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#ガラスの金継ぎは難しいよね
wulao · 2 years
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gallerynamba · 6 months
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現在、京都で開催中の『コスチュームジュエリー 美の変革者たち シャネル、ディオール、スキャパレッリ 小瀧千佐子コレクションより』はコスチュームジュエリーにフォーカスした世界的にも稀な展覧会です。 コスチュームジュエリーは本来、高価で希少な宝石や金属のイミテーションとして制作されていました。 20世紀初頭になるとフランスのモード界のデザイナー達、シャネル、ディオール、スキャパレリがコスチュームジュエリーを積極的に使用し、自身の作品を飾り立てるようになりました。 それは一部の階級に限定されていたモードの世界を一般化させ、その進化は代替品の域をはるかに超越したデザイン、創造性へと突き進めました。 その傾向はヨーロッパからアメリカへ波及すると、より自由に展開し、大量に生産される様になりました。 世界大戦の物資不足はコスチュームジュエリー界に新しい素材のプラスティックを招き、皮革や繊維、木材等の有機物も組み込ませました。 コスチュームジュエリーは現代では衣服、バッグ、シューズ、帽子と同じくファッション構成する最も重要なエレメントになっています。 コスチュームジュエリーは女性たちの美への追及、創造性、ユーモア、社会進出の歴史を示しています。 アメリカ、インディアナ州の生地や既製服を扱う店の娘、ミリアム・ハスケル(Miriam Haskell)は1899年に生まれました。 シカゴ大学で学んだ彼女はココ・シャネルに憧れて、ニューヨークに自身の店とブランドを創設しました。 彼女はニューヨークの有能なアーティスト、クラフツマンを雇い、独創的なコスチュームジュエリーを制作しました。 花や自然の造形の大ぶりなモチーフを中央に配置しました。 素材にはイタリア、ヴェネチア近くのムラーノ島のムラーノグラスビーズ、ローズモンテと呼ばれるオーストリア製の糸を通すラインストーン等を採用しました。 そして大量に買い付けたNIKIガラスパール、それはガラスに太刀魚の鱗やセルロースなどから作ったエッセンスを幾度となく塗り重ねた日本製の模造真珠です。 本物の真珠とは違う魅力のあるNIKIガラスパールは、世界中にコレクターがいます。 現在は生産されておらず、現存している未使用品はコレクターの買い占めによって非常に入手困難です。 それらをフィリグリーと呼ばれる、金属を糸のように細くして、繊細な手作業によって巻いたり編んだりし、溶接して模様をつくる金細工の技法で繋ぎ併せました。 接着剤を用いないフィリグリーにより、その透かし細工がアクセサリーに立体感と耐久性を与えました。 彼女の作品はハリウッドスター、セレブリティーに熱烈に支持されました ミリアム・ハスケルのブランドは今日も継続されていますが、とりわけヴィンテージ作品は多くの蒐集家を惹きつけています。 弊店は最新のモードの作品を扱いながらも、その変遷、ルーツに強い関心を持ち続けています。 そして全てのファッションアイテムは着用出来なければならないと考えています。 弊店はミリアム・ハスケルをはじめヴィンテージのコスチュームジュエリーを取り扱いをしています。 それらの幾つかは前述のブランドの特徴を有しています。 大ぶりなネックレスはハスケルが愛したほとばしる水滴の様な淡い水色のガラスビーズとドロップパールが繊細にしておびただしいメタルパーツで結束されています。 艶々と光る可愛らしいイミテーションピンクパールは一つ一つ鉤爪で固定されたカットビーズ、アンティークゴールドの金細工と相性の良さに驚かせます。 イヤリングの花や葉、果実のモチーフは手作業による金細工で形作られています。 アクセサリーの裏側を見ると美しく複雑に絡み合うフィリグリーとオーバル型のミリアム・ハスケルのサインが現れて、見るものを飽きさせません。 モード、美術工芸、歴史、蒐集どの視点からも一見の価値がある作品です。 勿論、販売可能です。 展覧会を御覧になられた方、興味をお持ちの方も是非この機会に弊店のコレクションを手に取り、御自身の目で御覧ください。 ここには手に入る、実際に身につけることが可能な美術品があります。
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hisoca-kyoto · 6 months
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先週末30日にて「金津沙矢香 ガラス展」を無事に会期を終えました。会期中はたくさんの方々にお越しいただきありがとうございました。初日のお問い合わせも多く、直前のお知らせにもかかわらず整理券番号ごとの入場など皆さまのご協力もありアクシデントもなく展示もゆっくり楽しんでいただけて有難いスタートを切れました。ガラスオブジェの抽選エントリーにも多方面からたくさんの方がご参加くださりありがとうございました。皆さまのお話をお伺いすると、金津さんの各展示へお出かけになりオブジェのエントリーをされている方が多数で、ご自身のための1つに出逢われるために楽しまれている方がたくさん居られることに感激しました。金津さんからもオブジェの風景や色合いなどは各展示の場所や季節などその時のイメージに合わせて作られていることを改めて知り、皆さんが魅了されている金津さんの作品の根っこの部分を感じさせて頂きました。
金津さんには制作やご家族のことでお忙しい中、在廊のお時間を調整頂きありがとうございました。当日はたくさんお方が会いに来てくださりとても賑やかな1日になりました。何度もお越しいただいた方も多く、こちらもありがとうございました。
全ての作品を写真に撮る時間が取れませんでしたが、雪解けから春の訪れを待ち望むこの時期ならではの百花景の丸いオブジェが印象的でした。口に金彩が施された田園のグラスや小鉢、小さめ一輪挿し、金彩のリム皿も素敵でした。金津さんたくさんの作品を制作くださりありがとうございました。常設用に作ってくださったNostalgiaシリーズが少しご覧いただけますので来週以降になりますが、オンラインショップに掲載予定です。またご準備できましたらお知らせいたします。
ガラスオブジェの抽選エントリーいただきました分は、31日に当選の方へのご連絡が完了いたしました。お電話やメールで感激のメッセージをいただき、私も一緒にワクワクドキドキの体験をさせて頂きました。今回合計158名の方にご応募いただき、13点の各作品ごとに写真のように昔ながらの方法にて抽選いたしました。ご参加いただきました皆さまありがとうございました。エントリーシートは今回の記念のために大切に保管させて頂きますね。ご当選の方は今しばらく作品との再会を楽しみにお待ちくださいませ。
本日まで展示入れ替えなどのためお休みいただきます。次回は明日3日(水)より通常通りオープンいたします。明日は金継ぎワークショップも行います。前回のキャンセル待ちの方で定員が埋まりましたので、募集の告知はありませんでした。明日ご参加の方々はお気をつけてお越しくださいませ。
それでは4月もよろしくお願いいたします。
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shukiiflog · 11 months
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ある画家の手記if.114  告白 殺意
目覚めた瞬間、ベッドから落ちてしまった気がしてビクッとする 「ーーー……」 動悸が早くていつまでも落ち着かない、ベッドからは落ちてない、一度起こした体が怠くてもう一度ベッドに横になった かいじゅうくんに顔を寄せたら頬を伝う涙を吸い取ってくれる 浅いままの呼吸を深くしようとして目を閉じる …日常と一緒に戻ってきた悪夢を 僕はどうにもできずにいる
***
「ーーー以上が、件の雪村真澄と直接接触しての会話と私感。」 情香ちゃんから淡々とした声で報告を受けてる間、僕は耳で聞きながら情香ちゃんの隣でずっとスケッチブックに鉛筆を走らせてた。 話にのめり込み���ぎるとどこかでまた爆発しそうな予感がしたから、集中力を分散させながら。 「……一応把握はしたよ。でもちょっとずるいな」 「ずるい?何が?」 平然と聞き返してきた情香ちゃんにちらりと目をやって少し困ったように笑む。 「意図的に省いたでしょう。僕が聞かないほうがいい話もあったの?」 「……なんでそう思う?」 「それだけの話で情香ちゃんが引きあげるわけないよ」 情香ちゃんが横でガリガリ髪の毛引っかいてる。面倒だなと思ったときの癖。 「一応説明にはなってるだろ」 「不十分だけどね」 「信用しろっての。伏せた部分含めて私が今後の危険性やらあれこれ考慮に入れてひとまずの判断下したんだから」 「そういうことは信用してるけど、なるべく本当のことが知りたかったなって思っただけだよ」 僕が知ったらじっとしてないようなことか。それだけで結構内容って絞られてくるんじゃないのかな。分からないけど。 一応僕は総合で情香ちゃんが下した判断を尊重する。僕よりずっと用心深いし世慣れてるし。香澄のことを愛してる。 「誰に対しても私は危険性ゼロとは言わないから、危険度の高低は常に変動するし、いざとなれば相応の動きを私がする。それでもう何も訊かないことにしろ」 「わかったよ」 「半径と角度によっちゃ危険人物にお前も入ってんだからな」 ジロッと睨まれて頷く。 「うん。だから僕は情香ちゃんが好き」 香澄のお兄さん…雪村真澄さんか。絢の境遇からしても今後僕との直接の接触が増えるってことはないと思うけど、…どうしようかな… 本人との直接の対面と会話を重ねることでしか僕は誰かの個人像を得難い。 心象だけの今の段��は正直息苦しい。会ったことがないわけじゃないんだけど、造形把握の域を出てない。僕が直接話せればそういうところはうまくいったかもしれないけど…。 …いや、それだけじゃ…なくて 香澄が気兼ねなく自由に絢の家に遊びにいったり話ができるなら、僕はそれで…。 「………」 …そういうふうに、おさめるしかないのか
***
情香ちゃんは全部を話してはくれなかった、けど僕は…それはそれでいい でも じゃあ 情香ちゃんを信用してるのにどうして僕は  現実が不安…なんじゃない…やり場がないことをどうにもできない
サイドテーブルの卓上カレンダーを見る。 今日は二月十日。 香澄の誕生日。
出会ってからこの日をちゃんと祝えたことがほとんどなくて不満だったから、今年こそお祝いの日にしたい。 でも僕には誕生日を祝ったり祝われたりって記憶がほとんどなくて、何が誕生日っぽいものなのかが分からない。 奮発して豪華なことやってみたりしても、つい先日のパーティ会場を上回るようなすごい贅沢なものにはならなさそうだし… それで僕は今朝もベランダに新聞紙を広げて一人で木彫りのかいじゅうくんを彫ってる。 前にも香澄にあげたけどあれは指一本分くらいの小さなものだったから、今回は旅館で作った雪だるまくらいの大きさ。中身をくりぬいてあるから口から小銭を入れられる貯金箱にするつもり。 ゆっくり彫ってたけどもうすぐ完成しそうだ。 僕は彫刻とか塑造を作るのも好き。上手いかどうかは分からないけど。 「………」 世の中がみんなお互いに好意的で仲良しなんてことにならないのは仕方ない。 画家なんてやってたら自己主張の塊みたいな人間とばかり遭遇するからぴったり気があうことの方が少ない。というか、ない。 他人と歩み寄ろうとしたり事なかれ主義みたいな人もいないことはないけど、結局関わるほど譲れない部分は浮き彫りになるし、…でもこれは、そういうものとも…違うのかな…  何が… 「痛っ…」 手元が狂って彫刻刀が軽く指先を掠めた。一度刃物を置いて切ったところを口に咥えてじっとしてたらそのうち出血は止まった。頑丈な身体だ、相変わらず。 …下手に考えてみようとしていつも失敗する 当然かもしれない 僕一人で頭で考えてるだけだから
木屑をはらって、わけて彫ってた部分を組み合わせるようにきれいに合わせて、拭き上げてから乾燥させて、完成したかいじゅうくんを持ち上げて顔を見合わせる。うん、きみはなかなかかわいい。 ニスとか保護剤を塗ったほうが長持ちするかもしれないけど、香澄は肌が弱いからかぶれるといけないし、ああいうのはどれも匂いが強くて部屋にこもっちゃうから、何も塗らなくても木肌だけできれいに映える木を選んだ。 少し笑った口の細い穴から小銭を入れられる。ちゃんと入るか実験に、一番大きな500円玉を使う。500円玉の表面にマジックでメッセージを書いてかいじゅうくんの口から入れた。コン、と中の木にぶつかって涼しい音が鳴る。狭すぎず大きすぎない、大丈夫そうだ。 お金を途中で出し入れできる蓋をどこかに作ろうか迷って、結局作らなかった。中のものを出したいときは、この子が壊れるとき。
リビングのソファでノエルと一緒にうとうとしてた香澄の隣に腰掛けたら、香澄がぼんやり目を覚ました。 香澄が僕を見て少し体を起こしたから、同時に貯金箱のかいじゅうくんを持ってる手をわざとらしくサッと背中に回して隠した。 「………。」 「………。」 無言のにらみ合い。二人ともなんとなく笑っちゃう。 香澄が僕の背中にすっと伸ばしてきた手からかいじゅうくんを逆の手に持ち替えてサッと離す。 僕が片眉を上げて笑ってみせたら香澄が体ごと飛びついてきた、僕からかいじゅうくんを奪おうとする香澄とソファの上で手を合わせて押し合って揉み合いになる。手を伸ばしてくる香澄から遠ざけようとしてかいじゅうくんを手に乗せて腕を遠くに伸ばして、そんな僕の体に乗っかって香澄がかいじゅうくんに両手を伸ばす。 しばらくそんなことして二人でふざけてたらふいに香澄が僕の肩に手を乗せて体に乗っかって伸びあがって、宙に伸ばしてた僕の手からかいじゅうくんをとりあげた。 「とった!」香澄が笑顔でちょっとはしゃいだ声をあげた。 「とられちゃった」 とりあげた姿勢でソファに体から倒れこむ香澄が肘置きで顔を打たないように腕で体を抱えて支えて起こす。 かいじゅうくんを両手で持って見てる香澄の頭を撫でながら「誕生日プレゼントだよ」って伝える。 「もっと特別なものが用意できればよかったんだけど、誕生日に何を贈ったりするものなのかよく分からなくて…ごめんね」 眉を下げて笑ってそう言ってから、じゃれてた姿勢から綺麗に座りなおす。 香澄は中で音がするのに不思議そうな顔をしてる。 「…もう直人が何か入れたの?」 「うん。記念にね。」 今でも僕は何かを言葉で伝えるのが下手で でもたった一人で想像したり推察したり何かを考えるのはもっと下手で だからそれらを怠るわけじゃない、でもそういうものを関わるときのたったひとつの指針に据えることはしない 本人と向かい合って話していたってほとんどのものを取り落とすけど、それでも僕は香澄と話がしたい 「香澄 少し…話せるかな」 ソファの上でトーンを落として話しかける。 「今? …いいよ」 香澄もかいじゅうくんを抱いて隣に綺麗に座り直した。 僕は自分の手の平を見てる。こっちの手、あのとき自分で傷つけた神経が今もたまに傷んで体に不調を起こす。香澄の方を見ることができない。…今はもう無いものをそこに見るのが怖い。 なるべく穏やかな声で話したい 「僕は」
「あれからずっと 雪村真澄を殺すつもりだった」
「香澄にとってどういう人か 知っていても」
「…でも  今は …  」
「今は違うの?」 長いこと僕が言葉に詰まってたら香澄が継いでくれた 僕も、本当は何から言えばいいのか、何を言えばいいのか、何を本当だって言っていいのか、きっと分かってない 「違うって…言いたいけど…   …   」 そう言えたら 絢のためにも、香澄のためにも 僕のこんな翳った感情より二人に楽しく過ごしてほしかった そのためなら そのために 今日まで意識の底に落とし込んでなんとかして でもきっと なんとかなってなんてなかったんだ
「…     香澄が…    」
目の前に広がる、あの日の光景  香澄の居ないこの部屋 置きっぱなしのケータイ 料理が作ってあって 血まみれのガラス片が散らばる足元 暗い山道 山中の そこで香澄が 彼に殺される だめだ だめだ 
だめだ
ずっとクリスマスのあの時から感じていたこと 香澄には悪かったけどきっと僕はあれからずっと嫌な空気をさせてただろう 香澄に言ったように兄の存在を教えてくれなかったからじゃない あの人との関係は良好だと言ってた 兄でも親子でも夫婦でもあるような仲で 父親がわりで 怪我をしたら手当てしてくれた じゃあどうして今の香澄が居る? 体は傷だらけ 背中には大きな刺青 僕と約束するまでずっと誰かを庇い通して どうして どうして どうして出会った頃の僕なんかと一緒に居させたんだ どうして香澄が僕を庇うのをとめられなかった なんであんな取り返しのつかない傷を顔なんてひどい場所に負わせたんだ 退院後に僕のいた施設へ香澄が通うのをなんでとめなかった そんなにはじめから近い場所にいたなら なんで どうして香澄を ちゃんと守ってくれなかったんだ どうして 僕から 僕 から …
一気にフラッシュバックするあの日の感情、 涙を飲み込んでたら声が出せなくなった。泣きたくない、今日は せっかく 香澄の誕生日なのに じっと俯いて黙ってたら香澄が横からぎゅって抱きしめてきた 「俺は直人が誰かを殺したり傷つけたりしないでくれて嬉しいよ」 僕も片手で香澄の後頭部を引き寄せて額に顔を押しつけるみたいにして口付ける 「…兄ちゃんに何かされたの?」 何か あの日 …違う、夢の中だ それでも、今、香澄を見下ろしたらその白い首筋には残忍な手痕が 僕には見える 痕の残る首筋をそっと指先で撫でながら言った 「  かすみが ころされかけた …    」 掠れてほとんど声にならなかった それでも言葉にしたら堪えてた涙が溢れてきた 「え?」 香澄は分かってないかもしれない あの頃は特に じゃあ言わなくちゃいけない、分かるように 「…あれからずっと  夢を見るよ  香澄が彼に首を絞められて そのまま殺される」 殺意がーーーあったんだろう そうだよね… 情香ちゃん 黙っていたのは この部分でしょう 彼には 香澄に対して、明確な殺意があったこと …それを聞いて どういう理由や感情がその間にあろうと僕が平静でいられないことを情香ちゃんは悟った その通りだよ 「…情香ちゃんが、絢の家に行って、彼と直接会って話しをしたんだって。…僕が行きたかったけど、とめられて、かわりに情香ちゃんが行ってくれた。もうそんなことは起きないって確認に。黙っててごめんね…」 香澄の頭を撫でながら謝る 話の主題は香澄のこと…  情香ちゃんは絢の身の安全も確認してくれたみたいだったけど、絢に関しては僕はとやかく口を出せる立場にない 香澄の話だから、本来なら前もって香澄にも話しておくべきだったかもしれない
話しておくべきだった
ずるずると いつまでも 香澄のためだなんて愛を言い訳に並べて
僕はいつまでひとりで身を削りながら自分の感情を圧し殺しておくつもりだ
それがいつまでも続かないのを知っていて 片方ではこれは香澄と一緒にいるためだなんて
「彼は今は絢の父親でもあって  僕は香澄と絢が仲良く過ごせるなら  こういう感情は無視できてたんだ ずっと 絢は彼のおかげで今幸せなのかもしれない … それでも
彼を殺さないと 殺したって 気が静まらないくらい許せない 香澄を傷つけて  殺そうとした人間を、僕は一生許さない 彼じゃなくてもそうだよ これまでに香澄を傷つけた人間  どんな事情が相手にあろうと知るか   許さない  八つ裂きにしてやる あの日 ここで  香澄を見送ろうとした  僕のことも」
頰を引っかいてくみたいに幾筋も流れ落ちる涙がとまらない 僕は今笑ってるんだろうか 誰だかに言ったな 香澄にこんな顔は見せないって 誰かへの殺意を剥き出しにした顔 この殺意は香澄への感情じゃないのに 香澄に向けるべき顔じゃないのに 怖かったのか、香澄が小さく息を飲んだ 「直人」 香澄が僕の頭を抱えるみたいにして抱きしめてくれる 「…気付かなくてごめん 直人一人に…抱えさせて」 「………」 香澄が気付かなかったのは 僕が見るのを避け続けたからだ 「いつも…俺が…、」 なにかを言おうとする香澄をぎゅっと抱きしめ返す   苦しいことを無理に言葉にしようとしなくていいよ 僕自身からも取り落とされて 疎外された感情 そのまま美しい感情だけで香澄を愛し��しめたら 「…直人が…許せなくても  俺は…」 許す…? …僕だって、 「こんな感情より   香澄を愛してる、まるであったかくて優しいだけみたいな気持ちをいつだって最優先して ずっとただそれだけでいられたら 誰かを憎むより香澄を愛す気持ちのほうがずっとずっと大事だって   それだけでいられたら …そのつもりだった、そうやって香澄と   一緒に生きていくんだって   … でも誰かをこれだけ激しく憎むのだって  香澄を愛してるからだ 僕は明るくてあったかくて優しいだけの愛し方は  できないよ  もしそんなふうに見えたなら、なにかを見ないふりしてるだけだ …もっと入り混じってどろどろしてて  香澄に見せたくないようないろんなものぜんぶで   僕は香澄を愛してる」 香澄が彼を許すのを責めてるんじゃない、否定したいんでもない、その気持ちが伝わるように、香澄の体を抱きしめてさする 「僕と一緒に彼を憎んでほしいんじゃないよ…   それでも…    …  」 香澄に 何をどう思ってほしいなんて…喜んでくれたら、楽しんでくれたら、笑ってくれたら、… いつも僕の頭にあったのは、そういう願いだった それがズタズタに引き裂かれる 香澄が傷つけられるたびに いつまで僕は ひとりで誰かを恨めばいい 違う  あれはもう前のことで   香澄はきっともう危ないものにちゃんと気づける どうして僕は憎んだり恨んだり傷つけることにばかり… とらわれて こんな話しか香澄にできないんだろう 許せないものばっかりだ ただ許せないだけでもなくなってしまった どうすればいい 僕は どこへもやり場のない激しい感情を それだけじゃない心を 「…ずっと     苦しくて…     」 複雑な心の折り目に  僕自身が戸惑ってる   香澄の大事な人を  僕は… また言葉を継げられなくなった僕を抱きしめて、香澄が僕の頭を撫でてくれる 「…ごめん 俺ちゃんと言われないとわかんなくて  直人が…苦しいのも、ずっと許せなかったこととかも…気付かなくて」 それは…言いたくなかったからだよ…  香澄の大事な人を、絢を助けてくれた人を、いつまでも憎んで許せない自分を見るのが嫌だった …それが香澄を、香澄が楽しく暮らすのを、邪魔するんじゃないかって 僕は誰を憎んでても、それがどれだけ激しくて抑えられないほどの感情でも、そんなことよりずっと、 香澄に幸せに生きててほしいよ…
「俺は 直人がどんなでも 俺の大事な人を憎んでても …違うことを見ていて違うふうに思っても 一緒に居たい
全部  言えなくてもいいよ
でも…何も言わずに一人にならないで…、俺は 一緒に居られるように…変わらなきゃって… 一人じゃどうしたらいいかずっとわからなかった 直人が…、 直人が居てくれたから」
じっと僕の目を見つめてた香澄の目から涙が零れ落ちた。 そっとあったかい色の髪を撫でて、静かに目を閉じて額をくっつける。
目を閉じた、そこはただの視界の塞がれた暗闇じゃなかった いくつも浮かんでは消える、僕と出会ってからの香澄   触れた額から伝わる温もり 香澄がくれた言葉を、ゆっくり、ゆっくり 反芻する 僕に向けられた言葉を、取り落とさないように、丁寧に 時間をかけて …そうしているうちに、激しい感情と一緒に荒れ狂ってた動悸も  浅い呼吸も  鎮まっていく… 話したことで事実関係が変わったわけじゃない  それでも一人で抱えて仕舞いこんで置き去りにされた感情を 香澄が一緒に背負ってくれた  …何かがゆっくり氷解していく 二人で額を合わせてたら香澄が小さく鼻を啜る音が聴こえた 目を開けたら香澄もまだ泣いてた 目元にそっとキスして涙を拭う …僕はまだ怖い顔しちゃってるかな… 香澄の髪の毛を梳きながら、静かに目を伏せて話す
「…以前、画家だった頃。僕から見るものさえあれば それが全てでよかった ただ何も考えずに描くためには それで… …でも、香澄と一緒にいるためには、一人の人間に数えきれない顔や、角度や、側面や、僕の知らない何か、僕が一生知ることのできない何か、それぞれの無数の世界があることを、僕は知っていかなきゃいけなかった そこに目を向けて、人の持つそういうものを怖いとも、美しいとも思ったから、僕は肖像画を描こうと思った …香澄が僕に、見えないものを教えてくれたから」
一度目を閉じてから、ようやく涙のとまった顔で優しく微笑みかける 香澄がくれた言葉への、うまい応えにはなってないかもしれないけど… 香澄の頰を撫でながら話す 「きっと彼…   雪村さんにも、そういういくつもの何かがあって…  ひとは単純じゃない わかってたはずだったんだけど それを例えば僕が知ったからって、彼を許せることにはならないかもしれない、けど でも …僕は知りたいよ 箇条書きにできるような数値化されたことじゃなくて、香澄にとって彼がどんな人か、香澄から見て彼はどういうふうに見えて、香澄と彼でどんなふうに過ごしたのか、香澄の中に彼はどういうふうに居るのか… 僕が彼を許すためじゃなくても、…香澄の中に僕の知らない誰かや何かがあって 寂しいし怖いけど 僕はそれを幸せに思うから」 それだけ言ってにっこり笑って向かい合ってた体を離して、一度ソファの背に体を預けた。 香澄も座りなおす。そっと頭を引き寄せて僕の肩に凭れさせた。香澄がゆっくり話し出す。
兄ちゃんは…兄弟みたいで、父親みたいで…子供っぽいとこもある気がする 勝手だしわがままだし よく喋るくせに肝心なこと何も言わずに実行するし いつもギリギリ死にそうになるまで助けてくれない… でも 見捨てられたことはないよ どんな状態で帰っても…いつも怪我の手当てとかしてくれた お前は悪くない、そのままでいいって  言って …首絞めたり、あの時起きたこともきっと兄ちゃんはお前は悪くないって言うかも、全部…自分が悪いって だからかな、あれから兄ちゃんにもう関わるなって何度も言われた …それでも絢のこと助けてくれた …ひねくれてるのかな…俺にとっては…優しい人だよ…
香澄の頭を撫でながら、ひとつずつの言葉を胸の中に落とすようにして静かに聞く 誰かにとっての、誰か 僕のいない場所で起きたこと 僕にとってそうじゃなくても、香澄にとって大事なもの 同じように大事にできなくても…違うものを持てたらいい でも結局こうしてすべて違うふうにしか持てないのが現実で それでも僕らは同じものじゃないからこうして寄り添い合うことができる 同じじゃないから こんなに愛しい
話し終わった香澄の頰を両手であっためるみたいに包んで、引き寄せる。 触れるだけ、それでも込められるだけの愛情を込めて、長いキスをした。 今朝まで凍えるほど冷え切ってたのが内側から溶かされていく感覚、閉じた目の端から氷解した名残みたいにまた涙が一筋溢れていった。 唇を離すと、香澄がソファの自分の隣に座らせてた貯金箱のかいじゅうくんを見て、ちょっとだけ寂しそうな顔をした。 「中に入れたもの出すところがない…」 香澄の頭を撫でながら笑って返す。 「そういうふうに作ったからね」 手を伸ばしてかいじゅうくんを手に取る、かいじゅうくんと一度目線を合わせてから香澄に微笑みかけて続ける。 「また何度でも僕が作ってあげるよ、香澄が喜んでくれるなら」
そのあとは僕が作ったケーキを二人で食べた。 うまくいくか自信はなかったけどアイシングとかお砂糖とかいろいろ使って試作を重ねてなんとか綺麗に作れた、小さなかいじゅうくんとノエルをケーキに乗せて、 どっちがどっちを食べるかでカードで勝負した結果、僕が全敗。嬉しそうに二匹を独占する香澄をにこにこしながら見てたら、勝負に負けた僕に香澄がかいじゅうくんをくれた。
食べたものを片付けてたらお風呂からあがった香澄が髪を乾かす前にノエルと一緒にソファでうとうとしてた。 僕も軽くお風呂に入ってからドライヤーを持ってきてソファに座って、うとうとしてる香澄の頭を膝に乗せて髪の毛を乾かす。 「はい。反対向きに寝返りうって」 「…ん~…」 膝の上でゴロンと反対を向いた香澄の髪を乾かし終えてから、自分の髪も乾かしてたら、香澄が何度か瞬きして少し覚醒しだした。 二人ともあとは寝るだけだったから、膝の上に頭を置いて僕を見上げてる香澄の顔を見つめながら優しく訊いた。 「…する?」 香澄は何度か大きく瞬きをしてから顔を紅く染めた。 無言で小さく頷いたからソファから体を起こさせて香澄の体を抱き上げる。首筋にぎゅって抱きついてきたから僕も背中をさすりながら抱きしめ返す。 香澄の部屋にはイルカや増えたかいじゅうくんの雛や汚せないものがたくさんあるから、僕の部屋。
そっとベッドにおろして、優しく、優しく触れる。 いつも欲に煽られて余裕をなくすのを、今夜だけは最後まで慎重に避けた。 僕の中にある香澄への愛情は、優しくて綺麗なだけのものじゃない、どろどろして醜くて凶悪で、それでもこうして示す行為だけなら、触れ方だけなら、僕の意思と抑え方次第で、優しくあれる。 現実や、本当に僕が抱えるものがなんであっても、香澄に最も受け取ってほしい愛情はこういうものなんだってことを、一晩かけてゆっくり、丁寧に香澄の体に染み込ませるようにして伝えた。
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nemosynth · 2 years
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episode zero - EMS VCS3
そう、シンセとは何であろう?
生楽器のものまね? 既存楽器の代用? アコピ、エレピ、オルガンの音が良ければ、キーボードは売れるという。まさに三種の神器。でもシンセって、そんなお約束の様式美でいいのか? 電子楽器は、もっと既存の束縛から自由な、しがらみの無さが良かったんじゃないのか? 聴いたことがない音、分類不能な音がしてこそ、シンセ の本懐ではなかったか? ��える音、使えない音なんて関係あらへん! シンセはシンセ独自のアイデンティティ を追求すべきではなかったのか?
未来に挑むカンブリア紀の大爆発シンセたち。それら、へんてこなシンセたちこそ、本当に宇宙の挑戦を受けて立つ人類にふさわしい。そんなシンセサイザーのフロンティアたちを紹介していくのがこの連載である。
♬     ♬     ♬
まだシンセと言えば、MOOG(モーグ)製かBUCHLA(ブックラ)製かしか無かった時代のこと。すべてシンセはアメリカ製、それも壁を覆う巨大モジュラー・システム、天文学的なお値段、大学の前衛音楽研究室か放送局の音響実験室かに納品されるものばかり。楽器として生まれる初の機種Minimoog (ミニモーグ) は、だがまだ世に 出る前の開発途上。後にMOOGの好敵手となるARP (アープ) に至っては創業して日も浅く、社名もいまだ TONUS INC. (トーナス) となっていた、そんな時代の話。
そのとき、アメリカ合衆国から大西洋を隔てたイギリスはロンドンにて、小さなシンセ・メーカーが誕生した。 その名もEMS (ELECTRONIC MUSIC STUDIOS)、和訳すれば「電子音楽スタジオ社」。このひねりゼロの、しか し当時最先端アートだった電子音楽にかけたドストレートな社名。そしてその電子音楽に賭けた夢の初号機が、創 業と同じ1969年に登場したVCS3 (Voltage Controlled Studio Version 3)、和訳すれば、「電圧制御式スタジオ 第3版」ですか。最先端レコスタを丸ごと電圧で制御してやろうだなんて、なかなかどうしてエンジニア魂こもった 素敵な名前じゃありませんか。こうして史上初のデスクトップ型フル・アナログ・モジュラー・シンセが、これま た生真面目なまでに正確無比な形のノコギリ状波でもって産声を上げた (MOOGなどのは波形が崩れていてそれが また不思議に音楽的な音なのよ)。
EMSを創設し、VCS3を作ったのは、この三羽ガラス。
・Peter Zinovieff:コンセプトと仕様を決めたジノヴィエフ氏  ・David Cockerell:回路設計をしたコッカレル氏  ・Tristram Cary:外装などを担当したケイリー氏
ジノヴィエフ氏の両親は、帝政ロシア貴族。かの国の革命のときにイギリスへ亡命。そのあとの1933年に彼は生まれた。科学者だった彼は、1950年代から黎明期の電子技術と音楽とのカップリングにご執心であった。ロンドンはテムズ河畔の自宅に半地下の実験室を作り、軍から払い下げられた機械をぎゅうぎゅう押し込み、何とかして最先端電子テクノロジーを音楽に応用しようと日夜没頭。時にはテムズ川が氾濫、半地下の実験室が浸水。それでも彼は張り切ってクラシック音楽界の前衛作曲家シュトックハウゼンらを招いては、無料で貸し出していた。
そこには助手となるエンジニアがいるも、ジノヴィエフによるテクノロジカル無茶振りが過ぎるあまり、面倒くさくなったエンジニア君はかつての同窓生だったコッカレル氏を誘い込み、彼に丸投げしてトンズラこく始末。当時コッカレル氏はイギリス国立医療センター勤務の技術者。のちの回想で、 「ジノヴィエフはすべからくアマチュア っぽい稚拙なスキルで解決しようとしていて無理あり過ぎ、郵便局からかっぱらってきたリレー回路なんかで実現 できるわけねーじゃねーかよ、そして我慢強いコッカレルが呼ばれたのだろう」 と。で、残されたコッカレル氏が辛 抱強くジノヴィエフ氏の要望を聞いては、VCOをはじめ彼らの夢を具現化していった。
1960年ごろのジノヴィエフ氏は、だが、当時の最先端だった録音テープ編集音楽“ミュージック・コンクレー ト”が大っ嫌い。スマホDAWみたいなグラフィック波形表示も無いのに、音と耳だけを頼りに磁気テープへの一刀入魂ばかり繰り返して切った張ったなんてありえん。そう考えた彼は “シーケンサー” というものを思いつき、帝政ロシア貴族の末裔らしく、妻が使わずに余らせていたという宝飾品の数々を売り飛ばし、DEC の汎用コンピューター、それも軍事産業か科学研究機関でしか使われない小型冷蔵庫ほどもある機種PDP-8を、家一軒分のカネを払って購入。ばかでかいナリしてRAMは8KBだったが、なんせ当時これが最安価の機種だったのだ から仕方がない。さらにもう一軒の家が買えるカネで32KBに拡張、トドメにもう1台また買う。電動機械式タイプライター “テレタイプ端末” をばちばち打ってプログラミングし、シーケンサーを開発。そのうち数字をタイプしていてはめんどっちぃとノブをたくさん付けて制御せんとした。
アメリカ人らがようやく電圧ですべてを制御するモジュラー・シンセを世に送り出すころ、既にジノヴィエフ氏 の一味は、一足飛びに全部コンピューター制御による全く新しい電化された機械作曲や、電化された機械音楽を構想していたのだ。彼らは64基もの16ビット/46kHzデジタル・オシレーターを開発。ADコンバーターも実現しモ ーツァルトのピアノ・ソナタを1~2秒ほどサンプリングし、新開発の64バンド・フィルター・スペアナでもって解析、原音忠実にリシンセシスで再現せんと四苦八苦。ついに全自動電子音楽コンサートまで敢行、聴衆理解不能 阿鼻叫喚若干爆睡倫敦崩壊河川氾濫地下室水没床下浸水イカした浸水(要出典)。
だがさすがにオイタが過ぎて資金難になり、財源とすべく開発したシンセが、何を隠そうVCS3だったのである。
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試作機VCS1は、オシレーター2基、フィルター1基、EG1基をラックマウント型に収めた代物であった。だが これではMOOGみたいな連中に勝てないというので、そのあと開発されたVCS3は、目標定価100ポンドだか200 ポンドだかを超えて300ポンド、当時のレートで24万円ほどになったものの、MOOGやBUCHLAと比べてもはるかに安価、かつ卓上に載るコンパクト・サイズ。そして“パッチ・コードも大嫌いだった”というジノヴィエフのお かげで、史上初のマトリクス・ピンボードを採用。これが戦艦沈没ゲーム方式であるため、1つのソースから複数 のデスティネーションへパラったり、複数のソースから単一のデスティネーションへ集約したりと結線も自由自 在。さすが、英国の星!
だが、すべてをV/Octで統一したMOOGの偉大さを理解していたのか否か、EMS VCS3では、 ・VCO1:0.32V/Oct ・VCO2:0.32V/Oct ・VCO3:0.25V/Oct ・VCF:0.20V/Oct ・DK1 (別売専用鍵盤) のCV出力:1V/Oct ほんでしかもDK1を使って平均律を弾くためには周波数ノブを369.99Hzに設定って、何じゃその端数は!? 虎の子 のマトリクス・ピンボードに至っては、クロストークする始末。
いい加減な仕様と作りのため変な音しかしないVCS3は、だがそれでもなおピンク・フロイドをはじめとするイギ リスのプログレ界へ、そして全欧に広まり、ケミカル・ブラザーズなど多くの愛好家を生んだ。ブライアン・イー ノに至っては、VCS3を修理に出すにあたり、“ここは直すな、あの不具合は直すな”と長いリストを添えたという。
どだい変な音しかしないVCS3は、だが、見事にシンセらしいシンセであった。
その後もEMS社のラインナップは拡充するも、1989年、創業20周年とともにVCS3を20年間にわたり販売し続 けていることを発表。当時の海外フェアにて、YAMAHA SY77、KORG T1/2/3, ROLAND D-5などの最新フル・ デジタル・シンセと一緒にVCS3が展示されていることに、シーラカンスを目の当たりにしたような感慨にふけった 人も、世界中におったことであろう。
VCS3やSynthi AKSなどが出てから半世紀以上たった今、EMSの中古品は50万円以上し、程度の良いものであ れば100万円したりもする。長い歴史にわたり人々を魅了してきた名機として今なお語り継がれているばかりか、 iOSアプリシンセAPESOFT iVCS3はもちろん、アナログ回路によるBEHRINGERの試作ハードウェアであると か、AKSクローンを超えたオマージュ機種ERICA SYNTHS Syntrxまで登場。デジタル化されたマトリクス・ピン ボードは、設定をメモリーに保存できて使い勝手がよく、モジュレーション・マトリクスの可視化という観点から しても、もっともっと広まってもいい。
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VCS3の外観デザインを担当したケイリー氏は、EMSに参加する以前から黎明期の電子音楽作曲家として活躍、 映画『火星人地球大襲撃』や TVシリーズ『ドクター・フー』などで電子音を鳴らして人々を唸らせ、偉大なコンポ ーザーとして2008年に82歳で没した。
VCS3の内部回路を設計したコッカレル氏は、その後、MiniKorg 700を見て、それがいかに洗練されているかを 目の当たりにして脱帽し、EMSからELECTRO-HARMONIXへ転職、今やビンテージとなっているフェイザー Small Stone や、フランジャーElectric Mistressなどを開発。彼が脱帽したMiniKorg 700や700Sも、仕様とし て今見ればけったいな機種なのだが設計思想が自由であり、かつ音にキャラがあって���常に良く、今年ご本家から 半世紀近くぶりに700Sの復刻版700FSとしてカーテンコールしたのは記憶に新しい。
さらにその後、コッカレル氏はフランス国立音響音楽研究所ことIRCAM(イルカム)にて研究。サンプラーを開 発、それをあちこちのメーカーへ売り込んで回り、最終的に興味を示したAKAI PROFESSIONALに就職、しかも当 時FAIRLIGHTやE-MU Emulatorしか無かった時代において価格破壊となったENSONIQ Mirageに続く、AKAI PROFESSIONAL初のサンプラーS612を1985年に開発。その後、彼はロジャー・リンとの共同開発たるMPC60 や、のちのS3200まで回路設計もしている。
そして今は、再びELECTRO-HARMONIXに戻って新しいエフェクトを開発。可動部品を一切使わないワウ・ペ ダルCrying Toneを世に送り出したりしている。彼はビンテージの復刻には興味が無いが、それは“あくまで最新の ものが最良”という、エンジニア魂の成せるところ。テクノロジーによるセンス・オブ・ワンダー、それがもたらす 明るく健全な未来感。この点は、デイヴ・スミス氏もトム・オーバーハイム氏も梯郁太郎氏も同じですね。
VCS3のコンセプトと仕様を決めたマッド・サイエンティストのごときジノヴィエフ氏は、その後“ブリテンのボ ブ・モーグ”とまで呼ばれ、グランド・ピアノにソレノイド磁石を付けハンマーを動かすことで、コンピューターによる自動演奏をさせる試みまでしている。
すっかりおじいさんになった21世紀に入っても、DAWにCOCKOS Reaperを、ノーテション用にAVID Sibelius とPRESONUS Notionを、そしてソフト音源NATIVE INSTRUMENTS Kontaktを使って音楽。VSTをはじめとするDAW環境は素晴らしいと彼は言うが、しかしその一方、彼はPCの中にあるソフトを直接わしづかみして操作したくてたまらないのだと愚痴っていた。そんな彼が、自宅で転倒してから10日間ほど入院したまま、ついに還ってこなくなったのは、今年2021年6月のこと。享年88歳。転んでいなければ、もっともっと楽しいもん作ってくれはったやもしれんのに、と思うと、残念でならない。
(2021年7月11日Sound & Recording公式サイト初出)
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cestlavie-sevenstar · 4 years
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01/21 ヤクザと家族 The Family 試写���に参加しました
*ネタバレどころか全編通しての感想なので一定期間が経過したら本記事は非公開に移行いたします🙆‍♀️
*記事全体でお名前や役名などを敬称略にて記載させていただいている部分が多数あります。ご不快に感じられる方がいらっしゃいましたらブラウザバックしていただけますと幸いです。
2021年1月21日(木)、映画「ヤクザと家族 The Family」試写会に参加させていただきました。年末年始は「1月29日を迎える」ことを目標に繁忙期を生き抜いたため、当選通知のメールを見た瞬間私の2021年は終わったような気持ちでした。(誇張表現)
今回も初見時の気持ちをフレッシュに残しておくべく、鑑賞しつつこんな感じでメモっていました。 黒い文字が上映中のメモ、緑の文字は帰宅後に補足で書き足したメモです。
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これまでは人に見せることを前提とせず目と耳に入ったことや感想を自由にメモっていたのですが、今回を機にメモを見返しつつ(時に載せつつ)感想ブログなどもしたため始めてみようと思い、画像と文字を投稿しやすそうなTumblrを開設してみました。普段芸術と程遠い業務にいそしむ会社員の感想を眺めて「わかる〜」「いやわからね〜」みたいな楽しみ方をしていただけたら幸いです。
今回はB6ノートに見開き10ページ分ひたすら悶絶しているメモとなりました。
映画開始から終了までの時系列順で書いています。ちょこちょこ下記のようにスクショで掲載します。
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水中から始まる…… フレッシュなダイイングメッセージみたいな文字で書き始めているのですが映画冒頭、あぶくに包まれながら沈んでいく推定・綾野剛さんの映像がとても綺麗でした。今思い出すと「ああ〜Familia……」という感じです…… 一緒に見に行った方が観賞後、「この映画は山本賢治の走馬灯なんじゃないか」という話をされていて打ちのめされました。
そう言われてみると最後の沈むシーンでは刺された血液か返り血かで体の周りにもやのような赤が浮いていますが、冒頭の沈む映像ではそれがなかった気がするので山本さんの自己認識的な映像なのかな〜とも考えていました。 確か右手を伸ばすようなカットがあり、写っている手がなんだか小さく見えたので「19歳の前に胎児からスタートなのかな?」と斜め上なことを考えていたのですが、上方に伸ばした手を自分で見上げているので確かに小さい感じに見えるんだな〜とも考えていました。
1999年
小さい原チャリの山本賢治くん(19)が着席するまでの一連、白い上着で葬儀場に入って行く俯き気味の後頭部が愛しかったです……読み間違いかもなのですが喪主が山本賢治に読めて、あ〜頼れる親族いなかったんだ……とすでに泣きそうになっていました。
少し後のシーンで山本宅が映る時、お父さんの名前で賞状も雑多に積まれていたのが何だったのかな〜と思いながら観賞後にサイトを読んだら証券マンだったとのことで、優秀な社員さんだったのかな……と思いつつ母親も離婚などではなく亡くなっているという記載からかつての山本家に思いを馳せて切なくなっていました。
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いちはらはやとかわいい 市原隼人さんをドラマ版『ROOKIES』で知り、『猿ロック』『ボックス!』くらいしか見たことがないながらにくしゃっと笑う顔が好き^〜〜〜と思っていた高校生時代を思い出しました。原チャに足乗せて数珠をいじってるの大変かわいかったです。数珠は手作りなのでしょうか🤔2019年で大原の墓前にも赤マルと一緒にお供えされてるのを見ると三人でお揃いで作ったのかしら……と深読みして涙する私でした。
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おかねにはしゃぐのかわいい 夜の堤防で強奪してきたクラッチバッグを開けるシーン。大原を演じる二ノ宮隆太郎さん、お顔は存じていたのですがお名前が出てこず、さらに事前にあまり情報を入れないようにして映画に没入しに行ったので「大原」「細野」の名前が最後までわからず迷走したメモになっています(言い訳) バッグの中から20万円くらいが出てきて堤防でめっちゃはしゃぐ大原が大変かわいかった……1999年でも2005年でも大原が笑ったり喜んだりすると見ているこっちもニコ……☺️と笑顔になるのが不思議でした。
このシーンで月におシャブさんをかざして「きれェ」って言う細野もやばいけど投げ捨てちゃう賢治くんの衝動性も心配な感じでした。この衝動性が2005年の川山を瓶でゴン事件に繋がるんだろうな〜と思いつつ……
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あかちゃんあやすいちはらはやときゃわ オモニ食堂で赤ちゃんの翼くんをせっせとあやす細野の笑顔がほんと〜〜に好きで…… 山本・細野・大原の三人でいっぱい食べてるのめちゃめちゃかわいい空間でした。
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くみちょうかっこいい 帰宅してから追記したメモもだいぶ頓珍漢なのですが「激シブ」と書きたかったんだと思います。
この食堂乱闘事件の最後、大原が出口手前の机に綺麗にぶつかって気持ちよくひっくり返して走って出て行くのも爽快でした。(どんな感想?)
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ドアちゃんとしめるけんじくん 寿司パに呼ばれた賢治くんがビルの入り口ドアを後ろ手ながらちゃんと閉めるのが偉いな〜と思って見ていました。(今思うと金文字の「柴咲組」を見せるためかな〜とも思いつつ) この後商店街を走る時も「どけどけ!」だったのが「どいてどいて!」になって、後に続く言葉の方が優しい感じになる辺りに人柄を感じてグッときました……
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はねられたあとはしるけんじくん 雑誌の『キネマ旬報』だったかで綾野さんがスタント無しで挑んだというのは読んでおり、事前公開された映像も見たので心の準備はできているつもりだったのですが劇場で見ると迫力が凄まじかったです……は、はねられている……あと確か長回しがはねられた後も続いていてハラハラしていました。
そしてこのあと盃交わす場面までほとんどメモ取ってませんでした。SNSの完成披露会を見られなかったので一緒に行った方に教えていただいたのですが、あのシーン本当に蹴られているということで……よくぞご無事で……😭 香港までの密輸(入国)船のサイズが意外と小さくて、時々ニュースで見る国境近辺の船ってそういえばこんな感じだったな〜と思い出していました。 あと加藤こと豊原功補さん、『のだめカンタービレ』の江藤しか知らなかったので「なんか見たことあるような…」とは思いつつ一瞬気づきませんでした……!江藤塾の指導が「ヤクザのとりたてみたいな指導しやがって!」と千秋に言われるのですが江藤と加藤全然違う人間ですごかったです……
ところでこの臓器くん三人が密輸されかけるくだりの辺り、賢治くんが柴咲組との関係を否定したのに中村の兄貴が迎えに来てくれて三人とも助かってる描写の理由が1回目だとわからなかったので今後わかるまで見に行きます(ムビチケを追加で積んだ顔)
盃交わすシーンで縦書きのクレジット入るのめちゃめちゃテンション上がりました。かっこいい……ここのシーンの背景や人の配置とお顔など、後で出てくる方いらっしゃるのかな〜と思いながら見ていて白文字を読んでいなかったので結局エンドロールまで気づかなかったのですが今回岩代太郎さんが音楽だったそうで、初めて映画のサントラ買ったのが『武士の献立』だったのでエンドロールでもテンション上がる事態になっていました。
2005年
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おしりまで入ってるの 銭湯で山本さんが湯船に向かう後ろ姿のシーンで刺青が背中通り越しておしりと太ももにまで入っていた衝撃のメモ。 そういえば私も小学生くらいの頃、近所の銭湯にどうしても行ってみたかったのですが連れて行ってもらえなかったことを思い出しました。(誰彼構わず話しかけては走り回って物を壊す子供だったのでいろいろな意味で人生変わるところでした)
大原と細野の背中にも線彫りでごっついでかい刺青が一面に入っているのですが、山本賢治さん(25)の気合の入り様がエグいかっこよかった……何年かけて彫ったのか…… 米国にいた時スナック感覚で一緒に刺青入れよ〜と誘われた際、断りつつ色々調べて知ったのですが、線ではなく面の刺青は痛さも尋常じゃない上にグラデーションは彫り師さんの技術も問われるところとのことでお尻やふとももとか脇の肋骨のあたりみたいな皮膚の薄そうなところにまで見事に入っているのを見て山本さんの六年間に思いを馳せたりしていました。あと全然関係ないですがお風呂めっちゃ気持ちよさそうで私も帰宅してお風呂沸かしました。
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中村「てれるな」かわいい 安易に「かわいい」という形容詞を使いがちなのですが魅力を感じた時にさくっとメモする時やっぱり「かわいい」とか「かわ」って書くのがラクという。 若頭襲名?就任?のお祝いをされてぽつっと一言中村の兄貴が「照れるな」と言うのがかわいかったです。立ってるだけでめちゃめちゃ怖いし1999年の方でも怖かった中村さんが口を開くと思ったよりフランクで端々にポップさが垣間見えて「あっ好き」と引き込まれた瞬間のひとつでもありました。ドラマ『アンナチュラル』の宍戸だ!!と思って警戒しながら見ていたのですがここで警戒を解いて仲間だ〜🌼と思いながら見ていたので2019年の方で落ち込みました……(鑑賞中に落ち込む視聴者とは)
このシーンで細野が「これ山本の兄貴からです」のような文言で中村さんにプレゼント(とは言わないのかしら……)を渡す時、言い方や間の取り方があまりにも自然なモブっぽくて一瞬細野だと思いませんでした。山本さんから中村さんにお祝いの品を渡すだけの舎弟の役割を果たしている細野aka市原隼人にグッときていました……
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せんえんくれる オモニ食堂で小学生の翼くんに千円札をくれる山本さんのシーン。一万円とかではなく、でも小学生には大金の千円札をお小遣いにくれる山本さんのバランス感覚がとても好きでした。愛子さんが止めるでもなく受け取っときなと言う様子になぜか嬉しくなってました。そして翼くんがンマ〜〜〜かわいい……その翼くんと会話してる時の山本さんと細野がこれまたンマ〜〜〜かわいい……あの笑顔は無形文化遺産認定の日も近いです。
「子供と会話すると笑顔になるよな〜」と思いつつ見ていたのですが今思うと大原くんと亡くなった翼くんのお父さんが似ていたというところから、自然と人を笑顔にさせる特性みたいなものを翼くんもお父さんから受け継いでたのかなぁとか、いろんな人の居場所になってたオモニ食堂を切り盛りしてるお母さんから学んだりしてたのかなぁとか色々考えていました。
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ジッポのチーンかわいい この「かわいい」も魅力的だったな〜の「かわいい」です。2005年の山本さん喫煙シーンで印象的なジッポライターの開閉音、薄い金属音がおしゃれで好きでした……小中学生の時分、ジッポに憧れて百均やらドンキやらで安いのを買ってはガチッとかバチッみたいな音を立てて開閉させていた勢なので「かっこいい……」と痺れていました。あと山本さんの手が綺麗で二倍痺れました……
2019年、山本さんの出所後に「柴咲組一同、盛大に」のシーンで煙草に火をつける時は百円ライター的なジッという音になっていて泣きそうになりました。対比がエグい……
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くうきのかわりかた 2秒前まで翼くんと近所のお兄ちゃんみたいな会話をしていた細野が山本の電話の様子を見て一瞬で空気を切り替えるのがビリッと来ました。オモニ食堂の壁際に飾られた七五三か端午の節句かの人形を挟んで会話していたのも何故か記憶に残っています。
この画面大原があまり映ってなくて若干寂しかったりしました。三人でご飯食べにくるの可愛かった……ビールの乾杯の時にグラス合わせる位置が特に山本さんが上という感じもなく三人でかんぱ〜いってなってたのが本当に好きでした。(見間違いだったらどうしよう…)山本さんの貴重な笑顔……
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あめちゃんなげるのかわいい この「かわいい」は「かっこいい」と「かわいい」が半々くらいのかわいいです。去り際に細野が翼くんに2つか3つか何か投げるので「小銭?にしては雑…?」と思っていたらキャラメルなのかラムネなのかアメなのかオレンジ色の細長いのを翼くんが両手で受け取ってて可愛くて死にました。 お菓子を持ち歩く細野……
続くクラブ C'est la vie で敵対勢力が煽りに煽るシーン、細野が身を乗り出してゴリゴリに睨んでる中、山本さんが微動だにせず立ってるのがめ〜ちゃ怖かったです……まじで身じろぎひとつせず川山のことをじっと見ている様子が、あまりにも静かなのに絶対静かな訳がない嵐の前の大気そのものでひたすらぞわぞわしました……
川山が立ち去った後でママが気を取り直して女の子たちに声をかけるのがまた好きでした。ママの肝の据わり方よ……
そしてここで登場するみゆきちゃんこと工藤由香。青いドレスが似合ってて素敵でした。今思い出すと冒頭や最後の海を思い出すような深い青なのですが、由香ちゃんの明るい人柄と真逆な色かつ尾野真千子さんの雰囲気にぴったりの綺麗な深さだったな〜と思いました。(小並感)
自己紹介もなく隣に座り山本さんの親指の付け根部分にガラス片が入っているのをそっと取ってくれる由香ちゃんを見つめる山本さんの目元がサングラスと前髪でわかりづらかったのもエモでした。わかりづらいけれど、川山と話していた時とは完全に異質の静けさ……
さっきまで流血沙汰の事件起こしてた男が、自分で気にもしていない(蔑ろにしている)傷に気づいて手当てをする由香ちゃん、彼女の来歴が映画の中ではほとんど見えないのも「山本の走馬灯」と考えると納得でした。
ついでにこの後ホテルに呼び出される由香ちゃんのシーンがめちゃめちゃ可愛くてニコニコしながら見ていました…… 由香ちゃんの到着で、画面には映らないジッポの音が「山本さん緊張してるのかな…」という感じでかわいかったです。そして由香ちゃんの私服(チェックのシャツワンピースとフードつきダウン)が青いドレスとこれまた180°正反対とは言わずとも90°くらいの位置にある感じでとてもかわいかったです。◯まむらかパ◯オスか……
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ぺちぺちたたかれてる かわいい 抵抗する由香ちゃんのぺちぺちパンチが大変かわいかったというメモでした。
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そういえば山本さんの背中におわしますは修羅でしたね
抵抗している由香ちゃんに動揺しまくる山本さん、さっきまで貫禄凄かったのに急に中学生男子になってニコニコしちゃいました。川山とか加藤にこんな態度を取ったら親族もいない由香ちゃんは臓器ちゃんコースでもおかしくないのに、運転しておうちまで送ってくれる…… ここで携帯渡して「入れろ」だけ言われて、一回でちゃんと正しい情報を打ち込んで渡してくれる由香ちゃんの律儀さもかわいかったです。ラブコメ映画ならここで一回ギャグ挟んでから山本さんが「あいつ…!」って思ってるときに携帯に由香ちゃんから連絡入るパターン……🤔💭と思考が逸れるくらいかわいいシーンでした。
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セーターのおじちゃんかわいいね… この「かわいい」も「かっこいい」と「魅力的」の混ざった感情でした。川山の件で加藤との会談に中村の兄貴を連れて行く柴崎さんにスルッと流されてしまって立ち尽くす山本さんに肩ポンしながら「たまには兄貴に花持たせたれや」のようなことを言うおじちゃんがその場面で一人だけスーツではなくセーター着用だったのがかわいいな〜と思った感想。
ビリビリに張り詰めた空気の中で元凶とも言える山本さんに声をかけようにもかけられない(かける勇気が出なさそうな)雰囲気の中、かる〜い感じで声をかけてくれるおじちゃんが大変好きでした。何かあったときに気持ち的にラクにしてくれる方が職場とかに一人いてくださると心理的安全ダンチだなぁなどと今打ちながら���みじみ考えます。みんな頼ってひっそり相談に行く感じ……
あとこの「たまには」という一言、最初はおじちゃんが気を遣ってくれてる感じかと思っていたのですが、2019年の方で中村の兄貴と乱闘になる場面で出所したての山本さんに兄貴が「いつもいいとこどりしやがって」みたいなことを言っていたのを考えると、1999年〜2005年の6年で相当派手に活躍していたんでしょうね山本さん……
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出待ちしてるのかわいい これは紛れもなく「かわいい」でした。クラブの前で車で由香ちゃんを待ってる山本さんのシーン。この直前の事務所でソファで仰向けで煙草吸いながら起き上がって天井見上げてまた吸って……というシーンの山本さんは手首や体の動かし方から漢と色気の混ざり合った匂いを画面越しに感じるほどかっこいいのに、由香ちゃん呼び出して「無理なんで……」とわりと年単位で寝込みそうな断り方をされて無言クラクションパーーーーーで強制的に呼び止めるあたりの流れまじでラブコメでかわいかったです。
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みゆきちゃんにオラつけてないのかわいい まさしく。別に山本さんが「オラついている」訳ではなく「ペースを乱されまくっている」と書きたかったのですが勢いでメモっていたのでこんな書き方になってしまいました。語彙力……
このシーンではまだ「ゆか」という名前が出てこなかったので鑑賞中のメモが「みゆきちゃん」記載。
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ドライブ(きょうせい)かわいい 由香ちゃん青いドレスのまま上着だけ持ってきてドライブしてたような気がします。白い上着に青が映えるな〜と思いながら見ていた気がするのですが見間違いかな……次見る時確認します。
そして今気づきましたが「(強制)」と言うと常田大希さんが年末にSNSで公開していた綾野剛さんとのメッセージを思い出します。どんなおせちだったんだろう……ちょろぎ入ってたのかな……🤤
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顔が良いあやのごう 夜明けの海岸で由香ちゃんに「どうやって儲けてんの」「なんでヤクザやってんの」のような質問攻めにされるシーン。今回のメモぶっちゃけ6割くらい綾野剛の顔が良い(または諸々が「かわいい」)で埋まっていたのですが、この辺りから各俳優さんの様々な「美しさ」に魂が震える映像になっていった気がしてメモ内容が圧倒的に表情のことや空気感について��言及になっていたので我ながら記述が曖昧で頭抱えました。咄嗟の語彙力 増強 方法 検索👆ポチ
夜通しドライブした二人が由香ちゃんの気軽な質問からほんの一瞬だけお互いの深いところに触れる描写が夜明け前の一瞬の空を思わせてエモでした。
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まじすか!? かわいい ここからしんどかった…釣りに出かけた柴咲さん・山本さん・運転手の大原くんの三人が車内で会話しているシーン。 電話で呼び出された時山本さんが着てたセーターかわいかったな〜というのも記憶に残っています。そういえば山本さんが住んでるところって柴咲組の寮的なところなのかしら🤔最初に由香ちゃんが呼び出された時、ドアに避難経路が貼ってあったのでホテルかと思ったのですがそういえばこの場面でも同じベッドな気がするのでホテルじゃなくて家なのかな……?
運転手の大原くんが嬉しそうに相槌を打つのが可愛すぎて劇場でニマニマしてました。「こいついっつもお前の話するんだよ」みたいなことを柴咲さんに言われて山本さんが呆れてるのに「すみません!」ってお返事しながらニコニコしてるの本当にかわいかったです。
気を張ったり気が立ったりがデフォルトの中で大原くんみたいな人がそばにいるとホッとして笑顔になったり少し安心したりするんだろうなぁ、愛されてるんだなぁと思って(由香ちゃんとのラブコメからのエモの流れで完全に油断していたこともあり)完全にリラックスしてたところで二人乗りバイク………………………………
ずるい……………………… 大原くんの魅力にフォーカスした直後のこれはずるい……………………
今思い返すとこのシーンも多分長回しでした。どこからどこまでだったんだろう……完全に頭から世界観に浸って「釣りか〜何が釣れる時期かな〜」とか考えてたのでめちゃめちゃ衝撃でした…… そしてここで山本さんが車を振り返って呆然とする流れが辛いのにめちゃめちゃ綺麗でした。昼前の太陽の明るさ……
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ないてるいちはらはやと 翼くんを撫でて笑おうとする細野がぼろぼろ泣いてしまうシーン。シンプルにつらすぎて胸にきました。トレーラー映像で主題歌が入る前あたりに映る煙、煙草かなぁと思ったらこの大原の葬儀のシーンだったんですね……ずるい……
この時の翼くん6〜7歳でしょうか。物心ついてから初めて参加したお葬式だったのかな、と思うと普段と様子の違う知ってる人たちの中で細野ならいつもみたいに笑ってくれる!と思ってたりしたのかなぁみたいなことも考えて辛み増してました。ちょっと戸惑うような様子が辛かった…… 細野の翼くんと接する時のあの笑顔が印象的に描かれていたからこそ辛さが倍増(どころの問題じゃない)でした。
そういえばこの後から細野の笑顔がちょっと変わったような。🥲 2005年ではもう笑うシーンがなく、2019年の方でも相当苦労したんだろうなぁという感じで笑顔の雰囲気が変わっていて辛かったです……パパしてる時ももう翼くんに笑いかけたみたいな笑顔じゃなくて……無形文化遺産儚い メタい感想だと「笑顔」ってそんなに種類分けられるものなの……?と市原隼人さんの表現ぢからにタコ殴りにされていました。安仁屋……
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けいさつとヤクザの髪型 ちがうのすごい 柴咲さんと大迫が会話するシーン。画面右側に柴咲さんと中村の兄貴、左側に大迫と若い警官?が映るのですが、中村の兄貴も警官も「髪が短く襟足は刈り上げに近い感じ」「スーツ」「姿勢良く立ってる」とほぼ同じ条件のはずなのに、どう見ても右側がヤクザで左側が警官だったのがすごかったです。さらに場面的に逆光でほぼシルエットだったにも関わらず明らかな差異があったので痺れました。
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ケン坊なのかわいいな…… 入院している山本さんのお見舞い兼報告?で柴咲さんと細野が病室を訪れるシーン。もうすでに嫌な予感はしていたので感想がかわいいポイントだけフォーカスして書いてありました。柴咲さんが「ケン坊」って呼ぶの本当に愛が深くてなんでか泣きそうになります…… 花籠を置きながらずっと泣きそうな顔をしている細野の私が代わりに泣きました。(なんで?)
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えっ えっ顔が良い あやのごう…… だいぶ動揺しています。ベッドで横になった山本さんの思考をなぞるように俯瞰でゆっくり回る画面のシーン。天井視点というべきか何と言うか…… 1999年に侠葉会から逃げる賢治くんのシーンでも画面がぎゅん!と回って大混乱なところがあってすごく好きでした。
あの静かな表情が怖いのか美しいのか、ぞっとするのか狂おしいほど愛しいのか、全部詰まっていて文字通り息が止まりました。二重幅の目元がずっと脳裏に残っています。
そしてこの後クラブの中で山本さんに紙袋を手渡す細野、サイトのキャスト紹介の写真もしかしてこの場面では……?と気づいて地に倒れ伏しました。苦しい……
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な…中村さん…… 1999年でおシャブさんを扱わない柴咲組に「じゃあ何をやってるんだよ」みたいなことを聞いた賢治くん19歳に、凛と張りのある声で答えていた中村さんを思い出しました。山本さんとはまた別の理由で耐えきれなかったのかな中村さん…… 屋上でゴルフしてる柴咲さんと山本さんを見てる時の中村さんの目線がなんとなく不穏だった気がしたのですが、中村さんは任侠の人でした……😭
刺殺する時は刃物を縦ではなく肋骨に沿うように横にして差し込むと致命傷になるみたいな話を思い出して現実逃避しながら見ていたのですが銃を選んだ山本さんと刃物を選んだ中村さんの違いみたいなところにも思いを馳せていました。 (そういえばサイト読むとドス的なものではなく包丁だったんですね)
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そぼくなゆかちゃんハウスかわいい 質素倹約大学生の一人暮らしアパートとてもかわいかったです。調べたら2005年といえばファーが流行したりエスニック柄が流行した時期らしいのですがそんなものの影もない本棚やキッチンの生活用品のカゴに生活を感じてグッときました。そこに転がり込んでくる血まみれの山本賢治……
震えてる山本さんに動揺しながらも少しずつ落ち着いて癒してくれる由香ちゃんと、最初触れるだけのキスをするのがすごくグッときました。
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みあげるとき 19さいだ… 翌朝、事務所に帰ってきた山本さんがソファに座ったままぼんやり柴咲さんを見上げて立ち上がるシーン。1999年、加藤の元から助け出された後を思い出しました。ESSE のインタビューで綾野剛さんが語られていた内容もふと思い出し、朝陽の入る光景に胸が痛くなりました。 その後で柴咲さんが山本さんが怪我をしている左肩を大切にして首元を引き寄せて、自分の白い上着を気にするそぶりも見せずにガッと抱き寄せるのがまた辛かったです……(あまりにも当たり前のように深く抱き寄せてたのでしばらく柴咲さんの上着が白いことにも気づきませんでした) 大迫が入ってきて手錠をかけているあたりのシーンで柴咲さんの上着に血がついててウグ……となっていました。
よりにもよって連行される時のニュースを翼くんがガッツリ見ているというのも辛かった……来なくなった大原、逮捕された山本さん、細野は一人でオモニ食堂にご飯食べに行ったりしたんでしょうか……2019年の方だと細野と翼くんのコンタクトが一切なかった気がしてまた辛いです……
怪我が治ってないのに歩かされて収監されてる山本さんが辛すぎると同時に、真っ暗な中から明るいところに出る流れの表情に鳥肌バキバキでした。
2019年
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2019年の方が青いの…?(色)がめんの 早朝出所する場面から始まることもあってか映像が青くて「あれ…?」と思うなどしていました。初めて見る丸メガネの若い子と中村の兄貴が迎えにきてくれて、「細野くん来ないんだ…」とざわざわしていました。
そして事務所に到着すると剥がされている金の「柴咲組」。剥がされた後のスプレー跡が残ってるのが傷跡みたいでまた辛い…(この後ほぼ「つらい」「しんどい」しか形容詞が出てこない)
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19才の鼻のキズのこっちゃうんだなぁ 出所後にすっかり様変わりした街並みを見上げながら事務所に戻り、多分14年ぶりに柴咲さんにも会うシーン。和装の柴咲さんに嬉しそうにしてる山本さんの鼻に傷跡が残ってるのがなんとなく印象的でした。
20年経ってるんだなぁと思いつつ、2005年の加藤との会談での「俺のたまでも取ってみるか」はもちろん何気ない会話の一言でも声の厚みがめちゃめちゃかっこよかった柴咲さんの声が弱くなっててめちゃめちゃ不安になりました。
あとこの事務所が映る時に「がらんどうだ………」と思った覚えがあります。置いてある小物の数が著しく減ったとかではなかったと思うのですが、何が違ったんだろう……2005年の時から人が減ったのに様子が変わらないから寂しく見えたのかしら……次見に行った時確認します……
そういえば美術の部谷京子さんが『容疑者Xの献身』の方と後で調べて知って唸り倒しました。寂寥感とあたたかさが混在する空間大好きです……
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SEKISUI HOUSE 山本さんの新居のアパートの壁にSEKISUI HOUSEのロゴがありましたという。なぜこれメモったんだろう。しんどさが限界点突破して何か関係ないものメモりたかったのかな……
このシーンの前でたぶん大原くんのお墓参りをしているんですが、そこで赤マルお供えしてるのと、あと多分ほどけてる数珠がお供えしてあったのも印象的でした。お揃いで作ってたのか、それとも細野が趣味で作ってたのを置いてったのか、ちょっと次見る時に三人が1999年と2005年でおそろっちしてるか確認します……
丸メガネの子がしょんぼり辛そうに条例の話をシンプルにしてくれるのを聞いてから山本さんがまず由香ちゃんに連絡取ろうとしてるのがかわいかったです……しかし繋がらない…… ここのスマホ使い慣れてなさそうなところがまた紛れもないかわいさでかわいかったです。通信機器って差し入れできないんですね……
そしてこの後の出所祝いが😭ひ、ひたすら辛かった……… 「柴咲組一同、盛大に」という文言はきっと昔から使われてきたもので、山本さんも何度も聞いたことのあるような乾杯の掛け声なんだろうなと思いつつ、どうしてもかつての賑やかさを思い出してしまって辛かったです……煙草に火をつける音が百円ライター……ビールは瓶のプレモル……(これも現実逃避メモ)
追い討ちをかけるようにシラスの密漁シーンが入り、大変な寒さに違いないだろうに「これで食わせてもらってんだよなぁ」的なことを言いながらはしゃぐようにしてるオジキたちがしんどかったです……
そして現存していたオモニ食堂😭よかった……!あった……!変わらず待っててくれる愛子さん、久しぶりの細野……!でもやっぱり笑い方が変わってるというか、なんかあんまり山本さんの方を見てなかったような……この辺りメモがくちゃくちゃ(文字が重なってて)になってて己の動揺を見ました🥲
配偶者を「ヨメ」って呼ぶ細野かわいいな〜と思いつつ、丸めた千円札をぎゅっと押し付けて出て行くまでの流れが辛すぎました。慰めるでもなく何か言うわけでもなく一緒に時間を共有してくれる愛子さんの存在に私も救われていた沈黙のシーンからの翼くん帰宅。上着こそ赤ですがまんま1999年の山本賢治(19)でかわいい〜!となるやら翼くん〜😭となるやら、感情のジェットコースターでした…… あとで加藤と会話してる時にも思ったのですが、翼くんの敬語の使い方が大変最近の若者感で好きでした。何が違うんだろう…🤔何が最近の若者感なんだろう……
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ふうとうにフッてするんだね… 親父の入院費を中村さんが徴収するシーン。細かい仕草なのですが気になりました。確かに新しい封筒を開いて紙の端を指で支えて、こう、中の空間を広げて……みたいなのをモタモタやるより一発でガッと開くので効率的ですね。完全に現実逃避の着眼点的メモです。
ここで出所祝金を封筒ごと出して全額出す山本さんもしんどみでした😭お守りみたいに持ってる…… (この部分、あとで由香ちゃんが14年間300万円に手をつけなかった部分と重なるなぁと思っていました)
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な…中村さん… おシャブ………………でもいろんな作品見てても「覚醒剤や大麻って儲かるのか〜」と思うので組を守るために背に腹だったのか……と思いつつ、本当に困窮するまで手を出さなかったであろう中村さんの葛藤を思って泣きそうでした🥲
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ひかりのかげんすごいすき 車のライトの前で取っ組み合いする中村さんと山本さんのシーン。足が長い二人がこういう画面で喧嘩すると足しか映らないんだな〜と辛さから逃げる思考をしつつ、画面の中央に車を置かない、全部見えない、どっちがどっちかわからなくなりながら怒鳴って掴んで引っ張って引きずり倒して、という二人の感情の発露を息を呑んで見入っていました。この時どこかのタイミングで月も映ってたと思うのですが、1999年に細野がシャブをすかしてた半月と同じだったりしたのかな……早くもう一回見に行きたい……
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中村さんよかった…やってない… 「そこまで落ちてねぇよ」的なことを言いながら自分のハンチング帽?で山本さんをぺしってする中村さんの仕草に「照れるな」の時と同じホッとする気持ちで気が緩んで泣きそうでした。ちょっと嬉しそうな山本さんの表情に私も嬉しくて…😭
(そういえばFitbitの記録見たら多分大原くんの死から2019年中盤あたりにかけてめちゃめちゃ落ちててすごい落ち込みながら見てたんだなぁと思いました)
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出待ちしがち山本けんじ 韻を踏んでいる😄煙崎市の市役所職員入り口前で由香ちゃんを出待ちしているシーン。最後自宅前でも出待ちしてましたね。 私個人「来るかわからない」「いるかわからない」「会えたところでめちゃくちゃ嫌な顔をされるかもしれない」状態で待つのが辛すぎて無理の民なので、山本さんの忍耐力や相手を想う気持ちの強さに泣きそうになった場面でした。(よくわからないところで泣く系)
月の出ている夕方の海、かつて隣で見た明け方とは異なりこれから暗くなる空の下で会話して、送ってもらってからあの時の血のついたままのお金を持ってくる由香ちゃんのいろいろな気持ちを思うと辛すぎてダメでした………
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キムチチャーハン(うまそう) 現実逃避メモ。お夕飯作ってる娘・あやちゃんが可愛くて可愛くて……😭😭そしてたぶんこれはキムチチャーハンではなくてケチャップライスでした。笑
昨年の『ドクター・デスの遺産 THE BLACK FILE』でも父だった綾野剛さん、今回は「父」としてあやちゃんに接する場面がありませんでしたが、先日公開された主題歌FamiliaのMVでおずおず近づいて抱きしめてくれるあやちゃんに腕を回して抱き返す姿になぜだか救われた気持ちがしました。(歌詞と学生服のあやちゃんが映った瞬間から涙が止まらなくて1日あけてからもう一回見ました)
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オヤジからぬけろって言われるの… 入院した柴咲さんを見舞った山本さんに優しく柴咲さんが「お前はまだやり直せる」と言うシーン。辛かった…
ドラマ『アンナチュラル』5話で鈴木さんがミコトに「何が間に合うの」「果歩はもう死んだ」と返して刃物を握りなおすシーンを思い出しました。 山本さんにとっては何も間違えていなかった、やり直すことはなかったんじゃないかな、と思う反面、妻と自分の子供と静かに暮らすためには「やり直す」必要があったのか……と思うといろいろな感情で諸々ぐるぐるしました🌀
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な…中村さん…… 除籍後、密漁するオジキたちのカットの後で車中で細い注射器で………………おシャブを打つ中村さんのシーン………………………だったと思います……
ハンドルに寄りかかって乱れた髪を手でさらにくしゃっと握りながらメガネがズレるのも構わない様子にめちゃくちゃ……落ち込みました……中村さん……
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謎に上から(笑) 加藤宅でお話ししてるシーンで翼くんがタメ語になる瞬間。この場面でも翼くんはずっと敬語でお話ししていて無用な軋轢を産まないというか禍根を残さないと言うか、処世術的にというか極端に悪い言い方をするなら日和見寄りな部分で現代っ子っぽいな〜という印象でした。あっ最近の若者感ってこれかしら…?
加藤の「時代遅れ」な助言の裏にしっかり見えてる支配欲に笑っちゃいそうな雰囲気が、絶えず続けられる撮影にも現れてるような気がしつつ、意外なところで動揺している様子が意外なようなちょっと安心するような気持ちで見ていました。お父さんのことが気になっていた翼くん……
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く…くまさんカップ……! 工藤宅で朝ごはんを一緒に囲む山本さんがくまさんカップでスープなのかココアなのかをいただくシーン。この穏やかな朝ご飯の空気と山本さんの柔らかい表情をトレーラーで死ぬほど見てはいたので、これ多分後で崩れ去るんだろうな〜のような予想をしつつ色々気持ちの準備とか覚悟とかしていたのですが、まさかくまさんカップとは思っておらず「かわいい」という気持ちで脳がパンクするかと思いました。と言うよりもパンクしまして準備していた覚悟的なものも全部粉砕したのでこの後のシーンのしんどさ全部真正面から浴びてしまって「もうやめて…やめて…」と泣いてました……(好き)
山本さんにくまさんカップを使わせるに至るまでのあやちゃんと由香ちゃんと山本さんのやりとりも考え始めると辛すぎました。かわいい。辛い。かわいい…………ゆるして…もうやめて………(好き)
空色の車で市役所と学校に二人を送るシーン、学校までのちょっとの時間をあやちゃんと二人で過ごす山本さんが愛しくて泣いてました。この辺りずっと泣いてる…… 「最近ママ楽しそうだよ」って言うあやちゃんに穏やかに笑ってる山本さんがもう無理でした。愛しい空気のままここで見終わりたい……と大号泣している自分と、ここからの展開に期待全開で姿勢を正してアドレナリン分泌の大号令を出す自分が同時に存在したので多分このシーンで私の副腎は副腎皮質も副腎髄質も絶賛大稼働していました。
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ありがとうほそのくん… 社長に無理を言って産廃処理工場に勤めさせてくれる細野くん。本当にありがとう……「初めてこいつに感謝したよ」みたいなことを山本さんが笑いながら言うのですがそんなところまで含めてかわいいシーン……………と思っていたら、二人の正面に座る若いの(かみやくん?)が口を開いた瞬間から不安でたまりませんでした。翼くんともまた違う若者口調……
そして場面が変わって翼くんがけつもち?しているお店に大迫が来るシーン。しかし一枚上手の翼くん💪いやここで頼もしい写真の証拠と、さっきのシーンでの記念写真の対比がエグい……
翼くんに一枚取られたのが悔しかったのか、八つ当たりみたいに産廃工場に来る大迫さん。シーンが繋がってたせいか余計そう見えてしまいました。大迫さんへいい感じに負の感情が向いた鑑賞中でした。
そういえば大迫さんもざっくり20年以上刑事を務めているんですよね。ドラマ『MIU404』のガマさんに一瞬思いを馳せていました。ふと思い出すと米ドラマ『The Mentalist』や『NCIS』だと現場に出てくる定年後の刑事ってあんまり出てこない印象があるなぁとも考えていました。『The Mentalist』に至っては『MIU404』の陣馬さんポジションのレギュラーいなかったような🤔ミネリはマメジかな……
「全部終わりだよ」とくずおれる細野、にやつく大迫と山本さんのやりとり、続く由香ちゃんとのシーンはただ呆然と見ていました。目も合わせてもらえないまま「お願いです、出ていってください」と泣かれて土下座されて、敷居を挟んで立ち尽くす山本さん……
ここで気づいたのですが、どのあたりからか山本さんのセリフがどんどん少なくなってってる気がしました。元々しゃべる立ち回りはしない山本さんでしたがますます口を開かなくなって……いたような……
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まばたきもしないでないてるの… 病院にかけつけた山本さんが危篤状態の柴咲さんに「まだ親父って呼んでくれるんだなぁ」と言われてまばたきもせずぽろぽろ涙をこぼすシーン。微笑んで「俺の父親は親父だけです」のように返す声で心臓がぎゅっとしました…
このシーン、不謹慎ですが見入ってしまいました。綺麗だった……
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6組「彩」ってしんどさよ… 転校?の挨拶をするあやちゃんの左奥、教室の壁に大きく貼られたクラスの標語が皮肉すぎました。名前の漢字、あやちゃん「彩」じゃなかったっけ……
このシーン山本さんが事務所から由香ちゃんの携帯に留守電を残すモノローグが入っていて嫌な予感しかしなくてずっと心臓ばくばくしていました。 そして帰宅すると家がからっぽの細野………土砂降り……
そして半グレの仲間達と金属バット持参で傘もささず父の仇のもとへ向かう翼くんと、その時にはもう着手している山本さん。返り血を浴びた表情がまさに背中の修羅そのものでした……担架で運び出されていた大迫はまだ息があったのか否か……
血まみれのまま朝方の堤防でぽやっと煙草を吸って2、3回軽く咳き込む山本さん、バイクの音が3人分聞こえてたような…… そして泣いてる細野……
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このカットがチラシなの!? 心の底から思いました。「ただ、愛した」という短いコピーと薄い空の色にどんな場面なんだろうと思っていたので、ここかぁと胸が熱くなりました。
刺されながら抱きしめて「ごめんな」と返事をする山本さんの体からどんどん力が抜けて、それでも溢れるほどの愛情がそこにあったような気がして息を呑みました。 細野の右頬にべったりと血が残っているのが脳裏に焼き付いています。
そして冒頭の沈む山本さん。海水の中で目を開けて、海面に手を伸ばそうとするような動作をしていたと思うのですが正直泣いててあんまり見えてませんでした。早く次見に行きたい……
後日、大きな白い花束を持って堤防に来てくれる翼くん。山本が吸っていたセッターを一口吸ってから箱ごと供えて立ち去ろうとするとあやちゃんが入れ違いでやってくるシーンがまた最高に好きでした。
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お母さんゆずりのグイグイ…… 翼くんに「あんたヤクザ?」とどストレートな質問を投げかけ、「お父さんってどんな人だったの」と質問を重ねるあやちゃんに、夜明けの海岸で山本さんにグイグイ質問していた由香ちゃんを垣間見て涙腺にきました。その後の翼くんの表情の変遷がまためちゃめちゃ好きでした……
血を分けた家族、血や肉の繋がりを超えた家族、いろいろな家族が描かれる中で、ただ愛した人たちと一緒にいたかった山本さんの人生を時系列で見せてもらえてしばらく放心していました。 幸せは人によって異なり、一緒にいたい人と築く家族の形も世帯の数だけ存在すると改めて思いつつ、山本さんが幸せだった時間も一緒に見せてもらえたことが私にとって幸せでした。
感想何かちょっといい感じの感想で〆たかったのですが全然なにもまとまっていないので月間シナリオ2月号で掲載されているという台本を読みつつ1月29日を待ちます。あと円盤にインタビューやオーコメや未公開映像があったらいいな〜と思いつつ円盤も待ちます。あと今後藤井監督や綾野剛さん・舘ひろしさんをはじめとしたみなさんが今後いろんな媒体でまた『ヤクザと家族 The Family』について言及される機会があるだろうと願いつつ各種媒体おっかけながら生き延びます。生きます。
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milaaaau · 3 years
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20万円のガラスを100枚割ったら2千万円動く! 自動ブレーキの普及で板金屋さんの仕事は激減しているそうな。普及率の高いスバル系のディーラーから仕事請け負ってる板金屋さんなんか10年前の5分の1くらいの仕事しか無くなったという。ここにきて自動車全体の自動ブレーキ普及率が上がってきたため、板金屋さんはどんどん廃業している。そんな状況を見て危機感を持ったのが窓ガラス業界だと私は勝手に妄想す。 上のダンプ、しばらく斜め後ろで様子をみていたら、大きな継ぎ目でビミョウに小石を落として行く。こいつを後続車がタイヤのパターンで拾い、後ろに飛ばしたら見事に窓ガラス割れますね。このダンプだけで何十枚も窓ガラス割ったかもしれない。窓ガラス屋さん、大儲け! そして警察は窓ガラス業界からマージン取る。もちろん全てウソだけれど、そう考えたくなりますよ! 実際、写真を撮った場所から5kmくらい手前で走行車線を走っていたら「ビシッ!」と飛び石を喰らった。この積み方、どう考えたって違法。なぜ警察が見逃すのか不思議でならない。窓ガラス業界からマージン貰っているとしか思えないのだった。警察からしてみても小石なら人命に関わる事故になることはないから、窓ガラス業者の言うことを聞いているのかも(繰り返すが妄想です)。 ちなみに相手に30万円の修理代が掛かるようなダメージを与えたら大騒動だ。でも小石を舞い散らすダンプは99.999%捕まらない。上の写真を見たって警察は100%動かないです。コレッぽっちも期待してない。高速道路走ったらロシアンルーレットに参加してると覚悟するのみ。ただバイクで高速走るなら必ずシールドがゴグルを。小石が目の真ん中に当たった失明するので御注意。
自動ブレーキの普及により板金業界は経営難に。それを見た窓ガラス業界は小石まき散らす秘策に出た! | 自動車評論家 国沢光宏
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shiunteen · 5 years
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メモ 2019年11月26日
十年以上住んでいた筈の祖父のマンションはいつまでも新築のような匂いがした。最後まで小綺麗な空間だった。流しには湯呑みが置いてあって、ジュースでも時々作っていたのかミキサーが出ていて、手拭きも台拭きも入院前に使っていたのが掛かったままだった。
私が洟をかんで捨てたゴミ箱は祖父が手作りした木製だった。老人大学で習ったという油絵も、彼の手作りの額縁に入れて壁に掛かっていた。飾りきれない絵は空いた部屋の隅に積んであった。
客間のガラス棚にはいつも正月に使う大人数用の食器と、古そうな酒が並んでいた。立て掛けたギターの横の譜面台には書き込みのある楽譜が開いてあった。物心ついた時から置いてあったが使っているのを見たことがない巨大な羽ペンと、カラオケの教本と、ペン字のテキストとバルーンアート教室の書類と無数の啓発本の横には、ハーモニカが二つ並んでいた。
毎年夏にはこの場所に集まって、墓参りに行く時間になるまで甲子園を見ていた。
全部そのままだった。
葬式で祖父に着せる服を選ぶため寝室に入った。部屋はベッド以外のもの殆どが服だった。
私なんかは最近まで気付けなかったほど、さりげなく、本当にさりげなくお洒落な人だった。色シャツを重ねたり、柄もののベストを着たり、ベルトや帽子にも拘っていた。
お義兄さん随分衣装持ちだったんだねえ、それでも処分は始めてたんだねえと、伯母と大叔母が喋りつつ箪笥を開ける。クローゼットからも積んだ衣装ケースからも、きちんと畳まれた仕立ての良い服が出てくる。いつか集まった時の記憶にあったような服も何着か見つかる。
これだけたくさんの服から、お洒落な彼に丁度良いコーディネートを考えるのは難しかった。結局は先週入院する日にも着ていたという、見慣れた紫のシャツに濃い緑を合わせて、真新しそうな靴下と一緒に纏めて葬儀屋に預けた。
手狭な寝室だけで時計が三つもあったが、そのうち二つは既に動いていなかった。
「あれさあ、昔かなり怖かった」
枕元にある黄緑の丸い置時計を見て姉は言った。言わなかったが私も当時同じことを思っていた。がちん、がちんと音を立てて震えながら静寂の中動く針が恐ろしかった。祖父が今のマンションに越す前は、広い広い家の一室の布団の脇に、必ず置いてあった時計だった。
今はひたすらに静かだ。その反対側の壁には10時で止まった掛け時計が、中身だけをかちこちと鳴らしている。
腕時計のことも書きたい。それだけは思い出が濃すぎてまだひとつも整理がつかない。装飾した創作話みたいにしてしまいそうで怖い。
あまりに突然の死で遺書はなかったのだが、大事な戸棚の鍵の場所は手書きのメモで分かりにくく残してあった。それを読みながら親族総出で探し回った。
合計4本の鍵がそれぞれ全然違う場所に隠してあって、まるで宝探しだった。『テーブル横の荷物入れのわきにある小さい茶色い鞄の中』茶色い鞄てどれだよ、どのくらいを小さいって言うんだよと皆笑いながらあちこちの鞄という鞄を漁って回った。一番わかりにくかった一文をなんとか解読して、湯たんぽの空箱から最後の鍵を発見したときが笑いのピークだった。
祖父が最晩年一緒にいた人(父は愛人と呼んでいた。伯母は怒って話題にも出さなかった。私はやっぱり何も聞かされないままだった)の家からも回収してきた鞄を開け終わると、また少し家族達は静かになった。
一見普通の人に思えるが妙に謎の多い人だった。いつも人好きのする顔で笑い、ゆっくりと話す。生き字引のような人だった。
生き字引が過ぎてほらまたいい加減な事を言っているよとも言われていた。外反母趾が輪ゴムで治るなんて聞いたこともない。いいや、治る。これをここにこうして、ちょっちょっちょ、とやると、治る。
どうせ本当に治ったことがあるんだろう。風邪の治し方にしたって、虫退治の方法にしたって、突拍子もない���とを小学校の恩師のような謎の老獪性と信頼性で話すものだからいちいち耐えられなくて笑ってしまった。
金庫漁りついでに発見された戸籍謄本を見たら、苗字の漢字が今と違うわ下の名前も聞いていたのと違うわで場は一時騒然となった(私たち全員の苗字が間違っていたことになるからだ)。俺は誕生日が二つあるんだと言っていた証拠もちゃんと見つかった。出生の届け出がひと月遅れたらしい。
長男なのに家を追い出されて継げなかったのはもらい子だったからではとも噂されていたが、これは書類上間違いなく当家の長男だった。そもそも大叔父と似過ぎているのだから親戚筋には違いないのだが、それにしたって妙なエピソードは多い。
やはり食えない人だ。可笑しな人だ。生前の発言のどこまでが冗談だったのか、今となっては知るすべは無い。
誰も知らぬ苦労もしたのかもしれない。
いつの間にか何でもやってみてしまう人だった。そうして出来てしまう人だった。私が就学するときはヒノキを切って学習机まで作ってくれた。
今のマンションに引っ越す前のあの広すぎる屋敷も昔祖父が増築していたらしい。どうりで少し歪んでいると思った。毎日のように近所の建設現場を見にいっていたと思ったら、設計図も書かずに突然「はなれ」をつくりはじめたそうだ。
決して飽き性ではない、趣味も勉強も工作も全部納得いくまで突き詰めてきたのだろう。まだ突き詰めている最中だった。
この手術が終わればまたダンス教室に通うからと言っていた。嘘ではなかった。フラグなんかじゃなかった。本当だった。誰も疑っていなかっただけではない、経過は順調だとも聞いた。
術後まだ動けない時に父に杖を取ってくれとねだり、何をするんだと訊くと、これをこうして、ほらあそこのスイッチを押せるんだなどと言っていたそうだ。まったくもって通常運転だった。
だから離れて暮らしている姉には手術のことすら伝えられていなかった。
この日の朝電話で呼ばれ、家を飛び出して地元のバスに乗る前に、母からラインで訃報が届いた。結局何一つ間に合わなかったんだなと思いながらバス停で髪も結わず化粧もしないままで私はびいびい泣いた。隣で並んでいる人がずっと私を見ていた。
霊安室の高すぎるベッドで眠る祖父の顔は記憶と少し違った。おじいちゃんに寄ってあげて、ちゃんと触ってあげてと何度か言われたのに、迷って迷って迷って最後までできなかった。
このこともいつか後悔するんだろうか。まだ忘れないように書き留めることしかできない。通夜も葬式も何も済んでいない。
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4th-sparrow · 5 years
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 寒い寒い、変わりだてしない冬の晩のこと。
 夕陽もすっかり落ちて、街には雪だけが降り続けている。
 積もりに積もった雪は教科書地区の石畳のほとんどを埋めつくして、白銀の世界を作り出していた。オレンジ色に揺らめく光は、煉瓦造りの家の窓から漏れる暖炉の光だろう。すりガラスの窓は曇って、中の暖かさを伝えている。
 石畳の大通りから少し外れて、入り組んだ路地にあるその家からは、砂糖の焼ける甘い香りが漂っていた。並んでいる家と同じく、窓からは暖かい光が漏れて、外の雪を照らしている。
 ――ふと、光が動いた。窓の近くにあった何かが動いて、遠ざかったように、広くなる。少し遅れて、明るい声が響いた。窓から離れたそれが、部屋の奥から出てきた家主に、声をかけたのだ。
「ねぇイリニ、それつまみ食いしていい?」
「もう〜、ダメよ。いま食べたら、お腹壊しちゃうわ」
 オーブン皿を持ちながら、イリニ・オデンスが微笑む。皿の上にはクッキングシートが敷かれ、その上には花や星などの形に取られたクッキーが並べられていた。
「大丈夫よ。あたし偉大な魔女だから」
「ん〜……ゲルダがそう言うなら、そうなのかしら……?」
 そのうちのひとつが手に取られる。雪の結晶の形をしたそれは、ぐにゃりと形を変えながら口の中に放り込まれていった。放り込んだのはイリニよりもずっと小さく、手のひらのサイズほどしかない魔女――ゲルダだ。溢れるような金の髪を揺らしながら、彼女は苦い顔をした。
「……甘さが足りないわ」
「あら、あとで調整しなくっちゃ」
 イリニはオーブンのドアを開けて、慣れた手つきで皿を入れた。余熱は十分で、すでに炉の中は火傷しそうなほど熱くなっている。熱が逃げないうちに閉めて、タイマーを入れた。さて、次は……。
「ねぇ、完成はまだ?」
「あと30分くらいかしら……?」
「違うわ。お菓子じゃない方」
 ゲルダは退屈そうに、イリニの周りを飛んでいた。彼女が通った空気に、髪と同じ金の光がわずかに残って、とても綺麗だ。イリニが手を出すと、ゲルダは我が物顔でその上に座った。
「ああ、実はもう終わってるの。でもちょっと寝かせたくて……。クッキーも粗熱を取った方がちゃんと味がわかるでしょ?」
 イリニの視線の先には、書斎があった。クッキーを作り始める直前まで、籠もりきりだった部屋。机の上は資料が雑多に置かれているが、中心は整理されている。いつもはばらばらになっている紙の束が整っている。新作が出来たのだ。――作家でもあるイリニ・オデンスにとっては、比較的珍しい光景だった。
「なんだ、てっきりまだかと思ってたわ。暇だし、読んできてもいい? こき下ろしてあげる!」
 勝気な笑顔を向けながら、ゲルダが手のひらから浮かびはじめる。質問の体を取っているが、止められたとしても読みに行くつもりなのだろう。
「ダメよ。ゲルダにはちゃんとしたのを読んで欲しいもの〜」
「いいじゃない。ちょっと置いたところで内容が変わるわけじゃないし」
「ええと、私が直してからって意味なんだけど……う〜ん、まぁいっか」
 苦い顔を見せていたイリニは一転、穏やかに微笑んだ。
「どうぞ、感想をちょうだい。せっかくだから、校正もお願いね」
「あのねぇ、この偉大な私に校正って貴女……」
 文句を言いながら、ゲルダが書斎に飛んでいく。ああ言いながらもなんだかんだでやってくれるのがゲルダで、イリニはゲルダのそんなところを好ましく思っていた。
(さて、じゃあ私はその間に――)
 焼き加減を見守りながら、イリニはポットを手に取った。
 校正作業をしてくれる偉大な魔女へ、献上品を捧げるために。
   ◇
 キッチンのあるリビングに比べて、書斎の空気は冷えている。
 広く取られた窓から冷気が浸み出して、床の上を滑っているのだ。床よりは暖かな空中を陣取って、ゲルダは出来たばかりらしい原稿を読んでいた。魔法で浮かせた原稿は動くたびに空気をかき混ぜて、すこし肌寒かった。
 原稿の内容は、そう難しくない。イリニは基本的に教科書地区にふさわしい作風で、暖かで優しく、希望に溢れる作風をもっている。今回の物語も、終わりはハッピーエンド。かわいそうな彼らは最後には救われて、いつまでも幸せに暮らしました。
 イリニが焼き終えたばかりのクッキーを魔法でつまみ食いながら、最後の文章を読み切る。ふと視線を移すと、イリニが部屋に入ってくるのが見えた。
「どうかしら」
「……甘ったるくて胃もたれしそうだわ」
 クッキーを咀嚼しながら、ゲルダは呟いた。甘さが足りないと言ったクッキーは色のついた砂糖でコーティングされていて、甘すぎるくらいになっていた。
「紅茶も淹れたの。よかったら一緒に飲んで」
 イリニの手には、ゲルダのサイズにあわせたコーヒーカップがあった。ゲルダはそれを浮かせて、自分の元に引き寄せる。手に取って、まだ熱いそれにゆっくり口をつけた。
「……今日は苦い方か。はぁ、なんでこう極端なのかしら……」
 イリニの入れる紅茶はまずい。正確に言うと、とても甘いかとても苦いしかない。彼女の作風と同じ。今日の紅茶は苦い方。この世の絶望を煮詰めたみたいな味だった。
「……ま、クッキーと一緒に食べるのでちょうどいいわ。及第点よ」
 そうイリニに言うと、彼女は優しく微笑んだ。甘ったるい笑顔だ。クッキーみたいに。あるいは彼女の新作みたいに。
「偉大な魔女にそう言っていただけるなんて嬉しいわ〜。これはお墨付きと思っていいかしら?」
「あら、勘違いしないでよね。あたしが評価したのは、あんたの作ったクッキーと紅茶について。作品については、いろいろ言いたいことがあるから、覚悟して聞きなさい! いい? まずは――」
 魔法にペラペラと捲らせて、付箋がわりにつけた色のページを探す。色は魔法でつけているから、簡単に消すことができる。カラフルに色づいたページを指差しながら、ゲルダは矢継ぎ早に話していった。面白かったところ、悲しい気持ちになったところ、楽しい気持ちになったところ。誤字らしき場所に、脱字らしき場所。文句と、ささやかな賞賛。
 古書とインクの匂いだけだった書斎には、いつのまにかクッキーの匂いと、苦い紅茶の香りとが混じっていた。開けっ放しだったドアからは暖かな空気が流れ込み、寒かったここもすっかり暖かくなっている。変わりだてしない冬の晩は、二人の笑い声を乗せながら、今日もゆっくりと更けていった。
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xf-2 · 6 years
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写真の中心に立っているのは私の姉で、その後ろで巾着を左手に持ち立っているのが私の祖母である。 祖母はいち早く個の自立を訴え日曜学校を開いたり阿寒にお土産店を開くなど活発な女性だった。 手先も起用で多くの着物や編み物を作り指導もし、言語学者の金田一京助氏と���に道内を巡り「所謂アイヌ文化」の研究にも協力した。 写真は昭和30年代阿寒湖のマリモ祭りでの一コマなのだが、誤解されないように先に書いておくが口の入れ墨は祭りの見世物用に眉墨で書いたもので刺繍された着物や首飾り等もそうです。所謂アイヌという少数部族が皆このような格好をしていたかというのは漫画や観光地とアイヌ政策で生計を立てるアイヌ屋の悪影響ですね。実際、アイヌは針一本生地一枚生産出来たわけではなく、その殆どを交易によって得てきたもので千年以上の混交と交易の歴史と文化は日本の北海道の特色ある文化、つまり日本文化と捉えるのが自然です。 着物の模様も、アイヌの活動家が先祖代々受け継いできた等と嘯きますが、確かに部族と地域によって大きな差異がありますね。(物流経路や部落内差別諸々) 刺繍やパッチワークのようなもの等何種類かに分類されますが、殆どの場合、刺繍した着物や飾りをつけられたのは極々一部の者に限られていました。飾りも殆どの者が身につけられることが出来ず泥や粘土で代用していたのが事実。 皆さん、想像してみて下さい、ガラス玉や金、漆器がどれ程まで高価な物だったか? 何故私がこのようなことを書いているかと言うと、 オリジナル浴衣ときもの居内商店さんが 所謂アイヌ紋様の浴衣を作ったところ、SNS等でアイヌの文化を侵略している肖像権の侵害だ等と、頭のイカれた方々が騒ぎ折角作った浴衣を販売中止させたことを知ったからで、毎度毎度アイヌ側の卑しいというか貧しい強請り集りには呆れるというか何というか・・・・・これまでも書籍・映画・ドラマだけではなくゲームの世界でも「俺達が監修しないと本物は作れない!トラブルが起きるぞ!」等と脅しをかけ金品を要求してきたのは何度も見聞きしてきた。 今回もアイヌ利権に群がる連中と歴史をまともに見れない思考が歪な方々が居内商店に様々なクレームを寄せているが 木彫り熊はアイヌの物と思われているが、あれは八雲や白老に入植した旧尾張藩主達がスイスのお土産を手本に作り始め、それを私の祖父市太郎や松井梅太郎・藤戸竹夫等が中心となり木彫り熊を作り始めたのが昭和10年代のことであるが、これも立派な日本の北海道の特色ある文化、つまり日本文化である。旧尾張藩主の方々は誰も真似られたパクられた等・・・一言も何も言わないどころか切磋琢磨し技術を争ったはずですよ? 刺繍の紋様も唐草等大陸との交易の影響であったり、和柄の幾何学模様からの影響を受けたものでアイヌ独特のもので先祖代々受け継いできたというのであれば、所謂アイヌと称する何処の地域の何処の部族の物なのか明確に答える必要があろう。 はっきり言って・・・・所謂アイヌの辛気臭い着物を、クオリティーの高い作品に作り上げ紹介してくれるだけでも本来なら感謝するほうが懸命だろう!それでこそ底辺が広がるというものであるが、何せ自分達の活動がアイヌ政策に依存し差別や全てを奪われたという被害者意識が出発点なので、自分よりクオリティーの高い物を作られたりすると兎に角ヒステリーを起こす。 所詮、現代においては観光地の見世物でしかなく著作権や肖像権の侵害という話は筋違い、 他者を妬む潰しにかかるのは昔も今も変わらない所謂アイヌの典型的な体質である。 それを言うのであれば、国民の税金を詐取・横領した金で作った着物を返し制作費も返金されなければならないはずである。 所謂アイヌの貧しい主張は「日本でフラの教室を開くのはハワイの原住民じゃないから教室を開くのも踊るのも許さない」と言っているのに等しい、私は所謂アイヌの着物や紋様を微塵も良いとは思わないが、それを売れる、もしくは良いものとして取り上げてくれる人や企業がいるのであれば、それは本来喜ぶべきことだろうが、今のアイヌ活動家やアイヌ伝統工芸師を名乗って活動している工芸詐欺師からすると、自分より良いものを作られると困るので因縁つけるしか手立てはないんだよね。 身内内でも盗作や差別なんかは日常茶飯事の連中が他者に対して噛み付くとは片手落ちもいいところ 所謂アイヌがアイヌを名乗らない、アイヌと関わらないというのは、こうした差別を自分たちで作る体質が生んだマッチポンプ! 所謂アイヌなんぞ別に特別でも被害者でも何でも無い!同じ日本国民で同じ民族で 逆に歴史を捏造され税金を詐取されている側こそアイヌ利権の被害者である。これを和人に制圧されたアイヌは可哀想などと偽善を装い自国の歴史を連鎖的に考えようとしない思考こそ差別を再生産する差別者ではないだろうか? 居内商店さんの商品は、アイヌ屋が作ったものよりセンスも質もいい!アイヌ利権や自国の歴史をまもとに考えられない卑屈な連中に屈することなく販売に踏み切ってほしい。 逆にきつい一言を付け加えるが、昨今、日の丸や愛国心を歌詞に入れたミュージシャンが意味不明な謝罪をしているが、謝罪とは非を認めることである、居内商店さんには絶対に謝罪はしてほしくない、良いものだと判断し製品にしたのだから自身を持っていただきたい、先にも書いたが、アイヌ史とやらは日本の文化の一つである! 非難されるべきは定義のないアイヌとやらの上に胡座をかき税金を詐取し続ける自浄力の欠片もないアイヌ側である。 アイヌ警察なる馬鹿がアチラコチラで出没しているが、所謂アイヌとやらの内情を調査しなされ! 居内商店さん!折角作った着物、私の方で引き取って販売しましょうか?手数料も何も要りませんよ !日本国民もそろそろ怒りましょうね!北海道開拓使は侵略史だから使うな等など馬鹿にされて差別政策を押し付けられてるんですよ? 「追」 最近はゴールデンカムイという娯楽本の悪影響で変に誇張された「嘘」が広がっていますが「あれは。娯楽本」 あれを読んで真に受けるのは「戦国BASARA」を読んで歴史を勉強しましたと真顔で言ってるのに等しい。 そのうちツイッターでやっていたゴールデンカムイないない書かなきゃ駄目ですね。 (ゴールデンカムイは娯楽本としては嘘が多いが、よく書き込まれているとは思いますよ!w戦国BASARAも見ましたがぶっ飛んでいて面白い漫画でしたよ、一応ちゃんと読んだり見たりしてますからね) ゴールデンカムイ読んで被れるのも聖地巡りするのも関知するもんじゃないが、全てアイヌ利権巡りにしか過ぎませんよ。 あっ!うちの祖母は頼まれて相当数の着物を作ったのだが、刺繍の模様や色諸々全て祖母にお任せで、何処出身だから何じゃなきゃ駄目とか全く無かったらしいですよ。それよりも祖母に作ってもらうステータスの方が大きかったようです。 それと、無くならないビッキ紋様の盗作については別な場面で書きますが・・・・・いい加減にしましょうね!某骨董商と美術商・アイヌ協会役員・芸術の森・洞爺湖美術館さん!
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actors10kamome · 3 years
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稽古9日目「恋って」
2/11(金・祝) 記録:まいまい(浅田麻衣)
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こんにちは、俳優養成講座修了生の浅田麻衣(あさだまい)と申します。 今回、俳優と制作でこの座組みに参加しております。
そしてこの稽古場記録を綴っていて今更ながらに気付きましたが、そもそも私、舞台に出演するのがめちゃくちゃ久しぶりでした。2年‥‥3年‥‥?ここ数年はずっと映像ばかりやっておりました。そして、俳優と制作兼任は、2018年度公演「革命日記」以来です。
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稽古の始まりは、こんな感じ。 今回俳優が合計15名、スタッフ含めると20名を超えますのでまず稽古初めに全体共有する場が設けられます。ここで、各スタッフから諸々伝達事項やらなんやらが伝えられます(写真手前の、かなさんの姿勢が非常に美しい)
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私は今回主に百花さん、渡部智子さんと一緒に行動するシーンが多いです。この日は監修の兵藤さんにみてもらって、3人のシーンをひたすら稽古しておりました。 そして私たちのシーンは非言語!が多い。非言語‥‥言葉に頼ることなく、私たちの関係性を感覚で知ってもらわねばならない。「あなたが好き」という、日本語にしたら6音を行動で観客に伝えるための、テンポ、緩急、間合い、などなどをひたすら研究しました。
個人的に、ピナ・バウシュの指先一つ、背中の肩甲骨のわずかな揺らぎでとてつもない悲しさを表すのやってみたーーい!!素敵ーーー!!と思っていた人間ですが、やってみると何これハッハッハ、難し!!!!!!
映像は瞬発性がもちろん求められるんですが、舞台の継続する瞬発性というか、映像はカメラの外側、舞台は舞台の内側へのアンテナ、みたいなのがすごく今張り巡らさなくちゃいけなくて、正直稽古始まりの1週間はこんなに舞台ってしんどかったっけ??とハテナを飛ばしつつ、ようやくこの感覚が戻ってきた気がします。
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「制作」といいますのはそれぞれのカンパニーによってやる範疇は異なると思うんですが、今回の場合、票券(チケットのこと)や座組みの場を整えるだとか、広報、外部への宣伝、エトセトラエトセトラ。 制作自体も票券だけとかはこれまで劇団かもめんたるさんとかでやってきていたんですが、全般的な制作は本当に久しぶりです。広報は受講生みんなの力を借りてめちゃくちゃ力強く進めさせていただいてます。私も受講生時代やったはずなのですが、ここまでの広がりは持てなかった‥‥
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ここでタイトル回収といきたいんですが、「恋」って果たしてなんなんだろう‥‥恋やら愛やら、多くの生きとし生けるものたちが悩み苦しんできたことだと思うんですが。今回の『かもめ』では多くの若者たちの「恋」が描かれています。 私自身、ひとつ呪いのように蔓延っている「恋」があるんですが、私は恋は愛とは違って、ひとつ行動の指針のような、「この思い出には敵わない」とポッと自分のゆきさきを照らしてくれるようなそんなものなのかなと今は思っています。恋は‥‥過去のものなのか‥‥?分からない‥‥現時点のものなので、変わる可能性あるけど。
そういえば、尾形亀之助の「色ガラスの街」という詩集が好きなのですが、その寂しさみたいなのが今回は広がっている気がします。途方もない寂しさと恋が伝わるといいなーと思いつつ、お稽古がんばります。
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「復帰後初」に向き合う
復帰後初めて、というかコロナ禍後初めての生演奏はすごくよかった
日本橋三越への信頼。そして台所QOLの向上
ビビッドカラーの調理器具が好き
復帰後初めての、新規の仕事の相談を、なんとか、どうにかこうにか
リハビリの通院がなくなって1週間が過ぎた。寂しいのだが解放感もあり、具体的には通院がなくなると時間的な余裕が生まれる。その代わりに仕事をしている時間が増えてはいるのだがそれは復帰に向かってよいことではあるし、現状は基本在宅で仕事できているので、家の中に居られる。家の中に居ると仕事が煮詰まった時などにちょっとした家事を出来るのがとても良くてQOLは上がっているように思う。
今はもっぱら「だいたい8000歩ぐらいのウォーキング」と「塩分・カロリー控えめの食事」「なんちゃってストレッチ」を中心に、頭蓋骨に傷を持つ自分の体とともに生きている。 ウォーキングも、仕事もしなきゃいけない平日には欲張らずに8000歩前後で帰ってくることができたし、朝イチで歩きたい!というわがままを堪えられた。朝イチで打合せとか午前中に先方にメールしなくては、ということも起きた1週間だったので、必然性による我慢だが、午後や夕方に時間を見つけて歩こう、という切り替えができたのが私が今週出来た「よかった」である。
食事については、けんちん汁のリベンジに成功。退院後に作って味がなさすぎて悲しかった食事シリーズのリベンジをコツコツとやっている。めくらで怖がらずになるべく目で見て味を入れるように。一度に作って5回ぐらいは同じものを食べているダラシナイタイプなので、ドキドキせずに冷静に、いやでも1/5だからさと脳内で唱えている。この次は舌で調整して薄味にできるところまでクラスアップしたいところではある。今週は仕事がそれなりに詰まっていたので昼ごはんは一部、スーパーの中食などを投入したのだが、買ったアジフライや買ったほうれん草の胡麻和えがどちらも味が濃いと感じたので、舌が慣れてきたのかもしれない。
今週、食事と台所周りのQOLを大きく上げたのは、耐熱ガラスの食器を買ったことだ。ハリオの大中小3ケセットで赤い蓋が付いている。 このところ朝ごはんに温野菜サラダを食べることが増えたのだが、いちいちサラダボウルにラップをかけるのが面倒だったのだ。自炊が増えてサランラップの減りの早さにけち臭く不満だったのと、いちいちゴミが出ると、あとはサラダボウルの中でドレッシングと混ぜていると写真に撮った時になんか汚いのが不満で、この1か月ぐらい解決策を探していたのだ。 まずは、東急ハンズで「食器用のプラスチックの蓋」という商品を見つけて、病院の食事にかぶさっていたことを思い出した。あれは保温と安全のためで機能的だと感じたが、病院の食器は「それ用」に食器と蓋がセットなわけで、自宅のセットじゃない普通の、でも気に入ってちまちま買ってる食器たちにサイズが合わないと何か嫌だな…と思った。ただでさえ「プラスチックの食器の蓋」は機能優先で美しさや楽しさがあるわけではないのに、サイズが合わないと、買った蓋を愛せないんじゃないかと思った。いや、まぁ蓋を愛する必要はないとは思うが。
それからネットで色々検索していたのだがピンとこず、散歩のついでにホームセンターに寄って探したりしたが愛せそうなものが見つからなかった。 実は、 こういう時はデパートがモノを言う。散歩のついでに頼れるデパート日本橋三越に行った。平日の日本橋三越は地下食品売り場以外はガラガラである。そして最新の流行のものを買うこと以外の「良い生活のためのもの」について本当にとても頼りになる。そして生活用品のフロアでハリオの耐熱ガラスの食器を見つけた。ハリオの製品はいくつか既に持っていて、耐熱ガラスの薄くて軽いのが便利で、あとカラーリングがビビッドでシンプルで好きだ。家ではオレンジ色の水出しお茶ポット。あと大小のポット容器を持っていてこちらは出汁の保存用とか冷茶のサーバとして使っている。 その商品が目に付いた理由は真っ赤なプラスチックのふたがかわいかったからだ。そして既に気に入っているハリオ製。だが大中小の3セットは多すぎないかとも感じた。特に大は径が20cm近くあって大きかったし、3ケセットはキッチンに収納する場所がない。更に、日本橋三越には申し訳ないが、ネットで買った方が安い可能性もあるな…という下心もあり、それで一旦は買わずに帰った。 帰宅してアマゾンや楽天で検索すると、三越で見た価格より高いし赤のかわいい蓋ではなくホワイトしかない。蓋が白いだけで魅力が半減して見えた。やはり日本橋三越だと変な納得をして、ちょうど週末に興味のあるイベント(アイリッシュ音楽のトリオのミニコンサート)のポスターが貼ってあったのを思い出したので、 コンサートの時間に合わせて再度日本橋三越に行くことにした。ティンホイッスル好き、アイリッシュ音楽好きなので楽しかったのと、一緒に見ているご家族のお子さんがノリノリでダンスしてるのがすごくかわいかったのと、そして何よりも 数曲、数十分の小さいものとはいえ久しぶりの生演奏にとても満足して、午前中とはいえ週末なのにあまり人が居なくてさすが日本橋三越だなと変な感服をして、コンサートの後、改めて赤くてかわいいフタが付いた耐熱ガラス容器セットを購入した。 帰宅して早速開封し洗いながらも、目はキッチン中をきょろきょろしている。置き場所探しである。ほぼ毎日使うものなので出来るだけ手元に近い場所に置きたい。しまい込むとせっかくの赤くてかわいいフタが見えないのも不満…そもそもキッチンスペースはかなりギュウギュウで整理がついてないのも不満だった。あちこちをやりくりして上手く行かず、結局、整理が付かない台所の主原因である、コンロ脇の棚に置いてある「適当に入れるかご」を整理することにした。かごの数(3つ)を1つに減らして並べたらちょうど大中小が収まるサイズだったので大変満足。 これもデパートあるあるだが、デパートで良いと思って買ったものの大半は自宅に持って帰るとデカいと感じる。大はやはりデカいと感じたのだが、逆にボウル代わりに使えばいいのかと思いついた。元々小鉢ストなのだが減塩料理のために葉の和え物を作ることが増えていたので、ちょうど使いやすい。生野菜を食べるのにも先に野菜に調味料を合わせてしまってからの方が良いと気付いたのでそれにも使える。余ってもフタをして冷蔵庫にしまって置ける。おまけにフタが赤くてかわいい。日本橋三越には感謝しかない。信用しきれなくていったん帰ってしまって申し訳ない気持ちである。買い物中に見つけた小さい行平鍋も本当はすごく欲しいけど此方は高い買い物なので、やはりもっと吟味しようと思う。三越に行って生演奏の楽しさと、買い物の楽しさを思い出した。そして台所のQOLが上がった。
仕事について。今週は仕事に割く時間が今までで一番多かった。復帰後初めての「企画書」の仕事が連続して入る。事業の企画書が2つと、媒体の企画書。 元々「新しい仕事に取り掛かる」のが苦手だったのだが、手術後に徐々に仕事を引き受けていくたびに「復帰後はじめての」仕事に手を付けるのが、どうにも億劫で、怖くて、なかなか腰が上がらない日が続いている。この怖さは「前よりも上手く出来なかったら私はもうだめなんじゃないか」という怖さだと気が付いた。以前から怖かったのは「頑張って考えてもダメだと言われるかもしれない」という臆病風で、二つの「怖さ」を抱えている。手術前にはそれほど難しいことだと思わなかったような仕事でも「うまくやれないんじゃないか」という感情が、手を付けなければという感情を阻害するような感じである。
事業企画書の1つは大した難易度の仕事ではなかったが、復帰後初めての更地から依頼された仕事だった。ここまでちょこちょことやっていた仕事は、入院する前から継続している仕事だったので「復帰後初めて」シチュエーションである。おまけに先方の上役の人はパワハラ体質のところもあり鬼門でもあった。大した難易度ではないはずだとビクビクとしつつ自分を鼓舞してなんとか、かんとか。とりあえず何とかなり、費用見積も納得してもらうことができたのが金曜、週明けに書類を揃えて一段落である。また一つ「できた」が増えたのかもしれない(し、単に今回の仕事が簡単だっただけかもしれない)。
一方で、仕事が多い一週間、主に家の中で仕事をしていると、口寂しくなるという問題が表面化した。脳を使うとブドウ糖的な甘いものが欲しくなるということもあるのかもしれず対策が難しい。冷蔵庫に転がっていた食べかけののど飴を1ケ舐めてこらえたり、あとは鳩サブレーを買った。1枚約140kcal、おやつには少々ハイカロリーなのだが、美味しいくて「食べて満足」感が高いので、これを食べる、あとは豆乳ティーを作って飲んだりするようにしようと思う。
頭痛はずっと小康状態を保っている。頭痛の種はずっと、今週は主に右目の裏に巣食っていて出番を待ちかねているような気味悪さがある。週末には右耳下から首筋にかけて痛みがつながるような怖さがあったが、こらえて仕事をしているうちに収まったり、夕食後にまた痛みを感じたりで、怖いなと思いながらも寝たら土曜の今朝は落ち着いている。頭痛は本当に辛いのでなるべく気味悪いままで収まっていてほしい…。 来週は仕事の予定があまり入ってないのでのんびりできるといい。
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higashiazuma · 4 years
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ヤンヨグ鮭卓ログ #3 遭遇!神話級のヤベーヤツ!~あの終業ベルを鳴らすのはあなた
!ご注意! このログには、裁定ミス、吟遊プレイ、内輪ノリなどが大量に含まれます。 どんとこいガハハ!な方のみ、お酒でも飲みながらのんべんだらりとお楽しみください。
ちなみに文中で使用しているナイスな各種シートは公式サイト(http://www.bouken.jp/pd/yy/)からDLできるぞ! るるぶを購入したら、今日から君もヤンキーだ!!
GM : では、うろつきフェイズ、2サイクル目です! 劔 理一(PL) : じゃあ、私はとりあえずまた情報収集スキルを使おう… GM : はーい!判定どうぞ! 劔 理一 : !roll 2d6 ダイスボット : @リヒト rolled 2. (1+1=2) 劔 理一(PL) : アッ GM : 寿司屋のおっちゃんに話を聞いてみましたが、「悪い、どうにも記憶があいまいでよ…」と 稲原 アギト(PL) : 大丈夫大丈夫 もうバッドヤンキーの場所は分かっている 事故はそうそうないだろう…… 劔 理一(PL) : 仕方ないね…
※実はここ、GMの裁定ミスです。今回配置されている「お祭り舞台」は、2サイクル目に必ずバッドヤンキーが立ち寄る【ナワバリ効果】があるため、この効果を発揮させるためには1サイクル目でPCがこの施設をナワバリにしている必要があります。メンゴメンゴ。…それはそれとして、リヒトくん、おなかいっぱいでちょっと眠くて頭が働かなかった説ありませんか。
GM : 2サイクル目で取れる行動は、「行きたい施設を宣言」か、「他のPCに同行」、「その場で待機」です。 GM : 先ほどと同じく、「いっせーの、せ」で、「行先の施設の番号」、「〇〇に同行」、「待機」のどれかを宣言してください。 稲原 アギト(PL) : あ、さっきと隣接したところにしかいけないんでしたっけ! GM : です! 稲原 アギト(PL) : オーケーです!悩む必要なかった 劔 理一(PL) : 私もOKですー GM : はーい!ではいきますよー GM : いっせーの、せ
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GM : では順番に! GM : ドワーフの洞窟。さっき格闘家ヤンキーが置いてった書類が山積みになってます GM : 皆さん死んだ目で名前を書いたり金額を書いたりハンコを押したりしてます 劔 理一(PL) : ドワーフたちが過酷な事務仕事を… GM : 手をおさえて倒れる人もいますね 劔 理一 : じゃあ、もともとは美しい珊瑚の洞窟だったであろうそこに踏み入れて  「なんだこのザマはよ、せっかく上等なモン作る腕があンのに、役にも立たねえ紙切れの山に苦戦しやがって」  と、おもむろに書類の山の一つに歩み寄っていってその山をバッサーと GM : では黄金の炎がボンッと 劔 理一 : 「おいテメェら! その手は何のためにあンのかもう一度思い出しやがれ!」 劔 理一(PL) : みたいな? GM : 次々に書類が消滅していきます GM : その喝に、ドワーフたちの目に徐々に光が戻っていきます 「そうじゃ…ワシらの手は…」 「このようなものにかけるためのものでは…無かったはずじゃ…!」 稲原 アギト(PL) : 書類仕事をするドワーフがかなり面白くて面白さが勝ってしまう 劔 理一(PL) : 絵面は最高に面白いんですけどね…絵面は… GM : ちっさいしかくいとこにハンコを押すドワーフ 稲原 アギト(PL) : そのはんこを彫るときとかはちょっとマシな仕事になるんだろうな…… GM : ドワーフたちが声のした方に目をやると、入り口から差し込む陽光を背負ったリヒトさんがいるわけです 劔 理一(PL) : かがやけるヤンキー GM : 「ヤンキー様!!」「おお!伝説のとおりじゃ!!ヤンキー様じゃ!!」 GM : 皆さん涙を流しながら手を合わせますよ 劔 理一(PL) : ありがたいかんじになっている! GM : 1サイクル目でもひどい目にあってたからね! 稲原 アギト(PL) : あとできっと彫られるんだろうな 稲原 アギト(PL) : 腹いせのようにすごい量彫られそう GM : 掘られますね 伝説のヤンキーリヒト像 GM : めっちゃ掘られてお土産屋さんに並ぶ 稲原 アギト(PL) : 後光が差しててすごいかっこいいやつ 劔 理一 : 「チッ…そんな死んだ爺さん拝むみてえなのはやめろよな…」と鼻を擦りつつ  しかしまんざらでもない 人の役に立つのは嫌いではないのだ GM : 仏像みたいな 稲原 アギト(PL) : リヒトまんじゅうとかも開発していこう GM : いいですね 劔 理一(PL) : 味にうるさい本人がちゃんと監修しよう 稲原 アギト(PL) : 「本人監修!」ってちっちゃく丸い絵を乗っけよう ※充実していくコーラルキングダム土産物会議 GM : 「ありがとうございますじゃ、必ずやヤンキー様のご活躍を後世に伝えるといたしましょう…!」「おお、インスピレーションが滾ってきたぞ…!!」 GM : もう後ろの方では彫り始めてます 劔 理一 : 話が早い! GM : お土産用リヒト珊瑚像 稲原 アギト(PL) : さいごには買って帰りたいね 稲原 アギト(PL) : 「う、あれは……夢だったのか……」 稲原 アギト(PL) : 「これは……リヒト像」 GM : 「お礼にこちらを。武器の扱いが記された、ワシら秘蔵のリーフレットですじゃ」 稲原 アギト(PL) : そういう!!!方向性!!! 稲原 アギト(PL) : 書類に紛れて隠してきたんだろうなあ GM : 「お仲間様のぶんも、ささ」 劔 理一 : 「おう、悪いな。武器つっても俺は竹刀ぐらいしか解らねえが、あいつらなら色々使えるんだろ」 GM : リーフレットの在庫をみかん箱に入れてたのでバレずに済みました 劔 理一 : リーフレットをありがたく受け取っておきましょう 劔 理一(PL) : そのへんのチェックがわりと甘いな!? GM : ドワーフだもの
※A4フルカラー中折り16P。観光案内所とかにも置いてる。
GM : ということで、ドワーフの洞窟がPCのナワバリになりました! 稲原 アギト : おれは拳だからハルが喜びそうだ GM : ハル「きゃっきゃっ」 稲原 アギト(PL) : さすがだリヒトさん!
GM : そして城では… GM : 先ほどのヤンキードワーフが「おう、追加の書類回収してきたぜぇ」イワン「ウワーッ!!!!」 稲原 アギト(PL) : まだ定時が遠いな GM : イワン君の目が濁っていきます 稲原 アギト(PL) : シンデレライワンくん GM : ガラスの靴は書類に埋もれて取り出せないし GM : カボチャの馬車も納期が遅れてるの 稲原 アギト(PL) : 12時の魔法はでろっでろに溶けちゃうし 劔 理一 : つらい 稲原 アギト : しんどい
GM : 寿司屋さん。客足が戻ってきたようです 劔 理一(PL) : よかったよかった 稲原 アギト(PL) : 回復したところも描写あるんだ! GM : 店主のお寿司を食べた人たちが、「俺たちは何を…」「家にある書類、本当に書く必要あるか…?」ざわ…ざわ… 稲原 アギト : 書類しんじつに気がつき始めたようだな
GM : お祭り舞台。画定が追加のお仕事を持ってきて皆さん目と心が死にました 稲原 アギト(PL) : わんこそばのように追加される書類 GM : 「皆さん、期限は待ってくれませんよ?さぁさぁ手を動かして。レシートは全部ありますか?領収書は?」 稲原 アギト(PL) : すごいまっとうなきがしてくるのはどうしてだろうか 劔 理一(PL) : うん…大事なことだよね… 劔 理一(PL) : (実家が自営業感) GM : バッドヤンキー本人は苦しむ人たちを眺めてニコニコしてます 劔 理一(PL) : やはりじゃあくだった
GM : では人魚の村。サーモン漁と冷凍サーモンの出荷が再開されました GM : 皆さん「ヤンキー様のご恩に報いるためにも、俺たちもしっかりしないと!」と GM : 活き活きと働いていますね 稲原 アギト : 「タフだな……。おれはもうすこし休んでもいいとおもうが」 GM : あ、すみません処理一個忘れてました GM : 喧嘩上等に勝利したので、アギトとハルのテンションが一段階上昇します 稲原 アギト(PL) : わーーーい!!! 稲原 アギト(PL) : ホカホカしてます GM : ハルもサーモン美味かったっすねーってホクホクしてます 稲原 アギト : おれはほめられてホクホクしているのは内緒だ GM : かわいい 劔 理一 : かわいい 稲原 アギト : 一段階だとテンアゲくらいですかね? GM : ですね、今テンアゲです GM : みんなテンアゲ 稲原 アギト : おっとサマリーがあったわ!ありがとうございます!
GM : で、港です GM : 港は、海と町との玄関口になっています GM : ちょっとした屋台やお店、船乗りたちを癒す酒場、船舶管理事務所なんかもあったりします GM : 海面が近いので、町の上よりも多数の珊瑚で構成されています。見渡せば色とりどりの珊瑚の建造物が立ち並んでいますが… GM : やはりここでも、誰もが書類を無言で書いています GM : 酒場の戸口には無常な「CLOSED」奥では客も店主もカリカリ...ポン...船着き場では船員も船長も木箱の上でカリカリ... 稲原 アギト : 「このままほうっておけば書類に埋もれて何一つ成せないままのたれじぬことになるな」 稲原 アギト : おれはCLOSEDのふだをひっくり返して入っていこう 劔 理一(PL) : シーンが完全に西部劇 GM : 「違いないっすねぇ。気が狂いそうですよぉ…いや、もう狂ってるンすかね。ここの連中。」アギトについていきます GM : カラン... GM : ではあの西部劇の扉を開けると、「何か」が店主の目の前に新しい書類を置いたところでした GM : それは、あなた方のほうをギロリと睨みつけます 稲原 アギト : では構わず書類を崩しながら「注文をいいか? おれはドキュメントのスペッスをむげんにうめるつもりはない」 GM : ではそれは、鉤爪でガッとアギトの肩をつかみますね。少し描写します
GM : その腹部と触覚と鉤爪はまるで昆虫のようでもあり、その皮膚と目はまるで人間のようでもあり、背に生えた翼は蝙蝠のようでもあり…
GM : 腐乱した死体のような臭気を発する異形の生物が、あなた方の前に姿を現します。
GM : 人の世の理から外れたこの異形を目の当たりにした探索者は、全員(1/1D6)の正気度ロールを行ってください。
稲原 アギト(PL) : あ、強いやつだ 劔 理一(PL) : そういえばビヤーキーだった GM : ですが、あなた方はヤンキーなのでしなくていいです。なんかキモいのがいます。 劔 理一(PL) : つよい 稲原 アギト(PL) : めんじょされた GM : いじょうです
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※なんかキモいの。探索者は死ぬ。
稲原 アギト(PL) : 一瞬どの能力値だ!?ってキャラシを参照しにいくところだった GM : ビヤーキーくんが顎をカチカチ言わせてますね 稲原 アギト : 「おれがようがあるのはヘンな虫でもスペッスでもないな」 稲原 アギト : プイプイ拳を構えますね GM : 「ビヤー!!!キー!!!!」「なんか怒ってないっすかぁこいつぅ」 GM : 「喧嘩上等」です! GM : ではPC側からどうぞ! 稲原 アギト(PL) : わーい!できることふえたかな?一応武器攻撃はできるんだけど~ GM : はーい!武器攻撃もできますよー! GM : 今ならテンアゲで攻撃力がさらに+1だドン! 稲原 アギト(PL) : 武器って持ってるモノですか?あとはなんだ ベイブを呼んでマジギレになってコークスクリューという手もありそうだけど 稲原 アギト(PL) : でもボス戦でやりたい気もするな~ GM : 武器の攻撃力はこちらをご覧ください(※公式の武器データ表のリンクを貼るGM) GM : 「扱いにくさ」ぶん達成値がマイナスされます 稲原 アギト(PL) : マグロってGMのおふざけじゃないんですか???? GM : 公式ですが??????? 劔 理一(PL) : 冒企だからね…
※公式ですが??????????????
稲原 アギト(PL) : マグロ2d6+6か 扱いにくさ2だけどいいな GM : サーモンなら扱いにくさ1ですよ GM : プレイシートのすみにこっそりデータ作っておきましたよ 稲原 アギト(PL) : 1d6+6だ! GM : マグロより小さいから1d6でいいかなという安直なデータ 稲原 アギト(PL) : 9出さないとマグロは振れないのかな 目標値いくつでしたっけ GM : アギトくんは修行で振るなら目標値7ですね 稲原 アギト(PL) : ありがとうございます!マグロを振りたいです 大きいので GM : はーい!ではカウンターの手頃な場所に解凍中の冷凍マグロがありました! 稲原 アギト : !roll 2d6 ダイスボット : @アギト rolled 5. (1+4=5) GM : ンッ 稲原 アギト(PL) : だめだ すっぱぬけてしまった! 稲原 アギト : 「おまえのまねをして武器を使ってみたが、あつかいが難しい……てほんを見せてくれ」 GM : どうします?ハルから友情修正出します? GM : 一度使うと使えなくなりますけど
※修正などに用いた友情度には「リスペクト」欄にチェックが入り、チェックが外れるまで使えなくなります。
稲原 アギト(PL) : 決戦までとっておきましょう 稲原 アギト(PL) : マグロは冷凍します GM : らじゃです! GM : ではマグロは明後日の方向に飛んでいき GM : ヤンキーオーラに導かれて開いた冷凍庫にホールインワンしました GM : ��゚タン 劔 理一(PL) : タベモノダイジニ! 稲原 アギト(PL) : ふぃーと汗を拭う GM : えらい GM : ハル「おもしれーことするじゃねーっすかセンパイ!…ところで俺ェ、さっき波止場で変わったモン見つけて来たんスよォ」 稲原 アギト : 「めざといな。真の男はチャンスを逃さない……」 GM : 魔法の爆弾 出目次第では仕留めきれないことに気付いた GM : うー うー
※魔法の爆弾の威力は7D6-13。GMの中の人は出目運が悪い傾向があるが、せっかくなので使ってみたい欲望と円滑に進行させたい気持ちで揺れている。
稲原 アギト(PL) : 1回で倒さないとダメでしたっけ! GM : しとめたい!! GM : メインフェイズの戦闘は1ラウンドきりなので!! 稲原 アギト(PL) : そうだったのか!あっそうかシノビガミとかそうだ! 稲原 アギト(PL) : とととととりあえず昆虫の居所を抜いて…… ※アギトPLは こんらんしている!!! 稲原 アギト(PL) : 攻撃食らったら病院いく?院卒になれるかもしれない 稲原 アギト(PL) : ギプスになんか硬派な一文を書いてもらおう。 稲原 アギト(PL) : 占拠で武器攻撃の威力があがってたりしません? GM : 病院送りはないですが、クライマックスに兵士を残したくないきもち GM : じゃあこうしよう、ごとっと取り出した魔法の爆弾に怯えて逃げ出したビヤーキーに GM : サーモンを投擲しましょう GM : 突然サーモンが突き刺さって死ぬかもしれない 劔 理一(PL) : 軟弱だなビヤーキー!
※おろかな探索者を*すぞーと息巻いて現れたら、こっちを見て怯みもしない奴らがマグロだの爆弾だの持って襲い掛かってくるビヤーキーの身にもなってほしい。
稲原 アギト(PL) : GMの温情温泉が湧いた GM : でもGMなので一人芝居なんだ ごめんよ 稲原 アギト(PL) : この温泉はダイスに効くんですね GM : ふらぐやめて やめて 劔 理一(PL) : 効能:ファンブル、いちたりない 稲原 アギト(PL) : すまない どうしてもマグロを振り回したくて…… 稲原 アギト : この機会を逃したらもう一生TRPGでマグロを振る機会は訪れないんじゃないかなと思うとつい GM : わかる>マグロ
※君のスタイルが「喧嘩殺法」なら「しこみ武器」の武器を「マグロ」ということにしても良い(要GM許可)。
GM : 【サーモン】で【武器攻撃】します!目標値はさっき説明しました5! GM : !roll 2d6 ダイスボット : @GM rolled 8. (3+5=8) GM : (サーモンが)刺さったー!! 稲�� アギト : 当ててくなあ~ GM : ダメージ GM : 1d6 GM : !roll 1d6 ダイスボット : @GM rolled 1. 稲原 アギト(PL) : フフッ 劔 理一(PL) : ウン…
※GMの中の人は(同)
GM : 1+6+戦闘スタイル2+二つ名修正1+テンアゲ1 稲原 アギト(PL) : あと施設効果の+2はいりませんか! 稲原 アギト(PL) : 同時だと入らないかな 劔 理一(PL) : あっでも結構補正が入るぞ! GM : ありますね!! 稲原 アギト(PL) : イマジナリーリヒトが伝えてくれるはずだ GM : なので合計で~13! GM : 施設なくても11! GM : たまたま吊るされてた荒巻鮭がビヤーキーを粉砕しました GM : なんだこの字面 稲原 アギト(PL) : ビヤーキー不運すぎない??? 稲原 アギト(PL) : お祓いとか行った方が良い 劔 理一(PL) : こんな異世界に喚び出されておきながら荒巻鮭に粉砕されるなんて 稲原 アギト(PL) : でもPCはそんなことしらないのでハイタッチします GM : では皆さんハッと顔をあげて…アギトさんの目の前の店主も書類を持つ手が震えていて… 稲原 アギト : 「あの角度、あの位置、あの鮭……おまえはすべてを計算しつくしていたのか……」 GM : 「たまたまっすよぉ、たまたまぁ」ヘラヘラ 稲原 アギト : 「この鮭をハル鮭と呼ぼう」 GM : 「それはやめてください」 劔 理一(PL) : 正直なのはよいことだハルくん 稲原 アギト : 鮭をダンッと床の上に刺して伝説の鮭にします 劔 理一(PL) : 真の男だけが引き抜くことのできる伝説の鮭だ!
※リヒト像、伝説の鮭。確実に異世界に爪痕を残していくヤンキー。
稲原 アギト : 「謙虚なことだ。それでこそ真の男というわけか……」 GM : では刺したとこにたまたま書類が落ちてたことにして GM : 書類が黄金の炎を上げて燃え尽きます GM : 港中で同じ現象が起きたのでしょう、港は大歓声に包まれます 稲原 アギト : 鮭のうろこが炎を反射してキラキラと輝いたことでしょう GM : 美しい GM : あ、もちろんハルはパイセンとハイタッチしますいえーい GM : 「なんだ今のは!」「そういえばさっき通りかかったのってヤンキー様じゃないのか!?」 稲原 アギト : 「今回のたて役者はハルだったな……おれはしかと見ていた」嫌そうじゃなかったら港の人に交じってたくさん胴上げしよう GM : 人々が酒場の周りに押し寄せますね。鳴りやまぬヤンキーコール GM : じゃあハルは胴上げされますね。「うっひょー!」とか喜んでる 稲原 アギト(PL) : マグロもサーモンもきっとびちびちはねている GM : イカもタコも、すべての水揚げ品がヤンキー達を祝福している 劔 理一(PL) : もうエンドロール入ってもいいような光景
※ワーッショイ!!ワーッショイ!! ビチビチ......ビチビチ.........(流れるクレジット)
稲原 アギト : 「おれはこの感動を末永くリヒトにも語り継いでいかないとならない使命にかられている」 GM : アギトくんももれなくベイブといっしょに胴上げされます GM : 「何かあったら絶対駆け付けるからな!!」「この町を頼んだぜヤンキー!!」 稲原 アギト : 「おれはなにもしていないのだが胴上げをしたいというのならかまわない(ちょっと嬉しそう)」 劔 理一(PL) : ベイブもちゃんと胴上げしてくれるのやさしいなあ GM : 港がPCのナワバリになりました!異世界の人々からの友情度を1点獲得します 稲原 アギト : 「なんてことだ。連中ははたらくことしか頭にないのか……?」 GM : 「まあまあ。協力するっつってんだからいいじゃないっすか。」 GM : 「ここの人らの世界なんだし、ちーったぁ働いてもらいましょうって」 稲原 アギト : 「それもそうだな。ベイブもプイプイいっているようだから良い方向に進んでいるんだろう」 GM : ベイブ「プイ!」
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GM : では2サイクル目が終了したところで GM : 「襲撃シーン」が発生します! 劔 理一(PL) : いよいよですな GM : 各々の思いを胸に皆さんが施設から出てくると、無数の木っ端ビヤーキーが家という家、施設という施設のドアを開けて出てきます。 GM : 皆、手には大量の書類を持っています。あれがイワンの元に集まったら…… 劔 理一(PL) : ヒエッ 劔 理一(PL) : 心が折れてしまう 稲原 アギト(PL) : 笑い事じゃないんだけど律儀に書類でSANを削ってるのがすごい笑ってしまう GM : 提出書類を運ぶ神話生物 GM : ではリヒトさん。ドワーフの洞窟から…どこかへ向かう途中ですかね。イワンくんがいるお城ですかね 劔 理一(PL) : まあ寿司屋に戻る理由もないですしお城行きですかねえ 劔 理一(PL) : その途中で名状しがたい光景に遭遇すると GM : そこで、道を塞ぐほどにあふれかえる木っ端ビヤーキーの群れに遭遇するわけです GM : そうそう 稲原 アギト(PL) : PDFをプリントしてはんこ押してスキャンしてPDFにして提出する仕事が待っている 劔 理一(PL) : グワーッ生々しい! GM : ファックスをエクセル形式に直す仕事が GM : クソガ 稲原 アギト(PL) : そこには……おびただしいエクセルの非表示セルが…… GM : ハルとアギトの方も同様ですね、お城に向かう道を書類配達ビヤーキーがわさわさと GM : 「これ…イワンの奴、ヤバくないっすか!?」 稲原 アギト : 「!まずい!定時までに間に合うか……?」 稲原 アギト : 「かんがえるのは真の男らしくなかったな。急いでから考えることとしよう」 稲原 アギト : スッタカター 劔 理一 : 量が多いから単に喧嘩挑んでも無理っぽいかな…? GM : ですが道をビヤーキーが塞いでいて通れない!そこに… GM : リヒトのほうは、背後から銃声がしますね 劔 理一 : !? GM : 振り返ると、先ほどのドワーフたちが(現代人目線では)古い銃を手に、ビヤーキーの群れに立ち向かいます
※フリントロック式とかのなんかいいかんじのやつ。
GM : 寿司屋のおっちゃんもいますね GM : マグロふりまわしてます 劔 理一 : おお…! GM : アギトのほうは、槍を持った人魚たちが頑張って陸にあがってきてビヤーキーに立ち向かいます GM : あと港の方々もいます GM : 人々の健闘により、城までの道が開かれます! 劔 理一 : 「なんだオッサンたち、無茶すんじゃねえよ! テメェらは自分の持ち場に戻りやがれ!」  と言いつつもちょっと頼もしいのである GM : 「アンタのおかげで目が覚めたんだ!これくらいはやらせてくれよな!!」「城にいるあのヒョロくさいエルフの坊主を頼んだぞ!!」 劔 理一 : 「…おう! とっとと終わらせて戻ってくるからそれまでヘバるんじゃねえぞ!」と城へ急ごう 稲原 アギト : 「おびただしい真の男たちの群れ……! 今がぜっこうのチャンスだ。おれはこのチャンスをみすみすのがすほど節穴ではない。ダイブするしかないだろうな」 GM : あ、リヒトくんのところには、あの老人が姿を現しますね GM : 「ヤンキー様!ワシです!先ほどお会いした、この町の町長ですじゃ!!」 GM : 「皆様のおかげで、この町の絶望の気配は薄れ…町人たちの気付けのおかげで、ワシもこうして正気を取り戻せました!」 劔 理一(PL) : あああやっぱりそうだったのか! GM : 「どうかイワンを!イワンを助けてやってくだされ!!」 劔 理一 : 「! てめェか、もうゴミ拾いなんざする必要はねえ! 後は俺らに任せな!」 劔 理一 : こうなったら何がなんでもやるしかないモードである 稲原 アギト : 「おれの計算によると勝率はせいぜい9割ごぶってところだろうな……」(弱気のつもり) 稲原 アギト : 「だが行くしか選択肢はない」 劔 理一 : まさか別行動の二人がマグロと荒巻鮭で敵を粉砕していたとは思ってもみないのである ※思ってたら狂人だと思います。 GM : お城には木っ端ビヤーキーたちが書類を手に手に集まっています。イワン君は今にも書類に押しつぶされそうです。どうぞお好きに暴れRPしてください。 GM : イワンくんを助けてしまってください GM : 本丸はその後です 劔 理一(PL) : じゃあ、とりあえずどっかで適当に合流したことにしましょうか 稲原 アギト(PL) : いいですね LINEしますか? GM : ライーン 劔 理一 : こう、「特攻(ブッコミ)」みたいなスタンプが GM : やってやんぞと 稲原 アギト :  「断る   理由は   ないな」  みたいな筆字スタンポがタイムラインを流れていく
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GM : では、ハルが物珍しそうにアギトのスマホをのぞき込んだりしてましたが GM : 皆さん問題無く合流して…いえ、���っかくだから木っ端ビヤーキーをちぎっては投げしながら合流したことにしましょうか 劔 理一(PL) : そうそう ちぎっては投げちぎっては投げ 稲原 アギト : 「こうか、だんだんコツがつかめてきた」 GM : マグロですか サーモンですか 稲原 アギト : ハルのまねをして武器を使ってみたりなどするRPをする 稲原 アギト : あ、じゃあサーモンで 稲原 アギト : 取り回しがいいので 稲原 アギト : マグロは懲りました 劔 理一 : そのへんに落ちてた棒を竹刀か木刀に見立てて振り回したりしつつ GM : ではサーモン一振りで 劔 理一 : 何故かサーモンを振り回しているアギトに気付いて疑問符が無限湧きしたり GM : !roll 1d20 ダイスボット : @GM rolled 5. GM : 5体くらいビヤーキーがふっとびました 劔 理一 : 普通に無双している GM : デーンデデデデーンデン(※三國無双のBGMを表現しようとしている) 稲原 アギト : 初期刀サーモン 稲原 アギト : こっちはリヒトを見つけて「!」が沸いてる GM : 後ろではマグロを振り回すハルもいます「スジ良いっすねぇパイセン!!」 GM : あ、そうだ GM : ハルとアギト、喧嘩上等で勝利したので友情度+1、テンション+1です
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稲原 アギト : じゃあ今回はリヒトを見かけてテンションが上がった 劔 理一 : 順調に殴り合いで友情を深めている…! 稲原 アギト : 知らない異世界 ちょっと心細い そんなところに知った顔を見つけてじゃっかん嬉しかった……かもしれない 稲原 アギト : わーいわーい GM : 「リヒトさん、こっちっすー!!」 GM : マグロぶーんぶーん サーモンぶーんぶーん 劔 理一 : こっちも湧き出す疑問符をとりあえずどっかにやって「おう、二人ともキレてるみてえだな!」 GM : ビヤーキーぐしゃーぐしゃー 劔 理一 : それでも抑えきれない疑問はあるけれど 他に何かなかったのかっていうのはあるけど 稲原 アギト : さすがにビヤーキーに疲れてきたのでサーモンをちょっと囓る GM : おいしいです 稲原 アギト : そして何事もなかったかのように戦いを再開する 劔 理一(PL) : 生食可能な新鮮さ! 稲原 アギト(PL) : 一度冷凍してあるから寄生虫のしんぱいもないのだ GM : そして執務室!邪悪な書類に包まれてグッタリしているイワン!おおブッダ! 劔 理一 : じゃあくなしょるいをガッサーとかき分けて掘り出してあげよう GM : イワンはうわごとのように「仕事…しなきゃ…仕事…」とつぶやいています 稲原 アギト : 「フレックス!!!!!!」という呪文を唱えながら書類をなぎ倒そう 稲原 アギト : フレックスだと永遠に労働しそうだな…… 稲原 アギト : 裁量労働制(定価働き放題) GM : かわいそう GM : でも助けようとする心意気はサーモンを黄金のサーモンへと変えました 劔 理一 : なんて???? 稲原 アギト : サーモン+1 GM : サーモンから黄金の炎がほとばしり、書類が燃え上がって消滅します! GM : 本当に必要なのであろう数枚の書類だけを残し、執務室は綺麗になりました。イワンがハッとした表情でリヒトを見ます 稲原 アギト(PL) : あっクエストアイテムだ GM : サーモンは役目を果たしたと言わんばかりに普通のサーモンに戻りました 稲原 アギト(PL) : この世界詰み防止システムはいってる GM : クエスト属性です 劔 理一(PL) : 重要NPCには不死属性がついてるタイプのオープンワールドRPGだ…
※何ダー何ロールズなんだ…
GM : 「皆さん…あれ…仕事は……?あんなに山積みだったのに……」 劔 理一 : 「おい、モヤシ野郎。そろそろ定時だ、退勤の準備でもしとけ」 劔 理一 : 「残業するのは俺たちだけで十分だ」 GM : カッチョイイ GM : 「私は…ああ、帰れる…帰れるんですね…!?定時で…!定時で…!!」ぽろぽろ
※定時で………!!!!!
稲原 アギト : 「よくきたな、イワン。残念だがおれは必要いじょうにはたらいてやる気はない……すぐにけりをつけることになる」 GM : 「ま、ここまでやったんだし。俺も最後まで付き合いますよぉ。」ハルは相変わらずヘラヘラしてます GM : 「ありがとうございます…!ありがとうございます…!!」 稲原 アギト : 「そう時間はとらせないはずだ」 稲原 アギト(PL) : ハルくんここで戦ってくれるのやさしみ やさしみ温泉が湧いている 稲原 アギト(PL) : やさしさ源泉かけながしだ~~~ GM : 「バッドヤンキーは…画定は、お祭り舞台にいるはずです。」 GM : 「及ばずながら私も、皆さんについて行きます。皆さんのヤンキー伝説を、最後まで見届けさせてください…!」 GM : イワンの大切な夢を守ったことにより、PC全員のテンションが一段階上昇します!
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※これにより、アギトとハルがテンション最大値「怒りMAX」に突入します。ダメージボーナスはなんと2D6!! 劔 理一(PL) : ヤッター!!! 稲原 アギト(PL) : わーいわーい しかし定時退社して仕事を見に来るってワーカーホリックだなあ 稲原 アギト(PL) : 帰らなくて良いのかい……?いや、明日から毎日定時で帰れるんだ…… 稲原 アギト(PL) : 週休も完全週休二日になるんだ 劔 理一(PL) : わりとこうなる前から社畜体質だったのかもしれませんねこの世界の人々… 稲原 アギト(PL) : 逆に仕事をとりあげたら発狂して死ぬかもしれないな…… GM : 珊瑚彫刻ももしかしたら副業かもしれない 稲原 アギト(PL) : はいほーはいほーしごとがすきー GM : 城の外に出ると、「異世界の人々」もいますね。皆PCについてきます。 稲原 アギト : (あまりチームを組むことがないからちょっとむずむずするな……) GM : では「決闘フェイズ」に移ります!
TO BE CONTINUED...
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hananien · 4 years
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【S/D】アナ雪パロまとめ
アナ雪2の制作ドキュメンタリー面白かった。みんなで一つのものを作るって素敵だなって素直に感動しちゃった。一人でコツコツ作���上げるのも素敵だけどさ、それとはまた違うよね。
アナ雪は大好き。2でアナが超進化を遂げたのでもっと好きになった。また兄弟パロ書きたいな。
3話あるけど全部で12000字くらいなのでまとめました。
<エルサのサプライズパロ>
 弟の誕生日を祝うため、城や城下にまで大がかりなサプライズを仕込んだディーンは、過労で熱を出してしまった。キャスたちの協力もあって無事にサプライズは成功したものの、そのあとで何十年ぶりくらいに寝込むことになってしまった。  (これくらいで熱を出すなんて、おれも年をとったもんだな。そりゃ、ここのとこ狩りもあって、ろくに寝てなかったけど……。昔はそんなこと、ざらだったのに。こんなていたらくじゃ、草葉の陰から親父が泣くな)  「ディーン」 スープ皿を銀の盆に乗せて、弟のサムが寝室にやってきた。「寝てた? ちょっとでも食べれそう?」  「食べるよ。腹ぺこだ」  まだ熱のせいで頭はもうろうとしていて、空腹を感じるところまで回復してないことは自覚していたが、弟が持ってきた食料を拒否するなんて選択肢は、ディーンの中にないのだ。  サムは盆をおいて、ディーンが体を起こすのを手伝ってやった。額に乗せていた手ぬぐいを水盆に戻し、飾り枕を背中に当ててやって、自分の上着を脱いで兄の肩にかけてやる。  兄がスープをすするのを数分見つめてから、サムは切り出した。  「ディーン、今日はありがとう」  「うん」  「兄貴に祝ってもらう最初の誕生日に、こうやって世話が出来て、本当にうれしいよ(※何かあって兄弟は引き離されて大人になり、愛の力で再びくっつきました)」  「おまえそれ、いやみかよ。悪かったな面倒かけて」  「ちがうよ」 サムは少しびっくりしたように目を広げて、それから優しく微笑んだ。「本当にうれしいんだ。まあ、サプライズのほうは、あんたの頭を疑ったけど。ワーウルフ狩りで討伐隊の指揮もしてたってのに、よくあんなことやる時間あったな? 馬鹿だよ、ほんと。ルーガルーに噛まれたって、雪山で遭難したときだって、けろっとしてるあんたが、熱を出すなんて……」  「うーん」 ディーンは唸った。弟の誕生日を完璧に祝ってやりたかったのに、自分の体調のせいでぐだぐだになったあげく、こうやって真っ向から当の弟に苦言をされると堪えるのである。  「でも、そのおかげかな。こうやって二人きりでいられる」  「看病なんてお前がしなくていいんだぞ」  気難し気に眉を寄せてそっぽを向きたがるディーンの肩に手をおき、ずれてしまった上着をかけ直してやって、サムはまた優しく微笑んだ。「ずっと昔、僕らがまだ一緒にいたとき、あんたは熱を出した僕に一晩中つきそって、手を握って励ましてくれた」  そんなことを言いながらサムが手を握ってきたので、しかもディーンの利き手を両手で握ってきたので、ディーンは急に落ち着かなくなったが、すぐにその思い出の中に入り込んだ。「ああ……おまえはよく熱を出す子だった。おかげで冬は湯たんぽいらずだったな」  「一緒に眠ると怒られた。兄貴に病気をうつしてもいいのかって、親父に叱られたよ」  「おれは一度もおまえから病気をもらったことなんて」  「ああ、あんた病気知らずだった。王太子の鏡だよな、その点は」  「その点はって」  「僕はその点、邪悪な弟王子だったんだ。あんたに熱がうつればいいって思ってた。そうしたら、明日になっても、一緒のベッドに入っていられる。今度は僕があんたの手を握ってやって、大丈夫だよ、ディーン、明日になれば、外で遊べるようになるさって、励ましてやるんだって思ってたんだ」  「……そりゃ――健気だ」  「本当?」  「うん……」  「こうしてまた一緒にいられて、すごく幸せなんだ」  「サミー」  (キスしていい?) サムは兄の唇を見つめながら、心のうちで問いかけた。息を押し殺しながら近づいて、上気した頬に自分の唇の端をくっつける。まだふたりが幼いころ、親愛を込めてよくそうしていたように。  ディーンはくすぐったそうに笑って顔をそむけた。「なんだよ、ほんとにうつるぞ。おまえまで熱出されたらキャスが倒れる」  「もう僕は子供じゃない」 サムは握った手の平を親指で撫でながら言った。「だからそう簡単に病気はうつらないよ。そもそも兄貴の熱は病気じゃなくて過労と不摂生が原因だからね」  「悪かったな」  「僕のために無理してくれたんだろ。いいんだ、これからは僕がそばで見張ってるから」  「おー」  目を閉じたディーンの顔をサムは見つめ続ける。  やっと手に入った幸福だ、ぜったいに誰にも壊させない。兄が眠りについたのを確認すると、握った指先にそっとキスを落とす。彼がこの国に身を捧げるなら、自分はその彼こそに忠誠と愛を捧げよう。死がふたりを分かつまで。
<パイとエールと>
 公明正大な王と名高いサミュエル・ウィンチェスターが理不尽なことで家臣を叱りつけている。  若い王の右腕と名高いボビー・シンガー将軍は、習慣であり唯一の楽しみである愛馬との和やかな朝駆けのさなか、追いかけてきた部下たちにそう泣きつかれ、白い息で口ひげを凍らせながら城に戻るはめになった。  王は謁見の控えの間をうろうろと歩き回りながら、臣下たちの心身を凍り付かせていた。  「出来ないってのはどういうことだ!」 堂々たる長身から雷のような叱責が落ちる。八角形の間には二人の近衛兵と四人の上級家臣がおり、みんなひとまとまりになって青ざめた顔で下を向いている。  「これだけの者がいて、私の期待通りの働きをするものが一人もいない! なぜだ! 誰か答えろ!」  「おい……どうした」 ボビーは自分の馬にするように、両腕を垂らして相手を警戒させないよう王に近づいた。「陛下、何をイラついてる。今日は兄上の誕生日だろ」  サムは切れ長の目をまんまるに見開いて、「そうだよ!」と叫んだ。「今日はディーンの誕生日だ! ディーンが天界に行っちゃってから初めての誕生日で、初めて王国に戻る日だっていうのに、こいつらは僕の言ったことを何一つやってない!」  手に持っていた分厚い書冊を机に叩きつけた。ぱらぱらと何枚かの羊皮紙が床に落ちて、その何枚かに女性の肖像が描かれているのをボビーは見た。頬の中で舌打ちして、ボビーは、今朝、この不機嫌な王に見合い話を持ち掛けた無能者を罵った。  まだ手に持っていた冊束を乱暴に床に放り投げて、すでに凍り付いた家臣たちをさらに怯えさせ、サムは天井まである細い窓の前に立った。  ひし形の桟にオレンジ色のガラスが組み込まれている。曇りの日でも太陽のぬくもりを感じられる造りだ。サムがそこに立つ前には、兄のディーンが同じように窓の前に立った。金髪に黄金の冠をかぶったディーン・ウィンチェスターがオレンジの光を浴びて立つさまは、彼を幼少期から知る……つまり彼が見た目や地位ほどに華美な気性ではないと知るボビーにとっても神々しく見えたものだった。  ディーンがその右腕と名高かったカスティエルと共に天界に上がってしまってからというもの、思い出の中の彼の姿はますます神々しくイメージされていく。おそらくはこの控えの間にいる連中すべてがそうだろう。  「兄が戻ってくるのに、城にパイ焼き職人が二人しかいない」  「ですが、それで町のパン焼き職人を転職させて城に召し上げるというのは無理です……」 家政長が勇気を振り絞った。しかしその勇気も、サムのきつい眼差し一つで消えた。  「全ての近衛兵の制服を黒に染めろといったのになぜやらない!」  二人の近衛兵は顔を見合わせたが、すぐに踵をそろえて姿勢を正した。何も言わないのは賢いといえなくもない。  「何で黒にする必要がある?」  ボビーの問いにサムは食い気味に答えた。「ディーンが好きだからだよ! ディーンは黒が好きだ、よく似合ってる」  「ディーンはベージュだって好きだろ。ブラウンもブルーも、赤も黄色も好きだ。やつは色になんて興味ない」  「それに注文したはずのエール! 夏には醸造所に話を通していたはずなのになぜ届いていない!」  項垂れる家政長の代わりに、隣に立つ財務長が答えた。「あー、陛下。あの銘柄は虫害にやられて今年の出荷は無理ということで、代わりの銘柄を仕入れてありますが……」  「その話は聞いた! 私はこう言ったはずだ、ディーンは代わりの銘柄は好きじゃない。今年出荷分がないなら去年、一昨年、一昨々年に出したのをかき集めて城の酒蔵を一杯にしろと!」  「そんな、あれは人気の銘柄で国中を探してもそれほどの数はありません……」  「探したのか?」 サムは、背は自分の胸ほどもない、老年の財務長の前に覆いかぶさるように立ち、彼の額に指を突き付けた。「国中を、探したのか?」  財務長の勇気もこれで消えたに違いなかった。  ボビーは息を吐いた。  「みんな出て行ってくれ。申し訳ない。陛下にお話しがある。二人だけで。そう。謁見の儀の時間には間に合わせる。ありがとう。さっさと行って。ありがとう」 促されるや、そそくさと逃げるように控えの間から去っていった六人を丁寧に見送り、ボビーは後ろ手に扉の錠を下ろした。  「どうなってる」 ボビーの怖い声にもサムはたじろがなかった。気ぜわしそうに執務机の周りを歩き回る足を止めない。  「最悪だ。完璧にしたかったのに!」 床に落ちた肖像画をぐちゃぐちゃにしながら気性の荒い狼みたいな眼つきをしている。「ディーンの誕生日を完璧に祝ってやりたかったんだ! 四年前、僕らがまた家族になれたあとに、ディーンが僕にしてくれたみたいに!」  「四年前? ああ、城じゅうに糸を張り巡らせて兵士の仕事の邪魔をしまくってくれたあれか……」 ボビーは口ひげを撫でて懐かしい過去を思い返した。「しかしあの時はディーンが熱を出して……結局は数日寝込むことになっただろう」  「完璧な誕生日だった。僕のために体調を崩してまで計画してくれたこと、その後の、一緒にいられた数日間も」  「あのな……」  「いろいろあって、あの後にゆっくりと記念日を祝えたことはなかった。ようやく国が落ち着いたと思ったら、ディーンは天界に行っちゃった。いいんだ、それは、ディーンが決めたことだし、僕と兄貴で世界の均衡が保てるなら僕だって喜んで地上の王様をやるさ。滅多に会えなくなっても仕方ない。天界の傲慢な天使どもが寛大にも一年に一日だけならディーンが地上に降りるのを許してくれた。それが今日だ! 今日が終われば次は一年後。その次はまた一年後だ!」  「わかっていたことだぞ」 ボビーはいった。「べったり双子みたいだったお前たちが、それでも考えた末に決めたことだ。ディーンが天界にいなければ、天使たちは恩寵を失い、天使が恩寵を失えば、人は死後の行き場を失う」  「これほど辛いとは思わなかった」  サムは椅子に座って長い足を投げ出し、希望を失ったかのように俯いた。  「なあ、サム。今日は貴重な一日だよな。どうするつもりだった。一年ぶりに再会して、近衛兵の制服を一新した報告をしたり、一晩じゃ食べきれないほどのパイの試食をさせたり、飲みきれない酒を詰め込んだ蔵を見せて自慢する気だったのか?」  「いや、それだけじゃない。ワーウルフ狩りの出征がなかったら、城前広場を修繕して僕とディーンの銅像を建てさせるつもりだった」  「わかった。そこまで馬鹿だとは思わなかった」 俯いたサムの肩に手をあて、ボビーはいった。「本当に馬鹿だな。サム、本当にディーンがそんなもの、望んでると思うのか?」  「ディーンには欲しいものなんてないんだ」 サムは不貞腐れたように視線を外したままいった。「だからディーンはディーンなんだ。天界に行っちゃうほどにね。それだから僕は、僕が考えられる限り全てのことをしてディーンを喜ばせてあげなきゃならない。ディーンが自分でも知らない喜びを見つけてあげたいんだよ」  「ディーンは自分の喜びを知ってる。サム、お前といることだ。ただそれだけだ」  サムの迷子のような目がボビーを見上げた。王になって一年、立派に執務をこなしている姿からは、誰もこの男の甘えたな部分を想像できないだろう。  もっとも、王がそんな一面を見せるのは兄と、育ての親ともいえるボビーにだけだ。  「……それと、エール」  「ああ、焼き立てのパイもな」 ボビーは笑う。「職人が二人もいればじゅうぶんだ」  サムはスンと鼻をすすって、ボビーの腕をタップして立ち上がる。  「舞踏会の用意は?」  「すんでるよ。ああ……サム、中止にするわけにはいかないぞ。もう客も揃ってるし、天界のほうにもやると伝えてある」  「わかってる。頼みがあるんだ……」
 ディーンがどうやって地上に戻ってくるか、サムは一年間毎日想像していた。空から天使のはしごがかかって、白い長衣をかぶったディーンがおつきの者たちを従えてしずしずと降りてくるとか。水平線の向こうからペガサスに乗って現れるとか。サムを驚かせるために、謁見の儀で拝謁する客に紛れ込んでくるかもしれない。  そのどれもがあまりに陳腐な空想だったと、サムは反省した。  謁見の儀を終えると、ディーンは何の変哲もない、中級貴族みたいな恰好で、控えの間に立っていた。  ひし形に桟が組まれた、長い半円の窓の前で。  「ディーン」  サムの声に振り向くと、ディーンは照れ臭そうな顔をして笑った。「サム」  二人で磁石みたいに駆け寄って、抱き合った。
 ディーンの誕生日を祝う舞踏会は大盛況した。近隣諸国の王侯貴族までが出席して、人と人ならざる者の世の均衡を保つ兄弟を称え、その犠牲に敬意を表した。ディーンと彼に随行したカスティエルは、誘いのあった女性全員とダンスを踊った。そしてディーンは、しかるべき時間みんなの祝福にこたえたあと、こっそりとボビーに渡された原稿を読み上げ――それはとても礼儀ただしく気持ちの良い短いスピーチだった――大広間を辞した。  「どこに行くんだ?」 一緒に舞踏会から抜け出したサムに手を引かれて、ディーンは地下に向かっていた。「なあ、王様がいなくていいのかよ。まだ舞踏会は続いてるんだぜ」  「僕がいなくてもみんな楽しんでる。今夜は一晩中、ディーンの誕生日を祝っててもらおう」  「本人がいない場所でか?」  「ああ。本人はここ」  サムは酒蔵の扉を開いてディーンを招いた。「ディーン、来てくれ」  いくつかある酒蔵のうち、一番小さな蔵だった。天井は低く、扉も小さい。サムの脇をくぐるように中に入ると、まるで秘密の洞窟に迷い込んだように感じた。  「ここ、こんなだったっけか」 踏み慣らされた土床の上に、毛皮のラグが敷かれている。大広間のシャンデリアを切り取ってきたみたいに重々しい、燭台に灯されたろうそくの明かり。壁づたいに整列された熟成樽の上には、瓶に詰められたエール、エール、エール。  「パイもある」 どこに隠してあったのか、扉を閉めたサムが両手に大きなレモンパイを持ってディーンを見つめている。  ちょっと決まり悪そうな、それでも自分のやったことを認めて、褒めてくれるのを期待しているような、誇らしげな瞳で。  「誕生日おめでとう、ディーン」  二人きりで過ごしたかったんだ。そういわれて、ディーンは弟の手からパイを奪い取った。  パイは危うい均衡で樽の上に置かれて、二人はラグの上に倒れ込んだ。
<永遠>
 誰がなんというおうと、おれたちが兄弟の一線を超えたことはない。  天使たちはおれの純潔を疑ってかかった。天界に昇る前には慌ただしく浄化の儀式をさせられた。”身持ちの固さ”について苦言をたれたアホ天使もいたほどだ。おれはその無礼に、女にモテモテだった自分を天使たちが勘違いするのも無理はないと思うことにした。  ああ、若く逞しい国王のおれと、いちゃつきたがる女は山ほどいた。でもおれは国王だ。心のどこかでは、弟に王位を譲るまでのつなぎの王だという思いもあった。だからこそ、うっかり子供でも出来たら大変だと、万全の危機管理をしていた。  つまりだ、おれはまだヴァージンだ。浄化の儀式は必要なかった。  女とも寝てないし、男とも寝てない。弟とは論外だ。  いつか、サムに王位を譲り、おれが王でないただの男になったら、女の温かな体内で果ててみたいと、そう思っていた。  でもたぶん、それは実現しない。なんというか、まあ……。  天界に行ってから、天使たちがおれの純潔について疑問視した原因が、女じゃないことに気がついた。そこまでくればおれだって、認めないわけにはいかない。  クソったれ天使たちの疑いも、あながち的外れじゃあないってこと。
 おれと弟が一線を超えたことはないが、お互いに超えたいと思っていることはどっちも知っている。  ということは、いずれ超えるってことだ。それがどうしようもない自然の流れってやつだ。  どうしてそんなことになったのかというと、つまりおれたち兄弟、血のつながった正真正銘の王家の血統である二人がおたがいに意識しあうようになったのはなぜかということだが、たぶんそれは、おれのせいだ。おれの力だ。  おれは小さい頃から不思議な力があった。  それはサムも同じだけど、サムの力はウィンチェスター家から代々受け継いだもので、おれのほうはちょっと系統が違った。今では、それが天使の恩寵だとわかっているが、当時はだれもそんなこと、想像もしなかった。それでも不思議な力には寛容な国柄だから、おれたち兄弟は一緒に仲良くすくすくと育った。ところがある事件が起きて、おれは自分の力でサムを傷つけてしまった。それ以来、両親はおれの力を真剣に考えるようになり、おれたち兄弟は引き離された。  おれが十一歳のとき、もう同じ部屋で寝ることは許されていなかったが、夜中にサムがこっそりとおれの寝室に忍び込み、ベッドに入ってきたことがあった。  「怖い夢を見た」という弟を追い払うなんてできるはずがなかった。お化けを怖がるサムのために、天蓋のカーテンを下ろし、四方に枕でバリケードをつくって、ベッドの真ん中でふたり丸まって眠った。  翌朝、おれは自分が精通したのを知った。天蓋ごしにやわらかくなった朝日がベッドに差し込み、シーツにくるまっていたおれたちは発熱したみたいに熱かった。下半身の違和感に手をやって、濡れた感触に理解が追い付いたとき、サムが目覚めた。汚れた指を見つめながら茫然とするおれを見て、サムはゆっくりとおれの手を取り、指についた液体を舐めて、それから、おれの唇の横にキスをした。  おれはサムを押しのけて、浴室に飛び込んだ。しばらくすると、侍女がおれを迎えに来て、両親のことろまで連れて行った。そこでおれは、これからは城の離れにある塔で、サムとは別の教育を受けさせると言い渡された。大事にはならなかったとはいえ、サムを傷つけた力には恐怖があったから、おれはおとなしくその決定に従った。結果として、サムがキスをした朝が、おれたちが子ども時代を一緒に過ごした最後の日になってしまった。  おれの変な力がなかったら、あのままずっと一緒に育つことができただろうし、そうならば、あの朝の続きに、納得できる落とし前をつけることもできただろう。おれはなぜサムがキスをしてきたのか、その後何年にわたってもんもんと考える羽目になった。サムによれば、彼もまた、どうしてあのタイミングでキスしてしまったのか、なぜすぐにおれの後を追わなかったのかと後悔していたらしい(追いかけて何をするつもりだったんだろう)。なんにせよ、お互いに言い訳できない状況で、大きなわだかまりを抱えたまま十年間も背中合わせに育ってしまったんだ。  再会は、おれの即位式だった。両親の葬儀ですら、顔を合わせていなかった。  喜びと、なつかしさ、罪悪感に羞恥心、後悔。それを大きく凌駕する、愛情。  弟は大きくなっていた。キャスに頼んで密偵まがいのことをさせ、身辺は把握していたけれど。王大弟の正装に身を包んだサムは、話で聞いたり、遠目にみたり、市井に出回っている写し絵よりもよっぽど立派だった。  意識するなって言うほうが無理だろ。
 ところでおれは、もう人じゃない。  一日に何度も食べなくても、排泄をしなくても、死なない体になった。天使いわく、おれは”顕在化された恩寵”だそうだ。恩寵っていうのは天使の持ってるスーパーパワーのことをいう。つまりおれはスーパーパワーの源で、天界の屋台骨ってこと。  そんな存在になっちまったから、もう必要のない穴ってのが体には残っているんだが、おれの天才的な弟ならその使い方を知っていると思っていた。  そして真実はその通り。弟はじつに使い方がうまい。  「純潔じゃなくなったら、天界には戻れない?」 一年前から存在を忘れられたおれの尻の穴にでかいペニスを突っ込んだサムが尋ねた。  うつ伏せになった胸は狼毛のラグのおかげで温かいが、腰を掴むサムの手のひらのほうが熱い。ラグの下に感じる土床の硬さより、背中にのしかかっているサムの腹のほうが硬い。  ついに弟を受け入れられたという喜びが、おれをしびれさせた。思考を、全身を。顕在化されたなんちゃらになったとしても、おれには肉体がある。天使たちはおれにはもう欲望がないといった。そんなのはウソだ。げんに今、おれの欲望は毛皮を湿らせ、サムの手に包まれるのを期待して震えている。  「サム……あ、ア」 しゃっくりをしたみたいに、意思を介さず肛門が収縮する。奥までサムが入っていることを実感して、ますます震えが走った。「サム、そのまま……じっとしてろ、おれが動くから……」  「冗談だろ?」 押さえた腰をぐっと上に持ち上げながら、サムはいった。「どうやって動くんだよ。力、入らないくせに」  その通りだ。サムに上から押さえつけられたとたん、おれの自由なはずの四肢は、突如として意思を放棄したみたいに動かなくなった。  「そのまま感じてて……」 生意気な言葉を放ちながら、サムはゆっくりと動き始めた。おれの喉からは情けない声が漏れた。覚えているかぎり、ふざけて登った城壁から落ちて腕を骨折したとき以来、出したことのない声。「はああ」とか「いひい」とか、そういう、とにかく情けない声だ。  「かわいいよ。かわいい、ディーン」  「はああ……」  「あんたの純潔を汚してるんだよ、ディーン……。僕に、もっと……汚されて……」 サムの汗がおれの耳に垂れた。「もう天界には戻れないくらい」
 まあおれは、かねがね自分の境遇には満足だ。天界にエネルギー源として留め置かれている身としても、そうすることを選んだのは自分自身だし、結局、やらなきゃ天界が滅んでしまう。天国も天使もいない世界で生きる準備は、国民たちにもだれにも出来ていない。  せっかくうまくいっていたおれとサムの関係が、期待通りにならないことは承知の上だった。おれたちは王族だ。自分たちの欲望よりも優先すべきことがある。おれは天界で腐った天使どもと、サムは地上でクソったれな貴族どもと、ともに世界を守れたらそれでいい。そう思っていた。サムも、そう思っているはずだった。  一年に一日だけ、地上に戻る許可を与えられて、おれが選んだのは自分の誕生日だった。  ほんとはサムの誕生日のほうがよかった。だけどおれの誕生日のほうが早く訪れるから。  サムに会えない日々は辛かった。想像した以上に永かった。
 下腹をサムの手に包まれて、後ろから揺さぶられながら、おれはふと気配を感じて視線を上げた。酒蔵の奥に、ほの白く発光したキャス――今は天使のカスティエルが佇んでいた。  (冗談だろ、キャス。消えてくれ!)  天使にだけ伝わる声で追い払うが、やつはいつもの表情のみえない顔でおれをじっと見つめたまま動かない。  (取り込み中なの見てわかるだろ!?)  (君はここには残れない) キャスがいった。(たとえ弟の精をその身に受けても。君はもはや人ではないのだ)  (そんなことはわかってる) おれがいうと、キャスはやっと表情を変えて、いぶかしげに眉をひそめた。(君の弟はわかっていない)  (いいや、わかってる……)  「ディーン、こっち向いて」 キスをねだる弟に応えて体をひねる。絶頂に向かって動き始めたサムに合わせて姿勢を戻したときには、もう天使は消えていた。  わざわざ何をいいに来たんだか。あいつのことだから、もしかして本当に、サムのもらした言葉が実現不可能なものだと、忠告しに来たのかもしれない。  天使どもときたら、そろいもそろって愚直で融通のきかない、大きな子どもみたいなやつらだ。  きっと今回のことも、天界に戻れば非難されるだろう。キャスはそれを心配したのかもしれない。  お互いに情けない声を出して、おれはサムの手の中に、サムはおれの中に放ったあと、おれたちは正面から抱き合って毛皮の上に崩れ落ちた。  汗だくの額に張り付いた、弟の長い髪を耳の後ろにかきあげてやると、うるんだ緑の目と目が合った。  「離れたくないよ、ディーン」  「おれもだ」  サムはくしゃっと笑った。「国王のくせに、弱音を吐くなって言われるかと思った」  おれはまた、サムの柔らかな髪をすいてやった。  おれがまだ人だったころ、おれの口から出るのは皮肉や冗談、強がりやからかいの言葉ばかりだった。だれもがおれは多弁な王だと思っていた。自分でもそうだった。  でも今や、そうじゃなくなった。  おれは本来、無口な男だったんだな。  見つめていると、弟の唇が落ちてきた。おれは目を閉じて、息を吸い込んだ。このキスが永遠に続けばいいのにと思う。  願っても意味はないと知っているからな。
 「驚いたよ」 天界へ帰るすがら(地上からは一瞬で消えたように見えただろうが、階段を上っていくんだ。疲れはしないけどがっかりだ)、キャスがいった。「きみたちは……意外とあっさり別れた。もっと揉めるかと思っていた」  「揉めるってなんだよ」  「ずいぶんと離れがたそうだったから」  「ふつうは他人のセックスをのぞき見したこと、隠しておくもんなんだぜ」  「のぞき見などしていない」 キャスは大真面目にいった。「のぞき見ではない。私は隠れてなどいなかった」  おれは天界への階段から転がり落ちそうになった。「おま……キャス……じゃあ、おまえの姿、サムには……」  「見ていただろうな。君とキスしているときに目があった」  「――あいつそんなこと一言も」  「今朝、私には警告してきた。次は翼を折ってやると。君の手の大きさじゃムリだと言ってやったが」  おれはため息を吐いた。  「次があると思っているのだな」  「もう黙れよ」  「一年に一度の逢瀬を、続けるつもりなのか。君はもう年をとらず、彼は地上の王として妻をめとり、老いていくというのに」  「なあ、キャス。おまえに隠してもしかたないからいうが、おれが天界にいるのはサムのためだ。サムが死後に行く場所を守るためだ」  キャスはしばらく黙ったあと、唇をとがらせて頷いた。「そうか」  「ああ、そうだ」  「きみに弟がいて世界は救われたな」  おれは足を止めて、キャスの二枚羽の後ろ姿を見つめた。彼がそんなふうに言ってくれるとは思っていなかったから驚いた。  キャスが振り返っていった。「どうした」  「べつに。おまえ皮肉が上手くなったなって。ザカリアの影響か?」  「やめてくれ」 盛大に顔をしかめてキャスはぷいと先を行ってしまう。  「お、待てよ、キャス。おまえのことも愛してるぜ!」  「ありがとう。私も愛してるよ」    たとえばサムが結婚して、子どもができ、平和な老後を迎えるのを、ただ天界から見守るのも素晴らしい未来だと思う。義務感の強いサムのことだから、十中八九相手は有力貴族の娘か、他国の姫の政略結婚だろうが、相手がよっぽどこじれた性格をしていない限り、いい家庭を築くだろう。あいつは優しいし、辛抱強くもなれる。子どもにも偏りのない教育を受けさせるだろう。安定した王族の指導で、王国はますます繁栄する。国王と王妃は臣民の尊敬を受け、穏やかに愛をはぐくみ、老いてからも互いを慈しみながら、孫たちに囲まれ余生を過ごすだろう。  愛と信頼に満ちた夫婦。サムがそんな相手を見つけられたらどんなにいいか。おれは心から祝福する。それは嘘偽りのない真実だ。  だけど、それは死が二人を分かつまでだ。  サムが死んだら、たとえその死が忠実な妻と手をつなぎ、同時に息を引き取るような敬虔なものだったとしても、彼の魂はもう彼女のものじゃない。死神のものですらない。おれだ。おれがサムを直接迎えにいく。  そしておれがサムのために守ってきた天国で、おれたちはまた、やり直すんだ。  おれが精通した十一歳の朝からでもいい。  ぎこちなかった即位式の午後からでもいい。  世界におれたちだけだったら、どれだけ早くたがいの感情に正直になれたかな。それを試すんだ。  だから今は離れていても、いずれは永遠に側にいられるんだ。  今は言葉だけでいいんだ。おれを汚したいといったサムの言葉が何物にも代えがたい愛の告白に聞こえたなんて変かな。サムの愛の言葉と、この体のどこかに残っているサムの精だけで十分なんだ。  また来年、それをおれにくれ。おまえが誰かいい女と結婚するまで。  おまえのための天国を作って、おれは永遠が来るのを待っている。
おわり
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abcboiler · 4 years
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【黒バス】愛のある生活
2013/05/03発行オフ本web再録
【愛のある生活】
「真ちゃんさ、今週か来週、どっか空いてる日ある?」
空調の効いた部屋の中で、高尾は何のきっかけもなく、たった今、降って湧いたのだとでもいうような口調で緑間に声をかけた。部屋の外ではまだ夕方の火が残って、黒い道路とベランダをじりじりと焼いている。けれどそんな外のことなど、窓を閉じきった二人には関係の無い話であった。二人の厳正なる協議の結果決まった二十八度の人工的な空気の中で、緑間と高尾は古びた革張りのソファに腰掛けている。所々に煙草の焦げ跡が見えるこれは、宮地から受け継いだ歴史ある一品である。宮地もまた、大学の同級生から受け継いだと言っていたから、ヴィンテージと呼んで差し支えないほどの貫禄を持っていた。きっと二人の前に宮地はここに腰掛けて雑誌を読んでいたのだろうし、名前も知らない彼の同級生は野球観戦をしていたのだろうし、きっとその前の持ち主はこのソファの上で窮屈なセックスをしたに違いなかった。時間と情念が染み込んだずっしりとした色は、思いのほか部屋に馴染みやすい。高尾はその上であぐらをかいてテレビを見ていたし、緑間は足を組んで本を読んでいた。てんでバラバラの行動をしている二人は、目線も合わせずに会話している。
高尾の唐突な質問に、緑間は雑誌から顔を上げずに答えた。並んで座るソファの向こうではテレビが騒がしい音を立てている。
「丸一日か」
「んー、できれば」
そこでほんの僅か、緑間は雑誌から視線を上げると宙を見つめた。蜃気楼を見定めようとするように細めた視線の先には何も無い。頭の中のカレンダーを彼はめくる。九月の始め。大学二年生の夏休み。高校生はもう二学期が始まっているだろうが、大学生はまだ半分近く夏休みが残っている。むしろ本番はこれからだろう。しかし、世の学生は講義が無ければバイトと遊行で予定を埋め尽くしているかもしれないが、こと緑間に限ってそれはなかった。伝手で紹介してもらった家庭教師のバイトは酷く割が良かった。一時間二千円で毎回ケーキやらしるこが出るのだよ、と高尾に伝えた時の表情を、緑間は未だに忘れていない。
あれは二人で夕飯の買い出しに出かけた時のことだ。季節は秋の終わりで、冷たくなった空気に秋物のセーターは少し風通しが良すぎた。俺久しぶりに真ちゃんに殺意抱いたわ、とはその時の高尾の言である。今日の夕飯はもやしでいいかな、俺今月ピンチなんだよね、真ちゃんはお金あるかもしれないけどね、とぶつぶつ呟く姿は、緑間でなくともあまり眺めていたいものではなかった。当の本人である彼は、お前は以前にも俺を殺そうとしたことがあったのかと問おうか考えて、どのような答えが返って来たとしてもあまり歓迎できる事態ではない、と結論づけた。喉元まで出かかっていたその言葉を飲み込んだ。その程度には彼も大人になっていた。代わりに、お前とセックスする時は大体死にそうになっているんだが、と伝えれば高尾は何も無い所でつまずいた。その後しばらく無言で、高尾は肉を買い物かごに無心に放り込んでいた。その日の夕飯は牛のすき焼きだった。とてもよく覚えている。
「……真ちゃん?」
「ああ、ぼんやりしていた」
「もー。それで、どう?」
完全に思考が逸れていた緑間は、もう一度、空中に浮かぶ見えないカレンダーに視線を移す。大学に入り、友人もできた。高校ほど顕著に周囲を拒むことは無い。講義の終わりの飲み会にだって顔を出すようになった。しかし、彼は大学の友人たちと毎日繁華街に繰り出すより、二人の家で静かに本を読むことを好んだ。カレンダーはまだ空いている。
「……木曜。来週でいいなら火曜」
「あー、今度の木曜は俺がバイト入ってんだよなー、来週の火曜は空いてる」
「それなら、そこでいいんじゃないか」
「うん」
再び本に意識を戻した緑間は、高尾の「それじゃー、そこ空けておいてね」という一言に軽く頷いた。
「それで、結局なんなのだよ」
「ああ」
目線を合わせないまま、ゆっくりと会話は続く。高尾の突然な誘いは初めてのことではない。最初は理由から何から全て尋ねていた緑間も、最近では中身も聞かずに許可を出すようになった。全ては『慣れ』の一言で片付けられるのかもしれない。そしてそれは、悪いものでもなかった。二人の間を流れる時間は酷く優しかった。きっと二人は昨日もこうしていたのだろうと思わせるような速度。明日もこうしているのだろうと思わせるような空気。テレビからは、バラエティ番組特有の揃えられた笑い声が響く。
「大掃除しようと思って」
「……大掃除?」
そこでようやく緑間は、読んでいた本から意識を外した。怪訝な顔で高尾の方を見れば、視線に気がついた高尾も、テレビから緑間へと視線をスライドさせる。隣同士に座る二人の距離は近い。
「そ。去年の夏はドタバタしててやれなかったけどさ。年末に大掃除やったじゃん? あれ、夏もやっとこーかなーと」
二人がルームシェアを始めたのは、大学入学とほぼ同時期だ。緑間は危なげなく第一志望の医学部に合格を果たし、高尾も、周囲から危ぶまれつつ有名私大の経営学部に合格した。あれだけバスケしかやっていなかった癖に、と周囲からやっかみ半分賞賛半分の拍手を受けつつ、めでたく二人で現役合格を果たしたのである。
難があるとすれば、それは双方共に大学が自宅から離れていることだった。一人暮らしには躊躇う。けれど自宅から通うには厳しい、そんなもどかしい距離。特に、遅くまで授業が入るであろう緑間にとって、通学に二時間かかるという現実は歓迎できたものではなかった。
「だったら、一緒に住んじゃおうよ」
そう言いだしたのは高尾だったろうか。緑間は「馬鹿なことを言うな、許される筈がないだろう」と言ったかもしれないし、「そうだな」と答えたかもしれない。
いいや、もしかしたら緑間が「一緒に住めばいいだろう」と言ったのかもしれなかった。高尾が「それは無理なんじゃないかな」と答えたのかもしれなかったし、「真ちゃんナイスアイデア!」と叫んだのかもしれなかった。今となっては二人とも覚えていないことである。それは世間一般から見れば大事なことだったのかもしれない。しかしこうして一緒に暮らすことに慣れてしまえば、大切な思い出は存外あっさり過去になっていくものだった。一度この件で二人言い争ったこともあるが、お互いに相手が言いだしたのだと主張して譲らなかった。「どっちが先にプロポーズしたか論争みたいだよな」と、後に高尾は苦笑いしたけれど、それに関してはお互い自分からだと譲らなかったのだから、不思議なものである。
どちらが言いだしたのかはともかく、まだ学費も親に出してもらっている身の上の二人、まさか当人だけで決定できるはずもなかった。恐る恐る親に話を出してみれば、二人が驚くほどスムーズに親同士は連絡を取り、一時間ほどの世間話と五分の要件で話はあっという間にまとまった。妹を抱え、あまり余計な出費をしたくない高尾家と、財政面はともかく、お世辞にも生活力があるとは言えない息子を一人暮らしさせるのが不安な緑間家��、あっさりと大学生二人の同居を許諾したのである。高校三年間、お互いの家に入り浸り続け、親にすれば今更だったのかもしれない。両親同士が、迷惑をかけると思いますがうちの子をよろしくお願いします、と言い合��のを聞いていた二人の表情は、それはそれは微妙なものだった。何故俺がこいつによろしくしなくちゃいけないのだよ、いや迷惑かけるのは恐らく真ちゃんっしょ、という視線が二人の間で交錯していた。
「……よろしくお願いします」
「……よろしくお願いします」
ダンボールに溢れかえった二人の新居で、正座しながら向かい合って挨拶をした初めての夜を、二人ともまだ覚えている。
 一年目は慌ただしく過ぎた。正直な話、幾度か破局の危機を迎えたほどである。女の子と結婚する前に同棲しろってのはなるほど正しいと、高尾は一人、誰もいないトイレで頷いたものだった。ちなみにこの時は、トイレから出るときに便座の蓋を閉めるか閉めないかで二人が大喧嘩していた時であり、現在では蓋は必ず閉じきられている。だいたいそういったことに我慢がきかなくなるのは緑間の方で、彼の様々なジンクスに高校生活で大分慣れたと考えている高尾ですら、一緒に生活してその異常さを痛感することになったのであった。今までこれを全て実行していたのかと思えば頭が痛い。真ちゃんママとパパってさ、流石真ちゃんのお父さんとお母さんだよね。初めて緑間と喧嘩をして仲直りをした日の夜、高尾がぽろっと呟いた言葉は紛れなもなく本音である。とはいえど、緑間から言わせれば高尾の生活も酷いものであった。味噌壺に直接胡瓜を突っ込んで食べる、牛乳パックを開け口からそのまま飲む、CDの外と中身が一致していない、なんていったあれこれである。そういったこと一つ一つ、慣れない暮らしや生活習慣の違いを見つける度に二人は喧嘩をして、たまに食器が一枚割れたりした。しかし二年目ともなればお互いに慣れてくる。緑間が洗濯物を洗う曜日に敏感なことも、高尾が調味料のメーカーにこだわることも織り込み済みである。夕飯を食べるか食べないかの連絡だってスムーズになった。慣れは、決して悪いものではない。
高尾が言った大掃除とは、年末に二人で行ったものである。なるほど、確かに一年分の汚れはなかなか落ちるものではなかった。半年間隔でやってしまおうという意見は、緑間にとっても悪いものではない。
「場所は? 全部か?」
「全部! まあ普段だってちょいちょいやってるし、一日で終わるだろ」
天井払って、壁と床拭いて、窓磨いて、あと洗面所と風呂トイレに台所だろー。
指折り数える姿に、悪いものではないが、これは結構な重労働になるなと緑間は溜息をついた。背の高い緑間にとって、天井付近はあまり負担ではないが、その分床に近づくと途端に身動きが取れなくなる。自分の体が、邪魔なのである。せめてその日が晴れるように祈るしかない。雨の日に水拭きなどしたら間違いなくカビが発生して、本末転倒になるだろう。
二人の協議の結果決まった二八度の冷房。高尾が選んだ柔らかいらくだ色のローテーブル。二人が好きなつまみ。緑間は、細かい朝顔の透かし彫りが入った切子ガラスのコップに手を伸ばす。氷を入れたグラスと緑茶は、見た目からして涼やかだ。冷房の下、僅かに汗をかいている表面をなでて、彼はそのまま一息に飲み干した。頭の中のカレンダーに、大きく赤い文字で、大掃除と刻み付ける。
「ところで高尾、テレビは消していいのか」
「えっ!? あ、ダメダメ。宮地さんが推してるチーム歌うから。真ちゃんもしっかり見ろよ?」
「は?」
「え、だって十月に大坪さんと木村さんも一緒に飲みあんじゃん。絶対にカラオケ行って歌うから、合いの手とコール覚えなきゃだろ?」
「断わる! お前だけやればいいだろう!」
「真ちゃんも一緒にやるから面白いんだろ!」
ほらほら、これCM明けに歌うから!
逃げだそうとする緑間を押さえつけて高尾はテレビの音量を上げた。暴れだす体の向こうで、同じ顔をしたアイドルたちが笑顔を振りまく。半年前に出た新曲と同じようなメロディと同じようなキャッチーさで、彼女たちはテレビの向こうから愛を届けている。日本中の可愛い恋人たちのために。
二人、相手を黙らせるために仕掛けたキスに夢中になって、結局ろくに歌を聴くことはできなかったのだけれど。
     ***
 よっしゃ、良い天気だ。
前日に二人で作ったてるてる坊主が効いたのかどうかは判らないけれど、檸檬色のカーテンをひけば高い青空が見えた。白いちぎれ雲が自信ありげに浮かんでいる。ホンの少し涼しくなった空気はまだ残暑模様。朝でも肌には汗が浮かぶ。午後からはきっと焼け付くような暑さが来るだろう。おり良く強い風が吹く。洗濯物がよく乾きそうだった。絶好の掃除びよりだと高尾は笑う。お前はそんなに掃除が好きなら、普段からもっと部屋を片付けろと緑間は溜息をつく。そう言う緑間が、いつもより十五分早起きしていることを高尾は知っている。
「じゃ、まずは上からな」
「壁か」
「んー、天井ざっとはたいてから壁かな」
汚れても良い格好ということで、二人とも服装はラフである。高尾は少しくたびれたTシャツに、これまた古びたジーンズ。緑間も洗いざらしのシャツとクロップドパンツだ。二人とも素足だが、ここでも去年の夏、スリッパ派と素足派による二日間の戦争があったことを知るのは、この二人だけである。ちなみにこれは開戦から二日目の夜、素足派による「だって夏のフローリング気持ちいいじゃん!」という叫びを否定しきれなかったスリッパ派の譲歩によって幕を閉じた。一週間に一度のクイックルワイパーを条件にして。それももう、一年前の話である。
ハタキと、堅く絞った雑巾を手渡され、緑間は黙々と天井の埃を落とし始めた。丁寧にやるような箇所でもないので、四角い部屋を丸く掃くような雑さで終える。そもそも、椅子に乗らなくとも天井に手が届く緑間にとっては簡単な作業である。洗剤やらスポンジやらを出して準備している高尾を尻目に壁にとりかかった。手渡された雑巾で、力をこめずに、壁紙の目に沿って拭いていく。ポートレイトや写真が貼られているのを丁寧に外してみれば、うっすらと壁に日焼けの跡が見えた。僅かに色の変わった境界線を、感慨深く緑間は撫でる。ついでとばかりに、飾ってあった額も拭いてしまう。それにしてもなんだか見慣れた雑巾だと思えば、それは高尾が寝間着代わりに使っていた白いTシャツだった。それがざっくばらんに切り刻まれ、雑巾として再利用されていることを見て取って、緑間はまたひとつ溜息をついた。いつの間にこんな主婦臭い技を身につけていたのか。
そもそも壁を拭くことすら緑間は知らなかった。しかし考えてみれば壁も汚れるものである。年末に帰省した際に母に聞いてみれば、毎年拭いていたとのことで、それまで母の仕事に全く気がついていなかった緑間は少し自らを恥じた。言われれば手伝ったのにと暗に言えば、あなたにはもっとやって欲しいことがあったから、と少し老いた母は笑った。高尾に、何故お前は知っているのだと聞けば、俺ん家は妹ちゃんも俺も総出で掃除させられたから、とあっけらかんとした答えが返ってきて、彼は黙り込むしかなかった。
その高尾は先に窓を始めている。バスケをやめた今となっても、自分にあまり水回りの仕事をさせようとしない高尾のことを緑間は知っている。基本的に自分の物は自分で片付けることが二人の間のルールだが、食後の皿は緑間がやろうとしても高尾が全て洗っていた。高尾が手際よく洗っていく皿を、緑間は隣で黙々と、白い木綿の布巾で拭いていく。会話は、あったりなかったりである。さすがに大掃除となって、濡れた雑巾に触れないわけにも行かないが、洗剤を使うような場所は頑なに自分でやろうとする高尾を、今更とがめはしなかった。その小さなこだわりは、きっとこれからも続いていくのだろうと緑間は知っていた。いつか高尾が緑間の左手を大事にしなくなった時、二人の関係は終わるのかもしれないなとぼんやり緑間は思っている。それが、本当の終わりなのか、それとも次の場所へと進むのか、そこのところはまだわかっていないし、わからなくて良いと思っている。結局、今のこの場所が居心地良いと思っているのは、双方同じなのである。だからこそ、こうやって二人で手入れをするのだから。
二人暮らしの狭い家とはいえど、壁一面となればそれなりに重労働である。意識をそっと白い壁に移して、彼は壁紙をなぞる。固く固く絞られた雑巾が、ホンの少し黒ずんでいく。その分また壁は白くなる。世の中はうまい具合にできている、と緑間は思う。
 緑間が壁を拭き終わり、高尾の様子を窺えば、彼は丁度全ての窓を磨き上げたところだったらしく、休憩にしようか、と笑った。曇り一つ無く、洗剤の跡すら見えない窓ガラスと積み上げられた雑巾に、こいつも大概完璧主義である、と緑間は思う。太陽は既に頂点、二人が掃除を開始してから二時間が経過、時計は十二を僅かに過ぎていた。朝の想像通り、日差しはますます勢いに乗って世界をじりじりと溶かす。無論掃除している最中にクーラーはつけていないので、二人とも背中には汗の痕が滲んでいた。風呂入る? という高尾の一言に緑間は首を振る。どうせこれからもっと熱くなるに決まっているし、目的はまだ半分しか達成されていなかった。
その様子に高尾は軽く頷いて、額に滲んだ汗を首から下げたタオルで拭う。窓の裏側を掃除するために外に出ていた高尾の方が体感はより暑かったのだろう、顔は少し赤くなっていた。素麺で良いよね、という言葉に緑間は頷いて、そのままぐるりと首を回した。パキ、と空気が割れるような音がする。あー、お湯沸かすのあっつい! という高尾の叫びを無視して、緑間はテーブルの準備を進めていた。どうせ手伝うこともないので、黙々と皿を並べる。濃緑の箸は緑間、橙は高尾。今は良いだろう、と緑間はクーラーのスイッチも入れた。お世辞にも新しいとは言えないそれは、大きく低い振動音と共にゆっくりゆっくり動き出す。ゴオ、オという音をたてて冷たい空気を排出するそれが効き始めるまでに、もう少し時間がかかるだろう。それまではこの部屋はただのサウナだった。気分だけでも涼しく、とグラスに氷を入れて緑茶を注げば、案外喉が渇いていたことに気がつく。
「きゅうり入れるー?」
「入れる」
台所の方から飛んできた声に、緑間は髪間入れずに答えた。夏の胡瓜は、夕立をナイフで切ったような食感がするから好きだと彼は思う。
「卵は?」
「細切り塩で」
「なんだよこまけえな」
文句を言いながらも、高尾は注文通りに手際よく仕上げていく。サラダ油がたっぷりと敷かれたフライパンの隣で、ボウルめがけて白い卵の殻がパカリと割れる。出てきた黄身をダンスでもするようなこ気味良さでかき混ぜて塩をふれば、その頃にはフライパンはすっかり温まって湯気を立てている。卵を流し込めば薄く広がって、柔らかいそれを一気にまな板の上に放り投げた。食べ物で遊ぶなと緑間が苦言を呈したことは数知れないのだが、最後に放り投げる癖は未だに抜けないままである。余熱で固まるそれを手際よく畳んで細く切りながら、なんか残り物あったっけ、と高尾は呟いた。緑間が冷蔵庫を開ければ昨晩の煮物が出てきたので、彼はそれを小鉢に盛る。タッパーから直接食べてしまえばいいだろうと言う高尾と、残飯を食べているようだと許せなかった緑間の、そんな戦争の結果はここにもある。
「おい、高尾、吹きこぼれそうだぞ」
「うっわ。やべ、あぶな」
透明な素麺は、川のようだから好きだと、昔高尾は笑って言った。
「いただきます」
「いただきます」
両手をあわせて自分の器にきゅうりと卵を投入しながら緑間は尋ねる。
「このあとは」
同じくきゅうりと卵を投入して、ごっそりと素麺を器に入れながら高尾は首を傾げた。麺つゆが器から溢れそうになるぎりぎりのところまで素麺が入り込んでいて、よくもまあそんな絶妙な量を取るものだと、緑間はいっそ驚嘆の目でそれを見つめる。彼の器には二口ほどで食べきってしまえる程度しか麺は入っていない。
「んーあとは床と水回りだな。台所洗面所風呂トイレ。あとリビング片づける」
「なるほど」
ネギは無いのか、という緑間の台詞に切らしてる、と口の中に���め込みながら高尾は答えた。キムチならあるけど、という言葉に首を振る。生姜はするの面倒くさいから却下ね、と尋ねる前に答えられて緑間はいささか不機嫌そうに麺をすすった。
「台所は絶対に俺だとして、他の水回り、いやでも真ちゃんにできると思えねえ」
「失礼な」
「いや、そーは言うけど、排水口に詰まった髪の毛ヘドロって結構えぐいぞ」
「う」
緑間がそこの掃除を担当したことは今までに一度も無い。水回りだからである。しかし初めてパイプがつまりかけて、すわ水道トラブル五千円か、と慌てて掃除をした時の憔悴を高尾は覚えている。髪の毛だって人体の一部だということを何故忘れていたのだろう。生物の一部が、ずっと水にさらされていればどうなるかは明白だった。すなわち、腐る。その時の異臭とあまりにもグロテスクな見た目を思い出して、高尾は慌てて首を振った。間違っても食事中に思い出したい光景ではない。あれ以来、髪の毛はなるべく排水口に流さない、紙にくるんでゴミ箱に! と叫び続けていたが、そうはいっても限界はある。こまめに掃除をするようにはしていても、夏場の腐食の早さを冷蔵庫を預かる高尾は知っていた。そして、どう考えても潔癖症のきらいがある緑間に向いている仕事では無いということも。
「水回り全般俺がやるから、真ちゃん床お願いね」
「……分かった」
高尾の悲壮感の漂う決意を受け取ったのか緑間は神妙に頷いた。別に死地に赴くわけでもなし、高尾は笑って緑間の状況を告げる。
「しゃがむのきついだろうけどファイト」
身長百九十五にとっては、床に這うのも重労働である。広くないとは言えど、終わる頃には腰が悲鳴を上げることは歴然としていた。
「……代わらないか」
「ヘドロ」
「……」
緑間は黙って素麺をすすった。やっぱネギ欲しいな、と高尾は笑った。
 「高尾」
磨き上げられた窓の向こうから夕日が差し込むのを見て、緑間は風呂場にいる高尾に向かって少し大きめの声をかけた。実際、やってしまえば床は案外すぐに終わり、高尾が悪戦苦闘している様子を見てとった緑間は一人だけ休憩するのもなんとなく心地悪く、結果リビング全体の掃除を始めていた。小物に少し溜まった埃だとか、装飾棚の隙間まで、一度始めてしまえば徹底的にやり切るまで集中する緑間は、目を刺す橙の光にふと気がつくまで、黙々と掃除を続けていたのである。
「ん、真ちゃん終わった? 俺も終わりかな~」
風呂場でシャツとズボンの裾を捲りながらカビと戦っていた高尾は、最後に洗剤をシャワーで流して伸びをする。腰からも肩からも不穏な音を感じて高尾は苦笑した。風呂に充満する洗剤の臭いに、少し頭が痛くなっている。換気扇を回して浴室から足取り軽く飛び出した。
「お、スゲー。リビング超きれいになってる」
「当然だろう」
床だけをやっている割には時間がかかっているなと薄々感づいていた高尾だったが、新居さながらに整えられたリビングと少し誇らしげな緑間の表情に、全てを悟って彼は笑った。完璧主義はどっちだよ、と告げれば軽く肩をすくめられる。
「やっぱ整理整頓は得意だよな真ちゃん。あんだけのラッキーアイテム把握してただけあるわ」
「だが、これが」
入らないのだよ。そう続けた緑間の視線の先には積み上げられた本と雑誌。幾枚かのCD。二人ともに気になっていたから、自分の部屋には持ち帰らずに置き放していた書籍の類である。月バスの五月号を買ったのは高尾だし、六月号を買ったのは緑間だ。緑間が気まぐれに買ったミステリの新刊を、高尾が気に入ってシリーズで揃えてしまった事もあった。高尾がおすすめだと無理矢理押し付けたバンドの新作のアルバムを何故か緑間が買ってきた。そういった、二人の間で分かちがたかったあれそれがリビングテーブルの上に広げられている。どちらが買ってきたのかももう覚えていない物もちらほらと見受けられた。これも一種の慣れなのかもしれないと、高尾は思う。放っておくには量が多すぎたし、どちらかの部屋に持ち込むにはあまりにも二人の間で共有されすぎていた。
「んー」
彼がちらりと壁に目をやれば時刻は四時。陽は頂点を過ぎてなお盛んである。むしろ暑さはこれからが本番だとでも言いたげな表情で、町は赤く燃え盛っていた。朝から掃除をしていたことを思えば結構な時間だが、一日を締めくくるにはいささか早い。まだ太陽は今日を終わらせるつもりがなさそうである。そう結論づけて、高尾は一仕事終えたと言いたげな緑間を振り返る。その表情を見て緑間は顔を引きつらせた。ろくなものではない。
「買いに行こっか」
「は?」
「本棚」
ホームセンター近えし。
その高尾の言葉に自らの予想が完璧に当たったことを理解して、緑間は一つ大きな溜息をついた。
そう、二人がこの街に居を構えることに決めた、大きな理由の一つがそれだった。本屋やコンビニを併設した大型のホームセンターが徒歩圏内なのである。トイレットペーパーから墓石まで揃うと謳うその店は流石の品揃えで、信じられないことに深夜二時まで営業している。男二人暮らし、計画的な買い物が得意ではない以上、いざという時に頼れる存在は大きかった。それは例えば、夜中にいきなり花火をしたくなった時なんかに。
「…支度をする」
置くのここでいい? と窓枠の下を指した高尾は、どこに持っていたのかいつ取り出したのか、メジャーを使って寸法を測り始めている。奥行ありすぎると通る時にぶつかっちゃうかな、でもあったほうが上に物とか置けて便利かな、そう目を輝かせる高尾はもう緑間のことを見ていない。これはもう止まらないな、と、この一年で学習した緑間は着替えるため、一人先に部屋に戻ろうとした。
「え、いーじゃんもうこのままで」
「外にでる格好ではないのだよ!」
見ていなかったはずの高尾に腕を掴まれて緑間は怒鳴る。その視野の広さを無駄に活用するくらいなら、素麺の噴きこぼれを防げと緑間は言いたい。そんな怒気に気がついているのかいないのか、メジャーをポケットにしまいながら高尾は笑う。
「今日組立までやるとしたらまた汚れるから着替え直しだし、めんどいだろ」
「そういう問題じゃ」
繰り返すが、今日は掃除で汚れると思っていたから、緑間も手持ちの服の中で最も汚れていいものを着ているのである。それに汗もかいている。近所のコンビニ行くのにラルフローレン着る必要なんてないだろ、と高尾は笑うが、コンビニじゃあないしラフにも限度があるし、これはマナーの問題だと緑間は思う。大丈夫真ちゃん別にくさくねえって、との言葉に彼は本気で頭を叩いた。
「ほれ、はやく」
涙目の高尾に引きずられて、結局、そのままの格好で、鍵と財布だけをポケットに突っ込んで二人は出発した。外に出た途端に額に滲む汗に、緑間も降参の溜息をつく。仕方がない。ここまできたら、とっとと買い物を済ませて綺麗になった家に帰ろう。足下のサンダルは安っぽい音を立てて道を進んだ。
 「ぜってえこっちの方がいいって」
「そんな下品な色がか? こちらの方が落ち着いていて良いだろう」
「そんなじじいっぽいのやだよ俺!」
とっとと買い物を済ませようという当初の思惑などすっかり忘れ、緑間は高尾と二人、本棚のコーナーでにらみ合っていた。ただでさえ目立つ二人組は完全に周囲の視線を集めている。案内している販売員も、最初は少し驚いたようだったが今は完全に笑いをこらえた顔で二人のやりとりを眺めていた。
「この人だってこっちのほうが今はやりだっつってたじゃん!」
「はやりの物は飽きるのも早いのだよ。こちらのほうが容量も大きく沢山入るとあの方も説明していただろう」
「いいや、いっぱい入ったって好きじゃなかったらしょうがないね。見るだけで嫌になるようなものに物を入れたいなんて思わないじゃん」
「ふん、入りきらなければ元も子もないだろう。それに」
「それに?」
「大きいほうが良いに決まっているのだよ」
「真ちゃんここでもそのよく判らない大きいもの志向持ち出すのやめようぜ!」
話し合いは完全に平行線である。こちらの商品はいかがですか、と指し示されたものを見た二人は、数秒間それを見つめ、「財政的にちょっと」と同じタイミングで声を発した。
「待って真ちゃん、一回冷静になろう」
「良いだろう」
「まず容量だ」
ああでもないこうでもないと言い争えど結論が出ないので、ついに高尾は最終手段に出ることにした。申し訳なさそうに販売員に紙とペンは無いか尋ねる。快く差し出されたそれに、高尾は雑に「デザイン」「色」と書き込むと、他に何かある? と緑間に尋ねた。特になかったらしい緑間は首を振って黙って見ている。それに頷いて、高尾は二本の線を伸ばし、間に横線をランダムに引いていった。二人がどうしても戦争を終結させられなかった時、諦めの平和条約の作り方をこの一年間で彼らは生み出していた。
「真ちゃん、右と左どっち」
古式ゆかしいあみだくじだった。
一時間後、高尾の選んだ色と緑間の好みの型をしたブックシェルフは無事にレジを通り抜けた。販売員に頭を下げて、二人は板を小脇に抱え込む。あみだくじはぐしゃぐしゃに丸められて高尾のジーンズのポケットにつっこまれていた。後で洗濯をする時に出し忘れて洗濯物を汚すパターンなのだが、今の彼はそんなことには気がつかない。二人、何かをやり遂げたような顔で家路を行く。配送業者も組み立て業者も近くで待機していたが、これくらいならば自分達でやると丁重に断わった。自転車で来れば良かったかな、とぼやく高尾に、逆に載せられないだろう、と緑間も淡々と返す。背中に夕日を背負って、二人の前には長く長く影が伸びている。やべえ俺モデルみたいに脚長い、お前はもう脚長おじさんって感じ。そう言って高尾が笑いながら取ったポーズがあまりにも滑稽で緑間は笑う。どうやら笑わせようと思って取ったポーズでもなかったらしく、高尾は一瞬複雑そうな顔をしたが、どうやら調子に乗ったようで、その後も家にたどり着くまでことあるごとに奇妙なポーズで緑間を笑わせにかかった。調子に乗りすぎて板を落としそうになったところまでご愛嬌である。とはいえどなかなかの重労働で汗をしこたまかく羽目になったので、あの服装で正解だったのかもしれないと緑間は頭の片隅で思った。そんなこと、口に出しはしないけれど。
 会議という名の喧嘩時間に反比例するように、案外あっさりと組み立て終わった白いそれは二人の腰よりも低く、窓枠の下にぴたりと収まって、雑多に積み上げられていた本も雑誌もCDも、全て収めて夏の光をはじいていた。これに合わせて変えようと、高尾が一緒に買った白いカーテンがはためいている。磨き上げられた窓、滑らかな床、白い壁は夕日で赤い。本棚もカーテンも、夕焼けと同じ色で呼吸をしている。���さも和らいできた。午後七時。夕日は地平に差し掛かり、町陵を金で縁取っている。昼間、高尾がいつの間にか干していたシーツが、朱金の鼓動を飲み込んで乾く。一日が、終わろうとしている。
「よっしゃ、これで終わり!」
「雑巾はもう捨てて良いか」
「おう!」
あー、一仕事終わったし、ビール飲もう! 枝豆冷やして! あとはなんだ、漬け物と、キムチで鶏のささみ和えて、いや、手羽先の方が良いかな。夏はうまい!
次々と夜の献立を並べる高尾に、緑間は僅かに頬を緩めた。腹が減っているのはお互い様である。何せ今日は、とてもよく働いたので。はじめは全くと言っていいほど合わなかった食の好みも段々と近づいて、今ではお互いの好物を好きだと言えるようになっている。
ねえ真ちゃん、今度おっきいソファ買いに行こうよ。今のも良いけどさ、もっとスプリング効いたヤツ。並んでテレビ見てさ、そんでそのまま…。
不真面目な頭を思い切りはたいて、歴史あるソファに緑間は腰をおろした。高尾が座れないように、真ん中に。空中にある明日のカレンダーの予定を見つめて、彼は午前中の用事に大きくバツをつけた。文句を言う高尾の口を塞ぐ。洗いたて��シーツで惰眠をむさぼるのも悪くないだろうと思って。
開け放した窓から夜風。彼らの城は今日も明るい。
Love is life.
        【愛こそすべて!?】
  まさか真ちゃんがあそこまであのソファに愛着を持っているとは思わなかった。その点は俺の見込みが甘かったとしか言えない。そりゃ、俺だってあれのことは気に入ってるさ。大分古びてるとはいえども、それがまた洒落てる感じ出してるし。座り心地だって悪くない。いや、悪くなかったんだ。でもさ、スプリング壊れちゃったんだから仕方ないじゃん。布を突き破って出てきたバネは鈍い黄金色をしていて、王様みたいな貫禄があってやけに格好良かった。それが真ちゃんとのセックスの最中じゃなければね。あの男三人が座ったらぎゅうぎゅうになる場所でどうやんのって話だけど、まあ窮屈には窮屈なりの楽しみ方があるってことでここはひとつ。
さて、俺たちはしばらく顔を見合わせたあと、まあお互いのケツにそれが刺さらなくて良かったじゃないかっていう結論に達した。その後ベッドに移動してどんくらい何をどうやったかっていうのは、俺だけの秘密にさせてくれ。
んで、後日修理してもらおうと、見積の業者さんを呼んだ俺たちは、提示された金額に頭を抱える羽目になった。流石王様。流石ヴィンテージ。俺たちは知らなかったが、このソファに使用されていた革は本革の相当質の良いものだったらしく、 これを貼り直すとなると普通に新品を買ったほうが良いというような、そんな値段になってしまうのである。古い物ほど、整備には金がかかるってことらしい。人間もそうかもね。
「あっちゃー、これはしょうがねえな……買いなおすか」
「……」
「やっぱ無いと不便だもんな。真ちゃんいつ空いてる? 別に丸一日じゃなくてもいいけど。買いに行こう。粗大ゴミって確かシールとか貼って業者さん呼ばなきゃいけないんだっけ……」
「…………」
「真ちゃん?」
「捨てないのだよ」
「は?」
「捨てない」
パードゥン? って感じだった。っていうかパードゥン? って言っちゃった。そしたら、捨てないのだよ、ってもっかい強く言われて、マジか、ってなった。その時は、俺は真ちゃんの、いつもの、まあかわいい我が儘だと思ってたんだけど、思ってたから、割と軽い調子で説得を始めちゃったんだけど、どうやらそれがより気に食わなかったらしく、結局その日の夕飯は無言でお互いにカップラーメンをすすった。そりゃ、俺だって愛着がないとは言わないけど、流石にあの値段は学生には無理だ。そんなの真ちゃんだってわかってるはずである。なんでそんなにこだわんの? って聞いたら、視線をそらされながら「バネが飛び出たソファがラッキーアイテムになるかもしれないだろう」って言われた。もしもそんなことになったらいよいよおは朝は専属の占い師を変えるべきだと思う。
とりあえず翌日、前の持ち主である宮地さんに電話してみた。もらったんですけど壊れちゃいましたすんませんっつったら、お前らにやったモンだから別に構わねえよ、とだるそうに返された。そもそもあれ古かったしな。しかし何して壊れたんだ? そんな風に聞かれて、いや、ちょっとはしゃぎすぎて、としか返せなかった俺は多分悪くない。
まあそんな感じで、俺は捨てて新しいのを買いたいんだけども、真ちゃんは全然そんなつもりがないらしく、バネはいつまでも飛び出したままだった。最初は王様のように見えたそいつもずっと見てると腹立たしくなってくる。案外間抜けな感じじゃないか。何年の歴史があるんだか知らないが、お前の時代はもう終わったんだ。
っていうか普通に危ない。怪我をしたらいけないからと説得したら、真ちゃんはしばらく考えたあげく、部屋からぬいぐるみを一つ持ってきてぶっさそうとしたので慌てて止めた。なんで目の前でいきなりスプラッタを見なくちゃいけないんだ。お前の男らしさはそんなところで発揮されるべきじゃないだろう。っていうか、そもそもお前はそういう物を大事にする奴だと思ってたんだけど。一通り止めた後、不審そうな顔で、「お前は何を言ってる。これはパペット人形だ」って、最初から手を通すために空いてる穴を見せられて思わず脱力。そんな訳であのソフアには蛙がど真ん中に堂々と立っている。バネは見えなくなったが、今度はこいつがウザイ。心底腹が立つ。っていうかこの蛙の居場所のためだけに、俺たちの生活スペースが侵食されてるんですけど! 真ちゃん!
「これは」
俺とお前が、初めて、一緒に選んだものだろう。
そうですね。
 「は? それで結局お前らそれどうしたわけ?」
「いや、やっぱ普通に不便だし無理なんで、新しいの買いました」
「そりゃそうだよな」
「んで、あのソファは真ちゃんの部屋に運び込まれて、今大量のラッキーアイテムのぬいぐるみが置かれています」
「あっそ」
久しぶりに宮地さんと差しで飲んでいる時に、ふとその話題になった。いや、俺が、ソファに座ってこの前真ちゃんとテレビ見てたら、って言ったんだっけ。結構酔いが回ってるらしい。覚えてない。
「つか、お前らが一緒に選んだってなに。あれ、俺がゆずったやつだけど」
「いや、実は真ちゃん、あれ宮地さんの部屋にある時から気に入ってたみたいで、俺も結構欲しかったんで、宮地さん家に行った時にそれとなくねだろうって事前に打ち合わせしてて……あたっ」
笑顔の宮地さんに叩かれたが、まあこれは仕方がない。引越し祝いに下さいとねだったら案外あっさりくれたんだし、そんなに怒らないでくださいよ。愛する後輩の、かわいいおねだりじゃないですか。やっぱり世界は愛が回してるんですよ。あのソファは、俺と真ちゃんと、あと多分宮地さんとか、宮地さんの前に使ってた人とか、それより前に使った人とか、その前の人とか、その前の前の人とか、作った人とかの愛がこもってるんですよ。だからやっぱり、捨てれなかったんですよ。そういうことなんですよ。決して、真ちゃんの我が儘に付き合った訳じゃないんです。
「嘘つけ」
そうっすね。嘘ですでも嘘じゃないんですよ。だってこれも俺の愛の形で、あれも真ちゃんの愛の形。世界は愛でできてるんです。愛こそ全て! 飲みましょう!
Love is life, Love is all.
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10.朝鮮近代化の推進
問い7:朝鮮の近代化とその阻止>10.朝鮮近代化の推進
目次は こちら
10.朝鮮近代化の推進
 『韓国の歴史教科書』の「4 近代的改革を推し進める」より、朝鮮の本格的な近代化推進とその阻止に関する記述を、174ページから引用します。
【折しも改革を要求する東学農民運動が起こり、清日両国の軍隊が入って来た。思いがけない状況に、政府は農民軍と「全州和約」を結んで両国の軍隊に撤収を求めた。しかし、日本は朝鮮の社会安定のために内政改革が必要だと主張して撤収しなかった。そこで、政府は校正庁を設置して東学軍の要求を一部取り入れ、自主的な改革を推し進めた。
 (中略)
撤収要求を無視した日本は景福宮を占領する一方、清日戦争を起こした。結局日本の強圧により閔氏政権が崩壊し、大院君を摂政とする第一次金弘集内閣が成立した。金弘集内閣は校正庁を廃止して軍国機務処を設置し、大々的な改革を断行した(甲午改革)。】
 甲申政変から10年後の1894年7月末に成立した金弘集政権が発した法令によって、第一次改革が断行されました。『韓国の歴史教科書』の174~175ページの「甲午改革を推し進める」には次のようにその第一次改革の内容が記されていますのでその要点を示します。
【第一次改革ではまず国政と王室業務を分離し、それぞれ議政府と宮内府が司るようにして内閣の権限を強化した。両班の特権を保障した科挙制度を廃止し、新しい役人登用制度を整備した。社会的には公私奴婢法を打破し寡婦の再婚を許可するなど身分・女性差別を廃止して人権を改善する措置を実施した。経済面では、全ての税金を貨幣で出すようにし、銀本位制の貨幣制度を実施して度量衡を統一した。
 日本は清日戦争で勝利が近づくと、朝鮮の内政に積極的に干渉し始めた。日本の強要により興宣大院君が退き、甲申政変で日本に亡命していた朴泳孝が帰国して内務大臣になった。そして第二次金弘集内閣が発足して軍国機務処は廃止された。
 改革が更に推し進められ、高宗は洪範十四条を領布して改革の基本方向を示した。】
 以下この洪範14条を宣言するに至る経緯とその内容を『朝鮮紀行』の「第21章 国王の宣誓・国王と王妃」の322~327ページより引用します。
[1895年1月8日、私は朝鮮の歴史に広く影響を及ぼしかねない、異例の式典を目撃した。
 (中略)
 (前略)北漢山のふもとの鬱蒼とした松林にある、朝鮮で最も聖なる祭壇において、王族と政府高官列席のもとに誓告式は執り行われた。
 (中略)
 予定よりずっと遅れ、国王は外国からの圧力に最後の抵抗を示すつもりだろうかという憶測が私の頭に何度も浮かんだあと、行列が王宮から現れた。(中略)ついで紅絹の傘があらわれ、(中略)両側にガラスのはまった簡素な木の輿がつづいた。その輿には青白く気落ちした表情の国王が乗りかつぎ手は四人しかいなかった。
 (中略)
 行列が、聖なる場所に到着すると、軍の大半は塀の外にのこり、国王と高官、そして主な従者のみが祭壇の前へと進んだ。(中略)政治的な見地からは朝鮮国王がつぎのような宣誓を行ったことは、このたびの戦争という事冗長なドラマにおける最も意義深い場面であった。
国王の宗廟宣誓文
 開国503年12月12日の本日、尊き皇室祖先のすべての御霊に対し、その卑しき末裔たる朕は、今をさかのぼる31年前、幼少にして代々の強大な遺産を継承したことを、また天地神明を畏み、祖先伝来の規範に従って、幾多の困難に遭いながらも結束の緒をゆるめずにきたことを明らかに宣言申しあげる。
 (中略)
 卑しき末裔たる朕は、ここに十四カ条の洪範を定め、わが祖先の御霊の前において、代々伝わった功徳を信じ、この洪範を成功裏におさめることを不退転の決意で誓う。輝かしき御魂よ、朕を見守りたまえ。
国政改革のための洪範十四ヵ条
一、 清国に依存する考えをことごとく断ち、独立のための��固たる基礎を築く。
二、 王室典範を制定し、王族の継承順位と序列を明らかにする。
三、 国王は正殿にて事を見、みずから大臣に諮って国務を裁決する。王后ならびには王族は干渉することを許されない。
四、 王室事務と国政事務を切り離し、混同してはならない。
五、 内閣[議政府]および各省庁の職務と権限を明らかに定義されねばならない。
六、 人民による税の支払いは法で定めるものとする。税の項目をみだりに追加し、過剰に徴収してはならない。
七、 租税の査定と徴収および経費の支出は、大蔵省の管理のもとに置くものとする
八、 王室費は率先して節減し、各省庁ならびに地方官の模範をなすものとする。
九、 王室費および各省庁の費用は毎年予算を組み、財政管理の基礎を確立するものとする。
十、 地方官制の改正を行い、地方官吏の職務を正しく区分せねばならない。
十一、国内の優秀な若者を外国に派遣し、海外の学術、産業を学ばせるものとする。
十二、将官を養成し、徴兵を行って、軍制の基礎を確立する。
十三、民法および刑法を厳明に制定せねばならない。みだりに投獄、懲罰を行わず、なにびとにおいても生命および財産を保全するものとする。
十四、人は家柄素性に関わりなく雇用されるものとし、官吏の人材を求めるに際しては首都と地方を区別せず広く登用するものとする。 現在朝鮮の改革は日本の保護下では行われていないとはいえ、進行中のものは殆どの段階において日本が定めた方針に則っていることを念頭に置かなければならない。]
 この「洪範十四条」を、国王が自ら制定するのは、朝鮮の将来のために大変素晴らしいことと思っていました。しかし、国王の本心は、機会があれば王の無制限の特権を復活させようと思っていたことを、歴史が示しています。高宗にはその無制限の特権が、李氏朝鮮の混乱と衰退を招き、朝鮮の民衆を苦しめてきたことに思いが至っていないのです。
 『日韓併合の真実』の「第3章 溶解しはじめた李氏朝鮮」の156~162ページでは、洪範十四条を全てもれなく記述をし、関連事項も記されています。洪範十四条に関連した記述内容を次に引用します。
[高宗は11月に日本の要請に従って、大院君の名において、金弘集を領議政(首相)とする革新内閣を発足させた。金弘集内閣には、甲申(1884年)政変に加わって、日本からアメリカへ亡命していた朴泳孝と、徐光範の親日派二人も、入閣した。
 (中略)
 金弘集は日本の意を受けて、内政の大改革である甲午更張を進めた。「更張」は、琴の糸を改めて張ることであって、これまで緩んでいた事柄を改めて、盛んにすることを意味している。
 もし、甲午更張が忠実に行われていたとすれば、その後の韓民族の進路が、大きく変わっていたことだろう。李氏朝鮮は、倒れるのを待っている腐木に似ていた。しかし、甲午更張によって朝鮮を、日本のような近代国家として創造することができるはずだった。
 歴史はこのために、まず金玉均に韓民族を救う機会を与えた。金玉均が甲申政変で失敗すると、金弘集を登場させた。
 甲午更張こそ、韓民族が五世紀にわたって待っていた黎明だった。
 (中略)
 高宗は高宗32(1895)年1月7日に、大院君・王世子・文武百官を率いて、大廟を参拝し、祖宗の霊前に跪いて、大更張――根本的な大改革を行うことを、誓約した。
 そして、そのうえで洪範十四条を宣布した。
 洪範十四条は、甲午更張の骨子となる基本綱領を明らかにしたものだった。この洪範十四条は、今日、反日学者によっても、「朝鮮最初の憲法」として評価されている。
 (中略)
 甲午更張は、それまで李氏朝鮮が清と結んだ条約をすべて破棄した。清との宗属関係を廃することによって、朝鮮が自主独立した国家であることを打ち出した。
 そして、政治、経済、社会の全ての領域にわたって、大胆な改革を断行して、朝鮮が日本と同等な文明国となることを目指していた。
 (中略)
 李氏朝鮮では、国家予算も無く、官僚たちが百姓を中心とする民衆から最大限に徴収――搾取した金銭、あるいは米穀類を、自分の櫃か、倉庫に蓄え込んで、中央へは三分の一程度しか納めなかった。
 しかし、大院君や高宗や閔妃たちは、官僚を売官売職によって任命したから、大金を横領していることを知っても、追及することができなかった。
 中央では、大院君や、高宗や閔妃たちは、民衆が飢えて苦しむのをよそに、毎日、宴を催しては、遊興に耽って、浪費を重ねていた。
 (中略)
 洪範十四条の中には、国王の親政を廃して、王権を制限し、王妃と王族の政治への関与を禁じた上で、王室と国家の経費を分離して、国庫と王室費である内帑金を切り離すことが含まれていた。これは高宗や閔妃にとっては、国庫を私物化することができなくなることを意味していた。]
 この改革は、停滞していた李氏朝鮮の諸弊害の根源を取り除き、現代朝鮮の基礎を創ろうとした素晴らしい改革です。そして当時の国民の大半が奴婢から解放され救済されようとしたのです。この解放され自由になれた人々は、積極的に自発的に活動できるので朝鮮の発展に大きく貢献できる可能性を持っていたのです。そして何もせずに良民・奴婢からの搾取で贅沢をすることが権威の徴であった両班も、その特権が無くなるので、額に汗しては働く必要が出てきたはずです。さらに、将官を養成し、徴兵法を行って、軍制の基礎を確立することは、朝鮮の防衛を清国に依存しなくなるので、本当の意味で独立国になれるはずでした。このように朝鮮人全体が積極的に活動できる体制は、朝鮮の自主独立と発展の基礎になるはずでした。従って、金弘集などこの改革を進めた人々は朝鮮の近代化と発展と自主独立の基礎を作った恩人として尊敬され、顕彰されて当然であると思われます。
 しかし、『韓國の歴史教科書』の175ページ「甲午改革を推し進める」には、
【第二次甲午改革は、三国干渉によって日本の勢力が弱まり、改革を主導していた朴泳孝が政変を図ったという疑惑で失脚したことによって中断された】
と記されており、せっかくの期待の改革が中断されてしまいました。朴泳孝の失脚に関して、『朝鮮史2』の「第1章 朝鮮の開国と開化」の44ページの「甲午改革」の項には『韓国の歴史教科書』と異なる次の記述がありますので引用します。
[しかし第二次金弘集政権の中では、金弘集派と朴泳孝派とが対立するようになり、5月8日に金弘集は内閣総理大臣を辞職し、朴定陽が後任と成った。三国干渉後の親露派の台頭にともなって、6月2日には学部大臣に親露派の李完用が任命され、7月6日には内部大臣の朴泳孝が王后殺害を企てたとの嫌疑を受けて、日本へ再亡命するにいたった。】
 朝鮮では政敵に罪を着せる手段として多くの誣告が、常套手段として存在したことはすでに見てきた通りです。「朴泳孝が王后殺害を企てた」との嫌疑も、改革に反対する誰かの誣告であった可能性が高いと思われます。多くの誣告は釈明や事実確認が行われずに、嫌疑だけで疑われた人の処刑が行われていましたので、朴泳孝が直ちに亡命したのは、賢明だったと思われます。またしても、一つの誣告によって、朝鮮が底無しの泥沼から脱出する機会が閉ざされてしまいました。この誣告を仕掛けた人物あるいは人々は、洪範十四条の実施で不利益を受ける王や王妃および両班や官僚たちであると推測されますが、教科書にはどこにも誣告の仕掛け人のことは記されていません。
 『朝鮮史2』の「甲午改革」の項には、第二次金弘集政権の成立から朴泳孝の亡命までにも多くの改革が行われたことが、44~45ページに記されていますので、引用します。
[第一に内閣制度が創設された(議政府を内閣に改め、八衛門を七部に改め、農商、工務衛門は農商工部に統合された。1895年4月)。
第二に軍制改革である。1894年12月に「陸軍将官職制」を定め、大将、副将、参将以下の階級が定められた。(後略)
第三に裁判所を設置し(1895年4月)、司法機構の行政機構からの分離の第一歩とした。(後略)
第四は財政改革である。それは、⑴「管税司及徴税署官制」施行(中略)、⑵「会計法」施行(中略)、⑶還穀の廃止(95年4月)などであった。(後略)
第四に学校行制の整備に着手した。(後略)〈第四は第五の誤り?〉
第五に地方制度改革である(1895年6月)。従来の八道は二三府に改編し、邑の名称は一律に郡とさ��た(二三府制)。(後略)
第六に清からの独立を明示する諸措置の実施である。(後略)
第七に宮内府の機構改革である(1895年5月)。(後略)]
 これらの改革は1895年に決定されていますが、朝鮮半島全体には何時頃に実施されたのか分かりません。なぜなら、1895年に裁判所が設置されて公正な裁判が行われているはずですが、10年後の1905年時点ではまだ裁判の名のもとに残酷な笞打刑と見るに堪えない残酷な死刑が旧来然とした法廷で行われているのを、スウエーデン人ジャーナリストが目撃しているからです。
 のように改革の実施がなされていない理由は、金弘集内閣が間もなく高宗によって潰され、金弘集首相も虐殺されたので、その後の執権者たちは改革を実施しなかったのかもしれません。
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