Tumgik
#祖光院_木漏れ日
kennak · 7 months
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解散命令請求を受け、自民の茂木敏充幹事長は13日、党本部で「党として関係は一切持たないという方針を決定し、順守を求めてきた。今後も徹底していきたい」と記者団に強調した。首相も12日に「関係を遮断しているものと認識している」と説明した。  自民と教団の蜜月関係は昨年7月の安倍晋三元首相の銃撃事件を機に表面化し、内閣支持率が急落した。党は所属議員を対象に点検を実施し、同年9月に当時の所属国会議員379人中180人に何らかの接点があったと発表した。  党行動指針も改定し、社会問題が懸念される団体との関わりを「厳に慎む」と明記。昨年の臨時国会で不当寄付勧誘防止法(被害者救済法)成立を主導するなど関係断絶のアピールに躍起になってきた。  ただ、実効性は不透明だ。党が点検結果を受けて追跡調査を行う予定はなく、教団との関係を断つとする誓約書を提出した所属議員も一部に限られる。密接な関係が指摘された細田博之衆院議長は、議長で党籍を離脱しているとの理由で調査対象外だった。  細田氏は、2019年に教団関連行事に出席し「会の内容を安倍総理にも報告したい」とあいさつした動画が明るみに出た。13日の会見では、この動画に関し「(安倍氏と教団の)関係、歴史が長いと承知していたからリップサービスで言った」と主張した。  昨夏の参院選で教団関連施設を訪問した萩生田光一政調会長は、解散請求を受け「コンプライアンス順守に努める」と書面でコメントしたが、教団との関係断絶をどう徹底していくかは言及しなかった。自民関係者からは「誰が教団と関係を持っていたか、もう覚えている人はいない」と楽観視する声さえ漏れる。  教団と自民の深い関係は1970年代ごろにさかのぼり、安倍氏の祖父岸信介元首相らも関わりがあった。自民の閣僚経験者はこうした長年のつながりを念頭に「教団の支援がないと当選できない議員もいる」と、関係遮断の難しさを指摘する。官邸関係者は「裏で今も付き合いのある議員は多くいる。これからも付き合いは続く」との見方を示した。
自民、旧統一教会と決別不透明 解散命令請求 追跡調査なく甘い対応(北海道新聞) - Yahoo!ニュース
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遺骨、酸初、初夏、夏至、我博、臨床、先客、那波区、東海、雲海、雲水、初楽、飼養、規律、滅法、頑丈、撃破化、内板、飼養、機咲州、分癖、蛾妙、頌栄、丼爆発、濃彩、恋欠、名瀬、徒歩機、歌詞役、素市、癌滅、元凶、願文、文座、同發、長門、至極、極美、呵責、端午、併合、奈落、底癖、幕府、某尺、尊式、検疫、未除、路側、柑橘、脂溶、瑛人、冠水、豪材、剤枠、土岐、駄泊、検尺、漏洩、破裂無言、任期、崩説、全滅、壊滅、開幕、統帥、頭数、水湿、冠水、抹消、網滅、馬脚、財冠水、風隙、来妙、勤学、餞別、名判、名盤、観客、衆院、才覚、無能、果餓死、損初、波脈、釋迦、損失、片脚、那古、可物、筋層、真骨、存廃、破格、名湯、今季、写楽、苦況、罪責、孫覇、全滅、今父、奈落、旋盤、秒読、読破、名物、貨客、泉質、随想、滅却、監理、素質、遡行、文滅、菜根、無端、庄屋、破壊、客率、合併、豪式、続発、泣塔、透析、頑迷、場脈、野張、船室、乾物、吐瀉分裂、戒行、噛砕、爾、晩別、海苔、西明、縁月、花月、独歩の大蛇、再発、納言、遺言、残債、背角、破壊、忠膵癌、統帥、馬車、下劣、火災、乱尺、毒妙、縫製、貨坂城、歳発、富低落、菜初、命式、山賊、海剤、激武者、瓦礫、破水、分裂、賀露、屠畜、能月、見激、破壊、破戒、採石、屈託、門別、皆来、家来、千四、我楽、夏楽、無慈悲、壊滅、破棄、損勤学、外鰓、長水、瑛人、永久、旋律、斑紋、財年、場滅、甘露、舐めけり、真靭、察作、論祭、乾裂、薩長、泣塔、室見、川縁、岩石、言後、荷火災、防爆、鋒鋩、体制、貨車、顎脚、刺客、坐楽、損益、脳系、文才、分合、合壁、啓発、萌姫、島内、監修、真木、合理、独房、雑居、紋発、乱射、雑念、五輪、三振、欄居、托鉢、紋腹、画狂、欠年、射殺、殺傷、脳初、目車、濫用、懸念、學年、身者、卓越、餓死、軟卵、場者、童空、我作、滅法、涅槃、抹殺、怒気、燃焼、略奪、宰相、馬腹、刳発、南山、活発、沙羅、割腹、殺戮、循環、奈良、菜道、紗脚、残雑、颯和、和歌、東風、南富、背面、焼却、四季、同發、博羅、無償、透明��明闇、雲海、陶酔、溺愛、泊雑、湖畔、花車、小雑、蘭風、雑魚寝、逆発、罵詈、検遇、明細、鳥羽、無数、飾西、涼感、割烹、面月、略発、明暗、御覧、絶滅、名者、焼却、野版、絶筆、数界、洒落、羈絆、四索、敏捷、旋律、脚絆、安行、軽安、難産、伊賀、消滅、生滅、巡数、水災、万華、論発、処住、崇拝、年月、画鋲、我流、剣率、草庵、律年、雑魚、規約、貨車、蒸発、重大、錯乱、蓮妙、奈良、坐楽、延宝、財年、爆発、龍翔、日向、塁側、席園、座札、風評、財年、何発、旋律、画狂、論券、戦法、尊師、大概、二者、那波、麺期、演説、合邦、放射、雑律、貨客、選別、燕順、考慮、試薬初、財源、富、符号、井原、若榴、清涼、無數、才覚、絶望、奈落、奔放、有識、台東、詮索、懸念、病状、設楽、宴客、怠慢、時期、同部、弁解、冊立、立案、前略、妄動、侮蔑、廃絶、間髪、図解、経略、発泡、者発、立案、滅鬼、自利、論酒、桜蘭、五月雨、垓年、処理、短髪、散乱、絶滅、命日、庵客、実庵、龍翔、派閥、同盟、連峰、焼殺、勝中、割裂、残虐、故事、量発、敗残、花夢里、面月、原氏、雑考、推理、焼殺、膵癌、導風、千脚、砂漠、漁師、活滅、放射、洋蘭、舞妓、邪武、涅槃、毛髪、白藍、他式、民会、参謀、廃車、逆発、峻峰、桜蘭、殺戮、銘客、随分、刺死、脳犯、我版、論旨、無垢、血潮、風泊、益城、拝観、舘察、懺悔、空隙、髭白、模試、散乱、投射、破滅、壊滅、下痢、他殺、改札、寿司、葉式、魔雑、渾身、等式、命日、安泰、白藍、良志久、中須、掻敷、北方、監視、血式、血流、詐欺、加刷、販社、壊滅、坐楽、白那、苫小牧、欄物、演説、開脚、摩擦、欠史、宰相、掻敷、飾西、近隣、可能、刺自虐、崑崙、独歩、良案、隔絶、菜作、妄動、犬歯、核別、概要、立案、破格、殺戮、良案、快絶、防止、那古、風別、焼安泰、独庵、囲炉裏、壊滅、外傷、刃角、視覚、耳鼻、下顎骨、子孫、剥奪、憂鬱、優越、液状、先端、焼子孫、兵法、那波、安楽、最短、数式、絶句、庵杭、雅樂、動乱、者妙、垓年、独初、前報、奈落、数道、弓道、拝観、俯瞰、散乱、男爵、害面、炎上、抹殺、破棄、分別、額欄、学雑、宴客、体面、村落、柿区、害初、告発、欄式、体罰、侮蔑、浄光、情動、差額、君子、何発、兵式、童子、飾西、各滅、我札、審議、半旗、普遍、動脈、外傷、無償、木別、別格、名皿部、京脚、破棄、試薬、絶滅、学札、清涼、爆発、組織、壊滅、ここに、名もなき詩を、記す。風水、万別、他国、先式、続発、非力、産別、嘉門、神興、撃易、弊社、紋別、座泊、画狂、式典、胞子、画力、座敷、学舎、論別、閉域、爆風、万歩、博識、残忍、非道、望岳、死骸、残骸、符合、壊滅、匍匐、弄舌癖、死者、分別、砂漠、白藍、模写、服役、奈落、忖度、符尾、同盟、田式、左派、具癖、退役、蛇路、素白、昆北、北摂、写経、文武、択液、図解、挫折、根塊、道厳、視野別、奈落、鳥羽、グリシャ・イェーガー、粗利、惨殺、学癖、優遇、陶器、場作、土壌、粉砕、餓鬼、草履、羅列、門泊、戸癖、山系、学閥、座枠、忠膵癌、視野別、脳族、監視、佐伯、釋迦、敏捷、遇歴、佐渡、名張、紀伊市、名刺、干瓢、夏至、楽節、蘇遇、列挙、間髪、風脚、滅法、呪水、遇説、死骸、爆発、山荘、塀楽、茗荷、谷底、愚者、妄動、還魂、色別、最座、雑載、論客、名足、死期、近隣、名張、迷鳥、呑水、飛脚、晩別、獄卒、殺傷、視覚、乱脈、鉱毒、財閥、漢詩、死語、諸富、能生、那波、合理、血中、根菜、明初、鹿楽、宮札、度劇、臥風、粋玄、我馬、洞察、今季、爾脈、羅猿、激園、葉激、風車、風格、道明、激案、合祀、坐楽、土地油、力別、焼殺、年配、念波、郭式、遊戯、富部区、奈脈、落札、合祀、寒白、都山、額札、風雷、運説、害名、亡命、闘劇、羅沙莉、砂利、夢中、淘汰、噴水、楽章、農場、葉激、際泊、手裏、合併、模等部、トラップ、落着、御身、学習、零、概要、各初、千四、何匹、笘篠、熊本、京駅、東葛、土量、腹水、活潑、酢酸、数語、隠語、漢語、俗語、羽子、豚皮、刃角、醪、能登、半年、餓鬼、泣塔、用紙、喜悦、山荘、元相、炭層、破裂、腹水、薔薇、該当、懐石、討滅、報復、船室、壊滅、回族、先負、嗚咽、暁闇の、立ち居所、餞別、乾式、財閥、独居、乱立、差脈、桜蘭、龍風、抹殺、虐案、某尺、無銭、漏洩、北方領土、白山、脱却、幻滅、御身、私利私欲、支離滅裂、分解、体壁、脈、落札、合祀、寒白、都山、額札、風雷、運説、害名、亡命、闘劇、羅沙莉、砂利、夢中、淘汰、噴水、楽章、農場、葉激、際泊、手裏、合併、模等部、トラップ、落着、御身、学習、零、概要、各初、千四、何匹、笘篠、熊本、京駅、東葛、土量、腹水、活潑、酢酸、数語、隠語、漢語、俗語、羽子、豚皮、刃角、醪、能登、半年、餓鬼、泣塔、用紙、喜悦、山荘、元相、炭層、破裂、腹水、薔薇、該当、土脈、桜蘭、郎乱、乱立、派閥、別癖、恩給、泣き所、弁別、達者、異口同音、残骸、紛争、薔薇、下界、雑石、雑草、破戒、今滅、梵論、乱発、人脈、壊滅、孤独、格律、戦法、破戒、残席、独居、毒僕、媒概念、突破、山乱発、合癖、塹壕、場技、極楽、動脈、破裂、残債、防壁、額道央、奈良市の独歩、下界残滓、泣き顎脚、朗唱、草庵、場滅、乖離、鋭利、破戒、幕府、網羅、乱脈、千部、土場、契合、月夕、東美、番號、虎破戒、在留、恥辱、嗚咽、完封、摩擦、何百、操船、無限、開発、同尺、金蔵寺、誤字、脱却、老廃、滅法、涅槃、脱却、鯉散乱、立哨、安保、発足、撃退、学別、憎悪、破裂無痕、磁石、咀嚼、郎名、簿記、道具雨、壊滅、下落、吐瀉、文別、銘文、安胎、譲歩、剛性、剣率、社販、薙刀、喝滅、解釈、村風、罵詈雑言、旋風、末脚、模索、村立、開村、撃退、激癖、元祖、明智用、到来、孟冬、藻石、端午の贅室、癌客、到来、未知道具雨、寒風、最壁、豪族、現代、開脚、諸富、下火、海日、殺傷、摩擦、喃楽、続落、解脱、無毒、名毒、戒脈、心脈、低層、破棄、罵詈、深海、琴別府、誠、生楽、養生、制裁、完封、排泄、虐殺、南京、妄撮、豚平、八食、豪鬼、実積、回避、答弁、弁論、徘徊、妄説、怒気、波言後、節楽、未開、投射、体者、破滅、損保、名水、諸味、透析、灰毛、界外、土偶、忌避、遺品、万別、噛砕、剣率、戒行、一脚、快哉、提訴、復刻、現世、来世、混成、吐瀉、場滅、経絡、身洋蘭、舞踏、近発、遊戯、男爵、最上、最適、破裂、改名、痕跡、戸杓、分髪、笠木、路地、戳脚、快晴、野会、対岸、彼岸、眞田、有事、紀伊路、八朔、減殺、盗撮、無札、無賃、無宿、龍梅、塩梅、海抜、田式、土産、端的、発端、背側、陣営、戒脈、母子、摩擦、錯覚、展開、星屑、砂鉄、鋼鉄、破滅、懐石、桟橋、古事記、戸杓、媒概、豚鶏、墓椎名、顎舌骨筋、豚海、砂漠、放射、解説、海月、蜜月、満期、万橋、反響、雑摺、油脂、巧妙、
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しかし、不思議だよなぁ、だってさ、地球は、丸くて、宇宙空間に、ポッカリ、浮いてんだぜ😂でさ、科学が、これだけ、進化したにも、関わらず、幽霊や、宇宙人👽たちの、ことが、未だに、明かされてないんだぜ😂それってさ、実は、よくよく、考えたら、むちゃくちゃ、怖いことなんだよ😂だってさ、動物たちが、呑気にしてるのは、勿論、人間ほどの、知能指数、持っていないから、そもそも、その、不安というのが、どういう、感情なのか、わかんないんだよ😂それでいて、動物たちは、霊的能力、みんな、持ってんだよ😂でさ、その、俺が言う、恐怖というのはさ、つまり、人間は、これだけ、知能指数、高いのにさ、😂その、今の、地球が、これから、どうなっていくかも、不安なのにも、関わらず、その、打つ手を、霊界の住人から、共有されてないんだよ😂それに、その、未開拓な、宇宙人や、幽霊たちとの、関係性も、不安で、しょうがないんだよ😂つまり、人間の、知能指数が、これだけ、高いと、余計な、不安を、現状、背負わされてるわけなんだよなぁ😂そう、霊界の、住人たちによって😂でさ、もっと言うなら、😂それでいてさ、人間が、唯一、未来を、予想できてることはさ、😂未来、100%、自分が死ぬ、という、未来だけ、唯一、予想ができるように、設定されてんだよ😂でさ、それってさ、こんだけ、知能指数、与えられてて、自分が、いずれ、確実に、死ぬという、現実を、知らされてるんだよ😂人類は😂つまり、自分が、いずれ、死ぬという、未来予想だけは、唯一、能力として、与えられてんだよ😂勿論、霊界の、住人にだよ😂これさ、もう、完全に、霊界の住人の、嫌がらせなんだよ😂そう、人類たちへのな😂つまり、動物たちは、自分が死ぬことなんか、これポチも、不安じゃないんだから😂その、不安という、概念をさ、😂想像すること、できないように、霊界の住人にさ、😂つまり、設定されてんだよ😂動物たちは😂つまりさ、霊界の住人は、動物より、人間が、嫌いだから、こんなに、苦しいめに、人類は、立たせ、られてんだよ😂で、これ、考えれば、考えるほど、ゾッとするんだよ😂だって、霊能力ある、得体のしれない、霊界の住人の、嫌がらせ、させられてんだから😂人類は、今、まさに😂つまり、人間の知能指数こんだけ、あげさせられてるってことは、😂そういうことなんだよ😂つまり、自分の、死の恐怖と、死後、自分たちが、どうなるのか?という、二つの不安を、抱えさせられてんだよ😂人類は、今、まさに😂そう、霊界の、住人にだよ😂もし、霊界の住人が、人間、好きなら、こんなに、自分の死ぬことをさ、恐れる感情も、湧かないように、設定されてるはずだし、😂死後、自分が、これから、どうなるのか?という、不安を、感じることなく、生きてるはずなんだよ😂そう、霊界の、住人が、人間、好きなら、そんなこと、おちゃのこさいさい、😂なんだよなぁ😂つまり、動物たち同様、なんの、不安も抱くことなく、毎日、生活できてる、はずなんだよなぁ😂人類たちは😂
でさ、あと、も一つ、俺、不気味に、思えたのはさ、😂そもそもさ、この地球上に、なんで、人間だけ、生きてるわけじゃなくてさ、😂つまり、人類の先祖と言われている、猿や、魚類とかが、絶滅することなく、😂人間と、共に、この地球に、未だに、暮らしているのか?ってことなんだよ。😂だってさ、進化論で、言えばさ、😂つまり、オーソドックスな、猿で、例えるとさ、😂そう、猿は、人類の先祖なんだからさ、😂すでに、絶滅してて、いいはず、なんだよ😂そう、恐竜や、マンモスみたいに、猿も、絶滅していて、いいはずなのにさ、😂なんで、これだけ、年月が、経って、これだけ、人類の知能指数が、高くなるまで、時間が、経っているのにも、関わらずさ、😂未だに、猿が、人間と、地球に、共生しているのか?って、😂考えたことない?😂だって、不思議じゃん😂普通に、考えてもさ😂
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kachoushi · 10 months
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各地句会報
花鳥誌 令和5年9月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和5年6月1日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
草取れば天と地しばし離される さとみ 沙羅咲きて山辺の寺の祈りかな 都 神官の白から白へ更衣 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月2日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
読み辛き崩し字祖父の夏見舞 宇太郎 滝飛沫祈りて石を積む人へ 栄子 担当医替る緊張なめくぢり 悦子 青葉木菟声を聞きしは一ト夜のみ 史子 黒を着て山法師てふ花の下 すみ子 砂丘拍動遅滞なく卯浪立つ 都
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月3日 零の会 坊城俊樹選 特選句
病院の跡へ南風の吹き抜ける 季凜 梅雨の石積むもののふの墓暗く はるか 十薬とは屍を小さく包む花 和子 もののふの山が鳴るなり青葉風 はるか いとけなき蜘蛛も浄土を知りつくし 順子 菩提寺は城を見上ぐや男梅雨 慶月 ナースらの谺を追うて枇杷熟るる 順子 階段をのぼるつま先街出水 小鳥 青梅雨のしづくすべてが弥陀のもの 光子 罠であり結界であり蜘蛛の糸 同
岡田順子選 特選句
墓守のアパート三棟蕗の雨 風頭 眼をうすく瞑る菩薩の単衣とも 俊樹 アトリエへ傾るる大樹枇杷たわわ 眞理子 真夜中の泰山木の花は鳥 いづみ 青梅雨のしづくすべてが弥陀のもの 光子 昼顔は雨の列車にゆらされて きみよ 行き先を告げよ泰山木咲けば 和子 夏菊や南無遍照と一家臣 慶月 梅雨出水過ぎて正気を歩きをり いづみ 青梅雨の真黒き句碑が街映す 小鳥
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月3日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
点ほどの人の生涯芝青し 朝子 青芝にまろぶフレンチブルドッグ たかし 海亀の孵化高精細の大画面 勝利 水郷の蛍のなかに嫁ぎゆく 孝子 子供の日クレーンは空へ置き去りに 久美子 特攻の話し聞く夜の蛍かな たかし 日輪は地球の裏に蛍の夜 睦子 青芝を犯す少年のスパイク 同 黴の中遺されしもの錆てゆく 美穂 舞ふものゝ影をも流し梅雨の川 かおり 袋ごと枇杷をもげよと檀太郎 睦子 亡き父のジャズ沁み込みし籐寝椅子 たかし  ハーレムの少年 青芝にいのちの次のスニーカー 修二
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月5日 花鳥さざれ会
少年の少女の昔あめんぼう 雪 ふる里の水の匂ひにあめんぼう 同 風みどり故山の空を吹きわたる かづを あめんぼう映れる雲に乗りゐたり 同 水馬水のゑくぼに乗り遊ぶ 泰 俊 名刹に雨を誘ふや水馬 同 売家札とれて漏るる灯蚊喰鳥 清 女 強かに生きて卒寿の髪洗ふ 同 緑陰に栄華の茶室古りしまま 希 落武者の子孫が育て花菖蒲 千代子
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令和5年6月7日 立待俳句会 坊城俊樹選 特選句
紅薔薇や三國廓址の思案橋 世詩明 更衣恋に破れて捨てがたし 同 水芭蕉分水嶺の��なる地 同 夏帽子振つて道草してゐる子 清女 鳴く顔が見たくて覗く蛙の田 同 読み終へし一書皐月の朝まだき 同 鋏手に赤き手袋バラ真赤 ただし 浦人の少年継げる仏舞 同 欲捨てて今日も元気蜆汁 輝一 紫の色をしまずや花蘇枋 同 一番星遠ち近ち蛙鳴きはじむ 洋子 手折りたる酸葉噛みつつ歌ひつつ 同 自転車を押してつつじの坂上る 誠 飛魚の羽ばたき飛べる船の旅 同 風薫る慶讃法要京の厨子 幸只
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月10日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
富士見えて多摩横山に風薫る 白陶 朽ちし色残し泰山木咲ける 秋尚 風薫るポニーテールの娘の声に 幸子 日々育つ杏とエール送り合ふ 恭子 夜も更けてたれが来たかと梅実落つ 幸子 余白には梅雨空映す年尾句碑 三無 記念樹の落ちし実梅も大切に 百合子 観音の指の先より風薫る 幸子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月12日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
浴衣着て父似母似の姉妹 清女 香水のひそかな滴人悼む 昭子 髪洗ふ心のしこり解くやうに みす枝 白鷺の孤高に凛と夏の川 清女 梅雨じめりしたる座敷に香を焚き 英美子 知らぬ間に仲直りして冷奴 昭子 夏場所や砂つかぶりに令婦人 清女 明易や只管打坐してより朝餉 同 蟇が啼く月夜の山に谺して 三四郎 白足袋の静かな運び仏舞 ただし 梅雨しとど鐘の音色も湿りたる みす枝 答へたくなきこともあり紫蘇をもむ 昭子 本題に触れず香水帰りゆく 同 水面にゑくぼ次次梅雨に入る みす枝
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月12日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
ためらはずどくだみ束ねバルコニー 和魚 釣堀の揺るる空見てゐるひと日 秋尚 何も手に付かぬひと日や五月雨るる 秋尚 どくだみの清潔な白映す句碑 三無 十薬の匂ひの勝る生家門 聰 どくだみの苞白々と闇に浮く 和魚 五月雨にふくらんでゐる山の湖 怜
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月13日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
目を染めて麦の秋へとなりにけり 光子 短夜の夢も短き目覚めかな 文子 子の植うる早苗の列の右曲がり 登美子 バースデーソングと夏至の雨響く 実加 羅の受付嬢はちよと年増 みえこ 色街の女を照らす梅雨の月 登美子 五月雨真青な傘を買ひにけり あけみ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月13日 萩花鳥会
車椅子頼りの暮し梅雨籠り 祐子 革ジャンに沁みた青春黴生ふる 健雄 玉ねぎの丸々太る五月晴 俊文 亡き夫の捨てられきれぬ黴ごろも ゆかり 雨蛙降り出す庭で鳴き交はす 恒雄 星々に瞬きかへし舞ふ螢 美惠子
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令和5年6月16日 さきたま花鳥句会
大胆に愚痴を透かして青暖簾 月惑 紫陽花や小走りに行く深帽子 八草 まな板も這ふらし夜のなめくじら 裕章 夕まぐれ菖蒲田の白消し忘れ 紀花 屋敷林青葉闇なる母屋かな 孝江 鐘供養梵鐘の文字踊りけり ふゆ子 漣の葉裏に返る新樹光 とし江 花手水薄暑の息をととのへり 康子 風薫るいまだ目覚めぬ眠り猫 みのり 花菖蒲雨に花びら少し垂れ 彩香 短夜や二日続けて妣の夢 静子 耳かきの小さな鈴の音初夏の夜 良江
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令和5年6月17日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
登山者が供華に挿し行く地蔵尊 やす香 蟬一つ鳴かぬ光秀忌を修す ただし 桃色の若き日の夢籐寝椅子 みす枝 村百戸梅雨のしとどに濡れそぼつ 同 空き箱に色褪せし文梅雨湿り やす香 西瓜買ふ水の重さの確かなり 同 薫風や見上ぐるだけの勅使門 真喜栄 そよぐには重たき鞠や濃紫陽花 同 花菖蒲咲かせ半農半漁村 千代子 日の暮れて障子明りに女影 世詩明 香水の女に勝てぬ男かな 同 早苗饗や上座に座る村の長 同 春深し遊び心の雲一つ 雪
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月18日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
蜻蛉生る山影ふかきむじな池 芙佐子 むじな池梅雨闇の棲むところかな 要 朝まだき甘き匂ひの蛍川 千種 田の隅の捨苗萎れゆく日差し 芙佐子 大方は夏草となる畑かな 秋尚 過疎村に農大生の田植笠 経彦 行き止る道に誘ふ夏の蝶 久 蚯蚓死すむじな池への岐れ道 千種 捩花の螺旋階段傾ぎをり 斉 道をしへ夜は蛍の思ひのまま 炳子 故郷の水田へ草矢打つやうに 要
栗林圭魚選 特選句
蜻蛉生る山影ふかきむじな池 芙佐子 六月の谷戸のすみずみ水の音 三無 蚯蚓死すむじな池への岐れ道 千種 虎尾草より風生まれをり流れをり 久 どんよりと新樹映して濁り池 要 源五郎さ走る田水光らせて 久子 桑の実や落ちては甘く土を染め 三無 万緑の中の水音澄みてをり ます江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月21日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
故里の百年の家花石榴 啓子 巣作りの青鷺歌ふ高らかに 千加江 母に詫び言はねばならぬ梅雨の入り 昭子 幹太くなりたる樹々の夏の午後 雪子 衣替へして胸に白すがすがし 同 梅雨の灯に猫の遺影と娘の遺影 清女 寝返りを打ちても一人梅雨の月 同 枇杷啜るこつんころりと種二つ 希子 女子高生混じる一人に黒日傘 数幸 観世音御ンみそなはす蛇の衣 雪 観音に六百年の山清水 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月22日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
あめんぼうてふ名に滑る他は無し 雪 九十二の更衣とはこんなもの 同 白鷺のいよいよ白き青田かな 同 蛇の衣こんな綺麗に脱がずとも 同 落椿描ける女人曼荼羅図 同 殉国の遺影と父の日を終へり 一涓 青春に戻りて妻と茱萸を捥ぐ 同 門川の闇を動かす蛍舞ふ みす枝 母の日の花は枯れても捨てきれず やすえ 一番星あちこち蛙鳴きはじむ 洋子 草矢打つ程の親しき仲でなし 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月25日 花鳥月例会 坊城俊樹選 特選句
紫陽花や伐らねば夜の重くなる 要 打水はインド料理の香をのせて はるか 炎帝の満を持したる神の池 要 炎天へ柏手打てば蹌踉ひし 順子 靖国は蒼くなりけりサングラス 緋路 雨蛙虫呑みてすぐ元の顔 裕章 サングラス胸にひつかけ登場す 光子 魂となる裸電球祭待つ はるか
岡田順子選 特選句
押し寄せる蓮のひとつに蓮の花 俊樹 紫陽花や伐らねば夜の重くなる 要 凡人てふ自由たふとし半夏生草 昌文 蓮原の沖に宮城あるといふ 光子 内堀の夏草刈られ街宣車 要 混ざり合ふ手水と汗の掌 緋路 祭の準備指揮をとる大鳥居 みもざ 水馬ふたつの天のあはひゆく 裕章
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年5月22日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
蛍狩り娘の掌のがれて星となる 世詩明 更衣恋の火種を残しけり 同 少年を仰いでをりぬ青蛙 昭子 うまいとも言つてくれぬが菜飯炊く 同 子よりまづ泳ぎ出したり鯉幟 一涓 夏暖簾廊下に作る風の道 紀代美 喉鳴らし母乳呑む児や若葉風 みす枝 目に見えぬものを脱ぎたり更衣 洋子 青鷺が抜き足差し足田を進む やすえ 一院のかつて尼寺白牡丹 雪 蝸牛角を突いてゐる女 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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kozuemori · 2 years
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今日の東京は、曇り空。明日、明後日と続くワークショップのための最終チェックをしたら、クリスマスプレゼントのラッピングに取り掛かる予定です。
先日、今年2回目の高野山への旅をして参りました。目的は奥之院への再訪です。今年の夏に初めて訪れた時は、ガイド付きのツアーで滞在時間も限られていたので、またいつかゆっくり訪れたいと思っていたのです。今回もお天気に恵まれ、初冬の高野山をゆっくりと散策することができました。
人里離れた高い山々が連なる天界の都市の東に位置する奥之院は、交通手段が徒歩しかなかった時代はもちろんのこと、現在もそこを訪れたいという意志が伴わないとなかなか行けない聖地ではないでしょうか。樹齢200年から600年と言われる1300本以上の大杉群に囲まれ、その枝の間からこぼれ落ちる木漏れ日を浴びながら歩いていると、次第に自分が小さくなっていくような感覚になります。けれど、決して心細くなることはありません。巨大な老木たちや、その表面を覆う鮮やかな緑色をした苔が放つ穏やかなエネルギーに見守られながら周りに溶け込んでゆき、次第に自然のエネルギーが優しく囁きかけてくるのを感じます。清浄な空気に満ちているので、気管支が弱く、子どもの頃喘息に悩まされていた私も思い切り深呼吸することができます。
今回は、午前10時半に行われる生身供(しょうじんぐ)も見学しました。生身供は弘法大師の入定から現在までの1200年もの間、ずっと続けられている儀式のひとつです。今も永遠の瞑想をしながら、世界平和と人々の幸福を願い続けている弘法大師へ毎日午前中の2回、6時には一汁四菜、10時半には一汁五菜が基本のお食事が3人の僧侶によって供されているそうです。お食事は御供所(ごくうしょ)と呼ばれる場所で行法師(ぎょうほうし)と呼ばれる僧によって調理され、唐櫃(からびつ)という白木の箱に納められた後、嘗試(あじみ)地蔵での毒味を経て、御廟橋を渡った先の聖域の奥にある御廟へと運ばれます。(写真上中央と下)
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聖域へ繋がる御廟橋は36枚の橋板と橋全体を合わせて37枚と数えられ、金剛界37尊を表しているそうです。さらに橋板の裏には梵字で37尊が刻まれ、天気や時間などの条件が揃えば、下を流れる玉川の水面に映った姿が確認できます。私もクッキリと太陽に照らされた種子真言を見ることができました。(写真下)
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他にも印象的な出来事がありました。一の橋から奥之院に足を踏み入れてすぐに、前方に黒い法衣を着たひとりの僧侶が急足で歩いているのが見えました。なんとなく気になってその後を追って長い階段を登りきり、通路の脇にある石段を登ると、人ひとりがやっと入れるくらいの小さな古いお堂がありました。その中でひとりの黒い法衣の僧侶が、ちょっと窮屈そうに座りながらお経を唱えていました。その後ろのお堂の外では、木蘭色の法衣を纏ったひとりの僧侶が立ったまま、目を瞑り読経に耳を傾けています。ここは密厳堂と呼ばれるお堂で、高野山を離れて根來寺を開いた覚鑁上人が祀られている場所です。通路からは見えない位置にひっそりと佇んでいて、あの僧侶の誘導がなければ、きっと気付かずに通り過ぎてしまったでしょう。後から調べてみたら、その日は覚鑁の御命日でした。私の母方のお墓のある護国寺は、覚鑁上人を始祖とする新義真言宗の教義を基礎とする真言宗豊山派ですので、お導きなのかもしれません。Wikiによると『覚鑁は真言宗において、空海以外では唯一の仏教哲学「密厳浄土」思想を打ち立てた僧として高く評価されている』とありました。ご縁があったら、いつか根來寺も尋ねてみたいです。
旅行とミディアムシップには共通点があります。それは、どちらも情報や筋書きがない方が上手くいくという事です。私の経験上、デモンストレーションも個人カウンセリングも相手の情報が少なければ少ないほど直感が働くこと、結果を期待したり、成果を望みすぎない方が良いことがわかっています。今回の旅も体力や日照時間、安全面などの条件を基にした最小限の計画と直感を使って、今の私にとって必要な経験をいただいたと感じます。思いもよらなかった素敵な出来事に巡り合うと、喜びと幸せを感じ、導かれ、守られているとわかります。また、その記憶が深く心の中に刻まれ、気づきに繋がります。私たちの人生にもまた、同じ事がいえるでしょう。
秋学期にはこの奥之院を題材とした誘導瞑想を作りました。生身供や御廟橋の梵字に出会い、今も瞑想を続ける弘法大師様との対面をイメージしながら般若心経を唱え、ご自身の中の美しい光に出会っていただけるストーリー展開となっています。ご興味のある方はこちらからご購入いただけます。
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高野山から戻ってから行った最初のカウンセリングもまた、とても興味深いものとなりました。後半、指導霊がお坊さんのお姿で現れ、私が前の晩に高野山で泊まった宿坊の和室と炬燵の風景を見せてくださったので、「近々旅行に行かれる予定はありますか?」と尋ねたら、「残りの札所を巡礼するために四国遍路を再開したいのですが、近々行ってもよいでしょうか。」というご質問をいただいたのです。答えはもちろん「Go」でしょう!霊界からこんな完璧なタイミングでメッセージをもらい、ご相談者様も嬉しそうでしたが、私も人生に無駄な経験はひとつとしてない事を改めて感じ、とても嬉しかったです。
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今後の予定
・12/18, 19  シャーマニック・ミディアムシップ お申し込みはこちらまで
・12/22  2/23  アイイス・ドロップイン・ナイト お申し込みはこちらまで
・12/25  アイイス・クリスマスサービス お申し込みはこちらまで
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2023年1月開講のクラスへのお申込受付を開始しました。お申し込みはこちらからどうぞ。
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spst-haru · 3 years
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[ 木漏れ日の彼岸 ] . . . 初秋の光が、彼岸花をまばゆく照らす。 . . . ==================== 📸 2021.09 Soko-in, Matsudo, Chiba . Nikon D5300 🥀🍃🥀🍃🥀🍃🥀🍃🥀 ==================== . . . #japan #chiba #sokoin #sokoin_higanbana #sokoin_manjushage #sokoin_redspiderlily #sokoin_clusteramaryllis #higanbana #manjushage #sokoin_komorebi #komorebi #千葉 #祖光院 #祖光院_彼岸花 #祖光院_曼珠沙華 #彼岸花 #祖光院_木漏れ日 #花が咲くお寺 #flowers_bloom_in_the_temple #花色大地 #flower_colored_ground #彼岸の赤花 #red_flower_of_higan #木漏れ日の園 #komorebi_garden #adobephotoshoplightroom #nikond5300 #instagram #photo #photography (祖光院) https://www.instagram.com/p/CWLfkflphaY/?utm_medium=tumblr
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2ttf · 12 years
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xf-2 · 6 years
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濱口和久(拓殖大大学院特任教授)(青林堂『日本版 民間防衛』より)
 日本は工作員天国といわれている。日本には世界の国ならどこでも持っている「スパイ防止法」がない。
 工作員にとっての天国とは次のような状態だ。①重要な情報が豊富な国、②捕まりにくく、万一捕まっても重刑を課せられない国のことである。
 日本は最先端の科学技術を持ち、世界中の情報が集まる情報大国でもある。しかも、日本国内で、工作員がスパイ活動を働いて捕まっても軽微な罪にしか問われない。スパイ活動を自由にできるのが今の日本なのである。つまり、工作員にとっては何の制約も受けない「天国」だということを意味している。
 アメリカに亡命したソ連KGB(国家保安委員会)少佐レフチェンコが「日本はKGBにとって、最も活動しやすい国だった」と証言している。ソ連GRU(軍参謀本部情報総局)将校だったスヴォーロフは「日本はスパイ活動に理想的で、仕事が多すぎ、スパイにとって地獄だ」と、笑えない冗談まで言っている。日本もなめられたものである。
 日本は北朝鮮をはじめとする工作員を逮捕・起訴しても、せいぜい懲役1年、しかも執行猶予がついて、裁判終了後には堂々と大手をふって出国していく。  中国が得意とするスパイ活動に「ハニー・トラップ(甘い罠)」という手段がある。ハニー・トラップは、女性工作員が狙った男性を誘惑し、性的な関係を利用して、男性を懐柔、もしくは脅迫して機密情報を聞き出す諜報活動のことだ。中国にとって、ハニー・トラップはサイバー攻撃と並んで機密情報を奪い取るための重要な手段となっている。
 イギリス紙タイムズ(電子版)が2014年11月に報じたところによると、イギリス国防省の諜報機関の上級職員向けに、中国のハニー・トラップ対策マニュアルを策定。マニュアルは中国のハニー・トラップに関して「手法は巧妙かつ長期的。中国人諜報員は食事と酒の有効性を知り尽くしている」としたうえで、「中国の情報に対する貪欲さは広範囲かつ無差別だ」と分析。「中国には諜報員が存在するが、彼らは国の諜報機関の命令によって動く中国人学生、ビジネスマン、企業スタッフの裏に隠れている」と指摘した。
 また、中国でのイギリス製薬大手グラクソ・スミスクライン(GSK)の汚職疑惑に絡んで、同社の中国責任者が自宅で中国人ガールフレンドとセックスしているところを隠し撮りされ、その動画がGSK役員らに送りつけられた。中国のハニー・トラップの標的になるのは、政府や諜報機関の関係者にとどまっていない。
 中国人女性工作員の“活躍”はイギリスだけではない。アメリカ軍の最高レベルの機密情報にアクセスできる立場にあった元陸軍将校が、国際会議で出会った女性と2011年6月から恋愛関係となり、戦略核兵器の配備計画や弾道ミサイルの探知能力、環太平洋地域の早期警戒レーダーの配備計画といったアメリカ軍の機密情報を伝えたという。この元陸軍将校は国防機密漏洩の罪などで逮捕、刑事訴追された。(SankeiBiz 平成28年1月11日付)
 中国人女性工作員は、日本人男性に対しても、ハニー・トラップを仕掛けてきている。中国の公安当局者が、女性問題をネタにして日本の領事に接近。この領事は総領事館と本省との間でやりとりされる暗号通信にたずさわっている電信官で、中国側は日本の最高機密であるこの電信の暗号システムを、領事に強要して手に入れようとした。だが、電信官は「自分はどうしても国を売ることはできない」という遺書を残して、平成16(2004)年5月に総領事館内で首吊り自殺をしている(上海日本総領事館領事の自殺事件)。
 領事の自殺により、電信の暗号システムの情報流出は防げたが、中国に出張した際、ハニー・トラップに引っ掛かった政治家、企業家、研究者(技術者)は1000人をはるかに超えているといわれている。彼らの中には、中国側が欲しい情報を提供したことがある日本人もいるかもしれない。いや、発覚していないだけで、間違いなく情報を提供していると考えるべきだろう。
 もしあなたが、これらの職業に就いていて、中国人女性が近づいてきた場合は、ハニー・トラップを警戒し、不用意に女性と深い仲にならないようにすべきだろう。また、中国人女性と結婚した自衛官は500人を超えている。その中には幹部自衛官も含まれる。女性から自衛官に接触し結婚したケースが大多数だ。自衛隊の情報が中国側に漏れているとしたら、日本の安全保障上にも影響を与えていることになる。
 実際、平成19(2007)年1月、神奈川県警が海上自衛隊第1護衛隊群(神奈川県横須賀市)の護衛艦「しらね」(イージス艦)乗組員の2等海曹の中国籍の妻を入管難民法違反容疑(不法残留)で逮捕。家宅捜索したところ、イージス艦の迎撃システムなど機密情報に関する約800項に及ぶファイルが発見されている。2005年6月に中国のシドニー総領事館の一等書記官だった陳用林がオーストラリアに亡命した。彼は、日本国内に現在1000人を優に超える中国の工作員が活動していると証言している。
日本国内に北朝鮮の工作員はどれくらい潜伏しているのだろうか。不審船や木造船を用いて不法上陸したり、他人に成りすまし偽造パスポートなどで入国している工作員も間違いなくいる。
 一方、工作員は日本人の協力者や在日本朝鮮人総聯合会(略称は朝鮮総聯)に関係する在日朝鮮人らと共謀して、日本からヒト、モノ、カネなどを持ち出してきたことは周知の通りだ。日本人拉致、核開発関連の研究者の勧誘、ミサイル技術流出への関与、日本製品の不正輸出、不正送金など。麻薬・拳銃売買などの非合法活動にも手を染めているのが朝鮮総聯である。祖国防衛隊事件や文世セ光事件を引き起こした歴史的経緯から、公安調査庁から破壊活動防止法に基づく調査対象団体に指定されている。  北朝鮮で製造されるミサイル部品の90%は日本から輸出されていた(2003年5月、米上院公聴会での北朝鮮元技師の証言)。北朝鮮の核施設元職員で1994年に韓国に亡命した金大虎は、各施設には多数の日本製の機械や設備があったと証言。平成24(2012)年3月、北朝鮮にパソコンを不正輸出したとして外為法違反罪で在日朝鮮人の会社社長が逮捕された。北朝鮮への経済制裁で全面禁輸となった後も、パソコン機器1800台を無承認で輸出。関連機器の輸出総数は約7200台にのぼるとみられている。
 平成29(2017)年秋ごろから日本海沿岸に北朝鮮船籍と思われる木造船が数多く漂着している。以前から同じような木造船が日本海沿岸で発見されていたが、報道はほとんどされてこなかった。同年11月23日、秋田県由利本荘市の船係留場に全長約20メートルの木造船が流れ着き、乗組員8人が警察に保護された。8人は調べに対し、イカ釣り漁の最中に船が故障し、およそ1カ月漂流していたと話したという。
 これ以外にも、北海道や青森、秋田、山形、新潟、石川の各県で北朝鮮籍の漁船と思われる木造船が漂着・漂流している。中には船内から遺体が発見されたケースもあった。だが、一連の漂流・漂着を単なる漁民の漂流・漂着として片づけることのできない事態が起きた。日本は6852の島嶼(周囲が100メートル以上)から構成されているが、そのうちの約6400が無人島で、それに伴う海岸線の総延長距離は3万3889キロメートルに達している。
 24時間体制で海上保安庁が海上から不審船等を監視・警戒しているとはいえ、すべてを確認することは難しい。木造船はレーダーでは見つけにくいという問題もあるなか、北海道松前町の無人島である松前小島に一時避難した北朝鮮籍の木造船が、北朝鮮人民軍傘下の船とみられることが同年12月5日に明らかになったのだ。船体には「朝鮮人民軍第854軍部隊」というプレートがハングル文字と数字で記されていた。
 北朝鮮では、軍が漁業や農業などの生産活動にも従事しており、乗組員9人は、北海道警の事情聴取に対して、秋田県由利本荘市の事案と同様に「約1カ月前に船が故障し、漂流していた」と話しているが、信用していいか疑わしいところだ。普通に考えれば、1カ月も海上を漂流すれば、食料や水が底をつき、栄養失調になったり、衰弱していてもおかしくない。
 乗組員が元気ということは、普段から訓練をしている軍人もしくは工作員であると思って間違いないだろう。平成29年12月23日に見つかった秋田県由利本荘市の船係留場に漂着した木造船が、2日後の25日朝に沈没したが、明らかに海保や秋田県警が船内を捜索する前に、証拠隠滅を図ったと考えるのが妥当だ。また、発見を免がれた乗組員以外の工作員が、上陸し潜伏している可能性もある。
 また、日本海沿岸は北朝鮮による拉致事件が多発した場所でもある。拉致被害者の1人である横田めぐみさん(当時13歳)が、新潟市内で学校からの下校途中に拉致されたことを考えれば、一連の木造船が漁業だけを目的とした船とは到底思えない。間違いなく何らかの任務を与えられていると考えなければならない。
平成29(2017)年11月30日の参議院予算委員会で、自民党の青山繁晴議員が「北朝鮮の木造船が次々に漂着している。異様だ。北朝鮮は兵器化された天然痘ウイルスを持っている。もし、上陸者ないし侵入者が、天然痘ウイルスを持ち込んだ場合、ワクチンを投与しないと無限というほど広がっていく」と問題提起したうえで、バイオテロにつながりかねないとの認識を示した。
 青山議員が提起した天然痘ウイルスの感染や生物兵器を使用しバイオテロが現実となれば、日本国内は間違いなくパニックに陥るだろう。韓国国防白書によれば、北朝鮮は複数の化学工場で生産した神経性、水泡性、血液性、嘔吐性、催涙性等、有毒作用剤を複数の施設に分散貯蔵し、炭疽菌、天然痘、コレラ等の生物兵器を自力で培養及び生産できる能力を保有していると分析している。
 アメリカ科学者連盟(FAS)は、北朝鮮は一定量の毒素やウイルス、細菌兵器の菌を生産できる能力を持ち、化学兵器(サリンや金正男氏の暗殺に使われたVXガスなど)についても開発プログラムは成熟しており、かなり大量の備蓄があるとみている。アメリカ国防総省も、北朝鮮は生物兵器の使用を選択肢として考えている可能性があると指摘している。
 そのため、韓国に駐留する在韓アメリカ軍兵士は、2004年から天然痘のワクチン接種を受けている。アメリカはテロ対策のため天然痘ワクチンの備蓄を強化し、2001年に1200万人分だった備蓄量を2010年までに全国民をカバーする3億人分まで増やしている。日本でも天然痘テロに備えて、厚生労働者がワクチンの備蓄を開始しているが、備蓄量は公表されていない。
 ここで青山議員が提起した天然痘ウイルスについて、もう少し詳しく説明したい。日本では、昭和31(1956)年以降に国内での発生は見られておらず、昭和51年にワクチン接種は廃止された。感染経路は、くしゃみなどのしぶきに含まれるウイルスを吸い込むことによる感染(飛まつ感染)や、患者の発疹やかさぶたなどの排出物に接触することによる感染(接触感染)がある。
 患者の皮膚病変との接触やウイルスに汚染された患者の衣類や寝具なども感染源となる。潜伏期間は平均で12日間程度。急激な発熱(39度前後)、頭痛、四肢痛、腰痛などで始まり、一時解熱したのち、発疹が全身に現れる。発疹は紅斑→丘疹→水疱(水ぶくれ)→膿疱(水ぶくれに膿がたまる)→結痂(かさぶた)→落屑と移行していく。ワクチン未接種の場合、20~50%の感染者が死亡する。
 ただし感染後、4日以内にワクチンを接種すれば発症を予防したり、症状を軽減できるとされている。だが、日本では半世紀発生していないため、医師も実際の症状を見たことがない。そのため医師によるスムーズな対応ができず、感染の拡大を招く恐れもある。北朝鮮による天然痘ウイルスをはじめとする生物兵器を使用するバイオテロは、私たちの身近なところで起きる可能性もある。不法に上陸をする工作員によって、日本国内に生物兵器が持ち込まれる可能性は拭いきれない。
「スリーパー・セル」。この言葉をめぐり論争が勃発した。平成30(2018)年2月11日放送のテレビ番組「ワイドナショー」(フジテレビ系)で、東京大学の三浦瑠麗講師が「スリーパー・セル」に言及すると、途端に激しいバッシングを浴びた。
 英語で「潜伏工作員」の意味で用いられる表現だ。平時は一般市民に同化して目立たないように生活しており、有事には組織から指令を受けて諜報活動、破壊工作、テロ行為などに及び、内部から攪乱する。スリーパー・セルの個々の分子は単に「スリーパー」と呼ばれることもある。
 日本において北朝鮮のスリーパーが都心部などに潜伏している可能性は決して否定できない。北朝鮮からの呼びかけに応じて、各都市で破壊活動やテロ活動をする準備をしながら、一般市民に紛れているとみられている。現在、日本に潜伏しているスリーパー・セルだが、その活動内容は、北朝鮮のサポートをすることが目的とみられている。ただ、公安当局も詳しくはつかんでいないようだ。
 スリーパー・セルは、北朝鮮のラジオなどから流される暗号を受信して行動に移ることになっている。現在は目立った活動はしていないが、北朝鮮がいつ、どんな指令を下すのか。それは分からない。スリーパー・セルは銃器も持っているし、もちろん扱える、爆発物や生物・化学兵器なども扱える可能性がある。それに加えて情報操作などを行い、嘘の情報を流すことでパニックを起こさせることだってやりかねない。
 韓国の高永喆元国防相専門委員・北韓分析官によると、日本人を拉致し、そのパスポートで韓国に入国し、工作活動をした辛光洙が代表的なスリーパー・セルだったと。現在も、日本国内には第2の辛光洙のようなスリーパー・セルに包摂された協力者が、約200人は潜伏している可能性があるとしている。
 2017年2月、金正男氏がマレーシアのクアラルンプール国際空港で毒殺されたが、当時、協力者として逮捕された李正哲という北朝鮮人は、現地製薬会社の社員に成りすまして暗躍したスリーパー・セルであることが明らかになっている。スリーパー・セルは、あなたの近くに普通の会社員や学生として潜んでいるかもしれない。また、不審な行動をする人がいたら、すぐに警察に通報することも忘れずに。
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86-ah1123 · 5 years
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大きなハクモクレンの木はとっくに花を落とした。大きな葉の間から木漏れ日。それで日陰になった居間は涼しい雰囲気をしてるけど、日の光はキラキラしてるのでなんとなく明るい気持ちになる。
いつもよりすこし遅く起きたのは週末、別に予定はない。でもずっと寝てても仕方ないし。
兄はアルバイト、弟はもう友達と遊びに行く支度を済ませているみたい。誰か友達が迎えに来るのを待ってるのかな。父はいないけど、通院の日か。
母は今の季節のうちにと庭の伸びた草を刈っている。
庭いじりが好きなわけではない。多分むしろ嫌いだ。祖母が残し親戚のせいで手放せなかった無駄に広い庭の、最低限の処理をしていると言う感じだ。父は蜂に刺されてからそれをやらなくなってしまった、仕方ないのかもだけどなんかムカつく。
はあはあと息をしながら部屋に戻った母は、寝起きでぼんやりしたわたしを見て「あんた起きたの」と言ってトーストとコーヒーを手早く用意してくれる。自分も朝食がまだなのだ、と。
弟はもう何かしらをもりもり食べたあとだと思う。テレビをつけたままスマホをいじっている。
ーーーーー
なんかくっきり思い出したので書いてみたけど、書いてみると全然足りないね。
すわっとした日陰の空気とか、ぼんやりした頭の感じとかいろいろ。
すこし泣きたい時期なのだ。
2019.5.10
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isushika-yabaize · 5 years
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1028年下半期 腰長~平宗太世代
前回のあらすじ
髪全部切れた。
白骨城で四ツ髪を切った翌月7月。
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ついに腰長の子どもがやってきた。感慨深い…腰長様は実のお父さん、木肌に会うことができなかったから…交神はしたけど、自分の子どもって言われてもピンときてないんじゃないだろうか。
腰長「……」
茜「ほらお兄ちゃん、しっかりして!」
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わっ……丸い(初見の印象)なんだかマスコットみたい。マスコットみたいって言ったらもっとナマズ顔とかいろいろあるけど、なんか腰長様が美形だったから、なんだかすごく丸く可愛く見えるというか。なんか胴周りもポチャッとしてそうでは?かわいい。
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そ、そつがねぇ~~心配だった体水もバーの上では十分だ~~。名前は平宗太(ひらそうだ)にした。平宗太鰹から。通称:平ちゃんだと思う。
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うんうん、良い感じ~。しいて言えば、体火が少し物足りなく見えなくもないけど、これからどうなるかわからないから、今後に期待。
性格はなんというか…素質的には心風が一番高いんだけど、来た段階では取り繕ってるっていうより、ちょっと気合が違うっていうか、ちょっと高めの心土と、心火を心水と同等にして来たあたり、堅実に頑張って行こうっていう心の表れに見えるというか…顔の勇ましさも相まって、フンスフンスって鼻息荒めのやる気を感じる。心の風は器の大きさかな。「~だぞ」「~なのだ」口調で喋りそう。勝手��イメージが留まるところを知らない。
職業は槍使いにした。できれば終始前線で頑張ってほしい。
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そして訓練は腰長様が。もう、ほんとに、マジで感慨深いというか。上で書いたけど、父・木肌に会えなくて、伯父の目鉢に1ヶ月だけ訓練をつけてもらった腰長様が、自分の子に訓練をつける、っていうのが、もうね……
平ちゃんがやる気に満ち溢れてる感じするから、腰長様のが若干戸惑いそうな感じもする。
腰長「そろそろ訓練の時間だ、平宗…」
平宗太「父上!訓練のほどよろしくお願い申し上げる!」
腰長「あ、ああ」
目仁奈「兄さんが及び腰なんて珍しい。平宗太くんは髪なんかより大物ね」
伊良子「腰長兄だけに、及び腰…」
茜「後で絶対七天爆されるよ」
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で、もうそろそろマジで一刻の猶予ない交神①、目仁奈の交神。そのカッスカス…大江山越える前の世代でももうちょっとマシなバーしてるんじゃないかという火を可及的速やかになんとかする必要がある。
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仙酔エビス様でもよかったんだけど、なんとなくバーの起伏の激しさが少し不安だったので、火もカバーしつつ全体的に安心感のあった鎮守ノ福郎太様にお願いした。見た目の相性なかなかいいな…
火が、火がなんとかなりますように(切実)
そして8月、
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腰長様「好きにしたらいい」
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腰長様、庭に向日葵が植わってることすら(そうだったのか)って思ってそうじゃないか?ところで、この選択肢って何か意味があるのだろうか。
伊良子「ええー!イツ花、神社のリスに向日葵の種あげに行くんだって!私達も行こう茜!」
茜「なんで私まで!?別にいいけど…目仁奈お姉ちゃんも行く?」
目仁奈「うん、行こうかな。リスって向日葵の種食べるんですね、兄さん」
腰長「知らなかったな」(特に必要のない情報だったから)
そして腰長親子の訓練はどうだったかな、と。
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そつがない~しいて言えば技風・技土が少し低めかな。苦手科目だからね。でも全体的に安定している…さすが腰長様…
でも
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ついに…その時が来てしまった。今月が…最後…。
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そしたら目仁奈も後を追うように健康度が下がってしまっていた。いや、うん、もう、そういう時期だものね…目仁奈も辛うじて子どもに訓練がつけられそうで、本当によかったとは思うけど、できればもっと元気な状態で子どもに会わせてあげたかった気持ちはある…
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腰長様は、自分の寿命をわかってそうだな…と思う。漢方は目仁奈だけが飲んだ。無駄なことは、きっとしない。
茜「目仁奈お姉ちゃん、これ、漢方…お兄ちゃんには」
目仁奈「いらないって、言うと思うの…」
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そして猶予のない交神②伊良子の交神。伊良子は…伊良子そのバーでよくここまで心火が伸びたな…やっぱ正義の心がバーニンソウルしたのかな。とりあえずは、落ち着きのなさ(心土)、あと梵ピンが無いと心もとない攻撃力(体火)弱めの防御力(体土)をなんとかしてほしい。
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まあ奉納点的にも余裕はあるし、土をなんとかしたいな、ということで月光天ヨミ様にお願いすることにした。
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すみ��せん。落ち着きのない妹ですが、よろしくお願いします。素直なところが取り柄です…
そして、伊良子の交神を見届けると
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わかっていたこと。狼狽える必要はない。
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当主の指輪は、平宗太へ。道は拓いた。あとはきっと、やり遂げる。平宗太は、その力を持つ。屍は、俺たちで最後だ……
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長くて短い、不思議な旅路だったように感じる。
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涙、っていう、心の象徴を慮れるようになったのは、腰長もこの人生で大きく成長したということなんだと思う。元々、「泣いてる暇があるなら」と思う人だろうと思うけど、涙を語るのは、今の腰長じゃないと思い至らないことだったと思うんだ…そして、腰長の周囲には、彼を慮って泣く人がいたんだ。
腰長は、不遇…と言うには苛烈すぎる人生を歩ませてしまった。父親は三ツ髪を討ち取った直後に燃え尽きて亡くなり、腰長は訓練をつけてもらうどころか、直接顔を合わせることすらできなかった。父親の双子の兄が、1ヵ月間みっちり有無を言わさず訓練をつけてくれたけど、その伯父もきっかり1ヶ月後には息を引き取ってしまった。
彼の人生は最初から最後まで「髪を切る」ということだけだった。元服前は緋扇っていうハイパー多彩な叔父がいたから、まだ楽だったとはいえ、本格的に世代が変わって、妹たちをまとめる立場になると、妹たちの成長が思い通りにいかなかったり、自分の才の(主に体力面での)貧しさを実感することになった。それでも役割をきっちり把握して、妹たちの力を束ねることで、6本の髪を切った。最初から最後まで1本の芯が通ってる人生で、それだけに黄川人がいくら一族を惑わす言葉を言おうと、きっとこの人は迷わなかっただろうな、という確信がある。
あとめちゃ七天爆られて普通に敗走、生死の境を彷徨った時もあった。漢方と養老水チャンポンして、全快でもないのに髪を切りに行く生命力、体力ないのに凄まじいものがあったね。やったのはプレイヤーだけど。
ここ数代の大海原家は、人数が多かったせいもあって、交神以外にも討伐にいけなかったりして、歴史に穴がある人が結構多かったけど、腰長様は初陣周辺と交神月以外、毎月何かしら○○打倒の文字が入っていて、かなり濃密な人生過ごしたな…と思った。毎月何かしらをボコったし、術やら指南書やら取って、絶対タダでは帰らない。何かしらもぎ取って帰る、という強い意志があった。
なんかな、この人、死んでもそれが本当に「安らぎ」なんだろうか。間もなくポーンと生まれかわって、またどこかでザクザクやっていそうな気がしてならない。
長くなってしまった。やっぱり髪を6本切りきったからなのか、思い入れがすごい…なにはともあれ、大きな歴史にまた一つ区切りがついた。ここからはまた、新しい歴史の一区切りなんだなぁ。
そして氏神推挙も来た。
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田力主大海原。まぁ、語感的に見てって話だけども、この人自身が爆発的な力を持っていたわけじゃないし、田力ってちょっと素朴なところも、合ってたりするかな…と思った。
氏神にはしなかった。優秀だとは思うけど交神はしないだろうと思うから。無駄なことはしなさそうじゃないか?腰長様なら。
そして、当主が変わって、9月。
腰長様の最後のお仕事、平ちゃんの訓練はどうだったか。
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悪くない。少し下がったのは、腰長様も体力がもうなかったということで…あの人もともと体力はないから…それでも下限が2ケタ行ってるあたり、やっぱり優秀なお方だったのだ。
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そして、目仁奈のお子さんも来た。
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親子~。カラーリングが完全に親子だ。カラーリングは柳葉魚の時から変わってないけども。
髪がしっかりしてそうというか、毛根強そう。少しお母さんに似て毛先に行くにつれてふわふわになってったりしたら、かわいいかも。
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火…火は結構、結構いい感じにしてくれた!でも落ち着き(心土)がなさそう!でも目仁奈、一番の課題は火だと思ってたから、まあOKということにする!
名前は鶏魚(いさき)。夏においしい魚らしい。夏終わったけど。職業はまた順当に親の職業を継ぎ、弓使いで。名弓不知火を活用できるかな?
性格は…来たばかりの目仁奈を思い出すな。ぽわぽわ系の天然間延び女子だと思う。心地バーの低さ…本質は地に足ついてなさそう。能力値で一番土が高いのは、これはきっと緊張だよ。身もフタもないけど。普段きっと緊張しないんだろうけど。
鶏魚「一族の宿願を果たさんがため、粉骨砕身の覚悟で邁進して参ります」
平宗太「そう固くならなくてもいいぞ」
鶏魚「…そっか~ありがと~!あらためてよろしくね~平ちゃん~!」
平宗太「……こちらこそよろしくなのだ」
そして、平ちゃんが実戦部隊に加わった。
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これ、平ちゃんのことだけど、平ちゃんに言ってんだよな。でもやる気めちゃありそう、という私の目に狂いは無かった…。
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実は伊良子も、健康度が下がってしまったんだけれど、茜の交神を急ぐよりかは、出陣できる大人がいるうちに、平ちゃんの初陣をしておきたい。
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鶏魚の指導は目仁奈に任せて、三人で出陣しよう。
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茜「髪切ったの三ヶ月前なのに」
伊良子「待っててくれたのね!意外と優しいとこあるじゃない!」
平宗太「私の初陣を待っていたと言うのか?私の宿命というのだな…」
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平宗太の戦いが始まる……。でも、伊良子と茜もきっと、地獄の入り口でいろんなことを考えるんだろうな。
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初成長。技風技土~~お父さんと苦手ジャンルが若干被ってる~って思った。心風と心水が大きく成長したのは、前線の伊良子と茜がギャースカやっているのを見て「父上は個性豊かな一族をまとめあげてきたのだな…私も精進せねばな」的な感じかと思った。体火体土ちょっと不安かも。
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初陣だから賽の河原の鬼を丁寧に叩いてきた。
平宗太「戻り船はない…今の私の力で朱点が討てるとは…まだ修行が」
茜「大丈夫」
伊良子「不思議な正義パワーでもうそろそろ疲れてきたな~って思うと自然と家に帰ってきてるのよ」
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宝…?となったので適当にお弁当代わりの力士水渡した。
茜「この船頭は信頼できるの?」
伊良子「仁王水で乾杯したらね、もうそれは家族よ」
平宗太「伊良子さんが訳のわからないことを言っていることはわかったぞ」
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血の池地獄に行った。急にBGMがギュイギュイしはじめてびっくりした。賽の河原らへんのBGMが「ああ…ラストダンジョン感ある…」ってしんみりしてたから。
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そうこうしてたら終わった。特に目新しい戦果というものはないけど、やっぱり初陣だから身体を動かす必要があった、という感じだし別にいいかな。
ただ、無限白波アタックは少しキツかった。
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そして、帰ったら目仁奈のお迎えが…鶏魚、みんなで見送ろう。
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「わたしの人生、何か足りなかった気がして…でも、結局わからずじまいね…」くらいかと思う。
何か足りない…何か足りない、というと、目仁奈にはいろんなものが欠けてたと思う。それは目仁奈本人の資質とかもあるけど、やっぱり腰長同様に父親に会えなかったこととか、髪を切ることという一つの大きな目標以外のこととか、そういう。
髪を切ったら、朱点との決着がついたら、家族のみんなと穏やかな日を過ごせる日が来たのかもしれない。夏の日に神社のリスをみんなで見に行ったときみたいな日がずっと続くような…。
ゲーム的な話をすると���目仁奈はマジで火が足りなかった。いや、進言はバリバリ奥義進言とかもしてきたし、腰長様の進言シカト采配でストレスで胃がキュッとなるときもあったと思うんだけど、マジで攻撃がカッスカスで…ほか3人が200とか300とかのダメージ出すのに、一人だけ80とか、そのレベルだった。
だからこそ、術を覚えてもらいたくて、サポートに回ってもらうために朱ノ首輪修行をしたりしたんだけど、そのへんプレイヤーの無知の被害を盛大に被った人だった。本当に申し訳ないと思う。でも目仁奈が石猿使えるようになってからは正直かなり安定したと言えた。
生まれた時から腰長と一緒だった目仁奈。逝く時も腰長と大差なく、死後の世界で腰長とあって少し休んだ後、どこかに生まれかわれたらいいね、と思う。
そして、目仁奈とお別れを済ませたと思ったら、
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えっ嘘…まだ余裕があったんじゃ…って思ったけど、地獄巡りで無理をさせ過ぎた…のか…ああ…腰長世代は全員を子どもに会わせてあげたいと思っていたのに…思っていたのに…ハモにきちんと2ヶ月訓練をつけてもらった伊良子が子どもを待たずに死ぬなんて…
でも遺言がどこまでも伊良子らしいのが、もう、もうな…「アハハ…��理しすぎちゃったかな!でも目仁奈姉も見送れたし、私にしては充分よね」みたいな…「子どもは心配っちゃ心配だけど、茜もいるし、大丈夫!」みたいな…茜、倒れた伊良子に泣きながらキレそう…「伊良子お姉ちゃん、まだ大丈夫だよって言ったじゃない!言ったじゃない!うそつき!」って怒ったあと、涙をぬぐった茜の表情がもう絶対に子どもたちを見守るって決意する場面だ…伊良子は終始笑って逝きそう。
伊良子は、壊し屋として腰長世代のメインアタッカーとして頑張ってくれた。腰長は体力が低くて、下手な一撃が致命傷になりうるし、目仁奈と茜は攻撃能力が低い。腰長の梵ピンを受けて敵を粉砕するのは伊良子の役割だった。攻撃はちょこちょこかわされたけど、でも体風は世代の中で一番高かった。あと、メインアタッカーだけど、攻撃を受けた兄姉の心配から、回復進言が人一倍多かった子だと思う。心の値が豊かだし、イケイケドンドンタイプの正義のアホの子というキャラを信じてたけど、優しい娘だったんだよな。あと会話考える時の伊良子の動かしやすさは異常だった。
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目仁奈は来なかったけど、伊良子は氏神推挙が来た。運命糸大海原か…運命糸…まあ正義だし…運命の糸くらい引き寄せる力はありそう。そういえば、父親のハモは「でっかい夢を口にして叶えるくらいじゃないと正義の味方は務まらないですよ」的に解釈した遺言を言ってたな、と思う。運命の糸くらい私にかかればチョチョイのチョイで引き寄せちゃうから!
氏神推挙は蹴った。化けて出ないって言ってるし、腰長と目仁奈も待ってるから。
一気に人数が減った10月。目仁奈の最後のお仕事、鶏魚の能力はどうかな。
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うん、頑張ってくれたなと思う。火は仕方ない。目仁奈の苦手分野だから。
そして、伊良子の子どもが来た。本当は会えるはずだったのに、本当に申し訳ないと思う。
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ど、どう解釈したらいいんだろう…伊良子がいたら何か変わったのかな。いや伊良子がいても「私の子なのに何考えてるのかわかんないのよね!」とか言うんだろうか。
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本当に何考えてるのかわからない顔と、何考えてるのかわからない心だな!と思った。この人の心風は本当に何考えてるのかわからない…何かを考えているのかもしれないし、考えていないのかもしれない…ただ、なんか心水がやけに低い…心水高い伊良子の子どもだけど…おお…?あとちょっと打たれ弱そうというか…
心水は優しさ≒気配りと解釈した。心風は本当に何考えているかわからないけど、心火、心土はほぼ同等で起伏が少なそうというか…そしてこの見た目…自分のことが好きなタイプではないだろうかと思った。そう思ったらなんだか愉快な人に思えてきたぞ。
名前は海蛇(うみへび)。このバーだと壊し屋を継ぐのはちょっと不安かな、と思ったのと、海蛇、鎚とか重い武器持てなさそう~、顔には出なさそうだけど箸より重いもの持ちたくなさそう…という勝手なイメージと、せっかく手に入れたのだからというエゴで、職業は踊り屋になった。似合うよ。踊るの好きそうというか、踊る自分が美しくて好きそう。そしてそのためならきっと努力もしてくれるだろうという希望。
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つよそう。
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で、今月はまた猶予のない交神③茜の交神。兄姉に比べると生まれが後の子だったから少し余裕があるかな、と思っていた。もうない。
茜は交神。訓練をつけられるのが平ちゃんしかいない訳だけど、ここは海蛇に訓練をつけてもらおうかな、と思った。まあ、言うて平ちゃんも初陣明けのペーペーだから復習感覚で気楽に頑張ってほしい。鶏魚は目仁奈に1ヶ月訓練をつけてもらったわけだし、ここは譲って自習をお願いする。
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あわよくば、平宗太世代を最終世代にしたいという願掛けで、日光天トキ様に交神をお願いした。茜も攻撃が伸び悩んでた部分があるから、その優秀な火をぜひお願いしたい。
伊良子の子どもが月光天ヨミ様の子、茜の子どもが日光天トキ様の子なんだなぁ。ここの2ラインの祖は双子だし、少し感慨深いものがある。
11月。鶏魚の自習の成果はいかに。
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まあ、こんなもんだ。ひとりでよく頑張ったと思う。さて、平ちゃんと海蛇のチームはどうなったか。
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ヴォエッ!?教え上手すぎでは…
鶏魚「海ちゃんすご~い!平ちゃん教え上手だね~!」
海蛇「平兄さんが優秀なのか、僕が優秀すぎるのか、わからない…」
平宗太「私も良い復習になった。人に教えるというのも、いいことだな」
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今月は鶏魚が実戦部隊入りしたので、平ちゃんと一緒に初陣。海蛇の面倒は茜に見てもらうことにした。
海蛇「茜さん…安心していいですよ。今月の訓練で僕の優秀さは証明された…大船に乗ったつもりでご指導ください」
茜「早くしなさい」パァン
海蛇「すみません」
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うーん、片や初陣明け、片や初陣。これで地獄巡りは怖すぎる…もうちょっとライトなところに社会科見学に行こう。準備運動みたいなものだから、気楽に行こう。どうせなら景色が良い所がいい。双翼院に行こう(ビビりすぎ)。
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初成長。うーん優しい。
鶏魚「平ちゃん見てみて~。コツ掴んだ感じするの~」
平宗太「的確に大将の頭蓋を撃ち抜く…鶏魚は天下を取る逸材かもしれんぞ」
鶏魚「やだ~!平ちゃん褒め過ぎ~!何もでないよ~!」バシバシ
平宗太「い、痛い痛い」
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パオーン
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鶏魚「……おいたが過ぎたらいけないんだからね~!平ちゃん!目仁奈地獄雨か柳葉魚貫通殺、使いたいな~!」
平宗太「歓喜の舞Cに攻撃を頼むぞ鶏魚!」
鶏魚「……平ちゃんがそういうなら、よ~し!頭蓋撃ち抜いちゃうぞ~!」
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勝った(ビビりすぎ)
その後は準備体操ということでぽてぽて走り回って討伐をして終了。今になって双翼院で欲しいものもなかったので、特にめぼしい戦果はない。無駄かもしれなかったけど、地獄も他も怖かったんだよ…(ビビりすぎ)
鶏魚も初陣が明けて12月。茜が海蛇につけた訓練はどうだったか。
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まあまあいいな。心土がすごくいいあたり、浮足立ってる海蛇を毎度叱りつけながら訓練したのかもしれない。
海蛇「あ、茜さん。僕もう足が」
茜「正座を崩さない!姿勢も猫背だよ!そんなんで美しい踊りができる!?」
海蛇「すみません」
そうこうしてる間に茜の子どももやってきた。平宗太世代最後の一人。どんな子やら。
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男の子か~男女比が腰長世代とは真逆になったな~。そしてハモと同じく、屋根や木に登るのが好きと。
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おっ…イケメンだ。肌と瞳の色が変わったけど、髪の色は茜と同じだし髪型も同じだ(茜は後ろで一つ結びと解釈している)。
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うんうん!良い感じ~。名前は夜光(やこう)にした。由来は夜光貝から。うーん、またちょっと体火は不安が残るけど、体風と体土は良い感じになってくれるかもしれない。全体的に風がすごくいいな。さすが風の神様の子。
性格は、能力値だけ見ると結構平坦なんだけど、バーを見ると結構デコボコしているというか…こいつも心風が高いな…でも海蛇と比べるとバーニングソウルというか。なんか微妙に喧嘩っ早そうというか。高い所好きだし、俺がトップになりたいんじゃないか?(適当)俺が最強最高なんじゃないか?まあバーはあれだけど初期能力値の心だと微量ながら心水が一番高いあたり、根はいい子なんだと思う。落ち着きはなくはないレベルかな、茜の子だけど。
夜光「平宗太!お前じゃここ(屋根の上)まで登って来れないだろ!つまり俺が最強ということが証明されたわけだ!」
茜「恥をかかせないで!このバカ息子!」パコーン
夜光「いってぇ!なにすんだよ母さん!」
平宗太「市井で、母親に反抗的な息子が『うるせーババア』と暴言を吐くところを見たことがあるが…そういうことは言わないあたり、根は親思いのいい息子なのだな」
鶏魚「やだ~平ちゃん人のいいとこ探しが上手~!」
海蛇「僕のことも褒めていいですよ」
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茜はまだ元気。いつもこの家系の子には次世代の面倒を見てもらって、本当にありがたい限り。海蛇の訓練をつけ終わったばかりだけど、今度は息子の訓練をお願いする。
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じゃあ、夜光は茜に任せて。平ちゃん、鶏魚、海蛇で討伐に行く。初陣は明けたし、地獄に行ってみてもいいかな…
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地獄巡り(3ヶ月ぶり2回目)。
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赤い火…!いい武器がほしい。
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海蛇の初成長(初進言は忘れた)。うんうん、何考えてるのかわからないけど優秀優秀。
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これは鶏魚さんの心水が死にかけたことにヒッ…ってなっているスクショ。なんか…なんか大丈夫?サイコパスみたいな成長の仕方してない?大丈夫?
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海蛇「海蛇も獣というところを見せてあげますよ」
鶏魚「ウミヘビって獣~?」
平宗太「わからん、すまんな」
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平ちゃんが梵ピン石猿を使えるようになっていた。腰長様の面影が見えるようになってきたぞ~!逞しいぞ~!
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鶏魚「チッ……調子にのったらいけないんだからね~!」というスクショ
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その手に持っている高そうな槍をよこせ~!という併せのスクショ。
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その手に持っている高そうな槍を手に入れたけど、鶏魚さんのサイコパスみが増していることに恐怖を隠せないというスクショ。
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あああもう無限白波アタックは嫌だ嫌だ増援やめて!
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平宗太「なんとか勝てたが…あのぬるぬるした敵の白波の波状攻撃は厄介だな」
鶏魚「もうずぶ濡れだよ~!も~!あの大将首次会ったら絶対頸椎撃ち抜くから~!」(逃げられた)
海蛇「平兄さんも、鶏魚姉さんも、僕のように冷静になればかわせるのに…」(一番回避した)
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ちくしょうまたか!!
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ヤバいヤバい。
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鶏魚「もう怒ったからね~!!」
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撃ち漏らしに鶏魚が…そして平ちゃんがこんな時に混乱…これはもう…ダメかもしれない。
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あああ……やっぱり……
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ヒヤヒヤしたけど、二人とも無事だった。それにしても、力不足を深く実感した…。武器は結構持って帰ってきたから戦果がゼロというわけではないけど、今いない職業の武器も多かったからな…
もう、本当に1戦1戦気が抜けない。もう最初からクライマックスなんだもの。がんばらないと…がんばらないと…
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foolish20 · 5 years
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星を目指す
 れーじくん(@reyji_1096)のスパイパロ設定をお借りして第4話。前回はこちら  お借りしたよその子:シド・レスポールくん(@chhh_M)、東堂紫音さん(@hixirari)
20XX/01/24 XXX°-XX'.XX’N、XXX°-XX'.XX’E
[作戦概要] 【開示不可】率いる武装集団『青い鳥』の拠点が判明。****連合軍からなる特殊部隊・【開示不可】が襲撃を行い、対象の完全な無効化を達成した。『青い鳥』の中心人物【開示不可】は拠点襲撃時には存在を確認したが、その後の行方は依然として不明。その他構成員については未就学児を含む児童の集団であったことから、人道的理由により、不断の監視を条件に施設への入居を認め、現在に至るまで保護を続けている。作戦に参加した隊員その他の氏名を含む一切の詳細は開示不可とし、情報漏洩が発覚した際には刑法XXX条第X項に基づいて厳正なる対処を行うものとする。――
 呼吸(いき)さえ凍る北国の山岳。R国とB国の境を跨ぐこの山脈に、ぼくらはいた。羽を震わせ、身を寄せ合って巣に潜みながら、春を待っていた。永く来ない春を。  いちいちニュースには乗らないけれど、R国は“常に”周辺諸国に対する侵略行為を続けている。あんな大きな国土を持ちながら、と、四季に恵まれた極東の人間は思うかもしれないが、大地の殆どが不毛の凍土であるあの国が、住処を求めて南下するのは無理からぬことなのだ。彼らの望みは国家というものの興った頃から変わりない。春。春が欲しい。一年を通じて、草木の枯れない土地が、欲しい。  だからといってぼくらが住処を追われる謂れも、無論ない。ここはぼくらの土地だ。決して豊かな土ではないが、ここはれっきとしたぼくらの故郷。だけど、我が国はぼくらを見捨てた。エネルギー供給を隣の大国に依存している我が国は、再三に渡る要求と圧力に対する妥協点としてぼくらを差し出したのだ。正確を期すと、ぼくらの暮らす地域一帯を、XXX人が、実効支配することを黙認した。  無力なぼくらは徒党を組んだ。裏切った祖国と侵略者を相手取り、“主張”を始めた。出て行け。ここはぼくらの故郷。共存を望むなら、先に態度を示すがいい。奪うつもりなら、容赦はしない。  ぼくらの“主張”が民間人――“同郷の”民間人――を犠牲にしたことはただの一度もなかったが、国際世論というものは如何様にでも操作が可能だ。ぼくらは正体不明で神出鬼没の、それも“子供を使う”、極めて悪質で過激なテロ組織、……ということになっていった。心あるジャーナリストはR国の振る舞いも必ず批判したが、ぼくらを擁護することは決してなかった。それは至極真っ当で、当然のことだと思う。ぼくらの“主張”が罪のない市民を巻き添えにしていたことに変わりはない。死んだっていいと思っていた。憎まれるのが筋だ。  やがて、国連が動いた。連合軍を招集し、各国から選りすぐりの兵を集めて特殊部隊を結成した。1月24日、彼らはぼくらがアジトを構える冬山を急襲し、約45分で無力化した。一人も、殺さずに。  あっという間だった。  換気口から突然現れた雪山迷彩の隊員は、一瞬で通路にいる配下の子供たちを制圧した。何が起こった? 全員が床に倒れているが、誰一人血を流していない。スタンガン? いや、それではあの速さの説明がつかない。呆気にとられそうになりながらそれでも慌てて構えたライフルの、銃口を難なく逸らされ体勢を崩す。手が首元に伸びてきて、思い切り壁に叩きつけられた。宙に揚げられた状態で、藻掻く。ソイツは片手でぼくを完全に抑え込んだままフェイスカバーを外し、素顔を見せた。……東洋人? 「手荒な真似をしてごめん」流暢なキングス・イングリッシュ。「君が****・*******か?」  歯軋りした。この野郎、この状況でぼくに“謝りやがった”。暗赤色の目を睨め付ける。彼はいささかも力を緩めず、ただ、微笑(わら)った。 「察しはついてると思うけど、俺は連合軍の兵士だ。普段は英国陸軍にいる。選抜されてこの特別任務に就いたのだけど、時間もないし、簡潔に話すね。俺には個人的な目的がある。俺の目当ては、君だ」  思考が取り残されそうになる。必死に頭をフル回転させ、食らいついた。全く急にも程があるけど、コイツは今、交渉しようとしてる。ぼくに何を? 何をくれる? そしてこんな瀬戸際に追い詰められて足をバタつかせているぼくに、一体何を、差し出せと? 英国陸軍所属の、完璧な英語を操りながら祖国は別であると思しきこの青年が何を企んでいるのか、ぼくには見当もつかなかった。手がかりが無さすぎだ。 「君のことは前から知っている。ニュースを見ていた。斬新な手口にも感心したけど、子供ばかりの隊を率いていると知ってますます驚嘆した、君の統率力は尋常じゃない。素人のガキばっか集めて、一から訓練してこれだけの成果を出せるとは、どんな根性の腐った野郎だと思っていた。ところが、びっくり。なんと子供じゃないか? 作戦概要を聞かされた時、こんなに都合の好い話はないと思った。分かるだろ?」 『……何。全ッ然、分かんないんだけど』 『君が子供なら、』これ見よがしに使った母国語に、あっさりと、返答される。『軍は確実に君を持て余すからだ。持て余すってことは、俺が、利用する隙が生まれるわけだ』 『……利用?』 『そう。有難いことに、君という存在に利用価値を見いだしているのは俺だけだ。そして、だというのに君は、政府(おえらいさん)にとって極めて“始末”のつけにくい存在なんだ。今までてっきり腸(はらわた)のドス黒い大人が子供を使ってテロリズムに及んでいるとばかり思ってたのが、残念なことに、首謀者もまた子供だった。今まで世論が君らを《除くべき悪》と見なしてきたのは、「大人が無垢な子供たちを犠牲にしている」という筋書があったがためだ。とどのつまり政府は話の組み立て方を失敗(まず)ったのさ』  流れに、ある程度の見当がついた。ぼくは尋ねる。 『簡潔に話す、っつったよね』 『うん』 『だったら要点だけをどうぞ。お前は、何が欲しい? そして、何をくれる?』  彼が、笑う。途端周囲の気圧が、急激に上昇しぼくは思わず息を詰める。肺腑に残った微かな息が逃れるように吐かれ、その後は、最早新たに吸う余地はない。柔和な態度に隠れていた、獰猛さが目の奥に透ける。上昇志向。征服欲。ギラギラと、煮え滾る焔。 「いいか。俺はいつまでも、“使われる”立場でいるつもりは無い」  彼の口から吐き出されたのは、彼自身の母国語だった。ぼくが知るはずもない言語。だが熱が全てを悟らせてくる、何を言われているかが分かる、ぼくは否応無く火口に立たされ、熱風に身を嬲られたようなものだった。そして同時に、ぼくは見惚れている。その岩漿に。渦を巻く火焔に。 「私兵が欲しい。俺だけの弾丸(たま)が。他の誰も持っていない俺だけの武器、武力、手段を、あるだけ揃えたい。“使う”のは俺だ。俺が欲しいのは一個の完全な兵士。それは自立していなければならず、そして俺だけが自由に、いつでも、扱うことのできる駒でなければならない。いくら良い臓器良い手脚を揃えたって頭がポンコツじゃお話にならない、まずは頭脳だ。頭が望む手脚を揃え、臓器を揃える。そいつが一番イイ」  ああ熱い。熱い。灼けそうだ。全身が熱され、舞い飛ぶ火の粉に、肌が、髪が、チリチリと焦げて、きな臭さが鼻を突く。身体ごと融かされそうな予感にぼくの背は竦む。けどその脅威に、不思議と、惹かれる。 「何を遣るか? お前の欲しいもの全て。安全な巣を用意しよう。誰にも奪われない故郷(ホーム)で、お前とお前の同胞たちが暮らす未来を担保してやるよ。お前の欲しいモノをくれてやる。お前の戦争(たたかい)の目的を俺が達成させてやる。だから、」  顔が迫る。一瞬、喉元に、喰らい付かれる錯覚が過ぎる。爛々と赤い眼光は闇の底に閉ざされたまま、それでもその閃きが、どうしようもなくぼくの目を、――射る。
「俺の、武器になれ。《革命家(イレギュラー)》」
 ぼくは悟った。きっとぼくのことを、ぼく自身以上にうまく扱えるのだ、この人は。……いや、というより彼は、ぼく自身には決して用意できない船を組み立てられる人。ぼくが自ら拵えた船はあまりにも脆すぎて、向こうの島へさえ行けなかった、だけどこの人が用意する船を繰ればぼくは地の果てだって見れる、……ぼくの今までの自負とプライドを、この人に賭けてみても、いい。青い小鳥の羽じゃあなくて、鋼鉄の翼をくれるなら。  飛んでやる。行きたかった場所まで。 「乗った。……貴方の賭けに、賭けよう」  お名前は? 尋ねた僕を、壁に磔にしたままで彼はまた微笑した。顔を離しつつ、ほっとしたふうな、柔らかな笑みを浮かべてみせる。実際、ほんとにほっとして、心からの表情を浮かべたのかもしれない、分からないんだ。彼の挙動はぜんぶがぜんぶ演技なわけではなく、そしてまた、ぜんぶがぜんぶ本当でもない。常にそういうグレーゾーンに身を置いていて判断がつかない。けれどそう、……僕が見惚れた、あの岩漿は本物だった。彼の内奥に煮え滾る溶岩。あれが彼の星。見たことがあるのは、広い世界でも僕だけのはずだ。彼の恋人だって沢霧さんだって、彼の野望の熱を素肌に感じたことはないだろう、以降彼は軍服を脱いでテーラードのスーツを羽織り、文官の世界に生きるようになる。僕は『安否不明』となり、別の名前と籍をもらって彼と共に英国へ渡った。その後のことは、ご想像にお任せ。 「俺の名前は、蔵未孝一」僕の“上司”となる人は、そうシンプルに答えた。「よろし��、【青い鳥】」
 申し遅れました。僕こそは、秘密諜報機関《H.O.U.N.D.》のリーダーにして、庶民院議員・蔵未孝一の秘蔵っ子、――東堂紫音。あ、戸籍上の繋がりはないけど、姪ってことになってるらしいよ?
「血縁関係は無理がある。第一、髪色が全く違う」  二丁の愛銃を慎重に組み上げながらそう彼女、――彼、は言った。すっきりとした顔立ちに控えめな化粧を施し、ロングヘアのウィッグを被って青いドレスを纏った彼は、どこからどう見ても“彼女”であるが、まだ隠していない喉仏から発される声は男のそれだ。彼の背後でデスクに座るアンバランスな前髪の少年(かれ)は、その赤い髪を指で摘む。 「エー、そう? 黒染めすりゃイケる?」 「イケない。髪色だけでなく目も骨格も、俺とお前が赤の他人であることを雄弁に語っている。それから大前提としてお前は潜入に向いてない、お前といると確実に予想もしなかったトラブルが起こり非常に混乱した現場となる、他の任務ならまあいいが潜入で一緒になりたくはない」 「オレのせいでトラブルになるわけじゃないじゃん!? トラブルの��うからこっち来んだって」 「結果的には同じことだ。縁起が悪いのでご遠慮願う」 「チェー」  ボスから告げられた最重要案件、——〈愉快な友人(シド)〉流に言えば“デカいヤマ”——とは別の、先にこなしておかねばならない任務があり、カーティスは準備のために技術課を訪れていた。ちょうど研究員はみな別棟の研究室(地下を経由しなければ辿り着けない仕組みとなっており、来訪の際は無線で一つ連絡を入れ、《女王》の了承を得る必要がある。《女王》とはすなわち彼の弟、アーネスト・シザーフィールドである)に呼び出されて出払っており、なぜか《女王》に毛嫌いされている赤い髪の少年が留守を預かっているのだった。元より申請済みの装備を取りに来ただけだった彼は、技術課の留守を同じ諜報課の蠍(ピピリ)が預かっている事実に首を傾げはしたものの、特に気にはせず準備を始めて、今に至る。 「あ、あ!」と、彼がはしゃいだ声をあげた。 「じゃあさ、恋人役ってのはどう? ノミの夫婦になっちゃうけどさあ、エスコートくらい身につけたぜ?」  カーティスは脛に仕込んだバンドにナイフを三本収納していた、その手を止めて、彼を見る。整った顔には愛嬌がなく、黙って見つめているだけで十分「冷ややか」に映るのだった。彼の顔には次第に焦りと誤魔化し笑いが滲み始め、その機を見計らったかのようにカーティスは言った。 「なら、聞くが」  ピピリの肩がヒョッと上がる。カーティスはカツカツとヒールを鳴らしまっすぐに彼の前までやって来ると、その傍らへ片膝を載せて、覆い被さるような形で彼の顎に白い手を添えた。キスでもするように持ち上げる。弧を描く唇。意地悪い、笑み。 『坊や。私があなたみたいな“チェリー”の相手、すると思う?』  耳朶を打ったのは、凛と涼やかな女性の声だ。そのまま顎を撫で、パッと“彼女”は身を引いてまた作業台へ戻っていく。チョーカーをつけ、喉元を隠す。 「わざわざ目立つ組み合わせにして何になる? 無駄なあがきはよせ」  触れられた顎に手を遣りながら、ピピリはへへ、とゆるく笑った。 「でもデスクワーク飽きちゃったんだよ。何とかして外勤できない?」 「書類を持って向かいのスタバにでも行ったらどうだ」 「ジョーダン。機密書類」 「ま、VRでも使って気を紛らわすんだな。行ってくる」  実に小さなハンドバッグの細いチェーンを肩にかけ、カーティスはゆらゆらと後ろ手を振った。去ってゆく背中に、不満げな視線を投げつつピピリもまた手を振り返す。VRかあ。《女王様》が最近持ち込んだ試作機(プロトタイプ)の中にその手のが何かしらあった気はするが、勝手に作動させたりしたらどんな目に遭うか知れたものではない。ところで、みんなはいつ戻るんだろう。もしかしてオレずっとお留守番?  溜息が、鼻を抜ける。彼の退屈な1日は、まだあと九時間も残っている。
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nemurumade · 7 years
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夜明けを迎える/英智×レオ
王さまと皇帝の最期、そして始まり
※過去・卒業後捏造
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 瞼の裏側の暗闇に光が差して、意識が浮上する。窓の外でウグイスが囀っていた。隣からは規則的な寝息が聞こえてくる。寝がえりを打って、彼と向き合う。長い睫毛は伏せられたままだ。  まだ五時を回ったばかりである。彼を起こさないようにそっと布団を抜け出して、寝室を後にした。冷え切った廊下の床が、ふたり分の体温を共有していた足の指を冷やす。寝ぐせだらけの長い髪を掻きながら、階段を下り、渡り廊下を渡って離れに向かう。  和室に不釣り合いな、年季の入った茶色いグランドピアノ。その前に座って、朝の一曲を弾く。それが昔からの習慣だった。  彼が起きるまで、レオは鍵盤を叩く。そして静かに歌を口ずさむのだ。  英智とレオが暮らし始めて、二日目の朝が来た。
 やかんが鳴って、お湯が沸いたことを知らせる。そのお湯をポットに注がれるのを見つめる。手慣れている。ただ、和室に陶器製のティーポットは驚くほど似合わない。先ほどまで弾いていた離れのピアノを思い出す。  「起こしてくれたっていいじゃないか」 おはよう、の後の二言目はその文句だった。レオは自分で焼いたトーストを齧る。 「まだ七時だぞ、別に寝坊じゃないだろ~」 「そうだけれど」 不服そうにしながら、英智がレオの前の椅子に腰掛け、レオが焼いておいたトーストにマーマレードを塗る。そして香りの良い紅茶を入れて美味しそうに啜った。 「あぁ、そういえば、あのピアノ、気に入ってくれたみたいだね。ピアノの音色で目が覚めたんだ」 かちゃん、とティーカップが心地良い音を鳴らす。英智の入れた紅茶をごくごくと飲み干して、 「べっつに~、ただの暇潰しだよ」 「もしよかったら君にあげるよ」 「遠慮しとく」 「処分するのはもったいないしなぁ」 美味しい? と首を傾げて彼が問う。その仕草がやけに愛嬌があって舌打ちをする。 「おれはコーヒー派なの~」 「君とはとことん気が合わないねぇ」 そう言いながらも楽しそうにクスクスと笑って、また紅茶を飲む。  レオは紅茶の味を消すように、口の中で舌を動かした。
 二日前、レオたちは夢ノ咲学院を卒業した。  卒業式で使われた、何度も立った戦場の講堂は粛然としていた。戦いのときのような熱はない。  卒業証書を受け取るためにステージに上がったとき、夢を見た。スポットライトと鮮やかな七色のサイリウムの光、客席から贈られる歓声とマイクを通して響く歌声、自分が作った音楽。  おめでとう、という校長の声と温かい拍手で目を覚ます。両手で受け取った紙切れ。自分の名前、今日の日付、卒業証書の文字が綴られている。  あぁ、こんなものでおれの三年間を顕そうだなんてくだらない。霊感を喪失してしまう。 そして、虚しい感情を抱く。 あの夢をもう見ることはない。そう、思った。
 窓から蕾のままの桜が見え、その背景の澄んだ青色の空は偽物じみている。やはりここは箱庭のようだった、と青春を捧げた学院の廊下を歩く。得たものも失ったものも数え切れない。レオは、この学院で栄光と挫折を知った。  拳で扉をノックする。はい、と涼やかな声が聞こえた。  レオから幾つも大切なものを奪い、与えた、かつての敵の本拠地、生徒会室の重い扉を開ける。  「やぁ、月永くん。来てくれたんだね」 玉座のような椅子に腰掛けた天祥院英智が穏やかな微笑を浮かべてレオを迎え入れた。  「一体『皇帝』さまがおれに何の用?」 「『皇帝』呼びは止してくれないかい。今日僕らはこの城から出るんだから」 「はいはい」 独特の言葉選びをする彼は、愛おしそうにレオを見る。  「素晴らしい青春だったと思わないかい?」 「……」 彼の手には、レオも受け取った卒業証書がある。レオがそれを見ているのに気づいたのか、くるくると丸めて筒に入れた。  「でもまだ味わい足りないんだ」 「何が言いたい?」 椅子から立ち上がって、レオの前に立つ。血管が透けて見えるのではと思うほど、彼の肌は白い。  世界を覆う空と同じ色の瞳が、レオを見据える。  「僕と一週間、一緒に過ごしてくれないかい?」 「はぁ?」 素っ頓狂な声が部屋に響いた。レオの驚いた顔に満足したかのように英智が微笑む。 「僕と一緒に暮らそうってことだよ」 「あ! なんで言っちゃうんだよ! 妄想しようとしてたのに~!」 「時間が無いんだよ、この後桃李たちと会う約束をしているからね」 「一緒に暮らすって何だよ、絶対嫌だからな! 大体、ユニットのやつとお泊り会すればいいだろ~、何で、」 「月永くんがいいんだ」  レオの言葉を遮った彼の顔からは笑みが消えていた。いつの日かにも見た、真剣な眼差し。それが嫌いだった。何もかも見透かされてしまうような気がして、レオは目を逸らす。 「……君が、いいんだ。無理なお願いだとは分かってる。でも、どうしても君とふたりきりで、最後を過ごしたいんだ」 最後、という言葉に静かに息を吐く。  「今日が最後だろ」 「僕の悪足掻きに付き合ってほしい」 「みっともない」 「そうだよ。みっともない僕に君の時間を分けてくれないかい」 く、と瞳が歪められた。  心の中で自嘲する。  「……分かったよ。おまえのお遊びに付き合ってやるよ」 何を言ってもこの男には通じないだろう。  春の光の中の『皇帝』は、嬉しそうに、その反面どこか寂しそうに、また微笑んだ。
 そうして次の日の夕方。ふたりは電車に一時間、バスに十五分揺られて、山の麓の郊外に辿り着いた。  田んぼに挟まれた道を走っていく乗客の少ないバスを見送って、英智は息を大きく吸った。 「ここの空気は相変わらずいいね」 レオはぐるりと辺りを見渡した。古民家が建ち並び、畑や田んぼがその周りを囲んでいる。夢ノ咲周辺とは全く違う風景に唖然とした。田舎だ。  「行こうか」 英智はすたすたと畦道を歩き出す。レオも彼に続いて歩く。  緩やかな坂道を上ったところに、大きな日本家屋があった。塀や門は高く、持ち主が裕福であるということは一目瞭然だ。ふと目に入ったのは、門の横にある『天祥院』の表札だった。  門をくぐり、庭園を抜け、英智は鍵を開けて玄関の戸を引いた。  「……ここ、お前の家なの」 「正確には、僕の祖母の実家だよ。もう誰も住んではいないけれど、所有権は父にあってね。幼い頃は長期休暇のときに療養を兼ねて、ここで過ごしていたんだ」 だだっ広い玄関から長い廊下が見えた。どうぞ、と促されてレオも家に上がる。 「最近は来る機会もめっきり減ってね。もったいないから売りに出すことが決まっているから、最後の思い出にと思って。でもひとりじゃ寂しいからね、君を誘ったんだ」 「おれじゃなくても良かったんじゃないか」 警戒心を露わにするレオに、ふ、と英智は穏やかに笑った。 「君は妄想が得意だろう?」 そうとだけ言って、先に行ってしまう。  まだ『皇帝』のマントを羽織っている彼の背中を追って、廊下を歩く。障子や襖で仕切られた広い和室がいくつもあった。  「ここが居間だよ」 庭に面した一番広い和室には、立派な卓袱台や背の低い箪笥が置かれているだけで、他に目立つ家具はない。  その奥には台所があり、横の部屋には囲炉裏があった。 「囲炉裏って初めて見たぞ、おれ」 「今日は冷えるし、囲炉裏を囲んで食べようか」 「おまえ、料理作れんの?」 「人並みには」 「“英才教育”ってやつ?」 「うん。でも幼い頃は大体寝込んでいたからねぇ、ほんの少ししかやっていないよ」 昔よりはマシになったのだろうか、なんて考えながら、二階へ向かった。  幾つかの和室が廊下沿いに並んでいて、古き良き旅館を連想させた。  英智が立ち止り一つの部屋の襖を開ける。 「君の寝室はここね。好きに使ってくれていいよ」  埃臭さに堪らなくなって開けた窓から、まだ雪が残る壮大な山が見えた。それだけで霊感が湧き上がってくる。レオの顔を覗き込んだ英智が微笑む。 「気に入ってくれたみたいで良かったよ。布団は押し入れの中だから。あ、ちゃんと洗ってあるから安心して。来る前に使用人に頼んでおいたんだ」 「はぁ、御曹司は好き勝手やりたい放題だな~?」 「我儘は幼い頃よりは減ったと思うけどな」 「そうかぁ?」 胡散臭そうに英智を見れば、何だい、と首を傾げる。昔より柔らかい表情になったとは思う。  「ちなみに僕は隣の部屋を使うから。寂しくなったときに来たらいいよ」 「誰が行くか」 「冗談だよ」 甘やかなトワレの匂いが離れていった。隣室へ向かった彼の残り香を消すように窓を全開にした。
2
 寒い、と、朝食後レオを散歩に誘った彼が言う。 「そりゃあ山だしな。学院の方よりは冷えるだろ」 朝独特の薄青の空が広がっている。三月とはいえ、山の麓の朝方は冷える。夜の残り香のような寒さに、レオはダウンのフードに顔を埋めた。  それを見た英智が長い睫毛を伏せる。 「……なんだよ」 「ううん、なんにも」 そう言ってはぐらかして、レオより数歩先、坂道を上っていく。  あの伏せ目は昔から変わっていない。言葉を濁すとき、いつも目を伏せた。彼の言いたいことはいつだって解らなかった。  「月永くん、はやく」 そう急かされて、歩みを進める。寒い。そう呟いた声は音にはならず、ただ白い息となって消えていく。  坂道の上に、小さな神社があった。鳥居の前に開けた場所があって、展望台のように町を見下ろすことができた。  畑や田んぼの緑の中に、ぽつぽつと民家の屋根の色がある。遠くには空とは違う青が広がっていた。英智が指差す。 「晴れた日は眺めがいいんだ。ほら、海が見える」 「この町に海はないだろ」 「うん。一駅先のところは港町だよ。カモメの声がよく聞こえて、潮の匂いがして、夢ノ咲に少し似てるかもね」 まぁ、田舎だけれど。そう付け加えて、英智は目を細める。  「……帰りたい?」 「どこに」 海を見つめたまま、レオは強い口調で訊いた。英智は何も言わなかった。 「……帰る場所なんてもうない。これから自分で作るんだ」 「君らしい答えだね」 そうして目を伏せて、また眼下の町の方に体を向けた。  「歌わないの」 「歌わない」 即座に答えれば、 「残念だなぁ」 という返事が帰ってきた。それが本当なのか嘘なのか。この男が嘘を吐いたことはない。きっと本心だろう、信じたくはないけれど。  彼の細い喉から歌が奏でられる。聞き覚えがある気がした――――学生時代の、あのステージで歌っていた曲だ。  アカペラの方が声の質や大きさが引き立っていると思った。爽やかなバラードが鼓膜を震わす。  抗争時代のときのような、荒削りさは感じない。  鋭い声が嫌いだった。だからと言って、この、角が取れた丸い声が好きなわけじゃない。  けっきょくこの男の声が嫌いなのだ。  名前も知らない凡才が書いた曲を、かつての『皇帝』は歌う。
 「せっかくだしお賽銭していこうか」 そう言ってコートのポケットから革の財布を取り出す。まさか万札を投げ入れるのでは、とレオは身構えていたが、英智が取り出したのは穴の開いた硬貨、五円玉だった。  「というか、おまえと神社が驚くほど似合わないんだけど」 「そう?」 レオも彼に倣ってポケットの中で小銭を探す。  鐘を鳴らし、硬貨を投げ入れる。レオが投げた硬貨を見て、英智が言う。 「十円玉は良くないんじゃないのかい」 「五円玉が無かったのー。いいだろ、金額なんて。縁があるときはあるし、ないときはないって」 二拍手して、目を閉じる。  願い事をして瞼を開ければ、英智がレオを見つめていた。 「ずいぶんと熱心にお願いしていたみたいだね」 「べつに、願い事じゃない」 石畳の上を歩き出す。レオのスニーカーと英智の革靴の底がコツ、コツと音を鳴らす。  赤い鳥居を潜りながら、英智が問う。 「君、神さまはいると思うかい」 「まぁ、いるんじゃない。だからおれは天才なんだし」 「神に愛されている、って?」 「まあな」 ふ、と英智が笑った。 「よかった」 その言葉の意味が理解できず、レオは首を傾げた。  「……いないなんて言われたら、僕は君を殺したかもしれない」 英智が鳥居の前で立ち止まる。吹いた風に、木の葉と木漏れ日、ふたりの髪が揺れた。 「君に八つ当たりして。……そうだなぁ、君をそこの柵から突き落としたかもしれない」 「絶景を見ながら死ぬわけだ」 強気に冗談を返せば、英智は嬉しそうにゆったりと微笑んだ。 「今さらだ。おまえは一度おれを殺しただろ」 「そうだねぇ」 謝る気も、謝らす気も、お互いさらさらないのだ。  寒いね、と英智が言う。そうでもない、とレオはフードに顔を埋めながら答えた。  神社を背に、坂道を下っていく。  「そういえばさぁ」 と、朝から思っていたことを口にする。 「賽銭するのもそうだけど、『いただきます』、『ごちそうさま』を言う印象もなかったんだけど」 英智はレオの横を歩きながら答える。 「躾けられたんだよ。あの説教好きな彼にね」  あぁ、と納得した。いつだか腐れ縁だと聞いたことがある。対極にいるようなふたりだが、逆にそれが長い付き合いに結びついているのだろう。 「昔からお小言ばっかり言われたよ」  昨日の夜、英智のスマートフォンが震えていたのをレオは知っている。その着信相手が彼だということも。  出ないのか、なんて野暮な質問はしなかった。理由があるから、黙ってあの箱庭がある街を出てきたのだ。  なぜ英智がレオを連れてこの町へ来たのか。  訊きたいことは多いのに、その問いを口にすることはできない。  遠くの海が陽の光にきらきらと光っている。
 夕方、離れに置かれたピアノの前に座り、鍵盤に触れる。  生まれてはすぐに朽ちていってしまうメロディーを音符で形にしていく。忘れることのないように、奏で続けられるように。  外から入る僅かな光に、宙に舞った埃がきらきらと輝く。  ふ、と背後に気配を感じた。その腕が伸びてくる。  細いヘアゴムを取られて、束ねていた長い髪が広がった。その髪に指が触れる。 「……ねえ、退屈だよ」 「そうか」 短い返事をしながら音符を書いていく。  つまらなそうに溜息を吐きながら、ふと英智が床に散らばった楽譜を拾い上げる。咎めているうちにメロディーが消えていってしまう。レオは楽譜に音符を書き込むことに夢中だった。  「ね、月永くん」 英智がレオの耳元で囁く。ぞわ、と鳥肌が立って振り返る。穏やかな微笑を睨み付けた。 「この曲、ひとりじゃ弾けないだろう?」 彼の手にあったのは、先程書き上げたばかりの楽譜だった。連弾の、曲。  何も言わないレオをよそに、英智は部屋の端に置いてあった椅子を引き摺ってきて、レオの座る椅子の横に並べ、腰掛けた。  そして、その長い指が鍵盤を叩く。  挑発的な流し目がレオを見て、そして重みのある深い音色を奏で出す。  ぞっ、と背筋に寒気が走る。ステージに立っていたときと似ている。痺れるような闘志。  レオも負けじと鍵盤に触れる。  「……最高だよ、その目」 熱い視線がレオを貫く。  あぁ、最高だよ、おまえも。  そんでもって、最悪だ。
 息が上がる。首を絞め続けられるような感覚。  声を嗄らして歌い叫び、足が縺れるまで踊って、主張しろ。王はおれだ。誰にも奪わせない。  おまえなんかに、おまえなんかには絶対渡さない。  おれの居場所だ。  セナがいて、リッツがいて、おれがいて、三人で築いて守っている唯一の城なんだ。  純白の衣装を纏った彼らが、微笑を浮かべる。  目の前の、サイリウムやスポットライトの光が、彼らの白が、唇をきつく噛んだセナと、舞台の上に座り込んだリツの後ろ姿が、霞む。  スクリーンに映し出された映画を観ている客の気分だった。自分事に理解できずに、レオはただ戦場の地に立っていた。  そんなレオの前に、美しい少年が一歩踏み出す。その視線に、呼吸が上手くできなくなる。力が抜けてマイクが手の中から滑り落ちた。  「……『Knights』の『王』、月永レオ、」 彼の低い声が静かに告げる――――『王』の、死を。  「このゲームは、君の負けだ」 まるで死期を伝える天使に似た、無垢な残酷さで、おれを見下す。青い瞳には勝ち誇った光が爛々と輝いていた。  衣装のマントが、目の前で翻される。  客席から沸く歓声は、騎士たちへのものではない。  「ありがとう」 優雅に辞儀をする、絶対王者――――『皇帝』へのものだった。  あぁ、そうか。おれは、負けたんだな。  そう理解した瞬間、すべてが音を立てて崩れ落ちていった。  なにを見ても、なにを聞いても、もう音楽は湧き出てこない。  おれはもう、『王』ではいられないのだ。  『皇帝』は歓声の中、仲間を引き連れて舞台を降りていく。スポットライトが消えると同時に、観客たちも会場から立ち去っていった。  「……『王さま』、」 息が整わないままの凛月を支えた泉が、レオを見つめた。澄んだブルーの瞳が、ゆらゆらと揺れている。凛月の漆黒の髪から雫が滴り落ちて、ステージの床を濡らした。  あぁ、なんて、情けない。 「……先に、行っててくれ」 ふたりから目を逸らす。泉は何か言いたげに口を開こうとしたが、躊躇ったように唇を結んだ。そして、 「わかった」 そうとだけ言って、凛月の細い身体を支えながら舞台袖に消えていった。  先ほどまでの熱は既に冷め切って、短い夢のようだった。  空っぽの、がらんどうのステージに、たったひとり。  初めての、敗北だった。 「あああぁああああっ、あああああああああぁぁぁっ!!」 引き裂かれた喉を、さらに壊すように号哭した。  痛い、痛い。死んでしまいそうなのに、殺してはくれない痛みにただ叫ぶ。  救ってくれ。赦してくれ。おれの居場所を、返してくれ。  リツとセナと生んだあの熱を、返してくれ。  「っ、は、ぁっ、はぁっ、はぁっ、」 自分の荒い息の狭間に、彼の歌声を思い出してしまう。  繊細かつ大胆、聴く者すべてを魅了する、完璧な声。  その凶器を首筋に宛がわれて、レオは竦んだ。  ――――君の負けだ 歪められた青い瞳に映った自分の表情さえも、しっかりと憶えている。  「あぁ、そうだ、おれの負けだ!」 レオの、最後の叫び声が反響した。  今度は、ぜったいに、おまえを殺してやる。この苦しみを、おれが味合わせてやる。  憎しみに燃えて、そうして、意識を手放したのを、今でもはっきりと思い出すことができる。
 英智が風呂に入っている間に、グリルで鰆を焼き始める。午後に行った魚屋で買った旬のものだ。予熱したグリルの中に二切れ並べる。やかんに水を入れ、火にかけてお湯を沸かす。  英智が上がるころには焼けるだろう、とレオは居間の押し入れの戸を開ける。昨日、この中にいいものを発見したのだ。  押入れの中の本棚に並んだたくさんのアルバム。それを手に取って、ページを捲る。  古いカメラで撮ったような写真が、きっちりと整理されていた。  写真の中で、今と変わらない色の瞳がレオを見つめた。  「月永くん」 後ろから声がして、レオは振り返った。  居間と廊下を隔てる障子から、 「上がったよ」 と、英智が上気した顔を覗かせた。そしてレオの手元を見て、目を丸くする。  「ああ、こんなところにあったんだ」 勝手に見ていたことを咎めもせず、レオの隣に座り、一緒にアルバムを覗き込む。ふわ、とフローラルなシャンプーの匂いがした。  「祖父が写真好きでね。よく撮ってくれたんだ」 「ふぅん。それにしても、ずいぶん不機嫌そうな顔ばっかりしてるな」 「はは、うん。この頃の僕には可愛げがなかったからね」 「安心しろ、今もないぞ」 「ひどいことを言うね」 楽しそうに笑いながら、次々と写真を指差していく。  誕生日のときの写真。小学校の入学式の写真。敬人の家の寺で撮ったふたりの写真。風邪を拗らせて入院しているときの写真。大きなアイリッシュ・セッターと寄り添って寝ている写真。小学校の卒業式の写真。  「……おまえ、泣けるの?」 英智の声を遮ったレオの問いに、英智は彼の指先の写真を目に止めた。  子ども用の黒いスーツを着た三歳くらいの英智の写真だった。その瞳には涙が浮かんでいる。 「ああ、さっきの写真に写ってた犬が死んでしまった時のだよ。庭で葬式をしたんだ」 他のページを捲れば、愛犬との写真がたくさん貼ってあった。 「ドナートって名前だよ。僕が生まれる前から飼っていたから、先に死んでしまうのは当たり前なんだけどね。すごくショックだった。余命宣告を繰り返しされていた僕より、なぜ元気だったドナートが先に死んでしまうのか、理解ができなかった。それと同時に、死ってこういうことなんだ、とも思ったけれど」 「このあと、動物飼ってないの」 「うん」  まだ子どもの頃に、自分にもいつかやって来るという死を目の当たりにしたのだ。恐怖でしかなかっただろう。  「……なぁ、怖いか?」 そう問えば、ゆっくりと英智が顔を上げた。落とせばすぐに壊れてしまう、丁寧に拵えられた美術��のようだと思った。  英智は、何が、とは訊かず、ふふ、と花が綻ぶように笑った。でもどこか憫笑じみたそれに違和感を覚える。 「怖い、って言ったら、君は僕を救ってくれるのかい?」  何も、言えなかった。  レオの返事を待たずに、英智はゆっくりと立ち上がる。  お湯を沸かしていたやかんとタイマーが鳴った。 「片付け、しておいてね」 そう言い残して、台所の方へ消えていく。その後ろ姿を見送って、レオはアルバムを集めた。  あいつを救えるのは誰なんだろう、と考える。  いただきます、ごちそうさまを教えた、彼の幼馴染か?  彼の左腕の道化か?  彼を心底愛している両親か?  それとも、彼に壊されたおれか?  答えの出ない問いを呑み込む。年季の入ったアルバムを閉じ、押し入れの中の棚に戻した。
 英智は湧いたお湯で味噌汁を作っていた。台所にその後ろ姿は、やはりどうも似合わない。  その間に、レオは丁度良く焼けた鰆を皿に移し、炊いておいたご飯をよそう。  囲炉裏の前に皿を並べていると、いつものように英智がラジオをつけた。ノイズ混じりにニュースが聞こえる。  いただきます、と手を合わせて食べ始めた。  「美味しいねぇ」 と、英智が笑う。  レオは頬杖をついて、鰆を噛みながらじっと目の前の男を見つめる。  彼の持った箸が鰆の身を裂いて、彼の口元へ運んでいく。開いた薄い唇の間の闇に消え、英智は静かに咀嚼した。  だれかの命を喰らって、生きている。  彼もまた、人間なのだ。  「……そんなに見つめられると食べにくいんだけどなぁ」 英智が苦笑しながら言う。 「顔に何か付いているかい?」 「あぁ」 右腕を伸ばして、英智の口元に触れる。  親指で下唇をなぞれば、柔らかい感触が神経を刺激する。  彼の唇が微かに、ゆっくりと開き、赤い舌が覗いた。滑らかなそれは、応えるようにレオの指に触れた。  誘うような目と同じくらい熱い、味を感じるための舌。  並びの良い、命を引き裂くための白い歯。  消化を手伝うための唾液が、唇から零れて一筋伝う。  据え膳食わぬは男の恥、とは言うが。  レオが指を離そうとした瞬間、彼の白い歯がその指を思い切り噛んだ。 「痛っ!」 「……食事中に欲情する君が悪いんだよ」 「欲情……っ、なんて、してないから!」 くっきりと歯形の残った親指を庇いながら、英智を睨めば、彼は楽しそうに笑う。 「早く食べないと、せっかくの食事が冷めてしまうよ」  そう言って、彼は何もなかったかのように食事を再開する。  レオももう一度箸を取り、鰆とご飯を口に運ぶ。  目線の先の汁椀の中で、冷め切ったお湯と味噌が分離している。右手で持った箸で掻き混ぜてその境界線を消してから飲み干した。冷めたそれは、ちっとも体を温めてくれない。  ラジオでは、天気予報士が今週の天気を知らせていた。
 布団を敷き終えて、ふわぁ、と大欠伸をしていると、 「もう寝るのかい?」 と、なぜかパジャマの上にセーターを着た英智が問う。 「おまえは寝ないのかよ」 「うん、ちょっといい所に行くんだ」 「いいとこ?」 小首を傾げるレオに、英智は窓を開けた。 「分かった、屋根の上だろ」 ふわ、と夜風が部屋の中に入り込んできた。  その窓の前に立ち、微笑んだ英智の髪がさらさらと靡いた。 「大正解」  屋根の上に干してあったらしい下駄を履いて、窓から屋根の上に出る。西洋人じみた顔立ちと高級ブランドの寝間着に、不釣り合いな下駄が小気味良い音を立てた。 「月永くんもおいでよ」  子どもみたいにあどけなく笑う男に、深い溜息を吐く。  そして渋々毛布を担ぎ、押し入れの中にあった足袋と下駄を履いて、彼の後を追って窓から出る。棟に腰掛けた英智に毛布を被せると、 「ありがとう」 と嬉しそうに微笑んで、レオの手を引いて自分の隣に座らせた。そしてレオの肩にも毛布を掛ける。  「綺麗だろう?」 まるで自慢の宝物を紹介するかのようにそう言った。  星屑が散りばめられた濃紺のビロードの空が、世界を包んでいる。  「小さい頃ひとりで、こっそりこうやって屋根に上がって星を見ていたんだ。本当は誰にも教えるつもりは無かったんだけど」 すぐ傍で、英智の声が聞こえる。呼吸が聞こえる。 「……おれに教えていいのかよ?」 この夜空は、本当に英智だけのものだったのだ。  英智は楽しそうに笑う。 「ここにいると自分も宇宙に居られるみたいに感じられるから、君も気に入ってくれるだろうと思って」 宇宙が好きだろう?  そう問われて、あぁ、と肯いた。  何億光年も昔に放たれた光が届く。今この瞬間も、宇宙のどこかで爆発が起きている。生まれ、滅んで、数えきれない光が走っている。  おれの書いた曲もそうなればいい。おれが死んでも、曲は生き続けて誰かに届けば、おれは死んでも幸せだ。  とは、言わなかった。自分の幸せをこの男に語っても、彼にとっての幸福の概念はちっとも変わらないだろう。  英智を変えたのは、レオではないのだ。  「……うん、大好きだ」 隣で、良かった、と英智が言う。彼がどんな表情をしていたのか、レオは見なかった。  「……ね、手繋いでいい?」 拒否はしなかった。そっと手が伸びてきて、レオの手に触れる。自分の体温を移すようにその手を握ると、英智は微かな笑い声を上げた。  「寒いねぇ」 「もう部屋入りたい」 「あと一分」 いーち、にーい、さーん、とカウントし始めると、英智も一緒になって数えた。  冷たい夜風が二人の頬を撫ぜた。
 「そういえば、なんでおまえもおれの部屋で寝てるんだっけ?」 朝訊こうと思って忘れていた問いを、布団に入り込みながらぶつける。隣の布団に入った英智が寝がえりを打ってレオの方を向いた。  常夜灯のぼんやりとした光の中で彼の笑った顔が見える。 「本当はそんなことどうでもいいと思ってるだろう?」 「はぁ?」 「朝に思ったはずだよ。でも今になるまで何も言わなかったから、どうでもいいんじゃないかなって」 図星、なのかもしれない。確かに、隣の部屋で寝ようが、すぐ隣の布団で寝ようが、どうでもいい。 「そうかもな」 そうとだけ答えて、英智に背を向ける。  ねぇ、月永くん、と呼ぶ声がしたが無視した。すると彼の足が入り込んできて、レオの足に触れた。 「冷たっ!」 思わず足を避けると、さらに追いかけてくる。ゆえに、レオと英智の距離も縮まる。  「おい!」 振り返れば間近に端正な顔があって、驚いて息を呑む。  「月永くん、あったかいから」 足を絡められて動けなくなる。氷のような冷たさがレオに伝わる。 「……裸足で外になんか出るから」 「ふふ」 「ふふ、じゃないし。霜焼けになっても知らないからな!」 「うん、おやすみ」 その言葉を最後に、英智は何も言わなかった。少し経って、規則的な呼吸音が聞こえてきた。  レオの熱が伝染したのか、それともレオの熱が奪われたのか、英智の足は徐々に温まっていった。
3
 三日目。  電車に乗って、ふたりは隣の海辺の町へ来た。  英智の言う通りだった。カモメの鳴き声があちこちからして、潮の匂いがして、海が煌めいている。  海風が前を歩く金色の髪を揺らした。  けれど彼が羽織っているのは、あの紺のブレザーではない。質の良い茶色いコートの後ろ姿を見つめながら、彼についていく。  一日この町を回ろう、という提案をレオは拒否しなかった。  家屋の間の細い石畳の道を歩いていく。  英智が足を止めたのは、古めかしい建物の前だった。扉の上の看板には『潮風劇場』の文字が刻まれており、懐かしい匂いが漂っている。 「映画でも見るかい?」 「ここ映画館なの?」 「そうだよ。単館上映の映画を多く上映してるんだ。意外と面白いよ」  中へ入って、英智が選んだ映画のチケットを買う。ロシアの監督の作品らしい。  小��んまりとしたシアターの、ほとんど観客のいない座席に座る。しばらくして照明が落とされ、上映が始まった。  ロシア語を聞いているうちに、うとうとと微睡んでしまう。  スクリーンの中の主人公がヒロインとキスを交わしている。  あぁ、この男とラブストーリーを観るとは思ってもなかったなぁ。そんなことを思いながら、レオは意識を手放した。  「……月永くん」 その声に目が覚める。証明に目が眩む。映像が映し出されていたスクリーンはただの薄い布に戻っていた。 「あれ、もう終わっちゃったのか?」 「君はずっと寝てたんだねぇ」 「最初は起きてた!」 「ヒロインは最後死んでしまったよ」 「はぁ、ありがちな悲恋だな」 「僕もちょっと退屈だった」 そんな他愛のない会話をしながら映画館を出た。  道路沿いの道を歩いて、海に辿り着く。  夕焼けに、薄く夜の色が掛かっている。そんな空の色を垂らされた海が、静かに波打っている。  柔らかく麗らかな三月の橙色の陽射しに、彼の金髪が光る。 「……夢ノ咲の海は、もっと明るい色をしていた気がするなぁ」 ひとりごとのようなその言葉に返す言葉を、レオは持っていない。ただ彼の背と、その先に広がる海を見つめる。  波打ち際でしばらく海を眺めていた英智が、不意に靴と靴下を脱いだ。細い足首の線が露わになる。  レオが声を上げる前に、英智は裸足で海の中に入った。  「冷たい」 「風邪ひくぞ」 「ひかないよ」 レオの心配をよそに、英智は靴を片手に歩いていく。  深い溜息を吐いて彼の後を追う。手で触れた海水は凍えるほど冷たくて、レオは英智の神経を疑った。  「君は寒がりだもんねぇ」 振り返って立ち止まった英智が笑う。追いついたレオは彼の細い手首を引いた。迫り来る波から英智の足が逃げる。 「冬の海に入るのはおまえみたいな酔狂だけだよ」 「三月はもう春じゃない?」 「冬だろ」 英智はコートのポケットから白いハンカチを取り出して、濡れて砂のついた足を拭いた。すぐにそのハンカチは汚れて、きっともう使い物にならないだろう。しかしそれも、英智とレオにとってはもうどうでもよかった。  レオの肩を借りて、英智が靴下と靴を履く。 「帰ろうか」 「腹減った」 「何か食べる?」 「うん」 砂浜に残った二人の足跡は、すぐに波に掻き消されていった。
 月永くん、と呼ばれる。  仰向けになると、布団の上に座った英智の手が伸びてきて、髪に触れた。 「……思い出してしまうね」 「なにを」 「昔のこと」  ――――キスしたこと、憶えてる? 問い掛けられて、レオは顔を顰めた。  「よかった。憶えててくれて」 「何もよくない」 英智の指の間から、長い赤毛がはらはらとすり抜けていく。それを見つめながら、英智は、 「相変わらず君はひどいなぁ」 なんて、笑う。  「またするかい? 楽しいこと」 「絶対に嫌だ」 「どうして?」 「痛いだけだ」 「そうかな?」 「痛い」 「手術に比べれば全然だよ」 「麻酔するだろ」 「してもしなくても、痛いものは痛いよ。肌を切り裂かれるんだから」  レオは黙って英智のパジャマのボタンに手を伸ばした。彼はされるがままだ。パジャマを脱がせ、下着をまくり上げた。  あの頃、くっきりと残っていた胸の下の傷は薄くなっていた。細胞が修復している。この男の身体はきちんと機能している。  指先で、その傷跡をつうとなぞる。彼の唇から甘い吐息が漏れた。 「月永くん、さっきの冗談だよ」 暗がりの中で彼の瞳が光っている。獣みたいだ、と思う。  「……解ってる」 柔らかな拒否を呑み込んで、彼の身体から手を放す。掌に、彼の低い体温が残っている。  レオは布団に寝転がり、パジャマを着直す英智に背を向けた。 「……おやすみ、月永くん」 そう言った彼の手は、レオに触れなかった。
 『生徒会』と『五奇人』の抗争時代に、レオと英智は何度か身体を重ねたことがある。  若さゆえの過ちだった。英智に生徒会室に呼ばれて、粛然とした箱の中で密やかに抱き合った。  一度目はお互いを苦しめるためだけの痛々しい行為に過ぎなかった。身体を貫くような痛みに吠えて、吠えさせた。  二度目、三度目、そう回数を重ねていくうちに本当の目的を見失っていった。  バスタオルを敷いた床にレオは押し倒される。自分を見下ろすその瞳を見つめながら、唇を触れ合わせる。唇の皺ひとつひとつを確かめるように、何度も、何度も。  そして深いキスに変わる。舌を絡めて、音を立てて。 ブレザーを、ワイシャツを、お互いに脱がしていく。蠱惑的な瞳を見つめながら。  肌蹴たシャツの下、露わになった彼の胸元を初めて見たとき、レオは息を呑んだ。 「……これかい?」 つ、と彼の指がその線をなぞる。  左胸を横切る醜い傷跡。それは白い肌にくっきりと刻まれていた。 「手術の痕だよ」 何でもなさそうにそう言って、笑う。 「醜いだろう?」 自嘲のような、挑発的な笑みが気に入らなくて、端を引き上げた唇を噛んだ。  何回目かの行為の最中には、 「くたばっちまえ」 と息も絶え絶えに口にしたことがある。音楽が生まれないゆえの苛立ちをぶつけた、ただの八つ当たりだった。そう叫んでも、怒りと憎悪に塗れたレオの身体にキスを落としながら、英智は強気に目を細めるだけだった。  ダンスに使う四肢も、歌うための声も、今は飢えた獣のものでしかない。  理性と本能が剝離していく感覚がレオを快楽に突き落とす。それはきっと、英智も一緒だった。  制服を着た英智が自分を見下ろしている。  「声、聞かせてくれないかい?」 嫌だ、と反論する声が擦れている。  「レオ、気持ちいい?」 一対の青色が冷淡に細められて、背筋に電流が走る。それと同時に、音楽が生まれていく。ペンを取ろうとしたレオの手を英智が押さえ付けて、そして深く口づける。  「……ッ、あ、ぁ」 「レオ、」 名前を呼ばれて、理性が崩壊する。ふたりの獣は吠える。  全部が欲しい。この男の全てを、奪って、殺してやりたい。  「英智……ッ!」  憎い。愛おしい。殺したい。終わりに、したい。  混沌とした感情を快楽に混ぜて飲み干していく。  そして熱が醒め切ってから、あの行為で戦意を失ってしまえ、と懇願していた。
 スマートフォンのアラームで浮遊した意識はすぐに覚醒した。  布団から腕だけ出してスマートフォンを掴む。寝起きの頭にガンガンと響く煩いアラームを止めた。  隣から寝息が聞こえる。不幸中の幸い、英智はまだ眠っているようだ。  彼を起こさないように布団を抜け出し、枕元に畳んでおいた着替えを持って風呂場へ直行した。  寝間着と下着を洗濯機に投げ入れボタンを押してから、浴室へ入った。  熱いお湯を全身に浴びて頭が冴えていく。  あんな夢を見るなんて、どうして今更。まるで昨日の言葉に乗せられているみたいじゃないか、と自己嫌悪に陥る。  ――――またするかい? 楽しいこと。 歪められた瞳を思い出す。あの部屋でレオを見下ろしたときと同じ眼差しだった。  髪の毛先から雫が連なって床に落ち音を立てる。  あいつにとっては、楽しいことだったのか。おれにとってはちっとも楽しくなかったけど。  痛くて、息が詰まって、苦しくて、でも、それ以上に気持ち良かった。  けれど、抗争時代の後、レオと英智がその行為をすることはなかった。
 さっさと一人で朝食を済ませて、レオは作曲のためにピアノと譜面と向かい合っていた。そんなレオの姿を見咎めて、英智が声を掛ける。 「今日はずいぶんと早起きだね。昨日もなかなか寝付けずに、遅くまで起きてたんだろう?」  重低音のメロディーを荒々しく弾きながら、レオは顔を背けた。  「何か嫌がらせしたかな?」 独り言を呟きながら、英智はレオの傍へやって来る。  それを咎める気にもならなかった。  音楽が、生まれない。  音符を書いては消し、楽譜を書き上げては丸めて床に捨てた。起きてからずっとこの調子だった。  寝起きが一番頭が冴えるはずだ。一番いい曲が書けるはずだ。こんなこと、一度もなかった。おれは天才だ、音楽を生めないなんて有り得ない。  英智の白い手が散らばった楽譜を手に取る。  そして、その声が音符を追う。  「な、」 レオはピアノに凭れていた頭を持ち上げて彼を見つめた。  楽譜に向けられていた視線がレオに移る。 「歌うな」 そう制しても彼は止めない。  あの眩しいスポットライトの光と華やかな歓声に包まれている。純白の衣装を身にまとった彼の貫くような視線に、あの頃、欲情していた。  歌声がレオの心臓を突き刺す。  「やめろ、」 違う。おれが作りたいのは、こんな、醜い曲じゃない。  「やめろ!!」 両手で鍵盤を思い切り叩いた。貫くような不協和音と怒鳴り声が部屋中に響いて、英智は驚いたような顔をして、歌うのを止めてレオを見た。  彼の胸倉を掴み、そのまま床に押し倒した。痛みに彼の表情が歪み、落ちていた楽譜が舞う。 「こんな曲に価値なんてない!」 「……どうして」 「こんなんじゃない、おれが創りたいのは、もっと、もっとあの頃みたいな」 「月永くん、」  冷淡な声に息が詰まった。白い手がレオの喉笛に添えられる。深い色をした瞳に、深層部までを見透かされてしまっている気がした。  「……あの頃には、戻れないよ」 窓の外で一層強く雨が降り頻る。その音にも邪魔されずに、彼の声はレオの鼓膜を震わせた。  その声に、記憶を翳して、辿っている。  ――――君の負けだ、  ――――『王さま』  ――――『Knights』の王、月永レオ  レオは英智を突き放し、ピアノの傍に置いておいた財布と携帯を引っ掴んで家を飛び出した。  三月の冷たい雨が身体を打つ。肌の表面は凍えるほど冷たくなっていくのに、頭には血が上って熱くなっていく。  呼び止める声も、追い掛ける足音も、聞こえなかった。  煩い雨音に紛れて聞こえなかっただけだと信じたがる自分が、ひどく惨めだった。
4
 夢ノ咲学院の裏の砂浜で、ふたりきりになったことが一度だけある。  十八歳の秋。  砂浜に音符を刻む。湧き上がる霊感に追いつかなければ。  と、そのときだった。  「久しぶりだねぇ」 懐かしい声に、手を止める。  ザァ、と音を立ててやってきた波が音符をさらっていくのを見送って、レオは振り返った。 「……おかえり、月永くん」  相変わらず頼りない細い身体だった。入退院を繰り返していると風の噂で訊いた。  「また君と兵刃を交えられると思うと嬉しいよ」 「それはもうごめんだな」 目の前に立った男を見上げる。  「もう帰ってきてくれないと思った」 「まだやるべきことが残ってる」 く、と青い瞳が細められる。 「キス、してもいい?」 「再会祝いのつもりか?」  目線がふたりの間で絡み合って、英智が細い腰を折ってレオの唇に口づけた。  おまえを殺したい。  はっきりと、あのステージの上でそう思ったことを思い出す。  おれの描いた音符で首を絞めて、剣のような歌声で心臓を貫きたい。  おれがおまえにされたことをしてやりたい。  心臓が止まって、そのまま玉座からずり落ちてしまえばいい。  でもそれは、レオの役目ではなかったらしい。  時代を変えた『新星』たちが、『王』のいないあいだに『皇帝』を殺した。  「なぁ、『皇帝』、」 離れていく唇を引き留めずに、まっすぐと英智を見つめる。その渾名はもう似合わないか、とも思ったが、レオの中で、天祥院英智という男は『皇帝』でしかなかった。  「おれの悪足掻きに付き合ってよ」  青い瞳に自分が映っている。鏡のようなそれは凪いだ海と似ていた。  「いいよ、君の考えることは退屈しないからねぇ」 そう言って、笑った横顔が昔と違うことに気づいたが、レオは何も言わなかった。
 ふ、と目が醒める。スマホの画面を確認すると、もうすぐ午後六時を回るころだった。  朝、あの家を飛び出して、夢ノ咲とは逆の方向へ向かっていく電車に乗り込んだ。絶えず変わっていく車窓を見つめながら、気分でいろいろな駅に降りた。  荒れた海が見える町。ビルが立ち並ぶ都会。教会のある田舎町。山ばかりの町。寂れた商店街がある街。  そうしてあの田舎町から、英智から、遠ざかってきた。  英智からの連絡はなく、それ以前に、スマートフォンの電池は切れて使い物にならなかった。  雨は昼間より強くなっている。アナウンスが鳴っていて、多くの人から席から立ち上がった。それに倣うように重い腰を持ち上げて、人に押されるように電車から降りる。  コンコースの人混みの間をすり抜けながら外へ出れば、降り頻る強い雨が身体に叩きつけられる。コンビニで買ったビニール傘は、前の町で壊れて捨ててしまった。  ダウンのフードを被り、寒さに息を吐く。  傘を差した人たちが足早に歩いていく。レオの横を通り過ぎた何人かが、傘を差さないレオを訝しげに見てはすぐ目を逸らす。  孤独だ、と思った。  こんなにたくさん、数えきれないほど傍に人がいるのに、孤独しか感じないのは、なぜ。  「……『王さま』?」 聞き慣れた声に後ろを振り返る。灰色のコートを着て青い傘を差した、端正な顔の男が立っていた。 「おぉ、セナ、久しぶりだなぁ」 駆け寄ってくるかつての仲間に、無理に作った笑顔を見せた。  「ずぶ濡れじゃん、こんなところで何してるわけぇ?」 泉はレオの腕を引いて傘の中に入れた。 「身体も冷え切ってるし」 「わはははっ、セナは相変わらず世話焼きだなぁ」 「無理して笑わなくていいから」 ほら、行くよ、と腕を引かれて歩き出す。自分より少し背の高い男の背中は、昔と変わらず大きく見えた。  ふたりが雨宿りに入ったのは通りにあるカフェだった。客は少なく、店内にはBGMと、窓の外の雨音が流れていた。  窓際の席に向かい合う形で腰掛け、泉が店員を呼ぶ。 「コーヒーで良い?」 と訊かれ、黙って肯いた。 「ホットのブレンドコーヒーを二つ」 という泉の注文する声が雨音を消す。店員は注文を取るとすぐに去っていった。  「……で、」 頬杖をつきながら泉が話を切り出す。 「卒業式後からどこに行ってたわけ?」 「田舎町だよ」  泉の青い瞳をじっと見つめる。彼より濃い、青。それに嘘が通じないことは理解している。 「セナはこんな都会で何してたんだ?」 「仕事に決まってるでしょ。モデル業に復帰したらすぐに大量の依頼が来たの」 「さっすが売れっ子モデルだなぁ~」 「お褒めの言葉をありがとう、『天才作曲家』さん。アンタも仕事来てるんでしょ?人づてに聞いたよぉ?」 「まぁな。でも大体断ってるよ、充電期間」 「何言ってんの、散々充電してたくせに」 「それは、あの戦いから逃げた期間のこと?」 思わず語気を強めてしまったことに、すぐ口を噤んだ。  「……ごめん」 そう謝れば、泉が窓の方に顔を背ける。 「今のは、俺も悪いから」 気まずそうに、彼はそう言った。  お待たせいたしました、という店員の声にふたりで顔を上げる。それぞれの前にコーヒーカップが置かれ、また店員は去っていった。  テーブルの端に常備されているシュガーを手に取って、黒い液体の中に入れた。ブラックコーヒーを啜り、泉が言う。 「珍しいね、砂糖入れるなんて。ブラックで飲まないの」  そう問われて、目を伏せる。黙ってコーヒーを飲んだ。今まで甘いフルーツティーやミルクティーなどの紅茶ばかり飲んでいたからか、とても苦く感じた。  「……『皇帝』と一緒にいたの」 その問いに、レオは思わず目を見開いた。 「……なんで」 「昔と、同じ目をしてるから。当たり?」 「セナには敵わないなぁ」 苦笑しながら苦いだけのコーヒーを啜る。  泉が、かちゃん、と音を立ててコーヒーカップを置く。  「……一週間だけって約束で暮らしてたんだけど、ちょっといろいろあってさ。出てきたんだ」 「探してんじゃないの」 「さあなぁ」 ふぅん、とどうでもよさそうに泉が相槌を打ち、 「これからどうすんの」 と訊く。  「自分の家に帰ろうかなぁ」 あの日本家屋に着替えなどは置きっぱなしだが、わざわざ取りに行きたくもないし、大して大事なものでもない。このまま黙って帰ればいいだろう。  はぁ、と息を吐いた泉が立ち上がる。  「傘買ってきてあげるから。ここから動かないでよね、分かった?」 泉はそう言って、傘を差して土砂降りの雨の中へ出ていった。銀色の髪と灰色のコートはすぐに人混みに紛れていく。  あの頃と同じ目――――どんな目だろうか。すべてを喪ったような光を持つ瞳だろうか。あぁ、そうか。おれはまだ 過去に囚われているのか。セナは自分の道を、自分の未来をまっすぐ見据えて歩き出しているというのに、おれはまだ未練があるのか。  彼の姿が窓から見えなくなると、レオはレジに行って二人分のコーヒー代を払い、店を出た。  そして、泉が歩いていった道とは反対の道を、雨に打たれながら歩いた。
 夜になっても、雨はやまない。  建ち並んだビルの窓から漏れる光の色に雨粒が染まって、黒いコンクリートの上で砕け散る。  交差点の後ろに聳え立つビルの大型モニターの中で、知らないアイドルが歌っている。  しかしその歌声は雨音や足音に掻き消されて誰の耳にも届かない。  あぁ、おれの音楽もこんな風に踏みつぶされていくのか。  あいつが命を削りながら叫ぶ声も、誰の耳にも届かずに靴底の跡をつけられるだけなのか。  城を出た王は庶民と変わらないのか。  あの頃の栄光を得ることなんて、できないのか。  交差点の真ん中で茫然と立ち竦むレオの横を、人々が通り過ぎていく。暗い波が去っていく。  「――――月永くん、」 そう、呼ぶ。あの頃とは違う、丸みを帯びた優しい声が。  ふと、身体に叩きつけられていた雨が止んで顔を上げた。  傘を持つ白い手。自分より高い背丈。コートのフードから覗く金色の髪からは雫が滴っている。 「月永くん」 彼の濡れた肩を見て、思わず笑う。  それと同時に、今まで張りつめていた糸がぷつん、と切れて、全身の力が抜けた気がした。 「……傘の意味ないじゃん」 寒さに擦れた言葉は、最後まで言い終えることなく途切れた。  英智の冷え切った身体が、レオの身体を抱き締めた。  甘いトワレの匂い。一日中、この匂いを探していた。冷え切った身体を強く抱き締め返す。 「『皇帝』、」 「……帰ろう、月永くん」 帰ろう、と噛み締めるように、英智はもう一度囁いた。  それに対しての上手な答え方をレオは知らない。  「あぁ」 そうとだけ言って細い手を掴み、彼の持つ傘を受け取って歩き出す。  人混みの中に、ふたりの声は呑まれていった。
 「どうしてあそこにいるって分かったんだ」 そう問う。  都会の電車の中に、濡れ鼠になった会社員や学生の憂鬱が立ち込めている。  扉の傍の手摺に寄り掛かった英智が、車窓の外に目を向ける。 「……なんとなく。夢ノ咲の方には行かないだろうと思って、こっちに来たんだ。そうしたら、瀬名くんからメールが来て」 「はぁ、つまらないことするよなぁ、セナも」 「でもずいぶん探したんだよ」 おかげでぐっしょりだ、とコートの裾を絞ってみせた。電車の床に水滴が落ちる。  「会えて、良かった」 そう言って、レオの肩に頭を凭れる。香水に混じって、雨の匂いがした。  ねぇ、と擦れた声が左耳を擽る。 「……キス、してもいい?」 「再会祝いのつもりか?」 ゆっくりと電車がスピードを落とし、駅に停車する。降りていく大勢の人々の背中を見送って、ふたりは空いた席に腰を下ろした。  「もう昔じゃない、しないからな」 「冗談だよ」 はぁ、という隣で吐かれた溜息が電車の車輪が擦れる音に消えていく。  「……おまえのことだから、探しに来ないと思った」 トンネルに入る。ライトの光が差し込んでは通り過ぎ、また差し込んで、通り過ぎて消えていく。 「探してほしかったくせに」 揶揄う口調で英智が言う。 「べつに」 「素直じゃないなぁ」  横目で睨めば、英智は肩を竦めてみせた。 「……約束しただろう、秋の海で。君の悪足掻きに付き合ったんだから、僕の悪足掻きにも付き合ってもらわないと」 「そんなこと、いちいち憶えてるのか」 「もちろん。学院での思い出はすべて僕の宝だよ」 トンネルを抜けても、やはり窓の外は暗い。まっくろな闇が世界を包んでいる。  「……どこへ、行っていた���」 そう問われて、レオは、 「いろんなところ」 と答えた。  「海が見えるところ?」 「あぁ、行った。銭湯がある町もあった」 「銭湯には行ったの?」 「うん」 「風呂上がりに瓶牛乳を飲むんだろう?」 「あぁ、美味かった」 「いいなぁ、僕も行ってみたいよ」 どちらも、今度一緒に行こう、などとは言わなかった。  手と手が触れた。逃げずにいると、そっと手を繋がれた。  「……曲は、書けそうかい?」 英智の問い掛けに、レオは肩を竦めた。 「さあなぁ。まぁ、学院のときは生き急いでた感じだったし、少し休めってことじゃねえの」 「そうだねぇ。君はほんとうに忙しそうだった」 と、英智は懐かしむように笑った。その横顔が、すぐに消えてしまいそうな気がした。  「……おまえも人のこと言えない」 レオの言葉に、英智が顔を上げてレオの瞳をじっと見つめた。呑み込まれそうだと思うほど深い、深い青だった。 「なにをそんなに急いでんの」 英智は困ったように微笑んだ。 「急いでいるように見える?」 「……あぁ」 低い声で答えれば、彼は目を伏せる。 「まさか君にそんなことを言われるとは思ってなかったよ」  向かい側の席の窓を見つめながら英智の肩に頭を凭れた。重いよ、と声がしたが気にしなかった。  「……眠いな」 「眠いねぇ」 「あと何時間で着く」 「二時間はかかるかな」 ゆっくりと瞼を閉じれば、浮遊感に似た、夜の色より深い闇が身体を包む。  ふたつの手はどちらも冷え切っていて、一向に温まらない。
 家に着いたのは、日付が変わる、少し前の頃だった。  雫が滴る洋服をすべて脱いで洗濯機の中に押し込み、風呂で熱いお湯を浴びる。冷え切った身体がじょじょに温まっていった。  先に風呂に入った英智はすでに布団の中に潜り込んでいた。垂れ下がった紐を引いて電気を消す。  隣に並べられた布団に入れば、月永くん、と声がした。だんだん暗闇に目が慣れて、英智の顔が見えた。 「なんだ、まだ起きてたのか」 「うん、なんだか寝付けなくて。電車でも、ずっと起きてた」 それは、気づいていた。途中で意識が戻って、いつの間にか彼の頭の方が上にあり、彼の瞳は開いていた。その青は、じっと向かい側の窓を見つめていた。  「眠くないわけ」 「眠いんだけど、なんでかなぁ……」 困ったように彼が笑った。掛布団の上の右手をそっと取れば、何も言わずに握り締められる。   深夜特有の研ぎ澄まされた空気に降り頻る雨の音が響く。それをたっぷりと聞いてから、英智が呟いた。  「……眠るのが、怖いんだ」 繋がれた彼の右手に力が籠る。天井を見上げる彼の目の光はあの頃に比べるとずいぶん弱々しく見えた。  もしも、と彼の唇が動く。 「もしも、朝が来ても目が醒めなかったら?僕に朝が来なかったら?……考えるだけで、身が竦むんだ」 「……」 「長く生きられないって解っているつもりだ。いつ死んでもおかしくない身体だって理解している。それでも、それでも毎日眠るときになって恐怖が僕を支配するんだ」  彼の弱さの吐露に、レオは寝がえりを打った。手は、繋いだまま。 「……あいにく、おれは作曲の天才だ。作詞の才能はこれっぽっちもない。だからおまえが欲しいような言葉をおれは見つけられない」  英智は一瞬驚いたような顔をして、そして微笑んで、 「あぁ、そうだったね」 と言う。  無意識に、指を絡める。細い指だった。 「……明日、起こしてやるから」 「ふふ、うん。頼むよ、早起きはどうも苦手でね」  そっと英智の布団の中へ足を忍ばせ、相変わらず冷たい彼の爪先に触れた。 「あったかい」 と、彼が笑う。レオの体温が、徐々に英智に移っていく。  「……おやすみ、月永くん」 「……おやすみ」 そう返事をすると、左手をぎゅっと握られた。英智がゆっくりと瞼を閉じる。神に祈る儀式のようだった。  命あるもの、誰だっていつかは死ぬさ。おれも、おまえも。それが早いか遅いか、その違いだけだ。  心の中でそっとそう囁いて、瞼を閉じた。
5
 衣擦れの音に目が醒める。足音と咳き込む声が離れていく。  「『皇帝』……?」 起き上がって横を見ると、隣に彼の姿はなく、乱れた掛け布団が投げ出されていた。窓の外は暗い、まだ日も出ていない時間だ。  重い瞼を擦りながら、彼の後を追う。  居間にも、トイレにも、風呂にも、離れの部屋にもいなかった。 「朝からどこに行ったんだ……?」 渡り廊下を歩いているときだった。微かに水が流れる音がした。  中庭の方からだ。置いてあった下駄をつっかけて、中庭へ向かった。中央に植えられた梅の木の花が風に揺れる。  壁に取り付けられた立水栓の前で英智が蛇口のハンドルを掴んでいた。静寂に包まれた夜明け前の空に、水が流れる音だけが響く。  声を掛けようとして、やめた。  ――――英智は、泣いていた。 必死に、声を押し殺している。きつく噛み締めた唇の間から嗚咽が漏れる。悲鳴のようなそれに足が竦んだ。  しばらくして英智が水を止めた。  英智が縁側に上がって、その姿が見えなくなると、レオはその水道の前に行く。薄紅色の梅の花びらが浮かぶ水に、濃い赤が混じっている。  「……何の赤だ?」 ひとり首を傾げながら、蛇口を捻る。冷えた水がぐるぐると小さな渦を巻きながら花びらとその赤を排水口へ流していった。
 寝室へ戻ろうと廊下を歩いているとき、居間の灯りが点いていた。障子に透けるその光の中に影がある。  静かに障子を開けると、畳の上に英智が横たわっていた。  「……『皇帝』?」 顔を覗き込む。薄い瞼が開き、潤んだ青い瞳にレオの顔が映った。 「月永くん、」 その声は擦れていた。やけに赤い頬に触れると、溶けるかと思うほど熱かった。 「おまえ、すごい熱だぞ!」 「ん……身体が怠い……」 「こんなところで寝てたら余計熱上がるだろ!布団で寝ろよ!」 立ち上がらせるために熱い腕を掴んで、息を呑んだ。  元々細い身体だ。知っている。  しかし、こんなに細かっただろうか。  軽いその身体を背負い、二階の寝室へ向かう。布団に寝かせて、水で濡らしたタオルを彼の額に乗せた。  「……ありがとう、月永くん」 そう言って、赤い頬のまま笑う。幾筋もの汗が垂れている。 「……君は、いいお嫁さんに、なるねぇ……」 「バカ。いいから寝ろ」 バカはひどいなぁ、とぼやいて、レオの手を掴んだ。 「一緒に、いてくれないかい」 幼い子供のような表情に、レオは逆らえない。  黙って同じ布団に潜り込むと、英智は驚いたような顔をした。彼が口を開く前に、目を細める。 「ほら、寝ろって」 繋いだままの手は熱い。 「……うん、おやすみ」 「おやすみ」  いつもは冷たいのになぁ、なんて思いながら、レオも英智と同じように瞼を閉じた。昨日の疲労が残っているせいか、あっという間に眠りに落ちた。  次に目が覚めたときには、すっかり日も昇り、昼に近い時間帯だった。  英智は変わらず、長い睫毛を伏せてすやすやと眠っていた。彼の額に浮かんだ汗を、乾いてしまったタオルで拭ってやる。  低い音で腹が鳴った。英智を起こさないように静かに布団から出て、一階の台所へ向かう。背の低い冷蔵庫にはほとんど食材がなく、買いに行かなければ何も作れない。  二階へ戻り、冷やし直したタオルを英智の額に乗せた。着替えてから、メモ帳に『買い物に行く』と走り書きを残して家を出た。
 スーパーで買い物を終えた頃には腹がぐるぐると鳴っていた。  食材を冷蔵庫に入れ、冷却シートを持って寝室へ向かう。  襖を開けたが、布団の上に彼はいなかった。  まさかまた、と思い中庭に行ったが、彼はいなかった。トイレだろうか、と踵を返そうとしたそのとき、ピアノの音色が聞こえた。  ブランケットを肩に羽織った英智が、ピアノの前の椅子に座って鍵盤に触れていた。 「……あれ、見つかっちゃった」 そう言って笑いながら、モーツァルトのピアノソナタを弾く。 「モーツァルトは嫌いだ」 ピアノに凭れ掛かって、冷却シートを一枚取り出す。  顔を上げた英智の前髪を指で梳く。露わになった額にそれを貼ってやると、冷たい、と眉を顰めた。  「安静にしてろって言っただろ」 「なんとなくピアノが弾きたい気分になったんだよ」 そう言って、近くにあったもう一脚の椅子を引き寄せてレオに座るよう勧めた。溜息を吐きつつ、腰を下ろす。 「一曲だけだからな」  そうして、あの連弾曲を弾く。  時折、英智は咳をした。細い喉のしがらみ。  たまに、レオの左手と英智の右手が触れ合った。わざとらしく指を絡められて振り払えば、英智は楽しそうに笑った。そして、また咳をする。  白と黒の鍵盤の上で、二十本の指が自由に躍る。  離れて。近づいて。触れて。また、離れる。  誰かのために、と定めて曲を作ることは少ない。そのとき生まれた霊感を音符に変えるだけだ。  この連弾曲も、そうだ。  『皇帝』と呼ばれた天祥院英智という男に触れて、声を聞いて、そうして生まれた霊感を形に、音に、変えて出来上がった曲だ。  すぐ傍に体温がある。  彼の鼓動が聞こえる。  けれど安心できない。それは、雨の都会の街で感じた孤独に似ていた。  最後の一音の残響が部屋に響いた。  「……月永くん、」 「なに」 ふ、と彼が目を伏せ、なんでもない、と言う。  英智の手を取って立ち上がらせる。  「昼飯、食べれる?」 「お粥かい?」 「そう」 「あんまり好きじゃないんだよなぁ……」 「文句言うなよ」 なんとなく、その手を放せなかった。寝室に行くまで、ずっと手を繋いだままだった。
 昼食を食べ終えて、英智はまた眠りについた。レオはピアノに触れた。 それからメモ帳を広げたものの、まったく霊感は湧かなかった。昨日の朝方から陥ったスランプから、まだ抜け出せないでいる。もどかしい気持ちばかりが募って、ペンが進まない。  掴もうとした音がばらばらに飛び散っていって、指の間をすり抜けていく。音符の形になろうとせず、五線譜の中に納まってくれない。  あぁ、おれはどんなふうに曲を書いていたんだろう。  弾きたい曲もない。書きたい曲もない。  おれは、あの学院にいるとき、スランプになって足を枷に捕らわれたとき、どうしていたっけ。  鍵盤の上に頬を乗せていたとき、ピアノの横に置きっぱなしにしていたスマホが震えた。  腕だけを伸ばし、それを手に取った。『新着メールが届いています』という通知が液晶画面に表示された。  メールボックスを開くと、見覚えのないアドレスからメールが届いていた。  差出人は有名な映画製作会社だった。レオはその会社の映画を観たことはないが、今まで出席してきた表彰式などで名前を聞いた。映画の劇中歌が賞��貰っていた気がする。  メールの趣旨は、次回作の映画の劇中歌を作曲してほしい、というようなことだった。依頼を受けてくれるのなら、詳しいことは会って話したい、早ければ明後日に、とも書いてあった。  ピアノの蓋を閉じて、寝室へ戻ると、目を覚ましたらしい英智が窓辺に腰掛けていた。  夕陽がきらきらと彼の金色の髪に反射している。濃い影が彼の背中から伸びていた。  額、高い鼻、顎のラインを目線で辿る。  視線に気づいたのか、振り返った英智が、 「月永くん」 と呼んだ。  レオはその隣に座って、彼が見ていた景色を見た。  まだ山には少し雪は残っているが、白や赤の梅が春の訪れを告げるように花開いている。薄紫色の雲が伸びていて、いつだかの時代の物語を思い出した。春はあけぼの、だ。今はあけぼのではなく夕暮れだけれど。 「春の夕暮れは好きだよ。柔らかい匂いと色がする」 と、まるでレオの心を読んだかのように英智が言った。  「……仕事を依頼された」 唐突に話が変わったにもかかわらず、英智は驚くこともなく、そう、とだけ相槌を打った。 「明後日、昼間いなくなるけど」 「うん、君の帰りを待ってるよ。夜になったら家に帰ろう」 元々そういう約束だった。七日目の夜には帰って、そして。  「……どんな仕事なの?」 「映画の、劇中歌の制作」 「大抜擢だねぇ」  咽た英智の背を撫でてやると、彼はもう一度窓の向こうを見た。 「春には街中の桜が咲いて、一面桜色に染まる。夏には蝉が鳴いて、八月の夜は隣町で打ち上げられる花火がとても綺麗に見える。秋には庭のイチョウや山の紅葉が色づくんだ。冬は空気が澄んで星がいちだんと美しいから、寒さも忘れてずっと見ていられる。僕は、いつも病院のベッドの上で、窓から町を見下ろしていた」 そう言ってから、また静かに咳き込んだ。 「……この町の四季も、見たかったなぁ。夏にしか来たことなかったから」 「住めばいいじゃん、この家に」 「無理だよ、この家は売られるんだ」 「わがまま言えよ」 「もう買い取られたんだ」 残念そうに、彼がそう言った。 「僕がこの町に来ることはもうないよ」  その指が窓にサインを綴る。  「形あるものはいつか失われるんだ、解っているよ。……ただ、もう少し時間があれば、とは思ってしまうけれど」 形あるもの、それが何を指すのか、レオは訊けなかった。  振り返った英智が、来て、と言う。  その声が、やけに細くて。  鼻が触れてしまうほど、距離を縮めた。彼に向き合うように。  「……君と一緒に暮らせたら良かったなぁ」 「おれはごめんだな」 「冗談だよ」 そして、ゆっくりと唇を寄せた。薄くて乾燥した唇だった。離れていくとき、思わずぺろりと舐めてやった。何食わぬ顔で、 「……あの頃とは違うんだぞ」 と言えば、英智はどこか哀しそうに微笑んで顔を伏せた。長い前髪がその表情を隠す。 「解っているよ」  その前髪を指で持ち上げ、顔を覗き込む。 「……みっともない顔だなぁ」 「そのとおりだよ」 もう一度、そのままキスをした。  最後の悪足掻きだ、許してほしい。  あの学院で終わったあの輝きを今だけ、もう一度だけ。  優しくて柔らかい匂いと色がする春の夕暮れは、なぜか寂しい気持ちになるのだと、レオはそのとき初めて知った。
 徐々に頭が冴えてきて、そして勢いよく起き上がった。  いない。  英智は、布団の上にいなかった。  部屋を出て違う部屋を覗いたが彼の姿はなかった。  一階に降りて、居間や台所、洗面所、風呂場や囲炉裏部屋にも、トイレにも、彼の姿はなかった。  離れに向かおうとして渡り廊下を歩きながら、ふと中庭に目をやった。  裸足のまま、地面を歩く。ひんやりと冷たい土を踏む。  青い絵の具を垂らしたかのような真っ青な空に、白い梅の花が風に揺れている。  その木の下にしゃがみこんだ彼もまた、レオと同じように裸足だった。  「……何してるんだよ」 後ろから声を掛けると、英智が振り返る。顔色は昨日ほど悪くはない。 「……月永くん、」 と呼んだ彼の額に、手の甲で触れる。まだ少し熱が残っている。そのまま、指で前髪を梳けば、擽ったそうに彼が瞳を伏せる。  「……ぶり返すぞ」 「うん、でもあともう少し」  レオの手から逃れて、また梅の木を見上げる。そうわがままを言う横顔は幼い子供のようなのに、瞳は世界の仕組みのすべてを知った大人に似た、冷たい光を宿していた。昔とは違う、熱のない光。昨日の夜と変わらない、弱々しい光。  彼は梅の木の幹に額を当てた。まるで信仰を伴った行動のようだった。伏せた睫毛から目を逸らし、彼の足首の細い線を見つめる。  小さく彼が、ステージの上で歌っていた歌を口ずさむ。  そうして、顔を上げて振り返った英智は微笑んでみせた。そんなに情けない顔をしていたのだろうか、と思わず口元を右手で覆う。  「ねえ、月永くん」 首を傾げれば、長い前髪がそれに合わせて揺れた。 「散歩に行きたい」
 坂道を上っていく後ろ姿を見つめながら、後を追う。  あたたかい陽射しの中、道の両脇に咲く梅の花と同じ色の彼のシャツが眩しく光る。  相変わらず白が似合う、と思った。  「……なぁ、」 「ん?」 振り返った彼に問う。 「白、好きなの」 彼は微笑んで頷いた。 「白は美しい色だと思わないかい?」  何者にも侵されないその色を纏った英智が、長い睫毛を伏せる。 「……それに昔、喪服は白色だったんだ」  ふわ、とふたりの頬を撫ぜた風は線香の匂いがした。  匂いの先を見ると、坂の途中に墓園があった。名前が刻まれた石が揃って並んでいる。 石と石の間の通り道を若い女性とその子供であろう幼い男の子が手を繋いで歩いていく。女性の腕には花束と線香の箱。  彼女が線香に火をつけ、その線香を立てた。細く白い糸のような煙が風に流れていく。  線香の匂い。  死の、匂い。  「……懐かしい匂いだ」 英智はそう呟いて、哀しくなるほど青い空を仰いだ。金色の髪がさらさらと風に靡いて、その隙間から形の良い耳が覗く。 「敬人の家に遊びに行くと、必ず線香の匂いがするんだ。敬人はその匂いが嫌いだって必ず言ってた。でもしょうがないよね、毎日お墓に誰かが来て、線香を上げていくんだから」  ゆっくりと瞬きをして、それから、 「行こうか」 と再び歩き始めた。  線香の匂いがしばらくレオの鼻先に残っていた。  辿り着いたのは、坂の上にあるあの神社だった。鮮やかな、赤い鳥居と青空のコントラストを目に焼き付ける。 「今日は海まで見える」 英智が眩しそうに目を細める。眼下に広がる町を、ふたり並んで見渡した。  細い畦道をバスが走っている。田んぼや畑に柔らかい緑が広がっている。乗客の少ない電車が走っている。遠くの海がきらきらと輝いている。  あの青に触れた彼の足首の線を思い出して、海へ行きたい、と思った。さざ波の音が耳の奥で聞こえる。  その音を、英智の歌声が掻き消していく。レオの知らない曲だった。  都会のビルのモニターの中で歌う彼の姿を想像する。似合わない衣装を着て、凡才の作った曲を歌って、センスのないダンスを踊る。  しかし、それでもきっと、雑踏に踏みつぶされることはないのだろう、と思った。誰しもがレオと同じように、彼の歌に心臓を掴まれ、息を止められるのだ。  歌い終わった彼は、大きく息を吐いて春の町を見下ろした。  「……僕は、神様はいると信じているんだ」 神様がいないと言ったらここから突き落とされるんだっけ、と思い出しながら彼の背を見つめる。 「神様がいなかったら、僕は誰に八つ当たりすればいい? 誰を憎めば、恨めばいい?」 振り返った英智の瞳に、息を呑んだ。  相手にすべてを投げ出させ、降伏させるためには手段を択ばない、あの『皇帝』そのものの光を宿した瞳だった。  それは、あの頃だけのものであって、今は。  英智は、絶壁の先と展望台を区切るフェンスの手すりの上に立った。  そのまま、重力に逆らうことなく落ちていく――――その彼の姿を想像して、レオは細い腕を思い切り引っ張った。重なるように倒れて、英智の全体重がレオの身体にかかり、ぐぇ、と呻き声を上げた。  起き上がった英智が、レオの顔を見て、それからぷっと噴き出した。 「あははっ、あはははは!」 愉快に笑い声を上げる英智に、レオは顔を赤くして怒鳴った。 「笑い事じゃないからな!」 「僕が、飛び降りると思ったのかい? はぁ、君の真剣な顔と言ったら、あっはははっ」 大口開けて子どものように笑う英智を見て、言葉を発する気力も失せた。  笑い続ける彼を無理矢理押し退けて、レオも起き上がった。  笑い過ぎて下瞼に溜まった涙を拭った英智が言う。 「はぁ、ほんとうに君がいると退屈しないなぁ」 やっぱり一緒に暮らそうか、なんて口にする英智に、 「絶対にごめんだね!」 と、べっと舌を出した。  やはり神様はいるのか、と思った。  賽銭をしたときに心の中で言ったのだ、この男の笑った顔が見てみたい、と。自分には決して見せないような顔を見れたら、きっと霊感が湧くのだろうと思ったから。  立ち上がろうとした英智が、あれ、と言う。先に立ち上がったレオが彼のつむじを見下ろす。  「……月永くん、」 「……なんだよ」 「腰が、抜けたみたいだ」 「このボンクラ『皇帝』!」 そう罵って、動けなくなった彼の身体を背負う。驚くほどの軽さに息を呑んだ。 「月永くんは優しいねぇ」 「貸しひとつな」  そうは言ったものの返される機会なんてもうないんだろうなぁ、と思いながら、麗らかな光が当たる坂道を下った。
 夜が更けて、彼の熱は少し上がった。 「昼間にはしゃぎすぎすぎたせいだろ」 と言えば、英智は、 「君の面白い顔を思い出すとまた笑ってしまうよ」 と言いながら、また笑っていた。  垂れ下がった紐を引いて、常夜灯に切り替わる。淡い光に目を擦り、彼の隣の布団に潜り込む。  そっと足を忍び込ませて、彼の足に触れる。  「あったかい」 彼はそう言って寝がえりを打ち、レオの方を向いた。レオはじっと天井を見上げたまま、光に目が慣れるのを待つ。  ねぇ、と彼が言う。  「君は、アイドルを辞めるのかい?」 考える時間さえなかった。その答えを、ずっと前から持ち合わせていた。 「あぁ」 天井の染みを数えながら短く答えると、英智は、けほ、と小さく咳をして、また問う。  「歌ってくれないの」 「歌わない」 「残念だなぁ……」 いつだかと同じやり取りをして、英智が咳をしながらも笑う。  「僕は君の歌声が好きなのに」 「嘘吐け」  英智が起き上がり、じっとレオの瞳を見つめた。暗闇の中で白すぎる顔がぼんやりと浮かんで見える。  深い溜息を吐いてから、今度はレオが問う。  「……お前は辞めないの」 「辞めない」 瞬時に返ってきた声に驚いて、英智を見つめ返す。その瞳が、強い声色とは裏腹に優しく細められた。 「辞められない、と言った方が正しいかな。アイドルという概念が僕を離してくれないんだ。それは苦じゃなくて喜ばしいことだよ、僕にとってはね」  なんとなく、その腕を取る。袖を捲って露わになった前膊は点滴の針の痕が多く残っていた。こんな脆い身体を引き摺り続けるなんて、自らの首を絞めるような行為だというのに。  「……月永くん、」 青が、揺らめく。あのときの薔薇の色も、この色だったとふと思い出す。  あの花と同じ、この虹彩の色が『神の祝福』だと言うのなら、皮肉にしか聞こえない。  手を伸ばして、彼の首に触れる。頸動脈が、どく、どく、と動いている。  「僕の我が儘を聞いてくれて、ありがとう」 「あははっ、おまえに礼を言われる日が来るなんて思ってもなかったな~」 英智の冷たい指がレオの輪郭を撫でる。その表情に、無理に引き上げた唇の端を元の位置へと戻す。  「僕のこと、ずっと赦さないで」 「……なに言って、」 「僕が君にしたこと、全部、赦さないでいて」 そう言った瞬間、英智は大きく咳き込み始めた。 「お、い……」  いつもとは違う。ヒュー、ヒュー、と喉鳴っている。レオは起き上がって、英智の背を摩った。左胸の奥で煩い心臓がレオの思考を邪魔する。  神様はいつだってひどい。人間を簡単に裏切るのだ。自分そっくりにつくったこの男を祝福したというのに。  嘔吐いた英智の唇から、鮮血が吐き出された。レオの服と布団が真っ赤に染まる。  「英智!」 名前を、叫んだ。  英智が顔を上げる。血で汚れた美しい顔を見て、英智は人間なのだと痛感した。人間だから、生きているから、死んでしまう。  ――――そんな風に、また、呼んでほしかったんだ、レオ。 そう擦れた声で言って、英智は微笑む。  そして、糸が切れた操り人形のように、レオの方に倒れ込んだ。繋いだお互いの手の隙間から、英智の命を証明する紅が零れて指を伝う。  「英智!」 引き攣った喉から紡いだ声で、もう一度そう呼んでも、英智は長い睫毛を伏せたままだった。
6
 七日目。寒���がぶり返した。三寒四温とはこのことか、と思いながらマフラーを巻いた。  仕事の打ち合わせを終えて、あの田舎の街に向かうバスに乗っているときに、ポケットの中のスマートフォンが震えた。液晶画面には『ケイト』という着信相手の名前が表示される。  「もしもーし」 『もしもし』 卒業式以来に聞いた声は、相変わらず無愛想だった。しかしその中に少し疲労が窺える。 「珍しいな、お前がおれに電話かけてくるなんて」 『お前が電話に出ることも珍しいぞ』 「今暇してたんだよ」 『英智といるときは忙しかっただろう』  その言葉に呆れ笑いが出る。 「なに、俺を糾弾するためにわざわざ電話掛けてきたのか~?」 『逆だ。礼を言うためだ』  ふは、と思わず笑い声が出てしまった。電話越しに、咳払いと、『何笑っている』という声が聞こえた。 「お前に言われてもなぁ。『皇帝』本人に頭を下げさせたいんだよ、おれは」 冗談交じりにそう言えば、彼は黙ってしまった。  「あいつ、生きてんの?」 そう問えば、即座に、 『生きている』 と返ってきた。  『いつもよりひどい発作だったらしい。じきに良くなる。そうしたら、会いに来い』  会いに、か。  バスがゆっくりと止まる。老婦人が降りて、その後に続いてレオも降りた。  白く輝く星たちがよく見える、静かな夜だ。街灯のない畦道を歩く。冷え込んだ空気に身震いした。  フードに顔を埋めて息を吐く。  「分かった」 そう一言だけ、返事をした。  『あと、英智から伝言だ』 「伝言?」 『ピアノの傍に渡したかったものを置いておいた、と』 「……そうか」 敬人は何も訊かなかった。さすが気が利くなぁ、と感心しながら、一言二言を交わして電話を切った。  その頃には目的地に辿り着いていた。空き家となった日本家屋の門には、名札が掛かっていなかった。合鍵を使って戸を開ければ、初めて訪れたときのように沈黙が立ち籠めている。  スニーカーを脱ぎ、家に上がった。
 昨日の夜。  英智は血を吐いて意識を失った。レオが呼んだ救急車に乗せられて市街地の病院に運ばれていった。サイレンの赤い光と耳に響く音が遠ざかっていくのを見送って、踵を返した。  走って向かった中庭では、梅の花が月明かりの下、儚い白い光を放っている。両の掌を、月に翳した。  乾いた赤い血。彼の身体に通う血潮。生きた身体に、流れている血。  立水栓の前に立ち、自分の手にべっとりとこびり付いた彼の血を、冷たい水で洗い流す。  渦を巻きながら排水口へ運ばれていく血と水を見て気付いた。  あの朝が来る前。中庭の水道に浮かんでいた花びらを染めた赤は、英智の血だったのだと。  昨日の朝方も、英智は吐血していたのだと。ひとり、立水栓の前で体を折って、咳き込んで、鮮血を吐き出していたのだと。  苦しげに歪められた横顔と、必死に噛み殺そうとした嗚咽を思い出す。蛇口のハンドルを掴んだまま、そのままずるずるとしゃがみ込んだ。  「……今更だよなぁ」 ひとりごとは誰にも届かず消えていった。  勢いよく吹き出す冷水に左手を当て続けた。指先の感覚が、なくなるまで。
 渡り廊下の先の離れに入る。東の窓から差す月明かりの下、グランドピアノが佇んでいた。  ふたりで腰掛けて連弾したことを思い出す。白く細い骨ばった指がレオの描いた音符を追って、鍵盤の上で踊っていた。  日本家屋に似つかわしくない茶色のグランドピアノの前の椅子に腰を下ろす。  鍵盤蓋を開け、譜面台を立てて、息を呑んだ。  一枚の便箋がそこに、楽譜のように立て掛けられていた。  『月永くんへ』 一行目に綴られた、その筆跡。  思わず鍵盤に触れて、透き通った和音が響いた。  『君がこの手紙を読んでいるとき、僕はもう生きていないかもしれない。』 二行目に書かれたありきたりな文。それを目にした瞬間、全身の血液が沸騰した。  その手紙を払いのけた。はらはらと床に落ちる。  耳鳴りがする。それを掻き消すように音を掻き鳴らした。
―――― 月永くんへ  君がこの手紙を読んでいるとき、僕はもう生きていないかもしれない。  どうしても君には伝えておきたいことがあって筆をとったよ。  久々にこんな高熱を出して体が言うことを聞いてくれないんだ。読みにくい字でごめんね。
力が入らなかったのだろう。震えた字だった。
――――思えば君にはひどいことをされたし、僕もおなじくらい君にひどいことをしたね。  あの学院で過ごした日々がなつかしいよ。  君と戦ったこと。  君が逃げたこと。  君がいない間、病院のベッドの上で君の作った曲を思い出していたこと。  君ではなく新星のあの子たちに敗北したこと。これは、さすがに情けないね、わらっていいよ。君が帰ってくるまで王座についているつもりだったのだけれど。  君が帰ってきてナイトキラーズとして戦ったこと。  僕がしたことを、ゆるさなくていい。  けど、おねがいだ。  僕のことはぜんぶ忘れてほしい。
 激しく感情的な反面、哀しげなメロディーが響き渡った。  紙を手に取って、感情に任せるまま、それを引き裂く。  最大の喪失だ。何もかもが奪われていく感覚がする。これならオリジナリティのない量産型のアイドルソングを聞いている方がマシだ。
――――最後に。僕のわがままを聞いてくれてありがとう。  君は最高の宿敵だった。元気で。
 震えた手で描かれたサインさえ破いた。  「赦さないで、忘れられるもんか……!」  鍵盤に額を凭れれば、乱雑で悲しい和音が響いた。  生きることを諦めた手が綴った手紙は塵になって床やピアノの上に落ちた。  「おまえの終着点はこんな所なんかじゃないだろ……!」 吐き捨てるように一人叫んだ。  今、やっと気づいた。  なぜ英智があの学院を出て、悪足掻き、と名をつけてレオを連れてこの田舎の家に来たのか。  この場所で、彼は死のうとしていたのだ。  あてつけのつもりだったのか、償いのつもりだったのか、それは分からない。  ただ彼は、両親の傍でも、幼馴染の傍でも、仲間の傍でもなく。  かつての宿敵の傍で、死のうとしていたのだ。  ――――歌わないの。 そう、彼が問う。  歌わない。  歌わないさ。  この曲はおまえへの餞だ。おまえが、歌えばいい。
 曲を書き終えて、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。ふ、と目を開けたとき、水滴が一筋の線を描き、パーカーの袖に染みを作った。  振子時計の短針が五を指していた。夜更けを過ぎたものの、まだ外は暗闇に包まれている。  メモ帳から、五線譜を書いた数ページを引き千切って譜面台に添え、ゆっくりと寝かせた。このピアノを英智は捨ててしまうだろうか、と考えたがすぐにどうでもよくなる。  二階へ上がり、ふたりで使った寝室に入った。  彼の匂いがした気がした。  窓辺に腰掛けて、外の風景を見つめていたあの横顔をもう見ることはない。  いつも真っ直ぐレオに向けられた、冬の晴空と同じ色の瞳も、  艶のある柔らかい金髪も、  長い指、細い身体の線も、  あのとき、指で撫ぜた頸椎やなぞった背骨も、  粉雪みたいに白く冷たい肌も、  悪戯好きな子どもの頃の面影を残した稚気溢れた笑顔も、  もう、隣にはない。  ――――おやすみ、月永くん。 眠るのが怖いと言った英智は、布団の中で瞼を閉じる前に必ずそう囁いた。青が閉じられて、  作り物のようになってしまった彼の体温を確かめたくて、必ず爪先で足に触れた。あったかい、と彼は笑った。  「……史上最悪の一週間だった」 その言葉が窓を曇らせた。  傍にあった英智の強さに、脆さに、喉奥に隠した叫び声に、死のにおいに、すべてに気付きながらもレオは何もできなかった。  何も変えることはできない。ふたりは神様ではなく、神様につくられた『人間』であって、運命は変えられないのだと知っている。  はぁ、と吐いた息で窓ガラスが白く曇る。その色紙に指先で、数え切れないほど書いてきたサインを描く。そのサインが消えてしまう前に、レオは家を出て、玄関の引き戸に鍵をかけ、もう使うことのないそれを郵便受けに入れた。  それから中庭へ向かい、一本の梅の木の前に立った。  幹に触れ、そして額を当てた。英智がこうしたまま、何を考えていたのかレオには解らないけれど。  ――――英智、 名前を呼ぼうとして、やめた。  ――――レオ そう呼んだ彼の声が聞こえた気がして空を仰ぐ。  泣きたくなるほど真っ青な空に、白い花びらが映えて、散っていく。  三月の寒さに身震いして、門をくぐった。ダウンのフードに顔を埋める。振り向くな、と自分に言い聞かす。  結局、ふたりの青春は、神様が丁寧に拵えた箱庭のような学院でしか生きられなかったのだ。もう二度とあの頃には戻れないし、あの頃を悔いることもない。  何も間違えたことなどなかった。子どもの二人にはすべてが必要だったのだ。  英智が『五奇人』、『王』との戦いに勝利し、『皇帝』になったことも。  レオが彼に敗北し『Knights』を守れずに壊れた玩具になったことも。  『皇帝』が新星に頭を垂れたことも。  あの秋に再会したことも。  ――――宿敵と見なし憎みながらも、愛したことさえも。  神に愛され弄ばれた二人の運命だった。 乗客の少ないバスに乗り、窓際の席に腰を下ろした。さほど大きくない車体が動き出す。  ふたりで過ごした街が遠ざかっていく。  窓に頭を凭れて、瞼を閉じる。  あいつが死んだら、あいつはおれのことを忘れて、おれもあいつのことを忘れるのか。忘れて、お互いを赦すのだろうか。  その疑問を浮かべてから、地獄に堕ちてからじゃないと解らないなぁ、とふたりを嘲る。  頭の中で、あの頃の彼の、凱歌を歌う声が鳴り響く。もう聞くことのない、昔は憎くて堪らなかった、命を証明する美しい叫び声が。脳裏に、祝福を受けた青い瞳でレオを見つめる彼の微笑が浮かぶ。  日射しに瞼の裏が明るんで目を開けた。東の空が白み、新しい一日が生まれる。  美しい夜明けを、レオはひとりで迎える。きっと英智も、病室でこの夜明けを迎えているのだろう。  それをただひたすらに、これからも繰り返していくのだ。  そうして、死んだ青い春を抱えて、ふたりは生きていく。
20160424
夜明けを迎える | よなか #pixiv http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6698339
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hikoheihi · 5 years
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7月から今日まで
久しぶりに忙しい内容の生放送。朝冷蔵庫に忘れ物をして幸先が悪い。雨宮さんに試食を丸投げしてディスプレイする。放送開始後生肉を切りにいかなくちゃならず、インカムから聞こえる縁起のいいめだかを紹介する中継を聞きながら「おめだか様の手も借りてえ・・・」と思う。めだかには手も足もないというのに。猫に助けを求める時点で相当てんてこ舞いなのに、めだか。まあなんとか破綻せずにすんだ。かなり危なかった。試食入れ終わったの10秒切ってた。相変わらず想像力がない。帰って役所に行くつもりだったけど結局寝てしまった。19時に起きてデニーズにいく。1時に帰宅。流石に疲れてフラフラで寝る。
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ちょっと余裕ある時間に起きてステーキ丼食べる。堀井さんの担当回を少し見て家を出る。 JAFNA。川畑さん仕事早い時はちゃっちゃとやってくれるからってそんなトゲのある言い方しなくても。今日はまあ普通。そんなに早くは終わりません。昼飯は例によってはしご。5回連続。だあろう。隣の人が食べてたシュウマイがうまそう。次はだんだんとシュウマイかな。 なんだか酷く疲れてしまい帰ったら寝るなと思ったのでプロントに入る。が、wifiがなく結局飲んじゃう。 
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朝雨がすごかったから小田急でツイート検索したら積み残しが凄そうだったのでケイクスにメールして1時間余計に寝た。カレー食べて11時半くらいに電車乗って12時半とかに出社した。パン祭り今日だったのにおにぎり弁当買っちゃった。なんだかんだ結構食べちゃう。全部めちゃうまかった。ロブションのクリームパンすごい。今度人に買っていこう。体力がガーーっとなくなって大変だった。結構やばい気分だったけど下北で一龍食べてブルーマンデーでES書く。興が乗ってきて、いい感じでまとめることができた。なによりやりきったことで得体の知れないエネルギーを得た。22:50くらいまでいたけど0時前に帰ってきた。下北沢は近い。
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朝起きて学校に行って証明書を発行して図書館にいって本を読もうと思っていたのに結局14時まで寝てしまった。背中に痛みを感じつつシャワーを浴びて代々木八幡に行く。月一の散髪。着く直前に清水さんから連絡が来ていることに気がつく。早稲田に移動。証明書を入れるクリアファイルを忘れてどうしようか迷ったけどお父さんは週末しかいないので発行することに。ついでに成績証明書も取っておいた。なにかに使う気がするので。図書館で『舞踏会に向かう三人の農夫』を借りて少し読む。どうやら舞踏会とは戦場のことらしい。19時に合流してピカソ。桃のサラダと2本目のワインが美味しかった。牧舎に行って藤田さんの誕生日に乾杯する。気にかけてくれていて嬉しい。
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13時まで寝てしまう。お父さんがご飯に誘い出してくれた。ロイホでハンバーグ。 煙草の吸いすぎで胸が痛くてあんまり長くものごとを考えられない。 少ししてヤマザキに買い物に行く。そうめんをゆでて食べてしばらくしてからデニーズに行く。日記を書いている。このあと帰ってお風呂に入って寝る。
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リハをやって本番をやる。古野さんが最後だったのにうまく感謝を伝えられなかった。頼りにされていたと思うし、つくしたいという気持ちがあった。いい経験だった。江ノ島に撮影に行く。しゅんじに手伝ってもらいながら二日間で5カット。満足。でも提出時に5カット”以上”で、テーマが『早稲田の光』であることに気づいてしまった。まあいいか。電車の乗り継ぎを間違えてしゅんじを1時間も待たせてしまった。ふつうにおちこんだ。 木金は銀座で事務。久保さんいないので好き勝手やった。でも仕事はほとんどきちんと終わらせた。ウーバーイーツを初めて使った。tosirou(85)がお届けしてくれた。ビッグマックセット。帰りにオールスター見たくて代々木上原のビアバー行って5千円も使ってしまう。でも秋山が松坂からホームラン打つところみれたからいいか。今日はプール行ってそうめん食べた。音楽の日とかいうテレビの歌番組で宇多田ヒカルを見る。今日も美しかった。
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引越しを手伝う。12時に渋谷につけるように起きて家を出た。セブンイレブンでサンドイッチとコーヒーを食べて電車に乗ったらお腹が痛くなって新百合で降りた。間に合うかなと思っていたらやっぱ13:30と連絡があってこの感じ懐かしいなと思った。下北で立ち読みして100均でメジャーを買って改めて渋谷に向かう。井の頭線に新しいエスカレーターができている。結局14時前に集合して天下寿司にいく。美味しい。元祖より美味しいし値段もそんなにしないし閉店間際は安くなるらしいしいい。カーテンを買いベッドを物色してから無印へ。ベッドを決めてハンズで壁美人を買う。ニトリに戻って鏡を買って再び戻る。楽しみだなあこれからの人生と言った友達が眩しかった。おれは全然楽しみじゃない。正気を保つので必死だ。
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俊二と早稲田に行って図書館とコンタクトセンター。ふたりでメルシーを食べる。別れて松の湯にいく。体重が70kgになっていて驚く。ゴトーでチーズケーキ食べて帰る。ダイエットだと思い夜はツナ缶とレタス。那須の話が動き出す。
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金曜日の夜からリンクス同期7人で那須に旅行に行った。1日で先に東京に戻って新木場でceroのtrafficに。SPANKHAPPYに間に合うか危なかったけど大丈夫だった。完全に整った。帰りにコンビニで煙草を吸うこともなく、石鹸を買い足し忘れたことにも苛立たず。おおらかなこころを取り戻した。
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9時台に起きて朝ごはんを食べる。昼まで洗濯をして12時半に正ちゃんへラーメン食べに行く。しょうゆ味玉。アイス食べてCS見る。ずっと後手。点差以上の差を感じた。
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ファミマで肉まん食って夜はサガミで味噌うどん。怒りの葡萄上巻読み切ってコンビニでコーヒーとチョコ。まじでおもしろい。怒りの葡萄。文章全体が煌めいてる。
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多摩川に行ってお昼を食べる。川沿いを歩く。狛江高校の女子陸上部がいる。硬式の少年野球がいる。小さい子供とその親がいる。女の人二人組がいる。洪水を伝える石碑を見つける。おれにも伝わったよ、と思う。トイレに行きたいのとゴミを捨てたいのとで駅に向かって歩く。結局改札内にしかトイレもゴミ箱もなかった。なんて不便なところなんだろう。駅でガーベラを、セブンでロックアイスを買って帰る。裏庭で焼き鳥をするというので鶏肉を切って串に刺す。串に食材を刺すことを串を打つという。ビール飲んで焼き鳥食べる。日本シリーズを最後まで見てコンビニに行く。帰ってきて風呂に入ってウイスキーを一杯だけ飲む。2時に寝る。
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俺を漢字一文字で表すと瓦らしい。瓦斯の瓦。青い炎。採用。9時に起きて着替えてコンビニまで散歩。なんとか振り絞ってES書いて履歴書も書き直してギリギリで家出る。走る。間に合って面接。可愛くて愛想がいいけどペラい感じの女の子が受け付けてくれる。なんか小説に出てきそうな絵に描いたようなベンチャー企業の若い女の子だ。面接はけっこう芯食ったと思う。終わって駅前でサンドイッチとカフェオレ。煙草。帰って授業の準備と授業。面接と演習で脳が興奮状態にある。
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リハ。ADさんが有能でとても助かる。パターンいじってただけ。本屋とベローチェで時間潰す。ベローチェにZAZYがいた。魚金で飲み会。楽しかった。
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本番。飯田さんへの手元大根の打ち込み浅かった。記憶ねえ。こういうとこだ。 オファーボックス整備。めっちゃオファーくる。去年の今頃からやっとけばよかった。
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12時半まで寝てから掃除と洗濯をして、ツタヤに行って帰りにコンビニでタバコを吸ってあとは部屋で音楽を聴いたりSNSをみていた。今日は129円しか使わなかった。これで2千円浮かしたのでもう本が買える。 年金の督促が来てしまったので遡って猶予できるか確認しにいかなくちゃいけない。でもこれで最大でも九月までしか猶予にならないことは確実になったから少なくとも半年分は月16000円払わなくちゃならない。ばりキツイ。
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11時前に起きてご飯を食べる。宇多田ヒカルのプロフェッショナルを見てからまほろ駅前狂騒曲をみる。真実は他者にはない。世界にもない。自分にしかない。思い出す作業に近い。なにか引っかかったら引き寄せくる。まほろは終盤急に大味になっていまいちだった。あのぬるっとした緊張感のなさと進行している狂気のギャップが悪い方にでてた。でも作品全体に横たわる空気はとても好きだ。映画終わってちょうどM-1始まったから見る。ここ3年はとても刺激的で、しかも笑いを通してなにか世の中の倫理観とか空気感がいい方向に転がっているような感覚がある。平場の志らくほんと嫌いなんだけど絶対上沼殺すマンになっててよかった。塙富澤志らくは審査基準を繰り返し述べていたのが番組全体に安定感と信頼感を与える結果になっていてとてもよかった。霜降り明星の漫才はボケ単体でもパワーがあるのにツッコミが全ワードハマっててすごかった。久々に背中痛くなるくらい笑った。92年93年生まれらしくて嬉しくなった。和牛が準優勝3回目と聞いて聖光学院かよと思った。ジャルジャル。もうジャルジャルが2本やっただけでいかにいい大会だったかということがわかる。その上で3位。いい塩梅。絶対結果を出そうとして、その過程についてまでも理想を描いて、突き詰めて、あの組み順で決勝に残って、ウケて、あの2組にああやって負けて、エンディングのあの表情。もう充分すぎるくらい見せてくれた。あなたたちが俺たちの幸福を願ってることは充分伝わった。あしたからも楽しく、幸せに、全員連れて行く漫才をつづけてください。ありがとう。
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新バイトへの説明と本番、JAFNA。眠すぎて市民センターいけなかった。友達から結婚の報告を受ける。おめでたい。すすすっと生きていくのに全然悲壮感やさみしさを感じさせないコミーさん好き。
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面接して面接。1本目はとてもうまく行ってその場で内定がでた。変に受け流しても体に良くない気がしたのでじんわり喜んだ。でも次があったので脚はわりと高速で回転させた。2本目は大失敗した。面接官の第一声を聞いた瞬間にこいつ冷たいな、見下してんな、しゃべりたくねえなと思った。終始全然響いてない感じで、締めの言葉が御足労ありがとうございましただったんでもう完全に終わったと思った。やべえどうしよう、まじでエンジニアか。これどっちだ?悲しいのか?迷いなくなってむしろいいのか?んんん??となりつつタリーズでなんかピザクロワッサンみたいなのとチャイミルクティー、煙草。ぼーっとして、ぼーっとしながらも猛烈な勢いでなんJ読み漁るいつものぼーっとするをして、ながらご飯、みたいなことだけど、して、体はねむいし頭は混乱してるから首がくんして寝ようとするけど次の瞬間には巨人のプロテクトリスト予想見て、いやどうせ若手が漏れてる、とか思った瞬間にはガクン。してるうちにメール。え、うわっ3時間で来た。常にお互い即レスという12月採用あるある第2位をやりながらここまできたもののさすがに今回はひらけず。再び広島スレを回遊したのち急にプロ野球が色褪せて見えたので、やっぱ一番面白いの自分の人生か、と思いつつ開いたら通ってて草。通ってて草。なにがあった?の答え一発目として上出来なやつだった。草ってリアルで使う人ほんと無理だったんだけどこの1年でちょっと大丈夫になった。3時間ふらふらだったけどまた別の種類のフラフラがきてフらふラだった。でも迷いは晴れない、とりあえず脳内に『まだ内定じゃない』をかけて戦闘モードを呼��戻す。
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最後のJAFNA。文書保存箱の組み立て方がわかんなくて、何はともあれ検索だと思ったら動画でてきて5秒で解決した。10分くらいウンウン言ってたのに。ファイルの整理や会員向けの資料の封書をしているうちにお昼に。最後なので事務局長とお食事。勤務初日に行ったイタリアンと同じビルにある和食屋さんに行った。目の前の壁に白鵬の手型が飾ってあってベタだなと思った。なんかふつうにハンバーグとステーキ重で迷っていていや和食和食と穴子重にした。穴子って銀座の和食屋でのランチとして一番ちょうどいい気がした。うなぎだと鰻屋のパチモンみたいになるし。美味しかった。なんで留年したのかとかどんなバイトしてたのかとかを話した。通常初日にする話。一応就活終わりましたと報告しておめでとうな空気にしておいた。就���中社会性を保つために始めたバイト先が、まさか解散し、まさか最終勤務日の前日に内定をもらうとは、なかなかかけない筋じゃないですか、と言おうと思ったけど何かの拍子に忘れ、今思い出し、言わなくてよかったと思う。席を立つ時「ここに白鵬の手型あるの気づいてましたか」と聞いたら見るなり「思ったより小さいのね」と言うので笑ってしまった。小ささに気づくの早っ。確かに小さい気がするけど。驚きの焦点の切り替わり方が早すぎる。バナナジュースコリドールに移動。レトロポップ&たしかな品質に久保さんも気に入ってくれたようでよかった。今日はベースを豆乳に変えてレモンとナッツを追加した。めっちゃうまい。またポイントカード作るの忘れた。午後は封書を頑張る。60ちょい。また盛大に紙を無駄にしながらも印刷したりなんだり。春にやってたら絶対おわんなかったし間違いまくりだったけど今はわりとふつうなのでふつうに頭が働いていい感じにミスを未然に修正してくれた。おれは間違えるけど脳みそが助けてくれる感じがした。無意識がのびのびしてるのがちょうどいい時
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9時に起きてラグビー。7時に兵藤から10時集合との連絡あったようだけどもう間に合わないと連絡。インスタみるも兵藤の気配がないのでたぶん朝まで起きてて今寝てる。三ツ沢上町から球技場まで歩く。とても立派な公園。球技場は球技場だけあって臨場感すごい。負けちゃった。けど生ラグビーはとても良いもの。早明戦以来だった。あれも冬。冬の晴れた日に熱く美しいスポーツを見るというのはなかなかいいものです。試合後横浜で飲む。みなさん暖かく受け入れてくれてありがたかった。
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吉祥寺でワカサギ会議。ワカサギを釣りにくことが決まった。長野に。久しぶりに井の頭公園にいく。大道芸人がとてもすごくて見いってしまった。その後ローグでキルケニーとなんかIPAを飲む。トラファルガーより品があって気分が出る。店内禁煙になっていたのもいい判断なように思う。お釣りが合わないからとたくとにスタバでチャイラテを買ってもらう。甘いの忘れていた。全然美味しくない。帰宅後、ご飯がなんにもないので腹ペコの中日記を書く。チャイへの後悔と空腹からナイルレストランを思い出して無性に食べたくなる。
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リハ。助手さんが有能で助かるというかおれが無能すぎて申し訳ない。でもなんとかなりそう。
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本番。まあなんとかなる。もっと時間をかけて準備しなくては。やっぱりSEは向いてない、というか嫌、やりたくない、のかもしれないと思い始める。まさきくんとよっちゃんと会う。よしひろに彼女ができたの本当だった。なんだか胸が熱くなった。相手と自分にきちんと向き合って常によしひろにとって最良の選択肢を選んでほしいと願うし、そのための力になりたいと思った。
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内定先の選定で無間地獄に落ちる。双六のルートを限界まで読み込んだところで結局ルーレット次第なので意味ない。意味ないことを意味ないで終わらせられなくてずっと困り続けてる。
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本番。朝、あっきーとあめみーさん結婚の報を知りはい?となる。目が覚める。以降いつになく調子がいい。つつがなく進む。結構見えてる感じ。一回インカム聞き逃して変な感じになったけど。サンドラ・ブロックがキアヌ・リーブス好きだったと告白したという記事で、当時サンドラはキアヌの顔を見るとあはははってなっちゃうから真剣になるのが大変だったと書かれていて、その好きのこぼれ方はとてもいいなと思った。
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9時に起きて10時から授業。途中11時からのも頼まれて12時に部屋に戻る。4時まで何をしようかと思っていると1時からもと言われて結局3時前にコメダに。グラコロバーガーとたっぷりウインナーコーヒー。おいしい。インヴィジブルを読む。佳境に入る。こういう視点の切り替えとても好きだ。夜はセブンの肉じゃがを2パック買ってきて食べた。美味しい。なんなら家のより塩分控えめでいいんじゃないかとすら思う。Spotifyはじめてみたけどとてもいい。
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9:30に起きて10時から授業。一コマやって夕方まで間があったので下北へ服を買いに行く。せっかくなので一龍納めする。奥のほうに常連がいていつもよりずいぶんにぎやかだった。なんか年末っぽい。一番盛り上がって最古参と思われたおじさんが実は初めての来店だったらしく他の客にひかれていた。4時に帰宅。夕飯の準備をしてから2コマ。終わって炊事。ニラとケー���と豚肉と卵の炒め物。ネギと里芋がいつのまにかお好み焼きのタネにされていたので味噌汁はインスタントにした。
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インターン先に1ヶ月ぶりに出勤。新オフィスめっちゃ綺麗で笑ってしまった。編集部のみなさまに挨拶。なんだかんだ可愛がってもらってありがたいことです。鈴木くんと目黒。落ち着いたしいろいろ書こうねという話をする。なぜかダーツへ。楽しい。
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昼飯に藤田へ。鴨南蛮。この商店街もそろそろ建て替えらしく西側はもう取り壊されたらしい。よく通った駄菓子屋俺たちのサンケイこと三景も閉まったらしい。ドキュメント72時間の年末スペシャルを見て泣いたりウンウン唸ったりする。デパート閉店の回が特によかった。6時ごろ出て下北で時間潰す。山角納めしようと思ったらすでにお納まりになっていた。仕方がないからひとりでジンギスカンを食べる。今ブルーマンデーでこれを書いていてこのあと渋谷に行く。
20181229
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kurihara-yumeko · 6 years
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【小説】黄昏時の訪問者 (上)
 孤独で優しい魔法使い
   Ⅰ.黄昏時の訪問者 (上)
 その日、アンナが病室を訪れた時、世界は燃えるような夕暮れに包まれていた。
 橋の上で足を止めると、遥か遠く、川の水面の中へと太陽が沈んでいくところだった。両岸の家々は赤い夕陽に照らされて、屋根瓦や壁の石材を黄金で縁取ったように輝かせている。黒炭で描いたかのような暗い影が長く伸びる。川面は金や銀のビーズを一面に敷き詰めたように輝いており、アンナはしばし呆然と、自らの頬にもその光をさんさんと浴びながら、その光景を見つめていた。こんなに見事な夕焼けを見たのは、一体いつぶりだろうか。
 教会から鐘の音が聞こえてきて、急ぐように家路を駆けて行く子供たちとすれ違う。アンナは遅れてはいけないと、その腕に抱えていた花束を抱き直して再び歩き出す。
 アンナは毎月第三水曜日に、その病室へ足を向ける。その日は決まって、職場が午後四時ちょうどに閉まるからだ。普段は六時まで職場に居残っている彼女も、この日ばかりは上司や同僚たちと同じように四時に退勤する。息子のジョンを保育園へ迎えに行くまで二時間の余裕があるので、こうして病院まで見舞いに行ける。病室に辿り着く頃には、面会時間がほとんど終わりに近付いているが。
 病室にいるのは、アンナの祖父、ジョージである。御年八十二歳になる彼は、浅黒い肌に深い皺をいくつも刻み、その姿はまるで年老いた柳のようだが、年齢を感じさせない、かくしゃくとした老人だ。ただ、長いこと肺の病を患っており、最近は歩くだけで呼吸が苦しくなって動けなくなってしまう。一日のほとんどをベッドの上で過ごしており、ほんの少しの移動でも車椅子に頼らねばならない。彼はそのことをふがいなく思っているに違いなかったが、それを口に出しているのをアンナが聞いたことはない。
 病院の玄関ホールへ入ると、診療受付が終了している外来の待合室を突っ切るように横切り、アンナは奥にあるエレベーターへと向かう。
 エレベーターが下りて来るのを待つ間、幼い少女が側を通りかかり、アンナの腕に抱かれた大きな白薔薇の花束に目を見開いた。まるで食い入るように花を見つめる少女に、アンナは「こんにちは」と話しかけたが、少女は驚いたように表情を硬直させ、そのまま何も言わずに通り過ぎて行った。ここに入院している患者なのだろうか。ジョンよりも少し年上くらいの子供だったが、親も看護師も、誰も少女に付き添ってはいなかった。
 だがアンナはすぐに、その少女のことは忘れてしまった。それは、エレベーターに乗り込み五階へ行き、病室の扉をノックした時、「どうぞ」という凛とした声を聞いたからだった。
 祖父の声ではなかった。もっと若い男の声のように聞こえたので、彼女は最初、病室を間違えたのかと思った。しかし扉を開けると、ベッドにはいつものように祖父がいて、半身を起こした姿勢のままアンナを見つめていた。部屋の窓はブラインドが細く開けられていて、清潔感のある白で統一された病室には、赤い夕陽の縞模様ができている。
 そして声が聞こえた通り、祖父のベッドのすぐ側には、ひとりの青年が椅子に腰かけていた。
 それは見知らぬ青年だった。黒いタートルネックのセーターと、濃紺のジーンズを身に着けており、それらは高価な衣服のようには見えなかった。黒い髪も少し伸ばしてあるようで、身なりからして学生、年齢からすると大学生くらいだろうか、とアンナは想像した。
 青年の肌は白く、瞳は髪同様に黒い。中肉中背の、どこにでもいそうな平々凡々とした若い男。
 それがアンナの、彼に対して抱いた第一印象だった。
 しかし、それでも彼女は、祖父の病室で彼と対峙した時、驚きのあまり言葉を発することができなかった。彼女はその日、祖父の見舞いに通うようになって、彼に来客があったところを初めて目の当たりにした。今までこの病室で出会ったのは、祖父以外はいずれも病院関係者だった。見舞いに来た血縁者にすら出くわしたことがない。祖父の病室で出会った最初の来客、それが孫娘の自分よりも若そうな、見知らぬ男だったのだ。
「どうしたアンナ、ぼけっとして」
 ベッドの祖父はしわがれた声で怪訝そうにそう言うと、もっと近くまで来るよう手招きをした。アンナは未だぽかんとした表情で青年を見つめたまま、祖父のベッドへと近付く。
「彼女が、お孫さん?」
 青年がジョージにそう尋ねた。穏やかな声音だった。まるで寝る前の子供に絵本を読んでやる時の、父親のような声。アンナの脳裏には一瞬、夫のことが過ぎった。息子のジョンは、一日の終わり、ベッドの中で夫に本を読んでもらうのを楽しみにしていた。
「そうだ。孫娘のアンナだ。知っているだろう?」
 祖父はそう言って、彼女のことを青年に紹介した。それから祖父は彼女を見上げ、
「アンナ、こちらはスミキ。俺の旧い友人だ」
 と、告げた。
 青年は椅子から立ち上がり、彼女のことを正面から見つめた。
「こんにちは、アンナ」
 そう挨拶をした彼の顔には柔和な笑みが浮かべられていたが、親愛の情を示すために握手を求めてきたりはしなかった。アンナは青年の両手が、黒くてぴったりとした手袋に包まれていることに気付き、それを不思議な気持ちで眺めた。乗馬用の手袋のように見える。どうして手袋なんてしているのだろう。手が汚れるような作業をしている訳でもないのに。
「初めまして。……知らなかったわ、おじいちゃんにこんなに若いお友達がいたなんて」
 アンナが持って来た花束を手渡しながらそう言うと、祖父は白い薔薇の花に表情を多少和らげたものの、不機嫌そうな声を出した。
「こいつが若いもんか。言っておくが、スミキは俺よりずっと年上だ」
 アンナは少し目をみはり、それから苦笑した。この祖父が冗談を言うのは珍しいことだった。
「僕って、そんなに年だったかな?」
 青年はきょとんとした表情をしている。ジョージは受け取った花束をベッド脇の戸棚の上に置きながら、ふん、と鼻を鳴らした。
「お前はいつまでも若作りな顔をしおって。八十年前からちっとも変わっておらん」
「顔だけは綺麗なままでいたいんだ。アネッサも褒めてくれた顔だからね」
 青年は手袋を嵌めたままの両手で自らの頬を触り、それからジョージを見つめて、
「君は、少し会わないうちに、ずいぶんおじいさんになったね」
 と、言った。
 ジョージはやれやれと言うように首を横に振り、肩をすくめる動作をする。
「当たり前だ。お前と違って俺は魔法を使えないし、そもそも、もうだいぶジジイなんだ」
 それから彼は、孫娘が困惑した様子でふたりのやり取りを聞いているのを見やり、「まぁ、座りなさい」と声をかけた。
 部屋の隅に立てかけてあった折り畳み式の椅子を一脚、青年がアンナに手渡し、彼女はそれを広げて腰を降ろした。
 ベッドを挟んで反対側の椅子に座った青年を、アンナは怪訝そうに見つめた。こんなにも祖父と親しげに会話をする人物と、今まで出会ったことはなかった。
 祖父は若い時は大工をしていたが、アンナが物心つく頃には、すでに仕事を辞めていた。彼はかつての仕事仲間とも、近所の人々とも交流を持とうとしなかった。ときどき思い出したかのように立ち寄る友人や知人を、渋々家に上げていた。客人の相手をするのは、決まって祖母のマリーの方だった。祖父は眉間の皺をより一層深くしたまま、客の前ではほとんど口を開かなかった。そして一時間後には、追い払うように客を見送っていた。
 その祖父が、穏やかに会話をしている。まるで、この青年とは言葉を交わすことが億劫ではないと言うように。しかも、孫のアンナよりも若いであろう青年と。
 ときどき庭に出て植木の手入れをし、家の修繕や小さな棚を作るくらいで、ほとんどの時間を家にこもりきりで過ごしていたこの祖父は、一体どこで、この青年と知り合ったのだろう。
「お前に、スミキの話をしてやろうか」
 アンナの心中を読んだかのように祖父はそう言うと、ベッド脇に置いてある小さな戸棚を開け、そこから一冊の本を取り出した。ところどころが手垢で黒ずみ、擦れて色褪せた革表紙のその本を、彼は黙ってアンナに手渡す。彼女は祖父の意図を掴むことができないまま、その分厚い本を膝に乗せ、そっと開いた。
「あら……」
 それは本ではなかった。多くの写真が収められたアルバムだった。写真は昔の物なのか、色のない物がほとんどだ。ページが後ろへいくにつれ、カラーの写真が混ざるようになり、アンナはやっと写真の中に見知った顔を見つけることができた。
「これ、おばあちゃんだわ」
 十年前に亡くなった祖母のマリーが、庭先で大きなゴールデンレトリバーを撫でている写真だった。
「この犬は、なんだったかしら……そう、エドね、エドワード」
 アンナは写真の中の犬を指差して、そう言う。
 思い出した。彼女がまだ幼い頃、祖父の家にはこの大きな犬がいた。年老いた犬で、鳴き声を上げることも、走り回ることもほとんどなかった。居間に敷かれたマットの上に寝そべっていて、アンナの顔を見ると尻尾を振り、口を開けてだらしなく舌を見せた。それがまるで笑っている顔のように見えたので、彼女はその犬のことが好きだった。だが、幼い彼女は、その大きな犬が突然豹変して襲ってきたらどうしよう、と恐れ、近寄ることができなかったのだ。
 写真の中の犬は、アンナの記憶の中よりもずっと活き活きしているように見えた。昔の写真なのだろう。後ろ脚で立ち上がり、前脚はマリーのエプロンに当てられている。まるで子供が母親にだっこをねだっているかのようだ。愛犬に優しそうな笑みを向け、頭を撫でてやっている祖母の姿もまた、アンナが記憶しているよりもずいぶんと若々しく見えた。庭に咲いている花を見ると、初夏に撮られた写真なのだろうか。半袖のワンピースから剥き出しのマリーの二の腕には、皺もあるがまだハリがある。
 次のページに貼られた写真には、庭の白いベンチに腰を降ろしている祖父の姿があった。病床にいる今よりもずっと元気そうな姿だ。その祖父の傍らに、佇んでいる若い男の姿があった。二十代くらいだろうか。白い肌に黒い瞳、襟足が少し伸びすぎている黒い髪。黒いニットを着て、首元には赤いスカーフが巻いてある。祖父とはずいぶん親しげに見えるが、見知らぬ男だ。だがアンナには、写真の男が目の前に座っている青年に似ているように思えてならなかった。
「これって…………」
 アンナが言いかけると、祖父はそれを遮るようにベッドから手を伸ばし、慣れた手つきでアルバムのページをめくり始めた。あるページで指を止め、とんとんと軽く叩くようにして写真を示す。
 祖父が示したのは、一枚の白黒の写真だった。教会の前に多くの人々が並んでいる。記念写真のようだ。人々の中心には華やかな白いドレスを着て白い薔薇の花束を抱いた女性が、同じく白い衣装を着た男性に笑顔で寄り添っていて、そのふたりが花嫁と花婿なのだとわかる。結婚式の写真なのだ。
 写っている人々は皆笑顔なのに、花婿だけがカメラを睨みつけるかのようなしかめ面をしている。どうして結婚式というおめでたい席の記念写真なのに、こんなにも不機嫌そうな顔をしているのだろう。
「もしかして、これっておじいちゃん?」
「そうだ」
 それがどうした、とでも言いたげに祖父は頷いた。写真の中の祖父と祖母は、あまりにも若々しくて、アンナには本当に自分の知る祖父母なのか判断ができない。今の自分と同じくらいの年齢か、それよりももう少し若いくらいだろう。六十年くらい昔の写真ということになる。言われてみれば、若い夫婦の顔には確かに、ふたりの面影がある。
 写真をしげしげと見つめているうちに、アンナは見つけてしまった。参列者の中にひとり、見覚えのある顔がある。さっきの写真にも写っていた、あの若い男だ。襟の高いシャツと古めかしいタキシードを着て、髪は後ろに撫でつけられきっちりと固められていたが、その顔だけは間違いようがなかった。何しろ、さっきの写真と何も変わっていないからだ。少しも変化が見られない。
 信じられない気持ちでアンナが向かいに座る青年を見やると、彼は手袋をした両手で自らの前髪をかき上げて見せた。そうした青年の顔は、写真の中の顔と全まったく同じだった。
「これも見てみろ」
 何も言えないアンナに、祖父はさらにアルバムのページを、歴史を遡るようにめくっていく。次に祖父が示したのは、もっと古い写真だった。紙は黄ばみ、茶色い染みが浮かんでいる。
 写真には、幼い男の子が写っていた。真ん丸の顔に、ソーセージのような指、ふさふさとした髪の毛。二歳か、三歳くらいだろうか。息子のジョンも、ほんの二年くらい前はこんな感じだった。夫のたくましい腕に抱かれて、嬉しそうにはしゃいでいた頃だ。
 写真の中の男の子は、ひとりの男と一緒に写っている。男はしゃがんで男の子と目線を合わせるようにして微笑みながら、写真の中から、写真を見る者に人指し指を向けている。恐らく、カメラの方を見るように、男の子に教えているのだろう。だが幼い男の子は、そんなことにはお構いなしといったようで、男の顔を見てにこにこ笑ったまま、カメラの方には見向きもしていない。
 黒いニットに、首には汚れたタオルを巻いて、くたびれて汚れた上着を羽織り、両手に黒い手袋を嵌めている男。伸びすぎた髪は後ろで結わえられ、まるで頭から生えた短い尻尾のようだ。その男は、やはり、青年と同じ顔をしていた。
「その写真の赤ん坊は、俺だ」
「おじいちゃんが、まだ赤ちゃんだった時の写真?」
「そうだ」
「さっきから、ずっと似たような男性が写ってるわ。この人は誰なの?」
「その男なら、お前の目の前に座っているだろう。スミキだよ」
「そんな訳ないじゃない」
 そう叫ぶように口にしてからアンナは、自分の声が思っていた以上に響いたことに驚いた。はっとして口を手で覆ったがもう遅い。声はきっと廊下まで漏れてしまっただろう。大声を出してしまったことが急に恥ずかしくなる。
「おじいちゃんの言っていることが本当なら、この人は八十年近く前に若者の姿だったことになるわ。八十年経ったら、おじいちゃんよりもずっと老けていないとおかしいじゃない。なのに、おじいちゃんの結婚式の時も、おばあちゃんが元気な頃の写真でも、まるで見た目が変わっていないわ。今だって……」
 意識して声を潜めるようにしてアンナはそう言ったが、祖父は片手を挙げて、「まぁ落ち着け」と彼女をなだめた。
「アンナ、お前の言いたいことはよくわかっているつもりだ。お前の言う通り、スミキは昔から少しも変わっていない。こいつは年を取らないんだ」
「年を取らない……?」
 アンナは祖父の言っていることが理解できなかった。
 年を取らない男。理解はできないが、そう言われれば一応、説明はつく。
 どうして八十年前の写真のままの姿なのか、それは年を取らないから。
 だがそんな回答では納得することは、到底不可能だった。この青年は、写真に写っている人物のクローン人間だ、もしくは、整形手術してその写真の人物と同じ顔に変えた、という答えの方が、よっぽど真実味を帯びている。
「違うよジョージ」
 今までうっすらとした微笑みを浮かべたまま黙っていた青年が、その笑みを崩さぬまま、口を挟んだ。
「僕は年を取らない訳じゃない。ただ、顔が変わらないようにしているだけだよ」
「それを、『年を取らない』と言うんだ」
「そんなことないよ、ほら」
 そう言って青年は、左手の手袋を外した。現れたその片手を見て、アンナは思わず息を呑んだ。それは若者の顔にはとても不釣り合いな、皺だらけの痩せ細った手だった。
 爪はいくつかが黒ずみ、いくつかは黄色くなり、どれも分厚く固く、周囲の皮膚に食い込んでいる。皮膚には細かい皺が覆うように刻まれており、骨は角張り、まるでコウモリの翼のようだ。そばかすのような染みもある。その手だけを見れば、この手の持ち主は百歳を越えている老人だと言われても、疑うことはないだろう。
 青年はその手で自らの頬に触れた。そうして若者の顔と老人の手が並ぶと、その違和感が気味悪かった。
「ほら、こっちも」
 青年の手はタートルネックの襟元をめくって見せた。今まで襟に覆われていた彼の首元は、その手と同じく、まるで老人のようだった。
「ね? 顔から下は、ちゃんと年を取ってるでしょ?」
 そう言って、青年はにっこりと笑う。写真の中で赤ん坊だったジョージに向けていたのと同じ笑顔だ。
「なんだったら、服を全部脱いで見せようか? お腹とかお尻はちょっと恥ずかしいけど。すごいしわしわだから」
 青年がそう言うと、ジョージが、
「誰が男の裸なんか見たいもんか」
 と、不機嫌そうな声で言った。
「女だったら見たの?」
「ばあさんの裸なんか、なおさら勘弁だ」
 そんなふたりのやりとりは、アンナの耳にはまったく入ってこなかった。
 アルバムのページを何度も行ったり来たりしてそれぞれの写真を見比べてみるが、どの写真に写っている男も、今、目の前でにこやかにしている青年と同一人物にしか見えない。
 首と手は老人で、顔は若者のまま。そんなことが可能だろうか。八十年前から顔をまったく同じに保つなんて、そんなことできるはずがない。
 しかし、どうして手袋をしているのだろう、という先程浮かんだ疑問は、こうして解決された訳だ。顔は二十代の若者なのに、手があんなに皺だらけでは、他者から奇異の目で見られる。手袋をすることで隠していたのだ。タートルネックを着ているのも同じ理由だろう。他の部位は服を脱いでしまわない限り隠すことができるが、手と首だけはそうはいかない。
 そう言えば、写真の中の青年は、必ず首元を隠し、手袋を嵌めている。アンナはそのことに気が付き、そして、ぞっとした。
 一体、いつから?
 一体いつから、この男は年を取っていないと言うのだろうか。
「……あなたは、何者なの?」
 彼女がそう問いかけた時、外した手袋を再び装着している途中であった青年は、一瞬きょとんとしたような表情をして、それからやはり、うっすらと微笑んだ。
 アンナの背中には冷や汗が流れた。その笑っている瞳の奥に、何かぞっとするようなものの片鱗を見てしまったような気がしたからだ。だが、薄く開かれた青年の口から発せられた言葉は、驚くほどに朗らかな声音だった。
「僕は、魔法使いだよ」
「……魔法使い?」
「そう。破滅の導師とか、不可能の術士とか、黒き無秩序って呼ぶ人もいるけれど、僕は魔法使いだ。自分ではそう思っているし、できればそう思ってもらいたい」
 魔法使い。
 それはおとぎ話やファンタジー映画の中でのみ使われる単語だと知っていたが、この青年と対峙している今、その単語が彼を表すのにあながち的外れでもない、ということが彼女にはわかる。この青年が何者なのかわからないが、彼が常人ではないということは、誰にだってわかる。
「どうして、おじいちゃんは魔法使いとお友達なの?」
 アンナは、今度は祖父に向けてそう尋ねた。祖父は黙ったまま彼女の膝の上で開かれたままだったアルバムのページをめくり、先程の、自分が赤ん坊だった頃の写真を指差した。
「スミキは我が家の庭師だった」
 幼い祖父と顔を見合わせて笑っている青年の服装は、言われてみれば庭師のように見えなくもない。
「そして、子供だった俺の遊び相手でもあった。俺は生まれつき肺が弱く、近所の子供たちと同じように遊べなかった。スミキは月に一度、うちに来ては庭の手入れをしてくれた。他にも庭師は数人いたが、一番若いのがスミキだった。俺はスミキに懐いていたが、学校に上がる頃にうちへ来なくなった。他の庭師に尋ねても、理由は教えてくれなかった。その頃には、俺の肺の病気はだいぶ良くなっていて、そのうちにスミキのことは忘れた」
 ジョージはそれからまた、アルバムのページをめくる。結婚式の写真を指差した。
「次にスミキに会ったのは、俺の結婚が決まった頃だった。スミキは突然、ふらっと俺の前に現れた。子供の頃に出会った姿と、何も変わらない姿でな。顔を見てすぐに、うちにいた庭師だと思い出した。そして、今のアンナと同じように、俺も狼狽えた。いくら変わらないといっても、限度がある。十五年以上経っても、若いままの姿だなんてな」
「僕もびっくりしたよ。あの赤ん坊が、こんないい男になってるなんて」
 青年がそう口を挟んだが、ジョージは相手にしなかった。話を続ける。
「俺は訊いた。あんなに俺の相手をしてくれたのに、突然いなくなったのはどうしてだったのか、と。こいつは言った。『実は僕は、庭師なんかじゃない。ただ、子供の頃病弱だった君が心配で、側で見守ることができるように、庭師の振りをしていただけだ。君の病気が良くなったから、僕は安心して消えたんだ』ってな。俺はまた訊いた。お前は一体、何者なんだ、どうして昔と少しも姿が変わらないのか、と。そしたらこいつはこう答えたのさ。『僕は魔法使いで、昔の恋人の、魂の継承者を見守り続けている』」
「魂の継承者……?」
 アンナが訊き返すと、青年は朗らかな声で「そうだよ」と答えた。
「君のおじいさんは、僕の恋人の魂の継承者、つまり、生まれ変わりなんだ」
「生まれ変わり……。おじいちゃんの前世が、あなたの恋人だった……ってこと?」
「そうだよ」
「言っておくが、俺には前世の記憶なんてないぞ」
 ジョージが渋い顔をして、首を横に振りながらそう言うと、
「そりゃそうだよ。ジョージの前世は男性だったもの。君の魂が僕の恋人だったのは、もっとずっと、もう数十世代も昔だよ」
 と、青年は笑いながら言った。
「じゃ、じゃああなたは、おじいちゃんの前世も、そのまた前世も、そうやってずっと、見てきたっていうの? 恋人の生まれ変わりを、数十世代も、ずっと?」
「そうだよ」
 青年はにっこりとした笑顔だった。アンナは絶句した。大法螺を吹くことは誰にでもできるが、あの皺だらけの手や、アルバムの中の変わらない彼の容姿を見てしまった今、それも嘘ではないのかもしれない、と思えてしまう。
「でもどうして、恋人の生まれ変わりを見てきたの? おじいちゃんだって、前世のことは覚えていないんでしょう? ときどきは、あなたの恋人だった頃のことを覚えている人がいるの?」
「ううん。皆、アネッサだった頃の記憶はない。前世のことなんて覚えていないよ。皆、自分が母親の胎内にいた時のことさえ覚えていないのに」
「じゃあ、どうして?」
「もうアネッサは、死んでしまったから」
 青年は変わらない笑顔のまま、そう答えた。
 アンナは彼に何かを尋ねようとして、しかし、何も言えなかった。
 もうアネッサは、死んでしまったから。
 そう言われてさらに何か問うべき言葉を、アンナは持っていなかった。
「話を、続けても構わんか?」
 祖父はアンナにそう断ってから、話を続けた。
「俺の前に現れたスミキは言った。結婚のお祝いを言いに来たのだ、と。俺は不思議だった。一体どこからその話を聞いたのか。まだ両家しか結婚の話は知らないはずなのに。そしたらこいつは、『魔法で』って言いやがったのさ。魔法でなんでも、知りたいことは知ることができると。俺は信じられなかった。だから訊いた、『なら、俺とマリーの子供はいつできる?』って。そしたらこいつは平気な顔で、『彼なら、もうマリーのお腹にいるよ。こないだの土曜日に着床したばかりだ』って言ったんだ。その時にも驚いたもんだが、その後で本当にマリーが妊娠しているとわかった時には飛び上がるほど驚いた。産まれてきた子が男の子だった時には、俺にはもう、スミキの話を疑う余地はなかった」
 アンナは黙って祖父の話に耳を傾けていた。青年も穏やかな微笑を浮かべたまま、黙っている。祖父は咳払いをひとつして、続けて言う。
「それからスミキは、何か祝いごとがある度に俺のところにやって来た。子供たちが産まれた時、高校に入学した時、それから、彼らが結婚した時と、孫が産まれた時だ」
 祖父はアルバムのページをめくり、祖母のマリーと、犬のエドワードが写っている写真を指差す。
「アンナ、これはお前の兄のマルクが産まれた頃の写真だ」
 ということは、三十年ほど前の写真ということになる。マリーもエドも、アンナの記憶の中よりもずっと若々しい姿をしているのは、やはりそれだけ過去の写真だからなのだ。
 アンナは青年に向かって尋ねた。
「私が産まれた時にも、あなたは来てくれたの?」
「もちろん。君が結婚した時も、君がジョンを産んだ時も、僕はジョージにお祝いを言ったよ」
「それから、身内に不幸があった時も、スミキは俺に会いに来た」
 祖父がそう言ったことで、アンナは少しばかり目を見開いた。
「それじゃあ……」
「ロバートのことは、本当に残念だった」
 言いかけた彼女を遮るように、しかし柔らかい口調のままで、青年はそう言った。そしてそれ以上は、何も言わなかった。アンナは確信した。この青年は知っているのだ。彼女の夫が、もう亡くなっていることを。
 (下) へ続く
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spst-haru · 3 years
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[ 彼岸水鏡 ] . . . 水溜りを覗き込むと、 映し出される 赤き妖艶な花。 . . . ==================== 📸 2021.09 Soko-in, Matsudo, Chiba . Nikon D5300 🥀🍃🥀🍃🥀🍃🥀🍃🥀 ==================== . . . #japan #chiba #sokoin #sokoin_higanbana #sokoin_manjushage #sokoin_redspiderlily #sokoin_clusteramaryllis #sokoin_komorebi #sokoin_reflection #千葉 #祖光院 #祖光院_彼岸花 #祖光院_曼珠沙華 #祖光院_木漏れ日 #祖光院_リフレクション #花が咲くお寺 #flowers_bloom_in_the_temple #花色大地 #flower_colored_ground #彼岸の赤花 #red_flower_of_higan #木漏れ日の園 #komorebi_garden #水鏡世界 #suikyo_world #adobephotoshoplightroom #nikond5300 #instagram #photo #photography (祖光院) https://www.instagram.com/p/CVdEbZXFrp9/?utm_medium=tumblr
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hidemi21 · 6 years
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ーーー 木漏れ日の中の ヒガンバナ。 2018.9.18🌥撮影 #千葉県 #松戸市 #祖光院 #お寺 #木漏れ日 #ヒガンバナ #彼岸花 #はなまっぷ #japancountryside #japan #chiba #matsudo #temple #spiderlilies #clusteramaryllis #flowerstagram #wp_flower #lovers_nippon #photo_shorttrip #photo_travelers #visitjapanjp https://ift.tt/2ppwlDC
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chilidogyt · 6 years
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vol.1 堕落さん
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――プロレスを見始めたのはいつからですか。 これが結構謎なの(笑)。初代タイガーマスクのデビュー戦(1981年4月23日/vsダイナマイト・キッド)をリアルタイムで観た記憶があるんだけど、定かではなくて。俺は最初から藤波辰巳(現・辰爾)ファンだったから、それ以前に藤波の試合を観ているはずなんだけど、藤波のジュニア時代はまったく記憶にないの。観ているのかもしれないけど、おぼえてない。藤波の試合でちゃんと記憶に残っているのは、83年の小学校3年のとき。俺、夏に肺炎で入院して、入院患者がくつろぐようなスペースで藤波vs長州(力)の攻防を観たんだ。それは確実に観たおぼえがある。 ――その試合は、ある程度プロレスのルールがわかっている状態で観たんですか。 もちろん。ルールをわかっていて、好きで観た。最初のきっかけは思い出せないんだけど、親父が金曜8時にテレビをつけていたんだと思う。親父はプロレス、あんま好きじゃないんだけどね。ほかに見るものがなかったのかもしれない。 ――どんなところに惹かれましたか。 単純に、藤波辰巳は格好良かった。元祖アイドルレスラーだからかね。女の子がイケメンに惹かれるのと一緒で、男の子も格好いい人に惹かれるじゃん。藤波はスラッとしていて、筋肉質で、動きも早くて。(アントニオ)猪木は結構動きがバタバタしているように感じて。俺は、猪木は運動神経が良くないんじゃないかって思っていて。あの人は、ドタバタが味というか、フックになるんだよ。一方で、全日を観たら(ジャンボ)鶴田、(ジャイアント)馬場、ファンクスとか。同世代だとテリー(・ファンク)からプロレスを好きになった人は多いんだけど、俺は当時、あの外連味がすごく嫌で。プロレスファンとしてキャリアを積んで、プロレスの仕組みやワビサビがわかってから好きになったけどね(笑)。「テリー最高!」って。 ――当時は同級生も金曜8時の『ワールドプロレスリング』を観ていたんですか。 そう。今じゃ信じられないけどね。当時の小学校は土曜が半ドンで、3時間だけ授業がある世代だから、クラスの男子の半分以上がプロレスの話やプロレスごっこをしていたね。実家は神奈川の田舎町なんだけど、1学年に6、7クラスある結構でかい小学校に通ってたの。男子は1クラス20人くらいはいたんだけど、その半分がプロレスに興味を持っていたね。ちょうどキン肉マンもあったから。 ――なるほどなあ、キン肉マンですか。 空前のプロレスブームだったね。猪木、藤波、長州、タイガー、そしてキン肉マン(笑)。当時は、新日が金曜8時。全日は土曜の夕方だったけど、全女は月曜の7時代。クラッシュ(・ギャルズ)全盛で、(長与)千種がダンプ(松本)に坊主にされるシーンがゴールデンタイムで流れてた。 ――テレビは毎週観るのが当たり前でした? 毎週観てた。金曜8時は、俺がチャンネル権をガッツリ確保して。弟と妹がいたけど、まあ勝負にならないから。でも、親父に対してはどうしてたかな。昔ながらの親父で、機嫌悪いとぶん殴られるし。小学校���入学式で、全校児童の前でビンタされたこともあったから。母ちゃんの腹の中に妹がいて来られないから代わりにパンチパーマに髭の親父が来たの(笑)。俺がはしゃいでいたら、「うるせえ」って感じで。弟をいじめたらキレられて、往復ビンタを食らって。翌日、学校に行った時も顔面に手の跡が残ったりしてたし。 ――そういう体験があったから、対抗するために強さに憧れたとか? それは関係ないかも。 ――鬱憤晴らしでプロレスごっこなんかも? そう(笑)。プロレスごっこといいながらひどい技かけてた。敷布団と掛布団を四重くらいにして、そのうえにドラゴンスープレックスとか(笑)。 ――ひどい(笑)。 ひどいよね。そりゃあ弟もプロレス嫌いになるよ(笑)。そんな弟が、将来プロ格闘家になるとは思ってもみなかった。一昨年くらいに引退しちゃったけど。リングスにも上がってんだよ。 ――そのあたりも追々伺いますね。初めて生観戦したのはいつですか。 1985年の7月かな。『バーニング・スピリット・イン・サマー』茅ケ崎青果市場大会。ブルーザー・ブロディが初めて新日のシリーズに出場したとき。 ――どういう経緯で観戦することになったのですか。 そのへんも全然記憶にないんだけど、近所のオッサンというか、親父の友だちに連れてってもらったの。チケットは、誕生日が近いからそのへんに絡めてもらったんじゃないかな。自分で買ったとは思えないから。 ――その時のメイン、おぼえてます? 猪木、藤波、ザ・コブラvsブロディ、キングコング・バンディ……あ、キングコング・バンディはセミかな。バッドニュース・アレンかマット・ボーンかな。ネットでもすぐに出てくると思う(注:正しくは、ブルーザー・ブロディ、ブラック・タイガー、マット・ボーン)。 ――会場の規模はどれくらいですか。 バスケットコート2面くらいあるのかな……そんなにないか。青果市場だからね。湘南地区でプロレスっていうとそこだった。鶴見五郎の聖地。国際プロレス、IWA格闘志塾がずっと使ってたとこ。そこで全日も観たし、IWA JAPANの旗揚げシリーズも観た。 ――堕落さんのなかではどんな思い出になっていますか。 そりゃ大きいよ。だって、チェーンを振り回しているブロディに追っかけまわされたんだもん(笑)。俺個人が追っかけられたわけじゃないけど、近くで見たら「でけえ!」「怖ぇ!」って(笑)。 ――テレビ観戦との差異でここに感動したとかは? 音。プロレスは音だよ。「バシーン」ってすごい音がするじゃない。第1試合から「ワー」って……第1試合のカード、なんだったかな。(ドン)荒川さんかな。当時、ドン荒川ってストロングスタイル転向宣言とかしてて、名前変わったのもそれがきっかけなのよ。その1年後くらいにIWGP Jrに唯一挑戦したことがあったの。ザ・コブラ戦。当時はまともな試合をしてたの。俺が唯一観たドン荒川の試合が、まともな試合だったんだよ(笑)。当時は、ジャパンプロレスに行く維新軍団が抜けて、何もなくなっちゃった頃だね。それでブロディを引き抜いて、85年の4月に両国で初めて猪木とシングルをやって、救世主になって。 ――それから会場にはコンスタントに行くようになりましたか。 全然。次に行ったのは91年くらいじゃないかな。なぜかというと、中学で部活に入ったから。 ――部活は何を? バスケ部(笑)。まあ2年でやめちゃったけど。 ――バスケで憧れている選手がいたとか? 全然。単純に運動をやりたいなって思って。 ――プロレスラーを目指して体を鍛えるような感じ? いや、背も伸びてなかったし。なりたかったけど。だって、中学3年で162cmしかなかったからね。中学入学したときに145cmしかなかったから。まだ覚えてるけど、中1の初めての身体検査で145cm、中2で152cmになって。1年間で7cm伸びたから、「おお、やっぱバスケすげえな」って。あ、背を伸ばしたかったのかもしれない。今もそうだけど、当時も太ってて、145cmで45kg。それが中2で7cm伸びたのに3kg減ったから、相当痩せたんだよ。公立だけど県大会で準優勝とか3位とかに入ってたから。俺はユニホームすらもらえなかったけど。 ――バスケ部っていうのはすごく意外です。 隣町に光GENJIのメンバーになった佐藤アツヒロがいて、そこそこ強いバスケ部がある学校に通ってた。俺らの1つ年上だった。 ――部活を一所懸命やっていたから観戦にも行けなかった? だって、中高生ってお金ないじゃん。部活やっている時間に『ワールドプロレスリング』が放送されてて、ビデオに録画して観てたけど。当時は、藤波が長期欠場した頃で。 ――腰ですね。 そう。89年の6月に長野の佐久大会で(ビッグバン・)ベイダーのバックドロップを食らって、そこで腰やっちゃって。猪木の選挙応援に駆けつけて悪化して(笑)。飛龍革命があって、俺的には「やっと藤波の時代が来た!」って感じだったのに。俺、いじめられっ子だったから。 ――それ、想像つかないです(笑)。 いじめられっ子だったし、喘息持ちだったから、一日おきに死ぬことを考えた。俺は性善説の人間だったから、いじめられると「なんでこんなひどいやつらがいるんだろう」って傷ついてた(笑)。むかつくっていうより、悲しいっていう。身体も弱かったし。でも、「藤波が天下を取るまでは死ねねえ!」って(笑)。で、(88年8月8日の横浜文化体育館で)猪木と引き分けて、IWGP王者になった、ついにエースになった、ついに待ち焦がれていた日が来たんだけど、それも長く続かずにあの人は腰をやっちゃって、欠場して。 ――傷ついている人がプロレスラーに自分を重ねるケースは多いと思うんですけど、堕落さんも多少なりともそうだったということですね。 マジで支えだったもん。俺、見た目も性格もオタクっぽいと思うんだけど、俺が漫画やアニメやゲームにいかなかったのは、プロレスがあったから。ウルトラマンよりも、仮面ライダーよりも、戦隊物よりも、プロレスラーがいたから。実在のヒーローとして。〇〇マンよりルチャドールの方がカッコいいじゃん(笑)。 ――週プロとゴング、どっち派でした? 雑誌どころか、小学生3、4年の頃から東スポとレジャーニューズ読んでた。 ――小学生で?(笑) 家族と出かけるとき、駅のホームにいったらキオスクでプロレスの見出しが出てるわけ。「なんだこれ、安いし買っちゃおう」って。東スポはまだいいんだけど、レジャーニューズは完全にプロレスと風俗だけだから(笑)。 ――親に何か言われませんでした? とくに何も言われなかった(笑)。エロ記事は隠れて読んでたしね(笑)。で、雑誌はゴング。初めてプロレスを観に行った人とは違う、家族ぐるみで付き合っている一家がいて、そこの親父がプロレス好きでゴングをたまに買ってて、もらってた。たぶん、小学3年くらいから自分で買い始めたんじゃないかな。当時、喘息の治療をするために、隣の市の病院まで行って注射を打ってたの。減感作療法ってやつ。それが毎週金曜日で、行くついでに買ってた 。当時、ゴングと週プロは木曜発売で、俺はゴング派だった。 ――ゴング派だった理由は? 誌面がきれいだったから。紙質が良かったし、写真もきれいだったし。当時、週プロが250円、ゴングが300円で、週プロの方が50円安かった。ゴングの方が高級感があった。ゴングは創刊したのが週プロより後なんだよね。週プロはまだそんなにアクの強さはなかったんだけど、ちょっとクセはあって、それが小学生には引っかからなかった。俺はもっとプロレスラーの生の声や情報が欲しいし、きれいな写真が見たいって。ゴングは「ルチャリブレ広場」もあったし(笑)。 ――毎週ゴングを購入されて、一字一句漏らさず読むくらいの勢いで。 もちろん。 ――どんどん知識もついていくなかで、プロレスの話ができる友人はいたんですか。 高校までいなかった。 ――じゃあ、さっき話していた91年の観戦はその友人と一緒に? そう。クラスでいつも体育を休んでて、全然しゃべらなくて、お笑いのネタにされているようなやつがいたの。俺もどっちかっていうとからかっていたけど、そいつと話すようになったら、プロレスが好きで、同レベルで話せるくらい結構詳しいの。それで意気投合して。で、ほかにもうひとりプロレスの話ができるやつがいて、翌年の1月4日、新日の後楽園に3人で行って。それが2回目だと思うんだよね。話せる人がいたら、また盛り上がるじゃん。 ――よくわかります。 当時は、チケットを取るのに新日の事務所に普通に電話してた。学校のロビーの赤電話から休み時間にかけたんだけど、神奈川の田舎と東京じゃ距離があるから10円玉もすぐになくなって、何回か通話が切れて、(新日の)事務員の姉ちゃんもキレてた(笑)。特リンを買ったんだけど、すごい悪い席で。前年の秋に藤波が復帰したけど、アニマル浜口にピンフォール負けするくらいの感じで、徐々に復調してて。年末の浜松かな、メインが長州と藤波のIWGP戦。藤波が復活を賭けて長州に挑戦、みたいな。生中継だったけど、お約束でメインの途中で放送が終わった(笑)。同じ日にルー・テーズの最後��試合もあって。テーズが74歳にして……。 ――おぼえてます。バックドロップをやりましたね。 そう。あと、猪木がニック・ボックウィンクルとやるはずだったけど、急遽猪木が欠場して、マサ(斎藤)さんとやって。 ――メインは? メインはなんだったかなあ……。藤波はセミだった。浜松で王者になって、初来日のムッシュ・ランボーっていう、ヨーロッパのCWAを主戦場にしていたでかい選手とやった。で、ツーカーのやつと3月にもうひとつ行ってて。『スターケードin闘強導夢』。藤波vs(リック・)フレアー。藤波がWWEの殿堂入りしたときも、一番のトピックとして扱われてた。フレアーに勝って、IWGPとNWAの2冠王になって。チケットはどうしたのかな。母親に泣きついたけどお金貸してもらえなくて(笑)、友だちに借金したのかな。当時のドーム大会って映像観てもらえるとわかるけど、すげえセットバック組んでアリーナも傾斜になってんの。何だかんだで観えるんだろうなって思ってたけど、一段嵩上げしている程度で全然観れない。だから、後ろ向いてヴィジョン観てた。 ――高校生で藤波さんが好きっていうのは渋好みに思えます。 そんなことないよ。だって、当時の藤波辰爾は38だし。昔のレスラーはちょっと老けてるから。 ――15、16歳のころっていうのは、まだ素直にプロレスを観ていましたか。 いわゆる高橋本(ミスター高橋『流血の魔術 最強の演技 すべてのプロレスはショーである』)以前・以降って話になるけど、以前の人の見方で、「相手の技はちゃんと受け合うけど、最後は力尽きた方が負けるんじゃないか」みたいな。頑なにガチだとは思ってなかったけど、勝敗は決まってないんじゃないかなって。 ――その頃って、将来こうなりたいとかって考え始めるじゃないですか。さっき、プロレスラーになりたかったって話もありましたけど。 無理。今も抱えている持病が高1の頃に発症しちゃって、かなり世捨て人だった。クラス替えで仲良い奴が1人もいなくなり、溶け込めなくなって。高3の頃は孤立してて、学校もちゃんとは行ってなくて。まあ卒業はできたけど。 ――高校卒業後はどんな生活をしていましたか。 2年宅浪して、家で何もしないで、『電気グルーヴのオールナイトニッポン』を録音して、テープが擦り切れるくらいまで聞いてた(笑)。その少し前だけど、92年に藤波のファンクラブに入ったんだよ。藤波が腰痛から復帰したあとにまた欠場して、その復帰戦が異種格闘技戦(vsリチャード・バーン)で、おそろいのTシャツをつくって入場を先導する感じで。よくあるじゃん、昔の(ミル・)マスカラスとかテリーの親衛隊みたいな。ハチマキまいてダッセーやつ(笑)。横浜文化体育館なんだけど、花道の前で待機したりして。そのつながりで、そこでドームのチケットを取ってもらって行くようになったりしてた。その翌年に、藤波がG1で優勝して。 ――決勝で馳(浩)とやったときですね。 そう。それは観に行ってないんだけど、「ついに藤波が完全復活!」みたいな感じでファンは盛り上がってたの。で、渋谷で祝勝会をやるっていって、ファンクラブのメンバーとして行って。そのファンクラブで仲良かった人がいて、コアな人たちと手伝いに行ったりしてたのかな。そんな中で無我をやるって話が出て、大阪までわざわざ夜行バスで旗揚げ戦に行ったりして。95年10月29日。大阪ATCホール。 ――よくおぼえてますね(笑)。 その前の93年にはドームと、WARの東京体育館大会に行った。2月14日、バレンタインだった。それもファンクラブにチケット取ってもらって、おそろいのジャンパー着て。メインは、天龍(源一郎)、石川(敬士)VS藤波、馳。しかも、馳って当時は藤波と組んだことがなかったの。俺は長州派に対して疑心暗鬼だったから、藤波が負けさせられるんじゃないかっていう嫌な予感がしてたの(笑)。それは1カ月後か2カ月後に、藤波、長州VS天龍、石川で石川にフォール負けっていうのがあって。石川、あまり評価してなかったから、こんな屈辱はないと思って。なんで天下の藤波辰爾が石川敬士に負けなきゃいけないんだって。石川は巧いとか言われるけど、全然巧いと思ったことなくてさ。彼はいろいろやるんだけど、器用貧乏の逆。貧乏器用。ヘタなのにいろんなことをするけど、どれもたどたどしい。中堅でやっている分には活きが良くていいけど、藤波に勝つのは……しかも2回勝ったからね。イリミネーションマッチでも藤波からピンフォールとってる。当時、阿修羅・原が失踪してSWSに復帰してからそれほど経たないくらいだったし、身体がボロボロで使い物にならなかったから。石川を格上げしなきゃいけないって事情はわかるんだけど、だったら長州が負けろよって思った(笑)。その頃はもうそういう見方をしてたね。東京体育館は、セミが(ジョン・)テンタVS(キング・)ハクだったかな。モッサリした試合で、いっぱい来てた新日ファンからかなり野次られてた。当時、俺たち新日ファンはかなり差別意識をもって(WARを)見ていたからね(苦笑)。 ――本当に藤波さんが好きなんですね。 藤波史観だから(笑)。 ――当時だと、全日とかFMWはいかがでしたか。 大仁田(厚)と(ターザン)後藤の最初の電流爆破のビデオは買ったよ。親に見せて、「こんな思いしてやってんだぞ」ってアピールして(笑)。俺ね、FMWはホセ・ゴンザレスを使った時点でかなり冷めた。ブロディの命日って、俺の誕生日なの。当時、うちは日刊スポーツを取ってて、ブロディが死んだことを知って大ショックを受けて。まだネットがないわけじゃん。朝刊スポーツ紙と夕刊の東スポと週プロ、ゴングが情報源で、突発的なニュースが入ったら編集部に電話してたもん。「〇〇が亡くなったって本当ですか?」って聞いたら「はい、そうです」って沈んだ声で言われたり。 ――僕も試合結果はよく週プロの自動音声を聞いてました。 テレフォンサービス? あれは俺もかけまくったよ。なかなかつながらないこともあったよね。 ――ありました。懐かしいですね。今なら試合結果もすぐにネットで見れますけど。 勝手に客がツイッターとかで「〇〇が勝った」って書いちゃうからね。 ――で、藤波さんがいる新日を中心に観ていた、と。 全体的な流れは追ってたよ。ルチャが好きだったからユニバーサル(・プロレスリング)観てえなって思ったり。話がさかのぼるけど、俺は『世界のプロレス』がアメプロばっかりだったのが不満でしょうがなかったから。ロス・ファンタスティコスの試合とかが流れて。俺は毎週ルチャをやってほしかったけど、やってくれなかったからね。カト・クン・リーのロープ歩きとかがゴールデンタイムで流れることもあった凄い時代だね(笑)。 ――90年代前半からは、いろんなインディー団体が出てきたりもしましたね。 インディーも結構行ってた。IWA  JAPAN旗揚げシリーズの茅ケ崎行ったでしょ、NOWの旗揚げシリーズの茅ケ崎も行ったでしょ、あと、オリエンタルプロレス、湘南プロレス、UNW、PWC、WARも後楽園に1回行った。当時、怨霊とかが第1試合で。天龍VS仲野信市がひでえ試合だったよ。「天龍、殺しちまえー」みたいな怒号が飛んでて。本当に殺すんじゃないかって試合で、仲野の顔面を蹴ったらパコーンって音がして、仲野は鼻から一気に大流血で、鼻が折れてたもん。 ――いろいろ観てるんですね。 俺、冬木(弘道)の講演会かなんかも早稲田大学に見に行ってるもん。その時に抽選が当たって特リンのチケットもらったんだけど、後楽園に行ったらダフ屋に捕まって、チケットむしり取られて1000円渡されたっていう(笑)。ダフ屋がそんなに悪徳だとはまだ知らなかったから。 ――プロレスを観ていない時期はなさそうですね。 新日のドームは毎年行ってるけど、2000年以降はあんまり記憶がないかな。週プロ、ゴングを買わなくなったのが2001年くらいか。友だちの家に転がり込んでから金もなかったし。あとはスポナビとか2chを見たりするくらい。棚橋(弘至)、(中邑)真輔の暗黒期とか、空気も暗黒だったし、自分の熱も低かったから。もちろん、彼らがどういうストーリーをたどってきたかはわかってるんだけど、一つひとつが記憶になくて。この前、真輔VSカート・アングルの試合をYouTubeで観たんだけど、「こんな試合だったっけ?」っていうくらいおぼえてなかった。 ――トピックとしては総合もありましたけど。 俺は格闘技も好きで、最盛期は週プロ、ゴング、ファイト、格通、紙プロを買ってた。K-1の1回目が93年、フジテレビの夢工場とかいうゴールデンウィークの企画の中の一つだった。 ――まったく別の競技として観ていた? うん。やっぱリングスが大きかったかな、プロレスと格闘技のハブという意味では。藤波のファンクラブの人がいろいろプロレスのビデオを回してくれて、その中でリングスを観て。正道会館がトーワ杯に出たりさ。藤原組からも高橋義生と石川雄規が出たり。そこで正道会館勢が猛威を振るって。もっと前だと、全日本キックの武道館大会とかをフジテレビが夜中にやってたの。立嶋(篤志)が成り上がってくる頃の試合だった。 ――UWFは? TBSで特番とかやってたね。俺は、新生UWFは何が面白いのかさっぱりわからなかったけど、プロレスに文句を言うやつにはUWFを観ろって言ってた(笑)。でも、これだったら修斗を観た方がいいなって当時から思ってた。UWFが明確に旧来のプロレスと同じだとは思ってなかったんだけど、暗くて緊迫感がねえなって。だったら、旧UWFの方が情念が感じられて特別感があった。 ――当時UWFが世間的に受けていたことをどのように感じていましたか。 文化人とかに支持されるプロレスだなって。 ――糸井重里とか? 糸井重里とか、クマさん(篠原勝之)とか。プロレスの胡散くささを排除して。「プロレスは八百長じゃねえ!」って言ってる人でも、言い切れないことってあるじゃん。馬場さんの十六文とか、「なんでロープに走るの?」とか。でも、UWFはロープに飛ばないし派手な大技がないから。 ――堕落さんもクラスメイトにそういうことを言われましたか。 そういうのと闘ってた。 ――闘ってた(笑)。 当時のプロレス少年は理論武装をしないと駄目だったの。「あんなの八百長だよ」って言うやつは絶対いるから。それは今でもそうだけど。 ――前田日明にカリスマ性は感じた? 時代のスターだとは思った。ルックスも良かったし、デカいし、借り物かもしれないけど言葉も持っているし。やっぱり、週プロとか格通とかが盛り立てたしね。「プロレスっていう言葉が嫌いな人、この指とまれ」とかさ(笑)。前田は突破者だったよ。でも、実際に試合を観ると面白いとは思えなかった。 ――で、K-1とUFCの始まりが93年。すごいものがでてきたっていう衝撃はありました? すごいものっていうより、プロレスラーが負けたじゃん。だから、プロレスの範疇にある異種格闘技戦を抜け出して、明らかにガチ(競技)で、しかも強いと思われていた(ケン・)シャムロックがあっさり負けたことに、呆然とした感じはあった。しかも、シャムロックが90kg台で、ホイス(・グレイシー)が70kg台だったでしょ。(ジェラルド・)ゴルドーもやられたし。噛みつきも金的もやって負けたからね。当時はリン魂(『リングの魂』)と『SRS』っていう番組があって、あとはなぜかNHKでUFCをやったんだよ。たしかBSかな? 当時はアルティメット大会って言ってた。 ――言ってましたね。UFCが始まっても総合オンリーにならず、プロレスはプロレスで楽しんでいた? うん。藤波辰爾とルチャが好きだから、元々ね。 ――2000年には桜庭(和志)がホイスに勝利しますが、ドームには行きました? 行ってる。その前のドームの高田(延彦)vsホイス(・グレイシー)、のちの船木(誠勝)vsヒクソンも観てる。 ――その頃、格闘技の好きな知人にNOAHの話をして「まだそんなの観てんの?」みたいに言われたことをよくおぼえています。 つうか、二極化したじゃん。NOAHと総合を両方好きって人は、たしかにあまりいなかった。俺は両方観てたけど。 ――当時「プロレスはもういいや」ってなった人は多かったと思うんです。そんな中で堕落さんは、プロレス界の流れを把握しつつ、総合の細かい技術面まで理解してチェックしているのが面白いなって。 自分がやりたかった人間だから。プロレスは体が大きくないとできないし、病気もあったから無理だったけど。格闘技に関しては、病気さえ治れば体のサイズ関係なしにできるじゃん。街で教えてくれるから。住んでいた赤羽って、U-FILE CAMPもGRABAKAもあったから。 ――なるほど。 プロレスも総合も、どっちも構造に興味があるんだよ。何をしたらどうなるのか。定型というか、詰め将棋みたいな。プロレスのロジックと格闘技のロジックって対極かもしれないけど、構造はある意味同じじゃないかな。こうしたらこうなる、こうしたらこう返す、みたいなさ。それが相手を組み伏せるものか、試合を構築するためなのかの違いだけであって、定型はあるから。その定型の積み重ねの破れ目みたいなところがプロレスの醍醐味じゃない? いわゆる不穏試合とか、不穏試合じゃないけど思いがけない展開になってすごい盛り上がって素晴らしい試合になるとか。 ――たとえば? 藤波vs天龍の3戦目とか。藤波と天龍って3回試合をしてるんだけど、じつは全部不細工な試合になってんの。2人とも受けのレスラーでしょ? 必ずいい試合をする名勝負製造機って言われる2人だけど、3戦とも不細工。初戦は唯一藤波が勝ったんだけど、天龍が突っ張りをやったときに藤波の歯で手首を切っちゃって、最後救急車で運ばれたの。2戦目は天龍が勝つんだけど、パワーボムをすごい急角度で落としちゃって3カウント。3戦目は、藤波がドラゴンロケット3連発をやって鼻を折って。藤波は負けたし大流血戦だけど、俺はその3戦目が大好きなの。アクシデントで予定とは違う終わり方になった気がするけど。でも、そのまとめ方がすごいテンポが良くて、やっぱり2人も一流だなって思った。天龍は藤波にドラゴンスリーパーをかけられたときに鼻血がドバーッとついたりして、相当嫌だったと思う。最後は天龍のラリアットで唐突に終わるんだけど、流れがすごくいい。唐突に藤波がトップロープからニードロップをやって、天龍は避けたように見えないんだけど当たってない感じになって、藤波が着地したところにラリアットを浴びせかけて、たぶん「これで終わらせよう」みたいな合意がその瞬間にあったんじゃないかな。 ――今、おもに情報ってどこから仕入れていますか? ネットだよ。スポナビとか。あとは昔の情報なら昭和プロレス掲示板ってところがあって、そこは国際プロレスの話をずっとしてたりするので、たまに追って読んじゃう(笑)。雑誌だったら『G-SPIRITS』は毎号買いたいくらい。この前、(Vol.18を)ちょっと立ち読みしたんだけど、石川が藤波のこと呼び捨てにしてるのはカチンときた。お前より先輩だろって(笑)。 ――また藤波さんだ(笑)。個人的には、同じ号の記事で馳が冬木(弘道)を高く評価しているのが面白かったです。 冬木の評価もわかるんだけど……。冬木vs橋本(真也)がすごい嫌いでさ。冬木が意地を見せた試合なんだけど、橋本がDDTをやって冬木が返して、2回目も返して、3回目でフォール負けっていう、俺が一番嫌いなタイプ。それだったら、1回目で返したあと、あと2連発で勝負を決めろよって。爽快感がない。 ――細かく見てますね(笑)。 あれは冬木が意地悪なのか、もともとそういうふうにやるつもりだったのか知らないけど。時々あるんだよ、そういう試合。藤原(喜明)vsダン・スバーンもそうだったんだけど、あれも酷くて。スバーンは水車落としをフィニッシュにしてたんだけど、同じパターン。1回目は返される、もう1回やって返される、3回目でフォール。 ――確かに爽快感はない。 ほかにもよくあるじゃん、カウント3でギリギリで返したように見えてもゴングが鳴って「今のは入ってないだろう」ってアピールするとか、3カウントで負けた後にすぐにスタスタ帰っちゃう武藤(敬司)とか、長州とか(笑)。ああいうプライドを見せつけるのは駄目だよ。その点、藤波は偉いと思うよ。石川にもちゃんとフォールを取られたし(笑)。藤波と対戦した選手で藤波を悪く言う人はまずいないと思う。 ――「無人島に流れ着いたと思ったら仲間がいた」って言った人もいますしね。 あの日(2017年4月20日ドラディション『藤波辰爾デビュー45周年ツアー』後楽園大会)ね、前田に長州と藤波がつっかかったの。最後にみんなのあいさつが終わってリングを降りるとき、藤波が前田を突き飛ばして、「かかってこい」とかやってさ。長州も「やれよ」みたいになって。3人ともニヤニヤ笑ってるんだけど、前田にそんなことできるの、ほかにいないと思うよ。前田はそういうのに本気で怒るタイプだから。 ――そんな藤波さんの社長時代についてもどう思っているか聞きたいんですけど。 俺、赤プリでやった藤波の社長就任記念パーティーに出席したから(笑)。キラー・カーンと堀辺正史とそれぞれ2ショット写真撮ってる(笑)。司会が生島ヒロシで、チェリッシュとかも来てた。2度とこんなところでパーティーに参加することはないと思った。 ――新日の暗黒期は記憶が薄いって言ってましたけど、ほとんど見てなかったですか? テレビを見なくなってたから、ネットばっかりやってて。深夜に30分だし、アルティメット・クラッシュとかやっちゃってるし(笑)。ちょっと冷めてたね。やっぱり藤波史観だから。社長でほとんど試合してなかったし、2000年に引退カウントダウンも始まったし。トップの座から落ちて、年齢的にもトップに返り咲くことはないような。今の棚橋より上、40代後半だったから。今の棚橋だって、トップに返り咲く感じはしないじゃん。1回くらいIWGPを獲ることはあるかもしれないけど、エースとしてではない。 ――そうですね。 暗黒期といえば……藤波が永田(裕志)に1回も勝ててないっていうのが俺は不満だね。永田と3、4戦はやってるんだよ、G1とかで。1度も勝ってない。永田の実力は認めてるけど、なんか腑に落ちねえなって(笑)。安田(忠夫)に負けた時点でもう駄目だと思った。藤波ってさ、凱旋帰国試合で「アイ・ネバー・ギブ・アップ」ってさ、ガキの頃、ずっと信じてた。実際に藤波はギブアップしなかったし、記録にもほとんどなかったし。だけど、実は普通にしてるんだよね。3本勝負の1本をギブアップで取られたり、海外でNWAインタージュニアを1回獲られるんだけど、その時に4の字でギブアップしてるし。最初に明確にしたのは、G1の橋本戦(1994年8月7日の『G1 CLIMAX』 Bリーグ公式戦)なんだよ。形は腹固めなんだけど、当時の公式発表では逆肩固めとかになってた。俺が明確に見たのはそれ。それってUWFとか総合の影響。関節技が極まったら本当は返せるものではないっていうのが世の中に広まったから、プロレスでもギブアップ決着が多くなった。昔はトップレスラーってあんまりギブアップ負けしなかったよ。両者リングアウトがなくなったのと、ギブアップ負けが多くなったのは、UWFと総合の影響だと思う。決着がつくカタルシスが格闘技にはあって、判定がつくじゃん。ドローもあるけど。最初に総合の影響を受けたのは意外にも全日なんだよ。馬場の鶴の一声で両者リングアウトがなくなって。 ――ああ、たしかに。 当時の雰囲気だと……四天王プロレスをガチだと思っちゃう感覚がすげえなって。俺は思ってなかったけど(笑)。人間って、インパクトにやられるんだなって。いや、実際すごかったよ、四天王プロレス。人間の限界に挑戦していたと思うけど、ガチだと勘違いさせるくらい恐ろしいことをやっていた。相手を殺す気がないけどハンマーで頭をぶん殴る(笑)。「あれは殺しにいってるだろう!」「いや、殺しにいくつもりは全然ない、でも本物のハンマーで力を加減して頭を殴ってる」っていう。 ――そのハンマーが、三沢(光晴)vs小橋(建太)の、三沢が小橋にかけた花道から場外へのタイガースープレックスだったり。 小橋vs秋山(準)の、小橋がやったエプロンからのブレーンバスターもそうだしね。 ――「NOAHだけはガチ」って言葉、当時流行りましたね。 ある意味、ガチな結末になっちゃったじゃん。三沢が亡くなって。 ――今日はそのへんの話も伺いたかったんですけど、リング上におけるレスラーの事があったとき、どうやって自分の中で折り合いをつけていますか? 三沢の死は…93年かな、鶴田が欠場したときの三沢vs川田(利明)の頂上対決。三沢が投げっぱなしジャーマン連発で勝った試合。それを観てから、四天王プロレスは嫌いになった。 ――その理由は? 美しくない。さっき言ったように、DDTを3発やるとして1発1発返していったら美しくないでしょ。1発返されたら2発連続でやってダメ押しするみたいにしないとダラダラした印象になる。それと同じで、危険な技を散発的に出すことに理屈が感じられない。 ――フィニッシャーに説得力が感じられない、と。 説得力でいえば、四天王プロレスの技自体にはあったじゃん。でも、首が折れるんじゃないかって技をなんで何発もやるんだっていう。そうなってくるとタフマン・コンテスト、残酷ショーでしょ。「信頼している人間だからこそ危険技を掛けられる」って言うけど、信頼している人間を殺す寸前までやる必要はないだろうって。四天王プロレスのきっかけって、豊橋でやった小橋vs(スティーブ・)ウィリアムスだと思う。ウィリアムスのバックドロップドライバー、殺人バックドロップが最初に出た試合。あれ当時ね、夜中に全日の中継見てて、解説の百田(光雄)と一緒に思わず「うぉー!」って言ったくらい衝撃的な試合だった。あの試合の小橋はすごい好きなの。すごい表現力があって、バックドロップを食らった後、意識を失うんじゃなくて、ガクガクしながらロープに這っていって逃げ惑うの。ウィリアムスはそこにもう1発バックドロップを食らわせてフォールを取るんだけど、それだったら俺は納得がいく。でも、小橋は散々受けてきたのに自分がやる方になって、それがちょっとげんなりしてさ。後に2chとかで“勝ちブックおじさん”っていわれるんだけど、NOAHでの絶対王者時代、小橋自身がブックを書いていたっていう。しかもあんな危ない技で勝ちまくる小橋、みたいなさ。そこに小橋の魅力はないわけ。確かにあの頃の小橋もすごかったし、小橋のことは認めてるんだけど、四天王プロレスは嫌いなの。小橋はミスター・プロレスだと思うし。スタイル自体は違うけど、小橋は藤波とキャラクター的には同系統だと思う。2人とも生粋のベビーフェイスで、ヒールだったことが1度もない。藤波はメキシコでルードになったこともあるんだけど、ものすごく非難をされた時期がないじゃん。で、2人とも生粋のプロレスファン上がりのレスラーじゃん。格闘技の実績があったわけじゃなくて、入団当初期待されていたわけでもなかったのに、練習熱心で身体をつくって、努力で上がったと。レスリングのスタイルとしては、藤波から受け取ったのは武藤、棚橋、SANADA。それってじつは、猪木とは違う系統。 ――今言った藤波さんに連なる系譜は同感ですけど、小橋と同系統っていう解釈は新鮮に感じます。 俺は今の新日は面白いと思うんだよな。藤波がすごい棚橋批判をしているらしいんだけど、それは乗れない。いくら生粋の藤波ファンとはいえ。WWEっぽさとかが駄目なようだけど。 ――僕はWWEをちゃんと観ていなんですけど、やっぱり近づいてきてますか? フィニッシャーを大事にするところとかね。フィニッシャーを決めて、そこから逆をたどって試合をかっちりつくってる。さっき言った破れ目が試合に全然ない感じ。アクシデント性、アドリブ性は昔に比べてなくなったなあって。昔はいわゆる基本的なチェーンレスリング、こう来たらこう返すっていう型がいくつもあるんだけど、その組み合わせ自体は完璧に決めないでお互いのアドリブ感覚で試合をつくっていくっていうのがあったっぽいんだけど、今はかなりきっちりつくられている。 ――いつくらいからですかね? 2010年前後? そのくらいじゃないかな。2000年代半ばはちゃんと観てないんだけど、あの頃は「しょっぱいな」って試合が多かったから、移行期だったのか、まだだったのかって感じ。少なくとも2012年には今のスタイルになってた、レインメーカーショックは完全にWWEのスタイルの流れを汲んでいると思う。そうそう、俺、オカダ(・カズチカ)の凱旋試合観て、「アメプロのテレビマッチだな」ってツイートしてるの。いわゆるスカッシュマッチっていうんだけど、見せ場もほとんどなしに終わらせる試合。一応、相手のYOSHI-HASHIの凱旋試合でもあるのに、波もなくあっさり終わったの。勝った方と負けた方で明確に格の差があるのが、向こうの試合っぽいなって当時思った。そうしたら今の流れになったから、あながち間違ってなかったなって。 ――新日が盛り返したのは本当にうれしいです。 ただね、けが人が多すぎる。 ――最近だと、柴田ですね。 まだオカダ戦も観てないんだよね。観れない。別に凄惨な試合じゃないってのはわかってるんだけど。 ――僕はリアルタイムで観ましたが、すごくいい試合でした。 想像はつくんだよね。今の対立軸としても最高のふたりだったし。ものすごくもったいないし惜しいけど、ある意味では最高の終わり方かなって気もする。問題は本人がどう思っているか。ありがちなのは、会社は止めるけど本人がやりたがるとかさ。ただ、彼との試合で過去にひとり亡くなっていることは考えてほしいと思う。あまりいい言い方はではないけど、すごい因果だよね。でも、それはそれでそういうストーリーとして受け止めるしかない。 ――僕自身は、ああいうことが起こるたびに「このまま観ていてもいいのかな」って自問するんですけど、結局、いつも忘れて流されちゃってるんですよね。 俺が最初に通ったリング禍は、プラム麻里子。尾崎魔弓のライガーボムだけど、写真を見る限りはきれいに受け身も取ってる。脳の障害は慢性的なものもあるだろうし、人間の体って紙一重で助かるケースも多いと思うの。とくに脳はね。たとえば、棚の下を掃除してて、棚があることを忘れて頭を上げた瞬間にぶつけるっていう……日常でよくあるドジ。でもそんなことで死んだ人だって世の中にいるから。脳なんて水に豆腐を浮かべてるようなもんだし。ちょっとした角度とか、寝不足だったとか風邪気味だったとかで、人間は死んだり再起不能になったりするんだろうなって。首とか背骨もそうだけど。だから、どうすればいいって言いきれないんだけど、なるべくそのリスクを軽減されていることが平常であるべきだとは思う。だから、「危険技がどうのこうの言ったらプロレス見れねえ」っていうけども、できるはずだから。それでも事故は起きるよ。でも、確率を減らすことはできるはずだから。危険技があれば面白くて感動するものではないってことは、もうわかってるはずだから。だったら、減らすべきだろうし。そういうのを徹底した上で、どうしてもそういう技を入れたいっていう時にやったら、それはそれでインパクトがすごいだろうし、温存することにもなるから。料理にたとえたら、激辛のハラペーニョを500g入れたラーメンとすごく繊細な出汁をとったまろやかなラーメン、どっちが旨い?って話で。(前者は)刺激はあるけど、(後者を取るのが)人間の英知でしょって。それは何だってそうだけど。 ――ケニー(・オメガ)なんかは試合によってそのへんをうまく使い分けているように感じます。 ただね、(2017年の)1.4の雪崩式ドラゴンはやり過ぎだと思う。あれはさすがに……。オカダもよく大丈夫だったと思うもん。ジャーマンだと胴体を持つから相手の可動域も広くて途中で回転しやすいけど。ドラゴンって、本当に勢いつければ支点がてっぺんの方にあるからうまく体が回るはずなんだけど、首は固定されたら何もできない場所だから、中途半端に落ちる可能性がものすごく高い。ジャーマンをかけられた方が途中で切り返すときって、かける方は必ず相手の胸の方をグリップしてる。ドラゴンは首を固定しているから本当に危ないんだよ。 ――堕落さんがこの前ツイートしていたみたいに、藤原、(ザ・グレート・)カブキレベルになれば、リングに立っているだけでいいわけですもんね。 妖気漂う爺さんが隈取をしてね。首が曲がっちゃってて、言い方は悪いけど背虫男みたいになってるけど、逆にそれが不気味さを醸し出してる。藤原も胃がんをやって、体なんかダルダルになっているけど、藤原なわけじゃん。そのふたりが何もせず睨み合っているだけで成立する。ふたりの歴史もあるし。そういうものを使って見せるのがプロレスだと思う。だから、棚橋とオカダは正しいんだよね。レベルが高いし、危険技をほとんど使わずにあれだけテンションを保って、毎回アレンジを加えて名勝負をしているんだから。一昨年(2015年)のドーム、オカダが試合後に泣いた試合、あれは最高のアクセント。危ない技も派手な技も派手な仕掛けもなく、ただ泣いただけ。でも、あのオカダが泣いたから、ストーリーが翌年につながって。 ――オカダに一つだけ注文をつけるとすれば、マイクやバックステージのコメントで「この野郎」って言うのは似合わないからやめてほしいなって(笑)。 うん、慇懃無礼かつ愛されキャラでいいと思う。最近、地方では子どもにマイク振ってるみたいだよ。「なぜだかわかる?」って振って、「レベルが違うよ」って言わせてる。それでいいと思う。だって、どう考えても愛されキャラだから。ちょっと悪ぶっている気のいい兄ちゃん。 ――プロレスと言えば、テーマ曲も大切ですよね。好き選手のテーマ曲以外で、この曲を聴くとブチ上がる、みたいなものはありますか? 俺も基本的にオリジナルが欲しくて、一曲のためにアルバムを買うタイプだったから、「IRONMAN」が欲しくてブラック・サバスを買ったり(笑)。あと、ヘルレイザーズが出てきたときは、オジー・オズボーンのアルバムも買ったし。藤原の「ワルキューレの騎行」とか。「スーパーファイターズテーマ集」とか買ったけど、納得いかなくて、藤波の「ライジング」って曲――飛龍革命をやっていたころに使っていた――悲壮感があって、「ドラゴンスープレックスより合っていたと思うけど、オリジナルはビクターレコードから出てて。だけど、キングとビクターって、お互いにオリジナル原盤を持っていない方が必ずカバーを出すの。ほかのレコード会社が出した「ライジング」は、あきらかに音が違うわけ。ちゃんとしたスタッフがいる団体はそれを使わないはずなんだけど、DRAGON GATEに藤波が出た時にはそれが使ってやがって。ビクターから2回出てるんだけど、1回は橋本、��野(正洋)、藤波のテーマでミニアルバムが出て。その時に、藤波のテーマのあとにエピローグとして音が入っていたんだけど、表記が「ライジング~エピローグ」で。そうなると、知らないやつが曲名をそれだと思ってて、藤波のテーマ曲が「ライジング~エピローグ」って表記されてたりする。許せない、それは(笑)。あと、(グレート・)ムタのテーマ曲は、プロトタイプバージョンと音源バージョンだと全然違う。 ――知りませんでした(笑)。 会場使用がプロトタイプで、試作品をずっと使ってたのに、商品にする際に新録してるから、「会場でかかっているのと違うな」って思ったら、やっぱり違った。 ――やっぱり細かい(笑)。個人的にこれを聴くとテンションが上がるっていう曲はありますか? スタン・ハンセンの「サンライズ」かなあ。でもね、俺、UWFが嫌いだったのに、田村(潔司)がKOKトーナメントでヘンゾ(・グレイシー)とやったときだけ特別に使った『U.W.F.プロレス・メインテーマ』は良かった! 別に山ちゃん(山崎一夫)が使っててもそんなに気にならないのに(笑)。田村がついにグレイシー狩りに行ったとき、「ヒクソンより強いかもしれない!」と言われていたヘンゾと1回戦であたったんだけど、リングアナが「田村潔司選手の入場です!」って言った後に、数秒の間を置いてあの曲がかかったら、会場が「ウォー」ってなって、実況も「オオー!」とか言って(笑)。「Uを背負ってやる」って姿勢に瞬時に感動したわけだよね。 ――田村も面白い選手ですよね。UWFインターのときのドームに出なかったことも含め。 田村は本当にいいプロレスラーだと思う。自分でストーリーなりフックなりをつくるし。 ――プロレスラーは愛すべき個性を持っている人が多いですけど、いろいろな逸話を楽しんだりするのも好きですか。 嫌いじゃないけど、社会運動にかかわって、いろんなコード(規範)みたいなものをより意識するようになって。それと照らし合わせると、「あり」とは言えないものも多々ある。過去のシゴキの話とかも、昔は笑っていた気がするんだけど、今は「駄目でしょ」って思うし。 ――僕も以前は好きだったんですけど、今だったら駄目だよね、と思うことが増えています。たとえば、以前の新日の巡業でレスラーが女風呂を覗いていたっていうのも、もちろんナシでしょうし。 ホモソーシャルな中で笑い話にはできるかもしれないけど、表向きは絶対できないよね。 ――レスラーの政治志向なんかも気になりませんか? たとえば、ハンセンは(ドナルド・)トランプに投票したんだな、とか。 そうそうそう。でも、それはそうだろうなとしか思わなかったよ。 ――テキサス出身だったらトランプなのかな、とは思いましたけど。 俺も気になって調べた。レスラーとか格闘家って基本的には保守的な連中だと思っているから、その中でリベラルっぽい人をチェックしたの。俺は英語が苦手だから自動翻訳だとわかりにくかったんだけど、ジョシュ(・バーネット)は左派を揶揄してるように見えるツイートをしてた。今も付き合ってるか知らないけれど、白人のジョシュはアフロアメリカンの格闘家の彼女がいたし、リベラルな人なのかなって思ってたんだけど、そうでもなかったのかな。 ――そういう情報まで含めて細かいところまでチェックされて、そこからさらに深く考えてますよね。僕自身は、後楽園とかに行って、半裸の男女がプライドをかけて闘っているのを見るだけで「プロレスいいなー」って思っちゃう単純さだから、余計にそう思います。 いま「半裸」って言葉が出たけど、セックスワーカーの話にもつながるよね。仲の良いゲイの人が過去にウリをやっていて、その時の思ったことを著書(ハスラー・アキラ『売男日記』)につづっていたの。それを読むと、セックスワークにおける充実感とかがつづられていたりするわけ。俺は昔からセックスワーク、セックスワーカーが大嫌いで、蔑んでいたの。自分でも絶対利用したくないって思ってた。けど、いろいろな情報を得たり、そういう人たちと出会って、だいぶ考えが変わって。「あ、これはありだな」って思った。いわゆる売春自体が、人類最古の商売っていわれるくらい根源的なものとしてあるでしょ? あと、なぜ嫌悪するのかっていうところを突き詰めて考えると、性的なプライド、尊厳、肉体的なきつさを金にしていいのかっていうのがあると思うんだけど、いざ、自分が日雇い肉体労働派遣仕事しかできないような状況のときに、病気で体力もないのに現場派遣に行って、40kgあるガラを一輪車に乗せてダンプを駆け上がってっていうのを一晩中やらされて、死にそうになってしゃがみ込んでいたら、俺より明らかに若いアンちゃんに「てめえ、何さぼってんだよ」って言われたときに、肉体的にも死にそうになって、プライドもズタズタにされて、それで一万円も稼げないわけ。その時のことを思い返して考えたの。肉体労働とセックスワークは何が違うのかって。セックスワークは、いいお客さんに当たったら、相手を気持ち良くしてそれなりにお金をもらって、もしかしたら自分も気持ちいいかもしれない。だったら、それは素晴らしいことでしょ? もちろん現実はそんな理想的ではないだろうし、ゲイの人のとヘテロ男性向けの女性のとで事情も違うだろうけど。誰も損しなければね。搾取で行ったら、一般の肉体労働派遣の方が酷いこともあるし。だとしたら、その二つにどんな違いがあるのか、どっちが蔑まれるべきものなのか。そういうことを突き詰めたらね。もちろん、無理やりやらされてたり、酷い扱いをされるとかだったら駄目だけど、その存在自体は否定されるべきではないんじゃないかなっていうことをここ数年で思った。でも、世間的には未だに賤業なわけじゃん。それってプロレスと同じなんだよ。 ――なるほど。 プロレスってこんな熱く何時間も語れてさ、一緒に観に行けば「うわー!」って叫べて、生きる糧にもなってるわけじゃん。でも、やっぱりバカにされる。「いい年したおっさんが裸になって八百長やって何がいいんだ?」って扱いをされるわけじゃん。実際レスラーは身体ボロボロにしながら夢を売ってるのに。 ――今後もずっとプロレスは見ていこうと思っていますか。 ほかに趣味がないんだよね。映画も観ないし、本も読まないし、音楽も全然知らないし。漫画もアニメもゲームも……ゲームはスマホで野球のゲームをやるくらい。最近、ツイッターもプロレスのツイートばっかりしてるもん(笑)。 取材日:2017年4月下旬 取材・文:チリドックYT イラスト:鈴木侑馬
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