Tumgik
#蝕晒
don-dake · 2 years
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雖然已經正式又係一個新年嘞…精神上係噉想諗但實際上,同舊年並冇咩分別…只不過係月曆牌換咗啫!(笑) 日常生活都係要照過嘅!
而呢個周末假期同平時嘅周末假期冇咩分別,如果冇人叫我出去嘅話,我都係選擇留喺屋企靜靜地讀下書,睇下電視節目噉。我嘅生活方式係咪聽起嚟好無聊呢?(笑) 笑我都無所謂啦!都習慣囉!
講返正題…所以今次同平時嘅閒時一樣,我選擇留喺屋企睇舊港劇。既然 「無線」 先排又喺網上重播 《非常保鑣》,我就睇返一下。雖然好似唔係幾耐前我先睇過一次喔!(笑) 無所謂啦!因為我好鍾意睇陳妙瑛啲劇,亦都比較鍾意睇啲舊港劇嘛!
而呢齣劇雖然同一般 「無線」 嘅細製作品小型製作品冇咩特別,但起碼總算係有啲好笑,其他演員中亦都冇一個會令我討厭到,覺得煩嗰啲,所以對我嚟講係算一齣 「好劇」。(笑)
今次睇返,起碼可以仔細聽多啲上一排前排冇留意到嘅一些說話,可以再次學多一啲只有廣東話獨有嘅短語。喺呢個新嘅一年,繼續進步廣東話改善我嘅廣東話(同中文)吧!🉐
改寫:多得 mslinchinese @ Instagram 嘅指點!多謝晒!m(_ _)m
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「佢哋話呢要籌募經費建新禮堂。」
新詞:籌募 (cau4 mou6 / chóu mù)
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「嘩要捐款嘅唔好預埋我呀!」
新詞:預埋 (jyu6 maai4)
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「認住我呢個嘜頭,第日搵老公唔好搵我呢態人,嫁咗賺心悒。」
新詞:嘜頭 (mak1 tau4),心悒 (sam1 ngap1/jap1)
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「咪咁篩自己嘞。」 / 「別這麼奚落自己。」
新詞:篩 (sai1),奚落 (hai4 lok6 / xī luò)
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「你咁飢不擇食呀,因住添呀!好容易出事…」
新詞:飢不擇食 (gei1 bat1 zaak6 sek6/zī bù zé shí)
第二集
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「今次真係偷雞唔到蝕揸米。」 / 「這回真的是賠了夫人又折兵。」
新詞:偷雞唔到蝕揸米 (tau1 gai1 m4 dou2 sit6 zaa1 mai5),賠了夫人又折兵 (pui4 liu5 fu1 jan4 jau6 zit3 bing1 / péi le fūren yòu zhé bīng)
第四集
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「嗰個瞓厲頸會咁好死?!」
新詞:瞓厲頸 (fan3 lai2 geng2)
第五集
《非常保鑣》 (1999)
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keredomo · 1 year
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悪夢
 見知らぬ男が肩の半ばあたりですらりと軀をスライスされた。  ヒッ、と喉が痙攣し、息を飲み下せない。男はその身を切り落とされたまま、平然と私の前に立ちつくしている。本来ならば、身体組織が顕になり血がどうどうと溢れてやまないはずのその断面は、なぜか黒地に橙色のまだらが無数に滲む平坦な模様をなしており、橙色の楕円のすべては天体観測に見る恒星のようにぼんやりと発光していた。肩から上のない男は、口もないのに、どこからか発声して私に語りかける。「なんぴともすべて門をくぐる。椅子はみどりの黴に覆われて、蛸――」瞬間、巨大な蛸が私のからだに濡れたまま纏いつく。無数の鳥肌が立つ。蛸の帯びたぬとぬととぬめった海水が私の皮膚を舐め上げて、逃げ悶えながら這いつくばる身体の、骨という骨がごきごきと音を立てて外されてゆく、痛い、痛い、もういや、痛い、もうやめて!――
 はあっ、と息をあらげて目を覚ます。自室の白い天井が見える。大きな窓に掛けたカーテンを開け放していたせいで、部屋の奥に据えたベッドにまであかあかと届く光に瞼越しの眼球が晒されて痛い。私は昨晩眠りについたベッドにいつも通りに横たわっている。男はいない。蛸もいない。一応、手を確認する。折れていない。からだはこわばりきってぐったりと疲れている。汗がひどい。足の先まで湿っている。夢だった。あれは夢だった。
 休むために眠っているのに、どうしてこんな目に遭わなければならないのか。私はわたしの脳を恨む。東京から沖縄までラッコと共に泳いで渡る夢を見て、起きたらなぜだか肉体的にも疲れ果てていて、その日一日が使い物にならなかった日もあった。だれにも、私にも統御不可能な苦しい夢が日々を圧迫して、どうにもならないので仕方なく受け入れている。
 こんなにも毎晩、ひどい悪夢を見るようになったのはここ二、三年のことだった。それまでは美しい夢も見ていた。今も覚えている、数年前に見た、きらきらと光を湛えた金屏風の前に当時愛していた男が立って、こちらに手を差し伸べていた風景を。椿の花弁がおびただしく舞うなかで、とうに失ってしまった男が私に微笑みかけていた。そんな夢を見て、泣きながら目覚めた朝だってあったのだ。
 今はどうだ。眠るたびにグロテスクな夢を見る。神経を逆撫でする光景ばかりが私の認識(認識は夢でも現実でも同じだけ作用する)に襲いかかり、何時間にも及ぶ格闘ののち、疲れ果てて目を覚ます。魚屋に行った日には、イカとイワシが膣めがけて大挙して射精し、私の胎がふくれあがる。不安な仕事を抱えていれば、夢の中で大いに失敗する。仕事だけではない、私生活の延長にある最も忌避したい現実もまた、物語としてありありと立ち現れ、眠っている私の心を折ろうとする。
 明らかに精神を病んでいる。しかし、夢の持ち主であり作り手である私は、夢の光景に苛まれながらもその異常性を楽しんでいて、現実の苦しみ以上を夢の中で苦しむことに負のカタルシスを覚えていて、自罰のために悪夢の日々を手放そうとしない。  そんなお為ごかしに遵じていると、また悪夢をみる。乗るべき飛行機の便があと少しで離陸するというのに、走っても走っても前に進まない。風呂に浸かっているかと思えば尻には溺死体の女の隠毛が触っている。殺人者から逃れて、ペドロ・コスタの撮るような見知らぬ外国の貧困街を走り尽くす。苦しい。痛い。怖い。走っても走っても前に進まない。そうして殺される。殺されても生き返る。また酷いやりかたで殺される。心臓を抉られる。四肢をもがれる。頸に刃物を刺しとおされる。海に沈んで魚についばまれる。陵辱され、奇形を孕む。
 夢に現実世界の象徴化を見ることはスピリチュアリズムに淫するばかげた行為だとも思うが、そう理性的に事を収めるにはあまりにも異常な精度と頻度で悪夢を繰り返しすぎている。
 心当たりはある。日課のように悪夢を見るようになった頃、現実の私は、おのれの抱く「悪意」を封じることを倫理に強要されたのだった。
 褒められたことではないが、私には死を願っている対象が幾人かある。その願いを非倫理的なものとして押し潰し、しかし消し去ることはできず、心のなかに押し込んで飼い始めた。憎しみと怒りと苦しみと暴力性をぐちゃぐちゃに練り合わせた怪物は心の中で暴れ続けて、心臓を内側から喰いちぎろうとする。それと付き合ううち、段々と私の悪夢は激化した。初めは抽象的だったから、ただの悪夢として忘れることができた。夢は次第に具体化していった。その悪夢たちが現実を反映していることに気づいた時には、もう修復できないほどに心が喰い破られてしまっていた。
 こうして夢は、現実の強いる抑圧とはっきり結びついた。悪夢の悪性は私の心の醜さを反映している。そのことを認識できないほど、私の理性はなまくらではない。解釈可能な悪夢が日々わたしの心を蝕む。おのれの醜さに辟易する。自罰は次第に激化する。こうして魘されることでしか、醜い自分を罰することができない。
 ある夜、こんな夢を見た。  ペガサスの被り物をした女が、新宿駅東口の地下道へ降りる階段の踊り場に倒れ込み、今にも出産しようとしている。股からはおびただしく出血し、踊り場は血の海になっている。汚い地面に産み落とされようとする嬰児。ペガサスの女は、被り物をしているからその顔はわからないはずが、青ざめきって今にも死にそうになっているのがわかる。私は手を貸すこともできず、ただ立ち尽くしている。その光景はあまりにも惨たらしく、目が覚めてからもしばらく頭を抱えて魘された。  あの女はきっと、私だった。本当は、私がペガサスの被り物をして、汚い床にへばりついて、命と引き換えに何かを産もうとしていた。血みどろの光景。行き交う人間の靴の泥で汚れきって、不衛生な床。そこで何かを産もうとして絶叫しているのは私だった。誰の助けも得られぬまま、倒れ込んで血の海を広げ続けるのは私だった。
 あの時はわからなかった。しかし、こうして悪夢について改めて考えてみると、あれが自己イメージだったことは容易に理解される。夢は兆候を示さない。夢は象徴と意味を一対一に対応させ得ない。夢は抑圧されたイメージの屈折した表出でしかなく、他者には絶対に読み解けない、極めて自己閉鎖的なものだ。あの女が血の海で倒れていたことの意味は、私にしかわからない。どんなに親しい人間であっても、絶対にわからない。
 眠って、理性の制御のきかない混沌の中で夢を見るのが怖い。それは私を暴く。現実において理性的であろうと抑圧すればするほど、夢は残酷な様相を呈するようになる。とっくに理解している、この悪夢たちを退けようと思うのならば、現実をなんとかしなければならないのだと。現実のほうを、苦心なく生きていられるものに整えなおさねばならないのだと。
 わかっている。何を取り除けば悪夢から解放されるのか。何を手放せば楽になれるのか。わかっていて、迷っている。何を迷っているのかを考えている。
 いつか、それをついに捨てられる日が来るまで、夜がくれば私は諦めてまた眠る。眠って、悪夢に苛まれる。そうやって自分を罰する。考えて考えて考え抜いて、それでもどうしても手放せないというのなら、醜い怪物に喰われて、喰われ果てて、この心がいつか消尽するのを、果てしない絶望感に包まれて見守るだけだ。
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hummingintherain · 2 years
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12月11日(日)|200.96 letter
 まだまったく陽の気配がない、夜のような朝に起き上がった。夜明け前が一番暗いとは、そういえば手垢にまみれた言葉があった。自分から発される言葉は、ほぼ手癖100%なので手垢にまみれているどころか手垢で構成されているように思う。要は上手ではない。書きたいことを書きたいように書いているだけで、寝起きに書いた文は深夜の文の次に信用ならない。書いていくうちに徐々に覚醒していく。つよく冷え込んでいて、暖房をかけるとどこかから流れこんでくる冷気のほうを敏感に察知する。
 昨日を思い出す。早いうちに畑に行って大根を収穫しおえた。土は水分を保ったままでやわらかかったが、この寒さでは先週蒔いた種が土から顔を出しているはずもなかった。ただ昨日は陽射しがずいぶん暖かかった。畑仕事を終えた後で倚子に腰掛けてしばらくぼんやりとしていると陽のあたる部分が明確に熱をおびた。暖かい日は体調が向上しやすい。そういえば思い出したけれども昨日は朝から頭が痛くて、気圧のせいかと思ったら夜から朝にかけての気圧グラフを確認したところまったく関係なさそうで残念がりながら鎮痛剤を飲んだのだった。だから朝から体調は不安だったのだけれど、薬で充分に治まったし、早々に畑に行けたのだから悪くはなかった。そんなわけで体調が普通くらいで安定してくれることを期待して帰宅したら少し休んで絵を描いた。午後に小説を書くかふたたびスラムダンクを観に行くか迷ってどちらも選べるように家から出ようかとぼやぼや検討しながらTwitterを何気なくひらいたら、フォロワーさんがリツイートしていた中日新聞の記事を発見した。防衛省がAIを活用し、ビッグデータとインフルエンサーを利用して、SNSなどを通じて防衛省にとって有利となる世論を人々の間に拡散させ、情報操作し、特定国への敵対心を高め、反戦・厭戦機運の払拭をはかろうしているとの報道だった。こんな重要な情報は本来機密事項として水面下でこっそり行われてナンボではないかとも思ったけれども、これが事実であれば、戦争がいつ起きてもいいように大衆を管理していこうという魂胆があまりに透いてみえる。マイナンバーをはじめ、つくづく行政は、デジタル技術を市民の生活向上ではなく都合よく市民を管理するほうへと使いたいらしい。もうこんなにも見えやすいところまで腐ってしまったのか。あまりに今更な実感だった。そして私が最近強く嫌っている国家権力や極端なナショナリズムが、入り込んできてほしくはない内側の領域にまでどんどん浸蝕を試みていると恐怖した。いや、無意識のうちに侵襲されているのかもしれない。私の心は、生活は、本能は、生理的な流動は、ほんとうに私のものだろうか。誰かが意図的に操作したものではないだろうか。なぜなら私は容易に影響を受ける。疑り深いようで、その実ころりと信用する。権威に噛み付けるほど元気でもない。私は私の見ているTwitterのフォロワーを信頼しているけれども、惰性でトレンドをスクロールするのも嫌いじゃないので、過激な思想に交通事故のようにぶつかってしまって勝手に弱ることはまあまあある。
 無意識下に流されていってしまう可能性や、意図的に権力側が心までも支配しようとしている状態に震えた。それは小説を書いたついでに映画を観るかどうかで迷っていた脳天気さを簡単に破壊するような攻撃だった。それはそれとして目の前を楽しむと割り切るだけの強さが私にはなかった。だからしばらく記事を前にして動けなくなり、SNS全体も、国家も恐ろしくなっていく。難民についての本や映画を思い出す。私はその気になったら、日本を飛び出せるだろうか。たとえば今、飛び出せるだろうか。飛び出せるとしたら、どこにいくのだろうか。安直に検索にかけてみる。ワーキングホリデーや留学、なんだかとても心地の良いものとしてデザインされたサイトが並ぶ。アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリス、フランス、……どれも全くぴんとこなかった。家族について、考える。仕事について、考える。目の前の本棚に並んでいる大量の本について、考える。実際、今、すぐには飛ぶのはリスクと天秤にかけて難しい。
 戦争には反対だ。戦争に繋がりうるところから、正反対のほうへと歩いていきたい。それは別段特殊な考えでもなんでもないのだけれど、どうやら本流はそうとは限らないらしい。
 こんな腐りつくしてカビまみれの出がらし��ような環境をすぐにどうこうできるわけもなく、個人が影響を与えられるはずもない。他者を変えるのは難しい。私ができるのは逃げるだけ。
 恐怖に支配されること自体が、もはや防衛省そして政治家の意図ではないか。恐怖でたやすく人を管理できるのは、既にあまたの犯罪が証明してきた。事実、恐怖し、思考は止まった。調子がよく続きを書くのが楽しみな小説も、強く心をゆさぶられた映画も、恐怖の前には停止した。このままではいけないと、ひとまず身体を動かせと、胃を満たせと、理性が声をかけてきて、ポメラを持って家を出た。歩きながら、大事なものは本の中にたくさんあるし、なにもSNSの反射的な情報が欠けていてもぜんぜん生きていける、と思った。それでニュースレターを作ろうと思った。植本一子さんが、Twitterを凍結されてもニュースレターがあったことで現在地をしらせていて、あれはとてもいいなと思っていた。そういったものをやりたいとは考えていたが、正直なところ有料化での発信を検討していて、ただ、お金について考えて足踏みしていた。またお金だ。お金は好きだが、お金のことを多く考えているということはお金に支配されている状態であり、そしてそのお金の悩みで堰き止められている状況が自分事ながらかなりばかばかしくなった。
 外で生姜焼き定食を食べ、スターバックスに入ってコーヒーを飲み、Twitterからどんどんずれていくための算段をポメラで打鍵した。ビジネス、価値、お金儲け、サブスクリプション、税金、文明社会コッテコテの、お金をまきあげて作り上げていこうとする経済の流れに疲れた(サブスクが苦手なのはいつのまにか払っている税金みたいだからかもしれない、と今ふと思った)。誰かを疎外して成り立っている豊かさモドキにも疲れた。そして管理しようとしてくる存在にも疲れた。そんなことより私は安心して制作したい。書きたい。とはいえ完全に社会から離れることはできない。だからちょっとずつずれたい。自分を守るために切実にサバイブしたい。自分の感受性くらい、と茨木のり子の声がする。自分で守れ、ばかものよ。そうだ、私はばかものだ。しかし国家もどうしようもないばかたれだ。世界中のばかたれのせいで、経済はめちゃくちゃだし命は危機に晒されるし、深刻に病んでいる。全体的に病気にかかっている。だから元気がないのも当然だ。元気がないままでも、安心したい。どんどんおかしくなりたい。おかしくなって、国家を指差して爆笑したい。しかしぶっちゃけそんなことはどうでもいいので、そっぽを向いて私は書き続けたい。作り続けたい。リアルなてざわりを求めたい。
 Twitterからちょっとずつずれていく算段を、文章化することですこしばかり安心して、なんとか多少は小説をすすめようと思ってファイルを開いて執筆した。その後月と六ペンスに向かって、こんな時は坂口恭平だなと思って先日買った『継続するコツ』を読み、なんだかこの方向性は間違っていないと思って少しばかり強くなった気持ちになった。錯覚でもよかった。香山哲の『プロジェクト発酵記』を読んでいる途中で閉店五分前になってお会計した。
 帰宅したらニュースレターに着手した。最近みかける日本発ブランド「The Letter」はビジネスパーソンの雰囲気がしこたまに感じ取れて微妙だったので、日本語対応していないけれども見た目にかわいげのある「Substack」でひとまず立ち上げた。作っているうちから、「また新しいことやるの?」「また道を逸れるの?」「何度も飽きてきたのにこりないよね」「自意識過剰もたいがいにしなよ」と内側の声が乱れてとんできて、恐怖心ともまざってすっかり胃が痛くなっていた。ひとまず一晩をこえて考えようと思った。そうして一晩をこえた。書くうちに窓の外が白みだした。今日早起きしたのは、布団の中でまた記事のことを思い出して恐怖に苛まれたからでもあったけれども、自分を制御する面白みを思い出したいのと、これ以上感受性の無駄遣いするのはよそうと思ったから。
 風になればいい。自分を風だと思えば、場所をうつろうのも、ここではないどこかを常に求めるのも、同じところに居座るのが苦手なのも、なにもかも変じゃない。今日も外の風はつめたい。雲がぶあついけれども、視線を上げれば部分的にベージュの光がこぼれていて、低空は雲がいっそう薄く、オレンジの長い筋が見える。太陽が近い。
 自分をあたためたい。大丈夫だよ、失敗したって途中でやめたっていいじゃない、本当に大丈夫だ。すでに自傷も含めて味わった。あなたは自由だ。なにも問題ない。
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shukiiflog · 6 months
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ある画家の手記if.?-10 雪村絢視点 最後の告白
最近妙に眠たくて、ほとんど寝てばっかりいるようになった。 眠りたいわけじゃない。 足が動かないのは不便だけど退屈してもいないし、まだ色々やりたいことがあるから、こんな寝てばっかで怠惰に過ごしてちゃだめなんだけど… なんでこんなに 眠いんだろ…。
「えーとね、さっきのMa belleのとこMimiにして、愛情があるから美しさより…愛しいって…ほうが… … 」 ソファの上でぐらっと揺れて倒れそうになって、一瞬 意識が飛んだ 寸前で体ごと引き寄せられるような感覚 「…っ?」 すぐ 少し頭を振って、そしたら弱った三半規管のせいでめまいがしてまたぐらついた 何度も無理やりまばたきして目をしっかり開けようとする 倒れ… ? …ぶつけたところが痛み出したりとか 冷たい床の感触もない 包まれてる嗅ぎ慣れた匂い あったかい 真澄さんが自分のほうに抱きとめてくれてた… 「…ますみ…さん」 瞼が 落ちそう 何度も落ちる その度に首がぐらつく ほとんど開けてられない目で手探りみたいに、全体重でもたれかかってるのをどうにかしようとしてたら 抱きしめられて優しく体をさすられた 閉じかけた両目に涙が滲む 「ごめ なさい…」 眠たい 弱々しい声でなんとか言葉にする そのままどんどん勝手に身体から力が抜けて 眠りに入っていく ふと体が浮いた 真澄さんに抱え上げられてリビングのベッドにそっと下ろされる あんまりにも 俺にはやさしい 慈しむような情の深い動作 愛してるって何回言葉で繰り返すより、ずっと雄弁な 「……」 真澄さんが代わりに書いてくれてたのに、途中 だったのに… どうこう言っても…仕方ないや… 無理だ また すごく すごく眠たい 俺の意思に反して 眠る…
***
数日前のこと。 朝起きたら真澄さんと光さんがベッドの上の俺の脇に座ってて、きょとんとして見上げた。 二人とも揃って、今日ってなんかあったっけって思ったら、光さんがベッドに乗って言った。 「うちにこどもがふえるよ」 「…? 養子二人目くるの…?」 小さく首を傾げて訊いたら二人は顔を見合わせてちょっと笑ってた。 「わたしが赤ちゃんを産むの、真澄の子」 「兄ちゃんになるね、絢」 「……… !」 それから二人に毎日色々訊いた いつごろ産まれる? もうお腹に赤ちゃんいるの? 名前決まってる? ベビー服、男女どっちでも着れるの作るよ、二人は男の子と女の子どっちだと思う? どっちに似てるかな 俺ってちょっと真澄さんにも光さんにも似てるとこあるよね 二人ともに似てたら俺と似てる子かもしんない! その子は絢ちゃん気にいるかな もし気に入ったらその子にあげて 真澄さんの血筋なら双子ってこともありえるよね 俺は一気にふたりのにいちゃんになるかも! …最初に聞いたとき幸せな気持ちより先に不安になったりもした、光さんの体が細くて小さいから、女性の身体の事情とか知らないなりに出産って大丈夫なのかなって。 でもそういうことは俺より二人のほうがしっかり考えて決めたんだろうし、二人を信頼してる、だからそんなことは一切口にしないで俺は起きてる間、ずっと素直にはしゃいでた。 俺が兄貴になる! 寿峯に電話して報告したら、いっぱいお腹の中の子に話しかけてやれって言われて、それで俺は話しかけるための赤ちゃん用の物語を作りはじめた。 これは俺のこと少しでも覚えててほしい、俺の夢。 きっと産まれるときに俺はもういないから。とりとめもなくずっと違うこと話すより、ひとつのお話を語って聞かせた方がなにかを覚えててくれる確率が上がるかもしれない。 真澄さんに書き起こしてもらいながら まだ途中だけど 本とかにできたらいいな 形で残ればもっといい いっぱい 用意して遺していきたい、その子が産まれるのを心待ちにしてた俺がいたこと きみが産まれることを待ち望んでた この世にやってくることを心から待ち望まれていたこと 眠ってる時間が急に増えて やれることが少なくなった だから 急がなくちゃ… ーーーー……… こうやって眠るのは 起きてられる体力もなくなったから?
こんな調子じゃ抱えてもらったり助けてもらっても外出なんてもうできそうにないや、 家で人と会うのも 会いたいけど 急に寝落ちるなんて不安にさせて心配かけるだけで終わるかも。だって俺もこんなの初めてでけっこう怖い。長いこと眠れないほうだったから。こんなにずっと眠ってるなんて。 足が完全に動かなくなってからは、毎日リビングのソファで真澄さんと光さんと一緒に過ごして、真澄さんに書き留めてもらって日記とか翻訳とかして、今は赤ちゃんに語るお話を、 それが途中で俺がこうやってパタっと眠っちゃうようになってから、 真澄さんが部屋を少し模様替えして、リビングのソファもベッドにしてくれて、 書斎よりそこで寝るようにしてる。二人が居やすい場所に、俺も居たほうがいい。一緒にいたい 真澄さんと光さんが二人で突然ソファをひっくり返してベッドにしたからちょっとびっくりした、そういえばベッドになるやつだったこれ、俺が初めてここにきたとき香澄がそんなして寝てなかったっけ 二人に甘えたいよ もう十分甘えてるけど 頭撫でて 抱き締めて 俺のこと、何もできなくてもいい子って 褒めて 赤ちゃんに会いたい…
もう腕を高くあげたりも、貧血で冷たく痺れて感覚なくなってきつくて そうしなくてもずっとめまいがしてふらついてて、座って上体だけ起こしてるのもきつい ずっと何も食べてない 量が少ないんじゃなくて 一日五食くらい少量食べてたのも少しずつ減っていって、今はゼロになった 食べないと人間ってすぐ死んじゃうのかなとか漠然とイメージしてたけど、そんなこともなくまだ俺は生きてる 水分だけ薬と一緒に真澄さんと光さんがちょっとずつ、口移しで飲ませてくれてる 体とかきついけど 意外ときつくない、想像して覚悟してたほどには それはきっと支えてくれるみんなが代わりに負担してくれてるから だから死ねない 一日でも長く …ああ どうして 俺は 長い間 この体を特に省みることもなくぞんざいに扱って生きたんだろう
かなり以前から長く悩んだけど、結局俺はみんなに手紙を書いて遺した 会って直接話したこととかも被っちゃうけど書いて、 これは自分で書きたかったから、久しぶりに万年筆をとって、書き終わった頃には指先に巻いた包帯が血を吸って真っ赤になってたけど、手紙のほうはなんとか汚さずに書けた 遺書みたいになって、あまりに重たいものになっちゃったり、簡単に処分できなくなって困らせるかなとか、内容も形になって残るといつまでも相手を縛るようなことにならないかなとか、それで悩んだんだけど … 伝えたいことがまだあっても、このまま弱ると伝えられないままになるかもしれない それよりマシかもしれないし、伝えたいことなんて全部伝えられないまま終わるのが自然だとも思うし 結局俺には分からない
時計を見る 見上げる動作でめまいとか貧血起こすから、テーブルの上に置く小さい時計買ってもらった 香澄の手術が、そろそろ始まる時間 俺は 自分のしたこと言ったことを完全に間違ってたとは思わない そうじゃないならどんな手使ってもやめさせてる それでも真澄さんに泣きついちゃったとき、真澄さんは、香澄もそこまで考えなしじゃないってふうなこと言った 俺もそう思ってはいた 俺が言ったことでも香澄はもう自分で考えて決められるはずだって、信じてた だから言えた それはつまり、俺の無責任な願いの全責任と決定���香澄の側に負わせてしまったから一見俺に咎がない、そういうことだ 香澄には自我も意思もある どこまでもいくならこれも一つの妄想だって言える でも俺はそう信じた 信じてさっそくそれに寄りかかったわけだ 守るどころか …まだ未成熟な自我であっても、誰かがそれを確かにあるものとして信じて接することでそれは育まれる あるのかないのかは誰にも断言できない領域だからこそ 信じて、守るだけじゃなく頼って、危険に晒して輪郭を与えるんだ でも 誰から見ても俺の咎が見えないなら、俺が自分でふさわしい罪過を背負うしかない、自分で自分を正しく裁けるのなら 今の俺はどこまで冷静なんだろう 日々、思考の精度が落ちて 今ではもうできない 感覚的なものや感情に支配されて その感情も 強すぎると耐えられなくて弱々しいものになっていく なんのことも、うまく 考えられなくなっていく ピンと糸を張って編んでいくのがレトリック、それを美しくつなげていくのが文章、全体で見ても美しく意味を成すなら物語り、その、最初の糸がたわんでしまって続けて何も編めなくて 頭にとりとめなく浮かぶものが 思考にならない 体が思うように動かないなら口先と思考で敵を退けて味方を増やして盾を作り生きなきゃいけなかったはずだ、俺は 間違ってたかもしれない 思考するのも脳で身体だから こうして限界が来れば 栄養が足りない脳じゃ自分の思考もままならなくて 眠れば、自分の好きにできるはずの頭の中の世界さえ蝕まれて 思い通りになるものは毎日次々失われていく だから目を覚ましていたい 夢より現実のほうがいい 俺には呼んだら必ず助けてくれるひとが、現実には居てくれるから そう言って、はじめは光さんに眠気覚ましのお茶入れてもらって、眠り込んでも真澄さんに無理やり揺り起こしてもらってた でもそれでも俺が目を覚せなくなってきて 今は大人しくほとんどの時間を眠ってる さっき一瞬ぐらっと眠った、あの一瞬のうちにも怖くて長い夢がくる 防げない でもどんな怖い夢も昔の現実よりずっとマシだ あの悲しくて惨めで蔑ろにされる気持ちに比べたら 俺が俺じゃなきゃだめだって 今一緒にいるみんなはそう言ってくれる 俺が愛したら受け取ってくれる 誰もそのせいで死んだり犠牲になったりしない 俺の愛情を受けとって美しい花を咲かせてくれる 怖い夢は怖い夢で終わってくれる 現実に 戻りたい 死が近づいても 救われて与えられて俺も望んだ大好きな俺の現実に かえりたい
…絢
… 起きて
「ん… あれ 嘘、俺寝てた…?」 急いで身を起こす。布団にちゃんと入ってる…いつ眠ったっけ…? 「うん 珍しいな 疲れてたの?」 脇にいた人の手が俺の頭をそっと撫でる 今日機嫌いいな 「ごめん、もう今日の夕飯とかきた? 引かれた?」 ここでは毎食全部を配膳してもらってて、でも俺の分はないから理人さんのをたまに少し分けてもらってる。少ないからお腹すくけど、そこまで無遠慮に食い意地はれる身分でもないしね。 「絢、」 白い手がそっと伸びてきて俺の頬に触れる されるままじっとしてたら急に爪が頬に食い込んできた。 顔を逸らして頬を押さえる。手のひらをはなすと血がついてきた。 どうしてお前なの?なんでここにいるのは***じゃないの なんでって なんでとか俺が 俺が知りたい、あんたの世話しなきゃ俺は他に生きかたない、家もない、俺は ***じゃない ないないってうるさいな、お前が無力なだけなのを俺のせいにするの? 品のない子 自分の存在を自分で受け持つことができない、持ち前の弱さをまるでそれが抗いようもない決められた運命のような顔するんだね、醜い、あさましいな、弱さなんてなんの理由になると思う? 庇護されて生きるなんて恥ずかしいとお前も思うでしょ? そんなふうに生き存えるなんて 嫌になるな おまえ 誰だ 「ねえ どこいくの」 「ここよりいいとこ」 「なつかしいな、小さなお前に引っ張られてよくこんなふうに走った 大きくなったね」 「うん、ねえ 喋っちゃだめだよ 聴こえたら気づかれちゃうから」 「誰に気づかれちゃだめなの 俺が見つからない方法を教えてあげるよ」 「…内緒」 二人一緒だからどんないけないことだってできる 何度かこの人を部屋から連れだしては つかまって酷くお仕置きされた 床に体を押さえられて服を乱される 滲んだ視界が揺れて揺れてぐらぐら 震えてるのは俺だ 平気平気 どれくらい痛いか知ってるし 泣いたって別にそれでやめてくれるわけでもないしね いいんだってこれで 俺と理人さんは愛し合ってるからいいんだこういうのも きもちわるい 俺男なのに 男から 父親から 無理やりこんな ことされてる そんなところさわらないで おねがい いやあああああああああああああああああああああああああああああああ 俺はなにも知らないで育った 今もしらない セックスとかってしらなかった最初は 痛くてなんかすごく嫌なような気がするだけ だった、気がするだけ どう嫌なのか分からない 最初の頃は痛いのと よく分からない受けとめきれない嫌悪感みたいなきもちわるくて毎回最中に吐いちゃったけど 仰向けで嘔吐物が喉に詰まって窒息して酸素が足りずに失神する 長く呼吸が止まったまま転がされて目を覚ますたびに体のどこかを悪くしたり弱くしてた 畳で擦った肘や踵やあちこちに血が滲む でもそんなんでやめてくれないもん しらなきゃ平気なんだ、これがなんなのか 男同士とかなにしてるとか父親だとか どうだめだとか 泣き叫んでもこの家の中で俺の声が聞こえる人はいないから遠慮なく泣き叫ぶ 気休めっぽいけどなにかがマシになるような ひどくもなるけど うるさいって怒られたことはまだないから俺って恵まれてる 俺がくまのぬいぐるみだったらいちばん助かるのは俺なんだ 愛してる人と毎日いっしょに暮らせて 面倒みれて ひとりじめできて ときにはやさしい うれしい 嫌嫌嫌こんなことやめてまたお話ししてよ 父さん クラスのばかなやつらより父さんがいちばんものしりで頭がいいんだ、ねえまたあの話しして この人どうしようもなく愚かで馬鹿だからこんなこともしちゃうけどその分俺がしっかりしてなきゃな また壁にいっぱい数字かいて 俺にはむずかしくて意味がわかんないかもしれなくても父さんがわらっててたのしそうだから この人をはなして おねがいゆるして 俺がかわりになんでもするから ばかみたい この人を許してこの人と本当に関係できるのは俺だけだっての 犯そうが貢ごうがこの人が必要とするのは俺じゃない俺だけなんだから 俺が考えてることなんてこの人は全部知ってるし俺がこの人を許すことをこの人も許してくれる 俺たちは愛し合うことを許しあってる 誰もわかんないだろ俺たちのことなんて 地獄に見える? 似てるかも ずっと燃えてる 給油場みたいな 匂い なんの音? やだああああああああああああああああああああああ あ あ もういやだ こんなの やだ いや ねえ 俺 まだ 正気でいなきゃいけない? まだ? いつまで どうしても? ごめんなさい どこにもいかない 俺はどこにもいかない 二度と逃げたりしないから ごめんなさい 俺を 愛して また抱いて 俺があなたにとって俺じゃなくても 誰でも あなたは愛してくれる 俺は応える、永遠に あれだけ嫌だったことを今は俺から土下座してねだらなきゃいけない いいんだ 大丈夫 支配なんかじゃないよこれは だって俺があなたを守ってる あるとき首に手を回して耳元で繰り返し囁いて 愛してる 愛してる 愛してる 愛してる 愛してる だから俺が俺だけのために生かしてるあなたを終わりにしなきゃって どっちがくまのぬいぐるみ? 他の誰でもなく俺が ねえ許してくれるでしょ 嫌 嫌 死なないで 俺と一緒に苦しんで 中途半端で苦しませるだけになってしまった 俺じゃ全力でも絞め殺す腕力に足りなくて あなたはいつも弱者を無自覚な加害者だって詰ったけど 本当に弱い俺みたいなのは加害さえ満足にできない 不十分な加害をこそもっとも最悪の害だって そう言って首を絞めたことをあなたは笑って許してくれた 俺は一生どこへもいけなくなった 火傷なんてなくてよかったんだよ 俺は自分の罪を許されただけで充分身動きできなかった 体じゅうに強力に張り巡らされて絶え間なく脈打つ 「俺はこの人を愛してる」 だから幸せ 俺は強い 俺が守ってあげる 守って… 守るって こんなことだった?
走る 逃げた 逃げたね とうとう お前は逃げた うん逃げるよ 一緒に死んでくれなかったね 俺は 死にたくない あのときやっぱり火は付いていて 俺は燃えながらずっと走っていた それでも辿りつけるんだ俺が逃げたら 俺に ちゃんと守らせて 愛させて 愛しあって くれた 香澄 …
「…香澄 …?」 細いかすれた声がした 俺の声だった
俺を見下ろしてる …香澄、 「…俺… 寝てた…?」 起き上がろうとして 体に全然力が入らない 香澄が手伝ってくれてなんとかふわふわの枕とクッションを 背にして上体を起こした 身体中に違和感があると 思ったらあちこちから管が伸びてる でもここ リビングだ 病院とかじゃない これ…ほんの何時間か寝てたんじゃ…ないな いつから… … 香澄 が、いる 手術、いつ終わった…?覚えがない また眠ったのは、あの前後なのか 朦朧とする意識 焦点がなかなか 合わない目 香澄の肩に両腕をまわして 顔を近づけて髪の毛をくしゃっと柔らかく握った 「…香澄は今のままでいいよ」 俺がそう願ったって どうしようもなくすべて変わっていくから、 これは今 愛しいことを伝えるための言葉 香澄はこれまでもこれから先も いつだって今のままでいい 傷つけることを避ける、清らかな手 それはずるくなんかない そんな香澄が ずっと香澄のままでいることが 直にぃを生かしてくれる 真澄さんと光さんは、 って香澄に訊く前に 二人ともベッドの横に来てくれた 「絢 おはよう …」 光さんが首にギュって抱きついて 抱きしめてくれる 初めて会ったとき、一言で俺を家族にしてくれた あの時みたいに 腕がうまくあがらないけど 小さな背中を抱きしめかえす 「うん… 」 おはよう 光さんがベッドから降りるのと同時くらいに 優しく頭を撫でられた 殺したいほど本気で憎んで 誰よりも許されてほしかった それでも俺はなにひとつ許さずにいたかった あなたをひとりにしたくなかった 頬に添えられた手に自分の手を重ねる 背中の傷 痕が残るようにつけたから、死ぬまでちゃんと背負ってよ
香澄の頰を包んで 顔を引き寄せて唇にキスした 長い長い、他にどんな目的も意味も含まない、 “愛してる” …それだけ伝わればいい それだけしかもう今の俺には 伝えられない 口付けたまま 静かに目を閉じる 頬を一筋の涙が伝い落ちた 少し開いた口から 微かな息を吹き込む この体が空っぽになったあとも 香澄が 生き て …… …
…ーー ー に しな で …
くらい部屋から いつかの誰かの声がする いちばんの苦しみは順応を遠ざけられることだ 生かされてもいたんだ あの人に 愛すことで正気を保ってたし、愛すことで日々が過ぎて、生きてた 俺は 蝕んだのもあの人かも知れない それでも …でも あの日々を肯定的に見てたら 大学生なんてやってられなくて 小学校からずっと学校には普通にいってたんだよ、びっくりだよね でも高校までは案外平気だった みんな同じ制服着て頭髪も似たり寄ったり、俺がちゃんとよく見てなかったのもあるだろうけど、押し並べて大差ない 俺もその一人ってことにあんまり違和感なかった 生活とか家がちょっと複雑ではある、この歳で親の介護だからね、なんて その程度 たった二言で具合のいい説明が誰にでもつくんだ みんな大変だねって納得する 何に納得してんの?とか思う暇もなかったかな 雅人さんと 会ったことある 多分本人だと思う、名乗ったりはしなかったけど 理人さんにも会わなかったけど 諦めてしまった人の目だった 直にぃと似てるとはそんなに思わなかった 雅人さんが死んで あの人が死んで 俺が殺して 大学に行くことにしたんだけど、自由なことが多すぎて 怖くて何ひとつ自分で選べない 決められない だから服とかお下がりを着てた ずるいよね、お下がりしかないことに不満みたいなことゼミの子に雑談の中で言ったりしながら本心ではこれ以外に着れるものないんだから 古風なお堅い家から何もかもこれしかダメって決められててさーやんなるよね、とか言いながら 漠然と俺は あの人と生きてくって思ってた あの人も好みとか、俺が変な格好したら嫌な顔するから、あの人が気にいる服でいいやって思ってた 辛くて苦しい可哀想なことなのか、俺にはよく分からない ただ俺は辛かったし苦しかったし恨んでも憎んでもいた、主観的に抱いてた感情なら言葉で言えなくもないけど、客観てなると難しいよ でも家を出てから少し身についた気はしてる ところで男女が生物的に交わって種を保存するもので、それ以外の交配に似た行為は似た行為でしかない、みたいなのさ、あれはちょっと不思議な感じする、俺はそういう体感が特に強かったからかな 要するに「この人と交わることはよくない」みたいなのを漠然と、でもものすごく強烈に、感じる 子供の頃は「これはしちゃいけない遊びだ」とか「誰にも知られちゃだめだ」とか思ってたかな その頃俺はマジで何も知らなかったよ 家の中では黙認どころか推奨されるような空気感さえあった気がする でも生理的に本能的にこれはだめだってものは無知でも感じるもんなんだなとか ……。 ねえ 俺このまま死ぬの? ほんとうに? やっと目が覚めて帰ってこられたのに? 人が死ぬのって あっけないよね ノワール小説じゃなくても死ってけっこうそんな感じだ 劇的にするのは死なれた人たちだから俺に何もできないのは当たり前なのかな 何もできなかったなんて言いたくないよ 俺はこの一年と少しの間にいろんな人と関わって影響受けて与えてきたんだから、そういうのを全部蔑ろにして踏みつけるようなこと言いたくない、それでも 俺は やっぱり 何もできなかった 何もって何のこと言ってるのか分からないけどそう感じる 何もできなかった そんなふうに死ぬのが嫌で 関わってくれたみんなに報いたくて でも何ができたなんて結局誇っていいのは俺みたいな何もない人間には健康で長生きして幸せに天寿を全うしたって、それだけしかないんだって だんだん分かって 少しでも長く生きて でもたかが知れてるよ、もうすぐそこに死が見えてて 大切にしてくれた人たちに報いるたった一つの方法も遂げられずに 死にたくない 踏みにじっていくんだ関わってくれた人たちみんなのこと 死 っていう 事実と終わりで 俺を大事にしてくれた人みんなへの裏切り ごめんなさい ごめんなさい
心から そう思えるのが今の俺の 幸せ
絶え間ない悪夢の中 暗闇で長い髪を床に引きずって 立てないでいる人がいた 足が悪いの? まだ立ったことがないの? 俺はその子と向かい合うようにして 座っていた ごめんね 俺も立てないんだ 足が焼けて なにも手伝えない 両腕を伸ばして痩せっぽちのその子を抱き締めたら その子は消えて 暗闇に俺ひとりがのこされた … 誰もいない 静けさだけ 俺の頭に そっと誰かの手が乗った なつかしいような 暗闇と同化した姿 優しい眼差し 背後から 無邪気な女の子の鈴を鳴らすような笑い声 そっと後頭部を包んだ手に導かれて 当たり前のように俺は自分の足で歩きはじめた おいで って 連れてってくれる深い声が どこへいくのか俺は知っているのに いっしょなら少しも怖くなくて そこへ自分の足で 自分の意思で 踏み出していくことができた
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港樓燶晒!北都6幅土地發展商拒補地價 港府全數收回!長實樓王勸業主蝕3成賣納米樓 | 夜間熱線20230104(A)
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keenywong · 9 months
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港樓燶晒!北都6幅土地發展商拒補地價 港府全數收回!長實樓王勸業主蝕3成賣納米樓 | 夜間熱線20230104(A)
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manbolo88 · 11 months
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用個科幻腦黎抗疫&準備促進經濟復甦(二十七)有鑑於全東亞人口老化嚴重,成立城市定向居屋發展項目(基金)以鼓勵青年健康生育及發展為城市吸取年青精英
由日本開始,以至韓國,甚至香港⋯
青年生育率好像不斷下降⋯
就以日本咁先進嘅經濟體為例,呢 D 問題十多年嚟好似都無法解決!
為乜嘢呢!?!
最大問題還不是為了一個「錢」字!
生育養育一個孩兒要幾佰萬港幣,當中責任與壓力無可口非係山大嘅!
好多難題喺香港早有嘅運作模式裏頭都早埋藏着解決方案⋯
上世紀中期極大量嘅基層新移民湧入咁大嘅問題都喺十多年間就被解決咗!
方法就係公屋同居屋!
呢個無敵嘅方法只要扭一扭,是否可以解決整個東亞都解決唔到嘅問題呢?
「成立城市定向居屋發展項目(基金)以鼓勵青年健康生育及發展為城市吸取年青精英」
如果將居屋申請劃一個可觀部分出嚟,只給全體成員三十五歲以下三人家庭(即是兩個青年夫婦一個細路)申請。
呢個方法唔單止香港可以用,相信整個東亞都適用,尤其係現今全球經濟喺美元高息環境下都處於調整中,無論房價地價都較高峰時期平咗,令成本平咗同時就更加容易實行。甚至有 D 可能因為實力唔夠嘅公司會有 D 發展延誤項目(或者類似所謂嘅爛尾或者價錢唔好嘅盤),是否可以用更低嘅價錢收集咗佢,甚至間隔成三十至六十平方嘅細單位,以市價五折左右賣比呢 D 上面講嘅三人家庭?
呢個會唔會係一舉多得嘅方案?
1. 當然係極端級數嘅鼓勵青年生育,住屋問題解決咗等於解決咗一半以上嘅人生問題!而且係定向嘅(指明為兩個青年一個細路嘅家庭解決呢個問題)。甚至⋯佢哋咪有更多嘅錢消費囉⋯推動埋社會經濟添(年青人係消費者嘅主力嘛)!
2. 青年有咗家庭、有咗細路、仲有埋間屋⋯思想仲唔極端穩定!?!仲唔鼓勵到佢除咗努力工作賺取美好嘅人生!?!乜嘢移民呀其他立立雜雜嘅嘢都唔會有咁多心去諗⋯穩定咗年青家庭等於穩定咗社會一大半嘅繁榮。仲扶植咗青年進入第一層嘅置業階梯添(之後佢個心就更有可能諗第二層、第三層㗎啦🤭)。
3. 如果真係搵到 D 人哋發展得唔係咁暢順嘅(類似爛尾或者價錢唔好嘅)盤,唔單止成個計劃嘅成本好可能大幅減低,仲好可能某程度幫咗呢 D 公司渡過難關,公司可以解凍部分資金(就算蝕都好過凍結晒吖)、工人繼續有工開、甚至如果有爛尾業主都較容易整理出補償方案吖!整個商業循環及運作咪快咗囉!係咪人人得益先?
4. 吸引優秀青年新移民,只要加埋 D 合理條款例如有碩士以上學歷或者年薪介乎於三十至五十萬之類⋯只要都係兩大一細都可以同時申請埋呢 D 居屋⋯仲唔大大吸引呢 D 年青優才?仲兼穩定住佢哋少 D 誘因走人添!
好多人好多事情都偏向於往一得一失去諗,但事實係⋯多元得益先係推動社會發展最好嘅選項,希望有聊得很嘅意見有幫助啦🤭
作者:有聊得很(Manbolo88)
密切留意⋯
coming soon⋯
登。登。登。凳⋯
有聊得很腦殼中嘅 真。科。幻
獻給哈勃的退休禮物(第二季——續航至宇宙邊緣)(五十四)唔單止暗物質荒謬!暗能量更加荒謬絕倫!!!
即。將。上。映
作者:有聊得很(manbolo88)
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nobuyukikakigi · 2 years
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Chronicle 2022
ときに絶望的な無力感に陥るほど、至るところで、また相次いで暴力が剝き出しになった一年でした。その暴力は直接に破壊的なものだけではありません。社会を壊し、そこに生きる者を蝕んだうえに、直接的な暴力の前に晒し出す暴力も、さまざまなかたちで露わになった年だったと感じています。もちろん、この一年を振り返るにあたり、ウクライナで今も続く戦争の暴力を挙げる必要があるのは確かでしょう。2月24日、ロシア軍のウクライナ各地への攻撃が始まったという報せを聞いたときの衝撃は忘れられません。 現在も続いている攻撃によるウクライナの民間人の死者は、記録されているだけでも七千人に達しようとしているとのことです。痛ましい犠牲です。大切な人を失った人々の悲しみを思うと言葉がありません。そして、生き残った人々の苦悩は、今も積み重なるばかりです。生活を根こそぎにされて避難を余儀なくされた人々や、生活の基盤を破壊されて恐…
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kayli-workshop · 4 years
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個個都話你好神‼️究竟有幾神⁉️  #當你試左1次 #就5會夠膽再質疑 5盒10盒甘掃貨已經系基本野🤣🤣  #你5系甘蝕無用過掛  💦Sliswiss極光白藜蘆醇爆水萬能面膜💧一盒6️⃣片 敷1️⃣片=敷100片補水mask #絕對省時省力省荷包 然且每Pack都會有30ml特濃精華😍😍 #白藜蘆醇 今期至hit女士大愛成分之一 🉐🉐  ❣️高效成份 白藜蘆醇提取物 🌟抗氧化 🌟清除自由基 🌟神級抗衰老 🌟幫助細胞生成 🌟回復肌膚更新週期 🌟肌膚恢復元氣、年輕、活力  GIGAWHITE™️ 山花素 💠長效保濕 💠抗氧化作用 💠 分解黑色素 💠防止膚色黯沈 💠不會刺激皮膚 💠效果迅速持久  DermaFlux CR ™️ 水動能因子 💎打造500水引力理念 💎打通肌膚水通道 💎層層的引水向上 💎深入到真皮層 💎密集保濕滋養肌膚 💎肌膚持久至潤水盈  Sulforaphane™️ 萊菔硫烷  🔮 美白皮膚 🔮自帶保護屏 🔮 抑制皮膚黑色素生成 🔮保護皮膚免受紫外線傷害 🔮有效保護真皮細胞膠原纖維  堪稱朋友圈中最狂面膜控既我‼️ 教你點樣用 #爆水面膜 達至做到神級補水💧成效😏😏  Step1️⃣撕開包裝前..先用雙手搓下包裝袋😃 令精華因子爆開及滲透面膜 ▶️發揮最強補水效果🤩  Step2️⃣將面膜敷上臉部🙋🏻‍♀️ 用開面膜既都知➡️每一滴精華💧都系精粹所在😏😏 所以千萬必須緊記要撈晒佢地出黎塗抹全面🉐🉐 #想預防及減少頸紋生成 #可以將精華搽埋落條頸喔  難怪被稱為終極爆水炸彈💦💣1000倍注水🌊 過程中feel到皮膚系甘飲水😍 #超強水潤感 用完仲會即時亮白✅✅ #白到反晒光 全面膚色均勻晒💖最緊要系毛孔都收細晒🥰 #好正 #好掂  #謝絕甩皮肌 #30倍爆水力 #Sliswiss極光白藜蘆醇爆水Gel #爆水gel #水魔法爆水炸彈 #Sliswiss極光白藜蘆醇爆水萬能面膜 #白藜蘆醇爆水面膜 #Sliswiss #爆水 #保濕 #美白 #降紅 #導入 #萬用gel  想了解更多美容及最新資訊, 快啲follow我嘅Instagram & Facebook啦!😉  WhatsApp 查詢:9865 9268 或按📲 https://wa.me/85298659268  Facebook: https://www.facebook.com/Kayli-Workshop-385619092166124/  Instagram: @kayli_workshop711 or @kc.beauty.shop  付款方式:銀行轉賬 / 轉數快 / PayMe / 支付寶   https://www.instagram.com/p/CC5i49invZ9/?igshid=h5ii1bamc82y
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itigo-popo · 3 years
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こんにちは!今回は前回と前々回で予告したクランちゃん🌹とグレン君🥀についての記事です!毎度の事ながら原作者である🍓ちゃんに頂いた資料を元に、感謝の念と溢れる熱量と共に解説していきます〜!🌻
★二人の立ち絵は後々また描き足すかもしれません。グレン君の立ち絵の方は下記にて…!
【2021/09/23追記:一部文章の修正と追加済み】
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舞台はとある王国に聳え建つ大きな城。厳重に施錠された塔一角の部屋に一人の薔薇色の少女が国から手配されたメイドの監視下の元、一人ぼっちで幽閉されていました。
その少女の名は〝クラン・ローゼンベルク〟といいます。
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★補足
この王国は前回のオズウェルさんが訪れていた村があった国では無く、はたまた村を襲った敵兵の国でも無く、次回の記事で書かせて頂く予定のルイの出身国でもありません。
因みにラブリーちゃんとミハエルさんはオズウェルさんと同様に後に地上に降り立ちますが恐らくまだこの時点では天界在住です。各自地上に降りる理由ですがラブリーちゃんは保護者役になったオズウェルさんに連れられ、ミハエルさんはラブリーちゃんを追ってという理由かと思われます。
花夜と春本に至っては作者が🍓ではなく🌻で舞台も日本と全く違う為こちらは国以前に蚊帳の外です。カヤだけに。
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話を戻しまして…クランちゃんの出生ですが、
王国専属の魔法使いが連れて来た子です。
クランちゃんが幽閉されている城や国の主導権は主である国王と息子である王子に有りますが当然〝連れて来た〟からには彼らの娘という立ち位置ではありません。
ならば貴族の子か?というと違い、かといって村や街に父や母がいる訳でも無く…しかし孤児でも人攫いでもない。
遠く離れた血縁でもありません。そんな少女を一体どのような目的で幽閉までし、人目を避けさせ隠しているのか…。
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それには理由が有りました。まず国王は国全体の権力者達や政治家達、軍事機関、研究機関と深い繋がりがあります。
そしてクランちゃんの傍には彼女に正体を隠している国から派遣されたメイドが世話係と銘打って監視をしています。
万が一逃げ出さないようにしているからです。つまるところ
クランちゃんは純粋な人間ではありません。
元々彼女は無限に膨大な魔力を発生させる事が出来る装置のような存在として創られました。
この魔力を国や王は軍事や国家機密の研究に利用する為クランちゃんを幽閉していたのです。
そして、それらは後発的にそうなったのでは無くクランちゃんが創られた理由でもあります。
因みに王と違い王子は善良で国王共々クランちゃんに直接の面会はなかったものの彼女への幽閉や以降に記述する〝ある〟研究内容に反対しています。
この王子の存在が後々の展開に大きく影響していきます。
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ここまで禍々しく書き連ねて来ましたが、クランちゃんは種族としては人間です。正確には〝天使に近い存在〟です。理由は後程。
とはいえ機械では無いと言えど彼女の魔力の使い道を考えますと、それこそ機械のように扱い然るべき施設内にて監視且つ管理し利用した方が効率も良いのでは?と疑問も感じ無くもありません。
ましてや愛らしく着飾る洋服も本来は最も必要が無いはず。
この辺りについては彼女を連れてきた王国専属の魔法使いが大きく関係しています。彼女も権力者の一人でもあります。
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女性は国から頼まれた魔力装置を創る為に神様の元に訪れます。神話みたいですね!この神様なのですが現在は地上界に隠居中のようでして前回のオズウェルさんの記事の時にて登場した全智の天使に神としての役割を引き継いでいます。
こう見ますとそれぞれ在住していた国は違えど皆々同じ🍓が描いた世界に住んでいるのだな〜と嬉しくなる🌻…!!
つまりクランちゃんは神様が人間として創造した子ですので、先述でいう〝天使に近い存在〟なのです。
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しかし、何故この時点で敢えて〝人間〟として創ったのか。
これは神様の意思からではなく魔法使いの女性がそう創って欲しいとお願いしたからです。
歳も取りますし、国としては今後も末永く使っていく効率を考えますと悪手のように感じざるを得ません。
これに関しては恐らく魔法使いの女性が、前回のオズウェルさん同様に人間が好きだったからだと伺えます。
但し、この女性もオズウェルさんと同じく良識的な人間を好いており王国の民が好きで且つ彼らを護る為に王国専属の魔法使いをしています。故に国王や後に記述する研究機関等のやり方には眉を顰めており、まだこの時点では内側に潜めていますが彼女もまた王子同様に反対派なのです。
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上記の通り魔法使いの女性は慈悲深い方で、クランちゃんを連れて来た際に大切に扱うようと国王に釘を打ちます。
魔法使いとしての実力も然ることながら神と繋がっていたりと特殊なパイプ持ちでもありますから国王も彼女の言い分を無碍に扱わず、提示された条件を呑み承諾します。
一種の取引みたいなものでしょうか。人間として創られた事以外は国王側からしても悪い話ではなく、そんな些細な欲求に対し首を縦に振ってさえしてしまえば無限の魔力の提供という膨大な利益を得る事が出来るのですから。
以降クランちゃんは〝幽閉〟はされているものの、衣食住や遊ぶものにも困らない何不自由のない生活を送ります。
城に来た当初は四歳くらいで、とても幼なかったのですが今現在は十四歳まで成長しています。世間を知らずに育った為やや浮世離れはしていますが心優しい性格に育ちました。
魔法使いの女性も仕事の合間に遊びに来てくれたりと、血の繋がりこそ有りませんが母と娘のような関係を築きます。
--
因みに、これ以降の展開には神様は全く関与して来ません。
クランちゃんを創造したのち、その後どう扱われるか又は持たせた魔力によって一つの国がどうなっていくのか…。
それに関心も無関心も無い。手を貸すのも偶然且つ必然。世界を憂い愛と平和を謳いながら冷徹で残酷な傍観者です。
--
視点をクランちゃんに戻します。
上記の方でふんわりと触れましたが彼女の素知らぬところで彼女が生成する強大で膨大な魔力は軍事利用を始めとした王国専属である〝機密〟の研究機関により非人道的な人体実験にも使われてしまいました。
その人体実験の内容は、身寄りの無い孤児を集め兵士として利用する為にクランちゃんの魔力を使い潜在する運動神経を刺激し著しく向上させるという実験です。
この実験が成功した暁には対象は常人離れした身体能力を得る事が出来ます。
但し実験対象が魔力を持っていた場合クランちゃんの魔力に影響される副作用か又その後遺症か、魔力が消失します。
数々の孤児が犠牲となり失敗作と成功作が生まれました。
救いは先述した王子や魔法使いの女性に根回しされたのか失敗作の孤児達は城内で働いてるという事でしょうか。
--
★補足
魔法使いの女性がクランちゃんを連れて来なければ、事前にこのような人権を無視した事態は未然に防げた筈です。
恐らく企画段階で、孤児の子達を含めた彼女が愛する国民達の命を天秤に掛けられてしまった��は人質に取られる等、弱味を握られてしまったからではないかと思います。
又は孤児の子達が人体実験以上の危機に晒されてしまう等。
クランちゃんを敢えて〝人間〟としたのは人間が好きだから以外にも訴える想いやメッセージが含まれていそうです。
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凄惨な実験の果てにクランちゃんの魔力に適合し成功した孤児達は軍事利用の為、兵士としての教育を受けます。
その中でも逸脱した身体能力を覚醒させた優秀な成功作である一人の真紅の少年がいました。
その少年の名こそ〝グレン・クロイツ〟元孤児であり、この人体実験の被検体の一人だったのです。
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過酷な境遇だった為か、それとも教育の影響なのか自身を〝駒〟と呼び感情を表に出さない少年です。淡々と任務遂行する姿は一人前の兵士にも全てを諦めているようにも見て取れます。その後は暫くの間、その高い能力を見込まれ王城専属の傭兵兼使用人として過ごしていました。
そうして与えられた任務や日々を、ただただ機械的に過ごしていた彼に、やがて突然過ぎる転機が訪れます。
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とある業務で偶然、中庭にて作業をしていた日のことです。
これまた偶然にも部屋の窓から中庭を見下ろしていたクランちゃんの目に、グレン君の姿が留まりました。
先述通りクランちゃんは浮世離れ気味で世間を知らない面があります。自分と似た髪色、瞳の色を持つグレン君に好奇心に似た興味を抱きそれ以降、窓の外で彼を見かける度に目で追うようになっていきました。
--
魔法使いの女性が国王に釘を指してくれたお陰で、大事にはされていますがクランちゃんは幽閉をされている身です。
流石に十年もそれが続けば、室内に居るのがが当たり前に育ったといえど飽きが来るというもの。
退屈だったクランちゃんにとって、外で見掛けるグレン君は羨望の的のように輝いて見えていたのかもしれません。
そして遂には我慢出来なくなった彼女は訪れていた魔法使いの女性に頼み。彼と遊んでみたいとお願いします。
--
クランちゃんの口からこのような〝お願い〟が出たのは、恐らく今回が初めてで魔法使いの女性はそれを快諾します。
グレン君にとっても異性同士とはいえ同年代の子と…ましてや遊ぶ機会なんて随分と無かったと思いますから悪い話では無い筈です。足早に国王に掛け合いました。
国王は些か呆れ気味に聞いてはいましたが、多少グレン君の仕事内容に調整が入る程度であり通常通りの任務にクランちゃんと遊ばせるという風変わりなものがくっつくだけなので返答をそこまで渋るような内容でもありませんでした。
もし不穏な動きが有れば予めクランちゃんの側近として配置させているメイドがグレン君を拘束し再教育するように研究機関に送り返すだけです。
こうしてグレン君は傭兵兼使用人又はクランちゃんの従者兼遊び相手として勤めるようになり晴れて二人は顔を合わせる事となりました。
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因みに銘を受けた当日のグレン君ですが上司に呼ばれ初っ端口頭から「最重要人物の護衛及び監視の任務だ」と告げられ、流石のグレン君も涼しい顔の内心では戦々恐々としていたのですが蓋を開けてみれば少女と文字そのままの意味で遊ぶだけだったので拍子抜けしたとかなん��か。
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最初こそ主にグレン君が警戒を示して距離感があったもののクランちゃんの能天気な…おっとりとしたペースにだんだんと絆されていきました。二人は徐々に親密になります。
好奇心からか人懐っこく少々抜けている愛らしい面もあるクランちゃんに対しグレン君も素で少々辛辣な言葉を投げ掛けてみたりと魔力装置とその魔力による被検体とは思えないような微笑ましく仲睦ましい関係値を築きます。
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少し引っ掛かるのは、クランちゃん自身に知らされていない事とはいえ自身や周囲の孤児達をこのような姿にした元凶でもあるクランちゃんに対してグレン君は怒りや怨みを感じ無かったのだろうかという点ですが恐らくそんな事は無く、だからこそ最初の頃は警戒し場合によっては一夜報いて処分される気もあったのではないかなと思います。
しかしクランちゃんと触れ合っていくうちに連れ彼女自身の境遇も決して良いものとは言えず彼女もまた被害者の一人であるという答えに落ち着いたのではないかと推測します。
二人が親しい友人となるまで、そう長い時間は掛かりませんでした。しかし同じくして穏やかな時間も長くは続いてくれなかったのです。
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これまでの国王の横暴な統制に国民や一部兵士の不満が爆発しクーデターが勃発したのです。
瞬く間に王国内が戦場と化しました。勿論、国同士の戦争では無く内紛でです。城内にも怒号と罵声が響き渡ります。
意外にも早々に劣勢に陥ったのは国民側ではなく王国側でした。軍事力は王国側が保持しているものの肝心の指揮が行き届いていなかったのです。何故そのような事態に陥ったか
国王も混乱していました。何故ならクーデターを起こした先導者は実の息子、自身の傍で仕えて来た筈の王子だったからです。
だいぶ遡った先述にて書かせて頂いたこの王子の存在が後々の展開に大きく影響していくというのが、ここで繋がります。ずっと傍らで国王の人を〝駒〟のように扱う王政、そして非人道的な研究への協力等々人権や意志を無視したやり方を見て来た王子は、裏で傷ついた国民や兵士達に寄り添い反旗を翻すタイミングを見計らっていました。
恐らく魔法使いの女性も王子同様に以前から国民側として裏で手を引いていたと思われます。そして、このクーデターはクランちゃんとグレン君の保護までしっかりと視野に入れられており、外部にも漏らさぬよう慎重に計画を練られていた筈のものでした。
魔力提供したものとは又違いクランちゃん本体の強力な魔力は、王城内外のバリア等あらゆる動力源としても使用されてしまっており図らずしもクーデターを起こすには厄介なものとなってしまう為、一時的に城外に避難させる必要がありました。そこで警備が手薄になる内乱での混乱に乗じてグレン君が外の安全地帯に彼女を連れ出すという算段の筈でした。
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一足…いや二足も早くクランちゃんの側近であった王国専属のメイドが王子や魔法使いの女性の規格外に動きクランちゃんを拘束します。
彼女はただのメイドではなく王国の為に戦闘要員として教育された暗殺者の一人でした。思うに彼女は事前に王子や魔法使いの女性の裏での行動に気付いており尚且つグレン君がクランちゃんを連れ出すという計画まで〝メイド〟として傍で聞き確実に王国側を勝利させる為敢えて大事にせぬように内に潜ませ、虎視眈々と様子を伺って来たのではないかと思います。
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★解説では早い段階でメイドの正体は王国から手配された監視役と明かしていましたがクランちゃんやグレン君達が彼女の正体に気づくのは今この瞬間です。
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さて確実に王国側を勝利させる条件ですが、それはクランちゃん…もとい、
無限魔力発生装置の主導権を王国��が絶対的に握り最大限に利用する事です。
これまでは魔法使いの女性との契約により大事に扱ってきましたが王国側から見たら今の彼女は裏切り者です。
よって契約は破棄と見なされ、クランちゃんを大事に且つ丁重に扱う理由も無くなりました。
逃げようとするクランちゃんの手をメイドは捕まえます。
当然そんな裏事情など知らずに十年間、彼女に信頼を置き剰(あまつさ)え家族のように慕っていたクランちゃんは酷くショックを受けます。
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予定外の展開にグレン君も呆気に取られ、動揺している間にクランちゃんは王城内の他の部屋に攫われてしまいました。
今までと打って変わり問答無用という態度にグレン君も普段の冷静さを失い激昂し、それこそ同士討ち前提の死を覚悟しクランちゃんを死に物狂いで探します。
もしこれが王国の手により強化された人間同士の一対一の純粋な決闘ならグレン君にも勝算が見えたかも知れません。
しかし現状は内部戦争です。相手も無策な訳がありません。
ここにきて王国側からの新たなる刺客がグレン君とクランちゃんを絶望の淵に追いやります。
城内が混乱する渦中やっとの思いでグレン君がクランちゃんを探し当てた部屋には怯える彼女と一緒に最凶で最悪な暗殺者が血色の眼を揺らしながら尋常でない殺意と狂気を放って恨めしそうにグレン君を待ち構えていたのです。
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この刺客とは一体何者なのか。まず、クランちゃんの側近であったメイドは王国に忠誠を誓う暗殺者の一人でした。要は彼女の他にも暗躍していた者達が存在していたのです。
その中でも現在グレン君と対峙している暗殺者の少女はタチが悪く、例えば暗殺者でありながらも世話係の兼任を担っていたメイドが持つような理性が崩壊しており殺しそのものを生業とする生粋の暗殺者です。そして国王以外に唯一、メイドが信頼する彼女の実の妹でもあります。
この暗殺者の少女はクランちゃんやグレン君と同じ年頃でありますが、元々の素質か暗殺者として育て上げられた過程でか価値観が酷く歪んでしまっており『自分を見てくれるから』ただそれだけの理由で暗殺を遂行してきました。
今回も例に漏れずグレン君が『見てくれるから』彼を殺そうとします。そこに最早もう内部戦争だとか暗殺任務だ等は塵程に関係ありません。
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★補足
この間クランちゃんを暗殺者の妹側に任せて姉側のメイドは何処に行っていたのかと言いますと、国王の元へと助太刀しに行っていたのではないかと思います。クーデターが勃発している現状、命が一番危険に曝されているのは国王です。
この姉妹も出生はグレン君と同じく孤児であり特に姉のメイドの方は王国に拾われた恩義から強い忠誠心を持ち結果としてクランちゃん達と敵対しました。
しかし妹の方は精神が壊れてしまっており暗殺の理由である『見てくれるから』という物言いの仕方からして、国に恩義を感じる以前に幼さ故に愛情不足等々のストレスに心が耐え切れなかったのだと推測します。
因みに姉妹と表されていますが血の繋がりはありません。
二人の関係ですが、少なくとも姉の方は妹を大事にしている印象で壊れてしまった妹と同じ年頃であるクランちゃんの傍で仕えながら、同じく彼女らと同じ年頃であるグレン君と一緒に従者として働いていた日々の内心を思いますと複雑なものがあります。
因みに約十年間メイドとして触れ合ったクランちゃんの事は「嫌いでは無かった」ようで今回の王国側と国民側の対立が無ければ、もっと良好な関係が築けていたのかもしれない。
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★補足2
今まで触れて来なかったクランちゃんの戦闘能力ですが無限に魔力を発生させれるものの、温室育ちであり恐らく王国側からの指示で万が一抵抗された際に厄介なので護身用の教育を受けていません。よって王国の動力源に使われる程の高い魔力を持っているにも関わらず戦闘能力は皆無です。
素質としては王城の防御壁代わりに使われていた防御魔法に特化しており、攻撃魔法より守護面に長けているようです。
しかし今回の件を考えますと王国側の判断は大正解だったようで実際にクランちゃんは戦闘場面においての自身の力の使い方が分からずグレン君を守る事が出来ませんでした。
これに関しては、先を見据えて指示した王国側がしたたかであったと言う他ありません。
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視点を絶体絶命のグレン君とクランちゃんに戻します。
グレン君も傭兵として培われた経験や過酷な訓練を乗り越えて来ただけあり持ち前の身体能力を持ってして抵抗します。全ては囚われてしまったクランちゃんを救ける為。いま彼女を敵の手中に収めてしまったら、もう二度と会えなくなってしまう…そんな胸騒ぎがグレン君を焦燥に駆り立てます。
しかし相手は〝殺人〟に関して一流であり加えて精神が崩壊している為ブレーキが存在せず惨殺するまでグレン君に執着し続けます。例えクランちゃんが自分を犠牲にしグレン君を見逃すように叫んでも羽虫の鳴き声程にしか捉えない又は聞いてすら…はたまた聞こえてすらいないのです。
その結果、グレン君くんの必死の攻防は悲劇的で尚且つ最悪な結末として無念にも終わってしまいます。クランちゃんの目の前でグレン君の身体は鋭利な刃や黒魔術により深く刻まれ嬲られ満身創痍となりました。
死体よりも酷い有り様の瀕死状態で、まともに呼吸をする事すら出来ているのか分からない程に変わり果てたグレン君の姿にクランちゃんは遂には泣き崩れてしまいます。
その凄惨な光景は、誰がどう見ても逆転不可能な幕引きにしか見え無かったのです。しかし…
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クランちゃんの泣き声を聞きグレン君は最期の力を振り絞り傷だらけの体で立ち上がります。
それとほぼ同時に魔法使いの女性が率いる一部の反乱軍がグレン君とクランちゃんを護るように部屋に突入し、反乱軍である国民と魔法使いの女性の決死の助力によってクランちゃんとグレン君は先述していた計画を組んでいた際に事前に用意されていた外の安全地帯へと送られたのです。
そして同時刻…クランちゃんとグレン君の逃亡劇の裏で、王城の玉座の前では国王は国の繁栄を、王子は民の意志を継いで、互いの思想と理想の為に親と子は剣を振り下ろしました。
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安全地帯に送られ、文字通り命からがら城外に逃げる事が出来たクランちゃんとグレン君。クランちゃんは初めて出た外を不安げにきょろきょろと見渡します。足取りも覚束無いまま緊張の糸が切れ尻餅を着くクランちゃんの横で、どさりと重たい音がしました。グレン君が倒れたのです。
逃げる前グレン君は重症よりも酷い状態でした。その深手のまま敵に抗い痛みを感じる以上にクランちゃんを助ける事に必死でした。自分の命を犠牲にしてまでもクランちゃんに生き延びて、生き続けて、生きていて欲しいと。
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二人を逃がす前に、魔法使いの女性から応急手当として回復魔法を受けていたと思われるグレン君ですが恐らく魔法使いの女性は回復魔法は専門外であり、専門の術者もその場におらず呼びに行くとしたら時間が掛かってしまい目の前の敵に隙が出来てしまう…そして、それ以前に暗殺者の黒魔術が蝕んでしまったグレン君の体や魂は、もう助からない段階まで症状が進んでしまっていたのだと思われます。
魔法使いはグレン君に眴せします。流石にグレン君を治療が行き届かない外に出す訳にはいきません。例えもう助からないとしても1%でも生存確率を上げるならばクランちゃんを一人で外に逃がし、そして暗殺者と今も尚対峙している為この場は危険な場所には変わりませんが医療班が来る望みがまだ有る分こちらにグレン君は残っているべきと…ですが
その真紅の瞳は近くまで来ている〝死〟への恐怖は微塵も感じさせず最期までクランちゃんを護りたい、傍にいたいという強い願いと従者としての誇りを、肌がひりつく程に感じさせました。
いずれの選択にせよグレン君が長く無いのは変わりません。ならば彼の意志を最大限に尊重するのが、せめてもの手向けになるのではないか…そうして魔法使いの女性は、それこそ断腸の思いでクランちゃんと共にグレン君を送り出しました。彼女にとっても王国により犠牲となってしまった国民である一人��少年を。そして大事な娘…そのような存在であるクランちゃんの、やっと出来た大切な友人を自身の目の前で救えなかったのですから…。
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安全地帯にさえ来てしまえば、クランちゃんはもう大丈夫です。役目を終えグレン君は血塗れた瞼を穏やかに閉じて息絶えていました。従者として友として最期まで彼女の傍にいました。
グレン君の死にクランちゃんは酷く悲しみました。しかし、もう先程のようには泣き叫びませんでした。膝枕するようにグレン君の頭を乗せ、泣いていた時の余韻を残して少し赤く腫れてしまった瞳で何かを決意したようにグレン君の亡骸を見据えます。そして彼女の〝救けたい〟という純粋な想いと祈りは、潜在的に宿り眠り封じられた秘められし〝奇跡の力〟を覚醒させます。
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二人を取り囲むようにして、周囲をクランちゃんの強い魔力が顕現した証である紅い薔薇が、まるで今から起こる出来事を祝福でもするかのように咲き乱れ華やかに舞い踊ります。
随分と遡った先述にて記させて頂いた通りクランちゃんの実態は人間ではなくどちらかと言うと天使に近い存在です。
そう、今まで鳴りを潜めていた天使としての力が覚醒したのです。そして運命に翻弄され続けた少女の無垢な祈りは無事に天へ届きました。
こうして意識を取り戻したグレン君の視界には宝石のような瞳に涙を一杯一杯に溜めたクランちゃんが映り、揶揄ってやろうとするも束の間に抱き締められ、傷に響くと小さく呻きつつも照れくさそうに抱き締め返すのでした。
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天使の蘇生術を施された反動によりグレン君も人間ではなくなってしまいました。クランちゃんも以前のように人間の真似事のような歳の取り方を出来なくなってしまいます。しかし、そんな事は今の二人にとって、とてもとても些細な事でした。
その後の長い長い年月を、クランちゃんとグレン君は互いに手と手を取り支え合い二人は幸せに生きていくのでした。
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ここからは補足と後日談。内紛は王子が率いる国民側が勝利し、研究施設諸々は取り壊され軍事の在り方についても一から見直していく事となりました。国民を踏み台として富や税を貪っていた一部の権力者達も総入れ替えを行い今度は国民に寄り添える王国を目指し今ここに若き王が誕生しました。
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元国王の処罰そして処遇については王子自身が殺害での解決を望まない人柄に汲み取れた為、権力を剥奪した状態で王子側の兵士の監視下の元軟禁または国民が知る由も無い住居にて隠居させているのではないかと思います。後者の隠居の場合に関しては見つからない場所でないと恨みが収まらない国民が国王を手に掛けてしまう事が危惧出来るからです。
これに関しては元研究員達や元王国側の権力者達そして例の暗殺者であった姉妹達にも同じような処遇が下されたかと思います。もし更生が可能ならば数年後には贖罪という意味合いも込めて表で活動出来るよう手配をする事も考慮して。
但し人として余りにも許されない行為をしてしまっていたり、更生の余地や意思が無いようであれば再出発をした王国を脅かす脅威となる前に正当に処罰を降したと考えます。
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その後のクランちゃんとグレン君について。
隠居とはまた違いますが、復興中の王国内が落ち着くまで暫くは安全地帯での生活を余儀なくされます。とはいえ生活で必要な食料や衣料品等は、新しくなった国からほぼ毎日届いており特に不便や不自由なく暮らせる状態です。
落ち着きだした頃には魔法使いの女性も二人が人間ではなくなってしまった事情も知った上で変わらぬ様子で接し度々顔を出すようになります。まるで新婚さんのような二人を茶化す母親のように。
安全地帯に関してですが、恐らく特に危険な生物が生息していない森の中で目立たないながら赤い屋根の可愛いらしいお家が建っており、そこを王国内に戻るまで仮住まいにしていたのではないかと推測。もしかしたら、そのままそこに住み続けているのかも。小鳥のさえずりで起きてほしいし、クランちゃんには森の小動物��遊んでほしい。
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以上がクランちゃんとグレン君編でした!🌹🥀
クランちゃんの愛らしさも然る事ながらグレン君という一人の男の子の生き様と言いますか在り方が格好良すぎる…!!
因みに今後ルイ達と邂逅する時が来た場合、時系列的には逃亡後の二人と会うのが正解なのですが、お城…箱入り娘のお嬢様…と見せかけて実は囚われの身の女の子…グレン君との主従関係…イイよね…みたいな感じで🍓と話していて、んじゃあ逃亡前にするか〜と審議中だったり🌻
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そうだ、せっかくなので…魔法使いの女性、クランちゃんのメイドであった暗殺者のお姉さん、そのお姉さんの実妹でグレン君を窮地に追いやったヤベー暗殺者の子は…実は…!
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この🍓が販売中のスタンプにいます。(久々な突然の宣伝)
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ちょうど三人で並んでらっしゃいました。左が魔法使いの女性、左中央が妹の方の暗殺者の子、右中央が姉の方の暗殺者の女性でメイドとしての姿、右が暗殺者としての姿です。
みんな可愛くて美人さんです!因みに🌻の推しは…春本の作者なので何となく察して頂けてそうですがヤベー妹の子。
でもって!なんと神様(左)と、オズウェルさん編で登場した全智の天使様(右)もスタンプの中にいるのだ〜!神々しい!
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そんな感じで今回はここまで〜!次回はルイと花夜と春本編です!😼🦊🐰もしかしたらルイと花夜、次々回に春本という風に記事を分割するかもしれません。まだ未知数…!
今回…というより、まとめ記事を書く度🌻から🍓への愛の重さが尋常でなく露呈しだしており見て��通り沢山書いてしまった為、誤字脱字すごいかもしれません…!見つけ次第直していきます😱それでは!♪ (2021/09/22)🌻
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luqixian · 3 years
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獨家|盧啟賢前妻上週一癌症亡 臨終被前夫告上法庭 生前絕望控訴:只想和女兒move on 廖碧兒緋聞男友盧啟賢(Calvin Lo)被誤傳是超級富豪 ,其實他的家族經營保險中介業務,他跟前妻Emily Lo育有10歲女兒Bella,Emily表示自離婚後,不時收到前夫的律師信,對她造成壓力。事實上,Emily在本月7日癌症逝世前,也被他告上法院。 在最後歲月,Emily向本刊作出絕望控訴,作為一個患癌的單親媽媽,她道出自己的心願:「我只想和女兒move on!」 全文:https://s.nextmag.hk/e/5qtsv0Bsccb ----------------------------- 推薦影片: 【這夜給惡人基一封信】大佬茅躉華日夜思念 回憶從8歲開始:兄弟有今生沒來世 (壹週刊 Next) (https://youtu.be/t06qjQbRIpY) 59歲黃秋生還債減磅搬離廿年居所 台灣搵食重新開始:香港擁有嘅嘢冇晒 有咩辦法唔離開 (壹週刊 Next)(https://youtu.be/CzZJeRqzAX0) 【假如沒有天價租】「福食」三老 唔靠綜援靠自己 (果籽 Apple daily) (https://youtu.be/aUE2oQIDoV0)【生命鬥士】值得鄭秀文都讚 前女歌手車禍癱足27年 靠聲控製花椒辣椒油:即使手腳不能動 腦袋仍可很靈活(飲食男女) (https://youtu.be/gREGjaLELTg) 【太子餃子店】新移民唔怕蝕底自薦包餃子 粗重功夫一腳踢 老闆刮目相看邀開店:呢個女人唔係女人(飲食男女 Appledaily) https://youtu.be/7CUTg7LXQ4M) 【娛樂人物】情願市民留家唔好出街聚餐 鄧一君兩麵舖執笠蝕200萬 (蘋果日報 Appledaily) (https://youtu.be/e3agbTOdfoY) #廖碧兒 #盧啟賢 #施家殷 #黃秋生 #鄭秀文 #壹週刊 #StayHome #WithMe #跟我一樣 #宅在家 ----------------------------- 武漢肺炎專頁 緊貼防疫資訊!與你遠離瘟疫 睇清官謊! https://s.nextmag.hk/e/F2Kry67L03 ----------------------------- �壹週刊直播平台 ChannelNEXT� 區區論壇 教你點樣防疫!� https://s.nextmag.hk/e/KrpoG7E761 ----------------------------- �講真心話 撐住我香港!� 每日$1 訂壹仔!: https://s.nextmag.hk/e/NXeKVODrVZ
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skf14 · 4 years
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君の手術は失敗した。鮮やかだったであろう君の世界から、全ての物が消えた。
淡々とその事実だけが君から知らされた時、僕は、心にずっと秘めていた、しかし最後まで口にすることは叶わなかった君への「盲目になって欲しい」というイカれた願いを神が叶えてくれたのだと、無神論者でありながらも感謝とばかりに空を見上げた。
「結婚して欲しい。」という僕の言葉を、君はどう聞いたのだろう。全盲の人間の中には、聞こえる音、言葉に色がついて見えるようになるタイプもいるようだが、君は音も言葉も、空気の振動としか捉えないらしかった。
「いいの?だって私、目が見えないんだよ。」
「君がいい。これからもずっとそばにいたい。」
「荷物になりたくないな、」
「君の気持ちは?」
「...............」
君はただポツリ、「貴方と一緒にいたい。」そう答えた。私は君の小さな手を取り、そして抱きしめた。涙腺だけはまだ機能している君が、眼窩から涙を溢しながら、「健全なまま、貴方と一緒にいたかった。」と零した言葉には、何も答えることなく抱きしめた。答える資格など、私には無かった。私が答えない訳を、君はもしかしたら理解していたのかもしれない。
私は君に対して、外に出るための訓練をすることを望まなかった。君も、盲目の自分を外の世界に晒すことを嫌がった。情緒のない言い方をしてしまえばそれは、"利害の一致"と呼ぶのだろう。えてして君は自宅に篭り、半ば私に世話をされるだけの生き物になった。こう君を表すことに些か抵抗感はあるが、事実として、君はそうなった。私が望んだ。君も望んだ。君はあまりにも冷静で、私はあまりにも理性的だった。それが悪なのか善なのか、私には判断することが出来ない。誰かが裁くとすればそれは神なのだろうか。あぁ、味方をしてくれた神が最後に、私の愚かさを裁くとしたら、とんだ皮肉だ。いや、喜悲劇と呼ぶべきか。
"そう"なってからの君と私は、度々夜に獣と化した。君がじっと寝たままの私の身体を弄り、まるで谷崎潤一郎の「刺青」で描かれた女郎蜘蛛のように、私の身体を這い回り、捕食する姿を見て、私は著しく興奮した。それは私の元来持っていた"盲目性愛"という癖が刺激されたことも大きかったが、淑女めいた君が変貌する様を見たからでもあった。
そのおぼつかない手が、私を探し、指先に触れた温度に安堵して、爪を立て質量を確かめる。私がうちに秘めた、君には決して見せない凶暴で獰猛な、本能に蝕まれた精神が顔を覗かせて、私はそのか弱い腕を捕まえ、君を喰らう。
感覚を奪われると、他が過敏になり失った分をカバーする、というのは何も物語だけの話ではないことを、私は身をもって体験した。君は視覚から得られない情報を、その全てを持って拾い集め、私と、そして私を通じて己が世界に存在することを、確認していた。その行動は他者から見ればある意味哀れ、と思えるようにも見えるだろう。しかし私は、荒地に唯一凛と咲く百合が、天から降り注ぐ雨を少しでも蓄えようと頭を上げて空を仰ぐような、そんな神々しさと瑞々しさ、生命の逞しさを君に感じた。
ああ、真っ先に私は君の肥やしになったんだ。そう思った瞬間、私は快楽を感じ、君を掻き抱いて欲望をぶつけた。真っ暗な中、私も盲目になったように君の身体を弄って、何もない暗闇の中で、二匹の動物は互いを食い合った。
君が、運命の導きで私の手の中に収まった。何度考えてもこの事実が震えるほど勿体無く、幸せで、今まで大きな幸福も不幸もなくありふれた物事ばかりに囲まれてきた私の平凡な人生には信じがたく、ひどく不釣り合いだった。人にはそれぞれ生まれつき与えられている役割と立場があるとして、それを飛び越えてしまったような、そんな果てのない罪悪感と、優越感。とかく、人の世は他者と比べないと満足に息が吸えない。これが蟻ならば、蠅ならば、余計なことに頭を使わず、ただ生存と交配のためだけに生きて死ねるのに。
「ねぇ、あの本、読んでくれないかな。」
「ん?あぁ、いいよ。『アイのメモリー』だろ?」
「そう。聞きたいわ。」
あるところに、人語を話せるカラスがいた。カラスは大変に賢かった為、人語が話せるからと言って人に話しかけるような愚かさは持っていなかった。
カラスはある日そこらをふらふらと飛んでいた時、ある一軒家の2階の窓が開けっぱなしになっていることに気づいて、窓枠に降り立ち中を見た。中には、少女が一人、ぽつりと座ってぼーっとしていた。はて、様子がおかしい。とカラスがよくよくその少女を見た時、彼女の顔に、あるべき眼球が、二つとも嵌っていないことに気が付いた。少女の顔にはぽっかりと黒い穴が二つ鎮座していて、それは酷く滑稽にも、美しくも見えた。
「お嬢さん。」カラスが話しかけると、いきなり聞こえてきた人の声にびくりと肩を震わせた少女がキョロキョロと辺りを見回し、そして窓の方へと手を伸ばした。カラスはふわっと飛んで近くの枝に止まりながら、「お嬢さん。私を探しても無駄ですよ。私は存在し、そして存在していないのですから。」と笑った。少女も釣られて笑い、姿を探すことをやめ、「声だけおじさん」と私を呼んだ。
彼女が最後に見た景色は、己の頭上から降り注いでくる、無数の割れたステンドグラスの破片だったらしい。きらきら、ちらちらと太陽の光を反射して輝く色とりどりのそれを、避けることもなく、ただ見惚れていたそうだ。赤、青、黄色、緑、少女は拙い語彙でその美しさを私に訴え、私は、もっと沢山の色が世界に溢れていることを少女に伝えるため、海辺に住む老婆の元へと向かい、その顔から眼球を一つ、拝借した。
少女の空洞に嵌ったその球は、少女に広大な海と、その深々しい青を与えた。少女は感嘆し、目を押さえて涙を流した。少女が頭を動かすたび、涙で濡れた眼球がくる、くるりと回ってあらぬ方向を向いていた。
「勿論、フィクションなのは分かってるけど。」
君が少し申し訳なさそうな、そして不安げな顔でポツリ呟いた内容に、私は心の中で、万歳三唱していた。ごめんね、私には誠意というものが欠けているらしい。NPCじゃない人間相手に、こうも思い通りことが進むというのは、少々気持ち悪くもあり、そして大変に愉快であった。それはきっと、己の脳に対して抱いていた自信が肥え太っていくのを感じるからで、ただ、それが良いことなのか悪いことなのか、判別は付かない。誰も不幸になってない、必然だった、そう叫ぶにはあまりにも、私は汚れすぎた。
小ぶりなビー玉。模様も気泡もない、一点の曇りもない透き通ったそのガラス玉を持って、私は海に来ていた。もう吹く風はとうに冷たい季節になっており、時期外れの海になど来ている人間は皆無だった。散歩をしに来たであろう老人が私に、訝しげな視線を向けた。入水自殺をする、とでも思われていたのだろうか。にこりと笑顔を作り会釈すれば、老人は不快そうに顔を歪め足早に去っていった。
ザザ、と押し寄せる波は白い飛沫をそこかしこに撒き散らしながら、際限なく現れ、そして消えていく。私は窮屈な革靴と靴下を脱ぎ捨て、砂浜の砂を踏みしめた。指の隙間に入り込む、ぬるりとした湿った砂の粒子。久しぶりに感じるその感覚に、子供時代をふと思い出した。
赤貧、と呼ぶべき家庭だったのだろう。外に女を作って出て行った父親を想って狂った女と、二人きりで過ごしていた地獄。赤貧をどうにかする頭は、女にも、子供だった私にもなかった。
私は空腹を紛らわせようと、拾ったビー玉を舐めながら、どこからか拾ってきた小さなブラウン管テレビの中で、潮干狩りを楽しむ親子を見ていた。仮面ライダーのTシャツを着た子供はケラケラと楽しそうに笑いながら、砂浜を掘り返し、裸足で気持ち良さそうに踏みしめていた。母親、父親はそれを見守り、静かに笑う。女は隣の部屋で、よく分からない自作の儀式をしながら笑っていた。ケタケタ、ケラケラ、笑い声が反響して響き合い、世間の全てが僕と、そして哀れな女を嘲笑っているように聞こえて、僕は、己の鼓膜を菜箸で突き破った。
人間に諦めと軽蔑の心を抱いていた私が君に出会い、恋に蝕まれ、愛を自覚し、それが収束すると執着に変わることを知った。愛は、執着だ。あの女が狂ったのも、今となっては、理解くらいなら出来る気がした。欲しい、手に入れたい、他にやりたくない、ずっと腕の中に、誰のものにもしたくない。進化の過程で高い知能を得たはずの人間は、動物よりも獣らしく哀れな所有欲を万物に対して抱き、己だけではどうにもならない人に対して向いたソレは最も醜悪になった。
私は盲目に興奮する。その根底には何があるのか、自覚した当初からずっと考えていた。初めて君に目隠しをした時の、脊髄に収まった神経を舌先で直接舐め上げられるような著しい快感。そして、次第に湧き上がってきた、君から視覚が消えて欲しいという欲。
ふるり、と己の肩が震えて初めて、もう2時間近く、何もない海をただ眺めていたことに漸く気が付いて、私は足に纏わり付く砂を払い、帰路についた。
「これ?」
「あぁ、そうだよ。消毒してあるから、入れても問題ない。」
「ありがとう。嬉しい。」
君の白く細い指が、私の手のひらから海をたくさん見たビー玉をつまみあげ、指の腹でツルツルとした表面をくすぐるようになぞっていた。そして君は瞼を開け、そのガラス玉をぽい、と放り込んだ。ころり、と眼窩を転がる玉の感触が面白いのか、君はふらり、ゆらりと首を動かし傾けながら、見えるはずもない海に想いを寄せ、私の話す、海についての様々な創作を聞いていた。目は口ほどに物を言う。君が視覚を失ってから、私は以前より君の感情について、推察することが減ったような気がする。何故だろう。分からないから、というのは、あまりにも暴論な気がするが。
閉館間近の水族館にいる人間なんて、若いカップルか、水族館にしか居場所のない孤独な人、くらいだった。ある者はイルカと心を通わせ、ある者はアマゾンに生息する、微動だにしない巨大魚の前でいつまでも佇んでいる。私は手の中のビー玉と共に、館内をゆっくり回っていた。水族館なんて、目明きの君とすら来たことがなかった。私はこの空間に一人でいることを望んだ。大量の水に囲まれ、地球が歩いてきた歴史が刻まれた数多の生き物に触れることで、漠然と、母の中へ還れるような気がしたからだった。水族館と胎内は、どこか似ている。
水槽の前に置かれたベンチに腰掛けた瞬間、私は動けなくなった。丁度、目線の位置が海底になっていて、そこに、1メートルをゆうに超える巨大な茶色い魚が沈んでいた。でっぷりと太った腹に不機嫌そうな唇が、魚の愛嬌の良さを全て消していた。そしてその魚は、目が酷く白濁しており、空気の吹き出る場所に鰓を起き微動だにしなかった。
「あの、すみません。この魚、具合が、悪いのでしょうか。」
私は通りかかった清掃中の飼育員を捕まえ、魚を指差した。飼育員はハンディクリーナーの電源を消してふっと笑い、私のそばに寄って水槽を愛おしげに見つめた。
「いえ。夜なのでもう眠っているんだと思います��。この子は目が見えないので、普段から水槽の隅っこが好きで、よくこうしてぼーっとしているんです。」
「そうですか。この魚は、盲目なのですか。」
「えぇ。珍しいことではありませんよ。他の魚に攻撃されたり、岩や漂流ゴミで傷付けてしまったり。ただ、見えない分他の感覚が過敏になるので、海の中では支障なく生きられるんです。」
「そう、ですか。」
「えぇ。では、引き続きお楽しみくださいね。」
盲目の魚。私がそれを見た時に抱いた感情は、ただ一つ。「惨め」だった。何故?何故、だろう。分からない。何故私は、盲目の魚を見て、惨めさを抱いたのだろう。閉じる瞼すら持たない魚はただただ空気の泡を浴びながら、水中で重たそうな身体を持て余し、ぼんやりとこちらを向いている。濁った眼球がぎょろり、と上を向き、そしてまた私を見る。
ある小説に、盲目の主人が恨みを買って熱湯を浴びてしまい、美貌が失われてしまったことを憂いて、弟子は己の目を針で突いた。というシーンがあった。鏡台の前で針を手に、己の黒目へとそれを突き立て、晴れて盲人となる描写。私は読んだ当初、まだ小学生の頃だったが、その話に、微塵も共感することが出来なかった。目明きの方が世話も出来る、何かあった時支えられる。直情的だ。と批判までした記憶がある。でも、今になれば、あれが最善の行動だったのだろう、とも思う。歳をとって少し、寛容になったのかもしれない。
気付けば、私は水族館を出て、そばの海を眺めていた。街の中の海だ。情緒ある砂浜もなければ、テトラポッドもない。ただ効率だけを求められたコンクリートの直線に、黒いうねりがぶつかってじゃぶじゃばと水音を立てている。
盲目の魚。
私は、ずっと握りしめ暖かくなっていたビー玉を海へと投げた。波の音の狭間で、ちゃぽん。と小さな音が冬の空気の中、響いた。脳を介さない行動に、今は委ねたかった。考えることに、疲れたのかもしれない。私は、一体、どこへ向かいたかったのだろう。
扉の開く音で駆け寄ってきた君は、部屋に入る私の周りをクルクルと回りながら、今日のことについて色々と質問をした。黙ったままの私に不思議そうな表情をして、「何かあった?」と尋ねる君。君の方が今も昔も、察しがいいのは皮肉なんだろうか。
「アイのメモリー、今日は出来ない。」
「どうして?水族館、行かなかったの?」
「水族館には行った。けど、無くしたんだ。ビー玉。」
「そう。いいよ、どんな魚がいたのか、話して。聞きたい。」
「魚、」
「魚、いたでしょ?」
魚。
私は、盲目の魚を惨めに思った。あの魚は大きな水槽の中でひっそりと身を潜め、知らぬ他人からは笑われ、同居人からはいないもののように扱われ、飼育員からは憐れまれていた。与えられる空気を日がな浴びて、落ちてくる餌のおこぼれを拾い、そんな状態で生きていることが、酷く惨めに思えた。
「あぁ。.........」
「......疲れちゃった?」
立ちすくんだ私を見上げた君はぺたぺたと彷徨わせた手のひらで私の顔を見つけ、撫で、胸元に引き寄せ抱きしめた。とくとくと鳴る軽い心臓の音。生きている温度がこめかみあたりからじんわりと染み込んで、凝り固まって凍った脳を溶かしてゆく気がした。
「...いや、疲れてなんかないよ。」
「貴方は、いつも一人で考えて、一人で答えを出すから。」
「耳が痛いな。」
「ここには脳が二つ、あるんだよ。ひとつじゃなし得ない考えだって、きっとある。」
「うん。」
永遠とも呼べるほど長い時間、私は君に抱かれたまま、ぐちゃぐちゃと脳を掻き回す思考に身を委ねていた。
「ビー玉、本当は、無くしたんじゃなくて、捨てたんだ。」
「うん。」
君はきっと分かっていたんだろう。何をどこまで、なのか、それは、きっと暴かない方がいい。それは言葉にしなくとも、双方が漠然と理解していた。私は君の顔が見たくなくて、顔を上げないまま、君の心臓の音を聞いていた。
「もう、こんな真似、やめるよ。」
「そうだね、やめよう。」
ぼんやりとした頭でシャワーを浴び、リビングに戻った時、ついていたはずの部屋の電気は全て消えていた。私は手探りで部屋の壁を伝いながら、廊下を進んだ。幾度となく歩いているのに、視界がないと、こんなにも覚束ない。君の寝室の扉が少し開いて、ギィ、と音を立てている。漏れ出ているのは月の光か、その細い線に指を差しいれ扉を開くと、窓が開いているらしい。冷たい風が吹いて、まだ濡れたままの髪を冷やしていく。
そこに、君の姿はなかった。普段は何も置いていない机に、メモが一枚載っている。
『来世では、共に生きましょうね。』
はるか遠くの方から、微かなサイレンの音が響き始めた。
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mononohon · 4 years
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磯野真穂『ダイエット幻想 やせること、愛されること』
 領域横断的で、そしてとても優しい本だと思いました。
 工業化の進展にともない、誰もが簡単に太れる社会が到来すると、自らの意思で体重をコントロールできることを示す痩せた体に価値が置かれるようになった。とりわけ女性は容姿の評価に晒されやすい。
 その痩せ願望に歯止めが利きづらくなっている状況は、他の人よりちょっといいものを買いたい、みたいな差異化への欲望(ボードリヤール)で部分的に説明することができる。みんなが十分に痩せている状況であれば、それより更にもう少しやせていた方が素晴らしいのだという物語が、「美容体重」さらには「シンデレラ体重」という言葉なんかを使って生み出される。
 そして痩せていることは「かわいい」という評価と結び付く。日本では無害で自立していないことが「かわいい」といわれ、女性が自立し成長することを阻む価値観が未だに強い。自立した大人でないことは選ばれる側の条件であり、��ばれる側に立つと、決して完全には分からない選ぶ側の視線を予測しながらメンバー間で比較がつづき、選んでくださる側を否定することが出来ないので選ばれる側のなかで攻撃しあい、たとえ選ばれてもいつ選ばれなくなるか分からないからいつも不安、といったことになる。
 そんなふうに常に今より、他の人よりもうちょっと痩せていなければならないという強迫観念に自分の身体が満たされると、普通に食べること、おいしいと感じる経験をすることは難しくなる。痩せようと思うと食べるものや運動量をすべて数字に置き換えて管理しようとするけれど、「食べることの調整を身体から頭に移譲する際、ふつうに食べる力は失われやすい」(171)。ふつうに食べられなくなると待っているのは、食べ物が味わえないし人との食事も楽しくないのに頭の中から食べ物のことが片時も離れず、体がどんどん蝕まれていく生活だ。
 そこから抜け出すには、自分が生きてきた文脈のなかの経験、世界との関わりの経験を取り戻すことが必要だ。
 ……という要約であってるかな。フェミニズムあり、文化人類学ありの読みやすい内容で、けっして何をするな、何をしろ、これさえすればあなたの人生は薔薇色に!!という啓発や押し売りではなく、でも確かにエールであり解放的である本でした。
 女性について書かれた内容だけど、身体の管理や性のあり方と食べることの関わりは、もちろんそれだけでは語り尽くせないものがあるよな、とも思っています。もちろん、全部をひとりの著者に求めたりはしないけどね。
磯野真穂『ダイエット幻想 やせること、愛されること』ちくまプリマー新書、2019年。
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amyma1205 · 6 years
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吽咗喺屋企大半日,終於有得出街。。。 #唱片變軚盤 啲friend #AL變SL #蝕晒 #好彩都碎碎哋食咗個生日飯 #即使生日午餐係外賣譚仔 #特別鳴謝我嘅專屬外賣仔 #外賣仔都蝕咗半日AL返屋企陪我 #我只想身體健康 #尋晚咳到肺都甩 #SickDecember #BirthdayDecember (at MOKO 新世紀廣場) https://www.instagram.com/p/BrnVssAloN1aQRP5x6en5vnfeK26DCQQxvDFuc0/?utm_source=ig_tumblr_share&igshid=qlqlt2yo66su
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dreamingtime96 · 5 years
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‪性的なモノとしてあるいは癒しを振りまくモノとして子を産む機械として、そうした軽視を起点とした性別イメージが商品やキャンペーンの戦略として使われ続けてきた悔しさきっとわからないと思う至る所で身体のパーツが提供され、男性目線で修正された自立意思を持たない無知で感情的で従順な幼児的な女性像が社会の中で当たり前の女性の姿として頒布されたことによって、もともと築かれてもおらず尊重されなかった女性の権利を貶めることに役立った。
‪女性軽視的な基盤をさらに強めてきたのは常に感情と認識だ。こうであって当然という価値観とそれを擁護する社会的な規則だ。
例えば中世、女性の胸や腰を苦しめた服装、コルセットなんかもそうだが、ウエストが細ければ美しいという価値観に基づいたものだが、女性の服装やその身体の美観を社会によって定められていたことにも起因している。今はコルセットにかわってパンプスが女性の健康を蝕んでいる。女性の健康や疲労を度外視し、女性を鑑賞物として扱うことが前提になった慣習や価値観がもとになっているのは言うまでもなく、女性身体への配慮の欠如は女性への意識の低さを示していることに他ならないと私は思う
‪そのように社会が当然と女性たちに求めてくる礼儀としての美観目的の服装の強要が、女性はこうであってはならない、あるべきという二極化した女性像の規範化や懲罰的な態度を持つことを認め、より一層強めている。こうした意識への無関心がさらに現実の女性たちを抑圧し、苦しめている。
女性たちは自宅の外では美しくなくてはいけない。胸が大きくなくてはいけない。けれど誘惑することと同じだから地味な服を着ろ、でも男性から嫌われるようにするな、愛想をよくしろ、気に入られなきゃいけないと、自身を客体化することを刷り込まれ、自分を罰するようになる。家庭や学校、あるいは創作物からの影響が尚更女性の心身を蝕む。男性が主体となった男性目線が定着し、それがスタンダードでマジョリティである社会では‬、女性が自分自身の生き方や感情をあらわにすることや、自分自身の意思を持つことに厳しい視線が注がれる。特に、性犯罪被害や客体化されている女性の扱われ方について意見を言うことは許されない。
‪ただ歩いてたり電車に乗ってるだけで他者に性的記号を勝手に付与された肉体を持っているだけで言葉や振る舞いまで消費され搾取され、意見を言うだけで蔑まれ、差別的な社会の中で育まれた女らしさという規格の中に心身を押し込まれ、不健康な靴を強いられ、鑑賞物として存在することを強要される‬生き方を選ぶよう、女性は強要され、従うのだ
わたしもそうだった
‪高校生の時成績も優秀だった私より、相手の加害者を学校はかばい、私に転校するよう言ってきた。同室で自習しろと支持したのは教員だ。私の意思ではなかった。家父長的傾向の強い国では性被害の認知件数が少ないという。犯罪を助長する女性のモノ扱いや社会からの指示にこれ以上どう我慢しろというのか‬
‪この環境で生きていれば歪んだ認識が生まれ感覚も麻痺するだろう。‬
‪女の胸はいやらしいものという値札がつけられ晒された中にいればそういう風に見てもいいという認識が生まれる。じゃなければあんな言葉をかけられ触られることもなかった‬
‪また私の父が私に自分を不機嫌にさせたという理由だけで暴力を振るうことはなかった‬し、私を殴り、蹴り、人格を否定した同級生の男も同じだ
相手が強い同じ性別の男であれば、同級生は加害対象にしなかったし父は事あるごとにわたしの発言や容姿や性格や口にする食べ物までバカにして口に出したり、自分の意見に対して口を出してきただけで激昂して拳を振るうことはなかったはずだ。
‪性犯罪や女性への犯罪やあらゆる暴力と権利の侵害は男性の持つ狩猟本能や生殖のシステムによるものではなく、そうした行動の原点の奥には女性軽視的感情が存在する。そのタネをまき、栄養を与えら育てているのは社会だ。
‪社会の基盤は常に男性側が主体となって築かれてきた。社会の仕組みの基礎となる生殖システムとその基盤を作り管理してきたのは男性だ。古くから産む性として母としてその機能と役割に合致した性格を植え付け、女性が中心に入り込めないよう男性たちは苦心してきた‬
‪今まで戦争を起こしたのはほとんど男性だ。社会の決め事や重大な決断の場に女性がいることはなかった。補佐としてのみ許された。自立した意思は求められなかった。‬
‪男性の許した範囲でのみ、女性はその役割を果たすことが求められ、その範囲を超えることは許されなかった。‬
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chw131 · 5 years
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Repost @joycexlicious - 坤記煲仔小菜 西環德輔道西243-245號地舖 ================================== 以下嘅話題呢就有少少敏感,如果唔鍾意嘅話就可以skip咗佢啦🙇🏻‍♀️ 🔸 是咁的,話說呢我就好想食煲仔飯喎,咁我之前呢就去過坤記-咁佢嗰間地址就係喺呢(西環西營盤皇后大道西263號和益大廈地下1號舖 )。 🔸 咁如是者我今次又一早晚上六點十五分就去到啦,佢哋係開六點嘅,跟住我見到入邊已經人頭湧湧啦🤢,咁如是者我就問下姐啦,啊姐請問呢要等幾耐㗎?阿姐塊面呢就黑過包青天🌚咁同我講,九點半呀九點半呀!咁我就話啦阿姐可唔可以攞飛㗎,佢塊面更加黑,黑到好似日全蝕咁樣🌑,九點半呀!我心諗,問你有冇得攞飛姐,唔知以為我爭左你十萬九千七😵! 🔸 俾阿姐嚇一嚇之後,我抱着失落嘅心情,喺條街度遊蕩🚶🏻‍♀️🚶🏼‍♀️,跟住突然之間比我發現,下乜西環有另外一間坤記😱,跟住我就行咗入去啦,同阿姐講我想問吓有冇兩位,點知佢話有啊,入去埋便坐!媽!今次真係感謝天父啦🙇🏻‍♀️🙇🏻‍♀️🙇🏻‍♀️🙇🏻‍♀️! 🔸 跟住我嗌左💁🏻‍♀️($85)臘美煲仔飯-因為即叫即做嘅關係,所以都等左半個鐘先有得食😅,我見佢呢都好足料,臘腸油脂分布得好均勻🥰,唔會過分肥膩,但係呢臘肉就肥膏多咗啲🤣,最開心係呢佢個飯焦真係脆卜卜嫁,食到我幾開心🤣!仲有仲有,好神奇嘅就係,依間鋪頭啲姐姐個個都好有禮🥰貌,我埋單嗰陣時問佢同另外一間係咪有關連,佢話係兄弟檔,嗰一刻,我個心裏面有一隻烏鴉飛過😵🤮! 🔸 呢個故事教訓我,塞翁失馬焉知非福,同埋我依世都唔會去- 坤記煲仔小菜 (西環) 西環西營盤皇后大道西263號和益大廈地下1號舖 因為俾人日全蝕嘅感覺實在太得人驚啦🤫🤭! 🔸 寫到咁長唔知你哋會唔會睇晒呢🤣?========================== #joycexlicious #jl_saiwan . #香港#西環#坤記煲仔小菜 #煲仔飯#臘味#臘味飯 #claypotrice https://www.instagram.com/p/BztB9H7g2kn/?igshid=jagd31du1zu7
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