「目的」というドクサ
理由探し
人は「理由」を求める。
ある事象が起きたとき、人はそのことの理由とは何かと思考する。そのことは自然だ。理由を知ればより適切で根本的な「対処/対応」が可能になる。
何かを「知る」目的は、もちろんその事態に適切に「対処」するためであり、「適切な対処」は自らの生存に有利に働く。つまり自分(たち)が生き延びるために、ある事態を理由も含めて知ることはとても役に立つ。
時間的にいえば理由は過去に属するものだが、それを知るのは未来の事態への対処のためである、というパースペクティブを持っている。
ホモサピエンスは、この戦略を突き詰めていったが、そのときの最大の武器が言葉だった。
理由探しとは「因果関係」を追求すること。
問いの非凡さ
林檎は樹から落ちてくるのに、月は落ちてこないということは誰でも知っている。でもそれはなぜか? と問うニュートンのその問いは非凡だ。
問いの発見とはすなわち視点の発見である。視点の発見(ときに視点の発明)のなかにこそ、創造性/クリエーティビティと天才性が宿っている。創造性は「作り出すこと」よりもむしろ「視ること」に関わっている。
理由の連鎖
すべての質量あるものは引き合っている(距離の平方の逆数と重さに見合った力で)。月が落ちてこないのは、月が地球の周りを回っていてその遠心力と引力が釣り合っているから。
ではなぜ、重力子(graviton)が引き合うように働くのか、どうやって引っ張っているのか、そもそも物を隔てる空間とは何か、その理由は今はまだ完全には知られていない。
理由の連鎖は、どこかで「あるものがそういう性質を帯びている」というところで止まらざるを得ない、ということではある。これはある事象の「振る舞い」に着目したときの着地点である。
しかしその後ろで、ではそれはどうしてそうなったのか、何と何がどういう影響を与え合ってそういう性質を獲得したのか、という時間的な経緯という理由探しの問いが始まる。
ビッグバンが醸し出す不思議さはそこから発している。ビッグバンはまるで時間とともに理由をそこで断ち切っているように見える。ビッグバンの真相や「それ以前」については現在も究明中だが、その結果がどうであれ、理由探しは結局留まるところをしらない。
目的という理由探し
もう一つ「目的」という視点での理由探しがある。
正確にいうと、自然界には「目的」という理由は存在しない(と自分は信じている/つまり神はいないと、暫定的に)が、人は自分自身の行為を理解の雛形/モデルとして、なんらかの「目的」をそこに持ち込んだ。
人自身の行為(振る舞い)は、自らの欲求なり意志なりなんらかの志向性の中で為される。そこに特徴がある。
これは「人」よりもっと広く、「生命」のレベルで帯びている振る舞いの傾向なのだろう。生命の第一ミッションは「自己の継続」である。そこから「目的」が発生している。
自己継続の理由
生命の不思議さは、なぜそういう振る舞いの傾向を帯びたのか、に集約されると思う。
あえてその理由(の一つ?)を述べれば、生命の中の、細胞や個体や種について、自己継続の振る舞いをしないものもたくさんあっただろうし、今も随時そういう個体は生まれているのだろう。しかしそういう継続という振る舞いを止めた個体はそこで終わる。継続を止めなかった個体だけが生き残り、その振る舞いの傾向はじょじょに「濃く」なっていった、そういうことなのだろう。
冒頭に「ホモサピエンスの戦略」と書いたが、それは目的論的な視線で「自然」を捉えようとすることで、それは正しくない。「戦略」というとはじめにそうなろうとする「意志」が存在していていて、それを「目的」に掲げてそうなっていったととれる、が事実はそういうことではない。
思考の道具としての「目的」
「目的」というのは、人が科学的な思考を洗練させるはるか以前に獲得した思考方法ないし「思考の道具」であったのだと思う。あるいは理解や説明のための「お話し/モデル」として「目的」という観念を抱いた。そしてその道具はそれなりの効果があり、実質的によく働いたのだろう。
人は自らの振る舞いを内省して「目的」という思考概念を発見した。これをする(目的の)ために、あれをするし、それもする。その底には意思や欲求があった。
自分の生の目的
その思考を押し広げて、周囲の動物や植物や自然を理解していった。そしてさらに自分自身という存在にもそれを当てはめた。自分は何のために生きているのか? 自分の生の目的とは何か? そう問うた。
その設問自体は馬鹿げたものかもしれないが、それが自分の生き方(=自己継続の仕方)を洗練させたと思う。たとえばその枝の先に実った果実が哲学であり宗教であり芸術でもあるのだろう。
一言でいいとか悪いとかは言えないが、「目的」が憶見、思い込み、ドクサであることはまちがいないと自分は思う。
そのことの「よき効果」と、そのことがドクサであるという事実はともに念頭から外さないように考えていきたいと思う。
220827
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이유
[i·yu]
(noun) reason, excuse · pretext
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替自己找理由是人之常情,
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人はおのずと生きていることに目的を求めるのだ。 それは生まれた川へ帰ってくる鮭や、渡り鳥などと同じような、生物の一種の本能なのかもしれない。 ー五木寛之 著『人生の目的』 (幻冬舎文庫) よりー #五木寛之 #人生の目的 #本能 #理由 #無意味 #散歩 #つれづれ #今日の言葉 #石神井公園 #撮影散歩 #今日の一枚 #カメラのたのしみ方 #順正寺 #写真 (石神井公園) https://www.instagram.com/p/Cldj2IBP9CI/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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