喜怒哀(eel)楽
去年の7月にパートさんと鰻屋に訪れた事について綴ろうかと。何故今年の2月に入ってから振り返るのか。その事にも触れて綴り殴っていく。
仕事の休憩中に会社のパートさんと飯屋についての雑談をしていた。この人は各地方の鰻屋を巡るのが趣味らしく、休みの日には1人で地方の鰻屋に足を運んでいた。長野や岐阜、滋賀など...と鰻を食べる為なら地方まで出向くのは苦じゃないという人だ。
そんな美食家のパートさんがどうしても行きたい鰻屋があるという。だが1人では行けないとの事。会社の中で色んな地方の鰻屋の事を骨の髄まで知り尽くした漢が行けない鰻屋とはどんな鰻屋だろうか。気にならない訳が無い。話を聞くと愛知県内にあり会社からの距離だとやや遠いらしい。やや遠くとも愛知県内なら何時でも行けるはずでは?と思ったがここの鰻屋はかなり特殊であった。
まずそこの鰻屋を食べるに当たって朝から並ばなければいけない。
僕「???鰻屋って朝から並ぶん???パチンコの抽選なんか???」
パチンコの抽選だったらまだ良かったと思った。パチンコの抽選よりも朝早くから並ぶ事になる。大将が朝早く店にやって来るのだが、そのタイミングで名前を書いて予約するというやり方である。大将がやって来るタイミングも日によって違い、早い時間帯だと朝の4時頃。遅い時間帯だと朝の6時頃(当社調べ)にやって来る。しかもその予約方法と鰻の美味さを口コミで聞いた美食家達がこぞりにこぞって1列に並んでいるという。多い日だと早朝から鰻屋に20組近く並ぶという異常な光景が見られる。中には東京や大阪、地方からわざわざ車や夜行バスで来て並ぶ美食家達も存在するという。
そんなん気になってまうやん。
パートさん曰く、予約したいのは山々だが朝っぱらから鰻屋まで足を運ぶ事が面倒で食べに行けていないという。そこで僕の出番という訳だ。会社で鍛え抜かれた忍耐強さを活かして予約を取ろうと試みた。僕はパートさんに朝並んで予約する事を条件に僕の分の鰻代を奢って貰うという割とwin-win(なのか?)交渉を持ちかけた。話半分で聞いてたパートさんは
「並ぶなら全然いいよ笑 並ぶんならね笑」と。
交渉成立(一方的に交渉成立にさせた)
任せろ。今日は火曜日の遅番。あと5日待てば天国が待っている。こうなった僕はもう誰にも止められない。まさにバーサーカー。
「今週の日曜日に予約取りますね。」と告げその日を終えた。次の日の休憩中に「マジで予約取ってきてくれるんだったら俺全然出すわ笑」と言ってくれたので一方的では無くしっかりと交渉が成立したので心置き無く予約しに行く事が出来る。
迎えた土曜日の夜。僕は愛知県の北の方に在住しており、車が必須と言われる地域に住んでいながらも恥ずかしながら車を所持していない。(早く買え)実家から最終の電車に乗って鰻屋の最寄り駅の尾張瀬戸駅へと到着した。
日付が変わって時刻は00:20_____。ここから勝負が始まるのか。この予約を取る為に頑張っt...いや待って、早すぎる。何でこんな早い時間に来とるん?夏の割には肌寒くね?眠くね?暗くね?全然街灯無いしお化け出そうじゃね?いろんな感情が交錯しながらも15分後には呆気なくその地に着いた。
うなぎ 田代
ここが聖地メッカか_____。
いややっぱ暗すぎるやろ。流石に1番乗りだった。そこら辺の猫と戯れつつ寝ないようにテンションをガンガンに上げていくプレイリストの楽曲達を聴きながら待った。3時間ほど待つとチョロチョロ人が並び始めた。到着するのが早すぎてどこで並ぶのかが分からなかった僕は並び始めの2組の後ろに並んだ。すると前に並んでいた老夫婦が話し掛けて来て如何にも常連ですよ、と言わんばかりの口振りで「どっから来たの?」と声を掛けてきた。僕が返答すると「全然近いね遠いとこだと大阪や東京からやってくるから」と言っていた。やはりあのパートさんが言っていた事は本当だったのか、と思っていたのも束の間。4時頃には僕含め約10組程の美食家達が綺麗に列を揃えていた。完全にパチ屋で見たそれだった。朝の5時頃。漸く大将が到着。体感それほど待った感じはしなかった。会社で8時間近く立ち作業をしている僕にとってはお易い御用だった。予約を朝の11時に取りその後去った。朝の8時頃にはもう既に予約は終了していたとの事。早すぎやろ。
その間する事が無くお腹も空いていたので近くのファミマでコンビニ弁当とビールをキメた。もうこの達成感だけで非常に気持ちが良いのに何だこの背徳感。いつもよりビールが美味く感じた。その後歩いて1時間半かけてコメダに行った。コメダで時間を浪費しながらまた歩いて1時間半かけて田代近くまで戻った。パートさんがレンタカーで来ていたみたいなのでやや早めに合流し、田代の店内へと向かった。
鰻屋独特のええかほりがプンプンする。
入店すると大将が鰻を素手で焼いていた。その腕捌きは完全に職人の手さばきだった。店内はかなり年季が入っており、長くから続けられてきたんだと言わんばかりの内観だった。まさに老舗。カウンターに3人程座れてテーブル席2組座れる感じ。
もちろん頼むのは鰻丼(上)
ここまで頑張って来たんだ。しかも奢ってもらえる。今日くらいがめつくたっていい。そして思った以上に早いスピード感でうなぎ達は姿を現した。
ありがとう。非常に感謝した。富士山を頑張って登った時に見える絶景と空気の美味しさ。この為に頑張って来たんだ、と。そう感じざるを得なかった。四捨五入したら田代のうなぎは富士山なのかもしれない。そう言わんばかりの面構えをして我々の前に現れた。見た目はかなりシンプル。鰻丼とお吸いものと漬物。薬味等は一切無し。余計な物は要らない。このシンプルな鰻丼だけで勝負してきたとうなぎ達が我々に語りかけている。鰻は1尾と半尾。かなり贅沢。焼いた表面から見える鈍い光がより一層我々の食欲を掻き立てた。そんな御託はどうでもいい。口の中いっぱいになるまで頬張る。
口の中で天変地異が起こった。なんだこれ。美味すぎる。外はパリと言うよりかはサク。中がフワフワでは無くフヮフヮ。この表現をする為にこのヮは生まれて来たのかもしれない。うなぎ特有の後味の臭みも全く無く、やや濃ゆめタレと相性が抜群過ぎる。かなり食べ応えのある鰻。圧倒的ナンバーワンな蒲焼だと思った。長年受け継がれてきた焼き方でないとこの焼き方は出来ないのだろうな、と。5時間近く並んだという付加価値も含めてより美味しさが増している事も事実。しかしそれを抜きにしたとしても手が止まらなかった。割と量あるのかなと思っていたがペロリと食らいつくし、パートさんも余裕で完食していた。後日談で2019年のミシュランガイドに掲載されていたらしい。そんなん絶対掲載なるやん。美味しさ故に暫く余韻に浸り続けていた。長年各地の鰻屋を渡り歩いたパートさんも「田代は越えれんな今の所ナンバーワン」と言っていた。
時が経ち、今年の2月にまた鰻の話題が出た。冬の方が鰻は脂が乗ってて美味いのでまた行こうと言っていたので「またもや奢られチャンスか!?」と思っていたが店側が予約方法を変更したらしい。どうやら大将が大病を患ったらしく、今まで田代を支えてきてくれた常連さんのみに提供する事になったらしい。悔しいが大将には身体を大事にして欲しい。もう少し早ければと自分を責めた。またあの味を求めたかったがもう求める事は出来ないのだと。もう少し早ければ。
いつかまた5代目がこの伝統とも言える田代を引き継いでお店を前のように再開してくれる事を心から祈っております。
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2024.3.4mon_tokyo
8:00 起床。縁側で瞑想する。
Netflixでアニメを流しながら、朝ご飯と身支度。フリーレン、薬屋のひとりごと、アンデッドアンラックの最新話を一通り見て、シャンフロは夜の楽しみにとっておく。
今日はあったかそうだな、と春物コートで会社に向かう。まだちょっとビビってヒートテック靴下を選んだのは失敗だった、地味にアツイ。通勤電車で読む今週のジャンプはONE PIECEがアツイ。来週休載はキツイ。
会社でミーティングを終えて、資料発行のため法務局へ。お昼だからなあ、と途中下車して好きだったカレー屋に足を運ぶ。約6年振りの『ホンカトリー』の店主は相変わらず口数が少ない。トイレの場所を聞くとサムズアップした親指で教えてくれた。カッケエかよ。
店名の由来は「本家を取る」くらい挑戦し続ける店主のスタンスからなんだよな。今日も「しらすと白菜のカレー」だなんて珍しい挑戦してるもんだから、そんなの頼むしかないじゃん。テーブルに並んだト��ピングを付け加えながら食べ進めていく。5種類分つぎつぎかけて面白がってたら、気づくとペロリだった。「面白い」が「美味しい」になっちゃう体験、健在だったな。
資料発行ミッションを完了して会社に戻る。
ちょっと甘い物食べたいなあ、と思ってたら目の前に和菓子屋さんが。思わず、和菓子と抹茶のセットを注文する。さくら餅を口に入れて目を瞑る。「わあ、これ春の味じゃん」と心の中でつぶやく。すると以前「季節を楽しめてる人って良いよな」って誰かと喋ったのを思い出した。今のおれ楽しめてるじゃん、良いじゃん。
仕事してたらiPhoneに通知。
インスタのDM…マリさんからだ。そうだ、さっきマリさんのストーリーにおれが反応したんだっけ。書かれてた文章からSUPER BEAVERの『美しい日』が頭に浮かんで、思わずspotifyのリンクを送ったんだよね。最近のマイブーム:不意に思いついたその人に合う曲を送りつける、である。
=====
おじさんは今日は出張だよ><💦
すごく嫌だけど頑張るね❗
いっかんちゃんは今日は何をする予定なのかな❓
暇だったら学校終わったら連絡してほしいな~😉
=====
「曲のお礼に」と、おじさん構文が送られてきた。なんでおじさん構文が送られてきたんだろう…あ、お礼にか。いや、わからんわからん。
19:07 仕事終わり。
夜ご飯どうしようかなあ、と考えたらショウくんの顔が浮かんだ。先週飲みに誘ってくれたけど行けなかったんだよな、もう食べ始めてるかもだけど一応LINEしてみるか。「今ちょうど仕事終わったとこです」と即レスが来た。おいおいナイスタイミングかよ、めずらしく今日はツイてる日かもしれないぞ。
19:40 表参道駅で乗り換え。
どうやら人身事故があったみたいで電車が遅延してる、さっきのツイてる宣言撤回だな。ホームの列に並びながら、遅れるゴメンLINEを送る。「ゴトン!」と真後ろで鈍い音がする。後ろに並んでたおじさんが倒れた。
緊急事態。
「大丈夫ですか…?」周囲の人と一緒に声をかけるも反応がない。真っ赤な顔をして、目を見開いてる…明らかにヤバイ。救急車?緊急ボタン?駅員…いない。「駅員さん呼んできます!」と駅員室に走る。連れて戻ると、人だかりの中で女性が心肺蘇生法をしてた。偶然、医療従事者の方が居合わせてたらしい。おじさんの脈が止まっていた。
どうしよう。
でも、どうしようもない。心で「頑張れ」と唱えながら見守るしかできない。AEDが届いて、女性が何度か試みる。脈が戻る、でも意識は戻らない。遅延してた電車が到着する、乗る気がしない。乗れるワケがない、多分きっといま周りにいる皆が同じ気持ち。
救急隊員さんたちが来た。
医療従事者の女性が処置内容を共有し、第一発見者の方が状況を説明する。駅員さんはおじさんの携帯で奥さんに連絡をしてて、救急隊の方はずっとおじさんに話しかけ続ける。緊迫状態が続く中「あぁ」と声が聞こえた。おじさんが、反応した。
よかった…
もう大丈夫のはず。一命を取り留めたおじさんが担架で運ばれるタイミングで電車がきたので、駅員さんに会釈をして乗り込む。「ごめん、今から向かうね」とショウくんにLINEをする。最近ずっと聴いてた『切望』という曲の一節が頭に浮かぶ。”人ひとりの幸せに どれだけの人生が 携わっているだろう” 本当にそうだよなって思った。
20:14 ショウくんちで晩御飯。
今どこにいるんだっけ…まだちょっと緊張を引き摺りつつも、今度は別の非日常な景色が広がってる。先週建てたばかりの友だち夫婦の新居は2人の「素敵」を凝縮したような空間で、出てくる料理の皿まで全部可愛いもんだからずっと「ひえ〜」って言ってた。人に懐かないはずのペットの鳥ちゃんが頭に乗ってきてくれた。素敵の仲間に入れてもらえた気がして、ちょっと嬉しい。
01:08 やばい、もうこんな時間。
2人の素敵なおもてなしについ長居してしまう。帰り際、ずっとレコードを流してたショウくんが何故かキマグレンの『LIFE』を流した。”君は誰のために生きてるの?” めちゃくちゃ久しぶりに聴いたけど、こんなにズシリと来る歌詞だったのねキマグレン。
01:30 帰宅。
歩いて帰れる距離にあの2人が住んでるのが嬉しいなあ、とか思いながら歩く夜道。何杯ワインを注いでもらったか覚えてないくらいにはフラフラである。帰ってからの楽しみにしてたシャンフロの最新話はもう諦めるかなあ、今日はいつもより濃い一日だったもんな。
-プロフィール-
遠水イッカン
32
東京
プランニングディレクター
https://www.instagram.com/ikkaaannnn__/
https://ikkaaannnn.com/
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全員が黙々と食事を始めた。
食器と皿が当たる音だけがこのテーブルから発される音だけが鳴り響いている。
だがこんな静寂をも簡単に打開してしまう男の発言があった。
「会話無くよう、そんな黙々と食事出来るなァ。コロナ禍かァ?」
「アリスちょっと、ここにアクリル板持って来てくれない?」
「確か大量廃棄が社会問題になっていたわよね。一気に必要なくなるんだもの。諸行無常とはこの事なのね。」
「今は盛者必衰の理を表さなくていいの。へえって平なリアクションだけしておくんだよ。」
「そういえば昔に流行ったへえと音が鳴るボタンもアクリル板も今となっては入手困難に似合ってしまったわね。あの時作っていた企業はどこに行ってしまったのかしら。」
「『あの人は今』みたいに『失われたあの物は今』とかいう名前でドキュメンタリーがもし放送されたとしても確実に見ない自信しかないな。」
「ドキュメンタリーは興味のある分野しかハネへんもんなァ。」
「結構偏った意見ね。たまたま点けたら見知らぬ分野のドキュメンタリーやっていたら意外と見てしまうもんでしょう。」
「プロの技は見ていて気分が良いもの。」
「大袈裟にいえばロストテクノロジーっちゅう訳やなァ。」
「大袈裟に言わなくてもそれはロストテクノロジーでしょうよ。いや、物は失われたけど別に技術は失われていないわ。危うく騙されるところだった。」
「失われ過ぎ去った物たちにノスタルジーを感じるのも小粋なものよ。」
「アンタが好きそうな話だわ。嫌と言う程聞かされてきたのだから。」
「亡くなりつつあるモノへのせめてもの手向けだよ。消えちゃう前に触れ合いたいじゃあない。」
「デジタル化が進んでいった結果返ってアナログ懐古が趣味になったのもまあ頷けなくもないわね。」
「ちょっとは理解してくれる様になったじゃあない。」
「何よ。見縊ってたって言う訳?許せないわ。」
「これでもかとォ仲良し見せて来るなよォ少女漫画誌かァ。」
「私は断然ちゃお派だったけどね。」
「今は全くそんな事聞いてないのよ。なんなら薔薇乙女とか好きなんだから少年誌かと思うじゃあない。妙な肩透かしを喰らった気分だわ。」
「そりゃあ少年誌も愛しているわ。この街並みの模倣となった様な作品も数多いし敬愛するものだけでいったとしても三日三晩じゃ収まらないわきっと。」
「いやいや、一つの話が長過ぎるって。フリーザ編かよ。」
「あら?読んだ事も無いのにそんなツッコミなんか覚えちゃって。何処から仕入れた悪知恵よ。」
「他にも長編はあれど知名度的に伝わり易いと思ってな。じゃあ無いのよ。なに解説をさせてるの。これ以上無い辱めだわ!」
「オイオイ、オレの出白があまりにも無さ過ぎやしねえかァ。そんな便利屋オジサンとして来た訳じゃあねえよォ。今頃オレの追っかけがSNSで嘆いてる頃やろうなァ。」
「無理矢理、出白を作らないでよ。折角、家族ならぬ姉妹水入らずのやり取りだったと言うのに邪魔してさ。」
「もうそれツッコミというかァ、ストレートな指摘やんかァ。オレもさァ会話劇に混ぜてェなァ。オジサン寂しいやんかァ。」
「私、反抗期を経過せず、いや通過する頃には父親が居なかったのだけれど改めて反抗期の頃に触れ合う父親はこんなにも鬱陶しい存在かと思えば勝手に杞憂してしまうわ。」
「黙々と飯食えちゅうんかいィ。そんな悲しい話なんかァそうないでェ。」
私とテレスは目を合わせ何かのテレパシーで通じ合ったのか何も言葉を返さなかった。
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「いやはや空気読みせんでええねん。まるでオレが1人でにスベッたみたいやがなァ。貰い事故やでェ。こんなん。ヒドイわァ。」
「てっきり、この展開を欲しがっているのかと思ったので差し上げた次第ですわ。違いましたか?」
「そりゃあ違うかと訊かれたらやなァ確かに間違いとも言わんけどなァ。恰もオレが欲しがっていたみたいな物言いにはァ納得は出来んでェ。」
「意外と服は着ているのに不服だったのね。」
「おォ?なんだなんだァ?一発此処以来で脱いで腹踊りでも披露してやろうかァ?」
「周りの視線が気になって文字通り疲労してしまいそうですしそのボケを誰が拾うのかが検討もつかないのでやめにしておきましょうか。」
「オイオイィ。オレの出しろ終わりっちゅうんかえェ。まだまだ話させてくれよ。会話劇から離さずにさァ。」
「じゃあ何か話したい事等御座いますか?」
「待て待てェ。て言うかなァ。言葉遣いから距離感じるわァ。そない距離取ってたかァ?川挟んで会話してるやないかァ。向こう岸から話しかけて来てるよなァ?」
「三途の河を渡られたので此方と致しましても何も出来兼ねまして。」
「笑うてまう位には言い過ぎやろォ。こうなったら賽の河原にてあんたらァ来るん待っといたるわァ。早よ石積みに来いよォ。」
「口を挟んで申し訳ないけど賽の河原は親より先立った子供達が行く場所よ。私達はてんで用事が無いわ。もし地獄に行く機会がありましたら閻魔大王様へ直談判しようかしら。地獄の人事部を出せと。採用担当に悪態を突いてラビさんの職を失わせて差し上げるのが筋かしら。」
「アンタが1番地獄が似合うってオチかいなァ。さては閻魔大王の生まれ変わりか?余りにも畜生が過ぎるでェ。ッて言うかまずそもそもなんで地獄行きやねん。気にも留めて無かったけどおかし過ぎるやんけェ。」
「ラビさんには地獄がお似合いな事。」
「どれだけ好きな人でも末尾にハートマークが装飾されていようが悍ましい文章だな。」
「テレスならこれで何人か口説いてたりしそうね。」
「なんだとテ���ェ。悪評過ぎんだろ。」
「やっとこさ口を開いたと思ったら喧嘩かいなァ。」
退屈そうにしていたのがバレない様に口を開いたのが災いとなった。
先人達が残した諺と言うのはこうにも的を得ているのかと感心までする。
「このままこの場におっても如何にもこうにもならへんねんからそろそろ場所変えるかァ。」
確かに全員の皿は空になってから時間は経っている。
「そうね。と言いたいところだが何処行くんだよ。」
「そんなん行き当たりばったりやがなァ。」
大の大人とは思えない当ても無い他人事の様な一言に吹き出しそうになる。
「どうせまたあのアジトやらに戻ろうとしているのが見え見えよ。選択肢の無い男ね。」
「痛烈批判やんけェ。そないな事してどないなるっちゅうねん。」
「てんで会話劇が下手ね。同じ場所でぐるぐると、のたうち回っているだけじゃあ無い。」
「テメェ等の口が重厚な銃口の様に思えて来たわァ。口から煙吹いてんでェ。薬莢拾い係なんざ躍起してもやりたァないわァ。行き過ぎた死体撃ちをしたい内はまだまだお子ちゃまっちゅうこっちゃあなァ。」
「まだ死に足りてねえのか?脳天一発ぶっ放してやろうか?」
「そんな汚い言葉を何処で覚えたのよ。親族としてしんどくなるわ。そんな事よりも、この空いた器がこっちを見ているわ。追加注文の是非を問うている様ね。」
「御馳走してくれるのか。」
「いやはやレディーには食後のデザートは付き物やけどもやなァ。あれだけ火吹いといて鎮火に甘味かいなァ。あんたらの口は忙しいてしゃあないわァ。」
「ウダウダ言ってないで早く甘味を寄越せよ。」
「こればかりはテレスに同感だわ。」
「甘味の前では悲しき抵抗かァ。ほらァ好きなモン頼め頼めェ。」
煽てれば男は弱るのを昔見たドラマか何かで学んでから実践する様になって久しい。
今回も案の定の結末を迎えた。
ほら簡単だと得意気な顔してメニューから吟味する。
あたしは純喫茶ならではの硬めのプリンをアリスはショートケーキとミルクレープを注文する事とした。
ホイップクリーム党なるものがあるとしたらアリスは党首か側近には位置する程の愛好家である。
兼ねてから切り分けられていたモノを皿に移し替えるだけなので注文から程なくして卓上には3皿が並んだ。
デザートが来たタイミングで気が付いたが若しかするとアリスはラヴィの分も注文していると喫茶店側にアピールする為に3皿注文したのかもしれないと。
まあどうせ食べるのはアリスの他ならないし、その配慮が如何、喫茶店側に作用したのか等神のみぞ知りうる事実であろう。
そんなこんなで別腹の作用も相待ってか軽くペロリと平らげた。
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会計は警戒する間も与えず軽快にラビさんが支払ってくれた。
カランコロンと退店し先程、一頻り盛り上がった“あの話題”へと舞い戻る事となる。
「さあて、あたしは帰ろうかな。」
満腹中枢を満たしたのだから後は寝るだけだと言わんばかりのテレスが欠伸をしながら言った。
「では一緒に帰りましょうか。ラビさんご馳走になりましたわ。まだまだ話し足りない所ですがテレスがこうなってしまわればどう足掻こうとも結末を変えるのは難しくて無難に逆らわず従うのが筋なのです。良く言えばまた会う為に歯切れの悪い別れも必要だと云う事ですかね。」
「まあァ嫌でも会う事になるやろうしなァ。今日はこんぐらいで御容赦しておこうかァ。」
傍目でテレスを見いやると相変わらず欠伸をして眠気眼を擦っていた。
ラビが言った“嫌でも会う事になる”という文言が引っ掛かったのは事実ではあるが現段階ではピースの足りないジグソーパズルを完成させる様で直ぐに思考を放棄した。
「では。また今度。」
とだけ別れの言葉を吐きテレスと一緒に駐車場に向かう。
「ほなァ、またなァ。」
相変わらず歯切れの悪い語気が伸びた言葉を雑踏の所為にして振り返らずに歩き出した。
「如何だった?ラビさん。」
ちいとばかりの気不味さ紛らわす為に会話の初歩みたいな質問を問うてみた。
「え?なんつった?」
帰ってきて欲しかった言葉が何処にも見当たらないエッジの効いた返答である。
ほぼ寝ながら歩いてるテレスの耳には届かないのはそこまでおかしな話でもない。
生物的に最も弱い姿であるのに語気だけは保とうとしているその健気さには微笑ましく思えてしまう。
「だからラビさんと話してみて如何だった?って訊いてるのよ。」
「嗚呼、あの姦し人誑しペテン師の事?」
「小気味良く脚韻を繋ぐ余裕だけはあるんだ。それなら良かったけど。余りに悪く言い過ぎてはいない?まさかだと思うけど私が来るまでに膨大な金額を持ってかれたりしたの?」
「詐欺には遭っちゃあ無いけど、のらりくらりフラフラとしていて尚ヘラヘラしていられちゃあイライラもするだろ。」
真一文字に閉じかかった目を半弦の月位には開かさる事に成功した。
「他人の不得手も得手とする事で幾分かは生きやすくなると思うわ。今は若いから他人にそれだけのエネルギーを使い発散出来ているけれども、いつかは身が持たなくなってしまうわ。」
「増えて?ババ臭い事言ってんじゃねえよ。」
閉じかかった目を開かせたとしても妙に噛み合わないのは脳がまだ意識として追いついていないからであろう。
「増殖の話はずっとしていないけど装飾無しの言葉じゃあどうも堪える物もあるわ。」
「逆ヴィーガンの話であったり増えてみたり一体なんなんだこの話は。点と点が線にならないヘンテコにも程があるだろ。」
「私の食生活もテレスの食生活も草食無しでは無いんだけどなあ。宛らエスキモー寄りな生活でしょう?強烈なタンパク質不足によって脳の回転数が足りていないみたいよ。決してヴィーガンの是非を問うている訳では無いんだけれどもね。」
「噛み合わない歯車を回す苦労も幾分か理解出来た。」
「うん。理解出来てたら尚更、今の発言には是非を問いたいところよ。」
こんな調子のコンテンポラリーを続けていたら愛おしき我が家に到着した。
エレベーターでは開きがかった眼も脳も閉幕へと向かうテレスと共に家のドアを開ける。
数える間も無くテレスは濃い化粧を携えてベッドへと溶け込んでいった。
一応、聞いてはいないであろうが着替えておきなさいと水を刺しておいた。
寝耳に水は有効な筈なのに。
身支度を済ませたら疲労感がドッと押し寄せて床まで向かうのはそう難しくはなかった。
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あまりにも深過ぎる睡眠だった事もあり起床に時間を要したのは言う間でも無い。
やっとの思いで身体を起こし時計を見いやる。
時刻は15:39を指していた。
昨日が何時に帰宅したのか。
どうやって帰宅したのかが蒙昧になってしまっている以上どれだけ寝ていたかは定かでは無い。
10分以上をかけて部屋から出る。
私達のリビングには誰も居ない。
相も変わらずアリスは用事に満ちている。
宛ら幼児かの如く注意散漫も欠かせない。
出不精なアタシは今日はトコトン引き篭もってやろうと決断した。
だからと言って劇的に現実がどうなる事もないが。
片付けを早急に熟さなければならない程散らかっても居ないし観たかった映画やドラマも今の脳の回転数には無駄になってしまう。
只管にぼんやり何を見つめるわけでも無く思案することも無く時間だけを浪費していく。
このままでは夜更かしに繋がってしまうと危惧して一先ずテレビを点ける。
夕方のニュース番組が流れてきた。
うんざりする程に今日も今日とて他人の不幸ポルノである。
意図せず抱く事となった嫌悪感に辟易していればあたしを釘付けするには過不足無いニュースが読み上げられた。
余りに退屈が過ぎるので起きてから初めて携帯を見る。
さして友達もアプリも多くないから依存をしてしまう程、携帯が震えて鳴る事は無い。
深過ぎた睡眠中に来ていた通知を確認しようとしたら“ラヴィ”と書かれた名前から何故かメッセージが届いていた。
「気色の悪い野郎だろ。ったく。」
久しぶりに発した声は初めて恋をするかの如く不器用であった。
嫌々ではあるが送られてきている以上中身を確認せざるを得ない。
『無事に帰れたかァ?終盤のテレスは中々に見応えあったでェ。このメッセージ見たら返事でも頂戴。』
最悪だ。
酷い鈍痛が脳を劈く。
返事なんて寄越す気にもならない。
だが無視ばかりをしていたとしてもどうせ追いメッセージが届き更に滅入るのはもっと目に見えていた。
『別にどうって事ないわ。気にし過ぎるのも大概にして欲しいって所かしら。』
素っ気無く返事を送信した。
ただただ返信がすぐさま帰ってこない事を望むばかりだ。
寝ても覚めてもこうして慈愛と自愛と悲哀と非愛ばかりの街に溶け込むであろうアリスやラヴィの生き様は憧れを抱くのを優に通り越えて全くなれない別の生物かのように思わされる。
確か「みんな違ってみんな良い」
なんてセリフはかの金子みすヾが言っていた。
そしてその言葉が深く意識され始めた令和を経過したが結局、自分の意識外に位置するものは異物で脳内で咀嚼するには相当の経験眼が必要であろう。
便利な言葉が所以、昨今も理解がある大人になろうとして良く使われているが結局、他人への無関心を露呈させてやがるだけである。
良くない方向に思案する様になってきたのが肌感覚で分かってきたので機嫌を取る為にキッチンに立ち冷蔵庫の中に残っている余り物を駆使して今の胃に献上するにうってつけのメニューを手軽に作った。
寝過ぎた所為からか胃も本調子では無く、さっと平らげて過眠の影響でまだ気怠い身体をそのままベッドへと移してそのまま気絶する様に入眠しようとしたその時だった。
鳴らないはずの携帯が鳴動する。
こんな時の嫌な予感は十中八九、的中してしまう。
”ラヴィ”と書かれた通知バナーには
『無事に生きてたんやなァ。えらいツンデレな返事、寄越してくれるやんけェ。次のデートはいつにしようかァ。都合のええ日取り教えてくれやァ。』
全くいつまでふざければ気が済む野郎なんだ。
何回この気持ちにさせられればいいのか先を見通せば気が滅入る。
場末のスナックのママは日夜こんな出来事も些末な物として処理してしまうのだから人間強度がまるで違う。
どんな返事をすればいいのか。
自分が困らないように仕向けたいとは思うが良い案も浮かぶ訳が無い。
今迄の人生で適正に絡むべき人との接点を避けてきたあたしには無理難題でしかない。
どうせならいっその事無視でもしてやろうかなと覚悟を決め携帯を放り投げ寝る前に水を一杯飲もうとキッチンに向かい丁度飲み終える頃で玄関先からガチャと扉が開いた。
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Dole® ぶどうミックス&ヨーグルト(2023年ver)
季節ごとにフルーツが変わるのが楽しいDoleシリーズ、秋の味が10/2に登場🙌
ぶどうミックスは過去にも出てたことがあるけども、若干アップデートされてる!
スペック
・ぶどう果汁
・白桃果肉
・アロエ
を組み合わせた無脂肪ヨーグルト。
なんとぶどう果汁は巨峰・赤ぶどう・白ぶどうの3種のミックス!
果肉はない代わりに、アロエがぶどうっぽい食感を醸し出してくれるとのこと。
今までのぶどうミックスはナタデココも入ってたけど、今年の春から新作は常にナタデココなし。
微量のビタミンCを入れてアピールするやり方がなくなったのがすごくいい。
あわよくば無脂乳固形分がちゃんと発酵乳の規格に入るようになってくれると嬉しいんやけど、難しいのかなぁ。
今回も「発酵乳」ではなく「乳等を主原料とする食品」。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・୨୧
開封
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・୨୧
毎度のことながら、ヨーグルトが遠い。
もうずっと170gでやっていくなら、容器も170gに合わせた大きさに縮小できるといいなぁ。
ヨーグルトは彩度低めの淡い紫色で、いつもどおりスライム的なぷんにゅり質感。
かなーーーーーーーーーーり香料きつくて、だいぶ離れててもガンガン来る⚡️
ぶどうガムみたいな香り🍇
白桃果肉とアロエ葉肉、どれがどれやろう。
着色料が染み込んでるのか、全部濃ゆいピンク色してて見分けがつかず。
いろいろ人工的でちょっと苦手。
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頂きます🙏
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・୨୧
うぅ、香料が強すぎて偏頭痛スイッチが入ってしまうタイプやった😭
体質的に合わず。
でも味は駄菓子的においしい!
ヨーグルトの口溶けや舌触りはなめらかで、ぶどうの果汁感もあり、渋みもあり💓
ただひたすらにぶどうで、お乳の味わいは浅め。
アロエはあんまり入ってないみたいで、たまにちゅるんと現れるのがレアで嬉しい。
白桃はたくさん入っててジャキジャキしたいい歯ごたえ😋
あんなに強かった香料が、食べ続けてると麻痺ってくる😳
軽やかでペロリと完食できてしまうおやつヨーグルト。
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無脂乳固形分 6.9%
乳脂肪分 0.2%
—————————————————
栄養成分(1個170gあたり)
エネルギー 94kcal
たんぱく質 5.5g
脂質 0g
炭水化物 17.9g
食塩相当量 0.2g
カルシウム 147mg
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原材料名
フルーツソース(ぶどう果汁、白桃果肉、砂糖、シロップ漬けアロエ葉肉)(国内製造)、乳製品、砂糖、デキストリン、乳たんぱく、ゼラチン/増粘剤(加工デンプン、増粘多糖類)、酸味料、着色料(紅麹、クチナシ)、香料、甘味料(スクラロース)
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希望小売価格
140円(税別)
購入価格
108円(税別)
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製造者
協同乳業株式会社
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