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#人事を尽くして天命を待つ
straycatboogie · 1 year
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2023/01/11
BGM: Cutemen - Love Deeep Inside
今日は遅番だった。朝、小坂井敏晶『神の亡霊』を少し読む。すこぶる刺激的な本だ。彼は、私たちは自分の死を選ぶことができると書いている。死にたければ死ねばいい、と。これは危険な議論だと思う。私は「死にたい」と願う人、死の自己決定を望む人に対して「死ねばいい」とは言えない。その自己決定をその人が後悔しないとは言い切れないからだ。生きていれば過去に下した決定を後悔することは山ほどある。間違いは誰もが犯しうる。それが人間の人生というものだ。ゆえに、死を望む人に向けられるべきは別の言葉だとも思った。こうした議論に私を差し向けてくれたという意味で、皮肉など交えず小坂井の本を良書だと思う。
「生きていればいいこともある」という言葉の意味について考える。日本には「人生万事塞翁が馬」ということわざがある。私もかつてクリニックの医師に「きっといいことあります」と言われたっけ。私たちの人生はそうした「運」「縁」が重要な役割を果たしているのだろうか。絶望的な状況に置かれた人に、「運次第」で人生は開けると語りかけること……それは残酷ではないだろうか。運次第で人生が好転するか暗転したままか決まるのなら、人生というものは相当にナンセンスなものではないだろうか。そんなことを考えた。
チェスタトンだったか、「奇跡に関して最も信じがたいことは、奇跡は起こるということだ」と喝破したのは。私の人生を振り返ってみても40の歳に奇跡的な出会いがあり、そこから今のような英語でメモを書いたり発達障害と向き合ったりするような人生が始まった。その意味では人生は「ガチャ」で決まるところがあるとも思う。人事を尽くして天命を待つ、ということわざもある。運次第でどうにでもなる人生だからこそ、私は運に頼らずに自助努力を尽くしたい、とも思う。この矛盾を生きることが、すなわち人生を生きることなのかなとも思う。
「空気は読むものではなく、吸うものだ」とある方の言葉だ。私も空気を読めなくて苦労している身なので、この言葉が身に沁みる。私は結局雑談もこなせない、変人としての人生を生きるしかない。だが、ならばその道を極めて集団の中でファーストペンギンとして生きるまでだ。ナンバーガールの歌詞のように「自力を信じて」。哲学の徒として私は生きているので、あらゆることを懐疑的に見る癖がついてしまっているがゆえにこれは難しい。だが、なぜかうまくいってしまうのが人生、奇跡が起きてしまうがゆえに価値があるのが人生でもある。人生は面白い。
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leomacgivena · 1 month
Quote
「人事を尽くして天命を待つ」の難しい部分は「人事を尽くす」方じゃなくて、「天命を待つ」の方なんよな。「合理的になすべき努力はここまで。ここまでやったらあとは乱数。ジタバタせず来たものを受け入れるのみ」というメンタリティを獲得するのにオススメのゲームはポケモンと麻雀です。
Xユーザーのtrtmfileさん
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ysterrd · 12 days
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Takato Taiten (CV: Fukuyama Jun)
“Fate helps those who help themselves. Such is the elite’s guiding principle.”[1]
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A mega-corporation's young CEO
As the CEO of Takato Enterprise, he's a very busy businessman with a schedule that's packed for months to come.[2]
Although he watches over his younger brother Uryu, he's strict with him to uphold the name of the Takato family.[3]
He's skilled at using yojijukugo.[4]
Profile
Class: Tower Emblem
Height: 179kg
Weight: 69kg
Birthday: May 1st
Age: 28
Zodiac Sign: Taurus
Hobby: Golf
Skill: Using yojijukugo
Rider Finisher: Spectral Judgment
Voice lines
“Fate helps those who help themselves. Such is the elite’s guiding principle.”
“As the head of a company, I must be diligent[5], so I don’t need holidays.”
“I’ve received sweets from a client. Would you like some?”
TL Notes:
人事を尽くして天命を待つ is an expression that means you’ve done your best and leave the rest to fate, pretty much. There’s this idea of exerting efforts before you wait for something to happen, so I went for a variant of the expression “God helps those who help themselves” for the TL. As for 心得, it can either mean knowledge/experience, or rule. I went for “guiding principle” to convey that “important rule” meaning.
Combined the first two lines of the description in a single sentence for the sake of flow.
I’ll be honest I don’t think I would have been able to word this part like this without the feedback of some buddies because English was not on my side there (thanks to the Stashers, you know who you are <3). While the first half of the sentence is closer to the OG, I had to take some liberties with the second half because that 高塔一族の者として led to weird results when TLd in a more faithful manner. So, with some feedback from friends, “to uphold the name of the Takato family” sounded like a more natural wording, especially considering the context of Taiten being the head of a megacorp.
四字熟語 (yojijukugo) are idiomatic words and expressions made up of 4 kanji. Considering their cultural specificity, I decided to keep yojijukugo as is. In layman terms, though, it just means that Taiten is a wordy guy. Godspeed to fellow translators who like him, I’ll cheer you on.
Less of a TL note and more of a fun fact, but the word Taiten uses here, 精励恪勤, is an example of yojijukugo.
Source: Ride Kamens website
Originally posted on Dreamwidth & Twitter on Feb 14 2024.
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2comlog · 8 months
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法事 月命日
行ってきました、腰越海岸に。
それも、ちゃんと10月12日に。
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~一応、どういった人間が読んでくれても良いように概要説明をします~
私はあるジャンプ漫画の97年9月12日に死んだ二人を推しカプとし、まあまあ二次創作をしている者です。 その死地の場所が腰越海岸という巡礼可能箇所だったので月命日ゃし…と巡礼してきました。
やるぞ!月命日を!
ちゃんと大船からバス乗って!!! バス写真撮ってなかったけど!!! ちゃんと中野なり練馬からでも乗り換えをする確率の高い、東京駅から東海道線に乗り!!!上野東京ラインは97年に存在していないんですね。
今回もまたもや、愛・同カプ推し作家氏にまたご同行いただいたため、 マジで無限にオタクの話をしていたので東海道線内の車窓一切見てなかったからその辺は不明でしたが、 本当に海岸のバス停まで一切海見えなくてウケました。
それはそう……お前たちはそう……… 観光で江ノ島に来たわけじゃないから海見える見えないは何も関係ない…… すごく…それが推しカプっぽかった…
すみませんバスの写真も全く無くてウケています。 大船~腰越海岸へのバス、案外一時間一本とかで、運よく「あと数分で発車するが」というバスを捕まえる事が出来たので結構ダッシュだったんですよね。
えっ!??!! 推しカプも運が良かったならともかく、人生大凶みたいな二人だが!?一時間待った可能性もあるんですか!?!
…まあ、この後死ぬし、そうでなくても「明日多分死ぬ」と分かってる状況で「運が良かったな…バスがすぐ出るぞ」「ええ…キミの運なんてずっとよくないけど…」みたいなアホの会話をしたのかもしれない。かわぃ…。
でも一時間待った可能性も大事にしたい。 もしかしたら思ったより天使は「明日死ぬ人間君」と大事に過ごせたのかもしれない。 だからこそ、ああいう顔してたのかもしれない。
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天気良くてびっくりしたねぇ…何度となく「こんな景色良いとこで死ぬなや!!!」と言いました
…………
すみませんここで少しフィルムカメラオタクの話を聞いてください。 上記写真、言うほど「天気いいな」の色じゃなくないですか? そう…そう思われるかもしれないのにはワケがあるのです。 これの撮影フィルムは「LomoChrome Color '92」というフィルムでしてぇ…… ロモグラフィー社が92年に設立され、最近20周年を迎えたのでその記念に開発された(と思われる)フィルムなんですよね。 90年代風の色味が出るように…と作られたフィルムです。
めっちゃ彩度が低い!!!!!粒感がすごい!!!!!! わかりやすくいうとノスタルジックな色!!!!!!! 何撮ってもわりと天気悪そうに見える!!!!!!!!!!
こんなに推しカプに似合うフィルムはないよ!!!!!!!! (果たしてそうかな?他にももっと…やめなよ今日は聖地巡礼記事だよ)
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デイト機能(日付入れるやつ)付きのカメラで撮影しているので嘘の日付が入れられます。 うれしい!!!!! …でも構図が適当だと…というか「平行じゃない」ことがめっちゃ目立つなデイトは…
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こんな事なかなか無いから…とカメラも3台程持ってった。 これは私が世界で一番好きなカメラで撮ったやつ。Diana F+といいます。 上の日付は入ってるやつとほぼ同じ場所から撮ってるのに、こいつは何撮っても概念みたいになる。大好き… これでしばらく推しカプ描く時のテクスチャに困らん
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こちらは推しと大体同い年のカメラ! …という話は過去にしています…オートハーフE2てゃです↙ https://2comlog.tumblr.com/post/686037344695074816/%E3%81%8A%E9%80%B1%E5%A0%B1%E7%95%AA%E5%A4%96%E7%B7%A8%E3%82%AB%E3%83%A1%E3%83%A9%E8%B2%B7%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%82%8A%E7%8F%BE%E5%83%8F%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%8B%E3%82%89%E8%A6%8B%E3%81%A6 
うわーー!江の島~!すげー!見える!江の島の形が!
江の島とかいうジャパニーズ観光地の代表格、推しカプはもし観光で来ていたとしても絶対泳いだりはせんだろうな…という話を無限に推し作家としておりました。 なかよく荷物番してろッ!
浜辺で本を読むとか素敵なんですけど、本を読むような推しでもない、体育すわりしてボーっとしてる。絶対。
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いい日、いい海でした。 法事なので黒い服着て行ったんですが(私も…推し作家も…)、全身黒いとやや汗ばむような快晴と気候。海もずっときらきらしていた。 写真各位でも確認できますが結構サーファーやヨッター(ヨッター?)もいらっしゃるくらいに。
スケジュールアプリには今日のことを法事と記してあったのだが、なんか喪に服すとかいう空気でもなく…まあ「こんなとこで死ぬなや」と思うことは弔いのバリエーションの一つではあるから…法事、やったかな…!!
観光もしたよ!!!
死んだ推しカプに出来なかったことやろうやぁ…の趣旨もあったため、江ノ電乗ったりしらす丼食べたり江ノ島行ったりもしました。
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江ノ電!! まあじで観光電車ですね…よかった…ほんとうに…
修学旅行生とかも歩いててよかったです。 歩いていた人間、そういえば、完全に海パン一枚のおっちゃんが自転車乗ってて「わあ…湘南をエンジョイしてる…」と思っていたら自転車のカゴにネギ刺さったスーパーの袋が乗ってて「何の人!?!」と思いました。 観光ちゃうんか。よく考えたら自転車の人、たいてい地元の人か…
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江島神社の方も行ってきた~ えっ…階段こんな………そう……そらエスカレーターあるわ………… そういう、やや急な階段、かわぃ~犬が完全に飼い主さんに抱えられ、一切その肉球を階段に着けることなく拝殿まで連れていかれていて、良かったです。 散歩を嫌がる犬は3割くらい推しカプですが、こういうのも2割くらい推しカプです。そうかな?
もし気兼ねのない観光で、ガチのデートをしたところで推しカプは死ぬ前の空気で歩いてたかもしれん… それは生活と死がメイン性癖の手癖によりすぎているか…
カラすぎる推しだから観光ガイドブックのそのまんまの手順で江ノ島歩くだろうし…とちゃんと江の島に上陸もしてきました。 つまらねえ男…旅って偶発性を楽しむもんじゃないの…
でも推しカプとはきっと正反対のノープラン・偶発性観光だったので、なんとなく入った路地のハイパー景色良し海岸にて礼服(礼服ではない)の裾とスニーカーをビシャビシャにしたりしました。すぐ乾く天気で良かった!
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これはハイパー景色良すぎ海岸。突然スマホ写真やん。こっからフィルム変えてて…まだ…現像…出来てなくて……
…海水浴こそしなさそうな推しだが、「海に来た礼儀なので…」つって足を海につける行動は取ろうとして、理性的悪魔を「うっわウソウソ…キミそういうのするの…」と狼狽えさせたりして欲しい。 人外には、礼儀や義務感で海に入ろうとする人間がいることなんかに気がつかないで欲しい。 でも人間君が海入ってっちゃったら慌ててついてくかもしれない。死ぬ時もなんかついてっちゃう悪魔なので。
その後は海見ながら瓶ビール飲んで、推し作家と無限に無い話と死の話をして、都内戻ってきてもまた無限に無い話と死の話をしました。
海から離れた瞬間もう全部の気を抜きすぎているので、一切の写真が無くてウケました。そういうとこやんな…
流石にしゃぶり尽くした気がしていた九巻だったが、海見て推し作家と話していると無限に味わいが変わっていく… そういう推しカプ…
行けて…良かった……腰越海岸………………
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オチとかはないです!
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apoandbangpo · 11 months
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BTS Sugaのワールドツアーは究極のポップス転覆 / The Atlantic 翻訳
アメリカでグループ初となるソロコンサートを開催、アーティストとしての個性を強烈に宣言した。
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Story by Lenika Cruz
フォグマシーンの柔らかな吐息に包まれたステージから、フードを被った4人の人物が舞い降りてきたかのようだった。その肩には、黒をまとった体が乗っている。雨と稲妻が背後のスクリーンに真っ白に映し出される。ようやく、その男が地面に横たえられた。その後には、まるで死からの復活を思わせるような光景が待っていた。スポットライトが彼を見つけ、歓声が上がり、ついに彼は動き出した。そして、マイクを口に当てた。
このロックスター、ラザロの正体はミン・ユンギ。グラミー賞にもノミネートされ、チャートを席巻している韓国のグループ、BTSのラッパー兼ソングライターのSugaとして広く知られている。しかし、その夜ニューヨーク州ロングアイランドにあるUBSアリーナのステージには、彼のバンドメンバーは誰もいなかった。なぜなら、この日は彼のソロワールドツアーの初日だったからだ。昨年の夏以降、メンバーは各々の兵役義務遂行に向け、個人活動に集中してきた。BTSで初めてソロツアーを行うSugaはグループ作品よりも暗く、生々しく、パーソナルな音楽制作のために2016年につけた名前、Agust Dとしても公演を行っていた。先月、Agust Dの3部作の完結編となる強烈なスタジオアルバム『D-Day』をリリースした。このアルバムで社会批判やトラウマの黙想、名声、精神疾患、孤独、そして許しについて語っている。
同じくD-Dayと題されたSugaの現在進行中のツアーは、彼の作品を初めて本格的にショーケースするものだ。完売したアメリカでのツアーは、まるで10年以上の歳月を経て作り上げた芸術的個性の宣言のようだった。コンサートはフロントマンのエネルギーと作家主義的な華麗さで爆発していた。しかし、彼の最も際立った功績はポップミュージックが持つ共感を生み出す潜在的な力を受け入れながらも、その非人間的な作用に立ち向かっていることだ。
水曜日の夜、カリフォルニア州オークランドで幕を閉じた全米ツアーの全11公演は雷雨の中、道路に横たわるSugaの姿で終わるショートフィルムからスタートした。これはBTSとしてデビューするまでの練習生時代、生活費を賄うためにソウルで配達のアルバイトをしていた時に、車にはねられたことにちなんでいる。この事故で肩に傷を負った彼はBTSが世界的な名声を得た後も、この怪我に悩まされ続けた。この映像の後に命を落としたかのような実物のSugaがステージに担ぎ込まれる展開は、スムーズでありながらも衝撃的であり、何日も会場の外で待ち続けるファンを持つポップスターの人間的な脆さを再認識させるものであった。
初日のUBSアリーナ、そしてアメリカ最終日のオークランド・アリーナで私が観たSugaの公演は、ポップ・コンサートの常識を覆すものだった。ある面では子供の頃に日本の作曲家である坂本龍一の曲をサンプリングして自分のビートを作っていた技術に長けたラッパーによるダイナミックなヒップホップショーだった。Sugaは『Haegeum』でこの夜の空気を作った。タイトルは韓国の弦楽器と解禁を意味する。「溢れ返る情報は想像の自由を禁ずると同時に思想の統一を求める」「資本の奴隷 カネの奴隷 憎悪と偏見 嫌悪の奴隷 / YouTubeの奴隷 Flexの奴隷」とSugaは韓国語でラップする。Haegeumの耳に残るストリングスと、心地よく荒れたベースが空気を振動させた。この曲はすべて韓国語で書かれたものだが、観客は歌詞を大声で彼に歌い返した。反骨精神に満ちた『Daechwita』、初期のファンに人気の『Agust D』、『Give It to Me』と激しいラップ曲で序盤を駆け抜ける彼は催眠状態にあるかのようだった。
観客がまだ落ち着かないうちに、Sugaはアコースティックギターを取り出した。ギターにはBTSの他の6人のメンバーからのメッセージや絵が描かれていた。パンデミック期間中にギターを習得した彼のアンプラグド・バージョンの『Seesaw』は、振り付けやバックダンサー、凝ったセットを伴う過去のパフォーマンスとは一線を画すものであった。序盤の盛り上がる曲で見せた力みのない威勢が、静かなシンガーソングライターモードのSugaへと移り変わっていった。その後、アップライトピアノの前に座り、2020年のBTSの楽曲『Life Goes On』の自作バージョンを披露した。特に感極まる瞬間は、歌手のWoosungと亡き坂本龍一が参加した楽曲『Snooze』のソロパフォーマンスだった。2022年後半にSugaと坂本が唯一対面した時の映像が、前もって大型スクリーンに流れた。グランドピアノで曲を演奏する年上のミュージシャンと喜びを抑えようとする若者。Snoozeは、坂本にとって最後のコラボレーション作品のひとつになった。坂本を敬愛し、苦闘する若きアーティストを慰めるためにこの曲を書いたSugaにとって曲中の坂本の存在は、とりわけ心に響くものだろう。
BTSの活動で、できなかった試みをD-Dayで再三にわたり実践するSugaの姿は、実にスリリングだった。 そう、彼は依然として熟練したエンターテイナーなのだ。何万人もの観客の心をつかむ術を熟知している。BTSのコンサート中盤の爽快なラップメドレーで見せるとおり、息をつく様子もなくラップをしながらステージを飛び回れる人なのだ。そして、ロサンゼルスの2公演ではアメリカ人歌手、MAXとHalseyをゲストに迎え、それぞれのコラボレーションを披露した。その一方で、彼の破壊的な選択も際立った。コンサートに散りばめられたショートフィルムは、デヴィッド・リンチの夢の論理とグラインドハウス映画の粗い質感を思わせる。ポップアイドルのSuga、影のAgust D、そして人間ミン・ユンギという3つのアイデンティティーのストーリーが描かれている。このコンサートにおける究極の芸術的意図は、それぞれの自己を観客に明瞭に示すと同時に、それらがすべて共存していなければならないのだと認識させることにあるようだ。BTSのソロ曲である『Interlude: Shadow』やBTSの他のラッパーたちとの曲のヴァースを披露する姿を見て、彼は自分の過去を否定しているのではなく、むしろ誇りに思っているのだと確信した。なにしろ、その過去が彼を韓国の青瓦台、アメリカのホワイトハウス、国連総会、そしてグラミー賞の舞台にまで導いたのだから。
もうひとつの魅力的な演出があった。公演全体を通じて、舞台の一部がチェーンで天井に引き上げられ、Sugaのパフォーマンスできるスペースが次第に狭くなり、より慎重に舞台を進行させる必要があったのだ。 アンコール前の最後の曲『Amygdala』では、寂しげな四角い床に立っていた。周囲には炎が燃え上がり、まるで恐ろしい牢獄のようだった。アルバム D-Dayの核となる、このエモ・ラップトラックには、Agust Dのオルター・エゴの起源が���されている。交通事故、母親の心臓手術、父親の肝臓がん宣告など、彼の人生を決定づけたトラウマに言及し、それらがいかに彼を形成したかを語っている。曲の最後のフレーズで、力尽きたように地面に倒れ込むとフードをかぶった人物たちが戻ってきて彼を運び去った。ただし、今回は全身真っ白な服を着ていた。まるで浄化されたかのようだった。彼のカタルシスが完了したのだ。
アンコールの頃には舞台装置がすべて取り払われ、下に隠れていた機材が露わになった。 消火器、電気コード、発火装置などが散乱していた。Sugaはもう観客の頭上に立つことなく、地面の高さからファンの目の前で最後の数曲をパフォーマンスした。時にはファンの携帯電話を手に取り、自身の姿を撮影してみせた。最後の瞬間は、ほろ苦かった。ほとんどの観客は、6月下旬にあるソウル公演でツアーが終了した後、Sugaが少なくとも18ヶ月間の兵役に就くことを知っていたからだ。その現実がコンサートを一時的な別れのように感じさせた。ファンが持つライトスティックの輝きが、まるでひとつの波のようにアリーナ全体を駆け巡った。 時折、野生的なエネルギーに駆られた観客が吠え始めるとSugaは驚いたり笑ったりしていた。オークランドでは観客に向かって、BTSの他のメンバーと一緒に戻ってくること伝え、ファンにもう少しだけ待って欲しいと頼んだ。
ツアー初日の夜、もうひとつのサプライズが待っていた。私は最後の曲は感傷的なものなのか、軽快なものかだと思っていた。 ところが、Sugaは不気味なビデオカメラの輪の中に入っていき、その真ん中に立った。つぶやきはじめたのは『The Last』のヴァースだった。第一作目のミックステープに収録されているこの曲は、彼の最高傑作であり、私が最も好きな曲のひとつだ。そして、このところ私が聴くのに苦労している曲でもある。The LastでSugaは、強迫性障害、鬱、社交不安について語っている。低く控えめな表現から徐々に切迫していき、最後には叫び声と泣き声の間のような声へと変化していた。数年前、この曲を初めて聴いたとき、私は自分自身の絶え間ないパニック障害による発作と息苦しい死への渇望を思い出した。この曲は私の心に刺さり、歓迎すべき欠片になったのだ。
ここ数年、Sugaは成長、自己愛、不安や苦しみを肯定することをテーマにした音楽を多く作ってきた。 コンサートの序盤、彼は英語で「あまり怒りを抱えずにパフォーマンスしたい」と語り『SDL』、『People』、『People Pt.2』といった曲に焦点を当てた。これらの曲は人生の試練を前にして冷静に考え、許し、謙虚でいられる人物像を描いている。ひどい苦しみから解放され、自分なりの癒しを見つけられたときの安堵感を私もよく知っている。だから、The Lastの出だしの歌詞(「有名なアイドルラッパーその後ろに、弱い俺が立ってる 少し危険だ」)を聴いたとき、私は凍りついた。彼は一体何をしているのだろうか。 監視システムのように並んだカメラ、その映像が映る彼の頭上のスクリーン。彼が見せる苦しみを貪るように映し出す。つまり私もまた、彼の苦しみを貪っているのだ。
しかし、すぐに理解できた。23歳のときと同じように息もつかせぬ情熱でラップしているが、単なる激高ではなく時間とともに和らいだ怒りでパフォーマンスしているのだと。その感情の力強さや真摯さに陰りはないが、それを発信する側が受けるダメージは少ないのだ。今の彼は炎の中に立って熱を感じながらも、その炎に飲まれることはない。若き日の自分に回帰することなく、当時の自分と心を通わせられる。
そして、魔法が解けた。曲が終わった瞬間、客席の照明がつき、彼が舞台袖に無言で歩いていくのが見えた。別れの挨拶も、長々とした感謝の言葉も、歓声を上げる観客に手を振ることもない。後ろを振り返ることさえもしなかった。初日の夜、突然の退場に衝撃を受けた人々は戸惑いの表情を浮かべた。このフィナーレを観客との静かな対決、愛されてやまない芸術家による大いなる自己主張と捉えることもできるかもしれない。けれども、もしそれが対決であったなら、それは見下しているのではなく、むしろ信頼に基づくものだ。観客が不快感に耐えられるだけの知性を備えており、彼が見せたものに気分を害したり、恐怖を感じたりしないのだという信頼だ。
完璧なエンディングだった。闇と神話作りから始まったコンサートが明かりの中で、さらけ出すように終わったのだ。他の誰かに運ばれきてスタートさせた公演をSugaは自らステージを去ることで終わらせたのだ。これ以上、何を望むというのか。彼は私たちに何もかも見せてくれたのだから。
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chiaroscuro-lily · 10 months
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皆様ごきげんよう、またまた私です。
はい、そうです祈織です。🖋🌓
今回からメンバーブログというものを始めることになりまして、やはり1番手はお前だろうということでこうして記事を書いている訳であります。
メンバーブログというのはそれぞれメンバーが自分のことや考えたことをテーマに沿って自由に更新していくものとなっております。
更新は不定期となりますが、皆様の暇な時にでも楽しんでいただけたらなと思っております。
テーマはその都度皆と話し合って決めていくのですが、今回は初回ということもありまして
⒈自己紹介・好きな物
⒉主催祈織との馴れ初め(主催はメンバーのことでも語ってろ)
こんなラインナップとなっております。
……いやその2番目のやつ何??と私も思うのですが…
何故か皆がノリノリであるが故に…ご了承くださいませ(?)
では早速自己紹介から始めていきましょう。
名は祈織(きおり)、由来は私がキリスト教系の高等学校へ好奇心で入学したことからはじまります。
まあそのうち語るかもしれないので今回は割愛しましょう。
小さい頃から本が好きで…と言っても読む量はたかが知れていますが…
小学校3~4年生の時に図書館の伝記を読み尽くし(今となっては何も内容を覚えていない)、何か暇だなと思ってファンタジー小説を読み始めてから、脳内ファンタジーや厨二病(?)を患うようになります。
陰キャだし友達居ないし…ってことで、グラウンドに出て健康的に遊べと圧をかけてくる小学校教師に聞き分けのいい子供の演技をしながら教室を出て、そして図書館に入り浸る…そんな人を欺く術を取得しつつある子供時代です。
私が思う子供時代はこんな感じですが、はるたんに聞くとどうやらそうでもないらしく。
彼女が私との馴れ初めを語る回を楽しみにしている自分がいます。
創作を始めるようになったのは中学生の時で、その時からはるたん含め当時のいつめんと言う名の身内の間で創作が大ブーム。
皆で交換小説を書いたりイラストを書いたり(私は描けない)、私は曲を作ってみたりと楽しい日々を過ごしていました。
当時ボーカロイドが流行っていた関係もあり、そうか…!一般人でも曲って作っていいんだ…!(それはそうだろう)といたく感動した私ですが、そうして始めた曲作りは大した機材もないのでピアノでリズムを作って五線譜に書き殴って無料ソフトに暗号化して打ち込んで…みたいな感じです。どこに出す訳でも無く完全に自己満足の世界でしたね。私のクソ雑魚ピアノスキルでは弾けないような曲を演奏させてニコニコするだけの遊びです。
ピアノに関しては幼稚園からやっているというのに一向に成長しません。練習も飽きてしまいますし。
自分ってもしかして才能ある…?と気づいたのは小学生高学年から管楽器と出会ってからです。私の担当はアルトサックスでしたが、学校の楽器に『華子』と名付けて可愛がるまでになります。
どんな時間も楽器触りたい!と思っていました。
今振り返ってみても吹奏楽部時代はもう一度やりたいと思えます。それくらい楽しかったです。
百合が好きになったのは高校時代の環境と見ていたアニメ等の影響だったかと思います。
男女間の仲が悪いクラスで、男子との関係で何度も病んでゆく友達を見て絶対同性同士で過ごした方が平和なのに…などと言うある意味若さともとれる穿った考え方で視聴したアニメ作品はどれもキラキラして見えたものです。
今となっては人が人を想う気持ちはどれも尊いでしょうけれど、女の子が複数人いて互いに抱くどんな感情も何にも代えがたい尊さを持つ唯一無二のものであるなぁという気持ちです。
百合万歳。
最近好きなものは各国の神話や美術、科学など所謂マニアックなものばかりで、中々今は商業百合作品を楽しむところまで時間の関係でも行けておりません。
根が考察ヲタクなので考えることができるコンテンツに沼りがちですね。
例えば某夢の国。普通に行っても楽しいのですがやれあの山の柱状節理が気になるだの、あの島の発電システムが気になるだの、歴史的背景を踏まえた備品の数々、そしてその関係性。
それらを見に行くために年パスを買って一人で行くなどしたこともありましたね。
ショーやパレードも素晴らしく、演者の演技力を堪能し、いつしか写真に残しておきたくなった私はここでカメラを始める訳です。
勢いで一眼レフを購入し、誰に教えられる訳でも無く勘とフィーリングとノリで弄り倒す私ですが最初の写真の酷いこと酷いこと。それでもあの時は綺麗に撮れた!なんて喜んでおりました。
音楽やカメラで分かったことですが、努力することを苦だと思った時点で成長は見込めないのだなぁなどと思う訳であります。楽しいと思うことは才能であると、そんな気がしますね。
楽しいから私は本の世界でファンタジー脳や厨二病を拗らせるし、一人で美術館に行くし、神話や神社の御祭神を調べてはニヤニヤするし、一人で某夢の国行って一日中遊んで帰ってくるし、一人でカラオケ行くし、曲だって作るわけです。
こんな感じで人からよくズレてるだの癖が強いだのと言われる主催ですが、次のテーマである主催からみたメンバーのことにでも触れてみようかと思います。
まずは柘榴。☕️🍎
第一印象は何この美少女。です。
最近気づきましたが私実はメガネフェチだったらしく、彼女と初めて会った時にしていた縁の太いあのメガネが忘れられません(?)。
後から聞いたら花粉症でコンタクト入れられなかったってだけだったそうです。おお神よ…。
あと柘榴は某夢の国での私の考察(奇行)に付き合ってくれた1人でもあります。
好きになるものは大体同じで、カフェ巡りしたりバレエ見に行ったり一緒にロリィタ服買ったりお揃いのアクセ買いまくったりと色んなところに行ったなあ…。運命共同体ですし。
そんな彼女が最近めざましい成長を遂げているのがアクセサリー作り。撮影で使うロザリオとブローチを短期間で全員分自作したのはこいつです。なんつー集中力だ…。
店でもやるんか?って位のクオリティまで持ってきて頂いてただただ感謝。引き続きグッズ制作の程宜しくお願いします。
柘榴が心血を注ぎ作った小物…そのうち特集してもいいかもしれませんね。
次ははるたん。🫧‪🐑
第一印象?ンなもん忘却の彼方です。
彼女とは幼稚園からの仲ですし最古の記憶を辿っても何も思い出せません。気づいたら隣にいたタイプの人です(?)。
でもはるたんは私よりも過去の記憶があるらしいです。ごめんて。
とりあえず昔から彼女の言葉選びや画力には目を見張るものがありましたし、性格も良いし、可愛いし。
人を絶対攻撃しないタイプです。 その代わりめちゃくちゃ抱え込んで我慢するけど。口堅いし。
あとめちゃくちゃ私を褒めてくれるので好き。
なんで?君の方が凄いよ才能あるよ天才だよ!!…という言い争いが日常的に巻き起こります。これが愛と平和。
心が荒んだ時ははるたんを見ましょう。きっと貴方を癒してくれるはず。全人類のラッキーアイテムははるたんの短歌。はるたんのTwitterにて掲載中。是非待ち受けにしましょう。
次はいーちゃん。🎪🍫
彼女とは柘榴経由で知り合った子です。
まだ知り合って日が浅いというのに大分濃い絡みしてる気がする。当社比。
彼女は思慮深く、頭が良いという印象。あとかわいい。
この前とある企画展に2人で遊びに行ってきたのですが、その対象の歴史を完璧に予習してきていてめちゃくちゃビックリした思い出。
どうやら歴史や民俗学に興味があるらしく、神話の情報極振りの私とは違って非常にバランスが良いです。
考察が捗ります。感謝。
私服もめちゃくちゃ可愛くて…というか私の好みすぎて、大体いーちゃんとの待ち合わせで私の第一声は「かわいいいいい( ´ཫ`)」です。
あとはセルフプロデュース能力が高��です。
今後小説のキャラクターのビジュアルを公開する予定ですが、その全てが天才的。確実に作りこんで、仕上げてくる…しかも創作未経験で。是非そのキャラデザも皆様に見ていただきたい所。お陰様で私とはるたんの推しは彼女の担当キャラクターです。何卒我らが推しを宜しくお願いいたします。
次はみけ。🍓🎀
みけとは最初某夢の国ヲタクと言う点で仲良くし始めた子でしたね。
ハキハキしていてコミュニケーション能力が高め。
知らない人とでも臆せず話せちゃうって才能だよな…とか思います。でも別にグイグイ来るような不快感は一切ない。
きっと他人を思いやる姿勢が初期装備であるんだろうなぁなんて思います。あと顔が良い。
今後いくつ作品を作ろうとも彼女を主人公に当てたくなる…!そんな感じです。
そして私との距離が一気に縮まったのはお互い百合ヲタクだということに気づいた時。
お互いになんでそんな話題になったんだっけ???となってる訳ですがこれはもう導きということで。
鬼スケジュールをこなしてる大人気コスプレイヤーさんなので遊べる機会は今となってはあまり無いですが、一緒に創作しよ!と言ったら快く乗ってくれました。感謝。
顔も可愛くて声も可愛くてイラストも可愛い彼女のTwitterは必見です。全員フォローせよ。無料で幸せになれます。
次はゆーやさん。🥀🦋
出会ったきっかけは確かTwitterのロリィタさんと繋がりたいタグとかその辺だった気がする…。
…え?そうですよね?(急に不安になるやつ)
私がゴス会に憧れを抱いていることを知りわざわざゴス会を開催してくれたという聖人。
いいんですか?そんな、わざわざ主催してくれるなんて…!!と言った私に「いいんですよー、その代わり祈織さんが何か主催してくれた折には私も参加させてもらえれば」と言ってくれたゆーやさんが私が作った百合創作サークルに参加してくださっているのはなんの因果なのか。
…っていうかこれで合ってる?
そうして数年越しに再会したきっかけがこのサークルという私にとってなんとも運命的な方です。あと顔がいい。
センスが良くて気遣いもカメラの腕も一流なので創作でめちゃくちゃ助けられています。感謝。
撮影時のメインカメラはほとんどゆーやさんがされていますのでご覧いただけたらプロの所業が分かっていただけることかと思います。Twitterの投稿写真や今後公開するHPの素材として使っているので是非見てください。一瞬だけでも!お願い!
次はゆう。🌕🦊
ゆうは百合好きという共通点から知り合った子ですね。
百合を表現する、という点であの時はよく2人で撮影したり企画話し合ったりしましたね。
これがやりたい!という要望を沢山出してくれるし、レスポンスも爆速で返してくれるのでめちゃくちゃやりやすかった印象。
そんなゆうですが、本人談では本来重度の人見知りらしく。
初対面で一日中遊んだっていうこともあり私は全然そんなこと感じなかったですね。
そして顔が良い。彼女の撮影時の表情が好きなんですよね、あの時は専ら私がカメラマンでしたから。
特に憂いを帯びた表情が破壊力強めです。今ここに公開してやりたいくらいです。
今後の撮影に乞うご期待です。暫しお待ちを。
最後にゆしあさん。
彼女は唯一会ったことがないメンバーです。
メンバーブログ等SNSの発信は今の所やる予定がありませんが、一応私目線だけは綴っておきましょう。
会ったことはないですが、きっと誰よりも私の性格や本質を把握していることだろうと思います。
なぜなら人生や価値観について彼女と電話で語っていたらいつの間にかオールしてたみたいな事を何回も繰り返しているからです。
こんな深い話人としないでしょうよって事を長時間話しているのです。いや、そりゃぁお互いに把握してしまいます。
しかも楽しくて時間が経ってる、みたいな体感なので余計に私の中で唯一無二の存在ですね。
私は早寝の民なので途中寝落ちて復活してを繰り返していますが…彼女はずっと変わらぬクオリティでお話してくれます。いつか勝ちたい。
性格は明るくて話しやすくて。あとすっごく真面目。
私の身に起きた嫌な思い出に自分の事のように怒ってくれる優しい人でもあります。
そして博識。彼女自身の環境的な側面もあるでしょうが、彼女の体験談や知識は非常に興味深いです。
彼女の知識は創作、シナリオの面でかなり活躍してくれています。感謝。
彼女のおかげで小説の世界観はかなり深みのあるものとなったのではないでしょうか。
小説に乞うご期待、ですね。私も頑張る。(白目)
さてさて、私はここまでで一体何字書いたのか…字書きとしては気になり始めるレベルまできていますね。
ここまで長くするつもりは無く、軽い気持ちで読めるブログを目指すはずだったのですが……はて。
ここまで読んだ人は居るのでしょうか…。
もし居るのならばスクロールしたその手は腱鞘炎にでもなっていることでしょう。
ありがとうございます。お疲れ様です。
今日は湿布でも貼ってゆっくりと休んでください。
最初は 自分のこともメンバー全員分のことも書くんかい!と思いましたが、皆様に主催目線のメンバーのことを知っていただくいい機会になったのではと思います。
如何だったでしょうか?
他にも皆でこんなテーマを話して欲しい等希望がありましたらコメント欄でお聞かせいただければと思います。
次のメンバーブログの担当は柘榴☕️🍎です。
きっとここまでの長文にはならないでしょう。多分ね。
貴方のその手の腱鞘炎が治ったらまた遊びに来てください。
ではまた。
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elle-p · 1 year
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P3 Club Book Yukari Takeba short story scan and transcription.
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学校で起きる怖い話
こつり。
その書きは、暗く大きな建造物の中に大きく広がり、ふっと消える。そして、また。
こつり。
まるでそれは、骨か石膏でできた心臓が発する、鼓動のよう。断続的に、一定のペースで、ゆっくりと。それが心音だとすると、その寿命は尽きかけているのではないか?そう思わせるほど、ゆっくりと、途絶えがちにすら思える音が、こつりこつりと響いている。
そこは、昼の光の中で見れば、明るく清潔な印象を与える場所だったに違いない。だが深夜、満月もほど近い、十三夜のほの暗く青い月光のもとでは、鮮やかな若草色のはずの床はどす黒く、陽の光を思わせある真っ白な壁は死人の肌のように蒼白で、ただひたすらに---怖い。
そんな場所の、長い廊下にゆらゆらと、頼りなげにうごめくひとつの影。ゆらりと動いては、止まり、また動いては、止まる。そしてそのたびに、こつりこつりと、音が鳴る。その影は、ひとつの扉の前でふと停止した。一拍置いて、影が細く枝分かれして、扉に伸びる。よく見ると、その影は小刻みに震えていた。やがて聞こえてくる、影と同じように震える声。
「······怖くない。こ、怖くないんだからね。 ぜんっぜんちっとも微塵も怖くなんかないから。な、なによ、たかが暗いだけじゃん。つ、月明かりもあるし。あ、あは。あははははは」
人影の正体は、月光館学園2年F組、弓道部期待のホープにして、シャドウを狩る特別課外活動部員こと、岳羽ゆかりであった。
「し、シャドウと戦ってるあたしが、こんな暗闇程度でブビ······ビビッてたまるかっつーの」
勇ましい言葉に反し、ビビリまくりで、しかもきっちり噛んでいる。どうやら、目の前のドアを開けるのに躊躇しているらしい。だが、それでも、ついに彼女は意を決して腕に力を込め。
がらり。
何の抵抗も無く、ドアは横にスライドし、その室内をあらわにした。そして。
「······うみゃああああああああああああぁぁぁぁぁ!!」
壮絶な悲鳴だった。悲鳴を上げながら、ゆかりは既に10メートルは離れた場所を疾走している。悲鳴の後半がやや尻下がりに低く聞こえるのは、そのあまりのスピードによるドップラー現象が起こっているせいだ。
暗闇に取り残される、開きっぱなしのドアと、その内部の影。ゆかりに悲鳴を上げさせた元凶である、入り口脇に置かれた人体模型は、悲鳴を上げたいのはこっちだと言わんばかりに、大きく目を見開いて直立していた。
そもそもの発端は、タルタロスの探索に深入りしすぎたことにあった。満月を控え、いつもより実戦経験を積んでおきたかったこと。既に踏破済みの階層で、体力的には余裕があったこと。その他、いくつかの不幸な理由が重なり、あってはならない “事故” が起きた。
それは突然の風花の悲痛な叫びから始まる。
《これは······いけません! エントランスに戻ってっ!影時間から······弾かれますっ!!》
探索中のタイムオーバー。
誰にとっても始めての事態だった。
そのときに探索メンバーとして参加していたのは、ゆかり、順平、天田、そしてリーダー。風花の声に、全員が目を見合わせた瞬間に、それは来た。ぐにゃりと周囲の壁が歪む。一瞬で平衡感覚が失われ、高いところに放り投げられ、叩き落されるような衝撃。内臓が持ち上がり、また下がり、脳が揺さぶられる。そして気づいたときには---ゆかりはひとり、この場所に倒れていたのだ。
「ど······どこ?ここ?」
最初は、訳もわからず暗闇の中にいたが、徐々に目が慣れてくると周囲の状況が把握できるようになる。長い廊下と、壁の片面にだけ点々と存在する横開きの扉。壁の掲示板らしきボードには、「こんしゅうのもくひょう・きゅうしょくのまえに手をあらう」という文字が読み取れる。遠くに赤く光って見えるのは、たぶん消火栓の非常灯。
「学校······初等部?」
その推測は正しく、そこは月光館学園初等部の校舎内だった。以前、体育館に閉じ込められた風花が、タルタロスのいずこかへと飛ばされたことがあったが、今回はその逆転現象とも言える事態が起こったのだ。本来、タルタロス内部では、影時間が終了しても翌日の影時間へと間断なく入り込む。だが何らかの原因で、ゆかりたち4人はその影時間の流れから弾き出され、正常な状態に折り畳まれたタルタロス---すなわち月光館学園へ、バラバラに強制転移させられたのだろう。
「······とりあえず、外に出なきゃね」
事態を把握し、ゆかりは呟いた。そして、ゆっくりと身体を起し、ぱんぱんとスカートについた埃をはらう。落ち着いた、様子だった。だが実際は、まったくもって落ち着いちゃいなかった。彼女は既に、自分が大の怖がりだということすら忘れるほど、パニクっていたのだ。
そして、意識を取り戻してから十数分後、ゆかりはけたたましく喚きながら、学校内を疾走していた。その叫びは、もはや人類の解する言語ではなく、火災現場に急行する消防車のサイレンさながらである。
しかしそれでも、さすがに体力の限界が来たか、ゆかりは何階かも知れぬ階段の踊り場で足を止めた。目の前には大きな窓。冴え冴えとした光を帯びる月が、そこから見える。ガクガクと震える足を最後の力を振り絞るように動かし、ゆかりはその窓に近づいて、手をかける。窓から見える景色からして、そこが1階と2階を結ぶ階段の踊り場であることがわかり、ゆかりはぐっと腕に力を込める。
だが、窓はびくとも動かない。
その窓を隅々まで見たが、ロックに当たる機構は見当たらず、それがはめ殺しの窓であることが理解できると、ゆかりはがっくりと膝をついた。そう。ゆかりをパニックに陥らせている最大の原因が、この初等部校舎の構造にあったのだ。数年前、変質者が学校に侵入して子供を傷つけるという痛ましい事件が連続し、学校側の安全意識が大きく変化したことがある。その際、部外者を完全にシャットアウトするという目的で施されたのが、この
執拗なまでに完璧なセキュリティ体制であった。
大半の、開ける必要がない窓はすべてはめ殺しで強化ガラスが張られ、開けられる窓も内部からのみ操作可能な電子ロック式。外部に通じる扉もそれは同様で、外部からの侵入どころか内部から外に出るのも、教師によってロックが解除されないと自由にはならないという徹底ぶり。そのため、生徒および関係者がすべて下校し、完全に電源が落とされた現時点では、この校舎は脱出不能の密室と化していたのだ。
「っ······たく、か、火事でも起こったら、ど、どうすんのよ······ひぐっ」
べそをかきながらも、精一杯の虚勢を張ってゆかりが呟いた。実際には非常時に備えて、停電時でも手動で開けられる窓があったり、強化ガラスを打ち割れる特殊ハンマーが各所に設置されていたりするのだが、それを知らないゆかりには、ここはまさに牢獄であった。
だが、そこに救いの手が差し伸べられた。
《ゆかりちゃんっ!?》
心に染み渡るように柔らかな、それでいて包み込まれるように心強い声が頭の中に響く。ついに風花が、散り散りになったゆかりの位置を補足したのだ。それに対する返事は。
「もぎゃああぁythh@kwf*!!??」
先ほど以上に壮絶な、ゆかりの悲鳴だった。
《も、もう······びっくりしたよ》
「ごめん······」
おずおずと、しかしちょっと前は確実にカ強い足取りで、ゆかりは廊下を歩いた。
《あ、そこの角は右ね》
「うん、オッケー······うぎゃっ!!」
《ど、どうしたの!?》
「······は、あ、あ······だ、だいじょび、美術室の石膏像が、ちょっと······」
《あはは、月光館七不思議のふたつ目だね。“夜中にまばたきするビーナス像”》
「······やめてよ、もう······」
《最初に見たっていう “覗き込む人体型” と、さっ見た音楽室の “抜け出すハイドンの肖像画” と合 わせて、あとは“未来が見えるトイレの鏡”でコンプリートだよ。······ゆかりちゃん、トイレ行きたくならない?》
「ならないっつーの!ったく、だいたいそれでコンプリートって、4つしかないじゃん」
《それも、不思議のひとつなのかもね》
くすくすと笑う風花に、ゆかりもついつられて軽い苦笑を浮かべていた。
いまは風花の誘導で、仲間との合流地点を目指して進んでいるところだ。暗闇に一人きりという状況は変わらずとも、会話する相手がいるだけでずいぶんと心は安定する。そもそも携帯で連絡を取るということを、最初に考え付くべきだったが、それも先ほど風花に指摘されるまで、すっかりと失念していた。本当に、自分はこういうのはダメだと、ゆかりは深く自覚する。
《······本当に、ゆかりちゃんってお化けとか苦手なんだね》
ゆかりの心を読んだように、風花が言う。
「ま、まあね。カッコ悪いよね?あはは」
《ううん、そんなこと、ない。でも、なんでそんなに苦手なんだろね?》
「たぶん······ホントは、居て欲しいのかも」
《えっ?》
ゆかりの聞き取れるかどうかという呟きに、風花の軽く驚いたような声が返る。 少しだけ迷ったように間を空けて、ゆかりは言葉を続けた。
「あたし······お父さん死んじゃってるでしょ?できるものなら、もう一度話したいとか思ってる。だから、ホントに霊ってのがあるんなら、できれば······なんてね」
《ゆかりちゃん······》
ゆかりのさっぱりとした性格上、霊なんてないと否定すれば、それで済むはず。だが、そうしたくてもできない過去。その複雑な感情が、霊の存在を信じさせ、その想いに付随する形で、余計な恐怖をもたらしている、のだろう。
《あのね、ゆかりちゃん》
「ん?」
《気を悪くしないで欲しいんだけど、私は、こういう能力を持っているから、生きている人同士の心の繋がりや、それが持つ力を知っている。だからわかるんだけど······死んだら、人はそれっきり。もう、生きている人との繋がりは、そこで終わっちゃうと、そう思うの。だから私は、霊っていうものはないと思ってる》
「うん······」
《でも、だから、逆に生きている人との繋がりは、何よりも強いし、大切だと······思う。上手く、言えないけど······生きている私たちが、ゆかりちゃんの怖いこととか、辛いこととか、受け止めてあげること······できない、かな?》
珍しく饒舌な風花の言葉に、ゆかりはふっと心が軽くなったような気分になる。風花が言っていること、それは霊が存在するかどうかという議論とは、まったくピントの外れたものだったが、それでも、不思議と怖さが薄れていく。
「ま、要するにさ、 今は風花がいてくれるから、大丈夫ってことだよね?」
《そ、そういうこと、かな?》
「なによー、ハッキリしないなあ」
《あ、ご、ごめん》
「あはは、うそうそ。······ありがとね」
《······!う、うん!》
霊なんてものが、いるかいないかはわからない。でも、仲間がいれば大丈夫。それだけは、確実に実感できる。そして、それだけで、今のゆかりにとっては十分だった。
「で、 あとどれぐらいでゴール?」
《えっと······そこから10メートルくらい先の角を、左に曲がれば合流地点です。もう皆で、待ってるはずだよ》
「りょーかい!風花、さんきゅーね」
一人でいたときの怯えぶりが、まるで嘘のようにゆかりは元気を取り戻していた。いまだ、目の端に映る影が動くような気がしたり、ちょっとだけビクッとするときもあるが、すっかり恐怖は影を潜めたようだった。やがて、曲がり角のシルエットが、暗闇の中に現われたとき。
「······から、大丈夫だって······」
「······メですよ、 順平さん······に悪い······」
小さなささやき声が漏れ聞こえてきた。かすかでわかりにくかったが、どうやら順平と天田が会話をしているようである。
「順平?天田くん?いるの?」
明るい声を上げ、小走りになるゆかり。
「······しっ!」
「······知りませんよ······もう······」
順平と天田の、ちょっとばかり不穏な声は、あいにくと再会の喜びに浸るゆかりには届かなかった。そして満面の笑みで、ゆかりが角を曲がったとき、そこに見た物は。
「······!?」
懐中電灯で下からライトアップし、どこで入手したものか血糊らしきものを顔面に垂らして、白目を剥いて鬼気迫る形相を浮かべる順平のアップであった。もし、違う状況なら、こんな子供だましの脅かしは、一笑に付されて終わり、のはずだった。しかし、相手は人一倍怖がりの岳羽ゆかり、場所は学校、時間は深夜、いくつもの原因が重なり······“事故” が起きた。
「&△×○#▼□%◇$●@+☆дつ!!」
その悲鳴は、もはや超音波を超え、衝撃波とすら形容できる恐ろしいもの。だが、それに続く、男性の悲鳴は、それ以上に血を凍らせるほど悲痛な、断末魔の声だった。
数日後���月光館学園初等部の昼休み。大型シャドウとの戦いでの疲労が残っているのか、天田乾はうーんと腕を伸ばしつつ、眠そうな目で大あくびをした。そこに、ひとりの女子クラスメイトが声をかけてくる。
「ねえねえ、天田くん、知ってる?」
「ん?何?」
「七不思議だよ、七不思議。ついに七不思議が揃ったんだって。何日か前、夜中に肝試しにきた6年生が見たらしいよ。えっと······確か、“絶叫して渡り廊下を走り回る女” と “玄関ホールに浮かぶ大きな牛の頭” と “はいずり回る血まみれの男” だったかな?嘘じゃないって!ホントにホントなんだってば!」
「う、うん······知ってる······怖いよね」
返事をする天田の脳裏に浮かぶのは、数日前の惨劇。いるかいないかわからない霊よりも、誠に恐ろしいのは、生きている人間、であった。
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hitujijp · 2 years
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正直言って、全てがどうでも良い。 今更何をした所で無意味だ。 何もしない。希望を抱きかねない一切の行動も行わない。 他者と関わるのさえ無意味だ。そんなことして何になる。 オレが執り行うべき唯一の仕事は死を待つこと以外に何も有りはしない。 もうこの人生は事実上終わったんだよ。計算上最下位が決定しているチームが消化試合を何となくこなしている心境以下のものでしかない。 人生を放棄し諦めた視線で過ごす日々。ああ、虫けらってこんな気分なのだろうか。案外悪くない。オレは人生で転落に次ぐ転落を繰り返して、やっと元の場所まで落ちてきた。人間のスタートラインは遙か天上にある。手を伸ばそうが、飛び跳ねようが決して届かない雲の上だ。しかし、虫けらの視線で見る世界は新鮮でどことなく懐かしい。じっとダンゴムシが力尽きたナメクジを喰うのを見ていた。生命ってこういうものだったのか。こんなに簡単で良いんだ。オレが始めに言わんとしたこと。この文章を見返して上の方はまだ人間の世界に足を突っ込んでる。しかし下に降りてくる程、ダンゴムシの世界だ。もう登りたくないね。人間は面倒臭いや。ケツ叩くなよ。オレはもう登らねえ。光など要らない。土と水が好きだ。光は上には満ちている。しかし土も水も高い所には登らねえ。どっちもより低い場所、底を好む。だからここが気持ち良いのだ。
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iconomiccc · 2 years
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深々と燃えるような身のうちの炎と、絶好調について。
正確な日時を調べると、私が初めてtumblrでリブログしたのは2011年10月21日のようです。という事は、今月21日がきたら私がこのブログを開始してから11年がたったということになりますね。 この11年間ほぼ毎日欠かさず更新を続けていますが、今が一番楽しくて、tumblrにおける「創作」、「私の美意識の発露」ということを意識してリブログをしています。 tumblrの1日の投稿数の上限は200件です。私は調子が良いと1日の間に200件以上の素敵なpostをあっという間に見つけてくるので、すぐに上限いっぱいになってしまって、制限が解除される時間まで待たなくてはならなくなります。 この夏精神科の閉鎖病棟というとんでもないところに一ヶ月半入院していましたが、退院して仕事にも復帰して、市の担当の支援員さんや精神科の主治医や会社の上司や家族や親友、私の大切な人たちに私がつくづく語ることは、「今回、あの病院に入院して良かった」「とても辛くもあったけど、かけがえのない貴重な体験を通して、得るものがたくさんあった」ということです。 実際、今、私は、あそこで流れていた時間や過ごした時を、出会った人たちを愛おしく思��出し、「まるで竜宮城のようであったなあ」と懐かしさと切なさで胸をいっぱいにしているのです。 これはうつ病を発症して会社を辞めなくてはならなくなり、社会復帰するためにリワーク(精神障害者就労支援施設)に通っていた時にも似たような感覚を覚えたのですが、 「精神病の人たちが集まっているところ」なんて聞くと、「社会的弱者」、あるいは「近づくのも恐ろしい、何をするかわからないやばい人たち」の巣窟のように感じてさける人も多いのでしょう。 でも、私は自分が精神障害者という当事者であるからだと思いますが、 「そこ」へ入って行って、性別も年齢も経歴も色々な人たちと会話を交わし関わると、病気の原因になっている心の深い部分の傷は、私もみんなも「同じだ」、と感じ、普通に生きていると互いに曝け出す機会はそうそうないであろうその傷から生まれる弱い部分を見せ合って、互いを許し、認め、共感しあうことによって、何か「人間の一番美しい部分」に触れることができたような気がするのです。 病棟で私の隣の部屋に、私より先に入院していたおそらく40代後半の女性の患者さんがいました。 彼女はのび太くんを女の人にしたみたいな容貌で、やせっぽちでいつも膝下のズボンを履いて度のきつい眼鏡をかけていました。不安障害があり、ほんの少し目の不調があれば泣きながら「眼科の先生にいますぐ診てもらいたい」と看護師さんに訴えたり、「夜中に自室に看護師さんがきて勝手にロッカーの鍵を開けられて荷物を漁られている」と涙ながらに他の患者に相談したりするような方でした。 その方が、私が投薬の時間にとあることがきっかけでひどいうつ状態になり、ホールの椅子に体育座りして動けなくなっていた時に、そばにきて一生懸命、一時間も慰めてくれたのです。 ほんの小さなことで、健常な人から見れば異常なほどに落ち込み、傷つき、不安になってしまい、泣いたり食事がとれなくなったり体調を崩してしまったり、最悪な場合は命を絶ってしまうような病気。 同じ症状を持つものとして、「その気持ちわかるよ」「大丈夫」と、言葉を尽くして一生懸命私の肩をさすりながら慰めてくれた彼女のことが、お世辞ではなく女神か天使のように思えました。 確かに、閉鎖病棟なので「やばい状態」になっている人もいます。(だから入院しているんだしね) 廊下を一人でぶつぶつ何かと交信しながら話して歩いている人もいれば、暴れて物を壊してしまったり、部屋のドアを何時間も「助けて、ここから出して!!」と叫んで叩いている人もいました。 確かに「異常な状態」であり、怖いんだけど、そういう人たちも「病気で」そうなっているわけで、先生に診断してもらって処方箋のお薬が合えばまるで見違えるように良くなって、普通ににこやかに挨拶をして、会話を交わしたりできるようになるんです。 私としては自分が精神病の疑いがあることから目をそらして病院に行かず、治療を受けてない健常者の方がよっぽど危険なやばい人、だと思います。 私が退院してきて親友に電話でこのことを伝えた時、彼女は「芸術家というものはそのほとんどが、精神的に健常の域を超えて辛い思いをしたり、生きづらさに困窮することがある。それでもその経験を糧に彼らが作り出す「芸術」は、健常者のわたしたちに見たこともないような鮮やかな世界を見せてくれて、救いを与えてくれる。絶対に必要な人たちだよ。 いこちゃんも、そうだと思っているよ。」と言ってくれました。 そして、「元気が戻ってきたらまた創って。詩でも、絵でも、ビーズのアクセサリーでも、なんでも。私はいこ��ゃんのセンスが好きで、創り出すものが好きで、楽しみなんだ。だからまた、創って、見せてほしい」と言われました。 その時、 私は、私の生きている証というか、存在意義というか、弱っていた私の命の炎に、焚き付けの薪をドバッとくべてもらった気分になったのです。 彼女は大学の同級生で、もう二十年以上の付き合いがあります。私が自然を愛しながら何かを創りながら生きてきたその生き方を、愛し、尊重し、一緒に歩いてくれた人でもあります。 ありがたいことにこのtumblrでも私の創る世界を愛してくれるフォロワーの方が何人かいらして、熱いメッセージをいただくことがあります。 そんな時、今までは謙遜することが多かったのですが、今の私は自分の中の「創りたい」という炎に怯えることなく、真っ直ぐに見つめ、「そうか、燃えたいのか、では燃やそう、」と肯定し、楽しく創ることができているように思います。 何も考えずに歩いて行った先で、自分のアンテナに引っかかった美しいpostを200件精査して、アーカイブに並んだ時の形や色味の調和を見ながらリブログする。 まるで一枚の永遠に続く綺麗な布を、拾ってきた貝殻や露や花びらや骨で飾って織るような行為。 ちっとも苦ではありません。 楽しいからできている。 楽しいから続けていられるんだろうし、私が楽しく創っているから、見ている人も楽しいんだと思います。 このブログのタイトル「涙ぐむ眼」は、宮沢賢治が故郷の少年院の庭に作った花壇のタイトルです。涙を湛えた瞳の形をしたその花壇は、まつ毛や虹彩や涙丘それぞれを表すにふさわしい種類の花々で作られています(涙丘の部分は睡蓮を浮かべた小さい池になっている)。 中学の頃、友達が誕生日プレゼントに透明の小さなビーズの球を数粒、くれました。 「いこちゃんの涙みたいと思って」と言って。 私はそれからずっと、露や真珠の粒が好きです。 狂人と紙一重のところまで心を飛ばして自然と交わり、そこから詩作のインスピレーションを得ていた賢治の作った「涙ぐむ眼」と、すぐ泣くけど、泣く時は一人で泣かなければならないと思いこんで自分を許さなかった若い頃の自分を重ねて、11年前、このブログのタイトルに据えました。 今、私は今までで一番元気です。 これからも日々楽しんで此処を創っていきますので、楽しんでいただければ幸いです。
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lb-toei70th · 2 years
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伊藤英明、中谷美紀、宮沢氷魚、市川染五郎、北大路欣也 出演情報解禁!豪華俳優陣が覚悟の集結!!
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伊藤英明、中谷美紀、宮沢氷魚、市川染五郎、北大路欣也という豪華俳優陣の出演が解禁になりました! 濃姫(綾瀬)の侍従・福富平太郎貞家(ふくずみへいたろうさだいえ)には伊藤英明、濃姫の筆頭侍女・各務野(かがみの)を中谷美紀、美濃の戦国大名で濃姫の父親・斎藤道三には北大路欣也がそれぞれ扮し、主演級の豪華俳優陣が綾瀬濃姫の脇を固めます! 織田家の家臣でありながら本能寺で謀反を起こした明智光秀には宮沢氷魚、そして織田家家臣・森可成の息子で信長の側近中の側近・森蘭丸には時代劇映画初出演となる市川染五郎が扮し、フレッシュなキャストが木村信長を支える形に。戦国時代を駆け抜けた人物たちが大友組の現場でどのような彩りを放つのか、新たなレジェンドの誕生にご期待ください! 【キャスト役所&コメント】 伊藤英明/福富平太郎貞家(ふくずみへいたろうさだいえ)役 濃姫の侍従。斎藤道三に仕え、その娘の濃が織田信長に嫁いだ際、共に織田家へと入った。 <COMMENT> 東映70周年記念作品であり、主演の信長役が木村拓哉さん、さらに大友監督が信長の生きた時代を撮るということで、台本以上のものが必ず出来上がるだろうと楽しみでした。内容としては信長と濃姫夫婦の純愛ストーリーですが、いち歴史ファン、信長ファンとしては、どういう解釈で一つの作品になっていくのか、その過程を見たくて出番がない日でも現場に顔を出していました。 私が演じた貞家は、濃姫の目付け役、お守役という役どころです。自分の中で役の中に通る筋のようなものを見つけて、演じるというよりは、現場で貞家が「生きている」という感覚を持ち楽しみながら参加させていただきました。完成した映像を観るのが待ち遠しいです。 中谷美紀/各務野(かがみの)役 濃姫の筆頭侍女。濃が幼い頃より姫を見守り支えてきた。 <COMMENT> 各務野は綾瀬さん演じる濃姫にお仕えする立場なので、濃姫への愛情を胸に秘めていて、彼女が可愛くて仕方がない、言うことを聞かないお転婆ぶりまでもが愛おしいという気持ちで演じていました。また、以前ご一緒させていただいたこともある大友監督から、ある種、濃姫が憧れるような存在であってほしいとのご要望がありました。信長の正室の濃姫は、その立場のためささやかな日常を楽しむゆとり、普通の幸せを感じることが許されていない。各務野と濃姫、2人が得られる幸せの違いを際立たせてほしいというご依頼で、その点も大事に演じています。壮大なスケールの作品で、この中に存在させていただいただけで本当に贅沢なことだなと思い、幸せでした。 宮沢氷魚/明智光秀(あけちみつひで)役 織田家の家臣で織田五大将の一人。信長より信頼され、低い身分から一国一城の主に出世したと言われる。史実では本能寺で謀反を起こし、わずか10日余りの天下を取ったとされる人物。 <COMMENT> オファーをいただいたときは大変嬉しかったですが、すぐ「本当に頑張らなければ」というプレッシャーが一気に襲ってきたのを覚えています。自分がクォーターで、髪や目の色が茶色だったり、身長が184cmあったりもするので、そもそも時代劇に出られると思っていなかったので、脚本を読み込み、過去の映像作品を観て、自分なりに明智光秀についてリサーチや勉強をしました。そしてあえて自分にしか出せない明智を演じてみようという思いに至りました。ただ立っているだけなのに、何を考えているのだろうと感じるような不思議な雰囲気をまとっている、自分自身とシンクロした、自分にしかできないミステリアスな明智を作り上げてきたつもりです。 市川染五郎/森蘭丸(もりらんまる)役 織田家家臣、森可成の息子で織田信長の側近中の側近。13歳の頃より信長の小姓として仕え始め、その上品で堂々としたふるまいは、織田信長の近習として、織田家の家臣団や敵にも認められていった。 <COMMENT> 台本を読み、殿のため忠義を尽くして生き抜いた蘭丸の姿を純粋にかっこいいと思い、自分で演じてみたいと、お話を受けさせていただきました。木村さんとの共演シーンが多く、クランクインした日から信長の、後ろに炎が燃え盛るような気迫に圧倒されましたが、木村さんは殺陣の稽古を見てくださり、刀の持ち方のアドバイスもしていただいて勉強になりました。所作が歌舞伎と違う部分も多く難しいこともありましたが、殺陣では今回ちゃんと刀を合わせることができて、歌舞伎とはまた違った実戦感が楽しかったです。殿のために生きている蘭丸なので、殿が命令する前にすでに対応しているような頭の回転の早さが見えればいいなと思い意識して演じました。 北大路欣也/斎藤道三(さいとうどうさん)役 美濃の戦国大名で濃姫の父親。典型的な下克上の体現者とされ、美濃のマムシという渾名でも知られている。 <COMMENT> 戦国という滾る時代の中で、激しく美しく熱く燃える男と女の紡ぎ合い、ハラハラドキドキ興奮と感動の内に脚本を読み切りました。斎藤道三と織田信長、その運命の出逢いから道三の中で奮い立つ夢と希望、そしてその願いを濃姫に託したいという想い。そういった想いを意識してこの役を演じ、まさに男が男に惚れた、道三の一面を表現しました。自然体で受け止めて下さった、スタッフの皆様に感謝しています。 1956年(昭和31年) 映画「父子鷹」でデビューさせて戴いて以来66年、先人の方々が築き上げてこられた大きな山を、今も登り続けています。「東映70周年記念」と冠がついたこの作品に出演出来た事の喜びを嚙み締めております。
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leomacgivena · 6 months
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「人事を尽くして天命を待つ」の難しい部分は「人事を尽くす」方じゃなくて、「天命を待つ」の方なんよな。「合理的になすべき努力はここまで。ここまでやったらあとは乱数。ジタバタせず来たものを受け入れるのみ」というメンタリティを獲得するのにオススメのゲームはポケモンと麻雀です。
Xユーザーのtrtmfileさん
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yaasita · 13 days
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会場は日本なのに…中国国内“ライブ禁止”のロック歌手の歌を聞くためだけに多数の中国人来日し涙 日本人が知らない“中国”の一面
国際取材部
2024年5月31日 金曜 午後6:30
4月下旬から約10日間かけて、あるロック歌手のツアーが日本全国5都市で行われた。全会場でチケットが完売し、1万人もの観客が涙を流し熱狂したが、コンサート会場にいた客の大半は中国人だった。しかもわざわざこのコンサートを見るためだけに来日した人も多い。彼らはなぜ、多くの金と時間をかけ、わざわざ日本に来たのか?その答えは、彼らの視線の先で歌う1人の中国人男性の歌に込められている。その歌手は、共産党の監視の目が光る中国国内では、公の場で歌う事ができない。この事実を知る日本人は、ほとんどいない。
以下の文章は、東京大学のある中国人訪問学者が執筆し、東京大学大学院の阿古智子教授が翻訳したものを編集した記事である。
満場の観客が流した涙
数千人規模の会場は満員。そのほとんどが中国人。涙を流している人が多い。
日本ではほとんど知られていない45歳の中国人ロック歌手が、ツアーのため来日し、4月20日の大阪を皮切りに名古屋、福岡、仙台、東京で公演を行った。ツアーはどの回も満席だった。
最終公演の東京では、歌手が最後に「自分のような農家の息子が日本でコンサートができるなんて。それになんと、チケットは完売だったんだ!」と語ると、観客は笑い、涙を流した。PANDA RECORD公式SNSより
この記事の画像(9枚)
一部の観客にとって、このコンサートに来るのは、そう簡単なことではない。
現場で観客にランダムに聞いてみたところ、80%以上が航空券を購入し、わざわざ中国から日本に来ているようだった。
さらに、中国ではチケット購入用のウェブサイトにアクセスできないため、コンサートの予約をするためには、VPNなどでネット規制を回避してサイトにアクセスしてチケット代を払い、さらに、ビザの申請、航空券の購入、ホテルの予約もしなければならない。そこまでして、初めてコンサートに来ることができるのだ。
実際に大阪のコンサートに行って中国に一旦帰り、その後また仙台に行き、東京に行ってはまた中国に戻るというように、日本と中国を行ったり来たりするのを2、3回繰り返している人もいるという。
彼らに話を聞くと、「どの会場でも泣いていた」「曲が始まるとすぐに、涙が顔に溢れた」という。
誰かが冗談で、どのコンサートも「大規模なお葬式の会場」のようだったと言った。
歌手は「南京市民の李さん」
歌手は1978年に中国・江蘇省の農家に生まれた李志(リージー)。 現在、南京をベースに活動しており、「南京市民の李さん」と呼ばれている。李志さん PANDA RECORD公式SNSより
しかし、彼はここ数年間、中国では公演ができない状況に追い込まれている。
彼の曲は、経済発展によって激動する中国の40年間の「小人物(普通の人々)」の、「どうしようもない人生のあれこれで構成される生活の断片」を描いている。
たとえば、南京の通りの名前と同じ「熱河」というタイトルの曲の歌詞は、このようなフレーズだ。
熱河通りには長年営業している理髪店がある どんな髪型のカットでもたった5元 店の主人とその妹は椅子に座り、何も言わずに鏡を見つめている 彼らのふるさとは安徽省全椒県の岸辺にある この街に移ってから896日が経った 熱河通りはいつも同じ顔をしている
李志の歌は、埃っぽい中国の普通の人々の無力さを歌ったものであり、政府の公式メディアが毎日宣伝する「ポジティブなエネルギー」とは相容れないものだ。
しかし、李志の歌が禁止されたのはそれが原因ではない。直接の理由は、2018年に彼が著作権侵害で中国の大手商業プラットフォームを訴え、「権利擁護」の道を歩み始めたからだと思われる。
この「権利擁護」が中国政府に嫌われたのだろう。だから、禁止されたのだろう。PANDA RECORD公式SNSより
彼が発表した有名な楽曲のうち、中国で聞けなくなっているのは、1989年の天安門事件を想起させる「広場」や「人民に自由は必要ない」だ。
中国で大きな自由を望むことはできないが、かといって「人民に自由は必要ない」と言うこともできないらしい。だから、中国でこの曲を聴くことはできない。
コンサートを開催してくれた日本に感謝
李志は中国に多くのファンがいる。
中国には、2つの世界があるようだ。1つは当局の宣伝の中の中国であり、戦狼外交官やロシアのプーチン大統領とハグしている指導者がいる。しかし、その外側にまた別の世界がある。そこでは、誰もが互いを知らず、共に関わり合うこともできない。市民団体が政府に危険視されているからだ。だから、コンサートに誰が来ていたのかわからない。
コンサート会場内での携帯電話の使用は禁止されていた。コンサートについて調べても、中国のソーシャルメディアにはほとんど痕跡が残っていない。感情のこもった感想文を書いても、それは友人同士で共有することしかできない。
李志の背中の写真をソーシャルメディアに��稿した者もいたが、それはすぐに削除された。だから、コンサートから1カ月経った今、コンサートに行き、共に歌い、泣き、笑ったという記録は非常に少ない。実際に起こっていることすら記録できない。コロナ後の中国ではよくあることだ。
だが、誰も文句を言わなかった。コンサートが開催されただけでもありがたいことだ。中国の人々はこのコンサートを開催してくれた日本に感謝している。PANDA RECORD公式SNSより
この公演を主催した日本のPANDA RECORDは、李志という歌手とそのバンドを、より多くの日本の人に知ってもらおうと企画したという。実際には、日本人よりも、中国人の熱意が彼らの期待を大きく上回ったにちがいない。 多くの観客が中国から飛行機で来るとは予想していなかっただろう。
PANDA RECORDの喜多直人社長は、「チケット販売システムで購⼊者の国籍や居住地が集計できないので分からないが、中国からわざわざきた観客もいた。チケットは完売し、およそ1万人が来てくれて、コンサートは大成功だった。彼らは素晴らしい演奏、音、照明を披露してくれた。今後も中国の素晴らしい音楽を日本で紹介していきたい」と話している。
人々で埋め尽くされる会場を眺めながら、ここに来るために必要な航空券、ホテル、消費額について考えた。中国の厳しい統制によって、日本にもたらされている、この「自由経済」(Freedom Economy)の規模の大きさに、日本の経済アナリストは気づいているのだろうか。コンサート会場には日本人はほとんどおらず、誰も分析できていないと私は思っている。
今回、李志は「熱河」のような「安全な」曲を歌い、 観客は携帯電話を専用の袋に入れて封をし、コンサートの間、使うことができなかった。つまり、彼は「一線を越えた」わけではないが、数年ぶりに彼のステージを見て、彼の声を聞くことができただけで、多くの人が涙を流した。
涙の理由…言論統制で覆い隠される悲劇
なぜ観客は泣くのか、おそらくそれは、これが「普通で自由なコンサート」だからだ。
日本人には中国人の痛みを理解するのは難しいかもしれない。 言論統制が行われている中国では、毎日のように悲劇が起きている。
5月1日未明、広東省梅州市で築10年にも満たない高速道路が崩落し、50人近くが死亡した。政府系メディアの報道はすべて、事故に遭う前に車を止め、高速道路の真ん中でひざまずき、後方の車に停車するよう促している運転手に焦点を当てた。これによって多くの命が救われたわけであり、確かに感動的な話だ。しかし、高速道路の建設の質に関わる政府の説明責任と調査結果は、どこに報じられているのか。中国のほかの災害の犠牲者と同様、亡くなった50人の名前は伝えられない。
5月13日、元弁護士で女性市民ジャーナリストの張展氏が刑期を終えて釈放された。張氏は、新型コロナウイルスがまん延した武漢で起きたことを携帯電話で記録したことが原因で拘束され、2020年12月に「騒乱挑発罪」で懲役4年の判決を受けた。 出所から1週間以上経ってようやく、外の世界が彼女のことを知った。彼女は未だ限られた自由しか享受できない。中国には、刑務所の外にいても、政権にとって「危険な」人々を監視し統制する大規模なシステムがある。出所した張展氏 Xより
5月中旬から、邢燕軍という企業家が中国の法曹界で注目されている。彼は李志と同年代で、「居住監視」という制度で拘束されていた。これは、当局が指定する特定の場所に居住させられ、監視と取り調べを受けることを指す。彼は4月3日に死亡し、家族が説明を求めている。
悲劇は実際に常に起こっている。
5月2日の東京コンサートには、周雲蓬という盲目の中国人ミュージシャンがいた。 彼は2007年に「中国の子ども」という曲を書いた。もちろんこの曲は、中国では演奏できない。曲の中に中国の子どもたちに関連する多くの悲劇に言及しているからだ。たとえば曲の中に、1994年新疆ウイグル自治区のカラマイ市で起きた火災のことが書かれている。教育委員会の指導者を歓迎する文化公演の最中に火事が起き、「指導者を先に逃げさせるのだ!」と生徒たちに指示が渡った。結局、指導者たちは無傷だったが、小中学生288人が死亡するという大惨事になった。
ほかには、沙蘭中央小学校の水害のことも曲の中に。2005 年、黒竜江省寧安市沙蘭鎮の沙蘭川上流で突然大雨が降り、最も高度が低いところにあった沙蘭中央小学校に激流が押し寄せ、105人の子供たちの命を奪った。
どの事故も心が痛むような内容だが、この曲を中国で演奏することはできない。
観客には中国出版業界の人が何人もいた。彼らは非常に厳しい検閲の下で、書籍を出版してきたが、撤去もされ続けている。何人も健康上の問題を抱えている。
観客席には中国の弁護士の姿もあった。彼は「法の支配」を可能な限り守ろうとしているが、本当の意味の「法の支配」は中国にあるのだろうか。
爆買いやタワマン購入だけが“中国人”ではない
2024年の東京で、こんな特殊なコンサートが行われたのだ。歌手も、観客の学者、弁護士、出版人も、ほとんどが40歳以上の中高年だった。歌った内容は中国のごく普通の生活の断片に過ぎなかったが、誰もが涙を流しながらそこに立っていた。PANDA RECORD公式SNSより
日本では、タワマンを購入し、投資する中国人について数多くの報道が行われている。中国に関する分析の多くは経済関係のもの。それこそが、唯一合理性に叶っていると見ているからなのか。
しかし、老いる親と小さい我が子を抱える中年の中国人たちが、どのような状況で故郷を離れ、文化も言語も異なる国で人生をやり直す決心をしているのか、日本人は考えたことがあるだろうか。
コンサートで中国人が流した涙からさらに理解を深められるのではないだろうか。
※コンサートの写真はすべてPANDA RECORD公式SNSより東京大学大学院 阿古智子教授
阿古智子 東京大学大学院総合文化研究科教授。 大阪外国語大学、名古屋大学大学院を経て、香港大学教育学系Ph.D(博士)取得。 在中国日本大使館専門調査員、早稲田大学准教授などを経て現職。 主な著書に『香港 あなたはどこへ向かうのか』『貧者を喰らう国―中国格差社会からの警告』(新潮選書)など。第24回正論新風賞を受賞。
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nua-ap · 15 days
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白夜
AP_2023 / 名古屋芸術大学 舞台芸術領域2年 演劇公演(プロジェクトワーク3)
原作:フョードル・ドストエフスキー (小沼文彦訳よりアダプテーション)
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僕はもう、自分の人生に罪を冒したって悩まなくても済むかもしれない。
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主人公の青年は、サンクトペテルブルクに引っ越してから8年、友人が一人もできず、夢想的で孤独な生活を送っていた。白夜のある晩、橋のたもとで、ある少女に出会い彼の日常は鮮やかになっていく。孤独だった 2 人は、互いに惹かれあい、会う度に気持ちは高まっていく。しかし、実は少女には婚約者がいた。夢のような淡い恋心が芽生え始めたころ、彼の想いは淡く散ってしまう。 青年は少女との出会いを心から喜び、感謝し、誠実に関わろうと努める。それでも少女は青年の前から去ってしまう。そのとき彼は何を思うのだろう。
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開演日時
2024年7月13日(土)11:00、14:30
※受付開始・開場は、各公演30分前より ※上演時間45分(予定・途中休憩なし) ※駐車場あり ※場内車いすスペースあり ※未就学児入場不可 ※全席自由
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料金:無料
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会場
名古屋芸術大学 東キャンパス 8号館スタジオ 愛知県北名古屋市熊之庄古井281
公演当日受付場所:東キャンパス 1号館 1階ロビー
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ご予約(オンライン受付) https://forms.gle/mUviZedostUTAMHa9
※予約開始 6月7日(金)12:00 ※定員に達し次第、予約受付は終了となります。 ※演出の都合上、開演後はすぐに入場できない場合があります。
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出演
宇津 舞衣子(音楽領域 音楽総合コース2年) 安尾 琢杜(舞台芸術領域 プロデュースコース2年)
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「白夜」の主人公は、あまりにも人間らしい。
夢想家である彼は、考え込み、想像し、思い上がったと思えば、悲観し、皮肉り、絶望する。そして、今日という日を懸命に生きていくのだ。
この作品の中で、彼は沢山の感情を吐露する。それは、人の素晴らしさだけでなく、人の残酷さ、世の中の無情さによるものでもある。
私達も彼と同様、理不尽な出来事に苛まれる時がある。等身大の人間である彼と共に過ごすこの物語は、あなたの心にも重なることがあるのではないだろうか。
世界は変わっていくものであり、そこには失うことや捨てることへの不安よりも強い期待がそこかしこに溢れている。若々しい期待は、ほとんど場合、期待通りの結果にはならない。その世界の中で私達はどう生きれば良いのか。
世界の若者の多くが、これまでに心の病を経験していると言われる現代。だから私達は、この今の時代に「白夜」という作品を通し、「あなたが抱えるものはあなただけのものではない」ということを伝えたい。そんな自分を、他者を、そして世の中を赦せたのなら、あなたの世界はより一層健やかなものになるだろう。
舞台芸術領域 プロデュースコース 3期生
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構成・演出:鳴海康平
第七劇場、代表・演出家。Théâtre de Belleville、芸術監督。早稲田大学在籍中の1999年に劇団を設立。これまで国内25都市、海外5ヶ国11都市で作品を上演。ポーラ美術振興財団在外研修員(2012・フランス)。2014年、三重県津市美里町に拠点を移設。民間劇場 Théâtre de Belleville を開設。愛知県芸術劇場主催 AAF戯曲賞審査員(2015〜)。名古屋芸術大学 舞台芸術領域准教授(2021〜)。
写真:松原豊
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制作(舞台プロデュースコース)
安尾琢杜、山田葵衣、石川大海(演出補) 今泉舞音、遠藤美帆、岡部創太 河合仁衣菜、齋藤寧々、田中蒼真 松本千花、蓑原楓子、萬敬祐
音響(演出空間コース[音響])
上之未来、奥田颯杜、松木千夏
照明(演出空間コース[照明])
浅野羽菜、大橋知世、何采沂 桂川栞吏、新名里彩、野本恭可 深作百花、水谷莉子、三宅梨世 山田瑞希
美術(舞台美術コース)
大下女神、岡本愛結、後藤歩栞 坂倉しずの、白井友菜、諏訪天音 髙橋杏奈、田中杏果、丁奕文 成瀬葉菜音、花瀬由珠、坂梨々愛 間瀬美紀、松本莉歩、武藤彩花 村松真琉子、山下心響、吉川治希 吉田翠里
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照明協力
イ ロイ、今井歩、上本瑞和 酒井優、佐藤星希、鈴木日奈子 関楓奈、松浦萌衣、三浦琴葉 宮原羽菜
音響協力
二木陽菜、松木花水実、中根美咲
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指導教員:
梶田美香、鳴海康平、浅井信好 石黒諭、山口剛、神谷怜奈
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宣伝美術:橋本純司
フライヤービジュアル:イ ロイ
フライヤーPDF 表 / 裏
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名古屋芸術大学 舞台芸術領域について
「あなたが舞台をつくる」をコンセプトに、舞台芸術作品を製作・上演するための知識と技術を専門的に学ぶことのできるカリキュラムで、未来の舞台芸術シーンをけん引する人材の育成をおこなう。
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X / @NUA_AP instagram / nua_ap
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主催・お問い合わせ: 名古屋芸術大学 舞台芸術領域
mail / [email protected] tel / 090-6798-8035(平日10:00〜17:00)
協力:名古屋芸術大学 音楽領域音楽総合コース
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だって、こんな生活、罪ですよ。
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aiarututae · 25 days
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「愛はある」と伝えたい
占星術を通して本当の豊かさを考えています。
ホーム悩み愛はある
孤独感を解消して愛に出会う
2020/5/14 2020/5/15 愛はある
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生き辛いと愛から遠ざかりがちなのは孤独を
感じ易くなるからです。
孤独な理由
生き辛い人は、自分にとって大切ないくつかの
要素(天体や感受点)を使うことを禁じています。
それは虐待のせいかも知れませんし、失恋や
何らかのトラブルで深く傷付いたからかも
知れません。
理由はそれぞれですが、幸運期、不運期に関係なく
それを若しくはそれらを使おうとしません。
それではどれだけ頑張っても問題は解決しない
ことになります。
生き辛い人にとってどれだけ頑張っても解決
されることのないように感じる部分は、内面化
されているので非常にデリケートで複雑な問題
として感じられ悲観的な気分を作ります。
しかし客観的に見れば仕事、愛情問題、経済的な
問題、人間関係、健康等ある程度大まかに
分類出来る形で表れますから生きることが
楽な人にとって何故客観的にアプローチして
解決していかないのか訝しく思われます。
これが苦しみを理解され難い理由です。
そして理解されないからこそ孤独になります。
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実際的な問題点
実際の大きな問題点は、心の世界の一部を
動かさないことで起こる不利益が年齢と共に
増えていくことです。
その部分が他の動きを阻害することによって
様々なことを経験する機会を奪ってしまいます。
そうは言っても様々なことに関心を寄せて驚くべき
バイタリティーを発揮し人生を味わい尽くそうと
するようなタイプの人は僅かです。
現実的な問題はある要素を動かせないことによって
生きるための活力が減り続けたり、一般的に必要と
思われるものを手に入れることが困難場合です。
このような状態は生き辛いですし、何かと不都合
ですからやはり改善すべきです。
しかしどのような心理的な要因でそのような状態に
なっているか知ることは専門家であっても
きちんと見定めることが難しいですし、何よりも
かなりの時間を必要とします。
ホロスコープを活用することによって魔法のように
心の問題を解決することは出来ませんが、自分自身の
様々な要素を一通り把握することによってそれらと
対話しながら生きればその都度感じたことを
フィードバック出来ますし、それを繰り返すことで
自然とどの部分が問題になっているのか実感出来ます。
実際はトランジットの影響もあるのでネイタルの
ホロスコープだけではありませんが、まずは
ネイタルのホロスコープの天体や感受点の内容を
抑えることで自分自身の出発点を理解出来ます。
その中でなかなか動かない部分があれば、そこを
意識的に動かす試みるだけです。
まとめ
ごちゃごちゃと書きましたが、月星座タイプの人の
一番重要なポイントは自分を無理に統合しないことです。
逆説的な話ですが自分を健全に統合しようとすると
場合によっては一生問題は解決しません。
せいぜいそれは無理だと言って諦めるのが
関の山です。
それで本当に諦められたらそれもありですが、
心には気持ちがあり生ものですから何かの拍子に
痛むことになります。
様々な要素を部分的に機会あるごとに生きる
ということは命ある限り持ち時間に出来ます。
それでも活動出来る時間や望むものによっては
旬もありますからやはり動くことです。
そして動いた結果を少しずつ様々な要素に
還元していくことが大切です。
最初は大変ですが、全ての要素に意識を
向けてみることがスタート地点になります。
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retepom · 1 month
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本誌感想と朗読劇余韻(早口)
労働が“現実”過ぎてどうしたものかと頭を抱えた本日。同僚への土産菓子は好評だったのでヨシとする。とりあえず合併号明けの本誌なのでざっくり好きポイントに触れつつ後半は朗読劇関係の早口感想(くるっぷ拡大版)になります。脳内再生するときは思ってる3倍早口にしてください。では本誌から。
サカデイ 篁さんやっぱり妖怪じゃねーか!!!となりました 神格化してる方の怪異に違いない 怖すぎて命乞いすら諦めるレベル
ヒロアカ 本当に色々あったけれどここへ来て『ヒーロー』の在り方が本当にシンプルな領域に戻ってきていて……「頑張れ」の声が力になる…「初日の下校を思い出す!」の台詞でもう涙腺が限界を超えているのに「今なら彼女が言っていたこともよくわかる気がするよ」は反則だよ飯田くんさァ!!麗日さんの言葉ってずっとあったかいんだよ 言われた本人以外の心にもこんなにも残ってんだもん…あらゆる頑張れの先にサブタイが爆発すんのたまんねぇ〜〜〜ッ!!
超巡 「俺が狙う」からのコンビネーション片腕ショット 嫌だ 警視をカッコイイと思いたくない!!嫌だ!!!がっ"ご"い"い"なんなの やめてください 助けて チャラになるくらいキモさが爆発してくれなきゃ困る あとけなぽん(?)が私の王道脱線センサーに引っかかって絡まってるんですけれど 身長差と絶妙な立場にギュッッッときちゃったどうしたらいい 埋め合わせで食事とかしてくれませんか???
キルアオ 元嫁!!元嫁俺だ!!!好き過ぎて取り乱してしまうくらい好き 瑛里さんの後れ毛をそよがせる風になりたい 日常の安心感もそこそこに次の案件が舞い込んでくるの週刊のテンポしてて良い
呪術 お兄ちゃ………ブラザー!!!!!!!!!!!!ウワアアアアアァ東堂ッッああぁ おわ
ロボコ 仲良し三人組+ロボコのワチャワチャ回は安定感すら感じる ガチゴリラがまた人をやめているがそれも良い あったかいオチにしてくれるの好きです ギャグ枠は超巡とアンケ割れちゃいそうで怖いけれどこのままどっちも読ませて欲しい……
あかね噺 現在と過去の回想演出がうますぎるんだよ…天才……?まいける兄さ"ん"ッ!!!「範を示そうか」が貫禄とセクシーの合せ技一本で困る 諏訪部さんの声がしてもおかしくないレベル まいける兄さんの落語マジで楽しみ
アンデラ 超弩級組織最終兵器対神波動砲!!超弩級組織最終兵器対神波動砲じゃねーか!!!完成度高くね????改魂 ファン=クーロンの魔貫光殺砲ってこと?????(???????)ソウちゃ…なんでそんな“人間”みたいな顔するんだよ 仲間の消滅に何を想う……ニコイチがいままで散々じれったかったのに一晩で急に付き合うもすっ飛ばして結婚しましたされるラボメンの心境を140字程度で述べよ なおファン=クーロンは徒歩で帰るため事情説明には加わらないものとする
アネモネ 海月ちゃんが仲間に加わるなどあったけれどナニワ系ミュータントが引き続きいい味を出している しかし急展開 どうしたんだ
グリグリ 感情の発露と余韻演出の良さにも関わらず順位があまりにも厳しい……もっとゆっくり読める漫画雑誌ならあるいはと感じてしまう…
掲載順でザクザクっと触れていきましたが合併号明けはやはり読み応えがありますね。ジャンプラの方はスパイファミリーがよォ…!!過去回想なのにこんなにも情緒がめちゃくちゃ つらい
さてここからは土曜日に現地で見てきた朗読劇のお話と余韻になります。だいぶキモいので読まなくても大丈夫です。当日ポスト+くるっぷ+αくらいの乱文となります。
当然ながらガチ勢の方が多い中ひっそりソロ活して帰ってきたオタクなので(現地交換はやったれェ!!という気持ちだったが)
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語り尽くせぬあれやこれやがあるんですが あの空間で体験したエンターテイメントを言葉で出力する語彙が欲しい ちなみにプレミアムシートがどれくらい前方だったかというと演出の火柱が上がるたびに「あったけぇ…」となる位置にいました。火柱に爆発に煙に光にと舞台演出がとんでもなくて 声優さん達は基本の立ち位置から動かずにお芝居するんだけれどしっかり画が想像できて動きも感じられるし ストーリーも全編シリアスってわけでもなくてわりとコメディもありあたたかさもあり…これが新時代のエンタメか……中村杉田がイチャついてたと思ったら中村沢城もイチャつきだすし諏訪部沢城はしっとりクソデカ感情で困る 安元梅原兄弟はやりとりが終始愉快 我が弟は間が悪い 持ちネタかな?年齢の末っ子は梅原ガレスなんだけれど精神的末っ子は杉田モードレッドなんです 今も昔もお前は一人ぼっちが嫌い…大塚さんはみんなのじいじだった 泣いちゃうよこんなん……中村さんが“純粋”なんてそんなまさかと思いながら見てたせいでエクスカリバーの件に妙な納得感があったのは私だけではないはずだ……モードレッドの“もう一人は嫌だ”という意識による「お前たちより先にアヴァロンへ行きたい」はズルいじゃん……あざとい…緊張しすぎて安元さんを直視しきれなかったキャスト紹介は基本中村さんが読んでてその間他のキャストは拍手したりこっちだよって手で合図してたりするんだけれど安元さん本当に全身でそれをやってて自分の後ろにいた人の紹介のときはちゃんと立ち位置から離れて見えるようにしたりポーズで賑やかしたり本当に気遣いの人 Xでポストもしたんだけれど待機モーションのときめちゃくちゃ足開いて座ってるの大好き あと梅原さんはマジでクールな男前ハンサムでした。千秋楽後のポストも写真撮ってない中村さんと写真で余韻をひとり締める安元さんの対比がも〜〜〜最高かよ?ってなったオタクです。そして梶田さんはあげてくれる。わしゃがなでもまた話題に出してくれるといいな〜!安元さんは本日も夜あそびで明日はコーポとこんなに供給が多くて大丈夫!?れてぽんは推しが多忙過ぎると心配になるタイプのオタクだよ!!!今日も元気をありがとうございまああぁすッ!!!!!!!(財布の紐をブチ抜いてDVD予約に踏み切るgif)
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kiriri1011 · 2 months
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わが最愛なる夜の牙
 アスタリオンは、まだ寝ている伴侶の顔を満足そうに見下ろしていた。  その頬は優しげに緩んでいるが、まなざしではタヴの長い睫毛がかすかに動くのも見逃すまいとするように彼女だけを見据えていて、寝台に垂れた黒髪を弄ぶ所作にもどこか独占欲が滲む。  今や彼にとって、美しいタヴを視線で愛でることと、狩りの獲物を賛美することに大した違いはない。  そして、どちらも紛うことなく愛であるとアスタリオンは信じている。
 ――凄惨な儀式を経て、ヴァンパイア・アセンダントに昇格したアスタリオンがまず最初に行ったことは、最愛の人を自身のスポーンへと変化させることだった。
 愛し合うふたりが不老不死となり、この世界を揺るがす闇の支配者として君臨する。これ以上のハッピーエンドは物語の世界にもないだろう。  完璧な幸福を手中に収めた実感は、日々深まる一方だ。  ふと、手にとっていた黒髪を離し、眠るタヴの上唇をめくると、白く伸びた犬歯を見てにやりとする。  ヴァンパイア・スポーンとして生まれ変わった彼女の身体には、徐々にだが確実に変化が現れた。  長くなっ��きた牙がその証拠だ。  唇を触られたタヴが緩やかに睫毛を上げて、赤い瞳を持ち上げる。  今やその瞳が自分と同じ色をしていることに、アスタリオンは言葉にしつくせない喜びを感じる。
「だいぶ長くなってきたな。すばらしい成長だ」
 アスタリオンは鋭く尖った牙を眺めて、満足そうにうなずく。  その満ち足りた表情を見て、女は冷めたため息を落とした。
「それで、人が寝てるのを邪魔してまでする歯医者ごっこは楽しいかしら、マイ・マスター?」
「お前の吸血鬼としての成長を見届けるのも主としての役目だ、わが愛し子。それに、もう十分眠っただろう」
 アスタリオンに言わせれば、むしろこの時間まで起こさなかったことに感謝するべきだ。  わが物顔で唇をめくる指先にタヴは鬱陶しそうに目を細める。  スポーンとなった彼女は、もともと白い肌がさらに青みを増し、頬からは血の気が失せて、その美貌はより冷たくなった。  バルダーズ・ゲートを救った英雄として持ち上げられる機会も増えた中、研ぎ澄まされる彼女の魅力に世間も放っておかない。  カザドール亡き後、ザール家の当主の地位を簒奪し、貴族として名乗りを上げたアスタリオンはそんな浮き立つ世間を牽制するように彼女と婚姻し、名実ともに夫婦となった。  だが、歴史に名を刻む英雄と上層きっての大貴族という十分な肩書きを得たものの、タヴはあまり頓着していない。  アスタリオンが貴族社会を手玉にとるべく連日催している派手な夜会や舞踏会にも、タヴは一応出席しているといった体であまり気が乗っている様子ではなかった。  アスタリオンが常に彼女をそばに置きたがるのも、仕方なしといった感じで従ってはいるし、夫婦となってからは彼と同じベッドでともに寝ている。ふたりはほぼ片時もなく一緒にいる。
 唇に触れていたアスタリオンの手首に、そっと忍び寄る蛇のように彼女の片手が絡みつく。
「あまり傲慢すぎると私に寝首を掻かれるわよ」
 だが、ときどきタヴはそんな完璧な幸福に唾を吐く真似をする。  そっと力を込めて彼女はアスタリオンの腕を押し返した。  最高の伴侶であり、最高のマスターとして君臨する自分の何が不満だというのか、アスタリオンはたまに理解に苦しむ。しかし、彼女を支配する闇の王たる己に、誰を理解する義務があるだろう?  それに、タヴのささやかな反抗を許す程度にはアスタリオンは寛容だった。
「誰が、誰の寝首を掻くって? ああダーリン、あまり愛情深い伴侶をからかわないでくれ。お前の冗談にはいくらでも付き合うが、自分が何を言っているかは少しぐらい考えたか?」
 アスタリオンは笑う。  笑ってはいるが、押し返された手を引っ込めるどころか、白い喉首を掴み、試すように力を込めた。  タヴは物憂そうに目を細め、自分の上に跨る男を冷たく見つめる。
「お前の夫は7000人もの命を吸って完成した不死の王で、お前自身はそのスポーンに過ぎない。夜の力を得たばかりで少々舞い上がってるのは大目に見よう。……だが、夫婦の寝室で聞きたいのはお前の睦言か悲鳴だけだ。ささいなすれ違いで夫婦げんかになる前に自分の立場をよく思い出してくれ、ダーリン」
「なぜ不可能だと思うの?」
「考えるまでもない」
「きっと、カザドールもお前に殺されるまではそう思っていたわよ」
 アスタリオンから笑顔が消えた。
 一瞬の沈黙。
「ハッ――、アハッ、アハハハ! 今のはお前が俺にかけた言葉の中でも最高傑作だ、いや、一番は『愛してる』だが、それに匹敵すると言ってもいい!」
 急にアスタリオンは肩を震わせて哄笑した。  だが、タヴの首に絡む手はそのまま動かず、また力を緩めることもない。  嘘のように見事な高笑いだったが、アスタリオンは彼女の言葉に心から感嘆した。  スポーンの自分があの男を殺したように、スポーンの彼女が自分を殺すという。  ありえないと言いたいところだが、自分がそのありえざる物語の生き証人であることを、アスタリオンは不愉快ながらも認めるしかない。
「タヴ、あまり真実を言い当てるな。お前の傷つくところは見たくない」
 認めざるを得ないからこそ――、だからこそ、怒りを隠さなかった。  首にかけた手に力を込め、顎を自分の方に向けさせると、そのまま咬みつくような口づけをする。  性急に舌をねじ込み、彼女の口内を食い尽くす勢いで攻め立てた。  呼吸を差し止められながら蹂躙されたタヴは、苦しげにしながら自分の喉を締める手に両手をかける。  抵抗を受けつつ、アスタリオンは挑発するように彼女の長い牙を丹念に舐め上げたが、その舌先にじくりと刺激が走り、鉄錆の味が広がった。  完璧な夫婦にはありうるはずもない痛みに、アスタリオンはかすかに目を開く。
「おかげさまで牙の使い道がわかったわ。ああ、ダーリン、身体を張ったご指導、本当に熱心ね――」
 氷のナイフのような微笑みを浮かべてタヴは言う。  その唇には赤い血が滲んでいて、どんな口紅でも演出できない艶やかさを漂わせていた。  アスタリオン己の血の味をよく味わいながら、暗い興奮がぞくぞくと痺れ薬のように背筋を這い上がる感覚に集中する。  ヴァンパイア・スポーンとしては赤子も同然とみなし、緩やかに見守っていたが、そもそもタヴは天性の反逆者だった。  たとえば相手がアスタリオンではなくカザドールだとしても、彼女は誰の奴隷にもならないだろう。  不滅の血の絆も、決して彼女の魂を捕らえておくことはできないと知った夜の王は、白い牙を光らせて獰猛に微笑んだ。
「お前は俺の最高の獲物だ」
 間違いなくタヴは至高の存在だ。  だからこそ、跪かせたい。  世界でもっとも美しい獲物の頬をそっと撫でて、アスタリオンは恍惚とつぶやく。
「永遠にお前が欲しい」
 ヴァンパイアの感情は、尽きることのない飢えへの欲求だけだと言われている。  だが、アスタリオンに言わせれば、彼女を求めることは、吸血鬼の本能を超えて、もはや魂が叫ぶ飢えそのものだった。アスタリオンの赤い欲望はタヴに向かって咆哮し、自身が完全に満たされるまで欲し続けるだろう。
 永遠に。
 タヴの手が静かに伸びて、お返しのようにアスタリオンの頬を撫でた。
「なら、お前も私の欲しいものをくれる?」
「ああ、与えてやろう。お前の望むままに、欲しいすべてをくれてやる。一晩では足りないほど、時間をかけて、永久にそれを教えてやる」
 アスタリオンが頭を屈めると、タヴはそれを受け入れて、ふたりは静かに唇を重ねた。  血の滲むキスは甘く、毒の入ったワインのように濃い。
「……お前に私の欲しいものがわかるのかしら?」
 口づけの合間、そっと耳元でささやいてきた唇。  アスタリオンは腕に抱いたその身が秘めた期待に応えるように赤い口をひらき、青白い肌に牙を突き立てる。  吸血の苦痛に身悶えする身体を離すまいと抱き締めながら、夜の王は愛する半身の血を啜り、己の欲望が激しく胎動する感覚にすべてを許す。
 欲しいのはお前だけだと、互いの流血を以て教え続ける。
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