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#爪痕残して去りたい願望
weepingcoffeetiger · 2 years
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⁡ ⁡ 👣  👣 👣  👣 👣  👣 👣   👣 ⁡ #ロールケーキ ⁡ #クリスマス ⁡ #デイサービス ⁡ ๑⃙⃘´༥`๑⃙⃘♡ ⁡ ⁡ ↟𖡼↟𖠚↟𖡼↟𖠚↟𖡼↟𖠚↟𖡼↟𖡼↟𖠚↟𖡼↟𖠚↟𖡼↟𖠚↟𖡼 ⁡ @cotta_corecle ⁡ さんの材料を利用して♡ ⁡ *cotta 薄力粉 特宝笠 1kg ⁡ 商品コード:027140 ⁡ *cotta 細目グラニュー糖 2.5kg ⁡ 商品コード:027300 ⁡ *cotta ケーキピック 踊るサンタ(10片) ⁡ 商品コード:095876 ⁡ ⁡ このケーキピック ⁡ 『スーーーパーーーーーーー!!』 ⁡ なサイボーグの彼を思い出しません? ⁡ 私だけか? ⁡ #フランキーよ ⁡ ⁡ ✰⋆。:゚・*𓎸: ✰⋆。:゚・*𓎸✰⋆。:゚ ⁡ 先日、いつもより仕事を早くあがった為、 ⁡ いつもは閉まっている養老軒のお店が開いており ⁡ 『お、ゆうなたんは苺大福好きだから、買ってってあーげよ♡』 ⁡ と思ったのですが、レジのところで ⁡ 閉め作業に入っているバイトの子を見て ⁡ お金計算してるし、可哀想だから買うのはやめよう。 ⁡ と帰宅路につきました。 ⁡ その帰り路途中に、結果的に無事でしたが車に轢かれそうになりました。 ⁡ そのとき、パッと頭に浮かんだことは... ⁡ ここで死んで、ゆうなが私を見た時、苺大福を手に持ってれば ⁡ 『ママが手に苺大福持ってる... ⁡ ママは、ゆうなのことを思いながら帰ってこようとして死んでったんだね...ぅぅ😢』 ⁡ と、思われたはず... ⁡ しまったな ⁡ なんで、私苺大福買わなかったんだろ ⁡ クソ ⁡ と思いながら帰り、そのことをゆうなに話したら ⁡ 『苺大福買わなくて後悔した理由が、それ?www』 ⁡ と笑われました ⁡ #爪痕残して去りたい願望 ⁡ やっぱりママってメンヘラだよね ⁡ って言われました ⁡ #ゆうなの言動がメルタルハラスメント ⁡ #メンハラ ⁡ ๑⃙⃘´༥`๑⃙⃘♡ ⁡ <𝚖𝚢 𝚛𝚎𝚌𝚒𝚙𝚎 > ⁡ 𝚑𝚝𝚝𝚙𝚜://𝚛𝚎𝚌𝚒𝚙𝚎.𝚌𝚘𝚝𝚝𝚊.𝚓𝚙/𝚛𝚎𝚌𝚒𝚙𝚎.𝚙𝚑𝚙? 𝚛𝚎𝚌𝚒𝚙𝚎𝚒𝚍=𝟶𝟶𝟶𝟷𝟼𝟽𝟺𝟽 ⁡ ✰⋆。:゚・*𓎸:゚・⋆。✰⋆。:゚・*𓎸:゚・⋆。✰⋆。:゚・*𓎸 ⁡ #製菓材料ならコッタ #レシピもコッタ #PR ⁡ *製菓材料&ラッピング&お菓子参考は* ⁡ ☕︎ @seal_market ☕︎ @cotta_corecle ☕︎ @ouchi_cafe ⁡ #ファインダー越しの私の世界 #cake #pretty #可愛い #gym #foodiesofinstagram #岐阜 #食スタグラム #ハンドメイド #sweets #happy #インスタ映え #ありがとう #followme #写真好きな人と繋がりたい #canon #幸せ #food #yummy #l4l #岐阜市 (Ichinomiya, Aichi) https://www.instagram.com/p/Cpcg86hLLku/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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somei0318 · 9 months
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あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
新年早々、胸の痛むニュースが続き… 少しでも多くの命が救われることを祈っております。
去年夏に2回行った珠洲をはじめとした地域がまた地震に襲われ壊滅的な被害を受けているようで、お世話になった現地の方々が心配です。
遠くに住む私のできることは少ないかもしれませんが、心を寄せたいと思います。
明日冬コミで搬出した荷物が届くので、在庫数確認して通販(BOOTH)開きたいと思います…!早くて5日夜、土日あたりに開ければ〜と思っていますが、少々お待ちいただければ幸いです! 励ましのお言葉、本当にありがたいです……
ゲ謎本は現地で完売したのでひとまず通販予定はないです!通販で購入希望だった方すみません… 気に入っている絵や書いていただいた小説はまたどこかで再録できればと思っています。
スキロー本には去年の夏に珠洲に2回行った時の写真がたくさん収録されて���るので、まだ現在現地がどうなっているのか把握しきれていませんが、みつみちゃんたちの育った、見ている景色を見るという意味でも、スキロー本を手に取っていただけば… 去年の春の地震の爪痕が残ってたけど、私の本が記録になっていれば…と願っています。
「土地の記憶は人の記憶だと思います」
覚えている人がいる限り、必ず復興できる。そう信じています。
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moonrobe · 1 month
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単巻作品
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『風花雪月』
喫煙の補導で停学になった高校生の知幌。両親が激怒する家に帰りづらく、従兄の束の部屋に転がりこむ。その町で佳鈴という女性に出逢い、ひと目で惹かれるが、彼女には夫も娘もいて……男子高生×人妻のラブストーリー。
『IN BLOSSOM』
愛してるのは二次元の彼!重度の夢女子・季羽は進級したクラスで早瀬という女子生徒に目が留まる。近づきたい、でも触れたくない。そんな季羽は、“ノンセクシュアル”という恋はしてもセックスは求めない性を知る。
『月の堤』
精神安定剤を飲み、工場で働く毎日をやりすごす心を病んだ青年。ある日、職場で古株のおばさんになじられる新人の女性に目が留まる。何となく気になるものの、彼女には娘がいて──哀しいほどの純愛を綴る恋愛小説。
『ミメシスの夜』
昼は「普通」に紛れて過ごす彼らは、夜、いつものバーでありのままのすがたになる──ビアンの未桜、トランスセクシュアルの透羽、ゲイの七音とバイの伊緒。いつも四人で過ごす夜に、柳という中年男性が現れ……?
『僕の爪痕』
クラスメイトの女子である里菜に、暴力的なイジメを行なう少年・早原。スクールカースト上位の彼が、底辺の里菜を容赦なくいびる背景には、幼い頃からトラウマが関係していた。彼は里菜に「恐怖」を覚えていた──。
『PASTEL ZONE』
死後に待っていたのは異世界転生──じゃなく、現世に遺した人々に対して“無力”になったことを思い知らされる、気のふれそうな時間だった!家族、友人、恋人の中で過去になる自分に、あなたなら耐えられますか?
『砂糖づけの人形』
容姿のことでイジメられて以来、髪をほどくこともなくなった結菜。そんな結菜の前に現れたのは、家の都合で引き取られてきた佳月というはとこの美少年。次第に結菜に心を開いた佳月が語った、彼の過去とは──?
『Baby,RAG BABY』
僕は好きになった人と幸せになれない。同性を好きになった日から、そう思ってきた希雪。そんな悩みを知ってか知らずか、ふたごの妹の希咲は希雪の書いた詞をたどってギターを弾く。そんなふたりが出逢ったのは──
『ミチカケループ』
DV彼氏の束縛を愛だと言い張る彼女、そんな彼女に片想いする彼、ふたりの力になろうとする彼女、そして彼女が片想いする彼は……さまざまな男女の負の感情が絡みあい、吐き気がするような連作短編集。
『360°』
「僕、女の子が好きなんだよね」ある日、親友の雪月がそう打ち明けてきた。男ならそうだろうと思った千晶に、雪月は自分の心は女の子なのだと訴えてくる。さて、軆は男、心は女、それなら恋する相手は──?
『Blue hour』
クリスマスの朝、闘病していた僕の恋人が死んだ。彼女がいなくなったこの世で、それでも生きていかないといけない。それは気の遠くなる長い夜を過ごすようで──愛する存在を喪っても、前を向いて生きるための物語。
『死花』
僕には命など邪魔物でしかない──誰も自分など愛さない、そんな想いに囚われ、“心”や“意思”のない物体を愛し、やがて死体性愛に目覚めていく少年。殺さないと人を愛せない彼は、ついに一線を超えてしまうが……?
『まちばり』
幼い頃に捨てられた少年は、残飯の中から赤ん坊を拾い、その子を妹として守り育てることを心の支えに成長する。ずっと盗みで生きてきたふたりは、ある日、男娼宿のオーナーである男に目をつけられて──?
『ロリポップ』
遊びほうける高三の夏休み。大して本気でもない彼女、校則違反だらけの親友、俺も将来を考えることから逃げている。そんな現実逃避の毎日の中、自傷癖を持った女の子と出逢い、次第に惹かれていくけれど──?
『中2ヒーロー』
知名度と話題性で作家になる芸能人。俺のクラスメイトの神凪瑠斗みたいな奴。音楽、モデル、文学、何をしても認められて、何だよもう!俺の取り柄は書くことだけど、そのたったひとつにも光は当たらないのに。
『男の娘でした。』
駄菓子屋で店番をする癒は、子供たちに「姫」と揶揄われている。青春は華やかな男の娘として暮らした癒。しかし今はイケメン女子の恋人・伊鞠に首ったけ。彼女のためなら何も厭わぬ、ハイテンションラブコメ!
『僕らの恋はうまくいかない』
書くしか取り柄がない青年・希音の周りの人々は、みんな恋をこじらせている。女装男子に恋するゲイ、塀の中の初恋の人を想う少女、実の弟との関係に溺れる女性、好きな人のペットに過ぎない少年──
『彼女の恋は凪いでいる』
恋をする。私にはその感覚が分からない──自分はどこかおかしいのかと悩む舞凪が知ったのは、自分が無性愛者(アセクシュアル)だということ。そんな彼女と、高校で知り合った三人組の男女は……?
『それでも君に恋をする』
この気持ちは報われないかもしれない。どんなに想っても届かないかもしれない。距離を取る親友、兄の婚約者、勘違いする彼女、振られた相手、長年の友達、失恋を引きずる男女。それでも、君が好き。
『雪の十字架』
彼女は俺を怨みながら死んだ。高校時代の同級生の死に取り憑かれ、精神を病んだ瑞栞。しかし恋人である陽葵に寄り添われ、やっと未来に光が芽生えたはじめて──そのとき、少女の怨念としか思えない惨劇が始まった。
『恋にならない』
三十歳。焦って婚活もしない私は、誰とも結婚なんてしない気がしてきた。そのほうが気楽でいいとさえ思っていた。なのに、あるきっかけで夫のいる女性と親しくなって──ねえ、私たち、友達のままならよかったの?
『白濁の血』
俺のなめらかで蒼白い肌は、まるで白濁を浴びたときのままのようで。幼い頃、さらわれて犯人と倒錯的な時間を過ごした美しい少年。忌まわしい記憶をなぞりながら、カミソリで自分を傷つける。彼の傷ついた魂の在処は?
『深紅の盃』
血を飲みたい。僕はその異様な欲求をこらえきれない。でも、君が僕のそんな欲望を理解してくれた。だから、ただ君のそばにいられたらよかったのに──ある日突然現れた美しい彼が、僕から理性を掠奪する。
『雪薬』
枕営業も厭わないホステスの凪子。そんな彼女を支えるのは処方される大量の薬。今日も口説き落とそうとしてくる客である作家が飲みに来る。薬さえ飲めば、まともでいられるんだから、それでいいじゃない──
『MIDNIGHT』
お互いを犯すように、一線を超えて禁忌に耽る姉弟。そこに愛はなく、ただいらだちを吐き出して夜の行為を重ねていたが、ある日、姉弟の幼なじみが隣の家に帰ってくる。そこから、姉弟の関係は揺らぎはじめて……
『START OVER』
夢の中でくらい、幸せな恋ができたらいいのに。そんなことを思うアラサー女子・真幸は、今日も職場後輩の恋バナマウントをかわす。このままひとりなのかな。そんな不安も一抹感じる日々、彼女の前に現れたのは──?
『アイオライトの夜』
あの残暑の夜を、私はきっとずっと忘れない。祖母を亡くし、乾燥したような退屈な日々を送っていた少女。ある日、彼女はクラスメイトの少年の飼い猫探しにつきあうことになり、さらに「帰らずの森」に踏み込むことになるが……?
『アスタリスク』
ずっと死ねばいいのにと思いながら生きてきた。機能不全の家庭、登校拒否の教室、そんな環境に身を置き、繰り返すのは自殺にも至らない自傷行為。それでも、こんな僕でもまだ──。言ってはいけない願いをこめて。
『指先に触れる君が』
周りにはゲイであることを隠し、ひっそりだけど、穏やかにつきあう映乃と真冬。しかし思いがけない運命に引き裂かれ、かけはなれたふたりに起きる、切なすぎる奇跡──ファンタジー風味のボーイズラブ。
『万華鏡の雫』
秘かに想いを寄せていた恵波とつきあうことになった水澪。幸せな交際が始まったが、恵波をつけ狙う不気味な影と、謎めいた水澪のルームメイト・早凪によって、徐々に歯車が狂いはじめる──血塗られたグロテスクBL。
『揺籃に花』
俺の家族はみんな狂っている。そんな俺も家族を避けて引きこもって暮らし、夜にだけ街を出歩く。いつものバーで引っかける男娼のキキのことは気に入ってる。ただし恋愛感情ではない、そう思っていたけれど──
『さいれんと・さいれん』
「ほかに好きな子ができた」いつもそう言われて彼氏に振られる桃寧。俺なら心変わりなんかしないのに。そう思っていた水雫は、ついに桃寧とつきあうことに!そして現れた桃寧の弟は男の娘!?NTR系BL。
『ローズケージ』
雪理と雪瑠、そして颯乃。幼い頃はいつも三人一緒だった。しかし雪瑠が失踪したことで、三人はばらばらになってしまう。数年が経ち、中学生になった颯乃の前に現れた雪瑠が語った、雪理と共に受けていた虐待は──
『Noise From Knife』
担任教師の水波と秘かにつきあい、心も軆も愛されている優織。このままずっと先生のそばにいたい。そんな甘い願いは、優織がナイフを持った何者かに襲われたことで壊れはじめる──恋心と友情が錯綜するBL。
『樹海の影』
静かに暮らす姉弟の藍と燐。ふたりは夜ごと軆を重ねる、ゆがんだ男女でもあった。このままではいけない──分かっていても、呪われた記憶を共有するふたりは、互いに狂おしく執着する。これは愛情か、あるいは呪縛か。
『黒血の枷』
幼い頃、おぞましい出来事に見舞われたこまゆ。しかしその記憶も薄れた頃、その出来事が起きた町へと帰ってくる。懐かしい友達、幼なじみとの甘やかな再会──しかしこまゆを襲った悪夢は、まだ終わっていなかった。
『茜さす月』
幼い頃の忌まわしい記憶を共有し、互いを求めあってきた姉弟、萌香と有栖。ある日を境にふたりは離れることを選ぶが、それでも秘めた心では相手への狂気じみた執着が絶えることはなくて──禁断の愛の果ては?
『紅染めの糸で』
幼い頃から片想いしていた年上の幼なじみに大失恋した香凪。友達には早く次を見つけろと言われるが、簡単に心は切り替えられない。そんなとき遭遇したのは「男なら誰でもやれる女」こと深月毬実の情事現場だった。
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kotobatoki-arai · 24 days
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滅紫雲の揺籃
 方法の片を退く背中は痛いのか、痒いのかもわからない。ヒレのとろびが従うばかりに 目頭はあつくあった。またあんまり綺麗で、握りしめて確かに黒。外海を触れる、捉えられる、とはいえ。また妙におずおずと正面に堕ろした。ぴちょん。ちょんと横向きにある、光量は一変する。そして散りばめた浅い小魚の、捕まえていたものもはっきりとはしない みな窶れた手紙が閉じたまま。隙に与え、乳房を含ませるその怪異の、引き返す軌道に射す  ほおを手のひらで支え、その事の起こりを、火照るような彼方なりのヤイバとして、慌ただしく過ぎる背景を少しばかり切り取り配置した。じっと見渡せば。採光、通風、眺望、燦然と近いところで どれもめくりかえしては、剥落する。ねむっているあいだにみた景色だ――雷の鳴る音があべこべに散らばった、透き通るような星星の間を亘るみち、あらかじめ願い求めたあと。忘れな草が輝いていた。目映いほど零れる、この星とあり空となり光と去り月日と在りて、くまなく流れゆく、過去も未来と再生され、また嘘を繕うように記憶の彼方に励まそうとするけれども  伝い歩く手がわけもなく届かぬ 風采の、差出人の記述はないが。その頃とは瑪瑙/琥珀/真珠、いづれ先端で涸れ井戸のかたわらであう。まるでお互いここに純なタマシイが。朴訥に枯れ、というか痂皮も掠れ傷跡ひとつ残らない。大勢がひろく見合わせるそこで倒れたい。大変だと口を借り、唇を噛む。結して、進まねばならないとおもわれ、はなしておくこと  おもに普通と異なった様子。そればかりは熱もなく、終る。過ぎ去った時 かたくなる。ちいさな家 しげみ ちから強く。オオルリの羽音はどこか。またくっつきやすいものを、かたちづくる。新しい/そのてをとって/撫でるばかりの爪痕が、くもなく、かえってはとおく あっちへゆき/つみあがる。もともとはガラクタの化章 これが色褪せず距離に適う わずかにも 未来サキの覚サトりだ いちいち。 (尋ね回っては くれないのである) 永く息を噴ハいている凡庸にささくれ立つ 〈蛭は萎れ 虱は腐る 蟻は錆びたばかりの〉 自由であろう 賭して つぶやく  道をつけるように踏んづけていく翠雨。昨日は泣いた、今日は笑った。すこし顔をのぞかせる白い花が開け放す向こう側から、どどと みちみちてできるだけの、ちょいと射すから。耳触りのいいその声が、好きだと思った  自惚れを切り離したムにかえり、そこに小石という成れの果てを飾りつける。愛称は踊り子をしています。それだけ 視線を投げて創られる 生々しさ、選ぶばかりと発露し、弱く眩しい乏しさもやわらかくある栄華と 違いないと明らかに並び立てる。まばらに緩め排泄と数を合わせ、それが であって 最もうすく多くはしる、みずぎわで、明日はすべてで。どうか赤茶けるいいゆめを。沈んだ泡を言葉にする  ただ海底に放牧された明星がゆれながら、咲きひらく。と、きいたことがあります。死胎になり損なう鬨の声をはじく。きれいなたしなみが誠に、ほがらかなきれはしでくりぬく、と、ひとつまみ。合鍵と粘土で退屈にピントを合わせる、よほどひそひそ放つということは、むちゃくちゃな役目で  そして得られたことによると、満員列車の表情をうつした。目ではみえない濃淡のそれを追って、どれもまたとない鈍色。じんわりと浸透する、ひとで或る空を仰ぐ。寄せ集めの暁が息苦しさの干潟へ。ゆっくりでいいから手を引いて、さびしさが栄えてから周囲のものと紛れていく/どのみちも/月出ていて/複雑で翳りあい。あくどい色  待ちくたびれる朝な夕な、青い花火が仰け反るだけ。あかのたにんの谺コダマである 名前は、ふっつり握手する。測り兼ねる刹那に追いやられる条件は花瓶に汲み込む。もう彼は誰カワタレと抱え、反対に敷地のうちに、並外れてまとまりもなく大きくとんとんな様  ちろちろと明かりをつける。灰桜の鶏鳴が、睫毛がゆっくりと下を向いた 空気は冷ややかな形でぬるまゆを保ち。きっと仕方の無いことなのだと。観察する刺激によって伏し、残り火は消えるものと合掌する、永遠トワに対する無明が、現象すでに夢幻逆巻くのだと。まばたきひとつで手元に残る、苹果の魔法。憧れながら――透明人間としらない、花。ならこれら蘖ヒコバエ(樹木の断面)にうまれもつカラクリに、訝しんで伺おうとしていると、見てみろ 2024/04/27 滅紫雲の揺籃ヨウラン
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the-clockwork-maiden · 10 months
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聖痕サクリファイス
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作詞:葉月ゆら 作編曲・Choir:甲斐ユウ Guitar:音冶(Resonecia)
(乱れ散り舞う薔薇は 胸に咲き誇って 悪を饗す刺が甘やかな痛み 聖なる生贄達��興じる企み 罪も罰も恐れぬ 貴方がいるから 結ばれ狂いはじめ 倫理も砕けて 触れ合えぬ距離で良い 心感じたいから)
高貴な私に下僕が膝まづく ほら一人また一人 愛されたいと願うの
誰もが心の底に持つ欲望は ただ一つそう一つ 支配され飼われたいのでしょう
紅い唇 潜むカンタレラ 純潔の欠片を散りばめた 白い肌にあの人の痕が 許されぬ恋それでもいい
嗚呼 穢れなど二人には無いの 策略は巡り踊りだした 秘密の鍵 甘やかな過去を オルゴールの音色に添えて
(誰よりも呼び合う兄は一人 月夜の影に隠れ惹かれあう 罠の中 手繰り寄せた糸なら 激情に喜び見出すだろうか 見えない未来なら捨ててしまえ 涙こそ想い伝わる雫 触れられなくても良い 見つめあえば 伝わる熱と意味 何も怖くないから)
今宵、生贄は どんな声で歌う 清楚なる淑女 毒に魅入られる
(乱れ散り舞う薔薇は 胸に咲き誇り 悪を饗す刺が甘やかな痛み 聖なる生贄達 興じる企み 罪と罰重ね合い 貴方を彩る影)
我が身の痛みを隠しながら生きて ただ少し もう少し 満ちては欠ける月のよう 望みを叶えて早く迎えにきて 今すぐに 口づけを 壊れてしまう前にどうぞ
儚い夢 含むカンタレラ 残酷な想い出 食み生きる 白い肌にあの人の熱を 嗚呼 感じたいわ 終わらぬ罪
もう楽園を求め生きるほど 愚かな子供ではいられない 果て無き夜 揺れ足掻く躯 爪を立て 只、求め出した
(誰より響きあう兄はは一人 星空に照らされて惹かれあう 蜜の中 手繰り寄せた意図なら 激情に喜び見出すだろうか 見えない支配すら愛の証 涙こそ想い伝わる雫 触れられなくても良い 見つめあえば 伝わる熱と意味 何も怖くないから)
今宵 誰のため 愛 偽り歌う 清楚なる淑女 禁忌を犯すの
紅い唇 潜むカンタレラ 純潔の欠片を散りばめた 白い肌にあの人の痕が 許されぬ恋 それでもいい
嗚呼 穢れなど二人には無いの 策略は巡り踊りだした 秘密の鍵 甘やかな過去を オルゴールの音色に添えて
(誰よりも呼び合う兄は一人 月夜の影に隠れ惹かれあう 罠の中 手繰り寄せた糸なら 激情に喜び見出すだろうか 見えない未来なら捨ててしまえ 涙こそ想い伝わる雫 触れられなくても良い 見つめあえば 伝わる熱と意味 何も怖くないから)
今宵 戯れに 嘆き含ませましょう 清楚なる淑女 血を交え祈る
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chaukachawan · 1 year
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伝えたい時に伝えないと
いつ無理になるかわかんないからね。ゆるあです🐴
役者紹介です。35期はもっと仲良くなりたいぜの気持ちを込めて、やりたいデートを提案します。
・児
いやーお疲れ様です。舞台について、無茶みたいな要望をしてくれてありがとう。おかげでスチルが構造美な設計をしてくれて、大道具班員さまたちがそれを形にしてくれました。本番、純粋に楽しみにしてます
・苔丸
久しぶりにちゃうかで整理整頓してくれるタイプが現れた。箱チーフに任命される日も近い。演技も丁寧に丁寧に塗り重ねてくれるので、気づけばものすごい厚みになっていそう。今後が楽しみ。
1万ピースくらいのパズル
・衿君
とても仲良くなれるか、全然仲良くなれないかの2択だと思っている。今のところ意味もなく手を振り、反応に困られた。ごめんね。しばらくは遠くから彼の華麗な体の使い方を眺めていようと思う
コアラの観察
・君安飛那太
時々稽古場に行くと同期が嬉しい、とおかしな動きとにっこにこ笑顔で歓迎してくれた。今公演の功労賞を彼にあげたい。演技力が段違いに伸びてて何かあったっけと困惑するなどしている。すごいや。
・たぴおか太郎
彼女はもっと各方面からよしよしされるべき。どれだけ努力して、時間や精神をつかって、今そこに居るのかきっと誰も知らない。それが彼女の凄いところだけど、頼むから抱きしめさせてくれ
・じゃがりーた三世
役者もスタッフも苦労している。そういう人にはお疲れ様と言いたいが、彼が疲れたかは知らない。ちゃうかを滅ぼす人ランキングとしっかり者ランキングで共に2位をとってるの面白すぎる
・雨音
可愛い女を見るとまず性格の悪さを予想するわたしの疑いを秒速で打ち砕いた。独特のセリフ回しをする、1人芝居を見たい。たぶん本当にどんな格好をさせても私服みたく似合う、農家のおばさんのコスプレとか
じゃがいも掘り
・緒田舞里
彼女は演劇が好きなんだなあと改めて感じている。好きだからちゃんと向き合いたいので、目が合わないと落ち込んだり空回ったりする。きっと周りの方が彼女の凄さには気づいている、まずはなでなでしようね
・えどいん
見る度上手くなっててびっくりする。なんならあと30年くらいちゃうかにいたら何者かにはなってそう。その時は50歳か。やめた方が良いな。ふわっと現れて、働いて、ふわっと去っていく姿に救われていたよ
・肆桜逸
まずは土下座。余計なお世話を沢山しました。なんやかんやで男の子だな〜と感じた今公演。役者楽しそうね、作業中も男の子たちに囲まれて楽しそうだった。ここまで来たら徹底的に私を搾り取ってくれたら良いと思う
・園堂香莉
彼女の周りには風が吹く。班員でもないのにインパクトを握り、悪戦苦闘する姿が有り難すぎた、可愛いすぎた。また来てね。立っているだけで絵になるし、何をしてもしなやかで綺麗。
大人しく餌を垂らして待つタイプの釣り
・海泥波波美
多分ものすごいバランス感覚で人格を保っている、ので丸ごとふわふわに包みたくなる。何かを掴んだ瞬間にものすごい成長を遂げるだろう役者。大道具も沢山ありがとうだけどご自愛ください
予定は立てるけど二度寝の気持ちよさに負ける
・黒井白子
気が回りすぎてびっくりしている。大道具の作業場で、お願いしようと思った仕事を既に終えてくれていた事が1度や2度ではない。努力家でこつこつ積み重ねられる役者、1度彼に背中を預けてみたい。
彼のgrwmを私が撮影する
・縦縞コリー
彼の表情筋がお気に入り、いつ見ても面白い。褒めてる。大道具も沢山手伝ってくれてありがとう。どんな役を与えても彼の味を加えて深みを出してくれそう、出汁みたいな役者。必須。
おネエごっこ
・ミル鍋
養いたい。知れば知るほど可愛い沼人間兼役者。目が無くなるタイプの笑い方も、上手な甘え方もずるい程可愛い。のに立ち姿も声もイケメンすぎて惚れる。殺陣はいつか絶対やって欲しい。
一緒に料理。ゆにはお皿を並べてくれてたら良いよ
・岡崎仁美
久しぶりに会っても変わらずゆるあさ〜ん、って話しかけてくれてとてもとても嬉しかった。大変なんですよ、と言いながらにこにこ仕事を片付ける姿には脱帽するしかない。もはや恐怖。
・鴨兎春
大道具の作業場でなぜかハケを持っているのを見る方が多かった気がする。今回の役がハマりすぎてて他の役のイメージが湧かないんだけど、他の役でも同じように思うんだろうか。楽しみにしてます。
ごめん消えてた、縁側ですいかを食べる
・アリリ・オルタネイト
彼女の舞美とか役への向き合い方・こだわり方が好きなので、今後あと何回見れるだろうと思うと寂しい。今回役者は無くなった幻のシーンしか見ていない、けどあそこで初めて見た彼女の顔が忘れられない。
・黍
もしかして彼女と演劇できる機会ってもうそんなに多くはないのでは、と気づいてしまった。秋こそがっつり一緒にやりたい。欲を言えばずっとそばにいてほしい、これはプロポーズ。びっくらぶ。
・近未来ミイラ
実は彼の才能をまだ知らない。が、少なくとも言葉のセンスが好きなので脚本を読みたい。今回は出演時間の割に爪痕残すキャラを演じてるのでずるい。今後も人柱じゃなくても大道具来てね
同じ部屋で別の本を読む
・大福小餅
彼女が作業場にいるということが大道具作業をする理由になる。彼女は稽古場でも光、たぶん物理的に。なんか明るい気がする。姿勢と声がきれいなのでどんな役をやらせても美しい。
ボウルで餅つき
・田中かほ
誰かの為に生きていたい
お客様、役者、スタッフ、その他関わってくださった全ての方々が良い公演だったと言ってくれるようなものになりますように。
最後、もうひと頑張りです
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citrussdance · 3 years
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[SONG TRANSLATION] 失楽園 (shitsurakuen; lost paradise) by Reol
KANJI
あたしノーベンバーならさわって 用無し、足すセンテンス繋いで したくなっちゃうこと大体が 悪いことなんだよごめんね
握ったら終わる洋洋な関係 別に本性願望そうじゃない 馬鹿げてんのアイノウ、ラララ 清く正しく生きて死ね
都合がいいと不都合ですか 執着と情、差はどこですか 賢く老いて子どもを持てば 床上手ですから愛され給うて
中途半端立ち入りは禁止 侵しちゃだめわかってる倫理 あたし間違えてました さあ、ご教授ください
強引な手付きでさわってよ 未練なく捨て去ってよ これ以上もうだめだよ どうしたって報われないんだよ わかってるから終わらせてよ 失楽園
今日会えますかフライデー それとなく偶然を仕込んだら ���更待った話です あーあまた破綻しちゃった
その気になってく次第に もう天国なんかには行けず仕舞い 最高ライドンダダダ あたし悪くない、多分
強引な手付きでさわっても 未練だけが残るでしょう これ以上もうだめだと そう言ったってやめられないんだよ ああどうやって終わらせるの
なんでもいいから言い訳を頂戴な 墜落してく果実似合った赤 背中に回した爪で痕を残して 簡単な���言で片付けないで
強引な手付きでさわってよ 未練なく捨て去ってよ これ以上立ち入らないで どうすべきかわかっているんだよ わかったから一思いに終わらせてよ
なんでもいいから言い訳を頂戴な 墜落してく果実似合った赤 背中に回した爪で痕を残して 簡単な一言でハッピーエンドね
不完全同士に愛し合った交配が 産み落とした四苦八苦祝ったエゴ あなたに出会った一致を問い正して わかんないな指さして 幸せってどれだった?
誰にも占えないわけは 最初から意味なんかないの
失楽園
ROMAJI
atashi NOVEMBER nara sawatte you nashi tasu SENTENCE tsunaide shitaku nacchau koto daitai ga warui koto nandayo gomenne
nigittara owaru youyou na kankei betsu ni honshou ganbou sou janai bakageten no I KNOW rarara kiyoku tadashiku ikite shine
tsugou ga ii to futsugou desu ka shuuchaku to jou, sa wa doko desu ka kashikoku oite, kodomo wo moteba toko-jouzu desu kara aisere-tamau te
chuuto hanpa tachi-iri wa kinshi okashicha dame wakatteru rinri atashi machigaetemashita saa gokyouju kudasai
gouin na tezuki de sawatte yo miren naku sute-satte yo kore ijou mou dame da yo doushitatte mukuwarenainda yo wakatteru kara owarasete yo shitsu-rakuen
kyou aemasuka FRIDAY sore to naku guuzen wo shikondara ima-sara matta hanashi desu aa mata hatan shichatta
sono ki ni natteku shidai ni mou tengoku nanka ni wa ikezu shimai saikou RIDE ON dadada atashi warukunai tabun
gouin na tezuki de sawattemo miren dake ga nokoru deshou kore ijou mou dame da to sou ittatte yamerarenainda yo aa dou yatte owaraseru no
nandemo ii kara iiwake wo choudai na tsuiraku shiteku kajitsu niatta aka senaka ni mawashite tsume de ato wo nokoshite kantan na hitokoto de katazukenaide
gouin na tezuki de sawatte yo miren naku sute-satte yo kore ijou tachi-iranaide dou subeki ka wakatteirunda yo wakatta kara hito-omoi ni owarasete yo
nandemo ii kara iiwake wo choudai na tsuiraku shiteku kajitsu niatta aka senaka ni mawashite tsume de ato wo nokoshite kantan na hitokoto de HAPPY END ne
fukanzen-doushi ni aishi-atta kouhai ga umi-otoshita shikuhakku iwatta ego anata ni deatta icchi wo toi-tadashite wakannai na yubi sashite shiawasette dore datta
dare ni mo uranaenai wake wa saisho kara imi nanka nai no
shitsurakuen
ENGLISH
Touch me, but only if it’s November Put the sentences I’ve lazily tacked on the ends of each other together The things that I end up wanting to do are usually bad things, sorry
A loose relationship that’ll end if you look at it too closely Is this the real me? My lifelong dream? Nah, it’s not like that I know I’m just being stupid, la-la-la Live purely and rightly, then die
Is inconvenient for you if it’s convenient for me? What’s the difference between obsession and love? Grow old and wise, and if you have kids that’ll prove you’re good in bed, so you’ll be given affection in return
Half-assed intrusions are invalid I know, morally, being violated is wrong I have made a grave error– please, teach me the right way
Touch me with heavy hands Throw me away without a second thought I can’t handle any more than this I know it’ll be one-sided no matter what I do, so please just let me end this Lost paradise
Today’s a Friday; will I see you? If I don’t, I can just stage a coincidence I know it’s too late to say this, but I waited for you– –aww, I failed again
Since I’ve gotten like this, once it’s over, I obviously won’t be able to go to heaven anymore Fuck yeah, ride on, da-da-da I’m not a bad kid. . . probably
Even if you touch me with heavy hands I’ll only regret it in the end, knowing I can’t handle any more But just saying that won’t make it stop Ahh, how am I supposed to end this?
I don’t care what it is, so just give me an excuse, any excuse Bright red suits fallen fruit Wrap your arms around me and leave scratches down my back Don’t brush this off with a half-assed word or two
Touch me with heavy hands Throw me away without a second thought Don’t violate me any more, please I know what I’m supposed to do I get it, I know, so let me end this quickly
I don’t care what it is, so just give me an excuse, any excuse Bright red suits fallen fruit Wrap your arms around me and leave scratches down my back With just a half-assed word or two, we can have a happy end, right?
An ego that celebrates the suffering that we birthed through a love between two equally imperfect people I go back to the day we met, and ask, point it out for me–I can’t tell anymore– What part of this, really, is happiness?
The reason no one could have predicted this is because it never had any meaning from the start
Lost paradise
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2ttf · 12 years
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Latin//Alphabet// ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZabcdefghijklmnopqrstuvwxyz0123456789 !"“”#$%&'‘’()*+,-./:;<=>?@[\]^_`{|}~ Latin//Accent// ¡¢£€¤¥¦§¨©ª«¬®¯°±²³´µ¶·¸¹º»¼½¾¿ÀÁÂÃÄÅÆÇÈÉÊËÌÍÎÏÐÑÒÓÔÕÖ×ØÙÚÛÜÝÞßàáâãäåæçèéêëìíîïðñòóôõö÷øùúûüýþÿ Latin//Extension 1// ĀāĂ㥹ĆćĈĉĊċČčĎďĐđĒēĔĕĖėĘęĚěĜĝĞğĠġĢģĤĥĦħĨĩĪīĬĭĮįİıIJijĴĵĶķĸĹĺĻļĽľĿŀŁłŃńŅņŇňʼnŊŋŌōŎŏŐőŒœŔŕŖŗŘřŚśŜŝŞşŠšŢţŤťŦŧŨũŪūŬŭŮůŰűŲųŴŵŶŷŸŹźŻżŽžſfffiflffifflſtst Latin//Extension 2// ƀƁƂƃƄƅƆƇƈƉƊƋƌƍƎƏƐƑƒƓƔƕƖƗƘƙƚƛƜƝƞƟƠơƢƣƤƥƦƧƨƩƪƫƬƭƮƯưƱƲƳƴƵƶƷƸƹƺƻƼƽƾƿǀǁǂǃDŽDždžLJLjljNJNjnjǍǎǏǐǑǒǓǔǕǖǗǘǙǚǛǜǝǞǟǠǡǢǣǤǥǦǧǨǩǪǫǬǭǮǯǰDZDzdzǴǵǶǷǸǹǺǻǼǽǾǿ Symbols//Web// –—‚„†‡‰‹›•…′″‾⁄℘ℑℜ™ℵ←↑→↓↔↵⇐⇑⇒⇓⇔∀∂∃∅∇∈∉∋∏∑−∗√∝∞∠∧∨∩∪∫∴∼≅≈≠≡≤≥⊂⊃⊄⊆⊇⊕⊗⊥⋅⌈⌉⌊⌋〈〉◊♠♣♥♦ Symbols//Dingbat// ✁✂✃✄✆✇✈✉✌✍✎✏✐✑✒✓✔✕✖✗✘✙✚✛✜✝✞✟✠✡✢✣✤✥✦✧✩���✫✬✭✮✯✰✱✲✳✴✵✶✷✸✹✺✻✼✽✾✿❀❁❂❃❄❅❆❇❈❉❊❋❍❏❐❑❒❖❘❙❚❛❜❝❞❡❢❣❤❥❦❧❨❩❪❫❬❭❮❯❰❱❲❳❴❵❶❷❸❹❺❻❼❽❾❿➀➁➂➃➄➅➆➇➈➉➊➋➌➍➎➏➐➑➒➓➔➘➙➚➛➜➝➞➟➠➡➢➣➤➥➦➧➨➩➪➫➬➭➮➯➱➲➳➴➵➶➷➸➹➺➻➼➽➾ Japanese//かな// あいうえおかがきぎくぐけげこごさざしじすずせぜそぞただちぢつづてでとどなにぬねのはばぱひびぴふぶぷへべぺほぼぽまみむめもやゆよらりるれろわゐゑをんぁぃぅぇぉっゃゅょゎゔ゛゜ゝゞアイウエオカガキギクグケゲコゴサザシジスズセゼソゾタダチヂツヅテデトドナニヌネノハバパヒビピフブプヘベペホボポマミムメモヤユヨラリルレロワヰヱヲンァィゥェォッャュョヮヴヵヶヷヸヹヺヽヾ Japanese//小学一年// 一右雨円王音下火花貝学気九休玉金空月犬見五口校左三山子四糸字耳七車手十出女小上森人水正生青夕石赤千川先早草足村大男竹中虫町天田土二日入年白八百文木本名目立力林六 Japanese//小学二年// 引羽雲園遠何科夏家歌画回会海絵外角楽活間丸岩顔汽記帰弓牛魚京強教近兄形計元言原戸古午後語工公広交光考行高黄合谷国黒今才細作算止市矢姉思紙寺自時室社弱首秋週春書少場色食心新親図数西声星晴切雪船線前組走多太体台地池知茶昼長鳥朝直通弟店点電刀冬当東答頭同道読内南肉馬売買麦半番父風分聞米歩母方北毎妹万明鳴毛門夜野友用曜来里理話 Japanese//小学三年// 悪安暗医委意育員院飲運泳駅央横屋温化荷開界階寒感漢館岸起期客究急級宮球去橋業曲局銀区苦具君係軽血決研県庫湖向幸港号根祭皿仕死使始指歯詩次事持式実写者主守取酒受州拾終習集住重宿所暑助昭消商章勝乗植申身神真深進世整昔全相送想息速族他打対待代第題炭短談着注柱丁帳調追定庭笛鉄転都度投豆島湯登等動童農波配倍箱畑発反坂板皮悲美鼻筆氷表秒病品負部服福物平返勉放味命面問役薬由油有遊予羊洋葉陽様落流旅両緑礼列練路和 Japanese//小学四年// 愛案以衣位囲胃印英栄塩億加果貨課芽改械害街各覚完官管関観願希季紀喜旗器機議求泣救給挙漁共協鏡競極訓軍郡径型景芸欠結建健験固功好候航康告差菜最材昨札刷殺察参産散残士氏史司試児治辞失借種周祝順初松笑唱焼象照賞臣信成省清静席積折節説浅戦選然争倉巣束側続卒孫帯隊達単置仲貯兆腸低底停的典伝徒努灯堂働特得毒熱念敗梅博飯飛費必票標不夫付府副粉兵別辺変便包法望牧末満未脈民無約勇要養浴利陸良料量輪類令冷例歴連老労録 Japanese//小学五〜六年// 圧移因永営衛易益液演応往桜恩可仮価河過賀快解格確額刊幹慣眼基寄規技義逆久旧居許境均禁句群経潔件券険検限現減故個護効厚耕鉱構興講混査再災妻採際在財罪雑酸賛支志枝師資飼示似識質舎謝授修述術準序招承証条状常情織職制性政勢精製税責績接設舌絶銭祖素総造像増則測属率損退貸態団断築張提程適敵統銅導徳独任燃能破犯判版比肥非備俵評貧布婦富武復複仏編弁保墓報豊防貿暴務夢迷綿輸余預容略留領異遺域宇映延沿我灰拡革閣割株干巻看簡危机貴揮疑吸供胸郷勤筋系敬警劇激穴絹権憲源厳己呼誤后孝皇紅降鋼刻穀骨困砂座済裁策冊蚕至私姿視詞誌磁射捨尺若樹収宗就衆従縦縮熟純処署諸除将傷障城蒸針仁垂推寸盛聖誠宣専泉洗染善奏窓創装層操蔵臓存尊宅担探誕段暖値宙忠著庁頂潮賃痛展討党糖届難乳認納脳派拝背肺俳班晩否批秘腹奮並陛閉片補暮宝訪亡忘棒枚幕密盟模訳郵優幼欲翌乱卵覧裏律臨朗論 Japanese//中学// 亜哀挨曖扱宛嵐依威為畏尉萎偉椅彙違維慰緯壱逸芋咽姻淫陰隠韻唄鬱畝浦詠影鋭疫悦越謁閲炎怨宴援煙猿鉛縁艶汚凹押旺欧殴翁奥憶臆虞乙俺卸穏佳苛架華菓渦嫁暇禍靴寡箇稼蚊牙瓦雅餓介戒怪拐悔皆塊楷潰壊懐諧劾崖涯慨蓋該概骸垣柿核殻郭較隔獲嚇穫岳顎掛括喝渇葛滑褐轄且釜鎌刈甘汗缶肝冠陥乾勘患貫喚堪換敢棺款閑勧寛歓監緩憾還環韓艦鑑含玩頑企伎忌奇祈軌既飢鬼亀幾棋棄毀畿輝騎宜偽欺儀戯擬犠菊吉喫詰却脚虐及丘朽臼糾嗅窮巨拒拠虚距御凶叫狂享況峡挟狭恐恭脅矯響驚仰暁凝巾斤菌琴僅緊錦謹襟吟駆惧愚偶遇隅串屈掘窟繰勲薫刑茎契恵啓掲���蛍傾携継詣慶憬稽憩鶏迎鯨隙撃桁傑肩倹兼剣拳軒圏堅嫌献遣賢謙鍵繭顕懸幻玄弦舷股虎孤弧枯雇誇鼓錮顧互呉娯悟碁勾孔巧甲江坑抗攻更拘肯侯恒洪荒郊貢控梗喉慌硬絞項溝綱酵稿衡購乞拷剛傲豪克酷獄駒込頃昆恨婚痕紺魂墾懇沙唆詐鎖挫采砕宰栽彩斎債催塞歳載剤削柵索酢搾錯咲刹拶撮擦桟惨傘斬暫旨伺刺祉肢施恣脂紫嗣雌摯賜諮侍慈餌璽軸叱疾執湿嫉漆芝赦斜煮遮邪蛇酌釈爵寂朱狩殊珠腫趣寿呪需儒囚舟秀臭袖羞愁酬醜蹴襲汁充柔渋銃獣叔淑粛塾俊瞬旬巡盾准殉循潤遵庶緒如叙徐升召匠床抄肖尚昇沼宵症祥称渉紹訟掌晶焦硝粧詔奨詳彰憧衝償礁鐘丈冗浄剰畳壌嬢錠譲醸拭殖飾触嘱辱尻伸芯辛侵津唇娠振浸紳診寝慎審震薪刃尽迅甚陣尋腎須吹炊帥粋衰酔遂睡穂随髄枢崇据杉裾瀬是姓征斉牲凄逝婿誓請醒斥析脊隻惜戚跡籍拙窃摂仙占扇栓旋煎羨腺詮践箋潜遷薦繊鮮禅漸膳繕狙阻租措粗疎訴塑遡礎双壮荘捜挿桑掃曹曽爽喪痩葬僧遭槽踪燥霜騒藻憎贈即促捉俗賊遜汰妥唾堕惰駄耐怠胎泰堆袋逮替滞戴滝択沢卓拓託濯諾濁但脱奪棚誰丹旦胆淡嘆端綻鍛弾壇恥致遅痴稚緻畜逐蓄秩窒嫡抽衷酎鋳駐弔挑彫眺釣貼超跳徴嘲澄聴懲勅捗沈珍朕陳鎮椎墜塚漬坪爪鶴呈廷抵邸亭貞帝訂逓偵堤艇締諦泥摘滴溺迭哲徹撤添塡殿斗吐妬途渡塗賭奴怒到逃倒凍唐桃透悼盗陶塔搭棟痘筒稲踏謄藤闘騰洞胴瞳峠匿督篤凸突屯豚頓貪鈍曇丼那謎鍋軟尼弐匂虹尿妊忍寧捻粘悩濃把覇婆罵杯排廃輩培陪媒賠伯拍泊迫剝舶薄漠縛爆箸肌鉢髪伐抜罰閥氾帆汎伴畔般販斑搬煩頒範繁藩蛮盤妃彼披卑疲被扉碑罷避尾眉微膝肘匹泌姫漂苗描猫浜賓頻敏瓶扶怖附訃赴浮符普腐敷膚賦譜侮舞封伏幅覆払沸紛雰噴墳憤丙併柄塀幣弊蔽餅壁璧癖蔑偏遍哺捕舗募慕簿芳邦奉抱泡胞俸倣峰砲崩蜂飽褒縫乏忙坊妨房肪某冒剖紡傍帽貌膨謀頰朴睦僕墨撲没勃堀奔翻凡盆麻摩磨魔昧埋膜枕又抹慢漫魅岬蜜妙眠矛霧娘冥銘滅免麺茂妄盲耗猛網黙紋冶弥厄躍闇喩愉諭癒唯幽悠湧猶裕雄誘憂融与誉妖庸揚揺溶腰瘍踊窯擁謡抑沃翼拉裸羅雷頼絡酪辣濫藍欄吏痢履璃離慄柳竜粒隆硫侶虜慮了涼猟陵僚寮療瞭糧厘倫隣瑠涙累塁励戻鈴零霊隷齢麗暦劣烈裂恋廉錬呂炉賂露弄郎浪廊楼漏籠麓賄脇惑枠湾腕 Japanese//記号//  ・ー~、。〃〄々〆〇〈〉《》「」『』【】〒〓〔〕〖〗〘〙〜〝〞〟〠〡〢〣〤〥〦〧〨〩〰〳〴〵〶 Greek & Coptic//Standard// ʹ͵ͺͻͼͽ;΄΅Ά·ΈΉΊΌΎΏΐΑΒΓΔΕΖΗΘΙΚΛΜΝΞΟΠΡΣΤΥΦΧΨΩΪΫάέήίΰαβγδεζηθικλμνξοπρςστυφχψωϊϋόύώϐϑϒϓϔϕϖϚϜϞϠϢϣϤϥϦϧϨϩϪϫϬϭϮϯϰϱϲϳϴϵ϶ϷϸϹϺϻϼϽϾϿ Cyrillic//Standard// ЀЁЂЃЄЅІЇЈЉЊЋЌЍЎЏАБВГДЕЖЗИЙКЛМНОПРСТУФХЦЧШЩЪЫЬЭЮЯабвгдежзийклмнопрстуфхцчшщъыьэюяѐёђѓєѕіїјљњћќѝўџѢѣѤѥѦѧѨѩѪѫѬѭѰѱѲѳѴѵѶѷѸѹҌҍҐґҒғҖҗҘҙҚқҜҝҠҡҢңҤҥҪҫҬҭҮүҰұҲҳҴҵҶҷҸҹҺһҼҽҾҿӀӁӂӇӈӏӐӑӒӓӔӕӖӗӘәӚӛӜӝӞӟӠӡӢӣӤӥӦӧӨөӪӫӬӭӮӯӰӱӲӳӴӵӶӷӸӹӾӿ Thai//Standard// กขฃคฅฆงจฉชซฌญฎฏฐฑฒณดตถทธนบปผฝพฟภมยรฤลฦวศษสหฬอฮฯะัาำิีึืฺุู฿เแโใไๅๆ็่้๊๋์ํ๎๏๐๑๒๓๔๕๖๗๘๙๚๛
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ayanemutuki · 5 years
Text
セルフ・トーキング
!Transformers MTMTE Fanfiction!
・ファルマとラチェットの話。
・ほぼMTMTE・LL全編のネタバレを含みます。
・独自解釈・又人間関係が原作とは少し異なります。
・Image song:セルフ・トーキング 或いは 魔女というガラクタによる魂の在り処への言及のバラード
01.
例えどんな状況でも死にゆく命を見つけたら救うのが医者であれ。敵味方関係無く、弱者を救うのが医者たる義務である。師であるラチェットの教えはそう簡単な、ごく普通の有り触れた話であった。オートボットで優れた医者であると評判のラチェットの弟子であるファルマから見たら、彼は立派な医者であり、弱者を救う信条を忘れないと言う存在であった。だからこそ、自分はそんな彼に惹かれたのだ。彼みたいな、誰かを助ける医者になりたいと。弱者を救う、医者になりたいと。そんなファルマにラチェットは「お前は何時か、私の跡を継いで立派な医者になれる」と言ったのだから。何時かは、彼と一緒に働けるようになりたいと。そう願ったのだ。いや、願わずにいられなかったのだ。 ――【オートボット医療施設デルファイCMO・ファルマの記憶】 記憶と言うのは、ブレインとスパークに直結しているとかのインティステュート所属のある記憶外科医の見解はこうだ。 トランスフォーマーの感情や言葉を、自らのスパークが聞いたり受け止めたりすると、感動で心が震える、怒りで泣き叫びたくなる、悲しみに落ちる。スパークが抱く感情を、ブレインが忘れる事が無いと言う見解だった。だからこそ、その印象が強く残る記憶は、何時までも何時までも、怒りや悲しみ、喜びに直結しているらしい。 しかし、その記憶を壊せるとしたら?と例えた物も居る。 自らの目の前で、大事な物を取られたとしたら?目の前で、大事な存在を殺されたとしたら?目の前で――心を壊されたら? その例えの結果は、簡単な答えだった。結果的に狂い、狂乱し、泣き叫ぶのではなく―― ――人が変わってしまう。いや、外見はそのままに、人格をガラリと変えてしまう。大事な物はもうない、誰が彼を癒してくれるのか。誰が彼を救えるのか。その答えを、答えられる者は居なかった。 ――或いは、ジェーン・ドゥ達に於ける鎮魂歌を。 ――或いは、ファウストに於けるコーラスを。 ――そして――貴方に贈る、うつくしい歌を。
02.
「僕はファルマ先生を救う事が出来たんでしょうか」 あの一件以来、ロストライトはゲッタウェイやアトマイザーの反乱、スターセイバーによるクルー虐殺が収まった後、ファーストエイドはひとりぼやいていた。ドリフトは彼の話をおとなしく聞いていた。ファルマについては、あまりドリフトは詳しく知らない。確かだったのは、ラチェットの弟子だった事と、DJDに利用されていた事と――ティレストに加わっていた事。そしてアンブロンを殺害した張本人である事だ。 「僕や…アンブロン先生と違って、ファルマ先生…ファルマは、僕達を守ろうとして、DJDと取引をしてでも…患者に、手を下して僕達を守ろうとしていた。だけど、僕は――そんな彼の苦しみに気付く事が出来なかったんだ。だって、彼は…医者だったから、一人でも、人の命を守ろうとしたラチェット先生の教えを守り抜いて…でも、でも…僕達に助けを求めても、良かったんだ。そうしたら、あんな事には――」 ドリフトには、そんな事が出来るはずが無い。とディセプティコンに居た当時からの経験故か――賛同する事が出来なかった。助けを求めても…相手があの虐殺と、拷問に美学を求めるDJDだ。オートボットで、非力な医者である彼等には、到底勝ち目が無かった。助けを出しても、出せなかったのだ。医者である彼等と、殲滅戦を得意とする彼等。戦力差が違い過ぎる。 「僕は――誰も救えなかったんだ。だけど…そんなファルマ先生は、僕らを守ってくれたんだ」 アンブロン、トレイルブレイカー、そして――プロテクトボットの仲間達。ドリフトは、ファーストエイドに何かを言う事が、出来なかった。 もし、自分がファルマだったとしたら、彼に何て言葉をかけられたのだろうか?いや、自分も彼と一緒なのだろう。何かに縋り、何かから逃げようとしたのは、自分も彼も似た者同士だ。だが、ファーストエイドは、これからどうなるのだろうか。大事な仲間達や同僚を失い、絶望に打ちひしがれている。自分が声をかけても、何も彼を理解出来ても、心の傷を癒す事は出来なかった。それはロディマスや――ラチェットも理解している筈だ。 「ファルマの話が聞きたい?」 「俺はそう思ってる。アンタが大事にしていたあの弟子についての話を聞きたいんだ」 ラチェットに対してドリフトはそう問いかけた。ファルマと出会って直ぐにデルファイのウィルスパニック事件の事もあってか、あまり彼について知らない。冷酷で自分に冷たい態度がやや見られたが(恐らくDJDの一件もあるだろうからか)、ラチェットの弟子について詳しく聞きたかった。そうしないと、ファルマがただの狂人ではないと証明出来なくなってしまう――彼の眼は、昔の自分そっくりだったからか?それとも…。 「…お前さんのその口ぶりからすると、ファーストエイドが、仲間や同僚を救えなかったと落ち込んでいるからか、誰も救える事が出来なかったか――」 「別にいいだろ、俺もあまりファルマについて知らないんだ。いいから話をさせてくれ」「あまりせっかちだな。後で文句を言っても知らんぞ。私はこう見えても厳しいからな」 わかってるよ、ラチェット。とドリフトはそう言い、話を聞く体制をした。 「…そうだな、あれは戦争が始まる前の話だったか」
03.
「全く、お前さんはいつも無茶をしている!」 ラチェットは警備員のアイアンハイドに対して、怒っていた。またアイアコンで暴動が起きたらしく、アイアンハイドはその暴動を無理を通してまでグループ犯を制圧し、暴動を鎮圧させたのだが、その際に怪我をしたらしく、ラチェットのリペアを受ける事になった。此度も昨日も一昨日も、アイアンハイドは事件があったらすぐに無茶をして制圧して鎮圧を行う。全くリペアをする自分や弟子にも配慮と言う物がないのか、とラチェットが溜息をつく。オートボットの中で最も治療技術が優れており、かの議会ですら目をつけるほどの実力を持っている自分にも、限界と言うものをこの馬鹿に教えてやりたい気分だ。まだ若いファルマは「ラチェット先生…」とおどおどしていたが、アイアンハイドはラチェットに反論した。 「アイアコンで暴動が起きたら、あのまま死傷者が増え続けていた。そうなる前に止めに入って犠牲者を止めるしか方法は無かったんだ」 「お前さんはいつも無茶をして!血盛んなのは分かるが、仲間と協力して止めに入るのも頭に入れろと言ってる筈だ!」 いつの間にか、何時ものいざこざが始まった。ラチェットは「全く…これで最後だぞ。今度怪我をしたら、他の所に行って貰うからな」と愚痴を吐いた。 「なあ、お前の弟子、ずっとお前の傍から離れないんだな。名前は…ファルマだったか?」 「そうだ、ファルマと言うんだ。いずれ私の跡を継ぐかもしれない」 「跡を継ぐかもしれない?それってどういう事だ?」「彼は自慢の弟子だよ」 ラチェットはそう答えた。自慢の弟子。彼曰く、成績も優秀で、手先が器用な弟子と言う事だ。彼には��分の才能を継ぐ可能性がある。とラチェットはアイアンハイドにそう説明していた。 「は、ははは…まさか、物騒なお前の後継者だなんて、夢にでも――」「今すぐその発声回路をちょん切ってやろうか」「アッスイマセン」「わかればよし」 しかし、手先が器用――か、何時か成長したラチェットの跡を継いだファルマを、見てみたいな。とアイアンハイドは、当時そう思っていた。だが、彼が、それを叶う筈が無かったのだ。 「自慢の弟子、か」とドリフトはラチェットの話を聞き、黙り込んだ。自分にも敬愛する師が居た。ウィングと、ダイアトラス――だが、それは今は昔の話だ。 「まだ俺がデッドエンドでガスケットと……一緒にいた頃の話だろう」 思い出したくもないだろうか。ドリフトは一瞬口籠った。だが、ラチェットは頷いた。 「多分、ファルマは俺を嫌っているのだろうか。と思うとやるせない気持ちがするよな。あの悪名高きDJDにプライドや人生もズタズタにされたから――いや、前からだったか?」 あの時、ファルマを躊躇いなく斬ったのは、ラチェットの命を脅かす輩は、例え誰であろうと決して許しはしなかったのだ。それは過去の鎖に縛られた故か、それとも――。 「それに…ファーストエイドも、とても辛かったんだろうな。俺が戻ってきた時、涙を堪えていたんだからな…相当、悲しい思いをしたんだろう。トレイルカッター、プロテクトボットの仲間達…そして、アンブロンと、ファルマ」 「…ファーストエイドに、お前さんのような悲しみを背負わせてはいけない。それは、私がきっと何とかしてみせるさ、だが――あの時、ファルマに…なんて言葉をかければよかったのか、私にも分からなかった」 あの哀れなディセプティコンの"正義"に踊らされた男に、利用されたファルマを――どう救えばよかったのか。それは自分が――ファルマをもっと理解していれば、何かが変わったのだろうか。 「…だが、過去は変えられない…前を進めばいい。そうだろ?」 「…ああ、お前さんの言う通りだ」
04.
ある日の事だ。その男と初めて出会ったのは。ラチェット曰く、ロディオン警察署長のオライオン・パックスの同僚らしいが、第一印象は「ガラの悪い男」だった。 「また議員絡みの暴動事件を鎮圧したが、腕にダメージを追う怪我を負った。お前の手伝いが必要な時は私が合図で通信を送る。その間に受付で待ってろ」 と言うラチェットの言葉に静かに頷き、受付付近で一人佇んでいたが、ロディオン警察の同僚達がオライオンの怪我を聞き、駆けつけてきたらしい。看護師達が「患者達の迷惑になるから落ち着いて下さい!」と宥めているが、あのオライオン・パックスが怪我となると聞くと落ち着いてはいられないだろう。幾ら何でもたかがケガだ。落ち着いて欲しいと言うのもあるが。すると、その警察の同僚を大型機の男が宥めている様子が見えた。どうやら彼らを落ち着かせる実力を持つと言う事は、相当の身分が高いと言う事だろう。 すると、ファルマの目の前にその男はぬっと現れ、オライオンについての居場所を自分に問いかけてきた。 「で、オライオンは今何処に居る?怪我をしたと聞いたが」 「オライオンは、今ラチェットの治療を受けている。知り合いか?」「まあ、知り合いと言うか、同僚だ」 同僚。つまり、オライオンの同僚と言う事は親友と言う訳か。とファルマは勝手に認識した。するとその男はファルマに問い質した。 「で、ここの自販機に売ってるか?」「何を」「クレムジーク印のドリンク」 そう言えばラチェットから愚痴を聞かされた事がある。「オライオンの同僚にジュースが好きで好きでたまらない程に呆れるほどに依存症気味の男が居る」と。こいつか、ああ。とファルマは心の中でまた納得した。何だ、つまりはこの男が噂の。 「ラチェットの弟子なんだろう?話はオライオンから聞いているぜ」「で、態々何の用だ。暇だったからやって来ました~なんて言ったら怒るからな」 「いんや、重傷だったと言うから駆けつけに来ただけだ」 「…そうか、オライオンを心配してくれたんだな。その度胸だけは誉めてやろう。だが、迷惑な同僚を連れてくるのはやめろ。こっちにも迷惑がかかる」「ははは、考えておく」 長い沈黙の間、ファルマは彼に問いただした。 「…それで、お前は時折複雑な表情を見せるな」「…何がだ?」「…オライオンを見る目が、な」 まるで自分のようだ。と心の中で嘯いた。ファルマは男に何かもう一つ話をしようと思ったが、その途端にラチェットの通信が入った。 「悪いな、邪魔をして…こんな暇話をして悪かったな。で、お前の名前は」 「…ファルマだ、では、こっちも問おう。お前の名前は?」 「――ローラー、ローラーだ」 「ローラー、か」 まあ、確かに彼の親友らしいな。その伸び伸びとした態度は。とポツリと独り言をつぶやきながらメンテナンスルームへの道程を急いだ。 その後、大戦が起きた後――ローラーはある事件に巻き込まれて生死不明になったと言う情報が入った。その後、彼の姿を見る事はそれっきりなかった。
05.
初めてあったその男は、どうしようもない嫌悪感になるのも無理はなかった。その男は、かの破壊大帝メガトロンを模範したボディをしていた。違う、あの男ではない――一瞬、姿からして、生死不明となったあのオライオンの親友と悟ってしまったか…違う、あいつじゃない。そう、まるでドッペルゲンガーを見ているような錯覚に陥ってしまったのだから。 デルファイのCMOに就任して日が経っての事だった。かのオートボットとディセプティコンの戦争の爪痕がまだ残っているこの星で、悪名高き、拷問も虐殺も躊躇う事は辞さない処刑部隊であるDJDの長とのターンの交渉。それはTコグを交渉の道具として、自らに渡すようにと。甘い言葉で囁くが、結果的に卑劣な交渉だと分かってしまったのだ。もし反抗したりノルマを達成出来なかったら――自分も彼等もDJDの殺戮対象になってしまうのだから。だが、ファルマにはターンの意図が、偶然分かってしまった時があった。 「もし貴方が、私と同じように尊敬に値する師匠を殺すとしたら、どう思いますかね、ドクター」 メスの手入れが終わった後、仮面の男は自分にそう告げた。尊敬に値する師匠を殺す。確かに――もう後戻り出来ない道を歩む自分を、師であるラチェットは、自分を殺すのだろうか。仮面の男は、師であるとある男についての話をした。話は単純なものだった。アカデミーの話や、メガトロンについての話、そしてオプティマスや戦争についての話をしていた。それ故に、自分はラチェットを尊敬していると同時に――憎悪に近い何かを抱いていたのだ。自分は仮面の男を睨む――が、何も反論しなかった。同族嫌悪、だからこそ――この男も、自分も――結局は同じじゃないか。と自分で自分のプライドを傷付けながら思った。 「それなら、お前の正体があいつだと信じてた事があったよ」「ほう、ドクターの意見がどのような物なのか、お聞きしたい事ですな」 「答えは明白だ――お前を、オライオン・パックスの相棒――ローラーだと信じていた事があった」 それは興味深い考えだ。とターンは言葉を返す。 「変形依存症――何らかの依存を患っている。データベースからシャドウプレイと言う人道に反する技術のケース、姿とオルトモード…それらが偶然一致している、そして――『正義』。あいつとターンは、同じではないか。と考えていたが…結果は不正解だった」 いや、結果的に不正解で――正解だった。自分も――『この男』も、同じ同族嫌悪であり、似た者同士だったからだ。師匠に対する未練と、それが報われない歯がゆさと、思いに対する報われなさと――そして、苛立ちに対する冷酷さと。 「貴方は、確信を鋭く突いた。だが、不正解だった。貴方は立派な医者であり、親愛なる貴方の師であるラチェットの将来を期待する――」 「――お前如きがラチェットの事を、軽々しく口にするな」 おっと、これは失礼。とターンは礼儀正しそうに口にする。だが、彼の見解も悪くはないだろうか。と何処かで期待してしまう自分が居た。 後は地獄へ転がり落ちていくだけ。ただ、それだけの事だった。この男は、あいつではない。あいつではないからこそ、自分もこの男もお互いを同族嫌悪しているだろう。 それはきっと報われないからこそ、最悪の結末へ��向かうだろう。そう、互いに��
06.
誰でもいいから、この思いをぶつけたかった。けれど、ぶつけられなかった。あいつが常に自分を監視している事を。例えぶつけ、一致団結してこのデルファイを守ろうとしても?守れはしない。医療用と患者達と、処刑と戦闘用に特化しているDJD――叶う筈が無い。もう、つらいのだ。誰か、助けて。と叫びたかった。 「…ファルマ先生、顔色悪いけど大丈夫か?」 アンブロンはそう言いながら、何時の間にか顔色を悪くしていた自分に気遣っていた。だが、アンブロンを見ると――どうしても心の中からどす黒い感情と、複雑な心が渦巻いてしまうのだ。彼は元々ディセプティコンの脱走兵――恐らく、DJDで最重要ターゲットにされているであろう。今は、デルファイの看護師兼病棟名簿の管理をしている。自分はため息をつきながらも、カルテを机に置く。 「そう言えば、ラチェット先生は今元気にしているってさ。呑気なものだなぁ…伝説のナイツオブセイバートロンを探しに、ロストライト号で旅をしているってさ。俺も行きたかったなぁ」 「減らず口は叩くな。仕事をするぞ」 すると執務室からファーストエイドが現れ、アンブロンの名前を呼んだ。 「アンブロン先生ー、メディカルポッドが壊れちゃいました」「えっ本当か?いつも壊れちゃうよなあ、あのポッド」「しょうがないでしょ。まだ最新のポッドなんだから…ファルマ先生、少しいいですか?」「ああ、ポッドのメンテナンスだな?分かった」 何時もと何も変わらないデルファイの日常、それでも、確かに自分の居場所が此処にあった。けれど、いつかはこの日常も終わってしまうのだろうと悲しくなった。 「…そう言えばさ、ファルマ先生は、どうして医者になろうと思ったんだ?」 「……ラチェットみたいになろうと、か?」 「へぇー…俺、正直ファルマ先生の事をおっかない医者だと思っていたけど、意外だったんだ」「意外?」 俺、元ディセプティコンで…合体兵士の落ちこぼれだからさ。エリートのアンタが正直羨ましかったんだ。だから、俺はアンタの事を羨ましいって思ってる。 「別に私は、エリートでは…」 「良いじゃないか。どうせ俺なんか――」「アンブロン」「えっ」 自分の言葉に、アンブロンは息を詰まらせる。 「お前は…お前のままでいろ」 どうしても、精神的に狂っていく。それでも、何時かはこの日常も、終わってしまうとなると、悲しく感じた。誰も知らない、秘密の地下室で――自分はこの日常をいとおしく感じた。 (――ああ、それでも) ――まだ、この日常の中に居たい。それは、許されないだろうけれども。
07.
デルファイが閉鎖される――しょうがない、あのウィルスパニックで多くの死者や感染者が出た。仕方のない事なのだ。首謀者は倒され――事態は一時終息に陥った。いや、アンブロンやファーストエイドに大きな傷が残った。首謀者はデルファイのCMO…自分の教え子であり、弟子であったファルマだった。有り得ない、信じられない。と言う気持ちがいっぱいだった。だが、ファルマから語られる残酷な事実と、どうしようもない現実が――胸に突き刺さった。あの時、彼を救ってやれたら?救ってやれない現実が、響いた。 オーバーロードのあの悲惨な一件の後、ラチェットはファーストエイドの私室に向かった。ファーストエイドはカルテを取っていた。恐らく今回の事件の負傷者や死者についての事を書いていたのだろう――ラチェットは悩んだ表情をしていたのに気付いたファーストエイドは「どうしたのですか」とこちらに振り向いた。 「…ファルマの事を考えていた。あいつは、私に対して何かを叫びたいような気持を押し殺していた気がしたんだ」 「……でも、僕にはまだ、信じられないんです。どうして、ファルマ先生はあんな事を…ただ、DJDから僕らを守る為に……?だったら、ファルマ先生の気持ちに気付いていれば、何とかなったのかもしれません」 「やめておけ」とラチェットはファーストエイドを制した。 「…分かっている筈だ。相手は――DJDだ。お前さん達ではあの戦闘用に特化された……虐殺、いや、処刑部隊には太刀打ち出来ない。そうなったら、もっと悲惨な事になっていた筈だ」 ファーストエイドは険しい表情をした――が、直ぐに不安な表情に戻った。 「もしかして、ラチェット先生――ドリフトの事、悔やんでいるのですか」「何で」「ドリフトが出て行く時の事ですよ」 貴方は、ファルマ先生を救えなかった時と――そして、彼を引き留められなかった気持ちを、まだ消化しきれないんですか。 「彼、凄く罵声を浴びられていました…「結局はディセプティコンだ、碌な事を考えない」って言うクルーの声が、響いているような気がして。だけど、ラチェット先生は…彼を、引き留めようとしていました」 そう���すよね?とファーストエイドの言葉に、ラチェットは少し、動きを止めた。 「…ああ、そうだ――だが、ドリフトが決めた道だ。もし、あいつが――いや、この話は、また今度だ」 「…その話の続き、聞かせて下さいね」 ロックダウンはティレストが連れて来たこのファルマと言う男については詳しくは知らない。ただ知っているのは――デルファイのCMO、オートボット軍医ラチェットの弟子だったと言う事実だけだ。美人の顔だ。とファルマに近付こうとすれば、かなり心が無い言葉を浴びせられた。どうやらスターセイバーやティレストに対する態度を考えると、相当なディセプティコン嫌いなようだ。ああ、そうだったな――デルファイはあの悪名高きDJDの領域の一つだ。あの得体のしれないターンと言う男にかなり酷い目に遭わされたんだろうな――と心の中で思った。だが、あのティレストという男は一つの問いかけをした。 「神は居ると思うか」 と言われたら、スターセイバーは「居る」と答えたであろう。しかし、ファルマは「NO」と答えた。賞金稼ぎである自分は、ファルマと言う男について――考えていた。師匠であるラチェットが無神論であり、彼もまた無神論だ。いつかスターセイバーに殺されるだろうな。いや、半殺しにされる程度だろうな。一応このルナ1のお偉いさんであるティレストに殺されかねないからな。と自分はそう思っていた。 「では、貴様はあの男についてどう思う?」 「いいや?普通に顔は美人な医者だけどよ――中身は精神がイカれてるのか、正気とは思えない態度をする」 剣を持った男は「そうか」と無言のまま見据え「だが」と口を紡いだ。 「あの男も、私と同じだ」 「ほう?プライマスを信じたお前と、あの医者とどう同じなんだ?」 スターセイバーは、ある正論を告げた。 「あの男は、尊敬に値する師を神として信じ――そして憎悪している」 ほう、とロックダウンはスターセイバーを見上げた。この男、同胞であるサークルオブライトを裏切った挙句に長であるダイアトラスを捕らえた上、かつての仲間を殺してそのパーツをレジスレイターの素材にするという神を信じる者の所業とは思えない行為をしている。愛と憎悪は紙一重――まあ、そうだろうな。何が「愛で世界が救われる」だ。結局戦争は、その「世界を救う」と言う一筋の引き金から始まったようなもんだ。とロックダウンは、スターセイバーと別れた後、ラボへと向かった。 「失礼するぜ……寝ているのか?」 ファルマはラボの机に突っ伏して眠っていた。カルテやリストに、何らかのパーツや材料について書かれていた。まったくあのイカれた裁判官は何を考えているんだ。と静かに一人部屋でぼやいたが――ファルマのある言葉に気付いた。 「ラチェット……」 ラチェット。あのオートボットの医者の名前か。 ――そう言えば、ティレストがこいつをつれて来た時に、かなり目が疲れていたな。 余程DJDに苦しめられたのか、眠れていなかったのだろう。今はぐっすり眠っている様子が見られ、ロックダウンはまた、ぼやく。 「――こいつ、幸せそうに眠ってやがる」 この場所が、一番居心地が良いのか、それとも――それは、ファルマ自身にしか分からない事だった。
08.
やあ、始めまして。え?君は誰だって?それは秘密。このお医者さんの物語を語る語り部って思ってもいいよ。そうだね、この先の物語は君も知っている筈。ファルマはファーストエイドに殺され、オールスパークに還りました。しかし、それを憐れに思った神様は彼の中に宿りましたって。まるで神話に出てくるアスクレピオスだと思ってるんだよ。そう、彼は神話そのものだったんだと思う。 あたしは時々思うんだ。この物語に人の死は付き物だって。いい人も悪い人もそうじゃない人も、平等に死んでいく。誰しもが理不尽だとは思っているけど、あたしはそうじゃないと思っているんだ。でも、神様は理不尽。平等に皆を殺していく。そうかな、あたしはその限りある命を無様に散らしても、高潔に散らしても、死んだら皆一緒だと思う。この物語は、そういう彼等の為の物語。 うーんと……え?納得がいかない?そうかな?でも、君がファルマの事について何らかの事を知っているのはあたしには嬉しいよ。ファルマとラチェットが共に歩めた未来もあった、袂を分かつ未来もあった。けれど、この物語は一つの未来に収束してしまった。失われた光…ロスト・ライト――う~ん、難しい事はよく分からないけど、ファルマの物語の続きを覗く自信はある? …うん、うん。納得したみたいだね。あたしは全然大丈夫だよ。君がそういうのを望んでいるからこそ、この物語に価値はあるんだと思う。 でもね、この物語は全ては泡沫の記憶に還っちゃうんだ。 ショックウェーブとオライオンパックスがあのベンチで笑いあって語り合う未来も、 ドリフトがサークルオブライトと出会ってウィングと一緒に共に歩めた先も、 レッカーズが馬鹿やって笑いあったのも、 ニッケルがDJDと出会って、初めて家族ができたのも、 …そして、ラチェットたちデルファイのお医者さんが、あの日、一同に会したのも。 凡ての路の果てに、命も時間も、悲しみも、叫びも、嘆きも。すべて泡沫に還る。この物語に最初から意味なんてなかったのかもしれない。この物語は現実で終わるかもしれない。…だけど、そんな物語でも価値はあったんだと思う。慟哭も、咆哮も、嗚咽も、悲鳴も。 …おっと、あたしの与太話に付き合わせちゃって御免ね。 じゃあ、始めようか。彼の物語の終着点の続きを。君がどんな感情を持ってもいい、この先についての話を見届ける価値がある、泡沫の物語を。
09.
ラチェットはファーストエイドの所へ向かう。道中の最中、何も言わなかった――ロディマスも、ウルトラマグナス…もといミニバス・アンバスも、そして彼も――あのルナ1での出来事で相当傷ついたのだろう。今はそっとしておいた方が、良いのかもしれない。近寄ってはいけない、寄り添ってはいけない事が、幸せなのかもしれないのだと。ただ、ファーストエイドだけは、自分だけが何としても向かわなければならなかった。彼に関して、こうなったのは――自分の責任なのだから。 ファーストエイドの自室に入る。ファーストエイドは椅子に座り、蹲っていた。何も言わなかったのだ。 「…ラチェット先生?どうされましたか?」 バイザーで覆われて何も見えないが、目にクマが出来ているのと「、相当疲れたような声をしている。それはそうだろう――ファルマを自らの手に掛けたのは、ファーストエイド本人なのだから。 「…でも、僕は――あの時、ファルマ先生を許す事が出来ませんでした。だけど、だけど…本当は分かっていたんです。ファルマ先生は僕達を守ろうとして、だけど、アンブロン先生を手に掛けたのが――何よりも許せなかったんです…!」 ファルマのチェーンソーによって真っ二つにされたアンブロンの姿を見て、ラチェットも、ファーストエイドも何も言えなかった。いや、彼の信じられない行動に絶句するしかなかった。 「だけど…僕は、僕は…ふぁ、ファルマ先生を、許す事が出来なくて、だか、だから…」 吃逆を上げて嗚咽を漏らしているファーストエイドの頭を、ラチェットは撫でた。もし、プロールとの会話で、ファルマを止めなかったら――だが、ファーストエイドやドリフト、ロディマスらにこれ以上重荷を背負わせたくなかった。人殺しや、卑怯者の烙印を、これ以上背負わせたくないのだから。ただ、ファーストエイドの気持ちを、素直に受け止める事しか出来なかった。 分かっていたのだ。自分の命はもう直ぐ尽きると。だが、それは大きな間違いだった。バンブルビーも、トレイルブレイカーも、ショックウェーブも、アンブロンも、ローラーも、パイプスも――自らの命を投げ打ってまで、何かを守ろうと命を散らしたのだ。これ以上、そんな重荷を背負わせたくなかった。だけど、嘗て、自分が助けたドリフトがオーバーロードの事件の際に、全てを背負ってロストライトに出て行った時――自らの手でデルファイを守ろうとしたファルマもこんな気持ちだったのだろうな。と何処かで諦めていたのかもしれない。ただ、一人で大きな十字架を背負ったドリフトが、勝手に傷ついて勝手に死んでいくのは――許せなかったのだ。 ドリフトの手を差し出す。彼の手は、長い間放浪していたのか、かなりボロボロだった。お前さんが決めた道だろう?だったら――私も、手を貸してやるとしよう。
10.
この物語の続きを語る前に、一つだけ話をしていいかな? 天使様は確かに、人々を救うし、人類を正しい道に導いてくれる存在だ。でも、それは大きな間違い。何らかの理由を言い訳にして、天使と言う免罪符を使ってる。だから天使は虐殺や圧政を行ってる――そうだよね。オートボットも天使も、何も変わらないし、何も変わる事が出来やしない。あたしが言う言葉だからこそ、意味がある。 でも、誰かを救う方法は幾らでもある――手をさし伸ばす、仲間に引き入れる、傷を癒す――そして、殺す。殺すしか、方法は無かったのか?って言う疑問は、確かにある。でも――生かす事が救済に繋がらないって、この物語が証明してる。 「さて、ドクター。一つ問いをしておこう。此処に天秤があるとする。左右には一つだけ救える存在があるとしよう」 煩い、煩い。お前に何が分かる。冷酷非道なディセプティコンの貴様に、一体何が分かるって言うんだ。でも、結局私も変わらないじゃないか――患者を救うのが、医者であれ。私はそれを破ってしまった。だから、もう彼に合わせる顔が無いのだ。 「一つは、街が火の海になって悲鳴を上げている群衆――もう一人は、今にも死にかけている兵士」 私はどれを選べばいい?どっちを選ぶ事が『正しい』選択なのか?私は天秤に手を差し伸ばす――天秤は重さに達し、落ちた。 「答えは――誰も救えない。だが、貴方は『誇り高き医者』だった。それでこそ『医者』の務めだ」 やめてくれ、私は正しい選択を答えただけだ。だから、私の行いを否定しないでくれ――目を瞑って手を差し伸べる。そして前を見る。其処に一体のトランスフォーマーが居た。 手はハサミ型であり、一つ目と思われるモノアイ、そしてそのトランスフォーマーは、こう呟いた。 「僕は…………誰なの?」 目が覚める。ああ、あの悪夢の続きか。だが、考える内に――私は悟る。 (ああ、そうか…あの事件を経て、分かった気がした。お前も、寂しかったんだろうな…私と同じだ) ただ、その夢が意味するものは、分からなかった。 (――結局、『神様』の身になっても、私は私のまま、か)
11.
嘗てあの戦いを生き抜いた同僚が、親友の弟子に手をかけたと言うのは到底信じられない真実だった。メガトロンがターンらDJDを倒し、突然機能主義の世界に飛ばされ、信じられない真実をこの男が鵜呑みにするのは時間がかかるだろう。だが、自分も、この男――ローラーも、目の前の真実を目にしてしまったからこそ、複雑な思いを暴露する資格は持っているのだから…。 「――色々あってすまなかったな」 オプティマスに無断で黙って特攻し、それ以降行方が分からなかったローラーが、ラチェットと久々話をする際に、いきなりラチェットに詫びた。ラチェットも、親友と再会し、何を言えばいいのか――分からなかった。デルファイ事件の事、トレイルブレイカーとスキッズの事、ファーストエイドとアンブロンの事、ドリフトの事、――そして、ファルマの事。ローラーは「ゆっくり深呼吸して落ち着け」と体が小刻みに震えているラチェットを落ち着かせ、ラチェットは椅子に座り、彼にこれまでの事をぼつぼつ話した。 「………そうか」 ターンの正体はアウトライヤーであり、スキッズの同僚の一人であるグリッヂだった。グリッヂが、ファルマに手をかけた。いや、ファルマを精神的に追い詰めた事実は到底受け入れ難い真実だった(後にクロームドームもショックウェーブ議員の教え子が同じ同僚だったのに、そんな事をするなんて信じられないと言っていたが)。実質的にトレイルカッターも、アンブロンも、スキッズも――彼によって殺されたも同然だ。あんな受け入 れ難い真実は、二人を重い空気に押し潰した。 「…もし、ファルマを引き留めていれば、こんな事にはならなかったのだろうな」 あの時、デルファイに送られる事を聞いたラチェットが、ファルマと話をしていた時に、ショックウェーブやローラーの事を考えていた。オライオン達を守る為に評議会に投降したショックウェーブ、生死不明の状態になったローラー…だが、結果的にファルマと永遠の別れを意味をしていたのだから、あの時を思うと考えたくなかったのだろう。 「お前のせいじゃない」とローラーはラチェットにそう、言葉を返し――「もう、終わった事なんだ」と、言葉を返した。 「ただ、グリッヂの事を考えたら…ファルマと、自分…何処か同じ所を重ねていたんだろう。だが、あいつがそんな事をする筈が無い。と必死で受け入れられずにいた。どうしてこんな事になってしまったんだろうな――戦争が無かったら、グリッヂもあんな事には成らなかった。ファルマもお前の跡を継いでいた。けど、」 現実と言うのは、中々上手くいかないもんだな。と――スワーブバーで、トレイルカッターがメガトロンに言った言葉を思い出した。 『罪を償う為にロストライト号のロディマス船長と一緒に居るけど、周りが白けた目で見ている?ま、そんなもんだろ』 『――現実って言うのはなぁ、中々上手くいかねーもんだよ』 そう言えばラチェットは、ファーストエイドとアンブロンと、一緒に撮った写真の他に、オライオンから譲り受けた写真を貰っていた事も思い出していた。 スキッズやグリッヂ、チャージャーやトレイルブレイカーが写っていた写真。そして、今は居ないショックウェーブの姿もあった。だが、絆は失われたが――それでも、自分とローラーは、此処に居る。まだ、過去は失われていなかった。けれども、ファルマの未来は?ラチェットは、天井を見上げた。
12.
「――怪我人は居るか!?死亡者が居るなら直ぐ様私に直接報告をするんだ!」 「――ラチェット先生、お願いです!ホットスポット達を…!」 ゲッタウェイやスターセイバーの一件の後、ロストライト号を奪還したロディマス達は直ぐ様怪我人の治療や死亡者の収容を急いだ。ドリフトはロディマスの元に向かっている最中、ファーストエイドがラチェットに何やら焦っている…いや、取り乱しながらも正気を取り戻し、叫んだ。 「――もう、誰がが死んでいく姿を見るのは、嫌なんだ…!」 …それが、ファルマとアンブロンを失って、ゲッタウェイの暴挙に耐え続けたファーストエイドの精一杯の叫びなのだろう。 ラチェットが器具の整理をしている最中…自室に佇んでいるドリフトは口を発しそうにしたが、意を決して口を開いた。ラチェットは相当疲れた顔をしている。あの多くの怪我人の治療に忙しかったのだろう。ラングの手伝いもあってか、何とか一命をとりとめたのが幸いだったか。それにしてもあのスターセイバーの攻撃を耐え続けたのが、一番の不幸中の幸いだろう。 「…大丈夫か?」 「大丈夫だ。なるべく多くの医者の命を救うのが――」 「――医者であれ、だろ?」とラチェットの言葉を、ドリフトが紡いだ。さっき、ファーストエイドと会って来た。ファーストエイドがファルマの事を言っていた。僕だったらファルマ先生を救えたのだろうか。と――ファルマの話をし終わったラチェットは、淡々と器具の整理をしていた。ドリフトは「なあ、ラチェット」と口を発した。 「――俺は、ファルマの事はあまり知らない。だけど、あんたは…ファルマを救えなかったのを、後悔してるんだろう?」 ――俺だって、大事な人を救えなかったんだ。ファルマについて、俺に色々話してくれたんだから…それと、あんたは俺を救おうと、必死だったんだろう。 そう言いたげなドリフトの口ぶりに、ラチェットは口籠った。 「ファルマを救えなかった。だから、あんたは自分を責めるな――俺だって、大事な人を護れなかった。もし、あんたが辛い目に遭ったなら…俺があんたを何度だって助けてやる。自分の苦しみを、自分で抱え込むな――あんたが、俺に教えてくれた事だろう?」 ああ、あの時――ドリフトと再会した時、考えた事があったのだ。ファルマも、こんな気持ちだったのだろうか――一人で、ラチェットを待ち続けたのだろうか、と。だが、ファルマといつかは、また出会う気がするのかもしれない――それは、自分でも感じていた。だが、今だけは――。 「――有難う、ドリフト」 目の前に居るドリフトに、感謝の言葉を述べ��。それでも、自分がファルマにしてやれなかった事を贖うと共に、ドリフトが自分を守ってやる。と言う彼なりの誓いがあるのだから。
13.
「神様を信じるか否か?」 ファルマはラチェットの突然の問いかけに、忽然としていた。「ああ、そうだ。どっかの馬鹿が作り出した神が居るか否かの論だ」と溜息をつきながらデータパッドを置き、カルテを出した。 「自分の手は神の手だ、アダプタス神に認められている。とどっかの馬鹿がそう言っているが、私は神が居るとは思わんがね。まあ、そんな事実があるのならば本物の神様を寄越して証明して来い…と思わんがね」 ラチェットはどっかの馬鹿――ファルマはラチェットのそう言う所に惹かれたのだ。自分にも厳しく、他人にも厳しいが――消え行く命を決して失わせる訳にはいかない鋼の精神と、誰かを救う為の医療だからだ。と言う理念。 「ファルマはどう思うか?」 「私は―――――ええっと…答えが難しいですが、居ると思いますね」 居ると?とラチェットが困惑した表情をしていると、ファルマは微笑んで問いを返した。 「神様は――ラチェットだと思います」 ラチェット自身。ファルマの答えに、ラチェットは一本返されたな…とぽつりと呟いた。 「私も、貴方と同じ神様が居るとは思えないんです。ですが、私は――ラチェットが神様だと思うんです。私の進むべき道を照らしてくれるのが、貴方自身だから」 「ファルマ…」 ファルマは立ち上がり、ラチェットから出されたカルテを持って立ち上がる。 「アダプタス神から認められた手――何時か、私も手にしたいと思っていますね」 『アダプタス神から認められた』――だが、まさか彼が、こんな事になるなんて思わなかっただろう。神は確かに居た。だが、まさかこんな形で会うなんて思わなかった。アダプタス、いや、ファルマは――確かに、微笑んで…そして、最後の言葉を言った。 「My beloved.ratchet」 ああ、その声は――届く事は、決して無かった。
14.
さて、この物語も終わる。後に残されたのは、現実の物語か、そして夢物語か。 ○月×日 ロストライト号でロディマス艦長主催のパーティをする事になった。ロストライト号が解体されるらしくて、皆と一緒に馬鹿やったりリップタイドやスワーブの世間話を聴いたりするのもこれで最後だ。寂しくなる。そしてラチェット先生が僕に後任を譲る事にしたらしい。ファルマ先生の事は…最後まで話さなかった。多分、彼の事を話すのは相当辛いんだろう。昔の僕みたいだ。とふと、あの時そう思ったんだ。アンブロン先生を亡くした僕みたいに…でも、ドリフトと一緒に居れば、大丈夫なのかもしれない。 △月●日 ラチェット先生がドリフトとCEを結ぶ事になったらしい。僕やホットスポット達は先生を祝った。僕がデルファイでウィルスパニックに巻き込まれた時、ドリフトの噂は巷に聞いているから(悪い噂しかないのは、当時の状況を考えるとしょうがなかったけど)どんな人物かなって思ったら、先生を困らせてくる朗らかな青年だった印象だった。でも、ドリフトとCEを結ぶ事になるなんて。おめでとう。と祝ったんだけど、少し寂しいような気がした。 ○月◇日 メガトロンが裁判を受ける事になった。ロディマスやウルトラマグナスが何故、どうしてって制止したけど――僕は、メガトロンを引き留める義務が最初から無かった事に気付いた。ロディマスとメガトロンは、最初から立ち位置が違い過ぎたのかもしれないのだ。罪人である自分は、一緒にロディマスと居る権利など無いのだ。まるでそう言い聞かせているみたいだった。廊下を歩いていた時、ローラーとラチェットが会話していた。 「お前さんは止める義務など無いのか」 「俺だって本当は制止したい。だが、俺はプロールの気持ちを尊重する」 「…そうか」 「メガトロンを止める権利は無いかもしれないが、今はそっとしておいてくれ…頼む」 ローラーは何かを言おうとした。ラチェットも何かに気付いた。けれど、それが何なのかは分からなかった。 ×月▽日 だって、こんな事って…嫌だ、嫌だ。どうして。ラチェット、先生(この先は涙で滲んでいて読めない) 「…ずっと、分かっていた事があるんです」 ファーストエイドは、ラチェットの墓標を見て、ぽつりと呟いた。 「だって、ラチェット先生はずるい人なんですよ。ファルマ先生の気持ちも、僕の気持ちも、アンブロン先生の気持ちも、ドリフトの気持ちも、メガトロンの気持ちも、最初から分かっていたんです。でも、敢えて伝えなかった。伝えていたら、どんなに楽だろうかって、そう思っていたんですね」 ラチェットは、ファルマの気持ちを最初から分かっていた。でも、伝え方が分からない人だったから、伝え損なってしまったのだ。自分は、本当は駄目な先生だと何処かで引っ掛かっていたのだろう。 「でも、ファルマ先生はそっちでラチェット先生と一緒に居られるんですよね。アンブロン先生と一緒に。ずるいですよ。僕もそっちに連れてって下さいよ。って本当はそう思いたいんですよ。……でも、まだ、僕はそっちに行けないんです。ホットスポットやグレイズが、悲しむから。だから、僕もこっちで頑張るから。ラチェット先生は……また、ファルマ先生に思い出話を咲かせて下さいね。ロストライトでの旅や、色々な事を」 ファーストエイドが日記を墓標に置き、立ち去った後――墓標には多く置かれているエンゲックスと、メガトロンの最後の置き忘れであるロディマスバッジだけが置かれているだけだった。 流れ星が、またひとつ堕ちた。
fin.
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karasuya-hompo · 6 years
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RDR2:73:やりたい…でもツラい…っ
 2018年のマイ・ベスト・ゲームは、間違いなくRDR2です。  というか、他にやったゲームで「すげー面白かったー!!」とか「いっぱい語りたいことあったぜ」とかいうのが思いつかなくてですね。  もちろん「コナン・アウトキャスト」も楽しみましたけど、建築好きでバグやグリッチや不便さにそこそこ耐えられるなら普通に面白い、という感じであって、「このゲームやべぇわ」というくらいにハマった感はありません。  「Darksiders3」は……、「ああ、俺ってDSファンじゃなくてデスさんLOVERなんだな」と再認識したところで、序盤から進めてなかったりもし。  SkyrimやMass Effectは2018年の新作ってわけでもないし。  他に新作ゲームで気になったものがなかったってのもありますけど、世界観にどっぷり浸かり込んで、FTの存在すら忘れて世界を放浪するくらいに、私にとってRDR2は良ゲーです。……オンラインはPK対策がもう少��はっきりしないかぎりちょっと別件。  にも関わらずここ数日ふっつりと触らなくなった理由は、ほい、タイトルどん。゚(゚´ω`゚)゚。
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 顛末は知っているので、そういう意味ではこれまでとなにも変わりません。なのになんでこんなに「やりたいけど……あの世界に行きたくない気持ちもある……」みたいになったのか。  ふと思いついたのは、「仲間内で傷つけ合うのを見たくない」からかもしれない、って理由でした。  アーサーが死に向かうのはとっくに知ってて遊んでいるし、それは受け入れています。けれどその中で、父親代わりであったホゼアをまず失い、残ったダッチとは確執が生まれました。ギャング内部でも、アーサー、ジョン、セイディ、アビゲイルみたいに、若干目先の善悪に振り回されがちな、でも分かりやすい正義感の持ち主と、それ以外とに別れる感じ?  それで内部紛争じゃないけど、ごちゃごちゃして、アーサーはこんなにがんばって尽くしてきたのに、気に入らなくなったら責められるとか……( ・ὢ・ )オコ ダゾ  しかしね、ここまでやってクリアしないなんて選択肢もないので、のこのこと街めぐりに出掛けました。
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 街巡りならってことで、拉致っただけで放置も可哀想だろうと、アメペに乗り換え。  ストロベリーの建築中の建物、だいぶできてきました。でもまだ完成はしないあたり……バレンタイン傍のあのおうちはすげーとっとと出来上がったのに、おまえらちゃんと働いてる??( ತಎತ)
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 お、またこの牧師さんいた。「救済を求めているのだろう」とかいう話題なので、アーサーさんも無視はできないと思うけど、さんざん悪事働いて生きてきて、ただ救われたいなんて思ってはいないだろうなぁ。ダウンズ夫人にも言ってるとおり。  アーサーが6章でこなすサブクエはまさに「贖罪」行脚。ただの善行ではなくて、”犠牲を払って”罪を贖うこと。  アーサーさんの場合はたぶん、善行っていう代価で自分がばらまいた罪を買い取ろう、それで少しでも罪を減らして許してもらおうってより、犯した罪は地獄に背負っていくとして、傷つけたり苦しめたりしてしまった人のため、あるいはそうでなくても困ったりしてる人のため、なにかいいものも配り、残していこう、て感じ?  ここのやりとり、「あんたもがんばれ」ってあたりに、この牧師さんが救われることもちょっと願ってあげる、優しさというか、ゆとりみたいなものを感じますな。
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 ところでこのホテルにも入りたかった……。二階にも人がいるのに俺は入れないなんて( ・ὢ・ ) 名前からして運送関係の人たちの安めの宿泊施設なんだろうなとは思うけどさ。  ホテルよりも安い価格で泊まれるなら尚良しだけど、「すみません、ここは運送関係者だけなんです」と断られたとしても、入るだけは入ったりできれば良かったのになぁ。
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 そして新してブラックウォーター紙。セイディも言ってたけど、コルムが逮捕されたってのは意外。あれだけいがみあってきたのに、対決しないのか。  セイディが絞首刑見たいって言ってたけど……サブクエみたいに発生するのかな。それとも適当にサンドニ行けば広場でやってるのか。  自分らの手でころころできなかったことは悔しい気もするけど、官憲に捕まって処刑とか「ザマァねぇな」って気もするので、良し( ・ὢ・ ) たぶん、一番ギャングらしい死に方って、敵と撃ち合って殺されることだろうし。そういう派手さのない、たかが田舎警察ごときに、みたいな屈辱的なちにかたすればいいよ( ・ὢ・ )オマエ キライ  ところでこいつ、綴り見てたのでなんとなくは察してましたけど、「ドレスコ」って聞こえてるだけで「オドリスコル」なのか。ただ、最後の「L」なんて発声しないことが多いので、この表記が本当に正しいのかは疑問。
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 さて、バレンタインへ向かおう。  通りかかった伐採場。なんかもう遺棄されてる感じ? だーれもいないし、小屋もボロけてる感じ。伐るだけ伐って放置なのかなここは。
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 ぽっくらぽっくら、のんびりと。  お金作る必要ないんだけど、黒部とぎんばくくんも卸そうかな……。馬屋に置いておけばジョンが引き取ってくれるってわけでもないらしいし(´・ω・`)  お金と馬はリセットされるって聞いてるんだけど、バッグの中身は全部引き継がれる? だったら、ってことで換金せずに延べ棒とかいろいろ持ってるわけなんだけど。  どっちにしても、馬はそのままでも消えるし、換金しても使いきらないかぎり消えるわけで。銃とか服は引き継がれるなら、買えるだけ全部買い占めとこうかな。引き継がれずなくなるにしたって、お金持ってたって意味ないわけだし。  あっ、サンドニの仕立て屋さん、行きにくくなったなぁ。街の外周近くならともかく、けっこう内側だ……。
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 バレンタインが見えてきました。今更ですけど、背後に広がる山並みがなかなか峻険で冷たい感じ。
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 雑貨屋さんの隣も、まだ建築半ば。時間かかりすぎではないか? ゲーム内リアル日数カウントすると何日なのか分からないけど、数週間寝込んでたりもするし、2ヶ月やそこらはたってると思うんだが。
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 とりあえず泊めてもらうことに。  このおじさん、話しかける=用件を言うだけなのが寂しい(´・ω・`) ただ挨拶する項目もほしかった、と実は毎回思ってました。来たときはいいんですよ。「よう、部屋用意してらえるか?」、「すぐ使っていただけますよ」で向かうのは不自然じゃない。でも帰るときに無言ってのが毎回ちょっと引っかかってまして。「世話になったな」とか一言残したいんですよ、天使アーサーとしては!  とか思いつつ一夜明けて降りてきたら、「少しお痩せになられたのでは? 酒場で食事ができますよ」とか言われました。仕事ってのもあるだろうけど、そういう一言かけるってのは、やっぱり顔なじみで外見よく覚えてるからだし、であればなおのこと、普通に気になって気遣ってくれたってことで。゚(゚´ω`゚)゚。
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 酒場でも、当初あれだけ「もう厄介事は御免ですよ」て言われてたのに、「具合悪そうだけど大丈夫か」と言ってもらえました。゚(゚´ω`゚)゚。ヒトノ ナサケガ ミニ シミル   ゲームシステムではあるけれど、フレンドリーに接し、悪事は極力働かずに来たアーサーのことを、町の人たちが気にしてくれるのはとても自然な反応ですな。  やっぱり人ってね、親切にしてもらったり、愛想よくフレンドリーに接されたりすれば、自然と同じ態度で返そうって気になる人が多いのです。  よっぽどなにかあって気に入らないとかでないかぎり、「普通の」関係ならまずそう。自分を好きな人を好きだと思うし、嫌いな人を嫌う。  めちゃくちゃシンプルですけど、ダッチギャングの崩壊も、根本的にはこれなのかもなぁ。(時代の流れという巨大な外的要因が第一ではあるとしても)  うまくいかないことが多くなって、そこに芽生えた不安が不信につながって、ちょっと気に入らないとこ、嫌いなところ、信用できないところができたところから、雪だるま式に。  それを持ち直そうという努力は、たとえばホゼアと三人での釣りなんかもそうだったのかもしれない。  でも時代の流れというより、最早度重なる不運がそれを台無しにしてきた感もあります。ある程度は読みの浅さ、自業自得ですけど、サンドニで銀行強盗してせっかく大金手に入れたのを、嵐でなくすなんてのは、ほんとただの不運でしかない。
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 で、サブクエ出たので、せっせとアンスバーグの北へ。シャーロット夫人です。  盲目の乞食さん。偽物もいるらしいですね。でもたぶんこの、なんか本当に当たってるっぽいこと言うほうは本物かな? 偽物は帽子触るとか、ちょっと違う挙動するらしいとも聞いてますが。まあ1ドルだしね。たとえ偽乞食でも、生活に困ってやってるのには変わりないだろうし、あげるけどさ。もう名誉は上がらなくても関係ないのです。  で、この乞食さんはなんかしっくり来ること言いました。自分の過去を清算しようとしてなにかするのか、それとも、他の誰かのためにしてやれることをするのか。  サブクエ積極的にこなす天使アーサーだと、明らかに後者でございます。
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 さて、ライフル練習中だったシャーロットさん。……ちなみにここに来る前、まだ真っ昼間だっちゅーにクーガーに襲われました:((((; ๐ᾥ๐)))): おかげで肩に爪痕ついてます。ふんまにもう。
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 どうしていいかも分からず途方に暮れていたけれど、当座の食料を得て、小動物の皮の剥ぎ方くらいは教わって、生きていけるかも、という望みが出てきたようで、ずいぶん明るくなりました。
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 旦那さんのライフルを持ちだして射撃の練習をするものの、反動を受け止めることもできないし、すぐそこの的にもちゃんと当てられない夫人。  手本を見せてあげたりして何度か撃っているうちに、とうとう瓶を割ることに成功!  まあ、だからってそれで動く動物仕留められるのかとか言えば別ですけど、そこはファンタジーになるところです。  前回はおうちに入れてもらえなかったけど、今回は、お礼に食事でもと誘ってもらえました(´ω`*)
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 塩漬けにした��サギ肉のシチューかな。  都会の生まれで、ふたりとも裕福で。でも虚栄に満ちた人と物に囲まれた暮らしに嫌気がさし。押しつぶされそうになったから逃げてきたけれど、
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 こっちはこっちで、大自然という強大なものに押しつぶされそうになった。  けど、ほんの少しずつだけど、ここで生きていくこともできる、旦那と一緒に夢見た暮らしを、自分なりに続けることができるという希望が出てきた感じ。  そしてアーサーは、時々画面が赤っぽくなって、具合が……。
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 厄介かけてしまう前に行こうとするけれど、ダウーン_(┐「﹃゚。)_
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 ベッドに運ばれてました。なかなかパワフルだなシャーロットさんw
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 枕元にお手紙。「ちょっと狩りに行ってきます。枕元の小箱にお礼のお金が入っているから遠慮無くどうぞ。体を労ってください」と。゚(゚´ω`゚)゚。ヒトノ ナサケガ  ちょっとした優しさに、優しさがかえってきて、ありがたいなとしみじみ思うから、また誰かにその優しさを分けてあげたくなる。今アーサーは、そんな連鎖の中にいるのかもしれないなぁなんて思ったり。  かく言う私は、こんなささやかなシーンにうるうるしておりましたとさ。゚(゚´ω`゚)゚。  いやマジでアーサーさん労られて大事にされて愛されてほしい……。゚(゚´ω`゚)゚。
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coffee-breaker · 6 years
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【DIR EN GREY】
「The Insulated World」レビュー
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今更かもしれないけどこれから買うかもしれない、買うかどうか迷っているという人の為に。
私は限定生産盤でなく初回限定盤を購入したのですが、実際その初回盤は通常版とあまり価格は変わりがなく、そして初回盤と限定生産盤の違いと言ったらライブ映像の有無、限定生産盤が通常のCDよりも音質がいいと言われているBlue-specCD2、ボーナストラックが限定生産盤は+3曲というぐらいの違いなので、ライブ映像が欲しい!又はリメイク曲、ライブ音源がほしい!!という人以外は大きく価格が開く事になってしまうので初回盤をおすすめする。
曲は13曲と従来のフルアルバムよりローカロリーだが、実際に聴いてみるとやはりあっという間に終わってしまう。
以下曲レビュー
↓↓↓
1.軽蔑と始まり
アルバムの序曲を飾る中々のヘビーナンバー。何事にしても「つかみ」は重要とされるけれど、この曲は「The Insulated World」の、そして現在のDIR EN GREYの世界観=DIRらしさが顕著に出ている。タイトルから実は買うまでは、過去作フルアルバム、「DUM SPIRO SPERO」の[1.狂骨の鳴り]のような不気味なオープニングを飾るインストだと思いこんでいたのだが(タイトルに「始まり」とか入ってるし)いざ聴いてみるとDjentyなギターリフと力強いドラムから過去作シングル「詩踏み」のから最近よく聴く京の殴るようなスクリームが聴覚を蹂躙する。しっかりしたクリーンパートは存在せず、『俺さえ死ねばいい〜』という歌詩の部分のみシ��ウトして歌っている。完全に暴れ曲。歌詩は完全に自死に関する内容のもの。強烈な負の感情が疾走感ある演奏にも相まってリスナーの心にダイレクトに訴えかけてくる。
2.Devote my life
前曲が終わると同時に再びスイッチを入れたかのように気持ちいいドラムから入る。こちらもクリーンパートは存在せず、序盤はスクリーム、中盤はグロウル祭り、終盤はもうずっと『残酷な』というフレーズが繰り返される。ライブのコール&レスポンスのポイントに間違いなくなるだろう。全編を通じて「生きることへの絶望」を叫んでいることは歌詩を読めばよくわかる。今作はあまり歌詩に抽象的な表現は使われておらず、本当に「ストレートかつシンプル」というフレーズがしっくりくる。特に興味深い展開は少なく、この曲は最もこのアルバムでシンプルな曲かもしれない。歌詩は前曲と内容がリンクしており、自死や生まれてきたことそのものに対する懺悔が歌われている。
3.人間を被る
DIRのシングル曲アルバム再録は毎度かなりアレンジや変更点が多いが、この曲に関してはあまり変更点がなく、最初に聴いたときは京のBlessing to lose heartのコールや最初のシャウトぐらいしか明確に「シングルと違う…」と感じる部分はなかった。元々完成度が凄く高い曲なのでアルバムに入れるにあたって変更したい部分が少なかったのかもしれない。サビのクリーンパートのユニゾンはやっぱり凄く綺麗。やはり京さんの高域は毎年レベルアップしているように感じる。衰退期なんて当分来ないんじゃないだろうか。歌詩はこちらに問い掛けてくるフレーズがとても多く、「何の為に、誰の為に生きるのか?」という強烈なメッセージ性を有している。ここアルバム全体を通して言えることだが、特にこの曲に関してい言えば、京さんの「自己を持て、他人に流されるな」という強いメッセージが込められているように思う。
4.Celebrate Empty Howls
メリハリの強い曲。結構面白い音とかも入っていて新感覚。個人的にはこの曲の少ないクリーンパートの「荒れ狂う時代の〜」からがとても好き。間奏のギターリフDjentyさはラウドロック好きなら絶対にハマるだろう。この曲にきてハッキリと分かった事だが、それにしても今作は過去作と比べて音質がずば抜けて良い。歌詩については、「他人に流されて自己を持っていない」人間に対する軽蔑と皮肉が込められていて、前曲のメッセージを助長するような、しかしそれよりも尖った言葉、サウンドでリスナーに訴えてくる。
5.詩踏み
個人的にはDIRで1、2を争う良曲。シングルは2016年にリリースされた。やはり2年間の差があるのでメンバーが変えたい部分は沢山あったようで音質からかなり籠もった…というよりもドンシャリ気味の録音雰囲気になっている。このアルバム版に収録するに当たってドンシャリ気味の音質変化になるのは、過去作シングル「CLEVER SLEAZOID」がアルバムに収録されたときととても似ている。この「CLEVER SLEAZOID」のアルバム版はシングル版と比べてあまり好評ではなかったのだが、今作に関してはアルバム版の方が遥かに洗練されているように個人的ながら思う。その音質に関しては、まず低音の響き方がエグい。私のヘッドホンはaudio-technica社製の「ATH-WS990BT」で低音に重点を置いた製品なので、もちろんディープに曲の低音をフォーカスしてくれるのだが、それも相まって音の響きが心地良すぎる。また、イントロ→ギターの「キーン音」→急な疾走サウンドの展開の爽快感はシングルよりもより洗練されていて素晴らしいの一言に尽きる。歌詩は『誰もが信じていた言葉が正しいとは限らない』等、名言のような心に刺さるようなワードが歌われている。また、歌詩に書いてあるが、THE FINALとの関連はよく分からなかった。
6.Rubbish Heap
おそらくこのアルバムで最もDjenty色の強いハードロック。「Fist」という掛け声もなかなか癖になる。ギター、ベース共に重い響きが中々グッとくるヘビーナンバー。京のヴォーカルよりも演奏を楽しむ曲だと思う。もちろん声も重要なんだけど、もうこの曲に関しては「Fist」や「生きたい生きたい生きたいでしょ?」というフレーズのなども含めて京の声さえもが良い意味で楽器になっているようだ。ここでも歌詩は強烈な自己嫌悪、自身の無価値さについて歌いながらも終盤では希望が差したような前進を助長させるメッセージが残っており、少しこれまでの流れに反するものとなっている。
7.赫
タイトルから察するに聴くまでは強烈かつメタリックな攻撃的サウンドを予想していたのだが、完全にその予想は外して美しいバラード曲だった。毎度の事ながら、京さんのmid域からhi域への自然すぎる持っていき方には圧巻せざるを得ない。系列的には前作シングル『輪郭』や今作のラストを飾り、かつリードナンバーである『Rununculus』と似ていると感じた。優しい歌い方をしながらも歌っている歌詩の内容は暗く、そしてネガティブなもので自死に関する描写や、前曲の希望ある終わり方を否定しているようだった。デスボイス系の声は入っていない純真で真っ白な曲調に反して今までの激しい曲よりも強烈なメッセージが透き通った声を通してリスナーの心を突き刺してくるだろう。
8.Values of Madness
アルバムがリリースされる前からRadio Edit Verが公開されており、もちろん直ぐに聴いてみてのだが、第一印象は「とてもDIRらしい」と言うことだ。最近のDIRによく見られる面白アプローチ満載だったし、Aメロ、サビのキャッチーかつ思わず口ずさんでしまうようなメロディラインはPOPSの要素さえ感じさせた。Aメロの後に展開されるラップ調のスクリームパートも珍しい。いかにもジャンルレスな音楽性確立させているDIRらしい曲といった感じだ。歌詩は、『生きてる事が最低』と歌ってしまう程に救いのない絶望的な内容で、誰かを待つ希望さえ捨てきれず、しかしその誰かさえも失ってしまう…という自分を見失った者への軽蔑が感じられた。
9.Downfall
このアルバムで最も攻撃的で突っ走り続ける暴走ナンバー。しかし、ストップする場面も存在しており、曲構成としては緩急が非常に強い。『意味は 意味は 意味は』『楽しそうな未来…』と要所要所で繰り返されるフレーズを『ゆらゆらゆら』と空耳で聴こえて捉えていたので、歌詩カードをみて笑ってしまった。間奏のベースラインがかなり際立っていて単純にメタルコア的格好良さは満載である。また、『正義面して答えてんじゃねぇ』と吐き捨てる場面は爽快感抜群。メタルコア好きならアガること間違いないだろう。歌詩はかなり怒りの感情が露わになっており、「何かに従って生きることに意味はあるのか?」と終始訴えかけ続けている。
10.Followers
扉開け閉めされるときに鳴る不協和音のような音から幕を開ける壮大なバラード曲。系列サビの時に鳴っているギターのバックサウンドがとてもいい役割をしていてヴォーカルのメッセージを際立たせている。また、泣きのギターソロは必聴。終盤でhihi域まで簡単に歌い上げてしまう京さんにはやはり脱帽してしまう。ここに来てようやく気づいたけど、全体的に今作は高音バラード曲が多い。歌詩は『残酷な世界であっても』尚、生き続けるという希望が込められた前向きな言葉が綴られている。
11.谿壑の欲
これで「けいがくのよく」と読むらしい。どこでそんな単語知ったんだ。。。緩急の激しいシンプルな展開で、疾走パートとスローパートの主張もバランスが良く、ライブ映えしそうな曲。DIRファンに言うならば過去作「DUM SPIRO SPERO」の[5.「欲巣にDREAMBOX」あるいは成熟の理念と冷たい雨]のような曲展開と非常に似ている。あの次々と畳み掛けるような急すぎるスクリームパートは一瞬で駆け抜けていくものの、耳には強烈に焼き付くものがある。他に上げるならば京がリーダーを務めるもう一つのバンド【sukekiyo】の最新音源集「ADORATIO」の[1.疑似ネクロマンサー]のような要素も取り込まれている。歌詩はドロドロとした雰囲気を放っているというだけで具体的に何を言いたいのかはあまり伝わってこない。また最後の『そして次に誰かがこう言うの「」』という歌詩も意味深かつ「」には何が入るのか全く予想がつかない。ミステリアスな曲だ。
12.絶���体
間違いなくこのアルバムの核となる曲。だいたいDIRのフルアルバムには一曲ロングナンバーが入っているのだが、この曲はその中でも一層壮大で多彩な展開や、静かめな序盤→綺麗すぎるサビ→クリーンパート→突然と溢れ出す深く黒い感情→『信じること そうそれだけだ』と繰り返される→そしてまた綺麗なサビ→疾走感情爆発スクリームパート…という展開には感動してしまうとともにこの曲の完成度の高さを物語っている。絶縁体といいタイトルの通り、他者とは絶縁された境地に立ちたいという願いや、京自身が思うようなメッセージが直情的にかかれており、抽象的な表現は一切存在しない、ストレートな歌詩は強烈にリスナーの心を揺さぶるだろう。
13.Rununculus
ついにたどり着いた希望の境地、このアルバムは最も爽やかで美しいバラードナンバー。静かなピアノのイントロと、さらに低音の京の歌声から幕を開け、盛り上げていき、最後の曲らしい、と形容できる美しいサビが爆発する。今まで自死について散々歌ってきて、ここで『叫び生きろ 私は生きてる』と感情移入して聴けば涙が溢れ出てしまいそうな背中を押す前向きな詩と『Rununculus…』と繰り返されて最後に『Rununculus!』と力強く歌い上げてこのアルバムの幕を下ろす。歌詩は最後まで「誰かの為ではなく、自分の為に今を生きろ」という強く、固いメッセージがストレートに書かれている。リード曲が最後に置いてあるというのに最初疑問を抱いたが、全部を通して聴いてみるとなぜこの曲がリードナンバーなのかはすぐにわかるだろう。何故ならこのアルバムで最もDIR EN GREYが"伝えたかったこと"なのだから。
以上、全曲レビュー。
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このアルバム通して伝えたい事は言わずもがな明確で、今まででもっともストレートかつ直情的なメッセージ群だ。通して聴いていると、まるで一つの長い長い曲を聴いているかのようにあっという間に終わってしまうが、そのメッセージがリスナーにつける爪痕は今までのどのアルバムよりも強烈だ。そして、間違いなく生きるということに対する"答え"なのだ。
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oyutama-music · 3 years
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FAQ
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■1曲お願いするとしたら、金額はどのくらいになりますか?
1曲の制作費はご依頼の内容によって変動いたしますので、上記フォームにてお気軽にご連絡くださいませ。内容にもとづいたお見積もりを作成させていただきます。これまでご依頼いただいた案件では、個人のお客様は8万円~、事務所・法人のお客様は15万円~のご予算で楽曲提供させていただいております。(レコーディング込み)
■新規アイドルグループ立ち上げでワンマンも予定しているため大量に曲数が必要なのですが、まとめて依頼できますか?
5曲以上などまとめてのご発注も承っております。タイトなスケジュールの場合は、お湯たまサウンドと提携している作曲家と分担することで、曲数をスケジュール通りにご用意できる体制を整えております。
■依頼してどのくらいでできるか教えてください。
納期はご依頼者様のご希望に合わせ調整いたします。目安として、ダンスの振り入れやレッスンに使用できるフル尺の仮歌入り音源の納品には2~3週間程度のお日にちを頂戴しております。
■楽曲制作が初めてで何をしたらいいのか分からないのですが、それでも相談に乗ってくれますか?
はい!もちろん大丈夫です。楽曲制作が初めてのお客さまにも、分かりやすく丁寧な対応を心がけております。楽曲のテンポ感、曲調、歌詞の雰囲気などの認識を合わせ、的確丁寧な音楽制作を行ってまいります。
■アイドルのプロデューサーをしておりますが、ファンの方が現場でノリやすい楽曲をお願いする事は可能でしょうか?
お湯たまサウンドの代表者(お湯たま)もアイドルグループのプロデュースをおこなっていた経験があり、ファンの心に刺さるような楽曲作りを常に心がけております。例えば、沸ける曲、楽曲派もうならせる曲、ガチ恋口上などが入れやすい曲など…。大切な現場で爪痕を残せるような最高の楽曲を提供いたします。作詞作曲からレコーディングまで完パケいたしますので丸投げしていただいても大丈夫です。また、メンバーの歌割作成などの運営サイドのご協力も可能です。最高の音で現場を沸かすことができるよう、制作物には責任を持って対応いたします。
■東京で活動していないのですが大丈夫でしょうか?
関東圏ではない遠方のお客様からのご依頼も対応可能でございます。LINE公式アカウントやビデオ会議などの打ち合わせ環境を整えておりますので、直接お会いできない場合でも問題なく進めることができます。過去には関西や九州などでご活動されているお客様からご依頼いただいたことがございます。
■楽曲の著作権の扱いについて教えてください。
お湯たまサウンドがご提供させていただく楽曲の著作権については、基本的にJASRACに管理を委託しております。制作費をお支払いいただいた時点で楽曲の原盤権はお客様が持つことになりますので、販売、配信などは自由におこなっていただけます。なお、楽曲のクレジット(作曲者等)を別名義にする、楽曲を別アーティストに転売・転用する、などの行為は禁止させていただいております。音楽出版社との著作権譲渡契約が必要な場合は別途ご相談くださいませ。
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shibatakanojo · 4 years
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守ってあげたい
 毎週、土曜日の午後、二時から三時まで。彼女はそのカフェでひたすらにペンを走らせていた。二人掛けのテーブル、注ぎ込む陽光を全身で受け取るかのように、ガラス窓へ向かって彼女は座っている。向かい側の椅子の背もたれには、彼女が着てきたベージュのチェスターコートと赤いグレンチェックのマフラーがかけられ、向かい合う座面には人間の代わりに黒いリュックサックが置かれた。テーブルの一冊の大学ノートには隙間なく文字が並ぶ。値の張りそうな橙色のボールペンは手帳型の付箋紙と共に真四角のポーチから取り出され、付箋紙は常に開きっぱなしだ。
 彼女の「書く」という一連の行動は、僕にはどうも儀式じみたそれのように思えてならない。週二回、あの席で一心不乱に言葉を綴り続ける彼女は一体何を、何のために書いているのだろうか。僕がそれを知ることはない。
   彼女と出会ったのは全くの偶然だったけれど、いま思えば僕にとっては必然としか言い表せないものだったし、つまりそれを奇跡と言い換えることだって容易いと言えるだろう。言葉通り『拷問』のような就職試験を死に物狂いで突破し、勤め始めた職場は絵に描いたようなブラック企業だった。退職するまでの約二年半、僕はインスタグラムやツイッターに並ぶ『仕事が原因でうつになりました漫画』のテンプレートをなぞるように少しずつ精神を蝕まれ、家族や友人と距離を置き、笑いかたを忘れ、入浴を億劫がるようになり、布団から起き上がれなくなり、出社できなくなり、そうしてある日心療内科で「うつ病ですね」と告げられた。白髪交じりの担当医は重くもなく軽くもない調子で「しばらくお休みましょう」「ご家族と連絡はとれますか」「今後は隔週で通院してくださいね」「薬はあくまで薬ですから、怖がる必要なんてありませんよ」「ちょっと疲れちゃっただけのことですからね」「どうか心配しないで」「これもあなたがきょうまで頑張ってきた証拠なんですよ」などと、定型の文言を少々僕向けにカスタマイズしたうえでいくつも並べ立ててみせた。僕が曖昧な返事をすると彼は、
「大丈夫。うつは心の風邪です。きっとよくなりますよ」
 原型から外したばかりの仮面みたいな笑顔で僕にそう告げる。きっとよくなる、と話す彼の目がひどく澱んでいることを、僕は少し怖いと思った。医師の指示通り、職場へしばらく休職させてほしいと告げると上司は一切渋る様子もなく、「あ、はい。そういうことなら了解です」と言って、へらへらと笑った。細かな手続きを行う過程の中でも、僕は自分がこの会社の手駒にすら勘定されていないことを改めて思い知る。誰も僕を引き止めない。誰も僕に同情しない。誰も僕の復帰を期待していない。誰もが皆、無表情で書類や画面を睨み、死体みたいな顔のまま異常なほどに明るい声色で電話を取る。嬉々として罵ってくる上司とあわせる部下の両眼は、あの日の担当医のそれと酷似していた。
 ああ、そうか。ここにいる僕らは人じゃない。ただのリビングデッドなんだ。
 僕は休職を撤回し、退職願を提出した。肌寒い秋の始め、僕はもう一度人になりたいと思っていた。
   治療らしい治療をした実感はない。
 毎日決められたタイミングで薬を飲み、隔週で心療内科へ行って、その間の出来事や感情の変化、体調の良し悪しなどを伝え、それを聞いた医者は僕へ相応の言葉を返しながら薬を増減させる。たったそれだけのことで僕の世界はみるみる優しさを取り戻していった。最初のうちは医者や看護師がいう「お大事にどうぞ」という言葉にすら「こいつらは一体僕に、僕の何を大事にしろというのだろうか?」などと内心腹を立てていたというのに、数ヵ月もしたころには僕も “僕の平均値”に戻りつつあり、彼らへ、
「ありがとうございました」
 と穏やかな顔で返せるようになっていた。渡された定型文へ、そっくり定型文を投げ返すだけのことがこんなにも難しいだなんて、僕は自らの精神を病むまでずっと知らずにいた。なんてことない出来事に笑うだけのことがこんなにも心を満たしてくれる。家族や友人がいる幸せ、温かな湯船を心地よいと感じる瞬間の安堵、朝陽の眩しさ。僕にとってはあまりに過酷すぎた会社勤めで失った美しくやわらかで希少な生活の一つ一つを、そうして僕はまた一つずつ取り戻していく。
「ああ、あなたは花が咲くように笑うのねえ」
 担当医に薦められ、勇気を振り絞って顔を出した『交流会』で隣の席になった初老の���性にそう言われたとき、僕は「これ��患ったことは決してマイナスじゃない」と心から思った。通院が隔週からひと月に一度になり、さらにふた月に一度になったころ、季節はまた冬を迎えていた。
  「気が向いたときでいいですから、外に出かけてみるといいかもしれませんね。たとえば、日中の散歩だとか」
 医師の提案を受け、その日僕は近所をふらふらと歩いていた。気温は低く吐く息も白んでいるが、きんと尖った空気はむしろ僕にとっては清潔なものだと感じられ、不快感なんてどこにもなかった。僕のアパートはおんぼろな代わりに立地がよく、十分も歩けば街中へ出ることができる。そういえばここしばらく、買い物はインターネットか最寄りのホームセンター、食料品はスーパーマーケットやコンビニエンスストアで値下げ品ばかり買っている。きょうは随分気分がいい、イヤホンを嵌めていれば人目もそれほど気にせずに動けそうだった。久しぶりに本屋にでも行ってみようか。余裕があれば服屋に行ってパーカーの一つでも買ってきたっていい。ああ、そういえばこの履き古したスニーカーもずっと買い替えたいと思っていたんだったな。
 進行方向を変え、銀杏並木を東に進む。頬をかすめる風が冷たい。フライトジャケットに突っ込んだ両手の関節がきしむ。日曜の午後、午後三時過ぎ。どこまでも冷え切った、気持ちのいい、空の高い日だった。
   僕の機嫌は二十分ももたなかった。
 駅ビルに入り、本屋までの長い通路を歩くだけのことで僕は十二分に精神をすり減らしていて、周囲の人間が気になり立ち読みをしようにも内容は一切頭に入ってこなかった。イヤホンから流れる音楽を今の自分に寄り添ってくれるような歌詞のものに変えても、限界まで音量を上げても効果は一切ない。掌が汗ばんでくる。心臓はバクバクと暴れ、目が泳ぐ。本棚の透き間、狭い通路を何人もの他人が通り過ぎる。そのたび互いのアウターが擦れ、布越しに人間の気配がべったりと僕の肌にこびりつく。
 気持ち悪い。吐き気がする。鳥肌が立つ。あまりの不快感に後頭部を掻きむしりたくなってくる。今にも叫び出しそうだった。
 乱暴に本を戻し早足で店を出た。音量をさらに上げて世界から自分を完全に隔離する。駅ビルが勢いよく僕を吐瀉する。全身からだらだらと汗がふき出しているのに、手足は氷のように冷え切っていた。震える両手で自動販売機を操作し缶コーヒーを買う。必死の思いで駅裏の公園に行き冷たいベンチに腰掛け、そこでようやくプルトップを開けることができた。カシュ、と空気が漏れる。深呼吸を繰り返し、あえて時間をかけてそれを味わいながら、僕は僕に「もう一人きりだから」と何度も繰り返し説いた。もう一人だから。もう誰も僕を見ていないから。もう誰にも僕は見えていないから。もう落ち着いていいから。もう大丈夫だから。
 あまりの情けなさに、油断すると涙が溢れそうだった。
 今の僕は本屋で立ち読みすらできない。服屋なんてもっての外、靴なんて買えるわけがなかった。土埃で黒ずんだ爪先を見る。ソールは斜めにすり減り、全体的に黄ばんで何ともみすぼらしい。今の僕とよく似ていると気づき、軽く笑い飛ばしてみる。どのみち惨めだった。
 缶コーヒーを飲み終えても、僕はなかなかその場を立ち去れずにいた。どれだけ待っても立ち上がる気力が湧いてこなかったのだ。家族に迎えを頼みたいけれど、実家はここから車で一時間以上かかる場所にある。かかりつけの病院に電話をかけてみようか、いやしかしこの程度のことで対処してもらえるとも思えない。あるいは担当医が話くらいは聞いてくれるかもしれないけれど、どうせ適当な励ましの言葉をいくつか投げかけられ、「だからどうにかして一人で帰ってくれ」とでも言われるのだろう。あの日会社から引き留めてもらえなかった僕は、やはり誰からも助けてもらえそうになかった。
「あー、死にてえなあ」
 不意に口から出たその言葉は、極めて自然な表情をしていた。ああ、それもいいかもしれないな。そんなふうに思っているうち、ぼろ、と涙が零れる。あ、やべ。慌てて手の甲で涙を拭うが、一度溢れた涙はなかなか止めることができないもので、必死に瞳をこすっても次から次へと大粒の雫が両頬を濡らしていった。いっそけらけらと笑い飛ばしてやりたいような、あるいは大声を上げ怒り狂いたいような、けれどどちらも現実的ではない、そういったやり切れなさがなおさら涙を促す。ああ、本当に、もう死んでしまいたいなあ。いよいよ僕は涙を拭うことも諦めて、じっと俯き、時折しゃくり上げながら自身の感情が落ち着くのを待った。
「あの……、どうかなさいましたか?」
 ふと頭上から若い女の声がした。ぱっと顔を上げると、目の前には品のいいショートカットの女性が立っていて、
「具合、悪いんですか? 大丈夫ですか?」
 彼女は僕へ向かって白いハンカチを差し出している。何か返事をしなければ。今の僕にとって、医者以外の他人と向かい合って話すことはあまりにも久しいものだった。うまく言葉が出てこない。彼女は一方的に話を始めている。
「すみません、少し前からあなたが泣いてらっしゃるのには気づいていて。声をかけるか迷っていたんですけど、その……、ご迷惑でしたか?」
「あ、あの、いえ……、ありがとうございます。で、でも大丈夫ですので、はい。あの、少しだけ休んでいこうと思っていただけで……。コーヒーを飲み切るまで」
 とっくに飲み切ってあったコーヒーの缶を顔の横で振ってみせる。彼女は「ああ、そうなんですね」と言い、それから、
「私も、休んでいこうかな」
 僕から一人分より少し足りない程度に間隔を開け、そっとベンチに腰掛けた。
「もう冬だから仕方ないけれど、やっぱり外は冷えますね。はー、寒い。でもこう寒いと温かい飲み物がおいしいんですよね。朝に目が覚めて、布団から出るのは勇気が要るけれど、寒い台所に立って丁寧にコーヒーを淹れて、それを暖まりかけた居室で飲むの、何より好きだなあ」
 女性はつらつらと一人で話しながら、鞄から掌より少し大きい水筒を取り出した。口をひねり、それをカップにして中身を注ぐ。
「ホットレモネードをね、毎朝ポットに入れて持ち歩いているんです。休日に蜂蜜漬けのレモンを作っておいて、そのシロップを少し濃い目にお湯で割って、ポットに注いで。職場ではサーバーのコーヒーが常に飲める状態になっているからそれを飲んで、行き帰りだけ、このホットレモネードをバスに揺られながらこっそり飲むんです。仕事ってどうしても疲れちゃうけど、そこから離れたときに温かい飲み物があるとちょっとだけ、ほんのちょっとだけ落ち着けるんですよ。まあ、私の場合は、ですけどね。あ、ちなみに夏場は水で割って、氷を入れてキンと冷やして持っていくんです。帰るころには氷も溶けちゃって薄まっているんですけど、まあそれもそれでおいしくて。ふふ、いわゆる“馬鹿舌”なのかもしれませんね」
 彼女が注いだ液体からは柑橘の甘酸っぱい香りがする。かすかに湯気の立つそれを、彼女は大切そうにゆっくりと口に含んだ。ああ、おいしい。彼女が呟く。
「この辺りにはよくいらっしゃるんですか?」
 女性の問いかけに、いえ、と短く答える。彼女は、そうなんですね、とワンクッション置いてから、
「私は毎日二回、この公園の前を通るんです。ほら、この道を真っ直ぐ下るとバスターミナルがあるでしょう? 毎朝あそこで降りて会社に向かって、毎晩あそこから家に帰るんです。だから」
「ああ、なるほど。そうなんですね」
「ええ。それで、朝にこの公園の前を通ると三日に一回くらい、灰色の毛の猫の親子に会えるんです。親猫も、子猫も、ふたりして桜耳でね。最初は目が合ってもプイっとすぐにそっぽを向かれてしまったんですけど、朝会うたびに『おはよう、きょうもかわいいね』って声をかけるようにしていたら、最近は親猫が私の声に答えるみたいに尻尾をふわって一回だけ揺らしてくれるようになったんです。それがもう、すっごくかわいくて。野良の子に餌をあげるのはあまりよくないって話も聞くからそういうのはやらないようにしているんですけど、でももう、なんていうか、そうやって会うたび『おはよう』って話しかけていると次第にその子たちが友達みたいに思えてくるんです。何日も会えない日が続くと、ああ元気かな、怪我とかしてないかな、ごはんは満足に食べられてるのかな、あったかい場所で眠れてるかな……って。飼ってあげられたら一番いいんでしょうけど、私が住んでいるところはペット禁止だし、そもそも動物、見ている分はともかく、触るとかそういうのはあんまり得意じゃなくて。あはは、ひどい話なんですけどね。それでもやっぱり、うん……、私はあの二匹のことが好きだな」
 女性がホットレモネードを含む。うん、おいしいな。そう呟く。女性が確かに僕を見る。それから静かに口を開いて、
「うまく言えなくて申し訳ないんですけど、その、なんていうか、だから……死んじゃうのって勿体ないと思うんです」
 と言った。
「本当に、大したことは言えないけれど、寒い朝に飲むコーヒーがおいしいとか、疲れた身体にレモネードが沁みるとか、時々会う猫がかわいいとか、その猫に会えなくて心配になっちゃう気持ちとか……。そういうの、死んじゃったら全部わかんなくなると思うんです、それはすごく勿体ないって思うんです。生きるってきっと、結論を先延ばしにし続けるだけのことでいいはずなんですよ。何か、確かな希望をもって生きるなんてそうそうできることじゃなくて、でも毎日……毎朝、毎晩『別に死ぬのは今日じゃなくてもいいかな、とりあえず明日まで生きておくか』って、その程度でいいって、私は思うんです」
 彼女は水筒を強く握りしめていた。いつの間にか彼女の視線は自身の履いている革靴に移動している。焦げ茶色のサイドゴアブーツ。丁寧に磨かれたそれは彼女のやわらかな雰囲気とよく合っていた。
「あはは、あの、すみませんお節介なこと言ってしまって。なんていうか、私も、昔ちょっと死にたいって思っていた時期があって。そういう時期がすごく長くて……。だからその、死にたいって声が聞こえてきて、ああこの人に話しかけたいなって、そう思っちゃって。ごめんなさい、いきなり。ご迷惑でしたでしょうね」
 まあ、じゃあ、私はここで。そういって彼女はやおら立ち上がると僕に向かい合って、左手を顔の横で小さく振りながら去っていく。彼女のその華奢な手首には横向きの古傷が何本も走っていて、彼女の言葉を無言で裏付けていた。
 その夜、僕は一人の部屋で彼女のことばかり考えていた。毎朝一日二回、朝と晩と通りすがる公園。親子猫と会える日。冷え切った部屋と温かいコーヒー。手づくりのレモネード。先延ばしにし続けた希死念慮。手首の傷痕。
「『別に死ぬのは今日じゃなくてもいいかな、とりあえず明日まで生きておくか』……」
 彼女の言葉を反芻する。
 彼女のことだけを思い出している。
   翌朝、目が覚めてからも僕はずっと彼女のことを考えていた。いつの間にか思考は彼女の言葉から彼女自身のことに移っている。丸みを帯びたショートカット。直線的な眉。末広がりのつぶらな二重。小さな鼻と唇。水筒を開ける指先の繊細さ。ベージュ色に塗られた艶やかな爪。飼い犬のように親しげな笑顔でありながら、いくらか広めに距離をとってベンチに腰掛けるところはまるで野良猫が互いのパーソナルスペースを侵すまいと神経を尖らせているふうだとも思えた。
 彼女は、非常にかわいらしい女性だった。
 時計を見る。午後五時十分前。彼女は今頃職場だろうか。一体どんな仕事をしているのだろう。どうして昨日はあんな時間にあの公園の前を通ったのだろう。いくら僕が「死にたい」と漏らしていたとはいえ、そして自身も死にたいと思っていた過去があるとはいえ、なぜ僕なんかに話しかけてくれたのだろう。
 立ち上がり、昨日と同じフライトジャケットを羽織る。マフラーを巻き、手袋をはめ、財布をポケットにねじ込み部屋を出る。すっかり暗くなった宵の道、公園へ向かった。
 いくらか急ぎ足で歩いたこともあり、六時過ぎには駅前に辿り着いていた。できる限り人間と目を合わせないよう気を配りながら自動販売機で缶コーヒーを二本買い、それを両手に駅裏の公園を目指す。通り過ぎる女性全員の風貌をそれとなく観察し、彼女ではないかと期待してはすぐに落胆させられる。
 そこから午後九時半まで、昨日と同じベンチの同じ場所に座りながら、僕は公園前を過ぎる人々を眺め続けた。真っ暗な公園、街灯は申し訳程度の明るさしかなく、その場に三時間以上留まっていた僕は誰が見ても不審者そのものだっただろう。実際その場にいた僕は不審だったのだと思う。
 様々の偶然が重なって、その日、その数十分だけ話しただけの女性にもう一度会いたいと願う男。何か伝えたいことがあるわけではないし、何か言ってほしいことがあるわけでもなかった。ただ僕は彼女にもう一度会いたいと思ってしまった、それだけだ。きっとそれは彼女がきょうも猫の親子を見られたら嬉しいと、毎朝その姿を探してしまう感覚に限りなく近い。ほんの小さな幸運を、幸福を、彼女が二匹の猫や温かな飲み物に見出すように、僕は彼女の存在に小さな幸運を見出したのだ。
 その夜、僕は彼女を見つけられなかった。
   以来、僕は毎日二回、公園で彼女を待つようになった。彼女が言った“朝”や“晩”が具体的に何時なのかを知らない僕は、朝は七時から九時まで、晩は六時から九時半まで公園のベンチに居座り続けた。行くたび駅前の自動販売機で温かなコーヒーを二本買い、通りを眺めながら彼女を待ち、一本だけ時間をかけて飲む。もう一本は彼女と出会えたら渡そうと思っているのだが、今のところそれは叶わず、帰り道にとぼとぼと歩きながら冷え切った状態のそれを飲んだ。
 そのようにして僕は四日連続で彼女を待ってみたが、しかし不思議なくらい彼女に出会えはしなかった。あるいは彼女はもっと早い時間に公園の前を通り、もっと遅い時間にあの公園を通るのかもしれない。
 彼女のいう猫の親子にも会える気配はなかった。アウターのポケットに猫用のペットフードを仕込んでいる意味は、今のところない。
  「少し、痩せましたか?」
 二週間前に会ったばかりの医者からそう指摘され、取り繕うように「体力を戻そうと思って、毎日走るようにしているんです」と返した。医者は「それはとってもいいですね」と言い、それから、
「でもまあ、あまり無理はしないでくださいね。何事も適度に行うのがベストですから」
「ああ、はい。わかりました。適度に」
「ええ、適度に」
 彼は僕に対して何かを言いたげなようにも見えたし、一刻も早く診察を切り上げたがっているようにも見えた。薬の飲み忘れはありませんか。飲んでいて、何か気になる点などはありませんか。夜はしっかり眠れていますか、途中で目が覚めてしまうことはありませんか。定型的な医師の質問へ一つ一つ「ありません、ありません、ありません」と同じ言葉だけを繰り返す。
「最後に、何か気になることがあれば」
 普段であればこの質問へも「特にありません」と返している。ただ、その日の僕は普段の僕と少し違う僕だった。彼女、という人間を知り、そのうえで再び会うことが叶わず、そして僕は今彼女にもう一度会いたいと思っていた。僕は彼女を切望する人間に変わっていた。
「あの、ええと……」
 その事実をどのようにして伝え、相談すればいいのだろうと思惟する。恥はかきたくなかったし、不必要に訝しがられることも避けたかった。この四日間で不審がられることには十二分に慣れたが、だからといってそのような扱いを受け入れられるようになったわけでもなかったのだ。
「なんというか……、その、気になる人ができたんですけど、なかなかタイミングがあわなくて。親しくなりたいというか、うまく話しせたらいいのにというか……。えー、その……、こういう場合って、一体どう立ち回ったらいいんでしょうか?」
 僕の的を射ない話を受け、医師はなぜか困ったように笑った。そうですね、と一度間を置いてから、
「自分をよく見せようとか、大きく見せようとか、そういうことではなく……、まあ、素直に笑い合えるようになれたなら、きっと、楽しいのでしょうね」
 僕とはまた違う、けれど僕と似たように的を射ない物言いで彼はやはり僕に笑いかける。ああ、はい、わかりました、ありがとうございます。医師の発言の意味は理解できなかったけれど、ひとまず礼を伝えて頭を下げる。彼は「いえ、では、きょうは」と僕に別れを告げた。僕も再び頭を下げて、
「ありがとうございました」
 そういって困惑したまま診察室を出る。僕と話しながら、医師は眉を下げ、口角を上げ、頬を持ち上げて確かに笑っていた。笑ってはいたが、彼の目は弧を描いてはいなかった。もうずっとひどく疲れたままなのだろう、前々から両眼は澱んでいたが、先ほどの彼はそういう次元ではない、まるで何かを警戒するような、何かを危惧するような、そんな目をしていたように思えて仕方がなかった。
   その日の朝にも僕は彼女と会いたくてあの公園で座っていたし、その日の晩にも僕は公園で彼女を待ち伏せていた。きょうは月末の金曜日の夜だった。退勤後、このまま街中で飲んでいくのだろう男女が笑いながら公園の前を過ぎていく。いつもよりも早い時間なのに人の通りは激しかった。さすがはプレミアムフライデーだな、と鼻で嗤う。
 半分ほど中身の残る缶コーヒーを手の中で持て余している最中、僕はようやくそのベージュのチェスターコートの女性を目にした。品のいいショートカット、グレンチェックの赤いマフラー。間違いない。彼女だった。
 彼女は同年代の男性と、年配の女性と共に、笑いながら歩いていた。彼女の瞳は年配女性の手元を捉えている。はめられた手袋を見ているらしかった。不思議なくらい彼女の目線はそこから移らない。彼女と女性が何度か頷いている。話しかけに行きたかったが、僕の足は動く気配などなかった。このままでは彼女が行ってしまう、僕は何とか情報を手に入れようと、必死に耳を澄ます。彼女と年配女性の声は聞こえてこなかったが、同年代らしき男性が、
「ってことは、明日も×××で?」
 と割合大きな声で彼女に訊ねる。彼女は一度曖昧に笑って、しかし何かを言いながら頷いたのを僕は確かに見た。彼が挙げた名前は、駅中にあるチェーンの喫茶店の店名だった。明日、彼女はそこに行くのかもしれない。
 結局そのまま彼女は行ってしまい、僕は彼女に話しかけられなかった。
「明日、も」
 いつの間にか足元には二匹の猫がいた。僕のほうを見上げ、物欲しそうに鳴いている。僕はポケットに入れていたペットフードを開封し地面に放り投げる。猫たちが餌を貪る様を眺めながら、僕は明日の自分が彼女にどう話しかけるべきかを考えていた。
   帰宅後スマートフォンで調べると、その喫茶店は朝七時半から開いているらしかった。一晩考え続け、結局翌朝七時に家を出る。彼女が朝一でその喫茶店にやってこないとは言い切れなかった。開店十五分前から店の前に並ぶ。僕以外の人間は誰もいない。しばらくして店が開き、店内へ招かれる。朝食としてホットコーヒーとミルクレープを注文し、支払いを済ませ、他の座席をよく見渡せる、隅の席に腰掛けた。昨日まで寒空の下公園のベンチに座っていたせいで、店内の程よく調節された空調が天国のようにも思える。多少インストゥルメンタルの音楽が賑やかすぎるとは思ったが、それもコーヒーを飲み干すころにはすっかり慣れてしまった。店員に促されるままにコーヒーのおかわりをもらう。今のところ彼女がやってくる気配はなかった。さすがに早すぎたのかもしれない。あの男性は、彼女が何時にこの店にやってくるのかを知っていたのだろうか。
 彼女がこの店に入ってきた後のことを想像する。真っ先にレジへ向かった彼女は何か、温かな飲み物を注文する。僕と同じようにミルクレープも頼むかもしれない。それらを受け取った彼女は席を探しに歩き出し、
「あれ? もしかして……?」
 僕を“僕”だと認識した彼女は、笑いながら僕に近づいてきてくれるだろうか。あるいは軽く会釈をするだけに留めるのかもしれない。そうしたら僕は立ち上がって彼女に近づいて、この間の礼を伝えるのだ。うまくいけばその後相席させてもらえるかもしれない。きっと僕らは何か意味のある会話をするのだろうが、けれど僕は彼女の左手首の傷の理由にはあえて触れないだろう。そのうえで僕は僕のことを少しだけ話すのだ、この間の涙の言い訳として。彼女はそっと慰めてくれるかもしれないし、よくある話だと軽快に笑い飛ばしてくれるかもしれない。どちらにせよそれは僕にとって明確な救いとなる。
 静かにコーヒーを含む。しっかりと苦くコクがあり、酸味は微かで、深い香りは鼻腔を満たす。ここ数日飲み続けた缶コーヒーとは比べ物にならない味わいに、今日まで彼女に会えずにいたことをむしろありがたいと思った。
   昼を過ぎても彼女は現れなかった。入店して四時間も経つと店員は鬱陶しそうに僕を睨むようになり、いつの間にかおかわりを訊ねてくることもなくなっている。申し訳程度に何度か別のメニューを頼むが、心なしか応対も冷たくなっているように感じた。さすがに居づらくなってきて、四度目の注文を食べ切った午後二時手前、逃げ出すように店を後にする。他の客には必ず告げていた、ありがとうございました、の一言はどの店員からも言ってもらえなかった。
 背を丸め、件の公園のほうへと歩き出す。彼女がきょうもあの公園前の道を通る可能性に賭けようと思っていた。いくら冬だとはいえ、きょうはやけに気温が低い。風邪をひかないといいのだが、この寒空の下どう対処すべきだろうなどと考えていると、ふと遠くからベージュのチェスターコートの女性が歩いてくるのが見えた。目を凝らす。赤いグレンチェックのマフラーに丸みを帯びたショートカット。じっと顔を見つめる――間違いない。彼女だ。きょうの彼女は両耳にイヤホンを挿していた。大振りの、キャンバス地のトートバッグが重そうだ。おそらくこれからあの喫茶店に入るのだろう。店内で会うシーンはシミュレーション済みでも、こうしてすれ違うことは全くの想定外だった。何か話しかけなければ、彼女が行ってしまう。しかし彼女はイヤホンをはめていて、いっそ奇妙なくらい目線も合わない。何かを伝えようにも僕の声はきっと届かないだろう。身振り手振りで彼女にアピールする必要があった。しかし、どうやって。考えを巡らせているうちにも順調に彼女は僕に近づいてくる。残り、あと数メートル。
「あ、あの」
 イヤホンをはめこちらを見ようともしない彼女に、案の定僕のか細い声は届かなかった。僕の横を通り過ぎた彼女が喫茶店に入る様を振り向いて見届ける。もう一度あの店に入る勇気はなかったが、せっかく得たチャンスを手放す勇気も僕にはない。
 僕はただじっとその場に立って、彼女が店から出てくるのを待った。
   一時間後、彼女が店から出てくる。重そうな鞄を左肩に、駅地下へと向かっていく。おおよそ彼女と同年代だろう若い女が複数人並ぶデリカテッセンの前で立ち止まった彼女は、その店でいくつかの商品を買った。その後、彼女は駅前のバス停に並ぶ。数分ほどスマートフォンをいじっているうちに某バスターミナルへと向かうバスがやってきて、彼女はそれに乗り込み僕の前から消え去った。僕はそれらを物陰から、走りゆくバスが全く見えなくなるまでじっと見つめていた。
 駅に戻り、先ほどの店に入る。彼女が何を買ったかまでは見えなかったが、その店に並んだやたらに値の張る品のいい数々の総菜は彼女の雰囲気によくあっている気がした。ほうれん草とグリュイエールチーズのキッシュ、という商品を買うと、店員はそれを彼女が受け取っていたものとサイズ違いの白い小箱に納めて渡してくれる。帰宅後、電子レンジで加熱して食べたそれはよくわからない香辛料の複雑な香りがした。
   翌日の日曜は一日中家にいたが、さらに翌日、月曜の朝になると僕はまたあの公園のベンチに座っていた。月曜から金曜、朝は七時から九時、晩は六時から九時半。数日に一度やってくる二匹の猫をかわいいと思った��とはただの一度もなかったが、いつ彼女に見られるかはわからない、僕は「そのふたつの命が愛しくて仕方ない」という演技をしながら会うたびその二匹にペットフードを与えた。残念ながらあの夜を除き平日に彼女とすれ違えることはなく、しかし彼女は毎週土曜、午後二時から三時までをあの喫茶店で過ごすと気づいてからは平日の公園も苦ではなくなった。土曜日にだけ会える彼女のために、僕はそれ以外の日々をうまくやりこなすのだ。何の愛情も持てない猫への餌づけも、日に日に寒くなってくる気候も、味気ないだけの缶コーヒーも、他人の冷たい目線も、土曜の午後に見つめられる彼女の姿を思えば何の苦でもなかった。彼女が喫茶店にやってくる三十分前に喫茶店へ入り、ホットコーヒーとミルクレープを頼んで一番隅の席に座る。彼女は毎回違う席に座るが、店内の座席は僕にとって都合のいい配置となっていて、窓際の、薄暗くうまく暖房の届かない、人気のないこの席だけは他のすべての席を確認できる位置にあった。
 最初の数回こそ「今日こそは彼女に声をかけよう」と腹に決めながらその席に座り、結局何も言えないまま彼女を見送る自分に落胆していたが、次第に僕は別にこのままでもいいのではないかと自身の考えを改め始めた。僕にとって彼女は、誰がどう見ても高嶺の花だった。整った顔立ち、やわらかな笑顔、しなやかな指先。店員への応対を見ていても彼女の優しさは明らかで、僕のような人間が触れていい生き物だとは到底思えなかった。長袖を着ている彼女の左手首の古傷に気づいている人間は、この店内、きっと僕ひとりだろう。彼女との秘密の共有は思い出すだけでもひどく甘美なことで、僕の心はそれだけで充分すぎるほどに満たされていた。
 僕は陰として、彼女からは見えない場所で、彼女をそっと見守っていよう。
 店の中で彼女はいつも大学ノートを開き、そこへ何かを書き込んでいる。そのノートに書かれている文章が何なのかを僕は知らない。知りたいとは思ったが、だからといって彼女に話しかけようとはもう考えもしなかった。陰はあくまでも陰だ。話しかける、という行為は陰にそぐわない。ミルクレープを頬張る。もう何度目かもわからないその味に、今更何かを思うことなどなかった。
   彼女を見守り始めて二か月と少し、数日に一度は春めいた日差しが降り注ぐようになった土曜日。きょうも僕は駅中の喫茶店で彼女を待っていた。コーヒーとミルクレープを頼み、いつもの席に座って腕時計を確認する。あと十分程度で彼女もやってくるだろう。きょうの彼女はどんな服を着ているだろうか。彼女は女性らしい服装を好んでいるらしく、ワンピースやスカートが多く、パンツスタイルは一度しか見たことがなかった。俯いてノートに向かうとき、彼女は両耳に髪をかける。露わになる華奢な首筋は加護欲を駆り立てられるそれで、見るたびに美しいと思った。彼女がくるまで、あと五分――
「あの、すみません。少しお時間いいですか?」
 目の前にひとりの男が立っていた。彼は、明らかに僕に向かって話しかけている。どこかで見たことのある顔だが、どうしてだろうそこまでしか思い出せない。
「え、あの、いや……はい?」
 男の目的が理解できず、曖昧に笑ってみせる。すると男は、
「単刀直入にお訊ねします。あなた、ある女性に付きまとっていますよね?」
「……は?」
「毎週土曜日、ここで彼女のことを見張っていますよね。駅裏の公園では月曜から金曜、それも朝と晩、二回も待ち伏せしている。違いますか?」
 どうやら男は彼女のことを言っているらしかった。少しずつ記憶が繋がっていく。ああ、そうだ、この男は、あの夜彼女が喫茶店に現れることを教えてくれた男だ。男は、僕が彼女を見張っていると言った。男は、僕が、彼女を、待ち伏せしていると言った。
 ふと店のレジカウンターのほうを見るとそこには彼女がいた。彼女の隣には若い男の店員が立っていて、僕をきつく睨みつけている。彼女は僕のほうを見ていなかったけれど、その表情は男性店員とよく似ているようにもみえた。
「彼女から話はある程度聞いてあります。彼女の言葉を受けてあなたがどう感じたかは知りませんけど、毎日毎日待ち伏せる、そのうえつけ回して見張っているなんて……どうかしているとは思わないんですか? 何の権利があって彼女にそんなことを?」
「え、いや、あの、僕はべつにそんな……」
「べつに? それは言い訳ですか?」
 男は僕が彼女をつけ回していると信じて疑わないようだった。早急に誤解を解かなければならない、僕は席を立ち彼女のほうへと歩き出す。すると彼女は短い悲鳴を上げ、店員は僕から彼女を隠すようにずいと前に立ち、男は僕の右腕を掴んだ。店内が一気にざわつく。
「あの、どういう意味かよくわからないのですが、僕はべつにそんな、彼女をつけ回してなんていませんよ、それは誤解です、僕はただ彼女ともう一度話がしたくて、ただそれだけのことですよ、つけ回すなんてそんな言い方、まるで僕がストーカーみたいじゃないですか、いやだなあ困りますよ、僕があなたを見張っていた? 違いますよ、誤解ですよ、ただ僕はあなたを見ていたかっただけのことで、それを見張っているだなんて――」
「“見ていたかったから、声もかけずに待ち伏せてじっと見張っていた”。世間ではそれをストーカーと呼ぶんです」
 男がいくらか声を荒らげて僕にいう。掴まれた右腕が痛い。
「それはあなたの考えですよね? これは僕と彼女の関わりです、あなたは黙っていてください」
「自分はその“彼女”に頼まれて、こうしてあなたに訊いているんですよ。駅裏で泣いている男に声をかけたら、何がどうなったのかわからないけれど毎日待ち伏せられるようになった、週に一度の楽しみの喫茶店にも毎回いる気がする、つけられているんだと思う、気味が悪い、助けてほしい、と」
 僕には男の話した言葉の意味が一切理解できなかった。
 気味が悪い? 僕が? 彼女にとって? 助けてほしいと頼まれた?
 彼女を見る。目が合う。あなたの誤解なんですよ、という意味を込め、僕は彼女へそっと、素直に、花が咲くように微笑んでみせた。その瞬間、彼女はボロッと大粒の涙を溢し、
「ひっ」
 と短く声を上げる。
 僕の腕を掴んでいた男は座席に置いてあった僕の鞄を乱暴に抱えると、
「あの、すみませんが近くに交番がありますよね? 電話をかけていただいてもよろしいですか?」
 彼は彼女の前に立ち塞がる男に声をかける。店員は短く「かしこまりました」と言うと、レジカウンターの奥でこちらの様子を窺っていた女性店員に「お願いできる?」と伝える。女性店員は慌てながらも二、三度頷き、そのまま奥へと下がって行った。その間も男性店員は彼女の前から退こうとしない。
 気がつけば僕の周りでは遠巻きに、けれどいざとなったなら全員で取り押さえられるように、複数の男たちが僕を囲んでじっと睨んでいる。その輪の後ろ側には女性が何人も立っていて、皆一様に口元や胸元へ手を宛がいながらまるで化物でも見ているかのような形相でこちらを見ていた。電話を終えた女性店員がカウンターから出てきて、男性店員に耳打ちした後、彼女の肩をそっと抱き、
「きっともう大丈夫ですよ」
 と言った。涙声で、はい、と返事をした彼女は、しかしそのまま膝からくずおれ、小さく震えて荒い呼吸を繰り返している。女性店員は何度も彼女の肩をさすり上げながら、
「もう心配いらないですよ、きょうまでよく頑張りましたね。もう大丈夫です」
 ほんの数ヵ月前、僕が担当医から言われたような定型の慰めの言葉を、どこまでも優しい声でかけられていた。店の外が少しずつざわついている。きっともうすぐ警察がくる。僕は彼らに連れられ、どうしてこのようなことをしたのかと問われるのだろう。僕はその問いに何と答えればいいのかわからない。今の僕ではその先延ばしにできないだろう答えを支度できそうもなかった。
 彼女が嗚咽を上げて泣いている。そえはまるでいつかの僕のようだった。
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hpmi222 · 6 years
Text
(碧棺兄妹)
 毎日深くなっていく夜の音だけを追うように耳を澄ます。今日は何も聞こえませんようにと祈りながら目を閉じると、敏感になった耳から入った少しの風の音でも体が強ばるのがわかる。
 想像するの。瞼の裏の暗く深い影の向こう側は今日もきれいな青空。そこは誰もいない浜辺で夏に近づいた風が気持ちよくて薄手のシャツから伸びるお兄ちゃんの腕に空き瓶のひっかき傷は見えない。「合歓」と私に向ける声は柔らかい。お母さんの真っ白なワンピースは、海風に遊ばれて楽しげにはためく。 日焼けを気にしてつけていたはずのアームウォーマーも深い帽子も今日は置いてきたのね。隠さなくていいんだよ、ここではね。だってきれいなのだから。だって私の夢のなか。夢の中は誰にも邪魔されないでしょう?
 青空をかき消す怒鳴り声がドアの向こう側から聞こえてきて私の短い逃避行は終わった。次はお前だと悟るのに充分な当たり散らされる声はただの騒音。声ですらない、音。今日は誰にしようか花いちもんめ。値踏みするような目つきは楽しげで、「合歓」と吊り上げられた口から獣の匂いがした。中古品にさらに傷を重ねるよりも、新品のお皿をフォークでいたずらに引っ掻くことを好む人だった。私たちはそんな日替わりランチのような扱いを受けていた。
 守ってくれる手が何度も私の代わりにフォークを突き立てられるのをあと何度見る? 
 最後のデザートを味わうように丁寧に浅く浅く引っ掻く行為が、決して殺されはしない行為が、かえって恐ろしく思えた。
 恐怖心の扱い方を知っている声の主に呼ばれたら「はい。」と答える以外の選択肢は許されていない密室。上がっていく息を落ち着けるためにぎゅっと手を握る。この部屋に酸素がないように感じられるくらい吸っても吸っても苦しい呼吸。しっかりして、私。治ったばかりのこの皮膚に思い出させる手つきで丁寧に引っかかれるのだろう。メインディッシュを終えた口を甘く癒やすようにゆっくりと。
 たまにねこの夢を見るの。吐く息の温度が一瞬で奪われてしまう冬のベランダ。私が持っているグラスにサラサラとした星が降り注いであっという間に星がきらめくソーダになる。見あげればホウキに乗った魔法使いが軽やかにステッキを振り上げて「甘くなる魔法をかけておいたよ。」と笑ってくれる。私は自分で口をつける前に飲んで欲しい人達がいるからと締め切られた窓を開ける。あたたかいのに神経が削られる空気で満たされている我が家に戻る。言葉にはできない気持ちをこれで伝えたい、これならば伝えられるかもしれないと願いをこめて。
「合歓、待ってろ。」
 この時間が来てしまったのだと心が冷えていくのがわかる。スイッチが何かはきっと誰にもわからないし知ったところで防げるものではない、という諦めが私たちの気持ちを常に縛った。渡されたイヤホンで耳を塞ぐ。持ち主である父の激しい叱責の声が、陽気な童謡の向こう側でお兄ちゃんを責め立てている。凍りついているみたいに冷え切ったベランダでつとめて明るく歌を口ずさむ私は薄情だろうか。
 魔法使いさんお願いします。あの時みたいにこのお水に星を降らせてください。お兄ちゃんにあげたいのです。
 手を伸ばしてコップを夜空に近づける。寒さで唇が震えだしても歌うことはやめなかった。
 しばらくしてお迎えの声がベランダの窓を開けた。 整えきらない呼吸でもう大丈夫だと笑ってくれる顔には擦り傷がついていた。微笑むことはやめない悲しい優しさばかりを見せるお兄ちゃんに差し出せるものは冷え切った水道水だけ。笑顔は伝染するんでしょう? 悲しい顔も伝染するとしたならば私が選ぶのは決まっている。
「星の光が落ちると甘くなるんだって。」
「そうかよ。」
 笑っているのか、泣いているのかわからない顔を見せたと思ったら不意にふたりの冷たい隙間を埋めるように抱きしめられた。わずかにお兄ちゃんの体が震えていることに気づいても、できることはなくて気付かないふりをする私は(やっぱり薄情ですか)。胸にくっつけた耳から届く震える呼吸音。私を抱きしめた腕からはふわりと血の匂いがしてああかみさま、と唇を噛んだ。
 二人で一緒に住み始めた頃は「いつもあった感覚」がいつまでも肌に張り付いて、その度に「らしさ」を取り戻すことに身を削る日々だった。何が正しかったのだろうか。これからどうやって進んでいけばいいのだろう。考えずにいられる日がどれだけあったのかと思い始めて、出ない答えに首を振る。海に打ち上げられたボトルメールの持ち主を探すよりも途方もない、空想。さざなみのように押し寄せてくる不安や焦燥感が私の中で確かに呼吸を繰り返している。
 ねえ何が怖い?
 誰がくれるわけでもない答え。苦しいのか悲しいのか判別できないまま違和感に占領されたベッドの中で涙に溺れることができたら心地よいのだろうか。柔らかなシングルベットの中はあたたかくて、もう瞼の裏に逃げなくても声に追いかけられることはない。ひとつの結末が繋いでくれた結果が今。今は幸せな毎日。もう震えながら玄関の取っ手を握ることはない。これで、よかった。(今の私には、湧いてくるたらればにどう立ち向かっていいのかわからない。)
 みなとみらい地区の観覧車、コスモクロック21のライトがすべてLED化されてからもう随分経つらしい。日没から日付が変わるまでの間、うつくしいイルミネーションが周囲を飾る。
「乗っていかない?」
 答えが決まっている問いかけはずるいのかな。私より先に観覧車へ向かう背中を追いかける。何を話すわけでもない一五分の小旅行。家族が二人になってから通うようになった学校では、まだらしさを取り戻せずにいる。私のぼんやりとした不安にきっと気づいているんだろうけど、何も聞いてこない。そいういうところに助けられている部分は多い。好きなものを好きと口にすることは勇気が必要だった。そんな気の使い方をするだなんて思いもしなかった。今を繋いでくれたひとつの結末に対してどのように向き合えばいいのか答えを出せずにいる。
「きれいだね。」
「ああ。」
 手持ち無沙汰の右手が煙草を欲しがっている。こうして誰かと重なり合う時間を過ごすことは簡単なことじゃないんだな、と転校前のクラスメイトに連絡が取れずにいることに切なさがこみ上げてきた。自分の中で折り合いをつけていくしかない。絡まった気持ちを解いてくれるココアを差し出してくれる優しい手が、煙草を欲しがっている右手が、焦らなくていいのだと教えてくれた。徐々に地上から離れていくゴンドラ。喧騒やあたたかな笑い声、ヨコハマの町並みから遠ざかっていく私たち。現実からどんどん離れていくような気がする。建物が小さくなっていく。ここには沢山の人たちが暮らしている。日々を苦しみ楽しみながら営みを続けて街を作り上げている。その中の一員に、私もなれているんだろうか。探してしまうのは二人で行ったおしゃれなカフェでも、お気に入りの展望台でもない。暴力に染まっていたあの粗末な、家。
「合歓?」
 引き止める声に広がり始めた凄惨な光景が現実に戻る。ゴンドラが頂上まで登りガタンと揺れた。
「なに?」
「別に。」
 ふい、と逸らされる視線に心配されている。思い出に時効というものがあればいいのにな、と誰かに願いたかった。降りていくゴンドラから見えるファッションビルの広告に踊る「諦めを知ること」の文字がいやに残酷に思えてため息が漏れ出た。
 知った諦めの味を、舌を貫いて麻痺させたその鋭さをどこに流したらいいですか。
 そんな意図で書かれたものではないことはわかっているのに、湧き出る攻撃的な感情に目をふせざるを得なかった。上がりだす息を落ち着けようと深呼吸にすれば涙が滲んでまだこんなにも囚われているのだと、どうしようもない悔しさに襲われる。ぎゅっと手を握って耐えているとガチャリとゴンドラの扉が開かれて冷たい空気がわっと流れ込んできた。降りなきゃ、とぼんやりした頭で立ち上がると冷たい指に手を引かれた。冷えた手は私が無事に地上に降り立ったことを見届けても煙草には手を伸ばさずに、私を貫いた広告が貼られたファッションビルへと向かう。ビルの入り口とは別に、道に面した窓にレジを設けるショップで小さな箱を受け取った兄はそのまま私に手渡した。
「お前、これ好きだろ。」
 右手に揺れる四号のチョコレートケーキは日本ではここで出店していないお店の看板商品。特別な時にしか食べないことにしている私の大好きなケーキ。痺れさせられた舌を甘く癒やしてくれる優しさが小さな箱の中に詰まっていた。
「お兄ちゃん、早く帰ろ。」
 だめだめ、今は流れちゃだめ。鼻の奥から外に出ようとする涙を上を向いて喉に押し込む。紛らわすためにスキップして冷たい右手を掴んだ。煙草吸わせろ、の声が後ろから聞こえてきてはいはいと喫煙所へ寄り道をするためにsiriに話しかけた。
 当たりどころがまだよかったと説明された病院で目に入ったのは、清潔なベッドに横たわる兄の姿だった。
 吊るされた薬剤が少しずつ針を通して体の中に入っていく様子が痛々しい。中身は何だろう。念の為、と告げられた言葉の意図を探る。うなされて、苦しそうな呼吸。止まらない汗。額にハンカチを押し当てれば案の定、起きてしまった。
「合歓…?」
 伸ばされた手が私の頬に触れて、安心したように目が細められた。
「お前じゃなくて、よかった。」
 まっすぐなまなざしに見つめられると、込み上げる虚しさに体がいうことをきかなくなる。ベッド横の丸椅子に座って頬の手を自分の手で包む。うまく呼吸ができない。誰にしようか花いちもんめ。たまたま、家にいたのが兄と父だけだった。たまたま、虫の居所が悪くて。偶然が重なってしまっただけで。
 割れたビール瓶のひっかき傷がまだ治っていない反対の手は無傷だった。慣れることなんてできない。いつだって痛い。何も言葉を発さずに、耐えられるだけ。「大丈夫だ。」とだけ口にする度に体は冷たく冷えていくだけなんだよ。泣いちゃだめ、泣いちゃだめ。悲しい時、涙は塩辛くなるんでしょう。塩水は傷によくないから。ぐっと飲み込んで「家に帰ろう。」と口にする私がどれだけ残酷だったのか。私たちにとってあそこが帰る場所なのかという虚しさが毒として体に回る。口が震えっぱなしのもう二度と思い出したくない光景。兄は穏やかな口調でまた大丈夫だからと言った。この日、父は体調を崩した母の代わりに兄の帰りを待っていた。
「つらいならつらいって、痛いなら痛いって言えばいいじゃない。」
 目の前で泣いている女の子が私を責めている。
「誰も聞いていなくても、自分が痛いんだってわかるように。」
 そうしたら私がちゃんと聞いてるから。
 はっと起きたら見慣れない景色で、一拍遅れて病院であることを思い出した。点滴が終わるまでのあいだだけと、眠ってしまったみたい。外は暗く午後八時を過ぎていた。ゆっくり薬剤を落とし続ける点滴がまだ私たちを足止めしてくれている。兄のあたたかな手首に指を這わせると正常な脈拍が手首を叩いていて安堵する。包帯に滲む血はじんわりとシーツを汚していた。巻き付く包帯をそっと取ると、乾いた血に張り付いてぺりぺりと傷の深さを訴えた。ためらいもなく私は晒された傷口にぎりっと歯を立てた。驚いて起き上がろうとする体を押さえつけてさらに歯を立てる。
「おい合歓、何してる!」
 傷口を歯でこじ開けると「痛い!  やめろ!」と声が降ってきたから私はすぐに口を離した。口の中に広がる血の味が生々しくまとわりつく。これは痛みの味。
「ちゃんと、痛いよね?」
 腕を押さえて顔を歪ませている兄は、私の言わんとしていることがわからず状況を伺っている。
「つらいならつらいって、痛いなら痛いって言って。ちゃんと言って。」
 私が、聞いてるから。
 私の右腕のもう治った引っかき傷がずきりと痛んだ。
 噛み付いた腕の傷は大きく開いて負ったばかりの鮮明さで血をこぼす。点滴がもうすぐ終わる。解放されてしまう。終わってしまえばまたはじまるんだ、と暗い気持ちに心が負けていく。
「終わらないで、ほしいな。」
 無邪気でいること。それは私の課題だった。
 歯を食いしばって乗り越えてきたことが崩れていく。砂の城より脆く、さらさらと。願っても願わなくても日々は変わらない(わかってる。)努力は届かない(わかってる。)けれど希望を失えばすべて奪われた暗く冷たい世界になる(わかってる!)
 ���とは何?
 この両目からこぼれている液体にそれは含まれている?
 泣くことでは何も解決しないことを知っている。ぐちゃぐちゃになった気持ちが出ていくだけだ。悲しいのか、苦しいのかわからない。それでも胸が痛い。確かに何かが刺さっている。
「合歓、大丈夫だ。」
 抱き寄せる腕からは鼻を突く血の匂い。愛とは何。愛はなんでこんなに残酷。愛がなければ私たちは…。
 愛しいと書いてかなしいとも読ませるのだと知った時、やっぱりと思った悲しさがいつまでも胸から消えてくれなかった。
「ねぇ知ってる?」
 私を責めていた女の子に手を引かれて石畳の道に二人分の足音が響いている雨上がり。なるべく路地裏は通らないようにと注意された声を思い出しながら薄暗い道を進む。静かすぎて人通りのない道で背後から襲われでもしたら、と周囲を見渡す私を笑う彼女は私より幼い。
「秘密の場所、教えてあげる。」
 魔法使いが教えてくれたの。
「魔法使い…?」
 コツコツと濡れた石畳の階段を降りたら右のトンネルへ。この先は近道だけど魔法使いがいなければ遠回りすること。
「私、この道を知ってる。」
「何度も来たでしょ?」
 振り向いた顔にかかる前髪にいびつな切れ目が入っている。指先を見ればささくれが目立つ小さな手。きっと袖の向こう側にはフォークの痕があるんだ。
「開けて。」
 地下へ続く階段を照らす松明を通り過ぎて握ったドアノブは冷たくて重い扉を体重をかけながら押し開いた。
「秘密の、場所…」
 昨日、寝つきが悪かったからか正午からはじまった私の休日。胸を高鳴らせて開けた扉の先を見ることはかなわなかった。カーテンを開ければ空が高い。小春日和のやわらかな日差しが部屋を明るく照らした。
 着替えてリビングに行くとたまごサンドとポテトサラダのプレートに夕方には帰ると置き手紙が添えてあった。「疲れた時ほど丁寧に食事をすること。」を二人で決めてから一年が経った。手作りの食事は、体の中からあたたかくなることを私たちは知っている。
 帰宅した兄の手を引いて私たちはいつものように変装して家を出た。夕日で赤く染まる石畳を進む。なるべくひとりで路地裏には入るなと忠告した口が、前は誰かと来たんだろうなと後ろから言葉でつついてくる。二人だったけど実際には初めて来たよ。この石畳の階段を降りたら右のトンネルへ。この先は近道だけど魔法使いがいなければ遠回りすること。
「魔法使いが教えてくれたの。」
「魔法使い?」
 はあ? 呆れる声を上げても特に抵抗はしない兄は私の好きにさせてくれた。そうあの魔法使いが、絵本の中で教えてくれた。もらいものの背表紙に傷が入っていた大好きな絵本はヨコハマが舞台のファンタジー。道案内の女の子についていくとそこにはお店があった。そしてそのお店は実在したことに驚いた。
 掴んだドアノブはずしりと重く夢で見たままで胸が高鳴る。思ったより滑らかに開いた扉の向こう側は夜空に包まれていた。星空の下の広いフロアに転々としかない座席は離れ小島のよう。案内人に渡されたランタンのオレンジが揺れると床の大理石に埋められた石が囁くようにきらめいた。ガラステーブルの下を流れる天の川が美しくて私はカウンターを選んだ。薄暗い店内は星の形のライトでほのかに照らされている。少し離れればはっきりと顔を認識することはできない。帽子を脱ぎ、サングラスをしまって、カラコンをはずした。誰も私たちに気づくことはない。お願い、今だけは知らないふりをして。ありのままでいることの難しさはもう充分知ったの。
「星空ソーダと三日月アイスコーヒー。」
 迷う私たちに薦められたドリンクの眩しさに息を呑む。ランタンに照らせて踊るようにグラスの中を舞う光の粒。星がグラスの中で輝くとそれは甘くなるんだって昔読んだ絵本の魔法使いが笑っていた。
「お兄ちゃん、見て。」
 ランタンからアイスコーヒーを遠ざけたら真上から降り注ぐ星のきらきらが反射した。
「星の光が落ちるとね、甘くなるんだって。」
「そうかよ。」
 本当は甘党なんだって知ってるよ。嗜好品は贅沢品だったもんね。
「ねぇ、おぼえてる?」
 天井を見ればあわせて見上げてくれた赤い目にきらきらと星が降った。
「真冬のベランダ。寒かったけど好きだったんだ。お兄ちゃんの目が一番きれいに見えたから。」
 北風に勝った太陽にはできなかった。月と星がその目を優しく照らしていたの。確かに思い出すのは決して明るくはない毎日だったけど、その日々がくれたものは確かにあった。
 何も言わずに細められる目からこぼれる気持ちが穏やかになったのは最近のこと。息をするのはやっとだった。水面に口を出したところで吸い込めるのは酸素とは限らない。喘ぎながらそれでも生きることから逃げなかった私たちの過去は忘れたい呼吸の温度ばかりを体に覚えさせた。
「ガムシロップ、入れていいよ。」
 開けたことがないのだと渡されたポーションは二つ。パチリと爪を折って注ぐとろりとした液体。これはほしい、と口にすることをやめた舌を甘く癒す魔法。見あげれば魔法使いがウィンクしている。彼はここのオーナーなのだろうか。壁のイラストにありがとうを心の中で囁く。
 いつか来てみたいと思っていた絵本の中の世界。うつくしい幻だと、実在はしないと心のどこかで自分に言い聞かせていた。安心していいよ、ちゃんとその願いは叶うから。隠れて泣いていた幼い頃の私を想う。
「甘くなる魔法をかけておいたよ。」
 魔法使いの口調はもっと軽やかだった気がするな。人差し指をステッキに見立てて左右に振った。
「合歓、ありがとな。」
 頭を撫でてくれる腕に傷が残らなくて良かった。ストローで回された氷がカランカランと嬉しそうな音を立てた。
 大丈夫。痛みを伴わない「大丈夫。」が少しずつ増えてきたように、私たち歩いて行ける。一度に水を与えてると枯れてしまうから、ゆっくりと水と光を浴びていこう。そして、愛が何かを体に覚えさせていきたい。髪を伝って流れてきた体温にも、手を引く私に付き合ったことも、たまごサンドと置き手紙にも愛という血が通っていた。まだ理由を付けなければ飲み込めないものはあるけれど、いつか、ありったけの愛を渡して受け取れる日がきますように。
 大丈夫。少しずつ、ちゃんと、歩けてる。
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image-weaver · 6 years
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55 Deadman
<霊の間>を後にしたバルナバーシュとフェリクスが進む階段は徐々に狭まり、窮屈な石の螺旋階段が少しだけ続いた。抜け切ってひとつの小さな広間に出ると、甲冑を着込んだ男が、桃色と青の遊色の短い銀髪をやわらかに揺らしながら立っている。知らぬ顔であり、フェリクスにとってもそうであったが、彼は驚きもせず何か知っている風でもあった。目を逸らさぬまま、フェリクスは戸惑っているバルナバーシュの耳元に囁きかける。
「フェレスの亡霊だ」 「亡霊?」 「あれは……あれらと言ったらよいのか。フェレスに導かれてイススィールへ来たものの、望みを果たせずに斃れた者たちだ。貴殿も道行きのなかで会わなかったか」
バルナバーシュはリギノの神殿からずっと、彼らを見かけたり、直接の対面もしている。最初に亡霊という印象を抱いたが、あながち間違いではなかったらしい。バルナバーシュはうなずいて、男への警戒を解いた。
「私とルドは、彼らに二度も助けられた。私たちに協力したいのだろうか」 「道中はそうに違いない。目的は分からないが」
フェリクスの言う通りだったが、バルナバーシュには少なくとも、ハインの祖父やクヴァリックの霊が自分たちを謀っているとはとても思えなかった。
「我々もオストル沼沢で命を拾われた。いくらかは疑えど、今は義理を重んじたい」 「同感だ、フェリクス」
二人は武器を下ろして、男の前に歩み出た。男は若かったが、肩幅は広く、見苦しいとは言えないまでも顔の無数の傷痕が歴戦のいさおしを伝えている。二人を見据える奥深い目には暗い炎が静かに滾り、燃えるような情念のまなざしがこの者が亡霊である考えをつかのま忘れさせた。圧しかかる威風にバルナバーシュは思わず息を呑む――そういえば、この男だけが白絹の衣ではない。まさかこれまでとは異なり、フェレスの持ち主を向こうにまわし、腰に佩いた剣を抜き払って一太刀浴びせにかかるのではないか。フェリクスも同じ思いだったらしく、緊張から拳を固く握りしめる気配があった。
「ふっ、ははっ」
不意に男が肩を揺らして失笑した。愉快げな声から察するに、二人の様子がおかしかったらしい。今度こそ驚いて呆然とするフェレスの主たちに、男は沈黙を破るように語り始めた。
「よくもおいでなすったな、とうに忘れ去られて久しいこの島に……お前たちは本当に、愚かにも、エターナルデザイアーを信じてここまで来てしまったのかい」 「………」 「あれは既に失われた秘宝だ。諦めて帰りな」
声音は憐れみに沈んでいた。バルナバーシュが口を開くより早く、フェリクスの気骨が熱を吹く。
「どうやら、お前はこれまでの助力者とはわけが違うようだな」 「助力だと? フェレスの無念が、果たしてなんの依託もなく生者に恩を売ったとでも思うか」 「ならば話せ。お前たち亡霊がなぜ、我々の前にちらついて現れるのか」
男は何も喋らず、ただ訳知り顔で低く笑い続けた。不快な笑いだったが、二人は気みじかを起こさず言葉を待った。男はやがて、きっと顎を上げ、もとの堂々とした態度を取り戻した。
「教えてもよいが、闇沙漠のベドウィンたちには敬意を払いたい。知りたきゃ越えていくがいいさ」 「その者たちが教えてくれるのか」
バルナバーシュが尋ねる。
「ああ。ここからではまだ遠いが。俺からは餞別をくれてやる」
男が何かを放って寄越し、フェリクスが受け止めた。掌ほどの丸みを帯びた鋼鉄の石で、表面には髪を乱れさせ、憤怒の形相で雄叫びを上げる益荒男の貌が練り上げられている。もがれた首をただちに魔法で変えて残したかと思えるほど、力強くも忌まわしい造形だった。古い時代のものらしく、二人の知識をもってしても何者かは知れない。男はレイ一族の始祖たるシックマンかもしれないと言った。
バルナバーシュも手に取ってみると、石は鋼鉄らしからぬ生きた熱を帯びており、熱は手の中でうごめきながら、男の瞳に揺らめく火に、地底深くに滞留する溶岩に、夜を通して鞭に打たれる罪人の涙に、姿を様々に変容させた。骨の茨と赤黒い生命のうねりが腕にまとわりつき、底無しの濃密が感受性を刺戟して、背に粟立ちが走った。変相の熱は持つ者の最も淀んだ暗部へ皮膚より潜りこみ、いずれもが神を騙る者に爪を立て、救いらしき言葉に牙を剥く。暴虐に閉じ込められて、嘆き、咆えたける人間の叫びに、石は(遺志は)(意志は)打ち震えた。人間の――人間の呪わしき血だと、バルナバーシュは思った。それもただ一人の血だけではない。連綿と子々孫々へ継がれ、例外なくこの石の上に流された血のすべてを知っている。呑まれまいと心を強く持てば害はなかったが、深く、おぞましい来歴の遺物には違いなかった。
「ご丁寧にも饅頭のような形をしているな。墓前に供えろということか」
フェリクスが一笑に付すと、秘された冗談を解したらしい男が肩をすくめてみせる。
「本物の生首でないだけましと思え。大昔には一度、この塔のために娘御が生贄に捧げられたらしいが、レイ一族はきっと心根が優しかったんだよ。饅頭で身代わりにすれば誰も悲しまないだろ」 「お前はレイ一族の者か?」
はっとしてバルナバーシュが踏み込んだが、男は眉間を揉んで答えるのを渋った。
「さてな……違う気はするが、俺が生きたのは何百年も前で、もう記憶が擦り切れている。しかしレイ一族の意志に味方していたのは確かだ。ゆえに俺もまた、道を指し示す。お前たちに無念を託しながら」
男の体は背後にある階段を透かしながら、消えつつあった。まだ聞き出したいことは尽きなかったが、二人は追いすがろうとはせずに彼が去るのを黙って見送った。わずかな燐光の波紋も失せたあと、バルナバーシュ��下唇を噛みながら石床を小さく蹴りつける。
「気に食わない男だった」 「そうだな。あの者に種明かしを乞い願うなら、自力で解き明かすほうがよっぽど気分がよい」
フェリクスは同意を表したが、バルナバーシュほど苛立ってはおらず、状況を楽しんでさえもいた。心躍る彼の手の中で、託された石がもてあそばれる。ルベライトの瞳は好奇心にひらめき、含み笑いがこぼれていた。男は明らかに煽り立てており、二人もそれには気付いていたが、彼らはともに企てに飛び込んでやる気概に奮い立っていた。
「バルナバーシュさん!」
最上階でようやく四人は合流した。いち早くルドとマックスがバルナバーシュに取りつき、長年連れ添った家族さながらに怪我の程度をつぶさに確かめる。バルナバーシュも大げさにはしないものの、長らく味わっていなかった安堵を全身に滲ませ、相棒への気がかり以上に、自らの大切な半身が返ってきた心地に今は満たされていた。微笑を浮かべ、我が子のようにルドの頭をなでる。たった数時間なのに何年も離ればなれだった空白が彼らにはあり、いやに奇妙な感覚で、実体的でさえもあった。
「お互い、無事だったようだな」
イブも暖かく見守りながら言い、フェリクスだけがこともなげに封廟を見回していたが、彼らの睦まじい再会をとがめたりはしなかった。封廟はルド達が到着してから何も変わっていない。柱の燭台にほのめく白い火と天窓から差す銀の光だけが、薄暗い広間に人の寄るべき場所を示していた。フェリクスが柩をかかげる階段を上っていく。厳かに照らされた柩の蓋には彫像が横たわっていた。鎧に身を包んだいかめしい戦士で、鼻梁の高く、活気ある面差しの内には勇猛と共に秘密めいた知性も宿している。フェリクスには、利口よりも洞察のそれに近く思えた。
バルナバーシュも階段のたもとまで来ると、彼は天窓を見上げた。完璧で美しい円天井で、半球形のドームの頂点にその天窓はあった。凝灰岩のアーチをつなぎ合わせて造られ、魔術で守られているのか風化は一切見られない。また、派手な装飾はひとつもなかった。頽廃を嫌悪しているのだ。荘厳で、象徴的な空間だった。天窓から見える空は依然として雲がかかっていたが、銀の光は増し、天を往く風の音も騒がしかった。そこに不穏は無く、今になって上空の冷たい空気を吸いこんだ息に感じとり、統一された霊魂がゆるやかに空間へ融けていく。命の門より根差し、二柱の塔によって研ぎ澄まされた一体性だった。
「この柩の主が分かった」
フェリクスの声が降りてきた。ルドとイブもやってきて、立ち上がった彼を見上げる。
「デッドマン・レイ。柩に名が彫られていた。レイ一族のひとりだろう……」 「嫌な予感しかしないね」
イブが率直に言った。
「蓋には特殊な封印がかけられているが、我々がここへ来る前に亡霊から供え物をあずかった。ちょうどそれが嵌まりそうなくぼみがある。みな、武器を構えておけ。今から鍵を開けるぞ」
階段のたもとに並ぶ者たちがそれぞれの得物を手にしたのを確かめると、フェリクスも長斧をそばに置いて慎重に石をくぼみへ近づける。バルナバーシュにはその時、石が脈打ったかに見えた――石はぴたりと嵌まった。すると石はまたたく間に罅を走らせ、甲走った悲鳴を上げながら粉々に砕けると、もとより幻であったのか光の粒子と化して消え失せてしまった。そして、毀たれたるは石だけではなかった。柩の蓋、生前のデッドマンの彫像もまた容赦のない亀裂に不吉な音を響かせる。フェリクスが逃れようと斧を手にした瞬間、凄まじい風圧をともなって蓋は砕け散った。
階下にいた三人が手をかざして衝撃を防ぎ、砂塵が晴れた先を見据えると、フェリクスが宙に浮いている――いや、吊るされている! 何者かのミイラの長い腕が彼の喉首をつかみ、持ち上げているのだ。腕もまた、支えるはずの肉体もなく虚空に浮かんでいたが、化け物じみた力で締めあげていることはギリギリと食い込む手が示威していた。
「ぐ、う…ッ!」
フェリクスは足をばたつかせ、斧を落として引きはがそうとする。イブが刀を手に駆けだしたが、骸の腕は横へひるがえると、フェリクスを彼女目掛けて荒々しく投げ飛ばした。尋常ではない勢いで放たれたフェリクスの体をイブはあえて避けずに受けとめ、どっと飛ばされて絡まり合いながら赤い絨毯を転がり、滑っていく。
「イブさん、フェリクスさん…!!」
ルドが叫んだ先で、二人は立ち上がれずにうめいている。バルナバーシュはその場から離れず、彼らを背にして覚悟を決めた。汗が一筋、背を伝い落ちる。
《望まれる目覚めを望むものらよ……》
腕に続いて、柩から頭蓋骨が浮き上がって語り掛けてくる――眼窩の焔が内より血の色を投げかけ、有無を言わせぬ声の響きに封廟がわなないた。天窓の光に骸は鋼鉄のごとく蒼ざめて輝き、朽ちてなお剣と魔法、二柱の力に命をみなぎらせている。腕が、幅の広い長大な曲剣を頭上にかかげた。磨き抜かれた刃が血気を放つ。
《この先に広がるのは、幾千の夜を越え続いてきた戦い。お前たちにその宿縁を背負う覚悟があるかを、我は問うのだッ!》
デッドマンの腕の殺意がルドへ迫り、最上段より刃が打ち下ろされる。ルドは大剣を斬り上げてそれを弾き返したが、今までにない膂力を受けて痺れが走った。そして狙うべき肉体がないことに今さら気付き、反撃を躊躇する。そこを隙と見るやデッドマンが突きかかり、ルドは体を逸らしたものの避けきれず、脇腹の甲冑の隙間を切りつけられてしまう。
「うっ…!」 「ルド!」
バルナバーシュが魔術を完成させ、振るう杖から火球を放つ。それは狙い通りに腕に着弾し、亡者を祓う火となるはずだった。だが爆炎が去ったあと、何一つ削がれはしなかった腕が現れる。
「そいつに炎は効かん……炎はレイ一族を守護するものだ……!」
背後のフェリクスの掠れた声に、バルナバーシュは歯噛みした。その時、風を切って彼の横を走り抜ける姿があった。イブだった。人間離れした脚力でデッドマンの腕の横合いに回り込んだかと思うと、片刃が閃き、上腕を斬りつける。予想だにしない攻撃に腕は大きく後退した。
「こいつは四人でやらなきゃだめだ。私はフェリクスに斧を届ける。時間を稼いでくれ!」 「! 任せてください!」
イブの求めにルドは力強くうなずき、大剣を構えなおした。曲刀に守られたデッドマンの頭蓋骨の顎が小刻みに動いている。眼窩の炎に鬼気が立ち、あるはずのない喉が苦患めいて呪文を紡いでいるのだ。
「イブ、急げ。あいつの力が頼りだ!」
バルナバーシュが焦燥から叫び、イブは階段を駆け上がって斧を取り上げる。彼女に落ちかかったデッドマンの刃を、ルドの大剣が割りこんで受け止めた。火花がルドの鉄仮面を赤銅色に燃え上がらせる。力はデッドマンが格上だったが、力の霊水とルドの意地が助け、すれすれで持ちこたえていた。そこへバルナバーシュの氷柱の矢が飛来し、デッドマンの曲刀にぶつかって弾き返した。ルドは身をひっぱずして不利から逃れ出る。この期に語らう隙など無かったが、二人はともに互いを必要としていることを戦いの中に再認していた。
「ルド、こっちへ戻れ!」
頭蓋の魔術が成し遂げられようとしていた。もはや妨害する余地はない。ルドが引き返し、そこへイブも加わった。バルナバーシュが呪文を唱え始める。それは元素をかいなとする黒魔術とは異なる負荷とリズムで紡がれ、自然ではなく天上を招ずる聖性の歌だった。彼の前で杖が白い光を発しながら宙に浮き、バルナバーシュは両手をゆっくりと持ち上げていく。目を恍惚にし、視線は天窓の銀の空へ向けられていた。一行の前に、美しく透き通る真白のヴェールがはためく。あらゆる厄災より護る力だった。だが、間に合わない――どうあがこうがデッドマンの魔法が先だった。そこへ最後の一人が駆け込んでくる。フェリクスが一行とヴェールの間に立つと、長斧をかかげ、刃より紫の光彩を解き放った。
デッドマンの周囲から暗褐色の靄が立ちのぼり、吹き下ろす突風に乗って彼らを呑み込まんとしたが、フェリクスの魔力を注がれ、まばゆく輝いたヴェールが靄を切り開いて防護する。だが風までは防ぎきれず、わずかに靄も流れ込んできた。靄は雨が石を濡らす匂いに似てなつかしく、だが忘れ去ったはずの瞋恚を覚ます悪しき力もあった。バルナバーシュは袖で口元を覆いながら強風に耐えた。ルドとイブも踏ん張り、フェリクスは泰然たる立ち姿を見せている。
魔法が去ると、彼らは武器を構えなおす。今こそ反撃の時――そのはずだった。
「くそ…ッ!」
フェリクスがうなった。見れば、腰より下が暗褐色に染まり、硬直している――石化の呪いだった。敵の魔法を食い止めきれていなかったのだ。憎々しげに身をよじらせるが、びくともしない。
「フェリクスさん、あぶない!!」
悲鳴に近いルドの叫びに振り向いたフェリクスの頭上から、振りかぶられた曲刀の影が落ちる。刃は禍々しい黒炎をひきまとい、狙いは一度は逃してやった命――フェリクスの首すじにひたと定められていた。彼の眼鏡の奥で、生涯で一時たりとも直面しなかった感情がルベライトの瞳にかぶさり、双眸よりも早く、額の三つ目から光が失せかかる。絶望だった。世にありふれ、ついぞ共感など覚えなかった闇が――彼の背を這い上がり、死者の手となって目元へ回され覆い隠した。快い夜が彼の全身に広がった。
《げに在りし力を持つ我が腕が、ふたたび破壊を振るうぞ……ッ!》
烈火の弧を引いてデッドマンの刃が打ち込まれる――。
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sakuraumi0-blog · 6 years
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永劫の幸運を望んだ話
久しぶりに合わせるその顔はひどいものだった。痛みを覚えていたのは日向のはずなのにそれよりもずっと苦しそうな面。寝食がままならなのか何時もより色の失せた肌が余計それを際立たせていた。
「………脚、動かないの?」
狛枝は車椅子に座る日向の前で呆然と立ち尽くしてそう言った。
一拍の間を置いて、彼女はただ頷く。
「……どう、して? ボクなんか庇ったの」
「どうしても何も、思わず、だよ」
少し前、二月下旬の事だった。日向は復興の確認作業の一環として共に出張していた狛枝と建設中のホテルの近くを歩いていた。不運にもそこは治安も悪くまだしっかりとした業者も入っていないせいで管理も杜撰だったのだ。工事途中で纏めてあった鉄鋼が落下した。それが狛枝の頭上であると気づいた瞬間、日向はその体を突き飛ばしたのである。下敷きになった脚は命に別状はなくとも悲惨なものだった。形は何とか元通りになっても神経が死んでいた。もう歩けない。そう知った時、心中に浮かんだ感情を日向はよく覚えている。想起して歪む表情を狛枝に見せたくなくて俯いた。
「お前がそんな顔、しなくていいだぞ。私が勝手にしたんだから」
「……そう、だよ。キミが勝手にしたんだからボクが責任なんて感じる必要ないんだから」
そう口にしながらも狛枝の表情は微塵も納得しているようには思えなかった。だから日向は微笑を作って狛枝に向ける。
「…………今日、退院なんでしょう?」
「ああ」
「………キミさ、どうせ、誰にも言ってないんだよね。世話かけたくないとか思って」
「なんで知ってるんだよ」
「だってここに誰もいないし」
「……じゃあ、お前はなんでいるんだよ」
「……………いいでしょ別に。それより、さ」
躊躇いを唇に狛枝は一瞬、黙り込む。しかし、それはすぐに解かれ、言葉が溢れる。
「……一緒に住もうよ。今日から全部、ボクが世話するから」
ゆっくりと目を剥いた。
「な、お前、何言って……! い、いいってそんなの。別に責任感じてないんだろっ…!」
「……キミがいくら口で否定しようったって連れて帰るから。逃げられないよね、その脚じゃ」
助けを求められる相手はいなかった。当然である。誰もいないのを望んだのは日向であったのだから。
「じゃあ行こうか」
動きだす車輪に日向は抗う術を持たなかったのである。
 何処かで根を上げると思っていた生活は未だに続いている。甲斐甲斐しく世話を焼く狛枝の部屋で過ごすのは、確かに楽だった。座ってできるのだから料理は日向がするつもりだったのにそれすら狛枝がやってしまう。最初は散々なものであったが、近頃、随分改善されてきていて、日向は洗濯を畳むくらいしか役割がない。だがそれが厭ではなくて、心地よさすら覚えている。狛枝と暮らす幸福がほんの僅かな罪悪感を塗りつぶして、日向はこの生活を気にいっていた。
ただ一つ面白くないのだとすれば。
「お風呂、そろそろ入るでしょう」
「ああ」
読んでいた本を横におけば、狛枝の手によって寝台から体躯が浮いた。日向を抱きあげて、震えていた頃が嘘のように安定している。
「……なに、笑ってるの」
「いや、お前、力ついたなあって。そんなに白いくせに」
「白いの関係ないでしょう。ほら行くよ」
埋めるようにその胸元に額を付ける。日向と同じ洗剤の香りが少し嬉しい。
「そういえばさっき何読んでたの」
「死んだ恋人を思い続ける男の話だよ」
「……キミにしてはやけにロマンチックな話を読んでるんだね」
「いやこれミステリだぞ。恋人殺したのはその男だし」
「…なにそれ。嫉妬に狂ってとか安易な動機じゃないの」
「ははっ、そんな感じかもな」
脱衣所にある椅子におろされて、服が取り払われていく。その手つきは慣れたものでしかし、日向にとって未だ羞恥は拭えない。それなのに狛枝の面に何の感情も見いだせない。初めからそうだった。
 狛枝がただの責任感と負い目だけで日向の世話をするだなんて言い出すことがないくらい知っていた。何年傍にいるのだ。それくらい分かる。何よりも同等の感情を抱いている日向は、それに機敏だった。一番近くにいるだけでなく、ずっと見ていた。故に確信しているのに。
 渡されたタオルを巻いた。日向は腕まくりした腕に再び抱き上げられて、浴室に連れられる。
狛枝が頭を洗ってくれている間に日向は体を泡立てる。蛇口を捻る手先が見え、水音が反響した。流れている白をぼんやりと眺める。髪に触れる指先をやけに意識する。それ以上、下方に触れることがないと分かっているのに毎回期待してしまう。だが、今日も狛枝は変わらない。
その後は日向を湯につけて、狛枝は浴槽に背を向けて何時も待っているのだ。
「……なあ」
「なあに? もう上がるの?」
ゆっくりと振り返って、不意に狛枝の双眸が大きく開かれる。狛枝の眼前にあるのがタオルと取り去った剥き出しの肌なのだから当然かもしれない。わざと強調するように半身を乗り出して顔を覗きこむ。
「…………お前も、一緒に入らないか? どうせ服、濡れてるんだからこの後入るんだろ」
「…………やだよ、狭いし」
そう言って、狛枝は顔を背ける。今日もまた失敗である。時折、狛枝を風呂に誘って、だが、毎回、断られる。口に出すのにも羞恥心をおさえこんで必死なのに、狛枝はいつも平然と否を唱える。それが腹立たしくて、哀しい。
「……そろそろあがる」
「もうちょっと入ってたら?」
「最近、暑いんだよ。もう夏だし」
口に出して、季節の変動に気付いた。この生活を始めてから日付の感覚がなく、何か月も経っているのは驚きである。そこで失念していた事実にふと思い至る。
「そろそろ連絡しないとな……」
「連絡?」
「苗木に」
「どうして」
「だって仕事、休職してるんだしどうするか決めないと」
不意に体が浮いた。風呂から掬い上げられ、腕に収まる。
「もうあがるんでしょう」
そう言った狛枝の双眸を覗いて日向は口元を緩める。ようやく動いた狛枝の感情を噛み締めて、安堵する。
冷たい身体に熱を渡すように首筋に腕を絡めて、身を寄せた。
「寒い」
「……暑いんじゃなかったの」
「……風呂から上がったら思ったより寒かったんだよ」
抱き付いた羞恥を隠す為の言い訳じみた語。すぐに下ろされるのだからちょっとくらいいいだろう。そんな風にも言い聞かせる。
 脱衣所に戻ってから狛枝は肌の水を拭いていく。服を身に付けた日向の髪をドライヤーの温風が撫でる。
「……連絡しなくていいんじゃない?」
「なんで」
「だってキミ、退職してるし」
「は?!」
「その脚で働くつもりとか逆にみんなに迷惑でしょ。ボク、手続きしておいてあげたんだから感謝してよね」
「そう、かもしれないけど……あーでも苗木には一応、会って話したほうがいいか」
狛枝の手が止まった。同時に音も消える。
「っ、」
背にある冷たい感触。回る腕にどきりとした。肩口にある貌はどんな表情をしているのだろうか。
「連絡だけでいいじゃない。わざわざ会いに行かなくても」
「いやでもやっぱり……」
「…………そんなに気になるの? キミ、苗木クンと仲良かったよね、何時も一緒に残業してたし」
「苗木、仕事に忙殺されてたしな、手伝った方が良かっただろ。お前もよく手伝ってくれたじゃないか」
「だってキミ、仕事増やしてるだけだったし」
「な、そんなことないからな!」
ゆっくりと離れていく囲いを残念に思った。
「じゃあボク、お風呂はいってくるから」
「…………ああ」
 冷たい両脚。追い縋れないのが厭だった。だがそれだけだ。狛枝は日向を置いていかない。そう知っていた。
 寝台に戻ってきた狛枝は日向の隣に身を横たえる。
「お前、髪、濡れてる」
渋々、座り直す狛枝のタオルを奪ってその髪を掻��混ぜる。何時も何時も言っているのに乾かさない。日向のはわざわざドライヤーを使ってまで水気を取るというのに、変な所を面倒だと思うものだ。
「これでいいだろ」
「……いいのに、そのままでも別に」
「駄目だ。風邪ひくだろ」
再び掛布に潜りこむ狛枝が向けるのは相変わらず背中だった。無駄に広い寝台は一人分の距離を空けるのにも充分だ。いつもいつもこうだった。手を伸ばせば届く距離にいるのにひどく遠く思え、厭になる。いい加減、変えたかったのかもしれない。
「狛枝」
「何」
「………こっちむけよ」
「なんで」
「……話したいことあるから」
「このままでも話せるよね」
「……いいからこっちむけって」
「……………」
いくら言い募っても返ってきたのは沈黙であった。何時も余計なほど饒舌なくせに何故、こういう場面は口を噤むのだろうか。
腹立たしくて、日向は会話を諦めた。先に対話を降りた狛枝が悪いのだ。
日向よりも幾分か広い背に近寄って、抱き付く。びくりと震える肩を横目に服の隙間から掌を滑らせる。
腹部に回りこんだ手を上に上に撫でて、日向にとって唯一の武器のような膨らみを押し付けた。唇を首筋に、骨ばった感触を焼きつける。仕返しのように歯を立てて、刻まれた痕にちょっとだけ満足した。
「ちょ、なにして……」
狛枝が根を上げるのは早かった。腕を取られて、見下ろされる。声色の剣呑さと違って不機嫌そうな、困惑したような、そんな表情はすこしおかしくて、日向は眉を下げる。
「………お前さ、好きにしていいんだぞ」
自由である片手でその白い頬に触れた。その色の通り詰めただけではなく、表情まで凍っている。
「っ、やめてよ。世話して貰ってるからってそんなの、いっ!」
爪を立てた。引き攣る面に幾分か溜飲が下がる。
「そうじゃないだろ! 馬鹿っ! そんなんで私が言うと思ってるのか狛枝!」
蹴りたいのに蹴れないもどかしさの代わりに力いっぱい片腕で引き寄せた。
触れた唇は一瞬で眼前には狛枝の歪んだ瞳がある。灰色のそれは今にも泣きだしそうだった。
「……いいの?」
「いいっていってる」
勢いでの口づけに遅れて羞恥がやってくる。逸らしたくなる両眼は、しかし、再び落ちる唇を前に自然と覆い隠せた。
「ひなたサン」
声にゆるりと瞼を開ければ、ひどく幸福そうな貌がそこには在った。
狛枝が何かを見上げていた。
乾いた音に視線を向ける。
そこにはやけに綺麗な切れ端。
まるでそれは意図的なほどで。
思考を断ち切ったのは崩壊を知らせる金属音。
落下してくるモノを認識して、日向は動く。
狛枝と目が合った瞬間。
突き飛ばして、安堵した。
満たすのは歓喜。
だがその耳には激痛と誰かの悲鳴が響く。
敗北感と落胆。
生きている。
幸運にも。
望んだように
揺蕩うのは夢か現実か判別できず、漫然として日向は瞳を向ける。じっと見下ろすのは狛枝だろうか。
脚を優しく撫でる感触。気だるい体躯が重く、軋みと痛みを訴える。
「ねえ」
「ん……なんだ……?」
狛枝に呼ばれ微睡の中で落ちそうな瞼に抗い反応する。抱きこまれている膝の上は生温く心地よくて、すぐに睡魔に連れ去られそうだ。
「……キミ、さ、……苗木クンのこと好きなんじゃなかったの」
「…何言ってるんだ、そんなわけないだろ」
「だって、苗木クンといる時、楽しそうだし笑ってたし。キミ、ボクの前だといつも仏頂面してたじゃない」
「……仕方ないだろ。緊張してたんだよ……お前が、す、きだから」
口にして想像以上に恥ずかしい。だが頬を色づける色は狛枝も同じだった。
「っ………だったらチョコレートくらいくれたっていいでしょ……!」
「チョコレート……?」
「こないだのバレンタインの……苗木クンにはあげてたから」
「……苗木のは義理だぞ。何時も世話になってたし」
「本当に?」
「ホントだって。なんで嘘つくんだよ」
「……キミ、苗木クンにしかあげてなかったからあれでボクそう思って……」
「あーそうだったか……?」
よく覚えていなかった。だって今はもうどうでもいいことだ。
「そんなに欲しいなら今度作ってやるから」
「……約束、だよ」
「ああ」
 ゆっくりと撫でていた掌が止まって、脚を持ち上げる。頬擦って口づけて、冷たい脚を狛枝は再び撫でる。
「…………お前さ、本当幸運だよな」
触れていた手がぴたりと制止した。
視線を上げれば、日向を見る狛枝が笑った気がした。
「何か言った、日向サン……?」
「……いや、なんでもない」
苦笑する。日向の望みと少し違うけれど、これはこれで悪くないと思ってしまった。
 手にしていた本を脇に置く。何度読んでも面白い話。まるで日向の願望をそのまま記したような内容は、初めて読んだ時、ひどく感動した。その余韻を断ち切るように鳴り響く音に目を向ける。狛枝の携帯。着信は苗木からだった。
「あれ、日向さん? これ狛枝くんの携帯だよね」
「ああ、今、狛枝、手が離せないから」
「そう、でも丁度良かった。日向さんに伝えたいことがあったから」
「え、私に?」
「さっき気づいたんだけど、出張の時、僕、日向さんに渡したチケット間違えてたみたいで……。
こないだ事故にあった目的地もっと治安も良くて安全な場所だったのにチケット間違えて渡したせいであんなことになったって気づいて……僕のせいで、ごめんね、電話なんかじゃなくてホントは直接謝りにいきたいんだけど……」
「いいよ、忙しいんだろ。気にするなって。あれは運が悪かっただけだから」
「でも……」
沈む声色に気にしないでほしいと念を押し、電話を切る。
嗚呼、そうだ。苗木は何も悪くないのだ。
「忘れてたな、そういえば」
二人分のチケットを日向は財布から取りだして指に力を籠める。しかしふとその手を止めた。破るのは勿体ない。
「日向サン、昼ご飯出来たよ」
「ああ、わかった……なあ、狛枝、今度建つホテル、一緒に行かないか? 丁度、電車のチケットあるんだ、二枚」
「ホテル?」
「このチケット結構前に取ったしもうすぐ期限切れるからな。
きっと綺麗だぞ。治安もいいみたいだし。いいだろ、狛枝?」
「そうだね、いこうか。次の休みまで持つかな?」
「あ、大丈夫みたいだ」
ふと狛枝の視線が枕元に向けられた。
「あれまだ読んでたのその本」
「ああ、さっき読み終わったんだ。訊いてくれよ、男が恋人を殺したのは、男がそうするように恋人が…………」
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