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#姿勢と呼吸と歩き方
hangorin · 10 months
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東京五輪から2年 湾岸はいま
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悪夢のようなTOKYO2020大会から2年が経った。 五輪のために姿を変えられたあの場所は、巨額の資金を費やして建てられた会場は、白いフェンスに閉ざされていた公園は、いま一体どうなっているのか。 湾岸エリアを中心に、フィールドワークを行った。
①築地市場
築地本願寺から場外市場に向かう。日曜日。外国人観光客、親子連れ、カップル。賑わいは築地市場があった頃と変わらないように見えた。どの店にも、昼食を目当てに沢山の人が並んでいる。
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立体駐車場の最上階から市場のあった方を見下ろす。縦横に走るターレ、魚の並ぶケース、積み上げられたトロ箱、林立する仲卸の看板――それらが全て消え去り、でこぼこの、剥き出しのコンクリートだけが灼熱の太陽に焼かれていた。その一部は駐車スペースに。数台の自家用車。物悲しくなるぐらいしょぼい。
駐車場のわきに、築地市場の仲卸とおぼしき店名のプレートを付けたターレが放置されていた。よく見ると、ナンバープレートを外した痕がくっきりと残っている。
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石原元都知事が主導した2016年五輪招致当時、築地市場を潰してメディアセンターを作るという話が出ていた。2020東京大会ではそれが「駐車場」にかわり、市場は2018年10月に東京都によって閉鎖された。選手村から競技場への輸送のために新たに作られた環状2号の全面開通は、五輪閉幕から1年以上も過ぎた2022年12月。五輪招致が、都民の台所を打ち出の小づちのように利権を生み出す空虚な「一等地」に変えてしまった。
築地を舞台にしたある連載漫画の中で、目利き一筋の主人公は何故か移転に何の葛藤もないまま「豊洲で頑張っていこう」と仲間に呼びかけていた。築地市場83年の歴史は、急速に「なかったもの」にされようとしている。
②月島
東京では五輪の前から、競技会場と直接関係のない場所でも各地で再開発が起こっていた。晴海にも程近い、湾岸エリアに位置する月島もまたその1つ。もんじゃストリートで有名なこの町は、一本裏道に入ると古い木造家屋が軒を連ねる下町らしさが残っている。私たちが2017年に訪問した際は、月島1丁目西仲通り地区再開発計画のためにもんじゃストリートの店舗が軒並み閉店していた。
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そして今回訪ねてみると、MID TOWER GRANDなる地上32階、高さ121mの超高層マンションが建ち(2020年10月竣工)、その1階にもんじゃ屋などの店舗が入っていた。 月島ではさらに地上48階、高さ178.00mのタワマンを建てる月島三丁目南地区第一種市街地再開発事業、地上58階、高さ199mのタワマンを建てる月島三丁目北地区第一種市街地再開発事業が控えている。フィールドワークの後で知ったことだが、この月島三丁目再開発計画には反対運動や行政訴訟も起こっているとのこと。長年暮らしてきた人々の息吹が聞こえるような町並みが、大手開発業者によって姿を変えられようとしていることには胸が痛む。
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③晴海選手村
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カンカン照りの選手村跡地。ここはHARUMI FLAGなる高層マンション群として開発され、完成すれば5,632戸12,000人が暮らす街になるという。未だ工事中で通行できるのはメインストリートの車道のみ。焼けつくような暑さの中、誰もいないコンクリートだらけの空間は殺伐とした雰囲気が漂っていた。
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選手村をめぐっては、東京都が適正価格の10分の1という不当な安さで都有地を三井不動産ら11社のデベロッパーに売却したとして住民訴訟が起きている。五輪という祝賀的なイベントが作り出す例外状態によって、公共財産が民間資本に吸い上げられた象徴的な場所だ。
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街の中心に近づくと、左手には、大会中、大量の食材廃棄が問題となった食堂の跡地が、中央区立の小中学校(2024年度開校予定)として整備されていた。
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右手には三井不動産の商業施設「ららテラス」。その1階には「東京五輪を振り返りスポーツの力を発信する施設」として「TEAM JAPAN 2020 VILLAGE」が設置されるらしい。五輪と三井不動産のどこまでも続く蜜月がうかがえる。
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その先では道路を挟んで左右両方の街区で50階建ての2棟の超高層タワーマンションが目下建設中だった。
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選手村を訪れるとき、2018年、建設工事中に2人の労働者が亡くなったことを思わずにはいられない。その街区は、労働者の死という痛ましい現実を塗り固めるようにSUN VILLAGE(太陽の村)という輝かしい名前で分譲されている。 この街区だけではない。この街全体が、五輪によって引き起こされた問題などまるで何もなかったかのように成り立っている。この街ではとても生きていけない、生きた心地がしない。生気を抜かれたようにその場を後にした。
④潮風公園、お台場海浜公園
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ビーチバレーボールの会場設営のため何年もフェンス封鎖されていた潮風公園。わたしたちは初めて公園内に入った。こんなに広かったのか!無観客のくせに、この公園全体を占拠していたなんて、ほんとうに厚かましい。
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東京湾の対岸の埠頭にはコンテナが並んでいる。海をみてみると、うっ!海水は泥沼のような色。しかし、なぜか匂いはせず、潮の匂いさえもしない。ファブリーズでもしているのか?
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わたしたちは、野宿の人たちが寝ていた場所を探して公園内を歩いた(東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織員会による追い出し→https://x.gd/ZJP4d)。木がたくさんあってなかなか住み心地よさそうだと思っていたら、屋根のある排除ベンチにたどり着いた。なんて醜いデザインなのだろう。
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次に「トイレのようなニオイ」と話題になったお台場海浜公園のビーチへ、匂いを確認しに行った。「遊泳禁止」の看板があり、スクリーニングのためと記してあったが、やはり汚染が懸念されているのだろろう。このビーチの海水も濁っていて、潮の匂いさえもしない。怪しい水質だ。
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しかし、暑すぎる。灼熱の日差しの下で、ビーチバレーボールや、トライアスロンをやって、汚い海に飛び込んでいたのか。 知れば知るほど、オリンピック・パラリンピックは地獄だ。
⑤有明
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有明の旧会場エリアへ。グーグルマップで見ると、どうやらこの一帯は「有明オリンピック・パラリンピックパーク」と名付けられたらしい。いまや地に落ちた電通がオリンピックでちゃっかりゲットした、唯一黒字と言われる有明アリーナへ。SNSではステージが見えない席があると不評を買っていたが、「ディズニーオンアイス」をやってるらしく、猛暑の折、駅から会場まで大勢の人だかり。
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有明体操競技場はこの5月に「有明ジメックス」と名を変え、株式会社東京ビックサイトが運営する展示場としてオープンしたらしい。第一印象は「・・・神社?」世界的ウッドショックの最中に木材を山のように使って、10年程度で取り壊される予定とのこと。こんなに立派にする必要あったのか?
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そこからゆりかもめの駅を越えると、フェンスで囲われた草ぼうぼうのワイルドな一角が。有明BMX会場跡地だ。グーグルマップには「有明アーバンスポーツパーク(2024年4月開業)」とあるが、いまのところ影も形もない。スポーツ施設より原っぱ公園の方が需要あるのでは?
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有明テニスの森公園は工事パネルが外されて、開放感に溢れていた。こんな素敵な場所を何年もオリンピックのために囲って、市民を排除してきたかと思うとあらためて腹が立つ。
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真夏の炎天下に火を燃やし続けた聖火台があった夢の大橋にも立ち寄った。観覧車が無くなっていた。東京都はこの夢の大橋を含むシンボルプロムナード公園の一角に、新たに聖火台置き場をつくって飾っている。東京都はいつまでオリパラの亡霊にすがる気か。。
⑥辰巳・東京アクアティクスセンター
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アクアティクスセンター
「威圧」を形にしたような巨大建造物。
建物の周りには木陰がなく、取ってつけたような弱々しい植栽が施されている。
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正面外の、広すぎる階段は、車いす利用者でなくても、大げさすぎてびっくりする。コンクリートが日射で熱い。ゴミ一つ落ちていないのは、人が寄り付かないからだろう。
その下にたたずんで私は、ピラミッド建設のために労働を強いられている人のような気持ちがした。
ここは、公園の一部であった。近くに団地もある。誰でも入って、海からの風を感じながらくつろぎ、出会う場所だったはずだ。
5年前に訪れた時は、工事中で巨大な支柱がそびえたっていた。三内丸山遺跡にインスパイアされたのかと思ったが、出来上がったのは帝国主義の終点のようなしろものだった。
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「お前たちが来るところではない。」という声がどこからか聴こえる気がした。
知ってる。だから入ってみた。静かだ。人っ子一人いない、空調が効いて冷え切っている。だだっ広いロビーの小さな一角に、TOKYO2020オリパラのポスターたちがいまだに展示されていた。
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競争をあおり、序列化し、勝者に過剰な価値を与え、「感動」を動員するスペクタクルがここで続けられるのだ。
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生きていくのに必要な潤いをもたらす公園に、このような醜悪なものが君臨しているのを私は許せない。
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炎天下の湾岸エリアを丸1日かけて回った。TOKYO2020跡地は、廃墟になっていると思いきや、むしろ多くの場所でまだまだ開発が続いていた。開発への飽くなき欲望と「レガシー」への執着、五輪災害は閉幕後も延々と残り続けている。 この日撮影した映像を使って「オリンピックって何?東京からパリ五輪1年前によせて」という動画を作成し、1年後に五輪開幕が迫るパリでの反五輪の闘いに連帯を示すメッセージとした。 From Tokyo To PARIS, NOlympicsAnywhere
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harawata44 · 9 months
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「視力1.0」でも突然失明することはある…健康診断ではわからない「失明原因トップ5」の恐ろしさ - ライブドアニュース
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写真=iStock.com/Krisada tepkulmanont※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Krisada tepkulmanont
以下引用
目の健康を保つには、何が大切なのか。眼科医の平松類さんは「失明原因のトップ5である緑内障、糖尿病網膜症、網膜色素変性症、加齢黄斑変性、網脈絡膜萎縮は、末期になるまで視力が落ちることはない。視力検査で失明の危険性はわからないため、必ず『眼底検査』を受けてほしい」という――。 ※本稿は、平松類『眼科医が警告する視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■いたずらに「眼圧」を上げるような行動は控えたほうがいい
会社の健康診断などで眼科検診に行くと、視力検査と一緒に必ず「眼圧」の測定も行われると思います。しかし、その意味合いをいまいち理解し��いない人がほとんどではないでしょうか。 眼圧測定とは、空気を軽く当てて「眼球の圧力」を測ることで「眼球の硬さ」を調べるものです。 なぜこの検査が重要かというと、眼圧が高い、つまり眼球が硬いと、失明原因の1位である緑内障のリスクが高くなることがわかっているからです。近年では眼圧の高さと近視の進みやすさの相関も指摘されています。 ここから言えるのは、「眼圧が高くなるような行動」は、できるだけ避けたほうがいいということです。日常生活のなかにも、知らないうちに眼圧を上げてしまう行動がけっこう潜んでいます。 その筆頭が、「水の一気飲み」です。水分補給は目の健康にとっても重要ですが、汗をかいたり、脱水症になったりしたときを除いて、一般的に水の一気飲みはよくありません。 体に水分が入ると、血液中の水分量が増えます。ごく単純にいえば血管を流れる液体の量が増えるため、血管に圧がかかります。これは大半の臓器にとっては大した問題ではないのですが、ごく微細な毛細血管が張り巡らされている眼球には、過度な圧力をかけてしまうのです。
■水の一気飲みはNG、マメな水分補給を
いたずらに眼圧を上げないよう、「水分補給は少量ずつ」が鉄則です。 例えば500ミリリットルの水を一気に飲むと、平均で3~4、最大で7ほども眼圧が上がることがわかっています。 眼圧の正常値は10~20ですから、その30~40パーセント、最大で70パーセントほども眼圧が上がるというのは、いわば収縮時血圧(最高血圧)が正常値の130から一気に170くらいまで上がるようなものです。 1回に飲む量は、200ミリリットル程度が適当です。もちろん1回の摂取量を抑えたせいで水分不足になっては本末転倒ですから、1時間に1回くらいを目安に「マメな水分補給」を心がけていきましょう。
■「過度な運動」は目をいじめる行為
「水の一気飲み」に加えて、気をつけたいのが運動習慣です。 運動のすべてが悪いわけではありません。「筋トレ」の場合、自重トレーニング程度ならば問題ないのですが、重すぎるウエートを用いた筋トレだと「いきむ」たびに眼圧が上昇するという研究があります。 意外なところでは、「ヨガ」も要注意です。 さまざまなポーズをとることで、ほどよく体全体がストレッチされ、呼吸を繰り返す有酸素運動でもあるヨガが概して体にいいことは確かです。ただし、唯一、目の健康を考えるうえで懸念されるのは「頭が心臓よりも下になるポーズ」です。 頭が心臓より下になると、当然ながら、頭に血が上ります。すると眼球にも圧力がかかってしまうのです。ヨガをやめる必要はありませんが、目の健康を思うのなら、頭が下になるポーズは避けたいところです。 逆に、目にいい運動もあります。体に酸素をふんだんに取り入れ、巡らせる「有酸素運動」(ウオーキングや軽いジョギング)は、必然的に目への酸素供給にもなり、目の健康維持に寄与します。 目安は「週3回、1回あたり30分以上、合計で週に90分ほど」、運動の強度は「ゼエハアと息が上がらず、会話できる程度」。これくらいの有酸素運動が緑内障などの防止になるという研究データもあります。
■「ストレス」も眼圧を上げる一大要因
眼圧には自律神経も関係しています。 ストレスを感じると、緊張状態を司(つかさど)る交感神経が優位になるのですが、このとき体中の血管が収縮します。眼球も例外ではありません。交感神経が優位になると眼球の毛細血管が収縮するし、そこで眼圧が上昇するのです。 現に、緑内障に処方される目薬は、交感神経を鎮める効果のある成分が使われています。交感神経を鎮めることで眼圧を低下させ、緑内障を軽減する狙いがあるわけです。 ストレスには、仕事やプライベートでの人間関係のストレスもありますし、騒音や急激な冷えといった環境的なストレスもあります。冬場は眼圧が高くなるという研究報告もあるほどです。 すべてのストレスを取り除くのは難しいものですが、自然に触れに行く、自宅でのんびりする、ゆったり入浴するなど、適宜、自分に合ったリラックス習慣を取り入れましょう。
■眼圧を上昇させる「睡眠姿勢」に要注意
みなさんのなかに、「睡眠時はうつぶせ」という人はいるでしょうか。 問題は、うつぶせになったときの顔の角度です。心臓より眼球が下にならない顔の角度ならば、ギリギリセーフです。 しかし、心臓より眼球が下になる顔の角度で寝ると、眼球の中の水晶体というレンズが本来の位置から少しだけ下に落ちることになり、眼球から余分な水分を排出する箇所がふさがれてしまいます。そして余計な水分が排出されないことで、眼圧が上昇してしまうのです。 年に数回ならばいいのですが、毎日、ランチ後にデスクに突っ伏して仮眠を取るなどの行為は、眼球にとっては最悪の習慣です。 同じ理由で、マッサージ店や整骨院によくある「顔のところに穴が開いているうつぶせ用のベッド」や、理髪店の「顔を下に向けるシャンプー椅子」も好ましくないのですが、それほど高頻度でなければ、あまり心配はありません。 また、横向きで寝るのはいいのですが、枕の硬さ(柔らかいほうが目に圧力がかかりやすい)や顔の角度によっては、眼球が枕に押し付けられるような感じになってしまいます。これはよくありません。目にかかる圧力上昇は、眼圧の上昇を意味するからです。 まとめると、睡眠時の姿勢は「あおむけ」がベストです。とはいえ眠りやすい姿勢は人それぞれでしょう。今後は目の健康のために、とにかく「顔が下向きになる」「眼球が枕に押し付けられる」ことだけは避けるよう、意識してみてください。 ただ、これらの生活上の注意は可能であればというレベルですので、無理せず取り組んでいただければと思います。
■視力は「いい・悪い」で判断してはいけない
これもありがちな誤解なのですが、視力(メガネやコンタクトレンズによる矯正のない「裸眼視力」)がいいから検診を受けなくても大丈夫、とはいえません。 そもそも一般的には何をもって「視力がいい」と思われているのでしょう。0.8や0.9まで見えれば「視力がいい」のでしょうか? 専門的には「視力」とは相対的な指標です。現時点で「いい・悪い」という話ではなく、「以前と比較してどうか?」という変化こそが重要です。 例えば、一般的には視力0.9は「視力がいい」ほうに入るのかもしれませんが、昨年は1.0だったところから0.9に下がったのなら、それは「大丈夫」とは言い切れません。視力が下がった場合は近視の進行も考えられますし、何らかの病気になっている可能性もあります。
■失明原因トップ5の病気は「末期まで1.0くらい見える」
「視力がいいから検診を受けなくても大丈夫」とはいえない理由は、これだけではありません。失明原因のトップ5である「緑内障」「糖尿病網膜症」「網膜色素変性症」「加齢黄斑変性」「網脈絡膜萎縮」は、実はかなり進行するまで1.0くらいは見えていることが珍しくないのです。 1位の緑内障の場合、いよいよ重度になり一人では歩けないくらいにまでなって初めて、1.0から視力が下がってくるケースがよく見られます。 2位の糖尿病網膜症も同様です。糖尿病により、ものの色や形をハッキリ捉える黄斑の中心部「中心窩」がむくむと早期に視力が低下する場合がありますが、そのむくみが起こらなければ、末期までは視力1.0くらいが維持されます。 3位の網膜色素変性症は、暗いところでものが見えなくなったり(夜盲)、視野が狭くなったりする遺伝性・進行性の疾患です。こうした症状が出てもなお、明るいところや、視力が届く範囲ではハッキリとものが見えるので、視力検査値としては「悪くなっている」わけではなく、1.0くらいは余裕で見えるケースが多いのです。 4位の加齢黄斑変性は少し例外で、早期から視力が下がるケースのほうが多く見られます。とはいえガクンと視力が下がるのは、だいぶ黄斑変性が進行した末に、合併症により網膜中心部に発生した新生血管から出血したときです。 そして5位の網脈絡膜萎縮もまた、早期からゆっくり視力が下がっていきますが、やはりガクンと下がるのは、かなり進行した後です。
■定期健診には「本当に必要な検査」が含まれていない
このようにたどる経過はそれぞれ違うものの、基本的には、末期になるまでは1.0くらいの視力が続きます。1.0というと、一般的には自信をもって「私は目がいい」といえる数値だと思いますが、ご覧のとおり、「大丈夫」といえる根拠にはなりえないのです。 企業や地方自治体の定期健診の眼科項目は「視力検査」「眼圧検査」だけで終わってしまう場合がほとんどでしょう。しかし前項で見たように、たとえ視力が1.0以上あっても失明の危険のある病気にかかっている可能性は消せないため、視力検査にはあまり意味がありません。視力検査が役立つのは白内障の診断です。 また、かつては「眼圧が上がると緑内障リスクが高くなる」のは確かだったのですが、日本人は神経が弱いため、緑内障患者の8割は眼圧が低いのに緑内症になっていることがわかっています。したがって、緑内障の診断に必須とされてきた眼圧テストの意味も、薄れてしまいました。 今後、罹患するリスク判定も含め、失明原因トップ5の疾患の診断には、眼底カメラで眼底の血管、網膜、視神経などをチェックする「眼底検査」が欠かせません。 追加料金が必要になる場合もありますが、これらの疾患の早期発見、早期治療のために、今後の眼科項目では、ぜひ「眼底検査」のオプションをつけることをおすすめします。
■「片目だけの悪化」は自覚しづらい
失明原因トップ5の疾患の早期発見、早期治療には眼科検診(特に眼底検査)が欠かせないと述べたことには、あと二つほど理由があります。まず一つめは、一般の方の「見えている」は、実は「片方しかちゃんと見えていない」可能性がゼロではないからです。 日常生活のなかで「片目ずつ何かを見る」という場面は、ほとんどありません。誰もがたいていは両目を開いて、ものを見ています。とはいえ両目が等しく、ちゃんと見えていないと生活できないわけではありません。 試しに片目をつぶって歩いてみてください。あまりふらつくことなく、真っ直ぐ歩けるはずです。つまり両目で見ているようでも、極端なことをいえば、仮に片目を失明していても生活には大して支障が出ないのです。 そのため、意外と多いのが、片目の視力の急激な低下にずっと気づけないというケースです。不調を感じなければ眼科を受診することもなく、病気の発見が遅れてしまいます。そういう患者さんが一定数いるのです。 眼科検診では、必ず片目ずつ検査を行います。片方の目は健康でも、もう片方の目は不健康という自覚しづらい事態もたちどころに明らかにし、早期に手を打つことができるというわけです。
■「緩やかな悪化」は自覚しづらい
そしてもう一つ、目の疾患の早期発見、早期治療に眼科検診が欠かせないと述べた理由は、人は「緩やかな変化(悪化)」を自覚しづらいからです。例えば、もし、昨日は1.0だった視力が、今日は0.2になっていたら、視力検査を受けずとも、誰だってすぐに異変に気づけるでしょう。 しかし、白内障では徐々に視力が低下していきます。しかも、ちょっとくらい視力が落ちたところで、急に日常生活が送れなくなるわけではありません。それなりに何とか補正しつつ、生活を送ることができてしまうのです。 緑内障も同様です。両目の視野が半分くらいになっても、見えていない分を脳が補正してくれることで、何ら支障なく暮らせてしまいます。視野はたしかに半分になっているのですが、脳が情報を補い、「見えているように」認識するのです。 まったく人間の脳の補正力とはすごいものだと感心してしまいますが、そのために何も手を打たないまま日常生活を送っている間に、病気が進行してしまうというケースは決して少なくありません。 さらに、目の不調を単なる「疲れ」と捉える人も多いようです。 本当は病気による不調なのに、「今日は目が疲れる」「最近、目が疲れやすい」「ここのところ、ずっと目が疲れている」とすべてを疲れのせいにして、徐々に病状が進行していることに気づけないケースもあります。こうして早期発見のタイミングを逃してしまうのです。 上記すべてに共通しているのは、自分の体のことは自分が一番わかっているというのは錯覚である、ということです。こう言ってはなんですが、「自分が支障を感じていないから大丈夫」という感覚は、実はほとんどアテにならないのです。
■人生100年時代には目の健康は欠かせない
食料��情の改善、医学・医療技術の発達などにより、人間の寿命はどんどん延びてきました。そして寿命が延びたことで、体のさまざまな臓器や器官は、より長期にわたって働かねばいけなくなりました。特に、目は過酷な状況に置かれています。 寿命が延びたことで使用期間が延びただけでなく、例えば本を読むようになった、車に乗るようになった、デジタルデバイスを使うようになった……といった人間の生活の変化により、目はどんどん酷使されるようになってきたからです。それだけに、私たちはいっそう目の健康に気を使わなくてはいけない時代になっていると思います。 目の病気には、死に直結するようなものはありません。しかし、どの目の病気も、悪化するほどに生活の質は大きく損なわれます。 しかも目の病気は総じて神経のダメージであり、一度ダメージを受けた神経を元通りにするのは、ほぼ不可能です。となると、ダメージを受けていない神経を守り、残っている機能をできるだけ保全することが重要になってきます。病気の進行を食い止めたり遅らせたりするためには、検診による早期発見が欠かせません。 人生100年時代だからこそ、年に一度の眼科検診で専門医による客観的な診断を受けることが、いつまでも、より快適に暮らしていけることにつながるのです。
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平松 類(ひらまつ・るい) 眼科医 医学博士 愛知県田原市生まれ。二本松眼科病院副院長。「あさイチ」、「ジョブチューン」、「バイキング」、「林修の今でしょ! 講座」、「主治医が見つかる診療所」、「生島ヒロシのおはよう一直線」、「読売新聞」、「日本経済新聞」、「毎日新聞」、「週刊文春」、「週刊現代」、「文藝春秋」、「女性セブン」などでコメント・出演・執筆等を行う。Yahoo!ニュースの眼科医としては唯一の公式コメンテーター。YouTubeチャンネル「眼科医平松類」は20万人以上の登録者数で、最新情報を発信中。著書は『1日3分見るだけでぐんぐん目がよくなる! ガボール・アイ』『老人の取扱説明書』『認知症の取扱説明書』(SBクリエイティブ)、『老眼のウソ』『その白内障手術、待った!』(時事通信出版局)、『自分でできる!人生が変わる緑内障の新常識』(ライフサイエンス出版)など多数。 ----------
(眼科医 医学博士 平松 類)
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blue-aotan · 3 months
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ハロー(´ー∀ー`)2024.3.21
リンツのチョコレートが食べたすぎて買ったのはいいものの、コロナ後遺症のせいでちゃんとした味が分からなかったあおです!
食べたい欲求をしっかり満たせない現状。
かと言って量食べればいいって訳でもなく、7ヶ月が経過しました。
未だに煙のにおいもします。
私が感じるに、コロナになる前の感覚には戻れない気がします。ウイルスに感染して、私の細胞とか神経系とか全部変異してしまったのではないでしょうか。
私のようにコロナワクチンを一度も打ってない人が職場にいますが、その人は感染しても嗅覚・味覚に変わりはなかったそうです。
(動悸や息苦しさもないみたい
ワクチンが関連してるとははっきりとは言えないし、やっぱり人それぞれ症状が違うんですよね。
私の場合は動悸が増えてたまに苦しくて眠れない時もあったり、過呼吸のような息苦しさがたまに出たり。
(最近記憶力もかなり低下してる気がします
コロナではなく別の病気の可能性もありますが←
それでも生きて好きなことができるうちは命に感謝です。
コロナ後遺症の話はいい加減飽きたので別の話題。
先日、この腰痛と肩こりを解消すべく整体へ行ってみました。
男性の整体師さんなので抵抗はあったのですが、物腰柔らかく症状を細かく聞いて下さり重心の位置や正しい姿勢なども教えてくれて今後も頑張って通い続けようかな…となりました。
ボキボキっとかはしない方針のところだったのですが、まぁまぁ痛かったです😭
みてもらったところ
・激しい巻き肩
・一部が反り腰
・腹筋が上手く使えていない
・左の骨盤が歪んでいる
・骨盤全体が前傾になっている
・重心がずれている
・股関節が悪い
・やや外反母趾気味
このように悪い部分が沢山ありました…
腰痛は姿勢のせいもありそうですね。
運動不足による筋力低下も原因の一つかもしれません。
ストレッチをしてる時に股関節がパキパキ鳴ってて、普段歩いたりとかふと動いた瞬間にパキっと鳴る事が結構ありますと言ったら
「よくないです!!痛みが出てきたりしたらすぐに言って下さい!!」
と言われました。
膝がよくパキッと鳴るので股関節のパキもそこまで深くは考えた事なかったのですが、今回それが悪いことなんだと改めて知りました😰
(痛みは今のところ全くない
正しい姿勢・重心を日々意識しながらコツコツと直していきたいと思います!
そんなこんなで3月も終わりに向かっておりますが、今年はなんだかんだ休日にすべき事が色々と立て込んだりしていて最近ようやく落ち着いてきました。
携帯のキャリア・機種変更や車のタイヤ買い替えなどなど。
なんか面倒臭いなーーーーって先延ばしにしていた事を今年は頑張ってやっていこう!って気にやっとなりました←笑
スマホも2年で機種変すれば残りの機種代払わなくていいとかそういったタイプの契約増えてますけど、すごい面倒臭がりの私は2年で機種変する事がめんどくさいってなってしまうのよね…
お得にしたいなら面倒くさがらずに身軽にフッ軽で即行動できたらいいんでしょうけどなかなか…ねぇ😭
お金が余るほどあればそんな事ちまちま考えなくていいのに←
好きな機種を好きなだけ買うよね←
(何個もいらんわいw
ってことで色々新しくなって気分爽快
そして暖かくなってきて気持ちも軽くなってきましたよねぇー
冬の鬱さらば( ˊᵕˋ )
なんだけど←
季節の変わり目で色んな不調がありました。
なんか体調悪いなーと思ってたんだけど、多分ストレスと自律神経の乱れっぽい事が判明しました。
動悸・吐き気・胃痛・頭痛…
みなさんも無理せず休み休みお気をつけ下さいませ😷
花粉症じゃないだけ御の字です!
気分アゲ↑になってきたので、ホラーゲーム買いました
(どんな流れやねん
私の心臓が止まるのが先かクリアできるのが先か…笑
乞うご期待🥱🫀
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kusa931kusakusa · 2 years
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拾いモノです
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日本の山奥にある男ばかりのとある村。
ここでは毎年ある催しが行われる。
『雄臭の象徴する色は赤か青か』
毎年赤に所属するプロレス団体と青に所属するプロレス団体が試合を行い、それに勝利した者の色がその年の雄臭を象徴する色となる。
勝利した色のプロレス団体は、その年いっぱい敗北した色に所属する者を、奴隷の如く扱うことができるのだ。
雄臭を決めるプロレスと言うこともあり、試合は純粋なプロレスではない。
腋、股間、そして足の匂いでの責めも組み合わさった雄臭プロレス。
それがこの村で行われるプロレスだった。
プロレス技に匂いでの責めを含ませ、匂いで屈服させることができれば勝ち。
まさに雄臭を決めるのに相応しい勝負だった。
今年の赤と青の代表は、両者とも長年鍛え上げらた逞しい肉体で、ガタイの良く背の高い屈強な男。
同じ色に所属する者達と代表を決めるために戦い、圧倒的な力で勝利を納めた男達だった。
その見た目だけで雄の臭いを感じられる様は、まさに男の中の男と呼ぶに相応しい。
「両者リングへ入れ」
レフェリーが二人に言うと、デカイ身体をのっそりと起き上がらせて椅子から立ち上がり、両者がリングへと入っていく。
赤のプロレスブーツに赤のプロレスパンツ、上半身は裸で自らの肉体を惜しげもなく晒す赤の代表である宗一郎。
青いプロレスブーツに青のプロレスパンツ、同じように上半身は裸で、宗一郎に負けず劣らず逞しい肉体を晒す青の代表である正吾。
「「「「うぉぉおおおっ!!」」」
二人がリングへと上がると、観客から歓声が上がった。
「今年こそ赤が勝つぞ宗一郎!!」
「青なんてぶっ潰してやれ正吾!」
それぞれに所属するメンバー達も、自分の色の代表へと声援を送っていた。
「おう、久しぶりだな」
「ふっ、お前が来るとは、赤は勝つ気がないのか?ははっ」
そう豪快に笑って煽る正吾に、宗一郎は余裕の笑みを浮かべて返す。
「そんなでかい口がいつまで利けるか楽しみだよ」
「お前等は俺達の匂いに屈服して奴隷でいんのがお似合いだよ」
「はっはっはっ!その言葉、後悔するなよ」
お互い煽るように言葉を交わしつつも一見冷静なように見えるが、中身はお互いへの闘志で燃え上がっていた。
赤は昨年敗北し、この一年赤のレスラー達は青のレスラー達の奴隷として過ごしてきた。
雑用をやらされながら、犬のように青のレスラー達の臭い腋や股間、足の雄臭を嗅がされ、毎日のように凌辱されたのだ。
その悔しさと恨みは計り知れないだろう。
そして去年戦った二人。
それが今回と同じ、正吾と宗一郎なのだ。
「ではルールはいつも通りだ。相手が負けを認めるまでお互いにプロレスと匂いで戦う。以上だ」
なんとも簡潔な説明だが、二人にはそれで良かった。
プロレス技で苦しめ、そして匂いでトドメを刺す。
それで相手が負けを認めれば良いのだ。
「さて…」
二人は戦うために履いていたブーツを脱ぎ捨てる。
赤いブーツを脱ぎ捨て、中から現れたのは真っ赤なソックスを履いた大きく逞しい宗一郎の足。
何日も同じソックスを履き続け、ブーツで蒸れさせて臭くなった足汗でドロドロの汚れたソックス。
そしてそれは青いソックスを晒した正吾も同じで、履き過ぎて裏の生地が薄くなった足裏には、ドス黒くなる程足汗が染み込み、ブーツから出た瞬間湯気を放つ程だった。
そしてそれは履いているビキニ型のプロレスパンツも同じだ。
お互いを象徴する赤と青のプロレスパンツは、この日の為に雄の臭いを込め続けた代物。
股間の汗を大量に含み、周りに男の蒸れた匂いを振りまいていた。
股間は中にある立派なイチモツのせいで大きく膨らみ、今から戦うという興奮で二人共いきり勃っている。
そしてお互い伸びをする度に晒される腋。
立派に毛が生え揃い、一本一本から汗の水滴が流れ落ちる程に蒸れたそこは、まさに熱帯雨林のようだった。
足、股間、腋、どこをとっても雄の臭い溢れる宗一郎と正吾。
これから二人はプロレスとこの匂いで戦うのだ。
「早く嗅がせてやりてぇなぁ」
正吾は自らの股間を撫でながら、見せつけるように前に突き出す。
「それはこっちの台詞だよ」
宗一郎は腋を見せつけながら、余裕ぶる正吾にそう返した。
「両者準備は良いか」
「あぁ」
「勿論」
「では…試合開始だ!!」
そう言って後ろに下がるレフェリー。
「「「うぉぉおおおおっ!!」」」
一斉に盛り上がる観客達。
そして二人は、そのリングの上で少し距離を取りながら構え、お互いを睨んでいた。
「おら、早く来いよ。最初に俺が受けてやるよ」
「ちっ、舐めやがって!!」
昨年の勝者である正吾の挑発に乗り、宗一郎が正吾に向かって走っていく。
しかし正吾はその様子を余裕の笑みを浮かべて見ているだけで、宣言通り一歩も動こうとしなかった。
「おらっ!!」
そんな正吾の後ろに回った宗一郎は、正吾の肩を抱きながら足を払って床へと仰向けに倒すと、そのまま身体を受け止めながら技を掛ける。
「腋の臭いを嗅がせてやるよ」
宗一郎がかけた技はドラゴンスリーパーだった。
寝かせた正吾の顔を腋で挟んで腕ごと固める寝技だ。
正吾の顔は宗一郎の蒸れた腋へと埋められ、否応なしにその腋の臭いを嗅ぐしかなくなってしまう。
「んっ…」
「くっせぇだろ!!俺の蒸れた腋の臭いはよぉ!!」
腕をグッと固め、痛みで呼吸を乱して無理やり呼吸を止めさせず、腋を鼻に擦るようにグリグリと動かす宗一郎。
腋汗が溜まり発酵した雄の臭いを放つ腋によって、その濃く臭い腋の臭いが正吾の鼻へと入っていく。
「んんっ…はっ、くっせぇ腋してやがるぜ。少し舐めてたよ。ぐっ」
「ははっ、腋の臭いに溺れろよ」
宗一郎は腋の臭いで窒息させる勢いで、グッと更に強く腋を正吾の顔に押し付けた。
腋は熱を籠らせて正吾の鼻を覆い、腋毛がズリズリと鼻を擦りつけられる。
「んあっ…ったく、くっせぇ腋してやがる…だけど少し考えが甘いな」
正吾は宗一郎の腋の臭いに苦しみながらも、笑みを浮かべて言った。
「はっ、負け惜しみか」
そんな正吾の姿に少し不安を感じながらも、宗一郎は自身の腋の臭いを信じて正吾を責め続けた。
しかし正吾に一行に負けを認める気配はない。
「ちっ、次はこうだ!!」
宗一郎は正吾から腋を離すと、そのまま身体を横に倒して正吾の腕を掴み、腕十字固めを決めた。
「おらっ!今度はくっせぇ足嗅がせてやるよ!」
「んごぉっ!!」
本来ならば足は床に付けるが、その足裏をわざと正吾の顔に乗せて腕を固めたのだ。
ジットリと湿る宗一郎の赤いソックス。
ブーツで蒸れ、足型が浮き出る程に汚れた足裏は、正吾の鼻を覆うように乗せられ、濃く臭い足の匂いを正吾に嗅がせた。
「ぐっ…くっせぇ足だな…んぉっ」
「俺の足汗がたっぷり染み込んだソックスはどうだ!」
足裏をグリグリと顔に押し付け、その臭い足の匂いを無理やり嗅がせながら、腕に痛みを与えていく。
痛みで乱れた呼吸と共に、宗一郎の雄臭溢れる足の匂いが次から次へと流れ込んだ。
「がっ…目に沁みやがる…おぉくっせぇえ…やるじゃねぇかっ」
「おらっ、去年とは比べ物になんねぇだろ!!」
この一年、どうすれば正吾に勝てるのかを考え続けた宗一郎。
足の新陳代謝を上げるために食べ物から変え、そしてブーツにも工夫をしたのだ。
通気性を敢えて悪くしたブーツ。
その湿気の多い熱い中でソックスと足が汗で蒸され、臭くて堪らない足ができあがった。
「んんっ…確かにこれは臭ぇ…んおっ…だが、まだまだだな」
「っっ!!強がるな!!こんなくっせぇ足嗅がされて平気なはずがねぇ!おらっ!!」
宗一郎は正吾の鼻を足指で覆うように包むと、掴んでいた腕を引き、痛みで鼻で息を強制的に吸わせ、濃厚な臭い足の匂いを体内へと流れ込ませた。
「んぉお"っ!!!」
「どうだ!!俺の蒸れに蒸れたくっせぇ靴下はよ!」
流石に効いたのか、正吾はその臭い足の匂いに面食らったように目を瞑り、唸り声を上げる。
「おらっ!おらっ!おらっ!」
勝機が見えた宗一郎は、グリグリと足を鼻に押し付けながら正吾に何度も何度も足の匂いを嗅がせ続けた。
「んぐっ…くっせぇなチキショウ…んぉっ…」
「さっさとこの臭ぇ足に負けを認めろ!」
笑みを浮かべながら言う宗一郎だが、相当臭い足の匂いを嗅がされているにも関わらず、やはり負けの宣言をしない正吾。
それどころか、その臭い宗一郎の足の匂いを嗅がされながら、ニヤリと笑みさえ浮かべ始めたのだ。
「ははっ…なかなかだが、やはりお前は甘いな」
「なにっ!!」
「こんな足の匂いなんざ、いくら嗅がされても俺は負けなんか認めねぇって話だ」
「ちっ…」
臭がりながらも、笑みを浮かべながら宗一郎の足の匂いを嗅ぎ続ける正吾。
その姿を見て宗一郎は舌打ちをすると、トドメを刺そうと次の体勢へと移り始める。
宗一郎の腕を引き無理やり立たせて自身もそのまま向き合うように立つと、その体勢からコブラツイストをかけたのだ。
通常であれば宗一郎が正吾の後ろから掛けるのがコブラツイストだが、敢えて宗一郎は自身の方を向かせて掛けていた。
「これでどうだ!!」
「ぐっ!!!」
向き合うようにしてコブラツイストを掛けられた正吾。
頭をグッと固められた体勢で目の前にあるのは、宗一郎の膨らんだ股間だった。
赤いプロレスパンツを履いた宗一郎の股間。
そこは股間の汗と性器から出た液体で濡れ、異様な程に蒸れて湿っていた。
「嗅ぎやがれ!!」
宗一郎は股間を突き出し正吾の顔に押し当てると、そのまま正吾に痛みを与えるために締めを強くする���
「んぐぉおっ!!」
蒸れて温かい股間に鼻を押し付けられ、そのまま勢いよく嗅いでしまった正吾。
正吾の鼻には、股間で分泌される様々な臭いが混ざった濃い雄の臭いが大量に流れ込んだ。
本能から男を感じるような、フェロモンのような濃厚な雄の臭い。
「んぁああっ!!くっせぇなぁっ!!」
これには正吾も堪らず声を上げた。
嗅げば嗅ぐ程身体に染み込むような、股間から放たれる雄臭。
「おらっ!!俺のくっせぇチンポの匂い、たっぷり嗅ぎやがれっ!!」
「ふぐぉっ!!」
湿り気を含んだ股間のネットリとした匂いは、確実に正吾にダメージを与え、正吾の顔がその匂いに苦悶の表情を浮かべていた。
その苦しむ表情に勝ちを確信した宗一郎は、その興奮で大きく勃起してプロレスパンツを膨らませ、更にその股間の匂いを強めていく。
「はははっ!!俺のチンポ臭は最高だろ?」
「くっそ…ううっ、くっせぇなぁ…」
「さっさと負けを認めちまえよ!」
これでもかと言う程に股間を押し付け、思い切り正吾の身体を締め上げ、休むことなくその雄臭を嗅がせ続けた。
「おらっ!!おらっ!!」
「んぉおっ…くっ、調子に乗りやがって…」
正吾は顔に熱く硬い宗一郎のチンポをプロレスパンツ越しに感じながら、そこから放たれる臭気に犯されていく。
そんな正吾の様子を、宗一郎はニヤリと歯を見せて笑って見ていた。
しかし…
「ぐっ…おらぁああああっっ!!」
「なっ!!!!」
宗一郎が雄叫びと共に正吾を振り払い、掛けられていたコブラツイストを振り解いたのだ。
「はぁっ…はぁっ…なかなかやるじゃねぇか…」
「チッ…あと少しだったのに…」
「はっ、あんなんで俺が負けるはずねぇだろ。今度はこっちの番だ!!」
正吾はすぐに息を整えると、そのまま宗一郎に向かって掴みかかっていった。
「んぐっ!!」
「おらっ!!」
技を掛ける側だった宗一郎だが、見た目よりも体力を消耗しており、正吾の不意打ちにあっさりと掴まってしまった。
そしてそんな正吾が掛けてきたのは…
「んぐぉっ!!」
「おらっ!!てめぇと同じドラゴンスリーパーで腋責めだ!!俺のくっせぇ腋を嗅ぎやがれ!!」
そう。
正吾は宗一郎に格の違いを見せつけるため、敢えて同じ技で腋の匂いを嗅がせることにしたのだ。
正吾の逞しい腕の付け根の、毛の生える熱く蒸れた腋。
その腋でがっつりと顔を覆うドラゴンスリーパー。
宗一郎の顔を覆わんばかりに押し付けられた、蒸気すら見える程に湿気の籠ったそこからは、ツンとする悍ましい程の雄の臭いが立ち込めていた。
「んぎぃぃいいいいっっ!!!」
「おらっ!!これが漢の腋の匂いだ!!てめぇの軟弱な腋とは違ぇんだよ!!」
身体を思い切り締め上げ、苦痛で息を乱して腋の匂いを無理やり嗅がせる。
そのあまりに濃厚な腋の匂いに、宗一郎は苦悶の表情を浮かべて呻いていた。
「くっせぇえええっ!!んぐぐっ!!んおぉぉおっ!!」
キツ過ぎる腋の雄臭に苦しみ、それから逃れようと抵抗するが、正吾は完璧に技を掛けているため、その腋の匂いから逃れることはできない。
「おらっ!おらっ!俺の腋はくっせぇだろ?てめぇみてぇな半端な腋の匂いじゃねぇぞ!!」
「ふぎぃぃいいっっ!!」
噎せ返る程に濃厚な雄の臭いに当てられ、宗一郎はそのキツさに息を吸うのを止めようとするが、正吾によって決められたドラゴンスリーパーは更に締まり、苦痛の叫びと共に大量にその臭い腋の匂いを吸い込んでしまう。
「んがぁあああああっっ!!おぉぉお"おっ!!」
「おいおい情けねぇぞ?腋でもうへばってんのかぁ?」
腋の溝の一番匂いの籠った場所に鼻はすっぽりと嵌り、その堪らない雄臭が次々と宗一郎の鼻へと流れ込んでいく。
気を緩めれば意識が吹っ飛びそうな程の濃い匂いと共に、腋毛からは汗が伝って宗一郎の顔へと流れていった。
「どうしたぁ?俺の腋の匂いは最高だろ?気ぃ引き締めて嗅げよ」
「んぐっ!!んぎぎぃいっ!!クソがぁあああっ!!」
その叫びと共に更に多くの匂いが宗一郎の鼻へと流れ込む。
汗で蒸れたあまりに臭い腋の匂いに襲れながら、必死に抵抗する宗一郎。
そんな様子を見て、正吾はニヤリと笑いながら宗一郎を腋から解放した。
ドラゴンスリーパーを解いたのだ。
「んあぁっ!!はぁっ…はぁ…はぁ…」
床に突っ伏して必死に息を整えようとする宗一郎だが、そんなことを易々と許す程正吾は優しくない。
「腋の匂いだけじゃ足んねぇよなぁ?」
「んがぁっ!!」
そんな宗一郎を掴んで床へと無理やり仰向けに寝かせると、宗一郎の上半身に腕ごと掴んで上から覆い被さり、69の体勢で固めたのだ。
プロレスパンツの中で蒸れに蒸れたチンポの濃厚な匂いを放つ、その股間で宗一郎の顔を覆いながら…
『上方四方固め』
宗一郎が行ったものと比べて正吾の行うこの寝技は、より顔に股間を密着させることができる技だ。
「おらっ!!俺のくっせぇ股間を嗅げ!!」
「んぐぉぉおおおおっっ!!」
腋とはまた違い、性の匂いを大量に含む湿気の籠った股間の蒸れた匂い。
「くせぇえええええっっ!!あぎぁっ!!!」
あまりに臭い股間の匂いを嗅がせながら、プロレスパンツ越しにその勃起したチンポを鼻に押し付けられ、雄としての優位を示されているようにも見えるそれは、正吾が相手を辱めるために使う得意技だった。
「あぁ?どうだぁ?俺の臭くて堪んねぇ股間はよ。プロレスパンツにもたっぷり雄汁が染み込んでんだろ?おらっ!!」
テンポ良くグッグッグッと腕を強い力で抱き、痛みを与えることによって何度も何度も嗅がせてい正吾。
「んぐぉおっ!!ぐぁあっ!!んぉおっ!!」
「はははっ!!興奮でチンポ汁出ちまった。まだまだ臭くなんぞ」
根っからのサディストである正吾は、技を掛けながら自身の匂いを嗅がせ、苦しむ宗一郎の姿に興奮していた。
それによってチンポからは次々と我慢汁が溢れ、それが更に正吾の青いプロレスパンツを蒸れさせ、濃厚な匂いを放ち続けるのだ。
「んぐぐぐぐっ!!おぉぉおおお"お"っ!!」
宗一郎が予想していた以上に強烈な雄臭に、顔を大きな股間に覆われながら低い唸り声を上げる。
「顔の凹凸が良い具合にチンポに擦れて、こりゃ良いな」
そんな苦しむ宗一郎の顔を犯すように、正吾は腰をピストンさせて大きく膨らんだ股間を擦り付け、自分自身が感じて楽しむ程の余裕を見せていた。
「んぁああっ!!くっせぇええっ!!くそっ!!」
技を返そうと宗一郎も藻掻くが、上から押さえつける正吾を引き離すのは容易ではなく、起き上がろうとすればするほど顔を正吾の股間に埋める結果となってしまう。
「はははっ!顔面使って気持ち良くしてくれんのか?おらっ!玉の裏もよーく嗅げよ」
勃起したチンポの濡れた先を嗅がせていた正吾が、今後は玉の裏で宗一郎の鼻穴を埋めてしまう。
股間で一番蒸れる玉近辺。
濃厚な雄の臭いが発酵し、ムワっと蒸気でも発生するのではと錯覚する程に蒸されていた。
「んぐぉおおおっ!!ぎぁあああっ!!」
その熱く臭い空気を大量に吸い込み、体内へと流れ込んでしまった宗一郎は、あまりの匂いに苦しみの声を上げる。
その声を嬉しそうな顔で聞いている正吾の股間は、ビクビクと興奮で震えていた。
「あぁ…良いぞ…俺のくっせぇ股間で苦しむてめぇの声、最高だよ。おらっ!!」
恍惚の表情を浮かべながら、股間をズリズリと鼻に擦りつけ続ける正吾。
その度に臭くて堪らない股間の雄臭が宗一郎を犯し続けた。
そしてその雄臭責めは腋や股間で終わる訳ではない。
宗一郎は正吾に嗅がせる際、腋→足→股間の順に嗅がせていた。
しかし正吾は腋の次は股間を嗅がせている。
お互い一番臭い場所は最後のトドメとしてとっておくもの。
腋や股間でこんなに苦しむ宗一郎に待ち受けているのは、正吾が一番自信のある足だ。
「ふぐぉぉぉおおっっ!!」
「はははっ!!てめぇに俺の一番くっせぇとこ嗅がせてやるよ!!」
正吾は宗一郎に乗っていた身体をどかすと、流れるように次の技へと移っていく。
股間の匂いで弱った宗一郎にはその技をかわすことはできず、されるがままになるしかなかった。
最後に正吾が繰り出した技。
『ヘッドシザーズ』
それは通常両足の膝部分で寝ている相手の首を挟み、そのまま膝で首を締め上げる技。
しかし正吾の行った技は、片足と床で挟み込むものだった。
それだけだと締まりが悪く、すぐに解かれてしまう。
しかしそうはさせないのが正吾オリジナルの『ヘッドシザーズ』だ。
「くっせぇ足で固めてやるよ!!」
そう言って正吾は、空いた方の足裏で、宗一郎の顔面を押さえつけたのだ。
正吾の履いた青いソックス。
日々の訓練でブーツの中で蒸れに蒸れ、悍ましい程の汗が染み込み、足指の形にくっきりと黒く浮かび上がる代物。
その大きく逞しい足が宗一郎の顔を覆い、力強く押さえつけたのだ。
「おらっ!!」
そこで膝で挟んだ首を締め上げる。
すると、宗一郎は苦しさで正吾の蒸れた足の匂いごと空気を吸ってしまった。
「んぐぅぉぉぉおおおおおおおっっ!!!!」
一気に鼻へと流れ込む正吾のあまりに臭い足の匂い。
足汗が発酵して酸味と納豆臭の入り交じる強烈な匂い。
雄の本能が強制的に屈服してしまいそうな程、濃厚な雄の臭いだった。
「ふぐぁぁああああああっ!!おぉぉおおお"お"っ!!」
「俺の足は格別だろ?おらっ!!くっせぇ足嗅げよ!!」
グリグリと鼻を踏みつけ、ソックスからは足汗がグチュグチュと染み出していた。
宗一郎の足とは比べものにならない程に臭い、正吾の臭い大足の匂い。
あまりの臭さに、屈強な身体に似合わず宗一郎は涙すら流していた。
「ははっ!!何泣いてんだよ!そんなに足が臭ぇか?おらっ!」
「んぐぉぉぉおおおっ!!ぐぜぇえええっ!!」
湿気と共に鼻へと流れ込む足の激臭。
その男の足汗を大量に含む匂いは、ただ臭さで苦しむだけでなく、自身が弱者であると無理やり突き付けられるような、屈辱すら与えられるものだった。
あまりに濃く臭い雄の匂い。
動物的本能にまでその臭い足の匂いは訴え掛けてくるのだ。
「てめぇがいかに軟弱かが分かるか?俺の雄臭に屈服しやがれ!!」
「ふぎぃぃいいいいいっっ!!」
蒸れた足裏を顔に擦り付け、その匂いを擦り付けられるように力強く顔を踏まれ、豚のような声を上げる宗一郎。
これまで匂いに対する耐性も、自身の匂いを強化するための訓練も、必死に取り組んできた宗一郎だったが、あまりに臭いこの匂いに心が折れかけていた。
それ程までに正吾の足の匂いは強烈で、雄を感じさせる匂いだったのだ。
「くっせぇ足の本番はこっからだぞ」
そんなボロボロの宗一郎に鞭打つように、正吾がニヤリと歯を見せて笑って言う。
そして宗一郎の顔に乗せている足を移動させ、鼻を足指でテントのように覆った。
足の部位でも一段と蒸れて匂いの濃いその場所。
ネットリとした液体が青いソックスからは染み出し、感触だけで臭いと判断できる程の代物。
その足指の股で鼻穴を覆うと、正吾は首を絞める膝の力をグッと強めた。
「ふぐぉ"ぉんあ"ぁああぎあぁ"ああ"ああっっ!!!!」
その苦痛でズズっと鼻で空気を大量に吸ってしまった宗一郎。
鼻に流れ込んだ足の匂いは強烈で、鼻孔を突きさすような鋭い酸味のある匂いの後、ジワジワとねっとりとした足汗の発酵臭が染み込んでいく。
「ふぎぃぃあぁああああっ!!おぉぉおおおおっっ!!」
あまりに凶悪な匂いのそれは、宗一郎を屈服させるには十分過ぎる程の匂いだった。
「これが雄の匂いだ。てめぇに誰が支配者が教え込んでやるよ!!」
あまりの匂いに暴れる宗一郎を足裏で顔を踏みつけ押さえながら、指をグニグニと動かして濃く臭い足の匂いを鼻へと流れ込ませる。
「ひぎぁぁあああっ!!おぉぉおおおお"ぉ"っ!!」
「おらっ!!俺の足の匂いに屈服しちまえよ!!」
臭い足の匂いに藻掻き苦しむ宗一郎を見ながら、その様子を楽しむように更に嗅がせようとするドSな正吾。
既に勝敗は明確だった。
バンバンと床を叩き、ついに宗一郎はギブアップをしたのだ。
「そこまで!!」
レフェリーがそう言って近づき、宗一郎と正吾を引き離す。
「青の勝ちだぞてめぇら!!」
顔面を涙と唾液で汚しながら、茫然とした表情で仰向けに寝る宗一郎と、その宗一郎の胸に足を乗せ、観客達に手を上げて勝利を宣言する正吾。
「「「「うぉぉぉおおおおおおっっ!!!」」」」
青所属の男達が歓声を上げ、赤所属の男達がぐったりとうなだれる。
今年の雄臭を象徴する色が『青』と決まった瞬間だった。
「てめぇら赤は一生青には勝てねぇんだよ!!今年も可愛がってやるからな」
うなだれる赤所属の男達に向かい、正吾は指を指しながら言った。
赤はただただ涙を流しながら、悔しそうに歯を食いしばることしかできない。
「おいてめぇら!!仕上げだ!!」
「「「おう!!」」」
青のプロレスラー達がリングへと上がり、宗一郎を囲む。
これから始まるのは、勝者が行う凌辱ショー。
勝負に負けた宗一郎は、皆の前で正統色と認められた青の軍団の雄臭で犯されるのだ。
壇上に上ってきたのはどいつもプロレスラーなだけあり、代表である正吾に負けず劣らず屈強な男達だ。
「まずは腋だ!!」
正吾が叫ぶと、青の男達は一斉にその蒸れた腋を晒し、床に寝る宗一郎に近いていく。
「や、やめてくれっ!!」
「敗者がグダグダ言うんじゃねぇ!!」
「男なら黙って受け入れろ!!」
いくつもの汗で蒸れて臭い腋たちが宗一郎を襲う。
顔には腋毛の生えたいくつもの逞しい腋が覆い、そのツンとくる雄臭で包み込む。
身体にもいくつもの腋がこすり付けられ、その臭い腋の匂いを擦り込まれていく。
そして赤いプロレスパンツを脱がされた股間には、試合でいきり勃った宗一郎のチンポがあり、そのチンポまでも男達の臭い腋に挟まれてしまった。
「んぐぅぉおおおおおおおっ!!あぁぁあああっ!!」
「おらっ!!くっせぇ腋でイっちまえよ!!」
「たっぷり腋の匂い嗅がせてやるからなぁ」
「俺らのくっせぇ腋、堪能しやがれ!!」
腋は一斉に宗一郎の身体の上で動き出し、リングは男達の熱気で蒸気が湧き始めていた。
そのあまりに臭い腋の匂いに犯されながら、チンポを腋で激しくコかれる宗一郎。
「ふぎぁぁああっ!!ぐぜぇえええっ!!だずげでぐれぇええっっ!!」
臭い腋の匂いに泣き言を良い、それでも腋でコかれる快感でチンポをビクビクと動かすその姿に、最初の勇ましさはもうなかった。
「ほら深呼吸して落ち着けよ」
「くっせぇ腋の匂いで深呼吸な」
「おいおい、くっせぇ腋嗅がされてるくせに、チンポだけはいっちょまえに感じてんじゃねぇか」
「んぐぉおおおっ!!あぁぁああああっっ!!」
臭すぎる雄臭に包まれ、苦しみながらもズリズリと腋でチンポをコかれ続け、宗一郎は皆の前で辱めを受ける。
「おらっ!!俺の腋は気持ちぃか?はははっ!!」
「イくなら腋の匂い思いっきり嗅ぐんだぞ?」
「おらっ!!」
腋でチンポを締めながらコき上げられる中、濃厚な腋の匂いが次々と鼻へと流れ込む。
そして…
「んひぃぃぃいいいいいいっっ!!」
宗一郎は情けない声を上げながら、チンポから大量の精液を吐きだした。
射精の快感に声を上げながらも、そのせいで臭い腋の匂いをまた思い切り嗅いでしまう。
「ふぐぉおぉおおおおおおっっ!!」
「おらっ!!次はここだぞ!!」
そんな苦しみ鳴く宗一郎を休ませることなく、青のレスラー達は今度は股間を擦り付け始める。
宗一郎の顔を男達の股間が覆い、性の匂いの混じる蒸れたチンポの匂いが襲う。
そして射精したばかりでまだ硬さの残る宗一郎のチンポを、素股でもするようにその臭いチンポを包んだプロレスパンツの股間で擦り始めた。
「おらっ!!今度はチンポの匂い嗅ぎながらイけよ!!」
「俺のチンポを擦り合わせようぜ」
「試合見てたら興奮して我慢汁出まくってたんだよなぁ」
「んぉぉぉおおおおおおおっっ!!」
レスラー達の青いレスラーパンツの股間で覆いつくされ、今度は酸味のあるツンとくる雄臭に襲われる。
そしてチンポは強制的に勃起させられ、臭い股間の素股によってシゴかれた。
「おらっ!!俺らの雄の匂いを味わえよ!!」
「あぁ、直接嗅がせてやりてぇなぁ」
「これが終わったら俺のくっせぇチンポ直接舐めさせてやるからな」
あくまでこれは見せしめのための雄臭の凌辱ショー。
直接チンポを嗅がせたり舐めさせるのはここでは禁止されている。
しかしこのショーが終われば、赤に所属する男達は皆青の奴隷。
いくらでも好きにできるのだ。
「んぐぉぉおおおおおっ!!やめでぐれぇええっ!!」
「チンポは元気じゃねぇか」
「俺らの匂いに興奮してんのか?」
「はははっ!!てめぇ女かよ!!くっせぇくっせぇ男の匂いで興奮するなんてよ」
蒸れた股間はとても臭く、悍ましい物だった。
しかし男達のフェロモンを大量に含むこの匂いは、敗者の心を蝕んでいき、本能で征服されたいと思わせてしまう程に強烈だったのだ。
宗一郎自身はそんな気はないのに、身体はあまりに濃い雄臭に強制的に発情させられてしまう。
「んひぃぃいいいっ!!んぐぉぉぉおおおっ!!」
「おらっ!!俺らのくっせぇ股間でイけよ!!」
宗一郎のチンポは、両脇からビキニ型の青いプロレスパンツの熱い股間に擦り上げられ、快感に液を垂らしていた。
「くっせぇ股間嗅ぎながらイっちまえ!!」
「濃厚なチンポ臭たっぷり嗅ぎながらな!!」
「んふぉぉぉおおおおおっっ!!!!」
そして再び宗一郎のチンポからは精液が噴出した。
「んぐぉぉぉおおっ!!おぉぉおおおおっ!!」
快感と雄臭の臭さに悶える宗一郎だが、まだ凌辱ショーはこれだけでは終わらない。
「最後はとっておきだぜぇ」
「俺らのくっせぇくっせぇ足でイかせてやるよ」
「一気に雌になっちまうかもな」
それぞれ履いているブーツを脱ぎ捨て、中から青いソックスを履いた足を晒した男達。
その足はどれも大きく、何日もブーツの中で足汗に蒸されて湿っており、悍ましい程の匂いを放っていた。
「だ、だずげでぇえええっ!!」
その足に囲まれただけで泣き言をいう宗一郎だが、青のレスラー達はそんな姿を見て悦ぶように足を近づけていく。
「おらっ!!くっせぇ足を嗅げよ!!」
「最高に蒸れてくせぇぞぉ」
「チンポも足で包んでやるからなぁ」
宗一郎の身体をいくつもの大きなソックス足が覆い、そしてチンポはいくつもの足によって筒を被せられたように包まれる。
ブーツを脱ぎたての熱く蒸れた臭い足。
異常な程の熱気と雄臭の溢れるリングの上で、レスター達は宗一郎に足責めをし始めた。
「んぐごぉぉおぉぉおおおお"おお"お"おっっ!!」
臭すぎる男の足の匂いに悶絶しながら、チンポをその蒸れ足ソックスによってシゴき上げられる宗一郎。
あまりに臭く濃い雄の匂いに、身体は異常なまでに熱く発情し、その臭い足の匂いを嗅げば嗅ぐ程チンポへの快感は強まった。
しかしそれはあくまで宗一郎の身体の話であり、心は別だ。
あまりに臭すぎる匂いに苦しみ、不快さで狂いそうになっていた。
「くっせぇ足嗅ぎながらくっせぇ足でコかれてんぞ」
「赤の男はみんな青に屈服してりゃいいんだよ」
「はははっ!安心しろよ。また一年たっぷり可愛がってやるよ。くっせぇくっせぇ雄臭でな!」
「ふぎぎぃぃいいいいっ!!だずげっんおぉぉおおっ!!」
蒸れたソックスのザラつく感触で包まれたチンポがシゴき上げられ、身体を這う足達は乳首や腋など性感帯も指先で擦り上げられる。
そんな匂いの地獄の中で与えられ続ける快感。
これからそれを赤のレスラー達は毎日受け続けるのだ。
「んぐぉぉおおおおっ!!ひぎぃいいっ!!」
「おらっ!!イけよっ!!情けねぇ赤は青のくっせぇ雄臭でイっちまえ!!」
「はははっ!!足でコかれてチンポ気持ち良いかぁ?」
「んがぁああああっ!!おぉぉおおおおっ!!」
先ほど射精したばかりだと言うのに、宗一郎のチンポは既にイきそうになっていた。
それ程青のレスラー達の雄臭は濃厚で、宗一郎の身体をそれを求める雌へと変化させていた。
「んぐぉおおおおっ!!おおぉぉおおっ!!」
「イく時は思いっきりくっせぇ足嗅げよ~」
「ほらっ、俺のここ、すげぇくせぇから嗅いでみ」
「おらっ!!イきやがれっ!!」
「んふおぉぉおおおおおっっ!!!」
思い切り蒸れに蒸れた臭い足の匂いを嗅がされながら、男達の足に包まれシゴかれ続けた宗一郎のチンポから、再び勢いよく精液が噴き出した。
「ふぎぃいいいっ!!」
そんなチンポを踏み、再び皆の前に立ったのは正吾だった。
「おい赤のヘタレ共!!明日から男の匂いってのはどんなものか、徹底的に教え込んでやるからな!!」
リングの上で泣きながらチンポを踏まれて射精する宗一郎。
明日からは赤のレスラー達全員がそうなる運命なのだ。
「後で生チンポ嗅がせてやるからなぁ」
「俺はくっせえ素足嗅がせてやるよ」
「今度腋嗅がせながらサウナに入るってのも良いな」
青のレスラーのそんな言葉と共に、赤と青の戦いがここに終結した。
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ichinichi-okure · 11 months
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2023.7.9sun_tokyo
朝 暑すぎて目が覚める。 エアコンをつけるも、もうひと眠りするほど 早くもない、アラームよりは少し早い、微妙な時間。起きよう、と思うものの、すぐには立ち上がれず、右を向いたり左を向いたり、布団の中で、数分を引き延ばす。
そういえば、最近あまり夢をみていない。みているのかもしれないけれど、覚えていない。 子どもの頃は、ほとんど毎日夢をみていて、宙に浮いてかなりの距離を移動したり、知らない人に追いかけられて走って逃げた末に包丁で刺されたり(刺されたところで目が覚めたので、自分が死んだのか無事だったのかもわからない)、村を救う、みたいなハードな夢も多かった。 現実世界ではぼんやりと生きていたので(今もだけど)、毎日夢を生きる方がずっと大変で、起きるとぐったりと疲れていたりした。
起き上がって、白湯をつくり、洗濯をして、シャワーを浴びる。こないだ買ったデニムのちょっとワイドなパンツを履く。 どうせ汗で流れ落ちるけれど、一応化粧もする。
家を出ると曇っていて、風が強い。なまぬるい風。青空も見えるのに雨もぽつぽつ。不穏な天気。 このところ猛暑続きだったので、今日は少し涼しくて過ごしやすいのかな、と期待するも、しかし歩いているとすごい湿気で、あっという間に暑くなる。 今日は日曜日なので、1日お店にいる予定。
家からお店に歩いて行くときは、途中で公園の中を通る。あるときに、日傘をさしていても直射日光が強すぎて、日陰を求めて逃げるように公園に入ってみたら、ちょうどよい木陰の道があって、それからは、秋も冬も、雨の日も、いつも公園の中を通るようになった。外の道路を歩くのと、ほんの数メートル、ズレるだけなのに、景色が、世界が、全く違う。
何かの約束みたいに、枝につけられたピンクのリボン あじさいの坊やたち
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多分何時間も同じ作業をしているんだろう、真剣な表情の砂場の男の子 何かを考えているようないないような、ぼんやりとベンチに座っているおじいさん 軽い足取りで植物のあいだを闊歩する鳩
メガネに白マスク、白シャツに斜めがけバッグ、というお揃いコーデの2人組とすれ違う。 白い小花柄ワンピースに白いバッグ、フラットバレエシューズな2人組と、すれ違う。
お店に着いたら屋上の植物たちに水をあげる。レモンマートルとシルクジャスミン。レモンマートルは、葉っぱをちぎるとレモンの香りがする、というのにひとめぼれして、先月、三茶の広場でやっていたマルシェで買った。 (マルシェで植木屋さんに葉っぱを嗅がせてもらったら、予想以上にレモンの香りで、テレビショッピングばりのリアクションをとり、即決した)
屋上はかなり過酷な環境で、しかもわたしたちがしっかりとした世話を出来ないので、前にいた植物は枯れてしまったのだけど、今のところ、この2人はなんとか元気でいてくれている。一緒にがんばって、夏を越そうね。
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昼 12時になってお店を開ける。ドアを開けていると、外からは もわぁ とした空気が入ってくる。ぽつぽつとお客さんが来てくれるも、こんなに湿度が高くて暑い日は、みんな家にいた方がよいのではと思ってしまうくらい。座っているだけで熱中症になりそう。 ふらふらになりながら、何度もお茶とはちみつレモンを飲む。
夕方 最近は暑いからか、日曜日でも夕方以降にたくさんお客さんが来てくれたりするのだけど、今日はいちにちを通してお店は緩やか。屋上に出てひと呼吸。もうすぐ19時でも空はまだ、だいぶ明るい。 お客様がいないのでイスに座って、空を見上げる。広い空の下、とりあえず生きていれば大丈夫、と思う。息を吐いて、吐ききって、ゆっくり、吸う。背中まで空気を入れる。
横隔膜は開きすぎないで、背中は少し丸める感じ。頭は前に出ないように。ピラティスでまっすぐな立ち姿勢をおしえてもらうも、しっくりこないまま、だけど少しずつ、反り腰は直ってきている。お客様がいないのをいいことに、まっすぐ立つ練習をしてみるも、周りのビルの誰かから見えていたら、不気味だったかも。
夜 お店は21時で閉店。今日はわたしはnicolasに寄らずに早く帰ることに。 スーパーに寄って野菜や豆乳、アイスとチョコレートを買う。そして大好きな桃がなんとクーポンで割引になっていたので、もちろん買う。くだものはみんな好きなのだけど、中でも桃は特に好き。すべての食べものの中でも、上位に好き。このあいだnicolasで、今年初の桃をいただいたのだけど(もちろん天才的においしかった!)、デザートで食べるのと、そのままの桃を食べるのはまた違う気がする。というわけで、丸ごと桃は、今年初! 桃は柔らかいぬめぬめがいいのか、少し硬めのシャキッとしたのがいいのか。派閥があるらしいが、正直わたしは桃に関してはもう何でも好き。桃というだけで愛している。
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義理の実家からいただいた、おいしいハムやソーセージと、パプリカを焼いたのとトマトと、味の薄い野菜スープを作って食べる。 最近夏バテぎみなので、麹甘酒も、ちゅーっ。 明日はもっと、暑いらしい。
先月のB&Bでの安達茉���子さんと土門蘭さんのイベントのアーカイブを観ながら、横になる。このあいだ途中まで見たので、続きから。 (しかし気づいたら寝てしまっていて、ちょっとしか見れていなかった、これを毎回続けていて、全く見終わらないまま、視聴期限が迫っている)
翌朝 夫の人が帰ってきたら桃を剥いて食べよう、と楽しみにしていたのに、結局起き上がれず。そのまま寝てしまい、 桃は翌朝、食べました。ぬるり。あんまり甘くなかったけれど、これはこれで、愛している。
-プロフィール- くまがいれいこ 40歳 世田谷 本屋・twililight手伝い @reioyms
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armanskij · 1 year
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目を逸らさずに、立ち向かえ
L'événement @ Rectangle Productions 他
Directed by Audrey Diwan
 執拗に観客を主人公と同化させようと試みる作品というものがある。やり方を間違えると白けるだけだが、本作は難なく成功している。スタンダードサイズの画面、彼女を追って周りがボケているピントの合わせ方。これら技術的な面も手伝っていることも確かだが、何よりとある「病気」が自分の身に降りかかるという状況が有無を言わせず全ての人間に当事者意識を植え付ける。彼女のバックグラウンドや、選択、考え方、仕草を気に入る気に入らないといった、通常主人公を批判的に見る隙を観客に与えることはない。観客は始めから彼女の肉体に囚われ、逃げることができない。
 病気と書いたが、それは主人公が言うところの「女だけがかかる病気」「主婦になるという病」、すなわち妊娠である。大学生の主人公 Anamaria Vartolomei は予期せぬ妊娠に直面し、これでは文学あるいは国語の教師になりたいという夢を諦めなければならなず、自分の人生を捨てなければならない危機に見舞われる。しかし 1963年当時フランスでは中絶は違法であり、彼女を助けることができる真っ当な方法は存在しない。彼女は、アンダーグラウンドの中絶手術を求めることとなる。
 冒頭の授業で詩の授業が行われている。読まれているのは戦争を描いた Louis Aragon の詩  « Elsa au miroir » である。
 教授が Vartolomei に質問する。「この手法をなんと言いますか?」  « Une Anaphore » 「首句反復」と答える彼女。単語の響き、アンシェヌマン(フランス語の発音ルール)が起きてこう聞こえる。 « Une Nana Forte » 「強い女」。戦争に巻き込まれる強い女とは何者か?
 それは、一つに原作者の Annie Ernaux のことである。彼女の実体験を映画化した本作は、壮絶で孤独な戦いに身を投じる若い女性を描く。私はカメラワークが László Nemes の 「サウルの息子」や「サンセット」といった作品のようだと感じたが、戦禍の中、主人公がどこにピントを合わせて世の中を見ているかという点さえも観客に主人公との同化を強いる意味では当然の選択だったのだろう。観客は、彼女が見ていないものは知るよしもないが、逆に彼女が見ているものは全てくっきり見せつけられる。さらに、サスペンス的要素もこの作品の危機感をドライブする。3週、7週などとカウントアップされていくクレジットは焦燥感を煽り、観ている側もパニックに襲われそうになるのだ。戦争、病気といった非日常に突入したことによって、もはや自分にとって時間の数え方が変わってしまう。しかしこれはある意味、妊娠という状況でなくとも男女の大きな違いかもしれない。28という数字を聞いて、男はなんのことだろうと首を傾げるなどよくある話だ。
 さて、妊娠が分かったヒロインだが60年代フランスにおいて人工妊娠中絶はいかにタブーであったかを思い知らされる場面が次々と出現する。まず、医者が「生理が来るように」無言で処方した薬は精力剤で胎児を元気付けるものだったという騙し討ち。あるいは、女友達は雑談の中で子供を堕すことを「冗談でも言わないで」と真顔で言う。当然の成り行きで、打ち明けた途端に巻き込まないでほしいと友人関係も疎遠になる。時間が経ってから、仲良し三人組の一人だった Luàna Bajrami が私は欲望のままに男と遊んだけれど、妊娠しなかったのは運が良かっただけど心の中を Vartolomei に打ち明けて歩み寄るシーンがあるが、 « Portrait de la Jeune Fille en Feu » で彼女は周りの登場人物にあんなに堕胎に協力してもらってたのに、本作での主人公への仕打ちはあまりじゃないか!と突っ込んだ。笑
 追い詰められた彼女に手を貸したのは、悪い遊びを知っている男友達 Kacey Mottet Klein 。「経験がある」という学生 Alice de Lencquesaing にアンダーグラウンドで手術を請け負う Sandrine Bonnaire を紹介される。 Alice は告げる。手術のあと医者が「流産」と書くか「中絶」と書くかは運次第。後者ならみんな-妊婦、手術した人、協力者-刑務所行きだと。手術費用は400フラン。Vartolomei は大事な蔵書を売って金を工面する。そこで売られているのは Simone de Beauvoir や 冒頭の Aragon の著作。自由やそれを奪う戦争について彼女がいかに考えを巡らせているかを垣間見せる一場面だ。ちなみに、フランスは1789年の革命の頃まで中絶は合法だった。それが禁止されたのは1810年から。理由は、 Napoléon Bonaparte による戦争。国民全員が何らかの形で戦争に関わることになる近代国家にとって、人口の量と質の管理は至上命題であり、子供を勝手に堕ろされては政府にとって不都合だったのである。
 クライマックスとなる堕胎の場面は、 Bonnaire の自宅へ足を踏み入れてから手術完了まで長尺のワンショットで見せる。ショットを映画における瞬きとするならば、ここは瞬きなしの一呼吸だ。一度目の手術では胎児は持ち堪えて失敗。もういちどと Bonnaire を説得し行った2回目では成功。彼女は大学の寮に戻ってから激痛に耐えた末、トイレで亡骸を産み落とす。この場面では便座に座る彼女を正面からカメラが捉えているのだが、ほんの少し下へ向けられる瞬間がある。そこには血だらけの肉塊が臍の緒一本で Vartolomei と繋がっている姿が映される。女性は血と肉、すなわち命をかけて妊娠をするものなのだという事実を観客に見せる姿勢に容赦はない。それが本作の映画化にあたり、考えられうる限り最大の誠実さを証明していることは言うまでもない。
 最後には世間が行う時間の捉え方7月5日の文学の試験で幕を閉じる。試験前に教授が引用するのは Victor Hugo の言葉だ。その内容も顔を上げて、旗を掲げて歩めという戦争もの。若者たちよ、強い女性たちよ、歩き闘い続けよというメッセージが込められていた。
 なお、この闘いは現在も進行中である。法律は変えられる恐れがあるからとフランスでは先月24日、憲法に中絶へのアクセス権を明記する憲法改正案が国民議会で可決されたばかりだ。右派が過半数を取る上院での可決は難しいらしいが、 US の動向に対する反動としても議論は続いていくだろう。最後に余談だが、成績が下がってきたヒロインに対し教授が冷たい態度をとったせいで Vartolomei ならぬ Ernaux は教師になんかならず作家になりたいと思ったのではないだろうか。であるならば、 Nobel 賞作家の第一歩を歩ませたという意味で彼はグッジョブだ。笑
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kennak · 1 year
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姉から連絡があり、母さんの体調が悪いこと、癌の可能性もあることを知らされる。母さんは自分の意志でがん検診は受けていなかったから、不安を感じつつも、「姉は大袈裟だからなー」と、大ごとになるとは思っていなかった。ただ、残念ながら婦人科系の癌だった。コロナ禍ではあったものの、運良く地域の基幹病院に入院することができ、溜まっていた腹水を抜いてもらったり、検査をしたりと、色々と処置をしてもらったらしい。医者からは一般論として「5年後にはいないだろう」という話をされたが、「医者は短めに言うんだろうな」と、前向きに捉えようとした。仕事の帰り、一つ手前の駅で降りて、歩きながら母さんに電話した。「そうじゃないかと思ってたから、分かってスッキリしてるよ。子供たちは立派に独立して、みんな家族もいるし、私は思い残すことはないから。」とサラッと話していた。なんとか気丈に話そうとしたが、涙が出た。帰宅し、妻に報告したら、また涙が出た。祖父を癌で看取った妻は「そんな簡単に亡くなりはしないよ」と、怒っていた。彼女なりに励ましてくれてたんだろう。「何で癌で人が死ぬのか」ということすら知らないことに気づいて、いくつかの本を読んで、「多臓器不全で死ぬ」ということを今さらながら知った。翌月、帰省すると、「で、何しに帰ってきたの?」と、とぼけたことを聞かれたので「様子見にだわ」と。特段変わった様子はなく、いつもの調子。溜まっていた腹水を抜いてもらって、楽になったらしい。「しばらくは大丈夫かな」と思う。翌朝、母さんは「そのうち、『あれが最後に作ってもらった朝ごはんだったな』ってなるわよ」と軽口を叩きながら、目玉焼きを焼いてくれた。その後の検査で、癌はそれなりに進行していて、「ステージⅢの後ろの方」と評価された。外科手術や放射線治療を行う段階にはなく、化学療法(プラチナ製剤��を試してみて、癌細胞が小さくなるようであれば、外科手術や放射線治療を検討しようということに。母さんは「『髪の毛が抜けることがある』じゃなくて『絶対抜ける』って言われたわ」と笑っていた。程なく、抗がん剤治療が開始され、母さんの髪の毛が抜けた。この頃は、抗がん剤の副作用が抜ければ、食べたいものだとかも色々あったから、買いだめしといてあげたりした。実家に家族と帰省して、夜遅くまで母さんも交えて酒を飲んだりもした。まだ、言葉もしゃべれなかった娘も、母さんにはよく懐いて���た。副作用に耐えながら抗がん剤治療を続けたものの、思うような効果は得られなかった。「癌の専門医の先生の方がいいんじゃないか」という思いもあり、主治医の先生にも相談の上で、セカンドオピニオンを取ることにした。その道の専門医の先生2名にお話を伺いに行ったが、どちらも「うちなら治るかもよ」だとか「この治療法よりも、こっちの方がいい」なんて話は、当然なく、今診てもらってる病院で、「そのままお世話になる方が良い」とやんわりと伝えられた。それでも、「やっぱり経験値が高い専門医の先生の方がいいんじゃないか」と、先の2名の先生のうちお一人にお世話になることにした。細かく検査もしてもらったが、「やれることは限られている。選択肢がないわけではないが、リスキーな上、効果の期待値は低いので、おススメはしない。本人の希望に沿うならば、通いやすい、もともと診てもらっていた病院で改めて診てもらっては。」とのお話があり、結局、出戻ることにした。その病院からの帰路、高速道路の大きなSAに寄った。「あなたたちが小さい頃には、旅行の度に、いつもこのSAに寄ってたのよ」と懐かしそうに話していた。ちなみに、今��もそのSAを通過すると、その時の母さんを思い出して、なんだか泣きそうになる。改めてもともと診てもらっていた病院に伺ったところ、事前に調整はしていたこともあってか、主治医の先生は嫌な顔一つ見せず引き受けてくださり、次の段階の抗がん剤(単剤)にトライすることになった。これ以降、段々と体力の低下、食欲不振が顕著になりだし、当初は「抗がん剤の副作用かな」と考えていた。思うような効果が得られず、抗がん剤の投与を中止してからも状態は改善しなかった。母さんが癌であることは、母さんの希望もあって、積極的に知らせることもせず、また隠すこともしなかったが、状況を知った遠方の親類達が揃って見舞いにきてくれたりもした。この頃は、まだ座ってコーヒー飲むらいのことはできていて、楽しそうにお喋りもしていた。妹が介護休業を取り、母さんの面倒を見てくれることになった。その時点では、自分のことは自分でできていたし、正直言って「早いんじゃないかな」と思っていたが、結果的には、ドンピシャのタイミングだった。死ぬまでに行きたいと言っていたスカイツリー。東京で結婚式に出席したので、その足でスカイツリーに行き、ビデオ通話で見てもらった。「すごいねー」と笑ってくれた。12月下旬は、早めの冬休みを取って実家に。妹からは、体力の低下が著しいということは聞いていたが、想像よりずっと悪かった。ベッドの脇に座って吐いてばかりいた。思っていた以上の状態に言葉が出なかった。夜も眠れず、食事も摂れず、水分を摂れば吐き。かわいそうで見ていられなかった。足のむくみもひどく、母さん曰く、頭の中は「しんどい」一色だった様子。肩をさすったり、足を揉んであげたりしかできない。足をマッサージしてあげていると、少しの間だけ、寝てくれたのが、せめてもの救いだった。そんな中、母さんは「とても渡せそうにないから」と、お年玉と一緒に娘の七五三の祝いを渡してくれた。涙が溢れた。母さんも「湿っぽくなってごめんね。」と言いながら泣いていた。年明けも早々に再入院。あまりに辛そうな母さんの姿に、打ちのめされてしまった。母さんの希望は、「できる限り家にいたい」だったので、妹が訪問看護の段取りを取ってくれ、病院には無理を言って予定より早く退院した。この訪問看護のチームが素晴らしく、親身になって、それも超速で対応してくれた。母さんは「病院から逃げ出して正解だった」と、喜んでいた。急遽、仕事を休み、実家へ。妹と交代で診る体制に。眠れず、体の置き所がない母さんは、15分おきくらいで、姿勢を変えてあげなければいけなかった。辛そうだった。少し話ができそうなタイミングで、「今までありがとう。母さんの子どもで良かったよ。」と口に出すと、涙が溢れた。喋るのも辛く、手をあげるのもしんどいはずの母さんは「何を言ってるの。こっちのほうが、ありがとうよ。いい子だね。」と言って、頭や頬を撫でてくれた。涙が止まらなかった。妹と交代で眠りながら看ていたが、日に日に意思疎通がとれなくなり、意識レベルも低下。せめて、苦しまず、穏やかに逝かせてあげたいと、鎮静剤の量も増やしていった。眠る時間が増え、顔をしかめる頻度も少なくなり。「母さん、先に横になるね。また後でね。」と声をかけて寝ようとしたところ、ほとんど意識のないはずの母さんが、少し手を上げて応えてくれた。「バイバイしてんの?」と、妹と2人で笑った。その晩、妹に「やばいかも」と起こされ、会ったときにはほとんど呼吸もなく。子供3人が揃ったところで、母さんは静かに息をひきとった。目を瞑り、とても穏やかな顔だった。皆、口々に「お疲れ様。よく頑張ったね。」と母さんの闘病生活の終わりを労った。泣き崩れてしまうかもと思っていたが、不思議と涙は出ず、ホッとしたような気持ちになった。訪問看護に連絡したところ、深夜にも関わらず、看護師さんが来てくれた。死亡診断は医師しかできないとのことだったが、脈拍を見たり、瞳孔を見たりして「確かに亡くなられていますね」と手を合わせてくれた。そこからは、子供三人で、看護師さんの指示に従って、母さんの体を拭いたり服を着せたり。服は死装束じゃなく、妹が見繕ってくれていた、いつも母さんが来ていた服を着せることにした。最後に看護師さんが、母さんに化粧をしてくれると、すっかり血色が良くなって、まるで寝てるみたいだった。看護師さんが帰られてからは、葬儀屋を探したり、段取りや役割分担を話したり。葬儀屋は、空いてるところに頼むしかなかったというのが実態で、なんなら「火葬場に直送しろ」くらいのことを言っていた母さんの考えとは違ったんだろうけど、普通に葬儀屋に頼むことになった。一旦、各自寝て、翌日以降に備えた。翌日は午前6時の医師の死亡診断に始まり、寺や葬儀屋との調整や、親類への連絡、行政関係の手続きなどで忙殺され、あっという間に通夜になった。どんな感じで動いたのか、正直、思い出せない。覚えているのは、いつも気にかけてくれていた母さんの友達が、偶然訪ねて来られ、母さんに会って「信じられない」と泣いてくれたことと、一報を受けた母さんの義姉にあたるおばさんが寄ってくれて、母さんに会って「寝てるみたい」と泣いてくれたこと。おばさんは「お母さんは若い頃はお父さん(自分の祖父。自分が小さい頃に他界。)と、喧嘩ばかりしててね。今頃、お父さんから「うるさいのが来た」って言われて、また喧嘩してるかも。」と、知らない話をしてくれた。納棺のときには、たくさんの花と一緒に父さんの写真や、自分を含む子どもの写真を納めた。短い髪の毛の頭には、ウィッグをつけたかったんだけど、生前に「あんな高いものを燃やすなんてもったいないから、棺桶には入れるな。」と言われていたので、やむなく頭はそのままに。誰が使うんだよ。マジで。葬祭会館で通夜を終え、そのままそこに泊まることにし、姉と妹は一旦、家族と帰宅。酒を飲みながら待ち、時々、隣室の母さんの顔を覗きに行っては、線香をあげ、その度に泣いた。夜中の2時になっても、誰も帰って来ず、体力的にも限界だったので、寝た。深夜に姉が、朝型に妹が戻ってきた。翌日も葬儀、火葬とバタバタ。孫たちが大騒ぎしてくれたおかげ(?)で、終始、湿っぽくならずに済んだような気がする。母さんも、「あんたらねぇ」と笑ってくれただろう。母さんが望んでいたような「火葬場に直送」じゃなくて、普通の見送り方にはなってしまったけれど、許してくれると思う。それから職場に復帰するまでは、皆で家の片付けや、クレジットカードの解約やら銀行関係やらのたくさんの事務手続き、親類縁者への連絡などを分担して対応している間に、あっという間に過ぎていった。その間、近所の方だとか、母さんの旧来の友達だとかがたくさん弔問に訪ねてきてくれた。皆が口々に「いい写真だね」と言ってくれた祭壇の遺影は、母さんが自分で選んで、わざわざトリミングまでしていたものだったから、本人も満足してるだろう。母さんの旧来の友達からは、母さんの若い頃の話や、その後の友人関係の話しを伺った。学生時代のことや、社会人時代のことだとか、自分が知らない母さんの一面をたくさん知ることになった。当たり前だけど、母さんは「母」としてだけでなく、一人の人間として、たくさんの人と関係を作り、それを続けていたんだなと気付き、なんだか新鮮な気持ちになった。そういえば、ウィッグは友達の一人で、自分もよく知っているおばさんが貰い受けてくれることになった。何度も「管理が大変だけど大丈夫?」と聞いたけど、それを踏まえて快く受け取ってくれた。ウィッグの販売店には、その旨は連絡しておいた。弔問に来てくれた時にお渡ししたところ、母の遺影に向かって「返さないからね」と笑っていた。思い返してみると、母さんが癌になってからというもの、母さんとは色んな話ができた。父さんのことだとか、嫁いできた経緯だとか、これからのことだとか。癌との闘いは、とても辛かったと思うけど、近い将来確実に訪れる「死」に向かって、本人も家族も、心の整理も含めて、時間をかけて準備することができたように思う。僕は癌で死にたくないけれど、そんなふうに、ちゃんと準備をして死にたいなと思う。母さん、ありがとう。母さんの子どもで良かったよ。【追記】たくさんの方に、暖かな言葉をいただき、恐縮しております。ありがとうございました。私自身が、母さんが癌になるまで癌のことを何も知らず、また、どのような経過を辿るのかを知らなかったので、「自分用に書いたけど、同じ境遇を迎えてたり、これから迎えるかもしれない誰かのためになるかも」と、乱文を投稿させていただきました。野暮かなとも思いましたが、いくつかコメントいただいた内容を踏まえ、その趣旨に合うかなとも思うので、いくつか追記いたします。母さんが癌の宣告を受けたのは、2月上旬で、翌年の1月中旬に60台後半で他界しました。10月頃まではまずまず元気でしたが、以降は段々と体力の低下が顕著になりました。12月中旬までは、体調が良ければ妹の運転でドライブに行く程度の元気さもあったのですが、食事を受け付けなくなってからは、あっという間でした。思っていたよりもずっと早い経過だったので、「もっと会いに帰ったら良かった」と思うこともありますが、「そうさせないところが母さんらしいな」とも感じています。経過は個人差が非常に大きいものだと思います。母さんよりも早い経過を辿る方もいれば、もっと緩やかな経過を辿る方もおられるでしょう。早い経過を辿ることを前提に、たくさん話し合って、準備をしておいた方が良いと思います。特に、残された時間はできたら住み慣れた自宅で過ごしたいという方が多いと思うので、それができるよう、家族の介護+訪問看護の体制を整えられるかをしっかり考えておくべきだとも思います。うちの場合は、姉が実家の比較的近くに住んでいたこと、妹が介護休業に理解のある職場環境だったこと、また、訪問看護のチームが素晴らしかったこと等、様々な要因が重なって、自宅で看取ることができました。なお、母さんがやっていてくれた事で本当に助かったのは、エンディングノートをしっかり書いていてくれたことと、重要書類(通帳、カード、年金手帳、マイナンバーカード等)を整理してくれていたことです。特に、亡くなったことを誰に知らせるのかは、親類縁者ならまだしも、友人関係はほとんど分からなかったので、これがなかったら不可能でした。「私も書くから一緒に書かない?」と、提案されてみても良いと思います。長くなってしまいましたが、皆様の一助になりましたら、幸いです。皆様のコメントから、元気をもらいました。改めて、ありがとうございました。
母さんがガンで死んだ(追記)
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alaephoenicis · 1 year
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レムリア 〜 母なる樹に抱かれた生活
ロビン・カイザー
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オリジナル動画:https://youtu.be/UMtxg1KGJXE
【和訳:ALAE PHOENICIS】
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レムリアには巨大な生命の樹があり、そこに人が住んでいた。現在でも、この母なる樹の遺跡は世界各地に残っている。レムリアの記憶が人々の心の中に残っている限り、本来の自然な生活を取り戻す希望があるのです。 ロビン・カイザーのホームページ:robinkaiser.eu
レムリアと母なる樹木での生活
その昔、地球にはまだ水が澄んでいて、土壌には豊かな栄養分が含まれ、自然の中のあらゆるものが底力をみなぎらせ、振動していた頃がありました。
当時はまだ炎には性格があり、風には声があり、自然界のものにはみな生命が宿っているのが当たり前だったのです。
火の精霊は炎を舞ってその姿を人間に見せ、風の勢いは遠くの国の物語を語ってくれた。
人間は、すべての生き物と親密な交流を持ち、すべての生き物が心の動きや感情を直感的に理解できる言葉を話すことができました。
自然界に備わる力は友人や仲間として扱われ、助けを求めたり、助言を求めたりすることができました。
人間が他の土地について何か知りたいと思ったとき、その土地の情報を素早く運んできてくれないかと風に頼みました。
そして、人生における決断を運命に問うたときは、炎の精霊に火を灯しました。
人間が全生涯を自然界の創造物に捧げているため、自然界の精霊たちは人間に好意的でした。
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二つの部族が互いに連絡を取り合いたいとき、同時に火を焚いて、その火を通してもう一方の火の中に姿を現すことができました。
この地球上のすべての炉は自然のネットワークを形成しており、ある人の意識は、ある炉を通して別の炉に現れることができるのです。そして、火の精霊の力を借りて、火の炎の中に顔や形を作ります。
人々は火を通してお互いを訪問し、風に乗って聞こえてくる声と火の中の幻影の両方を通して、お互いにメッセージを伝え合うことができたのです。
その頃、大地との対話は、現在の数倍も大きかった木々を通して行われました。
そして、人々は木々を通して深い瞑想状態に身を置くことができたのです。
人の意識が木と融合すれば、木の枝や根をすべて自分の手足のように感じ、その意識で大地に深く沈むことができました。
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自然は人間の家であり、森の中の空き地はすべて自分の家の中のようだったからです。
自然の力は、その自然な成長を通して、人間のために素晴らしい住まいを作ってくれていました。
この地球が人間に与えた最大の贈り物は、母なる樹木です。
地球は人間に、天に近い最も美しい住処を提供しようと考え、ある種の樹木を空に向かって何キロも成長させました。
この樹木は、地球が生んだ最も素晴らしいものでした。
そして、それらは生きた楽園であり、色鮮やかな花々が咲き乱れる独立した生態系でした。
一本の母なる樹には、部族が丸ごと住めるほどで、その上に台座、塚、見晴らし台、梁、小川、円周およそ3メートルもある花があり、日没時には必ず開いて燐光を放っていました。
世界は言葉に尽くせないほどの美しい色彩に染まり、生活は静かな調和と深い感銘、そして母なる自然への大きな感謝の中で営まれていました。
なんでも豊富にあるため、人間は何も植えなくても木や草の果実を食べて生きていました。
人間が必要とするものはすべて自然が与えてくれ、生活の自然な営みを阻害するものは何もありませんでした。
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人の体は細身で力強く、生命力に溢れていました。直立歩行で、足取りも軽く、優雅でした。そして、歩くというより、大地の上を踊るように飛び跳ねていました。
夕刻になると、人間も植物も生きとし生けるものすべてが調和し合い、深い静寂の中にたたずむことがありました。
風が止んでしまいました。もう葉っぱの音もしないし、人も獣も動いていません。
すると、すべての生命を包み込むような大きな静寂が訪れるのです。あれだけ活気に満ちていたのに、まるで、自然そのものが息を潜めて、ひと休みしているかのようです。
この最も神聖な時代にあって、すべての生命は互いに静かに結ばれ合っていたのです。そして、すべての生命体が母なる樹木と大地の精霊のもとに一体となっていました。
その日の時刻によって、さまざまな香りが漂っていました。
中には、一瞬で人を別の意識状態にしてしまうような魅惑的な香りもありました。
生命のリズムは、ある種の植物の開花によってもたらされ、その植物はその進化において動物と植物の中間に位置する生物のようなものでした。
母なる樹には、その上を移動する植物があり、常に最も日当たりの良い美しい場所に移動していました。
また、一日に一度、数時間だけ大きな花を咲かせ、その後また閉じる植物もあります。また、他の植物には脈拍や呼吸のリズムがあることも見て取れました。
ある日、ある植物が花を咲かせると、その香りが辺り一面に広がり、その香りを通じて人間の意識はその植物と一体化しました。
その花が閉じればまた、別の植物が示し合わせたかのように花を開き、人間の心を招き入れるのでした。
母なる樹は年に一度、数日間だけ花を咲かせますが、このときが自然と人間が結ばれる最高の神聖な結婚式だったのです。
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母なる樹が開花するや否や、人々を恍惚とさせる芳香が立ち込めるため、その宴の準備は長い時間をかけて行われました。
母樹の花、そして一部の植物には幻覚作用があり、その香りだけで人間の意識を大きく拡張させることができたのです。
萼(がく)から滴る露を飲み、花粉で満たされた空気は、呼吸するだけで豊かな栄養を与えてくれます。
人間の皮膚はやや硬く、革のようでありながら、ところどころに細かいクリスタル状の構造が浮き出ていて、その上に皮膚が光っているように見えます。
深い意識状態から抜け出したばかりの人たちは、文字通り、肌がクリスタルのように光り輝いていました。
植物は人々の生活の場となり、母なる樹木の中には、夜になると大きな花が開き、その中に寝そべることができるような、各人専用の植物があったりしました。
人間の意識は植物と結びついていて、疲れたときには必ず寝台植物の花びらが開くのでした。生きている花の中に横たわって眠れば、花はその人の体を優しく覆い包んでくれました。また、目が醒めると共に、花は開きました。
こうした人たちの眠りとは、意識的に夢の世界へ移行することでした。
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また当時の人々の生活の営みは大部分が睡眠中に行われていました。
人生には、夢の世界というレベルからしか叶えられないことがありました。ほかに、身体的な場面での方がもっとうまくやれものもありました。
その意味で、世界には意識が起きている間も、眠っている間も、変わりありませんでした。
人々は、睡眠中に物理的な世界に繋がるのと同じように、日中も睡眠中の世界に繋がっていたのです。
そして、彼らは夢の中の世界から、物理的な領域で多くのことを実現させました。彼らは自分の人生を夢で描き、その夢に従って自然界は急速に物質面で成長していったのです。
母なる樹は鉱物の王国と植物の王国の狭間で進化を続け、地球は母なる樹を通して生きた結晶のように空へ向かって成長していきました。
地球に宿る魂は、母なる樹の中に最も純粋な形で転生していきました。そして、地球の鉱物界から植物界へと流れるようなクリスタル状の移り変わりを形成したのです。母なる樹の幹は、大地から伸びたクリスタルのようで、頂上に向かって次第に樹らしくなっていくのでした。
反重力によって、母なる樹の幹は地中の鉱物だけでなく、大量の水を運び、樹冠の中で湧き水となり、小川や滝となって地上に流れ落ちていきました。
ある種の樹木の鼓動は、大地から何キロも上へと水を汲み上げ、樹冠の中に泡立つ湖を形成していました。
さっきも言いましたが、それぞれの木にはそれぞれの生態系があり、当時の人が住んでいた地球にはそれぞれの地球があったのです。
当時の気候は一年中安定しており、熱帯らしい暖かさで、昼夜の温度差もわずかでした。
母なる樹に生える植物は、どちらかというと動物に近かった。そして、動物はより植物に近かったのです。
そこには沢山の巨大な平野があり、非常に多様な色と形をしたキノコがたくさんありました。
いくつかのキノコは夜になると小さな提灯のように発光し、母なる樹を光の海に変えてしまいました。
当時は昆虫や鳥類もいましたが、その他の大型哺乳類はまだいなかったか、母なる樹の上で生活していた人たちには関わりのない存在だったようです。
ただ、人間の髪の毛には特別な役割があり、髪の毛もある種の生き物として、触角のような役割を果たしていました。
樹木が幹から枝を生やすように、人も頭髪を生やしました。そして、髪の毛は手や足と同じように身体の一部として何かに触れることができたのです。
また、髪は意識的に動かすことで、例えば三つ編みにすることなども出来ました。
人々は特別な日には葉や花で身を飾りましたが、伝統として我々が理解している衣服は存在しませんでした。
彼らは、高い目標を目指すことなく、母なる樹木の腕に抱かれ、最も素晴らしい自然構造の中で暮らしていたのです。
そして、彼らの存在は、大地が差し出す贈り物で深く満たされていました。
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レムリアと呼ばれるこの時代に、一体何が起きて、このような生き方が終焉を迎えたのかは、その時のあなた方の記憶に委ねるしかないでしょう。
私たちはただ、あなたの地球の最も素晴らしい創造物が完全に消滅させられた、巨大な破壊工作が行われたことを記しておきたいのです。
すでに一部の人類が乱伐を営んでいたにもかかわらず、レムリアの人々は最後まで、大自然に忠実に、平和的な生活を続けようとしました。
そうして、地球にとって最も痛ましきことは、すべての母なる樹木が計画的に伐採されていったことでした。
今でも、その痛みは地球のエネルギー領域で感じることができるのです。
母なる樹木が壊されて以来、地球上の生命はますます分離と孤立に向かって後退していきました。
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そして、一本の母樹の最初の伐採から始まったこの破壊行為のクライマックスに、今日、皆さんはたどり着いたのではないでしょうか。
けれども、あなた方の世界では、当時の楽園のような地球での状態を覆い隠し、嘘だらけの人間の起源を語る勢力があるものの、まだ母なる樹木の名残が息づいているのです。
そして、自然と深く一体と なって生きていた記憶は、一部の人々の中で未だに消えてはいません。
もちろん、現在の地球上の自然はかなり異なっていますが、レムリア時代の生き生きとした自然が当時のみなさんの意識に呼応していたように、ある意味、現在のみなさんの意識状態に呼応した小規模な自然がそこに存在しているのです。
地球上の天然の楽園が破壊されようとも、地球はまだ失われてはいません。
そして、レムリアの原初的状態の生々しい記憶が、あなたに相応しい未来を創造する力を持っているのかもしれません。
人類として別離の時代を乗り越えたとき、地球上のいくつかの木々は再び他の木々よりも大きく成長し、ガイアの精霊が自らそれらの木々に転生して、天まで成長させるのかも知れませんね。
今の地球には、このような素晴らしい生き物を育てるだけの生命力と強さがありません。しかし、地球が再生し、枯渇から回復したとき、人間は再び木の上に生きた自然の建造物を育てることができるかもしれません。
最後に、以下の写真をじっくり眺めて、レムリア時代と母なる樹木の記憶を呼び覚ましてみてください。
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これらは、のこぎりで切られた切り株です。
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かつて、あなたの地球で最も偉大で最も素晴らしい生き物でありました。
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この地球上の破壊工作は、はるか昔から始まっており、あなた方は今になってその結果を体験しているのだということに、どうか気づいてください。
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レムリアの生活形態は破壊されたとはいえ、人々の心の中に生き続けています。
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そして、それがそこに生き続け、人々の意識の中に残っている限り、地球を癒す希望も残っているのです。
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isakicoto2 · 2 years
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つまさきになみのおと
そういえば、自分から電話すること��って滅多になかったのだった。 ディスプレイに浮かぶ名前を、そっとなぞるように見つめる。漢字三文字、向かって右手側の画数が多いそれは、普段呼んでいるものよりもなんとなく遠くに感じる。同じ、たったひとりの人を指す名前なのに。こんな場面でやけに緊張しているのは、そのせいなのだろうか。うんと昔は、もっとこれに近い名前で呼んでいたくせに。本人の前でも、居ないところでだって、なんだか誇らしいような、ただ憧れのまなざしで。 訳もなく一度ベンチを立ち上がって、ゆるゆると力なく座り込んだ。ただ電話をかけるだけなのに、なんだってこんなに落ち着かないんだろう。らしくないと叱咤する自分と、考え過ぎてナーバスになっている自分が、交互に胸の中を行き来する。何度も真っ暗になる画面に触れなおして、またひとつ詰めていた息を吐き出した。 寮の廊下はしんと静まり返っていた。巡回する寮監が消していく共同部分の照明、それ以外は規定の中だけで生きているはずの消灯時間をとうに過ぎている。水泳部員の集まるこのフロアに関して言えば、週末の夜にはもう少し笑い声も聞こえてくるはずだ。けれど、今日は夜更かしする元気もなく、すっかり寝息を立ててしまっているらしい。 午前中から半日以上かけて行われた、岩鳶高校水泳部との合同練習。夏の大きな大会が終わってからというもの緩みがちな意識を締める意味でも、そして次の世代に向けての引き継ぎの意味でも、今日の内容は濃密で、いつも以上に気合いが入っていた。 「凛先輩、今日は一段と鬼っスよぉ」 残り数本となった練習メニューのさなか、プールサイドに響き渡るくらい大きな声で、後輩の百太郎は泣き言を口にしていた。「おーい、気張れよ」「モモちゃん、ファイト!」鮫柄、岩鳶両部員から口々にそんな言葉がかけられる。けれどそんな中、同じく後輩の愛一郎が「あと一本」と飛び込む姿を見て、思うところがあったらしい。こちらが声を掛ける前に、外しかけたスイミングキャップをふたたび深く被りなおしていた。 春に部長になってからというもの、試行錯誤を繰り返しながら無我夢中で率いていたこの水泳部も、気が付けばこうやってしっかりと揺るぎのない形を成している。最近は、離れたところから眺めることも増えてきた。それは頼もしい半面、少しだけ寂しさのような気持ちを抱かせた。 たとえば、一人歩きを始めた子供を見つめるときって、こんな気持ちなのだろうか。いや、代々続くものを受け継いだだけで、一から作り上げたわけではないから、子供というのも少し違うか。けれど、決して遠くない感情ではある気がする。そんなことを考えながら、プールサイドからレーンの方に視線を移した。 四人、三人と並んでフリースタイルで泳ぐその中で、ひときわ飛沫の少ない泳ぎをしている。二人に並んで、そうして先頭に立った。ぐんぐんと前に進んでいく。ひとかきが滑らかで、やはり速い。そして綺麗だった。そのままぼんやりと目で追い続けそうになって、慌ててかぶりを振る。 「よし、終わった奴から、各自休憩を取れ。十分後目安に次のメニュー始めるぞ」 プールサイドに振り返って声を張ると、了解の意の野太い声が大きく響いた。
暗闇の中、小さく光を纏いながら目の前に佇む自動販売機が、ブウンと唸るように音を立てた。同じくらいの価格が等間隔に並んで表示されている。価格帯はおそらく公共の施設に置いてあるそれよりも少しだけ安い。その中に『売り切れ』の赤い文字がひとつ、ポツンと浮き上がるように光っている。 ふたたび、小さく吐き出すように息をついた。こんな物陰にいて、飲み物を買いに来た誰かに見られたら、きっと驚かせてしまうだろう。灯りを点けず、飲み物を選んでいるわけでも、ましてや飲んでいるわけでもない。手にしているのはダイヤル画面を表示したままの携帯電話で、ただベンチでひとり、座り込んでいるだけなのだから。 あと一歩のきっかけをどうしても掴めない。けれど同時に、画面の端に表示された時刻がそんな気持ちを追い立て、焦らせていた。もう少しで日をまたいで越えてしまう。意味もなくあまり夜更かしをしないはずの相手だから、後になればなるほど��ードルが高くなってしまうのだ。 今日は遅いし、日をあらためるか。いつになく弱気な考えが頭をもたげてきたとき、不意に今日の後ろ姿が脳裏に浮かんだ。途端に息苦しさのような、胸の痛みがよみがえる。やはり、このままでいたくなかった。あのままで今日を終えてしまいたくない。 焦りと重ねて、とん、と軽く押された勢いのまま、操作ボタンを動かした。ずっと踏み出せなかったのに、そこは淡々と発信画面に切り替わり、やがて無機質な呼び出し音が小さく聞こえ始めた。 耳に当てて、あまり音を立てないように深く呼吸をしながら、じっと待つ。呼び出し音が流れ続ける。長い。手元に置いていないのだろうか。固定電話もあるくせに、何のための携帯電話なのか。そんなの、今に始まったことじゃないけれど。それに留守電設定にもしていない。そもそも設定の仕方、知ってんのかな。…やけに長い。風呂か、もしくはもう寝てしまっているとか。 よく考えたら、このまま不在着信が残ってしまうほうが、なんだか気まずいな。そんな考えが浮かんできたとき、ふっと不安ごと取り上げられたみたいに呼び出し音が途切れた。 「もしもし…凛?」 繋がった。たぶん、少しだけ心拍数が上がった。ぴんと反射的に背筋が伸びる。鼓膜に届いた遙の声色は小さいけれど、不機嫌じゃない。いつもの、凪いだ水面みたいな。 そんなことを考えて思わず詰まらせた第一声を、慌てて喉から押し出した。 「よ、よぉ、ハル。遅くにわりぃな。あー、別に急ぎじゃないんだけどさ、その…今なにしてた? もう寝てたか?」 隙間なく沈黙を埋めるように、つい矢継ぎ早に並べ立ててしまった。違う、こんな風に訊くつもりじゃなかったのに。いつも通りにつとめて、早く出ろよ、とか、悪態の一つでもついてやろうと思ってたのに。これではわざとらしいことこの上なかった。 「いや…風呂に入ってきたところだ。まだ寝ない」 ぐるぐると頭の中を渦巻くそんな思いなんて知らずに、遙はいつもの調子でのんびりと答えた。ひとまず色々と問われることはなくて、良かった。ほっと胸を撫で下ろす。 「そ。それなら、良かった」 電話の向こう側に遙の家の音が聞こえる。耳を澄ませると、何かの扉を閉じる音、続けて、小さくガラスのような音が鳴った。それから、水の音、飲み下す音。 …あ、そっか、風呂上がりっつってたな。向こう側の景色が目の前に浮かぶようだった。台所の、頭上から降る白い光。まだ濡れたまま、少しのあいだ眠っているだけの料理道具たち。水滴の残るシンクは古くて所々鈍い色をしているけれど、よく手入れがされて光っている。水回りは実家よりも祖母の家に似ていて、どこか懐かしい。ハルの家、ここのところしばらく行ってないな。あの風呂も、いいな。静かで落ち着くんだよなぁ。 「それで、どうしたんだ」 ぼんやり、ぽやぽやと考えているうちに、水かお茶か、何かを飲んで一息ついた遙がおもむろに投げかけてきた。ハッと弾かれるように顔を上げ、慌てて言葉を紡ぎ出す。 「あー、いや…今日さ、そっち行けなかっただろ。悪かったな」 「…ああ、そのことか」 なるほど、合点がいったというふうに遙が小さく声を零した。 そっち、というのは遙の家のことだ。今日の合同練習の後、岩鳶の面々に「これから集まるから一緒に行かないか」と誘われていたのだった。 「明日は日曜日なんだしさ、久しぶりに、リンちゃんも行こうよ」 ねぇ、いいでしょ。練習終わりのロッカールームで渚がそう言った。濡れた髪のままで、くりくりとした大きな目を真っすぐこちらに向けて。熱心に誘ってきたのは主に彼だったけれど、怜も真琴も、他人の家である以上あまり強くは勧めてこなかったけれど、渚と同じように返事を期待しているみたいだった。当の家主はというと、どうなんだと視線を送っても、きょとんとした顔をして目を瞬かせているだけだったけれど。きっと、別に来てもいいってことなのだろう。明確に断る理由はなかったはずだった。 けれど、内心迷っていた。夏の大きな大会が終わってやっと一息ついて、岩鳶のメンバーとも久しぶりに水入らずでゆっくり過ごしたかった。それに何より、他校で寮暮らしをしている身で、遙の家に行ける機会なんてそう多くはない。その上、一番ハードルの高い『訪問する理由』というものが、今回はあらかじめ用意されているのだ。行っても良かったのだ。けれど。 「わりぃ、渚。今日は行かれねぇ」 結局、それらしい適当な理由を並べて断わってしまったのだった。ミーティングがあるからとか、休みのうちに片付けなきゃならないことがあるとか、今思えば至極どうでもいいことを理由にしていた気がする。 始めのうちは、ええーっと大きく不満の声を上げ、頬を膨らませてごねていた渚も、真琴に宥められて、しぶしぶ飲み込んだみたいだった。 「また次にな」 まるで幼い子供に言い聞かせるようにやわらかい口調につとめてそう言うと、うん、分かったと渚は小さく頷いた。そうして、きゅっと唇を噛みしめた。 「でもでも、今度こそ、絶対、ぜーったいだからね!」 渚は声のトーンを上げてそう口にした。表向きはいつものように明るくつとめていたけれど、物分かりの良いふりをしているのはすぐに知れた。ふと垣間見えた表情はうっすらと陰り曇って、最後まで完全に晴れることはなかった。なんだかひどく悪いことをしてしまったみたいで、胸の内側が痛んだ。 ハルは、どうなんだ。ちらりとふたたび視線をやる。けれど、もうすっかり興味をなくしたのか、遙はロッカーから引き出したエナメルバッグを肩に引っ掛け、ふいっと背を向けた。 「あ、ハル」隣にいた真琴が呼びかけたけれど、遙は振り返らずに、そのまま出入り口へ歩いていってしまった。こんなとき、自分にはとっさに呼び止める言葉が出てこなくて、ただ見送ることしかできない。強く引っ掛かれたみたいに、いっそう胸がちくちくした。 「なんか、ごめんね」 帰り際、真琴はそう言って困ったように微笑んだ。何が、とは言わないけれど、渚の誘いと、多分、先ほどの遙のことも指しているのだろう。 「いーって。真琴が謝ることじゃねぇだろ」 軽い調子で答えると、真琴は肩をすくめて曖昧に笑った。 「うん、まぁ、そうなんだけどさ」 そう言って向けた視線の先には、帰り支度を終えて集まる渚、怜、江、そして遙の姿があった。ゆるく小さな輪になって、渚を中心に談笑している。この方向からでは遙の顔は見えない。顔の見える皆は楽しそうに、ときどき声を立てて笑っていた。 「言わなきゃ、分からないのにね」 目を細めて、独り言のように真琴は口にした。何か返そうと言葉を探したけれど、何も言えずにそのまま口をつぐんだ。 その後、合同練習としては一旦解散して、鮫柄水泳部のみでミーティングを行うために改めて集合をかけた。ぞろぞろと整列する部員たちの向こうで、校門の方向へ向かう岩鳶水泳部員の後ろ姿がちらちらと見え隠れした。小さな溜め息と共に足元に視線を落とし、ぐっと気を入れ直して顔を上げた。遙とは今日はそれっきりだった。 「行かなくて良かったのか?」 食堂で夕食を終えて部屋に戻る道中、宗介がおもむろに口を開いてそう言った。近くで、ロッカールームでの事の一部始終を見ていたらしかった。何が、とわざわざ訊くのも癪だったので、じっとねめつけるように顔を見上げた。 「んだよ、今さら」 「別に断る理由なんてなかったんじゃねぇか」 ぐっと喉が詰まる。まるで全部見透かしたみたいに。その表情は心なしか、成り行きを楽しんでいるようにも見えた。 「…うっせぇよ」 小さく舌打ちをして、その脚を軽く蹴とばしてやる。宗介は一歩前によろけて、いてぇなと声を上げた。けれどすぐに、くつくつと喉を鳴らして愉快そうに笑っていた。 「顔にでっかく書いてあんだよ」 ここぞとばかりに、面白がりやがって。
それから風呂に入っても、言い訳に使った課題に手を付けていても、ずっと何かがつかえたままだった。宗介にはああいう態度をとったものの、やはり気にかかって仕方がない。ちょっとどころではない、悪いことをしてしまったみたいだった。 だからなのか、電話をしようと思った。他でもなく、遙に。今日の後ろ姿から、記憶を上塗りしたかった。そうしなければ、ずっと胸が苦しいままだった。とにかくすぐに、その声が聞きたいと思った。 寮全体が寝静まった頃を見計らって、携帯電話片手にひと気のない場所を探した。いざ発信する段階になってから、きっかけが掴めなくて踏ん切りがつかずに、やけに悩んで時間がかかってしまったけれど。 それでも、やっとこうして、無事に遙と通話するに至ったのだった。 「…らしくないな、凛が自分からそんなこと言い出すなんて」 こちらの言葉を受けて、たっぷりと間を置いてから遙は言った。そんなの自分でも分かっているつもりだったけれど、改まってそう言われてしまうと、なんとなく恥ずかしい。じわじわと広がって、両頬が熱くなる。 「んだよ、いいだろ別に。そういうときもあんだよ」 「まぁ、いいけど」 遙は浅く笑ったみたいだった。きっと少しだけ肩を揺���して。風がそよぐような、さらさらとした声だった。 「でも、渚がすごく残念がってた」 「ん…それは、悪かったよ」 あのときの渚の表情を思い浮かべて、ぐっと胸が詰まる思いがした。自分のした返事一つであんなに気落ちさせてしまったことはやはり気がかりで、後悔していた。いっつもつれない、なんて、妹の江にも言われ続けていたことだったけれど。たまにはわがままを聞いてやるべきだったのかもしれない。近いうちにかならず埋め合わせをしようと心に決めている。 「次に会うときにちゃんと言ってやれ」 「そうする」 答えたのち、ふっとあることに気が付いた。 「そういえば、渚たちは?」 渚の口ぶりから、てっきり今晩は遙の家でお泊り会にでもなっているのだと思っていた。ところが電話の向こう側からは話し声どころか、遙以外のひとの気配さえないようだった。 「ああ。晩飯前には帰っていった」 「…そっか」 つい、沈んだ声色になってしまった。何でもないみたいにさらりと遙は答えたけれど、早々にお開きになったのは、やはり自分が行かなかったせいだろうか。過ぎたことをあまり考えてもどうにもならないけれど、それでも引っ掛かってしまう。 しばらく沈黙を置いて、それからおもむろに、先に口を開いたのは遙の方だった。 「言っておくが、そもそも人数分泊める用意なんてしてなかったからな」 渚のお願いは、いつも突然だよな。遙は少し困ったように笑ってそう言った。ぱちりぱちりと目を瞬かせながら、ゆっくりと状況を飲み込んだ。なんだか、こんな遙は珍しかった。やわらかくて、なにか膜のようなものがなくて、まるで触れられそうなくらいに近くて、すぐ傍にいる。 そうだな、とつられて笑みをこぼしたけれど、同時に胸の内側があまく締め付けられていた。気を抜けば、そのまま惚けてしまいそうだった。 そうして、ぽつんとふたたび沈黙が落ちた。はっとして、取り出せる言葉を慌てて探した。だんだんと降り積もるのが分かるのに、こういうとき、何から話せばいいのか分からない。そんなことをしていたら先に問われるか離れてしまうか。そう思っていたのに、遙は何も訊かずに、黙ってそこにいてくれた。 「えっと」 ようやく声が出た。小石につまづいてよろけたように、それは不格好だったけれど。 「あ、あのさ、ハル」 「ん?」 それは、やっと、でもなく、突然のこと、でもなく。遙は電話越しにそっと拾ってくれた。ただそれだけのことなのに、胸がいっぱいになる。ぐっとせり上がって、その表面が波打った。目元がじわりと熱くなるのが分かった。 「どうした、凛」 言葉に詰まっていると、そっと覗き込むように問われた。その声はひどく穏やかでやわらかい。だめだ。遙がときどき見せてくれるこの一面に、もう気付いてしまったのだった。それを心地よく感じていることも。そうして、知る前には戻れなくなってしまった。もう、どうしようもないのだった。 「…いや、わりぃ。やっぱなんでもねぇ」 切り出したものの、後には続かなかった。ゆるく首を振って、ごまかすようにつま先を揺らして、わざと軽い調子で、何でもないみたいにそう言った。 遙は「そうか」とひとつ返事をして、深く問い詰めることはしなかった。 そうしていくつか言葉を交わした後に、「じゃあまたな」と締めくくって、通話を切った。 ひとりになった瞬間、項垂れるようにして、肺の中に溜め込んでいた息を長く長く吐き出した。そうしてゆっくりと深呼吸をして、新しい空気を取り入れた。ずっと潜水していた深い場所から上がってきたみたいだった。 唇を閉じると、しんと静寂が辺りを包んでいた。ただ目の前にある自動販売機は、変わらず小さく唸り続けている。手の中にある携帯電話を見やると、自動で待ち受け状態に戻っていた。まるで何ごともなかったみたいに、日付はまだ今日のままだった。夢ではない証しのように充電だけが僅かに減っていた。 明るさがワントーン落ちて、やがて画面は真っ暗になった。そっと親指の腹で撫でながら、今のはきっと、「おやすみ」と言えば良かったんだと気が付いた。
なんだか全身が火照っているような気がして、屋外で涼んでから部屋に戻ることにした。同室の宗介は、少なくとも部屋を出てくるときには既に床に就いていたけれど、この空気を纏って戻るのは気が引けた。 寮の玄関口の扉は既に施錠されていた。こっそりと内側から錠を開けて、外に抜け出る。施錠後の玄関の出入りは、事前申請がない限り基本的には禁止されている。防犯の観点からも推奨はできない。ただ手口だけは簡単なので、施錠後もこっそり出入りする寮生が少なくないのが実情だった。 そういえば、前にこれをやって呼び出しを受けた寮生がいたと聞いた。そいつはそのまま校門から学校自体を抜け出して、挙げ句無断外泊して大目玉を食らったらしいけれど、さすがに夜風にあたる目的で表の中庭を歩くくらいなら、たとえばれたとしてもそこまでお咎めを受けることはないだろう。何なら、プールに忘れものをしたから取りに行ったとでも言えばいい。 そうして誰もいない寮の中庭を、ゆっくりと歩いた。まるで夜の中に浸かったみたいなその場所を、あてもなくただ浮かんで揺蕩うように。オレンジがかった外灯の光が点々とあちこちに広がって、影に濃淡をつくっている。空を仰ぐと、雲がかかって鈍い色をしていた。そういえば、未明から雨が降ると予報で伝えていたのを思い出した。 弱い風の吹く夜だった。時折近くの木の葉がかすかに揺れて、さわさわと音を立てた。気が付けば、ほんの半月ほど前まで残っていたはずの夏の匂いは、もうすっかりしなくなっていた。 寝巻代わりの半袖に綿のパーカーを羽織っていたので、さして寒さは感じない。けれど、ここから肌寒くなるのはあっという間だ。衣替えもして、そろそろ着るものも考えなければならない。 夏が過ぎ去って、あの熱い時間からもしばらく経って、秋を歩く今、夜はこれから一足先に冬へ向かおうとしている。まどろんでいるうちに瞼が落ちているように、きっとすぐに冬はやってくる。じきに雪が降る。そうして年を越して、降る雪が積もり始めて、何度か溶けて積もってを繰り返して、その頃にはもう目前に控えているのだ。この場所を出て、この地を離れて、はるか遠くへ行くということ。 たったひとつを除いては、別れは自分から選んできた。昔からずっとそうだった。走り出したら振り返らなかった。自分が抱く信念や想いのために、自分で何もかも決めたことなのに、後ろ髪を引かれているわけではないのに、最近はときどきこうやって考える。 誰かと離れがたいなんて、考えなかった。考えてこなかった。今だってそうかと言えばそうじゃない。半年も前のことだったらともかく、今やそれぞれ進むべき道が定まりつつある。信じて、ひたむきに、ただ前へ進めばいいだけだ。 けれど、なぜだろう。 ときどき無性に、理由もなく、どうしようもなく、遙に会いたくなる。
ふと、ポケットに入れていた携帯電話が震え出したのに気が付いた。メールにしては長い。どうやら電話着信のようだった。一旦足を止め、手早く取り出して確認する。 ディスプレイには、登録済みの名前が浮かんでいる。その発信者名を目にするなり、どきりと心臓が跳ねた。 「も、もしもし、ハル?」 逡巡する間もなく、気が付けば反射的に受話ボタンを押していた。慌てて出てしまったのは、きっと遙にも知れた。 「凛」 けれど、今はそれでも良かった。その声で名を呼ばれると、また隅々にまで血が巡っていって、じんわりと体温が上がる。 「悪い、起こしたか」 「や、まだ寝てなかったから…」 そわそわと、目にかかった前髪を指でよける。立ち止まったままの足先が落ち着かず、ゆるい振り子のように小さくかかとを揺らす。スニーカーの底で砂と地面が擦れて、ざりりっと音を立てた。 「…外に出てるのか? 風の音がする」 「あー、うん、ちょっとな。散歩してた」 まさか、お前と話して、どきどきして顔が火照ったから涼んでるんだ、なんて口が裂けても言えない。胸の下で相変わらず心臓は速く打っているけれど、ここは先に会話の主導権を握ってしまう方がいい。背筋を伸ばして、口角をゆるく上げた。 「それより、もう日も跨いじまったぜ。なんだよ、あらたまって。もしかして、うちのプールに忘れもんしたか?」 調子が戻ってきた。ようやく笑って、冗談交じりの軽口も叩けるようになってきた。 「プールには、忘れてない」 「んだよ、ホントに忘れたのかよ」 「そういうことじゃない」 「…なんかよく分かんねぇけど」 「ん…そうだな。だけど、その」 遙にしては珍しい、はっきりとしない物言いに首を傾げる。言葉をひとつずつひっくり返して確かめるようにして、遙は言いよどみながら、ぽつぽつと告げてきた。 「…いや、さっき凛が…何か、言いかけてただろ。やっぱり、気になって。それで」 そう続けた遙の声は小さく、言葉は尻切れだった。恥ずかしそうに、すいと視線を逸らしたのが電話越しにも分かった。 どこかが震えたような気がした。身体の内側のどこか、触れられないところ。 「…はは。それで、なんだよ。それが忘れもの? おれのことが気になって仕方なくって、それでわざわざ電話してきたのかよ」 精一杯虚勢を張って、そうやってわざと冗談めかした。そうしなければ、覆い隠していたその存在を表に出してしまいそうだった。喉を鳴らして笑っているつもりなのに、唇が小さく震えそうだった。 遙はこちらの問いかけには返事をせずに、けれど無言で、そうだ、と肯定した。 「凛の考えてることが知りたい」 だから。そっとひとつ前置きをして、遙は言った。 「聞かせてほしい」 凛。それは静かに押し寄せる波みたいだった。胸に迫って、どうしようもなかった。 顔が、熱い。燃えるように熱い。視界の半分が滲んだ。泣きたいわけじゃないのに、じわりと表面が波打った。 きっと。きっと知らなかった頃には、こんなことにも、ただ冗談めかして、ごまかすだけで終わらせていた。 ハル。きゅっと強く、目を瞑った。胸が苦しい。汗ばんだ手のひらを心臓の上にそっとのせて、ゆるく掴むように握った。 今はもう知っているから。こんなに苦しいのも、こんなに嬉しいのも、理由はたったひとつだった。ひたひたといっぱいに満たされた胸の内で、何度も唱えていた。 「…凛? 聞いてるのか」 遙の声がする。黙ったままだから、きっとほんの少し眉を寄せて、怪訝そうな顔をしている。 「ん、聞いてる」 聞いてるよ。心の中で唱え続ける。 だって声、聞きたいしさ、知りたい。知りてぇもん。おれだって、ハルのこと。 「ちゃんと言うから」 開いた唇からこぼれた声はふわふわとして、なんだか自分のものではないうわ言みたいで、おかしかった。 できるだけいつも通りに、まるで重しを付けて喋るように努めた。こんなの、格好悪くて仕方がない。手の甲を頬に当ててみた。そこはじんわりと熱をもっている。きっと鏡で見たら、ほんのりと紅く色づいているのだろう。はぁ、とかすかに吐き出した息は熱くこもっていた。 「あのさ、ハル」 差し出す瞬間は、いつだってどきどきする。心臓がつぶれてしまいそうなくらい。こんなに毎日鍛えているのに、こういうとき、どうにもならないんだな。夜の中の電話越しで、良かった。面と向かえば、次の朝になれば、きっと言えなかった。 「こ、今度、行っていいか、ハルの家」 上擦った調子で、小さく勢いづいてそう言った。ひとりで、とはついに言えなかったけれど。 「行きたい」 触れた手のひらの下で、どくどく、と心臓が弾むように鳴っているのが分かる。 無言のまま、少し間が開いた。少しなのに、果てしなく長く感じられる。やがて遙は、ほころんだみたいに淡く笑みを零した。そうして静かに言葉を紡いだ。 「…うん、いつでも来い」 顔は見えないけれど、それはひらかれた声だった。すべてゆるんで、溢れ出しそうだった。頑張って、堪えたけれど。 待ってる。最後に、かすかに音として聞こえた気がしたけれど、本当に遙がそう言ったのかは分からなかった。ほとんど息ばかりのそれは風の音だったのかもしれないし、あるいは別の言葉を、自分がそう聞きたかっただけなのかもしれない。あえて訊き返さずに、この夜の中に漂わせておくことにした。 「それまでに、ちゃんと布団も干しておく」 続けてそう告げる遙の声に、今度は迷いも揺らぎも見えなかった。ただ真っすぐ伝えてくるものだから、おかしくてつい吹き出してしまった。 「…ふっ、はは、泊まる前提なのかよ」 「違うのか」 「違わねぇけどさ」 「なら、いい」 「うん」 くるくると喉を鳴らして笑った。肩を揺らしていると、耳元で、遙の控えめな笑い声も聞こえてきた。 いま、その顔が見たいな。目を細めると、睫毛越しに外灯のオレンジ色の光が煌めいて、辺りがきらきらと輝いて見えた。 それから他愛のない会話をひとつふたつと交わして、あらためて、そろそろ、とどちらともなく話を折りたたんだ。本当は名残惜しいような気持ちも抱いていることを、今夜くらいは素直に認めようと思った。口にはしないし、そんなのきっと、自分ばっかりなのだろうけど。 「遅くまでわりぃな。また連絡する」 「ああ」 そうして、さっき言えなかったことを胸の内で丁寧になぞって、そっと唇に乗せた。 「じゃあ、おやすみ」 「おやすみ」
地に足がつかないとは、こういうことなのかもしれない。中庭から、玄関口、廊下を通ってきたのに、ほとんどその意識がなかった。幸い、誰かに見つかることはなかったけれど。 終始ふわふわとした心地で、けれど音を立てないように、部屋のドアをいつもより小さく開けて身体を滑り込ませた。カーテンを閉め切った部屋の中は暗く、しんと静まっていた。宗介は見かけに反して、意外と静かに眠るのだ。あるいは、ただ寝たふりなのかもしれないけれど。息をひそめて、自分のベッドに潜り込んだ。何か言われるだろうかと思ったけれど、とうとう声は降ってこなかった。 横向きに寝転んで目を閉じるけれど、意識がなかなか寝に入らない。夜は普段言えない気持ちがするすると顔を出してきて、気が付けば口にしているんだって。あの夏にもあったことなのに。 重なったつま先を擦りつけあう。深く呼吸を繰り返す。首筋にそっと触れると、上がった体温でうっすら汗ばんでいた。 なんか、熱出たときみてぇ。こんなの自分の身体じゃないみたいだった。心臓だって、まだトクトクと高鳴ったまま静まらない。 ふっと、あのときの声が聞こえた気がした。訊き返さなかったけれど、そう思っていていいのかな。分からない。リンは奥手だから、といつだかホストファミリーにも笑われた気がする。だって、むずかしい。その正体はまだよく分からなかった。 枕に顔を埋めて、頭の先まで掛け布団を被った。目をぎゅっと瞑っても、その声が波のように、何度も何度も耳元で寄せては引いた。胸の内側がまだいっぱいに満たされていた。むずむず、そわそわ。それから、どきどき。 ああ、でも、わくわくする。たとえるなら、何だろう。そう、まるで穏やかな春の、波打ち際に立っているみたいに。
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(2018/03/18)
両片想いアンソロジーに寄稿させていただいた作品です。
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kuchuki · 9 days
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2024/5/30
今回の担当:🦋
次回の担当:🌛
早起き
うおー!
3時に目が覚める 昨日学校から帰ってすぐに床に就いたのだ めちゃめちゃ寝た めちゃめちゃ寝たのに日が昇っていない なんとか有意義に過ごさないとという思い込みからとにかく動く
座椅子に座る 授業開始時刻まで何をしよう 計画を立てることが凄まじく苦手なので、何度か同じようなことを頭の中で繰り返し組み立て、ようやく立ち上がる 決断
とりあえず、たまご豆腐とおにぎりを口に放り、フラフラする身体に熱量をいれた まだ血がめぐる感じがないのでチョコ板(半分)を冷蔵庫から持ってくる せんべいでもよかったな……と目の前にある菓子箱を見て思う 思ったことを行動に起こせるくらいには活動的だ ぱりんこ チョコは1、2カケ食べて棚へ戻した
ものを食べたはいいものの、本を読んだり課題をこなしたりするほどの活力はなかったため液タブを立ち上げる 5時間ほど絵を描いた 良さげ〜な色の塗り方を発見 やった〜 最近めちゃめちゃ良いペンを見つけて描くのが楽しい 楽しい でも全てが中途半端なまま次の紙を開くのでひとつも完成してないです
……あまり賢い時間の使い方ではない が、まあ、なんのやる気もなかったし、朝で活力を使い切っては身も蓋もないので楽しいことに逃げちゃっても良い とします よし
洗濯機を回しながらシャワーを浴びる ちょうど洗濯時間と同じくらいかかるのでセットでやりがち なにか同時進行していないとシャワーを浴びようと立つまで時間がかかるし、一石二鳥
学校
「うお〜! わかる〜〜」と「全く身に入りません……なんですか……そうですか……」を反復横とびしていた おもしろかったです
移動
完全に初夏の匂い というよりかは雨がそれとなく近づいている匂いですね 移動時は考えるか呼吸かしかできないので、大抵そのときに匂いに気づく 初夏、焦燥感 自分だけが地に足をつけていないように思い、焦る 浮かんでいる さっさと帰りたくなる 特に何をするわけでもないけど
湿度・カビ防止の諸々を購入
買った品を棚に置き散らかす どんと来い、梅雨前線
めちゃめちゃ動いた めちゃめちゃつかれた とんでもなく寝れそう 素晴らしき及第点 なんか、今までやりたい、やらないとと思っていたことを次々に達成できた 泣いてもいいですか いいよ ウボーイオイ 明日もちゃんとできるといいですね
今日見たもの
現実について話す学生、でかい犬、小さい犬、リュックの横ポケットに入れられたポケモンのぬいぐるみ、きれいに整えられた花壇のホウセンカ、元気に跳ねる子供と手を繋ぎ歩く親
↑嬉しい
回答
🌛
ふつう、てきとー、けっこう
一般的に使用されてる意味と、実際に言葉のもつ意味が違っている単語を、一般的な意味で使いたい場合にひらいたりカタカナにしたりして避けています 避けに入るかはビミョーですが
🎈
雨の日の靴、いつものスニーカー
防水・汚れ防止スプレーをしているので、まあ、いいかな……というものぐさ
質問
好きなモチーフや柄を教えてください🎶🎶🎶
 マーブルやストライプ等、いくつかの色が何かしらの規則に沿って並んでいると嬉しくなります あと素晴らしいデフォルメ(文字でも動物でもキャラクターでも)
変な姿勢で書いていたのでめっちゃ足が痺れている ぐお〜……
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kazuki-sakakibara · 11 days
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その涙を流さないために
大切なものを失って流した涙夢に届かなくて流した涙 もうダメかも知れないって立ち直れなくなりそうになった 誰かが「まだ終わりじゃない」って言った 「やれること、全部やったのか?」少し厳しい声で問うた 「本気で掴みたかったら手放したくなかったらできることってまだあるんじゃないか?」 「探そうとしたか?どこかでこれで良いって思っていないか?ここまでだって思っていないか?」 厳しい言葉ではあるけれどその人の方が自分よりも熱かった 温かい涙を流して「まだ立ち上がる気があるのならまだ歩み進める気があるのなら全力でフォローする全身全霊で伴走する」 そんなエールをくれたそんな愛をくれた 違う涙が流れた その涙が新たな原動力になった まだやれる 深呼吸ひとつ 涙をぬぐう視線を上げる姿勢を正す 扉を開く まず一歩、 大きな大きな一歩。
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shukiiflog · 28 days
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ある画家の手記if2 - 1 雪村泉視点
なぜ私を助けてくださったのでしょう。あんなにも親切にしていただいたことは、今までの平穏な人生においてさえ一度もございません。 あの方は私の見ている幻覚なのかもしれません。
いくら世界が冷酷でなかったとしても、さすがに行き倒れの汚らしい人間をそんなに都合よく、助けてくださる方など、いらっしゃらないはずですから。犬や猫を拾う方がまだ実現せ得るでしょうか。 日本の外界が私の知りうるほどに冷酷ではないと知ってからは、外に出ることが叶うなら、香澄のことを誰かに話すつもりでいました。助けを求めるためでした。その頃の私は、自分でどうにもできないふがいなさにも、都合よく助けてくれる他者に出会えると盲信していた傲慢にも、思い至らなかったのです。ただ香澄のことを何とかしなくてはと、そればかりでした。恐ろしいと、出てはいけないという教えを破り、助けを求められるかもしれないと知った途端にそうなるのだから、極端なことです、加減というものはどうにも難しい。 そのうちに香澄は香澄自身の力で得た外の繋がりによって、あの楽園のような地獄の部屋から出て行き、そのついでのように私も久方ぶりの外の世界へ出ました。 香澄が自由を得られた以上、私が外へ助けを求める意味も無く、私が外に出る必要など無いのに。出てきてしまった私は、浜辺で立ち尽くしていました。だってもうあの部屋に香澄は居ないのだから、帰る理由もない。千風のことは、香澄が生まれてからはいつしか、愛しているのかなどもうわからなくなってしまっていました。 しばらく波打ち際をずっと歩き続けていたはずでしたが、行き止まりを避けて、そこからいつの間にか気付くと水の中に倒れていました。 海の波が打ち付ける境目の非常に浅いところでしたが、段々と潮が満ちて、口の中がしょっぱくなってきます。渚、というのでしたか、今私が触れているここは、陸と水と空中がすべて混じり合う交差地点なのですね。沢山の刺激に目が回って、身体がおののくような、変な具合がします。一体外に出てからどれほどの時間が経過したのか、見たことのある空の色が目の前に広がっていましたので、少なくとも二日以上は経ったと推測できる。 ああまさかこうして空を眺めているだなんて、ほんの数日前?までは、思いもよらなかったというのに。 世界の一部になっていくような身体感覚に身を委ねていたその時、急に私の身体は重力に逆らって持ち上がりました。 驚いて空から視界の端へ入り込んだ影へと目線を移すと、…それが、初めて見たあの方の姿でした。 どこか景色が透けて彼の身体越しに見えているような、色素の薄い身体をしていて、陰影でようやく顔立ちが象られて見える、その場所に抱き上げられてようやく私は波から切り離されました。だから彼は、そう、私の居た世界の一部ではなく、きっとこれ以上どこにもいけなくなった私が見出した都合のいい幻覚かと、いえ、けれども私などに自分を救いあげるような幻覚を生み出す力など、あるとは思えないのですが。
その方の、住居でしょうか、歩みを止めてお休みになられた場所は、幼い頃両親に連れられて出掛けた先の海外の建物に似た空間でした。 身体が動かせないままの私を柔らかい、ベッドに横たえてくださり、服を取り払って身体に触れ、どうやら診察をしてくださっている。その間ずっと、抱きかかえられても触れられても感触はどこか淡く、経験したことのないゆらぎを伴いました。千風に触れられる時のような、確かさが無い、とでも言うのでしょうか。やはりどこかおぼろで、夢幻の中のよう。 しかしあの方は私の見ている幻覚なのかもしれない、と考えていましたが、ここにきて地縛霊という可能性も浮上してきました。けれどもっと世界から乖離したものだと思っていただけに、土地という生々しいものと癒着している存在として認めるのは難しい。それともそうしなくてはひとところに存在できない方なのかもしれません だとしたら私を迎えに来てくださった死神、という解釈も一興ですね。 「警察、救急、家族、恋人、タクシー、大使館、どこでもいいが電話をかけたいならこれを使え」 ああ、けれどやはり違うようです。酷く現実的な言葉が告げられて、私はなんだかとても、悲しい気持ちになりました。本当はとても、とても泣きたかったのですが、困ってしまったのですが、困ってしまったので私は何と答えることもできずにただその方を見詰め返しました。私が何も言わないので彼はそれ以上警察や家族と言いつのることはなさいませんでしたが、呆れられてしまった気がして、それも酷く悲しくなりました。
私は調和のとれた安寧な箱庭で生きてきすぎて感覚が麻痺しているのでしょう。生きるか死ぬかの前線に在る兵士のほうが、命の危機には敏感なものです。 その日の夜はずっと、苦しくて痛くて眠れませんでした。脱力することも叶わない苦痛に苛まれ呼吸もままならない私を、彼は一晩、おそらくずっと、看ていてくださった。 汚れた服をとり替え、水を飲ませてくださいました。 なぜ そんなにも親切に、助けてくださるのですか もしあなたが亡霊で無いならは、私など薄汚れた浮浪者に相違ないでしょうに、口付けて水を含ませるのがお嫌では無いのですか 訊ねたらあなたは消えてしまいそうで恐ろしいです、だんだんと 身体の感覚も、熱も まるで現実のようになって 私がこの不思議な夢幻の中から抜けたら、あなたはそこに居ないのでは?
意識が途切れて、次に目が覚めたとき、身体は動かせるようになっていました。そしてあの方はほんとうに、そこからいなくなってしまいました。 清潔なシーツのベッドと、懐かしさを覚える調度の室内だけが、残っていました。 床に降りて、立ち上がり外に出ると、足の裏に地面の温度と感触とが伝わる。寂しい、いえ、高揚しているのでしょうか、わからないどういうことなのか、走り出したいような、すぐそこの崖から飛び降りたいような心地で一度飛び跳ねましたが、何も起こりませんでした。座り込みたい、逃げ出したい、いいえ、わからない もう渚の際から外れてしまって、ここは天国みたいです 私が、そんなはずはないのに、でも地獄にだって招かれなくては入れないのでは 先程までせっかく招き入れられた場所があったというのに、あの方が消えたあの場所で私はとても、いけない、入ってはいけない、ところに、踏み込んでしまったような、急かされるような思いがしたのです。違う、懐かしいほどだった。悲しかった。 どこへ行っても人が居ないまま、また家に辿り着いてしまいました。そこは窓のガラスが全て砕け散り床板が一枚ずつ別の波長でたわんでいて、ほんの少し歩いただけのはずが、すっかり朽ちた様子の空き家に様変わりしていました。屋内へ入ると、私にはこちらの方が似つかわしいように思われました。ようやく誰も居ない、私だけの空間になった。 ふらついた脚をそれ以上扱えず床に座り込み がらんどうの場所へやってきて、私以外の人間が居ない空間で一人。 ようやくはっきりと意識されたのは、千風が世界の全てでは無かったということです。そう、ここは ここは部屋の中だけれど、千風の作り上げた空間ではない 千風が居なくても私は 一人、ここに居ます プラスチックのむき出した椅子とベッド 壁紙の剥がれ落ちた壁 抜けて破れた床と動かなくなったドア 本当は私は …… それとも 何もなくなったから、私は一人なのでしょうか あの方はやっぱり幻で、外の世界なんてものは 無くて 千風がくれたあの部屋が、やはり世界の全てで 全部全部私の妄想で、私は あの部屋から出たまぼろしを、ずっと見ているのでしょうか ……その時、何かが崩れるような大きな破壊音が響きました。 遠かったために幻聴かと、ぼんやりその音の方を見遣ると、…ああ 彼が、立っていました。
「差し障りがあるなら無視していい。君の名前は?」 海辺を抱きかかえられたまま行きながら、名前を尋ねられ、それまでじっと彼の顔を見詰めていたことに気付きました。 幻では無いのだ、と思いたく、無意識にそうしていたのか、急に目が合ったことで緊張してしまいすぐに返事ができません。 「…いずみと申します」 なんとかそう答える間も、目は合ったままでした。なぜかそうしていると、彼が幻ではないと感じられる気がしました。 「稔だ」と、彼が言いました。……え、と お名前でしょう。名前がある。到底私が思いつく幻覚とは思えません。 ミノルさん。 名はその概念を示します、個としての。この方は、ミノルさん。 「笑わずにいられるんだな」 不意にそう言われて私は、はっとしました。 「笑えと言われるものですから」 幻でないなら、見えているのだ、一瞬焦りましたが私は笑っていたようです。ちゃんと。 けれどミノルさんは続けて仰いました、 「ここでは無用な時はなるべく控えてくれ。うっかり笑ってしまう分には――」 ――――無用な。控える? 「あっ、はい、」咄嗟にはいと言ってしまってから困ってしまいました。私は長い間、自分の表情を意識したことが無かったので、ずっと鏡を見てでも居ない限り自律することができない 何か有用で笑っているわけではないのに、私はもしかしたら、ミノルさんにご不快な思いをさせる顔をしていたかもしれません、助けていただいたというのに、なんと失礼な。 「ちがうんです、そうすると私、どうしましょう、ごめんなさい、ごめんなさ」 「落ち着け。一度喋るのをやめて呼吸を整えろ」 ああ、困らせてしまう 目を見せない方が、見ない方がよいと判断して咄嗟に顔を隠すように俯きましたが、額をけっこうな勢いでミノルさんの鎖骨にぶつけてしまった。 涙ぐむ目元と裏腹に口元がつり上がって、今の私はさも不気味な表情をしているだろうと、やめようとすればするほど、ますます表情が歪んでいく。 「すみません、気付かずにご迷惑を、見ないで」 ……ミノルさんは何も仰らず、私に顔を見せろとも命じないのはお優しいからなのか、それが心苦しい気もして、身を固めていると 突然私の身体を抱えた腕が更に強く胴を支えて、かと思うと直後には内蔵が放り出されたような浮遊感を覚えた 「…!!」 盛大な音を立てて、一拍遅れで頭から水を被る 思わず顔を上げた私の身体の下に、ミノルさんが居て、二人ともが波の中で揺蕩うように海水に浸かっていた。 「…………?」 伝い落ちてくる水を瞬きで弾いて目の前のミノルさんの顔を見たら、彼は私の顔に掛かった髪をその手でよけてくれたあと、咽を鳴らしながら静かに笑い始めました。ぴったり合わさった身体からその揺れが伝わって、彼は、笑顔で、まだ、こちらを見ています。 まぼろしじゃ無い。 「……」 急に、首や頬がかあっと熱くなった感覚がして、手足が重くなりました。身体が振動するほどに心臓が脈打ち、苦しいほどです、私の頭���抱えるようにしてミノルさんは何かおっしゃったようですが、鼓動に妨げられて聞き取れませんでした。 このままここで死んでしまうのかも、 はじめお会いした時に一人で倒れていた時には何も思わなかったというのに、今こうしていると身体が苦しくて痛くて、しんでしまうのだ、という高揚がどうしようもありません。二人で浜辺に横たわって、ああそうしたら私の亡骸をこの方が抱いていてくださることになるのですね。 それは存外、悪くないことのように思われました。あれだけ恐怖するように教えられたはずの死への感覚を、私は狂わせてしまったようです。とても自由で、後腐れのないことのように感じたのでした。
死んでしまうというのはどうやら杞憂で、ただ単純に驚きすぎたため動悸がしたということだったようです。ミノルさんは私を抱きかかえたまま身体を起こすと再びあの海外の建築に似た建物へ、私を連れて入りました。 ミノルさんにとって私は、犬や猫のようなものなのかもしれません。そう考えれば、拾って世話をされることも不可解ではないかと… そういえば日本ではいつからか、男と女では人の扱いが異なるのだったか、だとしたら私は女のはずですから、人と思われていないのは仕方の無いことなのでしょうか、よくわかりません。犬猫として拾っていただき、ここまでよくしていただいたのだから、それを喜んで享受するべきなのか、それとも人として死ぬべきだったのでしょうか。私が人の言葉を使えば使うほどに、ご迷惑をおかけしているのかもしれない。微笑まないようにというのは、笑顔が人間のようだからなのかもしれません。元から飼い殺されているようなものでしたが、外に出てもこうなってしまうのはやはり千風や父母がそうというのではなく私の気質なのでしょうか。 海水に倒れた身体を洗い、着せられた服は見覚えのあるワンピースでした。それからお食事まで食べさせていただいて、何から何まで。 彼にとってそれらはあまり負担にもなっていない様子でした。 けれど 早く出て行かなくてはならないのでしょう、こんなにもご迷惑をおかけしているんですから
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bearbench-tokaido · 3 months
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五篇 下 その一
左手に神風も伊勢と都に別れるといわれる追分を見ながら野道をたどっていっていると、向こうから耕作馬にちょこんと乗っている薄汚い男がなにやら、甲高い声で歌いながらやってきた。
「見るからに~、暖かそうな~、女と寝たならあ~、手織りの~、木綿の綿入れを、一枚、さっさと脱ぎ捨てた~。なあえ~。」
それを見た弥次郎兵衛が、立ち止まって北八に言う。 「おい、ちょっと見ていろ。 あの向こうから馬に乗ってくる野郎を、降ろしてみせる。」 と、脇差をぐっと抜き出して差しなおし、合羽の袖を前のほうに折ってさも、刀の柄を持っているようにみせて歩いていく。 すると、前から馬に乗って歩いてきた男はさっと降りて行く。 弥次郎兵衛は、 「ほら見ろ。どうだ。」 と、自慢げに言っている。 するとまた、向こうより横乗りした馬かたがやってきた。 やっぱり、歌を歌っている。
「晩に~泊まりに~、行こうかと、思っていたが~、やめたやめた。なあ~。 どうして行かないか~、と言うと~、賭博で負けて~、裸になったから~。なあえ~。」
弥次郎兵衛は、北八に目配せして、 「こいつも降ろしてやろう。えへん。」 と、大きく咳払いする。馬かたは、 「しっ、しっ。」 と、馬をなだめるように言ってからうろたえた様子で、降りて通り過ぎる。 「北八、どうだ。恐れ入ったか。」 と、弥次郎兵衛が、北八に言うと、 「武士を見ると、馬に乗ったまま通り過ぎることが出来なことはみんな知ってることだ。」 と言い、鼻で笑う。
その通りと、大きくうなずくと、弥次郎兵衛は、 「だから、俺を侍だと、思ったということだ。」 と言うのに、北八は、笑いながら、 「馬鹿なことを言うもんだ。後ろを見てみろ。侍が、二人やってきている。」 と、指差す。 「ええ、本当か。」 と、弥次郎兵衛は振り返った拍子にこのお侍にばったりと、ぶつかってしまう。 「はいこれは、失礼いたしました。 ところで鈴鹿へは、あとどれくらいでございましょう。」 と、とっさにその場をとりつくろった。 どうやらこの侍は、この辺りの領主から特別の待遇を受けている郷士らしい。 「それこの川の提から、すっと空に上がるともうすぐでござる。」 「はい、ありがとうございやす。」 と弥次郎兵衛が頭を下げると、侍はさっさと行き過ぎる。
北八は、その侍の後姿を見送って、 「提から空へ上がれとは、どういうことだ。 竜が天に召し上がるわけじゃあるまいに。」 と、つぶやいている。 弥次郎兵衛はことなく済んで、ほっとしながら、 「たぶん、提の上の方に行けって事だろう。」 と、さっさと歩いていく。
北八はその後を付いて行くと、橋が架かっておりそのそばに橋番が立っている。 「すまんがこの川は、何という川だ。」 北八が尋ねると、橋番が、 「この川は内部川といいます。 でこの橋は、橋錢を二文払っていただきます。」 というので弥次郎兵衛が、ふところから金を取り出し、 「それ二文ずつ、四文だ。」 と渡し、橋を渡りながら一首詠む。
抜け参り ならば博打も うつべ川 渡しの金を 借りてでも
さらにその先の鈴鹿川を渡ると、そこは鈴鹿の町だ。 街の入り口に宝殊山、火除地蔵堂がある。 弥次郎兵衛はそれを見て、一首詠む。
安穏に 火よけ地蔵の 守るらん 夏の暑さも 冬の鈴(涼)鹿も
二人はそこで、一休みすることにした。 茶をすすりながら休んでいると、馬かたが話しかけてきた。 「もし、旦那方、馬に乗って行かんかね。」 「馬か。それもよかろう。戻り馬なら安いんだろう。それなら、乗っていこう。」 と、弥次郎兵衛が、答えると、 「三重の安芸まで戻る馬じゃから、荷をつけて二百五十で行きましょう。」 馬かたは、ニコニコして言う。 今度は、北八が言う。 「一頭の馬の背の両側に椅子を置いて二人で乗っていけるなら、百五十ずつやるが。」 それを聞いて馬かたは、ちょっと困ったようで、 「今日はその道具を持ってきていない。ここから上野まで、たった三里じゃ。 白子までの一里半で交代することにして、交互に乗って行ったら。」 と、言う。
弥次郎兵衛が、これは、面白いと思って、 「二人いっしょに、乗れないと嫌だ。」 とからかうと、馬かたは、 「そしたらお二人とも、馬の鞍へくくって行きましょう。 この縄で締めりゃ、切れることはない。」 と、怒ったふうに言う。 その様子に、北八が、 「とんでもないことを言うもんだ。それじゃ、煙草も吸えないじゃないか。」 と、訳のわからないことをいうと、 「そんなら、かわりがわりに乗っていこう。百五十でいいか。」 と、馬かたの威勢に押された様子で、弥次郎兵衛が答える。 馬かたは、 「ちょっと安いが、まあ、それで行きましょう。」 と、馬の値段も決めて二人の荷をくくりつけると、まずさきに北八が乗って出かけることになった。
弥次郎兵衛は、その様子を見ていたが、 「俺は、先に行こう。」 と、さっさと歩いて行ってしまう。 その後を、馬が 「ヒヒン、ヒヒン。」 といななき、馬に付けた鈴の音が、 「シャン、シャン。」 と、聞こえている。
しばらく歩いてると、紺縞の洗濯したての雨合羽を着て、厚く織った風呂敷を首に巻いた男が走るようにやってきた。 男は、すれ違いざまに、 「あれお前は、上野の長太じゃないか。 今、お前のところへ行って来たところだ。いい所で会った。」 と、この馬かたに話しかける。 長太と呼ばれた馬かたは、 「はあ権平さまじゃ、ございませんか。 こりゃさて私は、申し訳ない。」 と立ち止まって、ちょこんと頭を下げた。 「申し訳ないと思うのが当たり前だ。そうだろう。 毎月末毎に、返済することになっている借金を、まだびた一文、返してもらっていないのだから。 どうするのか。それを聞きたいもんだ。」 権平は、仁王立ちで、長太と呼ばれた馬かたの前に立っている。 「まあまあ、こっちに来て下さいな。」 と馬かたが、街道の端の方に権平と馬、それに馬に乗っている北八を連れて行く。
この馬かたは借金のことわりをしようと思って、日当たりのいいところまで連れて行くと、まず自分が土手にどっかりと腰を下ろし、 「まあそのように腹をたてなさんな。ここへかけたらどうです。」 と、手で合図する。 権平が、腰を下ろそうとすると、 「いやそこのには、犬のくそがある。」 と、権平のピンチを救ってやる。 権平はちょっといやな顔をしてから、長太の反対側に座る。
「今日来られるのがわかっていたら家の掃除をして、『こりゃこりゃ、権平さまへ茶をあげんか。いや、酒を勝って来い。』と言うところじゃが、ここは街道だからそれもできない。」 馬かたの長太が、話し出す。 馬に乗っていた北八が、 「こりゃ、どうする。早くやらんか。」 と、馬かたに話しかけると、 「はてせわしない人だ。ちょっと待ってくださいな。 今大事なお客様がいらっしゃるところなんだから。」 と長太は北八に言い、また権平の方を向いて、 「さてまあ、聞いてください。 去年の冬からうちのかかあが、病気になりましてな。 がきどもにはせがまれるし、金にもならない役所の仕事をいろいろさせられたりで、まあそんなこんなで、とりあえずこうしてください。 四、五日のうちには、ひゅっとこちらからもって行きましょう。」
権平はそこまで、黙って聞いていたが、 「いいや承知、出来ない。 そう言ってもよう戻せないだろう。だめだ、だめだ。」 と、首をふる。 「もう、三年も返してもらってい���い。 貸した時から、利子に利子が付いて、二十貫あまりというもんじゃもの。 簡単に、返せるかな。」 権平は、更に言う。 「そのかわりに、あの馬を貰っていこう。 ほれ金が払えないときは馬をかわりに渡すと、証文に書いたじゃないか。 それなら、文句はあるまい。」
権平は、馬に乗った北八に言う。 「さあさあ、もし、馬の上の旦那さま。 今、お聞きになったとおりじゃ。 借金返済のかわりに、その馬を受け取ることになりました。 お気の毒ですが、どうぞ、ここから降りてください。」 北八も、その通りだと思いながら、 「俺も、さっきからいらいらしてたんだ。 まったく、いまいましい馬に乗り合わせたもんだ。 しかしまあ、まだ金も払っていないんだし、これまでただで乗ったのだから、よしとして降りよう。」 と、権平に口をとらせて、馬から降りる。
つづく。
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psytestjp · 3 months
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funniaking · 5 months
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タイ旅行記2019/09/24編③
10時に起床。同室は人気がなく恐らく一番寝坊しているのは自分だと気づいた。
ホテルの予約を全然していなかったので、連泊する旨を受付に伝えた。
ついでにネットから予約した際に朝食付きの内容だったので、どうやって朝食を食べられるのか質問すると、
追加で払ってくれと言われた。予約してるので、そんなことないだろうと戦う姿勢を見せたものの、
やはりダメと断られ、お腹も空いていたので、仕方なく払ってしまった。
まだまだ押しに弱いぜ。
朝ごはんはザ朝ごはんを食べ、目玉焼きとハッシュポテトを食べた。
日本なら和食とか洋食選べたりするが洋食オンリーだったので
洋食の広がりに驚きながら食べた。
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地球の歩き方を読みながら寝てしまったので、
ゲストハウスに併設しているプールに浮き輪でぷかぷか浮きながら当日の予定を考える。
BGMは爆音で流れるテイラースイフト。
ここでもまた洋の広がりを感じた。
ある程度予定が固まったのでプールから上がり、
着替えて部屋へ戻るとジム終わりのアンドリューが汗だくになっており、
「これからプールに飛び込まなきゃ」と言っている。すごい体つきだった。
お土産を買いにカオサン通りへ向かう前に、
タイに着いてからお気に入りになったレストランで昼から飲酒しながら前来た時と同じメニューを注文。
冒険しにきたが、この辺は冒険しない自分を嫌いではない。
昼食をとり終えると、時間があまりないことに気づいたためパタヤーへ向かうことを諦める。
アユタヤ同様、目的意識を持ってしまうとうまく思考ができずまたぼったくられることを
リスクと感じたのた。大人になるとリスクヘッジがうまくなる分、つまらなくなってしまうなあ。
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カオサン通りに着いて、まず自分のお土産からと、お香たてを探した。
前回来た時の顔を覚えていたのか、気にしてたお香たてを売ってるおばさんが表示価格より安くしてくれた。
(家について実際に使おうとしたら全く灰落としの長さが足りていなくて使えなかった。)
時間もなかったので一人一人考えるよりもまとめて買った方が楽だと思ったのでそのお店で10着以上のタイパンツを購入。
一着100Bだったが、値切って150Bにしてもらい安く購入できた。
値段の概念がわからなくなってしまう国だ。。
店主のおばあちゃんがなんか前回来たときよりも優しい顔をしていて微笑みの国たる所以を感じた。
衣類を大量に購入したのでもっと散歩しようと思っていた気持ちが荷物の煩わしさに負けてしまった。
煩わしくなったお土産をゲストハウスに置いておくために一度ホテルへ戻ることに決めた。
戻ったゲストハウスではたくさんの利用者がプールでわちゃわちゃしており、
大きめの手提げを抱えていた自分は田舎もの感がでてしまったことで、少し恥ずかしさを感じながら部屋へ向かった。
現在地から近い距離でタイをたくさん感じるために行くことに決め、
近場にあるワットポーを見に行くために外に出ると露天で190Bのアロハシャツが売っていた。
リゾートっぽいから着て歩きたいぞ!と思い浮き足だって覗いてみた。
結局はタイシャツを購入したのだが、友達にあげることにした。
ワットポーは徒歩圏内だったので、タイ旅行で培った徒歩移動しているとトゥクトゥクおじさんが声をかけてきた。
150Bというので50Bにしてくれというとダメだとの返答。
歩き出すと袖を掴んできて80Bならいいよという。
70Bでどうだいと返すと仕方なく了承してくれた。
おじさんの友達が笑いながら50Bでいいよ、と言ってきたので、
本当に50でいい?と聞くとトゥクトゥクおじさんにはシカトされた。
トゥクトゥクは移動にはコスパ悪いけど、折角だし乗ってよかった。
タイのほどよい暖かさにちょうどいい風を感じた。
次はリモバイクに乗ってみたいなあと思った。
ワットポーはメインだと思われる大きめな涅槃像よりも、寺院内にある大仏の方が趣があって好きだった。
理由は昨夜のレストランで、ライブを見ながら興奮気味にチップを渡して路上で呑んだくれてた青年が寺院内で静かに拝んでいた姿があったからだ。
ちょっとしたヒッピーみの彼の旅に幸あれと胸に秘めながら寺院を散策。
ワットポー内で猫が横になっているのを見つけたので、寝顔を納めようとカメラを近づけると
動物特有の複式呼吸がなかった。
しっかりと確かめなかったが、きっと亡くなってるんだろうと思いカメラを下げた。
ひとり旅はなんでも刺激的で記録として残したかったためいろんな箇所でカメラを向けてたけど
その瞬間ハッとしてしまった。
写していいものと悪いもの、BE HUMBLEしなきゃいけないことが頭によぎった。
(寺院内には至る所にBE HUMBLEという注意書きがあり、恐らくうるさくしないでといったことがメインであるが
生き物を尊重する、ということも含まれると勝手に解釈した。)
ワットポーは社会人1年目の研修のミャンマーで見た涅槃像がファーストインプレッションなので、ワットポーの涅槃像との違いがイマイチわからないかったので
刺激も興奮もなかった。
ただし、寺院内の装飾が素晴らしく、大仏や涅槃像よりもお寺の中の手入れのされ方などがタイの寺院の魅力なんだと個人的には感じた。
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ワットポーを見終わった後にワットアルンを見に船着場へ。
船着場の猫がフラフラと天井に上がっていて
猫特有の気ままさが可愛かった。
タイの猫は特に人懐こさがあり、飼い主によく躾されているように見える。
(もしくは野良だけど常識ある猫。)
人の言葉がわかるような印象がある、魔女の宅急便のキキのような佇まいだった。
タイでは犬よりも猫を見る方が多かった。
ワットアルンは厳かで感動した。
白を基調にした場所で、日差しが差し込むことによって言葉に言い表せない感動があった。
途中揉め事が近くで起こっていたけど、何が起きてるかは分からなかった。
(恐らくゲイのカップルが面白がられて写真撮られたりした雰囲気だった。そしたら最低だと感じる。)
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ワットアルンを一通り楽しみ、ワットポー側の岸に着いたとき
次��ワットアルンへ向かう船の列に並ぶ日本人がちんたらと歩いており、欧米系の人に抜かされていた。
抜かされた日本人が日本語で「白人ってこういうことするよね」って言っており、
とてもイラついた。
海外に来ている以上、お前の常識ではないんだぞ?思った。
少し腹が立った状態でワットアルンを後にし、名所と思しきルンピニ公園の入り口を眺めながら、
歩きたくない病によりバスを待つことにした。
となりの欧米系の若いカップルがバスに乗ろうとするがタイ独特のパワープレイアピールでないと
バスが止まってくれないらしく、なんどもトライしていたが結局乗れず、諦めてバス停から去っていった。
俺もトライしようとしたが、まずこの路線のバスはどこへ行くのか調べてみようと思い、
地球の歩き方に書いてあったバンコクのバスアプリをダウンロード。
最寄りのバス停を調べるため目的地までの移動手段をグーグルマップで検索をかけると歩いて最寄り駅に行って、
メトロに乗れとのことだった。
(デジタルデトックス言うてる場合ではなく、インターネットさまさまになってしまっていた。)
サンセットが近づいており、フォトジェニックな風景を撮りたいと思い、
最寄り駅からメトロに乗ってリバーサイドレストランへ向かう。
一杯引っ掛けながら、日没を見ようと楽しみにしていたが、
到着すると船着場しかなくてレストランやバーが見当たらない。
残念がりながら駅周辺を探索をしてみた。
映画ハングオーバー!で使われていたスカイタワーがあるため、そこで飲むか!高いところの景色綺麗だし!と調べてみると
ドレスコードが存在し、サンダルがNGのためバカンス気分でサンダル短パン姿の俺はスカイタワーに行けなかった。
(次回リベンジしたい。)
目的地だったリバーサイドレストランも
タクシー、バスに乗ろうにも交通量が多く、結局向かっても日没は車内で迎えると判断して諦めた。
駅付近を探索してるとシャングリラホテルという有名なホテルの近くで見つけた「chill」の文字が書いてあるバーで
そろそろチルしたいと体が悲鳴を挙げていたため、
タイに着いてからずっと飲んでいるレオビールのブラックを注文し、少しのチルタイムを迎えた。
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特にすることもなく、手持ち無沙汰になったため、お土産を買いにサイアムへ向かう。
サイアムへ向かう途中で汗疹?もしくは蕁麻疹が出てきて、
悪いもの食べたかなと思い返しても直近はビールだからきっと疲れが原因だと思った。
サイアムに到着し、MBKセンターで買い物。
これは紛い物ばかりだー、ワハハ!という品揃えだったので全然魅力を感じない。
安いからとかそういうことじゃないだろう!と思いながら一種のエンタメを味わった。
MBKセンターではトムヤムクン味のプリッツを購入し、お土産ミッションをコンプリートしたので
MBKセンターを後にした。
流石にもうサイアムからカオサンまでは歩けないと思い、タクシーを捕まえる。
50Bでどうです?とタイ慣れてます、アホな日本人ではないです、というアピールを兼ね備え
交渉とメーターだよ、アホと言わんばかりの態度をされた。
(タイでは交渉式とメーター式のタクシーがあり、メーター式はある程度しっかり金額管理されている)
メーターならまだ安心かと判断し、乗せてもらった。
昨日のアユタヤからの帰りとほぼ同じ道中をタクシーで通った際に、この距離を歩いたんだなあと物思いに耽っていると
あっという間にカオサン通りに着いてしまった。
乗り物すげーな。と思いながら、徒歩でしか味わえない街の空気と、ドラマも楽しいよなと自分を正当化した。
カオサンに着くとメーター通りの70Bを請求されたので100Bを出すとお釣りが25Bで帰ってきた。
あれ?という大袈裟なリアクションをして再計算していると
運転手から早く降りろと言わんばかりの態度をされた。
5Bと10Bは似てるから単なる間違いだよなと思い、
100B出したから30Bのお釣りのはずだけど、5B硬貨だよ、これ、と渡すと「はて?」という顔をされた。
失敗から学び続ける気持ちで、折れてはいかんと思い、はい、5B!って運転手の顔の前に出すと
タイ語でブツブツ言われていたが、結局10Bのお釣りを返してもらった。
カオサン通りに着くと、連泊しているからか、もはや安堵感が生まれた。
相変わらず、賑やかな街並みを通り、お土産を置きにゲストハウスへ向かう。
昨日ついたばかりと言っていた、アンドリューがほかの宿泊者と仲よさそうに話しており、
アンドリューにとって第一ゲストハウス村人だった俺は謎の「一番の友達だよね、俺ら!」感を持ってた自分に羞恥心を感じながら
こうやってゲストハウス過ごすもんだよね!びびってるよね、俺!と反省した。
(転校生と一番最初に仲良くなったけど、そいつは別の友達と仲良くなった時の気持ちみたいな)
一息ついたのでシャワーを浴びた後、最終夜のカオサン通りに繰り出す。
さすがに今夜は行き慣れたレストランとは違うレストランに入ってみようとトライしたが、
きっと同系列のお店だった。なぜならメニューが同じだった。
タイ最後の晩餐はトムヤムクンとビール。
翌日の空港へ向かうタクシー代を考えると、あまり豪勢な食事はできなかった。
(あまりタイ料理で豪勢というのもイメージつかないが。。)
これで満たされるかと不安があったが、スープは意外にも腹にたまりビールがなかなか進まなかった。
ひとり旅だし、解放的になった俺は”なんか街で歩いている人みんな可愛く見える病”にかかりながら
カオサン通りを歩いていくバックパッカーや観光客を眺めていた。
持ってきていたブラッドベリの短編を読みながらビールを流し込んでいく。
しばらく過ごすことができたのだが、流石にビール一杯とトムヤムクンで
長時間居座るのも、居心地が悪くなりゲストハウスに戻ることにした。
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翌日のタクシーを予約するため、受付脇に置かれていた”taxi”と書かれたシートに記帳していたため、
タクシー来るまでの段取りをゲストハウスの受付に確認すると
「カープールは同じ方向に向かう人を集うシートであって、タクシーを予約するやつではない、自分で調整してくれ」と言われ、
無知って怖いなあと勉強できました。英語で書かれているんだから文字もちゃんと読むべきだよなあ、という反省。
どうしようかと考えあぐねていたが、まあ明日考えようという持ち前ポジティブマインドになってしまったので
お酒が買えなくなる24時前にビールとお水を買いに外に出た。
ゲストハウスへ戻ってくるとロビー内のテーブルが片付けられていたので
フロントでビールを飲みながらぼーっと旅の思い出を整理しながら時間を過ごした。
コンビニでも買うくらい、お気に入りとなったレオビールを飲み干し、最後の夜を無事に終えた。
あとは空港までの移動のみだ。
翌日のタクシーのことは明日の自分に任せて、ベッドに入った。
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ohnoyoshito · 6 months
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体の歪み
私達の体は、利き腕(利き足)の方がやや発達するなどの左右差があります。 ある程度の左右差は問題ありませんが、 悪い姿勢や、立ち方、座り方、歩き方など、 日々の習慣の積み重ねで左右差が大きくなり過ぎると、 体に歪みが生じ、それによって肩こりや腰痛、さらには呼吸も浅くなり、 自律神経のバランスが乱れ、内臓機能が低下する等、 体調やメンタルにも影響を及ぼす事があります。   そういった事を予防する上で、有効なのが、 『生活ヨガ』という考え方で、 利き手(足)と違う方で、 「鞄を持つ(肩に掛ける)」 「いつもと逆に足を組む」 「部屋の電気を消す」 「歯磨きをする」 等の、日常の動きをする事で、体の歪みが少しずつ、 改善されていくそうです。 私は、この事を知った約20年くらい前から、 (いつもではありませんが) 定期的に、体の左右のバランスを整える意味で、 そういう事をよくやります。 心身の健康の…
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