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#犬山寂光院
catdoll007 · 7 months
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随求堂の本尊 大随求菩薩(だいずいくぼさつ)
真言:「オン バラバラ・サンバラ サンバラ・インジリヤ・ビシュダニ ウンウン・ロロシャレイ ソワカ」
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天井絵も見れた😆💠🐯
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本堂のご本尊 千手観世音菩薩
《本尊の千手観音は秘仏で60年に一度の甲子年に限って開帳される》 だそうです🙏
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ご真言👄
🗣️ オン バザラ タラマ キリク ソワカ
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oharash · 1 year
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余花に吉兆
1.  友人あるいは恋人のようなことを始めたら、もっと分かり合え���親密な空気だとか柔らかな信頼みたいなものが生まれるかと予想していたが、俺らの空間は特段何かが変化することもなく、近すぎず遠すぎずの関係が果てなく伸びていくのみだった。  大切なものを手のひらに閉じ込めるような日々だった。彼の大きな体は存在感だけでもどこか騒々しかったが、無音より心地よかったのだ。
 うずたかく積もった瓦礫がようやく街から消える頃、俺は人生初の無職デビューを飾った。事務所は畳んだし復興支援委員会の任期も終わった。警察や公安、行政から相変わらず着信や不定期な依頼はあれど、様々な方面からの誘いを断り所属する場所がなくなった俺はぼんやりと初夏を迎えることとなった。  無職になりまして。とセントラルの定期通院の帰り、待ち合わせた居酒屋で焼き鳥をかじりながら言うと彼は呆けた顔で俺を見た。エアコンの効きが悪いのか、妙に蒸し暑くてふたりとも首筋にじんわり汗が滲んでいる。 「お前が?」 「はい。しばらくゆっくりしてから次のこと考えようと思って」 「お前にそんな発想があったとは」 「どういう意味ですか」 「休もうという発想が。いつも忙しく働いとったろーが。そもそも趣味や休みの過ごし方をお前の口から聞いたことがない」 「それ元SKたちにも言われましたわーー。人を仕事人間みたく言わんでくださいよまあその通りですけど。今までやれなかったこと全部やったろ、と思ってたんですけど10日で飽きました。福岡いるとどうしても街の様子気になっちゃうしホークスだ〜〜♡ て言われるし、どっか旅行でも行けばって言われるんすけど全然そんな気になんないんすよ。来月には引きこもりになってるかもしれねっす」  そしたら会いに来てくださいね♡ と言ったら、彼は釈然としないような、そして何かに耐えるような、そんな顔をした。  店を出ると強い風が頬を打った。まだほんのわずか残っていた春の気配が吹き飛んでいく。じゃあ、と手をあげかけたところでデカい手が伸びてきて顎を掴まれた。「飲み直すぞ、うちで」「ひゃい?」かくて俺はそのままタクシーに突っ込まれ(この人と乗る後部座席は超狭い)、轟邸へお持ち帰りされることとなった。
 暗闇の中でうずくまる恐竜みたいな日本家屋。数奇屋門と玄関の間だけで俺の1LDKがすっぽり入りそう。靴を揃えて上り框に足をかけると今度は首根っこを掴まれた。連行されるヴィランそのままの格好で俺は廊下を引き摺られ居間の隣室へ放り込まれる。今夜は何もかも展開が早い。「なになに? 俺には心に決めた人がいるんですけど⁉︎」「使え」「は?」 「この部屋を好きなように使え。しばらく置いてやる」 「もしかしてあなた相当酔ってますね⁉︎」 「あれくらいで酔わん。お前が、ヒーロー・ホークスが行くところがないなんて、そんなことがあってたまるか」  畳に手をついて振り仰ぐ。廊下から部屋に差し込む灯りは畳の目まではっきりと映し出しているけれど、彼の表情は逆光でわからない。 「俺、宵っぱりの朝寝坊ですよ」 「生活習慣までとやかく言わん。風呂を沸かしたら呼びに来てやるからそれまで好きにしてろ」  けれど俺が呼ばれることはなく、様子を見に行くと彼は居間で寝落ちていたのでやっぱり酔っていたのだと思う。デカい体を引きずって寝室に突っ込んだ。風呂は勝手に借りた。
 酔ってはいたものの彼の意思はしっかり昨晩にあったようで、そして俺も福岡に帰る気が全くおきなかったので、出会い頭の事故のように俺の下宿生活は始まった。  「うちにあるものは何でも好きに使え」なるありがたいお言葉に甘えて俺は巣作りを開始した。足りないものはAmazonで買った。徹夜でゲームしたりママチャリで街をぶらついたり(帽子をかぶってれば誰も俺に気づかなかった)ワンピース一気読みしたり豚肉ばかり使う彼からキッチンの主権を奪いそのまま自炊にハマったりもした。誰を守る必要もなく、誰かを気にかける必要もない。誰を満足させる必要もなかった。彼が出かける時間に俺は寝ていたし夕飯も好きな時間に食べていたので下宿より居候の方が正確だったかも知れない。誰かとひとつ屋根の下で暮らすことへの不安はすぐ消えた。早起きの彼がたてる足音や湯を使うボイラー音、帰宅時の開錠の音。そんな他人の気配が俺の輪郭を確かにしていったからだ。  ヒーローを引退した彼は事務所を売却したのち警備会社の相談役に収まっていたがしょっちゅう現場に呼ばれるらしく、出勤はともかく帰り時間はまちまちだった。まあわかる。治安維持に携わっていて彼に一目置いていない人間はまずない(治安を乱す側はなおさらだ)。「防犯ブザーのように使われる」とぼやいていたが、その横顔にはおのれの前線を持つものの矜持があった。どうしてか俺は嬉しい気持ちでそれを見ていた。
2.  ある夜、俺は玄関で彼のサンダルを履き外へ出た。引き戸を開けると明るい星空が広がっていて、それが妙に親しかった。縁側に腰掛けてぼんやり彼方を眺めると星の中に人工衛星が瞬いている。ほとんどの民家の明かりは消えていて、夜は少し湿りそして深かった。紫陽花だけが夜露に濡れて光っていた。  知らない街なのに、他人の家なのに、帰らんと、とは微塵も思わなかった。俺はここにいる。知らない場所に身ひとつで放り出されてもここに帰ってくる。呼吸をするたびに心と体がぴったりと張り付いていった。  気配を感じて振り返ると、あの人がスウェットのまま革靴を引っ掛けて玄関から出てくるところだった。 「風邪をひくぞ」と言われ何も答えずにいると犬か猫みたいにみたいに抱えられ、家の中に連れ戻された。  それからほとんど毎夜、雨でも降らない限り俺は外に出て彼方を眺めた。そうすると彼は必ずやってきて俺を連れ戻した。ある夜「一緒に寝てください」と言ったら彼は呆れたように俺を見下ろして「お前の部屋でか」と言った。そうかあそこは俺の部屋なのか。「あなたの部屋がいいです」と言ったら視線がかちあい、耳の奥で殺虫器に触れた虫が弾け飛ぶみたいな音がして、目が眩んだ。 「そんで、同じ布団で」 「正気に戻ってからセクハラだとか騒ぐなよ」  彼の布団にすっぽりおさまると目が冴えた。やっぱこの人なんか変。そんで今日の俺はもっと変。分厚い背中に額をあてて深く息を吸った。おっさんの匂いがして、めちゃくちゃ温かくて、甘くて甘くて甘くて足指の先まで痺れる一方で自分で言い出したことなのに緊張で腹の奥が捻じ切れそうだった。  彼の寝息と一緒に家全体が呼吸をしている。眠れないまま昨夜のことを思い出す。俺が風呂に入ろうとして廊下を行くと、居間で本を読んでいた彼が弾かれたように顔を上げた。その視線に斥力のようなものを感じた俺は「お風呂行ってきまぁす」となるべく軽薄な声で答えた。一秒前まであんな強い目をしていたくせに、今はもう血の気の失せた無表情で俺を見上げている。妙に腹が立って彼の前にしゃがみ込んだ。「一緒に入ります?」「バカか」「ねえエンデヴァーさん。嫌なこととか調子悪くなることあったら話してください。ひとりで抱え込むとろくなことないですよ。俺がそれなりに役立つこと、あなた知ってるでしょ?」 「知ったような顔をするな」 「俺はド他人ですが、孤独や後悔についてはほんの少し知っていますよ」  真正面から言い切ると、そうだな、と素っ気なく呟き、それきり黙り込んだ。俺ももう何も言わなかった。  ここは過ごすほどに大きさを実感する家だ。そこかしこに家族の不在が沈澱している。それはあまりに濃密で、他人の俺でさえ時々足をとられそうになる。昨日は家族で食事をしてきたという彼は、あの時俺の足音に何を望んだのだろう。  いつぞやは地獄の家族会議に乱入したが、俺だって常なら他人の柔らかな場所に踏み入るのは遠慮したいたちだ。けれどあの無表情な彼をまた見るくらいなら軽薄に笑うほうがずっとマシだった。これから先もそう振る舞う。  きんとした寂しさと、額の先の背中を抱いて困らせてやりたい怒り。そんなものが夜の中に混ざり合わないまま流れ出していく。
3.  涼しい夜にビールを飲みながら居間で野球を眺めていたら、風呂上がりの彼に「ホークス」と呼ばれた。 「その呼び方そろそろやめません? 俺もう引退してるんすよ。俺はニートを満喫している自分のことも嫌いじゃないですが、この状態で呼ばれるとホークスの名前がかわいそうになります、さすがに」「お前も俺のことをヒーロー名で呼ぶだろうが」「じゃあ、え……んじさんて呼びますから」「なぜ照れるんだそこで」「うっさいですよ。俺、けーご。啓吾って呼んでくださいよほら」「……ご」「ハイ聞こえないもう一回」「け、けいご」「あんただって言えないじゃないですかあ!」  ビールを掲げて笑ったら意趣返しとばかりに缶を奪われ飲み干された。勇ましく上下する喉仏。「それラスト一本なんすけどお」「みりんでも飲んでろ。それでお前、明日付き合え」「はあ」「どうせ暇だろ」「ニート舐めんでくださいよ」  翌日、俺らは炎司さんの運転で出かけた。彼の運転は意外に流れに乗るタイプで、俺はゆっくり流れていく景色を眺めるふりをしてその横顔を盗み見ていた。「見過ぎだ。そんなに心配しなくてもこの車は衝突回避がついている」秒でバレた。 「そろそろどこいくか教えてくださいよ」 「そば屋」  はあ、と困惑して聞き返したら、炎司さんはそんなに遠くないから大丈夫だ、とまたしてもピンぼけなフォローで答えた。やがて商業施設が消え、国道沿いには田園風景が広がり出した。山が視界から消え始めた頃ようやく海に向かっているのだと気づく。  車は結局小一時間走ったところで、ひなびたそば屋の駐車場で止まった。周りには民家がまばらに立ち並ぶのみで道路脇には雑草が生い茂っている。  テレビで旅番組を眺めているじいさん以外に客はいなかった。俺はざるそばをすすりながら、炎司さんが細かな箸使いで月見そばの玉子を崩すのを眺めていた。 「左手で箸持つの随分上手ですね、もともと右利きでしょ?」 「左右均等に体を使うために昔からトレーニングしていたから、ある程度は使える」 「すげえ。あなたのストイックさ、そこまでいくとバカか変態ですね」 「お前だって同じだろう」  俺は箸を右から左に持ち替えて、行儀悪く鳴らした。 「んふふ。俺、トップランカーになるやつってバカか天才しかいねえ、って思うんすよ。俺はバカ、あなたもバカ、ジーニストさんも俺的にはバカの類です」 「あの頃のトップ3全員バカか。日本が地図から消えなくてよかったな」  そばを食べて店を出ると潮の匂いが鼻を掠めた。「海が近いですね?」「海といっても漁港だ。少し歩いた先にある」漁港まで歩くことにした。砂利道を進んでいると背後から車がやってきたので、俺は道路側を歩いていた炎司さんの反対側へ移動した。  潮の香りが一層強くなって小さな漁港が現れた。護岸には数隻の船が揺れるのみで無人だった。フードや帽子で顔を隠さなくて済むのは楽でいい。俺が護岸に登って腰掛けると彼も隣にやってきてコンクリートにあぐらをかいた。 「なんで連れてきてくれたんですか。そば食いたかったからってわけじゃないでしょ」  海水の表面がかすかに波立って揺れている。潮騒を聞きながら、俺の心も騒がしくなっていた。こんな風に人と海を眺めるのは初めてだったのだ。 「俺を家に連れてきたのも、なんでまた」 「……お前が何かしらの岐路に立たされているように見えたからだ」 「俺の剛翼がなくなったから気ィ使ってくれました?」  甘い潮風にシャツの裾が膨らむ。もう有翼個性用の服を探す必要も服に鋏を入れる必要も無くなった俺の背中。会う人会う人、俺の目より斜め45度上あたりを見てぐしゃりと顔を歪める。あの家で怠惰な日々を過ごす中で、それがじわじわ自分を削っていたことに気づいた。  剛翼なる俺の身体の延長線。俺の宇宙には剛翼分の空白がぽっかり空いていて、けれどその空白にどんな色がついているかは未だわからない。知れぬまま外からそれは悲しい寂しい哀れとラベリングされるものだから、時々もうそれでいいわと思ってしまう。借り物の悲しさでしかないというのに。 「俺より先に仲間が悲しんでくれて。ツクヨミなんか自分のせいだって泣くんですよかわいいでしょ。みんながみんな悲壮な顔してくれるもんだから、正直自分ではまだわかんなくて。感情が戻ってこない。明日悲しくなるかもしれないし、一生このままかも。  あなたも、俺がかわいそうだと思います?」 「いいや」  なんのためらいもなかった。 「ないんかい」 「そんなことを思う暇があったら一本でも多く電話をして瓦礫の受け入れ先を探す。福岡と違ってこの辺はまだ残っとるんだ。それから今日のそばはおれが食いたかっただけだ」 「つめたい!」 「というかお前そんなこと考えとったのか。そして随分甘やかされとるな、以前のお前ならAFOと戦って死ななかっただけ褒めてほしいとか、ヒーローが暇を持て余す世の中と引き換えなら安いもんだと、そう言うだろう。随分腑抜けたな。周囲が優しいなんて今のうちだけだ、世の中甘くないぞ、きちんと将来のことを考えろ」 「ここで説教かます⁉︎ さっきまでの優しい空気は!」 「そんなもの俺に期待するな」  潮風で乱れる前髪をそのままにして、うっとり海に目を細めながらポエムった10秒前の自分を絞め殺したい。  彼は笑っているのか怒っているのか、それともただ眩しいだけなのかよく分からない複雑な顔をする。なお現在の俺は真剣に入水を検討している。 「ただ、自分だけではどうしようもないときはあるのは俺にもわかる。そんな時に手を……  手を添えてくれる誰かがいるだけで前に進める時がある。お前が俺に教えてくれたことだ」 「ちょ〜〜勝手。あなたに助けてもらわなくても、俺にはもっと頼りたい人がいるかもしれないじゃないですか」 「そんな者がいるならもうとっくにうちを出ていってるだろう。ド他人だが、俺も孤独や後悔をほんの少しは知っている」  波音が高くなり、背後で低木の群れが強い海風に葉擦れの音を響かせた。  勝手だ、勝手すぎる。家に連れてきてニートさせてあまつさえ同衾まで許しといて、いいとこで落として最後はそんなことを言うのか。俺が牛乳嫌いなのいつまでたっても覚えんくせにそんな言葉は一語一句覚えているなんて悪魔かよ。  俺にも考えがある、寝落ちたあんたを運んだ部屋で見た、読みかけのハードカバーに挟まれた赤い羽根。懐かしい俺のゴミ。そんなものを後生大事にとっとくなんてセンチメンタルにもほどがある。エンデヴァーがずいぶん可愛いことするじゃないですか。あんた結構俺のこと好きですよね気づかれてないとでも思ってんすか。そう言っ��やりたいが、さっき勝手に演目を始めて爆死したことで俺の繊細な心は瀕死である。ささいなことで誘爆して焼け野原になる。そんなときにこんな危ういこと言える勇気、ちょっとない。 「……さっきのそば、炎司さんの奢りなら天ぷらつけとけばよかったっす」 「その減らず口がきけなくなったら多少は憐れんでやる」  骨髄に徹した恨みを込めて肩パンをした。土嚢みたいな体は少しも揺らがなかった。  
 車に向かって、ふたりで歩き出す。影は昨日より濃く短い。彼が歩くたびに揺れる右袖の影が時々、剛翼の分だけ小さくなった俺の影に混じりまた離れていく。 「ん」  炎司さんが手でひさしを作り空を見上げ、声をあげる。その視線を追うと太陽の周りに虹がかかっていた。日傘。 「吉兆だ」
4.  何もなくとも俺の日々は続く。南中角度は高くなる一方だし天気予報も真夏日予報を告げ始める。  SNSをほとんど見なくなった。ひとりの時はテレビもつけず漫画も読まず、映画だけを時々観た。炎司さんと夜に食卓を囲む日が増えた。今日の出来事を話せと騒ぎ聞けば聞いたで質問攻めをする俺に、今思えば彼は根気よく付き合ってくれたように思う。  
 気温もほどよい夕方。庭に七輪を置き、組んだ木炭に着火剤を絞り出して火をつける。静かに熱を増していく炭を眺めながら、熾火になるまで雑誌を縛ったり遊び道具を整理した。これは明日の資源ごみ、これは保留、これは2、3日中にメルカリで売れんかな。今や俺の私物は衣類にゲーム、唐突にハマった釣り道具はては原付に及んでいた。牡丹に唐獅子、猿に絵馬、ニートに郊外庭付き一戸建てだ。福岡では10日で暇を持て余したというのに今じゃ芋ジャージ着て庭で七輪BBQを満喫している。  炭がほの赤く輝き出すころに引き戸の音が聞こえ、俺は網に枝豆をのせた。 「今日は早いですね〜〜おかえりなさい」 「お前、無職が板につきすぎじゃないか?」 「まだビール開けてないんで大目に見てください」  家に上がった彼はジャージ姿でビールを携えて帰ってきた。右の太ももには「3-B 轟」の文字。夏雄くんの高校ジャージだ、炎司さんは洗濯物を溜めた時や庭仕事の時なんかにこれを着る。そのパツパツオモシロ絵面がツボに入り「最先端すぎる」と笑ったら「お前も着たいのか?」とショートくんと夏雄くんの中学ジャージを渡され、以来俺はこの衣類に堕落している。遊びにきたジーニストさんが芋ジャージで迎えた俺たちを見てくずおれていた。翌々日ストレッチデニムのセットアップが届いた(死ぬほど着心地がよかった)。  焼き色のついた枝豆を噛み潰す。甘やかな青さが口の中に広がっていく。 「福岡帰りますわ、ぼちぼち」  彼の手からぽとりとイカの干物が落っこちた。砂利の上に不時着したそれにビールをかけて砂を流し、網の上に戻してやる。ついでにねぎまを並べていく。 「……暇にも飽きたか」 「いや全然、あと1年はニートできます余裕で」  ぬるい風と草いきれが首筋をくすぐり、生垣の向こうを犬の声が通り過ぎていく。いつも通りのなんでもない夕方だ。そんななんでもなさの中、現役の頃は晩酌なんてしなかっただろう炎司さんが俺とビールを開けている。俺らはずいぶん遠くまで来た。 「福岡県警のトップが今年変わったんですけど、首脳部も一新されて方針も変わったらしくて、ヒーローとの連携が上手くいってないらしいんすよね。警察にもヒーローにも顔がきいて暇な奴がいると便利っぽいんで、ちょっと働いてくるっす。そんで、俺のオモチャなんですけど」整理した道具たちに目をやる。「手間かけて悪いんですが処分してくれませんか?」 「……どれも、まだ使えるだろう」 「はあ。リサイクルショップに集荷予約入れていいです?」 「そうじゃない。処分する必要はないと言ってるんだ」  的外れと知っていてなお、真っ当なことを言おうとする融通のきかなさ。その真顔を見て俺この人のこと好きだな、と思う。子どものまま老成したような始末の悪さまで。 「それは荷物置きっぱにしてていいからまたいつでも来いよってことでしょーーか」 「……好きにしろ」  唸るような声はかすかに怒気をはらんでいる。さっきまで進んでたビールは全然減ってないしイカはそろそろ炭になるけどいいんだろうか。ビール缶の汗が彼の指をつたい、玉砂利の上にいびつな模様をつくっていく。 「じゃあお言葉に甘えて。それとツクヨミが独立するってんで、事務所の立ち上げ手伝ってほしいって言われてるんすよ、なんでちょくちょくこっちに滞在するので引き続きよろしくお願いします具体的には来月また来ます♡」 「それを先に言え‼︎」  今度こそ本物の怒りが俺の頬を焦がした。具体的には炎司さんの首から上が燃え上がった。七輪みたいに慎ましくない、エンデヴァーのヘルフレイム。詫びながら彼の目元の皺を数えた。青い瞳にはいつも通りに疲労や苛立ち、自己嫌悪が薄い膜を張っている。今日も現場に呼ばれたんかな。ヒーロースーツを着なくなっても、誰かのために走り回る姿は俺の知ったエンデヴァーだった。腕がなくなろうが個性を使わなかろうが、エンデヴァーを許さぬ市民に罵倒されようが。だから俺も個性なくてもできることをやってみっかな、と思えたのだ。ここを離れ衆目に晒されることに、不安がないわけではないけれど。  疲れたらここに帰ってまたあの部屋で布団かぶって寝ればいい。家全体から、やんわり同意の気配が響くのを感じる。同意が言いすぎだとしたら俺を許容する何か。俺のねぐら、呼吸する恐竜の懐の。 「その……なんだ、頑張れ」 「アザーース」  帰属していた場所だとか、背にあった剛翼だとか。そんなものがごっそりなくなった体は薄弱で心もとない。だから何だ、と思う。俺はまだ変わる。  空があわあわと頼りない色合いで暮れていく。隣にしゃがんだ炎司さんの手が俺の背に添えられた。翼の付根があったあたりにじわりと熱が広がり、そのまま軽く背を押されて心臓が跳ねる。 「来月はそば打ちでもしましょうね」  短い肯定が手のひらの振動から伝わる。新たな命を吹き込まれる俺の隣で、炭がぱちりと爆ぜた。
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kachoushi · 7 months
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各地句会報
花鳥誌 令和5年12月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和5年9月2日 零の会 坊城俊樹選 特選句
売られゆく親子達磨の秋思かな 三郎 初秋の六区へ向かふ荷風かな 佑天 浅草にもの食ふ匂ひして厄日 和子 秋の風六区をふけばあちやらかに 光子 蟬一つ堕つ混沌の日溜りに 昌文 中国語英語独逸語みな暑し 美紀 神谷バーにはバッカスとこほろぎと 順子
岡田順子選 特選句
ましら酒六区あたりで商はれ 久 レプリカのカレーライスの傾ぐ秋 緋路 鉄橋をごくゆつくりと赤とんぼ 小鳥 ぺらぺらの服をまとひて竜田姫 久 橋に立てば風に微量の秋の粒 緋路 秋江を並びてのぞく吾妻橋 久 提灯は秋暑に重く雷門 佑天 浅草の淡島さまへ菊灯し いづみ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月2日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
さざなみの落暉の中の帰燕かな 睦子 流木を手に引き潮の夏終る 同 無干渉装ふ子等や生身魂 久美子 秋暑し右も左も行き止まり 愛 秋の虹までのバス来る五号線 同 バスを降りれば露草の街青し 同 投げやりな吹かれやうなり秋風鈴 美穂 先頭の提灯は兄地蔵盆 睦子 なりたしや銀河の恋の渡守 たかし 指で拭くグラスの紅や月の秋 久美子 くちびるに桃の確かさ恋微動 朝子 法師蟬死にゆく人へ仏吐く たかし 息づきを深め白露の香を聞く かおり 燕帰るサファイアの瞳を運ぶため 愛
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月4日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
恐ろしき事をさらりと秋扇 雪 美しき古りし虹屋の秋扇 同 秋扇想ひ出重ね仕舞ひけり 千加江 秋扇静かに風を聞ゐてみる 同 鵙高音落暉の一乗谷の曼珠沙華 かづを 秋夕焼記憶に遠き戦の日 匠 補聴器にペン走る音聞く残暑 清女 夕闇の迫りし背戸の虫を聞く 笑 秋扇閉ぢて暫く想ふこと 泰俊 曼珠沙華情熱といふ花言葉 天空
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月6日 立待花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
片足を隣郷に入れて溝浚へ 世詩明 野分中近松像の小さかり ただし 吹く風の中にかすかに匂ふ秋 洋子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月7日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
何事も暑さの業と髪洗ふ 由季子 染みしわの深くなり行く残暑かな 都 膝抱き色なき風にゆだねたり 同 秋の灯を手元に引きてパズル解く 同 のど元へ水流し込む残暑かな 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月9日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
枯蟷螂武士の貌して句碑に沿ふ 三無 籠に挿す秋海棠の朱の寂し 百合子 一山の樹木呑み込み葛咲けり 三無 風少し碑文を撫でて涼新た 百合子 守り継ぐ媼味見の梨を剥く 多美女 葛覆ふ風筋さへも閉ぢ込めて 百合子 かぶりつく梨の滴り落ちにけり 和代 秋雨の音の静かに句碑包む 秋尚 梨剥いて母看取り居ゐる弟と 百合子 たわわなる桐の実背ナに陽子墓所 三無
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月11日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
登り来て峙つ霧を見渡せり エイ子 太鼓岩霧に包まれ夫と待ち のりこ 秋茄子の天麩羅旨し一周忌 エイ子 秋茄子の紺きっぱりと水弾き 三無 散歩道貰ふ秋茄子日の温み 怜 朝の日の磨き上げたる秋茄子 秋尚 山の端は未だ日の色や夕月夜 怜 砂浜に人声のあり夕月夜 和魚 四百段上る里宮霧晴るる 貴薫
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月11日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
星月夜庭石いまだ陽の温み 時江 サングラス危険な香り放ちけり 昭子 団子虫触れれば丸く菊日和 三四郎 羅の服に真珠の首飾り 世詩明 無花果や授乳の胸に安らぐ児 みす枝 蜩に戸を開け放つ厨窓 時江 秋立つやこおろぎ橋の下駄の音 ただし 曼珠沙華好きも嫌ひも女偏 みす枝 長き夜を会話の出来ぬ犬と居て 英美子 妹に母をとられて猫じやらし 昭子 長き夜や夫とは別の灯をともす 信子 蝗とり犇めく袋なだめつつ 昭子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月12日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
鳳仙花見知らぬ人の住む生家 令子 秋の灯や活字を追ひし二十二時 裕子 露草の青靴下に散らしたる 紀子 父からの裾分け貰ふ芋の秋 裕子 かなかなや女人高野の深きより みえこ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月12日 萩花鳥会
秋の旅ぶんぶく茶􄽂の茂林寺に 祐子 胡弓弾くおわら地唄の風の盆 健雄 大木の陰に潜むや秋の風 俊文 月今宵窓辺で人生思ひけり ゆかり 天に月地に花南瓜一ついろ 恒雄 月白や山頂二基のテレビ塔 美恵子
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令和5年9月12日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
蜩や五百羅漢の声明に 宇太郎 我が庭は露草の原湖の底 佐代子 水晶体濁りし吾に水澄める 美智子 手作りの数珠で拜む地蔵盆 すみ子 蝗追ふ戦終りし練兵場 同 病院を抜け出し父の鯊釣りに 栄子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月15日 さきたま花鳥句会
虫しぐれ東郷艦の砲弾碑 月惑 熱帯夜北斗の杓の宵涼み 八草 兵の斃れし丘や萩の月 裕章 夕刊の行間うめる残暑かな 紀花 校庭に声もどりをりカンナ燃ゆ 孝江 八十路にもやる事数多天高し ふゆ子 子供らの去り噴水の音もどる ふじ穂 杉襖霧襖越え修験道 とし江 耳底に浸みる二胡の音秋めけり 康子 敬老日いよよ糠漬け旨くなり 恵美子 重陽の花の迎へる夜話の客 みのり 新涼の風に目覚める日の出五時 彩香 鵙鳴けり先立ちし子の箸茶碗 良江
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令和5年9月17日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
昼の星遺跡の森を抜けて来て 久子 曼珠沙華もの思ふ翳ありにけり 三無 いにしへの子らも吹かれし秋の風 軽象 明け六つの鯨音とよ��芒原 幸風 秋の蟬さらにはるけき声重ね 千種
栗林圭魚選 特選句
朝涼の白樫の森香の甘し 三無 莟まだ多きを高く藤袴 秋尚 艶艶と店先飾る笊の栗 れい 榛の木の根方に抱かれ曼珠沙華 久子 揉みし葉のはつかの香り秋涼し 秋尚 風に揺れなぞへ彩る女郎花 幸風 秋海棠群がるところ風の道 要 秋の蟬さらにはるけき声重ね 千種
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月20日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
江戸生れ浅草育ち柏翠忌 世詩明 神谷バーもつと聞きたし柏翠忌 令子 柏翠忌句会横目に女車夫 同 旅立たれはやも四年となる秋に 淳子 桐一葉大きく落ちて柏翠忌 笑子 虹屋へと秋潮うねる柏翠忌 同 言霊をマイクの前に柏翠忌 隆司 若き日のバイク姿の柏翠忌 同 一絵巻ひもとく如く柏翠忌 雪 柏翠忌旅に仰ぎし虹いくつ 同 柏翠忌虹物語り常しなへ 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月24日 月例句会 坊城俊樹選 特選句
秋天を統ぶ徳川の男松 昌文 秋の水濁して太る神の鯉 要 眼裏の兄の口元吾亦紅 昌文 秋冷の隅に影おく能楽堂 政江 群るるほど禁裏きはむる曼珠沙華 順子
岡田順子選 特選句
身のどこか疵を榠櫨の肥りゆく 昌文 カルメンのルージュみたいなカンナの緋 俊樹 口開けは青まはし勝つ相撲かな 佑天 光分け小鳥来る朝武道館 て津子 蓮の実の飛んで日の丸翩翻と 要
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年8月2日 立待花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
炎天下被るものなき墓の石 世詩明 夫恋ひの白扇簞笥に古り 清女 野ざらしの地蔵の頭蟬の殻 ただし 一瞬の大シャンデリア大花火 洋子 三階は風千両の涼しさよ 同 素粒子の飛び交ふ宇宙天の川 誠
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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shukiiflog · 8 months
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ある画家の手記if.124  告白
香澄と一緒に車で家を出た。留学から帰ってくる絢の迎えに。 絢と僕らはもう親戚ってわけじゃないけど、僕も香澄も少しでも早く会いたかったから。 かいじゅうくんキーホルダー、役に立ったかな…。 出てくる前に香澄とじゃれてた名残でまだ少し体があつい。車内の空調を強くしたら髪の毛が後ろに靡いた。 香澄も僕もだいぶ髪が伸びた。僕の髪はちょっと前は大型犬の尻尾くらいの長さだったけど、今はクラゲの触手くらいの長さになってる。
空港で会えたのは絢だけじゃなくて、ちょうど同じタイミングで帰ってきたまことくんと雪村さんと光くんもだった。 絢に「おかえり」って言って頭を撫でたら撫でた手に噛みつかれた… 合間をみて雪村さんにちょっと大きめの箱を渡す。「帰国祝いです」って笑って渡したら向こうも笑って受け取ってくれた。 いい包装紙がなかったから山雪の工房を借りて、大きな紙に自分で描いてデザインしたかいじゅうくんと絢ちゃんの柄を刷ってみた。包装するリボンにも、綺麗にレタリングしたアルファベットとかいじゅうくんと絢ちゃんの顔を描いて、シルクスクリーンで刷って入れた。 かいじゅうくんもだけど、雪村さんにあげるなら絢ちゃんも一緒に入れたほうが喜ばれるかなと思って。絢が僕に絢ちゃんを見せてくれたのは病院に持ってきてた一回くらいだけど、たまに送られてくる画像にもよく写り込んでるし特徴は覚えてた。 絢はたまに、みんなにじゃなくて僕だけに画像だけ送ってきてくれたりする。嬉しい…んだけど、謎の画像が多くて、どれも絢が外を歩いてて撮った写真みたいなんだけど、枯れた蓮のドアップだったり、寂れて朽ちて顔の印刷が禿げた公園の動物の遊具だったり、…謎だ。毎回一応送ってくれた写真にはコメントしてる。
帰って来るやいなや絢と一緒にあっという間に香澄も攫われていって、残された僕とまことくんとでぽかんとその場に立ち尽くす。 正確には僕一人。まことくんはそこまであっけにとられたふうでもなくて、慣れてるみたいな涼しい顔で絢たちを見送ってた。オーストラリアでもこんなことあったのかな。 このまま香澄も一緒に行かせちゃっても特に危険はないと思う…わがまま言ってるふうでいて絢がそう判断してもいるんだろうし…。 絢の家族の人間性とか危険性については香澄からも絢からも僕はほとんど聞いたことがない。それぞれ個人についてなら間接的な情報を聞けたこともあったし、それが無意味ってことじゃないけど。情香ちゃんからの報告も、つまるところあくまで情香ちゃんへの対応なんだと思う。 僕は香澄みたいに彼らと個人的な関係を築けてるわけじゃない。…でもみのむしくんは渡せた、これ以上は高望みかな。 ひとつ音にもならないくらいのため息をつく。煙草…はここは禁煙かな。 となりのまことくんのほうへ視線をやって話しかける。僕はまことくんにも話しがあったんだった。 「まことくんは機内でなにかもう食べた? 僕は空港内のカフェで軽く食べて帰ろうと思うけど、よければ奢るよ」 にっこり笑って誘う。「君と少し話せたらなって思って」 「え?や…ありがとうございます…」 まことくんは愛想笑いでも警戒するような感じでもなく、僕に対して特にどういう感情もなさそうな顔。 「食べて帰ろうかと思ってますけど…  香澄も絢も居ないのに俺だけなんか悪いですし」 お辞儀してそのまま一人で行っちゃおうとするから、もう一声かけてみる。 「香澄も絢も居なくていいかな。できれば君と個人的な話が二人でできればいいなって思ってたから。…無理強いはできないけど」 まことくんがカフェに向かって歩き出す僕の斜め横にくる。 「そういうことならありがたく奢ってもらいます。院生て金無くて。留学とか行っといてなんですけど」 今の言葉でとまってくれたのかな。その前と言ってることはほとんど変わらないけど、どこで思いとどまってくれたんだろう…。 「お金があってもなくてもやりたいことはやらなきゃね」 院生か。僕は院には行ってないけど卒業後それなりに極貧生活だったな。まだやってることがはっきりとは結実しない期間ってことなのかな。 院には慧が行ってた、その慧の部屋に僕はしばらく入り浸ってたから、まことくんと慧では分野は違うだろうけど院生がそれなりに忙しいスケジュールを抱えてるわりにまるで儲からないのはなんとなく知ってる。 一緒に来てくれるってことで、まことくんの肩からひょいっと荷物を預かる。僕のランチの提案で重たい荷物を抱えて当初の予定より余計に歩かせることになるから、せめて。飛行機から降りたばっかりだし。 そのとき気付いた。まことくんの荷物の端っこで揺れる、荷物に付けてあるキーホルダー…木彫りの、かいじゅうくん、僕が香澄と一緒に作った 「ーーー……」
まことくんと二人で入ったのは飛行機の離着陸や滑走路が見える日当たりのいい綺麗なカフェ。 軽く食べるっていっても僕はもともとが一度にそんなに食べきれないから小さなワッフルとコーヒーだけ。 夏だけど僕はコーヒーは一年中ホットで飲んでる。空港内は涼しいからまことくんもこの季節に見てて暑苦しいってほどじゃないはずだ。 テーブルの向かいの席にまことくんも座る。 こうして綺麗に正面から姿を見るのは初めてかもしれない。 絢や香澄と一緒に家に遊びにきてたことは何度もあるけど、まことくん個人と面と向かって話したことはない。 顔立ちはシャープな印象だけどパーツや骨格の造り自体はそんなに細く鋭く尖ってるわけじゃない、骨ばってもない、てことは表情でかなり顔が変わるのかな? 造形より印象が圧倒的に強く出てる。 表情豊かな人だ、多分。造作的な表情の変化の幅が大きくて広いって意味じゃなくて、ほんの少しごく僅かな表情の変化だけで内面や感情を非常に雄弁に物語る、って意味で。 少ない情報…出力から、相手に膨大な入力をもたらす相貌、ひとの顔は見る人間と見られる人間の双方の視線で織りなして編まれる、出入力のアンバランスが造作より印象が圧倒的に勝る容貌に繋がってるのか…どうかな… まことくんが飲み物しか頼まないから「好きなもの頼んでいいよ」って言ったら僕と同じワッフルを頼まれた…   さっきお金ないって言ってなかったっけ…  あんまり量食べないほうなのかな 余計なことかもしれないけど、店員さんにメニューの中からいくつか腐りにくい日持ちしそうな料理を頼んでテイクアウトにしてもらった。 コーヒーに口をつけながらまずはなんてことない話を始めてみる。 昔、慧につっこまれた、突然本題を相手の顔面にパイみたいにぶつけていく話し方やめろ、それは会話じゃない、って。 そのパイをぶつける話し方って案外、美術講師をやってた頃には生徒に通用してたんだけど。先生と生徒なら、要点が話の頭に来たほうが早くて助かる、ってことだったのかな。 「そういえばまことくんの名前って本名じゃなかったんだね、最近香澄が呼び方を変えたので初めて知ったよ」 まことくんも飲み物を飲みながら答える。 「そうですね。まことって呼んでたのは香澄の勘違いというか…本名は張磨寿峯です」 ことねって名前がふとした話題に出てきたとき、最初僕は香澄が誰の話をしてるのか分からなくて、新しい友達ができたのかなと思った。なんとなく、香澄も呼び方を変えてすぐにしっくりきたわけでもないみたいだった。 名前、というより呼び方なのかな、相手そのものの僕の中での存在のあり方を呼称って形で包括してる。呼び方を変えるときは相手の存在形式が大幅に変わったときか、変えるときで、だから僕の中では絢はずっと絢だったりする。 …僕は名廊に絢がいたときから、絢のことを「絢」って呼んでたから。あの日理人さんと会って。今でも僕が「絢」って呼ぶとき、それはなんとなく「雪村絢」の絢じゃなくて「絢人」を略したものとしての絢だったりする。…言わなくてもいいことだから、言わないけど。 「はりまことね… 綺麗な名前だね。…僕も呼び方変えたほうがいいかな?」 香澄から呼び方を変えた経緯とかは聞いてないからまことって呼ばれるのになにか不都合が起きたんじゃ… 「呼びやすいように呼んでください。絢はまだまこって呼んできてて、逆にぬいぐるみのサメに寿峯って名前つけてんですよ。まぁそういうのも別にいいかなって思います」 杞憂だった。 絢はまことくんにもぬいぐるみ買ってたのか…。 …そう言われれば…こう、鋭利な印象と魅力的な部分に相似が…  もしかして絢もそう感じた…? 「サメ…  ………まことくんがサメに似てるから…?」 訊いてみたらまことくんの表情のニュアンスが少し変わった。嬉しそう…楽しそう…? 「そうそう、サメ似てるって…絢から聞いてました?」 「いや、僕は何も聞いてなかったけど、印象が似てると思って…」 絢はぬいぐるみが好きなのかな。そういえば僕によくノエルぶつけてくるね。好きな人にそのイメージのぬいぐるみをあげてたりするのかな。 僕から見るとサメってすごくかっこいいけど、絢から見てもまことくんはそんなふうに見える? なんとなくにこにこする。 そのまま立て続けてサメからゆきちゃんからノエルからかいじゅうくんからみのむしかいじゅうくんの話をしそうになって一度冷静になる。 留学から帰ってきてまだそのままだし、そんなにここに長居させるわけにもいかない。国が変わると空気とか水とか匂いに慣れるまでに時間がかかるとか体壊すとかって前に稔さんから聞いたような…。 僕とまことくんとはしょっちゅう会えるわけじゃないから聞きたいことがあるなら今聞いておかなくちゃ。 「そういえば絢から通話で聞いたよ。まことくん、絢と付き合い始めたんだって?」 僕が聞きたかったのはそういう話。 まことくんはさっきの顔からまた元に戻って短く答えた。 「ああ…はい」 「…」 こういうのって、例えば家族とかでも本来は無遠慮に聞いていい話じゃないんだろうな。誰とどう交際するとか結婚するとかって。 名廊はそのへんも古いからな…そろそろ誠人くんがそういうのにも耐えがたくなって変えてそうな気もするけど。男女関係なく、誰かと交際するときはもちろん結婚前提だし、相手もそれなりの家で、相手の家の親族は軽く洗ってあまりに見るに耐えかねる人物がたとえ遠縁にでもいたらそこで話は終わり、とかだった。 ずっと家の子供たちを幼稚舎から西蘭に通わせる理由にそれもある。あの学内だけでプライベートな人間関係が構築されるなら、西蘭には名家の子や一定レベル以上に優れた能力を持つ子しか入らないから、学内で普通に恋愛しても家曰く「ひどいハズレ」を引くことがない、とかなんとか。…考えてて嫌になるし、実際嫌になったから僕は大学は別のとこにいったんだっけ… 「…立ち入ったことだったかな」 眉を下げて訊いたらまことくんがフォローを入れてくれた。 「いえ、絢が香澄と直人さんに伝えたのは聞いてました」 まことくんと絢が付き合い始めたのが留学期間中であってるなら、まだそんなにどういう交際になるのかとか、はっきりしてないのかもしれないし、僕は別に波風立てたいわけじゃ…ない。 「…伝えてきたのは絢の行動であって君の積極的な意思が伴ってたのかはわからないし、だから僕がその事実関係を知ってることを君も知ってることと、僕がその関係について絢じゃなく君にも遠慮なく踏み込んだ話をしていいのかは、別だから…」 慎重に言葉を選ぶ 相手を悪戯に傷つけないように 土足で踏み込まないように 「君が嫌なら金輪際絢との関係については話題にしない…って言いたいけど、最低限僕が君としたい話だけ、ここで僕にさせてくれるかな」 どこまで僕がエゴを抑えて話せるか 「答えられることなら」 まことくんはさっきまでと同じ声で答えた。 「絢が香澄と直人さんに伝えたいって思うのは納得できてますし、俺もそれは了承して��す。でも今は俺しかこの場に居ないから。俺一人で答えられる範囲じゃ無いって思ったら、それはすみませんけど、話せないってこともあるかも。それでもよければ」 むしろここに絢もいたら、絢は僕がまことくんに聞きたいことや話したいことを茶化したり誤魔化してくるか混ぜっ返してくる。そしてもう一度同じ話題に戻れない流れを作る。絢はそういうのが上手い、ここでは厄介な存在だから、今はいないほうがいい。 …なにから話せばいいのかな   絢とまことくんが付き合うって知って頭を掠めたものはなんだったっけ …髪留め
「…邪推の域を出なくて申し訳ないけど、僕はずっとまことくんは絢じゃない別の人のことが好きなんだと思ってたんだ。今もそうなのかなと、僕は思ってる。…僕はなにか勘違いをしてるかな?」 向かいでまことくんが唖然と…ぽかんと…?してる。 脱線してないことを示そうとしてにこっと笑って続ける。 「…僕は君がその人の誕生日に髪留めを贈ったのを知って、そうなのかなと思ったんだけど。」 「え」 まことくんの食べてる手が止まった。目が合う。…これもあんまり僕からは言っちゃいけないことだったかな。  これに関しては何も攻撃の意図はないから最初に声をかけた時のまま、穏やかな笑みを崩さないでおく。 「香澄のことですか」 「うん。決められたたった一人の相手としか恋愛や交際をしちゃいけないとは僕は思ってない、けど…自分の大事な子たちに無節操に軽い気持ちで手を出されるような動きをされると心中穏やかじゃない。香澄にも絢にも、幸せになってほしいから」 香澄は僕が幸せにするけど、香澄に髪留めを贈って、絢に告白されたら付き合って、僕はどっちのこともいい加減に扱われていたずらに気を持たせて蔑ろにされたようで   少し怒ってて でも  …どういう行為が本人の中で下衆な行いだって認識されてるのか、その行動を一人一人の相手がどう受け取るのかは、分からない…場合によってはそれでいい関係だって多分あるんだ    今回は僕がただ拭えない違和感を感じただけで、それだって僕は本来部外者だし… 僕と香澄と情香ちゃんの関係だって、信じがたい、受け入れがたい、って人はいる   パーティでそういう声も聞いたから だから結局僕の気持ちより絢の気持ちのほうがずっとずっと今は大事にしなきゃいけない でも絢は… 傷つけられても、…気付けないかもしれない 「…君は絢のことをどう思ってるの」 まことくんは訝しげな表情で僕にしっかりした声で返した。 「俺は付き合うなら一人だけです。絢と付き合うなら二股とか浮気はし��せん」 眉が下がっていく… 一緒に目線も下がって、手元のコーヒーをじっと見つめることになった。 「それは君の主義信条方針であって君の気持ちは一言も出てきてない。僕はそれが怖い。僕は、絢のことをどう思ってるのかって聞いたのに。…」 どんな崇高で堅牢な主義思想や人道的な判断を貫くより絢のことを誰より一番に最も深く愛してほしい、どれだけ道に外れることになっても愛の形が歪になってでも   …どこからが僕の本当の願いで、どこからが変えられなかった過去だ 悲しい顔した僕の向かいでまことくんは少し気分を害したみたいな空気で言った 「…好きですよ」 その言葉に、僕は「お前ごときに絢を幸せにできるとでも思うのか」って怒鳴りたかった、そうしなかったけど その言葉は本来はまことくんに向けられたものじゃない、その怒りも、本当は僕に向けられたものだ、だから言わなかった 今ここでこうして絢の恋人相手にあれこれ訊いてみるなんて滑稽な真似してまで僕は絢に幸せになってほしい、 そうじゃ���いと僕が困るから? 絢は僕の犯した因果から産まれた 僕一人では負いきれないほどの咎を、まるで無関係のはずのまことくんに負わせてしまったような気持ちでいる、 僕が 絢を幸せにしてあげられればよかった 誰より深く優しく愛して死ぬまでそばにいて慈しんであげられたら それはできない 僕が絢を一人の連続した人間だってふうに思えるようになったのは、香澄に会って 香澄と愛し合ったから 深く優しく慈しむような愛し方も 僕の中には元々なかった 香澄と関わって育まれたものだ それは香澄と僕で編んだもので、僕が一度そういう愛し方を学んだからって誰しもにそれを適用できるわけじゃない  あくまでその人との関係の中で生まれたものを途切れないように大事に紡いでいくだけで、それがどこに行き着くかどんな形になるのかは、そうしてみないと分からないし、香澄とまったく同じ形になることは相手が誰でもきっと起きない
「…」 少しの間黙り込んじゃったけど、手元のコーヒーを一口飲んでからまことくんに柔らかく微笑みかけて、話を続ける。 「そう…  それならよかった。…僕が訊いて君が答えてくれたのに、言われたことを鵜呑みにもできなくてごめんね。君を信頼してないってこととも違うんだけど…。」 好意なんてものを単純に絢にとって良いものだなんて信じられるわけがない、絢だけじゃない、好意をかさに着て香澄に好き勝手に振舞ってきた人間がどれほどいたか いつも好意はどんな悪意より尚たちが悪かった 好きだって、まことくんの言ってる好意がどういうものかは、真実を僕が知ることはなくてもせめてこうして話さないと何も分からない 「…僕は当人と直接一対一でのコミュニケーションを重ねないことにはどうにも個人像が得難いらしくて、今まで君のことも家で幾度となく見かけて挨拶を交わしたりもしてるのに、僕には君をどういう人間のようにも思えなかった。こうして多少不快なやりとりを通してでも僕は君のことを知りたかった、絢を傷つける人間を僕はもう二度と絶対に許さないから。」 理人さんも、誠人くんも、僕も。 流石にもう分かってるよ、理人さんが優しくて儚げで壊れそうなお兄さん、なだけじゃなかったこと。…誠人くんも。…僕も。 まことくんは…どういう人なのか。プロファイリングみたいな成果がこの会話で欲しいんじゃない、お互いの中にまず一人の人間として根を下ろす覚悟がまことくんにも僕にも必要じゃないかなってことなんだけど…。 まことくんが僕の少々重たい言葉を継いだ。 「…絢がすごく真剣に物事考える奴だってことは俺も感じてます。だから正直なんで俺?って思いましたけどね。直人さんみたいに周りに絢を心配する人が居るのはあいつにとっていいと思いますよ。俺は俺が関わる以上のことは絢にしてやれないんで」 ………。 絢に…何かを要求してるわけじゃない…? 関わる以上のことはできない…  なら、 どう関わりたいかだけがネックだ。 「僕はもう絢にとっては親戚でも従兄弟でもなんでもない存在だから…正直どこまで僕の一存で絢に鬱陶しくいつまでも構っていいものかはずっとはかりかねてるんだけどね…。君は、絢とどういうふうに関わっていきたいと思ってるの?」 ここまで訊いていいのかな、嫌なら「答えられない」で済むからいいのかな、とか思ってたらまことくんの顔から力が抜けた…僕なにか変なこと訊いたかな… 「どうっていうか… 俺わりと絢はそのまんまで好きなんで。絢がやりたいようにやってるとこ見てられればそれで」 「ーーー……」 「俺も絢もやりたいこと違うと思うんですけど、それでも相手の興味あることが自分の糧になったりもしますし」 「………」 ………そっか…  絢は今度は 際限なく尽くして相手の欲求や混乱を鎮めて満たしていくような関係は 自分を少しでも損なうような関係は、望まなかった…のか 絢のことが…  そのままで好き…… 「………まことくんは、なんで自分なのかって言ってたけど、僕は今すごくよく分かったような気になったよ…あの家を出たあとの絢らしいね… 前からいい子だったけど、ずっとずっといい子になった…」 自分で言ってて優しい気持ちと一緒に笑みが溢れる。 「僕だけかもしれないけど話しを聞けてすごく安心したよ。好意を振りかぶって傷つけてくる人間が、大勢いたから…好きだから付き合うってだけじゃどうしても警戒心が抜けなかったんだ」 そのままの絢が好き… 絢に何を求めてるんでもない、何でもこなす器用なあの子にそのスペックを自分との恋愛に活かしてほしいだとか、あの美しい容姿を連れ歩いて自己顕示の道具にしたいだとか、ただ愛玩したいだとか、そういうのじゃなかった…  僕がほっとしてる間にまことくんは「はぁ。そうですか」てまた元の顔に戻っちゃってる。…?違う感じもする… おたおたしながらコーヒーに口をつけて弁解みたいなことを言う。なんとなく目が泳ぐ。 「ご、ごめん、絢の話ししてたのに自分語りみたいになっちゃったね。喋るの苦手で…話すとき言葉が抜けがちとか主語がないとか日本語じゃないとかよく言われるんだ…」 正直に白状したらまことくんに笑われた。苦笑いみたいな感じだけど。 マグの向こうをそっと見る。この子ちょっと困ったような感じの苦笑みたいな笑顔が映えるな。少し痩せ気味の体型とも合ってて全体の空気に統一感がある。苦笑に皮肉や嫌味っぽい暗い雰囲気が混じらないから向けられたほうも嫌な気持ちにならない。無表情に近いときの顔の造作がそういう笑みの印象から…遠くはないけど、でもすぐに思い描ける感じでもないから、そこに少しのギャップがあるのかな。 「日本語になってないって…」 まことくんは苦笑したまま返してきた。 「や、別に、会話って言語外のニュアンスが色々ありますから」 「…ニュアンス頼りだと齟齬にいつまでも気付けないこともあるし…」 僕の場合はニュアンス以前な気がするけど… 「香澄に会ってからは気をつけようとはしてるんだ…あの子ははじめて会った頃はあんまりどういう言外のニュアンスも醸さなかったから、僕も何も汲まなかったひどい歴史があって… …絢はそういうとこは醸すかどうかしっかり統制してるからこれもやっぱり僕には難しいんだけど…相手が汲んでほしくないものは汲めないし…」 「そういうものじゃないですか、人間関係は」 僕がおたおたしてたら総まとめにされちゃった…。 続けづらくて黙ってコーヒーを飲んでたらまことくんが続けてくれた。 「俺は前まで絢が好きなのは香澄だと思い込んでたんですけど まぁ、そういう…はっきり言われないとわからないこともありますね。絢が香澄を好きなのは間違いないと思いますが」 「…?うん。…?」 絢は香澄が好きで香澄も絢が好きでまことくんは香澄が好きだけど絢も好きで付き合ってて、…いい関係だと思うけど… 「留学最終週とか絢ずっと香澄に会いたいとかくっつきたいとか色々言ってて、それで今日会った途端あれじゃないですか。マジで置いてかれたし…」 まことくんがちょっとおかしそう?に笑ってる 絢、もうすでにまことくんに甘えきってるな… 「置いてっても君ならちゃんとそこにいると絢が思ってるからでしょう。両想いだね」 僕がそう言ったらまことくんは笑顔の余韻を漂わせてる。 「あー…まぁ…だといいですね…」 真っ先に駆け寄っていく相手と、置き去りにしていく相手。どっちがどうとは言えないけど、違う形の信頼関係が両者とそれぞれにあるってことかな。 「僕は絢が君を選んだことがすごく嬉しいよ。どれだけ今の段階で深く愛しあってても、絢が香澄を恋人に選ぶよりも、君を選んだことが。 あの子は生まれた時から自分のすべてをたった一人のひとに捧げて、その生き方を愛ゆえだと思うことで耐えて生きてきた。本当に愛かもしれなかった、それはもう分からないけど、絢の世界ではずっと愛し愛されることはあの子が身を削る形のものでしか成立しなかった。 でも君はそのままの絢が好きだって言った。絢はやっと身を削らなくてもそのままでいるだけで愛し合える相手を見つけて、そういう君のことを、自分の意思で選び取れたんだと思って。」 きっと怖かったんだろうな。がんばったね絢。 笑んだ目元に自然と涙が薄く浮かんだ。僕のほうにまっすぐ視線を向けたまま、まことくんは黙ってた。 僕から続ける。 「それに君はいくら恋人でも絢のために身を削る真似はしない、…ような気がした。」 にっこり。これから変わるかもしれないけど。 「まぁそうですね」 そうであってくれるから、絢はまことくんを選んだんだろう。 僕の勝手な想像だけど、絢から聞く限りでは、絢がまことくんとの関係を恋人って形にするのを少し急いたのは、絢が香澄と今後も一緒にいるためでもあったような気もする。 自分の気持ちの成就もあっただろうけど、絢の人間関係はそれほど大きな広がりを見せることはもうないはずで、絢と香澄はそうならないように思いあっているものの、お互いに少し、お互いのことになると我が身を省みなくなるところは…あるよね。 長々話し込んだけどコーヒーも飲み終わったし、まことくんも食べ終わってるから日が落ちる前に空港を出る。夜道の運転は暗所が見えない僕は避けたほうがいい。 「食べ終わったし、そろそろ僕らも帰ろうか。送っていくよ」トレーを持ってワッフルを包んでた紙を丸めてゴミ箱に入れながらまことくんのトレーも彼の手から預かって片付ける。 「はい。じゃぁ…ほんといいんですか奢ってもらって」 「もちろん」 会計しながら話す。 「まことくんは遠慮しそうな気もするけど、ご飯作るのが面倒だったりお金がなかったらいつでもうちに泊まってってたくさん食べてってね。一人暮らしだって聞いたし。香澄も喜ぶよ」 「ありがとうございます。機会があれば」 丁寧に「ごちそうさまです」って言って僕に頭を下げる、わかりやすい愛想はそんなにないけどどこも無礼じゃない…躾の行き届いた子?っていうのかな…?いや、この年齢ならもう躾とかってことじゃないのかな…。
香澄と絢は向こうの車で帰ったみたいで、ロールスは駐車場でいい子に待ってたから後部座席にまことくんを乗せる。 僕が持ってたまことくんの荷物も乗せて、その横に食料を乗せた。 ふと思いついて運転席からバックミラー越しに提案する。 「今日はうちに泊まっていったら?今夜は香澄も絢のところに泊まるみたいだから僕も家に一人だし。おいしい晩ごはん作るよ」 さっき香澄と絢から連絡が来てたのを見た。僕一人だとちょっと寂しい。 「いや、さすがにそれは…帰って荷ほどきとかもしたいんで」 「そっか」 今まではずっと留学先で絢と同室だったみたいだし、急に一人の部屋に戻って一人で寝起きするのも寂しいんじゃないかなと思ったんだけど、一人のほうが落ち着くし静かでいいって場合もあるし、これも無理強いはできないな。 「じゃあせめて家まで送っていこう」 そこから先はまことくんのナビで一緒にまことくんの下宿までいく。 車の運転はなるべく安全運転で。 後ろのまことくんに話しかける「そのキーホルダー、絢からもらった?」 荷物についてたかいじゅうくん。僕と香澄がお守りに渡したものを他の人に渡すなんてよっぽどだ。 まことくんは「借りてるだけで返します。それも何度も断ったんですけど」って言ってる。相当絢が食い下がったな。お守り、自分よりまことくんに持っててほしかったのかな。
まことくんの下宿についたら、車から荷物を持って降りる彼に、カフェで受け取った大きな袋を運転席から差し出す。 「これ、さっきのお店のメニューで日もちしそうなやつをテイクアウトしといたんだけど…疲れてるかなと思って、数日は料理しなくていいように」 慌てて付け足す。 「アレルギーとかあったり食べきれなさそうだったらこのまま僕が持って帰るよ」 「あーありがとうございます…なんか色々してもらって」 絢を呼べばぜんぶ処理できる気はするけど、絢ももしかしたら今頃はしゃぎすぎて熱出してるかも。 まことくんは袋の中身を確認して「助かります。いただきます。ありがとうございました」って綺麗にお辞儀した。 背筋もいいけどお辞儀の仕方が綺麗なだけじゃない、茶道じゃない…何か武道をやってたのかな。 「役に立ちそうならよかった。それじゃあ、お疲れさま。留学先から絢を無事に帰してくれてありがとう。おやすみ」 運転席の窓を閉めて車を出す。
聞きたいことが聞けたのとはちょっと違ったけど、それより当初の目的は達成できてる気がする。 最初はたしか香澄の話題に頻出していた、名前だけの存在だった”まこと”くんに、実体が伴い、造形が伴い、存在感が伴い、今日ようやく僕なりの像が得られた。 これからそこに少しずつ違うものが追加されていったらいいな。
香澄視点 続き
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wangwill66 · 9 months
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煩憂
H:李白「棄我去者,昨日之日不可留;亂我心者,今日之日多煩憂。」煩憂自古皆有,上至君王,下至庶民,憂國憂民,范仲淹更甚「先天下之憂而憂,後天下之樂而樂。」不憂國也為情愛憂個人憂錢途。古時没有「憂鬱症」這名詞,煩憂的詩詞倒不少。天下本無煩憂,庸人自擾之。斬斷三千煩惱絲,全憑心中慧劍斬。天地煩憂自遠離,神清氣爽日日過。以解脫釋迦牟尼的所稱的三界皆苦「天上天下, 唯我獨尊,三界皆苦, 吾當安此。」吃飽太閒煩憂多,找事找活多長壽!20231006W5
網路資料:
棄我去者,昨日之日不可留;亂我心者,今日之日多煩憂。
出自唐代李白的《宣州謝脁樓餞別校書叔雲》
棄我去者,昨日之日不可留;
亂我心者,今日之日多煩憂。
長風萬里送秋雁,對此可以酣高樓。
蓬萊文章建安骨,中間小謝又清發。
俱懷逸興壯思飛,欲上青天覽明月。(覽 通:攬;明月 一作:日月)
抽刀斷水水更流,舉杯銷愁愁更愁。(銷愁 一作:消愁)
人生在世不稱意,明朝散發弄扁舟。
煩惱叢千縷,全憑慧劍揮維基文庫
詩詞名:相見歡①
作者:李煜
無言獨上西樓,
月如鉤,
寂寞梧桐深院鎖清秋。②
剪不斷,
理還亂,
是離愁,③
別是一般滋味在心頭。④
紅樓夢
「因定三生果未知,繁華浮影愧成詩。」
無端墜入紅塵夢,惹卻三千煩惱絲。
《紅樓夢》的中心思想。人世間因緣不過是三生三世的因與果,所有繁華苦難,皆是浮影。所有人無非都是來到人世,入了紅塵,做了一場煩惱如三千髮絲般多且不斷的夢。
“為天地立心,為生民立命,為往聖繼絕學,為萬世開太平。”這四句話,是北宋張載一生為學的歸宿,也是其思想的精髓所在。
釋迦牟尼:天上天下, 唯我獨尊,
三界皆苦, 吾當安此。
三界,佛教用語。三界為:欲界、色界、無色界。三界構成世間,相當於三有。有情眾生都在三界中因為煩惱的關係生死輪迴。此概念被道教借入,也稱三界二十八天。 在淨土宗曇鸞大師所著的《略論安樂淨土義》中,說明阿彌陀佛極樂世界等佛國淨土非屬三界。 梵語त्रैलोक्य還可以翻譯為三世,指時間界,如過去、現在、未來縱三世佛。 維基百科
法鼓山聖嚴法師
人生本來就是苦多樂少,我們的一生汲汲於追求消滅痛苦的方法,這都只是治標而已,非但不能得到真正的快樂,可能還會造
成更大的痛苦。主要的原因,就是不知道痛苦的發生,其實都是自己造成的。(聖嚴法師)
見慕法師:欲離苦得樂,首先要知苦。所謂:「千人千般苦,苦苦不相同。」佛法將種種苦約略歸納為八苦──生苦、老苦、病苦、死苦、愛別離苦、求不得苦、怨憎會苦、五陰熾盛苦;從古至今,上至達官顯要,下至販夫走卒,無人能倖免。然而苦從何來?苦,是起惑、造業之結果;亦即現在的苦果,是過去種的因,集合過去的善業和惡業,而有現在的善報、惡報。轉煩惱生死苦之因,得菩提涅槃樂之果。 苦,世人所厭離;樂,世人所追求。 從古至今,人們無不追求快樂、遠離痛苦。
宋.范仲淹〈謝轉禮部侍郎表〉:「進則盡憂國憂民之誠,退則處樂天樂道之分。」
岳陽樓記
作者:范仲淹 北宋
1046年10月17日本作品收錄於《范文正公集/卷07》和《古文觀止》
慶曆四年春,滕子京謫守巴陵郡。越明年,政通人和,百廢具興,乃重修岳陽樓,增其舊制,刻唐賢今人詩賦於其上;屬予作文以記之。
予觀夫巴陵勝狀,在洞庭一湖。銜遠山,吞長江,浩浩湯湯,橫無際涯;朝暉夕陰,氣象萬千;此則岳陽樓之大觀也,前人之述備矣。然則北通巫峽,南極瀟湘,遷客騷人,多會於此,覽物之情,得無異乎?
若夫霪雨霏霏,連月不開;陰風怒號,濁浪排空;日星隱曜,山岳潛形;商旅不行,檣傾楫摧;薄暮冥冥,虎嘯猿啼。登斯樓也,則有去國懷鄉,憂讒畏譏,滿目蕭然,感極而悲者矣。
至若春和景明,波瀾不驚,上下天光,一碧萬頃;沙鷗翔集,錦鱗游泳,岸芷汀蘭,郁郁青青。而或長煙一空,皓月千里,浮光躍金,靜影沉璧,漁歌互答,此樂何極。登斯樓也,則有心曠神怡,寵辱皆忘,把酒臨風,其喜洋洋者矣。
嗟夫!予嘗求古仁人之心,或異二者之為,何哉?不以物喜,不以己悲。居廟堂之高,則憂其民;處江湖之遠,則憂其君。是進亦憂,退亦憂;然則何時而樂耶?其必曰:「先天下之憂而憂,後天下之樂而樂」歟!噫!微斯人,吾誰與歸?
時六年九月十五日。
《謝轉禮部侍郎表》
臣某言伏蒙聖慈特授臣尚書禮部侍郎依前充職者楨握自天震���無地循牆弗獲致寇是虞臣中謝伏念臣布素寒坎斗管微器初糜下士之祿忽塵上聖之雉歷升近芝二且亡一書2 
班嘗預太政深自感激誰蔚因循川祖宗之謀請行故事懷社稷之計動發危言雖欲必盡其心奚能久安於位彊彰無狀誠合有誅而聖意始終天慈曠蕩尚真名於祕殿伏蒙幸於善藩犬拙云藏人言用息莫聞課最敢睹龍光伏蒙皇帝陛下雷霆霧威日月還照丞冠圖舊不次推恩擢登宗伯之曹上應文昌之緯職命如故爵數甚隆徒執讓以弗諧止服榮而為懼臣敢不夕惕二省寅恭必進則盡憂國憂民之誠退則處樂天樂道之分上酬聖遇用竭愚
酷相思·本意(鄭燮)
杏花深院紅如許,一線畫牆攔住。嘆人間咫尺千山路,不見也相思苦,便見也相思苦。
分明背地情千縷,拼惱從教訴。奈花間乍遇言詞阻,半句也何曾吐,一字也何曾吐!
根據世界衛生組織(WHO)的估計,在2015年,全球已有超過3億人受憂鬱症(Depression)及焦慮症(Anxiety disorder)所擾。另外一項研究則顯示,從1990年到2010 年,受憂鬱症影響的人口增加了 37.5%。
憂鬱症是一種精神官能症,對人事物失去興趣甚至感到悲傷,且持續一段時間,初期不容易被發現。憂鬱症和單純情緒不好是不一樣的,多數人不會再難過低潮的情緒持續太久,但憂鬱症會維持相當長的一段時間,對於人的感受、行為和思考都會造成影響,嚴重的會造成身體機能問題,影響正常的起居生活、睡眠和工作。
台灣憂鬱症防治協會提到目前診斷憂鬱症的標準共有9個症狀,其中只要有5個症狀持續超過兩週,且大部分時間都有達到標準,就要小心得到憂鬱症,症狀包括(2):
1.憂鬱情緒:快樂不起來、煩躁、鬱悶
2.興趣與喜樂減少:提不起興趣
3.體重下降(或增加)或食慾下降 (或增加)
4.失眠(或嗜睡):難入睡或整天想睡
5.精神運動性遲滯(或激動):思考動作變緩慢
6.疲累失去活力:整天想躺床、體力變差
7.無價值感或罪惡感:覺得活著沒意思、自責難過,都是負面的想法
8.無法專注、無法決斷:腦筋變鈍、矛盾猶豫、無法專心
9.反覆想到死亡,甚至有自殺意念、企圖或計畫
何謂憂鬱症?最常見的症狀如下:
1.憂鬱情緒:悶悶不樂、面露愁容、哭泣、易怒。
2.生活失去平時的興趣或樂趣、性慾減低。
3.認知及動作遲鈍:反應遲鈍、記憶力變差、無法專心、猶豫不決、生活懶散、生活及工作能力減退。
4.食慾不振、體重減輕。
5.失眠、經常凌晨醒來。
6.疲倦及四肢無力。
7.躁動不安、手足無措。
8.自責、罪惡感。
9.無助、無用、無望。
10.自殺念頭或企圖。
11.其他:酒精濫用、慮病(過度注意身體症狀,擔心患有重大身體疾病)。
12.另外憂鬱症病患,也常合併有明顯焦慮症狀,如恐慌、莫名的恐懼、心悸胸悶、頭暈及全身疼痛等。
維基百科介紹:
情緒障礙症
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情緒障礙症[1](mood disorder)又稱情感障礙(affective disorder)、心境障礙、情感性疾患,是一群精神和行為疾患的狀況[2],人的情緒障礙或紊亂是其主要的基本特徵[3][4]。在精神疾病診斷與統計手冊(DSM-5)中,是對於診斷患疾的歸類;在國際疾病與相關健康問題統計分類第十版ICD-10中,以情緒性(情感性)疾患(mood (affective) disorders)分類之。
有情緒障礙會影響以任何形式行使權力的人,其中傲慢綜合症、狂妄自大、錯亂或自戀最為突出。
分類
憂鬱性疾患
1869年描寫憂鬱性疾患的漫畫
氣候寒冷、缺少陽光的北歐、俄羅斯等地區則屬憂鬱症高發區
憂鬱性疾患,是一類以心情抑鬱為主要特點的情感障礙,包含常見的憂鬱症(抑鬱症)。
對憂鬱性疾患的診斷一般由醫師遵照DSM或ICD標準(兩者基本一致)進行,一般症狀較重的患者考慮診斷為重性抑鬱障礙,症狀較輕但是病程較長���患者則有可能是心境惡劣障礙,有明顯季節性特徵的患者可能診斷為季節性情緒失調。另外,在按此標準診斷前一般須排除其他有相似症狀的生理疾病[5]。
憂鬱性疾患屬於常見的心理疾病的一種,目前全球有超過2.64億名患者[6]。近年來憂鬱性疾患的發病年齡有提早,且發病率提高的趨勢。終身患病率在不同國家中不盡相同,有調查顯示中國的患病率約為6%[7],而日本的患病率則高達20%[5][8]。COVID-19致使全球青少年抑鬱概率翻倍增加。[9]
在積極治療的情況下憂鬱性疾患的癒後良好,但考慮到患者須承受極大痛苦並有自殺的可能,因此應儘早進行積極治療。患者在症狀緩解後仍有復發的可能,世界衛生組織建議對憂鬱性疾患的藥物治療至少持續到症狀緩解後的六個月。[10]對於發病較早、有精神病症狀或對藥物反應不良的患者則很有可能反覆發作造成不良後果[11][12]。
重性抑鬱疾患
主條目:重性抑鬱疾患
在所有憂鬱性疾患中,重性抑鬱疾患的症狀最為嚴重,其主要影響心境、認知和軀體功能。在心境方面,患者長期(兩周以上)處於極其抑鬱的情感狀態中;認知方面,患者往往看到事物的消極面,被空虛感和無價值感包圍;軀體功能方面主要有進食和睡眠障礙和無力感,頭痛等[13]。患者可能反覆想到死或者有自殺企圖,最終大約有3.4%的患者自殺[14]。
對重性抑鬱疾患的診斷主要依據的是精神疾病診斷與統計手冊中的相關標準。醫生需要先排除生理因素、藥物濫用[15],然後進行有關抑鬱程度的測試以確診[5]。
對於確診的患者,醫生往往會建議抗抑鬱藥物治療,即選擇性5-羥色胺再吸收抑制劑(SSRIs),單胺氧化酶抑制劑(MAOI)和三環類抗抑鬱藥,有時會建議患者參加心理治療[5]。對於年輕患者,例如兒童則應先考慮心理治療[16],而對於症狀特別嚴重(有嚴重自殺企圖或者緊張性患者)的患者則可能進行電痙攣療法(ECT)[17]。大多數重性抑鬱疾患的患者愈後仍能正常生活。多數患者在未治療下能康復[18]或緩解[19]。超過35%的患者仍會復發[20],而心理治療較能有效預防復發[21]。對於發病早、有精神症狀或者同時患有人格障礙的患者則預後不良,他們可能會反覆發作,自殺率也較高[11][12]。其提出情緒神經編碼的研究方法揭示了快速抗抑鬱分子的作用機制,2019年7月獲得腦神經學最高的國際凱默理獎,為非歐美人獲獎之首例,其提案成為國際醫療界廣泛認同的一個研究方向。[22]
持續性抑鬱症
主條目:持續性抑鬱症
持續性抑鬱症的症狀與重度抑鬱症的症狀相似,但是與重度抑鬱症相比,持續性抑鬱症的程度較輕,而持續時間較長[5]。持續性抑鬱症一般要持續2年才能確診,病程可以持續10年以上甚至一生[13]。心境障礙診斷方法與重度抑鬱症相同,但其診斷標準較低。對確診的患者,其治療方法與重度抑鬱症的治療方法相同[5]。持續性抑鬱症會引發重度抑鬱症,有研究顯示有79%的患者在一生中會併發重度抑鬱症,此情況亦稱為雙重抑鬱症(英語:Double depression)[13]。
季節性抑鬱症
主條目:季節性抑鬱症
季節性抑鬱症的症狀與重性抑鬱疾患相似,有時歸類為重性抑鬱疾患的一個亞型[23]。主要特點是病情會隨著季節而有所起伏,患者經常在寒冷季節發病,並在其他季節完全緩解。季節性抑鬱症隨緯度的增高而越發流行, 意即日照時間越少,發病率越高。多曬太陽可減輕病情,對這種疾病的診斷需要確認患者只在特定時節發病而在其他季節從未發病。對患者的治療與重性抑鬱障礙的治療相似,對於季節性情緒障礙,光照治療似乎特別有效。澳洲昆士蘭大學的學者於2013年繪製的「抑鬱症世界地圖」顯示,日本與陽光充足、氣候溫暖的東南亞、南歐、澳大利亞同屬抑鬱症發病率較低的地區,而氣候寒冷、缺少陽光的北歐、俄羅斯等地區則屬抑鬱症高發區[13][24]。
非典型抑鬱症
主條目:非典型抑鬱症
在一些特殊情況下,患者可能表現出明顯的抑鬱症狀,但是不符合DSM任何一種具體病症的診斷標準,這時可以作出非典型抑鬱症的診斷[25]。
雙相情緒障礙症
主條目:雙相情緒障礙症
循環性情感症
主條目:循環性情感症
在DSM-5已歸為雙相情緒障礙症之亞型
物質所致障礙
其它軀體疾病所致障礙
未明示之情緒障礙症
臨床徵象
憂鬱初期,大腦的海馬體(Hippocampus)、杏仁核(Amygdala)、以及前額葉皮質(Prefrontal Cortex)等負責情緒的區域,下達指令給自律神經,心血管、免疫及內分泌系統等,適時地回應內外在壓力(心跳及血壓稍稍上升,HF下降等)。但長期的壓力,焦慮,或憂鬱會導致身心俱疲,自律神經的交感支容易出現交感疲乏(Sympathetic Fatigue),LF絕對值甚至低於正常值,再加上副交感 HF已顯著撤退。[26]
相關條目
人格障礙
抗憂鬱劑
自我藥療
參考資料
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sadaki-ino · 1 year
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ご本尊の千手観音さまは60年に一度の甲子年に限って開帳される秘仏とか。
【寂光院】愛知県犬山市大字継鹿尾字杉ノ段121
2023年1月7日(土)
また秘仏千手観音厨子の「お前立ち」の像は南北朝時代の作とされているとのこと。
ゴルフの後に桃太郎神社さん、栗栖神社さん、寂光院さんを参拝させていただきました。
https://youtu.be/_X277IZCI8s
犬山観光情報より
【継鹿尾観音 寂光院】
●とっておきの自然やすらぎと祈り
白雉5年(654)、孝徳天皇の勅願により道昭和尚が七堂伽藍を建立されたのが始まりとされます。以来、千手観音菩薩を中心とする霊山として信仰を集めてきました。凛とした霊気あふれる山寺で、観音さまに我々のこころ深くにある「願い」を静かに祈る場所であります。
●織田信長と寂光院
寂光院の名前が一躍世に出るのは戦国時代。永禄8年(1565)には織田信長公が柴田勝家らを伴って参詣の折、清州城(当時の信長の居城)から鬼門の方角に当たる当山を鬼門鎮護の霊刹として黒印50石、山林50町歩を寄進されました。軍略的な意味合いも強かったのかも知れませんが、信長公を寂光院の中興としております。本堂脇の展望台からは犬山城に加え、小牧城や岐阜城(金華山)、遠くは伊吹山や養老山地~鈴鹿山脈までも見晴かす絶景ポイント。
●別名「尾張のもみじでら」
境内にあるモミジは約1,000本、 特に巨木が多くて葉が細かく、色鮮やかに染まるので見応えも十分です。また、秋の紅葉に劣らず、4月中旬~5月上旬の新緑・若葉の頃は実に爽やかで鮮やかです。今では秋のもみじに対して、「青もみじ」と称し、この時期にお参りになる方々が多くなりました。
#寂光院 #尾張のもみじでら #千手観音菩薩 #継鹿尾観音
【桃太郎神社】
https://youtu.be/FJ4RqXSfzUE
【栗栖神社】
https://youtu.be/TuXgkLtxTRQ
【寂光院】
https://youtu.be/_X277IZCI8s
【名古屋ヒルズゴルフ倶楽部 ローズコース】
https://youtu.be/melgq_Zpg9E
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chibiutsubo · 6 years
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下の駐車場付近の紅葉もそこそこ綺麗でした。
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bellavitacasa · 3 years
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今日の寂光院 誰もいない静けさが気持ちいい 深呼吸で気分リフレッシュ 秋の気配 この景色を直ぐに行ける事に感謝 #犬山 #寂光院 #秋 #リフレッシュ #感謝 #千手観音 #織田信長 #深呼吸 https://www.instagram.com/p/CTg0ZLRhY3d/?utm_medium=tumblr
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catdoll007 · 7 months
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はだしで乗るみたいでタイツ脱げなかったので写真だけΣp[【◎】]ω・´)
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爪楊枝じゃなかった😆愛の錫杖🦯
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toubi-zekkai · 3 years
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厚着紳士
 夜明けと共に吹き始めた強い風が乱暴に街の中を掻き回していた。猛烈な嵐到来の予感に包まれた私の心は落ち着く場所を失い、未だ薄暗い部屋の中を一人��往左往していた。  昼どきになると空の面は不気味な黒雲に覆われ、強面の風が不気味な金切り声を上げながら羊雲の群れを四方八方に追い散らしていた。今にも荒れた空が真っ二つに裂けて豪雨が降り注ぎ蒼白い雷の閃光とともに耳をつんざく雷鳴が辺りに轟きそうな気配だったが、一向に空は割れずに雨も雷も落ちて来はしなかった。半ば待ち草臥れて半ば裏切られたような心持ちとなって家を飛び出した私はあり合わせの目的地を決めると道端を歩き始めた。
 家の中に居た時分、壁の隙間から止め処なく吹き込んで来る冷たい風にやや肌寒さを身に感じていた私は念には念を押して冬の格好をして居た。私は不意に遭遇する寒さと雷鳴と人間というものが大嫌いな人間だった。しかし家の玄関を出てしばらく歩いてみると暑さを感じた。季節は四月の半ばだから当然である。だが暑さよりもなおのこと強く肌身に染みているのは季節外れの格好をして外を歩いている事への羞恥心だった。家に戻って着替えて来ようかとも考えたが、引き返すには惜しいくらいに遠くまで歩いて来てしまったし、つまらない羞恥心に左右される事も馬鹿馬鹿しく思えた。しかしやはり恥ずかしさはしつこく消えなかった。ダウンジャケットの前ボタンを外して身体の表面を涼風に晒す事も考えたが、そんな事をするのは自らの過ちを強調する様なものでなおのこと恥ずかしさが増すばかりだと考え直した。  みるみると赤い悪魔の虜にされていった私の視線は自然と自分の同族を探し始めていた。この羞恥心を少しでも和らげようと躍起になっていたのだった。併せて薄着の蛮族達に心中で盛大な罵詈雑言を浴びせ掛けることも忘れなかった。風に短いスカートの裾を靡かせている女を見れば「けしからん破廉恥だ」と心中で眉をしかめ、ポロシャツの胸襟を開いてがに股で歩いている男を見れば「軟派な山羊男め」と心中で毒づき、ランニングシャツと短パンで道をひた向きに走る男を見れば「全く君は野蛮人なのか」と心中で断罪した。蛮族達は吐いて捨てる程居るようであり、片時も絶える事無く非情の裁きを司る私の目の前に現れた。しかし一方肝心の同志眷属とは中々出逢う事が叶わなかった。私は軽薄な薄着蛮族達と擦れ違うばかりの状況に段々と言い知れぬ寂寥の感を覚え始めた。今日の空が浮かべている雲の表情と同じように目まぐるしく移り変わって行く街色の片隅にぽつ念と取り残されている季節外れの男の顔に吹き付けられる風は全く容赦がなかった。  すると暫くして遠く前方に黒っぽい影が現れた。最初はそれが何であるか判然としなかったが、姿が近付いて来るにつれて紺のロングコートを着た中年の紳士だという事が判明した。厚着紳士の顔にはその服装とは対照的に冷ややかで侮蔑的な瞳と余情を許さない厳粛な皺が幾重も刻まれていて、風に靡く薄く毛の細い頭髪がなおのこと厳しく薄ら寒い印象に氷の華を添えていた。瞬く間に私の身内を冷ややかな緊張が走り抜けていった。強張った背筋は一直線に伸びていた。私の立場は裁く側から裁かれる側へと速やかに移行していた。しかし同時にそんな私の顔にも彼と同じ冷たい眼差しと威厳ある皺がおそらくは刻まれて居たのに違いない。私の面持ちと服装に疾風の如く視線を走らせた厚着紳士の瞳に刹那ではあるが同類を見つけた時に浮かぶあの親愛の情が浮かんでいた。  かくして二人の孤独な紳士はようやく相まみえたのだった。しかし紳士たる者その感情を面に出すことをしてはいけない。笑顔を見せたり握手をする等は全くの論外だった。寂しく風音が響くだけの沈黙の内に二人は互いのぶれない矜持を盛大に讃え合い、今後ともその厚着ダンディズムが街中に蔓延る悪しき蛮習に負けずに成就する事を祈りつつ、何事も無かったかの様に颯然と擦れ違うと、そのまま振り返りもせずに各々の目指すべき場所へと歩いて行った。  名乗りもせずに風と共に去って行った厚着紳士を私は密かな心中でプルースト君と呼ぶ事にした。プルースト君と出逢い、列風に掻き消されそうだった私の矜持は不思議なくらい息を吹き返した。羞恥心の赤い炎は青く清浄な冷や水によって打ち消されたのだった。先程まで脱ぎたくて仕方のなかった恥ずかしいダウンジャケットは紳士の礼服の風格を帯び、私は風荒れる街の道を威風堂々と闊歩し始めた。  しかし道を一歩一歩進む毎に紳士の誇りやプルースト君の面影は嘘のように薄らいでいった。再び羞恥心が生い茂る雑草の如く私の清らかな魂の庭園を脅かし始めるのに大して時間は必要無かった。気が付かないうちに恥ずかしい事だが私はこの不自然な恰好が何とか自然に見える方法を思案し始めていた。  例えば私が熱帯や南国から日本に遣って来て間もない異国人だという設定はどうだろうか?温かい国から訪れた彼らにとっては日本の春の気候ですら寒く感じるはずだろう。当然彼らは冬の格好をして外を出歩き、彼らを見る人々も「ああ彼らは暑い国の人々だからまだ寒く感じるのだな」と自然に思うに違いない。しかし私の風貌はどう見ても平たい顔の日本人であり、彼らの顔に深々と刻まれて居る野蛮な太陽の燃える面影は何処にも見出す事が出来無かった。それよりも風邪を引いて高熱を出して震えている病人を装った方が良いだろう。悪寒に襲われながらも近くはない病院へと歩いて行かねばならぬ、重苦を肩に背負った病の人を演じれば、見る人は冬の格好を嘲笑うどころか同情と憐憫の眼差しで私を見つめる事に違いない。こんな事ならばマスクを持ってくれば良かったが、マスク一つを取りに帰るには果てしなく遠い場所まで歩いて来てしまった。マスクに意識が囚われると、マスクをしている街の人間の多さに気付かされた。しかし彼らは半袖のシャツにマスクをしていたりスカートを履きながらマスクをしている。一体彼らは何の為にマスクをしているのか理解に苦しんだ。  暫くすると、私は重篤な病の暗い影が差した紳士見習いの面持ちをして難渋そうに道を歩いていた。それは紳士である事と羞恥心を軽減する事の折衷策、悪く言うならば私は自分を誤魔化し始めたのだった。しかしその効果は大きいらしく、擦れ違う人々は皆同情と憐憫の眼差しで私の顔を伺っているのが何となく察せられた。しかしかの人々は安易な慰めを拒絶する紳士の矜持をも察したらしく私に声を掛けて来る野暮な人間は誰一人として居なかった。ただ、紐に繋がれて散歩をしている小さな犬がやたらと私に向かって吠えて来たが、所詮は犬や猫、獣の類にこの病の暗い影が差した厚着紳士の美学が理解出来るはずも無かった。私は子犬に吠えられ背中や腋に大量の汗を掻きながらも未だ誇りを失わずに道を歩いていた。  しかし度々通行人達の服装を目にするにつれて、段々と私は自分自身が自分で予想していたよりは少数部族では無いという事に気が付き始めていた。歴然とした厚着紳士は皆無だったが、私のようにダウンを着た厚着紳士見習い程度であったら見つける事もそう難しくはなかった。恥ずかしさが少しずつ消えて無くなると抑え込んでいた暑さが急激に肌を熱し始めた。視線が四方に落ち着かなくなった私は頻りと人の視線を遮る物陰を探し始めた。  泳ぐ視線がようやく道の傍らに置かれた自動販売機を捉えると、駆けるように近付いて行ってその狭い陰に身を隠した。恐る恐る背後を振り返り誰か人が歩いて来ないかを確認すると運悪く背後から腰の曲がった老婆が強風の中難渋そうに手押し車を押して歩いて来るのが見えた。私は老婆の間の悪さに苛立ちを隠せなかったが、幸いな事に老婆の背後には人影が見られなかった。あの老婆さえ遣り過ごしてしまえばここは人々の視線から完全な死角となる事が予測出来たのだった。しかしこのまま微動だにせず自動販売機の陰に長い間身を隠しているのは怪し過ぎるという思いに駆られて、渋々と歩み出て自動販売機の目の前に仁王立ちになると私は腕を組んで眉間に深い皺を作った。買うべきジュースを真剣に吟味選抜している紳士の厳粛な態度を装ったのだった。  しかし風はなお強く老婆の手押し車は遅々として進まなかった。自動販売機と私の間の空間はそこだけ時間が止まっているかのようだった。私は緊張に強いられる沈黙の重さに耐えきれず、渋々ポケットから財布を取り出し、小銭を掴んで自動販売機の硬貨投入口に滑り込ませた。買いたくもない飲み物を選ばさられている不条理や屈辱感に最初は腹立たしかった私もケース内に陳列された色取り取りのジュース缶を目の前にしているうちに段々と本当にジュースを飲みたくなって来てその行き場の無い怒りは早くボタンを押してジュースを手に入れたいというもどかしさへと移り変わっていった。しかし強風に負けじとか細い腕二つで精一杯手押し車を押して何とか歩いている老婆を責める事は器量甚大懐深き紳士が為す所業では無い。そもそも恨むべきはこの強烈な風を吹かせている天だと考えた私は空を見上げると恨めしい視線を天に投げ掛けた。  ようやく老婆の足音とともに手押し車が地面を擦る音が背中に迫った時、私は満を持して自動販売機のボタンを押した。ジュースの落下する音と共に私はペットボトルに入ったメロンソーダを手に入れた。ダウンの中で汗を掻き火照った身体にメロンソーダの冷たさが手の平を通して心地よく伝わった。暫くの間余韻に浸っていると老婆の手押し車が私の横に現れ、みるみると通り過ぎて行った。遂に機は熟したのだった。私は再び自動販売機の物陰に身を隠すと念のため背後を振り返り人の姿が見えない事を確認した。誰も居ないことが解ると急ぐ指先でダウンジャケットのボタンを一つまた一つと外していった。最後に上から下へとファスナーが降ろされると、うっとりとする様な涼しい風が開けた中のシャツを通して素肌へと心地良く伝わって来た。涼しさと開放感に浸りながら手にしたメロンソーダを飲んで喉の渇きを潤した私は何事も無かったかのように再び道を歩き始めた。  坂口安吾はかの著名な堕落論の中で昨日の英雄も今日では闇屋になり貞淑な未亡人も娼婦になるというような意味の事を言っていたが、先程まで厚着紳士見習いだった私は破廉恥な軟派山羊男に成り下がってしまった。こんな格好をプルースト君が見たらさぞかし軽蔑の眼差しで私を見詰める事に違いない。たどり着いた駅のホームの長椅子に腰をかけて、何だか自身がどうしようもなく汚れてしまったような心持ちになった私は暗く深く沈み込んでいた。膝の上に置かれた飲みかけのメロンソーダも言い知れぬ哀愁を帯びているようだった。胸を内を駆け巡り始めた耐えられぬ想いの脱出口を求めるように視線を駅の窓硝子越しに垣間見える空に送ると遠方に高く聳え立つ白い煙突塔が見えた。煙突の先端から濛々と吐き出される排煙が恐ろしい程の速さで荒れた空の彼岸へと流されている。  耐えられぬ思いが胸の内を駆け駅の窓硝子越しに見える空に視線を遣ると遠方に聳える白い煙突塔から濛々と吐き出されている排煙が恐ろしい速度で空の彼岸へと流されている様子が見えた。目には見えない風に流されて行く灰色に汚れた煙に対して、黒い雲に覆われた空の中に浮かぶ白い煙突塔は普段青い空の中で見ている雄姿よりもなおのこと白く純潔に光り輝いて見えた。何とも言えぬ気持の昂ぶりを覚えた私は思わずメロンソーダを傍らに除けた。ダウンジャケットの前ボタンに右手を掛けた。しかしすぐにまた思い直すと右手の位置を元の場所に戻した。そうして幾度となく決意と逡巡の間を行き来している間に段々と駅のホーム内には人間が溢れ始めた。強風の影響なのか電車は暫く駅に来ないようだった。  すると駅の階段を昇って来る黒い影があった。その物々しく重厚な風貌は軽薄に薄着を纏った人間の群れの中でひと際異彩を放っている。プルースト君だった。依然として彼は分厚いロングコートに厳しく身を包み込み、冷ややかな面持ちで堂々と駅のホームを歩いていたが、薄い頭髪と額には薄っすらと汗が浮かび、幅広い額を包むその辛苦の結晶は天井の蛍光灯に照らされて燦燦と四方八方に輝きを放っていた。私にはそれが不撓不屈の王者だけが戴く栄光の冠に見えた。未だ変わらずプルースト君は厚着紳士で在り続けていた。  私は彼の胸中に宿る鋼鉄の信念に感激を覚えると共に、それとは対照的に驚く程簡単に退転してしまった自分自身の脆弱な信念を恥じた。俯いて視線をホームの床に敷き詰められた正方形タイルの繋ぎ目の暗い溝へと落とした。この惨めな敗残の姿が彼の冷たい視線に晒される事を恐れ心臓から足の指の先までが慄き震えていた。しかしそんな事は露とも知らぬプルースト君はゆっくりとこちらへ歩いて来る。迫り来る脅威に戦慄した私は慌ててダウンのファスナーを下から上へと引き上げた。紳士の体裁を整えようと手先を闇雲に動かした。途中ダウンの布地が間に挟まって中々ファスナーが上がらない問題が浮上したものの、結局は何とかファスナーを上まで閉め切った。続けてボタンを嵌め終えると辛うじて私は張りぼてだがあの厚着紳士見習いの姿へと復活する事に成功した。  膝の上に置いてあった哀愁のメロンソーダも何となく恥ずかしく邪魔に思えて、隠してしまおうとダウンのポケットの中へとペットボトルを仕舞い込んでいた時、華麗颯爽とロングコートの紺色の裾端が視界の真横に映り込んだ。思わず私は顔を見上げた。顔を上方に上げ過ぎた私は天井の蛍光灯の光を直接見てしまった。眩んだ目を閉じて直ぐにまた開くとプルースト君が真横に厳然と仁王立ちしていた。汗ばんだ蒼白い顔は白い光に包まれてなおのこと白く、紺のコートに包まれた首から上は先程窓から垣間見えた純潔の白い塔そのものだった。神々しくさえあるその立ち姿に畏敬の念を覚え始めた私の横で微塵も表情を崩さないプルースト君は優雅な動作で座席に腰を降ろすとロダンの考える人の様に拳を作った左手に顎を乗せて対岸のホームに、いやおそらくはその先の彼方にある白い塔にじっと厳しい視線を注ぎ始めた。私は期待を裏切らない彼の態度及び所作に感服感激していたが、一方でいつ自分の棄教退転が彼に見破られるかと気が気ではなくダウンジャケットの中は冷や汗で夥しく濡れ湿っていた。  プルースト君が真実の威厳に輝けば輝く程に、その冷たい眼差しの一撃が私を跡形もなく打ち砕くであろう事は否応無しに予想出来る事だった。一刻も早く電車が来て欲しかったが、依然として電車は暫くこの駅にはやって来そうになかった。緊張と沈黙を強いられる時間が二人の座る長椅子周辺を包み込み、その異様な空気を察してか今ではホーム中に人が溢れ返っているのにも関わらず私とプルースト君の周りには誰一人近寄っては来なかった。群衆の騒めきでホーム内は煩いはずなのに不思議と彼らの出す雑音は聞こえなかった。蟻のように蠢く彼らの姿も全く目に入らず、沈黙の静寂の中で私はただプルースト君の一挙手に全神経を注いでいた。  すると不意にプルースト君が私の座る右斜め前に視線を落とした。突然の動きに驚いて気が動転しつつも私も追ってその視線の先に目を遣った。プルースト君は私のダウンジャケットのポケットからはみ出しているメロンソーダの頭部を見ていた。私は愕然たる思いに駆られた。しかし今やどうする事も出来ない。怜悧な思考力と電光石火の直観力を併せ持つ彼ならばすぐにそれが棄教退転の証拠だという事に気が付くだろう。私は半ば観念して恐る恐るプルースト君の横顔を伺った。悪い予感は良く当たると云う。案の定プルースト君の蒼白い顔の口元には哀れみにも似た冷笑が至極鮮明に浮かんでいた。  私はというとそれからもう身を固く縮めて頑なに瞼を閉じる事しか出来なかった。遂に私が厚着紳士道から転がり落ちて軟派な薄着蛮族の一員と成り下がった事を見破られてしまった。卑怯千万な棄教退転者という消す事の出来ない烙印を隣に座る厳然たる厚着紳士に押されてしまった。  白い煙突塔から吐き出された排煙は永久に恥辱の空を漂い続けるのだ。あの笑みはかつて一心同体であった純白の塔から汚れてしまった灰色の煙へと送られた悲しみを押し隠した訣別の笑みだったのだろう。私は彼の隣でこのまま電車が来るのを待ち続ける事が耐えられなくなって来た。私にはプルースト君と同じ電車に乗る資格はもう既に失われているのだった。今すぐにでも立ち上がってそのまま逃げるように駅を出て、家に帰ってポップコーンでも焼け食いしよう、そうして全てを忘却の風に流してしまおう。そう思っていた矢先、隣のプルースト君が何やら慌ただしく動いている気配が伝わってきた。私は薄目を開いた。プルースト君はロングコートのポケットの中から何かを取り出そうとしていた。メロンソーダだった。驚きを隠せない私を尻目にプルースト君は渇き飢えた飼い豚のようにその薄緑色の炭酸ジュースを勢い良く飲み始めた。みるみるとペットボトルの中のメロンソーダが半分以上が無くなった。するとプルースト君は下品極まりないげっぷを数回したかと思うと「暑い、いや暑いなあ」と一人小さく呟いてコートのボタンをそそくさと外し始めた。瞬く間にコートの前門は解放された。中から汚い染みの沢山付着した白いシャツとその白布に包まれただらしのない太鼓腹が堂々と姿を現した。  私は暫くの間呆気に取られていた。しかしすぐに憤然と立ち上がった。長椅子に座ってメロンソーダを飲むかつてプルースト君と言われた汚物を背にしてホームの反対方向へ歩き始めた。出来る限りあの醜悪な棄教退転者から遠く離れたかった。暫く歩いていると、擦れ違う人々の怪訝そうな視線を感じた。自分の顔に哀れな裏切り者に対する軽侮の冷笑が浮かんでいる事に私は気が付いた。  ホームの端に辿り着くと私は視線をホームの対岸にその先の彼方にある白い塔へと注いた。黒雲に覆われた白い塔の陰には在りし日のプルースト君の面影がぼんやりとちらついた。しかしすぐにまた消えて無くなった。暫くすると白い塔さえも風に流れて来た黒雲に掻き消されてしまった。四角い窓枠からは何も見え無くなり、軽薄な人間達の姿と騒めきが壁に包まれたホーム中に充満していった。  言い知れぬ虚無と寂寥が肌身に沁みて私は静かに両の瞳を閉じた。周囲の雑音と共に色々な想念が目まぐるしく心中を通り過ぎて行った。プルースト君の事、厚着紳士で在り続けるという事、メロンソーダ、白い塔…、プルースト君の事。凡そ全てが雲や煙となって無辺の彼方へと押し流されて行った。真夜中と見紛う暗黒に私の全視界は覆われた。  間もなくすると闇の天頂に薄っすらと白い点が浮かんだ。最初は小さく朧げに白く映るだけだった点は徐々に膨張し始めた。同時に目も眩む程に光り輝き始めた。終いには白銀の光を溢れんばかりに湛えた満月並みの大円となった。実際に光は丸い稜線から溢れ始めて、激しい滝のように闇の下へと流れ落ち始めた。天頂から底辺へと一直線に落下する直瀑の白銀滝は段々と野太くなった。反対に大円は徐々に縮小していって再び小さな点へと戻っていった。更にはその点すらも闇に消えて、視界から見え無くなった直後、不意に全ての動きが止まった。  流れ落ちていた白銀滝の軌跡はそのままの光と形に凝固して、寂滅の真空に荘厳な光の巨塔が顕現した。その美々しく神々しい立ち姿に私は息をする事さえも忘れて見入った。最初は塔全体が一つの光源体の様に見えたが、よく目を凝らすと恐ろしく小さい光の結晶が高速で点滅していて、そうした極小微細の光片が寄り集まって一本の巨塔を形成しているのだという事が解った。その光の源が何なのかは判別出来なかったが、それよりも光に隙間無く埋められている塔の外壁の内で唯一不自然に切り取られている黒い正方形の個所がある事が気になった。塔の頂付近にその不可解な切り取り口はあった。怪しみながら私はその内側にじっと視線を集中させた。  徐々に瞳が慣れて来ると暗闇の中に茫漠とした人影の様なものが見え始めた。どうやら黒い正方形は窓枠である事が解った。しかしそれ以上は如何程目を凝らしても人影の相貌は明確にならなかった。ただ私の方を見ているらしい彼が恐ろしい程までに厚着している事だけは解った。あれは幻の厚着紳士なのか。思わず私は手を振ろうとした。しかし紳士という言葉の響きが振りかけた手を虚しく元の位置へと返した。  すると間も無く塔の根本周辺が波を打って揺らぎ始めた。下方からから少しずつ光の塔は崩れて霧散しだした。朦朧と四方へ流れ出した光群は丸く可愛い尻を光らせて夜の河を渡っていく銀蛍のように闇の彼方此方へと思い思いに飛んで行った。瞬く間に百千幾万の光片が暗闇一面を覆い尽くした。  冬の夜空に散りばめられた銀星のように暗闇の満天に煌く光の屑は各々少しずつその輝きと大きさを拡大させていった。間もなく見つめて居られ無い程に白く眩しくなった。耐えられ無くなった私は思わず目を見開いた。するとまた今度は天井の白い蛍光灯の眩しさが瞳を焼いた。いつの間にか自分の顔が斜め上を向いていた事に気が付いた。顔を元の位置に戻すと、焼き付いた白光が徐々に色褪せていった。依然として変わらぬホームの光景と。周囲の雑多なざわめきが目と耳に戻ると、依然として黒雲に覆い隠されている窓枠が目に付いた。すぐにまた私は目を閉じた。暗闇の中をを凝視してつい先程まで輝いていた光の面影を探してみたが、瞼の裏にはただ沈黙が広がるばかりだった。  しかし光り輝く巨塔の幻影は孤高の紳士たる決意を新たに芽生えさせた。私の心中は言い知れない高揚に包まれ始めた。是が非でも守らなければならない厚着矜持信念の実像をこの両の瞳で見た気がした。すると周囲の雑音も不思議と耳に心地よく聞こえ始めた。  『この者達があの神聖な光を見る事は決して無い事だろう。あの光は選ばれた孤高の厚着紳士だけが垣間見る事の出来る祝福の光なのだ。光の巨塔の窓に微かに垣間見えたあの人影はおそらく未来の自分だったのだろう。完全に厚着紳士と化した私が現在の中途半端な私に道を反れることの無いように暗示訓戒していたに違いない。しかしもはや誰に言われなくても私が道を踏み外す事は無い。私の上着のボタンが開かれる事はもう決して無い。あの白い光は私の脳裏に深く焼き付いた』  高揚感は体中の血を上気させて段々と私は喉の渇きを感じ始めた。するとポケットから頭を出したメロンソーダが目に付いた。再び私の心は激しく揺れ動き始めた。  一度は目を逸らし二度目も逸らした。三度目になると私はメロンソーダを凝視していた。しかし迷いを振り払うかの様に視線を逸らすとまたすぐに前を向いた。四度目、私はメロンソーダを手に持っていた。三分の二以上減っていて非常に軽い。しかしまだ三分の一弱は残っている。ペットボトルの底の方で妖しく光る液体の薄緑色は喉の渇き切った私の瞳に避け難く魅惑的に映った。  まあ、喉を潤すぐらいは良いだろう、ダウンの前を開かない限りは。私はそう自分に言い聞かせるとペットボトルの口を開けた。間を置かないで一息にメロンソーダを飲み干した。  飲みかけのメロンソーダは炭酸が抜けきってしつこい程に甘く、更には生ぬるかった。それは紛れも無く堕落の味だった。腐った果実の味だった。私は何とも言えない苦い気持ちと後悔、更には自己嫌悪の念を覚えて早くこの嫌な味を忘れようと盛んに努めた。しかし舌の粘膜に絡み付いた甘さはなかなか消える事が無かった。私はどうしようも無く苛立った。すると突然隣に黒く長い影が映った。プルースト君だった。不意の再再会に思考が停止した私は手に持った空のメロンソーダを隠す事も出来ず、ただ茫然と突っ立っていたが、すぐに自分が手に握るそれがとても恥ずかしい物のように思えて来てメロンソーダを慌ててポケットの中に隠した。しかしプルースト君は私の隠蔽工作を見逃しては居ないようだった。すぐに自分のポケットから飲みかけのメロンソーダを取り出すとプルースト君は旨そうに大きな音を立ててソーダを飲み干した。乾いたゲップの音の響きが消える間もなく、透明になったペットボトルの蓋を華麗優雅な手捌きで閉めるとプルースト君はゆっくりとこちらに視線を向けた。その瞳に浮かんでいたのは紛れもなく同類を見つけた時に浮かぶあの親愛の情だった。  間もなくしてようやく電車が駅にやって来た。プルースト君と私は仲良く同じ車両に乗った。駅に溢れていた乗客達が逃げ場無く鮨詰めにされて居る狭い車内は冷房もまだ付いておらず蒸し暑かった。夥しい汗で額や脇を濡らしたプルースト君の隣で私はゆっくりとダウンのボタンに手を掛けた。視界の端に白い塔の残映が素早く流れ去っていった。
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kachoushi · 1 year
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各地句会報
花鳥誌 令和5年4月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和5年1月4日 立待俳句会 坊城俊樹選 特選句
年賀状投函ポスト音を吐く 世詩明 大冬木小枝の先まで空を突く 同 猫寺の低き山門虎落笛 ただし 福の神扱ひされし嫁が君 同 石清水恙の胸を濡らしつつ 輝一 阿弥陀様お顔に笑みや秋思かな 同 去年今年有縁ばかりの世なりけり 洋子 潮騒の聞こゆる壺に水仙花 同 羽根をつく確かなる音耳に老ゆ 同 時々は絵も横文字も初日記 清女 初電話友の恙を知ることに 同 暁に湯気立ち上がる冬の海 誠 大寒のポインセチアに紅のあり 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月5日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
初暦いかなる日々が待ち受けん 喜代子 おさんどん合間に仰ぐ初御空 由季子 病院の灯消えぬや去年今年 同 雪掻に追はれつつ待つ帰り人 さとみ 海鳴りや岬の水仙なだれ咲く 都
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月7日 零の会 坊城俊樹選 特選句
あをき空うつし蓮の枯れつくす 和子 蓮枯れて底の地獄を明るめる 軽象 枯はちす揺り起こすなり鐘一打 三郎 破れ蓮の黄金の茎の高さかな 炳子 枯蓮の無言の群と相対し 秋尚 弁天の膝あたたかき初雀 慶月 面差しの傾城名残青木の実 順子 男坂淑気を少し漂はせ 三郎 恵方道四方より坂の集まり来 千種 葬儀屋の注連縄なんとなく細い いづみ いかやきのにほひに梅の固くあり 要 枯蓮のやり尽くしたる眠りかな 佑天
岡田順子選 特選句
枯はちす揺り起こすなり鐘一打 三郎 鷗来よ枯蓮の幾何模様へと 俊樹 そのあとは鳶が清めて松納 いづみ 毛帽子にまつ毛の影のよく動く 和子 北吹けりもう息をせぬ蓮たちへ 俊樹 蓮枯れて水面一切の蒼穹 和子 人日の上野で売られゆくピエロ 三郎 石段に散り敷く夜半の寒椿 悠紀子 恵方道四方より坂の集まり来 千種 よろづやに味噌づけ買うて寒に入る 眞理子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月7日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
双六やころころ変る恋心 朝子 下の子が泣いて双六終りけり 孝子 短日は数が減るかもニュートリノ 勝利 歌留多とり式部小町も宙に舞ひ 孝子 小春日や生ぬるき血の全身に 睦子 骨と皮だけの手で振る賭双六 愛 京の町足踏み続く絵双六 散太郎 粛々と巨人に挑む年始 美穂 来世から賽子を振る絵双六 愛
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月9日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
双六の終着駅や江戸上り 時江 たかいたかいせがまれて解く懐手 昭子 てのひらの白きムースの初鏡 三四郎 火消壺母のま白き割烹着 昭子 木の葉髪何を聴くにも左耳 世詩明 街筋の青きネオンや月冱てる 一枝 姿見に餅花入れて呉服店 昭子 はじき出す男の子女子のよろけ独楽 時江 一盞の屠蘇に機嫌の下戸男 みす枝 初詣寺も神社も磴ばかり 信子 御降や傘を傾げてご挨拶 みす枝
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月9日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
初明かり故山の闇を払ひゆく かづを 万蕾にある待春の息吹かな 々 小寒や薄く飛び出る鉋屑 泰俊 勝独楽になると信じて紐を巻く 々 仏の前燭火ゆらすは隙間風 匠 筆箱にニトロとんぷく老の春 清女 二千五百歩小さな散歩寒に入る 天空
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月10日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
鋳鉄製スチームの音古館 宇太郎 始業の蒸気雪雲を押しあげて 美智子 溶けてなほ我にだけ見ゆる時雨虹 佐代子 失ふはその身ひとつや冬の蜂 都 寒灯下遺影に深く法華経 悦子 大木を伐られ梟去つたらし 史子 枯木立通り抜けたる昼の月 益恵
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月10日 萩花鳥会
人生の余白少なし冬の薔薇 祐子 裸木が絵になる空を展げゆく 健雄 山茶花や気は寒々と花紅く 俊文 守らねばならぬ家族や去年今年 ゆかり 一椀に一年の幸雑煮膳 陽子 故郷で一つ歳とる雑煮かな 恒雄 昼食後一枚脱いで四温かな 吉之 亡き人に届きし賀状壇供へ 明子 逆上がり笑顔満面四温晴 美惠子
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令和5年1月13日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
初生けを祝成人と命名す みえこ 薪焚の初風呂済ませ閉店す 令子 御降りに濡れても訪ひぬ夫の墓 同 初詣光􄽄現れて良き日かな あけみ 注連飾父の車の隅に揺れ 裕子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月14日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
閼伽桶の家紋色濃し寒に入る 多美女 養生の大樹潤す寒の雨 百合子 勤行の稚の真似事初笑ひ 幸風 いつもならスルーすること初笑 秋尚 臘梅に鼻近づけてとしあつ師 三無 寒椿堂裏の闇明るうす 多美女 多摩堤地蔵三体春立ちぬ 教子 均しある土の膨らみ春隣 百合子 掃初の黒御影拭き年尾句碑 文英 悴んで顔を小さく洗ひけり 美枝子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月15日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
飛石を跳ね蝋梅の香に酔うて 炳子 木道の先の四阿雪女郎 幸風 その奥に紅梅の蕊凜として ます江 黒き羽根なほ黒々と寒鴉 貴薫 不器用に解けてゆきぬ寒椿 千種 入れとこそ深き落葉へ開く鉄扉 同 谷あひに弥生の名残り水仙花 炳子 椿落つ樹下に余白のまだありて 三無 木道まで香り乱れて野水仙 芙佐子 寒禽の群を拒まぬ一樹かな 久子
栗林圭魚選 特選句
山間の埋れ火のごと福寿草 斉 空昏く寒林よぎる鳥の影 芙佐子 厚き雲突き上ぐ白き冬木の芽 秋尚 福寿草労り合ひて睦み合ひ 三無 そのかみの住居跡とや蝶凍つる 炳子 水仙の香を乱しつつ通り抜け 白陶 入れとこそ深き落葉へ開く鉄扉 千種 竹林の潤み初めたる小正月 要 椿落つ樹下に余白のまだありて 三無 せせらぎのどこか寂しげ寒の水 白陶
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月16日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
若きより板に付きたる懐手 雪 北窓を塞ぎさながら蟄居の間 同 昨夜の酔ひ少し残るや初鏡 かづを 九頭竜や寒晴の綺羅流しゆく 同 除夜の鐘八つ目を確と拝し撞く 玲子 初明り心の闇を照らされし 同 一点の客観写生冬の句座 さよ子 翳す手に歴史を語る古火鉢 同 笑つても泣いても卒寿初鏡 清女 餅花の一枝華やぐ奥座敷 千代子 年賀状手描の墨の匂ひたつ 真喜栄 若水を汲むほどに増す顔のしわ 同 裸木村は大きな家ばかり 世詩明 春炬燵むかし昔しの恋敵 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月18日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
水仙や悲恋の話知りしより 啓子 堂裏の菰に守られ寒牡丹 泰俊 餅花やなにやらうれしその揺れも 令子 左義長の遥けし炎眼裏に 淳子 寅さんを追つて蛾次郎逝きし冬 清女 飾り焚く顔てらてらの氏子衆 希子 御慶のぶ一人一人に畏みて 和子 眉を一寸引きたるのみの初鏡 雪 初髪をぶつきら棒に結ぶ女 同 束の間の雪夜の恋に雪女 同 マスクして睫毛に化粧する女 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月20日 さきたま花鳥句会
凍星や夜行列車の窓あかり 月惑 葉牡丹や鋳物の町の鉄の鉢 一馬 どら猫のメタボ笑ふか嫁が君 八草 小米雪運河の小船音もなく 裕章 老木に力瘤あり春隣 紀花 竜神の供物三個の寒卵 ふゆ子 医学書で探す病名寒燈下 とし江 おごそかに雅楽流るる初詣 ふじ穂 人のなき峡の華やぐ柿すだれ 康子 小正月気の向くままの古本屋 恵美子 寒梅や万葉がなのやうに散り 良江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月21日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
福引の種考へてゐるところ 雪 枯れ行くは枯れ行く庭の景として 同 懐手して身も蓋も無き話 同 思ひ遣り言葉に出さぬ懐手 昭上嶋子 言ひかねてただ白息を吐くばかり 同 きさらぎや花屋はどこも濡れてをり 同 父の碑を七十余抱き山眠る 一涓 藪入りを明日に富山の薬売り 同 人日や名酒の瓶を詫びて捨つ 同 一陣の風に風花逃げ廻る 世詩明 安座して児の母となる毛糸編む 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月22日 月例会 坊城俊樹選 特選句
舞ひ上がる金子銀子や落葉掻 千種 春近し湯気立つやうな土竜塚 昌文 寒林や父子のだるまさんころんだ 慶月 紅梅のどこより早く憲兵碑 同 冬帝に囲まれてゐる小さき者 いづみ 出征を見送る母子像の冷え 昌文 青銅となりて偉人は寒天に 千種 火の雨を知る大寒の展示館 いづみ
岡田順子選 特選句
狛犬の阿形の息を白しとも 俊樹 勾玉のほどけ巴に冬の鯉 千種 ただ黒し桜ばかりの寒林は 同 ボサノバを流し半熟寒卵 慶月 石に苔泥に苔あり日脚伸ぶ 和子 息白く母子像見てひとりきり 俊樹 寒林の一木たるを旨とせり 晶文
栗林圭魚選 特選句
冬の雲弛びそめたり大鳥居 要 朽木より梅百蕾の薄明り 昌文 ボサノバを流し半熟寒卵 慶月 能舞台脇座に現るる三十三才 幸風 日向ぼこして魂は五間先 俊樹 霜柱崩れ鳥居の崩れざる 同 青銅となりて偉人は寒天に 千種
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月 九州花鳥会 坊城俊樹選 特選句
大枯野太古は大海だつたかも ひとみ 初景色常の神木よそよそし 美穂 椰子の実のほろほろ落ちて神の留守 孝子 緋あけ色の空へ音ひき初電車 美穂 嫁が君大黒様の手紙持ち ひとみ おんちよろちよろと声明や嫁が君 睦古賀子 歌留多取対戦するは恋敵 睦吉田子 水仙はシルクロードの香を含み ひとみ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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sadaki-ino · 1 year
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本尊の千手観音さまは60年に一度の甲子年に限って開帳される秘仏とか。 【寂光院】愛知県犬山市大字継鹿尾字杉ノ段121 2023年1月7日(土) また秘仏千手観音厨子の「お前立ち」の像は南北朝時代の作とされているとのこと。 ゴルフの後に桃太郎神社さん、栗栖神社さん、寂光院さんを参拝させていただきました。 https://youtu.be/_X277IZCI8s 犬山観光情報より 【継鹿尾観音 寂光院】 ●とっておきの自然やすらぎと祈り 白雉5年(654)、孝徳天皇の勅願により道昭和尚が七堂伽藍を建立されたのが始まりとされます。以来、千手観音菩薩を中心とする霊山として信仰を集めてきました。凛とした霊気あふれる山寺で、観音さまに我々のこころ深くにある「願い」を静かに祈る場所であります。 ●織田信長と寂光院 寂光院の名前が一躍世に出るのは戦国時代。永禄8年(1565)には織田信長公が柴田勝家らを伴って参詣の折、清州城(当時の信長の居城)から鬼門の方角に当たる当山を鬼門鎮護の霊刹として黒印50石、山林50町歩を寄進されました。軍略的な意味合いも強かったのかも知れませんが、信長公を寂光院の中興としております。本堂脇の展望台からは犬山城に加え、小牧城や岐阜城(金華山)、遠くは伊吹山や養老山地~鈴鹿山脈までも見晴かす絶景ポイント。 ●別名「尾張のもみじでら」 境内にあるモミジは約1,000本、 特に巨木が多くて葉が細かく、色鮮やかに染まるので見応えも十分です。また、秋の紅葉に劣らず、4月中旬~5月上旬の新緑・若葉の頃は実に爽やかで鮮やかです。今では秋のもみじに対して、「青もみじ」と称し、この時期にお参りになる方々が多くなりました。 #寂光院 #尾張のもみじでら #千手観音菩薩 #継鹿尾観音 【桃太郎神社】 https://youtu.be/FJ4RqXSfzUE 【栗栖神社】 https://youtu.be/TuXgkLtxTRQ 【寂光院】 https://youtu.be/_X277IZCI8s 【名古屋ヒルズゴルフ倶楽部 ローズコース】 https://youtu.be/melgq_Zpg9E (寂光院 (犬山市)) https://www.instagram.com/p/CnJuEF-vJAF/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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furrytyphoonchaos · 3 years
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人生中的许多大哥   作者:陈小天
事实证明,在高中,特别是像我们这种规模不大的破高中,异常装逼地竖起一座住宿楼市极端纱布的行为。 魔都某高的住宿楼被恐怖的两位大哥控制着。这座高达6层的伟岸大楼总共居住着三位学生,大哥一号、大哥二号以及大哥一号的女朋友。 我读高中那会,校风还非常淳朴,据说两位大哥入学时因为都是住校生双双结拜。结拜的高中生和普通的高中生自然很不一样,根据当时普遍的社会剧情设定,两个普通人在结拜的那一刻便等于选择了黑色的道路,所以他们成了大哥。 当然,当大哥不仅需要仪式,在平时也要以德服人。什么是德,德就是打架斗殴。高中生激昂澎湃,随时都可以因为我看你长的像我老婆的前男友之类的牛角尖抛头颅洒热血,相当轻易地就能发生学校与学校之间的摩擦。大哥一号经常振臂一挥,一句“戳那妈逼”,领着浩浩荡荡学弟们冲锋陷阵,然后被不知从哪飞来的有时是未开封的可乐罐,有时是只剩半块的蜂窝煤撂倒。通常大哥二号会抱起大哥一号的尸体,戟指敌方,大骂“戳那阿姨”,声泪俱下,我方群情激奋,士气大涨。 许多年以后,大哥一号也是如此振臂一呼“我开怪了”,一个冲锋甩开大部队。身后一群牛头人兽人亡灵巨魔咿咿呀呀在大哥一号身后猛追,待追到时发现大哥一号已经横尸当场,TS中大哥二号震耳欲聋——“治疗我操你阿姨!” 高中那段时间正直网络普及,许多如今看来很火星的笑话在当时流传甚广。住校生洗澡并不方便,为了把洗头的时间节省下来去网吧,两位大哥纷纷理了光头。相传大哥一号在网吧被一红名爆了装备,忧郁万分,切出游戏看BBS。也不知哪根筋搭错了,突然抚这自己的脑门叹道,贫僧法号梦遗。身边的大哥二号便开怀大笑,梦遗大师伸出手摩擦着大哥二号的脑门,说高潮师弟何故痴笑不止。 后来他们就被称为梦遗大哥和高潮大哥了。 梦遗大哥自称梦遗是非常牵强的,因为梦遗大哥基本无货可遗,梦遗大哥的女朋友就在住宿楼住。一栋只有3人的6层住宿楼,所以梦遗大哥和梦遗大嫂每晚互相串门联络感情进行一些群众们喜闻乐见的娱乐活动是很符合情理的,学校也不可能因为这只有三个人的住宿楼请一个专门的宿管,这不符合学校财务处的思维方式。高潮大哥倒的确经常高潮,不过因为没有住校的女朋友的关系,一直都是独自高潮。每当因为隔音较差的问题听到地动山摇海枯石烂的时候,高潮大哥就会很忧伤,忧伤后开始高潮。 久而久之,高潮大哥总是有意见的,当面又不能说你俩收敛点,我连不住校的女朋友也没有,这样太丢人了。只好找到教导主任,说主任你看,麻雀虽小五脏俱全,我们宿舍楼有男人有女人,但是却没有宿管来管理我们,我觉得这样不太好。按教导主任一毛不拔的性格估计当场就想用眼神杀死他,平时管你们你们要造反,现在要老子出钱找个人来管你们,搁我身上我也不干啊。不过教导主任没有斥责高潮大哥,因为高潮大哥相当能打,他们班的物理老师就被他打得去教初中生了,所以教导主任表扬了高潮大哥,说吴同学你真是自律自强,勇敢创新,然后派了门卫刘大爷做了宿管。 新官上任三把火,刘大爷一上任就因为使用电吹风的事差点把屋子烧了,被下网归来的梦遗大哥抓个正着。梦遗大哥抓着刘大爷衣领大叫,保安造反烧楼啦,保安造反烧楼啦。旁边的高潮大哥赶紧拉住梦遗大哥,说这是咱们的宿管。梦遗大哥在学校住了近两年都没听过有宿管这么牛逼的东西,何况刚见到宿管宿管居然在烧楼,指着刘大爷大骂:你个老东西居然敢管我,我爸都没有管过我。说罢便抡拳要打,没想到刘大爷后发先至,一脚踹中梦遗大哥的小腹,把梦遗大哥踹得弯下腰来。刘大爷又是一脚,骂道:浪你个妈的,打打打,打你妈辣个逼,吾辣死你妈妈。这一脚把梦遗大哥直接放倒,然后噼里啪啦的小碎脚落在梦遗大哥的身上。毕竟差了一个级别,大哥完全拼不过大爷,梦遗大哥匍匐在地上隐忍良久,朝高潮大哥使劲眨眼,意思是点子硬,咱兄弟并肩子上啊。高潮大哥正是把刘大爷弄来当宿管的人,怎么可能上,但是人家眼睛都快眨得掉出来了,只怕梦遗大嫂也没被这么眨过。上了实在非己所愿,不上又怕以后遭人耻笑,最后高潮大哥踌躇半天,只能硬着头皮,口中呼喝舞拳而上。刘大爷见高潮大哥突然发难,估计也是吓了一条,问道:你组瑟逆?高潮大哥口中生沫,摇头晃脑,状若狂犬,刘大爷忙乱之下一拳抡中高潮大哥的胸口,高潮大哥立马顺势倒下。 刘大爷抡高潮大哥的空隙,梦遗大哥好不容易爬起来,刚想夹攻,发现高潮大哥已经仰面躺在地上,不知死活。梦遗大哥哪知道高潮大哥乃是防水假摔,只道刘老英雄神拳无敌,随便一拳变把甚是耐打的高潮大哥解决了,便也啊得一声倒在地上,抱右腿滚来滚去,口中呜哩吗哩,不知所云,煞是痛苦。留下莫名其妙的���大爷站在住宿楼门口,任由夕阳照得刘老英雄的影子高大威武。 妈妈从小教育我,在背后算计别人是不好的,要遭报应的。高潮大哥就遭了报应,而且报应就在当天。刘大爷进驻住宿楼后,非但没有解决住宿楼的深夜真人小剧场问题,高潮大哥反而从原来的单声道变成了双声道,转来我们学校没多久的一位生物女老师也解决了住宿问题。对此,高潮大哥变得更为忧郁,人也消瘦了许多。 后来我们才知道,当初那个被我们叫做刘大爷的大爷,那年只有47岁,因为担心小他近20岁的老婆被学生欺负才来我们学校当门卫。 高潮大哥之后的日子过得很苦,因为成年人和高中生活跃的时间点并不一样,所以高潮大哥有时晚上会高潮很多次,当然,直到毕业,高潮大哥依然是独自高潮,他高的不是潮,是寂寞。 难得可贵的是,如今梦遗大哥和梦遗大嫂依旧在一起,虽然他们之间有着近五年的空白期。那是在高中毕业后,梦遗大哥因为优异的网吧到到勤率顺利落榜,进了一所高职,而梦遗大嫂除了每天晚上,基本没有进行什么娱乐活动,成功考取了二本。梦遗大哥很MAN地对梦遗大嫂说,我落榜了,我没出息了,我们分手吧。梦遗大嫂哭着说,册那,侬则赤佬吃过算过了咯。梦遗大哥吸着鼻涕说,以后我有出息了,一定会来找你的,我我我我我不会乱搞的,我今天开始为你守贞。只说得旁边的高潮大哥狂喜乱舞,泪流满面:妈逼你也有今天啊。 梦遗大哥和梦遗大嫂之后怎么复合的我并不太了解,不过梦遗大哥似乎真的在近五年的时间里没有碰过女人,这些是高潮大哥一直关注着的。对于高潮大哥的怨念我表示非常理解,毕竟是一个在三年里几乎每天都能对你投掷闪光弹的人,不过能够五年如一日地监视着哥们的生殖器官,这是一种什么样的精神病。 时隔这么多年,梦遗大哥终于得偿所愿,被拘束的那什么又得到了释放,显得活泼异常,一举中标。梦遗大哥有亲戚在医院混得不错,几个月后带着大嫂去做了检查,居然一炮双响。自由的时候是不会奔跑的,阿扁没进去的时候就没怎么认真跑过步,几亿的精子,被关了5年徒刑,终于苦难的日子到头了,那必须挤破脑袋往前冲,最后冲成了双胞胎。 据说梦遗大哥头发白了很多,接了好多工,连出来小聚的时间也没有了。 某天在苏州河边撞见高潮大哥,高潮大哥还是当年那副苦大仇深的模样,一点没变。我挥舞着双手叫:老吴!老吴!吴XX!高潮大哥才认出我,于是聊了一会梦遗大哥的事,聊了一会各自的生活。高潮大哥点起一支烟,以45°的标准视角将忧郁的目光射进了天空那充满污染的黄云中,说哪天我们出来喝酒吧。 我们?两个?我说,不请其他兄弟吗? 高潮大哥猛地将烟喷了出来,眼角隐隐浮有泪光,说: 他们,都有女朋友了。
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chibiutsubo · 6 years
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スロープカーに心惹かれつつ、私たちは階段を登ります。
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bellavitacasa · 3 years
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今日の寂光院 澄んだ空気で癒やされます。 今日は少し曇っていましたが 白山の神様に手を合わせ 今日もありがとうございます 桔梗が素敵 #犬山 #寂光院 #お寺 #桔梗 #キキョウ #素敵 #落着く場所 #澄んだ空気 #白山 #神様 #千手観音 #織田信長 https://www.instagram.com/p/CTgWKzBhBk9/?utm_medium=tumblr
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catdoll007 · 7 months
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