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#爪噛み癖
nailstudiomotoni · 2 years
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自爪の形を変えたい! そう思って、3ヶ月ネイルケアをお申し込みいただく方が多いです。 自爪の形までは、さすがに変わらないだろうと思って諦めている方も多いのですが、この3ヶ月ネイルケアで、今まで何をしても変化がなかった自爪の形がかわった方がたくさんいらっしゃいます。 まだまだこのネイルケアを知らない方もたくさんいらっしゃるので、同じようにお悩みの方にこの投稿が届き、自爪は変わらないと諦める前に、是非とも試していただきたいなと思っています。 当サロンにはこんなお爪のお悩みの方がいらしてます。 ・何をしても爪の白い部分が伸び続けてしまう ・ピンクの部分が伸びない ・爪が広がって生える ・爪周りががさがさ ・爪の形がきらい ・縦長の爪にしたい ・深爪 ・むしりぐせ そして、3ヶ月後、こんな嬉しいことが期待できます! 🌸ピンクの部分が伸びて縦長の爪に! 🌸人前に堂々と見せたくなる爪に! 🌸ホームネイルケアのやり方がわかり習慣となる! 🌸自分を労わるようになる! 🌸爪を見るたびに綺麗でテンション⤴️ 3ヶ月ネイルケアを検討されている方で、まずはどんなネイルケアかを体験して説明を聞きたいという方に体験コースも、今ならお値打ちでご用意してます。 少しでも気になって頂けた方は、このインスタのプロフィール画面のURLから詳細をご確認いただけます。お問い合わせもそこからしていただけますので、是非のぞいてみてくさい! また、深爪さんを応援したいので、深爪さんのための年内特別キャンペーンをすることにしました。 絶対直したいと思っている方で、3ヶ月ネイルケアを私と一緒に挑戦したい方に特典をご用意してます。(年内スタート出来る方) 是非、プロフィールのURLからラインにてご連絡ください! ラインに登録いただくと、特典の申し込み方法がわかるようになっています。 あなたの自爪のコンプレックスの解消のお手伝いが出来たら嬉しいです。 ◆3ヶ月中、8回〜10回のご来店での最強ネイルケア施術と、カウンセリング、ホームケア用品など込 67,200円 (深爪さんは特典あり。ラインで写真送ってください!) あなたと私で二人三脚で頑張るネイルケアです! 都内の間借りやシェアスペースなどでネイルケアをしていますが、今のところは東京の北参道エリアでスペース借りてやってます。11月ごろに場所は新宿三丁目のサロンに移動予定です。 ご連絡は24h いつでも受付しております! ご連絡お待ちしています! #深爪改善 #爪のコンプレックス解消 #最強ネイルケア #丸爪 #ネイルケア専門店 #北参道ネイル #北参道ネイルサロン #千駄ヶ谷ネイルサロン #千駄ヶ谷ネイル #ネイルケア専門店 #爪を育てるネイルサロン #明治神宮前ネイル #明治神宮前ネイルサロン #深爪 #美爪育成 #美爪育成サロン #深爪ネイル #二枚爪 #爪噛み #爪噛み癖 #むしり癖 #深爪育成 #爪のコンプレックス #貝爪 #美爪になりたい (渋谷区千駄ヶ谷) https://www.instagram.com/p/CkGGLxgB-6e/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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oka-akina · 1 year
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リチとの遭遇(冒頭試し読み)&通販のお知らせ
 こたつの天板をひっくり返すと麻雀のラシャだった。あの緑色が現れると夜だった。布端がちょっとほつれて毛羽立っていて、直行はいつも焦れったかった。剥がれかけたかさぶたを引っ掻くみたいに手が伸び、びーーっと引っ張りたくてたまらなかったが、あれは父とその友人、あるいは伯父たちが夜な夜なジャラジャラやるためのものだった。勝手に触ると叱られそうな気がしてがまんしていた。  母家の隣のプレハブ小屋だ。父たちはしょっちゅうそこに集まり、ときには半裸になって酒を飲んでいた。母や祖母はほとんど来ない部屋だった。酒とかつまみとかを運んで溢れた灰皿を交換する役目は直行だった。夏の小屋はかなり蒸すが、窓も扉も全開にして扇風機をまわしておくと夜風が涼しかった。  ぶおお……ぶおお……と風に乗って鳴き声が響く。あれは牛蛙だと祖父が言った。火を通すとささみみたいだがあまりうまくはない、ただし唐揚げにすれば鶏か蛙かわからない。直行は、六年生になったら授業でカエルの解剖をやる、一人一匹カエルを与えられて必ずお腹を割かねばならないと上級生からおどかされていたため、いつまでも響く鳴き声が怖かった。そうしたら祖父が励ますみたいに「鳴いているのはみんな雄だ」と教えてくれた。変な励ましだと思った。  日が暮れる。父は小屋に向かう。麻雀牌にベビーパウダーをまぶし、夏場は長い時間やっているうちに牌と牌が汗でくっついてしまうからで、直行が赤ん坊のころ汗疹やおむつかぶれにはたかれたのと同じ粉だった。いそいそと作業する父の背中は汗ばんで、太い首が桃色に染まっていた。小屋の中を甘いにおいでいっぱいにして仕度し、父は客を待った。そうしていいにおいは男たちの汗やたばこでたちまちぐちゃぐちゃになった。  牌は杏仁豆腐みたいに見えた。しっかり固くて、スプーンを押し当てたらすとんと切れる、甘いシロップの中に浮かんでいる……。牌山を見ているとひんやりと甘い味が口の中によみがえった。甘味が虫歯に滲みる気さえした。あるいは父たちのツモったり切ったりの手つきは寿司職人みたいだと思っていた。伏せられた牌の白色はシャリで、背の黄色は……、黄色いネタって何かな。沢庵とか卵とか。もしくは辛子を塗られた? そんなもの見たことはないがたぶんバラエティ番組の罰ゲームっぽい何かが頭にあった。直行がじっと見ていても父も誰も麻雀のルールを教えてくれなかった。そばで携帯ゲーム機をいじりながら勝手な想像ばかりしていた。  父の後輩らしきちょっと若い男。日焼けした体がケヤキの若木みたいで、背中も眉も額も、体の全部がまっすぐだった。定規で引いたみたいな輪郭だと直行は思った。彼が「ロンです」と控えめに発声する感じがいいなと思っていた。あ、ロンです。あ、ツモ。おとなしく勝つ感じが格好いいもののように思えた。ただ��うもロンとかツモとか宣言しても必ずしも勝ちとはならないようで、直行にはますます謎めいていた。  昼。男たちがいなくなったあとも直行はそれについて考えた。授業中や掃除の時間にふと思い出した。ポン、チー。卓のあっちからこっちへやりとりされる点棒。あれは算数セットの何かに似ていなくもない。小屋の麻雀はいつも長い時間やっているから直行は途中で寝てしまうこともあり、誰かが布団へ運んでくれた。男の横顔。彼はたばこを吸わない。漬物の茄子を齧るとき、汁がこぼれないようにあるいは惜しむように、口に運んだ箸をちょっと吸う。直行も真似をしてみたが茄子漬けを好きになれなかった。においも感触も苦手だった。鉢に残った漬け汁の青色は朝顔みたいな色だと思った。授業で育てた朝顔。直行のだけ成長が遅かった。みんなが実をスケッチしたり種を収穫したりしているころ、直行の鉢だけまだ青い花を咲かせていた。  苦手だとわかっているのに客の前で見栄をはり、茄子を口に入れたら飲み込めなくてべえっと吐いた。父はべつに叱らなかったが声をかけてくれるでもなかった。若い男がティッシュをとってくれた。しゅっしゅっとすばやく二枚。二枚も使って母親に怒られないかと、小屋にはいないのにとてもどきどきした。そうして若い男は出し抜けに「子どものころ学校のトイレでうんこするのが恥ずかしくて、体育館横のトイレは幽霊が出るって噂を流したよ」と言った。おれ専用のトイレにしたんだと笑った。  鳴いている蛙はみんな雄だ。いつかの祖父の励ましは理屈として通らないと思ったが、あれは理屈を言いたいわけではなかったのだとしばらく経ってからふと思い至った。体育館でマットを運んでいたら急にそう思った。たんになぐさめようとして言葉を継いだのだ。直行の学校は体育館の横にトイレはなかった。渡り廊下がいつも薄暗かった。  それならばと直行は思い、父たちのいない昼のうちにこっそりラシャのほつれを毟ることにした。学校から帰ってきてそっと忍び込み、昼間の小屋はかえって薄暗かった。カーテンの隙間から差し込む光が埃の粒子に跳ね返り、光の道筋を作ってキラキラしていた。直行は口を開け、ぱくっぱくっと空気をかじって吸い込んでみた。キラキラが埃だというのはわかっていた。汚い粒が自分の胃袋に溜まっていく背徳感に酔った。  天板を浮かせて隙間に手をつっこみ、布端を探った。天板は重く、指を挟むと爪がぎゅっと白くなった。痛くはないが圧迫される感じがよかった。思ったより少ししか糸はほどけず、びーーっとはならなかった。千切った糸は絨毯の裏に隠した。すっかり擦り切れたパンチカーペットで、タバコの焦げ穴があいている。直行の人差し指がちょうど���まる穴。そこに指を突っ込むのが好きだった。自分の指が芋虫になって絨毯を食う。きっと穴はどこかちがう場所につながっている。ワープ。そのころ髪を抜くのもちょっと癖になっていて、ぷちっと抜いたときの案外痛くない感じがやみつきになっていた。根元の白いかたまりが大きいとうれしくて、いい感じのかたまりが取れるまでぶちぶち抜いた。抜いた毛も糸と一緒に絨毯に挟んだ。  直行は一人で小屋に入り浸るようになった。毎日緑の布地をこすった。父たちがラシャと呼んでいたからこれはラシャなんだろうなあとおぼえたが、本当はもっとちがう名前があるのか、このような敷物がラシャというのは世の中の常識なのか、直行にはわからなかった。ラシャは音を消した。酔った父たちのでかい声に反し、牌を切る音はことんことんとおとなしかった。おらっとふざけて乱暴な打牌をすることはあったが、それでも大した音は鳴らない。寿司っぽい。寿司のことはよく知らないけど。白い調理服の男のイメージ。たまに連れて行ってもらう回転寿司は若いアルバイトとおばさんのアルバイトが多く、ちょっとちがった。伯父は醤油をむらさきと呼ぶ。伯父の太鼓腹には盲腸の手術跡がある。盲腸の痛みがいかに大変だったか、伯父は大仰に語り直行を怖がらせたが、手術跡というのは格好いい気がしていた。酔った伯父のひたいはてかてか赤く光った。  重い天板に手首の骨のところをわざと挟んでみて、痛くないのに痛がってみた。手がちぎれる! 罠が仕掛けられていた! 鰐に噛まれた! そういう想像。なかなかいい演技だったと直行は思うが一人きりでやっていたことなので誰も見ていない。昼間の小屋には誰も来なかった。やがて自慰を覚えた。  挟まれる感じといえば、重たい布団に押しつぶされるのも好きだった。押入れに積まれた布団の間に体をねじこみ、圧迫される感じがうれしかった。そしてそういう喜びは人に知られてはいけないものだろうと直感していた。これは誰にもばれてはいけない感情だと直行は噛み締めた。  でも従兄弟たちは察していたのかもしれない。集まった子どもたちで床にうつぶせになって何人も重なる遊びをよくやっていて、直行は一番下にされがちだった。その遊びのことはペチャンペチャンと呼んでいた。一番下はじゃんけんで決めようとは言うが小さい子が下になってはかわいそうだともっともらしく言われ、だいたいいつも直行が下敷きになった。どんどんみんな積み重なって、他人の体と密着したのはこれが最初の記憶かもしれない。自分ではない体のぐにゃっとした重さや熱。におい。  二つ上の従兄はそんなに背が高いわけではなかったが腕や足が骨っぽくて重かった。のしかかられると日焼けした腕にうっすら毛が生えているのがよく見えた。従兄の輪郭も定規で引き直されつつあると思った。直行が重いと叫ぶと毛が揺れた。草原だと思った。自分のとはちがうよその家の服のにおいがくすぐったかった。ペチャンペチャンをやっていると母たちに叱られた。内臓が破裂しちゃったらどうするの。直行はそのスリルにもひそかにドキドキしていた。ペチャンペチャンは三人目くらいから腹がぐっと押され、潰される感じで、苦しい苦しい、痛い痛い、ぺちゃんこになっちゃうよと直行はわめいた。ほんとはそんなに痛くなかった。痛みよりも快感があったのだが、ごまかすみたいに苦しいと叫んでいた。  やがて従兄は中学生になり麻雀の輪に入っていった。卓を囲む四人の男たち。じゃあ、従兄が入ったぶん誰が抜けたのだろう。それとも誰も抜けずに仲良く交代で? 疑問に答えは出ないまま、やがて直行が中学に入るころには父たちはあまり集まって遊ばなくなった。若い男は結婚し、子どもが生まれたときいた。直行は小屋をもらって自分の部屋とした。
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5/21文学フリマ東京の新刊です。3万字くらいの短い小説で、薄い文庫本です。
通販開始しましたのでよかったら覗いてみてください〜
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ophelia333k-k-k · 2 years
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筆記の試験が昨日で終わったから、今日は大体だらだらしていた。まだ明日口頭の面接があるけれど、もはや英語とかそういう対策してきたものは終わったから。ずっと勉強だったり課題だったりバイトだったり締め切りだったりで、一日何もしない日というのがかなり久々で、もちろん何をかをするのはかなりしんどいから、何もしない方がいいのだけど、それはそれで不安になる。自分がいつも強制的に外に出るのは、動き続けることで何かをごまかせるから、ある場所に居続けると不安になるから。ファミリーマートで買った国産果汁のフルーツミックス(果汁1%)でどこまでも口を甘くして、歯���磨いて眠る。いつも自分の口の中を自分の歯で剥がしてしまうから(よくある「爪を噛む」みたいな癖として)口の中がぼろぼろなのだけど、口の中を噛んだことで、更にぼろぼろになってしまっている。それも、「国産果汁のフルーツミックス」(果汁1%)を飲んでごまかす、眠る
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kotoridutu · 4 months
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(2024/05/23 23:05:00)
伸びてた爪を噛んだ。幼少期の頃からある爪を噛む癖。大人になってジェルネイルをはじめた。オシャレ目的なんかじゃない。見た目が可愛いからでもなく、ただ自爪が顕になっていると噛みたくなるから。ボロボロの自分の手が大っ嫌いだった。甘皮やむけた皮をはぎまくったボロボロの手。綺麗に伸びていた爪を噛んで二重爪になったりした。ストレスを感じると爪を噛みたくなる。
通勤中、道を歩く自分の姿をショーウィンドウの反射越しに確認したりする。醜いなあと思う。肩が丸くなって猫背でおしりが大きくて。背中が痛くて、姿勢が悪いのが原因だと思いピラティスをはじめた。ピラティス後は背中の違和感も軽減されてる。これを続けて行こうと思う。
本屋に行って読みたい本、いいと思うデザインの物色をしてたらあっという間に20時をすぎていてそろそろ帰るか〜と電車に乗る。バイトの時は毎回青山のブクセンによっていたけど今はさすがに週に2.3回くらいいけたらいいなと思う感じ。青山ブクセンだーいすき。私の読みたいを刺激する本が沢山売ってる。デザインの勉強のために休憩ちゅも行くし帰りも寄って帰る。東京は人が多いところが嫌いだけど東京の店はどこよりも良い。デザインが洗練されているしマーケティングとやらも考えられている。こういうわくわく感を感じられるのが好きだ。今週末は下北にある日記のおみけにでもいこうかな。美術館ももっと行きたい
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niyuuhdf · 4 months
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イキヤ 貴重な初期設定・一人称
パート名廊直人において死という形で実を結んだ「画家」像の限界に、次の パートで行屋虚彦が挑む。
行屋虚彦の現在の手段は「隷属」である。
*
行屋虚彦(Ikiy% Utsuhiko) M中学校三年二組 15歳  200?年(平成?年)11月22日生まれ  蠍座  身長168cm  体重49kg B型 父・行屋疾彦  母・耀屋七  弟・耀屋糸彦(9歳差) 師・名廊直人、山雪実 髪の色・黒 目の色・黒 イメージ・鴉、豹、晩年のモネ画、佐伯祐三画家。 中学にはほとんど通わず、山雪のアトリエでいつも油絵を描いている。 すでに画家として売れており、軌道に乗りつつある。 直人を超える早筆で多作。 自身の色覚障害を忌々しく思っており、それを共感覚や才能だとは認めない。 母似の近寄りがたい極端な三白眼の顔立ちをしているが、中身は普通の多感な15歳。
行屋虚彦(通称イキヤ)は生まれた時から育児能力のない母に変わって山雪アトリエでほとんど育てられたため、自分の描画能力を環境の産物だとしか感じていない。 自分の色覚に劣等感を抱いていたために画材は黒の鉛筆のみだったが、 8歳のとき名廊直人に隠していた色覚を看破され「見たままを描く」よう示唆されて以来、自分の視る色世界に隷属するようになる。 イキヤの見ている色覚世界は原色が非常に多く、強烈な色の残像が補色になってそれら二つが常に明滅するように入れ替わる。 真っ白な壁にも多くの色を見る。 色は流動する。 気温や匂いや音も関係しているが乱雑に絡みすぎて一つの原因に特定することはできない。 本人も治療できる類のものだとは感じていない。 しかし五感への刺激物を減らすことで対処できるなど気休め程度の回避の方法も身につけている。 幼児期には自分の色覚への自覚がなかったために一人でストレスを抱えており、無意識に鉛筆や自分の指の爪を噛んだり、いまだに指の皮を剥がす癖がある。 彼の描く絵は美しいが、彼の見ている世界そのものは刺激が強すぎて常人にはとても美しいという形容では済ませられない過酷なものである。 8歳の日に色から逃げなかった後遺症で持病の偏頭痛が悪化。 少しずつ視力も落としていて左目の視界は常時霞んでいる。 絵を描くとき以外は完全に視覚を閉じるためアイマスクをしていることが多い。 目への余計な刺激を避けるために私服は黒かグレーしか持たない。 視界を閉じたいときのために大きめのすっぽり被れるフードがついている上着を好む。 体力的にかなり無理な描き方をしており、作業中はものも食べないため痩せている上に自律神経のバランスも若干崩していて常に少し機嫌が悪い。 描くことはどちらかというと彼にとって苦しいばかりで、今は自分の絵が売れることも評価されることも釈然とせず気に食わない。 名廊直人とはほとんどろくに話したこともない。 イキヤは口にはしないが名廊直人をこそ絵の師であると感じている。 一種の色覚障害と神経の問題を抱える点で二人は体質がやや似ているが、そ のことに対する姿勢や性格はまったく異なる。 「見たものをそのまま描く」ことは名廊直人から譲り受けたものであるため そこでのみ二人は完全に重なるが、その姿勢が行屋虚彦の身体に負荷をかけている。 名廊直人の自殺がそれを突き詰めた結果の限界であることにイキヤは気付いているが、彼から受け取ったものをまだ捨てることができずに自分に無理を強いている。 イキヤが命を絶えさせずに絵を描き続けるためには名廊直人の限界を認めて 自分の描き方を真剣に模索する以外にないが、今の彼にそれはまだ厳しすぎ るし、自分をこのまま追い込むほうがやさしいと感じている。 そんなイキヤが弱冠15歳にして実力のみの外部からの評価で画家としてそれなりに立脚してしまっていることは、イキヤを追い込み、体を蝕み、
パート行屋虚彦において彼は迷走した末にとうとう名廊直人にできなかったことを成し遂げる。 画家をやめるのである。
前日譚より、行屋虚彦の一人称から抜粋
「今も片方の瞼は痙攣しているし、その目は薄く霞がかかったように視力を落としている。 俺は今年で十五になる。 今では家事と母の世話はたくましく育った弟の役割になっている。 俺は絵を描いて個展をして公募に出してと忙しくしている。 収入はほとんど家のことに使って、残りを画材にあてているけど、俺の人生がこれでいいのかは分からない。 少なくとも自分の体と、ほとんど家にいない父親からは、絵なんてやめろと言われている。 やめればいいのかもしれない。アトリエで描く時間をほとんど不登校になっている学校生活に使うべきかも。 そうしたところでうちには別の収入もないわけではないし、俺が絵を売って稼ぐのは必要に迫られてのことじゃない。 不健康に痩せて曲がった背筋は痛むし、目もどんどん疲労して悪くなる。描き続けてもいいことなんて…と思うようになった矢先。名廊直人が死んだ。 精神的に不安定だとかいう理由で入れられていた施設の窓を突き破っての投身。その死ぬ寸前まで篭りきりだった狭い部屋から出てきた膨大な遺作。 絵の具の乾ききらない絶筆の連作が20枚はあったらしいから死ぬ寸前まで 描いていたことは確かなんだろう。 あの人の横顔が脳裏に過る。 死んだ。なにひとついいことなんてないまま。 あの人に生き方を支配される謂れはないけど、俺はどうしても素通りできなかった。 どこかであの人もいつか人並みに幸福を享受できると思っていた。 名が残るとか画家として成功するとかそんなものとは無縁な、絵を抜きにしても去っていかない幸福だ。その可能性と一緒にあの人は死んでしまった。 それで俺は今日もキャンバスの前にいる。 油にまみれてボサボサの頭で何百円かで買った安い古着を着て。 何か答えが出た訳でもなく、とにかく描くことでしかどうにも息ができない。 ただ生きていくだけならきっと絵なんていらない、それでも絵にすれば世界は美しい。」
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qofthequinine · 6 months
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どこにある?
間違い探しは得意だった。流石にサイゼリヤのやつは脳みそがウニョっとなってしまって辞めたけれども、『ミッケ!』とか『ウォーリーをさがせ!』が大好きだった。神経衰弱というゲームがあるが、子供にとってみれば神経発達である。ああいうゲームが好きだし、ボードゲームも好きだった。心理戦が関わるととてつもなく面白く、『スコットランド・ヤード』では負けたことがない。一方、将棋では絶対に負けてしまう。弟とおじいちゃんが強すぎるのだと思う。チェスは案外強いが、弟ともおじいちゃんともやったことがない。おそらく負ける。アホみたいにオセロが強い母には成人してからやっと勝てるようになった。ポーカーは1ゲームでは勝てない。数ゲームやって、場にいるメンバーがどのレベルのカードでどういう振る舞いをするか、である。お金がないしギャンブルだけは絶対にやるなよ、という家訓があるので、NISAでさえ他の人がやっていてもあんまり興味がない。未来に金銭を預託する感覚がないのだ。借金もしない。借りた金を明日返せるかもわからないのだ。もらいタバコもしない。無理に吸わせず、無理に飲ませず、各々楽しんでほしい。
嗜癖とは人間の精神状態を表す。ギャンブルであれば興奮が足りず、飲酒であれば常に緊張していて、爪を噛む人はなんらかのストレスに耐えており、例えばこうやってキーボードを叩いているような時に、手の指に無理な緊張が走っていれば、その人はキワキワである。嗜癖と言ったが、「なくて七癖」の七癖がどこにある?を見極めるだけだ。過労パーソンは片付けができないか、オンラインゲームにハマる。こういうのをひっくるめて「発達障害」と名付けたのが失敗だったようには思う。正しい人間はこの世に存在しない。一面が正しくても他の面は正しくないかもしれない。人間は入り組んだ多面体だと思う。精神解剖なんつうのは無理な話で、奥底に秘めている話さなかったことは存在していない。
今日ここまで美しいと思ったことを書いて結びとしよう。
・スポーツ系の部活らしき自転車に乗った女性が、乗りながらウインドブレーカーを脱いでいた。普通、自転車がブレるだろうに、全然だった。体幹が強いなあ、と思って惚れ惚れした。
・マンションの改修に来ている鳶職の女性がいる。見た目はきついのに話すと優しい。
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to-toshikun · 11 months
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・俺を呼ぶ声も甘えたい時の声も笑ってる時の声も全部!
・電話掛けるの苦手なのにたまーに掛けてきてくれる
・電話すぐ出てくれる
・水飲む時とトイレ行く時絶対だめ!の横暴なとこ
・2人の時はそりゃもうずっとひっついてきてくれる
・手繋いできてくれたりぎゅーもちゅーもしてくれる
・いちゃいちゃが大好きなとこ
・俺がべたべたしてても全部受け止めてくれるとこてゆうか寧ろそれが好きなとこ
・俺のご飯をおいしいって食べてくれる時の笑顔!
・お揃いをプレゼントした時の反応。あれほんともー堪らなかったなあ。
・俺の邪魔するのが好きなとこ
・読み聞かせしたらほんとに寝るのまーじで早い
・読み聞かせしてくれる時の声
・会ってる時めちゃくちゃ爆睡する
・でも起こしてって言うとこ
・満腹の寿司ガチャ失敗したとき
・甘えたくて仕方ないときいじわるしたくなる
・いちゃいちゃしてるとき
・俺の独占欲好きだよって言いながらとしくんもちょっと独占欲あるとこ
・だめっていう時ちょっとえろい
・たまに乱用する変な絵文字とスタンプ
・としくんの文字列?言葉?かわいい。
・なんでそんなところで誤字?のとき
・電話でも急に出てくるとしくん語
・ちょっとだけわがままなところ大好き
・ひよこみたい
・俺がいじわるしたらちょっと拗ねるところも好き
・すき、だいすき、あいしてるこれに勝るものはない
・会いたくて寂しい時ちゃんと言葉にしてくれるとこ
・いつもなんか可愛いのついてる爪
・あ、足の爪もキラキラしてた
・噛んだらうさぎの跡になるとこ
・まつげくるくるしてる
・髪の毛乾かして欲しいんじゃなくてその時間が好きなとこ
・手叩く音デカい
・野球応援とんでもないおっちゃんの大盛り上がりする
・野菜嫌いなのに野菜ジュース頑張って飲んでる
・みなしょーみて泣く
・ポップコーンを食べさせてる時にベストポジション教えてくれる
・お揃いが好き
・俺がいないと布団被れない
・俺が今すぐに会いに行けないのを知ってい��がらなんでー!と駄々をこねる
・タクシーの決済うまくいかない
・俺の好きなものを見つけたら教えてくれる
・甘いものとか好きなものをおいしそうにいっぱい食べるとこ
・俺がいないと時々だめになるとこ
・好きなものを俺にたくさん共有してくれる
・俺のことが大好きで仕方ない!!
・やっぱりわんこだなあって思う
・俺が眠い時寝ないでって言わなくても寝ないでほしいのわかる
・すきすき何パーセントか聞いてくるところ
・ちゅーが好きになってきたとこ
・俺に触ってる時間が増えた
・隠れてお菓子食べてすぐバレる時の顔
・すぐ15%増税してくれるとこ
・性癖がおなじとこ
・やっぱり声が好きだなあ!2回目?
・俺のことをたくさん見てるし知ってるし調査兵団よりも調査うまい
・写真とか動画をたくさん撮ってくれる
ちなみに好きなところ!じゃなくて可愛くて大好きなところ!ね。随時更新!
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shukiiflog · 11 months
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ある画家の手記if 佐伯岬/春輝視点 告白
わたしを見つけて
佐伯岬:
光は人が好きだった。
妻の昴が持病の具合がよくなくて光を見ていられない日、僕は仕事で行くパーティに幼い光を抱えて連れていった。 子供用のかわいいドレスを着せて、髪の毛は僕が編んだ。 会場に着くと光はすぐに僕の腕から降りて、会場をとことこ歩き回り、途中から靴擦れで足が痛くなったのか靴を脱いで裸足になって、あちこちの人に笑顔でシャンパンや花を配って回った。途中でパーティの主催者に光にそういうことをさせてもいいかと聞かれて、僕も了承した。 接してくれる誰もが光を笑顔で可愛がり、あたたかく迎えてくれた。 しょっちゅう誰かにお菓子か何かをもらっては、遠目に見ている僕のところへ光はいちいち走って戻ってきて「もらった」といって僕にもらったものを一つずつ丁寧に見せてくれた。 「おとうさんがもってて。たべてもいいよ。これとこれはたべちゃだめ」光に荷物持ちにされて細かく指示を受ける。 「はい。いってらっしゃい」笑顔で受け取って光を送り出す。昴に似てとてもかわいい。僕がそういうといつも周囲は「いや、お前に似てる」と返してきた。そうかな? そういう場で春輝とも出会った。光に声をかけられた春輝はまだ学生だった。春輝も親に連れられて来場していた。
昴が病気で寝込むことが多い以上、お手伝いさんを雇ったりするべきだったのだろうけど、そこまでのお金がなかった。なんとか僕が仕事を調整すれば光のことは見ていられたし、家事はもともと僕が好んでしていたから、うちは僕と昴と光の三人家族だった。 それより以前は存命だった僕の父も一緒に暮らしていたけれど、影で光によくない悪戯をしようとしているのに気付いてからは父には出ていってもらい、そのまま親子の縁を切った。 僕はそれ以来、ほとんど勘当されたも同然の身になり、莫大な財産に支えられた生活は終わった。 その後は父ではなく僕個人と繋がった人脈でなんとか仕事を続けて稼いでいた。培った仕事の要領でそれなりの年収はあったものの、昴の医療費にかなりの額を確保しておく必要があったため、暮らし向きはどこにでもある中流家庭の域を出るものではなかった。 その点では財産を丸々失ってしまうため昴には申し訳ないことになると思ったが、僕が昴に事情を話すと、昴から言い出してくれたのだった。 「私たちが出ていくか、お義父さんに出ていってもらいましょう」
僕一人にえらく負担がかかっているように周囲からは見えたようだったけれど、光の面倒を見る時間は僕には癒しだった。 光は僕のいない時間は昴の寝ている布団のまわりで転がりながら、折り紙をしたり絵を描いたり本を読んだりして過ごし、昴は体調のいい日には光と一緒にそういうことをしたり、もっと難しい折り紙や一人遊びを教えたり、本を読み聞かせたりしていた。
僕は仕事から帰ってくると昴の寝ている部屋に顔を出す。光がいない。「光はどこかな?」「さぁ、岬さんの車が帰ってくる音が聞こえたら急にどこかに行ってしまって…」 これが僕と光の日課だった。 僕が帰ってくる気配がすると光は家の中のどこかへ隠れる。僕が光の名前を呼びながら家中を探し回る。 光は運動神経もいい上に極端に体の小さな子だったから、思いがけない場所によく隠れていて、真剣に探しても見つけるのはなかなか簡単ではなかった。 光の隠れ方もたまに巧妙に裏をつくようなものだったりして、洗濯籠に洗濯物に埋まって隠れている光の上から脱いだ服を気づかず僕は投げ入れていたり、帰ってきて無造作に放っていたままのコートの下に隠れていた光を危うく踏みつけそうになったり。 足場もない高い箪笥と天井の隙間の影にいたり、戸棚を一つずつ全部開けたらその中の一つに実にうまく体を曲げてコンパクトに手足を折りたたんでおさまっていたりした。 賢いのか天然なのか、とにかくいつも光は何事にも真剣で一生懸命に取り組んでいた。 ある時は隠れるためにあまりに高い場所に登ったせいで一人で降りられなくなって、いつまでも僕が見つけられずにいると光が僕を細い声で呼んだ。僕は笑って梯子を持ってきて光を抱えて床に降ろした。 それでもやっぱり子供だから簡単に見つけられる日もあった。けれど僕は見つけられないふりをしてしばらくの時間、家をわざとうろうろした。 「光はどこいったのかな?」「隠れるのが上手だね」「大人の僕でもこれはとても見つけられない」「光は賢いなぁ」そんなことを隠れているつもりの光に笑顔で言いながら。
どんな些細なことでも、光に一つでも多くの成功体験を積ませるため、僕は光をいつも褒めた。 この子が人を好きになってくれたら。 屈託なく誰にでも心から笑えて、人の善性を信じ尊んで大事にするように育ってくれたら。 もちろんいつまでもそれだけではいけない、けれどこの年齢ならまだ子供を守るのは僕や昴や大人の役目だ。先に信じることを、疑うことは後からいくらでも身につけられる。この世界への安心感と揺るぎない信頼をまず光にあげたかった。 光は僕と昴の愛情に育まれて、天真爛漫で素直な素晴らしい子に育ったし、僕も昴もそんな光の成長に日々を支えられていた。
ある日を境に、僕は光をパーティに連れていくことをやめた。光は行きたがったけれど、もう二度と同じような思いはしたくなかった。 パーティ会場で幼い光に多くの人が善意でお菓子やかわいいキーホルダーや着けているアクセサリーをくれた。光はいつも僕にそれを渡していって、中にあまりに高額そうなものが混じっていたら僕が帰り際に主催者に持ち主に返してくれるよう頼んで預けて帰った。 ある日、光が僕に渡したその中にコンドームの箱が一つ混じっていたのだ。誰が光にこれを渡したのかは結局分からずじまいだったものの、あまりの不快感と吐き気で僕はすぐに光を連れて帰って、二度とそういう場所へは連れていかなかった。
光が平均的な子供より可愛らしい容姿をしていることは親の欲目を捨てても理解できていた。 子供服のモデルのスカウトや、テレビでちょっとした子役に出してみないかという話がよく人づてにきたが、僕はそれらをすべて断ったし光にも教えなかった。 なんであれ子供に自分で金を稼がせることは慎重にしっかりした教育下で少額から少しずつ経験させていかなければいけない。労働や消費対象になることなども含めて、どんなに条件のいい話でも僕には許容できなかった。
光は、止むを得ず僕がほんのすこし目を離したタイミングで、誘拐されかけたり連れ去られそうになったりしていた。そのすべてを僕が間一髪で防いではいたものの、そういうことは光が成長するにつれて頻度を増した。まだ裁判沙汰にまで至らないし、すべて相手に逃走されて終わっていたとはいえ、僕にとってはすべて重大なただならぬことだった。
光にとってもどこかでストレス要因になって積もり積もったものがあったのか、それともまったく別の何かからなのか、光は自分の指や爪を噛んで、ちぎったり皮を剥がしてしまうようになった。 指先が血みどろになっても光はやめなかった。 とめる間もなくすぐに癖付いてしまった自傷をなんとかしようと、僕は空いた時間に光を抱きかかえて優しく揺らしながら家の中を毎日散歩した。 光は静かに揺られながら僕の首筋の肌に噛みついてじっとしていた。そのうちうとうとして、眠り込んだ光を昴の布団に入れる。 僕の首筋には鬱血した噛み痕が残ったけれど、光の指先に比べればどうというほどのものでもなかった。 なにかを噛んでいると光は安心するようだった。
その頃からすこしずつ、光の問題が浮かび上がってきていた。 知らない人についていってはいけないとか、物をもらってはいけないと言い聞かせても、光はそれを理解できなかったのか、何度も似たようなことを繰り返してしまった。 叱らずによく話を聞いたが、総じて光は加害者を「やさしくていいひとだった」というふうに屈託なく笑顔でそう評した。 僕が、育て方を致命的に誤ってしまったのか。悩んだ末に、光に危険な存在や行為や悪意についてそろそろしっかり教えなければと思った。光は人の言うことをいつだって真剣に聞くし、僕のことを誰より信頼している。根気強く教えればいい。 もし光にそれらを理解できない何か重大な問題があるのならそのように接して、光が生きていく環境を僕がある程度整えなくてはいけない。 酷いことが起きないように僕が目を光らせながら、僕がいつか居なくなっても光が生きていけるように、信頼できる伴侶や守ってくれる存在を見つけて、いつか僕からその人たちへ光を託さなければ。 このまま順当にいけば僕の方が光より先に死ぬことは明らかなのだから。
***
佐伯春輝:
岬さんが出張先の海外で起きたテロに巻き込まれて亡くなって、僕は遺された昴さんと結婚した。昴さんはまだ若いけれど僕よりはずっと歳上だった。 僕には岬が一人でなんとか仕事をして稼いで暮らしているのが理解できなかった。勘当されたとかいう話は聞いたけれど、なんでそんなことになったのか、光もいて、昴さんの医療費もあるんだし、佐伯の実家に頼るのが一番だろうに。 そう思って、結婚してすぐに僕は絶縁状態になっていた佐伯家へ出向いて、資金援助と和解を申し出た。 岬は不利な要素を抱えても一人で中流家庭並みの暮らしを実現させていたけど、僕はまだ若いし、とても岬の真似事はできなかったから。 そうして僕は佐伯の家の跡継ぎになった。一人息子の岬に去られて佐伯家は今後どうするかで揺れていたから、僕の申し出は歓迎された。ただやっぱり僕は頼りなかったのか、佐伯の家から受け入れられている感じはしなかった。 僕はすこし気が弱いし、あまり自分に自信もないし、自分でもこれからどうしようか途方にくれることが多かった。 それで僕は光を使うことにした。 幼い頃に僕にパーティ会場で花をくれた。初対面から光は僕に好意的だった。 僕は光に家でも人前でも僕を「お父さん」と呼ぶように言いつけた。光は断固としてそれを拒否し続けていたけど、一度ベッドに無理やり連れ込んだら以降はおとなしく言うことを聞くようになった。 それでも光は「おかあさんのお部屋にいたい」と言ってしつこかった。実際、昴さんは岬を亡くしてから持病を拗らせていたし、光はそんな母親のそばについていたかったのだろうが、僕はそれを許さなかった。 僕の目を盗んで母親の部屋にいた光を抱えて連れ出し、「そんなにべったり一緒にいたらお前にも病気がうつってしまうよ、昴さんはそれを望むかな?」と説いた。 それから光は遠くの廊下から母親のいる部屋を毎日じっと見つめているだけになった。 それから一度も昴さんと光は会えないまま、昴さんはあっけなく亡くなった。 家には僕と光だけになった。
光はその頃まだ小学生だったけれど、成人女性の色気とも種類の違う独特の色気のようなものを発していた。 子供にしても未発達な印象のあどけない童顔、黒くて艶めいた長くて太い睫毛で常にアイラインを引いてるような目元、小さな口や鼻、すこし厚めの唇。 頭、顔、肩幅、手、足、耳、爪、すべて規格外に小さい。すべて小さいのでバランスにあまり違和がない。 全身痩せ型で細いが、とくに手首と足首が折れそうなほど細い。 全体的な雰囲気は岬と似ていた。 生前の岬も、光はつけ狙われやすいと友人に相談していたそうだ。そういう子なんだろう。 僕を誘ったのは光の方だと思っている。意識的なのか無意識なのかは知らないけれど。光の体には毒がある。 僕はその毒にあたったのだ。 岬が死んでから光はほとんど眠れなくなっていた。夜の間は僕が遊び相手になった。 光の体は感度が良くてすぐ濡れるからいつも大した準備なんてしなくてもすんなり僕のことを受け入れたし、光もおとなしかった。佐伯の人間で僕を受け入れてくれ���のは光だけだった。 同時期から光は食事を嫌がるようになった。匂いが強いとか味が濃いとか、食材も味付けも以前と変わらないのに急にわがままを言いだすようになった。なら食べなくていいと言ったら、光は本当に食べずにどんどん痩せ細ってしまった。 医師からは拒食症だと言われた。なにか心的外傷になるような出来事があったか尋ねられたので、僕は岬と昴さんの死について語った。
僕は光を義務教育期間だけ学校に在籍させていた。高卒や大卒の履歴などこの子に必要ないだろう。 医師の診断書を偽造して、母親と同じ病気であるとあちこちに触れ回った。 それで光はむやみに外出もできなくなった。 妙に本質を突くような聡いところがあるかと思えばこんな僕の言うことを簡単に鵜呑みにしてしまう、どうにも愚かな子だった。 ただ何かの拍子に光は僕の目をじっとただ黙って見た。子供らしく床に転がってお絵かきをしたり本を読んでいる姿勢で止まって、そこにやってきた僕の目を、じっと。いつものように笑ってもいない、無表情に近いけれどはっきりと意思を宿した大きな瞳が、黒くて長いまつ毛に縁どられてただ僕を凝視していた。光はそういうとき一言もなにも言わなかった。
人形かなにかのようだ。意思があるように見えるだけで僕の内面を反映しているだけ。人の形をしているし、いかにも人間らしいけれど、それだけだ。 そのたびに、僕のことなどすべて見通されているように感じて、怖くなった。脅かされているのは、僕のほうだ。
そういうふとしたとき以外は、光は天真爛漫なかわいい子だった。 岬が死んで以来、身長や体重が変化せず、成長がぴったり止まったようになっていたし、光には第二次性徴が訪れず、月経も始まらなかった。そういう体質なのかもしれないと思って放っておいた。 何より光の成長が止まったことは偽りの病気にもっともらしいぱっと見でわかる事実としての身体的異常を付け加えてくれた。 僕は光に言った。 「こんなに背が小さいのも初潮がこないのも、病気の影響だよ。この歳でこんなに背が低いなんて昔なら奇形児なんて言われて気味悪がられてるところだ。今でもそういうふうに言ってくる心ない人は外にたくさんいるけれど、光がここにいれば僕が守ってあげられる。お前はきっと一生一人では何もできないだろう。未成熟な醜い子だけれど、僕は光を誰より美しいと信じてるよ。光を愛しているからね」 光は僕の言ったことを、ただ無表情で黙って聞いていた。 僕が喋れば喋るほど光は無表情になって黙って僕を見るだけになったから、怖くてだんだん僕は光とちゃんと会話するのを避けるようになった。
光は保健室登校しながら、ある日突然彼氏だと言って同じくらいの学齢の男子生徒を家に連れてくるようになった。 その度に僕が間に入って、申し訳ないけれどこの子は闘病で手一杯だからと話して無理やり二人を別れさせた。それでも光は性懲りもなく何度も新しい別の彼氏を作った。 ある日、僕は光に聞いた。「どうしてそんなに次々に誰かと付き合うんだ、別れるのだってあんなに簡単に別れるのならどうして付き合おうと思ったんだ」と。 光はこともなげに「付き合いたいって言われたから」だと答えた。それ以上のものはないように見えた。 ますますもって人形じみてきたと感じた。僕の人形だと思っていたけれど、誰の人形にでもなるのか。
僕の中で光への感情が修復不可能なほど屈折していくのが分かったけれど、僕が屈折しているのではなくて光がただ異常なだけであるようにも感じた。両親の死で本当にどこかおかしくなったのかもしれない。 僕は二人だけの家にわざと他人を招いて、光を襲わせた。 光も僕の差し金だと分かっていただろう。勝手に外で恋人を作ってくるような真似をするからだ。相手が欲しいのならいくらでも適当なのをあてがってやる。どうせ大した怪我なんてしないだろう、誰相手にでもすぐ慣れるふしだらな体だ。 そのうち光はそういう連中を相手取ってなのか家のあちこちに隠れるようになった。 光は見つかっては隠れた場所から力尽くで引きずり出されていいように弄ばれた。 あるとき光はひとりごとみたいに空中に向かって呟いた。「かくれんぼは最後に絶対にお父さんが見つけてくれる」 光の中ではまだ隠れているまま、終わっていないという意味か。お父さんとは僕のことじゃなく岬を指しているんだろう。 ちょうどいい。何度でも岬ではない他人に見つかって暴行されて終わるのを繰り返してその拠り所と一緒にめちゃくちゃに踏み躪られればいい。本当に岬はもういないのだから。
以前から光は年齢に似つかわしくない難解な本を好んで読んでいた。 僕にはそれらの内容が理解不能だったし、光はそれらに熱中することで他の自身についての事柄にさらに無頓着になっていたから、僕には都合が良かった。それで邪魔はせず、欲しがる本はすべて買い与えた。 光の本棚はあっという間に埋まって増えていって、一見たいそうな読書家の部屋のようになった。光が読んだ本について僕になにか語ることは一切なかった。
そして時間の止まった家は光を内包するための容量が足りなくなったことを象徴でもするようにその都度必然的な理由で増築されていき、家には巨大な施設群がくっついて光はそっちで過ごすことの方が多くなった。 見栄えも考えてあったが一般客のためのアトラクション的なものではなく、どちらかというと研究者や有識者のための学術的な場だった。プレゼンテーション用のスクリーンが完備されたホールなどがあり、そういう空間がよく学会などの発表の場として活用されていた。 屋内にも緑が多く、建物のあちこちに綺麗に水が通る自然の地形を生かした設計は訪問客にとても好評だった。光はその設計を初めて見たとき「フランク・ロイド・ライトの建築のよう」だとその美的感覚を絶賛していた。僕には光の話すことはよくわからなかった。 たまに光は訪れた有識者とオーナーの娘として知り合いになって気まぐれにしばらく楽しげに話し込み、「研究に興味を持って話を聞いてくれた。聡明な娘さんですね」と僕があとでお世辞を言われることもしばしばだった。 あの子をまだ小学生かその程度だと勘違いして買いかぶったのだろう。実年齢を聞けばきっとバケモノでも見るような顔をするに違いない。
あるとき施設の管理担当が一人の若い男に引き継がれる流れになった。 広くて全体を把握するのも難しいため、何人かの担当者にあちこち区分させて管理を任せていたけれど、その男は突然一人でやってきて簡単に屋内を歩いて巡ったあとで、仕事を一人で引き受けてしまった。 彼は僕と信頼関係を築くための必要最低限の世間話を応接間でしていった程度で、施設の現状の資料を一台のノートパソコンにおさめて帰っていった。定期的に訪れて微調整をすると言っていた。 彼が帰ったあとでよく思い出したら、この施設の初期の設計に携わった数人の建築家のうちの一人が彼だった。会ったのはこれが初めてだった。建設される当時はもっと年配の人間が責任者兼代表として僕に挨拶にきていた。 一人一人の年齢まで把握していなかった、まだあまりに若くて気づけなかったけれど、要は自分の設計した建物がようやく本人の管理下に落ち着いたということなのだろうか。
何より喜ばしかったのは、光がこの男に少しずつ惹かれていったことだ。 光と僕はそういう話はまったくしなかったが、僕から見たって一目瞭然だったし光も隠す気はないようだった。これまで迫られて了承する形でしか恋愛といったものに関われずにきた光が自分の意思で彼に迫るようになった。 それを十分確信したタイミングで僕は彼に光との縁談を持ちかけた。 光が世間的な常識人とうまく関係を築けるはずもない。接したところ彼はそのあたりをよく踏まえた常識的で賢明な人物であるように感じた。結婚してここを出ていこうが、必ず破綻して光がここへ出戻ってくることは明白だ、僕のもとへ。 光自身の無力と絶望的な精神的遅滞とを自分で痛感して、光は一生立ち直れないほどのひどい挫折体験を抱えて帰ってくるだろう。それが光にとっての外界へのイメージになるはずだ。光の中にある外界への憧れを光自身が望んで実行した行動と感情を基にして、折ることができる。 そのためには彼への恋愛感情がより強く揺るぎないものになればなるほどいいだろう。 僕は彼に感謝した。 病気でしかもどうしようもない世間知らずな娘を手厚く扶養する父親として、僕の立場はこれまでなんとかもってきていたのだから。
光視点
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metaleft · 1 year
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◆ キャラクターシート
◆氷魚 身上調査書
姓名、略称:氷魚(ルィオン=氷魚) 年齢:26 性別:男性 血液型:AB型 誕生日:12/25 星座:山羊座 身長:170cm 体重:58kg 髪色:氷 瞳の色:炎 視力:とても悪い。メガネの度数も合っていない。 きき腕:右 声の質:デンジくんみたいな声 手術経験や虫歯、病気:肺が悪い。扁桃腺が腫れやすく風邪をひきやすい。 身体の傷、アザ、刺青:何かしら喧嘩をしていつも切り傷や痣だらけになっている。 その他の身体的特徴:右目下にほくろ セックス体験、恋愛、結婚観:誰彼構わず寝るので病気めっちゃもらう 尊敬する人:多分苺月 恨んでる人:魁來華 出身:チャイナタウン 職業:無職 将来の夢:特に無し 恐怖:苺月の死 癖:爪を噛む 貧乏ゆすり 酒癖:大体いつもビールを飲んでいる。シラフでも言動が粗暴なので酔っていても特に変わらない。
*交流向け恋人/許婚:特に無し 一人称:オレ、オレ様 二人称:テメー、お前 呼び方:來華→黒虫 あも→ハム
*概要 S級能力者で青い炎を操る。 孤児で幼い頃からホームレスに育てられていたが殺人一回、爆発事故を二回起こし犯罪者認定されている。 レベルの高い能力から魁來華に興味を持たれ、戸籍と住居と家庭教師をあてがわれた。 家庭教師にとても懐いていたがある日自分の燃やしたビルの中に取り残され家庭教師は死亡。 そしてそれすらも魁來華の計画の一部だったことを知り、彼に深い憎しみと殺意を持つ。
*性格 足癖が悪く乱暴。教育をまともに受けていないので普通にバカだが、要領がよく素直なので教えられたことはすぐ学ぶことができる。 普段はビール片手に路上のホームレス達や公園の子供達と遊んでいる。 一度でも顔を合わせた相手は大切にするが、全くの他人は躊躇なく暴行、殺すこともできる。 最近は専ら友達をいじめた相手に報復しに行くことが多いが当たり前に通報沙汰になりViCaPのお世話になっている。
*人間関係 苺月との話なげ〜
*能力 ・広範囲に青い炎を広げる能力。レベルS ・意識を飛ばせる範囲であればどこでもライター程度の火を灯せる。目を瞑り集中することが必要。 ・水に非常に弱く自身が少しでも濡れると火が付かない。 ・煽り耐性が低いので癇癪を起こして発火することがしばしばある。能力の暴走こそしないが感情が爆発することが多い。 ・調子が悪い時はライターのオイル切れのような症状が出る。
*(その他の特殊事項)  ・苺月から勉強の他に芸術や芸能を楽しむ感性を育てられた。特に映画にハマり、おさがりのポータブルDVDプレーヤーで古い名作を片っ端から観ていった。 ・育ちが悪くまともに学校に行っていなかったが地頭は良い方で教えられたことはほぼ覚えており応用も効く。どちらかというと文系。字を書く事が嫌いだが読書感想文が得意。
*好きなもの 食べ物:ポテト チキン 飲み物:ビール コーラ 季節:冬色:赤、水色 香り:メンソールじゃない煙草 書籍:てぶくろ(絵本) 動物:パサパサの毛玉 ファッション:プラスチック90% 場所:埃っぽい場所 愛用:ポケットがたくさんあるコート 趣味:子供をからかうこと
【関係】 ・魁來華 (宿敵)
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yuiohata · 1 year
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真鶸
あの金曜日から数ヶ月後。
あいつも上京して近所に住み始めた。
あいつはクリーニング屋でバイトをしたり、よくわかんないウォーターサーバーの営業をしたり、かと思えばいきなり、マイブラのGeek!のレコードを買ってきてマヒワちゃん!!!と目をキラキラさせて帰ってきたこともあった。そんなお金どっから沸いてきたんだよ。なんて聞かないけどさ、聞けないけどさ。
休日が被ると昼過ぎまで寝て、ちょっとだけ遠い河川敷に行くのがお決まりだった。
帰りにコンビニで飲み物を買って、浮いたお金は旅行費にまわそう、と歩けるとこまで歩いて帰る。そしたら家についてたりする。
金ローは必ず2人で観るのが暗黙の了解で。
そんな毎日を重ねる事であたしは、
あたしの奥の、まだずっと奥の方で、あの時かけ間違えられたボタンが正しい位置と手を繋ぐ音に耳を傾けている。今も昔もこの先もずっと。
身勝手すぎる考察をあの時の三ツ矢サイダーが溶かしてくれないかな、もう遅いよな。
炭酸なんてとうに抜けて、ただの甘ったるい水になってるよな。
何もしてあげられなかった、
何も出来なかった。
そんな自分が惨めで、あのクソ田舎から逃げるように此処にきた。何も出来なかった自分がいるあの町から。
真相は缶詰の中。
大人になっても開けられない。
ううん、開けさせてくれない。
そして多分それらが開いたとしても、
あたしはきっと注げない。
あいつの涙をみたのはあの日が最初で、きっと最後だ。
ピアッサーを握るあたしの手は、まだちいちゃかった震えるあいつの手みたいだった。
あいつのお母さんが死んだ。
だから今のあいつには私しかいないわけで。
つまり、
あたしにもあいつしかいないわけで。
"マヒワちゃん。"
そう呼ぶあいつの声は安心するのだ。
サイダーを注ぐ音みたいに。
"あぶないから。"
と、優しく微笑むお母さんみたいに。
研究対象の少年のことを思う
彼は、超能力に目覚めたならば、解放されるのだろうか? しかし、すぐに考えるのをやめる。どうせ、あたしはま���ずっと、この疑問を持ち続けるだけなのだ。ただずっと。
昼休憩のチャイムが鳴って、私たちは屋上へ向かう。あたしは 廊下の自動販売機でいつものように三ツ矢サイダーを買う。 屋上に着くと、さっそく煙草に火を点けた白カラスさんと湖底 さんのそれぞれの煙の香りが、風とともに流れていた。
たまに夜中にあいつがひとりで泣いてること、爪を噛む癖、左腕の傷跡。
お母さんの命日は必ず地元に帰る事。
ぜんぶしってる、解ってるよ。
ぜんぶしってた、解ってたんだよ。
でも触れない。触れなかったから。
宙を見ながら、三ツ矢サイダーのふたを ひねる。
昨日の夜、寝たフリをした私に
今にも消えちゃいそうな声でアイツが言った
"マヒワちゃんは強いね。"
しゅわしゅわじゅわあああ
青い空に、白い煙が薄くなりながらたちのぼり、雲と混ざる。
あいつのどこにも触れなかったのは
自由を奪いたくなかったから、
奪える強さなんてあたしにはないから。
キョーミのないフリを続けた。
あたしの親があたしにしたみたいに
あいつにも自由でいてほしかったから
あいつも、あたしも、少年も。
ここにいる人みんなそう
この籠の中で自由を求めてる
だれかの肩に縋りながら。混ざりながら。
そうやってまた、
あたしは明日の自由を願うんだろうな。
あいつの自由を願うんだろうな。
口の中から喉に広がる
なんだかいつもより炭酸が強い気がして
思わず顔を顰めた
しゅわしゅわじゅわあああ
心地のいい感覚、
真っ白な白衣と真っ白な靴。
あたしは、自由でいたいから。
いちばんよわいあたしでいい。
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nailstudiomotoni · 2 years
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ずっと変わらなかった爪の形は、 ある方法で変えることが期待できます。 ずっと悩んでいた、コンプレックスだった自爪をたった3ヶ月で変化できた お客様がたくさんいらっしゃいます。 この写真のお客様もそうです。 3ヶ月ですっかり美爪になりました。 こちらのお客様からも、 「爪にコンプレックスがある全ての方にお勧めしたい」 と言っていただきました。 この投稿が、同じように悩んでいるあなたに届くことを願っています。 少しでも気になって頂けた方は、このインスタのプロフィール画面のURLから詳細をご確認いただけます。お問い合わせもそこからしていただけますので、是非のぞいてみてくさい! 自爪のお悩みのある方のお力になれればと思っています。 3ヶ月ネイルケアを検討されている方で、まずはどんなネイルケアかを体験して説明を聞きたいという方に体験コースも、今ならお値打ちでご用意してます。 あなたの自爪のコンプレックスの解消のお手伝いが出来たら嬉しいです。 当サロンにはこんなお爪のお悩みの方がいらしてます。 ・何をしても爪の白い部分が伸び続けてしまう ・ピンクの部分が伸びない ・爪が広がって生える ・爪周りががさがさ ・爪の形がきらい ・縦長の爪にしたい ・深爪 ・むしりぐせ そして、3ヶ月後、こんな嬉しいことが期待できます! 🌸ピンクの部分が伸びて縦長の爪に! 🌸人前に堂々と見せたくなる爪に! 🌸ホームネイルケアのやり方がわかり習慣となる! 🌸自分を労わるようになる! 🌸爪を見るたびに綺麗でテンション⤴️ ◆3ヶ月中、8回〜10回のご来店での最強ネイルケア施術と、カウンセリング、ホームケア用品など込 67,200円 あなたと私で二人三脚で頑張るネイルケアです! ご連絡は24時間いつでもお待ちしてます! #深爪 #深爪育成 #最強ネイルケア #爪のコンプレックス解消 #爪のコンプレックス #ネイルケア専門店 #北参道ネイルサロン #北参道ネイル #明治神宮前ネイル #明治神宮前ネイルサロン #千駄ヶ谷ネイル #千駄ヶ谷ネイルサロン #爪噛み癖 #爪噛み #むしり癖 #貝爪 #美爪になりたい (渋谷区千駄ヶ谷) https://www.instagram.com/p/CjnN4cDBgsC/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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skf14 · 4 years
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07032350
丁度幼女の左乳房を薄く剥ぎ取ったあたりでふと作業の手を止め、そもそも私は何故女児が好きなのか、と思考を巡らせ始めた。
部屋が寒い。何か羽織りたい。
ピロン、と机に放置していたスマートフォンにポップアップが表示される。ああ、設定していたスケジュールだ、と、ポップアップを消してから、隣の部屋、テレビの前へと座った。手���中にあった冷えた幼女の左乳房(といっても薄っぺらいそれは機能としては乳房だが見た目は投げつけられた水風船さながらだ)を掌で揉んで温めて一口分齧り、そして歯の力で噛み切ることの難しさを思い出して、一旦皮膚へ爪を立て、引き裂くように顎の力を込めて一部をかじり取った。
外皮を下にして舌の腹にそれを乗せれば、微かに感じるふわりさらりとした産毛、そして馴染むような吸い付くような不思議な感触。やはり人と人だと、親和性も高いんだろうか?心地いい、まるで元あった場所に帰ったかのように、私の舌の上で寛ぐ幼女。
口の中でそれを少し転がしたあと、ゆっくりしがみながら、テレビのスイッチを入れる。溢れ出る組織液はほんのりしょっぱく、舌��まとわりつく脂分も少し感じる。子供の方がむしろ皮下脂肪はある方だと、この食感がいつも思い出させてくれる。唾液腺から唾液が溢れ出て口の中に旨味の洪水をどばぁ、と作る様子が脳裏に描かれて、至福の時間が訪れたことを知らせてくれる。
アナウンサーの声が流れた瞬間忘れ物をした!と思い出して慌てて部屋に取りに戻った。いけないいけない。これを背負っておかないと、と、名札付きの赤いランドセルを背に背負う。比較的華奢で良かった。女児用のカバンだが私に背負えないこともない。肩周りが窮屈だけど背負っているうちに慣れるだろう。だってランドセルは丈夫な革で出来てるから小学校の6年間振り回したって持つような代物なんだ。考えついた人の技術に脱帽。ブラボー。スタンディングオベーション。
駆け足でテレビ前のソファー、定位置へと戻り、テレビの音量を連打して上げる。24。私の設定温度は決まって24度だ。何故なら。24は美しい数字だ。偶数、陰陽道ではその昔、陰の数だと揶揄され不吉な扱いすら受けていた偶数。割り切れる、なんて最高に気持ちが良くて素晴らしいじゃないかって私は思うけど頭の悪い世間はそうじゃなかったらしい。今でも結婚式のご祝儀とかじゃ別れることが出来るから推奨されない数らしいね。でもよく考えれば二人で仲良く分けられた方が円満に回りそうじゃない?今後の人生。って思うけどまあ結婚式に出席することなんて今までもこれからもないから気にしないでおこう。
夕方のトップニュース。見出しで一応確認はしていたが、もちろん話題は例のアレだ。分かっていたからわざわざ冷凍庫に眠っているハーゲンダッツや書斎に常備している白い恋人やらを差し置いて女児を肴に、番組の始まる2分前にアラームをセットしておいたんだ。私は予定調和が好きだから、予定通りの姿で幸せを噛みしめたい。
『先日、行方がわからなくなっていた○○県○○市の○学○年生、○○あかりちゃんですが、依然として足取りは掴めないまま、今日も早朝から地元の消防団、警察による大規模な捜索が再開されました。』
映像の中でいかつい顔の男達や年金暮らしで暇そうな年寄りどもが深刻そうな顔で列を成し、山の中、茂みの中を棒をつんつくつんつくしながら声を張り上げあかりちゃんを探している。涙ぐましい光景だなぁ。
そういえば先日近くのドラッグストアでチョコパイの安売りをしていたのに、丁度荷物が多くて買いそびれていたことを思い出した。ああ悔しい。食べたかった。今手元にチョコパイがあれば両手に花なのに。ファミリーパックはなかなかに高くて、特売日じゃないと手が出せないのに。なのになのにが多すぎて反省。あの時手間を惜しんでもう一度買いに行かなかったのは自分に甘い私だ。
何を隠そう私は甘いものには目がない。何をするにも糖分は必要だ。脳を動かすにあたって人間はブドウ糖を摂取する必要があり、身体の最上部、お上に君臨しているこの崇高な脳髄様は、最高の栄養と酸素とが入った血液を余すところなく啜り倒して思考をこねくり回している。まあ、脳髄が実際に思考をしているのかについては私の愛読書、夢野久作先生の「ドグラ・マグラ」にもある通り検証の余地があるが、概ね思考している、と言っても間違いではないだろう。脳には謎が多い。
そんなわけでブドウ糖を多量に消費する私の愛しい脳髄は、時折強烈な糖分を狂ったように欲する。脳が溶けそうな、むしろ頭が悪くなりそうな甘ったるいチョコレートやら、シロップをふんだんに混ぜ込んだココアやらホットミルクやら。果てにはガムシロップやメープルシロップやらまで欲した時には、ついに頭がおかしくなってしまったかと心配したほどだ。つまりは私にとっての甘味は失うことなど考えられない、麻薬のようなもの。上白糖に依存性があるというニュースが巷を駆け巡ったのはいつのことだったかな。
そういえば一人でテレビを見るのは寂しい。と、ニュースを見たい気持ちも引きずりつつ、(どうせ録画してあるし過去のものも含め何度だって時系列を追って見ている)部屋から妹を連れてまたテレビ前のソファーへと舞い戻った。機嫌の悪そうな、伏し目でテレビを見つめる横顔を見ながら、口の中に残っていた残りカスを手のひらに出してみる。なんだか、こう、皮の残りというのは味気のない、口の中にへばりつく薄っぺらい粘性のないガムのようになって不快だ。ガムなら飲み込めるがこれはあまり飲む気にはならない。だからいつも出して適当に捨ててしまっている。活用法がわからず、揚げたり焼いたり茹でたりでなんとか食べることもあるが生食の場合は廃棄一択。勿体無いお化けが出そう。右手に持った幼女の皮膚片から二口目を齧りとり、また口内で転がしてしがむ。じゅわりと溢れ出るしつこい皮下脂肪、この一瞬だけがどうにも至福で美味い。が、食べ過ぎると後々胃もたれを起こすから注意をしないといけない。歳はとりたくないもんだ。
眉毛が痒い。ぽりぽり、とかいたら指先にぬるつく感覚。昨日食べた尻肉の脂が、もう顔に出てきているらしかった。消化出来ないはずはないんだけど、何故か顔のテカリに反映されるあたり私ももうお兄さんではなくおじさん、いや、前言撤回。まだお兄さんでいたい。空いていた左手で顔を拭い、気紛れに隣にいた妹の顔に脂をなすり付けてみた。顔の左側にテカリの線が3本入って、民族のようにも見える。かさかさな肌が心配になって、右手に持っていた皮膚片の内側、皮下脂肪を妹の顔に貼り付け、ごしごしと皿でも洗うように塗り付けてみた。うん、いい。でも汚れてしまった。しまった、洗えないのに。
ニュース番組では事実の報道が終わり、スタジオにいるど素人のコメンテーターが神妙な面持ちで��し始めた。面白い。この瞬間が私はとても好きだ。興奮してきた、と、妹の顔に乳房の皮膚片を貼り付けたまま、妹の背中へと手を差し入れ、中に取り付けた操作用の棒を握り締めた。ふふ。もう楽しい。既に楽しい。
『こういった事件、事故が何故起こるのか、責任は一体どこにあるのか、考えなければいけません。』
「出ました。日本人特有の責任論。責任責任って、じゃあ誰かが代わりに失踪した娘に成り代われば、親御さんは満足するのでしょうか!?」
この場はまるで朝生。妹の首がぐりぐりと回り、上っ面ばかりきれいなコメンテーター達を正論でめった打ちにしていく。
この腹話術人形、作るのにかなり苦労した。初代はただ市販の人形と首を挿げ替えただけだった。動かせないことがひどく不愉快で、次は市販の人形に皮を被せた。剥製や、世界一美しいミイラのような想像をしていたけど、やっぱり素人じゃあそうは上手くいかず、萎びてそれは酷い有様だった。人はいつでも試行錯誤を繰り返し、素晴らしい成果をあげるんだ。先人達の数多の失敗の上にこそ、今の私たちの生活や人生は成り立っている、と思っている。あ、棒動かすの飽きた。喋らせよう。なんてったって今回の妹は特別カスタムを施していて、なんと、口が動く。カラクリを説明してしまえば至極簡単で、丁度舌の裏のあたりに親指が入る位の穴を開けているだけ。それだけ。天才的なアイデアは時として拍子抜けするほど簡単な構造だったりすることを、まさに思いついた瞬間私は実感した。中身をくり抜き、骨と皮を残して中を木の枠で補強して、下顎と首の可動域を広げた。それだけでかなり楽しくなるなんて、初代が知ったらどう思うだろう。私もして!って思うんだろうな。ごめんね妹、来世の私達に期待しよう。
何が面白いって、妹の頭の中に鈴を一つ入れたこのひょうきんな発想。チリン、チリリン!周りを論破するたびに小馬鹿にするように妹が鳴る。バーカバーカ!
「あれ、何の話しようとしたんだっけ。」
テレビの上の空間を暫し見つめて、やっと思い出した。そうだ、何故女児が好きなのか、だ。今日のテーマはそれだった。一旦妹を部屋に返そう。もうテレビは終わったし、朝生ごっこも妹の完全勝利Sで終わったし。最高。そうだ、喉乾いたからアップルジュースでも飲もうかな。冷蔵庫を開ける。ラインナップは水か麦茶かアップルジュース。よし、在庫あり。さすが私の記憶力。アップルジュースは、口内の粘つきやらしつこさやらを全てかっさらってくれる有能な子。オレンジジュースはダメ。酸っぱさが食べたものによっては苦さに変わるし、そもそも私の使ってる歯磨き粉がオレンジ味だから萎えちゃう。アップルジュースをコップに出して机に置いて、妹を部屋に返した。戻ってきた時つい机を蹴っちゃって、倒れかけたコップを咄嗟に支える。
「あばばばば。」
あっぶないあぶない。こんなハプニング望んでないよ私。まったくもう。おっちょこちょい。あ、ほっぺの皮膚片、そのままだ。忘れてた。あちゃー...。カピカピになっちゃうかな。まあいいか、あと片方あるし、それはそれで斬新なメイクみたいになるかな。でなんだっけ。晩ご飯までの時間潰し。あぁそうだ、女児趣味の原因。頭の中が煩雑で、いつも思考があっちこっちに飛び回るのが私の困った癖。
家族構成は、美しい母、そして静かな父、私、だった。しばらくの間は。そう、少し経って、妹が生まれたんだ。妹。初めて見た妹の姿は、夜な夜な父がむしゃぶりついているあの細い足が二本生えた股からひり出されたとはとても思えないでっぷりとした、そして管に塗れた私の可愛らしい妹の姿だった。顔はどちらにも似ていない、そして時々豚のような声を上げて唸り、周りの機械が喧しい合唱を始める。合掌。子供ながらに、「異常」が生まれたと認識した。天変地異、のような感覚だったかもしれない。ともかく、自然界にはあり得ないその異物を、私は己と血の繋がった人間、妹だと正しく認識し、むしろ愛着が湧いた。それはわかりやすくいうなら、近所のデパートの見切り品の中にあった、糸がほつれ綿が飛び出たぬいぐるみを見つけたような感覚だった。ああ、かわいい。可愛い。と、思った。本当に。まさかその可愛い妹が、父にむしゃぶりつかれてるなんて、その頃の私はよもや思うまい。未来から来たと言っても信じないだろう。
中学生だった私が、深夜トイレに起き、少し扉が開いていた寝たきりの妹の部屋を覗いた時、ちょうどこちらへ足を向けて横たわる妹の股倉に、父親が顔を突っ込んでいた。猫背気味で丸い背中。じゅるる、ずぞぞ、と、穏やかで悍しい音が聞こえた。ずぞ、じゅる、じゅっ、じゅるる。
頭を撃ち抜きたいと思った。勿論己の頭だ。衝動だった。日本に銃刀法があって良かったと心から思った。突発的な自殺に走ってしまう人の気持ちがほんの少し分かったような気がした。父は下の服を着ていなかった。
妹は異常だと思っていたが、果たして見た目の異常さと、中身の異常さはどちらが深刻で疎まれるべきものなのだろう。この問いに答えはまだ出ていない。なんて堅苦しくなっちゃったけど結局興味持ったのはあの時覗いた妹と同じくらいの歳の子だししゃぶり尽くしたいのも基本的には股倉ばっかりなんだよね。ああ、ちなみにそのあとしばらくして母が首を吊って、父は妹を置いて逃げたんだ。妹も、数年後に事故で亡くなってね。見事綺麗さっぱり無くなったから、私の人生には「しがらみ」ってものがないんだ。自由はいい。自由に憧れ続けて籠の中で死に絶えるなんて私には耐えられないよ。
考え続けて疲れてきたから、と息抜きにテレビをつけた。リモコンをぽちぽち。レコーダーに残された無数の映像は、どれも夕方のニュースを編集したもの。朝のニュースに比べて、昼から夕方、特に夕飯前のニュースには表現がリアルで、残酷なものが多いっての知ってた?朝は皆嫌なことを見たくないけど、仕事したり家事して疲れた人間たちは誰かの不幸を餌に一休みするんだなって私は思うよ。めんどくさーいって肉放置して腐らせる前に、今度こそはモチベ上げてこ。つって。
『○○は、元気で、すれ違う人に、挨拶をするような、素直な子です、だから、誰かについていってしまったとしたら、お願いですから、あの子を返して...』
と言われても、もう大半は私の内臓を通過して下水に旅立ったし、身につけてた衣類は燃やしちゃったし、髪の毛とか爪はコレクションしてるから返したくないし、どうしようもないんだよな。骨?そんなもん貰ってどうすんの?カルシウム取りたいなら牛乳飲んだ方がいいと思うな、私としては。
なんだか映像を見てたら下半身がむずむずとしてきた。生理現象か?いや、違う。これは性的な興奮のやつだ。暫しトイレにドロン。
はぁ。帰ってきたらまだ母親らしき女が泣いてる。テレビも欲しがるよね、引っ張って泣かせるような質問して。ちょっと眠くなってきた。けど、時間は17時すぎ。晩ごはんには早い、寝るにはもっと早い、昼寝には遅い。こんな時の選択肢は寝る一択。私は己の欲望を抑えるのがとても嫌いだ。寝たい時は寝るに限る。雨の日は休むに限る。でも起きたら流石に処理しないと、さっきからぷぅぷぅと何匹かハエが飛んでて頭がおかしくなりそう。なんたって私は虫が大の苦手で、部屋に殺虫剤を撒き散らして私が殺されかけたこともあるくらいの虫嫌い。よく考えたら別にそこまで美味しくて美味しくて震えるってわけでもないしむしろ顔が脂ギッシュになるのになんで食べるんだろう?分かんないけど、なんか食べたらお腹の奥がじんわり熱くなって、気持ち良くてぽわっとする。孕んだような感覚?孕んだことないけど。だから内臓は諦めるけど可食部はなるべく丁寧に食べたいんだよね。まあいいや、とりあえず眠いし、すごい眠いから一旦寝よう。おやすみなさい。
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kokonotokoro · 5 years
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朔太郎のこと
明日で朔太郎がこの世にいてくれた日まで1ヶ月なので、書こうと思います。 まず彼のことや、彼のことで悲しむ私に対して、ツイッターのリプライや、ハートや、ダイレクトメッセージや、DMをくださった皆様、本当にありがとうございました。 どれも本当に温かいお言葉ばかりで、朔太郎はこんなに素敵な人たちに見送られたんだと思うと、本当に救われる思いでした。 ただ、私自身の気持ちの整理がつかず、まだ朔太郎がいなくなってしまったことを受け入れることができていないがゆえ、皆さんからいただいた数々の温かい言葉になかなかうまく返すことができず、1ヶ月経ってしまいました。 本当にごめんなさい。 自分が9年間続けてきたツイッター人生で、こんなにもリプライが返せずにいたのは初めてだったのですが、でも、このブログを書いたら、少しずつでもお礼を返せていければと思っています。
朔太郎は2019年の5月6日に14歳5ヶ月10日で天国に行きました。 5,274日も私の家族でいてくれました。 天国にいってしまっても変わりません、大切な私の家族です。
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いつでも元気がいっぱいで、よく笑った顔をする柴犬でした。 ハンサムで、家族に対しては甘えん坊で甘え上手で、とてもとても可愛い子でした。 ケフィアヨーグルトと、煮干しと、りんごと、セブンイレブンのあらびきフランクとビスケットが特に大好きで、私の家族によく似て食い道楽で、人が食べるものは何でも欲しがりました。 食べ物のためならおてもおかわりもまてもできるけど、ちょっとアホで、飽きさせない子でした。 私の人生の半分以上を一緒に過ごしてくれた子です。
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朔太郎は、洋犬のブリーダーさんが朔太郎のお父さんに一目惚れしたことをきっかけに唯一繁殖させていた日本犬の子供で、犬舎からやってきた子でした。 家族全員読書好きなのですが、その中でも特に日本文学が好きな姉が、詩人の萩原朔太郎になぞらえて、「朔太郎」と名付けました。 家族みんな、この名前は気に入っていて、今でも本当にいい名前だなと思っています。
8歳くらいまでは本当にやんちゃで、体のあちこちには朔太郎につけられた噛み傷がまだたくさんあります。(でも全力で叱ると本当に落ち込んでしまうので、それもまた可愛かったりもしました笑) シニア犬と言われる歳になっても病気しらずで(昔ほんのすこしだけてんかんやアレルギーが出たこともありましたが、ゲージの環境や餌を変えることによって乗り越えてきました。昨年の春に指の間に腫瘍ができたのですが、この手術にも耐え、病理検査の結果も良性の腫瘍でした。)これからもずっと元気で一緒にいられると思っていました。 永遠は無理なんてことはわかっていましたが、お別れはまだまだ先だろうと思っていました。
でも、突然病に襲われ、朔太郎は旅立って行きました。 急性の悪性リンパ腫でした。 最後は家族みんなで決めて、安楽死を選びました。
年末から少し咳を出していたので通院をしていたのですが、特に大きな変化もなく、ハウスダストの影響かもしれないと寝床をこまめに変えてあげたりしていました。 ところが3月の中旬に急に大好きな散歩に出たがらなくなり、家の前の階段を降りたがらなくなり、顔つきがしょぼしょぼとし始めたので、何度もかかりつけの病院に行って朔をよく知る先生に診てもらったのですが原因はわからず。 ただ、元気が無くなってから3回目の通院をしたその日の夕方に左足がぱんぱんにむくんでいることがわかり、翌日急いで先生にエコーで診てもらったところ、足の付け根の本当にわかりにくいところに腫瘍が見つかりました。
朔太郎の年齢的に、抗がん剤はおすすめしない。 いたずらに寿命を延ばそうとするのではなく、痛みを取る治療をしながら最期までなるべく穏やかに過ごしたほうがいい。 というのが、朔太郎をずっと診てきてくれた先生の判断でした。 そして、このまま腫瘍が脳や鼻に転移すれば苦しい最期を迎えることになるので、そうなる前に安楽死という選択があることも告げられました。
それから1ヶ月と少し、朔太郎は病気と闘いながら私たち家族に本当に素晴らしい時間をくれました。 お散歩で大好きだった川沿いも行ったし、カートを買ってお花見にも行きました。 病気になる前は何時間だってお散歩できるくらいお外が大好きな子だったので、できる限りお外の匂いを嗅がせてやりたいと、姉と母と私でできる限りのところを散歩しました。 日に日に咳がひどくなり、呼吸が荒くなっていく姿を見るのは辛かったですが、薬が効いているお昼の間はいつもの穏やかな顔でいてくれて、そんな朔太郎と過ごす1日が、本当に宝物でした。 もう昔みたいにてくてくは歩けないけど、川沿いで抱っこして撫でると気持ちよさそうで、良くならなくても、このままずっと生きていてほしいと思いました。カートにちょこんと乗っている姿も、あんなに荒くれ者の朔太郎を見てきた身としては違和感しかなかったのですが、病気になってもこんなに可愛い子がいるんだなんてと、新しい発見をくれました。
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家族ももうみんな、いい大人なので、覚悟はできていたつもりだったのですが、���太郎に時間を全て使える10連休をいまかいまかと待ち、そして朔太郎と令和という新しい時代を迎えられたことが本当に本当にうれしかったです。
朔は本当に優しくていい子でした。でも、最後は特に、優しいいい子でした。 どんなに辛くても頑張って歩いてくれて、私たち家族の手から直接おやつを食べる時も、昔のようながっつく勢いはなくなっていたのですが、とても優しく鼻先を手のひらにあてて、手を舐めるようにしておやつを食べてくれました。
病気になる前はいつも軽い足取りで歩けていた坂が、病気の彼にとってどんなに辛く長い道のりだったかと思うと、口がきけない分想像するしかないのですが、本当に辛かっただろうと思います。 辛いだろうに一生懸命歩いて、私たちについてきてくれました。 1時間かけて実家の周りをやっと1周、という事実は辛かったですが、それでも一生懸命、ゆっくりゆっくり歩いてくれる朔太郎が愛おしくてたまりませんでした。
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最期の夜は、ゲージの横で一緒に寝ました。そして翌日のお昼過ぎに、注射をしてもらって天国に行きました。 本当はこのことをここに書くべきかとても悩んだのですが、これも家族の決めたことなのだからと書いています。
GWが始まってから、家族でずっと、安楽死のことを考えていました。 朔太郎のことをずっと診てくれた先生が「最後は安らかに、というのはこの病はありえない」とはっきり言ってくださって、それからずっと、家族で考えていました。 深く話し合えば話し合うほど悲しくなるのでよく話し合ったわけではないのですが、家族みんなで決めたことです。 朔太郎のことが大好きで、家族で一番の仲良しの姉が「このまま連休が明けて、家族みんながそばにいられる時間も限られてくるのだから、朔太郎が家でひとりぼっちで苦しんで死んでしまうことだって考えられるのだから、そうなる前に、朔太郎がまだ可愛い姿のまま見送ってあげたい」と言ったので、私も気持ちに区切りがつきました。
これには本当にいろんな家族の決断があって、安楽死を選ぶことも選ばないこともまた正解なんてないし、いくら考えても答えなんてないことだと思います。 家族みんなで、自分たちの中で、気持ちの整理をつけるしかないんだと思います。
でも、朔太郎を見送った日は、一生で生きてきて、一番辛い日でした。朔太郎を見送ると決めたのは、朔太郎が天国に行く日の朝でした。
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前日、私は朔太郎の横で寝て深夜まで寝返りを手伝ってあげていたのですが、ようやく寝付いた翌日の明け方にも同じ姿勢だったのを姉と一緒に見て、姉はもう朔太郎に残された時間は長くないんだと悟ったそうです。 それからかかりつけの病院に一度、姉と母が診察に連れて行き、その日の午後に処置をすることを決めました。 その時点で少し前までは見られなかった腹水が溜まっていたということで、家族全員で送ってあげられるのは今、というお話になったそうです。
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残された4時間ちょっと、本当に悲しくて悲しくて、ただひたすらに朔太郎の写真や動画を撮って、たくさん撫でて、キスをして、大好物を少しずつ刻んでたくさんあげました。 朔太郎は食欲だけは最後まであったので、本当にぺろりとそれを平らげてくれました。 これから先、自分に何が起きるかわかっていない彼の顔をみるのが、本当に辛くて、辛くて、今思い出しても、本当に良かったのか、どうしても答えがでません。 最期だとわかっていると、こんなにも人は何をしていいのかわからなくなるんだと自分の無力感が情けなくもなりましたが、本当に決まってしまったお別れを受け入れよう、なるべく本人には伝わらないようにしようと思えば思うほど涙が出てきて、しょうがなくなったことだけははっきり覚えています。
私が少し用があって朔太郎のそばから離れて実家の2Fに行った時、下からカチャカチャと彼の爪音が聞こえてきて、1Fに降りると朝あんなに寝返りが打てていなかった彼が部屋の中で家族を探している姿が見えました。 もう大分耳が遠くなっていたのか、降りる私には気づいていなかった。でもその背中が本当に可愛かったです。
最後は家族みんなで病院に連れて行き、家族みんなで最後のお別れをして、処置をしてもらいました。 私は本当に辛くて最後の瞬間をちゃんと見られなかったのですが、本当に眠るように天国に行ったのがわかりました。
棺にいれてもらってもお顔も寝ているようで、頭の後ろもどこもかしこもふわふわで、足の間も温かくて、本当に可愛かった。耳もいつもの肉厚でふわふわで、生きていたときそのままでした。
大好きだったお庭には、母が植えた花がたくさん咲いていたので、それも一緒に入れてあげられて良かった。 本当に素敵な季節に、朔太郎は家族全員を揃えて旅立ってくれました。 それから大好物もたくさん一口大に刻んで棺に入れました。 まだあたたかい朔太郎のそばに、いつまでもいたかったのですが、朔太郎が冷たくカチカチになってしまう前に、そして家族全員で見送れるうちにと、その日のうちに火葬してもらいました。 嬉しいと力一杯振ってくれた尻尾の先にまで小さなお骨が入っていて、骨になってもこんなに可愛いなんて、と思ったくらいです。
この文章を書いていても涙が止まりません。 あと1回でいいから会いたいです。1日でいいから会いたいし、また散歩に行きたいです。 もし、あと30年後に1日だけ会わせてあげるよと神様が言ってくれるのであれば、これから先30年がどんなに早く過ぎ去ってほしいと思うか。 もう一度だけでも会えたらしてあげたいこと、食べてほしいものもたくさんあるのですが、何よりも私たち家族が朔太郎に会いたくて仕方ありません。 私ももう一度でいいから、あのおでこの匂いを嗅ぎたいのです。
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朔太郎は里山や雑木林が本当によく似合う子でした。 日本に四季があって本当に良かったと、この子とお散歩に行くたびに思いました。 菜の花畑も、つつじの植え込みも、冬の雑木林も春の桜並木もよく似合う、最高の犬でした。 これから先、こんなに素晴らしい存在と同じような存在に出会える気はしません。
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今でも、何か食べるたびに朔太郎のための一口残したりするくせや、コンビニに行った時にもらえるビニール袋を散歩のうんち袋にするためにとっておく癖が抜けません。 朔太郎の匂いのするものも、未練たらしく、ずっとそこから動かせずにいます。
1ヶ月経てば悲しみが少しは癒えて前向きになるのかなと思ったのですが、そればかりかどんどん悲しみは増すばかりで、これから先、この悲しい気持ちが無くなる気が少しもしません。
家の中も、携帯の中も、朔太郎の写真や匂いでいっぱいで、いつでも思い出してはもう会えない悲しさにただ呆然とするばかりです。
でもずっとこうしている訳にもいかないし、それは過ごし方としても違う気がするので、無理はしない範囲で少しずつ���つも通りの生活に戻れれば良いと思っています。
朔太郎、私や私の家族のところに来てくれてありがとう。 朔太郎がくれた14年間の毎日は本当に楽しくて、その分、さくちゃんがいない日が本当に辛いです。 天国があって、虹の橋という場所があるのなら、そこでりんごやヨーグルトをたくさん食べて、いつか私がそこにいくまで毎日のんびりと、暮らしてください。 あなたの大好きな川によく似た川がそこにあって、あなたの大好きな菜の花畑や雑木林によく似た場所がそこにあることを願っています。
また会おうね。
フォロワーの皆様、9年間、私のツイッターでの親バカツイートや写真を見てくれて、ありがとうございました。 時折いただけるお褒めの言葉ひとつひとつが、本当に嬉しかったし、朔太郎は自慢の弟でした。 本当に、感謝しかありません。 今まで、可愛がってくださって、ありがとうございました。
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kkagtate2 · 6 years
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乃々香の部屋に入ったのは、別に昨日も来たので久しぶりでも何でも無いが、これほどまでに心臓を打ち震わせながら入ったのは初めてだろう。今の時刻は午後一時、土曜も部活だからと言って朝早く家を出ていった妹が帰ってくるまであと三時間弱、…………だが、それだけあれば十分である。それだけあれば、おおよそこの部屋にある乃々香の、乃々香の、-------妹の、匂いが染み込んだ毛布、掛け布団、シーツ、枕、椅子、帽子、制服------あゝ、昨晩着ていた寝間着まで、…………全部全部、気の済むまで嗅ぐことができる。
だがまずは、この部屋にほんのり漂う甘い匂いである、もう部屋に入ってきたときから気になって仕方がない。我慢できなくて、すうっ……、と深呼吸をしてみると鼻孔の隅から隅まで、肺の隅から隅まで乃々香の匂いが染み込んでくる。-------これだ。この匂いだ。この包み込んでくるような、ふわりと広がりのあるにおい、これに俺は惹かれたと思ったら、すぐさま彼女の虜となり、木偶の坊となっていた。いつからだったか、乃々香がこの甘い香りを漂わせていることに気がついた俺は、妹のくせに生意気な、とは思いつつも、彼女もそういうお年頃だし、気に入った男子でも出来て気にしだしたのだろう、と思っていたのだった。が、もうだめだった。あの匂いを嗅いでいると、隣りにいる乃々香がただの妹ではなく、一人の女性に見えてしまう。彼女の匂いは、麻薬である。ひとたび鼻に入れるともう最後、彼女に囚われ永遠に求め続けることになる。だからもう、いつしか実の妹の匂いを嗅ぎたいがゆえに、言うことをはいはい聞��入れる人形と成り果ててしまっていた。彼女に嫌われてしまうと、もうあの匂いを嗅げないと思ったから。だが、必死で我慢した。我慢して我慢して我慢して、あの豊かな胸に飛び込むのをためらい続けた。妹の首筋、腰、脇の下、膝裏、足首、へそ、爪、耳、乳房の裏、うなじ、つむじ、…………それらの匂いを嗅ごうと、夜中に彼女の部屋に忍び込むのを、自分で自分の骨を折るまでして我慢した。それなのに彼女は毎日毎日、あの匂いを纏わせながらこちらへグイッと近づいてくる。どころか、俺がソファに座っていたり、こたつに入っていると、そうするのが当然と言わんばかりにピトッと横に引っ付いてくる。引っ付いてきて兄である俺をまるで弟かのように、抱き寄せ、膝に載せ、頭を撫で、後ろから包み込み、匂いでとろけていく俺をくすくすと笑ってから、顎を俺の頭の上に乗せてくる。もう最近の彼女のスキンシップは異常だ。家の中だけではなく、外でも手を繋ごう、手を繋ごうとうるさく言ってきて、…………いや声には出していないのだが、わざわざこちらの側に寄って来てはそっと手を取ろうとする。この前の家族旅行でも、両親に見られない範囲ではあるけれども、俺の手は常に、あの色の抜けたように綺麗な、でも大きく少しゴツゴツとした乃々香の手に包まれていた。
……………本当に包まれていた。何せ彼女の方がだいぶ手が大きいのだ。中学生の妹の方が手が大きいなんて、兄なのに情けなさすぎるが、事実は事実である、指と指を編むようにする恋人つなぎすらされない。一度悔しくって悔しくって比べてみたことがあるけれども、結果はどの指も彼女の指の中腹あたりにしか届いておらず、一体どうしたの? と不思議そうな顔で見下されるだけだった。キョトンと、目を白黒させて、顔を下に向けて、………………そう、乃々香は俺を見下ろしてくる。妹なのに、妹のくせに、小学生の頃に身長が並んだかと思ったら、中学二年生となった今ではもう十、十五センチは高い位置から見下ろしてくる。誓って言うが、俺も一応は男性の平均身長程度の背はあるから、決して低くはない。なのに、乃々香はふとしたきっかけで兄と向き合うことがあれば、こちらの目を真っ直ぐ見下ろしてきて、くすくすとこそばゆい笑みを見せ、頬を赤く染め上げ、愛おしそうにあの大きな手で頭を撫でてきて、…………俺は本当に彼女の「兄」なのか? 姉というものは良くわからないから知らないが、居たとしたらきっと、可愛い弟を見る時はああいう慈しみに富んだ目をするに違いない。あの目は兄に向けて良いものではない。が、現に彼女は俺を見下ろしてくる、あの目で見下ろしてくる、まるで弟の頭を撫でるかのように優しくあの肉厚な手を髪の毛に沿って流し、俺がその豊かすぎる胸元から漂ってくるにおいに思考を奪われているうちに、母親が子供にするように額へとキスをしてくる。彼女には俺のことが事実上の弟のように見えているのかもしれない。じたい、俺と妹が手を繋いでいる様子は傍から見れば、お淑やかで品の良い姉に、根暗で僻み癖のある弟が手を引かれているような、そんな風に見えていることだろう。
やはり、乃々香はたまらない。我慢に次ぐ我慢に、もう一つ我慢を重ねていたいたけれども、もう限界である。今日は、彼女が部活で居なければ、いつも家に居る母親も父親とともに出かけてしまって夜まで帰ってこない。ならばやることは一つである。大丈夫だ、彼女の持っている物の匂いをちょっと嗅ぐだけであって、決して部屋を滅茶苦茶にしようとは思っていない。それに、そんな長々と居座るつもりもない。大丈夫だ。彼女は異様にこまめだけど、ちゃんともとに戻せばバレることもなかろう。きっと、大丈夫だ。……………
  肺の中の空気という空気を乃々香のにおいでいっぱいにした後は、彼女が今朝の七時頃まで寝ていた布団を少しだけめくってみる。女の子らしい赤色のふわふわとした布団の下には、なぜかそれと全く合わない青色の木の模様が入った毛布が出てきたが、確かこれは俺が昔、…………と言ってもつい半年前まで使っていた毛布で、こんなところにあったのか。ところどころほつれたり、青色が薄くなって白い筋が現れていたり、もう結構ボロボロである。だがそんな毛布でも布団をめくった途端に、先程まで彼女が寝ていたのかと錯覚するほど良い匂いを、あちらこちらに放つのである。あゝ、たまらぬ。日のいい匂いに混じって、ふわふわとした乃々香の匂いが俺を包んでいる。…………だが、まだ空に漂っているにおいだけだ。それだけでも至福の多幸感に身がよじれそうなのに、この顔をその毛布に埋めたらどんなことになるのであろう。
背中をゾクゾクとさせながら、さらにもう少しだけ毛布をめくると、さらに乃々香の匂いは強くなって鼻孔を刺激してくる。この中に頭を入れるともう戻れないような気がしたが、そんなことはどうでもよかった。ここまで来て、何もしないままでは帰れない。頭を毛布とシーツの境目に突っ込んで、ぱたん…と、上から布団をかける。------途端、体から感覚という感覚が消えた。膝は崩れ落ち、腰には力が入らず、腕はだらりと垂れ下がり、しかし、見える景色は暗闇であるのに目を見開き、なにより深呼吸が止まらぬ。喉の奥底がじわりと痛んで、頭がぼーっとしてきて、このまま続ければ必ず気を失ってしまうのに、妹の匂いを嗅ごう嗅ごうと体が自然に周りの空気を吸おうとする。止まらない。止まらない。あの乃々香の匂いが、あの甘い包まれる匂いが、時を経て香ばしくなり、ぐるぐると深く、お日様の匂いと複雑に混じり合って、俺を絞め殺してくる。良い人生であった。最後にこんないいにおいに包まれて死ねるなど、なんと幸せものか。……………
だが、口を呆けたように開け涎が垂れそうになった時、我に返った。妹の私物を汚してはならない。今ここで涎を出してしまっては彼女の毛布を汚してしまう。--------絶対にしてはいけないことである。そんなことも忘れて彼女の匂いに夢中になっていたのかと思うと、体の感覚が戻ってきて、言うことを聞けるようになったのか、呼吸も穏やかになってきた。やはり、毛布、というより寝具の匂いは駄目だ。きっと枕も彼女の髪の毛の匂いが染み付いて、途方も無くいいにおいになっていることだろう。一番気持ちが高ぶった今だからこそ、一番いい匂いを、一番最初に嗅ぐべきだと思ったが、本当に駄目だ。本当にとろけてしまう。本当に気を失うまで嗅いでしまう。気を失って、そのうちに乃々香が帰ってきたら、それこそもう二度とこんなことは出来なくなるだろうし、妹の匂いに欲情する変態の烙印を社会から押されるだろうし、その前に彼女の怪力による制裁が待っている。……………恐ろしすぎる、いくらバレーをしているからと言って、大人一人を軽々と持ち上げ、お姫様抱っこをし、階段を上り、その男が気づかないほど優しくベッドの上に寝かせるなんてそうそう出来るものではない。いや、あの時は立てないほどにのぼせてしまった俺が悪いが、あのゆさゆさと揺れる感覚は今思い出してみると安心感よりも恐怖の方が勝る。彼女のことだから、決して人に対してその力を振るうことはないとは思うけれども、やはりもしもの時を想像すると先ほどとは違う意味で背中に寒気を覚えてしまう。
ならばやるとしても、少し落ち着くために刺激が強くないものを嗅ぐべきである。ベッドの上に畳まれている彼女の寝間着は、………もちろんだめである、昨夜着ていたものだから、そんなを嗅げば頭がおかしくなってしまう。それにこれは、もう洗濯されて絶対に楽しめないと思っていた、言わば棚から牡丹餅と形容するべき彼女の物なのだから、もう少し気を静めて鼻をもとに戻してから手に取るべきであろう。なら何にしようか。早く決めないと、もう膝がガクガクするほどにあの布団の匂いを今一度嗅ぎたくて仕方がなくなっている。
そういえばちょうど鏡台横の��ックに、乃々香の制服があるはず。…………あった、黒基調の生地に赤いスカーフが付いた如何にもセーラー服らしいセーラー服、それが他のいくつかの服に紛れてハンガーに吊るされている。その他の服も良いが、やはり選ぶべきは最も彼女を引き立たせるセーラー服である。なんと言っても平日は常に十時間以上着ているのだから、妹の匂いがしっかり染み付いているに違いない。それに高校生になってからというもの、なぜか女生徒の制服に何かしら言いようのない魅力を見出してしまい、あろうことか妹である乃々香の制服姿にすら、いや乃々香の制服姿だからこそ、何かそそられるものを感じるようになってしまった。-------彼女はあまりにもセーラー服と相性が良すぎる。こうして手にとって見るとなぜなのかよく分かる。妹は背こそ物凄く高いのだが、その骨格の細さゆえに体の節々、-------例へば手首、足首やら肘とか指とかが普通の女性よりもいくらか細く、しなやかであり、この黒い袖はそんな彼女の手を、ついつい接吻したくなるほど優美に見せ、この黒いスカートはそんな彼女の膝から足首にかけての麗しい曲線をさらに麗しく見せる。それに付け加えて彼女の至極おっとりとした顔立ちと、全く癖のない真直ぐに伸びる艶やかな髪の毛である。今は部活のためにバッサリと切ってしまったが、それでもさらりさらりと揺れ動く後髪と、うなじと、セーラー服の襟とで出来る黒白黒の見事なコントラストはつい見惚れてしまうものだし、それにそうやって見ていると、どんな美しい女性が眼の前に居るのだろうと想像してしまって、兄なのに、いつも乃々香の顔なんて見ているのに、小学生のようにドキドキと動悸を打たせてしまう。で、後ろにいる兄に気がつくと彼女は、ふわりと優しい匂いをこちらに投げつけながら振り向くのであるが、直後、中学生らしからぬ気品と色気のある笑みをその顔に浮かべながら、魂が取られたように口を開ける間抜けな男に近づいてくるのである。あの気品はセーラー服にしか出せない。ブレザーでは不可能である。恐らくは彼女の姿勢とか佇まいとかが原因であろうが、しかし身長差から首筋あたりしか見えていないというのに、黒くざわざわとした繊維の輝きと、透き通るような白い肌を見ているだけで、あゝこの子は良家のお嬢様なのだな、と分かるほどに不思議な優雅さを感じる。少々下品に見えるのはその大きすぎる胸であるが、いや、あの頭くらいある巨大な乳房に魅力を感じない男性は居ないだろうし、セーラー服は黒が基調なのであんまり目立たない。彼女はその他にも二の腕や太腿にもムチムチとした女の子らしい柔らかな筋肉を身に着けているが、黒いセーラー服は乃々香を本来のほっそりとした女の子に仕立て上げ、俗な雰囲気を消し、雅な雰囲気を形作っている。------------
それはそれとして、ああやって振り向いた時に何度、俺が彼女の首筋に顔を埋め、その匂いを嗅ごうとしたことか。乃々香は突っ立っている俺に、兄さん? 兄さん? 大丈夫? と声をかけつつ近づいてきて、もうくらくらとして立つこともやっとな兄の頭を撫でるのだが、俺が生返事をすると案外あっさりと離してしまって、俺はいつも歯がゆさで唇を噛み締めるだけなのである。だが、今は違う。今は好きなだけこのセーラー服の匂いを嗅げる。一応時計を確認してみると、まだこの部屋に入ってきて二十分も経っていない。そっと鼻を、彼女の首が常に触れる襟に触れさせる。すうっと息を吸ってみる。-------あの匂いがする。俺をいつも歯がゆさで苦しめてくるあの匂いが、彼女の首元から発せられるあの、桃のように優しい匂いが、ほんのりと鼻孔を刺激し、毛布のにおいですっかり滾ってしまった俺の心を沈めてくる。少々香ばしい香りがするのは、乃々香の汗の匂いであろうか、それすらも素晴らしい。俺は今、乃々香がいつも袖を通して、学校で授業を受け、友達と談笑し、見知らぬ男に心を寄せてはドキドキと心臓を打たせているであろうセーラー服の匂いを嗅いでいる。あゝ、乃々香、ごめんよこんな兄で。許してくれなんて言わない。嫌ってくれてもいい。だが、無関心無視だけはしないでくれ。…………あゝ、背徳感でおかしくなってしまいそうだ。………………
----ふと、ある考えが浮かんだ。浮かんでしまった。これをしてしまっては、……いや、だけどしたくてしたくてたまらない。乃々香の制服に自分も袖を通してみたくてたまらない。乃々香のにおいを自分も身に纏ってみたくてたまらない。自分も乃々香になってみたくてたまらない。今一度制服を眺めてみると、ちょっと肩の幅は小さいが特にサイズは問題なさそうである。俺では腕の長さが足りないので、袖が余ってしまうかもしれないが、それはそれで彼女の背の高さを感じられて良い。
俺はもう我慢できなくって着ていた上着を雑に脱いで床に放り投げると、姿見の前に立って、乃々香の制服を自分に合わせてみた。気持ち悪い顔は無いことにして、お上品なセーラー服に上半身が覆われているのが見える。これが今から俺の体に身につけることになる制服かと思うと、心臓が脈打った。裾を広げて頭を入れてみると、彼女のお腹の匂いが、胸の匂いが、首の匂いが鼻を突いた。するすると腕を通していくと、見た目では分からない彼女の体の細さが目についた。裾を引っ張って、肩のあたりの生地を摘んで、制服を整えると、またもや乃々香の匂いが漂ってきた。案の定袖は余って、手の甲はすっかり制服に隠れてしまった。
---------最高である。今、俺は乃々香になっている。彼女のにおいを自分が放っている。願わくばこの顔がこんな醜いものでなければ、この胸に西瓜のような果実がついていれば、この股に情けなく雁首を膨らませているモノが無ければ、より彼女に近づけたものだが仕方ない。これはこれで良いものである。最高のものである。妹はいつもこのセーラー服を着て、俺を見下ろし、俺と手をつなぎ、俺に抱きつき、俺の頬へとキスをする、-------その事実があるだけで、今の状況には何十、何百回という手淫以上の快感がある。だが、本当に胸が無いのが惜しい。あの大きな乳房に引き伸ばされて、なんでもない今でも胸元にちょっとしたシワが出来ているのであるが、それが一目見ただけで分かってしまうがゆえに余計に惜しい。制服の中に手を突っ込んで中から押して見ると、確かにふっくらとはするものの、常日頃見ている大きさには到底辿り着けぬ。-------彼女の胸の大きさはこんなものではない。毎日見ているあの胸はもっともっとパンパンに制服を押し広げ、生地をその他から奪い取り、気をつけなければお腹が露出してしまうぐらいには大きい。さすがにそこまで膨らまそうと力を込めて、制服を破ったりしてしまっては元の子もないのでやりはしないが、彼女の大変さを垣間見えただけでも最高の収穫である。恐らく、いつもいつも無理やりこの制服を着て、しっかりと裾を下まで引っ張り、破れないように破れないように歩いているのであろう。あゝ、なるほど、彼女が絶対に胸を張らないのはそういうことか。本当に、まだ中学生なのになんという大きさの乳房なのであろう。
そうやって制服を着て感慨に耽っていると、胸ポケットに何か硬いものを感じた。あまり良くは無いが今更なので取り出してみると、それは自分が、確か小学生だか中学生の頃に修学旅行のお土産として渡したサメのキーホルダー、…………のサメの部分であった。もう随分と昔に渡したものなので、その尾びれは欠け所々塗装が禿げてしまっているが、いまだに持っているということは案外大切にしてくれているに違いない。全く、乃々香はたまにこういう所があるから、ついつい勘違いしそうになるのである。そんな事はあり得ない、----決してあり得ないとは思っていても、つい期待してしまう。いくら魅力的な女性と言えども、相手は実の妹なのだから、-------兄妹間の愛は家族愛でしかないのだから。…………………
ちょっと湿っぽくなってきたせいか、すっかり落ち着いてしまった。セーラー服も元通りに戻してしまった。が、ベッドの上にある妹の寝巻きが目についてしまった。乃々香が昨日の晩から今朝まで着ていた寝巻き、あの布団の中に六七時間は入っていた寝巻き、乃々香のつるつるとした肌が直に触れた寝間着、…………それが、手を伸ばせば届く位置にある。---------きっと、いい匂いがするに違いない。いや、いいにおいなのは知っている。俺はあのパジャマの匂いを知っている。何せ昨日も彼女はアレを着て、俺の部屋にやってきて、兄さん、今日もよろしくね、と言ってきて、勉強を見てもらって、喋って、喋って、喋って、俺の部屋をあのふわふわとしたオレンジのような香りで充満させて、こちらがとろとろに溶けてきた頃に、眠くなってきたからそろそろお暇するね、おやすみ、と言い去っていったのである。………その時の匂いがするに違いない。
それにしてもどうして、………どうして毎日毎日、俺の部屋へやって来るのか。勉強を教えてほしいなどというのは建前でしかない。俺が彼女に教えられることなんて何もない。それは何も俺の頭が悪すぎるからではなくて、乃々香の頭が良すぎるからで、確かにちょっと前までは高校生の自分が中学生の彼女に色々と教えられていたのであるが、気がついた時には俺が勉強を教わる側に立っており、参考書の輪読もなかなか彼女のペースについていけず、最近では付箋メモのたくさんついた〝お下がり〟で、妹に必死に追いつこうと頑張る始末。そんなだから乃々香が毎晩、兄さん兄さん、勉強を教えてくださいな、と言って俺の部屋にやって来るのが不思議でならない。いつもそう言ってやって来る割には勉強の「べ」の字も出さずにただ駄弁るだけで終わる時もあるし、俺には彼女が深夜のおしゃべり相手を探しているだけに見える。それだけのために、あんないい匂いを毎晩毎晩俺の部屋に残していくだなんて、生殺しにも程がある。
だから、これは仕方ないんだ。乃々香のせいなんだ。このもこもことしたパジャマには、悔しさで顔を歪める俺を慰めてきた時の、あの乃々香の大人っぽい落ち着いた匂いが染み付いているんだ。------あゝ、心臓がうるさくなってきた。もう何が原因でこんなに心臓が動悸してるのか分からない。寝間着を持つ手が震えてきた。綺麗に丁寧に畳まれていたから、後できっと誰かが手を加えたと気がつくであろう。だけど、だけど、このパジャマを広げて思う存分においを嗅ぎたい。嗅ぎたい。…………と、その時、するりと手から寝巻きが滑った。
「あっ」
ぱさり…、という音を立てて乃々香のパジャマが床に落ちる。落ちて広がる。袖の口がこちらを見てきている。たぶんそこから、いや、落ちた時に部屋の空気が掻き乱されたせいか、これまでとはまた別種の、-------昨日俺の部屋に充満した、乃々香がいつも使うシャンプーの香りと彼女自身の甘い匂いが、俺の鼻に漂ってくる。もうたまらない。パジャマに飛びつく。何日も食事を与えられなかった犬のように、惨めに、哀れに、床に這いつくばり、妹の���ていた寝間着に鼻をつけて思いっきり息を吸い込む。-------これが俺。実の妹の操り人形と化してしまった男。実の妹の匂いを嗅いで性的な興奮を覚え、それどころか実の妹に対して歪んだ愛を向ける男。実の妹に嫌われたくない、嫌われたくない、と思いながら、言いながら、部屋に忍び込んでその服を、寝具を、嗅いで回る変態。…………だが、やめられない、止まらない。乃々香のパジャマをくしゃくしゃに丸め、そこに顔を埋める。すうっ………、と息を吸う。ここが天国なのかと錯覚するほどいい匂いが脳を溶かしてくる。もう一度吸う。さらに脳がとろけていく。------あゝ、どこだここは。俺は今、どこに居て、どっちを向いているんだ。上か、下か、それも分からない。何もわからない。--------
「ののかっ!」
気がつけば、声が出てしまっていた。-------そうだ、俺は乃々香の部屋に居て、乃々香のパジャマを床に這いつくばって嗅いでいたのだった。顔を上げ、そのパジャマから鼻を離すといくらか匂いが薄くなり、次いで視界も思考も晴れてくる。危なかった、もう少しで気狂いになって取り返しのつかない事態になっていたところだった。だが、パジャマから手を離し、ふと首を傾ぐとベッドの下が何やらカラフルなことに気がついた。見ると白いプラスチックの衣装ケースの表面を通して、赤色と水色のまん丸い影が二つ、ぼやぼやと光っている。こういうのはそっとしておくべきだが、そんな今更戸惑ったところで失笑を買うだけであろう、手を伸ばして開けてみると、そこには嫌にバカでかい、でかい、………でかい、…………何であろうか、女性の下着ということは分かるが何なのかまでは分からない。いや、大体想像はついたけれども、まだ信じられない。これがブラジャーだなんて。……………
とりあえず目についた一番手前の、水色の方を手に取ってみると、案の定たらりと、幅二センチはある頑丈なストラップが垂れた。そして、恐らくカップの部分なのであろう、俺の顔ほどもある布地がワイヤーに支えられてひらひらと揺れ動いている。片方しか無いと思ったら、どうやらちょうど中央部分で折り畳まれているようで、四段ホックの端っこが二枚になって重なっている。俺は金具の部分を持って開いてみた。………………で、でかい。…………でかすぎる。これが本当にブラジャーなのかと思ったけれども、ちゃんとストラップからホックからカップから、普通想像するブラジャーと構造は一緒なようである。……………が、大きさは桁違いである。試しに手を目一杯広げてカップの片方に当ててみても、ブラジャーの方がまだ大きい。顔と見比べてもまだブラジャーの方が大きい。とにかく大きい。これが乃々香が、妹が、中学生が普段身に着けているブラジャーなのか。こんな大きさでないと合わないというのか。……………いや、いまだに信じられないけれども、ところどころほつれて糸が出ていたり、よく体に当たるであろうカップの下側の色が少し黄色くなっているから、乃々香は本当に、この馬鹿にでかいブラジャーを、あの巨大な胸に着けているのであろう。そう思うと手も震えてくれば、歯も震えてきてガチガチと音が鳴る。今まで生で見たことが無くて、一体どれだけ大きな胸を妹は持っているのか昔から謎だったけれども、今ようやく分かった気がする。カップの横にタグがあったので見てみると、32KKとあるから、多分これがカップ数なのであろうと勝手に想像すると、彼女はどうやらKカップのおっぱいの持ち主らしい。………なぜKが二つ続いているのか分からないが、中学生でKカップとは恐れ入る。通りで膝枕された時に顔が全く見えないわけだ。
-------あゝ、そうだ、膝枕。乃々香の膝枕。アレは最高だった。もうほとんど毎日のようにされているが、全くもって飽きない。下からは硬いけれど柔らかい彼女の太腿の感触が、上からは、………言うまでもなかろう顔を押しつぶしてくる極上の感触が、同時に俺を襲ってきて、横を向けば彼女の見事にくびれたお腹が見える。それだけでも最高なのに、彼女の乳房にはまるでミルクのような鼻につくにおいが漂い、彼女のお腹にはあのとろけるような匂いが充満していて、毎晩俺は幼児退行を経験してしまう。だがそうやって、とろけきって頭の中から言葉も無くなった俺に、妹はあろうことか頭を撫でてくるのである。そして、子守唄でも歌ってあげようか、兄さん? と言ってきて本当に、ねんねんころりよ、と赤ん坊をあやすように歌ってくるのである。あの膝枕をされてどうにかならないほうがおかしい。もう、長幼の序という言葉の意味が分からなくなってくるほどに、乃々香に子供扱いされている。-------だが、そこにひどく興奮してしまう。彼女に膝枕をされて、頭を撫でられて、子守唄を歌われて、結果、情けなく勃起してしまう。俺はもう駄目かもしれない。実の妹に子供扱いされて欲情する男、…………もしかしたら実の妹の匂いで興奮する男よりもよっぽどおかしいが、残念ながら優劣を決める前にどちらも俺のことである。…………あゝ、匂い。乃々香の匂い。--------彼女の布団が恋しくなってきた。動くのも億劫だが最後にもう一嗅ぎしたい。…………………
これで最後である。もう日が落ちかけてきているから、そろそろ乃々香が帰ってきてしまう。この布団をもう一瞬、一瞬だけ嗅いだら彼女のブラジャーをもとに戻し、パジャマを出来る限り綺麗に畳み、布団を元に戻して部屋に戻る。まだまだ満足とは言えないが、こういう機会は今後もあるだろうから、今日はこの辺でお開きにしよう。
そんなことを思いつつ体を起こして膝立ちの体勢でベッドに体を向けた。布団は、先程めくったのがそのまま、ぺろりと青い毛布とシーツが見えている。そこに吸い込まれるように顔を近づけ、漂って来るにおいに耐えきれず鼻から息を吸う。------途端、膝が崩れ落ちた。やっぱりダメだった。たったそれだけ、………たった一回嗅ぐだけで、一瞬だけ、一瞬だけ、という言葉が頭の中から消えた。ついでに遠慮という言葉も消えた。我慢という言葉も消えた。ただ乃々香という名前だけが残った。頭を妹の布団の中へ勢いよく突っ込んだ。乃々香の、乃々香ままの匂いが、鼻を通って全身に行き渡っていく。あまりの多幸感に自然に涙が出てくる。笑みもこぼれる。涎もだらだらと出てくる。が、まだ腕の感覚は残っている。手を手繰り寄せ、上半身を全て乃々香の布団の中へ。------あ、もう感覚というかんかくがなくなった。おれは今、ういている。ののかの中でういている。ふわふわと、ふわふわと、ののかのなかで。てんごくとは、ののかのことであったか。なんとここちよい。ののか、ののか、ののか。……………ごめんよ、乃々香、こんなお兄ちゃんで。----------------
  気がついた時には、いよいよ日が落ちてしまったのか部屋の中はかなり薄暗く、机や椅子がぼんやりと赤く照らされながら静かに佇んでいた。俺はどうやら気絶していたらしい。まだ顔中には信じられないほどいい匂いを感じているが、それにはさっきまで嗅いでいた布団とは違う、生々しい人間の香りが混じってい、------------あれ? ………………おかしい。俺は確か布団の中で眠ってしまったというのに、なぜ部屋の中が見渡せる? それに下からは硬いけれど柔らかい極上の感触が、上からは顔を潰さんと重々しく乗ってくる極上の感触が、同時に俺を襲ってきている。しかもその上、ずっと聞いていたくなるような優しい歌声が聞こえてきて、お腹はぽんぽんと、軽く、リズムよく、歌声に合わせて、叩かれている。……………あゝ、もしかして。……………やってしまった。乃々香が帰ってきてしまった。ブラジャーもパジャマも床に放りっぱなしだったのに、布団をめちゃくちゃにしていたのに、何もかもそのままなのに、帰ってきてしまった。きっと怒っている。怒っていなければ、呆れられている。呆れられていなければ、もう兄など居ないことにされている。…………とりあえず起きなければ。----------が、体を起こそうとした瞬間、あんなに優しくお腹を叩いていた腕にグッと力を入れられて、俺の体は万力に挟まったように固定されてしまった。
「の、乃々香。…………」
「兄さん、起きました?」
「あ、うん。えっと、………おかえり」
「ただいま。------まぁ、色々と言いたいことはあるけどまずは聞くね。私の部屋でなにしてたの?」
キッと、乃々香の語調が強くなる。
「あ、……いや、………それは、……………」
「ブラジャーは床に放り出して、寝間着はくしゃくしゃにして、頭は布団の中に突っ込んで、…………一体何をしていたんですか? 黙ってないで、言いなさい。--------」
「ご、ごめん。ごめんなさい。………」
「-------兄さんの変態。変態。変態。心底見損ないました。今日のことはお父さんとお母さんに言って、もう縁を切ってもらうつもりです」
「あ、………あ、…………」
もう言葉も出ない。ただただ喉から微かに出てくる空気の振動だけが彼女に伝わる。が、その時、あれだけ体を拘束してきた腕の力が弱まった。
「……………ふふっ、嘘ですよ。そんなこと思ってませんから安心して。------ああ、でも、変態だと思ってるのは本当ですけどね。………」
「あ、うあ、………良かった。良かった。乃々香。乃々香。……………」
「あぁ、もう、ほら、全然怒ってないから泣かないで。そもそも怒ってたらこんな風に膝枕なんてしてませんって。………ほんとうに兄さんって甘えんぼうなんだから。………………」
と、言うと、またもやお腹をぽんぽんと叩いてきて、今度はさらにもう片方の手で頭を撫でてくる。俺は、乃々香に嫌われてなかった安心感から、腕を丸めてその手の心地よさに身を任せたのだが、しばらくして、ぽんっ、と強く叩かれると、頭を膝の上からベッドの上へ降ろされ、次いで、彼女の暖かさが無くなったかと思えば、パチッ、という音がして部屋の中が明るくなる。ふと目を落としてみると、いまだ床にはブラジャーとパジャマが散乱していて、気を失うまでの興奮が蘇ってきて、居ても立ってもいられなくなってきて、体を起こす。
「あれ? 膝枕はもういいんです?」
隣に腰を下ろしつつ乃々香が言う。
「まぁ、ね。いつまでも妹の膝の上で寝ていられないしね」
「ふふふふふ、兄さん、いまさら何言ってるんです。ふふっ、昨日も私の膝の上で子守唄を聞きながら寝ちゃっていたのに。--------」
「うぅ。……………それはそれとして、ごめんな。こんな散らかして」
「別に、このくらいすぐに片付けられるから、何でもないですよ」
------それよりも、と彼女は言って俺をベッドの上に押し倒し、何やら背中のあたりをゴソゴソと探る。
「今日は何の日でしょう?---------」
今日、…………今日は確か二月一四日、…………あゝ、バレンタインデイ。……………
「せっかく、本当にせっかく、昨日兄さんに見つからないように作ったんですけど、妹のブラジャーを勝手に手に取る人にはちょっと。…………」
「ほんとうにごめんなさい。乃々香様、チョコを、--------」
と、ふいに、顔の上に白い大きな、大きな、今日嗅いだ中で最も強烈に彼女の匂いを放つ布、-------四つのホックと二つのストラップと二つのカップからなる布が、パサリと、降ってきた。
「ふご、………」
「兄さんはその脱ぎたてのブラジャーと、……この、特製の、兄さんを思って兄さんのために兄さんだけに作ったチョコレート、どっちがいいですか? と言っても、そこに落ちてるブラよりもっと大きいし、それに私さっきまでバレーしてて結構汗かいちゃったから、チョコ一択だと思うけど。…………」
ブラジャーのあまりにも香ばしいにおいに脳を犯され、頭がくらくらとしてきて、ぼうっとしてきて、またもや乃々香のにおいで気を失いそうだが、なんとか彼女の手にあるハート型の可愛いラッピングが施されたチョコレートを取ろうと、手を伸ばす。…………が、途中で力尽きた。
「落ちちゃった。……………兄さん? にいさーん?」
「ののか。……」
「生きてます?」
「どっちもほしい。…………・」
「そこはチョコがほしいって言うところでしょ。…………まったく、変態な変態な変態な兄さん。また聞きますから、その時はちゃんとチョコがほしいって言ってね。---------」
と、言うと乃々香は俺を抱き上げてきて、こちらが何かを言おうとする前に俺の顔をその豊かな胸に押し付け、後頭部を撫で、子守唄まで歌いだしたのであるが、いまだに湿っぽい彼女の谷間の匂いを嗅ぎながら寝るなんて、気を失わない限りは到底出来るはずもないのである。---------
  (おわり)
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kkagneta2 · 6 years
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妹の匂いはどんなにほひ?
お兄ちゃんが妹の部屋に忍び込んであれやこれを嗅ぐ話。
乃々香の部屋に入ったのは、別に昨日も来たので久しぶりでも何でも無いが、これほどまでに心臓を打ち震わせながら入ったのは初めてだろう。今の時刻は午後一時、土曜も部活だからと言って朝早く家を出ていった妹が帰ってくるまであと三時間弱、…………だが、それだけあれば十分である。それだけあれば、おおよそこの部屋にある乃々香の、乃々香の、-------妹の、匂いが染み込んだ毛布、掛け布団、シーツ、枕、椅子、帽子、制服------あゝ、昨晩着ていた寝間着まで、…………全部全部、気の済むまで嗅ぐことができる。
だがまずは、この部屋にほんのり漂う甘い匂いである、もう部屋に入ってきたときから気になって仕方がない。我慢できなくて、すうっ……、と深呼吸をしてみると鼻孔の隅から隅まで、肺の隅から隅まで乃々香の匂いが染み込んでくる。-------これだ。この匂いだ。この包み込んでくるような、ふわりと広がりのある甘い匂い、これに俺は惹かれたと思ったら、すぐさま彼女の虜となり、木偶の坊となっていた。いつからだったか、乃々香がこの甘い香りを漂わせていることに気がついた俺は、妹のくせに生意気な、とは思いつつも、彼女もそういうお年頃だし、気に入った男子でも出来て気にしだしたのだろう、と思っていたのだった。が、もうだめだった。あの匂いを嗅いでいると、隣りにいる乃々香がただの妹ではなく、一人の女性に見えてしまう。彼女の匂いは、麻薬である。ひとたび鼻に入れるともう最後、彼女に囚われ永遠に求め続けることになる。だから俺はもう、実の妹の言うことをはいはい聞き入れる人形と成り果ててしまっている。彼女に嫌われてしまうと、もうあの匂いを嗅げないと思ったから。だから、必死で我慢した。我慢して我慢して我慢して、あの豊かな胸に飛び込むのをためらい続けた。妹の首筋、腰、脇の下、膝裏、足首、へそ、爪、耳、乳房の裏、うなじ、つむじ、…………それらの匂いを嗅ごうと、夜中に彼女の部屋に忍び込むのを、自分で自分の骨を折るまでして我慢した。それなのに彼女は毎日毎日、あの匂いを纏わせながらこちらへグイッと近づいてくる。どころか、俺がソファに座っていたり、こたつに入っていると、そうするのが当然と言わんばかりにピトッと横に引っ付いてくる。引っ付いてきて兄である俺をまるで小さな子供かのように、抱き寄せ、膝に載せ、頭を撫で、後ろから包み込み、匂いでとろけていくその小さな子供をくすくすと笑ってから、顎を頭の上に乗せてくる。もう最近の彼女のスキンシップは異常だ。家の中だけではなく、外でも手を繋ごう、手を繋ごうとうるさく言ってきて、…………いや声には出していないのだが、わざわざこちらの側に寄って来てはそっと手を取ろうとするのである。この前の家族旅行でも、両親に見られない範囲ではあるけれども、俺の手は常に、あの色の抜けたように綺麗な、でも大きく少しゴツゴツとした乃々香の手に包まれていた。
……………本当に包まれていた。何せ彼女の方がだいぶ手が大きいのだ。中学生の妹の方が手が大きいなんて、兄なのに情けなさすぎる��、事実は事実である、指と指を���むようにする恋人つなぎすらされない。一度悔しくって悔しくって比べてみたことがあるけれども、結果はどの指も彼女の指の中腹あたりにしか届いておらず、一体どうしたの? と不思議そうな顔で見下されるだけだった。キョトンと、目を白黒させて、顔を下に向けて、………………そう、乃々香は俺を見下ろしてくる。妹なのに、妹のくせに、彼女が小学生の頃に身長が並んだかと思ったら、中学二年生となった今ではもう十、十五センチは高い位置から見下ろしてくる。誓って言うが、俺も一応は男性の平均身長程度の背はあるから、決して低くはない。なのに、乃々香はふとしたきっかけで兄と向き合うことがあれば、こちらの目を真っ直ぐ見下ろしてきて、くすくすとこそばゆい笑みを見せ、頬を赤く染め上げ、愛おしそうにあの大きな手で頭を撫でてきて、…………俺は本当に彼女の「兄」なのか? 姉というものは良くわからないから知らないが、居たとしたらきっと、可愛い弟を見る時はああいう慈しみに富んだ目をするに違いない。あの目は兄に向けて良いものではない。が、現に彼女は俺を見下ろしてくる、あの目で見下ろしてくる、まるで弟の頭を撫でるかのように優しくあの肉厚な手を髪の毛に沿って流し、俺がその豊かすぎる胸元から漂ってくる匂いに思考を奪われているうちに、母親が子供にするように額へとキスをしてくる。彼女には俺のことが事実上の弟のように見えているのかもしれない。じたい、俺と妹が手を繋いでいる様子は傍から見れば、お淑やかで品の良い姉に、根暗で僻み癖のある弟が手を引かれているような、そんな風に見えていることだろう。
やはり、乃々香はたまらない。我慢に次ぐ我慢に、もう一つ我慢を重ねていたいたけれども、限界である。今日は、彼女が部活で居なければ、いつも家に居る母親も父親とともに出かけてしまって夜まで帰ってこない。ならばやることは一つである。大丈夫だ、彼女の持っている物の匂いをちょっと嗅ぐだけであって、決して部屋を滅茶苦茶にしようとは思っていない。それに、そんな長々と居座るつもりもない。大丈夫だ。彼女は異様にこまめだけど、ちゃんともとに戻せばバレることもなかろう。きっと、大丈夫だ。……………
  肺の中の空気という空気を乃々香のにおいでいっぱいにした後は、彼女が今朝の七時頃まで寝ていた布団を少しだけめくってみる。女の子らしい赤色のふわふわとした布団の下には、なぜかそれと全く合わない青色の木の模様が入った毛布が出てきたが、確かこれは俺が昔、…………と言ってもつい半年前まで使っていた毛布である。こんなところにあったのか。ところどころほつれたり、青色が薄くなって白い筋が現れていたり、もう結構ボロボロである。だがそんな毛布でも布団をめくった途端に、先程まで彼女が寝ていたのかと錯覚するほど良い匂いを、あちらこちらに放ち初めた。あゝ、たまらぬ。日のいい匂いに混じって、ふわふわとした乃々香の匂いが俺を包んでいる。…………だが、まだ空に漂っているにおいだけだ。それだけでも至福の多幸感に身がよじれそうなのに、この顔をその毛布に埋めたらどんなことになるのであろう。
背中をゾクゾクとさせながら、さらにもう少しだけ毛布をめくると、白いふさふさとしたシーツが見え、さらに乃々香の匂いは強くなって鼻孔を刺激してくる。ここに近づけるともう戻れないような気がしたが、そんなことはどうでもよかった。ここまで来て、何もしないままでは帰れない。頭を毛布とシーツの境目に突っ込んで、ぱたん…と、上から布団をかける。---------途端、体から感覚という感覚が消えた。膝は崩れ落ち、腰には力が入らず、腕はだらりと垂れ下がり、しかし、見える景色は暗闇であるのに目を見開き、なにより深呼吸が止まらぬ。喉の奥底がじわりと痛んで、頭がぼーっとしてきて、このまま続ければ必ず気を失ってしまうのに、妹の匂いを嗅ごう嗅ごうと体が自然に布団の中の空気を吸おうとする。止まらない。止まらない。あの乃々香の匂いが、あの甘い包まれる匂いが、時を経て香ばしくなり、ぐるぐると深く、お日様の匂いと複雑に混じり合って、俺を絞め殺してくる。良い人生であった。最後にこんないい匂いに包まれて死ねるなど、なんと幸せものか。……………
だが、口を呆けたように開け涎が垂れそうになった時、我に返った。妹の私物を汚してはならない。今ここで涎を出してしまっては彼女の毛布を汚してしまう。--------絶対にしてはいけないことである。そんなことも忘れて彼女の匂いに夢中になっていたのかと思うと、体の感覚が戻ってきて、呼吸も穏やかになってきた。やはり、毛布、というより寝具の匂いは駄目だ。きっと枕も彼女の髪の毛の匂いが染み付いて、途方も無くいいにおいになっていることだろう。一番気持ちが高ぶった今だからこそ、一番いい匂いを、一番最初に嗅ぐべきだと思ったが、本当に駄目だ。本当にとろけてしまう。本当に気を失うまで嗅いでしまう。気を失って、そのうちに乃々香が帰ってきたら、それこそもう二度とこんなことは出来なくなってしまうだろうし、妹の匂いに欲情する変態の烙印を社会から押されてしまうだろう。いや、その前に彼女の怪力による制裁が待っているかもしれない。……………恐ろしすぎる、いくらバレーをしているからと言って、大人一人を軽々と持ち上げ、お姫様抱っこをし、階段を上り、その男が気づかないほど優しくベッドの上に寝かせるなんてそうそう出来るものではない。あの時は立てないほどにのぼせてしまった俺が悪いが、あのゆさゆさと揺れる感覚は今思い出してみると安心感よりも恐怖の方が勝る。彼女のことだから、決して人に対してその力を振るうことはないとは思うけれども、やはりもしもの時を想像すると先ほどとは違う意味で背中に寒気を覚えてしまう。
ならばやるとしても、少し落ち着くために刺激が強くないものを嗅ぐべきである。ベッドの上に畳まれている彼女の寝間着は、………もちろんだめである、昨夜着ていたものだから、そんなを嗅げば頭がおかしくなってしまう。それにこれは、もう洗濯されて絶対に楽しめないと思っていた、言わば棚から牡丹餅、僥倖、零れ幸いと形容するべき彼女の物なのだから、もう少し気を静めて鼻をもとに戻してから手に取るべきであろう。なら何にしようか。早く決めないと、もう膝がガクガクするほどにあの布団の匂いを今一度嗅ぎたくて仕方がなくなっている。
そういえばちょうど鏡台横のラックに、乃々香の制服があるはず。…………あった、黒基調の生地に赤いスカーフが付いた如何にもセーラー服らしいセーラー服、それが他のいくつかの服に紛れてハンガーに吊るされている。その他の服も良いが、やはり選ぶべきは最も彼女を引き立たせるセーラー服である。なんと言っても平日は常に十時間以上着ているのだから、妹の匂いがしっかり染み付いているに違いない。それに高校生になってからというもの、なぜか女生徒の制服に何かしら言いようのない魅力を見出してしまい、あろうことか妹である乃々香の制服姿にすら、いや乃々香の制服姿だからこそ、何かそそられるものを感じるようになってしまったのである。-------彼女はあまりにもセーラー服と相性が良すぎる。こうして手にとって見るとなぜなのかよく分かる。妹は背こそ物凄く高いのだが、その骨格の細さゆえに体の節々、-------例えば手首、足首やら肘とか指とかが普通の女性よりもいくらか細く、しなやかであり、この黒い袖はそんな彼女の手を、ついつい接吻したくなるほど優美に見せ、この黒いスカートはそんな彼女の膝から足首にかけての麗しい曲線をさらに麗しく見せる。それに付け加えて彼女の至極おっとりとした顔立ちと、全く癖のない真直ぐに伸びる艶やかな髪の毛である。今は部活のためにバッサリと切ってしまったが、それでもさらりさらりと揺れ動く後髪と、うなじと、セーラー服の襟とで出来る黒白黒の見事なコントラストはつい見惚れてしまうものである。それにあの後ろから見える、微かに撫でている肩の丸みや、その流麗さを隠しきれない腰や、ひらひらとお尻の動きに合わせて踊るスカートや、そこから伸びる細い、けれども肉付きの良い足の曲線、………などなどを見ていると、どんな美しい女性が眼の前に居るのだろうと想像してしまって、兄なのに、いつも乃々香の顔なんて見ているのに、小学生の男子児童のようにドキドキと動悸を打たせてしまう。で、後ろにいる兄に気がつくと彼女は、ふわりと優しい匂いをこちらに投げつけながら振り向くのであるが、直後、中学生らしからぬ気品と色気のある笑みをその顔に浮かべながら、魂を抜き取られたように口を開ける間抜けな男に近づいてくるのである。あの気品はセーラー服にしか出せない。ブレザーでは不可能である。恐らくは彼女の姿勢とか佇まいとかが原因であろうが、しかし身長差から首筋あたりしか見えていないというのに、黒くざわざわとした繊維の輝きと、透き通るような白い肌を見ているだけで、あゝこの子は良家のお嬢様なのだな、と分かるほどに不思議な優雅さを感じる。少々下品に見えるのはその大きすぎる胸であるが、いや、あの頭よりも大きい巨大な乳房に魅力を感じない男性は居ないだろうし、セーラー服は黒が基調なのであんまり目立たない。彼女はその他にも二の腕や太腿にもムチムチとした女の子らしい柔らかな筋肉を身に着けているが、黒いセーラー服は乃々香を本来のほっそりとした女の子に仕立て上げ、俗な雰囲気を消し、雅な雰囲気を形作っている。------------
それはそれとして、ああやって振り向いた時に何度、俺が彼女の首筋に顔を埋め、その匂いを嗅ごうとしたことか。乃々香は突っ立っている俺に、兄さん? 兄さん? 大丈夫? と声をかけつつ近づいてきて、もうくらくらとして立つこともやっとな兄の頭を撫でるのだが、生返事をすると案外あっさりと離してしまって、俺はいつも歯がゆさで唇を噛み締めるだけなのである。-------だが、今は違う。今は好きなだけこのセーラー服の匂いを嗅げる。一応時計を確認してみると、まだこの部屋に入ってきて二十分も経っていない。そっと鼻を、彼女の首が常に触れる襟に触れさせる。すうっ………、と息を吸ってみる。-------あの匂いがする。俺をいつも歯がゆさで苦しめてくるあの匂いが、彼女の首元から発せられるあの、桃のように優しい匂いが、ほんのりと鼻孔を刺激し、毛布のにおいですっかり滾ってしまった俺の心を沈めてくる。少々香ばしい香りがするのは、乃々香の汗の匂いであろうか、それすらも素晴らしい。俺は今、乃々香がいつも袖を通して、学校で授業を受け、友達と談笑し、見知らぬ男に心を寄せてはドキドキと心臓を打たせているであろうセーラー服の匂いを嗅いでいる。乃々香、ごめんよこんな兄で。許してくれなんて言わない。嫌ってくれてもいい。だが、無関心無視だけはしないでくれ。…………あゝ、背徳感でおかしくなってしまいそうだ。………………
----ふと、ある考えが浮かんだ。浮かんでしまった。これをしてしまっては、……いや、だけどしたくてしたくてたまらない。乃々香の制服に自分も袖を通してみたくてたまらない。乃々香のにおいを自分も身に纏ってみたくてたまらない。自分も乃々香になってみたくてたまらない。今一度制服を眺めてみると、ちょっと肩の幅は小さいが特にサイズは問題なさそうである。俺では腕の長さが足りないので、袖が余ってしまうかもしれないが、それはそれで彼女の背の高さを感じられて良い。
俺はもう我慢できなくって着ていた上着を雑に脱いで床に放り投げると、姿見の前に立って、乃々香の制服を自分に合わせてみた。気持ち悪い顔は無いことにして、お上品なセーラー服に上半身が覆われているのが見える。これが今から俺の体に身につけることになる制服かと思うと、心臓が脈打った。早速、裾を広げて頭を入れてみると、彼女のお腹の匂いが、胸の匂いが、首の匂いが鼻を突いた。するすると腕を通していくと、見た目では分からない彼女の体の細さが目についた。裾を引っ張って、肩のあたりの生地を摘んで、制服を整えると、またもや乃々香の匂いが漂ってきた。案の定袖は余って、手の甲はすっかり制服に隠れてしまった。
---------最高である。今、俺は乃々香になっている。彼女の匂いを自分が放っている。願わくばこの顔がこんな醜いものでなければ、この胸に西瓜のような果実がついていれば、この股に情けなく雁首を膨らませているモノが無ければ、より彼女に近づけたものだが仕方ない。これはこれで良いものである。むしろ最高のものである。妹はいつもこのセーラー服を着て、俺を見下ろし、俺と手をつなぎ、俺に抱きつき、俺の頬へとキスをする、-------その事実があるだけで、今の状況には何十、何百回という手淫以上の快感がある。だが本当に、胸が無いのが惜しい。あの大きな乳房に引き伸ばされて、なんでもない今でも胸元にちょっとしたシワが出来ているのであるが、それが一目見ただけで分かってしまうがゆえに余計に惜しい。制服の中に手を突っ込んで中から押して見ると、確かにふっくらとはするものの、常日頃見ている大きさには到底辿り着けぬ。-------彼女の胸の大きさはこんなものではない。毎日見ているあの胸はもっともっとパンパンに制服を押し広げ、生地をその他から奪い取り、気をつけなければお腹が露出してしまうぐらいには大きい。さすがにそこまで膨らまそうと力を込めて、制服を破ったりしてしまっては元の子もないのでやりはしないが、彼女の大変さを垣間見えただけでも最高の収穫である。恐らく、いつもいつも無理やりこの制服を着て、しっかりと裾を下まで引っ張り、破れないよう破れないよう慎重に歩いているのであろう。あゝ、なるほど、彼女が絶対に胸を張らないのはそういうことか。本当に、まだ中学生なのになんという大きさの乳房なのであろう。
そうやって制服を着て感慨に耽っていると、胸ポケットに何か硬いものを感じた。あまり良くは無いが今更なので取り出してみると、それは自分が、確か小学生だか中学生の頃に修学旅行のお土産として渡したサメのキーホルダー、…………のサメの部分であった。もう随分と昔に渡したものなので、その尾びれは欠け塗装は所々禿げてしまっているが、いまだに持っているということは案外大切にしてくれているに違いない。全く、乃々香はたまにこういう所があるから、ついつい勘違いしそうになるのである。そんな事はあり得ない、----決してあり得ないとは思っていても、つい期待してしまう。いくら魅力的な女性と言えども、相手は実の妹なのだから、-------兄妹間の愛は家族愛でしかないのだから。…………………
ちょっと湿っぽくなってきたせいか、すっかり落ち着いてしまった。セーラー服も元通りに戻してしまった。が、ベッドの上にある妹の寝巻きが目についてしまった。乃々香が昨日の晩から今朝まで着ていた寝巻き、あの布団の中に六七時間は入っていた寝巻き、乃々香のつるつるとした肌が直に触れた寝間着、…………それが、手を伸ばせば届く位置にある。---------きっと、いい匂いがするに違いない。いや、いいにおいなのは知っている。俺はあのパジャマの匂いを知っている。何せ昨日も彼女はアレを着て、俺の部屋にやってきて、兄さん、今日もよろしくね、と言ってきて、勉強を見てもらって、喋って、喋って、喋って、俺の部屋をあのふわふわとしたオレンジのような香りで充満させて、こちらがとろとろに溶けてきた頃に、眠くなってきたからそろそろお暇するね、おやすみ、と言い去っていったのである。………その時の匂いがするに違いない。
それにしてもどうして、………どうして毎日毎日、俺の部屋へやって来るのか。勉強を教えてほしいなどというのは建前でしかない。俺が彼女に教えられることなんて何もない。それは何も俺の頭が悪すぎるからではなくて、乃々香の頭が良すぎるからで、確かにちょっと前までは高校生の自分が中学生の彼女に色々と教えられていたのであるが、気がついた時には俺が勉強を教わる側に立っており、参考書の輪読もなかなか彼女のペースについていけず、最近では付箋メモのたくさんついた〝お下がり〟で、妹に必死に追いつこうと頑張る始末。そんなだから乃々香が毎晩、兄さん兄さん、勉強を教えてくださいな、と言って俺の部屋にやって来るのが不思議でならない。いつもそう言ってやって来る割には勉強の「べ」の字も出さずにただ駄弁るだけで終わる時もあるし、俺には彼女が深夜のおしゃべり相手を探しているだけに見える。それだけのために、あんないい匂いを毎晩毎晩俺の部屋に残していくだなんて、生殺しにも程がある。
だから、これは仕方ないんだ。乃々香のせいなんだ。このもこもことしたパジャマには、悔しさで顔を歪める俺を慰めてきた時の、あの乃々香の大人っぽい落ち着いた匂いが染み付いているんだ。------あゝ、心臓がうるさくなってきた。もう何が原因でこんなに心臓が動悸してるのか分からない。寝間着を持つ手が震えてきた。綺麗に丁寧に畳まれていたから、派手に扱うと後できっと誰かが手を加えたと気がつくであろう。だけど、だけど、このパジャマを広げて思う存分においを嗅ぎたい。嗅ぎたい。…………と、その時、するりと手から寝巻きが滑った。
「あっ」
ぱさり…、という音を立てて乃々香のパジャマが床に落ちる。落ちて広がる。袖の口がこちらを見てきている。たぶんそこから、いや、落ちた時に部屋の空気が掻き乱されたせいか、これまでとはまた別種の、-------昨日俺の部屋に充満した、乃々香がいつも使うシャンプーの香りと彼女自身の甘い匂いが、俺の鼻に漂ってくる。もうたまらない。パジャマに飛びつく。何日も食事を与えられなかった犬のように、惨めに、哀れに、床に這いつくばり、妹の着ていた寝間着に鼻をつけて思いっきり息を吸い込む。-------これが俺。実の妹の操り人形と化してしまった男。実の妹の匂いを嗅いで性的な興奮を覚え、それどころか実の妹に対して歪んだ愛を向ける男。実の妹に嫌われたくない、嫌われたくない、と思いながら、言いながら、部屋に忍び込んでその服を、寝具を、嗅いで回る変態。…………だが、やめられない、止まらない。乃々香のパジャマをくしゃくしゃに丸め、そこに顔を埋める。すーっ………、と息を吸う。ここが天国なのかと錯覚するほどいい匂いが脳を溶かしてくる。もう一度吸う。さらに脳がとろけていく。------あゝ、どこだここは。俺は今、どこに居て、どっちを向いているんだ。上か、下か、それも分からない。何もわからない。--------
「ののかっ!」
気がつけば、声が出てしまっていた。-------そうだ、俺は乃々香の部屋に居て、乃々香のパジャマを床に這いつくばって嗅いでいたのだった。顔を上げ、そのパジャマから鼻を離すといくらか匂いが薄くなり、次いで視界も思考も晴れてくる。危なかった、もう少しで気狂いになり、取り返しのつかない事態になっていたところだった。が、���ジャマから手を離し、ふと首を傾ぐとベッドの下が何やらカラフルなことに気がついた。見ると白いプラスチックの衣装ケースの表面を通して、赤色と水色のまん丸い影が二つ、ぼやぼやと光っている。こういうのはそっとしておくべきだが、そんな今更戸惑ったところで失笑を買うだけであろう、手を伸ばして開けてみると、そこには嫌にバカでかい、でかい、………でかい、…………何であろうか、女性の下着ということは分かるが何なのかまでは分からない。いや、大体想像はついたけれども、まだ信じられない。これがブラジャーだなんて。……………
とりあえず目についた一番手前の、水色の方を手に取ってみると、案の定たらりと、幅二センチはある頑丈なストラップが垂れた。そして、恐らくカップの部分なのであろう、俺の顔ほどもある布地がワイヤーに支えられてひらひらと揺れ動いている。片方しか無いと思ったら、どうやらちょうど中央部分で折り畳まれているようで、四段ホックの端っこが二枚になって重なっている。俺は金具の部分を持って開いてみた。………………で、でかい。…………でかすぎる。これが本当にブラジャーなのかと思ったけれども、ちゃんとストラップからホックからカップから、普通想像するブラジャーと構造は一緒なようである。……………が、大きさは桁違いである。試しに手を目一杯広げてカップの片方に当ててみても、ブラジャーの方がまだ大きい。顔と見比べてもまだブラジャーの方が大きい。二倍くらいは大きい。とにかく大きい。これが乃々香が、妹が、中学生が普段身に着けているブラジャーなのか。こんな大きさでないと合わないというのか。……………いや、いまだに信じられないけれども、ところどころほつれて糸が出ていたり、よく体に当たるであろうカップの下側の色が少し黄色くなっているから、乃々香は本当に、この馬鹿にでかいブラジャーを、あの巨大な胸に着けているのであろう。そう思うと手も震えてくれば、歯も震えてきてガチガチと音が鳴る。今まで生で見たことが無くて、一体どれだけ大きな胸を妹は持っているのか昔から謎だったけれども、今ようやく分かった気がする。カップの横にタグがあったので見てみると、32KKとあるから、多分これがカップ数なのであろうと勝手に想像すると、彼女はどうやらKカップのおっぱいの持ち主らしい。………なぜKが二つ続いているのか分からないが、中学生でKカップとは恐れ入る。通りで膝枕された時に顔が全く見えないわけだ。
-------あゝ、そうだ、膝枕。乃々香の膝枕。アレは最高だった。もうほとんど毎日のようにされているが、全くもって飽きない。下からは硬いけれど柔らかい彼女の太腿の感触が、上からは、………言うまでもなかろう顔を押しつぶしてくる極上の感触が、同時に俺を襲ってきて、横を向けば彼女の見事にくびれたお腹が見える。それだけでも最高なのに、彼女の乳房にはまるでミルクのような鼻につくにおいが漂い、彼女のお腹にはあのとろけるような匂いが充満していて、毎晩俺は幼児退行を経験してしまう。だがそうやって、とろけきって頭の中から言葉も無くなった俺に、妹はあろうことか頭を撫でてくるのである。そ���て、子守唄でも歌ってあげようか、兄さん? と言ってきて本当に、ねんねんころりよ、と赤ん坊をあやすように歌ってくるのである。あの膝枕をされてどうにかならないほうがおかしい。もう、長幼の序という言葉の意味が分からなくなってくるほどに、乃々香に子供扱いされている。-------だが、そこにひどく興奮してしまう。彼女に膝枕をされて、頭を撫でられて、子守唄を歌われて、結果、情けなく勃起してしまう。俺はもう駄目かもしれない。実の妹に子供扱いされて欲情する男、…………もしかしたら実の妹の匂いで興奮する男よりもよっぽどおかしいが、残念ながら優劣を決める前にどちらも俺のことである。…………あゝ、匂い。乃々香の匂い。--------彼女の布団が恋しくなってきた。動くのも億劫だが最後にもう一嗅ぎしたい。…………………
これで最後である。もう日が落ちかけてきているから、そろそろ乃々香が帰ってきてしまう。この布団をもう一瞬、一瞬だけ嗅いだら彼女のブラジャーをもとに戻し、パジャマを出来る限り綺麗に畳み、布団を元に戻して部屋に戻る。まだまだ満足とは言えないが、こういう機会は今後もあるだろうから、今日はこの辺でお開きにしよう。
そんなことを思いつつ体を起こして膝立ちの体勢でベッドに体を向けた。布団は、先程めくったのがそのまま、ぺろりと青い毛布とシーツが見えている。そこに吸い込まれるように顔を近づけ、漂って来るにおいに耐えきれず鼻から息を吸う。------途端、膝が崩れ落ちた。やっぱりダメだった。たったそれだけ、………たった一回嗅ぐだけで、一瞬だけ、一瞬だけ、という言葉が頭の中から消えた。ついでに遠慮という言葉も消えた。我慢という言葉も消えた。ただ乃々香という名前だけが残った。頭を妹の布団の中へ勢いよく突っ込んだ。乃々香の、乃々香ままの匂いが、鼻を通って全身に行き渡っていく。あまりの多幸感に自然に涙が出てくる。笑みもこぼれる。涎もだらだらと出てくる。が、まだ腕の感覚は残っている。手を手繰り寄せ、上半身を全て乃々香の布団の中へ。------あ、もう感覚というかんかくがなくなった。おれは今、ういている。ののかの中でういている。ふわふわと、ふわふわと、ののかのなかで。てんごくとは、ののかのことであったか。なんとここちよい。ののか、ののか、ののか。……………ごめんよ、乃々香、こんなお兄ちゃんで。----------------
  気がついた時には、いよいよ日が落ちてしまったのか部屋の中はかなり薄暗く、机や椅子がぼんやりと赤く照らされながら静かに佇んでいた。俺はどうやら気絶していたらしい。まだ顔中には信じられないほどいい匂いを感じているが、それにはさっきまで嗅いでいた布団とは違う、生々しい人間の香りが混じってい、------------あれ? ………………おかしい。俺は確か布団の中で眠ってしまったというのに、なぜ部屋の中が見渡せる? それに下からは硬いけれど柔らかい極上の感触が、上からは顔を潰さんと重々しく乗ってくる極上の感触が、同時に俺を襲ってきている。しかもその上、ずっと聞いていたくなるような優しい歌声が聞こえてきて、お腹はぽんぽんと、軽く、リズムよく、歌声に合わせて、叩かれている。……………あゝ、もしかして。……………やってしまった。乃々香が帰ってきてしまった。ブラジャーもパジャマも床に放りっぱなしだったのに、布団をめちゃくちゃにしていたのに、何もかもそのままなのに、帰ってきてしまった。きっと怒っている。怒っていなければ、呆れられている。呆れられていなければ、もう兄など居ないことにされている。…………とりあえず起きなければ。----------が、体を起こそうとした瞬間、あんなに優しくお腹を叩いていた腕にグッと力を入れられて、俺の体は万力に挟まったように固定されてしまった。
「の、乃々香。…………」
「兄さん、起きました?」
「あ、うん。えっと、………おかえり」
「ただいま。------まぁ、色々と言いたいことはあるけどまずは聞くね。私の部屋でなにしてたの?」
キッと、乃々香の語調が強くなる。
「あ、……いや、………それは、……………」
「ブラジャーは床に放り出して、寝間着はくしゃくしゃにして、頭は布団の中に突っ込んで、…………一体何をしていたんですか? 黙ってないで、言いなさい。--------」
「ご、ごめん。ごめんなさい。………」
「-------兄さんの変態。変態。変態。心底見損ないました。今日のことはお父さんとお母さんに言って、縁を切ってもらうつもりです」
「あ、………あ、…………」
もう言葉も出ない。ただただ喉から微かに出てくる空気の振動だけが彼女に伝わる。が、その時、あれだけ体を拘束してきた腕の力が弱まった。
「……………ふふっ、嘘ですよ。そんなこと思ってませんから安心して。------ああ、でも、変態だと思ってるのは本当ですけどね。………」
「あ、うあ、………良かった。良かった。乃々香。乃々香。……………」
「あぁ、もう、ほら、全然怒ってないから泣かないで。そもそも怒ってたらこんな風に膝枕なんてしてませんって。………ほんとうに兄さんって甘えんぼうなんだから。………………」
と、言うと、またもやお腹をぽんぽんと叩いてきて、今度はさらにもう片方の手で頭を撫でてくる。俺は、乃々香に嫌われてなかった安心感から、腕を丸めてその手の心地よさに身を任せたのだが、しばらくして、ぽんっ、と強く叩かれると、頭を膝の上からベッドの上へ降ろされ、次いで、彼女の暖かさが無くなったかと思えば、パチッ、という音がして部屋の中が明るくなる。ふと目を落としてみると、いまだ床にはブラジャーとパジャマが散乱していて、気を失うまでの興奮が蘇ってきて、居ても立ってもいられなくなってきて、体を起こす。
「あれ? 膝枕はもういいんです?」
隣に腰を下ろしつつ乃々香が言う。
「まぁ、ね。いつまでも妹の膝の上で寝ていられないしね」
「ふふふふふ、兄さん、いまさら何言ってるんです。ふふっ、昨日も私の膝の上で子守唄を聞きながら寝ちゃっていたのに。--------」
「うぅ。……………それはそれとして、ごめん。ほんとうにごめん。ごめんなさい。勝手に部屋に入ってこんな散らかして、しかも、しかも、……………」
「別に、このくらいすぐに片付けられるから、何でもないですよ」
------それよりも、と彼女は言って俺をベッドの上に押し倒し、何やら背中のあたりをゴソゴソと探る。
「今日は何の日でしょう?---------」
今日、…………今日は確か二月一四日、…………あゝ、バレンタインデイ。……………
「せっかく、本当にせっかく、昨日兄さんに見つからないように作ったんですけど、妹のブラジャーを勝手に手に取る人にはちょっと。…………」
「ほんとうにごめんなさい。乃々香様、チョコを、--------」
と、ふいに、顔の上に白い大きな、大きな、今日嗅いだ中で最も強烈に彼女の匂いを放つ布、-------四つのホックと二つのストラップと二つのカップからなる布が、パサリと、降ってきた。
「ふご、………」
「兄さんはその脱ぎたてのブラジャーと、……この、特製の、兄さんを思って兄さんのために兄さんだけに作ったチョコレート、どっちがいいですか? と言ってもそのブラって、床落ちてるのよりももうちょっと大きいし、それに私さっきまでバレーしてて結構汗かいちゃったから、チョコ一択だと思うけど。…………」
ブラジャーのあまりにも香ばしいにおいに脳を犯され、頭がくらくらとしてきて、ぼうっとしてきて、またもや乃々香のにおいで気を失いそうだが、なんとか彼女の手にあるハート型の可愛いラッピングが施されたチョコレートを取ろうと、手を伸ばす。…………が、途中で力尽きた。
「落ちちゃった。……………兄さん? にいさーん?」
「ののか。……」
「生きてます?」
「どっちもほしい。…………・」
「そこはチョコがほしいって言うところでしょ。…………まったく、変態な変態な変態な兄さん。また聞きますから、その時はちゃんとチョコがほしいって言ってね。---------」
と、言うと乃々香は俺を抱き上げてきて、こちらが何かを言おうとする前に俺の顔をその豊かな胸に押し付け、後頭部を撫で、子守唄まで歌いだしたのであるが、いまだに湿っぽい彼女の谷間の匂いを嗅ぎながら寝るなんて、気を失わない限りは到底出来るはずもないのである。---------
  (おわり)
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shukiiflog · 11 months
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佐伯光(Saeki Hikaru)  → 雪村光(Yukimura Hikaru) W小学校→M中学校 最終学歴、おそらく高卒 36歳前後 11月5日生まれ 蠍座 身長143㎝ 体重32kg B型 夫・雪村真澄 息子・雪村絢 (亡父・佐伯岬  亡母・佐伯昴  義父・佐伯春輝) (※小学生の頃に、父・岬が海外のテロで死亡。その後、昴が春輝と再婚。昴が岬のあとを追うように持病を悪化させて死亡。血の繋がらない春輝は光を代理ミュンヒハウゼン症候群の犠牲者に選んだ) 髪の色:黒 目の色:黒に近い焦げ茶色、陽にあてると薄くなる(水っぽい体質。涙や体液で眼球が常にキラキラ光る) イメージ:りす(By絢)、人形、鈴、七五三の着物を着た童女、ハーバリウム(液体に漬けられた標本)、レオナルドダ・ヴィンチ、ポロック(後期)、ダリ「ポルトリガトの聖母子」
天真爛漫。素直。 自我が強く、いつも謎の自信を持って迷いなく行動する。 快感や快楽を好む。作り出すことも好むが作ったあとのことを考えていない。 向こう見ずで、危険を想定するより前に好奇心と興味が大きく優って動いてしまう。高いところに登って降りられなくなる猫のような感じ。 物怖じしない大胆な性格。毎度やらかしが大規模だったり派手。 斜め上の天然ボケを地でいくが本人はいつもいたって真剣。 澱みなく普通に話すが、自分の思考や頭の中のものを言語化して言葉で表現するのが下手で、顎が小さく弱い体質・口調と相まって、どこか舌足らずだったり突飛な発言になることがある。 身体能力は高い。運動神経抜群で逃げ足が速い。教えれば経験がないが教えれば運動はなんでも簡単にマスターする。 誰も入ってこれないベッドの下や狭い場所に入るのが好き(必ず見つけてくれる父・岬との思い出から) じっとしていてもエネルギー消費が激しい体質。知らない間に水分が足りなくなって熱中症になってすぐ熱を出す。→雪村家にきてからはほぼ絶え間なくなにかいつも水分を摂って補っている。 噛み癖(自傷癖)、拒食、味覚障害、睡眠障害(不眠)がある。 つけ狙われやすいほう。
外見/
施設内: 外見は髪型から服まですべて養父・春輝の決めたとおりに整えている 厚めに切りそろえられた眉上までの前髪 量が多く腰より長いまっすぐな黒髪に鈴をつけている 全身白いレースのワンピースやロングスカート(逃走防止も兼ねている?)
雪村家内: 前髪も後ろ髮も真澄に梳いてもらって量がすっきりしている。一番長くて髪はお腹くらいまでの長さ(今後髪型や髪色で遊ぶ可能性) 逃避行中に真澄に着せてもらった「三つ編み・彼シャツ・サロペットスカート」の姿がお気に入り。真澄に選んでもらうものはだいたいお気に入り。 三つ編みはほぼ毎日固定? きつい三つ編みにして解いてもうねったり跡のつかないハリとコシのあるまっすぐな強い黒髪、染髪経験なし処女髪、キューティクルで天使の輪ができる 頭が丸い。顎が小さくて細い。 歯の数や体の骨がところどころ足りない。 未発達な印象の童顔。 実際に肉体的に、実年齢にそぐわずいびつに未発達で未成熟。生活に支障が出ているという意味では病的といってもいいライン。 黒くて艶めいた長くて太い睫毛。化粧なしでもアイラインを引いてるような目元。 口小さめ、唇だけ少しぽってりめ、鼻低くて小さめ。 髪や肌が全体的に水分と油分多めで乾燥知らず。いつも全身艶々している。睫毛や目や唇もいつも少し濡れたように光る。 ちいさな子供のような体躯。 (逃避行後に初潮や第二次性徴が始まって体型が僅かにだが女性らしくなる) 頭、顔、肩幅、手、足、耳、爪、すべて規格外に小さい。すべて小さいので全体のバランスは普通。集合写真を撮ると一人だけ縮小加工したみたいになる。 痩せ型で細め、とくに腰・首・手首・足首が折れそうなほど細い。 真澄の手で一周できるウエストサイズ。
佐伯岬/春輝視点・過去編 光視点・過去編
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