Tumgik
#孫くんの血を引いてるから母親以上の女性を見つけるのは無理そう
abeya38 · 12 days
Video
youtube
この世を去ったと思っていた子どもに 再会できた母親チンパンジー ---------------------------- 個体は親の子であり、その親達もそれぞれの親の子であり、親なくして個体は存在し得ない。仮に人工授精だらうとなんだらうとそこには確かに親から子への繋がり、命脈がある。 「そんな事は当り前だ!」と思ふ人が大半であるとは思ふし、私自身も嘗てはさういふ一人であつた。しかし、本当に当り前と片付けられる程簡単な事なのだらうか?「子の思ふ当り前」と「親として思ふ当り前」では大きな隔たりがある。一世代だけ見てもさうであるのに、私達の命脈の大元はいつ、どこから続いてゐるのだらうか? 今存在してゐる私達にとつては当り前な事実といふものは、奇跡に等しい偉業であると分かる程度まで突き詰めると軽々しく「当り前」とはいへなくなる。 格差社会である現代では子の親と成れる割合は少なくなつてゐるのだらうし、好ましくない親を持つ子も少なくはないだらう。しかし、ヒトは社会的な動物なので血の繋がりだけ、養育される環境だけが親子関係といふべきでもない。 血縁のあるなしを問はず、環境の良し悪しを問はず、親子の情とは本能として人類の中にある。これの欠落や機能不全を人でなしといふ。 それこそヒトとチンパンジーとの祖先が本当に共通するのであれば、その分岐はおよそ600~760万年前と推定されるらしいので、これより遥か以前から神代の���から連綿と絶へる事なく繋がる親と子の世代循環、命脈。 この動かぬ現実に対する感謝と報恩、それが神道では祭祀といふ形で今世の私達にも伝へられてゐる。これこそ正に「天壌無窮の神勅」であらう。 これを以て「大日本は神國なり」とするのは当然であり、これこそが『國體』といふものの本質である。 そして、神代の昔から遠つ御祖の積み上げてきた社会、その時々の時代や環境により形は様変はりしてゐるだらうが、その本質は一貫してゐる。 祖の御恩への感謝と、受けた御恩を子孫へと報恩。 個人的な感想かも知れないがヒトとチンパンジーとの差と、皇國臣民と近代的な価値観との差とを比ぶれば、皇國臣民と近代との差異の方が大きいだらう。 (蛇足だが、異なるといつてゐるだけであり、優れてゐる劣つてゐるといつてゐるのではないのだが、レイシストはそのやうに感ずるらしいので。) 皇國臣民の方がヒトの本質たる本能が強いので、近代的価値観の人々よりもチンパンジーに近いので真つ当な生き方をしてゐるわけだ。 意識のある生物でも生命の本質は睡眠状態であるらしく、覚醒は生命を維持し繁栄するための手段であり、即ち本能こそが命の本質であり、理性とはそれを助ける手段に過ぎない。 本能と理性といふ事柄もよく誤解されるのだが、本能が悪であるなら、理性を持たぬ生命はとつくの昔に絶滅してゐなければ話が可怪しい。 話を戻すが、皇國臣民を近代的価値観の人々とは「別の種」であると考へてみるといふのは思考実験として有意なのかも知れない。 皇國臣民といふ種では「御祖への感謝として、祖の遺し伝へて下さつた事を、出来る限りそのまま、別種からもたらされた文物も取り入れつつ、歴史的研鑽を経てより良い形を発見できればそれを後世へと報恩してゐる」といふのがこの種の本能的な特徴だらう。 ・・・このやうに書くと字面が綺麗事のやうだらうか。感謝と報恩の発露は眞心(大和心)によると思ふが、そこには社会を弱体化せぬための間引きや、我が身を殺してでも仇に報ゆといふ苛烈さと表裏一体であらう。 先に挙げたチンパンジーやライオンではオスによる「他の父を持つ子殺し」といふ間引きがあるが、その結果として必ず生存に有利な遺伝子が残るかといへばそれは別の問題かも知れないが、それで種は今も存続してゐる。 またある種の魚類では群れを襲ふ外敵に対してオスは我が身を盾として特別攻撃、詰り特攻を掛ける。興味深いのはオスが全滅するとメスがオス化してまた特攻兵となるらしい��� これは余談かも知れないが武士道が大和男兒の道であるとするならば、面白い事になる。天孫・邇邇芸命の妻である木花之佐久夜毘売は一夜にして身籠り、誰が本能の父であるか問題になつた。木花之佐久夜比売は産屋に火を放ち、身の潔白を証明した。天孫であつても男は自らの腹から生まれるわけではないので、その子の父が自分であるか知る事はできないわけだ。無論、それを悪用されては困るので、女性には産屋に火を放つ位の覚悟を持つて頂きたい。 結局のところ、実の父子であるかといふよりは家督や技術の継承こそが重んじられる事にもなり、そもそもわからぬなら我が子と認め、また種全体の危機であれば同種の子らを護るために、外敵に対して玉砕もする。 まさに大和男兒の本懐で御座る。いやぁ~乱世乱世!血湧き肉躍り候。 話を戻し、そんな皇國臣民といふ種は、近しい(?)別種である列強各国による植民地支配に対し、自存自衛のみならず、これらを解放し、自立の道を示す大東亜聖戦を完遂した。歴史的かつ客観的事実として大東亜聖戦の前後で植民地と独立国を比較してみると良い。 誰が事実を述べてゐるのかよく分かる。 しかし如何な皇國臣民であれど列強諸国を相手に八面六臂の死闘を続け、有史以来最悪の死者数(一度の攻撃に於ける)を出した戦争犯罪である大空襲や2度もの原爆投下を受け 「堪ヘ難キヲ堪ヘ忍󠄁ヒ難キヲ忍󠄁ヒ」て皇軍の降伏を受諾し停戦に応じたが、この時点で世界各地の植民地支配は継続できない状態であり、この点での戦争目的は達した。 だが 「惟フニ今後帝國ノ受クヘキ苦難ハ固ヨリ尋󠄁常ニアラス」どころではなく停戦後の侵略占領下は堪へ難いものであつた。最たる例はポツダム宣言の條文では「全日本國軍の無條件降伏」であり「占領下で制限はあれど主権が認められた」はずであるのに実際にはさうでなかつた点だらうか。 誤解を恐れずにいへば侵略者である連合国・占領軍は皇國臣民を牛のやうに扱つたといふ事になる。どういふ事かといへば、皇國臣民種の特徴を破壊し、文字通りに家畜化するため、御祖からの國體の精華といへる大東亜聖戦を否定し、それを可能とした皇國社会の背骨「稜威奇しき法(大日本帝國憲法)」と大和魂「御祖と子の歴史の眞心」を抜き取り、他の骨身を粉として、皇國臣民の餌だと細工し「日本國憲法といふ名の肉骨粉」を喰はせたのだ。 制定過程を見れば明らかだが、軍事侵略中の占領下にその侵略者達との多国間合意により制定されたのが「日本國憲法」であるから、これは明らかに講和に向けた條約群の一つであり、国際法の範疇でしかない。 無論、皇國の力を削ぐ目的であるから、その真意を隠さずに「ジャップ家畜化條約」といふ名称にするはずもなく、オレオレ詐欺・成りすまし詐欺・架空請求詐欺の走りとして「日本國憲法」といふ名称にしてゐる。 牛の餌桶に飼料として「肉骨粉」が入つてゐれば、それが「日本國憲法」といふ名称であれば「それはさういうものか」として受け入れるのが被占領國の「尋常ならざる苦難」であり、公職追放や報道規制により「真実はかうだ!」と知らぬままにそれを摂取し続ければ、プリオンが脳に侵入し、牛ならば狂牛病、皇國臣民ならば日本国民といふ脳みそスカスカのスポンジ頭が生じる事になるのは必然である。 ここまでくれば、いつそスポンジ頭が好都合かも知れぬ。 そのスカスカの脳みそに玉音放送として知られる「大東亜戦争終結ノ詔書」を最後の部分だけでも叩き込め!沁み込ませよ! そしてただ反芻せよ!脳がやられてゐるのだからあれこれ考へるな! それがどういふ意味なのかは、本能と脳がやられてない者が正しく理解する! ・・・原状回復に到るまでには再び歴史的研鑽が必要かも知れないが、直ちに教育を糺せば数世代で済む(占領期以降の期間と同等)かも知れない。 ---------------------------- 宜シク擧國一家子孫相傳ヘ確ク神州ノ不滅ヲ信シ任重クシテ道󠄁遠󠄁キヲ念ヒ總力ヲ將來ノ建󠄁設ニ傾ケ道󠄁義ヲ篤クシ志操ヲ鞏クシ誓テ國體ノ精華ヲ發揚シ世界ノ進󠄁運󠄁ニ後レサラムコトヲ期󠄁スヘシ 爾臣民其レ克ク朕󠄂カ意󠄁ヲ體セヨ 御名御璽 昭和二十年八月󠄁十四日 內閣總理大臣男爵󠄂鈴木貫太郞 ---------------------------- 猿にも劣る「戦後日本人」! 御祖に対して、子孫に対して恥ずかしいと思はぬのか! ■ 國體護持總論 http://kokutaigoji.com/books/menu_kokutaigojisouron.html
0 notes
p1zzapi22a · 2 years
Text
Tumblr media
新しい命を授かり、あっという間に妊娠35週に入った。順調に行けばの話だが来年には知らない人間が家に1人増える。この重い身体ともあと1ヶ月程の付き合いなので今の気持ちをちょこっとメモしておこうかなと思い時間を見つけてはつらつらと書いている。
​───────
この様な話題に生理的な苦手意識や嫌悪感を抱かれる方もいらっしゃるかと思いますのでそういう方はお戻りくださいね。
​───────
私は自発的に「絶対結婚したい」「子供が欲しい」などと思ったことが無かった。自分が親になるなんて考えられなかった。子供が嫌いとか産みたくないというより、単純に想像が出来なかったのだ。
赤子を見ればもちろん普通に可愛いと思うし、知り合いの子供と遊んだり姪の面倒を見たこともある。でも明らかに子供と触れ合うのに向いてないのだ。そんな風に不器用に接する私に子供側も警戒するのか、懐かれることもないのであった。
自分の事をまともに大切にすることが出来ず、周りが普通にやっていることも満足にこなせずお金も無い。こんな人間には子供云々以前に結婚すら危うい、そう思っていた。
浮き沈みを繰り返しながら深く考えず適当に生きているうちに色々なきっかけがあり旦那と出会い、結婚した。それでもやはり子供の事を考えるなどしなかった。
​───────
我が家は月一で夫婦会議のようなものをしている。とは言ってもそんな厳かなものではなく、どこかで美味しいご飯を食べながら先月の振り返りやお互い思っていること、これからの予定などを話しながらノートにまとめるというものだ。これがとても良い時間でかれこれ5年ほど欠かさず続いている。
とある日の話し合いでふと旦那が「やっぱり子供は欲しいな」と漏らした。そう言われて驚きはしなかったものの、じゃあ作りましょうとは言えず、今はあまり想像が出来ないということ、夫婦2人の時間をもう少し楽しみたい気持ちが正直あるということ、そして出産によって自分のやりたい事の幅が狭まるのではないかという不安を伝えた。
旦那は否定せずにうんうんと聞いてくれたが話していく途中に「気持ちは分かるが出産にはどうしてもタイムリミットがある。特に女性はリスクが伴うので待つにしても限度がある」というような事を言った。その言葉が妙に重荷に感じてしまった私は「男性は一時の快感だけで済むが女性は想像を絶する痛みを感じながら命をかけて産まなくてはいけない、それは強要されるべきでは無いし、もし直ぐに子供が欲しいなら私と居ることは正解では無いかもしれない」と、酔っていたこともあり泣きながら叱りつけるような口調で旦那に訴えた。
今思えば私を1番大切にし、守ってくれている人に酷いことを言ったと思う。男性には男性の苦労があるというのに。
直ぐに和解したが、その後は特にこのような話題を積極的にすることは無かった。私に気を遣ってくれていたのかもしれない。
結局のところ計画的に妊娠したわけではないのだが、言葉にせずともそろそろいいかななんて考えていたら直ぐに授かった。本当にすぐだったのでびっくりした。
そろそろいいかなと思うはっきりとしたきっかけがあったわけではないが、ぼんやりと考え始めたのは強いていえば祖父の死が��っかけだったのかもしれない。
​───────
私は父と数年しか一緒に暮らしていない。悪い人では無かったし、アーティストだった父から学んだことは多々あるが、所謂浮世離れした人間だったので母と頻繁に衝突しており長い長い別居を経て両親は離婚した。
そんな私は幼い頃から祖父母の元で育ち、父親よりも長く共に暮らした祖父は私の誕生日に亡くなった。
私に覚えていて欲しかったのだろうか。
いつかの正月に姪をとろけた眼差しで見ていたのが私の記憶にある最後の祖父だ。
初孫として特別可愛がってくれた祖父に私は曾孫を見せられなかったなあと火葬中にふと思ったのだ。
その後旦那方の祖父も亡くなり訃報続きの中、夫婦や親子の在り方、子孫を残す意味のようなものについて考えたりした。何が幸せかは一概には言えないが、今1番愛する人と新しい家庭を作り上げていくのも悪くは無いなと思った。
旦那方の祖父の法要帰り、鼻水が止まらず熱っぽかったので疲れからくる風邪を引いてしまったと思った。気合いを入れるためにアルコール消毒!などと言いながら疲れきった身体に電車内でビールを流し込んだりしていた。が、どうにもしばらく倦怠感が抜けず、数日後に旦那が買ってきてくれた検査薬を試したら陽性。体調不良のくせに酒も煙草もかまわずやっていたのでとても焦った。当たり前だが良くないとされる嗜好品は全てその日にやめた。
健診に行き改めて妊娠を確認、モニターに映る点のようなものがこれから成長するらしいがあまりにも小さくて信じられなかった。
実感の無いまま悪阻に絶望する日々が始まる。
こめかみを釘打たれるような頭痛、激しい胃痛、今まで普通に食べていたものが全く食べられなくなる。からあげクンとフライドポテトとチョコスティックパンで生命を維持。生まれて初めて味わう生き地獄だった。
補助があるとは言え、定期的にある検診料も地味につらい。
悪阻で干からびたナマコのようになってしまった私に対して文句1つ言わずに色々な事を調べ、最大限のサポートをしてくれた旦那には随分助けられた。今も妊婦の身体の変化や新生児の事について私以上に調べており本当に凄いなと思う。私といえば沐浴の勉強すらまだしていない。
拷問のような悪阻が終わり、妊娠中期はそんな日々が嘘だったかのように気分爽快体調絶好調でご飯が美味しいこと美味しいこと。そして気がついたら10kg体重が増えていた。何事。羊水や増加した血液量、胎児の重さを差し引いても割に合わない…健診で叱られないか毎回ビ���ビクしている。そろそろやばそうである。
​───────
あれよあれよと月日は過ぎて現在35週目、所謂妊娠後期。痩せ型だからそんなに大きくならないかもねーと言われ甘く見ていたお腹もしっかり出てきて、とにかく身体が重い。歩くのが大好きなのに直ぐに動悸がして立ってても座ってても色んなところがめちゃくちゃ痛い。
かと言って夜寝ようと横になると体内で大運動会が繰り広げられ、みぞおちと膀胱に激痛、急激に重くなった自重により下にしている方の腰骨にアザができたりして全く眠れない…。後期は後期でとても辛いが、毎日感じる胎動やまだ見ぬ存在を思いながら夫婦2人で過ごす時間、四六時中一心同体である期間もあと僅か、そう思うとなんだかんだ名残惜しく感じるものだ。
と同時に今度は出産への恐怖が襲ってくる。あまりにも怖い。新生児を見ると小さくてびっくりするが、人の身体から出てくるには大きすぎるので卵で産ませてほしい。
痛みもだがそもそも無事に産まれてくるのか、万が一なにか疾患があったらその時私は受け止められるのか。
考えても仕方の無いことだが気を抜くと狂いそうになる。
未知の経験の連続で疲れてしまう時もあるけれど逆に良かったこともそれなりにある。
今まで疎かにしていた自分の身体を大切にしなきゃと思えたこと、豆粒サイズの物体が心臓や脳をひとりでに形成して体内で育っていく人体の不思議を感じられたこと、自分がここまで大きな事件事故に巻き込まれること無く健康に生きてこられたことへの感謝。母親の偉大さ。
まだあるけれど特に強く感じたのはこのあたり。これらは改めて気がつけて本当に良かったと思う。
​───────
以前は子供が産まれたら夫婦関係が変わってしまうのではないか、自由な時間はあるのか、私という存在が世の中が決めつけている母親像に飲み込まれないかなどという不安が染みのようにじんわり広がっていたが、我が子は守るべき存在ではあるけれど私の分身では無い。思い通りにはコントロールは出来ない。
私は私、子は子で全く別の個体であり何れは自分の事は自分で決める。それが出来るまで夫婦で見守れば良い。
私はお絵描き、ゲーム、飲酒、散歩が大好き。もちろん我慢する期間はあれど、別にそれらを子の存在により諦めたりする必要は無いのだ。そう思えてきた最近は、幾分か気持ちが楽になった。
未だに拭えない不安はあるし、我が子の成長日記のようなものを包み隠さず投稿している知り合いのSNSにどうにも興味が持てなかったりするのだが、本能なのか私の中に少しだけ、ほんの少しだけ母性が芽生えているのも事実。身体を動かしたり話しかけたりするとモニョモニョと動くお腹をとても愛おしく思う時がある。
今はとにかく無事に予定日を迎えることが目標。
まだ仕事も納まっていないし、実を言うと引越しもあるのだけど。
歳をとるにつれてまあどうにかなるよね精神が鍛えられているので今回もそう願ってなるべくリラックスして過ごしたいと思う。
そんな覚え書き。
0 notes
amumate · 6 years
Text
カプリカさんに、力力べジャーの間でシャロットくんが力力ベジの息子だと盛り上がっていると聞いてわたしも参戦してみました。
(ゲームはやってないです)
Tumblr media
昔、マザコンのゴジベジが高校生になったところまでの漫画は描いた事があったのですが、その時も彼らは母親よりイイ女に出会えない事から残念な童貞と素人童貞というしょうもない設定だったと思います。(ベジットは童貞はダサイからとお店で卒業している)
134 notes · View notes
keredomo · 4 years
Text
『八月の光』、分厚いですよね(後半)
Tumblr media
 後半です。前半ではクリスマスとジョアナを中心に愛と承認についてうだうだ書きました。後半では腹を括って書ききれなかった「信仰とはなにか」問題について書かねばなりません。書き切るためにも、とにかく気合でページを進めるのみです。デスマーチ……(私はものを読むのが得意でない)。  後半で取り扱う人物がまー軒並みクズでして、奴隷労働をさせられることになった怒りをフォークナーに癒してもらうために読み始めたはずが、より一層怒り狂うはめになりました。
【主な登場人物】
リーナ・グローヴ:神がジェファソンに導き給うた。そろそろ産まれそう。
ジョー・ブラウン:自分が作った酒でアル中になるバカ。
ジョー・クリスマス:愛した女を殺し家を燃やして逃走中。賞金首。
ジョアナ・バーデン:愛の渦に飲み込まれ死亡。享年44歳。
バイロン・バンチ:おれがリーナを守る!夫に会わせてやるからな!
ゲイル・ハイタワー:実はバイロンとマブダチ。本は結構読むらしい。
 それでは参りましょう。悪態が炸裂して大変なことになりそうです。
【目次】
383ページ 頭蓋骨に蛆が詰まっているとしか思えない
395ページ 「確信」への憧憬  
403ページ ハイタワーの受け取った「おつり」
474ページ まるで死が賜物であるかのように
495ページ 黒人の神様
498ページ 罪を抱えきれない弱い人間
526ページ リーナの出産
574ページ このタイミングで新キャラ出すの何なの
631ページ ハイタワーの死/リーナの再出発
やっと読み終わりました(656ページ)
383ページ 頭蓋骨に蛆が詰まっているとしか思えない
 前半冒頭で「走る下半身」として紹介したジョー・ブラウンという男がいましたね。こいつの名前は偽名です。リーナの夫になることから逃れるために町を移り、名を変えました。本名(かどうかも怪しいが)ルーカス・バーチ、バイロン・バンチと名前が似ていた偶然がリーナを彼のそばまで運んできたのです。必然でしょうね。  このクソ野郎は、リーナから逃げて流れ着いたこの町に同じく流れ着いたストレンジャーであったクリスマスとつるんで密造酒の製造販売で儲けようとするのですが、脳が5gくらいしかないのであちこちでヘマをやらかしてクリスマスに睨まれます。とはいえクリスマス自身もストレンジャー特有の警戒心があり他に仲間にでき��うな人もなく、同じくストレンジャーであるブラウンと一緒に過ごすことを選びました。宿のない彼をジョアナに与えられていた小屋に招いて共に暮らすようになると、ブラウンはクリスマスとジョアナが男女関係であることを知るようになります。へえ、こいつはおもしれえや。あの北部人の女とね。のみならず、クリスマスが酩酊して「自分には黒人の血が流れている」と独白するのも聞く。いよいよこいつの弱みを握ってやったぜ。こいつは使えそうだ。  それで、火事の現場に偶然居合わせたブラウンに容疑がかかった際、相棒クリスマスの複雑で繊細な事柄をぜんぶ、ぜーんぶぶちまけて、自分の利益に替えようとするわけです。我が身の安全とクリスマスの首に懸かった賞金の千ドルのために、知ってることをすべて警察に打ち明けて、「あいつが殺したんだ!あいつが悪人だ!」と喚く。「俺は何もかも知っている!犯人を明らかにしたんだから千ドルよこせ!」とぎゃんぎゃん叫ぶ。なんなんだこの下劣野郎は。最悪すぎる。
ブラウンはしゃべりたがった、熱心に大声でしゃべりたがり、どうやら彼がそうするのも千ドルの賞金が欲しいためだとすぐに明らかになったのだった。 「おまえは共犯証言をして自分の罪を軽くしたいわけかね?」保安官が尋ねた。 「俺はそんな証言したくねえよ」ブラウンは表情も声もやや荒っぽく、突っかかるように言った。「誰がやったか��は知ってるんだ、千ドルくれれば話すんだ」
 ちょっと頭蓋骨に蛆が詰まっているとしか思えないですね。それとも、この時代、1930年代のアメリカの南というのは、ここまで人を貶めなければ自分が生き延びることができないような時代だったのでしょうか。
 2020年を生きる私はブラウンのキャラクターに対してはっきりと憎悪をもっていますが、当時の土地や時代のことや、信仰のもう手に負えないほどの形骸化のことに鑑みるに、彼が神を無視し、慣習を無視し、父親となってこの世に囚われることを拒み、逃げ、逃げ続け、この世に反抗して生きられるのならば何だってやる、という態度を選択するのももしかすると一つの生き様なのかもしれない、とわずかな同情の余地をもつこともできます。彼の発言や行動の迂闊さと利己心をみるに、そこまで確固たる思想があるとはまったく思えないけど、絶対ないとは言い切れないよね。
 もちろん、どう擁護しようと、こいつのせいでリーナは孕んで共同体から疎外され、こいつのせいでクリスマスはリンチに遭って死ぬわけです。  ですが、彼を悪であると断じていいのかどうかはわかりません。
 リーナはすごく晴れ晴れしく旅を続けています、この男を追う旅を。この小説のラストシーンは再びリーナの歩みで締めくくられるの��すが、そのリーナの姿の晴れやかなことといったら。生きる勇気をもらえるラストシーンです。この美しさ、晴れ晴れしさは、未読の方には是非読み通して味わっていただきたいものです。  クリスマスは、これは想像にすぎないけれど、多分ジョアナを殺して一人になった時からずっと死にたかったのだろうと思います。二人で死ぬつもりだった女を一人で死なせて、彼はもう生きていくことはできなくなったような気がする。二人で死のうとしていたような女を一度人生に置いて、それから再び一人になるということはできないような気がします。
 ジョー・ブラウンの存在は、「引き金は意思を持たない」ということを示しているのかもしれません。事実、この世には、明確な意志で以って引かれる引き金なんかほとんどないのです(私たちが抗いながらも自殺に憧れる理由でしょうか)。
395ページ 「確信」への憧憬  
 これまでこの記事では愚昧な男バイロン・バンチと追放された牧師ゲイル・ハイタワーのことにはほとんど触れずにきました。どちらも物語の主要人物なのですが、どうも魅力に欠いて、それは彼らに主体性がないからだと思います。自己についても他者についても社会についても責任を有していない。呆れたことですが、一般的なことかもしれません。  動くことはもちろんsurviveするための能動的選択ですが、不動のまま耐え続けることもまた生き延びるための一つの選択肢でしょう。とくに共同体から疎外されては生きてゆかれないような状況では、動くことのほうが愚策であることが多い。  バイロンとハイタワーの両者は「耐える」ことを選んだ者でした。  ある側面では、この小説の結末について思えば、これはそういった「どこに自分を見出せばいいかわからない」ような生を生きてきた彼らを救済する物語であるとも言えるかもしれません。
「彼女はいまあなたがしているように僕を見つめてて、それから言ったんです、『その黒ん坊の名は何というの?』まるで神様が見るみたいに、人間の嘘から知りたいことだけを、尋ねもせずに、見つけだしちまうんです」
 バイロン・バンチがリーナに恋をするのも頷ける話です。確信を持つ人間は、従い続ける人間にはあまりにも眩しく見えるものでしょう。
 バイロン・バンチは、よりによってジョアナの死体と家が燃え上がっているまさにその時にジェファソンにたどり着いたリーナと偶然出会って恋に落ちます。「ルーカス・バーチ(下半身ジョー・ブラウン)を探していたら、バーチじゃなくてバンチならここにいるっていろんな人に言われたわ。バンチってあんたなのね。」みたいな感じで話します。今書き出してみて気づいたけど、売野機子の描く物語の登場人物にこういう話し方をする子がけっこういますね。『かんぺきな街』とか。
 バイロンがリーナを保護し、彼女の望みを叶えるためにブラウンに会わせてやろうとするその健気さ、甲斐甲斐しさ��いうのは、明らかに当時理想とされていた男性像から逸脱したものです。言ってしまえば性役割が反転しています。ここがリーナというキャラクターの底知れなさで、この人、主語が一貫して「あたし」なんですよね。前半の登場人物紹介で「電波」と書きましたが、彼女を電波と言わしめる社会順応性のほうがどう考えても悪ですね。
403ページ ハイタワーの受け取った「おつり」
 『いかん、わしはせんぞ。わしはお役ご免の株を買ったんだ』。それがいまは口でしゃべる言葉ほどになって、繰り返し、執拗に、主張するように、『わしはそのために支払ったのだ、値段をごまかしはしなかった。誰にもそうは言わせんぞ。わしはただ平和が欲しかっただけだ。言い逃れもせずに彼らの値段どおり払ったんだ』。
 『 』は作中人物が頭の中で考えた会話や独白を示すそうです(原文では ‘ ’ )。ゴシック体(原文はイタリック)となっている“意識の中を走る「思考の流れ」”との違いが相変わらずよくわかりませんね。より強く現実に即している思考ってことなのかな。
 本書ではバイロン・バンチとハイタワーの対話に少なくない紙面が割かれているのですが、この箇所ではバイロンがハイタワーにクリスマスを助けるための嘘をついてくれないかと懇願します。  バイロンはハイタワーに頭を下げつつ、「悪人と同様に善人にも負債が——償わねばならぬ負債が——あるとあなたに言いましたね」と話しています。ハイタワーはそんなこと、つゆほども承知していない。  先に「耐える」者として触れたとおり、そして上記の引用からも見て取れるような、「ただ悪事を犯さないというだけで“善人”である」というスタンスをとっていたハイタワーには、自分が支払わなければならない負債なんか到底あるとは思えないのです。  しかしその後、ハイタワーはほとんど自らの意志で「おつり」を受け取ることになりました。
 この場面の前後で、クリスマスの祖父母が新たに登場します。ここにきて新キャラ出すのやめろ。クリスマスの(微妙にたいしたことない)出生の秘密が明らかになると同時に、前半で触れた孤児院の「番人」はクリスマスの祖父だったことが判明します。孤児院のシーンでの描写でも完全にヤバい男でしたが、何がどうなってあんなにヤバかったのかが明らかにされて私も安心しました。詳しくは後ほど。
474ページ まるで死が賜物であるかのように
それでいてなおその音楽は冷酷で執念ぶかい性質を持ち、用心ぶかくて、わが身を犠牲にする情熱もなく、頼み、懇願するのだが、それは生をではなく、死を請い願っているのであり、他の新教音楽と同様、人々に生命を禁じるその高い調子は、まるで死が賜物であるかのように、死を請い願っているのだ。
 ハイタワーが今は自分の所属先ではなくなってしまった教会、そこで奏でられるパイプオルガンの音色について回想しているこの箇所は、明らかにイエス・キリストを擬人化(擬人化?)した挙���クリスマスに重ねている文章ですね。  この、クリスマスの心情を髣髴とさせる一節をハイタワー(堕落した牧師)の思念として描き出すのもなかなか皮肉に満ちていながら、……もしかすると、「わかりあえなさ」を強調しているのかもしれません。
この人々は喜びや陶酔には耐えられぬようであり、そこから逃避するために暴力と酒と喧嘩と祈りを用い、破滅するときにも、また、同様に、きまって暴力を用いるのだ だから彼らの宗教も当然のことに、彼ら自身やお互いを、十字架上に追いあげるようなものになるのだ と彼は考える。この音楽の内奥には、あの人々が明日はせねばならぬと知っているものに対する彼らの宣言と献身とが聞きとれるように思える。また、前の週は奔流のごとく過ぎ去り、明日に始まる来週は深淵であり、いまだけは瀑布(ばくふ)の落ち口に集まった水の流れが一つに調和して厳粛で朗々たる響きをあげているといったふうなのだ、それも弁明のためでなくて自らの落下を前にしての末期の挨拶であり、それを神へではなくて鉄棒のはまった監房に死を待つあの男へであって、その合唱ばかりか他の二つの教会の音楽も聞えてくる監房にいる男に、彼らは喜んで磔のための十字架を建てようとしているのだ。(太字箇所はここではゴシック体)
『というのも、あの男を憐れんだりすればそれは彼ら自身への疑問を生むことになるからだ、彼ら自身を憐れむ希望と必要を生むことになるからだ。だから彼らは喜んであの男を磔にする十字架を建てるのだ、喜んで。それが恐ろしいことなのだ、まったく恐ろしい、恐ろしい』
 思念はイエス・キリスト、クリスマス、そしてハイタワー自身が民衆から受ける仕打ちを重ね合わせながら、自己を守るために他者の理解を拒むという民衆的暴力の陰惨さに辿り着きます。  この箇所を他人事として棚上げすることは許されないように思われます。私たちが他者を拒むとき、それが暴力の行使にあたることにはほとんど気づきません。しかしそれは、『八月の光』あるいは聖書に描かれる実際上の血祭りとなんら変わりないと、ここにはっきりと記されていました。
 ハイタワーとクリスマスは、それこそクリスマスの死の瞬間まで一切、直接に接触することはありません。隠居しているハイタワーは、クリスマスの存在を知ってはいるものの、バイロンの噂話で聞きかじる程度です。  こうしてかつての自分が民衆から受けた迫害にあらためて思いを馳せる夜を経たことで、その後ハイタワーはクリスマスを暴力と死から逃そうとする行動をとることになるのですが、結局守りきれず、無力感に包まれたままハイタワーもまた孤独に息をひきとりました。
 直接に愛し合うことのない人間がほとんど唯一の理解者としてこの世に存在しうるということは、絶望でしょうか。それとも希望でしょうか。自分が生きながらにして享受できない救いははたして救いなのでしょうか。生前評価されなかった画家を死んでから愛でるというおこないの下劣について、私たちはどう折り合いをつければいいのでしょうか。
 死が賜物であると宣べるとき、私たちはこの生の耐え難い無力感から解放されることの安堵に支配されてしまうのでしょう。その安堵に抵抗し続けることの困難に、それでも立ち向かわなくてはならないのですが。
495ページ 黒人の神様
『坊や、なんであっしばかり見つめとるだね?』するとその子(引用者注:孤児院時代のクリスマス)は言った、『おじさん、どうして黒ん坊になったの?』それで黒ん坊が言った、『あっし��黒ん坊だなんて誰が教えたい? ええこの白人の父(てて)なし子め!』するとその子が言うんだ、『ぼく黒ん坊じゃないよ』、そして黒ん坊が言った、『おまえはそれより悪いだ。自分が何だか知らねえんだから。それもだ、これからずっと一生知らねえだ。おまえは行きて、そいから死ぬだがそれでも死なねえままだ』
 呪いがすごい。この呪詛によって、人種差別の罪、暴力でもって黒人を奴隷として使役してきた白人の罪のすべてがクリスマスに注がれています。神なき人の子に重すぎる原罪を背負わせるのやめろ。
そしてその子が言うんだ、『神様は黒ん坊じゃないよ』、そしてその黒ん坊が言うのさ、『おまえは神様が何だか知ってるにちがいねえな、だっておまえがどんな人間かは神様だけが知っとるんだからよ』。
 「神様は黒ん坊じゃない」!  その次の黒ん坊のセリフもまたすごいものですが、「神様は黒ん坊じゃない」という一節に衝撃を受けました。そうだよな、黒人の歴史においては、キリスト教が布教される(あるいは強制される)その担い手は白人だったわけで、それは書物ではなく口承と絵図とモチーフのみによって教えられたわけで、イエス・キリストは黒人の姿をしていない……。一度も考えたことがなかった。黒人にとっては、神の子は自分と同じ肌の色をしておらず、よりイ���ス・キリストの姿(と思い込まされているもの)に近い白人たちのほうが上等な生き物であると思わされてきたのかもしれない。白人たちも当然その傲慢に染まっていたことでしょう。聖書におけるイエスの肌は褐色であるにもかかわらず。  ここで私が割って入って「神様は黒ん坊でもないけど白人でもありませ〜〜ん残念でした〜〜〜!」と叫びながらハリセンでクリスマスの頭をはたけたら何か変わっていたかもしれません。悔やまれます。
 その直後の黒ん坊のセリフ「おまえは神様が何だか知ってるにちがいねえな、だっておまえがどんな人間かは神様だけが知っとるんだからよ」、こっちが真実ですね。どんなに正しいことに触れても、それが正しいと知らなければ受け取ることは叶わないのはやるせないものです。私もきっとおびただしい正しさを取りこぼして過って生きているのだろうな。
 それにしても、構造が明らかになるにつれフォークナーの筆力にひれ伏すばかりです。私事ですが、ここ何年かは、複雑きわまりない人生から「咀嚼可能なていどに簡易化をほどこした物語」を抽出することに取り組んできましたが、そろそろ「複雑な物語構造を組んで現実を再構築する」ということに取り組んでみたい気がしています。
498ページ 罪を抱えきれない弱い人間
 クリスマスの祖父について少し触れておきたいと思います。老ハインズと呼ばれている、町で噂のキチガイ爺です。「番人」の描写の時もやたらと神神神神言ってましたが、この人もまたあんまりよろしくない形で神と共にあり神を都合よくつかって救われたがっている人です。彼は常時、神と会話(対話でなく会話です)をしています。
老ドック・ハインズはあれが馬車に乗って出てゆくのを見送ってから、神様がおいでになるのを待っとると神様がやってきて老ドック・ハインズに申された、『おまえも行ってよろしい。おまえはわたしの仕事を果した。あとはもう女の悪業しか残っておらぬが、それはわたしの選んだ手先に見張らせる値打ちもないものじゃ』。
 クリスマスを孤児院から養父母に引き渡したあとのシーンですね。老ハインズは自分を神の使者だと思っているようです。  彼の一人芝居の滑稽さには正直ちょっと笑ってしまうのですが、直後に来るシーンはかなり切実で泣けてしまいます。
夜になると彼は言った、『神様、あの父なし子は?』そして神様が言われた、『あれはまだわたしの大地を歩いておる』、そして老ドック・ハインズは神様と連絡をとっておってそして晩になると彼は言った、『神様、あの父なし子は?』そして神様が言われた、『あの子はまだわたしの大地を歩いておる』、そして老ドック・ハインズはなおも神様と連絡をとっておって、そしてある夜に彼はもがいたり荒れくるったりしてから大声で叫んだ、『あの父なし子、神様! わしは感じます! わしは悪魔の歯と牙を感じます!』そして神様が言われた、『それはあの私生児じゃ。おまえの仕事はまだ終っておらん。彼はわたしの大地の汚れであり憎しみなのじゃ』
 ぐううう……(ぐうの音)。いやね、今となっては「私生児くらいでそんな……」という感じですが当時は気が狂うほどの罪だったんでしょう。自分の手から放してしまった孫をずっと気にして、不安にかられて、神様、神様と唱え続けている老ハインズの哀れな姿に胸が締めつけられます。ついに不安も苦しみも罪の意識も自責の念も背負いきれなくなり、ハインズは神様に「彼はわたしの大地の汚れであり憎しみなのだ」と言わしめてしまいました。  貶めることで安堵しようとする。人間のそういう弱さはよくわかります。自分の罪を自分で抱えきるには人間は弱すぎる。老ハインズと同じことを私もよくやっていると思います。でも、人間が弱いからと言って、自らその弱さを手放しに許すことは堕落にほかなりません。生きる以上、私たちはこの弱さに抗っていかなければならない。
526ページ リーナの出産
 さて、物語も終盤にさしかかっています。ついにリーナが出産するのですが、ブラウンが彼女を匿うことにしたのは実はジョアナ・バーデン邸の一角、クリスマス(とブラウン)が寝泊まりしていた小屋なんです。  クリスマスがジョアナを殺して家を焼いたそのすぐそばの小屋でリーナの子が産まれた瞬間、そこには、大人になったクリスマスに再会することで罪を許されたいと願ったものの叶わなかったクリスマスの祖父母(老ハインズら)と産婆役のハイタワーが集い、ここまできてもなお事態を我が事とみなしていなかったために医師を連れて来るのが間に合わなかった情けないバイロン・バンチが遅れてやってきて……なんというか、すごい構図��すね。ゴーギャンの『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』(1897-98)を思い出します。
Tumblr media
 ゴーギャンこれ。好きなんだよね。
『哀れな女だ』と彼は考える。『哀れにも不毛な女。あと一週間だけ生きのびておれば、幸運がこの場所に戻ってきたものを。この不毛の破滅した土地に運と生命が戻ってきたものを』。
 ハイタワーはリーナの小屋に医師役として通いながらこんなことを考えますが、ほんとにそうかなあ。ジョアナとクリスマスが破滅し、家が燃え上がって何もかも失われてしまったからこそ、ここに新たな生命が芽吹いたんじゃないのかな。わからないけど、そんな気がします。世界は運動し続けるもので、とどまることはないと思う。
574ページ このタイミングで新キャラ出すの何なの
 おい、もうほぼ読み終わろうとしているこのタイミングでなぜまたも新キャラを登場させる。すごい度胸だフォークナー。登場させたペラッペラの新キャラにクリスマスを惨殺させる役割を担わせるのに何の意図があるんだフォークナー。  この新キャラ(警官パーシイ・グリム)は物語に颯爽と現れて颯爽とクリスマスを殺して消えます。なんなんだ。
 留置所から逃げ出したクリスマスはハイタワーの家に駆け込み(クリスマスの祖母が彼に会いに留置所へ行き、ハイタワーが守ってくれるはずだと説いたためです)、ハイタワーも彼を追っ手の警官グリムから守ろうとするのですが、空しくクリスマスはグリムに撃たれて殺されてしまいます。
他の連中が台所に着いたとき、テーブルは横にのけられ、グリムは死体の上にかがみこんでいた。彼が何をしているのかと近づいて、一同は男がまだ死んでいないのを知った、そしてグリムのしていることを見たとき、彼らの一人は咽喉のつまった叫びをあげ、壁のほうへよろめいていって嘔吐しはじめた。グリムもまた、血だらけの大ナイフを背後に投げすてながら飛びさがった。「これで、きさま、地獄に��っても白人の女にいたずらできないぞ」と彼は言った。
 このシーンは……ちょっとあまりにも悲惨で口を噤んでしまいますが……。直後に「尻や腰のあたりの切り裂かれた服の間からは」という記述があるので、おそらくそういうことですね。一体、警官には正義の名の下にそんな仕打ちをおこなう権利があるというのでしょうか。正義は最悪。いや……マジで最悪ですね正義……。正義によって私刑が正当化されると思っている人間は本当に吐き気のする悪でしかないですね……。おえ。
彼らはこの澱んで僧院めいた薄暗さの中へ、いま彼らが彼にしたばかりの残酷な夏の光に似た何かを持ち込んだのであった。  その光の残映は彼らの上に、彼らのまわりに、ただよっていた——それは光の持つ恥知らぬ残忍酷薄な明るさともいえた。
 「八月の光」が何であったのか、端的に述べられた箇所です。  柔い光は人に優しく、あたりを照らして私たちに景色を与え、世に温度と色彩をもたらし、それは恩寵というべき恵みです。しかし、あまりにも強い光は私たちから視力を奪い、体を灼熱に焦がし、すべてを奪いつくす暴力と転じます。それは私たちの力ではどうにも操ることのできないもの、畏怖すべき自然です。  このグリム然り、『異邦人』のムルソー然り、どうも「太陽のせい」で人は道を踏み外しがちになるようです。それはお前が常日頃からきちんと責任について考えておらず、また畏れという意識のもとに生きてないからだと思います。バーカ。
631ページ ハイタワーの死/リーナの再出発
『いずれにせよ、人間の手で神様に非難や責任を押しつけえないものが、何かあるにちがいないのだ。どこかにあるにちがいない』。
 終わりから2番目の章はハイタワーが息をひきとる間際におこなう回想に充てられています。祖父の栄光、父の真面目さ、自殺させた妻のこと、などなど。相変わらずあまり反省の様子は見受けられませんが……。初めて知ったのですが、死ぬ間際にはアメリカ人にも走馬灯が見えるようです。
 それでも、上に引用したハイタワーの独白は、「八月の光」を否定しうる力強い一節に違いありません。この小説に登場した人物には、神を信じるのではなく、神に責任を転嫁したり、神を都合よく利用したり、神にすべてを預けて破滅へと堕ちていったりする者も多くありました。まともに神を信仰していたのは記憶の限りではリーナくらいでしょうか。  別に神を信仰することが圧倒的な是ということもなく、神のかの字も口にしないジョー・ブラウンのあっぱれな逃げっぷりもそれはそれでよかろうと思います。人倫には悖るし、局部を切り取られるべきはクリスマスではなくこいつなわけだが……。
 自分を手放してしまうこと、抗うことを諦めてしまうこと、すべてを「八月の光」のせいにして責任を取らないまま都合よく救済されようとすること。生きるという重圧からの解放に誘惑され、とも��れば抗い難く飲まれてしまうそういった堕落に抵抗し続けることこそ、私たちが生きるこの世界にたいする責任を果たすことに繋がるのかもしれません。
 ちゃっかり逃げおおせたブラウンを追って、リーナは再び立ち上がります。今度はバイロン・バンチも一緒です(残念ながらまだまだ片思いの模様。)。
『逞しいもんだ。男どもがあんたを踏みつけにして行っちまうと、あんたおはやつらの残したものを集めて、また進むというわけだ』
 そのとおり。私たちは何度踏みつけにされても立ち上がるのです。
やっと読み終わりました(656ページ)
 読み終わったぞーーー!!!ワーーー!!すごかった!!!  軽い気持ちで書き始めた感想文のために2周もするはめになり、私もリーナと一緒にずいぶん遠いところに来た気分です。私の読解力の低さゆえ一読では読みきれないところが結構あったので、こうして精読する機会を得られてよかった。
 しかしフォークナーの筆力えげつないな……。 
 と言うのが今は精一杯です。人の人生を初めから終りまで描き切るようなことは、今の私には逆立ちしたってできっこありませんが、「人の人生を初めから終りまで描き切るようなことも人間には可能なのだな」ということをこの20代の終りに初めて知れたので、おそらくこれから先、見ようとするもの、見えることをわかっているので見ようとすることができるもの、が格段に増えてくると思います。とても嬉しい。嬉しいな。精読できてよかったな。
 追うリーナ、逃げるブラウン、彷徨うクリスマス、助けるジョアナ、閉じるハイタワー、従うバイロン。人間同士を物語によって絡めあい、多様な生き様を浮き彫りにしつつ、フォークナーはけっしてその是非を問わない。善悪を診断しない。評価を下さない。優れた小説とはかくあるべし、というまさにお手本のような作品でした。これは個人的な感触にすぎず、後日もっと学びを深めたあかつきには撤回することになる謂いかもしれませんが、多くの小説においてはテーマがすでに正義を帯びているような気がします。気がするだけだけど……。
 というわけで、拙い感想文に長々とお付き合いくださり本当にありがとうございました。長かったでしょう……。読んでいただけて嬉しいです。ありがとうございます。  最後に、フォークナーがノーベル文学賞を受賞した際のスピーチより有名な一節を引用して締めくくりたいと思います。
I believe that man will not merely endure: he will prevail. He is immortal, not because he alone among creatures has an inexhaustible voice, but because he has a soul, a spirit capable of compassion and sacrifice and endurance.
 ——私は、人間とはただ耐えるだけの存在ではなく、打ち克つことのできる存在であると信じています。人間は永遠の存在です。あらゆる生き物のうちただ人間だけが尽きることのない声をもっているから、というわけで���ありません。人間に魂があるからです。他者を思いやり、自己犠牲を厭わず、忍耐強く耐え抜くことのできる精神を人間が備えているからです。
訳は拙訳でした。全文はこちら↓ https://www.nobelprize.org/prizes/literature/1949/faulkner/speech/
 リーナの旅は続く。わたしは次は何を読もうかな。
(2020/05/17 16:21)
0 notes
herdofloner · 4 years
Text
私的かつ長い話
昨年の夏、祖父に残された時間が早くて一ヶ月だと告げられた翌日、朝六時まで呑んでそのまま見舞いに行った。 見舞いといっても、駅まで迎えにきてくれた祖母と二人で病院まで行って当たり障りのない会話をしただけだった。祖父が自分の状況を理解しているのかよく分からなかったのは、自分が寝不足と二日酔いと生理痛で朦朧としているせいかと思ったが祖母にもよく分からないらしい。
病院を後にして車に乗り込むと祖母は、十年ほど前に母と私が二人で住んでいた家まで車を走らせた。 祖父母の家から車で十分程の場所にあったその家は取り壊されて真新しい家が建っていた。車で通り過ぎると家の中に赤ん坊がいるのが見えた。
以前、そこに建っていたのは古くて暗い二階建ての家だった。小さな庭があって、玄関はガラスの引き戸。湿気がすごくてカビ臭くて、砂壁はシミだらけだった。 13歳から三年間その借家に住んでいた。近所ということもあって祖母が遊びに来たこともあったのだろうが、記憶がなかったのでわざわざ家がなくなった様子を見せられて不思議に思った。 その家で過ごした記憶で覚えている内容は暗いものばかりだった。
14歳のとき、私はその家を燃やそうとして精神科に連れて行かれ統合失調症だと診断された。誤診だと思っているが、病気の性質上そう思う患者しかいない気がする。とにかく今でもおかしいのは自分ではなくて自分以外だったと思うし、あの時の心からの殺意を今でも鮮明に思い出せる。 だから黒歴史と揶揄する気にもなれず、あのころ失敗した破壊が知らない間に行われていて、嘘みたいに明るく綺麗な家が建ち平和な光景が広がっていることにただ呆然とするしかなかった。
思い返せばあの家に住んでから家族を憎み、開き直って笑いの種にして、やっと自分の気持ちを認めて、当時の周りの大人の気持ちを想像できるようになって改めて絶望したりしていた。ずっと形容し難い仄暗い感情を抱えてきた。
昔は家族のことが大好きだった。 私は5歳までアメリカで暮らしていて、帰国してからは父親が自営業で経営がうまくいかなくなると引っ越す根無し草の暮らしだった。毎回リセットされる子供同士の人間関係より家族との絆が深まるのは自然なことだ。父親がミュージシャンとしてライブに呼ばれた時は学校を休んで三人で車でどこまででも行った。楽しかった。
10歳になって父親の不貞が原因で離婚するまでその暮らしが続いた。 今考えてみれば父親が不貞を働く前から、長い間父と母には齟齬は生じていたのだろう。私が原因不明の脳の発作を起こしてから母親は不安がちだった。その上、楽しい暮らしのツケでうちは借金まみれだった。
離婚後は母と二人で祖父母の家に移った。 母にとっては両親と妹が住む実家だったが、それから祖父母の家を出て二人暮らしするまでの数年間、祖母は母の存在を無視した。自営業すら辞め無職になった父が裁判で取り決められた養育��を払うことはなかったし、私の脳波は安定せず病気の影響か発育も遅く体力もなかった。
祖父母の家を出て二人暮らしを始める頃には母は限界を迎えていたのだろう。 酒におぼれ、話が通じない時間が増えた。学費は出せないと言いながらよくわからない石を買っていた。 そんな状況でも祖母への恐怖は強く、祖母から見た私たち家族がちゃんとしているかどうかを酷く気にしていた。 そのちぐはぐさに私は翻弄され反発した。そして余計に母は現実と向き合わなくなった。
こうやって考えてみると私と母の確執は、母と祖母の確執だ。 祖母は実の娘を無視したという点だけ見れば非道な人間に思えるが、活発でお茶目な人で私は好きだった。 ただ心の深い部分で神経質なところがあった。そして礼儀作法に厳しく私の頭を撫でたりするような祖母ではなかった。 母も祖母に子供らしく甘えたりできなかったらしい。昔はもっと怖かったとよくこぼしていた。
祖母に厳しく育てられた結果、母は社会に出てすぐに20歳上で離婚歴のあるバーテンダーと結婚した。銀行員の祖母と役所職員の祖父に囲まれて育った母の人生に登場することのなかった人間だったのかもしれない。祖母は猛反対したが、母は半ば逃げるように渡米してしまった。 関係が全く途絶えることはなかったけれど祖母はずっと思うところがあったのだろう。でもやっと母の気持ちが少しわかるようになった私にまだ祖母の気持ちまでは想像できない。
そういえば祖母は祖父のこともよく無視していた。 孫や娘を抱きしめたりしないように、祖父とも体の一部がどこか触れるようなことはなかった。そもそも仲良く話しているのも見たことがなく、恋愛結婚だというのが信じられなかった。どうして離婚しないんだろうと思っていた。
唯一、叔母が祖母と比較的うまい距離感でやっているように見えた。 叔母は男性が苦手らしく未婚で実家から出たことがなく、ずっと働かずに家事手伝いをしていた。祖母は叔母にだけは多少甘いように見えた。母が受けた冷遇を見た後ではそれも不思議だった。
そんなことまで頭の回らなかった私は二十歳になるまでは自分の家にあまり帰らなかった。 就職して自分で家を借りてやっと自力で生活できるようになったと思ったところで父親の生活に困窮しているさまを見たり母親から仕送りを要求されたりした上に、毎日の過酷な労働環境で疲れきった私は自殺を試みて普通に失敗した。 そのあと両親のLINEをブロックして引っ越した。 心底もう関わりたくないと思ったが結局家を燃やせなかったと同じように完全に連絡を断つことはできなかった。
家族を拒絶するのに並並ならぬ決断力がいることを思い知って、呼ばれると誕生日や正月、入院時には家族の元へ出向いていた。会えて嬉しいとか顔を見ると安心するとかそういう気持ちはなかった。逃れられない果たすべき義務のひとつ、そう思っていた。 祖父の死を前にこの気持ちをどうすればいいのかわからなかった。
それでも残された時間は少ない。 今までにないくらい高い頻度でなんども昔住んでいた地に出向き、祖父のお見舞いに行った。 女四人で葬儀屋や墓に行ったりもした。集まった時に泣いたり弱音を吐く人はいなかった。
祖父は末期癌だったので治療はせず、痛みを緩和するだけの処置を受けていた。奇跡が起きる可能性はなく、ただその時が来るのを待つだけだった。少しずつ自分の状況を把握した祖父は弱っていった。 お見舞いに行って帰ろうとすると子供のようにシクシク泣いた。痛みはマシにはなっているのかもしれないけれど、何の思い入れもない清潔な病室で毎日を過ごす祖父を想うと悲しかった。 そしてそんな祖父を子供をあやすように慰める母や叔母をみるのも辛かった。 私はだれにも何の言葉もかけることができずに一人で帰りの駅のホームで泣いた。
そして宣告されてから2か月後に祖父は逝去した。 病院に着いた頃には亡くなっていたので、誰も看取れなかった。安らかだったのか、泣いていたのかも分からない。
余命宣告されてからずっと祖父が死んだとき自分がどんな気持ちになるか想像できなかった。家族の中で祖父のことが一番よくわからなかった。祖父は悪い意味で空気のような存在だった。どれだけ私たちの仲が掻き乱れていようと祖父には関係なかったし、そのことを疑問に思ったことすらなかった。認知症というわけではなく、昔からあまり話が通じたことがなかった。 そして私の父親のよう不貞を働くこともなく、淡々と働き続けていた。テレビを見るか、クラシックを聴いているか。外に出かけるのは病院に行く時だけだった。 だからずっとどんな気持ちでいればいいか分からなかった。でも当たり前に悲しかった。悲しい以外の感情が何もなかった。ただ安らかに逝けたことを願うばかりだった。
家族の全員がやっと何も気にせず涙を流して悲しむことができた。ずっと弱音を吐かなかった祖母も。火葬場で窯に入り見えなくなった遺体の方向を何度も振り返る祖母の姿を見て、私は初めて祖母が祖父を愛していたことを知った。祖母の愛情表現は言葉や態度ではなく”離れず一緒に生活すること”なのかもしれない。 なんて分かりづらいんだろう。祖父は分かっていたんだろうか?
初めて一緒に生活をしたことのある人の死を迎えて、家族がただ横にいるだけで心が楽になることもあるんだと本当に驚いた。 全員不器用で思ったことをそのまま伝えられないし、ここからすごく仲良くなったりはできないと思う。 でも漠然とあった、敢えて言葉にするとすれば、"この家族は間違っている"という気持ちは消えた。理解し合えない人間でも、一緒に生きていくのが当たり前である関係が尊いことをやっと自分の中で認めることができた。
今でも家族に会うと暗い気持ちにはなる。できれば一生別々に暮らしていたい。 それに自分はこうやってぐだぐだと考えて文章にすることで溜飲を下げていっても母は祖母との確執を抱えたままだ。生まれてきた順番に死ぬという自然な流れを汲めば次に別れが来るのは祖母だろう。 祖母がいな��なったら母はどうなってしまうんだろう。
血の繋がった家族でも痛みや死を代わってあげることはできない。そして絶対的な存在だと思っていた親も一人の人間で弱さや恐怖を抱えている。運が良ければ大人になるまで気づかないで済むけど、殆どの人が遅かれ早かれ思い知らされる。 その中で肉体の死ではなく家庭という機能の崩壊によって知る人も少なくないだろう。私はそうだったし、それを知ってからずっと寂しくてその事実を認められなかった。 でも今は、どれだけばらばらの家族でもそれはそんなに寂しいことじゃないと思えるようになった。微妙な距離感で、抱えている確執があって、暗い想いがあっても静かに毎日の暮らしを続けていきたい。
1 note · View note
xf-2 · 5 years
Link
003年4月15日夜、福岡市中央区の日本語学校に魏と王、楊らが職員室に忍び込み、現金約五万円を盗んだ。そこは王が在籍していた学校だった。王、楊はその1月にも、同区のファストフード店に侵入し、現金230万円を盗んでいた。ここは楊のアルバイト先。4月9日には魏が別の中国人留学生2人と共謀し、中国人留学生から現金約26万円を奪うという事件も起こしている。 「3人で何かやろう」  5月上旬には、楊のアルバイト先だった同市博多区のラーメン店経営者襲撃を計画する。「面識があると発覚の危険性が高い」として断念したが、この時すでに「殺害して金を奪う」ことを念頭に置いていた。 http://yabusaka.moo.jp/fukuokaikka.htm
中国人留学生
王亮(ワンリャン 当時21歳)
出典福岡・一家4人殺人事件
吉林省出身。父親は土木会社を経営し、裕福な家庭に育った。02年春、日本の大学進学を目指して福岡市内の日本語学校に入学し、同級生とともに寮で暮らし始めた。当初授業の出席率は96%と高かった。(出席率が95%以下になれば入国管理局に報告されるという。さらに低くなると強制送還される)だが王はこの年の9月、同級生とトラブルを起こし、その時の学校の対応に不信感を抱き、ほとんど学校に出てこなくなった。同級生によるとこの頃から王の様子が変わっていった���いう。03年4月の時点で、王はMさん宅から700mほどのところにある家賃2万円のアパートに楊とともに住んでいた。5月15日に日本語学校から、このままで除籍処分になると通告された。就学生が除籍処分されると、就学ビザを取り消され不法滞在になる。王は1度中国に帰り、両親に再編入のための授業料の工面を依頼していた。だが、両親が王持たせたはずの授業料は学校に納めておらず、除籍処分となっていた。
楊寧(ヤンニン 当時23歳)
出典福岡・一家4人殺人事件
吉林省出身。父親は長春市の中日友好協会に勤め、母親は同市の製紙工場に勤務。王とは両親同市が古くからの知り合いだった。01年10月に就学ビザで来日し、日本語学校を卒業した後、私立大学国際商学部に入学し、アジアの貿易経済について学んだ。02年には1科目を履修しただけでさぼり、後期には病気と称して休学したが、実際は福岡市内のハンバーガーショップでアルバイトをしていた。03年4月に1度は復学したが、年間50万円余の学費が払えず、納入期限の6月末を前に「親から学費を受け取るために一旦帰国する」と大学側に説明して出国した。この時、実家には戻っていない。
魏巍(ウェイウェイ 当時23歳)
出典福岡・一家4人殺人事件
河南省出身。父は工場を経営する資産家。魏自身も高校卒業後、3年間人民軍(※)で班長を務めた。その後大連の外国語学院で日本語を学び、日本留学後は先端技術を学ぶという希望を持ち、01年4月、福岡の日本語学校に入学している。02年4月には予定通り、コンピューターの専門学校に入学した。ここでは成績もよく、奨学生候補だった。故郷には恋人もいて、ごく普通の学生だったが03年になると一転して学校を欠席がちになった。魏のアパートには中国人の女性が何人も出入りするようになり、4月には留学生仲間と中国人宅に押し入り、26万円を強奪、6月には知人の女性に暴力をふるったとして傷害容疑で逮捕された。この頃、インターネットカフェにしばしば通うようになり、王や楊と知り合った。4月9日にはかつて住んでいたアパートへ強盗を押しこんだこともある。また、他人名義で携帯電話を契約する詐欺も働いている。金にも対して困っていない優秀な学生だった彼が、03年春を境に突如犯罪行為を繰り返すようになっていた。
出典blog-imgs-34.fc2.com
福岡一家4人殺害事件
福岡一家4人殺害事件
Mさん一家
殺害されたMさん一家は、Mさん(41歳)、妻C子さん(40歳)、小学6年の長男K君(11歳)、小学3年生の長女H子ちゃん(8歳)の4人暮らし。  Mさんは1962年福岡市で生まれた。私立博多高校を中退し、中州のクラブ勤めを経て上京。東京・麻布十番の焼肉店などで修行した後、88年に福岡市中央区で韓国料理店をオープンさせた。この店は繁盛し、有名人なども多く来店、テレビでも紹介されるほど有名店になった。その後、東区にも別の焼肉店を開店し、売上も好調だった。    C子さんも福岡県出身。九州女子高校を卒業後、94年頃まで化粧品会社の美容部員として福岡空港の国際線ターミナル店で働いていた。MさんとC個さんは高校時代から交際しており、90年5月に結婚した。Kくん、H子ちゃんも生まれ、幸せ家庭を築いていた。  しかし、最初の悲劇が起こった。01年9月、BSE(牛海綿状脳症)騒動が起こり、その煽りを受けて経営していた両店は廃業に追い込まれたのである。  MさんはC子さんの親族と一緒に婦人服販売会社を始めるが、売上が低迷、さらに東区の焼肉店開店のために自宅を抵当に入れて借りた4000万円の返済も滞るようになった。  03年3月、夫婦は婦人服販売業の業績が上がらないことから、C子さんの親族から独立して、衣料品などをデパートに卸す仕事を始めた。その2ヶ月後、Mさんの知人から休眠中の会社「W」を継承して復活させた。C子さんを社長にして、衣料品販売業を本格的に乗り出した。  また失業し、金に困ったMさんは闇ビジネスと呼ばれる仕事にも手を広げていく。事件後、家宅捜索で福岡市中央区のマンションから大麻草が発見されている。Mさんは大麻草を栽培して、売りさばいていたとされている。  またMさん一家は94年から96年にかけて、外資系生保会社と、99年には国内の生保会社と、一家4人の生命保健契約を締結した。保健金額はMさんが1億2000万円、C子さんが2500万円、KくんとH子ちゃんが各2100万円の総額1億8700万円に上り、その月々の保険料は14万円近くになっていた。  ちなみにMさん一家は王、楊、魏の3人とは面識はなかった。 http://yabusaka.moo.jp/fukuokaikka.htm
強襲
凌遅刑
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%87%8C%E9%81%85%E5%88%91
凌遅刑(りょうちけい)とは、清の時代まで中国で行われた処刑の方法のひとつ。生身の人間の肉を少しずつ切り落とし、��時間苦痛を与えたうえで死に至らす刑。歴代中国王朝が科した刑罰の中でも最も重い刑とされ、反乱の首謀者などに科された。また「水滸伝」にも凌遅刑の記述が記載されている。また、この刑に処された人間の人肉が漢方薬として売られることになっていたとされている。この刑罰は李氏朝鮮(朝鮮王朝)でも実施されていた。また、これに酷似したものとして隗肉刑がある。
Mさんの帰宅
日付が変わって翌午前1時40分頃、Mさんが帰宅してきた。愛車のベンツC200に乗って、自宅の車庫前まで帰ってきた時、携帯電話で友人と会話している。Mさんは「今、家についた。これから駐車場にいれるから、後でかけ直す」と電話を切ったが、その友人に再び電話がかかってくることはなかった。家に入ろうとしてきたMさんを犯人達は玄関で待ち伏せていた。工事現場から盗んできた鉄パイプを、いきなり後頭部を殴りつけた後、前に向かって横から額を殴り、さらに左目周辺や頬を殴ったり、全身を蹴ったりした。さらに犯人達は2階で失神していたH子ちゃんを担ぎ下ろし、父親の目の前でいたぶったり殴打しながら、Mさんに何かを聞き出そうとリンチを加え続けていた。だが、Mさんはなにも答えず、「用がなくなった」ということで、H子ちゃんの首を絞めて殺そうとした。Mさんは土下座して、「娘だけは助けてくれ」と言ったが、彼らはこれを嘲笑し、殺害した。さらにMさんの首を白いビニール紐で絞め、気を失った彼を浴槽に浸けて溺死させた。  3人は一家の遺体を運びやすくするため、まずMさんの両手に手錠をかけ、首から足にかけて工事現場で盗んできた太い電線で縛り、H子ちゃんを背負わせる格好で固定した。また、ちょうど血のついて放置しておけない玄関マットがあったので遺体を覆い隠すために持ち出し、車を乗り捨てる際に近くの草むらに捨てた。  3人は一家4人をベンツに乗せ、その車に一緒に乗りこんだ。 博多港箱崎埠頭の岸壁に到着した3人は遺体を海に沈めるために、前もって用意しておいた重りを1個ずつつけ始めた。Mさんの腕とH子ちゃんの足を手錠でつなぎ、その手錠のチェーンの部分に別の手錠をつないで、鉄アレイをつけるなど、万全を期した。C子さんとKくんはそれぞれ両手に手錠をかけ、鉄アレイをつけた。千加さんは服を着ていないので浮き上がりそうだったので、特別に鉄製の重りを針金で巻きつけていた。  遺体を捨てた後、Mさんのベンツを運転して久留米市に向かった。これはNシステム(自動車ナンバー自動読み取り装置)でも確認された。ベンツは「ブリジストン久留米工場」クラブハウスの専用駐車場に乗り捨ててあるのが発見されてい。3人はベンツ放置後、JR久留米駅から福岡に戻った。  20日午後、博多港箱崎埠頭付近の海中から一家の遺体が次々と発見された。これほど早く遺体が発見されることは、3人にとって誤算以外の何物でもなかったはずだ。  なお事件当日の行動については3人の供述をもとに書いたが、3人が責任をなすりつけ合ったり、供述そのものを変えているので、不確かな点も多い。 http://yabusaka.moo.jp/fukuokaikka.htm
3人の浮上
事件に使われた手錠は台湾製でレバー操作をすれば簡単に取り外しができる金属製のおもちゃ、鉄アレイは重量20kgのもので、それぞれ福岡市内にある量販店で売られていた。この店の防犯カメラにそれらを買った人物が映し出されていた。その映像から似顔絵が公開されると、日本語学校の生徒が「同級生(王)に酷似している」と証言、ここで王とその交友関係が洗われるようになった。ここで楊の存在が浮上し、楊の携帯電話の通話記録から魏の存在も明らかになった。  また、遺体に付けられていた直方体の鉄製の重り(重量30kg)は魏が過去に頻繁に出入りしていた女性宅がある福岡市博多区の賃貸マンションの所有会社が非常階段への鉄製扉を開放させておくために特別注文したものだった。  事件後、魏は出国2時間前に空港へ向かう途中の路上で、別の暴行事件により身柄を拘束された。だが、この時すでに王は楊とともに福岡空港から上海に出国していた。この航空券は犯行の3日前に楊が用意していた。2人は中国の公安当局に身柄を拘束されることになった。 供述 「窃盗目的で侵入した。黒幕は存在しない」(王、楊) 「Mさんは高級車を持っていて金持ちそうだったから狙った」 「5月下旬に王から『おまえは格闘技ができるだろう。それなりに荒っぽいが、カネになる仕事がある』と誘われ、楊を入れて3人でMさん一家を襲った。家族4人の首を絞めて殺した後、遺体をMさんのベンツでう実まで運んで投げ捨て、その車も遠くまで捨てに行った。王は誰かに殺しを依頼されていたようで、私は成功報酬として約1万円を受け取っただけだ。残りの報酬はまだもらっていない」 (魏) http://yabusaka.moo.jp/fukuokaikka.htm
出典kyushu.yomiuri.co.jp
公判を終え福岡地裁を出る魏被告
福岡一家4人殺害事件
王被告土下座にも消えぬ怒り 遺族、厳罰求める
出典kyushu.yomiuri.co.jp
福岡一家4人殺害事件
中級人民法院裏門で、通行人をチェックする職員
憤りは収まらなかった。昨年六月に起きた福岡市の松本真二郎さん一家四人殺害事件。遼寧省遼陽市の中級人民法院で十九日に開かれた初公判で、孫たちの命を奪った元留学生二人と初対面した遺族には、日本語での謝罪もむなしく響いた。「頭を下げれば済むと思っているのか」。一年四か月を経ても消えない激しい怒りが、異国の法廷に広がった。  王亮被告(22)は白いワイシャツ、白っぽい綿のズボン姿で法廷に姿を見せた。楊寧被告(24)は、黒いトレーナーに白っぽいズボンをはき、二人ともオレンジ色のベストを着ていた。両足には鎖、両手には手錠がかけられていた。  起訴状が読み上げられる間、楊被告は、検察側の質問に対し、はきはきと答えたが、何度もまばたきするなど緊張が見て取れた。王被告も時折、目元に手をやるなど、落ち着かない様子だった。  犯行現場となった松本さん宅の子供部屋や浴室、廊下に残された血痕などの写��がスクリーンに次々と映し出されると、王被告は終始目をそらし、楊被告も顔を上げようとしなかった。  静寂が破られたのは、王被告の意見陳述の途中だった。突然、後ろを振り返り、約三メートル離れた傍聴席の最前列に座っていた松本さんの妻千加さんの父親、梅津亮七さん(78)に向かって土下座し、約三十人いた傍聴席から驚きの声が上がった。さらに、裁判長に向き直った後、もう一度後ろを向き、日本語で三回、「すみません」と繰り返し頭を下げた。  数日前に遼陽市入りした梅津さんは、公安当局などを回り、両被告の逮捕に謝意を伝え、厳罰を要請したという。公判終了後、「頭を下げて済むものではない。それ以上にひどい目に遭わされた」と怒りが収まらない様子だった。 http://kyushu.yomiuri.co.jp/news-spe/20090427-462876/news/20090427-OYS1T00564.htm
裁判経過
楊寧被告人は1審で死刑判決を受け、控訴棄却を経て2005年7月12日に死刑執行された。一方、王亮被告人は遼寧省遼陽市人民検察院により無期懲役が確定した。 日本で逮捕起訴された魏巍被告人は1審の福岡地裁で事実を認めた後、ほぼ黙秘を通し、死刑判決を受けた。2審では、一転して動機や犯行過程、3人の役割、遺族への謝罪などを詳細に証言したが、控訴は棄却された。上告したが2011年10月20日に最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は上告を棄却して死刑が確定した。 2014年現在、魏巍は福岡拘置所に収監されている。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%8F%E5%B2%A1%E4%B8%80%E5%AE%B64%E4%BA%BA%E6%AE%BA%E5%AE%B3%E4%BA%8B%E4%BB%B6
出典stat.ameba.jp
福岡一家4人殺害事件
福岡一家4人殺害事件
日中の捜査共助と問題点
同事件は主犯格2人が中国に逃亡したため、中国との捜査共助が最大の焦点となった。結果的には日本国内の反響の大きさに配慮した中国当局が積極的に協力したため、早期逮捕が実現したが、一方で他の事件では日中間の捜査協力がほとんどなされていない実態や、アメリカ、韓国以外と犯罪人引渡し条約が結ばれていない現状も指摘され、国際化する犯罪に各国捜査当局の対応が遅れている点が浮き彫りとなった。 また、福岡地裁で行われた魏巍被告人の公判では、中国公安当局が作成した王亮、楊寧両被告人の供述調書が日本の裁判で初めて証拠採用された。これまで日本の刑事裁判では、海外の捜査当局が作成した調書は「証拠能力なし」とされることが多かったため、この判断は「国際犯罪の捜査に道を開く」と評価されたが、黙秘権が存在しない中国の調書を問題視する意見もあり、議論を呼んだ。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%8F%E5%B2%A1%E4%B8%80%E5%AE%B64%E4%BA%BA%E6%AE%BA%E5%AE%B3%E4%BA%8B%E4%BB%B6
8 notes · View notes
geniusbeach · 5 years
Text
絶望のパレード
 魂がうわついている。まるで自分が自分でないみたいだ。ここし��らく意識は常に前方斜め下で、歩いているのは抜け殻か尻尾のようなものである。いつから、そしてなぜそのようになってしまったのだろうか。正月にかこつけて内省的になってみる。
 昨年の初めに私家版詩集を刊行した。それまでに書き溜めた僅かな詩編を、2人の詩人と編集者、美術家とともに共著の形でまとめた。処女詩集にして全集のようなおもむきがあるけれども、自分としてはそれでよい。稲垣足穂風に言うなら、以降に自分が書くものはその注釈かバリエーションに過ぎないということだ。共著者と編集者が営業に奔走してくれ、関西の大型書店のみならず、関東の書店にも置いてもらうことができた。ありがたいことに帯には人類学者の金子遊氏が一文を寄せてくださった。個人的には、自分の高校時代からの読書遍歴を決定づけた恵文社一乗寺店に置いてもらえたこと、そしてそこで���度品切れになったことが大変嬉しかった。これで一地方のマイナーポエットになることができたという感じがある。それ以上は望まないが、この営みは細々と続けていくつもりだ。
 詩集に関するあれこれが落ち着いてからは、英語の学習に明け暮れた。一昨年は仕事で繁忙を極めており、勉強どころか読書も満足にできなかったため、それを取り戻すように必死にやった。おかげで昨年度中の目標としていた点数を一発で大きく上回ることができ、すぐに違う分野へ手を出した。次はフランス語であった。気合を入れて5000円もする参考書を買い、基礎からやり直していった。ところがその参考書、誤植があまりにも多く、解説も非常に不親切で、ページをめくるのが億劫になり早々にやる気を失ってしまった。なんとも情けない話である。新しい参考書を買う気もなくなり、漢字の勉強へシフトしたところ、こちらはうまくいった。徐々に、平日はカフェで、週末は図書館で勉強するスタイルが出来上がっていった。その間も読書は続け、昨年で40~50冊程度は読むことができた。
 秋ごろには面白い出会いがあった。実存的な不安が高まったこともあり、有休を取って哲学の道を散歩していたところ、海外からの観光客に、掛かっている看板の意味を聞かれた。訛りのある英語だったため、フランス人ですか? と問うと、そうだとの答え。自分がわずかばかりフランス語が話せるとわかって意気投合し、3日間観光ガイドのようなことをした。彼の名はムッシュー・F、ひとりで日本にバカンスに来て、東京でラグビーの試合を見たりしたとのこと。七十を超える高齢だが、つい最近まで自分もラグビーをしていたと話すエネルギッシュな人物で、全く年齢を感じさせない。パリで会社を営んでいるそうで、これが私の家だと言って見せられたのは、湖畔に浮かぶ大邸宅の写真であった。週末には森を散歩したり、湖にモーターボートを浮かべたり、馬に乗ったりしているよと言う。もちろんそれらは全て私有(森や湖でさえ!)、モノホンの大金持ちである。京都では一緒にカフェに行ったり、大文字に登ったり、うどんをご馳走したり、孫用の柔道着を探したり、旅行の手配を手伝ったりした。是非フランスにおいでと言い残し、彼は去った。それから今でも連絡を取り合っている。実に50歳差の友人ができた。
 かつて自分は、日本で日々を平穏に過ごしながらたまに外国語を話す生活を望んでいたが、今になって少しばかり叶っていることに気が付いた。仕事ではしばしば英語を使う。ただ、本音を言えば、金子光晴のように海外を旅して回りたい。学生時代に思い描いていた生活はと言えば、高等遊民か世界放浪者であった。金子は詩の中で「僕は少年の頃/学校に反対だった。/僕は、いままた/働くことに反対だ。」と言った。人間は何からも自由なのである。自分も「成績」や「評価」、「管理」などには絶対に反対である。人に指示され、その目を気にして送る生活など耐えられない......。ところが、じっさいの自分には構造の外へ飛び出す勇気がない。そもそも自分は道の外から生のスタ-トを切ったのだ。そこから正道に戻るだけで精いっぱいだった。血の鉄鎖に引きずられながらもなんとか空転を繰り返した結果、保守的な思想が全身に染みついてしまった。今はなすすべもないまま泣く泣くレールの上を鈍行で走っている。窓からは、空中を並走するもうひとりの自分が見える。全てに背を向けて純粋な精神の飛翔を楽しむ自分の姿が。金子の詩友・吉田一穂は「遂にコスモポリタンとは、永生救はれざる追放者である」と言った。世界は狭量だ。自分にとっては、シュマン・ド・フィロゾフもアヴェニュ・デ・シャンゼリゼも等価である。どうにか国や所属を超越したいと強く思う。やはり勉強をし直さねばならない。
 自分の様子がおかしくなったのは10月頃からだ。一昨年度に忙殺されたせいで少なからず人間の心を失った自分は、仕事における���脱感に苛まれていた。家における問題もあり、また昨年度新たに来た上司とは全くウマが合わず、フラストレーションも募っていた。そもそもが5年で5人も上司が変わるという異常な環境である。自分はよく耐えてきたと思う。働くことが馬鹿馬鹿しくなり、ぼーっとする時間が多くなる。そんな中、自分はある大きなミスをしでかしてしまった。それは実際大した問題ではない、誰にでも起こりうることだった。尻ぬぐいは上司とともに行うこととなった。しかし、そのミスのせいでかなり落ち込んでしまい、さらに事後対応や予防策の打ち出し方が虫唾が走るほど不快なものであったため、自分は深く考え込むこととなった。さらにそこで追い打ちのごとく転勤が告げられたため、自分はついに心身に不調をきたしてしまった。抑鬱、不眠、吐き気、緊張性頭痛、離人感、悲壮感、食欲不振……全ての事物から逃げ出したくなる衝動に眩暈がする。ある日職場で人と話している時に、どうにもうまく言葉が出てこなくなったため、何日か休む羽目になった。初めて心療内科を受診し薬をもらった。一日中涙が止まらなかった。その頃の記憶はあまりない。日々、ふわふわと悲しみのなかを漂っていたように思う。ただ、話を聞いてくれる周りの人々の存在はかなりありがたく、ひとりの人間の精神の危機を救おうとしてくれる数多の優しさに驚かされた。転勤の話は自分の現況を述べたところひとまず流れた。その際、上役が放った言葉が忘れられない。「私は今までどこに転勤しても良いという気持ちで仕事をしてきましたけどね」。他人の精神をいたずらに脅かすその無神経さに呆れて物が言えなかった。薬の服用を続け、1ヶ月半ほどかけて不調はゆるやかに回復したが、自分が何もできずに失った貴重な期間を返して欲しいと強く思う。仕事に対する考え方は世代間でもはや断絶していると言ってもよいだろう。
 労働を称揚する一部の風潮が嫌いだ。仕事をしている自分は情けない。それにしがみついてしか生きられないという点において。システムに進んで身を捧げる人間の思考は停止している。彼らは堂々と「世の中」を語り始め、他人にそれを強制する。奴隷であることの冷たい喜びに彼らの身体は貫かれている。何にも興味を持てなかった大多数の人間が、20代前半に忽然と現れる組織に誘拐され、奇妙にも組織の事業であるところの搾取に加担・協力までしてしまう。それは集団的なストックホルム症候群とでも言うべきではないか。社会全体へのカウンセリングが必要だ。尤も、使命感を持って仕事に臨む一部の奇特な人々のことは尊敬している。生きる目的と収入が合致しさえすれば、自分も進んでそうなろう。だが自分は、「社会とはそういうもの」だという諦念には心の底から反抗したい。組織とは心を持たない奇形の怪物だ。怪物は人間の心の欠陥から生まれる。ただ怪物のおかげで我々は生きられる。それをなだめすかしておまんまを頂戴しようという小汚い算段に、虚しさを深める日々。人間的であろうとする以上、この虚しさを忘れてはいけない。
 どうしようもない事実だが、労働によって人の心は荒む。労働は労働でしかない。肉体を動かすことによる健康維持という面を除けば、それ自体、自己にとっては無益なものだ。勤労意欲のない文学青年たちはいかなる生存戦略を以て生活に挑んでいるのか。彼らの洞窟を訪ねて回りたいと思う。現代には、彼らのように社会と内面世界を対立させたまま働き消耗する人々がいる。ある経営者がその現象を「ロキノン症候群」と呼んでいた。芸術に一度でもハマったことがあるような人々がそうなのだという。しかし彼らも納得はいかないながら、どこかで折り合いをつけて頑張っているはずだ。自分は彼らに一方的な連帯感を覚える。来る亡命に向けて、励まし合っているような気さえするのだ。世間様はきっと我々を馬鹿者だと罵るだろう。「なんとでもいはしておけ/なんとでもおもはしておけ」と、山村暮鳥の強い声が聞こえる。目に見えるものだけを信じるのもいいが、それを周りに強いてはならない。我々は今、ようやく開けてきた時代を生きている。だが認識は未だ模糊としている。完全な精神が保証される世界からすると、まだまだ古い時代なのだ。人間の姿を見失いがちな現代に対して言えるのはただ一つ、みんなで一緒に幸せになろう、ということだけだ。
 さて、年末に3日間の有休をぶち込んだので年末年始は12連休となった。天六で寿司を食べ、友人宅に入り浸ってジャークチキンをむさぼった。ポルトガル料理に舌鼓を打ち、サイゼリヤで豪遊した。特に予定を立てずに、ひたすら酒とコーヒーを鯨飲する毎日であった。心身の不調はマシになったものの、不運が続き、人と会わなければどん底に落ちると思った。それはまるで自分という神輿を中心にした絶望のパレードのようだった。
 休みの初日、ふと思い立ち、生き別れた父親の所在を探るべく、戸籍を請求してみた。私は父親の顔も名前も知らなかった。さほど興味がなかったというのもあるが、これまで家族に問うても曖昧な答えしか返ってこなかったのだ。働き出してからしばらくして、親戚から聞いたのは、父親は母親と同じく耳が聞こえなかったこと、暴力をふるう人間であったことの二つだけだ。養育費が払われることはなかったともどこかで聞いたような気もする。いずれにせよクズのような人間であったことは疑いようもない。生まれてから会った記憶もなく、不在が当たり前の環境で育ったため、会いたいと思ったことはほとんどない。ただ、自分の身体の半分が知らない人間の血によって構成されていることに何とも言えない気持ち悪さを覚えていた。というのも、顔は母親似だと言われるが、色覚異常の遺伝子は父親から受け継いだものであり、おかげで少年はある夢を断念せざるを得なくなったからだ。その「不可視の色」を意識するたび、自分の身の内には不在の存在がかえって色濃く反映された。違和感は自分が年を重ねるごとに増してゆくような気がした。そのため、せめて名前と消息だけでも知っておこうと思い、今回ようやく役所に出向いたのだ。職員に尋ねたところ丁寧に教えてもらえた。自分の戸籍から遡れば簡単に辿ることができる。しばらくして数枚の紙きれが手渡された。そこには聞きなれない苗字が書かれてあった。そして、案外近くにひとりで住んでいることがわかった。ふーん。何か虚しさを覚えた。自分は何がしたかったのか。カメラを持って突撃でもすれば面白いのかもしれない。ネットで調べてみると同じ名前の者が自己破産者リストに載っていた。そうかもしれないし、そうではないかもしれない。結局自分には関係のないことだ。じっさいこの文章を書いている今、父親の下の名前をまったく忘れてしまっている。思い出そうとしても思い出せないのだ。
 旅行前日の夜中に家の鍵をなくした。普段ほとんど物をなくさないのでかなり焦った。約4㎞の距離を3往復し、交番に駆け込むも見つからず。最後に寄ったコンビニの駐車場を這うように探し回ったところ、思いがけない場所で発見し安堵した。寒くて死ぬかと思った。自分は落とし物を探す能力には自信がある。物をなくさない、などと言いながらイヤホンのイヤーピースはこれまでに3度落としたことがある。しかし、その都度血眼になって道端から救出してきたのだ。今回見つからなかったら自分はどんなに落ち込んでいただろう。2時間も無駄にしてしまったが、とにかく良かった。もうお洒落を気取ったカラビナは使わない。
 中学時代の友人3名と有馬温泉に行った。ここ数年、年末の旅行は恒例行事となっている。とはいえこの4人で遊ぶために集まるのはおよそ10年ぶりだ。有馬は京都から車でおよそ1時間半。温泉街は観光客でごった返している。外国人も多い。昼飯にカレーを食べ、しばしぶらつく。細く入り組んだ坂道が続く。公園には赤く錆びついた蛇口があった。飲用可能な鉄泉だったが、衝撃的な味に顔がゆがむ。血だ。その後、目当ての温泉旅館に行くも臨時休業であった。どこの湯も混雑しており、20分待ちがザラだった。日帰り湯の看板が出ていないホテルにダメもとで聞いてみると、幸運にも入れるとの答え。客もほとんどおらず、金泉をこころゆくまで楽しめた。歩き途中、炭酸せんべいを土産に買う。特徴のない普通のせんべいだ。ここで一旦宿に戻って車を置き、再びタクシーで温泉街へ。鉄板焼き屋でお好み焼きを食べ、銀泉に入る。顔がツルツルになった。宿はそこからかなり離れた山裾にある合宿所のようなところだった。嫌がるタクシーに乗り込み、外灯のない急坂を登る。受付には緩い感じのおじさんがいて、懐かしさを覚える。鍵を受け取り、宿泊棟へ。一棟貸しなので騒ぎ放題だ。大量に仕入れた酒とつまみと思い出話で深夜までウノに耽った。翌朝気が付いたのは隣の棟の声が意外とよく聞こえるということだ。大声、というか爆音で昔の先生のモノマネやらツッコミやらを繰り返していた我々の醜態は筒抜けになっていたようだ。棟を出る時に同年代くらいの若者と鉢合わせてかなり気まずかった。ここにお詫び申し上げる。この日は朝から中華街へと移動し、料理を食らった。鰆の酒粕餡かけという聞��なれない一皿がめっぽう美味かった。バリスタのいるコーヒー屋でエスプレッソを飲み、だらだら歩いて旅行は終了。京都に着いてからなぜか3時間ほどドライブし、大盛の鴨南蛮そばを腹に入れてから解散となった。
 大晦日は友人宅で蕎麦をご馳走になってから鐘を撞きに行き、深夜まで運行している阪急で松尾大社へ。地元の兄ちゃんが多い印象。社殿がコンパクトにまとまっていて良かった。おみくじは末吉だった。年明け早々、以前付き合っていた人が結婚したことを人づてに聞く。めでたい気持ち半分、複雑な気持ち半分。元日は高校時代の友人3人と四条で酒を飲むだけに留まる。2日は友人らと蹴上の日向大神宮へ。「大」と名づくが割合小さい。社殿の奥には天の岩屋を模したと思しき巨大な岩をL字型にくりぬいた洞窟があり、潜り抜けることができる。いつ作られたものかは不明だそう。暗闇を抜けて日の光を再び浴びる時、不思議にもスッキリとした感覚になる。ここでもおみくじは小吉だった。その後は下鴨神社の露店を物色し、ケバブとヤンニョムチーズチキンなる悪魔のような食べ物に枡酒で乾杯。旧友と合流し、深夜まで酒を飲み、コーヒーで〆。怒涛のアルコール摂取はここで一旦落ち着いた。
 3日、昼に起きる。夕方ごろ喫茶店に行くもぼんやりして何もできず。3時間で本のページを3回めくったのみ。その帰りがけに初めて交通事故を起こした。自分は自転車に乗っていたが、考え事ごとをしていたかそれとも何も考えていなかったか、赤信号の灯る横断歩道の真ん中で車に真横からはねられて、初めて意識が戻った。即座に状況を理解し、平謝りする。非常に幸運なことに怪我も物損もなく、さらには運転手が気遣ってくれたおかげで大事には至らず、事故処理のみしてその場を後にした。自分はあまりにぼーっとしすぎていたのだ。赤信号はおろか、横断歩道があることさえも気づいていなかった。完全にこちらが悪い。ただ、こんなことを言ってはヒンシュクを買うだろうが、何か自分のせいではないような気もした。昔、轢かれたことのある友人が、「車は鉄の塊、人なんて無力」と言っていた。生と死は笑えるほどに近い。車の同乗者には、生きててよかったなぁ! と半ば怒った口調で言われた。果たしてそうなのか。苦しんで生きるか、知らぬ間に死ぬか、どちらが良いのか。よくわからない頭のまま先輩の家に遊びに行き、帰ってからおみくじを捨てた。馬鹿にもほどがある。
 “WWⅢ”がツイッターのトレンド入りした日に、リニューアルしたみなみ会館で映画「AKIRA」を見た。第三次世界大戦で荒廃・復興した2020年のネオ東京が舞台である。東京オリンピックの開催まで予言されていて瞠目する。作画の緻密さと色彩の美麗さ、展開のスピードが尋常ではなく、見るドラッグのようであった。見に来ていたのは意外にも20代の若者が多かった。なぜか終了30分前に入ってきた女性3人組もいた。目がぐるぐる回って、もう何が何か訳がわからなかった。溢れそうな鍋に蓋をしたところ、その蓋の上から具が降ってきた。そんな脳内で、世界の終わりというよりは、自分の終わりという感じだった。翌日から仕事だったが、変に興奮して夜中まで寝付くことができなかった。
2 notes · View notes
2ttf · 12 years
Text
iFontMaker - Supported Glyphs
Latin//Alphabet// ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZabcdefghijklmnopqrstuvwxyz0123456789 !"“”#$%&'‘’()*+,-./:;<=>?@[\]^_`{|}~ Latin//Accent// ¡¢£€¤¥¦§¨©ª«¬®¯°±²³´µ¶·¸¹º»¼½¾¿ÀÁÂÃÄÅÆÇÈÉÊËÌÍÎÏÐÑÒÓÔÕÖ×ØÙÚÛÜÝÞßàáâãäåæçèéêëìíîïðñòóôõö÷øùúûüýþÿ Latin//Extension 1// ĀāĂ㥹ĆćĈĉĊċČčĎďĐđĒēĔĕĖėĘęĚěĜĝĞğĠġĢģĤĥĦħĨĩĪīĬĭĮįİıIJijĴĵĶķĸĹĺĻļĽľĿŀŁłŃńŅņŇňʼnŊŋŌōŎŏŐőŒœŔŕŖŗŘřŚśŜŝŞşŠšŢţŤťŦŧŨũŪūŬŭŮůŰűŲųŴŵŶŷŸŹźŻżŽžſfffiflffifflſtst Latin//Extension 2// ƀƁƂƃƄƅƆƇƈƉƊƋƌƍƎƏƐƑƒƓƔƕƖƗƘƙƚƛƜƝƞƟƠơƢƣƤƥƦƧƨƩƪƫƬƭƮƯưƱƲƳƴƵƶƷƸƹƺƻƼƽƾƿǀǁǂǃDŽDždžLJLjljNJNjnjǍǎǏǐǑǒǓǔǕǖǗǘǙǚǛǜǝǞǟǠǡǢǣǤǥǦǧǨǩǪǫǬǭǮǯǰDZDzdzǴǵǶǷǸǹǺǻǼǽǾǿ Symbols//Web// –—‚„†‡‰‹›•…′″‾⁄℘ℑℜ™ℵ←↑→↓↔↵⇐⇑⇒⇓⇔∀∂∃∅∇∈∉∋∏∑−∗√∝∞∠∧∨∩∪∫∴∼≅≈≠≡≤≥⊂⊃⊄⊆⊇⊕⊗⊥⋅⌈⌉⌊⌋〈〉◊♠♣♥♦ Symbols//Dingbat// ✁✂✃✄✆✇✈✉✌✍✎✏✐✑✒✓✔✕✖✗✘✙✚✛✜✝✞✟✠✡✢✣✤✥✦✧✩✪✫✬✭✮✯✰✱✲✳✴✵✶✷✸✹✺✻✼✽✾✿❀❁❂❃❄❅❆❇❈❉❊❋❍❏❐❑❒❖❘❙❚❛❜❝❞❡❢❣❤❥❦❧❨❩❪❫❬❭❮❯❰❱❲❳❴❵❶❷❸❹❺❻❼❽❾❿➀➁➂➃➄➅➆➇➈➉➊➋➌➍➎➏➐➑➒➓➔➘➙➚➛➜➝➞➟➠➡➢➣➤➥➦➧➨➩➪➫➬➭➮➯➱➲➳➴➵➶➷➸➹➺➻➼➽➾ Japanese//かな// あいうえおかがきぎくぐけげこごさざしじすずせぜそぞただちぢつづてでとどなにぬねのはばぱひびぴふぶぷへべぺほぼぽまみむめもやゆよらりるれろわゐゑをんぁぃぅぇぉっゃゅょゎゔ゛゜ゝゞアイウエオカガキギクグケゲコゴサザシジスズセゼソゾタダチヂツヅテデトドナニヌネノハバパヒビピフブプヘベペホボポマミムメモヤユヨラリルレロワヰヱヲンァィゥェォッャュョヮヴヵヶヷヸヹヺヽヾ Japanese//小学一年// 一右雨円王音下火花貝学気九休玉金空月犬見五口校左三山子四糸字耳七車手十出女小上森人水正生青夕石赤千川先早草足村大男竹中虫町天田土二日入年白八百文木本名目立力林六 Japanese//小学二年// 引羽雲園遠何科夏家歌画回会海絵外角楽活間丸岩顔汽記帰弓牛魚京強教近兄形計元言原戸古午後語工公広交光考行高黄合谷国黒今才細作算止市矢姉思紙寺自時室社弱首秋週春書少場色食心新親図数西声星晴切雪船線前組走多太体台地池知茶昼長鳥朝直通弟店点電刀冬当東答頭同道読内南肉馬売買麦半番父風分聞米歩母方北毎妹万明鳴毛門夜野友用曜来里理話 Japanese//小学三年// 悪安暗医委意育員院飲運泳駅央横屋温化荷開界階寒感漢館岸起期客究急級宮球去橋業曲局銀区苦具君係軽血決研県庫湖向幸港号根祭皿仕死使始指歯詩次事持式実写者主守取酒受州拾終習集住重宿所暑助昭消商章勝乗植申身神真深進世整昔全相送想息速族他打対待代第題炭短談着注柱丁帳調追定庭笛鉄転都度投豆島湯登等動童農波配倍箱畑発反坂板皮悲美鼻筆氷表秒病品負部服福物平返勉放味命面問役薬由油有遊予羊洋葉陽様落流旅両緑礼列練路和 Japanese//小学四年// 愛案以衣位囲胃印英栄塩億加果貨課芽改械害街各覚完官管関観願希季紀喜旗器機議求泣救給挙漁共協鏡競極訓軍郡径型景芸欠結建健験固功好候航康告差菜最材昨札刷殺察参産散残士氏史司試児治辞失借種周祝順初松笑唱焼象照賞臣信成省清静席積折節説浅戦選然争倉巣束側続卒孫帯隊達単置仲貯兆腸低底停的典伝徒努灯堂働特得毒熱念敗梅博飯飛費必票標不夫付府副粉兵別辺変便包法望牧末満未脈民無約勇要養浴利陸良料量輪類令冷例歴連老労録 Japanese//小学五〜六年// 圧移因永営衛易益液演応往桜恩可仮価河過賀快解格確額刊幹慣眼基寄規技義逆久旧居許境均禁句群経潔件券険検限現減故個護効厚耕鉱構興講混査再災妻採際在財罪雑酸賛支志枝師資飼示似識質舎謝授修述術準序招承証条状常情織職制性政勢精製税責績接設舌絶銭祖素総造像増則測属率損退貸態団断築張提程適敵統銅導徳独任燃能破犯判版比肥非備俵評貧布婦富武復複仏編弁保墓報豊防貿暴務夢迷綿輸余預容略留領異遺域宇映延沿我灰拡革閣割株干巻看簡危机貴揮疑吸供胸郷勤筋系敬警劇激穴絹権憲源厳己呼誤后孝皇紅降鋼刻穀骨困砂座済裁策冊蚕至私姿視詞誌磁射捨尺若樹収宗就衆従縦縮熟純処署諸除将傷障城蒸針仁垂推寸盛聖誠宣専泉洗染善奏窓創装層操蔵臓存尊宅担探誕段暖値宙忠著庁頂潮賃痛展討党糖届難乳認納脳派拝背肺俳班晩否批秘腹奮並陛閉片補暮宝訪亡忘棒枚幕密盟模訳郵優幼欲翌乱卵覧裏律臨朗論 Japanese//中学// 亜哀挨曖扱宛嵐依威為畏尉萎偉椅彙違維慰緯壱逸芋咽姻淫陰隠韻唄鬱畝浦詠影鋭疫悦越謁閲炎怨宴援煙猿鉛縁艶汚凹押旺欧殴翁奥憶臆虞乙俺卸穏佳苛架華菓渦嫁暇禍靴寡箇稼蚊牙瓦雅餓介戒怪拐悔皆塊楷潰壊懐諧劾崖涯慨蓋該概骸垣柿核殻郭較隔獲嚇穫岳顎掛括喝渇葛滑褐轄且釜鎌刈甘汗缶肝冠陥乾勘患貫喚堪換敢棺款閑勧寛歓監緩憾還環韓艦鑑含玩頑企伎忌奇祈軌既飢鬼亀幾棋棄毀畿輝騎宜偽欺儀戯擬犠菊吉喫詰却脚虐及丘朽臼糾嗅窮巨拒拠虚距御凶叫狂享況峡挟狭恐恭脅矯響驚仰暁凝巾斤菌琴僅緊錦謹襟吟駆惧愚偶遇隅串屈掘窟繰勲薫刑茎契恵啓掲渓蛍傾携継詣慶憬稽憩鶏迎鯨隙撃桁傑肩倹兼剣拳軒圏堅嫌献遣賢謙鍵繭顕懸幻玄弦舷股虎孤弧枯雇誇鼓錮顧互呉娯悟碁勾孔巧甲江坑抗攻更拘肯侯恒洪荒郊貢控梗喉慌硬絞項溝綱酵稿衡購乞拷剛傲豪克酷獄駒込頃昆恨婚痕紺魂墾懇沙唆詐鎖挫采砕宰栽彩斎債催塞歳載剤削柵索酢搾錯咲刹拶撮擦桟惨傘斬暫旨伺刺祉肢施恣脂紫嗣雌摯賜諮侍慈餌璽軸叱疾執湿嫉漆芝赦斜煮遮邪蛇酌釈爵寂朱狩殊珠腫趣寿呪需儒囚舟秀臭袖羞愁酬醜蹴襲汁充柔渋銃獣叔淑粛塾俊瞬旬巡盾准殉循潤遵庶緒如叙徐升召匠床抄肖尚昇沼宵症祥称渉紹訟掌晶焦硝粧詔奨詳彰憧衝償礁鐘丈冗浄剰畳壌嬢錠譲醸拭殖飾触嘱辱尻伸芯辛侵津唇娠振浸紳診寝慎審震薪刃尽迅甚陣尋腎須吹炊帥粋衰酔遂睡穂随髄枢崇据杉裾瀬是姓征斉牲凄逝婿誓請醒斥���脊隻惜戚跡籍拙窃摂仙占扇栓旋煎羨腺詮践箋潜遷薦繊鮮禅漸膳繕狙阻租措粗疎訴塑遡礎双壮荘捜挿桑掃曹曽爽喪痩葬僧遭槽踪燥霜騒藻憎贈即促捉俗賊遜汰妥唾堕惰駄耐怠胎泰堆袋逮替滞戴滝択沢卓拓託濯諾濁但脱奪棚誰丹旦胆淡嘆端綻鍛弾壇恥致遅痴稚緻畜逐蓄秩窒嫡抽衷酎鋳駐弔挑彫眺釣貼超跳徴嘲澄聴懲勅捗沈珍朕陳鎮椎墜塚漬坪爪鶴呈廷抵邸亭貞帝訂逓偵堤艇締諦泥摘滴溺迭哲徹撤添塡殿斗吐妬途渡塗賭奴怒到逃倒凍唐桃透悼盗陶塔搭棟痘筒稲踏謄藤闘騰洞胴瞳峠匿督篤凸突屯豚頓貪鈍曇丼那謎鍋軟尼弐匂虹尿妊忍寧捻粘悩濃把覇婆罵杯排廃輩培陪媒賠伯拍泊迫剝舶薄漠縛爆箸肌鉢髪伐抜罰閥氾帆汎伴畔般販斑搬煩頒範繁藩蛮盤妃彼披卑疲被扉碑罷避尾眉微膝肘匹泌姫漂苗描猫浜賓頻敏瓶扶怖附訃赴浮符普腐敷膚賦譜侮舞封伏幅覆払沸紛雰噴墳憤丙併柄塀幣弊蔽餅壁璧癖蔑偏遍哺捕舗募慕簿芳邦奉抱泡胞俸倣峰砲崩蜂飽褒縫乏忙坊妨房肪某冒剖紡傍帽貌膨謀頰朴睦僕墨撲没勃堀奔翻凡盆麻摩磨魔昧埋膜枕又抹慢漫魅岬蜜妙眠矛霧娘冥銘滅免麺茂妄盲耗猛網黙紋冶弥厄躍闇喩愉諭癒唯幽悠湧猶裕雄誘憂融与誉妖庸揚揺溶腰瘍踊窯擁謡抑沃翼拉裸羅雷頼絡酪辣濫藍欄吏痢履璃離慄柳竜粒隆硫侶虜慮了涼猟陵僚寮療瞭糧厘倫隣瑠涙累塁励戻鈴零霊隷齢麗暦劣烈裂恋廉錬呂炉賂露弄郎浪廊楼漏籠麓賄脇惑枠湾腕 Japanese//記号//  ・ー~、。〃〄々〆〇〈〉《》「」『』【】〒〓〔〕〖〗〘〙〜〝〞〟〠〡〢〣〤〥〦〧〨〩〰〳〴〵〶 Greek & Coptic//Standard// ʹ͵ͺͻͼͽ;΄΅Ά·ΈΉΊΌΎΏΐΑΒΓΔΕΖΗΘΙΚΛΜΝΞΟΠΡΣΤΥΦΧΨΩΪΫάέήίΰαβγδεζηθικλμνξοπρςστυφχψωϊϋόύώϐϑϒϓϔϕϖϚϜϞϠϢϣϤϥϦϧϨϩϪϫϬϭϮϯϰϱϲϳϴϵ϶ϷϸϹϺϻϼϽϾϿ Cyrillic//Standard// ЀЁЂЃЄЅІЇЈЉЊЋЌЍЎЏАБВГДЕЖЗИЙКЛМНОПРСТУФХЦЧШЩЪЫЬЭЮЯабвгдежзийклмнопрстуфхцчшщъыьэюяѐёђѓєѕіїјљњћќѝўџѢѣѤѥѦѧѨѩѪѫѬѭѰѱѲѳѴѵѶѷѸѹҌҍҐґҒғҖҗҘҙҚқҜҝҠҡҢңҤҥҪҫҬҭҮүҰұҲҳҴҵҶҷҸҹҺһҼҽҾҿӀӁӂӇӈӏӐӑӒӓӔӕӖӗӘәӚӛӜӝӞӟӠӡӢӣӤӥӦӧӨөӪӫӬӭӮӯӰӱӲӳӴӵӶӷӸӹӾӿ Thai//Standard// กขฃคฅฆงจฉชซฌญฎฏฐฑฒณดตถทธนบปผฝพฟภมยรฤลฦวศษสหฬอฮฯะัาำิีึืฺุู฿เแโใไๅๆ็่้๊๋์ํ๎๏๐๑๒๓๔๕๖๗๘๙๚๛
see also How to Edit a Glyph that is not listed on iFontMaker
6 notes · View notes
donut-st · 5 years
Text
あなたにだけは忘れてほしくなかった
 アメリカ合衆国、ニューヨーク州、マンハッタン、ニューヨーク市警本部庁舎。  上級職員用のオフィスで資料を眺めていた安藤文彦警視正は顔をしかめた。彼は中年の日系アメリカ人である。頑なに日本名を固持しているのは血族主義の強かった祖父の影響だ。厳格な祖父は孫に米国風の名乗りを許さなかったためである。祖父の信念によって子供時代の文彦はいくばくかの苦労を強いられた。  通常、彼は『ジャック』と呼ばれているが、その由来を知る者は少ない。自らも話したがらなかった。  文彦は暴力を伴う場合の少ない知的犯罪、いわゆるホワイトカラー犯罪を除く、重大犯罪を扱う部署を横断的に統括している。最近、彼を悩ませているのは、ある種の雑音であった。  現在は文彦が犯罪現場へ出る機会はないに等しい。彼の主たる業務は外部機関を含む各部署の調整および、統計分析を基として行う未解決事件への再検証の試みであった。文彦の懸念は発見場所も年代も異なる数件の行方不明者の奇妙な類似である。類似といっても文彦の勘働きに過ぎず、共通項目を特定できているわけではなかった。ただ彼は何か得体の知れない事柄が進行している気配のようなものを感じ取っていたのである。  そして、彼にはもうひとつ、プライベートな懸念事項があった。十六才になる姪の安藤ヒナタだ。
 その日は朝から快晴、空気は乾いていた。夏も最中の日差しは肌を刺すようだが、日陰に入ると寒いほどである。自宅のダイニングルームでアイスティーを口にしながら安藤ヒナタは決心した。今日という日にすべてをやり遂げ、この世界から逃げ出す。素晴らしい考えだと思い、ヒナタは微笑んだ。  高校という場所は格差社会の縮図であり、マッチョイズムの巣窟でもある。ヒナタは入学早々、この猿山から滑り落ちた。見えない壁が張り巡らされる。彼女はクラスメイトの集う教室の中で完全に孤立した。  原因は何だっただろうか。ヒナタのスクールバッグやスニーカーは他の生徒よりも目立っていたかもしれない。アジア系の容姿は、彼らの目に異質と映ったのかも知れなかった。  夏休みの前日、ヒナタは階段の中途から突き飛ばされる。肩と背中を押され、気が付いた時には一階の踊り場に強か膝を打ちつけていた。 「大丈夫?」  声だけかけて去っていく背中を呆然と見送る。ヒナタは教室に戻り、そのまま帰宅した。  擦過傷と打撲の痕跡が残る膝と掌は、まだ痛む。だが、傷口は赤黒く乾燥して皮膚は修復を開始していた。もともと大した傷ではない。昨夜、伯父夫婦と夕食をともにした際もヒナタは伯母の得意料理であるポークチョップを食べ、三人で和やかに過ごした。  高校でのいざこざを話して何になるだろう。ヒナタは飲み終えたグラスを食洗器に放り込み、自室へ引っ込んだ。
 ヒナタの母親はシングルマザーである。出産の苦難に耐え切れず、息を引き取った。子供に恵まれなかった伯父と伯母はヒナタを養子に迎え、経済的な負担をものともせず、彼女を大学に行かせるつもりでいる。それを思うと申し訳ない限りだが、これから続くであろう高校の三年間はヒナタにとって永遠に等しかった。  クローゼットから衣服を抜き出して並べる。死装束だ。慎重に選ぶ必要がある。等身大の鏡の前で次々と試着した。ワンピースの裾に払われ、細々としたものがサイドボードから床に散らばる。悪態を吐きながら拾い集めていたヒナタの手が止まった。横倒しになった木製の箱を掌で包む。母親の僅かな遺品の中からヒナタが選んだオルゴールだった。  最初から壊れていたから、金属の筒の突起が奏でていた曲は見当もつかない。ヒナタはオルゴールの底を外した。数枚の便箋と写真が納まっている。写真には白のワイシャツにスラックス姿の青年と紺色のワンピースを着た母親が映っていた。便箋の筆跡は美しい。『ブライアン・オブライエン』の署名と日付、母親の妊娠の原因が自分にあるのではないかという懸念と母親と子供に対する執着の意思が明確に示されていた。手紙にある日付と母親がヒナタを妊娠していた時期は一致している。  なぜ母は父を斥けたのだろうか。それとも、この男は父ではないのか。ヒナタは苛立ち、写真の青年を睨んだ。  中学へ進み、スマートフォンを与えられたヒナタは男の氏名を検索する。同姓同名の並ぶ中、フェイスブックに該当する人物を見つけた。彼は現在、大学の教職に就いており、専門分野は精神病理学とある。多数の論文、著作を世に送り出していた。  ヒナタは図書館の書棚から彼の書籍を片っ端から抜き出す。だが、学術書を読むには基礎教養が必要だ。思想、哲学、近代史、統計を理解するための数学を公共の知の宮殿が彼女に提供する。  ヒナタは支度を終え、バスルームの洗面台にある戸棚を開いた。医薬品のプラスチックケースが乱立している。その中から伯母の抗うつ剤の蓋を掴み、容器を傾けて錠剤を掌に滑り出させた。口へ放り込み、ペットボトルの水を飲み込む。栄養補助剤を抗うつ剤の容器に補充してから戸棚へ戻した。  今日一日、いや数時間でもいい。ヒナタは最高の自分でいたかった。
 ロングアイランドの住宅地にブライアン・オブライエンの邸宅は存在していた。富裕層の住居が集中している地域の常であるが、ヒナタは脇を殊更ゆっくりと走行している警察車両をやり過ごす。監視カメラの装備された鉄柵の門の前に佇んだ。  呼び鈴を押そうかと迷っていたヒナタの耳に唸り声が響く。見れば、門を挟んで体長一メータ弱のドーベルマンと対峙していた。今にも飛び掛かってきそうな勢いである。ヒナタは思わず背後へ退いた。 「ケンダル!」  奥から出てきた男の声を聞いた途端、犬は唸るのを止める。スーツを着た男の顔はブライアン・オブライエン、その人だった。 「サインしてください!」  鞄から取り出した彼の著作を抱え、ヒナタは精一杯の声を張り上げる。 「いいけど。これ、父さんの本だよね?」  男は門を開錠し、ヒナタを邸内に招き入れた。
 男はキーラン・オブライエン、ブライアンの息子だと名乗った。彼の容姿は写真の青年と似通っている。従って現在、五十がらみのブライアンであるはずがなかった。ヒナタは自らの不明を恥じる。 「すみません」  スペイン人の使用人が運んできた陶磁器のコーヒーカップを持ち上げながらヒナタはキーランに詫びた。 「これを飲んだら帰るから」  広大な居間に知らない男と二人きりで座している事実に気が滅入る。その上、父親のブライアンは留守だと言うのであるから、もうこの家に用はなかった。 「どうして?」 「だって、出かけるところだよね?」  ヒナタはキーランのスーツを訝し気に見やる。 「別にかまわない。どうせ時間通りに来たことなんかないんだ」  キーランは初対面のヒナタを無遠慮に眺めていた。苛立ち始めたヒナタもキーランを見据える。  ヒナタはおよそコンプレックスとは無縁のキーランの容姿と態度から彼のパーソナリティを分析した。まず、彼は他者に対してまったく物怖じしない。これほど自分に自信があれば、他者に無関心であるのが普通だ。にも拘らず、ヒナタに関心を寄せているのは、何故か。  ヒナタは醜い女ではないが、これと取り上げるような魅力を持っているわけでもなかった。では、彼は何を見ているのか。若くて容姿に恵まれた人間が夢中になるもの、それは自分自身だ。おそらくキーランは他者の称賛の念を反射として受け取り、自己を満足させているに違いない。 「私を見ても無駄。本質なんかないから」  瞬きしてキーランは首��傾げた。 「俺に実存主義の講義を?」 「思想はニーチェから入ってるけど、そうじゃなくて事実を言ってる。あなたみたいに自己愛の強いタイプにとって他者は鏡でしかない。覗き込んでも自分が見えるだけ。光の反射があるだけ」  キーランは吹き出す。 「自己愛? そうか。父さんのファンなのを忘れてたよ。俺を精神分析してるのか」  笑いの納まらないキーランの足元へドーベルマンが寄ってくる。 「ケンダル。彼女を覚えるんだ。もう吠えたり、唸ったりすることは許さない」  キーランの指示��従い、ケンダルはヒナタのほうへ近づいてきた。断耳されたドーベルマンの風貌は鋭い。ヒナタは大型犬を間近にして体が強張ってしまった。 「大丈夫。掌の匂いを嗅がせて。きみが苛立つとケンダルも緊張する」  深呼吸してヒナタはケンダルに手を差し出す。ケンダルは礼儀正しくヒナタの掌を嗅いでいた。落ち着いてみれば、大きいだけで犬は犬である。  ヒナタはケンダルの耳の後ろから背中をゆっくりと撫でた。やはりケンダルはおとなしくしている。門前で威嚇していた犬とは思えないほど従順だ。 「これは?」  いつの間にか傍に立っていたキーランがヒナタの手を取る。擦過傷と打撲で変色した掌を見ていた。 「別に」 「こっちは? 誰にやられた?」  キーランは、手を引っ込めたヒナタのワンピースの裾を摘まんで持ち上げる。まるでテーブルクロスでもめくる仕草だ。ヒナタの膝を彩っている緑色の痣と赤黒く凝固した血液の層が露わになる。ヒナタは青褪めた。他人の家の居間に男と二人きりでいるという恐怖に舌が凍りつく。 「もしきみが『仕返ししろ』と命じてくれたら俺は、どんな人間でも這いつくばらせる。生まれてきたことを後悔させる」  キーランの顔に浮かんでいたのは怒りだった。琥珀色の瞳の縁が金色に輝いている。落日の太陽のようだ。息を吸い込む余裕を得たヒナタは掠れた声で言葉を返す。 「『悪事を行われた者は悪事で復讐する』わけ?」 「オーデン? 詩を読むの?」  依然として表情は硬かったが、キーランの顔から怒りは消えていた。 「うん。伯父さんが誕生日にくれた」  キーランはヒナタのすぐ隣に腰を下ろす。しかし、ヒナタは咎めなかった。 「復讐っていけないことだよ。伯父さんは普通の人がそんなことをしなくていいように法律や警察があるんだって言ってた」  W・H・オーデンの『一九三九年九月一日』はナチスドイツによるポーランド侵攻を告発した詩である。他国の争乱と無関心を決め込む周囲の人々に対する憤りをうたったものであり、彼の詩は言葉によるゲルニカだ。 「だが、オーデンは、こうも言ってる。『我々は愛し合うか死ぬかだ』」  呼び出し音が響き、キーランは懐からスマートフォンを取り出す。 「違う。まだ家だけど」  電話の相手に生返事していた。 「それより、余分に席を取れない? 紹介したい人がいるから」  ヒナタはキーランを窺う。 「うん、お願い」  通話を切ったキーランはヒナタに笑いかけた。 「出よう。父さんが待ってる」  戸惑っているヒナタの肩を抱いて立たせる。振り払おうとした時には既にキーランの手は離れていた。
 キーラン・オブライエンには様々な特質がある。体格に恵まれた容姿、優れた知性、外科医としての将来を嘱望されていること等々、枚挙に暇がなかった。だが、それらは些末に過ぎない。キーランを形作っている最も重要な性質は彼の殺人衝動だ。  この傾向は幼い頃からキーランの行動に顕著に表れている。小動物の殺害と解剖に始まり、次第に大型動物の狩猟に手を染めるが、それでは彼の欲求は収まらなかった。  対象が人間でなければならなかったからだ。  キーランの傾向にいち早く気付いていたブライアン・オブライエンは彼を教唆した。具体的には犯行対象を『悪』に限定したのである。ブライアンは『善を為せ』とキーランに囁いた。彼の衝動を沈め、社会から悪を排除する。福祉の一環であると説いたのだ。これに従い、彼は日々、使命を果たしてる。人体の生体解剖によって嗜好を満たし、善を為していた。 「どこに行くの?」  ヒナタの質問には答えず、キーランはタクシーの運転手にホテルの名前を告げる。 「行けないよ!」 「どうして?」  ヒナタはお気に入りではあるが、量販店のワンピースを指差した。 「よく似合ってる。綺麗だよ」  高価なスーツにネクタイ、カフスまでつけた優男に言われたくない。話しても無駄だと悟り、ヒナタはキーランを睨むに留めた。考えてみれば、ブライアン・オブライエンへの面会こそ重要課題である。一流ホテルの従業員の悪癖であるところの客を値踏みする流儀について今は不問に付そうと決めた。 「本当にお父さんに似てるよね?」 「俺? でも、血は繋がってない。養子だよ」  キーランの答えにヒナタは目を丸くする。 「嘘だ。そっくりじゃない」 「DNAは違う」 「そんなのネットになかったけど」  ヒナタはスマートフォンを鞄から取り出した。 「公表はしてない」 「じゃあ、なんで話したの?」 「きみと仲良くなりたいから」  開いた口が塞がらない。 「冗談?」 「信じないのか。参ったな。それなら、向こうで父さんに確かめればいい」  キーランはシートに背中を預け、目を閉じた。 「少し眠る。着いたら教えて」  本当に寝息を立てている。ヒナタはスマートフォンに目を落とした。
 ヒナタは肩に触れられて目を覚ました。 「着いたよ」  ヒナタの背中に手を当てキーランは彼女を車から連れ出した。フロントを抜け、エレベーターへ乗り込む。レストランに入っても警備が追いかけてこないところを見ると売春婦だとは思われていないようだ。ヒナタは脳内のホテル番付に星をつける。 「女性とは思わなかった。これは、うれしい驚きだ」  テラスを占有していたブライアン・オブライエンは立ち上がってヒナタを迎えた。写真では茶色だった髪は退色し、白髪混じりである。オールバックに整えているだけで染色はしていなかった。三つ揃いのスーツにネクタイ、機械式の腕時計には一財産が注ぎ込まれているだろう。デスクワークが主体にしては硬そうな指に結婚指輪が光っていたが、彼の持ち物とは思えないほど粗雑な造りだ。アッパークラスの体現のような男が配偶者となる相手に贈る品として相応しくない。 「はじめまして」  自分の声に安堵しながらヒナタは席に着いた。 「彼女は父さんのファンなんだ」  ヒナタは慌てて鞄から本を取り出す。 「サインしてください」  本を受け取ったブライアンは微笑んだ。 「喜んで。では、お名前を伺えるかな?」 「安藤ヒナタです」  老眼鏡を懐から抜いたブライアンはヒナタに顔を向ける。 「スペルは?」  答える間もブライアンはヒナタに目を据えたままだ。灰青色の瞳は、それが当然だとでも言うように遠慮がない。血の繋がりがどうであれ、ブライアンとキーランはそっくりだとヒナタは思った。  ようやく本に目を落とし、ブライアンは結婚指輪の嵌った左手で万年筆を滑らせる。 「これでいいかな?」  続いてブライアンは『ヒナタ』と口にした。ヒナタは父親の声が自分の名前を呼んだのだと思う。その事実に打ちのめされた。涙があふれ出し、どうすることもできない。声を上げて泣き出した。だが、それだけではヒナタの気は済まない。二人の前に日頃の鬱憤を洗いざらい吐き出していた。 「かわいそうに。こんなに若い女性が涙を流すほど人生は過酷なのか」  ブライアンは嘆く。驚いたウェイターが近付いてくるのをキーランが手を振って追い払った。ブライアンは席を立ち、ヒナタの背中をさする。イニシャルの縫い取られたリネンのハンカチを差し出した。 「トイレ」  宣言してヒナタはテラスを出ていく。 「おそらくだが、向精神薬の副作用だな」  父親の言葉にキーランは頷いた。 「彼女。大丈夫?」 「服用量による。まあ、あれだけ泣いてトイレだ。ほとんどが体外に排出されているだろう」 「でも、攻撃的で独善的なのは薬のせいじゃない」  ブライアンはテーブルに落ちていたヒナタの髪を払い除ける。 「もちろんだ。彼女の気質だよ。しかし、同じ学校の生徒が気の毒になる。家畜の群れに肉食獣が紛れ込んでみろ。彼らが騒ぐのは当然だ」  呆れた仕草でブライアンは頭を振った。 「ルアンとファンバーを呼びなさい。牧羊犬が必要だ。家畜を黙らせる。だが、友情は必要ない。ヒナタの孤立は、このままでいい。彼女と親しくなりたい」 「わかった。俺は?」 「おまえの出番は、まだだ。キーラン」  キーランは暮れ始めている空に目をやる。 「ここ。誰の紹介?」 「アルバート・ソッチ。デザートが絶品だと言ってた。最近、パテシエが変わったらしい」 「警察委員の? 食事は?」  ブライアンも時計のクリスタルガラスを覗いた。 「何も言ってなかったな」  戻ってきたヒナタの姿を見つけたキーランはウェイターに向かい指示を出す。 「じゃあ、試す必要はないね。デザートだけでいい」  ブライアンは頷いた。
「ハンカチは洗って返すから」  ヒナタとキーランは庁舎の並ぶ官庁街を歩いていた。 「捨てれば? 父さんは気にしない」  面喰ったヒナタはキーランを窺う。ヒナタは自分の失態について思うところがないわけではなかった。ブライアンとキーランに愛想をつかされても文句は言えない。二人の前で吐瀉したも同じだからだ。言い訳はできない。だが、ヒナタは、まだ目的を果たしていないのだ。  ブライアン・オブライエンの実子だと確認できない状態では自死できない。 「それより、これ」  キーランはヒナタの手を取り、掌に鍵を載せた。 「何?」 「家の鍵。父さんも俺もきみのことを家族だと思ってる。いつでも遊びに来ていいよ」  瞬きしているヒナタにキーランは言葉を続ける。 「休暇の間は俺がいるから。もし俺も父さんもいなかったとしてもケンダルが 相手をしてくれる」 「本当? 散歩させてもいい? でも、ケンダルは素気なかったな。私のこと好きじゃないかも」 「俺がいたから遠慮してたんだ。二人きりの時は、もっと親密だ」  ヒナタは吹き出した。 「犬なのに二人?」 「ケンダルも家族だ。俺にとっては」  相変わらずキーランはヒナタを見ている。ヒナタは眉を吊り上げた。 「言ったよね? 何もないって」 「違う。俺はきみを見てる。ヒナタ」  街灯の光がキーランの瞳に映っている。 「だったら、私の味方をしてくれる? さっき家族って言ってたよね?」 「言った」 「でも、あなたはブライアンに逆らえるの? 兄さん」  キーランは驚いた顔になった。 「きみは、まるでガラガラヘビだ」  さきほどの鍵をヒナタはキーランの目の前で振る。 「私が持ってていいの? エデンの園に忍び込もうとしている蛇かもしれない」 「かまわない。だけど、あそこに知恵の実があるかな? もしあるとしたら、きみと食べたい」 「蛇とイブ。一人二役だね」   ヒナタは入り口がゲートになったアパートを指差した。 「ここが私の家。さよならのキスをすべきかな?」 「ヒナタのしたいことを」  二人は互いの体に手を回す。キスを交わした。
 官庁街の市警本部庁舎では安藤文彦が部下から報告を受けていた。 「ブライアン・オブライエン?」  クリスティナ・ヨンぺルト・黒田は文彦が警部補として現場指揮を行っていた時分からの部下である。移民だったスペイン人の父親と日系アメリカ人の母親という出自を持っていた。 「警察委員のアルバート・ソッチの推薦だから本部長も乗り気みたい」  文彦はクリスティナの持ってきた資料に目をやる。 「警察委員の肝入りなら従う他ないな」  ブライアン・オブライエン教授の専門は精神病理学であるが、応用心理学、主に犯罪心理学に造詣が深く、いくつかの論文は文彦も読んだ覚えがあった。 「どうせ書類にサインさせるだけだし誰でもかまわない?」 「そういう認識は表に出すな。象牙の塔の住人だ。無暗に彼のプライドを刺激しないでくれ」  クリスティナは肩をすくめる。 「新任されたばかりで本部長は大張り切り。大丈夫。失礼なのは私だけ。他の部下はアッパークラスのハウスワイフよりも上品だから。どんな男でも、その気にさせる」 「クリスティナ」  軽口を咎めた文彦にクリスティナは吹き出した。 「その筆頭があなた、警視正ですよ、ジャック。マナースクールを出たてのお嬢さんみたい。財政の健全化をアピールするために部署の切り捨てを行うのが普通なのに新しくチームを立ち上げさせた。本部長をどうやって口説き落としたの?」 「きみは信じないだろうが、向こうから話があった。私も驚いている。本部長は現場の改革に熱意を持って取り組んでいるんだろう」 「熱意のお陰で予算が下りた。有効活用しないと」  文彦は顔を引き締めた。 「浮かれている場合じゃないぞ。これから、きみには負担をかけることになる。私は現場では、ほとんど動けない。走れないし、射撃も覚束ない」  右足の膝を文彦が叩く。あれ以来、まともに動かない足だ。 「射撃のスコアは基準をクリアしていたようだけど?」 「訓練場と現場は違う。即応できない」  あの時、夜の森の闇の中、懐中電灯の光だけが行く手を照らしていた。何かにぶつかり、懐中電灯を落とした瞬間、右手の動脈を切り裂かれる。痛みに耐え切れず、銃が手から滑り落ちた。正確で緻密なナイフの軌跡、相手はおそらく暗視ゴーグルを使用していたのだろう。流れる血を止めようと文彦は左手で手首を圧迫した。馬乗りになってきた相手のナイフが腹に差し込まれる感触と、その後に襲ってきた苦痛を表す言葉を文彦は知らない。相手はナイフを刺したまま刃の方向を変え、文彦の腹を横に薙いだ。  当時、『切り裂き魔』と呼ばれていた殺人者は、わざわざ文彦を国道まで引きずる。彼の頬を叩いて正気づかせた後、スマートフォンを顔の脇に据えた。画面にメッセージがタイピングされている。 「きみは悪党ではない。間違えた」  俯せに倒れている文彦の頭を右手で押さえつけ、男はスマートフォンを懐に納める。その時、一瞬だけ男の指に光が見えたが、結婚指輪だとわかったのは、ずいぶん経ってからである。道路に文彦を放置して男は姿を消した。  どうして、あの場所は、あんなに暗かったのだろうか。  文彦は事ある毎に思い返した。彼の足に不具合が生じたのは、ひとえに己の過信の結果に他ならない。ジャックと文彦を最初に名付けた妻の気持ちを彼は無にした。世界で最も有名な殺人者の名で夫を呼ぶことで凶悪犯を追跡する文彦に自戒するよう警告したのである。  姪のヒナタに贈った詩集は自分自身への諌言でもあると文彦は思った。法の正義を掲げ、司法を体現してきた彼が復讐に手を染めることは許されない。犯罪者は正式な手続きを以って裁きの場に引きずり出されるべきだ。 「ジャック。あなたは事件を俯瞰して分析していればいい。身長六フィートの制服警官を顎で使う仕事は私がやる。ただひとつだけ言わせて。本部長にはフェンタニルの使用を黙っていたほうがいいと思う。たぶん良い顔はしない」  フェンタニルは、文彦が痛み止めに使用している薬用モルヒネである。 「お帰りなさい、ジャック」  クリスティナが背筋を正して敬礼する。文彦は答礼を返した。
INDEX PREV NEXT
1 note · View note
karasuya-hompo · 6 years
Text
映画:バーフバリ見ながら全部メモ 1
 見ながら、それぞれのシーンのざっとした情景(あらすじ……よりももう少しこまかい)、ふと思うこととかツッコミとかを書き連ねていくある意味 実況的なネタバレ全開感想&所感(๑•̀ㅂ•́)و✧
【伝説誕生】
《冒頭》
 どこか哀調を帯びた歌声と共に始まる物語。  メインの舞台であるマヒシュマティ王国から、川を下るほどに、クンタラ王国や盗賊の砦、そしてクンタラの潜伏地なる地名が映し出される。初見ではなんのこっちゃ分からないが見ていると、やがて地図の南端は滝に変わり、流れ落ちるその滝の一隅、滝の飛沫に濡れ樹木の茂った暗がりの岩壁に、炎の明かりが映る。  そして現れるのは、背に矢傷を受け、赤子を抱いた一人の壮年~初老くらいの女性だ。彼女は傷もあって疲弊しきっているが、それでも懸命に赤子を抱いて進む。手傷を追った彼女は何者かに追われ、必死に逃げているところだ。  賢い女性らしく、血のついた自分の足跡に気づくと、そっとそれを踏みながら後戻りする。  そこへ同じ洞窟から現れるのは、二人の兵士である。彼等は洞窟の出口に落ちている血から、この血を辿ればいいと察する。そうして川の畔にやってくるのだが、足跡は途中で途切れていた。どこへ行ったのか、と見回す兵士の後ろに、先ほどの女性が現れて不意を突き、見事な手際で二人を倒す。  そして再び赤子を抱いたまま逃げようとするのだが、兵士たちを倒したことで精も根も尽き果てたかのように、体はふらついている。歩いて渡るには激しい流れの中で足を滑らせ、彼女は川に流されてしまう。赤ん坊を水につけないようにと気遣いつつも、なんとか掴まれるものを探して足掻くが、ついに観念して空へと叫んだ。 「シヴァ神よ、命がほしいなら私のものを捧げる。けれどこの子は生かせ。帰りを待つ母のもとへ帰るため、そして、マヒシュマティ王国の王となるために!」  そして彼女は、右手にたかだかと赤子を掲げたまま、川面に飲まれ沈んでいく……。
 最初からクライマックスだぜぇ! という今となっては懐かしい台詞が、なんの誇張でもなく冒頭5分ばかりでこうして訪れるから凄い。  普通なら、もう少し物語が進んで話に入り込み、キャラに感情移入した頃に来て「ぐおぉぉぉぉっ」となるだろう場面を、開幕3分で見せてくる。  そのくせ、「は? わけ分からん(ㅍ_ㅍ)」とは感じない。それは、高貴な装いのこの女性の力強さ、真剣さ、必死さが伝わってくるからだろう。理由は分からないが、自分の命を投げうってでも「王となるべき赤子」を助ける。自己犠牲の尊さに、素直に打たれることができる。  ここまでのシーンで「上手いな」と思ったのは、地形だ。見せられる地図で、マヒシュマティ王国はこの地方の北、少し小高い場所に位置していると分かる。であればこそ、(滝の大きさ・高さを考えると無茶はあるが)、追われているこの女性が振り返ったとき、はるか彼方に燃えて見える町(王宮) は、「あの高いところにあった国かな」と分かるのだ。
 「王の凱旋」まで見ていると、この女性―――国母シヴァガミ(シヴァ神の妃という意味がある名だそうな。名前でなく”国母”みたいな代名詞みたいなもの??)が、いったいどんな思いで赤ん坊マヘンドラ=バーフバリを抱えて逃げているのか、自分の命を捨てようとも救おうとするのか、その必死さも想像できるようになる。  この赤ん坊は自分の孫、というよりも、”最愛の息子の子供”である。奸計にかかったとはいえ、自らの命令で殺めてしまった愛する息子の忘れ形見だ。そして、実母を陥れてでも国を奪おうとする悪逆な王、もう一人の息子に対抗できる唯一の光明、正当な王であり、また、シヴァガミの愚かさゆえに夫を失ってしまった嫁デーヴァセーナにとっての希望でもある。  なにがなんでも救わねばならない、こんな顛末になったのも自分の過ちのせいなのだから、この命などなくなっても構わない。彼女に命を惜しむ様子がまったくないのも道理だ。  その一念で、彼女は川面の上に赤子をさし上げたままで、しばし流れるか、あるいは水中に没したままとどまることになる。(流れているのかどうかまでは見ただけではちょっと分からない)
《滝下の村人たち》
 場面が切り替わると、そこに素朴な装いの男たちと、やや小綺麗な衣類を身につけた貫禄のある女性が現れる。  赤ん坊の泣き声を耳にした彼等が見つけたのは、水面に差し上げられた手に支えられ、泣いている赤子だった。  驚いた人々は急いで赤ん坊を助けることにする。一人の男が腰に縄をまいて川に飛び込み、赤ん坊のところに泳ぎ着いて受け取った。すると、もう命はないはずの女性の手がゆっくりと、川上、滝を指差した。ついそれを見やって視線を戻すともうそこに手はなく、ただ水面下に、鮮やかな衣装をまとった死者が流れていくのが見えるだけだった。  男は赤ん坊を抱えて岸に泳ぎ戻り、女性に渡す。高価な装飾品を身につけた女性の手は、最後に滝の上を指差したことを伝えていると、他の人々が近くに兵士の死体と洞窟を見つけた。この赤ん坊はきっと滝の上から、この洞窟の抜け道を通って連れられてきたのだろうと察し、届けようと言い出す男がいるが、赤ん坊を抱いた女性は、「乳飲み子を殺そうと追って来るような場所に戻せるものか。この子は、子供のいない私に川の神が授けてくれたものだ」と言い、洞窟を岩で閉じてしまうよう命じた。
 川に沈んでもなお、赤ん坊を支えた手は微動だにしない……ん な 馬 鹿 な wwwwwという光景ではあるけれど、そんなリアリティとは決別しよう。これはそういうリアリティを重んじる物語ではなく、どっちかと言えば神話なのだから。なんとしてでも救わねばならないという国母の一念が、奇跡を起こしたのだ。それとも、王になるべくして生まれた子であるという、運命ゆえか。  川辺に現れる村人たちは、私の目にはどことなくわざとらしく見える。演技として自然ではないというか、個人的には、舞台劇を見ているような大げささ、”型”のようなものを感じる。ごく自然に、本当にそうであるようにとリアリティ重視で現実的に演じるのではなく、むかしむかしあるところに、と語られるような物語として演じる。そんな感じだ。  それにしても、洞窟を閉じろ、この子は私の子にする! と言う女・サンガは、「逆らったら殺す!」である。初見では「どんだけ強いんだこの人wwww」となった。それともインド(の昔話)ではそれくらい女性の権力が強いのが普通なのかな、と。男たち誰も逆らわないし。  ここでサンガがマヘンドラを届けなかったことは、子のない女の身勝手で、誘拐も同然ではあるんだけれど、結果的にこれが赤ん坊の命を救うことになったのは間違いない。届けていたら100%殺されてるだろうから。  川にはまって溺れ死んだ女が支えていた子供と、川べりで死んでる兵士から、「この兵士はこの子を殺そうとしてたんだ」と決めつけるのは短絡的ではあるけれど、事実を言い当ててもいる。サンガがそう決めつけてマヘンドラを我が子にすると決めたことも、ある意味、神話的な運命というものなのかもしれない。
 この冒頭を見るだけでも、これが「貴種流離譚」と呼ばれる典型であることは分かる。いわゆる「本当は尊い血筋の王子様とかなのに、赤ん坊の頃にわけあって故国や親元、城を離れ、市井の一般人として育つが、やがて自分の出生を知り、本来つくべき王座を目指していく」とか「世界を救う」とか。  日本人がよく知ってそうな例でいくと、ドラクエ5のメインの主人公もそうだ。パパスは本当は王だった。けれど彼は息子を連れて王座を離れ、息子はそのことを知らず、父もそれを知らせず育てる。そして冒険の末、実はパパスは王だった、自分は王子だったと知り、王の座へと戻る。  キシュリューリタン、なんていう呼び方は知らなくても、多くの人がいつかどこかで味わっている物語パターンである。
《育っていくマヘンドラ=シヴドゥ》
 サンガの子となった赤ん坊はすくすくと育ち、少年になっている。彼は滝の傍に座り、滝を見上げ、あの上にはなにがあるのと、迎えに来た母に言う。  本来は滝の上にいた子、そこから来た子なので、サンガはせっかく授かった可愛い息子が、滝の上へ戻って行くことを恐れ、「子供を食べる悪魔がいるのよ」と言う。  しかしそれでも少年シヴドゥの、滝の上への強い関心は少しも薄れることなく、もう少し大きくなると滝を登ろうとしはじめてしまった。それを見つかって母親に叱られるも、それでも彼は諦めず挑戦しつづけ、少しずつ少しずつ、幼い頃よりは登れるようになっていき―――。  ついに"現在"になる。25歳の青年になったシヴドゥは、それでもまだ滝の上を目指していた。  同年代の友達たちは、呆れつつも面白がり、それを眺めている。昔よりはかなり高く登れるようになり、素晴らしい身体能力も見せつけてくれるシヴドゥだが、滝は険しくまた失敗してしまう。どうしても「対岸」に飛び渡らないといけないのだが、幅は広く、届かず落ちてしまう。  そして母サンガは、滝の上を目指し、自分のもとからいなくなってしまいそうな息子シヴドゥに滝登りを諦めさせるため、1016回、川から��んだ水をご神体に注ぐという、「潅頂(かんじょう)」なる荒行を始めていた。  仲間がそれをシヴドゥに告げに来る。母親がそんな無茶なことをしていると知って、シヴドゥはやめるよう頼むのだが、「私の言うことは聞いてくれないのに?」と母親は取り合わない。母は大切だが、滝の上へ行きたいという切実な思いもどうしても譲れないのだ。  そんなシヴドゥがとった方法とは?
 運命なので。  シヴドゥが滝の上に行きたがることに理屈なんかないのである。彼は王国に帰らねばならない。そうしないと映画にもならないし(マテ)。  それにしても、25歳シヴドゥの、顔を出して満面の笑みでバッサアァァァと水をふるい落とすのにはつい笑ってしまったw 少なくともこの瞬間には、演じるプラバースさんもちょっとふくよかなのか、小太りにも見える顔をしている。決して、日本人が一般的に「美男」という顔ではない。その顔でバッサアァァァである。いやまあ顔に関係なく、こんなバッサアァァァやられたら、その俳優が誰でも笑うわ。  で、5分に一回クライマックスがある、なんて言われるこの映画、またしてもむやみに盛り上がるシーンに突入する。  母に無茶な願掛けをやめてほしいが、滝登りをやめると約束もできない以上、さてどうするか。  シヴドゥは、「だったらご神体を水のあるとこへ持っていけばいーじゃん!」と閃いてしまうのだ。  で、シヴドゥはなんとご神体の根本をかち割り、石でできたクッソ重たいそれを担ぎ上げ、運びだすのである。  ここで、リズミカルな歌が入る。ドラムンベース系の、軽くはないが軽快な曲だ。その音楽とともに、シヴドゥは笑顔でご神体を担ぎ、滝の下まで運んでいく。そして常に水が降り注ぐそこにご神体を下ろすと、「これで神にはいつでも水が降り注ぐぞ」、だから母さんが体を酷使して無理な願掛けなんかしなくても、お願いは叶うようになるよ、というわけだ。
 個人的に面白いのが、ここの導師である。なんか胡散臭い嘘つき導師みたいな雰囲気も漂っているのだが、サンガから「これをやれば、息子は私の言うことに従いますか?」と問われ、「子は必ず正しき道に導かれる」と言う。サンガの言うとおりになるとは言っていない。そしてこの胡散臭い導師の台詞は、リアルタイム5時間後に真実となるのだ。  また、この胡散臭い導師だけれど、シヴドゥがご神体の根本を壊し、なにかしようとしたとき、男(サンガの夫である村長)が止めようとすると、導師は彼を制止する。突拍子もないが、なにか偉大なことをやろうとしている、と感じればではないだろうか。そのあたりに、胡散臭くはあるけれど、本物の導師っぽさも漂うのである。
 またこのシーンでは、実際には血の繋がらない母子が、互いを思い合っていることもちゃんと描かれている。可愛い息子に、「滝の上」という元の居所に戻ってほしくない、ずっと私のシヴドゥでいてほしいと願い、そのために苦行も厭わないサンガ。  シヴドゥは、(サンガを養母と知っているのかどうかはさておき)「それなら母さんの代わりに俺が運ぶよ」、それでは願いが叶わないと言われ、「じゃあ母さんを運ぶから、母さんは水を注いで」てサンガを抱え上げてしまう。母の体を労り、そのためなら自分が苦労するのはちっとも構わない。シヴドゥの人柄が描かれる。
 自分が滝の上に行こうとするがゆえの母の願掛けではあるけれど、それでも、願いの成就と引き換えに荒行を強いるシヴァ神、そのご神体を、シヴドゥは強く睨みつける。その後でガツンガツンとつつき始めるのだから、「腹が立って壊そうとしているのか」と一瞬思うが、そうではない。  根本にぐるりとヒビが入ると、シヴドゥはバッサアァァァと威勢よく上着を脱ぎ捨ててセクシーな上半身裸となるw そして曲がかかっていよいよご神体を持ち上げようというとき、シヴドゥはどことなく不敵にも見える、けれど愛嬌のある笑顔でご神体を見る。「神様、じゃあこんなのはどうだ?」とでも言うように、私には見えた。  で、膨張した筋肉で上腕にまいていた木の実を連ねたような飾りはぱっつーんとはじけ飛び、シヴドゥはついに肩の上にご神体を担ぎあげる。  ここで私は、うええぇぇぇぇなんかかっこいいんですけどおぉぉぉ!? となったw  ちなみにここで入る歌の歌詞はシヴァ神を描写して讃えるもので、つまりはシヴドゥがあたかもシヴァ神のごとき、あるいは神に選ばれた存在だということを表しているのだろう、たぶん。  で、村人たちはシヴドゥの怪力に驚きつつ、なにやら尊く感じてしまうのか、ほぼ拝んどきモードにw  彼等に見送られ……というよりも、自然と彼等を従えて滝の下まで辿り着いたシヴドゥは、流れ落ちる滝の真下にご神体を据えて、「母さん、これでもう未来永劫ずっと水は降り注ぐよ」、だから無茶な願掛けなんかもうしなくていいのだと、と笑顔で呼びかけるのである。
 ところでパパフバリも今フバリも、母・妻にかなり忠実だ。ここで描かれるのは今フバリと養母で、母の願いを叶えるため、シヴドゥは自分が苦労を買って出ている。  そんな親孝行で優しい息子たちだが、それでも譲れないものがあり、そのために今フバリは滝を登って養母のもとを離れ、パパフバリは妻を選ぶのである。
《仮面》
 ご神体を滝の下まで運んできて、母も(なし崩しにというか勢いで)納得したそのとき、滝の上からシヴドゥの足元へと流れ落ちてきたものがあった。それは、木製の素朴な仮面だった。  それから数日くらい経過したのか、翌日くらいなのか、ともかくサンガは導師を我が家に招き、食事でもてなしていた。「導師の予言どおり、あれからシヴドゥはもう滝を見上げなくなりました」と。導師はそれも神の御力じゃて、みたいなこと言いつつぱくぱく食べてて、やはり胡散臭いw  しかしその代わりシヴドゥは、拾った仮面に夢中になっていた。滝の代わりにその仮面―――美しい女性のようにも見える仮面ばかり眺めているのである。  導師は、「神のご意志は神のみぞ知る」と答える。そして村長が、「ご神体を運んだのは息子だが、では妻と息子、どちらの願いが叶うのか」と尋ねると、「神はご意志を貫かれる」とだけ言って導師は出ていってしまう。  さて、シヴドゥがどれだけ眺めていても仮面は仮面だし、持ち主のことはなにも分からない。やがて彼は砂地の上に仮面を置き、なにげなくその上に手をついて立ち上がった。そして仮面を取り上げると、砂の上には仮面の内側、そのオウトツにそった顔が刻まれていた―――。
 サンガは「シヴドゥは私のところにいるのが正しいの」と思い願をかけた。「正しき道」と導師に言われ、きっと、「そうよ、息子は母親のもとにいるべきなのよ、これが正しい道よ」と思えばこそ、導師の予言は当たったのだと感じている。  おそらくシヴドゥは、「滝の上に行きたいなぁ」んて思いながらご神体を運んではいない。じゃあなにを考えていたのかといえば、「今から水の降り注ぐところにつれていくから、それで母さんや皆の願いを叶えてくれよ」とか、あるいは、願掛けとしてはほぼ無心に近い、「これ運んじゃえばいいんだよ、そーさそーさ」くらいだったかもしれない。  どちらにせよ、彼等の思惑は導師の言うとおり、まさに「神のご意志」の前では大して意味はない。シヴドゥはまさしく、「神のご意志」により「正しき道」へと導かれることになる。ともすると、サンガの願いは違った形で叶えられたのかもしれない。「息子は母のもとに戻る」。養母ではなく、実母のもとになるのだが。  どちらにせよ、「神のご意志」である。王たるべき者は王に。そういう単純な、そして絶対の運命のことかもしれない。  シヴドゥが「正しき道」、「母のもと」へと踏み出すそのきっかけが、美女を思わせる仮面、である。
 木彫の仮面に美女の面影って無理ないか!? と思ったりしてはいけない。というか、そもそも仮面がその持ち主の顔形に似ているなんて保証はどこにもない、なんて言ってもいけない。  仮面はあくまでもきっかけだ。「なんか綺麗な女の人っぽい仮面だなぁ。つけてた人も美人なのかなぁ。なんかすっごい好みだなぁ。もしこんな人が滝の上にいるなら会いたいなぁ」くらいだと思う。だからシヴドゥは、仮面を手に入れても何日もただ仮面を眺めるだけでいたのではないだろうか。この時点ではいくらシヴドゥ��も、「こいつの持ち主は俺好みの美女だぜぇ」なんて思ってはいなかったと思う。持ち主が女の人とは限らないよなぁ、といった常識的な思考もあったんじゃないだろうか。  けれど砂地に転写された顔が、木彫の仮面で見ているよりも美人に見えて、髪とかも砂地に描いてみたら、ますます好みだった。それで、「よし、実際どうなのかは知らないし、いるかどうかも分からないけど、もしいるかもしれないなら、この人に絶対会いたい!!」になったんじゃないだろうか。  そのへんにもきっと、神のご意志と運命は絡んでいると見てもいい。  あるいは、運命ゆえに、理屈なんか一切無視して「これが俺の運命の人だガビーン!!」となった、それでもいいじゃない?  なんにせよ、それまでは「わけもなく」とか「なんとなく、だけどどうしても」だった、滝の上の世界に行きたいという”理由のない望み”は、「この人に会いたい!」という一つのはっきりとした理由、目的を見出した。  そしてシヴドゥは、再び滝の上を目指すのである。
《滝登り》
 仮面の主に会うために、再び滝に登り始めたシヴドゥ。  冒頭で失敗した「対岸へのジャンプ」のところまで来ると、鮮やかな青い蝶がいた。何匹もの青い蝶をまとって現れたのは、白い衣の美女。  もちろん彼女は実在しない。インド映画独自の、歌と踊りと異世界トリップである。もう少し身と蓋のある言い方をすれば、ここに現れる美女はシヴドゥの心象風景だ。身も蓋もなく言えば、空想、妄想、幻想である。  仮面の主がこんな美女だと決まったわけではなくても、「こんな素敵な人だったりして(´ω`*) で、もしかしたらこれって運命で、彼女も俺を待っててくれてるかもしんないしぃ。だったらがんばらなきゃ!!」みたいな感じ?  これで仮面の主がごっついおっさんだったりしたら笑えるのだが、それはさておき。  いくら超人的な身体能力のシヴドゥでも、落ちたら命はないほどの高さにまで登ってきたし、危ない目にも遭う。じりじりと狭い足場を進んでいくようなリアルな場面があったかと思えば、「あくまでもイメージです」みたいなシーンも挟んだりしつつ、「彼は前進と達成のみを知る男だ」という歌に合わせて、ひたすらシヴドゥは登っていく。時折現れ、誘うように、逃げるように先へ先へと、進むべき道を行く美女を追う。  そうして最後。もうどうしても掴まって登れそうもない崖っぷちで、彼はそこにあった竹や蔓から手製の弓を作り、それでてっぺんの木にロープを引っ掛けることに成功し、ついに滝の上の世界に辿り着くのであった。
 私の場合インド映画は、多分に漏れず「ムトゥ 踊るマハラジャ」で初めて見て、それ以来特にチェックもしていなかった。それはたぶん、ムトゥが合わなかったから、というのもある。「唐突に始まる歌と踊り」が面白いとか素敵だとかでなくて、退屈だったのだ。映画自体はなかなか面白く見たけれど、もう一度見ようとは思わなかった。  だからバーフバリも、どんなに絶賛されていてもその懸念はあった。  しかし幸いにもバーフバリの歌・ダンスのシーンは、物語の進行を邪魔しない。  最初の「歌」であるシヴドゥがご神体を運ぶシーンは短めだし、彼が運んでいく姿を並行して映し出しているから、「ちょっと大げさな感じの移動に、歌がついている」という感じである。  そして滝登りのシーンでは、シヴドゥ自身は飛んだりはねたり走ったりじわじわしたり、基本的に「滝を登る」という行為を続けるだけだ。歌(と美女の踊り)はやはり、「危険な滝登り」というアクションシーンのBGMである。  ただまあ、いきなりいかにもCGな青い蝶が出てきて、美女が出てきてで、それがあくまでもシヴドゥの妄想でしかないのであるから、途端にアブナい奴になってしまうがw
 ところで、インド南部のテルグ語映画というのつは、男がたいていストーカーらしいw  もちろんそこには、「思いを寄せる男は、ストーカー的ではあるけど、一途で誠実で、本当に相手を愛している」という前提があるし、「女のほうも満更ではない」という前提もある。これがどっちが崩れてたら、ただの犯罪者である。  ともあれ観客は、シヴドゥのヘヘヘヘ(´ω`*)な妄想を垣間見つつ、一緒に滝の上の世界へと進むのだ。んな馬鹿なwwwwなところもあるが、コミック的だと言えばそれで済む。漫画でなら当たり前にやってるような程度でしかない。  落下したら足にツタが絡まって、とか、普通なら股関節抜けるだろそれ!? みたいなのもあったりするが、漫画とかならありうるシーンだし、実際に描かれて来てもいる。ドラゴンボールとか、そーゆーあれ。普通死ぬ。だが普通じゃないから平気なのである。よし。
 どうでもいい話だけれど、私はこのシーンでの美女さんは、特にどうとも思わなかった。もちろん美人だが、女優さんなんだから美人なのは珍しくもなんともない。「うおぉぉすげぇ美人じゃーん!」とは思わなかった。  むしろ、この後にシヴドゥが出会う「仮面の主」、アヴァンティカの女戦士としての凛々しさと美しさのほうが「おっ」と思ったし、ストーカー男に巧みに着替えさせられたときのほうが、「うひょ~びっじーん!!」と思ったのであったw
《アヴァンティカ》
 ついに滝の上に来たシヴドゥは、林の中を逃げる女性を見かける。兵士たちに追われている彼女はどうやら、あの仮面の面影によく似た女性である。もちろんシヴドゥは助けなければと思うのだが、逃げて行く先、追い詰められたかに見えた彼女の号令で、一斉に矢が放たれた。  樹上に隠れていた男たちと合流し、彼女は果敢に戦う。男のような身なりで女らしい装いもないが、それでも彼女は美しく、しかも強かった。  助けはいらないらしいと見て取ったシヴドゥがこっそり見守っていると、娘は最後の一人の兵士の身にアミュレットらしきものを見つけ、「これはどうした」と奪いとった。「殺した相手が持っていた」と言われ、兵士を殺し、彼女たちは引き上げていく。  その先には、薄汚れた身なりの者が隠れるように集まっていた。娘は兵士から奪い返したものを長らしき男に差し出し、元の持ち主の死を告げる。つい泣き出す少年を、長は厳しく叱りつけた。「デーヴァセーナ様を助け出すまでは、目には涙ではなく、怒りの炎を灯すのだ」と。  シヴドゥに詳しいことは分からないが、彼女たちはレジスタンスのようである。であればこそ皆、実用性第一の戦闘服であるし、宝飾品も、贅沢なものもなにもない。そして、デーヴフセーナ妃と呼ばれる人物を救い出すことに命を賭けているようだ。  そしてシヴドゥが見つけた仮面は、彼らが顔を隠すために使っているものだったと知る。(つまり全然、美女の顔をかたどってるわけではないw)  ともあれ、ここまでついてきて見届けたついでに(?)シヴドゥはそのままストーカーを続行するのであった。
 アヴァンティカという、仮面によく似た面差しのその女戦士は、あるとき、湖のほとりで片手を水につけたままうたた寝してしまう。手をついばむ小魚たちのいたずらが心地よかったのかもしれない。  シヴドゥは水中をこっそり近づいて、小魚たちのついばみにまぎれて、彼女の手にあざやかな孔雀の羽のタトゥーを描いた。アヴァンティカはそのことにまったく気付かないまま、やがてアジトである洞窟に帰っていった。  そして長から、デーヴァセーナ救出の大役を任される。その証としてアミュレットを授けてもらうのだが、彼女が出した手には鮮やかなタトゥーがあり、見つけた長は「化粧にうつつをぬかすような奴には任せられん」と怒ってしまう。アヴァンティカ自身には身に覚えのないことである。驚いた彼女は、任せてもらえない悔しさで泣きながら、「この涙は怒りの涙です。見ていただければお分かりになるはず」と長を説得する。  そしてそれから、友人である女性を囮にし、このにっくき悪戯者をこらしめることにした。こんな不覚をとったとしたら あのときだけだと、アヴァンティカは友人に自分の身代わりをさせ、同じように泉のほとりに寝そべらせる。そして自分は、その姿が見える樹上に隠れて、近づいてくる者を弓を狙うことにした。  ところがシヴドゥは一枚上手だった。弓を構える彼女の後ろの枝にねそべって、捕まえてきた小さな蛇を彼女の肩へと這わせる。そして今度は、その蛇の感触でごまかしながら、ちょいちょいとまたタトゥーを描きあげてしまった。
 タトゥーと言っても、描いているだけのものでしょう。針でさしてたらさすがに気付かないはずもありません。だとしても、相手の体に勝手にお絵かきとはヤバい奴w このへんはもう、自分がフラれること、相手がそれをマジで嫌がることなんて考えてもいないし、そしてそれが正しいというテルグ的ご都合主義、と言ってもいいかと思います。  気づかないアヴァンティカもアヴァンティカです。二度目の肩に描かれるものは自分では見えにくいので、友人に「それなに?」と言われないと見つられないのも仕方ないでしょう。 しかし一度目のは手ですよ? 手の甲というか、そのへん。なんで気付かんのだ。  それに、うたた寝してたときはともかく、弓を引いて狙ってたときなら、小蛇の感触とそれ以外と、分からないものでしょうか?  と、冷静な頭はツッコミますが、いいんです。気づかないんです。そういうオヤクソクなんです。んな馬鹿なwwwwと思っても、白けない。おいおいと思いながら楽しんでしまう魅力があります。
 あと、こまかいところはこまかい、それが映画としての面白さを支えてる、というところもあるように思います。  バトルシップとかもそうですけど、大味で大雑把に見えて、設定が地味に活きてるとか、こまかいところがあったり、オイシイ伏線をきっちり拾うとかみたいに、なにもかもが大味なわけではない。  初めて滝の上に来たシヴドゥは、感動の面持ちで雪をかぶった枝を見ていたりします。たぶん雪なんてもの初めて見たのかもしれない。「ついに、ずっと行きたかった滝の上に来た!!」という感動がちらっと描かれる。  そして、追わせれてたか弱い女性のふりのアヴァンティカが、本来の強い女戦士に戻る直前に、一つ深い呼吸の音が入る。力を込めるひとときです。こういうのがちゃんとあったりする。  しかもその間もテンポもいい。嬉しそうに滝の上の世界を見るシヴドゥ、女性の悲鳴、走るシヴドゥがただそれだけなのに何故かスローモーwwwでちゃんと草も生やせる、逃げる女性、それが深呼吸一つを境に、「剣を!」という一言とともに一変する。  だから飽きずに、笑いながら、そしてつい惹きこまれながら、見てしまうのではないかなと思います。
 なお、一回目に見たときには、まだ固有名詞も覚えていないのがピンと来ませんが、このシーンの後、冒頭で出てきた地図が現れ、そこが「クンタラの潜伏地」だと分かります。  ほんと、初見では記憶に残らないのですけどw クンタラ王国とかデーヴァセーナ妃とか、固有名詞はこのへんあたりでは完全にスルーです、わたくし。  しかし「王の凱旋」まで見終わって戻ってくると、冒頭の地図で「そうか、ここが彼らのいたところで、だからクンタラの潜伏地なんだな」と分かるし、このシーンの切り替えの場面でも「クンタラノ潜伏地から、さて一方その頃、マヒシュマティ王国の武器工場では」としっかり分かります。
 この続きは、いつになるか分かりませんが、また次回!  いよいよカッタッパ登場ですよ!!
4 notes · View notes
groyanderson · 3 years
Text
☆プロトタイプ版☆ ひとみに映る影シーズン2 第七話「復活、ワヤン不動」
☆プロトタイプ版☆ こちらは電子書籍「ひとみに映る影 シーズン2」の 無料プロトタイプ版となります。 誤字脱字等修正前のデータになりますので、あしからずご了承下さい。
☆ここから買おう☆
(シーズン2あらすじ) 私はファッションモデルの紅一美。 旅番組ロケで訪れた島は怪物だらけ!? 霊能者達の除霊コンペとバッティングしちゃった! 実は私も霊感あるけど、知られたくないなあ…… なんて言っている場合じゃない。 諸悪の根源は恩師の仇、金剛有明団だったんだ! 憤怒の化身ワヤン不動が、今度はリゾートで炸裂する!!
pixiv版 (※内容は一緒です。)
དང་པོ་
 ニライカナイから帰還した私達はその後、魔耶さんに呼ばれて食堂へ向かう。食堂内では五寸釘愚連隊と生き残った河童信者が集合していた。更に最奥のテーブルには、全身ボッコボコにされたスーツ姿の男。バリカンか何かで雑に剃り上げられた頭頂部を両手で抑えながら、傍らでふんぞり返る禍耶さんに怯えて震えている。 「えーと……お名前、誰さんでしたっけ」  この人は確か、河童の家をリムジンに案内していたアトム��員だ。特徴的な名前だった気はするんだけど、思い出せない。 「あっ……あっ……」 「名乗れ!」 「はひいぃぃ! アトムツアー営業部の五間擦平雄(ごますり ひらお)と申します!」  禍耶さんに凄まれ、五間擦氏は半泣きで名乗った。少なくともモノホンかチョットの方なんだろう。すると河童信者の中で一番上等そうなバッジを付けた男が席を立ち、机に手をついて私達に深々と頭を下げた。 「紅さん、志多田さん。先程は家のアホ大師が大っっっ変ご迷惑をおかけ致しました! この落とし前は我々河童の家が後日必ず付けさせて頂きます!」 「い、いえそんな……って、その声まさか、昨年のお笑いオリンピックで金メダルを総ナメしたマスク・ド・あんこう鍋さんじゃないですか! お久しぶりですね!?」  さすがお笑い界のトップ組織、河童の家だ。ていうか仕事で何度か会ったことあるのに素顔初めて見た。 「あお久しぶりっす! ただこちらの謝罪の前に、お二人に話さなきゃいけない事があるんです。ほら説明しろボケナスがッ!!」  あんこう鍋さんが五間擦氏の椅子を蹴飛ばす。 「ぎゃひぃ! ごご、ご説明さひぇて頂きますぅぅぅ!!」  五間擦氏は観念して、千里が島とこの除霊コンペに関する驚愕の事実を私達に洗いざらい暴露した。その全貌はこうだ。  千里が島では散減に縁を奪われた人間が死ぬと、『金剛の楽園』と呼ばれる何処かに飛び去ってしまうと言い伝えられている。そうなれば千里が島には人間が生きていくために必要な魂の素が枯渇し、乳幼児の生存率が激減してしまうんだ。そのため島民達は縁切り神社を建て、島外の人々を呼びこみ縁を奪って生き延びてきたのだという。  アトムグループが最初に派遣した建設会社社員も伝説に違わず祟られ、全滅。その後も幾つかの建設会社が犠牲になり、ようやく事態を重く受け止めたアトムが再開発中断を検討し始めた頃。アトムツアー社屋に幽霊が現れるという噂が囁かれ始めた。その霊は『日本で名のある霊能者達の縁を散減に献上すれば千里が島を安全に開発させてやろう』と宣うらしい。そんな奇妙な話に最初は半信半疑だった重役達も、『その霊がグループ重役会議に突如現れアトムツアーの筆頭株主を目の前で肉襦袢に変えた』事で霊の要求を承認。除霊コンペティションを行うと嘘の依頼をして、日本中から霊能者を集めたのだった。  ところが行きの飛行機で、牛久大師は袋の鼠だったにも関わらず中級サイズの散減をあっさり撃墜してしまう。その上業界ではインチキ疑惑すら噂されていた加賀繍へし子の取り巻きに散減をけしかけても、突然謎のレディース暴走族幽霊が現れて返り討ちにされてしまった。度重なる大失態に激怒した幽霊はアトムツアーイケメンライダーズを全員肉襦袢に変えて楽園へ持ち帰ってしまい、メタボ体型のため唯一見逃された五間擦氏はついに牛久大師に命乞いをする。���くして大師は大散減を退治すべく、祠の封印を剥がしたのだった。以上の話が終わると、私は五間擦氏に馬乗りになって彼の残り少ない髪の毛を引っこ抜き始めた。 「それじゃあ、大師は初めから封印を解くつもりじゃなかったんですか?」 「ぎゃあああ! 毛が毛が毛がああぁぁ!!」  あんこう鍋さんは首を横に振る。 「とんでもない。あの人は力がどうとか言うタイプじゃありません。地上波で音波芸やろうとしてNICを追放されたアホですよ? 我々はただの笑いと金が大好きなぼったくりカルトです」 「ほぎゃああぁぁ! 俺の貴重な縁があぁぁ、抜けるウゥゥーーーッ!!」 「そうだったんですね。だから『ただの関係者』って言ってたんだ……」  そういう事だったのか。全ては千里が島、アトムグループ、ひいては金剛有明団までもがグルになって仕掛けた壮大なドッキリ……いや、大量殺人計画だったんだ! 大師も斉二さんもこいつらの手の上で踊らされた挙句逝去したとわかった以上、大散減は尚更許してはおけない。  魔耶さんと禍耶さんは食堂のカウンターに登り、ハンマーを掲げる。 「あなた達。ここまでコケにされて、大散減を許せるの? 許せないわよねぇ?」 「ここにいる全員で謀反を起こしてやるわ。そこの祝女と影法師使いも協力しなさい」  禍耶さんが私達を見る。玲蘭ちゃんは数珠を持ち上げ、神人に変身した。 「全員で魔物(マジムン)退治とか……マジウケる。てか、絶対行くし」 「その肉襦袢野郎とは個人的な因縁もあるんです。是非一緒に滅ぼさせて下さい!」 「私も! さ、さすがに戦うのは無理だけど……でもでも、出来ることはいっぱい手伝うよ!」  佳奈さんもやる気満々のようだ。 「決まりね! そうしたら……」 「その作戦、私達も参加させて頂けませんか?」  食堂入口から突然割り込む声。そこに立っていたのは…… 「斉一さん!」「狸おじさん!」  死の淵から復活した後女津親子だ! 斉一さんは傷だらけで万狸ちゃんに肩を借りながらも、極彩色の細かい糸を纏い力強く微笑んでいる。入口近くの席に座り、経緯を語りだした。 「遅くなって申し訳ない。魂の三分の一が奪われたので、万狸に体を任せて、斉三と共にこの地に住まう魂を幾つか分けて貰っていました」  すると斉一さんの肩に斉三さんも現れる。 「診療所も結界を張り終え、とりあえず負傷者の安全は確保した。それと、島の魂達から一つ興味深い情報を得ました」 「聞かせて、狸ちゃん」  魔耶さんが促す。 「御戌神に関する、正しい歴史についてです」  時は遡り江戸時代。そもそも江戸幕府征服を目論んだ物の怪とは、他ならぬ金剛有明団の事だった。生まれた直後に悪霊を埋め込まれた徳松は、ゆくゆくは金剛の意のままに動く将軍に成長するよう運命付けられていたんだ。しかし将軍の息子であった彼は神職者に早急に保護され、七五三の儀式が行われる。そこから先の歴史は青木さんが説明してくれた通り。けど、この話には続きがあるらしい。 「大散減の祠などに、星型に似たシンボルを見ませんでしたか? あれは大散減の膨大な力の一部を取り込み霊能力を得るための、給電装置みたいな物です。もちろんその力を得た者は縁が失せて怪物になるのですが、当時の愚か者共はそうとは知らず、大散減を『徳川の埋蔵金』と称し挙って島に移住しました」  私達したたびが探していた徳川埋蔵金とはなんと、金剛の膨大な霊力と衆生の縁の塊、大散減の事だったんだ。ただ勿論、霊能者を志し島に近付いた者達はまんまと金剛に魂を奪われた。そこで彼らの遺族は風前の灯火だった御戌神に星型の霊符を貼り、自分達の代わりに島外の人間から縁を狩る猟犬に仕立て上げたんだ。こうして御戌神社ができ、御戌神は地中で飢え続ける大散減の手足となってせっせと人の縁を奪い続けているのだという。 「千里が島の民は元々霊能者やそれを志した者の子孫です。多少なりとも力を持つ者は多く、彼らは代々『御戌神の器』を選出し、『人工転生』を行ってきました」  斉一さんが若干小声で言う。人工転生。まだ魂が未発達の赤子に、ある特定の幽霊やそれに纏わる因子を宛てがって純度の高い『生まれ変わり』を作る事。つまり金剛が徳松に行おうとしたのと同じ所業だ。 「じゃあ、今もこの島のどこかに御戌様の生まれ変わりがいるんですか?」  佳奈さんは飲み込みが早い。 「ええ。そして御戌神は、私達が大散減に歯向かえば再び襲ってきます。だからこの戦いでは、誰かが対御戌神を引き受け……最悪、殺生しなければなりません」 「殺生……」  生きている人間を、殺す。死者を成仏させるのとは訳が違う話だ。魔耶さんは胸の釘を握りしめた。 「そのワンちゃん、なんて可哀想なの……可哀想すぎる。攻撃なんて、とてもできない」 「魔耶、今更甘えた事言ってんじゃないわよ。いくら生きてるからって、中身は三百年前に死んだバケモノよ! いい加減ラクにしてやるべきだわ」 「でもぉ禍耶、あんまりじゃない! 生まれた時から不幸な運命を課せられて、それでも人々のために戦ったのに。結局愚かな連中の道具にされて、利用され続けているのよ!」 (……!)  道具。その言葉を聞いた途端、私は心臓を握り潰されるような恐怖を覚えた。本来は衆生を救うために手に入れた力を、正反対の悪事に利用されてしまう。そして余所者から邪尊(バケモノ)と呼ばれ、恐れられるようになる……。 ―テロリストですよ。ドマル・イダムという邪尊の力を操ってチベットを支配していた、最悪の独裁宗派です―  自分の言った言葉が心に反響する。御戌神が戦いの中で見せた悲しそうな目と、ニライカナイで見たドマルの絶望的な目が日蝕のように重なる。瞳に映ったあの目は……私自身が前世で経験した地獄の、合わせ鏡だったんだ。 「……魔耶さん、禍耶さん。御戌神は、私が相手をします」 「え!?」 「正気なの!? 殺生なんて私達死者に任せておけばいいのよ! でないとあんた、殺人罪に問われるかもしれないのに……」  圧。 「ッ!?」  私は無意識に、前世から受け継がれた眼圧で総長姉妹を萎縮させた。 「……悪魔の心臓は御仏を産み、悪人の遺骨は鎮魂歌を奏でる。悪縁に操られた御戌神も、必ず菩提に転じる事が出来るはずです」  私は御戌神が誰なのか、確証を持っている。本当の『彼』は優しくて、これ以上金剛なんかの為に罪を重ねてはいけない人。たとえ孤独な境遇でも人との縁を大切にする、子犬のようにまっすぐな人なんだ。 「……そう。殺さずに解決するつもりなのね、影法師使いさん。いいわ。あなたに任せます」  魔耶さんがスレッジハンマーの先を私に突きつける。 「失敗したら承知しない。私、絶対に承知しないわよ」  私はそこに拳を当て、無言で頷いた。  こうして話し合いの結果、対大散減戦における役割分担が決定した。五寸釘愚連隊と河童の家、玲蘭ちゃんは神社で大散減本体を引きずり出し叩く。私は御戌神を探し、神社に行かれる前に説得か足止めを試みる。そして後女津家は私達が解読した暗号に沿って星型の大結界を巡り、大散減の力を放出して弱体化を図る事になった。 「志多田さん。宜しければ、お手伝いして頂けませんか?」  斉一さんが立ち上がり、佳奈さんを見る。一方佳奈さんは申し訳なさそうに目を伏せた。 「で……でも、私は……」  すると万狸ちゃんが佳奈さんの前に行く。 「……あのね。私のママね、災害で植物状態になったの。大雨で津波の警報が出て、パパが車で一生懸命高台に移動したんだけど、そこで土砂崩れに遭っちゃって」 「え、そんな……!」 「ね、普通は不幸な事故だと思うよね。でもママの両親、私のおじいちゃんとおばあちゃん……パパの事すっごく責めたんだって。『お前のせいで娘は』『お前が代わりに死ねば良かったのに』みたいに。パパの魂がバラバラに引き裂かれるぐらい、いっぱいいっぱい責めたの」  昨晩斉三さんから聞いた事故の話だ。奥さんを守れなかった上にそんな言葉をかけられた斉一さんの気持ちを想うと、自分まで胸が張り裂けそうだ。けど、奥さんのご両親が取り乱す気持ちもまたわかる。だって奥さんのお腹には、万狸ちゃんもいたのだから……。 「三つに裂けたパパ……斉一さんは、生きる屍みたいにママの為に無我夢中で働いた。斉三さんは病院のママに取り憑いたまま、何年も命を留めてた。それから、斉二さんは……一人だけ狸の里(あの世)に行って、水子になっちゃったママの娘を育て続けた」 「!」 「斉二さんはいつも言ってたの。俺は分裂した魂の、『後悔』の側面だ。天災なんて誰も悪くないのに、目を覚まさない妻を恨んでしまった。妻の両親を憎んでしまった。だからこんなダメな狸親父に万狸が似ないよう、お前をこっちで育てる事にしたんだ。って」  万狸ちゃんが背筋をシャンと伸ばし、顔を上げた。それは勇気に満ちた笑顔だった。 「だから私知ってる。佳奈ちゃんは一美ちゃんを助けようとしただけだし、ぜんぜん悪いだなんて思えない。斉二さんの役割は、完璧に成功してたんだよ」 「万狸ちゃん……」 「あっでもでも、今回は天災じゃなくて人災なんだよね? それなら金剛有明団をコッテンパンパンにしないと! 佳奈ちゃんもいっぱい悲しい思いした被害者でしょ?」  万狸ちゃんは右手を佳奈さんに差し出す。佳奈さんも顔を上げ、その手を強く握った。 「うん。金剛ぜったい許せない! 大散減の埋蔵金、一緒にばら撒いちゃお!」  その時、ホテルロビーのからくり時計から音楽が鳴り始めた。曲は民謡『ザトウムシ』。日没と大散減との対決を告げるファンファーレだ。魔耶さんは裁判官が木槌を振り下ろすように、机にハンマーを叩きつけた! 「行ぃぃくぞおおおぉぉお前らああぁぁぁ!!!」 「「「うおおぉぉーーーっ!!」」」  総員出撃! ザトウムシが鳴り響く逢魔が時の千里が島で今、日本最大の除霊戦争が勃発する!
གཉིས་པ་
 大散減討伐軍は御戌神社へ、後女津親子と佳奈さんはホテルから最寄りの結界である石見沼へと向かった。さて、私も御戌神の居場所には当てがある。御戌神は日蝕の目を持つ獣。それに因んだ地名は『食虫洞』。つまり、行先は新千里が島トンネル方面だ。  薄暗いトンネル内を歩いていると、電灯に照らされた私の影が勝手に絵を描き始めた。空で輝く太陽に向かって無数の虫が冒涜的に母乳を吐く。太陽は穢れに覆われ、光を失った日蝕状態になる。闇の緞帳(どんちょう)に包まれた空は奇妙な星を孕み、大きな獣となって大地に災いをもたらす。すると地平線から血のように赤い月が昇り、星や虫を焼き殺しながら太陽に到達。太陽と重なり合うやいなや、天上天下を焼き尽くすほどの輝きを放つのだった……。  幻のような影絵劇が終わると、私はトンネルを抜けていた。目の前のコンビニは既に電気が消えている。その店舗全体に、腐ったミルクのような色のペンキで星型に線を一本足した記号が描かれている。更に接近すると、デッキブラシを持った白髪の偉丈夫が記号を消そうと悪戦苦闘しているのが見えた。 「あ、紅さん」  私に気がつき振り返った青木さんは、足下のバケツを倒して水をこぼしてしまった。彼は慌ててバケツを立て直す。 「見て下さい。誰がこんな酷い事を? こいつはコトだ」  青木さんはデッキブラシで星型の記号を擦る。でもそれは掠れすらしない。 「ブラシで擦っても? ケッタイな落書きを……っ!?」  指で直接記号に触れようとした青木さんは、直後謎の力に弾き飛ばされた。 「……」  青木さんは何かを思い出したようだ。 「紅さん。そういえば僕も、ケッタイな体験をした事が」  夕日が沈んでいき、島中の店や防災無線からはザトウムシが鳴り続ける。 「犬に吠えられ、夜中に目を覚まして。永遠に飢え続ける犬は、僕のおつむの中で、ひどく悲しい声で鳴く。それならこれは幻聴か? 犬でないなら幽霊かもだ……」  青木さんは私に背を向け、沈む夕日に引き寄せられるように歩きだした。 「早くなんとかせにゃ。犬を助けてあげなきゃ、僕までどうにかなっちまうかもだ。するとどこからか、目ん玉が潰れた双頭の毛虫がやって来て、口からミルクを吐き出した。僕はたまらず、それにむしゃぶりつく」  デッキブラシから滴った水が地面に線を引き、一緒に夕日を浴びた青木さんの影も伸びていく。 「嫌だ。もう犬にはなりたくない。きっとおっとろしい事が起きるに違いない。満月が男を狼にするみたいに、毛虫の親玉を解き放つなど……」 「青木さん」  私はその影を呼び止めた。 「この落書きは、デッキブラシじゃ落とせません」 「え?」 「これは散減に穢された縁の母乳、普通の人には見えない液体なんです」  カターン。青木さんの手からデッキブラシが落ちた途端、全てのザトウムシが鳴り止んだ。青木さんはゆっくりとこちらへ振り向く。重たい目隠れ前髪が狛犬のたてがみのように逆立ち、子犬のように輝く目は濁った穢れに覆われていく。 「グルルルル……救、済、ヲ……!」  私も胸のペンダントに取り付けたカンリンを吹いた。パゥーーー……空虚な悲鳴のような音が響く。私の体は神経線維で編まれた深紅の僧衣に包まれ、激痛と共に影が天高く燃え上がった。 「青木さん。いや、御戌神よ。私は紅の守護尊、ワヤン不動。しかし出来れば、お前とは戦いたくない」  夕日を浴びて陰る日蝕の戌神と、そこから伸びた赤い神影(ワヤン)が対峙する。 「救済セニャアアァ!」 「そうか。……ならば神影繰り(ワヤン・クリ)の時間だ!」  空の月と太陽が見下ろす今この時、地上で激突する光の神と影の明王! 穢れた色に輝く御戌神が突撃! 「グルアアァァ!」  私はティグクでそれをいなし、黒々と地面に伸びた自らの影を滑りながら後退。駐車場の車止めをバネに跳躍、傍らに描かれた邪悪な星目掛けてキョンジャクを振るった。二〇%浄化! 分解霧散した星の一片から大量の散減が噴出! 「マバアアアァァ!!」「ウバアァァァ!」  すると御戌神の首に巻かれた幾つもの頭蓋骨が共鳴。ケタケタと震えるように笑い、それに伴い御戌神も悶絶する。 「グルアァァ……ガルァァーーーッ!!」  咆哮と共に全骨射出! 頭蓋骨は穢れた光の尾を引き宙を旋回、地を這う散減共とドッキングし牙を剥く! 「がッは!」  毛虫の体を得た頭蓋骨が飛び回り、私の血肉を穿つ。しかし反撃に転じる寸前、彼らの正体を閃いた。 「さては歴代の『器』か」  この頭蓋骨らは御戌神転生の為に生贄となった、どこの誰が産んだかもわからない島民達の残滓だ。なら速やかに解放せねばなるまい! 人頭毛虫の猛攻をティグクの柄やキョンジャクで防ぎながら、ティグクに付随する旗に影炎を着火! 「お前達の悔恨を我が炎の糧とする! どおぉりゃああぁーーーーっ!!」   ティグク猛回転、憤怒の地獄大車輪だ! 飛んで火に入る人頭毛虫らはたちどころに分解霧散、私の影体に無数の苦痛と絶望と飢えを施す! 「クハァ……ッ! そうだ……それでいい。私達は仲間だ、この痛みを以て金剛に汚された因果を必ずや断ち切ってやろう! かはあぁーーーっはーーっはっはっはっはァァーーッ!!!」  苦痛が無上の瑜伽へと昇華しワヤン不動は呵呵大笑! ティグクから神経線維の熱線が伸び大車輪の火力を増強、星型記号を更に焼却する! 記号は大文字焼きの如く燃え上がり穢れ母乳と散減を大放出! 「ガウルル、グルルルル!」  押し寄せる母乳と毛虫の洪水に突っ込み喰らおうと飢えた御戌神が足掻く。だがそうはさせるものか、私の使命は彼を穢れの悪循環から救い出す事だ。 「徳川徳松ゥ!」 「!」  人の縁を奪われ、畜生道に堕ちた哀しき少年の名を呼ぶ。そして丁度目の前に飛んできた散減を灼熱の手で掴むと、轟々と燃え上がるそれを遠くへ放り投げた! 「取ってこい!」 「ガルアァァ!!」  犬の本能が刺激された御戌神は我を忘れ散減を追う! 街路樹よりも高く跳躍し口で見事キャッチ、私目掛けて猪突猛進。だがその時! 彼の本体である衆生が、青木光が意識を取り戻した! (戦いはダメだ……穢れなど!)  日蝕の目が僅かに輝きを増す。御戌神は空中で停止、咥えている散減を噛み砕いて破壊した! 「かぁははは、いい子だ徳松よ! ならば次はこれだあぁぁ!!」  私はフリスビーに見立ててキョンジャクを投擲。御戌神が尻尾を振ってハッハとそれを追いかける。キョンジャクは散減共の間をジグザグと縫い進み、その軌跡を乱暴になぞる御戌神が散減大量蹂躙! 薄汚い死屍累々で染まった軌跡はまさに彼が歩んできた畜生道の具現化だ!! 「衆生ぉぉ……済度ぉおおおぉぉぉーーーーっ!!!」  ゴシャアァン!!! ティグクを振りかぶって地面に叩きつける! 視神経色の亀裂が畜生道へと広がり御戌神の背後に到達。その瞬間ガバッと大地が割れ、那由多度に煮え滾る業火を地獄から吹き上げた! ズゴゴゴゴガガ……マグマが滾ったまま連立する巨大灯篭の如く隆起し散減大量焼却! 振り返った御戌神の目に陰る穢れも、紅の影で焼き溶かされていく。 「……クゥン……」  小さく子犬のような声を発する御戌神。私は憤怒相を収め、その隣に立つ。彼の両眼からは止めどなく饐えた涙が零れ、その度に日蝕が晴れていく。気がつけば空は殆ど薄暗い黄昏時になっていた。闇夜を迎える空、赤く燃える月と青く輝く太陽が並ぶ大地。天と地の光彩が逆転したこの瞬間、私達は互いが互いの前世の声を聞いた。 『不思議だ。あの火柱見てると、ぼくの飢えが消えてく。お不動様はどんな法力を?』 ༼ なに、特別な力ではない。あれは慈悲というものだ ༽ 『じひ』  徳松がドマルの手を握った。ドマルの目の奥に、憎しみや悲しみとは異なる熱が込み上がる。 『救済の事で?』 ༼ ……ま、その類いといえばそうか。童よ、あなたは自分を生贄にした衆生が憎いか? ༽  徳松は首を横に振る。 『ううん、これっぽっちも。だってぼく、みんなを救済した神様なんだから』  すると今度はドマルが両手で徳松の手を包み、そのまま深々と合掌した。 ༼ なら、あなたはもう大丈夫だ。衆生との縁に飢える事は、今後二度とあるまい ༽
གསུམ་པ་
 時刻は……わからないけど、日は完全に沈んだ。私も青木さんも地面に大の字で倒れ、炎上するコンビニや隆起した柱状節理まみれの駐車場を呆然と眺めている。 「……アーーー……」  ふと青木さんが、ずっと咥えっ放しだったキョンジャクを口から取り出した。それを泥まみれの白ニットで拭い、私に返そうとして……止めた。 「……洗ってからせにゃ」 「いいですよ。この後まだいっぱい戦うもん」 「大散減とも? おったまげ」  青木さんにキョンジャクを返してもらった。 「実は、まだ学生の時……友達が僕に、『彼女にしたい芸能人は?』って質問を。けど特に思いつかなくて、その時期『非常勤刑事』やってたので紅一美ちゃんと。そしたら今回、本当にしたたびさんが……これが縁ってやつなら、ちぃと申し訳ないかもだ」 「青木さんもですか」 「え?」 「私も実は、この間雑誌で『好きな男性のタイプは何ですか』って聞かれて、なんか適当に答えたんですけど……『高身長でわんこ顔な方言男子』とかそんなの」 「そりゃ……ふふっ。いやけど、僕とは全然違うイメージだったかもでしょ?」 「そうなんですよ。だから青木さんの素顔初めて見た時、キュンときたっていうより『あ、実在するとこんな感じなの!?』って思っちゃったです。……なんかすいません」  その時、遠くでズーンと地鳴りのような音がした。蜃気楼の向こうに耳をそばだてると、怒号や悲鳴のような声。どうやら敵の大将が地上に現れたようだ。 「行くので?」 「大丈夫。必ず戻ってきます」  私は重い体を立ち上げ、ティグクとキョンジャクに再び炎を纏った。そして山頂の御戌神社へ出発…… 「きゃっ!」  しようとした瞬間、何かに服の裾を掴まれたかのような感覚。転びそうになって咄嗟にティグクの柄をつく。足下を見ると、小さなエネルギー眼がピンのように私の影を地面と縫いつけている。 ༼ そうはならんだろ、小心者娘 ༽ 「ちょ、ドマル!?」  一方青木さんの方も、徳松に体を勝手に動かされ始めた。輝く両目から声がする。 『バカ! あそこまで話しといて告白しねえなど!? このボボ知らず!』 「ぼっ、ぼっ、ボボ知らずでねえ! 嘘こくなぁぁ!」  民謡の『お空で見下ろす出しゃばりな月と太陽』って、ひょっとしたら私達じゃなくてこの前世二人の方を予言してたのかも。それにしてもボボってなんだろ、南地語かな。 ༼ これだよ ༽  ドマルのエネルギー眼が炸裂し、私は何故かまた玲蘭ちゃんの童貞を殺す服に身を包んでいた。すると何故か青木さんが悶絶し始めた。 「あややっ……ちょっと、ダメ! 紅さん! そんなオチチがピチピチな……こいつはコトだ!!」  ああ、成程。ボボ知らずってそういう…… 「ってだから、私の体で検証すなーっ! ていうか、こんな事している間にも上で死闘が繰り広げられているんだ!」 ༼ だからぁ……ああもう! 何故わからないのか! ヤブユムして行けと言っているんだ、その方が生存率上がるしスマートだろ! ༽ 「あ、そういう事?」  ヤブユム。確か、固い絆で結ばれた男女の仏が合体して雌雄一体となる事で色々と超越できる、みたいな意味の仏教用語……だったはず。どうすればできるのかまではサッパリわかんないけど。 「え、えと、えと、紅さん……一美ちゃん!」 「はい……う、うん、光君!」  両前世からプレッシャーを受け、私と光君は赤面しながら唇を近付ける。 『あーもー違う! ヤブユムっていうのは……』 ༼ まーまー待て。ここは現世を生きる衆生の好きにさせてみようじゃないか ༽  そんな事言われても困る……それでも、今私と光君の想いは一つ、大散減討伐だ。うん、多分……なんとかなる! はずだ!
བཞི་པ་
 所変わって御戌神社。姿を現した大散減は地中で回復してきたらしく、幾つか継ぎ目が見えるも八本足の完全体だ。十五メートルの巨体で暴れ回り、周囲一帯を蹂躙している。鳥居は倒壊、御戌塚も跡形もなく粉々に。島民達が保身の為に作り上げた生贄の祭壇は、もはや何の意味も為さない平地と化したんだ。  そんな絶望的状況にも関わらず、大散減討伐軍は果敢に戦い続ける。五寸釘愚連隊がバイクで特攻し、河童信者はカルトで培った統率力で彼女達をサポート。玲蘭ちゃんも一枚隔てた異次元から大散減を構成する無数の霊魂を解析し、虱潰しに破壊していく。ところが、 「あグッ!」  バゴォッ!! 大散減から三メガパスカル級の水圧で射出された穢れ母乳が、河童信者の一人に直撃。信者の左半身を粉砕! 禍耶さんがキュウリの改造バイクで駆けつける。 「河童信者!」 「あ、か……禍耶の姐御……。俺の、魂を……吸収……し……」 「何言ってるの、そんな事できるわけないでしょ!?」 「……大散、ぃに、縁……取られ、嫌、……。か、っぱは……キュウリ……好き……っか……ら…………」  河童信者の瞳孔が開いた。禍耶さんの唇がわなわなと痙攣する。 「河童って馬鹿ね……最後まで馬鹿だった……。貴方の命、必ず無駄にはしないわ!」  ガバッ、キュイイィィ! 息絶えて間もない河童信者の霊魂が分解霧散する前に、キュウリバイクの給油口に吸収される。ところが魔耶さんの悲鳴! 「禍耶、上ぇっ!!」 「!」  見上げると空気を読まず飛びかかってきた大散減! 咄嗟にバイクを発進できず為す術もない禍耶さんが絶望に目を瞑った、その時。 「……え?」  ……何も起こらない。禍耶さんはそっと目を開けようとする。が、直後すぐに顔を覆った。 「眩しっ! この光は……あああっ!」  頭上には朝日のように輝く青白い戌神。そしてその光の中、轟々と燃える紅の不動明王。光と影、男と女が一つになったその究極仏は、大散減を遥か彼方に吹き飛ばし悠然と口を開いた。 「月と太陽が同時に出ている、今この時……」 「瞳に映る醜き影を、憤怒の炎で滅却する」 「「救済の時間だ!!!」」  カッ! 眩い光と底知れぬ深い影が炸裂、落下中の大散減を再びスマッシュ! 「遅くなって本当にすみません。合体に手間取っちゃって……」  御戌神が放つ輝きの中で、燃える影体の私は揺らめく。するとキュウリバイクが言葉を発した。 <問題なし! だぶか登場早すぎっすよ、くたばったのはまだ俺だけです。やっちまいましょう、姐さん!> 「そうね。行くわよ河童!」  ドルルン! 輩悪苦満誕(ハイオクまんたん)のキュウリバイクが発進! 私達も共に駆け出す。 「一美ちゃん、火の準備を!」 「もう出来ているぞぉ、カハァーーーッハハハハハハァーーー!!」  ティグクが炎を噴く! 火の輪をくぐり青白い肉弾が繰り出す! 巨大サンドバッグと化した大散減にバイクの大軍が突撃するゥゥゥ!!! 「「「ボァガギャバアアアアァァアアア!!!」」」  八本足にそれぞれ付いた顔が一斉絶叫! 中空で巻き散らかされた大散減の肉片を無数の散減に変えた! 「灰燼に帰すがいい!」  シャゴン、シャゴン、バゴホオォン!! 御戌神から波状に繰り出される光と光の合間に那由多度の影炎を込め雑魚を一掃! やはりヤブユムは強い。光源がないと力を発揮出来ない私と、偽りの闇に遮られてしまっていた光君。二人が一つになる事で、永久機関にも似た法力を得る事が出来る!  大散減は地に叩きつけられるかと思いきや、まるで地盤���下のように地中へ潜って行ってしまった。後を追えず停車した五寸釘愚連隊が舌打ちする。 「逃げやがったわ、あの毛グモ野郎」  しかし玲蘭ちゃんは不敵な笑みを浮かべた。 「大丈夫です。大散減は結界に分散した力を補充しに行ったはず。なら、今頃……」  ズドガアアァァァアン!!! 遠くで吹き上がる火柱、そして大散減のシルエット! 「イェーイ!」  呆然と見とれていた私達の後方、数分前まで鳥居があった瓦礫の上に後女津親子と佳奈さんが立っている。 「「ドッキリ大成功ー! ぽーんぽっこぽーん!」」  ぽこぽん、シャララン! 佳奈さんと万狸ちゃんが腹鼓を打ち、斉一さんが弦を爪弾く。瞬間、ドゴーーン!! 今度は彼女らの背後でも火柱が上がった! 「あのねあのね! 地図に書いてあった星の地点をよーく探したら、やっぱり御札の貼ってある祠があったの。それで佳奈ちゃんが凄いこと閃いたんだよ!」 「その名も『ショート回路作戦』! 紙に御札とぴったり同じ絵を写して、それを鏡合わせに貼り付ける。その上に私の霊力京友禅で薄く蓋をして、その上から斉一さんが大散減から力を吸収しようとする。だけど吸い上げられた大散減のエネルギーは二枚の御札の間で行ったり来たりしながら段々滞る。そうとは知らない大散減が内側から急に突進すれば……」  ドォーーン! 万狸ちゃんと佳奈さんの超常理論を実証する火柱! 「さすがです佳奈さん! ちなみに最終学歴は?」 「だからいちご保育園だってば~、この小心者ぉ!」  こんなやり取りも随分と久しぶりな気がする。さて、この後大散減は立て続けに二度爆発した。計五回爆ぜた事になる。地図上で星のシンボルを描く地点は合計六つ、そのうち一つである食虫洞のシンボルは私がコンビニで焼却したアレだろう。 「シンボルが全滅すると、奴は何処へ行くだろうか」  斉三さんが地図を睨む。すると突如地図上に青白く輝く道順が描かれた。御戌神だ。 「でっかい大散減はなるべく広い場所へ逃走を。となると、海岸沿いかもだ。東の『いねとしサンライズビーチ』はサイクリングロードで狭いから、石見沼の下にある『石見海岸』ので」 「成程……って、君はまさか!?」 「青木君!?」  そうか、みんな知らなかったんだっけ。御戌神は遠慮がちに会釈し、かき上がったたてがみの一部を下ろして目隠れ前髪を作ってみせた。光君の面影を認識して皆は納得の表情を浮かべた。 「と……ともかく! ずっと地中でオネンネしてた大散減と違って、地の利はこちらにある。案内するので先回りを!」  御戌神が駆け出す! 私は彼が放つ輝きの中で水上スキーみたいに引っ張られ、五寸釘愚連隊や他の霊能者達も続く。いざ、石見海岸へ!
ལྔ་པ་
 御戌神の太陽の両眼は、前髪によるランプシェード効果が付与されて更に広範囲を照らせるようになった。石見沼に到着した時点で海岸の様子がはっきり見える。まずいことに、こんな時に限って海岸に島民が集まっている!? 「おいガキ共、ボートを降りろ! 早く避難所へ!」 「黙れ! こんな島のどこに安全が!? 俺達は内地へおさらばだ!」  会話から察するに、中学生位の子達が島を脱出しようと試みるのを大人達が引き止めているようだ。ところが間髪入れず陸側から迫る地響き! 危ない! 「救済せにゃ!」  石見の崖を御戌神が飛んだ! 私は光の中で身構える。着地すると同時に目の前の砂が隆起、ザボオオォォン!! 大散減出現! 「かははは、一足遅いわ!」  ズカアァァン!!! 出会い頭に強烈なティグクの一撃! 吹き飛んだ大散減は沿岸道路を破壊し民家二棟に叩きつけられた。建造物損壊と追い越し禁止線通過でダブル罪業加点! 間一髪巻き込まれずに済んだ島民達がどよめく。 「御戌様?」 「御戌様が子供達を救済したので!?」 「それより御戌様の影に映ってる火ダルマは一体!?」  その問いに、陸側から聞き覚えのある声が答える。 「ご先祖様さ!」  ブオォォン! 高級バイクに似つかわしくない凶悪なエンジン音を吹かして現れたのは加賀繍さんだ! 何故かアサッテの方向に数珠を投げ、私の正体を堂々と宣言する。 「御戌神がいくら縁切りの神だって、家族の縁は簡単に切れやしないんだ。徳川徳松を一番気にかけてたご先祖様が仏様になって、祟りを鎮めるんだよ!」 「徳松様を気にかけてた、ご先祖様……」 「まさか、将軍様など!?」 「「「徳川綱吉将軍!!」」」  私は暴れん坊な将軍様の幽霊という事になってしまった。だぶか吉宗さんじゃないけど。すると加賀繍さんの紙一重隣で大散減が復帰! 「マバゥウゥゥゥゥウウウ!!!」  神社にいた時よりも甲高い大散減の鳴き声。消耗している証拠だろう。脚も既に残り五本、ラストスパートだ! 「畳み掛けるぞ夜露死苦ッ!」  スクラムを組むように愚連隊が全方位から大散減へ突進、総長姉妹のハンマーで右前脚破壊! 「ぽんぽこぉーーー……ドロップ!!」  身動きの取れなくなった大散減に大かむろが垂直落下、左中央二脚粉砕! 「「「大師の敵ーーーっ!」」」  微弱ながら霊力を持つ河童信者達が集団投石、既に千切れかけていた左後脚切断! 「くすけー、マジムン!」  大散減の内側から玲蘭ちゃんの声。するうち黄色い閃光を放って大散減はメルトダウン! 全ての脚が落ち、最後の本体が不格好な蓮根と化した直後……地面に散らばる脚の一本の顔に、ギョロギョロと蠢く目が現れた。光君の話を思い出す。 ―八本足にそれぞれ顔がついてて、そのうち本物の顔を見つけて潰さないと死なない怪物で!― 「そうか、あっちが真の本体!」  ���と光君が同時に動く! また地中に逃げようと飛び上がった大散減本体に光と影は先回りし、メロン格子状の包囲網を組んだ! 絶縁怪虫大散減、今こそお前をこの世からエンガチョしてくれるわあああああああ!! 「そこだーーーッ!! ワヤン不動ーーー!!」 「やっちゃえーーーッ!」「御戌様ーーーッ!」 「「「ワヤン不動オォーーーーーッ!!!」」」 「どおおぉぉるあぁああぁぁぁーーーーーー!!!!」  シャガンッ! 突如大量のハロゲンランプを一斉に焚いたかのように、世界が白一色の静寂に染まる。存在するものは影である私と、光に拒絶された大散減のみ。ティグクを掲げた私の両腕が夕陽を浴びた影の如く伸び、背中で燃える炎に怒れる恩師の馬頭観音相が浮かんだ時……大散減は断罪される! 「世尊妙相具我今重問彼仏子何因縁名為観世音具足妙相尊偈答無盡意汝聴観音行善応諸方所弘誓深如海歴劫不思議侍多千億仏発大清浄願我為汝略説聞名及見身心念不空過能滅諸有苦!」  仏道とは無縁の怪獣よ、己の業に叩き斬られながら私の観音行を聞け! 燃える馬頭観音と彼の骨であるティグクを仰げ! その苦痛から解放されたくば、海よりも深き意志で清浄を願う聖人の名を私がお前に文字通り刻みつけてやる! 「仮使興害意推落大火坑念彼観音力火坑変成池或漂流巨海龍魚諸鬼難念彼観音力波浪不能没或在須弥峰為人所推堕念彼観音力如日虚空住或被悪人逐堕落金剛山念彼観音力不能損一毛!!」  たとえ金剛の悪意により火口へ落とされようと、心に観音力を念ずれば火もまた涼し。苦難の海でどんな怪物と対峙しても決して沈むものか! 須弥山から突き落とされようが、金剛を邪道に蹴落とされようが、観音力は不屈だ! 「或値怨賊繞各執刀加害念彼観音力咸即起慈心或遭王難苦臨刑欲寿終念彼観音力刀尋段段壊或囚禁枷鎖手足被杻械念彼観音力釈然得解脱呪詛諸毒薬所欲害身者念彼観音力還著於本人或遇悪羅刹毒龍諸鬼等念彼観音力時悉不敢害!!」  お前達に歪められた衆生の理は全て正してくれる! 金剛有明団がどんなに強大でも、和尚様や私の魂は決して滅びぬ。磔にされていた抜苦与楽の化身は解放され、悪鬼羅刹四苦八苦を燃やす憤怒の化身として生まれ変わったんだ! 「若悪獣囲繞利牙爪可怖念彼観音力疾走無辺方蚖蛇及蝮蝎気毒煙火燃念彼観音力尋声自回去雲雷鼓掣電降雹澍大雨念彼観音力応時得消散衆生被困厄無量苦逼身観音妙智力能救世間苦!!!」  獣よ、この力を畏れろ。毒煙を吐く外道よ霧散しろ! 雷や雹が如く降り注ぐお前達の呪いから全ての衆生を救済してみせよう! 「具足神通力廣修智方便十方諸国土無刹不現身種種諸悪趣地獄鬼畜生生老病死苦以漸悉令滅真観清浄観広大智慧観悲観及慈観常願常瞻仰無垢清浄光慧日破諸闇能伏災風火普明照世間ッ!!!」  どこへ逃げても無駄だ、何度生まれ変わってでも憤怒の化身は蘇るだろう! お前達のいかなる鬼畜的所業も潰えるんだ。瞳に映る慈悲深き菩薩、そして汚れなき聖なる光と共に偽りの闇を葬り去る! 「悲体戒雷震慈意妙大雲澍甘露法雨滅除煩悩燄諍訟経官処怖畏軍陣中念彼観音力衆怨悉退散妙音観世音梵音海潮音勝彼世間音是故須常念念念勿生疑観世音浄聖於苦悩死厄能為作依怙具一切功徳慈眼視衆生福聚海無量是故応頂……」  雷雲の如き慈悲が君臨し、雑音をかき消す潮騒の如き観音力で全てを救うんだ。目の前で粉微塵と化した大散減よ、盲目の哀れな座頭虫よ、私はお前をも苦しみなく逝去させてみせる。 「……礼ィィィーーーーーッ!!!」  ダカアアアアァァアアン!!!! 光が飛散した夜空の下。呪われた気枯地、千里が島を大いなる光と影の化身が無量の炎で叩き割った。その背後で滅んだ醜き怪獣は、業一つない純粋な粒子となって分解霧散。それはこの地に新たな魂が生まれるための糧となり、やがて衆生に縁を育むだろう。  時は亥の刻、石見海岸。ここ千里が島で縁が結ばれた全ての仲間達が勝利に湧き、歓喜と安堵に包まれた。その騒ぎに乗じて私と光君は、今度こそ人目も憚らず唇を重ね合った。
0 notes
karasugai · 4 years
Text
陰陽の聖婚 番外編読了からの1周目を踏まえた2周目感想文(なぜか途中から)
・2-24
ただのお蕎麦好きで有能でちょっと上昇志向のお役人さんだと思ってたエンロンさんの過去が獄吏だと発覚。からの
“(俺、この女嫌いだ――)”
は?!好き。
木っ端役人の意地のシーンの理詰めも本当好き。かっこいいよぉぉぉエンロンさーん!!
・2-27
ドジっ子属性と言っても「tell me ガツン」はまだ対人コミュニケーション不足による語彙力ゼロだとこの頃は思ってた。まさかフラグだとは。
・2-28
まさかエイダが来ると思わなかった。ビックリビックリ。
・2-29
エイダ戦の《美女に化けてはいけない》やりとり戦闘シーンの重さと反比例して話を軽くしてて面白い。余裕ない時ほど軽口叩くキャラいいよね。
・2-30
もやもやゾーイさんが小箱の中身を知ってしまった。ニヤニヤが止まらないね。《小箱の人=アデライード》に早く気づいてあげて!!ドジっ子設定はここで回収されてるからもう無いと思ってた。ドジっ子とは一度ならず二度以上やらかすからドジっ子なんだと…
・2-31
転移魔法ってオビワン助けてレベルの画像解像度だと思ってたけど、後ろに陛下がチラ見えするってことは割とか��りドーンとテレビ会議レベルなのかな。それにしても暇を出されたとはいえ側室のところに敵の隠密いるのヤバいと普通に思ってたけど、2週目的にはエリン兄さんあんたの孫のとこにもおるで?って気持ち。
・2-32
背に腹はかえられないって言い訳ができるからか、北方での身売りはだから何?レベルであっさり簡単に言っちゃうけど、デュクトとの関係は一番深い傷なんだと改めて。「彼女と生きられるのが今しかない」の重さが2周目半端ない。
・2-33
とにかくエンロンさんがかっこいいやつ。
「牢獄でお茶を飲むのも久しぶりだな。俺が尋問するような、そんな大物も最近いなくてね。」……スケベすぎてお茶が羨ましくなってくるやつ
「あれは獄吏の方も面倒くさいから、実はやりたくはないんだよ。」
「俺はもともと獄吏だから、あんたの供述からだいたいの罪名と量刑を決め、それを報告書に添えて、帝都に上げることになるな。……つまり、この先のあんたの人生は、俺の胸先三寸」
「でも、見てる地平が違うっていうのは感じるね。俺たち獄吏は常に、この犯罪はどの律に当てはめるか、どのくらいの量刑か、そんなことばっかり考えてる。減刑の可能性のあるのはどちらか、付加刑をつけるならどれかってね。」←これが半分ほんとで半分嘘とか…ちゅき
・2-34
スーパーエンロンタイムの間にやってくるトルフィンの変態具合。ここの主従変態しかいないのかな。
何をどう言い訳しても理詰めで「はい、死刑だね」ってしちゃうエンロンさんかわいい。
ゾラから見た殿下とアデライードの評価にはグッとくるものがある。
・2-35
過去と現在がしんどすぎて起きたくない殿下しどいし、殿下のセコム2人が真実知っちゃて激おこなの分かる。
・2-36
マニ先生、殿下好きすぎ問題。♪テーンテンテン
師弟愛とはいえ初めて知った愛情という意味ではこの人も初恋拗らせてる。(この作者、ほんと初恋拗らせてる人多すぎて最高)マニ先生が激おこすぎてジュルチ先生は冷静になっちゃうやつ。
1周目だとマニ先生と同じく何で殿下シウリンだと言わないのだろうか?って感じてた疑問に一定の答えが出るけど、2周目的にはあまりの壮絶さを思い出してそらぁ言えないよなと泣けてきちゃう。天と陰陽いつも殿下に冷たい。
・2-37
セコム会議はけっきょく殿下次第。仕方ないとはいえ、みんな殿下に押し付けすぎるwwww
そして白痴のフリしてる姫さまの深層はあまり描かれてないから貴重。割と早くから《愛してくれる人を愛しちゃう苦悩》から脱してはいたけど、その次の《愛してる人は自分が別の人を好きだと思い込んでいる苦悩》にニヤニヤする。
カイトがドン引きしてる一晩300回の愛してるが姫様にとっては一番の薬なの破れ鍋。
生理中というか殿下のいない1人寝の布団も蛇っ子が片付けてて意外。
・2-38
とっても芥川の蜘蛛の糸。
認識の違いでちょいちょい内容がすれ違ってる。そんな人と遊んでないでが可愛い。
つまりやっぱり姫さまが最強。
《あなを穿たれた血塗れの醜い怪物》の話はあっちを読んでないと何のこっちゃ?だったけど、分かってて読むとじわじわくるものがある。
「それでアデライードが怯んだりすると思っているとしたら、それは考え違いだ」ほんそれ。
・2-39,40
普通の悪役貴族親子、兄妹の会話だと思っていたけど、この時点のシメオンくんの気持ちやクソ親父の仕込んでた《毒》を思うと…うわぁぁぁしんどいよぉぉぉぉ東側の上の世代が出る度にこの人もあの人も…ってなっちゃう原因はお前だよこのクソ親父!!!
女王が女児しか産めないと思われてるのは仕方がないけど、普通の貴種男性(王気が無いもとい魔力が弱い)<女王の魔力 ゆえに女児なのであって、エリン兄さんとアルベラなら男児産まれちゃうんじゃね???
ユウラとアデライードの恨みに気づかないのもだけど《なぜ女王に王気が必要なのか》をきちんと考えたことないのも致命的だねぇ。まぁクソ親父がわざと承認式を見せなかったり盲目的に信じさせようと誘導した結果だけど。ほんとテセウスとシリルまじ良心。
・2-41
姫さまとフエルの内緒話。メイローズは殿下が盛ってる時へし折るタイミングは完璧なのに、それ以外はだいたい間が悪いwwww
・2-41
無自覚にも殿下の中でシウリンが戻ってきてるのが分かる姫にしか勃たない殿下のくだりはとっても良いが、短気で狭量だからお前そこ反省しろよwwww(そうでないと話が進まないんだけど)
・2-42
反省の写経がマニ先生からの厳罰ってのがたまらない。粛々とやってる殿下もかわいい。悪いのは殿下なんだが。
喧嘩した時は周りがアレコレやっちゃうと本人の意思とは反対に悪化する典型。でもそのおかげで姫さまが自分から何かしようと動いたのは成長だねぇ。
二人揃って自分が化け物だと思ってて、相手がいないとダメって思い込んでる共依存…最高かな。
・2-43
仲直りおセッセするのは良いけど、姫さま念話の方が雄弁疑惑。出会った当初の王気で会話?もそうだけど、いっそいつも心に直接語りかけた方が早いよ!!!それにしてもだいしゅきホールドってのは本当にいいものだ…
・2-44
《僕は、消えたりはしない。――ずっと、君の、側にいるよ》が、あ゛ーーってなる。
殿下の姿から母の声がするって、冷静になってはいけないよね。
・2-45
結婚してしばらく経つのにやっと夫婦らしい会話を見たwwwwおせーよwwwwww
・2-小結
価値観のすり合わせ大事だから、ここのやりとり好き。南の討伐の苦悩はつらつらのツラだっただけに、混沌に連れてきたくない殿下と殿下のいる���所が自分の居場所だと主張する姫さま。シウリンと訣別してスッキリ?してる姫さまとそれはそれで寂しいけど嬉しい殿下。姫さまやっぱり強い。
番おセッセの姫さまからの愛情のかけ方がなんか違っていい。
0 notes
chem-love · 6 years
Text
yatsuhaka-mura
youtube
都井睦雄。大正6年3月5日、岡山県苫田郡加茂村大字倉見にて出生。享年22歳。二歳で父を、三歳で母を亡くす。この時点で都井の
孤独な戦争
は既に始まっていたのだ。父母の死去後、祖母が後見人として睦夫を引き取ったが、睦夫を引き取りさえしなければ祖母はもう少し余生を愉しむことが出来たかもしれない。過保護な祖母は睦夫の外出を制限した。
自宅に居ることを強要された睦夫は勉学に励んだ。尋常高等小学校への入学は一年遅れ、欠席がちだったが成績優秀のため進学を担任に勧められるも祖母の反対にあい断念した。一回目の躓きだ。
都井は、尋常高等小学校を卒業直後に肋膜炎を患って医師から農作業を禁止され、無為な生活を送っていた。病状はすぐに快方に向かい、実業補習学校に入学したが、姉が結婚した頃から徐々に学業を嫌い、家に引きこもるようになっていき、同年代の人間と関わることはなかった。一方で、自身が子供向けに作り直した小説を近所の子供達に読み聞かせて、彼らの人気を博した。さらに、近隣の女性達とこの地域での風習でもあった夜這いなどの形で関係を持つようになっていった。(引用、NAVER)
聖書に神は乗り越えられない試練を与えない(コリント信徒への手紙10:13)と在るが、都井には乗り越えられなかったようだ。咳が目立つようになり青白い顔をした都井を村民は露骨に避けるようになり、許嫁と思っていた女からは絶縁を告げられる。
生き残った村民は村の慣習である「夜這い」を否定しているが、当時の寒村に嫁入りはなかなか無く、夜這いは村を存続させるシステムであった。夜這いについては民俗学者の柳田國男の著作が詳しい。
許嫁に棄てられた都井の 濁った情念 は性欲に転化した。当時の不治の病とされた結核に罹患し(医師からは正式に結核と診断を受けていた)種の保存の本能とでも言うのか夜這いで情を通じた女どもに性交を迫るも全ての女に拒絶された。30人程度の寒村である。女の数も多寡が知れていた。
当時は日中戦争のため徴兵が開始されていた。所謂「アカガミ」が都井の元に届く。孤独な命、皇国のため、見事散らしてくれようぞ と都井は願ったがそれも叶わず徴兵検査は不合格であった。
そしていよいよ都井は村民全員を敵として戦争を始めた。まず田畑を抵当に銀行から借り入れた金で日本刀(太刀から匕首)を集め始める。都井の様子がおかしいのは一緒に棲んでいた祖母が一番感じ取っていたのだろうか。都井が祖母の病気治療目的で味噌汁に薬を入れているところを祖母本人に目撃され、そのことで「孫に毒殺される」と大騒ぎして警察に訴えられたために家宅捜索を受け日本刀は没収の憂き目に遭ったが都井は諦めない。
ほとぼりが覚め村民が警戒心を解いた頃ふたたび都井は日本刀と12ゲージ五���式散弾銃を買い求めた。12ゲージとは、散弾がパチンコ球程度��大きい猛獣用の散弾である。都井は機械に詳しかったのか後述するが村民に頼まれれば嫌な顔せずに機械類の修理を引き受けていた。弱電の知識も在ったらしい。
手先の器用さは凶行に利用された。12ゲージ五連式散弾銃を九連式に改造していた。日本刀も念入りに研ぎあげた。機は熟した。昭和13年5月21日未明に戦争を始めた。都井はランボー宜しく村民の目を盗み電柱によじ登り電線を切断、村を停電させた。知識がなければ感電死してもおかしくないのだが先ほど述べた様に都井には弱電の知識があった。断線も難なく実行した。
停電し都井にも頼めない村民の夜は早かった。早々と村民たちは床に就いた。それまで都井は息を殺し床の中で待ち続けたのだ。床から出ると先ず隣室に眠る祖母を血祭りに上げた。スイッチが入った都井は止まらない。次々と刀の刃毀れとし、改造された散弾銃から散弾を村民に浴びせかけた。
許嫁だった女は父母の死体を押しのけて逃げ仰せ、騒ぎを聞きつけた男は都井に対し差別的発言をしなかったので
お前はわしの悪口を言わんじゃったから、堪えてやるけんの
気まぐれか都井はこの男を許した。そして村から一番離れた村民宅に鬼の角を思わせる額に巻きつけた懐中電灯、軍服を思わせる詰襟、腰には太刀と匕首、足元はゲートル巻き、両手には改造散弾銃を握り締めた怪異な姿で現れた都井に、住民の少年は紙と鉛筆を差し出した。
少年は都井と顔見知りだった。都井が暇に明かせてやっていた紙芝居の常連だったのである。少年に優しい言葉をかけた都井は一家を殺害することなく消えた。
自分を苛み虐げた村、許嫁が出来た村、夜這いで愉しんだ村、大量殺戮を敢行した村 が一望できる丘に上がった都井は遺書を書き残し散弾銃を自分に向けて発射した。都井の遺書を紹介して終わりにする。
愈愈死するにあたり一筆書置申します、決行するにはしたが、うつべきをうたずうたいでもよいものをうった、時のはずみで、ああ祖母にはすみませぬ、まことにすまぬ、二歳のときからの育ての祖母、祖母は殺してはいけないのだけれど、後に残る不びんを考えてついああした事をおこなった、楽に死ねる様と思ったらあまりみじめなことをした、まことにすみません、涙、涙、ただすまぬ涙がでるばかり、姉さんにもすまぬ、はなはだすみません、ゆるしてください、つまらぬ弟でした、この様なことをしたから決してはかをして下されなくてもよろしい、野にくされれば本望である、病気四年間の社会の冷胆、圧迫にはまことに泣いた、親族が少く愛と言うものの僕の身にとって少いにも泣いた、社会もすこしみよりのないもの結核患者に同情すべきだ、実際弱いのにはこりた、今度は強い強い人に生まれてこよう、実際僕も不幸な人生だった、今度は幸福に生まれてこよう。 思う様にはゆかなかった、今日決行を思いついたのは、僕と以前関係があった寺井ゆり子が貝尾に来たから、又西川良子も来たからである、しかし寺井ゆり子は逃がした、又寺井倉一と言う奴、実際あれを生かしたのは情けない、ああ言うものは此の世からほうむるべきだ、あいつは金があるからと言って未亡人でたつものばかりねらって貝尾でも彼とかんけいせぬと言うものはほとんどいない、岸田順一もえい密猟ばかり、土地でも人気が悪い、彼等の如きも此の世からほうむるべきだ。 もはや夜明けも近づいた、死にましょう。(引用、NAVER)
1 note · View note
xf-2 · 6 years
Link
議長、副大統領、議員の皆さん、ファーストレディー、米国民の皆さん、我々は今夜、限りない可能性の瞬間に立ち会っている。新しい議会の始まりにあたり、私は全ての米国民のため、歴史的な大躍進を達成するため皆さんと協力する気持ちでここにいる。
 何百万もの米国民が今、この偉大なる議場に集まった我々を見ており、二つの政党としてではなく、一つの国家として統治することを望んでいる。
 私が今夜示す計画は、共和党の計画でも民主党の計画でもない。米国民の計画だ。
 我々の多くが中核となる同じ約束のために運動してきた。それは、米国の労働者のために米国の雇用を守り、公平な貿易を要求することだ。国のインフラ(社会基盤)を再建し、再活性化させることだ。保健医療と処方薬の価格を引き下げることだ。適法で近代的で安全な移民制度を作り上げることだ。米国の利益を第一にする外交政策を追求することだ。
 米国政治には新たな機会がある。それをつかみとる勇気さえあればいいのだ。勝利とは、自分の政党を勝たせることではない。国民のために勝つことだ。
 今年、米国の使命の荘厳さと米国人の誇りの力を確認する二つの大事な記念日を迎える。
 6月には、アイゼンハワー将軍が大いなる聖戦と呼んだ、連合国軍による欧州解放作戦の開始から75年を迎える。ノルマンディー上陸作戦の決行日の「Dデー」、つまり1944年6月6日、我々の文明を暴政から救うため1万5000人の米国の青年たちが空から、6万人以上が海から強襲した。
 そのときの信じられないほど素晴らしい英雄3人が今夜、我々と共にここにいる。ジョゼフ・レイリー1等兵、アービング・ロッカー2等軍曹、ハーマン・ゼイトチク軍曹だ。敬意を表したい。
 2019年に我々はまた、月面に米国旗を立てるため勇敢な若い飛行士たちが宇宙を約25万マイル飛んで以来50年となることを祝う。半世紀後(の今)、旗を立てたアポロ11号の宇宙飛行士の1人が(ここに)参加している。バズ・オルドリン氏だ。今年、米国の宇宙飛行士は米国のロケットで宇宙に戻る。
 米国は20世紀、自由を守り、中流階級のありようを一変させた。皆さんが本腰を入れれば、世界の中で米国と競争できるところはない。我々は今、大胆に勇気を持って米国の偉大な冒険の次の章に進まなくてはならない。21世紀にふさわしい新たな生活水準に一新しなければならない。すべての市民が素晴らしい生活の質をもう少しで手に入れられる。
 我々はかつてないほど地域を安全にし、家族を強固にし、文化を豊かにし、信仰を深めるとともに、中流階級をより大きく、より豊かにすることができる。
 そのために我々は復讐(ふくしゅう)や抵抗、報復の政治を拒絶し、協力と妥協、公益の限りない潜在力を追求するべきだ。
 我々は、何十年も続く政治的な行き詰まり状態を共に打開することができる。昔からの分断に橋をかけ、古い傷を癒やし、新しい連立を築き、素晴らしい米国の未来を切り開くことができる。決断は我々にかかっている。
 偉大さか停滞か、成果か抵抗か、未来か復讐か、途方もない進歩か無駄な破壊か、選ばなくてはならない。
 今夜、皆さんに偉大さを選択するよう求める。
 この2年間、私の政権は、何十年にもわたり両党の指導者が放置してきた問題に立ち向かうため、切迫感をもって歴史的なスピードで行動した。大統領選からたった2年余りで、我々は空前の好景気をもたらした。かつてないほどの好景気だ。530万の新規雇用を生み出した。製造業で60万の新規雇用を創ったのは特筆できる。誰もがそんなことはできないと言っていた。事実は、これはまだ始まりということだ。
 賃金はこの何十年で最速のペースで増え、私が身を挺(てい)して支援すると約束したブルーカラー労働者で一番伸びている。500万人近い米国人が低所得者向け食料品購入券「フードスタンプ」の支給対象から外れた。米国経済は私が就任した時に比べ、ほぼ2倍の速さで成長している。米国経済は、世界のどこと比べても圧倒的な差をつけて活況だといわれている。
 失業率は半世紀で最も低い。アフリカ系米国人、ヒスパニック系米国人、アジア系米国人の失業率も、史上最低水準だ。障害を持つ米国人の失業率も史上最も低い。歴史的に最多の1億5700万人が今、就労している。
 我々は就労世帯に大規模な減税を行い、児童扶養控除を倍にした。小規模の企業や牧場、家族経営の農場にかかる不動産税や相続税を実質的に廃止した。
 とても不人気だった医療保険制度オバマケアの加入義務違反に対する罰金を廃止した。重病患者が救命治療を受けられるようにした。未承認薬を使えるようにする法案を通過させた。
 私の政権はほかのどの政権が任期中に達成したよりも多くの規制撤廃を短期間で実現した。歴史的な減税と規制緩和の結果、多数の企業が米国に戻ってきている。
 米国でエネルギー革命を起こした。米国は今、世界一の石油と天然ガスの産出国だ。今や、約65年ぶりにエネルギーの純輸出国となる。
 24か月の急速な発展を経て、我々の経済は世界の羨望の的だ。軍は地球上で最強だ。米国は日々、勝利している。議員の皆さん、米国は強力である。我が国は活気にあふれ、経済はかつてないほど繁栄している。
 1日には、今年1月だけで雇用が30万4000人増えたとの発表があった。予想のほぼ2倍だった。米国で経済の奇跡が起きている。唯一それを止めるものがあるとしたら、おろかな戦争か政治、あるいは、ばかげた党派的な捜査だろう。
 平和と法律があるところには、戦争も捜査もあるはずがない。そんなことにはならないものだ。
 我々は国外の敵を打ち負かすため、国内で団結しなければならない。
 この新たな協力の時代は、連邦機関のポストにふさわしい高い能力を有する300人以上の候補者の指名承認で幕を開けられる。手続きは今も上院で止まっており、中には何年も待たされている者がいる。上院は行動を怠っており、これでは候補者だけでなく国に対して不公正だ。
 今こそ超党派の行動が求められる。信じるか信じないかわからないが、それが可能であることを我々はすでに証明している。
 前の議会で、両党は力を合わせ、鎮痛剤オピオイド乱用問題に対処するため前例のない法案を通過させた。包括的な新農業法案、退役軍人省の改革を通した。さらに40年否決され続けた、退役軍人省の説明責任法案を可決した。これにより、素晴らしい退役軍人に対するひどい扱いをようやくなくせる。
 そしてほんの数週間前、両党は画期的な刑事司法改革に向けて団結した。昨年、私は友人からアリス・ジョンソンの話を聞いた。私は深く心を動かされた。
 1997年、アリスは麻薬を巡る違法行為で終身刑を言い渡された。初犯で暴力に手を染めたわけでもなかったのにだ。
 その後20年以上、彼女は刑務所の牧師となり、他の受刑者により良い道を選ぶよう励ましてきた。刑務所の受刑者に大きな影響を与えた。影響はそこだけにとどまらなかった。
 アリスのケースは、判決の不平等や不公平を明確に示している。この不公正を是正する必要がある。彼女はほぼ22年間受刑し、残りの人生を刑務所で過ごすことになっていた。
 私は6月、アリスを減刑した。彼女は今夜ここにいる。アリス、ありがとう。我々にはいつだって自身の運命を決める力があることを思い出させてくれた。
 アリスのすてきな家族が刑務所の門で彼女を迎え、抱きしめ、キスを交わし、泣き、笑うのを見たとき、私は正しいことをしたと実感した。
 アリスのような話をきっかけに、私の政権はファースト・ステップ法の成立に向けて、両党の議員と緊密に連携した。この法は、アフリカ系米国人の権利を誤ったやり方で過剰に損なってきた刑法を改革するものだ。
 ファースト・ステップ法は、暴力を伴わない犯罪者が生産的で法を順守する市民として社会復帰する機会を与える。今、国中の州が続こうとしている。米国は罪が償えることを信じる国だ。
 今夜、ここにテネシー州からマシュー・チャールズも来ている。1996年、マシューは30歳のとき、違法薬物販売などの罪で35年の刑を言い渡された。その後20年にわたり、30以上の聖書の講義を修了し、法務書記となり、受刑者たちの良き助言者となった。彼は今、ファースト・ステップ法のもとで出所した最初の元受刑者となった。ありがとう、マシュー。
 今、共和党と民主党は、差し迫った国家の危機に立ち向かうために再び力を合わせなければならない。
 国土を守り、南部国境を厳重に警備する予算案を通すために、議会には10日の期間が残っている。
 今こそ、米国が不法移民をなくし、密入国を手引きする冷酷な一味や組織、麻薬密売人や人身売買組織を壊滅するために取り組んでいることを、議会は世界に示すときだ。
 今こう話している最中も、中米からの移民集団の大規模な隊列が米国を目指している。メキシコの複数の市当局が、不法移民を地域から排除するために、バスやトラックに彼らを乗せ、我が国の国境警備が手薄な場所に送り込んでいるそうだ。このとんでもない猛襲に対処するため、南部国境に3750人の部隊派遣を命じたところだ。
 これは倫理問題だ。南部国境の無法状態は、すべての米国民の安全、治安、金銭的安���に対する脅威だ。我々は、国民の暮らしと雇用を守る入国管理体制を作り出す義務がある。
 これには、規則を守り、法令を順守している、今ここに暮らす何百万人もの移民に対する我々の責任も含まれる。合法な移民は、様々な形で我が国を豊かにし、社会を強くする。私は我々の国に、かつてないほど多くの人々に来てほしい。しかし、それは合法的でなければならない。
 不法移民ほど我が国の政治的、階級的な分断を明示する問題はない。豊かな政治家や献金者は、壁と門と警備に守られながら、国境の開放を求めている。一方で、米国の労働者たちは、雇用の減少、低賃金、教育の負担、社会保障の衰退といった大規模な不法移民の代償を払っている。
 不法移民への寛容は思いやりではない。現実は非常にひどいものだ。(米国を目指し)北上する女性の3人に1人が性的暴行を受けている。密売人たちは、我々の法律を悪用し、我々の国に入国するために移民の子供を人質として利用する。
 人身売買業者たちは、何千人もの少女や成人女性を米国に密入国させ、彼女らを売春に従事させるため、我々の通関施設間の広い地域をたくみに利用している。
 何万人もの善良な人々が、我々の暮らす街に国境を越えて流入した覚醒剤、ヘロイン、コカインなどの危険な薬物によって死んでいる。
 悪質なギャング組織「MS―13」が少なくとも20州で活動している。彼らのほとんどは南部国境を越えて入ってくる。ちょうど昨日、メンバーの一人がニューヨークの地下鉄ホームでの射殺容疑で拘束された。我々はこのようなギャングのメンバーを排除しているが、国境の安全が保証されるまで、彼らは逆流し続ける。
 年を追うごとに、犯罪的な不法外国人によって殺害される米国人は数え切れない。
 私は多くの素晴らしい「天使の母たち、父たち、家族ら」を知るようになった。誰も、彼らが耐えなければならなかったようなひどい心痛に苦しむべきではない。
 今夜ここに、デボラ・ビッセルが来ている。3週間前、デボラの両親ジェラルドとシャロンはネバダ州リノの自宅で強盗に入った不法な外国人に撃たれて亡くなった。2人は80歳代で、4人の子供と11人の孫、20人のひ孫がいた。ここには、その孫娘のヘザーとひ孫のマディソンも来ている。
 ほとんどの人はあなたたちの痛みを理解できない。ありがとう、ここにいてくれてありがとう。本当にありがとう。私は決して忘れないし、ジェラルドとシャロンのために、このようなことが二度と起こらないように闘う。
 危険な国境の管理を怠り、もうこれ以上、米国人の生命が奪われることがあってはならない。
 米移民・関税執行局(ICE)は、この2年間で、26万6000人の不法な外国人を拘束した。この中には、性犯罪にかかわった3万人や、殺人事件に関与した4000人が含まれる。
 こうした法執行の英雄の一人がここに来ている。ICE特別捜査官のエルビン・ヘルナンデスだ。エルビンと彼の家族はドミニカ共和国から合法的に米国に移住してきた。8歳の時、エルビンは父親に捜査官になりたいと言った。彼は今、国際的な性的人身売買を取り締まる捜査を指揮している。エルビンは言う。「もしこれらの若い少女たちが確実に正義を得られるならば、私は本当に自分の仕事をしたことになる」。彼と彼の同僚のおかげで、昨年、300人以上の女性らが恐怖から救われ、1500人以上の残虐な人身売買業者らが投獄された。
 我々はいつも、法執行に関わる勇敢な男女を支持する。私は今夜、ICEの英雄を滅ぼすことはないと誓おう。ありがとう。
 我が政権は、南部国境の危機を終わらせるため、良識ある提案を議会にしてきた。それは、人道支援や更なる法執行、入国時の薬物探知、子供の人身売買を可能にする抜け穴を封じること、国境の物理的な壁を含む。過去には、ここにいるほとんどの人が壁に賛成票を投じたが、壁は適切に建設されていない。私はそれを建設する。
 これはスマートで戦略的で向こうが見通せる鋼鉄の障壁であり、ただのコンクリート壁ではない。これは、国境警備隊によって必要性があると確認された場所に設置されるだろう。壁がつくられたところでは不法入国は激減すると国境警備隊は言うはずだ。
 サンディエゴ(カリフォルニア州)は、米国で最も多くの不法入国があった。サンディエゴ住民や政治指導者の要求に応じて、頑丈な壁が導入された。この頑丈な壁は不法入国をほぼ完全に収束させた。
 メキシコとの国境都市であるテキサス州エルパソは、かつて、米国内で凶悪犯罪率が最も高い都市の一つで、最も危険な都市の一つと考えられていた。今は強力な壁のおかげで、エルパソは最も安全な都市の一つになっている。端的に言えば、壁は機能し、壁は人命を救う。
 だから、協力し、歩み寄り、真に米国を安全にする取引を成立させよう。
 我々は国民の安全を守るために働いている。経済の回復を速いペースで進めなければならない。
 昨年に創出された新規雇用の58%を占めた女性たちほど、私たちの発展する経済から恩恵を受けた人々はいない。すべての国民は、これまで以上に多くの女性が働けることを誇りに思うだろう。女性に参政権を与える憲法修正が議会で可決されてからちょうど1世紀、これまでで最も多くの女性が議会で活躍している。素晴らしい。おめでとう。
 あらゆる場面で女性の活躍する機会を改善する取り組みの一環として、我々は途上国の女性の経済的自立に焦点を絞った政府初の事業も始める。
 驚異的な経済の成功を築くためには、最優先事項として、数十年にわたる悲惨な貿易政策を転換させることだ。
 我々は中国に対し、長年にわたって米国の産業を狙い、知的財産を盗んできた今、雇用と富を盗み取るのはもう終わりだと明確にしておきたい。
 我が国は最近、約2500億ドル(約27兆4000億円)の中国製品に関税を課した。財務省は今、中国から何十億ドルも受け取っている。しかし、我々を利用したと、中国を非難するつもりはない。私は、この茶番を許した我が国の過去の指導者と議員たちを非難する。私は習シー(近平ジンピン)国家主席をとても尊敬している。
 我々は今、中国との新しい貿易協定に取り組んでいる。しかしその新たな協定には、不公正な貿易慣行を終わらせ、慢性的な貿易赤字を減らし、米国の雇用を守るために、実質的で構造的な改革が含まれなければならない。
 もう一つの歴史的な貿易の大失敗は、北米自由貿易協定(NAFTA)として知られる大惨事だ。
 私はNAFTAによって夢を砕かれたミシガンやオハイオ、ペンシルベニア、インディアナ、ニューハンプシャー、さらに多くの州で男女に会った。何年もの間、政治家はより良い協定を交渉すると公約してきた。しかし、今まで誰も実行を試みなかった。
 我々の新しい「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」は、NAFTAに取って代わり、米国の労働者のために役割を果たすだろう。それによって、米国の製造業に雇用を取り戻し、米国の農業を拡大させ、知的財産を保護し、より多くの車に「メイド・イン・ザ・USA」の美しい四つの単語を誇らしげに刻印することを保証できる。
 私は今夜、相互貿易法を議会で通過させることを求めたい。他国が不当な関税を米国の製品に課したら、我々も彼らが売りたい同様の製品に全く同じ関税を課せるようにするためだ。
 両党は、米国のボロボロのインフラ再建という偉大な仕事のため団結できるはずだ。
 私は、議会がインフラ整備法案を通すことに意欲を持っているのを知っている。私は、未来の最先端産業のための投資を含めた、新しくて重要なインフラ投資を実行するための法整備で、あなたたちと一緒に働きたくてたまらない。これは選択の問題ではない。必要不可欠なものだ。
 私だけでなく、私たち全員にとって次の大きな優先事項は、医療と処方薬の費用を減らし、既往症のある患者を守ることだ。
 私の政権の努力の結果として、既に薬の価格は2018年に、46年間で最大の下げ幅を経験した。
 しかし、我々はもっとやらなければならない。米国人が、たいてい全く同じ場所で作られている全く同じ薬のために、他国の人より非常に高い金額を支払わされるのを受け入れることはできない。こんなことは間違っており不公平だ。力を合わせ速やかにやめさせたい。
 私は、医薬品開発費の負担が世界的に不公正になっている問題にようやく取り組み、米国の患者にとって公平性と価格の透明性を提供する法律を通すことを求めている。製薬会社や保険会社、病院に対し、競争を促し、価格を下げるために実際の価格を開示することも要求すべきだ。
 歴史上、米国の自由ほどの力を持って、人々の境遇を進歩させたものはほかにない。ここ数年で我々は、HIV(エイズウイルス)との闘いで目を見張る進展を遂げた。科学の飛躍的進歩は、遠い夢を手の届く距離に引き寄せた。私は、10年以内に米国でHIVの流行を確実になくすために必要な予算を民主党と共和党に求めたい。一緒に米国のエイズに打ち勝とう。
 今夜、私は全ての米国人が支持できる別の闘いに参加することも求めている。それは小児がんとの闘いだ。
 観���の中で今晩メラニアと一緒にいるのは、とても勇敢な10歳の女の子、グレイス・イラインだ。やあグレイス。彼女は4歳の時から誕生日のたびに、セントジュード小児研究病院への寄付を友人に呼びかけていた。彼女は自身が、患者になる日が来るとは思わなかった。それが起こった。昨年、グレイスは脳のがんと診断された。すぐに彼女は放射線治療を始めた。同時に地域に呼びかけ、がんとの闘いのために4万ドル以上を集めた。彼女が昨秋、治療を終えた際、「化学療法の最終日」というポスターを掲げると、彼女の医師や看護師が目に涙をためて喜んだ。ありがとうグレイス、あなたはこの部屋にいる全員の励みだ。
 多くの小児がんは新しい治療法が見つかっていない。私は、命を救う重要な研究のため5億ドルの予算を議会に求めている。
 共働きの親を助けるため、米国の子供たちのための公立学校選択制を通す時が来た。私は、有給の家族休暇を全国的に導入する計画を予算案に含める最初の大統領となることを誇りに思う。親がみな、生まれたばかりの子供と親密な絆を結べるようにするためだ。
 母親が幼児を抱く美しい映像と比べ、我々の国で最近流れた身も凍るような映像ほど、大きなコントラストを示すものはない。
 ニューヨークの議員は、生まれる寸前の赤ちゃんを中絶できるようにする法案の通過を喜んだ。こうした赤ちゃんは、生きていて感覚を備える美しい存在なのに、この世の愛も夢も決して触れられない。バージニア州の知事に至っては、その発言で、出産後に赤ちゃんを処刑する意図まで示した。
 全ての人の尊厳を守るため、私は、母親の胎内で子供が痛みを感じることができる妊娠後期の中絶を禁止する法案を通過させるよう求めている。
 無垢(むく)の生命を大事にする文化を共に築こう。根本の真実を再確認しよう。生まれた子もこれから生まれる子も、神の神聖な御姿をかたどったものだ。
 私の計画の最後は米国の安全保障についてだ。
 ここ2年以上、昨年は7000億ドル、今年は7160億ドルをかけて、我々は米軍を全面的に立て直すことに着手してきた。我々は他の国々に対して公平な分担をさせている。やっとだ。長年の間、米国は、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国である友好国から非常に不公平に扱われてきた。しかし、この2、3年でNATOの同盟国による1000億ドルを超える防衛支出の増額を確保した。彼らができないと言っていたものだ。
 軍増強の一環として、米国は最新式のミサイル防衛システムを開発している。
 私の政権下では、米国の利益を促進したことを巡って我々が謝ることは決してない。
 例えば、数十年前、米国はロシアとミサイル能力を制限し、縮小する条約を締結した。我々が合意とルールを誠実に守る一方、ロシアは長年、繰り返し取り決めを破ってきた。それが、私が中距離核戦力(INF)全廃条約から正式に離脱することを発表した理由だ。それ以外に選択肢がない。
 おそらく我々は中国やその他を加えて異なる合意を交渉できる。もしできなければ、我々は、ほかのどの国もはるかにしのぐ費用をかけて技術革新を行い優位に立つ。
 大胆で新しい外交の一環として、我々は朝鮮半島での平和のために歴史的な努力を続けている。我々の人質は帰国した。核実験は止まった。ミサイル発射は15か月間、行われてこなかった。私が米国の大統領に選ばれていなかったら、私の考えでは、今まさに、北朝鮮と大規模戦争になっていただろう。多くの仕事が残っているが、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と私の関係はよいものだ。金委員長と私は2月27、28日にベトナムで再び会う。
 2週間前、米国は正統なベネズエラ政府および新しい大統領、フアン・グアイド氏を正式に承認した。ベネズエラの人々の高貴な自由の追求を支持する。マドゥロ政権の残忍性を非難する。彼らの社会主義政策は、南米で最も裕福だった国を、みじめな貧困と絶望の国に転落させたた。
 ここ米国で、我々の国に社会主義を採用しようという新たな要求を警戒している。米国は、政府の強制でも支配でも統制でもなく、自由と独立の上に築かれた。我々は生まれながらに自由で、自由であり続ける。今夜、米国が決して社会主義国にならないという決意を再確認する。
 我々が長年にわたって直面する試練の中でもとりわけ複雑なものの一つは、中東にある。
 我々の取り組みは、原則にのっとる現実主義に基づいている。何十年も進展がなかった信用できない理論ではない。だからこそ我々の政権は、イスラエルの真の首都を認め、誇りを持ってエルサレムに大使館を開いた。
 我々の勇敢な兵士は今、ほぼ19年間にわたって中東で戦ってきた。アフガニスタンとイラクでは7000人近い米国人の英雄が命をささげた。5万2000人以上の米国人が重傷を負った。我々は7兆ドル以上を中東での戦闘で費やしてきた。
 大統領候補として、私は新しい取り組みを声高に約束した。偉大な国は、終わりなき戦争はしない。
 私が就任した時、イスラム過激派組織「イスラム国」はイラクとシリアの2万平方マイル以上を支配していた。今日、血に飢えた怪物の支配から、我々は実質的に全領土を解放した。
 「イスラム国」の残党を壊滅するため、同盟国と連携して取り組んでいる今、我々のシリアにいる勇敢な戦士に温かい「お帰りなさい」を贈る時だ。
 私はまた、アフガニスタンで政治的解決を、可能なら実現させるための交渉を加速させてきた。敵対勢力もまた、交渉が行われていることをとてもうれしく思っている。我々の軍は比類なき勇猛さで戦ってきた。そして、彼らの勇気のおかげで、我々は今、この長く血を見るような紛争の政治的解決となりうることに取り組むことができる。
 アフガニスタンで私の政権は、(旧支配勢力)タリバンを含む数多くの勢力と建設的な対話を行っている。これらの交渉が進展すれば、我々の軍の駐留部隊を減らし、テロ対策に集中することができるだろう。我々は実際にテロ対策に集中する。(和平)合意を実現できるかどうかはわからない。しかし、20年に及ぶ戦争を経て、少なくとも和平達成に向けて努力する時が来たことを我々はわかっている。相手も同じことをしたいと思っている。その時だ。
 敵味方の区別なく何より重要なのは、国民を守ろうとするこの国の力と意思を疑ってはならないことだ。18年前、テロリストたちは米駆逐艦「コール」を襲撃した。そして先月、米軍はこの襲撃の首謀者の一人を殺害した。
 我々は今夜、トム・ウィバリーが参加してくれたことを光栄に思う。彼の息子で海軍上等兵のクレイグ・ウィバリーは、我々が悲劇的に失った17人の乗組員の1人だった。トム、我々はいつでも、駆逐艦コールの英雄たちを記憶にとどめると誓う。ありがとう、トム。
 私の政権は、世界で有数のテロ支援国家であるイランの急進的な政権に立ち向かうため、断固とした態度で行動してきた。急進的な政権だ。彼らは本当に悪いことをする。
 この邪悪な独裁政権が核兵器を決して保有しないことを確実にするため、私は破滅的なイラン核合意から米国を撤退させた。そして我々は昨年秋、米国が一国に科すものとしては最も厳しい制裁を発動させた。
 我々は、米国に対して死を唱え、ユダヤの人々に対して集団虐殺を行うと脅す政権から目をそらさない。反ユダヤ主義という卑劣な害毒、その悪意に満ちた信念を広める人々を、決して無視してはならない。我々は一致団結し、こうした憎しみがいかなる場所で生じたとしても、立ち向かわなければならない。
 わずか数か月前のことだが、(東部)ピッツバーグのシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)「生命の木」で、ユダヤ系米国人11人が反ユダヤ主義の襲撃によって残忍な形で殺害された。SWAT(警察特殊部隊)のティモシー・マットソン隊員は銃撃のさなかに突入し、7回撃たれながらも犯人を追跡した。そして非常に成功した。ティモシーは12回目の手術を受けたばかりで、さらに多くの手術を受ける。しかし、今夜、我々と共にここにいるために駆けつけた。マットソン隊員、ありがとう。我々は、永遠に感謝する。本当にありがとう。
 今夜、ピッツバーグの事件の生存者ジュダ・サメットも参加している。彼は、虐殺が始まった時にシナゴーグに到着した。しかし、彼は昨秋、死を免れただけではない。70年以上前、ナチスの強制収容所でも辛うじて生き残ったのだ。今日はジュダの81歳の誕生日だ(拍手。誕生日を祝う歌が歌われる)。彼らは私のためにそうしてくれないよ、ジュダ。ジュダは、約75年前、強制収容所で10か月間過ごした後、家族と列車に乗せられ、別の収容所に行くと言われたまさにその時を、今でも思い出すことができると言う。突然、列車がキーッと音を立てて止まった。1人の兵士が現れた。ジュダの家族は最悪の事態を覚悟した。そのとき、彼の父親は大きな喜びの声を上げた。「米国人だ、米国人だ」と。
 今夜ここにいる、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を生き抜いた2人目の人物のジョシュア・カウフマンは、ダッハウ強制収容所の捕虜だった。彼は、家畜運搬車の壁の穴をのぞき、米兵が戦車で続々とやって来るのを見たことを覚えている。ジョシュアは「私にとって、米兵は神が存在するという証しであり、彼らは空から下りてきた。彼らは天国から下りてきた」と回想する。
 今晩、私はまず、第2次世界大戦中の「Dデー」(ノルマンディー上陸作戦の決行日)に戦った兵士3人を称賛することから始めた。そのうちの1人がハーマン・ゼイトチクだった。
 だが、ハーマンの物語はもっとある。ハーマンはノルマンディー海岸を急襲した1年後、ダッハウ(強制収容所)の解放を手助けした米兵の1人だった。彼は、この世の地獄からジョシュアの救出を支援した米国人の1人だった。75年近くがたち、ハーマンとジョシュアは今夜、ギャラリーの中に共にいる。米国の自由発祥の地であるこの場に、隣り合って座っている。ハーマンとジョシュア。あなたたちが今晩ここにいることにとても感謝している。
 1944年、Dデーの早い時間帯、英仏海峡の暗い空の下で米兵が作戦に着手した時、彼らは18、19歳のただの若者だった。不安定な上陸用舟艇で、戦争の歴史の中で最も重要な戦闘へと突き進んでいったのだ。
 彼らは、その時を生き残れるのかわからなかった。年を重ねられるのかもわからなかった。しかし彼らは、米国が優勢でなければならないことはわかっていた。この国家、そして、まだ生まれていない世代(のために戦うこと)が彼らの大義だった。
 なぜ彼らはそうしたのか。米国のため、私たちのためにそうしたのだ。
 共産主義への勝利、科学と発見の大いなる飛躍、他の追随を許さない平等と正義への前進――。全てが、先人の血と涙と勇気、先見の明のおかげなのだ。
 この議事堂に思いをはせよう。あなたたちより前に(ここにいた)議員たちが、奴隷制に終止符を打ち、鉄道や高速道路を建設し、ファシズムを打ち倒し、公民権を獲得し、悪の帝国を屈服させるために投票を行った、まさにこの議場に思いをはせよう。
 今夜ここには、この壮大な共和国の各地から来た議員たちがいる。メーン州の岩石の多い海岸やハワイ州の火山の峰々から。ウィスコンシン州の雪深い森やアリゾナ州の赤い砂漠から。ケンタッキー州の青々とした農地やカリフォルニア州の黄金の砂浜から。我々は共に、歴史上最も類いまれな国家の議員を務めている。
 我々はこの瞬間、何をしようとしているのだろうか。我々はどのように記憶に残るのだろうか。私はこの議会の男女に求める。目の前にある機会を見よ! 最も感動させる偉業が、まだこの先にある。最も刺激的な旅が、まだこの先に待ち受けている。我々の最大の勝利はまだ先のことだ。我々の夢はまだ始まっていない。
 我々は、不一致によって規定されてしまうのか、勇気を持って違いを乗り越えていくのか、選ばなくてはならない。
 我々は、受け継いできたものを無駄遣いするつもりなのか、あるいは、米国人だと誇らしげに宣言するつもりなのかを選ばなければならない。我々は信じられないようなことをする。我々は不可能なことに挑む。我々は未知なるものに打ち勝つ。
 今こそ米国の想像力を再び燃え上がらせる時だ。最も高い頂を目指し、何よりも輝く星を目指して目標を設定する時だ。我々を市民として、隣人として、愛国者として結びつける愛と忠誠、そして記憶の絆をよみがえらせる時だ。
 これが我々の未来であり、運命であり、選ぶ道だ。私はあなたたちに偉大さを選ぶよう求めている。
 どんな困難に直面しようと、どんな難問が降りかかってこようと、我々は共に前進しなければならない。
 我々は、心の中に「米国第一」を掲げなければならない。魂の中に自由を息づかせなければならない。そして、神のみもとにある一つの国として世界各国の希望であり、期待であり、光であり、名誉であるべきだ――という米国の運命にいつでも信念を持ち続けなければならない。
 ありがとう。みなさんに、そして米国に神のご加護がありますように。そして、おやすみなさい。
3 notes · View notes
petapeta · 7 years
Quote
この事件は、2009年に大阪地裁で懲役12年の判決が言い渡され、2010年に大阪高裁・2011年に最高裁でもそのまま有罪となったレイプ事件である。  しかし、2014年に冤罪が発覚、2015年に再審で無罪が確定した。  最初の懲役12年の判決は、被害者とされた少女の証言を有罪認定の最大の根拠としたものであった。  再審の開始も、この少女の証言が偽証であることが認められたことによるものだった。  では、なぜ大阪地裁・高裁・最高裁は、一度は少女の証言を信じ、被告人を有罪だと判断したのだろうか?  そこには、かつて幾多の悲惨な冤罪を生んだ裁判官の考え方が現代日本でも健在であることを示していた・・・ 事件登場人物 被害者Dの証言 恐怖の「訳がない論法」 否認供述~否認供述には根拠がありません 判決~徹底的な人格攻撃 高裁での審理~裁判所はXさんにマホトーンを唱えた!! 再審~ウソだって言い出せなかったの・・・ 関係者のその後 どうしてこんなことに・・・親の事情の聞き方 裁判所が「訳が無い論法」に走った訳 事件  この事件の被告人、Xさんが起訴された事件の内容は、大体こんな感じである。 登場人物 X・・・被告人。ACDと同居していた。 A・・・Xの妻。 B・・・Xの娘。ただし、血はつながっておらず、Xが再婚した際のAの連れ子。 C・・・Bの子でXの孫。平成3年生まれで被害者Dの兄。Dが被害に遭う所を目撃した (実はウソ) 。 D・・・Bの子・Xの孫で 被害者 (実はウソ) 。平成5年生まれで平成20年の被害当時は14歳の少女。 E・・・Bの姉。美容院経営。 F・・・Bの夫。 ①2004年11月21日ころ,Xの自宅で当時11歳のDを押し倒して衣服をはぎ取ってレイプ。 ②2008年4月14日ころ、Xの自宅でDがXを怖がっているのをいいことに押し倒して衣服をはぎ取ってレイプ。 ③2008年7月上旬ころ、Xの自宅で当時14歳のDを背後から両腕で抱き着き、服の上から胸をつかんでもんだ強制わいせつ。 被害者Dの証言  全く身に覚えがないXさん、法廷でも無実を主張したが、検察はCとDを連れてきた。  そして、法廷に連れてこられたDは法廷でこう証言した。 「私は、小学校高学年の時から、おじいちゃん(X)におしりを触られたり、口にキスをされた。  平成16年11月21日ころ、Aが家にいないときに引き出物を食べているとおじいちゃんが家にやってきて服を脱がせていろいろやってきた。   体が固まっているとおじいちゃんにレイプされた。 おじいちゃんは「いったら殺すぞ」と脅された。  中学生になると、おじいちゃんの揉んだり触ったりするようになり、中1の時にも両手で胸をもまれたり、レイプされたこともある。  大体Aが銭湯に行ってしまっていない時で、場所は自分の部屋だった。  平成20年4月に部屋で名探偵コナンを見ていると部屋に入ってきた。固まってしまっていると おじいちゃんに服を脱がされたが、怖くて抵抗できずにレイプされ、「Bに言うな」と口止めされた。  7月初めころ、またAがいないとき、 トイレに行こうとしてドアを開けようとしたら後ろからつかまれて揉んできた。この時は抵抗して逃げることができた。  これまで、誰にも相談できなかった。Cに相談したこともあったが、「我慢するしかない」と言われた。  おじいちゃんに抗議したこともあったが、横からAが口の利き方が悪いと言って怒ってきたこともあり、信じてもらえないと思って相談できなかった。  お母さん(B)もおじいちゃんに襲われたという話を聞いたことがあり、迷惑をかけたくなくてお母さんにも相談できなかった。  平成20年7月頃、高校生になるので嫌なことを振り切って新しい生活をしたいと思ってEに打ち明けようとしたが全てを打ち明けられなかった。  7月下旬に、お母さんが大阪に来たときお尻を触られたということだけ話した。  8月初めころ、実家にいるときに胸も触られているという話をした。お母さんに「最後までやられたの」と話したが、恥ずかしいのと思い出すのがつらくて、レイプされたことは話せなかった。  その後警察で話をし、9月初めころにお母さんと話した時にお母さんが「命に代えてでも守ってあげる」と言われて覚悟を決め、全部話した。」  Dは裁判所で尋問されたが、尋問の前日は寝られず、途中で体調を崩し、涙ながらに話し、弁護人からの尋問に動揺することなく対応していた。  そして、 Dの兄Cも、Dが被害に遭っているのを見たと証言したのだ。 恐怖の「訳がない論法」  後になって分かったことだが、Dが被害に遭ったという証言も、Cが被害を見たというのも、 見間違いどころか 何から何まで真っ赤な嘘 であった。  そして、実は、Dの証言にもおかしな点はいくつかあり、第一審判決も、このおかしな点についてはいろいろと検討していた。  Xさんの弁護士が様々に主張したため、Dの証言を全く検討しなかったという訳ではなかったのだ。  だが、その検討方法は恐ろしいものであった。  判決はまず、Dの証言についてこうぶち上げた。 「Dは自分の親族であるXからレイプされたということを内容とする供述をしている。14歳の少女がありもしないレイプ被害等をでっち上げてまでXを告訴すること自体非常に考えにくい。そんなことがあるならよほど特殊な事情があるはずで、そういう事情がなければDの言っていることは本当だ。」  年少の少女が、ありもしない被害を主張する訳がない。  面倒なので「訳がない論法」と書こう。  この訳がない論法、セイラム魔女裁判で、19人を絞首刑にした恐るべき冤罪思考法であった。  セイラム魔女裁判では、まだ当時の裁判官が名士と兼業する仕事に過ぎず、裁判官としての専門教育を受けていない言わば素人裁判であった。  だが、現代日本で、裁判向け教育を受けた裁判官が複数で検討しても、この訳がない論法は健在だったのだ。  そして、Xさん側としても、なぜそんなことを言われるのか心当たりはない。心当たりもないのだから、CやDが嘘をつくという証拠が準備できるはずもない。  ただ、Xさん側ももしかしたら過去にXさんとトラブルのあったDの母Bが言わせているのではないか…ということを主張はしたが、Xさんの側も当然、そんな動機があるという証拠など持っているはずもない。  裁判官は 「Bが自分でXに仕返しをするならともかく、自分の子どもDを使ってそんなことをする訳がない」  という訳がない論法で一刀両断。  CDが嘘をつくかもしれない、という動機からCDの証言を批判する弁護側の主張は「訳がない論法」で封じられてしまった。  それでも、まだAの証言その物に不合理な点がないかどうか、チェックするという手が残っている。  だが、ここでも訳がない論法の手は容赦なく及んできた。  訳がない論法のせいで、弁護士が主張した Dの証言の不合理な点は片っ端から裁判所によって好意的に解釈され、「不自然ではない」という扱いにされてしまった のだ。   弁護側  「BがXの勤務先や近隣住民に言いふらしているのはおかしいだろ?」   裁判官  「Dの被害が噂になったから確認して回っていただけだし、会社での態度を知りたいと思っているという説明をしていただろう。   この説明は一応納得できるものだし、Bが嘘をつく訳がない。」   弁護側  「Bがすぐに被害を言わないのはおかしいだろ?最初は胸だけだったのに後から尻、レイプと被害がどんどん大きくなっていったのもおかしいよ!?」   裁判官  「おじいちゃんから性的被害に遭っていたならば思春期の少女が躊躇するのは当たり前だし、被害がだんだん大きくなるのも不自然ではないし、おじいちゃんが圧力かけていたんだから、言えなくても不自然ではない。   それに、BECの言っていることとも一致している。憶測で被害者を非難するのは慎みたまえ。   Dが嘘をつく訳が(ry。」   弁護側  「Cは見たって言ってるけど兄だよ?口裏合わせなんていくらでもできるし、Cは助けようとも、周囲に相談もしてないじゃないか。」   裁判官  「Dと2歳しか違わないCがそんな嘘をついたって得をする訳がないではないか。  得がないのに言ってるってことは、本当のことを言ってるからと考えるのが当然であろう。  助けようとしなかったのも、Xを告発したりすれば自分の生活が危うくなるのだから当然だろう。  Cが嘘をつく(ry。」   弁護側  「Dの言ってる被害状況は曖昧すぎるよ。」   裁判官  「曖昧なところは多少はあるが、全体から見れば十分真に迫った証言だと言える。   肝心の被害の所が曖昧なのは、Dが精神的ショックを受けて正確に覚えていない部分があるだけだ。   Dが嘘を(ry。」   弁護側  「Aはいなくたって、隣の部屋にはCやXの母親(事件当時存命)もいたんだよ?バレる所でレイプをするバカはいないだろ?」   裁判官  「Xの母親は耳が遠かったし、多少は音もさえぎられるんだから、別におかしくはないではないか?   Dが嘘(ry。」   弁護側  「DはPTSDになったが、警察に告訴した後にそうなっている。   告訴自体が精神的負担になって、虚偽がバレるのを恐れたんじゃないか?」   裁判官  「弁護側のストーリーからすると、BCDで組んででっち上げたということかね。   でっち上げをするような者が、でっち上げ対象が捕まった途端にPTSDになるなんて不自然であろう?   Dがウ(ry。」   弁護側  「Dの言うことは途中で変わってる部分がある。本当のことを言ってるなら変わる訳がないだろ?」   裁判官  「途中で変わってる部分があるとはいっても、大筋の所は全く変わっていないではないか。   一部だけが変わったからと言ってDが(ry。」 このように、訳が無い論法にはまってしまった裁判官は、Dの証言の不合理な点を 「Dが言っているのは本当のことではなかったから」 とは考えず、 「Dは本当のことを言っているのだが、被害に遭ったことを言うのが恥ずかしいから隠そうとしてしまった」 などと考え、信じても良い証言と扱ってしまったのだった。 「疑わしきは罰せず」という言葉を思い出した方も多いだろう。 有罪か無罪か、どちらが正しいのか分からず両方とも可能性があるなら、被告人に有利に考えるのが刑事裁判の鉄則である。 しかし、裁判官や検察官などは 「疑わしきは罰せず」というのは証拠が全て揃った後に考えればいいことだと考える傾向が強く、個々の証拠の信用性を判断するにあたって「疑わしきは有罪に使わず」という考え方をすることは少ない。 結果として、裁判官は疑わしい証言を支えるだけ支えてあげて、信用できるだけの証拠を全て整えてしまった。 証拠を全部信用できるものと判断した上で、その後になって疑わしきは罰せずと言っても遅すぎたのである。 否認供述~否認供述には根拠がありません  Xさん自身も、全く身に覚えがないが、それでも変じゃない?という要素については主張をした。   弁護側  「勃起障害があって、やろうにもやれないよ!!勃起障害だって鑑定すればわかるから鑑定してよ!!」   裁判官  「勃起障害の治療を受けていないではないか。   当時50代ならば、妻との夫婦生活もあったであろう。全く治療しないということは、嘘を言っている証拠だ。   鑑定?却下。そんなことをしなくても君の言っていることはウソに決まっている。」   弁護側  「Dは部屋の場所をいろいろ言ってるけど、当時の部屋と違うよ!」   裁判官  「何の根拠もない発言である。君の言っていることはウソに決まっている。」   弁護側  「AもXと性交渉ないって言ってるし、部屋の場所が違うって言ってるよ?」   裁判官  「Aの言ってることにも何の根拠もない。AはXの妻だから庇おうとしてるだけに違いない。」  裁判所は、Dの言い分については、訳がない論法で好意的に解釈して筋を通させていた。  ところが、弁護側の言い分についてはそうしようとせず、むしろ弁護側に主張の根拠を要求し、根拠がない、根拠が不十分だとなるとたちまち一蹴。  Xさんの妻を連れてきても、身内をかばっているだけだと判断してしまうのだった。  正当防衛を主張する場合のように、被告人に主張の根拠を要求するような場合は存在する。  だが、Dには好意的に解釈して筋を通ったことにしてあげる一方で、Xさんについては全く筋が通らない扱いするとなると話は全く変わってくる。  Xさんは実質、疑わしきは被告人を罰する裁判で戦わされていたのだ。 判決~徹底的な人格攻撃  こうしてDの証言は全面的に信用される一方、Xさんの言い分は全く認められず、Xさんには懲役12年の判決が言い渡された。  判決理由では、「罪を認めずに否認を続けるふてえ野郎」であるXさんに対して情け容赦のない人格攻撃が行われた。 「言語道断」 「犯行動機は誠に身勝手極まりなく,そこには一片の酌むべき点すら見出せない。」 「その行動は誠に醜悪極まりなく,齢60を超えた者の振る舞いとも思えぬ甚だ恥ずべき所業であるといわざるを得ない。」 「不合理な弁解に終始して本件各犯行を全面的に否認し,反省の情が皆無であるばかりか,挙げ句には,Bが自分に恨みを持っていることから被害をでっち上げたなどと同女を誹謗中傷するまでに至っている。」  本当にXさんが真犯人で、Xさんの弁解が苦し紛れの弁解だったなら拍手喝采ものである。  だが、後の結末を考えると、大上段にXさんを人格攻撃するこの判決のしらじらしさは際立つ。  しかし、無罪であると主張して、結果有罪になってしまうことは、裁判所にこんな風に考えられてしまい、処罰が重くなる一因となってしまうのである。  被疑者・被告人が戦うことを諦めてしまった冤罪事件のたびに、「戦わなかった被疑者・被告人が悪い」という意見はしばしば上がるが、この事件から、徹底的に無罪を争うことはリスクがあるのだということを噛み締めてほしいものである。 高裁での審理~裁判所はXさんにマホトーンを唱えた!!  Aさんはなおも高裁に控訴。しかし、一審で有罪判決が出ている件を高裁でひっくり返すのは、よほどのことがなければいけない。  高裁で弁護側はDが病院にかかったという記録があったことからそこの医療記録を出せと検察官に迫った。   ところが、検察官は「ない」と回答。  検察の手元にないだけで医療機関にはあったのだが、弁護側は手を封じられてしまった。  そして、有罪判決の最大の根拠となったDの証言を何とか崩そうと、 弁護側はDの証人尋問を申請したが、高裁はこれも却下してしまう。  高裁は判決を受けての追加の証拠調べをなかなか認めないことが多い。  高裁になってからでないと出せない証拠は認めることも多いが、Dの尋問は一審で既にやっていることであった。  また、Dが年少者の被害者だったこともあって、  「また尋問するなら、Dが傷ついてしまう。一度尋問したんだからもう十分だ」  となってしまったのだった。  結局、弁護側は打つ手がなくなってしまった。  こうして、高裁も一審の有罪判決は間違っているとは言えないと言うばかりの有罪判決を言い渡したのだった。  上告もしたものの、最高裁では追加の証拠を調べることはできないことになっている(例え裁判官がやってあげたいと思っても、裁判官に権限がない)。  本来ならば私は冤罪だということで最高裁判所に上告することは門前払いされても仕方がないことになっている。  結果、裁判は確定。Xは無実の罪で12年の服役をすることになってしまった。 再審~ウソだって言い出せなかったの・・・  有罪判決が出て諦める被告人も決して少なくはない。  だが、刑務所に服役させられてもXさんはあきらめず、担当の弁護士が活動していたら、重要な証拠がやっと登場した。  Dがレイプ被害に遭ったとされる日時の後、Dは産婦人科にかかっていた。  検察が「ない」と言っていた産婦人科の診療記録であったが、 弁護士が該当する産婦人科に記録があることを突き止めた。  まさか弁護士も診療記録があるのに検察が「ない」というとは思わなかったか、どこの産婦人科か分からず産婦人科を手あたり次第探すしかなかったために、判決確定後になってしまったのだと思われる。  弁護士がその診療記録を取り寄せると、 なんとレイプされたならあるはずがない処女膜が健在だったことがはっきり記録に残っていたのだ。   さらに、C・D自身が証言を翻した。    これに基づいてXさんの弁護士が再審請求。  弁護士の再審請求にびっくりした検察が再捜査。  Dがかかった医者の記録を調べたところ、 平成22年にDが受診した精神科の診療録にも、実は被害に遭っていないとDが話していたことまで記録に残っていた。  そして、裁判所でもCとDは揃って、裁判で言ったことはウソだったと認めたのだった。  Dはこう語った。  「あれはウソだったんです。  Xにおしりを触られたと話したら、 母親BとFから、他にも何かされたんじゃないかと何日間も、深夜まで問い詰められてしまいました。  それで、最後には胸をもまれたと認めて、その後レイプされたと質問されても否定できなくなりました。  取り調べや裁判でもBとFに怒られるのが怖くて、嘘だったと言えなかったんです・・・。  裁判が終わった後、あれはウソだったとBとFにも話したんですが、処罰されたり、他に証言した人たちに迷惑がかかると思って黙っておくことになりました。  でも、今になってB・Fとも疎遠になったし、他の家族からも勧められて、話すことにしました。」  更にCも  「本当は犯行を見ていた訳じゃないんです。Bから見てないはずがないだろと問い詰められて、見たと喋ってしまったんです。  今更ウソだと打ち明けても信じてもらえないと思って本当のことを話さなかったんです…」  CDの言うことがもし本当なら、CDは場合によっては偽証罪による処罰も考えられたところだが、それでもCDは揃って、Bに問い詰められて発した口から出まかせであったことを白状した。  もちろん、「CDがそんな嘘をつく訳がない!!」だけでは判決の訳がない論法と同じである。  しかし、 カルテなどの証言以外の証拠と見比べても、どう考えても正しいのは証言が誤りであるという言い分の方であった。  第一、CDが真摯に喋ってるから有罪だ、という判決だったのに、そのCDがXが犯人であるという主張を撤回してしまったら、もうXを有罪にするまともな証拠なんか残っているはずがない。  Fも、Dに対して尻を触られたということならレイプもされたんじゃない?と聞いたら、最初は否定していたが認めたという���  Bだけは、CDを問い詰めてなんかいないと主張したが、CDから被害を告白された状況についてはあいまいな供述しかしなかった。  更に、BはDをつれていった産婦人科医に 処女膜が破れていないと診断された後も他所の産婦人科医に執拗に連れて行っていた ということが検察の捜査で発覚していた。  頭からDはレイプ被害に遭ったに違いないと決めつけ、産婦人科医にそんなことはないと言われても信じなかったのか、弁護側が主張した通り、実はXさんを陥れようとしていたのか、裁判所はそこまでは判断しなかった。  だが、どちらであれ、BがCDを執拗に問い詰め、CDはそれに乗せられてしまった可能性が高い。  こうして有罪の根拠を失った検察は、再審請求に対してXさんが有罪であるという主張を諦めた。  検察自らXさんは無罪であるとして、無罪判決が確定する前に手続を取ってXさんを釈放。Xさんは裁判中・裁判後含め、およそ6年の獄中生活から解放されたのだった。   その後も再審手続は進み、2015年に再審無罪判決が確定。  再審に当たり、検察は自らXさんの無罪を主張したほか、判決言渡しの後は上訴権放棄の手続を取った。 (*1)  また、再審を担当した大阪地裁の裁判長(有罪判決を書いた裁判官とは別の裁判官である)は、判決を言い渡すにあたってXさんに謝罪の言葉を述べている。 関係者のその後  Xさんは、国に対して国家賠償訴訟を起こすことを検討していると言う。  ただし、Xさんは役員をやっていた企業に復職することもできず、被害の回復にはまだまだ時間がかかることと思われる。  CやDのその後は定かではない。  建て主が調べたところでは、C・Dとも偽証罪で起訴された、という話は見つかっていない。 (*2)  実は起訴されて既に有罪になっているという可能性もないわけではないが、この事件自体は全国的に報道された件であり、起訴されたが報道されないとは考えにくいのではないだろうか。  自白だけで有罪とすることは許されないため、証拠不十分と判断されたかもしれない。  経緯からCやDもB・Fに半ば言わされた被害者に近い立場であることや、遅すぎたとはいえ正直に白状したことを評価されて情状酌量されたのかもしれない。  XさんもCDに対しては怒りも恨みもない、とコメントしたという。  また、有罪の判決を書いた一審の裁判官のうち、 裁判長は2013年、この件の冤罪が発覚する前に57歳で死亡。  この裁判長は大阪地裁の名物裁判官であり、死去に当たって弁護士からも哀悼の言葉が述べられる有名人であった。  万引き再犯を行なった二児の母親に対し、家庭を考慮して執行猶予を与えたエピソードがよく知られている。  (再犯であれば実刑が普通だが、被告人の家庭事情を考慮し、敢えて執行猶予を与えた)  残りの2名のうち、一人は現在東京地裁で裁判官をしている。  平成27年までは、司法試験に合���した将来の裁判官や検察官・弁護士を育てる仕事をしていた他、司法試験の問題を作ったり採点をする仕事もしていた。  もう一人は、現在千葉地裁木更津支部で裁判官をしている。  彼ら裁判官一人一人がこの件をどう考えたかは、あいにく定かではない。  地裁判決では、個々の裁判官の意見を書いたりしないし、評議の秘密を公開することはできないため、この判決に反対した裁判官がいたとしても、真相は不明である。
大阪市レイプ虚偽証言冤罪事件 - アニヲタWiki(仮) - アットウィキ
14 notes · View notes
marikohigashi05 · 4 years
Photo
Tumblr media
武蔵野市より『ひとり親家庭等住宅費助成制度』の情報が公開されています。 http://www.city.musashino.lg.jp/kurashi_guide/shisetsu_jigyo/1006714/hitorioya_teate_josei/1006731.html おはようございます 武蔵野市議会議員の東まり子です。 新型コロナウイルス 感染症予防はひとりひとりの意識で、大きく実を結びます。 くれぐれもお身体にお気をつけてお過ごしください。 これからも東まり子は「いのちを大切にするまちづくり」をすすめていきます。 #いのちを大切にするまちづくり 東(ひがし)まり子 -- 以下、詳細 -- ひとり親家庭等住宅費助成制度 ページ番号1006731  更新日 令和2年5月25日 印刷 大きな文字で印刷 20歳未満の児童がいるひとり親家庭の父・母・養育者が、民間の共同住宅等を借りて家賃を支払っている場合に、家賃の一部を助成する制度です。 助成対象 以下の条件のすべてにあてはまるかたが助成対象となります。 ひとり親家庭であること(注意1)。 民間の共同住宅をご自身で借りて家賃を支払っていること(独立行政法人都市再生機構住宅、市営・都営・都民住宅、社宅、社員寮等を除く)。 武蔵野市内に引き続き6カ月以上在住していること。 所得制限限度額未満であること。 (注意1)ひとり親家庭とは、次のいずれかの状態にある児童と、児童を監護しているひとり親である父または母もしくは父母以外で児童を養育しているかたをいいます。 父母が離婚した児童 父または母が死亡した児童 父または母が生死不明である児童 父または母に1年以上遺棄されている児童 父または母が裁判所からのDV保護命令を受けた児童 父または母が法令により1年以上拘禁されている児童 婚姻によらないで生まれた児童 助成制限 次のいずれかに該当する場合には、助成を受けることはできません。 武蔵野市内に住所を有しない場合 生活保護を受給している場合 心身障害者住宅費助成を受けることができる場合 児童が児童福祉施設等に入所、または里親に委託されている場合 児童が申請者以外の父または母と生計を同じくしている場合 児童が母または父の配偶者(事実上の配偶者を含む)と生計を同じくしている場合 所得制限 申請者またはその扶養義務者(注意1)等の所得(注意2)(注意3)が下表の所得制限限度額以上である場合は、助成を受けることはできません。 所得制限限度額表 扶養人数 本人所得制限限度額 孤児等の養育者、扶養義務者 の所得制限限度額 0人 1,920,000円 2,360,000円 1人 2,300,000円 2,740,000円 2人 2,680,000円 3,120,000円 3人 3,060,000円 3,500,000円 4人 3,440,000円 3,880,000円 以下、1名増える毎に +380,000円 +380,000円 (注意1)扶養義務者とは、原則としてひとり親家庭等住宅費助成の受給者と同住所に居住されている直系血族(父母、祖父母、子、孫など)及び兄弟姉妹のかたをいいます。実際の扶養・被扶養関係の有無は問いません。 (注意2)所得とは、給与所得者は給与所得控除後の金額、確定申告のかたは収入額から必要経費を引いた額です。なお、所得制限限度額は、所得から次のものを控除したものになります。 社会保険料相当額8万円 特別障害者40万円 障害・勤労学生27万円 雑損・医療費・小規模企業共済等掛金の相当額 特 おはようございます 武蔵野市議会議員の東まり子です。 【 武蔵野市議会議員 東まり子 プロフィール 】 1966 年生まれ。現在 4人家族。子供 2人は市内小学校卒。武蔵野女子学院高校 → 武蔵野女子短期大学卒(現 武蔵野大学) → ホリプロにて、1998 年長野オリンピックなどスポーツマネジメントを手掛ける。 H23 . 武蔵野市議会議員初当選。H24 〜28. 武蔵野大学キャリアデザイン講師。H28. 市内小学校 PTA 会長。その後次点を経て、 H29 . 10月1日市議会補欠選挙にて 25,499 票を獲得、当選を果たす。H31. 市議会議員選挙、トップ当選。現在文教委員長。地域活動 → 地元商店街役員、コミセン協力委員、ジャンボリー指導員など、現在も地域活動に汗を流す。第 11 期生 自民党政経塾卒。 こども、障害者、高齢者政策進めます。 「東(ひがし)まり子」は頑張ります! 武蔵野に家族と暮らしこの街が大好きです 生活感覚あふれる市議会議員を目指します! #武蔵野市 #武蔵野市議会議員 #東まり子 #武蔵境 #自民党 #武蔵野市議会 #ひがしまり子 #市議会議員 #インスタ映えする市議 #東真理子 #文教委員会 #統一地方選 #ひがしまり子市議会議員 武蔵野市の自民党公認で挑戦する女性は32年ぶり #文教委員長 子育てを中心に、幼稚園、保育園、小学校、中学校など、幅広い分野で、市民の皆さんのご意見を伺いながら、しっかり政策を進めてい (武蔵野市役所) https://www.instagram.com/p/CAlmO4OgMnp/?igshid=l9o60ztkgdvb
0 notes