#互いに引退試合の押し付け合いです
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これからThe K4senなのに、ネオポリスのエモな切り抜き見ちゃって情緒が迷子。
#the k4sen#アキ・ローゼンタール#こっちも緊張してきた#最後まで見れないつらみ#朝4時までマ!?#しろまんた先生ママ#バブロゼ#uruka#エクス・アルビオ#胡桃のあ#天月#zerost#ミス・フォーチュン#互いに引退試合の押し付け合い��す#絶対アキロゼ引退させるマン#白雪レイド
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寮では、翔が他の生徒とは遅れて夕食を摂り、終えると部屋に戻った。建物は学年別に三棟並び、食堂は共同だがトイレと浴室は部屋ごとに設置されていた。まるでビジネスホテルの様な構造だった。
翔の部屋の隣には正美がいたが、午後八時になるとノックをした。室内から翔が出て来ると、
「どうしたンだよ、心配したよ」
と声を��けた。翔は正美を室内に入れた。正美はベッドに腰を下ろし、��分の部屋の冷蔵庫に仕舞ってあった缶ジュースを差し出し、
「親父が送ってくれたンだ。飲めよ」
と勧めた。
二人は缶ジュースを片手に、まずは翔が亮司に声をかけられたことを話した。そして、
「実はオレ、用務員さんとキスしたりハグしたりして…エッチした」
と告白した。流石に、正美は一瞬飲んでいたジュースを気管の方に入りそうだったのかむせ込み、
「そ、それって…!?」
と驚きを隠せない様子だった。翔はスエットパンツ越しに股間を覆いながら、
「オレ、用務員さんにキスされたら急に好きになっちゃって…。気付くと裸でエッチしてた。用務員さん、チ◯ポが大きくて…。オレ、そのままイッちゃった」
と顔を赤らめた。もはや、開いた口が塞がらない様子だった正美は、
「お、お前、急に『チェリー』じゃなくなったなァ!」
と興奮していた。嗚呼、まさか翔に「童貞喪失」を先越されるとは…。内心、悔しかった。彼は、
「オレも、早く誰かとセッ◯スしてやるぞ!」
と鼻息を粗くした。
その頃、宿直室では見回りを終えた大平が、周囲に誰もいないことを確認したうえで、
「…全く、オレが宿直に入る度に『夜這い』に来るンだから!」
と口調をキツくさせながら言った。
布団には、早くもスエットパンツを脱いで白いリオバックビキニを穿いた二年生・根本郁斗が布団に横たわっていた。彼は大平が顧問をするラグビー部に所属していた。
「だって、オレは入学した頃から先生一筋だもン。浮気してないもン」
そう言いながら、彼はスエットパーカーも脱いだ。灰色のタンクトップだけになった彼の上半身は、小学校の頃からスポーツ少年団でラグビーをやっているからか、肩幅がガッチリしていた。そのまま彼は大平のところまで立膝でやって来て、そっと両手でスエットパンツを下ろした。有名ブランドのロゴがプリントされた水色のスポーツビキニを穿いていたが、郁斗はその股間に頬擦りをした。微かに洗剤の芳香がする。彼は自分のチ◯ポが硬くなっていくのを感じた。
「…雅之の、コレが欲しいの」
彼は、まるで成人映画の女優の様に股間を突き上げながら内腿を拡げた。次第に、ビキニ越しに大平のチ◯ポを愛撫する手指が素早くなり、その勢いで彼はウエストゴムを両手でつまんだ。血管が浮き出た肉棒が天井に向かっていきり勃ち、ヌッと郁斗の目前に現れた。その肉棒の裏を彼は舌の先端でなぞり、挙げ句に咥えた。大平は、口淫をする郁斗を両手でその髪を弄った。気付くと腰を前後に振り、
「あッ、あッ、ああん…」
と恍惚の表情で喘いでいた。
情事は未だ終わらず、二人は全裸になって郁斗の下半身の穴に大平は己の肉棒を挿れ、「騎乗位」で戯れた。頻りに郁斗の臀部を撫で回し、
「い、郁斗、この、あばずれが…」
と言葉攻めをした。郁斗は布団にしがみつく様にシーツをつかみ、
「…雅之、もっと突いてぇ〜」
とうなだれた声で訴えた。
宿直室は六畳の和室で、トイレもシャワーも完備されていた。寮の玄関からも近かったが、周辺には食堂と厨房しかなく、幸いにも生徒が寝泊まりする部屋は二階からだった。誰かに知られてはと声を押し殺しながらの濡れ事であるものの、大平も郁斗も一応用心をした。
オルガズムに達すると、二人はすっかり教師と生徒という垣根もなく、卑猥な音を立てながら接吻を交わした。すっかり大平の「子種」を仕込まれた郁斗は下腹部を押さえながら、
「雅之の赤ちゃん産みたいのォ〜」
と甘える声で訴えた。
そんな一部始終を、たまたま缶ジュースを買いに階下に来た佳憲が、宿直室から聞こえてくる声に気付き、襖の隙間から覗いて見ていた。大平と関係を持ってから知ったのだが、彼には自分以外の生徒と複数寝ているという話を直接聞いていた。そのことに対しては、とりわけ固執せずに「男って生き物はそんなもの」と割り切っていた。彼は、明日は一緒に寝てやると、テントの様に突き上げたスエットパンツをパーカーの裾で隠しながら自分の部屋に戻って行った。
「別荘」では、これまで誰にも公にしていなかったプライベートバーのドアを貢が開け、亮司を招き入れた。カウンターに五人は座れる椅子が並べられ、背後にはシングルモルトやリキュールなどが整然と置かれていた。
貢は元々、某私立大学の経済学部を卒業してからは大手都市銀行に定年まで勤めていた。父・操が私立K高校の理事長を「引退」するのを機に、地元へ「Uターン」してきたのだ。
理事長になってからは、隣町にある単科大学の経営も担いながらメインであるこの高校では校長もやっていたが、多忙の故に高血圧症とかかりつけ医から診断されてしまい、それが理由で岩崎に校長の方を委ねたのだった。
プライベートバーは、貢の趣味で設計してもらったものだった。大学時代に��宿のオーセンティックバーでアルバイトをしていた経験があり、家��もあったので本格的にその道に入ろうとはしなかったものの、自分でカクテルを作って愉しみたいという思いがあったのだ。彼は「ビフィーター」というジンをシェーカーに入れ、それからライムジュースとガムシロップを加え、振り始めた。亮司は、何度かバーには同僚に連れられて行ったことがあるが、基本は居酒屋が多かったのでカクテルなんてハイボールしか飲んだことがなかった。
目前に「ギムレット」が差し出されると、
「元々は、イギリスの船乗り達がジンばかり飲んでアル中になるのが問題となって考案されたカクテルらしい」
と、貢は自分で飲む「マティーニ」を作りながら言った。亮司は一口飲むと、
「何か、サッパリしているなァ…」
と感想を述べた。
亮司は、翔のことを貢に話した。一通り話を聞くと貢は、
「よくいるンだよ、母親が絶対的な立場で逆らうことができず、ウチに来てそれが爆発するケース。母親の愛情は必要不可欠だし、それを十分に受けないとひもじくなってしまうンだよ。でも、亮ちゃんに抱かれたらその気になっちゃったンだ」
と言った。
「もう、二度もイキやがって…。オレ、しばらくセッ◯スできねぇよ」
「嘘だァ〜!? この後試してみる?」
「『中折れ』しちまうよ」
「誰もア◯ルやってなンて言って���いよ、スケベ!」
結局、二人は三杯目のカクテルを飲み終えるとプライベートバーを出ながら接吻を交わし合った。貢の首筋に唇を押し付けながらネクタイを解き、ベッドに辿り着く頃にはスラックスだけになっていた。亮司は、彼の乳房を谷間の様に寄せながら吸い付き、ブリーフだけにさせていく。貢は、
「…ほら、亮ちゃんはズルいよ! 抱けないって言っておきながらその気にさせるンだもの」
と言いながら、亮司のベトナムパンツのベルトを緩めた。
互いのブリーフがベッドの許に重なり合っている。貢と亮司は「シックスナイン」の状態で口淫に耽った。互いに「アラ古希」ではあったが、性衝動は十代に負けなかった。仕舞いには貢が亮司の身体に覆い被さり、「子種」を仕込んだ。久しぶりに「ネコ」となった亮司は黄色い声を上げ、エクスタシーの故に涙を浮かべた。
情事を終えた二人は布団の中で見詰め合いながら、
「お前、『タチ』もイケるンだな」
「まァ、変態なンだよ」
「何だか、久々に女みたいな声を上げたよ」
「可愛かったよ、亮ちゃん」
と抱擁しながら話した。
時計の針は午後十一時を回っていた。翌日は土曜日で、そのまま大型連休に入る。入職したばかりの秀一のことを亮司は思った。昔、こんな風にオレも彼を抱いたなァ…。翔と寝た時、まるでデジャヴの様だった。秀一も「春の目覚め」が遅く、オレが最初に惚れた男となった。そんなことを回顧しながら、亮司は貢に接吻をした。貢は聞いた。
「…何考えてたの?」
「まァ、昔のこと。もう寝よう」
このまま二人は眠りに入った。
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ゲーム・推理解説
・役職説明 ・ゲームの進行 ・推理のヒント(足音の考え方) についての説明ページです。
■公式ページ
・ルールブック ・解説付きルール紹介ページ ↑わかりやすく、おすすめです。
■役職解説
より詳しい説明はルールブックをご覧ください。 RPにおけるの推理発言の方針については守ってほしい注意点の「推理について」をご覧ください。
【村人陣営】
村人 何の能力もない村人。推理と勘と運でがんばる。 ダミーキャラ(=2日目に確定で人狼に襲撃される最初の犠牲者)は必ず村人となります。
霊能者 処刑された人が人狼だったか人間だったか分かる。役職まではわからない。 墓落ち(=襲撃や処刑によりゲームから脱落脱落すること)しても同じ能力を持つ人物が生きている間は霊能結果がわかる。
賢者 毎日一人を指定して占い、その役職を知ることができる。 占い対象までの経路に足音が立つ。一度だけ曲がれる。 役職CO(COとはカミングアウトのことで、役職を他者に知らせる行為を指します)はできないため、「誰を占ったか」「占い結果」を伝える方法を考えるのがミソ。 狐を占うと倒せる。(今回の村に狐は居ません)
導師 処刑された人の役職がわかる! 自身が導師であることを通常発言(表チャットの白発言)で役職CO、またその内容を公表しても良い。結果騙り(=嘘をつくこと)も許可されている。
狩人 二日目以降、一人を指定して襲撃から守ることができる。 護衛対象までの経路に足音が立つ。一度だけ曲がれる。
共鳴者 共鳴専用チャット『共鳴』で共鳴者同士の秘密会話でお話できる。 ただし、人狼と違い誰が共鳴者同士であるかはわからないので『共鳴』チャット(緑の発言)で名乗り出てあげてね。 共鳴会話内では『この人があやしいと思う』や『自分たちが共鳴者同士だって皆に伝えるためにお互いに投票してみる……?』などの推理発言可。
◆村陣営のまとめ◆ ・狼を全滅させ、且つ終了時に狐を倒していれば勝ち。(今回の村に狐は居ません) ・共鳴者は相��できる! ・処刑者の情報を得られる:霊能者、導師 ・処刑者の情報を得られない:賢者、狩人、共鳴者×2、 ※↑導師が教えてくれたらわかるよ
【人狼陣営】
人狼 毎日人間を一人選び、脱落させることができる。 誰が他の人狼なのか表示されるが、狂人の正体はわからない。 人狼が複数いる場合はどの人狼が襲撃するか自由に選ぶことができる(※今回の村では人狼陣営が2人以下になるまで同じ人狼が連続で襲撃することはできない)。 襲撃対象までの経路に足音が立つ。一度だけ曲がれる。 人狼陣営チャット「囁き」の閲覧、発言ができる。
狂人 任意の部屋から一直線に足音を立てることができる。曲がれない。 どこも通らず音を鳴らさないこともできる。 人狼陣営だが狼ではなく人間カウント。 誰が人狼なのか自力で知ることはできない。
◆人狼陣営のまとめ◆ ・囁きで相談できる!(狂人は囁き参加できません) ・人狼と人間(狂人含む)が同数になり、且つ終了時に狐を吊れていれば勝ち(今回の村に狐は居ません)
■ゲームの進行について
ゲームが始まると画像のような部屋割りがランダムで決められます。 最初に訪れる運の試練です。
【1日目】 役職COは導師のみ許されます。騙りCO(たとえば人狼が自分は導師です、と嘘つくこと)は禁止です。 導師はこの日から好きなタイミングでCOできます。 人狼の襲撃先はダミーキャラ固定です。人狼は相談して襲撃担当者と経路を選択! 賢者は占い先を選択! 狂人や狐は足音を立てたり立てなかったり。 それ以外の人はやることがありません。
【2日目】 ダミーキャラが襲撃されたメッセージが表示されます。 (全員)投票が始まります。あやしい人に投票しましょう。 また、この日から狩人の護衛が始まります。 人狼は襲撃対象を選択! 賢者は占い先を選択! 狩人は護衛先を選択! 狂人と狐は足音を立てたり立てなかったり。
【3日目以降】 初回処刑者が決まります。 導師は処刑者の役職がわかります。みんなに通常発言(白発言)で結果���教えて構いません。 霊能者は処刑者が人か狼かわかります。ですが導師以外のCO禁止のため、みんなに教えてはいけません。心の中に留めましょう。
【4日目以降】 上記から抜けが発生するので、 ★☆★☆もうわからん★☆★☆
■推理のヒント
【足音について】 マンション人狼で重要となる推理要素が足音です。 推理の足音について公式にも説明がありますが、公式のインターフェース確認用のサンプル村(テストアカウントを入村させて各役職のインターフェースや操作を確認できる村です。誰でも利用できます)の画面を用いて、当ページでも簡単に解説します。 今回の村で足音を鳴らせるのは人狼、狂人、賢者、狩人です。
※推理のヒント※
足音は目的地目的地まで必ず最短距離で通る。
スタートとゴールは鳴らない(あくまで通り過ぎた部屋のみ鳴る)。 つまり隣の部屋の村人を襲撃した場合は音が鳴らない。
最初から誰もいない角の空き部屋(画像の01、05、16)も無音で通れる。
処刑や襲撃で墓落ちした人の部屋を通っても音が鳴らない。
人狼/賢者/狩人の足音は1回曲がれる。つまり経路はL字か直線になる。 足音の起点と終点の部屋の中心から線を伸ばしてみるとわかりやすい。
狂人/狐のたてる足音は、本人がいる部屋起点とは限らない。
【例1】 部屋13、14で足音が聞こえた...。
このシステムメッセージは、13,14を通った人物がいる、という意味になります。 文章通りに受け取ると「12が15に向かった………?」と受け取りかねませんが、それだけではありません。
・足音を鳴らす役職が通った番号は若い順に並び替えられる。
・スタートとゴールは鳴らない(あくまで通り過ぎた部屋のみ鳴る)。
つまり隣の部屋の村人を襲撃した場合は音が鳴らない。
・人狼/賢者/狩人の足音は1回曲がれる。
これらの要素を加味して考えると、音を立てた人物は、
・08(13→14→15) ・09(14→13→12) ・12(13→14→15) ・15(14→13→12) ・18(13→14→15) ・19(14→13→12) ※括弧内は通ったルート
と6名もの候補が発生します。難しいですね。 さらに足音の主が人狼、狂人、賢者、狩人のいずれかであるかもわかりません。 投票結果や他の足音とも比べつつ足音の正体を考えてみましょう。
難しいですね……。
大抵の場合は決定打に欠け、確実な正解に辿り着くことは容易でないので間違いを恐れずに考えてみましょう。 大丈夫です、考えてもわからないことは世の中にあります。
【例2】 部屋13、14で足音が聞こえた...。 部屋04、10で足音が聞こえた...。
このシステムメッセージは、13,14を通ったAさんと、04,10を通ったBさんがいる、という意味になります。 通った番号は若い順に並び替えられるため、Aさんの経路は ・13→14 ・14→13 の両方のパターンが考えられます。
【例3】 部屋13、14で足音が聞こえた...。 部屋13で足音が聞こえた...。
この場合は、13,14を通ったAさんと、13を通ったBさんがいる、という意味になります。
【例4】 部屋13で足音が聞こえた...。 部屋13で足音が聞こえた...。
この場合は、部屋13を通り過ぎた人物が2人居ることになります。
【例5】 足音を聞いたものはいなかった...。
この場合は、足音の鳴らない部屋ルート(隣部屋や角の空き部屋、墓落ちした人の部屋など)を通ったことになります。難しいですね。
【おまけ:足音ではないメッセージ】 ・次の日の朝、(キャラの名前)が無惨な姿で発見された。 ・今日は犠牲者がいないようだ。人狼は襲撃に失敗したのだろうか。
人狼に襲撃された人物は前者のメッセージと共に無残な死体として発見されます。(ゲーム上の話であり、RP上は死亡しません。安心安全な夏祭りです。) 襲撃予定者が処刑されたり、狐のように襲撃されても死亡しない役職であった場合は後者のメッセージが表示されます。 処刑はシステム上の処理順が襲撃よりも前にあるため、襲撃が失敗扱いとなります。(処理順については公式ルールをご覧ください)
■補足説明
・その日の処刑や襲撃により足音を鳴らした人が退場している可能性がある。 能力者、襲撃担当者が死亡していてもセットした通りに足音が響きます。(ルールブックより引用)
・投票は初期設定が自分になっている。 ゲームの日付が変わる度ににリセットされます。 投票先のセットを忘れないよう気を付けましょう。
・狼の襲撃先設定は多数決で決まる。 初期設定はランダムになっています。相談した相手と合わせて全員で襲撃先をセットしましょう。
・投票先の設定と役職の行動は、1回の更新で同時に設定できない。 例えば賢者は投票先と占い先をセットする必要ありますが、投票先を選んで「投票セット」ボタンを押し、ページが更新後に改めて占い先を選び「能力セット」ボタンを押すことで両方の設定が反映されます。
【文章作成:@suzupuyo】
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朝比奈潤(ドMおじさん)@doemojisan
今から15年ほど前、20代後半の頃に個別指導系の学習塾で数年間働いていた。担当は男子中学生ばかりだったがその中に明らかにオーラが違うイケメンがいた。今で言えば坂口健太郎によく似ていたので、ここでは彼を坂口君と呼ぶ。坂口君は身長180弱、不良っぽさと中性的な部分を併せ持ったルックスだった。
実際、彼はよくモテていた。恥ずかしい話だが、私は女性の生態についての知見をほとんど彼から得たと言っても過言ではない。30歳手前の大人が14~5歳の少年から女について教わるという屈辱は私を大いに苦しめたが、童貞だった私には坂口君が無邪気に話すモテ話が抗いがたい魅力を持っていた。
「さっき逆ナンされてカラオケでセックスしてきちゃった」私が担当してすぐの頃、彼が述べた遅刻の理由である。成績の良い子が行くような塾ではなかったから真面目に勉強しに来ている生徒は少ない。それでもこの発言は衝撃的であった。事の真偽はともかくとして、私は注意するよりも呆然としてしまった。
イケメンの中でもよりすぐりの「超イケメン中学生」には凡人には想像し得ない奇跡のような出来事が毎日起きている。逆ナンパはそれこそ日常茶飯事だ。家電量販店で暇をつぶしていたら、見知らぬ40代のマダム風女性に当時、流行っていたゲームボーイアドバンスを買ってもらったこともあるという
奇跡というのはたとえば、繁華街ですれ違った20代の女性に道を聞かれ、親身になって教えたところ連絡先を聞かれ後日、お礼がしたいと食事に誘われる…といったようなことだ。そんなことがあるのだろうかと思う。私は42年間生きて、宗教の勧誘以外で一人歩きの女性に声をかけられたことがない
こうしたエピソードの一つひとつに何とも言えない迫力を感じ、私は授業中の彼の雑談、自慢話を黙認した。そういった話に私自身が興味を持っていた。彼の携帯電話の画像フォルダには今まで関係した女性との画像が収められていた。その数の多さ、写真に収まった女性の美しさには圧倒される思いであった
そのフォルダを全部見たわけではないが、一際目を引いたのは坂口君と同世代であろう白人とのハーフの美少女だ。玉城ティナ、トリンドル玲奈に似た雰囲気の彫刻のように美しい顔だった。とても中学生には見えない。そしておっぱいも、服の上からでもそれなりの大きさになっているのがわかった
何枚かの画像には私と同世代、もしくは30代であろう女性も写っていた。私には視線すら合わせない同世代の美女が15歳の少年には心を開き体も許しているのかと思うと、やるせない思いであった。自分の私生活がとてつもなく惨めに感じ、オスとしての能力の違いを見せつけられる思いであった
当時の私生活は今よりも悲惨であった。休日ともなれば昼近くまで惰眠を貪り、起きれば近所のコンビニへ行く。道中、美少女とすれ違えばその顔や胸の膨らみを凝視して目に焼き付け、帰宅後はその美少女を想像しながら自慰をする。そしてコンビニ弁当を食べテレビを見ながら夕方になるとまた自慰にふける
坂口君が恋愛ゲームを楽しみ女性を楽しませ、そして愛されている一方で、私は道行く美人を盗み見ては服の上から伺えるおっぱいの大きさを確認して脳裏に焼き付け、その乳房を揉みしだく妄想にかられながら一人慰め、果てる。東京砂漠とはこのことだろう。私は自分の情けなさに消え入りたくなった
坂口君を教えていて気付いたことがある。それは女も男と同じように気になる異性をチラ見するという事実だ。教室で隣り合って座っていた私にはそれが手に取るようにわかった。そしてチラ見された側は視線に完全に気付く。チラ見されている事に気付かれまいとあえて見ないようにする行為すらもほぼわかる
授業時間が終わり坂口君が帰宅しようとすると、いつも奇妙な光景が繰り広げられた。女子生徒たちがみなソワソワしながら坂口君の様子を気にしているのである。女子生徒の中でもカースト上位と思われる、沢尻エリカ似のリーダー格はいつも偶然を装って坂口君の周囲をうろつき会話の機会を伺っていた
沢尻の積極性に私は驚いた。女の子は相手次第でこれほどまでに積極的になるのである。カースト下位の女の子には坂口君と話す機会は与えられない。女子リーダー格の沢尻は、その地位を生かして他の女の子を牽制していたのかもしれない。授業が終わると上位グループが坂口君を取り囲むこともあった
坂口君と沢尻はもしかしたら関係を持っていたのかもしれない。なぜなら沢尻が坂口君に夢中になっていたのは誰の目にも明らかだったからだ。坂口君に入れあげていたのは沢尻だけではない。女性社員にもまた坂口君は人気があった。中でもある20代後半の女性社員が取った行動は生々しかった
の女性社員は波瑠に少し似ていたのでここでは波瑠さんと呼ぶ。長身でスレンダー、キリッとした顔つきが近寄りがたい雰囲気を出していて仕事が速かった。その波瑠さんは、愛想が良いほうではなかったが、坂口君と話すときだけは満面の笑みになるのである
志望校などを調査する資料を坂口君が提出し忘れたことがあったが、その時の波瑠さんの動きは凄かった。坂口君の席の隣にひざまずいて「ここに名前を書いて」「学籍番号はここ」と、手取り足取り教えながら書かせているのだ。どこに名前を記入するかなどバカでもわかる。波瑠さんの魂胆は明らかだった
波瑠さんが坂口君に資料を書かせている間、二人の物理的な距離が徐々に近づいていくのがわかった。波瑠さんは時に坂口君に覆いかぶさるように資料の書き方を教えていた。私には波瑠さんのおっぱいが坂口君の背中に当たっているように見えて仕方がなかった。いや、間違いなく胸と背中が触れ合っていた
波瑠さんは長身だったが胸はそんなに大きくなかった。体の線がはっきりとわかるような服を着てくることもなかった。私はそんな波瑠さんが自らの女の部分を強調していることに衝撃を受けた。よく恋愛マニュアルに「OKサインを見逃すな」なんて書かれているが、こういうことなのかと思った
女のOKサインとはかくも露骨なものなのだ。本物のOKサインとはこのようなものなのだと思い知らされた。恋愛マニュアルに書かれた「酔っちゃった~」なんていうセリフや、普通の男が「もしや」と感じるセリフなど、このときの波瑠さんのOKサインに比べれば勘違いに近い
手取り足取り教えられながら資料を書き終えた坂口君の行動も私を驚かせた。「疲れた~」と言いながら席を立った坂口君は「波瑠さんの肩揉んであげます」といって肩のあたりを揉みはじめたのだ。波瑠さんは顔を真っ赤にしている。あのクールビューティの波瑠さんが真っ赤になって動揺している
波瑠さんにひそかに思いを寄せていた私は激しく嫉妬した。童貞ゆえの自信のなさで会話すらままならなかったが、いつも彼女を盗み見ていた。服の上から伺える乳房の形を想像しながら自慰したこともある。年上の彼氏がいるという噂にうちのめされたこともあった
そんな高嶺の花だった波瑠さんが「どうぞ私を抱いて」と言わんばかりにオンナの表情をしていたことがショックだった。一見、ツンとしているように見える女性でもイケメンに見つめられたらイチコロなのだ。しかも相手は15歳の少年である。この事実は私を苦悩させた
その日、自宅に帰った私は波瑠さんの表情を思い出していた。肩を揉まれた時の波瑠さんはなんと幸せそうな表情をしていたことか。坂口君が波瑠さんを抱いている���を想像してみた。すると嫉妬と悔しさで不思議と興奮してくるのがわかる。寝取られ好きの気持ちがわかった。私はその夜、何度も自慰をした
この一連の出来事は童貞を捨てたいという思いを強めた。風俗でもいいから童貞を捨てれば嫉妬に苦しまなくてもすむかもしれないと思った。次の休日、ネットで入念な下調べをし風俗へ向かった。初めての記念だからと一番美人でゴージャスな容姿の女の子を指名した
指名し部屋で待つ間、胸は高まった。期待と緊張が入り交じり、武者震いが止まらなかった。女の子が部屋に入ると緊張は限界を越えた。手足が震えている。まずい。嬢に童貞であることを悟られたくない一心で、手足の震えを隠し手慣れた様子を演じようとすればするほど震えは強まり会話にも妙な間ができた
正常なコミュニケーションすら成立しない私を前に、風俗嬢は徐々に心を閉ざしていった。恐らく私は緊張と劣等感にまみれた恐ろしい表情をしていたのだろう。風俗嬢が私を不気味がり、怖がっているのがわかる。私はその雰囲気をどうすることもできず、無言で胸を揉み続けた
子泣き爺のように後ろから覆いかぶさり、ぎこちなく胸を揉みしだく私の表情をチラリと見た風俗嬢は、ほんの一瞬だが嫌悪の表情を見せ、その後は私をできるだけ見ないようにしていたと思う。私の性器に手を伸ばし、数回上下に動かしながら刺激を与え勃起を確認した彼女は無言でコンドームを装着させた
コンドームを装着されながら私は女体に感じ入っていた。初めて触る女性のおっぱい。その柔らかさ美しさに衝撃を受けた。女の乳房とはこんなにも男に幸せな感情を与えるのかと。ずっと揉み続けていたい衝動にかられた。しかしコンドームを装着させた嬢は女性器に何かを塗り込んだあと挿入を促した
正常位の体勢から、私はアダルトビデオの見よう見まねで挿入を試みた。しかし、これが意外に難しい。挿入しようとし、角度や位置の違いから押し戻される。それを数回繰り返すうちに動揺は強まった。童貞であることがバレたかもしれない。そして何より精神的動揺から勃起が弱まっていくのを感じた
萎えて柔らかくなった男性器を女性器の入り口に押し付け、どうにか挿入しようとして押し戻される滑稽きわまりないやりとりの後、私は挿入を諦めた。気まずさを誤魔化すため、私は風俗嬢のおっぱいにむしゃぶりついた。風俗嬢は事務的に私の性器を手でしごき、再び勃起を促した
胸を揉むとわずかだが、萎えた性器が復活する。ベッドの上にお互い向き合って座りながら無言のまま、私は胸を揉みしだき、風俗嬢は淡々と私の性器をこすり上げる重苦しい時間が20分くらい続いた。異様な���景だったと思う。やがてコンドームがシワシワになったところでタイマーの警告音が響いた
「時間…」とつぶやいた風俗嬢はコンドームを剥ぎ取り、激しいペースで性器をしごいた。私も胸を揉むペースを早める。すると数十秒後、精子が放出された。思わず「あっ」という声を上げてしまった。賢者モードに陥る私をよそに彼女はティッシュで精子を拭く。これが私のみじめな初体験だった
挿入に成功しなければ真の意味で童貞を脱したことにはならない。翌週も同じ店に行った。指名した娘は先週の子ほど美人ではなかったがとても愛想が良かった。武者震いしながら性行経験者を装う私のバレバレの演技にも笑顔だ。私を傷つけないよう、私が彼女をリードしている錯覚を与えながら挿入へと導く
メリメリという感覚の後、私の性器はするっと女性器の中に入った。挿入に成功した。私は激しく動くことで緊張を悟られないように努めた。しかし、このとき私は膣内での射精には成功しなかった。風俗業界ではこれを中折れと呼ぶらしい。結局、私は手と口で嬢に刺激されながらゴム内で発射させられた
恥ずかしながら私はセックスがこんなにも難しく、重圧がかかるものだとは知らなかった。機会さえあれば誰にでもできると思っていた。水を飲み、道を歩き、ベッドで寝る。そんな人間の当たり前の営みと同じく挿入と射精ができるのだと。しかし実際は違う。自転車の補助輪を外すような訓練が必要なのだ
風俗店から帰宅後、ネットで調べたところ、私のような症状は「膣内射精障害」と言うらしい。自慰ばかりしているモテない男が患う風土病のようなものだ。普通の男性が患うこともあるが、多くは加齢、飲酒、あるいは倦怠期で刺激を失ったことが原因であり、コンディション次第ですぐ回復する
自慰ばかりしている男性は、しばしば自分の性器を強く握りしめる。そして、それは膣が加える刺激を上回る。性交よりも自慰の回数が圧倒的に多い非モテ男はそれに慣れきってしまい、いざ性交するときに刺激が足りず射精に至らないのだ。オナニー病、モテない病と言える。こんなに哀しい病があるだろうか
結局、膣内での射精に成功するまで、童貞を捨てた日から3年以上の月日がかかった。風俗店へ通いつめた回数は40回を超える。30歳を超え、ようやくである。中折れし途中で萎えた性器を手でしごきあげられ、射精させられるという情けないセックスを40回以上も繰り返したのだ
童貞を捨てれば消え去るかと思われた劣等感はさらに巨大になった。3年の間、自らの性的能力の低さ、異常さを突きつけられた思いがした。15歳の少年がいとも簡単に、毎日のように行う「普通の性交」にお金を支払ってもなお達しないのである。波瑠さんら女性社員や生徒がこれを知ったら、蔑み笑うだろう
恥ずかしい話だが、今でも私は2回に1回は膣内射精に失敗する。これは異常なことだろう。しかし、異常者なりに気づきもあった。風俗嬢に「実は素人童貞で経験が少ないんです。リードしてください」と白旗を上げるのだ。すると精神的に少し楽になることがわかった。少なくとも手足の震えは軽減した
裸の女性を前にした緊張���武者震い、手足の震えは、恐らく素人童貞を恥に思い隠そうとする男のチンケなプライドと密接に関わっている。あえて白旗を上げることで、それはいくらか軽減する。しかし「途中で萎えたらどうしよう」という重圧は依然として残る。この重圧から逃れる方法を私はいまだ知らない
風俗嬢に「経験が少ないのでリードしてほしい」とカミングアウトすると、高確率で「そういうお客さんの方が好き」と言われる。これは好き嫌いというよりも、その方が業務上、楽なのだろう。世の女性が素人童貞を好きというわけではない。むしろ素人童貞で射精障害のおっさんなど視界にすら入っていない
しかし指名した子がドンピシャで好みだった場合は、経験が少ないことを明かせずにいた。もしかしたらこの娘と付き合えるかもしれないという下心からである。冷静に考えれば風俗嬢が客と付き合うことなどあるはずがない。にも関わらず、自分を偽りカッコつけてしまうのだ
なぜか。それは女性との接触が極度に少ない非モテには万に一つの可能性でさえ貴重な機会だからだ。自分でも狂っていると思う。しかし非モテの劣等感とは、これほどまでに人間の判断力を狂わせるのである。こうして性に習熟した大人の男を演じようとして射精に失敗し呆れられる。私はこれを繰り返した
風俗店通いで不快だったのは待合室の存在だ。見るからに女と縁がなさそうな醜い男たちが折り重なるように狭い部屋に押し込められ、煙草の煙にまみれながら携帯電話の画面を覗いている。そしておそらく彼らは軽く勃起している。この世の終わりみたいな場所だ。気持ちの悪さに身の毛がよだってしまう
フェミニストが憎み、罵り、滅ぼそうとしているのは風俗店の待合室にいるような男たちのことだろう。決して坂口君のような美少年ではない。この点に関して、私はフェミニストに深く同意する。彼らを消し去ることで、世界は少しだけ良くなると思わざるを得ない。私も消えてしまうけれども
おそらく坂口君は、平均的な非モテ中年の何十倍、何百倍もの女性を傷つけ、悲しませ、不安にさせてきたはずだ。しかし、世の女性はそれでも坂口君を愛する。そして彼に特別扱いされることを望む。フェミニストも坂口君を攻撃することはない。彼の存在そのものが女性を幸せにするからだ
私のような非モテ中年がフェミニストにお願いしたいのは、せめて我々が生きる権利だけは奪わないでほしいということだ。風俗店の待合室に来てしまうような種族は、自分ではどうにもできない性衝動と法律の折り合いをつけ、やむにやまれず安月給を工面して数万円を握りしめてやってきた善良な市民である
男がお金を払って快楽を得ようとすることに関して、女性の目は厳しい。それは本来なら淘汰され、消えてなくなるべき遺伝子が、お金の力で力を得ることへの本能的な嫌悪であると思う。この本能は現在の人権制度、博愛主義と完全に対立する。この点について現代社会はまだ��えを見いだせていないと思う
坂口君には女性を虜にする必殺技があった。それは笑顔で挨拶することだ。なんだ、それだけかと思うかもしれない。しかし彼は笑顔だけで女性を完全にコントロールしていた。私が見る限り、彼はいつも同じように笑顔の挨拶をしていたわけではない。人や状況に応じて、振りまく笑顔の量に濃淡をつけていた
坂口君が最大級の笑顔で挨拶をすると、女たちは皆、有頂天になった。成人女性とてそれは同じだった。みな狂ったように喜んだ。しかし、いつもそれをするわけではない。そうやって濃淡をつけることで、不安にさせたり、嫉妬させたりしながら女たちの行動をコントロールするサイコパス的な側面があった
それは幼少期から女性と濃密なコミュニケーションをすることで得られた天性の能力だろう。真似しようとしてできるものではない。「女性に優しく」と、よく恋愛マニュアルに書かれているが、大半の男が考える優しさは「弱さゆえの優しさ」であって、本質的には媚びや譲歩に近い
そしてこれは重要なことだが、女性はその「弱さゆえの優しさ」には興味がない。いや、嫌悪すらしていると思う。「弱さゆえの優しさ」でどんなに高額のプレゼントを貰おうとも、女たちはなびかない。むしろ坂口君から時に冷たくされ、時に嫉妬させられながら、ごくたまに優しくされる恋愛を選ぶ
坂口君に話しかけられた女性の反応は、若くてハンサムな白人男性に話しかけられた日本人女性のリアクションに近い。若い白人男性が日本人女性を次々といとも簡単にナンパする動画がネット上で賛否を呼んでいたことがあり、私もそれを興味深く観たが、あれはまさしく坂口君の周りで起こっていたことだ
六本木などを歩けばわかることだが、ハンサムな白人男性を連れて歩く日本人女性は不思議と欧米風の所作になる。彼女らは白人男性を連れて歩いているという状況そのものに酔っていて、「みんな見て、これが私の彼氏よ」とアッピールしたくてたまらないように私には見える
白人男性と交際すること、それを周囲に認識させることが自らの格をも上げるのだと確信していないと、ああはならないのではないか。少なくとも冴えない日本人男性を連れて歩く日本人女性は、六本木を彼女らほど我が物顔では歩かない。もっと申し訳なさそうにそそくさと歩いているように私には見える
思えば沢尻や波瑠さんは、坂口君と話しているとき、とても得意げだった。周囲に見せつけるように、「坂口君とこんなに仲が良い私」をアッピールしていた。そして我を忘れて会話を楽しんでいた。沢尻はともかく、波瑠さんまでが中学生相手にそんなになってしまったことは、私に強い衝撃を与えた
私が初めて風俗店へ行ってから数週間後、沢尻の母親からの電話が私の勤務する学習塾を大混乱に陥れた。最初に電話をとったのは私だ。母親が言うには沢尻が波瑠さんからしきりに服装について注意を受け精神的に参っていると。服装についての規則はないはずでは?何が悪いのかということだった
これは沢尻の母親に理がある。生徒の服装を職員が注意することは、基本的にはないはずだ。そんな場面を見聞きしたこともなかった。これは奇妙だ。そして母親は言いにくそうに、話を続けた。「あと…娘が波瑠さんにあなた処女じゃないで��ょって言われたみたいなんですけど…」。私は耳を疑った
沢尻母が校舎へやってくると、室長室へ通し、私は退席した。約1時間後、沢尻母が帰ると、今度は波瑠さんが室長室へと呼ばれた。授業時間になっても波瑠さんは戻ってこない。私は嫌な予感がした
納得がいくようでいかない、なんとも要領を得ない説明である。「波瑠さん、沢尻に派手な下着を着るなとか、ピタっとした服を着て来るなとか言ってたらしいですよ…。で、別の教室へ行って、すぐ辞めたみたい…」。私はそのことを坂口君から聞いた。そして事の真相にある程度の察しがついた
一連の騒動はおそらく坂口君をめぐる沢尻と波瑠さんの潰し合いなのだ。そして沢尻が勝ったと。坂口君と沢尻がイチャついていたのを見た波瑠さんが嫉妬し、坂口君におっぱいを密着させて接近した。それを察知した沢尻は波瑠さんのクビを獲りにきた…。そういうことなのではないかと
坂口君はなぜ波瑠さんの「その後」を知っていたのか。私は彼に「そんなこと誰から聞いたの?」とは聞けなかった。仮に聞いたら、彼はおそらく「だって波瑠さん、俺のセフレだよ」と無邪気に答えたであろう。波瑠さんに想いを寄せていた私は、それだけはどうしても聞きたくなかった
坂口君は波瑠さんのOKサインを見逃してはいなかったのだ。そして彼は波瑠さんとセックスしていたのだと思う。室長の聞き取りで波瑠さんは、沢尻への仕打ちだけでなく余罪も白状した。そして警察沙汰を恐れた塾側は、噂になる前に波瑠さんをクビにした…。これが坂口君の口ぶりから察した私の仮説である
坂口君と波瑠さんは、いったいどんなセックスをしていたのだろう。15歳にして180cm近い長身、私より10cm以上も高い。きっと性器も立派なのだろう。少なくとも私のような仮性包茎のイカ臭い、粗末な性器ではないはずだ。場馴れした手つきで波瑠さんをリラックスさせ、「好き」と囁き合ったのではないか
坂口君は30人以上とやったと豪語していた。多少盛っていたかもしれないが、説得力はあった。セフレの女子大生からの「生理来たよ」というメールを見せてきたこともあった。当初、私はその意味がわからなかった。数日してようやく危ない日にコンドームなしでセックスしたことを意味するのだと悟った
童貞の男はそんなことも分からないくらい察しが悪い。そのくせ嫉妬深い。坂口君と波瑠さんがセックスしていたことに気付いた日、私は帰宅するなり自慰をした。波瑠さんを奪われた怒りに近い感情が、なぜか興奮を高めた。怒りと興奮で顔を紅潮させながら、あらん限りの力を込めて性器を握りしめていた
そのときの私はこの世のものではないくらい醜い顔をしていたはずだ。嫉妬に狂いながら坂口君が波瑠さんを愛撫する姿を想像し、「畜生、畜生…」と呟きながら性器を握りしめた。膣内射精障害が悪化するとも思ったが、どうにでもなれという自暴自棄の気持ちが勝っていた
そのときなぜか波瑠さんが小ぶりなおっぱいを精一杯寄せて、坂口君の性器を挟んでいる像が思い浮かんだ。パイズリだ。なぜそんなイメージが浮かんだのかはわからない。心の奥底に閉じ込めた性衝動が脳内で不可思議��暴発したのだと思う。そして、その瞬間、私の性器は精子を垂れ流した
その後、私は坂口君の立派な、私の倍くらいはあるだろう性器を波瑠さんが小さな乳房で一生懸命に包み込んで奉仕している場面を思い浮かべながらもう一度、射精した。その後、今度は波瑠さんが坂口君に攻められ、涙声で「ごめんなさい」と言いながら絶頂に至る妄想でさらにもう一度、射精した
それにしても波瑠さんはなぜ沢尻なんかに目くじらを立てたのだろう。たしかに職員にとって沢尻は苛立たしい存在ではあった。反抗的で知性に欠け、徒党を組むタイプの女だ。が、所詮中学生。美人だが波瑠さんの上品な美しさとはモノが違う。しかし沢尻にあって波瑠さんにないものが一つだけあった
大きな乳房だ。沢尻は中学生の割におっぱいが大きかった。それを見せつけるように胸の谷間も露わなキャミソールを着てくることもあった。波瑠さんは沢尻の胸の大きさに嫉妬していたのだろうか。普通ならば、そんな結論には至らない。何より女性は男が思うほど、恋敵の胸の大きさを気にしない
本当のところはわからないが、少なくとも気にしない素振りを見せる。しかし、こんな普通じゃない状況になった今、どんな可能性だってありうるように思われた。沢尻が大きな胸で坂口君を誘惑していると確信した波瑠さんが、嫉妬にかられ派手な下着や体のラインが出る服を着ないよう命じた…
そんなのはアダルトビデオの中だけの話。そうやってシンプルに考えられる人を私は羨む。いろいろな可能性を考えたとしても、それは何も生まない。真相は本人に聞いてみなければわからないのだから、考えたって仕方がないのだ。本人ですら、自分が何を考えているのかわからないのかもしれないが
波瑠さんは胸は小さく、おそらくAカップかBカップといったところだったが、170cm近い長身で顔が小さく手足が長い。他人の美貌に嫉妬するようなコンプレックスがあるようには見えなかった。沢尻は165cmくらい、Dカップくらいだろうか。大人びてはいるが品の無いヤンキーみたいだなと思うこともあった
私は波瑠さんに話しかける勇気はないくせに、チラチラと盗み見ていた。ブラウスの間からブラジャーが見えていて、凝視してしまったこともあった。もう少し角度をずらせば波瑠さんの胸の大きさが確認できるような気がした。思えばあれは気付かれていただろう。なんとも情けない話だ
真剣佑という俳優が14歳当時、37歳の子持ち既婚女性と肉体関係を持ち、その女性が真剣佑との間に生まれた子供を出産したというスキャンダルがあったはずだ。私はこの報道を聞いて真っ先に坂口君と波瑠さんのことを思い出した。この世には現実にこういうことがあるのだ。「事実は小説より奇なり」である
37歳人妻の理性はなぜぶっ壊れたのか。希少性の法則という言葉がある。人は希少なものや機会には価値があると思い込み、しばしば非合理的な行動をとる。旅先で割高な土産物を買ったり、閉店セールで安いからと絶対に使わないものを買ったりしたことはないだろうか
希少性の法則は性愛においてこそ当てはまると私は考える。目の前にいる美少年が完全に自分の好みのタイプで、彼にいま好意を伝えなければもう会えないかもしれないという状況があったとしたら、女の理性は少しづつ壊れていく。「こんな子にはもう出会えないかも」「今しかない」という感覚
それでも法に触れることを恐れて、性衝動を理性で強引に閉じ込めるのが普通の人間だ。しかし、心の奥底に折り畳まれた性衝動を侮ってはいけない。理性で閉じ込めるたびに性衝動は力を増す。性的な衝動を発散する機会が少ない、抑圧された女性の性衝動は男の数倍強い
希少性の法則を突き詰めれば、非モテ男の生存戦略は希少性を獲得することということになる。容姿に恵まれていないが幸せな性愛生活を送りたいと願うなら、希少な存在になるべきだ。この観点から、モテたくてバンドをやる、芸人を目指す、漫画家を目指すという行為はまったく正しい
希少な存在だけが女の心を揺さぶり、理性の扉を開くことができる。モテたいのに会社員になってそれなりの年収を貰おうと努力するのは完全に間違っている。そもそも非モテは会社で出世できない。会社とは非モテがせっせと努力して得たものをリア充がまるで自分の手柄のようにかっさらっていく場所だ
イケメン男子中学生に手を出した年上の女は、遊ばれた挙げ句、無残に捨てられるだけなのになぜ…?と理解ができない人もいるだろう。非常に浅はかな考えだ。性愛に賭ける女の深い情念を甘く見すぎている
女はイケメンに近づけば遊ばれ捨てられることなど百も承知なのだ。15歳の美少年に手を出せば、彼と同世代の美少女と比較され、子供と侮っていた女に男を奪われ、時に恋敵の女子中学生よりも胸が小さいというみじめな現実を突きつけられ嫉妬に狂うことだって覚悟の上なのだ
男子中学生と成人女性の間には、事実、性愛関係が成立する。たった今も地球のどこかで男子中学生と成人女性はセックスをしている。にも関わらず、それは世間的には許容されない。いや、法的、社会的、道徳的、教育的などあらゆる観点からそれは否定される
そして弱虫や嘘つき、偽善者たちは、男子中学生と成人女性の性愛関係など、この地球上にまるで存在していないかのように振る舞う。しかし、私は文学的、ないし芸術的な観点からは、それを肯定したい。少なくとも私には坂口君に肩を揉まれ至福の表情を浮かべる波瑠さんを咎める気にはなれなかった
私は数日前にTwitterでここに書いたトラウマを吐き出したことで、ようやく性愛と向き合うことができた。性愛以上に大事なものはこの世に存在しないことにようやく気付いた。そして素人童貞なりに、この世にどうにか自分の爪痕、生きた証を残したいという強い生の衝動に突き動かされてこれを書いている
私の書く文章を気持ちが悪いと思う人は多いだろう。作り話だ、決めつけだ、素人童貞に何がわかるという意見だってあるはず��。批判したければ批判するがいい。笑いたければ笑えばいい。しかし、批判しても笑っても、すべての人間に気色の悪い性的衝動が存在する事実を消し去ることはできない
この一連のツイートを波瑠さんと、私を射精に導いたすべての女性に捧げる…って、捧げられても困るか…。まあいいや(完)
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明日、結婚しよう
勇利��試合のための荷造りを済ませると、居間へ行き、ソファで雑誌を読んでいるヴィクトルの隣に座った。 「ヴィクトルももう荷物できたの?」 「ああ、大丈夫。勇利もできた?」 「うん。いつかみたいにパスポートを忘れたなんて言わないでよ」 「あれは勇利を驚かせるための冗談だ」 「ヴィクトルの場合、冗談が本当になりそうでこわいんだよ。何が飛び出してくるかわからないひとだから」 「勇利がびっくりしてくれるならうれしいよ」 「そういう驚きはいらない。マッカチン」 勇利は部屋に入ってきたマッカチンを手招きし、腕いっぱいに抱きしめて頬ずりした。 「しばらくのあいだ留守番しててね。ヴィクトル、あずけ先には連絡した?」 「したよ」 「衣装はちゃんと入れた?」 「入れたさ」 ヴィクトルはにっこり笑った。 「できあがったとき着てみたら、勇利がうっとりしてとろけてたあの衣装」 勇利は聞こえないふりをしてマッカチンと交流した。だってかっこうよかったのだ。すてきなヴィクトルに見蕩れることの何が悪いのだ。 「言い返せばいいのに」 「なんて?」 「ヴィクトルこそ、ぼくの衣装姿を見てでれでれしてたじゃない、って。いまにもキスしそうだったよって」 「でれでれしてたのもキスしそうだったのも知らない」 勇利は立ち上がると、マッカチンと一緒にヴィクトルの寝室へ行った。ヴィクトルも明かりを消してついてきた。いつも彼の部屋で寝るわけではないのだけれど、試合におもむく前夜は、三人でこうしてやすむことにしている。このときばかりはヴィクトルもしぶしぶながら、下着とスウェットパンツを身に着ける。勇利としては上も着て欲しいのだけれど。 「おやすみ」 「おやすみ」 勇利が自然に手を伸べると、ヴィクトルがその手をつかんで優しく包みこんだ。彼は勇利にほほえみかけ、額にいつくしむようなやわらかいキスをした。勇利はヴィクトルの頬にそっとくちづけを返した。ふたりは青い闇の中で視線を合わせて微笑を交わし、足元にマッカチンのぬくもりを感じながら口を閉ざした。 勇利はなかなか寝つけなかった。試合の前はいつもそうだ。困るけれど、神経がたかぶるのは仕方のないことだし、どちらにしても時差のせいで体調は変わってしまう。この状況を、もう彼は受け容れていた。 「今夜も眠れないかい?」 勇利のことをよく知っているヴィクトルは、低い、ひそやかな声でささやいた。 「いつものことだよ」 勇利は穏やかに返した。 「ヴィクトルは寝て」 「ああ……」 ヴィクトルは身体を勇利のほうへ向けると、あいている手を勇利の頬に添えた。彼はなめらかな頬を撫で、黒髪を梳き、優しくほほえんだ。 「何も心配することはない」 「うん……」 「いつもそばにいるよ」 「うん」 勇利はヴィクトルの胸に顔をうずめた。そしてちいさく笑った。 「なんだい?」 「やっぱり服を着て欲しい」 「なぜ?」 「こんなふうに顔を寄せると変な感じがするから」 「かまわないじゃないか。いつでも俺の胸に飛びこんでおいで」 勇利はくすくす笑いながらヴィクトルに一度ぎゅっと抱きつき、それから身体を戻してあおのいた。最初のとおり、ヴィクトルは手をつなぐだけの姿勢になったけれど、指がからまっているだけで、勇利はひどく安心し、ヴィクトルからの深い愛を感じた。 勇利はヴィクトルを見た。いまはいつもより濃い色に染まっているうつくしい瞳が、きらりときらめいた。ヴィクトルがささやいた。 「勇利の目はうつくしい」 「え?」 ヴィクトルは黙って勇利の髪にくちづけし、勇利はまぶたを閉ざした。 「ヴィクトルとセックスはしてるの?」 試合のために訪れた中国で、勇利はピチットと会った。久しぶりに会えてうれしかったので、試合後、一緒にお茶を飲んでいたら、彼はそんなことを言いだしたから飲み物を噴き出しそうになった。 「な、なに言ってるのピチットくん……」 「いやあ、だって、そうかなって」 ピチットは頬杖をつきにこにこ笑った。 「普通そう思うでしょ。みんな考えてると思うよ。試合に出た選手も、コーチも関係者も、観客もみんな」 「ちょっと」 勇利はあきれかえった。 「そんなことあるわけないでしょ……なんでそんな大勢がぼくたちの事情を……」 「べつに真剣に考えてるわけじゃないよ。空は青い、海はひろい、雪はつめたい、勇利とヴィクトルは���しあってる、って感じだよ」 勇利は溜息をついて肩をすくめた。ピチットは興味津々という様子だった。何を言っても恥ずかしい話をひろめられそうで勇利は警戒した。 「何年だっけ?」 ピチットが尋ねた。 「ヴィクトルと一緒に暮らして」 「何年……」 勇利は戸惑った。何年、とただちに正確に答えることができなかった。ヴィクトルといると時間がひどく短く感じて、しかし彼とはずっと以前から親密に暮らしていた気がして、数えることが難しかった。 「おぼえてる? ヴィクトルが勇利のコーチになって初めての国際試合も、この中国だったよ」 勇利はほほえんだ。おぼえている。忘れられるわけがない。あのときはたくさんのことがあった。もちろんそのあとも、いろいろなことがあった。ヴィクトルといると事件ばかりだ。それがどれほど愉快で幸福なことか。 「あのとき、ヴィクトルが勇利を『俺のもの』って抱いてる写真をアップしたら、ものすごい反響だったよね。おもしろかった」 「ちっともおもしろくないよ。ぼくはあれからしばらくネットを見るのがこわかったんだから」 「勇利はもともとあんまりそういうの見ないじゃん。ヴィクトルはあれ、気に入ってくれたよ」 「ヴィクトルとぼくの意見はちがいますから」 「そうだろうね。よく言い争ってるよね。バンケットのときなんかとくに」 ピチットはふくみ笑いを漏らした。 「いちゃいちゃと」 「いちゃいちゃなんかしてない」 「そうかな。ヴィクトルは『勇利はまたわけのわからないことを言いだして』っていう顔をしながら、かわいくてたまらないっていう目つきで勇利をみつめてるし、勇利は『ヴィクトルの言うことはどうしてこんなに理解できないんだろう』っていうふうなのに、好き好き大好きヴィクトルしか見えないっていう熱烈な様子だよ」 「おおげさに言わないでよ」 「ひかえめに言ってるくらい」 そうなのだろうか。勇利はそっと頬に手を当てた。 「してないの?」 ピチットがまた尋ねた。勇利はまつげを伏せ、ゆっくりと瞬いた。 「……してないよ」 「うそ」 「なんで?」 「あんなに愛しあってるのに?」 勇利はちいさく笑った。ヴィクトルと勇利は愛しあっている。確かに。でも、愛しあっているからといって��ックスをするわけではない。 「そういう関係じゃないから」 「お互いをあんな目で見ておいて?」 「どんな目か知らないけど……」 「さっき言ったやつだよ。かわいくてたまらない、好き好き大好き」 「そんな目でみつめあえるだけでもうすごいことじゃない?」 ヴィクトルとは、本当にそういうことはしたことがなかった。勇利はヴィクトルを愛しているし、もし求められれば、という気持ちはあった。もしかしたらヴィクトルは自分をそういうふうに愛しているのかもしれないという予感をふと抱くこともあった。しかし結局ヴィクトルはしようとは言わなかったし、勇利も自分から提案するつもりなんてなかった。いまのままでじゅうぶんしあわせで、みたされていた。ヴィクトルに抱かれることになんの抵抗もないけれど、それを口にするなんて、勇利には発想すらなかった。 「それはそうだけど」 ピチットは残念そうに溜息をついた。 「それに、愛しあってたら絶対しなくちゃいけないっていうものでもないよ」 「しちゃいけないっていうものでもない」 勇利は笑っただけだった。ピチットはしばらく難しい顔で考えこみ、紅茶を飲むと、なんでもないことのように言った。 「ヴィクトルに訊いてみるよ」 「何を?」 「勇利とそういうことはしないのかって」 「ピチットくん!」 勇利は仰天して声を上げた。 「やめてよ、そういうのは!」 「どうして?」 ピチットは、なぜそんなに慌てるのかわからないという態度だった。 「勇利が訊けないなら僕が訊くよ」 「べつに訊けないわけじゃないんだよ」 「じゃあ勇利が訊けば?」 「そういうことじゃないんだ」 「どういうことなわけ?」 勇利は答えられなかった。ヴィクトルにそんな話をしてしまったら──そんなことになったら──。 「ヴィクトルと一緒にいなくていいの?」 急に話題が変わったので、勇利はよくわからず、「え?」と瞬いた。 「いま、ヴィクトルは何してるの? 勇利はのんびり僕とお茶なんか飲んでていいの?」 「ああ」 勇利は笑った。 「べつにそんなことはいいんだよ。四六時中一緒にいないと落ち着かないっていうわけじゃない。めんどうを見なくちゃいけない相手がいなくてくつろげるって、ヴィクトル、いまごろ羽を伸ばしてるんじゃない?」 「そうかな」 ピチットがおもしろそうに笑った。 「そう思ってるのは勇利だけみたいだよ」 「え?」 勇利は彼の視線を追い、店の入り口に目を向けた。ヴィクトルがちょうど入ってきたところで、彼は勇利をみつけると笑顔になった。勇利は愛する男の笑みにどうしようもないほどときめいた。 「ほら、好き好き大好き貴方しか見えないっていう顔」 「しっ」 「勇利」 ヴィクトルはふたりのいるテーブルまで来ると、勇利の隣に腰を下ろしてうれしそうにした。 「なかなか帰ってこないから迎えに来たよ」 「ピチットくんとお茶飲んでくるって言ったよね。忘れたの?」 「ちゃんと聞いたよ。忘れてない。でも、『なかなか帰ってこなかった』からね」 平然とするヴィクトルにピチットが噴き出し、勇利は、このひとは何を言ってるんだろうと思った。 「ずいぶん話がはずんだんだね。何を話してたんだい?」 「それがね、勇利とヴィクトルが──」 「わあ!」 ピチットが身を乗り出したので、勇利は思わず声を上げた。さっきのことを尋ねるつもりにきまっている。冗談ではない。そんな話をされてなるものか。 「なんだい?」 ヴィクトルがふしぎそうな顔をした。勇利はぶんぶんとかぶりを振った。 「なんでもない!」 「俺にはひみつなのかい?」 「たいしたことじゃないよ。もう行こう」 勇利は、ヴィクトルとピチットを長く会わせてはいけないと判断した。ピチットがどんなことを口走るかわからない。危険だ。 「勇利、早くヴィクトルとふたりきりになりたいってさ」 ピチットがからかうように言った。勇利はピチットをにらんだ。 「そうなのかい?」 ヴィクトルがはしゃい��。 「そう、そう、そうだよ。さあ行こうヴィクトル。もう行こう」 勇利は自分のお茶代をテーブルに置き、ヴィクトルの背を押して店を出た。出口でちょっと振り返ると、ピチットがにこにこ笑いながら手を振っていた。まったく……。 「勇利」 ふたりの部屋へ続く廊下を歩いているとき、ヴィクトルが機嫌よく勇利の腰を抱いた。 「早くふたりきりになりたかったって本当かい?」 勇利は驚いてヴィクトルを見た。ヴィクトルは期待をこめた目で勇利をみつめていた。勇利は笑いだし、彼の肩にもたれかかった。 「うん……、本当だよ」 ロシアへ戻っても、勇利はピチットと話したことについてヴィクトルに教えなかったし、もちろん彼とセックスもしなかった。これまでそうしてきたように、試合のことを考え、練習のことを考え、スケートのことを考え、そしてヴィクトルのことを考えて過ごした。ヴィクトルのことを考えると、自然とセックスのことも考えたけれど、やはり、それについてはひとことも口には出さなかった。 ヴィクトルは勇利を深く愛していて、よく抱きしめたり、髪にふれたり、手を握ったり、キスしたりした。勇利はそれをうれしく、気持ちよく受け取っていた。ヴィクトルにさわられるのは胸のときめく、すてきなことだった。身体じゅう、すみずみまで、そして身体の奥までヴィクトルに知ってもらえたらとても幸福だろうなとは思うけれど、そんなことを言うつもりはなかった。 「勇利、着てごらん」 シーズンの途中、これまで着ていたのとは別の衣装をつくったとき、ヴィクトルは勇利以上にはしゃいで、届いたばかりのそれをひろげた。勇利はいまのままでいいと主張したのだけれど、ヴィクトルが「このプログラムの新しい魅力を引き出す手助けになる」と言い張って、意見を通してしまったのだ。 「ど、どう……?」 勇利は、いままでとはまったくちがう印象の、それでいてプログラムの雰囲気を引き立てる衣装を身にまとい、おずおずと尋ねた。鏡をのぞいてみても、自分に似合っているのかどうかわからなかった。こういうことに関して、勇利はいつまでも自信を持てない。 「動きとかは問題ないけど……、見た感じがわからない。変じゃない? 変じゃない?」 不安がって、何度も背中や横からの角度を鏡で確かめる勇利を、ヴィクトルはこわいくらい真剣な顔でみつめていた。彼のその厳しい目つきに、勇利はやはり似合わないのではないかという恐怖をおぼえた。 「勇利……、もっと堂々とするんだ」 「だって……」 「とても似合ってるよ」 「そうかな。そうかな。でもいままでとぜんぜんちがうね」 「だからいいんだ」 「それはわかるんだけど」 「勇利」 ヴィクトルが、鏡の前ですらっとした立ち姿をしている勇利につかつかと歩み寄った。勇利はヴィクトルを見上げた。ヴィクトルは勇利を引き寄せ、すこし身をかがめて、くちびるに優しくキスした。勇利はびっくりして目をまるくした。 「うつくしいよ、勇利」 ヴィクトルははかりしれぬ笑みを浮かべ、勇利だけを熱っぽい瞳に映してささやいた。 「早くみんなに見せたい。俺の綺麗ないとしい勇利を」 ヴィクトルは勇利の腰を抱いてもう一度キスした。勇利は今度は驚かず、まぶたを閉ざして彼の腕にそっと手を添えた。胸が痛いほど高鳴って、うずいて、甘さがあふれた。くちびるが離れたとき、勇利の瞳はしっとりとうるんでいた。それに気がついたヴィクトルがまなじりに接吻した。 「かわいいかわいい俺の勇利」 ヴィクトルは完全にとりのぼせたような目で勇利を見るから、勇利は気恥ずかしくなってうつむいて���まった。ヴィクトルは笑っていとおしそうに勇利を抱きしめた。勇利は、今夜抱かれてもいいと思った。抱いてもらいたいと思った。そうしたらヴィクトルにもっと知ってもらうことができるし、ヴィクトルを知ることもできる。いまより深い愛を伝えられるかもしれない。ヴィクトルとそうすることが当たり前だとさえ勇利は感じた。ヴィクトルとなら──。 しかしやはり、彼はそのことを口にはしなかった。これからさきも言うつもりはなかった。だって──。 言ったら、終わってしまう。 そんな気がした。 もしヴィクトルにそんな気がまったくなかったら? 彼を困らせるだけだ。せっかく仲よく、親密に暮らしているのに、ふたりの生活のいとなみがおびやかされるだろう。勇利が気にしないでと言い、ヴィクトルがわかったと了承したとしても、ふたりのあいだの何かが変わってしまう。もう元には戻れない。もしヴィクトルが同じ気持ちだとしても──、それでもやっぱり変わってしまう。いつかヴィクトルが勇利にそういう気持ちを持たなくなったとしたら──、そのときも、元には戻れない。しかし、このままなにごともなく暮らしていけば、いつまで経ってもふたりはこんなふうに、むつまじくいられるのだ。 勇利はいまがしあわせで、毎日がいとおしく、それをけっして壊したくはなかった。ヴィクトルを愛し、ヴィクトルに愛され、ふれられ、キスをされる輝かしい日々が終わるようなことはしたくなかった。ヴィクトルに抱かれることは喜びだろうけれど、いまこうして、彼のそばにいることもまた喜びなのだ。 季節がめぐり、いくつものシーズンをふたりで乗り越えたけれど、やがてそれにも終わりが来る。勇利はある年、自分の選手生活を終えることを発表した。いちばんにヴィクトルには打ち明けて、ふたりはよく話しあい、新しい未来にすばらしい希望を持った。最後のグランプリシリーズが始まり、グランプリファイナルに出場し、四大陸選手権、そして本当に最後の試合である世界選手権が幕を閉じた。 エキシビションに出場した勇利は終幕の挨拶を終え、スケーターたちのいちばんあとから氷を出ようとした。彼はみんなからもらった大きな花束を抱えており、頭には、青いばらのかんむりを頂いていた。 「勇利」 ふと顔を上げると、退場口のところにヴィクトルがいて、彼はきわだった笑顔で白い歯を見せていた。 「ヴィクトル」 勇利は抱擁を求めて彼に近づこうとした。しかしそれより早く、ヴィクトルが言った。 「結婚しよう」 「──え?」 勇利のスケートシューズが音をたてて止まった。氷から上がったばかりの選手たちが驚いて振り返り、関係者や、近くの席の観客たちが息をのんでヴィクトルを見た。 「ヴィクトル……、いま……、なんて……?」 勇利はささやいた。ヴィクトルはすばらしい笑顔でもう一度言った。 「結婚しよう!」 彼は両手をひろげた。 「と言ったんだよ!」 勇利はなおもぼうぜんとしてヴィクトルをみつめていた。どうして? そう訊きたかった。しかし彼のくちびるから出たのは、疑問の言葉ではなかった。 「する!」 勇利は叫んでヴィクトルの胸に飛びこんだ。 「貴方と結婚するよ、ヴィクトル!」 そのあとのことはおぼえていない。 「いままでずっと我慢してたんだ」 ホテルの部屋でようやくふたりきりになったとき、ベッドに並んで座ったヴィク���ルは、勇利の手を、離すものかというふうに握りしめてささやいた。 「どうして?」 勇利はヴィクトルの肩にもたれかかり、うっとりとまぶたを閉ざして、よいこころもちで尋ねた。 「しなければならなかったからさ」 「金メダルを��っても結婚しようっていう感じじゃなかったから、冗談だったんだろうなって思ってた」 「冗談なものか。俺が人生でいちばん本気だったもののひとつがその宣言だ」 ヴィクトルは言ってから得意そうに笑った。 「ほかの本気は、スケートと、もちろん全部勇利のことだよ」 勇利はまぶたを開けると頬をあからめ、熱心にヴィクトルをみつめた。 「勇利はふたつのことは同時にできないだろう?」 ヴィクトルは優しく言った。 「え?」 「スケートと一緒にほかのことはできない。スケートをしているときはスケートのことで頭がいっぱいさ。俺は知ってる」 ヴィクトルは自慢してから、ひとつうなずいて付け足した。 「いまだに勇利のことはよくわからないけど」 勇利は笑いだした。 「矛盾してない?」 「でもそれはわかるよ。勇利が本気だっていうことはね」 「スケートに本気だったのはそのとおりだけど……、そうなのかな」 勇利は首をかしげた。 「ぼくはスケートと同時に何かをすることはできないの?」 「俺は勇利のことはなんでも知ってる」 よくわからないと言ったばかりなのに、ヴィクトルはまたそんなことを宣言した。 「勇利のコーチだからね」 勇利はちいさくおとがいを引くしぐさをし、ヴィクトルの肩に頬をこすりつけた。彼はささやいた。 「……いつ、結婚するの?」 「明日」 ヴィクトルは迷わず答えた。勇利はびっくりして顔を上げた。 「明日?」 「そうだよ」 ヴィクトルはうれしそうに笑った。 「もう一日だって待てないよ。俺は、勇利が引退する日なんて永遠に来なければいいと思いながら、勇利との結婚を夢見てたんだ。つじつまの合わない俺の気持ち、わかるかい?」 「わからない」 勇利があっさり答えると、ヴィクトルは陽気に声を上げて笑った。 「そうだろう。おまえにはわからないだろう。それでいい」 「でも、明日って、どうやって?」 「どうとでもなるさ」 ヴィクトルは平然としていた。 「俺が勇利と結婚したいと思って、勇利も同じ望みを持ってくれたなら、もうそれでなんでもできる」 「そう……、そうだね」 勇利はほほえんだ。ヴィクトルは、どんなことでも可能にしてしまう。彼はいつだってすてきな希望を示してくれた。彼とならなんでもできる。 「明日、結婚しよう」 ヴィクトルが熱っぽくささやいた。 「うん」 勇利はしっかりと握られた手を、こころをこめて握り返しながらうなずいた。ヴィクトルは微笑し、勇利の頬に手を当てて、そっと引き寄せ、キスをした。ヴィクトルとキスするのは初めてではなかったけれど、夢のような接吻だった。どきどきしたし、くらくらしたし、笑いたくなったし、泣きたくなった。 「じゃあ、今夜が独身最後の夜だね」 勇利はいたずらっぽく言った。 「そうだ。勇利は何かしておきたいことがある?」 「ヴィクトルと一緒にいたい」 勇利が声をはずませて望みを述べると、ヴィクトルははしゃいだ笑い声を上げた。 「ヴィクトルは?」 「俺かい? 俺は……」 ヴィクトルはいったん言葉を切り、はかりしれぬ優しい瞳で勇利をじっとみつめた。勇利はその甘いまなざしだけで、もうぽーっとなってしまった。 「勇利とセックスがしたい」 「……えっ?」 勇利はびっくりして目をみひらいた。ヴィクトルはやはり、優しく笑っていた。 「勇利とセックスがしたいな」 「…………」 勇利はまっかになった。何か答えようとし、口を閉ざし、それからぱちぱちと瞬いた。 「勇利は婚前交渉は感心しないたちかい?」 ヴィクトルは勢いこんで、熱意のこもった声で尋ねた。 「初夜は結婚してから迎えるべきかな?」 「え……っと……」 ヴィクトルは青い目を少年のように輝かせ、勇利がいとしくてたまらないというふうにみつめていた。勇利は、どうしようもなく彼が大好きだと思った。 「……そんなこと、訊かなくてもわかるでしょ」 勇利は甘えるようにささやいた。 「ヴィクトルはぼくのことをなんでも知ってるんでしょ?」
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南シナ海で何が起きているのか
「緊急ニュースをお伝えします。先ほどアメリカ軍が、南シナ海に中国が建造した人工島を攻撃し、破壊した模様です……」
これから2~3ヵ月後、こんなキナ臭い事態が起こりかねないほどに、米中間の緊張が高まりつつある。
7月に入って、アメリカ海軍は、まるで憑りつかれたかのように、南シナ海を目指している。アメリカの独立記念日にあたる4日、アメリカ海軍は「二つの空母打撃群が自由へのアメリカの関与を強化」と題する発表を行った。空母ニミッツと、横須賀港を母港とする空母ロナルド・レーガンを南シナ海に派遣したというものだ。
〈 ニミッツ空母打撃群は、自由で開かれたインド太平洋を支援する「空母2隻作戦」と演習を実施する南シナ海に配備され、比類なき海軍力でもってアメリカの独立記念日を祝った。
高度に統合された訓練は、あらゆる領域の戦闘環境で、比類なき柔軟性、耐久性、機動性、そして火力を構築する。これらの取り組みは、国際法が許可するところなら世界のどこへでも、すべての国が航空、航海、および操業する権利に立ち向かうというアメリカの公約の永続をサポートするものだ。
空母攻撃部隊は、ニミッツとロナルド・レーガンで構成され、防空能力を最大化し、急速に進化する作戦地域での空母ベースの航空機による長距離精密海上攻撃の範囲を拡大するために設計されたいくつかの戦術演習を行った。
防空演習と攻撃演習中、ニミッツとレーガンの航空機は、敵の攻撃を想定して、脅威を検出、傍受、関与する能力をテストする。演習では、パイロットの習熟度を高めながら、現実的な環境での防御を調整する実践的な経験を、船上の戦術スタッフに提供する。
ロナルド・レーガン空母打撃群は、アメリカ海軍で唯一の前方配備(アメリカ本土以外を母港とする)攻撃群であり、アメリカ海軍の可視的抑止の象徴の一つだ。ニミッツとレーガンは世界で最も効果的で機敏な戦闘力を発揮し、地域の同盟国や友好国との相互防衛協定に対するアメリカの取り組みを支援し、平和と繁栄を促進するものだ 〉
続いて、3日後の7日にアメリカ海軍が発表した「レーガン、ニミッツは自由で開かれたインド太平洋への比類なき関与を示す」。
〈 ニミッツとロナルド・レーガン空母打撃群は、7月6日現在、南シナ海で「空母2隻作戦」を実施中だ。全領域環境での戦闘準備と能力を強化するために、いくつかの演習と運用を行った。統合された作戦には、防空演習、戦術操縦訓練、想定される長距離海上攻撃シナリオ、および戦闘準備と海上優位性を維持するための空中および水上演習の調整が含まれた。
「レーガンを派遣した目的は『力による平和』だ」と、ロナルド・レーガン���指揮官であるパット・ハンニフィン大尉は言う。「われわれは同盟国とともに、自由で開かれたインド太平洋に力を注ぐ」
空母2隻での運用は、特に航空領域において、到達距離、電力予測、および運用の継続性を向上させる。毎日何百機もの航空機を発着させ、24時間連続で稼働させた。攻撃部隊は、航空優位性の範囲を拡大し、地域全体でより優れた安全を提供することに成功した。
ニミッツ空母打撃群は、6月17日に第7艦隊エリアに到着した。「われわれの活動は、国際法によって保証される海域と空域の権利、自由、合法的な使用を強化するものだ」と、空母ニミッツ航空ウィング17の司令官であるトッド・シミカータ大尉は語った 〉
この2隻の空母打撃群による南シナ海での大規模な演習は、7月上旬に終わったと思いきや、中旬になって再び開始された。
同じくアメリカ海軍の7月16日の発表「ロナルド・レーガン空母打撃群は南シナ海で高度なサポートを提供する」。
〈 ロナルド・レーガン空母打撃群は、7月17日現在、自由で開かれたインド太平洋を支援する南シナ海での作戦を継続中だ。その間、インド太平洋の同盟国や友好国との相互防衛協定に基づいた、応答性が高く、柔軟で永続的な関与を維持する高度な演習と運用を行っている。
ニミッツ空母打撃群と協力して、戦術防空演習を実施することにより、戦闘の準備と習熟を維持することができた。これらの統合された演習は、地域の緊急事態に対応する海軍の能力を向上させるものだ。
アメリカ海軍は、自由で開かれたインド太平洋を支援し、各国が国家の主権を犠牲にすることなくその能力を発揮できる、国際ルールに基づく秩序を促進するために、統合的な攻撃群作戦を、定期的に実施していく 〉
さらに、翌17日のアメリカ海軍の発表「ニミッツ、レーガンは同盟国や友好国とともに南シナ海で立ちはだかる」。
〈 アメリカ海軍第7艦隊司令官のビル・メルツ副提督は語った。
「理念を同じくする地域の友好国とともに、国際法が許す場所ならどこでも機動させ、アメリカの直接的なサポートによって航空、航海の解決を図っていく。わが海軍の能力と柔軟性は、インド太平洋の安全と安定をすべて網羅するものだ。われわれの地域への関与以上によい例はない。われわれは定期的に、第7艦隊に複数のチームを集め、大規模な協調作戦を訓練していく」
ニミッツとレーガンは、世界で最も効果的で機敏な戦闘部隊の一つであり、地域の同盟国と友好国の相互防御体制に対するアメリカの関与を支持するものだ 〉
中国が南シナ海でやっていること
このように、アメリカ軍は、南シナ海への関与を、急速に増やしているのである。その理由について、日本のある防衛関係者に聞いたところ、こう答えた。
「中国は現在、南シナ海に防空識別圏を敷く準備を進めていて、まもなく宣言するものと思われる。アメリカ軍はそれを妨害する意味で、南シナ海での行動を活発化させているのだ。7年前のようにはさせないぞということだ」
「7年前」というのは、習近平政権が発足して約8ヵ月後の2013年11月23日、中国国防部が突然、東シナ海における防空識別圏(ADIZ)を設定したと発表したことを指す。
この日、日本は勤労感謝の日の祭日だったが、首相官邸、防衛省、外務省な��のスタッフが参集し、慌てて善後策を練る騒ぎになった。外務省は当時の程永華駐日大使を呼びつけて抗議している。
日本が慌てたのは、中国が防空識別圏を突然、発表したこともあったが、設定した防空識別圏に、日本固有の領土である尖閣諸島が含まれていたことが大きかった。当然、日本の防空識別圏とも重なっている。実際、中国は以後、尖閣諸島海域への公船の進入を増加させていった。
最近では、7月16日まで94日も連続で、中国の公船が尖閣諸島の接続水域に進入している。また、7月14日には4隻もの公船が、尖閣諸島の領海にまで侵入している。その前にも、7月2日から5日まで4日連続で、2隻の中国公船が尖閣諸島の領海に侵入している。
確かに、中国としては一日も早く、東シナ海と同様に、南シナ海にも防空識別圏の設定を宣言し、この海域全体の支配を強めていこうという思惑があるのだろう。防空識別圏の一件は、中国外交部の定例会見で、海外メディアからたびたび質問が出ているが、外交部報道官は否定せず、「(設定は)合法的権益の行使だ」と居直っている。
中国はすでに今年4月、海南省三沙市に、「西沙区」と「南沙区」という新たな行政区分を定めている。西沙区は西沙(パラセル)諸島とその海域を管轄し、西沙区政府を永興(ウッディー)島に置いた。南沙区は南沙(スプラトリー)諸島とその海域を管轄し、南沙区政府を永暑(ファイアリークロス)礁に置いた。
そして南沙諸島では、習近平政権になってから7つの岩礁に人工島を建設中である。永暑礁、華陽(クアテロン)礁、渚碧(スービ)礁、美済(ミスチーフ)礁、南薫(ガヘン)礁、東門(ヒューズ)礁、赤爪(ジョンソンサウス)礁の7ヵ所である(渚碧礁に代わって安達(エルダド)礁を入れて7ヵ所としている分析もある)。アメリカは衛星写真などから、それぞれ軍事要塞化が進んでいると分析している。
こうした7つの人工島や、ベトナムに近い西沙(パラセル)諸島の永興(ウッディ)島、フィリピンに近い中沙諸島の黄岩島(スカボロー礁)などで、中国は軍事要塞化を進めていると、アメリカは指摘する。
中国は、南シナ海のほぼ全域を「中国の海域である」と宣言していて、「九段線」という9本のラインを引いて囲っている。これは、1947年に中華民国が定めた「十一段線」を、中国を統一して4年後の1953年に、友好国のベトナムに配慮して、ベトナム近海に引いていた2本の線をカットして「九段線」としたものだ。
だが、2016年7月12日、その2年前にフィリピンが中国に対して申し立てを行った国際司法裁判で、ハーグの常設仲裁裁判所は、中国の主張を全面的に退ける判決を下した。「九段線には歴史的権利を主張する国際法的根拠はない」「中国が南沙諸島などで建設中の人工島は岩(��潮高地)にすぎない」などと判断したのだ。
中国は「そんな判決は紙屑にすぎない」と開き直ったが、アメリカは2015年10月以降、南シナ海で「航行の自由作戦」を敢行している。これは中国が「自国の領海」と主張する人工島から12カイリ以内に、故意にアメリカ海軍のイージス駆逐艦などを進入させるオペレーションだ。
2018年9月には、南沙諸島の海域で、アメリカ軍と中国軍の駆逐艦が約41メートルまで接近する一触即発の事態まで発生している
ポンペオ米国務長官が痛烈批判
7月13日、ドナルド・トランプ大統領の最側近の一人で、対中強硬派として知られるマイク・ポンペオ米国務長官が、「南シナ海の海洋主張に対するアメリカの立場」と題した長文の声明を発表した。
アメリカの国務長官が、南シナ海に関して、ここまで痛烈に中国を批判したのは初めてのことである。そのため、少し長くなるが全訳する。
〈 アメリカ合衆国は自由で開かれたインド太平洋を擁護する。今日、アメリカは核心的で論争がある地域の政策を強化している。それが南シナ海だ。われわれがはっきりさせたいのは、南シナ海で北京が主張する海洋資源のほとんどのものは、完全に違法だということだ。それらは、南シナ海を横暴にコントロールしようとする中国のキャンペーンなのだ。
南シナ海において、われわれは平和と安定を保持しようとしており、国際法に則って公海の自由を守り、商業が妨げられない流れを維持しようとしている。そのため、論争を収めるために強制力や武力を行使するいかなる試みにも反対する。そしてこれらの奥深くて不変の権益を、多くの同盟国や友好国と共有する。彼らは法に基づいた国際秩序を長きにわたって支持している人たちだ。
これらの国々の共通の結束は、中国からの前例のない脅威から来るものだ。北京は、南シナ海の沿岸地域にある東南アジアの主権を徐々に蝕んでいき、沖合の資源から追い出し、一方的な支配を主張する。そして「力は正義なり」として、一方的に国際法を変更しようとする。
北京の手法は、長年にわたり明白だった。2010年に、当時の楊潔篪外相は、ASEANのカウンターパートたちに言った。「中国は大国であり、他の国々は小国というのが実状だ」。そんな中国が略奪していく世界観など、21世紀には居座る場所がない。
中国は、その地域に自国の意思を一方的に押し付ける法的根拠を持っていない。中国は2009年に、正式に「九段線」を主張しだしてから、首尾一貫した法的根拠を何ら示してこなかった。2016年7月12日に常設仲裁裁判所が、中国も加わっている1982年の国際海洋法に基づいて、中国の海洋主張は国際法の根拠がないとして退けた。常設仲裁裁判所は、訴え出たフィリピンの主張を、ほぼ全面的に認めたのだ。
アメリカが過去に述べてきたように、そして特に国際協定で示されているように、常設仲裁裁判所の判決は、双方に対して最終的かつ法的拘束力を持つものだ。今日、南シナ海に対する中国の主張を、常設仲裁裁判所と同様の立場で見て��るのが、アメリカである。
具体的には、スカボロー礁(黄岩島)とスプラトリー(南沙)諸島の経済水域(EEZ)を含む中国の海洋権益の主張には、何ら法的なものはない。逆に常設仲裁裁判所は、それらはフィリピンの経済水域もしくは大陸棚であると明らかにしたのだ。
その地域でのフィリピンの漁師たちや沖合のエネルギー開発に対する中国の妨害は、違法行為であり、それらの資源を拡張する行為は独善的なものである。
常設仲裁裁判所の法的で拘束力のある判決に沿って言うなら、ミスチーフ礁もしくはセカンド・トーマス(仁愛)礁に関して、中国はいかなる法的領有権も海洋権益も持たない。これらはどちらともフィリピンの主権と管轄下にあり、北京にはいかなる領有権も海洋権益の主張も保持していないのである。
北京が南シナ海において、合法的で一貫した海洋権益を主張することに失敗する中で、アメリカは、中国がスプラトリー諸島の島々から得られる12カイリの領海などのいかなる主張をも拒絶する。それは、島々に関する他国の主権の主張などの偏見を持たずにということだ。
つまりアメリカは、バンガード堆(ベトナムと関係なく)、ルコニア礁(マレーシアと関係なく)、ブルネイの経済水域、それに大ナトゥナ島(インドネシアと関係なく)を取り囲む中国のいかなる海洋権益をも拒絶する。これらの水域での他の国々の漁業や炭化水素開発を邪魔する中国のいかなる行為も、それらを一方的に実行することも、すべて違法だ。
中国は、ジェームズ礁、もしくはそこから得られる領有もしくは海洋の合法的権益は何も持っていない。完全に水中に覆い隠されたジェームズ礁は、マレーシアからわずか50カイリだが、中国の海岸からは1000カイリほども離れている。それが中国のプロパガンダのサイトでは、「中国最南端の領土」と出ている。
国際法は明快だ。ジェームズ礁のような水面下の場所は、どの国も(領有権を)主張できないし、海洋ゾーンを設定することもできない。約20mの水面下にあるジェームズ礁は、かつて中国の領土であったことはないし、現在も中国領ではない。そして北京はそこから合法的な海洋権益も主張できない。
世界は、中国が南シナ海を自己の海洋帝国のように扱うことを許さない。アメリカは、東南アジアの同盟国や友好国とともに、東南アジアの海洋資源の主権を保護していく。それらは彼らの国際法上の権利と義務に合致するものだ。
われわれは、海洋の自由を守り、主権を尊重し、賢明な地域である南シナ海において、「力は正義なり」といういかなる押し付けも拒絶する国際社会とともにあるのだ 〉
以上である。アメリカが中国に対して、激しい怒りをたぎらせていることが分かるだろう。
武力戦争勃発の可能性 だがこれは、裏を返せばトランプ政権の大統領選に向けた「選挙戦術」とも言える。
中国が発生源と思われる新型コロナウイルスの蔓延などによって、アメリカ人の対中感情は、1979年の米中国交正常化以降、最悪と言えるほど悪化している。そうした国内世論を受けて、共和党のトランプ陣営と民主党のジョン・バイデン陣営は、どちらが対中強硬派かという争いをしているからだ。
7月19日にABCニュースとワシントンポスト紙が発表した最新の世論調査によれば、バイデン候補支持が55% 、トランプ大統領支持が40% で、その差は15% まで開いた。トランプ大統領としては、差を縮めていかねばならないのに、逆に開く一方である。
こうした傾向が続けば、11月3日の投票日前の9月か10月頃、トランプ政権が「最後の賭け」に出る可能性がある。それが、「中国と局地戦争を起こすこと」だ。
そもそも、この2年あまりで、米中は全面戦争の様相を呈してきた。具体的には、貿易戦争、技術戦争、人権戦争、通貨戦争、疫病戦争といったものだ。こうした流れが続けば、いずれは局地的な武力戦争が避けられなくなる。
武力戦争の可能性がある場所は、南シナ海と東シナ海(台湾近海や尖閣諸島近海も含む)である。なかでも、中国が習近平政権になって造った南沙諸島の人工島は、中国の民間人はほとんどいないし、常設仲裁裁判所が「違法だ」と判決を下している。アメリカ軍が攻撃しても、人道的もしくは国際法的に責任を問われるリスクは少ないのだ。
また、ポンペオ国務長官も述べているように、中国本土から1000kmも離れているため、中国との全面戦争にもなりにくい。それでいてアメリカ国内では、「悪の中国の建造物をぶち壊した」とアピールすれば、支持率を上げるだろう。大統領選挙には直接関係ないが、東南アジアの一部の国々も、喝采するかもしれない。
ちなみにアメリカ軍は、いまから21年前の1999年5月7日、B-2爆撃機でベオグラードの駐ユーゴスラビア中国大使館を爆撃したことがある。この時は大使館員ら3人が死亡し、20人以上が負傷したが、それによって米中が全面戦争に発展することはなかった。
冒頭のような「臨時ニュース」が現実のものとならないよう、日本としても注視していく必要がある。
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織田先生の論稿より
3ー3ー2フォーミュラーから4ー4ー2フォーミュラーへ
マティス発言にぬか喜び禁物、強か中国次の一手
米国が守ってくれる幻想を捨て、尖閣を自ら守る体制整えよ
. 政策提言委員・元航空支援集団司令官 織田邦男
2月3日(金)、ジョージ・マティス米国国防長官が来日した。安倍首相はトランプ新政権発足後、初の重要閣僚の来日に対し、「揺るぎない同盟を更に確固たるものにしたい」と述べて歓迎した。
翌4日に実施された稲田朋美防衛大臣との会談では、日米同盟がアジア太平洋地域の平和と繁栄を支える公共財であること、そしてトランプ新政権との間で、日米同盟の重要性が相互に確認できたことは、大きく評価できる。
米国の「核の傘」による拡大抑止の維持、北朝鮮、中国に対する脅威認識、普天間飛行場の名護市辺野古への移転に対する相互認識の一致など大きな成果があった。なかでも、マティス国防長官が「尖閣が安保条約第5条の適用対象」と語ったこと、そして在日米軍駐留経費負担が「他国の模範」と述べたことが、日本政府にとっては、何よりの成果であった。記者会見における稲田防衛大臣の安堵と高揚感の入り混じった表情からも見てとれる。
尖閣への「5条適用対象」発言については、2014年4月、オバマ大統領訪日の際、安倍首相との首脳会談で初めて述べられたものである。彼は次のように述べた。「日本の施政下にある領域は日米安保条約第5条の適用対象であり、尖閣諸島もそれに含まれる」
今回のマティス発言は、トランプ政権でもこの姿勢を引き継ぐことを明らかにしたものであり、尖閣の領有権を狙う中国に対する力強いメッセージになる。日本にとっては、マティス訪日の最大成果であろう。だが、手放しでは喜んでいるわけにはいかない。政府の安堵とその高揚感ぶり、そしてメディアの「はしゃぎぶり」に、大いなる違和感を感じたのは筆者だけではあるまい。これには二つの大きな問題が包含されている。
この発言は、安倍首相との会談の冒頭、マティス長官から自発的に述べられたものである。NHKは7時のニュースを報道中、わざわざ「ニュース速報」を出した。マティス米国防長官が「日米安全保障条約の第5条が『沖縄県の尖閣諸島に適用される』と明言した」と流したのだ。だが、果たして「ニュース速報」を流すような性格のものなのだろうか。
ある評論家は「所領を安堵された御家人」のはしゃぎ様だと揶揄した。筆者も同感である。「アメリカさん、どうか尖閣を守ると言ってください」となりふり構わず懇願し続けた末に、「アメリカさんが言ってくれた。バンザイ!」というような、まるで属国意識丸出しのような報道ぶりに、思わず赤面した人も多いのではないだろうか。
安保法制の時も、イラク派遣の時もそうだった。「アメリカへの従属だ」「アメリカのポチ」だと批難してきたメディアがこういう報道をするから、余計に複雑な気分になる。
先述の通り、今回の発言は中国の「力による現状変更」への大きな抑止力となるのは違いない。だが、間違ってはならないのは、尖閣を含め、我が領土、領海、領空を守るのは日本(国そのものである)人であるということだ。
1969年に米国は「ニクソン・ドクトリン」を発表し、「国家の防衛は当事国が第一義的責任を負うべきである」ことを示した。それ以来、米国の同盟政策の基本となっている。当然、日本も例外ではない。それが日米同盟の大前提である。
マティス長官は米国議会の公聴会で「強い同盟国を持つ国は栄え、そうでない国は衰退する」と述べた。今回の会談でも日本の防衛力強化を期待し、「強い同盟国日本」を求めている。
今回の「ニュース速報」の騒ぎ振りに、日本人は米国の同盟政策の基本を理解しているのかと疑念を抱いた。日本人が血も汗も流す努力なくして、「5条」など発動されることはあり得ないことを知った上での報道なのだろうかといささか心配になった次第である。
この報道振りを見る限り、尖閣が中国軍に占領されたら、自動的に5条が発動されて、まず米軍が投入されると勘違いしているのではないか。或いは、まさかとは思うが、米軍が尖閣で中国と戦っている映像を、「岡目八目」的に上空から撮り、お茶の間に流すというネットジョークを本当に考えているのかと勘ぐりたく���なる。そこまで程度が低いとは思いたくない。いずれにしろ、こういう報道振りは、安全保障に詳しくない一般国民に対し、誤った幻想を抱かすことになり兼ねない。
マティス国防長官は会談の中で『日米関係は試す迄もない。この政権移行期に乗じて、つけ込んでくるのを防ぐ為に訪日した』と淡々と述べた。まさに「5条」発言は、こういう冷徹な政治的メッセージなのである。
メディア報道に見られる当事者意識の欠けた安堵や高揚感は、44年間、全人生を米国の安全保障に捧げてきた「戦う修道士」、マティス長官に対して、あまりにも失礼であり、実に恥ずかしいものである。両国の信頼を失墜させるに足る愚かなことの自覚が日本人には必要だろう。
もう一つ問題点は今後の事である。翌朝、早速朝刊を見た。概ね新聞各社は「尖閣に安保適用明言」がトップニュースだった。まあ、日本にとっては結構なニュースには違いないし、新聞報道としては当然そうなるのだろう。中国の情報当局も、苦々しい顔で日本の新聞各紙を読んでいたに違いない。
だが、これから厄介なことが予想される。今後、米国で政権が交代する度に、日本は新政権に対し、「尖閣は5条適用対象」と明言してくださいと懇願しなければいけなくなったということだ。
もし何らかの事情で、米国側が「5条適用対象」と言わなかった場合、どうなるか。「言わなかった」という事実が中国に対する大きなメッセージとなり、中国に対する日本の立場を弱くするだけでなく、この地域の不安定化を助長することになり兼ねない。
ということは、この騒動を永遠に、いや中国が尖閣を諦めるまで止めることはできなくなったということではないだろうか。これは米国に対しても日本の立場を著しく弱くするものである。後先を考えない近視眼的態度が、後の災い種を生んでしまったという気がしてならないのだ。
さて、尖閣について、今後政府は何をやらなければならないか。少なくとも政府はこれで安堵している場合ではない。なるほど、尖閣諸島への中国の軍事的介入に対する抑止力は高まったことは間違いない。中国は米国とは決して事は構えない。力の信奉者である中国は、自らの軍事力が未だ米国のそれにはるかに及ばないことを誰よりもよく認識している。従って、「5条」の対象になるような行動は控えるはずだ。
だからといって、中国は今後尖閣に一切手出しをしないかというとそれは大きな間違いである。中国は尖閣諸島を「核心的利益」と位置付けている。「領有権の奪取」を決して諦めることはない。中国は今後、安保条約「5条」が発動されない形で領有権を奪取する戦略をとってくるだろう。中国の高官はこう語っている。「我々にとって最も好都合な日米同盟は、ここぞという絶妙の瞬間に機能しないことだ」と。
今後の中国の出方はオバマ発言の中にヒントが含まれている。尖閣諸島はオバマが語ったように、「日本の施政下にある領域」だから「5条の適用対象」なのであって、米国は尖閣諸島に対する日本の領有権を認めたわけではない。「施政下」にあることと、「領有権」は別問題なのである。
米国は他国同士の係争地については、どちらに領有権があるとは決して言わない方針���とっている。日本は「竹島」や「北方領土」も領有権を主張している。だが、両者とも日本は実効支配をしておらず、「施政下」にはない。だから日本がいくら領有権を主張しようが、米国はこれらに対し、決して「5条適用対象」とは言わない。
ということは事実上の実効支配を奪って「施政下」にあると言えない状況を作為すれば、「5条」の適用対象とはならないわけである。中国は、今回のマティス発言を受け、今後、軍事力を行使することなく実効支配を争奪する動きを一層加速するだろう。
2014年のオバマ発言以降、中国は海軍を出さずに海警(中国版コースト・ガード)を投入して既成事実を積み重ねてきた。「3-3-2フォーミュラ」と言われるように、月に3回、3隻、海警を領海侵犯させて2時間居座る行動を繰り返してきた。少しずつ既成事実を積み重ね、実効支配をかすめ取る「サラミ・スライス戦略」である。
昨年8月には海警15隻を同時に領海侵犯させ、6日間で延べ28隻の領海侵犯という実績を上げた。今後は「4-4-2」、そして「5-5-3」とサラミ・スライスを加速させ、既成事実を積み上げていくことが予想される。
これまでも人民解放軍の代わりに民兵(偽装漁民)を活用してきた。米国は民兵が乗船した偽装漁船が機雷敷設訓練を実施している写真を公開している。これまで数百隻単位の漁船が尖閣諸島周辺や小笠原方面に押し寄せることがあった。これらはまず、上からの指示による民兵の行動だと考えて良い。
マティス長官の発言を受け、今後中国は、こういった非軍事活動の頻度や規模を拡大し、既成事実を積み重ねて実効支配を奪取する作戦を加速させるだろう。海警や民兵の行動に対しては、武力攻撃事態の認定は難しく、自衛隊による自衛権行使は難しい。となると「5条」の発動はあり得ないということだ。
これらについては警察権行使を拡大した「領域警備」の範疇である。最も蓋然性の高い事象であるが、一昨年の安保法制では手が付けられなかった。政府はこの領域警備事態で海保や警察の能力を超える場合に、速やかに自衛隊を出動させることでこれに対処しようとしている。これは大きな間違いである。
相手が軍隊を出してもいないのに、自衛隊を投入することは決してやってはいけない。中国に口実を与えるだけで国際社会からの賛同も得られない。まさに愚の骨頂である。また「非軍事活動」に対する法執行の為に、警察権行使という手足を縛ったまま自衛隊を投入することもやってはならない。米国も連邦軍が法執行を実施するのを憲法で禁じている。法執行で軍を使うのは、国際社会の常識からも逸脱している。
では、どうするか。「非軍事活動」に対しては、最後まで海保と警察が対応できるよう強化するしかない。これが「領域警備」であり、その能力の向上は、喫緊の課題なのだ。今こそ真剣に取り組まねばならない。今回の日米防衛首脳会談で防衛力の強化が謳われたが、防衛力には自衛隊のみならず、海上保安庁、警察の能力向上も含めた総合力強化の観点を忘れてはならない。
そこで盲点なのが領空主権の防護である。平時には、陸には警察があり、海には海保がある。空には航空警察はな��、最初から中国空軍と航空自衛隊のガチンコ勝負である。しかも上空での動きは政治家を含めて一般国民には非常に分かりづらい。
中国は今後、海警が領海侵犯を繰り返すように、上空でも尖閣諸島の領空侵犯を繰り返すことにより、実効支配争奪を狙ってくるだろう。領空には排他的かつ絶対的な主権がある。勝手気ままに領空侵犯されるようでは実効支配しているとは言えないし、「施政下」にあるとは言えない。
竹島、北方四島ともに、日本は領有権を主張している。だが、空自機は上空を飛ぶことはできないし、逆に相手国は自由に飛行できる。だから竹島、北方四島は日本の「施政下」にあるとは言えない。従ってこれらは日本の固有の領土にもかかわらず、安保条約「5条」の適用対象ではないのだ。
一昨年、トルコ空軍は領空侵犯を繰り返すロシア機を撃墜して領空主権を守った。相手が軍事大国ロシアであっても、決して領空侵犯を許さない。独立国としては当然の処置である。それでこそ「施政下」にあると言える。
トルコ空軍と同様、航空自衛隊は中国軍機による尖閣諸島の領空侵犯を阻止できるのか。一番のネッ���は、日本の法的欠陥である。紙幅の関係上、ここでは述べないが、現在の自衛隊法「領空侵犯措置」には致命的欠陥がある。だが、一昨年の安保法制では手つかずだった。この改正は焦眉の急務である。
中国軍機が尖閣諸島の領空を自由に、勝手気ままに飛べるようになった時、尖閣は日本の「施政下」にあるとは言えなくなる。その時点で米国は「5条適用対象」とは言わなくなる。米軍の介入を招かずに尖閣の領有権を奪取する中国のシナリオの完結である。
「所領を安堵された御家人」よろしく、「5条適用対象」と言われて、「バンザイ」と喜んでいる場合ではない。中国は「5条」発動を回避する戦略で尖閣の領有権奪取を狙ってくるだろう。日本の領土、領海、領空を守るのは日本人しかいない。その原点に立ち返り、自衛隊の強化、併せて海上保安庁、警察の強化、そして「領空侵犯措置」の法改正等、自らがやるべきことを粛々と実行していくことが求められている。
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08041926-7
なんで鍵をつけておかなかったんだあのクソ野郎、と舌打ちを溢し、こじ開けられた扉を閉めようとした瞬間、奴の足が隙間に差し込まれ、かけられた手が扉を閉めさせまいと力を込める。怯える母親が俺に抱き付いて、シャツ越しの背中にふにゃ、と柔らかい肉の感触が伝わる。人間の、女の肉だ。くらり、込み上げる吐き気に力が抜けた瞬間、奴が力の限り扉をこじ開けた。俺を突き飛ばすように部屋へ入ってきた奴は母親と俺を交互に見て、怒りをあらわにした表情のまま、俺を見下ろした。何故コイツが怒るのか、分からない。
「何、参加したいの?」
「ふざけるな。」
「出てけ。見世物じゃねえんだよ。」
「もう、一度殺してそれで十分だろ」
「お前に何が分かる。」
「俺は医者だ。お前も医者だろ。そんな当たり前のことすら説明しないと分からなくなったのか。」
「はっ、どのツラ下げて言ってんだ。てめぇでてめぇのガキ殺したの、忘れたか。」
刹那、目の前に真っ白い火花が飛ぶ。ジン、と鈍く刺さるような痛みが頬に走り、歯を食いしばって拳を握りしめる奴の姿が目前にある。ああ、殴られたのか、と、認識が後から鈍足で追いついて、乾いた笑いが込み上げた。
「お前が作り出したモノだろ。」
「......モノ、ねぇ。これ見ても言えるか、その台詞。」
最後まで何も変わらない奴に立つ気力を全て削がれた俺は、床に座り込んだままケツに入れっぱなしだったスマートフォンを操作し、写真を一枚見せた。よく分からない、と眉を潜め写真を見ていた奴の顔から、どんどんと血の気が失せていくのを、まるで映画のクライマックスでも見ているかのような気分で見ていた。要するに、興醒めだ。俺は謎を解く過程が好きなんであって、謎解き後に自己を正当化する泣き言を聞きたいわけじゃない。
「誰だ、これは、」
「お前と、エリの子供だよ。」
「クローンは、受精卵の時点で、あの時処分したはずだ。」
「もう一人いたんだよ。」
「そんな、はずは...本当に俺と、エリの...?いや、そんなはずはない、この顔、エリそのままじゃないか!!」
「お前にはどうしても似せたくなくてなぁ。」
「この子はどこにいる、」
「死んだよ。」
12歳のまま時を止めた子供の顔。画面越しに愛おしさを込めて撫でれば、いつか頭を撫でたときの髪のつるりとした感触が蘇るような気がした。そういえば後ろで怯える母親も、美しい黒髪の持ち主だった。
「アイツの話には、意図的か偶然か、足りないピースがいくつかある。地球が実験場になってから俺はアイツの技術を借りて、自分自身の過去の記憶を全て見た。」
「過去を全て...?」
「ガキの脳味噌で都合良く加工された記憶ほど、目障りなものはないからな。俺はただ事実を知りたかった。」
母親は俺の背中に隠れたまま、精神の疲労からか、うとうとと船を漕ぎ始めている。幼子のような仕草が外見とミスマッチで、脳が違和感に警鐘を鳴らしていた。
「本当に邪教にハマっていたのは、俺の父親だった。生まれて初めて見た景色は、俺を抱き上げた男が、己の顔を切りつけて溢れた血を、恍惚とした顔で俺に塗りたくる姿だ。笑えるだろ?教材ビデオみたく、父親らしい男のイカれた姿を何時間も、何十時間も見続ける母親を、俺はいつも押し入れの隙間から見てた。」
「...彼の話に、父親は出てこなかった。」
「アイツの目的は俺の過去を晒すことじゃなく、母親の話で俺を煽ることだからな。ただ不要な要素を削っただけだ。」
すっかり眠ってしまった母親は柔らかな頬を俺の肩に乗せ、すぅすぅと気持ちよさそうに寝息を立てていた。その艶やかな髪に、そっと頬を擦り寄せて、愚かにも記憶の上塗りを試みる。
「...それに、出さなかったんじゃない。出せなかったんだ。」
「どういうことだ。」
「やけに美味かった母親の手料理が記憶に残ってた。でもそれが何だったのか、ずっと思い出せずにいた。ガキ用の器に山盛り盛られた、味のしつこいオートミールみてえな謎の食い物がさぁ、すげえ好きだったの、俺。3歳頃の記憶を覗いた時、全部の謎が解けたよ。」
「まさか、」
「冷凍庫から取り出された肉の塊をお湯で戻した母親が楽しそうに叩いて柔らかくしてさ、ミキサーでぐちゃぐちゃにして、調味料かけて水入れて鼻歌まじりに煮込んでんの。湯気が立ち込める台所からは喉に張り付くような油の��いがして、俺はテーブルでその飯を心待ちにしてた。」
口元を押さえて顔を顰める姿にこみ上げた笑いを噛み殺し、ため息を一つ。
「俺が殺すって言うのを分かってて、アイツは選択を迫ったんだ。万が一言わなくても、結局どうこうする権利はアイツにしかないからな。だから俺は、母さんを守るために、一旦ここに連れ込んだ。」
『......ディナーの時間だよ、......!』
「...呼んでるぞ。」
「分かってる。少しだけ、母さんと二人にしてくれ。頼む。」
「......分かった。5分だけ待ってやる。すぐ出て来い。二人でとりあえずお母さんを逃がそう。」
「...あぁ、ありがとう。」
ギィ、バタン。背後からは変わらず安らかな寝息。とりあえず耳を塞いでおいてやるか、と、両手で母親の小さな顔を包むように掴んで、耳を覆う。そして無音に包まれた殺風景な部屋の中、まるで胎内へ帰ったような気持ちになって、余計に吐き気が加速する。目を閉じていれば、死後の世界かと思うほどの、冷たい場所。少し経って、車に跳ね飛ばされた獣の断末魔の如く聞くに耐えない慟哭がドアの向こうから漏れ聞こえ、そして、バタバタと暴れる音、一瞬の静寂ののち、どん、だか、ばん、だかの破裂音が響いた。4コマ漫画のようなオチだ、と、眠る母親をそっと床へ横たえ、部屋を出た。
「...ひでえ有様。」
「手伝うとかないの?」
「ない。自業自得だろ。さっさと片付けろよ。」
「おっかしいなぁ、俺ボスなのに。」
リビングの床に這いつくばって肉のカケラをチマチマ拾い集めていた奴を呆れた顔で見下ろせば、奴は困った顔でゴミ箱ゴミ箱、と呟きながら掻き集めたそれを捨て、片付けていた手を拭いて椅子へと座り直した。
テーブルの上に置かれていたであろう皿はひっくり返され汁やら野菜やらが散乱してひどい有様だ。折角丹精込めて作ったのに、と言いたげな顔で唇を尖らせているが、その台詞は何よりも俺が言いたい。
「何がしたかったの、アンタ。」
「さぁ。むしろ、オッケー出したのお前じゃん。」
「このままいけば、先天性疾患もなく普通に生まれる予定だったからな。」
「それの何が不満だったのさ。お前にしては、裏もない優しい契約に見えたけど、俺。」
「アイツは?」
「俺の部下に回収されて、火葬で処理ってところかな。まごうことなき自殺だしね。」
「そうか。」
「びっくりしたよ。折角食べやすいようにしてたのにまさか俺の料理でパズル始めるとは思わなくて。」
当然の末路だろう。コイツが俺達に出そうとしていた料理は、エリを使って育てていた奴の子供だ。バラバラにして出して、食べたところでネタバラシをしたのか、食べる前にバレたのか。開きっぱなしのベランダから吹き込む風が、縺れたカーテンを揺らしていた。
「で、どうするの。」
「何が。」
「あのクローン。本物だよ。お前の真似で作ったにしては、商売出来るレベルの再現度だと思うけど。」
「そうだな。あれほど的確で、趣味の悪いプレゼントはないだろうよ。」
「だよね。よかった。」
床やら机やらを綺麗に拭き終わった奴は、よし、と満足げに見渡し、そして、俺に向き直った。
「どうするの?」
「人間が、いついかなる時もどうするか考えて行動出来る理性的な生き��だと思ってんのか?」
「少なくともお前はそうでしょ。」
「...そうだな。」
「ねぇ、俺もいていいかな。」
「アンタならどっからでも覗けるだろ。」
「近くにいたいんだ。ダメ?」
「...好きにしろ。」
彼のために用意しておいた部屋で、俺はただ、なぜ他の誰でもない彼に興味を持ったのか、ぼんやりと考えていた。広がる果てのない虚無と、抗えない焦燥感と、全てから解放されたくてこの星に来たのに、虚無と、焦燥感しか感じ取れない、まるで人間らしくない彼と今、行動を共にしている。何故なのか。
「やめ、やめて、いたいわ、どうして、和、」
「どうしてだろうな。俺はその何倍も、何十倍も、何百倍も聞いたよ。どうして、なんで、母さん、って。」
「おれる、おれちゃう、いたい、いたいいたいいたい!!!!!」
「いたかったよ、ずっと。」
様々な人間を見て、本性を試し、大実験を繰り広げたこの星で、俺は一体何を得たのだろうか。むしろ何か、失ったのだろうか。分からない。彼の足が、ボコボコに殴られて横たわる母親の肩を押さえ、彼の細い指がゆっくりと雑巾を絞るように柔らかな腕を捻っていく。ばきょ、と湿った鈍い音がしたのは、骨の耐久度の問題か、それとも、関節の限界か。詳しく見ようとは思わなかった。
「あの夜、俺は殺した恐怖で震えてたわけじゃない。」
「あれ、違ってた?」
「世界に一人になった実感で、震えたんだ。それが恐怖なのか喜びなのか、当時はわからなかった。が、結局あれは、喜びだった。幸せ、だ。分かるか?」
「分かるよ。呪縛からの解放、ってことでしょ。」
「そうだ。一人に、自由になった幸福感だ。」
でも、と、彼の口からぽろぽろ、脳を介さない子供の独り言のように言葉がこぼれ落ちていく。
「それは果たして本当に、幸福と呼べるものだったのだろうかって、俺は血塗れで倒れる母親を見下ろしながら自問自答した。答えは出なかった。殺した瞬間はただただ嬉しかったその静けさが、段々怖くなって、俺は、ただひたすら深く深く、母親を埋めた。裏山の土のむせ返るような生臭い匂いと、湿ってぬかるむ足元と、何かの鳴き声と、真っ暗闇の中で、ひたすら掘った。」
「うん。」
「そして、いつからか、人の真似をするようになった。人がどう感じどう思うのか、思考の上でしか味わえなくなった。母さんと買い物に行く、母さんとどこかへ旅行に行く、母さんと手を繋ぐ、そんな妄想すら、大多数が幸せだと判断する事象だから幸せなんだ、としか、思えなかった。」
「あの子と過ごした日々も?」
「ああ。思い描いた通りに作って、思い描いた通りに育てて、思い描いたように出来た。テレビで見た家族と、本で読んだ親子と、全て足し合わせて最適解を見つけたんだ。当たり前だ。」
「じゃあ、目の前のそれも、何かの真似?」
異形、と呼ぶにふさわしい生き物が虫の息で目の前に転がっていることに、果たして彼は気付いていたのだろうか。丁度彼が話の中で母親を埋めた時、首に食い込んでいた彼の親指が母親の喉仏を抉り出し、くぇ、だかきゅえ、だか上手く形容出来ない声と共に絶命したそれをじっと見下ろした彼は、無垢、と表しても遜色ない純粋な表情で首を傾げ、暫し考えた後、「再現。」と言った。
「最初に可愛がってた犬、確かこんな感じで捻じ曲げられてたんだ。俺の飯の残りを喜んで食べる、汚い野良犬だった。俺が唯一、名前をつけた犬だった。」
「気分はどう?」
「なにも変わらない。ゼロがゼロに戻っただけだ。」
「一人ぼっちなんだね、お前は。」
「...ふっ、ふは、はは、ははは、ふははは!」
急に笑い出す彼の気が狂ったかと目を見開いた刹那、全てを見抜くような、鋭く、そして嫌な目がこちらを刺すように向いた。
「自己紹介でもしてんのか?アンタ。」
「...どうして?」
「いくら技術に長けた星でも、知識を無限に蓄えても、一人じゃ"一人"は学習出来ないよなぁ。そりゃ。」
「何を言ってるのか、よく分からないな。」
「お前が引き連れてた部下、全部人工物だろ。」
「なんで、」
「この部屋もそうだ。使った痕跡がまるでない。わざわざ今日の為に用意したな?」
「......」
血やら体液やらが溢れ出る母だった塊を足で退かした彼は気持ちよさそうな顔で俺を見下ろした。俺は、その目をよく知っていた。いつかの人権を失った人間、いつかの子を失った親、いつかの矜恃を捨て去って畜生と化した若者、それらに向けられていた、そう、"可哀想"の目だった。
「アンタがどんな生き方をしてきたのか俺は知らねえが、この星に来て、アンタはやけに人の心、それも人同士が関わり合う心の動きに執心してた。契約もそうだ。承諾が必要なんてまどろっこしい真似せず、アンタが楽しいか楽しくないかで許可すれば良かったのに、アンタわざわざ人間に委ねたよなぁ?」
「それは、実験がしたかったから。」
「いや、違うね。あのサンドイッチの女だって、英知の結晶なアンタの頭で考えたにしては余りにも不確定要素が多すぎる。俺が気まぐれで外に出たら?俺があの女に興味を持ったら?会社の嘘がバレたら?」
「......」
「楽しむにしちゃあ、人間すぎるんだよ。アンタは。」
今更、この目の前の男がおよそ人間らしくなく、逸脱した倫理観と恐ろしい程良い頭の持ち主だったことを思い出した。今や知識すら契約でなんでも買える世の中で、人の心を掌握し、嬲り、思う方へ転がす悪魔。
「おいおい、この星を壊すだけ壊した奴がなんて顔してんだよ。」
「お前だけには、知られたくなかったのに。」
「なんで?」
「惨めになる。」
「下の下にいるただの人間相手に?」
「初めて出来た、知己だったから。」
「かたっ苦しいな。友達、でいいじゃねえか。」
けろり、と笑った彼の顔にはもう、蔑みも軽蔑の色もない。出会った時の、退屈な日常に中指を立て、おもちゃを探して楽しそうに笑う彼だった。
「来いよ。」
「え?」
手を引かれるまま、部屋を出る。彼に続いて靴下のまま開きっぱなしだったベランダへと出た。そういえばこの家を用意してからバタバタしていて、初めて、外に出て景色を見た。爛々と輝く街の光が、俺と彼の角膜に写って、その光が漠然と命を思わせる。
「綺麗だろ。ただの街灯と、航空障害灯と、車のライト、あと、人間が生きてる光だよ。」
「そうだね、綺麗。」
「それは学習した上での結論か?」
「いや、考える前に出た、言葉だ。」
「皆、一人じゃないって証明のために数十年の命を無駄遣いしてんだ。俺と、アンタは、それをしなくても生きていける。」
「...確かにね。」
「その使い古した皮捨てろよ。今日くらい。」
「え?」
「俺が今まで何人生身の人間作ってきたと思ってんだ?」
「......そうだね、今日くらい。」
いなくならない彼にだけは見せないでおこう、そう決めたはずなのに、首に手をかけ、被っていた頭皮をメリメリと剥がしてから、部屋の中へと投げ入れた。景色は俺を通り抜けても、変わらず目に映って眩しい。
「さて、ボス。明日は何をしよう?」
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3月に入ってから御言葉で異性の罪、情の罪についてのお話があったので、なんとなく警戒していたのだけれど、やっぱりというか、案の定というか、異性から告白されるというイベントが発生した。
有料記事を読んでいる方は既にご存知の通り、信仰を持つとサタンが堕落させようと必死で信仰者に恋愛イベントを持ち込み出します。
今までモテと無縁だった人でも謎のモテ状態になる。異性の罪が一番重い罪だとサタンは知っているからです。
異性の罪と聞いて有料記事未読の方は何がなにやらだと思うんですけど、神様と疎通して恋人同士になることが本来人間にとっての「幸せ」というものなんだよという話であり、世の中の男女が上手く行かない原因の根本がこれなのです。
アダムとエバがまだ霊的に成長してないのに身体の関係を持ってしまって、人生が狂った。そして彼らは神様が人類の救いの為に立てた中心者でもあったので、人類の運命も狂った。それを聖書の中では木の実を食べたで表現している。ことを私はRaptさんのブログで初めて知りました。
まあ異性の罪についての詳しい話は有料記事をお読み頂くとして、今回どうやって告白イベントをクラッシュして乗り切ったかを書き出し、分析して、自己反省していこうと思います。
告白されたのはコロナ休校で学校に通わなくてもよくなった休校中でした。
そう。私はつい最近まで通学していました。
その前はアルバイトをしていたのですが(アルバイトする前はポルターガイスト現象に見舞われたりしながら半ば世捨て人というか、ニートみたいな感じで、そもそも社会に参加してなかったんだけど、それは人によっては馴染みのない話だからまたの機会に)、
個性才能を発見したいというか、手に職をつけたほうがいいなとか…
いや本音を言うと、御言葉の中に電気的なことや工学的な話が出てくるから、それを理解できるようになりたいなという理由で学生になることにしたのでした。スマホの中身とか仕組みが分からないし、コンピュータやネットの概念が自分の中でフワッとしていたからです。
私はもともと小さい頃は図鑑を読んだり図工をしたりするのが好きで、小学校では本ばかり読んでいたし(バレエもやってたけど)、中学では美術をやって、高校は霊現象に見舞われてたから中退したけど美術部の先生には入部を誘われていた(寮生で門限とかもあったから入れなかったわけだけど…)所謂どっちかといえば文系人間であった。
でも今回通ったのは理系分野だったので、もう、それはそれは未知の世界だったわけなのですが、意外や意外、文系は設計などのモノ作りの世界に向いてるっぽい?
いや、単に神様がそう導いてくれただけの可能性のが強い?
入学試験の日に面接があって、面接官をやっていた先生たちが「女の人他にいないけど大丈夫ですか?」って訊いてきたので、「え?女の人だと困る事例が今までにあったのでしょうか?」って訊き返したら、「いやそういう話は特にないです」と返されたので、なんだそれは…どういう意図の会話だったのだ…?と疑問に思いました。
一応卒業生に女の人は何人かいるんだけど、学年飛び飛びで発生するからお互いに写真でしか知らない感じです。
最終学年の夏季休暇より前だったかに会社見学先で会った女性の先輩は、2人きりになった瞬間に「女の人1人だけだと大変ですよね…」って切り出してきたから何かあったんだと思う。
そして先生たちには相談できなかったんだと思う。女の人は、いや人は、「この人に相談したところで解決しない」とわかっている相手に相談したりなどしないからである。この先生たちはあまり頼りにならない存在だとみな��れていたんだろうなと思う。
私も入学早々話しかけてきた男の人(クラスメイト)相手に頭痛と吐き気を覚えたことがあって、「授業内容に関わること意外で私に話しかけないでもらえますか?何故か頭痛がするんで」と素直に伝えたんですけど(読んでる人は笑ってもいいです)、「え?なんで?いろんな雑談するほうが楽しくない?」みたいにヘラヘラ食い下がってきたし、それから1年くらいはしつこかった。
本当に面倒臭かった。めっちゃ滅びを祈ってた。どうせサタンに主管されてた人だと思ったから。そう、彼が他のクラスメイトと話す内容は大変下品な下ネタか、目下年下の人間を見下す高圧的で卑劣なもので、あと無い学歴で高学歴マウントをとろうとする(たまにいるよねこういう謎の行為するやつ)などの老害行為とか、とにかくこの世の地獄のような思想を煮詰めた煮こごりみたいな人だった。
そんでその下品な男の人は1年くらいして、ようやく私のことを「最初から生理的に受け付けなかったし」と言って避けるように(無視するように?)なってくれた。私はそれまでずっと「好き嫌いという以前に、人として生理的に受け付けないので関わりたくないです」とめげずに伝え続けてきたので、その台詞はパクリでは?と思いながらも、あと最初からそう思ってくれて話しかけないでくれていたなら私も楽だったのに…とか相手の発言に矛盾を感じながらも喜びました。
今まであなたによって発生してしまった無駄な時間はなんだったんだろうな?あとあなたが勝手にメルカリに出品した私が制作したキーホルダーも返してくれると嬉しかったけどそれは返してくれないのな?(追記:返してもらえませんでした)まあいいよ悪人が離れてくれればそれで。この世の物品など平和な生活に比べたらなんてことないぜ。
そんなこんなで、私は紅一点ながらも下心を持った男の人には塩対応する部分をみんなに見せてきたので、その後謎アタックしてくる人や、謎アプローチしてくる人はいなくなりました。他の科の頭のおかしい人が名前を連呼しながら横を通過したりとかはあったけど、その他は概ね平和に過ごせたと思う。
男子生徒と女子生徒で態度変えるタイプの男の先生たちからは「人使いが荒い」と言われていたし、クラスメイトにも「まあ…あの人はクレイジーだから…」とか「誰よりも男らしい」とか言われていたので、まあ大丈夫だろう、みたいな。
まあ大丈夫じゃなかったことが今回発覚したんだけど。
突然の休校が決まったのはニュースで臨時休校が話題になってからずっと後で、その前は周りに建っている小中学校や高校が休みになる中うちの学校はというと、スカイプを使ってのんびり他校とロボットカーレース的なことをしていた。
会社によってはリモートワークの環境作りに四苦八苦していたようだけど、流石は電気系の先生が多めの学校というか、大会におけるスカイプ空間は学校の設備と先生たちの私物によってサクサク構築されていった。やっぱり最近売れてる自撮り用の小さいながらも高性能なカメラは便利そうである。結構高いみたいだし、海外製は当たりハズレもあるみたいだけど。
そんな感じでのんびり過ごしていたのに突然休校することになったのは周り(東京都の偉い人とか)の目を気にして焦ったからなのか?
ちなみに学校から感染者は1人も出ていないし、もちろんインフルすら出てない。
まあコロナはインフルなのでパンデミックの報道はデマなんだけど、学校は男の人ばかりであるせいかみんな基本的に不健康な生活を送っていたので、そういう暮らしを目にすることに私は若干辛みを感じていたので、休暇は素直に嬉しかったです。(なんで男の人は健康な食事にあそこまで無頓着なのだろうか?)
休暇だけど最終学年なので、つまりは卒業であり、ある意味クラスメイト達とはこの先恐らく二度と会わなくなることを意味します。
それでサタンも焦ったのでしょうか?今回は卒業制作を一緒に仕上げた人間から告白されたんですね。
学校最終日、私はいつものように普通に登校しました。
休校になることは突然知らされたので、荷物や教科書を全て持って帰らねばならなくなったこともあり、まあまあ驚きましたが、それ以上に驚いたのがその日はなんとなくカートをゴロゴロ引いて登校してきたので、スムーズに荷物が持って帰れるという偶然でした。(いや、神様は偶然はないと仰っていましたから神様が霊感で持たせて下さったのでしょう。よって私は神様に感謝しました)
それまでの授業ではラズパイでサーバを構築してHPを作る授業が行われていたのですが無事終わったので、持ち込んでたモニタをもって帰ろうと思ってカートを持ってってたんですね。そこで突然の休校です。
午前中は後輩に教室を明け渡す為に作業場を掃除したりして過ごして、午後は後輩たちのプレゼン大会が予定されていて、いつもより授業の始まる時間が遅かったので私は一旦家に帰ることにしました。あとなんか掃除中にヘアゴムが切れてしまってピンチで、そのへんにあった針金で留めていたので、家でまとめ直したかったというのもある。
やばいピンチだ…と針金で留め直してたとき、思い返せば今回告白してきた人が髪を下ろしたらどうなるのか的な質問をしてきて、「どうって、邪魔ですよね。作業するのに」と返したら「そっか」と笑っていたけど、なんか違和感を感じたやり取りだったのだけど、そういうことだったのかね?
思い返せば中学生の頃プールの授業のあとで髪を下ろして乾かしてたら、当時学校にいた私のことを観察する会的な謎の集団がわざわざそれを見にやってきたことがあった。だからそう、こういう髪に関することで注目してくる男の人はもうなんか駄目なんだと思う。そういうことだったのかも。
そんで家に帰ってから髪を留めて、なんとなくハンカチを新しいものに替えて、また学校へと出発しました。
ちなみに家に着いたとき、たまたま祖母が家にいて何故かご飯を炊いていて、「ちょうど出来たから食べていく?」っていうので、いつもはお昼ごはん食べないんだけどその日は食べてから出発したのでした(よってちょっと出遅れた)。いつもは一駅歩くのだけど、遅刻は嫌なので駅のホームで電車を待っていたら、若い女の人達が「〇〇駅ってどうやって行くんだっけ?」とワイワイ喋りながらスマホで乗り換え検索しながらこちらに向かってきた。でも〇〇駅は反対方向の電車に乗ってから乗り継がなければならないので声をかけてそれを伝えたら、ちょうど反対側に電車がくるところだったのもあり「ありがとうございます!」と言いながら彼女たちは駆け足でギリギリセーフで乗車していった。(そこで私は思った。ああそうか、それで私は家を出遅れたのかも。神様ありがとう!)
なので学校に着いた時刻はプレゼン予定時刻ギリギリだったんだけど、予定が押したみたいでまだ余裕であった。神様ありがとうございます。
後輩達は私達の学年より真面目な子達が多いので、プレゼンはとてもクオリティが高かった。んだけど中に仏教かぶれの人がいて若干むむってなった。仏教は悪魔崇拝だからです。まあネタ化されてたからガチではないのかもしれないけど。全ての神社仏閣が滅びますように。
最後はなんか、お別れの挨拶をそれぞれ述べて終了という流れになったんだけど、プレゼンを指導していた外部講師の方が今日で十数年に渡る講師活動を終えるとのことで泣きながら色々と思い出を語っていた。熱血タイプの先生なので涙が思いと一緒に溢れてし��ったのだろうと思う。私達も突然で驚いたけど色々とタイミングが良すぎである。もういっそ今日が卒業式ってことで良いのではと思った。
お化粧が崩れるのも構わず泣いている先生を見ていて、「そういえば私何故か新しいハンカチ持ってきてたな」と思い出し、そのハンカチを渡した(この時新しいハンカチを持たせて下さったのは間違いなく神様だと思った)。
彼女は潔癖症なので未使用であることを伝えて渡した。「もう学校最後だから洗って返せない。どうしよう!」と言うので、「あげますよ」って言ったら、「洗わないでとっておこうかな(笑)」とか言いだしたので、潔癖症なのにご冗談をと思いながら「いや洗いましょう。何か繁殖しちゃうかもしれないじゃないですか」って返したら「コロナとか?」と笑われたので、私はその流れのまま「コロナはインフルエンザなんですよ」って話をした。
(私最近会う人会う人誰とでもコロナはインフルの話をしているけれど、まだ誰にも否定されたり拒絶されてない。Twitterの工作員とは随分反応が違うよね)
そんなこんなで授業もおわり、作業室で卒業制作で作ったマシンを班員と二人で動かしたりして遊んだ。校長先生を乗せる約束をしていたのにまだ乗せてなくて可愛そうだという話があったので、久々の起動に様子を見ながら発進させてたんだけど、校長を呼んで乗せてたらしばらく動いてマシンは死んだ。
FETが爆発したりしたわけじゃないから、多分ダイオードが死んだとかじゃん?という結論になったんだけど、調べないとわからん…わからんけどもう時間がないので、あとはもう後輩たちが好きにすれば良いんじゃん?ということになった。大掃除のときにモータドライバの同人誌を託したことだし(次回はデジタルアイソレータとか入れてみてほしい)。
校長先生や担任の先生たちとのお喋りも今日で最後か…というわけで、せっかくなのでコロナの画像がサンゴ礁の写真を加工した画像だった説や、タピオカヤクザの話や、蓮舫議員の闇のお婆ちゃん陳杏村の話をした。私は学級日誌でも毎度こんな話しか書いてなかったので先生たちも慣れていたのもあると思うんだけど、割とスムーズに受け入れてくれました。東京都からお金が出てパーツとか買ったりする学校だったけど、都知事をディスったところで咎める者は誰もいなかった。小池百合子はやはり都の職員からも嫌われているのではないか。
このまま興味を持って色々調べるようになってくれれば嬉しいのだがどうだろうか。調べてくれますように。
そして私の知らないところで同性に伝道されるなり、ネットで伝道されるなりすれば良いと思う。
先生たちには「忘れ物があったら取りにおいでね」と言われたけど、学校まではルート的に結構距離があるので、私は「思い出と一緒に置いていきますね」と答えた。そしたら「じゃあ思い出が欲しくなったらいつでも来て下さい」と返されてしまった。グヌヌ被せボケ…
最後まで一緒に残っていたもうひとりのクラスメイトは「あと2時間くらいお話していたいですね!」とか言っていた。勘弁してほしい。
死にかけのマシンはホールに飾られることとなった。
試作の小型機は班員が夜なべして書いたプログラムのお陰か元気に走ったので、最後に走らせて展示場に到着させた。
班員は小型機にゴリアテと名付けようとか言い出して、私はゴリアテ倒す派なので(ダビデの話参照)その場で反対したのだけれど、その後どうなったのかは分からない。今思えば何かの暗示であったのかもしれない。今回告白してきた人間はこの班員であるからである。
そんなこんなで帰りが遅くなってしまったのが良くなかったんじゃないかと今では思う。
校門を出たら外は真っ暗だった。冬だったので星がキラキラしていて大変綺麗で良かったんだけど「星が綺麗ですね…ってもう寝る時間じゃん!」と焦った。私は早く寝て早く起きて祈ったりしたいからです。
さてさよならするぜと班員に別れを告げるとき、私は特に台詞が思い浮かばなかったので、「とりあえず禁煙したら」と言った。彼は喫煙者だったからである。そしたら今までは絶対無理とか言っていたのに、今回は珍しく「禁煙外来に行こうと思う」と言い出した。
喫煙者が減ることは良いことだし、そのことは普通に嬉しかったので神様に感謝して、私は家に帰った。
その日は風が強くて、家の近所の庭的な広場に誰かのTシャツが落ちていたので、風向きから推測したマンションに届けに行った…のはいいものの、どこに置けばいいのか分からなかったから、そこら辺にいた住人らしき方に訊いて、エントランスに引っ掛けてきた。住人らしき方は見ず知らずの私にお礼まで言ってくれて、最近世間がピリピリしているというのに、優しく対応してくれてありがとうと思った。
それから1週間くらい経った頃だろうか。なんだか体が重かった。生理でも無いのに日中眠かった。
勉強したくても頭がモヤモヤするというか、お祈りの時間に起きられてもなんだか体が重かった。そういう日が数日続いた。
そんなある日、制作課題用に作ったSNSルームに置きっぱにしていたファイルをダウンロードしようとPCを立ち上げログインしたら、告白文が踊っていた。
いや、その前から就活どう?的な情報交換はしてた(私の就活はゆっくりでギリギリだったので先生やクラスメイトたちが私の代わりに心配していたというのもある)のだが、まさかこれを使って告白されることになるとは。そういう素振りを相手が見せたことがなかったので余計に驚いた。
読んだ瞬間はいつものごとく目眩と吐き気に襲われた。なぜ私は異性に好意を向けられたと認識した途端に吐き気と頭痛がしてくるんだろう?神様を信じるようになってからそうなるようになったのね。霊魂の苦しみが脳を通して肉体に伝わるからでしょうか?その仕組が知りたいのですががが。
ところで異性の罪は重罪なので、思わず「ブルータスお前もなの…?」と呟いてしまった。
霊魂は肉体と違って異性の罪によって、まるでウジやハエや汚物を飲まされているかのような地獄を味わうのだと、以前主が御言葉の中で仰っていました。
相手にこうして罪を犯させるような行動を私はどこかでしてしまっていたのだろうかとか、なんかそんな感じでショックを受けたついでにそのままブルータスについてググったら、なんと告白された日とカエサルが殺された日が同じ3月15日だったので思わず笑ってしまった。
よくイル���ナティたちが日付にこだわって重要人物を殺したりするけど、確かその中に3月15日もあった気がする(そういうツイートを前に読んだ気がする)。
サタンが験担ぎして告白させたのかもしれんな。はっはっは…(真顔)
(そういえば志村けんが死にましたね。やっぱり小林麻央が海老蔵に生贄として殺されたみたいな感じで他殺なんでしょうか?)
告白文の内容は概ねこんな感じであった。
最終日にそちらから告白を受けたが(してないんですが?)、過去に色々あって二股かけて失敗しているのと(なんですと!?)、一緒に住んでる腐れ縁のルームメイトが人生に問題を抱えていてこれからも自分が助けになり支えていきたいので(誰のことだ?)、貴方の気持ちには応えたいが応えるわけにはいかないと思った。けれど前から可愛いと思っていたし称賛する気持ちは絶対に伝えたいと思っていたので今回告白に至ったと。その他、私と会うのを楽しみに学校に通っていたこと、可愛さにため息がとまらない(?)、私が小型機を操縦している様がキラキラして見えた(?)、ここ1週間ほど私のことを考えていた、買い物しに車を出して気付けば学校まで運転しておりそのまま夜空を眺め続けてしまった(重症では?)ことなどが書かれていた。
()は私の感想です。
そんで、うーん…?私そもそも告白してないけど?どういうこと???ってなった。
私としては、突然相手が目の前でサンドペーパーを敷きだしたと思ったらそのまま助走をつけて全裸で一気にスライディンクした挙げ句血まみれになりながら「どうもすみませんね…」とヨロヨロ退出していったような、こちらとしては見てはいけないものを見てしまったような、そんな気分である。
というか、1週間念を送られていたから具合が悪かったのかもしれないな…?
なんか頼もしいとか崇高とかいう文字も文章内に組み込まれていたので一応リスペクトしてくれてたっぽいことは分かるんだけど、恋愛フィルターを通してそう見えてただけだと思うと素直に受け取るわけにはいかないですよね。だって正気じゃないんだから。
校長先生が入学当初、学校の仲間は将来同じ分野の仕事仲間にもなるわけだから仲良くして情報交換していくといいよ的なアドバイスをお話してくれてた気がするんだけど、でもそこで相手に恋愛フィルターがかかっちゃったらさ、相手が間違ってるときに情が邪魔して相手を正論でコテンパンにしてあげられないわけだからもうその時点で良き仕事仲間とは言えないじゃん。
それに男の人って(弟もそうなんだけど)相手を褒めるときもそんないちいち褒めたりしないですよね。あっても一言で終わるじゃないですか。「スッゲ」「ヤベえ」「ウケんだけど」「流石ですな」「かっけえ」みたいな。だからこうやってリスペクトしてますよ感出して長文ぶつけてくるときは告白じゃなくとも下心があると疑った方が良いっぽい。よ。
可愛いに関してもよくわからなかったんだけど(私には可愛げがないという定評がある)、告白文を見るに、どうも頑張っていた姿がいじらしく見えたとかそういう意味での可愛いということであったらしい。ということは、男の人に比べたてまだまだ頼りない部分があったために可愛いに繋がってしまったのかもしれない。ネットで調べたところ庇護欲を掻き立てる女性はモテるらしいので、こいつは一人でもやっていけるなと思わせるキャリアウーマン的な女性にならないといかんなこれはと思ったし、反省した。
しかし腑に落ちないのが私が告白したことになっている部分なんだけど、どうも「星が綺麗ですね」と最終日に言ったことが告白と取られたらしいのね。
でも「月が綺麗ですね」は聞いたことがあるけど「星が綺麗ですね」はちょっと聞いたことがない。
それに夏目漱石が「月が綺麗ですね」と言ったという話はデマであることがわかっているし、それを告白に持ってくる現代っ子がどれくらいいるのかね?
わからん。
わからんので調べたら、出てくるわ出てくるわ…

ちょっとバリーエーション増や��すぎじゃない?
これじゃあ異性の前で景観を褒めてはいけないことにならないかい?
しかも「星が綺麗ですね」はタロットが元ネタだと?悪魔崇拝者共め…なんと迷惑な。(ちなみに占いもタロットも、悪魔崇拝からきた文化です)

なので私は告白してないのでそれは勘違いだし、一応漱石はデマだよと伝えた。
(あとうっかりここにたどり着いてこれを読んでる方で陰謀論よくわからない人向けにお知らせしとくと、夏目漱石の名前の由来はフリーメイソンなので、興味が湧いた方は調べてみて下さい。)
あとキラキラして見えるとかため息が止まらないとか深夜徘徊とか目に余る異常行動が気になったのでそっちも調べたんだけど、人は恋に落ちると脳内麻薬が出て、なんかそういう状態になるらしい。
というか、完全に病気だよね。
脳内麻薬で脳が酸欠になるらしい。煙草でも脳は酸欠状態になるっていうのに、お前さんはこのまま死ぬつもりか?
冷静になあれ。
とりあえずセロトニンが不足するとそういう情緒不安定状態になるらしいので、日光浴をおすすめしといた。
そしてSNSからは重要ファイルをサルベージした後離脱した(Twitterにおけるブロックのようなものです)。
しかし業務用のSNSで告白って公私混同って感じで普通にルール違反だと思う。勘違いとは言え、気持ちに応えるわけにはいかないからと理性で踏み留まってくれたのは、有難いっちゃ有難いけれど、結果告白してしまったのでは無意味なのではないか。それは踏み留まれているとは言えないわけで。
恋は病気。
愛は理知。
冬の星が綺麗な理由は太陽が早く沈むから残照の影響が少なく湿度も低いためにその分光がこちらに届くから。
よって、さらばだブルータス。
というか以前「背中を押すのは友人の特権だ」とか発言してたような気がするのだけど、友達だと思ってくれていたのは嘘だったということか?
まあ私は私で男友達ですら御免だしこの先男とはプライベートで仲良くするつもり無いですって言ってたわけだけど、大事なことだからそれ2回くらい伝えたはずなんだけど、聞いてなかったのかねブルータスは。
ちなみに「ブルータスお前もか」は「月が綺麗ですね」と同じく言ってないのに言ったとされてる言葉の一つなのであった。綺麗にオチまでついてしまったのであった…
実はその後、学校に卒業書類貰いに行かなきゃいけない日があって、ちょっと憂鬱だったんだけど、エンカウントしないように祈って早めに登校したら、早めに書類もらえたし、早めに帰れたのでブルータスには会わずに済みました。
神様ありがとうございます!
あと水筒持ってくの忘れたんだけど何故か先生が自販機の飲み物奢ってくれるっていうのでお水を買ってもらえました。
先生ありがとうございました。
おしまい!
帰りが遅くなった最終日、家族が私の身を案じて祈ってくれていたそうである。私は本当に、神様に、みんなに助けられて生きてきたし、今もそうである。感謝します。どうかみんなの信仰生活も守られますように。
今サタンが絶賛大暴れしているそうなので、他の信仰者の方々もゲリラ告白をされたりしているのだろうか。どうか無事に撃退できますように。
あと恋の脳内麻薬は3年くらい出続けるらしいから3年は会わない方がいいっぽい。先生には悪いけど文化祭も行かないほうが良さそう。
異性の罪を犯したときに3年くらい期間を設ける話はもしや脳内麻薬にも関係しているのだろうか?まだまだ分からないことが沢山ありますね。
しかし思いがけずスムーズに荷物が持って帰れたり、知らない人が電車に間に合ったり、奇跡的なタイミングでハンカチを差し出せたからといってなんだっていうんだろう。神様にとって有益かというと、そうでもない。
結局学校は神様に意識を向けて生活し辛い空間だったことが証明されただけなんだと思う。卒業が早まってよかった。それこそ、神様に感謝すべきことだったのではないか。
唯一連絡手段が残された相手と縁が切れたことも、信仰生活を送るうえでとても有難いことであったと思います。ありがとうございました。
あと私は異性からの好意に気付かなさすぎであるということが発覚したので、これからもっと遠巻きにしてもらえるように頑張ろうと思いました。
そして恋愛コラム的なことが書かれているサイトって、全部占いへ誘導するようなものばかりで、この世の中に恋愛の文化を広めたのがサタンであることがよくわかる構図だなと思いました。
人間との恋愛は人間を幸せにはしません。不幸への入り口です。
占いは闇です。何も解決しません。
何事も神様に求めるべきです。神様に相談しましょう。
今回色々あった中で私にとって良かったことって、コロナはインフルだって話ができたことくらいじゃないでしょうか。もっとディープな話をスムーズに展開できるようになりたいですね。
反省!
こうして自分を省みる機会を与えて下さった神様とRaptさんに感謝します。どんなに神様が機会を与えて下さっても、Raptさんの宣布する御言葉がなければ理解できないし、悟れないからです。それから私の為に祈ってくれた方々にも感謝します。本当に命拾いしました。ありがとうございます。
コロナのデマが世界中の人々にバレますように。
あと最近初めて行った公園が心臓の形してる気がした。

そして電車の広告にあった有名テニスプレイヤーの顔がそっくりで、2人は血縁かもしれないと思った。

この春あちこち散歩したけれど、東京都民は都知事の言うことなんて心の底では信じていなくて、パンデミックは演出不足であるなと思った。
だって人がわんさか住んでる団地で1人も感染者出てないし、誰も死んでないし、噂好きなおばさまも誰かが死んだ噂すら聞かないって言ってるし、というか2月も3月も全然救急車来てないし(12月と1月は夜でもバンバン来てたのに。餅かな?)。
都民はみんな訝しがっている。
陽の光を浴びながら元気に遊ぶ子どもたちを見ながら散歩したけど、あれはあれで免疫力がアップしてインフルにかかり��くくなって良いのではないかと思った。
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音楽
私は人をまとめたり動かしたりするのが極端に苦手な性分で、今でも人と仕事をするのが苦痛で仕方なく、例えば、ある作品の評論を書いてくれと依頼があっても、依頼主の意向を無視したものを書き上げてしまい、折角の仕事の話を頓挫させてしまったことが幾度となくある。
「井原西鶴はスタンダールやバルザックと同じリアリズム文学の創始者であり、当時、大阪はパリに匹敵する文化的都市だった、だからこそ、大阪維新の会のような文化破壊をあたかも道徳のように行う政党は許してはならない」と書いて、失笑されること数回。十三の風俗嬢とその馴染み客の恋愛を書けば、織田作の模倣に過ぎないと馬鹿にされ、踏んだり蹴ったりの私。それでも井原西鶴や織田作、宇野浩二、武田麟太郎、林芙美子を見習い、軽佻浮薄にケラケラ笑いながら私は生きている。
そんな私だから、音楽なんてとうの昔に辞めて正解であった。もともと不器用なんだから音楽なんてそれはそれはとても私の技量にかなうものではなかった。
しかし、音楽について語れとなると話は別だ。私の音楽の趣向は以前よりも幅広くなり、軽音楽の域を出てしまっている。
Miles Davis、Sun Raなどのジャズから、The ClashやSex Pistolsなどのパンク、LoveやThe Byrds、Jimi Hendrixなどのサイケ、Derrick MayやDinosaur L、Larry Heardなどのハウス、Biggie SmallsやPharcyde、Wu-Tang Clanなどのラップ、Burning SpearやSizzlaなどのレゲエ、New Age SteppersやScientistなどのダブに至って、我ながら多岐にわたり、結果、私は何が一番好きなのか、分からなくなるありさまだ。おかげで私のiPhone容量256GBはパンパンになる寸前だ。
だからとて、それを自慢したいわけではない。音楽のことをこれだけ知っとるぜなんてやるのは、幼稚なリスナーのすることで、私の趣味ではない。これだけの趣向を凝らして発展的なものを創り出すことが重要であると私は考える。しかし、残念ながら、私の興味は音楽よりも文学に大きく傾いており、それゆえ、残念ながら具体的な方針がないのが現状だ。
しかし、何としても音楽から透けて見えるものについて思索をめぐらしたい。それは、イギリスの保守言論人のダグラスマレーが、著書「西洋の自死」のなかで、ヨーロッパの文化的衰退とその自滅について書いた視点をこの日本でも応用できるのではないかという思いだ。
つまり、日本も西洋と軌を一にして自滅する運命にあるということを、彼の著書を読み、私は直感した。それは政策や経済だけの話にとどまらない。これは、歴史という大きな大河のような流れをも含む話である。日本は歴史的に作られた国家という点でヨーロッパと共通する部分も多く、況してや、移民流入を許す出入国管理法改正案が昨年末国会を通過したからには、決して移民で苦しむヨーロッパの自死は他人事ではない。
著書の中で、彼は第二次世界大戦以後の哲学者は、ポストモダンの流れの中で、脱構築ゲームに嵌り、徐々に社会的基盤や常識を見失ったとし、その観点から、芸術を論じている。それに倣おうというのが、私の試みである。
これに成功するならば、微弱ながらも、私と同じように、この日本も自滅すると自覚する人間が生まれるのではないか、そんな淡い期待をして、私は筆を走らせたい。
先日、諸用で大垣行き東海道本線の電車に乗ると、10年ほど前に関西0世代として持て囃されていたバンドの女とたまたま乗り合わせた。相変わらず、リストカットの跡が生々しく、プリキュアか何だか分からぬが、女児用のアニメキャラが描かれたTシャツ、下には寝間着の様なものを履き、ボロボロのスーツケースを枕にうつらうつらしていた。社会不適合の私も人のことは言えないけれど、この女もそろそろ40に差しかかろうとしているのに、年齢を経ることを放棄した哀れさがその姿、風貌から強く感じられてかなわなかった。まだ救いがあるとしたら、童顔であることくらいだろう。しかし、いつか人は老いて、その醜悪さから逃れられない。
少しばかりインディーズバンドにかぶれていた若い頃、私もいろんな媒体から情報を取ったり、デモテープ等を聴いたりしてみたが、彼らの作品に一貫しているのは、自己完結する歌詞のなかからもわかるように甚だしいほどの自閉的な兆候であり、パンクやフォークのようにわや、人と人を有機的に繋ぐ役割がないといえるものであった。共感もできず、ただこれらの事情に通じていたいという邪な感情でライブハウスに足を運ぶ、それが当時、恐らく多くの人が持っていた思いではなかろうか。本音を言えば、私は彼らの音楽に本当は興味などなかったのだ。それに彼らの個々の作品には個々の価値基準というものがあってそこを理解してくれと彼らは歌詞からも音楽からも暗示しているように、私には思われ、参加している読書会や文学同好会で、趣味の悪い私小説を読まされている、そんな気まずい気分で、彼らの演奏を聞いていた。
ギターのハウリング、歪んだベースの振動、スネアドラムの破裂音、雄叫びのようなボーカル、聴いているだけで耳が痛くなり、はよここから出たいと、何かと理由をつけ、ライブに同行していた友人をちょろまかし、自室で好きな音楽を聴きながら、タバコを吸うか、大学の社会学部の落し物箱から拾った古典の本を読むかして、売春街や西成のドヤ街を散策する、それが私の青春の大部分を占めていた。永井荷風のように一冊の本を片手に市バスか阪急電車に乗って街をぶらつく、音楽よりもそちらの方が私の気性にはあっていたようだ。
当時、本ばかりを読み焦る耳年増な私であったから、早熟ながらも、小林秀雄や福田恆存等の評論の論旨に敷衍して物事を考える癖がついており、やはり自室で一人、彼らインディーズの演奏に思い返すと、個性と特殊性を履き違えたものだと結論せざるを得なかった。
画家のゴッホが偉人であったのは、彼の持病であると考えられた精神疾患を絵画の中で普遍性に耐えるものへと昇華したことによるもので、ゴッホ自身、自分の気狂いという特殊性を忌み嫌っていたことは彼の書簡や弟に宛てた手紙からも明らかである。葛飾北斎も同様で絵の世界の中で自身の狂気を封じ込めること、それに成功したからこそ、彼の作品は偉大であったのであり、なにも北斎の放埓な生活習慣が偉大であったわけではないのだ。
このあたりを勘違いして、形から入り、気狂いのように振る舞う馬鹿が大勢いるのはどうしてだろう。その多くは、自分がまともではない、まともな社会生活を送れないなどの言い訳をそこに見つけたいという思いがあってのことだろう。それか、世間に受け入れられるべき人間であるのに
どうして弱者でいつだって辛酸を舐めなくてならないのかという苛立ちからか。
いずれにしても過去に名を馳せたミュージシャンとは違い、個性を自身で発掘する野心は、彼らからは感じられない。だって自分の作品に自分たちだけの価値基準を設けている限り、普遍性を持ったものを作り得ないのだ。
現在、日本の国会等でまともに議論が行われていないのもこれと似たような現象ではなかろうか。つまり価値基準を共有していないがため、我々はその時その場面その場所に合わせて常に考え方の軸の変更を強いられている。
互いの主張が、「自分の現実はこうだ」と、価値基準がバラバラの主張を繰り返し、互いに反目するか、若しくは、意思決定が、ある特定の人たちに有利な形で進められているかしている。
民主主義とは価値基準の共有が危うくなればなるほど、専制政治へと傾きやすい。したがって経済格差や世代間の思考の隔たり等を政治がなるべく是正する必要は、民主主義の場合だと、尚のこと重要になる。
普遍性、政治の場合だと、時間の経過に耐え得る政治決定が、現在、ほぼ不可能となった。ー「今だけ、金だけ、自分だけ」ー 米英と中共の代理戦争の体を成している香港でのデモを見て、未だに、日系企業は呑気に中国への投資を続けている。ーこれだけ見ても、今の日本人の意思決定が価値基準が曖昧なまま行われていることは明らかである。このような事態を放置していると、恐らく50年後くらいには日本は中国の勢力圏に入っていくと思われる。ー
例えば、経済政策が典型的だが、小泉純一郎氏が、特定郵便局等の、かつての共同体や組合や派閥をぶっ壊したばっかりに、政治的な意見を各々の共同体で集約することが不可能となった今、個々の政策が、力のある者(今だと経団連を始めとする財界)の意図が大きく、国会や内閣、省庁で反映される有様で、弱者や利害関係者の本音を汲み取れていない。また、価値基準が曖昧なままとなり、後々、問題をより悪化させている事態を引き起こしている。
たしかに世間を疎ましく思う気持ちは良くわかるものの、理解されない、受け入れられない苦しみの原因は、こうした政治的社会的な要素に見出すべきで、芸術とは無関係であると私は思う。
この長期デフレ、財界と大手マスコミに乗っ取られた政治と文化、理不尽な自己責任論を吹聴し押し付け、分断されゆく社会ー彼らインディーズはもっとこれらに着目すべきだった。そしたら、きっと特殊性と個性を履き違えた馬鹿げたパフォーマンスなんてする必要はなかった。しかし、彼らインディーズは、社会的政治的要因に自身の不条理な現実を見出すことは決してなく、どころか、個性を磨く野心さえも捨て、奇抜なパフォーマンスに終始して自閉的な世界に留まっている。これこそ日本文明の自滅の現れではないか。そう、起きている現実の問題から目を背け、ひたすらに、有機的なつながりを捨てて、自己完結する世界にどっぷり浸かる、その果てにあるのは、ミシェルウェルベックやボーヴォワールが書いた世界、つまり虚無しかない。
文化こそ虚無の防波堤だと私はそう信じているが、その文化の一部を形成するインディーズ界隈が、個性を見つける野心を捨て、特殊性ばかり強調して虚無しか生み出さないのは、それこそ自滅行為に近い。それに彼らの作品が時代の経過に耐え得るとはとても想像し難い。
かつて小林秀雄がどこかの大学の講演で言っていたように、実際は、自身の特殊性をどのような場合にあっても克服することでしか、普遍的な個性を勝ち得ないのだ。
従って、音楽で大成するには、いつの時代も自身の特殊性を乗り越えて、普遍性に堪え得る個性を如何にして手に入れるべきか考え実践することが大きな課題であると徐々に分かってきた私は、自身の無能さと自閉性に呆れ返り、そそくさと自分の持っていたギターを質屋に入れたのだった。
正直に言えば、音楽に夢中になっている人々、とりわけ自身の特殊性を躍起になって誇示する人々との関わり合いこそ、私には無益であり有害と考えたのだ。
それから10年ばかりの時を経て、東海道本線大垣行きの電車でそのインディーズバンドの女と隣り合わせたのだった。
名古屋駅から尾張一宮駅までの間、彼女は、ひたすらiPhoneを握りしめ、通知が鳴る度に、眠気を堪えて、操作をし続けていた。人のことなど興味がないように思われた。
彼女の動かす右腕のリストカットの跡、それらは大きく膨れ上がっており、とても正視できるものではなく、私はそれを見て、毎日ライブだの何だのをやり通しで如何にも充実しているように見えたこの女の哀れさは相当なものだと思うた。必ずしも得られやしない麗しい青春めいた喜びを絶えず求め、年をとることを拒否する虚しさ、切なさ…、思いを巡らすとキリがない。
私がふと、視線を落として、プリントされたキャラクターが薄汚く擦り切れた彼女のTシャツを見たとき、全てを悟った。
ーこの女の行き着く先には、虚無以外何もないー
もう駄目だった。
尾張一宮駅で私が降りようとしたとき、彼女はこう口を開いた。
「見たことあると思えば、10年前、難波かどっかで、あっしと呑んで、言い争いした事、あるよな」
「うん、でももうそれはいいじゃない。過ぎたことやよ。」
あまりに単調で退屈な会話だった。
「名古屋でライブするんよ。だから…」
彼女がそう私を誘いかけた時の目は、灰色に曇って、その視線はどこか虚しく漂い、悲しそうだった。
音楽は、彼女にとって虚勢をはる道具に過ぎず、ただそれはこの女を焦燥に駆り立てる、そう思い、ただ、私にはこの女を安心させるだけの抱擁を誰かがしてくれることを祈るしかできなかった。
私はきっと彼女が行う名古屋でのライブには行かないだろう、それが賢明だ。
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あんなことするんじゃなかった。──とは、思わないけれど。
勇利はヴィクトルの前で、ゆっくりと服を脱いだ。毎日脱衣所でしている行為だけれど、入浴のためにそうするのとは、まるで気持ちがちがった。きっと当たり前のことなのだろうが、勇利は不思議だった。同じ行動なのに、こうして明かりを落とした部屋で、別の目的のために肌をさらすというのは、気恥ずかしいような、うれしいような、せつないような、胸のときめく感じだった。 「そのままおいで」 勇利が振り返ると、ヴィクトルはベッドに上がって勇利を手招いた。勇利は下着姿でヴィクトルのふとんにもぐりこみ、彼の腕の中で全裸にされた。 最後の夜だった。いや、ヴィクトルはそのつもりではないだろうし、また、勇利の思った通りになったとしても、彼がここへ二度と帰らないということはないだろう。マッカチンもいるし、荷物の整理もある。だが、もうこれまでのように親密にはふるまってはくれまい。ふたりの関係は変わってしまう。それならば、今夜が最後の夜と言って差し支えなかった。 いつも通り練習をし、いつも通り食事を済ませ、いつも通り温泉へつかったあと、勇利は、いつも通りおやすみなさいとは言わなかった。 「ヴィクトルと一緒に寝たいな」 初めてだった。これまでヴィクトルと同じベッドで寝たことは一度もない。また、ヴィクトルがしばしば誘ってきたように、ただ並んで眠りたいというわけでもなかった。 「ヴィクトルと一緒に寝たい」 勇利はまっすぐにヴィクトルをみつめてささやいた。ヴィクトルはどういう意味だと訊いたりはしなかったし、冗談と受け取って笑ったりもしなかったし、明日にはバルセロナへ出発するのだからそういうことはよくないと諭したりもしなかった。彼はじっと黒い目を見返し、勇利の手を取って、「いいよ」と自分の部屋へ導いたのだ。 自分から誘っておきながら、勇利はこういったことをまるで知らなかった。調べようとしたこともなかった。ただ、なんとなく、ヴィクトルとなら大丈夫という気がしていた。そしてその予感は正しかった。 ヴィクトルは優しく丁寧に勇利の身体を取り扱い、くちびるを押し当てて愛情深く愛した。勇利はもちろん初めての行為だったのだが、戸惑うゆとりも、恥ずかしがったりうろたえたりする余裕もなかった。ただ彼は、ヴィクトルをみつめ、ヴィクトルのすること、ヴィクトルの瞳、ヴィクトルのささやき、ヴィクトルの吐息、指遣いや目つき、彼のあたたかさなどを夢中で感じていた。絶対に忘れない、と思った。ヴィクトルのことは忘れない。この夜を忘れない。勇利の無茶なねがいを笑わず、いやな顔もせず受け容れ、いつくしんでくれたことを。こうして全身で抱きしめてくれたことを。彼のぬくもりを。ヴィクトル・ニキフォロフという男のすべてを。 息をはずませるヴィクトルの両頬を勇利はてのひらで包み、「ヴィクトル」とちいさく呼んだ。ヴィクトルはほほえみ、くちびるに接吻したあと、勇利と額をこつんと合わせた。 「大丈夫かい?」 「うん」 ヴィクトルは勇利のつむりを撫で、隣にごろりと転がると、「おいで」と腕をまくらにして抱き寄せてくれた。勇利は素直に彼に寄り添い、ゆっくりと呼吸をした。 こういうとき、普通は何か言葉を交わすものなのだろうか? きっとそうだろう。睦言などがあるのだ。だが、勇利には必要なかった。ヴィクトルが話すのなら、彼の大好きな声を聞きたい気がしたけれど、何も言ってくれなくてもちっとも構わなかった。ヴィクトルには熱心に愛してもらった。それだけでもう胸がいっぱいだった。 ああ、これで終わるのだな、と思った。ヴィクトルと過ごした八ヶ月が終わる。勇利はグランプリファイナルでヴィクトルと別れ、引退し、ヴィクトルはきっと選手に復帰する。それが勇利の考えた筋書きだった。 ヴィクトルと過ごした八ヶ月間は、最高だった。こんなに楽しく、優しく、いとしく、夢中で暮らした日々はなかった。これからさきもないだろう。もうあんな毎日は二度と望めない。だが、それでもよかった。この八ヶ月間の思い出、そして今夜与えられた情熱があれば生きていけると思った。 スケートだけではない。ヴィクトルにはありとあらゆることを教えられた。新しい笑い方、怒り方、泣き方、せつなさ、うれしさ、胸のときめかしさ……。愛を、教えてもらった。 一生ぶん、ヴィクトルのことを愛した。 勇利は生涯、誰とももうキスをしないだろう。こうして肌でふれあうこともない。勇利にはヴィクトルだけだ。彼以外なんて、考えることもできなかった。 「眠れそうかい?」 ヴィクトルが優しく尋ねた。勇利はこっくりとうなずいた。 「もっとこっちへおいで」 ヴィクトルが勇利を引き寄せ、むき出しの肩をふとんで覆ってくれた。彼は勇利の手をぎゅっと握った。 「勇利」 こんなに愛情深くヴィクトルは呼んでくれる。やわらかく、甘く……。しかし、彼から離れなければならない。勇利は胸が痛かった。大丈夫だ。大丈夫。こうして抱きしめてもらったから。 「勇利……、泣いてるのかい?」 ヴィクトルが心配そうに尋ねた。 「どこか痛くした? つらかった?」 勇利は嗚咽がこみ上げそうで、それを一生懸命にこらえた。 「どこが痛い? 撫でてあげるよ」 「ううん、ちがうんだ……」 勇利はどうにかほほえみ、ヴィクトルを見上げてつぶやいた。 「うれしいの」 「…………」 「うれしいんだよ……ヴィクトル」 勇利はヴィクトルの胸に顔をうずめた。 「うれしいんだ、ぼくは……」 「勇利……」 「それだけ……」 ヴィクトルが力強い腕で勇利を抱きしめた。勇利は微笑しながら透明な涙をこぼし、これでいいのだと思った。 これでいいのだ。これで……。 ヴィクトルとの最後の夜。 勇利は、しあわせだった。 あれは別れの儀式だったのだ、とヴィクトルは思った。あまりに感傷的で断定的かもしれない。勇利はそんなふうに、後ろ向きな気持ちではいなかっただろう。しかしヴィクトルにとっては、結局そういうことなのだった。いくら言葉を尽くしてみても、愛があるからと言い訳してみても、結果は変わらない。勇利はヴィクトルと濃密な八ヶ月間を過ごし、その八ヶ月目の親密な最後の夜にヴィクトルのベッドに入ってき、そこで確かな愛を交わして、バルセロナで別れを告げた。彼の中ではもうきまっていたのだ。計画的犯行だった。 なんて勝手なのだろうとヴィクトルは思った。「終わりにしよう」と言われたときからヴィクトルは怒っていた。勇利との未来を夢見、彼とならと思いきわめたのに、そんなふうに夢中になっていたのはヴィクトルだけで、勇利はあっさり手を離せるくらいの想いだったのだ。 何が初めてつなぎとめたいと思ったひとだ。何がロシアじゅうに愛を見せつけるだ。勇利は、結局……。 あの夜、一緒に寝たいと言われたとき、ヴィクトルは驚いた。だが勇利の目を見ればすぐにこころはきまった。彼の感情を受け容れようと思った。勇利はいつだって、まるで命懸けのような顔をして練習していたが、それと同じ決意にみちた瞳で、あのとき、ヴィクトルをみつめた。勇利を信じ、勇利の望むようにしてやりたかった。彼が何の迷いもないように、心残りなく試合にのぞめるように、なんでもしてやりたかった。勇利の気高い決断と、それをヴィクトルに伝えた勇気を褒めてやりたかったし、彼の想いを感じ、同じだけ愛を返してやりたかった。 なのに勇利は、ヴィクトルとはちがうところを見ていた。終わりを見ていたのだ。なんてひどいのだろう。あんなに自分勝手で視野の狭い者には会ったことがない。自分だけの気持ちで何もかもわかっているみたいにふるまって。 すべて勇利の思い通りになるのだろうか? 彼は満足そうに「これでいいんだ」と言うのだろうか。それが彼の愛なのか。 「そう上手くいくと思うなよ、勝生勇利」 グランプリファイナルが閉幕し、明日はいよいよ帰国だった。すぐに全日本選手権があるので、勇利は集中する必要があった。昨季はひどい成績だったから、それを乗り越えなければならない。現役を続けるからといって、そして気持ちが晴れ晴れとし、つい先日までとはすっかり変わったからといって浮かれてはいられない。 「勇利」 その夜、寝ようというころになって、ヴィクトルが気軽な調子で言い出した。 「俺たちの今後の関係についてなんだけど」 勇利はすぐにうなずいてベッドに腰を下ろした。ヴィクトルが向かいの窓辺に座る。 「うん、これから大変だよね」 ヴィクトルはコーチを続けると言ってくれた。選手に戻るけれど勇利のコーチもやめないと。そのことに勇利はわくわくしていた。 「ヴィクトルの負担が大きいのはわかってる。もちろんぼくも努力するよ。ヴィクトルに迷惑をかけないようにする。いままでは甘えすぎてたからね。もっと自覚を持つよ。ヴィクトルはプレイヤーコーチっていうことになるのかな……。あれって、選手とコーチが同じチームの場合にいうんだっけ? ぼくとヴィクトルはチームはちがうよね。じゃあそう言わないのかなあ」 のんきにそんなことで悩む勇利に、ヴィクトルはにっこり笑ってかぶりを振った。 「勇利、そういうことはどうでもいい」 「え、そう?」 勇利はどきっとした。ヴィクトルは笑っているけれど、彼からなんとなく不穏なものを感じる。気のせいだろうか? 「あ、じゃあ、もしかしてぼくがひとりで日本へ戻ることを心配してるとか?」 ヴィクトルはロシアナショナルで復帰するというので、当然そういうことになる。勇利は頼りないから彼は気にしているのかもしれない。 「心配? フリーの世界記録を持っていて、グランプリファイナルで銀メダルを獲った選手が、ライバルもいないらしい国内で試合をするのに、いったいどんな心配をするというんだ? もちろん勇利は優勝するよねえ。大差をつけるんだろうね。百点くらいは差が出るのかな?」 ヴィクトルは相変わらずにこにこしながら言った。勇利はなんとなくおののいた。 「ヴィクトル……どうしたの?」 「何が?」 「何か怒ってる?」 「そう見えるのかい?」 「えっと、なんとなく……」 「なぜ俺が怒るんだ?」 「それは、その……」 勇利はためらった。答える声がちいさくなる。 「……ぼくが引退すると言ったから」 「俺は怒ってはいない」 ヴィクトルはじろりと勇利をにらんだ。 「勝生勇利に怒っても意味はないと知ったからね。もうそのことについてあれこれ言ったりしないよ。勇利を相手に���時間の無駄だ」 「なんかあなどられてる?」 「ただ勇利は、俺がコーチをやめると思って、いろいろ計画していたよね」 「計画って……そんなことしてないよ」 「本当に?」 「うん」 「そのための行動を何ひとつしなかった?」 勇利は考えこんだ。金メダルを獲るためにたくさん練習はしたけれど、それ以外に何か特別なことをしたという意識はない。 「……してないと思うけど」 ヴィクトルは眉を上げて言った。 「勇利は俺と、これからどんな関係でいたい?」 突然の質問に勇利は戸惑った。 「え? それは……コーチと生徒だけど……」 そこで急に不安になった。 「コーチでいてくれるんだよね?」 やっぱりやめたいとかそういうことだろうか? そんなのは困る。 「いるよ」 ヴィクトルはうなずいた。勇利はほっとした。 「勇利はそれ以外を俺に求めてはいない?」 「それ以外?」 勇利は首をかしげた。 「俺に望むことはないの?」 「…………」 ヴィクトルに望むこと。ヴィクトルはヴィクトルでいて欲しい。コーチをして欲しい。……ほかにはちょっと思い浮かばない。 「……ないよ」 「勇利、訊くけど」 「なに?」 「俺たち、セックスしたよね」 勇利はいきなり顔をそむけ、ベッドにつっぷした。あっという間に頬が赤くなり、耳までまっかになった。忘れていた! いや、忘れていたわけではない。あれは大切な思い出だし、生涯における最大の喜びのひとつである。しかし、自分の中にぴたりとおさまって、すべて納得していたので、万事問題はないという気持ちだったのだ。 そうだ。ぼくたちはそういうことをした。裸で抱きあった。ぼくはヴィクトルと。ヴィクトルと……。 ��──あああああ! もぉおぉぉお! こんなことになるなんて! どうしよう! その勇利の気持ちをくみとったかのようにヴィクトルが言った。 「まさかこんなことになるなんて思わなかっただろうね。俺とはもう会うこともないと考えたから抱いて欲しいと言ったんだよね」 「そ、それは……」 「俺とセックスして、俺とデートをして、自分の中で整理をつけていったんだよね」 「あ、あの……」 「もう最後。これで終わり。そうやって決定した事柄がくつがえされてるわけだけど、勇利、どうするんだい?」 ああ、もう……。勇利はぎゅっと目を閉じた。確かに、これで最後と思いきわめてしたことだった。こうして師弟関係が続くことになってしまえば、まったく困った事態である。恥ずかしいし、言い訳もできない。 どうしよう……。 勇利とヴィクトルはあのとき抱きあい、肌を重ねて、勇利は身体の奥深くまでをヴィクトルに明け渡した。勇利はもう二度とふれられぬはずのぬくもりにおぼれ、ヴィクトルの情熱的な愛を確かに受け取ったのだ。 「…………」 勇利はがばっと身体を起こした。赤い顔をヴィクトルに向ける。勇利はヴィクトルを上目遣いでうかがい、それからぎゅうっと両手を握りあわせて頭を下げた。 「忘れてください!」 「…………」 「あ、あのことは……忘れてください……」 勇利はささやいた。 「あの、お怒りはごもっともですけど、ぼくは中途半端な気持ちでああいうことをしたわけではなく、いえ、言い訳なんですが、でもとにかくヴィクトルとはずっといい師弟でいたいんです!」 「…………」 「ヴィクトルには……悪かったというか……ええ、申し訳ないと思いますけど……」 「…………」 「それで……いままで通り……変わらぬご指導ご鞭撻をいただければと……」 「…………」 「いままで通り……いままで通り……」 「…………」 ヴィクトルは何も言わない。勇利はおずおずとヴィクトルを見た。ヴィクトルは勇利をじっとみつめていた。 「……それで?」 「え?」 「俺が忘れて、勇利も忘れるのかい?」 「えっ、いえ、ぼくは……おぼえてますけど……」 「おぼえてる!」 「あっ、何か不都合が……」 いやかな、と不安になった。ヴィクトルにとってあの夜は失態で、なくしてしまいたい出来事なのだろうか。 「勇利って本当に勝手だよね」 ヴィクトルがあきれたように言った。 「引退すると言ったり忘れてくれと言ったり、もう、俺の気持ちなんかぜんぜん考えてないだろ?」 「えっと……」 勇利はおそるおそる尋ねた。 「……ぼくも忘れたほうがいいの?」 「そういうことを言ってるんじゃないんだよ、俺は!」 怒られてしまった。勇利は、なんでヴィクトル怒ってるんだろ、と首をかしげた。よくわからない。 「勇利」 ヴィクトルが勇利の手を取った。そのままぐっと押され、勇利はベッドにあおのいた。ヴィクトルが膝をついてのしかかってくる。 「さぞかしうつくしかっただろうね」 「え?」 「勇利が引退して俺が復帰して、それで終わりになっていたら」 勇利はぱちくりと瞬いた。 「勇利は長谷津へひとりで帰るわけだ。何もかもやりきった、心残りはない、というすっきりした態度でね。最初はちょっとさびしいと感じるだろう。ついこのあいだまでいた俺がいない。リンクでもひとり、温泉でもひとり。リンクの行き帰りにアイスクリームを買ったり肉まんを買ったりして分けあうこともない。何か楽しいことがあっても俺に話せない。俺がくだらないことではしゃぐこともない。襖一枚をへだてたところにあった気配は感じられない。勇利はさびしい。さびしいけれど、穏やかな気持ちなんだ。これでよかったんだ。ヴィクトルはいまごろ練習に励んでる。彼のスケートがもうすぐ見られる。それがうれしくてたまらない。──そうだね?」 「あ、あの……」 「勇利は長谷津で何かスケートにたずさわる仕事を続けるんだろう。俺の暮らしていた部屋を見てちょっと涙ぐんだり、なつかしいとほほえんだりしながら。完全に俺のファンになって俺を応援する。俺の試合を熱心にテレビでみつめ、俺の新しいプログラムをまねしたりして勝手にわくわくする」 「勝手にって」 「俺が金メダルを獲れば、あのひとはぼくのコーチだったんだ、なんてせつなく感じたりする。それは誇りだ。いまそばにいないからといってかなしくなんかない。けれど、どうしようもなくさびしくなったら指輪にキスをする。勇利は俺がテレビに出ると、指輪をはめているかどうかさりげなく確認してしまう。はめていたら、いい加減外せばいいのにとくすぐったくほほえんで、もしなかったら、ああ、とうとう外したのかとせつなくなり、でも当然だ、これでいいんだと勝手に納得するんだ」 「勝手にって」 「俺を遠くから想い、時にひどいひとりぼっちの気分になると、けれどあの夜ヴィクトルはぼくにふれてくれた、確かに愛してくれた、と思い出してせつない幸福に勝手にひたる」 「また勝手に……」 抗議しながら勇利は頬を赤くした。 「俺が日本に行くと、勇利も仕事上、会うこともあるかもしれない。ショーに出演すればきっとそうなる。なにしろ勇利は日本の宝石だからね。ショーがあれば呼ばれるさ。勇利はそのときだけは指輪を外す。いつまでも未練がましくはめていたらヴィクトルに悪い。ヴィクトルだって、そんなものをいつまでつけているんだとうんざりする。そう考えてね。俺たちは再会し、大人らしく笑顔で快活に話して、丁寧な対応をする。俺たちは気軽に世間話をし、近況報告をして笑いあう。勇利は俺のプログラムへの賛辞を率直に述べる。どれだけ俺のスケートがよかったか、夢中になったか、並べ立てることだろう。そして最後に、応援していると付け加える。俺たちはいい仕事をし、じゃあまたいつかと笑顔で手を振って別れる。俺は新しいプログラムを考え、勇利は次のシーズンを心待ちにして長谷津で過ごす。ヴィクトルはますますかっこよくなってたな、やっぱり大好きだな、あのひとがコーチだったなんて信じられない、でも彼は確かにぼくにさわったんだ。そう思いながらまた指輪をはめ、それにキスをする」 ヴィクトルは勇利をにらみつけた。 「うつくしい、平穏な、お互い苦しむことのなさそうな結末だ」 「…………」 「勇利はそうしたかったんだろう。そうなると思っていたんだろう」 「そう……したかったわけじゃ……」 「でもそういうことを考えていた。俺と最後に愛を分かち合うために、一緒に寝た」 勇利は何も言えなくなった。気まずそうに目をそらし、それからちらとヴィクトルを見、また視線をそらした。 「……絶対に、そんなくだらない物語を完結させてなんかやらないからな」 ヴィクトルは子どものように言い張った。 「でもヴィクトル──」 「引退しないんだからそんな未来は来ない。そう言いたいんだろ? そうじゃない。勇利が引退しないのはいまだけだ。何年か経てばそうなる。俺だってそうだ。結局は、みんな、一生現役でいることはできない。そうだろう」 「は、はい……」 ヴィクトルはゆっくりとした口ぶりで話しているが、奇妙な迫力が彼にはあった。 「きっといずれ、同じことが起こる。きみは現役を退くと言い出し、俺を置いて長谷津へ帰る。ひとりで。俺の言い分なんて聞きもしないで」 「そ、そんなことはないよ」 勇利は気おされ、てのひらを上に向けて両手を顔のそばへ置いて、まるで降参しているかのような姿勢でヴィクトルを見上げた。 「そういうことは、ちゃんと、ヴィクトルと話しあって、それで」 「いま話しあえなかった者が、そのときになって話しあえるとは思えない」 「そんなことないってば。今回のことでぼくもひとつ学んだから、次は……」 「勇利の言うことなんか信用できない。おまえは平気で俺を捨てるんだ。自分がやりたいと思ったことをお構いなしでやるんだ。もう知ってる。俺こそ学んだんだよ、勇利」 ヴィクトルは相変わらず静かに話している。しかし勇利はどうにも抵抗できないものを感じていた。ヴィクトルは何か決心している。それが何かはわからない。 「勇利」 ヴィクトルは勇利の目をのぞきこんだ。 「あのとき、どうして一緒に寝ようと言い出した?」 「えっ、そ、それは」 「いくら親しくても、別れにのぞみ、セックスまでしたいと思うなんて、それは一般的な関係じゃないよね?」 「そ、そうだけど、あれはなんていうか、セッ……とかそういう感じじゃなくて、ぼくはヴィクトルのことを全部おぼえておきたかったっていうか、知っておきたかったっていうか、ぼくはヴィクトルが……」 「俺のことが好き」 ヴィクトルが唐突にほほえんだ。勇利はどきっとしたが、その通りなのでこっくりとうなずいた。 「だからあのとき、最後にふれあおうとした。そうだね?」 「は、はい……」 「勇利にはそれが必要だった。まちがってないね?」 「はい……」 「つまり、俺をそんなふうに愛しているし、これからさきも俺が必要だということだよね?」 「えっ?」 勇利はびっくりした。そうは考えていなかった。とにかく勇利はあのとき、ヴィクトルの全部を自分に刻みつけてもらいたいと、そのことだけをねがっていたのだ。それがセックスというかたちになったに過ぎない。 「そうだね?」 しかしヴィクトルは有無を言わさず決断を迫ってくる。勇利は混乱した。 「そ、そうじゃないよ。ぼくは……」 「一度俺を求めたんだ。これからも求めるだろう。そうだろ、勇利」 「いえ、あの……」 「別れるわけでもないのにあんなふうにベッドにもぐりこんできた。俺が必要ってことだろ?」 「あのときはもう終わりだと思っていて、つまり別れるものだと思っていて」 「だが別れなかった」 「…………」 「思い出は理由にはならない」 「それは結果論です」 「結果論でも結果は結果だ」 「ヴィ、ヴィクトル」 「俺はあの夜を忘れない。きみも忘れない。俺たちは愛しあっている。お互いが必要だ。だったら、俺たちが今後どんなふうに仲よくするかは、もうわかりきってるんじゃない��?」 「だって……」 「そうだろう、勇利。単純な話だ。わかりやすい。何も迷うところなんてない、あっさりしたなりゆきだ」 「ヴィクトル、あの、貴方はもしかして」 「なんだい?」 「こ……、」 勇利は口元を手で押さえてささやいた。 「これからも、ぼくたち、あんなふうにする関係になるっていう、そういう……そういう気持ちが……」 ヴィクトルはにっこり笑った。 「にぶい勇利にしてはよくできたね。いい子だ」 勇利はまっかになった。 「できるわけないだろ!」 「なぜ?」 「だってぼくたち、そういう関係じゃない!」 「そういう関係だよ」 「ぼくたちは師弟で──」 「きみはただのコーチとセックスするのか」 「だからあのときは!」 「俺をもてあそんだのか?」 「ちょっと、ぼくはまじめに話してるんだよ!」 「俺もまじめに話している。わかったよ。そういう関係じゃないというならそれでも構わない。でもこれからそうなればいいだろう。俺たちはもう一歩を踏み出している」 「あれは最初の一歩じゃなくて、最後のつもりで──だから──」 「ちょっときみ、黙って」 ヴィクトルがふいに勇利の両手首をつかみ、ぐっとふとんに押しつけた。負けるものかと押し返そうとしたら、彼にキスされて勇利はびっくりした。 「んっ、んんん! ん!」 「…………」 「んーんーんーんー! んんんん!」 ヴィクトルはしばらくむぐむぐと勇利のくちびるをついばみ、長くキスしてからようやく離れた。勇利はぷはっと息をついた。 「何するんだよ!」 「勇利こそ何なんだ。俺を誘惑しておいて、俺がキスしたら文句を言うのか」 「誘惑なんかしてないよ!」 「したよ。俺は勇利にまいってしまって、勇利のためならなんでもしたい、望むようにしてあげたいと思ってしまったんだ」 「ぼくはそんなふうには──」 「そしてその魔法はいまもとけていない」 ヴィクトルが急に声をひそめ、まじめに言った。勇利はどきっとして赤くなり、口をつぐんだ。 「勇利があのときどういうつもりだったかわかっている。さきの関係を期待してああしたわけじゃないことも。だからいまのおまえの気持ちもわかる。俺は勇利のためならなんでもしてあげたい」 「だったら──」 ヴィクトルは勇利を見据え、きっぱりと言った。 「だが、自分のために何もしないわけじゃない」 勇利は大きく瞬いた。 「ヴィ、ヴィクトル……」 「あんなの、ぜんぜん俺らしくなかった。勇利は俺は俺でいて欲しいって言ったね。ああ、そうするよ。勇利にとっていいようにしていたら、捨てられそうになるってわかったからね。もう遠慮なんかしない。勇利があのとき俺を求めた気持ちはわかっているけど、俺は、勇利が俺を愛していることも知っている」 ヴィクトルの手がスウェットの裾から入ってきた。勇利は仰天した。 「ヴィクトル!」 「勇利、一緒に寝たい」 「ちょっと!」 「勇利だって俺のねがいを聞いてくれるよね」 「待って──」 慌てる勇利などものともせず、ヴィクトルは優雅にほほえんで口元を上げた。 「手加減はしないよ。それが俺の愛だからね」 「ヴィクトル──」 「いやなら本気で抵抗してごらん」 ヴィクトルはじたばたと暴れる勇利���ささやいた。 「それならやめる」 「…………」 「──でも」 彼はどこかうれしそうににっこり笑った。 「勇利はそうしないって、俺は知ってるよ」 「……ずるい」 ロシアへ移り住んでから、ヴィクトルにはベッドを一緒にしようとたびたび言われている。けれど勇利は断固としてそれは断っていた。するとそのたびに過去のことを持ち出されて責められる。 「あのとき、勇利は自分から俺のところへ来てくれたよね」 「バルセロナでも、されるがままになってたし、愛してるって言ってくれたよね」 「そこまで俺のことを想ってるのになんでいやがる?」 それに言い返せる言葉はない。すべてヴィクトルの言うとおりだと思う。わかっているのだ。でも、勇利はもともとそんなつもりはなかったし、ヴィクトルのことはこころから愛しているけれど、日常的にそんなことをする関係になんて、とてもなれない。 だって、だって──。 だって、恥ずかしいではないか。 「勇利、じゃあベッドをずっと一緒にはしなくてもいいから、今夜はふたりで寝よう」 「何もしない?」 「なに言ってるんだ? 何もしないわけないだろう。何かするから言ってるんだよ」 「そう言われてぼくがいいよって返事すると思う!?」 「だって勇利、そういう気持ちがあるからあの夜俺のところへ来てくれたんだろ?」 「いい加減にして! だからそれは──」 「最後だからとか関係ないんだよ。理由じゃなく、そのとき俺たちがおこなった行為について俺は言ってるんだ」 「もう知らない!」 あの一夜のせいでこれからもずっとこういうことを言われ続けるのだろうか。まったく困る。ヴィクトルはしつこい。あんなことするんじゃなかった。──とは、思わないけれど。 「まあいいけどね」 ヴィクトルは勇利が拒んでも、機嫌よく笑って言うのだ。 「勇利はワールド五連覇しないと引退できないからね。それまでに、もう日本へ帰ります、貴方のことこれからもファンとして応援してます、さよなら、なんて言えないくらいには愛させるから」 なんて自信……。勇利はあきれてしまった。それにしても信用がない。そんなにヴィクトルにとってバルセロナの夜は衝撃だったのだろうか。 勇利はそっぽを向いてつぶやいた。 「もう、それくらいの愛はとっくにありますけど」 「え!?」
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あなたにだけは忘れてほしくなかった
アメリカ合衆国、ニューヨーク州、マンハッタン、ニューヨーク市警本部庁舎。 上級職員用のオフィスで資料を眺めていた安藤文彦警視正は顔をしかめた。彼は中年の日系アメリカ人である。頑なに日本名を固持しているのは血族主義の強かった祖父の影響だ。厳格な祖父は孫に米国風の名乗りを許さなかったためである。祖父の信念によって子供時代の文彦はいくばくかの苦労を強いられた。 通常、彼は『ジャック』と呼ばれているが、その由来を知る者は少ない。自らも話したがらなかった。 文彦は暴力を伴う場合の少ない知的犯罪、いわゆるホワイトカラー犯罪を除く、重大犯罪を扱う部署を横断的に統括している。最近、彼を悩ませているのは、ある種の雑音であった。 現在は文彦が犯罪現場へ出る機会はないに等しい。彼の主たる業務は外部機関を含む各部署の調整および、統計分析を基として行う未解決事件への再検証の試みであった。文彦の懸念は発見場所も年代も異なる数件の行方不明者の奇妙な類似である。類似といっても文彦の勘働きに過ぎず、共通項目を特定できているわけではなかった。ただ彼は何か得体の知れない事柄が進行している気配のようなものを感じ取っていたのである。 そして、彼にはもうひとつ、プライベートな懸念事項があった。十六才になる姪の安藤ヒナタだ。
その日は朝から快晴、空気は乾いていた。夏も最中の日差しは肌を刺すようだが、日陰に入ると寒いほどである。自宅��ダイニングルームでアイスティーを口にしながら安藤ヒナタは決心した。今日という日にすべてをやり遂げ、この世界から逃げ出す。素晴らしい考えだと思い、ヒナタは微笑んだ。 高校という場所は格差社会の縮図であり、マッチョイズムの巣窟でもある。ヒナタは入学早々、この猿山から滑り落ちた。見えない壁が張り巡らされる。彼女はクラスメイトの集う教室の中で完全に孤立した。 原因は何だっただろうか。ヒナタのスクールバッグやスニーカーは他の生徒よりも目立っていたかもしれない。アジア系の容姿は、彼らの目に異質と映ったのかも知れなかった。 夏休みの前日、ヒナタは階段の中途から突き飛ばされる。肩と背中を押され、気が付いた時には一階の踊り場に強か膝を打ちつけていた。 「大丈夫?」 声だけかけて去っていく背中を呆然と見送る。ヒナタは教室に戻り、そのまま帰宅した。 擦過傷と打撲の痕跡が残る膝と掌は、まだ痛む。だが、傷口は赤黒く乾燥して皮膚は修復を開始していた。もともと大した傷ではない。昨夜、伯父夫婦と夕食をともにした際もヒナタは伯母の得意料理であるポークチョップを食べ、三人で和やかに過ごした。 高校でのいざこざを話して何になるだろう。ヒナタは飲み終えたグラスを食洗器に放り込み、自室へ引っ込んだ。
ヒナタの母親はシングルマザーである。出産の苦難に耐え切れず、息を引き取った。子供に恵まれなかった伯父と伯母はヒナタを養子に迎え、経済的な負担をものともせず、彼女を大学に行かせるつもりでいる。それを思うと申し訳ない限りだが、これから続くであろう高校の三年間はヒナタにとって永遠に等しかった。 クローゼットから衣服を抜き出して並べる。死装束だ。慎重に選ぶ必要がある。等身大の鏡の前で次々と試着した。ワンピースの裾に払われ、細々としたものがサイドボードから床に散らばる。悪態を吐きながら拾い集めていたヒナタの手が止まった。横倒しになった木製の箱を掌で包む。母親の僅かな遺品の中からヒナタが選んだオルゴールだった。 最初から壊れていたから、金属の筒の突起が奏でていた曲は見当もつかない。ヒナタはオルゴールの底を外した。数枚の便箋と写真が納まっている。写真には白のワイシャツにスラックス姿の青年と紺色のワンピースを着た母親が映っていた。便箋の筆跡は美しい。『ブライアン・オブライエン』の署名と日付、母親の妊娠の原因が自分にあるのではないかという懸念と母親と子供に対する執着の意思が明確に示されていた。手紙にある日付と母親がヒナタを妊娠していた時期は一致している。 なぜ母は父を斥けたのだろうか。それとも、この男は父ではないのか。ヒナタは苛立ち、写真の青年を睨んだ。 中学へ進み、スマートフォンを与えられたヒナタは男の氏名を検索する。同姓同名の並ぶ中、フェイスブックに該当する人物を見つけた。彼は現在、大学の教職に就いており、専門分野は精神病理学とある。多数の論文、著作を世に送り出していた。 ヒナタは図書館の書棚から彼の書籍を片っ端から抜き出す。だが、学術書を読むには基礎教養が必要だ。思想、哲学、近代史、統計を理解するための数学を公共の知の宮殿が彼女に提供する。 ヒナタは支度を終え、バスルームの洗面台にある戸棚を開いた。医薬品のプラスチックケースが乱立している。その中から伯母の抗うつ剤の蓋を掴み、容器を傾けて錠剤を掌に滑り出させた。口へ放り込み、ペットボトルの水を飲み込む。栄養補助剤を抗うつ剤の容器に補充してから戸棚へ戻した。 今日一日、いや数時間でもいい。ヒナタは最高の自分でいたかった。
ロングアイランドの住宅地にブライアン・オブライエンの邸宅は存在していた。富裕層の住居が集中している地域の常であるが、ヒナタは脇を殊更ゆっくりと走行している警察車両をやり過ごす。監視カメラの装備された鉄柵の門の前に佇んだ。 呼び鈴を押そうかと迷っていたヒナタの耳に唸り声が響く。見れば、門を挟んで体長一メータ弱のドーベルマンと対峙していた。今にも飛び掛かってきそうな勢いである。ヒナタは思わず背後へ退いた。 「ケンダル!」 奥から出てきた男の声を聞いた途端、犬は唸るのを止める。スーツを着た男の顔はブライアン・オブライエン、その人だった。 「サインしてください!」 鞄から取り出した彼の著作を抱え、ヒナタは精一杯の声を張り上げる。 「いいけど。これ、父さんの本だよね?」 男は門を開錠し、ヒナタを邸内に招き入れた。
男はキーラン・オブライエン、ブライアンの息子だと名乗った。彼の容姿は写真の青年と似通っている。従って現在、五十がらみのブライアンであるはずがなかった。ヒナタは自らの不明を恥じる。 「すみません」 スペイン人の使用人が運んできた陶磁器のコーヒーカップを持ち上げながらヒナタはキーランに詫びた。 「これを飲んだら帰るから」 広大な居間に知らない男と二人きりで座している事実に気が滅入る。その上、父親のブライアンは留守だと言うのであるから、もうこの家に用はなかった。 「どうして?」 「だって、出かけるところだよね?」 ヒナタはキーランのスーツを訝し気に見やる。 「別にかまわない。どうせ時間通りに来たことなんかないんだ」 キーランは初対面のヒナタを無遠慮に眺めていた。苛立ち始めたヒナタもキーランを見据える。 ヒナタはおよそコンプレックスとは無縁のキーランの容姿と態度から彼のパーソナリティを分析した。まず、彼は他者に対してまったく物怖じしない。これほど自分に自信があれば、他者に無関心であるのが普通だ。にも拘らず、ヒナタに関心を寄せているのは、何故か。 ヒナタは醜い女ではないが、これと取り上げるような魅力を持っているわけでもなかった。では、彼は何を見ているのか。若くて容姿に恵まれた人間が夢中になるもの、それは自分自身だ。おそらくキーランは他者の称賛の念を反射として受け取り、自己を満足させているに違いない。 「私を見ても無駄。本質なんかないから」 瞬きしてキーランは首を傾げた。 「俺に実存主義の講義を?」 「思想はニーチェから入ってるけど、そうじゃなくて事実を言ってる。あなたみたいに自己愛の強いタイプにとって他者は鏡でしかない。覗き込んでも自分が見えるだけ。光の反射があるだけ」 キーランは吹き出す。 「自己愛? そうか。父さんのファンなのを忘れてたよ。俺を精神分析してるのか」 笑いの納まらないキーランの足元へドーベルマンが寄ってくる。 「ケンダル。彼女を覚えるんだ。もう吠えたり、唸ったりすることは許さない」 キーランの指示に従い、ケンダルはヒナタのほうへ近づいてきた。断耳されたドーベルマンの風貌は鋭い。ヒナタは大型犬を間近にして体が強張ってしまった。 「大丈夫。掌の匂いを嗅がせて。きみが苛立つとケンダルも緊張する」 深呼吸してヒナタはケンダルに手を差し出す。ケンダルは礼儀正しくヒナタの掌を嗅いでいた。落ち着いてみれば、大きいだけで犬は犬である。 ヒナタはケンダルの耳の後ろから背中をゆっくりと撫でた。やはりケンダルはおとなしくしている。門前で威嚇していた犬とは思えないほど従順だ。 「これは?」 いつの間にか傍に立っていたキーランがヒナタの手を取る。擦過傷と打撲で変色した掌を見ていた。 「別に」 「こっちは? 誰にやられた?」 キーランは、手を引っ込めたヒナタのワンピースの裾を摘まんで持ち上げる。まるでテーブルクロスでもめくる仕草だ。ヒナタの膝を彩っている緑色の痣と赤黒く凝固した血液の層が露わになる。ヒナタは青褪めた。他人の家の居間に男と二人きりでいるという恐怖に舌が凍りつく。 「もしきみが『仕返ししろ』と命じてくれたら俺は、どんな人間でも這いつくばらせる。生まれてきたことを後悔させる」 キーランの顔に浮かんでいたのは怒りだった。琥珀色の瞳の縁が金色に輝いている。落日の太陽のようだ。息を吸い込む余裕を得たヒナタは掠れた声で言葉を返す。 「『悪事を行われた者は悪事で復讐する』わけ?」 「オーデン? 詩を読むの?」 依然として表情は硬かったが、キーランの顔から怒りは消えていた。 「うん。伯父さんが誕生日にくれた」 キーランはヒナタのすぐ隣に腰を下ろす。しかし、ヒナタは咎めなかった。 「復讐っていけないことだよ。伯父さんは普通の人がそんなことをしなくていいように法律や警察があるんだって言ってた」 W・H・オーデンの『一九三九年九月一日』はナチスドイツによるポーランド侵攻を告発した詩である。他国の争乱と無関心を決め込む周囲の人々に対する憤りをうたったものであり、彼の詩は言葉によるゲルニカだ。 「だが、オーデンは、こうも言ってる。『我々は愛し合うか死ぬかだ』」 呼び出し音が響き、キーランは懐からスマートフォンを取り出す。 「違う。まだ家だけど」 電話の相手に生返事していた。 「それより、余分に席を取れない? 紹介したい人がいるから」 ヒナタはキーランを窺う。 「うん、お願い」 通話を切ったキーランはヒナタに笑いかけた。 「出よう。父さんが待ってる」 戸惑っているヒナタの肩を抱いて立たせる。振り払おうとした時には既にキーランの手は離れていた。
キーラン・オブライエンには様々な特質がある。体格に恵まれた容姿、優れた知性、外科医としての将来を嘱望されていること等々、枚挙に暇がなかった。だが、それらは些末に過ぎない。キーランを形作っている最も重要な性質は彼の殺人衝動だ。 この傾向は幼い頃からキーランの行動に顕著に表れている。小動物の殺害と解剖に始まり、次第に大型動物の狩猟に手を染めるが、それでは彼の欲求は収まらなかった。 対象が人間でなければならなかったからだ。 キーランの傾向にいち早く気付いていたブライアン・オブライエンは彼を教唆した。具体的には犯行対象を『悪』に限定したのである。ブライアンは『善を為せ』とキーランに囁いた。彼の衝動を沈め、社会から悪を排除する。福祉の一環であると説いたのだ。これに従い、彼は日々、使命を果たしてる。人体の生体解剖によって嗜好を満たし、善を為していた。 「どこに行くの?」 ヒナタの質問には答えず、キーランはタクシーの運転手にホテルの名前を告げる。 「行けないよ!」 「どうして?」 ヒナタはお気に入りではあるが、量販店のワンピースを指差した。 「よく似合ってる。綺麗だよ」 高価なスーツにネクタイ、カフスまでつけた優男に言われたくない。話しても無駄だと悟り、ヒナタはキーランを睨むに留めた。考えてみれば、ブライアン・オブライエンへの面会こそ重要課題である。一流ホテルの従業員の悪癖であるところの客を値踏みする流儀について今は不問に付そうと決めた。 「本当にお父さんに似てるよね?」 「俺? でも、血は繋がってない。養子だよ」 キーランの答えにヒナタは目を丸くする。 「嘘だ。そっくりじゃない」 「DNAは違う」 「そんなのネットになかったけど」 ヒナタはスマートフォンを鞄から取り出した。 「公表はしてない」 「じゃあ、なんで話したの?」 「きみと仲良くなりたいから」 開いた口が塞がらない。 「冗談?」 「信じないのか。参ったな。それなら、向こうで父さんに確かめればいい」 キーランはシートに背中を預け、目を閉じた。 「少し眠る。着いたら教えて」 本当に寝息を立てている。ヒナタはスマートフォンに目を落とした。
ヒナタは肩に触れられて目を覚ました。 「着いたよ」 ヒナタの背中に手を当てキーランは彼女を車から連れ出した。フロントを抜け、エレベーターへ乗り込む。レストランに入っても警備が追いかけてこないところを見ると売春婦だとは思われていないようだ。ヒナタは脳内のホテル番付に星をつける。 「女性とは思わなかった。これは、うれしい驚きだ」 テラスを占有していたブライアン・オブライエンは立ち上がってヒナタを迎えた。写真では茶色だった髪は退色し、白髪混じりである。オールバックに整えているだけで染色はしていなかった。三つ揃いのスーツにネクタイ、機械式の腕時計には一財産が注ぎ込まれているだろう。デスクワークが主体にしては硬そうな指に結婚指輪が光っていたが、彼の持ち物とは思えないほど粗雑な造りだ。アッパークラスの体現のような男が配偶者となる相手に贈る品として相応しくない。 「はじめまして」 自分の声に安堵しながらヒナタは席に着いた。 「彼女は父さんのファンなんだ」 ヒナタは慌てて鞄から本を取り出す。 「サインしてください」 本を受け取ったブライアンは微笑んだ。 「喜んで。では、お名前を伺えるかな?」 「安藤ヒナタです」 老眼鏡を懐から抜いたブライアンはヒナタに顔を向ける。 「スペルは?」 答える間もブライアンはヒナタに目を据えたままだ。灰青色の瞳は、それが当然だとでも言うように遠慮がない。血の繋がりがどうであれ、ブライアンとキーランはそっくりだとヒナタは思った。 ようやく本に目を落とし、ブライアンは結婚指輪の嵌った左手で万年筆を滑らせる。 「これでいいかな?」 続いてブライアンは『ヒナタ』と口にした。ヒナタは父親の声が自分の名前を呼んだのだと思う。その事実に打ちのめされた。涙があふれ出し、どうすることもできない。声を上げて泣き出した。だが、それだけではヒナタの気は済まない。二人の前に日頃の鬱憤を洗いざらい吐き出していた。 「かわいそうに。こんなに若い女性が涙を流すほど人生は過酷なのか」 ブライアンは嘆く。驚いたウェイターが近付いてくるのをキーランが手を振って追い払った。ブライアンは席を立ち、ヒナタの背中をさする。イニシャルの縫い取られたリネンのハンカチを差し出した。 「トイレ」 宣言してヒナタはテラスを出ていく。 「おそらくだが、向精神薬の副作用だな」 父親の言葉にキーランは頷いた。 「彼女。大丈夫?」 「服用量による。まあ、あれだけ泣いてトイレだ。ほとんどが体外に排出されているだろう」 「でも、攻撃的で独善的なのは薬のせいじゃない」 ブライアンはテーブルに落ちていたヒナタの髪を払い除ける。 「もちろんだ。彼女の気質だよ。しかし、同じ学校の生徒が気の毒になる。家畜の群れに肉食獣が紛れ込んでみろ。彼らが騒ぐのは当然だ」 呆れた仕草でブライアンは頭を振った。 「ルアンとファンバーを呼びなさい。牧羊犬が必要だ。家畜を黙らせる。だが、友情は必要ない。ヒナタの孤立は、このままでいい。彼女と親しくなりたい」 「わかった。俺は?」 「おまえの出番は、まだだ。キーラン」 キーランは暮れ始めている空に目をやる。 「ここ。誰の紹介?」 「アルバート・ソッチ。デザートが絶品だと言ってた。最近、パテシエが変わったらしい」 「警察委員の? 食事は?」 ブライアンも時計のクリスタルガラスを覗いた。 「何も言ってなかったな」 戻ってきたヒナタの姿を見つけたキーランはウェイターに向かい指示を出す。 「じゃあ、試す必要はないね。デザートだけでいい」 ブライアンは頷いた。
「ハンカチは洗って返すから」 ヒナタとキーランは庁舎の並ぶ官庁街を歩いていた。 「捨てれば? 父さんは気にしない」 面喰ったヒナタはキーランを窺う。ヒナタは自分の失態について思うところがないわけではなかった。ブライアンとキーランに愛想をつかされても文句は言えない。二人の前で吐瀉したも同じだからだ。言い訳はできない。だが、ヒナタは、まだ目的を果たしていないのだ。 ブライアン・オブライエンの実子だと確認できない状態では自死できない。 「それより、これ」 キーランはヒナタの手を取り、掌に鍵を載せた。 「何?」 「家の鍵。父さんも俺もきみのことを家族だと思ってる。いつでも遊びに来ていいよ」 瞬きしているヒナタにキーランは言葉を続ける。 「休暇の間は俺がいるから。もし俺も父さんもいなかったとしてもケンダルが 相手をしてくれる」 「本当? 散歩させてもいい? でも、ケンダルは素気なかったな。私のこと好きじゃないかも」 「俺がいたから遠慮してたんだ。二人きりの時は、もっと親密だ」 ヒナタは吹き出した。 「犬なのに二人?」 「ケンダルも家族だ。俺にとっては」 相変わらずキーランはヒナタを見ている。ヒナタは眉を吊り上げた。 「言ったよね? 何もないって」 「違う。俺はきみを見てる。ヒナタ」 街灯の光がキーランの瞳に映っている。 「だったら、私の味方をしてくれる? さっき家族って言ってたよね?」 「言った」 「でも、あなたはブライアンに逆らえるの? 兄さん」 キーランは驚いた顔になった。 「きみは、まるでガラガラヘビだ」 さきほどの鍵をヒナタはキーランの目の前で振る。 「私が持ってていいの? エデンの園に忍び込もうとしている蛇かもしれない」 「かまわない。だけど、あそこに知恵の実があるかな? もしあるとしたら、きみと食べたい」 「蛇とイブ。一人二役だね」 ヒナタは入り口がゲートになったアパートを指差した。 「ここが私の家。さよならのキスをすべきかな?」 「ヒナタのしたいことを」 二人は互いの体に手を回す。キスを交わした。
官庁街の市警本部庁舎では安藤文彦が部下から報告を受けていた。 「ブライアン・オブライエン?」 クリスティナ・ヨンぺルト・黒田は文彦が警部補として現場指揮を行っていた時分からの部下である。移民だったスペイン人の父親と日系アメリカ人の母親という出自を持っていた。 「警察委員のアルバート・ソッチの推薦だから本部長も乗り気みたい」 文彦はクリスティナの持ってきた資料に目をやる。 「警察委員の肝入りなら従う他ないな」 ブライアン・オブライエン教授の専門は精神病理学であるが、応用心理学、主に犯罪心理学に造詣が深く、いくつかの論文は文彦も読んだ覚えがあった。 「どうせ書類にサインさせるだけだし誰でもかまわない?」 「そういう認識は表に出すな。象牙の塔の住人だ。無暗に彼のプライドを刺激しないでくれ」 クリスティナは肩をすくめる。 「新任されたばかりで本部長は大張り切り。大丈夫。失礼なのは私だけ。他の部下はアッパークラスのハウスワイフよりも上品だから。どんな男でも、その気にさせる」 「クリスティナ」 軽口を咎めた文彦にクリスティナは吹き出した。 「その筆頭があなた、警視正ですよ、ジャック。マナースクールを出たてのお嬢さんみたい。財政の健全化をアピールするために部署の切り捨てを行うのが普通なのに新しくチームを立ち上げさせた。本部長をどうやって口説き落としたの?」 「きみは信じないだろうが、向こうから話があった。私も驚いている。本部長は現場の改革に熱意を持って取り組んでいるんだろう」 「熱意のお陰で予算が下りた。有効活用しないと」 文彦は顔を引き締めた。 「浮かれている場合じゃないぞ。これから、きみには負担をかけることになる。私は現場では、ほとんど動けない。走れないし、射撃も覚束ない」 右足の膝を文彦が叩く。あれ以来、まともに動かない足だ。 「射撃のスコア��基準をクリアしていたようだけど?」 「訓練場と現場は違う。即応できない」 あの時、夜の森の闇の中、懐中電灯の光だけが行く手を照らしていた。何かにぶつかり、懐中電灯を落とした瞬間、右手の動脈を切り裂かれる。痛みに耐え切れず、銃が手から滑り落ちた。正確で緻密なナイフの軌跡、相手はおそらく暗視ゴーグルを使用していたのだろう。流れる血を止めようと文彦は左手で手首を圧迫した。馬乗りになってきた相手のナイフが腹に差し込まれる感触と、その後に襲ってきた苦痛を表す言葉を文彦は知らない。相手はナイフを刺したまま刃の方向を変え、文彦の腹を横に薙いだ。 当時、『切り裂き魔』と呼ばれて��た殺人者は、わざわざ文彦を国道まで引きずる。彼の頬を叩いて正気づかせた後、スマートフォンを顔の脇に据えた。画面にメッセージがタイピングされている。 「きみは悪党ではない。間違えた」 俯せに倒れている文彦の頭を右手で押さえつけ、男はスマートフォンを懐に納める。その時、一瞬だけ男の指に光が見えたが、結婚指輪だとわかったのは、ずいぶん経ってからである。道路に文彦を放置して男は姿を消した。 どうして、あの場所は、あんなに暗かったのだろうか。 文彦は事ある毎に思い返した。彼の足に不具合が生じたのは、ひとえに己の過信の結果に他ならない。ジャックと文彦を最初に名付けた妻の気持ちを彼は無にした。世界で最も有名な殺人者の名で夫を呼ぶことで凶悪犯を追跡する文彦に自戒するよう警告したのである。 姪のヒナタに贈った詩集は自分自身への諌言でもあると文彦は思った。法の正義を掲げ、司法を体現してきた彼が復讐に手を染めることは許されない。犯罪者は正式な手続きを以って裁きの場に引きずり出されるべきだ。 「ジャック。あなたは事件を俯瞰して分析していればいい。身長六フィートの制服警官を顎で使う仕事は私がやる。ただひとつだけ言わせて。本部長にはフェンタニルの使用を黙っていたほうがいいと思う。たぶん良い顔はしない」 フェンタニルは、文彦が痛み止めに使用している薬用モルヒネである。 「お帰りなさい、ジャック」 クリスティナが背筋を正して敬礼する。文彦は答礼を返した。
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ジャンル名「百合系ミステリィADV」とは『flowers』レビュー
初めにこのゲームを人から勧められた時に引っかかったのは「百合系ミステリィADV」というジャンル名だ。なぜこの二つを掛け合わせたのだろう。
「flowers」は、全四部からなる百合をテーマにした連作ADVゲームだ。各篇は季節の名前を冠しており、2014年に第一部である春編がリリースされてから一年に一本のペースで続編が公開され、2017年に完結している。
身近に本作の熱心なファンがいたため評判の良さは以前から聞いていたが、四部作というハードルの高さに後回しにしていた。そしてつい先月、全編をワンパッケージにまとめたPS4版が発売されたとのことで意を決してプレイしたのだが、仕事と食事と睡眠の時間以外全てを捧げるほどのめり込んでしまい一週間足らずでクリアしてしまった。それどころか本編だけでは飽き足らず、今では卒業アルバムのような分厚さのアートブックや関連CDの収集まで始めている。この記事はレビューという体だが、本作を布教するための文章であり、また何故私が本作にここまでのめり込んでしまったのかを整理するための文章だ。
以降の本文では、出来る限りネタバレは避けたつもりが、レビューの上で必要と判断した内容には触れるため未プレイの方は注意して欲しい。特に「flowers」は前知識の有り無しで体験の質が変わってしまう内容であり、それこそ公式HPの情報すら見ないことを推奨する。
『flowers』のコンセプト
「マリア様がみてる」に影響を受けたという本作は、ミッションスクール(キリスト教主義学校)を舞台に百合を描くという王道な設定に挑んでいる。主人公である白羽蘇芳は、家庭内のトラブルから心に傷を抱え学校へも通えなかった事から対人能力への自信を失っている。そこで、学園側が仮り初めの友人を作らせ生活を共にさせる"アミティエ"という制度のあるミッションスクール「聖アグレカム学院」へ入学することとなる。つまり、社会生活で傷を負った者が世間から離れた場所で他者とのふれあいを通して回復していくというプロットだ。ここでいう他者とは同級生、上級生、先生など学園の様々な人たちを指している。本作は白羽が人間関係を広げていく姿を描いたもので、百合としては恋愛のみにとどまらず友情も含んだ物となっている。四部作という尺の長さをうまく使い、この二つの要素は片方が蔑ろにされることもなくバランスよく描かれている。結果的に人を選ばないリーチの広い内容になっていると言えるだろう。
あえてミッションスクールを舞台としているだけあって、本作は清楚で上品な雰囲気を強く打ち出している。グラフィックは淡い色調と細い線で描かれており、キャラクターは繊細で儚げな雰囲気を纏っている。私はADVは好んでプレイする方だが、ここまで甘美的なものは初めてで、慣れるまではなかなか話に集中できなかったほどだ。もしあなたが本作のパッケージイラストやCGイラストに惹かれるものがあるならば、「flowers」と相性が良い可能性が高い。グラフィックを手掛けるのはディレクターを兼任するスギナミキ氏であり、本作のコンセプトを端的に示しているからだ。グラフィック以外でもこだわりは強く、文章は地の文の割合が多めであるし、文体も硬すぎないがカジュアルとは思われないようにバランスがとられている。キャラクターはお嬢様ばかりというわけではなく皮肉屋やひょうきん物も混ざっているが、決して露悪的にならないよう一線引かれており上品さを失わない。本作は作り手の拘りが作品の隅々まで行き渡っており、方向性に共感できるならば素晴らしい体験になるだろう。
イラストのクオリティは総じて高く印象に残るものが多い
『flowers』のゲームプレイとミステリ
ゲームプレイはADVとしてはかなりシンプルだ。プレイヤーは選択肢を選ぶことで物語を読み進めていくが、分岐は最低限に抑えられており、複雑なフラグ管理を求めるようなものではない。あくまで物語に没頭してもらうことを重視したスタイルだ。ただし特殊な点として、本作はジャンル名にミステリを含む通り、推理パートが発生することがある。
先に百合をテーマとする本作に、何故ミステリ要素が入ってくるのか説明する。それは人間ドラマを描くために「日常ミステリ」のフォーマットを使っているからだ。日常ミステリとは、犯罪事件ではなく、日常生活の中での謎を追う物語だ。このフォーマットの大きな魅力の一つとして、謎の内側に人の意外な本心を忍ばせておくことで、人間ドラマを最大限に演出することができるという点がある。「flowers」は白羽が人間関係を広げていく話であると前述したが、プレイヤーは主人公の視点で語られる物語を元に謎を解き、明かされる学友の心情と向き合い距離を縮めていく過程を共に体験することとなる。謎の内容は学園内での小さないざこざを解消するものから、学園の七不思議の正体に挑むなど幅は広い。また、その意外な真相に驚かされたり、どうしてそこまで気が回らなかったのかと後悔させられたりと、主人公の心情とシンクロして動揺してしまう場面もあった。これはゲームらしい没入度の高さをうまく使ったストーリーテリングであるし、プレイヤー自身が苦労することで白羽と周囲の人物との仲が深まっていくことに説得力を与えている。少し遠回りなコミュニケーションをしているような印象も受けるが、奥手な白羽が意を決して他人と関わろうとする感覚が出ているとも言える。
推理パートが挟み込まれるのは、一つの事件において謎を解くための手がかりが全て揃ったタイミングの一度だけになっている。このとき、事件の筋を理解できているか確認するためにいくつかの選択肢が問われるので、無事正しいものを選択できれば、また次の事件の推理パートに到達するまで一直線に読み進めることができる。いわば、ミステリ小説の「読者への挑戦状」がインタラクティブ化されたようなものだとイメージしてもらえればいい。物語の進行を頻繁に止めてプレイヤーの干渉を促すようなものではなく、あくまでもミステリ要素は演出としての利用に留めており、人間ドラマを魅力的に描くことに注力している。
最悪謎が解けなくても、四択の選択肢を連続で数回問われるようなものなので、全パターンを試してしまえば簡単に物語の続きを見ることができる
少し脱線するが、本作をプレイしながらとあるミステリ作家の「ミステリは書きやすい」という言葉を思い出すことがあった。これは、ミステリには必ず謎と解が存在していて、このフォーマットに当て嵌めて物語を作れば、必ず解が明かされる瞬間に盛り上がりが発生するし作品全体もそこへ向けて密度を高めていくことになるから、という事らしい。本作の推理パートは一作につき四回前後用意されており、その度に小さい単位の物語に決着がつくようになっている。このため、全体を通してメリハリがあり興味が牽引されやすい構成になっている。それだけでなく、シリーズ全四部を通して解明に挑む事となる大きな謎も存在する。つまり、目の前の事件、一作通しての物語、シリーズを通しての物語という三階層の物語が同時にじりじりと進行する形になっている。これは常に物語が前進している感覚を与える効果があり、私は優れた長期連載漫画を読んでいるときのように続きが気になってプレイの止め時を失ってしまった。言わば、フロー状態にプレイヤーが導かれるように物語構造によってレールが敷かれているのだ。このシリーズを通しての謎はもはや日常ミステリの規模を超えて恋愛物から乖離しかけるところまで行くが、制作側も自覚しているのかギリギリの所で留められている。しかしこの謎の存在感故、エンタメ性が高く万人に受け入れられ易い内容にまとまっており、むしろ長所と呼んでいい部分だと言えるだろう。
学園物としての『flowers』
ここまでミステリの話ばかりになってしまったが、事件が起きるのは物語が大きく展開する瞬間のみで、主に描かれるのはミッションスクールでの生活とキャラクター達の交流だ。アングレカム学院は山奥に建てられた全寮制の学院で、テレビすらないという世間から隔絶された場所だ。それゆえ、学院の生徒の娯楽は部活や趣味、しかし一番は学友とのお喋りになる。
本作の登場人物は趣味に傾倒している者が多く、会話の内容も気付くとディープな方面へ行ってしまう。一見大人しそうにみえる主人公の白羽も、書痴を自称するほどのビブリオフィリア兼シネフィルで、その手の話を語らせるとうるさい人物でもある。会話の中では実在する小説や映画の名前を挙げてキャラクター達が作品について語り合う。扱われる作品は夏目漱石などの近代文学から、「ダークナイト」といったごく最近の映画まで年代の幅は広い。恐らくよほどサブカルチャーに精通している人でなければ全ての内容を理解することは難しいだろう。しかし、本作を楽しむ上でこれらの作品を知っている必要は実はない。重要なのは、彼女らが紅茶やコーヒーを飲みながらマニアックな歓談をしている様子を眺めていると、だんだん一種の陶酔感が生まれ、まるで実在の人物であるかのように錯覚させる効果があることだ。ADVファン向けに言うなら、サイバーパンクバーテンダーシミュ「VA-11 HALL-A」において、バーに訪れた二次元のキャラクター達の世間話や明け透けのない性に関する話を聞いている際、そのギャップと共にリアリティが立ちあがってくるあの感じに似ている。こういった物語の本筋と関わらない雑談が本作は頻繁に差し込まれる。これらは一見純粋なフレーバーに思えるが、気づかぬ内にプレイヤーを作品の世界の中に引き込む効果的な演出となっている。
クリントイーストウッドについて熱弁する主人公
寮生活ということもあり、夜にはこっそり人を集めて怪談が始まることもある。これは事件への接続として使われている部分もあるが、それを差し置いても本作は怪談への拘りが強い。登場回数は多く、場合によっては専用の挿絵まで用意されていることすらある。関連グッズのドラマCDでもお約束のように毎回怪談専用のトラックが差し込まれている。ここまで触れていなかったが、本作はキャラクターに声優によるボイスが吹き込まれている。声優による演技力の高い、抑揚の効いた語り口には引き込まれるものがある。キャラクター達の親密な雰囲気を感じさせる印象的な場面の一つだが、本作で可能な表現から算出された効果的な演出でもある。
アングレカム学院は行事も多い。合唱、バレエ、演劇など様々な催しが用意されており、主人公等もこれらに参加することとなる。準備にて起こる事件や人間ドラマを超えた末に辿り着く本番シーンは、各編の最も盛り上がる場面の一つとなっている。ここではテキストボックスなどの常駐していたUIが取り払われ、制約のない特殊な演出で進行する。その内容は演目により様々だが、タイポグラフィ、イラスト、声優によって吹き込まれたボーカル曲などを組み合わせたリッチなものになっている。
学院でのイベントについて幾つかの例を挙げたが、コストがかかっている場面もそうでない場面も、ADVというジャンルの特性をよく理解した演出がされていることが分かってもらえるだろうか。本作は「YU-NO」の系譜のようなストーリー分岐を用いるストーリーテリングは退化しているが、その代わりに表層的な部分での表現は非常に饒舌だ。本作が文学や演劇への数多くのリファレンスを持っていることを踏まえると、「flowers」は伝統的なテキストアドベンチャーとしての総合芸術的な作品だと呼びたくなる。「flowers」をプレイしていて感じる芳醇さ、贅沢さはこういった所に起因する物と考える。
『flowers』のテーマ
「flowers」は、学院での日常と、謎が生む非日常とを行き来する形で進行し、その過程で白羽が周囲の人たちと交友を深めていく様子が描かれる。しかし、なぜミッションスクールを舞台にする必要があったのだろうか。また、交友関係を描くにしても、なぜあえてミステリという手法を選択する必要があったのだろうか。それは、本作全体を通して語られるテーマと関係しており、このテーマこそが私が最も心を打たれた部分になる。
端的に言えば、本作のテーマは「はみ出し者たちが他者との相互理解の末に世界との向き合い方を見出す」というものだ。
アングレカム学院はミッションスクールであり、入学してくる者は良家のお嬢様が多い。しかし、その家柄故、強固な教育方針などで個人の意思を縛られて育ったことで、自尊心を欠いていたり悩みを抱える者がいる。また、世間から離れた、空気の澄んだ山奥に建てられた学院の特色から、病を持つ者が療養を目的として入学するケースもある。問題を抱えているのは主人公の白羽のみではなく、皆どこかで社会からはみ出してしまっていて、それぞれの葛藤を抱えている。
そして、「flowers」の最も信頼できるところは、この登場人物達が抱える葛藤は徹底的に隠されていること、また、ミステリパートにおける謎解きによって直接この葛藤が明かされることはないことだ。
本作はミステリであり、物語は主人公の主観で語られる。このため他人の心の内がモノローグでプレイヤーに伝えられるようなことは基本的にない。また、ミステリパートで扱われる謎は、学院内で起こった事件で容疑者に挙げられてしまった学友の濡れ衣を晴らすなどといったもので、あくまで学友を助けることが目的であり、そこで犯人の心の内を積極的に暴くようなことは避けようとすらする。それこそ、事件の中には真実の追求を求めず、傷つく人が生まれない嘘の真実を構築しようとする話だってあるのだ。
日常ミステリは「謎の内側に人の意外な本心を忍ばせておくことで、人間ド��マを最大限に演出することができる」と前述したが、実の所これは諸刃の刃だ。ミステリはその構造上、外的な痕跡から他人の心を推測してそれが真か誤りかといったやり取りをすることになるが、そうやって他人の心の内を明け透けにさらしてしまう事は冒涜的な一面がある。こうしたところにこのジャンルへ苦手意識を持っている人は多くはないがいるのでは無いだろうか。
その点において、本作は一貫して他者の神聖な領域を侵すことを拒んでいる。私は小説やゲームにおいてもミステリは好きなジャンルでどちらかと言えばよく触れる方だが、ここまで優しい手つきのミステリは見た事がない。
こういったスタンスを取る事で、ジャンルとしての面白さが失われているのではないかと思われるかもしれない。しかし、本作はミステリのみを主軸においた物語ではなく、推理パートは全体からすればほんの一部で、プレイヤーがインタラクションできない日常パートで充分にドラマは語られている。そして、ずっと見守って来たプレイヤーの分身である主人公が、学友を気にかけて探偵役を買って出るとき、プレイヤーは謎解きを行う事でその背を押す事ができる。これまで語られてきた物語を通して彼女らに親密さを覚えていたなら、これは非常に重要なインタラクションになる。
日常生活や事件を通して彼女らの信頼関係が構築されていき、その末に、彼女らは悩みを打ち明け互いを受ける事で、葛藤を克服し社会と向きあう力を得る。これは、一般的な百合をテーマとした物語へ回帰するように、プレイヤーの手を離れ俯瞰的な形で語られる。しかし、主人公の目を通してよく知った登場人物達が立ち直る姿には強く心を打たれるものがある。
「flowers」がミッションスクールを舞台とするのは、キリスト教の禁じる同性愛を扱う作品であるためではない。本作では自身が同性愛者であること自体に強く悩んでいる者は登場しない。しかし、他人に打ち明けられない悩みや葛藤を抱えるもの達が、密かにそれを共有しあい世界と向きあう力を獲得する場所として機能している。またミステリは、他人の心を暴くためのものではなく、むしろ他人の不可侵の領域を強調することに機能しており、尊敬を持った上で近づこうとする意思を示すためのものだ。この他者との距離感を重んじた姿勢で描かれる回復の物語こそが「flowers」の唯一無二の魅力であり、「百合系ミステリィADV」というジャンルが達成した物だ。
最後に
「flowers」は一見甘美的すぎるし、百合という題材からニッチなゲームと思われるかもしれない。しかし、描かれるストーリー、テーマは誰もが共感できる普遍的なものであるし、ミステリを通してプレイヤーを物語から置き去りにはしない。多くのADVファン、キャラクターゲームファンに手を取って欲しい一作だ。
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煌々と、透明
気づけば、道のガム跡を見つめながら歩いていることがある。 駅前や公園側の通りには特に多い、大小さまざまな、黒い点々模様。上京してすぐは、この黒い点が一体なんなのか、わからなかった。舗道に敷き詰められたブロックタイルの模様な どではないことはわかっていたが、その正体を知らなかった。猫の足跡のようにどこにでも点々と落ちているそれらが、吐き捨てられたガムが踏みつぶされて、固まり、取れなくなって しまったものだと知った時は、妙な気分になった。遙の知らない、いつかの誰かがここを歩いた跡だ。それも無数の。恐竜の足跡と同じ、「何者かが生きていた証し」だ。もちろん、き れいなものでも、珍しく貴重な物でもない。清掃するか、新しく舗装されない限りは、その黒い模様はそこにあり続ける。テナントビルに入った飲食店は目まぐるしく変わっていくのに 、路上のガム跡はしぶとく残るのだ。 赤信号で歩みを止めた。遙の少し前を歩いていた凛のスニーカーの底が、黒い点の端を踏みつけている。ごつごつとして重く、赤い凛のハイカットスニーカー。気に入って履き続けて いるので、ソウルは擦り減っていくばかりだ。擦り減ってどこかへ溶けていく凛のスニーカーのラバーソウルと、消えない黒いガム跡を、なぜだがじっと見つめてしまった。そこで、駅 を出てからほとんど、俯いたまま歩いていたことに気づいた。 凛には、「どこに行きたい?何したい?」と、空港で顔をあわせたそばからたずねておいた。その答えは、まる一日経って返って来た。今朝、凛はコーヒーメーカーから立ち上る湯気 に、ふかふかと煽られながら、「ぶらぶらしたい」と言った。「ちょっと買い物もしたいし」と付け加え、ガラスのサーバーを傾けてコーヒーを注いだ。アルミ製の、登山で使うような カップ、二つ分に。 なので、昼を過ぎて、いわゆる「若者のまち」に繰り出した。 その街は、上京してすぐに、真琴とスーツを仕立てたり、安くて着まわせる服を仕入れたりするために訪れた町だ。求めるものが無ければ、特に足を向けることは無い場所だった。そ もそも、「お出かけ」なんて、何か目的が無ければしないものだけれども。故郷には確かにあった、目的が無くても足を向けるような場所が、こちらには少ない気がする。海とか、神社 とか、展望台とか。無目的の人間を無条件に無関心に受け入れてくれる場所だ。そういう場所が、東京にもまったくないわけではないのだ。アパートの近くの公園とか、川沿いの桜の並 木道とか。少ないけれどもある、ということは、ここに確かに自分の暮らしがあるということだ。上京して間もなく一年が経つ。自分の足元から、細くて小さな根が生えていたりするの かな、と思う。 大きな交差点の赤信号は、待ち時間が長い。車はまるで連結した車両みたいに、絶え間なく行き交う。小春日和のあたたかい日だった。凛は、遙が貸した裏起毛のパーカーを着ている 。真夏のシドニーからは、厚手のコートを一着持ち帰るので精いっぱいだったらしい。けれども、お馴染みの黒いロングコートで出かけるには、今日はあたたかすぎた。凛が「日本は冬 もあったかすぎて、大丈夫なのか」という心配をしてしまうくらい、今年の冬はあたたかい日が続く。 「いや、天気よすぎだろ」 凛が空を見上げて、眠いみたいに言う。 ぎざぎざのビルの山脈の間に、水色のリボンがたなびくような空が覗いている。 ふー、と長く息を吐いていると、あわい水色の空に、カッターで切れ目を入れるように、大声がこだました。誰かが、拡声器を使って、金切り声で叫んでいる。近くの公園でデモが行 われているのだ。デモの声を聞くのも、その集団を目にするのも、こちらでは珍しいことではない。プラカードを掲げたパレードとすれ違ったこともある。けれど、以前耳にしたものよ りも、随分と過激だ。悪口雑言で、何ごとかを罵倒している。拡声器の音が割れていて、ところどころしか聞き取れないが、「しね」とか「出ていけ」とか、声に乗った重たい憎しみの 感情が、つぶてのように降った。その声に否応なく耳を叩かれているはずの信号待ちの人々は、何の温度もない顔をしているように見えた。 遙は、半歩前に立った凛を、掠めるように見た。凛は、スマートフォンで目的地を検索する手を止めて、声のする方に目をやっている。凛には、あの声が、どんな風に聞こえているの だろう。凛の耳を塞いで、謝りたいような気分になった。デモの声は、遙の声ではない。でも、街の声だ。何かを主張し、誰かを罵り、道行く人々にお前はどう考えるのだ、と答えを迫 るような声。あらゆる問題に対して、当事者でいなければならない、と突き付けるような声。それらが、遙の体の中にじりじりと侵入してくるように思えて仕方がない。青信号になって 歩き出しても、ガム跡の黒い点のように、声は遙の中にこびりついて離れない。 横断歩道を半分ほど過ぎてから、凛がちらりとこちらを向いた。 「疲れたか?」 え、と短い声が漏れた。「疲れたか」が、別のことを指しているように聞こえて困惑した。凛は歩みを止めないまま、言った。 「昼は軽く済ませたもんな。どこかで休憩するか?」 「いや、大丈夫だ」 「そ?」 じゃあ、もうちょっとで着くから、付き合ってくれな、と凛は軽い足取りで歩いて行く。東京の人ごみには遙の方が慣れているはずなのに、凛はヨットの帆先みたいに、無数の人々の 群れの中を軽やかに進む。 疲れてなどいない。と、思う。 一年近く暮らして、こちらにも、親しい友人や、馴染みの場所が増えた。もう知らない土地ではない。どこからどんな風に日が上るのか、日暮れ時の景色はどんな色か。日々刻まれて いく街の記憶がある。でも、今、凛に「疲れたか」と問われて、無性に、帰りたくなった。どこに。アパートに。ふるさとに。プールに。どこが、自分の帰るべき場所なのだろう。どこ へ、とも知れないが、帰りたい。透明になれる場所に。この土地でずっと暮らすうちに、いつか、透明になる方法を忘れてしまいそうだ。 こっちこっち、と凛の的確なナビゲーションで辿り着いた先は、大きなCDショップだった。いや、ショップと呼ぶに納まらないほどの規模だ。入り口に、「NO MUSIC NO LIFE」とで かでかと掲げられた九階建てのビルを、思わず見上げてしまった。 「改装されたって聞いて、来てみたかったんだよな」 凛は相変わらず迷いのない足取りで、自動ドアをくぐっていく。慌てて追いかけ、凛のうしろにくっつくようにして、エスカレーターに乗った。 店内のすべての壁を埋めることに使命でもあるのか、ポスターやポップが賑やかで、目が飽きるということがなかった。また、ひっきりなしのレコメンド放送が耳を埋めた。目と耳か らの情報の洪水の中で、遙は凛の色とか形とか匂いを手がかりに、必死に立っているような気分になった。 四階に上がる頃になってようやく体が馴染んできて、フロアガイドに目をやる余裕が出来た。CDなどの音楽ソフト全般はもちろんだが、映画ソフトやAV機器も置いてあり、カフェ や本屋も併設してある総合施設らしい。 「何階に用があるんだ?」 エスカレーターを下りて、また登りの方へベルトコンベアのように体を運びながらたずねる。凛は肩越しにこちらを振り返って言った。 「順番に上から見て行きてえんだけど」 順番に、上から、というと、九つのフロア全てということだ。地元のCDショップに二人で行ったことがないわけではないが、ワンフロアのこじんまりとした店舗だった。この音と光 に溢れたタワーを、一階ずつ攻めていくのかと思うと、う、と息が詰まった。すると凛は、苦笑いした。 「わーかったよ。特に行きてえのは八階かな」 ぐいぐいとエスカレーターに運ばれながら、フロアガイドを確認する。八階は、主に洋楽の音楽ソフトを置いているフロアらしい。 ビルをジグザグに縫うように上へ上へと運ばれて、ようやく目的の階に到着した。エレベーターでもよかった気がするのだが、凛はあえてエスカレーターを選んだようだった。移動し ている間ずっと、彼は店内の様子をおもしろそうに眺めていた。縁日の屋台を見て回るみたいに。 「ここまで連れて来ておいてなんだけど、ハルは、カフェか本屋で時間潰すか?」 8F、と書か���たフロアマットを踏んで、凛が言う。ふるふる、と首を振って意思を伝える。たまにしか会えないのに、別々で過ごすのは、選択肢になかった。それに、ぶらぶらする のに付き合うのは、苦手ではない。真琴や旭の買い物に付き合うこともよくある。 「ハルには、退屈かも」 それまでまったくそんな素振りなど無かったのに、急に心配になってきたらしく、凛はやや重い足取りと、小股で移動した。陳列棚の間を進みながら、 「べつに、いい」 と返した。それでも凛は、申し訳なさそうに言う。 「わざわざショップに行かなくてもさ、いまどき、配信でも手に入るのが多いんだけど、…マイナーなやつとか、配信の方が早かったりするし。でも、なんか、ジャケットを手に取って 選びたいっつうか」 「わかる」 「ほんとかよ」 凛は思いきり疑っている。遙が音楽に興味の薄いことを知っているからだ。 「魚は、実際に捌いているところや、目を見て鮮度を確かめたい。それと同じだ」 「そうじゃねえ、とも言い切れねえ…絶妙な例えを持ってくんな」 「とにかく、俺も適当に楽しむから、気にするな」 もっと理由を説明したほうが親切丁寧なのかもしれないけれど、自分でも、なんとも説明のしようがなかった。 凛は地図アプリを見ていた時と同じように、天井に下がる案内札を見ながら迷いなく進んだ。時々、黄色いエプロンの店員に「いらっしゃいませー」と笑顔を送られながら、八階フロ アの隅にある、一区画に辿り着いた。 「改装されて、ちょっと数は減ってるけど、ここ、インディーズの品ぞろえがいいんだよな。視聴もできるし」 そう言って、凛は、宝物でも探すように頬を煌めかせて陳列棚を眺めはじめた。遙も四角いケースにパッキングされたCDの群れを眺めてみたけれど、ピンとくるものはなかった。色 とりどりのCDのパッケージより、凛を眺めている方がおもしろかった。先ほど、べつに、いい、と返したとき、このことを伝えた方がよかったのだろうか。凛の指先が、つい、とケー スの背表紙を引き出す。ケースは、表、裏に返されて、また列の中に戻される。発掘調査員みたいなその様を見ているのが、おもしろいし飽きないのだ。そう言ってみたところで、果た して理解されるだろうか。言ってもいいことなのだろうか。 試聴したい、というので、壁づたいにひっそりと設置された試聴コーナーに移動した。「掘り出しもの!」「密かに沸騰中」など、手書きのポップが躍る試聴カウンターの前に立ち、 凛はヘッドホンを手に取った。再生ボタンを押された試聴プレイヤーの中では、青い円盤がきゅるきゅると回転している。凛はCDジャケットを眺めながら、何がしかの音楽を楽しんで いる。並びには、同じように試聴する客の姿がぽつぽつとあった。ポップやジャケットをくまなく眺めた。遙も適当なヘッドホンを手に取って、耳を塞いだ。再生ボタンを押すと、しゃ がれた女性の歌声が、破天荒ででたらめなピアノの音に乗って聞こえて来た。もちろん、遙の知らない歌姫だ。隣の凛が、ヘッドホンを着けた遙をおもしろそうに見ていた。 曲を聴くというより、ヘッドホンを装着しているだけの時間を過ごしていると、ふと、先ほどの、デモの声が蘇った。どれだけ耳元で音楽が鳴っても、店内が賑やかな音で溢れていて も、街の空に亀裂を入れるような、女の叫び声を剥し去ることができない。「しね」「出ていけ」「ほろびろ」「消えうせろ」ヘッドホンをしているからか、尚更、遙の体の中のあちこ ちで跳ね返り、耳から出て行くことを許されず、モンスターみたいに暴れた。こうして暴れはじめると、遙にはなす術がない。時に任せて、薄く��って、やがて忘れてくれるのを待つし かない。 不意に、隣の凛が「あ、これ」と呟きに近い声を出した。つん、と肩を突かれて顔を向けると、凛が遙のヘッドホンを外した。そして、自分と同じプレイヤーのフックに掛けられてい たヘッドホンをぱかりと開いて、遙の耳に当てた。突然、世界が静寂に包まれた。いや、正確には、ちゃんと音楽が鳴っている。ピアノとかギターとか。たぶん、笛も?なんというジャ ンルの音楽なのか、見当もつかないが。 「これさ、」 と、凛が説明を始める。しかし、ヘッドホンをしているし、音も鳴り続けているので、うまく聞き取れない。戸惑っていると、凛が身を寄せて、右耳のヘッドホンと、遙の左耳のヘッ ドホンをこつんと触れあわせた。そして、CDジャケットの裏の、曲目リストを指で差した。数cmのところで、凛の赤い唇が動く。 「このバンドの作曲担当がさ、自然の音を録音して、サンプリングして、曲の中にミックスするのが好きなんだ」 ここまではわかった?という風に、かすかに首を傾げて確かめて来るので、こくこくと頷いた。 「それでさ、今、聞いてるのは、海の波音とか、ダイビング中の海の中の音とか、イルカの鳴き声がサンプリングされてるんだってさ。ハルなら、なんか、聴き取れそうだなって、思っ てたんだ」 凛はおもしろそうに笑って、こちらを見ている。曲も聴かないといけないし、凛の説明も聴かないといけないし、イルカや波音も聴き取らなければならないので、忙しい。それに、何 より、突然に、近いし。パーカーの布越しに、凛の体温がじわりと伝わってくる。それくらい、凛が、近い。セックスだってなんだってしているのに、こういう時、どうしようもなくな ってしまう。心音が跳ねまわって、皮膚の下で反響している。 「どう?イルカ、いた?」 「ぜんぜん、わからない」 残念だが、わかるはずがない。正直に、首を振る。それでも、凛は楽しそうだ。「だよな」と、くすぐられたみたいに、笑っている。音楽の中に溶け込んでしまった動物の声を探すな んて、無茶な話だ。でも、二人で並んで同じ音楽を聴くのは、楽しいことなのかもしれなかった。ようやく動悸を落ち着かせて、他の客に怪しまれない程度に、体の片側をくっつけて、 どこかの国の、どこかの誰かが作った音楽に耳を澄ませる。ヘイトに満ちたデモの声を聴くよりも、凛と一緒にイルカの鳴き声を探す方がよっぽどいい。 ふと、こんな風に、高校生の時も、身を寄せ合って音楽を聴いたことがあるのを思い出した。駅前の、つぶれそうでつぶれない、小さなCDショップで。やっぱりその時も、凛は遙の 知らない音楽を楽しそうに聴いていたし、遙はその横顔を見つめていたのだ。凛はもしかして、泳いでいる時も、歌っているのだろうか。あとで聴いてみようか。そんなことを、思って いたのだ。凛の記憶は、きっとどこを取り出しても、息をしているみたいに鮮やかだ。 凛はその後も、いくつか試聴し、いくつかのCDアルバムを手に取ってうんうんと悩み、二枚のアルバムを選び抜いた。凛がレジに並んでいる間、離れたところで待っていると、手招 きされた。「二枚も買ってもいいと思う?」と不安そうにたずねてくる凛は新鮮で、どこかに再生ボタンがあれば、何回も押すのに、と思った。 アルバム二枚の出費は、親に仕送りをしてもらい、ろくにアルバイトもできない身分としては、確かに思い切ったものかもしれない。支払いを済ませた後も悩ましげな凛と一緒に、九 階のカフェテラスへ上がった。屋上にあるカフェはオープンテラスで、空がぐんと近かった。暑い季節になれば、ビアガーデンとして人の集まる場所らしい。レジ横のポスターには「B BQ予約開始」の文字がでかでかとあって、一気に季節感が狂いそうになる。 「江がおいしいって騒いでたな」と、凛は試しにタピオカミルクティーとやらを注文した。手渡された透明なカップの中を、茶色の半透明の球体が、ふよふよと泳いでいる。 「ナントカって魚の卵みたいだ、とか、言うなよ」 先に言われてしまって、黙るしかない。遙はブレンドにした。カップを手にして、テラスの端っこの席に座った。 凛はやたらと太いストローを咥えつつ、さっそく、包みを開けて、歌詞カードを眺めている。出費に関しては、もう開き直ったらしい。 「それ、うまいか?」 「んー、何とも言えねえ。甘すぎないのは、いいかもな」 唇からストローを外して、「飲んでみるか?」と、カップをこちらに向けて来る。顔だけ寄せてストローを唇で食む。なかなかうまく吸えなかったが、微かな甘みのある液体と一緒に 、ぽこぽことタピオカの粒が口に飛び込んで来る。こういうのを、楽しむ飲み物なのかな、と思った。 「魚の味はしないな」 「当たり前だろ」 凛は呆れたように笑って、またストローを口にしようとして、はた、と止まった。ほわ、とその耳の先が赤くなる。無意識のうちに、間接なんとやらをしてしまったことに、お互いに 気づいた。真っ昼間のオープンカフェは、老若男女問わず、客で溢れている。けれど、誰も、こちらを見てなどいない。しかし凛は気になるのか、カップをテーブルに置いてしまった。 「このくらい、友だち同士でもあることだろ」 「そーだけどよ!ダチなら気にしねえよ。…でも、俺とお前は、ダチ同士じゃねえだろ」 まだ赤い耳を隠すみたいに、凛はパーカーのフードを被ってしまった。どうやら、見られているかもと意識したからではなく、単に間接なんとやらが恥ずかしくなってしまったらしい 。セックスでも何でもしているのに、お互いに、些細なことに照れてしまうのは、何なのだろう。 「この後、どうする?」 フード男にたずねる。凛はCDジャケットを見ている振りなのか、ケースで顔を隠しながら、 「ぶらぶらする」 と応えた。 「他に、行きたいところは?」 「特に、ねえけど。ぶらぶらしたい」 「いいけど」 それで、凛は楽しいのだろうか。 「ハルと、ぶらぶらしたかったから。東京でも」 フードとCDケースの間から、凛の目が覗いている。 「今日、デートっぽいだろ」 「うん、まあ…」 「デートっぽく、したかったの、俺は!」 やっぱり小声だが、凛は、自己主張は忘れない。思わず、笑ってしまった。ぶらぶらと歩いたり、CDを選んだり、同じ曲を聴いたり。自分だって、そういう何でもないことがしたか ったのは確かだ。 「ぽく、じゃなくて、しっかりデートだ。…すごく、楽しい」 凛の意見を肯定したかっただけで、言うつもりはなかったのに、最後に楽しい、と言ってしまって、自分に驚く。遙はストローをくるくると回して、タピオカのつるつるした球体をカ ップの中で躍らせた。 「結局、どんなCDを買ったんだ?」 「おー、これ?」 凛は歌詞の書かれたブックレットを遙に渡し、お守りにみたいに小さなプレイヤーをポケットから取り出した。 「スウェーデンのロックバンドなんだけど。いくつか、配信で入れたやつもあんの」 言いながら、イヤホンの片方を遙に差し出す。ころりとしたそれを受け取って、左耳に差す。凛が再生ボタンを押す。先ほど試聴したものより、少しだけかさついた音源が流れ出す。 凛が、曲のタイトルを口にして、バンドの説明をしてくれる。けれど、やはり、申し訳ないが、音楽よりも、凛の声が聴きたいだけだった。 相変わらず、デモは続いているようだった。太鼓の音と拡声器の声が不調和に入り混じってビルの壁を叩いている。おそらく、路上をパレードしているのだ。けれどその声は、遠い。 色とりどりの音と光の詰まったタワーの最上階までは、届かない。 あの叫びに耳を塞ぎ、やり過ごすことがいいことなのか、遙にはわからない。わからないけれど、今は、フードに隠れた恋人の声に、彼と半分こしているイヤホンから流れる音楽に、 耳を澄ませるので精いっぱいだ。 CDのディスク面が、力強く光を跳ね返す。 「いや、やっぱ、天気よすぎだろ」 凛が、歌うみたいに言う。ごちゃつく街の、少しだけ空に近い場所で、透明に、体が清んでいく。 end 公式ブックの、あるコメントを読んで。遙も東京暮らしに疲れることもあるのかなと思ったので。
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TEDにて
ジェームズ・B・グラットフェルダー:世界をコントロールしているのは誰か?
(詳しくご覧になりたい場合は上記リンクからどうぞ)
ジェームズ・グラットフェルダーの研究分野は「複雑系」です。
例えば、鳥の群れのように、相互につながった要素を持つシステムでは、全体が、どのように部分の集合以上になるか?ということを研究しています。カオス理論もそうです。
そこで!明らかになってきたのは、複雑系の理論を通じて経済の仕組みが解明できるということです。
グラットフェルダーの革新的な研究で、支配力がグローバル経済の中でどのように移動するのか?そして、少数の手に権力が過度に集中することで、どれだけ私達が危険にさらされるか!ということが明らかになります。(TEDxZurich)
「危機的な状況に陥ると現状の経済。金融モデルに深刻な問題があることがすぐに明らかになる」― 「粗悪で単純、自信過剰な経済学が危機を助長した。という考え方には私も賛成だ」
資本主義に懐疑的な人が、こんな批判をするのを聞いたことがあるでしょう。でも、今、挙げた言葉は、金融の中心にいる人達の声です。
始めの言葉は、当時の欧州中央銀行総裁 ― ジャン=クロード・トリシェ。その次は、イギリス金融庁の長官の言葉です。
彼らが言いたいのは、現代社会システムの原動力である経済システムを我々が理解していないということでしょうか?さらに、厳しい指摘が続きます。
「私達は、何十億ドルもかけて宇宙の起源を探っているのに、社会システムが安定して、経済も機能し ― 平和が成立する条件すらまだわかっていない?」
どうしてこんなことが起こるのでしょうか?人間社会の仕組みよりも、物理世界の仕組みの方がよくわかっているということでしょうか?残念ながらその通りです。そこで、面白い解決策を提案するのが「複雑性の科学」です。
複雑系で分かっていることは何か?複雑な振る舞いに見えたとしても実は、相互作用に関するいくつかの単純なルールの結果に過ぎません。
つまり、方程式は忘れて相互作用そのものを観察すれば、システムを理解する手がかりが得られます。
方程式は無視して相互作用を捉えるのです。さらに、面白いことにほとんどの複雑系が「創発」という驚くべき性質を備えています。創発とは、個々の要素を観察しても理解や予測ができない振る舞いがシステム全体に突如、生じることです。
このとき、全体は部分の集合を超えています。システム内の個々の要素は、どれほど複雑であっても無視してよいということになります。
この方法は、物理学や生物学 ― コンピューター科学や 社会科学における ― 様々な複雑系について成功を収めています。
では、経済学はどうでしょうか?経済のネットワークはどこにあるのでしょう。実は、この分野は明らかに研究が遅れています。
私達が、2011年に発表した ― 「世界的企業コントロールのネットワーク」という論文は、経済のネットワークを初めて詳細に分析したものです。
この研究は、ネット上で大きな反響を呼び、各国メディアが注目しました。驚くべきことです。どうして今まで誰も ― 着目していなかったのか?似たデータは以前からあったというのに!
私達が分析したのは、所有権のネットワークです。このノードは、人や企業 ― 政府や財団などを表しています。
ノードをつなぐ線は、株式保有の関係です。株主Aは、会社Bの株式をx%保有する。といった関係です。また、この会社に対して営業収益に基づく価値を与えます。
すると、株式保有の関係が所有ネットワークから明らかになるのです。この例では、いくつかの金融機関と一部のリンクを強調しています。これまで、所有ネットワークの研究が注目されなかったのは退屈に思えるからかも知れません。
実は、所有権はコントロールと関係があるので ― 所有ネットワークを通して様々なことがわかるのです。キー・プレーヤーは誰か。どう組織されているか。単独か。つながっているか?
支配力の分布はどうなっているか?つまり、誰が世界をコントロールしているか?興味深い問いです。
システム上のリスクもわかります。システムがどの程度、ぜい弱かがわかるのです。つながりが密接だと安定が損なわれます。高密度の関係では、負荷が伝染病のように広がってしまいます。
科学者が批判してきたのは、経済学者が、裏付けのあるデータよりも思想や概念を重視する点です。科学の基本方針は「データで示す」これに従いましょう。
分析の結果、構造がわかりました。ネットワークには、周辺と中心があり全企業の75%が中心に属します。中心には、つながりがより密接な ― 少数の企業からなる支配的中核部が存在します。都市圏に例えると分かりやすいでしょう。
郊外や周辺部があり ― 金融街のような中心部があり ― 中核部には、高層ビルが建ち並びます。すでに、仕組みが見え始めています。中核となる36%の多国籍企業が、全ての多国籍企業の営業収益の95%を占めています。
構造はわかりましたが、これがコントロールとどう関係しているのでしょう。所有権があれば、株主は議決権を持つ ― これがコントロールの普通の捉え方です。
別のモデルでは、所有権から生じる ― 支配力を計算できます。過半数の株式を所有すれば、企業をコントロールできますが、通常は、株式全体の相対的な分布によって決まります。
この研究で私達が計算したのは、多国籍企業の価値に対する支配力です。こうすることで、一定の影響力を株主それぞれに割り当てられます。これはマックス・ウェーバーの潜在力の考え方そのものです。つまり、他者の反対を押し切って自分の意志を貫ける可能性です。
所有ネットワークにおける影響力の流れはこう計算します。見た目ほど難しくはありません。たとえ話をしましょう。パイプに水が通っているとします。パイプの太さはまちまちです。支配力も同じように所有ネットワークを流れ ― ノードに溜まります。
ネットワークを支配する力を計算してわかったことは、737の大株主が多国籍企業の価値の80%をコントロールする力を持つということです。ノードの総数は60万でしたから、737という大株主の数は、全体の0.1%程度です。アメリカとイギリスの金融機関がほとんどを占めます。
さらに言うと中核部には146の株主がいますが、これが多国籍企業の価値の40%をコントロールできるのです。
この事実からわかることは何でしょうか?
ご覧頂いたコントロールの集中はどう見ても行き過ぎです。中核部にいる株主が過度に集中すると世界経済に重大なシステム上のリスクが生じます。多国籍企業のネットワークは、いくつかの単純なルールで簡単に再現できました。
自己組織化の結果として構造が生じたからです。これはシステムの相互作用のルールから創発した性質です。だから、たぶん地球規模の陰謀論のような ― トップダウンの構造から生じたものではないでしょう。
私達の研究は、詳細な地図というよりは大まかな見取図です。
だから、この研究で出した数字を鵜呑みにしないでください。それでも金融の新しい姿を垣間見ることはできます。これがきっかけになって、方向性を共にする研究が増え、未知の領域の調査が進むことを期待します。
ゆっくりとですが試みは始まっています。
ネットワーク化した世界を複雑性という視点から理解しようとする ― 長期に渡る 予算も十分な研究プログラムが出現しつつあります。でも、探究は始まったばかりです。結果が出るまでには時間が必要です。
私はまだ重要な課題が残されていると思います。金融、経済、政治、社会システムに関する考え方には、しばしば、個人的なイデオロギーがまとわりついています。だから、複雑性の視点が共通の基盤を与えることを期待しているのです。
対立するアイデアが行き詰まりを生み、グローバル化する世界の重荷になっています。その解消に手を貸せたら素晴らしいと思います。現実はとても複雑です。一つの教義に縛られてはいけません。ただ、これも個人的なイデオロギーなのですが。
ヨーロッパでの一般データ保護規則(GDPR)でも言うように・・・
年収の低い個人(中央値で600万円以下)から集めたデータほど金銭同様に経済的に高い価値を持ち、独占禁止法の適用対象にしていくことで、高価格にし抑止力を持たせるアイデア。
自分自身のデータを渡す個人も各社の取引先に当たりデータに関しては優越的地位の乱用を年収の低い個人(中央値で600万円以下)に行う場合は厳しく適用していく。
歴史が示すところによれば、警察が、ひとたび大量のデータを保有し、無実の人々の追尾するようになると暴走し、拡大解釈をし続け、脅し、威嚇、特権意識の乱用や政治的な優位を得る行為、時には、法令を無視した同意や許可申請のない単なる覗き見行為へと濫用されがちです。
幸いにも、我々にも取るべき手段があります。市議会は、地方警察を統制できるので、条例を制定することによって無実の人々の情報を破棄し、保存期間も短期間にすることで、このような技術の合法的な使用のみを認可するのです。
オウム真理教の集団テロ事象の原因は開発独裁特有の当時、自民党55年体制の特権意識による負の遺産とインターネット黎明期にまだ周波数を独占的した民放テレビ局の暴走が談合を産み出し、警察機関が職権乱用して談合に便乗。監視も悪用し権力を思うままにふるまわせたことによる出来事にすぎない。
みなさん。考えてみてください!オウム真理教の集団テロ事象の後の警察権力は拡大���てます!防衛庁は防衛省になりましたよね。拡大してます!スピード早くないですか?歴史的に見ると危険です。権力を思うままにふるまわせたことによる証拠です。憎しみの連鎖の起点の一つ。
テレビ潰れろ!なくせ!警察の職権乱用。警察が悪さしないようにまず監視カメラを警察内部につけろ!防衛省を防衛庁に格下げ、警察予算を削減してベーシックインカムの原資にすること。
最後に、マクロ経済学の大目標には、「長期的に生活水準を高め、今日のこども達がおじいさん達よりも良い暮らしを送れるようにする!!」という目標があります。
経済成長を「パーセント」という指数関数的な指標で数値化します。経験則的に毎年、経済成長2%くらいで巡航速度にて上昇すれば良いことがわかっています。
たった、経済成長2%のように見えますが、毎年、積み重ねるとムーアの法則みたいに膨大な量になって行きます。
また、経済学は、大前提としてある個人、法人モデルを扱う。それは、身勝手で自己中心的な欲望を満たしていく人間の部類としては最低クズというハードルの高い個人、法人。
たとえば、生産性、利益という欲だけを追求する人間。地球を救うという欲だけを追求する人間。利益と真逆なぐうたらしたい時間を最大化したいという欲を追求する人間。などの最低生活を保護、向上しつつお金の循環を通じて個人同士の相互作用も考えていく(また、憎しみの連鎖も解消する)
多様性はあるが、欲という側面では皆平等。つまり、利益以外からも解決策を見出しお金儲けだけの話だけではないのが経済学(カントの「永遠平和のために」思想も含めて個人のプライバシーも考慮)
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The idea of the administrative system in the artificial intelligence era 人工知能時代の行政府システムのアイデア
ベーシックインカムは、労働市場に対する破壊的イノベーションということ?2017(人間の限界を遥かに超えることが前提条件)
Is the world ’s currency supply amount reach the annual income of $ 60,000 per person, the lowest line of happiness?2017世界の通貨供給量は、幸福の最低ライン人間ひとりで年収6万ドルに到達しているのか?2017
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