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#アイリッシュ・コーヒー
vegehana-food · 2 years
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✿ アイリッシュ・コーヒー | Irish Coffee ・ホットコーヒーにアイリッシュウイスキーとブラウンシュガーを加えて、ホイップクリームを浮かべたアイルランドの飲み物。1940年代、客の冷えた体を温めるために、アイルランド西海岸にあるフォインズ飛行場のシェフによって考案されました。
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kjh-417 · 11 months
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mes possibilites aujourd'hui. 今日のわたしの可能性。   洗濯をする。   スコーンを焼く。   栗の渋皮煮をつくる。   徒歩で買い物に行く。     ゴールド・バニーが 一輪だけ咲いたので、 早々に摘花。 元気が出る黄色。   昨夜焼いたチャバッタを スライスして、 サワークリームと柿を乗せて食べる。 お供は久しぶりに アイリッシュ・ブレックファストで ミルクティー。   栗の渋皮煮、今までと 少し違った方法でチャレンジしてみることに したのだけど、 重曹を切らしていたので 徒歩で買いに行く。   いつもと違うスーパーマーケットは どんな商品が並んでいるか ながめて歩くのもたのしい。 今日はlotusの丸いビスケットサンドを発見、 衝動買い(笑。 今度ゆっくりコーヒーを淹れて いっしょにいただくとしよう、 もちろんlotusのカップで。
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sohgendo · 5 months
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こんにちは、そうげん堂です。
お待たせいたしました!昔ながらのプリンが始まりました。平飼い卵をたっぷりと使っています。濃厚で程よい甘さが、コーヒーによく合います。
#そうげん堂#sohgendo#カフェ#スープ#サンドイッチ#ケーキ#和歌山#海南市#アイリッシュ#和歌山カフェ#まるい#カレー#スパイス#お持ち帰り#ブリトー#takeaway#旧田島うるし工場#old_factory_books#展覧会#art#ピクルス#ジャム#プリン
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kurashinoshop · 3 months
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6月13日 木【暮らし】
キラキラと輝くホルダーと、
吹きガラスによる繊細でクリアなカップ。
美しいデザインのグラスは、
ずっと眺めていたくなる魅力があります。
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メーカー:Royal Krona / ロイヤル クローナ
シリーズ:Irish / アイリッシュ
素材:マウスブロー 耐熱クリアガラス
24kゴールドメッキホルダー / シルバーホルダー
年代:1975 -1977
サイズ(cm): φ7.0 × H10.5
生産国:Sweden
ロイヤルクローナ社より
1970年代に作られた、
ヴィンテージグラスです。
ゴールドのホルダーは、
なんと24K / ゴールドメッキ。
深く上品な輝きを魅せてくれます。
元々は
アイリッシュコーヒー用グラスとして発売されました。
アイリッシュコーヒーとはアイルランド発祥のホットカクテルで、
アイリッシュウイスキーをベースに、
コーヒー、砂糖、生クリームを加えて作られます。
寒い国だからこそ、
身体の芯から温まる飲み物として長年愛飲されています。
もちろんアイリッシュコーヒー用としてだけではなく、
アイスコーヒーなどの冷たいドリンクや、
ホットワイン、ココア、紅茶など。
クリアガラスならではの色で魅せる楽しみもあります。
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ロイヤルクローナ社は、
1974 -1977年の僅かな期間しか存在しなかったスウェーデンのガラスメーカーです。そのあと KOSTA BODA社に買収されました。
大変希少なグラスです。
是非店頭にてお手に取ってご覧くださいませ。
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yuutanman · 2 years
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【アイルランドのシチュー料理とおいしいコーヒーとビールのお店】 『巨人のシチューハウス』という面白い店名ですが、かなり話題になるお店とのことでマスコミ宣伝が多いお店だそうです。まったく知りませんでしたが、初挑戦。 土曜日のお昼どき、予約なしで行きました。ラッキーだったのかすぐには入れました。 その後は10名位並んでいましたね・・。こちらの看板メニューはシチューです。アイルランドのドリンクやおつまみなどもあるので、お酒好きにはうれしいお店だと思います。 車で来たので、ビールは我慢です。シチュー+サイドを1つずつ選択できるセットをオーダーしました。 シチューはとっても優しく、おいしいです。ビーフアンドギネスとシーフードチャウダーを注文しました。アイリッシュ・コーヒーがとてもおいしいです。アイリッシュはアルコールが少し入ります。あ、車で来てましたが、お酒に弱い方は注意しましょう。 シチュー + サイドセット 1300 シチュー + ドリンクセット 1400 シチュー + サイド + ドリンクセット 1600 シチュー + サイド + クラフトビールセット 1900 シチュー + サイド +ドリンクセットの1600円を頼みました。 ■シチュー 具材ゴロゴロ。お野菜が、にんじん、じゃがいもがごろごろ入ってる。 お肉もとても大きいです。お肉もほろほろで柔らかい。 ■アイリッシュコーヒー シナモンの香りがとてもいいですね。 生クリームがまろやかで、少しの苦味と、ウィスキーの微妙な香り。 アイルランドの雰囲気を楽しめます。 ●店名 巨人のシチューハウス ●住所 東京都品川区豊町1-3-11 ●交通手段 JR東京臨海高速鉄道りんかい線 大崎から徒歩12分。 都営浅草線   戸越駅 徒歩11分 東急大井町線「戸越公園」駅 徒歩10分 東急大井町線「下神明」駅 徒歩8分 戸越銀座商店街 下神明駅から610m ●営業時間 [水・木] 12:00~14:30 18:00~21:00 [金] 12:00~14:30 18:00~22:30 [土] 11:00~22:30 [日] 11:00~21:00 日曜営業 ●定休日 月、火 #love #photooftheday #happy #followme #follow #food #likeforlike #foodporn #東京美食 #戸越銀座ランチ #戸越銀座ディナー #戸越銀座おいしい店 #戸越銀座シチュー #巨人のシチューハウス #シチューハウス #シチュー屋 #シチュー好きな人と繋がりたい (巨人のシチューハウス) https://www.instagram.com/p/CkkPIvBv7-G/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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picolin · 2 years
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Not Now
by David Ireland
dir. Max Elton
2022年11月19日 Finborough
『Cyprus Avenue』のデヴィッド・アイルランドの新作。初演は今年5月のグラスゴー。ベルファストの若者マシューがロンドンのRADAへの入学試験のため、シェイクスピアの『リチャード三世』の冒頭の独白を練習している。そこにたまたま入ってきてしまったレイおじさんとの間で交わされる、アイデンティティとは、ブリティッシュネスとは、そこにおけるアルスターアクセントの立ち位置とはをめぐる会話の中に家族の秘密が浮かび上がってくる。
スクリプトやコーヒーが置かれたテーブルと椅子がある居間を舞台にした二人芝居。冒頭、いかにも古くさくいかめしい調子でグロスター公を演じるマシュー。彼が頑なに「自分はアイリッシュではない、ブリティッシュだ」と言い張るのに対し、「もっとアイリッシュであることを誇りに思えばいいのに」と言うレイおじさん。会話の中に映画や芸能人ネタをふんだんに取り入れて笑いを誘ったあと、亡くなった父親がロイヤリスト側の武装組織の一員だったことを打ち明ける。一方で生まれてこの方一度も女性とつきあったことがないことを話すレイおじさん。ここで語られるのは、個人が自分のものとして認識する属性やアイデンティティの選択の裏に様々な経緯や状況が複雑に関与していることである。そこでキーとなるのは誇りだけではなく恥もまた大きな影響を及ぼすことが示唆される。そして最後におじさんからマシューに提案されるあることは、文化に支配的影響を及ぼす「中央」とそれ以外の「地方」との関係を少しでも掻き乱し、自分たちの社会に誇りを取り戻す試みのようにも見える。
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masu2202 · 5 years
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お店の外では顔を合わせる事もあるのですが、久々にお店の方へ! 店主、本日はイベント出店の為、リョウくんが店番。 壁のアイリッシュのミュージシャン達のサインはぜひ残したい! #fiddle #パン #コーヒー #アイリッシュ音楽 (Fiddle (フィドル)) https://www.instagram.com/p/B7xtt5vBO3G/?igshid=1nu0cwe3ni59g
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learningnihongo · 3 years
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コーヒー
Vocabulary
コーヒー - coffee
コーヒーまめ - coffee beans
コーヒーショップ - coffee shop
コーヒーカップ - coffee cup
クリーム - cream
コーヒープレス - coffee press
ペーパードリップ - paper drip
レギュラーコーヒー - regular coffee
アイスコーヒー - iced coffee
ラテ - latte
フラットホワイト - flat white
カプチーノ - cappuccino
アイリッシュ コーヒー - Irish coffee
ベトナムコーヒー - Vietnamese coffee
Vocabulary with kanji
珈琲 - coffee
コーヒー豆 - coffee bean
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I really like coffee.
私 は コーヒー が 大好き です
This coffee is really tasty
これ は とても おいしい コーヒー だ 。
Coffee please.
コーヒー を ください
Do you want coffee?
Yes please.
コーヒー は ほしい ですか?
はい、ください。
Do you want coffee?
Yes please.
コーヒーいりますか?
はい、おねがいします
Want coffee?
Yeah.
コーヒー、いる?
うん、いる
My husband makes good coffee.
私のおっと は 私に おいしいコーヒー を いれてくれます。
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hibikore-archives · 5 years
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よしもとかよ 「日々是好日。」vol.18 (2019/12/11 + 12/18)
2019  11th + 18th december
    M1   Eagle Man / Changing Woman (Mari Boine)
  M2 air of December (Edie Brickell)
  M3 ああ、美しく神秘的な夜 (Szaloki Agi)     M4 光の中の光 (Gunnel Mauritzson)     M5   L’enfant au tambour (Nana Mouskouri)     M6   o come, o come Emmanuel (Susan Aglukark)     M7   in the bleak mid-winter (Shawn Colvin)       M8   cold December night (Michel Buble)    
< 好日の素 … 表現する、ということ >  
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  ここ数年、 「表現する」ということについて ぐるぐると 考えてしまっている状態が 続いていて ともすれば 敬遠していた節もあったのですが、   ここにきて それが少しずつ ほぐれてきているような 気がするのです。   身構えたり、頭でっかちになるのを 一旦やめて もっとシンプルにとらえてみませんか、と じぶんでじぶんに声をかけているような。   ひとつ「表現」と言っても その手法はさまざまで、 それならば じぶんの中にうごめいている何がしかを アウトプットするなら 何を用いたらいいだろうか、と思い、   じぶんならでは、という意味でも 音声がよいのではないか、ということになりました。   昨年の秋から M45というユニットで 音声での表現に取り組んでみて   今までも さんざん向き合ってきたはずのことながら 何かとても新鮮な感覚もあって、 おもしろいな、と素直に思えたのです。   そこに 今回お声かけをいただいて 作品展に参加できることになり 一年ほどかけて、音響作品をつくることに。 テーマは「つつみ」。 このテーマに寄せて [2:23 p.m.] という作品ができました。
作品展会期中、 タイトルどおり 午後2時23分から 一定時間しか、ある意味「展示」されない、 不思議な作品。 そして、M45らしさにあふれる作品です。   ぜひ、会場で 体感していただけましたら幸いです。     「つつみ - みえるとみえない、作品展」 2019/12/14 - 22 富山市民プラザ2F アートギャラリー 詳しくは 富山市民プラザHPをごらんください。 http://www.siminplaza.co.jp/index.php?tid=103940       * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * < 日々是食べたい! … ミルクティー>  
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  いよいよ寒くなってきて、 あたたかい飲みものに ホッとする、ということが 多くなってきたように感じます。   今まさに ホッとしていますよ!という方、 いらっしゃるのではないでしょうか。   スープ、お味噌汁、お茶にコーヒー… 寒いのはイヤだけど、 寒さを感じるから余計さら あたたかい飲みものが おいしく感じられる、ということも あるのかもしれません。   そんなこの時期に わたしが好んで飲んでいるのが、ミルクティー。 紅茶もさまざまな種類がありますが、 ミルクティーに合う茶葉の中から 数種のお気に入りを その時の気分や 時間的な余裕に合わせて選んで たのしんでいます。   ウヴァをはじめ、 ケニアやアールグレイなど…そしてこの頃は アイリッシュ・ブレックファストが 定番になりつつあります。   そういえば、学生時代 アルバイトの帰りに 自動販売機で あたたかいミルクティーを買って、 手をあたためながら帰ったなぁ、なんてことまで 思い出しながら、お話しさせてもらいました。  
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y-amaoni · 4 years
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手作りカクテルキット最終回
【アイリッシュ珈琲】
ノンアルコールなので、見た目だけでも
アイリッシュ珈琲らしく、頑張ってみました😊
レモンマートルシロップとコーヒーが上手に合わさってとてもとても良いバランス☕️
最後の最後まで、楽しく頂きました!
次は札幌へ行った時には
是非お店へ参ります。
富田さんのカクテルはこちらで↓
The bar nano. gould.
https://www.facebook.com/nanogould/
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yohatateao · 2 years
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某日、昼下がりの公園。映画を観た後、喫茶店。アイリッシュ・コーヒーを呑み、即刻、ほっつき歩いた。
公園の入口は雑草の群れ。一匹の猫。奥から数人の子供。逃げる二人の少年。追いかける一人の少女。続いて二人の少女。その一人、「いってぇ!ぜったい、ぜったい、ムカつく!」と公園いっぱいに発した。
僕の酔しれた身体は、子供たちを追い、一回、二回、三回、シャッターを切った。
池に沿う細い道。細い道を囲う草木。背景には都会のビルディング。遠い青空。片隅にある旧いベンチ。座る。向こう側から別の群声がした。
一息と目を閉じる。一息に呑み込まれる。沈黙、のような後、沈黙などないことを知る。音が通過する。ガマガエルが鳴いている。じっと身構えていた。
風は、何をあつめていたのだろうか。あいつは、この世界をどう映していたのだろうか。世界の何処かで、別の生物に僕は、別の僕として映されているはずである。
目を開ける。前を通りすぎる猫。尻尾を振る。僕のなかの猫が歩きだし雑草に群れる。草花が揺れる。落葉に雫。湿った土の香り。昨夜の雨。小鳥の鳴き声は甲高い空。子供たちの足音。
駆け抜けていくイメージ。あるいは、イメージそれ自体が駆け抜けていく。ただひたすら、この偶有性において在ること。次なる駆け抜けるイメージ。すぐ近かく、別の誘い。超薄的な、何事か。イメージの駆け抜け。つらなり。影のように、泡のように。なめらかさ。軽やかさ。移動。音。訪れ。少し酔って写真を撮りに出る午後。曲がる街角。シャッターを切る。誰もしらないところで、死と愛が、目隠しの追いかけっこを始めている。
揺れ動く姿のわずかな顕れ。写真に映る事物の前後は到底知るよしもない。写真にある静止。その静止が世界の朧気を浮き彫りにする。
イメージの駆け抜けが連なり、日々の残像が群れる。閃光しつづける道草。逢引きする眼差し。瞬き。わが瞳。汚れた血。アマータイム。
ねえ…N…あなたは誰を追いかけているのか…この視線…これは本当にあなたのものなのだろか…ねえ…世界がその表面において絶えず静かにざわめいているよ…微かな光と共鳴に淡く揺れ動いているね…
Nの視線はいま家々をひとめぐりする。
「ほらあそこ、あの窓が見える?」
「こわいわ!木立のなかにあらわれるものが見える」
「以前にいちどだけ、あのおなじ木立の上を、あの青い風が通ってゆくのを見たことがあるわ」
酔ってこんなことを覚え書く、この読み返されない多くのどうでもいい言葉の歩行と時間、けれどそれは、自己を不可思議に開いていく生の可能性であって、決壊する知覚の帝国に彷徨う声をあつめる真夜中の、無能で乾いた奔放な奏によって、のらくらと、のらくらと、何も定めることのないまま、ただ自身を平然と過ぎ去らせるのだろう。
陰るものたちの生を、長々とアスファルトにうつす、春の雨光。
雑多に過ぎる日々。さまざまな出来事が僕を通過する。頭のどこか片隅に、暴力、帝国、捕獲装置、このような語が残っていた。物神化の罠。無惨な言文一致。神経は秤られている。内側の影に潜んではこちらを見ている。一方で、僕は何かに捕獲されている。他方で、僕は何かを捕獲している。あるいは、占有といってもいいのだろう。他者を、自己を。日々がつねに何かの目的に使命に従属させられているようで嫌気がさす。いったい、いかなる神話的暴力の下で生きてしまっているのだろうか。あらゆる「法」は誰が定めたのだろうか。互い互いに、神の裁きをちっぽけに真似ているだけではないだろうか。阿呆な歩行者である時間を失いつつある暮らしに幻滅する。ある日、夜の白い部屋でダラダラ話したあの目的のない時間、あれが青春の無生産的生産だったのか?何かが僕に迫ってくる。そして、僕もまた、何かに迫っている。機械仕掛けの一つの暴力。恐れつづけ、苛立ちつづける、あの硬直した神経の姿形は消えることなどない。
所在のない日々、ただ雑多に歩く。偶像の黄昏。さっさと生きて、さっさと死ぬ。空を眺める。事物は即物的に青いあわい。男であることの、大人であることの、意味内容から離脱する。いまだに青いあわいなのだから、歩く、この青いあわいのままに、書く。のらくら、のらくら。あてのない、くるくるぺっぺっ。平面にある薄い浮っ。包む紙。それだけでいい。どうだっていい。
眠らさない時代。液晶化する身体。だから、さぐった風景ばかり見つめていたNの黒い瞳。だから、さぐった音ばかり聴いていたNの小さな耳。ほんとうに見える眼があるなら、球状の子午線から。ただの身ぶり。ただの口ずさみ。街いっぱいに散っている。まだ見ぬ暁の光はつねにすでに仄かな傍らにある。
語るべき、どうでもないこと。回想する現在。言葉が戯れる。猫は草花に群れる。夜風がそよぐ。デジャブ。記憶は闇の中での狩りを好んでいる。奔放な奏。疾走する月夜。春の夜に聴く横笛のひびきである。
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vegehana-food · 7 years
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✿ アイリッシュ・コーヒー | Irish Coffee
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sohgendo · 11 months
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12月のお知らせ
一夜限りの楽しいお店、ナカタトツジモトがそうげん堂にてオープンします。お酒と唐揚げ、スイーツにコーヒー、呑む人もそうでない人も楽しめるメニューをご用意して、さちこママ( @sachirihikeifuu )と揚げ担おいやん( @hrktjmt )、ナカタ‘s( @sohgendo )がみなさまをおもてなしいたします。これはっ、と思われた方はぜひともお立ち寄りください!
お待ちしております。
12月2日(土曜日)
17:00から22:00ごろまで
そうげん堂にて
※お車、自転車でのお越しの方にはお酒を提供いたしません。公共交通機関ををご利用くださいませ。和歌山バス東浜停から徒歩5分。
※20歳未満の方にはお酒を提供いたしません。
#そうげん堂#sohgendo#カフェ#スープ#サンドイッチ#ケーキ#和歌山#海南市#アイリッシュ#和歌山カフェ#まるい#カレー#スパイス#お持ち帰り#ブリトー#takeaway#旧田島うるし工場#old_factory_books#展覧会#art#ピクルス#ジャム#ナカタトツジモト#お酒あります#唐揚げあります
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goat-coffee · 5 years
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《 4/21(sun) 18:30- “Fiddler’s night at goat coffee” 》. . 各所で素敵なイベント,マルシェが開催される今週末。 そんな日曜の夜を、“ブルーグラス”のライブで過ごしてみませんか?. . ーーーーーーーーーーーーーーーー. . ○4/21(日) Bluegrass Fiddler’s night live at goat coffee . Open 18:30 Start 19:00 Charge 1,500(1drink込み) ※予約可、当日可。 . “Bluegrass”(ブルーグラス)とは、アメリカ開拓時代からの継承音楽で、“アイリッシュ”や“カントリー”に近く、現代ロックの原点とも言われる音楽ジャンルです。 . ギター、マンドリン、フィドル(バイオリン)、バンジョー、ベースなどといった弦楽器のみで構成され、インストや歌曲を特有のリズム、トーンで奏でます。 今回は、中でも最も難易度の高いとされる楽器“フィドル(バイオリン)”をフューチャーしたライブを開催したいと思います。 . この度、ブルーグラスフィドラーとして演奏して頂くのは、静岡県焼津市出身で現在北海道で活動されている“増田賢次”さん。 「バイオリンは“歌う”、フィドルは“踊る”」 と表現されますが、まさにそれを体現してくれるフィドラーさんです!. . また、今回はバンドとして僕を含む4人編成(フィドル、ギター、マンドリン、ベース)での演奏をさせていただきます。 . ぜひこの機会にBluegrass music を至近距離で体感してみて下さい!. . 問合せは、DMにて受付ております。 . ※4/21(日)、日中の営業はお休みとなりますのでご注意下さい。 . #goatcoffee #coffee #coffeestand #coffeeshop #live #bluegrass #fiddle #chillout #fiddletune #music #acoustic #bluegrassmusic #shizuoka #makinohara #静岡 #牧之原市 #ライブ #ブルーグラス #ブルーグラスライブ #コーヒー #喫茶店 #音楽 #フィドル (goat coffee) https://www.instagram.com/p/BwaaxsWA9qP/?utm_source=ig_tumblr_share&igshid=1vvqlldloepkg
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karasuya-hompo · 5 years
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RDR2:74:6章では放浪しないって言った奴出てこい
 ……し、知らないなぁ、そんなこと言ったっけ~?♪~(´ε` ;)  すっかり放浪ばかりのチキンハートです。
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 だからサブクエに精が出るのです。  シャーロットさんのところにまたマーカーがあったので、会いに行ってみました。  なんだかいい雰囲気……だけどメアリーと完全に切れたわけでもないしな。シャーロットさんも、旦那さんのことほっぽってアーサーに乗り換えるわけでもあるまいし。  ただまあ、ちょっと誤解が生じそうではありますねw 家の中のものも必要なものがあったら好きに持って行ってね、て言われるし、シャーロットって呼んでと言われるし。  いや、しかし俺はもう先がないし、メアリーっていう未だに思ってる女がいるから……(´・ω・`)  あ、もちろん家の中のものに手なんてつけませんよ。お金もそうだったけど、俺と違ってあんたにはこの後があって、そこでなにがあるか分からないんだからな。裕福なわけじゃなし、蓄えはちゃんとしとくんだ。  アーサーさんはそんなこと言わないけどねw
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 アメペでまったり、線路沿いに南へ戻ります。  最初の頃は道ばっかり走ってたけど、町に行きたいなら線路沿いのほうが近いんだよね。それに、最近は強引に、道なき丘なんかを突破したりもしています。そこになにかあったりもするしさ。
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 ……い~い日ぃ、旅ぃ立ちぃ~、ほにゃらはら~はらひ~らぁ~♪(←古い  あ、ちゃっかりクロクマ狩って毛皮積みました。  サンドニの罠師さんのところで毛皮売却し、町中に出ていたサブクエマーカーのところへ。おっ、シスターだ!!  ……名前出たけど、忘れちゃった(´・ω・`)
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 以前に聖職者、罪と許しについてだらだら書きましたね。やはりシスターたちは、「許す人」ですね。  過去ではなく、誰しもが持つ黒い”部分”ではなく、白い部分を大切に見、愛すること。  シスター自身も、決して品行方正な生き方の末に今ここにいるわけでなく、昔は悪いこともしたみたい。でも今は、違う生き方をしている。  そして、何一つ汚れのない人もいないし、逆に、汚れきった人もいないのよ、と。  アーサーさん自身は自分を悪人だと思っていて、その罪の意識から自分を許すことなどできないようだけど、誰かを助けてやろうという優しい心も持っていることはまぎれもない事実。特にMAX天使アーサーw あれだけ天使だ王子様だ言われ町の人から心配され人助けばっかりして、それなのに俺は悪人だと頑なに思い続けるのも不思議だなw  ちなみに、ちょっとした善行をまずやってみましょうよ、と食料寄付することになったんですが……え? それだけでいいの? 俺、大物の狩猟肉80個くらい持ってるから、なんならこれ全部やるぞ?(´・ω・`)  その鞄のどこにそんなに入ってるの、とさすがのシスターもツッコミかねせんなw
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 たまにはシネマティックモードで撮影。  フォトモードほしい……ないならせめて、シネマ中にもっと自由にカメラ動かしたい。
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 そしてやってきました、ハミッシュのところ。  このサブクエシリーズは、アーサーで終えると勿体無いということは知っているので、ほっとくつもりだったのですが、アーサーで途中まで進めてから本編クリアすると、その後の会話がね……ちゃんとアーサーに言及すると聞きまして。だったら、ハミッシュがアーサーのことを「あの若いの、どうしたろうか。最近見ねぇな」とくらい思うようになる程度に何回か―――具体的には最後の1つだけを残して、進めておこうかと。
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 噂のビューエルくん。美しいシャンパンゴールド(実際は上のスクショのとおり、クレメロゴールド)のダッチウォームブラッド。  ダッチウォームは体型のバランス良くてかっこいいし、体格もそこそこいいのでね。……アーサーさんに乗らせたい気持ちもすげーあるけど……クリア後は「愛馬」とこの子、ローズアラブを固定して、残り一枠でいろんな馬乗ろうと思ってるんだ……あっ、でも黒鹿毛トルコマンも捨てがたい……っ!! マジどうしよ。馬屋の枠、マジで増やしてもらえないかな。って、さすがに発売から半年もたって実装されないんだから、無理なんだろな……(´・ω・`)
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「ご主人様、このかたに乗り換えられるのですか?」 「いや。こいつはさっきのじいさんの馬だからな。心配するな」  と言いつつ(言いません)、十分調教したら人手に渡すんだけどな、くろたまちゃん以外は。
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 隙あらば他人の馬も撫でるアーサーさん。ほんと馬好き。  まあ、町とかに行くとわんこが嬉しそうにわんわん吠えながら寄ってくるし、そのたびにわざわざ馬下りてなでてやるので、うちのアーサーさんは動物好きなんですよ。そのわりにガンガン狩りもするけど。
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 え? あ、ハミッシュさんは南北戦争で片足失ったおじさんでした。馬が暴れて逃げ出したとき、義足が鐙に絡んだままはずれ、持って行かれてしまったため、馬のところまで行くのが大変だったので、代わりに連れ戻してきてあげました。  ……こうしてアメペと並ぶと、アメペにはアメペの可愛さがあるとはいえ、ビューエルの美しさが際立って見えますな……。  そーいや、リアル路線で「この時代、この土地にいた馬」が選ばれてるんだと思いますが、DLCででもいいので、見た目ではっきりと違いの分かる馬種を追加してくれないかなぁと思ったり。  ほら、世界で最も美しい馬とも言われるフレデリック様(様?)のフリージアンとかさ。アハルテケはこのビューエルに色合いはよく似てるけど、これよりもっとすらぁっとされていらっしゃるでしょ?(何故敬語?) ちょっと太めというかもふ系だとアイリッシュ・コブもかっこいいし、あっ、スタンダードなところでハノーバーとか!  ……「美しい馬」で調べて出てきた画像とか記事、実はけっこうコレクションしてるんですよ。RDR2やる前、フレデリック様を知ったときに集めたものですね。フレデリック様マジでイケメン。
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 と、いつもどおりのウマキチアーサーになりつつ、日を改めてのプレイはストロベリーのホテルからです。ゲームスタート時が軒下で、いい雰囲気でした。
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 アメベ゜、全体で見ると好みではないとは言え、やはり乗っていれば愛着もわくし、このつやつやと輝くおしりは俺のお世話の賜物(´ω`*)
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 お、貨物列車来てるのか。最後尾回りこむにも長いし、ちょっと待つとするかな。……あと、後ろにだいたい護衛乗ってて、ちょっと近づくだけで罵られるのも愉快じゃないし( ತಎತ)  ちょっと道を塞いだりとか、ぶつかりそうになったりとか、そうするとすーぐ、かつみんなして罵ったり「あんたナニ考えてんだ!?」みたいに言うのは、逆に非リアルなのでほんとなんとかしてほしいなぁ(´・ω・`) 謝る人、アーサーがとっさに挨拶でフレンドリーに声かけると「お互い様だ。悪かったな」みたいに返してくれる人、「すみませんけど、ちょっと通してもらえますか?」と低姿勢な人、列車の護衛だとしても、近づいて長時間とどまるのでないなら普通に挨拶かわしてくれる人、いろいろいてもいいと思うんだ(´・ω・`)
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 せちがらい世の中だからこそ、忠実な馬の可愛さが倍加するという説も。
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 ��だいじに(´・ω・`) 23時前くらいには寝て、しっかり朝まで7時間くらい睡眠を取る生活。あとすこしで町だから、とか無理した場合、朝まで4時間しかないなら、昼まで寝るようにしてたりもします。  あと、ごはんも食べてるよ。馬に乗りながらが多いから缶詰だったりもするけど、一日2食は食べるようにしてる。
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 さーて、今日はどこへ行こうかな。  と思っていたら……ん? 気になったのは、予備の馬マーク。どこにいるんだ? と地図をぐりぐり見ていて……なんか、ジョンを助けに��かった船着場? あんなとこに置き去りにした馬いたっけ??  でもたぶん、あいつかな。グアーマから戻ってきたときにちょっと乗った、白黒のハンガリアン。ハンガリアン好きだし、あの白黒の毛並みも良かったし……あんなところでほったらかされてるくらいなら、馬屋で卸そうか、それとも調教しようか……。
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 まあともかく向かおう。アメペも親密度MAXになっちゃったし。
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 で、メドウズの馬屋でアメペを卸し、白黒くんのところまで行くのには、黒部。アラブ……性能いいし白も黒も綺麗なんだけど、やっぱどうしても小さく見えるのがなぁ(´・ω・`)
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 牧場の真ん中の道をとっとこ駆けていくと、なんだか赤いドットが。え、ここ私有地的な? 通りぬけ禁止? というわけで撃たれないうちにとっとと通り過ぎました。
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 うむ、やっぱりおまえだったか。  悩んだ結果……
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 ハンガリアンは別ので親密MAXにしてるし、白黒はまた手に入るので、まだ乗ったことのないアルデンヌの購入に決定。  ふ と ま し い ww  ビルの愛馬って、ベルジアンあたりの荷馬かなと思ってましたけど、こっちですね。足の筋肉質なところとか太さとかふさふさした毛とか、たぶんアルデンヌ。  仲間の馬って、種類では表示されないのでこのへんちょっと分かりづらい感じ。マイカの馬がミズーリだっていうのも、ネット見てて知ったしさ。
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 霧のかかった林の中。  PS4なので細部の表現はかなり省略されてる感があって、特に水は雑だと感じますが、光、空気感の表現は十分ですね。水はねぇ、川とかはともかく、雨がただの白い線なんだもん(´・ω・`)  Proと4Kモニターほしいなぁ。「今すぐになにか10万円分買ってやるから1分以内に決めろ」と言われたら速攻でこの2つ言いますわ(´・ω・`) うん、分かってる、そんなまさに夢物語……。
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 そして、いかに軍馬とはいえ懐いてない状態ではかなり臆病というか神経質なのに、やってきました、ラグラス!! もちろん、伝説ワニが目当て!  伝説ワニは、分かってましたけど、ターゲットよりもむしろ、周囲にある普通のワニが危険。迂闊に発泡するとターゲットが逃げ出しかねないからスルーしなきゃいけないしさ。
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 ……足跡。ウィッチャーセンスならぬイーグルアイ(これ言うの何度目だ?)使わなくても追いかけられるけど……ワニにしちゃ足長くないかこいつ……? 腹、引きずらないのか……??
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 そして発見。伝説アニマルはほんと、ころころしさえすればいいのでラクですね。慣れない内は、そのへんの思い切りがつかなくて失敗したこともありますけど。
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 珍しく自撮りカメラで記念撮影w ソーシャルクラブにアップしたのをDLしなきゃいけないので面倒くさい……手持ちカメラの画像、PS4本体にダイレクト保存できるようにしてほしいなぁ。
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 剥ぎ取り中。  気がつけば夜になってしまいましたよ。このへんは湿地帯だから、テントで寝るのあんまりやりたくないんだよなぁ。
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 罠師の店へ向かいつつ、通りすがりのラグラス。ちょっと不気味。ブッチャーズクリークほどじゃないけど、沼地と、このぼんやり靄がかかったみたいな感じがさ。
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 乾いたところまで行ったら2時くらいになってしまいました。  お肉食べて、コーヒーも2杯(ポット1つ分)。カフェインがどうのって部分は気にしないことにしてます。水とかミルクあれば、コーヒーは朝にして、夜にはそっち飲みたいところだけど。  あと、結核がはっきりした後だと、食事してても噎せるみたいに咳き込むことありますね。……ふー。アーサーさん、分かってる。貴方の運命は先に知ってるんだ。そしてその運命自体は、受け入れるものだから構わないんだ。ただ……「どうしてこんなに進めたくないのか?」の、別の理由、見つけました。(あるいは別の表現、か)  プレイヤーの心は、ギャングの仲間から離れてしまったのですよ。全員ってわけじゃないけど、なんか今までみたいに、「仲間と一緒に」みたいな気分になれなくて。しかも、次に待ってるクエストの話しかける相手、マイカですよ? もうガチでほっときたくて。これがチャールズやハビア、ジョンならね。「ギャング団のため」じゃなく彼等個人のしようとしてることのため、力を貸そうかって気にもなるけど……。  このへん、「アーサー」とは違ってしまったんです。プレイヤーはアーサーに同情してアーサーのためになることをしたくてならないのです。だから、明らかにためにならない上に、アーサー含め他の仲間のほとんどを屁とも思っていマイカに主導されたくないわけですよ( ・ὢ・ )  だからもうマジでほっといてのんびり馬と暮らす療養生活したいわ・け( ・ὢ・ )ワカッテ モラエル カナァ  ある意味、めちゃくちゃハマってこの世界とアーサーが好きだからこその現象なので、素晴らしいことではあると思うのですが……、やはりどこかで、ゲームと割りきって、進めることにはします。  これだけ気に入ったアーサー・モーガンの、行き着くところをしっかりと見届けるために。
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nemurumade · 8 years
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夜明けを迎える/英智×レオ
王さまと皇帝の最期、そして始まり
※過去・卒業後捏造
1
 瞼の裏側の暗闇に光が差して、意識が浮上する。窓の外でウグイスが囀っていた。隣からは規則的な寝息が聞こえてくる。寝がえりを打って、彼と向き合う。長い睫毛は伏せられたままだ。  まだ五時を回ったばかりである。彼を起こさないようにそっと布団を抜け出して、寝室を後にした。冷え切った廊下の床が、ふたり分の体温を共有していた足の指を冷やす。寝ぐせだらけの長い髪を掻きながら、階段を下り、渡り廊下を渡って離れに向かう。  和室に不釣り合いな、年季の入った茶色いグランドピアノ。その前に座って、朝の一曲を弾く。それが昔からの習慣だった。  彼が起きるまで、レオは鍵盤を叩く。そして静かに歌を口ずさむのだ。  英智とレオが暮らし始めて、二日目の朝が来た。
 やかんが鳴って、お湯が沸いたことを知らせる。そのお湯をポットに注がれるのを見つめる。手慣れている。ただ、和室に陶器製のティーポットは驚くほど似合わない。先ほどまで弾いていた離れのピアノを思い出す。  「起こしてくれたっていいじゃないか」 おはよう、の後の二言目はその文句だった。レオは自分で焼いたトーストを齧る。 「まだ七時だぞ、別に寝坊じゃないだろ~」 「そうだけれど」 不服そうにしながら、英智がレオの前の椅子に腰掛け、レオが焼いておいたトーストにマーマレードを塗る。そして香りの良い紅茶を入れて美味しそうに啜った。 「あぁ、そういえば、あのピアノ、気に入ってくれたみたいだね。ピアノの音色で目が覚めたんだ」 かちゃん、とティーカップが心地良い音を鳴らす。英智の入れた紅茶をごくごくと飲み干して、 「べっつに~、ただの暇潰しだよ」 「もしよかったら君にあげるよ」 「遠慮しとく」 「処分するのはもったいないしなぁ」 美味しい? と首を傾げて彼が問う。その仕草がやけに愛嬌があって舌打ちをする。 「おれはコーヒー派なの~」 「君とはとことん気が合わないねぇ」 そう言いながらも楽しそうにクスクスと笑って、また紅茶を飲む。  レオは紅茶の味を消すように、口の中で舌を動かした。
 二日前、レオたちは夢ノ咲学院を卒業した。  卒業式で使われた、何度も立った戦場の講堂は粛然としていた。戦いのときのような熱はない。  卒業証書を受け取るためにステージに上がったとき、夢を見た。スポットライトと鮮やかな七色のサイリウムの光、客席から贈られる歓声とマイクを通して響く歌声、自分が作った音楽。  おめでとう、という校長の声と温かい拍手で目を覚ます。両手で受���取った紙切れ。自分の名前、今日の日付、卒業証書の文字が綴られている。  あぁ、こんなものでおれの三年間を顕そうだなんてくだらない。霊感を喪失してしまう。 そして、虚しい感情を抱く。 あの夢をもう見ることはない。そう、思った。
 窓から蕾のままの桜が見え、その背景の澄んだ青色の空は偽物じみている。やはりここは箱庭のようだった、と青春を捧げた学院の廊下を歩く。得たものも失ったものも数え切れない。レオは、この学院で栄光と挫折を知った。  拳で扉をノックする。はい、と涼やかな声が聞こえた。  レオから幾つも大切なものを奪い、与えた、かつての敵の本拠地、生徒会室の重い扉を開ける。  「やぁ、月永くん。来てくれたんだね」 玉座のような椅子に腰掛けた天祥院英智が穏やかな微笑を浮かべてレオを迎え入れた。  「一体『皇帝』さまがおれに何の用?」 「『皇帝』呼びは止してくれないかい。今日僕らはこの城から出るんだから」 「はいはい」 独特の言葉選びをする彼は、愛おしそうにレオを見る。  「素晴らしい青春だったと思わないかい?」 「……」 彼の手には、レオも受け取った卒業証書がある。レオがそれを見ているのに気づいたのか、くるくると丸めて筒に入れた。  「でもまだ味わい足りないんだ」 「何が言いたい?」 椅子から立ち上がって、レオの前に立つ。血管が透けて見えるのではと思うほど、彼の肌は白い。  世界を覆う空と同じ色の瞳が、レオを見据える。  「僕と一週間、一緒に過ごしてくれないかい?」 「はぁ?」 素っ頓狂な声が部屋に響いた。レオの驚いた顔に満足したかのように英智が微笑む。 「僕と一緒に暮らそうってことだよ」 「あ! なんで言っちゃうんだよ! 妄想しようとしてたのに~!」 「時間が無いんだよ、この後桃李たちと会う約束をしているからね」 「一緒に暮らすって何だよ、絶対嫌だからな! 大体、ユニットのやつとお泊り会すればいいだろ~、何で、」 「月永くんがいいんだ」  レオの言葉を遮った彼の顔からは笑みが消えていた。いつの日かにも見た、真剣な眼差し。それが嫌いだった。何もかも見透かされてしまうような気がして、レオは目を逸らす。 「……君が、いいんだ。無理なお願いだとは分かってる。でも、どうしても君とふたりきりで、最後を過ごしたいんだ」 最後、という言葉に静かに息を吐く。  「今日が最後だろ」 「僕の悪足掻きに付き合ってほしい」 「みっともない」 「そうだよ。みっともない僕に君の時間を分けてくれないかい」 く、と瞳が歪められた。  心の中で自嘲する。  「……分かったよ。おまえのお遊びに付き合ってやるよ」 何を言ってもこの男には通じないだろう。  春の光の中の『皇帝』は、嬉しそうに、その反面どこか寂しそうに、また微笑んだ。
 そうして次の日の夕方。ふたりは電車に一時間、バスに十五分揺られて、山の麓の郊外に辿り着いた。  田んぼに挟まれた道を走っていく乗客の少ないバスを見送って、英智は息を大きく吸った。 「ここの空気は相変わらずいいね」 レオはぐるりと辺りを見渡した。古民家が建ち並び、畑や田んぼがその周りを囲んでいる。夢ノ咲周辺とは全く違う風景に唖然とした。田舎だ。  「行こうか」 英智はすたすたと畦道を歩き出す。レオも彼に続いて歩く。  緩やかな坂道を上ったところに、大きな日本家屋があった。塀や門は高く、持ち主が裕福であるということは一目瞭然だ。ふと目に入ったのは、門の横にある『天祥院』の表札だった。  門をくぐり、庭園を抜け、英智は鍵を開けて玄関の戸を引いた。  「……ここ、お前の家なの」 「正確には、僕の祖母の実家だよ。もう誰も住んではいないけれど、所有権は父にあってね。幼い頃は長期休暇のときに療養を兼ねて、ここで過ごしていたんだ」 だだっ広い玄関から長い廊下が見えた。どうぞ、と促されてレオも家に上がる。 「最近は来る機会もめっきり減ってね。もったいないから売りに出すことが決まっているから、最後の思い出にと思って。でもひとりじゃ寂しいからね、君を誘ったんだ」 「おれじゃなくても良かったんじゃないか」 警戒心を露わにするレオに、ふ、と英智は穏やかに笑った。 「君は妄想が得意だろう?」 そうとだけ言って、先に行ってしまう。  まだ『皇帝』のマントを羽織っている彼の背中を追って、廊下を歩く。障子や襖で仕切られた広い和室がいくつもあった。  「ここが居間だよ」 庭に面した一番広い和室には、立派な卓袱台や背の低い箪笥が置かれているだけで、他に目立つ家具はない。  その奥には台所があり、横の部屋には囲炉裏があった。 「囲炉裏って初めて見たぞ、おれ」 「今日は冷えるし、囲炉裏を囲んで食べようか」 「おまえ、料理作れんの?」 「人並みには」 「“英才教育”ってやつ?」 「うん。でも幼い頃は大体寝込んでいたからねぇ、ほんの少ししかやっていないよ」 昔よりはマシになったのだろうか、なんて考えながら、二階へ向かった。  幾つかの和室が廊下沿いに並んでいて、古き良き旅館を連想させた。  英智が立ち止り一つの部屋の襖を開ける。 「君の寝室はここね。好きに使ってくれていいよ」  埃臭さに堪らなくなって開けた窓から、まだ雪が残る壮大な山が見えた。それだけで霊感が湧き上がってくる。レオの顔を覗き込んだ英智が微笑む。 「気に入ってくれたみたいで良かったよ。布団は押し入れの中だから。あ、ちゃんと洗ってあるから安心して。来る前に使用人に頼んでおいたんだ」 「はぁ、御曹司は好き勝手やりたい放題だな~?」 「我儘は幼い頃よりは減ったと思うけどな」 「そうかぁ?」 胡散臭そうに英智を見れば、何だい、と首を傾げる。昔より柔らかい表情になったとは思う。  「ちなみに僕は隣の部屋を使うから。寂しくなったときに来たらいいよ」 「誰が行くか」 「冗談だよ」 甘やかなトワレの匂いが離れていった。隣室へ向かった彼の残り香を消すように窓を全開にした。
2
 寒い、と、朝食後レオを散歩に誘った彼が言う。 「そりゃあ山だしな。学院の方よりは冷えるだろ」 朝独特の薄青の空が広がっている。三月とはいえ、山の麓の朝方は冷える。夜の残り香のような寒さに、レオはダウンのフードに顔を埋めた。  それを見た英智が長い睫毛を伏せる。 「……なんだよ」 「ううん、なんにも」 そう言ってはぐらかして、レオより数歩先、坂道を上っていく。  あの伏せ目は昔から変わっていない。言葉を濁すとき、いつも目を伏せた。彼の言いたいことはいつだって解らなかった。  「月永くん、はやく」 そう急かされて、歩みを進める。寒い。そう呟いた声は音にはならず、ただ白い息となって消えていく。  坂道の上に、小さな神社があった。鳥居の前に開けた場所があって、展望台のように町を見下ろすことができた。  畑や田んぼの緑の中に、ぽつぽつと民家の屋根の色がある。遠くには空とは違う青が広がっていた。英智が指差す。 「晴れた日は眺めがいいんだ。ほら、海が見える」 「この町に海はないだろ」 「うん。一駅先のところは港町だよ。カモメの声がよく聞こえて、潮の匂いがして、夢ノ咲に少し似てるかもね」 まぁ、田舎だけれど。そう付け加えて、英智は目を細める。  「……帰りたい?」 「どこに」 海を見つめたまま、レオは強い口調で訊いた。英智は何も言わなかった。 「……帰る場所なんてもうない。これから自分で作るんだ」 「君らしい答えだね」 そうして目を伏せて、また眼下の町の方に体を向けた。  「歌わないの」 「歌わない」 即座に答えれば、 「残念だなぁ」 という返事が帰ってきた。それが本当なのか嘘なのか。この男が嘘を吐いたことはない。きっと本心だろう、信じたくはないけれど。  彼の細い喉から歌が奏でられる。聞き覚えがある気がした――――学生時代の、あのステージで歌っていた曲だ。  アカペラの方が声の質や大きさが引き立っていると思った。爽やかなバラードが鼓膜を震わす。  抗争時代のときのような、荒削りさは感じない。  鋭い声が嫌いだった。だからと言って、この、角が取れた丸い声が好きなわけじゃない。  けっきょくこの男の声が嫌いなのだ。  名前も知らない凡才が書いた曲を、かつての『皇帝』は歌う。
 「せっかくだしお賽銭していこうか」 そう言ってコートのポケットから革の財布を取り出す。まさか万札を投げ入れるのでは、とレオは身構えていたが、英智が取り出したのは穴の開いた硬貨、五円玉だった。  「というか、おまえと神社が驚くほど似合わないんだけど」 「そう?」 レオも彼に倣ってポケットの中で小銭を探す。  鐘を鳴らし、硬貨を投げ入れる。レオが投げた硬貨を見て、英智が言う。 「十円玉は良くないんじゃないのかい」 「五円玉が無かったのー。いいだろ、金額なんて。縁があるときはあるし、ないときはないって」 二拍手して、目を閉じる。  願い事をして瞼を開ければ、英智がレオを見つめていた。 「ずいぶんと熱心にお願いしていたみたいだね」 「べつに、願い事じゃない」 石畳の上を歩き出す。レオのスニーカーと英智の革靴の底がコツ、コツと音を鳴らす。  赤い鳥居を潜りながら、英智が問う。 「君、神さまはいると思うかい」 「まぁ、いるんじゃない。だからおれは天才なんだし」 「神に愛されている、って?」 「まあな」 ふ、と英智が笑った。 「よかった」 その言葉の意味が理解できず、レオは首を傾げた。  「……いないなんて言われたら、僕は君を殺したかもしれない」 英智が鳥居の前で立ち止まる。吹いた風に、木の葉と木漏れ日、ふたりの髪が揺れた。 「君に八つ当たりして。……そうだなぁ、君をそこの柵から突き落としたかもしれない」 「絶景を見ながら死ぬわけだ」 強気に冗談を返せば、英智は嬉しそうにゆったりと微笑んだ。 「今さらだ。おまえは一度おれを殺しただろ」 「そうだねぇ」 謝る気も、謝らす気も、お互いさらさらないのだ。  寒いね、と英智が言う。そうでもない、とレオはフードに顔を埋めながら答えた。  神社を背に、坂道を下っていく。  「そういえばさぁ」 と、朝から思っていたことを口にする。 「賽銭するのもそうだけど、『いただきます』、『ごちそうさま』を言う印象もなかったんだけど」 英智はレオの横を歩きながら答える。 「躾けられたんだよ。あの説教好きな彼にね」  あぁ、と納得した。いつだか腐れ縁だと聞いたことがある。対極にいるようなふたりだが、逆にそれが長い付き合いに結びついているのだろう。 「昔からお小言ばっかり言われたよ」  昨日の夜、英智のスマートフォンが震えていたのをレオは知っている。その着信相手が彼だということも。  出ないのか、なんて野暮な質問はしなかった。理由があるから、黙ってあの箱庭がある街を出てきたのだ。  なぜ英智がレオを連れてこの町へ来たのか。  訊きたいことは多いのに、その問いを口にすることはできない。  遠くの海が陽の光にきらきらと光っている。
 夕方、離れに置かれたピアノの前に座り、鍵盤に触れる。  生まれてはすぐに朽ちていってしまうメロディーを音符で形にしていく。忘れることのないように、奏で続けられるように。  外から入る僅かな光に、宙に舞った埃がきらきらと輝く。  ふ、と背後に気配を感じた。その腕が伸びてくる。  細いヘアゴムを取られて、束ねていた長い髪が広がった。その髪に指が触れる。 「……ねえ、退屈だよ」 「そうか」 短い返事をしながら音符を書いていく。  つまらなそうに溜息を吐きながら、ふと英智が床に散らばった楽譜を拾い上げる。咎めているうちにメロディーが消えていってしまう。レオは楽譜に音符を書き込むことに夢中だった。  「ね、月永くん」 英智がレオの耳元で囁く。ぞわ、と鳥肌が立って振り返る。穏やかな微笑を睨み付けた。 「この曲、ひとりじゃ弾けないだろう?」 彼の手にあったのは、先程書き上げたばかりの楽譜だった。連弾の、曲。  何も言わないレオをよそに、英智は部屋の端に置いてあった椅子を引き摺ってきて、レオの座る椅子の横に並べ、腰掛けた。  そして、その長い指が鍵盤を叩く。  挑発的な流し目がレオを見て、そして重みのある深い音色を奏で出す。  ぞっ、と背筋に寒気が走る。ステージに立っていたときと似ている。痺れるような闘志。  レオも負けじと鍵盤に触れる。  「……最高だよ、その目」 熱い視線がレオを貫く。  あぁ、最高だよ、おまえも。  そんでもって、最悪だ。
 息が上がる。首を絞め続けられるような感覚。  声を嗄らして歌い叫び、足が縺れるまで踊って、主張しろ。王はおれだ。誰にも奪わせない。  おまえなんかに、おまえなんかには絶対渡さない。  おれの居場所だ。  セナがいて、リッツがいて、おれがいて、三人で築いて守っている唯一の城なんだ。  純白の衣装を纏った彼らが、微笑を浮かべる。  目の前の、サイリウムやスポットライトの光が、彼らの���が、唇をきつく噛んだセナと、舞台の上に座り込んだリツの後ろ姿が、霞む。  スクリーンに映し出された映画を観ている客の気分だった。自分事に理解できずに、レオはただ戦場の地に立っていた。  そんなレオの前に、美しい少年が一歩踏み出す。その視線に、呼吸が上手くできなくなる。力が抜けてマイクが手の中から滑り落ちた。  「……『Knights』の『王』、月永レオ、」 彼の低い声が静かに告げる――――『王』の、死を。  「このゲームは、君の負けだ」 まるで死期を伝える天使に似た、無垢な残酷さで、おれを見下す。青い瞳には勝ち誇った光が爛々と輝いていた。  衣装のマントが、目の前で翻される。  客席から沸く歓声は、騎士たちへのものではない。  「ありがとう」 優雅に辞儀をする、絶対王者――――『皇帝』へのものだった。  あぁ、そうか。おれは、負けたんだな。  そう理解した瞬間、すべてが音を立てて崩れ落ちていった。  なにを見ても、なにを聞いても、もう音楽は湧き出てこない。  おれはもう、『王』ではいられないのだ。  『皇帝』は歓声の中、仲間を引き連れて舞台を降りていく。スポットライトが消えると同時に、観客たちも会場から立ち去っていった。  「……『王さま』、」 息が整わないままの凛月を支えた泉が、レオを見つめた。澄んだブルーの瞳が、ゆらゆらと揺れている。凛月の漆黒の髪から雫が滴り落ちて、ステージの床を濡らした。  あぁ、なんて、情けない。 「……先に、行っててくれ」 ふたりから目を逸らす。泉は何か言いたげに口を開こうとしたが、躊躇ったように唇を結んだ。そして、 「わかった」 そうとだけ言って、凛月の細い身体を支えながら舞台袖に消えていった。  先ほどまでの熱は既に冷め切って、短い夢のようだった。  空っぽの、がらんどうのステージに、たったひとり。  初めての、敗北だった。 「あああぁああああっ、あああああああああぁぁぁっ!!」 引き裂かれた喉を、さらに壊すように号哭した。  痛い、痛い。死んでしまいそうなのに、殺してはくれない痛みにただ叫ぶ。  救ってくれ。赦してくれ。おれの居場所を、返してくれ。  リツとセナと生んだあの熱を、返してくれ。  「っ、は、ぁっ、はぁっ、はぁっ、」 自分の荒い息の狭間に、彼の歌声を思い出してしまう。  繊細かつ大胆、聴く者すべてを魅了する、完璧な声。  その凶器を首筋に宛がわれて、レオは竦んだ。  ――――君の負けだ 歪められた青い瞳に映った自分の表情さえも、しっかりと憶えている。  「あぁ、そうだ、おれの負けだ!」 レオの、最後の叫び声が反響した。  今度は、ぜったいに、おまえを殺してやる。この苦しみを、おれが味合わせてやる。  憎しみに燃えて、そうして、意識を手放したのを、今でもはっきりと思い出すことができる。
 英智が風呂に入っている間に、グリルで鰆を焼き始める。午後に行った魚屋で買った旬のものだ。予熱したグリルの中に二切れ並べる。やかんに水を入れ、火にかけてお湯を沸かす。  英智が上がるころには焼けるだろう、とレオは居間の押し入れの戸を開ける。昨日、この中にいいものを発見したのだ。  押入れの中の本棚に並んだたくさんのアルバム。それを手に取って、ページを捲る。  古いカメラで撮ったような写真が、きっちりと整理されていた。  写真の中で、今と変わらない色の瞳がレオを見つめた。  「月永くん」 後ろから声がして、レオは振り返った。  居間と廊下を隔てる障子から、 「���がったよ」 と、英智が上気した顔を覗かせた。そしてレオの手元を見て、目を丸くする。  「ああ、こんなところにあったんだ」 勝手に見ていたことを咎めもせず、レオの隣に座り、一緒にアルバムを覗き込む。ふわ、とフローラルなシャンプーの匂いがした。  「祖父が写真好きでね。よく撮ってくれたんだ」 「ふぅん。それにしても、ずいぶん不機嫌そうな顔ばっかりしてるな」 「はは、うん。この頃の僕には可愛げがなかったからね」 「安心しろ、今もないぞ」 「ひどいことを言うね」 楽しそうに笑いながら、次々と写真を指差していく。  誕生日のときの写真。小学校の入学式の写真。敬人の家の寺で撮ったふたりの写真。風邪を拗らせて入院しているときの写真。大きなアイリッシュ・セッターと寄り添って寝ている写真。小学校の卒業式の写真。  「……おまえ、泣けるの?」 英智の声を遮ったレオの問いに、英智は彼の指先の写真を目に止めた。  子ども用の黒いスーツを着た三歳くらいの英智の写真だった。その瞳には涙が浮かんでいる。 「ああ、さっきの写真に写ってた犬が死んでしまった時のだよ。庭で葬式をしたんだ」 他のページを捲れば、愛犬との写真がたくさん貼ってあった。 「ドナートって名前だよ。僕が生まれる前から飼っていたから、先に死んでしまうのは当たり前なんだけどね。すごくショックだった。余命宣告を繰り返しされていた僕より、なぜ元気だったドナートが先に死んでしまうのか、理解ができなかった。それと同時に、死ってこういうことなんだ、とも思ったけれど」 「このあと、動物飼ってないの」 「うん」  まだ子どもの頃に、自分にもいつかやって来るという死を目の当たりにしたのだ。恐怖でしかなかっただろう。  「……なぁ、怖いか?」 そう問えば、ゆっくりと英智が顔を上げた。落とせばすぐに壊れてしまう、丁寧に拵えられた美術品のようだと思った。  英智は、何が、とは訊かず、ふふ、と花が綻ぶように笑った。でもどこか憫笑じみたそれに違和感を覚える。 「怖い、って言ったら、君は僕を救ってくれるのかい?」  何も、言えなかった。  レオの返事を待たずに、英智はゆっくりと立ち上がる。  お湯を沸かしていたやかんとタイマーが鳴った。 「片付け、しておいてね」 そう言い残して、台所の方へ消えていく。その後ろ姿を見送って、レオはアルバムを集めた。  あいつを救えるのは誰なんだろう、と考える。  いただきます、ごちそうさまを教えた、彼の幼馴染か?  ���の左腕の道化か?  彼を心底愛している両親か?  それとも、彼に壊されたおれか?  答えの出ない問いを呑み込む。年季の入ったアルバムを閉じ、押し入れの中の棚に戻した。
 英智は湧いたお湯で味噌汁を作っていた。台所にその後ろ姿は、やはりどうも似合わない。  その間に、レオは丁度良く焼けた鰆を皿に移し、炊いておいたご飯をよそう。  囲炉裏の前に皿を並べていると、いつものように英智がラジオをつけた。ノイズ混じりにニュースが聞こえる。  いただきます、と手を合わせて食べ始めた。  「美味しいねぇ」 と、英智が笑う。  レオは頬杖をついて、鰆を噛みながらじっと目の前の男を見つめる。  彼の持った箸が鰆の身を裂いて、彼の口元へ運んでいく。開いた薄い唇の間の闇に消え、英智は静かに咀嚼した。  だれかの命を喰らって、生きている。  彼もまた、人間なのだ。  「……そんなに見つめられると食べにくいんだけどなぁ」 英智が苦笑しながら言う。 「顔に何か付いているかい?」 「あぁ」 右腕を伸ばして、英智の口元に触れる。  親指で下唇をなぞれば、柔らかい感触が神経を刺激する。  彼の唇が微かに、ゆっくりと開き、赤い舌が覗いた。滑らかなそれは、応えるようにレオの指に触れた。  誘うような目と同じくらい熱い、味を感じるための舌。  並びの良い、命を引き裂くための白い歯。  消化を手伝うための唾液が、唇から零れて一筋伝う。  据え膳食わぬは男の恥、とは言うが。  レオが指を離そうとした瞬間、彼の白い歯がその指を思い切り噛んだ。 「痛っ!」 「……食事中に欲情する君が悪いんだよ」 「欲情……っ、なんて、してないから!」 くっきりと歯形の残った親指を庇いながら、英智を睨めば、彼は楽しそうに笑う。 「早く食べないと、せっかくの食事が冷めてしまうよ」  そう言って、彼は何もなかったかのように食事を再開する。  レオももう一度箸を取り、鰆とご飯を口に運ぶ。  目線の先の汁椀の中で、冷め切ったお湯と味噌が分離している。右手で持った箸で掻き混ぜてその境界線を消してから飲み干した。冷めたそれは、ちっとも体を温めてくれない。  ラジオでは、天気予報士が今週の天気を知らせていた。
 布団を敷き終えて、ふわぁ、と大欠伸をしていると、 「もう寝るのかい?」 と、なぜかパジャマの上にセーターを着た英智が問う。 「おまえは寝ないのかよ」 「うん、ちょっといい所に行くんだ」 「いいとこ?」 小首を傾げるレオに、英智は窓を開けた。 「分かった、屋根の上だろ」 ふわ、と夜風が部屋の中に入り込んできた。  その窓の前に立ち、微笑んだ英智の髪がさらさらと靡いた。 「大正解」  屋根の上に干してあったらしい下駄を履いて、窓から屋根の上に出る。西洋人じみた顔立ちと高級ブランドの寝間着に、不釣り合いな下駄が小気味良い音を立てた。 「月永くんもおいでよ」  子どもみたいにあどけなく笑う男に、深い溜息を吐く。  そして渋々毛布を担ぎ、押し入れの中にあった足袋と下駄を履いて、彼の後を追って窓から出る。棟に腰掛けた英智に毛布を被せると、 「ありがとう」 と嬉しそうに微笑んで、レオの手を引いて自分の隣に座らせた。そしてレオの肩にも毛布を掛ける。  「綺麗だろう?」 まるで自慢の宝物を紹介するかのようにそう言った。  星屑が散りばめられた濃紺のビロードの空が、世界を包んでいる。  「小さい頃ひとりで、こっそりこうやって屋根に上がって星を見ていたんだ。本当は誰にも教えるつもりは無かったんだけど」 すぐ傍で、英智の声が聞こえる。呼吸が聞こえる。 「……おれに教えていいのかよ?」 この夜空は、本当に英智だけのものだったのだ。  英智は楽しそうに笑う。 「ここにいると自分も宇宙に居られるみたいに感じられるから、君も気に入ってくれるだろうと思って」 宇宙が好きだろう?  そう問われて、あぁ、と肯いた。  何億光年も昔に放たれた光が届く。今この瞬間も、宇宙のどこかで爆発が起きている。生まれ、滅んで、数えきれない光が走っている。  おれの書いた曲もそうなればいい。おれが死んでも、曲は生き続けて誰かに届けば、おれは死んでも幸せだ。  とは、言わなかった。自分の幸せをこの男に語っても、彼にとっての幸福の概念はちっとも変わらないだろう。  英智を変えたのは、レオではないのだ。  「……うん、大好きだ」 隣で、良かった、と英智が言う。彼がどんな表情をしていたのか、レオは見なかった。  「……ね、手繋いでいい?」 拒否はしなかった。そっと手が伸びてきて、レオの手に触れる。自分の体温を移すようにその手を握ると、英智は微かな笑い声を上げた。  「寒いねぇ」 「もう部屋入りたい」 「あと一分」 いーち、にーい、さーん、とカウントし始めると、英智も一緒になって数えた。  冷たい夜風が二人の頬を撫ぜた。
 「そういえば、なんでおまえもおれの部屋で寝てるんだっけ?」 朝訊こうと思って忘れていた問いを、布団に入り込みながらぶつける。隣の布団に入った英智が寝がえりを打ってレオの方を向いた。  常夜灯のぼんやりとした光の中で彼の笑った顔が見える。 「本当はそんなことどうでもいいと思ってるだろう?」 「はぁ?」 「朝に思ったはずだよ。でも今になるまで何も言わなかったから、どうでもいいんじゃないかなって」 図星、なのかもしれない。確かに、隣の部屋で寝ようが、すぐ隣の布団で寝ようが、どうでもいい。 「そうかもな」 そうとだけ答えて、英智に背を向ける。  ねぇ、月永くん、と呼ぶ声がしたが無視した。すると彼の足が入り込んできて、レオの足に触れた。 「冷たっ!」 思わず足を避けると、さらに追いかけてくる。ゆえに、レオと英智の距離も縮まる。  「おい!」 振り返れば間近に端正な顔があって、驚いて息を呑む。  「月永くん、あったかいから」 足を絡められて動けなくなる。氷のような冷たさがレオに伝わる。 「……裸足で外になんか出るから」 「ふふ」 「ふふ、じゃないし。霜焼けになっても知らないからな!」 「うん、おやすみ」 その言葉を最後に、英智は何も言わなかった。少し経って、規則的な呼吸音が聞こえてきた。  レオの熱が伝染したのか、それともレオの熱が奪われたのか、英智の足は徐々に温まっていった。
3
 三日目。  電車に乗って、ふたりは隣の海辺の町へ来た。  英智の言う通りだった。カモメの鳴き声があちこちからして、潮の匂いがして、海が煌めいている。  海風が前を歩く金色の髪を揺らした。  けれど彼が羽織っているのは、あの紺のブレザーではない。質の良い茶色いコートの後ろ姿を見つめながら、彼についていく。  一日この町を回ろう、という提案をレオは拒否しなかった。  家屋の間の細い石畳の道を歩いていく。  英智が足を止めたのは、古めかしい建物の前だった。扉の上の看板には『潮風劇場』の文字が刻まれており、懐かしい匂いが漂っている。 「映画でも見るかい?」 「ここ映画館なの?」 「そうだよ。単館上映の映画を多く上映してるんだ。意外と面白いよ」  中へ入って、英智が選んだ映画のチケットを買う。ロシアの監督の作品らしい。  小ぢんまりとしたシアターの、ほとんど観客のいない座席に座る。しばらくして照明が落とされ、上映が始まった。  ロシア語を聞いているうちに、うとうとと微睡んでしまう。  スクリーンの中の主人公がヒロインとキスを交わしている。  あぁ、この男とラブストーリーを観るとは思ってもなかったなぁ。そんなことを思いながら、レオは意識を手放した。  「……月永くん」 その声に目が覚める。証明に目が眩む。映像が映し出されていたスクリーンはただの薄い布に戻っていた。 「あれ、もう終わっちゃったのか?」 「君はずっと寝てたんだねぇ」 「最初は起きてた!」 「ヒロインは最後死んでしまったよ」 「はぁ、ありがちな悲恋だな」 「僕もちょっと退屈だった」 そんな他愛のない会話をしながら映画館を出た。  道路沿いの道を歩いて、海に辿り着く。  夕焼けに、薄く夜の色が掛かっている。そんな空の色を垂らされた海が、静かに波打っている。  柔らかく麗らかな三月の橙色の陽射しに、彼の金髪が光る。 「……夢ノ咲の海は、もっと明るい色をしていた気がするなぁ」 ひとりごとのようなその言葉に返す言葉を、レオは持っていない。ただ彼の背と、その先に広がる海を見つめる。  波打ち際でしばらく海を眺めていた英智が、不意に靴と靴下を脱いだ。細い足首の線が露わになる。  レオが声を上げる前に、英智は裸足で海の中に入った。  「冷たい」 「風邪ひくぞ」 「ひかないよ」 レオの心配をよそに、英智は靴を片手に歩いていく。  深い溜息を吐いて彼の後を追う。手で触れた海水は凍えるほど冷たくて、レオは英智の神経を疑った。  「君は寒がりだもんねぇ」 振り返って立ち止まった英智が笑う。追いついたレオは彼の細い手首を引いた。迫り来る波から英智の足が逃げる。 「冬の海に入るのはおまえみたいな酔狂だけだよ」 「三月はもう春じゃない?」 「冬だろ」 英智はコートのポケットから白いハンカチを取り出して、濡れて砂のついた足を拭いた。すぐにそのハンカチは汚れて、きっともう使い物にならないだろう。しかしそれも、英智とレオにとってはもうどうでもよかった。  レオの肩を借りて、英智が靴下と靴を履く。 「帰ろうか」 「腹減った」 「何か食べる?」 「うん」 砂浜に残った二人の足跡は、すぐに波に掻き消されていった。
 月永くん、と呼ばれる。  仰向けになると、布団の上に座った英智の手が伸びてきて、髪に触れた。 「……思い出してしまうね」 「なにを」 「昔のこと」  ――――キスしたこと、憶えてる? 問い掛けられて、レオは顔を顰めた。  「よかった。憶えててくれて」 「何もよくない」 英智の指の間から、長い赤毛がはらはらとすり抜けていく。それを見つめながら、英智は、 「相変わらず君はひどいなぁ」 なんて、笑う。  「またするかい? 楽しいこと」 「絶対に嫌だ」 「どうして?」 「痛いだけだ」 「そうかな?」 「痛い」 「手術に比べれば全然だよ」 「麻酔するだろ」 「してもしなくても、痛いものは痛いよ。肌を切り裂かれるんだから」  レオは黙って英智のパジャマのボタンに手を伸ばした。彼はされるがままだ。パジャマを脱がせ、下着をまくり上げた。  あの頃、くっきりと残っていた胸の下の傷は薄くなっていた。細胞が修復している。この男の身体はきちんと機能している。  指先で、その傷跡をつうとなぞる。彼の唇から甘い吐息が漏れた。 「月永くん、さっきの冗談だよ」 暗がりの中で彼の瞳が光っている。獣みたいだ、と思う。  「……解ってる」 柔らかな拒否を呑み込んで、彼の身体から手を放す。掌に、彼の低い体温が残っている。  レオは布団に寝転がり、パジャマを着直す英智に背を向けた。 「……おやすみ、月永くん」 そう言った彼の手は、レオに触れなかった。
 『生徒会』と『五奇人』の抗争時代に、レオと英智は何度か身体を重ねたことがある。  若さゆえの過ちだった。英智に生徒会室に呼ばれて、粛然とした箱の中で密やかに抱き合った。  一度目はお互いを苦しめるためだけの痛々しい行為に過ぎなかった。身体を貫くような痛みに吠えて、吠えさせた。  二度目、三度目、そう回数を重ねていくうちに本当の目的を見失っていった。  バスタオルを敷いた床にレオは押し倒される。自分を見下ろすその瞳を見つめながら、唇を触れ合わせる。唇の皺ひとつひとつを確かめるように、何度も、何度も。  そして深いキスに変わる。舌を絡めて、音を立てて。 ブレザーを、ワイシャツを、お互いに脱がしていく。蠱惑的な瞳を見つめながら。  肌蹴たシャツの下、露わになった彼の胸元を初めて見たとき、レオは息を呑んだ。 「……これかい?」 つ、と彼の指がその線をなぞる。  左胸を横切る醜い傷跡。それは白い肌にくっきりと刻まれていた。 「手術の痕だよ」 何でもなさそうにそう言って、笑う。 「醜いだろう?」 自嘲のような、挑発的な笑みが気に入らなくて、端を引き上げた唇を噛んだ。  何回目かの行為の最中には、 「くたばっちまえ」 と息も絶え絶えに口にしたことがある。音楽が生まれないゆえの苛立ちをぶつけた、ただの八つ当たりだった。そう叫んでも、怒りと憎悪に塗れたレオの身体にキスを落としながら、英智は強気に目を細めるだけだった。  ダンスに使う四肢も、歌うための声も、今は飢えた獣のものでしかない。  理性と本能が剝離していく感覚がレオを快楽に突き落とす。それはきっと、英智も一緒だった。  制服を着た英智が自分を見下ろしている。  「声、聞かせてくれないかい?」 嫌だ、と反論する声が擦れている。  「レオ、気持ちいい?」 一対の青色が冷淡に細められて、背筋に電流が走る。それと同時に、音楽が生まれていく。ペンを取ろうとしたレオの手を英智が押さえ付けて、そして深く口づける。  「……ッ、あ、ぁ」 「レオ、」 名前を呼ばれて、理性が崩壊する。ふたりの獣は吠える。  全部が欲しい。この男の全てを、奪って、殺してやりたい。  「英智……ッ!」  憎い。愛おしい。殺したい。終わりに、したい。  混沌とした感情を快楽に混ぜて飲み干していく。  そして熱が醒め切ってから、あの行為で戦意を失ってしまえ、と懇願していた。
 スマートフォンのアラームで浮遊した意識はすぐに覚醒した。  布団から腕だけ出してスマートフォンを掴む。寝起きの頭にガンガンと響く煩いアラームを止めた。  隣から寝息が聞こえる。不幸中の幸い、英智はまだ眠っているようだ。  彼を起こさないように布団を抜け出し、枕元に畳んでおいた着替えを持って風呂場へ直行した。  寝間着と下着を洗濯機に投げ入れボタンを押してから、浴室へ入った。  熱いお湯を全身に浴びて頭が冴えていく。  あんな夢を見るなんて、どうして今更。まるで昨日の言葉に乗せられているみたいじゃないか、と自己嫌悪に陥る。  ――――またするかい? 楽しいこと。 歪められた瞳を思い出す。あの部屋でレオを見下ろしたときと同じ眼差しだった。  髪の毛先から雫が連なって床に落ち音を立てる。  あいつにとっては、楽しいことだったのか。おれにとってはちっとも楽しくなかったけど。  痛くて、息が詰まって、苦しくて、でも、それ以上に気持ち良かった。  けれど、抗争時代の後、レオと英智がその行為をすることはなかった。
 さっさと一人で朝食を済ませて、レオは作曲のためにピアノと譜面と向かい合っていた。そんなレオの姿を見咎めて、英智が声を掛ける。 「今日はずいぶんと早起きだね。昨日もなかなか寝付けずに、遅くまで起きてたんだろう?」  重低音のメロディーを荒々しく弾きながら、レオは顔を背けた。  「何か嫌がらせしたかな?」 独り言を呟きながら、英智はレオの傍へやって来る。  それを咎める気にもならなかった。  音楽が、生まれない。  音符を書いては消し、楽譜を書き上げては丸めて床に捨てた。起きてからずっとこの調子だった。  寝起きが一番頭が冴えるはずだ。一番いい曲が書けるはずだ。こんなこと、一度もなかった。おれは天才だ、音楽を生めないなんて有り得ない。  英智の白い手が散らばった楽譜を手に取る。  そして、その声が音符を追う。  「な、」 レオはピアノに凭れていた頭を持ち上げて彼を見つめた。  楽譜に向けられていた視線がレオに移る。 「歌うな」 そう制しても彼は止めない。  あの眩しいスポットライトの光と華やかな歓声に包まれている。純白の衣装を身にまとった彼の貫くような視線に、あの頃、欲情していた。  歌声がレオの心臓を突き刺す。  「やめろ、」 違う。おれが作りたいのは、こんな、醜い曲じゃない。  「やめろ!!」 両手で鍵盤を思い切り叩いた。貫くような不協和音と怒鳴り声が部屋中に響いて、英智は驚いたような顔をして、歌うのを止めてレオを見た。  彼の胸倉を掴み、そのまま床に押し倒した。痛みに彼の表情が歪み、落ちていた楽譜が舞う。 「こんな曲に価値なんてない!」 「……どうして」 「こんなんじゃない、おれが創りたいのは、もっと、もっとあの頃みたいな」 「月永くん、」  冷淡な声に息が詰まった。白い手がレオの喉笛に添えられる。深い色をした瞳に、深層部までを見透かされてしまっている気がした。  「……あの頃には、戻れないよ」 窓の外で一層強く雨が降り頻る。その音にも邪魔されずに、彼の声はレオの鼓膜を震わせた。  その声に、記憶を翳して、辿っている。  ――――君の負けだ、  ――――『王さま』  ――――『Knights』の王、月永レオ  レオは英智を突き放し、ピアノの傍に置いておいた財布と携帯を引っ掴んで家を飛び出した。  三月の冷たい雨が身体を打つ。肌の表面は凍えるほど冷たくなっていくのに、頭には血が上って熱くなっていく。  呼び止める声も、追い掛ける足音も、聞こえなかった。  煩い雨音に紛れて聞こえなかっただけだと信じたがる自分が、ひどく惨めだった。
4
 夢ノ咲学院の裏の砂浜で、ふたりきりになったことが一度だけある。  十八歳の秋。  砂浜に音符を刻む。湧き上がる霊感に追いつかなければ。  と、そのときだった。  「久しぶりだねぇ」 懐かしい声に、手を止める。  ザァ、と音を立ててやってきた波が音符をさらっていくのを見送って、レオは振り返った。 「……おかえり、月永くん」  相変わらず頼りない細い身体だった。入退院を繰り返していると風の噂で訊いた。  「また君と兵刃を交えられると思うと嬉しいよ」 「それはもうごめんだな」 目の前に立った男を見上げる。  「もう帰ってきてくれないと思った」 「まだやるべきことが残ってる」 く、と青い瞳が細められる。 「キス、してもいい?」 「再会祝いのつもりか?」  目線がふたりの間で絡み合って、英智が細い腰を折ってレオの唇に口づけた。  おまえを殺したい。  はっきりと、あのステージの上でそう思ったことを思い出す。  おれの描いた音符で首を絞めて、剣のような歌声で心臓を貫きたい。  おれがおまえにされたことをしてやりたい。  心臓が止まって、そのまま玉座からずり落ちてしまえばいい。  でもそれは、レオの役目ではなかったらしい。  時代を変えた『新星』たちが、『王』のいないあいだに『皇帝』を殺した。  「なぁ、『皇帝』、」 離れていく唇を引き留めずに、まっすぐと英智を見つめる。その渾名はもう似合わないか、とも思ったが、レオの中で、天祥院英智という男は『皇帝』でしかなかった。  「おれの悪足掻きに付き合ってよ」  青い瞳に自分が映っている。鏡のようなそれは凪いだ海と似ていた。  「いいよ、君の考えることは退屈しないからねぇ」 そう言って、笑った横顔が昔と違うことに気づいたが、レオは何も言わなかった。
 ふ、と目が醒める。スマホの画面を確認すると、もうすぐ午後六時を回るころだった。  朝、あの家を飛び出して、夢ノ咲とは逆の方向へ向かっていく電車に乗り込んだ。絶えず変わっていく車窓を見つめながら、気分でいろいろな駅に降りた。  荒れた海が見える町。ビルが立ち並ぶ都会。教会のある田舎町。山ばかりの町。寂れた商店街がある街。  そうしてあの田舎町から、英智から、遠ざかってきた。  英智からの連絡はなく、それ以前に、スマートフォンの電池は切れて使い物にならなかった。  雨は昼間より強くなっている。アナウンスが鳴っていて、多くの人から席から立ち上がった。それに倣うように重い腰を持ち上げて、人に押されるように電車から降りる。  コンコースの人混みの間をすり抜けながら外へ出れば、降り頻る強い雨が身体に叩きつけられる。コンビニで買���たビニール傘は、前の町で壊れて捨ててしまった。  ダウンのフードを被り、寒さに息を吐く。  傘を差した人たちが足早に歩いていく。レオの横を通り過ぎた何人かが、傘を差さないレオを訝しげに見てはすぐ目を逸らす。  孤独だ、と思った。  こんなにたくさん、数えきれないほど傍に人がいるのに、孤独しか感じないのは、なぜ。  「……『王さま』?」 聞き慣れた声に後ろを振り返る。灰色のコートを着て青い傘を差した、端正な顔の男が立っていた。 「おぉ、セナ、久しぶりだなぁ」 駆け寄ってくるかつての仲間に、無理に作った笑顔を見せた。  「ずぶ濡れじゃん、こんなところで何してるわけぇ?」 泉はレオの腕を引いて傘の中に入れた。 「身体も冷え切ってるし」 「わはははっ、セナは相変わらず世話焼きだなぁ」 「無理して笑わなくていいから」 ほら、行くよ、と腕を引かれて歩き出す。自分より少し背の高い男の背中は、昔と変わらず大きく見えた。  ふたりが雨宿りに入ったのは通りにあるカフェだった。客は少なく、店内にはBGMと、窓の外の雨音が流れていた。  窓際の席に向かい合う形で腰掛け、泉が店員を呼ぶ。 「コーヒーで良い?」 と訊かれ、黙って肯いた。 「ホットのブレンドコーヒーを二つ」 という泉の注文する声が雨音を消す。店員は注文を取るとすぐに去っていった。  「……で、」 頬杖をつきながら泉が話を切り出す。 「卒業式後からどこに行ってたわけ?」 「田舎町だよ」  泉の青い瞳をじっと見つめる。彼より濃い、青。それに嘘が通じないことは理解している。 「セナはこんな都会で何してたんだ?」 「仕事に決まってるでしょ。モデル業に復帰したらすぐに大量の依頼が来たの」 「さっすが売れっ子モデルだなぁ~」 「お褒めの言葉をありがとう、『天才作曲家』さん。アンタも仕事来てるんでしょ?人づてに聞いたよぉ?」 「まぁな。でも大体断ってるよ、充電期間」 「何言ってんの、散々充電してたくせに」 「それは、あの戦いから逃げた期間のこと?」 思わず語気を強めてしまったことに、すぐ口を噤んだ。  「……ごめん」 そう謝れば、泉が窓の方に顔を背ける。 「今のは、俺も悪いから」 気まずそうに、彼はそう言った。  お待たせいたしました、という店員の声にふたりで顔を上げる。それぞれの前にコーヒーカップが置かれ、また店員は去っていった。  テーブルの端に常備されているシュガーを手に取って、黒い液体の中に入れた。ブラックコーヒーを啜り、泉が言う。 「珍しいね、砂糖入れるなんて。ブラックで飲まないの」  そう問われて、目を伏せる。黙ってコーヒーを飲んだ。今まで甘いフルーツティーやミルクティーなどの紅茶ばかり飲んでいたからか、とても苦く感じた。  「……『皇帝』と一緒にいたの」 その問いに、レオは思わず目を見開いた。 「……なんで」 「昔と、同じ目をしてるから。当たり?」 「セナには敵わないなぁ」 苦笑しながら苦いだけのコーヒーを啜る。  泉が、かちゃん、と音を立ててコーヒーカップを置く。  「……一週間だけって約束で暮らしてたんだけど、ちょっといろいろあってさ。出てきたんだ」 「探してんじゃないの」 「さあなぁ」 ふぅん、とどうでもよさそうに泉が相槌を打ち、 「これからどうすんの」 と訊く。  「自分の家に帰ろうかなぁ」 あの日本家屋に着替えなどは置きっぱなしだが、わざわざ取りに行きたくもないし、大して大事なものでもない。このまま黙って帰ればいいだろう。  はぁ、と息を吐いた泉が立ち上がる。  「傘買ってきてあげるから。ここから動かないでよね、分かった?」 泉はそう言って、傘を差して土砂降りの雨の中へ出ていった。銀色の髪と灰色のコートはすぐに人混みに紛れていく。  あの頃と同じ目――――どんな目だろうか。すべてを喪ったような光を持つ瞳だろうか。あぁ、そうか。おれはまだ 過去に囚われているのか。セナは自分の道を、自分の未来をまっすぐ見据えて歩き出しているというのに、おれはまだ未練があるのか。  彼の姿が窓から見えなくなると、レオはレジに行って二人分のコーヒー代を払い、店を出た。  そして、泉が歩いていった道とは反対の道を、雨に打たれながら歩いた。
 夜になっても、雨はやまない。  建ち並んだビルの窓から漏れる光の色に雨粒が染まって、黒いコンクリートの上で砕け散る。  交差点の後ろに聳え立つビルの大型モニターの中で、知らないアイドルが歌っている。  しかしその歌声は雨音や足音に掻き消されて誰の耳にも届かない。  あぁ、おれの音楽もこんな風に踏みつぶされていくのか。  あいつが命を削りながら叫ぶ声も、誰の耳にも届かずに靴底の跡をつけられるだけなのか。  城を出た王は庶民と変わらないのか。  あの頃の栄光を得ることなんて、できないのか。  交差点の真ん中で茫然と立ち竦むレオの横を、人々が通り過ぎていく。暗い波が去っていく。  「――――月永くん、」 そう、呼ぶ。あの頃とは違う、丸みを帯びた優しい声が。  ふと、身体に叩きつけられていた雨が止んで顔を上げた。  傘を持つ白い手。自分より高い背丈。コートのフードから覗く金色の髪からは雫が滴っている。 「月永くん」 彼の濡れた肩を見て、思わず笑う。  それと同時に、今まで張りつめていた糸がぷつん、と切れて、全身の力が抜けた気がした。 「……傘の意味ないじゃん」 寒さに擦れた言葉は、最後まで言い終えることなく途切れた。  英智の冷え切った身体が、レオの身体を抱き締めた。  甘いトワレの匂い。一日中、この匂いを探していた。冷え切った身体を強く抱き締め返す。 「『皇帝』、」 「……帰ろう、月永くん」 帰ろう、と噛み締めるように、英智はもう一度囁いた。  それに対しての上手な答え方をレオは知らない。  「あぁ」 そうとだけ言って細い手を掴み、彼の持つ傘を受け取って歩き出す。  人混みの中に、ふたりの声は呑まれていった。
 「どうしてあそこにいるって分かったんだ」 そう問う。  都会の電車の中に、濡れ鼠になった会社員や学生の憂鬱が立ち込めている。  扉の傍の手摺に寄り掛かった英智が、車窓の外に目を向ける。 「……なんとなく。夢ノ咲の方には行かないだろうと思って、こっちに来たんだ。そうしたら、瀬名くんからメールが来て」 「はぁ、つまらないことするよなぁ、セナも」 「でもずいぶん探したんだよ」 おかげでぐっしょりだ、とコートの裾を絞ってみせた。電車の床に水滴が落ちる。  「会えて、良かった」 そう言って、レオの肩に頭を凭れる。香水に混じって、雨の匂いがした。  ねぇ、と擦れた声が左耳を擽る。 「……キス、してもいい?」 「再会祝いのつもりか?」 ゆっくりと電車がスピードを落とし、駅に停車する。降りていく大勢の人々の背中を見送って、ふたりは空いた席に腰を下ろした。  「もう昔じゃない、しないからな」 「冗談だよ」 はぁ、という隣で吐かれた溜息が電車の車輪が擦れる音に消えていく。  「……おまえのことだから、探しに来ないと思った」 トンネルに入る。ライトの光が差し込んでは通り過ぎ、また差し込んで、通り過ぎて消えていく。 「探してほしかったくせに」 揶揄う口調で英智が言う。 「べつに」 「素直じゃないなぁ」  横目で睨めば、英智は肩を竦めてみせた。 「……約束しただろう、秋の海で。君の悪足掻きに付き合ったんだから、僕の悪足掻きにも付き合ってもらわないと」 「そんなこと、いちいち憶えてるのか」 「もちろん。学院での思い出はすべて僕の宝だよ」 トンネルを抜けても、やはり窓の外は暗い。まっくろな闇が世界を包んでいる。  「……どこへ、行っていたの」 そう問われて、レオは、 「いろんなところ」 と答えた。  「海が見えるところ?」 「あぁ、行った。銭湯がある町もあった」 「銭湯には行ったの?」 「うん」 「風呂上がりに瓶牛乳を飲むんだろう?」 「あぁ、美味かった」 「いいなぁ、僕も行ってみたいよ」 どちらも、今度一緒に行こう、などとは言わなかった。  手と手が触れた。逃げずにいると、そっと手を繋がれた。  「……曲は、書けそうかい?」 英智の問い掛けに、レオは肩を竦めた。 「さあなぁ。まぁ、学院のときは生き急いでた感じだったし、少し休めってことじゃねえの」 「そうだねぇ。君はほんとうに忙しそうだった」 と、英智は懐かしむように笑った。その横顔が、すぐに消えてしまいそうな気がした。  「……おまえも人のこと言えない」 レオの言葉に、英智が顔を上げてレオの瞳をじっと見つめた。呑み込まれそうだと思うほど深い、深い青だった。 「なにをそんなに急いでんの」 英智は困ったように微笑んだ。 「急いでいるように見える?」 「……あぁ」 低い声で答えれば、彼は目を伏せる。 「まさか君にそんなことを言われるとは思ってなかったよ」  向かい側の席の窓を見つめながら英智の肩に頭を凭れた。重いよ、と声がしたが気にしなかった。  「……眠いな」 「眠いねぇ」 「あと何時間で着く」 「二時間はかかるかな」 ゆっくりと瞼を閉じれば、浮遊感に似た、夜の色より深い闇が身体を包む。  ふたつの手はどちらも冷え切っていて、一向に温まらない。
 家に着いたのは、日付が変わる、少し前の頃だった。  雫が滴る洋服をすべて脱いで洗濯機の中に押し込み、風呂で熱いお湯を浴びる。冷え切った身体がじょじょに温まっていった。  先に風呂に入った英智はすでに布団の中に潜り込んでいた。垂れ下がった紐を引いて電気を消す。  隣に並べられた布団に入れば、月永くん、と声がした。だんだん暗闇に目が慣れて、英智の顔が見えた。 「なんだ、まだ起きてたのか」 「うん、なんだか寝付けなくて。電車でも、ずっと起きてた」 それは、気づいていた。途中で意識が戻って、いつの間にか彼の頭の方が上にあり、彼の瞳は開いていた。その青は、じっと向かい側の窓を見つめていた。  「眠くないわけ」 「眠いんだけど、なんでかなぁ……」 困ったように彼が笑った。掛布団の上の右手をそっと取れば、何も言わずに握り締められる。   深夜特有の研ぎ澄まされた空気に降り頻る雨の音が響く。それをたっぷりと聞いてから、英智が呟いた。  「……眠るのが、怖いんだ」 繋がれた彼の右手に力が籠る。天井を見上げる彼の目の光はあの頃に比べるとずいぶん弱々しく見えた。  もしも、と彼の唇が動く。 「もしも、朝が来ても目が醒めなかったら?僕に朝が来なかったら?……考えるだけで、身が竦むんだ」 「……」 「長く生きられないって解っているつもりだ。いつ死んでもおかしくない身体だって理解している。それでも、それでも毎日眠るときになって恐怖が僕を支配するんだ」  彼の弱さの吐露に、レオは寝がえりを打った。手は、繋いだまま。 「……あいにく、おれは作曲の天才だ。作詞の才能はこれっぽっちもない。だからおまえが欲しいような言葉をおれは見つけられない」  英智は一瞬驚いたような顔をして、そして微笑んで、 「あぁ、そうだったね」 と言う。  無意識に、指を絡める。細い指だった。 「……明日、起こしてやるから」 「ふふ、うん。頼むよ、早起きはどうも苦手でね」  そっと英智の布団の中へ足を忍ばせ、相変わらず冷たい彼の爪先に触れた。 「あったかい」 と、彼が笑う。レオの体温が、徐々に英智に移っていく。  「……おやすみ、月永くん」 「……おやすみ」 そう返事をすると、左手をぎゅっと握られた。英智がゆっくりと瞼を閉じる。神に祈る儀式のようだった。  命あるもの、誰だっていつかは死ぬさ。おれも、おまえも。それが早いか遅いか、その違いだけだ。  心の中でそっとそう囁いて、瞼を閉じた。
5
 衣擦れの音に目が醒める。足音と咳き込む声が離れていく。  「『皇帝』……?」 起き上がって横を見ると、隣に彼の姿はなく、乱れた掛け布団が投げ出されていた。窓の外は暗い、まだ日も出ていない時間だ。  重い瞼を擦りながら、彼の後を追う。  居間にも、トイレにも、風呂にも、離れの部屋にもいなかった。 「朝からどこに行ったんだ……?」 渡り廊下を歩いているときだった。微かに水が流れる音がした。  中庭の方からだ。置いてあった下駄をつっかけて、中庭へ向かった。中央に植えられた梅の木の花が風に揺れる。  壁に取り付けられた立水栓の前で英智が蛇口のハンドルを掴んでいた。静寂に包まれた夜明け前の空に、水が流れる音だけが響く。  声を掛けようとして、やめた。  ――――英智は、泣いていた。 必死に、声を押し殺している。きつく噛み締めた唇の間から嗚咽が漏れる。悲鳴のようなそれに足が竦んだ。  しばらくして英智が水を止めた。  英智が縁側に上がって、その姿が見えなくなると、レオはその水道の前に行く。薄紅色の梅の花びらが浮かぶ水に、濃い赤が混じっている。  「……何の赤だ?」 ひとり首を傾げながら、蛇口を捻る。冷えた水がぐるぐると小さな渦を巻きながら花びらとそ��赤を排水口へ流していった。
 寝室へ戻ろうと廊下を歩いているとき、居間の灯りが点いていた。障子に透けるその光の中に影がある。  静かに障子を開けると、畳の上に英智が横たわっていた。  「……『皇帝』?」 顔を覗き込む。薄い瞼が開き、潤んだ青い瞳にレオの顔が映った。 「月永くん、」 その声は擦れていた。やけに赤い頬に触れると、溶けるかと思うほど熱かった。 「おまえ、すごい熱だぞ!」 「ん……身体が怠い……」 「こんなところで寝てたら余計熱上がるだろ!布団で寝ろよ!」 立ち上がらせるために熱い腕を掴んで、息を呑んだ。  元々細い身体だ。知っている。  しかし、こんなに細かっただろうか。  軽いその身体を背負い、二階の寝室へ向かう。布団に寝かせて、水で濡らしたタオルを彼の額に乗せた。  「……ありがとう、月永くん」 そう言って、赤い頬のまま笑う。幾筋もの汗が垂れている。 「……君は、いいお嫁さんに、なるねぇ……」 「バカ。いいから寝ろ」 バカはひどいなぁ、とぼやいて、レオの手を掴んだ。 「一緒に、いてくれないかい」 幼い子供のような表情に、レオは逆らえない。  黙って同じ布団に潜り込むと、英智は驚いたような顔をした。彼が口を開く前に、目を細める。 「ほら、寝ろって」 繋いだままの手は熱い。 「……うん、おやすみ」 「おやすみ」  いつもは冷たいのになぁ、なんて思いながら、レオも英智と同じように瞼を閉じた。昨日の疲労が残っているせいか、あっという間に眠りに落ちた。  次に目が覚めたときには、すっかり日も昇り、昼に近い時間帯だった。  英智は変わらず、長い睫毛を伏せてすやすやと眠っていた。彼の額に浮かんだ汗を、乾いてしまったタオルで拭ってやる。  低い音で腹が鳴った。英智を起こさないように静かに布団から出て、一階の台所へ向かう。背の低い冷蔵庫にはほとんど食材がなく、買いに行かなければ何も作れない。  二階へ戻り、冷やし直したタオルを英智の額に乗せた。着替えてから、メモ帳に『買い物に行く』と走り書きを残して家を出た。
 スーパーで買い物を終えた頃には腹がぐるぐると鳴っていた。  食材を冷蔵庫に入れ、冷却シートを持って寝室へ向かう。  襖を開けたが、布団の上に彼はいなかった。  まさかまた、と思い中庭に行ったが、彼はいなかった。トイレだろうか、と踵を返そうとしたそのとき、ピアノの音色が聞こえた。  ブランケットを肩に羽織った英智が、ピアノの前の椅子に座って鍵盤に触れていた。 「……あれ、見つかっちゃった」 そう言って笑いながら、モーツァルトのピアノソナタを弾く。 「モーツァルトは嫌いだ」 ピアノに凭れ掛かって、冷却シートを一枚取り出す。  顔を上げた英智の前髪を指で梳く。露わになった額にそれを貼ってやると、冷たい、と眉を顰めた。  「安静にしてろって言っただろ」 「なんとなくピアノが弾きたい気分になったんだよ」 そう言って、近くにあったもう一脚の椅子を引き寄せてレオに座るよう勧めた。溜息を吐きつつ、腰を下ろす。 「一曲だけだからな」  そうして、あの連弾曲を弾く。  時折、英智は咳をした。細い喉のしがらみ。  たまに、レオの左手と英智の右手が触れ合った。わざとらしく指を絡められて振り払えば、英智は楽しそうに笑った。そして、また咳をする。  白と黒の鍵盤の上で、二十本の指が自由に躍る。  離れて。近づいて。触れて。また、離れる。  誰かのために、と定めて曲を作ることは少ない。そのとき生まれた霊感を音符に変えるだけだ。  この連弾曲も、そうだ。  『皇帝』と呼ばれた天祥院英智という男に触れて、声を聞いて、そうして生まれた霊感を形に、音に、変えて出来上がった曲だ。  すぐ傍に体温がある。  彼の鼓動が聞こえる。  けれど安心できない。それは、雨の都会の街で感じた孤独に似ていた。  最後の一音の残響が部屋に響いた。  「……月永くん、」 「なに」 ふ、と彼が目を伏せ、なんでもない、と言う。  英智の手を取って立ち上がらせる。  「昼飯、食べれる?」 「お粥かい?」 「そう」 「あんまり好きじゃないんだよなぁ……」 「文句言うなよ」 なんとなく、その手を放せなかった。寝室に行くまで、ずっと手を繋いだままだった。
 昼食を食べ終えて、英智はまた眠りについた。レオはピアノに触れた。 それからメモ帳を広げたものの、まったく霊感は湧かなかった。昨日の朝方から陥ったスランプから、まだ抜け出せないでいる。もどかしい気持ちばかりが募って、ペンが進まない。  掴もうとした音がばらばらに飛び散っていって、指の間をすり抜けていく。音符の形になろうとせず、五線譜の中に納まってくれない。  あぁ、おれはどんなふうに曲を書いていたんだろう。  弾きたい曲もない。書きたい曲もない。  おれは、あの学院にいるとき、スランプになって足を枷に捕らわれたとき、どうしていたっけ。  鍵盤の上に頬を乗せていたとき、ピアノの横に置きっぱなしにしていたスマホが震えた。  腕だけを伸ばし、それを手に取った。『新着メールが届いています』という通知が液晶画面に表示された。  メールボックスを開くと、見覚えのないアドレスからメールが届いていた。  差出人は有名な映画製作会社だった。レオはその会社の映画を観たことはないが、今まで出席してきた表彰式などで名前を聞いた。映画の劇中歌が賞を貰っていた気がする。  メールの趣旨は、次回作の映画の劇中歌を作曲してほしい、というようなことだった。依頼を受けてくれるのなら、詳しいことは会って話したい、早ければ明後日に、とも書いてあった。  ピアノの蓋を閉じて、寝室へ戻ると、目を覚ましたらしい英智が窓辺に腰掛けていた。  夕陽がきらきらと彼の金色の髪に反射している。濃い影が彼の背中から伸びていた。  額、高い鼻、顎のラインを目線で辿る。  視線に気づいたのか、振り返った英智が、 「月永くん」 と呼んだ。  レオはその隣に座って、彼が見ていた景色を見た。  まだ山には少し雪は残っているが、白や赤の梅が春の訪れを告げるように花開いている。薄紫色の雲が伸びていて、いつだかの時代の物語を思い出した。春はあけぼの、だ。今はあけぼのではなく夕暮れだけれど。 「春の夕暮れは好きだよ。柔らかい匂いと色がする」 と、まるでレオの心を読んだかのように英智が言った。  「……仕事を依頼された」 唐突に話が変わったにもかかわらず、英智は驚くこともなく、そう、とだけ相槌を打った。 「明後日、昼間いなくなるけど」 「うん、君の帰りを待ってるよ。夜になったら家に帰ろう」 元々そういう約束だった。七日目の夜には帰って、そして。  「……どんな仕事なの?」 「映画の、劇中歌の制作」 「大抜擢だねぇ」  咽た英智の背を撫でてやると、彼はもう一度窓の向こうを見た。 「春には街中の桜が咲いて、一面桜色に染まる。夏には蝉が鳴いて、八月の夜は隣町で打ち上げられる花火がとても綺麗に見える。秋には庭のイチョウや山の紅葉が色づくんだ。冬は空気が澄んで星がいちだんと美しいから、寒さも忘れてずっと���ていられる。僕は、いつも病院の��ッドの上で、窓から町を見下ろしていた」 そう言ってから、また静かに咳き込んだ。 「……この町の四季も、見たかったなぁ。夏にしか来たことなかったから」 「住めばいいじゃん、この家に」 「無理だよ、この家は売られるんだ」 「わがまま言えよ」 「もう買い取られたんだ」 残念そうに、彼がそう言った。 「僕がこの町に来ることはもうないよ」  その指が窓にサインを綴る。  「形あるものはいつか失われるんだ、解っているよ。……ただ、もう少し時間があれば、とは思ってしまうけれど」 形あるもの、それが何を指すのか、レオは訊けなかった。  振り返った英智が、来て、と言う。  その声が、やけに細くて。  鼻が触れてしまうほど、距離を縮めた。彼に向き合うように。  「……君と一緒に暮らせたら良かったなぁ」 「おれはごめんだな」 「冗談だよ」 そして、ゆっくりと唇を寄せた。薄くて乾燥した唇だった。離れていくとき、思わずぺろりと舐めてやった。何食わぬ顔で、 「……あの頃とは違うんだぞ」 と言えば、英智はどこか哀しそうに微笑んで顔を伏せた。長い前髪がその表情を隠す。 「解っているよ」  その前髪を指で持ち上げ、顔を覗き込む。 「……みっともない顔だなぁ」 「そのとおりだよ」 もう一度、そのままキスをした。  最後の悪足掻きだ、許してほしい。  あの学院で終わったあの輝きを今だけ、もう一度だけ。  優しくて柔らかい匂いと色がする春の夕暮れは、なぜか寂しい気持ちになるのだと、レオはそのとき初めて知った。
 徐々に頭が冴えてきて、そして勢いよく起き上がった。  いない。  英智は、布団の上にいなかった。  部屋を出て違う部屋を覗いたが彼の姿はなかった。  一階に降りて、居間や台所、洗面所、風呂場や囲炉裏部屋にも、トイレにも、彼の姿はなかった。  離れに向かおうとして渡り廊下を歩きながら、ふと中庭に目をやった。  裸足のまま、地面を歩く。ひんやりと冷たい土を踏む。  青い絵の具を垂らしたかのような真っ青な空に、白い梅の花が風に揺れている。  その木の下にしゃがみこんだ彼もまた、レオと同じように裸足だった。  「……何してるんだよ」 後ろから声を掛けると、英智が振り返る。顔色は昨日ほど悪くはない。 「……月永くん、」 と呼んだ彼の額に、手の甲で触れる。まだ少し熱が残っている。そのまま、指で前髪を梳けば、擽ったそうに彼が瞳を伏せる。  「……ぶり返すぞ」 「うん、でもあともう少し」  レオの手から逃れて、また梅の木を見上げる。そうわがままを言う横顔は幼い子供のようなのに、瞳は世界の仕組みのすべてを知った大人に似た、冷たい光を宿していた。昔とは違う、熱のない光。昨日の夜と変わらない、弱々しい光。  彼は梅の木の幹に額を当てた。まるで信仰を伴った行動のようだった。伏せた睫毛から目を逸らし、彼の足首の細い線を見つめる。  小さく彼が、ステージの上で歌っていた歌を口ずさむ。  そうして、顔を上げて振り返った英智は微笑んでみせた。そんなに情けない顔をしていたのだろうか、と思わず口元を右手で覆う。  「ねえ、月永くん」 首を傾げれば、長い前髪がそれに合わせて揺れた。 「散歩に行きたい」
 坂道を上っていく後ろ姿を見つめながら、後を追う。  あたたかい陽射しの中、道の両脇に咲く梅の花と同じ色の彼のシャツが眩しく光る。  相変わらず白が似合う、と思った。  「……なぁ、」 「ん?」 振り返った彼に問う。 「白、好きなの」 彼は微笑んで頷いた。 「白は美しい色だと思わないかい?」  何者にも侵されないその色を纏った英智が、長い睫毛を伏せる。 「……それに昔、喪服は白色だったんだ」  ふわ、とふたりの頬を撫ぜた風は線香の匂いがした。  匂いの先を見ると、坂の途中に墓園があった。名前が刻まれた石が揃って並んでいる。 石と石の間の通り道を若い女性とその子供であろう幼い男の子が手を繋いで歩いていく。女性の腕には花束と線香の箱。  彼女が線香に火をつけ、その線香を立てた。細く白い糸のような煙が風に流れていく。  線香の匂い。  死の、匂い。  「……懐かしい匂いだ」 英智はそう呟いて、哀しくなるほど青い空を仰いだ。金色の髪がさらさらと風に靡いて、その隙間から形の良い耳が覗く。 「敬人の家に遊びに行くと、必ず線香の匂いがするんだ。敬人はその匂いが嫌いだって必ず言ってた。でもしょうがないよね、毎日お墓に誰かが来て、線香を上げていくんだから」  ゆっくりと瞬きをして、それから、 「行こうか」 と再び歩き始めた。  線香の匂いがしばらくレオの鼻先に残っていた。  辿り着いたのは、坂の上にあるあの神社だった。鮮やかな、赤い鳥居と青空のコントラストを目に焼き付ける。 「今日は海まで見える」 英智が眩しそうに目を細める。眼下に広がる町を、ふたり並んで見渡した。  細い畦道をバスが走っている。田んぼや畑に柔らかい緑が広がっている。乗客の少ない電車が走っている。遠くの海がきらきらと輝いている。  あの青に触れた彼の足首の線を思い出して、海へ行きたい、と思った。さざ波の音が耳の奥で聞こえる。  その音を、英智の歌声が掻き消していく。レオの知らない曲だった。  都会のビルのモニターの中で歌う彼の姿を想像する。似合わない衣装を着て、凡才の作った曲を歌って、センスのないダンスを踊る。  しかし、それでもきっと、雑踏に踏みつぶされることはないのだろう、と思った。誰しもがレオと同じように、彼の歌に心臓を掴まれ、息を止められるのだ。  歌い終わった彼は、大きく息を吐いて春の町を見下ろした。  「……僕は、神様はいると信じているんだ」 神様がいないと言ったらここから突き落とされるんだっけ、と思い出しながら彼の背を見つめる。 「神様がいなかったら、僕は誰に八つ当たりすればいい? 誰を憎めば���恨めばいい?」 振り返った英智の瞳に、息を呑んだ。  相手にすべてを投げ出させ、降伏させるためには手段を択ばない、あの『皇帝』そのものの光を宿した瞳だった。  それは、あの頃だけのものであって、今は。  英智は、絶壁の先と展望台を区切るフェンスの手すりの上に立った。  そのまま、重力に逆らうことなく落ちていく――――その彼の姿を想像して、レオは細い腕を思い切り引っ張った。重なるように倒れて、英智の全体重がレオの身体にかかり、ぐぇ、と呻き声を上げた。  起き上がった英智が、レオの顔を見て、それからぷっと噴き出した。 「あははっ、あはははは!」 愉快に笑い声を上げる英智に、レオは顔を赤くして怒鳴った。 「笑い事じゃないからな!」 「僕が、飛び降りると思ったのかい? はぁ、君の真剣な顔と言ったら、あっはははっ」 大口開けて子どものように笑う英智を見て、言葉を発する気力も失せた。  笑い続ける彼を無理矢理押し退けて、レオも起き上がった。  笑い過ぎて下瞼に溜まった涙を拭った英智が言う。 「はぁ、ほんとうに君がいると退屈しないなぁ」 やっぱり一緒に暮らそうか、なんて口にする英智に、 「絶対にごめんだね!」 と、べっと舌を出した。  やはり神様はいるのか、と思った。  賽銭をしたときに心の中で言ったのだ、この男の笑った顔が見てみたい、と。自分には決して見せないような顔を見れたら、きっと霊感が湧くのだろうと思ったから。  立ち上がろうとした英智が、あれ、と言う。先に立ち上がったレオが彼のつむじを見下ろす。  「……月永くん、」 「……なんだよ」 「腰が、抜けたみたいだ」 「このボンクラ『皇帝』!」 そう罵って、動けなくなった彼の身体を背負う。驚くほどの軽さに息を呑んだ。 「月永くんは優しいねぇ」 「貸しひとつな」  そうは言ったものの返される機会なんてもうないんだろうなぁ、と思いながら、麗らかな光が当たる坂道を下った。
 夜が更けて、彼の熱は少し上がった。 「昼間にはしゃぎすぎすぎたせいだろ」 と言えば、英智は、 「君の面白い顔を思い出すとまた笑ってしまうよ」 と言いながら、また笑っていた。  垂れ下がった紐を引いて、常夜灯に切り替わる。淡い光に目を擦り、彼の隣の布団に潜り込む。  そっと足を忍び込ませて、彼の足に触れる。  「あったかい」 彼はそう言って寝がえりを打ち、レオの方を向いた。レオはじっと天井を見上げたまま、光に目が慣れるのを待つ。  ねぇ、と彼が言う。  「君は、アイドルを辞めるのかい?」 考える時間さえなかった。その答えを、ずっと前から持ち合わせていた。 「あぁ」 天井の染みを数えながら短く答えると、英智は、けほ、と小さく咳をして、また問う。  「歌ってくれないの」 「歌わない」 「残念だなぁ……」 いつだかと同じやり取りをして、英智が咳をしながらも笑う。  「僕は君の歌声が好きなのに」 「嘘吐け」  英智が起き上がり、じっとレオの瞳を見つめた。暗闇の中で白すぎる顔がぼんやりと浮かんで見える。  深い溜息を吐いてから、今度はレオが問う。  「……お前は辞めないの」 「辞めない」 瞬時に返ってきた声に驚いて、英智を見つめ返す。その瞳が、強い声色とは裏腹に優しく細められた。 「辞められない、と言った方が正しいかな。アイドルという概念が僕を離してくれないんだ。それは苦じゃなくて喜ばしいことだよ、僕にとってはね」  なんとなく、その腕を取る。袖を捲って露わになった前膊は点滴の針の痕が多く残っていた。こんな脆い身体を引き摺り続けるなんて、自らの首を絞めるような行為だというのに。  「……月永くん、」 青が、揺らめく。あのときの薔薇の色も、この色だったとふと思い出す。  あの花と同じ、この虹彩の色が『神の祝福』だと言うのなら、皮肉にしか聞こえない。  手を伸ばして、彼の首に触れる。頸動脈が、どく、どく、と動いている。  「僕の我が儘を聞いてくれて、ありがとう」 「あははっ、おまえに礼を言われる日が来るなんて思ってもなかったな~」 英智の冷たい指がレオの輪郭を撫でる。その表情に、無理に引き上げた唇の端を元の位置へと戻す。  「僕のこと、ずっと赦さないで」 「……なに言って、」 「僕が君にしたこと、全部、赦さないでいて」 そう言った瞬間、英智は大きく咳き込み始めた。 「お、い……」  いつもとは違う。ヒュー、ヒュー、と喉鳴っている。レオは起き上がって、英智の背を摩った。左胸の奥で煩い心臓がレオの思考を邪魔する。  神様はいつだってひどい。人間を簡単に裏切るのだ。自分そっくりにつくったこの男を祝福したというのに。  嘔吐いた英智の唇から、鮮血が吐き出された。レオの服と布団が真っ赤に染まる。  「英智!」 名前を、叫んだ。  英智が顔を上げる。血で汚れた美しい顔を見て、英智は人間なのだと痛感した。人間だから、生きているから、死んでしまう。  ――――そんな風に、また、呼んでほしかったんだ、レオ。 そう擦れた声で言って、英智は微笑む。  そして、糸が切れた操り人形のように、レオの方に倒れ込んだ。繋いだお互いの手の隙間から、英智の命を証明する紅が零れて指を伝う。  「英智!」 引き攣った喉から紡いだ声で、もう一度そう呼んでも、英智は長い睫毛を伏せたままだった。
6
 七日目。寒さがぶり返した。三寒四温とはこのことか、と思いながらマフラーを巻いた。  仕事の打ち合わせを終えて、あの田舎の街に向かうバスに乗っているときに、ポケットの中のスマートフォンが震えた。液晶画面には『ケイト』という着信相手の名前が表示される。  「もしもーし」 『もしもし』 卒業式以来に聞いた声は、相変わらず無愛想だった。しかしその中に少し疲労が窺える。 「珍しいな、お前がおれに電話かけてくるなんて」 『お前が電話に出ることも珍しいぞ』 「今暇してたんだよ」 『英智といるときは忙しかっただろう』  その言葉に呆れ笑いが出る。 「なに、俺を糾弾するためにわざわざ電話掛けてきたのか~?」 『逆だ。礼を言うためだ』  ふは、と思わず笑い声が出てしまった。電話越しに、咳払いと、『何笑っている』という声が聞こえた。 「お前に言われてもなぁ。『皇帝』本人に頭を下げさせたいんだよ、おれは」 冗談交じりにそう言えば、彼は黙ってしまった。  「あいつ、生きてんの?」 そう問えば、即座に、 『生きている』 と返ってきた。  『いつもよりひどい発作だったらしい。じきに良くなる。そうしたら、会いに来い』  会いに、か。  バスがゆっくりと止まる。老婦人が降りて、その後に続いてレオも降りた。  白く輝く星たちがよく見える、静かな夜だ。街灯のない畦道を歩く。冷え込んだ空気に身震いした。  フードに顔を埋めて息を吐く。  「分かった」 そう一言だけ、返事をした。  『あと、英智から伝言だ』 「伝言?」 『ピアノの傍に渡したかったものを置いておいた、と』 「……そうか」 敬人は何も訊かなかった。さすが気が利くなぁ、と感心しながら、一言二言を交わして電話を切った。  その頃には目的地に辿り着いていた。空き家となった日本家屋の門には、名札が掛かっていなかった。合鍵を使って戸を開ければ、初めて訪れたときのように沈黙が立ち籠めている。  スニーカーを脱ぎ、家に上がった。
 昨日の夜。  英智は血を吐いて意識を失った。レオが呼んだ救急車に乗せられて市街地の病院に運ばれていった。サイレンの赤い光と耳に響く音が遠ざかっていくのを見送って、踵を返した。  走って向かった中庭では、梅の花が月明かりの下、儚い白い光を放っている。両の掌を、月に翳した。  乾いた赤い血。彼の身体に通う血潮。生きた身体に、流れている血。  立水栓の前に立ち、自分の手にべっとりとこびり付いた彼の血を、冷たい水で洗い流す。  渦を巻きながら排水口へ運ばれていく血と水を見て気付いた。  あの朝が来る前。中庭の水道に浮かんでいた花びらを染めた赤は、英智の血だったのだと。  昨日の朝方も、英智は吐血していたのだと。ひとり、立水栓の前で体を折って、咳き込んで、鮮血を吐き出していたのだと。  苦しげに歪められた横顔と、必死に噛み殺そうとした嗚咽を思い出す。蛇口のハンドルを掴んだまま、そのままずるずるとしゃがみ込んだ。  「……今更だよなぁ」 ひとりごとは誰にも届かず消えていった。  勢いよく吹き出す冷水に左手を当て続けた。指先の感覚が、なくなるまで。
 渡り廊下の先の離れに入る。東の窓から差す月明かりの下、グランドピアノが佇んでいた。  ふたりで腰掛けて連弾したことを思い出す。白く細い骨ばった指がレオの描いた音符を追って、鍵盤の上で踊っていた。  日本家屋に似つかわしくない茶色のグランドピアノの前の椅子に腰を下ろす。  鍵盤蓋を開け、譜面台を立てて、息を呑んだ。  一枚の便箋がそこに、楽譜のように立て掛けられていた。  『月永くんへ』 一行目に綴られた、その筆跡。  思わず鍵盤に触れて、透き通った和音が響いた。  『君がこの手紙を読んでいるとき、僕はもう生きていないかもしれない。』 二行目に書かれたありきたりな文。それを目にした瞬間、全身の血液が沸騰した。  その手紙を払いのけた。はらはらと床に落ちる。  耳鳴りがする。それを掻き消すように音を掻き鳴らした。
―――― 月永くんへ  君がこの手紙を読んでいるとき、僕はもう生きていないかもしれない。  どうしても君には伝えておきたいことがあって筆をとったよ。  久々にこんな高熱を出して体が言うことを聞いてくれないんだ。読みにくい字でごめんね。
力が入らなかったのだろう。震えた字だった。
――――思えば君にはひどいことをされたし、僕もおなじくらい君にひどいことをしたね。  あの学院で過ごした日々がなつかしいよ。  君と戦ったこと。  君が逃げたこと。  君がいない間、病院のベッドの上で君の作った曲を思い出していたこと。  君ではなく新星のあの子たちに敗北したこと。これは、さすがに情けないね、わらっていいよ。君が帰ってくるまで王座についているつもりだったのだけれど。  君が帰ってきてナイトキラーズとして戦ったこと。  僕がしたことを、ゆるさなくていい。  けど、おねがいだ。  僕のことはぜんぶ忘れてほしい。
 激しく感情的な反面、哀しげなメロディーが響き渡った。  紙を手に取って、感情に任せるまま、それを引き裂く。  最大の喪失だ。何もかもが奪われていく感覚がする。これならオリジナリティのない量産型のアイドルソングを聞いている方がマシだ。
――――最後に。僕のわがままを聞いてくれてありがとう。  君は最高の宿敵だった。元気で。
 震えた手で描かれたサインさえ破いた。  「赦さないで、忘れられるもんか……!」  鍵盤に額を凭れれば、乱雑で悲しい和音が響いた。  生きることを諦めた手が綴った手紙は塵になって床やピアノの上に落ちた。  「おまえの終着点はこんな所なんかじゃないだろ……!」 吐き捨てるように一人叫んだ。  今、やっと気づいた。  なぜ英智があの学院を出て、悪足掻き、と名をつけてレオを連れてこの田舎の家に来たのか。  この場所で、彼は死のうとしていたのだ。  あてつけのつもりだったのか、償いのつもりだったのか、それは分からない。  ただ彼は、両親の傍でも、幼馴染の傍でも、仲間の傍でもなく。  かつての宿敵の傍で、死のうとしていたのだ。  ――――歌わないの。 そう、彼が問う。  歌わない。  歌わないさ。  この曲はおまえへの餞だ。おまえが、歌えばいい。
 曲を書き終えて、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。ふ、と目を開けたとき、水滴が一筋の線を描き、パーカーの袖に染みを作った。  振子時計の短針が五を指していた。夜更けを過ぎたものの、まだ外は暗闇に包まれている。  メモ帳から、五線譜を書いた数ページを引き千切って譜面台に添え、ゆっくりと寝かせた。このピアノを英智は捨ててしまうだろうか、と考えたがすぐにどうでもよくなる。  二階へ上がり、ふたりで使った寝室に入った。  彼の匂いがした気がした。  窓辺に腰掛けて、外の風景を見つめていたあの横顔をもう見ることはない。  いつも真っ直ぐレオに向けられた、冬の晴空と同じ色の瞳も、  艶のある柔らかい金髪も、  長い指、細い身体の線も、  あのとき、指で撫ぜた頸椎やなぞった背骨も、  粉雪みたいに白く冷たい肌も、  悪戯好きな子どもの頃の面影を残した稚気溢れた笑顔も、  もう、隣にはない。  ――――おやすみ、月永くん。 眠るのが怖いと言った英智は、布団の中で瞼を閉じる前に必ずそう囁いた。青が閉じられて、  作り物のようになってしまった彼の体温を確かめたくて、必ず爪先で足に触れた。あったかい、と彼は笑っ���。  「……史上最悪の一週間だった」 その言葉が窓を曇らせた。  傍にあった英智の強さに、脆さに、喉奥に隠した叫び声に、死のにおいに、すべてに気付きながらもレオは何もできなかった。  何も変えることはできない。ふたりは神様ではなく、神様につくられた『人間』であって、運命は変えられないのだと知っている。  はぁ、と吐いた息で窓ガラスが白く曇る。その色紙に指先で、数え切れないほど書いてきたサインを描く。そのサインが消えてしまう前に、レオは家を出て、玄関の引き戸に鍵をかけ、もう使うことのないそれを郵便受けに入れた。  それから中庭へ向かい、一本の梅の木の前に立った。  幹に触れ、そして額を当てた。英智がこうしたまま、何を考えていたのかレオには解らないけれど。  ――――英智、 名前を呼ぼうとして、やめた。  ――――レオ そう呼んだ彼の声が聞こえた気がして空を仰ぐ。  泣きたくなるほど真っ青な空に、白い花びらが映えて、散っていく。  三月の寒さに身震いして、門をくぐった。ダウンのフードに顔を埋める。振り向くな、と自分に言い聞かす。  結局、ふたりの青春は、神様が丁寧に拵えた箱庭のような学院でしか生きられなかったのだ。もう二度とあの頃には戻れないし、あの頃を悔いることもない。  何も間違えたことなどなかった。子どもの二人にはすべてが必要だったのだ。  英智が『五奇人』、『王』との戦いに勝利し、『皇帝』になったことも。  レオが彼に敗北し『Knights』を守れずに壊れた玩具になったことも。  『皇帝』が新星に頭を垂れたことも。  あの秋に再会したことも。  ――――宿敵と見なし憎みながらも、愛したことさえも。  神に愛され弄ばれた二人の運命だった。 乗客の少ないバスに乗り、窓際の席に腰を下ろした。さほど大きくない車体が動き出す。  ふたりで過ごした街が遠ざかっていく。  窓に頭を凭れて、瞼を閉じる。  あいつが死んだら、あいつはおれのことを忘れて、おれもあいつのことを忘れるのか。忘れて、お互いを赦すのだろうか。  その疑問を浮かべてから、地獄に堕ちてからじゃないと解らないなぁ、とふたりを嘲る。  頭の中で、あの頃の彼の、凱歌を歌う声が鳴り響く。もう聞くことのない、昔は憎くて堪らなかった、命を証明する美しい叫び声が。脳裏に、祝福を受けた青い瞳でレオを見つめる彼の微笑が浮かぶ。  日射しに瞼の裏が明るんで目を開けた。東の空が白み、新しい一日が生まれる。  美しい夜明けを、レオはひとりで迎える。きっと英智も、病室でこの夜明けを迎えているのだろう。  それをただひたすらに、これからも繰り返していくのだ。  そうして、死んだ青い春を抱えて、ふたりは生きていく。
20160424
夜明けを迎える | よなか #pixiv http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6698339
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