胃腸の調子が悪い時の試したい消化のいい食事法
毎日、休みなく生命維持の為に働いてくてる胃や腸のかわりに消化ができる臓器はありません。
毎日、おいしく食べている食事をしっかり消化・吸収できるようにするには、胃に負担をかけず健康的な状態を保つことが重要です。
それでは胃に負担をかけない食材や調理方法を紹介していきます。目次
胃腸の調子が悪いときにおすすめの消化のいい食事法
消化に良い食材を食べよう!
胃に負担をかけない調理方法
消化酵素の多い食べ物
最後に
関連
胃腸の調子が悪いときにおすすめの消化のいい食事法
水分を摂取しやすい食事 胃腸の負担を軽減するためには、水分を摂取しやすい食事がおすすめです。例えば、スープや湯気の立つ温かい飲み物、麺類のスープを食べると、水分と一緒に栄養も摂取できます。さらに、消化しやすい野菜や果物のスープもおすすめです。野菜や果物をミキサーやジューサーでジュースにすることで、食物繊維を摂取しながら水分も補給できます。
小分けにして摂取する食事 胃腸の負担を軽減するためには、一度に大量の食事を摂取するのではなく、小分けにして摂取することがおすすめです。食事の回数を増やして、量を減らすことで、胃腸の消化負担を軽減できます。また、食事をゆっくり咀嚼して食べることも大切です。よく噛むことで、唾液の分泌が促され、食物をより細かく咀嚼することができます。
消化の良い食材を選ぶ 胃腸の調子が悪いときには、消化の良い食材を選ぶことが大切です。消化の良い食材としては、白身の魚や鶏肉、豆腐などがおすすめです。また、野菜も消化の良い食材の一つですが、生の野菜よりも蒸したり、煮たりすることで消化しやすくなります。また、脂っこい
食材や油脂の多い食事は、胃腸の負担を増やす可能性があるので避けるようにしましょう。消化のいい食材を選ぶことで、胃腸の調子を優しくサポートできます。
発酵食品を取り入れる 発酵食品には、胃腸の働きを促進し、消化を助ける効果があります。例えば、ヨーグルトや酸味のある漬物、納豆などがあります。これらの発酵食品を食事に取り入れることで、腸内環境を整えることができ、胃腸の調子を改善することができます。
スパイスを控えめにする スパイスは消化を促進する効果がある一方で、胃腸に刺激を与えることもあります。胃腸の調子が悪い時には、スパイスを控えめにすることをおすすめします。特に辛いものや刺激の強い食品は避けた方が良いかもしれません。
時間をかけた煮込み料理を食べる 胃腸の負担を軽減するためには、時間をかけてじっくり煮込まれた料理がおすすめです。例えば、スープやシチュー、煮物などは、材料が柔らかくなるため、消化しやすくなります。また、煮込むことで旨味も増し、食欲をそそることもあります。
自分に合った食事を摂る 最も重要なのは、自分に合った食事を摂ることです。人によって胃腸の弱さや食物に対する耐性が異なるため、自分自身の体調や症状に合った食事を摂るようにしましょう。食欲があまりない場合には、無理をして大量に食べるよりも、少量の食事を繰り返し摂る方が良いかもしれません。
胃腸の調子が悪いときには、消化のいい食事法を取り入れることで、胃腸を労わりながら栄養を摂取するこことができます。ただし、医師や専門家の指導のもとで適切な食事法を選ぶことが大切です。
また、消化のいい食事法だけでなく、食事の際の食べ方にも注意をしましょう。
よく噛んで食べる 食べ物をよく噛むことで、唾液の分泌が増え、消化酵素の働きを促進します。食べ物を細かく噛んでから飲み込むことで、胃腸に負担をかけずに消化を助けることができます。
食事を急がずにゆっくりとる 食事を急いで食べると、空気を一緒に飲み込んでしまい、胃腸に負担をかける可能性があります。ゆっくりと食事を取ることで、胃腸にかかる負担を軽減し、消化をスムーズにすることができます。
食事の量を調整する 胃腸の調子が悪い時には、一度に大量の食事を摂るよりも、食事の量を少なめに調整する方が良い場合があります。無理をせず、自分の体調に合った食事の量を摂るようにしましょう。
消化に良い食材を食べよう!
脂肪の少ない肉類(鶏のささみ・赤身のひき肉など)
繊維の少ない野菜類(キャベツ・白菜・大根・ジャガイモ・里芋・かぼちゃ・にんじんなど)
白身魚
ヨーグルト
豆腐
牛乳
※牛乳はあたためて飲むことで、さらに消化しやすくなります。
胃に負担をかけない調理方法
硬い食材はやわらかく煮込む
油で揚げるよりも、「煮る」「茹でる」 の調理法を選択する
味付けは薄味にする
繊維が多い食品は、繊維を断ち切るように切る
ミキサー等を使って、細かくしたり、すりおろしたりするとさらに消化しやすくなります。
消化酵素の多い食べ物
消化酵素は食べたものを細かく分解して栄養素を取り出し、体内への吸収やエネルギー消費、排出をしやすくします。
パパイヤ・キウイ・パイナップル
はちみつ・オリーブオイル
スプラウト・大根
酵素は熱に弱いため、生で食べるようにしましょう。
カフェインやアルコール、炭酸飲料などの飲み物、香辛料や熱すぎるもの、冷たすぎるものは胃に負担がかかるため消化に良くありません。
食欲がわかなかったり、胃に負担がかかってると感じたら、これらのことに気をつけて消化に良い食事を心がけましょう。
最後に
以上のように、胃腸の調子が悪い時には、消化のいい食事法を取り入れることで、胃腸を労わりながら栄養を摂取することができます。
ただし、個人に合った食事法を選ぶ際には、医師や専門家の指導を受けることをおすすめします。
自己判断せず、安全に食事を管理が必要ですよ。
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オリーブに含まれる天然化合物が肥満や2型糖尿病の治療薬になる可能性、承認済みの治療薬と同等以上の効果を発揮 - GIGAZINE
以下引用
オリーブオイルやオリーブの葉から抽出できる化合物であるエレノール酸が、肥満や2型糖尿病の予防に有望だとの研究が、2024年6月に開催されたアメリカ栄養学会の年次総会「NUTRITION 2024」で発表されました。
・(OR02-02-24) Identification of a Novel Multi-target Bioactive Compound With Anti-obesity and Anti-diabetic Activities
・Compound from olives shows promise for treati | EurekAlert!
・Natural Compound in Olives May Help Fight Obesity And Type 2 Diabetes : ScienceAlert
「生活習慣の改善や公衆衛生的な対策は、2型糖尿病の最大のリスク因子の1つである肥満の増加に対して限られた効果しか発揮していません。また、市販されている現行の肥満治療薬は減量の継続には効果がない割に高価で、長期的な安全性リスクを伴う可能性もあります」と指摘するのは、アメリカ・バージニア工科大学の栄養学教授であるドンミン・リュー氏です。
より安全かつ安価で便利な薬を開発するため、リュー氏らの研究チームはまず、食事に関するホルモンの分泌を担っている腸管内分泌細胞の「L細胞」に作用する天然化合物を探すことから始めました。
調査の際には、L細胞が分泌する「腸管GLP-1」と「ペプチドYY(PYY)」というホルモンが手がかりとして注目されました。これらのホルモンは、満腹感を刺激して食べ過ぎを防ぎ、血糖値や代謝を制御する機能を持っていることがわかっています。
研究チームが、満腹ホルモンに作用する天然物質を探すスクリーニングを実施したところ、腸内でGLP-1とPYYの分泌を促す天然化合物として、成熟したオリーブの実やエクストラバージンオイルに含まれるエレノール酸が特定されました。
エレノール酸には、GLP-1とPYYを増やすだけでなく、過剰になると摂食量や体重の増加を招く「アグーチ関連ペプチド」の産生を調節する働きもあり、これが体重のコントロールに役立っているのではないかと研究チームは考えています。
実際に、研究チームが糖尿病の肥満マウスにエレノール酸を経口投与する実験を行った結果、エレノール酸を摂取したマウスは対照群の肥満マウスに比べて代謝の健康状態が著しく改善し、わずか1週間の投与で体重が減少して血糖値の値も良好になったとのこと。そして、治療開始から4~5週間後には、血糖値とインスリン感受性がやせた健康的なマウスと同等になるまで改善しました。
エレノール酸が血糖値を改善させる効果は、GLP-1受容体作動薬として肥満症の治療に用いられているリラグルチドと同等で、2型糖尿病の第一選択薬である血糖降下剤のメトホルミンよりも優れていたと、研究チームは報告しています。
これらの結果について、リュー氏は「オリーブ由来のエレノール酸は、特に肥満や糖尿病の状態における、ホルモン分泌や代謝の改善に有望な結果をもたらすことが示されました。この化合物は、食事によって起きる生理学的条件を再現し、腸の代謝ホルモンの分泌を直接促すことで、エネルギーバランスと代謝の健康のコントロールに貢献しているのではないでしょうか」と述べました。
残念ながら、天然のオリーブやオリーブオイルに含まれるエレノール酸の濃度は非常に低いため、オリーブ製品を食べても今回の研究で判明した効果を得ることは難しいとのこと。
研究チームは、実験の際にオレウロペインというポリフェノールの一種を分解してエレノール酸を調達しており、この方法を使うとオリーブから直接エレノール酸を抽出するより安価にエレノール酸を得ることが可能でした。
今回の研究結果は、アメリカ栄養学会の専門委員会による評価と選考を受けたものですが、学術誌に掲載されるのに必要な査読を受けたものではないため、それまでは暫定的な研究結果と位置づけられています。
リュー氏らの研究チーム今後、エレノール酸が体内でどのように働くのかを分析して、肥満や糖尿病を改善するメカニズムを解明し、将来的な臨床試験に向けた安全性の確認を行っていく予定です。
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魔法じかけの林檎
誰もがその林檎を欲しいと思ったけど
千鈴は林檎しか食べない。どんな食事を用意しても食べないのに、林檎を切ってあげると、それは食べる。だから、お見舞いのときは、私は必ず林檎を持っていく。
精神病棟だから病室には行けない。けれど、看護師さんに手を取られて、千鈴は面会室には現れる。精彩のない無表情でソファに座る。待っているあいだに切り分けた林檎を並べたお皿を、私は千鈴の前に置く。
その甘い香りか、お皿を置いた音か、それは分からないけど、千鈴は林檎に目を落とし、ひと切れ、手に取る。そして、言葉はなく、しゃり、しゃり、とゆっくり林檎を食べていく。
姉の千鈴。妹の五鈴。私たちは、十三年前に一卵性のふたごとして生まれた。
幼い頃は、ふわふわのカールの髪に結ぶ、色違いのリボンが見分けるコツだった。それと、泣いているのはたいてい私で、褒められているのはたいてい千鈴。
千鈴は泣き虫の私を揶揄ったりもしたけど、けして意地悪ではなかったし、優しい姉だった。私は、よく千鈴のあとを追いかけて走っていた。私たちの毎日が壊れた、あの日もそうだった。
ふたごって何かかわいいねと言われながら、同じ小学校に上がった春だった。私たちは一緒に下校していた。
にぶくて泣き虫な私をまた揶揄って、千鈴は駆け足で先を走っていた。春風に、千鈴の髪を結う白いリボンがひるがえった。ひと気が減ってきた角を曲がり、「千鈴、待って」と息を切らす青いリボンの私は顔を上げ、はっと立ち止まった。
こちらを振り返って笑っている千鈴のすぐ背後に、知らない男の人が立っていた。私は千鈴の名前を叫ぼうとした。遅かった。男の人は、強引に千鈴を抱え上げ、そのまま路地に駆けこんでしまった。
茫然とする私の耳に届いたのは、服を引き裂く音、千鈴の泣き声、男の人の荒い息──
そのとき、偶然同じクラスの男の子たちが通りかかって、私は泣きながら千鈴が引きこまれた路地を指さした。私は何もできなくて、男の子たちが声を上げたり、大人を呼んだりしてくれた。
けれど、千鈴の心にはすべてが手遅れだった。その日から千鈴は、感情も記憶も喪失した、息をしているだけの人形のようになった。外出はもちろん、家庭で過ごすことさえ困難と診断され、精神病棟で過ごしていくことになった。
しばらく、千鈴は何も食べなかった。点滴で栄養を摂っていても、見る見る痩せていった。ふっくらした薔薇色の頬は蒼くこけて、腕も脚も折れそうになって、しっとり白かった肌もぱさぱさになっていった。
そんな千鈴を見るのをつらいと言い出したのは、私より両親が先だった。何かと言い訳をつけ、千鈴のお見舞いに行かなくなった。私が千鈴に会いたいとせがむと、「病気が伝染って人形になるから」とおとうさんは目をそらした。おかあさんは「千鈴のぶんまで、いい子にしてね」と虚ろな瞳で私の頭を撫でた。
それでも私は、千鈴に会いたかったから、そばにいたかったから、お小遣いを全部交通費に当て、両親には「友達と遊んでくる」と言って、こっそり千鈴のお見舞いに行った。
私と千鈴が幼稚園の頃に読んだ、子供向けにした神話の絵本の中に、こんな話があった。どんな病も傷も治す、魔法の林檎を果樹園で守る女の子がいた。彼女は、林檎を盗みにきた泥棒に殺されてしまった。その死を哀しんだ女神様によって、彼女は花のすがたとして生まれ変わった──
魔法の林檎は、半分食べれば、どんな病気も癒える。全部食べれば、永遠に若く生きられる。そんな、不思議な黄金の林檎。
ひとりになってしまった部屋で、その絵本を読み返した私は、その林檎が欲しいと思った。林檎が心まで癒すかは分からなかったけど、そんな魔法に頼らないと、千鈴は壊れてしまうのではないかと怖かった。
「ねえ、千鈴」
季節はあっという間に巡り、着こんだコートのポケットに、懐炉を入れておく冬になっていた。吐く息が白く、雪が舞う日も多かった。
家から駅まで歩いて、病院の送迎バスが来る駅までふた駅。ありがたいことに、マイクロバスの利用は無料だった。私はその日、お年玉をもらってお金があったので、千鈴のお見舞いに差し入れを持ってきていた。
「お花に生まれ変わった女の子のお話、憶えてる? もしあの子が魔法の林檎を食べてたら、殺されても死ななかったよねって一緒に話したよね。だからね、千鈴も林檎を食べたらつらくても咲えるかもしれないって、今日は林檎を持ってきたの」
かたわらに置いていたビニールぶくろから、駅前のスーパーで買ってきた林檎を取り出した。千鈴がめずらしく、ゆっくりとだけど視線を動かし、それを見た。私は精一杯咲って、「ちょっとでも食べよう」と千鈴の手に林檎を持たせた。
「林檎を食べたら、千鈴にも治る魔法がかかるから」
千鈴は何も言わなかった。でも、それから、林檎だけは食べてくれるようになった。
それが、千鈴の必死の声だったのだと思う。本当は千鈴も、食べたいし、しゃべりたいし、咲いたいのだ。でも、でき��い。あの体験がおぞましく焼きついて、自分を思い通りに動かせない。
いつか心が癒えるように、掠奪された自分を取り返して傷を乗り越えられるように、千鈴は願いをこめて林檎を食べた。
「……千鈴だったら、こんな間違いしないのに」
一方、千鈴が欠けた家庭で、おかあさんの態度がおかしくなりはじめたのは、事件から一年が過ぎた頃だった。
私のテストの答案を見ていたおかあさんが、ふとそんなことをつぶやいた。「えっ」と私がちゃんと聞き取れずに問い返すと、おかあさんは突然、答案用紙をびりっと音を立てて破った。
「千鈴なら、こんなテストぐらい百点が取れるでしょう!」
言われていることがとっさに分からず、ぽかんとおかあさんを見た。おかあさんはゆがんだ顔を覆って、フローリングにくずおれて、わっと泣き出した。どくどくとあふれる涙で、床に散らばった不正解だった私の字がふやけていった。
私はしばし突っ立ってしまったけど、「おかあさん」とこわごわその肩に手を置いた。おかあさんはその手を振りはらって、「あんたなんかいらない!」と金切り声で叫んだ。
「千鈴! 千鈴を返して‼ 私のかわいかった千鈴はどこなの、ねえ、どこに行ってしまったの!」
私ははたかれた右手を握りしめ、視線をとまどわせた。おかあさんは、砕けたガラスみたいに床に這いつくばって泣いている。その嗚咽に、千鈴の名前が混じる。
私なんかいなかったみたいに。自分の娘は千鈴だけであるみたいに。
ああ、おかあさんは千鈴に会いたいんだ。いつでも会える私なんか、どうでもいいんだ。おかあさんに必要なのは、一年前まで、無邪気に咲って、当たり前に私たちの中にいた、健やかな千鈴──
「ほ……ほんとに、五鈴は、ダメだよね」
何で、そんなことを言ってしまったのか分からない。
「私からも、五鈴にこれくらいできないとって、しかっておくから」
それが幼い頭でやっと考えついた、発狂しそうなおかあさんのなだめ方だったのかもしれない。
「おかあさん、泣かないで」
おかあさんが震えながら泣きやんで、鼻をすすって顔を上げた。
「私はここにいるよ」
おかあさんが手を伸ばし、私の頬に触れた。
「千鈴……?」
私はおかあさんに向かって微笑み、うなずいた。その拍子、おかあさんは私を抱きしめて、また泣き出した。
でも、耳にきりきりする、痛ましい泣き方ではなかった。安堵で声をつまらせ、やっと家にた��りついた子供のような慟哭だった。
こんなに、おかあさんは千鈴を探していたのか。傷ついてしまう前の千鈴を求めていたのか。
だったら、私にできることはひとつだ。おかあさんの前では、私は千鈴を演じる。千鈴のふたごの片割れである私にしか、それはできない。
千鈴がいなくては、おかあさんが壊れてしまう。だから、千鈴が治るまでは、帰ってくるまでは、おかあさんの前では私が千鈴になる。
「五鈴は……つらいかもしれないけど」
その夜、おとうさんが帰宅する頃にはおかあさんは泣き疲れて、リビングのソファで眠っていた。「『千鈴だよ』って言ったら、おかあさん、すごくほっとしてくれたの」と私がつたなく説明すると、おとうさんは言葉を失くしたものの、私の頭に大きな手を置いて言った。
「おかあさんの前では、千鈴でいてくれるかな」
「うん。おとうさんも、私のこと五鈴って呼んじゃダメだよ」
「……ごめんな、五鈴」
「千鈴、だよ」
「ごめん、……ごめん千鈴。守ってやれなくて、本当にごめん──」
おとうさんにぎゅっとされて、スーツの糊の匂いの中で、「大丈夫だよ」と私は言った。
その言葉が、五鈴としてだったのか、千鈴としてだったのかは、分からない。おとうさんの腕に力がこもったのも、五鈴に対してだったのか、千鈴に対してだったのか、分からなかった。
それから、私は家庭では千鈴を演じるようになった。千鈴のように勉強も運動も、口調も身だしなみも頑張った。「五鈴」はいなくなったわけではなく、いつも偶然その場にいないかのように振る舞われた。私だけでは修復しなかった家庭が、私が千鈴になることで、少しずつ明るくなっていった。
もちろん、私を「千鈴」と呼んで、買い物に行けるようにもなったおかあさんについて、近所の人は怪訝そうにひそひそ話をした。私がひとりのとき、「無事だったのは五鈴ちゃんよね?」と心配そうに声をかけられることもあった。私はあやふやに咲ってかわし、家に駆けこんで、おかあさんに百点を取ったテストを見せた。おかあさんの穏やかな笑顔が、私のきしみそうになる心を支えた。
本物の千鈴のお見舞いに行くのは、相変わらず私だけだった。家のことを、千鈴には話したほうがいいのかと思ったけど、刺激を与える話は先生を通してからと看護師さんに言われていた。
近所の人の訝る目を思い出し、あんまりお医者さんには言いたくないなと思った。やっと見つけた落ち着く手段を、やめたほうがいいとか言われたくない。
千鈴は事切れた瞳のまま、静かに林檎を食べている。私たちは、いつ千鈴が帰ってきてもいいようにしているだけ。だけど、千鈴が戻ってきたら、私はどうなるのだろう。
どんどん希薄になっていく五鈴という私は、まだあの家に存在しているのだろうか。帰ってきてほしいと思って、私だけがこうして本物の千鈴を見捨てていないのに、千鈴が帰ってきたら、きっと私が一番報われない。
私が演じる千鈴は、周りの理想を裏切らないように、美しく築かれていった。言葉ひとつ、仕草ひとつ、細心の注意で千鈴らしくした。千鈴以上に千鈴だったかもしれない。
おかあさんが外では私を「千鈴」と呼ぶし、家に来たクラスメイトたちは、「あれ……五鈴ちゃんだっけ? 千鈴ちゃんだっけ?」と混乱して、いつのまにか「えーっと、千鈴ちゃんだよね!」と思いこんでいった。
テストや教科書に名前を書くときも「千鈴」と書いた。さすがに本名を把握している先生たちは、最初は「え?」という顔をするものの、私もクラスメイトも──何より親が「あの子は千鈴ですよ」と言うので、触れてはいけない、あるいは関わりたくないと思うらしく、次第に何も言わなくなった。
私は人前では淑やかに咲う反面、部屋でひとりになると、自分の鼓動がうるさくて過呼吸になるときがあった。
私は綺麗。私はいい子。私は──違う、全部千鈴だ。綺麗なのは千鈴。いい子なのは千鈴。じゃあ私は? 私は何なの? 私はどこに行ったの?
千鈴の偽物として生活していて、私自身の価値はどうなってしまったの?
どんなに演じても、千鈴本人になれることもないのに、なぜ私は不毛な嘘をまとっているの?
千鈴として咲うほど、私は咲えなくなっていく。千鈴として振る舞うほど、私は何も感じなくなっていく。
自分を切り崩していく中で、中学生になった。最近の公立中学は物騒だからと私立に進んだ。私を千鈴としてあつかうことは、ご家庭の事情があるから、と小学校の先生が伝えたらしい。生徒証などの公的な書類になるもの以外では、私は千鈴として通った。
葉桜の緑が鮮やかな五月、一年生の中間考査では首席を取れた。ほっとして貼り出しから教室に戻ろうとしたとき、「あ、おいっ」という声がして肩をつかまれた。
私は立ち止まって振り返り、そこにいたブレザーの男の子に首をかしげた。黒いさらさらとした髪、まだ童顔の大きな瞳、誰なのか心当たりはなかった。けど、「千鈴なのか?」と声変わりもしていない声が言う。私は貼り出しにある名前が、千鈴であるのを一瞥した。
「……そう、だけど」
「えっと……元気にしてたか」
「ええと、あなた──」
「洋介だよ。谷村洋介。その、……あのとき、妹のほうが俺とか和義を呼び止めて。俺は、学校まで先生を呼びに行ったんだけど」
私はその男の子を見つめた。引っかかる記憶はなかった。
あのとき、どんな男の子たちに声をかけたかもよく憶えていない。クラスメイトではあったはずだけど、特に彼に印象はない。
「ちゃんと、学校にも来れるようになったんだな」
「……もうずいぶん経ったから」
「そうか。あ、千鈴は何組なんだ?」
「A組よ」
「すげ、進学クラスじゃん。俺は一般のC組だけど、また今度、ゆっくり話でもできたら」
「そうね」
「よかった、ちゃんと生活できるようになったなら。ずっと心配してたんだ」
洋介くんは優しく微笑むと、「じゃあ」とそばにあった階段を降りていった。妹のほう。五鈴のことは、名前さえ出てこないのだろうか。
それから、ときおり洋介くんが声をかけてきて、私たちは話をするときがあった。この人、千鈴が好きなのかな。そう気づくまでに、時間はかからなかった。
幼い頃からの想いなのだろうか。再会して始まった恋心だろうか。
後者だとしたら、君が好きになったのは千鈴じゃなくて五鈴なんだよ、と伝えたい心がふくれあがってきた。幼い頃からの気持ちだったとしても、それなら彼には、本物の千鈴のことを言っておきたかった。
どうして、本当のことを知ってもらいたいと思うのだろう。知られたところで、状況をかき乱すだけなのに。
梅雨の合間に晴れた日、雨粒が芝生できらきらする中庭のベンチで、洋介くんとお昼を過ごしていた。洋介くんはお弁当を食べはじめていたけど、私はお弁当ぶくろを膝に置き、躊躇っていた。「食べないのか?」と言われて、曖昧にうなずいた私は、気を引き締めて洋介くんを向いた。
「あのね、洋介くんに知っていてほしいことがあるの」
「ん、何だよ」
「……これ、なんだけど」
私は胸ポケットから生徒手帳を取り出し、生徒証のページを開いて、洋介くんに渡した。洋介くんはそれを受け取り、怪訝そうにページを見つめた。
「これが?」
「名前を見てほしいの」
「名前──」
洋介くんの目が、そこに記される私の名前をたどった。まぶたが押し上げられる。
「え……これ、五鈴って」
「私ね、ほんとは五鈴なの」
「は?」
「みんな千鈴だって思いこんでるけど、私もそう思われるように千鈴を演じてるけど、違うの。私は五鈴──」
「え……ちょっと、待てよ。演じてるって、じゃあ、ほんとの千鈴は?」
「千鈴、は──」
「てか、わけ分かんねえし。何でそんな演技してんだよ」
「ち、千鈴を演じないと、誰も私なんか見ない、し」
「はあっ? 千鈴はあんなことがあったんだぞ⁉ お前なんかどうでもよくなるのが普通だろ。……くそっ、最低じゃないか」
最低? 私が? 何で?
ぽかんとしてしまうと、洋介くんは忌ま忌ましそうに立ち上がって、中庭を出ていってしまった。私はそれを見送り、本当にわけが分からなくて、洋介くんの反応が正常なのか異常なのかさえ判断できなかった。
だって、私が千鈴にならないと、大人たちはまるで歯車が合わなかったじゃない。なのに、私が間違いだったの?
そのとき、突然気づいた。魔法の林檎になっているのは、私なのだ。おかあさんにとって。おとうさんにとって。あの事件から目をそらしたい人、すべてにとって。
私という林檎が、麻薬のようにみんなの意識をごまかし、ひととき忘れさせて、麻痺させている。私が千鈴になることで、千鈴が傷つけられた事実はゆがめられ、偽りの安心をみんなに与えている。
やがて、太陽が白光する夏が来た。季節外れでちょっと高い林檎を買って、私はまた千鈴のお見舞いに行った。
千鈴は林檎を食べる。しゃく、と噛み砕く音と共にこぼれる甘酸っぱい香りに、私は涙が出てくる。
このままでは、私が壊れてしまう。私が見せる幻覚は、薬でなく毒だ。そんな調和は、今すぐやめないといけない。
ふと、口元に冷たい酸味が触れた。はっとすると、虚ろな表情のままだったけど、千鈴が私の口に林檎を分けようとしていた。私は千鈴の瞳を見つめ、久しぶりに、五鈴として咲った。
林檎を受け取り、さわやかな味を頬張った。口の中に、新鮮な味がふわりと広がる。
林檎を食べていたら、女の子は死ななかった。でも、もう死んでしまった。だけど、女神様によって花に生まれ変わった。
千鈴もきっと生まれ変われる。綺麗な花としていつかまた咲える。私も弱い大人の犠牲になり、千鈴が花になれたすがたを演じてみせなくていい。そんなことをしなくても、千鈴は咲けるから。その千鈴の生きる力を信じることが、魔法じかけの林檎になって、五鈴としての私を癒やしてくれる。
千鈴じゃなくていい。弱い心に見せる幻にはならなくていい。そんなことをしていても、今度は私が死ぬだけだ。
再び咲えるようになる千鈴と共に、私は私のまま、嘘偽りなく生きていっていいんだ。
私がこくんと林檎を飲みこむのを見た瞬間、確かに千鈴の瞳が、ほころぶようにほのかにやわらいだ。
FIN
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