Tumgik
#勇征くんはただのゆあファン
yuanohimichu · 6 months
Text
Tumblr media Tumblr media
少し前に久しぶりに勇征くんと電話したんだけど、いっぱい笑ったなぁ。近況報告とオススメのTikTokと観るべきドラマの話。友達にドタキャンされた話も猫ミーム好きって話とか本当にしょーもない話してた。いつもこんな感じだから落ち着くんだよね。
勇征くんとはもう知り合って数年になるけど、いつも可愛いって褒めてくれて何事にも感想くれて、程良い距離感で仲良くしてくれてるのが本当にありがたくて。彼が居なかったら確実に今ここに居なかったなって自覚してるし、勇征くんの事全く知らずに繋がったからたっぷり自分の事とグループの事を教えてくれて、それで彼のグループを好きになれて、感謝しかない存在。だからゆあがいて嬉しいって思ってくれる皆んなも勇征くんに感謝して!
ゆあが「つまんない!もうやだ!」ってなった時「俺が楽しませてあげるから!」って言ってくれたの、めちゃくちゃカッコよかったです。
勇征くんはいい意味でも悪い意味でも優しすぎるからそのツケというかしわ寄せがきてしんどくなってるの見ると、ゆあも少し苦しくなるかなぁ。彼の優しさに甘えまくる人達が少しでも彼のモヤモヤに気付いてくれますように、って神様にお願いしておくからね。
Tumblr media
お題箱でめちゃくちゃ暴言吐かれた時もヘッダーに入れて守ってくれました、ありがと、勇征くん(逆効果な気もしなくもないけど)ちゅきちゅきラブリーちゃん。多分モチベがだだ下がり中だと思うから、勇征くんには毎日感謝してるよーって事と、何かあったらゆあが助けに行くからねって気持ちを伝えたくなったよってやーつ。
今後の目標��出会ってから1回もした事ないゆあの恋バナを勇征くんにする事です!なんちて。
Tumblr media
取り敢えず、匂わせ厳禁ダヨ!(懐かしい画像)
1 note · View note
sorairono-neko · 5 years
Text
勝生勇利は四回転フリップを二度跳ぶ
 全日本選手権とロシア選手権は重なっており、ヴィクトルは勇利の試合に帯同できなかった。もしロシア選手権のほうがさきに開催されていたなら何を置いてでも飛んでいったのだが、とヴィクトルは悔しがった。  しかし、勇利の出来については何も心配していなかった。グランプリファイナルであれだけの演技ができたのだから、優勝はまちがいないだろう。四回転フリップなしでも勝てるけれど、勇利ならきっと入れてくるにちがいない。世界選手権であの構成を完成させるという意味では、よい練習になる。ヴィクトルはジャンプについては何も口出しせず、勇利の好きにさせるときめていた。  それにしても、彼は昨年、全日本選手権ではジャンプをすべて失敗したという。その演技を見たけれど、確かにひどいものだった。水準が低いというよりも、何か歯車が狂っているといった感じなのだ。けがをしているのでは、と心配されたのも無理はない。グランプリファイナルで惨敗し、直後の全日本選手権では失敗のうえに失敗を重ねる。見ているほうはたまらなかっただろうな、とヴィクトルは想像した。観察したところ、勇利のファンは、熱狂的といえる者が多い。ヴィクトルにも過激なファンはいるのだが、それとはまた性質のちがう──なんというか、「命がけ」といった様子で応援しているようなのだ。勇利は日本では頂点に立つような選手だけれど、世界的にずば抜けてすばらしいというほどではなかった。少なくとも昨季までは。もちろん、成績だけでこういうことははかれず、そのひとの持つものが大切なのだが、それにしてもあれほど熱心なファンがいるというのはすごい。勇利の魅力ははかりしれないのだな、とヴィクトルは思っていた。しかしそのファンたちも、いまは安心しているだろう。  ヴィクトルはロシア選手権に出場し、まずショートプログラムで一位という成績をおさめた。最高の演技とは言えないが、それほど悪くもない。 「まあこんなものかな。まだ本調子じゃないけど」  ヴィクトルがつぶやくと、ユーリが憎々しげな視線を向けてきた。 「さて、勇利は……」  ヴィクトルは勇利のショートプログラムを動画で確認した。そして仰天した。なんだこのジャンプは? 勇利は、まずトリプルアクセルで手をついた。四回転サルコウからのコンビネーションは、セカンドジャンプでオーバーターンした。最後の四回転フリップは転倒した。 「ちょっと……」  スピンやステップはよかった。しかし、いまの勝生勇利からは考えられない演技だった。昨季までの「技術点を失っても演技構成点で持ち返す」という法則にのっとったかたちだ。かろうじて一位となったけれど、二位とは僅差である。 「勇利!?」  何やってるんだ!? どこか痛めているのか!? ヴィクトルはすぐさま勇利に連絡を取った。 「あ、えっと、ヴィクトル、ショート一位おめでとう。すごいよ。かっこよかった。あの……」 「俺のことなんかどうでもいい!」  ヴィクトルは声を大きくした。 「けがしてるのか!?」 「してない……」 「あれっていったいどういうこと!?」 「え、えと、ただ調子が悪かっただけです……ごめんなさい……」  ヴィクトルは、動画を見ていて気がついたことを一気にまくしたてた。まったくもう、勇利は、ちょっと目を離すとこれだ! 「勇利、聞いてるのか!?」 「聞いてるよ、わかったよ。いまメモを取ってたんだよ」 「���リーは……」 「フリーは大丈夫だよ! ノーミスだよ! まかせて!」 「本当かな……」 「本当! 本当!」 「信じてるからね」 「うん!」  ヴィクトルは息をついた。勇利は強がりを言っているという感じではない。ショートプログラムの結果に落ちこんでいる様子もない。「やっちゃった……」くらいの気持ちなのだろう。まったく……。  フリースケーティングの滑走当日、ヴィクトルは勇利のことが気になって仕方なかった。演技前に電話をしたほうがよいだろうか、いやそのほうが気が散るか、と頭を悩ませる。 「おいヴィーチャ、落ち着け。そわそわするな。いまさらなんだ」 「勇利が心配なんだよ。もしかしたら泣いてるかもしれない。大丈夫かな」 「おまえな……」 「あぁあ、やっぱり付き添えばよかった」 「できるわけないだろうが」  ヴィクトルは優勝し、報道陣と観客に笑顔を振りまいたが、内心ではひやひやしていた。勇利はどうだっただろう。早く結果が見たい。ヴィクトルはホテルへ向かう車に乗りこむなり、携帯電話を取り出してニュース記事を調べた。勝生勇利、全日本選手権、優勝。 「よかった……」  持ち直したのだ。まったく心配させてくれる。ヴィクトルはほっと安堵し、演技の動画を再生した。隣にいたヤコフがディスプレイをのぞきこんでくる。ヴィクトルは得意になって胸を張った。ヤコフも俺の生徒のすべりが気になるんだな。そうだろうとも。なにしろ俺の勇利だからね! 「…………」 「……なんだこれは」  冒頭からあぜんとした。ちっとも持ち直していない。ジャンプの調子があまりにも悪い。 「カツキはどこか痛めとるのか?」 「痛めてない……」 「それでこれか?」 「勇利はそういう子なんだよ!」  さすがに昨季の「全ミス」をくり返してはいないけれど、本来の勇利からは程遠い演技だった。優勝できたのは、スケーティングのうつくしさのききめが強かったのと、ほかの選手も失敗をくり返したためだ。 「あー……」  ヴィクトルは頭を抱えた。勇利は落ちこんでいるだろうか。もしかしたら、がっかりしているというより、ヴィクトルがどんな説教を始めるかとそちらを気にしているかもしれない。まったくもう、難解な子だな。 「なんだ。とっとと電話して叱りつけんか」  ヤコフがあきれたように言った。 「ちょっと待ってちょっと。整理するから」 「おまえが動揺してどうする」 「ああもう。ああもう」 「四大陸とワールドの代表には選ばれたようだな」 「次四大陸か……。ヤコフ、俺行くからね」 「あの選手は、おまえがいなければまともにすべれない呪いにでもかかっとるのか?」 「今回はちがうんだ。今回はちがうんだ」  ヴィクトルは溜息をついてまぶたを閉ざした。そんな彼を横目でヤコフが観察している。 「……ヴィーチャ」 「なに? 俺いま忙しいんだけど」 「グランプリファイナルのショート、カツキはユーリと二十点以上の差がついたな」 「ああ、うん。それが?」 「おまえ、それで、優勝させるために何か具体的な提案をしたか?」 「…………」  ヴィクトルは閉じていた目を開けた。 「四回転を一本増やしていたが、あれはおまえの案か?」 「……いや、ちがう。勇利が自分の判断でそうした」 「おまえは演技前、カツキに何を言った?」 「……勇利なら優勝できると」 「ふん」  ヤコフが鼻を鳴らした。 「二十点以上の差をつけられていて、助言も与えずに、『優勝できる』か」 「…………」  ヴィクトルは、あのときはいろいろあって、と言おうとしてやめた。 「いいか、ヴィーチャ」  ヤコフがヴィクトルに指を突きつけ、キスアンドクライで説教するときのようにがみがみと言った。 「カツキがどれほど才能ある選手か知らんが、コーチがおまえなら、わしの生徒が負ける気はせん!」  ヴィクトルは瞬いた。 「ちゃんと四大陸で調整して立て直せ! わかったかヘボコーチ!」  四大陸選手権で再会した勇利は、落ち着いており、体調もよさそうで、問題は見当たらなかった。勇利は全日本選手権の成績をふがいないと感じているらしく、「今回は大丈夫だから」とヴィクトルに約束した。彼の瞳は勝ち気に強く輝いていたし、おどおどした態度はいっさいなかったので、ヴィクトルは安心した。 「オーケィ勇利。きみならできる。信じてるよ」 「うん。……ところでヴィクトル」 「なんだい?」 「……あ、会えてうれしいよ」  赤くなって視線をそらした勇利を見て、ヴィクトルは、俺の勇利がかわいい……と目元に手を当てた。  公式練習でも勇利は調子がよかった。すべてのジャンプがおもしろいようにきまっている。報道陣も、こぞって「勝生、すばらしい仕上がり」「四回転ジャンプすべて成功」と書き立てた。 「ヴィクトル聞いて! まるでヴィクトルみたいなジャンプって言われたんだよ!」 「そうか。もちろん明日はノーミスだね」 「ちょっと、またそうやって煽る……」  しかし、勇利はショートプログラム当日、公式練習での好調がうそのように失敗を重ねた。すべてのジャンプに減点がつき、かろうじてステップとスピンは最高評価だったものの、すばらしい練習とはまるで異なる内容だった。 「勇利……」  ヴィクトルはキスアンドクライで勇利を抱き寄せた。勇利が青い顔をしている。なぜだ、とヴィクトル自身混乱していた。あんなに調子がよかったのに。  得点は、グランプリファイナルで出したものよりも低かった。厳しいな、とヴィクトルは目をすがめた。ほかの選手も調子が出ないのか、さほど差はないが、順位は三位だった。 「何がいけなかったんだろう……」  勇利がつぶやいた。 「そういう日はある。練習で好調なのに、なぜか本番で降りられないことがね。練習がよすぎて、いつも気をつけている点がわからなくなるんだ」  ヴィクトルは翌日の公式練習後のインタビューで、「フリーは問題ないよ。ま、記録更新だね! 勇利が優勝して、金メダルにキスさせてくれるはずさ」と笑顔で語った。 「あのさ、ヴィクトル、ああいうのほんとやめてよ……」  その夜、ヴィクトルの腕枕でうとうとしながら、勇利がとろんとした口ぶりで抗議した。 「なんで? だって優勝するだろ?」 「したいけどさあ……記録更新とか……」 「俺の勇利ならやってくれるさ」  ヴィクトルは勇利の額にくちづけしてほほえんだ。 「不安かい?」 「んー……」 「俺の生徒だ。やるさ」 「……でもあんまり調子よくない……」 「調子なんか気にするな。きみはショートの前、絶好調だったのにあんなひどい演技をしたじゃないか」 「あのさあ……その言い方……」 「逆に言えば、不調でもいい演技ができるということだ」 「そうかなあ」 「そうだ」  ヴィクトルは勇利に頬ずりをし、目をほそめてほほえんだ。 「俺が言うんだからまちがいない」 「…………」 「だろ?」  勇利はゆっくりと瞬いた。彼も微笑を浮かべる。 「……うん」  勇利はヴィクトルの胸に甘えるようにすり寄った。 「ヴィクトルが言うんだから、まちがいないね……」 「そうだ」  勇利は間もなく寝息をたて始めた。緊張はしていないようだ。そう、ゆっくりやすむんだよ、たくさん寝るんだ、とヴィクトルは彼の髪をそっと撫でた。  勇利のためにできることはなんだろう。俺は彼のコーチなんだ。ヴィクトルは勇利のまぶたにくちびるを押し当てた。氷の上では誰もが孤独だ。ヴィクトルだって、そこへ出ていって助けてやることはできない。しかし、何もできないわけではない。勇利にとっていちばんよいことをしてやらなければ……。  観客席を見渡したヴィクトルは、日本人が多いな、と思った。勇利のために遠征してきたのだろう。さすが熱狂的ファンである。今日は勇利が優勝するところを見られるからね、とほほえんだ。勇利は六分間練習でも不安そうにしていた。 「勇利」  演技前、ヴィクトルは、フェンスを挟んで青い顔をしている勇利の手を握った。勇利が痛いくらいの力で握り返してくる。 「勇利、頼みがある」  ヴィクトルはささやいた。勇利は声をひそめ、なに、と答えた。 「いまからの四分間、きみの時間を俺にくれ」  勇利が目をみひらいた。 「俺だけに……」  ふたりは瞳の奥を熱心にみつめあった。ヴィクトルはほのかに微笑し、勇利のほうはぼうぜんとしていた。 「いいかい?」 「…………」  ヴィクトルが答えを迫った。勇利は一度瞬きすると、ふっと口元に笑みを漂わせ、ひとつうなずいて「わかった」と言った。 「ヴィクトルのために踊るよ」  彼は瞳をきらきらと輝かせ、身を乗り出して誓った。 「このフリー、ヴィクトルに捧げる」  ヴィクトルは手を持ち上げ、勇利の指輪にくちびるを押し当てた。勇利はまつげを伏せてそれを見ていた。 「いってきます���  スタートポジションにつき、勇利が大きく息をついた。それに合わせ、ヴィクトルも深呼吸した。ふたりの気持ちはひとつだった。  曲が始まった。ヴィクトルはもう、こぶしを握りしめていた。冒頭のコンビネーションジャンプ。それで勇利の調子がすべて伝わる。直前の六分間練習など関係ない。勇利は演技に入るまでわからないのだ。  フォアアウトスリーターン、足替え──勇利が跳んだ。四回転トゥループ、続けて二回転──。  ヴィクトルははっと息をのんだ。二本目が抜けた。単独ジャンプになってしまった。  ヴィクトルの頭がめまぐるしく計算し始めた。どこかでコンビネーションを入れなければならない。四回転トゥループはもう一本ある。あれに二本目をつけなければ減点される。勇利はちゃんと理解しているだろうか? ヴィクトルはスピンしている勇利をみつめた。落ち着いているように見える。さすがに勇利のスピンはうつくしい。そう、気持ちを切り替えて。単独にはなったけれど、ジャンプの質自体は悪くなかった。もう一本の四回転トゥループをコンビネーションにできれば問題ない。  次のジャンプは四回転サルコウだ。これは完璧にきまった。ヴィクトルはほっと息をついた。勇利は焦ってはいない。大丈夫だ。次はトリプルフリップ──。  ヴィクトルはその瞬間、あっと声にならない声を上げた。会場からも悲鳴が上がった。勇利はフリップジャンプを跳べなかった。踏み切りの瞬間、ジャンプの勢いそのままに転倒し、氷の上をすべってフェンスに叩きつけられたのだ。 「勇利!」  ヴィクトルの顔から血の気が引いた。かなりの速度が出ていた。転び方や打ち所が悪ければけがをしているだろう。一瞬のうちに、中断、病���、という単語が浮かんだ。 「ゆ、勇利──」  しかし勇利は両手をつき、顔を上げてすぐに立ち上がった。彼はスピードを取り戻すために一生懸命に漕ぐと、演技を再開して踊り始めた。観客席から応援の歓声が上がる。すぐにコレオグラフィックシークエンスだ。いつもの静かでうつくしい姿勢だが──。  大丈夫だろうか? ヴィクトルは気が気ではなかった。演技中は夢中になっているため、痛みのことなど考えられない。どこか悪くしていてもそのまま跳んでしまうだろう。ヴィクトルは目をこらした。勇利がおかしな動きをしていないか、足をかばったりしていないか、真剣に検分する。トリプルアクセル。普段と変わらず見事だ。問題ない。ヴィクトルは安堵した。しかし、すると今度はジャンプ構成がまた気になり始めた。このすぐあとに四回転トゥループなのだ。コンビネーションにしなければならない。勇利はわかっているだろうか? いまの転倒と激突で頭の中が真っ白になってしまっているかもしれない。  勇利──。  勇利が忙しく足を踏み替える。そして──。 「え……」  ヴィクトルは言葉を失った。トゥループではなかった。四回転フリップだ。  なぜだ!?  ヴィクトルは愕然とした。なぜいまフリップを跳んだ。四回転フリップは最後に跳ぶ大技だ。審査員に演技の質の高さを印象づけるため、そのようにした。それをここで跳ぶとは。最後では体力がもたないと判断したのか。それならそれでいい。終わりに四回転トゥループと二回転トゥループのコンビネーションジャンプ。構わない。最後がコンビネーションだというのは、リカバリの余地がないためいささか不安だが──勇利がそれがいいときめたなら問題はない。しかし──。  ヴィクトルは落ち着かなかった。本当にそうだろうか? 勇利はそう考えているだろうか? 安全策を採ったのだろうか? あの勇利が? いつもぎりぎりのところを攻めて、それを向上心につなげる勇利が──?  ひとつジャンプが抜けた。転倒して体力を失った。そのせいで変更している。それはわかる。だが、勇利はそういう切り替えをする選手だろうか? かえって挑戦したがるのではないだろうか? 転倒したため、ジャンプがひとつ消えているのだ。三回転フリップの得点が入らない。勇利は体力が尽きることより、失った点数を気にするのではないか? 『このフリー、ヴィクトルに捧げる』 「勇利」  ヴィクトルはつぶやいた。まさか……。  まさか勇利、四回転フリップを二本跳ぶつもりじゃ──。  ヴィクトルは思わず手すりを握りしめた。勇利の四回転フリップは完成しているとは言えない。入り方はすばらしいけれど、着氷が不安定なのだ。コンビネーションにできるかどうかわからない。もしできなければ、たとえ完璧なジャンプだったとしても減点される。 「勇利──」  勇利がジャンプを次々ときめてゆく。転倒や激突があったとは思えない、うつくしいジャンプだ。なめらかで明確、流れはじゅうぶん、高さも幅も申し分ない。これは加点がつく。しかし──しかし、四回転フリップをコンビネーションにするのは──。  さあ、ステップシークエンスだ。勇利の真価がもっとも発揮される要素である。世界一、唯一無二のステップ。勇利がしなやかに手を伸ばし、踏み出した。一瞬苦しそうな表情を見せたが、あの勝ち気なひかりを目に輝かせ、流れるように足をさばいた。  一度、勇利に尋ねたことがあった。うつくしいステップだと褒め、どうしてそんなふうにできるのかと訊いた。 「ヴィクトルだってこれくらいできるでしょ」 「確かに同じ動きはできる。しかし俺のステップと勇利のステップは別物だ。まるでちがう。勇利は勇利だけの音楽と流れを持っているんだよ。とくにこのフリーでは苦しいだろう。俺は体力を考慮せず、目いっぱい詰めこんで最高難度のステップにした」 「ああ、そうだよね。鬼ステップだよ。音楽がやわらかいからあんまりわかってもらえないけど」 「わかる人はわかってるさ。俺は終盤にあれを平然と踏む勇利を見て、いつも感心するんだ」  勇利は楽しそうに笑った。 「平然となんかしてないよ。ジャンプ跳びまくったあとだし、すでに足ががくがくだよ。このあとまだ四回転が控えてるって思うから体力を温存したいんだけど、それじゃみっともないものになるからね。いけるところまでいってる。もう、いつも崩れそうなんだよ。やすみたい! って思いながらやってるよ」  足ががくがく。温存したい。やすみたい。そんなふうにはとても見えない。勇利はうつくしく、高貴で、このうえもなく洗練されていた。彼にしかできない、清廉なステップシークエンスだ。 「勇利……」  ヴィクトルのくちびるがふるえた。最後のジャンプだ。ツイズル、足を変えて踏み出す、スリーターン、モホーク──。 『ヴィクトルのために踊るよ』 『このフリー、ヴィクトルに捧げる』  勇利は、俺のために──。  俺のために、跳ぶんだ。  ──勇利、おまえならできる。俺はおまえを信じる。  四回転フリップ。脅威的な幅と高さだ。最後にこのジャンプが跳べるなんて、いったいどうなっているのだ。そして──。  割れんばかりの拍手が起こった。勇利はふたつめのジャンプもまわりきり、ふわっと、まるで雲の上に降りるように着氷した。ヴィクトルは息苦しくなってフェンスにもたれかかった。最後のコンビネーションスピン。転ぶなよ、と思った。きみはたまに変なところで転倒するからな──。  勇利がヴィクトルのほうへ手を差し伸べる。ヴィクトルは笑った。勇利もかすかに口元を上げ、ほほえんだ。ヴィクトルの心臓がめちゃくちゃに打っていた。グランプリファイナルのときと同じくらい、はらはらし、どきどきした。自分の演技でこうなることはまずない。  観客は総立ちだ。スタンディングオベーションの中、勇利が丁寧に挨拶を済ませ、ふらふらしながら戻ってきた。リンクサイドに上がった瞬間、彼はヴィクトルに倒れかかった。ヴィクトルはしっかりと抱き止め、「心臓破裂したよ」とささやいた。 「ぼくも」  勇利が赤い顔で子どもみたいに笑った。ヴィクトルは彼を抱きしめ、頬を寄せてまぶたを閉じた。勇利……。 「大丈夫かい? どこも痛くない?」  キスアンドクライに座るなり、まずはそう尋ねた。勇利はきょとんとした表情で水を飲んでいる。 「なんで?」 「なんでって、転倒しただろう。フェンスにもぶつかった」 「ああ!」  勇利は目をまるくした。 「忘れてた」 「忘れてた? あんなに派手に転んだのに?」 「いや……あのときは、『やっちゃった!』って思ってびっくりしたんだけど、すぐにジャンプどうしようってそっちに頭がいっちゃって、そればっかりで……」  勇利は頬に手を当ててにこにこした。 「ていうかね、最初に二本目が抜けたじゃない? あそこでもう真っ白だったんだよね。大混乱。うわ、どこでつけたらいいの、なんだっけ、なんだっけ、ってなった」 「二本目の四回転トゥループでつければよかった」 「そう。で、あ、もう一本あるや、って思ってたら、転倒してずるーってすべっちゃってぶつかって、なに? なに? ってもうわけわかんないし」 「あれはどうしたんだ? 溝?」 「うん。氷の溝にはまった。そこからもう夢中だよ。こわかった。びっくりしたー」  こわがったりびっくりしたりしていたとは思えない明るさで勇利が笑った。頬は上気し、汗がこめかみを伝い、額には、髪がひとすじふたすじとこぼれ落ちている。両手で飲み物を持ってごくごくと飲む姿は、さっきまでの凛々しさからは想像もつかないほどかわいらしかった。 「でもヴィクトルが見ててくれてよかったあ」  勇利はおむすびのぬいぐるみを抱きしめ、笑顔で言った。 「ヴィクトルがいるから大丈夫、って思えたよ……」  ヴィクトルはたまらなくなり、勇利を無言で抱き寄せた。 「わあ、なに?」 「…………」 「ねえ、どうだった? あんまり点数よくないだろうね。ジャンプひとつ失ったし、あと、いろいろ急いでやったからせわしない感じだったかも……。でも、あの転倒以外はジャンプ失敗したっていう意識はないんだよ。だけど見てるほうからしたらひどい演技だったのかな……。不安」 「……フリップを二回跳ぶなんて無茶だ」  ヴィクトルはささやいた。勇利が無邪気に笑う。 「ぼくもそう思う」 「…………」 「でも、それしかないと思ったんだ。挽回するためにはそれしか……」  勇利はじっとヴィクトルをみつめた。ヴィクトルは無言で彼の手を握りしめた。 「……ものすごく、どきどきしたよ」 「うん」 「びっくりしたよ」 「ほんと? よかった」  勇利は花がほころぶように清楚に笑った。 「ごめんヴィクトル、ひどい得点かもしれない。金メダルは獲れないね、今回。でもどんな結果が出ても、ぼくは──」  そのとき、わっと歓声が上がった。成績が出たのだ。ふたりはそろってモニタを見た。勇利が目をまるくした。さすがに、グランプリファイナルで出した得点には及ばない。しかし、これまでの滑走者の中でもっとも高い点数だった。RK1、と表記された。  勇利がぽかんと口を開け、頬に手を当てた。彼はヴィクトルを見た。ヴィクトルは笑って勇利の肩を抱き寄せ、頬ずりをした。 「さすがは俺の勇利だ!」  ヴィクトルは勇利の頭を撫でまわし、額にくちびるを押し当てた。 「優勝だね」 「まだ残ってるよ。ほら、いちばんの強敵が」 「ああ、ジェンジェン?」 「JJだよ」 「いや……」  ヴィクトルはほほえんだ。 「彼はショートでミスをしている。あれだけ失敗を重ねた勇利とあまり得点差がない。フリーで勇利はジャンプひとつ失っているが、ほかはすべて加点されている。加えて、勇利のステップとスピンはレベル4だ。追いつけるかどうかはわからないよ。俺の見たところ、コンマ以下の差で勇利が勝つね」  勇利がヴィクトルをみつめた。ヴィクトルは得意げにおとがいを上げる。 「勇利、俺はおまえを信じた。いまも勇利が勝つって信じてるよ。勇利は俺を信じるかい?」 「…………」  勇利はヴィクトルにもたれかかった。彼は甘えるように額をこすりつけると、ヴィクトルに抱きついてささやいた。 「……信じるよ」  ヴィクトルの予言通り、勇利は表彰台の真ん中に立った。彼は金色のメダルを掲げ、頬を紅潮させて笑っていた。ヴィクトルは、なんて可憐な笑顔だろうと思った。 「勇利、服を脱いで」 「いいよ」 「だめだ。脱ぐんだ」 「いいってば。平気」 「いいから脱ぎなさい。言うことを聞かないとひんむくぞ!」  勇利は「うう……」と泣くまねをしながらジャ��ジを脱ぎ、ベッドにうつぶせになった。ヴィクトルは、彼のしなやかでうつくしい裸身を眺めた。 「……あざになっている」 「ですよね……」  勇利はまくらに顔を押しつけ、ぐすぐすと鼻を鳴らした。ヴィクトルは溜息をついた。 「痛いだろう」 「うー……」 「なんで言わない」 「だって……」 「まったく……。歩くのは問題ないんだね」 「うん……」  ヴィクトルは勇利の答えにうなずいた。そうだろう。歩行ぶりはいたって普通だった。ただ、ヴィクトルがふれたとき、眉を寄せて目をほそめることが多かった。時間が経ち、内出血があらわれてきたのだ。 「エキシビションはできそう?」 「��きるよ」 「…………」 「ひどい?」  勇利がおずおずと尋ねた。勇利の腰から腿にかけ、肌は痛々しく変色していた。 「まあね。ただの打撲だろうけど、明日は練習の前に病院だよ。一応検査だ」 「ふぁい……」  ��ィクトルは胸が痛くなった。これほどのあざができるのだから、相当なぶつかり方をしたのだろう。それでも彼はあれだけの演技をした。 「かわいそうに」  ヴィクトルはベッドに膝をつき、身をかがめて勇利の腰元にくちびるを寄せた。 「痛かっただろう……」 「ひゃっ」  勇利がびくっとふるえて振り返った。ヴィクトルは優しくほほえみかけ、もういちどそっとキスした。 「ヴィクトル……」 「えらかったね。よくがんばった」 「あの、くすぐったいよ……」 「痛いかい?」 「……ううん。痛くはない」  ヴィクトルは、色濃いあざにそっとくちびるを押し当てていった。勇利は息をつめてじっとしていた。 「勇利、俺はね……」  ヴィクトルはくちづけながら話した。 「ずっと考えていたんだ……。きみのファンは、どうしてあんなに熱狂的なのか……」 「え……?」  勇利が息を漏らした。 「ヴィクトルのファンのほうが熱狂的だと思うけど……」 「いや、そんなことはない。まあ、くらべられるものではないけれどね……、俺の見たところ、勇利のファンはかなりの熱意できみに思いを寄せている。勇利がわかっていないだけだ」 「そんなことは……」 「だってきみは、ファンサービスをまじめにするかい? どちらかといえばそっけないだろう? なのに彼女らや彼らは、気にせず熱心にきみを応援しているんだ。つめたくされるのがいい、なんていう人もいる。それも大勢」 「慣れちゃってるんじゃないかな……」 「みんながきみに望むのは、笑顔や優しい言葉じゃないんだ……」 「……何が言いたいの?」  ヴィクトルは黙ってキスを続けた。勇利はゆっくり呼吸している。だんだんと力が抜けて、ゆったりとくつろいでいるようだ。 「……もうひとつ気になっていた。勇利は全日本選手権で、どうしてあんな成績だったのか……」 「あ、あの……」 「金メダルは獲れた。しかし内容がよくない。勇利に似合わない成績だ。調子が悪いことは誰だってある。だが、それにしたって、いまの勇利からは考えられない。俺の知っている勇利とはあまりにちがっていた。昨季と同じく精神的な問題なのか? なぜだろう?」 「それは……、」  勇利は溜息をついた。 「……理由はないと思う」  ヴィクトルはほほえんだ。 「そうだ」 「え?」 「理由はない。勇利は理由もなく突然崩れるんだ」 「…………」 「もちろん、理由がある場合もあるけどね。もっとも、理由はないと言いつつ、精神的な何かが作用しているのかもしれない。きみ自身も気づかないところで。とにかく複雑なんだ。勇利はあぶなっかしいんだよ」  ヴィクトルは、あざの及んでいないところにもくちびるを押し当てた。勇利の呼吸は一定だ。 「ヤコフに怒られた。生徒ではなくコーチとして。俺は俺なりに勇利を押し上げようとした。そうしたらあんな転倒をする」 「あ、ごめ……」 「なのにあれほどの演技をして、俺をどきどきはらはらさせる。こんなにも幸福に、みちたりた気持ちにさせる。まったく、どっちが押し上げているのかわからないよ」  ヴィクトルは勇利をあおのかせた。足を捧げるように持ち上げ、傷だらけのそれに接吻する。 「この足で……」 「あ……」 「この膝で、この腿で、この腕で、この身体で……」 「ヴィクトル……」 「きみはしなやかに舞い、俺を魅了する……」  ヴィクトルは、勇利の白くきめこまかい練り絹のような素肌、いたるところにくちづけた。 「……生徒にふりまわされるコーチなんて聞いたことがない」 「ヴィクトル、ぼくは……」 「こんなに傷ついて……」  ヴィクトルは目を伏せた。 「……それでも、俺のために跳んでくれた」  勇利がまぶたを閉ざし、ふーっと長く息を吐く。 「……ありがとう、勇利」  ヴィクトルは勇利と額を合わせると、低く、熱愛をこめてささやいた。 「勇利の身体、すべてを愛しているよ」 「…………」 「どこもかしこもきみはうつくしい。そのこころも……」  そっとくちびるをふれあわせる。勇利が薄く目を開けた。その上品な、あどけない表情にヴィクトルは溜息をついた。 「あんなスケートは誰にもできない」  そっとてのひらを合わせ、指をからませる。勇利はせつない瞳でヴィクトルを見た。 「崇高なおまえを、俺は守るよ」 「…………」 「こうして傷ついたら、傷を癒すよ」  勇利が微笑を浮かべる。 「勇利、俺はきみのファンの気持ちがわかった」 「……そうなの?」  勇利がみずからのくちびるに指を当てた。ヴィクトルは優しく彼をみつめる。 「勇利、きみはね……」  くせになるんだ。  ヴィクトルはそう言って目を閉じ、鼻先をすり合わせた。  絶対王者には、期待と羨望が集まる。最高の喜びを与えられるのを誰もが望む。しかし勇利はちがう。彼は王者ではない。その日の彼がいいのか悪いのか、ふたを開けてみるまでわからない。勇利は人をどきどきさせるのだ。どんな彼を見せられるのか、誰も知らない。最高の演技をしたかと思えば、驚くような失敗をして崩れてしまう。しかし、いつもきらりとひかる魅力がある。守ってあげたくなったり、こころをかきみだされたり、ただ魅了されて言葉をなくしたり。見ている者は忙しい。しくじりをして落ちこむ彼に慕わしさを感じ、胸を痛める。頂点に立ち輝かしく笑う彼を、愛情をこめて抱きしめたくなる。目が離せない。  勇利、きみはいったい……、俺に何を……。 「きみは不思議なひとだね……」  ヴィクトルは勇利の全身に、あますところなくくちづけた。勇利はとろんとした顔つきで、夢見ごこちでされるがままになっていた。ヴィクトルは投げ出されていた彼の手を握り、指先にも接吻した。そして腰元をてのひらで押さえる。勇利は痛々しい痕さえも、うつくしく、神々しく見えるのだった。 「勇利、俺はね……、おまえに夢中で、もうすっかりとりこなんだ……」  勇利が頬をほんのりとさくら色に染めて、ふっと笑った。 「愛している」  ヴィクトルは彼の清楚な裸身を、壊れ物を扱うかのように優しく抱きしめ、溜息をついて耳元に約束した。 「俺のすべての力で、おまえのことを大切に守るよ」
5 notes · View notes
psychogardenandyou · 5 years
Text
【ささみ屋ノアンとマイナス人生オーケストラ 3】
ー2017年ー
3本。
こちら、この年にマイナスのライブに参戦した本数です。
解凍ワンマン2本を含めてこの数です。
解凍ワンマンが3月、この年最後に参戦する対盤イベントになってしまったのが4月30日VARONのバトルフィーバーでした。
何があったのかは敢えて言わないです。ただこの時バンギャが、負リィクスが心底恐ろしくなった、とだけ。
その先のライブのチケットも持ってなかったし、仕事を始めて固定休となってしまったこともあるのですが、一切ライブに行けなくなりました。
大学を出て、マイナスを追いかけるために就職せずしばらくフリーターとして生きていくか!って思ってた矢先なのですがね。
勿論マイナスの動向をネットで見守っていましたし、そのころに出たCDだってちゃんと買いましたけど、ライブ会場にもインストにも一切行けなかったですね。
今考えればなんであんなものに負けてしまったのだろうか、と思うこともあるのですが。
ねぇ、本当。この時期のことは考えることを拒否してしまうくらい。
私の人生にとっての最大のトラウマかもしれません。
というか、考えても思い出せないんですよ。不思議なことに。
嫌なことってめちゃくちゃ記憶に残るっていうじゃないですか、何にも思い出せないんですよね。
たぶん嫌を通り越してるんでしょうね。
マイナスに関係しないことでもいろいろなことがあった年です。
家庭があっさり崩壊したりね!!!
そんな中でよく生きてこれたなぁと思います。
一体どうやって生きてたんだろう。
お金だけは貯まってましたね。そりゃ何もしてなかったからね。
とりあえず思い出したくないんでこれくらいでいいっすか。もういいでしょ。
この際だから2017年なんてなかったってことにしてくれ。
ー2018年ー
そんな中私がマイナスのライブに行けるようになったのが2018年1月の京セラドームでの肉フェス。
確かこの時も行くことを躊躇してたと思うんだよな。
でも勇気振り絞って行ってよかったなぁ、と思います。
ビビりまくってたのですが、結果として残ったのは「やっぱり楽しい」という気持ちと、「この世界に戻りたい、あなたたちをまだまだ追いかけたい」という気持ち。
ほんっとうにかっこよかったんだよね。8か月前より増してかっこよくなってた。
大勢の一般人の前で「そんなに死にたきゃ死ねばいいじゃん」と叫ぶことの気持ちよさたるや。
やっぱりこの世界が大好きだ、ゆっけが大好きだ。って、本気でそう思えた。
そこからの私は仕事を辞めることに尽力し、3月からは遠征、遠征の日々。
3月に小川が帰ってきましたよね。
それでマイナスが5人体制になって。
私が望んでたツインギターですよ。やっぱギター1人って負担が大きいと思うし(ただ今ゆっけの負担が減ってるのか?と言われたらちょっと首をかしげるところもあるような・・・ないような・・・でも私もとはるのキャラは推せる)
やっぱりマイナスのベースは小川だなぁと思ったよ。
だから今小川がいないのすごい辛い。これで終わってしまうかもしれないのが本当に辛い。
何も言わないから最後くらい戻ってきてよ。
さて。ライブに行けてなかった貯金をすべて溶かし、寺子屋ツアーも回れるだけ周り、その心は。のインストも行けるだけ行きました。
3月、4月の遠征量すげぇ。あと5月はほぼ週1ペースで東京にいた。
6月からまた固定の仕事に就き、休みも自由に取れるし給料も申し分ない職場で文句をたれながらも仕事、ライブ、仕事、ライブの日々。
ほんとライブのためにしか休み取ってなかったな。
身体はしんどかったし、お金もなくてたまにライブに行くのが嫌になってたりもしてたけど、ライブの後に残るのは「楽しかった」って気持ちばかりで。
本当に、楽しい日々だったな。
そんな中で12月に���散が発表されてしまい。あの時は画面を見つめて、ただ静かに泣いてたな。
ゆっけがどれくらい苦しんで決断したのか考えるだけでも胸が痛くて辛くて。
バンドが売れること、それはファン1人の力でどうにかなることじゃなくて。
どうにかしたいけどどうにもならない、その無力感。
でも、音楽を嫌いにならないための決断、なのだとしたら私はそれを受け入れて見守ることしかできないな。とも。
私はゆっけのことが大好きで、特にステージ上でギターをかき鳴らしてるときのゆっけが大好きで。あの音、あの表情、あの動き、すべてがたまらなく愛おしい。
そんな姿を一生見られなくなるくらいなら。ここから離れて、この先に少しでも希望があるのなら。
これまでの自分の人生に後悔なんてないと語ったゆっけはこれからも自分が一番幸せになる方へ、楽しめる方へ進んで生きてくんだろうなって信じてるから。
解散発表されてすぐのライブでどういう顔をしたらいいのか分からなくて、でもとりあえず笑ってなきゃ、って。
マイナスもマイナスで驚くほどいつも通りだったんだよね。むしろ安心したし解散なんて嘘なんじゃねぇの、とも思った。
解散が発表されてからのライブも、いつも通りすぎてね。いつも通り楽しかったな、で終わるんだよな。
だから、残りのライブが5本切るところくらいまで実感がなかったというか。いや、キネマ終わった今でさえ実感ないんだけどさ。
もしかしたら味園終わっても実感ないかもしれないな、とも思っている。
当たり前に次があるように錯覚さえするかもしれない。
次がないことは頭の中で分かっているのだけど、どうしても心が理解しようとしない。
マイナスがいなくなったことを実感した自分がどういう行動をとるのか今の私には予想もつきませんが、衝動的に死ぬことだけはないように。
マイナスが教えてくれたのは死ぬことじゃなくて生きることだと思うから。
次回へ続く。
1 note · View note
jajihealth · 2 years
Text
[Live Report]浜崎あゆみ「『この人に出会えて生きてきてよかった』と一瞬でも思ってもらえたら」 | | バークス
[Live Report]浜崎あゆみ「『この人に出会えて生きてきてよかった』と一瞬でも思ってもらえたら」 | | バークス
写真◎田中征太郎 浜崎あゆみさんは、4月8日にデビュー24周年を迎えました。 ◆ライブフォト 1998年4月8日にシングル「ポーカーフェイス」でデビューして以来、止むことなく第一線を走り続けている。 日本のポップシーンで24年間、ライブを欠場せず、新作をリリースせず、休みも充電もせずに活躍した女性アーティストは何人いるだろうか? この間、数々のヒット曲を生み出した彼女の歌に共感し、時には泣き、支え、勇気づけたという人も多いだろう。 浜崎あゆみアニバーサリーライブ開催 4月6日、横浜ぴあアリーナMMにて。 ライブから早くも5日が経ちましたが、まだまだSNSには盛り上がりを伝える投稿が多く見られますが、ファンの間で伝説と言われるようなライブは今のところありません。 たくさんありました。 としか思えない
Tumblr media
View On WordPress
0 notes
afrontier-jp · 6 years
Photo
Tumblr media Tumblr media Tumblr media Tumblr media
youtube
afrontier 15th Anniversary
モーション・ブルー・ヨコハマ発のジャズイベント「アフロンティア」による15周年記念のスペシャルライブ&DJイベント!アフロンティアに縁ある新旧選りすぐりの精鋭バンド、DJが一同に集結する。今回、モーション・ブルーはもちろん、隣接するTUNE、バルコニーも会場として開放。準スタンディング・スタイルで、店内を自由に行き来しながら、極上の音楽をたっぷりと楽しむことができる、開放的でラグジュアリーな空間をご用意。秋の夜長に、赤レンガ倉庫で繰り広げられる「音楽好きな大人のためのパーティー」を心ゆくまで堪能してほしい。 【Live @Motion Blue yokohama】 [Fontana Folle] Alvin(vo)、Ryuji Iida(g)、Yuki Lee(b) Guest:佐々木大輔(tp,fl)、會川直樹(ds)、山野友佳子(p,key) [河野祐亮ピアノトリオ] 河野祐亮(p)、座小田諒一(b)、木下晋之介(ds) [細川玄 Jazz Quintet] 細川玄(tp)、早坂勇真(tb)、堀越昭宏(p)、清水玲(b)、村上広樹(ds) Guest:中村智由[native](sax) 【DJ @Motion Blue yokohama】 TOJO[afrontier]、Jun Morita[afrontier]、大塚広子[key of life+] 【Live @TUNE】 [山内洋介(13souls)&Outrage Soul Band] 山内洋介(g)、土本浩司(b)、中村新史(key)、橋本現輝(ds) 【DJ @TUNE】 Takeshita[afrontier]、木村勝好[in the mix, POSSIBILITY]、 kiki[Mucho Mucho Mambo!] 【VJ】 Tasuke 【Organizer】 isao osada 開催日時:2018年9月30日(日) 開催時間:4:00p.m~9:30p.m Special Live Set at Motion Blue yokohama [5:00pm / [Fontana Folle] [6:35pm / [河野祐亮ピアノトリオ] [8:10pm / [細川玄 Jazz Quintet] Special Live Set at TUNE [5:55pm / 7:30pm [山内洋介(13souls)&Outrage Soul Band] ミュージックチャージ:¥4,500(税込) ※別途2ドリンクチケット(¥1,000)をご購入いただきます。 開催場所:Motion Blue yokohama 231-0001 神奈川県横浜市中区新港1丁目1-2 横浜赤レンガ倉庫2号館3F 045-226-1919 http://www.motionblue.co.jp/ 予約受付先:モーション・ブルー・ヨコハマ 電話予約 (045-226-1919) ※11:00a.m.~9:00p.m. WEB予約(http://www.motionblue.co.jp/)※公演当日の14:00まで ※スタンディング形式の公演となります。(一部を除く) ※ミュージック・チャージ(エントランス・フィー)はインターネット予約のお客様以外は 店頭で受付時にお支払いいただきます。(クレジットカード利用可) ※ご入場時にドリンクチケット(¥1,000/2枚)を別途ご購入いただきます。(現金のみ) ※インターネット予約の際には無料のアカウント登録が必要になります。 登録がお済みでない方は、「マイページ」より事前にご登録いただくことをおすすめいたします。 ※なお、ウェブサイトからのご予約の際はクレジットカードが必要となります。 ご利用可能なクレジットカード⇒VISA、MASTER、JCB、AMEX、DINERS ※小学生以上18歳未満の方は、保護者同伴の上22時までご入場頂けます(条例による)。 ※制服、ユニフォーム等でのご入店はお断りしておりますので、あらかじめご了承下さい。なお、未就学児、乳幼児のご入店は堅くお断り申し上げます。 公演のご予約はMotion Blue yokohama公式サイトから http://www.motionblue.co.jp/artists/afrontier/ afrontier公式サイト https://afrontier.com/news
出演者紹介 (LIVE)
Tumblr media
Fontana Folle (フォンタナフォッレ) ミステリアスな多国籍メンバーが紡ぐ、躍動する新世代のボーカルジャズ。ニコラ・コンテ、ジャザノバ、ジャミロクワイが溶け込んだような新サウンドがここに誕生。 2016年結成。日本、アメリカ、ブラジル、イタリア、東南アジアで音楽を吸収してきた多様なバックグラウンドならではの新たなボーカルジャズ像を提示するトリオ。ジャズ、ラテン、R&Bを飲み込んだ豊かなサウンドの中でSadeやGeorge  Michaelを彷彿とさせるセクシーで中性的なボーカルが音楽を彩る。 2017年4月に1st EP "PRIMA"を全国リリース。結成1年にして渋谷最大のジャズクラブJZ Bratへの二度の出演、Blue Noteグループの名門Motion Blue Yokohamaへの初出演も果たす。 2018年はMotion Blue Jakartaでの公演を中心にしたジャカルタツアーを敢行し、日本とアジア、アジアと世界を音楽で繋ぐバンドとしての大きな一歩を踏み出している。 Fontana Folle 公式サイト http://fontanafolle.strikingly.com/
youtube
Tumblr media
山野 友佳子 -Yukako Yamano-  <Fontana Folle's guest> 3歳からヤマハ音楽教室でピアノを習い始める。東京音楽大学付属高等学校~同大学へ進学し本格的に音楽を学び始める。18歳からジャズを習い、演奏活動を開始。その後、自身のオリジナル楽曲の演奏活動も開始。ジャズピアノを清水 絵理子氏に、クラシックを小高 明子氏、稲田 潤子氏に師事。また、学内にてペーテル・ヤブロンスキー氏の公開レッスンを受講。2015年6月にオリジナル曲を収録した2ndアルバム、『2nd Stage』納 浩一(ba)藤井 学(ds)をリリース、完売。2015年9月~2016年4月、『読売プレミアム』よりコラムを連載。現在多くのライブハウスやフェスティバルに出演、アジア各国・ヨーロッパ・アメリカでの海外公演や海外のアーティストと共演するなど、幅広い地域とジャンルで活動を展開している。その他、KORG Cafe Style認定講師、リー・エバンス協会研究員、"Vocal School DADA"ピアノ講師。 山野 友佳子 公式サイト http://yukakoyamano.com/
Tumblr media
河野祐亮 ピアノトリオ  Yusuke Kono Piano Trio GospelやHiphopのサウンドが香る”NY JAZZ”スタイルのピアノトリオバンド。 リーダーの河野祐亮は2011年にNYへ渡り、名門The New School Jazz And Contemporary Musicにスカ��シップ合格し入学する。2014年秋に帰国し『河野祐亮ピアノトリオ』を結成。2015年にSAPPORO CITY JAZZのコンペティションでグランプリを獲得。名実ともに日本一のジャズバンドに輝く。 2016年7月から初の海外ツアーであるヨーロッパツアーを行い、世界三大ジャズフェスティバルの1つ『ウィーンジャズフェスティバル』(オーストリア)、ヨーロッパを代表するクラブ『ロニースコッツ』(イギリス)へ出演し喝采を浴びた。そして2017年にはメンバー3人で渡米し、本場NYのジャズシーンでいま大活躍するサックスプレイヤーWalter Smith Ⅲと、ビブラフォニストWarren Wolfをゲストミュージシャンに迎えブルックリンの「The Bunker」スタジオでレコーディングを行う。一流のプレイと河野のオリジナル楽曲の魅力が合わさった、珠玉のニューアルバム『Be with us』が8月30日に発売。 また、このアルバムのためにクラウドファンディングを企画。目標金額であった100万円をわずか2週間で達成し、まさにファンと力を合わせて完成させた1枚である。ディスクユニオンをはじめとする全国CDショップにて発売され、TowerRecords 都内店舗では初回入荷分がすべて完売、Amazon でも JAZZ 部門第 5 位(2017 年 9 月 3 日時点)という快挙を成し遂げた。また、このCDのリリース記念として行われた 2017年11月23 日の東京・渋谷「JZ Brat」でのライブでは、1st・2nd それぞれ定員 100 名の入れ替え制にもかかわらず、チケット完売・キャンセル待ちも発生。一夜にして200名の動員を達成する大盛況のライブとなった。 河野祐亮 公式サイト https://yusukekono.com/
youtube
Tumblr media
細川 玄 (GEN HOSOKAWA) ジャズトランペット奏者、作編曲家として25年以上プロとして活動中。 『細川玄ジャズクインテット』を率いてブルーノート系列のジャズクラブ、モーションブルーヨコハマには15年以上継続出演中。他全国で演奏を展開している。代表作CDソロアルバム『Motion for jazz Frontier』(Impartment Inc.)はジャズ系DJをはじめ、各方面から絶大な支持を獲得した。現在もロングセラーとなっている。これまでに30タイトル以上のCD作品にトランペット演奏また作曲アレンジなどを提供。TVCMなどのBGM作曲作品提供オンエア実績も多数。商業音楽での楽曲制作曲数は延べ70,000曲に及ぶ。 2018年より自身がプロデュースするミュージックスクール『セプテンバーミュージックスクール』を主宰。25年に渡るアーティスト活動、商業音楽活動を経て後進にリアルな情報と、音楽で生きてゆくためのリアルな必要スキルを伝授している。プロも学びに来る本格的な完全個人レッスン音楽教室をスタートさせ人気を博している。 個人レッスンの他にも荒川区が運営しているジャズビックバンドの指導、コンダクターなども務めている。地域コミュニティーへの音楽活動への推進やアマチュア音楽活動の普及に尽力している。荒川区の歌『あらかわ~そして未来へ』のジャズビッグバンドアレンジも手掛けた。現在バンドテーマ曲として演奏され、地元の方々から愛されている。 演奏家としては正統派ジャズミュージシャンとして定評があり、作曲家としては類稀なるメロディーメーカーとして各方面から高評価を獲得し現在に至る。 細川玄 公式サイト http://genn.la.coocan.jp/
youtube
Tumblr media
中村 智由 (native) 大学卒業後よりプロのサックス奏者として演奏活動を開始。ダンスホールやジャズクラブでの活動を経て、1999年に自身がリーダーのジャズバンド"native"を結成。nativeでは、ドイツ、中国など海外での公演、サマーソニックへの出演、海外レーベル含む10枚のアルバムをリリースし、大手CDショップのセールスランキングにチャートインするなど2000年代のクラブ/ジャズシーンを牽引する。演奏活動と並行しサウンドプロデュースも行っており多数のカバーアルバムを制作。生音中心の都会的でクールな表現を得意としている。 native 公式サイト http://www.cnative.com/
Tumblr media
山内洋介(13souls) 鳥のさえずりの如く歌うことを信条とし、海とサーフィンを愛する 湘南生まれのギタリスト山内洋介。 2009.08にデビュー作「Six strings with love」7インチをリリース。全国のDJの耳に響き、無名のアーティストにもかかわらず、スマッシュヒッツ。これを受け、60’sの黒人ミュージシャンのセッッションをイメージした二枚目の7インチをリリース。DJ MURO mix CD「MIX SHOW NIGHT CHANNEL issue 02」に収録され即完売。一気に話題のアーティストへ。 2011.7.06 1st Album「BRAND NEW OCEANS」をリリース。インディーズインストとしては異例の大ヒットを記録。7.20 Motion Blue yokohamaにて、『BRAND NEW OCEANS』のワンマン、リリースパーティが開催。当日は入場制限、1st setから立ち見が出るほどの動員数で、多くの観客を魅了した。同アルバムは2013渋谷TSUTAYAバイヤーが選ぶ今年のベストディスクに選ばれる。 2012.07 2nd album 『GOOD TIMES (I SAY) 』が発売。全国のタワーレコードを中心に、大展開。大きな反響を得る。後に2017年、ギターマガジン3月号、国内JAZZ FUNKのギタリストとして本誌を飾り、主催ライヴを大いに沸かせた。 2017 13souls 3rd album 『Rough&Beautiful』をクラウドファンディングにより制作。山内洋介の呼びかけにより、多くの人々の資金援助を得て、大反響を得る。同年、ギターマガジン12ヶ月号にてギタリスト 山内洋介がピックアップ、特集される。人気アパレルブランド、JOURNAL STANDARDとDeliciousのコラボ企画に楽曲提供。 正に13souls山内洋介の存在そのものが現代のレアグルーヴと言えよう。今、最も注目すべきアーティストの一人である事に間違いはない。 山内洋介 Facebookページ https://www.facebook.com/13souls-816172288405353/
youtube
出演者紹介 (DJ, VJ, Organizer)
Tumblr media
TOJO (afrontier) 90年代前半にDJとしてのキャリアをスタート。都内クラブ、カフェやライブハウスなどで活動後、2003年、トランペッターでありオーガナイザーでもあるオサダイサオ氏に見出され、Motion Blue yokohamaを拠点としたクラブジャズイベント『afrontier』に、JUN MORITA、Takeshitaと共に参加。『afrontier』のレジデントDJとして、国内外のアーティストと多数共演。Blue Note TOKYO関連イベント、来日アーティストのフロントアクトや数々のリリースパーティーに抜擢される。その他サルサやUKジャズダンス等のダンスイベントから、カフェやレストラン、ホテルのラウンジイベントまで、活動の場は多岐にわたる。また、ジャズミュージシャンやダンサーを相手にその場で選曲をするなど、セッションの経験もあり、アーティスト側からの信頼も厚い。近年はバレアリック・シーンとの交流もあり、シーンを代表する来日アーティストのサポートDJとして出演もしている。リイシュー・シリーズ【EXTRAVAGANZA!】から2016年5月にリリースされた『Randy Weston’s African Rythms / Niles Littlebig』のライナーノーツを担当。ジャズやエキゾチックな音を基調に、時空間を横断するクロスオーバーなDJスタイル。ドラマティックでストーリー性のある選曲を得意とする。 http://tojoafrontier.jugem.jp/
Tumblr media
森田潤 (afrontier) DJ、モジュラー・シンセ奏者。ソロ・アルバムLʼARTE DEI RUMORI DI MORTE (SPF-004)ɸonon 2018年発売。ワールド・ミュージック、ジャズ、エレクトリック・サウンドなどに幅広くコミットし、クラブやホテルでプレイするほか海外にも遠征。クラブ・ジャズ系”afrontier”、ワールド・ミュージック系”Séduction Tropicale”、エクスペリメンタル系"WHOLE LOTTA SHAKIN’ GOIN’ ON”、ハウス系”Perfect Love Affair”等、多くのイベントにレギュラー参加。blackmadras名義で楽曲製作も行い、OMAGATOKIやVillage Musicからリミックス作品も発表。バンド形態のOmega f2;kは13年にポニーキャニオンよりデビュー曲をドロップ。DVD作品"THE DECLINE OF THE ORGY”を発表。また、レア・ヴァイナル復刻のマスタリング・エンジニアとしても評価され、ホセー・アントニオ・メンデス等の再発盤がベスト・セラーになっている。2018年には芥正彦企画/演出によるノイズ・オペラ「カスパー」に参加。
Tumblr media
大塚広子 (DJ/音楽ライター/プロデューサー) ジャズをメインにDJ歴20年。アナログレコードにこだわった1960代以降のブラックミュージックの音源発掘から、現代ジャズ、クラブミュージックまで繋ぎ、ワン&オンリーな“JAZZのGROOVE”を呼び起こすDJ。徹底したレコードの音源追求と、繊細かつ大胆なプレイで全国的な現場の支持を得て、ニューヨーク、スペインの招聘、東京JAZZ、2度のFUJI ROCK FESTIVAL、Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN等出演。クラブシーンのみならず老舗ジャズ喫茶やジャズライヴハウスで、評論家やミュージシャンとのコラボレーションを積極的に行い、柔軟なセンスで音楽の楽しみ方を提示している。DJ活動の他、メディアでの執筆、選曲監修、伊勢丹新宿店をはじめ企業の音楽イベントプロデュース、自身のレーベルKey of LIfe+を主宰。現在生まれる音楽を審美眼を活かした切り口でまとめあげたコンピレーション(PIECE THE NEXTシリーズ)や、気鋭ミュージシャンを束ねたプロデュース・ユニット(RM jazz legacy)のディレクション、リリース活動なども行う。DeAGOSTINIジャズレコードコレクション(2016年創刊号及び、書店PR文)、朝日新聞(2017年7月「ジャズと私」コーナー)、読売新聞(2018年2月「くらし家庭記事」)などに掲載、執筆。ジャズ及び、アナログ・レコード普及におけるオピニオンリーダーとしても活躍。 http://djotsuka.com/
Tumblr media
Takeshita (afrontier) 90年代後半から青山BLUEなどの都内クラブやカフェ・レストランetcを中心にイベント企画及びDJ活動に精力的に取り組み、2003年からはMotion Blue yokohamaにてジャズイベント『afrontier』のレジデントDJとして参加、活動範囲を全国区へと広げた。ラテンを中心とした新旧ワールドミュージックからジャズ、現行のダンスミュージックを現場によって使い分けている。Eddie Palmieri, Larry Harlow, Jorge Benjour, Joyceの来日公演サポートをはじめ、国内外のミュージシャン/DJとの共演歴も多く、第一ホテル東京ラウンジなど商業施設のBGM選曲なども手掛けてきた。 https://afrontier.com/
Tumblr media
木村勝好 '90年代の終盤にキャリアをスタート。現在、青山ZERO、渋谷FAMILYといった都内のクラブフロアでプレイする他、ジャズクラブやホテルのラウンジ、レストランなど、あらゆる場所、シチュエーションに良質の音楽を届け、響かせている。ダンスミュージックの分野では、ASHREY BEEDLE、DJ KRUSH、菊地成孔他、国内外の名だたるDJやアーティストを、自身がレギュラーを務めるパーティー『in the mix』に招聘。そこでのフロントアクト・共演を経て吸収した幅広い感性は、まさに自らが提唱する「FREE FORM HOUSE MUSIC」そのものといえ、現在も変化を続けている。そのジャンルを横断しつつまとめあげる起伏と情感に富んだプレイスタイルを、是非とも体感してほしい。 http://mixcloud.com/masayoshikimura/
Tumblr media
Kiki (Mucho Mucho Mambo!) サルサバンドに明け暮れた大学時代から、無類のラテンクラシックス好き。60-70年代のグルーヴィなラテンをベースに、現在進行形のサルサまで、ラテンの様々な味わいを表現すべく、音源捕獲&模索の日々を送る。都内及び横浜、大阪のクラブ、バー、ラウンジで活動中。ラテンを愛するすべてのダンサーに贈るパーティ「Mucho Mucho Mambo!」レジデントDJ。
Tumblr media
TASUKE 1974年生まれ。ディレクター・アートディレクター。 主に映画・テレビ番組のオープニングタイトル映像のディレクションをメインワークとする。VJとしては2000年から、VJユニットNitro Movieのメンバーとして、キャリアをスタートする。2002年からtasuke名義で南青山のloopで行われていた「VORTECHS」のレギュラーVJをはじめ、代官山UNIT・Motion Blue Yokohaha・ageHaでプレイ、国内外の様々なアーティストと共演。2007年にはドイツのカッセルでDJピエールがオーガナイズするイベント、Tokyo NightにゲストVJとして出演。現在は2002年からオサダイサオがオーガナイズするジャズイベント、afrontierでレギュラーVJとして第1回から出演している。
Tumblr media
isao osada (trumpet, producer) 80年代初頭からプロのトランペッターとして音楽活動を始める。93年にCLUB JAZZ UNIT『O.M.U』のファーストアルバムをリリース、欧州14ヶ国を始め米国にて発売される。以降インターナショナルジャズ��ェスティバルへの出演、ヨーロッパライブツアーを行う傍ら、ミスターチルドレンのツアーサポート、数多くのレコーディングにソロプレイヤーとしても作品を残すなど、ジャンルにとらわれることなく精力的に活動。2002年からは自身のバンド演奏を行っていた横浜赤レンガ倉庫のジャズクラブ「Motion Blue yokohama」にて『afrontier』のイべント・オーガナイザーとしても活動。2008年には同イベントのコンピレーションCD『isao osada presents "afrontier" 12 colours to 7 seas』をリリース。近年はホテルを全館使用した新たなイベントスタイルをプロデュースする等活動の幅を広げている。 公式サイト http://www.isaoosada.com/
4 notes · View notes
angyeong-12 · 5 years
Text
「ライブやイベント参加に関するアンケート」を実施しました
今回は、前回行ったアンケートでライブに関する疑問がいくつか寄せられていましたので、それを元に調査を行いました。
もう結果行ってもいいですか?いいですね。
▼アンケート概要
コンサートやイベントなど現場に関するアンケート
アンケート実施期間:3/5〜3/10
アンケート回答数:115件
▼アンケート「共通質問項目」
【お住まいの地域を教えてください(都道府県)】
1位 東京都 17 件(14.8%)
2位 大阪府 11件(9.6%)
3位 埼玉県 9件(7.8%)
4位 兵庫県&愛知県 8件(7%)
6位 神奈川県&石川県 6件(5.2%)
都心&都心のベッドタウンの方が多かったですね今回
【イベント参加の有無】
Tumblr media
4人に1人はイベントに参加したことがある、という計算になりますね。 次の項目の「年齢」と一緒に見ると、「みんな若いのにすごいなあ」という気持ちになります(もっと良いこと言えないのか)
【年齢を教えてください】
(※任意回答)
Tumblr media
このアンケートで一番多い層は「高校生」ですね。
第三次韓流ブームが中高生中心に広がっているということが分かります (ようやくそれっぽいこと言えた)
中学生の方が、20%以上いらっしゃるのは驚きました。
私が中学生の頃は、吹奏楽部が変な挨拶をする風習があったので、それを真似するとか、そんなしょうもないことばかりしてました。 今は、中学生でもネットに触れる機会が多いので、流行しているものを取り入れやすいんでしょうね。
私が中学の頃なんて、銀魂中心にみんな生活してましたよ、、毎週木曜18時半、、
▼ライブやイベントに行ったことが無い方への質問
上記の共通質問項目「イベントに行ったことはありますか?」という質問に「無い」と回答した方への質問セクションです。
【今まで、イベントに参加しなかったのはなぜですか?】
機会がなかったから
お金が無い
暇とお金がなかったのと一緒に行く人もいなかったから
当選しなかった
子供が年子で小さいから
今までアイドルに興味が無かったから。
そもそもない
親に許可がもらえなかったから。
受験生だったから
日程が合わないから
受験があったのと、住んでいるところが鹿児島なので遠征費(?)がかかってしまってアルバイトをしていない身なので参加できなかったから。
周りに同じグループのファンがおらず、年齢的に一人で参加できなかった
現地まで遠い、金銭的余裕がない
最近好きになり始めたから
地方に住んでいて遠征費がまずい、貯金がない
そもそもイベント自体が無いという方も多数いらっしゃいました。
その他にも、時間や金銭が無く、参加を諦めたという方も多いようです。
地方にお住まいの方は、東京や大阪に出てくるだけで一苦労、という方も多いようで、、、、
最近好きになり始めた、という方はこれからどんどん色んな現場に行けるといいですね〜
【イベント参加に関する意欲に関して】
Tumblr media
頼む〜〜〜〜!!みんなが現場行けますように〜〜!!ナムナム🙏
▼ライブやイベントに行ったことがある方への質問
上記の共通質問項目「イベントに行ったことはありますか?」という質問に「ある」と回答した方への質問セクションです。
【現場に参加した回数】
Tumblr media
6回や9回の方は、ご自身で回数をカウントしてらっしゃるんですね!その記憶力が羨ましい!!
「10」に関しては、「10回以上」も含んでおります。
このアンケートに参加した方の割合としては、1回の方と10回以上の方がかなり多いですネ。
現場行き始めです〜!という方と、もうベテランです!っていう方に大きく分かれるんですかね〜
【普段の現場参加に関して】
Tumblr media
「連番した数」ですので、どうしても5人以上は無理ですよね(笑)
現場によっては、4連番出来ますよね、でも多いのは2連ですかね。 (今思い返せば、私は2連が多かったです)
ここで、「1人」と回答した方と、複数人の方は、次のセクションが変わります。
【遠征経験の有無】
Tumblr media
半数が遠征の経験アリなんですね〜!!
遠征って楽しいよね!!!!!今度韓国とか行きたいんですよね私も!!!!
【遠征はどこへ行きましたか?】 (遠征した理由等もあれば教えてください) ※遠征したことがある方のみ
大阪(2018SMTOWNが大阪でしかやらなかったり、SHINeeの公演があったので)
福岡ヤフオクドーム
韓国のソウル。ツアーの最終公演があった為。
会場が小さく観光としても興味があるという理由で仙台に行きました。
関東から関西に(遠征と呼べるのか否か
応募してみたら当たったので福井に行きました
福岡 クリスマスの公演に行きたかったから
大阪、北海道→東京より会場が狭いから(近い距離で観れる)
福岡、同じ九州でも簡単に日帰りできる距離ではあまりないから。
実家にいたときは東京へ遠征しました
大阪、千葉(会いたいから)
福井県(アリーナツアーで1番の近場) 宮城県(LIVE当日誕生日だったので)
東京(たまたま旅行に行く予定ですだったため)
家から行くには遠すぎるから、ライブは毎回東京
大阪(福岡住みのため)
幕張(幕張でしかペンミがなかったから)
福岡・名古屋・福井・和歌山・神戸 理由は好きな人にできるだけ会いたいと思ったから・チケットが当たったから
遠征してみたくて大阪に応募したら当たったから大阪に行った
家から行くには遠すぎるから、ライブは毎回東京
東京(たまたま旅行に行く予定ですだったため)
一番上の大阪SMTOWNとは私です()
ツアー最終公演を狙って韓国に行った方羨ましい〜〜〜!!!
この結果から、遠征は大きく分けて3パターンくらいあるんですね。
①「近くでイベントが開催されないため、都市に出るパターン」 ②「観光を兼ねて遠征するパターン」 ③「会場が小さいから近い、できるだけ多く会いたいなどの熱意に由来するパターン」
ツアー全通マンさんは、③熱意遠征組に分類されるのかな 私は2018のSMTOWNの時は、①でしたが、SHINeeのFromNowOnの時は③でした。
みなさんの遠征は、どの分類ですか??
【会場到着時間は、開演時間を基準として何時間前ですか?】
Tumblr media
2時間前と3時間前が圧倒的に多いですね、1時間前という方もいらっしゃいます。
次いで多いのが「5時間前」ですが、おそらく物販やご飯ですかね。
「その他」を選択した右らへんの少数は、10時間前や前日から、という方々です。
て、、、徹夜組、、、、!!!!
平日か休日かで大きく変わる方も多そうですネ
【どのような服装で参加していますか?】
動きやすさ重視!Tシャツorトレーナー&スキニー+スニーカーを基本に、推しのカラーを取り入れた服装が主ですかね〜〜〜
お気に入りの服(メンバーカラーがあれば取り入れる、、)
そのまま推しにお持ち帰りされてもいいような格好
写真映えしそうな服
普段とあまり変わらない
全身グッズ!
清楚系
スカート
推しが好みの服装
その季節に合った服装
BT21の服装
EXOならユニフォーム 他グルは推し色
スニーカー必須でスニーカーファッションでおしゃれできる服
量産
派手すぎない服装
バリバリの勝負服
韓国系意識の私服
自分の中で一番自分が可愛くなってると思える服装
黒系!
私服。誰かと連番する時はシミラールックが多いかも
機能性(動きやすさなど)を重視している方と見た目(単純な可愛さや派手さ、友人とのお揃いなど)重視の方にわかれましたネ。
グループカラーや推しカラーを取り入れる方も多いですね。
私はあまり何着ていこうとか、昔より考えなくなりました。 (いわゆる普段どおりというやつですな、、、)
【物販で必ず買うものはありますか?】 (理由もあれば教えてください)
会場限定のランダムグッズ:オンラインでは買えないグッズはどうしても買っておかなければという信念にかられるから。それでも可愛いいと思わなかったものは買わない
うちわがあればうちわ!ライブ中片手にペンライト、片手にうちわ!手が空いてるとどうしたらいいのか分からなくて← ジャニーズは固定ペンラがないので、買います!
推しの顔が見れるもの (見返して、胸がときめくもの…….)
うちわ、フォトカード、会場限定のキーホルダー?みたいなの(理由)そこでしか買えないから
Tシャツ
ピンバッチやキーホルダーなど(洋服はあまり使わないので買わない)
推しのうちわ理由アピールするため。ペンライトが新しければ買う
トレカ(収集癖のため)、うちわ
タオル等日常的に使えるものだけ買います
ない
うちわめっちゃ人気やん
いや、この表だけ見ると「何言ってん」って感じかもしれませんが、ここに載せる前に被り等を消しています。
うちわとペンライト、何回消したかわからないよ、、、、、、
でも、顔がドカンと載ってるタイプのうちわがみなさん好きなんですね。
トレカ系集めちゃうの分かります〜
チェミノのポラなんて2セット買いました(末期)
【会場で「特典付きCD」が売られていた場合、次のうちの何が特典の場合、CDを買いたいと思いますか?】
Tumblr media
おい、セジュンシッパーおるぞ
この質問は、私が元イベント会場CD売り場マンだったので、気になって追加しました。(たぶんここで書いた)
3年間働いていたので、ある程度は売れるものと売れないものの予想が当たるんですが、このグラフも「まあそうですよね」という結果です。
ミーグリ抽選券よりも若干トレカが強い、、それなら、ミーグリ抽選付きトレカを特典にして販売するのがいいんじゃないか、、、?おや、、、?
なお、キッスさん系のいわゆる接触系特典券が抽選関係無しについてくるパターンは想定していません。
学生の間は、クリアファイルや缶バッチ、ポスターも嬉しかったですが、今はトレカの方が嬉しいですね(まあ、結局なんでも嬉しいですけど)
▼普段、「1人で現場に参加する」と回答した方への質問
ここからは、ライブの参加人数によって質問を少し分けてみました。
【お一人で参加した理由を教えてください】
周りに友達がいなかった
1人の方が参戦できやすい
一緒に同じグループを応援している幼馴染はいるが、仕事の都合でなかなか予定が合わなかったりするから。私は平日休みのシフト制。友人は土日休みの仕事。あと友人はそこまでアクティブではない。Youtubeで推しをみているだけでも幸せで充分だと感じるみたいです。だけど私がライブに行くことはやはり羨ましいそうです。矛盾してますが…
友達のファンがいないため。1人の方が当選率や席が良さそうなイメージがあるため。
「1人のが楽です〜」派と「致し方なく」派がいらっしゃいますね。
1人の方が当選しやすいのは、座席の関係ですね。
【2人以上での参加に関して】
Tumblr media
真っ二つ!!
私は、時と場合によります〜
韓流系は友達と行って、「全自動尊いbot」になりたいですが、バンドの場合は1人で行きたいかな、、、なんでしょうね(笑)
【上記の「二人以上でのライブ参加」に関する質問の理由】
1人の方が1日自由に動けて気楽なため。
色々気を使うのが面倒
以前友人と連番して単コンに行ったが予約しているマスタニムグッズを取りに行くのに2人だと面倒くさかったから、それ以来1人で行くようになった。
心細いからです。あと、感動を共有したいからです
一緒に参戦できる子が欲しい
ひとりでのライブ参戦を特につらいと思ったことはない。むしろ気楽。会場でSNSで繋がっている方とお会いすることもできる。だけど同じグループを推している気の知れた友人とライブ参戦したときは、ひとりのときにはないワクワク感と高揚感を感じられるのでやはり楽しい。
「1人のが断然楽」派、「でもやっぱり人と行きたい」派、「どっちでも大丈夫」派にわかれました。
私もどっちでも大丈夫な方です!
私は周りに結構韓流好きな子が多いので、そういう子と行きますね。 (高校の頃の同級生です)
ツイッターなどのSNSで仲良くなった方にお会いするのも楽しいと感じる方です〜!!
▼普段、「2人以上で現場に参加する」と回答した方への質問
ここからは、複数人でライブに参加される方への質問です。
【どのような間柄の方と参加されていますか?】
Tumblr media
ちょっと複雑だったので、まとめて単語の回数検索をしました。
結果的に、友人と親御さんがとても多く、実際のアンケート結果を見ても、「SNS上の友人」と答えた方はそんなにいなかったです。
【1人での参加に関して、どう思いますか?】
FC限定などは基本一人参戦で楽しいです。ただ1度友達と参戦したことがありその後互いに語れるのがとてもたのしかったです(母の場合はどちらかと言うと一方通行に語ってる)
そのアイドルへの愛を感じるのでよいと思う
ぼっちは寂しいので、できれば誰かと行きたいですが、1人で行ける人のことを羨ましく思います。いつかやってみたい。
全然あり!自分も1回1人で参戦した!
少し寂しいと思う、始まる前の緊張を誰かと共有したい
あり!
自分も良くするので特に何とも思わない。強いて言うなら1人参戦をみて馬鹿にするのをやめてほしい
全然いいと思うただ終わってから騒ぐ相手がいないのが悲しい!
以前に1人で参加したことがあるが、自分の好きなように行動できるし集中できるので良かった。1人で鑑賞したい人の気持ちはとても良く分かる。
ちょっとしてみたい
なるべく2人以上で入りたいけど、予定が合わなかったり、チケ���トが1人1枚しか取れないときは1人でも参加してます。
トイレやグッズ列は1人で行動なので楽だが、いざライブが始まり楽しさを共用できる人がいないので寂しさも覚える。
1人で参戦できる勇気が欲しい
1人での参加に憧れるという方もいらっしゃいました。
よく、「1人なんです、、、、」という方を見かけますが、あまり気負う必要は私も無いと思います。
推しを愛する気持ちが重要なわけですから、、、、、、、
1人映画、1人水族館、1人ディズニー、1人渡韓、、、、
みなさんやったことありますか?私は全部あります
(ディズニーは、年パス持ってたので)
▼最後の項目ダヨ!!!
ここからは、共通の質問に戻りますアンド最後のセクション
【毎月いくらほど韓流にお金を使っていますか?】
10万円 1件
5万円 3件
3万円 9件
2万円 7件
1万円 22件
5000円 15件
3000円 7件
2000円 2件
1000円 3件
0円 3件
5000円〜1万円が平均的な金額みたいですね!
月によってバラバラという方も多くいらっしゃったので、大体の平均として捉えてください。
私ですか、、?私は、、、、1万、、、、? (意外と穏やかなオタク)
ンマ、カムバやイベントがあれば別だけどね。
▼長いアンケートにお付き合い頂きまして、ありがとうございました。
以上で、アンケート結果の集計は終わりです〜!!
今回のアンケートはちょっと長かったですか?? 分岐がたくさんありましたよね(複雑でごめんなさい)
みなさんがとにかく現場大好きなようで、とてもほっこりしました(笑)
この結果がオタクのみなさんにとって少しでも身になるものであることを祈ります!
▼番外編(今後の参考)
【知りたい情報やアンケートはありますか?】
韓国語の覚え方みたいなやつ
トレカを携帯ケースの裏に入れている方って、普段(仕事や学校に持って行く際)も入れているのか、休日やイベントの際のみ入れているのかちょっと気になりますね(しょーもな)
セジュンシッパーは人口の何割程度存在しているのか
推しの誕生日などで渡韓する際に、推しのグループのゆかりの地というか、ここは行っとけ!みたいな情報が知りたいです。
韓国で旅行をする時にオススメのホテルや交通機関
サイン会の行き方、応募の仕方
自分のライフスタイルの変化(特に結婚という点に特化して)で、独身時代と比べて推しを応援する活動に変化はあったか(金銭面や遠征回数、気持ちの面など)
みんなが推しのグループを好きになったきっかけ
EXOちゃんは誰と誰がリアルなんでしょうか
特に希望はございませんが、まためがねさんがアンケートをしてくだされば回答したいと思います。
キャ〜〜〜〜〜うれP〜〜〜〜〜!!
推しを推すことになったきっかけはすごくいいですね!
次回の参考にします〜〜!
そして最後に、「その他のご要望コーナー」もありましたが、温かい皆さんのお言葉がたくさんありましたので、独り占めさせてください(笑)(笑)
それでは次回は、「推しを推すことになった理由アンケート」を実施します
ご協力いただけますと幸いです!!
0 notes
Text
Something Like What.
I Don't Like Mondays. 2018 AW TOUR A GIRL IN THE CITYのファイナル(仮)がついに終わってしまった。(つまりこれを書いているのは2018年12月26日です。/そして加筆修正しているのは4月16日です。)
2018年下半期は、ずっとアイドラとともにあったから本当に本当に寂しくてまだひきずってる!
おーーー!いわたくんのスーパー同級生だ!ネスのラジオに出るのか~!と思って聞いたら、思っていたよりも、もっとずっとよく笑って、気さくにおしゃべりする4人、なにより曲がぜんぶすきなんですけど!?!?!?と思った瞬間にはたぶんもうアイドラの沼に片足突っ込んでたと思う。
夏だからな!現場に行くぞ~~!と軽率にXEX日本橋に駆け付けた8月24日からここまで、ほんとうにほんとうにほんとうにあっという間でした。
私はあの日、悠さん以外のメンバーのお顔とお名前が一致していないまま(予習が足らずすみません…)現場に行って、まず会場の予想以上の大人っぽさと少しのチャラさに内心めちゃくちゃ焦りながら(ドレスコードがsomething redだったのなつかしいね)、はじめてライブを観た。
サウンドチェックして一回ステージからハケたあと、しばらくするともういちどメンバーがステージに上がっておもむろに音出ししはじめたたところで、胸元がガッツリあいた柄シャツ・黒のスキニーパンツ・カラーサングラス(イエローのやつね)という出で立ちで現れた悠さんのお顔があまりにも小さくて、そのえげつないオーラと纏う色気に秒殺されて「エッロ!顔ちっさ!」と口走ったこと、めちゃくちゃ鮮明に覚えてる。
ライブは、がっつり音源を聴いて臨んだだけあって、これ知ってる!わかる!たのしい!がずっと続いてて心から楽しかったし、音源とは違った生の音圧にめちゃくちゃ興奮したし、ずっと生で聴いてみたかったMarry Meが聴けてうれしかった。そしてとにかくめちゃくちゃ踊った。(会場はバーレストランですがめちゃくちゃジャンプした)
そしてそしてベースの謙二さんの誕生日をサプライズでお祝いしたのもスペシャルで嬉しかったな〜。みんなでハッピーバースデー歌ったときの悠さんの楽しそうなお顔に、たぶん一目惚れしました。(※お誕生日だったのは謙二さんです)(胸を押さえながら顔を覆う絵文字)
そして待ちに待ったワンマンツアー、張り切ってグッズ販売開始時間に行ったらリハしてる音が聞こえてきて、お腹に響くようなバスドラにウゥ~~~~~~~~~~!!!ってテンションが上がったんだよねぇ……
とにかくこの日はブチアガった記憶しかない…あとFreaky Boyが撮影OKでしたね……(このあとツアータイトル曲のA GIRL IN THE CITYへチェンジしたよね)
秋気さんがいっつも最高のバイブスを伝えようと言葉にならないMCしてくれるのが、私はほんとに好きで、マジでマジでマジで本当に好きで、愛してる~~~~~~~~!!!!ってなる。
東京公演は、兆志さんが悠さんをセクシー担当って言いはじめたことがきっかけで、兆志さんはワイルド担当、謙二さんはチャーミング担当、秋気さんはありがとう担当になって、なんて愛おしいバンドなんだ…ってニヨニヨして静かに幸せを噛み締めてたら、最後の生声の「ありがとうございました!!!」にやられた。完全に、やられた。
次の現場いつですか…(ヨロヨロ)ってしてたらハロウィンイベントあるやで!と言われ、単身クラブに乗り込んだりもしました。クラブ自体きっと片手で数えられるくらいしか行ったことないのに!(前から一度中に入ってみたかった)1OAKでやるっていうから!仕事終わりに!駆け付けたよ!ノー仮���で!ごめんなさい!!!!!!!
マジでありがたいことに、いわゆる最前で見せてもらったんですけど、正直ずっと悠さんからセクシ〜な香りがしてるのでめちゃくちゃヤバすぎてしんどすぎてそのことが記憶の大半を支配している…オイ…せっかくの最前やぞ…あとこの日いつもの並びじゃなくて上手に兆志さんと謙二さんが並んでて下手に秋気さんっていうめちゃ新鮮な配置だった!秋気さんがドラム叩いてる姿よく見えて穴空いてしまいそうなくらいガン見してしまった。もうあとはエロい匂いしてたことしか覚えてない。エロい匂いってなんだ?って思うでしょ??くそエロいにおいしてましたからホント…(?)この日は二部制だったんだけど、合間にいわゆるVIPルームから悠さんが下覗いててマジそれが本当に最高に悠様すぎてハァァァアアアア!!!!ってなったし、ハーフィーズが出てくるとすこし身を乗り出してご覧になる悠様もめちゃかっこよくて最高でした……どうもありがとうございました……なんとか一人で帰ってこれてよかったね……
そして現場がないことに耐えられなくなり(この間に例の事件が勃発するわけですけども!浅●ね!!(やめな))、なんかもう居ても立っても居られなくなって、チケットを買い、単身宇都宮へ駆けつけたよ!!!!もはや財布に紐がない!!!!!!
いわゆる王道(?)のライブハウスでアイドラのライブみるの初めてだったんだけど、も~~~~~~~~~~本当に激アツだったの!!!!!!!!!!!!!悠くんダイブしちゃうんじゃないかってくらいブチ上がってて、ペットボトルの水ぶちまけたりしてて(これは秋気さんのドラムに死ぬほどかかって、秋気さんはめちゃくちゃ冷静にタオルで拭いてましたし、わたしは心の中でそっと黒木啓司さんのことを思い出しました)、それ見てこっちもブゥワァァァァァァァ!!!!!!!って盛り上がって。FeelingでSometimes love is painful, Sometimes love is hard.って歌いだしたときにキラッと光る指輪が美しくて、正直マジでめちゃくちゃ涙目になったけど、それさえも吹っ飛ぶくらいホントにホントに楽しそうな顔するからさぁ……ねぇ。きっととんでもなく刺激的な彼の人生のなかで、「ライブしてる瞬間に勝るものはない」っていう言葉が間違いなく真実で、それが本当に本当に嬉しくて。ひとりだったけど、行ってよかったなぁって心から思った公演でした。
そして待ちに待った札幌公演。個人的にめちゃくちゃ思い入れがある北海道(札幌)へ、しかもひとりで遠征するというのはすごく特別なことで、私がそこまでするって結構本気の時で。直前二週間、珍しく仕事がバタついてたり、冬の北海道恒例のちゃんと飛行機飛ぶのか問題とか、思えば一人で北海道行くの初めてだなぁとか、そもそも朝(3時起床予定)起きられるんですか!?!?とか思ってたら、前日というか当日のラジオで「今日は発表がありますから」とか言われて、もう感情がめちゃくちゃなままとりあえず無事に札幌入りして、友達と合流して、噂のキングムーの前まで連れてってもらって、雪積もるDuceの前に並んで、会場に入りました。
メンバーのただならぬ気迫と、オーディエンスのLIVEに対する期待のシナジーがすごくて、2曲目のWE ARE YOUNGで軽く酸欠になるくらい熱気がすごかった。ライブ中、わたし!いま!生きてる!!!!!って何回も思った。
謙二さんがいつもよりめちゃくちゃ煽ってきて、それでブゥワーーーー!!!って盛り上がった客席を見回してちょ〜満足そうな顔して舌ペロしたり(さながらトラのよう)、みんなの歓声にありがとうってつぶやいたり、愛してる!って叫んでくれたりとか。相変わらずRight before sunsetの兆志さんのピアノがうますぎて謙二さんが下向いて笑ってたりとか。みんなちょこちょこ後ろ向いて秋気さんと目合わせてニコニコしてたりとか。GOLDEN LIFEのスネアパートでめちゃくちゃドヤ顔する悠さんとか。やっぱり最後に耐えきれなくて笑っちゃう謙二さんとか。もう全部、全部愛おしくてたまらなかった。観ながらずっとこの時間が続けばいいのに、ってずっと思ってた。終わらないでって、ずっと思ってた。
僕たちにとって、大切な曲です。という紹介で始まったLIFEにじ~~~~んとして。TOKYO BROTHERSでほんっとに信じられないくらい煽られて、こんなに求められることないんじゃないかってくらいゴリゴリのロックを浴びて、人生で初めて死ぬかもって思うくらい本気で声出してプチョヘーンザ!した。いつもはパリピポプチョヘーンザ!なのに、札幌ではマザファカサッポロブラザーズ!!!!!!!!!!!!!って言ってくれてほんと死ぬほどうれしかったし、絶対まだ死ねないって思った。直前の栃木がめちゃくちゃ盛り上がっただけに、札幌どうなんだろって勝手にちょっと心配してたけどぜーーーーーーんぶ杞憂!今まででいちばんブチ上がった!!!!!!!!!!!間違いないです!!!!!!!!(2018年12月16日時点)
AGITCでいつも通り撮影OKにしちゃおうか?のくだりがあって、どういう流れか忘れたけど、隣のお姉さんとヤバイヤバイヤバイ!!!チャラい!!!って騒いでたら、ちょ〜かわいい笑顔でチャラい?って聞き返してくるから、ちゃらーーーーい!!って大騒ぎしたらOh My Godってめちゃくちゃうれしそうな顔で言うからさぁ……。オタクほんとうに生きててよかったきてよかった!!!!!!!!!!!!!!!(そのあと「ちゃらいってよく言われるけどほんとは真面目なんですよ」「え~~?」「まぁこれがチャラいですね」ってやりとりがあった……悠様……好きが止まらん……)
アンコール出てきてくれてFIREでめっちゃくちゃ歌い上げてくれたのうれしかった………これはマジでマジで最高すぎて、ほんと最後のファルセット最高すぎて隣のお姉さんを抱き締めた(※はじめましてのお姉さんです)
そして絶対に泣いちゃうOn My Way。「なぁ最近調子はどうだい?」っていうそのやさしい歌いだしがもうあまりにもI Don't Like Mondays.すぎて、グッときて毎回泣いてしまうよ………本当に本当に最高!!!!!!!!!!ずるい!!!!!!!!!
最後に写真撮ろうってなった瞬間、コソコソっと悠さんに例の段取りの話をする謙二先生ちょ〜かっこよくて勘弁して………ってなった……オーディエンスからのおめでと~!!!!!の声に、思わず両手で目頭を押さえる謙二さんと、ずっとずっとずぅっとニコニコ笑ってる悠さんというその対比がもうあまりにも尊かった……全然肩組むところじゃないのに、バッコーーーーーーン!のバネのくだりで感極まって悠さんの肩をグッと抱く謙二さんが最高にエモくて、もうまじでこんな最高な夜ある!?!?!?!?!?!?!?!?って思った。
移籍先はエイベックスです!!って言われた瞬間に私はその場で崩れ落ちたけど隣のお姉さんがささえてくれました ありがとう
恒例の生声のありがとうございましたー!もね、誰よりも大きい声でありがとうございましたぁ!って言うんだよ……最近作り笑いできないんだよねぇ、って男子夜会でポロっと零した悠さんが、ほんっとうに嬉しそうに笑うんだよ……あんまりにもパーフェクトナイトじゃん……夢なら醒めないで、終わらないで、って何回も、何回も思いました。
札幌公演が終わって、あまりにも余韻がすごくて、ありとあらゆるインタビューやLINE BLOGを一気読みしたんだけど、このバンドに出会うために、今までの涙や苦労があった、とか揃ったメンバーを見てしっくりきた、とか。このメンバーだからボーカルをちゃんとやろうと思った、とか。今まで応援してきてくれた親に成長したところ見せたい、とか。もしかしたら出会うことがなかったかもしれない俺たちが、音楽を通して出会えて、みんなと人生の一部を共有できたことが嬉しい、とか。それらは当時の彼らから出た言葉なんだけど、今もなおLIVEでまったく変わらず同じこと言ってくれるもんだから、もう本当に好きになれてよかったー!って心から思った。スーパースペシャルなあの夜に、間に合って本当に良かった。
今日来てくれて本当にありがとう、と言ってもらえること、シンプルにファン冥利に尽きるなぁと思ったし、あの夜に立ち会えたことは、これからどこまで続くか全くわからない私の人生の中で、間違いなく歴史的な一夜です。Tonight is the night we're gonna make historyですよほんとに……一生忘れられない夜をありがとう……
新しい環境に飛び込むのはもちろん勇気がいるし、大きな決断だったと思うし、もしかしたらすこしの不安や戸惑いもあるかもしれない。これがきっかけで、きっといろんなことが変わるだろうし、たまには躓くこともあるかもしれないし、いいことばっかりじゃないかもしれない。それでも4人が、ずっと4人でいて、いっぱい笑って、4人で見たかった景色が見られたり、やりたかったことができたりしたらいいなぁと思っています。そして、そんな瞬間に、これからも立ち会えたらいいなぁ。
本当におめでとう!ありがとう!私も愛してる!!!!!!!!!!!!!!!!
0 notes
3-mi-5 · 5 years
Text
プルースト効果
秋の匂いがする。カラッと晴れた日が増えて、もうすぐ冬が来そうな風も吹く。「こんな香りがする日にあのライブに行ったな」「この匂い、あの曲を聴いていた時に感じたことあるな」と、思い出す。香り、匂いによって思い出や感情が蘇ることを、プルースト効果と言う。 ヒトリエと過ごした期間が「青春」と呼ばれる時期で、まだ記憶が鮮明なため、匂い一つで全てが蘇る。 あの湿度が高くて苦しいくらいの暑さ特有の匂いを感じた時にはロッキン、ムロフェスなどが蘇ったり、暑い外から建物の中に入ってひんやりとしたタバコが混じった冷房の匂いはライブハウスを思い出す。冬のツンとした空気の中にある太陽の匂いを嗅ぐと、遠征中に開場まで「寒いね」って言い���がらたくさん歩いたあの日を思い出す。季節が変わる空気を感じると、次のツアーはどこに行こうかなと考えていた日々を思い出す。 引き出しが勝手に開けられて溢れてくる。忘れようと、いくら努めても、胸が苦しくなるくらいの好きが溢れてくる。プルースト効果は怖い。好きだったことを、ふと思い出してしまうことが怖い。 もう何処にもぶつけることができない「好き」なんか、抱えててもただの重い荷物で、そんなの捨てちゃった方が、きっといくらか楽で。そうしたくて、心の箪笥の奥の奥に押し込んで、いつか消えますようにって願うような日々を過ごしていた。そうすれば、他の人と同じように、生きることができた。 匂い一つ、場所一つ、音一つ、写真一つ、単語一つ。それだけで、勝手に引き出しが開いて、好きだった日々のこと、気持ち、想い、全部が溢れてくる。結局まだ全然、あの日から進めていないんだって、思う。 みんなもう忘れつつあって。あの日、「ご冥福をお祈りします」と言った人の何割が、今日この日も「wowaka」のことを思い出しているのだろうか。毎月5日には命日から何ヶ月だ、って悲しくなって、苦しくなって、涙が止まらなくなっているんだろう。きっと、ほとんどもう忘れてる。 いいな、忘れちゃいたいな、私も。リーダーが、ヒトリエが好きだったことなんか忘れて、新しい場所で新しくできた好きな人に「好き!」って手放しで言いたいな。そんなこと、まだできないなあ。 . 亡くなった仲間を弔ったり悼んだりするのは人間だけだと言う。他の動物は仲間が亡くなったことは理解するが、埋葬したり儀式を行ったりはしないそうだ。そして、そのまま忘れていく。 先日牧場のウサギ小屋で赤ちゃんが産み捨てられていて、そのまま亡くなっていたのを目撃した。他のウサギは無情にもその亡骸を踏んで歩くこともあり、「生」とは、「死」とはなんなんだろう、と思った。 人間だけなのか、死んだ同じ種族に対してこんなに向き合うのは。と思ったのだが、人間だって、ずっとその場に立ち止まっているわけではない。ずっと悲しんでいる人間なんかいない。各々見切りをつけて、忘れて、自分の幸せとやらを探して生きていく。それは物理的に亡骸を踏んでいないにしろ、心理的には踏み潰して進んでいくようで。 なんだ、他の動物と同じじゃないか。結局のところ、他人の死なんか、長い人生の一コマでしかないのだな、と思う。このまま生きていくはずの、自分も含めて。 今も私は辛くて苦しいけれど。でもきっと、生きていればいつしか一度もリーダーのこともヒトリエのことも思い出さない日が来て、いつしか「そんなこともあったね」なんて、言うようになるんだと思う。どうせ人間なんて、そんなものだ。そうやって神様に作られている。それなら、そうなりたくないのなら、今悲しいまま死ぬのが正解なんだろうな、と思う。 忘れるくらいなら、せめて彼らを大好きなままで自分を終わらせたいよ。 . 希死念慮は今日も元気に心の中に巣を作っていて。毎日隠して見ないふりして生きているだけで、ふとしたきっかけで顔を出す。 ある会で、自己紹介の時にヒトリエの話をした知らない人がいた。私はその人のことを会場で見たこともないし、その人は他のバンドも好きで、CDJに行くらしい。 「ヒトリエ」という単語を聞いた瞬間、首の裏はヒヤリとして、手足には汗が出て、動悸も激しくなってしまった私は、それから先の言葉が全く入って来なかった。たまたま自分の自己紹介が済んでいたから良かったものの、もし次に私の順番だったらどうなっていたかわからない。叫び出して帰ってしまいたかった。腕を引っ掻いて、大丈夫大丈夫、話していれば忘れられるはず、と自分を落ち着けて。心臓の音が、耳に直接聞こえているみたいだった。貼り付けたような笑顔でやけに饒舌になっているな、と自分で感じた。大丈夫なふりをして、その会をこなした。 一言で全てを思い出してしまった。結局帰りの電車で涙が止まらなくなり、嗚咽を上げながら帰った。1人になれる場所で、声を上げて狂ったように泣きたかった。今電車に飛び込んで仕舞えば、この感情も全部消えるって思えた。そんな勇気なんかないから、「殺してよ」と願った。 平気なフリをしているだけで、所詮付け焼き刃、虚勢なんて一瞬で消えて無くなってしまうことを実感した。この数週間、全てをシャットアウトすることで上手く生きてれていた、つもりだった。全然そんなことなかった。 3人を見ることができる赤の他人、が初めてだったのもあるのかもしれない。「この人は私とは違って、3人でも平気なんだ、応援できるんだ」と、劣等感にも似た、羨望が胸に溢れた。好きなバンドがたくさんあって、ヒトリエもその1つで、3人であってもいいと、大丈夫なあの人が、羨ましかった。 私はもう自己紹介で、「バンドが好き」とさえ言えないのに。 なんで私は3人を応援できないんだろう、ってずっとずっと思っている。リーダーも大好きだったし、3人のことももちろん大好きだったはずなのに、応援できない私が恥ずかしくて。悲しくて。できたら良かったな。できない、んだよなあ。4人じゃなきゃ、「ヒトリエ」として応援できないよ。 . 亡くなってから半年以上経って、誕生日だったはずの日が来て。リーダーは今どう思っていますか。死人に口なし、ではあるけど、私はずっと貴方がどう思っているかを考えています。 もしこの状況を嬉しく思っているなら、私は3人を応援できないことを恥じて後悔する。そうしようと思っている。だってリーダーがそう思っているなら、多分3人を応援することが正解だから。 それとも悲しく思っていますか。自分の死が利用されて、ツアーは全公演ソールドアウト、あんなに伸び悩んでいた動員も増えていると分かって、嫌だと思っていますか。どう思っているんですか。 追いかけられないことが正解ではないだろうし、追いかけることが正解とも、また言えない。 もうこうなったら、リーダーの言葉以外、全部不正解だと思うんだ、私は。 . リーダーがいなくなって、バンドを追いかけなくなったからこそ出会えた人もいる。その人のことはもちろん好きだけど、もし今もリーダーが生きていて、ヒトリエを、バンドを追いかけられていたとしたら、出会えていなくても良かったのかもしれないな、と思う。そんなの虚しいし申し訳なくて仕方がない。 なにかを、誰かを、好きだな、いいな、と思うたびに「でも急にいなくなってしまうかもしれないし」「死んだら全部終わりだし」と同時に思ってしまうんだよ。 単純に、手放しに、「好き」って言いたいんだけどな。変なストッパーなんかかけないで、「好き」を相手に伝えたいし、言いたいよ。心から好きになりたい。まだそんなこと、できない。 全部怖くなっちゃったな。年内になんとか何かを好きになれるように頑張ろうと思っていたけど、難しいなあ。消えない「好き」が苦しいや。 あと、好きだったはずの、ヒトリエで出会えた人たち。住んでいる場所が近くて、連絡も取りやすい人たちには今もなんとか会えているけど、遠方や連絡は頻繁にとっていなかった人たちとは完全に疎遠になってしまった。前者の人たちも、これからみんななんとか前に進んでいくんだろうし、「ヒトリエ」という繋がり、定期的に会える場所がない今後、もしかしたら会えなくなっていくかもしれない。 「リーダー」がいないだけ、この世界からたった1人がいなくなってしまっただけで、私のこれからの人生から何人もの人がいなくなってしまったんだなあと感じる。もう2度と会えないんだろうなと思う人が何人も何人もいる。その程度の繋がりだったんだよ、と言われたらそれまでなのかもしれないけれど、「ヒトリエ」というきっかけ一つで何度も会えて一緒に泣いて笑えてたら、それは確かな友情みたいなものだったんじゃないかな、って思う。 めそめそしていたら、親から「仕方のないことなんだよ」と言われた。「乗り越えなくちゃ」と。その通りだ。痛いほど分かってる。私が一番分かってるよ。生きるためには、リーダーの死を踏んででも、乗ってでも、越えて進まなきゃいけないんだよ。 文字通り「乗り越えて」生きるってそういうことでしょ。多分。 . 上映会にも行かなかった。DVDも予約していないし、結局手に取るのが怖くて、買えるかどうか分からない。もう買わなくてもいいんじゃないかとすら思っている。買うだけでボロボロになるなら、無理しないで自分のタイミングで買えばいいよね。 もう私は、ヒトリエの全部を知りたくて、なにもかも集めたくて、いち早く見たいような、人間ではない。 大好きだった、たくさん行ったツアーのファイナル、2本分。そんなの今見たらどうなるのか分からないし、息ができるのかすら分からない。DVDを手に入れたら、「ここにある」と思うのが怖いね。最前にいた私は、きっと何回か写っていて、笑って泣いて楽しそうなんだろうな。そんなの、羨ましすぎて狂っちゃうよ。いいなあ、幸せでしょう。 貴方の音も姿も声も全部怖くなっちゃった。ライブハウスも。それに加えてあの頃好きだったバンド、全部怖くて、今全然聴けてない。最近は全く関係のない女性アーティストとか聴いてる。できるだけ遠くにいれるように。 ギターの歌うようなアルペジオの音が怖い。ベースのうねるようなスラップの音が怖い。ドラムのリズムを刻むリムショットの音が怖い。ふと耳に入った知らないバンドの音1つで変な汗が出るような生活をまだしている。もう、バンドは新しく好きにならないんだろうなと思う。どうせ比べてしまうし、好きになる資格もないもんね。 鍵のかかる箱を買おうと思う。私がゆっくり噛み砕いて大丈夫になるまで、全部閉まって押入れに入れてしまおうと思う。心の箪笥に感情は押し込んで、物理的にもしまっちゃえ。仕方ないから、そうやって上手く生きれているふり、今日も続けよう。 . 言葉にするのが下手になった。毎週のようにライブに行って、感想をアウトプットしていたあの頃よりも密度がない日々を送り、中身のない会話ばかりしているとどんどん話すのが、言葉にするのが下手になる。別に元々上手かったわけじゃないんだけどさ、あの時の私の言葉には気持ちがたくさん乗ってて、素敵な言葉たちだったと思うんだ。 「ヒトリエが好きな私」で、「バンドが好きな私」、一生懸命で好きだったな。 ヒトリエのファンなんてさ、基本的に生きるのが下手くそで、でもなんとか生きたくて、曲やライブを支えにして、貴方たちに会うために頑張るような人たちばっかりで。ばかみたいだったけど、みんなそれでなんとか、ぎりぎり、幸せで。 ライブに行けば最高になれて、明日からはまた憂鬱だけど、次のライブまでまた頑張ろうって思えていたんだよな。素敵で、楽しい日々だったな。 写真を見返す。あの日々は本物で正解で嘘じゃなかったよな、と思い出そうとする。 私、√3ツアー本当に好きだったんだけど、もう今ではそこにリーダーもいなくて、大ちゃんもいなくなっちゃったみたいで、「いつか国道3号線のある鹿児島でやろう」というリーダーの言葉はもう2度と叶わないんだよなあ。という現実が突き刺さる。もしかしたら3人のヒトリエと、3人のLEGOと、改名したsajiでやるのかもしれないけど。それはまあ、あの日感じた本物の最高なんかじゃなくて、偽物でしょ。 忘れとの対バンとも2年経った。盛岡と山形、楽しかったな。忘れらんねえよは今では1人、ヒトリエもボーカルを失って3人、もう、何もかもが違うんだろう。あの日みんなで乾杯している写真、本当に好きなんだよな。みーんないい顔。ずっとあれが良かったな。いつかまたやるのかな。ベースの人のワンマンだ!とか言って。それね、実は、全部嘘。あの2日間だけが本当。私はそう思うよ。 永遠なんかない。 . andropだけだね、結局変わらず私の隣にいてくれるのは。そんなandropでさえ、苦しくて十分に聴けないような毎日、早く終わっちゃえばいいのに。ヒトリエとおんなじだけ好きだったから聴くのが辛い。早くandropだけは「大好き!」って言いながらライブに行きたいよ。こんなに見てないの、いつぶりなんだろう。 せめて、andropだけは変わらないで欲しい。変わらないでいてくれれば、あの日のこと、なんとか忘れないで、忘れようともしないでいれる気がする。でもいつか変わってしまうんだろう、それが怖くて。でもまあ、変わっても生きていてくれるなら、まだいくらか、いいかなあ。 . このTumblrだって所謂ただの「オタクのお気持ち表明」なんですよ。気持ち悪くてだっさい、ポエム文章。でもポエムでも書いてないとやってらんないよ。変わっていく世界に、無理矢理しがみついて生きるふりするには、たまにこうやって言葉にして文章にして、それをインターネットに流すしかない、私には。 文章にして、見える形にして、誰かに曝け出して、やっと自分の気持ちに一つ折り合いがつけられる。私は、こうして生きていくしかない。 何年か経って、ほかのバンドのライブに行けるようになったり、ヒトリエの音楽が聴けるようになって、DVDが買えるようになって、ライブ映像も見れるようになって、このTumblrも更新しなくて良くなって、IDもパスワードも忘れちゃって。そうしたら、リーダーの死を乗り越えた、となるんだろう。私は。 . 誕生日だね、リーダー。私の住む街はすごくいい天気だよ。この青空にリーダーの声が響いたら、すごく気持ちいいだろうな。 ヒトリエと、大好きな仲間と、めいっぱいお祝いしたかったな。大好きだったよ。リーダーを、ヒトリエを愛していました。 また冬が来るよ。冬は嫌いだったよね、でもフユノを作った頃に大丈夫になったんだっけ。あの刺さるような寒さが抜けたら、貴方を奪った春が来る。リーダー1人置いて、季節は巡る。 薄っぺらい「おめでとう」も「ありがとう」も言わないよ。みんな誰に向かって言っているんだろう。言う相手はいないのに。 この世界に、いない。 笑っていることより、やっぱり泣いてる事の方が多くて。私はね、 「笑えているよ 泣くこともあるけど あなたと会えたから幸せよ」 「今でも貴方を愛している」 って言いたいよ。もう少し、時間をください。 貴方のことが、本当に大好きでした。
0 notes
jazieta-blog · 6 years
Text
安倍首相やつるの剛士も愛読宣言! 百田尚樹『日本国紀』に今度は「Yahoo!知恵袋」からの“コピペ疑惑”が浮上
litera https://lite-ra.com/2019/01/post-4503.html  年を越しても相変わらず書店に山積みになっている百田尚樹の『日本国紀』(幻冬舎)。安倍首相が年末年始の読書のために〈購入した本〉としてTwitterにアップしたことはすでにお伝えしたが、吉村洋文・大阪市長やネトウヨから熱い支持を受けるタレント・つるの剛士、発行元の幻冬舎の見城徹社長と仲良しのサイバーエージェントの藤田晋社長など、安倍応援団有名人も続々と「読みます」「読んでます」とツイートしている。  こんな状況にすっかり調子に乗ったのか、百田センセイ自身も2日にTwitterで〈保守の本は売れても左翼の本は売れない。理由は左翼は本を読まないから〉などと言いだし、〈実は日本人であれば、いろんな本を読んで知識を得ると、自然に政治思想は左翼から保守に変わる。つまり左翼の多くは読書から取り残された人たちなのである。さらにテレビばかり見るから余計に左翼になる〉と珍理論を展開した。  いったい百田センセイやファンのネトウヨの皆さんが普段、どんな「いろんな本を読んで知識を得ている」のか気になるが、しかし、そんな我田引水的な妄想の裏で、『日本国紀』をめぐっては新たな“コピペ”疑惑が浮上した。  同書をめぐっては、すでにWikipediaからの“コピペ”問題を検証する動きが進んでおり、百田センセイと幻冬舎が刷を重ねるごとに“サイレント修正”を施しているのは周知の通りだが、なんとあの「Yahoo!知恵袋」から“コピペ”したとの疑惑まで取り沙汰されているのだ。  これは、ネットメディア「ハーバービジネスオンライン」で『日本国紀』の問題を指摘してきたGEISTE氏(Twitterのアカウント名)や、同書のコピペ問題などを追及しているウェブサイト「論壇net」が指摘していることだが、問題の箇所は、16世紀に日本を訪れたイエズス会の宣教師、アレッサンドロ・ヴァリニャーノに関するくだり。『日本国紀』にはこう書かれている。 〈イエズス会宣教師のアレッサンドロ・ヴァリニャーノ(信長に弥助を献上した人物)は、天正七年(一五七九)に本国イタリアに向けて、「日本人の好戦性、大軍勢、城郭、狡猾さと、ヨーロッパ各国の軍事費を比較して、日本を征服することは不可能である」と報告している。〉  ところが、前述のGEISTE氏の指摘によると、このヴァリニャーノの引用とされる文章と極めて酷似した記述が、2014年1月21日の「Yahoo!知恵袋」の回答のなかに存在した。 〈イエズス会宣教師のヴァリニャーノは明確に「日本人の好戦性・多軍勢・城郭・狡猾さと欧州各国の軍事費をふまえて、日本は征服できない」と1579年に報告しています。〉(「Yahoo!知恵袋」より)  『日本国紀』と比較すると「多軍勢」が「大軍勢」に、「欧州各国」が「ヨーロッパ各国」へと微妙に変えられているが、ほぼ同じ文章とみなしてよいだろう。こうしたことから、ネット上では、すわ「WikipediaだけじゃなくYahoo!知恵袋からもコピペか」と騒がれているというわけだ。  もちろん、大元の出典が同じならば、そっくりになるのは当然なので、これだけでは“コピペ”と断定できないが、実は百田センセイもこの「Yahoo!知恵袋」の当該部分も出典を一切明示していない。 『日本国紀』がほとんど出典を明示していないという問題は、Wikipediaからのコピペ疑惑の際にも指摘されており、それ自体が致命的な欠陥だと思うが、載っていないのでしようがない。百田センセイが「Yahoo!知恵袋」とそっくりなヴァリニャーノの報告を専門書や研究論文から引用した可能性を考えて、国会図書館でそれらしき文献を片っ端から調べてみた。 国会図書館でもヴァリニャーノの著作や資料集を片っ端から調べたが…  たしかにヴァリニャーノは在日中に何度も報告を上げており、初来日した1579年の12月にもイエズス会総長宛てなどの書簡を複数の日に送っていたようだ。しかし、いくら調べても『日本国紀』が引いている文章と同一の邦訳は見つけられなかった。  たとえば、邦訳されているヴァリニャーノの代表的な著作に「日本巡察記」というものがあるが、ここにも、百田センセイが指摘しているような書簡は掲載されていなかった。また、ヴァリニャーノが書いた報告書などを紹介する資���集(たとえば岩波書店「大航海時代叢書」所収の『イエズス会と日本』など)をはじめ、日欧関係史関連の歴史学系、キリシタン学系、スペイン・ポルトガル関連の学会誌などでヴァリニャーノの名前があがっている論文等に多数あたってみたが、百田氏の記述と同じ邦訳を見つけることはできなかった。  ただし、ヴァリニャーノがそういった内容の書簡を送ったことを記しているものはあった。前掲の「日本巡察記」の桃源社版(榎一雄監修『東西交渉旅行記全集』、松田毅一・佐久間正訳『日本巡察記』1965年)では、研究者の松田毅一氏が解説で、ヴァリニャーノが1579年12月2日付でイエズス会総長へ向けて出した書簡のなかに、〈日本を征服しようとするヨーロッパ植民勢力の凡ゆる試みは、「軍事的には不可能」であり、「経済的には利益がない」〉との内容があったと短く紹介している。注釈によれば、どうやら書簡から直接的に翻訳・引用されたものではなく、シュッテ(Schutte)というイエズス会研究者の大著(邦訳未刊)に基づく解説らしい。  また、比較歴史学・日欧交渉史を専門とする高橋裕史・苫小牧駒澤大学准教授の著書『武器・十字架と戦国日本 イエズス会宣教師と「対日武力征服計画」の真相』(洋泉社、2012年)に、ヴァリニャーノの1579年12月2日付書簡について、「日本は外国人の兵士の手で征服され得ない」「日本はこの世でもっとも堅固で険しい地で、日本人はもっとも好戦的だからである」「難攻不落の要塞が、高く非常に険しい山中にたくさんある。日本人はきわめて大勢であり、海に囲まれた島々にもいるため、彼らに対抗できる強国も兵士も存在しない」といった記述があると紹介されている。注釈をみると、ローマのイエズス会文書館に保管されている史料を高橋氏が翻訳・引用したものようだ。  しかし、この高橋氏による引用の文言も、百田センセイが『日本国紀』に書いている「日本人の好戦性、大軍勢、城郭、狡猾さと、ヨーロッパ各国の軍事費を比較して、日本を征服することは不可能である」という“引用風”の記述とは違う。結局、『日本国紀』の記述とほぼぴたりと一致するのは、いまのところ「Yahoo!知恵袋」だけなのである。  あとは、“勉強熱心な”百田センセイがイエズス会文書館に保管されているらしい本物の書簡をローマまで出かけて自分の手で翻訳・検証したか、あるいは、高橋氏の本の部分的な翻訳を要約したらたまたま「Yahoo!知恵袋」と一致してしまったという可能性だが、そんなことがありうるのか。  いずれにしても、百田センセイはしっかり出典を示して、読者の疑問に答える責任があると思うが、これまでの経緯を考えると、きっと無理だろうなあ。 明治の富国強兵政策で生まれた恣意的な歴史観を垂れ流す『日本国紀』  と、まあ、こんな感じで相変わらず、次から次へと疑惑が明らかになっている『日本国紀』だが、コピペ疑惑だけでなく、その内容についても歴史研究家から鋭い批判が出ている。たとえば、『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』(中公新書)がベストセラーになった歴史学者の呉座勇一・国際日本文化研究センター助教は、朝日新聞での連載コラムで〈学界の通説と作家の思いつきを同列に並べるのはやめてほしい〉(2017年12月11日朝刊)などと批判的に評した。  さらに、「週刊文春」(文藝春秋)1月17日号も「『オレはそんなに軽いのか』安倍晋三が元旦にキレた」という記事で『日本国紀』のコピペ疑惑に触れたのだが、そこに呉座氏が寄せたコメントは、まさにこの百田史観本の本質を喝破するものだった。 「同書では、鎌倉時代の質実剛健な武士と対比しつつ、平安貴族を平和ボケと指弾しています。こうした歴史観は、明治日本が富国強兵に突き進む中で生まれたもので、現在の学会では否定されています。百田氏は、戦後日本の“平和ボケ”を非難するために貴族の“軟弱さ”を誇張しており、憲法改正という持論の補強に歴史を利用しているように感じます。安倍首相は読んで共感するかもしれませんが」(「週刊文春」より)  そのとおりだろう。本サイトでも指摘したとおり、『日本国紀』はただの「コピペ本」ではなく、〈日本はアジアの人々とは戦争はしていない〉などと強弁して(中国はアジアではないのか?)、戦前日本の帝国主義と侵略、戦争犯罪を否定・美化し、同時に「敵国」の残虐行為を強調することで相対化するという、露骨な歴史修正主義の“啓蒙本”であり、その最終地点は安倍首相が悲願とする9条改憲だ。  だからこそ、冒頭で紹介したように、安倍首相やその応援団がこの『日本国紀』をやたらと“PR”展開しているのだ。  彼らがSNSで「読んでます」「読みます」と言い始めたのは、『日本国紀』にWikiコピペ疑惑が浮上して、サイレント修正をし始めたあとである。  ようするに、彼らにとって、その書物や資料がどれだけ間違いや問題、恣意性があっても、関係ない。安倍改憲のプロパガンダ本になるのなら、フェイクでもクオリティが低くても、どうでもいいのだ。こうした疑惑がこのままずるずると“なかったこと”にされないように、これからもどんどん『日本国紀』の問題点を周知させていく必要がある。 litera https://lite-ra.com/2019/01/post-4503.html
0 notes
sorairono-neko · 5 years
Text
I only have eyes for you.
 勇利がヴィクトルの存在になかなか慣れてくれず、話もかみ合わないうえ、ヴィクトルが余計なことを言ってしまったせいでしっくりいっていなかったふたりの仲は、海辺でゆっくりと語りあったあとから好転し、すこしずつではあるがなじんできた。勇利はヴィクトルの前でも自然に微笑を浮かべるようになり、さらに遠慮なく意見を述べるようになった。ヴィクトルはほっとし、それ以上にうれしかった。ヴィクトルは勇利を理解したかった。彼のことをもっと知って、もっと親しくなり、コーチとしてできるだけのことをしてあげたかった。ヤコフが自分にしてくれるみたいに。勇利とごく普通に話せるようになったことは、その第一歩だという気がしてヴィクトルは胸がはずんだ。 「フリーの曲、いいね。何回も聴いてるよ。でもまだ振付はかたちにならない。いろんな案が浮かんできて、ちょっと頭の中がとっちらかってるんだ。あふれすぎっていう感じさ。まとまるまでもうすこし待ってね。勇利も考えをふくらませてみて」 「うん。ぼくもあの曲は気に入ってるんだ。いままででいちばん好きかも。もちろんそのときそのときで、実際やってるプログラムに最高に情熱を傾けるから、本当はくらべられないんだけど。すごくいいものができるって、はっきりした予感があるんだ」 「音楽大学の女の子につくってもらったんだっけ?」 「そう。まだ音楽専門の職に就いてるわけじゃないんだけど、感性がよくて、何かひかるものがあるんだよね」  ヴィクトルは、一生懸命にブロッコリーやもやしを食べている勇利を眺めながらかすかにほほえんだ。 「……彼女?」 「えっ」  勇利は驚いて顔を上げ、それからそっぽを向いた。 「……ちがいます」 「本当にぃ?」  ふざけて言うと、きっとにらまれた。 「そういう話はいいから」  ヴィクトルは肩をすくめた。 「勇利はちょっと潔癖すぎるんじゃないかな。この手の話題になるとおおげさなほど照れたり怒ったりするけど」 「語るべきことが何もないからです。ヴィクトル、自分と同じように世界じゅうの男が女の人をはべらせてると思ってるんですか?」 「俺だってはべらせたことなんかない」 「したことがなくても、そうできる状況にある人とそれとは正反対の人間とじゃ、どうやったってこういう話は上手く進まないんです。以後、やめてください」  きっぱりと言われてしまった。「あぁ!?」とすごまれなかっただけましなのかもしれない。ヴィクトルは承服できかねた。勇利は自分をわかってないよ。そう言いたかったけれど、口にしたが最後、今度こそ「あぁ!?」と激怒されるかもしれないので控えておいた。さすがにもう無視はされないだろうけれど、あれはなかなかの威力と迫力があるのである。  勇利。きみは女性をはべらせたことはないかもしれない。でも、世界一もてる男は落としたことがあるんだよ。わかってるのかな。  勇利は機嫌を悪くしてしまったようで、以降、ヴィクトルがどれほど陽気に話しかけてもむっつりとした顔しかしてくれなかった。しかし翌日、悪かったと反省したのか、練習の前に赤い頬をして、「ゆうべはごめんなさい……」と謝った。そしてぴゅーっと氷の上に出ていってしまった。  そういうところがかわいいと思う。 「ジャンプの前、溜めすぎかな? もたついてる印象があるかもしれない。ヴィクトルどう思う?」 「そんなことはないよ。なめらかだし、いまのままでいい」 「そうかなあ。どうも遅いような気がするんだよね。あと、イーグルのところ、何回もヴィクトルに注意されてるけど……」  勇利は、リンクへ行くときも、その帰りも、スケートのことばかり話している。本当にスケートが好きなのだなと思う。ヴィクトルだってそういう性質だし、大切な話だし、楽しいのだけれど、もうちょっと個人的な会話もできないものだろうかとこのところずっと考えていた。そう、海辺で語りあったときのように、もっと勇利のことが知りたい。内面に踏みこみたい。勇利がゆるしたぶん以上に入りこむつもりはないが、それでも近頃、プログラムづくりに夢中になっているせいで、話すことが限られてしまっている。それ以外勇利の頭にないといった感じだ。悪いことではない。悪いことではないのだけれど、ヴィクトルとしてはもっと勇利のことを教えてもらいたいのだ。それがプログラムを創作するうえで役に立つこともある。なにより、単純に、勇利と仲よくなりたかった。勇利の私的な話や失敗談、スケート以外に感じていることなど、さまざまな感性を知りたい。ヴィクトルは、そのためにまず自分のことを話そうとするのだが、勇利はとにかくプログラムに熱中していて、矢継ぎ早にヴィクトルに質問をしたり意見を言ったりするので、そういうことを口に出す隙がみつからなかった。勇利がいかに美女やカツ丼になりきるかという問題を抱えているときに、紅茶を淹れたらものすごく苦いのができちゃって、なんていうたわいない話をして応じてもらえるとは思えない。ヴィクトルとしては、そういったちいさなことでも勇利について知りたいのだけれど。 「うーん……コレオのところさ……もうちょっと……、ヴィクトル、聞いてる?」 「聞いてるよ」  でもいま、勇利はスケートの話をしたいんだ。勇利が望むようにしよう。彼の希望を受け容れよう。ヴィクトルはこころぎめをして、勇利の言うことに耳を傾けることにした。 「ヴィクトル、あんたこれ読む?」  食事のあと、ひとりでテレビを眺めていると、真利に声をかけられてヴィクトルは首をもたげた。 「なんだい?」 「勇利の載ってる雑誌」 「勇利の!」  ヴィクトルは顔を輝かせた。 「あの子、わりとそういうの載るんだけど、それがいちばんページ数多いやつだから。特集されてるんだよね。勇利はあんたが載ってるやつは必死になって集めるけど、自分のにはまるで興味がないのよねえ。だから見向きもしないの」 「そんな、もったいない」 「日本語だから読めないだろうけど、あの子に訳してもらったら?」 「そうする。マリ、スパシーバ」  ヴィクトルはテレビを消すと二階へ駆け上がり、勇利の部屋へ飛びこんだ。 「勇利、これ、訳してくれ!」 「え? ……わっ、なにこれ」  勇利が赤くなったり青くなったりした。彼はしばらくじっくりと記事を読んでいたが、知られたくないことはなかったようで、「わかった」とこっくりうなずいた。恥ずかしい箇所があるならそこを飛ばして話せばよいと思うのだけれど、勇利はそういうことができない子なのだ。ヴィクトルにもすこしずつわかってきた。 「えっと、じゃあ座ってください」 「どこに?」 「その椅子にでも」  勇利はベッドに腰掛けている。椅子を引いてきて向かいあうのはおかしなことではない。しかしヴィクトルは勇利の隣に座った。 「あのさ……」  勇利はあきれた顔をしたが、すぐにくすっと笑った。彼がときおり見せる、ごく自然な微笑だ。ヴィクトルはこの笑顔が好きだった。 「じゃあ、訳すよ。言っておくけど何もおもしろいこと書いてないからね」  あらかじめ断り、勇利は記事の内容を話し始めた。最近はこういう練習をしているとか、あの試合のときはここがよくなかったのでこんなふうに考えたとか、悔しいと思ったときにはどういうことをしているかとか、一般的な、選手ならよく取材されることだった。ヴィクトルも似たような話を幾度も記者に語った。しかし、つまらないなどとはいっさい感じず、ヴィクトルは興味深く勇利の言うことに耳を傾けていた。 「……そんな感じ。ね、おもしろくないでしょ?」 「そんなことはないよ。勇利はそういう気持ちで試合をしてたんだね。これはいつごろ?」 「いつかなあ……」  本当に自分の記事には関心がないらしい。勇利はぱらぱらとページをめくり、衣装姿の彼の写真が出てきたところで手を止めた。 「ああ……、シニア二年目とかのあたりじゃないかな」 「ということは三年前?」 「それくらいだね」 「……いまとぜんぜん変わらないじゃないか」  ヴィクトルはまじまじと写真を見た。 「そりゃあ、大人になったら三年くらいじゃ変わらないんじゃない?」  勇利は気にしていないようである。 「ヴィクトルだって、二十四歳のときといま、変化ないでしょ?」 「でも、この前マーマに勇利のジュニア時代の映像を見せてもらったけど、それもいまと同じだったよ」 「そんなわけないだろ! なにわけわかんないこと言ってるんだよ」  ヴィクトルはちらと勇利を見た。勇利は怒った顔をしているけれど、口元がほころんでいる。ヴィクトルって変なひと、とでも思っているのだろう。ヴィクトルはうれしくなった。 「綺麗な衣装だね。でも俺ならもっと華やかにするな」 「そりゃあヴィクトルはきらびやかなのが似合うから」 「そうじゃない。俺がコーチならっていう意味。もっときらきらさせたい」 「きらきらってねえ……。じつは、最初はもうちょっとちがう色だったんだ。派手なね。コーチがそうしたほうがいいって。でも、連盟の人が似合ってないんじゃないかって言って変更になったんだ」 「無視すればよかったのに」 「ヴィクトルじゃないんだから」 「あれ? 俺が連盟の意見を採り入れたことが一度もないってなんで知ってる?」 「一度もないの? ほんとに?」  勇利が目をきらきらさせながら身を乗り出し、ヴィクトルに笑いかけた。無邪気でかわいらしい、すてきな勇利だった。ヴィクトルは急に胸がどきどきし、気持ちが高揚した。いま、すごく勇利と俺、いい雰囲気だ、と思った。 「だって彼ら、いつもダサいことしか言わないんだ。言う通りにしていたら俺のプログラムが台無しになる」 「それにしたって。怒られないの?」 「さあ、怒ってたかもね。知らないな」 「知らない?」  勇利はますます楽しそうに笑った。 「知らないんだ。ヴィクトル、すごい」 「何か言ってたかもしれないけどおぼえてないよ」 「ヴィクトルって本当に自由なんだね。インタビュー記事読んでてもなんとなく伝わってくるものはあったけど、想像以上だ」  勇利はヴィクトルに顔を近づけて言った。 「でもぼく、そういうヴィクトル好きだよ」  ヴィクトルはすっかり興奮し、うれしくなった。 「ねえ勇利」  勢いこんで勇利をみつめ、提案する。 「今度一緒に食事に行かないか」 「え?」 「ふたりでさ。行ったことないだろう? もっといろいろ話そうよ。練習のときも、家でもおしゃべりしてるけど、私的な時間を持てば別の話もできると思うんだ。もちろん勇利がいやじゃなければだけど、どうかな? そうだ、明日、休みだよね? 昼でも夜でもいいけど、勇利の都合さえよければ──」 「あ、あの……」  勇利が顔からさっと笑みを消し、うつむいた。ヴィクトルは、しまった、踏みこみすぎただろうか、とうろたえた。どうしよう。 「ごめん勇利、先走った��な。迷惑だったなら──」 「そうじゃないんだけど」  勇利は下を向いたまま口早に言った。 「明日は取材を受けることになってて……」 「そうなのかい?」  知らなかった。初耳だ。 「地元のちいさな情報誌だから、そんな大がかりなことじゃないんだけど。でも一日かかると思うから……」  そうだ。勇利は長谷津でとても慕われているスケーターなのだ。そういう仕事もあるだろう。もちろんだ。 「そうか。それなら仕方ないね」  ヴィクトルは明るく言った。 「取材に応じるのは大事だよ。ファンの人にいろいろなことを伝えられるからね」 「う、うん……」 「じゃあ、明日はやめておこう」 「ごめんなさい」  勇利はしゅんとしてしおらしく謝った。 「なんで謝る? 勇利は悪くないだろ? それより、その情報誌、俺も見られるのかな? 楽しみだね」 「あ、できたら送ってくれると思う……」 「そうか。そのときはまた勇利に訳してもらわなくちゃ」  ヴィクトルはずっとにこにこしてい��。しかし、内心はちっともそんな気分ではなかった。断られたことが衝撃で、思った以上にがっかりしていた。ヴィクトルは、勇利と一緒に出掛けられるものときめてかかっていたのだ。 「あ、もう遅いね。寝る?」 「そうだね。そろそろ……」 「じゃあ俺は部屋へ戻るよ。おやすみ」 「おやすみなさい……」  勇利と話した時間はとても楽しかった。しかし、愉快だったぶん、誘いが上手くいかず、食事に行くことができないという結果が、ひどく重苦しく感じられた。  だったらその次の休みはと尋ねればよいのだけれど、ヴィクトルはそうすることができなかった。また断られるかもしれないという疑念がわいたからである。ならば、ではまたその次と陽気に言える性質のヴィクトルなのに、なぜだかためらいがあった。勇利は結局、ヴィクトルと食事になんて行きたくないのかもしれない。用事がなかったとしても断ったのかもしれない。ヴィクトルの提案を聞いて、仕事があるのを幸いに思い、喜んでかぶりを振ったのかもしれない。そんなはずはないとわかっているのだが、どうも勇利はよくわからないたちをしているので疑いは尽きなかった。  もしいまの勇利が、ソチでのバンケットのときの彼のようにほがらかで親しみ深かったら、ヴィクトルもこんな気持ちにはならなかっただろう。しかし、長谷津にいる勇利はあんなふうに甘えるようにヴィクトルに笑いかけたりはしないし、何かして欲しいと求めることもない。酔っていない正気の彼は、まったく正常で真摯なのだ。  だがヴィクトルは、いまの勇利をつまらないとは思わなかった。かえって神秘的で不可解な、おもしろみのある、魅力のある青年だと感じた。酔うと変身するというひみつを隠し持っているのに、普段はまったくとりすましているのだ。ますます興味がわいて当たり前ではないか。いつかまた、あのにぎやかな面があらわれることがあるのだろうか?  そんな勇利をもっと知りたいと思うのに、「デート」の誘いは断られてしまった。もう一度気軽に誘えないのは、きっと、ひどく落胆したからだ。また同じように拒絶されたらさびしいとこころのうちで身構えているのかもしれない。自分の生徒を食事に誘うのに何を緊張する必要があるんだ、ヤコフなんか平気で俺を連れ歩いてくれた、と思いはするのだけど、なかなか決心がつかない。勇利は俺とはちがうからな、とヴィクトルは考えた。俺だって、俺みたいに取り扱いやすい教え子ならもっと……。しかし勇利はかわいらしい生徒だ。ヴィクトルは彼のことで頭がいっぱいである。  なんとなく気まずくて、家ではあまり話せなかった。練習中や行き帰りは、相変わらずスケートの話ばかりしている。そのときの勇利は熱心で、まじめで、ヴィクトルによく質問をする。貴方が苦手だから食事はお断りしました、という気配はいっさい感じられない。いまなら誘えば了承するのではないかとよくヴィクトルは思う。だが、やはり迷いがあり、ヴィクトルはしばらく食事の話はよしておいた。そのうちよい機会がみつかるだろう。そもそも、そういうことをしなくても、もうしばらくもすれば勇利はもっとヴィクトルになじみ、さらに仲よくなれるかもしれない。どんなことでも言いあえるふたりに……。  ヴィクトルは余裕があるときはひとり出歩き、あちこちのおいしい食べ物に舌鼓を打った。日本の食べ物はもとから好きで、遠征などでこちらへ来たときは楽しんでいた。もちろん試合のおりなので好き勝手に食べることはできなかったから、いつか私的なときに日本を訪れたら、思う存分食べたいものを食べようと思っていたのだ。  その日もヴィクトルは、翌日が休みだということで気をゆるめ、外で食事を済ませて遅くに戻った。そしてそのまま昼近くまで眠り、休日はのんびりと本を読んだりテレビを見たり散歩をしたりして過ごした。勇利はどこかへ行ったのか、それとも部屋に閉じこもっているのか、顔を合わせなかった。  夜になり、知り合いのSNSを巡回しようとして、ヴィクトルはふと気がついた。昨日から、ずっと携帯電話の電源を切っていた。  このところ、またヤコフの心配性が顔を出したようで、彼からの連絡が多いのだ。どうせ説教しかされないのでヴィクトルは適当に言い訳をして早々に電話を切っていた。おまけに、スケート連盟のほうも何かと小言を言ってくる。ヴィクトルが電話をいやがるものだから、どちらもメッセージまで送りつけてくる始末だ。昨日も溜まったメッセージに嫌気が差し、確認もしないまま電源を落としてしまったのだった。  ヤコフも連盟も怒り狂っているかもしれない。ヴィクトルはメッセージを確かめてみた。もちろん電話もかかってきている。しかしそんなことはどうでもいい。どうせ同じことしか言わないのだ。 「来てる来てる」  ヴィクトルはろくに読みもせず、ざっと視線を走らせるだけで無視した。何を言ってもいまさらだ。俺はここで勇利のコーチをするんだから……。 「あれ……?」  ふとヴィクトルの手が止まった。ヤコフと連盟以外から連絡が来ている。勇利からのメールだ。 「えっ」  ベッドに横たわっていたヴィクトルは勢いよく起き上がった。急に心配になる。何か緊急の用事があったのだろうか? 日付は昨日、時刻は夜である。ヴィクトルが飲み歩いているころだ。 『ヴィクトル、この前は誘ってくれてどうもありがとう。とてもうれしかったです。断ってしまってごめんなさい。せっかくヴィクトルが誘ってくれたのに、本当に申し訳なかったと思います。  それで、こんなことを言っていいか迷ったのですが……。よかったら、明日食事に行きませんか? 時間はいつでも構いません。昼でも夜でも。  でも、ヴィクトルはもうそんな気はないかもしれないし、もしかしたら迷惑かもしれないので、その場合は返事をくださらなくてもけっこうです。ぼくのことは気にしないでください。ちゃんとわきまえて、もうこんなこと、言ったりしませんから。  それでは。ご了承いただけるときはいつでも声をかけてください』  ヴィクトルは携帯電話を取り落とした。誘ってくれていた。勇利が。食事に。あのときの埋め合わせをしようと努力してくれていた。なのにヴィクトルは……。  ヴィクトルは青ざめた。断る場合は返事をしなくていいと勇利は述べている。ヴィクトルはメールに気づかず、勇利に何も言わなかった。つまりいまの彼は、ヴィクトルはもう二度と勇利と食事に行きたくないという気持ちだ、と考えているのだ。冗談ではない。そんなこと……。 「勇利!」  ヴィクトルは大慌てで部屋を飛び出し、勇利の私室に飛びこんだ。 「ごめん、勇利!」 「なに? どうしたの?」  コンピュータに向かって何かしていた勇利は、不思議そうにヴィクトルを見た。 「ごめん、気がつかなかったんだ。いま見た」 「何を?」 「メール。メールだよ!」 「ああ……」  勇利がほほえんだ。 「いいんだよ。気にしないで」  ヴィクトルはさらにうろたえた。この「気にしないで」は「メールに気づかなかったことなんて気にしないで」ではなく、「食事を断ったことは気にしないで」という意味だ。おそらく。 「本当なんだ。本当なんだ」  ヴィクトルはくり返した。 「本当に気づかなかったんだ」 「いいんだよ。ぶしつけなことを言ってごめん。大丈夫」 「いや、ちがう、だから……」 「気が変わるなんてよくあることだよ。なんとも思ってないから」 「勇利、俺は、本当に……」 「うん」  だめだ。勇利は、「ヴィクトルは気を遣って気づかなかったことにしている」と断定している。日々の練習で彼の頑固さをのみこみつつあるヴィクトルは、この気持ちはくつがえせそうにないということがわかった。 「行こう。次の休みに行こう」  ヴィクトルは言った。必死だった。 「必ず行こう。絶対に行こう」 「やめとく」 「なんで!?」 「ぼく、外食ってあまり得意じゃないんだ。だから……。ヴィクトル、どうもありがとう」  口ぶりもほほえみも優しいけれど、勇利からは絶対的な拒絶が感じられた。 「勇利……」 「べつに、食事なんて家でいくらでも一緒にできるしね」  勇利はあっさり言って、この問題に決着をつけてしまった。  最悪だ……。ヴィクトルは深い溜息をついた。どうしてこういうことが起こるのだ。勇利と付き合うのは本当に難しい。もっとも、責任は自分にあるのだけれど。  ヴィクトルは、前よりも勇利とのあいだにへだたりが生じたような気がしてならなかった。勇利は、練習中はいつも通りの態度なのだが、それ以外では以前より話さなくなったし、笑顔もあまり見ていないように思える。気のせいだろうか? ヴィクトルは気持ちが重かった。どうしてこう上手くいかないのだ。勇利のことを知りたいだけなのに。 「マリ……」  ヴィクトルは縁側に座り、庭を眺めながらぼんやりと言った。 「勇利って難しいね……」 「いまごろ気づいたの?」  ヴィクトルに水菓子を運んできた彼女は、可笑しそうに口をひらいて笑った。 「あんたたちって、同じ試合に出ることもあったでしょ? 話したことなかったの? ──まあ、ないか。ないわよねえ」 「なんでわかる? 勇利がそう言ってた?」 「勇利はもともと連絡なんかほとんど寄越さないし、あんたの話もしなかったわよ。あの子の性格からいって無理だろうなと思っただけ。あんたのことは昔からめちゃくちゃ好きだったけどね。だからこそっていうのかな」 「めちゃくちゃ好き……」  本当にそうだろうか。いや、その気持ちにうそはないだろう。バンケットのときに抱きついてきた勇利はきらきらと輝く目を持っており、ヴィクトルを愛情いっぱいにみつめ、甘ったるくコーチになってとねだった。あのとき、勇利はまぎれもなくヴィクトルを愛していた。しかし……。  思ってたのとちがう。  いまごろはそう考えてがっかりしているかもしれない。だとしたら……。 「マリ、俺ね、自分がいつでもいちばんだと思ってるんだ……」 「でしょうね」 「自信満々で、不安になることなんてなかった」 「そういう感じ」 「でも……」  ヴィクトルはふっと息をついた。 「勇利といると、ときどき、妙な憂鬱を感じるんだよ。なんてままならないんだろうってね。ものすごく苦労するし、どうすればいいんだろうって悩む。勇利って不思議な子だね」 「私に言えることは、何があろうとあの子はあんたが大好きだってことよ」  仲よくなった書店の店長に頼まれて、ヴィクトルはサイン会をひらくことになった。商店街の書店だから町の者しか利用しないし、ヴィクトルは道で会えば気軽にサインでも握手でも応じるので、さほど混雑はしないだろうという見込みだった。だがそれでもかなりの人数が連なり、ヴィクトルは店の片隅で、朝から笑顔を振りまいていた。日本語で話す者もいるけれど、ヴィクトルに伝わるようにと言うべき英語をおぼえこんできたファンが多かった。がんばってください、応援しています、という言葉に交じり、勇利くんのことよろしくお願いします、と親身になっている女性もいて、ヴィクトルは、勇利はやっぱり愛されてるな、とうれしくなった。  色紙を持ってくる人もいるが、たいていヴィクトルの写真集を差し出してくる。家から持参してもいいし、書店で買ってもよいという規則である。ヴィクトルは指定された場所にサインを入れ、相手の名前を書き、望まれれば握手をする、ということを長いあいだくり返していた。そして──。 「どうぞ」  ヴィクトルがうながすと、緊張しきった顔をした男の子──いや、青年がおずおずと進み出た。ヴィクトルは目をまるくした。 「写真集でいいの?」  驚いたにもかかわらず、自然に、すべき対応をしてしまった。青年はこっくりうなずいた。彼は脇に書店の袋を挟んでいた。新しく買ったのだ。これは持っているはずなのに。 「名前は?」 「ゆ、ゆ、ゆゆ、ユーリ……か、かつ、カツキ」 「オーケィ。勇利ね」  ヴィクトルは笑いながらさらさらとサインを書き、勇利の名前を入れた。勇利は眼鏡をかけ、マスクをして、まっかな頬だった。 「はい、どうぞ」 「あ、ああ、あ、あり、あり、あり、ありが、と、とうござ、ござ……」  勇利の後ろの女の子たちが、「勇利くんがんばって!」と応援していた。日本語だが、「がんばって」くらいはヴィクトルにもわかる。 「握手は?」  ヴィクトルは優しく尋ねた。 「お、おおおおおおね、おねが……」 「はい」  ヴィクトルは立ち上がり、ぎゅっと勇利の手を握った。勇利の頬がさらに赤くなった。 「あ、あのっ、あの、び、びくとる……」 「なんだい?」 「ぼ、ぼく、ぼく、ぼくは、ぼくぼくぼくっ……」 「落ち着いて」 「勇利くんがんば!」 「あ、あなたの、あなた、あなたの、ふぁ、ふぁ、ふぁ……」 「うん」  ヴィクトルはじっと勇利をみつめた。勇利は一生懸命にヴィクトルを見上げ、泣きそうな、訴えかけるような目をしていた。 「ずっと前から大好きです!」  勇利が叫んだ。ヴィクトルは瞬いた。後ろの女の子たちが、「やった!」と歓声を上げた。 「ありがとうございました!」  勇利はぺこりと頭を下げると、ものすごい勢いで駆け去っていった。ヴィクトルはぼうぜんと見送った。残された女の子たちが、「よかったぁ」と感��していた。 「勇利くん、がんばったね……」  翌日のヴィクトルは、あんなことがあったのでは、今日は練習にならないのではないかと心配していた。久しぶりにヴィクトルのファンになりきった勇利はめろめろで、その気持ちがあふれ出てしまうのではないかと思ったのだ。しかしそれは悪いことではあるまい。練習は大切だが、そればかりに明け暮れていては疲れてしまう。もちろん休みはあるけれど、精神の休息も必要だ。勇利はまじめな選手で、いつだって頭の中はスケートでいっぱいで、ヴィクトルともその話しかせず、息抜きをすることはあるのだろうかと気にしてしまうほどだったので、もし昨日の気持ちがまだ続いているようなら、それにはおおらかに対応しよう、彼が望むならもっと喜ぶことだってしてあげようとヴィクトルは思っていた。 「おはようございます」  しかし、リンクで会った勇利はいつも通りすっきりとした顔をしており、ぴんと背筋が伸びていた。 「今日もよろしくおねがいします」 「……うん。じゃあまず基礎からね。一緒に」 「はい」  勇利は見事に気持ちを切り替えていた。ヴィクトルは感心した。昨日の勇利と同じ人物だとは思えない。勇利は自分に厳しく、ヴィクトルにもっともっととジャンプを求め、何か足りないところはないか、これでじゅうぶんなのかと貪欲に稽古に努め、相変わらずヴィクトルが注意したくなるほど練習に没頭した。ヴィクトルは、勇利は芯からのスケーターなのだなと思った。なんてしっかりした、立派な選手なのだろう。氷の上に立っているときの凛とした勇利の姿がヴィクトルは好きなのだ。しかし同時に、もう俺のことはどうでもいいのかな、ひどいなあ、と冗談のように考え、そんな自分に笑ってしまった。  その夜、一緒に温泉に入ろうと誘うため勇利の部屋をおとなったヴィクトルは、机に向かった勇利が、うれしそうにヴィクトルのサイン入り写真集を持ち、腕をいっぱいに伸ばしてそれをにこにこと眺めているのを目撃した。 「勇利」  勇利がヴィクトルのほうを向いた。机の上には、同じ写真集がのっていた。やはりもう一冊買ったのだとヴィクトルは思った。 「サインもらった」  勇利ははしゃいでヴィクトルに報告した。ヴィクトルはうなずいた。 「うれしい」 「そうか」  もしかしたらそれは、勇利が初めて自分からヴィクトルに話したスケート以外のことかもしれなかった。聞いてヴィクトル、ぼくこのひとのファンなんだ。サインもらった。すごくうれしい。勇利のこころの中がどうなっているのかヴィクトルにはうかがい知ることはできないけれど、いまの勇利は、ヴィクトルに対してファン心理を抱いているというより、自分の好きな相手を打ち明けるほどに親しみを感じているようだった。おそらく、ヴィクトルを選手ではなくコーチとして見て、信頼をおぼえているのだろう。朝からの態度はずっとそうだった。好きな選手だとはしゃぐ気持ちより、このひとはぼくのコーチ、なんでも教えてくれるひと、という心構えがあったにちがいない。だがそれは勇利のヴィクトルへの好意が増えたり減ったりするという意味ではないはずだ。いまのヴィクトルは、勇利が安心して話せる、大切な相手なのである。「ずっと前から大好きです」と勇利は言った。それは、この瞬間も感じている想いなのだろう。あらわし方がちがうだけだ。勇利の瞳を見ればわかる。彼の目はヴィクトルに向くとき、いつでもきらきらと輝いて、ヴィクトルを求めている。  ヴィクトルはほほえんだ。 「ほかにして欲しいことがあったらしてあげるよ」  ヴィクトルは、朝に思っていたことを口にしてみた。勇利はふるふるとかぶりを振った。 「いまの俺には興味がない?」  ヴィクトルがからかうと、勇利はもう一度首を振った。 「一気にいろいろしてもらうと、許容量を超えるから」 「確かに。昨日の勇利はおもしろかった」 「言わないでよ」 「勇利」  ヴィクトルはごく自然に切り出した。この子はずっと俺が好きなんだ、この瞬間も、感情の出方がちがうだけで、昨日見せてくれたのと同じだけの愛情を俺に向けてくれているんだ。そう思うとヴィクトルは気持ちがやすらいだ。 「この前はごめん。あれは断ったつもりじゃなくて、本当にメールに気がつかなかったんだ。ヤコフや連盟がうるさいから電源を切ってたいた。言い訳だけどね。気がつかなくて本当に悪かったと思ってるよ。それに、勇利が誘ってくれて、とてもうれしかったんだ」  ヴィクトルは勇利の顔をのぞきこみ、ゆっくりとささやいた。勇利が瞬いてヴィクトルを見た。 「なのにそれを自分が断ったふうになってしまって、とてもがっかりしたよ。落ちこんだ」  おおげさに溜息をつくと、勇利がふと笑った。 「落ちこんだ? ヴィクトルが?」 「俺だって落ちこむことくらいある。最初勇利に誘いを拒絶されたときもしょんぼりしてたんだぞ」 「あれは拒絶っていうか……」 「いいさ。わかってる。だからいま改めて誘いたいんだけど」  ヴィクトルは熱心に言った。 「次の休み、俺と食事に行かないか。勇利と行きたい」  勇利はまっすぐにヴィクトルを見、すこし考え、それからかすかに笑ってうなずいた。 「いいよ」  かるい、さらりとした返事だったが、ヴィクトルはひどくうれしくなった。この約束をとりつけるのに、相当な苦労をしたような気がした。 「楽しみにしてる」  おそらくは社交辞令で勇利はそう言ったのだろうに、そのひとことにさえヴィクトルは喜んだ。やっと勇利と食事に行けるぞ、と彼は浮かれはしゃいだ。  ヴィクトルは意気揚々と自室へ戻った。しかし、気持ちが鎮まると、いったいどこへ連れてゆけばよいのかと不安になってきた。正装するような高級な店では勇利は戸惑うにちがいない。だが、ヴィクトルが近頃開拓したような、にぎやかな居酒屋やラーメン屋ではゆっくり話ができない。高級店と居酒屋のあいだくらいの落ち着いたレストラン……いや、それでも勇利は緊張するだろうか……ではファミリーレストラン……ジャンクフードの店はあまりよくないか……。  ヴィクトルはわからなくなってしまった。どうしよう。勇利はどういうところへ連れてゆけば喜んでくれるのか。もっと親密になるにはどんな店がよいか。場所など関係ないともいえるが、いや、環境が大事だ、という気持ちもある。勇利だって、舌を噛みそうな名前の料理が出てくる店では、安心して自分をさらけ出した会話などできないだろう。勇利が勇利のままでいられる……彼が話しやすくなる……そんな……。 「ヴィクトル、あの、食事のことだけど」  もうすぐ約束の日だ、早くきめないと、と悩んでいると、練習のあと、勇利が思い出したように言い出した。 「行く店はきめてあるの?」  まさに心配ごとについて指摘され、ヴィクトルは動揺しながらも、「考えてるところなんだ」と正直に話した。 「もしよかったらぼくの行きたい場所があるんだけど……」 「そうなのかい?」  勇利に希望があるならそれがいちばんよい。ヴィクトルはうなずいた。 「どこ?」 「あの……」  勇利がためらった。ヴィクトルは笑いながらうながした。 「勇利の行きつけの店?」 「ぼくそういうところはないから……。ただ、前からおいでって言われてて」 「店の人と知り合いなの?」 「知り合いは知り合いだけど、店じゃないんだ」  ヴィクトルはきょとんとした。どういう意味だろう? 「あと、ヴィクトルもその人とは知り合いだよ」 「なに? だれ? ラーメン屋?」 「それ、店じゃん」  勇利が笑った。彼はいたずらっぽく言った。 「ミナコ先生のうち」 「えっ」 「前から、ヴィクトル連れて一度遊びに来なさいって言われてたんだよね。ごはん食べさせてくれるって」  なるほど、そういうことか。確かに「店」ではない。勇利に積極的に行きたい店があったらすこし意外だという気がしていたのだ。ヴィクトルは可笑しくなった。 「ミナコ先生はよくうちに来るけど、そこじゃそう話もできないし。といってもぼくはあんまり話すことないけど……ミナコ先生はいろいろ聞きたいんだと思う。あと、ぼくほどじゃないけど、ヴィクトルのこと好きだし」  さらりと愛の告白などをする勇利は、そのことに気がついていないようだ。 「だからヴィクトルがよかったらだけど、ミナコ先生の家に一緒に行ってくれないかなって。どう?」  ヴィクトルはほほえんだ。それじゃ俺の計画は達成できないな、と思った。まったく勇利は困った子だよ。どうしても俺を手こずらせるんだから。本当に��もしろい。 「もちろん構わないよ。ふたりで行こう」  ヴィクトルはうなずいた。  ミナコは料理じょうずだった。ヴィクトルは素直に褒め、ミナコは得意げに胸を張った。 「食事は身体づくりに大きく影響するからね。まあいまさらあんたに言うまでもないけど。勇利はときどきそれを忘れるわ。この子の場合、体質もあるからかわいそうだけれどね。ちいさなころは練習のあと、よくうちへ寄らせてごはんを食べさせたものよ。この子の食事には気を遣ったわ。なつかしい」  ミナコは勇利の昔話をたくさんしてくれた。にぎやかな勇利の家ではなかなかしないような話もあった。ヴィクトルは慎んでそれを聞き、勇利をからかっては笑った。勇利が赤くなって「ミナコ先生、ぼくの話はもういいから……」と注意を与えるほどだった。 「なに言ってんの。気難しいあんたをヴィクトルにもっと知ってもらうために呼んだのよ」 「気難しくないよ。普通だよ」 「いや、気難しいよ。勇利、わかってなかったの?」  ヴィクトルが口を挟むと、 「どこが? どこが?」  勇利は不満そうにした。 「言っていいの?」 「えっ、なんかこわいな……ぼくそんなにおかしい……?」  食後は勇利の母に持たされたプリンをデザートにし、三人はすこし遅くまで語りあった。もっぱらしゃべっているのはミナコで、勇利はとにかく黙って欲しそうにしていた。ヴィクトルはそれをほほえましく見守った。当初の予定とはちがったけれど、ヴィクトルは楽しい時間を過ごし、そのまま愉快な気持ちで帰途についた。 「楽しかったね」  帰り道でヴィクトルは笑いながら言った。 「うん」 「ミナコ、また来てねって言ってくれたね」 「うん」 「ミナコはちいさなころから勇利のことをよく見てきたんだね」 「うん」 「勇利のこといろいろ知ってたね」 「うん」  勇利はうつむいて足元ばかりみつめていた。ほろ酔いのヴィクトルは、そんな彼の後ろからのんびりついていった。ヴィクトルが話すのをやめると、勇利はしばらく黙りこみ、そのうち「ヴィクトル」と呼んだ。 「なんだい?」 「あのさ、フリーなんだけど」  唐突な発言だった。ヴィクトルはすこし驚いた。 「全体を通してるときにまだ違和感があるっていうか、上手くジャンプに入れないところがあって、そのことをちょっと気にしてて、慣れの問題なのかなって思ったり、あと、サルコウがはまるときとはまらないときとで、何がちがうのかいまだにわからなくて、それ……」  勇利はスケートの話をし続けた。ヴィクトルは星空を見上げながら耳を傾けていた。そうか、勇利。そんなことを気にしてたのか。大丈夫だよ。ちゃんと聞くから。俺も考えるから。……ただし、練習のときにね。  星が綺麗だと思った。ちょうど何かを望んだときの勇利の瞳に似ている。勇利の黒い大きな瞳は、神秘的で、魅惑的で、ヴィクトルを惹きつけてやまないのである。 「勇利」 「だからもうちょっとジャンプの練習時間を……なに?」 「また食事に行こうね」  ヴィクトルはほほえんで言った。 「う、うん」  勇利は不思議そうに、あるいは戸惑ったようにうなずいた。 「今度はふたりきりで」 「え?」 「俺と勇利だけで」 「…………」  勇利が困った顔をした。ヴィクトルはまた微笑した。 「言っておくけど、今日は楽しかったよ。いろいろ勇利のことを知ることができた。勇利はミナコのところでもいいかと訊いてくれたし、俺も了承した。楽しめると思ったからだ。またこうして三人で会いたい。俺自身、望んでいる。でもそれとは別に、勇利はなぜ俺が勇利を食事に誘ったか、わかってる?」 「…………」 「勇利のことが知りたいからだよ」  ヴィクトルはにっこりした。 「ミナコから聞くのもいい。ユーコやタケシもいろいろなことを教えてくれる。勇利の家族だって。でも俺は、勇利の口から直接語られる勇利の物語を知りたいんだ」 「…………」  勇利はうつむき、困ったように眉を下げた。 「勇利」  ヴィクトルは勇利の隣に並んだ。 「どうしてスケートの話しかしないんだ?」 「…………」 「俺もスケートは大好きだよ。楽しい。ずっとだって語っていられる。でも勇利とは、別の話もしたいんだ」 「…………」 「俺とはスケートの話以外したくない? コーチとはそういうことしか話しあいたくない?」 「……そんなことないよ」  勇利はぽつんとつぶやくように言った。 「ミナコといるときは、ごく普通の会話もしてたよね。普段、家でもそうだ。でも俺とふたりきりになると、勇利はスケートのことしか口にしない。俺は怒ってるんじゃない。ただ不思議なんだ。どうして? 俺の顔を見ると、スケートのことが思い浮かぶのかな?」  ヴィクトルがおどけて言うと、勇利はしばらく黙りこみ、ちいさく、「ごめん……」と謝った。 「怒ってるんじゃないと言っただろう? いいんだよ。俺だって、無理やり勇利をしゃべらせたいわけじゃない。でも、俺としては、勇利とはいろんな話をしたいなあと思うんだ。いやならこころの中は話さなくてもいいよ。もっとくだらない、どうでもいいような、必要じゃないようなことも言いあえたらなって考えてるんだよ。そういうの、困るかい? 迷惑だったら言ってくれ」 「……迷惑なんかじゃない」  勇利はうつむいたままぼそぼそと言った。 「ただ……」 「ただ?」  勇利はようやく顔を上げた。彼はせつなそうに、胸に手を当ててヴィクトルをみつめた。ヴィクトルはどきっとした。なんて目をするのだ……。 「ヴィクトルとふたりだと、何を話したらいいのかわからないんだ……」 「え?」 「どうしたらいいかわからないんだ。ぼく、いつも困って……だから……」 「…………」 「……スケートの話ならおかしくないから」  勇利はあえぐようにかすかに息をつき、目を伏せた。 「それなら言うことも思い浮かぶし。でも……それ以外となると……ぼく……何を言えばいいのか……」  ヴィクトルはさらに胸がどきどきした。うれしいのか興奮しているのかわからない。 「勇利、それは、俺が苦手だからとかそういうこと?」 「そうじゃなくて……」  勇利の声がどんどんちいさくなる。 「ただ……ぼくは……ヴィクトルといると……なんか……なんていうか……」  勇利はささやいた。 「……困るんだよ……」  ヴィクトルには勇利の言っていることがよくわからなかった。けれど、勇利がそんなふうに感じるのは、悪い感情があるからではなく、かえって正反対の、もっとよい何かがあるからだということはわかった。 「そうか。俺とふたりだと、何を言えばいいかわからないか」  ヴィクトルはうきうきしながらうなずいた。 「なんでもいいんだよ」 「なんでもいいって言われても……」 「勇利の思ってること、思ってないこと。腹が立ったこと、目に映った景色。何かをしていて、あるいは何かを眺めていて思い出したこと。なんでもいい。たとえばいまは何を考えてる?」 「何って……、なんでぼくはヴィクトルとこんなところでこんな会話をしてるんだろうって……困ったなって……早く家に帰りたいし、ヴィクトルに黙ってもらいたいって……」  ヴィクトルは噴き出した。「貴方といると何を話したらいいのかわからない」とかわいいことを言っているのに、「黙ってもらいたい」なんていうことも思っているのだ。しかし、勇利の中ではきちんとつながっているのだろう。勇利って本当に愉快な子だ。 「そういうことだよ」  ヴィクトルはそっと勇利の手を取った。勇利がびくっとふるえた。 「そういうこと、全部話してくれ」  ヴィクトルは勇利の目をのぞきこんだ。 「海辺で、勇利は大切な話をしてくれたね。あんなふうに重要なことばかりじゃなくていい。どうでもいいことも教えてくれ。俺は知りたいんだ」 「どうでもいいこと……」 「勇利にとってはどうでもよくても、俺にはちがうんだ。俺にとって、勇利のことでどうでもいいことなんてひとつもないからね」 「そうなの?」 「そうだよ。だから」  ヴィクトルははずんだ口ぶりで言った。 「次はふたりきりで食事に行って、たわいない話をたくさんしようね」  勇利がヴィクトルをじっと見た。ヴィクトルは優しく見返した。 「俺にしか聞かせない話を聞かせてくれ」 「ヴィクトルにしか聞かせない話……」 「できるだろ?」  ヴィクトルは得意げにおとがいを上げた。 「俺は勇利が大好きな相手だし、コーチだし、ヴィクトル・ニキフォロフだよ」  勇利は目をまるくした。彼は花がほころぶように笑い出し、片手を口元に当てて「そうだね」とうなずいた。勇利はかわいい顔で笑うのだ。 「そうだね、ヴィクトル……」 「そうとも」  ふたりはつないだ手をぶらぶらと揺らした。そのまま家まで、手をゆるくつなぎあったまま帰った。  勇利が隣の部屋で何か話していた。日本語なのでなんと言っているのかはわからない。なんだか困った様子で、電話相手に一生懸命に断っている、といった感じだった。ヴィクトルは勇利が電話を切ると、すぐに彼の部屋へ行った。 「どうしたんだい? 何の電話? 深刻そうだったけど……」  勇利はほほえんだ。 「深刻というわけじゃないよ。ちょっとどう言おうか迷っただけ。地元の知り合いなんだ。誘われてて……」 「何に? 遊ぼうって? もうすぐシーズンが始まるけど、息抜きは必要だよ。行ってくればいいのに」 「普通の遊びじゃないんだよ。なんていうか……」  合コン、と勇利はつぶやいた。 「ゴウコン?」  ヴィクトルは首をかしげた。 「それ、なに? 日本語かい?」 「そう……、英語で言えばシングルパーティとかグループのブラインドデートとか、そんな感じだね……この表現でわかるかな。ロシア語ではなんていうんだろう」  意味はわかった。ヴィクトルはちょっと驚き、勇利のことをみつめた。 「つまり……勇利に女の子を紹介するということ?」 「そんな畏まったものじゃないよ。男と女とでだいたい人数を合わせて食事して、気に入った相手とは連絡先を交換するっていう……」 「勇利、いままで行ったことあるのか?」  ヴィクトルは思わず真剣に尋ねてしまった。なぜそんなふうに発言してしまったのかよくわからない。勇利は恋愛経験はないという態度でいたから意外だったのだろうか。しかし、そういうことが過去にあったのならよいことではないか。なにごとも体験してみなければ……。 「ないよ」  勇利は苦笑を浮かべた。 「ぼくはずっとスケートひとすじだよ。デトロイトでも遊びになんて行かなかったし……」 「そうか」  ヴィクトルは息をついた。それから心配になった。 「……今回は行くのかい?」  勇利はヴィクトルを見上げた。 「なんで?」 「え?」 「なんでそんな心配そうな顔してるの?」 「え」  ヴィクトルはびっくりした。なぜか勇利が怒っているようだ。彼はヴィクトルをにらんでいる。 「行ったらぼくが失敗すると思ってる?」 「いや、そういう意味じゃ……」  ヴィクトルはうろたえた。まったく頭になかったことだった。 「そりゃぼくは経験もないし、ぜんぜんもてないし、ヴィクトルみたいな完璧なひととはちがうけど!」  勇利はベッドから立ち上がった。 「そんな、いかにもおまえじゃ無理みたいな顔しなくてもいいじゃん!」 「ちがう勇利、そういうことじゃない。ただ、俺は──」  ただ、なんだろう? ヴィクトルは言うべき言葉がみつからず、困惑した。するとその態度を悪く取った勇利が、「ほら」とまた腹を立てた。 「悪かったね、ヴィクトルみたいに洗練されてなくて!」 「そんなこと言ってないじゃないか。勇利はすてきだよ。誰だって知ってる──」 「いいよ、とってつけたように言わなくたって」  勇利は携帯電話を取り上げた。 「どうするんだ?」 「行くから」 「え?」 「断ったけどやっぱり行く」 「ゴウコンに!?」 「そうだよ。悪い!?」  勇利は電話を耳に当てながらヴィクトルをまたにらんだ。 「世界一もてる男からしたら笑っちゃうかもしれないけど、ぼくだってこれくらいできるんだから!」  何をまちがったのだろう……。ヴィクトルはベッドに横になり、マッカチンを抱きしめて溜息をついた。あれから勇利はつんとしているし、食事のときもあまり口を利いてくれないしで、ヴィクトルはずっとそわそわしていた。そんなふうに落ち着かないまま迎えた今日が例の「ゴウコン」の日で、勇利は夜になるとさっさと出掛けていってしまった。  ヴィクトルは部屋を出る勇利の姿を見ていなかった。どんなかっこうで行ったのだろう。いつもの地味な服装だろうか。それともいかにもきちんとした身なりで出掛けたのか。勇利はちゃんとしていると、凛とした、かなりすてきな青年になるのだ。ヴィクトルはよく知っている。それに、笑うとかわいらしく眉が下がり、とても愛らしい。勇利は勇利が思っているような「もてない男」ではない。ヴィクトルの見たところ、「本気になればすごい」という若者だ。おまけにスケートが抜群にじょうずなのだから、それをよく理解している地元の女の子なら、是が非でも交際したい相手だろう。 「勇利……」  ヴィクトルは、いいことじゃないか、と思おうとした。人生経験は豊かなほうがよい。何も知らないというのなら、そういう機会があれば接してみるに越したことはない。どんなことだって無駄にはならないのだ。  でも……。 「……マッカチン。俺は何を気にしてるんだろうね?」  勇利が大事だ。かわいい生徒だと思っている。だから心配なのだろうか。悪い女の子に騙されないか。勇利は素直で純粋だから、女性の思惑までは読めないだろう。それで……。 「でも勇利のことだから、女の子を誘ったりはできないかもしれないね」  ヴィクトルは明るくマッカチンに話しかけた。しかしすぐに、女の子のほうで勇利と近づきになろうとするだろう、と気がついた。 「……そうだな」  勇利は可憐でうつくしく、澄んだ瞳の持ち主だ。ヴィクトルに向ける愛嬌のある笑顔は本当にみずみずしいのだ。誰だって彼のとりこになるだろう。 「……やっぱり悪い女の子に騙されるかもしれない」  ヴィクトルはふと起き上がった。 「心配だ。コーチとして心配だ。スケートに影響が出るかもしれない。そうじゃなかったとしても、俺は勇利を大切に思っているんだ。様子を見に行く必要がある。何もなければそれでいいんだ。そうだろ? それに、勇利は──」  ヴィクトルは上着を取って腕を通した。 「酔っ払うと大変なことになるじゃないか!」  勇利はきちんとした子で、行き先と、一緒に行く相手を母親に伝えていた。ヴィクトルは店用の車を借りて、勇利がいるはずの居酒屋に向かった。店に入り、聞いてきた名前を案内係に言うと、彼は笑顔でうなずいてその部屋に案内してくれた。 「こちらです」  ヴィクトルはためらいなく扉を開けた。十畳ほどの畳の部屋に、男女が五人ずつ並んで座っていた。全員が顔を上げ、ヴィクトルのことを見て目をまるくした。 「あー、びくとる!」  いちばんに勇利が声を上げた。 「みんな、見て。彼がびくとる。びくとるだよ!」  本物だ、とか、すごい、とかいう声が聞こえた。そのあたりはかろうじて理解できたけれど、続けて笑いながら話す勇利の言葉は、すべて日本語なので、何を言っているのかよくわからなかった。 「びくとる、来て!」  勇利が両手を差し伸べた。ヴィクトルは、呼ばれているのはなんとなくわかったので勇利に寄っていった。ハイ、とみんなに笑顔で挨拶したら、全員好奇心いっぱいの好意的な目でヴィクトルを見、挨拶を返した。 「びくとる」  ヴィクトルが膝をつくと、勇利はヴィクトルに抱きつき、頬をすり寄せた。ヴィクトルはびっくりした。こんなこと、普段の勇利はまずしない。  勇利は熱っぽく何かを語り続けた。さっぱりわからない。普段の日本語ともちがう気がする。ヴィクトルはふと、バンケットで「びーまいこーち」と言った勇利のことを思い出した。いまはそんな雰囲気だし、それに、そう口にする直前のせりふになんとなく抑揚が似ていた。 「勇利、なに言ってる? 英語で話して」  ヴィクトルは笑いながら要求した。しかし勇利は聞かなかった。ずっと彼は舌足らずに、甘えるように何か話している。困った。……かわいい。びくとる、という言葉だけは聞き取れた。 「どれだけ飲んだんだか……」 「あの、すみません」  ひとりの若者にたどたどしい英語で話しかけられた。 「勝生はそんなに飲んでないんです。ちょっとアルコールが入ってるやつを二杯くらい。でもやけに酔っちゃって。ずっとあなたのことばっかりしゃべってて、それで……」  ヴィクトルは驚いた。それでは「ゴウコン」にならないのではないだろうか。 「あなたに怒ってたみたいだけど、途中から、子どもだとしか思われてない、みたいに拗ね始めて……いまに至ります」  怒る。子どもだと思われている。拗ねる。ヴィクトルは笑ってしまった。なんだそれは……。 「勇利……」  胸があたたかくなった。勇利はヴィクトルにしがみつき、いい気持ちそうにまだ話している。ヴィクトルをじっとみつめる目はきらきらと輝いて、聞いて聞いて、ぼくヴィクトルのことが大好きなんだよーと言っているようだった。 「迷惑をかけたね、ごめんね」  ヴィクトルは一同を見渡して謝った。みんなぶるぶるとかぶりを振った。 「連れて帰るよ。せっかくの会なのに申し訳ない」 「いえ、これはこれでおもしろかったですから。……彼、長々と、あなたがどれだけすてきかっていう話をしてて」  さっきの若者が楽しそうに笑った。 「昔からヴィクトル・ニキフォロフのこと大好きだったけど、いまも本当に愛してるんだなって感じです」  車まで連れていくあいだも、勇利はヴィクトルの腕をぎゅうっと抱きしめるようにし、機嫌よくいろいろなことをのべつまくなしにしゃべり続けた。ヴィクトルは彼の手をしっかりと握って車まで案内した。しかし、助手席に乗せると急に勇利は静かになり、放心したような顔になった。家に着��ころには寝ているだろうと思ったのだが、意外なことにぱっちりと目を開けていた。ヴィクトルは勇利を部屋まで送っていった。 「さあ、着替えて。もう寝なきゃ。水を飲む?」 「いらない」  さっきまでの陽気さはすでにうかがえない。だが、ここ数日のような不機嫌さはないようだ。 「迎えに来てくれて、ありがとう」  勇利はちゃんと英語で言った。 「迷惑かけて、ごめんなさい」 「迷惑なんかじゃないよ」  ヴィクトルはほほえんだ。 「でも、ひとつおねがいがあるんだけど、いいかな?」 「なに……?」  ヴィクトルは、すぐ前に立っている勇利の目をじっとみつめた。酔っているせいかすこしうるんで、可憐な様子だった。勇利はいつもの野暮ったいかっこうをしていた。ヴィクトルは世界一かわいいと思った。 「もう『ゴウコン』には行かないでくれ」 「なんで? ぼくが子どもだから? 似合わないから?」 「妬けるから」  ヴィクトルは笑いながら率直に打ち明けた。勇利が瞬いた。 「……どういうこと?」 「妬ける」  ヴィクトルはくり返した。 「勇利がそういうところへ行くと、胸が苦しい」 「……どういう意味?」 「約束して」  ヴィクトルは勇利の手を握った。勇利はどぎまぎしながら頬を赤くし、こくっと子どものようにうなずいた。ヴィクトルは「いいね!」と喜んだ。 「さあもうやすむんだ。明日の朝の練習はなしにしよう。ゆっくり寝て」 「うん……」 「おやすみ、勇利」  ヴィクトルは勇利の額にかるくくちびるを押し当て、明かりを消した。  翌朝、洗面所へ行くと、寝惚けまなこで歯をみがいている勇利がいた。ヴィクトルを見た彼は頬を赤くしておはようとつぶやいた。 「昨日は、本当にごめん……。来てくれてありがとう」 「勇利」  ヴィクトルは勇利の耳元にささやいた。 「ゆうべ俺が言ったこと、おぼえてる?」  勇利はさらに赤くなった。彼は目をそらし、歯ブラシを動かしながら、口元を真っ白にしてうなずいた。 「それならいいんだ。忘れないで」  ヴィクトルは機嫌よく洗面所を出た。  中国大会のバンケットで、ヴィクトルはこのうえなく陽気に酔っていた。こんなにはしゃいだのは──勇利が突然目の前に現れた、あのソチのバンケットが最初で、これが二度目だ。 「ヴィクトル、飲み過ぎ……」  赤い顔をしてふらつくヴィクトルのあとを勇利が追いまわし、すれちがう人にヴィクトルが勇利のことを自慢するたび、「すみません」と謝った。 「そんなに飲んでないさ」  ヴィクトルは明るく笑いながら言った。 「でも酔っ払いの態度じゃないか」 「気持ちが高揚してるからだよ。俺はウォッカを何杯飲んでもカードで負けたことがないんだ」 「なにそれ。本当? それとも冗談? ぼくをからかってるの?」  ヴィクトルは、久しぶりに顔を合わせたロシアスケート連盟の役員にいろいろつまらないことを言われた。しかしそんなことは意に介さず、「俺の勇利、見てくれたかい? 最高だろう? 好きになっちゃだめだよ。俺のだから」と自慢した。ロシア語だったので勇利にはわからなかっただろうが、もし英語だったら彼に叱られていたことだろう。 「ヴィクトル、大丈夫? 何も言われなかった?」  勇利はあとでヴィクトルを心配した。 「何が?」 「さっきの人たち、スケ連の人でしょ? ロシアの」 「なんでわかった?」 「この中で顔がいちばんこわかった」 「おもしろい見分け方だね」  ヴィクトルは、そんなに俺はにらまれていたのか、と可笑しかったけれど、すぐに別の可能性に思い当たって笑いを消した。 「勇利、いやな目で見られた?」 「え? ううん、大丈夫だよ。でもヴィクトルのことはすっごくにらんでたでしょ」 「なんだ」  やはり最初に考えた通りのことだったらしい。ヴィクトルはほっとした。べつに彼らににらまれるくらいどうということもない。だが、ヴィクトルはふと思い立ってしょんぼりした表情をつくった。 「うん、にらまれてた……勇利、つらかったよ」 「え?」 「彼らはいつも俺のやることに文句をつけるんだ……」 「ヴィクトルが好き勝手してるからじゃん」 「でも意地が悪いんだよ……顔を合わせれば嫌みばっかり……俺は傷心なんだ……」  ヴィクトルは言いながら勇利にもたれかかった。勇利はしばらく黙っていたが、ちょっと笑い、「それはかわいそうだね」と優しく言った。ヴィクトルはすかさず要求した。 「なぐさめてくれ」 「どうやって?」 「優しい勇利なら、大変だったね、って俺にキスしてくれるだろ?」 「ヴィクトルさ、なんでもかんでもキスで解決しようとするの、やめたほうがいいんじゃないかな……」 「誤解だ!」  あきれた目で勇利にみつめられ、ヴィクトルは地団駄を踏みたい気持ちだった。確かに「キスでもすればいいのかい」はまずかった。いかにも悪い手段だ。言い方もなげやりだったし、「とりあえず」というおおざっぱさがうかがえる。しかしいまのはいいではないか。愛があればつらいことも我慢できるということだ。勇利にはその微妙なちがいがわからないらしい。 「ちがうんだ勇利、これは……」 「キスはだめだけど」  勇利は笑いながら言った。 「なぐさめることはできるよ。部屋へ戻ろうか」 「本当に?」  ヴィクトルは顔を輝かせた。 「いいのかい?」 「いいよ」 「楽しみだな。勇利、初めてだろう? 優しくするからね!」 「……ヴィクトル。何か誤解してない?」 「何が?」  勇利はヴィクトルを自分の部屋へ呼び、トランクの中からプレイングカードを取り出した。 「なんでそんなものがある?」 「デトロイトでの忘れ物。ピチットくんが持ってきてくれたんだ」  勇利はヴィクトルとベッドに上がると、手早くカードを切り始めた。 「手際がいいね。オールドメイドでもする?」 「ぼく七並べ鬼強いよ」 「やり方を知らない」 「ほんと?」  勇利は笑いながら、重ねたカードを裏返し、すっと一枚のカードをヴィクトルに見せた。 「おぼえて」  スペードのクイーンだった。 「���ーケィ」  勇利がカード束の上にそれを戻した。 「これからすごい手品を披露するよ。ヴィクトル、ぼくのこと好きになっちゃうかも」 「勇利、なんで手品なんかできる?」 「デトロイト時代、隣に住んでた学生が教えてくれたんだ。いい?」  勇利はいちばん上のカードを取り、それを束の真ん中あたりに入れた。 「いまからおまじないをかけます」 「俺に?」 「カードにだよ」  勇利はベッドの上にカードをまとめて置き、それにひとさし指を突きつけた。 「ヴィクトルはぼくのことを好きになる!」  ヴィクトルは笑った。 「めくってみて」  ヴィクトルはいちばん上をめくった。目をみはった。スペードのクイーンだった。 「どう?」  勇利が得意げに笑った。 「好きになった?」 「勇利、すごい!」  勇利は明るい目をした。 「どうやった? どうやってあのカードにした?」 「すごく簡単な種だよ。でも教えない」 「ほかにもできるかい?」 「できるよ」 「やって! やってくれ!」 「じゃあね……」  適当にカードで遊んでいた勇利は、それを敷布の上に扇状にひろげてじっとヴィクトルを見た。 「ヴィクトルはロシアの英雄。ぼくは日本の……?」  ヴィクトルはすこし考えた。 「……かわいこちゃん?」 「なんでそうなるんだよ」 「あ、わかった。貴公子! 貴公子!」 「ぜんぜんちがいます。諸岡アナがよく言ってるでしょ」 「ああ、エースだ。日本のエース」 「そう」  勇利がカードに視線を落とした。ヴィクトルも見た。半円に近いかたちでひろがっているカードは、スートと数字がわかる状態だ。勇利はそれをまとめ直して手に持った。 「じゃあ、とりあえず切っておこうか」  彼はカードを切り交ぜながら、ヴィクトルの目をまじめにみつめた。ヴィクトルはわくわくしていた。勇利が上から一枚ずつカードを取り、ベッドの上に裏返しに重ね始めた。 「好きなところでストップと言って」 「オーケィ」  ヴィクトルはしばらく待ち、適当なところで「ストップ」と言った。勇利は手を止め、重ねたカードだけを取り上げた。残りは脇へ置いておく。 「ヴィクトルが選んでくれたカードを使います」 「うれしいな」  勇利が順に四枚並べた。裏向きだ。それ以上は横には出さず、五枚目からはまた同じ順序で上に重ねていった。そしてすべてのカードが場にそろった。 「おまじないをかけます」 「また?」 「ヴィクトルはぼくのことを好きになる!」  勇利がカードを指さした。ヴィクトルは笑いをこらえた。 「じゃ、いくよ」 「うん」  何が起こるのだろう? 勇利はいちばん左のカードを表に返した。ハートのエースだった。彼はその次のカードもひっくり返した。ダイヤのエース。 「えっ」  その次はクラブのエース。最後はスペードのエースだった。すべてエースだ。 「いかがですか?」  勇利は笑ってヴィクトルを見た。ヴィクトルはカードを手に取った。ごく普通のカードだ。ほかのものも調べたけれど、エースではない。 「すごいぞ勇利!」 「好きになった?」 「すごい!」 「どう?」  勇利は四枚のエースを手で示した。 「そのプレイングカードが欲しい」 「カード自体は普通のなんだよ。日本のエースは欲しい?」 「えっ?」 「じゃあ最後」  勇利は笑いながらカードをまとめ、その中から三枚を選び出した。ハートのエース、ハートの2、ハートの3だった。 「ハートだね」 「ハートだよ」  勇利は三枚を裏返した。 「これはハートの3だったね」 「うん」 「じゃあ三枚、上に重ねちゃおうか」  勇利は手持ちの札から三枚のカードを取り、3の上に置いた。 「置いたね」 「そうです。で、これを上に重ねます」  合計四枚のカードが勇利の手持ちのいちばん上にのった。 「で、これを切ります」  勇利が一度手持ちの札を切る。 「どこに行ったかもうわからないよ」 「わからないね。じゃあ次。これは2だったね」 「うん、2だ」 「じゃあ、2なので二枚上に重ねます」  勇利がカードをまた重ねた。ヴィクトルは慎重に観察していた。その目は青く鋭く輝いている。 「で、これもまた戻します」  手持ちの束に三枚が戻る。勇利は再び、一度カードを切った。 「最後。エースだね。1だ」 「そうだ、1だ」 「じゃあ1なので一枚だけ重ねます」  カードが二枚になり、それも勇利は手に戻すと一度カードを切った。 「ハートはどこへ行った?」 「中のほうだよ。もうばらばらになってる」 「そうだよね。じゃあおまじないをかけるね」  勇利は一度束を置き、またカードに指を突きつけた。 「ヴィクトルはぼくを好きになる!」 「あのね」  ヴィクトルは可笑しかった。 「その結果……?」  勇利が上から一枚ずつカードを取り、三枚並べた。ヴィクトルはきょとんとした。ハートのエース、ハートの2、ハートの3だった。 「なんで!?」 「ぼくのハートは貴方のもの」  勇利は言って三枚のハートをひらひらと動かした。 「ぼくのほうが好きになっちゃったかも」 「見せて!」  ヴィクトルが手を伸べた。勇利はカードを遠ざけて渡さないようにした。ヴィクトルは身を乗り出した。すると勇利がふいに身体を寄せてきて、ヴィクトルの頬にかるくくちびるを当てた。ちゅっと音が鳴った。 「…………」  ヴィクトルは勇利をじっと見た。勇利が笑った。 「さあ、元気出た? 一応おまけでキスもしておいたよ。なぐさめになった?」  ヴィクトルは黙って勇利を抱きしめ、ベッドに押し倒した。勇利が「あ」と声を上げ、彼の手からはらりとハートのカードが散った。ヴィクトルはくすくす笑った。 「ねえ勇利」 「なに?」 「付き合っちゃおうか」 「付き合うって? 交際?」 「そうだよ」  勇利も笑った。 「もしぼくとヴィクトルが付き合ったら……」  彼は首をすこし傾け、ヴィクトルのことをなごやかな目つきでみつめた。 「何かあって泣いたら、ぼくはそのたびに『キスでもすればいいのか』って言われるの?」 「もう言わない。言わないから」  ヴィクトルは可笑しくてさらに笑った。 「ヴィクトルは泣きわめくぼくに、ちがうよって怒鳴られるわけだね」 「本当にもう言わないから。反省してる」 「ふふふ……」  ふたりはしばらく黙っていた。やがて勇利がぽつんと言った。 「ああ、手品ちゃんとおぼえてて、よかったあ。じつは自信なかったんだ」  ふたりは起き上がり、「疲れたね」「明日寝坊しそう」と言いあった。ヴィクトルは勇利をかるく抱擁して、「おやすみ」とささやくと自分の部屋へ戻った。  信号待ちでちらと横目でうかがったら、助手席の勇利は眠っていた。彼はヴィクトルのほうへ顔を向け、行儀よく膝をそろえて、くちびるをわずかにひらいていた。眼鏡のつるが座席に押されてゆがみそうだったので、ヴィクトルは眼鏡を外してやった。勇利の手はヴィクトルのほうへ伸び、コートの端っこをちょんとつまんでいた。いつの間にこんなことをしたのだろう? 気がつかなかった。ヴィクトルはほほえみ、勇利の頬を指の背で撫でた。勇利は目ざめない。眠りは深いようだ。飛行機の中で眠れなかったのだろうか。  ロシア大会ではなればなれになっているあいだ、ヴィクトルは、感じたことのない痛みを経験した。勇利と離れること��これほど苦しいとは想像もしていなかった。勇利はかわいく、大切で、ヴィクトルにとってすでにいちばんの存在になっていたが、これほどヴィクトルに苦痛を感じさせる者なのだという自覚はなかった。ヴィクトルはずっと勇利と愉快に楽しく過ごし、笑っていられるのだと思っていた。だが、そうではないのだ。勇利はヴィクトルに、すべての感情を与える存在なのだと、ヴィクトルはようやく気がついた。  かわいそうに。ひとりでこんなにがんばって。  ヴィクトルは勇利の疲れた顔をみつめ、胸を痛めた。もうひとりにはしないと思った。何があっても……。  家に戻るまでのあいだ、勇利はずっと眠っていた。ヴィクトルに会えたことで安心したのかもしれない。ロシアのホテルではどうだったのだろうとヴィクトルは心配した。しかしもうそれはいい。勇利はいまここにおり、ヴィクトルは彼のためになんでもできるのだ。どんなことでも……。  家の前庭に車を入れても勇利は目ざめなかった。ヴィクトルは優しくコートから勇利の手を離させると、あたたかくその手を握り、彼の額と頬に接吻した。 「すこしだけ待っていてくれ」  勇利の荷物を部屋へ運びこんでいたら、彼の母親が、「勇利、帰ってきたと?」と尋ねた。ずいぶん遅い時刻だが、起きて待っていたらしい。 「勇利、ネテル」  ヴィクトルが言うと彼女はほほえみ、「ヴィっちゃん、あの子んこと、よろしくね」と頼んだ。ヴィクトルは真剣にうなずいた。急いで車に戻り、勇利を抱き上げて助手席から下ろした。そのまま、家の中へ連れていく。 「んー……」  勇利がヴィクトルのほうへ頬を寄せ、また服をつかんだ。ヴィクトルは勇利を起こさぬよう自室のベッドへ運び、そうっと横たえた。マスクを外してコートを脱がせる。そうして甲斐甲斐しく世話を焼いていると、マッカチンが寄ってきて勇利に鼻先をくっつけた。 「このまま寝かせてあげようね」  マッカチンが鼻を鳴らした。 「今日は三人で一緒に寝よう……」  ヴィクトルが寝る支度を済ませて横になると、勇利がもぞもぞと寝返りを打った。彼がすがるように抱きついてきたので、ヴィクトルは愛情をこめて抱擁した。マッカチンが勇利の背中に寄り添う。 「勇利、大丈夫だよ。ずっといるからぐっすりやすんで」  ヴィクトルは勇利の髪にくちづけ、指でそっと梳いてやった。勇利が微笑を浮かべ、口の端を引きこむような寝顔になった。安心しきったその表情にヴィクトルは息をついた。  ヴィクトルは眠らなかった。苦しいほどいとおしい勇利の寝顔を眺め、じっとしていた。いくら見ていても飽きなかった。勇利がここにいる。すこし前までは、ふれることもできなかった勇利が。  勇利のあどけない目元、子どもっぽい口つき、かわいらしい眉毛、全体的に整っているおとなしやかな顔を見ているうち、夜が明けてきた。ヴィクトルはまだほんの三十分ほどしか経っていないと思っていたので驚いた。もう朝なのか。 「んん……」  勇利が口を動かして何か言い、ふと目を開けた。彼は幾度か瞬いて自分を抱きしめているヴィクトルに気がつくと、「あれ……?」とつぶやいた。 「帰ってきたんだよ、勇利」 「ああ……」  勇利は納得したようにうなずいた。それから変な顔をして自分の身体を見、すぐにヴィクトルに視線を戻した。 「ぼく服着てないみたいなんだけど……」 「寝るときは着ないだろう?」 「それヴィクトルだけ」  勇利が笑った。彼は「まあいいけど」と言った。 「おはよう」 「おはよう」 「朝かあ……」 「あとで一緒に温泉に入ろう」 「そうだね……」  勇利はまぶたを閉じてヴィクトルの胸に顔を寄せた。 「……ずっと一緒にいてくれたの?」 「一緒にいたかったから。よかった?」 「うん。大正解」  勇利はくすっと笑った。 「自分の部屋でひとりで目ざめてたら……」 「かなしかった?」 「なんで!? ってヴィクトルを叩き起こしてたかも」  ふたりは目を合わせて笑いあった。勇利は物穏やかに言った。 「……帰ってきたんだね」 「そうだよ」 「ヴィクトルのところに……」 「……そうだよ」 「…………」  勇利がゆっくりと両手を伸ばし、ヴィクトルの背中にそっと添わせた。彼はあえかな息をつき、「ヴィクトルのハグだ……」とつぶやいた。ヴィクトルはせつなくなり、勇利を強くかき抱いた。 「苦しい、ヴィクトル」  勇利が笑う。 「我慢して」 「もっと苦しくてもいいかも」 「…………」 「何か言ってよ」 「言葉が出てこない」  こんなことは初めてだった。ただヴィクトルは、ずっと勇利を抱きしめていたかった。この瞬間、望みはそれだけだった。ヴィクトルの希望をかなえてくれるのはこの世界で勇利しかいなかった。 「勇利……」  何か言おうとしたけれど、やはりだめだ。ヴィクトルは、気持ちが言葉を凌駕することがあると、このとき初めて知った。  勇利が指輪をくれたことは脅威的で、すばらしく、なんとも胸のときめく出来事だった。勇利と親密になってから、彼は幾度となくヴィクトルを驚かせてきた。コーチになってと言い、カツ丼を一緒に食べたいと言い、自分はカツ丼になると言い、ヴィクトルの言いつけを破り、はなれずにそばにいてと泣き、四回転フリップを跳んだ。今日それに、指輪をくれた、という項目が加わった。勇利はどこまでヴィクトルを驚かせれば気が済むのだろう? ヴィクトルは勇利と出会ってからやられっぱなしで、それがとても気持ちよかった。  この指輪に、みんなが冷やかすような意味はきっとないのだろう。けれど「おまじない」や「お礼」でそろいの指輪を贈る者なんていない。勇利は本当に突拍子もない、とても……すてきな子だ。指輪をもらってこんなにうれしくなるなんて思ってもみなかった。彼のことがいとおしい。彼のこと以外考えられない。結婚指輪だとか婚約指輪だとかそういう指輪ではないとか、そんなことはどうでもよかった。勇利とのあいだには愛があり、きずながある。それがヴィクトルには大切だった。  みんなとの食事を終えて部屋へ戻ったふたりは、順番に入浴した。ヴィクトルがバスローブ姿で風呂から出ると、勇利は窓のほうを向いて、華やかな夜景を眺めていた。このうつくしい景色を勇利とふたりで見られてよかったとヴィクトルは思った。 「勇利」  ヴィクトルは背後から勇利を抱いた。勇利は身体にまわったヴィクトルの手にそっとふれ、ヴィクトルにもたれかかった。 「そろそろやすまないと」 「うん、わかってるよ……」  ヴィクトルは指先で勇利の指輪をなぞった。なにげなくしたしぐさだったけれど、自分でなんともいえずぞくぞくした。こころよい喜びで気持ちがしびれ、ヴィクトルはこのうえもなく勇利に優しくほほえみかけた。 「緊張してる?」 「してる。今夜は眠れないかも」 「俺が眠れるようにしてあげよう」  ふたりはそれぞれベッドに入った。勇利が手を差し伸べ、「ヴィクトル」とすがるように呼んだ。 「右手を……」  彼がなぜだかさびしそうな顔をしているので、ヴィクトルは驚いて右手を伸ばし、彼の手を握った。 「大丈夫だよ」 「うん……」  勇利はせつない目でヴィクトルをじっと見ていた。まるでこれでお別れだとでもいうような一生懸命さにヴィクトルは戸惑い、つないだ手の指輪と指輪をかすかにふれあわせて、「大丈夫」ともう一度ささやいた。 「勇利が勝つと信じているよ」 「……うん。ありがとう」  勇利が泣き出しそうな顔で笑った。そのおさなげを失わない純粋な笑みに、ヴィクトルの胸はひどく痛んだ。今日はこのうえなく楽しいデートをしたのだ。なのにどうしていま、こんなふうに苦しくなるのだろう。明日のことを考えて、お互い感傷的になっているのかもしれない。自分がこんなことではいけない。勇利の支えになり、勇利のためになんでもするのだ。 「目を閉じて。明日、自分がすてきなプログラムを演じているところを想像してみるんだ。くり返しね」 「ヴィクトル、何か話して」 「どんなこと?」 「なんでもいい。いいから……」  ヴィクトルは話し始めた。自分がスケートを始めたころのこと、ヤコフとどんな話をしたか、失敗したことも成功したことも。途中から話の方向を見失い、ロシアのおとぎ話に変わった。しかし勇利は文句も言わず聞き入っていた。気がつくと、彼は深く眠りこんでいた。 「勇利……」  右手と右手はまだつながっていた。ヴィクトルは左手で勇利の髪を撫で、これほど緊張したことはないと思った。自分の試合では、前夜に眠れないなんて、そんなこと、いままで一度もなかった。  浅い眠りと目ざめをくり返し、やがて夜が明けた。勇利の前途を祝福するかのようなすがすがしくまぶしいひかりの中、ヴィクトルは起き上がり、ひと晩じゅうつないでいた勇利の手を静かに持ち上げた。彼の指輪にうやうやしく接吻し、手を離すと、着替えを終えてひとり街へ出た。  通りから、優しく語りかけてくるような、なつかしい感じのする海を眺めた。右手を上げると、朝日に勇利がくれた指輪がおごそかにきらめいた。  自分の人生は変わったとヴィクトルは思った。楽しくスケートをし、絶頂だという気持ちですべり続けていたあのころに考えていたのとはずいぶんちがう、想像もしていなかったようななりゆきだけれど、ヴィクトルはいまの日々がいとおしくて仕方なかった。こんな幸福な毎日があるのだと彼は知った。教えてくれたのは勇利だった。  これからさき、どうなるかはわからない。自分が王座に君臨し続けるのだと得意になっていたあのころにいまのこの気持ちが予測できなかったように、こののち自分がどんなふうに変わってゆくのか、ヴィクトルには想像できなかった。しかしどうなるにせよ、何を選択するにせよ、かたわらには必ず勇利がおり、彼とともに歩むことは変わらないのだとヴィクトルは信じた。  そのねがいと祈り、そして約束がこの指輪にはこめられている。  勇利が入浴しているあいだに、改めてメダルを観察した。銀色に光るそれは、ヴィクトルが手にしてきた金メダルのような華やかさはないけれど、誠実で、清楚で、純真で、輝きはすこしも劣っていなかった。勇利がヴィクトルと一緒に、愛で胸をいっぱいにして獲ってくれたメダルだ。 「また見てたの?」  扉を閉めた勇利があきれたように言った。 「うん」  ヴィクトルは笑った。 「銀メダルだなあ……と思って」 「悪かったよ」  勇利がおおげさに拗ねた顔をした。 「ヴィクトルには珍しいだろうね。もしかして初めて見る?」  ヴィクトルはくすくす笑った。もちろん、リビングレジェンドなんて呼ばれる前には、銀メダルだって銅メダルだって獲ったことがある。 「冗談だ。俺は勇利の銀メダル、好きだよ。かわいくて」 「かわいい?」 「かわいいからいいでしょって、今後何回も獲られたら困るけどね」 「ワールドでは金獲るから心配しなくていいよ」 「へえ、そうなんだ」 「そうだよ。ぼくのコーチは優秀だからね。そうなるよ」  ふたりは顔を見合わせて笑った。明かりを消し、ベッドに横たわる。ヴィクトルは勇利とデュエットしたエキシビションを思い出していた。すべての感情が勇利に流れこみ、また、勇利の想いもヴィクトルの胸に直接伝わってきた、すてきなプログラムだった。ヴィクトルはあの時間が永遠に続けばいいと思った。ふたりがつむいだ愛が「離れずにそばにいて」だったのだ。 「勇利、右手を」  ヴィクトルと勇利の右手が重なった。ヴィクトルは強く握り、息をついたが、勇利は痛いともなんとも言わなかった。ヴィクトルは手を顔のそばに寄せ、まずはみずからの指輪に、次に勇利の指輪にキスした。 「勇利……かなしかったよ……」  ヴィクトルは低くつぶやいた。 「あんなことを言われて、かなしかった……」 「……ごめん」  勇利のまつげがふるえた。彼がヴィクトルを愛していることは疑いようがない。 「二度と言わないでくれ」 「うん……」 「俺はもうきめてたんだよ。勇利と一緒だってね」 「……うん」  勇利の黒い瞳がきらりと輝いた。彼は射るようにヴィクトルをみつめた。 「ぼくも、もうきめたよ」 「…………」  ヴィクトルはささやいた。 「勇利をひとりにはしない」 「ぼくもヴィクトルをひとりにはしない」  ふたりの視線が合った。勇利のまなざしは強く、むこうみずなほどむき出しで、ヴィクトルは彼のまごころにふれた気がした。慎ましやかだったり控えめだったりする勇利が、いまは傲慢なほど気持ちをあらわにして、ヴィクトルと同じ誓いを捧げている。勇利のくちびるから、熱愛のこもった甘美な吐息が漏れた。ヴィクトルも湿った息を吐いた。勇利の濡れたような瞳ははかりしれぬ愛できらきらと輝いており、それは、勇利の凛とした表情をいろどった。  あのときと同じだった。「離れずにそばにいて」をふたりで踊ったときと。ヴィクトルには、勇利の気持ちがすべてわかった。ヴィクトルのこころのうちも、勇利には伝わっているようだった。ヴィクトルはいま、互いに裸身となり、抱きあって深く交わりたかった。とけあうほどからまりあい、勇利のすべてを知り、自分のことも知ってもらいたかった。勇利を腕の中に閉じこめ、彼の至高の愛を胸に刻みつけ、みずからの熱愛を勇利に捧げたかった。  そうすること���ためらいはなかった。ふたりが愛情を抑えなければならない理由も、彼らをとがめる事情も、いま、ここにはひとつもなかった。ふたりは目の奥をみつめあった。互いが互いを欲しているのがよくわかった。それぞれの指と指輪にくちづけあった。ヴィクトルのくちびるが勇利のしなやかな指をかすかに愛撫すると、勇利が押し殺した声を漏らした。  このまま……。  だが、ふたりは動かなかった。どちらも、すべてを痛いほど理解していながら、最後のこころぎめにまでは至らず、この夜、それ以上ヴィクトルたちの仲は熟さなかった。  迷ったのではない。自信がなかったのでも、気弱になったのでもない。ただ──、いとおしかったのだ。いまこの瞬間がいとおしかった。こんなふうに相手を求め、最後の瞬間を迎えるほんのわずか手前にとどまることが、苦しくもうれしかった。この初々しい、永遠に閉じこめたいような時間に、もうすこしだけ立ち止まっていたかった。おぼれてしまえば、もっと早くに抱きあえばよかったのだと自分にあきれることだろう。それはわかっている。だが──この一瞬のきらめき、この気持ちは、いましか感じられないものなのだ。  ふたりはそれぞれの瞳に、そんな子どものような未熟な愛を読み取り、ちいさく笑いあった。ヴィクトルは勇利の指をそっと舐め、勇利はヴィクトルの爪の先に接吻し、慎ましやかに眠った。 「身体に気をつけて」  ヴィクトルが言うと、「ヴィクトルもね」と勇利は笑った。ヴィクトルはロシア選手権のためにロシアへ、勇利は全日本選手権のために日本へ帰るのだ。 「四回転フリップの練習はちゃんと本数制限を守って。ほかの四回転なら跳びまくってもいいということじゃないぞ。練習時間も長ければいいというものじゃない。俺がいないからって好き勝手にやっちゃだめだ。ユーコに見張っててもらうからね。それなら走りたいとか言って深夜まで走らないこと。勇利は身体をやすめることを知らなすぎる。俺の動画や写真集ばかり見てないでちゃんと寝る。さびしくなったら俺のベッドを使っていいから。不安があったらいつでも連絡してくれ。なくても連絡してくれ。何時でも構わない。遠慮なんかするな。それから──」 「もうわかったよ、ヴィクトル」  くどくどと注意事項を並べ立てるヴィクトルに、勇利は笑いながらかぶりを振った。 「これまでヴィクトルがだめと言ったことはやらないようにするよ。長さじゃなく密度の濃い練習をする。ぼくも一応一人前のスケーターだから、自己管理はちゃんとするよ。次に会ったとき叱られたくないしね」 「本当かな?」 「ほんとほんと���  ヴィクトルは勇利をじっと見た。空港の喧噪はふたりを押し包んでいたが、彼らの耳には入らなかった。すぐ近くでヤコフたちロシアチームが「早くしろ」というように自分をにらんでいることをヴィクトルは知っていたけれど、そんなことはどうでもよかった。 「勇利はない?」 「なに?」 「勇利から俺に言っておくことは、何もない?」 「…………」  勇利はかすかにほほえんだ。 「じゃあ、ひとつだけ……」 「なんだい?」  ヴィクトルは勢いこんだ。 「なんでも言ってくれ。どんなことでも」 「…………」 「ささいなことでも。もちろん大きなことでもね。勇利、俺は──」 「ヴィクトル」  勇利が静かに呼んだ。彼の物穏やかな瞳がいとおしそうにうるみ、水際立った輝きを帯びてヴィクトルをみつめた。 「ぼくのこと、忘れないで」 「…………」 「それだけだよ」  ヴィクトルは無言で勇利を抱きしめた。忘れるものかと思った。どうやって忘れるというのだ。もうこんなに、こころの奥に息づいてしまっているというのに。まるでひとつになったかのように……。  ヴィクトルはこぶしを握りしめた。 「……勇利」 「なに?」 「いつか俺におまじないをかけてくれたよね」 「指輪のこと? それはぼくがかけてもらったんだけど……」 「そうじゃない」  ヴィクトルは顔を上げた。彼は情熱的に勇利をみつめ、どうにかほほえんで慕わしくささやいた。 「あれ、もう、とっくにかかってたよ」 「え?」 「とっくに好きになってたよ」  勇利が目をみひらいた。 「おまえを」  ヴィクトルは勇利の腰を引き寄せ、くちびるを重ねた。 「ヴィクトル」 「これは、俺のことを勇利が考えてくれるおまじない」  勇利がまっかになった。ヴィクトルはきびすを返した。  ロシア大会で勇利と離れたとき、ヴィクトルは、半身を引き裂かれるような痛みを味わった。しかし今度は大丈夫だ。いまもつらいことには変わりがない。けれど、あのときのようなのっぴきならない焦燥と苦しみは、もうない。ふたりのあいだには、信頼と、きずなと、約束と、そして深い愛がある。  ヴィクトルはネヴァ川にかかる橋の上で勇利を待っていた。ユーリは欄干にもたれかかり、「おっせーな」とぶつぶつ言っている。しかしヴィクトルの耳には入らなかった。  勇利が来る。もうすぐ。すぐに。さっき「いまから向かうよ!」とメッセージが来た。勇利に会えるのだ。いとしいあの子に。  春にはなったけれど、ところどころに雪がとけ残っており、大気はつめたい。そのせいで耳もまっかだ。それでも頬を上気させ目を輝かせているヴィクトルに、ユーリはあきれたような顔をしていた。 「あ」  ユーリが遠くへ視線を向けた。ヴィクトルははっとして振り返った。すこし髪が伸び、一段と綺麗になった勇利が、マッカチンと一緒に走ってきた。ヴィクトルは口元をほころばせて手を上げた。 「勇利!」  勇利が活発な足取りでまっすぐに駆けてき、勢いよくヴィクトルに抱きついた。 「ヴィクトル!」  彼の瞳がきらきらと輝き、ヴィクトルを見上げた。ヴィクトルは「コーチになってくれるとやろ?」と言った勇利の目のきよらかさ、純粋さを思い出した。 「ヴィクトル、好きだよ!」  勇利が叫んだ。ヴィクトルはびっくりした。勇利は背伸びをし、まぶたを閉じて、ヴィクトルにくちびるを押しつけた。ヴィクトルはよろめき、背中を欄干にぶつけ、そのままもたれかかった。勇利は言った。 「今夜抱いてね!」  ──勇利。きみはやっぱり俺を驚かせるね。
1 note · View note
komyu27 · 6 years
Text
【Complete東名阪ツアー#06(完)】ファイナル東京公演・昼夜公演 2018.4.14 代々木Labo
   
    11th《Future Toy》《アルバム未収録曲》
 
 2018年4月14日(土)一年かけて開催してきた【Complete東名阪ツアー】がいよいよファイナルを迎えた。 同時にDKRの活動も無期限の休止となる。 それぞれが更に輝くための決断と理解していても、やはり寂しさはある。 けれど、とにかく『最後ダカラ楽しもう!』そんな気持ちで会場に向かった。    この日は昼夜公演とも前売りはソールドアウト。 開場前、入場を待つ列の長さに特別な今日を思った。
 昼夜公演ともほぼ開場時間通りに入場。 入場の際、来場者プレゼントとして、昼夜別のブロマイド(3枚セット)が渡された。  どちらもリハーサルや打ち合わせの様子を撮影したもので、ステージ上やサイン会チェキ会でのメンバーとはまた違った表情。 ファンにはうれしいプレゼント。 下の画像がそのブロマイド。  プレミアムチケットは今回ベース&バンマスの笠原佑介くん。
Tumblr media
  会場に入ると、見知った顔の方々でいっぱい。 DKRのライブに通うようになって2年半、ツイッターやライブで知り合った方々との交流も楽しいものだった。 好きなミュージシャンが同じで同じライブを観て感動をともにして、特に言葉にしなくても、繋がるものを感じてうれしかった。  ワクワクと開演を待った。
11th Album《Future Toy》
【01. Emerald Tablet 】  ベース&バンマスの笠原佑介くん、ギターの福田智樹くんの順に登場。 インストゥルメンタル曲で幕が開けた。  オリエンタルな雰囲気のこの曲は、おおらかで柔らかなイメージ。 やや張り詰めていた緊張感がやわらぐ。 歌詞がないからこそ広がるイメージがあり、インスト曲でも伝わる強さは変わらない。 が、それは楽曲の持つ魅力あってこそ。 これもアーティストとしての才能と思う。  佑介くんの奏でるフレットレスベースの流麗な音が心地よく、2人のシルエットを際立たせるように背後から当てられた照明も神秘的で美しかった。  
【02. Future Toy】  アルバムでは1曲目にあたるこの曲を初めて聴いた時の興奮ったらなかった。 ファンとして長いブランクがあったから、発売(2003年3月5日)からずいぶん後になって聴いたのだけれど、好きなアーティストが以前聴いていた時以上に素晴らしい曲を作っていると知った時の喜びは何とも言えないものだった。
 松BOWは、この日の数日前に高熱を出したとのツイートをしており心配していたのだが、颯爽と登場した様子、見た感じは元気そうだったし声も出ていたのでホッとした。 安心して音に、歌声に身を委ね、跳ねた。
 【03. Blow Up】  デビュー当初はとにかくキュートなイメージが強かった松BOW。 私もまだ初々しい年ごろで、セクシーな言葉や描写のある曲に照れや抵抗を感じていたけれど、年齢を重ねるって素敵なことだ。 二十年数年後ファン復帰��てから、それを楽しめるようになった。 がしかし、この日は楽しむなんて余裕は無かった。 松BOWの大人の色香にクラクラした。
 【04. 天使】 『天使』という言葉のロマンティックなイメージを抱いて聴くと、 >どんなに激しい風に吹かれてもいい >どんなに険しい山を登ってもいい など固い決意が歌われており、そのギャップに心掴まれる。 彼をそこまで決意させる『天使』とは…との思いと、私にとっての『天使』とは、との思いが交錯。 この曲を力強く、時に甘く歌う松BOWは本当に美しい。
【05. Cherry Parade】  キュート&ピース。  昼公演では  >ニクらしいヤツは愛のピストルでBang! で松BOWが智樹くんに指でBang!のジャスチャー。 すると、智樹くんがすかさず『ヤラレタ』の表情で、会場は笑いに包まれた。
 夜公演ではバンマス権限?まさかの名古屋公演限定『名古屋体操』が始まり、片足で跳ねながら左右にピョンピョン、そしてスクワット。 名古屋公演に参加したことの無い観客は面食らったのではないだろうか。 でももちろん会場のあちらこちらから明るい歓声があがり、その声に煽られたか?ステージ上の松BOWはこちらが心配になるくらいのフルパワーで動き回っていた。 タフなお方である。  私は先日の名古屋公演が名古屋体操初参加だったけれど、はからずも2度目の参加となり、うれしくてならなかった。 (身体はキツかったが)
 【MC】  DKR最後のライブということで、『今日はすべて出し切ります!』と智樹くんの力強い宣言。 最後なんだとちょっと感傷的な気分になるが、各メンバー自己紹介での松BOWの外国人のキャラにそんな気分も吹き飛ぶ。  今までで一番テンション高く、生き生きとした様子がおかしくてたまらない。 バンマス佑介くんの冷静なツッコミもおかしかった。 ひとしきり外国人キャラでツアーの楽しさを語った後、佑介くんに促され改めて『松岡英明』として自己紹介を始めたのだが、まるで他の誰かが『松岡英明』を演じているかのようなぎこちなさと迷走ぶりに爆笑してしまった。 松BOWのMCって、『さすが!』と感心する時と、『だ、大丈夫?』とハラハラする時のギャップが大きくて、そこも惹かれる理由のひとつ。  このメンバー同士の絶妙なコンビネーションが見られなくなるのも寂しい。
 【06. Mysterious Stranger from Mars 07. LOOK@ME 】  松BOWの作る近未来的な曲が好きだ。 何度も書いているが、彼のフィルターを通して描かれる世界は未知の世界で、ワクワク感半端ない。 【Mysterious Stranger from Mars】はこのアルバムの中でも大好きな曲。 この曲も初めて聴いた時はそのカッコ良さに狂喜した。 中でも愛に向かって呼びかけるサビの部分が特に好きで、歌わずにはいられなかった。(近くの方の迷惑にならないように小声で歌いました)  続いての【LOOK@ME】 この2曲の流れは最強! イントロが流れると会場がますます沸く。
>きみだけに僕を見つめて欲しい
きみだけを見つめていたい、ではなく。 このフレーズに毎回心つかまれる。 ボーカルとギターの掛け合いがカッコ良かったし、 ベースソロもとにかくカッコ良かった。  テンション上がりまくってしまった。
【08. Life in Tao】 『タオ』とは中国の三大宗教の一つ『道教』、老子の教えだそう。(松BOWの今は閉じられたパーソナルアカウントのツイログより) オリエンタルな香り漂う幻想的かつ哲学的な曲。  この日の松BOWのステージ上のパフォーマンスは隙のない完成された素晴らしいものだった。  この曲でも、幻想的なイメージをあの美しい手の動き始め体全体で表現しており(名古屋公演で観た時よりさらに完成されていた)ゆったりとした曲では目を閉じ瞑想するかのように歌う松BOWの姿を何度か観ていたので、新鮮に思った。  活動の無期限停止が決まってから特に何度もファンへの感謝を口にしていたので、観客を耳からだけでなく、目でも楽しませようとしたのだろうかとふと思った。  美しい情景だった。
  【09. Edge of Space】  失礼ながら、最初に聴いた時はそれほどインパクトを受けるでもなく、印象に残るわけでもなかったのに、ふと気づくとサビを歌っていた曲。 >Stay with me,close to me, And hold me under the stars >Stay with me,close to me, And kiss me at the edge of space >With love…
 宇宙という無限に広がる空間に何度も繰り返されるロマンティックな歌詞に、時空を超える愛を感じる。  ライブ中、私は時々目を閉じて聴いたのだが、美しい地球を遠くに眺めつつ、宇宙空間を浮遊しているかのような気分になった。
【MC】  2年半ほどのDKR活動を振り返ってのメンバーそれぞれの思いが語られた。 ほぼ週に1度のライブ開催、その度の新しいチャレンジ。 音楽活動を30年以上続けてきた松BOWだからこその、若いメンバーへの要求。 松BOWいわく『重箱の隅をほじくるように』。 でも、それは佑介くん、智樹くんへの期待への表れでもあると思うのだが、2人にとっては相当に辛いこともあったよう。 それでも二人は懸命に課題に取り組み、それがあってのDKRの実力と人気。  佑介くんの『思いがこもった音は伝わる』という言葉(正確ではありません。そのような言葉。)は深くうなずくものだった。  智樹くんの『(DKRとして活動した)2年半、幸せでした』にも心打たれた。 そして、松BOW言葉。 『1番濃い色の時間を過ごすことができました。だから、感謝の気持ちを伝えたい』 ファン、物販始め各会場スタッフの方々、そして佑介くんと智樹くんにと。  松BOWはソロアーティストとしてデビューし活動してきたけれど、本当はこういう活動がしたかったのかなと思うほど、DKRとしての音楽活動は本当に楽しそうだった。 そんな松BOWを見るのがうれしかった。  最後に『DKRは…最高でした』との言葉、表情から、充実した2年半だったのだと、それはファンにとっても同じだったと、しみじみ��思った。
【10. 百年の恋】  先のMC『DKRは…最高でした』からの《百年の恋》は胸に沁みた。 恋人への悠久の愛を歌った曲だが、この日はDKRのいつかの未来へと繋がる曲に思えた。  松BOWが全身全霊を込めて歌う姿は美しく、汗で濡れた長めの前髪がその表情をさらに際立たせていた。
    *********************
 《アルバム未収録曲》
【11. I Wnna Know Because I Don’t Know】 >「無邪気にそっと近寄っても 鳥が逃げるのはなぜ?」 >そう彼女に訊いたらどう答えるだろう?  このフレーズ始め、上手さ可愛らしさ完璧!  この曲は、ライブSessionsシリーズで観客もコーラスとして加わることが定着しており、私も楽しく参加。 声を合わせる一体感はなんとも言えない。  私事だが、愛犬の散歩中にもよく歌わせてもらっている。 (シングルのカップリング曲《 I Wnna Know Because I Don’t Know(ルパンのための散歩曲)》由来)
 【12. 未来】  イントロで松BOWからメッセージ。 『メンバーそれぞれ別々の道を歩いて、また同じ道に辿りつくかもしれません』 『皆さんの未来が、幸せで素敵で輝いていますように』  今のDKRを表しているかのような曲に、グッと来た。 私の見た限り、涙している方も多かった。
 曲は、《汝子校戦艦シンフォニア ~体験入学 発進篇・下巻~》に収録。 主題歌。
  【告知】  この日のMCにて、智樹くんのソロライブの開催が発表された。 どよめく会場。そして大きな拍手。  Tomoki Fukuda 30th Birthday Solo Live《福祭りー2018- 》
・公演日時 6月10日(日) 開場 / 18:30 開演 / 19:00
・会場 高田馬場 四谷天窓.comfort
・出演 Vocal・Guitar 福田智樹
 チケットは既にソールドアウト。 参加される方は智樹くんのバースデーライブでもあり初ソロライブでもある《福祭りー2018-》楽しんで♫
  そして、佑介くんからも佑介くんプロデュースライブのお知らせが!
  Yusuke Kasahara Produce Live【BASSMAN】
・公演日時 7月29日(日) 開場 / 18:30 開演 / 19:00
・会場 西荻窪Terra
・出演 笠原佑介 and more (詳細は追って発表とのこと)
 こちらもチケットは既にソールドアウト。 出演者の発表も楽しみ。
  松BOWからの告知は……無かったけれど、新たな活動のための休息期間、準備期間も必要と思う。  告知を楽しみに、いつ告知があっても駆けつけられるように、私も心と遠征費の準備だけは整えておくつもり。 (毎月第4土曜17時から生放送のレインボータウンFM『松岡英明のポップランデブー』や、東京ケーブルネットワークの『神保町昭和歌謡倶楽部』〈放送ケーブルテレビ局拡大中。放送日時は各ケーブルテレビの公式サイトをチェック〉には今まで通り出演中。)
【13. If You Want】  こちらは《汝子校戦艦シンフォニア ~体験入学 発進篇・上巻~》のイメージソング。  ギターがとにかくカッコ良く印象的。 ここからノリの良い人気曲が続き、会場はさらに熱さを増していく。
【14. Sweet Baby Baby】  Rock & Sexy!  シングル《コズミック・パズル》のカップリング。 Sweet Babyでもあり天使でもある彼女は、私の中では一筋縄ではいかない堕天使のイメージ。 わがまま気ままで男心を翻弄するような。  でも、彼女の心は誰より純粋で、自分の心に忠実なだけではないのかなぁなどと考えたりしたが……そう! 『彼女の心の中は 神様にしかわからない』
【15. 二人で過ごす他に意味なんかないさ】  シングル《恋はあせらず》のカップリング曲だが、私は数年前にベストアルバム『Is This My Vision ~HIDEAKI MATSUOKA THE BEST IN EPIC YEARS~』(デビュー20周年を記念して企画、発売)で初めて聴いた。  熱々の恋の曲に、遅れて聴いたアラフィフの私はちょっとついていけない気持ちでいたのだが、今や《恋はあせらず》や《素敵な夜、ステキなキス》などと並んで大好きなラブソング。  恋に年齢は関係なーーい!って思わせてくれたDKRに感謝。 この日のDKRはとびきりの熱さで愛を奏でていた。
【16. Vanilla】  言わずと知れた名曲で人気曲。 アルバム未収録なのが残念だけれど、それだけに特別感も。 甘さの中にある、背徳的な印象も魅力的。  情熱的に歌う松BOWに心酔。 ベースの聴かせどころが素晴らしく、こちらもしびれた。
 【17. De Ja Vu】 『東京バビロン2』(CLAMP)のエンディング。 この曲で『松岡英明』を知った人も多いとか。 私は発売当時はファン空白期間の頃で、ファン復帰してからこの曲を知り、『東京バビロン』という作品も知った。 CLAMP作品は少々知っていたのでとてもうれしかった。  大人気曲に会場の熱気は最高潮に!
【18. 世界の果て、時間の終わり】  『ロックオペラ・ハムレット』のために書き下ろした作品。(だったと思う。違ったらご指摘お願いします) シングル《De Ja Vu》のカップリング曲。 ミュージカル舞台で活躍されている頃を全く知らず、ネット動画で拝見できた時は演技をしている松BOWを意外に思った。  私にとっては松BOWは『松岡英明』以外の何者でもなかったから。 けれど、ファンの方々のお話を聞くにつけ、一度生の舞台を観てみたかったと思う。
 この日をもって活動無期限活動休止となるDKRの演奏は、どの曲も最後の演奏となる。 それぞれに特別な思いが込められていたと思うが、特に心に沁みる演奏だった。   全ておしまいだと思った時に、始まることもあると教えてくれた曲。
 演奏終了後、大きく長く続く拍手からのアンコールの掛け声、手拍子も、この日は一段と熱がこもっていた。
  【プレゼント争奪! じゃんけん大会】   アンコールに応えて登場したメンバー。 まずは今回のツアーのお楽しみのひとつ、大好評の『プレゼント争奪じゃんけん大会』。 各メンバーからのプレゼントは
 《松BOW》 JILL STUART の『クリスタル・ブルーム』と『クリスタル・ブルーム・スノー』のヘ���ミスト (昼公演と夜公演どちらが当たるかはお楽しみとのことだった)
 《佑介くん》 昼公演:ルイボスティーとティーポットのセット 夜公演:伝説のバーテンダー福島勇三氏の著書『BARへようこそ 福島勇三のカクテルの愉しみ方』
 《智樹くん》 昼公演:ロクシタンの入浴セット 夜公演:生活の木のコーディアルとさくらのジャムのセット
  またも女子力高いプレゼントの品々に、昼夜とも満員の会場では熱い闘いが。 『グーを出しますからね』なんて予告もあったりして、会場はたいそう盛り上がった。  見事勝ち抜き、プレゼントを手にされた皆さま、おめでとうございます!
Tumblr media
 【素敵なサプライズ】  じゃんけん大会の興奮冷めやらぬ中、松BOWが突然舞台袖に引っ込み、どうしたのだろう?と思っていると、再び登場した時には両手にプレゼントの包みが。  この時の松BOWのうれしそうな顔ったら!(画像参照) なんと!松BOWから佑介くん、智樹くんへのプレゼント!
 読書好きの佑介くんには石村順さんの著作『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』  ギタリストでありながらDKRのあらゆるデザインも担当した智樹くんにはTHE BODY SHOP の癒しセット(ごめんなさい。詳細忘れてしまいました。)  二人とも本当にうれしそうで、メンバー同士の仲の良さが感じられてハッピーな気分になった。
Tumblr media
【アンコール 19. Hello】 《Hello》のMVでは、佑介くんと智樹くんも出演しており、DKR活動はここから始まっていたのかもしれないとの松BOWの言葉に納得。 人の縁とは不思議なものだと思った。  松BOWが柔らかな笑顔で歌っているのが胸に響いた。  DKRの活動が無期限休止となった寂しさが日ごとに募っている今日この頃だが、この曲に、あの時の松BOWの笑顔に、慰められる日々でもある。
 【アンコール 20. Space Rendezbous】  盛り上がる人気曲の定番。 名古屋公演で、この曲が最後の曲と知っていたので、メンバーの演奏を目にも耳にも心にも焼き付けた。 メンバーも観客もこのライブで1番のエネルギーを放っていたと思う。  松BOWの渾身のシャウトが、百獣の王ライオンのように見えた。 アンコールでの撮影OK時の画像を見返しながら、DKR集大成の素晴らしいライブだったと思う。
Tumblr media Tumblr media
  【アンコール 21. あの恋のメロディ】  ああ、終わってしまったと放心しているところに松BOWの独唱。 以前、ファンに向けて作った曲と聞いたことがある。 >もしもこの星に愛がなかったら どんなに世界は淋しかったろう この曲に込められたメッセージの意味は、それぞれの胸に。
  【最後に】  DKRの音楽を通して得られたものを挙げればキリがない。 音楽の楽しさ、可能性、忘れかけていた熱い思い、感動を共有できる友人……。 幸せな、心から幸せな2年半だった。 ありがとうDKR。 最高の時をありがとう。 またいつか聴かせて欲しい。 この決断があったからこその未来を、いつの日かこの目で観たいと願っている。
Tumblr media Tumblr media Tumblr media Tumblr media Tumblr media Tumblr media
0 notes
yakuminoiiwake · 7 years
Text
神々の土地〜ロマノフたちの黄昏〜/クラシカルビジュー
総括!(どの身分でそんなこというんだ)
何度東京へ行ってしまいたいと思ったことでしょうか。タカラヅカにおける遠征デビューを果たすならこの作品だろうかとも思ったのですが、さすがにあらゆる面を熟慮した結果しませんでした。うーん、一抹の後悔が残る。 でも、次の宙組公演こそは東京で観てやるー!とならないのは、まぁ様の退団公演だったから新参ファンであっても気合いは入っていたし、神々の土地が好きだったからなのだろうなと。本当にステキな作品に巡り会いました。(なんか出た人みたいな言い方になったw)
でもその代わりに映画館でみるぞ!と意気込んでの大千秋楽LV。大音量、ドアップの宙組を堪能して、一緒に行った身内の横で号泣してドン引きされるという貴重な経験も11/19に果たしてきました。笑 スカイステージを見出して数ヶ月、大千秋楽の映像をみて思いますが、大劇場→東京にかけての深まり方が全然違うのですよね。今回の神々は言わずもがなというか深まらないワケがないっしょ!くらいの期待感でしたが、全然違って驚きました。 が、やはり映像では感じ得ない迫力があることも知り、劇場に足を運ぶということの価値を改めて知りました。作品の深化だけでなく、オケも東京の方がいいと聞くので、次、もし何か東京で観たい!と思える作品やタイミングに巡り会ったら、一度はあのHIBIYAなるところに足を運んでみたいなと思います。
大劇場で9月末に1回、10月に3回+新公1回。 うち、わりかし前方1回、真ん中2回、天井桟敷1回。新公も天井桟敷。 正直映画でも美術館でもこんなに通ったことないのに、週イチで水分補給かのように「神々を補給しに」ぐらいの気持ちで通っちゃったのは自分でも衝撃的でした・・・(その反動か星組さんには行っておりません) 節約!節制!と言ってはいるけれど、間でBD買ったりロスでキャトル行ったりするからなんの節約にもなってはいないのが辛い。すっかり金欠で頭抱える私の頭の中でアリサちゃんが元気よく叫ぶのです「いいじゃないか!今がよければー!(ラッダじゃなくてアリサモードだよ)」 うん、本当にそう。そういうことにしておこう。アリサちゃんありがとう。
いざ。
神々の土地〜ロマノフたちの黄昏〜
我らが宙色のダイヤモンド、朝夏まなとの退団公演。 このたった1年ちょい通っただけでもトップ退団公演は3回巡ってきて(月・星・雪)今回で4回目。クライマックスは清々しく!明るく!みたいな決まりがあるのかな(船で出航する、仲間みんなとラストシーン、旅に出るみたいな)きっと、最後のはなむけ的な100余年のテンプレはあるかなと感じる演出を見てきました。当て書きの妙というか、面白いところですよね。 でも今回の神々の土地はとにかく終始暗いし、話に浮き沈みはあるけど全体的に低空飛行で重い。クライマックスも寂しさを吹き飛ばして明るく終わるのかと思いきや、寂しくて寂しくてたまらなくなっていくのよ。でもなぜか見終えた気分は清々しいというところの虜にいつのまにかなっていたのでした。 これをアカンと言う方もきっといるのでしょうが、まぁ様×ウエクミ+ゆうりちゃん×ウエクミ=最高。ということでいいじゃないか!(投げた)
最近気付いたのですが、私は宝塚にハマっているという割に男女の愛みたいなところはわりと冷ややかに観ている感がありまして。今回はそれを越えて隙間を自分なりに補わないと深くは理解できないかもしれないようなそんな話でしたよねー。ねー。(ご贔屓様がどストレートに恋してた役だったから見過ごせなかった説もある) なんというか、言葉で語らないところが多すぎるというか、だからこそ語らずとも分かり合っていた瞬間に美しさを感じ、語らなければ伝わらなかった悲劇、語ったがために引き起こされた事件が存在したのだろうなと。
その余白を埋める作業というのがいわゆる「拗らせ」で、寝ても覚めても神々の土地のことで頭がいっぱいという日々を送るはめになったのですよ!うえくみ先生…!
ドミトリーはよく出来た青年でした。でもどこか寂しげで何を考えているのか分からない…本当にイリナを愛しているんですよね?とすら思わされるような。大劇場で観たときはそんな印象でした。今思えば、少し年上らしいイリナにあわせようと背伸びをしていたのかな。孤児だったからしっかりしなくちゃと頑張って来ていたのかな。そんな大人びた青年だった。 でも、LVで観たドミトリーは全然違い、感情で動くところが増えていて、表情がとても人間的に見えました。イリナの前では屈託の無い笑顔でニコっと笑ったりするんだもん。最初からイリナのこと好きだよね。でも、ロマノフの皇子だっていう自覚には満ち満ちてるから、オリガと結婚するのはロマノフのためだよね、と。 どちらがいいかと言われると難しいのだけれど「愛」がテーマなのなら大劇場Ver.が完解で、「国家」とか人々の人生、歴史なども含めるときっと東京Ver.が完成形なのではないかな。最後の「一度呼んでみたかった・・・」のくだりや、旅人ドミトリーの最後の銀橋渡りはもう決壊しましたよ。なんて無邪気に笑うんだ…。ウエクミ先生的にどうだったかは分かりませんが、これが役として生き抜いたまぁ様が最後に導き出したドミトリーだったのでしょうね。 これがまぁ様が常に口にされていた深化・進化だったのかと思うと、本当に素晴らしい退団公演だったなと思います。最後まで前に前に進み続けた。歌もダンスも伸びやかで、芸達者。トップさんってこういう人のことなんだろうなとまぁ様の宙組を見て知ることが出来た私は本当に幸せです。そんなドミちゃんの前進にきっと組子は必死に、でも楽しく食らいついていったことでしょうね。 まぁ様の背中をみて育ち、これからまぁ様の男役像を継承する新生宙組を物陰からこっそり見守りたいなと、まぁ様の宙組が大好きだからこそ思います。他の組に比べたら浅い歴史の宙組だけど、こんな風にいろんな組のいろんなパワーを持ったトップさんの力を継承していったらいつかすっごいミラクルな組が生まれそうよね。生え抜きトップが生まれていないのは、思うところはありますが、宙組には宙組らしさがあり、だから私は宙組が好きになっているのだと思うんです。
さて、お次はイリナ。ゆうりちゃん。 LV当日、池泉の前を通ったらくらっちにポスターが変わっていて泣きそうになりました。(くらっち、あとはよろしく…)トップではなかったけど、確実にこの数ヶ月はあなたの時代だったよ。公式に語り継がれることはないのかもしれないけれど「娘役怜美うらら」の最後の勇姿がぎゅっと詰まったこの作品は、宝塚ファン生活の中でも深い思い出になったのは言うまでもありません。 役を選ぶ役者さんだったかもしれないけれど、ウエクミ先生に、劇団に、この作品を書かせ、彼女が演じたこの「イリナ」が麗しのヒロインとして作品をしっかり彩ったということはまぎれも無い事実でしょうね。 多分、外部を探せば「イリナ」を演じられる役者さんは大勢いらっしゃると思います。でも宝塚歌劇団という狭い世界で、イリナのあの憂いや艶やかさ出せる役者はそういないのでは。タカラヅカ的には怜美うららはある意味ギリギリな娘役なのかもしれませんよね。娘役って呼んでいいの?みたいなね。全員女性の歌劇団の中でも群を抜いて「女性」だったと思います。乙女とかじゃなく。 そのギリギリを攻める感じが見ていてハラハラしつつも楽しかったし、きっと作る側としても起用するのはワクワクしたんじゃないかな。 かと思えば喋ったらゆったりのんびりしていそうだし、キレイなのに謙虚ってなんだいなんだい。これから広い世界に羽ばたいていかれるのですよね。まだ若いもんね。確実に年下なんだけど少しその色気分けてほしい…いや、むしろ私の中にミジンコ程度の色気があるとしたら全部あげるから大活躍してほしい…うーん。脱線。
お次はしーちゃんかな。 アリーナは本当に美しかった。才色兼備?合ってる?もう退団の挨拶とかからも育ちの良さと頭の良さがにじみ出ていて、しーちゃん…アリーナ…っていうかしーちゃん!と目眩いがしそうなくらいステキな女性でしたね。フェリックスの永遠の片思いも受け止めた上でユスポフ家に嫁いだであろうロマノフの血をひく強い女性。ジナイーダとクセニヤだけだと多分めっちゃ濃かったと思いますが(大好き)爽やかさを添えてくれていました。 しーちゃんはエリザのリヒテ���シュタインを見て、この子が絶対実力派!と決めつけていたくらい自分の中では大ヒットな娘役さん。でも私なんぞが見始める前からいろんな役と出会い、自信をどんどん高めて行く中で作り上げられたリヒテンシュタインだったんだなと特番を見て知りました。若手の娘役さん達にも歴史があるんだよなぁ…あぁーもうこんなんしてたらいつまでも沼から脱出できないよね。まあいっか。
ありさちゃん。ラッダ最高でしたよ。一人の女性として強くたくましく生きている姿、あの時代のロシアの民衆の境遇や状況は何も知らないけれど応援したくなる。最初の「土よ」を歌い上げた後の晴れやかな表情が大好きでした。多くは描かれていないけど、コンスタンチンが惚れてしまうのが分かる、そんな魅力的な女性だったと思います。逢瀬のシーンでマイク当たる「どごっ」って鈍い音がする度に全力で抱きついてるわ(ノ∀`*)キャッ と微笑ましかったし、キスシーン(しかも!ラッダからの!)のたびに私の頭の中ではあっきーをお祝いするくす玉が割れてお祭り騒ぎなのと共にありさ感謝祭が催されてたし、襲撃のシーンでは早くツィンカを出て!どうかコンスタンチンと一緒に逃げて!と見る度に胸を締め付けられて号泣するという忙しい観客Sをさせていただきました。ありがとう。 大人な女性も、カワイイちょっとおばかな彼女も、カッコいい女性もなんでも出来ちゃう。それが彼女の魅力。スカステ出ても男役さんをしっかり立てられるし、あっきーのお茶会エピソード見てても娘役ってそこまでするの!!??と驚愕するし、本当にザ☆娘役なありさちゃん。あぁぁああぁぁ…もういないのか…寂しい…
真風(これ未だになんとお呼びすべきか考えあぐねているのです…ゆりかちゃんって呼ぶとなんか冗談ぽいというかさ…←失礼w なんて呼ぼうか悩んだ結果よびすてっていうめっちゃ失礼な状態になっています) フェリックスは母のジナイーダ共々本当に物語の本筋とは違うところで筋が通っているというか、あまり関係ないところ(実は全然関係なくはないのだけど)わちゃわちゃとレンブラントだイコンだ美しいものには価値があるのだと言っているのが物語が暗く暗くならないように陽の方に引っ張ってくれているようでした。宙組のトップと2番手のまぁ様とゆりかちゃんのように、この作品の全体のバランスを取っていたのはドミトリーとフェリックスの関係だったのかもしれないなとも思います。だからこそ、東京でのドミトリーの変化を感じられたからフェリックスも何か立ち位置変わっていたら面白かったのになと思う部分はあるのですが、難しい。本当に、落としどころの難しい立ち位置のキャラクターだっただろうなと。永遠の片思いなうえに腕っ節弱そうなのにラスプーチンからイリナ守ろうとするし、拳銃使えないのに襲撃現場に入って行くとか、もうネタでしかないけど、それをさすがフェリックス・ユスポフ侯爵wwとわりと力づくで納得させてしまうのは真風涼帆のパワーだと思うので、どんなトップさんになっていかれるのかがめちゃくちゃ楽しみです。 余談ですが、我が家では妹がゆりかちゃんの独特な節の真似をしやがります。全然似てないけどw口の動きが独特なのだそうです。歌い方とかもクセあるよね。ダンスもまぁ様とはタイプが全然違っていたので、どういう組になっていくんだろうなー。ハラハラドキドキワクワク。
まどかちゃん。初めてまともに見たのが全ツのマルガリータだったので、ああいう愛くるしいヒロインを絵に描いたイメージの子なのかとばかり思っていたのですが、意外と強い女性が似合う娘役なんですよね。今回の皇女オリガ様はトップ就任を控えた娘役の集大成としては素晴らしかったのではないかと思います。幼さもにじませつつ、一人の女性、あるいは娘としての成長、あの短い時間の中でいろんな面を見せてくれました。この物語は一人一人の描かれ方が濃いので、だからこそ誰かの行動によって揺らぐ心の動きが大きいのですよね。そんな描写も他の上級生たちと並んで堂々と演じられていたのは、これまでの大抜擢に応え続けたまどかちゃんだったから出来たことだと思います。ドミトリーの優しさに触れて生まれた恋は裏切られ、追い込まれた母の決意を共に背負うという…イリナとは対極にある悲劇のヒロイン。強い女性だったけど、見ていて辛かったなぁ…LVでポロポロと涙を流しながらアレクサンドラと向かい合っていた姿には泣かされました。新生宙組の新しいお姫様として、どんな成長を見せてくれるか、とっても楽しみです。
ラスプーチン。キワものが続く愛ちゃん。ご本人がどう思っておられるかは分かりませんが、どんどん愛月ひかるとしてのキャリアが深く深くなっていっているのをほんのちょっとしか見ていないのに感じられるし、本当に彼女は宙組の宝ですよね。階段落ち(違)極めちゃったり、桃を桃らしくじゅるりと食べることを追求しちゃったり、ヅラ取れても気迫で乗り切ったり、完全に殻をやぶけている感が出て来たというか、若干専科み出て来ちゃっていて組み替えで専科とか無いよね???と心配がなくはないのですけれど…とりあえず不滅の棘が楽しみでしょうがない。期待しすぎかな。 キキちゃん好きなのに、うれしいけどなんでこのタイミングなのさ!と思ってしまうくらいに愛ちゃんも好きなので、今後に期待です。天河の役は正統派な男役でそろそろお願いしたいなー。
ずんちゃんのゾバール。民衆のリーダーで革命家。新しいずんちゃんを見られた公演でした。かわいい、弟感、若さ溢れる、そんなずんちゃんは知っていたけど、革命のかける大きなエネルギーで人を惹き付ける、バウを経て大劇場でも中心に立てる男役さんなんだなと思いました。大柄な男役さんばかりの中で目立つのですが、それをプラスに変えて輝いているし、コンスタンチンとの身長差はゴメンナサイ。控えめに言っても最高でした。ポジション的にあっきーさんがゾバールの線ってなかったのかな…なんてぼんやり考えたりするのですけど、あの対峙する場面をみると「やっぱこれだね〜フフンフフンフン♪(byソラカズキ)」的納得が生まれるのですよね。身長面以外でもゾバールはニンだったと思うし、マキシム&エルモライの3人組の絵面も最高でしたよねー。 ただ、私はゾバールを最後まで人間と思えませんでした。最後の総踊り、ゾバールはカゲソロなので出て来ないわけですが、それも影響あるのかな。ラスプーチンは死後影になってゾバールにまとわりついているけど、ラスプーチンが煽動しているというよりもゾバール自身が民衆の怒りそのもので、革命への波そのものであり、ラスプーチンの死というものを取り込み大きなうねりとなった。そしてあの歌であのシーンなのではないかと思っています。だからもしかしたら革命が起こりロマノフの時代が終わった時にゾバールは消えてしまったのかもしれないなと。ミーチャやラッダはもういないし、両親がデモで殺されてから革命の為に生きていた彼にとって、革命が達成されれば生きる意味も無くなっていたかも。そんな風に思うと寂しいけれど、歌声だけで姿はなかった彼もまた神々の土地に帰る存在なのだなと考えを巡らせてしまうのです・・・考え過ぎかなー。
書く順番に困るな。でも残しておきたいのはロマノフの人たち。ニコライ、母マリア、そしてなによりもアレクサンドラ。 LVでアレクサーンドーラーアレクサーンドーラー♪で入場してきたときにニコライに「行きたくないわ…」と言っているのが分かったのですよ。あおいさんが「地味で神経質なアレクサンドラ」と歌っているんです。もうこんなに美しいのになぜそんな歌詞が付くのかしらとアンバランスさにクラクラしていました。わりと変わった役やおいしい役がまわって来る芸達者なりんきらさんですが、翼のベートーベン?に続き、ウエクミ先生から全幅の信頼を得てますよね。女役は初めてだったのかな。大劇場の千秋楽のまぁ様の入りを見に行った時にりんきらの美しさに衝撃をうけましたもんね。もともとおキレイなんでしょうけどね、アレクサンドラ引きずってたよねきっと。 アレクサンドラは今回の登場人物の中で一番寂しい、一番自分を閉ざしていた人物でしょう。
さてさて、ドミトリーの友達ーズ。コンスタンチン・スモレンスキーとウラジーミル・ボルジンとロマン・ポチョムキン。コンスタンチンは最後にしようかな。
0 notes
doisvolante · 7 years
Text
2016(夏)-2017(春)艦これ同人誌の紹介文まとめ (第13回 よつばの。読書会 より)
はじめまして、艦これ大好きおじさんさわだです。
この記事は2017/6/10(土) に行われた「第13回 よつばの。読書会」 という「みんなで面白い同人誌を持ち寄って、読み、語り、楽しもう」という趣旨のイベントにて「こんな面白い 艦これ の同人誌があるんですよ!」という、自分の偏った嗜好により持ち込まれた艦これ同人誌の持ち込みリストと「気持ち悪い紹介文ですね」っと言われた事のある、クドイ紹介文をくっつけました冊子を配ったものの電子の海に放流版となります。
読書会に来るという「意識の機関一杯」な方が多く訪れる方々に知識の無い自分が訴えられるのは熱意だけだと思い、異常なテンションで書かれた節足な紹介文でとっても説明不足なのですが、参考というかなんというか、まあ同人誌という「一期一会」の刹那的な情熱を閉じ込めた薄く熱い本を紹介できたら良いなあと思い毎回長い紹介文を書いています。
今まで読書会に持ち込んだ艦これ本のリストはこちらです(3回分:121冊)。
特に反響があったわけじゃないんですが、自分への戒めも含めて電子の海に放流しようと思います。
何か夏コミや面白い艦これの同人誌を探してる人の一助になれば幸いです(ならんか……)、と思いながら「プププこの同人誌知らないなんて……とんだマリアナ沖の七面鳥野郎だ」なんて思われた方などいらっしゃいましたら是非ご連絡ください!
Twitter:sawad04
No.タイトル サークル名    作家名   1 女装少年 萩風君 盛岡社中 星ナオスケ  2 ハッピーリバースデー トゥユー サ変 和紅   3 長門とシンゴジラ+@ 底物水槽 鷹月ナト   4 よもやま通り よもやま通り めごちも 文絵 ちーくん いりじゃこ   5 坊の岬の総集編 炯々 小林蕪   6 裏庭の花が咲く頃に 下北沢モラトリアム ウラー   7 Mechanized 乙種要員戦闘録 要塞都市国家 ※Kome  8 提督の科学 建造と修理 Nippak honda yuki  9 Vですわ!猛虎熊野と鈴谷さん AQUARIA 水田ケンジ 10 陸上の軍艦 見知らぬ姉と記憶の居場所 甘味寮 押蔵満重 11 お母さんってどんな人? 拍子木 べっちゃん 12 去年ルノアール鎮守府で 瑞鳳ちゃん来る 小書会 湊谷 康司 13 君の海を越えてゆく 0324製作所 Law 14 花信の嵐 つみきの帝国 しめぎ 15 巻き込み予防対策お願いします! 馬小屋 よいち 16 終の隣人 離陸点 夏見こま 17 浅草フレンドリーインフォメーション 105R Meet 18 ツインテールにさよなら solobon. そろぼ 19 ENGAGE 全艦出撃 争奪MVP サシミノワイフ しでん 20 Merry Log 2 ume 21 ローレライ外伝 んじゃめな本舗 磨伸映一郎 22 想いではなび 未来工房 MASATO 23 深縹 ALSeTRO ぎゃりん 24 ちょっとそこらでお茶でもどうですか ねこのほそみち 日向雲雀 25 N42°50’33” E131°41’21” 人間ごっこ 耳 26 此れは或る冬の話 coca カロ村 27 やさしい冬の日 しゅーまい 28 小さな鎮守府の山時雨 百葉箱 北村鳩 29 ずいかくちゃんのいちにち あげくの果ての よひ 30 青葉レポートとその後の話 preview 鹿乃子 31 トイレの瑞穂ちゃん(仮) laika 六海 32 きみがいない夜 こっこ後援会 totaro 33 秋月のごはんですよ! umi no muko uni 生足 34 艦娘特科運用手引キ書 ブーゲンビリア 弓弦花 八鳥 35 荒潮ちゃんの仰せのままに Harumori 森永ミキ 36 オモイツキ ラクガキ lowlife kashmir 37 あれこれ けふあす じゃこ
1 女装少年 萩風君 盛岡社中 星ナオスケ 2016/06/26
Tumblr media
タイトルと顔を隠して「秘密」を見せつける萩風の姿が印象的で、作者のいつもの「あれ、これSHIROBAKOのアレでは?」とか「今度はどんな艦娘がコミケに行くんだろう?」とポップな絵柄に合わせた、軽快な物語が展開されるのかなあと思ってページを開いてみると、あら不思議「にっ人間椅子かぁ」っとそこは江戸川乱歩よろしく淫靡な感触の世界。ある鎮守府で無能と罵られ「轟沈の疫病神」と忌み嫌われる提督が居ましたが、彼はひょんな事から秘書官である「萩風」に女装して、「艦娘」として扱われることに悦びを見出し、冷静でお淑やかで貞淑である「萩風」の秘密を知ってしまう。
人間椅子よろしく、三人称の突き放した語り口で語られる女装に取りつかれた提督の話、嗚呼なんと甘美な「秘密」の味……って感じでちょっと萩風とこういう「性の快楽にはめっぽう弱い一航戦」との秘密を知った提督が余韻無く「秘密」で萩風を「轟沈」させる本書はとっても駆逐(DESTROY)でお気に入りの一冊でオススメ(江戸川乱歩って聞いて怪人二十面相じゃなくて人間椅子を思い出す人に)だよ!
2 ハッピーリバースデー トゥユー サ変 和紅 2016/08/13
Tumblr media
制服が揃ってて、妙に「宝塚か!?」って感じの、男役・女役がハッキリしている嵐・野分・萩風・舞風の第四駆逐戦隊の中でもトップスターの男役である嵐と野分が輸送任務中に会敵して、不利な状況ながらも友情パワーで勝利するって感じの前半と後半の入渠中にお互いいつ沈むかわからない状況(駆逐艦・南洋_輸送任務は帝国海軍必殺の死亡フラグ)での戦闘の中で、お互いを思う気持ちを確かめあう姿は正に「愛」。
っと勝手に妄想しちゃうくらいカッコイイ野分と嵐が見られて大満足ですが、個人的には野分が妖精さんの力を借りて、洋上にドラム缶を固定してその上で海図を引く姿が、貧乏くさいけど艦これっぽい感じで、しょっちゅう羅針盤で迷っている艦娘も一生懸命頑張っているのだなあと思わせてくれたりして、とてもよいですね。
3 長門とシンゴジラ+@ 底物水槽 鷹月ナト 2016/09/11
Tumblr media
ゴジラっていっぱいいるけど、この本で長門とプリンツオイゲンと酒匂が飼ってるゴジラは正しく正当な血筋のゴジラで、まだこの頃はサラトガが実装されていなかったので出て来ないけど、クロスロード組がゴジラと仲良しなのはこれまたどういう理由で……っでタイトル通り長門が海岸で見つけたシンゴジラは見事に第四形態になり、その溢れる対空能力で加賀さんの艦載機の熟練度をツァって削り落としていく……イージス艦より防空能力高いシンゴジラにレシプロ機ぶつけても敵わない! シンゴジラは浜で放し飼いしちゃダメ、ゼッタイ。
って感じの良い感じのゴジラ愛溢れる本ですので、読んでるとまた機龍シリーズ見直したくなっちゃう!艦これの本じゃないのかって、みんな戦艦とかゴジラとか大きいのが好きだから大丈夫。pixivで全文公開されてるんですけど、コピー本ゲットしたぜという自己満だけでリストアップしたんじゃないですよ!
4 よもやま通り よもやま通り めごちも 文絵 ちーくん いりじゃこ 2016/09/11
Tumblr media
「特徴的な短編」が並ぶ合同誌で一緒に砲雷撃戦に参加したはいふりカメラマイスターが「めごちもさん良いんですよ〜」っと言うので店番任せてノコノコと(スリガオカ海峡に突入する西村艦隊みたいに)買いに行きました。
1本目の文絵さんの「流星際」は大潮がテンションアゲアゲで夜空の下、歌い踊りその後静寂と共に訪れる「流星」を艦娘達が見上げる姿に心打たれる秀逸なお話、2本目のちーくんさんの吹雪型の素朴で暖かい感じのイラスト、いりじゃこさんの北上さんが助けたユメゴンドウイルカと一緒に商店街を歩く話しと続いて最後はめごちもさんの唐揚げが大好きな神通が唐揚げ食いすぎるだけなのになんだか凄く神通っぽいなあ、花の二水戦っぽいなあとか思ったり、一緒に買い物に付いていく朝霜のやんちゃ坊主感とか凄く良いです。
5 坊の岬の総集編 炯々 小林蕪 2016/12/29
Tumblr media
「沖縄に突っ込んできて」と神(重徳)の無茶振りの末に大和を旗艦とする水上特攻部隊が編成されて出撃、作戦の初動から特攻艦隊の動向を把握していた米軍機動部隊の迎撃を受け、旗艦大和、軽巡矢矧、駆逐艦朝霜、浜風、磯風、霞が沈み、帝国海軍最後の大型水上艦艇による組織的艦隊行動は何の成果も上げる事無く多くの命が無為に散った。
大和が撃沈された場所から「坊ノ岬沖海」と呼ばれる顛末ですが、このように坊の岬と聞くとその悲劇性などから多くの物語が語れてますが、この「坊の岬の総集編」はそんな坊の岬海戦に参加した坊の岬組が仲良く語り合う姿がなんとも可愛らしく、そして史実を背景に主人公雪風が過去の悲劇を振り返るという話しになっております。
特殊な判型(縦長)と相まって、なんとも不思議な読後感がする本です。
6 裏庭の花が咲く頃に 下北沢モラトリアム ウラー 2016/09/11
Tumblr media
陽炎ってお姉さんキャラで描かれる事が多い気がするのですが(19人姉妹の長女として)、本書のように陽炎という名前の通り「幻影」として、なにか明るい元気な姿になにか隠している感じがしたりして、流石はネームシップは伊達じゃ無いなあと思うわけですが、本書は陽炎が疑問���思う「この世界」艦これの世界に対して、同室の、一番近い姉妹の不知火に「このくり返される世界」に対して抜け出したいと問う姿が描かれていて、なんとなく自分の勝手な思い入れだとわかっていても、戦場では「消耗品」扱いの駆逐艦、艦隊型駆逐艦の儚さを本書に感じ取ってしまって、駆逐艦っぽいなあと思ってしまうのです。
消えようとする陽炎と維持しようとする不知火。本書の最後に見せる不知火の驚いた顔と陽炎の笑顔が対となって印象に残る陽炎型駆逐艦なお話の素晴らしい本です。(二人だけだとどうにも硬いので黒潮〜すぐ来てくれ〜!!)
7 Mechanized 乙種要員戦闘録 要塞都市国家 ※Kome 2016/09/11
Tumblr media
独自解釈の簡易型艦娘「乙種」を装備する艦隊が、深海棲艦跋扈する北の海で海上護衛に奔走するというフルカラー(総天然色)の本。
描かれる北海はパーフェクトストームよろしく、あれくるう波浪が山の様にせり上がり、さらにその波間からは巨大なヲ級が!?か コイツは「クラス4」のカイジュウだ!? 出撃セヨ「ディプシーデンジャー!」って違う話ですが、そんな感じのハリウッド感溢れる描写が秀逸で、一本の映画を読んでいるような読み応えがある本書は最高です。
8 提督の科学 建造と修理 Nippak honda yuki 2016/08/12
Tumblr media
艦これに紐付いて軍艦の知識を学べる本は多く発行されてますが、まさか「リベット打ち」を学べる本が出るとは艦これおじさん的には大興奮してしまって。何度も読み返しました。そもそもリベット打ちは昨今の電気溶接の発達により廃れた技術で、今の軍艦や船舶の建造には殆ど使われてない筈、そもそもリベットは船体を鉄で作っていく課程で鉄で作ったパーツを組み上げる際のパーツパーツを穴を通してリベット(杭)でつなぎ合わせる工法で、この「提督の科学」を読んで頂ければわかるんですけど凄く面倒な作業で、これを戦艦大和だったらそれこそ何十万本打ち込んで巨大な船体を組み上げていく、さらには戦艦クラスになると装甲板(アーマープレート)も重く厚くなる(そりゃあ音速近い速度のエネルギーを持った46サンチ砲弾を弾くためにあるんだから)のでそれを組み付けていく作業は大変困難なものになるので……と理屈は知っていたけど見た事無いリベット打ちを忠実に再現しながら見せてくれる本書は最高だって盛り上がれる艦これおじさんはそんなに居ないでしょうけど、そういう人には読み応えがある本です!
リベット打やリアル建造レシピなどに興味が無い人は今野さんの丁寧に描き込まれた素敵で可愛らしいイラストを堪能しよう!
9 Vですわ!猛虎熊野と鈴谷さん AQUARIA 水田ケンジ 2016/08/13
Tumblr media
自分はサッカーは海外・Jリーグ共に大好きですが野球には全く興味が無い!ビックリする興味が無くて、埼玉に住んでいるのに周りには広島ファンしかおらず、大体セリーグの情報しか入ってこない、そんなボンクラでも本書は熊野という艦これ重巡クラス随一の神戸生まれの庶民派航空巡洋艦が地元の球団「阪神タイガース」を応援する本書は読んでてとても健やかな気持ちになり、一球一球相変わらず変なテンションで応援する熊野、そんな熊野に野球には全然興味が無いけど人間が出来ているので付いていってあげる鈴谷のツッコミ。
ただの阪神応援漫画かと思ったらちゃんと最後鈴熊してる辺りがとってもVやねんな本ですね! (交流戦前に阪神が首位と聞いて鈴谷さんも「マジビックリなんですけどー」)
10 陸上の軍艦 見知らぬ姉と記憶の居場所 甘味寮 押蔵満重 2016/09/11
Tumblr media
この作者さんはどちらかというと「一航戦が居る鎮守府」シリーズで、可愛らしいデフォルメされた一航戦で、よく喋って説明してくれる赤城さんと全く喋らない無口な(そもそも口がない)加賀さんの軽妙なやり取りが楽しい本を思い浮かべる人が多いかと思いますが、本書は少しだけ等身の上がった絵で、まだ翔鶴が来ていない鎮守府で瑞鶴が翔鶴の姿を思い出せずに、過去の記憶に悩まされるという導入から始まっております。
独特のデフォルメされた絵で綴られる本書は絵本みたいで、瑞鶴の姉の翔鶴の顔を思い出せない苦悩が痛々しく、それを助けようとする先輩の赤城さんと加賀さんの一航戦コンビと瑞鶴のやりとりなんかは読んでいてそういう関係もありだなあとか、あっ加賀さん喋ってる! とか色々と考えてしまったりして、読んでて面白いです。
コミケでコピー本を買いにいったら既に無く、自分はとんだ一航戦のうっかりした方だ!と悲観に暮れましたが、後日このオフセット版が出てコレはコレでミッドウェーの仇を第二次ソロモン海戦で討つという事で良かった良かったです、ハイ!
11 お母さんってどんな人? 拍子木 べっちゃん 2016/09/11
Tumblr media
可愛らしいデフォルメの効いたイラスト調の表紙と、小さい子供の第四駆逐戦隊が動き回る話しで、加賀さんに紙を結って貰う為に早起きしてソワソワする萩風と、寝坊して起きても髪はボサボサのままの嵐、そんな二人を驚かそうと押し入れに隠れる舞風、そんな舞風に付き合って押し入れに入っていたら暗かったのでまた寝始めた野分。
バラバラな個性の四駆を中心に、空母寮へと突撃していく萩風が色々な艦娘に会いながら「そういえばお母さんてどんな人?」って聞きながら話しは展開して行くんですけど、結局萩風をお茶を飲みながら待ってる加賀さんが丁寧に萩風の髪を結って上げる姿がとっても「お母さん」感が出てて良いなあと。色々な艦娘が出てて、なかなか読み応えがある本です最高か。
12 去年ルノアール鎮守府で 瑞鳳ちゃん来る 小書会 湊谷 康司 2016/09/11
Tumblr media
表紙で全て持っていく感じの本書は正にオンリーイベント会場を遊弋してたら触発機雷に触れてしまったような衝撃を持って思わず手にとって買ってしまいました。内容は……内容よりもあの灰色の背景、使い込まれた緑色の椅子に座る瑞鳳のインパクトの方が大きくてあんまり内容が頭に入ってこなかったっと言ったら大変失礼なのですが、本編もなんだか他の艦娘と微妙な距離感の大淀とか、真面目にお姉ちゃん仕様とする瑞鳳などしっかりと描かれている快作です。あと最後に瑞鳳が「戦艦が活躍している飛行機の無い世界が舞台のアニメ」の事で腹を立てたりするところが最高。
13 君の海を越えてゆく 0324製作所 Law 2016/09/11
Tumblr media
これが2016年一番熱かった本ですかね?
理由はまず、今まで散々自分の老後の蓄えを削って艦これの本を買ってきましたがこの本で初めて提督室に掛かっていたレインコート(家具コイン1800枚で購入できる)をちゃんと艦娘が着て外出しているところに衝撃を受けました。
確かにこのコート着てれば金剛とか外出して鎮守府の外に出ていくのは問題が無い! クッソ全然気が付かなかったって感じで膝を打ったのですが、早々にそんな事はどうでも良くなる程に表紙のカッコイイ金剛と頑固で融通の利かなそうな提督と、その周りで自分達の使命を全うしようとする浜風や他の艦娘達の物語に引き込まれます。主人公の提督は妻が元金剛達の提督で、深海棲艦との戦いの中で命を失い、その死を嘆き酒におぼれてしまいます。それを元妻の秘書官だった金剛が、老提督の助言に従って提督の任務に就いてもらうように自宅に訪ねるところから物語は始まるんですけど、金剛が物語を結構引っ張って行く本って何だか久しぶりだなあって、提督が居なくなった鎮守府で金剛がリーダーシップをとってみんなを引っ張って行く姿が男らしくて、こんな色物外人キャラじゃなくて男らしい旗艦先頭、見敵必殺な金剛がめちゃくちゃカッコイイ。���と人見知りっぽいけど真面目に任務を全うしようとする浜風や、主人公の元妻を守れなかった大井さんがベットで傷付きながらおにぎりを食べて「腹が立つほど美味いわよ……」っと悔し涙を流しながら飯を食い復権を誓うシーンとか凄え男前な艦娘だらけの鎮守府だなあと読みながらニヤニヤしてしまいました。
物語はもう一度悲劇を乗り越えて進んで征く提督と秘書艦の金剛と仲間達の姿を描いているのですが、表紙の絵からも伝わる熱さがこの本の魅了なのかなあと勝手に思う次第です。
何故戦うのか?
水面に沈むかも知れないのに何故艦娘は海を越えて征くのか?
海ゆかばの歌詞に「海を行けば、水に漬かった屍となり、山を行けば、草の生す屍となって、大君のお足元にこそ死のう。後ろを振り返ることはしない」とあって自己犠牲を強いる酷い歌詞だと思う反面、ふと本書に描かれる艦娘の様な勇気があれば、犠牲の上に掴める何かがあるのかと感じてしまいました。
本当の海の広さを知るには海岸から離れなくてはいけない。勇気のない時代に本書はふとそんな誰かの言葉を思い出させてくれて、胸が熱くなる本でした。
14 花信の嵐 つみきの帝国 しめぎ 2016/08/13
Tumblr media
艦娘が「艦娘」として育てられた説があるとおもいますが(kirusuさんとかね)、この本もそんな説?にのっとて翔鶴姉妹が田舎の屋敷の中で大事に、隠すように育てられている所から話しが始まります。勝手に先に行く瑞鶴を追いかけているウチに下駄の鼻緒が取れてしまい、困っているところに現れたのは海軍航空隊に所属する兄を持つがまだあどけない少年で兄と同じように戦闘機の操縦士に憧れていて、後に翔鶴の航空隊に所属する事になる二人の幼い日の邂逅が描かれています。
オリジナル要素が強く表紙の包帯姿の翔鶴の儚げな姿とモノローグに綴られた幼い「艦娘」の記憶を紐解いていく感じが大好きで、読んでて面白いです!
翔鶴ってそういえば傷つきやすい不幸キャラだった事を思い出しながら、いまや立派な装甲空母になって機動部隊のエースとして重用されるようになって、立派になったなあと思いつつ、今月も5-5でレ級の魚雷一発で大破撤退かぁ。
でも翔鶴型が大好きだか許しちゃう、そんな翔鶴型大好きおじさんにぴったりの、帝国海軍最高武勲艦の美しいくも儚い姿を目に焼き付けられる最高の本です。
15 巻き込み予防対策お願いします! 馬小屋 よいち 2016/12/29
Tumblr media
大和×鳳翔だよ全員集合、はい解散! 
鳳翔さんが好きな大和と大和が好きな鳳翔さんの間に挟まれた矢矧が、二人の大願成就に奔走するという、一番大きい戦艦と一番小さい空母の中を取り持とうと軽巡だけど重巡並みに色々と大きい矢矧が頑張る姿に「流石最新鋭軽巡は違うなあ」と思う訳ですが皆さんは如何お過ごしでしょうか?
僕はこういうクールな装いの矢矧が世話焼きまくる話しが大好きです。これはもしかして大和×鳳翔に艤装した「頑張る矢矧ちゃん」本だったのでは!?
16 終の隣人 離陸点 夏見こま 2016/12/29
Tumblr media
戦いが終わってひとりで海岸沿いの家で暮らす雲龍の元に流れ着いた集積地棲姫と二人で暮らし始める日々を淡々と描く作品です。
夏見こまさんと言えば「鳳翔さん」のイメージが強いですが、この艦娘一のファンタジー風味(ゲーム・オブ・スローンズ的な)の雲龍とか、一番生活感が溢れる深海棲艦である集積地棲姫の描き方も独特の絵柄も相まって、どこかほのぼのとしつつ寂しげでもあり、愛おしくて読んでて面白いなあと思いました。
17 浅草フレンドリーインフォメーション 105R Meet 2016/12/29
Tumblr media
ウォースパイトって戦いあるところに必ず居たと言われるWarmonger(ウォーモンガー)、戦争屋ですが、クイーンエリザベス級という事で女王さま気取ってたりしてるんだと思うんですけど、でもイギリスの王様って進んで戦場に出て行ってよく討ち死にしてるからなあ、ウォースパイトもドイツ駆逐艦が沢山居るフィヨルドの中に突っ込んでいったりしてるところが英国の王侯貴族の気風みたいなものなのでしょうか?
そういう話しとは全然関係ないんですが、本書は「金剛がウォースパイトを連れて浅草観光する」というこの主題だけでユトランド沖海戦級約束された勝利なのに、内容も金剛が和スイーツの嗜みを教えると素直に感動するウォースパイトが可愛いなどなどとっても最高です。
18 ツインテールにさよなら solobon. そろぼ 2016/12/29
Tumblr media
前にTwitterでこの本の感想を「これもプロ推奨の最高のグラーフ・ツエェッペリン本 プライドの高いドイツ艦がアドミラルにツインテールをバイエルンしてもらうためにマインツするつもりがドルトムントしちゃう感じでとってもダンケ・ダンケな本でした、最高」って書いて、改めてこの感想を読み直して「気持ち悪いな」って思って、反省してるんですけど、そんな感想が出て来ちゃうぐらい、すこし挙動不審気味で引っ込み思案だけど提督の事が大好きなグラーフ・ツェッペリンが読める本書はまさしくドイツ万歳!(Heil Deutschland!)
19 ENGAGE 全艦出撃 争奪MVP サシミノワイフ しでん 2016/12/29
Tumblr media
加賀さんが全ての戦いを終わらせる為に持ち出すのが「加賀メガランチャー」つまりハイパワー・メ加賀ランチャーっというワケですね! 自分はだいたい赤城さんの為にという名目で欲に目が眩んだ加賀さんが出てくる漫画に弱いのですが、本書も色々な艦娘が「MVPとったら何でも貰える賞」の為、潜水艦が戦艦を闇討ちし、駆逐艦が潜水艦を葬るドッタンバッタン大騒ぎが楽しく読めます。そして最後に正月年越し明淀二人暮らし漫画がこそっと入ってて、一冊で2度美味しいしようになってますね、最高。
20 Merry Log 2 ume 2016/12/29
Tumblr media
鈴谷と熊野が街に行ってオシャレしながら買い物して帰って来る話しです。鈴谷と熊野の服のセンスがギャル系と可愛い系で正反対なのだけど、お互い着せ合いしているウチにいつもと違う姿に喜んだりして、最高か。
表紙の賑やかな感じと落ち着いた感じが一枚に収まってて、何だか正反対だけど良いコンビの鈴熊らしい感じで、とても宜しくてよ。
21 ローレライ外伝 んじゃめな本舗 磨伸映一郎 2016/12/29
Tumblr media
艦これ初めて色々と気が付いた事は世の中には自分と同じように「佐藤大輔」の架空戦記にハマり、そしてちゃんと終わらないのに新シリーズが始まって、またそれが完結しないという悪循環が続き、新刊が出ないので既刊をまた読み始め、その独特の文体にハマって抜け出せなくなり「ようこそ我がクラブへ」っと誘われて大サトー民になるという本当にごく一部の人間だけが掛かる奇病があって、以外とそういう人が俺以外にも居たんだーっていうのがTwitterとかみてて「大和改二にはイージスシステム載っけろ」とか「戦艦播磨を大型建造するにはドック四つ必要」とか知らない人には全く響かないが、知ってる人は乾いた笑みを浮かべてしまう事が多い事案がたくさんありました。
本書はそんな大サトー民達だけに届くような美しい表紙、表紙の画像を見たときから「デァ・グロス・シュラック」 噴式エンジンを備えた超巨大陸攻飛鳥を装備した妖精さん達がイベント最深部の深海棲艦ボスを報復爆撃!する話しか!っと興奮するけど、まあそんな話しではなく、港湾集積姫は「あれ、パナマ侵攻3巻ってもうすぐ出るんじゃないの?」って言わせてるだけで最高以外の感想が無い。 これは中年殺しのドゥームズデイ・ミッションやで!!
22 想いではなび 未来工房 MASATO 2016/12/29
Tumblr media
赤城さんが食べ物キャラになって早くも4周年、真珠湾攻撃からマリアナ沖海戦までの時間が立つと「何故こうなってしまったんだ!?」っと歴史の不可逆性に自問自答をくり返す日々ですが、本書はそんな大食いキャラの赤城さんではなく、お姉さんキャラで美人で凛々しく、でもすこしスキがあって決して取っつきにくい美人では無く、気さくな性格のお姉さんって感じの赤城さん(こんなお姉さんだったらミッドウェーの兵装転換ミスも許しちゃう!)本書では堪能できます。
23 深縹 ALSeTRO ぎゃりん 2016/12/29
Tumblr media
自分の中で読んだ衝撃で心がジャックナイフ(船体が真ん中で真っ二つに割れて沈む事)しそうなった本です。
加賀翔という艦これ界の地獄温泉とも言うべき組み合わせ(自分は小学生botさん起源説を推す)ですが、本の中の加賀さんの台詞で「息を呑むほどの・・・本当の本物の空母」という台詞が元戦艦の加賀の口から出るとかもう最高最強。
加賀はそもそも戦艦という重武装・重装甲の到達点から空母という機動力や艦載機運用能力という人間で言うなら「手先が器用」な能力を求められるものが真逆なところから空母になった、いわゆる「とりあえず」の空母。
それがイチから正規空母として設計され、赤城・加賀の大型空母の運用実績と蒼龍・飛龍の空母専用として作られた中型空母の良いところを取り入れて初めて作られた次世代スタンダードとして作られた「翔鶴型空母の一番艦」たる翔鶴が「不器用な自分が慣れなかった洗練された形」として加賀さんから羨望の眼差しを受け取るが、翔鶴もまた自分には無い加賀が持つ「時代に翻弄されながらも生き抜いていく強さ」に惹かれる姿がなんとも意地らしい感じで、読んでて二人の正規空母の対比が素晴らしく、心に残る作品です。
各キャプションからの物語の繋げ方とか、黒い枠線と海上の白い空気感との対比、全てがハイコントラストでなんだか上品な本なんですが、加賀翔鶴本の一つの到達点たる本ではないでしょうか。
24 ちょっとそこらでお茶でもどうですか ねこのほそみち 日向雲雀 2016/12/29
Tumblr media
瑞鳳と祥鳳、同じ潜水母艦からの改装空母だけど、世界情勢や第四艦隊事件などで相次ぐ設計変更を強いられて、祥鳳は潜水母艦 剣埼として竣工後、航空母艦に改造されて、瑞鳳はそのまま航空母艦として竣工する事になったりして、同じ祥鳳型とは思えないくらい別々出自があってだから姉妹艦なのに姿が全然違うのかなあとか、ただ単に好き勝手に描いた結果なのかは置いておいて、祥鳳が似てない事を意識している瑞鳳が、着任したばっかりで話しが出来ない祥鳳との距離を縮めようと「お茶でもどうですか?」とお誘いする話しなんですが、意識してしまって素直に誘えない瑞鳳の可愛らしい姿とお淑やかなお姉さんの祥鳳が見せる優しさなどなど、瑞鳳と祥鳳の本って珍しいなあだけで無いとっても「甘い」本で最高です。
25 N42°50’33” E131°41’21” 人間ごっこ 耳 2016/12/29
Tumblr media
プロ推奨の響のイラスト本とおまけコピー本 響・ヴェールヌイ愛溢れるカラーイラストも素敵だが、おまけコピー本の小さい猫耳尻尾付き響と妖精サイズの赤加賀が艦載機乗って飛んだりする可愛いマンガも最高。表紙の響が肩に黒い第一種軍装を羽織っていて、響の白い髪との対比が美しいですね。なんか第六駆逐隊って本当になんか今っぽくて、特型駆逐艦とかと比べるとなんか外人の子みたいだなあって今更ながら思ったりしました。
26 此れは或る冬の話 coca カロ村 2016/12/29
Tumblr media
コンビニにバイトに出る加賀さんと、牛丼チェーン店にアルバイトに出る赤城さんの事を思い、手作り弁当を作って応援しに行こうとする鳳翔さんの話で、それを図らずも邪魔してしまう大和の話し。なぜか今回選んだ本で鳳翔さんが出てくる話多いなあ、これは偶然か必然か?
全ての空母の母となる、いや、全ての艦娘の母たる鳳翔さんの暖かい母性が感じられる、そんな最高の本です!
27 やさしい冬の日 しゅーまい 2017/01/22
Tumblr media
幼い大和が秘密兵器として匿われて、鎮守府に設けられた小さな家で鳳翔さんと暮らしているという設定で、雪が降り積もった雪の日に、初めて見る白い雪に無邪気に飛び込む小さな大和を鳳翔さんは優しい目で見守る。
小さな大和はお姫様みたいに大事に育てられるが、やがてこの国を護る戦艦として戦場へと立たなければいけないことを知る鳳翔は、せめて幼い日々だけでもと大和を見守り、幸せにしてあげようと誓う。この本の最後のカットがそんな幸せな日々を思い出しながら桜を見上げる大和の姿に、心を打たれる。
そんな作品です。
最高。
28 小さな鎮守府の山時雨 百葉箱 北村鳩 2017/01/22
Tumblr media
山城の私服姿がなんかエロイなあ。いや、和服っぽいいつもの制服姿の山城もエロイですけん、でも本書のロングカーディガンを羽織った垢抜けたお姉さん風の山城さんも、不幸体質も相まってなかなかエロイですね。
そんな感じで、とってもお姉さんな山城が何かあると鎮守府内なのに提督、時雨から襲われるという本書ですが、襲われても怒るだけですぐに許してくれちゃうやっぱりお姉さんな山城と一発やったらスッキリしたと、正しいかどうかどうかわからないが、あれが駆逐艦なのだ! っと褒められちゃう感じの時雨が見られる本書は最高じゃないですか! 
あと摩耶が「波が高いからコケんなー!」って注意してるところをパンツ丸出しで転んだ満潮と、波を使って飛び上がって反撃する時雨の戦闘シーンがめちゃくちゃかっこ良かった。そんなところも最の高です。
29 ずいかくちゃんのいちにち あげくの果ての よひ 2017/05/07
Tumblr media
小さい瑞鶴(俗にいうLv1)が加賀秘蔵の「赤城さんぬいぐるみ」を持ち出して、出撃した翔鶴の事を思い出してぬいぐるみを改造したりする姿をサイレント漫画で可愛らしく描ききってあって読んでて超楽しい本です。
瑞鶴はいろんな本で小さいときは元気で加賀さんに可愛がられている姿が描かれることが多いですね、髪型が子供っぽいから? 南雲機動部隊の末っ子らしい瑞鶴の幼い感じが、かまってあげる加賀さん達のお姉さんっぽさも相まって、一航戦・五航戦漫画の中でもなかなか最高!
30 青葉レポートとその後の話 preview 鹿乃子 2017/05/07
Tumblr media
高速修復材は短期間で傷が癒える便利なモノだが実は劇薬で、それを使いすぎると人に戻れなくなるという設定、だがレベルの上がった大型艦はもはや高速修復材なしでは戦う事はできず、艦娘達はリスクを承知で高速修復材を使い続けるしか無いのだが、遂にサブ島沖で連日の夜戦で修復材を使いこんだ青葉は、人の姿に戻る事が出来ずに看取る衣笠の腕の中で何も残さずに消えてしまった。
そんな青葉が身体の代わりに残した部屋にある大量のレポートを見ながら衣笠は…っと、なんか衣笠、青葉、夕張の可愛らしい表紙とは真逆のハードな設定、ストイックな内容でとてってもよい最高本だよ!
31 トイレの瑞穂ちゃん(仮) laika 六海 2017/05/07
Tumblr media
ある日提督が瑞穂を認識できなくなってしまったが、唯一トイレの個室に佇む瑞穂は認識でき、提督は忙しい時間を割いてトイレの個室に閉じこもる瑞穂に毎日会いに行く。って感じでダークだけどそこが瑞穂っぽくて良い、なかなか無い水上機母艦本でとっても最高です。
まあ冷静に考えれば水上機って時代の徒花的なもんだから、それを扱う水上機母艦も閑職に回るのは致し方ない感じがするのですが、瑞穂には手に持った三方に季節のものを載せて提督に季節感を伝えるという大事な仕事があるので、これからもコマちゃんとか居るけど、日進とか出るまでは重要な「差分の女王」「三方芸人」としての任務を全うしてもらいたいものです。
32 きみがいない夜 こっこ後援会 totaro 2017/05/07
Tumblr media
空母は二隻で一つの戦闘グループを作るので(どっちかがやられても最低限の艦載機の収容ができるようにだったかな?)、赤城には加賀、蒼龍・飛龍、翔鶴・瑞鶴と二人一組で行動するのが多いのですが、艦これではローテーションで頻繁に出撃が入れ替わるので、あまりコンビで動くということも無いので、なんか僚艦が同型艦だったらボーナスでも付ければ良いのにと思ってたりするのですが、本書では加賀が「相方」を色々な空母が心配しながら待っている姿を見て「そういう寂しいとおもった事が無い」と不思議がる姿があっめっちゃ加賀さんっぽいって感じで、成る程なあと感心しながら読んでしまった本です。
33 秋月のごはんですよ! umi no muko uni 生足 2017/05/07
Tumblr media
最近のグルメ漫画は最早何でもありで「山登りとご飯」とか「ダンジョン攻略とご飯」とか二つのジャンルを掛け合わせる事がブームの様な気がしますが、この本は秋月が時報で用意してるご飯を「超有名なグルメ漫画(ヒント:栗田の野望)」のレシピを元にあのエキセントリックな衣装の防空駆逐艦の秋月姉妹こんな料理を用意してるのでは?
という混ぜるな危険、なんちゅうもんを読ませてくれたんやって感じで面白い本です! 紹介されてるご飯が「バター醤油まぶしご飯」とか貧乏臭い感じが戦時修工の秋月型っぽくてとっても良いですね!
34 艦娘特科運用手引キ書 ブーゲンビリア 弓弦花 八鳥 2017/05/07
Tumblr media
艤装解説書というテーマの本で色々な艦種事の解説が超面白い。
あっところで艦娘達の戦艦の主砲ってやっぱり艦娘のサイズを考えると薬莢なんですかね? 
自分は戦艦の主砲の中はベルト給弾で運ばれて連射できるような仕組みよりも一発、一発妖精さんが弾丸を装填し撃つときには警報のブザーがなって黒煙と共に轟音が響く感じの一撃必殺感が欲しいなあと思っちゃうおじさんです。
でも秋月型は完全にベルト給弾で確実に機関銃みたいなもんだしなあ、でも艦娘の艤装って中何に何が詰まってんだろうと考えるとあんまり詰まってるような感じしないしなあ、機関とかも中で何が動いてるんだろうってなあ、タービン周りがどうとか言ってるけど、エンジン(内燃機関的なもの)が入ってる感しないしなあと、久しぶりにそんな艤装関連の事をあれこれと考えさせてくれる本で、色々な解説がとっても面白いデース!
35 荒潮ちゃんの仰せのままに Harumori 森永ミキ 2017/05/07
Tumblr media
凄い女子力高い鎮守府(なんかみんなちゃんと身嗜み整えて出撃してそうな)で、その中でも更に女子力というかお嬢様っぽいけど末っ子気質の甘え上手な荒潮が先輩重巡、軽巡にお嬢様として扱われながら幸せな一日を満喫するという何というかこう、朝潮型改二の私立小学校のお嬢様感とかが良い感じにイベントとかで荒んだ提督の心にすーっと聞く荒潮濃度100%の良書です。
重巡と軽巡、駆逐艦の縦の繋がりがこう、女子会っぽい感じってそういえば他に無いような気がして、可愛い駆逐艦に可愛いオシャレしたいってお姉さん達が寄ってたかってこうあれこれするのを、当人の駆逐艦はやれやれ仕方が無いから子供を演じてやるかって感じがめっちゃ「出来た子供」っぽい感じがして、本書の荒潮なんか台詞からあんまり考えて無さそうに見えるけど実は一番の「大人」ですよって感じが、改二で急に中学高に進学した感が溢れる荒潮っぽくてなんだかとってもよかたい!
36 オモイツキ ラクガキ lowlife kashmir 2017/05/07
Tumblr media
説明なんか不要だと思うんですけど本書は色々な話しが詰め込まれてて凄く楽しい本なんですが、その中でもつげ義春の「無能の人」よろしく、河原で石を拾い名前を付けて「艦石」として売る男の話しがめちゃくちゃ面白い。
艦石は素人目にはその辺の河原の石と同じに見えるが、石の中に艦を見出すのが「艦石」の作法だとするが、そうやって芸術ぶってるから誰にも相手にされなくなるんだよと嫁さん(愛宕)に怒られるところとか最高。自分も河原の石を拾い上げて「これは……最上かな」って言って悦に浸ってみたいもんです。
37 あれこれ じゃこ 2017/09/11
Tumblr media
最高ですね、読めばわかるさ、迷わず読め! あまりの最高さに最初リスト入れるの忘れるくらい最高。
まあ読書会で誰か持って来るだろうみたいな慢心があって、うっかり撃沈されるスカパ・フロー泊地に居たロイヤル・オークみたいなもんで、水密扉閉め忘れてゆっくり沈んでくみたいなもんです。
小さな鎮守府で駆逐艦達が元気に走り回り、鳳祥さんのご飯作るの手伝ったりしてるところを赤城が飯を食う事だけ考えている。
世界一のんびりした、世界一幸せな鎮守府の姿を覗き込む事が出来て凄く楽しい本です。
こんな素晴らしい本をリストから漏らしちゃっても雷ちゃんが大丈夫よって言ってくれるじゃこさんの名刺サイズのイラストカードを持っているのでハイ、さわだは大丈夫です。
0 notes
sorairono-neko · 5 years
Text
あのとき、きみにキスをした
「本当に大丈夫?」  ヴィクトルが心配した。 「大丈夫だよ」  勇利は明るく答えた。 「ヴィクトルは心配性だね」 「心配性にもなる。あんな勇利を見てきたんじゃ……」 「もうぼくは以前のぼくとはちがうの。何もこわくないし、立派にやり遂げられるよ」  勇利はきっぱりと言い、いたずらっぽく付け足した。 「お守りもあるし……」  そして右手の薬指にある指輪にくちづけした。ヴィクトルは溜息をついた。  グランプリシリーズ、ヴィクトルと勇利の試合は重なっていない。だからヴィクトルは、勇利の遠征に帯同できないことはない。しかし同じ試合には出なくても、日程は近い。付き添うのにヤコフは反対したし、勇利もよい顔をしなかった。 「ちゃんといい成績をとってくるから、ぼくを信じて。ね?」 「勇利のことは信じてるけど……」  ヴィクトルは行きたいのだ。しかし、そうすることで勇利が気に病むならやめたほうがよい。ヴィクトルのわがままということになるからだ。  勇利がわがままを言ってくれればいいのに。ヴィクトルは拗ねた。どうして勇利はすぐに「大丈夫」「心配しないで」「ヴィクトルは自分のことをして」と言うのかな。俺はおまえのコーチだろう? 「ヴィクトルだって、自分の試合のとき、ヤコフコーチがユリオやギオルギーのところにいても平気でしょ?」 「それとは話がちがうだろう」  ヴィクトルは口元に手を当てた。そこにヤコフが通りかかって、「またおまえらは揉めとるのか」とあきれたように言った。 「ヤコフ、俺、勇利の試合についていっていいよね?」 「だめだと言っとるだろうが」 「なんで? じゃあヤコフは俺の試合についてこないの?」 「わしは選手ではない」 「俺だって、勇利のコーチでいるときは選手じゃないよ」 「そういう屁理屈を言っとるうちは子どもだ。コーチなんて器じゃない」 「大丈夫です、ヤコフコーチ」  勇利が割って入った。 「ちゃんと言い聞かせますから。ヴィクトルには練習させます」 「ちょっと勇利」 「ふん。どっちがコーチだかわからんな」  ヤコフはリンクへ入っていき、「こらっ、ユーリ! 好き勝手にすべるな!」と叱りつけた。 「ヴィクトル」  勇利はヴィクトルの手を握り、真剣な顔をした。何を言うのだろう、と思ったけれど、彼は口をひらかなかった。そのかわり、瞳が雄弁だった。その目にヴィクトルはよわく、こうしてみつめられると勇利の言いなりになってしまうのだ。  しかし、このときは抵抗した。 「もうすこし考える」 「ヴィクトル」 「絶対に行くとは言ってない。勇利が出発までに満足な出来にならなかったらついていくよ。俺を安心させるためにがんばって。いいかい?」  勇利は溜息をついた。ヴィクトルのきっぱりとした口ぶりに、これ以上は無駄だとあきらめたらしい。彼はしぶしぶといった様子で譲歩した。 「わかった……。でも、ヴィクトルの『満足』ってどういう状況のことなの。何をやっても『それじゃだめだ』って言うんじゃないだろうね」 「はっきりとした基準を作れということ?」  ヴィクトルはにっこりした。 「そこは俺を信じてもらわないと。俺がきめる」 「そんなのずるいよ」 「そうだよ」  ヴィクトルは胸を張った。 「俺は勇利みたいに清純無垢じゃないんだ。悪い大人だよ。勇利、騙されないように気をつけて」 「人のことをからかって!」  勇利は手を振り上げてこぶしでヴィクトルの肩のあたりをぶった。ちっとも痛くない、仔猫がじゃれついてくるような感じだった。ヴィクトルは彼の手首をつかみ、笑い声を上げた。そこへ、ヤコフにさんざんがみがみ注意を受けたユーリがやってきて、ふたりのことをじろりとにらんだ。 「リンクでいちゃつくなら帰れ!」 「ユリオ、ひどいよ。ぼくは真剣にヴィクトルと今後の話を……」  ユーリは勇利に寄り添っているヴィクトルを指さした。 「だったらそれらしい距離感でやれ!」 「人を指さしちゃだめだよ」 「練習中いちゃいちゃばっかしてるやつが常識を語るな!」  その光景を見て、リンクメイトたちが、「またやってる……」とくすくす笑った。  しかしヴィクトルとて、そうして勇利とくっついて遊んでばかりいるわけではない。勇利の出場する試合まであまり時間がない。ヴィクトルは自分の練習よりも勇利を見ることを大事にし、技術に問題はないか、精神的に安定しているか、とそのことを確かめた。本当についていかなくて大丈夫だろうか? 「平気だよ。西郡が来てくれるし……」  確かに西郡は勇利にとって信頼できる相手だ。ヴィクトルだって信用している。しかし彼が、ヴィクトルの代わりをできるわけではない。 「それに、ひとりで試合に出るのって初めてじゃないんだ。チェレスティーノがついてないときもあったんだよ。国内大会はだいたいそうだったね。慣れてるよ」  だが、勇利は地方大会でも緊張していた。あれは長く試合から離れていたせいもあるだろうけれど、勇利の場合、そうではないからといって安心はできない。普通の選手でも突然調子を崩すことがあるのだ。勇利ならなおさらである。 「心配しないで」  勇利は熱心に言った。 「ひとりでもファイナルきめられるから」 「…………」 「そんな顔しないで」  勇利は笑ってヴィクトルの両頬をてのひらで包みこんだ。ふたりは同じベッドに入り、眠りにつくところだった。 「ただし、試合のあとは電話するよ。時差とか関係ないからね。ヴィクトルが寝てても叩き起こすから」  勇利はにっこり笑った。 「ヴィクトルの声を聞かせて。ぼくには指輪と、それがお守りになるんだ」 「ああ……」  ついていく、と言い張れば、勇利は怒り、それが負担になるかもしれない。こなくてよかったのに、そんなにぼくが信じられないの、といらいらさせるくらいなら、やはりついていかないほうがよいのか……。 「勇利……」 「どうしてヴィクトルのほうが不安そうにするの?」  勇利はくすくす笑った。 「愛の力でメダルを勝ち取ってみせるから……」  ヴィクトルは試合会場にいた。あれ、と思った。これは何の試合だっけ。俺の試合? どこの大会だったかな? それとも結局、勇利の試合に帯同したのだろうか。勇利は怒っているだろう。  ヴィクトルはきょろきょろとあたりを見まわした。騒々しく、いろいろな会話や注意が飛び交っている。報道陣も大勢見える。公式練習だ。  ヴィクトルはゆっくりと歩いた。リンクのそばにチェレスティーノの姿が見えた。彼の隣にはピチットがいる。挨拶しようと近づいた。するとピチットが気がつき、にっこり笑って手を振った。 「勇利! どこ行ってたの?」  勇利? ヴィクトルはきょとんとした。勇利がいるのか。ということはやはり彼の試合についてきてしまったのか。勇利、怒ってるだろうな、と思った。すると口が勝手にひらいた。 「うん、ちょっとお手洗い。この会場初めてだから、迷子になりそうだったよ」  え? ヴィクトルはびっくりした。いま誰が話したのだ、と混乱した。勇利の声だった。しかし、彼の姿はない。動いたのはヴィクトルのくちびるだった。勇利? 俺が勇利? 「わかる。僕も初めてなんだけど、それだけじゃなくちょっと複雑だよね?」  いったいどうなっているんだ? ヴィクトルは、自分をまっすぐに見て「勇利もあぶなかったのかー」と笑うピチットを凝視した。自分はいま勇利なのか? そういう風貌になっているのか? 声もしゃべり方も彼だった。話そうと思ったわけではないことが口から出た。変だ。 「騒いでないで支度しろ。もうすぐおまえたちの順番だぞ」  チェレスティーノがふたりに言った。ピチットとヴィクトルは──いや、勇利は、というべきか──「はーい」と声をそろえて言った。 「あっ、いたた」  急にピチットが声を上げて目を押さえた。 「どうしたの?」 「なんか急に目が……ゴミが入ったのかもしれない」 「こすっちゃだめだよ」 「鏡あるかな……」  そのとき、そばにいたどこかのチームスタッフらしい女性が、「持ってるわよ」とちいさな鏡を差し出した。「ありがとう」とピチットが受け取る。ピチットがまぶたを押さえて鏡をのぞきこんだ。 「あ、目のふちにまつげついてる……」 「すぐ取れそう?」 「うん」  ヴィクトルはピチットの後ろから鏡を見た。自分の意思ではなかった。誰かが勝手に身体を動かした感じだ。ヴィクトルは目をみひらいた。ピチットの背後から鏡を見ているのは、勇利だった。 「取れた。どうもありがとう。助かりました」 「どういたしまして」  女性はほほえんで去っていった。もう痛くない? と勇利が言った。 「うん、平気」  そうか。これは夢なんだな。ヴィクトルは合点した。夢ならよくあることだ。自分ではない人物になってしまうのも、妙な場面に出くわしてしまうのも。ヴィクトルはいま勇利になって、しかし勇利の身体をいっさい動かすことはできず、ただ存在しているのだ。勇利の視点での世界を眺めている。自分から話すことはできない。勇利の行動を見守るのみだ。  なるほど。そういうことか。そうと理解すると、ヴィクトルは愉快な気持ちになってきた。なかなかおもしろい夢だ。こういう夢なら大歓迎である。勇利の姿をたっぷりと堪能しよう。──いや、勇利の姿は見えないのだが。 「あっ、勇利!」  ピチットがヴィクトルのジャージの裾を引いた。彼は声をひそめて顔を寄せてくる。 「見て! ヴィクトルだよ……」 「あ……」  たちまち、ヴィクトルの胸が激しく打ち始めた。つまりは勇利がどきどきしているのだろう。リンクサイドに登場したのはまぎれもなくヴィクトル・ニキフォロフで、彼はかたわらのヤコフに笑顔で話しかけながら、優雅にジャージを脱いでいた。どうやら、この光景を見ているヴィクトルとは別に、きちんとヴィクトルも存在する夢らしい。 「やっぱりかっこいいね」 「う、うん……」  ヴィクトルは頬を押さえた。熱い。ヴィクトルかっこいい、綺麗、すてき、という感情が伝わってくる。ヴィクトルはくすぐったくなった。勇利、いつもこんな気持ちで俺を見てたのか……。 「練習するみたい。見てよう」 「う、う、うん……」 「勇利、大丈夫?」  ピチットがくすくす笑った。 「倒れそうだよ……」  勇利が胸に手を押し当て、溜息をついた。吐息の色を想像するなら、ば��色といったところだろう。ヴィクトルはこそばゆくて仕方なかった。勇利がヴィクトルのファンであることも、彼がヴィクトルを深く愛していることももうじゅうぶんすぎるほどに承知していたけれど、それにしてもこんなふうに体験するというのはまた新鮮な印象だった。「手に取るようにわかる」というが、それはこういう次第のことなのだ。勇利の気持ちが、すこしのまちがいもなく伝わってくるではないか。  ヴィクトル・ニキフォロフがすべり始めた。勇利はうっとりと彼の姿に見入った。勇利が、あの正確な踏み切り、ジャンプの高さ、視線の上げ方、指先の優雅なこと、といちいち感銘を受けているのとはうらはらに、ヴィクトルは、これはいったいいつの大会だろうと落ち着いて考えた。いや──夢だからそんなことは関係がないのか。それにしてもあんなおおざっぱなすべりをして。あの漕ぎ方! ちっともなめらかに見えない。すこしは勇利を見習えばいいのに。 「ほれ、とっとと行け」  チェレスティーノが教え子ふたりに声をかけた。ピチットが勇利を振り返った。 「行こうよ、勇利」 「…………」 「おーい、勇利」 「……あ、うん」 「大丈夫?」  ピチットがくすくす笑った。しかしリンクに出れば、勇利は熱心だった。氷の具合を確かめ、ジャンプをして足に伝わる感触をおぼえ、自分の調子を慎重に調べた。ヴィクトルは、そう、それでいい、とか、急ぎすぎだよ、とか、もっと身ぶりを大きく、とか、いろいろな助言をした。もっとも、勇利には届かない。彼は自分の感覚をヴィクトルが共有しているなんて、思いもしないのだ。 「よし、いいぞ。ふたりともそれを保持するんだ。とくに勇利。余計なことを考えるなよ。自分がいちばん上手いと思ってすべるくらいでいい」 「はい」 「ヴィクトルよりも?」  ピチットが笑いながら訊いた。 「そうだ」  チェレスティーノは澄ましてうなずいた。  その夜、勇利はホテルの部屋でぼんやりとテレビを眺めながら、昼間のことを思い返していた。 「ヴィクトル、かっこよかったなあ……」  勇利は練習のあとも常にヴィクトルをみつめ続けていたが、とうとう視線をつかまえられずじまいだった。もっとも、勇利自身はそうしようとは思っていなかっただろう。ただ慕っている相手に注目していただけだ。目が合ったら倒れてしまう、というくらい熱心な様子だった。  あのね、勇利。おまえはいずれ、その男とあんなことやこんなことをするようになるんだぞ……。 「あぁあ……」  しかし、目が合っただけでも勇利は卒倒する、と勝手にきめつけているヴィクトルになど気づかず、勇利は意外な言葉を口にした。 「あんなひとが、ずっとそばにいてくれたらなあ……」  勇利がヴィクトルに「コーチをしてもらいたい」と思い始めたのはいつのことなのだろう。ヴィクトルはそれを勇利に質問したことはなかった。勇利はヴィクトルと親密になる直前、グランプリファイナルでさんざんな成績だった。もう引退かというところだったのだ。追い詰められたから、あこがれのひとに助けてもらいたいと思ったのだろうか。それとも──、ずっとかたわらにヴィクトルの存在を望んでいたのか。ただのファンというだけではなく、もっと明確に。 「あれ?」  会場に入った勇利は、ジャージのポケットを探って顔をくもらせた。 「どうしたの?」  ピチットが振り返る。 「手袋がない」 「えっ、ホテル?」 「ううん、さっきはあったから……、どこかに落としたのかも。ぼくちょっと見てくる!」  勇利は急いで廊下を引き返した。ピチットが追いかけてきて、「荷物持ってってあげる!」とキャリーケースをひっぱった。勇利は来た道を戻った。 「あ」  廊下のすこしさきに、黒いものが落ちているのが見えた。勇利はほっとして駆け寄った。と──。 「わっ」 「あ、ごめんね」  ちょうど角を曲がってきた選手と、かるく突き当たってしまった。勇利はふらつき、急いで頭を下げた。 「いえ、こちらこそ。ごめんなさい、大丈夫ですか?」 「平気だよ。ほんとにごめんね」  よい匂いが漂った。勇利は顔を上げた。ヴィクトル・ニキフォロフが、ちらっと笑って手を振ったところだった。彼は足早に廊下を歩いていった。勇利はその場に立ち尽くし、ぼうっとしてヴィクトルの後ろ姿を見送った。  ヴィクトルは腹が立った。何をやってるんだ、俺は! 勇利にぶつかったなら、抱きしめて、ぶつけたところを撫でてやって、「大丈夫?」とほほえみかけて、キスしなくちゃだめだろう! あいつは頭がおかしいのか? ちっとも礼儀作法がなっていない! ヴィクトルはひとりで憤慨した。もちろん、そんなことはあのヴィクトルにはできないことだとわかっていた。しかし、それにしてもつめたいではないか。あんな態度はだめだ。もうすこし優しくできないのか。役立たずめ。 「……はあ」  勇利がちいさく息をついた。勇利、ごめんね。ヴィクトルの胸が痛んだ。 「かっこいいなあ……」  そうつぶやくので、ますます苦しくなった。抱きしめてあげたい。そのかっこいい男はいまおまえのものなんだよと言ってやりたい。 「ヴィクトルがすこしでもぼくを見てくれたらなあ……」  見てるよ。いつも。いつも見てる。目をそらしたりしないよ。ヴィクトルは一生懸命に訴えかけた。  ヴィクトルにつめたくされたせいでもないだろうが、公式練習で勇利は調子が悪かった。ヴィクトルには、彼の好不調はよくわかる。勇利、緊張してる、と心配した。昨日みたいなすべりができていない。 「勇利、自信を持って。大丈夫だよ。普通にやれば台乗りできる。かたくならないで。きみのスケーティングはちょっとやそっとじゃ追い抜けないんだ」  一生懸命に語りかけたが、勇利に届くはずもない。ヴィクトルはやきもきした。ああ、俺がいつもの俺だったら! いや──あの選手のヴィクトル・ニキフォロフだったら! 親切に声をかけて、ほほえみかけて、手さえ握って「落ち着いて」と言ってあげられるのに! 「勇利、大丈夫?」  ピチットが心配した。 「調子悪いね」 「う、うん……。ピチットくんは平気みたいだね」 「勇利、難しく考えるな。おまえに足りないのは自信だ。ほかの選手が上手く見えているかもしれんが、いまのおまえなら差はない」 「は、はい……」  そうだ。チェレスティーノの言うことをよく聞いて。彼はまちがったことは言わない。いいコーチだ。──俺には負けるけどね。 「勇利、楽しまなくちゃ! 勇利ならできるよ!」 「うん……」  勇利はトレーニングルームへ向かい、溜息をついた。中へ入ろうとしたとき、すっとヴィクトル・ニキフォロフが出てきた。勇利は慌ててわきへ寄り、彼が通れるようにした。  ヴィクトルは音楽を聴きながらまっすぐ前を見ており、勇利のことはすこしも顧みなかった。勇利は立ち止まり、両手を握り合わせて、ぼうっとヴィクトルを目で追った。  ──おい! ちょっとは勇利を見たらどうなんだ!? こんなにかわいい子が視線を向けてるんだぞ! ヴィクトルはまた猛烈に腹を立てた。恥を知らない男だ、と思った。あの高慢そうな態度をめちゃめちゃにしてやりたい。自分もすべれたらいいのに。そうしたら、あんな男よりすばらしい演技をして、悔しがらせることができるのに。  ──あ、俺だったな。くそ。だからなおさら腹が立つ。  ショートプログラムで、勇利は思った通り、実力を出し切ることができなかった。キスアンドクライにひとりで座った勇利を、会場の大きなディスプレイで見たヴィクトルは、彼がひどくさびしそうに思えて胸が痛んだ。勇利は出た得点にがっかりし、目を伏せてしまった。おむすびのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめ、しょんぼりしている。ヴィクトルはいますぐに抱きしめたかった。大丈夫、フリーで挽回できるからね、と元気づけたかった。勇利はひとりぼっちだ。頼みのコーチは、ピチットの滑走のためそばにいられない。  勇利はふらふらしながら立ち上がり、裏側へ入って廊下へ出た。彼はまっすぐトイレへ向かうと、誰もいないことを確かめてから、涙をひとつぶ、ふたつぶ、絞り出した。  なぜ勇利をひとりで泣かせなければならないんだ……。  ヴィクトルは自分を激しく責めた。それでもコーチか、と思った。  勇利はすぐに廊下へ戻った。演技を終えたピチットに、「ごめん、見られなかった!」と謝った。 「ううん、いいよ。僕もちょっと失敗しちゃった! 尻もちついちゃってさー」 「そうなの? 残念……」 「まあなんとかなるよ。勝負は明日だよ」 「そっか」 「勇利もね。一緒にがんばろ」 「うん」  勇利はどうにかほほえんだ……。  しかし彼は、ホテルへ戻ると、暗い面持ちでベッドに横たわった。何もする気がしないのだ。  ヴィクトルは、俺に身体があっ��ら一緒に寝てあげるのに、と思った。きみはすばらしいスケーターだ。俺がとりこになったんだ。そうじゃないわけがないだろう? きみのスケートを愛している。俺を魅了できるのは勇利しかいない。きみは俺の誇りなんだよ……。  たくさん言いたいことがあった。何ひとつ勇利には伝わらなかった。  翌日、フリースケーティングの六分間練習のとき、勇利は足に痛みを感じた。その感覚はヴィクトルにももちろん伝わり、ヴィクトルはどきっとした。激しい痛みではなかった。捻挫というほどでもないかもしれない。すべれない、というようなものではない。そういえば、ホテルを出るとき、急いでいて、足の甲をベッドにぶつけたのだ。そのせいだろう。  勇利は四回転トゥループを跳んでみた。痛かった。トゥをつくジャンプは痛い。勇利は迷った。四回転トゥループは二本跳ばなければならない。トゥループをやめてサルコウに変更すべきだろうか? でも──成功率が低いのに。  リンクから上がると、チェレスティーノにただちに相談しようとした。しかし勇利は思いとどまった。最初の滑走がピチットなのである。チェレスティーノはピチットについている。 「…………」  勇利は廊下のすみに柔軟運動用のマットを敷き、そこで痛む足を撫でた。どうしよう、どうしよう。やめたほうがよいだろうか? でもさっきは跳べた。跳べた……けど、綺麗ではなかった気がする。加点がもらえるかどうか。しかし、不安定な四回転サルコウに変更するよりはましではないか? そんなに痛くはない。──痛くない? 本当に? さっきより痛くなっている気がする。気のせいだろうか? 心配するから痛いと思ってしまうのだろうか? どうしよう。  ヴィクトルは見ていてはらはらした。どうにか──どうにかしてやれないものかと思い悩んだ。いま勇利は四回転サルコウもなめらかに跳んでいる。きみはちゃんと跳べるんだと教えてやりたかった。勇利、大丈夫だよ。きみは強い。きみは──きみは、俺の得点だって、越えてしまうような子なんだよ……。  そのとき、ヤコフと何か話しあいながら、勇利のすぐ前をヴィクトル・ニキフォロフが歩いていった。勇利ははっと顔を上げ、いつものようにヴィクトルの姿をみつめた。勇利がこころのうちでぽつりとつぶやいた。ああ、ヴィクトルがぼくに笑いかけさえしてくれたなら。ううん、そばにいるだけでいい。隣にいてくれるだけでいいんだ。かたわらについていてくれるだけで……。  ……勇利……。  ヴィクトルは、どうにかして勇利と話す方法はないものかと苦しんだ。勇利、俺はここにいる。いつだってきみを見ているよ。きみだけを見ている。きみしか、見えないんだ……。  不安をたくさん抱えたまま、勇利はフリースケーティングにのぞんだ。彼は、チェレスティーノの顔を見ても、足が痛いとは言わなかった。チェレスティーノがかるく勇利の肩を叩いた。勇利はうなずき、ひとりで氷へ出ていった……。  演技のあいだ、勇利はひとりで戦っていた。足の痛みに耐え、四回転トゥループを二回跳んだ。一度は転倒し、一度はオーバーターンした。セカンドジャンプをつけられなかった。それで不安が増したのか、ほかのジャンプも連鎖的に失敗した。足が気になるのか、得意のステップシークエンスでさえ、よどみなく、というふうにはいかなかった。だめだ、と思えば思うほど、演技がみだれてゆく。ヴィクトルは見ていることしかできなかった。  キスアンドクライで、勇利は深くうつむき、息をついていた。チェレスティーノが気遣った。 「足を痛めていたのか?」 「……すこし」 「勇利……」 「ごめんなさい……」 「気づいてやれなくて悪かった。おまえはすぐ我慢してしまう選手なのにな」  勇利の目から涙があふれた。悔しい、という感情がヴィクトルに押し寄せた。悔しい、悔しい、悔しい。なんであんなのしかできないんだ。足がちょっと痛いくらいでなんだ。悔しい。やり直したい。もう一度やりたい。なんでこんな……。  勇利は手の甲で目元をこすった。ヴィクトルは見ただろうか、と思った。あの不体裁な演技を。見る価値もないと思っただろうか。見ていて欲しかったし、知らないままでいてもらいたかった。ヴィクトル。彼さえそばにいてくれたら……。  ヴィクトルは耐えきれなくなってきた。どうしてこんなに自分は無力なのだろう。勇利のためならなんでもしてやりたいのに。彼のためならなんでもできると信じているのに。なぜ優��い言葉ひとつかけてやれない? なぜ抱き寄せて「よくがんばったね」と言ってあげられないのだ。  くそ……。  せめて──せめて、ここにいるヴィクトル・ニキフォロフが自分であったなら……!  そこでヴィクトルは気がついた。これは夢だ。ヴィクトルの夢なのだ。だからこんな不思議な現象が起こっている。勇利の内面にひそんでいる。勇利に対してできるのだから、自分自身にもできるのではないだろうか? 夢の中で説明のつかないことが起こるなんて当たり前の話ではないか。あれは何だったんだ──目ざめてからそんなふうに苦笑することなんていくらでもある。都合のいい夢だった──そう考えることも。つじつまが合わなくても、意味がわからなくても、夢ならできるはずではないのか? ましてや、自分の身体──自分が自分になるという当然の次第なんて──。 「ヴィーチャ、聞いとるのか!?」  突然ヤコフに耳元で怒鳴られ、ヴィクトルははっとして振り返った。 「ぼんやりしとらんでそろそろ支度しろ! 身体を動かせ! かたまってしまうぞ」 「……ヤコフ」  ヴィクトルはぼうぜんとしてつぶやいた。手を見る。勇利の手ではない。彼は廊下にいて、壁にぼんやりともたれていた。 「なんだ。忘れ物をしたなどと言うんじゃないだろうな」  ヤコフがじろりとヴィクトルをにらんだ。 「ヤコフ……、俺が見える?」 「……何を言っとるんだ?」 「俺は俺なのか?」 「ヴィクトル……」 「ねえ、俺の声が聞こえる?」 「ヴィクトル……おまえ、大丈夫か……?」 「オーケィ! ヤコフ、ちょっとごめん!」  ヴィクトルは駆け出した。走る感覚がきちんと足の裏から伝わってくる。自分で身体を動かしている。確かにいま、ヴィクトルは、勇利の中にいるあいまいな存在ではない、肉体を持つヴィクトル・ニキフォロフだった。  リンクサイドへ出ると、ちょうど勇利の得点が表示されたところだった。勇利はうなだれ、肩をふるわせた。泣いて、目元に手をやっている。チェレスティーノが何か話しかけていた。ヴィクトルはつかつかと歩いていった。迷いのない足取りでキスアンドクライへ近づく。観客がざわめいた。 「勇利!」  ヴィクトルは呼びかけた。勇利がぱっと顔を上げた。彼はまっかな目でヴィクトルを見た。頬には涙の痛々しいあとがあった。幼いおもてに、せつなさと悔しさがいっぱいにひろがっていた。 「ヴィクトル……」  勇利はつぶやいた。ヴィクトルはキスアンドクライへ踏みこみ、さっと腰をかがめた。両手で勇利のおとがいを包んで、そっと上向かせた。ヴィクトルは勇利のくちびるにくちづけした。勇利が息をのんだ。 「きみはうつくしい」  ヴィクトルは勇利の瞳をきまじめにのぞきこんでささやいた。 「きみだけが俺のこころをふるわせ、みたすんだ」  勇利がそっとヴィクトルの二の腕にふれた。彼は目をみひらき、ヴィクトルをみつめた。白くあどけない頬に、きよい涙がこぼれ落ちた。  ヴィクトルははっとまぶたをひらいた。腕の中で勇利が眠っていた。彼は、ヴィクトルの胸に額を寄せるようにしていた。頬がほんのりと赤い。ヴィクトルは勇利に腕でまくらをし、彼の手を握っていた。  カーテンの隙間から朝日が差しこんでいる。それは白い筋となって勇利の肩のあたりに落ち、真珠のようになめらかな素肌を輝かせていた。ヴィクトルは勇利の髪にくちづけした。 「ん……」 「おはよう」  勇利がまぶしそうに幾度か瞬いた。彼はぼんやりとヴィクトルをみつめ、夢見るような微笑を浮かべて「おはよう」と挨拶した。 「勇利、話があるんだ」 「なあに、起きてすぐに……困ったひと」  勇利がくすくす笑った。ヴィクトルは勇利の瞳を見てきっぱりと言った。 「やっぱり、きみの試合にはついていくよ」  勇利が目をみはった。彼は眉を寄せ、口をとがらせて何か抗議しようとし、そしてヴィクトルの目つきを見て話すのをやめた。何を言っても無駄なのだと、ヴィクトルはもうとりきめてしまったのだと、ヴィクトルをよく知る彼はわきまえたのだろう。 「ヴィクトル……、どうして? 急に……」 「耐えられない」 「何が?」 「全部だよ」  ヴィクトルは勇利を抱きしめた。勇利はちいさく息をつき、あきらめたようにほほえんだ。 「ゆうべまでそんなこと言ってなかったのに……突然気が変わったの?」 「ひと晩かけて変わったんだ」 「寝ながら気を変えるなんておかしなひと」  勇利はまぶたを閉ざし、自然なやり方でヴィクトルにくちびるを押しつけた。 「ええ、わかりました。どうぞご自由に。仕方がありません。言い出したら聞かないひとですからね」 「きみほどじゃない」  ヴィクトルは、自分の方針はこうだと言い聞かせるようにささやいた。 「きみから絶対に離れないよ」  試合会場で勇利にぴったりと寄り添ったヴィクトルは、「大丈夫かい?」「精神的な問題はない?」「手袋はちゃんと持ってる?」「どこかに痛みはないだろうね?」と熱心に尋ねた。勇利があきれた顔をした。 「ヴィクトル、どうしてそんなに過保護なの?」 「いや、気になって……」 「大丈夫だよ。何も不安は抱えていないし、手袋も持ってる。痛いところもとくにない。万事上手くいってるよ」  勇利はヴィクトルをみつめてくすっと笑った。 「ヴィクトルがいてくれるからね」  彼は壁にもたれ、誰にも見えないように、ヴィクトルの手をそっと握った。ヴィクトルはかたく握り返した。 「ヴィクトル……、来てくれてありがとう」  勇利は低くささやいた。その吐息混じりの声に、ヴィクトルは幸福を感じた。 「ヴィクトル、ここに来てから、とくには何もしてないよね。公式練習で何かすごい助言をしたわけじゃないし、ぼくに事件が起こってそれを解決したりもしてないし……、コーチがいなければいけない事態になんてちっともなってない」 「そうだね」 「きっと報道陣や、ヴィクトルがぼくのコーチでいるのを嫌う人たちから見たら、ぼくは贅沢でわがままなんだと思う。必要でもないヴィクトルを無理に自分に尽くさせてるってみんな考える」 「言いたいやつには言わせておけ。俺はそんなやつらのためにスケートをやってるわけじゃない」 「うん……わかってる」  勇利は目をほそめてかすかにほほえんだ。 「……いてくれるだけでいいんだ」  ヴィクトルははっとした。 「ヴィクトルが隣にいるだけで……ぼくはぼくでいられるんだ」  ヴィクトルはさらにかたく勇利の手を握った。 「何も言わなくていい……そこで見ていてくれるだけで」 「勇利……」 「それだけで……」  勇利はまぶたを閉じ、ヴィクトルの肩にもたれかかった。ふたりのいる廊下を、いろんな人が通り過ぎていった。ヴィクトルと勇利は寄り添い、手をつないだままじっとしていた。 「……あ」  勇利が目をひらいた。 「なんだい?」 「ヴィクトルがさっき心配したことが起こったことがあるよ」 「え?」 「ぼく、ずっと前……、気持ちがぐちゃぐちゃになって、足が痛くて、手袋を落として、ひどい演技をしたことがあるんだ」  ヴィクトルは驚いて勇利を見た。勇利は何か勘違いしたのか、「あ、手袋はすぐにみつけたんだよ」と安心させるように笑った。 「でもほかはだめで……、そう、ヴィクトルもいる試合だったよ」  ヴィクトルは息を止めた。 「ヴィクトルはぼくなんか見てなかっただろうけど……、でも、みっともなかったから、見られなくてよかったな。だけど、あのとき……、さびしくて、つらくて……、ヴィクトルの姿を目にした瞬間、ああ、このひとがそばにいてくれたらなあって思ったんだ」 「…………」 「何も言わなくていい。励ましてくれなくてもいい。そばに静かにいてくれるだけでいいんだけどなあって。そんなことあるわけないな、って思ったんだけど」  勇利はにっこり笑った。 「ねがいがかなったね。あのときのぼくに教えてあげたい」  ヴィクトルは何も言えなかった。彼は黙って勇利を引き寄せ、胸に抱きしめて頬ずりをした。 「ヴィクトル、どうしたの?」 「勇利、そのとき、キスクラで泣いただろう?」 「え……、どうして知ってるの……」 「あのね……」  ヴィクトルはみちたりた気持ちでささやいた。 「勇利は知らないだろうけど、俺は泣いているきみにキスをしたんだよ」
3 notes · View notes
sorairono-neko · 5 years
Text
俺のシュガーの話を聞いてくれ
 やあ、久しぶりだね。いや、そうでもないか。先月世界選手権で会ったばかりだからね。でもなんだか、もうあれが遠い出来事のような気がするな。  ああ、ニュースを見たのかい? うん、いろいろ書かれてるみたいだね。SNSでも広まってるし。まあ、あまり気にしてないよ。俺はいま目の前で起こってることに夢中なんだ。  え? それはもちろん本気だよ。酔狂で日本にまで来てこんな騒ぎ起こすと思うかい? そうそう、マッカチンも連れてきたんだよ。もうマッカチン、彼とすっかり仲よしさ。  心配かい? でも彼、俺に直接頼んできたじゃないか。はは、まあそうだけどね。あの動画? うん、もちろん見たよ。そうだね……、そのあたりはご想像におまかせするよ。  とにかく俺はいま、毎日が充実してるんだ。明日はあれをやろう、あんなことを言ってみよう、こういうのはどうかな、っていろいろなことを考えるよ。頭の中が忙しくて、それを実行するのにも忙しくて、いくら時間があっても足りないんだ。楽しいよ。君も遊びに来る? なんてね。  そうそう、彼の家、本当に温泉やってるんだ。いや、疑ってたわけじゃないけどね。感動したよ。とてもひろくて気持ちがいいんだよ。泳げるくらいだよ。それにはちょっと浅いけど。美味しいごはんもたくさん出てくるし、楽園だよ。大丈夫、俺はそんなに太りやすいたちじゃないから。あはは、彼にはびっくりしたね。君もあの動画見たんだろう? 彼って昔からあんなふう? いくら君でもそこまでは知らないか。  これからは、君より俺が彼にくわしくなるんだからね。俺はいま、彼のことを知ろうと一生懸命なんだ。毎日発見があるよ。ただね、なんだか彼、俺にあんまり近づいてきてくれないんだよ。緊張してるみたいだ。お酒が入らないとだめなのかな。そういえば、あのバンケットまではほとんど話したこともなかったし。遠慮深い子なのかもね。  とりあえずここで彼とやっていくつもりさ。何も心配いらないよ。俺だっていい加減な気持ちで来たわけじゃない。グランプリファイナルでは彼を優勝させてみせるからね。彼、君に勝ったことないんだってね? 今季ようやくそれがくつがえされるわけだ。あはは、もちろん、君の演技のすばらしさは知ってるよ。わくわくするね。  彼の成長を楽しみにしててくれ。SNSに彼との写真も出していくつもりだから見てね。ではまた。  やあ、俺だよ。元気かい? そろそろプログラムも仕上がったころだろう? 君は勤勉だからな。彼のほうかい? ショートはできてるんだけどね。君がびっくりするようなやつ。フリーは行き詰まってるんだ。彼に曲を持っておいでって言ってるんだけど、なかなかきまらなくてね……。  彼って自信がない子だよね。そういう感じだろうとは思ってたけど、あまりにも程度がひどいからびっくりしてしまった。自信を持ってもらおうと助言したら、彼にものすごく怒られたんだよ。ちがうよ、変なことは言ってない。俺としてはまちがいのない提案のつもりだったんだよ。でも彼、激怒して俺のことをにらみつけたよ。普段控えめな彼が怒ると迫力があるね。いつも遠慮がちだから、気持ちをはっきり言ってくれるのはうれしいんだけど……。  え、そうかな? そんなことはないよ。元気だよ。……でもまあ、悩んではいるかもしれないな。彼、ここのところ、口を利いてくれないんだ。何を言っても無視されるんだよね。笑いごとじゃないよ。成長? それは成長かもしれないけど。俺としては仲よくなりたいんだよ。俺たちの信頼関係のほうを成長させたいよ。彼って昔からああも自信がない子なのかい? そうか……まあそうだろうね。どうしてだろう。あんなにいいスケートをすべるのにな。顔だってかわいらしいじゃないか。それは普段はごく地味だけど。スケートのときは凛々しくてすてきだろう? 本気になればすごいんだって、自分のことなのにわからないのかな? 自分について評価する装置が壊れてるんだろうね。俺が直してあげなくちゃ。  それはともかく、彼って恋人いたことないのかい? え? いや、まあ……そのあたりのことを言ったのは言ったけど。でも悪気があったわけじゃなくてね……。  彼って難しいね。なんだか思ってたのとちがうよ。彼自身も、いまの生活も。俺、いままでにないくらい毎日悩んで考えてるんだよ。……え? うん、じつは……楽しいよ。なんだかんだ言って楽しいよ。悩んで楽しいなんて、すてきなことだよね。こんな感覚、知らなかったな。いや、スケートでは経験したけど、誰かについて、なんてさ……。  まあ、やってみるよ。明日は彼を海に誘おうと思ってるんだ。ちゃんと話をするよ。ずっとそうしたいと考えてたんだよ。なにしろ彼は、俺といるとまだ緊張するみたいだからね。彼の言い分を聞いてみたいんだ。スケートやプログラムのことだけじゃなく、もっと、深いところをね。俺のこころは彼のことでいっぱいさ。  じゃあ、またね。  聞いてくれ。日本の地方大会に出場したんだけど。え? いや、俺がじゃないよ。勇利がだよ。当たり前だろ? つまらない冗談で話を遮らないでくれ。俺は彼のことを話したいんだから!  そう、でね、おもしろかったんだよ。いろいろあったんだけど、まずはこれだ。  勇利、日本の後輩にかなり人気がある!  ……いや、わかってるよ。勇利がここではトップだということは。知っていたさ。でもね、あんなに慕われているとは思わなかったんだよ。もう、みんなあからさまなファンなんだ。え? ああ、そうだね、俺にあこがれてる勇利みたいだよ。ここでは俺の立場に勇利がいるわけだ。男子選手は全員──といっても今回はほかに三人しかいなかったけど──でももっといてもその選手もみんなだと思うな──勇利にきらきらしたまなざしを向けているし、女子選手も、勇利は誰も彼も俺のファンだと思ってたみたいだけど、勇利が目当ての子もあきらかにいたね。わかってないんだからな、彼は。  とにかくすごいんだ。勇利が歩くとみんなみつめるんだ。俺は鼻が高かったよ。俺の生徒はこんなに愛されているんだってね。……え? うん、まあ……彼はいつもの調子だよ。ぜんぜんそんなこと頭になかったよ。逆にすごくないか? あんなにファンサービスしない選手、初めてだ。びっくりした。自分のことで手いっぱいっていうのもあったんだけど、もともとそういう性格なんだろうね。だいぶ勇利についてわかってきたから、驚きはしたものの、ちょっと納得もした。  それとね、もうひとつ。勇利ね、ぜんぜん俺の言うこと聞かないんだ! どうなってるんだろうね。コーチ命令を無視するんだよ。信じられない。君、そんなことしたことあるかい? え? 俺? 俺のことはいいじゃないか。……まあ、俺に似たんだと思うけどね。いいんだけど。でも俺はもともとそういう感じだろ? 想像がつくだろ? だけど勇利は勇利だよ? あの素直そうな子が俺の言ったことを無視するんだ。まったく……。……うん、実際はそれほど素直じゃないんだけどね。いや、素直なときもあるんだけど。俺の言うこと、はい、はい、って聞いてることもあるよ。かわいいよね。でもたまにものすごい反逆を起こすんだ。俺に激怒したときもそうだったけど……、今回のことでさらによくわかった。うん? そう、それもかわいいんだけどね。  そうそう、それと、初めて勇利と旅行したんだよ。旅行っていうか遠征なんだけど、ふたりで行動した。彼ね、移動中、寝てばっかりいるんだ。俺は退屈さ。俺も寝るんだが、彼のほうが必ずさきに起きて、次で降りるよ、とか言うわけだよ。しっかりしてるだろう? 俺の生徒だからね。初めての場所だったから、観光しようって言ったら、そんな暇ないって怒られた。まったく頭がかたいよ、うちの生徒。俺ひとりでうろうろして、キビダンゴっていうのを買ってホテルで食べたんだけど、勇利は食べられないから、俺のことをにらんでた。楽しかったな。  え? うん、上手くやってるよ。勇利っておもしろいよね。  やあ、いつも電話だから、こうして話すのは久しぶりだね。最初の日? あれは偶然だったんだよ。俺と勇利が食事をしてたらピチットが来て、チェレスティーノが来て、それから通訳のために……。俺はすぐ酔っ払っちゃったから。君が来たらおもしろかっただろうな。写真見た? いたら俺と一緒に脱いでたんじゃないの、君は。勇利も酒が入ってたらその仲間入りだったかもね。あはは。バンケットの再来だ。  あの話? 勇利とはしてないな、そういえば。毎日いろんなことが起こるから、過去について語っている時間がないんだ。いまについて話さなくちゃ。それに、勇利ってかなり自尊心が強いから、酔っ払ったときのことなんて言われたらまた怒るかもしれない。そう、自信がないのに自尊心がすごいんだよね。その矛盾らしきところがたまらない。かわいいよね。  フリーの前? あれはね……、あれは、うん、ひみつだ。そう見えた? でも彼、ちゃんと演技しただろう? すばらしかったよ。それはまあ、ミスもあったけどね。あのときは駐車場にいたんだよ。人目を避けたかったから。どうだい、コーチらしいだろう?  ……なんて言っても、今回、俺は本当はコーチらしくなかったんだ。だめだった。俺もまだまだ未熟だね。ロシアを発つとき、ヤコフに、おまえにはコーチなんて無理だ、って言われたんだ。彼の気持ちがちょっとわかったな。  でも俺は無理だとは思わないよ。反対に、勇利のコーチは俺しかいないって思ったんだ。そう思えたのは勇利のおかげなんだけどね。彼ってすごいよ。すてきだよ。あんなふうに本音でぶつかられたのも、俺のことをどんなに信じてくれていたか伝わってきたのも、うれしかった。だってあんなこと、俺ならそうしてくれるって信じていなきゃ……俺が絶対に離れていかないって知っていなきゃ言えないからね……。あんなふうに信頼してくれていたのなら、勇利が怒るのも当たり前だ……。  だからひみつだって! 言わないよ。  とにかく、もっと勇利に寄り添って、守らなくちゃって思うんだ。勇利って強いけどもろくて、あぶなっかしくて、見ていられないことがあるんだよ。そういうところが魅力なんだけどね。なんでもしてあげたくなる。笑うかい? すこし前の俺なら絶対に言いそうにないだろう? でもね、勇利はそれを言わせる子なんだよ。わかるだろ? あはは、そうだね、のろけかな……。  じゃあもうひとつのろけるけど、勇利のエロス、すごかっただろう。セクシーだろ? ぞくぞくするだろ。俺が教えたんだよ。いい腕だろう?  ……いや、彼には何もしてないよ。そういう意味じゃない。わかるだろう? そんなエロスじゃなかったじゃないか。うん、まあ、俺が教えたっていうのは言いすぎた。彼が自分で考えたんだ。俺はちょっと可能性を示しただけさ。それであんな清潔なエロスを見せつけてくるんだからすごいよね。ああいう楚々とした感じって、氷がびしょびしょになるようなエロスよりかえって官能的な気がするんだけどどう思う? おい、あきれた顔をしないでくれ。『君の好み』のひとことで片づけるな! まったく……。  何もしてないと言ってるだろう! 何も知らないところがいいんだ。それがたまらないんだ。だから好み好みと言わないでくれ!  そろそろ部屋へ戻ろうかな。勇利が待っているし。え? いや、別々だよ。でも寝る前に話すから。  あ、そうそう。勇利の四回転フリップ、どうだった? 俺の勇利、よかっただろう?  やあ、君か。いや、ちがうよ。身体は大丈夫だ。俺はね。うちのマッカチンがちょっと調子が悪かったものだから。でもそちらも問題ないんだ。いまは元気だよ。どうもありがとう。  勇利の演技、見てくれたのかい? そう……。なんて言えばいいのかわからないよ。俺を送り出すときは気丈だったんだけどね。でも、俺は不安がぬぐえなかったんだ。もう勇利のそばを離れないと……離れずにそばにいるときめていたのに。  失望なんかしてないよ。悪かったのは俺だ。俺がいけなかったんだ。どうすればよかったのかなんてわからないけど……、あれ以外どうにもできなかったんだけど、でも、俺は無力感に打ちのめされたよ。  ねえ、クリス。  俺は勇利を守りたいと言ったよね。君も、俺に守るものができたって言った。それなのにこのていたらくだよ。俺は勇利のコーチなのにね。  勇利のほうから言ってきたんだ。日本へ帰ってってね。彼は自信があったからそんなふうに言ったわけじゃないと思う。俺のためを思って言ったんだ。あの演技を見て……、ひとりでいるあいだ、泣いたんじゃないかと、苦しかったんじゃないかと、そう思うとたまらないよ。  ずっとずっと勇利に会いたかった。あんなにせつない時間は初めてだ。もう体験したくない。  勇利のことばかり考えていたんだ。そう言ったら、勇利もそうだって。俺のことを考えていたんだってさ。でもやっぱり、うれしいっていうよりせつないんだ。何なんだろうね、この気持ちは。初めてだよ。クリス、知ってるかい?  俺はね、いままで、勇利のことを考えたら、いろいろな可能性が表れてきたり、やりたいことが思い浮かんだり、想像力がいくらでも湧いてきて、楽しいことしかなかったんだ。悩んだことも多かったし、勇利って難しいなと困ったけど、それも楽しかったんだよ。  でもいまは、勇利のことを考えると苦しいよ。楽しいだけじゃない。だけど、どうしようもなくしあわせなんだ。こんなに胸がずきずきするのにどうしてだろう。こんなこと初めてで、よくわからないよ。勇利って不思議な子だね。最初からそうだったけど、いまはもっとそれを感じるよ。より深く……。  クリス、俺ね、引退まで勇利と一緒にいることにしたんだ。もちろん、勇利のコーチではずっと居続けるつもりだったんだけど、とにかく目の前のことばかりで、将来については話したことがなかった。だけどもう、楽しい楽しいばかりでいられる時期は終わったんだね。俺の気持ちも、勇利との仲も成熟して、さきへ進んだんだと思う。うん。俺は勇利が引退するまでそばにいるよ。そして……、できれば……。  勇利ね、いままで俺がいくら一緒に寝ようって言ってもいやだって聞いてくれなかったんだ。でも、彼がロシアから帰ってきた日は同じベッドで寝たよ。勇利をぎゅっと抱きしめて眠った。窮屈だったと思うよ。だけど彼は、ひとことも文句を言わなかった。彼のほうからも俺にしがみついてくれてね……、うれしかったなあ。  ただ、彼がいとおしい。  いまの俺は、それだけなんだ。  勇利は昼の便で帰ったよ。俺は夕方。ああ、戻ったら忙しくなりそうだなあ。なのに勇利はそばにいない。憂鬱だ。  クリス、やけにうれしそうだね。俺が競技復帰したから? はは、ありがとう。これからの俺はいままでとはぜんぜんちがうからね。覚悟していてくれよ。  勇利は来季からロシアに来るんだ。え、そう? そんな顔してるかな……。だって勇利が来るんだよ。いいだろ? うらやましい?  ああ、それにしてもいろいろあったグランプリファイナルだった。バルセロナに来てからもう十年くらい経った気分だよ。うん? うん、まあ、ただひとつ言えることは……、勝生勇利ほど自分勝手な人間はいないってことだよ。……まあね。それでも俺は彼を手放せないんだ。笑うかい?  え、どこがって……、うーん、難しい質問だな。……、……、……全部だよ。勇利のすべてだよ。何もかもがいとおしいんだよ。かわいいところも、儚いところも、強いところも、自分勝手なところもだよ。俺にももうどうしようもないんだ。感情を操縦できないのなんて初めてさ。──という気持ちをもう何百回も味わったからね。あきらめてるよ。それでいいんだ。だってあんなに魅力的な子、どこにもいないじゃないか。  この指輪は本気だよ。俺がこういうこと、冗談でする人間じゃないって知ってるだろ? 結婚指輪は俺が贈るつもり。  とりあえず、春までは遠く離れることになるんだ。つらいよ。いままで毎日一緒にいたからね。もう泣きそうさ。だけど、ロシアナショナルでまずは金メダルを獲らないとね。年末には一時的に日本へ帰るつもりなんだけど、そのときに金メダル以外のものを持って帰って「はい、勇利」って見せるの、あまりにもかっこう悪いだろう? 勇利に幻滅されてしまう。そんなヴィクトル・ニキフォロフ、絶対だめだ。さすがぼくのヴィクトル、って勇利が顔を輝かせてくれないと。もちろん俺個人としても金メダルが欲しいけど、彼を喜ばせたいんだ。  ロシアへ戻ったら、練習と、あと、勇利が来たときのことを考えて、たくさん行動しないとね。ああ、いろんな計画を立てなきゃ。どんなふうに勇利と暮らそうかなあ……。日本では勇利の家族も一緒で、とてもあたたかくて最高だったんだけど、今度はふたりきりだからね。いろいろとちがってくると思う。勇利にも最高だと思ってもらいたいな。あとは……とにかく勇利が……俺は勇利を……。  え? そんなにとろけきってる? そうかな。うーん……。  仕方ないだろう? だって俺、勇利を愛してるんだよ。  やあ! 元気かい!? 俺だよ! え? そう? じゃあもうすこし静かにしよう。悪いね、どうも浮かれているようだ。  とにかく、長い三ヶ月だったよ! でも過ぎ去ってしまえばさびしいな。長いとはいえ、勇利との生活を考えて、とても楽しい三ヶ月でもあったから。毎日電話してたんだよ。勇利の顔を見たくて、声を聞きたくてね。日本が夜っていうときにすることが多かったから、勇利、ずいぶん眠そうでね。かわいかったなあ……。寝惚けたとろんとした声で、びくとる、って呼ぶんだよ。はしゃいじゃうだろ?  まあいいや。せっかく勇利が来たんだから、勇利が来てからの話をしよう。 ──え? どうして? 話すことたくさんあるぞ? 興味あるだろ? そう? それは残念だな。また時間のあるときに話を聞いてくれ。ん? 当分忙しいのかい? うそだろ? そうか……。  まあいい。俺だって勇利と愛をかわすのに忙しいからね。おっと、もう勇利がお風呂から出てくるころだ。一緒に入ろうって言ったのに、恥ずかしいのか断固拒否されちゃったよ。かわいいよね。  じゃあまた。──ゆうりーっ。  クリス、聞いてくれ。今日は真剣な相談なんだ。え? もちろん勇利のことだけど。なんで溜息をつくんだ? 俺には重大な話なんだ。まじめに聞いてくれ!  じつは……、じつは、つい昨日のことなんだけど……。  勇利に……。  キ、キスしてしまった……。  ──え? なんで黙る? おーい、クリス。聞いてるかい? ああ、いるのか。急にしんとしないでくれよ。こっちは本気なんだぞ。  いや、それがね……、それまではそんな気なかったんだよ。もちろん勇利にキスしたいなっていうのは四六時中思っていたんだけど……、おい、なんだその溜息は! 二度目だぞ! 何がおかしい!? 勇利はあんなにかわいいんだ、キスしたくなって当然だろ!? ならないほうが変だ。自然の摂理を口にしたくらいで溜息とはどういう了見なんだ。  話がそれたな。とにかく、キスをする気はなかったんだ。そのときはね。だって勇利は洗濯物を畳んでいたんだ。こっちはあまり晴れる日がないから、勇利はそれが不満らしいんだけど、昨日はたまたまいい天気でね。機嫌よく洗濯をして、それを片づけていたっていうわけさ。俺も手伝った。そうやってうれしそうに働く勇利を見ていると、しあわせだなあと思って、どうしようもなく気持ちがときめいてね。勇利が振り向いて、「はいこれ。ヴィクトルの」って言ったとき、あまりのかわいさに、自然に──当たり前に身を乗り出して、勇利のくちびるにキスしてたんだ。勇利は──勇利はかたまっていた。大きな目をもっと大きくして……。彼は口元を押さえて、それから俺を見て、信じられないみたいに瞬いて、そしてうつむいた。俺は慌てちゃってね。勇利とキスできてこのうえなくうれしかったのに、勇利の反応で焦ってしまった。勇利、いやだったのかな、したくなかったのかな、と思ったら何も言えなくてね……。それでも声をかけようとしたら、勇利はいきなり立ち上がって、部屋へ走っていってしまった。俺は取り残された。  クリス、どう思う? 勇利は怒ったんだろうか? 今日? 今日の勇利は普通だった。いつも通りだったよ。でも、怒ってるからそうなんだろうか? だってうれしかったならもっと親しげになるよね? 頭に来てるからそっけないんだろうか。いや、そっけなかったかどうかはわからない。俺も混乱してるから、勇利がつめたいのか、優しいのか、判断がつかないんだ。──そんなこともわからないのかって、『そんなこと』じゃないだろう! すごく難しいことだぞ! 何を言ってるんだクリスは!  とにかく、どうしたらいいかわからないんだ。助言をくれ。勇利は何を考えていると思う? 怒ってるのか? それともうれしすぎてそっけなくなってるんだろうか? 勇利ってわかりにくい子だからな。まったく理解できない。クリスなら勇利と付き合いも長いし、何か思うところがあるだろう? ──いや待ってくれ。俺にわからないことがクリスにわかるのか? なんだかおもしろくないな。どういうことだ。クリス、俺の勇利とそんなに仲がいいのか?  ああ、わかった! いや、もう言わないから。なんでもない。なんでもないさ。ああ。で、どう思う? 本人にって……本人に訊けないからクリスに相談してるんじゃないか! 訊ければ苦労しないよ! なんで!? そんなのきまってるだろう! 訊けると思うのか!? 勇利にキスをして、逃げられたからって「なんで逃げたの?」「怒ってるの?」なんて! そんなこと気軽に尋ねられるわけないだろう! まったくクリスはわかってないな……。  キスだぞ、キス。キスをしてしまったんだ。あの純真な勇利にしてしまったんだ。──そうだ。勇利は純真なんだ。純情なんだ。いきなりキスされたら恥ずかしいにきまってるよね? もちろん逃げるさ。当然だな。え? 中国大会? あれとはまた意味がちがうんだよ!  考えてみたら、あれは勇利のファーストキスだった。あのときはいきなりしても、「そう?」なんて色っぽい声で言って平然としてたけど、つまり俺のことが好きだから平気っていうことなのかな。でも今回は黙ってしまった……どういうことだろう……俺が嫌いになったのか……? どうしようクリス! 勇利に嫌われたかもしれない! どうしたらいいんだ!? え? 俺は落ち着いてるよ!!  いや……でも、勇利は純真だから、キスされたら逃げるんだよ。逃げてしまうんだ。中国大会のことは忘れよう。あれは別だ。けっしてかるい気持ちでしたわけじゃないが。……絶対にちがうよ? あのときだって俺は……。  俺は二度もふいうちで勇利にキスしてしまったわけだね。勇利、それであきれてるんだろうか。キスするのに許可もとらないなんて不誠実だと思われたのかもしれない。だらしないとか、下品とか。勇利に最低だってきめつけられていたらどうしよう。ああ、クリス、俺はどうしたらいいんだ!  …………。  とりあえず、次にキスするときは許可を求めてみるよ。それでいいかな。いいよね? ほかに考えつかないよ。あと、キスのことは謝ったほうがいい? でもそうすると、したことを後悔してるみたいだな。そんなわけないんだ。そんなわけないんだ。ああ、もう……。  困ったなあ。  勇利に謝ってみたんだ。そうしたら、思った通り、「後悔してるの」って静かに尋ねられた。こころにぐさっとくる白くひらめくような目つきで見られてね。どきどきしたし、ぞくぞくしたよ。俺は、突然したことに対して謝ってるのであって、したこと自体については謝っていない、勇利とキスできてうれしかった、って一時間くらい説明した。勇利は黙って聞いていて、最後には納得してくれたよ。  彼が「そう」ってほほえんだから、俺はちょっと安心して、どうにか訊くことができた。「怒ってる?」って。勇利はもっと笑って、「怒ってないよ」って言った。その声がまた優しいんだ。もうかわいくてたまらないんだ。俺はどきどきしてしまって、でも同じ失敗はしたくないから、気持ちを引き締めて尋ねたんだ。「勇利、キスしていい?」って。そうしたら勇利は急に怒り出した。「そういうこと訊かないでよ! 恥ずかしいな!」。それで部屋に戻ってしまった。  どうしようクリス。また怒られた。いや、前のは怒ってなかったんだけど。でも今度こそ嫌われたかもしれない。キスしていいかって訊いてはいけなかったんだろうか。そういう規則があるのか? 初耳だ。きっと勇利の中だけの話だろうな。だけど俺がキスする相手は勇利だけだから、彼の規則なら俺の規則というわけだ。結局失敗した……。ほかにどんな規則があるんだろう。勇利って謎だから、もうさっぱりわからないよ。  クリス、どうしたらいいと思う? 今回は本当に勇利は怒ってるんだ。ゆるしてもらわなくちゃいけない。勇利に嫌われたくないんだ。クリスはもてるだろう? こういうときどうするべきだと思う? 意見を聞かせてくれ。クリス、聞いてるかい? クリス?  仲直りしたんだ。クリスがぜんぜん俺を助けてくれないから、自分で一生懸命考えたさ。どうすれば勇利は喜ぶのかなあって。勇利は俺のスケートが好きだから、ジャンプでもなんでもしてあげればそれでよさそうだけど──それとこれとは別! ってもっと怒られる可能性もあるけど──俺はそれじゃいやなんだ。これはスケートの話じゃない。勇利と俺の日常のことなんだ。なんでもスケートで解決するのはちがうだろう?  それで、よくよく考えた結果、とりあえず花を買ってきた。勇利に似合う可憐な花だ。それと、うんと美味しいチョコレートを買った。見え透いた機嫌取り? いいだろうべつに! 勇利の機嫌を取りたいんだから! なに笑ってるんだ!? 俺が勇利の機嫌を取りたがったらおかしいのか!?  もうものすごく緊張したよ。じろっと見られて、「こんなのでぼくの機嫌が直ると思ってるの」ってつめたく言われたらどうしようってね。どきどきしながら勇利に花を渡して、チョコレートも渡して、ごめんって言おうとした。でも彼はそこで不思議そうに俺を見上げたんだ。大きな目が愛らしくてね……瞳がチョコレートの色なんだ。甘そうで、美味しそうで……。かわいくて仕方なかったよ。俺は気づいたらまた勇利にキスしてて、そして自然に言っていた。好きだよ、って。勇利はきょとんとした。  そこで俺は我に返ったさ。ああ、またやってしまった、って思った。そうしたら勇利は笑って、ぼくも、って答えた。そして、これなに、って。ぼくにくれるのって。お詫びだよって言った。勇利はもうちっとも怒ってなかった。さっきのヴィクトルの顔おもしろかったからゆるしてあげる、だって。俺はようやくどうすべきだったのかわかったよ。好きだって言えばよかったんだ。クリスもおぼえておくといいよ。好きな子ができたら、いきなりキスしたくなるけど、そういうときはちゃんと好きだって気持ちを伝えなきゃいけないよ。  勇利はチョコレートを見て、食べていいの、って俺に訊いた。いいよって言ったけど、たくさん食べたらあとで困るから、ひとつだけってひとつぶ食べた���もうひとつつまんで俺にくれた。勇利の指が俺のくちびるにふれてさ……、それで俺はたまらなくなって……、抱きしめて……。  おっと、これ以上は言えないな! いくらクリスが相手でも言えないな! 勇利とふたりだけのひみつなんだ! 勇利のくちびるはチョコレートの味がして、甘かったよ!  クリス、聞いてくれ……俺、勇利を愛してるんだ……。え? そんなことわかってる? いいから黙って聞いてくれ!  勇利はかわいい。どうしようもなくかわいい。一緒にいるだけでみたされて、胸がうずいて、たまらなくなる。そうするとキスしたくなる。あれからはね、キスも自然にできるようになった。勇利は恥ずかしがり屋だからすぐ赤くなるけどね。でも彼もちょっとずつ慣れて、顔を近づけたら緊張ぎみにだけど目を閉じてくれるようになった。そのキスを待ってる表情がかわいくて……俺はどきどきして興奮して……。  ……先日のことなんだが……。  そうしてキスしてしあわせにひたっているとき、あまりにも気持ちがいいものだから、俺はとんでもないことを口走ってしまったんだ。いま考えると勇利に嫌われなかったのが不思議なくらいだ。ひどかった。もっと誠実でいなければならなかったのに。俺は勇利の愛の奴隷だから、自分が操縦できないんだ。  なんて言ったかって? きまってるだろう。「セックスしたい」って言ったんだ。  俺は自分が自分じゃないような気がしたよ。なに笑ってるんだ? 俺がこんなに悩んでるのに! 勇利の反応? 恥ずかしがるどころじゃなかったよ。ぽかんとしてた。何を言われたのかわからなかったんだろうな。俺はごまかそうとした。いまのはなんでもないんだ。気にしないでくれ。そんなことより明日どこ行く? そんなことを言って話をそらそうとした。口をひらいたときに出てきた言葉はこれだ。  おまえを抱きたいんだ。  さすがに勇利も意味がわかったらしい。まっかになってうつむい��。絶対に嫌われたと思った。たぶんあのときの俺は性欲丸出しで相当まずかったと思う。不潔とか、けがらわしいとか、そんなふうに言われる、とうろたえた。勇利はささやいた。「ちょっとだけ時間が欲しい」。  驚くだろう? それはつまり、時間が経てばしてもいいっていうことじゃないか? 俺は勢いこんでその通りに尋ねた。うるさい。鼻息はそんなに荒くなかったさ! 「……たぶん」。勇利はちいさくうなずいた。こころの準備がしたいって。それから三日、勇利はセックスについては何も言わなかった。四日目の夜、俺の部屋へ来て彼は言った。いいよ、って。  かわいいだろう!? セックスを決心するのに、俺の勇利は三日という時間を要するんだ! かわいいだろう!? かわいいだろう!? 三日のあいだ何を考えていたんだろうな!?  とにかく俺は舞い上がった。いますぐでもいいのかって訊いた。勇利はいいって……。俺は勇利にキスして、それで……いやそのあたりは言わない。ひみつだ。いくらクリスが聞きたがったって教えてあげないよ。え? どうでもいい? どうでもいいわけないだろ、俺と勇利のセックスだぞ!  とにかくいろいろした。まあ、服に手を入れたり。さわったり。キスしたり。それで、服を脱がせようとした。ところが手がふるえてできないんだ。ボタンが外れないんだよ。……クリス。なんで笑う。何が可笑しいんだ!? 真剣に聞いてくれ!  俺は焦った。やっきになってはずそうとした。でもできない。勇利にばかだと思われる。けど、急げば急ぐほど指先がもつれるんだ。とうとう勇利は俺の手にふれた。彼は言った。自分で脱ぐよ。俺は自分に絶望した。がっかりしたよ。落ちこんだら勇利がキスしてくれた。天使だろう?  勇利は俺に背中を向けて服を脱いだ。指がもつれないのかって訊いたら、もつれるって。難しいねって、ちょっと振り返って恥ずかしそうに笑うんだ。どうしてやろうかと思った。彼は上のほうのボタンだけ外して、あとはひっぱって頭から抜いた。それでまあ、下も脱がせて、いろいろして……、このあたりもないしょだが……。  結論から言おう。できなかった。たたなかったわけじゃない。そうじゃない。逆に反応しすぎてまずかったくらいだ。だがそのあたりは問題じゃない。なんていうのかな、あまりに緊張してしまって、俺が勇利の身体をじょうずに扱ってあげられなかったというか……。ずっと手がふるえていて、頭の中が真っ白で、気持ちばかりが、その……。  クリス! 何を笑ってるんだ!? おい、聞いてるのか!? 死にそうな声になってるぞ!  言っておくが、べつに俺から「できない」と泣きついたわけじゃない。ただ、俺が焦ってるのを見て、勇利が優しく、「今日はここまでにしてくれる?」って言ったんだ。「ぼく緊張してこれ以上できそうにないから」って。俺がぜんぜんだめなのに気がついて、だからといって俺を責めるでもなく、自分のせいにしてくれたんだ。優しいだろう? 俺の勇利……。  あのまましていても、最後までできたことはできたと思う。でも、なんていうか……仕切り直したほうがいいのは確かにその通りだった。とにかく俺はどきどきして、自分が何をしているのかよくわからなかったから。不器用だった。勇利を抱きたいって、気持ちばかりが空回りしてね……。勇利は察してくれたんだ。みっともないことをするくらいなら中断したほうがいいと思う。だからそれはよかった。よかったんだが……。  ねえクリス。勇利は俺を、とんでもないへたくそだと思ったんじゃないだろうか。  その通りだろって……、そうだけど、仕方ないだろう! 愛してる子とするのなんて初めてなんだから! おかしくもなる! ただ、勇利にあきれられるのはいやだ! それだけはいやだ!  勇利? いや……怒ってなんかいなかったよ。翌日も普通だった。笑ってた。またちゃんとしようね、だってさ。かわいすぎる。いや、でも、それとへたくそと思う気持ちはちがうだろう。とりあえずヴィクトルはセックスへたくそなんだな、っていう知識は勇利の頭の中に入ったはずだ。つらいよ、クリス。  どうしたらいいと思う? 勇利に気持ちいいと思ってもらいたいんだ。……まあ、そうだけど。次にちゃんとするしかないんだけど。でも、次も同じことになったらどうしよう。俺、裸の勇利にふれようとすると、どきどきして、変になっちゃうんだよ。俺が俺じゃなくなるんだ。勇利は初めてだから、いろいろ教えてあげたいのに……。勇利も最初、ヴィクトル、ぼく何も知らないから教えてね、ってけなげに言ってたんだ。俺は、もちろんだよ、って答えた。なのに俺が教えられたことと言えば、ヴィクトル・ニキフォロフはセックスがへただという事実だけだ……。  さっきからなに笑ってる!? こっちは深刻なんだぞ!  ああもう……。  自分がこんなにみっともない男だとは思わなかったよ。こんなのは初めてだ。勇利は俺をどんどん変えてしまう。おそろしい魔性だな。かわいい顔してとんでもないよ。  クリス……、まだ笑ってるのか? そんなに笑うなら、もう電話してやらないからな!  やあ、クリス。え? わかるかい? うん、そう……、ふふふ……、すごく……すごくね、アメイジングだったんだよ! もう最高!  え? これから用事がある? そんなこと言わずにまあ聞いてくれ。俺の勇利のかわいげが度を超しているという話なんだ。勇利はかわいくて、可憐で、すてきで……、俺は勇利を愛してるんだよ。  おい! 俺のセックスがへただとかそういう話はいいんだよ! あのときは緊張してたんだ! 世界一愛してる子が相手だとそうなるものなんだよ! それが宇宙の真理、世のことわりなんだ! クリスは知らないのか!? 本当の愛を知らない男なんだな、君は! そうだろう! なに笑ってる?  まあそんなことはいい。え? ああ、うん……。しばらくは勇利に何もできなかったよ……だってまた同じことになったらいやだからね。二度目のほうがいやだよ。最初はまだ言い訳ができるけど、くり返しとなると……。またかよ、って勇利に思われたくない。いや、勇利はおしとやかで優しいから、そんな攻撃的なことは思わないさ。それはわかってる。勇利が言うのは変なことだけだ。でも、俺の精神的な問題なんだよ。わかるだろう? 勇利を愛してるんだ。おかしな失敗をしたくない。  そういうわけで、俺はしばらく勇利に何もしなかった。勇利は自分の部屋にベッドを持ってるから、そっちで寝たりしていたよ。でもね……、ある日、俺が寝ていたら、彼は俺のベッドに突然もぐりこんできたんだ。するするってね。俺がびっくりしてたら、勇利はいたずらっぽく笑って、一緒に寝ていい? って。だめなわけないじゃないか。いいよ、って答えた。すると勇利はうれしそうにうなずいて目を閉じた。そのままただふたりで寝たよ。どきどきしたなあ。セックスとは別の意味でどきどきした。あまずっぱくてね……。すてきな夜だったよ。  次の日はね、もう最初から、俺の寝室で勇利が待っていた。お風呂から上がって部屋へ行ったら、にこにこしながら勇利がベッドに寝てたんだ。だめ? って言うから、やっぱりそのときも、いいよって答えた。俺は勇利と眠れるのがうれしかった。でも、二日も何もしないままじゃ、男としてどうなんだろうという気もした。勇利とただ眠るのもすてきだけど……。  そしたら、勇利が言ったんだ。ヴィクトル、何もしなくていいよ、って。一瞬焦ったよ。勇利はもう俺としたくないか、それとも、俺がもうしたくないと思ってるときめつけてそんなふうに言ってるのかって。彼は続けてこう言った。ヴィクトル、まだぼくのこと抱きたいと思ってくれてる? 俺は答えた。もちろんさ。じゃあ、いつかしてね。勇利はほほえんだ。ぼくはいつでもいいからね。  クリス……、このときの俺の気持ちがわかるか? 気が狂いそうだったよ。正直、もう痛いほどたってた。え? うるさいな。真実なんだ。あんなに下半身がおかしくなったことはないよ。いや、まあ、勇利を抱こうとした最初の夜もそんな感じだったけどね。でも、それを踏まえての勇利のせりふで、その勇利のせりふを踏まえての俺だったから、やっぱりそれ以上なのかな。  もう我慢できなくなって言っちゃったよ。じゃあいますぐ。勇利は驚いたみたいだけど、すぐににっこり笑って、うん、だって。この、うん、っていう言い方が最高だったんだ。いちずで、けなげで、清楚でね……、もう、俺の勇利、って感じで……。  このあとはひみつだ。深く愛しあって結ばれた、とだけ言っておくよ。じつはね……、それからもう何度もしてるんだけど、そのたびに勇利はかわいくなって……初々しくなって……そういうことを知ったら普通、人は変わるものだと思うんだが……勇利は……いや、変わってるんだよ。変わってるんだけど……、……上手く言えない……。そんなことは俺だけがわかっていればいいね!  そういうわけで、俺と勇利は愛しあっているんだ。クリス、いろいろ心配かけたね。安心したかい? 今度、俺たちの愛の城に遊びに来てくれよ。歓迎するよ。クリスも早くいい人をみつけるんだよ。俺にとっての勇利、勇利にとっての俺のような誰かがクリスにも寄り添ってくれることを祈っているよ。え? もうかけてくるな? なんで?  やあ、クリス。聞いて聞いて。聞いてくれ。……なんでそんな声出す? もう用事はないだろうって? あるよ。どうしてないって思うんだ? え? 勇利と喧嘩? してないよ。いや、ちいさな喧嘩はするけどね。勇利は喧嘩のときもかわいいっていうか……、なんだ、クリスが言い出したんじゃないか。訊いておいて何なんだ。  とにかく俺と勇利は順調だよ。だから聞いて欲しいんだ。  セックスはたびたびしてる。俺はいつも勇利のことを考えて、こころから尽くしてるんだ。勇利のためになることならなんでもしたいんだよ。でも、自分本位にならないように気をつけてる。勇利はうぶで清純だから、俺が普通と思ったことや、いいと思ったことも、彼にとっては未知でこわいことかもしれないからね。ひとつひとつ確認してやってるんだ。……もうへたくそじゃないって? うるさいな。勇利は最初から、俺がへたくそだなんて思ってなかったそうだよ。気を遣ってるわけじゃない! 勇利はうそなんかつかないぞ!  でね、とにかく俺は勇利のためにいろいろしたくてがんばってるものだから、気になってたんだよ。何がって感想が。どうだったんだろうって。気持ちよかったかな? いつも考えてた。でも勇利は恥ずかしがり屋だからなかなか言ってくれないし。  俺? 俺はいつも最高だよ。すごく気持ちいいよ。でもね……、でも……。  いや、そうじゃない。問題はない。ただ俺は……、俺は、自分が汚れてるような気がしてね……。何を驚いてる?  昨日も一緒に寝たんだ。それで、勇利といろいろして……あれこれと彼に尽くして、愛しあって、それで終わって、ふうっと息をついた。俺は完璧にみたされていて、にこにこしてたんだ。勇利、気持ちよかったねって言おうとした。そうしたら、それよりちょっとだけ早く勇利が口をひらいたんだ。そして言った。  ヴィクトル、しあわせだったね。  ……しあわせだったね、だよ? 俺が気持ちいいなんて言おうとしたときに、勇利はしあわせだったと言ったんだ。初めての彼の感想……。勇利は俺との行為に幸福を感じてくれていたわけだ。たまらなくうれしかったよ。でも、同時に……、身体のことしか考えてない俺って何なんだと思ったさ。いや、しあわせじゃないわけじゃない。このうえなく幸福だよ。天にも昇るここちだ。だが、俺の口をついて出そうになったのは、気持ちよかった、という言葉だった。  クリス……、勇利に身体目当てだと思われてたらどうしよう? いつも言ってるんだよ、俺。勇利に。最中は『気持ちいいね』、終わったときは『気持ちよかったね』って。毎回毎回言ってる。気持ちよかったよ、ってキスして伝えてる。勇利はどう受け取っただろう。だって、つまり彼は、最中は『しあわせだ』、終わったら『しあわせだったなあ』と思ってるわけだろ。気持ちいい気持ちいいって連発してる俺は何なんだ。セックスのことしか頭にない男みたいじゃないか? 勇利にけがらわしいって思われていたらどうしよう。そのことで勇利に何か言われたことはないけど。気持ちいいってあまり言わないほうがいいのかな。だって気持ちいいんだ。口からつい出ちゃうんだよ。だけど勇利が俺のこと、ただのセックス男って思ったら……。ああ、でも、勇利、俺とするのしあわせなんだな。いつもそう思いながら抱かれてるんだな。それってすてきだね。すごくうれしいな。……だけど、俺が気持ちいいことしか考えてないって思われたら……。  ちょっと昨日から堂々めぐりなんだよ。クリス、どう思う? 俺、やりたいだけの男に見えるかい? そうじゃないんだよ。そうじゃないんだ。ただ、あんなに気持ちいいのは初めてだから……、俺は勇利におぼれてるから……だから……つい言ってしまう……。  あ、勇利が呼んでる。行かなきゃ。じゃあねクリス! また! 「いったいいつまでかけてくるつもりだ?」  電話を切ったクリストフは深い溜息をつき、ヴィクトルがこんなにお���ゃべりな男だなんて知らなかった、とひとりこぼした。何をこう話すことがあるのだか。……いや、まあ、何をというか勇利のことだが。  あの超然と構えた、なにごとにも動じない男が、勇利のたったひとこと、たったひとつの行動でこんなにも動揺したり喜んだりするとは思わなかった。可笑しい。本当にあのヴィクトルだろうか、とクリストフはしばしば考えたりするのである。  そもそも、言っていることが妙ではないか。冷静に思案すればわかるようなことばかりでヴィクトルは悩んでいる。クリストフから見ればあきれるような、おかしなことで彼は真剣に思いわずらい、どう思うと相談を持ちかけ、勇利にどんなふうに受け取られただろうとうれしそうに苦しんでいるのである。まったくまともな判断のできない状態だ。ヴィクトルがこんなにぽんこつだなんて。 「愛ってのはすごいもんだね」  クリストフは窓辺に立ち、グラスを手にして、つめたい飲み物を飲んだ。 「ヴィクトル……、いま君が報告してきたその楽しそうな悩みはね……、同じことなんだよ」  クリストフの足元に愛猫がやってきた。クリストフはほほえんで優しく撫でてやった。 「君の『気持ちいい』も、勇利の『しあわせだった』も……、同じ意味なんだ」  つまりね、君たちは、お互いに「愛してる」と言っているわけだ。 「ばかばかしいから、教えてあげないけどね」
1 note · View note