備保障の事務所は市内だけで八か所だ。それにコーンを乗せて動いてるかも知れなねぇし……」
「殺害現場が一番動かぬ証拠なんじゃない?」
 健に続いて加奈が言う。
「窓の無い部屋。地下室か、人の出入りの無い地下駐車場か……」
「それこそ検索できねぇよ」
 キーボードに触れずに指だけ動かして健が言う。
「忘れてる。現場は水で流して掃除できないと血が残るって事」
 加奈が言う。
 確かに最初の頃の映像は床がフローリングのようだったが、途中からリノリウムのようになり、照明も明るくなっていた。
 犯人グループは最初の頃の反省を踏まえ、条件のいい場所を探し当てたのだろう。
「ネズミをケージなりに戻す為にも密室が必要か……」
 清史郎は頭を巡らせる。間口がかなり狭くないとネズミの大脱走が起きる事だろう。
 そうすれば近所に知られる事になる。
 そしてこれまでの被害者の住所から考えて市内にある事は間違いない。
「コンテナだ」
 清史郎は言う。
「健、大日警備保障が警備している港のコンテナは分かるか?」
「なるほど、貨物のコンテナなら密室でライトを持ち込んだりすればそれらしくできるし、洗うのも簡単……」
 加奈が言うと健がPCのキーボードを叩き始める。
「パシフィックアジアって貿易会社と契約してやがる」
 健がgoogleearthで埠頭のコンテナを拡大する。
 黄色の貨物コンテナが八基並んでおり、そのうち一つか幾つかが犯行に使われた可能性が高い。
「ジョーク、乗り込むのか?」
 健の言葉に清史郎は考える。
 鍵を開けて中を確認するにはピッキングをしなければならないが、昼間にそれをすることは困難であり、そもそも大日警備保障が警備をしているのだ。
 新田に遭遇したら三人まとめてコンクリート詰めにされて、ドラム缶で海に沈められかねない。
 やるなら夜だ。
 現場を特定し、証拠を手に入れ、実行犯と無動正義を殺人容疑で起訴するのだ。
 
 
〈2〉
  ��深夜零時。清史郎は久々にジョーカーの衣装に身を包んでいる。
「僕は殺しが仕事で警護は仕事ではありません」
 ボートの上でスーツ姿の円山が両手に手袋をはめたまま言う。
「致命傷を負わせて欲しいんじゃない、殺されたら困る」
「あなたは殺し屋を何だと思ってるんですか」
 清史郎は今回の作戦に当たって円山健司に警護を依頼していた。
 緒方に兵隊を借りるという方法も無くは無かったが、矢沢組は格上であるとはいえ、愛国防衛戦線と同じ指揮系統に属しており、いざという時にどう動くか分からなかったからだ。
 健司と一緒にボートを漕いで岸壁に近づく。
 夜でも尚荷物の積み下ろしのある港は多くのライトで照らされている。
 大日警備保障のハイゼットが横付けされた黄色いコンテナがゆっくりと拡大されて来る。
「警備員……新田がいやがんな。こっちには気づいてねぇみてぇだけど」
「消して来ましょうか? 友達価格で一人五万円で手を打ちますよ」
 健に答えて円山が言う。
「もっと高額でいいから目を逸らせてくれないか?」
「中途半端が一番難しいんです」
 言いながら円山がアタッシュケースから花粉防止用のマスクのようなものを取り出す。
「円山くん、それ、何なの?」
 加奈が訊ねる。
「入手に苦労しましたがクロロホルムですよ。マスクに染み込ませてあります。これをかけてしまえば当分起きる事は無いでしょう。柔道家や空手家と戦って勝てるなんて思っていませんから」
 円山なりに気を使ってくれているらしい。
 ボートが岸壁に近づき、積まれたパレット越しに新田の頭が見える。
「それでは先に僕が行きます」
 円山が岸壁に腕をかけて身軽にパレットの裏に回る。
 ポケットから昔のカメラのフィルム程の大きさのものを少し離れた場所に放り投げる。
 瞬間、カメラのフラッシュのような光が瞬いた。
 新田が確認するかのように動き始める。
 円山が足音を殺して警備員の背後に回り込んでクロロホルムのマスクをかける。
 新田が身体を捩り、円山がコンクリートの床の上を転がる。
 新田が警棒を抜くと円山の手に拳銃が出現する。
 新田が一瞬動きを停めたかと思うと膝から崩れ落ちる。
 倒れた新田を円山がパレットの裏まで引きずってくる。
「その銃本物なのか?」
 健が健司に向かって訊ねる。
「まさか。クロロホルムが効くまでの時間稼ぎですよ。僕はもう少し周囲を探って来ます」
 健司がコンテナの影から影に移動するようにして姿を消す。
 これほどの人間に一度でも命を狙われていたのかと思うと恐ろしいものがある。
「ジョーカー行きましょ」
 作業員の服装の加奈が先に上がり、清史郎もそれに続く。
 健は清史郎と加奈の頭と肩と胸についたカメラの操作が仕事だ。
 清史郎は大日警備保障のハイゼットにルミノール反応液を振りかける。
 死体はブルーシートか何かに包まれていたのだろうが、靴跡がくっきりと浮かび上がる。
 足の大きさは二十七センチはゆうにあるだろう。
 実行犯に新田が加わっている事は確定的だ。
 続いて近場のコンテナの鍵を開ける。
 最も近いコンテナの中は空だった。ルミノール反応も見られない。
 続いて隣のコンテナの鍵を開ける。
 真っ暗な洞のような室内を照らすが血痕らしいものも機材を持ち込んだ形跡も無い。
 パトカーのサイレンが聞こえてくる。
 ――警察が来たならジョーカーの出番も無しか――
 清史郎はパレットの影に戻って加奈と合流する。
 やって来たのは覆面パトカーで、コンテナの前まで来るとサイレンを止めた。
 運転席から風間刑事が出てくる。
 周囲の様子を覗いながら一つのコンテナに向かって歩いていく。
 スーツ姿の手にはラバーの手袋がはめられている。
 ――おかしい――
 警察が来たなら何故一台、それも覆面パトカーなのか。
 他に警官も居なければ何故両手にラバーの手袋をしているのか。
 一番妙なのは……
 風間がポケットから取り出したキーでコンテナの鍵を開けようとする。
「ホワイトクリスマース!」
 清史郎はモデルガンのグレネードを抜いて飛び出す。
 鍵を手にしたままの風間が振り向く。
「チックタックチックタック宝箱の中身は何でしょう!」
「ジョーカー! この道化が!」
 鍵を放って風間が銃を引き抜く。
 刑事は事件性が無い限り銃の携帯は許されない筈だ。
 しかも手に握られているのは警察の正式拳銃のS&Wではなくトカレフだ。
 轟音が響いて清史郎の耳が一瞬聞こえなくなる。
 耳のすぐ傍を弾丸が通過したらしい。
 清史郎はグレネードを構える。
「ラップトップデスクトップトーテムポール!」
 清史郎が引き金を引くと花火が打ち出される。
 花火がコンテナに当たり色とりどりの光を放つ。
「見かけ倒しか! 愛国無罪! 死ぬがいい!」
 風間がトカレフの引き金を引く。
 清史郎は死ぬ思いでコンクリートの上を転がる。
 トカレフの装弾数は八。
 二発使ったから後六発残っているはずだ。
 轟音が立て続けに二回響く。
「トカレフモロゾフカラシニコフ!」
 清史郎は目くらましに花火を放つ。
 深夜の埠頭に水平に放たれた花火の光と轟音が響く。
 続けざまに轟音が三回。
 強運なのかどうやらトカレフの餌食にはならずに済んでいるようだ。
「我らの大義、邪魔はさせん!」
 轟音が響き、続いてカチリという金属音が響く。
 風間はトカレフの弾丸を打ち尽くしたらしい。 
「外国人の悲運も今日は我が身、ラットマン! 貴様の命運もここまでだ!」
 清史郎が歩み寄ると風間がS&Wを抜く。
「尽忠報国の志、英霊たちが共にあるのだ!」
 リボルバーが火を噴く。
 清史郎は反則だと思いながら再びコンクリートの上を転がる。
 警察官として発砲したなら、一発一発まで報告の義務があるはずだ。
 ――それすら無視すると言うのか――
 もう避け切れないと思った清史郎の周囲で銃弾が爆ぜる。
 銃を手にした風間の足が二日酔いのように揺らいでいる。
 瞬間、清史郎の目がコンテナの上に立つ円山の姿を捉える。
 円山が花火と銃撃の間にクロロホルムを振りかけていたのだ。
 揮発性の高いクロロホルムを吸い込んだ風間は意識を失いつつある。
「何故組織対策本部長を殺した?」
 清史郎は歩み寄りながら訊ねる。
 銃を構えようとした風間の手から銃が落ちる。
「薄汚いドブネズミ……土人どもの一掃作戦を無視したからだ。そもそも、最初のチンピラの死で新庄市の土人どもは一掃されるはずだったのだ。それを弁護士やら探偵やらが邪魔をしたのだ。土人を引き入れた悪逆非道のブローカーを殺し、土人の組織がやったのだと上奏したのに組織対策は受け入れん。だから殺したのだ。だが組織対策本部長が殺されたとあれば、土人どもが結託して美しい日本を汚そうとしている事を疑う者もいるまい。これから美しい日本を取り戻す戦いが始まるのだ」
 意識朦朧としているせいだろう、聞いてもいない事までペラペラと風間が喋る。
「それは無動正義の指示か?」
「無動閣下は総理を代弁し天皇陛下の目を覚まさせる為に戦いを始められたのだ! 私のような一兵卒は臣従するのが……務め……というもの……だ……」
 清史郎の前で風間が崩れ落ちる。
 清史郎は風間の放った鍵を拾ってコンテナの扉を開く。
 無数の歯ぎしりをするネズミの鳴き声が響き、ネズミのケージ、TVスタジオのような照明装置、そして殺された被害者が吊るされていた現場が姿を現す。
 清史郎は健に映像と音声を切るように合図する。
「私は愛国という言葉が嫌いだから郷土愛と言わせてもらうがな、郷土愛っていうのは自分の国を移り住んだ人が住んで良かったと思える国にする事だ。他人に冷たい人間は自分にも優しくできない。誰かを迫害する人間に国を愛する事はできないんだ。覚えておけ」
 清史郎は倒れた風間に向かって言う。
「ジョーカー、今の一言バッチリもらったから」
 加奈が楽しそうに言う。
「動画配信する時は削除しろ。俺はジョーカーなんだぞ」
『言って無かったっけ。これリアルタイムで動画配信してんだ。しかもようつべとヌコヌコで』
 イヤホンから健の声が聞こえてくる。
 清史郎は顔から火が噴き出るような気分になる。
「だったらショータイムだ! これが愛国防衛戦線と大日警備保障の悪の城だ!」
 清史郎はコンテナの照明のスイッチを入れる。
 暗かった殺戮の舞台がステージのように映し出される。
 遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる。
 今度こそ警察の大群が押し寄せてくるのかも知れない。
『ジョーク、動画停めたぜ』
 健が言うと円山が音も無くコンテナの上から飛び降りてくる。
「それではお暇しましょうか? 警察は厄介ですし」
「違いない」
 円山が素早くボートに飛び乗り、清史郎は加奈が乗ったのを確認して乗り込む。
 健がエンジンをかけて波を切る。
 入れ違いになるように港に赤いパトライトを点滅させたパトカーの群れがやって来る。
 パトライトの明かりが港の明かりに溶ける頃、清史郎はようやく詰めていた息を吐いてジョーカーのマスクを脱いだ。
「みんなお疲れ様だな。これで事件は一件落着だ」
 清史郎の言葉に三人の笑顔が答えた。
  エピローグ 
 
 
「……被告はビザを有しておらず、六十日を超えて無許可で労働していたのであり、これは入国管理法違反に相当します。従って強制送還が適当であると検察は判断します」
 検察が法廷で声を張り上げる。
「被告は六十日を超えて就労できるとしたフューチャー人材ネットの詐欺によって滞在したのであり、そもそもが入管で適切な説明を受けておりません。入管では入国目的を確認しているはずであり、六十日を過ぎて当人に確認を行わなかった入管に不備があるのでは無いでしょうか? 加えて被告は一日十八時間を超える労働に従事させられており、これは国籍を問わずに労働基本法違反に当たります」
 慶田盛が答弁する姿を清史郎は健と加奈に挟まれながら眺めている。
「異議あり! 被告の労働条件は入管法とは関係ありません」
 検察が慶田盛の陳述を遮る。
「異議を却下します」 
「そもそも日本国憲法三条十一項の基本的人権は日本国籍保有者のみに与えられたものではありません。一九七九年、最高裁のマクリーン判決の判例を資料として提出します」
「異議あり! 弁護人の資料は時世にそぐわぬ古いものであり判例として相応しくありません。二〇一八年十月二日改正出入国管理法案を資料とし��提出します」
「異議を認めます」
「出入国管理法は出入国に関する法律であり、被告は既に国内で就労済みであり法の適用外であります。また弁護人は改正出入国管理法に対し、一九七九判決に基づき違憲審査を請求します」
 慶田盛の言葉に法廷が騒然となる。
「一時休廷します」
 裁判官が言って慶田盛と検察を呼んで法廷を出ていく。
「慶田盛のオッサンって弁護士なんだな」
「昔から弁護士だよ」
 健に答えて清史郎は言う。
「何かドラマ見てるみたい」
加奈が呟く。
「私たちが風間や無動やらの事件を暴けなかったら、不法滞在どころか殺人容疑だったんだ」
「そう考えると俺たちすごくね。もっと注目されても良さそうだけどな」
「現場押さえて風間とやりあったのはあくまでジョーカーなんだから」
「へいへい、元優等生は言う事が一々真面目ですね~」
「うっさい!」
 清史郎が二人のやり取りを聞いていると裁判官と慶田盛、検察が戻って来た。
「本法廷は被告に情状酌量の余地があるとし、在留カード取得の意志の有無を確認し、在留の意志のある者には発行するものとする」
 裁判官が重々しい口調で言ってハンマーを打つ。
「これって慶田盛のオッサンが勝ったって事か?」
「概ね勝利って所だろうな」
「ミンさんたち幸せになれるといいね」
 加奈が嬉しそうに言う。
「どうだかな。国籍があってもヒーター一つでひいひい言わなきゃいけない国だからな」
 清史郎が言うと健と加奈が笑い声を上げた。
 
 
「と、いう訳でウチに入国管理官やら何やらが来て大わらわだ。こっちはシノギを一つ潰されたのに割に合わない話だ」 
 緒方は『殺し屋』のカウンターに座って焼酎を飲んでいる。
「それでも組員を殺した相手には意趣返しができたんでしょう?」
 言って殺し屋円山がグラスを磨く。
「動画配信でジョーカーに全部持っていかれたよ」
 組員に呼ばれて途中から映像を見ていたのだが、ジョーカーの一人舞台と言っても良かっただろう。
 内密に知っていれば大日警備保障と愛国防衛戦線を締め上げて金を巻き上げられたのだが、これでは踏んだり蹴ったりのままだ。
「その割には嫌そうな顔をしていないんですね」
 円山がいつもの笑顔のまま言う。
「欲の皮の突っ張った野郎はまだ見逃せるが、能書き垂れて悪さする野郎には反吐が出るんだよ」
 緒方が言うと円山の笑顔の質が変わったように見える。
「ええ。確かに。だから僕も殺し屋であって殺人鬼ではないんです」
 円山の言葉に緒方は久しぶりに笑い声を立てた。
0 notes
otoha-moka · 5 years
Text
病床本丸のまんばくんと監査官さん
※刀剣破壊?描写あり(創作病気ネタ)※原作ゲームより遅いスピード感(まんばの極実装から数年経って聚楽第任務)※ちょぎくに※いつも通り人を選ぶ 「…また来たのか」「監査が仕事だからね」そう言って誰に断るでもなく国広の隣に深くフードを被った青年が座る。「…こんなところで監査か?」
「こんなところでも、本丸に登録されているんだよ」季節は秋、けれど縁側から見える紅葉は葉もつけていない。それもそのはずだ。本丸の土地はその主、審神者の霊力に拠るところが大きいのだから。黙り込んだままの国広に、耐えきれないと溜息をつき、青年、もとい長義はフードをとり仮面を外した。
しっかりと上げていた髪もくしゃりと手で梳いて崩してしまう。あまり堅苦しいのは趣味じゃない。もう一度溜息をつく。全くやってられない。縁側は相変わらず殺風景極まりないというのに、己が写しはいつもそこにいる。なんてことはない。この馬鹿は、来ない主の帰りを待っているのだ。
長義が初めてこの本丸に赴いた時、すでに主はおらず、極めた写しのみがそこにいた。「特別任務があるんだけど」「…すまない、ここにはもう、俺しかいない。主も不在で、本丸解体の許可も降りていない…任務の達成は困難だ」帰ってくれ、と言う国広の言葉に、長義は訝しげに眉を寄せた。
ほかの刀は、と尋ねれば、そこに、と国広は庭の一角を指す。土が盛られ、木の枝なんかを使った、いかにもな手作りの墓だった。主は、と次に尋ねれば、国広は静かに首を横に振る。考えうることを考えて、ひとつ仮説を思いついた。「…本丸襲撃にでも?」もしそうだとしたら、さすがに気の毒だ。
そう思えば、国広はそれにも首を横に振った。たしかに、あちこちぼろぼろの本丸ではあるが、襲撃を受け一振のみ残ったと考えるなら綺麗すぎる。そうして考えあぐねる長義に対し、国広は「…最初は千代金丸だった。熱を出して、しばらくしたら、本体から鉄の破片のようなものが…」と話を始めた。
聞けば話はこうだった。国広が修行を終えて、さらに少し月日が流れた頃、突然千代金丸が倒れた。はじめは疲れが溜まったのだろうと言っていた。事実、千代金丸はしばらく寝て、目を覚ました時には特に異常はなかった。けれど、その数日後、またも彼は倒れてしまった。
今度は戦場での出来事で、慌てて帰還し看病にあたった。審神者を勿論手を尽くしたけれど、今度は熱は下がらなかった。そこで、審神者は現世での治療を探すため、政府の元へ行くことを決め、本丸を離れることにしたのだという。しかし、その後主が戻ることはなく、千代金丸の熱も下がることがなかった。
次第に、まるで刃が溶けだすように、ぽたりぽたりと鉄が零れるようになった。そして、そのまま、本丸にいながらにして、彼は”破壊”されたのだという。鉄の破片を見た時あたりから、いよいよマズいと誰もが直感していた。そんな最中、次に同じ症状を示したのは南泉一文字だったという。
「…じゃあ、猫殺しくんの、も?」「猫…ああ…南泉か。…あれだ」国広は迷わず土が盛られ十字に木を束ねたところのひとつを指を指す。自分のよく知る政府で働く南泉はからかえば響く、あの姿の彼だ。だから、物言わぬ刀だったものが地中にあることには違和感があった。
一振り、また一振り、と、何も解決策が見当たらないまま、主不在の本丸に生存している刀はどんどん減っていった。薬研が診るには、主の霊力枯渇で免疫力の落ちた刀剣からかかりやすい、なんらかの伝染病なのではないかという見立てだった。半ば閉鎖された空間だからか、伝染病の類は特に感染しやすい。
短い期間で大勢倒れたわけではない、だが、少しずつ減っていく仲間たちの数に、危機感は覚えたが、止める術も持たない。八方塞がりだった。 「それで、最後に残ったのが初期刀であるお前というわけだ」「…そうだ」「…仕事だからね。お前に思うところはあれど、恨みはないことははじめに断っておく」
「報告なりなんなり、すればいい」どうせ、今の自分に出来ることもない。そう言おうと国広は口を開いて、まるで何も知らない長義に当たるような態度だと思い直し言葉を詰まらせた。「…もし、主に会ったのなら」「うん?」「主を、見つけられたのなら、どうかこのことは言わないでほしい」
「…このこと、って」「俺以外の皆がもうこの本丸にいないこと。俺がここにいること。その全てを…もう、主不在になったのは何年も前だが…一応、な」「…約束は、しないでおくよ」そう言って、初めて長義が本丸に来たその日に、長義は特別任務について何か話すということもなく、早々に本丸を出た。
もちろん、本丸の件については政府に報告をした。政府役員の新人と思われる若い男性は戸惑っていたが、彼の上司にあたる人物は驚く様子もなく、少し考え込んで、それから長義に何かのワクチンを打つようにと命じ、定期報告を任務とするようにと伝えた。
「…ワクチン?」「ああ、いや…放置本丸は衛生状態があまりよくないことが多いから、一応ね」「へえ…そう、”一応”、納得したことにしておいてあげるよ」と、そんな会話を経て、長義は二度、三度と、件の、自分の写し以外いない本丸へと、否応なしにおとずれることになった。
そうして、今日は4回目の訪問だった。相変わらず、閑古鳥すら鳴かない、しんと静まり返った本丸だ。門を叩いてみても反応はなく、まあいいかと無断でくぐる。長義が国広を探して本丸を彷徨いていると、ふと、何かが香った。「…そこにいるのか?」言いながら香りを辿った部屋を開ける。
開け放った部屋は無人だった。一人用の部屋の思われる部屋には、甘い香りのする香が炊かれていて、それ以外には簡素な文机と、敷きっぱなしの布団があった。丁寧に畳まれた単衣が枕元にあり、それから、かけてある刀は山姥切国広��った。
「…偽物くんの、部屋?」生活感のある部屋なんて、この本丸に��きっとひとつしかない。「でも、こんな甘い香り好むか?」ひとりそう呟いて、部屋を見回す。普通の部屋だ。長義くんは、そうして発見した半開きになっていた文机の引き出しを、良くないとは思いつつも、好奇心には勝てず開けてしまった。
中には、文を書くための一式が揃っている。便箋はいくつか使われていた。隣にある小さなゴミ箱をみれば、そこにあったのは丸められた手紙…だったものがいくつも捨てられている。書き損じでもしたのだろうか。長義がクシャクシャに丸まったそれのひとつをを開いてみると、
そこには『主へ』という文字から始まる手紙があった。手紙の中身は、どれも自分たちはまだ大丈夫だから、であるとか、今日は誰と何をした、であるとか、そんなささやかな内容と、自分たちの無事を伝える内容、主を気遣うような文面だけで、決してこの本丸で起きたことだと語ってみせた内容ではない。
「…これ、結局出したのかな」その問いに答える者はおらず、長義は文机の引き出しを閉め、元あったように痕跡を消して部屋を出た。 国広はその後すぐに見つかった。うっかり池に落ちてしまって、服を乾かしていたのだという。
夏だからマシだった、と言う国広に、長義は手紙のことについて聞くことなど叶わず、ただ、ぼうっとしているからだ、と軽く頭を小突いた。もう頭からは被っていない布に隠れていない右腕をあげ、額をおさえ、少し拗ねるような声で「痛い」と小さく零す国広に、長義は思わず笑ってしまった。
その時の次の訪問が、今日だったというわけだ。この本丸の監査、もっといえば、国広の様子を確認することが長義に課せられていた使命だった。だから、ぐるりと本丸をまわって、前回との違いを記録する(違いなどないが)。それから、国広を探して、変わりはないか聞く。
まるで診察のようだと思う。思って、訪問命令を出されたとき、同時に何かのワクチンだと打たれた注射のことを思い出し、思いすごしだと頭を振った。 「そういえば、お前、寒いのか?」「…なぜ?」「袖、おろしているから」通常、国広は袖を肘の辺りまで捲っている。そう、ちょうど自分と同じように。
国広は嘘が下手だ。口ではああだこうだと言えるが、真っ直ぐに向けられた瞳が揺れるから、すぐにわかってしまう。そんな雄弁な瞳が気まずそうに逸らされた。先日池に落ちたと言っていたし、風邪でも引いているんだろうか、そう考えるも、国広は先程から咳をする様子もないし、
ほかにも、典型的な風邪の諸症状のようなものはみられないような気がする。ずっと縁側にいるから判断しにくいが、恐らくふらついたりもしていないように見える。「…何か、隠しているね?」「違…、」そう言う国広が、分かりやすく、普段布に隠されている方の腕を後ろに隠そうとする。
長義はそれを見逃さず、すかさず掴みあげた。「や、め…っ!」「何も無いなら、見せられるはずだろう」振りほどかれないよう強く掴んだため、国広は痛みに僅かに表情を歪ませる。長義は、それには構わず、無理矢理掴んだその腕の袖を、思い切り捲りあげた。「…これは、」
驚き目を見開く長義に、国広は、まるで悪いことがバレた子供のように気まずそうに、罪悪感でたくさんになったように、目を伏せる。国広の手首よりも少し上の辺りまで、焦げたように黒ずんでいるのが、はっきりと長義の目に映っていた。
どうして隠していた、とは言えない。長義自身、はじめに”自分には報告義務がある”と言ってしまっていた。国広はそれを了承していた。長義としても、コソコソと嗅ぎ回るようなのは趣味じゃないし、それはそれで納得した、後悔などない行動だった。けれど、失敗だったかもしれない、とは思う。
国広のことだ、もしもこれがバレたら?報告次第で自分が政府命令での刀解処分になったら?どこからか探し出された主が処罰を受けたら?こいつが考えそうなことなんてそんなところだろう、というところまで思いついて、長義はここへ訪れるようになって何度目かの溜息をつく。面倒なことになった。
「…熱も、あるな」「…」「いつから」「…」国広は初期刀だ。けれど、だからといって、付喪神としてはなにも特別なんかじゃない。ほかの刀剣となにも変わらない。それならば、ほかの刀剣が失われたように、国広だって失われてしまうことは、なにも不思議なことじゃない。黙ったままの国広に、
仕方なしに質問を変える。「…これは職務質問だ、協力を要請する。最後のお前の仲間が破壊されて、何日だ」「……、お前が来る、5日前」僅か5日前。なぜ、彼が何年もひとり、ずっとここで待っているなんて思っていたのだろうか。強く掴んだため、脆くなった表皮が、ぱらぱらと黒い欠片を落としていた。
「…刀身崩壊症?」「俺達はそう呼んでる。直接その患者を診たわけじゃないから保証は出来ないが、旦那の言い分から察するに、恐らくこれだ」そう言いながら、国立の総合病院、そこに隠された時の政府用、もっといえば、時の政府が刀剣用に設立した病院に勤めている薬研は、
タブレット端末を操作し、長義に見せる。”刀身崩壊症”と見出しのついた政府運営のサイトだった。小見出しで、さらにいくつかの種類に分類されている。薬研はとん、とタブレットの一点を指し、話を続ける。「ついこの前まで難病指定になっててな。感染率も高けりゃ致死率も高い、
刀剣男士のみが罹患する病気だ。今は…っと、なんだ、旦那これの予防接種を受けてるじゃあないか。これ、最近急に研究が進んでな、旦那が受けた予防接種も、丁度今年、認可を受けた」「…じゃあ、治るのかな」「それは…俺には、答えられねえな。
医者として、そういう部分で不確実なことをいうわけにはいかない」「それもそうか…いや、いいよ。語りえぬものは沈黙せよ、というしね。相談に乗ってくれてありがとう」「もしできるなら、そっちの山姥切の旦那も連れてきてみてくれや。専門のやつを紹介できるようにはしておこう」
長義が礼を言って部屋を出てみると、目の前に南泉が待ち伏せていた。眠そうに欠伸をしていたのに、長義の姿を認めるなり、じとっとした目で長義のことを見つめてくる。長義に用があるのは間違いなさそうだった。目の前にいられては、声をかけざるを得ない。長義は軽く右手を上げて、南泉に近づいた。
「やあ猫殺しくん、何か…」「…さっき見かけたとき、様子が少しおかしかった、にゃ」「は?」今更なにを遠慮しているのか、と疑問に思う長義を見て、南泉は難しい顔をしてうー、と唸った。さっき見かけた時、たしかにすれ違いはしたけれど、それだけだった。急いでいたから。
そんなに顔に焦燥でも出ていただろうか。頭を軽くかいて、南泉はもう一度長義を見つめ、それから続けた。「ついでに…今も変な顔してる」「…変な顔だなんて失礼な」「お前の普段のオレへの態度に比べたら可愛いもんにゃ!…ったく…で、なんかあったんだろ?」「…なにか、ね」
言うべきだろうか、言わないべきだろうか。しばらく考えて、長義は無言で南泉の手を掴み、そのまま引っぱって病気の出口へと歩き出した。「え、おま、ちょ…っ」「少し、人のいないところに行こう。話がある…どうせ暇だろう?」「…だからお前、そういう態度、にゃ!」戸惑う南泉をよそに、
長義は迷いなく歩を進める。しばらく抵抗しようとして、結局諦めた南泉は、分かりやすく聞こえるように大きく息をついた。「はあ…ハーゲンダッツで手を打ってやる」「はは、時間に比べれば安い買い物だね」向かう先は資料室の方だ。 結局、ハーゲンダッツだけでなく飲み物も長義持ちとなった。
売店で売られているものを適当に買い、資料室近くの会議室に入る。長義は考える間もなく扉に手を翳し、政府の認証システムで鍵をかけ、「さあ座って」と南泉を椅子に座るよう促した。南泉はというと、「公私混同…」などと長義を疎んだ目で睨みつけたが、
なに食わぬ顔をした長義が「はい、約束の品。溶けないうちにどうぞ」とアイスを取り出すので、諦めて渋々促された椅子に座り、売店で付けてもらった木製のスプーンの袋を破った。 「椿5763本丸…?それって…」「そう、今俺が監査対象にしている本丸だよ」
「つまり、お前の監査対象になった本丸の主を調べろ、ってぇ?」長義の話は宣言通りの長話で、守秘義務もへったくれもないものだった。あけすけに自らの監査内容、命令を語る長義に、初めこそ呆れたものの、話を聞くうちに、何やら事態は思ったよりも深刻らしいことが伝わる。
それはそうだ、長義は確かに我が道というか、天上天下唯我独尊のようなところが見られるが、仕事は決して疎かにしない。…というのが時の政府公安部第二課に所属している南泉の、同じく時の政府の監査科に所属するこの長義に対する評価だった。
だから本来必要も無いのにぺらぺらと仕事のことを話したりはしないはずだ。話終えると、次に長義は「登録番号椿5763の本丸の主について、少し調べて見てはくれないか」と依頼までしてきた。「主の謀反ってところか、にゃ」「いいや、違う。どちらかと言えば、”ここ”の話」
南泉の予測に長義は首を振って、自らの左腕を指さす。南泉は何が何だかといった様子で眉を顰めた。「…にゃ、お前の腕?いけ好かない奴だけど、その点は信用してるぜ?」「それはどうも。でも今回はそうじゃなくてね、あの本丸に通うよう命じられた時に、俺は刀身崩壊症の予防接種を受けているんだよ。
感染症などの特定はなかった本丸で、難病指定にあったとはいえ、目立った流行もないこの病を、なぜあの職員は特定出来たんだろうね?」「ははーん、なるほど、にゃ。…わかった、引き受けてやる、にゃ。
ただし、今度焼肉奢れよ!」「ええ…もうアイス奢っただろう?」「お前のいうところの安い買い物に見合わない仕事なんだよ」「仕方ないなあ、食べ放題ならいいか。成果、期待して待ってるよ」 翌日。長義は監査対象本丸、国広だけがいる本丸へと赴いた。
今日は日取りでは訪問しなければならない日ではなかったが、薬研の言葉を伝える必要があると判断したためだった。「…政府所属の監査官だが」相変わらず、静まり返った本丸は、生きた気配がほとんどない。これだけ広い場所に、国広しかいないのだから当然だろう。
そして、国広が訪問者に対して少し反応が鈍いところはよく知っている。思えばこれも、熱があったから、そのせいなのかもしれない。…池に落ちたと言っていたのも、もしかしたら。そんなことを考えながら、縁側の方を目指す。国広の定位置だ。見つけた、と思った国広からは、やたらと甘い香りと共に、
煤けた戦場のにおいがした。「…偽、物くん?」「…ああ、長義か。前回来てからあまり間が空いてないようだが…何かあったのか?」「いや…」見れば、いつもは開けているジャージの上のほうまで、彼の脇差の方の兄弟のようにきちんと閉めている。思ったよりも、猶予はあまりないのかもしれない。
間に合うかどうかは分からないと言っていた薬研を思い出す。言わなければ。「…国広。聞いてほしいことがある…お前に関わる、重要な話だ」
※創作病名の名の通り、刀本体もキャラもあまりいい思いをしません。ここから先ちょっと描写注意。(最初言った通り話としては死ネタです) 「…長義、お前が何を思ってかは知らないが、俺を助けようと、この病を治そうとしてくれていることはわかった…だが…」「…手遅れ、だとでも?
そんなの、検査してみないと…」「…俺の部屋に入っただろう?少し開けていた引き出しがしまっていたからな。…ならば、その時に”刀(俺)”を見たんじゃないか」「…お前?」たしかに、山姥切国広がかけてあったのを見た。けれど、しっかりと確認まではしていなかったように思う。
あのときは、たしか、別のことに気を取られていて…弾けるように立ち上がり、長義の足は国広の部屋へと駆けた。なにも遠慮はなく、勢い任せに戸を開く。国広はついてくる様子はない。「…刀、に何が…」掴んだ刀は鞘におさめられている。そっと少し抜き出して、すぐに気がついた。
ぼろ、と何かが落ちた気がする。このまま刀を抜くのが怖くなって、長義は思わず鞘にしまい込む。この刀はもう、刀工の最高傑作としての形を成すことが困難になっていた。「…そん、な」ここまでの状態で、国広はなぜ人の身を保っていられるのだろうか。お守り?そんなはずはない。
これは戦ではなく、彼らは正確には”破壊”ではなく、刀剣に有るまじき死、”病死”だ。 縁側に戻った長義が国広に物言いたげな視線を寄越すと、国広はなんでもないように「見てきたのか」と告げる。「見てきたけど…お前、あれは…」「ああ、刀としては、俺はとうに助からない。
…ところで、お前は実戦部隊で隊長をつとめたことは?」「ある、あるよ…でもそれに、何の関係が」「簡単な話だ、近侍の命を解かれたならば、その瞬間、俺は破壊される。主の霊力の枯渇による自動解任でも、同様だが…早いか遅いかの違いだ」主不在の本丸は登録解除とならないが、刀剣数0の本丸は自動
で本丸登録を解除されてしまう。主戦力は刀剣達だからだ。戦力外の本丸はいらない、ということになる。だからこそ、部隊長だけは帰還できるように時間跳躍のシステムは作られている。「…お前は、主に帰ってこなくていいと言ってくれと言いつつ、なぜ主を待つんだよ」「…俺が、主のための刀だからだ」
国広を連れ出せなかった。長義の頭の中は、本丸から戻ってもその事でいっぱいだった。2日後、定期報告書を作成しながら次の手はないかと考える。あいつは、もう主が帰ってくるだなんて思っちゃいない。来るなと言ったのは仲間の死を、もう間に合わない自分を、主に見せたくはないからだ。
…あいつは、最初から主を待ってなどいない。主の霊力が完全に途絶えるのを、仲間達と共に、いや、仲間達の墓守として終わるのを待っているのだ…”主のための刀”として。近侍を命じられた状態で主がいなくなったから、最後まで���侍のして命を果たそうというのだ。
健気、といえば聞こえがいいが、長義にしてみればただひたすらに頑固、としか評しようがなかった。「くそっ…どうすればいいんだ、どうすれば…」「おい、山姥切!」「…え、あ…何、かな」「ずっと呼んでたのに気付かねえから…」長義が呼ばれたのに気づいてふと顔を上げると、
しかめっ面の南泉が立っていた。どうやらずっと呼んでいたらしく、長義は考え事をしていたと弁明する。南泉は「まあいいけどよ…」と長義を一瞥し、小声で耳打ちした。「…ここじゃだめだ、向こう行く、にゃ」
南泉が長義に先だって向かった場所は、資料室近くの会議室だった。南泉は政府職員用の認証システムを使用し、セキュリティレベルを最大にまであげる。長義が「公私混同だね」と呟くと「お前もやってたろ」と短く返された。互いにむかいの席に座るなり、南泉は早速本題、とばかりに話を始める。
「…まず、例の本丸と主について、いくつかわかったことがある、にゃ。これに調査資料はつっこんでる。…わかってると思うけど、私用の端末使えよ」そういって、端末用のチップを南泉は投げる。受け取った長義が明かりにそれを透かしてみせた。「…早かったね」「お前が急いでそうだったから、にゃ。
端的に調査内容を報告する。…まず、例の本丸の主は、1年前に亡くなってる…もともと身体があまり強くなかったらしい。最終的な死因は肺炎、にゃ。そんで、あの本丸についてだけど、お前の思った通りのことになってたぜ」「…サンプリング、かな」
「多分。順番としてはこう…まず、本丸内に刀身崩壊症に罹患した刀剣があらわれる」「…あいつは、千代金丸だったと言っていたな…それから次に…」「…、別に、オレは気にしねえよ。ここにいるオレ自身じゃねえし」「…そう」次が、南泉だったと言っていた。目の前の南泉にそれを伝えるのは憚られる。
南泉の方は察したらしく、長義に気遣うように声をかけ、本題に戻すぞ、とすぐに話題を変える。「それから、主は政府に報告したんだ。原因不明の状態で、本丸の刀剣が重傷…いや、重症の状態だ、と…それで、あの本丸は観察対象になった」この病気は、
ついこの前まで難病指定になっていたものだと薬研は語っていた。最近になって急に研究が進み、治るものになった、とも。「発症率もさほど高くない病気なのは?」「感染はしても、主の霊力が免疫のはたらきをするから、主が本丸に居続ければ発症しにくいんだよ…最初がオレや千代だったのは、その当時、
1番顕現が短い、つまり主からの霊力供給量が少ないからだろう、にゃ。まあとにかく、主はそれで本丸の任をとかれた。記録は断片的にしか残ってないから、細かい所まではわからなかったが…何十年経ったもんでもないから…誰かが消したな」
「ならば、おかしいだろう。あいつは、本丸自体は存続していると…」「お前から聞いてる。だから、ここからは調査報告じゃなく、オレの仮説になる…にゃ…あんま、こういうのには自信はねえけど…」「…いいよ、お前の見解を聞きたい」長義が促すと、迷ったように視線を動かしていた南泉は口を開いた。
南泉の仮説は納得のいくものだった。南泉の所属する第二課は、もともと監査の調査報告やその他機密文書の管理等を取り扱う課だから、こういうのは得意中の得意だろう。だからこそ、長義は南泉に依頼したのだ。渡された調査報告を確認しながら、長義は悪い事をさせたな、とひとり考える。
南泉はおそらく、持ち出し厳禁のものであるとか、そもそもアクセスを禁じられているようなところからこれらの情報を持ち出したに違いない。長義はそれも分かっていて南泉に依頼したし、南泉もあの様子ならば分かっていて引き受けた。それでも、一方的に巻き込んでしまったのは長義だった。
「…まあ、猫殺しくんなら上手くやるか」そうは言っても、過ぎたことは仕方がないし、やってしまったことは仕方がない。南泉なら何とかするだろうと結論付けて、長義は渡された調査報告に集中した。
南泉の見解の通り、恐らく、こういうことだろう。主は政府の元へ病状報告をした、政府はこの危険な病で戦力を削ぐわけには行かないから、主には自身の刀剣達を優先的に診ることを約束し、審神者としての職務を解任させる、
その際、何らかの方法で審神者がそのまま微弱な霊力を本丸に流し続けられるような仕組みにした。だから、緩やかにあの本丸の刀剣達は朽ちていった。そして、間に合わなかったのだ。予防接種の認可は今年といっていた。主が亡くなったのは去年だし、
国広もすぐに仲間の数が減っていったのではないと言っていた、そのうえで、最後の仲間は5日前だとも。恐らく、最後の仲間は初鍛刀あたり、彼らの発症は主の死後、霊力の供給が止まってからだ。その直後に、ワクチンがでたのなら?あの弱った本丸は、戦力外として、文字通り見捨てられたのだ。
助かるとはあまり思えない。けれど、何もせずに終わらせたくはなかった。あいつが行かないならせめてこちらで誰かを連れていけばいいのではないか、と次に長義が起こした行動は、知り合いの、信用のおける刀剣への依頼だった。南泉の時とは異なり、さすがに全てを話すわけにはいかないが、
ぼかして国広の状況を伝えると、石切丸は驚いた、と表情を変えて、しばし考え込む。そして、言いにくそうに口を開いた。「加持祈祷でも何でも、出来ることなら引き受けよう…けれど、私の専門は…病魔を切るために一番必要なものは、当事者の治したいという意志だよ」「あいつに、その意志はないと?」
「…それは、君が一番よく知っているんじゃないかな」石切丸は、長義の言葉に、言葉を選ぶようにそう告げた。「あいつの、意志…」そう呟いて俯いてしまう長義に、石切丸はなるべく優しい声色を作り、困ったように微笑んだ。「それでも良ければいつでも声をかけてくれ」
次に長義が行った場所は、最近南泉と同じ課に配属された白山だった。事情を話すと、「…南泉一文字が最近色々と調べていたのはそのことだったのですね」と納得したように答える。「あいつ…バレてるじゃないか」「いえ…これは偶然で…恐らく知っているのはわたくしだけかと」「…それでそのことは?」
「誰にも報告してません。…第一課の鯰尾藤四郎が以前、男には秘密がひとつふたつある方が輝くんだよ!と言っていたので、報告しない方が南泉一文字は輝くのだろう、とそう判断し、視界から外しました」「…よくわからないけど、黙っててくれたんだね、ありがとう」
「…?感謝をされることはしていませんが」疑問符を浮かべた白山に対して、長義は構わず、それで、と話を始めた。 「構いませんが…わたくしの持つ治癒は、あくまで”重傷”への効果…病に…それも、そのような特殊なものに、効果があるかは…」「…だよね、そう聞いてる。」掻い摘んだ話でも
実状をある程度理解してくれた白山は、石切丸とは違い、眉ひとつ動かしはしないものの、極めて真剣に、石切丸と同じように考え込んで、似たような答えを導き出した。「それに…病の治癒ならば、病院施設が最も確実性が高いはず」難しいのか、と尋ねる白山に、
治す意志がないと効果は期待出来ないかもしれないと告げる石切丸の言葉が重なった。そうだ、あいつは治そうとも思っていないんだ。もう間に合わないから、自分は本丸を不在にしたくないから。長義が項垂れると、白山は南泉を呼ぶかと尋ねる。長義はそれに首を横に振って、礼を伝えるとその場を離れた。
「…というわけだ、薬研」「って言われてもなあ、俺だって何でも治せるというわけじゃあない。言ったろ?治せるかどうかは病気の進行にもよるって」「ああ、わかってる。そのうえで、頼んでいるんだよ」「…あまり長い時間はいられない。向こうで大きな治療はできない、それでもいいなら時間を作る
…旦那が頭下げるなんて、滅多にないからな」結局、長義が最後に向かったのは、最初に国広について話をした病院だった。その一室にいる薬研を捕まえて、その後について話す。薬研も言葉を選んでいるが、長義には伝わった。もう、国広は助からない所まできているのだ。そんなのは
、刀本体や身体をみればわかっていた。そして、国広自身もそのつもりだ。そのうえで、診てほしいと長義は薬研に頼んだ。これは、長義のわがままで、利己的な願いだった。「時間は明日…手続きとか面倒だから、少し刀に戻っていてくれ。俺が隠していく」「ははっ、短刀はこういう時にいいな」
そうからっとした雰囲気で笑う薬研に、長義は待ち合わせ場所として人目があまりない裏門近くの茂みを指定した。
思ったよりも大荷物を持ってきた薬研を懐に隠して荷物を手に持つ。「…重い」「短刀の俺が持てる荷物だ、旦那、書類仕事ばっかりで体なまってるんじゃないか?」「トレーニングは欠かしてないよ、そんなことになったら山姥切の名折れだからね」懐にある刀と会話をしながらゲートへ向かうのは
何だか不思議な気分だった。一応小声で会話しているが、傍目から見たら独り言のように聞こえるかもしれない。それは嫌だな、と長義はぼんやり考える。ゲートまではすぐそこだった。手をかざして門を開く。「…それじゃあ、行こうか」長義はそう合図すると一歩踏み出す。ぐにゃりと世界が歪み、
思わず目を閉じる。慣れた感覚だ。そうして気付くと、何度も通っている本丸の前までやってきていた。 「…ついたよ」そう言って長義が短刀を取り出すと、それを媒介にして薬研が顕れる。薬研は大きく伸びをして、本丸の門を見た。「…あれが、例の?」「ああ」本丸の門の方を指して尋ねる薬研に、
長義は短く肯定する。なにかを言うまでもなく、薬研は長義に持たせていた荷物を手に持ち、「…確かにこれは重すぎたな」と呟いてから、迷いなく門をくぐる。長義はといえば、急に軽くなった体に気を取られ、薬研の後ろを着いていくように門をくぐることになってしまった。
「とはいえ、勇んで入ったはいいが、俺はこの本丸の構造知らないんだよな。奴さんの部屋は?」「部屋よりも…多分、縁側の方。いつもそこにいたから」「…本当か?刀身崩壊症はかなりの高熱と痛みを伴うから、そんな風当たりのいい所、避けそうなもんだがな」「物好きなんだろう」
縁側は本丸の門からは最も遠いところに位置している。他の本丸は必ずしもそうではないけど、この本丸はそういう造りをしていた。廊下を歩きながら、薬研となんとはなしにこの本丸について話す。いつもより少し早く定位置に着けるような気がした。「次はどっち曲がるんだ?」「そこの角を右に…、ッ!」
曲がったらすぐのところ、と言おうとして、目に入った光景に固まってしまった。続いて薬研もその光景を目にし、「何…ッ」と零すと、荷物を放り出して駆け足になった。国広が倒れていた。意識は混濁していて、薬研が何度も声をかけても意味のない言葉が僅かに漏れるだけで、
すぐに糸が切れるように意識が途切れた。「おい、水と、それから…まあいいその荷物の中にあるAってある箱全部投げてくれ!」「…っ、ああ」その様子を、ぼうっと見ているしか出来なかった長義に、薬研は声を上げる。すぐに我に返って、薬研の荷物からAと書かれている箱を取り出し、廊下を滑らせた。
「この場で何かするわけにもいかねえな、とりあえず冷やすだけ冷やして…っと、部屋は?!」「さっき通ったところ、入ってすぐの左側だ!そいつは俺が運ぶ、薬研は何か準備があるなら先に行っててくれ!」そう言うと、薬研は「頼んだ!」と言うやいなや、素早く荷物を持って来た道を走っていく。
長義も早く行こうと、国広を抱きかかえた。わかってはいたが、健全な成体の男性が持つ重さではない。それどころか、ちらりと見えた服の中、肩の辺りまですっかりと黒ずんでいる。少し触れた肌は異様に熱く、いつから、と考えそうになって、長義はその考えを振り払うように頭を振る。
今はそんなことを考えている場合ではない。薬研のところまでいかなければ。なるべく揺らさないように慎重に、けれどなるべく急いで、長義も来た道を戻り始めた。
「…あまり非医学的なことは言いたくはねえが、こりゃあこの山姥切の旦那、気合いだけで持ってると言っても過言じゃないな。本来ならここまで進行してたら、人の身は保てなくなる」部屋に連れ帰って、敷きっぱなしの布団に寝かせる。応急処置を施した後、薬研が国広を一通り診た。
長いような短いような時間が経ち、薬研は息をついて、長義にそう答える。「それじゃあ、やっぱり…」「ああ、はっきり言う…助からない」薬研の言葉はどこまでも真っ直ぐに長義を突き刺した。わかってはいた、自分もそのつもりだった。けれど、はっきり言われることでのショックはある。
「…そう」「さっきも言ったが、酷い高熱と酷い痛みを伴う病気なんだ。なにせ、刀本体ごと、自分が崩壊する病だから。だから、今は鎮静剤を打ってある…が、痛みを軽減することと病を治すことは当然別物だ」「…わかってる。ねえ、薬研…ここまで進行するのに、平均的にどのくらいの時間がかかる?
こいつは、いつからその”人の身を保てないはず”の状態だった?」「主不在の本丸での資料は…いや、旦那が知りたいのはそうじゃあないな」薬研は長義の問に資料をパラパラと捲りながら答えようとして、はた、と手を止める。それから、うーん、と腕を組んで唸り、「確証はないが…」と続けた。
「恐らく、3度目に本丸に訪れた時、その時には、もう限界だったと思う」「もう、結構前のことじゃないか…全く、頑固なやつ」言いながら、汗ばむ国広の長めの前髪をそっと避けてやる。まだ熱いが、先程よりは呼吸は落ち着いている。鎮静剤が効いたのだろうか。
けれど、それは国広を今の状態から根本的に回復させるものではない。もっと早くに気付いていれば?そういった後悔は山ほどある。時間の前には、あまりにも無力だった。「…ちょ、うぎ?」それからさらにしばらくして、国広の瞼が重たげ持ち上げられる。すぐに視界に入った長義の名を掠れた声で呼んだ。
「…っ、ああ、やっと気がついた、お前縁側の方で倒れて、」「…なんで、あんたが泣きそうになってるんだ」「なっ…」「よう、この俺とは初めましてだな、政府の持つ病院勤務の薬研だ。気がついたようで何より」国広を覗き込むようにしながら、思わず早口になる長義に国広は僅かに腕を持ち上げる。
思うように動かないのか、その手は結局途中で下ろされてしまった。国広の言葉に、長義が言い返そうとしたもころで、薬研が間に割って入った。「薬研、も…すまな、ここの薬研は…」「病気は誰のせいでもない、気にすんな。それに、この俺っちはこの通り生きてる、な?」国広は薬研の姿を認めると、
申し訳なさそうに目を伏せる。薬研の方は、国広の言葉を受けて、長義に対して南泉が言ったような言葉を言い聞かせるように続けて、安心させるように笑顔を作った。国広から返事を貰うと、さて、と薬研は国広に向き直る。国広も起き上がることが出来るようになったらしく、ゆっくり体を起こした。
「最初に謝るが、こっちの山姥切の旦那の依頼で、勝手に体の方を診させてもらった…結論をいうが、」「…構わない。どうせもう朽ちる身だ、最初からわかっていた」「…でも、出来ることはしてやりたいんだ、医者として長らく働いてると、命を奪う刀にも命を救いあげたいという感情が芽生えるらしい」
容態の説明から、何をどう診たのか、どんな処置を施したのか、そういったことを薬研は簡潔に語っていく。国広の方も静かにそれを聞いて、たまに相槌を打っていた。「…そうか、道理で身体が軽い」最後まで聞いて、納得したように国広は薬研にそう返す。鎮静剤の効果はかなり確かなものらしい、
と穏やかな様子の国広に長義は考えた。「…それと、俺からも」一通り話し終えただろう薬研に、長義の方も進言する。国広は何を言われるのか分からないようで、長義を見て小首を傾げた。「お前の本丸と、主のことだよ」「…主、の」長義の言葉を国広は確かめるようにたどたどしく繰り返す。
「ああ、酷な話だけど、お前の主は1年前に…」「長義、その話…あと3日、待ってくれないか」何を言われるかなど、分からないはずがない。けれど、国広はそういって、長義の言葉を制止した。どうしてでも今言わなければならないことではない。長義も納得して「わかった」と話をやめた。
「…それから、長義。これは俺のわがままだから、無理にとは言わない」「…いくらなんでも聞く前から無理とは言わないよ」「…あと3日、この本丸にいてはくれないだろうか」断る理由は、長義には見当たらなかった。
(毎度ほんと長くてすみません、あともう少しなので良ければお付き合い下さい) 「それで、俺はなにをすればいい?」薬研は国広に、3日分の鎮静剤をはじめとするいくつかの薬と、それから呼べばすぐに来るから、と言って連絡先を寄越したらしかった。連れてきた時に1人だったから、
一旦長義ごとゲートをくぐり、長義は本丸までトンボ帰りする。ふたりになった本丸の自室で、長義の帰りを待っていた国広に、長義はそう訊ねた。「…特別な何かが欲しいわけじゃない…ただ、お前のいる本丸というのを感じてみたかった」縁側に行きたい、という国広を立たせる。
背負う?抱きかかえてもいいけど、と言えば、途端に真っ赤になった国広は、もう歩けるから!と断った。縁側までの道を、引き摺るように歩く国広に歩調を合わせながら辿る。そのさなか、先程の答えなのか、ぽつりと国広が呟いた。そんなこと?長義がそう言おうとしたのが顔に出ていたのか、
国広は布を被っていた時の癖なのか、顔を下に向けて逸らし、手を持ち上げようとして下げた。「…迷惑、だろうか」「別に…それに、ここはひとりには広すぎる、とは思ってた」ついた縁側は、相も変わらず枯れた木々が殺風景な雰囲気を出していた。
「…南泉とは知り合いなんだろう?…見知った相手なら、会わせてやれれば…」「はは、あいつの事だから、お前にだけは絶対会いたくなかったとか言うよ」「…そうか」縁側からすぐに見えるのは数多ある手作りの墓だ。今にして思えば、国広はどうしてでもこれを見ていたかったんじゃないかと思う。
とはいっても、体を冷やすわけには行かないので、長義は自らのストールを国広にかけてやる。ついでに、先程見つけた厨から茶器を持ち出して、政府に戻った際持ってきた茶葉(とはいえティーバッグだが)を入れてお湯を注ぐ。国広に渡せば、きょとんとした目で長義と茶を交互に見つめた。
「お前が茶を淹れるとは思わなかった」「俺をなんだと思ってるのかな」「…山姥切長義だろう」「そういう意味じゃない」「…お前のいうことは難しい」「お前よりは平易なつもりだよ」言えば、そうだろうか、と考え出す国広に、これ以上付き合っても仕方がない、と長義は何でもない話に話題を逸らした。
「隣の部屋を使ってくれ」「隣?」「…主のいた部屋、だった。掃除はできる範囲でしていたから…少し、足りないと思うが、そこまで汚くもない…と思う」そういえば、この国広は近侍だったと言っていたな、と思い出した。
隣の部屋と言っても、中で繋がっている続き間で、廊下に出なくても行き来が可能になっているものだ。開けて確認してみるが、荷物が少ないこともあり、軽く見積っても1-2週間掃除をしていない程度と言った程度で、そこまで酷くは感じない。「構わないけど…戸はあけておいていい?」「…戸?」
「ああ、夜中に何かあったらすぐに気が付けるように」「…今までひとりでもやっていけた」「ふたりいるんだから、より効率的になるべきだよ」言いながら、長義は押し入れを開けて布団を敷きだす。頼ってくれ、とは言えなかった。言ってしまえば、国広は尻込みして頑なになってしまうだろうから。
手伝おうとした国広を止めて、もう一度、効率のために戸は開けるようにと説得した。はじめこそ渋っていたが、国広は押し負けて最後には「わかった」と頷いた。 長義の懸念とは裏腹に、夜間に特に何か起きたりはしなかった。翌朝、目が覚めると国広はもう起きていた。
布団から上体を起こして、薬研から貰ったのだろう薬を見ている。「…おはよう、それ、薬研の?」声をかけると、自分で言い出した割には長義がいることに慣れていないのか、少し驚いて、なぜか慌てるような素振りで薬を隠そうとする。すぐにそんな必要が無いことを思い出したのか、
薬の入った袋を横に置き、長義に挨拶を交わす。「俺には十分すぎる…」「何、風邪をひくとゼリーが冷蔵庫にあるのと同じようなものだと思えばいい」「…ふ、なんだ、それ…」「…うーん、人間の親子の慣習、かな」長義の言葉に、いよいよおかしくなったのか、国広は控えめに声をあげて笑いだした。
薬の効き目が余程いいのか、国広は容態が急に悪化することもなく、ただ長義の話を聞きたがった。いわく、本丸の外の話を長く聞いていないから気になる、とのことだった。「…もっと何がしたいとか、本当にないのか」「…最初に言っただろう。お前のいる本丸を見てみたかった…だから、これでいい」
話す合間に、あまりにも欲のない国広に長義は初日と同じ問いをかける。国広も、初日と同じ答えを用意してみせた。「明日で、約束の3日目なんだよ」「ああ、そうだな」「…ねえ、国広。俺は、お前を助けられるかもしれない方法を知ってる…いや、知っているというべきではないな、これは賭けだ」
長義がそう続けても、国広は黙ったまま、何も反応を見せない。こうなればもう、反応を窺うなんてらしくないことなどせず、全て言ってしまおう。長義は意を決したように深く息を吐き出して、吸い込んだ。「…俺を、主にする気はないか」
長義の考えは簡単なものだった。この病は霊力によっておさえることができる。だから、主が不在であり霊力が枯渇したこの本丸では止まることがなかった。ならば、もしも主が現れたなら?薬研には話すことはしなかった、南泉の調査資料では、この本丸の主は亡くなっているということが明らかだ。
主従の契約はとうに切れている。ならば、自分が主として、国広に霊力を供給出来れば、国広の病は奇跡的よくなる可能性があるのではないか、というものだった。 「…長義、は。長義は、俺達が死んだら…折れるのではなく、人の身として死んだら、どうなると思う」長義の提案に、
しばらく考えるような素振りを見せた国広は、やっと口を開いたかと思えば、まるで話の噛み合わないような言葉を紡ぎ出した。「…は?」「死というのは、無くなるということだと、思ったんだ。命を奪うことは出来ない、失わせることだけだ、と…ならば、失ったものはどこへ消える?」
「消える、質量がなくなるという話?それとも、もっと魂の部分についての話をしてる?」国広の言葉はまるで要領を得ない。長義が呆然としているにも関わらず、国広は構うことなく話を続ける。「なくなるまえに、証がほしい、と思ったんだ…だから、お前に頼みたいことがある」
「…っ、薬研!」「あいつの願い、聞いてやれたか」「何が願いだ、あんな、あんなの…っ!」翌々日、4日目。長義は早足で病院へと向かう。まだ早朝だ、患者などは誰もいないのを、政府権限で裏口から入った。薬研は朝早く起きるほうで、逆に夜は早々に帰ってしまう。だから、
今日ももうここにいるだろうという確信があった。予想通り、薬研はそこにいた。長義の姿を見ると、苦々しそうに表情を微かに歪ませる。「なぜ、国広に安楽死用のカプセルを渡した!」「…言ったろ、あの山姥切の旦那は本来ならいつ死んでもおかしくない。だが、だかな、診察時に言われたんだ、
”検体である俺が死ぬと、監視を行う長義に何か罰が下るのか”ってな!…知ってたんだ、あの本丸が、そういう風に利用されているんだろうってことは…けど、あの本丸に来たのが山姥切長義だったから…いや、違うな、お前だったから…!」なりふりを構ってはいなかった。
長義は薬研に半ば詰め寄るように近付く。薬研の方も負けじと長義を睨み返した。「だからといって、あいつに死を与えることが救いになるとでもいうのか!」「…俺もあの日聞いたんだよ!”主のための刀として朽ちること”だった、
それから、照れくさそうに”出来ることなら、この本丸で共に”と付け足したんだ…なあ、山姥切、そうだったんだろう?お前も、そう聞いたんだろう?!」「それは…」「…医療にはまだまだ限界がある…悔しいことにな。もう助からない患者にしてやれる一番のことは、願いを聞いてやることだ。
それが出来たなら、上出来だ」「そんなの、自己満足にすぎないじゃないか…」「ああ…だが、生者に墓��ない、だからこれでいいんだ」その場で項垂れた長義に、薬研はタオルを1枚取って投げ渡す。ばさりと頭からかかったタオルを気にする様子もなく、しばらくの間長義はその場から動こうとしなかった。
「よう、戦線復帰、ついでに本丸配属になるんだって?」「ああ、猫殺しくんの顔が見られなくなると思うと残念だよ」「オレはずーっと会いたくなかったんだけど、にゃ」あの日から、長義は暫くは本丸には行きたくない、と伝えて、裏方の仕事に徹していた。
要望は思ったよりあっさり通り(以前少し話したためか、石切丸や白山が口添えをしてくれたらしい)、書類審査や資料整理といった業務に明け暮れること2年、再び特別任務があるとのことで、久方ぶりに本丸監査任務への配属を希望したのだった。監査結果は上々で、明日から長義の配属先はその本丸になる。
幼い主と初期刀の陸奥守が中心となっている本丸だった。「…そういや、お前の配属になる本丸って、審神者がまだ歳若いんだったな」「…それがどうかした?」「いーや、泣かせんじゃねーぞ」「そんなヘマはしないよ…上手く立ち回るさ」手を振っていくつかの荷物を持ち、ゲートのある方へと向かう。
久しぶりに感じたぐにゃりと歪む視界に目を閉じて、開いたその前にあったのは、いつかとは少し違う門と、「待っとったぜよ!」と豪快に笑う陸奥守、それから賑やかな声、きっと審神者もまじっているのだろう、そんな声が聞こえる本丸だった。
「あれ、主…と、偽物くんは?」長義が本丸に配属されてしばらくたった頃だった。特に用事がある訳ではなかったが、姿が見えないとなんとなく気になってしまう。部屋で寛いでいる加州と大和守に聞けば、あっさりと答えが返ってきた。「主なら出掛けたよ、まんばはその付き添い」「陸奥守ではなく?」
「なんでも、まんばじゃないとダメな用事なんだって。政府からの要請でなんとかかんとかーって」「なんとかかんとかじゃわからないよ…」それこそ陸奥守の方が詳しいんだろうか、陸奥守もどこにいるのかいまいち分かりにくい。いつもあちこちを駆け回っているような気がする。
この本丸は主が幼いこともあって、色々と多忙だというのは、配属後に知ったことだった。「んーと、たしか、土地の相続?と、お墓参りとか言ってたよ、なんで山姥切…えっと、国広の方、あいつが関係あるのかは分からないけど」「土地相続?」なんでそんなことに国広が関係してくるのだろうか、
長義も不思議に思い、顎に手を当て考え始める。その瞬間、大和守の言葉に、「あー、そうそう、お墓参り!」と加州が声を上げた。「ちょっと声大きい!」「あ、ごめんごめん。でね、なんでも、主のお母さんも元審神者で、でもお母さん、主産んですぐに亡くなったんだって…それで、
主のお母さんの初期刀があいつだったから、主ってばお母さんにくーちゃんを会わせてあげるんだ!って」「そうだったそうだった。最初は俺よりも適任がーとか渋ってたけど、結局押し負けてたよね」「まあ、主には長生きしてほしいよなあ」「特に、僕らみたいな扱いにくい刀を使いこなす主には、ね」
長義の姿が見えているのかいないのか、ふたりはそのまま思い出話に花を咲かせようとする。これ以上話に巻き込まれてしまうのも面倒に思い、長義は「とにかくありがとう」と適当に切り上げてその場を離れた。
主と国広が帰ってきたのは夕方過ぎだった。帰ってきてすぐ、廊下をすれ違ったときに、ふわりと何か甘い香りが漂う。匂いのもとは国広の方だった。「…偽物くん?」「…写しは偽物とは…って何してるんだ!」長義は国広を呼び止めると、
常時纏っている布(この本丸はまだ修行に出た刀は0だった)を掴んで自らに寄せる。慌てる国広をよそに、長義の疑惑は深まっていく。「…ねえ、この匂いどこでつけた?」「…は?匂い?…今日言った場所は、本丸跡地と政府の霊園くらいだが…焼香ではないのか」
「違う…もっと、花のような…焦げたにおいを誤魔化せそうなくらいの…ああそうだ、これ金木犀の匂いだよ」どこかでこの匂いを強く覚えていた気がする。長義は思い出を手繰るように匂いのありかを探そうとする。…ひとつ、思い当たる節があった。けれど、とんだ偶然だ。ありえない、とも思う。
「…金木犀…そういえば、本丸跡地で香ったような気がする…おかしいな、何も無いはずなのに、やけにある部屋だけ香りがあった気がして…というか、急にどうしたんだ、怖いんだが…」国広の言葉に、ありえない、がひょっとしたら、に変わる。長義は国広の肩を思い切り掴んで続けた。
「…次、その本丸跡地にはいつ行くんだ」「次の週明けに…」「連れてってくれないかな、その週明け」「そういうことは俺じゃなく主…なら二つ返事か」「主には言っておくから」長義が肩から手を離すのを国広は呆然と見る。そのまま、一体急にどうしたんだろう、と去っていく背中を見つめて続けていた。
訪れた本丸は、2年半前に刀剣数が0となった本丸だった。無人の本丸はあちこちが朽ちている。初めて来るはずの場所、少なくとも主や国広にとって、長義はそのはずなのに、とうの本人は迷うことなく歩いていく。主と国広はといえば、前回は政府役員に入口近くで説明を受け、1-2部屋回っただけだった。
庭だってまだ見ていない。「ちょぎくん、何かあったのかなあ」「さあな…とりあえず、全員迷子になるわけにもいかない、あいつについていこう」「うん!」戸惑いながらも、ずかずかと進む長義に、主と国広は着いていった。何度か角を曲がったと思えば、突然視界が開ける。縁側からは庭が見えた。
長義がその場所で立ち止まる。合わせて主と国広も止まって、長義の視線の先を見た。「これ…は…」最初に声を上げたのは国広だった。次に、主はその場所を指して、「おはか…? 」とふたりに問う。長義はそれには返事をせず、ただ、「やっぱり…」と一言呟いた。
木の枝と盛った土で作られた手作りの墓達の中、長義が凝視するものには、朱色に、よく見たら繊細な装飾が所々にある鉢巻のようなものが結んであり、風になびいている。国広は何度か演練場で見かけたことがあった。「…あれは、俺の」
「くーちゃん?」「…主、少し長義と話があるんだ。ここで、座っていい子にして待ってくれるか?」国広は、元気よく返事をする主をその場に残し、長義の方へと近づいた。 「…手向けられるような花がない」「いいよ、別に」何をどう話すべきなのか、とても思いつかなくて、
ようやくでてきた一言といえばそんなことだった。しゃがんで、そっと風に揺られている鉢巻を手に取ってみる。手を合わせてしまってもいいのかどうかもわからなかった。「…襲撃か?」「違う…俺は、ただ、墓守の墓を作っただけだよ…自己満足だ」「…そうか」
何がここで起きたのか、国広にはわからなかった。けれど、それを訊ねるのは不躾だろう、と国広はそれ以上の追及を避ける。「この俺は、探すものを見つけられたんだろうか…」「さあね…ただ、頑固なところはお前に似てる」「…俺は、俺を曲げるわけにはいかない」「ほらね、忌々しいくらいそっくりだ」
なにか咎めたわけでもないのに、そういうと国広は黙り込んでしまった。それを横目で見ていた長義は、なんとなしに国広に問いかける。「…なあ、お前は、もしも、もしも人の身として死ぬとしたら、折れるのではなく、死ぬとしたら、俺達はどうなるんだと思う?」
「…人の身としての死は、命がなくなるということ、俺が俺として生きられなくなること、だと思う…だから、死の瞬間から、俺はもう存在しなくなる、と思う…」だから、存在していたという証がほしい。そう言ってきたあの日の国広がリフレインした。「…本当に、忌々しいほどにそっくりだよ」
その後、本丸は解体せずに残しておくことにしたらしい。国広が何か言ったらしく、主は「ちょぎくんの大切なものがあるところって言ってた!」との一点張りだ。何をどうしたらそんなことになるのだろう。あの場所には、後悔ばかりがあるというのに。今では、第二拠点として、
少しずつあの殺風景な本丸にも刀剣が行き来するようになっていた。政府も、とうに立ち入り調査済みらしく、あっさりとこれらは認められた。もうすぐ季節が半周する。今年の春には、あの本丸の庭にも桜が咲くだろう。
国広はといえば、修行に出ていって、帰ってくる頃には忌々しさを倍増させていた。とはいえ、大きな問題もなく、賑やかに本丸は動いている。
「…半年前、この俺は探しているものを見つけられたかと訊ねたな」「そんなこともあったね」賑やかになっても、沢山の墓はそのままだった。飛ばしたものでダメにしてはいけない、と囲いを作って、少し立派には改造してしまったが。国広は、思うところがあるとすぐにこの場所に来るようになっていた。
「それで、お前は捜し物でも見つけたのかな」「…いや、そういうわけでは…だが、気になって」「…何が」「…お前がそれほどに気にする俺は、一体どんなやつだったのか、と」なにを気にしているかと思えば、今度はそんなことか、と長義はことさらに大きくため息をつく。
「…言っただろう?お前に似て、馬鹿みたいに頑固で、意固地で、申し分なく強い刀だったよ」「…え、」「はい、終わり終わり。こんな所でぼーっとしてても始まらない、さっさと行くよ、俺達には俺達のことがある…生者はいくら向こう側を考えたって仕方がないんだから」
勝手に思うくらいで丁度いい、それだけ言うと、直ぐに長義は囲いの向こうへと出ていこうとする。「…その、すまない…だが、俺は俺のやり方を貫くと思う、から…あんたの望みと同じではないかもしれない…それを、許してほしい」国広は自身の同位体の墓前でしゃがむと、
まるで自分に言い聞かせるようにそう呟く。長義に急かされるようにして、国広も囲いから出ていこうとしたその時、ふわりと甘い香りが掠めた気がした。もう春の盛りだと言うのに、金木犀の香りだった。 おしまい! ここまで読んで頂きありがとうございました! 一応タグ便乗のつもりだった。
分かりにくいわ!と思ったので補足。本丸跡地は長義くんがまんばを看取った本丸、本丸跡地の主と配属先本丸の主は親子。なので、霊力が似ていて、まんばに本丸跡地のまんばの香りが移った。本丸跡地まんばは、長義くんが来るので、病による焦げたにおいを誤魔化すために強めの香を身にまとっていた。
まんばの願いは、この本丸で仲間達と共に、主の刀として朽ちること、死んだらそうではなくなるからその証がほしい、というもので、それを形にしたのがお墓。それでよかったのかどうかは、死者であるまんばは語りようがないので、自己満足だ、と長義くんは言ってる…というつもりだった。分かりにくい!
あと、配属先まんばはnot初期刀but古参刀。時折自分を見ては他の自分を重ねている長義くんを気にかけていて、薄ぼんやりと恋愛感情を自覚しそうな状態。なので、最後に本丸跡地のまんばに、自分はやりたいようにやる、と宣戦布告した。けど、まんばはまんばなので、同じ状況になったら同じ選択をする。
0 notes
hikoheihi · 5 years
Text
7月から今日まで
久しぶりに忙しい内容の生放送。朝冷蔵庫��忘れ物をして幸先が悪い。雨宮さんに試食を丸投げしてディスプレイする。放送開始後生肉を切りにいかなくちゃならず、インカムから聞こえる縁起のいいめだかを紹介する中継を聞きながら「おめだか様の手も借りてえ・・・」と思う。めだかには手も足もないというのに。猫に助けを求める時点で相当てんてこ舞いなのに、めだか。まあなんとか破綻せずにすんだ。かなり危なかった。試食入れ終わったの10秒切ってた。相変わらず想像力がない。帰って役所に行くつもりだったけど結局寝てしまった。19時に起きてデニーズにいく。1時に帰宅。流石に疲れてフラフラで寝る。
___
ちょっと余裕ある時間に起きてステーキ丼食べる。堀井さんの担当回を少し見て家を出る。 JAFNA。川畑さん仕事早い時はちゃっちゃとやってくれるからってそんなトゲのある言い方しなくても。今日はまあ普通。そんなに早くは終わりません。昼飯は例によってはしご。5回連続。だあろう。隣の人が食べてたシュウマイがうまそう。次はだんだんとシュウマイかな。 なんだか酷く疲れてしまい帰ったら寝るなと思ったのでプロントに入る。が、wifiがなく結局飲んじゃう。 
___
朝雨がすごかったから小田急でツイート検索したら積み残しが凄そうだったのでケイクスにメールして1時間余計に寝た。カレー食べて11時半くらいに電車乗って12時半とかに出社した。パン祭り今日だったのにおにぎり弁当買っちゃった。なんだかんだ結構食べちゃう。全部めちゃうまかった。ロブションのクリームパンすごい。今度人に買っていこう。体力がガーーっとなくなって大変だった。結構やばい気分だったけど下北で一龍食べてブルーマンデーでES書く。興が乗ってきて、いい感じでまとめることができた。なによりやりきったことで得体の知れないエネルギーを得た。22:50くらいまでいたけど0時前に帰ってきた。下北沢は近い。
___
朝起きて学校に行って証明書を発行して図書館にいって本を読もうと思っていたのに結局14時まで寝てしまった。背中に痛みを感じつつシャワーを浴びて代々木八幡に行く。月一の散髪。着く直前に清水さんから連絡が来ていることに気がつく。早稲田に移動。証明書を入れるクリアファイルを忘れてどうしようか迷ったけどお父さんは週末しかいないので発行することに。ついでに成績証明書も取っておいた。なにかに使う気がするので。図書館で『舞踏会に向かう三人の農夫』を借りて少し読む。どうやら舞踏会とは戦場のことらしい。19時に合流してピカソ。桃のサラダと2本目のワインが美味しかった。牧舎に行って藤田さんの誕生日に乾杯する。気にかけてくれていて嬉しい。
___
13時まで寝てしまう。お父さんがご飯に誘い出してくれた。ロイホでハンバーグ。 煙草の吸いすぎで胸が痛くてあんまり長くものごとを考えられない。 少ししてヤマザキに買い物に行く。そうめんをゆでて食べてしばらくしてからデニーズに行く。日記を書いている。このあと帰ってお風呂に入って寝る。
___
リハをやって本番をやる。古野さんが最後だったのにうまく感謝を伝えられなかった。頼りにされていたと思うし、つくしたいという気持ちがあった。いい経験だった。江ノ��に撮影に行く。しゅんじに手伝ってもらいながら二日間で5カット。満足。でも提出時に5カット”以上”で、テーマが『早稲田の光』であることに気づいてしまった。まあいいか。電車の乗り継ぎを間違えてしゅんじを1時間も待たせてしまった。ふつうにおちこんだ。 木金は銀座で事務。久保さんいないので好き勝手やった。でも仕事はほとんどきちんと終わらせた。ウーバーイーツを初めて使った。tosirou(85)がお届けしてくれた。ビッグマックセット。帰りにオールスター見たくて代々木上原のビアバー行って5千円も使ってしまう。でも秋山が松坂からホームラン打つところみれたからいいか。今日はプール行ってそうめん食べた。音楽の日とかいうテレビの歌番組で宇多田ヒカルを見る。今日も美しかった。
___
引越しを手伝う。12時に渋谷につけるように起きて家を出た。セブンイレブンでサンドイッチとコーヒーを食べて電車に乗ったらお腹が痛くなって新百合で降りた。間に合うかなと思っていたらやっぱ13:30と連絡があってこの感じ懐かしいなと思った。下北で立ち読みして100均でメジャーを買って改めて渋谷に向かう。井の頭線に新しいエスカレーターができている。結局14時前に集合して天下寿司にいく。美味しい。元祖より美味しいし値段もそんなにしないし閉店間際は安くなるらしいしいい。カーテンを買いベッドを物色してから無印へ。ベッドを決めてハンズで壁美人を買う。ニトリに戻って鏡を買って再び戻る。楽しみだなあこれからの人生と言った友達が眩しかった。おれは全然楽しみじゃない。正気を保つので必死だ。
___
俊二と早稲田に行って図書館とコンタクトセンター。ふたりでメルシーを食べる。別れて松の湯にいく。体重が70kgになっていて驚く。ゴトーでチーズケーキ食べて帰る。ダイエットだと思い夜はツナ缶とレタス。那須の話が動き出す。
___
金曜日の夜からリンクス同期7人で那須に旅行に行った。1日で先に東京に戻って新木場でceroのtrafficに。SPANKHAPPYに間に合うか危なかったけど大丈夫だった。完全に整った。帰りにコンビニで煙草を吸うこともなく、石鹸を買い足し忘れたことにも苛立たず。おおらかなこころを取り戻した。
___
9時台に起きて朝ごはんを食べる。昼まで洗濯をして12時半に正ちゃんへラーメン食べに行く。しょうゆ味玉。アイス食べてCS見る。ずっと後手。点差以上の差を感じた。
___
ファミマで肉まん食って夜はサガミで味噌うどん。怒りの葡萄上巻読み切ってコンビニでコーヒーとチョコ。まじでおもしろい。怒りの葡萄。文章全体が煌めいてる。
___
多摩川に行ってお昼を食べる。川沿いを歩く。狛江高校の女子陸上部がいる。硬式の少年野球がいる。小さい子供とその親がいる。女の人二人組がいる。洪水を伝える石碑を見つける。おれにも伝わったよ、と思う。トイレに行きたいのとゴミを捨てたいのとで駅に向かって歩く。結局改札内にしかトイレもゴミ箱もなかった。なんて不便なところなんだろう。駅でガーベラを、セブンでロックアイスを買って帰る。裏庭で焼き鳥をするというので鶏肉を切って串に刺す。串に食材を刺すことを串を打つという。ビール飲んで焼き鳥食べる。日本シリーズを最後まで見てコンビニに行く。帰ってきて風呂に入ってウイスキーを一杯だけ飲む。2時に寝る。
___
俺を漢字一文字で表すと瓦らしい。瓦斯の瓦。青い炎。採用。9時に起きて着替えてコンビニまで散歩。なんとか振り絞ってES書いて履歴書も書き直してギリギリで家出る。走る。間に合って面接。可愛くて愛想がいいけどペラい感じの女の子が受け付けてくれる。なんか小説に出てきそうな絵に描いたようなベンチャー企業の若い女の子だ。面接はけっこう芯食ったと思う。終わって駅前でサンドイッチとカフェオレ。煙草。帰って授業の準備と授業。面接と演習で脳が興奮状態にある。
___
リハ。ADさんが有能でとても助かる。パターンいじってただけ。本屋とベローチェで時間潰す。ベローチェにZAZYがいた。魚金で飲み会。楽しかった。
___
本番。飯田さんへの手元大根の打ち込み浅かった。記憶ねえ。こういうとこだ。 オファーボックス整備。めっちゃオファーくる。去年の今頃からやっとけばよかった。
___
12時半まで寝てから掃除と洗濯をして、ツタヤに行って帰りにコンビニでタバコを吸ってあとは部屋で音楽を聴いたりSNSをみていた。今日は129円しか使わなかった。これで2千円浮かしたのでもう本が買える。 年金の督促が来てしまったので遡って猶予できるか確認しにいかなくちゃいけない。でもこれで最大でも九月までしか猶予にならないことは確実になったから少なくとも半年分は月16000円払わなくちゃならない。ばりキツイ。
___
11時前に起きてご飯を食べる。宇多田ヒカルのプロフェッショナルを見てからまほろ駅前狂騒曲をみる。真実は他者にはない。世界にもない。自分にしかない。思い出す作業に近い。なにか引っかかったら引き寄せくる。まほろは終盤急に大味になっていまいちだった。あのぬるっとした緊張感のなさと進行している狂気のギャップが悪い方にでてた。でも作品全体に横たわる空気はとても好きだ。映画終わってちょうどM-1始まったから見る。ここ3年はとても刺激的で、しかも笑いを通してなにか世の中の倫理観とか空気感がいい方向に転がっているような感覚がある。平場の志らくほんと嫌いなんだけど絶対上沼殺すマンになっててよかった。塙富澤志らくは審査基準を繰り返し述べていたのが番組全体に安定感と信頼感を与える結果になっていてとてもよかった。霜降り明星の漫才はボケ単体でもパワーがあるのにツッコミが全ワードハマっててすごかった。久々に背中痛くなるくらい笑った。92年93年生まれらしくて嬉しくなった。和牛が準優勝3回目と聞いて聖光学院かよと思った。ジャルジャル。もうジャルジャルが2本やっただけでいかにいい大会だったかということがわかる。その上で3位。いい塩梅。絶対結果を出そうとして、その過程についてまでも理想を描いて、突き詰めて、あの組み順で決勝に残って、ウケて、あの2組にああやって負けて、エンディングのあの表情。もう充分すぎるくらい見せてくれた。あなたたちが俺たちの幸福を願ってることは充分伝わった。あしたからも楽しく、幸せに、全員連れて行く漫才をつづけてください。ありがとう。
___
新バイトへの説明と本番、JAFNA。眠すぎて市民センターいけなかった。友達から結婚の報告を受ける。おめでたい。すすすっと生きていくのに全然悲壮感やさみしさを感じさせないコミーさん好き。
___
面接して面接。1本目はとてもうまく行ってその場で内定がでた。変に受け流しても体に良くない気がしたのでじんわり喜んだ。でも次があったので脚はわりと高速で回転させた。2本目は大失敗した。面接官の第一声を聞いた瞬間にこいつ冷たいな、見下してんな、しゃべりたくねえなと思った。終始全然響いてない感じで、締めの言葉が御足労ありがとうございましただったんでもう完全に終わったと思った。やべえどうしよう、まじでエンジニアか。これどっちだ?悲しいのか?迷いなくなってむしろいいのか?んんん??となりつつタリーズでなんかピザクロワッサンみたいなのとチャイミルクティー、煙草。ぼーっとして、ぼーっとしながらも猛烈な勢いでなんJ読み漁るいつものぼーっとするをして、ながらご飯、みたいなことだけど、して、体はねむいし頭は混乱してるから首がくんして寝ようとするけど次の瞬間には巨人のプロテクトリスト予想見て、いやどうせ若手が漏れてる、とか思った瞬間にはガクン。してるうちにメール。え、うわっ3時間で来た。常にお互い即レスという12月採用あるある第2位をやりながらここまできたもののさすがに今回はひらけず。再び広島スレを回遊したのち急にプロ野球が色褪せて見えたので、やっぱ一番面白いの自分の人生か、と思いつつ開いたら通ってて草。通ってて草。なにがあった?の答え一発目として上出来なやつだった。草ってリアルで使う人ほんと無理だったんだけどこの1年でちょっと大丈夫になった。3時間ふらふらだったけどまた別の種類のフラフラがきてフらふラだった。でも迷いは晴れない、とりあえず脳内に『まだ内定じゃない』をかけて戦闘モードを呼び戻す。
___
最後のJAFNA。文書保存箱の組み立て方がわかんなくて、何はともあれ検索だと思ったら動画でてきて5秒で解決した。10分くらいウンウン言ってたのに。ファイルの整理や会員向けの資料の封書をしているうちにお昼に。最後なので事務局長とお食事。勤務初日に行ったイタリアンと同じビルにある和食屋さんに行った。目の前の壁に白鵬の手型が飾ってあってベタだなと思った。なんかふつうにハンバーグとステーキ重で迷っていていや和食和食と穴子重にした。穴子って銀座の和食屋でのランチとして一番ちょうどいい気がした。うなぎだと鰻屋のパチモンみたいになるし。美味しかった。なんで留年したのかとかどんなバイトしてたのかとかを話した。通常初日にする話。一応就活終わりましたと報告しておめでとうな空気にしておいた。就留中社会性を保つために始めたバイト先が、まさか解散し、まさか最終勤務日の前日に内定をもらうとは、なかなかかけない筋じゃないですか、と言おうと思ったけど何かの拍子に忘れ、今思い出し、言わなくてよかったと思う。席を立つ時「ここに白鵬の手型あるの気づいてましたか」と聞いたら見るなり「思ったより小さいのね」と言うので笑ってしまった。小ささに気づくの早っ。確かに小さい気がするけど。驚きの焦点の切り替わり方が早すぎる。バナナジュースコリドールに移動。レトロポップ&たしかな品質に久保さんも気に入ってくれたようでよかった。今日はベースを豆乳に変えてレモンとナッツを追加した。めっちゃうまい。またポイントカード作るの忘れた。午後は封書を頑張る。60ちょい。また盛大に紙を無駄にしながらも印刷したりなんだり。春にやってたら絶対おわんなかったし間違いまくりだったけど今はわりとふつうなのでふつうに頭が働いていい感じにミスを未然に修正してくれた。おれは間違えるけど脳みそが助けてくれる感じがした。無意識がのびのびしてるのがちょうどいい時
___
9時に起きてラグビー。7時に兵藤から10時集合との連絡あったようだけどもう間に合わないと連絡。インスタみるも兵藤の気配がないのでたぶん朝まで起きてて今寝てる。三ツ沢上町から球技場まで歩く。とても立派な公園。球技場は球技場だけあって臨場感すごい。負けちゃった。けど生ラグビーはとても良いもの。早明戦以来だった。あれも冬。冬の晴れた日に熱く美しいスポーツを見るというのはなかなかいいものです。試合後横浜で飲む。みなさん暖かく受け入れてくれてありがたかった。
___
吉祥寺でワカサギ会議。ワカサギを釣りにくことが決まった。長野に。久しぶりに井の頭公園にいく。大道芸人がとてもすごくて見いってしまった。その後ローグでキルケニーとなんかIPAを飲む。トラファルガーより品があって気分が出る。店内禁煙になっていたのもいい判断なように思う。お釣りが合わないからとたくとにスタバでチャイラテを買ってもらう。甘いの忘れていた。全然美味しくない。帰宅後、ご飯がなんにもないので腹ペコの中日記を書く。チャイへの後悔と空腹からナイルレストランを思い出して無性に食べたくなる。
___
リハ。助手さんが有能で助かるというかおれが無能すぎて申し訳ない。でもなんとかなりそう。
___
本番。まあなんとかなる。もっと時間をかけて準備しなくては。やっぱりSEは向いてない、というか嫌、やりたくない、のかもしれないと思い始める。まさきくんとよっちゃんと会う。よしひろに彼女ができたの本当だった。なんだか胸が熱くなった。相手と自分にきちんと向き合って常によしひろにとって最良の選択肢を選んでほしいと願うし、そのための力になりたいと思った。
___
内定先の選定で無間地獄に落ちる。双六のルートを限界まで読み込んだところで結局ルーレット次第なので意味ない。意味ないことを意味ないで終わらせられなくてずっと困り続けてる。
___
本番。朝、あっきーとあめみーさん結婚の報を知りはい?となる。目が覚める。以降いつになく調子がいい。つつがなく進む。結構見えてる感じ。一回インカム聞き逃して変な感じになったけど。サンドラ・ブロックがキアヌ・リーブス好きだったと告白したという記事で、当時サンドラはキアヌの顔を見るとあはははってなっちゃうから真剣になるのが大変だったと書かれていて、その好きのこぼれ方はとてもいいなと思った。
___
9時に起きて10時から授業。途中11時からのも頼まれて12時に部屋に戻る。4時まで何をしようかと思っていると1時からもと言われて結局3時前にコメダに。グラコロバーガーとたっぷりウインナーコーヒー。おいしい。インヴィジブルを読む。佳境に入る。こういう視点の切り替えとても好きだ。夜はセブンの肉じゃがを2パック買ってきて食べた。美味しい。なんなら家のより塩分控えめでいいんじゃないかとすら思う。Spotifyはじめてみたけどとてもいい。
___
9:30に起きて10時から授業。一コマやって夕方まで間があったので下北へ服を買いに行く。せっかくなので一龍納めする。奥のほうに常連がいていつもよりずいぶんにぎやかだった。なんか年末っぽい。一番盛り上がって最古参と思われたおじさんが実は初めての来店だったらしく他の客にひかれていた。4時に帰宅。夕飯の準備をしてから2コマ。終わって炊事。ニラとケールと豚肉と卵の炒め物。ネギと里芋がいつのまにかお好み焼きのタネにされていたので味噌汁はインスタントにした。
___
インターン先に1ヶ月ぶりに出勤。新オフィスめっちゃ綺麗で笑ってしまった。編集部のみなさまに挨拶。なんだかんだ可愛がってもらってありがたいことです。鈴木くんと目黒。落ち着いたしいろいろ書こうねという話をする。なぜかダーツへ。楽しい。
___
昼飯に藤田へ。鴨南蛮。この商店街もそろそろ建て替えらしく西側はもう取り壊されたらしい。よく通った駄菓子屋俺たちのサンケイこと三景も閉まったらしい。ドキュメント72時間の年末スペシャルを見て泣いたりウンウン唸ったりする。デパート閉店の回が特によかった。6時ごろ出て下北で時間潰す。山角納めしようと思ったらすでにお納まりになっていた。仕方がないからひとりでジンギスカンを食べる。今ブルーマンデーでこれを書いていてこのあと渋谷に行く。
20181229
0 notes
kanata-bit-blog · 6 years
Text
天ヶ瀬さんちの今日のごはん5
『たこ焼き』with Beit
「タコヤキパーティー!? ボク、行きたい! みのり、恭二、いい?」  仕事帰りに事務所に寄ると、会議室ではBeitの三人が打ち合わせをしていた。  凸凹な身長差を見ると、「Beitだ」とさながら近所のおばさんのような安堵感を抱いてしまうが、一番小さいと思われるピエールは身長で言うなら翔太よりも大きいことを考えると、一緒にいる人間が大きいだけなんだよなあ、などと思い直してしまう。冬馬も身長に関しては175センチメートルと高校生男子の中でも平均より高いのだが、それでもあまり高いと思われないのは十中八九いつも隣に細長い奴がいるからに違いない。  休憩の合間に先日香川で話したたこ焼きパーティーの旨を伝えると、ピエールはただでさえ綺麗な瞳を宝石の如くキラッキラと輝かせてテーブルに身を乗り出した。 「勿論俺は喜んで行くよ。恭二も行くよね?」 「みのりさんとピエールが行くなら俺もお邪魔します。確かウチにこないだ買った竹串とかまだあったと思うんで」 「ああ、恭二が企画してくれたやつの余りか! 懐かしいね」  プロデューサーや他アイドル達から話だけは聞いていたが、以前にも彼らはたこ焼きパーティーをしたことがあるらしい。それも事務所で。ピエールを励ますという名目で開かれたたこ焼きパーティーはなるほど彼等らしい心温まるエピソードである。  冬馬としてもそれならば話は早い。料理の知識が人並みにあるとはいえ、うどんと同様に自らたこ焼きを生み出した経験はない。学問なき経験は、経験なき学問に劣る。やってみなければ分からないことばかりなのだ。そう言う意味では冬馬よりもピエールの方がたこ焼きの知識に長けているかもしれない。 「それじゃ、プロデューサーに頼んでスケジュール合う日にでも声かけるぜ」 「うん! 冬馬のおうちでタコヤキパーティー、楽しみ!」  ピエールは全身で喜びを顕にし、純粋をそのまま貼り付けたような満面の笑みを冬馬に向ける。予想以上の反応に冬馬は少しだけ照れくさくなる。と、同時に彼をもっと喜ばせたいという自分がいることも自覚した。  しばしばその感情に思い至って驚くのだが、どうやら自分は人に自作料理を食べさせることが思った以上に好きらしい。翔太と北斗は勿論ながら、315プロダクションの面々にも。  美味しい、美味しいと言いながら食べてくれる彼らの表情を見ていると胸の内から"くすぐったい"が溢れてくる。北斗や翔太にはそのことを「餌付けしている気分だ」と誤魔化したが、この感情は幸福以外の何物でもない。  誰かと食卓を囲むことはいつだって当たり前に見えて、当たり前ではない。冬馬はそれを知っている。痛いほどよく知っている。記憶の中にある父の寂し気な背中、主人を失ったキッチン、四人用の食卓に一人で座る自分、冷めたお弁当。
 あの弁当は一体どんな味だっただろうか。
 先日、番組のロケで香川県に飛んだ時、「四国にいるのだからもしかして」と、下心を孕ませたメールを送った。今日から三日間、番組で香川に行く。簡潔なメッセージへの返事はすぐに帰ってきた。  ホテルの場所を教えてほしい旨の返信に冬馬は胸の内で喜びを暴れさせながらすぐにホテルのURLを送った。きっと父が自分に会いに来てくれると信じて。  尻ポケットから携帯電話を取り出す。メール欄を辿り、数日前に既読マークのつけたメールを開いた。 『すまない、行けそうにない。北斗君たちによろしく』  絵文字も顔文字も何一つない簡潔なメールの文章を指でなぞる。  父と居を共にしていないことを寂しくないと言えば嘘になるだろう。しかし、今や自分も高校生であり、夢追い人である。我儘を言っている暇などない。芸能界に身を置き、テレビで全国へと元気な姿を乗せることが今の冬馬に出来る最大の親孝行なのだ。と、冬馬は思っていた。  平日の昼間だ、どうせ繋がらない。諦念を溜息に変え、冬馬は再びそれを尻ポケットに押し込んだ。
「こんにちは!」 「おう、よく来たな、ピエール。渡辺さんと鷹城さんも」  数日後、プロデューサーがわざわざ予定をずらしてまで合わせてくれた時間に、ようやくBeitの三人を自宅に招くことが出来た。仕事帰りで若干多い三人の荷物をいくつか受け取ると、冬馬はそのままリビングの方へと向かった。 「あっ、その中にシュークリーム入ってるから冷蔵庫に入れておいてくれるかな。たこ焼き食べ終わった後に食べれたらと思って駅前で買ってきたんだ。一応北斗君の分も買ってきちゃったけど、余ったら冬馬君が食べていいよ」 「どもっス。一応間に合えば行くとは言ってましたけど、駄目そうなら貰います」  合わせてもらったとは言え、残念ながら六人全員のスケジュールだと難しかった。ユニット単位での仕事が多い期間ならば良かったのだが、残念ながら北斗のみが次クールのドラマでメインにキャスティングされており、本編撮影中の今は微妙な調整すら利かない状況だった。  北斗がドラマの撮影に尽力している一方で、留年の可能性を潰すべく学業への専念を言い渡された翔太は、学校が終わった瞬間に冬馬の家へと直行するプレイを決め、冬馬もまた午前中だけ高校に顔を出した後に、雑誌のインタビューの為に校門を跨いだのだった。なお、仕事を終えた後は翔太同様である。 「もう少しだけ準備があるんで、三人は先にリビングで休んでてもらえれば」 「俺も出来ることがあるなら手伝うよ。何かある?」 「そうだな……もし何か具材とか買ってきたなら包丁は貸すんで切っておいてもらえると有難いっス」  リビングに戻ると天変地異の前触れか、いつもならば人のベッドに勝手にダイブしたかと思うと、次の瞬間にはアイドルらしからぬ鼾をかきはじめる翔太がたこ焼き器を嬉々としてセッティングしていた。あまりのきな臭さに反射的に辺りを見回すが、これと言って怪しいものは見受けられない。  てっきりたこ焼きに入れる為の良からぬ物を持ち込んでいるのかと思った。 「どうしたの、冬馬君? そんな怖い顔して」 「……なんでもねえ。お前、俺がキッチンで準備してる間渡辺さん達に迷惑かけんなよ」 「冬馬君に心配されなくても、僕良い子だし♪」 「ったく、大人しくしてろよ。……すんません、お願いします」  後から入ってきたみのりが笑う。恭二も笑顔が苦手なのか苦笑なのか分からない絶妙な表情を張り付けていた。  三人をリビングまで送り届け、冬馬は一人キッチンに入る。シンクで手を洗い、三人の来訪前にやっていた長ネギのみじん切りを再開した。長ネギを小さく刻んだものを相応のサイズのボウルに入れてラップをかける。  続いて紅ショウガ。予め刻まれた物を買ってきてはいるが、たこ焼きに入れるにしては少々大きいのでもう半分かそれ以下に小さく刻んでいくと汁がまな板を赤く染めていった。  切れたものをぎゅっと絞り、更にキッチンペーパーで包んで水気を出来るだけ吸う。ぱらぱらになった紅ショウガを別の皿に入れれば準備は完了だ。  前もって一口大に切っておいた茹で蛸の皿を持ってリビングに戻ろうとすると、みのりが廊下からひょっこりと顔を出した。 「包丁借りても良いかな?」 「これ使って下さい。まな板は…………っと、これを」 「へえ、パックのまな板! 料理する人って感じだね」 「肉とか魚料理で使った後は捨てるだけなんで楽っスよ」 「まな板使うと洗うの大変だもんね」  みのりは持ってきたビニール袋から丸々とした袋を取り出し、ハサミで口を切る。中からごろごろと出てきたのは親指位の太さのウインナーだった。冬馬から受け取った包丁で輪切りにしていく。上手いとは言い難いが、十分に慣れた手付きである。  冬馬はとんとんと包丁がパックの薄いまな板を通してカウンターを叩く音を聞きながら、みのりの持ってきた袋を覗いた。中にはチーズ、明太子、キムチ。 「色々あるな……」 「その方が面白いと思って。本当は納豆とかも買ってこようかと思ったんだけど、恭二に止められたんだ。メインはたこ焼きだしね」 「ウインナーあれば上等っスよ。あとはつけダレでも冒険出来ると思うんで」 「いいね! ポン酢とかお出汁とかも美味しそう」  明太子をパックから一つ取り出し、先端を切ってスプーンで強く撫でていく。すると、中身がまとまってずるりと飛び出した。冬馬はそれが皮だけになるまでスプーンの腹で掻き出していく。  続いてキムチはまな板の上に出してたこ焼きに入れても飛び出さない程度に小さく切り、軽く絞ってボウルに入れた。使用したまな板は残念ながら唐辛子の赤とキムチのにんにく臭さがこべりついたのでゴミ箱行きである。  見れば、山のように積んであったのが記憶に新しいパックのまな板が今や片手で数えられる程度の量になっていて、そう言えば最近仕事ばかりで家にいることもあまり無かったからなあ。足が早い牛乳を買う気にもなれなかったこともあり、追加されることがなくなったまな板は使っていれば減っていくのは当たり前のことである。  だからと言ってわざわざまな板のためにパックのジュースを買ってくる気にはなれないのだが、肉料理の後のこべり付いたまな板汚れを考えるとそれも検討の内である。 「みんな、待たせたな。準備完了だぜ!」 「まってました!」 「タコヤキ、たのしみ!」  恭二がタコのような形をしている油引きでたこ焼き器の穴一つ一つに油を広げていく様子をピエールが好奇心旺盛な小学生の如くきらきらと目を輝かせて見ている。  冬馬も度々純粋だと北斗や翔太、最近では天道にまでも揶揄され始めているが、そんな冬馬でもピエールがいかに純真無垢で汚れ一つ知らないかなど、見ていれば分かる。むしろそれ以上にこんな純粋の塊が芸能界、それも、闘争激しく嫌味などあって当たり前のアイドルというジャンルに属しているということが心配である。  ……心強い仲間がいるから大丈夫か。  それに、今頃玄関の前で石像の如く佇んでいるピエール専属のSP達だっている。彼の周りには血が繋がっていなくともそれ以上の繋がりを持つ家族がいるのだと冬馬は知っていた。  と、そこまで考えて冬馬は玄関の前にSPがいる異常性にやっと気が付いた。もしもお隣さんが買い物に出るべく玄関を出た時、アイドルとして名の知れ渡った天ヶ瀬冬馬の自宅前に厳ついスーツ姿の"見るからにその筋の人"に見える男が立っていたらどう思うだろうか。 「……悪い、ちょっと先にやっててくれるか」 「? 焼いちゃってていいの?」 「おう、すぐ戻るからよ」  冬馬はすっかり落ち着いていた腰に鞭打って立ち上がる。行先は当然玄関だ。  扉の前に立っているであろうSPにぶつけないようにゆっくりと扉を押し開けると、僅かに空いた隙間からサングラスが覗いた。その見た目の厳つさに冬馬は一瞬怯む。が、すぐに「周りの目が気になるんで、良かったら中入ってください」と促した。  SPとはなんて難儀なものなんだろうと冬馬は遠い世界のことのように考える。アイドルとは言えど、大統領ではないので当然ボディーガードといった類のものは縁がない。そう考えると、自分は実はものすごい人と知り合いなのではないかと思い至ってとりあえず飲み込んだ。  この話はまた今度北斗と翔太と三人で卓を囲む時にでも聞いてもらうことにする。
「お、どんな感じだ?」 「冬馬! 今ね、恭二がタネ? 入れた!」 「他にはなんも入れてないっす」  ちりちりと軽い音を立てて鉄板の上で生地が焼かれている。穴だけでなく、鉄板全面になみなみと注がれたそれは卵、塩、昆布と鰹節の合わせ出汁に隠し味として少しだけマヨネーズを入れたものだ。インターネットの押し売りだが、マヨネーズを入れることによって生地がふっくらと仕上がるらしい。玉子焼き、ないしパンケーキにすら良いと言わしめるマヨネーズだ、十分信用に足る。  二つ入ることがないように注視しながら冬馬が一口大に切った蛸を入れていくと、入れた先からみのりがあげ玉を落としていく。無言で発生した共同作業に、思わず笑いそうになるのを奥歯を噛む事で耐えたが、少し出てしまったらしい。首を傾げるみのりに冬馬は「気にしないでください」と苦笑した。  しかし、みのりがあげ玉を全て入れ終えると、今度は恭二が青ネギと紅ショウガを投入し始めるものだから今度は耐え切れず、思わず「チームワークすごいっすね」と笑ってしまった。 「そう? 全然気にしてなかったけど」 「何度か一緒に作ってるから、慣れたのかもしれないすね」 「みのり、恭二、たこ焼き作る、上手! かりかり、ふわっふわ!」  しばらく待って皮が焼けたことを確認すると、鉄板から剥がすように竹串を差し込み、穴からはみ出た生地を巻き込みながら半分ひっくり返す。まだ綺麗な円形とは言い難いが、なんとなく近付いた。今度は鉄板の空いた部分を埋め尽くすようにタネをかけていく。 「結構使うんスね」 「こうやって後から入れてはみ出た部分を中に押し込んでいくと、中はふわふわで外はカリカリになるんだよ」 「へえ……」  生焼けの生地を再び半円の中に押し込むと、今度は円形になるようにひっくり返す。みのりの鮮やかな手捌きに冬馬は感心することしか出来なかった。 「冬馬君暇そうだね」 「上手い人がいるからな、俺が手出しても邪魔なだけだろ」 「ボクもタコヤキ、作りたい!」 「一回目は俺が作るから、二回目はみんなで作ろう」  じゅううと焼ける音をBGMにしてピエールが鼻歌を口ずさむ。合わせて体を揺らす。翔太がそれを見て微笑ましげに目を細めた。  日々「弟だから」を理由に散々駄々をこねてくる翔太のことだから、今回のたこ焼きパーティーも自分も焼きたいと志願してくると思っていたが、そんなことはなく、翔太は大人しく胡坐をかいてじっとたこ焼き器を見つめている。  コイツ、Jupiter以外の人間がいると突然大人びる時があるんだよな。なんて思いながらお茶とジュース、皿を配っていく。  翔太は賢い。それは同じユニットメンバーでなくても見ていればわかることだ。両親の喧嘩をいち早く察する子供の如く空気を肌で感知し、マズいと思えば行動に移す。少年と形容される歳の人間が簡単に出来ることではない。そう北斗が話しているのを冬馬はしばしば聞いている。  北斗も北斗で他人を見る力には長けているのだろうが、二人ともそんなに気を張っていて疲れないだろうかと稀に心配になる時があった。 「えっと、皮をカリカリにするならここで油を入れるんだけど、どっちがいい? ふわふわなたこ焼きじゃないと認めない! って人がいればそうするよ」 「いるっすよね、カリカリのたこ焼きはたこ焼きじゃないって言う人。俺はどっちでも」 「俺もどっちでも大丈夫っス。二陣で変えてみても良いと思うんで」 「そうだね、じゃあ今回は入れるよ。跳ねるから気を付けてね」  そう言ってみのりはヘラでたこ焼きの表面を撫でるように油を塗っていく。くるりと一つ一つ丁寧にひっくり返していくと、油の音が一層騒がしくなった。  たこ焼き器の下に敷いた新聞紙が跳ねた油で変色している。見れば念の為にと机の下に敷いておいたビニールにも油の跳ねた跡が伺えた。やっぱり油ものは注意だな。再認識し、用意しておいた布巾で汚れを拭きとった。  大皿を差し出すと、みのりが竹串で二つずつ掬い上げ、乗せていく。一個、二個、三個と皿の上がきつね色のたこ焼きで埋まった。先程よりもずっと綺麗なまん丸である。  鼻を掠めた小麦粉の焼けた匂いに冬馬は口の中に涎が滲んだのが分かった。 「はい、冬馬さんと翔太さんも」 「どもっス」 「みのりさんありがとー♪」  みのりに促されるがままにその球体を三つほど小皿に移し、上からお好みソース、マヨネーズ、かつお節、青のりをかけると、熱に当てられたかつお節がふわりふわりと触れてもいないのに踊り出した。ごくり、絶えず溢れてくる涎を飲み込む。  隣でピエールや恭二も同じようにたこ焼きに味を付けていく中、一足先に飾り付け終えた冬馬が箸でたこ焼きを摘まむ。すると、それは少しの歪みを見せたものの、美しい丸を崩すことはなく箸の間に収まった。 「それじゃ、いただきます」 「はいどうぞ」
 大口開けて一口にそれを放り込むと、それはすぐにやってきた。
「アッ!!! 熱ッッッッッ!!!!!!ハッ、は・・・はふっ・・・はー・・・っ・・・」 「あっははは! 冬馬君、一口で食べるからそうなるんだよ。焼きたてが熱いのなんて分かりきってるんだから、こうやって半分齧って・・・は〇×□●〒§φ×!?!?!?!」 「冬馬、翔太、あつい? ダイジョーブ!? 」  揃って上向きにはふはふと呼吸をする二人に、ピエールが慌ててお茶を差し出す。苦しみながらも飲み込んだ冬馬が息交じりに「サンキュ、大丈夫だ」と告げてお茶で口を冷やす。口の中が若干ひりひりするわ、焦りのあまり飲み込んでしまうわでロクにたこ焼きを味わうことが出来なかった。 「二人とも、熱い、ダメ? お箸で割って!」  ピエールがお手本に自分のたこ焼きに箸で穴を開けて二つに割ってみせる。ぱっくりと割���たたこ焼きの中からとろりと半生の生地が漏れ出してピエールの皿を汚す。彼はその隙間にふうふうと息を吹きかけ、欠片をぱくりと口に入れた。  口に入れてすぐは冬馬達と同様にはふはふと熱さを逃がすも、熱さに苦しんで味が分からないという冬馬の二の舞にはならなかったらしい。何度かの咀嚼の後、喉が上下して「オイシイ!」と笑顔を振り撒いた。  みのりが折角綺麗に焼いてくれたたこ焼きを二つに割るのはなんとも気が引けるが、放置して冷めてしまっては元も子もない。これはたこ焼き好きの先達の知恵をお借りしてきちんと味わう段階までいかなければ。  ピエールに倣ってたこ焼きを二つに割り、少し冷ましてから欠片を食べる。  かり、皮は良く焼けてサクサクと食感が良く香ばしい。と、思いきや内側のとろりとした生地が舌を柔らかく包み込んだ。その中にある異分子、蛸は食感に更なる変化を付けながらも海鮮系の仄かな匂いでたこ焼きの旨味を後押しする。出汁とお好みソースの甘塩っぱい味が口の中で混ざり合う。  なんたる幸せか、口の中で広がる味の組み合わせを感じて冬馬は多幸感に目を瞑る。 「アリガト! みのり」 「外も中も丁度良い感じで美味いな。流石みのりさんっすね」 「ありがとう、恭二。……うん、ふわふわだね。こないだ作った時よりもずっと美味しいけど、マヨネーズ効果かな?」 「外にも付けてるんで味は全然変わんないっスけどね」  残されたもう一欠片を味わってみるが、やはり別で付けたマヨネーズとソースの味が強く、生地の中のマヨネーズの存在はいまいち感じられない。  思い立って、冬馬は何も飾り付けのされていないたこ焼きに齧り付いてみた。ソースやマヨネーズは勿論、かつお節や青のりもついていない状態のたこ焼きである。さくりと音をたててそれは冬馬の口の中で形を崩す。再び中の熱い生地が舌に触れたが、少し置いた分先程よりは熱くない。冬馬はそのまま何度か口の中でふう、ふうと呼吸をし、味わってから飲み込んだ。  ソースとマヨネーズをつけて食べた時よりもずっと香ばしく、青のりと鰹節の香りを強く感じる。残念ながらそのまま食べてみても生地の中に混ぜたマヨネーズの味は感じないが、何も付けなくてもたこ焼きは美味しいのだと知った。  しかし、どこか塩味が物足りないのはやはりソースがないからだろうか。であれば今用意するべきは…… 「塩だな」 「塩?」 「ああいや、もしかしてと思って何も付けずに食べてみたんスけど、意外とイケるんスよ」  冬馬が言うと、みのりは興味深々に目を瞬かせて言われるがままにたこ焼きを何もつけないまま食べた。数回の咀嚼の後に飲み込むと、みのりは「確かに美味しいね!」と頷いて、続く恭二も「確かに塩が欲しいな」と頷き返した。  塩を取ってくると言って席を立ち、キッチンへと向かう。確か先程生地を作る時に使用したので、記憶が正しければカウンターの上に出しっぱなしになっているだろう。  記憶通りの場所に青い蓋の透明ながぽつんと置いてある。意図的に色を変えて購入したもののおかげで砂糖と塩を間違えることはない。青が塩で、赤が砂糖である。
 蓋が青いことを確認して冬馬が踵を返そうとする。と、ポケットの中に入れていた携帯電話が震えていることに気が付いた。もしかすると、プロデューサーから仕事の連絡が来たのかもしれない。  基本的にはプロデューサーからのスケジュール確認などの諸連絡はメールで行われることが多いのだが、ごく稀に、例えば突発的に直近で仕事が入った場合、プロデューサーは酷く申し訳なさそうに「えっと、明日なんですけど……」と電話をかけてくることがある。プロデューサーという仕事も随分難儀なものだ、アイドル達のモチベーションも管理しなければならないのだから。冬馬もアイドルとしてはやる以上は忙しくなることも覚悟の上であるし、むしろ忙しいことは有難いとすら思っている。  仕事が入ることは一向に構わないのだが、プロデューサーの弱弱しい声を極力聞きたくない冬馬は、その連絡ではないことを祈りながらも携帯電話を取り出す。そして画面の文字を視界に入れて目をぱちくりさせた。携帯電話を耳に押し当てる。 「……もしもし?」 『もしもし、冬馬?』  耳元に聞こえるのは仕事中であったはずのユニットメンバー、兼恋人である男の声だった。スピーカーの向こうから微かに聞こえるエンジン音で彼が車の中にいることが分かる。  運転中は注意力散漫になりたくないからと自分からかけてくることはないし、恐らくタクシーの中なのだろう。と言うことは、仕事は終わったということか。 「おう、終わったのか?」 『さっきね。タクシーで冬馬の家に向かってるところ。渋滞に巻き込まれなければあと30分位で着くよ。そっちはどんな感じ?』  電話口に聞こえる北斗の声は全く疲れを感じさせず、仮にも朝から仕事をこなしていたとは思えない。すう、ゆったりとした呼吸音が耳に触れる。 「もう食ってる。始めたばっかだけど、お前が来る頃には落ち着いてるかもな」 『俺のことは気にしなくて良いよ。……そうだ、途中でスーパーに寄れるけど、何か買っていくものある?』 「あー、そうだな。お茶買ってきてくれ。デカいの』 『了解。Beitの三人と翔太によろしくね』  その言葉を最後にエンジン音は途切れ、北斗の声も聞こえなくなった。冬馬は口元を緩め、携帯電話を再び尻ポケットに戻そうとする。が、続いて震えたそれには、今度こそプロデューサーの名前が表示された。  冬馬は頬を掻いて「まさかな、」と内心そうでないことを祈りながら通話開始ボタンをスライドしたのだった。
 プロデューサーとの通話を終えて冬馬が部屋に戻ると、たこ焼き器の上では既に第二陣をドームにする段階まで進んでいた。どうやら第二陣も冬馬の出番はなさそうである。  結局、プロデューサーからの電話は危惧したような内容ではなく、逆に明日の午前中の仕事の打ち合わせがなくなったということだった。冬馬が個人で出演するバラエティ番組の打ち合わせだったはずだが、どうやら先方の都合が悪くなったらしく、つい先ほど連絡が来たのだという。  打ち合わせは来週に延期。元々プロデューサーがオフに取ってくれた日にしか入れることが出来ないとのことで、残念ながら冬馬のオフは少しの間没収となった。  元々何をしようかと悩んでいた休日であったし、どうせ秋葉原に足を運んでフィギュア鑑賞に一日を費やすか、はたまた家の掃除に励むくらいしか使い道はないのだ。無くなったところでまあまあ、となる程度である。  持ってきた塩瓶をテーブルの上に置くと、冬馬の皿の上にたこ焼きがいくつか増えていることに気が付いた。目をぱちくりとさせて顔を上げると、翔太がにこにこと「冬馬君の為に取っといてあげたんだから、感謝してよね」と言う。  妙にきな臭い態度に突っかかりを覚えながらも、冬馬は自分の分をとっておいてくれたことに感謝し、早速塩を振りかけて少し齧ってみる。と、一瞬で口の中に暴力的な違和感が広がって冬馬は顔を顰めた。 「………………………………………………!」 「どう!? 美味しい!?」  翔太がまたあの表情で冬馬の様子を伺ってくる。最早煽りと言っても過言ではないその言葉に、冬馬は一瞬で感じた舌の違和感を確信に変えた。  違和感は次第に舌の上を広がり、オレンジジュースを煽る。喉がごくりと音を立てている横で、翔太がけらけらと笑っているのが分かった。空いたグラスに困ったように笑うみのりがオレンジジュースを注ぐ。冬馬はそれを再び一気に飲み干した。  具はウィンナーとチーズ、舌の上で蕩けていたのはチーズ。想像していたたこ焼きの味とは遠く離れた具材、かつ美味しいか美味しくないかで言えば「ケチャップを付ければ美味いかもしれない」という感想を抱くしかない味に冬馬は返答に迷う。  しかし、それだけではないのだ。舌に感じた痛みは今もなお隣りで笑い転げている翔太のせいであることは間違いない。こいつ、入れやがったな。 「冬馬君の為に作った僕特製のピザ風たこ焼きだよ♪ タバスコた~っぷりの!」 「テメェやっぱ入れてやがったな!」 「わー!!」  これまでずっと静かにしていたのはこの時の為に機会を伺っていたのか。冬馬は理解する。少しでも彼の気遣い過ぎを心配した自分を後悔した。  首に手をまわしてとっ捕まえてやると、翔太は冬馬の腕の中でじたばたと喘ぐ。苦しくない程度に締めてやると。早々に「ギブギブ!」と腕を叩かれた。みのりがくすくすと笑う、恭二が微笑する。ピエールは何が何だか、と言った様子だった。 「……まあ、出汁が少し邪魔だけで、味は悪くはないかもしれねえけどよ」 「でしょー! 絶対美味しいと思ったんだよね」 「ただしタバスコは少しだけだ」  そう言って軽く翔太の脇腹を肘で小突いてやると、彼は薄く笑いながらも渋々といった様子で頷いたのだった。 「最近は居酒屋とかカラオケでも一つだけタバスコ入りのロシアンたこ焼きとかってよくあるよね。たまに辛いの好きな人が当てて誰がハズレかわかんなくなっちゃったり」 「そういうのあるっすよね。前に木村と二人でどっちがタバスコ入りを当てるか勝負したことあるんすけど、かなり辛がってて面白かったな……」  冬馬の頭に辛さにふと苦しむ木村龍の姿がよぎった。そう言えば、黒猫も目の前で行列を作る勢いの相当な不運体質だとか聞いたな。  FRAMEとは残念ながら未だ縁なく仕事を共にすることは出来てはいないが、木村龍、鷹城恭二と同じ歳と言う縁を持つメンバーがうちにいるので、ごく稀に「昨日飲みに誘われてね、」を会話の最初に、一体何を話しているのか皆目見当の付かない三人組の飲み会の話を聞かされる。  その話でなんとなくの関係は掴めたものの、お前ら本当に同い年なのか……? という会話内容はにツッコミを入れる者はいない。  と、まあ、そんな理由があり、直接的な絡みは無くとも冬馬は龍が自動販売機の下に小銭を落として取れなくなってしまったとか、恭二の新型冷蔵庫を懸賞で当てたい欲など、彼らのどうでもいい情報に詳しかったのだった。  北斗の話の中に出てくる木村龍というアイドルと、そして、未だ事務所ぐるみの仕事以外で出会えていないユニット達の隣に並んでみたいと常に思っている。 「僕も前に姉さんとカラオケに行った時にやらされたよ。普通の餃子とアイスが入ってる甘い餃子だったんだけど、見た目で分かっちゃったから結局僕が食べさせられてさ」
 想像してみる。餃子のつるつるの皮に包まれたバニラアイス。斬新ではあるが、好んで食べようとは思わない。  餃子のあの見た目からはたっぷりの肉汁が飛び出して、ニラの匂いがぷんぷんするものだと脳味噌が記憶しているのだ。甘い餃子などというものを食べようものなら、即座に味覚が混乱するに違いない。 「たこ焼き器でホットケーキミックス焼いたら美味そうだな」 「美味しそうだね、ベビーカステラみたいで!」 「ベビーカステラ? なに?」 「お祭りの屋台で売られてる小さなカステラだよ、卵の味がして美味しいんだ」  たこ焼き器という一つの金型でいくらでも創作が広がるのだから料理の世界というのは奥が深い。今回は残念ながらホットケーキミックスの用意は無いが、いつかおやつ作りの一つの候補としておくのも良いかもしれない。  十中八九、たこ焼き器は翔太が持ち帰るのを面倒くさがって冬馬の家に置かれることになるのだろうから、彼が姉に「持って帰ってこい」と言われるまでは自由に使うことを許してほしい。 「でもやっぱり僕は辛さでびっくりさせる方が面白くて好きだな」 「お前、あんま食べ物で遊ぶなよ」 「分かってるよ。だから今日はあと一回でおしまい。ね、冬馬君」
 いいでしょ? 翔太はまたあの表情で冬馬へと笑んだ。
「こんばんは。少し遅れてしまいましたね」
 あれからいそいそと準備を始め、すっかりイタズラモードに火のついた翔太主導で「北斗に一人ロシアンルーレットをさせよう計画」は無事に決行に移すこととなった。計画の概要を聞いた冬馬は初めこそ呆れが強く出たものの、翔太の全開の弟力で成す術もなく折れることとなった。まあ、どうせ北斗だし、怒りはしないだろう。 「さーさー北斗君! お仕事帰りで疲れてると思うけど、僕が北斗君の為に焼いておいたたこ焼き、早く食べてよ! まだそんなに経ってないから冷めてないよ!」 「ありがとう、翔太。いただきます」  何も知らず、翔太に案内された場所に腰掛けた北斗は、予めテーブルの上に用意されたたこ焼きセットを確認して小さく笑んだ。自分の為に用意してくれたものだと内心の喜びを漏らしているのだろう。とことん翔太には甘い奴だと冬馬は注いだお茶を煽りながらその様子をぼーっと眺める。 「へえ、たこだけじゃなくてウインナーも入れたんだ」  たこ焼きパーティーの残骸を見つめながら北斗は初手から翔太が作ったそれ―――タバスコたっぷりピザ風たこ焼きを口に運んでいく。思わず声を漏らしそうになったが耐えた。  会話を繋ぐことなど気にも留めずにBeitの三人、翔太、冬馬はそれが口に入るのを息を飲んで見守る。
「……………………」 「……………………………………………………」 「………………………………」 「……………………………………ああ、そうだ」 「え?ああ、」  確かに食べたはずなのに、見た目と味の違和感を感じたはずなのに、何故か北斗は表情一つ変えずにもぐもぐとそれを咀嚼し続ける。大量のタバスコ入りのたこ焼きをまるで当たり前かのように享受し、平然と冬馬に話を振る。  すっかり気勢を削がれた翔太及びBeitの三人は脱力してそのまま深く息を吐いた。北斗はそれに疑問符を浮かべながらも話を進めていく。 「今朝事務所で古論さんに会ってね、今度知り合いの漁師に誘われてスルメイカ漁に行くことになったらしいんだけど、良かったら冬馬も来ないかって」 「スルメイカ……? なんで俺が」 「それがね、最近冬馬が色んな人に手料理をご馳走してるのが事務所内で広まってるらしいよ。恐らく伊瀬谷君達のおかげだろうね。それで、良かったらイカ料理も作ってほしいって古論さんからの俺の所に熱烈なオファーをもらったんだよ」 「あー……」  突拍子も無い誘われ事に、冬馬は鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。続いて北斗の口から出た言葉に、一瞬にして脳内で映像及び音声が再生される。「冬馬っちの料理メガメガ美味いんすよ!」などとのたまう伊瀬谷四季に似た何かは間違いなく冬馬の記憶から捏造されたキャラクターなのだが、どうしても偽物とは思えない。マジで言ってそうだ。 「分かった、連絡しとく」  視界の端で翔太がつまらなそうにみのりが持ってきたシュークリームをつまむ。北斗の面前で「おかしいなあ」とぼやく彼はまるでおもちゃに遊び疲れた子供である��一方すっかり緊張感の抜けたBeitの三人も同じくおやつタイムに入っていたのだった。  伝えるべきことを伝え終えて満足したのか、北斗が二つ目のたこ焼きに手を出してぱくりと一口で食べる。赤丸、キムチの酸っぱさを微妙に残しながらもピリ辛でなそれは豚と合わせてみても美味しいかもしれないと先程みのりや恭二と盛り上がった。  そもそもたこ焼きと言うもの自体食べている印象のない北斗にとってはキムチ入りなど、斬新と言う他ないだろう。
 彼はうんうん頷いて、
「とても辛くて美味しいね」と呟いたのだった。
 NEXT→『冷製イカパスタ』with Legenders
0 notes