【かいわいの時】延暦十二年(793)三月九日:難波大宮を廃止し、摂津職を摂津国に改める(『日本後紀』)。
1)摂津国の国務は当初、難波宮および難波津を管理するとともに、摂津国の行政を兼帯する、摂津職とよばれる特別行政機関によって行なわれた。摂津職の官衙は難波京内に置かれたと考えられ、その所在地は現在の大阪市天王寺区国分町のあたりとする説が有力である(Web版尼崎地域史事典「apedia」)。
2)摂津国府の所在地は明らかでないが、大阪市天王寺区にある四天王寺の東方に国分町(もと国分村)の地名があり、摂津国分寺の所在地と考えられるところから、当初国府もその近くにあったとする説(『東区史』第一巻)が有力である(『大阪府史 第2巻 古代編』1990)
3)国司の庁は天王寺区生野町即ち旧生野村国分地方であろう(『東区史 第1巻 総説篇』1942)
4)国分町(近世):江戸期~明治5年の町名。江戸期は大坂三郷北組のうち。明治初年からは玉造を冠称。江戸初期、当地に山城国伏見の町人が移住。はじめは東伊勢町と称したという(初発言上候帳面写/大阪市史5)。町名はかつて当地に摂津国の国府があったためと伝えるが不詳。「玉造いなりうら門前筋より三すじ東の丁大和ばし通り北へ入」の町で(宝暦町鑑)、元禄13年の大坂三郷水帳寄せ帳によると家数29軒、役数30、うち無役数1(年寄)、年寄は塩屋半十郎。古代に朝鮮や中国からの使節の迎賓館として鴻臚館が設けられたが、「摂津名所図会大成」は当地をその古址としている(浪速叢書7)。しかし「五畿内志」は現在の天王寺区玉造元町としている。明治2年大阪東大組に所属。同6年東成郡西玉造村となる(『角川日本地名大辞典』)
5)摂津国の国府「大阪市天王寺区国分町・生野区生野西? 1」「同[図書館注:大阪市]東区*法円坂町または森ノ宮中央? 2」(『国史大辞典 5 け-こほ』1985。大阪府立中之島図書館による。*ママ。現在は中央区。
(結論)まったくの謎ですが、古地名との類推から「天王寺区国分町」または「中央区森ノ宮中央」の2地点に絞られています。しかし、摂津職は、国司としての職務に加えて難波津・難波京(難波宮)の管理も行っていたところから、その官衙が難波津や難波宮から離れたところにあったとは考えにくいところから、 当会ではかいわいの内である「中央区森ノ宮中央」を有力候補地としています(下記参照)。
6)古代の摂津国に摂津職が置かれたのは、難波宮と難波津の重要性に着目したものであり、その職掌の中心は、難波宮の維持・管理とともに「津済(難波津の維持・管理)、上下公使(諸外国の使人の応接)、検校舟具(官船・私船の管理・調査)であった。当然こうした職務を担当する官衙は難波津の近傍に設けられていた(中尾芳治「古代の難波と難波津について」2010)。
(写真)「古代摂津職の所在地」(「古代はじめの古地理図」趙ほか(2014)の巻頭図版5に加筆。①天王寺区国分町 ②中央区森ノ宮中央
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8月3日 土【食】
渡辺製菓さんより
「秋保 福おみそ」のまころん
再入荷いたしました。
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「秋保 福おみそ」とは
名取川の清流で育まれた
秋保産 大豆/ミヤギシロメ、
環境保全米「清流育ち秋保米」を使用した
純秋保産の本場仙台味噌です。
そのお味噌を仙台銘菓まころんに練り込み、
芳醇なお味噌の深い味わいと、
落花生の香ばしさが癖になる、
新しいまころんが生まれました。
取り扱いは
秋保温泉旅館売店とカフェ10軒ほどと、
街中の百貨店/三越さん藤崎さん、と当店。
可愛らしいパッケージで、
ちょっとした手土産にも喜ばれそうです。
味噌と落花生
個人的には一番好きなお味です。
是非ご賞味くださいませ。
原材料:落花生、砂糖、鶏卵、味噌、米、食塩、膨張剤
内容量:115g
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塩芳軒「亥の子餅」
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★ Feb. 23, 2018
Shioyoshi-ken, Kyoto:
1) sa-warabi (young bracken shoot) [upper left]
2) kobore-ume (lit. fallen?-‘ume (Japanese apricot)’) [upper right]
3) fuku-ume (lucky/bringing-luck-'ume’ blossom?) [lower left]
4) kyo-kanoko (lit. Kyoto-dappled pattern [seen on a deer]) [lower right]
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1) Japanese cake stuffed with chunky-type sweet bean paste 'tsubu-an’, covered with a 'habutae’ texture mixed (and accordingly colored) with ground leaves of a green, fragrant herb 'yomogi’, and dusted probably with rice cake powder called 'kori-mochi (lit. ice-rice cake)’. Two 'sa-warabi’ are impressed on top.
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2) The combination of strained-type sweet bean paste 'koshi-an’ and a smooth, white – partly 'faintly pink’-colored – 'joyo’ texture.
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3) Japanese cake in the shape of 'ume (Japanese apricot)’, which is filled with strained-type white bean paste 'shiro-an’ and wrapped in a soft layer of 'habutae’.
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4) Japanese cake with a filling of strained-type white bean paste 'shiro-an’ and a covering of white adzuki beans candied in sugar syrup and glazed.
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#wagashi #japanesesweets #sweets #tea #teaceremony #chanoyu #matcha #foodie #dessert #food #sweettooth #japan #japanese #kyoto #京都 #スイーツ #お菓子作り #お茶の時間 #お菓子 #和菓子 #抹茶 #お茶 #茶道 #春 #塩芳軒 早わらび こぼれ梅 福梅 京鹿の子
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蓬を練りこんだ柔らかくねっとりめの雪平(羽二重餅)を薄くのばして粒餡を包み、その上に焼印でさわらびの絵を加え、更に氷餅で散らしたお菓子です。いかにもお茶菓子という風情のあるお菓子で、羽二重餅の食感の気持ちよさ、蓬の香りの素晴らしさもさることながら、やっぱり粒あんの美味しさ、力強さが際立ちます。名古屋での羽二重餅(雪平)との扱いの違いに京都らしさを感じました。名古屋では厚めの羽二重餅の生地を使い、その生地の柔らかさ以上にふんわりとした食感が際立つようにするものが多いのに対して、こちらは生地を薄くし、柔らかさをアクセントとしながらもあくまでも餡が主役になっています。名古屋も実はお茶文化が盛んなところだけれど、やっぱり京都のお菓子はお茶のための和菓子なんだなぁ、と思いました。とっても美味しいお菓子です。
京都の塩芳軒の早蕨です。
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望月通陽展は今日26日まで。明日は定休日です。
昨夕京都から戻りました。そろそろ季節なので葛焼きないかな、と思い、駅に向かう道すがらに立ち寄り立ち寄り、末富で葛焼き(一枚目)と七夕、笹巻、塩芳軒で青梅、弓矢町の松寿軒で水無月(二枚目)を求めました。ぜんぶ一度にいただくわけでは無いのですが、ならべると涼やかで楽しい。
https://www.instagram.com/p/CfQLYJiPoNk/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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文ちがい
人と生まれてうぬぼれのない人はございません。
遊興にまいりましても、おれは女の子にかわいがられまいとおもってゆく人はありません。どんな醜男《ぶおとこ》でも、顔はみにくいが、心意気はおれほどの者はないなどと、みなうぬぼれてまいります。色の白い人は、ほかがわるくても、七難をかくしているから女が惚れるだろうとおもい、また黒い人でも、色の白いのはにやけていけないが、黒いほうが丈夫そうでいや味がない、第一よごれっぼくないから、いつまでもあきがこなくていいと、自分勝手のりくつをつけて逢いにいくのだそうでございます。
傾城《けいせい》に誠はないということを申します。しかし、おなじ人間でございますから、まるっきりないのではありませんが、くる客ごとに誠をつくしていたんではからだがいくつあってもたりるわけのものではございません。多くくる人の中には、いい人というのがかならずひとりはあるに相違ないので……
「どうもこまったじゃあねえか。くわしいことが手紙に書いてねえからわからねえが、どういうわけなんだ?」
「どういうわけだって、おまえさんも知っての通り、わたしのおやじというものはほんとうのじゃない。けれども、六歳《むつつ》のときから育ててくれたんで、それを恩に着せて、五両貸せの、十両貸せのってのべつの無心、けれど、親だからどうすることもできない。まあ、年期《ねん》があけて、おまえさんと夫婦になっても、あのおやじにのべつゆすられては、じつにおまえさんに気の毒……いいえ、いまはいいたって、それが長い年月だから、わたしもどんなにおまえさんに気の毒だか知れない。どうにかならないかとおもっていたら、こんども二十両の無心だろ? そんな大金はとてもできないといったら、こんどだけはなんとか助けてくれ。そのかわり親子の縁を切ってもいいから、二十両だけはなんとか都合してくれと、こういうんだよ。おまえさんにねえ、お金の心配をさせても気の毒だとおもうけれども、そういうことなら、なぜおれのところへいってよこさねえと、あとでいわれてもなるまいとおもって手紙をだしたんだよ……で、どうなの? お金のほうは?」
「どうも弱っちゃったなあ。おれもなんとかこせえようとおもったんだが、十両だけはできたんだけども、なんとかそれで承知しねえか?」
「さあ、二十両てんだから、十両じゃあねえ……だれだい? 障子の外で、ぐずぐずいわずにあけておはいりよ。お客さんたって心配な人がいるんじゃあない。うちの人だよ。半ちゃんだからこっちへおはいり。喜助どんかい? なんだい? 小さい声じゃあわからないよ。大きな声をおだし。え? 角さんがきたって? そうかい、そりゃあよかったねえ……ちょいと半ちゃん、角蔵というやつがきたんだそうだよ。これは在方《ざいかた》からくるやつで、じつのところをいうと、おまえさんのふところをいためたくないから、そいつに無心をいっておいたんだが、そいつがきやがったんだよ。きっといくらか持ってきたんだよ。喜助どん、どこの座敷だい? え? 六番? いやだねえ、筋《すじ》むこうじゃあないか。もうすこしはなれたところへいれてくれりゃあいいのにさ。いいよ、いまいくから……じゃあねえ、そいつがきたてえから、お金はきっと持ってきたにちがいないから、ちょいといってくるよ」
「うん、金がほしいとおもうところへそいつがくるなんてえのは、芝居でするようだなあ。早くいってきねえな」
「なにをいうんだよ。おまえさんは、すぐにちんちん(嫉妬)なんだからねえ……金をださせるんだから、こっちもすこしはあまいことをいわなくっちゃあならないじゃあないか……あとでおまえ怒ったりなんかしちゃあいやだよ。いいかい?」
「ああ、そんなこたあねえから、とにかく早くいってきねえ」
「じゃあね、ちょいとのあいだだから待っておくれ」
廊下へでますと、厚い草履をつっかけて、わざと足音をバターリ、バターリとさせて筋むかいの部屋へ……なにしろ相手をなめておりますから、はじめから高飛車にでて……
「角さん、きたのかい? なんだねえ、いま時分やってきて……気のきいた化けものはひっこむ時分だよ。ほんとうに……」
「へっへへへ、なにいってるだ。へへへへ、あんでもおらのつらあみさえすりゃああまったれやあがって……えへへへ……まあ、ちょくら此処《こけ》へこう、こけへこう」
「なんだい、にわとりだねえまるで、コケッコウだって……ほんとうにおまえさんぐらいたよりにならない人はないよ。わたしがなんべん手紙をだしたとおもってるんだよ」
「そりゃあ三本はおらがとこへとどいているだが、こんどのことというものはなみたいていのことでねえ。七ヵ村のもめごとがもちあがっただ。それをおさめるにもおらでなければなんねえ。ようやくはなしがついたとおもうと、あとは村の祭りだ。それについて、ばか囃子《ばやし》の小屋のかけかたも角さんが指図をしてくれなければわかんねえというでねえか。そもそもばか囃子ちゅうものは……」
「なにいってるんだよ。いまさらばか囃子の講釈なんぞ聞いたってしょうがないやね……いいんだよ。なにもとぼけなくったって……たんと浮気をしておあるきよ」
「ばかこけ。われをさしおいて浮気ができるかできねえか、かんげえてみるがええ」
「そんなことをいうだけに面《つら》がにくいんだよ。そんならなぜこ��あいだ東屋《あずまや》へあそびにいったんだい?」
「あんれまあ、おめえ知ってるか?」
「なんでもお見通しさ。いそがしい、いそがしいって、そんな浮気をするひまがあったって、あたしに手紙一本よこさないのはどういうわけなのさ?」
「うん、まあ……そりゃああんだあな……べつに浮気ちゅうわけじゃねえで……ありゃあ交際《つきあい》でいっただよ。一晩ぐれえは交際ならしかたなかんべえに……なにしろ上《かみ》の村の杢太左衛門がいっしょにいってくんろっちゅうで、そんで、おらもやだっちゅうわけにはいかねえでつきあうことになっただ。すると、若《わけ》え者頭《もんがしら》だけでいくべえでねえかちゅうことになって、おらと、杢太左衛門と、下新田《しもしんでん》の甚次郎兵衛と、それから寅八郎と、四人《よつたり》でいっただ。そのとき、おらの相手にでた女などというものは、どうしたって浮気のできねえような面《つら》で、われにみせたかった。長え面ったって、おらあ、ああだに長え面ちゅうのをみたことねえだ。上みて、まんなかあみて、下あみるうちに、上のほうをわすれちまうちゅう長え面だ。馬が紙くず籠をくわえて、そのさきへうなぎぶるさげて……」
「そんな長い顔があるもんかね。人をばかにしてるよ、この人は……ちょいと、ちょいと喜助どん、ここへきてごらん。この角さんてえ人は、ちょいとみたところは野暮《やぼ》にみえるだろう? ところが、それが野暮じゃあないんだよ。うわべは野暮にみせて、しんはいきなんだからね、うわべ野暮のしんいきてんだよ。だから女の子がうっちゃっておかないんだよ。ほんとうに女殺しだよ、この人は……あたしゃあなんの因果でこんな浮気な人に惚れたんだろう? くやしいよほんとうに……」
「おいおい、痛《いて》えでねえか、人の膝なんぞつねって……おいよせ、へへへへ……よせっちゅうに……へへへへ……若え衆がみてるっちゅうに、こっ恥《ぱず》かしいでねえか」
「へへへ……どうもお仲のおよろしいことで……」
「喜助、こまるなあ、われがそこにいては、すこしじゃまになることがあるだ。あっちへいってくんろ」
「どうもおそれいりました。たいへんに気のきかないことで……おじゃまになってはなんとやらでございますから、わたくしはごめんをこうむります。へえ、おあつらえのものも、もうちゃんと心得ておりますから……」
「喜助、そこをぴったりしめていけよ……おすみ、われはこまったもんだなあ。ふたりさしむけえのときはなにをいってもかまわねえが、喜助という他人がひとりおれば、口をきくにも気をつけねえではだめだ。おらはええ、おらはええが、われのつとめのじゃまになるべえとおもって心配ぶつだ」
「それだからねえ、おまえさんは、あたしのおもう半分でもないてんだよ。おまえさんのことは、あたしゃあかくしたことはないんだよ。おまえとあたしの浮名てえものは、この新宿じゅうで知らないものはないんだから……それをおまえさんがかくすなんて、ほんとうに水くさいよ。あたしがこんなに心配してやせたのが目にはいらないのかねえ」
「だれがやせた?」
「あたしがさ」
「なーに、この前《めえ》よりゃあちょっくら太ったな」
「あんなことをいってるよ、人がやせたといえば太ったって……ほんとうににくらしい……あたしは廊下でお百度ふんでるんだよ」
「いくらお百度をふんだっても、用があればこられねえ」
「おまえさんのためにお百度をふんでるんじゃあないよ。あたしのおっかさんがね、あすにも知れないという大病なんだよ」
「なんだと、かかさまが塩梅《あんべえ》がわりいだと? そらあおらあ知らなかった。たまげたな、われがかかさまなれば、おらがためにもかかさまだ。年期《ねん》があければ夫婦《ひいふ》になって、肥《こ》い桶《たご》の底を洗いあうという間柄《ええだがら》だ。たいせつなかかさまでねえか。医者さまにかけろ」
「おまえさんにいわれるまでもないよ。お医者さまにもみせたけれど、三人にみはなされてしまって、しまいのお医者さまのいうには、『おれがうけあってなおしてやるが、けれども高いくすりをもらなければとてもなおらない。それを前金でよこせ』とこういうんだが、そのお金があたしにはないだろう? それができないで、おっかさんにもしものことでもあったら親不孝になるから、どうしたらよかろうか、おまえさんがきたら相談しようとおもうのにきてくれず、あたしはもう心配しぬいていたんだよ」
「そうか、その金は、おらがだしてくれべえ」
「えっ、おまえさんがお金を? あの……お金をだしてくれるのかい? ありがたいね。そうすればほんとうにあたしは助かるんだから、どうかだしておくれよ」
「だすにゃあだすだが、金高はいくらだ?」
「たった二十両だよ」
「なんだと? たった二十両だと? あんまりたったでもねえだな。五、六両ならばどうにかなるべえが、二十両とは高《た��》えくすりでねえか。なんてえくすりを買うだ?」
「お医者さまのいうには、人参を飲ませればなおるというんで……」
「なに、にんじんだ? よし、そんならば、金ができなくっても現品《しなもの》を間にあわせてくれべえ。これから帰って、おらが村だけでたりなければ、近村をかけまわって十両分でも、十五両分でも、できるだけどんどんこっちへ送ってよこすべえ」
「お待ちよ。なにを送るの?」
「にんじんを……畑のをみんな抜いてよこすべえ」
「いやだよこの人は……あたしゃ八百屋の店びらきをするんじゃああるまいし、そんなものを送られてどうするのさ。人参といっても、朝鮮からくるんで、すこしばかりで二十両いるんだあね」
「そうか、にんじんを二十両なんて、なんになるべえかとおもっただ。しかし、こまっただなあ」
「まるっきりないの?」
「そりゃあまあ十五両だらばあるだ」
「じゃあ、それをおくれな」
「これはやれねえ。この金は、上《かみ》の村の辰松が馬を買うべえという約束になっていて……もっとも手付金《てつけ》はぶってあるので、これは残金だ。この金で馬をうけとってくれろとたのまれただ」
「いいじゃないか。手付金《てつけ》が打ってあるなら、そのお金をくれたって……そうして、うちへ帰ってお金を持って馬をひきにいけば、りくつはおなじことじゃあないか」
「そうはいかねえ。すぐと馬をひいて帰らねえと、辰松にいいわけができねえ」
「じゃあなにかい、馬をひいて帰れば、おっかさんは死んでもいいの? おまえさん、そんな不人情な人なの?」
「そういうわけではねえけんども、こまったなあ。馬をひいて帰れば、かかさまが病死というし、かかさまを助けべえとおもえば、馬をひいて帰ることができねえし……」
「そんなことをいって、おまえさん、おっかさんを殺すつもりなんだね、人殺し!」
「ばかなこといわねえもんだ。あんだ、人殺しだってやがら……おらあ、なにもそんなつもりは……」
「それじゃあ、あたしにお金をくれたっていいじゃないの」
「だって、おめえにこの銭をやれば、馬がうけとれねえで、おらあ辰松にあわす顔が……」
「もういい! わかったよ。もうお金はいらないよ。そのかわり、年期《ねん》があけたら夫婦になるという、あの約束は反故《ほご》にしてもらうからね、いいね?」
「そんなに怒ることはあんめえ」
「怒りたくもならあね、馬だ、馬だって、おっかさんよりも馬を大事にするような人と夫婦になんぞなりゃあ、どんなにひどい目にあうか……」
「おらあ、そんなつもりではねえだ。まあ、そう怒るでねえちゅうに……さあ、怒るでねえ……うん、そうだ。この十五両は、おめえにやんべえ。さあ持ってけ」
「いらないよ」
「いらねえって、銭を投げたりするもんでねえ……そんじゃまあ、おらがわるかったからあやまるで、あやまるから持ってけや。それ、あやまるから持ってけちゅうに……」
「おまえさんにあやまらしたり、お金をもらったりするような、そんなはたらきのある女じゃあないけれど、おっかさんは病気だし、お金はできないし、なにもかもうまくいかなくて、むしゃくしゃするもんだから、それでおまえさんにあたりちらしたんだけども、じゃあ、このお金を、すこしのあいだ貸しておくれよ」
「そんな、貸すの、貸さねえのって水くせえことをいうもんでねえ。年期《ねん》があけたら夫婦《ひいふ》になんべえちゅう間柄《ええだがら》でねえけえ」
「そうだったねえ。じゃあ、すまないけど、このお金は遠慮なく借りておくけどもね……つかいの者にちょいとわたしてくるから……」
「うん、早えほうがええ。はやくわたしてこうよ」
「じゃあそうさせてもらうよ。すぐだから、待ってておくれよ」
角蔵を座敷へおいて廊下へでますと、そっともとの部屋へもどってまいりました。
「ほんとにいやだよ、半ちゃん、あんなとこからのぞいたりして……あたしゃ気がさしてはなしができないじゃないか」
「かんにんしてくんねえ。おれものぞいちゃあわりいとおもったんだが、どんなやつか、まだみたことがねえから、ちょいと障子の穴からのぞいてみたけども、どうもたいへんなつらしてやがるな。鼻がまともに上へむいてるから、たばこをのむと煙がまっすぐ上へあがっていきゃあがる。どうもあきれたもんだ。それになんだい、年期《ねん》があけたらひいふになるってやがら……にんじんを二十両だけ馬に積んで送ってよこすって、まぬけな野郎じゃあねえか。しかし、おめえはてえした腕だなあ、あいつと肥《こ》い桶《たご》の底を洗いあうと約束するところなんざあ……」
「いやだよ。そんなことまで聞いてるんだもの……あんなことでもいわなければ金を持ってきやあしないやね。だから、つとめはいやだというんだ。察しておくれよ……それはそうと、おねがいだから、五両だけだしておくれ」
「だって、あの野郎が十五両持ってきたから、それでいいじゃあねえのか?」
「だけども、おやじが二十両というんだから、五両たりなけりゃあ、はなしがまとまりゃあしないよ。五両だしておくれな」
「だけどもよう、じつのところをいうと、おれは、この銭がねえとこまるんだ。だから、きょうのところは、その十五両でなんとかはなしをつけてくれ」
「あたしもねえ、なんとかおやじと縁を切っちまいたいんだからさ。どうしても二十両わたしてしまいたいんだよ。ねえ、おねがいだからだしとくれな。ねえ、だしとくれってのに……だめ? どうしても?」
「いや、どうしてもってえわけじゃあねえけどもよう、おれもこの銭がちょいとばかり入り用だもんだから……」
「そうかい、やっぱりだめかい? ふーん……あーあ、あたしゃやっぱり生涯あのおやじのために苦労するようになっているんだねえ……もういいよ」
「なんだなあ、おめえ、そんなにすねるこたあねえじゃあねえか」
「べつにすねてるわけじゃあないけどもさ、あんなおやじにいつまでもつきまとわれていたら、おまえさんと夫婦になったって、どうせうまくなんかいきっこないとおもうから、それでたのんでるんじゃあないか……だからいいよ。あたしさえいつまででも苦労すりゃあいいんだから、もういらないよ」
「なんだなあ、そんな厭《や》なことをいって……じゃあ、いいや、いいからこれを持っていきねえ」
「いいよ、もういらないよ」
「なに? いらねえ? なにいってるんだな。せっかくだしたんだから持ってったらいいじゃあねえか……なあ、だししぶったのは、たしかにおれがわるかった。だから、あやまるから持ってけよ。なあ、おれがあやまるから……」
「なにもおまえさんにあやまらしたり、お金をもらったりするような、そんなはたらきのある女じゃあないけどもさ、じゃあ、すまないけど、当分貸しておくれ」
「そんな、貸すの、貸さねえのって水くせえ……あ、ちょっと待ちな、それからここに別に二両あるから、こいつをおやじにわたして、なにか食って帰れっていってやれ……なーに、いいってことよ。どうせはんぱになっちまった銭なんだから……」
「まあ、すまないねえ。そうしてやってくれればほんとにありがたいよ……じゃあね、これをわたして早く帰しちまうから……」
「ああ……すぐ帰ってきな」
「じゃあ、ちょいといってくるよ」
おすみは二十二両をふところにして座敷をでまして、裏|梯子《ばしご》をおりて廊下づたいに表梯子をあがってまいりますと、表座敷に最前から待っている人がございます。
としのころは三十二、三、色のあさ黒い、目のぎょろりとした鼻すじのつーんと通った、にがみばしったいい男で……目がわるいとみえて、紅絹《もみ》のきれをだして、ときどき目をおさえております。
「ちょいとちょいとあの子や、たばこを持ってきておくれ。きせるはわたしが持っているから……あっちへとりにいっちゃあいけないよ。どこかで借りてきておくれ。たのむよ……ちょいと芳さん、待たせてすまなかったねえ。ばかにおそくなってしまって、さぞ怒ってやしないかと、そればかり心配をしていたんだよ」
「ああ、おすみか。いや、いくらなんだって腹を立つなんてことがあるもんか。おめえんとこへとんだ無理をいってすまねえとおもって……」
「いやなことをいうじゃあないか。無理をいうもいわないもありゃあしない。あたりまえのはなしだあね。けどねえ、あたしも気をもんだんだよ。お金がなかなかでき��いもんだから……やっとのこと、いま、まとまってねえ、こしらえてきたんだよ。それからべつに二両あるからね、おまえさんも滋養《じよう》になるものでも食べて、元気になっておくれよ」
「ありがとうよ。ほんとうにすまねえ。おかげでおらあ目が助かるんだ」
「なにいってるんだよ。夫婦の仲じゃあないか。水くさいことをおいいでないよ」
「いや、なんの仲でも銭金《ぜにかね》は他人というぜ、まあ、おめえのおかげでおれもほんとうに助かる。あらためて礼をいうよ」
「そりゃあいいけども、目のほうはどうなの? ちょいとこっちをむいてごらんよ……おかしいねえ。みたところはなんともないようだけどもねえ」
「おもてからみるとなんでもないようにみえるだろう? 医者のいうには、こういうのがいちばん質《たち》がわるいんだそうだ。おもてのわるくなってるほうが、かえって療治しやすい。へたをするとつぶれると、こういうんだ」
「へーえ、そうかねえ……で、なんてえ目なの?」
「うん……その……な……内傷眼《ないしようがん》とかいうんだそうだ」
「内傷眼? ……聞いたことがないけど、なおるのかねえ?」
「医者のいうには、真珠というくすりをつけると、たしかになおると、うけあってくれたんだ。おめえのおかげで銭はできたし、なんともありがてえ。じゃあ、これを持って、おれはさっそく医者へいってくるから……」
「え? すぐに帰っちまうの? いいじゃあないのさあ。今夜は泊まっておいでな」
「いや、それがいけねえんだ。医者のいうには、女のそばへ寄ってもいけねえというんだ」
「だって、あたしもいろいろはなしがあるんだよ。あれもはなしたい、これもはなしたいとおもって、お腹の中ははなしで一ぱいになっているんだから、泊まっていっておくれよ」
「おれもいろいろはなしはあるけども、なにしろこの目は一刻《いつとき》をあらそうてんだから、すぐに医者にやってくれ」
「そんなことをいわずにねえ、ちょいと泊まってっとくれよ。おねがいだからさあ」
「そんな無理なことをいうなよ。今日んところは、まあ帰してくれ」
「だってさ、せっかくお金をこしらえたのに……ねえ、どうしても帰るの? ……金ができりゃあ、持ってすぐに帰っちまうなんて……じゃあ、あたしそのお金あげないよ。かえしておくれ」
「じゃあなにかい、泊まっていかなけりゃあくれねえってのかい? ……ふーん、そうかい……じゃあ、せっかくだからおけえし申しやしょう。どうもおじゃまさまでござんしたね」
「ちょいと、ちょいと、芳さん、どうしたの? いきなり立ちあがったりして……怒ったの?」
「怒りたくもならあな。だって、そうじゃあねえか。おめえもあんまりわけがわからなすぎらあ。よしんば、おれが泊まっていくといっても、早く医者へいっておくれというのがあたりめえじゃあねえか。それをおれが病気をなおすんだから帰るといってるのに、なんだ、泊まっていかなきゃあ銭はやらねえとは?」
「そんなつもりでいったんじゃあないよ。ねえ、じょうだんだから……」
「なにいってやんでえ。じょうだんにもほどがあらあ」
「ねえ、そんなことをいわないでさあ、かんにんしておくれよ。あたしがわるかったんだから……ねえ、だから、このお金はとっておいとくれよ」
「いや、いらねえ。もう銭なんかいるもんか。目なんぞどうなったってかまうこたあねえ」
「そんなことをいわないでさあ、あたしがわるいからこの通りあやまるから、そんなに怒らないでさあ、ねえ、あやまるからお金を持ってっとくれよ」
「おめえにあやまらしたり、金をもらったりするような、そんなはたらきのある男じゃあねえが、むしゃくしゃしてしょうがねえんだ」
「かんにんしておくれよ。あたしがさからったのがわるかったんだから……じゃあね、お医者さまへすぐにおいでよ。ちょいとお待ち、いま、だれかに送らせるから……ちょいと、喜助どん、うちの人がね、帰るんだから、ちょいと手をひいてあげておくれよ。目がわるいんだから、気をつけてやっとくれ。それからね、これはうちの人から、まあ、たばこでも買っとくれな。いいからとっておいて……」
「そりゃあどうもありがとうございます。では遠慮なくいただきます……へえ、お手をとります。へえへえ、おあぶのうございます。お目がおわるいそうで、いけませんですなあ」
「目のわりいてえなあ不自由なもんで……手数をかけてすまねえなあ……」
「芳さん、あたしが心配してるんだからね、手紙ででもいいから、すぐに知らしとくれよ、いいかい?」
「ああ、そうするよ」
「ええ、ここはくぐり戸でございますから、おつむりをどうぞお気をおつけになって……お大事にどうぞ……ごめんくださいまし」
ガラガラガラッとくぐり戸をしめます。おすみは、惚れた男のことで心配でございますから、梯子《はしご》段をかけあがって、手すりのところから、男のうしろ姿をのびあがってみております。
男は、杖をついて四、五軒むこうへいきますと、わきから駕籠屋がつーっとでてまいりまして……
「へえ、お待ちしておりました。ご用ずみでございますか?」
「大きな声だな。しずかにしねえ。だいぶ手間がとれた。おそくなったから、早くやってくんねえ」
「へえ、承知しました。さあ、相棒、いくぜ!」
駕籠は芳次郎を乗せていってしまいます。
「あらっ、いやだよ。あんなとこへ駕籠屋を待たしておいてどうしたんだろう? ……ああ、駕籠を乗りつけては、金の無心をするのに気がひけるっていうんだね。それで駕籠をあんなところに待たしといて、杖にすがってきたんだ。気の毒だねえ。なにもそんなに気がねをしないでもいいのに……」
たばこをわすれたので、ふたたびもとの座敷へもどって、おすみがふとみると、芳次郎が坐っていたところに手紙がおちております。
「おや、この手紙はなんだろう? こまるねえ。目がみえないもんだからおとしていったんだよ。いまからあとを追っかけても間にあうまい。なんの手紙だろう? ……ええ、芳次郎さままいる、小筆《こふで》より……あらいやだ、こりゃあ女の手紙だよ。まあなんだろうねえ、女のそばへよってもいけないてえのにこんな手紙を持ってあるいてる。これだから、あたしゃ心配でならない。なかをみてやろう。なんだかたいそう長い手紙のようだね……ええ、ひと筆しめしまいらせ候。先夜はゆるゆるとお目もじもいたし、やまやまうれしく存じまいらせ……あれっ、この女に逢っているんだよ。いやだねえ、だから男ってえものは油断ができないよ……やまやまうれしく存じまいらせ候。その折りおはなし申し候通り、わたくし兄の欲心より田舎の大尽《だいじん》へ妾にゆけと申され、いやなれば五十両よこせとの難題をいいかけられ、おんまえさまにおわかれ申すもしみじみ悲しく、親方にたのみ三十両はこしらえ候えども、あと金二十両にさしつかえ、おんまえさまに申せしところ、新宿の女郎にておすみとやらを……あらっ、あたしの名がでているよ。なんだろう? ……おすみとやらを眼病といつわり、二十両おこしらえ候とのこと……えっ、なんだい? 目がわるいんじゃあないんだよ。この女にやるんだ。あきれるじゃあないか。どうもおもてからみてなんともないようだっていったら、内傷(内緒《ないしよ》)眼だなんていって……くやしいねえ、ほんとに……おすみとやらを眼病といつわり、二十両おこしらえ候とのこと、それより義理ずくとなり、そのおすみとやらをおかみさんにお持ちなされ候かと、それのみ心にかかり候。わたくしとてもたよりすくなき身ゆえ、いついつまでもお見捨てなきよう、神かけ念じあげ候。申しあげたきことはかずかず御座候えども、いずれこのほどお目もじの上申しあげ候。まずはあらあらめでたく、かしこ……なにがめでたいんだい、ちくしょうめ、まさか芳さんがこんな人だとは……」
こちらは半ちゃん、おすみがなかなか帰ってこないので、いらいらしながら待っております。
「ああ、どうしたんだなあ、たいそうおそいじゃあねえか。金をわたしたらさっさと帰ってきやがればいいんだ。いつまでくだらねえことをぐずぐずいってやがるんだろう? どうだい、まあ、おやじの前へいくってえのに、あわてやがって、たばこ箱へつまずいて、ころがしていきゃあがった。こまったもんだぜ。これじゃあ年期《ねん》があけて夫婦になったって案じられるぜ。なんだろう? たばこ箱からはみだしてやがる。あれっ、手紙がでてきやがった。なんだと、おすみさまへ、芳じるしより……ふん、いやに色男ぶってやがらあ、芳じるしだってやがる。へへへへ、ここに半ちゃんてえいい人があるてえことを知らねえんだからなあ。やっぱりこの里《さと》はこれでもつんだ。こういうまぬけなうぬぼれ野郎がきやがるから……どれ、読んでやろうじゃあねえか……ええ、ちょっと申しあげ候、いつもいつもご全盛にお暮らしなされ、かげながらおよろこび申し候。それにひきかえ、わたくしこと、このほどより眼病にてうち伏し申し候……ああ、なるほどねえ、目がわるくっていまいかれねえかなんか、ことわりの手紙をよこしたんだ。女郎のところへことわりの手紙をよこすなんて、またごていねいな野郎がいたもんだ……医者の申すには、真珠とやらのくすりをつけぬ上は目もつぶれ候とのことにて、その価二十両……たいそう高えくすりだなあ……その価二十両と申し候えども、知っての通りふしあわせにて、なかなか金子才覚でき申さず、なれども眼病にはかえがたく、またまたつとめのなかへ無理を申しあげ候ところ、なじみ客にて日向屋《ひゆうがや》の半七……あれっ、なんだ、おれの名前がでてきやがらあ……ええ、日向屋の半七をだまし、おこしらえくだされ候よし……あれっ、ちくしょうめ! おやじとの縁切りだなんてぬかしゃあがって……だれだ、障子のそとに立っていやあがるのは? おすみか? こっちへへえれ!」
「しずかにしておくれよ。はいれっていわないでもはいるよ。ほんとうに情夫《いいひと》ぶって、ぽんぽんいっておくれでないよ。なんだい、ひとのたばこ箱なんかほうりだして……大事なものがはいってんだからね」
「で、で、大事《でえじ》なもんのへえってるとこをあけてわるかったな。おうおう、なにつっ立ってるんだ。そこへ坐んねえ。坐れってんだ。そりゃあ女郎は人をだますのが商売かも知れねえが、だますにもだまさねえにもほどがあるもんだ。ふん、おめえなんざあ、大《てえ》した女郎だ。いい女郎だよ」
「なにいってるんだい。人間はね、虫のいどころのいいときばかりはないんだよ。あたしゃあ、いま、むしゃくしゃしてるんだから……」
「なにいってやんでえ。こっちのほうがよっぽどむしゃくしゃしてらあ。ふん、ふざけやあがって……なにがおやじだ。いいおやじだ。おやじのところへたんといってろい。ふん、色男のあることはちゃーんと知ってるんだ」
「色女のあることは知ってるんだい」
「なにいってやんでえ。おかげで七両かたられてらあ」
「こっちは二十両かたられてらあ」
「なんでえ、人のまねばかりしゃあがって……ふん、その上、目がわるいまで聞かされりゃあたくさんだ」
「目がわるいとおもったら、わるくもなんともないんだ」
「なにをぬかしゃあがる。てめえなんぞこうしてくれらあ!」
「なにをするんだい。よくもおぶちだね。あたしをぶって怪我でもさせりゃあ、おまえさんだってただはすまないんだよ。年期のあるあいだは親方のからだなんだから……」
「なにを、こんちくしょうめ!」
「ちくしょう、またぶったね。殺すともどうとも勝手におし」
「殺さなくってどうするもんか」
「殺せ、殺せ、殺しゃあがれ!」
「だれかいねえけえ、おい、だれかいねえけえ?」
「へーい」
「おい、ちょっくらこう、ちょっくらこけへこう」
「へえへえ」
「喜助でねえか」
「へえ、お呼びでございますか?」
「まあ、ここへへえれ」
「へえ」
「いま、むこうの座敷でたたかれて泣いているのはおすみのようだな」
「へえ、たいへんなさわぎをお耳にいれまして、まことにおそれいります」
「おそれいるの、いらねえのって……いま、おれがここで聞いていれば、色男に金をもらったとか、もらわねえとかいって、えかくはたかれているようだが、われ、むこうへいってとめてやれ。『あれは色でも恋でもごぜえません。かかさまが塩梅《あんべえ》がわりいちゅうから十五両めぐんでやりやした』って、早くいってとめてやれ」
「へえ……では、さっそく……」
「ああ、ちょっくら待て……いや、そういったら、おらが情夫《いろ》だということがあらわれやしねえか?」
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4月12日 金【食】
渡辺製菓さんより
「秋保 福おみそ」のまころん
新入荷いたしました。
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「秋保 福おみそ」とは
名取川の清流で育まれた秋保産 大豆/ミヤギシロメ、
環境保全米「清流育ち秋保米」を使用した
純秋保産の本場仙台味噌です。
そのお味噌を仙台銘菓まころんに練り込み、
芳醇なお味噌の深い味わいと、
落花生の香ばしさが癖になる、
新しいまころんが生まれました。
取り扱いは
秋保温泉旅館売店・カフェ10軒ほどと、
街中の百貨店/三越さん藤崎さん、と当店。
味噌と落花生
個人的には一番好きなお味でした。
是非ご賞味くださいませ。
原材料:落花生、砂糖、鶏卵、味噌、米、食塩、膨張剤
内容量:115g
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花見だんご 塩芳軒#和菓子 #こなし
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★ Jan. 26, 2018
Shioyoshi-ken, Kyoto: konohana-kinton
——–
‘Kinton’-type Japanese cake stuffed with chunky-type sweet bean paste 'tsubu-an’, probably depicting 'ume (Japanese apricot)’.
——–
The phrase ‘kono-hana (lit. this-blossom)’ refers to 'ume’, coming from a Japanese 'waka’ poem appearing in one of the two prefaces of the 'Kokin Wakashu’*.
————
* The 'Kokin Wakashu [Collection of Japanese Poems of Ancient and Modern Times]’ is an anthology of Japanese 'waka’ poems, dating back to the 10th century.
——–
#wagashi #japanesesweets #sweets #tea #teaceremony #chanoyu #foodie #dessert #food #matcha #sweettooth #japan #japanese #matcha #kyoto #京都 #スイーツ #和スイーツ #お菓子作り #お茶の時間 #お菓子 #和菓子 #抹茶 #お茶 #茶道 #塩芳軒 #此の花きんとん
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塩芳軒|干支和三盆『酉歳の春』Shioyoshiken|Eto-Wasanbon『Toridoshi no Haru』
credit:wagashibuyer
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題詠百首+十首
001:入
入相の鐘なりわたる室生寺のもみぢのにしき忘れかねつも
002:普
あめつちに普くひかり満つるあさ春告鳥の初音はつかに
003:共
明けぬればもはや往にけり共寝せしふしどのなかのあはき残り香
004:のどか
のどかさも中ぐらゐなり桜樹の伐り倒されし曠野の春は
005:壊
恋しければ壊るるほどにだきしめぬ春のわかれの鷺沼の駅
006:統
星月を統ぶるお方はみえねども夜夜にうるはし古典力学
007:アウト
労働を忌みつつ生きてこの日ごろアウトノミアの書にしたしめり
008:噂
噂たつことをおそれて裏門に待ちあはす子の伏し目がちなる
009:伊
紀伊のくにみなべのうみの浜千鳥跡ものこさず世を遁ればや
010:三角
大三角西にかたぶくひさかたの空の冬にも春きたるらし
011:億
こころひとつからだのからをぬぎすててのがれゆきたし十万億土
012:デマ
百重なす薔薇に埋もれて死なまほしアルマ=タデマの幼帝のごと
013:創
ブーイングに笑みてこたふるクセナキス頬の銃創かげきざみつつ
014:膝
をさなごを膝まくらして耳掃除するつかのまに寝入りたりけり
015:挨拶
いま死にし王よみがへり仇敵と手とり挨拶幕切れのあと
016:捨
身を捨つるほどの祖国はなけれどもなど惜しまめや妹がためには
017:かつて
夢遊してかつての家をたづぬればあとかたもなく枯野となりぬ
018:苛
苛政避け虎に喰はれしいにしへのもろこしびとのあはれなるかな
019:駒
宵闇の観覧車より見はるかす生駒のやまの藍にしづもる
020:潜
しだれさく木香薔薇を潜るときわがころもでにはなぶさひとつ
021:祭り
蝶々のかたちにむすぶ帯ゆれて祭り太鼓にいそぐをとめご
022:往
須磨の浦敦盛塚にきてみればただ海のみぞ往時のよすが
023:感
はかなくも恋ひわたりけり感熱紙うすくかすれて消なば消ぬがに
024:渦
渦をなす銀河のなかの星屑のひとつに生きて湯豆腐を食ぶ
025:いささか
わが宿のいささ群竹いささかもきみをはなれてなど生きめやも
026:干
干る間なく恋ひやわたらむ寄るなみにしとどぬれつつ逢ふよしをなみ
027:椿
はなびらのすがたかたちはそのままに落ち椿てふ絢爛たる死
028:加
春浅き加太の海辺にうかぶ雛いづちゆくらむ風のまにまに
029:股
花のごと裳裾ひろがる踊り子のうつくしきかな大股開き
030:茄子
オリーブのあぶらのごときかなしみに茄子をひたせばにほひたつ紺
031:知
香をたき花々撒きて待たなましきみが通ひ路わが知らませば
032:遮
ベルの鳴りドアの遮る別れ際加速とともに遠ざかる君
033:柱
夕かげに蚊柱ひかるかまくらのうら山伝ひともにあゆみき
034:姑
年の瀬の厨に出汁の香のみちて慈姑の煮ゆるときのしづけさ
035:厚
かたちなきものにかたちをあたへつつけさも作りぬ厚焼き卵
036:甲斐
住之江のまつ甲斐のなきひとさへも待たるるここちする侘び寝かな
037:難
難波江の蘆のわかばのしなやかにほそき御身を恋ひつつぞ寝る
038:市
ひさかたのひかりをあびて市ケ谷のお堀のさくらいまさかりなり
039:ケチャップ
第一声おなかすいたといふ子らにケチャップライスの半ドンの昼
040:敬
敬語もてはなしかけくる子と歩く春の夕べの距離のたのしも
041:症
後天性恋愛依存症候群ねてもさめてもきみをしぞ思ふ
042:うたかた
わたつみの泡より生れしヴィーナスををろがむゆゑやうたかたの恋
043:定
夕星のゆれ定まりて西の空あをよりあゐにうつりゆく色
044:消しゴム
鉛筆と消しゴム定規たしかめて早やも寝にけり受験のむすめ
045:蛸
来ぬひとをまつほの浦に凧のごと足ひろげられ蛸の干さるる
046:比
冬比叡ふりさけみれば横雲の峰にかかりぬ雪ふるらしも
047:覇
覇者の墓敗者の墓にとなりあふ墓地に降る雨雪にかはりぬ
048:透
夏されば着替ふるきみの半そでの透きとほるまでしろき二の腕
049:スマホ
スマホテル月かげあかき須磨の宿いさり火の群れはるかかなたに
050:革
つり革にとどく背丈になりし子の横顔みればいまだをさなき
051:曇
曇りのち晴れのち曇り永き日を籠いつぱいにつくしつみつつ
052:路
思ひつつ寝れども逢はずぬばたまの闇の夢路にまどふこのごろ
053:隊
磔の腕に間合ひをはかりつつ少年白き体操隊形
054:本音
本音つゆもらさぬ吾子と経巡りぬ南禅寺から法然院を
055:様
軒端にはてるてる坊主縊られぬしのぶの里のしぐれ模様に
056:釣
わが胸の底ひによどむ鬱憂をくみあぐるべき釣瓶もがもな
057:おかえり
今日かぎり家を出る子よ幸あれよ辛いときにはいつでもおかえり
058:核
真桑うりきうりにがうりからすうり瓜核顔のきみに恋ひにき
059:埃
春埃立つ中庭に卒業の子らのつどひて最後の写真
060:レース
わたつみは碧瑠璃の衣寄る波はレースの裳裾いざ唇を君
061:虎
歌もひとも遠しと思ふこの日ごろ李徴のごとく虎にならまし
062:試合
ラケットを楯と背負ひて乙女子の試合へむかふあかときやみを
063:両
マフラーをふはふは巻きし乙女子のひくくつぶやく「両思ひ巻き」
064:漢
吾妹子に恋ふればくるし銀漢の銀微塵ふる夜半のねざめを
065:皺
魂の皺ひとつづつのばしつつアイロンかけるあさのしづけさ
066:郷
落ち穂拾ふルツの背まるくかがまりぬ異郷てふ名のあかき残照
067:きわめて
栄華きわめてやがてむなしきソロモンの邸の前の菫一輪
068:索
ゆきやなぎ咲ききはまりて花序重し思索のはての春の夕闇
069:倫
ニコマコス倫理学読むはつなつのつつじの花にみつばちの飛ぶ
070:徹
すみれほど小さきひとによみがへる夢見て復活徹夜祭の夜
071:バッハ
経と緯追ひつ追はれつ綾なして弾けども飽かずバッハの風雅
072:旬
わかれきて旬日経れどかきやりしその黒髪を忘らえなくに
073:拗
ゴルゴタの道行き険し半音の執拗低音ゆきなやみつつ
074:副
Toujours は優しき副詞去りぎはの暮色のなかに母音たゆたふ
075:ひたむき
ぬばたまの黒髪の子のひたむきに墨濃くかきし二文字「質実」
076:殿
玲瓏と銀三十枚神殿に散りまがひたり逮捕の夜に
077:縛
みことばは肉体となり縛せられ十字架上の昼の闇黒
078:邪魔
「パジャマ邪魔」言ひつつきみのひきはがすふたりを隔てるいちまいの膜
079:冒
花冷えに耳たぶ白く冴ゆる夜マタイ受難曲冒頭合��
080:ラジオ
霜冴ゆる夜���しじまに不明者の名前を告ぐるラジオ聴きをり
081:徐
緩徐調に愛は歌へよさくらばな散らまく惜しむ春のゆふべを
082:派
タレ塩半々焼き鳥たのむ春の宵タレ派のきみと塩派のわれと
083:ゆらゆら
ゆらゆらと燃ゆる蠟燭ひといきにふきけす吾子のいのちたしかに
084:盟
いにしへの盟神探湯のことかたりあふ秋のまひるの甘樫丘
085:ボール
飛びうせしテニスボールを追ひかけてばつた群れとぶくさむらのなか
086:火
寝すごしてさくらふぶきのキャンパスの火曜一限ラシーヌ講読
087:妄
迷妄も雑念もさもあらばあれ祈祷書とぢて風に吹かるる
088:聖
とこしへの愛を信ぜぬわが身にも薔薇咲きにほふ聖五月かな
089:切符
大人用切符はじめて買ふ吾子の乙女さびたり十三歳
090:踏
閨に踏む煎り豆ひとつ拾ひけり春立つあさの白き光に
091:厄
災厄ののちの瓦礫にエグモント序曲を振れりチェリビダッケは
092:モデル
薔薇風呂にモデル泛べて今宵もやきみゑがくらむピンク・オフィーリア
093:癖
抱き癖のつくまで抱きしいとし子のはしばみ色のひとみ思ほゆ
094:訳
半過去を訳しなづみて夕まぐれ八重のさくらの咲き重りつつ
095:養
芳養の駅過ぐれば空も海も青かなたに見ゆる白き航跡
096:まこと
「まこととは」問へど答へずヴェロニカに顔をふかるるイエスなりけれ
097:枠
ひざまづく告解室のくらがりの木枠の窓に神はいまさず
098:粒
きぬぎぬの閨のひまよりチンダルの淡きひかりの粒子ふりつつ
099:誉
梅錦西の誉に高清水だしまきたまごとともに春宵
100:尽
身を尽くすほどの恋など知らぬまにわがみよにふるフルートふるる
101:轢
ひとすぢの血痕かすか冬道に忘られゆくや小さき轢死
102:鼎
魏蜀呉鼎立の図をさらさらとかきつつきみは孔明かたる
103:スパナ
しろがねのスパナのひかる逆光の自転車屋の自転車修理
104:欅
雨はれて欅の樹々のさみどりの芽吹きの春となりにけるかも
105:饒
水俣病以前知らねど不知火の豊饒なりし海をしぞおもふ
106:鰆
テーブルをたたいてせがむ子の口にほぐし与ふる鰆の切り身
107:蠱惑
半なまにとろりしつとり焼きあがるガトーショコラの甘美の蠱惑
108:嚢
みどりごの小さき陰嚢つつみもてやさしくあらふ沐浴の昼
109:而
夏・日暮れ・くちなしの花・遠花火 われの愛する形而下のもの
110:戴
春の野に一日あそびしをとめらは花かんむりを戴きかへる
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末富@五条/総合和菓子(さくら餅・団子)/☆☆☆☆
2017年4月訪問(初)
こちらも京都在住の方から教えて頂いた和菓子のお店に伺いました。
お菓子もさることながら、何やら包装も綺麗だとか…
その辺りも含め、春のお菓子を頂きましょう!
最寄駅は五条駅ですが、烏丸駅からでも歩いて行ける大通りから少し中に入ったところにあります。
看板が小さく最初は通り過ぎてしまいましたが、白い外壁が綺麗なお店。
若干入りづらい…
ですが、気にせず入りましょう。
店内は空間を贅沢に使った販売スペースと、カウンターの向こうに包装等の作業場があり、広々。
ショーケースは写真撮影不可でしたが、ご進物等のお菓子も多々ありました。
(さくらの羊羹が美味しそうだった…しかし大サイズのみ…)
季節・月によって替わる生菓子はこの日は5種。
きんとんや薯蕷のお菓子、求肥のお菓子にも惹かれましたが、
桜の季節ですから「花見団子、¥540」と、桜の葉が手に入る時期限定の「桜餅、¥432」を購入です。(なかなかの価格設定…)
移動して頂く前に、こちらが末富の包装。
扇のマークに鮮やかな水色(通称「末富ブルー」)が綺麗な袋そして包み紙。
京都でこの袋はブランドとして通じるんだそうな。
パッと見で「末富だ!」と認識されるブランドは大きな財産ですよね。
そして、美しく可愛らしい包装は開ける時にワクワクします。(パッケージって大事)
そして、これがそんな末富の「桜餅」と「花見団子」!
「桜餅」は桜の葉2枚に挟まれており、薄めのピンク色。
そして目で見てわかる程に、道明寺の粒が細かい!
食べてみると、
見た目通りにきめ細かい道明寺が口の中でほぐれてとても軽やかな舌触り。
味わい自体は薄めですが、
甘さ控えめのこしあんと、塩分控えめの桜の葉と完璧なバランスです。
こんなに軽やかな桜餅は初めてかも。美味しい!
「花見団子」はコナシ製。
「こなし」は知りませんでしたが、調べると「練りきり」のようで異なるものだそうです。
大きな違いとして、こし餡に小麦粉や薯蕷を入れたものを「蒸し」たものが「こなし」。
「こなし」を上手にこなして、一人前の和菓子職人だとも言われるらしい。
すごいぞ、「こなし」。
食べてみると、
練りきりよりもしっかりした甘い生地となっており、一口一口噛みしめられる団子です。
(餅ではないので、もちもちはしません)
桜(ピンク)はそんなに風味を感じなかったかな?
小豆(黒)は小豆の旨味がしっかり伝わります。
一番気に入ったのは蓬(緑)。
もうとても蓬!味わいが物凄く広がる素敵な団子。
蓬を使ったお菓子はこれくらい強烈に蓬を感じたいですね!蓬美味!
「花より」とか、「だんごより」とか、言わずに、花も団子も楽しめば良いと思いますね。
桜餅・花���団子が楽しめるのはあと少しかもしれませんが、
また違う季節のお菓子も楽しみな和菓子屋さんでした。
お値段ちょっとお高めですが、お土産等にも是非「末富ブルー」を!
(総合和菓子ならコチラもお薦め!)
塩芳軒@今出川/総合和菓子/☆☆☆☆☆
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■HP:
http://www.kyoto-suetomi.com/
■食べログ:
https://tabelog.com/kyoto/A2601/A260201/26003472/
■営業時間: 9:00~17:00
■定休日: 日曜日・祝日
■予約: 075-351-0808
(※訪問時の情報)
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■個人的オススメ度: ☆☆☆☆
■Instagramやっています: https://www.instagram.com/gunjou_ama_biyori/
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今年最初の餡子は、 年末に塩芳軒で買った子たち。 美味しい。優しい。美しい。 餡子食べてると、そろそろ愛媛のアレ🌀や、山口のとぅるんとした外郎も食べたくなって来る。 #餡子 は #塩芳軒 #花びら餅 お皿は #卓袱堂 https://instagr.am/p/CYNalVtg_4d/
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